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パンデミック(経済社会的視点)(その15)支える側の実態4題(支援現場の医師が訴える医療者の窮状 クラスター施設職員「2~3割がうつ症状」の悲惨、医療従事者のメンタル悪化が「放置」される複雑背景 うつに不眠、「心の異変」相次ぐ医療現場の深刻実態、クラスター施設では行政の支援が待ったなし 暗中模索の医療機関、コロナで不足する「職員ケア」) [パンデミック]

パンデミック(経済社会的視点)については、3月26日に取上げた。今日は、(その15)支える側の実態3題(支援現場の医師が訴える医療者の窮状 クラスター施設職員「2~3割がうつ症状」の悲惨、医療従事者のメンタル悪化が「放置」される複雑背景 うつに不眠、「心の異変」相次ぐ医療現場の深刻実態、クラスター施設では行政の支援が待ったなし 暗中模索の医療機関、コロナで不足する「職員ケア」)を紹介しよう。

先ずは、5月2日付け東洋経済Plus「支援現場の医師が訴える医療者の窮状 クラスター施設職員「2~3割がうつ症状」の悲惨」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/26864
・『コロナ禍で医療従事者や自治体職員の心の問題が顕在化している。患者や住民を「支える立場」にある人たちへの支援が急務だ。 医療従事者や自治体職員のメンタルヘルスが悪化している。コロナ対応に追われて過重労働が常態化し、うつ症状などに悩む人が増えている。 福島県立医科大学・災害こころの医学講座の主任教授を務める前田正治氏は、クラスター(集団感染)が発生した医療・介護施設の職員のメンタルヘルス・ケアを行う。前田教授に、医療従事者らのメンタル危機を防ぐための支援のあり方などについて話を聞いた(Qは聞き手の質問、Aは前田氏の回答)。 Q:コロナ禍で、医療従事者にどのような心のストレスがかかっていますか。 A:医療従事者のうつ症状が強くなる原因は、過重労働による疲弊と、強く自分を責める感情にある。医療従事者は自分が感染する不安より、「(家族や友人などの)誰かに感染させてしまうのではないか」と自分を責める感情のほうが強い。身の周りの人が陽性者や濃厚接触者になった場合には、いっそう自分を責める感情が強くなる。 感染のリスクをゼロにはできない。だが、医療従事者は自分が感染すると社会的な制裁を受けるのではないかという不安も大きい。ある感染症病棟の看護師は、「記者会見で謝罪している自分の姿をよく思い浮かべます」と話していた。(他者に感染させるリスクへの不安から)誰にも会わなくなるなど、職場以外でも萎縮してしまう。 直接コロナ患者に接するスタッフはそれほど増やすことができず、一部の職員に負担がのしかかってしまいがちだ。現場のスタッフからは「まず何より休息がほしい」という声を聞くが、スタッフに十分な休息を与えるシフトを組むことが難しい。 こうした過重労働やストレスが、睡眠不足をもたらすこともある。コロナに対応するスタッフに最も多い訴えの一つが睡眠障害だ』、「医療従事者のうつ症状が強くなる原因は、過重労働による疲弊と、強く自分を責める感情にある」、確かに大変そうだ。
・『「火をつける」との脅しも  Q:クラスターが発生した施設では、具体的に職員の間でどんなメンタルの不調が見受けられるのでしょうか? A:次々に職員が陽性になると、残った職員に負担が集中する。家族にも話すことができず、孤立しがちだ。クラスターが発生した施設の職員に対してストレスチェックを行うと、職員の2~3割に強いうつ症状が出ている。 私が支援に入ったクラスター発生施設の職員は、(周辺の)住民から「家に火をつける」と脅されるなどの嫌がらせを受け、深刻なうつ状態に陥ってしまった。感染症病棟で働く医療スタッフの不足や、医療機関がコロナ対応を避ける状況の背景には、社会的な偏見にさらされる不安や恐怖があるのではないか。 あるコロナ重症者を受け入れている病院では、クラスターが発生して機能が完全にストップした。こうした機能不全も、自然災害ならば職員も「自分たちが災害を被った結果」だと感じるが、コロナの場合は「(感染を予防できなかった)自分たちが悪かった結果」だと感じて深く傷つきがちだ。心の傷が深いほど、職場復帰が難しくなるし、離職につながりかねない。 クラスター発生施設では施設の内外で感染ルートの疫学調査が行われるが、やり方によっては「犯人捜し」のようになる。疫学調査は犯人捜しにならないように、慎重に行うべきだ。 Q:医療従事者と同じく、保健所などの自治体職員の過重労働も問題になっています。 A:保健所も余力がまったくないほど、業務がパンクしている。休暇を取れず、うつ病で休職する職員もいる。ここで辞めれば一生の悔いが残るという気持ちから、辞めることもできない。仕事と家庭のどちらを優先させるかという葛藤に苦しんでいる。 行政に対する住民からのバッシングも起こりやすい。自然災害は一目で被災の状況がわかる。それに対して今回のコロナ禍では(影響度合いが見えづらく)さまざまな公的補償の対象が恣意的な線引きで決まり、不公平感が生まれやすい。その線引きに住民の不満が向かっている。その構図は、原発被災者にとても似ている。 連合の地方組織「連合福島」と福島県立医科大が共同で行った調査(調査期間2020年10月1日~11月23日)では、回答した連合の組合員の50.4%に強いうつ・不安症状が認められた。コロナ禍の前年(2019年)の福島県民のデータ(31.5%)と比べても著しく高かった。 (広く県民の間でも)コロナの影響は感染不安ばかりではなく、情報不安やコミュニケーションの減少など生活全般に及んでいることがうかがえる。総じて女性や医療介護職のストレスが高い結果だった。 Q:医療従事者らにどのような支援が必要なのでしょうか。 A:専門職である医療従事者へのメンタルケアが必要なのかと問われることがある。だが、福島県内で私たちが支援する病院職員らは「震災時以上に大変だ」と口をそろえる。 都道府県にはメンタルヘルスの相談窓口が設置されているが、相談を待っているだけではほとんど利用されない。顔が見られる関係でなければ相談はできないからだ。 コロナ感染症対応病棟のスタッフからは、「不安よりも不満」という言葉をよく聞く。クラスターが発生すると、時にスタッフの怒りが噴出して、病院内の管理体制では組織のコントロールができなくなることがある。 スタッフの不満が最も高まるのがクラスターの収束後、病院再開のときだ。再開の時期をめぐって、地域医療や経営を考える管理者と、過酷な状況にいる現場の看護師の間に亀裂が深まりやすい。クラスターの発生が、そのまま組織の存続危機をまねきかねない』、「クラスターが発生した施設の職員に対してストレスチェックを行うと、職員の2~3割に強いうつ症状が出ている」、「「連合福島」と福島県立医科大が共同で行った調査・・・では、回答した連合の組合員の50.4%に強いうつ・不安症状が認められた。コロナ禍の前年(2019年)の福島県民のデータ(31.5%)と比べても著しく高かった」、「クラスターが発生すると、時にスタッフの怒りが噴出して、病院内の管理体制では組織のコントロールができなくなることがある」、やはり「クラスター」は可能な限り抑え込む必要がありそうだ。
・『外部の支援が足りない  そこで必要なのが、外部の支援チームだ。福島県では県の新型コロナウイルス感染症対策本部のもとで感染症防御の専門家チームと災害派遣医療チーム(DMAT)が協働し、福島県立医科大・災害こころの医学講座の医師、臨床心理士で作る「こころのケア・チーム」がクラスター発生施設を支援している。私たちのチームでは、病院再開後1カ月間は職員のメンタルケアの支援を続けている。復興期こそ心のケアは重要だ。 なかでも必須となるのが、遠隔支援だ。私たちは事前に職員へのアンケートでうつ病などの症状を確認し、その後、ズームや電話で面談をしている。治療が必要な場合や希死念慮(自殺願望)があるような重篤なケースは、対面での面談も行っている。 施設や職員からのメンタルヘルス支援のニーズはあるものの、外部のチームによる積極的な支援はまだ一部の自治体に限られている。 通常の災害では被災地には、(病院や大学などから派遣された)こころのケア・チームの支援が入る。それがコロナ禍では感染リスクなどから、クラスター発生施設に(支援チームを)派遣することに、派遣する側の組織が消極的だ。しかし、訪問が難しい場合でもオンラインを使って支援する方法はあるので、それらを活用すべきだ』、「クラスター発生施設に(支援チームを)派遣する」、「訪問が難しい場合でもオンラインを使って支援」、その通りだ。

次に、この続き、5月2日付け東洋経済Plus「医療従事者のメンタル悪化が「放置」される複雑背景 うつに不眠、「心の異変」相次ぐ医療現場の深刻実態」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/26879
・『コロナ禍で医療従事者や自治体職員の心の問題が顕在化している。患者や住民を「支える立場」にある人たちへの支援が急務だ。 2020年12月、長野県のある公立病院では近隣の2カ所の介護施設で新型コロナウイルスのクラスター(集団感染)が発生し、多数の感染患者を受け入れた。それまで最低限の人員で回していたコロナ病棟には、新たにほかの病棟から看護師が投入された。 「準備期間がなく、ぶっつけ本番に近い状態でコロナ病棟に入った。感染防護具を着るのも初めてで、感染の恐怖は大きかった」。コロナ病棟に回された看護師は、こう振り返る。この病院では看護師5人が院内感染しているという。 コロナ患者を受け入れる別の病院で働く理学療法士の男性は、昨年11月下旬にうつ症状が現れ、通院するまでになった。症状が出る前、男性が働く病院ではクラスターが発生。自宅には生まれたばかりの子どもがいたため、家族への感染リスクを懸念し、ホテルで寝泊まりする日々が続いていた』、「理学療法士の男性は・・・うつ症状が現れ、通院する」、「家族への感染リスクを懸念し、ホテルで寝泊まりする日々が続いていた」、という厳しい勤務環境からは同情する他ない。
・『自分が"感染源"になる恐怖  地方自治体職員の労働組合の自治労(全日本自治団体労働組合)が昨年、公立病院で働く医療者に行った調査によると、コロナ患者と直接かかわる職員の約2割にうつ症状の自覚があった。 コロナの感染拡大から1年以上。足元では第4波も広まり、病院職員の間で長期戦によるメンタルの悪化が深刻さを増している。 日本赤十字社医療センター(渋谷区)が2020年4~5月に全職員に行った調査でも、うつ症状があった職員は27.9%に上った。同年11~12月に調査を再び実施したが、うつ症状の職員は25.6%と、なお高い割合だ。同センターで職員支援に当たるメンタルヘルス科の臨床心理士の秋山恵子さんは、「慢性的な疲労やストレスが蓄積しており、依然として油断できない状況だ」と危惧する。 医療者たちが共通して抱くのは、自らが感染源になる恐怖だ。札幌市内の民間病院で働く看護師の女性は、「体調を自己管理するのは限界」と悲鳴を上げる。女性が働く病院は、呼吸器専門の内科だ。 「(病院全体の)入院患者の8割が呼吸器系の重症患者だ。職員はコロナの検査をしてもらえないため、熱を測って自分で体調管理するしかない。自分がウイルスを持ち込んで患者に感染させたらと思うと不安でたまらない」 感染リスクを恐れて、家族や友人とも接触を控える生活が続く日々。そのうえ、「いつもなら同僚と愚痴を言って励まし合っていたが、病院の休憩室で話すことすら禁じられている」(複数の看護師)。 コロナ患者の対応に当たる医師や看護師の睡眠不足も深刻だ。複数の医療機関の職員の電話相談を受けている臨床心理士は、次のように現場の実情を明かす。 「医療者は自分が休むことが患者の命と関係すると考えてしまう。病棟の夢を見る、人工呼吸器のアラーム音が耳から離れないなど、睡眠に影響が出ている人が多い。本人が自覚をしていなくても、眠れているかと質問すると、平均して2~3時間しか眠れていない」』、「職員はコロナの検査をしてもらえないため、熱を測って自分で体調管理するしかない。自分がウイルスを持ち込んで患者に感染させたらと思うと不安でたまらない」、病院は「クラスター」発生を予防するためにも、自らの職員にも検査を徹底すべきだ。
・『根底にある長時間労働とパワハラ  コロナ禍以前から、医療現場は過酷な労働環境が問題視されてきた。 厚労省の「医師の働き方改革の推進に関する検討会」では、一部医師の時間外労働時間の上限を「年間1860時間」(月平均155時間相当)まで認める方針をおおむね固めている。これは、過労死ラインとされる「月80時間」の約2倍。同検討会の資料によると、約1割の医師が年間1860 時間を超えて働いている。 コロナ対応で現場が逼迫する中、経験の浅い医師にも負荷が押し寄せている。 千葉県の民間病院で働く研修医は、「若手医師の当直回数が増えている」と吐露する。「地方ではもともと医師が足りず、ベテラン医師には当直を頼みにくいため、若手に集中しがち」という。通常の研修がおろそかにされ、コロナ診療に回される研修医も多い。 研修医や、専門医の取得を目指す"専攻医"は、「上司に逆らえないうえ、自分を責めやすい」と、勤務医らで作る全国医師ユニオンの代表を務める植山直人医師は話す。 「メンタルを病んでつぶれた医師はたくさんいる。根底にあるのは、当たり前のように横行する長時間労働と、それとセットのパワハラだ。上司に長時間労働の改善を求められないし、言ったとしても相手にされない。メンタル不調に陥ると、本人の闘う気力も失われる」(植山医師) 長時間労働を背景とした医師のメンタル不調は、数字にも表れている。筑波大学医学医療系・客員准教授の石川雅俊医師が行った専攻医への調査(調査期間は2020年10月10日~23日)では、中等度の抗うつ症状があった医師は18.6%。勤務時間が長いほど、その割合が高くなることもわかった』、「厚労省の「医師の働き方改革の推進に関する検討会」では、一部医師の時間外労働時間の上限を「年間1860時間」(月平均155時間相当)まで認める方針をおおむね固めている。これは、過労死ラインとされる「月80時間」の約2倍。同検討会の資料によると、約1割の医師が年間1860 時間を超えて働いている」、「医師」の「長時間労働」はやはり酷いようだ。「メンタルを病んでつぶれた医師はたくさんいる。根底にあるのは、当たり前のように横行する長時間労働と、それとセットのパワハラだ」、「中等度の抗うつ症状があった医師は18.6%。勤務時間が長いほど、その割合が高くなることもわかった」、なるほど。 
・『"弱さを見せない"特殊な文化  過度なストレスがかかりやすい職場であるにもかかわらず、従来から医療者の心の問題は放置されやすい傾向が強い。 横浜労災病院の勤労者メンタルヘルスセンターでは、業種を問わず労働者の心の悩みのメール相談を受けている。2020年のメール相談件数は、前年の約1.6倍の1万5223件。メール相談を開始した2000年以降で過去最多となった。 だが、メール相談に応じる山本晴義センター長は、「最もストレスを感じているはずの医療者からの相談は、思っているよりも少なかった」と言う。 「医療者には『弱さを見せない』という特有の文化がある。そのため、身体に症状が出るまで我慢してしまうことが多い」。医療事故問題に詳しい早稲田大学法学学術院の和田仁孝教授は、こう分析する。 和田教授が理事を務める一般社団法人「Heals」では、医療事故を体験した医療者からの相談を受ける活動をしている。設立した理由は、医療者が事故を起こしたときに安心して相談できる場が少なかったからだ。 「医療機関は、組織の中に専門知識を持つ医師や看護師がいるため、職員へのケアは誰でもできると思われがちだ。そのため医療者への精神的なケアは、エアポケット(空白)になりやすかった」(和田教授)』、「医療者には『弱さを見せない』という特有の文化がある。そのため、身体に症状が出るまで我慢してしまうことが多い」、周囲はそれを見込んで対応する必要がありそうだ。
・『院内の窓口には「相談できない」  一定の職員数を超える医療機関は通常、職員向けの専用相談窓口を設置している。だが、その利用率は低い。自治労の調査によると、勤務している施設内にメンタルヘルス相談窓口があると答えた職員は41%だった。ただし、相談したことがあるという職員は6.5%にとどまる。 利用されにくい事情として、「相談窓口があるが、元看護部長がやっているので組織内の不満を言えない」「相談しても組織が改善されない」(複数の医療者)といった声が上がる。 前出の病院職員の電話相談を受ける臨床心理士も、「元看護部長が相談に乗っているケースは多い。経験があるだけに、『もう少しがんばってみて』と、あと一歩無理をさせてしまう」と指摘する。 「Heals」では現在、医療従事者らを対象にコロナに関する電話相談も受けている。相談内容で目立つのが、組織内部での葛藤だ。「感染リスクの高い仕事ばかりやらされる」といった不公平感や、管理職の指示などに対する不満を持つ職員からの相談が多いという。 特殊な職場環境の下、最前線でコロナ対応に当たる医療従事者のメンタルの悪化は表面化しにくい。それゆえに深刻だ。彼らの自助努力を求める体制はすでに限界を迎えている』、「勤務している施設内にメンタルヘルス相談窓口があると答えた職員は41%だった。ただし、相談したことがあるという職員は6.5%にとどまる」、やはり職場では相談し難いケースもあるだろうから、外部に設ける必要があるのだろう。

第三に、この続き、5月2日付け東洋経済Plus「クラスター施設では行政の支援が待ったなし 暗中模索の医療機関、コロナで不足する「職員ケア」」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/26880
・『コロナ禍で医療従事者や自治体職員の心の問題が顕在化している。患者や住民を「支える立場」にある人たちへの支援が急務だ。 長期化する新型コロナウイルス感染拡大への対応に追われ、うつ症状や不眠など、メンタルの悪化に苦しむ医療従事者が増えている。 医師や看護師が多数在籍する医療機関では、職員のメンタルヘルスの相談対応も、外部の専門家に任せず組織内の人間でまかなうことが多い。そのため院内に相談窓口があったところで、「(同僚や上司に)組織内部の不満を言えない」(複数の医療従事者)といった理由から、広くは利用されていないのが実態だ。 「自分たちが言ったことが組織に反映されると思われなければ、職員に面談の意味も理解されない。個別の励ましや労いの言葉より、拾い上げた声を組織づくりに生かす方が、ずっと大きな心理的サポートになる」 こう話すのは、日本赤十字社医療センター(渋谷区)・メンタルヘルス科の臨床心理士、秋山恵子さんだ。同センターではコロナの感染拡大が本格化した2020年4月、院内に職員支援の専門チーム「スタッフサポートチーム」を作り、職員のメンタルケアを開始した』、なるほど。
・『メンバーが各部署に出向く  日赤医療センターには、災害時に被災者への心理的支援などに当たる職員が「こころのケア要員」として在籍している。こうしたメンバーが中心となり、総勢31人で全職員のメンタルケアに取り組む。 職員へのメンタル支援に必要なのは、ただ話を聞くだけでなく、相談内容を組織改革などへつなげることだ。同センターの支援チームでは、これまでに延べ209人の個人面談を実施。相談者から許可を得られた意見は、各部署の上司や管理職にも報告する。 他方で前述のように、医療機関では相談窓口があっても、利用されないケースも多い。 窓口の利用を促すため、チームではまず、職員自身がストレスに気づくように啓発ポスターを院内に掲示。さらに支援を必要とする職員の声を拾い上げるため、メンバーが定期的に各部署に出向いている。職員との雑談の中で困り事はないかなどを聞き、助言を行うほか、必要に応じて個人面談を促す。 埼玉医科大学病院(埼玉県毛呂山町)も、2020年4月から精神科のメンバーが中心となり、職員からの相談を受ける「こころのケアチーム」を発足。チームの中核を担う神経精神科・心療内科の松岡孝裕医長は、「コロナ病棟で働く職員だけでなく、間接的に関わる職員のストレスも大きい」と話す。 「相談依頼は直接コロナ対応に関わる職員に加え、周辺の職員からも少なからず届く。救急外来の職員やレントゲンを撮影する検査技師、食事を運搬する職員、窓口職員など、全職種への支援が必要だ」(松岡医師) ただ、現状こうした専門チームを作れる病院は、院内に精神的ケアの専門知識を有する人材を豊富に抱える病院に限られている』、「総勢31人で全職員のメンタルケアに取り組む。 職員へのメンタル支援に必要なのは、ただ話を聞くだけでなく、相談内容を組織改革などへつなげることだ。同センターの支援チームでは、これまでに延べ209人の個人面談を実施。相談者から許可を得られた意見は、各部署の上司や管理職にも報告する」、「支援を必要とする職員の声を拾い上げるため、メンバーが定期的に各部署に出向いている。職員との雑談の中で困り事はないかなどを聞き、助言を行うほか、必要に応じて個人面談を促す」、さすが「日赤医療センター」だけあって、取り組みは本格的だ。
・『電話相談を外部に委託  コロナ禍での職員のケアを強化するため、相談窓口の運営を組織内ではなく、外部機関に委託する事例もある。 大手民間病院グループの徳洲会は2020年4月から、職員向けにメンタルヘルス相談の電話窓口を設置している。相談窓口は、企業の従業員のメンタル支援を受託する民間会社のスノーム(名古屋市)が担う。同社は医療従事者向けの相談実績もある。相談内容は相談者の許可が得られた場合にのみ、病院側にフィードバックされる。 窓口導入のきっかけは、同グループの葉山ハートセンター(神奈川県葉山町)でダイヤモンド・プリンセス号の感染患者を受け入れたことだった。 「同調圧力によって、コロナ患者への対応に不安があっても言い出せない職員がいるのではないか」。 そう考えた同グループの医療安全・質管理部の野口幸洋課長補佐は、臨時的な電話相談窓口を設置し、職員へ周知した。「まずは病院側が、職員をフォローしているというメッセージを明確に示すことが重要だった」(野口氏)。 職員支援の必要性を即座に考えた背景には、災害支援での経験があった。 徳洲会では、災害時に医師や看護師で作るチームを被災地に派遣する仕組みがある。被災地に派遣された職員には、派遣直後と3カ月後にメンタルチェックを必ず行う。実際、水害支援に入った職員が被災地を思い出し、フラッシュバックを起こしたケースもあったという』、「徳洲会」の「葉山ハートセンター・・・でダイヤモンド・プリンセス号の感染患者を受け入れたことだった。 「同調圧力によって、コロナ患者への対応に不安があっても言い出せない職員がいるのではないか」。 そう考えた同グループの医療安全・質管理部の野口幸洋課長補佐は、臨時的な電話相談窓口を設置し、職員へ周知した。「まずは病院側が、職員をフォローしているというメッセージを明確に示すことが重要だった」(野口氏)。 職員支援の必要性を即座に考えた背景には、災害支援での経験があった」、早手回しに「職員支援」の体制を整えたというのはさすがだ。
・『休職者も出るクラスター施設  一方、医療機関の中でも突出して職員のメンタル支援の必要性が高まっているのが、クラスター(集団感染)が発生した施設だ。 厚生労働省によると、全国でクラスターが発生した医療機関と福祉施設は4648施設に上る(4月26日時点)。ひとたびクラスターが発生すると、別の業務に当たっていた職員も突然、コロナ対応の最前線に立たされる。職員が次々に陽性になると、残った職員に業務の負荷が集中する。 「クラスターが発生した施設では職員のメンタルケアが後回しになり、休職者が出るほど(メンタルの悪化が)深刻になる」 沖縄県立総合精神保健福祉センターの宮川治所長は、こう警鐘を鳴らす。沖縄県では2020年8月から同センターが中心となり、クラスターが発生した医療・介護施設の職員に対してメンタル支援を行ってきた。 同県では、コロナ対策本部の中に災害派遣精神医療チーム(DPAT)の調整本部を設置。DPATとは、災害時に被災者のメンタルケアや精神科病院の運営支援を行う専門チーム。地域の医療機関などから集められた医師や看護師で構成される。宮川所長が調整役となり、DPATや沖縄県公認心理師協会が、クラスター発生施設の職員のストレスチェックやカウンセリングに当たっている。 県のコロナ対策本部の中に、職員支援の調整機能を位置づけた意味は大きい。支援の存在が医療機関や介護施設側に周知され、クラスター発生の初期段階からのケアが可能となった。2021年3月末までに沖縄県では16施設に支援を実施した。 クラスター発生時には、経営存続を考える管理者側と過酷な環境で働く現場職員の間に溝が生まれやすい。「管理者からの情報不足により、職員の不満はたまる。職員支援では、両者のコミュニケーションの潤滑油となり、両者間の溝を埋める役割になる」(宮川所長)』、「沖縄県」では「コロナ対策本部の中に災害派遣精神医療チーム(DPAT)の調整本部を設置。DPATとは、災害時に被災者のメンタルケアや精神科病院の運営支援を行う専門チーム」、「DPATや沖縄県公認心理師協会が、クラスター発生施設の職員のストレスチェックやカウンセリングに当たっている」、「クラスター発生時には、経営存続を考える管理者側と過酷な環境で働く現場職員の間に溝が生まれやすい。「管理者」と「職員」の「コミュニケーションの潤滑油となり、両者間の溝を埋める役割になる」、なかなかいい仕組みだ。
・『自治体で取り組みに温度差  もっともクラスター発生施設の職員への積極的なメンタル支援は、一部の自治体に限られる。 累計のコロナ陽性者数が最も多い東京都では、沖縄県のようなDPATの仕組みはまだ活用されていない。都内にある3つの精神保健福祉センターでは、クラスター発生施設から要請を受けた場合に職員支援を行う仕組みがある。各センターへの取材によると、東京都立精神保健センター(台東区)では、6施設への支援を実施したが、他の2センターでの実施はなかった。 2021年3月末、厚労省は「新型コロナウイルス感染症感染制御等における体制整備等に係る DPAT の活用等について」という依頼を各自治体に通知し、DPATの活用を促した。ただ、同省の地域医療計画課の担当者は「DPATの派遣状況は把握していない」と言う。 国はコロナに対応できる医療機関の拡充を進めている。だが、代わりの効かない医療者の多くがメンタル不調に陥れば、病院の存続自体が危うくなる。医療機関独自の取り組みだけでなく、行政主導で実効力のある職員支援の拡充が急がれる』、「DPATの活用を促した」のに、「同省の地域医療計画課の担当者は「DPATの派遣状況は把握していない」、無責任だ。把握すべきだろう。「医療機関独自の取り組みだけでなく、行政主導で実効力のある職員支援の拡充が急がれる」、同感である。
なお、この他のパンデミックについては、後日、改めて取上げるつもりである。
タグ:パンデミック (経済社会的視点) (その15)支える側の実態4題(支援現場の医師が訴える医療者の窮状 クラスター施設職員「2~3割がうつ症状」の悲惨、医療従事者のメンタル悪化が「放置」される複雑背景 うつに不眠、「心の異変」相次ぐ医療現場の深刻実態、クラスター施設では行政の支援が待ったなし 暗中模索の医療機関、コロナで不足する「職員ケア」) 東洋経済Plus 「支援現場の医師が訴える医療者の窮状 クラスター施設職員「2~3割がうつ症状」の悲惨」 「医療従事者のうつ症状が強くなる原因は、過重労働による疲弊と、強く自分を責める感情にある」、確かに大変そうだ。 「クラスターが発生した施設の職員に対してストレスチェックを行うと、職員の2~3割に強いうつ症状が出ている」、「「連合福島」と福島県立医科大が共同で行った調査・・・では、回答した連合の組合員の50.4%に強いうつ・不安症状が認められた。コロナ禍の前年(2019年)の福島県民のデータ(31.5%)と比べても著しく高かった」、「クラスターが発生すると、時にスタッフの怒りが噴出して、病院内の管理体制では組織のコントロールができなくなることがある」、やはり「クラスター」は可能な限り抑え込む必要がありそうだ。 「クラスター発生施設に(支援チームを)派遣する」、「訪問が難しい場合でもオンラインを使って支援」、その通りだ。 「医療従事者のメンタル悪化が「放置」される複雑背景 うつに不眠、「心の異変」相次ぐ医療現場の深刻実態」 「理学療法士の男性は・・・うつ症状が現れ、通院する」、「家族への感染リスクを懸念し、ホテルで寝泊まりする日々が続いていた」、という厳しい勤務環境からは同情する他ない 「職員はコロナの検査をしてもらえないため、熱を測って自分で体調管理するしかない。自分がウイルスを持ち込んで患者に感染させたらと思うと不安でたまらない」、病院は「クラスター」発生を予防するためにも、自らの職員にも検査を徹底すべきだ。 「厚労省の「医師の働き方改革の推進に関する検討会」では、一部医師の時間外労働時間の上限を「年間1860時間」(月平均155時間相当)まで認める方針をおおむね固めている。これは、過労死ラインとされる「月80時間」の約2倍。同検討会の資料によると、約1割の医師が年間1860 時間を超えて働いている」、「医師」の「長時間労働」はやはり酷いようだ。「メンタルを病んでつぶれた医師はたくさんいる。根底にあるのは、当たり前のように横行する長時間労働と、それとセットのパワハラだ」、「中等度の抗うつ症状があった医師は18. 「医療者には『弱さを見せない』という特有の文化がある。そのため、身体に症状が出るまで我慢してしまうことが多い」、周囲はそれを見込んで対応する必要がありそうだ。 「勤務している施設内にメンタルヘルス相談窓口があると答えた職員は41%だった。ただし、相談したことがあるという職員は6.5%にとどまる」、やはり職場では相談し難いケースもあるだろうから、外部に設ける必要があるのだろう。 「クラスター施設では行政の支援が待ったなし 暗中模索の医療機関、コロナで不足する「職員ケア」」 「総勢31人で全職員のメンタルケアに取り組む。 職員へのメンタル支援に必要なのは、ただ話を聞くだけでなく、相談内容を組織改革などへつなげることだ。同センターの支援チームでは、これまでに延べ209人の個人面談を実施。相談者から許可を得られた意見は、各部署の上司や管理職にも報告する」、「支援を必要とする職員の声を拾い上げるため、メンバーが定期的に各部署に出向いている。職員との雑談の中で困り事はないかなどを聞き、助言を行うほか、必要に応じて個人面談を促す」、さすが「日赤医療センター」だけあって、取り組みは本格的 「徳洲会」の「葉山ハートセンター・・・でダイヤモンド・プリンセス号の感染患者を受け入れたことだった。 「同調圧力によって、コロナ患者への対応に不安があっても言い出せない職員がいるのではないか」。 そう考えた同グループの医療安全・質管理部の野口幸洋課長補佐は、臨時的な電話相談窓口を設置し、職員へ周知した。「まずは病院側が、職員をフォローしているというメッセージを明確に示すことが重要だった」(野口氏)。 職員支援の必要性を即座に考えた背景には、災害支援での経験があった」、早手回しに「職員支援」の体制を整えたと 「沖縄県」では「コロナ対策本部の中に災害派遣精神医療チーム(DPAT)の調整本部を設置。DPATとは、災害時に被災者のメンタルケアや精神科病院の運営支援を行う専門チーム」、「DPATや沖縄県公認心理師協会が、クラスター発生施設の職員のストレスチェックやカウンセリングに当たっている」、「クラスター発生時には、経営存続を考える管理者側と過酷な環境で働く現場職員の間に溝が生まれやすい。「管理者」と「職員」の「コミュニケーションの潤滑油となり、両者間の溝を埋める役割になる」、なかなかいい仕組みだ 「DPATの活用を促した」のに、「同省の地域医療計画課の担当者は「DPATの派遣状況は把握していない」、無責任だ。把握すべきだろう。「医療機関独自の取り組みだけでなく、行政主導で実効力のある職員支援の拡充が急がれる」、同感である。 なお、この他のパンデミックについては、後日、改めて取上げるつもりである。
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