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東芝問題(その41)(東芝 「株主への圧力問題」で判明した経産省の影 ガバナンス提唱者が企業経営に介入する大矛盾、【緊急寄稿】東芝スキャンダルと経産省の暗躍(古賀茂明)、「底なしに悪い会社」東芝から得る7つの教訓 山崎元が解説) [企業経営]

東芝問題については、5月12日に取上げた。6月25日に株主総会が終ったばかりの今日は、(その41)(東芝 「株主への圧力問題」で判明した経産省の影 ガバナンス提唱者が企業経営に介入する大矛盾、【緊急寄稿】東芝スキャンダルと経産省の暗躍(古賀茂明)、「底なしに悪い会社」東芝から得る7つの教訓 山崎元が解説)である。

先ずは、6月16日付け東洋経済オンライン「東芝、「株主への圧力問題」で判明した経産省の影 ガバナンス提唱者が企業経営に介入する大矛盾」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/434485
・『イギリスの投資ファンドからの買収提案と車谷暢昭社長の電撃的な辞任から2カ月。落ち着きを取り戻したかに見えた東芝を、再び激しい嵐が襲っている。 2020年7月に開催された定時株主総会をめぐり、東芝が株主提案などを妨害したとされる問題で、会社法に基づく調査報告書が6月10日に公表された』、「会社法に基づく調査報告書」とは物々しいが、アクティビスト・ファンドが中心になって昨年の株主総会で調査すると決定し、彼らが指名した第三者委員会が発表したもので、確かに「会社法に基づく調査報告書」ではある。
・『東芝と経産省は「一体」  報告書は、東芝の幹部と経済産業省幹部との生々しいやりとりを明らかにした。東芝幹部が、エフィッシモ・キャピタル・マネジーメントなどの大株主を「モノ言う株主(アクティビスト)」と見なし、その排除のために2020年5月に改正された外為法(外国為替及び外国貿易法)を利用しようとしたと指摘。 さらに、株主提案をさせないようエフィッシモに働きかけたり、東芝が有利になるように、経産省と一緒になってほかの大株主の議決権行使に影響を与えようとした。その結果、東芝の株主の権利が制限され、株主総会が公平に運営されなかったと結論づけた。 報告書を受けた東芝は6月14日、同25日開催の株主総会で会社側の社外取締役候補である太田順司、山内卓両氏の再任案を取り下げた。さらに、豊原正恭副社長、加茂正治上席常務の退任も決めた。 同日には永山治取締役会議長が記者会見を行い、陳謝した。東芝は今後、第三者による調査を行い、原因究明と責任の明確化を目指す。永山氏は取締役候補に残り、25日の株主総会で再任が適切か否か、株主の判断を仰ぐ。 報告書は図らずも、「東芝は、経産省といわば一体」という、経産省と東芝の親密な関係も白日の下にさらした。 具体的には、経産省幹部が東芝に対して株主への対応を指示したほか、幹部や経産省参与(当時)が株主に接触して圧力をかけたと指摘。その過程で得た情報を不当に東芝に流した、国家公務員法における守秘義務違反の疑いすらあると踏み込んだ。 経産省はこれまで日本企業に対してコーポレートガバナンスの推進を掲げ、制度設計を進めてきた。その提唱者がガバナンスの原理原則に反するような行動を取っていただけに、問題は根深い。 ところが、経産省の動きは鈍い。梶山弘志経産相は15日の記者会見で経産省として独自に調査する考えを否定。東芝に関する一連の言動も「経産省の政策として当然のことを行っているまで」と開き直った。 職員の守秘義務違反の疑いについても、「必ずしも根拠が明確ではない」と問題視せず、「国の経済安保上重要」という言葉を繰り返し、今後も東芝への外為法上の監督を続ける姿勢を示す』、「永山治取締役会議長」の「取締役」選任議案は「株主総会」で否決される異例の展開となった。「経産省」や「梶山弘志経産相」の姿勢は大いに問題だ。
・『車谷前社長と菅首相の関係  2015年の不正会計以後、人心一新を図ったはずなのに、東芝はなぜガバナンス上の問題を繰り返すのか。 「車谷氏もそれ以外の取締役も東芝の外部から来た。にもかかわらず不祥事が起きることに驚きを隠せない」。14日の会見では、アナリストからこんな意見も飛び出した。 東芝が選んだ社外取締役にも経産省の影がちらつく。そもそも車谷氏が社長に就任したのも、経産省の強い後押しがあったから。ある元社外取締役は、車谷氏を推薦したのは当時の経産省事務次官の嶋田隆氏で、その背後には菅義偉官房長官(現首相)の意向も働いていたと証言する。 東芝の調査報告書でも車谷氏と菅氏の会食が指摘され、このときに株主への対応を報告した可能性が高い。一連の株主への圧力行為はトップである車谷氏の主導で行われており、菅氏の関与が明確になれば、政治問題化する可能性もある。 25日の株主総会は波乱が避けられそうにない。永山氏らの再任案には投資助言会社が反対推奨しているほか、問題に直接関与した取締役候補だけを取り下げる対応に株主が納得するかわからない。「経産省との関わりなどに予想以上に踏み込んだ」(市場関係者)報告書に、株主の追及は必至だろう。 永山氏は14日、取締役としての監督責任を認めたうえで「責任を取る(辞任)よりも責任を果たす(続投)」と続投の理由を説明する。仮に永山氏が辞任したとして東芝の取締役会議長という「火中のクリ」を拾う人がいない現実も表している。東芝は株主総会後も取締役候補を探す予定だが、適任者が見つかる保証はない。 原子力など国家の安全保障に関わる事業を手がける東芝は、いや応なしに政官と関わらざるをえない宿命にある。だが、東芝に健全なガバナンスを取り戻すには、経産省との関係を見直す必要がある』、「車谷前社長」が威張っていたのは「菅首相の関係」が背景にあったようだ。「東芝」の「取締役候補」選びは難航しているらしい。

次に、6月19日付け日刊ゲンダイが掲載した元経産官僚の古賀茂明氏による「【緊急寄稿】東芝スキャンダルと経産省の暗躍(古賀茂明)」を紹介しよう。
・『「栄光の時代を生きた運命共同体」は今や落ちぶれた「腐れ縁」  日本政府とマーケットに対する信頼を根底から覆す大スキャンダルが起きた。大胆に要約すれば、外国株主が東芝に影響力を行使することを嫌った「外資嫌い」の経済産業省と、外資によって自らの地位を脅かされることを恐れた東芝首脳が共謀して、経産省の外国為替管理法上の規制権限をちらつかせて、外国株主に総会での人事案などの提案を止めさせようとしたり、経産省が海外の投資家に対して、外資による提案に賛成しないように働きかけたというものだ。当時の官房長官であった菅総理もこれに関わった疑いが強いという。 真相解明と再発防止策の策定までにはまだ時間がかかるが、それとは別に、マスコミからの取材で、私は、同じ質問を受けている。 東芝と経産省はなぜこんなにべったりの関係なのか、というものだ。 経産省は東芝の所管官庁で、貿易管理や原発関連などで東芝に対する規制権限を持つ。補助金、税の優遇措置でも東芝に便宜を図っているから、経産省は東芝の上に立つようにも見える』、「経産省の外国為替管理法上の規制権限をちらつかせて、外国株主に総会での人事案などの提案を止めさせようとしたり、経産省が海外の投資家に対して、外資による提案に賛成しないように働きかけた」のは、確かに「大スキャンダル」だ。
・『経産官僚にとって東芝は「居心地のいい」天下り先  一方、筆者が経産省にいた頃、東芝に天下りした先輩は、「居心地が良い」と言っていた。加計学園事件で問題になった安倍前首相秘書官を務めた柳瀬唯夫元経済産業審議官も東芝の関連会社、ダイナブック社の非常勤取締役に天下りした。 天下り以外にも、経産省が東芝の世話になることは多い。東芝の社長、会長は経済界で絶大な力を持ち、日本商工会議所(日商)や経団連のトップなど要職の常連だった。自民党への影響力も大きい。筆者も、課長や部長をしている時などに日商会頭だった東芝会長などに「ご説明」に行ったものだ。 経産省の政策にお墨付きをもらう最高機関である産業構造審議会でも東芝首脳は要職を占め、経産省のシナリオ通りに発言してくれた。もちろん、経産省最大の利権である原子力発電のメーカーでもある。どこから見ても、日本産業の頂点に位置し、80年代のジャパン・アズ・ナンバーワンと言われた日本の黄金期に、「ノートリアスMITI(悪名高き通産省)」と世界に恐れられた当時の通産省から見て、最高のパートナーであった。 両者に上下の関係はない。「栄光の時代を生きた運命共同体」だったと言うべきだろう。 後に、経産省の意向を受けて米国の原発メーカー・ウェスチングハウス社を買収して大失敗した東芝は、破綻寸前となった。その時も経産省は、産業革新機構や日本政策投資銀行などを使って東芝を救済し、「東芝復活」の夢に賭けた。その結果が、今回の不祥事だ。両者の関係は、今や、ただの「腐れ縁」に落ちぶれてしまったようだ。 これが「両者の関係は?」という問いに対する答えである』、「東芝」と「経産省」の「関係」は、「栄光の時代を生きた運命共同体」から「「腐れ縁」に落ちぶれてしまった」とは、言い得て妙だ。
・『時代にそぐわず不幸を生む経産官僚「2つのDNA」  東芝と経産省による外国株主の権利行使妨害スキャンダル。メディアから受ける質問で2番目に多いのが、「経産官僚とはどういう人間なのか」である。 彼らには「性」とも言うべき2つのDNAがある。 1つ目は、私が「中央エリート官僚型」と呼ぶタイプの公務員に共通するDNAだ。「自分たちが一番賢い」、だから、「我々が考えることは常に正しい」と思い込む。だが、現実には彼らの頭は時代遅れで使えない。このギャップが不幸の源になる。 例えば、「コーポレート・ガバナンス強化」をうたいながら、その本質は理解できない。ただ、そういう言葉を使えば、企業に対して偉そうに振る舞える。彼らのDNAがそういう方向に導くのだ。独立社外取締役を増やせというのも同じ。自分たちの天下り先が何倍にも増えるということを裏では計算しているが、「自分たちこそが正義」という意識に酔うあまり、そういう自身の下心を自覚できない。今回も、ガバナンスの観点では最低最悪の行為なのだが、本人たちは正義を追求したと信じている。 経産官僚2つ目のDNAは、「日本の経済界を仕切るのは俺たちだ」という強烈なプライドだ。企業が頭を下げて頼ってきたとき、「俺たちが助けてやる」とそれに応える瞬間こそ、至福の時だ。半導体のエルピーダや液晶のJDI(ジャパンディスプレイ)のような経産省のDNAが生んだ、負け組「日の丸連合」は残念ながら連戦連敗だった。ダイエー救済に失敗する直前まで「ダイエー再生はわれらの使命。経産省の鼎の軽重が問われている」と語っていた事務次官もこのDNAの持ち主だった』、「時代にそぐわず不幸を生む経産官僚「2つのDNA」」は、的確な指摘だ。
・『東芝が手に入れた「安全保障」という武器  実は、90年代までに、経産省はエネルギー関連を除く大半の権限を失い、構造的失業時代に入った。安倍政権で権勢を振るった同省出身の今井尚哉総理秘書官のおかげで一時は経産省内閣などと持ち上げられて喜んだが、それも終わった。 そんな経産省が、「改正外為法」により最高の武器を手に入れた。安全保障を口実に、海外投資家に干渉する権限だ。「安保」といえば、「国家の命運を左右する」仕事だ。いや応なく彼らのDNAを刺激する。彼らは、国家を守るためだから何でもできる、というおかしな世界に入ってしまった。 経産省のDNAには「外資嫌い」も含まれる。彼らは平気で経産省に逆らうから、「一番偉いのは我々だぞ!」となる。今回も、外資が東芝の株主総会で提案権を行使すると聞いただけで、「外資の野郎が!」と逆上し、「東芝を守り外資を潰せ」という条件反射となった。 経産官僚のDNAのおかげで日本が沈没、という事態を避けるには経産省解体しかないのかもしれない』、「経産省が、「改正外為法」により最高の武器を手に入れた。安全保障を口実に、海外投資家に干渉する権限だ。「安保」といえば、「国家の命運を左右する」仕事だ。いや応なく彼らのDNAを刺激する。彼らは、国家を守るためだから何でもできる、というおかしな世界に入ってしまった」、暴走を防ぐべきマスコミは記者クラブの枠に囚われて監視機能を果たしてないようだ。困ったことだ。

第三に、6月30日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏による「「底なしに悪い会社」東芝から得る7つの教訓、山崎元が解説」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/275361
・『6月25日、東芝の株主総会が行われ、取締役会議長を含む2人の取締役選任議案が否決される異例の事態に陥った。近年の東芝は「底なしに悪い会社」だ。本稿では、この東芝を巡る一連の不祥事から、一般市民及びビジネスパーソンにとって役に立つ「教訓」を七つ、いささかの皮肉と共に抽出したい』、「底なしに悪い会社」とは、「山崎 」氏もよほど腹を立てたのだろう。
・『「底なしに悪い会社」東芝 錯乱経営の末路  東芝の株主総会が6月25日に行われて、会社側が提出した取締役選任議案が2人分、否決された。 この議案は、昨年の株主総会が公正に行われなかったという第三者委員会による調査結果を受けて、提出直前に取締役候補2人の選任を撤回するという異例のプロセスで提出されたものだった。そして、取締役会議長の永山治氏(中外製薬名誉会長)を留任させるものであったため、株主の賛成を得られるかどうかが注目されていた。永山氏には、昨年の株主総会の運営に関する責任があると目されたからだ。 近年の東芝は、一言で言って「悪い」。それも、常軌を逸する悪さだ。 ごく大まかに経緯を振り返る。表立ったケチのつきはじめは、総額6000億円超で買収した米国の原子力発電所メーカー、ウェスチングハウスを通じて生じた米国原発事業の多額損失だった。広い事業分野の中から、将来の事業の柱として半導体と原発を選んだ経営的な「選択と集中」(東芝のスローガンでは「集中と選択」)の意志決定が盛大に裏目に出た。 立ち直りを目指す過程では、業績を実態以上によく見せるための大規模な「不適切会計」の問題が生じて、名門・東芝は東京証券取引所第1部から脱落する。この事案は、率直に言って会社ぐるみの粉飾決算だったが、長年の広告宣伝費が効いたものか、国策企業への遠慮があったのか、メディアの報道は必要以上に優しかった。 財務的余裕と信用の両方を失った東芝は、医療機器や半導体といった将来成長が見込めそうな事業を売却し、今回の問題の遠因となる資金調達を行うなどで延命と再建を図る。「そうしないと生き残れなかった」ということなのかもしれない。しかし、普通の感覚の第三者が経営を眺めるなら、重荷である原発事業を維持するために有望なビジネスを売却するという、ほとんど「逆噴射」と言いたくなる錯乱経営だった。しかし、これこそが経済産業省と共に東芝が選択した道だった。 そしてこの度は、昨年の株主総会に際してアクティビスト(物言う株主)の取締役人事案を退けるために、経産省と共謀して株主に不当な圧力をかけたとの嫌疑をかけられている。株主総会に提出する直前に人事案を修正したのだから、状況証拠的に東芝の経営陣には本件に関して、少なくとも「心当たりがある」のだろう。 東芝は、つくづく悪い会社だと言うしかない。ただ、もちろん大多数の東芝社員は悪くないばかりか有能でもあるし、東芝の製品にも優れたものがある(筆者も愛用している)。 本稿では、この東芝関連のもろもろから、怒りを抑えて(少しは怒るが)、一般市民及びビジネスパーソンにとって役に立つ「教訓」を七つほど、いささかの皮肉と共に抽出したい』、「重荷である原発事業を維持するために有望なビジネスを売却するという、ほとんど「逆噴射」と言いたくなる錯乱経営」、とは厳しい指摘だ。「「教訓」を七つ」とは興味深そうだ。
・『【教訓その1】「問題の解決が私の責任」は通用しない  不祥事を起こした企業の社長や政治家などが、「問題を解決することこそが私の責任だ」と言って、そのままポストに居座ろうとすることがある。しかし今回、永山氏の取締役会議長留任が否決されたことは、この言い分が以前よりも通用しにくくなったことを示している。 今回の永山氏の「問題」は、昨年の株主総会の運営が不適切だったのではないかという嫌疑だが、この問題は事実の全貌が十分明らかになっていないし、問題があったとした場合に誰がどのような責任を取るのがいいのかが不確定的だ。 「第三者から見て」、自分自身に責任があるかもしれない問題の解明と処理に永山氏自身が関わることは、自分自身に不都合な真実を隠蔽する可能性が考えられるし、自分に有利な裁定に導こうとする動機が働くかもしれない、との疑いが消せない。つまり、永山氏はこの問題の解決に当たる責任者として(単なる関与者としてもだが)不適切なのだと、自ら理解しなければならない。 経営者や大臣などの組織のトップにとって、自らに責任があるかもしれない問題を扱う際の責任者であり続けることは、「ほぼ例外のない一般論として不適切なのだ」と知るべきだ。「俺は余人をもって代えがたい」と本人が思い込んでいてもダメなのだ』、「「問題を解決することこそが私の責任だ」と言って、そのままポストに居座ろうとする」人は多いが、確かに大きな問題を孕んでいる。
・『【教訓その2】投資家は格好だけのガバナンスを疑え  「不適切会計問題」(より適切には「粉飾決算」だ)の際にも指摘したが、東芝はこの問題が生じる前から、コーポレートガバナンス(企業統治)にあって先進的とされる「委員会等設置会社」であった。 しかし、不適切会計の問題だけでなく、今回は株式会社の企業統治の根幹に関わる株主総会の運営に不正があったと疑われている。 一般論として投資家は、外形的に優れたガバナンス体制を整えている企業に対して、「感心する」よりは、むしろ「疑わしい」と思うくらいでちょうどいい。 委員会等設置会社も社外取締役も取締役会の「多様性」も、それぞれに結構な側面があるが、格好だけに騙されてはいけない。 年金基金などの機関投資家は昨今、議決権行使の助言会社(妙な商売があるものだ)のアドバイスに従って議決権を行使することが多い。ところが、その助言会社も企業の「外面」しか見ていない場合が少なくない。 「不祥事を起こした東芝的な会社について、助言会社はどうアドバイスしていたか過去を検証してみよう」とまで意地悪を言うつもりはないが、「体裁だけの先進的ガバナンス」に気をつけよう。ちなみに、外面だけ良くて中身がダメな会社を見抜く有力な判別手段は、「どう見てもビジネスの機微が分からなそうな社外取締役」の存在であるように思われる。しかし、サンプル数が多すぎて検証が難しいかもしれない』、「どう見てもビジネスの機微が分からなそうな社外取締役」、については「サンプル数が多すぎて検証が難しいかもしれない」とはその通りだろう。
・『【教訓その3】自由な経営にとって「上場」のコストは高い  今や、東芝の株主や投資家一般は東芝に対して「怒っている」に違いないのだが、視点を変えてみよう。東芝を自分の利害にとって都合良く経営したい経営者や、民間会社のまま国策に協力させたい経産省などにとって、東芝が上場企業であることは適切なのだろうか。 上場企業は、株主だけでなく投資家一般に対する情報提供を公平かつ迅速に行わなければならない建前だ。そしてもちろん、特定の株主の利益を増進することも、損なうことも行うべきではない。 経産省は現時点で、防衛などの点で国策上重要な企業の経営に同省が関与することがあるのは当然だと半ば開き直っている。だが、上場会社の株主に対して不公平が生じる関与を行っていいとは思えない。驚く読者がおられるかもしれないが、実は、経産省は上場企業のコーポレートガバナンス改革を主導する立場の官庁なのだ。 百歩譲って「東芝は特別な会社なのだから、われわれが経営に介入することがあってもいいはずだ」という経産省の言い分を認めるとしよう。そうだとしても、上場会社である東芝の株主にとって、そのことは事前に明らかでなければならなかったはずだ。 競馬で言うなら、「このレースでは国策による八百長があるかもしれないことを含んだ上で馬券を買ってください」と宣言するのが、主催者の最低限の良心だろう。 経産省に関しては、少なくともこの人たちにコーポレートガバナンスを語る資格はないと強く感じる。 東芝を自由に操りたい人々にとって、株式の「上場」は余計なのではないか。一方の投資家にとっては、株主総会でさえ八百長をやりかねない人々の存在が余計だ。 東芝は、非上場の「国策東芝」と、クリーンな上場企業の「民間東芝」に事業分割するといいのではないか。後者が、前者のために利用される今の状況は健全でない。 なお東芝の経営問題は、狭くは東芝の株主、広く見ても投資家一般にとっての問題だが、上場企業の経営に隠れて介入するような腐敗した官庁が存在することは、広く国民全体にとっての問題だ。東芝経営陣の責任よりも、経産省の関与の実態解明と責任の明確化の方がはるかに重要な問題だろう』、「東芝経営陣の責任よりも、経産省の関与の実態解明と責任の明確化の方がはるかに重要な問題だろう」、同感である。
・『【教訓その4】官僚は逃げる!  繰り返すが、本件の重要性に鑑みると、誰が、いつ、何をしたのかについて、事実が明らかにされなければならない。調査の必要性を認めないとする梶山弘志経産大臣の発言は、経産行政の責任者として著しく危機感を欠いている。 こんなに大事な問題をなぜ調べないのだろうか。それで、大臣が存在する意味があるのか。この大臣は、単に経産省の責任回避のために、振り付け通りにしゃべっているだけの、ネクタイを締めた発声機能付きのぬいぐるみ程度の人物なのだろう。 このレベルの政治家は与野党を問わず少なくない。次の内閣改造で視界から消える方だろうが、当面不愉快だ。 一般人が「教訓」として気に留めておくべきなのは、経産省のスタンスだろう。経営に介入し、加えておそらくは相談の上で株主総会対策に関わったとみられる経産省が、問題が発生してみると対外説明の上で全く味方になってくれない。そればかりか、「それは民間の問題だ」と言わんばかりの態度を取っていることだ。 嫌疑をかけられている東芝の経営陣の個々の人にとっては、行動の背景に経産省との方針の擦り合わせがあったり、経産省の指示や情報提供があったりしたことを明らかにしてもらえたら、「個人としては、やむを得なかった」という言い訳ができて(少しは)気が楽だったろう。ところが現状では、東芝経営陣が対外的な説明責任を負い、世間の非難を一手に引き受ける形になっている。 永山氏が、一企業である東芝だけでなく国家を思う人であるなら、経緯を「全て」明らかにして、経産省の官僚や関係者も含めて、「事実を明らかにした上で、一緒に然るべき責任を取りましょう」と責任の道連れにしてくださるとよいのだが、そうしようとしても官庁と官僚は責任から逃げるだろう。 経産省幹部の官僚さん個人にとっては、長い官僚人生の「収穫期」に入っていて、本人にとって大事な時期なのだろう。そういうことだから、民間人にとって官僚は、「一緒にリスクを取ってくれる信頼できる相手」ではないことをよくわきまえておくべきだ』、「官僚は逃げる!」、「官僚」だけでなく、民間企業の間でも情勢が厳しくなったら、「逃げ」られるとの覚悟を持って事に当たるべきだ。
・『【教訓その5】カネを出す人は、クチも出す  権利として(即ちゲームのルールとして)当然のことであり、本件にあって、アクティビストは少しも悪くはない。利益を求めて、ルール通りにゲームをプレイしようとしただけだ。東芝が彼らから株式を使って資金を調達した以上、彼らから経営に口出しされる事態は当然のことだ。 アクティビストは、例えば自社株買いや配当の増額のような財務政策的な短期利益を好む傾向がある。しかし、経営陣に十分な成算と説得力があれば、例えば将来の技術やビジネスに投資することが、単なる株主還元よりも株主の利益につながることを納得させられる可能性が十分ある。アクティビストも「もうけたい株主」なのだ。同時に、アクティビストは経営者を鍛えてくれる存在でもある。 さすがに、東芝クラスの会社の経営者は少なくとも耳学問レベルで「資本コスト」という言葉の意味をご存じだろうが、昭和の経営者のように、株主から調達した資本を「配当だけ払っておけばいい、自由に使えるカネ」だと考えているようではいけない。 本来、企業としての東芝の将来に強いモチベーションを持つ経営者なら、アクティビストを味方に付けて、経産省の悪影響を削減するためのバランサーに使うというくらいの戦略性を持つべきだ』、「アクティビストは少しも悪くはない・・・東芝が彼らから株式を使って資金を調達した以上、彼らから経営に口出しされる事態は当然のことだ」、「アクティビストは経営者を鍛えてくれる存在でもある」、「アクティビストを味方に付けて、経産省の悪影響を削減するためのバランサーに使うというくらいの戦略性を持つべき」、その通りだ。
・『【教訓その6】国策は今や足かせだ  東芝がかくも異様な会社となったことの大きな理由は、単に伝統ある大企業だったことだけではなく、同社が、おそらくは防衛政策等に組み込まれた国策企業であったことによるだろう。そして、今も国策企業だ。 端的に言って東芝は、原発事業を企業としての一存で止めることはできないのだろう。そして米国の意思を前提とすると、日本の政府にもそれは不可能なのだろう。日本は米国の実質支配下にある国であり(「対等な同盟国」ではない)、原発はその文脈の下にある。故に東芝側には、「政府はわれわれをつぶせないはずだ」という安心感があるだろう。 だが一般論として、商売の相手が国でなくとも、一つの顧客に大きく依存することは経営上不適切だ。そして、それは現実かもしれないのだが、「国策企業」であることのコストは特に、そこに勤める社員にとって大きい。 国策企業だから東芝はつぶれない(だろう)。これは安心であり、社員にとってもプラスだと思える要素かもしれないが、そのせいで成長ビジネスを売って重荷を抱える「逆噴射経営」が行われた。さらに、消費者向けの商品も扱うにもかかわらず、再三の不祥事でイメージが悪い中でのビジネスを余儀なくされている。 そしてついでに言うと、国策企業でもつぶれることはあるし(例えば日本航空〈JAL〉を見よ)、会社がつぶれなくても社員のリストラは大いにあり得る。 東芝は今でも、多くの技術とビジネスの可能性を持った組織だ。「国策企業なんて、やめてほしい」と思う社員が少なくないのではないか』、「国策は今や足かせだ」はその通りだ。
・『【教訓その7】腐敗した会社の株でももうかる!  今回の問題では昨年の株主総会に際して、経産省の関係者が米ハーバード大学の基金運用ファンドに対して議決権行使を控えるように働きかけたと報道されている。働きかけの有無も内容も現時点では明らかにされていないので、この経緯の事実関係の調査と公表が重要であることは当然なのだが、その点はさておき、ハーバード大学は昨年の株主総会当時にあって、東芝の実質的な大株主だったのだ。 ハーバード大学の基金による東芝株への投資は、昨年の総会で議決権行使を控えたことからも分かるように、シンプルな「純投資」だろう。 筆者の推測だが、ハーバード大学の基金は「不正会計」問題に揺れて株価が安いときに東芝株を大量に取得したのだろう。その後、昨年に東芝の前CEO(最高経営責任者)が仕掛けたMBO(マネジメント・バイアウト、経営陣による自社株買い取り)騒動(これも妙な話だった)による株価急騰までは享受できなかったのかもしれないが、大いにもうかった投資だったにちがいない。 同大学の基金が投資していた時期も、その前も現在も、東芝は株式市場の倫理から言って腐った会社だ。昨今流行の「ESG(環境・社会・ガバナンス)投資」的には最低の会社だったはずだ。 しかし、その株式は、「安く買って、高く売れたらもうかる」普通の株式だった。加えて、「安く」買うためには不祥事が役に立ったとさえいえる。 投資自体の効率を考えるなら(ほかに何を考えるのだろうか?)、「ESG」は投資に関係させない方が明らかにいい。投資論としては当たり前の話だが、今回の教訓に加えておこう』、「腐敗した会社の株でももうかる!」、「「ESG」は投資に関係させない方が明らかにいい」、山崎氏らしいシャープな教訓、同感である。
タグ:東芝問題 (その41)(東芝 「株主への圧力問題」で判明した経産省の影 ガバナンス提唱者が企業経営に介入する大矛盾、【緊急寄稿】東芝スキャンダルと経産省の暗躍(古賀茂明)、「底なしに悪い会社」東芝から得る7つの教訓 山崎元が解説) 東洋経済オンライン 「東芝、「株主への圧力問題」で判明した経産省の影 ガバナンス提唱者が企業経営に介入する大矛盾」 「会社法に基づく調査報告書」とは物々しいが、アクティビスト・ファンドが中心になって昨年の株主総会で調査すると決定し、彼らが指名した第三者委員会が発表したもので、確かに「会社法に基づく調査報告書」ではある。 「永山治取締役会議長」の「取締役」選任議案は「株主総会」で否決される異例の展開となった。「経産省」や「梶山弘志経産相」の姿勢は大いに問題だ。 「車谷前社長」が威張っていたのは「菅首相の関係」が背景にあったようだ。「東芝」の「取締役候補」選びは難航しているらしい。 日刊ゲンダイ 古賀茂明 「【緊急寄稿】東芝スキャンダルと経産省の暗躍(古賀茂明)」 「経産省の外国為替管理法上の規制権限をちらつかせて、外国株主に総会での人事案などの提案を止めさせようとしたり、経産省が海外の投資家に対して、外資による提案に賛成しないように働きかけた」のは、確かに「大スキャンダル」だ。 「東芝」と「経産省」の「関係」は、「栄光の時代を生きた運命共同体」から「「腐れ縁」に落ちぶれてしまった」とは、言い得て妙だ。 「時代にそぐわず不幸を生む経産官僚「2つのDNA」」は、的確な指摘だ。 「経産省が、「改正外為法」により最高の武器を手に入れた。安全保障を口実に、海外投資家に干渉する権限だ。「安保」といえば、「国家の命運を左右する」仕事だ。いや応なく彼らのDNAを刺激する。彼らは、国家を守るためだから何でもできる、というおかしな世界に入ってしまった」、暴走を防ぐべきマスコミは記者クラブの枠に囚われて監視機能を果たしてないようだ。困ったことだ。 ダイヤモンド・オンライン 山崎 元 「「底なしに悪い会社」東芝から得る7つの教訓、山崎元が解説」 「底なしに悪い会社」とは、「山崎 」氏もよほど腹を立てたのだろう。 「重荷である原発事業を維持するために有望なビジネスを売却するという、ほとんど「逆噴射」と言いたくなる錯乱経営」、とは厳しい指摘だ。「「教訓」を七つ」とは興味深そうだ。 【教訓その1】「問題の解決が私の責任」は通用しない 「「問題を解決することこそが私の責任だ」と言って、そのままポストに居座ろうとする」人は多いが、確かに大きな問題を孕んでいる。 【教訓その2】投資家は格好だけのガバナンスを疑え 「どう見てもビジネスの機微が分からなそうな社外取締役」、については「サンプル数が多すぎて検証が難しいかもしれない」とはその通りだろう。 【教訓その3】自由な経営にとって「上場」のコストは高い 「東芝経営陣の責任よりも、経産省の関与の実態解明と責任の明確化の方がはるかに重要な問題だろう」、同感である。 【教訓その4】官僚は逃げる! 「官僚は逃げる!」、「官僚」だけでなく、民間企業の間でも情勢が厳しくなったら、「逃げ」られるとの覚悟を持って事に当たるべきだ。 【教訓その5】カネを出す人は、クチも出す 「アクティビストは少しも悪くはない・・・東芝が彼らから株式を使って資金を調達した以上、彼らから経営に口出しされる事態は当然のことだ」、「アクティビストは経営者を鍛えてくれる存在でもある」、「アクティビストを味方に付けて、経産省の悪影響を削減するためのバランサーに使うというくらいの戦略性を持つべき」、その通りだ。 【教訓その6】国策は今や足かせだ 「国策は今や足かせだ」はその通りだ。 【教訓その7】腐敗した会社の株でももうかる! 「腐敗した会社の株でももうかる!」、「「ESG」は投資に関係させない方が明らかにいい」、山崎氏らしいシャープな教訓、同感である。
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