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電気自動車(EV)(その10)(「大逆転はここから始まる」トヨタがEVより"水素車"にこだわる本当の理由 EVシフトの盲点「蓄電池の限界」、三部敏宏社長が明かす決断の背景 ホンダが「脱エンジン」に舵を切った真意、EV化で見え始めた欧米の異なる思惑 日本の競争力を脅かす「LCA」とは) [産業動向]

電気自動車(EV)については、5月20日に取上げた。今日は、(その10)(「大逆転はここから始まる」トヨタがEVより"水素車"にこだわる本当の理由 EVシフトの盲点「蓄電池の限界」、三部敏宏社長が明かす決断の背景 ホンダが「脱エンジン」に舵を切った真意、EV化で見え始めた欧米の異なる思惑 日本の競争力を脅かす「LCA」とは)である。

先ずは、5月29日付けPRESIDENT Onlineが掲載した元外務省職員、EnergyShift発行人兼統括編集長(afterFITメディア事業部長)の前田 雄大氏による「「大逆転はここから始まる」トヨタがEVより"水素車"にこだわる本当の理由 EVシフトの盲点「蓄電池の限界」」を紹介しよう。なお、筆者の略歴は最終頁にある)
https://president.jp/articles/-/46422
・『自動車の電動化(EVシフト)が進んでいる。「EnergyShift」発行人の前田雄大さんは「トヨタをはじめする日本勢が電動化で出遅れているとの見方があるが、それは間違いだ。トヨタがEVよりも水素自動車(FCV)にこだわり続けているのには理由がある」という――』、どんな理由なのだろう。
・『なぜ「EV化」ではトヨタの名前がないのか  2016年のパリ協定の発効以後、国際社会では着々と脱炭素化が進展していた。加えて昨年9月、中国の習近平国家主席が連総会で、2060年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を宣言。アメリカも脱炭素を全面に打ち出すバイデン政権が発足したことで、その流れは決定的となった。 自動車のEV化はもはや世界的な潮流だ。欧州勢は2017年にいち早くガソリン車の廃止を打ち出し、ハイブリッドを飛び越していち早くEV化に着手。中国、北米もEV化とガソリン車廃止の施策を発表し、世界の主要市場はEV化という流れで一本化している。 日本の主力産業である自動車産業も例外ではない。だが、この過熱するEV戦線に日本勢、特にその筆頭であるトヨタの存在感がないのである。 2020年、EVを積極的に展開する米国のテスラ社の時価総額がトヨタを上回ったことは衝撃を与えた。また、2020年の世界におけるEV売上ランキングにおいて日本勢がトップ10社に入らなかったことも重なり、日本では「EV出遅れ論」もささやかれる。 リーフを一早く開発し、EV化に10年以上も取り組んできた日産や限定的に市場投入している例を除けば、市場においてEVで勝負できている日本企業は無いに等しい。 ドイツのVWはIDシリーズ、フォードは北米でマスタングのEVシリーズを展開。韓国は現代自動車がIONIQシリーズを投入し、中国はNIOや40万円台の低価格EVで話題となった上汽通用五菱汽車など続々と新興企業が成長している。しかし、本来そこにいるはずのトヨタの名前がない。それはなぜなのだろうか』、確かに不思議だ。
・『EV化が世界の一大潮流になっているのに…  世界がEV競争へとこの数年向かっていた間、トヨタはどこに向かっていたのか。 結論から言えば、その答えは「水素」である。厳密には「ハイブリッドの後に水素」という構想があった。先日行われた決算報告でも、引き続きその戦略がトヨタの中核を形成していることが分かる。 たしかに燃費の良いハイブリッド車が世界で売れているのも事実だ。トヨタの見立てはあながち間違ってはいない。しかし、EV化が世界の一大潮流になった今、なぜトヨタは“水素”に固執しているのか。それは、ハイブリッドで他の追随は許さないポジションを取ったトヨタの、次の一手への布石というべきものだと言える。 ハイブリッド車は、ガソリンで駆動するエンジンに加え、モータ、バッテリーおよびパワーコントロールユニットを組み合わせたものだ。走行中に発電した電気をバッテリーに貯め、バッテリーの残量を使ってモーター駆動でも走る。 トヨタの車両電動化のコア技術・CASE技術出典:トヨタホームページより (図表1)「トヨタの車両電動化のコア技術・CASE技術」はリンク先参照) 図表とおり、エンジンを排して充電器を付ければEVになる。しかしトヨタはEVをHVの次の選択として選ばなかった。蓄電池は高価であり、コストがかかった。長い充電時間の割に航続距離が短いという欠点もあった。そこでたどり着いたのが、水素であった』、検討した当時の技術的制約のなかでは「水素」だったのだろうが、「技術的制約」も変化している筈だ。
・『水素に張ったトヨタは予想を外したのか  この図表のとおり、ハイブリッド車のエンジンを燃料電池(水素を燃料に発電する装置)に置き換え、ガソリンタンクの代わりに高圧水素タンクを搭載した。それが燃料自動車(FCV)だ。自社が磨き上げたコアとなる電動化技術を生かす形で、トヨタは20年以上の研究開発を経て、2014年に初の量産型FCV「MIRAI」につながった。 しかしその後、脱炭素化の流れは一気に進んだ。エネルギーを貯蔵する役割としての蓄電池の役割がより重要となり、性能がこの数年で急速に向上し、価格も下がった。 課題とされていたEVの航続距離、充電時間、コストは、テスラ社がブレークスルーを見せ、航続距離は米国の環境保護局(EPA)基準で400キロ以上を確保。充電も独自の急速充電で30分強と大幅に短縮させた。価格はより安価になり、EVが競争力を持ち始めた。 こうした世界の動きを見ると、蓄電池を搭載するEVに軍配が上がり、水素に張ったトヨタは予想を外したと見る向きも少なからずある。 この主張は、一定程度、正しい。 たしかに水素は扱いが難しい気体であり、まだ輸送も商業的に十分に確立したとは言えない。また、エネルギー効率の悪さというデメリットもある。ただ、後者については、水素は地球上で最も豊富な元素であり、再生可能エネルギーと水があれば、使う場所で生産することができ、デメリットは相殺できる。 問題はコストと供給網不足、この2点だ』、「世界の動きを見ると、蓄電池を搭載するEVに軍配が上がり、水素に張ったトヨタは予想を外したと見る向きも少なからずある」、なるほど。
・『高コストと供給網不足という大問題  水素は、再エネ由来のグリーン水素、化石燃料由来のブラウン水素、ブラウン水素の製造過程でCO2を回収してCO2フリーとしたブルー水素などがある。最も低コストのブラウン水素でもガソリンに比べて高く、日本政府が掲げる目標の4倍以上の価格だ。 商業ベースに乗るにはかなり道のりがある。EVの電費が、ガソリン車の燃費よりも経済性があるのとは対照的だ。 加えて水素は、まだ供給網が確立されていない。トヨタが水素戦略を推し進め、政府がそこをある程度バックアップしている日本ですら、現時点で全国に130強の水素ステーションしかない。EVに関して充電インフラ不足が懸念として指摘されているが、充電インフラが2019年時点で2万を超えている現状から鑑みれば、そのインフラ不足は明らかである。 世界を見ても、アメリカ、欧州、中国いずれもEV充電スタンドの大規模増設を方針と打ち出しており、また、スタンドさえあればそれらの国では自由に電気にアクセスできるのに対して、水素はまだそうしたアクセスも確立されていない。 したがって、現時点の比較でみると、あくまで燃料電池車(FCV)とEVの比較では、EVの方が競争力を有しているという指摘は妥当なのである』、確かにその通りのようだ。
・『「水素自動車は乗用車」と決めつけてはいけない  無論、こうした状況をトヨタはもちろん認識している。EVを決して排除しているわけではなく、今年の決算発表では蓄電池を搭載したバッテリー電気自動車(BEV)のラインナップの拡充することにも触れている。 しかし、「焦らず、水素戦略を実行していけばよい」というのがトヨタの立場だ。そして、著者には、トヨタがEV化の盲点を突く考えを持っているように思う。 先ほど、大きな問題としてコストと供給網不足を列挙したが、こちらについては、理論上、需要が増えれば、供給量も増えるので規模の経済が働き、コストが低減していく。その結果、コスト安を受けてさらに需要が拡大していくので大した問題ではない。水素利活用が世界的に始まったいま、時間が解消する話である。 最も重要なのは、トヨタは水素を乗用車の文脈だけに限って考えているわけではないという点だ。トヨタが開発しているFCスタックと呼ばれる燃料電池は、水素を原料とした高性能発電機と捉えた方がもはや適切な状況にある。 初代MIRAI用に燃料電池(FC)システムを開発して以降、トヨタはさまざまな業界と対話をしてきた結果、汎用性のあるFCシステムの需要があることつかんだ。第2世代のFCシステムは、乗用車以外の転用を念頭に、コンパクトかつ高性能な仕様を実現させている。 モジュール化されたFCシステムは、トラック・バス・鉄道・船舶などのモビリティや定置式発電機などさまざまな用途に活用することが可能となったとトヨタは説明する』、確かに用途は広くした方が費用回収などでも有利だ。
・『トヨタが「長距離輸送トラック」に着目した理由  トヨタが水素にこだわる理由はこの点にある。 EVについては乗用車については蓄電池を多く積むことで、個人の使用であれば航続距離のニーズを十分に満たすレベルまで向上した。しかし、船舶やトラックといった長距離になると、それを賄い切れるほどの蓄電性能はまだなく、性能向上するにはかなりのイノベーションが必要となる。トヨタはまさにこの穴を水素で突く考えなのだ。 水素を原料とするFCシステムは長距離の航続距離の実現が可能であり、かつ、水素の充電は3分もあればフル充填じゅうてんが可能である利点がある。 そこでトヨタがまず着目したのが、長距離輸送トラックだ。商用トラックはエネルギー需要量が乗用車よりも多いため、水素需要創出にはもってこいの車両である。すでに北米では日野自動車と提携してFCシステムを搭載した大型トラックの共同開発を行っており、中国でも現地自動車メーカーと提携し、FCトラックの導入準備を進めている。 同様に長距離輸送を前提とする船舶や鉄道、バスへのFCシステム導入も視野に入れ、そこでの水素需要創出もトヨタは虎視眈々たんたんと狙っている。 さらに、国内企業と連携し、産業用の定置式FC発電機を共同開発も進めている。工場等の非常用ディーゼル発電機の置き換えや、港湾での荷役機械、停泊船舶への電力供給などを用途として想定しているとのことで、輸送セクターにとらわれずに貪欲に水素需要の創出に取り組んでいる』、「産業用」の「水素需要創出」ははるかに大規模なものだろう。
・『トヨタが狙った展開がようやく訪れつつある  トヨタがFCV販売で苦戦する中、世界各国は水素に着目をしてこなかった。しかし、再エネのコストが劇的に低下を見せ始めた2019年ころより、欧州から風向きが変わり始めた。 2020年7月には欧州委員会が水素戦略を発表し、巨額の資金を投じる考えを示している。また、世界最大の大型トラック市場を有する中国では、政府が自動車の電動化の文脈で、トラックなどの商用車についてFCVの適用に言及。アメリカも政権の施策パッケージの中でグリーン水素の利活用に触れている。 そうした水素利活用の方向性は、先般、開催された先進7カ国(G7)環境・気候大臣会合においても確認された。成果文書では、水素の重要性と商業規模での水素の推進に言及がされたほか、将来の国際的な水素市場の発展を実現すべく努力という形で記載された。 いま、水素について追い風が吹いている。まさに、トヨタが狙った展開がようやく訪れつつある状況ではないか』、「水素の重要性と商業規模での水素の推進」、たまたま一致しただけなのではなかろうか。
・『「水素は地球上で最も豊富な元素」という重要な事実  振り返ればプリウスを最初投入したときにも数年は泣かず飛ばずの時期があった。しかし、トヨタの長期展望がはまって今はヒットしている。同様に水素についても、トヨタは思い描いた戦略を着々と進め、その狙いに国際社会がようやくはまり始めた。 脱炭素化の進展がトヨタの想像を上回って到来しているのも事実だろう。蓄電池の想像以上の進化、テスラをはじめとするEV新勢力の台頭、欧州の周到な自動車産業復権の狙い等々、トヨタとして加味をしなければならない事項は多い。 特に、これから本腰を入れるEVに関しては、後発となったのは間違いのない事実だ。 それでもなお、現行のハイブリッド戦線で、当面、トヨタとして十分に戦っていけるだろう。その間に、着々と進めている水素戦略が花開くのか、それとも、ついに全力を出したEV路線で猛追からの逆転を果たすのか。いずれの形であれ、国際エネルギー機関が報告したように、世界はエネルギーの大部分を再生可能エネルギーに頼るようになり、そのコストが限りなく低減する未来がじきに来る。 そのときに、基本に立ち返って、水素は地球上で最も豊富な元素、というトヨタの着眼点が効いてくると筆者は考える。実は、そこまで行くと乗用車でもFCVがEVに対して競争力を持つ。 トヨタの水素戦略は、EVシフト、そして脱炭素の進展の先を見越した大戦略だ。トヨタ、そして日本勢の巻き返しはこれから始まる。「世界に日本あり」を脱炭素の文脈でぜひ示してほしい。(最後に筆者の前田 雄大氏の略歴はリンク先参照)』、「筆者」は「トヨタ」への見方が甘いようだ。「トヨタ、そして日本勢の巻き返しはこれから始まる」、そうなってほしいとは思うが、甘いような気がする。

次に、7月27日付け東洋経済Plus「三部敏宏社長が明かす決断の背景 ホンダが「脱エンジン」に舵を切った真意」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/27650
・『ホンダが新たにブチ上げた電動化戦略。2040年までに新車をEV、FCVにするという思い切った計画だ。異例の決断の背景に何があるのか。 「まさかここまで踏み込んで具体的な時期や数字を出すとは思わなかった」。あるホンダ系部品メーカー幹部は、ホンダが新たにブチ上げた電動化の戦略に驚きを隠さなかった。 ホンダの三部敏宏社長は4月23日の就任会見で、グローバルで売る新車を2040年までに全て電気自動車(EV)と燃料電池車(FCV)にする目標を打ち出した。日本政府が掲げる2050年温室効果ガス排出実質ゼロに歩調を合わせた形で、「自動車メーカーとしてまずTank to Wheel(車の走行時)のカーボンフリーを達成する責務がある」(三部社長)と力を込めた。 ガソリン車だけでなくハイブリッド車(HV)すら販売しない中長期の目標を表明したのは、日本の自動車メーカーで初めてだ。HVも含めたフルラインナップでの電動車戦略を推し進めるトヨタ自動車に対し、ホンダはそれと異なる道を行く決断を下したといえる』、「ガソリン車だけでなくHVすら販売しない」、確かに思い切った戦略だ。
・『「エンジンのホンダ」がなぜ?  ホンダはかつて、マクラーレン・ホンダがF1で一世を風靡したように、「エンジンのホンダ」と呼ばれるほどエンジン開発に力を注いできた。 1970年代には新型エンジンを開発してアメリカの環境規制をいち早くクリアするなど、エンジン開発を成長に結びつけてきた。技術畑の三部氏もそんな開発の現場に身を置いてキャリアを築いてきた一人だ。 にもかかわらずEVとFCVに思い切って舵を切る背景には、世界的に加速する「脱エンジン車」への強い危機感がある。 アメリカのゼネラル・モーターズ(GM)は35年までにガソリン車を全廃し、ドイツのフォルクスワーゲン(VW)は2030年にVWブランドで欧州販売の7割以上をEVにする目標を掲げる。国単位でもイギリスが2030年、フランスは40年までにガソリン車の新車販売を禁止する。アメリカはカリフォルニア州などが2035年までにZEV(ゼロ・エミッション・ビークル、走行時に排ガスを出さない車)以外の販売を禁じる方針だ。 こうした流れの中、ホンダは2016年発売のFCV「クラリティ FUEL CELL」の累計販売台数が約1800台(2020年末)、初の量産型EV「Honda e」は年間販売目標が日欧で1万台強にとどまる。将来的な電動車の本命とされるEV、FCVへ対応が進んでいるとはいい難い状況だった。 ホンダは自前主義で独立路線を貫いてきたが、今後は米国では提携関係にあるGM、中国では電池大手のCATLと組んでEV中心の電動化戦略を推し進める。 自動車メーカーにとってCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)と呼ばれる次世代技術への研究開発投資は重く、提携を生かしてEVやFCVの開発につなげる計画を描く。効率化を図るため、今後は車種の絞り込みに動く可能性も十分ある』、「ホンダ」の四輪事業は後述のように殆ど儲かってないので、「車種の絞り込み」の可能性は大いにある。
・『急展開に伴うリスクも  ただ、EV化の急速な推進にはリスクもはらむ。1つはGMとの関係だ。提携では、GMがバッテリーなどのEV分野の開発、ホンダはエンジンの開発をそれぞれ担う。EVはコストの3~4割を占めるとされるバッテリー価格をどう引き下げていくかが販売価格を決めるうえでカギを握る。 GMは目下、韓国のLG化学と組んで米国内に電池工場を建設する巨額投資を進めている。EV拡大で腹を決めたホンダにとって、電池の確保という面でGMは心強い存在のはずだ。 だが、バッテリー技術の開発や投資でGMに主導権を握られたままだと、ホンダの新車開発がGMの動向に左右されかねない。それを防ぐためには、アメリカの電池調達で複数の取引先を開拓する必要があるだろう。 また、ホンダがEV、FCVへの集中投資を鮮明にした中、GM向けにエンジン開発を続けることにメリットが見えづらい。 もう1つのリスクはサプライチェーン(部品供給網)の維持だ。「ホンダの戦略はサプライヤーによっては死活問題だ」。あるホンダ系部品メーカーの幹部はそう語る。 将来的にガソリン車を“捨てる”というホンダの決断は、エンジン関連の部品メーカーには経営戦略の大転換を迫るものだからだ。エンジン周りとは別の部品メーカーも「われわれとしても考え方を変える。守備範囲(取り扱う部品)を広げないと生き残れない」(幹部)と危機感を示す。 これまでホンダ系のサプライヤーは再編を繰り返してきた。ホンダが大株主のサプライヤーもあり、今後はメーカー主導の再編が起きる可能性もある。ホンダは単に目標を掲げるだけではなく、電動化時代に対応できる取引関係を構築していくことが不可欠だ。 提携拡大とサプライチェーン維持に潜むリスクをどうコントロールできるか。それはホンダにとっての試練であり、電動化戦略の実現に向けた重要なポイントでもある』、「エンジン関連の部品メーカー」にとっては、生き残りのためには「守備範囲」の拡大は不可欠だろう。
・『四輪事業は低収益にあえぐ  ミニバン市場を開拓した「オデッセイ」や「ステップワゴン」、軽自動車で「スーパーハイトワゴン」市場を作り上げた「N-BOX」など、ホンダはこれまで独自性のある商品を投入することで一定の存在感を示してきた。 しかし現在、ホンダの四輪事業は長年にわたるヒット車不足と低収益性にあえぐ状態が定着している。お膝元の日本ですら、登録車の販売台数上位20車種(2020年度)に入るのは3車種(フィット、フリード、ステップワゴン)のみ。営業利益率は1.5%と、トヨタ(8%)やスバル(6%)と比べて大きく水を開けられている。 八郷隆弘前社長時代、ホンダは2010年代前半の拡大戦略で膨れ上がった生産体制や、創業者・故本田宗一郎氏時代から聖域とされてきた本田技術研究所の再編にも踏み切った。こうした構造改革の効果が今後本格的に現れてくるのが2021年度以降となる。 ホンダはグローバルで推し進める新たな電動化戦略のために、研究開発に今後6年間で5兆円を投資する。将来に向けた投資を計画通り推し進めるためにも、現行車種のラインナップでしっかりと収益を上げていくことも欠かせない。 国内外の自動車メーカーがこぞってEVを投入する中、商品性と収益性の高いモデルを投入し、「ホンダらしさ」をどうユーザーに示していくか。「課題はたくさんあるが、同時に取り組んでいくしかない」と覚悟を語る三部新社長の双肩にホンダの将来がかかっている』、新生「ホンダ」で「ホンダらしさ」をどうユーザーに示していくか、「三部新社長」に期待したい。

第三に、8月17日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した法政大学大学院教授の真壁昭夫氏による「EV化で見え始めた欧米の異なる思惑、日本の競争力を脅かす「LCA」とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/279590
・『EUと米国で自動車電動化政策に「ある違い」が出た。EUではガソリン車に加えてハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)とも禁止。一方、米国はPHVと燃料電池車(FCV)も許した「良いとこ取り」な方針だ。他方、工業製品評価に「ライフサイクルアセスメント」(LCA)が強化されると、火力発電中心の日本経済にとって大きな打撃である。メード・イン・ジャパン製品の競争力は失われるかもしれない』、LCAとはどんなものなのだろう。
・『EUに続き米国でも自動車電動化の規制表明  世界的な脱炭素の流れが、自動車産業を取り巻く環境を大きく変化させている。7月、欧州委員会は2035年にEU圏内でのガソリン車の販売を事実上禁止し、電気自動車(EV)などへの移行を目指す方針を示した。欧州委員会は、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)とも禁止する見込みだ。 一方、米国のバイデン大統領は大統領令に署名し、30年の新車販売に占めるEV、PHVと燃料電池車(FCV)の割合を50%に引き上げると表明した。世界最大の自動車市場である中国も、新車販売に思い切った規制をかけることを鮮明にしている。 こうした脱炭素の背景には、専門家の想定を上回る地球の気温上昇がある。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、21年~40年に産業革命前と比較した気温上昇幅が1.5度に達するとの予測を公表した。地球物理学の専門家に聞くと、現在の地球環境は相当厳しく、緊急事態だ。 今後、世界全体で自動車などの原材料の生産、利用、廃棄の際に排出される二酸化炭素量を評価する「ライフサイクルアセスメント」(LCA)が強化され、再生可能エネルギーを用いて生産された素材、部材、完成品を求める企業や消費者が増えるだろう。わが国経済は官民総力を挙げて、経済活動の根幹であるエネルギー政策から対策を進めなければならない』、「LCA」で「自動車などの原材料の生産、利用、廃棄の際に排出される二酸化炭素量を評価」することになると、例えば、日本の鉄鋼製品は高炉で鉄鉱石から作るが、欧米ではくず鉄を電炉で作るので、日本が著しく不利になる。
・『米国は雇用に配慮し「良いとこ取り」の妥協案  現在、世界には3つの大きな新車販売市場がある。大きい順に、中国(20年の販売実績、2531万台)、米国(同1458万台)、EU(同994万台)だ。現在、米欧が自動車の電動化に関する政策を、より厳しい方向に引き上げている。ポイントはPHVとHVの扱い方だ。厳しい順に並べると、EU、米国、中国となる。 まず、欧州委員会は35年に販売できる新車をEVなど走行時に温室効果ガスを排出しない車に限定し、HV、PHVを含むガソリン車、ディーゼル車の新車販売を事実上禁じる方針だ。欧州委員会はFCVも電動化の手段として重視しているが、FCVの場合、水素を700気圧にまで圧縮する高圧タンクの製造コストが高い。そのため、EUは電動化のメインとしてEVを重視し、関連する政策の立案を急いでいる。EU市民の間では、気候変動問題への危機感が強く、欧州委員会はその方向に進まざるを得ない。 2番目に基準が厳しいのが米国だ。米国は、30年に新車販売の半分をEV、PHV、FCVにする方針だ。欧州と異なり米国はPHVを含める。公約に気候変動への取り組みを掲げたバイデン大統領は脱炭素への取り組みを進めなければならない。 その一方で、バイデン政権は産業、雇用にも配慮しなければならない。環境と経済の両方に配慮した結果、EVとエンジン車の「良いとこ取り」をしたPHVを含めることで妥協点を見いだしたといえる。ただし、カリフォルニア州は35年までにすべての新車をゼロエミッション車にする計画であり、米国の自動車電動化は加速する可能性がある。 3番目が中国だ。中国はEV、PHV、FCVを「新エネルギー車」(NEV)に区分して補助金などの対象とし、HVは低燃費車として優遇する。中国では豪雨や大気汚染が深刻化しており、脱炭素への取り組みは待ったなしだ。ただ、中国は製造技術面に弱さがあるため、PHVに加えてHVも重視する。HVおよび内燃機関の製造に強みを持つわが国は、EU、米国、中国ほどの踏み込んだ政策を示せていない。このように主要国はそれぞれの事情を考慮して電動化を進めている』、日本もそろそろ「電動化」「政策」の枠組みを示すべきだろう。
・『工業製品の評価にLCAが与える影響 欧米大手は先行して対策を急ぐ  自動車の電動化が急がれているのは、温室効果ガスの排出によって、想定を上回るペースで地球温暖化問題が深刻化しているからだ。特に、過去に例を見ない洪水や山火事に見舞われているEU各国の危機感は非常に強く、脱炭素関連政策の立案が急ピッチで進んでいる。 まず、23年に欧州委員会は、炭素の「国境調整」(環境規制が緩い国からの輸入品に事実上の関税をかける制度)の導入を目指している。それに加えて欧州委員会は、原材料の調達、生産、廃棄によって排出される二酸化炭素の量を評価するLCAの確立にも取り組んでいる。現状では、24年7月から車載バッテリーや産業用の充電池を対象に、ライフサイクル各段階での二酸化炭素排出量の計測と第3者による証明実施が予定されている。 工業製品などの価値評価にLCAが与えるインパクトは大きい。LCAに対応するために独フォルクスワーゲンは洋上風力発電事業に参入した。走行時にEVは温室効果ガスを出さない。しかし、生産工程ではガスが排出される。同社は、EVライフサイクルの中で温室効果ガスの排出量が大きいバッテリー製造を中心に再生可能エネルギーを用いた自動車生産を目指している。 また、米国でもLCAを重視する企業が増えている。20年7月、アップルは30年までに、自社のビジネス、サプライチェーン全体、および製品のライフサイクルすべてにおいてカーボンニュートラルを達成すると発表した。マイクロソフトはさらに野心的で、30年に「カーボンネガティブ」(排出量<吸収量)を達成し、50年までに1975年の創業以来に直接、および電力消費によって間接的に排出した二酸化炭素を完全に除去すると表明した。 製品のライフサイクル全体でどれだけ温室効果ガスの排出を抑えられているかが、顧客企業や消費者により厳しく評価される時代が到来している』、「LCA」については欧米企業に比べ「日本企業」の取り組みは遅れているようだ。
・『火力発電による日本製品は競争力を失う  LCAを基準にした製品やサービスの評価の定着は、火力発電によって電力を供給しているわが国経済にとって大きなマイナスの影響を与える恐れがある。火力発電を主とするエネルギー政策の下で生産活動が続けば、メード・イン・ジャパンの製品の競争力は大きく低下する、場合によっては失われるかもしれない。 わが国に求められることは、経済活動の基礎であるエネルギー政策の転換を進めることだ。具体的な方策として、再生可能エネルギーの切り札といわれる洋上風力発電をはじめ、太陽光発電、水力発電などの推進が待ったなしである。 洋上風力発電に関しては、わが国には大型の風車を生産できるメーカーがない。その状況下、まず、海外の風力発電機メーカーからの調達を進める。その上で海外の再生可能エネルギーを支えるインフラ導入の事例を参考にして、再生可能エネルギーを中心とする発電源構成を目指すことになるだろう。 そうした取り組みが遅れると、欧州などでLCAを基準とするサプライチェーンおよびバリューチェーンの整備が進行し、わが国企業のシェア、および競争力は低下する可能性が高まる。 例えば、鉄鋼メーカーであれば高炉にコークスを投入して銑鉄を生産することは難しくなることが懸念される。脱炭素のために水素を用いた製鉄技術の確立が目指されているが、水素利用(再生可能エネルギーを用いた製造、運搬、貯蔵)のコストは高い。 コストを吸収することが難しい場合、かつてワープロの登場によってタイプライターの需要が消え、パソコンがワープロを淘汰したように、個々の企業だけでなく産業そのものの存続が危ぶまれる展開も考えられる。そうしたリスクにどう対応するか、政府は迅速に、エネルギー政策をはじめ産業政策のグランドデザインを提示し、経済全体が向かうべき方向を示さなければならない』、一時は電力会社は石炭火力を増設しようとしたが、「LCA」の考え方とは完全に逆行するものだ。もっと、「LCA」などの国際的潮流を的確に捉えた戦略立案が望まれる。 
タグ:電気自動車 (EV) (その10)(「大逆転はここから始まる」トヨタがEVより"水素車"にこだわる本当の理由 EVシフトの盲点「蓄電池の限界」、三部敏宏社長が明かす決断の背景 ホンダが「脱エンジン」に舵を切った真意、EV化で見え始めた欧米の異なる思惑 日本の競争力を脅かす「LCA」とは) PRESIDENT ONLINE 前田 雄大 「「大逆転はここから始まる」トヨタがEVより"水素車"にこだわる本当の理由 EVシフトの盲点「蓄電池の限界」」 検討した当時の技術的制約のなかでは「水素」だったのだろうが、「技術的制約」も変化している筈だ。 「世界の動きを見ると、蓄電池を搭載するEVに軍配が上がり、水素に張ったトヨタは予想を外したと見る向きも少なからずある」、なるほど。 確かに用途は広くした方がよさそうだ。 「産業用」の「水素需要創出」ははるかに大規模なものだろう。 「水素の重要性と商業規模での水素の推進」、たまたま一致しただけなのではなかろうか。 「筆者」は「トヨタ」への見方が甘いようだ。「トヨタ、そして日本勢の巻き返しはこれから始まる」、そうなってほしいとは思うが、甘いような気がする。 東洋経済Plus 「三部敏宏社長が明かす決断の背景 ホンダが「脱エンジン」に舵を切った真意」 「ガソリン車だけでなくHVすら販売しない」、確かに思い切った戦略だ。 「ホンダ」の四輪事業は後述のように殆ど儲かってないので、「車種の絞り込み」の可能性は大いにある。 「エンジン関連の部品メーカー」にとっては、生き残りのためには「守備範囲」の拡大は不可欠だろう。 新生「ホンダ」で「ホンダらしさ」をどうユーザーに示していくか、「三部新社長」に期待したい。 ダイヤモンド・オンライン 真壁昭夫 「EV化で見え始めた欧米の異なる思惑、日本の競争力を脅かす「LCA」とは」 LCAとはどんなものなのだろう。 「LCA」で「自動車などの原材料の生産、利用、廃棄の際に排出される二酸化炭素量を評価」することになると、例えば、日本の鉄鋼製品は高炉で鉄鉱石から作るが、欧米ではくず鉄を電炉で作るので、日本が著しく不利になる。 日本もそろそろ「電動化」「政策」の枠組みを示すべきだろう。 「LCA」については欧米企業に比べ「日本企業」の取り組みは遅れているようだ。 一時は電力会社は石炭火力を増設しようとしたが、「LCA」の考え方とは完全に逆行するものだ。もっと、「LCA」などの国際的潮流を的確に捉えた戦略立案が望まれる。
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資本市場(その7)(東証の市場区分再編で「プライム落ち」に企業がおびえなくていい理由、東証の「市場改革」は何が大きくズレているのか 日本の企業統治に不足しているものは何か) [金融]

資本市場については、本年7月5日に取上げた。今日は、(その7)(東証の市場区分再編で「プライム落ち」に企業がおびえなくていい理由、東証の「市場改革」は何が大きくズレているのか 日本の企業統治に不足しているものは何か)である。

先ずは、7月28日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏による「東証の市場区分再編で「プライム落ち」に企業がおびえなくていい理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/277865
・『2022年4月に東京証券取引所が市場区分を再編する。東証第1部などを含む現在の4市場から「プライム」「スタンダード」「グロース」の3市場体制へ移行するのだ。それを受けて、最上位市場であるプライム市場での上場を目指して苦心している企業があると聞くが、企業は「プライム落ち」におびえる必要はない。その理由を解説しよう』、どういうことなのだろう。
・『東証の市場再編で第1次市場判定の通知あり  東京証券取引所は、7月9日に同取引所に上場している企業に対して、市場再編後にどの市場に属するかの第1次判定を通知した。 現在の東京証券取引所は、東証第1部、東証第2部、東証マザーズ、ジャスダック(スタンダード・グロース)の4市場に分かれているが、これが、「プライム」「スタンダード」「グロース」の3市場に再編される。この中で、優良企業が属するとされる東証プライム市場に、現在の1部上場企業が残ることができるかどうかが話題になっている。 プライム市場の上場維持基準は、株主数800人以上、流通株式数2万単位以上、流通株式時価総額100億円以上、流通株式比率35%以上、純資産がプラス、などとなっている。加えて、社外取締役の割合や取締役会の多様性、気候変動対策に対する情報開示などについて、従来よりも厳しい注文が付く方向だ。 移行措置があるので、これらを満たさない場合に直ちに「プライム落ち」するわけではないが、プライム市場での上場を目指して苦心している企業があると聞く。 例えば、「流通株」を35%以上にするために、創業家に持ち株を放出してもらったり、株式を保有する親密取引先企業に対して保有目的の区分を「政策投資」から「純投資」に変えてもらったりするなどの対策がある。 しかし、あえて言いたい。プライム上場を維持することに大きな意味があるとは限らない。個々の企業は、この機会に自社が何のために上場しているのかをよく考えてみるべきだろう』、「上場」はファイナンスの必要性はなくても、学生の採用などメリットは様々だ。
・『「プライム落ち」=「TOPIX除外」というわけではない  上場企業が必ずしもプライム市場にこだわらなくてもいい最大の理由は、「プライム落ち」が直ちに「TOPIX(東証株価指数)からの除外」を意味するわけではないからだ。TOPIXから除外されると、日本銀行やGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)などの機関投資家が大量に保有するTOPIX連動のインデックスファンド(3月末時点で50兆円以上ある)の投資銘柄から外れる。その結果、数パーセントの安定株主を失うことになる。株主対策上、「数パーセント」が大きな問題になる企業は存在するに違いない。 しかし、まずTOPIXは株価指標としての連続性を保たなければならない。指標として、2000年4月に銘柄入れ替えを実施した日経平均株価のような「不連続」を引き起こしてはまずい。また、採用銘柄の変更や銘柄のウェイト変更の際に、インデックスファンドの売買が他の市場参加者(主に高速取引業者や証券会社の自己売買部門)に利用される恐れがある。そうなればインデックス自体が下方バイアスを持って、インデックスファンドの保有主体が損をする問題が起こりかねない。 こうしたもろもろの問題が懸念されて、市場区分とTOPIXとの間の対応は直接的なものとはされないことになった。 市場区分の再編と共にTOPIXも改訂されるが、変化は段階的で緩やかであり、また見直し後のTOPIXの「浮動株時価総額ウェイト」は、現在のTOPIXの99%以上をカバーすると予想されている(「証券アナリストジャーナル」2021年7月号、能木絵美「TOPIX(東証株価指数)等の見直しの概要」による。能木氏は東京証券取引所 情報サービス部インデックス・グループ 運用企画課長である)。 新TOPIXの採用銘柄の条件及び移行措置もそれなりに複雑だが、主な採用基準は「流通時価総額100億円以上」だ。 つまり大まかに言うと、「プライム」から外れても流通時価総額が100億円以上ある上場企業は、TOPIXに採用され続けてインデックスファンドの保有対象となる』、「「プライム」から外れても」「TOPIXに採用され続けてインデックスファンドの保有対象となる」、のであれば、実害はなさそうだ。
・『この措置は、指標としてのTOPIXの連続性を維持する上でも、それ以上にTOPIX連動のインデックスファンドの保有者の利益の上でも妥当だ。ただ、「TOPIX落ち」を脅し材料にして一連の「ガバナンス改革」を押し付けたり、成長しない上場企業の尻をたたいたりしようとした「意識高い系有識者」(←もちろん皮肉だ)にとっては不満なことだろう。 「プライム落ち」が直ちに「TOPIX除外」を意味するのでない以上、プライム上場にこだわるか否かは、主としてメンツの問題に過ぎない。「名にこだわらずに、実を取ればいい」と考える冷静な企業経営者がいてもおかしくはない。 まず、株式の保有構造には個々の企業に事情がある。また一般論として、独立した社外取締役を多く持つことや、取締役会に多様性を持たせることなどは良いことだし、気候変動に関連する情報の開示なども企業の社会的責任の観点から好ましいことだ。しかし、取締役に適当な人材がいなかったり、企業にとって手間やコストが過大であったりする場合に、「プライム」にこだわることが得策でない場合があるだろう。 十分な収益を上げて大きな流通時価総額を持っている会社は、最上位ではないスタンダード市場に上場しているとしても、投資家から見て十分一流企業であるし、それなりの株価で評価されるはずだ。企業は収益やビジネスで評価されるのであって、市場区分によって収益が上がるわけではない』、理屈の上ではその通りだが、これまでの「1部上場」が「プライム落ち」すれば、経営者はみっともない思いをさせられるケースが殆どではないだろうか。
・『「東証1部上場」のブランド価値は劣化 一流企業」は取引所が決めなくていい  過去には、「東証1部上場企業」が新卒学生の採用や金融機関との取引などでブランド価値を持っていた時代があった。今でも、小さな地方銀行などで「東証1部上場」、今後は「プライム上場」にこだわる会社があるかもしれない。 しかし率直に言って、東証が「1部上場」を安売りしすぎて、今や2000社以上が1部上場銘柄となると、「東証1部上場」という事実に、かつてのようなブランド価値はなくなっている。これは、東証の経営戦略上の失敗であったかもしれない。 「プライム」とそれ以外の区分を強調する市場再編は、プライム上場企業に「一流企業」としてのブランド価値を持たせようとする東証の戦略なのだろう。けれども、「ブランド」の価値というものは一朝一夕に構築できるものではない。 加えて、そもそも「一流企業」を証券取引所が決める必要はない。米経済誌「Forbes(フォーブス)」が毎年発表するランキングのようなものでもいいし、米国のS&P500種株価指数のような、情報会社が発表する株価指数の採用銘柄を基準に判断するのでも構わない。 ランキングは目的に応じて作るといい。また、株価指数はTOPIXのように「統計指標」「デリバティブの原資産」「インデックス運用のターゲット」「運用評価のベンチマーク」といった複数の機能を兼ねると、例えば、「インデックス運用のターゲット」としては最適ではなくなる場合がある』、「東証が「1部上場」を安売りしすぎて、今や2000社以上が1部上場銘柄となると、「東証1部上場」という事実に、かつてのようなブランド価値はなくなっている。これは、東証の経営戦略上の失敗であったかもしれない」、「安売りしすぎ」で「かつてのようなブランド価値はなくなっている」とはお粗末だ。
・『「東証プライム指数」が誕生しても上場企業や投資家は慌てなくていい  今後、プライム市場の上場銘柄を対象とした株価指数が作られて、この指数をターゲットとするインデックスファンドが設定されたり、デリバティブが上場されたり、年金運用などのベンチマークに採用するように誘導されたりするのかもしれない。だが、上場企業も投資家も、しばらくは慌てるに及ばない。 「東証プライム指数」に投資する資金が、少なくとも10兆円を超えるくらいから気にし始めることで十分だろう。 企業は、「プライム入り」を気にするよりも、本業で収益を上げることに注力すべきだ。社長の意地だけを理由にプライム入りを目指すのは本末転倒。収益が十分上がれば、株価が高く評価されて流通時価総額100億円はクリアできるだろうし、成長資金が必要な場合は株式市場で資金調達ができるだろう。 市場区分がどこであっても価値のある企業を投資家は放っておかないだろうし、良いビジネス・アイデアの下に投資家とのコミュニケーションを的確に行うなら資金調達は可能なはずだ。 もちろん、相対的に小規模な企業でも株式が取引できて、株式で資金調達ができることに意義はある。しかし、流通時価総額が100億円に満たないような会社は、上場を維持するコストが上場のベネフィットに見合うのかどうかを冷静に検討する必要があるだろう(各社の事情によるので、一様ではないはずだ)』、「企業は、「プライム入り」を気にするよりも、本業で収益を上げることに注力すべきだ。社長の意地だけを理由にプライム入りを目指すのは本末転倒」、その通りだが、現実にはそうはいきそうもない。
・『ベンチマークを急に変えるようなら運用者としての見識を疑おう  投資家の側は、市場区分にこだわらずに個々の企業を評価すればいい。機関投資家の運用ベンチマークは当面TOPIXでいいはずだ。元々TOPIXでリスク・リターンを考えて資産配分しているのだし、プライム指数についてはまだ十分なデータがない。「プライム銘柄」の方が「TOPIX銘柄」よりも投資対象として優れていると判断できる論理的な理由もない。 年金基金などで、ベンチマークをいきなりプライム指数に変える向きがあれば、運用者としての見識を疑うべきだ。 また、将来「プライム指数連動インデックスファンド」が登場した場合に、この指数がどのように使われているかについては、十分注意を払う必要がある。株価指数「JPX日経インデックス400」(運用のターゲットとしては構造的な欠陥を持っている)のように、鳴り物入りで登場してもその後に注目されない指数になる場合もあり得る。 付け加えると、「運用のターゲットとして」のTOPIXは、例えば日経平均と比較して相対的に優れているが、欠点がないわけではない。プライム指数連動インデックスファンドが同様の欠点を引き継がないかについて、投資家は十分注意しておきたい』、「年金基金などで、ベンチマークをいきなりプライム指数に変える向きがあれば、運用者としての見識を疑うべきだ。 また、将来「プライム指数連動インデックスファンド」が登場した場合に、この指数がどのように使われているかについては、十分注意を払う必要がある」、その通りだ。

次に、8月15日付け東洋経済オンラインが掲載した財務省出身で慶應義塾大学大学院准教授の小幡 績氏による「東証の「市場改革」は何が大きくズレているのか 日本の企業統治に不足しているものは何か」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/448260
・『今回は東証のTOPIX(東証株価指数)改革についてとりあげたい。この連載でも山崎元さんが「東証の『プライム創設』で新TOPIXはどうなるのか」で指摘されていたが、私に言わせればこれはコーポレートガバナンス(企業統治)も金融も経済もわかっていない人々による改革だ。最重要である「2つの軸」で180度間違っているのではないか。今回は、それを説明しよう』、手厳しい批判だ。
・『なぜ皆がTOPIXにこだわるのか  東証は市場再編およびTOPIXという株式指標の変更を2022年4月から実施する。 これまでの東証1部、2部、マザーズ、および取引所再編で統合されたジャスダック市場を、プライム、スタンダード、グロースの3つに再編するというものだ。 要は、統合後、そのままになっていたものをわかりやすく整理するというもので、これ自体はおかしなことではない。 おかしいのは、これにかこつけて出てきた下心だ。それはTOPIXという株価水準指標を改革するということである。理由は「市場区分が変わるから、いままでの東証1部すべてを含んでいたTOPIXという代表指標を変える」ということだが、実は本音の意図は逆だ。 TOPIXという指標の評判が悪いため、投資家たちのニーズに合うようにTOPIXを変えたい。そして日本株を世界の機関投資家にもっと買ってもらいたい。いきなり変えるのも唐突だから、整理がなされていない市場区分の市場再編をします、その結果、TOPIXも変わります、ということだ。 実際、市場再編はさほど話題に上らずに、TOPIXの変更にすべての注目が集まっている。再編が関係するのは、東証1部が選抜されて東証プライムに移行し、落ちるとTOPIXから外れるから企業も投資家も右往左往している。すべてはTOPIXなのである。 では、なんでそんなにTOPIXという指標が重要なのか。 それは、世界中の機関投資家が、株価指数をベンチマークにして投資・運用しているからだ。彼らに株を買ってもらえなければ株価は上がらず、取引してもらえなければ、取引所に手数料は入らず、取引所が立ち行かなくなってしまう。 機関投資家の主流はパッシブで、株価指数(インデックス)に投資する。アクティブと呼ばれる運用者が自分で銘柄選択をする場合でも、インデックスをベンチマークにして、その構成に近い投資を行い、運用者としての特徴を投資家(資金の出資者)にアピールする、つまり自分の「味」を出すためには、少しそこからずらすだけである。 この結果、市場の投資資金のほとんどはインデックスに流れ込む。だから、インデックスは重要なのである。 個人投資家でさえ、初心者もプロも正しい投資はインデックスのETF(上場投資信託)である。日本で有名な日経平均株価は225銘柄のインデックスであるが、個別銘柄の名目の価格(例えばファーストリテイリング1株約7万5430円、ソフトバンクグループは同6647円、8月13日現在)をウェイトとするために、非常に偏っており(前述の2銘柄などのウェイトが極端に高い)もので、ベンチマークにはふさわしくない。 よって、普通の運用者は皆TOPIXをベンチマークとして使う。世間で日経平均が圧倒的に有名なのは「株価指数とはブランドだから」ということに尽きる。同様に、先物やオプションで日経平均が使われるのは、みんなが使うから使うだけのことであり、彼らは運用に興味はなく、高速のトレーディングや短期のセンチメントで売買することが商売だからである。ただ、彼らも取引所の主要顧客であり、収入源の一つである』、「市場の投資資金のほとんどはインデックスに流れ込む。だから、インデックスは重要」、「日経平均株価」は「非常に偏っており・・・ベンチマークにはふさわしくない。 よって、普通の運用者は皆TOPIXをベンチマークとして使う」、なるほど。
・『インデックス投資が主流になって、どうなった?  さて、この結果、インデックス投資が主流になってしまい、リサーチを丹念に行う小型株ファンドはもちろん、アクティビストファンド、ヘッジファンドも大規模運用者に押し流されて埋もれかけている。だから、アクティビストは埋もれないように過激化し、世界中で猛威を振るって、企業経営を混乱させている。 一方、HFTと呼ばれる、高速取引を行うトレーダーたちは「ナノセカンド(=10億分の1秒)」を争い、隙間のサヤ取りをしたり、サヤ取りと見せかけて、ナノセカンド単位での仕手筋的な動きをしたりして、稼ぐ。それは取引所にも利益にはなるが、そのためにシステムに過度な負荷がかかり、コストもかかる。実際、結果的にシステムの不調の責任をとる形で社長が辞任したことは記憶に新しい。これが、ここ10年の相場の現実だ。 投資家たちはローコストのインデックスファンドだけ、少し出資者の色を出すならESG(環境・社会・ガバナンス)などプラスして社会貢献を求めるのが流行している。この結果、個別の企業の隠れた価値を見抜いて賭ける投資家はほとんど存在しなくなってしまったのである。 インデックスファンドは、いちいち個別の企業を丁寧に分析する暇はなく、エンゲージメントと称して経営者と対話するというが、結局は株主議決権行使アドバイス会社に従うだけだ。さらにこのアドバイス会社も結局は客観基準で、形式的な議論に終始しないと網羅的に一貫性のあるアドバイスはできないから、要は、形式的な判断になる』。かつては、機関投資家にもアナリストがいたが、存在意義は薄らいでいるのだろう。 
・『「大機関投資家の離反」を恐れた改革?  これらの結果、世界の大規模機関投資家たちは、インデックスに含まれるほぼすべての会社に投資し、ガバナンスは不在になりがちだ。お茶を濁すために、議決権行使をするが、それもブランド活用となり、議決権行使アドバイザーも客観基準という名の形式基準、イメージ基準で投資するから、投資家サイドは誰も個別の企業の分析をしなくっているのに等しいのだ。 これが東証へのインデックス改革の要求へと結びつく。「俺たち投資家は忙しいんだ。だから、そのまま投資して儲かるようなインデックスを作れよ。そうでなければ面倒だから投資しないよ。TOPIXにも、さらには日本そのものへの投資を止めちゃうよ」ということなのである。だから、この恐怖におびえて、東証と日本政府は一丸となって、TOPIXの見直しを行おうとしているのである。 つまり、私に言わせれば、市場構造改革という名の下に行われようとしている今回の改革とは、ガバナンスとは無関係(それどころか改悪)であり、180度誤った方向の変更なのである。 東証、証券取引所は誰のためにあるのか。誰のどんなことのためにあるのか。この2つの最重要点について、根本的に誤っているのだ。 第1に、取引所は、資金調達をして経営を発展させようとしている企業と、それに対して出資をする投資家の保護のためにあるはずだ。今回の東証改革は、どちらの役にも立っていない。 取引所の役割は、第1に企業の資金調達を助けることである。そのためには、良い投資家を呼んでくることが必要である。よい投資家とは誰か。真の長期的な企業価値を理解し、その最大化を追求する投資家である。結論から言えば、多くのインデックス投資家は、それには当たらない。ましてやナノセカンドの高速取引をするトレーダーは問題外である。本来、東証がやるべきなのは、長期に企業とともに企業価値を最大化する仲間となる投資家を増やすことである。 取引所の第2の役割とは、企業へ出資する投資家を保護する役割である。投資家が持つリスクをとって出資する意欲を阻害しないように、投資対象となる企業を監視する、ということである。これこそが、ガバナンスである』、「市場構造改革という名の下に行われようとしている今回の改革とは、ガバナンスとは無関係(それどころか改悪)であり、180度誤った方向の変更なのである。 東証、証券取引所は誰のためにあるのか。誰のどんなことのためにあるのか。この2つの最重要点について、根本的に誤っているのだ」、極めて手厳しい批判だ。
・『東証が企業のガバナンスに責任を担うことが重要  例えば、硬直的な制度は東芝の大混乱を招いた根本的原因のひとつにもなった。すなわち「帳簿上債務超過が2期連続なら上場廃止」という形式基準一辺倒で、2兆円以上の価値が確実にある子会社を実質基準で判断せずに上場廃止を迫った。結局、血迷った東芝は、自ら「もっとも望まない投資家」を呼び込んでしまった。 このようなことが起きないようにすることが最重要である。企業の健全性を実質的に東証が判断する、そのような手間、暇、コスト、そして実質的に判断するという、責任を負ったガバナンスを東証が自ら担うことが必要である。 しかし、そのような役割にはしり込みをしておきながら、プライムというあたかも東証が保証するブランドをインデックス投資家に提供するようなことは積極的に行おうとしている。これは根本的な間違いではないか。 さらに、このプライムの基準は問題ではないか。第1に、そもそも企業を規模でプライムとスタンダードに分けていることだ。「大きければよい」という時代は19世紀に終わった。量より質である。だから、流通時価総額100億円以上ならプライムという高級市場でそれ以下なら普通のスタンダード、というのはおかしい。 第2に、流通株式という基準を用い、さらにこの基準を従来から変更していることである。要は、売買できる株式だけを時価総額の算定の中に入れるということである。株式を上場しても、創業者が自分や一族で保有している分や、大企業が子会社を上場した場合に、大株主として残ったような場合には、普通の状況では、彼らの持ち分は市場に出てくることはないから、市場に流通する株式の実質割合は低いということになる。 このときに、このような類の株式は除いて、残りの株式だけで、その企業の時価総額を算出するということである。その結果として、流通時価総額が100億円を超えるかどうかで、プライムに残るかどうか(現状東証1部の企業は)が決まる、ということだ。 そして、今回はおそらく、銀行などの政策保有株、企業の株式持ち合いなどを排除することを目的のひとつとして、流通株式の定義の変更を行ったのであろう。 この基準変更は、根本的な哲学が間違っているのではないか。つまるところ彼らの哲学は、株式が流通している企業のほうが偉いということである。だから、銀行が持っていても、目的が純投資であり、売買の実績があれば、流通に入れるという。なにをかいわんやである』、「この基準変更は、根本的な哲学が間違っているのではないか。つまるところ彼らの哲学は、株式が流通している企業のほうが偉いということである。だから、銀行が持っていても、目的が純投資であり、売買の実績があれば、流通に入れるという。なにをかいわんやである」、同感である。
・『大規模な機関投資家を見過ぎていないか  なぜいい企業だと思い、創業時から出資したのに、その株を手放さなくてはいけないのか。なぜちょこまか売買する必要があるのか。その企業を信頼し、将来を嘱望していればこそ売らないのだ。これは世の中の常識だ。ビンテージカーでも中古マンションでも歴史的な美術品でも、よいものはめったに売りに出ない。オークションなど市場に出回っているものは、言ってみれば、何らかの訳あり品だけなのである。 企業も同じだ。実際、M&A市場においても、「良いもの」は売りに出ない。創業者、大株主は死んでも手放さない。それなのに、短期に売買されればされるほど偉くてプライム市場に残り、誰も売らない超優良企業はプライム落ちをするものもある、そうした側面があるのである。 象徴的なことに、プライムから外すかどうかの基準に売買代金回転率が入っている。トレーダーが売り買いする企業は残るのである。デイトレーダーが好きな銘柄は残り、個人投資家が長期保有し続ける銘柄は外される、のである。 なぜ、こんな馬鹿げたことになっているのか。なぜ100億円以上の時価総額の大きな企業だけがプライムなのか。なぜ、株式が毎日売買される企業が偉いようにみなされるのか。 それは、インデックス投資家が売買しやすいからである。大規模な機関投資家にとっては、時価総額20億円の企業はどんなに魅力的であっても投資対象にならない。日本株を1兆円運用しているときに、時価総額20億円の企業にその5%の1億円を投資して、その企業の株価が倍になっても儲けは1億円だ。1兆円の0.01%だ。チリが積もっても山にならない。 だから、大規模機関投資家は時価総額の大きな企業からインデックスに目をつぶって投資するのである。実際には目はつぶらない。日本に投資するかどうか、アジアにおける中国以外の国の中で日本に何%投資するかは判断するが、日本の中でどの企業に投資するかは自分で判断せずにインデックスに頼るのである。こういうときに便利なインデックスが欲しいのである。そして、東証は、彼らのためだけに全力でTOPIX改革を行っているように見えるのである。 では、東証はどうすればいいのか。 それは、長くなったので次回にしよう。ガバナンスの本質もそこで議論したい。ただ、最重要ポイントだけを言っておくと、日本のガバナンスに足りないのは、制度でもなく、社外取締役でもなく、終身雇用が悪いのでもない。良い株主、投資家が少なすぎることに尽きる。 企業価値の長期的な最大化を目指し、自らも積極的に企業を理解し、独自に判断する投資家が増加し、彼らが株主にならない限り、ガバナンスはよくなりようがないのだ(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースや競馬論などを語るコーナーです。あらかじめご了承ください)』、「短期に売買されればされるほど偉くてプライム市場に残り、誰も売らない超優良企業はプライム落ちをするものもある、そうした側面があるのである。 象徴的なことに、プライムから外すかどうかの基準に売買代金回転率が入っている。トレーダーが売り買いする企業は残るのである。デイトレーダーが好きな銘柄は残り、個人投資家が長期保有し続ける銘柄は外される、のである」、確かにその通りだ。どうも今回の改革は、極めて問題が多いようだ。
タグ:資本市場 (その7)(東証の市場区分再編で「プライム落ち」に企業がおびえなくていい理由、東証の「市場改革」は何が大きくズレているのか 日本の企業統治に不足しているものは何か) ダイヤモンド・オンライン 山崎 元 「東証の市場区分再編で「プライム落ち」に企業がおびえなくていい理由」 「上場」はファイナンスの必要性はなくても、学生の採用などメリットは様々だ。 「「プライム」から外れても」「TOPIXに採用され続けてインデックスファンドの保有対象となる」、のであれば、実害はなさそうだ。 理屈の上ではその通りだが、これまでの「1部上場」が「プライム落ち」すれば、経営者はみっともない思いをさせられるケースが殆どではないだろうか。 「安売りしすぎ」で「かつてのようなブランド価値はなくなっている」とはお粗末だ。 「企業は、「プライム入り」を気にするよりも、本業で収益を上げることに注力すべきだ。社長の意地だけを理由にプライム入りを目指すのは本末転倒」、その通りだが、現実にはそうはいきそうもない。 「年金基金などで、ベンチマークをいきなりプライム指数に変える向きがあれば、運用者としての見識を疑うべきだ。 また、将来「プライム指数連動インデックスファンド」が登場した場合に、この指数がどのように使われているかについては、十分注意を払う必要がある」、その通りだ。 東洋経済オンライン 小幡 績 「東証の「市場改革」は何が大きくズレているのか 日本の企業統治に不足しているものは何か」 手厳しい批判だ。 「市場の投資資金のほとんどはインデックスに流れ込む。だから、インデックスは重要」、「日経平均株価」は「非常に偏っており・・・ベンチマークにはふさわしくない。 よって、普通の運用者は皆TOPIXをベンチマークとして使う」、なるほど。 かつては、機関投資家にもアナリストがいたが、存在意義は薄らいでいるのだろう。 「市場構造改革という名の下に行われようとしている今回の改革とは、ガバナンスとは無関係(それどころか改悪)であり、180度誤った方向の変更なのである。 東証、証券取引所は誰のためにあるのか。誰のどんなことのためにあるのか。この2つの最重要点について、根本的に誤っているのだ」、極めて手厳しい批判だ。 「この基準変更は、根本的な哲学が間違っているのではないか。つまるところ彼らの哲学は、株式が流通している企業のほうが偉いということである。だから、銀行が持っていても、目的が純投資であり、売買の実績があれば、流通に入れるという。なにをかいわんやである」、同感である。 「短期に売買されればされるほど偉くてプライム市場に残り、誰も売らない超優良企業はプライム落ちをするものもある、そうした側面があるのである。 象徴的なことに、プライムから外すかどうかの基準に売買代金回転率が入っている。トレーダーが売り買いする企業は残るのである。デイトレーダーが好きな銘柄は残り、個人投資家が長期保有し続ける銘柄は外される、のである」、確かにその通りだ。どうも今回の改革は、極めて問題が多いようだ。
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日本の政治情勢(その56)(菅首相の新ブレーンに元官僚タレント岸博幸氏起用のさもしい下心と打算、「河井事件」被買収議員ら100人 起訴で広島政界大混乱の恐れ、公明党議員事務所に前代未聞ガサ入れの裏 菅首相と山口代表が「維新政権入り」で物別れか、“自民党のドン”二階幹事長に「政界引退説」! 三男に選挙地盤継承か) [国内政治]

日本の政治情勢については、本年5月27日に取上げた。今日は、(その56)(菅首相の新ブレーンに元官僚タレント岸博幸氏起用のさもしい下心と打算、「河井事件」被買収議員ら100人 起訴で広島政界大混乱の恐れ、公明党議員事務所に前代未聞ガサ入れの裏 菅首相と山口代表が「維新政権入り」で物別れか、“自民党のドン”二階幹事長に「政界引退説」! 三男に選挙地盤継承か)である。

先ずは、7月10日付け日刊ゲンダイ「菅首相の新ブレーンに元官僚タレント岸博幸氏起用のさもしい下心と打算」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/291748
・『元経産官僚が菅首相のブレーンに抜擢だ。菅政権は9日、内閣官房参与に慶応大大学院教授の岸博幸氏を任命したと発表。コロナ禍を巡る「さざ波」発言で辞職した嘉悦大教授の高橋洋一氏と入れ替わる形で、内閣参与は再び計10人となった。 岸氏は経産省出身。現在は民放の情報番組やバラエティーのコメンテーターとしても活動している。1986年に一橋大経済学部を卒業後、旧通産省入り。小泉政権で竹中平蔵元内閣府特命担当相の秘書官などを歴任した。2006年に退官後、民間企業の役員や内閣府国家戦略特区ワーキンググループ委員、大阪府・市の特別顧問などを務めている。 菅首相とは先月26日に面会していた。 加藤官房長官は起用理由について「成長戦略、規制改革、経済産業政策、広報戦略について、適宜、総理に対し情報提供や助言をいただく」と説明したが、ピンとこない。なぜ岸氏なのか』、かねてから同氏には体制べったり的発言が多く、このブログでも紹介した回数も少ない。
・『竹中平蔵人脈からの抜擢  「岸クンはそもそも、菅総理のブレーンのひとりである竹中さんの“部下”みたいなもの。政権と気脈を通じているし、コメンテーターとして顔も広く知られているから起用への反発も小さい。ただ、政策立案においてはこれといった実績はなく、総理のイメージアップを期待しているのではないか。岸クンはエイベックス・グループ・ホールディングスの元顧問ですからね。安倍前総理が芸能人と会食を重ねて戦略的にアベ人気を高めたように、総理も何とか支持を広げたいところ。岸クンの人脈もあてにしているのでしょう」(経産省関係者) 「令和おじさん」「パンケーキ好き」でチヤホヤされたのは、はるか昔。調子こいて「ガースーです」と自己紹介しては炎上し、独善的な政権運営からついたあだ名は「スガーリン」だ。衆院選の前哨戦だった都議選では歴史的敗北。秋までにイメージアップしたいのは当然で、岸氏にとっても願ったりかなったりの展開だ。) 「経産官僚からタレントになったはいいものの、ピエロになりきれず、ブレークしたとは言い難い。政権内部に入れば箔が付きます。〈菅政権は~〉と話のネタにもなるし、〈選挙に出ないか〉と声がかかる可能性も大きくなる。今後のキャリアを見据えれば、参与就任はオイシイはずです」(前出の経産省関係者) ネット上はすでに〈悪名高き竹中平蔵の子飼い〉〈世も末〉――と大荒れ。菅首相の思惑通りにいくかどうか』、「竹中平蔵人脈からの抜擢」とは、世の中では新自由主義的風潮は後退しつつあるとはいえ、まだ根強いようだ。

次に、7月21日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した事件ジャーナリストの戸田一法氏による「「河井事件」被買収議員ら100人、起訴で広島政界大混乱の恐れ「河井事件」被買収議員ら100人、起訴で広島政界大混乱の恐れ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/277456
・『一昨年の参院選広島選挙区を巡る選挙違反事件で、東京地裁は先月、公選法違反の罪に問われた元法相で前衆院議員の河井克行被告(58)に懲役3年の実刑判決を言い渡し、地元議員ら100人全員の現金授受を認定した(河井被告は東京高裁に控訴)。しかし、東京地検特捜部は6日、100人全員を被買収で立件することなく、不起訴処分に。これに異議を唱える地元の市民団体は参院選当時に現職だった政治家40人を対象に15日、検察審査会に審査を申し立てた。河井被告に対する実刑判決と特捜部の不起訴処分で終わったかのように思われたこの事件。実は、広島の政界にとっては混乱の序章にしかすぎないのかもしれない』、この事件は岸田派の横手前参院議員に対し、安部首相が強引に「河井」案里氏を2人目の候補としてねじ込み、選挙資金も10倍の1.5億円が支払われ、案里氏が当選、「横手」氏は落選した(Wikipedia)。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%B3%E4%BA%95%E5%A4%AB%E5%A6%BB%E9%81%B8%E6%8C%99%E9%81%95%E5%8F%8D%E4%BA%8B%E4%BB%B6
・『次席検事による不可解な不起訴の説明  1審東京地裁判決によると、河井被告は2019年3月~8月、妻の案里氏(47)=公選法違反の罪で有罪判決が確定、参院議員を失職=を当選させる目的で地元の首長や議員、元国会議員秘書ら有力者計100人に投票と票の取りまとめを依頼するため計約2870万円を配った。 そもそもだが、公選法221条は買収および利害誘導罪について、こう規定している。1項では「当選を得(え)、若(も)しくは得しめ又(また)は得しめない目的をもつて選挙人又は選挙運動者に対し金銭、物品その他の財産上の利益若しくは公私の職務の供与、その供与の申込み若しくは約束し又は供応接待、その申込み若しくは約束をしたとき」は、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金となる。 つまり、現金を渡した河井被告だけではなく、受け取った議員らも罪に問われなければいけないのだ。 全国紙社会部デスクによると、100人のうち99人は起訴猶予で、1人は死亡で不起訴。政治家は広島の市町長2人、広島県議14人、広島市議13人、ほかの市議8人、町議3人で、受け取った金額は5万~300万円と幅があり、そのうち22人は複数回にわたり受領していた。 しかし、東京地検は「(現金受領は)いずれも受動的だった。一定の人物を選別して起訴するのは公平性の観点から疑問があった」(山元裕史次席検事)と、全員を不起訴とした理由を説明していた』、「次席検事による」「不起訴の説明」は、確かに「不可解」そのものだ。
・『検察審査会はどこまで踏み込むか  これに市民団体は異議を唱えたわけだ。 最近、検察審査会(検審)という存在がニュースで取り上げられることが多くなったが、実は検審のメンバーは司法の専門家ではない。無作為に選出された日本国民(公選法が定める有権者)で構成されるシロウト集団だ。 検察官が独占する公訴権に民意を反映させ、不当な不起訴処分を抑制するために各地裁やその支部に設置されている。 最近では、菅原一秀前経産相が夏祭りや盆踊りなどの行事を主催する町内会や商店街にご祝儀、故人の枕元に飾る枕花や香典を提供したとして、いったんは特捜部が不起訴(起訴猶予)としながら「起訴相当」と議決し、衆院議員辞職と略式起訴(略式命令で罰金40万円が確定)に追い込んだことは記憶に新しい。 市民団体に刑事告発されても、従来であればそのまま不起訴で終わっていたはずだが、最近はインターネットの普及で、こうしたニュースに対するコメントやSNSなどで意見を投稿する人たちが増えた。「政治とカネ」に対する目はシビアになり、検審のメンバーもプロから言いくるめられるのではなく、こうした声を受け入れている結果なのだ。 筆者も全国紙社会部記者として検察官と付き合いがあり、さまざまな事件を担当してきた。河井元法相や菅原前経産相が閣僚経験者で国会議員を辞職したのだから「社会的制裁を受けた」として刑事罰は受けずに終わるだろうという筆者の印象や、検察官らの「起訴は不要」という感覚は、もはや悲しいほど時代遅れのようだ。 特捜はそうした情勢を読み切れず、菅原前経産相や100人を不起訴としたわけだが、検審が「起訴相当」と判断し、特捜部が再捜査で不起訴としても、再度、検審が「起訴相当」と議決すれば強制起訴となり、いずれも事実関係を認めているわけだから裁判所も無罪にはできない。 情状酌量を含めて執行猶予はあっても、公選法の規定で議員バッジを外さなければいけなくなるのだ。そして何より、検察にとっては「おとがめなし」とした事件を、シロウトで構成される検審によって事件化され、有罪判決が出るというのは屈辱以外の何ものでもない』、「検審」は政権の意向をくみがちな検察に対する牽制役として重要だ。
・『不起訴にするための贖罪寄付という欺瞞  一般的に起訴されると「有罪率は99.9%」といわれるが、実は、これは検察が優秀だからではない。有罪判決が出る事件しか起訴しないから99.9%なのだ。検察という「業界」では、残りの0.1%を担当した検察官は「不祥事」扱いされるほどだ。 強制起訴制度は09年5月に始まり、東日本大震災での東京電力元会長や尼崎JR脱線事故の歴代3社長、政治資金規正法違反の小沢一郎元民主党代表などが起訴されたが、実際に有罪となったのは柔道教室の事故を巡り業務上過失傷害罪に問われた長野県松本市の元柔道指導員と、徳島県石井町長(当時)が飲食店女性従業員に暴行した2件だけだ。 河井被告の事件を巡っては、特捜部は「司法取引」を否定しているが、信じている国民はいないだろう。事実関係を認めない議員らに対する恫喝(どうかつ)は取材などに証言しているし、実は、全国紙社会部デスクによると、検察官らは議員らに「贖罪(しょくざい)寄付」をするよう示唆したとされる。 贖罪寄付とは、容疑がありながら、起訴しない前提で検察側に都合のいい供述を引き出す代わりに、慈善団体などに寄付を促し、反省の意を示したとする検察側の「不起訴の理由づくり」だ。 もちろん、検察側は司法取引したような供述調書は作らない。だから山元次席検事が議員ら100人を不起訴処分とした際の記者会見で「被買収者から(刑事処分をしないという)取引や約束をした事実(司法取引を指す)はない」と言い放ったのは、そういう背景がある。 筆者はなぜか地方支局時代、選挙違反事件に遭遇することが多かった。取材対象は「特捜部」ではなく、県警本部捜査2課になるのだが、その過程でよく耳にしたのが「立件のボーダーラインは2けた」ということだった。2けたは「10万円」を指す。 もう1つ言うと、殺人や放火など、捜査1課は発生して周知となった事件を立件しなければいけないが、捜査2課は贈収賄や選挙違反など「当事者らしか知らない犯罪」を手掛けている。表に出ない事件なのだが、実は「ノルマ」があると聞いたことがある。 贈収賄や選挙違反を年に1件以上、必ず挙げなければいけないのだ。ご存じの方も多いと思うが、地方の県警本部捜査2課長は、20代の警察庁キャリアで捜査経験のほとんどないエリートが派遣される。 名目は「地元名士との癒着を見逃さないよう、地縁のないキャリアを派遣する」ということだが、捜査1課と違い「摘発したら手柄、なくてもミスはなし」というのが本当の理由だ。それでも本庁へ帰る前に「お土産」を持たせなければ、警察本部としては恥ずかしい。だから「2けた」を立てるのだという。 筆者が知る限り「2けた」で立件されて執行猶予の判決はあっても、誰もが納得できる明確な理由がないのに「おとがめなし」(不起訴)は聞いたことがない。 今回の事件、検審はどう判断するのだろうか』、「特捜部は「司法取引」を否定しているが、信じている国民はいないだろう」、検察の恣意的取り調べを防止するため、取り調べの全段階をビデオ化するなどの可視化が是非とも必要だ。

第三に、8月7日付け日刊ゲンダイ「公明党議員事務所に前代未聞ガサ入れの裏 菅首相と山口代表が「維新政権入り」で物別れか」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/293061
・『永田町がキナ臭い。秋の総選挙を控える中、公明党議員の国会事務所がガサ入れを食らった前代未聞の騒ぎに、菅官邸が一枚かんでいるとの臆測が飛び交っている。自公連立政権の誕生から22年。この8年で深まった亀裂は修復し難いレベルまできたのか。 東京地検特捜部は4日、日本政策金融公庫からの融資を無登録で仲介したとされる事件に公明の衆院議員秘書2人が関与した疑いがあるとして、衆院第1議員会館の事務所などを貸金業法違反容疑で家宅捜索。問題の秘書は吉田宣弘衆院議員(比例九州)の政策秘書と、太田昌孝衆院議員(比例北陸信越)の元政策秘書だ。ともに、緊急事態宣言下の銀座クラブ通いで辞職した遠山清彦前衆院議員の元秘書。融資違法仲介の関係先として、遠山氏の自宅と代表を務める千代田区内のコンサルタント会社も捜索された。 公明は大揺れだ。しかもガサ入れ前日、山口那津男代表は菅首相とランチを共にしていたから、青天のへきれきだろう。所要49分間、昼食にしては長丁場だった』、「所要49分間、昼食にしては長丁場だった」、当然、昼食中に「山口那津男代表」に通告・打診したのだろう。
・『「新型コロナウイルス対策への批判で内閣支持率は30%を割り込み、『危険水域』に突入。衆院選で自民党は単独過半数割れ、自公で過半数をかろうじて上回るという厳しい情勢調査もある。延命の道を探る総理は、親密な関係にある日本維新の会の政権入り構想を温めているといわれてきた。ついに山口代表に打診したものの物別れし、官邸がガサ入れにGOサインを出したのではないか、との情報が流れています」(永田町関係者) 融資違法仲介捜査の端緒は、太陽光発電関連会社「テクノシステム」の詐欺事件だ。太陽光事業などへの融資名目で民間の3金融機関から約22億円をだまし取ったとして逮捕・起訴された社長の生田尚之被告は、遠山氏とも交遊がある、いわくつきの人物。反原発を掲げる小泉純一郎元首相に巧みに近づき、長男の孝太郎を自社CMに起用するなど、小泉親子のネームバリューを最大限に利用。一方、小泉政権で環境相を務めた東京都の小池百合子知事にも接近し、資金管理団体などに200万円ほど個人献金していた。 「小池知事が衆院議員時代の公設秘書で、“金庫番”の男性親族が『最高顧問』としてテクノ社に出入りしたり、生田被告と不可解な不動産取引をしたとも報じられています。一連の捜査の展開次第で、小池知事も無傷ではいられない可能性がある。ガサ入れは、菅総理の天敵への牽制球にもなり得ます」(与党関係者) 世論を無視し、永田町の汚い理屈で菅首相が延命を果たすなんてあり得ない』、「「テクノシステム」の詐欺事件」は被害金額の大きさからみても悪質だ。「捜査の展開次第で、小池知事も無傷ではいられない可能性がある」、とは面白くなってきた。

第四に、8月16日付け日刊ゲンダイ「“自民党のドン”二階幹事長に「政界引退説」! 三男に選挙地盤継承か」,との驚きのニュースを紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/293383
・『大島理森衆議院議長(74)、伊吹文明元衆議院議長(83)、竹下亘元総務会長(74)……と、自民党大物議員の政界引退表明が相次いでいる。衆院議員の任期は10月21日まで。残りあと2カ月だ。解散総選挙の時期が絞られ、このタイミングなら意中の後継者にスムーズにバトンタッチできるという事情があるという。 なんと、二階俊博幹事長(82)の政界引退説も飛びかっている。理由は息子への代替わりだ。 「二階さんの引退説は、先週、一斉に広がった。具体的な動きがあったわけではありません。でも、息子に選挙地盤を譲るとしたら、次の選挙しかない。二階さんは、秘書をしている三男を後継と考えている。選挙区は衆院和歌山3区です。でも、和歌山3区は、衆院への鞍替えをもくろんでいる自民党の世耕弘成参院議員が虎視眈々と狙っている選挙区です。二階さんが三男に引き継ぐとしたら、幹事長として党の実権を握っている今しかない。次の次の選挙では、二階さんの力も衰え、世耕さんに選挙区を奪われる恐れがあります」(自民党事情通)』、「三男に引き継ぐとしたら、幹事長として党の実権を握っている今しかない」、確かに説得力がある。
・『世耕参院議員には選挙区を渡さない  しかも、次々回の衆院選は、各都道府県に配分される選挙区が見直される「10増10減」が実施され、和歌山県の選挙区は現在の3から2に減らされる。選挙区が少なくなったら、なおさら三男に地盤を譲るのが難しくなる可能性がある。 「世耕さんの衆院鞍替えを封じ込め、息子さんへの地盤継承をスムーズに進めるには、次の選挙しかない。でも、引退するにしても、世耕さんが出馬の準備ができないように、ギリギリまで表明しないはず。恐らく、引退表明は解散が決まった後でしょう」(政界関係者) 菅首相の後見人が政界引退したら、自民党の勢力図はガラリと変わる可能性がある』、「引退するにしても、世耕さんが出馬の準備ができないように、ギリギリまで表明しないはず。恐らく、引退表明は解散が決まった後でしょう」、政治家の駆け引きは我々、一般人の常識の範囲を超えているようだ。「菅首相の後見人が政界引退」、もうはや菅政権の余命もいくばくもないとはいえ、総選挙の総指揮官をどうするのか、自民党にとっては頭が痛いところだろう。
タグ:日本の政治情勢 (その56)(菅首相の新ブレーンに元官僚タレント岸博幸氏起用のさもしい下心と打算、「河井事件」被買収議員ら100人 起訴で広島政界大混乱の恐れ、公明党議員事務所に前代未聞ガサ入れの裏 菅首相と山口代表が「維新政権入り」で物別れか、“自民党のドン”二階幹事長に「政界引退説」! 三男に選挙地盤継承か) 日刊ゲンダイ 「菅首相の新ブレーンに元官僚タレント岸博幸氏起用のさもしい下心と打算」 かねてから同氏には体制べったり的発言が多く、このブログでも紹介した回数も少ない。 「竹中平蔵人脈からの抜擢」とは、世の中では新自由主義的風潮は後退しつつあるとはいえ、まだ根強いようだ。 ダイヤモンド・オンライン 戸田一法 「「河井事件」被買収議員ら100人、起訴で広島政界大混乱の恐れ「河井事件」被買収議員ら100人、起訴で広島政界大混乱の恐れ」 この事件は岸田派の横手前参院議員に対し、安部首相が強引に「河井」案里氏を2人目の候補としてねじ込み、選挙資金も10倍の1.5億円が支払われ、案里氏が当選、「横手」氏は落選した(Wikipedia)。 「次席検事による」「不起訴の説明」は、確かに「不可解」そのものだ。 「検審」は政権の意向をくみがちな検察に対する牽制役として重要だ。 「特捜部は「司法取引」を否定しているが、信じている国民はいないだろう」、検察の恣意的取り調べを防止するため、取り調べの全段階をビデオ化するなどの可視化が是非とも必要だ。 「公明党議員事務所に前代未聞ガサ入れの裏 菅首相と山口代表が「維新政権入り」で物別れか」 「所要49分間、昼食にしては長丁場だった」、当然、昼食中に「山口那津男代表」に通告・打診したのだろう。 「「テクノシステム」の詐欺事件」は被害金額の大きさからみても悪質だ。「捜査の展開次第で、小池知事も無傷ではいられない可能性がある」、とは面白くなってきた。 「“自民党のドン”二階幹事長に「政界引退説」! 三男に選挙地盤継承か」 「三男に引き継ぐとしたら、幹事長として党の実権を握っている今しかない」、確かに説得力がある。 「引退するにしても、世耕さんが出馬の準備ができないように、ギリギリまで表明しないはず。恐らく、引退表明は解散が決まった後でしょう」、政治家の駆け引きは我々、一般人の常識の範囲を超えているようだ。「菅首相の後見人が政界引退」、もうはや菅政権の余命もいくばくもないとはいえ、総選挙の総指揮官をどうするのか、自民党にとっては頭が痛いところだろう。
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EC(電子商取引)(その8)(テンセント・リスクだけじゃない 楽天巡り強まる監視、日本政府が「楽天と中国の関係」を監視し始めた…でもそれ効果ありますか…?、物流強化でアマゾン 楽天を追撃 “ヤマトと心中”ヤフーのEC責任者が激白) [産業動向]

EC(電子商取引)については、4月9日に取上げた。今日は、(その8)(テンセント・リスクだけじゃない 楽天巡り強まる監視、日本政府が「楽天と中国の関係」を監視し始めた…でもそれ効果ありますか…?、物流強化でアマゾン 楽天を追撃 “ヤマトと心中”ヤフーのEC責任者が激白)である。

先ずは、4月21日付け日経ビジネスオンライン「テンセント・リスクだけじゃない 楽天巡り強まる監視」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00128/042100023/
・『楽天グループを巡る「監視」が強まっている。共同通信は20日、楽天が中国のネットサービス大手、騰訊控股(テンセント)子会社から出資を受けた点について、日米両政府が共同で監視していく方針を固めたと報じた。この一報を受け、21日の東京株式市場では楽天株が一時前日比約6%下落した。 通信事業を営み、莫大な個人情報を持つ楽天に対してテンセント子会社が出資する問題点について、日経ビジネスはこれまでに細川昌彦・明星大学経営学部教授のコラムの記事「政府も身構える『テンセント・リスク』 楽天への出資案が飛び火」や本連載の記事「テンセント出資で『三木谷氏に個人情報守る責任』 自民・甘利氏」などでたびたび指摘してきた。 日本政府はこうした問題提起に対して、きちんと対応する姿勢を見せるべく、共同監視の方針を打ち出したのだろう。ただ、監視といっても日本側が「聞き取り」をして、それを米国と共有するスキームだという。 米国では対米外国投資委員会(CFIUS)に、米国企業の買収や株式取得が安全保障に与える影響を調査する権限が与えられている。だが、日本政府がそれをチェックする手段を持っていない点はこれまでにも書いてきた通りだ。企業が必ず真実を語る性善説のうえに成り立つもので、プレッシャーにはなるものの、本質的な監視になるのか疑問符がつく。 楽天には、もう1つの監視が強まりつつある。 それが、財務の健全性への監視だ。 総務省は14日、高速・大容量通信規格「5G」向けの追加電波を、楽天モバイルに割り当てると発表した。東名阪エリアを除く全国において1.7GHz帯の基地局を開設できるようになる。地方での通信エリア拡大が期待でき、大手3社に比べて脆弱な楽天の通信環境の改善が見込まれる』、「日本政府」は「監視といっても日本側が「聞き取り」をして、それを米国と共有するスキーム」、どうも形をつけただけのようだ。
・『低下著しい自己資本比率  楽天にとっては悲願の割り当てだ。ただ、認可にあたっては12の条件が課せられている。その1つに「設備投資及び安定的なサービス提供のために必要となる資金の確保、その他財務の健全性の確保に努めること」がある。 認可の条件に財務の健全性の確保が明記されているのだ。これは2018年4月に楽天モバイルの参入を認めた際にもついた条件である。モバイル通信はライフラインの1つとなった。インフラ事業を営むにあたり、資金難となって突然サービスを停止されては困るからだ。 財務の健全性を示す指標の1つに自己資本比率がある。楽天の自己資本比率は20年末時点で4.86%だった。金融事業を抱えるため低くなるのは仕方がない部分もあるが、16年末の14.82%や19年末の8.03%と比べると、低下が著しい。楽天はモバイル事業への投資がかさみ、前期に1000億円超の最終赤字となった。今期もモバイル事業での投資を継続し、赤字の公算が大きい。) 楽天は4月19日、外貨建てでの永久劣後債の発行を決めたと発表した。ドル建てが総額17億5000万ドル(約1900億円)。ユーロ建ては10億ユーロ(約1300億円)で、発行総額は約3200億円となる。一度の起債では同社の過去最大規模だ』、「自己資本比率は20年末時点で4.86%」、確かに低過ぎる。「赤字」で軽く吹っ飛びかねない。
・『矢継ぎ早の資金調達  劣後債とは、債務不履行に陥った際に弁済の順位が普通社債より劣るため利率が高くなる。ただ、格付け会社からの格下げリスクは抑えられるメリットもある。また楽天グループは国際会計基準を導入しているため、永久劣後債で調達した資金を全額資本として扱える。自己資本比率の改善にもつながる。 3月には冒頭で扱ったテンセント子会社や日本郵政などから総額2400億円の出資を受け入れた。矢継ぎ早に資金調達に走る背景には、財務の健全性を確保しつつ、モバイル事業のインフラ投資を加速する狙いがある。 シティグループ証券アナリストの鶴尾充伸氏は財務の健全性を確保するための調達を評価する一方で「まだ足りない数千億円をどう調達するかが課題」と指摘する。楽天が非金融事業で稼ぐ営業キャッシュフローよりもモバイル事業の設備投資が大きくなり、その赤字額は「2年で1兆円」と鶴尾氏は見積もる。劣後債の発行や第三者割当増資で6000億円弱を調達したが、その差である4000億円強をどう調達するかが課題だ。 こうした点を格付け会社も注視している。S&Pグローバル・レーティングは2月に、楽天の長期発行体格付けと長期優先債券の格付けを、引き下げ方向の「クレジット・ウオッチ(CW)」に指定。4月9日にもCWを維持すると発表しており、現在の格付けである「BBB-」が引き下げられる可能性がある。 ただ、楽天モバイルは20年4月から今年4月まで、「1年間無料」とするキャンペーンを実施したため、モバイル事業の赤字は続く。この4月からは、1年間無料だったユーザーの期限が終わり、有料へと切り替わるタイミングが始まっている。楽天モバイルの売りの1つが、「いつでも解約、解約金は不要」というものだ。いわゆる「2年縛り」のように、期間中に解約した場合の違約金も発生しない。ユーザーにとってはメリットがあるが、楽天からすればいつでも解約されるリスクでもある。競合が20GBで約3000円という新料金プランを3月に始めており、楽天モバイルの競争優位性は低下している。 楽天モバイルでの収益化が難しい中で、いかに資金を確保するか。鶴尾氏は手段の候補として「保有する海外株式の売却」や「傘下のフィンテック企業のIPO(新規株式公開)」を掲げる。IPOは準備に時間がかかるため容易ではないが、対応策を示さなければ格下げリスクが高まってしまう。 日米政府による監視と財務の健全性の確保。強まる監視網に対し、楽天には丁寧な説明が求められる。 この記事はシリーズ「白壁達久のネット企業盛衰記」に収容されています』、「楽天」はまさに正念場にあり、「丁寧な説明が求められる」のは確かだ。

次に、4月28日付け現代ビジネスが掲載した経済評論家の加谷 珪一氏による「日本政府が「楽天と中国の関係」を監視し始めた…でもそれ効果ありますか…?」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/82631?imp=0
・『日本政府が安全保障の観点から楽天グループを監視する方針を固めたとの報道が出ている。中国のIT大手から出資を受けたことが背景だが、中国から出資を受けている企業や、中国との関係が密接な企業は他にもたくさんあり、年金機構から中国に情報が漏洩しているとの指摘も出ている。 データ漏洩を防ぐことは重要だが、楽天に対する監視が、単なる世論対策や政府のアリバイ作りでは何の意味もない。本気で中国リスクを懸念するのであれば、形式的な聞き取り調査ではなく、日本経済の仕組みそのものを変革し、中国依存度を下げる努力が必要である』、興味深そうだ。
・『楽天監視の記事が流された背景  共同通信は2021年4月20日、「日米両政府が楽天グループを共同で監視する方針を固めたことが分かった」と報じた。楽天グループが中国のIT大手騰訊控股(テンセント)グループの出資を受けたことから、日本政府は楽天に対して定期的に聞き取り調査を行い、米当局と情報を共有化するとしている。 正式な発表はなく、記事では情報源が明らかにされていないので、典型的なリーク記事と考えてよいだろう。リーク記事は大抵の場合、情報を拡散したい人(政府関係者や企業幹部など)が特定のマスコミだけに情報を流し、意図的に世論形成を図ったり、社会の反応を見るために実施される。 日米首脳会談が行われたタイミングであることを考えると、日本政府が中国に対する監視を強化していることを米国にアピールしたり、他の日本企業に対して安易に中国と提携しないよう促す目的があるのかもしれない。 政権が国内の世論対策として情報をリークした可能性もある。現在、中国に対しては香港問題やウイグル問題など人権問題が提起されているが、日本政府の中国への対応は曖昧なままである。中国依存を強める財界への配慮があると考えられるが、一部からは政府は何もしていないとの声も出ている。楽天という分かりやすい企業をターゲットに「監視強化」という情報を流せば、政府にとっては、「ちゃんと仕事をしていますよ」という、ある種のアリバイとなる。 いずれにせよリーク記事が出てきたということは、この情報をあえて拡散させたい人が政府内部にいることを示しており、背後には相応の目的があると考えた方がよい。 日本では、政府の正式発表ではないニュースをメディアが勝手に報じることに対して激しい批判が寄せられることが多く、「マスゴミはケシカラン」といった論調で溢れている。だがその理屈でいくと、この記事も根拠の怪しい一方的な報道であり、本来なら激しく批判されるはずである。自分たちが求めている話題ならマスコミの勝手な報道はOKで、望まない話をマスコミが勝手に報道するのはNGということでは、完全にダブルスタンダードだ。 リーク記事を鵜呑みにするのは危険だが、リーク記事ほど情報分析において重要な役割を果たすツールはない。リーク報道をむやみに批判するのは愚の骨頂であり、いかなる内容であれ、リーク報道が出てきた時には、その意図を探るのが基本中の基本である(政権に批判的なリーク記事も、実は政府関係者が流していることも多い)』、「リーク記事を鵜呑みにするのは危険だが、リーク記事ほど情報分析において重要な役割を果たすツールはない。リーク報道をむやみに批判するのは愚の骨頂であり、いかなる内容であれ、リーク報道が出てきた時には、その意図を探るのが基本中の基本である」、その通りだ。
・『年金機構からもデータが漏れている?  仮に今回のリーク記事が、政府のアピールだとすると、どうしても気がかりな点がある。データ漏洩の監視を強化するといっても、どの程度の実効性があるのかという問題である。 楽天は市場に大きな影響力を持つ企業であり、テンセントも中国を代表するIT企業のひとつである。今回の資本提携が世間の注目を集めているというのはその通りだろう。だが、楽天に限らず、日本企業と中国企業の結びつきは水面下で相当なレベルまで進行しており、実はすでに抜き差しならない状況まで来ているとの見方もできる。 日本の貿易総量において中国が米国を上回ったのはかなり前のことであり、とうとう2020年には輸出においても中国が米国を超えた。つまり日本の輸出産業における最大の「お客様」は中国である。つい先日、LINEの利用者情報がシステムの開発を受託している中国企業内で閲覧可能だったことが明らかになっているし、中国事業抜きに業績を継続することは困難であることから、ウイグル問題には目をつぶる日本企業も多い。) 中国企業と密接な関係を構築している日本企業はかなりの数にのぼり、楽天だけに聞き取り調査を行ったところで、データ漏洩を防ぐことなどほぼ不可能である。しかも困ったことに、国会ではマイナンバーというもっとも重要な国民の個人情報が、日本年金機構から中国に流出している可能性まで指摘されている。もしこれが事実であれば、民間企業を監視するどころの話ではなくなってしまう。 実際、今回の日米首脳会談では、中国問題に対する日本側の消極的な姿勢が目立った。国内メディアはあまり報道していないが、ロイターは、「日中の経済・商業上の深いつながりや、菅首相が慎重な対応を取る意向であることは認識している」という米高官の発言を報じている。この記事は、日本経済がすでに相当程度、中国に取り込まれており、米国と同じ行動を取ることは難しいと米国側が当初から認識していたことを示している。 この報道に対して「米国の理解が得られて良かった」と受け止めるのか、「米国はすでに日本を見放しつつある」と捉えるのかで、状況判断は180度変わる。いずれにせよ、多くの日本人が想像している以上に日本経済と中国経済の一体化は進んでおり、米国はその現実について、日本人以上に明確に認識している』、「多くの日本人が想像している以上に日本経済と中国経済の一体化は進んでおり、米国はその現実について、日本人以上に明確に認識している」、その通りなのかも知れない。
・『中国と日本を切り離すためには?  筆者は以前から、日本は輸出主導型経済から消費主導型経済に転換すべきであると主張してきた。輸出主導型経済を維持する以上、顧客となる国が必要であり、それは米国から中国にシフトしている。中国を主要顧客にしている以上、日本は交渉で不利な立場にならざるを得ない。仮に米国と政治的な関係を強化できたとしても、米国は保護主義に傾いており、従来と同じように日本製品をたくさん買ってくれる保証はない。 ITなど次世代産業を基軸とした高度な消費主導型経済を構築できれば、中国への輸出という呪縛から解放され、中国と距離を保つことができる。だが高度な消費主導型経済への転換については、国内では反対意見が多い。しかも困ったことに、そうした反対意見の内容は年々変化しているのが現実だ。 数年前まで筆者の主張に対しては「日本は輸出立国であり、輸出産業を軽視するのはケシカラン」といった批判が圧倒的に多かった。ところが最近では、日本の輸出競争力低下が目に見えて明らかになってきたせいか、論調が変わり、「日本の輸出依存度は低く、日本は中国への輸出に頼らなければならない国ではない」いった意見が目立つようになった。これは完全に現実逃避と言わざるを得ないのだが、マクロ経済における輸出の効果に関する誤認識もあるようだ。 確かに日本の純輸出(輸出から輸入を差し引いた金額)は、限りなくゼロに近づいており、純輸出がGDPに占める割合は低い。だが、輸出主導型経済というのは、貿易黒字で経済を回すという意味ではない。個人や企業では、利益という概念があるが、マクロ経済にはそうした概念は存在せず、黒字の額が経済成長を促すわけではないのだ』、「黒字の額」が二国間の勝ち負けを示すと飛んでもない見解を示したのが、あのトランプ前大統領だ。

第三に、6月5日付け東洋経済Plus「物流強化でアマゾン、楽天を追撃 “ヤマトと心中”ヤフーのEC責任者が激白」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/27169?login=Y
・『ネット通販ではアマゾン、楽天の後塵を拝しているヤフー。ヤマト運輸との連携を深める狙いはどこにあるのか。 EC(ネット通販)モール「Yahoo!ショッピング」や「PayPayモール」を展開するヤフー。アマゾン、楽天の後塵を拝し、業界内では「万年3番手」と呼ばれる。 そうした中、2020年3月に親会社Zホールディングスが、宅配便首位のヤマト運輸を擁するヤマトホールディングスと業務提携。ヤフーはヤマトとの共同で商品の在庫管理なども含め、受注から宅配までを一括で請け負う「フルフィルメントサービス」を提供している。 2021年3月には同サービスをリニューアルし、全国一律の格安配送で出店者の利用拡大を目指す。ヤマトとの連携強化の狙いは何か。ヤフーでEC事業を統括する畑中基・コマースカンパニー執行役員ショッピング統括本部長を直撃した(Qは聞き手の質問、Aは畑中氏の回答)。 Q:なぜ今、EC物流を強化しているのですか。 A:もちろん物流の重要性はわかっており、かなり前から議論を重ねている。 残念ながらヤフーはECで業界3位。しかも、競合との差は大きく圧倒的な3番手だ。競合に追いつくためには、まず品揃えの強化が必要だった。これが出店料と売り上げロイヤルティを無料化した2013年の「eコマース革命」につながる。出店者の数が増えたことで、「Yahoo!ショッピング」と「PayPayモール」には、合わせて約4億商品が掲載されている。 そして、大規模なポイント還元やセールによる割引でお得感をアピールし、ユーザーの定着を図った。ユーザーから好評だった直近の「超PayPay祭」は、とにかくオペレーションが大変だった。出荷量の拡大から物流オペレーションの負荷が増しているのは、どの出店者にも共通する課題だ。 ユーザーが配送に求めるハードルも高くなっている。以前は、お得に商品を買えたのであれば、届くのが多少遅れても許される「寛容さ」みたいなものがあった。今はどうも違うようだ。 Q:というと? A:以前よりも許容範囲が狭くなってきていて、商品の到着が遅いと(次の注文をしなくなるような)機会損失になってしまう。 だから、商品数を増やしてキャンペーンを打っても不十分だと感じていた。物流もやらないといけない。それに、商品価格や送料無料のラインが下がると、出店者はその分のコストをどこかに転嫁せざるをえない。多少はヤフーがコストを負担して、出店者を物流面で支援したいと考えた』、「ユーザーが配送に求めるハードルも高くなっている。以前は、お得に商品を買えたのであれば、届くのが多少遅れても許される「寛容さ」みたいなものがあった。今はどうも違うようだ」、「物流」も大変になってきたようだ。
・『物流の自前化は時間がかかりすぎる  Q:2020年のヤマトとの業務提携はその延長線上にあったと。 A:たとえば、アスクルやZOZOなどのグループ会社が保有する倉庫を活用し、出店者向け物流サービスを提供するとか、小さなことはやってきた。ただ、(配送拠点からユーザーまでの)ラストワンマイルのサービスがないと不十分で、自分たちでは投資負担が大きくてできなかった。 大きな事業者との連携を模索する中、ヤマトさんとの提携が決まった。物流などのオペレーション負荷を軽減し、出店者にはユーザーとのコミュニケーションや商品の宣伝といった「売り」に徹していただける環境を作っていきたい。 はたなか・はじめ/アパレル企業を経て2003年ヤフー入社。「Yahoo!ショッピング」の企画・営業に携わり、2012年に本部長就任。2018年4月に「Yahoo!トラベル」「Yahoo!ダイニング」の営業本部長を兼任、同5月よりスマホ決済サービス「PayPay」の営業責任者、6月にPayPay取締役に就任。2019年よりショッピング統括本部長。写真は2019年(撮影:今井 康一) Q:EC最大手のアマゾンは物流サービスの自前化を進めています。ヤフーは考えていないのですか? 検討はゼロではない。ただ、いつやるのかというタイミングの問題もあるし、事業モデルをどう構築するのか、コストをどう負担するのか、と課題は山積みだ。過去にいろいろと検討したが、どうしても自社化に踏み切る判断が難しかった。そう単純なものではない。 ましてや、楽天やアマゾンなどと比べてヤフーの物流は周回遅れだ。ハコ(倉庫)と足回り(配送)を自分たちでやっていると、かなり時間がかかってしまう。まずは大手事業者と組んだほうがメリットはある。 幸いにも、(ヤマトと共同で提供する)「フルフィルメントサービス」には、出店者から想定を大幅に上回る申し込みがあり、強い手応えを感じている』、「楽天」は携帯事業では前述のように苦戦しているが、ECでは「アマゾン」と並んで「ヤフー」に大差をつけているようだ。
・『ヤフーは何かを強制することはない  Q:今年3月にヤマトと共に打ち出した全国一律の配送サービスはかなり安いです。「楽天スーパーロジスティクス」や「フルフィルメント by Amazon」など、競合の物流サービスの価格を参考にして料金設定したのでしょうか? A:もちろん、勉強させていただいている。おそらく、競合である楽天やアマゾンと比べても価格面で優位にたっているはずだ。 だからといって、出店者を縛るというか、フルフィルメントサービスを使わないといけないというのは、極力排除したい。あくまで、出店者の売り上げと利益が確保できたうえで、よい商売がしたいと考えている。 「優良配送キャンペーン」で送料の一部を出店者にキャッシュバックしたように、われわれがコストを一部負担することがあっても、何かを強制したりはしない。 Q:フルフィルメントサービスが「お値打ち」なのはヤフーがコストを一部負担しているからですか? A:(同席した広報担当者が)フルフィルメントサービスの料金をどのように実現しているかの詳細は公表していません。 Q:「Yahoo!ショッピング」には「優良配送」というタグがあります。これとフルフィルメントサービスの関係は。 A:確実に翌日に届くもので配送遅延率も一定以下の商品に「優良配送」のタグが付く。ユーザーからすれば、いつ来るのかわからない商品よりも、「確実に明日来る・時間指定できる」というのはメリットだ。そのため、人気度や閲覧数と同様、「優良配送」があると商品がサイト内で上位に表示されやすくなる。 商品の出荷状況はヤフーの管理ツールで把握している。ヤマトのシステムとヤフーの管理ツールは、シームレスにつながっている。出店者がフルフィルメントサービスを使っていれば「優良配送」のタグはほぼ間違いなく付く』、なるほど。
・『ヤマトとがっつりと組む  Q:ユーザーの多様なニーズに対応するのであれば、佐川急便や日本郵便を使っている出店者にも同様のサービスが必要では。 A:もちろん、よい話があるならばぜひともやりたい。ヤマトだけと組んで他はお断りということはない。出店者やユーザーにとってよいサービスができるならば、ほかの事業者とも提携する。 少なくともB2Cの配送についてはヤマトがナンバーワンであり、システムやサービスも間違いなく他社に先行している。矢継ぎ早に素晴らしいサービスを提案してくれるので、当面はヤマトとしっかりとサービスを提供することが中心になるだろう。 すでにヤマトとは、リアル店舗の在庫をECサイト上に表示し、店舗から商品を出荷する取り組みも始めている。2021年の2月中旬から3月末の期間中、日比谷花壇とヤマトで実証実験を行った。近隣の店舗から商品を出荷・配送することで、午前中の注文を即日配送できる。 ECとリアル店舗の両方の領域で、出店者にとってよいサービスを提供しないと、すべての在庫をヤフーに預けて可視化させてはくれないだろう。 Q:実店舗での配送のあり方も変わってくると、ヤマトよりも企業間物流を手掛ける事業者や佐川急便のほうがよいのではないでしょうか? A:繰り返しになるが、ヤマト以外との連携をまったく考えていないわけではない。あくまで当面はヤマトとのサービス提供に注力するというだけ。 配送事業者は中小企業も含めて候補はたくさんあって、「マジカルムーブ」や「ピックゴー」のようにソフトバンクグループが出資している事業者もいる。ご縁があればそうした事業者とも連携したい。 でも、しばらくはがっつりとヤマトと組んでいく。それこそ、ヤマトと心中するつもりでやろうと思っている。 Q:心中、ですか? A:それくらい密に連携したいという話です。 ヤマトと一緒に始めたサービスをある日いきなりやめるなんてことはない。経営トップ同士で定期的に話をしており、この関係は揺るがない。 たとえば、ある商品の次にはこの商品が出荷される、といったAIによる需要予測などのデータ利活用についても議論している。 Q:ヤマトへの信頼度がそうとう高いのですね。 A:それはそうでしょう。ユーザーからすれば、ヤマトさんはブランドもサービスレベルも圧倒的。 繰り返しにはなるが、配送の「質」が(提携の)決め手。これまでほぼすべての配送会社と協議している。そうした中でヤマトとの連携を選んだのだから』、「ヤマトと心中するつもりでやろうと思っている」と「ヤマト」はさすがに高い信頼を得ているようだ。今後の、EC3強の展開を注視していきたい。
タグ:EC (電子商取引) (その8)(テンセント・リスクだけじゃない 楽天巡り強まる監視、日本政府が「楽天と中国の関係」を監視し始めた…でもそれ効果ありますか…?、物流強化でアマゾン 楽天を追撃 “ヤマトと心中”ヤフーのEC責任者が激白) 日経ビジネスオンライン 「テンセント・リスクだけじゃない 楽天巡り強まる監視」 「日本政府」は「監視といっても日本側が「聞き取り」をして、それを米国と共有するスキーム」、どうも形をつけただけのようだ。 「自己資本比率は20年末時点で4.86%」、確かに低過ぎる。「赤字」で軽く吹っ飛びかねない。 「楽天」はまさに正念場にあり、「丁寧な説明が求められる」のは確かだ。 現代ビジネス 加谷 珪一 「日本政府が「楽天と中国の関係」を監視し始めた…でもそれ効果ありますか…?」 「リーク記事を鵜呑みにするのは危険だが、リーク記事ほど情報分析において重要な役割を果たすツールはない。リーク報道をむやみに批判するのは愚の骨頂であり、いかなる内容であれ、リーク報道が出てきた時には、その意図を探るのが基本中の基本である」、その通りだ。 「多くの日本人が想像している以上に日本経済と中国経済の一体化は進んでおり、米国はその現実について、日本人以上に明確に認識している」、その通りなのかも知れない 「黒字の額」が二国間の勝ち負けを示すと飛んでもない見解を示したのが、あのトランプ前大統領だ。 東洋経済Plus 「物流強化でアマゾン、楽天を追撃 “ヤマトと心中”ヤフーのEC責任者が激白」 「ユーザーが配送に求めるハードルも高くなっている。以前は、お得に商品を買えたのであれば、届くのが多少遅れても許される「寛容さ」みたいなものがあった。今はどうも違うようだ」、「物流」も大変になってきたようだ。 「楽天」は携帯事業では前述のように苦戦しているが、ECでは「アマゾン」と並んで「ヤフー」に大差をつけているようだ。 「ヤマトと心中するつもりでやろうと思っている」と「ヤマト」はさすがに高い信頼を得ているようだ。今後の、EC3強の展開を注視していきたい。
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異次元緩和政策(その37)(アメリカの物価上昇のウラで…日本は「悪いインフレ」の悪夢に飲み込まれるかもしれない、訪れるコロナ経済の「出口戦略」…日本の「ゾンビ企業」消滅のカウントダウンが始まった、アメリカ雇用完全復活でFRBの政策変更前倒しも ドル相場は例年になく底堅く さらに上昇へ) [経済政策]

異次元緩和政策については、本年5月15日に取上げた。今日は、(その37)(アメリカの物価上昇のウラで…日本は「悪いインフレ」の悪夢に飲み込まれるかもしれない、訪れるコロナ経済の「出口戦略」…日本の「ゾンビ企業」消滅のカウントダウンが始まった、アメリカ雇用完全復活でFRBの政策変更前倒しも ドル相場は例年になく底堅く さらに上昇へ)である。

先ずは、7月28日付け現代ビジネスが掲載した経済評論家の加谷 珪一氏による「アメリカの物価上昇のウラで…日本は「悪いインフレ」の悪夢に飲み込まれるかもしれない」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/85604
・『原油価格の高騰や米国消費者物価指数の急上昇など、このところインフレの話題を見聞きするケースが増えている。日本経済の現状が変わらないまま、国内にもインフレが波及すると非常にやっかいなことになるが、そもそも物価上昇というのはどのようなメカニズムで発生するのだろうか』、興味深そうだ。
・『インフレには大きく分けて2種類ある  米国ではコロナ後の景気回復期待から企業が先行投資を加速しており、物価が猛烈な勢いで上がっている。2021年3月の消費者物価指数は前年同月比で2.6%だったが、4月は4.2%、5月は5.0%、そして6月は5.4%になった。これは2008年8月以来、約13年ぶりの水準である。2008年8月と言えば、リーマンショック直前で米国はまさにバブル経済の頂点にあった。コロナからの急回復という特殊要因はあるものの、異常な物価上昇であることは間違いない。 原油先物価格はこのところ上昇を続けており、7月初旬には一時、1バレル=75ドルを突破した。コロナ後の景気回復期待に加えて、石油輸出国機構にロシアなどの非加盟国を加えたOEPCプラスが増産に合意できなかったことなどが背景となっている。 日本はまだコロナ終息を見通せる段階ではなく、消費の急回復といった現象は見られない。だが困ったことに、諸外国でインフレが進むと、そのインフレは日本にも波及する可能性がある。景気回復が実現できない中で物価上昇が進むと国民生活は苦しくなるので、諸外国の動向には気を配っておく必要があるだろう。 米国のインフレが長期間継続するのか、またそれが日本にも波及するのかを正確に予想することはできないが、状況に対して適切に対応するためには、インフレがなぜ発生するのか知っておいた方がよい。 一般的にインフレは景気が良い時に発生する。景気がよくなって店舗に並ぶ商品がたくさん売れるようになると、値段を上げても客足が落ちなくなる。利益を最大化するためには値上げした方がよいとの判断が働く。その店舗に商品を納入している卸会社も同じように考えるので、景気がよくなると、同時多発的に値上げが起こり、社会全体の物価は上昇していく。 これは財・サービス市場での話だが、同じようなメカニズムは貨幣市場でも発生する。 景気がよくなり、次々と商品が売れる状況では、より多くの在庫を抱えておかないと品切れを起こすリスクが高まる。品切れで販売できないというのは極めて大きな機会損失であり、店舗としては何としても避けたい事態である。 ところが多くの事業者は、手元に大量の余剰資金は抱えていないので、在庫を増やすためには銀行から借り入れを増やさなければならない。結果として貨幣需要が増大し、銀行は利益を最大化するため金利を引き上げる。金利上昇は物価上昇を誘発するので、さらに物価が上がる。このようなインフレは需要が起点になっているのでディマンドプル・インフレとも呼ばれる』、「ディマンドプル・インフレ」は金融政策で抑制が可能な良質なインフレだ。
・『不景気下でのインフレは最悪  景気拡大に伴うインフレの場合、タイムラグこそ生じるものの、賃金も上がっていくので国民はあまり不満を感じない。だが、物価上昇は景気が悪い時にも発生する。それは商品価格の上昇が引き金となるコストプッシュ・インフレである。 コストプッシュ・インフレで最もわかりやすいのは1970年代に発生したオイルショックだろう。1973年、OPEC加盟6カ国は1バレルあたり3.01ドルだった原油公示価格を5.15ドルに引き上げ、に翌年1月からは一気に11.65ドルに引き上げる決定を行った。原油市場は大混乱となり、70年代後半には原油価格は30ドルを突破するまでに上昇。これを受けて先進各国ではあらゆる製品やサービスの価格が上昇し、インフレが一気に進んだ。 日本でも1973年から1980年にかけて物価は約2倍に高騰し、「狂乱物価」などという言葉が新聞の見出しを飾った。原油など重要な資源の価格が高騰すると、景気の良い悪いにかかわらず物価が上昇するので、国民生活は大きな打撃を受ける。企業の業績はむしろ悪化するので、賃上げもままならない。不景気化で物価上昇が進むと、いわゆるスタグフレーションという状況に陥るが、そうなってしまえば、そこから回復させるのは容易なことではない。 だが、当時の日本経済は60年代から長期にわたる好景気が続いており(いざなぎ景気)、この景気が一段落した後も田中角栄元首相による列島改造ブームが発生するなど成長が続いていた。原油価格の高騰で成長率こそ低下したが、ディマンドプル・インフレとコストプッシュ・インフレが併存する形で、何とか豊かな国民生活は維持された。 昭和時代の経済について、十把一絡げで「高度成長」と呼ぶ人も多いが、厳密には高度成長というのは1955年からオイルショックまでの極めて成長率の高い時代のことを指す。オイルショック以降は「低成長時代」と呼ばれるようになったが、バブル崩壊以降は、とうとうゼロ成長になってしまった。このため「低成長時代」という言葉は事実上、消滅した状況にある。 若い世代の人がバブル世代の上司に対して「高度成長時代の人は○×だから」と揶揄しているが、バブル世代は60年代生まれなので、実は彼等は典型的な低成長時代の人たちである。つまり失われた30年があまりにも酷い状況だったことから、低成長時代の人たちですら、高度成長に見えてしまっているという悲しい現実がある』、なるほど。
・『日本への波及を防ぐには成長しかないが…  米国で発生しているインフレは一過性のものであるとの見方も有力だが、一方でバイデン政権は巨額の財政出動に邁進しており、景気は今後、長期にわたって継続するとの予想も少なくない。景気が持続的に拡大すれば物価は上がりやすくなるし、財政出動が巨額になれば金利上昇を誘発するので、これも物価を上げる要因となる。 金利の上昇や、政府債務の増大は、景気にとってマイナス要因であり、いわゆる悪いインフレを誘発する可能性があるものの、米国の場合、景気拡大効果の方が大きいだろう。景気拡大による良いインフレに、若干悪いインフレの要因が加わり、物価の上昇が続くというシナリオが今のところ最有力候補だ。 では日本はどうだろうか。日本はワクチン接種の遅れから景気回復はまだ先になるとの予想が多い。しかも、米国や欧州が脱炭素やAI(人工知能)など、新しいテクノロジーに対する巨額投資を行っている中、日本はこうした先行投資をほとんど実施していない。コロナ終息後の反動以外に、日本の景気が急拡大する要因がないため、当分の間、低い成長率が続くだろう。 経済が日本国内だけで完結していれば、低成長とゼロ金利、物価上昇の停滞が続くことになるが、諸外国の物価と金利がさらに上がった場合にはそうはいかなくなる。諸外国の物価が上がれば輸入品の価格は上昇するし、債券市場の金利が上がると、日本の国債市場も無縁ではいられない。 輸入物価と金利が同時に上昇すると、いくら不景気であっても、日本国内の物価は上昇に転じるしかなくなる。企業の業績が伸びない中でのインフレなので賃金も上がりにくい。最悪のケースとしてはスタグフレーションということもあり得るという話になる。 こうした状況から脱却するためには、日本も諸外国と同レベルの成長を実現する必要があるが、現時点でその見通しは立てにくい。諸外国の景気があまり良くならない方が日本にとってはむしろ好都合という、皮肉な状況となっているのが現実だ』、「債券市場の金利が上がると」、日本の国債の発行利回りも上がり、国債費が膨張、市場は大混乱に陥るだろう。

次に、8月3日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの町田 徹氏による「訪れるコロナ経済の「出口戦略」…日本の「ゾンビ企業」消滅のカウントダウンが始まった」を紹介しよう』
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/85790?imp=0
・『「カネ余り」というつっかえ棒  内外の金融・資本市場の一部でインフレ懸念が根強く囁かれる中で、米連邦準備制度理事会(FRB)は7月27、28の両日、連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、ゼロ金利政策と量的緩和政策を維持することを全会一致で決めた。 28日発表のFOMCの声明の特色は、米景気について「依然として新型コロナウイルスの拡大状況に左右されている」「経済の先行きへのリスクは残っている」としたうえで、引き続き「雇用の最大化と物価の安定という目標を推進するために、あらゆる手段を使うことを約束する」としたことである。 これらは、当面の金融政策の対応として適切であり、十分に頷ける対応と言える。 注目すべきは、FRBがコロナ危機の収束後の懸案となるテーパリング(国債などの資産を買い入れる量的緩和の縮小)についても丁寧に言及したことだ。FRBのパウエル議長は28日の記者会見で、テーパリングの開始に触れ、「今後複数の会合」で経済情勢の進捗を確認すると表明した。 このため、関係者の間では、テーパリングの開始時期は、早くとも今年11月2、3日開催のFOMC以降との見方から安心感が広がったのである。 昨年来の新型コロナ危機の最大の特色の一つは、パンデミックが世界経済の歴史的な減速を招いたにもかかわらず、2008年のリーマン・ショックとは異なり、株式相場の暴落や金融危機は一時的なものにとどまり、大きな混乱に繋がらなかったことにある。 この背景には、FRBを始めとした各国の中央銀行がそろって大胆な金融緩和に踏み込み、市場に潤沢な資金を供給して世界的なカネ余り状況を作り出したことがある。 それだけに、カネ余りというつっかえ棒を失えば、日本では、コロナショック以前から軋みが見えていた金融機関やゾンビ企業の実態が露呈しかねない。国内経済が大きく動揺するリスクがあるのだ。FRBが見せたテーパリングの開始に向けた配慮は、改めて、コロナ危機の次にそうしたリスクが待ち構えていることを連想させずにはおかない』、「日本」では「テーパリング」が論議すら一切されてない状況で、「FRB」が「テーパリング」に踏み切れば、日本の円は暴落するリスクがある。
・『米国経済はなかなか急回復しない  今回、FRBが決めたのは、政策金利のフェデラル・ファンド(FF)レートの誘導目標を0.00~0.25%とする金融政策と、市場から米国債を月800億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)を月400億ドル買い入れている量的緩和策の維持だ。 FOMCの声明文によると、政策維持の目的は、従来、FRBが掲げてきた「雇用の最大化と物価安定に向けてさらなる大きな前進を遂げる」ことにある。 その一方で、一部のマスメディアなどで行き過ぎや長期化が懸念されているインフレについては、「2%のインフレ達成を目指している」と改めてFRBの政策目標を確認したうえで、この「長期目標を下回る状態が続いている」との認識を示した。 そして「当面は2%よりやや上のインフレ達成を目指す。そうすることで、インフレ率が長期的に平均で2%になり、長期インフレ予測が2%で安定するようにする」との方針を表明したのである。 今後インフレ率が急騰したとしても、それは一時的な要因の影響であり、コロナ危機に伴う供給制約が改善すれば、いずれ落ち着くとの見方を維持した形なのだ。 そうした前提の下で、米国の景気動向については「依然としてウイルスの拡大状況に左右されている」と断言した。「ワクチン接種の普及により、公衆衛生の危機が景気に及ぼす影響は引き続き小さくなる可能性が高いものの、経済の先行きへのリスクは残っている」というのである。 実際のところ、FRBが懸念を示したように、米国ではここへきて新型コロナの感染が再拡大している。ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、1日当たりの新規感染者数は7月3日の4739人を底に増加に転じ、7月30日には19万4608人と1月16日(20万1858人)以来およそ半年ぶりの高水準を記録した。 原因として、ワクチン接種の頭打ちのほか、デルタ株の拡大、経済活動の再開などがあげられるという。ニューヨーク州やニューヨーク市、カリフォルニア州では公務員にワクチン接種か週1度のコロナ検査を義務付けるなど、様々な対策に追われている。 FRBが、今後一本調子でコロナ危機が速やかに終息し、経済の急回復が続くとみていないのは妥当な見方だろう』、「今後一本調子でコロナ危機が速やかに終息」するとみていないのはともかく、「経済の急回復が続く」可能性はあり、インフレが深刻化するリスクはあるだろう。
・『議論開始は11月以降から?  半面、新型コロナのパンデミックが世界の実態経済を歴史的な減速に追い込む中で、この経済危機が金融・資本市場に波及しなかったのは特筆すべきことだ。その裏に、積極的な財政出動と金融緩和が寄与したことは周知である。 それだけに、金融・資本市場関係者は、コロナ危機終息後、金融政策の正常化のために行われるテーパリングに神経質だ。 FRBのパウエル議長は28日の記者会見で、こうした市場関係者の懸念に対しても十分過ぎるほどの心配りを見せた。テーパリング開始に向けては、「今後複数の会合」を通じて経済情勢の進捗を確認すると表明したのである。 市場関係者は、パウエル議長が「今後複数の会合」と言う以上、それは9月に予定している次回のFOMCではなく、11月初めか、12月中旬のFOMCのことと受け止めて、胸を撫で下ろした。 しかも、パウエル議長は資産購入政策の変更時期について、重ねて「今後のデータ次第だ」とも述べている。つまり、テーパリング開始をまだ既定路線としていないとも述べているのだ。 テーパリング開始に対して神経質な市場との対話に、神経質なほどの配慮を見せたと言って良いだろう。 経済紙の報道によると、FRBのブレイナード理事はFOMCの翌々日にあたる30日、講演で、米経済の現状について、就業者数がコロナ危機前の水準をなお680万人下回っていることを挙げて、FRBの目標に「まだ距離がある」とも述べた。 そのうえで、経済の回復ぶりが「9月のデータが手に入れば進展の程度をもっと自信をもって評価できる」と語り、9月分の米雇用統計の公表後に開催される11月のFOMC以降にテーパリングの開始議論を行うとの見方を裏付けたという』、なるほど。
・『そのときは遠からずやってくる  とはいえ、FRBが実際にテーパリングを始めれば、その影響は大きい。米国以外の経済が揺さぶられる懸念もある。長期間にわたって低金利が続いた結果、膨らんだ新興国や途上国のドル建て債務の返済や借り換えに問題が生じる恐れがあるのだ。 日本でも、米国へのドル資金の還流が本格化すれば、米国よりもワクチンの接種で後れを取りコロナ危機からの脱却が遅れているにもかかわらず、日銀が想定しているよりも早い時期に金融緩和策の修正を迫られるリスクがある。 そうなれば、政府の国債の利払い負担は増す。政府の要請と支援を受けて、ゾンビ企業への安易な融資を増やしてきた日本の金融機関はもちろん、政策支援で経営がひと息ついていた脆弱な企業の資金繰りも覚束なくなる可能性が高い。 実際のところ、日本の金融機関は、一部の地方銀行などを中心にコロナ前から続く低金利政策により資金運用難に陥っていたところが少なくないだけに、事態は予断を許さない。 昔に比べれば、各国の中央銀行は、自国の政策が他国の経済に影響を及ぼすスピルオーバーを意識するようになったとされるが、FRBがテーパリングの開始に当たって、経営の不健全な日本の金融機関やゾンビ企業にまで配慮するとは考えにくい。が、その時期は遠からず、確実にやって来る』、「日本」への影響で最も懸念すべきは、資本の対外流出、「円」の暴落、国債利回り上昇と国債費の増大、などだろう。

第三に、8月13日付け東洋経済オンラインが掲載した みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミストの唐鎌 大輔氏による「アメリカ雇用完全復活でFRBの政策変更前倒しも ドル相場は例年になく底堅く、さらに上昇へ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/447789
・『世界中で新型コロナウイルスのデルタ変異株が蔓延し問題視されている。しかし、FRB(連邦準備制度理事会)の政策運営は変わらず正常化プロセスに関してファイティングポーズを解いておらず、その限りにおいて、アメリカの金利とドルの相互連関的な上昇を見込む基本認識は変える必要がないと筆者は考えている。 8月2日、ウォラーFRB理事は「向こう2回分の雇用統計が自分自身の予想どおりになれば、2022年の利上げに向けた体制を整えるため、テーパリング(量的緩和の段階的縮小)に早期に着手し、迅速に進める必要がある」と述べている。 これは9月にテーパリングを決定し、10月に着手するとことを示唆したものだ。今後2回分とは7月・8月分を意味しており、同理事の予想とは具体的に「その2カ月間で雇用が160万~200万人増加した場合、失われた雇用の85%が9月までに回復することになるため、テーパリング開始を遅らせる理由はない」というものだった』、第二の記事での「ブレイナード理事」よりも早目を見込んでいるようだ。
・『ウォラー想定の実現は十分ありうる  この点、8月6日に発表されたアメリカの7月雇用統計は非農業部門雇用者数(NFP)の変化に関し、前月比プラス94.3万人と市場予想の中心(同プラス85.0万人)を超え、もともと強い結果が上方修正された6月(同プラス93.8万人)からも加速した。2020年4月時点で失われた雇用は未曾有の2236万人に達していたが、今年7月時点で570万人まで圧縮されている。これで約75%の雇用復元が完了したことになり、緩和縮小は妥当な判断に思える(下図)。 (外部配信先では図表を閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください) 2021年の雇用回復を振り返ると、年初来7カ月間で月平均61.7万人の増加、過去3カ月間では月平均83.2万人の増加となる。ウォラー理事の「2カ月で160万~200万人の増加」は難易度の高い予想だが、非現実的とは言えない。今回、94万人の増加を果たしたので、8月分(9月3日発表)が70万人弱の増加でウォラー理事の想定が実現する。過去3カ月の増勢に照らせば、十分可能性はある。 前掲図に示すように、アメリカ経済の雇用が減少したのはコロナ禍の初期に相当する2020年3~4月および、感染第2波によりロックダウンが実施された2020年12月の計3カ月間だけだ。その前後の2020年10~12月や2021年1月は雇用の増勢こそ鈍っていたものの、減少したわけではなかった。こうした事実は7月に全米経済研究所(NBER)が今次後退局面の「谷」を2020年4月、すなわち後退局面は2020年3月と4月の2カ月間しかなかったという異例の判断を下したことと符合している』、「今次後退局面」は僅か「2カ月間しかなかった」というのには驚かされた。
・『あと1年で雇用は完全回復へ  下図は筆者が折に触れて参考にしている前回の後退局面との比較である。コロナショックを伴う今次局面とリーマンショックを伴う前回局面では雇用回復の軌道がまったく異なっているのが一目瞭然だ。景気の「山」から起算した雇用の喪失・復元幅は今回のほうが比較にならないほど大きい。 例えば、前回局面では雇用喪失のピークは2010年2月の869万人だった。まずそこまで悪化するのに26カ月かかっている。これに対し、今回は「山」から2カ月後が喪失のピークという異例の軌道を描いている。だから景気後退局面がわずか2カ月間と判定されたのだろう。急性的に悪化した今次局面と、慢性的に徐々に悪化していった前回局面との対比はあまりにも鮮明である。 ちなみに現在(2021年7月時点)は景気の「山」から起算して17カ月目に相当するが、上述したように雇用喪失は570万人まで圧縮されている。前回局面で17カ月目にはまだ692万人が喪失したままだったので、当時の回復軌道を明確に上回ったことになる。今後、月平均で50万人程度の増勢が続くと保守的に仮定しても、あと1年もあればコロナ禍で失われた雇用は完全に復元されることになる。 すなわち来年の今頃には景気の遅行系列である雇用の「量」という面から見ても「コロナが終わった」という状態になる。) 前月比で非農業部門雇用者数の増加が90万人を超えたり、失業率が0.5%ポイントも低下したりする動きは過去に経験のないものだ。そのように実体経済の回復軌道が異なるのだから、金融政策の正常化プロセスの軌道も異なってくるのが自然であり、1年かけてテーパリングを完了した前回の経験を踏襲する必要はない。 かかる状況下、今年9月にテーパリングを決定、10月(遅くとも12月)に着手、2022年6月(遅くとも7月)に7~8カ月かけて完了というイメージはそれほどズレたものではないように思える。 セントルイス連銀のブラード総裁は7月30日、今秋にテーパリングを開始し、2022年初頭に完了させ、必要に応じて2022年中の利上げ実施を可能にするため「かなり速いペース」でテーパリングを進めることにも言及していた。2022年中の利上げを前提にした政策運営はFOMC(連邦公開市場委員会)の中でも極端な意見だろうが、雇用市場を筆頭とするアメリカの今の景気回復ペースを踏まえれば、無理な話でもないように思えてくる。 もしくは、テーパリングの期間を今年秋から来年秋まで、前回と同じ1年間と保守的に見積もったとしても、終了は2022年9月ないし10月になる。この軌道で正常化プロセスを進めたとしても、現在のドットチャートが示唆する「2023年に2回利上げ」という前提は大きく揺るがないだろう』、「2023年に2回利上げ」とは「日本」は大変だ。
・『ドルは底堅く、年内に115円まで上昇も  以上のようにFRBの政策運営が順調に進むことが見えている中、先進国で圧倒的に景気回復が出遅れている日本の円が対ドルで上昇する芽はほとんどないように思える。もちろん、新たな変異株の登場は常に世界経済のリスクだが、そうなればなおの事、ワクチン調達に優れる欧米市場は評価されやすいだろう。 今年4~6月期、為替市場では明確にドル全面安が進んだが、円高に振れることはほとんどなかった。これは日米実体経済の大きすぎる格差を前提に取引する向きが多かったからではないのか。当面、ドル円相場の底値は例年になく堅いものだと予想され、年内に115円付近までの上昇はあっても不思議ではないと考える。)ちなみに、7月の失業率は5.4%と前月の5.9%から0.5%ポイントも低下しており、2020年3月以来1年4カ月ぶりの低水準を記録している。現在、FRBスタッフ見通しで想定される自然失業率(4.0%)までには距離があるが、確実にそこへ接近している』、「テーパリング」が行われれば、私は円の暴落があってもおかしくないと思う。
タグ:異次元緩和政策 (その37)(アメリカの物価上昇のウラで…日本は「悪いインフレ」の悪夢に飲み込まれるかもしれない、訪れるコロナ経済の「出口戦略」…日本の「ゾンビ企業」消滅のカウントダウンが始まった、アメリカ雇用完全復活でFRBの政策変更前倒しも ドル相場は例年になく底堅く さらに上昇へ) 現代ビジネス 加谷 珪一 「アメリカの物価上昇のウラで…日本は「悪いインフレ」の悪夢に飲み込まれるかもしれない」 「債券市場の金利が上がると」、日本の国債の発行利回りも上がり、国債費が膨張、市場は大混乱に陥るだろう 町田 徹 「訪れるコロナ経済の「出口戦略」…日本の「ゾンビ企業」消滅のカウントダウンが始まった」 「日本」では「テーパリング」が論議すら一切されてない状況で、「FRB」が「テーパリング」に踏み切れば、日本の円は暴落するリスクがある。 「今後一本調子でコロナ危機が速やかに終息」するとみていないのはともかく、「経済の急回復が続く」可能性はあり、インフレが深刻化するリスクはあるだろう。 「日本」への影響で最も懸念すべきは、資本の対外流出、「円」の暴落、国債利回り上昇と国債費の増大、などだろう。 東洋経済オンライン 唐鎌 大輔 「アメリカ雇用完全復活でFRBの政策変更前倒しも ドル相場は例年になく底堅く、さらに上昇へ」 第二の記事での「ブレイナード理事」よりも早目を見込んでいるようだ。 「今次後退局面」は僅か「2カ月間しかなかった」というのには驚かされた。 「2023年に2回利上げ」とは「日本」は大変だ。 「テーパリング」が行われれば、私は円の暴落があってもおかしくないと思う。
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インド(その1)(RCEP加盟を拒否したインドの過ち──モディ政権が陥った保護主義の罠、政府発表は大きく異なるインド・コロナ危機 火葬が間に合わず葬場外に何時間も死体が放置、インドのコロナ地獄を招いた張本人モディの 償われることのない重罪) [世界情勢]

今日は、インド(その1)(RCEP加盟を拒否したインドの過ち──モディ政権が陥った保護主義の罠、政府発表は大きく異なるインド・コロナ危機 火葬が間に合わず葬場外に何時間も死体が放置、インドのコロナ地獄を招いた張本人モディの 償われることのない重罪)を取上げよう。

先ずは、昨年12月5日付けNewsweek日本版が掲載した米メアリー・ワシントン大学教授のスルパ・グプタ氏と、米インディアナ大学教授のスミト・ガングリー氏による「RCEP加盟を拒否したインドの過ち──モディ政権が陥った保護主義の罠」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/12/rcep-3_1.php
・『<アジアとオセアニア15カ国が参加する巨大経済圏に背を向けたことで多くのチャンスを逃しかねない> グローバル経済の約3割を占める巨大経済圏の誕生だ。11月15日、ASEAN(東南アジア諸国連合)加盟10カ国と、日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの合わせて15カ国が、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に署名した。 しかし、そこにはアジアの経済大国の1つが欠けていた。インドである。長期にわたる交渉の末、インド政府はRCEPへの参加を拒否した。 RCEPが発効すれば、加盟国間の商品やサービスに対する関税の撤廃や引き下げが行われる。投資と競争に関する規定が設けられ、知的財産の保護も確実なものになる。 政治・経済の専門家は、インドがRCEPに参加すれば恩恵を被ると主張してきた。安価で高品質の製品が手に入るという国内消費者にとってのメリットに加え、インド企業がグローバルなバリューチェーン(価値連鎖)の一部となり、外国からの投資を引き付けられるという利点もある。 インドが過去に参加した自由貿易協定(FTA)は」のは、、タイやカンボジア、ベトナム、マレーシア、フィリピンへの輸出の増加につながった。日本などから製品を安く輸入できるようになり、輸入量は増加し、生産能力が向上した。 さらに専門家らは、RCEPに参加すれば雇用が創出され、経済成長を維持できると主張した。政治的な利点もある。RCEPに加盟すれば、将来的に合意形成に参加するチャンスを得られるはずだった。撤退によってインドは孤立し、貿易に関する将来の制度構築への関与も限られる。 メリットがあるはずなのにインドが加盟を拒否するという事態は、全く予想外というわけではなかった。インドは長年にわたり輸入に代わる産業振興戦略の一環として、極めて保護主義的な経済政策を取ってきたからだ』、「インド」が「RCEPへの参加を拒否したのは、残念なことだ。
・『あくまで自立を目指す  インドは1991年の金融危機の余波を受けて、初めて一連の関税障壁を解体する方向に動いた。以来30年間にインドの世界経済への統合は劇的に進んだが、貿易交渉におけるインド政府の姿勢はほとんど保護主義のままだった。 現在のナレンドラ・モディ首相の下では、この保護主義的な傾向がさらに際立っている。モディは就任から間もないうちに、「メーク・イン・インディア(インドでものづくりを)」戦略を推進し始めた。新型コロナウイルスの感染拡大がインド経済を直撃しつつあるときには、国内産業を後押しする経済自立策「自立したインド」を発表した。 FTAに参加したさまざまな経験から、インドは自立を優先するイデオロギー的立場を強化した。過去に署名した貿易協定から恩恵を受けているとはいえ、そうした合意の結果、一部RCEP加盟国相手の貿易収支が赤字になっていると加盟反対派は指摘する。 さらに反対派は、日本、韓国、ASEANとのFTAを国内製造業の衰退に結び付けている。スブラマニヤム・ジャイシャンカル外相は最近、貿易協定が工業の空洞化につながっていると主張した。 過去の貿易協定では、政策と規制改革に加え、国内の製造業を支えるインフラを構築する努力が伴わず、協定から得られるはずの利益が限られたことは否めない。反対派の大きな不満の1つは、過去のFTAにはセーフガードの項目がなかったため、中国からインドへの輸出の流れに歯止めが利かなくなったことだ。 与党のインド人民党(BJP)と主要野党のインド国民会議派も、イデオロギー面では大きな違いがあるのに、自由市場経済への不信感は共通している。そのため、BJPが貿易協定への参加を拒んでも、最大のライバルである国民会議派から攻撃されることはほとんどない。実際、国民会議派が政権を主導した2004〜14年に締結された過去のFTAには国内に否定的な見方が多く、それが同党のRCEPに対する激しい反対につながったのかもしれない。 自由貿易そのものへの抵抗感とは別に、インドが譲歩を拒む大きな理由は少なくとも2つ考えられる。 第1に、関税障壁をいきなり撤廃すればグローバルな競争力のない多くのインド企業が打撃を被る。鉄鋼やプラスチック、銅、アルミ、紙、自動車、化学製品などインドの産業を支える業界は、RCEPからの離脱を歓迎した。 第2に、インドの政治家は大票田である農家をないがしろにできない。多くの農家は、市場を性急に開放して外国の農産物を受け入れた場合、大きな不利益を受けかねないと考えている。大規模な改革が行われれば、家族経営の小規模農家は廃業に追い込まれる恐れもある。 特に酪農業界からは反発が強い。工業化を進めて高い競争力を持つオーストラリアやニュージーランドの酪農業界との競争に不安があるためだ。 一方、インドのサービス業界はRCEPへの参加を支持するのではないかと思われがちだが、こちらも複雑だ。WTO(世界貿易機関)の2018年のデータによれば、インドはサービス輸出国としては世界8位、サービス貿易国としては9位につけており、今や立派なIT・ビジネスサービス大国だ。実際、インドのIT企業はRCEP加盟国の市場参入拡大を求めてロビー活動を行ってきた。) だがインドがIT関連の輸出を進めれば、同時に技術者も国境を越えていく。そのためインドのIT企業は特に中国に対し、商用ビザの規則や現地国での納税義務について譲歩を求めてきた。 こうした問題には国の移民政策に関する論争が絡むため、交渉は一筋縄ではいかないことが多い。RCEPはサービス業の自由化を一部約束したが、加盟国は技術者の「輸出」問題に関しては譲歩しておらず、この点がインドには大きなネックとなっていた。 さらにインドのサービス業界はとりわけ保護貿易志向が強く、市場を開放する段階にはまだない。その一例が電子商取引で、インドの政策の枠組みや規制環境が未整備であることが市場開放の障壁になっている』、「以来30年間にインドの世界経済への統合は劇的に進んだが、貿易交渉におけるインド政府の姿勢はほとんど保護主義のままだった。 現在のナレンドラ・モディ首相の下では、この保護主義的な傾向がさらに際立っている」、もともとインド独立の父のガンジーが、英国からの綿製品の輸入より、糸車での糸つむぎなどで自立することを呼びかけた歴史も影響しているのだろう。
・『アジアから米欧にシフト  RCEP加盟諸国は、サービス輸出国としての躍進が著しい。例えば中国は、インフラや物流、テクノロジーの関連部門で輸出額を大きく伸ばしている。 前出のWTOのデータによると、中国は2018年にサービス輸出国として最も急成長し、世界5位になった。WTOが分析しているように、インドにはRCEP加盟に強く賛成する声は少ないが、声高に反対する業界や部門は多い。 インドがRCEP交渉を離脱した理由は、経済的な利益だけでなく、貿易戦略や地政学的な要因も大きいかもしれない。モディ政権は自由貿易協定への取り組みを見直し、重点をアジアから米欧に切り替えた。この戦略は、RCEP離脱によってインドは多国間貿易協定から孤立するという見方に対抗するものだ。 だが過去の経験が示すように、アメリカとFTAを結ぼうとしても容易なことではない。米政府が貿易協定で一般的に求める基準は、RCEPのレベルをはるかにしのぐ。特に「投資家対国家」の紛争や知的財産権などの分野に関しては要求が厳しい。 RCEPに参加せず独立独歩の路線を取れば、将来的に有利な立場でFTAの交渉に臨めるのではないかと、インド政府はにらんだ。だが、そのシナリオが実現する可能性は低い。中国のWTO加盟が示したように、既存の協定に参加するには、より大きな譲歩を迫られる。さらにインドはRCEPからの撤退により、電子商取引などの貿易分野で新たに持ち上がる問題の解決に向けた規範作りに発言する機会も失った。 インドが経済強国になるためには、政策と規制環境を改め、今までの協定を見直して再交渉する必要がある。新しい協定に参加しないことがその答えではない』、「RCEPに参加せず独立独歩の路線を取れば、将来的に有利な立場でFTAの交渉に臨めるのではないかと、インド政府はにらんだ。だが、そのシナリオが実現する可能性は低い」、その通りだ。「インド政府」は冷徹に国際社会との付き合い方を見直すべきだろう。

次に、4月25日付け東洋経済オンラインが転載したブルームバーグ「政府発表は大きく異なるインド・コロナ危機 火葬が間に合わず葬場外に何時間も死体が放置」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/424842
・『インド各地の火葬場や埋葬地には遺体が山積みにされ、新型コロナウイルス感染による実際の死者数が政府の公式発表よりもはるかに多いのではないかという懸念が広がっている。医療体制を逼迫(ひっぱく)させている感染再拡大の深刻さが甘く見積もられている可能性がある。 インドの幾つかの都市では、病院で新型コロナ関連死と確認され、保護カバーに包まれた遺体が火葬場の外に何時間も放置されているという衝撃的な状況が報告されている。ブルームバーグが少なくとも5都市の火葬場で遺族や作業員、立会人から集めた証言は、コロナ感染による実際の死者数が州政府保健当局の報告よりもはるかに多い可能性を示唆している。 インドの1日当たりの新規感染者数は22日に世界最多を更新していたが、23日にはこれをさらに上回る33万2730人の死亡が新たに報告された。累計感染者数は1600万人を超え、米国に次ぎ世界で2番目に多い。 インドの死者数の集計方法についてはコロナ危機前から不明確な点が指摘されてきた。特に農村部では自宅での死亡が大半で、記録に反映されないことが多い。記載された死因が老衰や心臓発作などであることも多く、適切な医学的証明書のある死者数は全体の20ー30%にすぎないと専門家は推計している』、「特に農村部では自宅での死亡が大半で、記録に反映されないことが多い・・・適切な医学的証明書のある死者数は全体の20ー30%にすぎない」、ありそうな話だ。
・『コンサルティング会社IPEグローバルの最高戦略責任者(CSO)、ヒマンシュ・シッカ氏は、死者数が正確に把握されていないため、「メディアは裏付けに乏しい事例を紹介しており、全体的に制御された状況にあるとの誤解が生じ得る」と指摘。「これは感染第3波の可能性に備えるために必要な今後の準備や対策を損なうことになる」と述べた。 インドで最も人口の多いウッタルプラデシュ州の州都ラクノーでは、今月11日から16日までの新型コロナ感染による死者数が政府の公式統計では145人。一方、複数の立会人や作業員が取材に答える権限がないとして匿名で証言したところによると、市内の主要な火葬場のうち2カ所で報告された火葬件数は430件余りで、同期間中にコロナ対策の手順に従って行われた火葬件数の約3倍だという。これには市内の小規模の火葬場での埋葬や葬儀は含まれていないという。 モディ首相の出身地であるグジャラート州の工業都市スーラト。火葬場を運営する委託会社の責任者によると、コロナ対策で義務付けられた保護カバーに包まれた遺体がこの10日間に1日当たり少なくとも100体持ち込まれたという。市当局は19日、新型コロナ感染による死者数を28人と公表していた。 グジャラート州政府の報道官にコメントを求めたが今のところ返答はない。 感染者急増で全国の病院で病床や医療用酸素、医薬品が不足している。ニューデリーの主要病院の一つであるサー・ガンガ・ラム病院は23日、医療用酸素が2時間分を切り、コロナ重症患者60人以上がリスクにさらされていると訴えた。 連邦政府の保健・家族福祉省に電子メールでコメントを求めたが返答はなかった』、「州都ラクノーでは、今月11日から16日までの新型コロナ感染による死者数が政府の公式統計では145人」、「市内の主要な火葬場のうち2カ所で報告された火葬件数は430件余りで、同期間中にコロナ対策の手順に従って行われた火葬件数の約3倍」、「公式統計」の漏れは膨大なようだ。「スーラト・・・保護カバーに包まれた遺体がこの10日間に1日当たり少なくとも100体持ち込まれた・・・市当局は、新型コロナ感染による死者数を28人と公表」、死者数の実態は「公式統計」の数倍はありそうで、極めて深刻なようだ。

第三に、5月12日付けNewsweek日本版が掲載したジャーナリストのカピル・コミレディ氏による「インドのコロナ地獄を招いた張本人モディの、償われることのない重罪」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/05/post-96262_1.php
・『<感染爆発で死者急増のインド、その「戦犯」は過信から備えを怠ってきたモディ首相。ただし彼は国民の悲劇を自らの利益に変えかねない> わが国は「新型コロナウイルスを効果的に抑え込み、人類を巨大な災禍から」救った──。インドのナレンドラ・モディ首相がオンライン会合のダボス・アジェンダ(世界経済フォーラム)で、そう高らかに宣言したのは今年1月28日だ。 それから3カ月。気が付けばインドは世界最悪の感染地となり、医療崩壊が現実となった。首都ニューデリーでは医療用酸素が不足し死亡する患者が続出。最先端の設備を備えた病院でさえ政府に「もっと酸素ボンベを」と訴えている。火葬場はフル稼働で、燃やす場所も薪も足りない。 遺体を自宅の庭に埋める人もいる。路上に薪を積んで遺体を焼く人もいる。首都圏以外の状況はもっとひどい。南インドにいる知り合いの記者は筆者に、「ハエが落ちるように」人が死んでいると電話で伝えてきた。誰の身近にも感染者がいる。5月8日時点の累計死者数は公式発表で23万8000人超とされるが、実数はその20倍とも推定される。酸素や、最低限の医薬品を売る闇市場も出現した。IMFは2015年に、いずれインドは中国以上の経済大国になると予言したが、今のインドは諸外国に緊急援助を請うばかりだ。 未知の病原体だけが、この惨状を招いたのではない。真の原因は、なによりも自画自賛を愛する指導者の行動にある。ダボス・アジェンダでの首相の無邪気な演説を受けて、インド政府は国民に、もう最悪の時期は脱したという取り返しのつかない思い込みを抱かせた。政権与党でヒンドゥー至上主義のインド人民党(BJP)は2月に、「新型コロナウイルスとの闘いに勝利した輝かしい国として、インドを世界に知らしめた首相のリーダーシップ」を称賛する決議を党内で採択した。美辞麗句を並べた決議文には、インドが「モディ首相の有能かつきめ細かく、献身的で先見性のあるリーダーシップ」の下で新型コロナウイルスを打ち負かしたとある』、「モディ首相が」「世界経済フォーラム」でコロナへの勝利「宣言」して、わずか「3カ月」で「インドは世界最悪の感染地となり、医療崩壊が現実となった」、これでは笑うに笑えない喜劇だ。「インド人民党(BJP)は2月に、「新型コロナウイルスとの闘いに勝利した輝かしい国として、インドを世界に知らしめた首相のリーダーシップ」を称賛する決議を党内で採択した。美辞麗句を並べた決議文には、インドが「モディ首相の有能かつきめ細かく、献身的で先見性のあるリーダーシップ」の下で新型コロナウイルスを打ち負かしたとある」、まるで北朝鮮のようで、到底、民主主義国での出来事とは思えない。
・『マスクなしで大規模な選挙集会  3月になると、モディ政権の保健相はインドにおける感染が「終息に向かう局面」にあると発表した。同月、グジャラート州ではモディの名を冠したスタジアムでインド対イングランドのクリケットの試合が開かれ、マスクなしの観客が何千人も集まって大声援を送った。地方選挙の行われた4つの州では、何千人もの与党支持者がバスで集会に動員された。本来なら来年のはずだったヒンドゥー教の祭典「クンブメーラ」も、今年は縁起がいいと言う聖職者らの助言で1年前倒しになり、4月12日には聖地ハリドワールのガンジス川で300万人以上が沐浴した。 その5日後、1日の新規感染者が23万人を超えたという発表があった。それでもモディは西ベンガル州での選挙集会で、「これほど大勢の人が集まるのは見たことがない」と大見えを切った。もう感染症には勝ったと、モディは確信していた。選挙応援の集会は、いわば勝利の凱旋行進だった。 昨年、国内で第1波の感染爆発が起きる1カ月前にアメリカのドナルド・トランプ大統領(当時)を熱烈歓迎したように、モディは今度もイギリスのボリス・ジョンソン首相を招き首脳会談を開く予定でいた。だがインドでの驚異的な感染拡大を受けてジョンソンは訪問中止を決断。さすがのモディも、これで目が覚めたらしい。だが、今さら現実を受け入れても手遅れだ。 モディは1月、インドには「新型コロナ対策の専用インフラ」があると自慢していたが、そんなものが本当にあれば、こんなに多くの人が死ぬわけがない。モディは14年にも、スマートシティーの実現と雇用の拡大を約束して選挙に勝ったが、またしても美辞麗句で国を欺いた。バラ色の公約の下にあったのは、荒廃と死のみだ。 もしも首相が責任を放棄せず、建設的な助言をする人々を悪者扱いしなかったら、インドはこんな人道危機に陥らずに済んだかもしれない。国民を地獄絵図から守るために必要な、時間も方法も専門家の助けもあったはずだ。 既に昨年11月の時点で、インド議会の委員会が感染第2波を警告し、政府に医療用酸素ボンベの調達増を求めていた。だがモディは対策を強化せず、自身のカルト的な人気を高めることと国富を略奪することのために新型コロナウイルスを利用した。 昨年3月、わずか4時間の猶予しか与えずに全土封鎖を発表して国中を混乱に陥れた数日後、モディは信託基金「PMケアズ」を創設し、コロナ救済のための寄付金を募集した。それで最貧層に救いの手を差し伸べ、マスクなどの購入や、各地での酸素ボンベ製造プラント増設を目指すことになっていた。 募集から2カ月で10億ドルを超える金額が集まったが、それをモディが何に使ったかは誰も知らない。というか、誰も知り得ない。寄付者に対しては税金上の便宜を図り、政府機関を通じて大々的な宣伝もしたというのに、基金が民間の公益信託として設立されたため、当局による監査の対象にならないからだ』、「インド議会の委員会が感染第2波を警告し、政府に医療用酸素ボンベの調達増を求めていた。だがモディは対策を強化せず、自身のカルト的な人気を高めることと国富を略奪することのために新型コロナウイルスを利用した」、「募集から2カ月で10億ドルを超える金額が集まったが、それをモディが何に使ったかは・・・誰も知り得ない・・・基金が民間の公益信託として設立されたため、当局による監査の対象にならないからだ」、驚くほどデタラメなやり方だ。
・『インド民主主義の破壊者  遅まきながら、モディは集まった資金の一部を酸素プラントの増設に回すという。だが焼け石に水だ。もはや彼の業績は歴代の首相と比較するに値しない。イギリスの植民地だった時代に、インド各地で飢饉が発生しても狩猟に興じていた悪徳英国商人たちと同類だ。 今のインドの惨状は、建国の父たちが設けてきた制度的な安全装置の数々を、モディが破壊してきたことの結果でもある。モディ個人に権力を集中させ、民主社会にそぐわないカルト的な人格像を確立させたことにより、コロナ禍への迅速な対応を首相に促すべき人や制度のほぼ全てが無力化されている。 例えばインドの最高裁判所は政治に物申す点で世界有数の実績を誇り、国民の期待を裏切る政府を厳しく糾弾してきた。なのにコロナ対策の大失態については一言も発していない。報道機関はモディをかばい、反モディ派を裏切り者呼ばわりする。国営テレビ局に至っては、モディをインドの救世主とたたえている。 外交官も、モディに批判的な外国メディアにせっせと抗議文を書き送って、モディ政権によるコロナ対策は「あまねく高く評価され」ていると反論している。さらに政府はツイッターとフェイスブックに対し、批判的な投稿を削除するよう命じている。この期に及んでも、首相をカルト的存在として守ることが政府の最優先事項なのだ。 民主的な良識など、モディには無縁だ。国際社会から救援物資が空輸されている状況でも、与党BJPは各地で大規模な選挙集会を開いている。だが国民が文句を言う機会はない。首相として過去7年間、モディは一度も質疑応答のある記者会見を開いていない。 国民へのワクチン接種について言えば、モディはあらかじめ十分な数のワクチンを発注していなかった。しかも接種の責任は州政府に委ねた。結果、ただでさえ財政の苦しい州政府は市場価格でのワクチン確保に悲鳴を上げている。 インドはワクチンの製造能力で世界一だが、国民の命を救うのに必要な量を確保できていない。しかも多くの州は迅速な接種に必要な資金もインフラも欠いている』、「インドの惨状は、建国の父たちが設けてきた制度的な安全装置の数々を、モディが破壊してきたことの結果でもある。モディ個人に権力を集中させ、民主社会にそぐわないカルト的な人格像を確立させたことにより、コロナ禍への迅速な対応を首相に促すべき人や制度のほぼ全てが無力化されている」、曲がりなりにも「民主主義」が機能してきた「インド」の「制度的な安全装置の数々を」「破壊してきた」とは、「モディ」氏の罪は深い。「首相として過去7年間、モディは一度も質疑応答のある記者会見を開いていない」、マスコミも機能してないようだ。
・『「大国」として認められるという妄想  4月後半だけでも、コロナ関連死はインド独立以来の戦死者数の累計を上回る。この国が生き延びるには、最前線の医療従事者に加えて一般市民が立ち上がるしかない。政府が国民を見捨てた以上、ほかに手はない。 国民の利益も幸せも、歴代の政権によって無視されてきた。政治家たちは世界の「大国」として国際社会で認められるという妄想を追うのに忙しかったからだ。 今世紀に入ってから、インドこそ次なる民主主義の超大国だと称揚する本が続々と刊行されてきたのは事実。だが実際には、プリンストン大学の政治学者アトゥル・コーリ教授が言う「二重構造民主主義」に退化していた。つまり「一般国民は選挙の時にのみ必要とされ、投票が済んだら家に帰って政治を忘れ、あとは全てを『合理的』なエリートに任せて企業優先の政治を許す」ような社会だ。 そんな支配層の身勝手な幻想を、新型コロナウイルスは冷酷に打ち砕いた。1%の最富裕層が国富の半分近くをため込む一方、政府が国民の医療に充てる予算はGDPのわずか0.34%。そんな国に民主的超大国の資格はない。 では、これでモディも終わりか? 社会全体に広がる絶望と怒りで、ついにモディ政権は倒れるのか。 いや、モディはしぶとい。グジャラート州首相になったばかりの02年、同州ではインド史上最悪の宗教間対立による暴力事件が続発し、モディの在任中に少なくとも1000人以上のイスラム教徒がヒンドゥー教徒によって虐殺された。モディへの風当たりは強まり、ナチス・ドイツのヒトラーに例えられたこともある。当時のアメリカ政府は彼の入国を禁じた。それでも、彼は国内の経済界を味方に付け、自分への悪評を消し去り、気が付けば近代化の旗手と目されていた。 16年の高額紙幣廃止は経済に大きな打撃を与え、多くのインド人の希望を完全に打ち砕いた。それでも有権者の心を巧みに支配するモディの力は弱まらなかった。まるで催眠術だ。高額紙幣廃止の悲劇から数カ月後、モディ率いるBJPはインド最大州の議会選で圧勝している。 今、目の前に広がる惨状は次元が違う。その責任を逃れることはできないが、モディが責任を取り、潔く身を引く気配は全くない。 次の総選挙は3年先だ。インド人は大昔の恨みを晴らすためならいくらでも血を流すが、政治家の悪行に関しては忘れっぽい』、「インド人は大昔の恨みを晴らすためならいくらでも血を流すが、政治家の悪行に関しては忘れっぽい」、困った気質だ。
・『名実共に独裁者に?  モディは国民の忘れやすさを当てにしている。過去の行状から見て、いずれ権力を失う可能性があるからといって意欲を失ったり、弱気になったりする男ではない。そんな状況は彼を元気づけ、より危険な存在にするだけだ。 モディは、いわゆる「ガンジー王朝」の呪縛から解放された最初のヒンドゥー教徒の首相で、植民地時代を含めても最強のヒンドゥー教支配者だ。そして「新インド」というスローガンの父でもある。モディが退場すれば、この空虚な「新インド」も粉々に砕け散るに違いない。 思えば、半世紀近く前のインディラ・ガンジーも政権を追われることを恐れて非常事態を宣言し、憲法を停止し、独裁者に変身したのだった。今まで選挙で負けたことのないモディが、もう選挙では勝てないと気付いたとき、先人ガンジーの例に倣おうとする可能性は否定できない。 死人が街にあふれる現状は彼の無能さ・無謀さをさらけ出しているが、それは彼に民主主義の停止を正当化させる口実を与えるかもしれない。インドの状況は今でも事実上の非常事態に等しいが、この男なら平気で、これを常態化しかねない。 新型コロナウイルスの危機はインド独立以来最大の悲劇だが、それをも自分の利益に変えようとする男。それがナレンドラ・モディだ』、「インドの状況は今でも事実上の非常事態に等しいが、この男なら平気で、これを常態化しかねない。 新型コロナウイルスの危機はインド独立以来最大の悲劇だが、それをも自分の利益に変えようとする男。それがナレンドラ・モディだ」、神経の太さは並大抵ではなさそうだ。
タグ:インド (その1)(RCEP加盟を拒否したインドの過ち──モディ政権が陥った保護主義の罠、政府発表は大きく異なるインド・コロナ危機 火葬が間に合わず葬場外に何時間も死体が放置、インドのコロナ地獄を招いた張本人モディの 償われることのない重罪) Newsweek日本版 スルパ・グプタ スミト・ガングリー 「RCEP加盟を拒否したインドの過ち──モディ政権が陥った保護主義の罠」 「インド」が「RCEPへの参加を拒否したのは、残念なことだ。 「以来30年間にインドの世界経済への統合は劇的に進んだが、貿易交渉におけるインド政府の姿勢はほとんど保護主義のままだった。 現在のナレンドラ・モディ首相の下では、この保護主義的な傾向がさらに際立っている」、もともとインド独立の父のガンジーが、英国からの綿製品の輸入より、糸車での糸つむぎなどで自立することを呼びかけた歴史も影響しているのだろう。 「RCEPに参加せず独立独歩の路線を取れば、将来的に有利な立場でFTAの交渉に臨めるのではないかと、インド政府はにらんだ。だが、そのシナリオが実現する可能性は低い」、その通りだ。「インド政府」は冷徹に国際社会との付き合い方を見直すべきだろう。 東洋経済オンライン ブルームバーグ 「政府発表は大きく異なるインド・コロナ危機 火葬が間に合わず葬場外に何時間も死体が放置」 「特に農村部では自宅での死亡が大半で、記録に反映されないことが多い・・・適切な医学的証明書のある死者数は全体の20ー30%にすぎない」、ありそうな話だ。 「州都ラクノーでは、今月11日から16日までの新型コロナ感染による死者数が政府の公式統計では145人」、「市内の主要な火葬場のうち2カ所で報告された火葬件数は430件余りで、同期間中にコロナ対策の手順に従って行われた火葬件数の約3倍」、「公式統計」の漏れは膨大なようだ。「スーラト・・・保護カバーに包まれた遺体がこの10日間に1日当たり少なくとも100体持ち込まれた・・・市当局は、新型コロナ感染による死者数を28人と公表」、死者数の実態は「公式統計」の数倍はありそうで、極めて深刻なようだ。 カピル・コミレディ 「インドのコロナ地獄を招いた張本人モディの、償われることのない重罪」 「モディ首相が」「世界経済フォーラム」でコロナへの勝利「宣言」して、わずか「3カ月」で「インドは世界最悪の感染地となり、医療崩壊が現実となった」、これでは笑うに笑えない喜劇だ。「インド人民党(BJP)は2月に、「新型コロナウイルスとの闘いに勝利した輝かしい国として、インドを世界に知らしめた首相のリーダーシップ」を称賛する決議を党内で採択した。美辞麗句を並べた決議文には、インドが「モディ首相の有能かつきめ細かく、献身的で先見性のあるリーダーシップ」の下で新型コロナウイルスを打ち負かしたとある」、まるで北朝鮮 「インド議会の委員会が感染第2波を警告し、政府に医療用酸素ボンベの調達増を求めていた。だがモディは対策を強化せず、自身のカルト的な人気を高めることと国富を略奪することのために新型コロナウイルスを利用した」、「募集から2カ月で10億ドルを超える金額が集まったが、それをモディが何に使ったかは・・・誰も知り得ない・・・基金が民間の公益信託として設立されたため、当局による監査の対象にならないからだ」、驚くほどデタラメなやり方だ。 「インドの惨状は、建国の父たちが設けてきた制度的な安全装置の数々を、モディが破壊してきたことの結果でもある。モディ個人に権力を集中させ、民主社会にそぐわないカルト的な人格像を確立させたことにより、コロナ禍への迅速な対応を首相に促すべき人や制度のほぼ全てが無力化されている」、曲がりなりにも「民主主義」が機能してきた「インド」の「制度的な安全装置の数々を」「破壊してきた」とは、「モディ」氏の罪は深い。「首相として過去7年間、モディは一度も質疑応答のある記者会見を開いていない」、マスコミも機能してないようだ。 「インド人は大昔の恨みを晴らすためならいくらでも血を流すが、政治家の悪行に関しては忘れっぽい」、困った気質だ。 「インドの状況は今でも事実上の非常事態に等しいが、この男なら平気で、これを常態化しかねない。 新型コロナウイルスの危機はインド独立以来最大の悲劇だが、それをも自分の利益に変えようとする男。それがナレンドラ・モディだ」、神経の太さは並大抵ではなさそうだ。
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韓国(文在寅大統領)(その9)(「韓国・文大統領の天敵」の前検事総長が 最大野党に電撃入党した理由) [世界情勢]

韓国(文在寅大統領)については、3月12日に取上げた。今日は、(その9)(「韓国・文大統領の天敵」の前検事総長が 最大野党に電撃入党した理由)である。
https://diamond.jp/articles/-/278430
8月3日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元・在韓国特命全権大使の武藤正敏氏による「「韓国・文大統領の天敵」の前検事総長が、最大野党に電撃入党した理由」を紹介しよう。
・『尹錫悦前検事総長が「国民の力」に入党した背景  尹錫悦(ユン・ソギョル)前検事総長が7月30日、電撃的に最大野党「国民の力」に入党した。尹氏は、6月29日に出馬表明をしてから支持率がじり貧であった。それには、尹氏およびその家族を巡るスキャンダルと、政策ビジョンの物足りなさ、政治経験の不足からくる失言などが絡み合っている。 尹氏は、文在寅大統領と対立することによって国民の同情と期待、そして支持を集めてきた。このため与党「共に民主党」は尹氏を目の敵として攻撃を仕掛けてきている。そして孤立無援の尹氏がこれに耐えうるのか難しい状況となっており、強い政治的後ろ盾が必要な状況になった。 尹氏が8月を待たずに、7月30日電撃的に国民の力に入党したのにはこのような背景があるのであろう。尹氏は「入党に関して不確実なままにすることは、私が政権交代の政治活動をしていく上で、国民に多くの混乱と累を及ぼすのではないかと考えた」と述べ、7月入党に至る考えを述べた。当初は8月中旬以降に入党することを考えていたという。 「国民の力」は9月15日から大統領選の党公認候補を決める予備選を行い、一般国民を対象に実施した世論調査で候補を8人に絞り込む。 尹氏の入党に関し、「国民の力」の李俊錫(イ・ジュンソク)代表は次のように述べている。 私は絶えず話をしてきたように、尹前総長を通じて大統領選挙で勝利するという意思に変わりはないと考えてきた」 「入党が8月でなく、7月だったことを肯定的に評価する」「尹前総長が入党したのだから、尹前総長を支持する多くの方々が本日からオンラインで入党することを期待している」 これらの発言は、尹氏が「国民の力」と一体となって逆風を跳ね返し、再度、両者の支持率向上につなげていこうとする尹氏の意思を強く買ったものと考えてよいのではないか。尹氏の「国民の力」入党によって早くも来年3月の大統領選挙に向けた運動は熱を帯びてきている』、「オンラインで入党」とはさすがに進んでいる。
・『次期大統領選は三つ巴の争いに  7月19日に発表された、韓国の世論調査会社・リアルメーターの「次の大統領にふさわしい候補」調査で、李在明(イ・ジェミョン)知事23.8%、尹錫悦前検事総長22%、李洛淵(イ・ナギョン)元首相20.1%となり、尹総長と李知事の争いから、李元首相を含めた三つ巴の争いに変化した。 特に顕著だったのは李元首相への支持の急増である。李元首相はソウル・釜山の市長選挙において、「共に民主党」の選挙対策本部長を務めたため、「両市長選惨敗の責任を負って大統領選挙出馬を断念すべき」との声が党内や進歩系から湧き上がり、支持率が低迷していた。 しかし、ここに来て与党支持の進歩派だけでなく、中道層で支持が大きく伸びている。進歩系では、これまで文大統領の不人気度が高まるにつれ、与党内で非主流派の李知事に支持が集まっていた。 ところが、李知事は「親日派と米占領軍が大韓民国を建設した」と国体を否定するかのような発言を行うなど、あまりにも過激な言動が目立っている。このため進歩系の中からも李知事以外を支持する動きが広がっているのであろう。 また、中道層も尹氏に政治経験がなく李知事に勝てない可能性があるとの疑念が湧き、首相、党代表を務め政治経験が豊富で穏健派のイメージが強い李元首相に支持が流れたという側面もあろう』、「李知事は「親日派と米占領軍が大韓民国を建設した」と国体を否定するかのような発言を行うなど、あまりにも過激な言動が目立っている」、事実であっても、「国体を否定」は政治家としては命取りになるようだ。
・『尹氏の支持率の低迷は致命傷になりかねない  これまで尹氏の強みは高い支持率にあった。尹氏の支持率は6月29日に出馬表明した時点では32.3%で、「共に民主党」の李知事の22.8%を10ポイント近い差でリードしていた。また、李元首相は10%強の支持でしかなかった。 非与党系で常に先頭を走ってきたのが尹氏である。しかし、尹氏は6月末に記者会見を開いて政治活動を始めると宣言して以降支持率の低迷が続いている。それは先述の通り、尹氏およびその家族を巡るスキャンダルと尹氏自身の政治経験の不足が国民の失望を招いた結果であろう。支持率低迷が続けば、さらなる「尹氏離れ」が進みかねない。 尹氏に対しては、文政権が新設した捜査機関の高位公職者犯罪捜査処(公捜処)が、職権乱用容疑で捜査に着手した。 尹氏の義母が7月2日、ソウル近郊の議政府(ウィジョンブ)で資格外の療養病院の運営を行い、多額の給付金を不正に受け取ったのは医療法などに違反するとして3年の実刑判決を受けた。尹氏の妻にも株価操作の疑惑や、ホステス出身だったとの疑惑などが浮上した。こうした尹氏のイメージを悪くする攻撃が進歩系から続いている。 尹氏の政治経験の欠如も明らかになってきている。 出馬表明の記者会見で尹氏は、文政権を激しく攻撃したものの、自らの政策ビジョンは明確ではなく、記者会見での態度も落ち着かない様子だったという。 また、会見後に政治活動を始めてからは失言が目立っている。経済紙のインタビューでは労働時間規制を週52時間に制限した文政権を批判しながら「週に120時間でもがむしゃらに働いて、後でまとめて休めるようにすべきだ」と発言した。労働時間規制に対する経済界の不満を意識したものであろうが、長時間労働による過労死が社会問題となっているだけに、現実を無視した暴言だと激しい批判を浴びた。これも政治感覚が乏しいための失言だろう。 尹氏の広報戦略が稚拙だとも批判されている。尹氏の報道官は6月19日、健康上の理由で就任6日目に突然辞任した。報道官の辞任は尹氏の国民の力入党を巡る混乱が原因だともいわれている』、「尹氏の報道官」が「就任6日目に突然辞任」、というのは「尹氏」の政治家としての資質に疑問符をつけるものだ。
・『尹氏が不安視される中で第4の候補者が浮上  文政権にとって、尹氏は検事総長として対立した天敵である。尹氏が大統領となれば、文政権の幹部の退任後は安全とはいえないだろう。何としても尹氏が大統領に当選するのは避けたいところである。 7月28日、MBCと聯合ニュースTVの共同主催によるテレビ討論会では、尹氏に対する与党大統領候補のけん制が集中した。 李知事は尹氏に対し、「正当性がない」と主張した。 李元首相も尹氏の「経験不足」を指摘した。「検事は過去に対し有罪・無罪を判断する仕事だが、国政は未来を準備し、対立を調整するのが本質であり、そういうことは私の方がよく知っている」と述べた  今回の大統領選挙は野党系にとって難しい戦いである。文政権はこれまでネロナンブル(私がやればロマンス、他人がやれば不倫)というダブルスタンダードを徹底的に実践してきた政権である。 進歩系の人々は文大統領に反する候補者およびその親族のスキャンダルの告発に余念がなく、文政権はそれを積極的に取り上げてきた。次期大統領選挙で公平な選挙が行われるとは考えない方がいいだろう。 既に、尹氏については義母や妻ばかりでなく尹氏自身の職権乱用での捜査も行われている。こうした中、尹氏で本当に大丈夫かとの声は保守系の人々の間で絶えない。 それを受け浮上しているのが崔在亨(チェ・ジェヒョン)前監査院長である。崔院長は2018年に廃炉が決まった月城原発の監査で廃止決定プロセスが不当だと指摘し、脱原発を指向する文政権と対立した人物。尹氏に先立つ7月15日に国民の力に入党した。上記調査では支持が6%と急増しており、代替候補として注目されるようになった』、「崔在亨」氏も骨がありそうだ。
・『国民の力への入党で尹氏は弱点を埋められるか 尹氏にとって最大の課題は、国民の声に寄り添った選挙活動を行うことである。これまで尹氏には強靭(きょうじん)な政策集団や選挙マシーンはなく、素人のような政治活動もしてきた。しかし、今後は「国民の力」をバックとした選挙活動ができるようになるだろう。 尹氏は「国民の力」入党の翌日、同党の元非常対策委員長である金鐘仁(キム・ジョンイン)氏と面談した。尹氏はキングメーカーといわれる金元委員長の助言を求めたものと思われる。尹氏の報道官は「(金元委員長が)政権交代のために良いアドバイスをしてくださったと聞いている」と述べた。 特に重要なのは「国民の力」の李俊錫代表との連携である。韓国の国民の3割は進歩系、3割は保守系、4割は中道だといわれる。大統領選挙では誰が中道の4割を獲得することで決まる。前回の選挙で文在寅氏が勝利したのも、朴槿恵氏弾劾による保守の没落という背景で行われた選挙だったからである。 今回は中道の4割に加え、既成の政治に反旗を翻した20代を中心とする若者の支持を誰が獲得するかである。李代表はそこで重要な役割を果たすことになるだろう。) 李知事は尹氏に対し、「正当性がない」と主張した。 李元首相も尹氏の「経験不足」を指摘した。「検事は過去に対し有罪・無罪を判断する仕事だが、国政は未来を準備し、対立を調整するのが本質であり、そういうことは私の方がよく知っている」と述べた 今回の大統領選挙は野党系にとって難しい戦いである。文政権はこれまでネロナンブル(私がやればロマンス、他人がやれば不倫)というダブルスタンダードを徹底的に実践してきた政権である。 進歩系の人々は文大統領に反する候補者およびその親族のスキャンダルの告発に余念がなく、文政権はそれを積極的に取り上げてきた。次期大統領選挙で公平な選挙が行われるとは考えない方がいいだろう。 既に、尹氏については義母や妻ばかりでなく尹氏自身の職権乱用での捜査も行われている。こうした中、尹氏で本当に大丈夫かとの声は保守系の人々の間で絶えない。 それを受け浮上しているのが崔在亨(チェ・ジェヒョン)前監査院長である。崔院長は2018年に廃炉が決まった月城原発の監査で廃止決定プロセスが不当だと指摘し、脱原発を指向する文政権と対立した人物。尹氏に先立つ7月15日に国民の力に入党した。上記調査では支持が6%と急増しており、代替候補として注目されるようになった』、「文政権はこれまでネロナンブルというダブルスタンダードを徹底的に実践してきた政権である」、そんなのを許す「韓国」の政治風土は理解し難い。
・『国民の力への入党で尹氏は弱点を埋められるか  尹氏にとって最大の課題は、国民の声に寄り添った選挙活動を行うことである。これまで尹氏には強靭(きょうじん)な政策集団や選挙マシーンはなく、素人のような政治活動もしてきた。しかし、今後は「国民の力」をバックとした選挙活動ができるようになるだろう。 尹氏は「国民の力」入党の翌日、同党の元非常対策委員長である金鐘仁(キム・ジョンイン)氏と面談した。尹氏はキングメーカーといわれる金元委員長の助言を求めたものと思われる。尹氏の報道官は「(金元委員長が)政権交代のために良いアドバイスをしてくださったと聞いている」と述べた。 特に重要なのは「国民の力」の李俊錫代表との連携である。韓国の国民の3割は進歩系、3割は保守系、4割は中道だといわれる。大統領選挙では誰が中道の4割を獲得することで決まる。前回の選挙で文在寅氏が勝利したのも、朴槿恵氏弾劾による保守の没落という背景で行われた選挙だったからである。 今回は中道の4割に加え、既成の政治に反旗を翻した20代を中心とする若者の支持を誰が獲得するかである。李代表はそこで重要な役割を果たすことになるだろう』、単独では頼りなかった「尹氏」が「金元委員長の助言」や、「「国民の力」の李俊錫代表との連携」で力をつけつつあるようだ。今後の動きを注目したい。
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情報セキュリティー・サイバー犯罪(その7)(米司法省特殊部隊 ハッカーに支払われた身代金を仮想ウォレットから奪還、かっぱ寿司「転職者から競合情報入手」のマズい点 楽天モバイルでもソフトバンク出身者が逮捕、大抵の人が知らない「サイバー攻撃」驚愕の新事情 重要インフラが狙われる?積極防衛が必要な理由) [社会]

情報セキュリティー・サイバー犯罪については、4月10日に取上げた。今日は、(その7)(米司法省特殊部隊 ハッカーに支払われた身代金を仮想ウォレットから奪還、かっぱ寿司「転職者から競合情報入手」のマズい点 楽天モバイルでもソフトバンク出身者が逮捕、大抵の人が知らない「サイバー攻撃」驚愕の新事情 重要インフラが狙われる?積極防衛が必要な理由)である。

先ずは、6月8日付けNewsweek日本版「米司法省特殊部隊、ハッカーに支払われた身代金を仮想ウォレットから奪還」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/06/post-96471.php
・『<システムを人質に取って企業に身代金を要求するランサムウェアの言いなりになれば、社会は大混乱に陥る。ビットコインで支払われた身代金を取り返したのは反撃の第一歩だ> 燃料を送油するパイプラインを運営する米コロニアル・パイプライン(以降、コロニアル)がサイバー攻撃を受け、米国最大のパイプラインが5月7日に一時的に操業停止に追い込まれた事件について、米捜査当局は6月7日、暗号資産ビットコインで支払われた数百万ドル相当の「身代金」の大半を取り戻しと発表した。 米司法副長官リサ・モナコは6月7日の記者会見で、「米司法省は、5月にランサムウェア攻撃を受けてコロニアルが(ハッカー集団)ダークサイドに支払った身代金の大半を押収した」と発表した。 モナコはまた、「ランサムウェアによる攻撃は断じて許容されてはならない」と述べた。ランサムウェアは、ウイルスを送り込んでシステムを乗っ取り、身代金を要求する攻撃手法。「攻撃対象が重要な社会基盤である場合はとくに、いかなる手段をもってしても対処する」 身代金を奪還したのは、米司法省が最近設立したばかりの「ランサムウェア&デジタル恐喝タスクフォース」だ。タスクフォースは、ダークサイドが身代金を回収するために使用したビットコイン・ウォレットを仮想空間で探し当てたという。 回収したのは63.7ビットコインで、現在の相場では約230万ドルに相当する。米司法省によれば、コロニアルがダークサイドに身代金を支払ったのは約75ビットコイン(高値だった当時の相場では約440万ドル)だったという。 コロニアルの最高経営責任者(CEO)ジョセフ・ブラウントは5月19日に米ウォール・ストリート・ジャーナル紙の取材に応じ、身代金を支払った理由として、そうしなければパイプラインがいつ復旧できるかわからなかった、と答えた。 「(身代金支払いが)大きな議論を呼ぶ決定であることは承知している」とブラウントは続けた。「安易に決断したわけではない」』、「米司法省は、・・・ダークサイドに支払った身代金の大半を押収した」、とは手際良さに驚かされた。日本ではどうなっていたことやら・・・。
・『「形勢は逆転した」 ランサムウェアによる攻撃を受けたコロニアルは5月7日、5500マイル(約8800キロメートル)に及ぶ全米最大級のパイプラインの操業を一時停止した。アメリカ東海岸で消費される燃料の45%を供給するパイプラインが止まったせいで、パニックになった人々が燃料を買い占めたり、ガソリンスタンドで在庫が不足したりする事態となった。1ガロン当たりの全米平均ガソリン価格は2014年以来初めて、一時3ドルを上回った。 だが身代金を支払った後、5月13日からはシステム全体を再開して通常操業に戻っている。 米司法副長官のモナコは6月7日の会見で、ダークサイドとその関係者は2020年の大半、「米国にサイバーストーキングを仕掛け、われわれの重要な社会基盤を支える主要組織などを対象に無差別攻撃を行ってきた」と語った。「しかし本日、形勢は逆転した」』、米国にとって、燃料供給「パイプライン」はまさに米国の死命を制するもので、これを守り切った「司法省」の面子は維持されたようだ。

次に、7月15日付け東洋経済オンラインが掲載した未来創造弁護士法人 弁護士の岩﨑 崇氏による「かっぱ寿司「転職者から競合情報入手」のマズい点 楽天モバイルでもソフトバンク出身者が逮捕」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/440907
・『警視庁は6月28日、回転寿司チェーンの「かっぱ寿司」を運営するカッパ・クリエイト本社を家宅捜索しました。カッパ・クリエイトの社長が、競合する寿司チェーン「はま寿司」の営業秘密を不正に入手していたとして、はま寿司から不正競争防止法違反の疑いで刑事告訴されたことによるものです。 カッパ・クリエイトの社長は、はま寿司の親会社であるゼンショーホールディングスの元役員だったのですが、ゼンショーを退職後、カッパ・クリエイトの顧問となった2020年11月から12月中旬にかけ、元同僚より、はま寿司社内で共有されていた日次売り上げデータなどを数回にわたり個人的に送付を受けていた疑いがもたれていて、現在も捜査が続いています』、外食ではコンプライアンス意識は高くなさそうだが、それにしてもやり方がえげつなさ過ぎる。
・『ソフトバンクから楽天に転職した社員が逮捕  競合会社への転職に伴う情報流出事件は、今回に限ったことではありません。携帯電話大手ソフトバンクの技術職だった元社員が、競合である楽天モバイルに転職した際、高速通信規格「5G」技術に関する秘密情報を不正に持ち出して利用したとして、2021年1月に不正競争防止法違反の疑いで逮捕され、2月に起訴されています。 5月6日には、ソフトバンクが元社員と楽天モバイルに対し、10億円の損害賠償、持ち出した電子ファイルなどの使用、開示の差止請求および廃棄請求、基地局の使用差止請求および廃棄請求などを求める訴えを東京地裁に起こしたと発表しました。ソフトバンクは、約1000億円の損害を被っており、今回の請求額10億円はその一部にすぎないと主張しています。 不正競争防止法とは、営業秘密を不正に持ち出したり、利用したりする行為などを禁止し、事業者間の公正な競争を確保するための法律です。法律違反に対しては、民事的には差止請求や損害賠償請求ができます。また、刑事罰も定められており、違反者個人に対しては最高で10年以下の懲役または3000万円以下の罰金が科されますし、違反者が属する法人などに対しても最高で10億円の罰金が科されます。 このように厳しい制裁をもって営業秘密を守っている不正競争防止法ですが、法律が適用されるハードルは高いです。 不正競争防止法上の「営業秘密」といえるためには、①秘密として管理されていること(秘密管理性)、②事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であること(有用性)、③公然と知られていないこと(非公知性)という3つの要件を満たす必要があります。 このうち、②有用性の要件は、公序良俗に違反する情報などを保護対象から除外するために設けられた要件なので、情報流出が問題となるような事案であればほぼ要件を満たします。また、③非公知性の要件は、情報の保有者の管理下以外では一般に入手できなければ要件を満たします。例えば、刊行物に記載があって、保有者以外も知りうる情報であったとしても、容易には入手困難な情報であれば非公知性を満たすとされています。 そのため、最も問題となりうる要件は、①秘密管理性です。経済産業省の営業秘密管理指針を踏まえると、会社が特定の情報を秘密として管理することを意図していて、かつ、その意図を実現するための措置(例えば、情報にアクセスできる従業員を制限する、パスワードをかける、文書に「マル秘」の表示をする、施錠したキャビネットに保管するなど)をとっていて、その情報に触れる従業員が「この情報は会社が秘密に管理しようとしている」ということがわかる、ということが求められています。 ここでいう会社がとるべき措置は、会社の規模や実態などに応じた合理的な手段でよいとされており、柔軟な対応が認められている反面、要件を満たすかどうかが曖昧になりがちで、せっかくの不正競争防止法が活用しづらかった一因にもなっています』、「ソフトバンク」と「楽天」件は、7月7日付けのこのブログでも取上げたが、今日紹介したものはやや「楽天」不利な印象だ。
・『争点はデータが「営業秘密」に該当するか  カッパ・クリエイトの事例では、同社社長がデータを受け取ったこと自体は認めているため、このデータが「営業秘密」に該当するのか否かが争点になります。また、データを渡したとされる元同僚の関与がどの程度あったのかについても捜査の進展が待たれるところです。 ソフトバンクの事例では、同社のプレスリリースによれば、民事訴訟に先立つ証拠保全手続において、ソフトバンク側の電子ファイルが、楽天モバイルのサーバー内に保存され、かつ、ほかの楽天モバイル社員に対して開示されていた事実を確認した、とのことです。 仮にデータ自体が楽天モバイル側に渡っていたとすれば、やはり「営業秘密」に該当するのかが争点となります。なお、楽天モバイル側は、社内調査の結果ソフトバンクの営業秘密を楽天モバイルの業務に利用していた事実は確認されていないと主張して争っています。 不正競争防止法にいう「営業秘密」に該当しなければ、社外に情報を持ち出しても法律上問題がないかといえば、そうとは限りません。従業員や役員が会社から情報を持ち出して利用する行為は、会社との関係で、競業避止義務に違反するおそれがあるからです。 競業避止義務とは、競合する会社に就職したり、競合する会社を自ら設立したりするなど、自分が所属する会社の利益を害する競業行為を行ってはならないという義務をいいます。 会社の情報を持ち出して利用する行為は、会社の利益を害する競業行為に該当しうるものです。従業員については会社との雇用契約に付随する義務として、役員については会社との委任契約および会社法の規定に基づいて、競業避止義務を負うと考えられます。) 会社からすれば、会社の利益を守るため、従業員が競合となるのを防ぎたいと考えるのが通常です。一方、転職する従業員側からすれば、前職での知識や経験、人脈を生かしやすい競合会社に転職したり、同業で独立起業をしたりしてキャリアアップを図りたいと考えるケースが多いでしょう。 では、会社が従業員の競合会社への転職を防ぐ方法はあるでしょうか。 会社としてはできるだけ広く競業を禁止したいと考えがちです。ですが、すべての従業員に対して一律に、広く競業避止義務を課すような定め方ですと、無効と判断されてしまうおそれがあります。憲法では職業選択の自由が保障されているため、在職中はともかく、退職後についてまで合理的な範囲を超えて競業避止義務を課すことは公序良俗に反すると判断されてしまうからです。 裁判例の傾向としては、前職での地位が高いほど、禁止される範囲(禁止される業種や行為の範囲、義務が存続する期間、競業が禁止される地理的範囲など)が限定的であるほど、代償措置が設けられているほど、退職後の競業避止義務が有効と判断されやすいといえます。ですから、会社としては、個々の従業員の地位や職務内容に応じて、会社の利益を守るために必要最小限度の競業避止義務を定めるように気をつけたいところです』、「裁判例の傾向としては、前職での地位が高いほど、禁止される範囲が限定的であるほど、代償措置が設けられているほど、退職後の競業避止義務が有効と判断されやすい」、なるほど。
・『「有効」「無効」それぞれのケース  競業避止義務が実際に裁判で争われ、有効と判断された例を紹介します。 学習塾に勤務していた講師が、前職の塾から約430メートル離れた場所で独立して学習塾の営業を始めたことについて、前職の学習塾が差し止めと損害賠償の支払いを求めた事件です。 この会社には、退職後2年間は、会社で指導を担当していた教室から半径2キロメートル以内に自塾を開設することを禁ずる、という就業規則の定めがありました。 裁判所は、学習塾業界は現に担当している講師との信頼関係が生徒の集客にとって重要な意味をもつこと、競業が禁止される地理的、時間的範囲が限定的であることなどを理由に、就業規則の競業避止義務条項を有効と判断し、講師に対して990万円あまりの損害賠償の支払いと、退職後2年間は前職の教室から半径2キロメートルの区域内で学習塾の開設や営業をしてはならないことを命じました(大阪地裁2015年3月12日判決)。 反対に、競業避止義務の定めが無効と判断された例も紹介します。医療従事者向けの人材紹介会社の従業員が、別の人材紹介会社に転職して就労したことにつき、前職会社が元従業員に損害賠償の支払いを求めて訴訟を起こした事件です。 元従業員は、退職後3年間、競業会社への転職をしない旨の誓約書を前職会社に提出していました。しかし裁判所は、元従業員がいわゆる平社員にすぎなかったこと、前職の在籍期間が1年だったことに比べると競業が禁止される期間が3年と長いこと、地理的な限定もないこと、会社が代償措置と主張する手当の金額が低すぎることなどを理由に、誓約書の競業避止義務の定めは公序良俗に反して無効と判断しました(大阪地裁2016年7月14日判決)。 従業員の立場で、転職時に気をつけるべきことは何でしょうか。 競業避止義務は入社時に取り交わした雇用契約書や、会社が作成した就業規則に定めてあるケースが多いです。転職しようとする時点で自分がどのような義務を負っているのかを理解できるようにこれらの書類をきちんと確認しましょう。退職時に誓約書を書く際には、会社との間で認識にズレがないように確認をしておきましょう。 これまで述べた法律の理屈の話のほかに、もうひとつ大切なことがあります。それは従業員と会社との信頼関係を築いておくことです』、退職する「従業員と会社との信頼関係を築いておく」、というのはそんなに容易いことではなさそうだ。
・『最低限のコミュニケーションは必要  例えば、退職した従業員が前職でお世話になった取引先に転職のあいさつ状を送ったとしましょう。従業員としては、社会人として当然の礼を尽くしたにすぎず、競業や前職を裏切る意図はまったくない場合があります。 しかし、会社側からみると、顧客に対して乗り換えを促す営業活動をしているのではないか?というように、疑わしく映ってしまうことがあります。転職した従業員にも、多かれ少なかれ会社に貢献してきた自負があるものですが、会社からそのような疑いの目で見られたことに失望し、さらに溝が深まってしまうこともあります。 職場への不満が転職理由となることはしばしばあることですが、そのような場合であっても、転職の際には、例えば転職先がどのような会社であるかを事前に伝えたり、お客様に退職(担当者の引き継ぎを含む)をどのように伝えるか、あるいは、業務の引き継ぎや情報の返却や抹消をどうするかを擦り合わせたりするなど、従業員と会社との間で最低限のコミュニケーションを図ることが大切でしょう。 とくに、同業への転職の場合には、同じ業界内で転職にまつわる情報が広まることもあります。会社の内情を知る従業員が外に出て行くわけですから、悪いうわさが立ってしまうか、良い評判が広がるかは、転職時の対応にかかっていると言っても過言ではないでしょう。立つ鳥跡を濁さずという言葉がありますが、転職の場面では、従業員も会社もお互いに節度をもって、気持ちの良い一歩が踏み出せるようにしたいものです』、「とくに、同業への転職の場合には、同じ業界内で転職にまつわる情報が広まることもあります・・・悪いうわさが立ってしまうか、良い評判が広がるかは、転職時の対応にかかっていると言っても過言ではないでしょう」、その通りだろう。

第三に、8月9日付け東洋経済オンラインが掲載したAPI地経学ブリーフィングによる「大抵の人が知らない「サイバー攻撃」驚愕の新事情 重要インフラが狙われる?積極防衛が必要な理由」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/445711nijuu
・『米中貿易戦争により幕を開けた、国家が地政学的な目的のために経済を手段として使う「地経学」の時代。 独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく』、興味深そうだ。
・『重要インフラ防護の新段階  今年5月、アメリカ最大手の石油パイプライン事業者であるコロニアル・パイプラインが、ランサムウェア(身代金要求型不正プログラム)の攻撃を受けて5日間にわたる操業停止に追い込まれ、アメリカ東海岸の社会経済活動に重大な影響を与えた。 独立行政法人情報処理推進機構セキュリティセンター(IPA)「情報セキュリティ10大脅威」(2021年2月)によれば、ランサムウェアは、今や政府・民間組織の情報セキュリティに対する最大の脅威となっている。この脅威をより深刻にしているのは、ランサムウェアの矛先が国民生活や経済活動の基盤となる重要インフラに向けられたことだ。 重要インフラに対するサイバー攻撃は、未遂事例を含めれば枚挙にいとまがない。最近の深刻な事例は、アメリカのセキュリティ企業ソーラーウインズがソフトウェアを契約する企業が連鎖的に攻撃を受けたことである。 同社製品はアメリカの主要政府機関、アメリカ軍、アメリカの大手重要インフラ企業が採用しており、海外ユーザーには北大西洋条約機構(NATO)、欧州議会、イギリス国防省、イギリス国民健康保険制度(NHS)が含まれる。この事案では犯行グループが静かに侵入して攻撃の痕跡を巧妙に隠し、約10カ月間にわたり発覚を逃れてネットワークに潜伏した。同社ユーザーの多くの機密情報が窃取されたとみられているが、現時点でも被害の全容は判明していない。 重要インフラ防護で懸念すべき新たな動向は、産業用制御システムの脆弱性をついた攻撃の拡大である。ウクライナ大規模停電(2015年)では、犯行グループがVPN接続から制御システムに侵入・潜伏し、ブレーカー遮断コマンドを送信していた。 ノルウェー企業ノルスク・ハイドロ事案(2019年)では生産設備の管理システムがランサムウェアに感染し、世界中で社内ネットワークがダウンした。アメリカ・フロリダ州オールズマー市水道局事案(2021年)では、水道の制御システムが不正アクセスされ、犯行グループは水酸化ナトリウムの量を100倍以上に増やすコマンドを実行している。 かつてイラン核燃料施設の遠心分離機を稼働不能にしたスタックスネットは、外部からUSBメモリーを持ち込む物理レイヤーが依然として介在していた。しかし現代のデジタルトランスフォーメーション(DX)では、主要企業の生産部門・管理部門ではスマートファクトリー、リモート制御システム、エッジコンピューティング、AIによる最適化生産、クラウドサービスの責任共有モデルの導入が進んでいる。DXにより産業用制御システムはオープンシステムとの連携が急速に進んでおり、この進化とともにオペレーショナルテクノロジー(OT)の脆弱性も飛躍的に高まっているのである』、「オペレーショナルテクノロジー(OT)の脆弱性も飛躍的に高まっている」、とは穏やかではなさそうだ。
・『重要インフラ防護とアクティブ・ディフェンスの導入  日本政府は重要インフラ防護の最大の目的を機能保証に置き、重要インフラ事業者(14分野)の防護能力を支援し、事業者同士の連携を図ることによってリスクマネジメント体制を整備している(サイバーセキュリティ戦略本部「重要インフラの情報セキュリティ対策に係る第4次行動計画」)。しかし、重要インフラに対する脅威が新たな段階に入りつつある現在、機能保証のための事業者間連携モデル=受動防衛(パッシブ・ディフェンス)だけでよいだろうか。 例えばコロニアル・パイプライン事案では、アメリカのバイデン政権が犯行グループに暗号通貨で支払われた身代金のうち230万ドル相当を回収している。この回収作戦はアメリカ連邦捜査局(FBI)による犯行グループの捜査、アメリカ司法省のデジタル恐喝タスクフォース、アメリカ財務当局の緊密な連携によって暗号通貨ウォレット支払い資金の追跡(ブロックチェーン・エクスプローラー)によって可能となった。同作戦の成功は、アメリカの犯行グループに対する攻撃コストを高め、利益を減らす重要なシグナルとなる。日本政府にはこのよな機動的なタスクフォース機能は未整備の段階である。) また、将来重要インフラが大規模なサイバー攻撃に晒され、人命の被害や物理的破壊を伴う事態も想定が必要だ。航空、鉄道、交通、電力システムなど、制御システムを乗っ取ることによって、多数の死傷者が生じる重要インフラ攻撃のXデーは間近に迫っているかもしれない。そのような事態が生じた際に、機能保証を目指す受動防衛のみではもっぱら守勢となり、次の攻撃を有効に抑止する手立てを著しく欠くことになりかねない。 現代の重要インフラ防護の新たな動向に対応するためには、従来の受動防衛の強化と重要インフラ基盤の強靭性強化に加えて、攻撃者に対する直接的な働きかけを含む積極防衛(アクティブ・ディフェンス)の導入が望ましい。具体的には、潜在的な攻撃者に対する通信の監視による攻撃兆候の把握、攻撃者の特定(アトリビューション)能力の強化、攻撃者に対する交渉・強制・報復能力、(脅威の段階に応じた)有事認定、日米を中核とした国際連携を組み合わせることが重要な課題となる』、「この回収作戦はアメリカ連邦捜査局(FBI)による犯行グループの捜査、アメリカ司法省のデジタル恐喝タスクフォース、アメリカ財務当局の緊密な連携によって暗号通貨ウォレット支払い資金の追跡・・・によって可能となった。同作戦の成功は、アメリカの犯行グループに対する攻撃コストを高め、利益を減らす重要なシグナルとなる。日本政府にはこのよな機動的なタスクフォース機能は未整備の段階である」、日本でも試しに「機動的なタスクフォース機能」を試行してみてもよさそうだ。
・『アクティブ・ディフェンスの3段階  アクティブ・ディフェンスの第1段階は「探知による抑止」(deterrence by detection)強化である。潜在的な攻撃者の行動を検知・把握することによって、攻撃者が常に監視されていることを知り、機会主義的な行動をとる可能性を減らすことだ。 第2段階は「拒否的抑止」(deterrence by denial)であり、日本の多層防護態勢や迅速な復旧能力を示すことにより、攻撃インセンティブを低くすることである。 そして第3段階は攻撃者に対する刑事訴追や反撃を含む「懲罰的抑止」(deterrence by punishment)を導入し、日本に対する攻撃に高い代償を与える能力を持ち、攻撃を思いとどまらせるようにすることである。 日本政府は本年末をメドに「次期サイバーセキュリティ戦略」を策定する。また本年9月にはデジタル庁が発足し、デジタル経済推進を加速させる。この重要なタイミングで、政府は重要インフラ防護に対する危機認識を更新し、本稿で提示したアクティブ・ディフェンス導入も含めた取り組み強化を検討し、必要な法改正や実施体制について提言し、各組織における責任・権限・役割分担を明確化する必要がある。) 次期戦略(案)では「サイバー攻撃に対する抑止力の向上」が掲げられ、「相手方によるサイバー空間の利用を妨げる能力」や刑事訴追等の手段を活用するという方針を示している。日本が本気でアクティブ・ディフェンスに踏み込むためには、これら施策をより体系的に推進することが必要だ。 また経済安全保障の視点からも、先端技術・防衛産業等のセキュリティを確保する視点を強化することも必要だ。次期戦略の中で、機微技術の保護・移転防止を情報セキュリティ分野から支え、データセンター防護や分散化を推進し、さらにグローバルなサプライチェーン管理と新興国の情報セキュリティの能力向上支援をセットにした国際連携が求められる』、「日本」としても「本気でアクティブ・ディフェンスに踏み込」んで欲しいものだ。
・『日本には高い専門性を持つ大臣レベルの権限者がいない  日本の重要インフラ防護政策の最大の問題は、高い専門性を持つ大臣レベルの権限者が存在しないことである。国家安全保障会議(NSC)へのサイバーセキュリティ責任者の関与は極めて重要だ。重要インフラ防護と安全保障政策の接続にあたり、サイバーセキュリティを統括する責任者が首相、官房長官、外相、防衛相、自衛隊統合幕僚監部と連携を図る必要は明白だからである。 アメリカ・バイデン政権はホワイトハウス内に国家サイバー長官を指名し、民間機関の防衛やサイバーセキュリティ予算を監督する。アメリカNSCではサイバーセキュリティ担当国家安全保障副補佐官がサイバー防衛の指揮を担っている。またアメリカ国土安全保障省、国家情報長官(DNI)、サイバー脅威情報統合センター(CTIIC)が連携しながら体制を築いている。日本にも適切なカウンターパートの体制が整えられることが望ましい。 サイバーセキュリティを担う実行部隊の育成と組織化も喫緊の課題だ。次期戦略(案)でも「ナショナルサート機能の強化」および「包括的サイバー防御のための環境整備」が掲げられている。次期戦略では大規模な人事予算を確保し、ナショナルサートの枠組み整備とともに、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)の情報セキュリティ横断監視即応・調整チーム(GSOC)および緊急支援チーム(CYMAT)の大幅強化に取り組まねばなるまい。 これらのチームが警察庁・防衛省・デジタル庁と連携しつつ、状況監視・インシデントレスポンス・影響評価・フォレンジック・法的対応などの基盤となる。仮に国内の体制や法的基盤が短期間に整備されなくても、将来の日本のアクティブ・ディフェンス機能を担う準備を整えることが必要だ。 (神保謙/アジア・パシフィック・イニシアティブ-MSFエグゼクティブ・ディレクター、慶應義塾大学総合政策学部教授)』、「最大の問題は、高い専門性を持つ大臣レベルの権限者が存在しないことである」、「権限者」を官僚ではなく、政治家にする必要もないような気がする。いずれにしても、日本ではじっくり取り組んでゆくべきだろう。
タグ:情報セキュリティー ・サイバー犯罪 (その7)(米司法省特殊部隊 ハッカーに支払われた身代金を仮想ウォレットから奪還、かっぱ寿司「転職者から競合情報入手」のマズい点 楽天モバイルでもソフトバンク出身者が逮捕、大抵の人が知らない「サイバー攻撃」驚愕の新事情 重要インフラが狙われる?積極防衛が必要な理由) Newsweek日本版 「米司法省特殊部隊、ハッカーに支払われた身代金を仮想ウォレットから奪還」 「米司法省は、・・・ダークサイドに支払った身代金の大半を押収した」、とは手際良さに驚かされた。日本ではどうなっていたことやら・・・。 米国にとって、燃料供給「パイプライン」はまさに米国の死命を制するもので、これを守り切った「司法省」の面子は維持されたようだ。 東洋経済オンライン 岩﨑 崇 「かっぱ寿司「転職者から競合情報入手」のマズい点 楽天モバイルでもソフトバンク出身者が逮捕」 外食ではコンプライアンス意識は高くなさそうだが、それにしてもやり方がえげつなさ過ぎる。 「ソフトバンク」と「楽天」件は、7月7日付けのこのブログでも取上げたが、今日紹介したものはやや「楽天」不利な印象だ。 「裁判例の傾向としては、前職での地位が高いほど、禁止される範囲が限定的であるほど、代償措置が設けられているほど、退職後の競業避止義務が有効と判断されやすい」、なるほど。 退職する「従業員と会社との信頼関係を築いておく」、というのはそんなに容易いことではなさそうだ。 「とくに、同業への転職の場合には、同じ業界内で転職にまつわる情報が広まることもあります・・・悪いうわさが立ってしまうか、良い評判が広がるかは、転職時の対応にかかっていると言っても過言ではないでしょう」、その通りだろう。 API地経学ブリーフィング 「大抵の人が知らない「サイバー攻撃」驚愕の新事情 重要インフラが狙われる?積極防衛が必要な理由」 「オペレーショナルテクノロジー(OT)の脆弱性も飛躍的に高まっている」、とは穏やかではなさそうだ。 日本でも試しに「機動的なタスクフォース機能」を試行してみてもよさそうだ。 「日本」としても「本気でアクティブ・ディフェンスに踏み込」んで欲しいものだ。 「最大の問題は、高い専門性を持つ大臣レベルの権限者が存在しないことである」、「権限者」を官僚ではなく、政治家にする必要もないような気がする。いずれにしても、日本ではじっくり取り組んでゆくべきだろう。
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ソニーの経営問題(その8)(ソニー「10億人とつながる」 利益1兆円の先の野望 エンタメ軸に拡大宣言、グループ連携がカギ、ソニーが圧倒的な高収益体質に大復活できた本質 エレキ地位低下の一方 グループ6事業を「掛け算」、平井ソニーが前評判を覆し 再生を遂げることができた「底力」とは) [企業経営]

ソニーの経営問題については、昨年6月12日に取上げた。1年強が過ぎた今日は、(その8)(ソニー「10億人とつながる」 利益1兆円の先の野望 エンタメ軸に拡大宣言、グループ連携がカギ、ソニーが圧倒的な高収益体質に大復活できた本質 エレキ地位低下の一方 グループ6事業を「掛け算」、平井ソニーが前評判を覆し 再生を遂げることができた「底力」とは)である。

先ずは、本年6月3日付け東洋経済オンライン「ソニー「10億人とつながる」、利益1兆円の先の野望 エンタメ軸に拡大宣言、グループ連携がカギ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/431884
・『「現在、ソニーは世界で1億6000万人とエンターテインメントで直接つながっている。これを10億人に広げたい」 ソニーグループの吉田憲一郎社長は5月26日、オンラインで開催した経営方針説明会でこう宣言した。 業績はまさに絶好調。コロナ禍をものともせず、2021年3月期の売上高は8兆9993億円(前期比9%増)、営業利益は9718億円(同15%増)と、ともに過去最高を更新した。株式の評価益などもあり、純利益は初めて1兆円の大台を突破した。 業績の牽引役は祖業のエレクトロニクス事業から、ゲームや映画、音楽などのエンタメ系の事業に移っている。とくに巣ごもり需要でプレイステーション(PS)のソフト販売が伸びたことや、アニメ『劇場版「鬼滅の刃」』の大ヒットなどが利益を押し上げた』、「業績の牽引役」のシフトは時代のニーズの変化を映したものなのだろう。
・『今後3年間で2兆円を投資  かつてソニーは、エレキ事業で価格競争による採算悪化に苦しみ、景気の波に業績を左右された。価格競争の起きにくいエンタメに、エレキ事業で培ったテクノロジーを融合させ、サブスクリプション(定期購入)型ビジネスとして安定的に稼ぐ戦略を一段と推進する。 冒頭の吉田社長の発言にある、「1億6000万人」の内訳は定かでない。ゲームのプラットフォームであるPSネットワークの月間アクティブユーザーが、現在1億0900万人。ほかに展開する音楽配信などのプラットフォームのユーザーも合わせた数字とみられる。達成時期こそ示さなかったものの、これを6倍の10億人に増やすのは野心的な計画だ。 関連分野への投資は惜しまない。「エンタメ×サブスク」を軸に成長を持続させるため、今後3年で2兆円以上の戦略投資を進める。 投資の優先順位について吉田社長は、IP(アニメなどの知的財産)、DtoC(ダイレクト・トゥ・コンシューマー、消費者と直接つながる販売手法)、テクノロジーの順と明かした。 ゲームや音楽などのソフトコンテンツの制作にさらに資金を投じるほか、買収や出資により魅力的なIPを確保することを継続する。コンテンツを届けるプラットフォームとなる動画配信サービスとの協業や、自社のDtoCプラットフォームであるPSを通じたコンテンツ販売も強化する。 単にエンタメを伸ばすのではなく、エレキ事業との掛け合わせも重視する。ソニーにはゲームエンジンやイメージセンサーなどで高い技術力がある。これらが、コンテンツを作ったり届けたりするうえで、競合との差別化につながるからだ。今回掲げた2兆円には、こうしたテクノロジーへの投資も多く含まれる。 このようなグループ間の連携は、今後の成長において従来以上に重要な意味を持つ。今年4月、ソニーからソニーグループへと63年ぶりに社名を変更したが、ただ名前を変えただけではなく、組織体制の再編を伴ったものだった』、「今後3年で2兆円以上の戦略投資」、「ソニーにはゲームエンジンやイメージセンサーなどで高い技術力がある。これらが、コンテンツを作ったり届けたりするうえで、競合との差別化につながる」、なるほど。
・『事業連携強化の体制は「整った」  これまでソニーは本社にエレキ事業が特権的に所属していたが、それを独立させ、ソニーグループは本社機能に特化した。エレキ事業を音楽やゲームなどほかの事業と同等の位置づけにし、本社は各事業と等距離で関わる。吉田社長は「すべての事業がフラットにつながる新しいアーキテクチャー(組織体制)により、グループとして連携強化の体制が整った」と語る。 グループ間の連携は、新たに取り組むモビリティーなどの領域でも顕著だ。2020年に発表した電気自動車「ビジョンエス」は、デバイス事業が持つセンサー技術を生かす一方、スマートフォン「エクスペリア」の技術を用いて車内制御を組み立てている。 「モビリティーの領域において、モバイル技術は決定的に重要になる」(吉田社長)との確信の下で開発に邁進するが、エンタメも同様に、グループ連携により「ソニーにしかできない」ビジネスに育てられるかが今後問われる。 吉田社長の就任した2018年度に始まった中期経営計画は2020年度で終了。平井一夫前社長の時代から、エレキの赤字事業の改革、CMOSイメージセンサーへの集中、そしてコンテンツIPへの投資に取り組んできた。これらに一定のメドをつけた吉田社長は、2021年度以降目指す方向性について、冒頭の「10億人」以外に具体的な数値目標は打ち出さず、ビジョンを語るにとどめた。 現状は甘くはない。ソニーが足場とするエンタメでは、アメリカのアマゾン・ドット・コムやネットフリックスといった異次元のライバルが立ちはだかる。電機大手の「勝ち組」は、次のステージに上がったばかりだ』、「エレキ事業」は「本社」から独立させ、「音楽やゲームなどほかの事業と同等の位置づけにし」た。「「すべての事業がフラットにつながる新しいアーキテクチャーにより、グループとして連携強化の体制が整った」、果たして狙い通り「連携強化」につながるかを注目したい。

次に、7月12日付け東洋経済オンライン「ソニーが圧倒的な高収益体質に大復活できた本質 エレキ地位低下の一方、グループ6事業を「掛け算」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/440105
・『ソニーの業績が絶好調だ。2021年3月期は、同社が展開する6つの事業のうち米中貿易摩擦の影響を受けた半導体事業を除く5事業が増益。保有株式の評価益258億円を上乗せし、純利益が初めて1兆円の大台を突破した。 『週刊東洋経済』7月12日発売号は、「ソニー 掛け算の経営」を特集。ソニーの強みとリスクを分析し、復活したソニーの今後について占っている。業績の好調を受けて、社員への還元も大盤振る舞いだ。2021年度の年間ボーナスは組合側の要求を上回る7.0カ月という、かつてない高水準に。4566億円もの最終赤字に沈んだ2012年3月期のどん底から10年。苦労がようやく実を結んだ』、「年間ボーナスは組合側の要求を上回る7.0カ月という、かつてない高水準に」、「組合側」もここまでの好決算は予想してなかったのだろう。
・『早期退職の動きも  一方、「いいことばかりではない」と、浮かない顔をするのはソニーグループの中でエレクトロニクス事業に在籍する中堅社員だ。事業内での早期退職が目立ってきているからだ。 商品設計を担当するソニーエンジニアリングでは2020年秋、カメラなどを扱うソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ(ソニー)と営業を担うソニーマーケティングでは同年12月以降、いずれも45歳以上を対象とする早期退職募集を打ち出した。足元でもエレキ傘下の部署では今年12月末までの早期退職募集が行われている模様だ。 人員削減を進める理由についてソニー側は「エレキ事業では今後も安定した利益を創出できるよう、販売会社や製造事業所の一体運営を強化し、効率化に務めている」と説明する。 最高益を更新する好調ぶりにもかかわらず人員削減を進めるのは、ソニーという「電機企業」が変身しているからだ。 今年4月、ソニーは63年ぶりの社名変更に踏み切った。新しい社名はソニーグループ。伝統ある「ソニー」の社名は、祖業であるエレキ部門の子会社に引き継がれた。 これまで本社が行っていたエレキ事業は、ゲーム事業や音楽事業などと同様、グループ子会社の1つとなった。グループ本社は、全社を統括する機能に特化する。 「(統括会社の)ソニーグループは連携強化に向けて、すべての事業と等距離で関わる」。吉田憲一郎社長は5月の経営方針説明会でこう宣言した。 この変化は、ソニーにおけるエレキ事業の地位低下を反映したものでもある。この10年でソニーの全体の売上高に占めるエレキ事業の比率は、約6割から2割へと大きく下がった。ただ、組織変更にはこうした客観的事実以上の意味がある。 吉田社長は2019年1月、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」というフレーズを、エレキ事業にとどまらないソニーグループのパーパス(存在意義)と定義した。それぞれが独り立ちできる6つの事業群が1つの会社に集まっているのはなぜか。それを説明する概念だ』、「最高益を更新する好調ぶりにもかかわらず(エレキ事業で)人員削減を進める」、というのは堅実なやり方だ。
・『6つの事業をまとめ上げる「感動」  6つの事業が手掛ける事業の幅は広いが、これらをまとめ上げる概念が「感動」だ。それに向かって、フラット化した各事業を「掛け算」していく。それが今のソニーの戦略である。 各事業同士の連携はすでに業績に結実しつつある。例えば、ミラーレスカメラ市場で圧倒的なシェアを誇る「α(アルファ)」シリーズは、その背景にソニーが持つ優れた半導体技術がある。ソニー損害保険では、AI(人工知能)技術を使った商品が人気だ。 新規事業も「掛け算」が基準になっている。代表例が2020年にアメリカ・ラスベガスで行われた展示会「CES」で発表された電気自動車「VISION―S(ビジョンエス)」だ。2018年1月にイヌ型ロボット「aibo」を12年ぶりに復活させたAIロボティクスグループが手がける新プロジェクト。半導体事業で培ったセンサー技術のほか、スマートフォン「Xperia」の操作性や通信技術、得意のオーディオ技術を生かした車内空間作りなど、ソニーの技術がこれでもかと詰め込まれている。 「掛け算」の事例はこれだけではない。東京・世田谷区の東宝スタジオには、映像製作技術「バーチャルプロダクション」の設備が導入されている。ソニーが作る大型LEDディスプレーに映像を映し、その前にセットを置いて演者が動くと、まるで現地でロケをしているような映像を作ることができる。 この設備は、ソニーの出資する米エピックゲームスが開発したゲームエンジンを使用している。演者の位置を測定し、背景を対応させることで、よりリアルな映像を撮影できる。自ら発光するLEDの特徴を生かし、水たまりの反射や眼鏡による光の屈折といったものまで表現できる。 ほかにも、人気ゲームを、映画製作会社ソニー ピクチャーズ・エンタテイメントの手で映画化するプロジェクトが進行中だ。2019年に設立された「プレイステーションプロダクションズ」では、人気のPS用ソフトの映画化が進められており、第1弾として2022年2月には『アンチャーテッド』の映画版が公開される見通しだ。ほかにも、『ゴースト オブ ツシマ』、『ザ・ラスト・オブ・アス』など計10本が映画化を控えており、映画事業の拠点に設けられたオフィスで、ゲームと映画のそれぞれの会社のスタッフが一つの組織に集まって協業している』、「掛け算」とは、2つの事業間のシナジーともいえるだろう。
・『『夜に駆ける』オーディオドラマの圧倒的臨場感  ソニー・ミュージックエンタテインメントから生まれた2020年の大ヒット曲『夜に駆ける』(YOASOBI)。この原作となった小説を基にしたオーディオドラマでは、エレキ事業のオーディオ技術を活用した360度立体音響技術が採用されている。ぞっとするような臨場感が魅力だ。 このプロジェクトを担当するソニーミュージックの高山展明氏は「より生々しい、人間らしい要素を組み込めないか、コンテンツの面白さと技術の強みが一致する方法を考えた」と語る。 次々と生み出される「掛け算」事業。その収益化の方法も、単品売りで終わるのではなく、顧客の体験に訴求して製品やサービスを発展させ、継続的に稼ぐ方針を示している。 「ダメ企業」から見事生まれ変わり、再び攻めの戦略に転じつつあるソニー。快進撃を続けるうえで、エレキ企業としての過去のしがらみを断ち切り、自由な発想で挑戦し続けることができるかが肝となる』、「快進撃を続けるうえで、エレキ企業としての過去のしがらみを断ち切り、自由な発想で挑戦し続けることができるかが肝となる」、その通りなのだろう。

第三に、8月6日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した早稲田大学大学院経営管理研究科教授の長内 厚氏による「平井ソニーが前評判を覆し、再生を遂げることができた「底力」とは」を紹介しよう。
・『コロナ禍でも好業績のソニーに日本企業の「底力」を垣間見た  8月4日にソニーとトヨタの決算発表があり、ソニーの2021年4~6月期連結決算は、売上高が前年同期比15.0%増の2兆2568億円、純利益が9.4%増の2118億円、トヨタは72.5%増の7兆9355億円、純利益が約5.7倍の8978億円となり、トヨタは同四半期の過去最高業績となった。 ソニーとトヨタの好業績は、日本の製造業の底力を感じさせるニュースといえるかもしれない。古くから日本企業は、オイルショックや度重なる震災など、企業経営や生産に大きな影響が出る数々のアクシデントに見舞われてきたが、その都度困難を乗り越え、より強靱な経営や生産のシステムを構築してきた。 ソニーはオイルショックで燃料費が高騰したときに、当時の主力製品であったブラウン管の生産に大量に使うエネルギーを大幅に削減する生産技術を開発し、オイルショックを乗り切っただけでなく、長期的なブラウン管製造のコストダウンを実現した。2011年の東日本大震災では、宮城県の報道用ビデオカメラのテープの工場が甚大な被害を受けたが、当時の中鉢良治副会長の陣頭指揮の下で早期の生産再開を果たし、世界の放送局へのテープ供給に支障を来たさなかった。 昨今のコロナ禍では、テレビなどの巣ごもり需要は高かったとはいえ、家電、自動車ともにサプライチェーンの混乱や昨今の半導体不足などのアクシデントがあり、それに加えて経済の先行きの見えない不安感に不安定な需要、人の移動が制限される中での業務遂行など、企業にとっては様々なマイナス要素が存在していた。しかし、その中でも好業績を出せる日本企業の底力には、危機に強い日本の産業の特徴が表れているのかもしれない。 米国や中国は、仕事を明確に分業して他者の仕事には口を出さない、組合せ型、モジュラー型の製品開発や組織運営を強みにしてきた。一方、日本は組み合わせに対してすり合わせ、インテグラル型のものづくりが特徴といわれていて、トヨタの多能工に代表されるように、分業しながらも他の人の仕事にも関与したり協力しあったり、お互いがお互いの仕事に口を出し助ける文化が、日本のものづくりの現場にはある。 こうしたインテグラル、すり合わせのやり方は、効率性という点ではモジュラー型には敵わないが、柔軟性、多様性、臨機応変な対応はしやすく、多様な製品を生み出す力や、非常時の臨機応変な対応につながっている』、「インテグラル、すり合わせのやり方は、効率性という点ではモジュラー型には敵わないが、柔軟性、多様性、臨機応変な対応はしやすく、多様な製品を生み出す力や、非常時の臨機応変な対応につながっている」、同感である。
・『日本企業に合った経営再建策はむやみにV字回復を目指さないこと  本連載で、著者はよくV字回復の危うさを指摘しているが、こうした日本の底力は、V字回復のような瞬発力や効率性はないものの、長期的な競争優位を確立する上で貴重な日本企業固有の能力であり、それを伸ばすこと、つまりむやみにV字回復を目指さないことが、日本企業の能力に見合った経営の立て直し策であると考えるからだ。 ソニーは昨年、過去最高益を出し、今回の決算でも好業績を出しているが、これもV字回復というよりは、前社長の平井一夫氏、現社長の吉田憲一郎氏の平井・吉田体制が時間をかけて築いてきた成果といえる。 以下のグラフは、ソニーとパナソニックのリーマンショック後の研究開発費の変化の推移を示したものであるが、当時V字回復ともてはやされたパナソニックは研究開発費を抑えて短期的な利益率を改善、ソニーは赤字を継続したものの研究開発費はむしろ増加させている。結果はご存じの通り、パナソニックは短期的な業績回復はできたものの、長期的にはより苦しい経営環境に見舞われている。 (図表:ソニーとパナソニックの研究開発費の指数表」、はリンク先参照) 平井氏といえば、社長就任当時は「エレキを知らないレコード屋」「アメリカかぶれで日本企業の経営はできるのか」といった批判をされていた。週刊ダイヤモンドでも「ソニー消滅!!」といった特集が組まれ、当時から平井氏のマネジメントを評価していた著者は、ダイヤモンドオンラインで「週刊ダイヤモンドの『ソニー消滅!!』説に反論!」という記事を掲載したものだ。本誌の特集に真っ向から反論する論考を掲載するダイヤモンド社も、懐が広い。) この記事でも「パナソニックとシャープは事業構造改革の成果が出始め、浮上しつつある一方で、ソニーだけ今期(2015年3月期)も最終赤字予想となるなど、取り残されている」というリード文がつけられている』、「当時V字回復ともてはやされたパナソニックは研究開発費を抑えて短期的な利益率を改善、ソニーは赤字を継続したものの研究開発費はむしろ増加させている」、さすが「ソニー」だ。
・『ソニー再生の原動力となった平井氏の興味深いマネジメント  今となれば誰も平井ソニーを批判する人はいないが、平井氏が最近出版した著書『ソニー再生』には、この頃の平井氏のマネジメントについて興味深い記述があり、平井氏のマネジメントの基礎はダイバーシティにあるという。 ダイバーシティはイノベーションの源泉であるが、実は生産性とはトレードオフの関係にある。これはハーバードビジネススクールのアバナシー教授が1978年に出版した『生産性のジレンマ』という研究でも論じられているのだが、生産性を高めようとすると、効率の悪い無駄なことを排除しようとするので新たなアイデアも排除され、イノベーションが起きない組織になるというものだ。 平井ソニーの脇を固めた、今日のソニーの首脳陣である吉田氏、十時氏も、So-netやソニー銀行というソニーにとっては本流ではない事業からの登用であるが、平井ソニーの特徴はこうした多様性のある人材登用にあった。効率性が高く賢いだけでは、ソニーのような企業の経営はできない。 同書で平井氏はEQ(心の知能指数)という言い方をしているが、より情緒的で感性的なものを大切にし、効率経営だけではないものを大切にすることが、V字回復につながらなくとも長期的な企業の組織能力を強化させるものになるということだ。 この本の中で、平井氏は大学時代にマツダのRX-7が愛車であり、「燃費は悪かったけど、これがもう最高にカッコ良くて」と述べている。製品とは機能性能が優れていると価値が高いと思われがちだが、人は技術を買っているのではなく、製品を通じた総合的な体験を購入しているので、そこには非合理的であっても、情緒とか感性を揺さぶる何かがないと消費者の心の琴線には触れない。過去のデータやスペックシートを並べて機能・性能が向上したというだけでは、本当の意味での商品企画にはならない。 平井氏は社長時代に「RX100」というサイバーショットの話をよくしていた。サイバーショットはソニーのコンパクトデジタルカメラで、現在好調な一眼レフのαシリーズとは異なり、各社苦戦を強いられている領域の商品だ。しかし、衰退するコンパクトデジタルカメラ市場の中で、RX100だけは異彩を放っていた。 多くの家電製品は毎年新モデルが発売されると全くデザインが変わり、古いモデルは販売終了となる。これは家電業界の当たり前である。しかし、RX100は2012年の1号機発売以来、デザインが全く変わらず、2019年に発売された7代目「RX100M7」(マーク7)に至るまで、ほとんどのシリーズを併売し続けている。 ここには、毎年デザインを変えるのではなく、変わらないことで顧客の所有欲を満たし、機能・性能が向上したモデルを追加しても、全ての顧客が常に最高性能を求めるわけではない、という平井氏の思想が埋め込まれている。人はもっと感情や情緒で動くものであり、機械的に機能・性能を向上させるだけがものづくりではないということだ』、「平井ソニーの特徴はこうした多様性のある人材登用にあった。効率性が高く賢いだけでは、ソニーのような企業の経営はできない。 同書で平井氏はEQ・・・という言い方をしているが、より情緒的で感性的なものを大切にし、効率経営だけではないものを大切にすることが、V字回復につながらなくとも長期的な企業の組織能力を強化させるものになるということだ」、確かに現在の「ソニー」の復調には、「平井氏」の貢献も効いている筈だ。
・『効率性だけでは成長できない 優れた経営が大切にする「情緒性」  これらのエピソードに共通するのは、合理性、効率性だけでは判断し切れない、非合理的な人間の組織だからこそ必要な、情緒や感情を経営に持ち込むということだろう。 機械的に分業をして自分の与えられた仕事だけを効率的にこなすだけが、長期的に見て優れた仕事のやり方とは限らない。日本企業のような、スロースタートかもしれないが冗長性や多様性のある経営の良さを、再評価すべきだろう。 平井氏は今後の活動として、世界の子どもの貧困問題に取り組んでいくという。貧困問題は全人類が取り組まなければならない喫緊の課題であるが、同時に大きなビジネスの可能性も秘めている。プラハラードという国際経営学者はBOP(新興市場を意味するピラミッドの底辺)の重要性を指摘し、ゴビンダラジャンはこれまでのような先進国で開発された新技術や新製品が時間経過と共に新興国に広がるというイノベーションのスタイルに対して、新興国ならではのアイデアで生まれたイノベーションが先進国に還流する可能性を指摘している。施しではなく、合理的な配慮がダイバーシティの基本であるが、貧困問題も施しではない発想で対応すれば、それがイノベーションにつながる可能性も秘めている』、「機械的に分業をして自分の与えられた仕事だけを効率的にこなすだけが、長期的に見て優れた仕事のやり方とは限らない。日本企業のような、スロースタートかもしれないが冗長性や多様性のある経営の良さを、再評価すべきだろう」、同感である。 
タグ:「機械的に分業をして自分の与えられた仕事だけを効率的にこなすだけが、長期的に見て優れた仕事のやり方とは限らない。日本企業のような、スロースタートかもしれないが冗長性や多様性のある経営の良さを、再評価すべきだろう」、同感である。 「平井ソニーの特徴はこうした多様性のある人材登用にあった。効率性が高く賢いだけでは、ソニーのような企業の経営はできない。 同書で平井氏はEQ・・・という言い方をしているが、より情緒的で感性的なものを大切にし、効率経営だけではないものを大切にすることが、V字回復につながらなくとも長期的な企業の組織能力を強化させるものになるということだ」、確かに現在の「ソニー」の復調には、「平井氏」の貢献も効いている筈だ。 「当時V字回復ともてはやされたパナソニックは研究開発費を抑えて短期的な利益率を改善、ソニーは赤字を継続したものの研究開発費はむしろ増加させている」、さすが「ソニー」だ。 「平井ソニーが前評判を覆し、再生を遂げることができた「底力」とは」 長内 厚 ダイヤモンド・オンライン 「快進撃を続けるうえで、エレキ企業としての過去のしがらみを断ち切り、自由な発想で挑戦し続けることができるかが肝となる」、その通りなのだろう。 「掛け算」とは、2つの事業間のシナジーともいえるだろう。 「最高益を更新する好調ぶりにもかかわらず(エレキ事業で)人員削減を進める」、というのは堅実なやり方だ。 「組合側」もここまでの好決算は予想してなかったのだろう。 「ソニーが圧倒的な高収益体質に大復活できた本質 エレキ地位低下の一方、グループ6事業を「掛け算」」 「エレキ事業」は「本社」から独立させ、「音楽やゲームなどほかの事業と同等の位置づけにし」た。「「すべての事業がフラットにつながる新しいアーキテクチャーにより、グループとして連携強化の体制が整った」、果たして狙い通り「連携強化」につながるかを注目したい。 「今後3年で2兆円以上の戦略投資」、「ソニーにはゲームエンジンやイメージセンサーなどで高い技術力がある。これらが、コンテンツを作ったり届けたりするうえで、競合との差別化につながる」、なるほど。 「業績の牽引役」のシフトは時代のニーズの変化を映したものなのだろう。 「ソニー「10億人とつながる」、利益1兆円の先の野望 エンタメ軸に拡大宣言、グループ連携がカギ」 東洋経済オンライン (その8)(ソニー「10億人とつながる」 利益1兆円の先の野望 エンタメ軸に拡大宣言、グループ連携がカギ、ソニーが圧倒的な高収益体質に大復活できた本質 エレキ地位低下の一方 グループ6事業を「掛け算」、平井ソニーが前評判を覆し 再生を遂げることができた「底力」とは) の経営問題 ソニー
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日本型経営・組織の問題点(その11)(サイボウズ青野社長が説く「がんばるな」の意味 昔ながらのオジサンたちは何も変わっていない、「40歳までに退職が当たり前」リクルートこそが世界に通用する希有な日本企業である 日本的経営とは正反対の成長戦略、ひろゆきが断言「体育会系の『痛みを耐える文化』は間違っている」) [経済政治動向]

日本型経営・組織の問題点については、昨年8月15日に取上げた。今日は、(その11)(サイボウズ青野社長が説く「がんばるな」の意味 昔ながらのオジサンたちは何も変わっていない、「40歳までに退職が当たり前」リクルートこそが世界に通用する希有な日本企業である 日本的経営とは正反対の成長戦略、ひろゆきが断言「体育会系の『痛みを耐える文化』は間違っている」)である。

先ずは、1月29日付け東洋経済オンライン「サイボウズ青野社長が説く「がんばるな」の意味 昔ながらのオジサンたちは何も変わっていない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/399900
・『新型コロナウイルスの感染拡大で、多くの人にとって、仕事のあり方は大きく変わった。先が見えない不透明な今、個人にとって仕事とは何か? 1月25日(月)発売の週刊東洋経済1月30日号「1億人の職業地図」特集では、現在から2030年に向けて、将来の職場や働き方の変化を大予測。特集の中で、社長自身が3度の育児休暇を取得するなど先進的な働き方の取り組みで知られるソフトウェア会社、サイボウズの青野慶久社長(49)に話を聞いた(Qは聞き手の質問、Aは青野社長の回答)』、「社長自身が3度の育児休暇を取得するなど先進的な働き方の取り組みで知られる」、「青野」氏は「社長」としては珍しい存在として注目していたので、興味深そうだ。
・『1本足打法でなく、複数の得意を持つこと  Q:コロナ禍を経て仕事に対する価値観が変わった人も多いです。これから私たちはどのような仕事を選べばいいと考えますか。 A:自分がどのように働きたいか、何に喜びを感じるかは、人それぞれだと思う。そんな多様性のある時代に自らが責任をもって選択できる軸というものを持たなければならない。私が1994年に新卒で入社したのは松下電工(現・パナソニック)。1971年生まれで、できるだけ偏差値の高い大学に入学して大企業を目指すというのが、多くの学生が目指す流れだった。それから20年以上を経て、価値観は大きく変化した。 そもそも、正社員として働くのではなく週3日働き、副業にいそしむ人も増えている。それぞれの人の価値観で組み合わせがより一層多様化していく。そんな時代に自分がどうしたいかは、若いうちから考える必要があり、教育段階のところから意識していかないとダメだと思っている。 Q:青野社長は苦手を克服するのではなく、得意を伸ばす教育が重要だと以前から話しています。 A:2030年という10年後の変化は読みにくいが、AI(人工知能)やロボットの発達は間違いない。将棋のAIがプロ棋士を倒しているように、人間がコンピューターに勝つことは難しくなる。人間が人間に指示してやっていた定型業務はこの10年で多くが置き換わっていくだろう。そうなったとき、人間として何をやりたいのか、何が得意なのかを究められるようにしないといけない。いくら将棋AIが発達しても、藤井聡太氏のようなポジションは必要とされるように、その道のプロは生き残る。 もちろん、多くの人がその道を究め、実現できるわけではない。そういう人たちへの示唆としては、1本足打法ではなく、複数の得意を持つということだ。たとえば、マネジメントスキルもあり、プログラミングもできる。司会業が得意で手品もできますといったように、凡人でも身につけられるスキルを磨くことが重要となる。複数の得意を持っていると、活躍の機会がいくつもあるので、食えなくなるようなことはないだろう。) 今の時代でもネットを通じて、ちょっとした仕事や副業のマッチングができる時代になっている。その道のカリスマと呼ばれる人たちに依頼するには仕事の単価も高いが、それなりのスキルがあればそれなりの値段で仕事を請け負うことができる。スーパーエリートでなくても稼ぐ手段は増やすことができる。 Q:コロナ禍以前の社会では、東京に一極集中し、多くのお金を稼ぐという価値観がもてはやされていました。 A:私たちは単に“お金獲得競争”をしていただけだったのかもしれない。コロナ禍以前であっても、お金がなくても楽しく生活している人がいたものの、注目されていなかった。今回のコロナ禍をきっかけに東京で働かなくてもいいとなったことで、地方に目を向けることや自分の家庭に目を向けることで、幸せを見つけた人も多いはずだ。東京でみんなが一斉に集まってお金獲得競争をしていることは、果たして本当に幸せなのかということを考えるきっかけになったと思う。 あおの・よしひさ/サイボウズ代表取締役社長。1971年愛媛県生まれ。松下電工(現・パナソニック)を経て、1997年にサイボウズを設立。政府の「働き方変革プロジェクト」の外部アドバイザーも務める。2男1女の父(写真:サイボウズ) Q:サイボウズでは募集要項に「日本全国どこでも仕事ができる」と書いていますね。 A:(人々が生活するうえで欠かせないエッシェンシャルワーカーの職種を除いて)わが社はテレワーク(在宅勤務)禁止ですと言ったら、今の若い人たちは応募してこない。好きなところで好きなように働いてくださいと募集をしている。もちろん裏側にはITの仕組みがある。新型コロナが教えてくれたのは、自分たちはまだまだITを十分に活用していなかった、ということだ。サイボウズのようなIT企業は本来ならテレワークし放題だったはずなのに、社長が毎日出勤して毎日対面での会議を開催していた(笑)。 全社一斉テレワークに切り替えてウェブ会議を導入してから、いかに今の働き方がいいかがわかった。ITをちゃんと活用すれば、東京でなくても働くことができるし、ネットを通じて副業も自由にできる』、「全社一斉テレワークに切り替えてウェブ会議を導入してから、いかに今の働き方がいいかがわかった。ITをちゃんと活用すれば、東京でなくても働くことができるし、ネットを通じて副業も自由にできる」、その通りだろう。
・『ヒエラルキーの強い会社は生き残れない  もちろんテレワークが浸透する中でのデメリットもある。仕事の質を高めるためには、リアルな場で会ったほうがいいこともある。また、社員同士のコミュニケーションが希薄になるので、リモート環境でも自由に雑談できるように工夫するなど必要になる。ただ、世界中どこでも移動時間ゼロでウェブ会議をできることは、肉体的な負担も減って生産性向上にもつながっている。 Q:私たちがこれから仕事をする会社を選ぶうえで、どのような会社が伸びると考えていますか。 A:年功序列でヒエラルキーが強く、上司からの指示によって動く管理型の組織では、いまのビジネスモデルが強くても、これからの時代には淘汰されていく。変化へのスピードに対応できないからだ。 Q:2020年夏に「がんばるな、ニッポン。」というメッセージを放映したテレビCMが話題となりました。がんばるな、というメッセージには、どんな狙いがあったのですか? A:放映したCM自体は緊急事態宣言下にもかかわらず、経営者は社員に出社をがんばらせないでくださいというメッセージだった。その裏側に込めた思いは日本のガンバリズムに疑問を投げかけたかったというのがある。 このガンバリズムというのは、練習時間が長い人、睡眠時間が短い人、会社に長くいる人というように、がんばりを美徳としているのは本当に意味があることなのですか、ということだ。がんばりの結果として何が得られるのか、その過程で何が得られるのかというのが重要だった。がんばったことそのものを評価するのではなく、その成果物をもっと理解するようにしないといけない。 多くの社員にとっては、企業が前年比でプラス成長するかどうかより、自分の給料が多くもらえることのほうが重要だ。それなのに、企業の競争により社会が発達していくという20世紀にできあがった仕組みが正しい、と私たちは刷り込まれている。いやいや、ちょっと落ち着いて考えてみようよ、手段と目的が入れ替わっていないかと。私たちが幸せになるために企業が成長していくものじゃないの?企業を成長させるために私たちががんばってしんどい思いで働かなければならないのはおかしい』、「これからの強い企業の考え方は、新しい組織形態である自律型の組織が必要となる。自律型の組織は1人ひとりが自ら考え行動できる組織だ。組織として自律的な行動ができる環境が整っているかという基準で見ていくのがいいだろう」、なるほど。「がんばるな、ニッポン。」は面白いメッセージとして記憶していた。
・『会社に出社しなくても仕事は回る  今回のコロナ禍をきっかけに、若い人を中心に働く価値観は変わった。2020年に新卒入社した新入社員の1人は会社に出社したのが8カ月間でわずか3回だけだったという。それでも仕事は回っている。 しかし、昔ながらのオジサンたちは正直、何も変わっていない。緊急事態宣言が終わったから、みんな出社してみんなが対面で顔を合わせて働くのが正しい、と思っている。古い価値観の経営者はマインドチェンジしていかなければいけない。マインドチェンジができない経営者は淘汰されていくだろう。このコロナ禍をきっかけにパラダイムシフトが起こってほしいと考えている』、「マインドチェンジができない経営者は淘汰されていくだろう」、そうなってほしいものだ。

次に、4月18日付けPRESIDENT Onlineが掲載した日本共創プラットフォーム代表取締役社長の冨山 和彦氏とジャーナリストの田原 総一朗氏の対談「「40歳までに退職が当たり前」リクルートこそが世界に通用する希有な日本企業である 日本的経営とは正反対の成長戦略」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/44969
・『世界に通用する企業にはどんな特徴があるか。経営共創基盤グループ会長の冨山和彦氏は「どんな時代も生き残っていける企業は“両利きの経営”ができている。日本における代表例はリクルートだ」という――。(第5回/全5回)※本稿は、冨山和彦、田原総一朗『新L型経済 コロナ後の日本を立て直す』(角川新書)の一部を再編集したものです』、興味深そうだ。
・『新卒一括採用と終身雇用を廃止すべき  【田原】それで冨山さんは、ずっと日本型システムの外部から見てきた。いま、日本的経営を根底から変えなくちゃいけない時期に、冨山さんのサラリーマン社会の論理から離れた物の見方はとても大事だと思う。 冨山さんは根底から変えるためにはいわば憲法改正ぐらいの変革が会社にも必要で、憲法のレトリックにのっとった形で古い会社をしばる「旧憲法」と、これからの経営の指針となる「新憲法」を提示している。日本型企業の骨子を具体的に説明してほしい。 (コーポレートトランスフォーメーション 新旧憲法比較出所=『新L型経済 コロナ後の日本を立て直す』の図はリンク先参照) 【冨山】まずG型の大企業に対する私の主張は、終身雇用を前提とした雇用制度の見直しです。新卒を一括で採用し、一度雇った人は基本的に終身年功制で定年までというのをやめましょう。これは特に大企業ですね。 L型産業はだいぶ前からかなりジョブ型、技能職型で、転職は当たり前のことです。ある意味でL型のほうがすでに時代に適合していて、バスの運転手ならばバス会社やトラック物流会社を何社か渡り歩くというのは、特別驚くべきことではありません。 問題はそうした技能職が非正規雇用に結びつき、低い待遇になりがちであるという点です。経営側の側面から見ると、終身雇用は会社の新陳代謝、事業のイノベーションを阻害する一因になっています』、「G型」が何を指しているのか説明がないのは残念だ。「L型産業」はどうもタクシー・トラック運転などの運輸業を指しているのだろう。「終身雇用を前提とした雇用制度の見直し」には、そうしたい企業がやればいいのであって、一斉にやるのには反対だ。
・『生き残れる企業に共通する「両利き経営」  現在、世界的には「両利きの経営」というのが一つのトレンドになっています。スタンフォード大学のチャールズ・A・オライリー教授らが書いた同じタイトルの本(『両利きの経営』東洋経済新報社)が出て、彼の長年の友人として私も解説を寄せていますが、かいつまんで説明すると、次のような内容になります。 この先も何度もイノベーションの波がやってくる。かつてIBMがマイクロソフトに覇権を奪われ、そのマイクロソフトも携帯端末の世界ではアップルに敗北し、いまはGAFAの時代になっている。イノベーションというのは、時代のチャンピオンへの挑戦ですから、ある時に隆盛を極めた企業が没落するということは往々にしてある。 オライリーたちは時代の波に飲まれずに変化しながらも生き残っている企業、組織に目をつけ、イノベーションの波に飲まれるところと、そうではない企業で何が違うのかを調べあげました。 その結論が「両利き」が大事だというもので、「探索(自社の既存の認知の範囲を超えて、遠くに認知を広げていこうという行為)と深化(探索を通じて試したことの中から成功しそうなものを見極めて、磨き込んでいく活動)のバランスが高い次元で取れていること」を意味します』、「探索」と「深化」のバランスとは面白い考え方だ。
・『深化は得意でも探索を避けてきた日本企業  つまり自社の強みを磨き深めていくことと、自分たちにはできていない新しいこと、新しい能力を探して取り込んでいくこととのバランスを取っていないといけない。 日本型企業は探索はやらずに閉じられた世界で深化することにばかりこだわって、イノベーションの機会を逸してきました。そして事業としての寿命が終わっている既存事業を引っ張って稼ぐ力を失い、リスクの大きな未来投資能力、イノベーション能力を失った結果、破壊的イノベーションの時代に入ったこの30年間、長期停滞に陥っています。 その原因は同質性と連続性にあります。要はみんな同じメンバーで、社内の出世ばかりを目指すから、探索もろくにしないで、変化も嫌う。あるいは探索と言っても野球しかやったことのない人間がにわか勉強でサッカーやテニスなどの新領域の探索を行うので、判断を誤るし、探し当てても一流の事業に昇華できない。イノベーションの波が起きる、あるいは起こすためには、組織構成員も常に変化していないといけないんです。 まれにカネボウの化粧品事業やダイエーのコンビニエンスストア事業(ローソン事業)のように探索に大成功しても、従来の本業が苦しくなると、カネボウの場合は化粧品事業が古い繊維事業の赤字補塡ほてんで疲弊し、ダイエーでは翳かげりが見えているGMS事業を救うために将来性のあるコンビニエンスストア事業を売却してしまった。 同質的で連続的な集団はどうしてもそういう意思決定に傾くんです。) ▽「両利き経営」の代表例としてのリクルート(創業経営者がいてもやはり愛着があるのは自分たちが最初に成功させた祖業ですからそういうバイアスがかかる。もしあるべき「両利き経営」ができていたら、どちらも産業再生機構案件にはなっていません。 本当にグローバルで戦える会社を目指すなら、新卒一括採用生え抜きの同じ人材で回すより、経営層はもちろん、多くの人材が周期的に入れ替わりながら、その時々の状況に合わせて最適メンバーで戦えるようにすべきです。 【田原】冨山さんのいうことはよくわかるけど、もうちょっと実例がほしい。そんなモデルでうまくやってきた日本企業はあるのかな。 【冨山】やはり代表例はリクルートでしょうね。創業者の江副浩正えぞえひろまささんは光と影がある人ですが、彼の光の部分に関して言えば、日本的経営モデルというのをほぼまったく採用しないで、リクルートという会社をつくった偉大な起業家です。 【田原】終身雇用を採用しなかった。 【冨山】そうです、ほとんどの社員は40歳までに辞めています。別に解雇するんじゃないけど、昔は30歳まで、いまだと40歳までに独立できない社員はダメだという風潮が社内にある。だからリクルートからは様々な起業家が生まれています。 【田原】僕も江副は面白いと思っていて、ずっと付き合ってきた。彼が面白いのは、学生時代、2020年に100周年を迎えた東京大学新聞(東大の学生新聞)の広告担当だったことにある。 採用広告を企業に出させるというアイデアを発明して広告をかき集めて、だいぶ儲もうけた。その資金をもとに起業したリクルートも、最初は出版・広告業だった。 【冨山】出版業として出発しながら、紙の出版がダメだとなると、あっという間に跡形もなくやめちゃうんです。気がついたら全部ネットベースに変わっていました。出版業のなかで、あれだけのデジタルシフトを短期間でやったのは、リクルートだけでしょう』、「日本型企業は探索はやらずに閉じられた世界で深化することにばかりこだわって、イノベーションの機会を逸してきました。そして事業としての寿命が終わっている既存事業を引っ張って稼ぐ力を失い、リスクの大きな未来投資能力、イノベーション能力を失った結果、破壊的イノベーションの時代に入ったこの30年間、長期停滞に陥っています。 その原因は同質性と連続性にあります」、鋭く的確な指摘だ。「あれだけのデジタルシフトを短期間でやったのは、リクルートだけでしょう」、やはり「リクルート」は並みの会社とは違う。
・『人材を囲わず“リクルート出身者”のエコシステムを作る  とにかく変わり身が早い。既存の事業をやめる勇気もすごいんですが、創業時の事業にこだわらずに、新しい事業をどんどん立ち上げているところがすごいんです。アントレプレナーシップが社員レベルにまで共有されて、現在まで続いている。こんな会社は日本だとリクルートくらいだと思います。 【田原】新しい事業をどんどん作るんだね。 【冨山】結局リクルートにおいて評価されるのは、儲かる事業を新しく作ることなんです。儲かる事業を新しく作ることが評価されるし、作った事業は、独立して続けてもらってもかまわない。だから社員はどんどんチャレンジする。 ベンチャーのタネを徹底的に探していくというモデルをつくり、長期に循環させていくというモデルは日本的経営とは相反するものです。そして、リクルートが持っている事業ポートフォリオはガンガン入れ替えていく。さらに日本的経営と真逆で、人材も囲わない。 だから、どんどん元リクルートだらけの世の中になって、会社員をやめて独立しましたというベンチャー企業の経営者に会うと、半分くらいはリクルートという状況になります。 彼らがリクルートの大きな意味でのエコシステムの中で、恩返しをしてくれるので、リクルート本体のブランド価値はどんどん上がり、それがビジネスにも好影響を与えて、リクルート自体がさらに発展して、そうなるとまた変な若者が集まってきて、おもしろいビジネスを立ち上げて……と循環するんですね。 何をやっているか分からない、何をこれからやるか分からない会社だから魅力的なんです』、「人材も囲わない。 だから、どんどん元リクルートだらけの世の中になって、会社員をやめて独立しましたというベンチャー企業の経営者に会うと、半分くらいはリクルートという状況になります」、人材の宝庫のようだ。
・『企業の持続的な成長力の源泉は新陳代謝力  私が社外取締役を務めているパナソニックも時に昭和な経営評論家やOBから「何をやっているのか分からない会社になってけしからん」と批判されます。 しかし、GAFAやマイクロソフトが何をやっている会社かスパッと言えますか? 今、ソニーや日立もテレビやウォークマンといった、モノで会社を分かりやすく語れなくなってから復活を遂げています。グローバル化とデジタル革命の破壊的イノベーションの時代、むしろ何をやっているかモノで語れる会社は危ない。社名もそういう名前はやめたほうがいいでしょう。 しかし、リクルートにしてもマイクロソフトにしても世の中に訴求している根本価値、コアコンピタンス(企業の中核となる強み)は揺らいでいない。松下幸之助によるパナソニックの経営理念「綱領」「信条」「私たちの遵奉すべき精神」には一言も「家電」も「メーカー」も出てきません。 それはある時代環境でその会社が世の中に役立つためのビジネス上の表現手段に過ぎない。時代が変われば新陳代謝するのは当たり前です。「両利き経営」の時代、企業の持続的な成長力の源泉は何と言っても新陳代謝力です。破壊的イノベーションの時代、日本的経営はその新陳代謝力において致命的に劣っている。だからG型産業では決別すべしと言っているんです。 【田原】人材が外に出ることが価値になっていって、それが人材流出じゃなくて、むしろリクルートにはプラスに働くのか。そういう発想は僕にはなかったな』、「グローバル化とデジタル革命の破壊的イノベーションの時代、むしろ何をやっているかモノで語れる会社は危ない・・・しかし、リクルートにしてもマイクロソフトにしても世の中に訴求している根本価値、コアコンピタンス(企業の中核となる強み)は揺らいでいない」、「リクルート」は「江副」氏による政治家への未公開株譲渡という犯罪を除けば、素晴らしい会社で、現在も人材を輩出し続けているようだ。

第三に、7月29日付けダイヤモンド・オンライン「ひろゆきが断言「体育会系の『痛みを耐える文化』は間違っている」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/277657
・『現在、テレビやYouTubeで圧倒的な人気を集める、ひろゆき氏。 29万部を超えるベストセラー『1%の努力』では、その考え方について深く掘り下げ、人生のターニングポイントでどのような判断をして、いかに彼が今のポジションを築き上げてきたのかを明らかに語った。 この記事では、ひろゆき氏に気になる質問をぶつけてみた(Qは聞き手の質問)』、興味深そうだ。
・『体育会が生む「負の連鎖」  Q:オリンピックが始まって、スポーツ選手の活躍に感動する場面が増えています。 ひろゆき氏:あまりイメージがないかもしれませんが、僕も体育会系の部活に長く入っていた経験があるので、スポーツ選手の頑張りには一目置いてますよ。 体育会系の人たちって、上下関係を重んじるので、その後の就職なんかも有利ですよね。商社やマスコミの会社にも多いです。理不尽に対する免疫があるんですよね。上からの無茶振りにも耐えますし、それを疑うことをしない人もいます。 基本的には良いことが多いように見えます。ただ、1つだけ気になる点はあるんですよね。 Q:なんでしょうか? ひろゆき氏:体育会系で養われる「忍耐」が、自分自身にだけ向いている場合は無害なんですが、他人に押し付けてしまうと、いわゆる「パワハラ構造」になります。 上からの重圧に自分が耐えるのは勝手に頑張ってもらえればよいのですが、「我慢したから、次はやり返す」というように考えてしまうのはよろしくない。 Q:先輩・後輩の関係は連鎖すると言われますよね。 ひろゆき氏:自分が苦労しているときに、「楽している人」がどう見えるかが大事です。「うらやましい」「自分もそうなりたい」と表面だけを見るのか、「いや、彼らもたぶんつらいはずだ」と見えない部分を想像するのか。 表面しか見ない人は、「やり返す」「同じ分だけ苦労してもらう」といった考え方をしてしまいます。 Q:連鎖を止めるには、どうすればいいですかね? ひろゆき氏:僕がよく他人に言っているのは、「頑張りを見えるようにする」ということです。見えないところで頑張るタイプの人は、承認欲求がないのなら別にそのままで大丈夫です。しかし、人から認められたいタイプなのであれば、頑張りは見えるようにしたほうがいい。 頑張りアピールって、SNSなんかではウザがられたりするんですが、それでもやっといたほうがいいと思います。アイドルや芸能人も、努力の過程を見せる時代ですから。見えることに越したことありません』、「体育会系で養われる「忍耐」が、自分自身にだけ向いている場合は無害なんですが、他人に押し付けてしまうと、いわゆる「パワハラ構造」になります」、さすが「体育会系」出身のひろゆき氏らしい鋭い指摘だ。
・『日本人は我慢が大好き?  Q:体育会系に限らず、日本人全員にも言えることなんでしょうか。 ひろゆき氏:基本的に、社会は「楽になるべき」と僕は思っています。だから、痛みや苦労は少ないほうがよい。でも、「痛みを我慢したその先に大きなご褒美が待っている」という信仰が多いですよね。宗教も、学校も、会社も。 たとえば、「おなかを痛めて産んだ赤ちゃん」という表現があります。痛みを我慢したら、その分が愛情に変わるという。これだって、いわば「宗教」のような考えです。 無痛分娩を用いて、痛くないようにしたほうがいいに決まっています。それなのに、古い考えの人は、「私はそんなことをしなかった」と言い出します。 Q:考えが古い人には、どう反論すればよいでしょうか? ひろゆき氏:簡単ですよ。その人が楽することを認めないようにすればいいだけです。 「掃除機ではなく、ほうきを使わないんですか? そうやって昔の人は苦労していましたけど、あなたはしないんですか?」などと言い返せばいいでしょう。 「だって楽だから……」という言葉が聞けたら、「じゃあ、○○だって認めたほうがいいですよね?」と言い返せます(笑)。ぜひ、みなさん、ムダな苦労や我慢を強いる人たちと戦ってみてください』、「日本人は我慢が大好き?」というのは困った傾向だ。これに対抗するのは、「その人が楽することを認めないようにすればいいだけ」とは確かに有効そうだ。 
・『大好評! ひろゆき氏の人気記事 TOP5(リンク先参照) 「1%の努力」とは何か  「99%の努力と1%のひらめき」というのは、発明家エジソンの有名な言葉だ。これの真意をみんな誤解している。本当は、「1%のひらめきがなければ、99%の努力はムダになる」ということだ。しかし、「努力すれば道が開ける」という表現で広まっている。 発明の世界では、出発点が大事だ。「光る球のようなものを作ろう」という考えが先にあって初めて、竹や金属などの材料で実験をしたり、試行錯誤を重ねたりして努力が大事になってくる。 ひらめきもないまま、ムダな努力を積み重ねていっても意味がない。耳障りのいい言葉だけが広まるのは、不幸な人を増やしかねないので、あまりよくない。 そんな思いから、この本の企画は始まった』、確かに「1%のひらめき」は多くの人が無視している。
・『「自分の頭で考える世代」の教え  僕は、1976年生まれの「就職氷河期世代」だ。 この世代の特徴は、「自分の頭で考えることができる」ということだと思う。 僕らより上の世代は、バブル世代であり、時代を謳歌してきた。会社からも守られてきただろう。 彼らの世代が、いま、早期退職でリストラの嵐に巻き込まれている。僕の世代は時代が悪かったぶん、考えることを余儀なくされ、おかげで能力が身についた。 僕より上の世代は、「昔はよかった」と話す人が多い。しかし、ちゃんとデータを見ることができれば、昭和の時代より平成のほうが、殺人事件や餓死が少なく幸せの総量は多いことがわかる。 人生で選択肢が目の前にあるときに、どういう基準で考えるのかは人それぞれ違う。そこには、「判断軸」が存在する。「考え方の考え方」みたいな部分だ。 これについては、僕の経験をもとに教えられるのではないかと思った。できるだけ長期的な目線を持ち、「よりよい選択肢をとる」というクセがつくように、根っこの部分を書いた。それが、この本だ。 本書の内容(以下はリンク先参照))』、「ひろゆき」氏が「就職氷河期世代」とは初めて知った。そのせいで、「自分の頭で考えることができる」ようになったとすれば、恩恵をフルに活かした例外的存在のようだ。私は同氏の極めて合理的な考え方には同感する部分が多い。
タグ:対談「「40歳までに退職が当たり前」リクルートこそが世界に通用する希有な日本企業である 日本的経営とは正反対の成長戦略」 田原 総一朗 冨山 和彦 「体育会系で養われる「忍耐」が、自分自身にだけ向いている場合は無害なんですが、他人に押し付けてしまうと、いわゆる「パワハラ構造」になります」、さすが「体育会系」出身のひろゆき氏らしい鋭い指摘だ。 「ひろゆきが断言「体育会系の『痛みを耐える文化』は間違っている」」 ダイヤモンド・オンライン PRESIDENT ONLINE 「マインドチェンジができない経営者は淘汰されていくだろう」、そうなってほしいものだ。 「これからの強い企業の考え方は、新しい組織形態である自律型の組織が必要となる。自律型の組織は1人ひとりが自ら考え行動できる組織だ。組織として自律的な行動ができる環境が整っているかという基準で見ていくのがいいだろう」、なるほど。「がんばるな、ニッポン。」は面白いメッセージとして記憶していた。 「全社一斉テレワークに切り替えてウェブ会議を導入してから、いかに今の働き方がいいかがわかった。ITをちゃんと活用すれば、東京でなくても働くことができるし、ネットを通じて副業も自由にできる」、その通りだろう。 「グローバル化とデジタル革命の破壊的イノベーションの時代、むしろ何をやっているかモノで語れる会社は危ない・・・しかし、リクルートにしてもマイクロソフトにしても世の中に訴求している根本価値、コアコンピタンス(企業の中核となる強み)は揺らいでいない」、「リクルート」は「江副」氏による政治家への未公開株譲渡という犯罪を除けば、素晴らしい会社で、現在も人材を輩出し続けているようだ。 「人材も囲わない。 だから、どんどん元リクルートだらけの世の中になって、会社員をやめて独立しましたというベンチャー企業の経営者に会うと、半分くらいはリクルートという状況になります」、人材の宝庫のようだ。 「日本型企業は探索はやらずに閉じられた世界で深化することにばかりこだわって、イノベーションの機会を逸してきました。そして事業としての寿命が終わっている既存事業を引っ張って稼ぐ力を失い、リスクの大きな未来投資能力、イノベーション能力を失った結果、破壊的イノベーションの時代に入ったこの30年間、長期停滞に陥っています。 その原因は同質性と連続性にあります」、鋭く的確な指摘だ。「あれだけのデジタルシフトを短期間でやったのは、リクルートだけでしょう」、やはり「リクルート」は並みの会社とは違う。 「99%の努力と1%のひらめき」 「探索」と「深化」のバランスとは面白い考え方だ。 「ひろゆき」氏が「就職氷河期世代」とは初めて知った。そのせいで、「自分の頭で考えることができる」ようになったとすれば、恩恵をフルに活かした例外的存在のようだ。私は同氏の極めて合理的な考え方には同感する部分が多い。 確かに「1%のひらめき」は多くの人が無視している。 「G型」が何を指しているのか説明がないのは残念だ。「L型産業」はどうもタクシー・トラック運転などの運輸業を指しているのだろう。「終身雇用を前提とした雇用制度の見直し」には、そうしたい企業がやればいいのであって、一斉にやるのには反対だ。 「日本人は我慢が大好き?」というのは困った傾向だ。これに対抗するのは、「その人が楽することを認めないようにすればいいだけ」とは確かに有効そうだ。 「青野」氏は「社長」としては珍しい存在として注目していたので、興味深そうだ。 「サイボウズ青野社長が説く「がんばるな」の意味 昔ながらのオジサンたちは何も変わっていない」 東洋経済オンライン (その11)(サイボウズ青野社長が説く「がんばるな」の意味 昔ながらのオジサンたちは何も変わっていない、「40歳までに退職が当たり前」リクルートこそが世界に通用する希有な日本企業である 日本的経営とは正反対の成長戦略、ひろゆきが断言「体育会系の『痛みを耐える文化』は間違っている」) 日本型経営・組織の問題点
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