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環境問題(その10)(「社内炭素価格」を取り入れる企業が増えるわけ 脱炭素の動きに対応、課題は投資判断への反映、早急な脱炭素化は日本企業や家計に「コスト増」 雇用が不安定になる可能性も、人為的な影響が主因、今こそ本気でCO2抑制を 国連報告書が指摘する「破局的温暖化」の現実味) [経済政策]

環境問題については、5月4日に取上げた。今日は、(その10)(「社内炭素価格」を取り入れる企業が増えるわけ 脱炭素の動きに対応、課題は投資判断への反映、早急な脱炭素化は日本企業や家計に「コスト増」 雇用が不安定になる可能性も、人為的な影響が主因、今こそ本気でCO2抑制を 国連報告書が指摘する「破局的温暖化」の現実味)である。

先ずは、5月13日付け東洋経済オンライン「「社内炭素価格」を取り入れる企業が増えるわけ 脱炭素の動きに対応、課題は投資判が断への反映」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/427590
・『加速する脱炭素化の動きに対応するため、「社内炭素価格」(インターナルカーボンプライシング、ICP)を採り入れる企業が少しずつ増えている。 ICPは、ビジネスの過程で排出する二酸化炭素(CO2)を各社が独自基準で金額に換算して仮想上のコストとみなし、投資判断等に組み入れる手法だ。 背景には、各国政府がCO2に価格を付けて(カーボンプライシング、CP)、排出量に応じて課税したり、排出量に上限を設けて超過分に罰金を科したりする制度が広がっている事情がある』、「各社が独自基準で金額に換算して仮想上のコストとみなし」、とはいっても、「各国政府」の「CP」や「課税」「罰金」などと整合的なのだろう。
・『炭素価格使い、環境配慮の投資判断  OECDの調査によると、すでに46の国と35の地域(アメリカの一部の州など)がCPを導入済みだが、今後一段と増えるとみられる。企業がICPで自主的にCO2の排出量を抑制することは、世界的なCP拡大への備えになる。 繊維大手の帝人は2021年1月からICPを導入し、グループでの設備投資計画に活用している。同社CSR企画推進部の大崎修一部長は「環境を優先した設備投資はコストアップになりがちで、事業部からは敬遠されることがあった。今後はICPによってCO2の排出量などを考慮した投資を後押ししていきたい」と語る。 ICPを使うと、これまでとは違った投資判断が可能になる。例えば、設備投資を検討する際に、CO2の排出量が多いが、30億円で済む設備Aと、CO2の排出量が少ないが、40億円かかる設備Bがあったとする。性能が同等なら10億円安い設備Aが選ばれるはずだが、今後はICPを加味した金額で比較した結果、設備Bが選ばれることも十分にありうる。 極端な場合、ICPの仮想コストを組み入れた将来的なキャッシュフローがマイナスになれば、「投資不適格」として設備投資自体を見送る可能性もある。) 帝人では、海外事業の一部がすでにCPの影響を受けている。環境問題で先進的なEUでは、事業内容や規模次第でCO2の排出量に上限規制が課される。規制の上限を超えた分は他社から排出権を買ってCO2の排出量を帳消ししなければならず、超過分は1トンあたり100ユーロ(約1万3200円)の罰金が科される。 帝人がドイツで展開している炭素繊維工場は、この排出上限の対象事業に該当する。排出量の上限を超過しているため、毎年、排出権を購入(金額は非公表)することで規制をクリアしているという』、「ドイツ」での事業であれば、「排出権を購入」でオフセットせざるを得ない場合もあり得るだろう。
・『脱炭素シフトで排出権価格が高騰  将来、CO2の排出に伴って企業が負担するコストはかなりのレベルまで上昇していきそうだ。CPの導入エリアが広がっているうえ、CPの対象になる事業も増えていく。 さらに、排出権も高騰する可能性が高い。2020年に1トン当たり20~30ユーロで推移していた排出権は、世界的な脱炭素化シフトの影響を受けて、足元では40ユーロ(約5300円)前後まで跳ね上がっている。 帝人はICPを1トンあたり6000円に設定するが、これは排出権の相場等を参考にして決めたものという。大崎氏は「CPの対象やエリアが広がれば排出権は奪い合いになる。罰金の100ユーロを超えることはないが、そこを上限にかなりのところまで排出権の相場は上がるのではないか」と話す。 同社はこうした見通しも念頭に、ICPを使った投資判断を積み重ねて、先回りして将来的なCO2の排出抑制を目指す。 一昔前は、企業が環境に配慮するのは社会貢献の意味合いが多かった。だが、この2~3年はCP拡大の流れが加速し、CO2抑制は企業の経営に関わる問題になっている。その結果、帝人のように経営戦略としてICPの導入に踏み切る企業が増加している。 環境省によると、2」020年3月時点での日本のICPの導入企業社数は118社でまだ少数派だが、世界ではアメリカ(122社)に次いで多い。2022年には250社程度まで増える見通しだ。 日本政府は2012年から原油や(天然)ガス、石炭などの化石燃料の使用量をCO2排出量に換算し、1トンあたり289円を徴収する地球温暖化対策税を導入しているが、それより負担の重い炭素税などはまだ取り入れていない。 環境省と経済産業省がそれぞれ検討委員会を設置してCPの本格的な導入を議論している最中だ。環境省は前向きだが、経産省や産業界からは企業の負担増を懸念する慎重論があり、先行きはまだ見通せない』、管理用に「ICP」を導入する企業が増えたのに、いまだに「慎重論」を唱える「経産省」はお粗末だ。
・『社内炭素価格をどこまで反映させるのか  そうした中、菅義偉首相は4月22日の気候変動サミットで、「2030年度にCO2等の温室効果ガスを2013年度比で46%削減することを目指す」と表明した。目標達成に向けてCP導入の可能性が一気に高まったことは間違いない。菅首相は1月18日の施政方針演説で脱炭素化への道筋として、「成長につながるCPにも取り組んで参ります」と発言している。 企業にとって悩ましいのは、日本のCPがどのようなレベルになるのかがまだ不透明な今の段階で、ICPでの仮想コストを実際にどこまで投資判断に反映させるのかだ。 2021年4月にICPを導入した化学メーカー・クラレの福島健・経営企画部長は、「国内においてはバーチャル(仮想)での数字をどこまで使うのかは今後、社内で議論が出てくるかもしれない。世界的な流れは明確なのでそれに対応する面も当然あるが、設備投資はそもそも時間が掛かるもの。今から(国内含めてCP導入が増える)将来リスクを見越して取り組む必要がある」と語る。 単純に足元の利益への影響だけを見れば、ICPは利益を目減りさせることも当然ある。また、ICPはあくまでも社内の独自基準だけに、価格の付け方から適用範囲までさまざまなやり方がある。導入する企業は、判断基準や考え方を投資家ら外部に丁寧に伝えて、企業評価にしっかりとつなげていく必要があるだろう』、「ICP」を「導入する企業は、判断基準や考え方を投資家ら外部に丁寧に伝えて、企業評価にしっかりとつなげていく必要がある」、同感である。

次に、5月25日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した法政大学大学院教授の真壁昭夫氏による「早急な脱炭素化は日本企業や家計に「コスト増」、雇用が不安定になる可能性も」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/272082
・『2030年度までにわが国は、2013年度対比で炭素排出量を46%削減する目標にチャレンジする。本邦企業は今ある技術の延長によって脱炭素を進めなければならず、負担は増大するだろう。脱炭素によってわが国の技術が生かされる面はあるものの、わが国企業が脱炭素のコストアップで競争力がそがれ、厳しい状況に追い込まれる懸念も軽視できない』、興味深そうだ。
・『コロナで傷ついた経済を立て直す「グリーン・ニューディール」  主要先進国を中心に「脱炭素化」への取り組みが加速している。具体的には、2030年度までにわが国は、2013年度対比で炭素排出量を46%削減する目標にチャレンジする。さらに、2050年までに欧州連合(EU)、英国、米国やわが国が「カーボンニュートラル」(温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすること)を目指す。 各国が脱炭素社会を目指す背景には、温室効果ガスの排出削減による気候変動への対応に加え、再生可能エネルギーや水素の利用を支えるインフラ投資などを行い、雇用を創出してコロナ禍によって傷ついた経済を立て直す「グリーン・ニューディール」がある。脱炭素への取り組みは、経済活動の制約ではなく、経済の成長を支えるという考えだ。 ただ、脱炭素社会の実現にはかなり高いハードルがあることを覚悟する必要がある。現在のわが国経済から考えると、脱炭素はわが国の多くの企業や家計にとって「コスト増加」の要因となる可能性が高い。特に、2030年度までに本邦企業は今ある技術の延長によって脱炭素を進めなければならず、負担は増大するだろう。脱炭素によってわが国の技術が生かされる面はあるものの、わが国企業が脱炭素のコストアップで競争力が削がれ、厳しい状況に追い込まれる懸念も軽視できない』、「わが国企業が脱炭素のコストアップで競争力が削がれ、厳しい状況に追い込まれる懸念も軽視できない」、確かに覚悟が必要だ。
・『街にあふれる小型の風車 人工知能(AI)が電力を管理  脱炭素への取り組みによって、わが国の社会と経済は大きなパラダイムシフトに遭遇することになるだろう。そのインパクトをイメージするため、わが国がカーボンニュートラルを達成した場合の社会と経済の様子を頭の中に描いてみたい。 エネルギー分野では、化石燃料の消費がなくなる。電力供給のために、街の至るところに小型の風車が設置され、建物の屋上や屋根には太陽光パネルが敷き詰められる。各建物には消費電力量に応じた蓄電池が設置され、バッテリーシステムは人工知能(AI)に管理される。状況に応じてAIが流通市場で電力を売買し、自律、循環かつ持続的な電力システムが運営される。再生可能エネルギーを用いた電力システムを購入、あるいはサブスクライブする(継続課金でサービスやモノを使う)ことや、家計が企業などと「排出権取引」を行うことも当たり前になる可能性がある。 産業分野では、すべての自動車が電気自動車(EV)あるいは水素を用いた燃料電池自動車(FCV)に変わるだろう。自動車には自動運転・飛行など先端技術が搭載され、「移動する居住空間」として利用される。自動車と家電などの産業の境目は曖昧になり、設計・開発と生産の分離が加速し、わが国で用いられる自動車の多くが、人件費の安い海外の工場でユニット組み立て型の方式によって生産される可能性は高まる。自動車のボディをはじめ衣類や食器、建材などさまざまな資材や製品が、木材を原料とする「セルロースナノファイバー」から生産されるケースも増えるはずだ。 そうした状況下、わが国企業の多くが水素の生成・運搬・貯蔵、および二酸化炭素の回収・貯蔵・再利用、あるいは脱炭素につながる素材の開発製造などの分野で強みを発揮している可能性がある。以上は、わが国政府が脱炭素化への取り組みによって目指す、社会と経済のあり方の一つのイメージだ』、「わが国企業の多くが水素の生成・運搬・貯蔵、および二酸化炭素の回収・貯蔵・再利用、あるいは脱炭素につながる素材の開発製造などの分野で強みを発揮している可能性がある」、「強み」がこのように残って欲しいものだ。
・『必用な温室効果ガス削減量はこれまでの約1.5倍  このように脱炭素化は世の中を大きく変える。特筆すべきはまず、コストの増加だ。要因として、化石燃料依存からの脱却と、温室効果ガスの削減強化が挙げられる。 わが国の発電は化石燃料に依存している。2019年度の発電量の75.7%が石炭、天然ガス、石油等に由来する。政府は2030年度の温室効果ガス46%削減を達成するために、太陽光など再生可能エネルギーの割合を全体の30%台後半に引き上げて、火力発電を減らしたい。その費用は主に家計の負担によってカバーされるだろう。 次に、わが国は温室効果ガスの排出削減を強化しなければならない。国立環境研究所によると、2019年度のわが国の温室効果ガス排出量は12.1億トンだった。政府は2030年度までに排出量を7.6億トンに抑えようとしているので、必要な温室効果ガスの削減量は4.5億トンだ。なお、排出量の約39%を発電などのエネルギー転換部門、25%を産業部門、18%を運輸部門が占める。 2014年度から2019年度までの間、温室効果ガスの削減量は年度平均で約3000万トンだった。2020年度の排出量が11.8億トンだったと仮定すると、今後10年の間に、わが国は温室効果ガスの排出を4.2億トン削減しなければならない。年度に直すと毎年度4200万トン、これまでの年度平均の約1.5倍の削減が必要だ。 法人企業統計調査のデータから、金融・保険を除くわが国企業の営業利益の推移を確認すると、1989年度から2019年度までの営業利益の変化率は年度平均で、製造業でプラス4%、非製造業でプラス2%である。基本的にわが国経済は自動車、機械、素材など製造業の生産性改善によって成長を実現してきた。 2030年度までとなると、あまり時間がなく、かなり早急かつ強力な取り組みが不可欠だ。企業は既存の設備の改修、技術の改良など、さらなる取り組みを進めなければならない。それは、企業のコストを増加させる』、「今後10年の間に、わが国は温室効果ガスの排出を4.2億トン削減しなければならない。年度に直すと毎年度4200万トン、これまでの年度平均の約1.5倍の削減が必要だ」、かなりの努力が必要なようだ。
・『「国境炭素税」で海外に生産移転 国内の雇用が不安定化する可能性  一方、脱炭素はわが国企業に中長期的なビジネスチャンスをもたらすことも想定される。具体的には、二酸化炭素の回収などに用いられるセラミック製品などの素材、バッテリーや環境関連機器の生産に必要な精密機械などの分野で本邦企業は競争力を発揮できるだろう。FCVや、次世代電池として注目される「全固体電池」などの分野でもわが国企業の技術力は高い。パワー半導体などニッチかつ汎用型の半導体分野でも、わが国メーカーは一定の世界シェアを持っている。脱炭素関連ビジネスを強化する総合商社もある。 問題は、経済全体で考えた場合に、脱炭素社会の実現に必要なコストが、ベネフィットを上回る可能性が高いことだ。そう考える背景には複数の要因がある。温室効果ガス削減のコストを生産性向上や技術の改善で吸収することは容易ではない。風力発電の専門家によると、欧州に比べてわが国は風況に恵まれておらず、再生可能エネルギー利用のコストは想定を上回る可能性がある。 また、EUなどが、気候変動への対応が十分ではない国からの輸入品へ課税する「炭素国境調整措置」の導入を目指している。その背景には、脱炭素を世界全体で進めることや、経済対策の財源を確保する狙いがある。この「国境炭素税」を導入する国が増えれば、最終消費者に近い場所での生産や、生産コスト低減を目指して海外に生産拠点を移す本邦企業は増え、国内の雇用環境は不安定化する可能性がある。 以上より、企業をはじめわが国経済にとって、脱炭素への取り組みにかかるコストが潜在的なベネフィットを上回る可能性は軽視できない。もちろん、個別企業単位で見れば、脱炭素を追い風に成長を実現するケースはあるだろう。しかし、現時点で、それが経済全体で発生するコストを上回る付加価値を経済全体にもたらすとは考え難い。わが国にとって、脱炭素への取り組みは「いばらの道」といっても過言ではなく、政府をはじめ経済と社会全体で相当の覚悟が必要だ』、「問題は、経済全体で考えた場合に、脱炭素社会の実現に必要なコストが、ベネフィットを上回る可能性が高いことだ。そう考える背景には複数の要因がある。温室効果ガス削減のコストを生産性向上や技術の改善で吸収することは容易ではない。風力発電の専門家によると、欧州に比べてわが国は風況に恵まれておらず、再生可能エネルギー利用のコストは想定を上回る可能性がある。 また、EUなどが、気候変動への対応が十分ではない国からの輸入品へ課税する「炭素国境調整措置」の導入を目指している」、「わが国にとって、脱炭素への取り組みは「いばらの道」といっても過言ではなく、政府をはじめ経済と社会全体で相当の覚悟が必要だ」、やはりそうか。

第三に、8月26日付け東洋経済Plusが掲載したWWFジャパン・専門ディレクターの小西 雅子氏による「人為的な影響が主因、今こそ本気でCO2抑制を 国連報告書が指摘する「破局的温暖化」の現実味」を紹介しよう。
・『世界中で異常気象とそれに伴う自然災害が多発している。このほど発表されたIPCCの最新報告書を読み解いた。 この夏、西日本から東日本にかけての広い範囲で、40度を超える猛暑や大洪水の被害が相次いでいる。世界を見渡しても、自然災害が多発している。 2021年7月のドイツとベルギーでの大規模な洪水では、濁流が家屋と車を洗い流し、100人以上が亡くなったと報告された。中国では7月の大洪水によって数百万人が被害を受けている。 さらに、北アメリカ北西部では、数日間にわたって40度を超える酷暑が続き、カナダ西部ブリティッシュコロンビア州のリトンでは同国での観測史上最高となる49.6度を記録している。 これらの自然災害は、産業革命以前と比べて約1.1度の平均気温上昇の過程で起こっているものだ。国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)が8月9日に発表した最新の報告書によれば、地球がさらに温暖化していくにつれて、こういった「極端現象」の頻度と強度が一段と増していくという』、「IPCC」がいよいよ遠慮せずにストレートに主張し始めたようだ。
・『IPCC第6次報告書の要点  今回の報告書は、今後20年以内に産業革命以前と比べて世界の平均気温は1.5度上昇し、最も低いシナリオを除いては、1.5度を超えていくと指摘した。気温上昇を1.5度に抑え、深刻な影響を防げるかどうかは、この10年間の私たちの行動次第だということも改めて示された。 IPCCは地球温暖化に関して世界中の専門家の科学的知見を集約している国連の機関で、1990年から5~7年ごとに評価報告書を発表している。前回の第5次報告書(2013年から2014年にかけて順次発表)では「温暖化は人間活動による可能性が非常に高い」としたが、7年ぶりに発表された今回の第6次評価報告書は、さらに踏み込んで「温暖化が人間活動によることは疑う余地がない」と断定した。 人類による責任が科学的にはっきりした今、これ以上の危機を避けるために科学の知見にしたがって迷いなく行動しなければならない。10月31日からイギリス・グラスゴーで開催される第26回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)に向けて、世界一丸となった行動の加速が求められている。 IPCCの最新の報告書には、私たちが知るべきポイントが3つある。第1は、地球の気候システム全体に人間活動による爪痕が見られることだ。 地球の平均気温はすでに約1.1度上昇しており、熱波や激しい降水、干ばつといった極端現象や、氷河や北極圏の海氷の後退、海面上昇による沿岸部の洪水や海岸浸食、海洋酸性化、熱帯低気圧の強大化などに、人間活動による温暖化の影響が認められると明言した。 例えば海面上昇については、近年になるほど上昇速度が高まっており、少なくとも1971年以降は人為的な影響が主要な要因だと指摘した。 最近の極端現象が温暖化によるものなのか、といった反論がこれまではよくあった。しかし、「イベントアトリビューション」という新たな研究が進み、熱波や激しい降水といった個別の異常気象に関して、地球温暖化がどの程度寄与しているかを評価できるようになった。オックスフォード大学などによる研究速報は、6月のカナダなどの猛暑は人為的な温暖化がなければ発生しなかったと結論づけている』、「イベントアトリビューション」により「個別の異常気象に関して、地球温暖化がどの程度寄与しているかを評価できるようになった」、大きな前進だ。
・『気温上昇によって極端現象も増大  ポイントの2つめは、0.5度の気温上昇差でも温暖化による影響が大きく違ってくることだ。 IPCC報告書では、将来予測としてシナリオ分析が実施されている。私たちの今後の社会の選択によって、将来の気温上昇予測は変わるからだ。 これまでどおり化石燃料に頼り、温室効果ガスを大量に排出する社会のままなのか。それとも資源を循環させながら、脱炭素エネルギー中心の社会に変えていくのかなどによって、今後排出される温室効果ガスの量は異なる。気温上昇の予測もそれらのシナリオに従って変わっていく。 第5次評価報告書では4つの異なる排出量のシナリオが紹介され、それぞれのシナリオによって21世紀末の平均気温は産業革命前に比べておよそ2度から4度上がると示された。第6次評価報告書ではさらに排出量が非常に低いシナリオがもう1つ加わり、5つの将来予測の結果が公表された。 それによると、どのシナリオでも今後20年以内に平均気温が1.5度上昇し、非常に低い排出量のシナリオを除いては、さらに気温が上昇していくことが示された。 気温の上昇に応じて、極端現象が増大していくことも明示された。熱波や激しい降水の頻度や強度は、追加的に気温が0.5度上昇するだけで識別可能な増加が見られる。50年に一度の記録的な熱波が起きる頻度は、1.5度の気温上昇では産業革命前に比べて8.6倍、2度では13.9倍、4度では39.2倍にも達することが示された。 4度上昇するシナリオでは、50年に一度の熱波が毎年のように発生することになる。海面上昇は、1.5度に抑える非常に低い排出量のシナリオでも2100年には28~55センチメートル上昇し、4度上昇するシナリオでは最大1メートルに達する。もはや海面上昇は止めることができず、いずれのシナリオでも、今後何世紀にもわたって海面がさらに上昇し続けることも示された。 私たちはもはや後戻りできないところまで地球環境を変化させており、最悪の危機を避けるために残された道は、今後の気温上昇を1.5度に抑えることだ。 3つめは、1.5度に抑えるためには今後10年の行動がカギであることだ。 今後の気温の上昇幅は、過去からの累積の二酸化炭素(CO2)排出量にほぼ比例する。主要な温室効果ガスであるCO2は安定したガスであり、海洋や陸地生態系に吸収されない限り大気中に貯まっていく。今後の気温上昇を一定レベルに抑えるには、今後CO2の排出量に上限枠が必要になる。 どのシナリオでもCO2などの排出量をいずれゼロにしなければならず、いつゼロにするかによって今後の気温上昇予測は変わる。 今回の報告書では、累積CO2排出量1兆トンごとに約0.45度、平均気温が上がることが示された。人類はすでに約2兆4000億トン排出しているため、1.5度に抑えるために残された排出可能量は4000億トン程度しかない。この上限枠を「炭素予算」と呼ぶが、CO2は現在、年約350~400億トンペースで排出されているため、このままならば、あと10年で1.5度の炭素予算を使い切ってしまうことになる。 つまり、CO2排出量をただちに急減させ、貴重な炭素予算を使い切らないようにしながら、2050年ごろまでには排出量をゼロに持っていかなければ、1.5度の気温上昇に抑えることはできなくなってしまうのだ。もちろんメタンなどCO2以外の温室効果ガスも急減させる必要がある』、「人類はすでに約2兆4000億トン排出しているため、1.5度に抑えるために残された排出可能量は4000億トン程度しかない。この上限枠を「炭素予算」と呼ぶが、CO2は現在、年約350~400億トンペースで排出されているため、このままならば、あと10年で1.5度の炭素予算を使い切ってしまうことになる」、「炭素予算」は「あと10年で1.5度の炭素予算を使い切ってしまう」、衝撃的だ。
・『COP26で問われる具体的な削減計画  1.5度に抑えることは容易ではないが、私たちの選択次第で社会変革も可能であることもわかった。欧米や日本、韓国などの各国はそろって2050年ゼロを掲げている。2050年ゼロに至るまでに貴重な1.5度の炭素予算を使い切らないようにするためには、2030年に向かって現在の排出量をほぼ半減させていく必要がある。実際、欧米や日本は2030年に温室効果ガス排出量をほぼ半減させる目標を掲げた。 COP26で最大の焦点は、各国の2030年に向けた「国別削減目標」(NDC)が科学の知見に照らして十分な削減量となっているかどうかだ。そして目標を掲げるだけではなく、実際にそれを実現する計画が提出されるかどうか。 パリ協定事務局へ提出する国別削減目標には、具体的な削減計画も含まれていなければならない。日本の2030年目標(正確には2030年度目標)は欧米に比べてやや見劣りする2013年度比46%削減であるが、「50%の高みを目指す」と表明しており、今回の報告書をきっかけにさらに50%以上を目指してもらいたい。 そして日本にとって最も重要なことは、今後9年間で46%以上の削減を確実にするエネルギー計画づくりだ。排出量の多い石炭火力の廃止計画を立て、出遅れている再生可能エネルギーを最大限に導入、そして省エネルギーの取り組みを野心的に深掘りすることである』、「日本」は「石炭火力の廃止計画を立て、出遅れている再生可能エネルギーを最大限に導入、そして省エネルギーの取り組みを野心的に深掘りすることである」、同感である。
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