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原発問題(その18)(「使用済み核燃料の再処理に経済合理性はない」 著名科学者が警告する核燃料サイクルの不合理、データで明らかになった「詰め込み貯蔵」の実態 あふれる原発の核燃料プール 火災事故の危険性、賠償額「114万円」のはずが「11万円」に減額 東電の農家賠償で「算定間違い」多発の根本原因) [国内政治]

原発問題については、5月7日に取上げた。今日は、(その18)(「使用済み核燃料の再処理に経済合理性はない」 著名科学者が警告する核燃料サイクルの不合理、データで明らかになった「詰め込み貯蔵」の実態 あふれる原発の核燃料プール 火災事故の危険性、賠償額「114万円」のはずが「11万円」に減額 東電の農家賠償で「算定間違い」多発の根本原因)である。

先ずは、9月29日付け東洋経済Plus「「使用済み核燃料の再処理に経済合理性はない」 著名科学者が警告する核燃料サイクルの不合理」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/28316#contd
・『自民党総裁選でにわかに注目を集めている核燃料サイクル政策の是非。核物質問題の世界的権威に聞いた。 核燃料サイクル政策を続けるべきか否かは、次期首相を決める自民党総裁選でも主要な争点の1つになっている。 総裁選の有力候補である河野太郎・行政改革担当相は核燃料サイクル政策の見直しを訴え、「核のゴミ処分のあり方をテーブルに載せて議論しなければならない」と言及している。 核燃料再処理やプルトニウムなど核物質の問題に詳しいプリンストン大学のフランク・フォンヒッペル名誉教授に、日本の核燃料サイクル政策の是非についてインタビューした(書面インタビュー。インタビューに際しては、インターネット情報サイト「核情報」主宰者の田窪雅文氏の協力を得た。Qは聞き手の質問、Aはフォンヒッペル氏の回答)』、興味深そうだ。
・『河野氏の「再検討発言」は大歓迎  Q:自民党総裁選で河野氏が核燃料サイクル政策の見直しを訴えています。六ヶ所再処理工場(青森県六ヶ所村)の稼働を前に、与党の有力者からこうした発言が出てきたことについてどう受け止めていますか。 A:私は、この問題について河野氏と話をしたことがある。河野氏が日本の核燃料サイクル政策について再検討すべきだと述べていることは大歓迎だ。 Q:河野氏は新著『日本を前に進める』の中で、「高速増殖炉の開発が頓挫し、核燃料サイクルは行き詰まっている」「使用済み核燃料を再処理して余分なプルトニウムを取り出す必要はない」「再処理で取り出したプルトニウムは、核拡散の危険性を高める」などと述べています。これらの主張の当否についてどのようにお考えですか。 A:これらすべての点において河野氏に同意する。 Q:世界における再処理の現状は。 A:今日、使用済み核燃料の再処理を実施している国は、6カ国まで減っている。中国、フランス、インド、日本、ロシア、そしてイギリスだ。 イギリスは2022年に再処理の完全中止を予定している。再処理ビジネスの顧客である国内外の電力会社が契約更新を拒否したためだ。中国、インド、ロシアは、高速増殖炉計画に必要なプルトニウムを生産するために再処理をしていると説明している。 しかし、ロシアの原子力複合企業ロスアトムは、同社の3基目の高速増殖原型炉の運転開始を早くても2030年代まで延期するとしている。中国とインドは、核兵器用にプルトニウムを生産すると同時に、発電もする原子炉として原型炉を建設しているとみられる。 フランスと日本は、再処理で取り出したプルトニウムをウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料に加工し、通常の原発(軽水炉)で利用している。日本でもフランスでも再処理コストを含めると、MOX燃料の製造コストは通常の原発で使う低濃縮ウラン燃料の10倍レベルとなると推定されている。 (フランク・フォンヒッペル名誉教授の略歴はリンク先参照)』、「フランスと日本は、再処理で取り出したプルトニウムをウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料に加工し、通常の原発(軽水炉)で利用している。日本でもフランスでも再処理コストを含めると、MOX燃料の製造コストは通常の原発で使う低濃縮ウラン燃料の10倍レベルとなると推定」、こんなに高コストとは、飛んでもない話だ。
・『インドの核実験と再処理政策の見直し  Q:アメリカは最初は再処理推進の先頭に立っていましたね。 A:再処理のもともとの目的は、通常の原発の使用済み核燃料からプルトニウムを取り出して「増殖炉」の燃料にすることにあった。プルトニウムを燃料として使いながら、使った以上のプルトニウムを生産するというものだ。 天然ウランの中に豊富に含まれている連鎖反応をしないウラン238に中性子を当てて核変換させ、プルトニウムにするための原子炉だ。背景にあったのは、連鎖反応を起こすウラン235は天然ウランの中に0.7%しか含まれておらず、これを利用するだけでは原子力発電は維持できないという資源制約上の心配だ。 Q:フォンヒッペルさんはアメリカが1970年代に再処理政策を取りやめる際の政策決定に関わりました。 A:私は、1977年にカーター政権がアメリカの核燃料政策について再検討した際、アドバイザーの1人だった。当時のアメリカの政策は現在の日本と同じだった。カーター大統領は、再処理には経済的合理性がないし、プルトニウムは核兵器に使えるため、再処理でプルトニウムを取り出すことは他の国々にとって危険な手本となってしまうとの結論に達した。 インドはその直前の1974年にこのことが現実であることを世界に示した。アメリカの援助を得て、プルトニウム増殖炉計画用に分離したプルトニウムを使って核実験を行ったのだ。これに大変な衝撃を受けたことが再処理政策の見直しにつながった。 この頃までには、当初予想されていたよりずっと大量のウラン資源が存在し、高速増殖炉は予想よりも実用化が難しいことがわかってきていた。ウラン不足解消のために巨額の費用をかけてプルトニウムを取り出して使う必要はないということだ。 Q:カーター大統領の決定後、どうなりましたか。 A:カーター大統領の政策は当初、大変な物議を醸した。レーガン大統領は1981年に大統領に就任後、この政策を白紙に戻し、再処理するか否かはアメリカの電力会社次第だと発表した。しかし、大統領が同時に、連邦政府は再処理に補助金を出さないと発表した結果、アメリカの電力会社は再処理しないことを決定した。そして、使用済み核燃料の直接処分のために地下処分場を建設する費用を政府に支払うことに同意した。 Q:日本が六ヶ所再処理工場の稼働に踏み切った場合の影響は。 A:日本は再処理の方針を表明している唯一の非核兵器保有国だが、1970年代と1980年代にアメリカが日米原子力協定に基づいて日本に再処理を認めて以来、韓国も同様に再処理を認めるよう、アメリカに要求してきている。韓国国民の半数以上が北朝鮮に対する抑止力として韓国も核兵器を持つべきだと考えているため、これは厄介な問題だ。 Q:日本ではエネルギー政策の観点から、発電用として再処理が進められようとしています。使用済み核燃料を再処理せずに地下に埋めて直接処分したほうがよいと考える理由はどこにありますか。 A:アメリカの電力会社は、再処理とプルトニウムの再利用は経済的でないと理解した。日本の原子力委員会が2004年と2011年に設置した専門家委員会も、直接処分路線のほうが再処理路線より安くつくとの結論に達している。 しかし、日本の再処理推進派は、別の再処理正当化論を持ち出している。いわゆる核のゴミの「有害度低減」(無毒化)のために必要だという主張だ。 アメリカでも、高速中性子炉の推進派は、再処理を使用済み核燃料処分戦略の一部とすべきだと主張している。プルトニウムは寿命が長く、地下処分した使用済み核燃料の有害度の低減に必要な期間を長くする。だから、再処理でこのプルトニウムを取り出して高速中性子炉で核分裂させて、寿命の短い核分裂生成物にするべきだとの主張だ。 Q:その主張に合理性はありますか。 A:1990年代にアメリカ科学アカデミーは、この問題について研究するよう依頼された。「プルトニウムは、深地下の使用済み核燃料処分場で発生する長期的毒性(有害度)の支配的要因ではない」というのがその研究の結論だった。なぜかというと、プルトニウムは比較的水に溶けにくく、地表に到達するのに時間がかかるうえ、口から体内に取り込まれても胃腸から簡単に吸収されて他の臓器に運ばれることにはならないからだ。 一方、ヨウ素129(放射能の半減期は約1600万年)のような長寿命の核分裂生成物が毒性を支配するとみなされた。しかし、ヨウ素は吸着が難しいことから、フランスの再処理工場で分離されたヨウ素129のほとんどは海に放出されている。青森県の六ヶ所再処理工場はフランスの設計により建設されており、同じような問題がある。 フランスの「放射線防護原子力安全研究所(IRSN)」とスウェーデンの(使用済み燃料処分場の建設・運転に責任を負う)「核燃料・廃棄物管理会社(SKB)」による大掛かりな研究も、アメリカ科学アカデミーと同じ結論に達している』、「ヨウ素129・・・のような長寿命の核分裂生成物が毒性を支配するとみなされた。しかし、ヨウ素は吸着が難しいことから、フランスの再処理工場で分離されたヨウ素129のほとんどは海に放出されている。青森県の六ヶ所再処理工場はフランスの設計により建設されており、同じような問題がある」、福島第一原発でのトリチウムも「ヨウ素」と同じように「吸着が難しく」、「フランスの再処理工場」では「ほとんどは海に放出」。日本政府はトリチウムを含んだ汚染水も「海洋に放出」したいようだが、漁民が風評被害が激化すると反対している。
・『再処理路線はなぜ進められているのか  Q:再処理見直しに関するアメリカの教訓は。 A:私は、1993年に東京電力、関西電力など電力会社の核燃料担当者らと会い、「もし選択肢が与えられるのであれば再処理を選択するかどうか」について聞いてみた。答えは「ノー。だけど、われわれは(政策のわなに)はめられてしまっている」というものだった。 Q:合理性がないのになぜ、再処理路線が進められているのでしょうか。 A:再処理を正当化する側にとっての最後のよりどころは、再処理工場の運転を開始しなければ、使用済み核燃料を送り出せず、原発は止まってしまうという論理だ。これは他の国々がやっているように、乾式貯蔵方式を導入すれば解決できる問題だ。 アメリカでは、ほとんどすべての原発で使用済み核燃料プールが満杯になっていて、危険な稠密貯蔵状態にある。そのため、古い使用済み核燃料は敷地内で乾式貯蔵容器に入れて保管されている。これはプール貯蔵より安全だ。 乾式貯蔵のコストは決して高くない。敷地内にある原子炉すべての廃止措置(いわゆる廃炉)が完了するまでであれば、電力会社にとって問題にはならない。廃止措置が完了となると、電力会社としては、敷地を他の目的で利用しやすくするために、使用済み核燃料を集中貯蔵施設に搬出したいと考える。 アメリカの原子力委員会は最近、テキサス州の使用済み核燃料集中貯蔵計画に対し、建設・操業許可を出した。ニューメキシコ州でも別の施設の建設に許可を出すと見られている。しかし、放射性廃棄物の絡んだ問題は、アメリカでも日本と同様、政治的に論議を呼んでいる。 青森県の六ヶ所再処理工場や、フィンランド、スウェーデン、イギリスの使用済み核燃料処分場の場合と同様、地元のコミュニティーは雇用を求めるからこのような施設を受け入れようとする。しかし、州内の別の場所で政治的反対が生じる。2つの州の集中貯蔵計画がどうなるかは今後の展開を待つしかない』、「フィンランド、スウェーデン、イギリスの使用済み核燃料処分場の場合と同様、地元のコミュニティーは雇用を求めるからこのような施設を受け入れようとする。しかし、州内の別の場所で政治的反対が生じる。2つの州の集中貯蔵計画がどうなるかは今後の展開を待つしかない」、欧米でも地元と他の場所での利害対立が起きているようだ。今後の展開を注目したい。

次に、10月1日付け東洋経済Plus「データで明らかになった「詰め込み貯蔵」の実態 あふれる原発の核燃料プール、火災事故の危険性」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/28319
・『全国にある原発のうち、4割超の原発で使用済み核燃料を収納するプールが満杯に近い状態になっている。詰め込み貯蔵による大規模事故の危険が高まっている。 全国に33基ある原子力発電所のうち14基で使用済み核燃料を収納するプール施設が満杯に近い状態になっている。 核燃料サイクル政策の下、使用済み核燃料は、青森県六ヶ所村の再処理工場に送ることになっているが、この工場が25回の完成延期を繰り返すなど一向に稼動していないためだ。 以前、搬出先として使われていた東海再処理工場(茨城県東海村)は廃止作業が進み、イギリスとフランス両国への再処理委託契約に基づく搬出もそれぞれ1997年と2001年に終了している。そのため、このプールの満杯問題は、使用済み核燃料の送り先を確保するために一刻も早く六ヶ所再処理工場を動かせという政府や地元からの圧力になっている』、「原発の核燃料プール」で「火災事故の危険性」、現在でも大変危険な保管方法を取っていることを改めて知り、憤りを覚えた。
・『14原発で貯蔵能力の80%超に  立憲民主党の宮川伸衆院議員が請求した原子力規制委員会の開示資料を基に、原子力資料情報室の松久保肇事務局長とインターネット情報サイト「核情報」主宰者の田窪雅文氏がまとめたところ、「管理容量」に対する使用済み核燃料の実際の貯蔵割合を示す「管理容量比」が14原発で80%以上に達していることがわかった。 管理容量とは原子炉の定期点検などに伴って必要な空きスペースなどを考慮したうえで実際に保管(貯蔵)できる容量を示したもので、この比率が大きいほど貯蔵能力に余裕がないことを意味する。 だが、もっと大きな問題は、使用済み核燃料がもともとの想定の何倍もの密度で詰め込まれていることだ。福島第一原発4号機で心配されたように、このような状態のプールで水がなくなっていくと、大量の放射性物質の放出を伴う大事故に至る可能性があるのだ。 1970年代に建てられた原発では当初、使用済み核燃料は数年間貯蔵プールで保管した後、再処理工場に送ることが想定されていた。このため、これらの貯蔵プールは、1~2炉心分(注 1炉心分とは、原子炉内にある全燃料=全炉心の1倍分を指す)程度しか収納できない設計になっていた。このことは、関西電力・高浜原発1、2号機やすでに運転が停止されている日本原電・敦賀原発1号機など、とくに古くからある原発で明白だ。 プールが満杯になり、原発の運転を中止せざるをえない状況になるのを防ぐために実施されてきた対策が、燃料貯蔵ラック(棚)の増設や「リラッキング」(詰め直し)と呼ばれる方法だ。後者は、臨界防止対策を施したうえで、燃料集合体同士の間隔を狭めて、プール内に使用済み核燃料をぎっしり詰め込むやり方だ。原発33基のうち25基でラックの増設やリラッキングが実施されている。 一方、北海道電力・泊原発1~3号機や関電・大飯原発3、4号機など、比較的新しい原発の場合、稼働当初から、全貯蔵容量が大きめに設定されている。これは、プールの面積を大きくしたためではなく、当初から核燃料をプールにぎっしり詰め込む「稠密貯蔵」を想定していたことによる。 田窪氏は「稠密貯蔵は危険なやり方だ。巨大地震やテロ行為など何らかの理由でプールの水が失われた場合、燃料棒の温度が上がり、燃料被覆管(ジルコニウム合金)が発火する。そして最終的には大規模なプール火災に至り、その過程で生じた水素による水素爆発で建屋の上部が損壊し、放射性物質がそのまま大気中に出ていって、大量の放射能汚染をもたらす可能性がある」と指摘する。 プール火災の危険性が現実味を帯びたのが、2011年3月11日に起きた東京電力・福島第一原発の事故だった。事故当時、4号機の使用済み核燃料プールは、定期点検のために炉心から取り出したばかりの使用済み核燃料などでほぼ満杯状態にあった。そこに原発事故による全電源喪失が発生し、使用済み核燃料プールの冷却が一時不能になった』、「プールが満杯になり、原発の運転を中止せざるをえない状況になるのを防ぐために実施されてきた対策が、燃料貯蔵ラック(棚)の増設や「リラッキング」(詰め直し)と呼ばれる方法だ。後者は、臨界防止対策を施したうえで、燃料集合体同士の間隔を狭めて、プール内に使用済み核燃料をぎっしり詰め込むやり方だ。原発33基のうち25基でラックの増設やリラッキングが実施されている」、「田窪氏は「稠密貯蔵は危険なやり方だ。巨大地震やテロ行為など何らかの理由でプールの水が失われた場合、燃料棒の温度が上がり、燃料被覆管・・・」、が発火する。そして最終的には大規模なプール火災に至り、その過程で生じた水素による水素爆発で建屋の上部が損壊し、放射性物質がそのまま大気中に出ていって、大量の放射能汚染をもたらす可能性がある」と指摘」、「稠密貯蔵」のようなその場しのぎの方法で、リスクが大きくなっているとは、改めて恐ろしい気がする。
・『最悪想定では避難人口は3000万人に  プリンストン大学のフランク・フォンヒッペル名誉教授らの試算によると、福島第一原発4号機でプール火災が発生していれば、海に向かって風が吹いていた場合(2011年4月9日に火災が発生したと仮定)でも、放射性物質の拡散により約100万人が強制避難を余儀なくされていたという。 さらに風が陸向きだった場合(同年3月19日に火災が発生したと仮定)、影響ははるかに深刻になっていた。首都圏全体が高濃度の放射性物質に汚染されることにより、強制避難人口は約3000万人にのぼったという。 こうした指摘は決して絵空事ではない。2011年3月に菅直人首相に要請されて原子力委員会の近藤駿介委員長(いずれも当時)が提出した資料の中でも、プールの冷却不能によって使用済み核燃料の破損・溶融と原子炉格納容器内の燃料の溶融が重なることで、最悪の場合には首都圏が強制移転エリアに含まれる可能性があったという。その被害の深刻度は、チェルノブイリ事故をはるかに上回るものだ。 このような惨事を防ぐために、フォンヒッペル氏は「使用済み核燃料プールでの稠密貯蔵を早急に見直し、乾式貯蔵方式(分厚い鋼製容器を用いた自然空冷方式)に移行すべきだ」と指摘する。プールで5年間ほど冷やした使用済み核燃料は、古いものから順に乾式貯蔵に移すという考え方だ。 原子力規制委員会の田中俊一・前委員長も2016年2月3日の臨時会議で、「リラッキングなどという考え方はやめるべきで、ドライキャスク(乾式貯蔵容器)に保管するほうがより安全。世界的にもそれが普通だ」との見方を示している。 乾式貯蔵は使用済み核燃料の再処理をやめたアメリカやヨーロッパなどの原発で一般的になっているほか、日本でも日本原電・東海第二原発や福島第一原発などで小規模ながら実施されている。また、青森県むつ市において、再処理までの中間貯蔵という名目で、大規模な乾式貯蔵施設が建設中だ。 ただ、政府や電力会社は六ヶ所再処理工場の運転を早く開始しなければ原発が止まってしまうと強調してきたため、原発敷地内外の乾式貯蔵の本格的導入に本腰を入れることができないのが実情だ』、「福島第一原発」事故では、「プールの冷却不能によって使用済み核燃料の破損・溶融と原子炉格納容器内の燃料の溶融が重なることで、最悪の場合には首都圏が強制移転エリアに含まれる可能性があったという。その被害の深刻度は、チェルノブイリ事故をはるかに上回るものだ」、たまたま幸運に恵まれたに過ぎないようだ。「乾式貯蔵は使用済み核燃料の再処理をやめたアメリカやヨーロッパなどの原発で一般的になっている」、「政府や電力会社は六ヶ所再処理工場の運転を早く開始しなければ原発が止まってしまうと強調してきたため、原発敷地内外の乾式貯蔵の本格的導入に本腰を入れることができないのが実情だ」、情けない限りだ。
・『コストは6分の1で済む  むつ市の貯蔵施設の事業費などを基にした田窪氏の試算によれば、「乾式貯蔵コストは総発電コストの1%程度。コストはさほど高くない」という。旧通産省総合エネルギー調査会原子力部会の研究結果(1998年)によれば、同じ容量の使用済み核燃料プールの建設コストは乾式貯蔵施設とほぼ同程度とみられるが、水による冷却および維持・監視のためのコストがかさむ。このため、乾式貯蔵はプール貯蔵の約6分の1のコストで済むという。 乾式貯蔵に迅速に移行すれば、使用済み核燃料の行き先確保のために再処理工場を運転する必要はなくなる。原発の敷地内外に乾式貯蔵施設の用地を確保できれれば済むからだ。地元との調整など課題はあるが、もっとも安全な保管方法だ。 再処理工場とMOX燃料(ウラン・プルトニウム混合酸化物燃料)製造工場の総事業費は約16兆円にのぼるが、「いま中止すれば、使用済み核燃料の追加的貯蔵やMOX燃料に代わる濃縮ウラン燃料製造費などを差し引いても、今後約10兆円の節約になる」と田窪氏は試算する。 核兵器に利用可能なプルトニウムを増やしてしまうという面を抜きにしても、安全性および経済性の両面から、核燃料サイクル計画の見直しと乾式貯蔵導入の本格化を真剣に考える必要がある』、「乾式貯蔵はプール貯蔵の約6分の1のコストで済む」、「乾式貯蔵に迅速に移行すれば、使用済み核燃料の行き先確保のために再処理工場を運転する必要はなくなる」、となれば、「安全性および経済性の両面から、核燃料サイクル計画の見直しと乾式貯蔵導入の本格化を真剣に考える必要がある」、その通りだ。

第三に、10月23日付け東洋経済Plus「賠償額「114万円」のはずが「11万円」に減額 東電の農家賠償で「算定間違い」多発の根本原因」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/28545
・『福島の原発事故で被害を受けた果樹農家への賠償が、本来支払うべき金額を大幅に下回って決められていたことが判明した。 福島第一原子力発電所の事故で被害を受けた果樹農家への東京電力ホールディングスによる賠償が、本来支払うべき金額を大幅に下回って決められていたことがこのほどわかった。東電によれば、10件の農家について算定間違いが判明し、本来払うべき金額より合計で約500万円少なく見積もられていたという。 本来、114万円の賠償が支払われるはずであるのに、わずか11万円しか提示されなかった農家や、賠償そのものが認められなかった農家もある。東電は「故意ではない」としているが、「きちんとした説明もなく不誠実だ」(梨農家)と怒りの声が上がっている』、「東電」の割には、なにかみみっちい話だ。
・『なぜ算定間違いが続発したのか  算定の誤りは、被害を受けた農家が加入する福島県農民運動連合会(福島県農民連)による指摘で判明した。 東電の賠償の仕組みでは、取引量の少ない月に野菜や果樹の価格が高騰したり、逆に大幅に下落していた場合、原発事故前の過去3年間の平均単価を100%として、その100%という数値を当てはめて賠償額を一律に算定している。一方、相場変動が小さい通常の月については、実際の相場に基づいた数値である全国平均価格変動係数を適用して賠償額を決めている。 ところが東電は、梨やぶどうの最盛期で取引量が多い月であったにもかかわらず、価格が高騰している事実だけをとらえて異常値であると判断。213%や240%といった全国平均価格変動係数の実数値ではなく、100%という便宜的な数値を適用した。その結果、賠償額が本来の金額と比べて著しく少ないケースやゼロとされる事例が相次いだ。 問題が発覚したのは、福島県農民連の担当者が東電に問いただしたことがきっかけだった。 6月22日、東電の計算に疑問を抱いた福島県農民連の担当者が指摘。東電は8月31日、賠償額の計算の仕方に誤りがあったと認めた。しかし、東電は経済産業省にその事実を速やかに報告せず、経産省が誤りの事実を知ったのは9月中旬になってからのことで、福島県農民連から問題があるとの情報を寄せられたことがきっかけだった。 一方、農家がJAふくしま未来を通じて賠償請求をする「団体賠償」のケースでは算定間違いはなかったという。「同じ社内手続きが行われているはずなのに、なぜ団体請求と個別農家による請求とで異なった対応がされたのか、理解できない」と福島県農民連の佐々木健洋事務局長は話しているが、東電は明確な説明をしていない。 福島県伊達市の果樹農家、野田吉男さん(66)は、「東電から通知されたぶどうに関する2020年の賠償額はゼロ円だった」という。前年の約50万円から激減したが、「まさか東電が計算を間違うはずはない」と思い、合意書にサインした。野村さんは後に算定間違いの事実を知り、「東電への不信感で頭がいっぱいだ。きちんとした説明を求めたい」と話す』、「経産省が誤りの事実を知ったのは・・・福島県農民連から問題があるとの情報を寄せられたことがきっかけ」、「福島県農民連」のチェックがなければ、問題は闇のままに葬られていたようだ。
・『あいまいな説明に終始する東電  計算間違いの原因について、東電は「全国平均価格変動係数を算定した結果、200%を超過した値が出たにもかかわらず算定した結果を(異常値として)機械的に扱ってしまった」ことだと説明している。 東電では毎月の相場に基づいて適用する係数の妥当性について、「実務を担当するグループのマネージャーを含め、複数人で確認していた」(同社)ものの、数字の適用の仕方の誤りについて誰も気づかなかったという。一方、なぜ個別農家の請求に限って誤りがあったのかについての明確な説明は得られなかった。 東電は今後の対応について、「是正対象となる農家に連絡を取ったうえで速やかに正しい金額をお支払いする。(10件以外の農家への周知は)お詫びのお知らせとともに訂正した数値をホームページに掲載することを考えている」と説明している。ただ、農家の中には「賠償は期待できない」と思い込み、請求せずに諦めている農家も少なくないとみられる。 なお、再発防止策について東電は「今後は請求内容を確認する部署の品質管理を担当する管理職と、別部署のグループマネージャーが確認を行うことを考えている」としている。 福島第一原子力発電所では、放射性物質を吸着して外部への漏洩を防ぐことを目的とした排気フィルターを2年前に点検したところ、対象箇所25カ所のうちすべてで破損が見つかり、ひそかに交換していた。東電は2021年9月の記者会見で質問を受けるまでその事実を公表しなかった。 2月13日の福島県沖を震源とする地震の際にも、それ以前に地震計が故障したまま放置されていたことが判明し、安全への姿勢が批判されている。そして今般、賠償でも新たな不祥事が判明した。 福島第一原発をめぐっては現在、放射性物質を含むALPS(多核種除去設備)処理水の海洋放出が計画されている。しかし、その際の風評被害に対する賠償がきちんと行われるかどうかをめぐり、賠償スキームの実効性に疑問が持たれている。 そうした中で新たに発覚した今回の問題は、東電に対する不信感をいっそう高めている。東電は「最後の1人まで賠償を貫徹する考えに変わりはない」と言うが、曖昧な説明に終始するようでは信頼回復もままならない』、「東電」のダメぶりには食傷気味だが、今回のもコメントする気にもなれない。こんな少額でも、賠償額を圧縮することが評価されるような文化があるのだろう。徹底的な反省と再発防止策が必要だ。
タグ:原発問題 (その18)(「使用済み核燃料の再処理に経済合理性はない」 著名科学者が警告する核燃料サイクルの不合理、データで明らかになった「詰め込み貯蔵」の実態 あふれる原発の核燃料プール 火災事故の危険性、賠償額「114万円」のはずが「11万円」に減額 東電の農家賠償で「算定間違い」多発の根本原因) 東洋経済Plus 「「使用済み核燃料の再処理に経済合理性はない」 著名科学者が警告する核燃料サイクルの不合理」 「フランスと日本は、再処理で取り出したプルトニウムをウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料に加工し、通常の原発(軽水炉)で利用している。日本でもフランスでも再処理コストを含めると、MOX燃料の製造コストは通常の原発で使う低濃縮ウラン燃料の10倍レベルとなると推定」、こんなに高コストとは、飛んでもない話だ。 「ヨウ素129・・・のような長寿命の核分裂生成物が毒性を支配するとみなされた。しかし、ヨウ素は吸着が難しいことから、フランスの再処理工場で分離されたヨウ素129のほとんどは海に放出されている。青森県の六ヶ所再処理工場はフランスの設計により建設されており、同じような問題がある」、福島第一原発でのトリチウムも「ヨウ素」と同じように「吸着が難しく」、「フランスの再処理工場」では「ほとんどは海に放出」。日本政府はトリチウムを含んだ汚染水も「海洋に放出」したいようだが、漁民が風評被害が激化すると反対している。 「フィンランド、スウェーデン、イギリスの使用済み核燃料処分場の場合と同様、地元のコミュニティーは雇用を求めるからこのような施設を受け入れようとする。しかし、州内の別の場所で政治的反対が生じる。2つの州の集中貯蔵計画がどうなるかは今後の展開を待つしかない」、欧米でも地元と他の場所での利害対立が起きているようだ。今後の展開を注目したい。 「データで明らかになった「詰め込み貯蔵」の実態 あふれる原発の核燃料プール、火災事故の危険性」 「原発の核燃料プール」で「火災事故の危険性」、現在でも大変危険な保管方法を取っていることを初めて知り、憤りを覚えた。 「プールが満杯になり、原発の運転を中止せざるをえない状況になるのを防ぐために実施されてきた対策が、燃料貯蔵ラック(棚)の増設や「リラッキング」(詰め直し)と呼ばれる方法だ。後者は、臨界防止対策を施したうえで、燃料集合体同士の間隔を狭めて、プール内に使用済み核燃料をぎっしり詰め込むやり方だ。原発33基のうち25基でラックの増設やリラッキングが実施されている」、「田窪氏は「稠密貯蔵は危険なやり方だ。巨大地震やテロ行為など何らかの理由でプールの水が失われた場合、燃料棒の温度が上がり、燃料被覆管・・・」、が発火す 「福島第一原発」事故では、「プールの冷却不能によって使用済み核燃料の破損・溶融と原子炉格納容器内の燃料の溶融が重なることで、最悪の場合には首都圏が強制移転エリアに含まれる可能性があったという。その被害の深刻度は、チェルノブイリ事故をはるかに上回るものだ」、たまたま幸運に恵まれたに過ぎないようだ。「乾式貯蔵は使用済み核燃料の再処理をやめたアメリカやヨーロッパなどの原発で一般的になっている」、「政府や電力会社は六ヶ所再処理工場の運転を早く開始しなければ原発が止まってしまうと強調してきたため、原発敷地内外の乾式 「乾式貯蔵はプール貯蔵の約6分の1のコストで済む」、「乾式貯蔵に迅速に移行すれば、使用済み核燃料の行き先確保のために再処理工場を運転する必要はなくなる」、となれば、「安全性および経済性の両面から、核燃料サイクル計画の見直しと乾式貯蔵導入の本格化を真剣に考える必要がある」、その通りだ。 「賠償額「114万円」のはずが「11万円」に減額 東電の農家賠償で「算定間違い」多発の根本原因」 「東電」の割には、なにかみみっちい話だ。 「経産省が誤りの事実を知ったのは・・・福島県農民連から問題があるとの情報を寄せられたことがきっかけ」、「福島県農民連」のチェックがなければ、問題は闇のままに葬られていたようだ。 「東電」のダメぶりには食傷気味だが、今回のもコメントする気にもなれない。こんな少額でも、賠償額を圧縮することが評価されるような文化があるのだろう。徹底的な反省と再発防止策が必要だ。
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