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年金制度(その5)(現在56歳以下の老後「3000万円超必要」の驚愕試算 1965年以降出生者9割が老後生活資金を賄えない、河野太郎氏の「年金額の最低保障」構想を実現すべき8つの理由) [国内政治]

年金制度については、昨年11月22日に取上げた。今日は、(その5)(現在56歳以下の老後「3000万円超必要」の驚愕試算 1965年以降出生者9割が老後生活資金を賄えない、河野太郎氏の「年金額の最低保障」構想を実現すべき8つの理由)である。

先ずは、本年11月15日付け東洋経済オンラインが掲載した大蔵省出身で 一橋大学名誉教授の野口 悠紀雄氏による「現在56歳以下の老後「3000万円超必要」の驚愕試算 1965年以降出生者9割が老後生活資金を賄えない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/467641
・『老後生活資金に2000万円必要という金融庁の報告が、2019年に関心を集めた。しかし、「どれだけの貯蓄が必要か?」という疑問は、うやむやのままにされ、忘れられている。マクロ経済スライドによる年金額の削減や、支給開始年齢が70歳に引き上げられる可能性を考えると、必要貯蓄額はこれよりかなり多くなる。 昨今の経済現象を鮮やかに斬り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。野口悠紀雄氏による連載第56回』、うっかり忘れかけていたニュースだが、ないがしろには出来ない重要な問題なので、これを機によく見てみよう。
・『老後生活資金2000万円問題  2019年6月に「老後生活に2000万円の貯蓄が必要」という金融庁・金融審議会の報告書が発表されて、大きな関心を集めた。 ところで、報告書は極めて奇妙な経過をたどった。 まず野党が「年金だけで老後生活を送れると思っていたが、100年安心年金というのはウソだったのか?」と、政府を追及した。 ところが、この追及は見当違いである。なぜなら、政府は、「年金だけで老後生活を送れる」とは約束していないからだ。 政府が約束してきたのは、つぎのことだ。 厚生年金については、モデル世帯の所得代替率を、ほぼ50%に維持する(注)。2025年までに支給開始年齢を65歳に引き上げる。年金保険料率は、現在以上の引き上げは行わない。 「100年安心」とは、「このような内容の年金制度を100年維持できる」ということだ。 このことと、「老後に備えて一定の蓄えが必要」ということは、なんら矛盾しない。 だから政府は、野党の追及に対して、「それは見当違いだ」と言えばよかったのだ。 (注)「所得代替率」とは、年金を受け取り始める時点(65歳)での年金額が、現役モデル世帯の手取り収入額(ボーナス込み)と比較して、どのくらいの割合かを示す指標。 ところが、麻生太郎財務大臣(当時)は、「あたかも公的年金だけでは足りないかのような誤解、不安を与えた」として、報告書の受け取りを拒否するという挙に及んだのである。 これに対して、野党は「逃げ工作、隠蔽工作だ」と批判した。 それ以来、この問題は深く議論されることがなく、うやむやのままで放置されている。 先般の総選挙でも、この問題が議論されることはなかった。 したがって、「老後生活に向けてどのような準備をすべきか?」という指針は、いまだにうやむやのままになっている。 しかし、これから老後を迎える人々にとって、これは大変重要な問題だ。うやむやのままにしておくことはできない』、ピント外れの「攻撃をした野党も情けないが、「「あたかも公的年金だけでは足りないかのような誤解、不安を与えた」として、報告書の受け取りを拒否するという挙に及んだ」「麻生太郎財務大臣」も大問題だ。
・『政府は何を恐れたのか?  いったい、政府は、何を恐れて報告書の受け取りを拒否したのだろうか? 私は次のようなことだと思う。 前記報告書は、・必要生活費(実支出)=月26.4万円(年316.8万円) ・実収入=月20.9万円(年250.8万円) ・不足額=5.5万円(年66万円) という厚生労働省の資料を援用して、必要年数=30年として必要額=1980万円としている。なお、実収入のうち、社会保障給付が月19.2万円(年約230万円)だ。 これは、「老後の生活費のうち7割強を年金が保障する」としているように読める(もちろん生活費も年金も、人によって異なる。これは、標準的な世帯に関するものだ。具体的な数字が人によって異なることは言うまでもない)。 しかし実は、これは政府が約束していることとは異なる。 あとで詳しく述べるように、年金の実際の支給額が生活費の7割より少なくなることは、政府が約束している範囲内でも、十分ありうることなのである。 しかし、報告書を受け取れば、「生活費の約7割を年金が保障する」という約束に縛られてしまうことになる。 政府が受け取りを拒否したのは、これに関する言質を与えたくなかったからだと思う。 本来、野党が追及すべきだったのは、「(標準世帯の場合に)老後生活費の約7割を年金が保障してくれるのですね」ということだったのだ。「2000万円必要とはけしからん」と追及するのでなく、「2000万円準備すれば、それで十分なのですね」と確認すればよかったのである』、「報告書を受け取れば、「生活費の約7割を年金が保障する」という約束に縛られてしまうことになる。 政府が受け取りを拒否したのは、これに関する言質を与えたくなかったからだと思う」「本来、野党が追及すべきだったのは、「(標準世帯の場合に)老後生活費の約7割を年金が保障してくれるのですね」ということだったのだ」、なるほど。
・『「マクロ経済スライド」で年金が減る  以上で述べたことを言いかえれば、「老後生活における大きな不確実性は、年金額そのものにもある」ということだ。これについて、以下に説明しよう。 まず第1に、政府が約束している範囲でも、年金額が老後生活費の約7割にならない可能性がある。 これは、マクロ経済スライドという仕組みによる。 「マクロ経済スライド」とは、現役人口の減少や平均余命の延びに合わせて、年金の給付水準を自動的に調整する仕組みだ。 毎年の切り下げ率は、公的年金の被保険者の減少率(およそ0.6%)と平均余命の延びを考慮した一定率(およそ0.3%)の合計である0.9%とされている。 「所得代替率5割が確保される」と言われると、すべての受給者の代替率が5割であるように受け止める人が多いだろう。しかし、財政検証でいう所得代替率とは、新規裁定される受給者についてのものである。 マクロ経済スライドが実行されれば、裁定後時間がたった受給者の代替率は、これより低くなる。毎年実行されれば、10年で約9%、20年で17%ほど減らされることになる。 ところで、実際には、マクロ経済スライドの発動に制約が加えられている。 すなわち、「適用すると年金名目額が減少してしまう場合には、調整は年金額の伸びがゼロになるまでにとどめる」という限定化がなされているのだ。 つまり、年金の名目額を引き下げることはない。だから、物価上昇率が0.9%以上にならなければ発動されない。 実際、マクロ経済スライドは、2004年に導入されたにもかかわらず、2015年までの期間に、一度も発動されなかった。 ただし、調整できなかった分を、賃金・物価が上昇したときに調整する仕組み(キャリーオーバー)が2018年4月から導入された。 この措置は、すでに実施されている。今後も、キャリーオーバーによって年金が減額される可能性が十分ある。 また、名目年金額を減らさないという制約が、外される可能性もありえなくはない。そうなれば、実際に受給できる年金額はかなり減る』、「マクロ経済スライドは、2004年に導入されたにもかかわらず、2015年までの期間に、一度も発動されなかった。 ただし、調整できなかった分を、賃金・物価が上昇したときに調整する仕組み・・・が2018年4月から導入された。 この措置は、すでに実施されている」、「実際に受給できる年金額はかなり減る」、現実は厳しいようだ。
・『あまりに楽観的な財政検証  第2の、より重大な問題は、政府が言う意味での「100年安心年金」でさえ実現できる保障はないことだ。なぜなら、財政見通しが甘すぎるからだ。 2019年の財政検証では、実質賃金の上昇率が実質GDPの成長率より高いという、何とも奇妙な仮定が置かれている。 実質賃金が上昇すれば、保険料率を一定としても、保険料収入は増加する。他方で、年金給付は、その年度に新規裁定される分は増えるが、既裁定の年金は増えない。既裁定年金は、インフレ率に対してだけスライドする。 だから、年金財政は好転するのだ。 年金財政が維持できるとする大きな理由は、実質賃金上昇率として非現実的に高い値を仮定しているからだ。しかし、こんな都合のよいことが起こるはずがない。 したがって、将来何らかの対処が必要になることは明らかだ。政府が「行わない」としている措置が必要になることもありうる。 保険料引き上げや基礎年金に対する国庫負担率の引き上げなどが考えられるが、難しいだろう。政治的に抵抗が少ないのは、マクロ経済スライドの強化と支給開始年齢の引き上げだ。) 支給開始年齢を70歳にまで引き上げる措置が取られる可能性は、十分ある。2年で1歳ずつ引き上げ、10年間かけて行うだろう。仮に、65歳への引上げが完了する2025年から開始するなら、2035年に完了する。 これは、老後に向けての必要資金に大きな影響を与える。 上記金融庁の試算で、収入のうち、社会保障給付は月19.2万円(230万円)だ。5年間では約1150万円だ。 1960年に生まれた人は、2025年に65歳となり、年金を受けられる。したがって、1960年以前に生まれた人は、上記措置の影響を受けず、65歳から年金を受給する。 2035年で70歳となる人は、1965年に生まれた人だ。70歳支給開始になるのが2035年であるとすれば、1965年以降に生まれた人は、70歳にならないと年金を受給できないことになる。 このように、70歳支給開始の影響をフルに受けるのは、1965年以降に生まれた人々だ。今年56歳以下だ。 それらの人々は、単純に考えれば、5年間分の年金額に相当する額を2000万円に加えて、自分で用意しなければならない』、「70歳支給開始の影響をフルに受けるのは、1965年以降に生まれた人々だ。今年56歳以下だ。 それらの人々は、単純に考えれば、5年間分の年金額に相当する額を2000万円に加えて、自分で用意しなければならない」、「2000万円」が必要とは大変だ。
・『65歳時点で約3150万円の蓄積が必要  したがって、標準的な場合には、65歳の時点で、約3150万円の蓄積が必要ということになる。 高齢者世帯の貯蓄保有額を参照すると、これはきわめて厳しい状況だ。 厚生労働省、2019年国民生活基礎調査によれば、貯蓄額が3000万円を超えている世帯は、全世帯で8.9%、高齢者世帯で10.8%でしかない。 したがって、実に約9割の人々が老後生活資金を賄えないことになる。生活保護の支えが必要な人も出てくるだろう。 以上で述べた問題がありうることを考えて、将来に向かう年金制度を用意するのは、現在世代の責任だ。われわれは未来の世代に対する責任を果たしているとはいえない』、「65歳時点で約3150万円の蓄積が必要」とはますます大変だ。「生活保護の支えが必要な人」が続出するのだろう。

次に、9月22日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏による「河野太郎氏の「年金額の最低保障」構想を実現すべき8つの理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/282703
・『自民党の総裁選で筆者が注目している政策は、河野太郎氏が提言した「最低限の年金を保障する案」だ。ぜひ実行に移すべきで、国民年金(基礎年金)の財源を全額税金負担にするところからスタートすれば、「いいことだらけ」といえる。その八つの理由を解説しよう』、「河野太郎氏」は現在は無役となったが、普段は厳しい山崎氏が珍しく褒めちぎっているので、紹介しよう。
・『自民党の総裁選で最も注目される政策構想とは?  自由民主党の総裁選が注目を集めている。現在、4候補の政策が出そろって議論が始まった段階だが、筆者は、河野太郎規制改革担当大臣が提言した「最低限の年金を保障する案」(以下、「保障年金構想」と呼ぶことにする)に注目している。 河野氏が首相になった場合だけでなく、その他3氏のいずれかが首相になった場合でも、ぜひ実行に移すといい。 来年度から実現することが可能なはずだし(つまり来年の参議院選挙前にだ)、早ければ早いほどいい。 現在の日本にあって、効果的で望ましい「格差対策」であるし、将来の日本にとって必要で適切な「セーフティーネット」だ。 さて、「保障年金構想」と呼んでみたものの、現在、条件(何歳から、いくら支給するのかなど)として具体的な詳細が提示されているわけではない。だが、公的年金の保険料を払わなかった人に対しても、一定額の年金を支給するような年金制度を意味していることは確実だ。そうなのだとすると、現在の国民年金(基礎年金)の財源を全額税金にするところからスタートするといい。 年金制度を変更する場合には、激変緩和措置が必要だ。例えば、現在年金を受け取っている人への給付額をいきなり大幅に削減するような施策は、国民にとって好ましくないし、政治的にも不可能に近い。しかし、現在の基礎年金を全額財政の負担に切り替えることは簡単にできる。 総裁選候補者の討論会では、高市早苗前総務大臣が、現時点では2分の1負担の基礎年金の財源を全て税にすると「12.3兆円分」の巨額な負担が生じると懸念を示した。ただ、アベノミクスの積極的な継承を主張している高市氏の考え方を踏まえて、当面この額の国債を発行して日本銀行に買わせることを考えてみよう(直接的に日銀が買っても市中銀行から間接的に買っても、おおよその効果は同じだ)。すると、公平で大規模な経済対策になるのと同時に、金融緩和の実効性を高めるデフレ対策になり得る。 後でも触れるが、河野氏は高市氏的な経済政策を取り入りつつ、「保障年金構想」を実行するプランを練るといい』、なるほど。
・『年金の全額税負担は「いいことだらけ」である理由  さて、基礎年金の財源を全額税負担にすることから保障年金構想をスタートすると、どのような「いいこと」があるのか。実は、いいことはたくさんある。少し考えただけでも多数のメリットが思い浮かび、まるで「いいことだらけ」の様相を呈する。 さっそく、ご紹介しよう。 (1)相対的に貧しい若者の「手取り」が直ちに増える 直ちに生じるメリットで、この構想の最大のメリットともいえるものは、若者を中心とする低所得で経済的に恵まれない人から、現在月額1万6610円も一律に負担させている保険料を取らずに済むことだ。彼らには、お金が必要だ。 保障年金構想は、年金保険料負担世代(20歳から59歳まで)にとって月額1万6610円の現金給付と同等の効果を持つ。年間約19万9000円の“給付”だが、「一時金」ではなく継続的にもらえるお金(実際には負担の軽減だが)で、毎月使える「手取り収入」が増えることの効果は大きい。 「現金給付をもう一度検討」と述べている岸田文雄前政務調査会長には、「実質的に広く現金給付を行うのと同様の効果を持ち、継続的である点ではさらに強力な政策だ」と説明すると、理解してもらえるはずだ。) 日本に限らず世界的な問題として、経済的「格差の拡大」がある。格差対策では、超富裕層に対して多くの社会的な費用負担を求める「上の方の格差対策」も重要だが、何といっても現実に生活を圧迫されている低所得層に向けた「下の方の格差対策」の緊急性・重要性が大きい。 基礎年金の全額税負担は、支給のための事務負担(昨年問題になった日本の行政の苦手分野だ)もない。予算を組み替えて、国債を発行すれば直ちに実行できる』、「基礎年金の財源を全額税負担にする」「保障年金構想」は、「「いいことだらけ」である」。「相対的に貧しい若者の「手取り」が直ちに増える」、すごい褒めようだ
・『(2)消費の下支え  昨年の一時金支給では、一律に支給された10万円の多くが消費に回らず貯蓄に回って、「景気対策」として有効でなかったように見えたことが、一部で批判の対象になった。 しかし、そもそも所得が伸びない中で、不確実な新型コロナウイルスの不安が加わったというのが当時の状況だった。給付を受けた国民の多くが、いわば「10万円で一番買いたかったものは、安心のための貯金だった」というのが、その背景だろう。 保障年金構想が実現すれば、これまで徴収されていた毎月1万6610円が継続的に手元に残るのだから、国民はより安心してお金を使うことができる。 サラリーマンなら、毎月差し引かれる社会保険料が減って、1万6610円手取りが増えるのだ。 心が明るくなる話だと思う』、「これまで徴収されていた毎月1万6610円が継続的に手元に残るのだから、国民はより安心してお金を使うことができる」、その通りだ。
・『(3)より確実なセーフティーネット  保障年金制度の下では、現役時代の経済的な困窮などによって年金保険料を納めることができなかった人でも将来、一定額の年金を受け取ることが期待できる。 もちろん、今でも日本の年金はそれなりに安定したセーフティーネットの機能を果たしているが、これが一層強化される』、「セーフティーネット」が「より確実」になることは確かだ。
・『(4)高齢者の生活保護が減る 無年金、あるいはごく少額の年金しか受け取れない高齢者で、経済的に困窮している方は生活
保護を利用する場合が少なくない。 つまり年金を多く支払うと、生活保護の支出を抑える効果がなにがしか働くはずだ。 自治体等での生活保護に関連する事務(一部には陰で「水際対策」などと呼ばれる意地悪行為も含まれる)が減るのもいいことだ。もちろん受給者にとっても、生活保護で受け取るより年金としてお金を受け取る方が気分は良かろう』、その通りだ。 ・『(5)お金の使い道は自由だ! 経済対策や何らかの給付を検討する場合、率直に言うなら利益誘導の力学や、他人に対するお節介の心が働いて、「使用目的」を限ったものが提示されがちだ。 「教育クーポン」「家賃補助」「地域振興券」「商品券」「Go To何々」の類いだが、これらに望ましい側面があるとしても、利用者・業者の両面で受益の大きさに濃淡が生じる。いわば、政府による国民生活への介入だ。 付け加えると、使用目的を限った支給策には、行政側でも利用者側でも、多大な手間がかかる場合がある。 その点、現役世代の年金保険料の徴収をやめ、月額1万6610円手取り収入を増やして、使える現金を渡す方法なら、受益者は「自分にとって最も良いと思うお金の使い道」を自由に考えることができる。 党名に「自由」と入る党の政策にふさわしい。河野氏が総裁を目指している政党の名前は、「利益誘導党」とか「国民指導党」ではなかったはずだ』、「使用目的を限った支給策には、行政側でも利用者側でも、多大な手間がかかる場合がある・・・、現役世代の年金保険料の徴収をやめ、月額1万6610円手取り収入を増やして、使える現金を渡す方法なら、受益者は「自分にとって最も良いと思うお金の使い道」を自由に考えることができる」、つまり選択の自由を与えるわけだ。 ・『(6)第3号被保険者問題の発展的解決 現在の公的年金制度には、サラリーマンの妻(第3号被保険者)は国民年金(基礎年金)の保険料を負担しなくても将来の国民年金部分の給付が受けられる「ゆがんだメリット」が付いている。働いて収入のある女性は年金保険料を負担する一方で、サラリーマンの妻は負担が必要ないという対比は、女性の職業進出に対してネガティブなインセンティブとなっている。 基礎年金を全額税金負担にしてしまえば、この不公平が解決する。 女性の社会的活躍に熱心な野田聖子幹事長代行にも、評価してもらえるのではないか』、日本の年金制度の恥部である「第3号被保険者問題」が解消するのはいいことだ。 ・『(7)年金事務の著しい効率化 基礎年金の財源を全て税負担にすると、国民年金への加入勧奨、国民年金保険料の徴収、免除申請への対応など、国民年金(基礎年金)に関連する「事務」のいくつかが「廃止」できる。効率化などというケチなものではなくて、廃止だ。もちろん、コストカットの効果は大きい。 経済的に困窮している現役世代の手元に現金が残る一方で、経済的強者(高所得者、富裕層等)が税金を多く負担する「格差対策」を行うことが、同時に「行政の効率化」にもつながるのだ。理想的な政策ではないか』、これまで問題が多かった年金事務所などが効率化されるのは、望ましい。 ・『(8)デフレ対策としても強力だ 自民党が「挙党体制」を目指すには、高市氏やその後見人である安倍晋三前首相にも喜んでもらわなければなるまい。 財務省と日銀の協力が前提だが、保障年金構想の速やかな実行は、当面の財源を国債としてこれを日銀が購入するなら、前述のように財政の拡張と金融緩和の実質的な拡大として機能する。まさに、第2次安倍政権が発足した当初のオリジナル・アベノミクスの趣旨にかなうものだ。 民間経済に広く公平に現金が出回るのだから、デフレ対策のための金融緩和策としては、日銀による上場投資信託(ETF)買い入れのような政策よりもはるかに筋が良い』、「デフレ対策としても強力」で、「日銀による上場投資信託(ETF)買い入れのような政策よりもはるかに筋が良い」、その通りだ。 ・『河野首相(仮)に保障年金実現で気をつけてほしい2つのこと 実行者は誰でもいいと先ほど書いたが(実際にそう思うけれども)、せっかくだから構想の提唱者である河野氏が首相になると仮定しよう。 河野首相は、保障年金構想を実現するに当たって何に気をつけるべきか。 思うに、つまずきのもとになりかねない石が二つある。 【1】財源論でつまずくな! 一つ目の石は、河野氏が「財源をセットで同時に手当てしなければならない」という思考の枠組みの罠にはめられて(はめる人は官僚だ)しまうことだ。その結果、例えば消費税の増税とセットで保障年金構想を実現しようとして、「財政の緊縮化による景気後退・デフレへの逆戻り」や「消費税率引き上げによる政治的逆風」(野党には格好の攻撃材料だ)などの災いを自ら招くことだ。 財源としては消費増税も視野に入ると、河野氏は一度目の討論会でも述べたようだが(財務省に気に入られたいマスコミは、こういう話は大きく報じるはずなので、要注意だ)、ここは、振り上げた拳を下ろして冷静になってほしい。 少なくとも今、消費税率を引き上げるのは、マクロ経済政策としても政治的戦略としても「全く愚かなこと」だ。 そもそも、お金には大きさ(数字)はあっても、色は着いていない。新規の支出(ないし減税)に対してその都度「財源」を一対一対応で同時に手当てしなければならないとする予算の慣行は、企業経営で言うなら、製品ごとにバラバラにビジネスの資金を都合せよとルール化するくらいの巨大な財務的非効率だ。行政改革のためにも、この思考から早く脱却すべきだ。 加えて、経済政策の運営には、マクロ経済的な状況を踏まえた「タイミング」の問題がある。 年金の支出に対して長期的には、誰かの税負担の増加が必要だ。しかし、それを行うべきタイミングは、デフレ目前の低インフレに困っている「今」ではない。 消費税率を引き上げたいと企図する官僚は、保障年金構想に絡めて消費税率の引き上げを狙ってくるだろうが、その企みには乗らない方がいい。) なお、前述の通り、国民年金(基礎年金)の保険料負担がなくなることによる、勤労者の負担軽減は年間約19万9000円に及ぶ。この額は、普通の勤労者にとって野党が主張する「消費税率5%引き下げ」の年間のメリットをかなり上回るはずだ。 正直なところ筆者は選挙で与党に肩入れしたいとは特段思っていないが、保障年金構想の速やかな実行には、「消費税率5%引き下げによる野党共闘」を軽く吹っ飛ばすくらいのインパクトがあるに違いない(構想の主な受益者は20歳以上の若い有権者である)。 保障年金構想には、野党もすかさず相乗りすべきだ』、「財源論でつまずくな!」はなかなかいいアドバイスだ。 ・『【2】実行に時にじゅう間をかけるな! もう一つのつまずきの石は、構想の実現に時間をかけて、その間に政治的な勢いを失うことだ。 「有識者会議での検討が1年、党内で議論が1年、3年目に法案を通そう……」というような悠長なプロセスを想定してはならない。政権発足後のフレッシュで勢いがある間に具体的な成果を得るべきだ。 官僚機構の問題か、政治家の問題かはここでは論じないが、かつての「改革」の失敗例を思い出すと、官僚に時間を渡すことがいかにまずいかが、河野氏にはよく分かるだろう(他の3氏も分かるだろうが)。 小泉純一郎内閣時代の郵政民営化は、一気に民営化を実施せずに時間をかけるプロセスを許したために、現在「ぐずぐずの状況」になっている。 民主党政権が設立した当時の看板政策だったはずの年金改革は、検討期間を経て3年目に法案成立を目指すのんびりしたスケジュールを引いたために、政権の支持低下とともに立ち枯れてしまった。 同じく民主党政権の政策だった「子ども手当」は、満額で実行すると大きな効果があったはずだった。ところが、財源を理由に当初の5兆円を半値に値切られて、その後に増額できずにいるうちに形と金額を少し変えた児童手当に巻き戻ってしまった。 保障年金構想は素晴らしい。新政権の政治的な勢いがあるうちに、ぜひ形にしてほしい』、「かつての「改革」の失敗例を思い出すと、官僚に時間を渡すことがいかにまずいか」、「新政権の政治的な勢いがあるうちに、ぜひ形にしてほしい」、残念ながら首相は岸田氏になったが、政策としての筋の良さはあるので、岸田氏も取り組んでほしいものだ。

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