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公務員制度(その6)(経産省 続発するスキャンダルより大きな問題は「産業政策の失敗続き」、遅すぎた子育て世代支援 求められる財政拡充 「こども庁」は必要か 現場からあがる厳しい本音、中村格・新警察庁長官は本部長未経験でトップ就任…「一度は現場を」の不文律が崩れ “政権の腰巾着”だけが出世する) [国内政治]

公務員制度については、7月4日に取上げた。今日は、(その6)(経産省 続発するスキャンダルより大きな問題は「産業政策の失敗続き」、遅すぎた子育て世代支援 求められる財政拡充 「こども庁」は必要か 現場からあがる厳しい本音、中村格・新警察庁長官は本部長未経験でトップ就任…「一度は現場を」の不文律が崩れ “政権の腰巾着”だけが出世する)である。

先ずは、7月14日付けNewsweek日本版が掲載した経済評論家の加谷珪一氏による「経産省、続発するスキャンダルより大きな問題は「産業政策の失敗続き」」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/kaya/2021/07/post-149_1.php
・『職員によるコロナ支援金制度の悪用や、東芝の株主総会への介入疑惑......。だが最大の問題は時代に合わない産業政策だ> 経済産業省のキャリア職員2名が、コロナ対策の支援金制度を悪用して逮捕されるという信じ難い事件が発生した。同省をめぐっては、東芝の株主総会への不正介入疑惑など、行政運営の透明性が問われていた。しかも同省の産業政策はこのところ失策が続いており、一部からは組織的な問題も指摘されている。場合によっては省の存在意義すら問われかねない状況といってよいだろう。 経済産業省(旧通商産業省)は日本の産業政策を一手に担ってきた官庁だが、近年、失策ばかりが続いている。最も大きいのは半導体産業に対するずさんな支援策だろう。 かつて世界シェアトップを誇っていた日本の半導体産業は1990年代以降、急速に競争力を失い、後発の韓国勢や台湾勢に完敗した。経産省は「日の丸半導体復活」という勇ましい目標を掲げ、エルピーダメモリやルネサスエレクトロニクス、ジャパンディスプレイなど、国策半導体会社、あるいはそれに準じる合弁企業の設立を促し、政府系ファンドなどを通じて多額の公費を投入してきた。 だがエルピーダは倒産。ルネサスも一時、経営危機に直面し、ジャパンディスプレイは現時点でも巨額赤字を垂れ流している状況だ』、かつては、米国から「悪名高い経産省」と一目置かれていたのとは様変わりだ。
・『高度成長は本当に政策のおかげ?  加えて同省には、経営危機に陥った東芝を支援するため、株主総会に不正介入した疑いが持たれている。同省は介入を否定しているが、資本市場の常識として政府による不正介入疑惑が生じた段階で、既に国益を大きく損ねている。 経産省の産業政策は、特定の産業分野に的を絞り、各種の補助金や優遇税制、外国企業の参入規制などで育成を図る、いわゆるターゲティング・ポリシーと呼ばれる手法である。日本の高度成長は一連の政策で実現したとの主張があるが、戦後の産業発展の歴史を冷静に分析すると、必ずしもそうとは言い切れない。 確かに一部の業界では経産省の支援が功を奏したケースもあったが、一方で同省は国内自動車メーカーの多くを不要と見なし、60年代に特定産業振興臨時措置法を通じて再編を試みるなど致命的な判断ミスをしている(同省の要請を産業界が受け入れていたら、日本の自動車産業は消滅していただろう)。 60年代後半には太平洋ベルト地帯に集中していた重化学工業を青森県下北半島にシフトさせる「むつ小川原開発計画」を立案したものの、進出する企業がなく頓挫。その後、同地域を核燃料サイクル施設の拠点としたが、巨費を投じた核燃料サイクル計画そのものが宙に浮いた状況にある。 80年代には高性能コンピューターの開発を目指す「第5世代コンピュータ」計画や、ソフトウエア開発の高度化を目指す「シグマ計画」などを実施したが、ことごとく失敗している。日本の産業界で生き残ったのは政府に頼らなかった業界ばかりであり、半導体産業への支援も同じ文脈で捉える必要がある。 ビジネスに疎い公務員がイノベーションの未来を予想するのが困難であることや、企業の自由な活動を促進する政策誘導こそが最良の産業政策であることは、ほぼ全世界的なコンセンサスとなっている。同省は一時期、時代に合った産業政策を模索する動きを見せたことがあったが、近年になってなぜかその動きを止めてしまった。今こそ本腰を入れて基本戦略を見直す時期に来ているだろう』、「企業の自由な活動を促進する政策誘導こそが最良の産業政策であることは、ほぼ全世界的なコンセンサス」、「今こそ本腰を入れて基本戦略を見直す時期に来ている」、その通りだ。

次に、8月6日付け東洋経済Plus「遅すぎた子育て世代支援、求められる財政拡充 「こども庁」は必要か、現場からあがる厳しい本音」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/27687
・『政府が創設を目指している「こども庁」。貧困や虐待、少子化など子どもをめぐる課題は山積みだが、新省庁はこうした難題を解決できるのか。 政府は、子どもに関わる問題を一元的に取り組む「こども庁」の創設を進めている。子どもの貧困や虐待、学校でのいじめ、少子化など早急に解決すべき問題は山積みだ。 こども庁には何が求められているのか。子どもの貧困・教育費問題に詳しい末冨芳・日本大学教授、虐待の体験者で支援活動を行うブローハン聡さん、「保育園を考える親の会」代表の普光院亜紀さんの3人に話を聞いた』、有識者3人の意見とは興味深そうだ。
・『「財源拡充がなければ意味がない」日本大学文理学部教授/末冨芳(末冨芳氏の略歴はリンク先参照) こども庁の話を聞いたとき、私や現場の支援団体は強い怒りを感じました。 コロナ禍で困窮する子育て世代への政府の支援は、あまりに遅すぎます。その中での新省庁の議論は、政策の優先度がどこに置かれているかわからないからです。2人親世帯への給付金支給は支援団体が何度も政府に要望し、感染拡大から1年経ってやっと決まったところでした。 支援団体の調査によると、緊急事態宣言が出されるたびに、非正規労働のシングルマザー世帯を中心に家計が厳しくなっています。食事も満足にできず、体重が減少した子どもも増えています。新しい組織をつくる前に、足元で困窮する子どもの支援を最優先してほしい。 そのうえで新組織の設置は、財政拡充がなければ意味がありません。自民党議員によるこども庁に関する緊急提言では、子育て関連支出の対GDP比を欧米並みの3%台まで倍増させるという目標を掲げました。しかし、(6月に出された)政府の「骨太の方針」では具体的な目標までは触れていません。それどころか、菅首相は一部の高所得者への児童手当廃止を打ち出しています。 日本はそもそも、子ども・子育て世代への支出が少ない。OECD(経済協力開発機構)データによると、これは常識です。子どもを大事にすると言いながら、子どものための給付を削って他の予算に充てることは、大きく矛盾しています。 それに日本は子育てを親子だけの責任にし、国や企業が親子を支援しない「子育て罰」の傾向が強くあります。ですが、少子化対策は個人ではなく、社会全体にとってもメリットになります。少子化対策の受益者である国や企業が、子育てに投資するのは当然のことではないでしょうか』、「日本は子育てを親子だけの責任にし、国や企業が親子を支援しない「子育て罰」の傾向が強くあります」、「子育て罰」とは言い得て妙だが、これでは、少子化が止まる筈はない。
・『内閣府主導の組織では専門性が生きない  こども庁創設を機に期待されるのは、教育と福祉のデータを結び付けたデータベースの作成です。貧困や虐待が深刻な子どもをデータベースで判定し、必要な支援につなげる仕組みが政府内で検討されています。それには、そのデータベースを扱い、支援するスクールソーシャルワーカーの増員が必須です。 しかし、こうした子どもに関する専門職は、雇用が不安定で賃金が安い。学校現場で働くスクールソーシャルワーカーは非常勤ばかりです。今はその人たちの善意に頼っていますが、それでは優秀な人材は確保できません。 成長し、変化する子どもへの支援は、高度な専門性と経験が必要です。子ども1人ひとりを守り切ることは、並大抵のことではないのです。そのような責任ある職務に従事する専門職を非常勤で雇い、やりがいを搾取したままでよいのか。こども庁の議論はそのパンドラの箱を開けることになります。だから、人材にお金をかけると、より財源が必要です。一言でいえば、「子どもと専門職をなめるな」ということです。 (こども庁の創設をめぐり)今は組織を一元化する議論が先行していますが、横串が通っている分野とそうでない分野があります。保育園、幼稚園、認定こども園については、すでに省庁間の連携が取れています。連携の蓄積や成果があるにもかかわらず、一部の与党議員は思い込みに基づいて「横串を通せ」と主張しています。思い込みによって一元化すれば、専門行政が崩壊し、逆効果になります。 厚生労働省や文部科学省には、子どもの分野で長く経験を積んだ官僚がいて、省庁間の人事交流もあります。しかし、内閣府では専門性を考慮しない官僚の異動も多い。内閣府主導の省庁では、せっかく蓄積された専門的な行政経験が失われる心配があります。そうならないためには、内閣府から独立した組織にしたほうがよいでしょう。 子どもの実態や政策に詳しい専門家や当事者を置き去りにして、組織設計はできません。現場の支援者や専門家、そして子ども自身の意見を聞く有識者会議を立ち上げ、オープンで丁寧な議論を始めるべきです』、「内閣府主導の省庁では、せっかく蓄積された専門的な行政経験が失われる心配があります。そうならないためには、内閣府から独立した組織にしたほうがよいでしょう」、その通りだ。
・『「子ども主体の省庁にしてほしい」 一般社団法人「コンパスナビ」/ブローハン聡(ブローハン聡氏の略歴はリンク先参照)(「こども庁」をつくるなら、子どもが主体の省庁であってほしいです。「子どものため」は本当に子どものためになっているのか。それを考えるためには、「子どもだからできない」というフィルターを外し、彼らの言葉を聴くことが何より大切です。 子どもが直接発言できないなら、その声を拾う若者、それを応援する大人たちが新しい省庁の中心にいるべきではないでしょうか。 私は幸い、小学生のときに児童養護施設に入り、暴力から逃れられました。しかし、虐待を受けている子どもたちの多くが社会とつながれず、いまだに苦しんでいます。 仮に子どもに「虐待されていますか?」と聞いても、そもそも虐待が何かわかっていません。それに、子どもにとって親は唯一無二の存在。どんな形であっても切り離すことは難しいのです。命を救うことは最優先ですが、子どもの気持ちも含めて手を差し伸べるべきだと思います。 自分の経験を振り返っても、子どもはSOSの出し方がよくわかりません。子どもが声を上げられるようにするためには、小さいときから権利擁護の教育を徹底する必要があります。 それと同時に、学校の教員が子どもの権利についての研修を受けることも重要です。私は教員向けの講演会で、教員が虐待に気づいたことをきっかけに保護された自分の経験を話しています。こうした当事者の声を聴く場が全国に広がれば、虐待の早期発見につながる可能性があります』、「子どもが声を上げられるようにするためには、小さいときから権利擁護の教育を徹底する必要があります」、なるほど。
・『子どもが生まれる前から支援を  もう1つ、「こども庁」の議論で大切なことは、川下で泣いている子どもだけなく、川上で苦しんでいる親の存在を知ることです。虐待そのものは肯定できませんが、虐待してしまった親にも、貧困や家庭環境に苦しんできた背景があります。 虐待をなくすためには、親が子どもを産むまでの期間に、子育てについて学び、孤立しないように地域のコミュニティにつながる機会が必要ではないでしょうか。 現状で支援の対象となる子どもは18歳まで、とされていることにも問題があります。私は今、児童養護施設や里親家庭といった社会的養護の下で育った若者を支援する団体で働いています。児童養護施設出身の若者の多くは18歳で施設を出て、困ったときに頼れる家族がいないまま生きていかなければなりません。 児童養護施設出身者の半数以上は虐待を受けた経験があるため、心の傷が癒えず、大人との信頼関係がうまく築けないことがあります。そのため、就職した後もつまずく人が多いのです。 私自身は児童養護施設を出た後、アルバイトをして自活していました。親族との関係や日々の暮らしに困っていても、その自覚がありませんでした。しかし、心を許せる友達を通して支援団体につながったことで救われました。 こうした支援につながるためには、子どものときから支援制度やコミュニティの情報を知ることが重要です。その情報を基に何を選択するかは、あくまで本人が考えること。支援という重い言葉ではなく、あくまで本人の選択を手助けする仕組みが必要です』、「こうした支援につながるためには、子どものときから支援制度やコミュニティの情報を知ることが重要です」、その通りなのだろう。
・『「理念なきこども庁ならいらない」  「保育園を考える親の会」代表/普光院亜紀(普光院亜紀氏の略歴はリンク先参照)(こども庁が創設されて、保育園と幼稚園の一体化をさらに進める方向になるのであれば、すべての子どもに質の高い保育が保障されることを確約してほしいと思います。 保育園を考える親の会に先日、「保育園から習い事の月謝2万円を徴収されるようになった」という相談が相次ぎました。どうやら保護者の選択制で別料金を納めた子どものみが保育園で習い事を受けているようです。 たしかに、以前から多くの幼稚園で、正規の預かり時間の終了後に習い事を行い、その月謝を別途集めることが行われてきました。2015年に幼保一元化を目玉にした子ども・子育て支援新制度が始まり、認可保育園や認定こども園、幼稚園などの保育の費用や保育料に関する制度は内閣府が主管するようになりました。 厚生労働省はかつては、別料金は実費程度のものしか認めていませんでした。そのため、習い事的な保育を実施する保育園があっても、ほぼ無料でクラス全員に実施していました。 現在、内閣府に別料金の是非を尋ねても、明確な回答は得られません。幼稚園や営利企業の手法と児童福祉の理念の整合性が議論されないまま、理念なき制度運用になっているのではないかと危ぶんでいます。 こうした事態が生じている背景には、「家計のゆとり」を狙ったビジネスの活性化があります。これは2019年に始まった幼児教育無償化で生じたものです。幼児教育無償化は、2017年の衆院選で与党の選挙公約として掲げられた唐突な施策でした』、「幼児教育無償化」の裏で、「「家計のゆとり」を狙ったビジネスの活性化」が行われているのは問題だ。
・『保育の質が後回しに  国や自治体の財政が窮迫する中で、保育士の処遇や配置基準の改善といった「質の向上」を後回しにし、貴重な財源が無償化へと流れてしまったことは悔やまれてなりません。3歳児では20人に対して保育士1人、4・5歳児では30人に対して保育士1人などという配置基準は、他の先進諸国と比べても異常に低い。早急な改善が必要です。 にもかかわらず、政府が2020年末に公表した「新子育て安心プラン」では、保育士全員が短時間勤務であっても構わないという、規制緩和策が示されました。保育計画を立て、トラブル対応まで担うクラス担任でさえ、パートタイマーになるような施策は認められるべきではありません。 パート保育士にもこれらの業務を担いうる人材はいると思いますが、その保育士がパートタイマーでよいとは考えられません。パート保育士による細切れの保育になった場合には、子どもと保育士の間の愛着関係が形成されにくくなることも懸念されます。 まずは、子どもファーストの理念を設定する。そこから優先順位を決めて制度を見直し、予算を確保する。そのためのこども庁であるなら期待を持てます。逆に子どもの利益を無視して、大人たちの雑多な利害関係を調整するだけの機関になるのなら、こども庁はいりません』、「子どもファーストの理念を設定する。そこから優先順位を決めて制度を見直し、予算を確保する。そのためのこども庁であるなら期待を持てます。逆に子どもの利益を無視して、大人たちの雑多な利害関係を調整するだけの機関になるのなら、こども庁はいりません」、その通りだ。

第三に、10月16日付けYahooニュースが転載したFLASH「中村格・新警察庁長官は本部長未経験でトップ就任…「一度は現場を」の不文律が崩れ、“政権の腰巾着”だけが出世する」を紹介しよう。
・『「国民生活の安全安心を守るため、全力を傾注する」 9月22日、全国の警察組織の頂点たる警察庁長官に新たに就任した中村格(いたる)氏(58)は、就任の記者会見でそう抱負を語った。 晴れて29代目の長官になった中村氏だが、歴代長官と違うところがある。各道府県警察の長たる「本部長」の経験がないまま長官に就任したことだ。 同日に就任した警察庁の露木康浩次長(58)や、9月16日に就任した警視庁のトップである警視総監の大石吉彦氏(58)も本部長経験なし。警察トップ3がいずれも本部長未経験者になった。 「これは異例のことですよ。たとえば前任の松本光弘氏は神奈川県警察本部長を経験しましたし、その前の栗生俊一氏は徳島県警察本部長でした。県警の本部長とは、その地方の警察をまとめ上げるという、いわば現場のトップ。 もしも県警で不祥事が起きれば、その責任を取らないといけない存在です。そこで警察の実状に触れ、実績を残せた人間が上りつめるのが、これまでの警察庁長官でした。警察トップは本部長を経験しておくべきという不文律がこれまでは存在していたんです」(全国紙の元社会部記者) 中村氏の経歴は華々しい。東大卒業後、1986年に警察庁入庁、千葉県警本部捜査第二課長などの刑事畑を経て、在タイ日本国大使館の一等書記官も経験している。また、旧民主党政権から自民党の第2次安倍政権にかけ、5年半にわたり官房長官秘書官を務めている。 「中村氏は警察官僚のなかでも超優秀だといっていいでしょう。確かに地方の県警本部長は経験していませんが、海外への赴任経験もあり、経歴は申し分ない。 ただ、警察庁長官は公安部も経験するものですが、中村氏にはその経歴もありません。秘書官を何度もやっているのでその暇さえなかったということでしょう」(警察ジャーナリストの小川泰平氏) 一方、「“あの事件” のことを考えれば、政権に気に入られて出世したにすぎないでしょう」と前出の元記者は指摘する。 “あの事件” とは、2015年に起きた、ジャーナリストの伊藤詩織さん(30)が、山口敬之(のりゆき)・元TBSワシントン支局長(53)にホテルで性的暴行を受けたと被害を訴え、山口氏に準強姦の容疑で逮捕状が出されたものの、執行直前、当時警視庁刑事部長だった中村氏の判断で “握りつぶされた” というものだ。 山口氏はTBS政治部時代に安倍晋三元首相と親しくしており、中村氏が官邸に忖度した結果ではないかと一部で報じられている。 ある警察OBが語気を強めてこう話す。 「結果的に山口氏は嫌疑不十分で不起訴となりました。しかし、問題はそこではないんです。 署長が逮捕状を出すときは、さまざまな捜査を尽くし、また逮捕状を出す反響も踏まえて判を押すんです。それを刑事部長が握りつぶすなどあってはならないこと。所轄の努力や署長の決断を踏みにじる行為ですよ』、「署長が逮捕状を出すときは、さまざまな捜査を尽くし、また逮捕状を出す反響も踏まえて判を押すんです。それを刑事部長が握りつぶすなどあってはならないこと。所轄の努力や署長の決断を踏みにじる行為ですよ」、官邸にとっては、誠に使い勝手のよい警察官僚だったのだろう。
・『中村氏はそれをやった。秘書官として一度政治の世界に足を踏み入れてしまうと、どうしてもそっちに目が向いてしまう。警察官僚がそんなことではいけないと思います」 就任会見で中村氏は、そのことを問われ「組織として捜査を尽くしたうえで検察に送致した。捜査の過程について具体的に言及するのは控える。私は常に法と証拠に基づき適切に判断してきた。法と証拠以外を考慮して捜査上の判断をしたことは一度もない」と突っぱねた。 前出の元社会部記者は、警察官僚が政権に取り込まれているのではないかと危惧する。 「警察は、政治家を逮捕しなければいけない場合もあります。ところが中村氏は官房長官秘書官を5年も務めている。警察の独立性が失われ、政権の言いなりになりかねません。 警察は、自覚的に政権とは一定程度の距離を持つことが必要です。警察官僚が自分の出世ばかりに気を取られ、政権の腰巾着となってしまうようでは、とうてい国民の信頼を得ることなんかできません」 警察官僚にとって、事件は会議室でも現場でもなく、官邸で起きているようだーー』、「警察は、自覚的に政権とは一定程度の距離を持つことが必要です。警察官僚が自分の出世ばかりに気を取られ、政権の腰巾着となってしまうようでは、とうてい国民の信頼を得ることなんかできません」、同感である。 
タグ:公務員制度 (その6)(経産省 続発するスキャンダルより大きな問題は「産業政策の失敗続き」、遅すぎた子育て世代支援 求められる財政拡充 「こども庁」は必要か 現場からあがる厳しい本音、中村格・新警察庁長官は本部長未経験でトップ就任…「一度は現場を」の不文律が崩れ “政権の腰巾着”だけが出世する) Newsweek日本版 加谷珪一 「経産省、続発するスキャンダルより大きな問題は「産業政策の失敗続き」」 かつては、米国から「悪名高い経産省」と一目置かれていたのとは様変わりだ。 「企業の自由な活動を促進する政策誘導こそが最良の産業政策であることは、ほぼ全世界的なコンセンサス」、「今こそ本腰を入れて基本戦略を見直す時期に来ている」、その通りだ。 東洋経済Plus 「遅すぎた子育て世代支援、求められる財政拡充 「こども庁」は必要か、現場からあがる厳しい本音」 有識者3人の意見とは興味深そうだ。 「財源拡充がなければ意味がない」日本大学文理学部教授/末冨芳 「日本は子育てを親子だけの責任にし、国や企業が親子を支援しない「子育て罰」の傾向が強くあります」、「子育て罰」とは言い得て妙だが、これでは、少子化が止まる筈はない。 「内閣府主導の省庁では、せっかく蓄積された専門的な行政経験が失われる心配があります。そうならないためには、内閣府から独立した組織にしたほうがよいでしょう」、その通りだ。 「子どもが声を上げられるようにするためには、小さいときから権利擁護の教育を徹底する必要があります」、なるほど。 「こうした支援につながるためには、子どものときから支援制度やコミュニティの情報を知ることが重要です」、その通りなのだろう。 「幼児教育無償化」の裏で、「「家計のゆとり」を狙ったビジネスの活性化」が行われているのは問題だ。 「子どもファーストの理念を設定する。そこから優先順位を決めて制度を見直し、予算を確保する。そのためのこども庁であるなら期待を持てます。逆に子どもの利益を無視して、大人たちの雑多な利害関係を調整するだけの機関になるのなら、こども庁はいりません」、その通りだ。 yahooニュース Flash 「中村格・新警察庁長官は本部長未経験でトップ就任…「一度は現場を」の不文律が崩れ、“政権の腰巾着”だけが出世する」 「署長が逮捕状を出すときは、さまざまな捜査を尽くし、また逮捕状を出す反響も踏まえて判を押すんです。それを刑事部長が握りつぶすなどあってはならないこと。所轄の努力や署長の決断を踏みにじる行為ですよ」、官邸にとっては、誠に使い勝手のよい警察官僚だったのだろう。 「警察は、自覚的に政権とは一定程度の距離を持つことが必要です。警察官僚が自分の出世ばかりに気を取られ、政権の腰巾着となってしまうようでは、とうてい国民の信頼を得ることなんかできません」、同感である。
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M&A(一般)(その2)(日本製鉄・東京製綱問題(日本製鉄が東京製綱に振り上げた「拳」の威力 株式を買い増して「会長は退け」と詰め寄る、日鉄 東京製綱株を一部売却へ 敵対的TOBで3月に取得)、任天堂「中興の祖」の孫が相続資産599億円超を元手に海外ファンドと企業乗っ取り<上>、任天堂「中興の祖」の孫が相続資産600億円超を元手に海外ファンドと企業乗っ取り<下>) [企業経営]

M&A(一般)については、2019年12月27日に取上げた。今日は、(その2)(日本製鉄・東京製綱問題(日本製鉄が東京製綱に振り上げた「拳」の威力 株式を買い増して「会長は退け」と詰め寄る、日鉄 東京製綱株を一部売却へ 敵対的TOBで3月に取得)、任天堂「中興の祖」の孫が相続資産599億円超を元手に海外ファンドと企業乗っ取り<上>、任天堂「中興の祖」の孫が相続資産600億円超を元手に海外ファンドと企業乗っ取り<下>)である。

先ずは、本年2月21日付け東洋経済オンライン「日本製鉄が東京製綱に振り上げた「拳」の威力 株式を買い増して「会長は退け」と詰め寄る」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/412132
・『財界総理を輩出した“ザ・日本企業”が出資先に突如として拳を振り上げ、大きな注目を集めている。 日本製鉄は1月21日、ワイヤロープ国内最大手の東京製綱に対するTOB(株式公開買い付け)を発表した。TOB価格は前日終値に36.5%のプレミアムを付けた1500円で、出資比率を直前の9.9%から19.9%まで高める。経営権を握るわけでもなく、持ち分法適用にすらしない。ここだけ見るとよくある資本提携強化の取り組みと思われた。 だが、日本製鉄は公開買付届出書で、東京製綱の業績や財務の悪化を厳しく糾弾。その原因として「ガバナンス体制の不備」を指摘した。中でも、同社の田中重人会長の名前を挙げて、代表取締役の在任期間が約20年にも及ぶことを問題視。報道陣に対して「退任は必須」(日本製鉄)と言い切っている。まるで「モノ言う株主」になったかのようだ。 東京製綱はこのTOBに対して2月4日に「反対」意見を表明した。これにより、日本製鉄のアクションは「敵対的」なTOBとなった』、分かり難いTOBだ。
・『敵対的TOBは異例ではなくなった  かつての日本の企業社会では敵対的TOBへの拒否感が強く、株主の賛同を得られなかったため、事例もごくわずかだった。しかし、2019年には伊藤忠商事がデサントに仕掛けるなど、大企業でも敵対的TOBが「タブー」ではなくなった。 そうした中、官営八幡製鐵所を源流に持つ、保守本流の本尊のような日本製鉄が敵対的TOBに乗り出したことは、日本の企業社会の変化を実感させる出来事だ。 艦船用のマニラ麻ロープの国産化を図るために東京製綱が創立されたのは1887年。「日本資本主義の父」と言われる渋沢栄一が創立に協力し、初代の会長にも就いた老舗企業だ。ロープの素材が鉄に移る中、日本製鉄の前身である富士製鐵が1970年に資本参加した。 日本製鉄は長らく約7%を保有する筆頭株主(信託口を除く)であり、東京製綱にとって原料の主要な主供給元でもある。また、研究開発でもパートナーという密接な関係を築いてきた。田中会長は日本製鉄出身で、歴代のトップや取締役には日本製鉄出身者が少なくない。 2017年以降、日本製鉄は継続的に東京製綱の経営陣と面談を行って経営改善を促してきたが、危機意識もなく改善されなかったと主張する。2017年からは株主総会で取締役の選任議案に反対票を投じてきたとも公開買付届出書に記されている。2020年9月下旬からコミットメントを高めて経営体制の再構築を実現する目的で、株式の追加取得の検討を始めた。TOBについて、日本製鉄は「事前協議は行っていない」としており、敵対的となるのは覚悟の上だった。 長年のパートナーからのTOBの通告を受け、東京製綱は「何らの連絡もなく一方的かつ突然に行われたもの」と反発を隠さなかった。1月27日にはTOBが東京製綱の企業価値向上や株主全体の利益に資するのか不明として「留保」の意見を表明。同時に日本製鉄にいくつかの質問を行った。この質問に対して日本製鉄は2月3日に回答書を提出。その内容を精査した東京製綱があらためて「反対」を表明したのだ』、伝統的大企業にとっては異例の「敵対的TOB」になった訳だ。
・『東京製綱が反対する最大の理由  東京製綱が今回のTOBに反対する最大の理由は「利益相反」にある。日本製鉄は東京製綱の最大の原材料サプライヤーだが、日本製鉄はTOB成立後も持ち分法適用会社にしないため、東京製綱の業績が日本製鉄の業績には反映されない。「当社の企業価値及び株主共同の利益よりも、サプライヤーとしての公開買付者の利益を追求する恐れが将来に渡って継続する」(東京製綱の2月4日リリース)。 東京製綱はこれまで中国や韓国の線材の使用拡大を模索してきた。顧客の認証が必要になるため実績はわずかにとどまっているが、海外材という選択肢を持つことで日本製鉄から特別価格(海外材に見劣りしない価格)を引き出すことができた。近年、日本製鉄からの値上げ圧力が強まっており、海外材の顧客認証も急ピッチで進めていた。日本製鉄の出資比率が一段と高まると、こうした活動が阻害されて調達コストが上昇し、日本製鉄以外の株主の利益を損なうと懸念する。 また、東京製綱は鉄以外の新素材として炭素繊維を使ったケーブル事業(CFCC事業)を育成してきた。先行投資による赤字に耐えて、2020年11月にはアメリカ・バージニア州の大型土木プロジェクトで約40億円の受注に成功した。しかし、日本製鉄はこの事業を「失敗」と烙印を押す。東京製綱としては、日本製鉄による「脱鉄」の動きを阻害することが狙いと映ってもおかしくない。) ただし、日本製鉄の指摘にあるように東京製綱の業績が低迷していることは事実だ。2020年3月期までの5カ年の経営計画では、売上高900億円、営業利益78億円を掲げたが、実際には売上高630億円、営業利益は3億円と大幅に未達だった。しかも、最終利益は24億円の赤字である。 そうした中、田中会長は約20年も代表取締役に居続けている。2010年に田中氏が会長に就いて以降、現在の浅野正也氏で4人目の社長である。「ガバナンス体制の機能不全、とりわけ、社外取締役の経営陣に対する評価や、指名・再任のプロセスが適切に機能していない」(日本製鉄)という指摘は当てはまる』、「田中会長は約20年も代表取締役に居続けている。2010年に田中氏が会長に就いて以降、現在の浅野正也氏で4人目の社長である」、どう考えても長過ぎるようだ。
・『日本製鉄も4000億円超の赤字  東京製綱を批判する日本製鉄の業況はどうなのか。2018年3月期までの3カ年の中期経営計画で掲げたROE10%の目標は6%台にとどまった。2021年3月期までの3カ年中計はコロナ禍もあって達成は不可能だ。2020年3月期には4315億円の最終赤字を計上しており、2021年3月期も1200億円の連続での最終赤字を見込んでいる。 こうした状況について、日本製鉄の役員は、「2020年3月期は大赤字だったが、減損して構造改革をしている。コロナがなければ今年度から黒字になっていた。東京製綱と同じにはされたくない。大事なのはガバナンスを利かせているか。(東京製綱は)20年以上経営が変わっておらず、結果も出ていない」と主張する いずれにしても、他社に対して株主として経営改善を厳しく要求する以上、今後は自分たちの経営について厳しく責任を問われることになるのは間違いない。 「敵対的」というのはTOBをされる側の経営陣にとっての理屈で、企業価値や株主にとって敵対的であるとは限らない。株主としてモノを言う姿勢も、それ自体は高く評価されるべきだ。しかし、今回の日本製鉄のTOBには首をかしげたくなる点がいくつかある。 まず、東京製綱のガバナンスの問題として、CFCC事業(炭素繊維を使ったケーブル事業)を営む子会社が会社法上の公告を行っていないことを指摘している。この事実は容認されるべきことではないが、上場会社の子会社で必要な公告を行っていない会社は少なくない。それを日本製鉄は公開買付届出書で「財務状況・経営状況の隠蔽をする意図を有しているのではないかとの疑念を有さざるを得ない」とまで書く。 日本製鉄の公開買付届出書には明らかなミスリードもある。2017年3月期以降に営業利益が連続して前年を割り込み、減益傾向が続いていると繰り返し、2017年6月の株主総会から取締役の選任議案に反対票を投じてきたと記している。だが、東京製綱が質問状で2013年6月から反対していたと指摘すると、日本製鉄は「2017年以前にも総合的に勘案し、一部に反対していた」と答えている』、「日本製鉄」にとっては、さほど重要性もないので、いい加減にみているのであれば、大問題だ。
・『会長再任の「反対時期」に誤り  実は反対の時期について、日本製鉄と東京製綱の両方に誤りがある。記者が調べて東京製綱に確認したところでは、日本製鉄が田中会長の取締役選任議案に反対するようになったのは2012年6月の株主総会からだった。2012年3月期と2013年3月期はスチールコード事業の悪化で最終赤字に沈んでおり、株主として経営責任を追及してもおかしくはない。ただ、日本製鉄は最高益となった2014年3月期、営業利益率が6%を越えた2015年3月期も一貫して田中会長の再任に反対している。 日本製鉄の言行不一致はほかにもある。リリースではガバナンス不全を表す事例として、在任期間が約10年に及ぶ社外取締役がいることも挙げている。しかし、日本製鉄が在任10年になる増渕稔氏(日本銀行出身)に反対票を入れたことはない。反対しているのはなぜか2017年6月に就任した駒井正義氏(三井物産出身)に対してだ。 もともと「日本製鉄ともあろう会社が、なぜ東京製綱のような小さな会社に対してあそこまでの態度を取るのか」(金融関係者)という疑問がある。そのうえ、公開買付届出書にちぐはくな点が散見されることから、「ガバナンス不全は口実にすぎず、海外材の調達拡大や脱鉄の動きに対する見せしめではないか」(業界関係者)といった声も上がる。 TOB成立後、東京製綱への原料供給で日本製鉄が有利となるようなことはないのかと日本製鉄役員に聞くと、「(東京製綱の複数調達の模索を)問題にしていない。ガバナンスが明らかにおかしいからだ」と語気を強めて答えた。 東京製綱の株価は足元で1450円前後で推移しておりTOB価格(1500円)を下回る。これはTOBでの買い付け上限が10%とわずかであり、上限を超える応募は按分比例されてしまうため。TOBの期間は3月8日までだが、目標とする19.9%への出資比率引き上げは成立の確立が高い。 東京製綱側もそうした状況を十分に理解している。そのうえで「反対」を表明したのは、ほかの株主との利益相反のおそれを無視すれば、株主代表訴訟を起こされるリスクがあるからだ。公然と反対することで「調達の自由度」を約束させたい狙いがあるともいえる』、なるほど。
・『真っ向からケンカを続けられない  もとより東京製綱はワイヤロープに使う線材の仕入の90%超を日本製鉄に依存しており、真っ向からケンカができる関係にはない。日本製鉄が振り上げた拳の威力は大きい。TOB成立後の焦点は、東京製綱の田中会長の進退だろう。同社の取締役の任期は1年であり、2021年6月の株主総会でどのような会社議案を出すかが注目される。 にじり寄る日本製鉄も課題はある。「再建を支援することができる存在は(中略)当社を除いて他にいない」とする一方、東京製綱の独立性を維持する考えも示しており、どう両立させるかを問われるからだ。TOBが成立しても19.9%しか出資しない以上、他の株主の利益相反となるような行動は取れない。かといって、東京製綱の再建支援を通して自社の利益を高められなければ、今度は日本製鉄の経営陣が株主から責任を問われるおそれがある。 株式の持ち合いによって経営にお互いが口出しをしてこなかったことが、日本企業の経営に規律が働かない一因だった。そうした中、日本製鉄がモノ言う株主として動いた意味は大きい。数年後、「ぬるま湯の時代」が終わった分水嶺の出来事として、今回の敵対的TOBを振り返ることになるかもしれない』、このTOB自体は成立したが、その後、事態は次の記事のように、思いもかけない方向に展開した。

次に、8月4日付け日経新聞「日鉄、東京製綱株を一部売却へ 敵対的TOBで3月に取得」を紹介しよう。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC037SI0T00C21A8000000/
・『日本製鉄は3日、敵対的なTOBを経て3月に出資比率を19.9%に高めた東京製綱について、保有株の一部を売却すると発表。公正取引委員会が両社について一体化して事業を進める「結合関係が成立」と指摘。競争維持のために事業活動が制限される可能性が生じたため、出資比率を10%以下に引き下げる。日鉄は保有する約324万株の東京製綱株のうち約163万株を売却。東京製綱の株価が、TOBの買い付け価格である1株1500円を上回る時期などをみて実施。3日の終値は1115円。日鉄は1月、経営不振やガバナンス不全を理由に、東京製綱への出資比率を9.9%から19.9%に高めるTOBの実施を表明。東京製綱の当時の経営陣は反対したが、3月にTOBが成立。その後、全取締役8人が退任するなど経営体制が大幅に見直された。日鉄は東京製綱を持ち分法適用の対象にせず、経営の独立が保たれているという立場。ただ公取委の判断を受けて、独占禁止法の運用指針で結合関係を判断する条件の一つになっている議決権の保有率を10%以下にする売却完了までは議決権行使を10%以下に抑えることを公取委に伝えた。日鉄の石原秀威常務執行役員は「筆頭株主、またサプライヤーとして支えていくことに変わりはない」と話した。日鉄は東京製綱の経営体制の見直しが実現し、TOBの目的は達したとの立場だ。また東京製綱は「本件にかかわらず、企業価値向上の早期実現を目指し、鋭意取り組んでいく」とのコメントを発表した』、「独占禁止法の運用指針で結合関係を判断する条件の一つになっている議決権の保有率を10%以下にする売却完了までは議決権行使を10%以下に抑える」、これでは結局、「日鉄」の「保有比率」はTOB前の「9.9%」に戻り、TOB騒動は単に田中前会長に退いてもらっただけということになる。「東京製綱」も独禁法から反対していれば、もっと恰好がついただろう。

第三に、7月6日付け日刊ゲンダイ「任天堂「中興の祖」の孫が相続資産599億円超を元手に海外ファンドと企業乗っ取り<上>」を紹介しよう。
・『ファミコンを開発し、任天堂(本社・京都府)を世界的企業に成長させて「中興の祖」と呼ばれた山内溥氏(2013年没、享年85)。その孫の万丈氏(28歳)は溥氏から相続した任天堂株を元手に「アクティビスト・ファンド」として企業乗っ取りを仕掛けていた』、興味深そうだ。
・『「山内溥の意志を受け継ぎ」と言うものの  万丈氏は早稲田大学の在学中に時価600億円に相当する溥氏の任天堂株約3%を相続。大学卒業後の16年に博報堂に入社するも、19年3月には退社。同年6月に相続財産の運用会社「ヤマウチ・ナンバーテン・ファミリーオフィス」(以下、ファミリーオフィス)を設立した。 相続税対策のため万丈氏の株の一部を任天堂が自社株買いしたが、同社株はその頃から5倍近く上昇。関係者によるとファミリーオフィスの運用資産は1000億円を超えているという。 ファミリーオフィスはレトロなテレビゲーム画面のような自社ホームページを開設しており、「任天堂中興の祖、山内溥の意志を受け継ぎ、日本がもう一度、挑戦に満ちた国に生まれ変わるために先見性とユーザー目線の思考を持ちながら、私たちは社会に貢献し続ける」などと理念を掲げている。経営陣にはゴールドマンサックス証券など外資系投資会社、邦銀出身者が名を連ねており、何らかの金融ビジネスを営んでいる雰囲気だが、これまで具体的な活動は不透明だった』、「ファミリーオフィス」は情報開示義務がないので、まさに「不透明」だ。
・『相続マネーはシンガポールのファンドに注ぎ込まれた  ところが相続財産は思わぬ目的に使われていたことがわかった。昨今、日本の株式市場で跋扈する「アクティビスト・ファンド」である。 「アクティビスト・ファンド」とは、本業で営々と貯め込んだ現金を眠らせていたり、本来の価値よりも株価が低迷している上場会社の株を買い集め、配当金や自社株買いを求めたり、改善策の提案や役員の送り込みなどを積極的に行う「物言う株主」だ。要求が聞き入れられない場合は、株主総会で経営陣の退陣を求めることも辞さない。 ファミリーオフィスの資金は、そんなアクティビストファンドの中でも、乗っ取り屋として最近、暴れまわっている「アスリード・キャピタル」(拠点はシンガポール)というファンドに注ぎ込まれていた。同ファンドは、「ハゲタカ・ファンド」と恐れられる米国の資産運用会社「ローン・スター」出身者によって運用されており、ファミリーオフィスの設立と同時期に、日本株投資を活発化させている』、なるほど。
・『石油関連企業がターゲットに  そんなアスリード・キャピタルから狙われたのが、ガソリンスタンド等に石油製品を販売している東証一部上場「富士興産」(本社・東京都)だ。石油製品販売という事業自体に真新しさはないが、同社は37億円ものキャッシュを貯め込んでおり、これに目を付けられた。 アスリード・キャピタルは昨年夏頃から富士興産株を買い集めると同時に、経営陣に面談を要請。しかし本業への関心は薄く、3回目の面談で早々にアスリード・キャピタルの支援によるマネジメント・バイ・アウト(MBO)での「非上場化」を求めてきたという。MBOは、株主を気にしない独立した経営をするため、会社経営陣が自社企業の株式買収をすること』、なるほど。
・『非上場化を要求の狙いは  アスリード・キャピタルの主張は富士興産の投資家向け開示資料に詳しい。次のようなものだ。 石油事業が頭打ちになる中、上場を維持したままではコストがかかるだけでなく、経営戦略の実行が難しいので非上場化し、貯め込んだ現金をアスリード・キャピタルと共同で投資に回していくことなどを提案してきたという。MBOによって非上場化すれば業績や配当要求など「市場の雑音」を排して大胆な事業ができる、というわけだ。 しかし経営戦略や改善案などの具体的な提案はなく、とにかく非上場化だけを勧めてきたという。富士興産の関係者は「経営の効率化や企業価値向上など抽象的な話ばかりで、アスリード・キャピタルが非上場化で何をしたかったのか最後まで分からなかった」と話す。そのため富士興産は非上場化の提案を拒否。アスリード・キャピタルは一転して、手持ちのキャッシュを使って効率の良い投資に回すか自社株買いを要求するようになったという。 手のひらを返し、「市場の雑音」の権化たるアクティビストとしての本性を露わにしたのだった。(つづく)』、「アクティビスト」は初めのうちはネコをかぶって、紳士的だが、「本性を露わにした」からが勝負のようだ。

第四に、7月7日付け日刊ゲンダイ「任天堂「中興の祖」の孫が相続資産600億円超を元手に海外ファンドと企業乗っ取り<下>」を紹介しよう。
・『任天堂を世界的企業に成長させて「中興の祖」と呼ばれた山内溥氏(2013年没、享年85)。その孫の万丈氏(28歳)は溥氏から任天堂株時価600億円(当時)という莫大な資産を相続した。万丈氏はこのカネでヤマウチ・ナンバー10・ファミリーオフィスを設立。海外ファンドの「アスリード・キャピタル」に資金提供し、日本企業買収を次々に仕掛けていたのだった』、「海外の黒目ファンド」の「日本企業買収」の実態とは興味深そうだ。
・『敵対的買収に踏み切るものの  要求が通らないことに業を煮やしたアスリード・キャピタルは今年4月末、富士興産に対して株式公開買い付け(TOB)による敵対的買収に踏み切った。 これに対し富士興産は6月24日の株主総会で、買収防衛策の導入と、対抗措置の一環として新株予約権の無償割当を行うとした。かりにアスリード・キャピタルが発行済み株式の大半を買い占めたとしても、新株予約権が行使されればアスリード・キャピタルの持ち分は減少してしまい、買収は叶わないことになった。 アスリード・キャピタルはこれらの差し止め請求を東京地方裁判所に提起していたが、株主総会で買収防衛策は可決され、東京地裁は差し止め請求を認めなかった。アスリード・キャピタルはこれを受け、7月まで期間を延長していたTOBを撤回すると見られている』、なるほど。
・『村上世彰氏への憧れでファミリーオフィスか  一体なぜ、万丈氏はアスリード・キャピタルのような過激なファンドに資金提供しているのだろうか。 関係者は、「万丈氏は、“村上ファンド”の村上世彰氏(61)のようなファンドマネージャーに憧れていた。村上氏は現在、外部の投資家から資金を集めるのではなく、ファミリーオフィスという形態をとっています。万丈氏もこれを真似たのではないでしょうか」という。 通常の投資ファンドは外部の投資家から資金の委託を受けているため、決められた期間に一定の利回りを出さなければいけない。巨額資金に見合う説明責任があるので、投資先や投資手法にも倫理性が求められる。その点、ファミリーオフィスは資産家一族の資産だけを運用するので、一般の投資ファンドがコンプライアンス上の観点などで尻込みする投資手法や投資案件に手を出すことができる。 活動実態が不透明なものも多く、最近では4月にファミリーオフィス形態をとっていた米ファンド「アルケゴス・キャピタル・マネジメント」が破綻し、取引相手だった野村ホールディングスなど大手金融機関に巨額の損失が生じ話題となった。 実は、アスリード・キャピタルが最初に富士興産のまとまった株式を取得した相手方は、村上氏の実の娘である野村絢氏(33)である可能性が高い。 ファミリーオフィスは万丈氏が住む六本木の高級マンション近くにオフィスがありながら、わざわざシンガポールに拠点を置くアスリード・キャピタルを通じて日本株投資を行っている。これも村上氏のスキームと似通っている。シンガポールに住む村上氏は、日本国内の資産を税金の安いシンガポールに移し、海外経由で日本に投資している。投資手法やスキームが似通っているのは、山内氏が“村上ファン”だからと思えてくる』、「通常の投資ファンドは外部の投資家から資金の委託を受けているため、決められた期間に一定の利回りを出さなければいけない。巨額資金に見合う説明責任があるので、投資先や投資手法にも倫理性が求められる。その点、ファミリーオフィスは資産家一族の資産だけを運用するので、一般の投資ファンドがコンプライアンス上の観点などで尻込みする投資手法や投資案件に手を出すことができる」、確かに「ファミリーオフィス」は弾力的な「運用」が可能なようだ。
・『アスリード・キャピタルの高い買い物  とはいえ、なぜ富士興産ではTOBという強硬手段を使っても非上場化にこだわったのだろうか。 アスリード・キャピタルが野村絢氏から富士興産株を取得した価格は499円。さらに年末年始にかけて、市場で500円~600円で買い集めていた。富士興産の株価は2月頃には1300円まで上昇しており、すでに十分に儲けが出ているように見える。 しかし4月にアスリード・キャピタルが実施したTOBの買付価格は1250円で、富士興産の1株当たりの純資産とほぼ同額。買収に成功したとしても割安とは言えない。 実は、アスリード・キャピタルと山内ファミリーオフィスが買収に失敗したのは2度目だ。 今年1月、ジャスダックに上場する財務会計システム会社「ジャパンシステム」が、香港の投資ファンド「ロングリーチ」によるTOBで非上場化を実施した際、これに嚙みついていた。山内氏らはジャパンシステムの社長を担ぎ、対抗MBOによる支援を表明。しかし結局、ロングリーチのTOBは成立した。すでにTOBに主要株主が賛同していたためだ。山内氏側は早々に撤退することになった。 「山内氏を前面に押し出したジャパンシステムで事実上失敗して、資金を預かる立場のアスリード・キャピタルには後がなかった。富士興産では多少割高な買い物になっても、実績を作りたかったのではないか」(富士興産関係者)という見方もある。 そんな山内氏側の事情があったとしても、株を買われる側の富士興産には一切関係もない迷惑な話であろう。 欧米流のアクティビストが跋扈する中、日本を代表する任天堂の創業家一族ということで、“国産アクティビスト”に市場も注目していたが、短期間に2度も買収に失敗。金融業界で「拙速なファンド」だったとの評判が立つのは必至と見られる。(おわり)』、「山内氏のファンド」が「短期間に2度も買収に失敗。金融業界で「拙速なファンド」だったとの評判が立つのは必至」、一旦、悪評が立っても盛り返し可能なのだろうか。
タグ:M&A(一般) (その2)(日本製鉄・東京製綱問題(日本製鉄が東京製綱に振り上げた「拳」の威力 株式を買い増して「会長は退け」と詰め寄る、日鉄 東京製綱株を一部売却へ 敵対的TOBで3月に取得)、任天堂「中興の祖」の孫が相続資産599億円超を元手に海外ファンドと企業乗っ取り<上>、任天堂「中興の祖」の孫が相続資産600億円超を元手に海外ファンドと企業乗っ取り<下>) 東洋経済オンライン「日本製鉄が東京製綱に振り上げた「拳」の威力 株式を買い増して「会長は退け」と詰め寄る」 分かり難いTOBだ。 伝統的大企業にとっては異例の「敵対的TOB」になった訳だ。 「田中会長は約20年も代表取締役に居続けている。2010年に田中氏が会長に就いて以降、現在の浅野正也氏で4人目の社長である」、どう考えても長過ぎるようだ。 「日本製鉄」にとっては、さほど重要性もないので、いい加減にみているのであれば、大問題だ。 このTOB自体は成立したが、その後、事態は次の記事のように、思いもかけない方向に展開した。 日経新聞 「日鉄、東京製綱株を一部売却へ 敵対的TOBで3月に取得」 「独占禁止法の運用指針で結合関係を判断する条件の一つになっている議決権の保有率を10%以下にする売却完了までは議決権行使を10%以下に抑える」、これでは結局、「日鉄」の「保有比率」はTOB前の「9.9%」に戻り、TOB騒動は単に田中前会長に退いてもらっただけということになる。「東京製綱」も独禁法から反対していれば、もっと恰好がついただろう。 日刊ゲンダイ 「任天堂「中興の祖」の孫が相続資産599億円超を元手に海外ファンドと企業乗っ取り<上>」 ファミリーオフィスの運用資産は1000億円を超えている 「ファミリーオフィス」は情報開示義務がないので、まさに「不透明」だ。 「アクティビスト」は初めのうちはネコをかぶって、紳士的だが、「本性を露わにした」からが勝負のようだ。 「任天堂「中興の祖」の孫が相続資産600億円超を元手に海外ファンドと企業乗っ取り<下>」 「海外ファンド」の「日本企業買収」の実態とは興味深そうだ。 「海外の黒目ファンド」の「日本企業買収」の実態とは興味深そうだ。 「通常の投資ファンドは外部の投資家から資金の委託を受けているため、決められた期間に一定の利回りを出さなければいけない。巨額資金に見合う説明責任があるので、投資先や投資手法にも倫理性が求められる。その点、ファミリーオフィスは資産家一族の資産だけを運用するので、一般の投資ファンドがコンプライアンス上の観点などで尻込みする投資手法や投資案件に手を出すことができる」、確かに「ファミリーオフィス」は弾力的な「運用」が可能なようだ。 「山内氏のファンド」が「短期間に2度も買収に失敗。金融業界で「拙速なファンド」だったとの評判が立つのは必至」、一旦、悪評が立っても盛り返し可能なのだろうか。
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人生論(その9)(小田急刺傷事件は、元ナンパ師による 日本ではじめてのミソジニー(女性憎悪)無差別テロか、「MARCH出身者に職場では絶対勝てない」東大法学部卒37歳メガバンク行員の苦悩 職場は常に空気がギスギスしている、ジェフ・ベゾスが祖母に放った「残酷すぎる一言」 プリンストン大学卒業生への伝説のスピーチ) [人生]

人生論(その9)については、7月10日に取上げた。今日は、(小田急刺傷事件は、元ナンパ師による 日本ではじめてのミソジニー(女性憎悪)無差別テロか、「MARCH出身者に職場では絶対勝てない」東大法学部卒37歳メガバンク行員の苦悩 職場は常に空気がギスギスしている、ジェフ・ベゾスが祖母に放った「残酷すぎる一言」 プリンストン大学卒業生への伝説のスピーチ)である。

先ずは、8月31日付けダイヤモンド・オンライン「小田急刺傷事件は、元ナンパ師による 日本ではじめてのミソジニー(女性憎悪)無差別テロか【橘玲の日々刻々】」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/280905
・『小田急線の電車内で36歳の男が刃物で乗客10人に切りつけるなどした事件が、大きな衝撃を引き起こしました。報道によれば、この男が最初に狙ったのは「勝ち組っぽく見えた」20歳の女子大生で、「大学のサークルで女性にばかにされるなどし、勝ち組の女や幸せそうなカップルを見ると殺したくなるようになった」などと供述しています。 男は車内に灯油をまいて火をつけようとしたものの、入手できなかったため、常温では発火しないサラダ油で代用しました。一歩間違えば大惨事になるところで、多くのひとが2008年の事件を思い起こしたでしょう。 とはいえ、当時25歳の「秋葉原事件」の犯人は、「非モテ」であることに強いコンプレックスをもってはいたものの、自分には手の届かない華やかな女性に憎悪を抱いていたわけではありませんでした。その意味では、この国ではじめてのミソジニー(女性憎悪)による無差別テロといえるかもしれません。 掲示板で「不細工キャラ」を演じていた秋葉原事件の犯人との大きなちがいは、小田急線事件の容疑者が高校時代は成績優秀で、女子生徒にも人気があり、有名私立大学に進学した「リア充」だったことです。ところがなんらかの理由で大学を中退し、20代前半はコンビニなどでアルバイトしながら“ナンパ師”をしていたようです。 ナンパ師は、アメリカではPUA(ピックアップ・アーティスト)と呼ばれます。ゼロ年代のはじめに、さまざまなナンパ・テクニックをネット上で交換し、その成果を報告しあうサブカルチャーの存在がニューヨーク・タイムズで報じられて注目を集め、この記事を書いたニール・ストラウスの『ザ・ゲーム』は世界的なベストセラーになりました(その後、実際にナンパを指南するリアリティ番組も制作されました)。 PUAは女性を髪の色と10点満点の点数で評価し、「ブロンドの8点」「ブルネットの8.5点」などと数値化してナンパ掲示板で成果を競っていました。その手法は徹底的にマニュアル化されており、「ルーティーン」に従って会話を進行させれば、どんな女性も同じ反応を示すとされていました。女の脳を「プログラム」と見なして、それを「リバースエンジニアリング」しようとしたのです。 これだけでも嫌悪感を抱くひとは多いでしょうが、アメリカではPUAがミソジニーに結びつくことが繰り返し批判されてきました。PUAのアイデンティティはナンパした女性の合計点数で決まるため、試行回数を増やさなければならないのですが、それによって拒絶されるたびに(当然のことながらこれはよくあります)自尊心が傷つけられ、やがてナンパできない女性を憎みはじめるのです。 男が外見だけでモテるのはせいぜい大学くらいまでで、社会人になれば社会的・経済的な地位が重みを増してきます。小田急線事件の犯人は非正規の仕事が続かず、最後は生活保護を受けながら家賃2万5000円の1Kのアパートで暮らし、食品・生活必需品を万引きしていたといいます。これではどんなナンパ・テクニックをもっていても、誰からも相手にされないでしょう。 “ナンパ師”だった男が「非モテ」になり、若く魅力的な女性に深い憎悪を抱いて大量殺人を実行しようとするまでの転落の経緯は、「PUAのなれの果て」と考えるととてもよく理解できるのです。 参考:ニール・ストラウス『ザ・ゲーム 退屈な人生を変える究極のナンパバイブル』パンローリング』、「“ナンパ師”だった男が「非モテ」になり、若く魅力的な女性に深い憎悪を抱いて大量殺人を実行しようとするまでの転落」、誠に身勝手で、みっともない話だ。従来であれば、自らの恥になるようなことを表に出すことを控えていたのが、そんな自制もなくなったのだろう。

次に、10月2日付けPRESIDENT Onlineが掲載したライターの池田 渓氏による「「MARCH出身者に職場では絶対勝てない」東大法学部卒37歳メガバンク行員の苦悩 職場は常に空気がギスギスしている」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/50500
・『東大卒でメガバンクに就職する人は多い。彼ら彼女らの社会人生活が安泰かというと決してそんなことはない。仕事のストレスからうつ病を患ったという東京大学法学部卒のメガバンク行員・加瀬良介さん(仮名・37歳)は「社内で成績を評価されるがキツかった。口のうまさと体力にまかせてガンガン数字をとってくるMARCH出身にはかなわない」という??。 ※本稿は、池田渓『東大なんか入らなきゃよかった 誰も教えてくれなかった不都合な話』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。 「仕事がつらすぎる。ストレスがすごい」「死にたい」??「またそれか」「ごめんね。でも、死にたい」??「死んだらいかんよ。僕、加瀬くんが死んだら、しばらく体調を崩して寝込んじゃうよ」「……うん」??「会社に行きたくないの?」「うん」??「なんで?」「仕事がつらすぎる。ストレスがすごい。勤務中は常にプレッシャーを感じていて息がつまる。意地悪な先輩もいる」 ??「でも、加瀬くんのとこメガバンクじゃん。仕事は激務でもそのぶん給料はいいでしょ」「しょせん都銀だし世間に思われているほど給料はよくないよ」「なんのために働いているのかわからん。なんで銀行なんて入ってしまったんかな。頭がグチャグチャしてなにも考えられん」 このやりとりは、僕が東大に入学したときからの友人である加瀬良介くん(仮名・37歳)と、ある年の夏にLINEで交わしたものだ。 加瀬くんは大阪府出身。中高一貫の私立校から東大文一に入った。 東大法学部を卒業した後、邦銀のメガバンクに就職してバリバリ働いていた??はずなのだが、いつのころからか、彼はなにかにつけて「仕事がつらい。もう死にたい」と口にするようになった』、「東大法学部を卒業」といっても、内実はピンキリで、頭もそれほどでもないのに、プライドだけはやたら高いというやっかいなものもいる。
・『うつ病を患った「銀行」は東大卒のメジャーな就職先  先のやりとりから3カ月ほどがたったある冬の日、加瀬くんはついに無断欠勤をすることになる。その日、目が覚めると指一本動かせなくなっており、会社に電話をすることもできなかったという。 夕方になって心配した上司が家に様子を見に来るまで、彼はじっと布団に横たわり、ただ天井のシミを見ていたそうだ。 その後、加瀬くんは銀行お抱えの産業医に「この人間はうつ病のため約半年間の自宅安静での加療が必要である」との診断を下され、人事部から半年間の休職を命じられてしまった。 休職中の加瀬くんとは何度か会った。 友人として「今の仕事が嫌ならいっそ転職をしてはどうだろうか。君の学歴と経歴ならそれほど難しいことではないはずだ」などと無責任なアドバイスもしていたが、彼は半年後に元の職場に復帰をした。 相変わらずなにかにつけて「死にたい」と口にしているが、復帰後は休まずに職場に通えている。うつ病がひどいころは明らかに表情筋の動きが鈍く、目は生がきのようにドロッと濁り、なんでもないタイミングでふいに涙を流したりしていたが、今ではずいぶんと顔色もよくなっている。 この本を書くにあたり、改めて加瀬くんに当時のことを聞いてみることにした。なぜなら、彼がうつ病を患った「銀行」という職場は、東大の学部卒業者にとって大変メジャーな就職先だからだ。 (図表1)東大卒の就職先ランキング(2018年度学部卒業者)はリンク先参照) 「MARCH卒の連中がガンガン数字をとってくる」「客から受けるストレスもあったけど、社内で成績を評価されるのもキツかったね。俺が並の数字しかあげられないなかで、MARCH卒の『学生時代はイベサー(イベント系サークル)やテニス部でひたすら楽しんでいました』みたいな連中が、口のうまさと体力に任せてガンガン数字をとってくるんだよ」 幼稚園児みたいな文章を書く人たちが、しかし実際のところ、営業部では大活躍しているという。 「連中はろくに読み書きができない。でも、人に頭を下げることが苦でないし、愛想もいい。おべんちゃらも使える。愉快なトークもできる。理不尽なパワハラをスルーするスキルも高い。だから、客を簡単に口説き落として融資を取り付けてくるし、保険もたくさん売ってくるんだ。 ウェイ系っていうのかな。銀行って転勤が多いから歓送迎会も多いんだけど、そういう飲み会で場を盛り上げるもの彼らだよね。彼らがいい年して二十歳のガキみたいに『ウェーイ! ウェーイ!』って騒いでいるとき、俺みたいなのは端っこで静かに目立たないようにしているよ」 要は、そういう人たちはコミュニケーション能力が高く、会話における反射神経がすごくいいのだ。 往々にして場の空気を読む能力にも長けているので、軽快なトークで重苦しいシーンをパッと明るくさせることも得意である。 「俺らって人と会話するときにむちゃくちゃ頭を使うじゃない。会話のキャッチボールで一球投げるごとに、頭のなかにある情報をすべて引っ張り出して、検討して、最善だと思われることを話そうとするよね。でも、テンポの速い会話でそんなことをしていたら情報処理が追いつかない。 俺なんかは訪問営業をする前に、想定される会話をぜんぶ紙に書き出してみて、場を和ませる冗談まで考えて、それらを暗記してから行くのよ。 でも、生粋のソルジャーは営業トークが脊髄せきずい反射でこなせてしまう。日常会話をするだけで、連中には単純にコミュニケーション能力ではかなわないと思い知らされるね」』、「俺なんかは訪問営業をする前に、想定される会話をぜんぶ紙に書き出してみて、場を和ませる冗談まで考えて、それらを暗記してから行くのよ」、普通、そんなヒマはない筈だ。「生粋のソルジャーは営業トークが脊髄せきずい反射でこなせてしまう」、その通りだ。
・『「天下の東大の数字がなんでパッとしないの?」  僕たちは論理的な読み書きといった言語スキルは高いが、他人との会話やコミュニケーションといった対人関係スキルでは世間の平均値にもおぼつかない。 「話が面白くない」「難しいことしかいわない」「一呼吸でしゃべりすぎ」「人の気持ちが分かっていない」「なにを考えているのか分からない」「態度が冷たい」「協調性がない」「挙動が不審」……これらは、僕たちがなにかにつけて言われてきた言葉である。 もし今この本を読んでいるあなたが東大生や東大卒業生なら、身に覚えのある人もいることだろう。 僕たちが独りで机に向かってシコシコと受験勉強をしていたときに、大勢の人間と一緒に運動したり遊んだりしながら対人関係スキルを磨いていた人たちがいる。 東大から社会に出てはじめて、僕たちはそのことに気づくのだった。 「民間企業は稼いでなんぼでしょ。そんな職場で、まともな文章一つ書けないバカだと思っていた連中が、俺なんかよりずっと稼いでくる。 営業成績が張り出されて、みんなの前で上司に『短大出のあいつがあれだけの数字をあげているのに、天下の東大を出ているお前の数字はなんでパッとしないの? やる気が足りないのかな?』なんて詰められると、プライドはズタズタだよね。今でも思い出すだけで死にたくなる」 並程度の営業成績をあげられなかった加瀬くんは、大勢の同僚の前で上司から何度も叱責を受けた。並の成績ならそれでよさそうなものだが、東大卒というだけで要求される数字が大きくなるのだという。 結局、学歴があるうえで数字もあげる人間が銀行のメインストリームで出世していく。 「ただ、そういう人は『スーパースター』のようなもので、並の東大卒よりも明らかに能力が高い。俺なんかは有象無象の東大卒だからね……いや、人よりもずっと根性がないから、東大卒としては底辺かな。だから、営業仕事のキツさにメンタルがもたなかったんだろうね」 加瀬くんは自虐めいてそう言った』、「東大卒としては底辺かな。だから、営業仕事のキツさにメンタルがもたなかったんだろうね」、フーン。
・『慶應卒の嫌がらせが陰湿でキツかった  「もうひとつ嫌だったことを挙げるとすると、いじめだよね。けっこうひどかったよ」 一般的に、ある程度の数の人間が集まればいじめは必ず起こるとされている。しかし、加瀬くんが勤めるようなちゃんとした会社では徹底された社内コンプライアンスが大きないじめの発生を防いでいる??そう僕は思っていた。 「職場は常に空気がギスギスしているよ。仕事がキツくて、みんなストレスをためているんだよね。そんななかで東大卒は昇進とかでなにかと優遇されるから、他大卒の人たちの妬み嫉みの対象になりやすいんだよね」 自分たちの方が外で稼いでくるのになぜあいつは東大を出ているというだけ??そういった悪意に加瀬くんはしばしばさらされたという。 「具体的にぶっちゃけてしまうと、慶應を出ている人の先輩からの嫌がらせが陰湿でキツかった。いろいろとやられたよ」 業務で話しかけても一度目は必ず無視される。目が合うたびに舌打ちをされる。うっかり脚をぶつけたという体で机を蹴られる。ほかの同僚たちの前で仕事のミスを何時間も責められる。 名前ではなく「東大生」と呼ばれる……一つひとつはささいな嫌がらせでも、コツコツと続けられたことで加瀬くんの心には着実にダメージが蓄積した』、『慶應卒」の結束の強さは並大抵ではない。
・『飲み会好きの慶應卒、一匹狼の東大卒  これらの行為は金品の脅し取りや直接的な暴力とはちがって、告発されても「故意ではない」「誤解だ」「彼のためを思って指導していた」などという言い逃れが可能だ。社内のハラスメント相談窓口に通報されても、一度のことなら口頭注意で済んでしまうらしい。 つまり、一発で「レッドカード」をもらってしまうようないじめよりも、狡猾でタチが悪い。加瀬くんは、自分をいじめた人がともに慶應義塾大学の卒業生だったことを偶然ではなく必然だと考えていた。 「偏見と言われるだろうけど、慶應卒には東大卒を目の敵にしている人が多いように俺は思う。慶應って『私学の雄』とされているけど、東大卒の前ではそのプライドが傷つくのか、彼らからは常に敵意のようなものを感じるんだよね」 加瀬くんが働く銀行で役員の第一勢力を占めるのは優秀な東大卒だが、それに肉薄して第二勢力をつくっているのは慶應卒の人間なのだそうだ。 であれば、東大出身者をなにかとライバル視する慶應出身者がいてもおかしくはない。 「慶應の連中はやたらと同窓でつるむのが好きで、銀行のなかにも同窓会をつくっているんだよね。よく慶應卒で集まって飲み会をやってるよ。対して、俺たち東大卒は一匹おおかみが多いじゃない。飲み会なんかもやらないし、そもそも大人数での飲み会は嫌いだし。 仲間とわいわいしているのが好きな連中は、一人でいるようなやつが気にくわないんじゃないかな。もともと、相性が悪いんだよ。正直に言うと、俺だって慶應的な人づきあいは苦手だもの」』、「慶應の連中はやたらと同窓でつるむのが好きで、銀行のなかにも同窓会をつくっているんだよね」、その通りだ。
・『いじめのうまさとコミュ力の高さに共通点  たしかに、僕が知る範囲でも慶應の塾員(慶應では学生を「塾生」、卒業生を「塾員」と呼ぶ)には明るくて社交的な人間が多い。 附属校からエスカレーター式にあがってくる内部進学組、大学からの一般入試組、推薦入試組、帰国生入試組……慶應大学内には多様な出自の塾生がいる。 彼らは大学を卒業した後も「日本最強の学閥ネットワーク」との呼び声が高い「慶應三田会」に所属して盛んに親睦している。 このような多様な個性とのつながりを重視し、同窓生同士で生涯にわたって助け合う校風によって彼らの社交性は培われている。 「最悪なのは、人をいじめるような連中って営業で数字をとってくるんだよ。意地の悪い慶應卒の先輩たちも、営業成績はかなりよかった。だから、俺は余計にみじめになるんだよね」 人間関係での位置取り、相手のアクションに素早く対応する反射神経、場の空気の読み方、人の心を動かす言葉選び……いじめのうまさとコミュニケーション能力の高さは通じるところがある。 だからといって、コミュニケーション能力が高い人のすべてがいじめをするわけではもちろんないけれど。 「先輩のうちの一人は、学生のときにネットワークビジネスをやっていたんだって。飲み会で当時のエピソードを披露して笑いをとっていたよ。 都内のルノアールでくつろいでいると、時々ネットワークビジネスの勧誘現場に出くわすじゃない。しばらく聞き耳を立てていれば分かるんだけど、勧誘している側もされている側もたいてい慶應の学生なんだよね。 あんなものはろくな商売じゃないんだけど、学生のころからバリバリに営業の現場に出ていたってことでしょ。そんな人の営業スキルに、コミュ障の俺がかなうわけがないんだ」』、「ネットワークビジネス」の「営業の現場に出ていた」、「そんな人の営業スキルに、コミュ障の俺がかなうわけがない」、当然だ。
・『慶應卒の人たちが転勤して、会社でのストレスは半分に  反例なら挙げられたのだが、僕は一言「なるほど」とだけ返した。少なくとも、加瀬くんが同じ職場にいる2名の塾員からいじめを受けていたのは事実なのだ。彼の心情を考えれば、その意見がいくらか偏るのは無理からぬことだと思った。 幸いなことに銀行は内部での異動が激しい。行員が特定の客と癒着して悪さをしないように、約3年おきに転勤をさせられるのだそうだ。 休職していた加瀬くんがようやく職場に復帰したときには、彼を執拗しつようにいじめていた人の先輩はすでに別の支店に異動していた。 「慶應卒の人たちが転勤して、ずいぶん楽になったよ。会社でのストレスは半分になった」 やれやれという表情を浮かべながら加瀬くんはそう言った』、定期的な人事異動でリセットされるのは、銀行の数少ない良いところだ。

第三に、12月15日付け東洋経済オンラインが掲載した「 アマゾン創業者、元CEO :ジェフ・ベゾスが祖母に放った「残酷すぎる一言」 プリンストン大学卒業生への伝説のスピーチ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/458840
・『アマゾン創業者のジェフ・ベゾス本人の言葉による初めての本として話題の『Invent & Wander──ジェフ・ベゾス Collected Writings』。序文を当代一の伝記作家ウォルター・アイザックソン氏が担当している。本稿では同書より、ベゾスがプリンストン大学の卒業生に向けて語ったスピーチを抜粋して紹介する。ある一言で祖母を泣かせてしまった、という自らの苦い経験の告白とともに語られる、次代を担う若者へのメッセージだ』、「ペゾス」の「苦い経験」とは興味深そうだ。
・『10歳のときの祖父母との旅  子どものころは毎年夏になると、テキサスにある祖父母の農場で過ごしました。風車を修理したり、家畜に予防注射をしたり、そのほかの雑用を手伝ったりしていました。午後は毎日昼メロを見ていました。とくに、「デイズ・オブ・アワ・ライブズ」は欠かさずに見たものです。 祖父母はキャラバンクラブという、エアストリーム社のキャンピングトレーラーを持っている人たちのグループに入っていて、メンバーと一緒にアメリカやカナダを旅行していました。その旅に、私たちもたまに連れていってもらうことがありました。トレーラーを祖父の車につないで、300台ものほかのトレーラーと列をなして旅に出かけるのです。 私は祖父母が大好きで、いつもこの旅をとても楽しみにしていました。ちょうど10歳ごろだったでしょうか、旅に連れ出してもらった私は広々とした後部座席で転げまわっていました。運転していたのは祖父です。祖母は助手席に座っていました。祖母は旅のあいだずっとタバコを吸っていて、私はそのにおいが嫌でした。 そのころの私は何かにつけてちょっとした計算をしては推測ごっこをして勝手に喜んでいました。ガソリンの燃費を計算したり、日用品の買い出しについてどうでもいい統計を考えてみたり。 そのときは、少し前に聞いた喫煙に反対する広告キャンペーンが頭に残っていました。細かいことは覚えていないのですが、タバコを吸うたびに寿命が縮むというような広告でした。たしかひと吸いで2分だったと思います。 そこで祖母のために計算してみることにしました。1日に吸うタバコの本数と、タバコ1本につき何回吸うかなど、およその数を計算しました。それらしい数になったので、前の座席に顔を突き出して祖母の肩を叩き、鼻高々にこう言いました。 「ひと吸いで2分なら、もう寿命が9年縮んだね!」 それからのことは、鮮明に脳裏に焼きついています。私にとっては思いがけない出来事でした。頭がいいね、よく計算できたねとほめてもらえると思っていたのです。「ジェフ、なんて賢い子なんだろう。ややこしい推測をして、1年が何分かを計算して、そこから割り算したんだね」なんて』、「ジェフ少年」は「頭がいいね、よく計算できたねとほめてもらえると思っていたのです」、やはり誉められることを期待しての行動のようだ。
・『「賢いよりも優しいほうが難しいんだ」  でも違っていました。祖母がわっと泣き出したのです。私はどうしていいかわからず、ただ後部座席に座っていました。祖母が泣いている横で、祖父は黙って運転していましたが、高速道路の脇に車を止めました。祖父は車から出て後ろにまわり、後部座席のドアを開け、私が出てくるのを待っていました。叱られるのだろうか? 祖父は非常に知的で寡黙な人でした。厳しく叱られたことなどありません。でも今日、はじめて叱られるのかもしれない。車に戻って祖母に謝りなさいと言われるのかもしれない。 これまで祖父母とのあいだでこんな経験ははじめてで、どうなるのかまったく見当もつきませんでした。私と祖父はトレーラーの脇に立ち、向き合いました。祖父は私を見て、少し黙ったあと、優しく静かにこう言ったのです。 「ジェフ、賢いよりも優しいほうが難しいんだ。いつかおまえにもわかるときがくる」 今日みなさんにお話ししたいのは、才能と選択は違うということです。頭のよさは持って生まれた才能です。優しさは選択です。才能は簡単です。生まれついてのものですから。選択は難しい。うっかりしていると才能に溺れてしまいます。そうなると、おそらく選択を誤ってしまうでしょう。 ここにいるみなさんはたくさんの才能に恵まれています。頭の回転が速く賢いことも、みなさんの持って生まれた才能の1つでしょう。難関を突破してこの大学に入ってきたわけですから。もし頭のよさが何らかのかたちで示されていなければ、入学が許可されるはずはありません。 いまこれから、みなさんが驚くべき世界を旅するにあたって、その頭のよさが役に立つことは間違いありません。私たち人類は、ときにはつまずきながらも、それでも驚くべきことを達成するでしょう。) 環境に優しいエネルギーを大量に生み出す方法を見つけるはずです。細胞壁に侵入して病気を治せる原子レベルの微細な機械をいつかつくりあげるでしょう。ついこのあいだ、生命を合成できたという報道もありました。とてつもない大ニュースですが、一方で必然でもあります。今後数年のうちに、生命を合成するばかりか、仕様まで設計できるようになるでしょう。人間の脳も解明できるようになると思います。 ジュール・ヴェルヌ、マーク・トウェイン、ガリレオ、ニュートン。何でも知りたがったいにしえの天才たちはみな、いまの時代に生きていたかったはずです。私たちは文明全体として多くの遺産に恵まれていますし、私の前に座っているみなさんは、個人として多くの才能に恵まれてもいます』、「祖父は・・・優しく静かにこう言ったのです。 「ジェフ、賢いよりも優しいほうが難しいんだ。いつかおまえにもわかるときがくる」、凄いアドバイスだ。「私たちは文明全体として多くの遺産に恵まれています」、それらを活かすのは我々だ。
・『私たちは自分の「選択」でできている  そんな生まれながらの才能を、どう使ったらよいでしょう?みなさんがこれから誇りに思うのは、才能でしょうか、それとも選択でしょうか?(中略) 明日から本当の意味で、みなさんの人生が、みなさんがゼロからご自身で築き上げる人生がはじまります。 その才能を、みなさんはどう使いますか?どんな選択をするでしょう? 惰性で生きていきますか?それとも情熱を追いかけますか?  みんなと同じになりますか?それともほかの誰とも違う自分になりますか?  楽な道を選びますか?それとも誰かのために挑戦し続けますか?  批判されたら引き下がりますか?それとも信念を貫きますか?  間違ったらはったりで誤魔化しますか?それとも謝りますか?  傷つくことを恐れて何もしませんか?それとも惚れ込んだら行動に移しますか?  安定を取りますか?それとも少し向こうみずに突き進みますか?  困難なときにあきらめますか?それでもなおがむしゃらに挑戦し続けますか?  言い訳や批判だけで終わりますか?それともみずから何かをつくりだしますか?  誰かを傷つけてでも自分の賢さを主張しますか?それとも人に優しくなりますか? ここで、思い切って予言めいたことを言わせてください。 みなさんが80歳になり、静かに過去を振り返り、自分にしかわからない人生の物語を自分に向けて語るとしましょう。そのとき、あなたの人生を最も適切かつ端的に表すのは、あなたが行ってきた選択の数々にほかなりません。私たちはつまるところ、自分の選択からできているのです。 みなさんが素晴らしい人生の物語を紡がれますよう。私の話を聞いてくれてありがとう。幸運を祈ります』、「私たちはつまるところ、自分の選択からできているのです」、私は「ベゾス」氏は個人的には好きになれないが、この文章は素晴らしい傑作で、これに直接接したプリンストン大学の卒業生は幸せだ。
タグ:人生論 (その9)(小田急刺傷事件は、元ナンパ師による 日本ではじめてのミソジニー(女性憎悪)無差別テロか、「MARCH出身者に職場では絶対勝てない」東大法学部卒37歳メガバンク行員の苦悩 職場は常に空気がギスギスしている、ジェフ・ベゾスが祖母に放った「残酷すぎる一言」 プリンストン大学卒業生への伝説のスピーチ) ダイヤモンド・オンライン「小田急刺傷事件は、元ナンパ師による 日本ではじめてのミソジニー(女性憎悪)無差別テロか【橘玲の日々刻々】」 「“ナンパ師”だった男が「非モテ」になり、若く魅力的な女性に深い憎悪を抱いて大量殺人を実行しようとするまでの転落」、誠に身勝手で、みっともない話だ。従来であれば、自らの恥になるようなことを表に出すことを控えていたのが、そんな自制もなくなったのだろう。 PRESIDENT ONLINE 池田 渓 「「MARCH出身者に職場では絶対勝てない」東大法学部卒37歳メガバンク行員の苦悩 職場は常に空気がギスギスしている」 「東大法学部を卒業」といっても、内実はピンキリで、頭もそれほどでもないのに、プライドだけはやたら高いというやっかいなものもいる。 「俺なんかは訪問営業をする前に、想定される会話をぜんぶ紙に書き出してみて、場を和ませる冗談まで考えて、それらを暗記してから行くのよ」、普通、そんなヒマはない筈だ。「生粋のソルジャーは営業トークが脊髄せきずい反射でこなせてしまう」、その通りだ。 「東大卒としては底辺かな。だから、営業仕事のキツさにメンタルがもたなかったんだろうね」、フーン。 『慶應卒」の結束の強さは並大抵ではない。 「慶應の連中はやたらと同窓でつるむのが好きで、銀行のなかにも同窓会をつくっているんだよね」、その通りだ。 「ネットワークビジネス」の「営業の現場に出ていた」、「そんな人の営業スキルに、コミュ障の俺がかなうわけがない」、当然だ。 定期的な人事異動でリセットされるのは、銀行の数少ない良いところだ。 東洋経済オンライン 「 アマゾン創業者、元CEO :ジェフ・ベゾスが祖母に放った「残酷すぎる一言」 プリンストン大学卒業生への伝説のスピーチ」 『Invent & Wander──ジェフ・ベゾス Collected Writings』 プリンストン大学の卒業生に向けて語ったスピーチを抜粋して紹介 「ジェフ少年」は「頭がいいね、よく計算できたねとほめてもらえると思っていたのです」、やはり誉められることを期待しての行動のようだ。 「祖父は・・・優しく静かにこう言ったのです。 「ジェフ、賢いよりも優しいほうが難しいんだ。いつかおまえにもわかるときがくる」、凄いアドバイスだ。「私たちは文明全体として多くの遺産に恵まれています」、それらを活かすのは我々だ。 「私たちはつまるところ、自分の選択からできているのです」、私は「ベゾス」氏は個人的には好きになれないが、この文章は素晴らしい傑作で、これに直接接したプリンストン大学の卒業生は幸せだ。
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働き方改革(その35)(若者がハマる「ギグワーク」脱法的仕組みの大問題 労働問題に詳しい弁護士が指摘「日本は対応遅い」、日本企業でブーム 「欧米流働き方」の光と影 日本の「ジョブ型雇用」はここが間違っている、東レ・日覺昭廣社長が語る終身雇用の可能性 日本型の「終身雇用」のほうが会社は強くなる) [経済政策]

働き方改革については、10月23日に取上げた。今日は、(その35)(若者がハマる「ギグワーク」脱法的仕組みの大問題 労働問題に詳しい弁護士が指摘「日本は対応遅い」、日本企業でブーム 「欧米流働き方」の光と影 日本の「ジョブ型雇用」はここが間違っている、東レ・日覺昭廣社長が語る終身雇用の可能性 日本型の「終身雇用」のほうが会社は強くなる)である。

先ずは、12月1日付け東洋経済オンライン「若者がハマる「ギグワーク」脱法的仕組みの大問題 労働問題に詳しい弁護士が指摘「日本は対応遅い」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/470783
・『インターネットを通じて単発の仕事を請け負う「ギグワーク」。柔軟で自由な働き方として若者には魅力的に映るが、その実態は「個人請負」であり、事実上の無権利状態に置かれているなど、問題点は山積している。同様の問題が発生している諸外国では、すでに対策も進められつつある。 貧困に陥った若者たちの実態に4日連続で迫る特集「見過ごされる若者の貧困」2日目の第2回は、ギグワークの法的な問題点について、日本の労働問題に加え海外事情にも詳しい東京法律事務所の菅俊治弁護士に聞いた(Qは聞き手の質問、Aは菅俊治弁護士の回答)(1日目の記事はこちらからご覧ください)。 【2日目の記事】第1回:若者がハマる「ギグワーク」脱法的仕組みの大問題 第3回:「最低賃金も稼げない」米国ギグワークの衝撃実態 最大の問題は「あらゆる労働法規の脱法」』、興味深そうだ。
・『Q:台頭するデジタルプラットフォーム型ビジネスなどでサービスを提供する「個人請負」という働き方にはどんな問題があるのでしょうか。 A:最大の問題はあらゆる労働法規の脱法だ。委託された業務に対して報酬が支払われる形式のため、時間外、休日、深夜労働手当などはつかない。また最低賃金の保障や解雇規制もなく、職を失っても失業保険が使えない。 そのため、実態としては継続的な労務提供がなされているにもかかわらず、プラットフォーマー側の一存で、いつでも「アカウント停止」とされて仕事を失うリスクがある。報酬体系もブラックボックス化が進み、かつ一方的で著しい不利益変更がなされるケースもある。 さまざまなプラットフォーム型ビジネスが、コロナ禍で急拡大した。各プラットフォーマーとも立ち上げ期こそは、働き手の確保と囲い込みのために高い報酬を約束するなど好条件を提示するが、一定の寡占的なポジションを確保すると手のひらを返すように条件の切り下げへと転じている。 とりわけ最近問題となっているのが、収入維持のために相当無理して長時間労働を余儀なくされている人が増えている点だ。長時間労働による過労に伴う事故も発生している。労災保険も適用されず、また事故相手への補償も個人請負の自己責任が問われる場合すらある。 多くの場合で労働法が適用されるべきにもかかわらず、未解決、未整理のまま放置されているというのが日本の現状だ。) Q:労働法規以外にも問題は多いですね。 A:個人請負は年金や健康保険も全額自己負担で、国民健康保険、国民年金に加入することになる。会社側負担分がある労働者に比べて、負担が重い。また貨物運送や食品衛生などの各業法的な規制についても、誰が公的な責任を負うのかがあいまいにされている。 そんな個人請負が労働強化にまで直面しているというのは、相当危機的な状況だと思っている。こうした働き方が出始めたときから、上記のような問題が生じることはわかっていたはずなのに、厚生労働省も経済産業省もきちんとした手立てを取ろうとしなかった。また裁判所に救済を求める動きも進んでいない』、「立ち上げ期こそは、働き手の確保と囲い込みのために高い報酬を約束するなど好条件を提示するが、一定の寡占的なポジションを確保すると手のひらを返すように条件の切り下げへと転じている。 とりわけ最近問題となっているのが、収入維持のために相当無理して長時間労働を余儀なくされている人が増えている点だ」、「厚生労働省も経済産業省もきちんとした手立てを取ろうとしなかった」、由々しい問題だ。
・『「労働基準法上の労働者性」のハードルが高い  Q:日本ではまだプラットフォーマーを相手にした訴訟は多くないですね。なぜなのでしょうか。 A:日本では残業代や労災補償、失業給付などの対象となる「労働基準法上の労働者性」が裁判所で認められるためのハードルが高い。 (菅弁護士の略歴はリンク先参照) 自車を持ち込む形のトラック運転手の労働者性をめぐって、最高裁判所は運転手がその会社の運送業務に専属的にかかわり、運送係の指示を拒否する自由はなく、毎日の始業終業時間も事実上決められていたケースでも、労基法上の労働者性を否定した(横浜南労基署長事件、1996年11月判決)。 この最高裁判決に沿えば、始業・終業時間は自由で、サービス提供の拒否も可能なプラットフォーム型ビジネスの個人請負が労基法上の労働者性を認められるためのハードルはかなり高い。弁護士側にも容易ではないという認識が広がっているのは事実だ。 ただ、日本とは異なり諸外国では個人請負の救済に向けた議論や動きが急速に進んでいる。こうした海外からの波が、遅からず日本にも来るとみている。 Q:個人請負をめぐり、他の先進諸国ではどういった流れになっているのでしょうか。 A:まずわかりやすいのはフランスで、日本の最高裁に当たる破棄院はここ数年、従来の方針を転換して「ウーバーイーツ」のような料理配達人やウーバータクシーの運転手の労働者性を認めるようになった。GPSによる監視と指揮命令、アクセス停止などの制裁、報酬の一方的決定などが考慮されたとみられている。同時に立法的救済にも着手している。 イギリスは立法によって「被用者(employee)」を対象にしたものと、より広い概念の「労働者(worker)」を対象としたものに分かれているが、やはり最近の最高裁判決で、ウーバータクシーの運転手を「労働者」だと認定し、最低賃金の適用や有給休暇の付与などを認めた。 Q:アメリカは州レベルでも活発な動きがあるそうですね。 A:激しいせめぎ合いが起きているのが、カリフォルニア州だ。同州の最高裁はプラットフォーム型ビジネスの個人請負が独立した事業主であることの証明を、雇い主側に課す判決を出した。 これに対してウーバーなどプラットフォーマー側が猛反発して、州の住民投票でウーバーなどのアプリによる運転手を独立事業主することを賛成多数で承認させた』、「カリフォルニア州」で「プラットフォーマー側が猛反発して、州の住民投票でウーバーなどのアプリによる運転手を独立事業主することを賛成多数で承認させた」、リベラルな州なのに、ウーバーなどの抵抗が通ったとは意外だ。
・『最低賃金や安全衛生の規制の対象となるケースも  この点をめぐる争いは今でも議論や訴訟が続いているが、アメリカのほかの州でもさまざまな動きがある。労働者性が認められない独立事業主とされても、最低賃金の規制や安全衛生の規制の対象とされるケースも出始めている。 バイデン政権は、先のカリフォルニア州のような立証責任を雇い主側に課すモデルを連邦レベルで採用する法案を議会に提出し、下院では可決されている。 Q:改めて、日本の対応の遅れが目立ちます。 A:日本でも今春、「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」が定められたが、中身は労災補償の特別加入制度の一部拡大といった限定的なものにとどまる。 プラットフォーム型ビジネスは今後、さらに広い分野に浸透するだろうことは間違いない。アプリによる指示や事実上の拘束、ランキングや点数化などによるコントロールなどの従来とは異なる実態をしっかり踏まえたうえで、そこで働く個人請負の就業実態に即した労働者概念の見直しは喫緊の課題だろう』、日本の行政も、問題を放置することなく、実態調査やそれに「即した労働者概念の見直し」を積極的に取組むべきだろう。

次に、12月15日付け東洋経済Plus「日本企業でブーム、「欧米流働き方」の光と影 日本の「ジョブ型雇用」はここが間違っている」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/29052
・『日本で注目されているジョブ型雇用は、欧米で採用されている本来のジョブ型雇用とは大きくかけ離れている。ジョブ型雇用の専門家の話をもとに、その功罪を整理した。 フジテレビと博報堂、三菱ケミカル、それに味の素――。 大手企業の間でここ2年の間、共通した動きがあった。それは50歳以上を対象とする希望退職を募ったことだ。日本では今、こうした人員整理が目立っている。 欧米で採用されている「ジョブ型」と呼ばれる雇用形態のもとでは、このような形での退職募集は通常考えられない。大した仕事ができないまま歳を重ねても、日本のように年齢をもとに退職を請われることはない』、それはそうだろう。
・『日本型雇用は「甘くない」  雇用体系を整理し、欧米型の雇用を「ジョブ型」、日本型雇用を「メンバーシップ型」などと名付けたのは、労働政策研究・研修機構労働政策研究所長の濱口桂一郎氏だ。濱口氏は「日本のメンバーシップ型雇用がジョブ型雇用と比べて甘いと思うのはとんでもない。働かない50代が許されないという厳しさがある」と話す。 「年功序列」「終身雇用」といった特徴を持つメンバーシップ型雇用は、ともすればぬるま湯のようにも思われてきた。「職能等級制度」とも呼ばれ、年齢や勤続年数に応じて段階的に処遇(給与やポスト)も向上する。しかし、裏を返せば、本来はそれだけの結果を求められるということだ。 一方、欧米のジョブ型雇用は、「職務等級制度」と呼ばれるものだ。企業を人の集まりではなく、ジョブの集まりと見立て、ジョブの価値に値段をつける。ジョブ・ディスクリプション(職務記述書)をつくり、職務内容や責任範囲、勤務地、必要なスキルをあらかじめ明確に示す。そして、その職務の椅子に座るのにふさわしい人を採用する。 ジョブ型雇用では年齢や勤続年数を重ねても、昇進や昇給をすることはない(ただし若年期のみ、最初の数年は一括で昇給することがある)。そればかりか、成果や能力、意欲も一切考慮しない。なぜならばジョブ型雇用ではごく一部の幹部層を除き、社員1人ひとりの仕事内容や能力の評価を行わないからだ。働きぶりには関係なく、あらかじめ職務につけられた価値(値段)の賃金のみが支払われる。 そのため、20代であるジョブに就き、そのまま同じ職務で働き続ければ、50代になっても昇進することはない。ベースアップといった全社的な賃金水準の引き上げを除けば、給与が上がることもない。その代わり、日本のように「働きぶりが高い賃金に見合わない」などと中高年社員が冷たい目で見られることはない。 かつての日本では「働きぶりは微妙だが、中高年なので高給取り」の社員を抱えている余裕があった。年功序列のもとでは、中高年社員の給与は高い一方で、若手社員の給与を低く抑えられる。40~50代の社員数と20~30代の社員数のバランスがとれている間は、仕事ぶりに見合っていない中高年社員の給与を抱えることができていた。 だが、「人口構成が変わり、多くの有名企業では40代や50代が一番大きなブロック(人数)になった。メンバーシップ型雇用が想定していた企業内人的資源のありかたからすれば矛盾をはらんだ構成になり、大した仕事はしないが給与は高いという人をたくさん抱えることは企業にとって非常に大きなマイナスになってきている」(濱口氏)。 この深刻な問題は、昨日今日の話ではない。1990年代後半以降、この日本型雇用の矛盾を是正しようと、「成果主義」を導入する企業が相次いだ。だが、成果主義の多くは失敗に終わっている。それはなぜか』、「ジョブ型雇用ではごく一部の幹部層を除き、社員1人ひとりの仕事内容や能力の評価を行わないからだ。働きぶりには関係なく、あらかじめ職務につけられた価値(値段)の賃金のみが支払われる」、なるほど。
・『日本企業は成果を「働きぶり」で評価  欧米と違い、日本では長年、「働きぶり」という主観的、抽象的なものさしで社員を評価してきた。例えば「あいつは夜中まで頑張っている」「いつも周りに気配りをしている」「意欲が高い」といった情意考課の要素を入れた、客観性の低い評価だ。 メンバーシップ型雇用は社員が「なんでもやる」前提のため、本人が希望しなくても社命で異動や転勤を命じることができる。野球でいうと、野手を希望しているのにチーム都合で投手をやれと言われるようなものだ。しかも、成果を出せなければ、評価が下がってしまう。 結果的にメンバーシップ型雇用のままでの成果主義の拡大は、多くの社員が評価やそれに伴う処遇に不満を持って退社したり、意欲を失ったりするという結果に終わった。 その代わりに注目されているのがジョブ型雇用というわけだ。だが、濱口氏は「成果主義のリベンジとしてジョブ型雇用を導入しようとしているのだろうが、どうも根本的な勘違いがあるようだ」と懸念する。というのも、欧米のジョブ型雇用では原則的に幹部を除く社員の成果や能力を評価せず、成果主義とは対極にあるからだ。 日本企業が「ジョブ型」と呼ぶ雇用形態はたいていの場合、職務等級制度ではなく、役割等級制度だ。役割等級制度では社員が担当する職務を固定化し、責任範囲もある程度示したうえで、責任や役割をどれだけ果たしたかで評価する。社員の能力や成果も見る点が、ジョブ型雇用とは大きく異なる。 日本で欧米型のジョブ型雇用の導入が進まないのは、職務の価値を評価して値付けしてこなかったためだ。すでにそれぞれの職務に社員がついている中、この仕事はいくら、と後から値付けをすることは難しい。また、このスキルや資格があるからこのジョブに就けるといった考え方やノウハウも持ち合わせていない。 加えて、日本の高等教育は実学よりも教養教育を志向しており、多くの場合では学生が学ぶ中身が仕事と直結しない。そのため、企業の新卒採用では職務を限定しない総合職採用が多い。大半の学生は仕事で使える専門性を持っていないため、採否は成長可能性(ポテンシャル)を重視して決めるのが一般的だ。入り口の段階からして、職務に適性のある人材を採用する欧米のジョブ型雇用とずれている』、「日本企業が「ジョブ型」と呼ぶ雇用形態はたいていの場合・・・役割等級制度だ。役割等級制度では社員が担当する職務を固定化し、責任範囲もある程度示したうえで、責任や役割をどれだけ果たしたかで評価する。社員の能力や成果も見る点が、ジョブ型雇用とは大きく異なる」、「入り口の段階からして、職務に適性のある人材を採用する欧米のジョブ型雇用とずれている」、確かに日本では「欧米のジョブ型雇用」は採用不可能だ。
・『雇用制度に正解はない  メンバーシップ型雇用に比べると、役割等級制度は求める役割と成果が明確かつ具体的なため、評価される社員の納得度は高いと言えそうだ。上述の通り、年功序列のメンバーシップ型雇用制度を維持することには限界があるが、単に成果主義を拡大するだけでは失敗する。そうした反省のうえに、日本流ジョブ型雇用として役割等級制度が広がっているとみられる。 そもそも、欧米のジョブ型雇用も完璧なわけではない。 欧米のジョブ型雇用では働きぶりや能力評価といった曖昧なものではなく、公的な資格がモノをいう。会社で上の職務に就くには、自分の実力を客観的に証明する資格を取り、それを武器に上の職務の公募に手を挙げる方法が一般的だ。だが、資格があるからといって必ずしも実務で「使えるヤツ」なのかと言えば、そうとも限らない。逆もまたしかりだ。 濱口氏によると、そのためか、欧米では旧来の日本型雇用のような要素を少し採り入れる動きも出てきているという。「パフォーマンスペイ」と称し、仕事の成果も評価して報酬を決める傾向が以前と比べれば強まってきたという。 濱口氏は「欧米のジョブ型雇用はかなり合理的で公平性を第一にしているが、そこで測れない指標が抜け落ちてしまっている。向こうではそこへの問題意識が出てきている」と指摘したうえで、「どの雇用制度が正解と言うつもりはない。日本企業がこれまでの賃金処遇制度に問題意識を持ち、何とかしようとして新たな人事制度を採り入れようとしていること自体は理解できる。ただ、制度の違いや中身を本質的によく理解したうえで考えるべきだ」と話す。 ジョブ型雇用は職務が固定化され、専門性が高まる一方、「つぶし」が利かなくなる一面を持つ。その職務がAI(人工知能)に取って代わられたりして、消えてなくなる可能性も否定できない。雇用の大転換期にある今、働く側が身の振り方を主体的に考えることが重要になる』、「雇用の大転換期にある今、働く側が身の振り方を主体的に考えることが重要になる」、確かにその通りだ。

第三に、12月15日付け東洋経済Plus「東レ・日覺昭廣社長が語る終身雇用の可能性 日本型の「終身雇用」のほうが会社は強くなる」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/29063
・『日本企業に特有のメンバーシップ型雇用を続ける素材メーカー大手の東レ。「ジョブ型よりも会社は成長できる」という同社の日覺昭廣社長に聞いた。 素材メーカー大手の東レはいわゆる日本のメンバーシップ型雇用を続けており、終身雇用も堅持している。ジョブ型の本場、欧米での勤務も経験したうえで「終身雇用のほうが会社は成長できる」と主張する日覺昭廣社長に聞いた(Qは聞き手の質問、Aは日覺氏の回答)』、「欧米での勤務も経験したうえで「終身雇用のほうが会社は成長できる」と主張」、説得力がありそうだ。
・『ジョブ型という言葉が独り歩き  Q:日本でもメンバーシップ型雇用を見直し、ジョブ型に近い雇用制度を導入する動きが広がってきました。どうみていますか。 A:ジョブ型という言葉だけが独り歩きしてメンバーシップ型と比較されているが、本来は二律背反するものではないはずだ。 ジョブ型雇用では専門性とスキルさえあればいい。手っ取り早く、中途採用で外から人材を連れてきてもいい。われわれもそうだが、メンバーシップ型が中心の企業でも、職種や場合によってはそのようにしている。いわばジョブ型とのハイブリッドだ。 企業の成熟度によっても判断は違ってくる。新興企業では社員を一から教育しているようでは話にならないので、職務への適性を持つ人材を外部から集めるのが普通だ。 しかし、10年、15年経ってきてある程度成長してくると、新卒できちんと採用し、社内で人材を育成することが重要になってくる。会社でさまざまな経験を積んで、いろいろなことを理解し、専門的な知識を持った人がほしくなる。つまり、(ジョブ型とメンバーシップ型の)どちらを採るのかは企業の背景によっても変わってくるだろう。 Q:東レの人事制度のベースはメンバーシップ型です。 A:それは、会社というのは単にモノを作るだけでなく、ビジョンをしっかりと持つべきだからだ。ジョブを中心に考えるのであれば、そういうもの(ビジョンに共感してくれるかどうか)は全部無視して、適性がある人を集めればいい。だが、それだけではしっかりした企業ブランドを確立できない。 こういうやり方では、会社に帰属意識を持ってもらい、会社のために頑張ろうという気持ちを持ってもらうのは難しい。ジョブ型は決まった職務の内容に応じて報酬を支払うが、さらに「当社の理念までよく理解して働いてくれ」と言っても、「そんなことは契約には書いてない」と思われてしまうかもしれない。 (日覺氏の略歴はリンク先参照)』、「会社というのは単にモノを作るだけでなく、ビジョンをしっかりと持つべきだからだ。ジョブを中心に考えるのであれば、そういうもの(ビジョンに共感してくれるかどうか)は全部無視して、適性がある人を集めればいい。だが、それだけではしっかりした企業ブランドを確立できない」、立派な経営理念だ。
・『終身雇用のほうが会社は強くなる  :東レでは終身雇用の維持も掲げています。 A:私は、終身雇用のほうが会社は強くなると思っている。日本ではわれわれみたいな企業が10年先、20年先に向かって研究開発を続けている。東レの事業でいえば、例えば水処理膜は1968年から始まって、最初にきちんとしたものができたのは1980年。12年かかっている。 どんどん改良して今がある。今のアメリカのような短期の利潤を追求する金融資本主義のもとで、こんなことはできないだろう。長期的な視野で事業をやるには会社や事業のベースを理解したうえで、さまざまな技術や知識を蓄積していることが必要だ。そのためにも、人材の育成や終身雇用は非常に重要だと思っている。 Q:「年功序列」についてはどう思いますか。 A:単に年齢が上だからというだけではなく、年齢に応じて知識と経験が付き、仕事をするうえでの能力も上がっている場合が多いので、(結果的に)年齢が上の人の給料が高くなる場合が多い。したがって、日本がいくら終身雇用で年功序列だと言っても、能力が上がらない人は職務も上がらず、給料もそこまでは上がらない。終身雇用は年功序列だから競争がないという人もいるが、実際にはそんなことはない。 ただし、人が成長をしていくには必要な時間というものがある。若い時に伸びる人もいれば、中高年になってから伸びる人もいる。ある程度時間も与えながら、人のモチベーションをうまく引き上げることが会社の強さになってくる。 Q:日本でジョブ型を導入したと称する企業では、ジョブローテーションをやめてポストを公募制にし、「自律的なキャリア形成を図れるようにした」という趣旨の説明をしています。メンバーシップ型では社員が意思を反映してもらうことは難しいのではないですか。 A:東レではまずキャリアシートをつくって社員を教育している。一人前になるには8年間かかるとみて、職種ごとに必要な技術や知識、経験を書き出し、それをしっかりマスターしてもらう。 シートを通じ、社員には将来像も明確にしてもらっている。この職種で一人前になるにはこういう現場の経験もいるよ、という説明もしっかりやる。いろいろな仕事を経験させるのはあくまでも育成に必要なためであり、育成に関係ないものを経験させるわけではない。 東レでは以前から、社内公募制度もある。「この人にはこの仕事をやったほうがいいじゃないか」と上司らが思っていても、本人はどうしても別の仕事をやりたいと思っているかもしれない。そういう人が手を挙げて、希望する部署に行ける機会を設けている。希望とのミスマッチを防ぐ意味がある。 こうしたことは、別にメンバーシップ型をやめないとやれない話ではない。終身雇用のもとで、ジョブローテーションをしながらでもできることだ』、「人が成長をしていくには必要な時間というものがある。若い時に伸びる人もいれば、中高年になってから伸びる人もいる。ある程度時間も与えながら、人のモチベーションをうまく引き上げることが会社の強さになってくる。 ある程度時間も与えながら、人のモチベーションをうまく引き上げることが会社の強さになってくる」、なるほど。
・『教えたメモがゴミ箱に  Q:ジョブ型で社員を育成していくのは難しいのでしょうか。 A:ジョブ型だと、社員は他の人に仕事を教えない。私はアメリカとフランスに10年いて、それを嫌というほど経験している。 アメリカにいたとき、若い人たちにもこうやって教えたらいいよと仕事の仕方をメモに書いて社員に渡したら、後でそれがゴミ箱に捨てられていたこともあった。ジョブ型では、若い人たちに自分が知っているやり方を教えて、彼らが同じレベルのことができるようになったら、いつか自分の椅子(職務)が奪われるかもしれないと考えてしまう。だから絶対に他の人に仕事は教えない。あれには驚いた』、「ジョブ型では、若い人たちに自分が知っているやり方を教えて、彼らが同じレベルのことができるようになったら、いつか自分の椅子(職務)が奪われるかもしれないと考えてしまう。だから絶対に他の人に仕事は教えない。あれには驚いた」、アメリカとフランスに10年いて」実感しただけに、説得力がある。
・『ジョブ型の能力発揮はよくて100%  Q:日本企業の間で雇用制度が見直されているのは、右肩上がりの経済がとっくに終わり、多くの日本企業が厳しい事業環境に直面しているからではないでしょうか。 A:日本企業の事業環境が厳しくなっていることは事実だろう。だから派遣社員を増やすなど、これまでも工夫や対策をしている。最近は日本企業も欧米のように金融資本主義的なことを外部から言われてしまうので、(雇用も含めた経営方針が)フラフラとしてしまっているのが現実なのではないか。 しかし、(メンバーシップ型とジョブ型のうち)どちらに競争力があるのか。現実的に給料を下げられたり、首を切られたりして喜ぶ人はいないはず。日本は現場と現実をきちんと理解して、何が本当にいいやり方なのかを考える必要がある。日本企業には、日本の良さを見失わないようにする気骨を持ってほしい。 Q:昔と比べて事業の変革スピードが速くなっている中、事業環境が変わっても、メンバーシップ型では以前と同じ社員を残しながら対応していかなければなりません。 A:その点はみんな悩むところだと思う。 それでも、東レでは雇用をしっかり守って、人を大事にして、思う存分能力を発揮してもらうことを重視している。そういう形なら本人の能力が100%、150%出る可能性がある。 しかし、(契約で決められた職務さえできればいい)ジョブ型だと、(本人が発揮する能力は)よくて100%。悪くすると70%や80%にとどまる。ジョブ型では会社のカルチャーとか方針に共感できるかどうかを考慮していない。人間はモチベーションの有無で全然パフォーマンスが違ってくる。 ジョブ型というのは、その職務についての能力がある人を雇って力を発揮してもらう。だが、会社も成長していくわけだから、われわれが期待するのは社員にはさらに上を目指してもらうこと。そのためには、社員にも(メンバーシップ型で)基礎から時間をかけて成長してもらうことが大事なのではないか』、「会社も成長していくわけだから、われわれが期待するのは社員にはさらに上を目指してもらうこと。そのためには、社員にも(メンバーシップ型で)基礎から時間をかけて成長してもらうことが大事なのではないか」、同感である。
タグ:働き方改革 (その35)(若者がハマる「ギグワーク」脱法的仕組みの大問題 労働問題に詳しい弁護士が指摘「日本は対応遅い」、日本企業でブーム 「欧米流働き方」の光と影 日本の「ジョブ型雇用」はここが間違っている、東レ・日覺昭廣社長が語る終身雇用の可能性 日本型の「終身雇用」のほうが会社は強くなる) 東洋経済オンライン 「若者がハマる「ギグワーク」脱法的仕組みの大問題 労働問題に詳しい弁護士が指摘「日本は対応遅い」」 菅俊治弁護士 「立ち上げ期こそは、働き手の確保と囲い込みのために高い報酬を約束するなど好条件を提示するが、一定の寡占的なポジションを確保すると手のひらを返すように条件の切り下げへと転じている。 とりわけ最近問題となっているのが、収入維持のために相当無理して長時間労働を余儀なくされている人が増えている点だ」、「厚生労働省も経済産業省もきちんとした手立てを取ろうとしなかった」、由々しい問題だ。 「カリフォルニア州」で「プラットフォーマー側が猛反発して、州の住民投票でウーバーなどのアプリによる運転手を独立事業主することを賛成多数で承認させた」、リベラルな州なのに、ウーバーなどの抵抗が通ったとは意外だ。 日本の行政も、問題を放置することなく、実態調査やそれに「即した労働者概念の見直し」を積極的に取組むべきだろう。 東洋経済Plus 「日本企業でブーム、「欧米流働き方」の光と影 日本の「ジョブ型雇用」はここが間違っている」 それはそうだろう。 「ジョブ型雇用ではごく一部の幹部層を除き、社員1人ひとりの仕事内容や能力の評価を行わないからだ。働きぶりには関係なく、あらかじめ職務につけられた価値(値段)の賃金のみが支払われる」、なるほど。 「日本企業が「ジョブ型」と呼ぶ雇用形態はたいていの場合・・・役割等級制度だ。役割等級制度では社員が担当する職務を固定化し、責任範囲もある程度示したうえで、責任や役割をどれだけ果たしたかで評価する。社員の能力や成果も見る点が、ジョブ型雇用とは大きく異なる」、「入り口の段階からして、職務に適性のある人材を採用する欧米のジョブ型雇用とずれている」、確かに日本では「欧米のジョブ型雇用」は採用不可能だ 「雇用の大転換期にある今、働く側が身の振り方を主体的に考えることが重要になる」、確かにその通りだ。 「東レ・日覺昭廣社長が語る終身雇用の可能性 日本型の「終身雇用」のほうが会社は強くなる」 日覺昭廣社長 「欧米での勤務も経験したうえで「終身雇用のほうが会社は成長できる」と主張」、説得力がありそうだ。 「会社というのは単にモノを作るだけでなく、ビジョンをしっかりと持つべきだからだ。ジョブを中心に考えるのであれば、そういうもの(ビジョンに共感してくれるかどうか)は全部無視して、適性がある人を集めればいい。だが、それだけではしっかりした企業ブランドを確立できない」、立派な経営理念だ。 「人が成長をしていくには必要な時間というものがある。若い時に伸びる人もいれば、中高年になってから伸びる人もいる。ある程度時間も与えながら、人のモチベーションをうまく引き上げることが会社の強さになってくる。 ある程度時間も与えながら、人のモチベーションをうまく引き上げることが会社の強さになってくる」、なるほど。 「ジョブ型では、若い人たちに自分が知っているやり方を教えて、彼らが同じレベルのことができるようになったら、いつか自分の椅子(職務)が奪われるかもしれないと考えてしまう。だから絶対に他の人に仕事は教えない。あれには驚いた」、アメリカとフランスに10年いて」実感しただけに、説得力がある。 「会社も成長していくわけだから、われわれが期待するのは社員にはさらに上を目指してもらうこと。そのためには、社員にも(メンバーシップ型で)基礎から時間をかけて成長してもらうことが大事なのではないか」、同感である。
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夫婦別姓(その2)(別姓婚「日本も有効」で露呈した戸籍制度の矛盾 25年も議論棚上げ 多様な夫婦への対応は急務、中国、韓国も夫婦別姓を認めているのに…日本が世界の潮流から取り残される根本原因) [社会]

夫婦別姓については、1月8日に取上げた。今日は、(その2)(別姓婚「日本も有効」で露呈した戸籍制度の矛盾 25年も議論棚上げ 多様な夫婦への対応は急務、中国、韓国も夫婦別姓を認めているのに…日本が世界の潮流から取り残される根本原因)である。

先ずは、5月1日付け東洋経済オンライン「別姓婚「日本も有効」で露呈した戸籍制度の矛盾 25年も議論棚上げ、多様な夫婦への対応は急務」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/425750
・『夫婦の2人が結婚前の姓を名乗ることを認める、「選択的夫婦別姓制度」の議論に一石を投じる判決となるか――。 アメリカで別姓のまま結婚した日本人夫婦が、日本の法律においても婚姻関係にあることを認めるよう国に求めていた裁判の判決が4月21日、東京地方裁判所で下った。東京地裁は婚姻関係を戸籍へ記載できることの確認といった請求を却下・棄却した一方で、アメリカで成立した2人の婚姻関係は国内でも有効であると認めた。 原告の映画監督の想田和弘さんと映画プロデューサーの柏木規与子さんは、1997年にアメリカ・ニューヨーク州の法律に基づいて結婚した。日本人同士が外国で結婚した場合、その婚姻関係を日本の戸籍に登録するため、大使館などに報告のための婚姻届を提出することが求められている。それに基づき、2人は2018年に千代田区役所で別姓のまま届け出をしたが、夫婦同姓を定める民法や戸籍法に違反するとして受理されなかった』、「千代田区役所で別姓のまま届け出をしたが・・・受理されなかった」、「区役所」レベルではやむを得ない。
・『同姓規定を満たす必要はあるのか  戸籍によって婚姻関係を公的に証明できなければ、税や相続の問題などでさまざまな不利益を被りかねない。そこで2人は、それぞれの戸籍に結婚相手を記載することで婚姻関係の証明を受けられることの確認や、法の不備で被った不利益に対する国家賠償を1人当たり10万円ずつ求めていた。 争点となったのは、外国で婚姻した日本人同士の婚姻関係が日本でも成立するには、「夫婦は婚姻の際に夫または妻の氏を称する」という日本の夫婦同姓規定を満たす必要があるのかどうかだ。 原告側は、夫婦同姓規定は2人の婚姻関係が日本で成立するために必要な条件ではなく、2人は日本でも法律上の夫婦であると主張。対する国は、外国で結婚した場合でも夫婦同姓規定は婚姻の要件であり、別姓のままの2人の婚姻関係は成立しないと反論した。) 東京地裁は、婚姻関係の戸籍への記載可否については、家庭裁判所への不服申し立てのほうが適切だとして判断を示さず、国家賠償についても退けた。一方で、前提となる婚姻の成否については国の主張を否定し「婚姻自体は有効に成立している」と明確に認めた。これにより、別姓の2人の婚姻関係が日本の法律において成立していると証明された。 原告代理人の竹下博將弁護士は、「戸籍や相続の実務に照らせば当然の判断だと思っているが、この点が争点となって正面から判断されたのは初めてだ」と話した。不服申し立てをするのかどうかは今後検討する。 想田さんと柏木さんは判決後の会見で「わたしたちは法律婚であると明確に述べていただいたので、実質的な勝訴だと受け止めている。別姓でも夫婦になれると示してもらったので社会的意義もある」(想田さん)、「当たり前のことだと思っていたが、認められないのではないかと不安もあった。このような判決がくだって本当にうれしい。選択的夫婦別姓制度の実現に向けた大きな第一歩だと思う」(柏木さん)と笑顔を見せた』、「米国で」「夫婦別姓」で婚姻が成立したのを、日本でどう扱うかが争点だ。
・『遅々として進まない夫婦別姓の議論  これまで、日本における選択的夫婦別姓の実現に向けた動きは茨の道を歩んできた。 1980年代以降、氏を変えることによってアイデンティティーの喪失感を抱く、仕事上の不利益を被るなどの理由から、同姓でなければ結婚できない夫婦同姓制度への批判が強まった。1996年には法務省法制審議会が選択的夫婦別姓制度の導入を提言する答申を行い、法務省が改正法案を準備。2010年にも改正法案を準備した。しかし、保守派議員が「家族の絆が危うくなる」などとして反対し、国会への提出には至らなかった。 2011年に夫婦同姓を定める民法規定は違憲だとして男女5人が提訴した「第一次夫婦別姓訴訟」では、最高裁が合憲と判断しつつ「国会で論ぜられるべきだ」と議論を国会に委ねたが、これも審議されてこなかった。2020年末に閣議決定された第5次男女共同参画基本計画からは、自民党内の反発をうけ「選択的夫婦別姓」の記述が削除された。) 海外では夫婦別姓制度の導入が進み、法務省によると法律で夫婦同姓とするように義務づけている国は日本だけだ。日本は、国連の女性差別撤廃委員会から法改正の必要性を繰り返し勧告されている。 早稲田大学法学部棚村政行研究室と選択的夫婦別姓・全国陳情アクションが2020年に全国の20~59歳の7000人に行った合同調査の結果、別姓を選べないために法律婚を諦めた人が1.3%いた。夫婦別姓の議論が始まって40年近く、1996年の民法改正案の答申から25年が経つ中、夫婦別姓を望む人々は不安定な状態におかれ続けている。 選択的夫婦別姓・全国陳情アクションの井田奈穂事務局長は、「望まない改姓をしてアイデンティティーを毀損した状態で亡くなる人や、(選択的夫婦別姓が法制化されるまで)待つと言って、30年来事実婚を続けてきた人もいる。事実婚のまま年を重ねてきたことで、配偶者の医療合意ができないのではという不安が高まる、介護施設で同じ区画に入ることを断られるなど、30年前には想定されていなかった問題が起きている」と訴える』、「法律で夫婦同姓とするように義務づけている国は日本だけだ。日本は、国連の女性差別撤廃委員会から法改正の必要性を繰り返し勧告されている」、自民党右派のこだわりは常軌を逸している。
・『ビジネスシーンでの混乱も招きうる  経済界でも、選択的夫婦別姓の法制化を切望する声があがっている。「選択的夫婦別姓の早期実現を求めるビジネスリーダー有志の会」の共同呼びかけ人の1人、サイボウズの青野慶久社長はこう話す。 「これだけ女性が当たり前に働き続けるようになり、海外出張や海外赴任もするようになって、社内で困り事があることを経営者も認識するようになっている。(選択的夫婦別姓を認めず)法的根拠のない旧姓の通称使用を拡大することは、どの名前がどこまで使えるのかといった二重管理の問題などでビジネスの現場でさらなる混乱を生む」 現在、4組の事実婚夫婦が夫婦別姓の婚姻届の受理などを求め2018年に提訴した「第二次夫婦別姓訴訟」のうち3件について、最高裁大法廷で審理されることが決まっている。 今回の訴訟は、選択的夫婦別姓制度に関する議論を大きく前進させた。 竹下弁護士は「2015年の最高裁では、婚姻の成立要件に関する細かい議論に入っていなかった。今回の判決を受けて、『第二次夫婦別姓訴訟』の最高裁大法廷ではより緻密な議論がされることになるだろう」と話す』、「『第二次夫婦別姓訴訟』の最高裁大法廷ではより緻密な議論がされることになるだろう」、当然である。
・『戸籍制度は時代に追いつけるか  さらに、判決は戸籍制度の不備を明らかにした。本来、戸籍制度の目的は夫婦関係や親子関係を記載し身分関係を把握することだが、想田・柏木夫妻のように別姓のまま法律上成立している婚姻関係を、同姓を前提とする現行の戸籍制度でどのように把握するか検討してこなかったからだ。 竹下弁護士は「海外で別姓のまま結婚することができる法律になっているのであれば、その夫婦関係を別姓のままでも戸籍に記載できるようにすることが戸籍制度の本来の目的にかなう」と指摘する。「別姓のままでも戸籍に記載できるように、民法や戸籍法の改正を検討していかざるをえないだろう」(同)と立法府の動きも期待する。 身分関係を証明する戸籍制度が現状の多様な夫婦のあり方に対応できずに、個人や社会に不利益をもたらしていることは重要な社会課題だ。選択的夫婦別姓制度の実現に向けた法整備について、早急に議論することが求められる』、「別姓のままでも戸籍に記載できるように、民法や戸籍法の改正を検討していかざるをえないだろう」、同感である。

次に、11月26日付けPRESIDENT Onlineが掲載したジャーナリストの池上 彰氏による「中国、韓国も夫婦別姓を認めているのに…日本が世界の潮流から取り残される根本原因」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/52120
・『国会議員と国民の意識が離れている」海外ではほとんどの国が夫婦別姓を認め、結婚時に姓を選択できるようになっている。さらには「同性婚」を認める国も増えている。一方、日本はどちらについても議論すら進んでいない。ジャーナリストの池上彰さんは「夫婦別姓は中国や韓国でも認められている。このままでは日本は世界から取り残されてしまう」という――。※本稿は、池上彰『これが日本の正体! 池上彰への42の質問』(大和書房)の一部を再編集したものです』、興味深そうだ。
・『夫婦別姓に合憲の判断を下した日本の最高裁  2015年と21年、最高裁判所は2度にわたって、民法の夫婦同姓を定めた規定について、「合憲」であるとの判断を示しています。憲法には違反していないということです。 ただし、「国会で論ぜられ、判断されるべき事柄」としてその是非を国会にあずける形になっています。つまり、いまの規定は憲法違反ではないが、夫婦別姓を実現したければ国会で、そういう法律を作りなさい、と宣言したわけです。 選択的夫婦別姓については、法務省の法制審議会によって幾度となく答申されていますが、いまだ与党からの法案の提出に至っていません。その最大の理由は自民党の保守派議員の反対によるもので、彼らは「家族の一体感が損なわれる」「子の姓の安定性がなくなる」と言っています。要は、家制度の崩壊につながるから、ということなのですが、夫婦が別姓を選択したからといって家族がバラバラになったりするでしょうか。 安倍元首相の「秘蔵っ子」と呼ばれ、防衛大臣を務めた稲田朋美議員は、以前は夫婦別姓に反対していました。ところが賛成を表明した途端、保守議員の支持団体である「日本会議」は距離を置くようになり、稲田議員は神道政治連盟の国会議員団体の事務局長も更迭されました。 2021年には、自民党の国会議員有志50人が、選択的夫婦別姓制度に賛同する地方議員に対し、慎重な検討を求める文書を送っていたことが発覚しました。この有志には高市早苗、片山さつき、丸川珠代といった女性の閣僚経験者も名を連ねています。つまり自民党の保守派として後ろ盾を失わないためにも、「夫婦別姓」に反対しようという意図が見えます。 こういった保守政治をとりまく古い意識と環境のために、なかなか前進できないでいるのが現状です』、「稲田朋美議員」の影が薄くなった印象なのは、「夫婦別姓」、に「賛成を表明した途端、保守議員の支持団体である「日本会議」は距離を置くようになり」、「神道政治連盟の国会議員団体の事務局長も更迭」、なるほど右派に弓を引いたためのようだ。
・『中国や韓国は「一周遅れのトップランナー」  海外ではほとんどの国が夫婦別姓を認め、結婚時に姓を選択できるようになっています。欧米にはファーストネーム(名)とラストネーム(姓)の間にミドルネームをつける習慣があります。ミドルネームは洗礼名や祖先の名前が多いのですが、女性の場合旧姓をミドルネームとして残すこともできます。現在は別姓が認められているため、夫の姓か自分の姓か、あるいはミドルネームとして両方を名乗ることが可能になっています。 アジアでは、中国や韓国が夫婦別姓になっています。しかしこれは、女性の立場を考えて導入された制度ではありません。どちらも歴史的に「男の家」制度が顕著だった国で、女性は結婚しても「男の家」の戸籍に入れてもらえなかったんですね。女性が家系に連なることを拒まれた結果夫婦別姓となり、そのまま現在の制度になっています。 日本に先んじているようにも見えますが、私に言わせれば「一周遅れのトップランナー」です。ただそれでも、この問題において、日本より前にいることは間違いないでしょう』、「中国や韓国が夫婦別姓になっています」、これは「歴史的に「男の家」制度が顕著だった国で、女性は結婚しても「男の家」の戸籍に入れてもらえなかったんですね。女性が家系に連なることを拒まれた結果夫婦別姓:、なるほど。
・『芸能人の「入籍会見」はおかしい  よくタレントが「入籍会見」などと結婚の報告をしますが、あれは間違いです。入籍というのは、基本は夫の戸籍に入ること。戦前の言い方です。現在は結婚と同時に夫婦で新しい籍をつくるわけですから、入籍ではなく、「新しい戸籍をつくりました」と言うべきところです。 そのとき、夫でも妻でも、本来はどちらの姓を名乗ってもいい法律になっています。でも大半が夫の姓を名乗るので、結果的に女性が不便を強いられる事態になっています。 過去の世論調査においても「家」が重視された時代は夫婦別姓に反対する意見のほうが多かったのですが、最近では賛成が圧倒的に多く、反対派は24%ほどにとどまっています。「男女共同参画基本計画」なるものを政府が示している以上、国民の意見を聞き、選択的夫婦別姓の議論を前進させるべきではないでしょうか』、「過去の世論調査においても「家」が重視された時代は夫婦別姓に反対する意見のほうが多かったのですが、最近では賛成が圧倒的に多く、反対派は24%ほどにとどまっています」、そうであれば、確かに「選択的夫婦別姓の議論を前進させるべき」。
・『「家系を絶やさない」家制度のもとの結婚  同性婚も日本では夫婦別姓と同様に、「家制度」が尾を引いているといえるでしょう。結婚は親が決めるものであり、家系を絶やさないために男女がするもの。そしてここにはLGBTQに対する大きな偏見と差別が存在していました。 戦後になり、憲法によって自由な結婚が保障されるようになりました。日本国憲法第24条は「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立」とあります。従来の解釈では、「両性」とは男性と女性のことであるから、男女同士以外の結婚は認められないということになっています。 近年、世界的にLGBTQなどのセクシャルマイノリティの人権を守る運動が高まり、日本の憲法学者の間でも、議論されるようになっています。 憲法学者の木村草太氏は、この条文は親の同意などが求められた旧民法に対し、両当事者の意思を尊重する意味で「両性」という言葉を用いたのであって、同性婚を禁止したものではないと述べています。本人同士で結婚を決めていいんだよ、という趣旨でできた条文なんだから、「両性」は男同士でも女同士でもいい。そういう解釈は可能だということです。 一方で、「両性」はあくまでも男と女であるから、同性婚を認めるには、憲法を変えなくてはならない、という学者もいます』、「両性」についての「木村草太氏」の解釈は余に広すぎるような気がする。
・『パートナシップ制度は人権保護の第一歩  国として議論が進まないなか、パートナーシップ制度を導入する自治体が増えています。 同性パートナーシップ証明制度は、2015に東京都の渋谷区と世田谷区でスタートし、2021年7月までに、全国で110の自治体が採用しています。基本的には同性のパートナーが自治体に書類を提出し、それに対する証明書が与えられて、異性のカップルと同等の権利が認められるのです。 例えば、カップルのどちらかが入院して「家族以外は面会できません」となった場合、パートナーである公的な証明があれば、面会が許されたりします。それ以外にも、公営住宅の入居が認められたりなど、実質的な不利益を被らないようにするのが目的です。しかし、このパートナーシップ制度には、法的拘束力はありません。法律婚ではありませんから、配偶者控除は適用されませんし、遺族年金も適用対象外です。さらには、共同での親権を持つこともできません。 パートナーシップ制度が全国に広がれば、同性婚を認めなくてもいいだろう、という声もありますが、この制度はあくまでも、性的マイノリティの人権を守るための第一歩であることを理解しなくてはなりません』、「パートナーシップ制度」は「性的マイノリティの人権を守るための第一歩」でしかなく、「法的」なものではないようだ。
・『アメリカで起きた保守派の揺り戻し  2015年、アメリカの連邦最高裁判所は、同性婚を認める判断を示しました。これにより、現在アメリカでは、同性婚が可能になっています。ところが、これを「とんでもないことだ」と思っている人も多くいます。その一人がトランプ前大統領で、その支持者の多くも同性婚に反対でした。 2020年9月、連邦最高裁判所のルース・ベイダー・ギンズバーグ判事が亡くなりました。性差別を許さないリベラルな判事として名をはせていましたが、大統領選挙の1カ月半前にこの世を去りました。するとトランプ大統領はすかさず、同性婚や妊娠中絶に批判的なエイミー・コニー・バレット判事を最高裁判事に指名。共和党が多数の議会上院がこれを承認しました。これにより、今後同性婚をめぐる裁判が起きた場合、はたしてそれを認めるかどうかが注目されています』、「トランプ」の「負の遺産」がいまだに地方議会に残っているようだ。
・『世界の潮流は同性婚容認へ  2020年の大統領選挙で民主党の候補に名乗りをあげた、ピート・ブティジェッジ元サウスベンド市長は同性愛者であることを公表しています。バイデン政権では運輸長官に指名され、アメリカ史上初の同性愛者を公表している閣僚となっています。 またアイスランドでは、女性のヨハンナ・シグルザルドッティル元首相が、女性作家のパートナーと結婚しています。さらにルクセンブルクのグザヴィエ・ベッテル首相は、ベルギー人のパートナーと一緒になりたいために、同性婚を認める法改正に積極的に協力し、改正法ができると真っ先に結婚しました。EU加盟国の首脳として初めての同性婚者となりました。 世界では、とりわけ先進国では、同性婚を認めるようになってきています。 2021年3月、三重県で、性的マイノリティの人への差別や偏見をなくし、安心して暮らせる社会をつくるための条例が県議会で可決されました。ここでは、個人の性的指向を本人の了解を得ずに暴露する「アウティング」の禁止が、条例としてはじめて盛り込まれました。さらには「カミングアウト」の強要も禁止しています。 パートナーシップ制度もあわせ、性的マイノリティの人権を守る動きは日本の各地で広がりつつありますが、まだ地方自治体の条例の段階です。法律として認めるために国が動くようになるのは、夫婦別姓の問題と同様に、国会に保守的な議員が多くいる限り、もう少し時間がかかりそうですね。 同性婚を認めている海外の国(2020年) ※英国は2014年3月にイングランドとウェールズ、2014年12月にスコットランド、2020年1月に北アイルランドでそれぞれ同性婚が認められた。 国名 法律施行日 国名 法律施行日 1 オランダ 2001年4月1日 2 ベルギー 2003年6月1日 3 スペイン 2005年7月3日 4 カナダ 2005年7月20日 5 南アフリカ 2006年11月30日 6 ノルウェー 2009年1月1日 7 スウェーデン 2009年5月1日 8 ポルトガル 2010年6月5日 9 アイスランド 2010年6月27日 10 アルゼンチン 2010年7月22日 11 デンマーク 2012年6月15日 12 ブラジル 2013年5月16日 13 フランス 2013年5月18日 14 ウルグアイ 2013年8月5日 15 ニュージーランド 2013年8月19日 16 英国 2014年3月29日(※) 17 ルクセンブルク 2015年1月1日 18 メキシコ 2015年6月22日 19 米国 2015年6月26日 20 アイルランド 2015年11月16日 21 コロンビア 2016年4月28日 22 フィンランド 2017年3月1日 23 マルタ 2017年9月1日 24 ドイツ 2017年10月1日 25 オーストラリア 2017年12月9日 26 オーストリア 2019年1月1日 27 台湾 2019年5月24日 28 エクアドル 2019年6月12日 29 コスタリカ 2020年5月26日 30 スイス 2022年7月1日 出典・参照:NPO法人 EMA日本を参考に作成)』、「パートナーシップ制度もあわせ、性的マイノリティの人権を守る動きは日本の各地で広がりつつあります」、保守的な国はともかく、まずは地方中心に今後広がることを期待したい。
タグ:池上 彰 「中国、韓国も夫婦別姓を認めているのに…日本が世界の潮流から取り残される根本原因」 「パートナーシップ制度」は「性的マイノリティの人権を守るための第一歩」でしかなく、「法的」なものではないようだ。 「トランプ」の「負の遺産」がいまだに地方議会に残っているようだ。 「パートナーシップ制度もあわせ、性的マイノリティの人権を守る動きは日本の各地で広がりつつあります」、保守的な国はともかく、まずは地方中心に今後広がることを期待したい。 「過去の世論調査においても「家」が重視された時代は夫婦別姓に反対する意見のほうが多かったのですが、最近では賛成が圧倒的に多く、反対派は24%ほどにとどまっています」、そうであれば、確かに「選択的夫婦別姓の議論を前進させるべき」。 「両性」についての「木村草太氏」の解釈は余に広すぎるような気がする。 「中国や韓国が夫婦別姓になっています」、これは「歴史的に「男の家」制度が顕著だった国で、女性は結婚しても「男の家」の戸籍に入れてもらえなかったんですね。女性が家系に連なることを拒まれた結果夫婦別姓:、なるほど。 「稲田朋美議員」の影が薄くなった印象なのは、「夫婦別姓」、に「賛成を表明した途端、保守議員の支持団体である「日本会議」は距離を置くようになり」、「神道政治連盟の国会議員団体の事務局長も更迭」、なるほど右派に弓を引いたためのようだ。 興味深そうだ。 PRESIDENT ONLINE 「別姓のままでも戸籍に記載できるように、民法や戸籍法の改正を検討していかざるをえないだろう」、同感である。 「『第二次夫婦別姓訴訟』の最高裁大法廷ではより緻密な議論がされることになるだろう」、当然である。 「米国で」「夫婦別姓」で婚姻が成立したのを、日本でどう扱うかが争点だ。 「千代田区役所で別姓のまま届け出をしたが・・・受理されなかった」、「区役所」レベルではやむを得ない。 「別姓婚「日本も有効」で露呈した戸籍制度の矛盾 25年も議論棚上げ、多様な夫婦への対応は急務」 東洋経済オンライン 「法律で夫婦同姓とするように義務づけている国は日本だけだ。日本は、国連の女性差別撤廃委員会から法改正の必要性を繰り返し勧告されている」、自民党右派のこだわりは常軌を逸している。 夫婦別姓 (その2)(別姓婚「日本も有効」で露呈した戸籍制度の矛盾 25年も議論棚上げ 多様な夫婦への対応は急務、中国、韓国も夫婦別姓を認めているのに…日本が世界の潮流から取り残される根本原因)
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鉄道(その8)(日本とはケタ違い 米国「貨物列車」のスケール 風力発電の翼から航空機の胴体まで輸送する、イギリスの「鉄道防犯対策」は日本と何が違うか ロンドン同時テロ後に防犯カメラ設置を徹底) [産業動向]

鉄道については、4月11日に取上げた。今日は、(その8)(日本とはケタ違い 米国「貨物列車」のスケール 風力発電の翼から航空機の胴体まで輸送する、イギリスの「鉄道防犯対策」は日本と何が違うか ロンドン同時テロ後に防犯カメラ設置を徹底)である。

先ずは、5月1日付け東洋経済オンラインが掲載した 鉄道フリーライターの中村 彰宏氏による「日本とはケタ違い、米国「貨物列車」のスケール 風力発電の翼から航空機の胴体まで輸送する」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/425448
・『巨大貨物の輸送は、通常船舶によって行われる。アメリカ東部は、鉄道発達以前から五大湖を中心とした大河川利用の運河網が張り巡らされ、船舶が運航された。巨大貨物は艀(はしけ)により、これらの水路を利用して運搬されてきた。しかし、西部―中西部を結ぶ交通には南北にロッキー山脈が横たわり水路が発達せず、やむなく分割できる巨大貨物は陸送によって行われている。 化学工業用高圧反応塔や、電力用大型トランスなどの長大・重量貨物の輸送は古くから鉄道で行われていることもよく知られている』、「長大・重量貨物の輸送は古くから鉄道で行われている」、大陸横断鉄道などの伝統があるだけに、さすがだ。
・『家屋を1棟丸ごと運ぶ  高速道路では、完成した家屋1棟をトレーラに載せ“OVER WIDE(側面がはみ出している)”と表示したプレートを付けた運搬トラックに出会うことがある。これらの家屋は、現地に完成している土台の上に載せ固定した後、電気・水道等のユーティリティを接続するだけで居住可能となる。 道路輸送による巨大貨物の例として、アメリカ中西部から、西海岸のサンフランシスコに輸送される構造物の基礎部分を運ぶトレーラーの例を記しておく。 この基礎運搬車は、一般車両の交通を極力妨げないよう夜間に走行するための準備をしているときに撮影した。運転手によれば、幅が可搬寸法をオーバーしているため、トンネル部走行時はセンターラインよりに走行するとのこと。前後には“OVER SIZE(サイズがはみ出している)”の旗を立てた先導車が走る。 これからご紹介する鉄道による巨大貨物は、風力発電用のブレード(翼)、航空機の胴体とロケット部品である。 風力発電用ブレードは、89フィート(約27m)のフラットカー2両にまたがって積載されている。2019年に修復運行を始めた世界最大級の蒸気機関車「ビッグボーイ」の機関車部の長さは前部連接可動部を除きボイラー・運転台間固定部がおよそ23mを超えているが、ブレードの長さ(筆者推測では約40m)は、この長さを優に越え、曲線走行時、2両目の車両がかかるブレードの端部は曲線部で外側にはみ出してしまう。 ちなみに、ビッグボーイの固定部と対向列車と接触するのは、軌道中心間隔が13フィート(3.96m)で曲線角度が8度以上である。 ビッグボーイより飛び出し部の長いブレードを積載して運行するにあたっては、対向列車と曲線部ですれ違い接触が起きないようにダイヤが組まれる。 数十枚のブレードを北部に運搬するため、対向列車の通過待ちをしている光景は壮観だ。 なぜか、ブレードは同一方向に積載され1基のブレードにフラット・カー2両が割り当てられていた。 この列車の編成はフラット・カー100両を超えていた』、「家屋を1棟丸ごと運ぶ」、「ビッグボーイより飛び出し部の長いブレードを積載して運行するにあたっては、対向列車と曲線部ですれ違い接触が起きないようにダイヤが組まれる」、鉄道運航システムも弾力的に運用しているようだ。
・『B737の胴体を貨物列車で運ぶ  長さ、幅ともにオーバースケールの代表例は、航空機の胴体輸送である。 ボーイング社はワシントン州エバレットに主力工場を置くが、胴体の製造は中西部の工場で行われている。ボーイングの航空機製造は、B737シリーズの製造は1万機を超えているが、B737MAXのインドネシア沖での墜落事故、またコロナ禍、エンジントラブル等々により世界的な航空輸送量の激減でこのシリーズの製造数は減少している。 これらの外的要因以前、コンスタントにカンザス州ウィチタの機体製造工場からワシントン州シアトルの最終組み立て工場に輸送されていた。 ピストン輸送していた列車が、2014年7月、積載のフラット・カーを含む貨物列車の脱線事故により胴体をモンタナ州のクラーク・フォーク川に落下させる事故が起きた。 輸送方法は、ブレード輸送とほぼ同じであるが、幅方向は対向列車との側面車間距離を保つための運行スケジュールが設定されている。 すれ違いは、通常3線の直線部で行われ、双方の列車は中線を挟んで外側の線路が使用される。 対向列車待ちの状態で機体を載せたフラット・カーは線路の直線部にあるが、後部に連結されている一般貨車は曲線部で停止している。 機体は、機体断面を覆うように作られた専用治具でフラット・カーに固定される。この専用治具の高さは、牽引機関車の高さより幾分高く製作されている。冬季のロッキー山脈越えのトンネル内のツララと上部の障害物による機体への損傷防止を図るためである』、「専用治具の高さは、牽引機関車の高さより幾分高く製作されている。冬季のロッキー山脈越えのトンネル内のツララと上部の障害物による機体への損傷防止を図るためである」、ずいぶん工夫をしているようだ。
・『ロケット部品の運搬の様子  最後は、荷物の内部を見ることは不可能であるが、西部からフロリダ州に運搬されるロケット部品の運搬の様子である。 撮影時、たまたま強風のためシートが引き裂かれた。このため、内部の保護用鉄製の保護カバーが露見した。この鉄製カバーには点検用の扉が付いている。 ロケット搬送用フラット・カーが走行する場合は、障害物よけに改造された車両がフラット・カーの前部に連結される。冬場はトンネル内のツララ落としにも効果がある。 今日では、貨物を、早く・安全に客先に届けるために鉄道輸送が多様化されている』、日本の場合は規制が多く、米国のような訳にはいかないだろうが、「鉄道輸送」に改めて脚光を当ててみる価値はありそうだ。

次に、12月4日付け東洋経済オンラインが掲載した在英ジャーナリストのさかい もとみ氏による「イギリスの「鉄道防犯対策」は日本と何が違うか ロンドン同時テロ後に防犯カメラ設置を徹底」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/472982
・『10月31日に起きた京王線特急列車内での事件をはじめ、走行中の列車内での傷害事件や放火事件が日本国内で相次いだ。自身が居合わせていたらどういう行動を取っただろうかと考えると、改めてショッキングな出来事だったと感じる。国土交通省は12月3日、一連の事件を踏まえ、車両新造時の防犯カメラ設置や非常用設備の表示共通化などの対策を打ち出した。 こうした列車内での事件に備えて、鉄道の発祥国・イギリスではどういった対策を講じているのだろうか。イギリスでは2005年、ロンドンの地下鉄が爆破テロのターゲットになった。長距離列車や地下鉄の防犯対策と非常用設備の現状を調べた』、「テロ先進国、英国」の例を見る意味は大きそうだ。
・『地下鉄にもバスにもカメラ  首都ロンドンで、最も人々に身近な鉄道といえば地下鉄だ。「チューブ(Tube)」という愛称があるが、市街中心部を通る路線の車両が半円形で小さいことに由来する。建設の際、技術的に大きなトンネルを掘るのが難しかった時代に開業したためだ。 そんなロンドン地下鉄車両の非常用設備を改めて確認してみると、緊急事態を知らせる「SOSボタン」はあるものの、乗客が扱える非常用ドアコックはない。これは、トンネルが小さくて客室のドアを開けても車外に出られるだけのスペースがなく、車両の下には電気が流れる第三軌条がむき出しになっているといった事情によるものだ。地下鉄車両が立ち往生した際の脱出の様子などを見ると、先頭車両前面の中央ドアを開けて外に降りているのがわかる。 一方、防犯カメラは積極的に設置が進められ、1970年代に製造された古い車両が走る路線を除き、大半の路線で全車両に標準装備されている。ロンドン交通局(TfL)によると、プラットホームをはじめとする駅構内には計7万7000基の防犯カメラが取り付けられているという。 防犯カメラ導入が進んだ最大のきっかけは、2005年7月にロンドン市内で起きた同時多発テロ事件だった。わずか1分以内の差で市内を走っていた3つの地下鉄車両が爆発し、その1時間後には2階建てバスが爆発。死者計56人、負傷者計784人を出す大惨事となった。この事件を受け、路線バスの更新車両にも防犯カメラが標準装備されている。) 防犯カメラは地下鉄車内だけでなくプラットホームにも多数設置されている。地上駅でカメラがむき出しになっているのを数えてみると、7両編成の車両に対して6台のカメラがあった。 これらのカメラ映像のモニター画面は運転士も見られる仕組みだが、駅、そしてロンドン交通局(TfL)の運行管理センターでも確認できるという。仮にどこかの車両で放火や爆発が起きても、カメラを通じて概ねの車両位置やトラブルの状況を遠隔で把握できるようになっている。 こうしたカメラを交通局などに卸している業者は、「ロンドン市民は街の防犯カメラで1時間平均13コマは撮られている」というデータを開示している。これは交通機関だけでなく、ビルやショッピングモールなどあらゆる場所を合計しての数値と思われるが、いずれにせよ「あらゆるところで監視されている」と思ってよさそうだ。カメラの映像に、非接触式ICカード乗車券「オイスター」の行動データを組み合わせると、乗客の動きはかなりの確率で特定できるとされている』、「ロンドン市民は街の防犯カメラで1時間平均13コマは撮られている」、緩やかに監視されているようだ。
・『長距離列車の非常設備は飛行機のよう  一方、長距離列車にはどのような非常用設備があるのだろうか。今やイギリスで一大勢力となった日立製の長距離列車「クラス800シリーズ」の例を見てみよう。 筆者が確認したのは、ロンドンとスコットランド方面を結ぶロンドン・ノース・イースタン・レールウェイ(LNER)「あずま」の非常用設備案内だ。各車両のデッキ部分に詳細な非常時案内のピクトグラムが貼り付けられている。情報が1カ所にまとまっていてわかりやすい。 どんなことが書いてあるのか。読んでみると、航空機に搭乗した際に耳にする安全の案内によく似た内容となっている。 まずステッカーの一番上に「この車両内の出口や緊急用の設備の位置をよく理解しておいてください」(Please familiarise yourself with the location of exits and emergency equipment in this coach)と赤地に白い文字での注意書きがあり、その下に「非常時の場合」(In Case of Emergency)の対応が緑地に白文字で記してある。 「非常時の場合」の対応については、「ほとんどの緊急事態では、列車内にとどまることが最も安全です」(In most emergency situations it is safest to remain on the train)との説明がある。そして「必要であれば、列車が停止した後、外部のドアから脱出してください」「避難先は線路が敷かれた面(へ降りることになります)」など、脱出する際の注意についても触れている。 また、平面図を見ると、非常用のSOSボタンはデッキだけでなく客室内にもあること、消火器のほかAED(自動体外式除細動器、案内ではDefibrillator)が客室内に備え付けられていることがわかる。) 地下鉄などと同様、こちらも車内に防犯カメラがある。最近の傾向として乗客のほとんどが座席指定された前売りの格安切符をオンラインで購入していることを考えると、運行会社はカメラの映像と併せて、特定の座席に座っている人が「どこの誰か」をほぼ把握できる。防犯のための監視はかなり高いレベルに達していると言えよう。 京王線の事件では、乗客が窓から車外に脱出した映像が残っている。「もし、ガラスを割って外に出られたらよかったかも」と思う人もいるのではないだろうか。 イギリスには実際にガラスを割るためのハンマーを備えた列車がある。西海岸本線(ウェスト・コースト・メイン・ライン、West Coast Main Line)を走るアヴァンティ・ウェスト・コーストの車両「ペンドリーノ」には、座席車中央部にハンマーを備え付けており、万一の際、車両両端のドアまで行き着かなくても、ガラスを破壊して車外に出られるようになっている。このような非常用ハンマーはフランスのTGVや中国の高速列車など他国でも見ることができる。 ただ、列車事故など緊急時を想定した車両の仕様条件に関する書類を確認すると、英国では列車内に窓ガラス破壊用のハンマーの設置は義務付けられていない。また、緊急時の窓の破壊は「窓を通じてでないと、担架で乗客が救出できない時などの『最後の手段』」とわざわざ言及している。 一方、ロンドンを走る新型バスには、特殊な脱出用の窓ガラス破壊装置が取り付けられている。「SAFE PUNCH(セーフパンチ)」と名付けられたこの装置は、大きなボタン状になっており、安全シールを外した後、強く叩くとガラスが割れるように先端に鈍器がついている。これならハンマーを探すことなく、すみやかにガラスを割って脱出できる。また、「非常時にはこれを使えばいい」と日頃から乗客に促すこともできる』、「ガラスを割って脱出できる」のを認めるか否かは、脱出後の安全確保は可能かどうかにもよるようだ。
・『運行妨害にはどう対応している  ロンドンの東側一帯には、運転士なしで走る軽鉄道「ドックランド・ライト・レールウェイ(DLR)」が走っている。市内中心部の金融街・シティーと新金融街・カナリーウォーフ、ロンドン最大の見本市会場・エクセルなどを結ぶこの鉄道は全長38km。運行スタッフがボタンを押せばドアが閉まって走り出すという「半自動運転」で運行されている。 筆者はDLRを長年にわたって利用していたが、いたって順調に走る乗り物だと感じていた。ところが、最近利用すると運行スタッフが1編成(2両編成を2~3セット連結して運行、通り抜け不可)につき1人しか乗っていない、駅員がいないことを知ったうえで、学生が閉まるドアに足やカバンを入れて運行の妨害をしているケースがまま見られる。 こうした妨害行為が起こると復旧まで何分もかかるが、ひどい例では、次の駅に向けて出発というタイミングで意図的にSOSボタンを押して非常コックでドアを開けるという妨害も実際に見た。こうなると運転指令から原因調査を求められ、動きが取れなくなる。車内に運行スタッフが1人しかいないため、こうしたケースでは列車を放っておいて犯人を捕まえるというわけにはいかない。) だが、DLRは防犯カメラを車内ではドア1つおきに設置しているほか、駅構内にも取り付けている。ビデオの分析など追跡調査は、交通専門の警察組織であるイギリス鉄道警察(ブリティッシュ・トランスポート・ポリス、British Transport Police)が実施し、犯人検挙に努めている。統計によると、12件の事例に対し8件、つまり事件のうち3分の2を検挙できているという。 筆者の肌感覚だが、鉄道警察による平常時の警備は実際のところあまり積極的には行われていない。人の出入りが多いターミナル駅では常に6~10人の鉄道警察官を見るが、車内では目に見える形での警備はない。 ただ、ひとたびことを起こすと多数の警官が現れる。先日、スコットランドからの最終列車でロンドンへ戻った際、列車から降りた若者グループが警官6~7人に取り囲まれていた。車内で大騒ぎしていたか、あるいは窃盗を働いたといった可能性もあるが、警察犬を連れた警官隊に囲まれて事情聴取されるのは穏やかではない。遠巻きに眺めていたが、その場でコロナウイルスの抗体検査のため、鼻に綿棒を突っ込まれつつの職務質問とはなかなか厳しい対応と感じた』、「イギリス鉄道警察」は「事件のうち3分の2を検挙できている」、のはまずまずの成果だ。
・『無関係の人を射殺した事例も  すでに述べたように、ロンドンを含むイギリスの街中には多数の防犯カメラが設置されている。しかし、こうした設備には問題点もある。 鉄道警察による「怪しい人物はこいつだ」とのツイッターでの書き込みも見かけるが、誤認は本当にないのだろうか。ロンドンではかつて、2005年の同時多発テロの直後、事件に関係のないブラジル人を誤認して射殺するという痛ましい事件もあった。 各国からの観光客に交ざって、招かれざる人物もイギリスに上陸している。安全確保とプライバシーとの兼ね合いが難しいところだが、大きなテロ事件からの教訓として、市民の間からは「徹底した管理と警備」を求める声が根強い。コロナ禍のさなかは乗客が少なく犯罪発生率も低かったが、進みつつある経済の回復からあぶれた人々による犯罪行為も起こらないとは限らない。大過なく安全な運行が続くことを願ってやまない』、「コロナ禍」が落ち着いて経済が正常化しても、公共交通の安全が維持できるか、注目されるところだ。
タグ:鉄道 (その8)(日本とはケタ違い 米国「貨物列車」のスケール 風力発電の翼から航空機の胴体まで輸送する、イギリスの「鉄道防犯対策」は日本と何が違うか ロンドン同時テロ後に防犯カメラ設置を徹底) 東洋経済オンライン 中村 彰宏 「日本とはケタ違い、米国「貨物列車」のスケール 風力発電の翼から航空機の胴体まで輸送する」 「長大・重量貨物の輸送は古くから鉄道で行われている」、大陸横断鉄道などの伝統があるだけに、さすがだ。 「家屋を1棟丸ごと運ぶ」、「ビッグボーイより飛び出し部の長いブレードを積載して運行するにあたっては、対向列車と曲線部ですれ違い接触が起きないようにダイヤが組まれる」、鉄道運航システムも弾力的に運用しているようだ。 「専用治具の高さは、牽引機関車の高さより幾分高く製作されている。冬季のロッキー山脈越えのトンネル内のツララと上部の障害物による機体への損傷防止を図るためである」、ずいぶん工夫をしているようだ。 日本の場合は規制が多く、米国のような訳にはいかないだろうが、「鉄道輸送」に改めて脚光を当ててみる価値はありそうだ。 さかい もとみ 「イギリスの「鉄道防犯対策」は日本と何が違うか ロンドン同時テロ後に防犯カメラ設置を徹底」 「テロ先進国、英国」の例を見る意味は大きそうだ。 「ロンドン市民は街の防犯カメラで1時間平均13コマは撮られている」、緩やかに監視されているようだ。 「ガラスを割って脱出できる」のを認めるか否かは、脱出後の安全確保は可能かどうかにもよるようだ。 「イギリス鉄道警察」は「事件のうち3分の2を検挙できている」、のはまずまずの成果だ。 「コロナ禍」が落ち着いて経済が正常化しても、公共交通の安全が維持できるか、注目されるところだ。
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韓国(文在寅大統領)(その11)(反日を掲げていたのに…韓国の自治体が「戦犯」と呼んでいた日本企業を次々と誘致しているワケ、韓国・文大統領の失策で「国家自然消滅の危機」 元駐韓大使が解説、BTSが外交パスポートで渡米し国連総会に! 圧巻スピーチ&パフォーマンスの“原点) [外交]

韓国(文在寅大統領)については、9月8日に取上げた。今日は、(その11)(反日を掲げていたのに…韓国の自治体が「戦犯」と呼んでいた日本企業を次々と誘致しているワケ、韓国・文大統領の失策で「国家自然消滅の危機」 元駐韓大使が解説、BTSが外交パスポートで渡米し国連総会に! 圧巻スピーチ&パフォーマンスの“原点)である。

先ずは、10月14日付け文春オンラインが掲載した広告プランナー・コピーライターの佐々木 和義氏による「反日を掲げていたのに…韓国の自治体が「戦犯」と呼んでいた日本企業を次々と誘致しているワケ」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/49255
・『韓国の自治体が日本企業誘致に取り組んでいる。 2019年7月、日本の経済産業省が、半導体・ディスプレイの核心素材であるフォトレジスト、エッチングガス、フッ化ポリイミドの韓国向け輸出管理を強化すると発表した。政府はまた、翌8月7日、韓国をいわゆるホワイト国(輸出管理上での優遇措置対象国)リストから除外する政令も公布した。 日本と韓国の間では、いわゆる徴用工裁判や慰安婦合意破棄、レーダー照射など確執が続いていたが、そうした状況下でも韓国にとってはまさに青天の霹靂といえる発表だった』、私自身は「韓国向け輸出管理を強化」をやり過ぎと思う。
・『韓国全域に広がった「日本製品不買運動」  フォトレジストとエッチングガスは半導体製造に欠かせない素材で、日本企業が世界全体の供給量でそれぞれ、85%と70%を占めている。フッ化ポリイミドは韓国勢が強い有機ELディスプレイに使われている材料で、日本が世界の供給量の90%を占めている。経済産業省は日本以外からの調達が難しい3品目を選んだのだ。 韓国は、日本政府の輸出管理強化は、徴用工裁判で韓国の最高裁が日本企業に賠償金支払いを命じた前年10月の判決に対する報復だと主張。文在寅大統領が「ふたたび日本に負けない」と発言し、与党・共に民主党が主導権を握る自治体が反日の狼煙を上げ、韓国全域で日本製品不買運動が広がった。 なかでも最も強硬な反日姿勢を見せたのは、次期大統領の座を狙う李在明(イ・ジェミョン)京畿道知事だった』、こんなことで「日本製品不買運動」が起こるとは日本にとっては割に合わない。
・『「脱日本技術独立」を宣言したが……  京畿道は人口1300万人を擁する韓国最大の自治体だ。道内の平澤市は、半導体工場があるサムスン電子の企業城下町として知られており、利川市にはSKハイニックスの半導体工場、坡州市にはLGディスプレイの企業団地、また、これらの工場に部品を納める企業の工場や事務所が集まっている。これらの工場は上記3品目のほか、多くを日本企業に依存しており、日本政府の輸出管理強化による影響を最も受ける地域である。 韓国は日本政府が、韓国をホワイト国から除外した(輸出管理のグループAからグループBに変更した)措置を輸出規制と批判するが、実際には、輸出が不許可となる例はほとんどない。輸出手続きは煩雑化するものの、兵器転用のおそれがない貨物の輸出や技術移転は従来通り、許可されるからだ。 しかし、知事が反日を掲げる京畿道は19年7月、すぐさま「脱日本技術独立」を宣言し、素材・部品・装備の研究開発を行う地元企業に5年間で2000億ウォン以上を支援する計画を立て、また、韓国の政府機関が2012年に作成した“戦犯企業リスト”に掲載されている日本企業273社の製品を公共機関が購入しないようにする「不買条例」を制定した。 そこから京畿道は、道内企業に20年7月までの1年間に300億ウォンを支援したものの、技術開発は一朝一夕でできるものではない。1年や2年で追いつくことなど極めて難しいし、韓国企業が追いつく頃には、日本はさらに先を進んでいることがほとんどだ』、「技術開発は一朝一夕でできるものではない。1年や2年で追いつくことなど極めて難しいし、韓国企業が追いつく頃には、日本はさらに先を進んでいることがほとんどだ」、まさに逃げ水のようだ。
・『代替品の獲得に失敗したワケ  そこで京畿道は、日本を除く国々の企業誘致にも邁進した。19年11月に米国に本社を置く世界最大の半導体装置企業・ラムリサーチ社の誘致に成功、20年6月には世界有数の半導体中古装置流通企業であるサープラスグローバル社を、21年5月には産業用ガスを製造するエアープロダクツ社を誘致するなど、21年5月までに、10社以上を誘致した。 しかし、結局その戦略もうまくはいかなかった。半導体の製造現場に詳しい、日本企業の韓国駐在員はこう語る。 「仮に地元企業や米国企業から代替品を調達できたとしても、それらを別の素材や部品と組み合わせると、期待通りの成果が得られないこともよくあります」 工業技術に100%はなく、コンマ数パーセントの誤差や不純物は避けられない。一つの素材や部品が、それ単体では何の問題もないように見えても、他のものと組み合わせたときに、その「コンマ数パーセントのズレ」によって予期せぬ不具合を引き起こすことは珍しくないのだ』、「一つの素材や部品が、それ単体では何の問題もないように見えても、他のものと組み合わせたときに、その「コンマ数パーセントのズレ」によって予期せぬ不具合を引き起こすことは珍しくないのだ」、なるほど。
・『「日本企業の誘致」という禁じ手  そうして5年計画で「脱日本」に邁進した京畿道だが、決定的な成果が得られないまま、世界的なコロナ・パンデミックの影響でテレワークが拡大し、また無人化のAIが増えるなど、半導体の需要が急増しはじめた。 サムスン電子は2020年8月に世界最大規模の半導体工場となる平澤2ラインの稼動を開始し、21年8月には半導体新工場の建設費2兆円を含む23兆円相当の投資計画を発表した。SKハイニックスも1兆円規模の設備投資を行う方針を明らかにするなど、即効性が求められるようになった。 高まる需要を前に、「国産化の推進」「日本からの輸入を抑制」「地域のグローバル企業を妨害しない」という3つの課題の解決策を模索した京畿道は、ある答えに辿り着いた。日本企業の誘致である。日本企業が韓国内で製造した製品は数字上、韓国製にカウントされ、また、“日本製”の素材や部品であれば「組み合わせの不具合」を心配することなく、そのまま使うことができる。 サムスン電子とSKハイニックスは、いずれも東芝との提携を通して半導体を製造する技術を得ており、日本から購入した素材や部品で、製品を作ってきた。そんな両社の増産は、日本企業からの輸入増加を意味している』、「サムスン電子とSKハイニックスは、いずれも東芝との提携を通して半導体を製造する技術を得ており」、これではしょうがない。
・『「戦犯企業」を次々と……  実際、昭和電工の子会社である昭和電工マテリアルズ(旧日立化成)は、京畿道安山市に110億円を投資して新工場を建設した。2016年にSKマテリアルズと合弁でSK昭和電工を設立した同社は韓国内の生産能力を30%引き上げる計画で、10月に稼働を開始する予定である。ちなみに、昭和電工は韓国政府の「戦犯企業」リストに掲載されている。 京畿道に隣接する忠清南道も「戦犯企業」を誘致した。 2021年1月、忠清南道と同道唐津市は、ダイキン工業が韓国半導体製造装置メーカーのシーアンドジーハイテク社と合弁で唐津市松山に工場を新設する覚書(MOU)を締結した。ダイキン工業は、韓国半導体製造用ガス市場で約28%のシェアを持ち、半導体の製造過程で必要なエッチングガス(高純度フッ化水素)を日本や中国で生産して、サムスンやSKハイニックスなどに供給してきた。 4月には半導体材料メーカーの日産化学と子会社である韓国現地法人のNCKも、唐津市松山2産業団地に工場を新設する覚書(MOU)を忠清南道と締結した。NCKは2001年に日産化学が出資して京畿道平澤市に設立した子会社で、半導体やディスプレイの材料の研究や製造、販売を行っている。 ダイキン工業とNCKが工場を新設する唐津市は、SKハイニックスの工場とは100キロ近く離れているが、サムスン電子の企業城下町である平澤市とは川を挟んだ対岸に位置している。なお、ダイキン工業と日産化学も昭和電工と同様、「戦犯企業」リストに掲載されている』、「「戦犯企業」リストに掲載されている」ことで、どんな不利益があるのだろう。
・『日本企業にとってもメリットはある  日本企業を誘致する韓国の自治体は、地元の雇用を守り、国産化を推進したと主張できる。一方、これは日本企業にとってもメリットがある。韓国がホワイト国から除外されたことで輸出手続きが煩雑になっているが、その点、韓国工場で生産すると、手続きを簡素化できるし、韓国企業の要求に合わせて納入しやすくなるのだ。 また、サムスンをはじめ、日本政府のさらなる規制を危惧する韓国企業が、日本以外からの調達を本格的に進める可能性もある。その点、日本企業が韓国で生産すれば、日本企業に依存してきた韓国企業の第3国からの調達を防ぐことができる。 京畿道をはじめ、各自治体は整備した税制優遇、賃貸料の減免、法務、会計、人事労務、金融の無料相談などのインセンティブを訴求して、日本企業を誘致したい考えだ。 表では反日を掲げながら、裏では“戦犯企業”を誘致する李在明京畿道知事は、現在、次期大統領の最有力候補となっている』、「表では反日を掲げながら、裏では“戦犯企業”を誘致する」、いかにも「韓国」らしいやり方だ。

次に、12月14日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元・在韓国特命全権大使の武藤正敏氏による「韓国・文大統領の失策で「国家自然消滅の危機」、元駐韓大使が解説」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/290534
・『未来への議論がない次期大統領選挙  文在寅政権になってから韓国の合計特殊出生率は急減している。このまま進めば、韓国の人口は最悪の場合、50年後には現在の60%ほどに低下するとの予測もある。 韓国にとって今が人口減を食い止める最後の機会のはずであるが、文政権は人口問題を回避する一方、国内政治的には分断を一層深化させ、経済的には韓国経済を支える財閥企業をたたき、労働組合に肩入れして経済の弱体化を進めている。 さらに、不動産政策に失敗し、若者の良質な雇用を奪って、若者に将来への夢を失わせ、晩婚化を進めている。外交的には米中間にあって本来の友好国である日米との関係を疎遠にし、中国や北朝鮮に歩み寄っている。 このような文在寅大統領の政策を進めていけば、韓国はいずれ自然消滅しかねない。 文大統領に人口減少を止める政策が期待できないとすれば、次期大統領に期待せざるを得ない。しかし、次期大統領選の主要な争点が、どちらがより多くの不正を働いているかに集中し、韓国の未来に関する議論がほとんど行われていない。 本来、次期大統領選挙の重要なテーマは、いかに人口減を食い止め、韓国社会を安定成長の軌道に戻すかであるべきであろう。次期大統領は、国民統合に向けた政策を取り戻す、経済成長を実現して若者の良質な雇用を増やしていく、不動産の高騰を抑制しつつ、バブル崩壊を防ぎながら国民の持ち家政策を進めていくという点に集中して国家運営をするべきである。 文政権がいかに国内の対立を助長し、若者の雇用を奪い、不動産政策で失敗することで、韓国を行き場のない国にしたか、そして、次期「大統領となってもこうした点の改善は難しいということについては、22日発売の新刊本「さまよえる韓国人」で書き下ろした。こうした状況を生んだ韓国社会の背景についても記述したのでご参照願いたい』、「韓国」のマスコミは、「本来、次期大統領選挙の重要なテーマは、いかに人口減を食い止め、韓国社会を安定成長の軌道に戻すかであるべき」か、「次期大統領は、国民統合に向けた政策を取り戻す、経済成長を実現して若者の良質な雇用を増やしていく、不動産の高騰を抑制しつつ、バブル崩壊を防ぎながら国民の持ち家政策を進めていくという点に集中して国家運営をするべき」、という角度から報じないのは何故なのだろう。
・『100年後の人口は6割減 最悪の場合は8割減  韓国統計庁が発表した「将来人口推計2020~2070」の付録に「100年推計統計表(2070~2120年)」が添付されている。これによると2020年末の人口が前年比で初めて減少に転じ、2万人減となった。 人口減少は今後も加速度的に進んでいく。韓国の人口は2020年末時点の5182万9000人から、2120年には3088万3000人減少して2094万6000人(59.5%減)になると予測している。 さらに2120年の生産年齢人口(15~64歳)の比率は48%(1005万8000人)で半分にも満たない。14歳以下の人口は8.9%で185万9000人だ。他方、65歳以上の高齢者人口は903万7000人で43.1%を占め、ほぼ生産年齢人口に匹敵する。まさに「高齢者国家」である。 ただ、これはまだいい方の予測である。最悪の想定では2120年の人口は1214万人(76.5%減)になるという。この予測では高齢者人口は生産年齢人口を上回っている。 これはもはや持続可能な社会とはいえないだろう。) 文大統領は政権の残り5カ月の最大の課題として、北朝鮮との「終戦宣言」を挙げている。しかし、それは自分の政権のレガシーを残したいからであり、あわよくば、それによって金大中元大統領に次ぐ韓国人2人目のノーベル平和賞受賞者となりたいからである。それは韓国の国益ではなく、文大統領の利益である。 韓国にとって、現在の最大の国益は、出生率を高めて人口減を食い止めることである。そのためには国民の生活水準を引き上げること、人々が結婚して子供を持とうという意欲をよみがえらせること、生活水準を引き上げて子供を持てる社会に再生することである。 しかし、文政権は国内的に政治闘争を繰り返し、北朝鮮との間で無駄な労力を費やしており、その結果、韓国が再生する最後の機会を失いつつある』、「文政権は国内的に政治闘争を繰り返し、北朝鮮との間で無駄な労力を費やしており、その結果、韓国が再生する最後の機会を失いつつある」、その通りだが、日本も似たようなものだ。
・『経済政策の失敗により出生率が急速に低下  文政権になってから韓国の合計特殊出生率は減少幅を拡大している。 2020年の合計特殊出生率0.84という数字は少子化が問題となっている日本の1.34(2020年)と比べても格段と低い。特に不動産価格の高いソウルは0.64%である。 少子化のペースは文政権になってから加速している。2018年に初めて0.98と1を下回ってからさらに減少を続けている。新型コロナによって結婚する人の数は10%減ったといわれており、この状況が続くとすれば、来年以降の合計特殊出生率は0.69、0.62、0.57と年々減少し、2025年は0.52になるとの予測もある。わずか8年で半減するという異常さであり、その発端を作ったのが文政権である。 合計特殊出生率が極端に低下した最大の理由は、文政権の経済政策の失敗によって若年層にしわ寄せが及んでいることにある』、「合計特殊出生率が極端に低下した最大の理由は、文政権の経済政策の失敗によって若年層にしわ寄せが及んでいることにある」、その通りだが、韓国内にはこの問題を問題視する意見はないのだろうか。
・『若者の良質な雇用の減少が出生率を低下させた  韓国の若者の雇用の現状は悲惨である。これを認めないのは文大統領とその周辺くらいであろう。文大統領は、財政支出で高齢者向けの短期アルバイトを増やすことで、見かけ上の失業率は低く抑え、その数字をもとに韓国経済の就業状況は良好であると発言している。 しかし、今年だけで非正規職が64万人増加するなど、雇用が改善したとは到底いえる状況ではない。 青年失業率は5.4%と昨年より3.5ポイント改善している。しかし、これは数字のトリックにすぎない。就業者の内訳を見ると、20~30代の30.1%(243万人)が非正規職であり、その比率は60代よりも高い。しかも若年層の勤務時間を2年前と比較すると、週36時間に満たない人が10.3万人増加する一方、36時間以上の人は13.9万人減少している。 この間、良質な製造業の雇用は減少している。それは反企業的な文政権の政策が原因であり、その代表例が、最低賃金の無計画な大幅引き上げ、規制改革と労働組合寄りの労働政策である。あまりにも労働組合の力が強くなり、不況時にも解雇できないこと、賃金の上昇幅が大きいことが良質な雇用減少の大きな要因である。 さらに、文大統領の政権与党は重大災害処罰法を制定した。これは労働災害を防止するためとしているが、あいまいな労働災害の線引きとともに企業に過重な責任を負わせるもので、事実上の操業時間減、コストアップにつながるものである。さらに労災事故発生時には、事業主や経営責任者が刑事処罰される内容も含まれている。これでは新しく製造業を始めようとする人々もちゅうちょするであろうし、企業の海外進出を助長するであろう』、よくぞここまで反企業的政策を展開したものだ。
・『非正規労働者の増加による晩婚化で出生率が低下  韓国の30代の人々の未婚比率は2010年が女性20.4%、男性37.9%であったが、2020年には女性33.6%、男性50.8%と大幅に増えている。それは初婚年齢の高まりを反映しており、2020年の初婚年齢は男性33.4歳、女性30.8歳と、20年前と比較して男性で3.9歳、女性で4.3歳高まっている。 晩婚化の原因については、適当な相手と巡り合う機会にめぐまれないことが33.8%と高い。 所得や持ち家などの経済的な基盤がしっかりしていない男性が、結婚相手を探すのは難しい。文政権は非正規職を正規職に格上げすることを公約して大統領になったが、逆に非正規職が増えているのが現実であり、それが結婚の障害となっている。 ちなみに、30代男性の正規職労働者の未婚率は44.3%であるのに対し、非正規職の場合には53.7%と半分以上が未婚である』、「30代男性の正規職労働者の未婚率は44.3%であるのに対し、非正規職の場合には53.7%と半分以上が未婚」、確かに「非正規」では結婚など夢物語だろう。
・『生活の質の低下に歯止めがかからない  文大統領は、韓国は国民1人当たりGDPで世界十大経済大国の仲間入りを果たしたというが、国民生活にはその実感は広がっていない。 グローバル統計サイト「Numbeo」によると、2021年の韓国の「生活の質」指数は130.02となり、評価対象国83カ国中42位となった。文政権1年目の2017年には67カ国中22位だったから、大きく悪化したことになる。 生活の質が低下した主な要因は、非正規労働者の増加に加えて、不動産価格の高騰が挙げられる。 ソウル市内の不動産価格は文政権の4年間で倍増した。文政権はこの間で20回以上、大々的に不動産対策を発表しておきながら、価格上昇を抑えることができなかった。その結果、若者がマンションを購入することは遠い夢になってしまった。韓国の男性が婚姻するときには家を用意しなければならない。家を持てないということは、恋愛、結婚、出産、育児を放棄することになる。 さらに、20~30代の調査では、「一生懸命働いても金持ちになれない」と答えた人が70.9%に上った。そして、69.5%は「希望する職場に就職する可能性は低い」、62.9%は「今後も若年層の雇用環境は悪化する」と答えている。 これでは晩婚化の解消や合計特殊出生率の改善にはつながらないだろう』、「20~30代」が先行きを悲観的にみているようだ。
・『何よりも優先すべきは出生率を引き上げる施策  韓国では、超高齢化社会の到来は避けることができない、それに向けた備えが必要だとの指摘が出ている。 中央日報によれば、慶煕(キョンヒ)大東西医学大学院のキム・ヨンソン老人学科教授は「超高齢化社会に必要な高齢者向け技術に投資する必要がある。(同技術は)新しい成長エンジンとして高付加価値と良質の雇用を創出し、経済成長に寄与するだろう」「(同技術の)受恵者は高齢者になるが、これを開発してサービスを提供する人は青年であるため、雇用の創出が期待される」と述べた。 こうした取り組みはたしかに効果的だろう。しかし、何よりも重要なことは出生率を上げる施策である。大統領が国内的な闘争、労働組合となれ合いの企業たたき、北朝鮮の実態を見ない無益な歩み寄りに埋没している時間はないはずである。大統領は韓国社会の現実を直視し、未来に向けた果敢な政策を打って出ることが求められている』、「文大統領」が破滅的な政策を展開しているのであれば、打つ手なしだ。

第三に、9月25日付け日刊ゲンダイ「BTSが外交パスポートで渡米し国連総会に! 圧巻スピーチ&パフォーマンスの“原点」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/295146
・『韓国の7人組グループBTSが今月20日にニューヨークの国連本部で行われた「第76回国連総会」に出席し、「持続可能な開発目標(SDGs)モーメント」の開会セッションでスピーチとパフォーマンスを行った。BTSが国連に登壇したのは18年9月、昨年9月に続いて3度目。大統領から文化特使に任命され、外交パスポートで渡米。リーダーのRM(27)は「ワクチン接種はファンに会うためのチケットのようなもの」とメンバー全員が接種済みであることを明かし「可能性と希望を信じれば新しい道を発見することができると信じている」と若者に向けてスピーチした。 国連の動画配信はBTSが登場すると5万アクセスから一気に100万アクセスに爆上がり。動画は今も再生回数を伸ばし「韓国最大の武器はBTS」といわれるほど。韓国エンタメプロデュースに携わるローバー美々氏がこう言う。 「文大統領は弁護士時代、光州事件の学生デモで逮捕された学生側の弁護人だったこともあり、若者に対する理解と、若者を取り込むのが非常にうまい人物。韓国は2000年くらいから国策でエンタメを打ち出し、コロナ対策と並行し、早々にCGを駆使できるライブ配信用の劇場を造るなど、エンタメにも注力してきました。BTSが今回あえて韓国語でスピーチしたことは韓国の世界的地位向上の手段。いわば国策の成功の証しとも言えます。アーティストとしてはデビュー当時アイドル激戦区の韓国では埋もれ、日本でブレークし“逆輸入”で韓国で火がついて注目を浴びました。彼らは日本のCDショップでストアイベントやチラシ配りをしていた頃と変わらず、アイドル意識の高い、100年に一度の逸材です」 音楽性について、音楽評論家の富澤一誠氏が「ヒップホップとアイドルという、今まで相反すると思われていたジャンルを融合させたグループです。反骨精神と高いメッセージ性のある音楽を提供していて、オピニオンリーダーとして発信し、アイドル好きの若者だけでなく大人も認めざるを得ない」と言うように、大人を超えてシルバー世代にも人気で、昭和の芸能界で青春時代を過ごした芸能人までもが魅了されている』、韓国の国連への売り込みの巧みさには頭が下がる。見事だ。「デビュー当時アイドル激戦区の韓国では埋もれ、日本でブレークし“逆輸入”で韓国で火がついて注目を浴びました」、初めて知った。
・『BTSを国際的スターに引き上げたリーダーRMの英語力  BTSファンで女優の水沢アキさんは語る。 「芸能界で青春時代を過ごすことがいかに不自由で、犠牲にすることがあるか身をもって知る私たちもリスペクトする、完璧なアイドル。彼らの努力に裏打ちされた歌とダンスは有名ですが、国連でのパフォーマンスはタイトな時間、限られた場所で、カメラに収まることに重きを置いてあれだけのクオリティーの高い動画に仕上げていました。国際的スターに引き上げた要因にリーダー・RMの英語力もあります。彼の英語は韓国なまりがなくネーティブなので、グラミー賞などでも引けを取りません。アメリカから世界に評価されたアーティストという意味では、BTSはビートルズに匹敵する存在。メッセージは常にポジティブで、スピーチでの『LOVE YOUR SELF』という言葉も日頃から発信している内容だから説得力がある。生い立ちについては一切明かさず、親が出てこない。純粋にステージを見て応援したいと思わせてくれるんです」 ビートルズに次ぐ世界的アーティストBTS。快進撃はまだまだ続きそうだ』、「メッセージは常にポジティブで、スピーチでの『LOVE YOUR SELF』という言葉も日頃から発信している内容だから説得力がある」、今後のさらなる活躍が楽しみだ。
タグ:韓国(文在寅大統領) (その11)(反日を掲げていたのに…韓国の自治体が「戦犯」と呼んでいた日本企業を次々と誘致しているワケ、韓国・文大統領の失策で「国家自然消滅の危機」 元駐韓大使が解説、BTSが外交パスポートで渡米し国連総会に! 圧巻スピーチ&パフォーマンスの“原点) 文春オンライン 佐々木 和義 「反日を掲げていたのに…韓国の自治体が「戦犯」と呼んでいた日本企業を次々と誘致しているワケ」 私自身は「韓国向け輸出管理を強化」をやり過ぎと思う。 こんなことで「日本製品不買運動」が起こるとは日本にとっては割に合わない。 「技術開発は一朝一夕でできるものではない。1年や2年で追いつくことなど極めて難しいし、韓国企業が追いつく頃には、日本はさらに先を進んでいることがほとんどだ」、まさに逃げ水のようだ。 「一つの素材や部品が、それ単体では何の問題もないように見えても、他のものと組み合わせたときに、その「コンマ数パーセントのズレ」によって予期せぬ不具合を引き起こすことは珍しくないのだ」、なるほど。 「サムスン電子とSKハイニックスは、いずれも東芝との提携を通して半導体を製造する技術を得ており」、これではしょうがない。 「「戦犯企業」リストに掲載されている」ことで、どんな不利益があるのだろう 「表では反日を掲げながら、裏では“戦犯企業”を誘致する」、いかにも「韓国」らしいやり方だ。 ダイヤモンド・オンライン 武藤正敏 「韓国・文大統領の失策で「国家自然消滅の危機」、元駐韓大使が解説」 「韓国」のマスコミは、「本来、次期大統領選挙の重要なテーマは、いかに人口減を食い止め、韓国社会を安定成長の軌道に戻すかであるべき」か、「次期大統領は、国民統合に向けた政策を取り戻す、経済成長を実現して若者の良質な雇用を増やしていく、不動産の高騰を抑制しつつ、バブル崩壊を防ぎながら国民の持ち家政策を進めていくという点に集中して国家運営をするべき」、という角度から報じないのは何故なのだろう。 「文政権は国内的に政治闘争を繰り返し、北朝鮮との間で無駄な労力を費やしており、その結果、韓国が再生する最後の機会を失いつつある」、その通りだが、日本も似たようなものだ。 「合計特殊出生率が極端に低下した最大の理由は、文政権の経済政策の失敗によって若年層にしわ寄せが及んでいることにある」、その通りだが、韓国内にはこの問題を問題視する意見はないのだろうか。 よくぞここまで反企業的政策を展開したものだ。 「30代男性の正規職労働者の未婚率は44.3%であるのに対し、非正規職の場合には53.7%と半分以上が未婚」、確かに「非正規」では結婚など夢物語だろう。 「20~30代」が先行きを悲観的にみているようだ。 「文大統領」が破滅的な政策を展開しているのであれば、打つ手なしだ。 日刊ゲンダイ 「BTSが外交パスポートで渡米し国連総会に! 圧巻スピーチ&パフォーマンスの“原点」 韓国の国連への売り込みの巧みさには頭が下がる。見事だ。「デビュー当時アイドル激戦区の韓国では埋もれ、日本でブレークし“逆輸入”で韓国で火がついて注目を浴びました」、初めて知った。 「メッセージは常にポジティブで、スピーチでの『LOVE YOUR SELF』という言葉も日頃から発信している内容だから説得力がある」、今後のさらなる活躍が楽しみだ。
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今日は更新を休むので、明日にご期待を!

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大学(その9)(「俺が逮捕されれば裏金のことも全部ぶちまける」“日大のドン”田中英寿理事長が口にする"不穏な言葉" 地検特捜部と"田中帝国"の攻防戦、「暴力団との交際を堂々とアピール」そんな人間になぜ日本大学は牛耳られていたのか「夜道に気をつけろ」と脅すことも、灘高生に「東大理三離れ」の兆し “高偏差値男子は医学部”の常識に異変) [社会]

大学については、1月13日に取上げた。今日は、(その9)(「俺が逮捕されれば裏金のことも全部ぶちまける」“日大のドン”田中英寿理事長が口にする"不穏な言葉" 地検特捜部と"田中帝国"の攻防戦、「暴力団との交際を堂々とアピール」そんな人間になぜ日本大学は牛耳られていたのか「夜道に気をつけろ」と脅すことも、灘高生に「東大理三離れ」の兆し “高偏差値男子は医学部”の常識に異変)である。

先ずは、10月10日付け文春オンライン「「俺が逮捕されれば裏金のことも全部ぶちまける」“日大のドン”田中英寿理事長が口にする"不穏な言葉" 地検特捜部と"田中帝国"の攻防戦」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/50345
・『11月29日、東京地検特捜部は日本大学理事長の田中英寿容疑者(74)を所得税法違反の疑いで逮捕した。「誰も逆らえない」と言われる“日大のドン”田中氏の素性や、「日大利権」の実態について報じた週刊文春の記事を再公開する。(初出:週刊文春 2021年9月23日号、年齢、肩書等は掲載時のまま)。  約7万人の学生数を誇る日本最大のマンモス校、日本大学の中枢についに司直の手が伸びた。9月8日、東京地検特捜部は、日大の本部、そして最高権力者である田中英寿理事長(74)の自宅などを背任容疑の関係先として家宅捜索した。 検察担当記者が語る。 「疑惑の舞台は日大医学部附属板橋病院です。老朽化による建て替え計画が進んでおり、予算規模は1000億円という大プロジェクト。日大は昨年、基本設計を24億円で設計会社『佐藤総合計画』に発注しているのですが、そのうち約2億円が不正に流出し、大学に損害を与えたとみられているのです」 契約は、日大が全額出資して2010年に設立された株式会社「日本大学事業部」が行なった。大学の納入業者の選定を一手に仕切り、大学のグッズの企画・販売や職員の物品購入から学生寮の管理、保険代理業まで担う組織だ。そのキーマンが日大の理事で、日大事業部の取締役も兼務する田中氏の最側近、井ノ口忠男氏(64)である』、「日本最大のマンモス校、日本大学の中枢についに司直の手が伸びた」、全く異例のことだが、「悪質タックル問題」の時から、「日大」には何やら正常とはいえない雰囲気が濃厚だった。
・『佐藤総合計画を日大に紹介したのは…  地検関係者が明かす。 「井ノ口氏が、佐藤総合計画に対し、約2億円を大阪の医療法人『錦秀会』の籔本雅巳理事長の右腕が社長を務める港区の医療コンサル会社に送金するよう指示したとみています。そもそも籔本氏は井ノ口氏を通じて田中氏の知遇を得、14年には日大出身の力士、遠藤関の後援会長を務めて日大との関係をさらに深めました。その後、田中氏が会長を務める国際相撲連盟の副会長にも、籔本氏は名を連ねた。特捜部は今回の契約に医療コンサルを入れる必要があったのか否かに着目している」 捜査は、証券取引等監視委員会からの告発案件などを担当する経済班が担うが、班を率いる副部長は、日産のカルロス・ゴーン事件の主任検事を務めた強硬派だ。 「佐藤総合計画を日大に紹介したのは、自民党の故野中広務元官房長官の元秘書です。彼が日大と取引のある葬儀業者を通じて田中氏に持ち込んだ。この元秘書は今夏、コロナで亡くなっていましたが、葬儀業者に詳しく事情を聴いた特捜部は、一気に勝負に出たのです」(同前)』、なるほど。
・『“反田中”の大学幹部に実弾入りの封筒が  田中氏は家宅捜索には驚いていたものの、至って強気の姿勢だという。 「田中氏本人はガサ入れ翌日に6時間の事情聴取を受けていますが、『まったく知らない。金が(医療コンサルに)渡っていたことは後で知った』と一貫して否認している。学内で、地検に協力した犯人探しも始めています」(同前) 田中氏は青森県出身で、地元高校の相撲部を経て日大に入学。現役時代は34個のタイトルを獲得した、“アマ相撲界の大鵬”だ。 「83年に日大相撲部監督に就任。指導者として元小結・舞の海や野球賭博で追放された元大関・琴光喜などを育てた。その後も角界に絶えず逸材を供給するドンとして君臨し、日本オリンピック委員会(JOC)の副会長などを歴任。政治力に長けていた田中氏は日大でも出世コースを歩み、08年に理事長の座を手にした」(日大関係者) その過程で、“反田中”の大学幹部に実弾入りの封筒が送られるなどの不穏な動きが勃発。捜査当局の間でいつしか「日大利権」「ドン田中」のキーワードが取り沙汰されるようになった』、「理事長の座を手に」する「過程で、“反田中”の大学幹部に実弾入りの封筒が送られるなどの不穏な動きが勃発」、その当時は問題にならなかったのも不思議だ。
・『悪質タックル問題の“黒幕”  異例の長期政権となった田中体制が最大の危機に直面したのは、18年5月。日大と関西学院大学とのアメフトの定期戦で、日大の選手が、味方にパスを出して無防備な関学のクォーターバックに激しいタックルを浴びせ、大怪我を負わせた悪質タックル問題でバッシングを浴びたのだ。この時、“黒幕”として名前が浮上した人物が、日大アメフト部の大物OBである、件の井ノ口氏だった。 「悪質タックルは、日大アメフト部の監督とコーチの指示によるものだったのかどうかが焦点となり、警視庁も捜査に乗り出すなか、大学側は第三者委員会を設置。その調査報告で、井ノ口氏は加害者である選手と父親に不当な圧力をかけ、口封じをして事件のもみ消しを図ろうとしたと指摘されたのです」(社会部記者) 集中砲火を浴びた井ノ口氏は日大事業部の取締役を退き、18年7月には理事も辞任。だが、ほとぼりがさめた19年12月に事業部取締役に返り咲き、昨年9月には理事にも復帰した』、「井ノ口氏」が「事業部取締役」や「理事」にちゃっかり「復帰」していたとは、やはり「田中氏」になくてはならない人材なのだろう。
・『ちゃんこ屋で毎回約30万円を支払い…  その背景を日大アメフト部関係者が解説する。 「田中氏が唯一、頭が上がらないのが、東京・阿佐ヶ谷でちゃんこ屋を経営する元演歌歌手の優子夫人。井ノ口氏の復活には彼女の口添えがあったようです。もともとは09年頃に、井ノ口氏の実姉が日大の広報関連の仕事を通じて優子夫人に取り入り、井ノ口氏も頻繁に店に出入りするようになりました。アメフトの試合後に部員20名ほどを店に連れて行き、毎回約30万円を支払い、優子夫人の機嫌をとっていたのです」 11年に、ちゃんこ屋の近くに12階建てのマンションが建設されると、優子夫人の勧めもあり、井ノ口氏はすぐに12階の1部屋を購入。今回の捜査ではここも家宅捜索を受けている。 「井ノ口氏は田中氏から理事長付相談役の肩書を貰うと、日大事業部を舞台にやりたい放題でした。学内の自動販売機ビジネスに手を付け、各飲料メーカーに取引の条件として実姉の広告会社が扱う広告への協賛金として1口300万円を拠出するよう要求するなど、あちこちで強引な手法が問題になっていた」(同前)』、
・『ドン田中と同様、誰も逆らえない存在  さらに井ノ口氏は、当時、資金繰りに苦慮していた兵庫県の学校法人への融資を田中氏に働き掛けている。 「3億円を融資すれば、関西初の日大の系列校になるとの思惑もあり、田中氏は幹部職員らに調査を命じました。だが精査したところ、赤字の累積額も多く、とても融資は難しいとの判断になり、田中氏も渋々受け入れた。ところが、井ノ口氏らは優子夫人に、『こんないい話を断わるのはおかしい』とご注進。板挟みになった田中氏は、融資困難と判断した幹部職員を、一番の側近だったにもかかわらず東京郊外の稲城のグラウンド管理人に飛ばしたのです」(前出・日大関係者) 見せしめ人事の効果は絶大で、日大内部で井ノ口氏は、ドン田中と同様、誰も逆らえない存在になった。 「井ノ口氏は芦屋に3階建ての自宅、堂島に7階建ての自社ビルを持ち、2つのタワマンに部屋を所有。常宿のウェスティンホテル大阪の駐車場には、ベンツやポルシェなどの高級車を何台も停めていた」(同前)』、「井ノ口氏」の資産取得経緯や所得申告をきちんと精査する必要がある。
・『「俺が逮捕されるようなことがあれば…」田中氏が口にする不穏な言葉  その井ノ口氏と盟友関係にあるのが錦秀会の籔本氏なのだ。大阪の7病院のほか介護老人保健施設や医療コンサルを抱え、グループ全体では約5800床を誇る関西屈指の医療法人を率いる。夜の北新地では有名な存在で、フェラーリ愛好家としても知られている。安倍晋三前首相のゴルフ仲間として首相動静にも何度も登場してきた。 「ただ近年、病院経営の台所事情は火の車だった。今回の件は資金繰りに窮した籔本氏ありきのスキームだったのではないかとみられている」(前出・地検関係者) 錦秀会側は「取材はお受けできません」と回答。一方の田中氏は、9月12日に検察側に診断書を提出し、入院。最近こんな不穏な言葉を口にしているという。 「俺が逮捕されるようなことがあれば、今まで政治家に渡した裏金のことも全部ぶちまけてやる」 長年にわたり特捜部が追ってきた日大“田中帝国”の暗部。その攻防は最終戦争の様相を呈している』、「近年、病院経営の台所事情は火の車だった。今回の件は資金繰りに窮した籔本氏ありきのスキームだったのではないかとみられている」、「藪本」氏の存在の意味がようやく理解できた。「俺が逮捕されるようなことがあれば、今まで政治家に渡した裏金のことも全部ぶちまけてやる」との「田中氏」の言葉で、肝を冷やした「政治家」も多いのだろう。今後、楽しみだ。

次に、12月10日付けPRESIDENT Onlineが掲載したジャーナリストの元木 昌彦氏による「:「暴力団との交際を堂々とアピール」そんな人間になぜ日本大学は牛耳られていたのか「夜道に気をつけろ」と脅すことも」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/52690
・『暴力団幹部と一緒に写った写真が次々と流出  住吉会の福田晴瞭会長(当時)、山口組六代目の司忍組長、弘道会傘下佐々木一家の山本岩雄総長(故人)と一緒に写っている人間が大学を牛耳っている理事長だったら、その学校の学生やOBはどう思うのだろう。 日本大学の理事長だった田中英寿(74)が、11月29日に東京地検特捜部に逮捕された。田中は歴代の総長選で、自分の推す候補者を勝たせてきた。こんなエピソードがあると週刊新潮(12月9日号)が報じている。 「13年前の総長選では自分がついた候補の対抗馬を向島の料亭に呼び出し、“出馬を辞退してくれたら5000万円渡す。次期総長選は勝たせるようにするから”と協力を仰いでいました。あまりに一方的な申し出に、その候補は断っていましたが」(さる日大関係者) 気にいらない教授がいると、「夜道に気をつけろ」と脅したこともあったという。俺のバックには暴力団がいるとほのめかし、わが物顔に振る舞っていた』、「13年前の総長選では自分がついた候補の対抗馬」に「“出馬を辞退してくれたら5000万円渡す」、総長のポストはやはりおいしいようだ。「俺のバックには暴力団がいるとほのめかし、わが物顔に振る舞っていた」、大学人とは思えないような振る舞いだ。
・『対立していた幹部は、グラウンドの守衛に左遷  瀬在幸安総長は田中(当時は常務理事)の言動に疑問を持ち始め、6人の弁護士からなる特別調査委員会をつくり、疑惑の調査を指示したと週刊文春(12月9日号)が報じている。 だが調査はうやむやになり、反瀬在に転じた田中は、2005年の総長選では小嶋勝衛を推して瀬在を破ったという。 文春によれば、その後、名古屋で行われたイベントに出席した小嶋総長に、「会わせたい人がいる」と田中が誘った。行った先にいたのは、「司(忍=筆者注)氏だったそうです」と、同大学の元幹部が話している。 田中が2008年に理事長に就任すると、 「まず着手したのは学内にある在籍を知らせる電光掲示板の『総長』と『理事長』の位置を入れ替えることでした。 それまでは総長が上だったのを、理事長を上にし、自らがトップだと宣言した。対立していた幹部を左遷し、最終的に東京・稲城のグラウンドの守衛にするなど、逆らう奴がいれば呼び出して“北海道の大学施設の管理人が空いてるぞ”と脅すのです」(週刊新潮(同)、「まず着手したのは学内にある在籍を知らせる電光掲示板の『総長』と『理事長』の位置を入れ替えること」、権力志向が並外れて強いようだ。
・『教育を食いものにする社会悪  逮捕の発端は、田中の側近だった大学理事の井ノ口忠男と医療法人「錦秀会」の藪本雅巳理事長が、日大医学部附属板橋病院の建て替えを巡り、大学に4億2000万円の損害を与えた背任容疑で逮捕、起訴されたことだった。 そのカネの一部が田中に渡っているのではないか。特捜部は今年9月8日に阿佐ヶ谷の彼の自宅で1億円超の現金を発見、藪本からも約6000万円を田中に渡したという供述を引き出していた。 約5300万円を脱税した所得税法違反容疑だが、特捜部は最初から、5年以下の懲役である背任ではなく、10年以下の懲役の所得税法違反でやるつもりだったと、週刊文春(同)が報じている。 それが証拠に、特捜部から上級庁には、このような報告がなされていたというのである。 「特捜部は、すべて当初の予定通り、田中を逮捕いたします。かねてよりご報告の通り、教育を食い物にする社会悪としての田中を、可罰において重い量刑を科す本来目的の、所得税法違反による逮捕です。すべては狡猾な巨悪を油断させるための“死んだふり”が功を奏しました」 だが、立件・逮捕に至るまでには高いハードルがあったようだ』、「“死んだふり”」とは、これまで故意に見逃していたことを指しているのだろうか。
・『決定的な証拠をつかめない中、作戦を変え…  捜査の手が伸びると、田中は駿河台にある日本大学病院に逃げ込んだ。そこで行われた特捜部の任意の事情聴取では、一貫して容疑を否認し強気だったという。「田中氏が背任工作のスキームを指示、あるいは承知していたことを証明する必要がありましたが、それが難しかった」(司法担当記者) 田中はいちいち細かいことには口を出さないため決定的な証拠がない。背任の共犯での立件は困難だという見方が広がったそうだ。 そこで特捜部は、田中が会長を務める国際相撲連盟を使った金の出入りと、昨年行われた田中邸のリフォームをめぐる支払いの疑惑へと、戦線を拡大していった。 だが、相撲連盟のほうは任意団体で、会計報告の義務もなく、突破口にはならなかったようだ。 リフォームのほうは、工事の窓口になったのは田中が信頼を置く相撲部のOBで、かつて日大の建設工事などの差配役を担った会社の元社員だった。 その人間は田中の紹介で石川県の建設会社の営業部長になり、日大の子会社・日本大学事業部にも籍を置いていて、リフォームは件の会社が請け負い、日大工学部がこの会社に発注した別の工事費用と併せて処理されていたフシがあったが、このルートも不発に終わった。 そこから特捜部は、脱税に焦点を合わせていって、ようやく逮捕にこぎつけたというのである。 田中は逮捕されて理事長を辞任したが、彼にはいくつもの疑惑がある。冒頭書いた暴力団との強いつながりがひとつである』、「脱税」はたぶん証拠固めし易いのだろう。
・『田中体制の集金マシンと化していた「日大事業部」  週刊文春にはこんな話が載っている。 「日大出身のある親方が部屋を開いた際は、小雨の降る地鎮祭に、後に山口組若頭となる高山清司氏が姿を見せたと言われていた。田中氏と弘道会(司忍山口組六代目の出身母体=筆者注)の関係が密かに話題になり、高山氏が田中氏の妻、優子夫人にエルメスのバーキンを一ダース送り、優子夫人が感激していたとの話も耳にしました」(日大関係者) 田中の側近である井ノ口が牛耳っていた日大事業部という伏魔殿の実態も、明るみに出されなければならない。 ここは別名「日大相撲部」といわれていて、田中が率いる相撲部の関係者が複数採用されているという。 その利益の大半は日大への寄付として処理されていて、田中体制の集金マシンになっていたといわれる。 薮本の政界人脈と豪遊ぶりも週刊新潮(10月21日号)と週刊文春(同)で報じられた。週刊新潮は、薮本が安倍晋三元総理と親しく、加計学園の加計孝太郎理事長らとゴルフクラブで撮った写真も掲載していた。 口ひげを蓄えた面構えはいかにも“政商”という雰囲気である。 藪本の仲介で田中と安倍が会ったことはないのだろうか。』「日大事業部」には、「田中が率いる相撲部の関係者が複数採用されている」、「その利益の大半は日大への寄付として処理されていて、田中体制の集金マシンになっていた」、極めて便利なポケットだったようだ。
・『「政治家に渡した裏金のことも全部ぶちまけてやる」  田中との関係が最も強いのは相撲界だ。週刊文春によれば、 「一九八三年には日大相撲部の監督に就任。田中氏が指導した角界の日大出身者は五十人を超えています。現役理事の境川親方を始め、木瀬親方や入間川親方、解説者の舞の海もいます。 さらに角界に力士を輩出し続ける鳥取城北高の石浦外喜義総監督や埼玉栄高の山田道紀監督も田中氏の薫陶を受けています」(角界関係者) 薫陶ばかりではない。 「田中氏はその豊富な人脈を駆使し、日大に有望な学生を集め、高値で相撲部屋に力士を送り込むことで絶大な影響力を誇った」(週刊文春)という。 田中は入院中に、こんな言葉を口にしていたようだ。 「俺が逮捕されるようなことがあれば、今まで政治家に渡した裏金のことも全部ぶちまけてやる」 逮捕されたのだからぜひ、そうしてもらいたいものである』、「高値で相撲部屋に力士を送り込む」、とはまるで人身売買だ。
・『日大の「暗黒の歴史」が繰り返されている  日大という大学には帝王やドンといわれる人間たちが、莫大な私学助成金や学生たちの学費を私してきた「暗黒の歴史」がある。 1960年代後半、吹き荒れた学生運動の「先駆」となったのは「日大闘争」だった。 以前にも書いたことがあるから詳しくは繰り返さないが、当時「帝王」とまでいわれた古田重二良会頭は、学費の相次ぐ値上げに怒った学生たちを右翼学生や体育部の学生たちに襲わせた。その中に相撲部の田中もいたといわれている。 古田は、学生たちのデモ鎮圧のために機動隊まで導入したが、ついには学生たちに屈し、3万5000人の学生が見つめる中で大衆団交に応じ、要求を認めた。 だが、当時の佐藤栄作首相が「日大の大衆団交は常識を逸脱している」と発言。約束は反故にされ、古田は会長として再び日大に戻るが、その年に死去。 あの時、古田的なものを一掃できていれば、田中英寿前理事長も出てこなかったかもしれない。 田中は警察関係とのつながりも強い。 週刊新潮は、安倍元首相時代、官邸の守護神といわれた警察庁出身の杉田和博前官房副長官もその1人ではないかと報じている。 もっとも杉田は、「サシではないと思いますよ。記憶にございませんね」と週刊新潮に答えているが。 警察官僚出身で衆院議員だった亀井静香も週刊新潮で、「相撲取りからマンモス校のトップまでいったんだから、大人物だよ」と田中を擁護している』、「古田は、学生たちのデモ鎮圧のために機動隊まで導入したが、ついには学生たちに屈し、3万5000人の学生が見つめる中で大衆団交に応じ、要求を認めた。 だが、当時の佐藤栄作首相が「日大の大衆団交は常識を逸脱している」と発言。約束は反故にされ、古田は会長として再び日大に戻るが、その年に死去。 あの時、古田的なものを一掃できていれば、田中英寿前理事長も出てこなかったかもしれない」、日大闘争は東大闘争の先駆けになった。確かに「古田的なもの」が残っていたのが、「田中理事長」につながったのだろう。
・『“田中派”の評議員が理事長に復帰させるのではないか  特捜部は、悪質な所得隠しに妻の優子も共謀していたと見て捜査を進めているという。実刑も視野に入れているともいわれる。だが、もしそうなっても、数年後に再び田中が理事長に復帰する可能性があると囁ささやかれているようだ。 現在の加藤直人学長はアメフト事件(日大の選手が監督やコーチの指示で相手選手に危険なタックルをして負傷させた)当時、アメフト部の部長だったが、不祥事にもかかわらずトップに就けたのは、田中の力があったからだといわれている。 今回の件で理事は総辞職したが、大半が田中派といわれる評議員はそのままである。彼らを理事に横滑りさせ、時機を見て田中を理事長に復帰させるのではないか。 こういうケースはほかにもあると大学ジャーナリストの石渡嶺司が「揺れ動く日大~田中色一掃かそれとも復権狙いか、今後のシナリオは」(Yahoo!ニュース 12月2日 7:54)で書いている。 「2008年の東京福祉大事件です。当時、総長だった人物がわいせつ事件により逮捕。総長も辞任し、大学は『今後、大学経営に関与させない』と表明します。 しかし、服役後には大学職員(事務総長)として大学に復帰。2020年には学長としても復帰します」』、「東京福祉大事件です。当時、総長だった人物がわいせつ事件により逮捕。総長も辞任・・・服役後には大学職員(事務総長)として大学に復帰。2020年には学長としても復帰」、学長にまで「復帰」というのは驚くべきことだ。
・『政界まで深く食い込んでいる日大を改革できるのか  石渡は、こうしたシナリオは文科省も承知しているから、田中派を学内から一掃した日大再建を考えているという。 その切り札は年間90億円といわれる私学助成金。日大側が説明責任を果たして徹底的な改革を断行しなければ文科省は、これを減額、または不支給にすると“脅し”て学内の田中派を一網打尽にするというのである。 たしかに学生数6万5000人といわれるマンモス校でも、助成金が減らされれば学校経営に大きな支障が出るだろう。ましてや、理事長が反社と深い付き合いがあったというのでは、来年の志望者が激減することも予想され、受験料収入が大幅にダウンするかもしれない。 それでは、文科省主導の日大改革が行われるかというと、私には大いに疑問である。安倍元首相時代の官邸にまで食い込んでいた田中グループが、文科省の官僚や大臣たちを手なずけていないはずはないからである。 彼らを饗応した際の明細や録音を録っているかもしれない。それが“ヤクザの流儀”である。もし、それを公開するといえば、それでも日大改革をやるという気骨のある人間が出てくるだろうか。 第2の日大闘争を起こせとはいわないが、良識ある教授、学生たちが立ち上がり、学長の説明責任を求め、納得できなければ辞任を要求するべきである。 学外に新学長にふさわしい人材を求めることを考えてもいいのではないか。この機を逃さず、真の改革に着手しなければ、日大は「マンモスの化石」になる。(文中敬称略)』、「この機を逃さず、真の改革に着手しなければ、日大は「マンモスの化石」になる」、言い得て妙だ。

第三に、10月4日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した教育ジャーナリストの庄村敦子氏による「灘高生に「東大理三離れ」の兆し、“高偏差値男子は医学部”の常識に異変」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/283585
・『『週刊ダイヤモンド』10月9日号の第一特集は「医学部&医者2021」です。医者の「安定、高収入、高ステータス」というイメージにより、1990年頃以降過熱の一方だった医学部入試。しかし、ここ数年は高偏差値校の男子生徒による医学部離れの兆しが徐々に見え始めていました。それは、東大理三への合格者数トップを走ってきた西の名門、灘高校も例外ではありません。本特集では、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)のインパクト、そして今後の医学部入試の動向&受験対策を徹底解説します』、興味深そうだ。
・『「灘→東大理三」の黄金ルートが崩壊か? 三男一女を理三に入れた佐藤ママも憂う異変  長年、医学部の最難関、東京大学理科三類(以下、理三)への合格者数が最多の高校といえば灘(兵庫県)だった。2013年には27人(以下、合格者数は総数)が合格。当時の定員は100人だったため、なんと合格者の4人に1人が灘出身者だった。医療界でも、「灘→理三」は一種のブランドになっている。 しかし、19年には21人が合格したものの20年は14人、21年は12人だった。他校に比べて灘高生の学力が落ちたわけではなく、同校によれば理三の志望者自体が減ったという。 「三男が理三を受験した13年は、27人が合格しました。そのうち21人が現役で、保護者の間では『花の65回生』と呼んでいます。三男の合格発表では、親しいお母さんの息子さんたちがみんな合格していたので、『良かったね』と喜び合い、ちょっと騒ぎ過ぎたくらいです。昨年は全国トップとはいえ14人、今年は12人(2位)なので、寂しいですね」 そう話すのは、3人の息子全員が灘から理三に進学した佐藤亮子さんだ。 理三が募集を開始した1962年から21年までの灘の合格者数は、教育ジャーナリストの小林哲夫氏と大学通信の調査によると797人。59回の入試のうち灘は実に42回全国トップになっており、2000年以降も15人以上合格した年が13回ある。 灘が、筑波大学附属駒場、開成、麻布など東京の難関男子中高一貫校よりも長年理三に多数の合格者を輩出してきた理由の一つが、数学が得意な生徒が多いことだった。灘中学の入試は国語、算数、理科の3科目で、国語と算数は2日間行われる。算数の2日目はパターンの暗記だけでは対応できない、思考力が必要な問題を出すため、論理的に物事を考えられる算数好きな生徒が集まる。 灘高生は国際数学オリンピックに毎年のように出場している上、数学の授業のレベルも高いことで定評がある。同校の数学教師が授業で扱った難易度の高い問題が、半年後の東大入試に出題されたこともあるほどだ。 理三に27人が合格した13年は、東大入試の数学が極端に難しかった年だ。数学の問題が難しくなればなるほど、灘高生に有利になるというわけだ。 灘は理三だけでなく、国公立大学医学部全体の現役合格率でも常にトップを争ってきた。医学部合格ランキングの上位校の中には、医学部進学率を学校の売りにしているため、成績優秀者に医学部を積極的に勧めるところもある。しかし灘は「学校自体が成績優秀者に理三を勧めているわけではない」(同校の和田孫博校長)。医学部に特化したカリキュラムはなく、志望校の決定も生徒と家庭の意向に任せているという』、「灘が、筑波大学附属駒場、開成、麻布など東京の難関男子中高一貫校よりも長年理三に多数の合格者を輩出してきた理由の一つが、数学が得意な生徒が多いことだった」、「医学部合格ランキングの上位校の中には、医学部進学率を学校の売りにしているため、成績優秀者に医学部を積極的に勧めるところもある。しかし灘は「学校自体が成績優秀者に理三を勧めているわけではない」、自然体で医学部を目指すとは大したものだ。 
・『「医者になりたい」ではなく「学力を証明する」ために理三を目指す   その一方で、理三に進学した卒業生に聞くと「成績優秀者はほとんど理三を受験していた」と証言する。内科医で、医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師だ。 上医師は、東大と京都大学のダブル受験が可能だった87年、理三と京大医学部の両方に合格した。87、88年は、国立大学の試験日がA日程=2月下旬、B日程=3月上旬に分ける方式が取られ、東大がB、京大がAの日程で試験を行った。AB両日程の入学手続きが同じ日だったため、京大に先に合格し入学する権利を持ちながら、東大の合格日まで待つことができたのだ。「私が受験した年は24人が理三に合格し、進学しなかったのは1人だけ。高3の駿台全国模試でもトップ10に灘から7~8人入っていて、校内順位と変わらない感じだった」と、当時を振り返る。 理三は、日本“最難関”学部だ。灘高生に限らず、有名予備校の全国模試の上位に入るような成績優秀層の中には「医者になりたい」というより、「日本一偏差値が高い」「自身の学力を証明する」ことをモチベーションに受験した学生もある程度はいたのだろう。 では、ここ5年で灘から理三への合格者数が減ったのはなぜか。和田校長は前提として「今春の卒業生のようにそもそも医学部志望者が少ない年や、理三よりも京大や大阪大学医学部志向が強い年もある」と断った上で、近年の医学部志向についてこう話す。 「以前は、浪人してでも東大や京大の医学部を目指す生徒が多かった頃もあるが、近年は、臨床医志望なら京大や阪大以外の関西の国公立大を目指す生徒も増えている」(和田校長)。 また、駿台教育研究所進学情報事業部の石原賢一部長は、「全国的に難関大志向が弱まっていることも背景にあるのでは」と推測。「少子化のため全体の受験生自体が減っているので、各大学の倍率が下がっており、浪人しなくてもどこかには現役で合格する確率が高くなっている。そのため、ロマンで理三を目指す受験生は少なくなった」(石原部長)。確かにここ数年の理三志願者は、16年の546人をピークに21年は385人にまで減っている。 そのほか複数の塾関係者によれば、特に今年は成績優秀層が医学部から情報系学部に流れ、今後もこの傾向は続くとみる向きが強い。昨年と比較すると、21年は主に情報分野などの工学系学部に進む理科一類(理一)が64.2%→65.6%と上昇しているのに対し、理三は75.3%→73.8%と下降し、両者の差が少し縮まっている。「頭が良ければ医学部」という、ここ数十年のスタンダードが廃れていくのかもしれない。 このまま灘から理三の合格者は減り続けるのか。黄金ルートは崩れゆくのか。来年22年入試の結果に注目したい』、「工学系学部に進む理科一類(理一)が64.2%→65.6%と上昇しているのに対し、理三は75.3%→73.8%と下降し、両者の差が少し縮まっている」、「理三」一極集中から分散していくとすれば、好ましいことだ。
タグ:大学 (その9)(「俺が逮捕されれば裏金のことも全部ぶちまける」“日大のドン”田中英寿理事長が口にする"不穏な言葉" 地検特捜部と"田中帝国"の攻防戦、「暴力団との交際を堂々とアピール」そんな人間になぜ日本大学は牛耳られていたのか「夜道に気をつけろ」と脅すことも、灘高生に「東大理三離れ」の兆し “高偏差値男子は医学部”の常識に異変) 文春オンライン 「「俺が逮捕されれば裏金のことも全部ぶちまける」“日大のドン”田中英寿理事長が口にする"不穏な言葉" 地検特捜部と"田中帝国"の攻防戦」 「日本最大のマンモス校、日本大学の中枢についに司直の手が伸びた」、全く異例のことだが、「悪質タックル問題」の時から、「日大」には何やら正常とはいえない雰囲気が濃厚だった。 「理事長の座を手に」する「過程で、“反田中”の大学幹部に実弾入りの封筒が送られるなどの不穏な動きが勃発」、その当時は問題にならなかったのも不思議だ。 「井ノ口氏」が「事業部取締役」や「理事」にちゃっかり「復帰」していたとは、やはり「田中氏」になくてはならない人材なのだろう。 「「井ノ口氏は田中氏から理事長付相談役の肩書を貰うと、日大事業部を舞台にやりたい放題」、そんなに「肩書」がものを言うとは驚きだ。 「井ノ口氏」の資産取得経緯や所得申告をきちんと精査する必要がある。 「近年、病院経営の台所事情は火の車だった。今回の件は資金繰りに窮した籔本氏ありきのスキームだったのではないかとみられている」、「藪本」氏の存在の意味がようやく理解できた。「俺が逮捕されるようなことがあれば、今まで政治家に渡した裏金のことも全部ぶちまけてやる」との「田中氏」の言葉で、肝を冷やした「政治家」も多いのだろう。今後、楽しみだ。 PRESIDENT ONLINE 元木 昌彦 「:「暴力団との交際を堂々とアピール」そんな人間になぜ日本大学は牛耳られていたのか「夜道に気をつけろ」と脅すことも」 「13年前の総長選では自分がついた候補の対抗馬」に「“出馬を辞退してくれたら5000万円渡す」、総長のポストはやはりおいしいようだ。「俺のバックには暴力団がいるとほのめかし、わが物顔に振る舞っていた」、大学人とは思えないような振る舞いだ。 「まず着手したのは学内にある在籍を知らせる電光掲示板の『総長』と『理事長』の位置を入れ替えること」、権力志向が並外れて強いようだ。 「“死んだふり”」とは、これまで故意に見逃していたことを指しているのだろうか。 「脱税」はたぶん証拠固めし易いのだろう。 「その利益の大半は日大への寄付として処理されていて、田中体制の集金マシンになっていた」、極めて便利なポケットだったようだ。 「高値で相撲部屋に力士を送り込む」、とはまるで人身売買だ。 「古田は、学生たちのデモ鎮圧のために機動隊まで導入したが、ついには学生たちに屈し、3万5000人の学生が見つめる中で大衆団交に応じ、要求を認めた。 だが、当時の佐藤栄作首相が「日大の大衆団交は常識を逸脱している」と発言。約束は反故にされ、古田は会長として再び日大に戻るが、その年に死去。 あの時、古田的なものを一掃できていれば、田中英寿前理事長も出てこなかったかもしれない」、日大闘争は東大闘争の先駆けになった。確かに「古田的なもの」が残っていたのが、「田中理事長」につながったのだろう。 「東京福祉大事件です。当時、総長だった人物がわいせつ事件により逮捕。総長も辞任・・・服役後には大学職員(事務総長)として大学に復帰。2020年には学長としても復帰」、学長にまで「復帰」というのは驚くべきことだ。 「この機を逃さず、真の改革に着手しなければ、日大は「マンモスの化石」になる」、言い得て妙だ。 ダイヤモンド・オンライン 庄村敦子 「灘高生に「東大理三離れ」の兆し、“高偏差値男子は医学部”の常識に異変」 「灘が、筑波大学附属駒場、開成、麻布など東京の難関男子中高一貫校よりも長年理三に多数の合格者を輩出してきた理由の一つが、数学が得意な生徒が多いことだった」、「医学部合格ランキングの上位校の中には、医学部進学率を学校の売りにしているため、成績優秀者に医学部を積極的に勧めるところもある。しかし灘は「学校自体が成績優秀者に理三を勧めているわけではない」、自然体で医学部を目指すとは大したものだ。 「工学系学部に進む理科一類(理一)が64.2%→65.6%と上昇しているのに対し、理三は75.3%→73.8%と下降し、両者の差が少し縮まっている」、「理三」一極集中から分散していくとすれば、好ましいことだ。
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電気自動車(EV)(その11)(EV電池の中国CATLを見て 日本の自動車産業の将来に危機感 沸騰・欧州EV(15)、課題山積でも「日本でEV普及が急加速できる」根拠電 力不足や充電渋滞は工夫すれば回避できる、いすゞのEVトラックが自動車産業と日本経済に与える 侮れないインパクト) [イノベーション]

電気自動車(EV)については、8月18日に取上げた。今日は(その11)(EV電池の中国CATLを見て 日本の自動車産業の将来に危機感 沸騰・欧州EV(15)、課題山積でも「日本でEV普及が急加速できる」根拠電 力不足や充電渋滞は工夫すれば回避できる、いすゞのEVトラックが自動車産業と日本経済に与える 侮れないインパクト)である。

先ずは、9月15日付け日経ビジネスオンライン「EV電池の中国CATLを見て、日本の自動車産業の将来に危機感 沸騰・欧州EV(15)」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00122/091400093/
・『欧州委員会が電池産業の育成を明確にし、欧州各社が巨大な電池工場の建設計画を打ち出しています。官民一体で自動車の電動化に突き進む欧州の動向をどのように捉えるべきでしょうか。日経ビジネスは、専門家が解説する日経ビジネスLIVE(オンラインセミナー)「電気自動車で日本は勝てるのか~欧州の野望を読み解く」を9月15日(水)16:00~17:00に開催します(事前登録制、日経ビジネス電子版有料読者は受講料無料です)。詳細についてはこちらをご覧ください。今回は登壇するZFジャパン社長の多田直純氏のインタビューの一部をお届けします(Qは聞き手の質問)。 多田さんはドイツのボッシュや中国の寧徳時代新能源科技(CATL)でマネジメント経験があり、現在はZFジャパン社長として自動車サプライヤーに精通しています。Q:今のEV市場の状況をどのように見ていますか。 ZFジャパン社長の多田直純氏(以下、多田氏):中国では、今年から来年にかけて電池の生産量が急激に伸びていきそうな勢いです。それから考えると市場にEVが出始めるのが、2022年や23年ぐらいになりそうです。おそらく3〜4年前の17年や18年ぐらいに生産設備への投資計画を考え始めたと思います。 その頃の17年に私はCATLに入りました。そのときは欧州や日本の自動車メーカーが、CATLに何度も足を運んでいたときです。CATLの本社がある寧徳(ニンドゥ)にあるワンダプラザホテルにいつも泊まっていたんですけど、そこには欧州の自動車メーカーの人たちが毎日いましたね。 Q:そのときには実際、自動車メーカーとCATLはどのような交渉をしていたのですか。 多田氏:日本の自動車メーカーは、電池の供給量の約束をしてほしかった。生産量の確保のために動いていましたね。当時、日本の自動車メーカーは日本の電池メーカーと距離を取り始めていました。 (多田 直純氏の略歴はリンク先参照」 Q:その頃には技術面や品質面の課題はクリアになっていたのですか。 多田氏:当時、日本の自動車メーカーは自分たちの基準を製品に反映しようとしていました。プラットホーム(車台)の開発に5年以上かかるような話を持ってくるのに対し、中国は非常に短い開発期間で対応するという話をしました。逆にCATLの方に日本の自動車メーカーの品質の高さやノウハウを植え付けるような話をしながら、ウイン・ウインの関係を築くようにしました。 Q:欧州勢と日本勢のアプローチの仕方は違ったのですか。 多田氏:違いますね。欧州の顧客たちは切り替えが早かったです。というのは、欧州顧客の最初の新エネルギー車(NEV)は、中国限定だったのですよ。スペックも中国限定とし、そのときに欧州の顧客が開発プロセスや品質プロセスをCATLに教えて、CATLはそれを勉強していきました。その後、中国のスペックからグローバルのスペックに持っていく過程には時間をかけていました』、「欧州顧客の最初の新エネルギー車(NEV)は、中国限定だったのですよ。スペックも中国限定とし、そのときに欧州の顧客が開発プロセスや品質プロセスをCATLに教えて、CATLはそれを勉強」、「その後、中国のスペックからグローバルのスペックに持っていく過程には時間をかけていました」、「中国限定」でやるとは急いでやるのは上手いやり方だ。
・『日本と欧州の自動車メーカーで2年ぐらいのギャップがあった  ドイツ勢はいち早くEVを商品化することを目的とし、CATLと付き合っていたのでしょうか。 多田氏:日本の顧客は、中国における電池の開発能力の高さや開発者の質、開発スピードの速さなどを見て、CATLと組まないと自分たちは中国で成功しないということに気付いたんだと思います。欧州の自動車メーカーは、もっと早いうちにそれが分かっていたのかもしれません。欧州の自動車メーカーと日本の自動車メーカーでは電池の使いこなしという点で、当時は2年ぐらいのギャップがあったように感じていました。 Q:そもそも多田さんはどのような経緯で、CATLの日本法人トップになったのですか。 多田氏:前の会社を辞めた後にヘッドハンターから電話がかかってきて、それで「来いひんか」という話があり、何回かCATLの幹部の人と電話でやりとりした後に本社に行きました。 今はCATL本社としてすごい立派なビルがあるんですけど、それもできていない頃です。小さなオフィスを借りてみんなが頑張ってやってはったときだったんですよ。まあ、こんなにみんな一生懸命やってエネルギーに満ちた会社を久しぶりに見たなと思って。 ロビンという創業者兼CEO(最高経営責任者)とも話をしたら、本当にどうやって日本のお客さんと仕事ができるやろう、どうやって教えてもらえるやろうとか言ってくれて、エネルギーに満ちた会社と幹部の人たちの気持ちとか熱意とかに感動して、入社を決めました。 Q:それがCATLの成長の原動力だったのですね。 多田氏:そうです。僕は中国の若いエンジニアたちのすごいエネルギーと向上心、まじめな勤務態度とか、それから多大な資本というのを見たときに、日本は負けると思いました。だからCATLにいたとき頭の中にずっとあったのは、このCATLと日本の自動車メーカーをつながないと、将来日本の自動車メーカーはえらいことになるんじゃないかということなんですよ』、「中国の若いエンジニアたちのすごいエネルギーと向上心、まじめな勤務態度とか、それから多大な資本というのを見たときに、日本は負けると思いました。だからCATLにいたとき頭の中にずっとあったのは、このCATLと日本の自動車メーカーをつながないと、将来日本の自動車メーカーはえらいことになるんじゃないかということなんですよ」、なるほど。
・『欧州と中国は似ている面がある  欧州はムービングゴールポストというか、勝手にゴールポストをつくるとか、ルールづくりで勝つ意識が強いように感じます。多田さんは欧州のルールづくりの在り方とか目標設定をどう受け止めていますか。 多田氏:あまり僕も詳しいことは分からないんですけど、最近の報道なんかを見ていたり、読んだりしていると、以前の中国と似ているなと思いました。以前、中国では自動車に関していろいろな規制を発表したり、優遇措置を出したりなど、本当に1週間ごとぐらいに新しいニュースが入ってくるような時期がありました。今は欧州がそんな感じがしますよね。ですので、印象としては欧州も中国と同じようになってきたというイメージを持っています。 欧州と中国は人権意識などで大きな違いがある一方で、意外に共通点があると感じます。米国はどちらかというと民間がイノベーションの主体になりますが、欧州はむしろ規制ベースで枠をはめてイノベーションを起こすという仕組みがあるように感じます。 多田氏:まさにそんな感じですね。あるいは逆に中国の市場を見据えた欧州自動車メーカーの電動化への動きということから考えると、欧州の政府と自動車メーカーは一緒に考えている印象も受けます。独ミュンヘン国際自動車ショーでもメルケル独首相が、ZFのブースを訪問し、弊社CEOのシャイダーと次世代のモビリティのソリューションについて議論されていました。(続きは、9月15日の日経ビジネスLIVE「電気自動車で日本は勝てるのか〜欧州の野望を読み解く」をご視聴ください)』、「電気自動車で日本は勝てるのか〜欧州の野望を読み解く」は、セミナーのPRなので紹介は省略。「欧州はむしろ規制ベースで枠をはめてイノベーションを起こすという仕組みがあるように感じます」、というのは「中国」のやり方に近い。このままでは、「CATL」と日本の自動車メーカーの格差は開く一方だ。

次に、10月10日付け東洋経済オンライン「課題山積でも「日本でEV普及が急加速できる」根拠電 力不足や充電渋滞は工夫すれば回避できる」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/461216
・『2050年のカーボンニュートラル  二酸化炭素排出量の実質ゼロ)に向けて、自動車業界も対応を迫られている。その主役と目されるのはEV(電気自動車)だが、普及に向けた課題もある。『週刊東洋経済』10月9日号は「EV産業革命」を特集。欧州を震源に巻き起こるカーボンニュートラルの動きに、トヨタ自動車を筆頭とした日本の自動車産業はどう対応していくのか。EMS(電子機器の受託製造サービス会社)世界最大手の台湾・鴻海精密工業や中国・ファーウェイといった異業種の参入により、車づくりはどう変わっていくのか。激動の自動車産業に迫る。 EVの価格の高さや品ぞろえの少なさ、充電インフラの不足などから日本でのEV普及は遅れている。また、日本は7割を火力発電に依存しているため、EVによるCO2削減効果への疑問やEV普及によって増える電力量を心配する声もある。こうしたEVに対する疑問や、普及に伴うさまざまな課題をどう解消していけばよいのだろうか。 脱炭素化を研究する櫻井啓一郎氏に聞いた(Qは聞き手の質問、Aは櫻井氏の回答)』、興味深そうだ。
・『電力不足に対応する時間は十分にある  Q:EVが普及すれば、電力不足になると心配する声があります。日本自動車工業会の会見で、豊田章男会長(トヨタ自動車社長)が「国内の乗用車がすべてEV化したら、夏の電力使用のピーク時に電力不足になる。解消には発電能力を10~15%増強しないといけない。これは原子力発電で10基、火力発電なら20基に相当する」と述べています。 A:国内の乗用車総保有台数約6200万台が全部EVに置き換わったとして、1年間に必要な電力を試算すると現在の日本の年間総発電量の約1割となる。 だが、問題はEVの普及によって増える電力量よりも、充電するタイミングが重なることだ。豊田会長の試算は、それを念頭に置いているのではないかと思う。 Q:約1割増える電力はまかなうことができる、と。 A:今すぐに新車販売をすべてEVに切り替えたとしても、約6200万台の乗用車をすべてEVに置き換えるのに15年かかる。その前に新車販売をすべてEVにするにも何年もかかる。対処する時間は十分にあるはずだ。 Q:そもそも日本は電力の約7割が火力発電由来です。EVに切り替えてCO2排出量は減るのでしょうか。 A:今の日本の電力構成を前提に見積もると、送電と充電のロスを考慮しても、EVのライフサイクル(製造時から廃棄時まで)全体でのCO2排出量はハイブリッド車(HV)と同程度になる。 ただ、日本が今後(再生エネルギーの比率を増やすなど)電力の(CO2の)低排出化を進めていけば、販売済みのEVのCO2排出量も減少していく。欧州やアメリカのカリフォルニアのようにすでに電力の低排出化が進んでいる地域では、現時点でもHVよりEVのほうが何割も低排出になっている。) Q:再エネは太陽光にしろ、風力にしろ、稼働が不安定という問題があります。 櫻井氏の略歴はリンク先参照) A:EVの蓄電能力を利用することで太陽光や風力を有効に活用できる。現時点でも太陽光による電力が余ることがある。今はその余った電力を捨てている。 一方、EVは大容量の電池を積んでいるが、どの時間帯でも約9割の車両は駐車されている。電力が余る時間帯に安くEVを充電し、電力需要が高いときにEVにためておいた電気を使うことで、捨てられるはずだった再エネ電力を有効活用できる。 そうすれば再エネ事業者の採算性が改善して需要ピーク時の電力コストを抑えられるため、EVを持たないユーザーにとってもプラスになる。何より国全体で再エネ電力を増やし、カーボンニュートラルへと近づくことができる。 EVと家とで電力を融通し合うV2H(ビークル・トゥー・ホーム)や、EVを電力系統全体で有効活用するV2G(ビークル・トゥー・グリッド)と呼ばれるシステムも期待できる。現在は高価だが、EV用の車載インバーター(モーターの回転速度を制御する装置)の活用で安価にできる余地がある』、「どの時間帯でも約9割の車両は駐車されている。電力が余る時間帯に安くEVを充電し、電力需要が高いときにEVにためておいた電気を使うことで、捨てられるはずだった再エネ電力を有効活用できる」、「国全体で再エネ電力を増やし、カーボンニュートラルへと近づくことができる」、なるほど。
・『カギは充電タイミングの分散  Q:充電のタイミングが集中する問題に対応できますか。電力逼迫時に一斉にEVが充電をすれば、停電が起きる懸念もあります。 A:ユーザーがEVを充電するタイミングについて何も対策をしないと、電力需要のピーク時に充電も集中し、必要な発電容量が増えてしまう。だが、EVの機能をフルに活用すれば、ピーク時の電力需要を下げることが可能だ。 例えば、夕方帰宅してすぐに自宅でEVを充電しようとすれば、住宅での電力需要が増えるタイミングと重なるのでよくない。帰宅してEVをコンセントにつないでもすぐに充電が開始されるのではなく、夜中に電力需要が下がってから自動的に充電を始められるようにしなくてはいけない。 実は、EVの多くには充電のタイミングをコントロールする機能が搭載されている。朝の7時に充電を終えるようにセットしておけば、残量から逆算して(電力需要の少ない)夜中に自動で充電を開始してくれる。こうした機能があることは、EVの保有者にもあまり知られていない。販売時点でこの機能をオンにしておくようにすると、充電の需要が集中するリスクの回避に有効だろう。 Q:消費者がEVの購入に消極的な理由として、充電インフラの不足もあります。 A:自宅での基礎充電と外出先での急速充電――この2つのインフラを整えなくてはいけない。ただし国全体の電力需給の観点からは、日常では基礎充電を使うようにして急速充電の利用は遠出をする際に絞るなど、補完的な位置づけにすべきだ。 基礎充電は先ほど述べたV2Hでメリットを出していく。職場には充電できる環境がまだ少ないので、その整備も必要になる。) Q:急速充電は補完的な位置づけだとしても、国内の急速充電器はまだ少なく、ガソリンの給油に比べると時間がかかります。EVが普及すれば、充電待ちの行列ができるのではないでしょうか。 A:海外では150~400キロワットと高出力な充電器を多数設置するインフラ整備が進められており、休憩時間中に充電するだけで遠出が可能になりつつある。対して、日本の高速道路には出力が最大90キロワットまでの充電器しか設置されていない。基数も少なく、充電待ちも長くなりがちだ。 ただ、EVの充電はガソリン車の給油よりも便利な点がある。EVならコンセントにつないでから、その場を離れて用事を済ませることができる。トイレに行ってもいいし、食事をしてもいい。タバコだって吸える。夏場ならエアコンをかけて車内で待っていてもいい。ガソリン車は給油中に車を離れにくいので、用事を済ませてから給油しないといけない。 また、急速充電器そのものが進化しているため充電時間は短くなっている。ガソリンなら給油にかかるのが約3分としても、代金を払ったりしていればトータルでは5分くらいはかかるものだ。EVの充電なら充電の終了と同時に支払いまで自動でできる。さらに急速充電が進化すれば、充電時間の長さはそこまで気にならなくなるのではないか。 業務用の車両などでは無線充電の利用も考えられており、すでに規格化も済んでいる。) Q:こうしたインフラ整備には多額のコストがかかり、一方で収入は限られます。民間企業がきちんとしたビジネスモデルを描けるのでしょうか。 A:EVは猛烈な勢いで価格低下が進んでいるため、車単体で儲けるのは難しくなるかもしれない。安くなったEVを活用してどんなビジネスを展開するかが重要になるのではないか。 EVと自動運転を組み合わせた運送業、家の電力とEVを組み合わせたV2Hのサービスなど、EVを活用して業界の垣根を超えたサービスを考えていくことになる。 急速充電器はこうした新しいビジネス候補の1つになるだろう。実際、テスラは自前で急速充電器「スーパーチャージャー」を整備して顧客サービスの強みにしている。最近は他メーカーに充電網を開放するという話もあるが、その場合はテスラに巨額の収入をもたらすとも言われている』、「EVの多くには充電のタイミングをコントロールする機能が搭載されている。朝の7時に充電を終えるようにセットしておけば、残量から逆算して(電力需要の少ない)夜中に自動で充電を開始してくれる」、便利になったものだ。「海外では150~400キロワットと高出力な充電器を多数設置するインフラ整備が進められており、休憩時間中に充電するだけで遠出が可能になりつつある。対して、日本の高速道路には出力が最大90キロワットまでの充電器しか設置」、日本でも「高出力な充電器」を設置すべきだ。
・『欧州は充電網に対する民間投資を呼び込めている  欧州では先を争うように事業者が急速充電器を整備している。ユーザーは契約している事業者なら安く充電できるが、契約外の事業者だと高い。事業者は携帯電話のローミングにも似たこの商売で競っており、よい充電器の設置場所は取り合いになっている。充電網に対する民間投資を呼び込めているといえる。 EVの電力が余っているときに系統につないで電力会社に売るといった商売もあるかもしれない。周辺サービスを含めて今から取り組んでいくことが大事ではないか。 Q:EVシフトが進むと、雇用への打撃は避けられません。 A:今後EVの価格が安くなって充電環境も整うと、EVがメジャーになると見られている。すでに、ノルウェーなどの国では実証されていることだ。 ただ、EVは部品点数が少ないうえに車両価格も下がっていくため、生産台数あたりの雇用も減ると見られている。 しかも、各国が巨額の支援を行い、コスト・規模・技術のすべてにおいて激しく競い合っている。欧州は中国などへの対抗を念頭に、域内での生産・雇用を確保するように動いている。アメリカも同じ。EVをあきらめることは、自動車産業をあきらめると同義だと捉えられている。 EVが普及すると、どのみち産業構造も変わらざるをえず、その変化の規模も大きくなるはずだ。それが日本も含め、各国の自動車業界が政府への支援を求める理由になっている。国全体でこの課題を認識しておく必要があるのではないか』、「政府の支援」は何らかの形で必要なのだろうが、「支援」は最小限に留めるべきだろう。
・『課題を解決することがビジネスチャンスになる  Q:急速充電が進化すれば、短時間に大量の電力が必要です。電力システムへの負荷が大きく、対応するには多額の設備投資が必要になります。 A:そのとおり。例えば、東名高速道路の海老名サービスエリアには現在、上り下りのそれぞれにガソリンの給油機が9台ある。そこで1時間に給油する台数や給油量と同じだけEVを急速充電しようとすれば、おそらく鉄塔を使うような送電線を追加しないといけない。高速道路事業者がそこまで投資をするのは難しいだろう。 サービスエリアでも電力需給が逼迫する時間、急速充電が混雑する時間などで充電料金を高くすることが考えられる。ただ、サービスエリアに太陽光発電や蓄電池を設置すれば、送電線の容量を減らすことができる。投資額は増えるが非常用の電源にもなり、災害対策としても意味がある。いずれにしろ課題があれば、それを解決することがビジネスチャンスになる』、「東名高速道路の海老名サービスエリアには現在、上り下りのそれぞれにガソリンの給油機が9台ある。そこで1時間に給油する台数や給油量と同じだけEVを急速充電しようとすれば、おそらく鉄塔を使うような送電線を追加しないといけない」、「太陽光発電や蓄電池を設置すれば、送電線の容量を減らすことができる」、充電ネットワークの設計も重要なようだ。

第三に、11月23日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した法政大学大学院教授の真壁昭夫氏による「いすゞのEVトラックが自動車産業と日本経済に与える、侮れないインパクト」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/288400
・『いす電動ゞが化関連技術の開発に加え、販売戦略を強化して、よりスピーディーに電気自動車(EV)トラックの創出に取り組むことを期待したい。口で言うほど容易なことではないが、いすゞが進めるEVトラック戦略がわが国の自動車産業と経済に与える潜在的なインパクトは大きいはずだ』、「EVトラック」とは興味深そうだ。
・『いすゞのEVトラックが自動車産業の巻き返しにつながる  現在、トラック・バスメーカーのいすゞ自動車は、電気自動車(EV)のトラックの量産を目指している。いすゞは、航続距離の短さというEVトラックの課題を克服する技術的なブレークスルーの実現にめどをつけたようだ。それは、ハイブリッド車(HV)技術を重視し、結果としてEVシフトへの対応が遅れたわが国自動車産業の巻き返しにつながる可能性を秘めている。 わが国にとって、自動車産業は経済成長を支える最重要の産業だ。言い換えれば、日本経済の自動車依存度は高い。今夏に東南アジアで新型コロナウイルス感染が再拡大したことで、車載半導体の生産が減少した。その結果、9~10月にかけてわが国の自動車生産と販売は大きく減少した。それは7~9月期のわが国GDP(国内総生産)がマイナス成長に陥った主たる要因だ。 世界全体で今後、商用車と乗用車の両分野でEV化は加速するだろう。わが国の自動車産業は、EVシフトの加速という世界経済の環境変化に、より高い集中力を持って対応しなければならない。EVトラック分野でのいすゞの新しい取り組みは、わが国自動車産業、さらに経済の成長を支える重要な要素といえる』、その通りだ。
・『EVトラック製造技術のブレークスルーへの期待  2022年からいすゞはEVトラックの量産を開始する模様だ。背景には、航続距離や積載量を向上させる技術的なブレークスルーを実現したことがあるはずだ。 EVトラックには、航続距離が短いという致命的な欠点がある。今年に入って物流業界では、国内のスタートアップ企業が設計と開発を行い、中国のEVメーカーが受託生産を行う小型トラックの導入が発表された。それらは1回の充電で200~300キロメートル走行する。積載量も小さい。 つまり、物流の集配拠点から最終配達先までの「ラストワンマイル」を埋めるための、近距離移動を念頭に開発されている。逆に言えば、EVトラック分野で低価格と、航続距離や積載量を引き上げる「両立」が難しい。 EVトラックの課題を克服するために、各国自動車メーカーは事業運営体制の強化を一段と重視し始めた。独ダイムラーはトラック部門(ダイムラー・トラック)を分離して上場させる予定だ。ダイムラー・トラックは経営体力を強化して、より効率的にEVトラック関連技術の開発と向上に集中する意向だ。 米国では11月10日、EVピックアップトラックを生産するリヴィアンが米ナスダック市場に上場し、当日の終値ベースの時価総額はGMと肩を並べた。 競争が激化する中でいすゞは2~3トンクラスのEVトラック量産を目指す。物流に加えて引っ越しでの利用も想定しているという。 引っ越しは短距離移動ばかりとは限らない。詳細は今後の展開を確認する必要があるが、いすゞは中国メーカーが手掛ける低価格、近距離での利用目的とは異なり、ある程度の長い距離を相応の量のモノを積んで走ることのできるEVトラック技術の実用化にめどをつけた可能性が高い。 さらに、報道によると、1500種類の用途に対応できるプラットフォーム(車体)も開発された。かなりのスピード感を持って、いすゞはこれまでになかったEVトラックの量産体制を確立しつつあるとみてよいだろう』、「ある程度の長い距離を相応の量のモノを積んで走ることのできるEVトラック技術の実用化にめどをつけた可能性が高い・・・1500種類の用途に対応できるプラットフォーム(車体)も開発」、かなり本格的な「トラック」のようだ。
・『EVで後塵を拝す状況が続けば自動車産業の国際競争力は低下  いすゞのEVトラック生産は、わが国経済にとって重要だ。産業構造面から見た場合、わが国の経済は「自動車一本足打法」とやゆされるほど自動車に依存している。 1990年代初頭の資産バブル崩壊後、わが国経済は長期停滞に陥った。その中で経済を下支えしたのが自動車産業だった。特に、ハイブリッド自動車(HV)のイノベーションはわが国自動車産業を世界トップの地位に押し上げる原動力だった。 しかし、HVに続く新しい商品が創出できなかった。自動車産業への経済的依存度は高まった。2021年7~9月期、米国とユーロ圏の実質GDP成長率がプラスだったのに対して、わが国の成長率は前期比年率で3.0%のマイナスだった。国内の感染再拡大に加え、東南アジアでの感染再拡大が自動車部品の供給を制約し、自動車生産と販売が減少した影響は大きい。 また、わが国自動車産業のEVシフトへの対応は遅れている。企業が本拠地を置く国ごとにEV販売シェアを見ると、ドイツが28%、中国が27%、米国が20%程度であるのに対して、わが国は約5%にとどまる。企業別に見ると、EV販売トップはテスラであり、わが国の自動車メーカーはトップ10にランクインしていない。本邦自動車メーカーのHV重視姿勢は強い。 中長期で考えると、EVで後塵を拝す状況が続けば自動車産業の国際競争力は低下し、経済にも打撃だ。わが国自動車メーカーが高いシェアを維持してきたインドネシアなどの東南アジア新興国地域では、脱炭素と経済成長の加速のために国策としてEV生産の強化が重視され、韓国、台湾、中国、ドイツなどの企業が直接投資を増やしている。東南アジアの自動車市場で日系自動車メーカーのシェアが低下する可能性は軽視できない。 わが国では自動車に続く移動手段として、国を挙げて取り組んだ旅客航空機の開発も凍結された。米国などでは航空機技術と自動車技術を結合して新しいモビリティーの創造を目指している。いすゞのEVトラック技術は、わが国経済の成長力強化に欠かせない』、「EV販売シェアを見ると、ドイツが28%、中国が27%、米国が20%程度であるのに対して、わが国は約5%にとどまる」、確かに「日本」の低さが目立つ。
・『潜在的なインパクトは大きい! いすゞ、フロントランナーへの期待  今後、いすゞには世界のEVトラック、バス市場のフロントランナーになってもらいたい。いすゞが競合相手に先駆けてより航続距離の長いEVトラック、バスなどの製造技術を創出することは、わが国自動車産業がEV分野での出遅れを取り戻すために不可欠な要素だ。 いすゞはトヨタを中心とする商用車のコンソーシアムに加わっている。その中で、よりオープンな姿勢でいすゞが新しい取り組みを増やすことは、わが国自動車産業全体の成長に寄与するだろう。 例えば、いすゞのEVトラック技術がコンソーシアム内の企業が持つ技術と新たに結合して、より航続距離の長いEV開発につながる可能性がある。航続距離の長いEVトラックやトレーラーの開発が加速すれば、商用車分野での自動運転技術などCASEへの取り組みも加速するはずだ。 それは自動車メーカーとITや高速通信、半導体など成長期待の先端分野の企業との連携の強化、それによる新しい需要創出につながる可能性を秘める。他方で、世界経済全体で脱炭素への取り組みは加速し、EVの生産工程で排出される温室効果ガスの削減や部品の再利用を支える技術の重要性も格段に高まる。 このように中長期的な展開を考えると、EVシフトが世界経済にもたらす波及需要創出への期待は高い。いすゞのEVトラック量産は、そうした需要をわが国の自動車産業が取り込む重要なステップになり得る。自動車という完成品レベルでの新しい取り組みは、わが国の素材や機械産業などにも新しい製造技術の実現をより強く促す。それは経済全体での新陳代謝の向上に欠かせない。 それくらいの展望を描きつつ、いすゞが電動化関連技術の開発に加え、販売戦略を強化して、よりスピーディーに新しいトラックの創出に取り組むことを期待したい。口で言うほど容易なことではないが、いすゞが進めるEVトラック戦略がわが国の自動車産業と経済に与える潜在的なインパクトは大きいはずだ』、私も「いすず」の「EVトラック戦略」に大いに期待したい。
タグ:電気自動車(EV) (その11)(EV電池の中国CATLを見て 日本の自動車産業の将来に危機感 沸騰・欧州EV(15)、課題山積でも「日本でEV普及が急加速できる」根拠電 力不足や充電渋滞は工夫すれば回避できる、いすゞのEVトラックが自動車産業と日本経済に与える 侮れないインパクト) 日経ビジネスオンライン 「EV電池の中国CATLを見て、日本の自動車産業の将来に危機感 沸騰・欧州EV(15)」 「欧州顧客の最初の新エネルギー車(NEV)は、中国限定だったのですよ。スペックも中国限定とし、そのときに欧州の顧客が開発プロセスや品質プロセスをCATLに教えて、CATLはそれを勉強」、「その後、中国のスペックからグローバルのスペックに持っていく過程には時間をかけていました」、「中国限定」でやるとは急いでやるのは上手いやり方だ。 「中国の若いエンジニアたちのすごいエネルギーと向上心、まじめな勤務態度とか、それから多大な資本というのを見たときに、日本は負けると思いました。だからCATLにいたとき頭の中にずっとあったのは、このCATLと日本の自動車メーカーをつながないと、将来日本の自動車メーカーはえらいことになるんじゃないかということなんですよ」、なるほど。 「電気自動車で日本は勝てるのか〜欧州の野望を読み解く」は、セミナーのPRなので紹介は省略。「欧州はむしろ規制ベースで枠をはめてイノベーションを起こすという仕組みがあるように感じます」、というのは「中国」のやり方に近い。このままでは、「CATL」と日本の自動車メーカーの格差は開く一方だ。 東洋経済オンライン「課題山積でも「日本でEV普及が急加速できる」根拠電 力不足や充電渋滞は工夫すれば回避できる」 「どの時間帯でも約9割の車両は駐車されている。電力が余る時間帯に安くEVを充電し、電力需要が高いときにEVにためておいた電気を使うことで、捨てられるはずだった再エネ電力を有効活用できる」、「国全体で再エネ電力を増やし、カーボンニュートラルへと近づくことができる」、なるほど。 「EVの多くには充電のタイミングをコントロールする機能が搭載されている。朝の7時に充電を終えるようにセットしておけば、残量から逆算して(電力需要の少ない)夜中に自動で充電を開始してくれる」、便利になったものだ。「海外では150~400キロワットと高出力な充電器を多数設置するインフラ整備が進められており、休憩時間中に充電するだけで遠出が可能になりつつある。対して、日本の高速道路には出力が最大90キロワットまでの充電器しか設置」、日本でも「高出力な充電器」を設置すべきだ。 「政府の支援」は何らかの形で必要なのだろうが、「支援」は最小限に留めるべきだろう。 「東名高速道路の海老名サービスエリアには現在、上り下りのそれぞれにガソリンの給油機が9台ある。そこで1時間に給油する台数や給油量と同じだけEVを急速充電しようとすれば、おそらく鉄塔を使うような送電線を追加しないといけない」、「太陽光発電や蓄電池を設置すれば、送電線の容量を減らすことができる」、充電ネットワークの設計も重要なようだ。 ダイヤモンド・オンライン 真壁昭夫 「いすゞのEVトラックが自動車産業と日本経済に与える、侮れないインパクト」 「EVトラック」とは興味深そうだ。 「ある程度の長い距離を相応の量のモノを積んで走ることのできるEVトラック技術の実用化にめどをつけた可能性が高い・・・1500種類の用途に対応できるプラットフォーム(車体)も開発」、かなり本格的な「トラック」のようだ。 「EV販売シェアを見ると、ドイツが28%、中国が27%、米国が20%程度であるのに対して、わが国は約5%にとどまる」、確かに「日本」の低さが目立つ。 私も「いすず」の「EVトラック戦略」に大いに期待したい。
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