SSブログ

M&A(一般)(その2)(日本製鉄・東京製綱問題(日本製鉄が東京製綱に振り上げた「拳」の威力 株式を買い増して「会長は退け」と詰め寄る、日鉄 東京製綱株を一部売却へ 敵対的TOBで3月に取得)、任天堂「中興の祖」の孫が相続資産599億円超を元手に海外ファンドと企業乗っ取り<上>、任天堂「中興の祖」の孫が相続資産600億円超を元手に海外ファンドと企業乗っ取り<下>) [企業経営]

M&A(一般)については、2019年12月27日に取上げた。今日は、(その2)(日本製鉄・東京製綱問題(日本製鉄が東京製綱に振り上げた「拳」の威力 株式を買い増して「会長は退け」と詰め寄る、日鉄 東京製綱株を一部売却へ 敵対的TOBで3月に取得)、任天堂「中興の祖」の孫が相続資産599億円超を元手に海外ファンドと企業乗っ取り<上>、任天堂「中興の祖」の孫が相続資産600億円超を元手に海外ファンドと企業乗っ取り<下>)である。

先ずは、本年2月21日付け東洋経済オンライン「日本製鉄が東京製綱に振り上げた「拳」の威力 株式を買い増して「会長は退け」と詰め寄る」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/412132
・『財界総理を輩出した“ザ・日本企業”が出資先に突如として拳を振り上げ、大きな注目を集めている。 日本製鉄は1月21日、ワイヤロープ国内最大手の東京製綱に対するTOB(株式公開買い付け)を発表した。TOB価格は前日終値に36.5%のプレミアムを付けた1500円で、出資比率を直前の9.9%から19.9%まで高める。経営権を握るわけでもなく、持ち分法適用にすらしない。ここだけ見るとよくある資本提携強化の取り組みと思われた。 だが、日本製鉄は公開買付届出書で、東京製綱の業績や財務の悪化を厳しく糾弾。その原因として「ガバナンス体制の不備」を指摘した。中でも、同社の田中重人会長の名前を挙げて、代表取締役の在任期間が約20年にも及ぶことを問題視。報道陣に対して「退任は必須」(日本製鉄)と言い切っている。まるで「モノ言う株主」になったかのようだ。 東京製綱はこのTOBに対して2月4日に「反対」意見を表明した。これにより、日本製鉄のアクションは「敵対的」なTOBとなった』、分かり難いTOBだ。
・『敵対的TOBは異例ではなくなった  かつての日本の企業社会では敵対的TOBへの拒否感が強く、株主の賛同を得られなかったため、事例もごくわずかだった。しかし、2019年には伊藤忠商事がデサントに仕掛けるなど、大企業でも敵対的TOBが「タブー」ではなくなった。 そうした中、官営八幡製鐵所を源流に持つ、保守本流の本尊のような日本製鉄が敵対的TOBに乗り出したことは、日本の企業社会の変化を実感させる出来事だ。 艦船用のマニラ麻ロープの国産化を図るために東京製綱が創立されたのは1887年。「日本資本主義の父」と言われる渋沢栄一が創立に協力し、初代の会長にも就いた老舗企業だ。ロープの素材が鉄に移る中、日本製鉄の前身である富士製鐵が1970年に資本参加した。 日本製鉄は長らく約7%を保有する筆頭株主(信託口を除く)であり、東京製綱にとって原料の主要な主供給元でもある。また、研究開発でもパートナーという密接な関係を築いてきた。田中会長は日本製鉄出身で、歴代のトップや取締役には日本製鉄出身者が少なくない。 2017年以降、日本製鉄は継続的に東京製綱の経営陣と面談を行って経営改善を促してきたが、危機意識もなく改善されなかったと主張する。2017年からは株主総会で取締役の選任議案に反対票を投じてきたとも公開買付届出書に記されている。2020年9月下旬からコミットメントを高めて経営体制の再構築を実現する目的で、株式の追加取得の検討を始めた。TOBについて、日本製鉄は「事前協議は行っていない」としており、敵対的となるのは覚悟の上だった。 長年のパートナーからのTOBの通告を受け、東京製綱は「何らの連絡もなく一方的かつ突然に行われたもの」と反発を隠さなかった。1月27日にはTOBが東京製綱の企業価値向上や株主全体の利益に資するのか不明として「留保」の意見を表明。同時に日本製鉄にいくつかの質問を行った。この質問に対して日本製鉄は2月3日に回答書を提出。その内容を精査した東京製綱があらためて「反対」を表明したのだ』、伝統的大企業にとっては異例の「敵対的TOB」になった訳だ。
・『東京製綱が反対する最大の理由  東京製綱が今回のTOBに反対する最大の理由は「利益相反」にある。日本製鉄は東京製綱の最大の原材料サプライヤーだが、日本製鉄はTOB成立後も持ち分法適用会社にしないため、東京製綱の業績が日本製鉄の業績には反映されない。「当社の企業価値及び株主共同の利益よりも、サプライヤーとしての公開買付者の利益を追求する恐れが将来に渡って継続する」(東京製綱の2月4日リリース)。 東京製綱はこれまで中国や韓国の線材の使用拡大を模索してきた。顧客の認証が必要になるため実績はわずかにとどまっているが、海外材という選択肢を持つことで日本製鉄から特別価格(海外材に見劣りしない価格)を引き出すことができた。近年、日本製鉄からの値上げ圧力が強まっており、海外材の顧客認証も急ピッチで進めていた。日本製鉄の出資比率が一段と高まると、こうした活動が阻害されて調達コストが上昇し、日本製鉄以外の株主の利益を損なうと懸念する。 また、東京製綱は鉄以外の新素材として炭素繊維を使ったケーブル事業(CFCC事業)を育成してきた。先行投資による赤字に耐えて、2020年11月にはアメリカ・バージニア州の大型土木プロジェクトで約40億円の受注に成功した。しかし、日本製鉄はこの事業を「失敗」と烙印を押す。東京製綱としては、日本製鉄による「脱鉄」の動きを阻害することが狙いと映ってもおかしくない。) ただし、日本製鉄の指摘にあるように東京製綱の業績が低迷していることは事実だ。2020年3月期までの5カ年の経営計画では、売上高900億円、営業利益78億円を掲げたが、実際には売上高630億円、営業利益は3億円と大幅に未達だった。しかも、最終利益は24億円の赤字である。 そうした中、田中会長は約20年も代表取締役に居続けている。2010年に田中氏が会長に就いて以降、現在の浅野正也氏で4人目の社長である。「ガバナンス体制の機能不全、とりわけ、社外取締役の経営陣に対する評価や、指名・再任のプロセスが適切に機能していない」(日本製鉄)という指摘は当てはまる』、「田中会長は約20年も代表取締役に居続けている。2010年に田中氏が会長に就いて以降、現在の浅野正也氏で4人目の社長である」、どう考えても長過ぎるようだ。
・『日本製鉄も4000億円超の赤字  東京製綱を批判する日本製鉄の業況はどうなのか。2018年3月期までの3カ年の中期経営計画で掲げたROE10%の目標は6%台にとどまった。2021年3月期までの3カ年中計はコロナ禍もあって達成は不可能だ。2020年3月期には4315億円の最終赤字を計上しており、2021年3月期も1200億円の連続での最終赤字を見込んでいる。 こうした状況について、日本製鉄の役員は、「2020年3月期は大赤字だったが、減損して構造改革をしている。コロナがなければ今年度から黒字になっていた。東京製綱と同じにはされたくない。大事なのはガバナンスを利かせているか。(東京製綱は)20年以上経営が変わっておらず、結果も出ていない」と主張する いずれにしても、他社に対して株主として経営改善を厳しく要求する以上、今後は自分たちの経営について厳しく責任を問われることになるのは間違いない。 「敵対的」というのはTOBをされる側の経営陣にとっての理屈で、企業価値や株主にとって敵対的であるとは限らない。株主としてモノを言う姿勢も、それ自体は高く評価されるべきだ。しかし、今回の日本製鉄のTOBには首をかしげたくなる点がいくつかある。 まず、東京製綱のガバナンスの問題として、CFCC事業(炭素繊維を使ったケーブル事業)を営む子会社が会社法上の公告を行っていないことを指摘している。この事実は容認されるべきことではないが、上場会社の子会社で必要な公告を行っていない会社は少なくない。それを日本製鉄は公開買付届出書で「財務状況・経営状況の隠蔽をする意図を有しているのではないかとの疑念を有さざるを得ない」とまで書く。 日本製鉄の公開買付届出書には明らかなミスリードもある。2017年3月期以降に営業利益が連続して前年を割り込み、減益傾向が続いていると繰り返し、2017年6月の株主総会から取締役の選任議案に反対票を投じてきたと記している。だが、東京製綱が質問状で2013年6月から反対していたと指摘すると、日本製鉄は「2017年以前にも総合的に勘案し、一部に反対していた」と答えている』、「日本製鉄」にとっては、さほど重要性もないので、いい加減にみているのであれば、大問題だ。
・『会長再任の「反対時期」に誤り  実は反対の時期について、日本製鉄と東京製綱の両方に誤りがある。記者が調べて東京製綱に確認したところでは、日本製鉄が田中会長の取締役選任議案に反対するようになったのは2012年6月の株主総会からだった。2012年3月期と2013年3月期はスチールコード事業の悪化で最終赤字に沈んでおり、株主として経営責任を追及してもおかしくはない。ただ、日本製鉄は最高益となった2014年3月期、営業利益率が6%を越えた2015年3月期も一貫して田中会長の再任に反対している。 日本製鉄の言行不一致はほかにもある。リリースではガバナンス不全を表す事例として、在任期間が約10年に及ぶ社外取締役がいることも挙げている。しかし、日本製鉄が在任10年になる増渕稔氏(日本銀行出身)に反対票を入れたことはない。反対しているのはなぜか2017年6月に就任した駒井正義氏(三井物産出身)に対してだ。 もともと「日本製鉄ともあろう会社が、なぜ東京製綱のような小さな会社に対してあそこまでの態度を取るのか」(金融関係者)という疑問がある。そのうえ、公開買付届出書にちぐはくな点が散見されることから、「ガバナンス不全は口実にすぎず、海外材の調達拡大や脱鉄の動きに対する見せしめではないか」(業界関係者)といった声も上がる。 TOB成立後、東京製綱への原料供給で日本製鉄が有利となるようなことはないのかと日本製鉄役員に聞くと、「(東京製綱の複数調達の模索を)問題にしていない。ガバナンスが明らかにおかしいからだ」と語気を強めて答えた。 東京製綱の株価は足元で1450円前後で推移しておりTOB価格(1500円)を下回る。これはTOBでの買い付け上限が10%とわずかであり、上限を超える応募は按分比例されてしまうため。TOBの期間は3月8日までだが、目標とする19.9%への出資比率引き上げは成立の確立が高い。 東京製綱側もそうした状況を十分に理解している。そのうえで「反対」を表明したのは、ほかの株主との利益相反のおそれを無視すれば、株主代表訴訟を起こされるリスクがあるからだ。公然と反対することで「調達の自由度」を約束させたい狙いがあるともいえる』、なるほど。
・『真っ向からケンカを続けられない  もとより東京製綱はワイヤロープに使う線材の仕入の90%超を日本製鉄に依存しており、真っ向からケンカができる関係にはない。日本製鉄が振り上げた拳の威力は大きい。TOB成立後の焦点は、東京製綱の田中会長の進退だろう。同社の取締役の任期は1年であり、2021年6月の株主総会でどのような会社議案を出すかが注目される。 にじり寄る日本製鉄も課題はある。「再建を支援することができる存在は(中略)当社を除いて他にいない」とする一方、東京製綱の独立性を維持する考えも示しており、どう両立させるかを問われるからだ。TOBが成立しても19.9%しか出資しない以上、他の株主の利益相反となるような行動は取れない。かといって、東京製綱の再建支援を通して自社の利益を高められなければ、今度は日本製鉄の経営陣が株主から責任を問われるおそれがある。 株式の持ち合いによって経営にお互いが口出しをしてこなかったことが、日本企業の経営に規律が働かない一因だった。そうした中、日本製鉄がモノ言う株主として動いた意味は大きい。数年後、「ぬるま湯の時代」が終わった分水嶺の出来事として、今回の敵対的TOBを振り返ることになるかもしれない』、このTOB自体は成立したが、その後、事態は次の記事のように、思いもかけない方向に展開した。

次に、8月4日付け日経新聞「日鉄、東京製綱株を一部売却へ 敵対的TOBで3月に取得」を紹介しよう。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC037SI0T00C21A8000000/
・『日本製鉄は3日、敵対的なTOBを経て3月に出資比率を19.9%に高めた東京製綱について、保有株の一部を売却すると発表。公正取引委員会が両社について一体化して事業を進める「結合関係が成立」と指摘。競争維持のために事業活動が制限される可能性が生じたため、出資比率を10%以下に引き下げる。日鉄は保有する約324万株の東京製綱株のうち約163万株を売却。東京製綱の株価が、TOBの買い付け価格である1株1500円を上回る時期などをみて実施。3日の終値は1115円。日鉄は1月、経営不振やガバナンス不全を理由に、東京製綱への出資比率を9.9%から19.9%に高めるTOBの実施を表明。東京製綱の当時の経営陣は反対したが、3月にTOBが成立。その後、全取締役8人が退任するなど経営体制が大幅に見直された。日鉄は東京製綱を持ち分法適用の対象にせず、経営の独立が保たれているという立場。ただ公取委の判断を受けて、独占禁止法の運用指針で結合関係を判断する条件の一つになっている議決権の保有率を10%以下にする売却完了までは議決権行使を10%以下に抑えることを公取委に伝えた。日鉄の石原秀威常務執行役員は「筆頭株主、またサプライヤーとして支えていくことに変わりはない」と話した。日鉄は東京製綱の経営体制の見直しが実現し、TOBの目的は達したとの立場だ。また東京製綱は「本件にかかわらず、企業価値向上の早期実現を目指し、鋭意取り組んでいく」とのコメントを発表した』、「独占禁止法の運用指針で結合関係を判断する条件の一つになっている議決権の保有率を10%以下にする売却完了までは議決権行使を10%以下に抑える」、これでは結局、「日鉄」の「保有比率」はTOB前の「9.9%」に戻り、TOB騒動は単に田中前会長に退いてもらっただけということになる。「東京製綱」も独禁法から反対していれば、もっと恰好がついただろう。

第三に、7月6日付け日刊ゲンダイ「任天堂「中興の祖」の孫が相続資産599億円超を元手に海外ファンドと企業乗っ取り<上>」を紹介しよう。
・『ファミコンを開発し、任天堂(本社・京都府)を世界的企業に成長させて「中興の祖」と呼ばれた山内溥氏(2013年没、享年85)。その孫の万丈氏(28歳)は溥氏から相続した任天堂株を元手に「アクティビスト・ファンド」として企業乗っ取りを仕掛けていた』、興味深そうだ。
・『「山内溥の意志を受け継ぎ」と言うものの  万丈氏は早稲田大学の在学中に時価600億円に相当する溥氏の任天堂株約3%を相続。大学卒業後の16年に博報堂に入社するも、19年3月には退社。同年6月に相続財産の運用会社「ヤマウチ・ナンバーテン・ファミリーオフィス」(以下、ファミリーオフィス)を設立した。 相続税対策のため万丈氏の株の一部を任天堂が自社株買いしたが、同社株はその頃から5倍近く上昇。関係者によるとファミリーオフィスの運用資産は1000億円を超えているという。 ファミリーオフィスはレトロなテレビゲーム画面のような自社ホームページを開設しており、「任天堂中興の祖、山内溥の意志を受け継ぎ、日本がもう一度、挑戦に満ちた国に生まれ変わるために先見性とユーザー目線の思考を持ちながら、私たちは社会に貢献し続ける」などと理念を掲げている。経営陣にはゴールドマンサックス証券など外資系投資会社、邦銀出身者が名を連ねており、何らかの金融ビジネスを営んでいる雰囲気だが、これまで具体的な活動は不透明だった』、「ファミリーオフィス」は情報開示義務がないので、まさに「不透明」だ。
・『相続マネーはシンガポールのファンドに注ぎ込まれた  ところが相続財産は思わぬ目的に使われていたことがわかった。昨今、日本の株式市場で跋扈する「アクティビスト・ファンド」である。 「アクティビスト・ファンド」とは、本業で営々と貯め込んだ現金を眠らせていたり、本来の価値よりも株価が低迷している上場会社の株を買い集め、配当金や自社株買いを求めたり、改善策の提案や役員の送り込みなどを積極的に行う「物言う株主」だ。要求が聞き入れられない場合は、株主総会で経営陣の退陣を求めることも辞さない。 ファミリーオフィスの資金は、そんなアクティビストファンドの中でも、乗っ取り屋として最近、暴れまわっている「アスリード・キャピタル」(拠点はシンガポール)というファンドに注ぎ込まれていた。同ファンドは、「ハゲタカ・ファンド」と恐れられる米国の資産運用会社「ローン・スター」出身者によって運用されており、ファミリーオフィスの設立と同時期に、日本株投資を活発化させている』、なるほど。
・『石油関連企業がターゲットに  そんなアスリード・キャピタルから狙われたのが、ガソリンスタンド等に石油製品を販売している東証一部上場「富士興産」(本社・東京都)だ。石油製品販売という事業自体に真新しさはないが、同社は37億円ものキャッシュを貯め込んでおり、これに目を付けられた。 アスリード・キャピタルは昨年夏頃から富士興産株を買い集めると同時に、経営陣に面談を要請。しかし本業への関心は薄く、3回目の面談で早々にアスリード・キャピタルの支援によるマネジメント・バイ・アウト(MBO)での「非上場化」を求めてきたという。MBOは、株主を気にしない独立した経営をするため、会社経営陣が自社企業の株式買収をすること』、なるほど。
・『非上場化を要求の狙いは  アスリード・キャピタルの主張は富士興産の投資家向け開示資料に詳しい。次のようなものだ。 石油事業が頭打ちになる中、上場を維持したままではコストがかかるだけでなく、経営戦略の実行が難しいので非上場化し、貯め込んだ現金をアスリード・キャピタルと共同で投資に回していくことなどを提案してきたという。MBOによって非上場化すれば業績や配当要求など「市場の雑音」を排して大胆な事業ができる、というわけだ。 しかし経営戦略や改善案などの具体的な提案はなく、とにかく非上場化だけを勧めてきたという。富士興産の関係者は「経営の効率化や企業価値向上など抽象的な話ばかりで、アスリード・キャピタルが非上場化で何をしたかったのか最後まで分からなかった」と話す。そのため富士興産は非上場化の提案を拒否。アスリード・キャピタルは一転して、手持ちのキャッシュを使って効率の良い投資に回すか自社株買いを要求するようになったという。 手のひらを返し、「市場の雑音」の権化たるアクティビストとしての本性を露わにしたのだった。(つづく)』、「アクティビスト」は初めのうちはネコをかぶって、紳士的だが、「本性を露わにした」からが勝負のようだ。

第四に、7月7日付け日刊ゲンダイ「任天堂「中興の祖」の孫が相続資産600億円超を元手に海外ファンドと企業乗っ取り<下>」を紹介しよう。
・『任天堂を世界的企業に成長させて「中興の祖」と呼ばれた山内溥氏(2013年没、享年85)。その孫の万丈氏(28歳)は溥氏から任天堂株時価600億円(当時)という莫大な資産を相続した。万丈氏はこのカネでヤマウチ・ナンバー10・ファミリーオフィスを設立。海外ファンドの「アスリード・キャピタル」に資金提供し、日本企業買収を次々に仕掛けていたのだった』、「海外の黒目ファンド」の「日本企業買収」の実態とは興味深そうだ。
・『敵対的買収に踏み切るものの  要求が通らないことに業を煮やしたアスリード・キャピタルは今年4月末、富士興産に対して株式公開買い付け(TOB)による敵対的買収に踏み切った。 これに対し富士興産は6月24日の株主総会で、買収防衛策の導入と、対抗措置の一環として新株予約権の無償割当を行うとした。かりにアスリード・キャピタルが発行済み株式の大半を買い占めたとしても、新株予約権が行使されればアスリード・キャピタルの持ち分は減少してしまい、買収は叶わないことになった。 アスリード・キャピタルはこれらの差し止め請求を東京地方裁判所に提起していたが、株主総会で買収防衛策は可決され、東京地裁は差し止め請求を認めなかった。アスリード・キャピタルはこれを受け、7月まで期間を延長していたTOBを撤回すると見られている』、なるほど。
・『村上世彰氏への憧れでファミリーオフィスか  一体なぜ、万丈氏はアスリード・キャピタルのような過激なファンドに資金提供しているのだろうか。 関係者は、「万丈氏は、“村上ファンド”の村上世彰氏(61)のようなファンドマネージャーに憧れていた。村上氏は現在、外部の投資家から資金を集めるのではなく、ファミリーオフィスという形態をとっています。万丈氏もこれを真似たのではないでしょうか」という。 通常の投資ファンドは外部の投資家から資金の委託を受けているため、決められた期間に一定の利回りを出さなければいけない。巨額資金に見合う説明責任があるので、投資先や投資手法にも倫理性が求められる。その点、ファミリーオフィスは資産家一族の資産だけを運用するので、一般の投資ファンドがコンプライアンス上の観点などで尻込みする投資手法や投資案件に手を出すことができる。 活動実態が不透明なものも多く、最近では4月にファミリーオフィス形態をとっていた米ファンド「アルケゴス・キャピタル・マネジメント」が破綻し、取引相手だった野村ホールディングスなど大手金融機関に巨額の損失が生じ話題となった。 実は、アスリード・キャピタルが最初に富士興産のまとまった株式を取得した相手方は、村上氏の実の娘である野村絢氏(33)である可能性が高い。 ファミリーオフィスは万丈氏が住む六本木の高級マンション近くにオフィスがありながら、わざわざシンガポールに拠点を置くアスリード・キャピタルを通じて日本株投資を行っている。これも村上氏のスキームと似通っている。シンガポールに住む村上氏は、日本国内の資産を税金の安いシンガポールに移し、海外経由で日本に投資している。投資手法やスキームが似通っているのは、山内氏が“村上ファン”だからと思えてくる』、「通常の投資ファンドは外部の投資家から資金の委託を受けているため、決められた期間に一定の利回りを出さなければいけない。巨額資金に見合う説明責任があるので、投資先や投資手法にも倫理性が求められる。その点、ファミリーオフィスは資産家一族の資産だけを運用するので、一般の投資ファンドがコンプライアンス上の観点などで尻込みする投資手法や投資案件に手を出すことができる」、確かに「ファミリーオフィス」は弾力的な「運用」が可能なようだ。
・『アスリード・キャピタルの高い買い物  とはいえ、なぜ富士興産ではTOBという強硬手段を使っても非上場化にこだわったのだろうか。 アスリード・キャピタルが野村絢氏から富士興産株を取得した価格は499円。さらに年末年始にかけて、市場で500円~600円で買い集めていた。富士興産の株価は2月頃には1300円まで上昇しており、すでに十分に儲けが出ているように見える。 しかし4月にアスリード・キャピタルが実施したTOBの買付価格は1250円で、富士興産の1株当たりの純資産とほぼ同額。買収に成功したとしても割安とは言えない。 実は、アスリード・キャピタルと山内ファミリーオフィスが買収に失敗したのは2度目だ。 今年1月、ジャスダックに上場する財務会計システム会社「ジャパンシステム」が、香港の投資ファンド「ロングリーチ」によるTOBで非上場化を実施した際、これに嚙みついていた。山内氏らはジャパンシステムの社長を担ぎ、対抗MBOによる支援を表明。しかし結局、ロングリーチのTOBは成立した。すでにTOBに主要株主が賛同していたためだ。山内氏側は早々に撤退することになった。 「山内氏を前面に押し出したジャパンシステムで事実上失敗して、資金を預かる立場のアスリード・キャピタルには後がなかった。富士興産では多少割高な買い物になっても、実績を作りたかったのではないか」(富士興産関係者)という見方もある。 そんな山内氏側の事情があったとしても、株を買われる側の富士興産には一切関係もない迷惑な話であろう。 欧米流のアクティビストが跋扈する中、日本を代表する任天堂の創業家一族ということで、“国産アクティビスト”に市場も注目していたが、短期間に2度も買収に失敗。金融業界で「拙速なファンド」だったとの評判が立つのは必至と見られる。(おわり)』、「山内氏のファンド」が「短期間に2度も買収に失敗。金融業界で「拙速なファンド」だったとの評判が立つのは必至」、一旦、悪評が立っても盛り返し可能なのだろうか。
タグ:M&A(一般) (その2)(日本製鉄・東京製綱問題(日本製鉄が東京製綱に振り上げた「拳」の威力 株式を買い増して「会長は退け」と詰め寄る、日鉄 東京製綱株を一部売却へ 敵対的TOBで3月に取得)、任天堂「中興の祖」の孫が相続資産599億円超を元手に海外ファンドと企業乗っ取り<上>、任天堂「中興の祖」の孫が相続資産600億円超を元手に海外ファンドと企業乗っ取り<下>) 東洋経済オンライン「日本製鉄が東京製綱に振り上げた「拳」の威力 株式を買い増して「会長は退け」と詰め寄る」 分かり難いTOBだ。 伝統的大企業にとっては異例の「敵対的TOB」になった訳だ。 「田中会長は約20年も代表取締役に居続けている。2010年に田中氏が会長に就いて以降、現在の浅野正也氏で4人目の社長である」、どう考えても長過ぎるようだ。 「日本製鉄」にとっては、さほど重要性もないので、いい加減にみているのであれば、大問題だ。 このTOB自体は成立したが、その後、事態は次の記事のように、思いもかけない方向に展開した。 日経新聞 「日鉄、東京製綱株を一部売却へ 敵対的TOBで3月に取得」 「独占禁止法の運用指針で結合関係を判断する条件の一つになっている議決権の保有率を10%以下にする売却完了までは議決権行使を10%以下に抑える」、これでは結局、「日鉄」の「保有比率」はTOB前の「9.9%」に戻り、TOB騒動は単に田中前会長に退いてもらっただけということになる。「東京製綱」も独禁法から反対していれば、もっと恰好がついただろう。 日刊ゲンダイ 「任天堂「中興の祖」の孫が相続資産599億円超を元手に海外ファンドと企業乗っ取り<上>」 ファミリーオフィスの運用資産は1000億円を超えている 「ファミリーオフィス」は情報開示義務がないので、まさに「不透明」だ。 「アクティビスト」は初めのうちはネコをかぶって、紳士的だが、「本性を露わにした」からが勝負のようだ。 「任天堂「中興の祖」の孫が相続資産600億円超を元手に海外ファンドと企業乗っ取り<下>」 「海外ファンド」の「日本企業買収」の実態とは興味深そうだ。 「海外の黒目ファンド」の「日本企業買収」の実態とは興味深そうだ。 「通常の投資ファンドは外部の投資家から資金の委託を受けているため、決められた期間に一定の利回りを出さなければいけない。巨額資金に見合う説明責任があるので、投資先や投資手法にも倫理性が求められる。その点、ファミリーオフィスは資産家一族の資産だけを運用するので、一般の投資ファンドがコンプライアンス上の観点などで尻込みする投資手法や投資案件に手を出すことができる」、確かに「ファミリーオフィス」は弾力的な「運用」が可能なようだ。 「山内氏のファンド」が「短期間に2度も買収に失敗。金融業界で「拙速なファンド」だったとの評判が立つのは必至」、一旦、悪評が立っても盛り返し可能なのだろうか。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感