外国人問題(その6)(武蔵野市の住民投票条例で噴出した外国人投票権「陰謀論」、武蔵野市の住民投票条例案 なぜ否決されたのか?市長がこだわる「先進性」、アメリカ大使館が異例の警告「日本の警察」の疑い 多くの在日外国人が感じている「不当な扱い」) [社会]
外国人問題については、5月24日に取上げた。今日は、(その6)(武蔵野市の住民投票条例で噴出した外国人投票権「陰謀論」、武蔵野市の住民投票条例案 なぜ否決されたのか?市長がこだわる「先進性」、アメリカ大使館が異例の警告「日本の警察」の疑い 多くの在日外国人が感じている「不当な扱い」)である。
先ずは、12月17日付けNewsweek日本版が掲載した思想史研究社の藤崎剛人氏による「武蔵野市の住民投票条例で噴出した外国人投票権「陰謀論」を紹介しよう。
・『<住民投票に外国人の投票権を認めると、某国から移民が押し寄せて市が乗っ取られる、というあり得ない妄想より、外国人増加の実態を否定し続けた結果の分断の弊害を考えよ> 武蔵野市議会で「武蔵野市住民投票条例」が審議されている。ところが、この条例が現在、猛烈な反対運動に晒されている。条例案に3ヶ月以上市内に居住する18歳以上の外国籍住民も住民投票に投票権を与えると定められていたことが、その理由だ。市の内外から反対派が市役所や吉祥寺駅前に集結し、デモ行進が行われるなど激しい示威活動が続けられている。条例の採決は21日の本会議で行われる見込みだが、その成否は予断を許さない』、「本会議」では反対多数で否決された。
・『住民投票での外国人投票権は珍しくはない 住民投票で外国人の投票権を認めている自治体は、全国で40以上存在する。その多くは永住権獲得が条件だが、武蔵野市の条例案のように比較的短期間の居住で投票権が認められている自治体も、大阪府豊中市、神奈川県逗子市という先例がある。もし武蔵野市で可決されれば3例目、都内では初となる。 外国人参政権に関する議論は国政から地方自治まで様々なレベルで存在するが、最高裁は地方自治体の参政権に関しては憲法上否定していない。自治体の住民投票条例で外国籍住民に投票権を与えることはトレンドとなりつつある。 その理由の一つは、自治体の住民投票条例には法的拘束力がなく、首長や議会はそれをあくまで「尊重する義務」があるだけだからだろう。大阪維新のように、二度の住民投票での否決を無視してなお都構想の実現を行おうとする政治勢力もある。武蔵野市も、この投票権は参政権ではなく、あくまで条例についての住民の意思表示であるという立場だ。 地方自治は「民主主義の学校」とも呼ばれるように、より身近で具体的な生活の問題が扱われることが多い。そして地域の生活者に日本人も外国人もない。それぞれが協力して生活の質を向上させていかなければならないところ、外国籍の住民にのみ意思表示の権利を与えなくてよいということにはならない』、「地域の生活者に日本人も外国人もない。それぞれが協力して生活の質を向上させていかなければならない」、その通りだ。
・『反対運動の中にみられる陰謀論 武蔵野市の条例案については、国会議員も含め市内外からの反対も多い。たとえ住民投票レベルであれ、外国人参政権に関する抵抗感は根強くある。その抵抗感が陰謀論にまで達してしまっている場合もある。典型的な陰謀論的反応としては、ある特定の国が大量の移民を武蔵野市に対して送り込み、市を乗っ取るのではないか、というものがある。 少し考えてみれば、これがどれだけ非合理的な思考かが分かるはずだ。武蔵野市を乗っ取るためには、少なくとも数万人の成人を送り込まなくてはならない。また、少なくとも3ヶ月は市の住民でいられるような在留資格および生活資金を人数分準備しなければならない。しかもそこまでやって出来ることは、法的強制力をもたない住民投票での意見表明なのだ。) 外国人参政権の話題になると、即座に「国(自治体)が乗っ取られる」という妄想のような意見が寄せられる。しかしそのような意見は、大抵が上述のような実行手段の困難さが全く考慮されていない。また、先行して住民投票条例を可決した自治体でも、そのような現象が起こっていないということからも、地域を乗っ取られるという思考には根拠はないのだ』、「陰謀論的反応」としては、自民党の国会議員のなかにはこれに乗って住民を煽っている悪質な人物もいる。
・『ホラー小説化する外国人嫌悪 一般論として外国人参政権は自明な権利とはいえないので、その拡大には個別の議論が必要だ。しかし外国人参政権を「外国人に国を乗っ取られる」という理由で一律に否定するような外国人嫌悪(ゼノフォビア)は、マジョリティの過剰な防衛本能に由来すると考えられる。 クトゥルー神話で有名なホラー作家ラブクラフトは、人種差別主義者であったことが知られている。彼の小説に登場する半魚人のようなグロテスクな生き物たちは、20世紀前半のアメリカに大量に流入してきた移民への恐怖がモチーフになっていると読み解くこともできる。マジョリティにとって外国人はホラーであり、そのような心理が前提にあるから、「国を乗っ取られる」というようなホラー小説じみた非合理的な妄想も直感的に受け入れることができてしまうのだ。 しかし現実は、マイノリティのほうこそ、こうした外国人嫌悪が誘発するマジョリティの暴力に怯えている。この暴力を現実化させないためにも、外国人参政権について議論する場合は、まずはマジョリティの恐怖から来る非合理的な妄想は取り除いてから行う必要がある』、「現実は、マイノリティのほうこそ、こうした外国人嫌悪が誘発するマジョリティの暴力に怯えている。この暴力を現実化させないためにも、外国人参政権について議論する場合は、まずはマジョリティの恐怖から来る非合理的な妄想は取り除いてから行う必要がある」、その通りだ。
・『外国籍住民の増加という現実への対応を 外国籍住民への投票権付与は、かれらを地域社会へと包摂するためにも役立つ。 地域差はあるにせよ、自分が住む地域に外国籍住民がいる、という状況は、現代の日本ではまったく珍しくなくなっている。一方で入管問題や技能実習生の問題など、外国人の人権がほとんど顧みられていない現状があり、意識と制度の両面での改善が必要になっている。 現在はコロナ禍の入国規制で外国人の新規入国が止まってはいるが、日本政府は特定技能制度の拡大によって家族を含む外国人労働者を増加させる方針を示している。外国人にとって現在の日本に移民を検討するだけの魅力があるかはともかく、日本側からみれば、少子化が止まらない以上は社会を維持するために国を開いていかなければならない。このトレンドには、しばらく変化はないだろう。 そうであるならば、外国籍の住民の権利を守り、かれらをいかに包摂していくかが マジョリティたる日本市民の責任となる。子どもの教育や言語など生活面のサポートも考える必要もあるだろうし、日本社会が多様性を認めるよう変化する必要もある。) そして、外国籍住民に地域社会の一員たる自覚と誇りを持ってもらうためには、行政について意見表明をする機会を与えることは重要な手段となるだろう。将来的には投票権のみならず、参政権そのものについても検討が必要だと思う』、「外国籍の住民の権利を守り、かれらをいかに包摂していくかが マジョリティたる日本市民の責任となる」、同感である。
・『ドイツの失敗に見習うべき 外国籍住民の包摂の必要性については、80年代までの西ドイツの失敗が反面教師となるだろう。高度経済成長時代に大量の外国人労働者を受け入れた西ドイツは、かれらを移民として処遇することを長く認めず、外国籍住民の増加に伴う問題を放置し続けたため、建て前と実態の剥離によって、深刻な社会の分断を生み出してしまった。 ドイツでは80年代から90年代にかけて、外国籍住民への生活サポートや権利付与が充実してくるが、それでもなお問題は残る。もっと早く外国籍住民の定住という実態を認識し、その包摂に動いていれば、問題が深刻化する前にソフトランディングできただろう。 多様な人々、多様な文化がいま目の前に存在しているという現実を認めず、純粋な国民、純粋な文化という幻想に固執する社会は、あとで必ずそのツケを払うことになる。日本社会は好む好まざるに拘らず、多様なルーツをもつ人々との共生へと進んでいく。外国籍住民に対する投票権付与は、その長いプロセスの一歩にすぎないのだ』、私は「外国人労働者」への安易な依存には反対だが、一旦、入れた「外国人労働者」を「包摂」できるよう最大限、努力すべきとの立場である。
次に、12月22日付け東京新聞Web「武蔵野市の住民投票条例案、なぜ否決されたのか?市長がこだわる「先進性」」を紹介しよう。
・『外国籍の市民も日本人と同等になるはずだった東京都武蔵野市の住民投票条例案は21日、市議会で反対多数で否決された。「多様性を認め、支え合うまち」を目指す松下玲子市長がこだわる、市内在住3カ月以上を条件とするなどの「先進性」が、是々非々の対応だった市議の態度を硬化させた。今後の見直しの協議で、外国人の在留期間などに一定の制限を設ける「後退」を市長が受け入れるかが焦点だ。(花井勝規)』、「市長」はあえて理想形に走って自沈したようだ。
・『◆公明党への淡い期待\ 「あれで潮目が変わってしまった」 住民投票条例制定に向けて旗を振ってきたベテラン市議は、13日の市議会総務委員会を振り返る。委員の賛否は3対3の同数となり、委員長裁決で可決したが、結果よりも公明党の委員が反対に回ったことに驚いた。「同党は永住外国人の地方参政権付与に前向きで、住民投票条例案に賛成してくれるか、棄権に回ってくれるはず。条例案は可決される」。賛成派市議らのそんな淡い期待は消し飛んだ』、確かに「公明党」の態度は不思議だ。
・『◆永住か、定住か 「市の提案はタイミングが少し早かった」。市議会公明党の落合勝利代表は、外国人の参加要件などで議論が尽くされていないと話す。全国の他自治体の例を挙げ「永住外国人なら市民の理解を得やすいが、定住外国人は在留期間の幅が広く、何が最適なのか分かりにくい」と指摘する。 「3カ月前に日本に来て、言葉もよく分からない人が市の課題に意見を表明できるのか」「永住外国人や在留資格を3年以上持っている人なら考慮の余地はあるが、日本人と同じ条件にするのは乱暴だ」。自民党系市議らと条例案反対の論陣を張った、同市などを地盤とする長島昭久衆院議員(自民)も街頭演説で外国人の在留期間に言及していた。 武蔵野市によると、常設型の住民投票条例を持つ全国の自治体のうち、外国人にも投票を認めているのは43自治体。このうち小金井市など28自治体は永住外国人に限定。残る13自治体は、永住外国人に加え、中長期の定住外国人に「国内で在留資格を持ってから3年以上」(川崎市)などの要件を付けている』、「市長」が「在留期間」で原理主義的姿勢を貫いた要因は何なのだろう。
・『◆市民への周知、不十分 松下市長に近い賛成派の市議は「外国籍の人も同じ市民で、投票資格に差をつけるべきではないと市長は考え、3カ月以上市内に住む18歳以上の人という設定にした」と明かす。 外国籍の市民も日本人と同等の条件で投票できる条例は、神奈川県逗子市と大阪府豊中市の2自治体。今後の協議で外国人の在留期間が見直しの俎上そじょうに載った場合は「市長は『先進性』のこだわりが強く、簡単に折り合えるか」と首をかしげる。 住民投票関連の市の意見交換会に出席した市民は13人だったなど、条例案の市民への周知が不十分だったことも反対派からやり玉に挙げられた。市報「むさしの」(タブロイド判)8月15日号は、住民投票制度の1ページ特集を組んだが、外国籍に触れたのは「(外国籍の方を含む)」のわずか8文字だった。 2009年に住民投票条例を施行した川崎市は、条例の検討委員会をほぼ月1回のペースで計11回開催。外国人市民代表者会議や高校生との意見交換もする念の入れようだった。武蔵野市が住民投票条例を成立させるのに、越えなければならない壁が多い』、「武蔵野市」のやり方は、どうも硬直的過ぎたようだ。
第三に、12月16日付け東洋経済オンラインが掲載した作家のバイエ・マクニール氏による「アメリカ大使館が異例の警告「日本の警察」の疑い 多くの在日外国人が感じている「不当な扱い」」を紹介しよう。
・『12月6日の朝、ツイッターでアメリカ大使館領事部が、日本の警察が外国人を「レイシャル・プロファイリング」していることについて、日本で暮らすアメリカ国民に警告を発したことを知った。レイシャル・プロファイリングとは、特定の人種や民族、肌の色、宗教などを対象に捜査活動を行うことだ。 そのツイートは、文字通り非常警報で、次のように書かれている。「レイシャル・プロファイリングが疑われる事案で、外国人が日本の警察から職務質問を受けたという報告があった。数名が拘束され、職務質問や所持品検査をされた」「拘束された場合は領事館への連絡を要請する必要がある」』、面倒な「外国人」を「レイシャル・プロファイリグ」の対象にするとは通常、考え難い。
・『自転車に乗っていると突然警官が来て… 私は驚かなかった。 数週間前のある日の午後、八王子駅の近くで、自転車でブラブラしていると、突然警察官が目の前に割り込み、私に止まるように合図した。私は驚いた。そして、私の中にいるブラック・アメリカンが、一抹の恐怖と憤りを感じた。 だが、私はそれを抑えた。 警官は私の自転車の登録を確認したいと伝えた。 理由を聞いた。警官は自転車が盗難されていないことを確認しなければならないと言ったので、私はその必要はないと言った。彼は拘束して申し訳ないが、最近盗まれた自転車があったので、確認しなければならないと言った。これは決まっている任務だと言い、 そしてまた詫びた。 私は警察は自転車に乗っている人全員を定期的に止めて確認しているかどうか尋ねた。もしそうなら、ひどい人員不足だ。彼はニタっと笑って、一部の人を止めただけだと言った。私はどんな理由であっても今後避けることができるように、自分が何をしたからこの「一部の」人々に含まれたのかと当然疑問に思った。 「一部の人? 本当に? ランダムですか? もしくは直感的ですか? それと決まりがあるのですか?」 私は尋ねた。「常連の容疑者たちを検挙しただけだと言わないでくださいね」。 警官は答えなかった。彼は私に奇妙な視線を向けただけで、私の在留カードを確認したいと言った。ちょうど近くの交番からほかの警官が何人か現れた。 そして、私が大道芸人で、彼らは熱狂的ファンであるかのように、みんな笑顔で会釈をし、そして密かに「ソフトに」私を取り囲んだ。) その時八王子駅には多くの通行人がいて、通り過ぎる人たちはこの光景を決めつけた目で一瞥し、非難するように私を睨みつけた。私はこの非難の焦点となることでとても恥ずかしい思いをした。非常に不快だと警官に伝えた。彼は私の在留カードを偽造品だと疑うかのようにスキャンし続け、その間、謝罪して会釈をした。 人生で初めて、自分個人が法執行機関のハラスメントの標的にされていると感じた。この犯罪に関する疑いは、自分の人種や民族(外国人であること)に関係していると感じた。誰かが私の尊厳に唾を吐いたように感じ、泣きそうになった。警官たちは自転車が盗難されていないと確認するためだけに15分間公然と私を辱めたのだ。 帰宅途中で私は側溝に嘔吐し、その週の残りは具合が悪かった』、きっとショックが大きかったのだろう。警官たちは、相手が弱い立場だと見ると、徹底的に居丈高になるケースが多いようだ。
・『「20年間頻繁に警察に止められた」 日本におけるレイシャル・プロファイリングの存在を感じているのは私だけではない。 世界的なダンサー兼振付師であり、長年日本に住んでいるブルックリン出身のテリー・ライトさんは、警告の中で「疑い」という言葉が使われていることに気づいた。彼は初めて日本に来てから20年以上の間、日本の警察に頻繁に止められてきたので、彼にとってレイシャル・プロファイリングは疑いどころか、「当たり前のこと」とさえ感じると語る。 その理由として、ライトさんは自分が止められた時のエピソードを挙げた。東京で何人かの友人とともに金曜の夜に繰り出した時のことだ。自分たちが警官に止められる前に、酔っ払って騒いでいる日本人男性たちを目にした。ライトさんほかの黒人男性2人とドレッドヘアの日本人男性と一緒だった。 「警察は私のことを調べようとしたが、大声で話している酔っ払いの日本人男性たちにはまったく注意を払っていなかった」。アメリカのストリートダンスのパイオニアであるライトさんはこう話す。 「だから、私は警官に尋ねた。『なぜあなたは彼らのところには行かなかったんですか? どうして私たちのところに来たのですか? 私たちは黒人だからですか?』。すると、警官はこう答えた。『ええと、それがまさにあなたがドラッグを持っていると思う理由です』」。 この答えに私は大笑いしてしまった。つい最近私が経験したことと同じだったからだ。だが、ライトさんは笑っていなかった。 「だからこそ、アメリカ大使館から、日本でプロファイリングされている疑いを警告されたとき」と、テリーは苦笑いして続けた。「『濡れているから、ビーチに行くときは気をつけて!』と言われているように感じた」。 今回のアメリカ大使館による警告が遅きに失していると思ったのは、テリーさんだけではなかった。実際、ソーシャルメディアでは多くの人が「そんなこといまさら言うまでもない」という反応をしていた。 一部の人はまた、レイシャル・プロファイリングが疑われる例が大幅に増えている理由をそれぞれ推察した。アメリカ人、特に有色人種が、警察がつねに自分たちを不当に標的にしていると不満を言っているわけではない。 ここでのシナリオは、映画「カサブランカ」のシーンを思い出させた。腐敗したフランスの警官ルノー署長が、自分が常連のカジノの真ん中で、その晩のギャンブルの賞金を手渡される直前に、ハンフリー・ボガート演じるリックに対して、「ここでギャンブルが行われているのを知ってショックだ」と言うシーンだ』、なるほど。
・『なぜ突然アメリカ大使館が警告を発したのか アメリカ大使館が突然、日本の警察を諌めることに決めた真相に迫ろうとして、いくつかの理論が浮上した。 「アメリカ大使館の誰かが警察に止められたに違いない」と、日本で作家として活躍するマシュー・カウフマンさんは推察する。 「長年にわたって多くのアメリカ人が、何度も警察に止められたことへの不満を伝えにアメリカ大使館に行ったはずだ。しかし、私が知るかぎり、プレスリリースみたいな警告がこれまで発行されたことがなかった。連続的にハラスメントを受けてきた一般の人々の苦情は却下されることが多いが、幹部からの苦情は波風を立てることがあるのではないか」 私は在日アメリカ大使館に連絡し、実際の回答を得て憶測に終止符を打とうとしたが、残念ながらなんの回答もなかった。 プライバシー上の理由から、アメリカ大使館は特定の件について論じないと言う。 広報担当者によると、「アメリカ国務省は、海外のアメリカ国民の安全と保安を超えた責任を負わない。当局は、警察によるアメリカ国民を含む外国人のレイシャル・プロファイリングの疑いについて、日本で複数の信頼できる報告を受けており、これらの報告をしかるべき日本当局に伝えている。在日大使館のアメリカ市民サービス課のツイッターアカウントは、重要な安全および保安情報を提供することにより、海外に渡航および居住するアメリカ国民を保護する役目がある」としている。 「私は日本が大好きで、文化と人々が大好きだ。しかし、日本はつねに島国であり続け、その歴史の大半は世界から孤立してきた」と、教師、ミュージシャン、音楽プロデューサーのデロン・レイノルズさんは話す。 「根底にある人種差別的なトーンに加えて、今の日本は孤立主義的な感情を強めている。日本政府が外国人にハラスメントをするように伝えているとしか思えない。白人である私もハラスメントを受けていると思うが、悲しいことに、日本では有色人種の人々からよりひどい話を聞く」 私は日本に17年間住んでいるが、アメリカ大使館が日本について警告を出したことはほとんどない。他国と異なり、日本は長年アメリカ人にとって安全な場所だった。 2011年の東日本大震災の時、アメリカ大使館は日本からの出国を検討するよう忠告した。私も出国しかけたが、私もこの国が大好きだ。日本は私の家であり、危機の最中に日本を捨てることはできなかった』、一般的には日本人は欧米の白人には卑屈で、その他の外国人には居丈高である。東南アジア諸国の人々には失礼なことをしている懸念が強い。
・『パンデミックが人種差別的な空気を強めた そして今、私たちは別の危機の真っ只中にいる。今回は終わりの見えないパンデミックだ。そしてこう状況は、いわゆるグローバルコミュニティの醜さを引き出している。世界中で外国人排斥が加速しており、日本もその例外ではない。一部の国で人種差別と新型コロナウイルスに結び付けられる中、アメリカなどでは、#StopAsianHateのような運動も起こった。 今回、新たな変異株であるオミクロン株がアフリカで検出された際、多くの感染症学者が「ウイルスの特性については研究中」としているにもかかわらず、多くの国はアフリカ諸国を対象とした渡航禁止措置などを発し、さらにアフリカ系の人々に汚名を着せた。 これが、アメリカ大使館が疑うレイシャル・プロファイリングに悪影響を及ぼす可能性があるだろうか。つまり、この影響がバイレイシャル(注)の日本人や、アメリカ人以外の「黒人」にまで及ぶか、ということである。 日本政府はそうではないと述べている。事実、松野博一官房長官は、警察が人種や国籍に基づいて不審者に質問しているという主張を否定した。しかしこれは、多くの外国人居住者の生きた経験に反する。 警官がプロファイリングを行っていないのであれば、きちんとその誤解を説明して、解消しなければならない。私の個人的な経験から言えば、このような扱いを受けることは不愉快以外何でもなく、多くの外国人、特に有色人種は同じように感じているのだ』、同感である。(注)バイレイシャル:両親の人種が異なる。 日本では、人種差別がないなどの暴論を主張する向きがあるが、厳然と存在することをまず認めるべきだろう。
先ずは、12月17日付けNewsweek日本版が掲載した思想史研究社の藤崎剛人氏による「武蔵野市の住民投票条例で噴出した外国人投票権「陰謀論」を紹介しよう。
・『<住民投票に外国人の投票権を認めると、某国から移民が押し寄せて市が乗っ取られる、というあり得ない妄想より、外国人増加の実態を否定し続けた結果の分断の弊害を考えよ> 武蔵野市議会で「武蔵野市住民投票条例」が審議されている。ところが、この条例が現在、猛烈な反対運動に晒されている。条例案に3ヶ月以上市内に居住する18歳以上の外国籍住民も住民投票に投票権を与えると定められていたことが、その理由だ。市の内外から反対派が市役所や吉祥寺駅前に集結し、デモ行進が行われるなど激しい示威活動が続けられている。条例の採決は21日の本会議で行われる見込みだが、その成否は予断を許さない』、「本会議」では反対多数で否決された。
・『住民投票での外国人投票権は珍しくはない 住民投票で外国人の投票権を認めている自治体は、全国で40以上存在する。その多くは永住権獲得が条件だが、武蔵野市の条例案のように比較的短期間の居住で投票権が認められている自治体も、大阪府豊中市、神奈川県逗子市という先例がある。もし武蔵野市で可決されれば3例目、都内では初となる。 外国人参政権に関する議論は国政から地方自治まで様々なレベルで存在するが、最高裁は地方自治体の参政権に関しては憲法上否定していない。自治体の住民投票条例で外国籍住民に投票権を与えることはトレンドとなりつつある。 その理由の一つは、自治体の住民投票条例には法的拘束力がなく、首長や議会はそれをあくまで「尊重する義務」があるだけだからだろう。大阪維新のように、二度の住民投票での否決を無視してなお都構想の実現を行おうとする政治勢力もある。武蔵野市も、この投票権は参政権ではなく、あくまで条例についての住民の意思表示であるという立場だ。 地方自治は「民主主義の学校」とも呼ばれるように、より身近で具体的な生活の問題が扱われることが多い。そして地域の生活者に日本人も外国人もない。それぞれが協力して生活の質を向上させていかなければならないところ、外国籍の住民にのみ意思表示の権利を与えなくてよいということにはならない』、「地域の生活者に日本人も外国人もない。それぞれが協力して生活の質を向上させていかなければならない」、その通りだ。
・『反対運動の中にみられる陰謀論 武蔵野市の条例案については、国会議員も含め市内外からの反対も多い。たとえ住民投票レベルであれ、外国人参政権に関する抵抗感は根強くある。その抵抗感が陰謀論にまで達してしまっている場合もある。典型的な陰謀論的反応としては、ある特定の国が大量の移民を武蔵野市に対して送り込み、市を乗っ取るのではないか、というものがある。 少し考えてみれば、これがどれだけ非合理的な思考かが分かるはずだ。武蔵野市を乗っ取るためには、少なくとも数万人の成人を送り込まなくてはならない。また、少なくとも3ヶ月は市の住民でいられるような在留資格および生活資金を人数分準備しなければならない。しかもそこまでやって出来ることは、法的強制力をもたない住民投票での意見表明なのだ。) 外国人参政権の話題になると、即座に「国(自治体)が乗っ取られる」という妄想のような意見が寄せられる。しかしそのような意見は、大抵が上述のような実行手段の困難さが全く考慮されていない。また、先行して住民投票条例を可決した自治体でも、そのような現象が起こっていないということからも、地域を乗っ取られるという思考には根拠はないのだ』、「陰謀論的反応」としては、自民党の国会議員のなかにはこれに乗って住民を煽っている悪質な人物もいる。
・『ホラー小説化する外国人嫌悪 一般論として外国人参政権は自明な権利とはいえないので、その拡大には個別の議論が必要だ。しかし外国人参政権を「外国人に国を乗っ取られる」という理由で一律に否定するような外国人嫌悪(ゼノフォビア)は、マジョリティの過剰な防衛本能に由来すると考えられる。 クトゥルー神話で有名なホラー作家ラブクラフトは、人種差別主義者であったことが知られている。彼の小説に登場する半魚人のようなグロテスクな生き物たちは、20世紀前半のアメリカに大量に流入してきた移民への恐怖がモチーフになっていると読み解くこともできる。マジョリティにとって外国人はホラーであり、そのような心理が前提にあるから、「国を乗っ取られる」というようなホラー小説じみた非合理的な妄想も直感的に受け入れることができてしまうのだ。 しかし現実は、マイノリティのほうこそ、こうした外国人嫌悪が誘発するマジョリティの暴力に怯えている。この暴力を現実化させないためにも、外国人参政権について議論する場合は、まずはマジョリティの恐怖から来る非合理的な妄想は取り除いてから行う必要がある』、「現実は、マイノリティのほうこそ、こうした外国人嫌悪が誘発するマジョリティの暴力に怯えている。この暴力を現実化させないためにも、外国人参政権について議論する場合は、まずはマジョリティの恐怖から来る非合理的な妄想は取り除いてから行う必要がある」、その通りだ。
・『外国籍住民の増加という現実への対応を 外国籍住民への投票権付与は、かれらを地域社会へと包摂するためにも役立つ。 地域差はあるにせよ、自分が住む地域に外国籍住民がいる、という状況は、現代の日本ではまったく珍しくなくなっている。一方で入管問題や技能実習生の問題など、外国人の人権がほとんど顧みられていない現状があり、意識と制度の両面での改善が必要になっている。 現在はコロナ禍の入国規制で外国人の新規入国が止まってはいるが、日本政府は特定技能制度の拡大によって家族を含む外国人労働者を増加させる方針を示している。外国人にとって現在の日本に移民を検討するだけの魅力があるかはともかく、日本側からみれば、少子化が止まらない以上は社会を維持するために国を開いていかなければならない。このトレンドには、しばらく変化はないだろう。 そうであるならば、外国籍の住民の権利を守り、かれらをいかに包摂していくかが マジョリティたる日本市民の責任となる。子どもの教育や言語など生活面のサポートも考える必要もあるだろうし、日本社会が多様性を認めるよう変化する必要もある。) そして、外国籍住民に地域社会の一員たる自覚と誇りを持ってもらうためには、行政について意見表明をする機会を与えることは重要な手段となるだろう。将来的には投票権のみならず、参政権そのものについても検討が必要だと思う』、「外国籍の住民の権利を守り、かれらをいかに包摂していくかが マジョリティたる日本市民の責任となる」、同感である。
・『ドイツの失敗に見習うべき 外国籍住民の包摂の必要性については、80年代までの西ドイツの失敗が反面教師となるだろう。高度経済成長時代に大量の外国人労働者を受け入れた西ドイツは、かれらを移民として処遇することを長く認めず、外国籍住民の増加に伴う問題を放置し続けたため、建て前と実態の剥離によって、深刻な社会の分断を生み出してしまった。 ドイツでは80年代から90年代にかけて、外国籍住民への生活サポートや権利付与が充実してくるが、それでもなお問題は残る。もっと早く外国籍住民の定住という実態を認識し、その包摂に動いていれば、問題が深刻化する前にソフトランディングできただろう。 多様な人々、多様な文化がいま目の前に存在しているという現実を認めず、純粋な国民、純粋な文化という幻想に固執する社会は、あとで必ずそのツケを払うことになる。日本社会は好む好まざるに拘らず、多様なルーツをもつ人々との共生へと進んでいく。外国籍住民に対する投票権付与は、その長いプロセスの一歩にすぎないのだ』、私は「外国人労働者」への安易な依存には反対だが、一旦、入れた「外国人労働者」を「包摂」できるよう最大限、努力すべきとの立場である。
次に、12月22日付け東京新聞Web「武蔵野市の住民投票条例案、なぜ否決されたのか?市長がこだわる「先進性」」を紹介しよう。
・『外国籍の市民も日本人と同等になるはずだった東京都武蔵野市の住民投票条例案は21日、市議会で反対多数で否決された。「多様性を認め、支え合うまち」を目指す松下玲子市長がこだわる、市内在住3カ月以上を条件とするなどの「先進性」が、是々非々の対応だった市議の態度を硬化させた。今後の見直しの協議で、外国人の在留期間などに一定の制限を設ける「後退」を市長が受け入れるかが焦点だ。(花井勝規)』、「市長」はあえて理想形に走って自沈したようだ。
・『◆公明党への淡い期待\ 「あれで潮目が変わってしまった」 住民投票条例制定に向けて旗を振ってきたベテラン市議は、13日の市議会総務委員会を振り返る。委員の賛否は3対3の同数となり、委員長裁決で可決したが、結果よりも公明党の委員が反対に回ったことに驚いた。「同党は永住外国人の地方参政権付与に前向きで、住民投票条例案に賛成してくれるか、棄権に回ってくれるはず。条例案は可決される」。賛成派市議らのそんな淡い期待は消し飛んだ』、確かに「公明党」の態度は不思議だ。
・『◆永住か、定住か 「市の提案はタイミングが少し早かった」。市議会公明党の落合勝利代表は、外国人の参加要件などで議論が尽くされていないと話す。全国の他自治体の例を挙げ「永住外国人なら市民の理解を得やすいが、定住外国人は在留期間の幅が広く、何が最適なのか分かりにくい」と指摘する。 「3カ月前に日本に来て、言葉もよく分からない人が市の課題に意見を表明できるのか」「永住外国人や在留資格を3年以上持っている人なら考慮の余地はあるが、日本人と同じ条件にするのは乱暴だ」。自民党系市議らと条例案反対の論陣を張った、同市などを地盤とする長島昭久衆院議員(自民)も街頭演説で外国人の在留期間に言及していた。 武蔵野市によると、常設型の住民投票条例を持つ全国の自治体のうち、外国人にも投票を認めているのは43自治体。このうち小金井市など28自治体は永住外国人に限定。残る13自治体は、永住外国人に加え、中長期の定住外国人に「国内で在留資格を持ってから3年以上」(川崎市)などの要件を付けている』、「市長」が「在留期間」で原理主義的姿勢を貫いた要因は何なのだろう。
・『◆市民への周知、不十分 松下市長に近い賛成派の市議は「外国籍の人も同じ市民で、投票資格に差をつけるべきではないと市長は考え、3カ月以上市内に住む18歳以上の人という設定にした」と明かす。 外国籍の市民も日本人と同等の条件で投票できる条例は、神奈川県逗子市と大阪府豊中市の2自治体。今後の協議で外国人の在留期間が見直しの俎上そじょうに載った場合は「市長は『先進性』のこだわりが強く、簡単に折り合えるか」と首をかしげる。 住民投票関連の市の意見交換会に出席した市民は13人だったなど、条例案の市民への周知が不十分だったことも反対派からやり玉に挙げられた。市報「むさしの」(タブロイド判)8月15日号は、住民投票制度の1ページ特集を組んだが、外国籍に触れたのは「(外国籍の方を含む)」のわずか8文字だった。 2009年に住民投票条例を施行した川崎市は、条例の検討委員会をほぼ月1回のペースで計11回開催。外国人市民代表者会議や高校生との意見交換もする念の入れようだった。武蔵野市が住民投票条例を成立させるのに、越えなければならない壁が多い』、「武蔵野市」のやり方は、どうも硬直的過ぎたようだ。
第三に、12月16日付け東洋経済オンラインが掲載した作家のバイエ・マクニール氏による「アメリカ大使館が異例の警告「日本の警察」の疑い 多くの在日外国人が感じている「不当な扱い」」を紹介しよう。
・『12月6日の朝、ツイッターでアメリカ大使館領事部が、日本の警察が外国人を「レイシャル・プロファイリング」していることについて、日本で暮らすアメリカ国民に警告を発したことを知った。レイシャル・プロファイリングとは、特定の人種や民族、肌の色、宗教などを対象に捜査活動を行うことだ。 そのツイートは、文字通り非常警報で、次のように書かれている。「レイシャル・プロファイリングが疑われる事案で、外国人が日本の警察から職務質問を受けたという報告があった。数名が拘束され、職務質問や所持品検査をされた」「拘束された場合は領事館への連絡を要請する必要がある」』、面倒な「外国人」を「レイシャル・プロファイリグ」の対象にするとは通常、考え難い。
・『自転車に乗っていると突然警官が来て… 私は驚かなかった。 数週間前のある日の午後、八王子駅の近くで、自転車でブラブラしていると、突然警察官が目の前に割り込み、私に止まるように合図した。私は驚いた。そして、私の中にいるブラック・アメリカンが、一抹の恐怖と憤りを感じた。 だが、私はそれを抑えた。 警官は私の自転車の登録を確認したいと伝えた。 理由を聞いた。警官は自転車が盗難されていないことを確認しなければならないと言ったので、私はその必要はないと言った。彼は拘束して申し訳ないが、最近盗まれた自転車があったので、確認しなければならないと言った。これは決まっている任務だと言い、 そしてまた詫びた。 私は警察は自転車に乗っている人全員を定期的に止めて確認しているかどうか尋ねた。もしそうなら、ひどい人員不足だ。彼はニタっと笑って、一部の人を止めただけだと言った。私はどんな理由であっても今後避けることができるように、自分が何をしたからこの「一部の」人々に含まれたのかと当然疑問に思った。 「一部の人? 本当に? ランダムですか? もしくは直感的ですか? それと決まりがあるのですか?」 私は尋ねた。「常連の容疑者たちを検挙しただけだと言わないでくださいね」。 警官は答えなかった。彼は私に奇妙な視線を向けただけで、私の在留カードを確認したいと言った。ちょうど近くの交番からほかの警官が何人か現れた。 そして、私が大道芸人で、彼らは熱狂的ファンであるかのように、みんな笑顔で会釈をし、そして密かに「ソフトに」私を取り囲んだ。) その時八王子駅には多くの通行人がいて、通り過ぎる人たちはこの光景を決めつけた目で一瞥し、非難するように私を睨みつけた。私はこの非難の焦点となることでとても恥ずかしい思いをした。非常に不快だと警官に伝えた。彼は私の在留カードを偽造品だと疑うかのようにスキャンし続け、その間、謝罪して会釈をした。 人生で初めて、自分個人が法執行機関のハラスメントの標的にされていると感じた。この犯罪に関する疑いは、自分の人種や民族(外国人であること)に関係していると感じた。誰かが私の尊厳に唾を吐いたように感じ、泣きそうになった。警官たちは自転車が盗難されていないと確認するためだけに15分間公然と私を辱めたのだ。 帰宅途中で私は側溝に嘔吐し、その週の残りは具合が悪かった』、きっとショックが大きかったのだろう。警官たちは、相手が弱い立場だと見ると、徹底的に居丈高になるケースが多いようだ。
・『「20年間頻繁に警察に止められた」 日本におけるレイシャル・プロファイリングの存在を感じているのは私だけではない。 世界的なダンサー兼振付師であり、長年日本に住んでいるブルックリン出身のテリー・ライトさんは、警告の中で「疑い」という言葉が使われていることに気づいた。彼は初めて日本に来てから20年以上の間、日本の警察に頻繁に止められてきたので、彼にとってレイシャル・プロファイリングは疑いどころか、「当たり前のこと」とさえ感じると語る。 その理由として、ライトさんは自分が止められた時のエピソードを挙げた。東京で何人かの友人とともに金曜の夜に繰り出した時のことだ。自分たちが警官に止められる前に、酔っ払って騒いでいる日本人男性たちを目にした。ライトさんほかの黒人男性2人とドレッドヘアの日本人男性と一緒だった。 「警察は私のことを調べようとしたが、大声で話している酔っ払いの日本人男性たちにはまったく注意を払っていなかった」。アメリカのストリートダンスのパイオニアであるライトさんはこう話す。 「だから、私は警官に尋ねた。『なぜあなたは彼らのところには行かなかったんですか? どうして私たちのところに来たのですか? 私たちは黒人だからですか?』。すると、警官はこう答えた。『ええと、それがまさにあなたがドラッグを持っていると思う理由です』」。 この答えに私は大笑いしてしまった。つい最近私が経験したことと同じだったからだ。だが、ライトさんは笑っていなかった。 「だからこそ、アメリカ大使館から、日本でプロファイリングされている疑いを警告されたとき」と、テリーは苦笑いして続けた。「『濡れているから、ビーチに行くときは気をつけて!』と言われているように感じた」。 今回のアメリカ大使館による警告が遅きに失していると思ったのは、テリーさんだけではなかった。実際、ソーシャルメディアでは多くの人が「そんなこといまさら言うまでもない」という反応をしていた。 一部の人はまた、レイシャル・プロファイリングが疑われる例が大幅に増えている理由をそれぞれ推察した。アメリカ人、特に有色人種が、警察がつねに自分たちを不当に標的にしていると不満を言っているわけではない。 ここでのシナリオは、映画「カサブランカ」のシーンを思い出させた。腐敗したフランスの警官ルノー署長が、自分が常連のカジノの真ん中で、その晩のギャンブルの賞金を手渡される直前に、ハンフリー・ボガート演じるリックに対して、「ここでギャンブルが行われているのを知ってショックだ」と言うシーンだ』、なるほど。
・『なぜ突然アメリカ大使館が警告を発したのか アメリカ大使館が突然、日本の警察を諌めることに決めた真相に迫ろうとして、いくつかの理論が浮上した。 「アメリカ大使館の誰かが警察に止められたに違いない」と、日本で作家として活躍するマシュー・カウフマンさんは推察する。 「長年にわたって多くのアメリカ人が、何度も警察に止められたことへの不満を伝えにアメリカ大使館に行ったはずだ。しかし、私が知るかぎり、プレスリリースみたいな警告がこれまで発行されたことがなかった。連続的にハラスメントを受けてきた一般の人々の苦情は却下されることが多いが、幹部からの苦情は波風を立てることがあるのではないか」 私は在日アメリカ大使館に連絡し、実際の回答を得て憶測に終止符を打とうとしたが、残念ながらなんの回答もなかった。 プライバシー上の理由から、アメリカ大使館は特定の件について論じないと言う。 広報担当者によると、「アメリカ国務省は、海外のアメリカ国民の安全と保安を超えた責任を負わない。当局は、警察によるアメリカ国民を含む外国人のレイシャル・プロファイリングの疑いについて、日本で複数の信頼できる報告を受けており、これらの報告をしかるべき日本当局に伝えている。在日大使館のアメリカ市民サービス課のツイッターアカウントは、重要な安全および保安情報を提供することにより、海外に渡航および居住するアメリカ国民を保護する役目がある」としている。 「私は日本が大好きで、文化と人々が大好きだ。しかし、日本はつねに島国であり続け、その歴史の大半は世界から孤立してきた」と、教師、ミュージシャン、音楽プロデューサーのデロン・レイノルズさんは話す。 「根底にある人種差別的なトーンに加えて、今の日本は孤立主義的な感情を強めている。日本政府が外国人にハラスメントをするように伝えているとしか思えない。白人である私もハラスメントを受けていると思うが、悲しいことに、日本では有色人種の人々からよりひどい話を聞く」 私は日本に17年間住んでいるが、アメリカ大使館が日本について警告を出したことはほとんどない。他国と異なり、日本は長年アメリカ人にとって安全な場所だった。 2011年の東日本大震災の時、アメリカ大使館は日本からの出国を検討するよう忠告した。私も出国しかけたが、私もこの国が大好きだ。日本は私の家であり、危機の最中に日本を捨てることはできなかった』、一般的には日本人は欧米の白人には卑屈で、その他の外国人には居丈高である。東南アジア諸国の人々には失礼なことをしている懸念が強い。
・『パンデミックが人種差別的な空気を強めた そして今、私たちは別の危機の真っ只中にいる。今回は終わりの見えないパンデミックだ。そしてこう状況は、いわゆるグローバルコミュニティの醜さを引き出している。世界中で外国人排斥が加速しており、日本もその例外ではない。一部の国で人種差別と新型コロナウイルスに結び付けられる中、アメリカなどでは、#StopAsianHateのような運動も起こった。 今回、新たな変異株であるオミクロン株がアフリカで検出された際、多くの感染症学者が「ウイルスの特性については研究中」としているにもかかわらず、多くの国はアフリカ諸国を対象とした渡航禁止措置などを発し、さらにアフリカ系の人々に汚名を着せた。 これが、アメリカ大使館が疑うレイシャル・プロファイリングに悪影響を及ぼす可能性があるだろうか。つまり、この影響がバイレイシャル(注)の日本人や、アメリカ人以外の「黒人」にまで及ぶか、ということである。 日本政府はそうではないと述べている。事実、松野博一官房長官は、警察が人種や国籍に基づいて不審者に質問しているという主張を否定した。しかしこれは、多くの外国人居住者の生きた経験に反する。 警官がプロファイリングを行っていないのであれば、きちんとその誤解を説明して、解消しなければならない。私の個人的な経験から言えば、このような扱いを受けることは不愉快以外何でもなく、多くの外国人、特に有色人種は同じように感じているのだ』、同感である。(注)バイレイシャル:両親の人種が異なる。 日本では、人種差別がないなどの暴論を主張する向きがあるが、厳然と存在することをまず認めるべきだろう。
タグ:(その6)(武蔵野市の住民投票条例で噴出した外国人投票権「陰謀論」、武蔵野市の住民投票条例案 なぜ否決されたのか?市長がこだわる「先進性」、アメリカ大使館が異例の警告「日本の警察」の疑い 多くの在日外国人が感じている「不当な扱い」) 外国人問題 Newsweek日本版 藤崎剛人 「武蔵野市の住民投票条例で噴出した外国人投票権「陰謀論」 「本会議」では反対多数で否決された。 「地域の生活者に日本人も外国人もない。それぞれが協力して生活の質を向上させていかなければならない」、その通りだ 「陰謀論的反応」としては、自民党の国会議員のなかにはこれに乗って住民を煽っている悪質な人物もいる。 「現実は、マイノリティのほうこそ、こうした外国人嫌悪が誘発するマジョリティの暴力に怯えている。この暴力を現実化させないためにも、外国人参政権について議論する場合は、まずはマジョリティの恐怖から来る非合理的な妄想は取り除いてから行う必要がある」、その通りだ。 「外国籍の住民の権利を守り、かれらをいかに包摂していくかが マジョリティたる日本市民の責任となる」、同感である。 私は「外国人労働者」への安易な依存には反対だが、一旦、入れた「外国人労働者」を「包摂」できるよう最大限、努力すべきとの立場である。 東京新聞Web「武蔵野市の住民投票条例案、なぜ否決されたのか?市長がこだわる「先進性」」 「市長」はあえて理想形に走って自沈したようだ。 確かに「公明党」の態度は不思議だ。 「市長」が「在留期間」で原理主義的姿勢を貫いた要因は何なのだろう。 「武蔵野市」のやり方は、どうも硬直的過ぎたようだ。 東洋経済オンライン バイエ・マクニール 「アメリカ大使館が異例の警告「日本の警察」の疑い 多くの在日外国人が感じている「不当な扱い」」 面倒な「外国人」を「レイシャル・プロファイリグ」の対象にするとは通常、考え難い。 きっとショックが大きかったのだろう。警官たちは、相手が弱い立場だと見ると、徹底的に居丈高になるケースが多いようだ。 なるほど。 一般的には日本人は欧米の白人には卑屈で、その他の外国人には居丈高である。東南アジア諸国の人々には失礼なことをしている懸念が強い。 同感である。(注)バイレイシャル:両親の人種が異なる。 日本では、人種差別がないなどの暴論を主張する向きがあるが、厳然と存在することをまず認めるべきだろう。