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メタバース(仮想空間)(その1)(メタバースが「デジタル創作物」のマーケットを作りだそうとしている NFT=非代替性トークンの威力とは、「セカンドライフ」の二の舞は避けられるのか メタバース沸騰が「過去のブーム」とまるで違う点、先駆者clusterが普及に自信を抱く合理的根拠 和製メタバースで「暮らす」「稼ぐ」人と企業の全容) [イノベーション]

今日は、メタバース(仮想空間)(その1)(メタバースが「デジタル創作物」のマーケットを作りだそうとしている NFT=非代替性トークンの威力とは、「セカンドライフ」の二の舞は避けられるのか メタバース沸騰が「過去のブーム」とまるで違う点、先駆者clusterが普及に自信を抱く合理的根拠 和製メタバースで「暮らす」「稼ぐ」人と企業の全容)を取上げよう。

先ずは、昨年12月26日付け現代ビジネスが掲載した大蔵省出身で一橋大学名誉教授の野口 悠紀雄氏による「メタバースが「デジタル創作物」のマーケットを作りだそうとしている NFT=非代替性トークンの威力とは」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/90424?imp=0
・『世界のさまざまな企業が、メタバース構築に向けて走り出した。NFT(非代替性トークン)というブロックチェーンの新しい技術を用いると、メタバース内のデジタル創作物を売買することができる』、興味深そうだ。
・『世界の企業がつぎつぎにメタバース計画に参入  フェイスブックは、2021年8月、仮想空間サービス「Horizon Workrooms」を始めた。利用者が自分のアバターを作り、「メタバース」と呼ばれる仮想空間のなかで人々と交流したり、会議をしたり、買い物をしたりする。 同社は、社名をメタと変え、メタバースの企業になると宣言した。そして、このプロジェクトに100億ドル(約1兆1400億円)という巨額の資金を投入する。開発を加速させるため、今後5年間でIT人材を1万人採用するとしている。 メタバース計画を進めているのは、メタだけではない。 マイクロソフトは「チームズ」に仮想空間で会議などができる機能を加えるとしている。 ドイツのシーメンス・エナジーやスウェーデンのエリクソンは、GPU(画像処理半導体)のトップメーカーである米エヌビディアとメタバースを構築している。 移動体通信技術と半導体の設計・開発を行なうクアルコムは、スナップドラゴン・スペイシーズというAR(拡張現実)開発のプラットフォームを提供し、次世代のヘッドセットやゲーム端末に向けたARアプリの開発をサポートする。 ウォルト・ディズニー、ナイキなども参入の計画だ。 日本では、KDDIが「渋谷区公認バーチャル渋谷」という仮想空間を作っている。20年5月に公開され、これまでクリスマスやハロウィーンの催しが行なわれた。ユーザーが物販やイベントをできる。 このように、多くの人や企業が、メタバースに向けて走り出している。 カナダの調査会社エマージェン・リサーチは、メタバース関連の世界市場は、20年の477億ドル(約5兆5千億円)から年平均43%で伸び、28年には8290億ドル(約95兆円)になると予測している。 メタバースは、昔からあった。2003年にスタートした「セカンドライフ」がそれだ。2007年頃が人気のピークだった。リンデンドルという仮想通貨も発行され、仮想世界の中で使われた。しかし、その後ユーザー数が減少し、いまは忘れられた存在になっている。 任天堂から2020年に発売された『あつまれ どうぶつの森』も、メタバースの一種だとされることがある』、「メタバース計画に参入」は確かにすごいブームだ。
・『75億円の取引例-NFTでデジタルアーツが売買可能に  多くの企業がメタバースに関心を寄せる大きな理由は、仮想空間で経済取引が可能になるだろうという期待だ。 これは、NFT(Non Fungible Token:非代替性トークン)というブロックチェーン技術を活用するものだ。 ブロックチェーンに取引情報を改竄不可能な形で記録していくことによって、インターネットを通じて経済的な価値を送ることができる。この技術は、すでにビットコインなどの仮想通貨で実証されている。 ところで、仮想通貨の場合には、Aさんの持っている仮想通貨とBさんの持っている通貨は同じものだ(これをFungibleという)。それに対して、NFTでは、一つ一つの個別的な対象を区別して、取引を記録していく。これは、物流管理についてすでに提供されているブロックチェーンサービスだ。 ダイヤモンドについては、2015年に設立されたエバーレッジャー社によって、サービスが提供されている。現在では、食料品などのサプライチェーンにも用いられている。 NFTは、デジタル創作物に、この技術を応用するものだ。売買する時、データと持ち主を、第三者に頼らずに検証できる。これによって、メタバースの仮想空間に作られたデジタル創作物(建物や衣装など)の売買が可能になると期待されている。 NFTを用いたデジタル創作物の取引は、現実の世界ですでに行なわれている。 デジタルアート作家「Beeple(ビープル)」ことマイク・ウィンケルマン氏のデジタル作品「Everydays - The First 5000 Days」が約75億3000万円で落札された。 また、Twitterの共同創業者ジャック・ドーシー氏の初めてのツイートが約3億1600万円で落札された。 日本でも、小学3年生が夏休みの自由研究として作ったドット絵が約80万円で取引された』、「NFTを用いたデジタル創作物の取引は、現実の世界ですでに行なわれている」、「ブロックチェーン技術を活用」することで、多重譲渡を防止する歯止めになるのだろうか。
・『コピーができるのに「唯一のオリジナル」とは?  ところで、ブロックチェーンに記入してあるのは取り引きの情報だ。デジタルな作品自体は、ブロックチェーンの外に保管されている。そして、NFTにはその作品のコピーを防止する機能はない。だから、簡単にコピーできる。 実際、上で述べた作品もウェブで簡単に見ることができる。「初めてのツイート」に至っては、単なる文章に過ぎないので、誰でも簡単に複製できる。 しばしば、「NFTは、デジタル作品が唯一のオリジナルなものであることを証明する仕組みだ」と解説される。しかし、「唯一」とか「オリジナル」ということの意味については、注意が必要だ。 リアルな絵画であれば、オリジナルな作品とその模写とは、詳細に調べれば、違いを見いだすことができるだろう。しかし、デジタルな作品の場合は、オリジナルとコピーに違いは何もない。違いは、創作者が認めた正当な取引を通じて手に入れたというだけのことである。 今後は、コンテンツ自体の複製を不可能にするための方法が開発されるかもしれない。しかし、そうしたことがない現状であっても、上記のように巨額の取引が行なわれているのだ』、「デジタルな作品の場合は、オリジナルとコピーに違いは何もない。違いは、創作者が認めた正当な取引を通じて手に入れたというだけのこと」、見分けは確かに困難だ。
・『ではなぜデジタル作品を買うのか?  デジタル絵画を見て楽しむだけなら、ウエブでタダでできる。それなのに、なぜ75億円もの巨額な支払いをするのか? 2つの理由が考えられる。 第1は、創作者からの正しい手続きを経て権利を獲得したという自覚を持てることだ。それは、「虚栄心を満足させているに過ぎない」といってもよい。 第2は、購入価格よりさらに高値で転売できる可能性があるという期待だ。その意味では、デジタルアーツの価格はバブルであると言える。 現在はもの珍しさで多くの人が参加しているが、そのうちに飽きてしまって、転売が不可能になり、価値がゼロになってしまう可能性も否定できない』、「デジタルアーツの価格はバブルであると言える」、やはりそうかというのが正直な感想だ。
・『新しい法規制を探る  経済産業省は、2021年7月、企業などがメタバース事業に参入する際の法的論点をまとめたリポート「仮想空間の今後の可能性と諸課題に関する調査分析事業」を公表した。 仮想空間内での商取引などを巡る法律やルールの整備が課題になるとしている。異なる国の利用者間でトラブルが起きた場合の解決法、詐欺への対応、セキュリティー対策などを含む「メタバース新法」が必要だとしている。 仮想空間における取引が盛んになるのは、望ましいことだろう。しかし、人々が仮想空間で過ごせる時間には限りがある。 そしてわれわれは、リアルの世界から逃げ出すことはできない。人間は、仮想空間だけで生活できるわけではない。 現実の世界を住みよく快適で安全なものにするのは、もっと重要なことだ。そのことを忘れてはならないと思う』、まだ発展途上の技術に対しては、法規制の適用は慎重であるべきだ。

次に、1月13日付け東洋経済Plus「「セカンドライフ」の二の舞は避けられるのか メタバース沸騰が「過去のブーム」とまるで違う点」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/29433
・『あっという間に衰退してしまったセカンドライフの時代と現在とでは、いったい何が違うのか。技術や価値観など、さまざまな面から考察した。 にわかに沸騰するメタバース市場。VRデバイスやスマートフォンを通じ、人々が気軽に交流できるようになった仮想世界で今、世界中の種々雑多な企業が新規事業立ち上げや巨額投資に勤しんでいる(詳細は前回記事:熱狂メタバースに突き進む企業それぞれの皮算用)。 もっとも、メタバースブームは今回が初めてではない。 過去のブームの象徴的な存在が、アメリカのリンデンラボが2003年から運営する「セカンドライフ」だ。日本でも一般の個人はもちろん、サントリー、ソフトバンクモバイル(当時)、電通、三越などの大手企業が続々参画。セカンドライフ内に仮想店舗を出したり、マーケティング活動を行ったりと、2000年代初頭から一大ブームとなった。 リンデンラボは自社サービスを指すものとして、当時から「メタバース」という言葉も用いている。さらに空間内ではリンデンドル(空間内の通貨)での取引や、リンデンスクリプト(空間内で創造物を作るための簡易プログラミング言語)を使ったクリエーターの呼び込み・空間の拡張も行っていた。 ところが2007年をピークに、アクティブユーザー数は減少に転じる。セカンドライフ自体は現在も稼働しているものの、企業は相次いで撤退。あっという間に”オワコン”と化した。 今回のメタバースブームも、一時的なものにすぎないのではないか。セカンドライフの時代と現在とでは、何が違うのか。取材を重ねる中で見えてきたのは、当時から大きく事情が変化した3つの点だ』、興味深そうだ。
・『デバイスの発展で「大衆化」  1つ目は、デバイスやネットワークの劇的な進化だ。当時はまだ初代iPhone(2007年発売)の普及前で、メタバースに参加できたのはハイスペックなパソコンなどを所有する一部の消費者のみだった。その状況が、スマホやそれに対応するアプリの普及で一変。若年層も含め、誰もが簡単にメタバースにアクセスできるようになった。 さらに、2020年10月にメタ(当時の社名はフェイスブック)が発売したヘッドセット型のVRデバイス「オキュラス・クエスト2」も、市場拡大の下地をつくるのに一役買っていそうだ。販売実数は公表していないが、「売れ行きも非常に好調」(フェイスブックジャパンの味澤将宏代表)だという。 先代機に比べ処理速度・操作性を改良した一方、価格は下げた(先代機は4万9800円~、新型機は3万3800円~)。「メタバースは没入感のある仮想世界を実際に体験してもらわないと(面白さや利便性が)わからない。オキュラス・クエスト2はそのミッションの達成に向けて、非常にいいスタートを切れている」(味澤氏)。 2つ目の変化は、スマホの普及にも後押しされる形で醸成されたデジタル文化だ。SNSが一般化したことで、人々がリアルと必ずしも同一でないバーチャルのアイデンティティを持つことが当たり前化した。 「女子高生にインタビューすると、学歴よりもインスタグラムのフォロワーがほしいという声をよく聞く。彼女たちにとっては、デジタル世界のアイデンティティがリアル世界のそれより勝るということ。この価値観はアバター(自身の分身となるキャラクター)を介して仮想空間で他人と交流するメタバースと非常に相性がいい」 ブロックチェーン技術を用いたコミュニティサービスなどを展開するベンチャー・ガウディの石川裕也CEOはそう分析する。 「技術やサービスがより洗練されていくことで、あくまでリアルが主でバーチャルが従だったこれまでの価値観が薄れ、バーチャル上の個性や生活が主という時代が来るかもしれない」 そう展望するのは、VRゲームを皮切りにメタバース事業の拡大を志向するベンチャー・サードバースのCEOで、業界を長年眺めてきたgumi創業者の國光宏尚氏。このような価値観の変化も、メタバースの発展に影響しそうだ』、「あくまでリアルが主でバーチャルが従だったこれまでの価値観が薄れ、バーチャル上の個性や生活が主という時代が来るかもしれない」、「バーチャル上の個性や生活が主」というのは私には想像もつかない。
・『個人が「稼げる」新しい仕組み  3点目で最も大きい変化が、ユーザーや企業が「稼げる」機会の拡大だ。セカンドライフの時代には、インターネット上で決済すること自体がまだ一般消費者層まで定着していなかった。が、EC(ネット通販)やサブスクリプションサービスの普及で、スマホやPCでデジタルにお金を払うことは日常化した。 加えて、メタバースを取り巻く経済圏をさらに強力にするのがNFT(Non-Fungible Token=非代替性トークン)だ。これまでは”コピー上等”だったネットの世界に、「本物・偽物」「所有」「資産化」といった、フィジカルなものの価値を保証するのと同じ概念が根付き始めている。 【キーワード解説】NFT Non-Fungible Token(非代替性トークン)の略。「電子証明書」のようなもので、改ざんが難しいブロックチェーン技術を用いて、アートやゲームアイテムなどのデジタルデータに作者の情報などを記載。その作品が唯一無二のものであることを証明する。第三者への転売も可能で、売買金額の一定割合を原作者に還元するプログラムを書き込むこともできる。 実際、世界中の企業がメタバース上でのNFTビジネスに動き始めている。 アメリカのナイキはブロックチェーン技術を用いるバーチャルスニーカー販売の企業を2021年12月に買収。またアメリカでメキシコ料理チェーンを展開するチポトレは、メタバースプラットフォーム「ロブロックス」内に出店。リアル店舗でブリトーと引き換えられる限定コードを配布するなど、リアル・バーチャル横断の取り組みを行っている。 デジタル上の資産を個人でスムーズに売買できるシステムも整い始めた。例えば世界最大のNFTマーケットプレイス「オープンシー」では、ブロックチェーンゲームのアイテムやデジタルアートが、イーサリアムなどの暗号資産を用いて取引されている。 ブロックチェーンを使ったゲームなら、ゲーム内で創造した成果物などに金銭的価値をつけられる。「数年内にはメタバース内で家などを建ててNFTとして販売し、親より稼ぐようになる子どもが続出するだろう。人々はメタバースを通じて、学歴や資格などで決まってきたリアル世界のヒエラルキーから解放されるかもしれない」(サードバースの國光氏)。 リアル世界と遜色ないような稼ぎ口が発展すれば、そこで活躍したいと考える個人や企業がよりメタバースに集まりやすくなるだろう』、「「数年内にはメタバース内で家などを建ててNFTとして販売し、親より稼ぐようになる子どもが続出するだろう」、とあるが、「メタバース内で家など」を購入することにどういう意味があるのだろう。全く理解できない。
・『参入各社の「同床異夢」  セカンドライフ時代との技術や価値観の違いは、確かにありそうだ。ただ、メタバースがマスに定着するかを占ううえでは、拭えない懸念もある。 その1つは、デバイスやVR制作の技術が、かつてより進化したとはいえ未熟だという点だ。またそれらを使う側の企業も、技術の特性や現時点での限界を深く理解しないまま踏み込んでいるケースが少なくない。 法人向けにメタバース関連のコンサルティングや制作支援を行うSynamon(シナモン)の武井勇樹COO(最高執行責任者)は、「顧客企業のアイデアの中には、そのまま実装するとユーザーがVR内で酔ってしまうようなものもある」と話す。 「そういう場合には軌道修正を提案している。細かな調整を怠ると、せっかく時間とお金をかけて行ったイベントなのにユーザー離れを起こしてしまったり、VRそのものに”がっかり感”を持たれてしまう危険もある」(武井氏) もう1つの懸念は、業界内が決して”一枚岩”ではないという点だ。2021年12月には技術・サービスの普及などを目指す業界団体・日本メタバース協会が設立されたが、暗号資産系企業4社が音頭を取る組織構成に対し、業界内外から「当事者不在では」と疑問の声が上がった。 「メタバース=NFTではない。声の大きい人が『これがメタバースの定義だ』と言うと、(一般の理解が)その通りになってしまう。それは業界の健全な発展にとっていいことなのか」(メタバース関連企業幹部) 参入企業が急増しているだけに、メタバースで成し遂げたいビジネスがバラバラになるのはある程度仕方がない。互いの差異に折り合いをつけつつ協力関係を築けるかが、今後の業界発展のカギになるかもしれない』、技術革新が速い業界では、「業界内が決して”一枚岩”ではない」のはやむを得ないとしても、「一般」が理解できない対立は避けてほしいものだ。

第三に、1月18日付け東洋経済Plus「先駆者clusterが普及に自信を抱く合理的根拠 和製メタバースで「暮らす」「稼ぐ」人と企業の全容」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/29476
・『コロナ禍が収束してもなお、メタバースの熱狂は収まらないのか。「バーチャル渋谷」で55万人の集客実績を持つベンチャーのCEOを直撃した。 2017年にリリースされたメタバースプラットフォーム「cluster(クラスター)」。スマートフォンやパソコン、ヘッドセット型のVRデバイスを通じ、バーチャル上で音楽ライブなどのイベントに参加したり、ユーザー自ら制作した空間で友人と遊んだりできる。運営主体はサービスと同名の国内ベンチャー、クラスターだ。 イベントや空間活用の支援を行う法人向け事業も展開し、コロナ禍のハロウィーンイベントに数日間で55万人を集めた渋谷区公認の「バーチャル渋谷」など実績は豊富だ。直近で公開している2020年のイベント数は1500件超と、前年の4.5倍だ。2021年はこれをさらに上回った。 クラスター内に「”住み着いている”人もいる」と表現する加藤直人CEO。ユーザーや企業は、クラスターをどう活用しているのか。急速に熱を帯びるメタバース市場で、どんな成長を描くのか。本人にじっくり聞いた(Qは聞き手の質問、Aは加藤氏の回答)』、興味深そうだ。
・『非リアルでもライブチケットは6000円  Q:2017年からサービスを展開する中で、メタバースに興味を持ったり、クラスターに案件を依頼してくる企業の数や属性に変化はありますか? A:最初はやはりエンタメ、とくに音楽ライブで使われることが多かった。 2018年ごろからバーチャルユーチューバーが流行し、彼らの活用法を見たリアルのアーティストもこの市場にやってくるようになった。ライブ需要は今も大きく、お客さんの側も、5000~6000円とか、リアルのライブと遜色ない価格のチケットを買って参加してくれている。 2020年からはコロナ禍に突入し、現実世界ではイベントと名のつくものが全部できなくなった。それらがクラスターに全部入ってきて、ピーク時は半年で1000件以上問い合わせがあった。2021年もイベント数はさらに増え、売り上げは2020年の倍になっている。 最近の傾向としては、エンタメとは別の需要が勃興している。企業が顧客向けに行うカンファレンスや全社会議、内定者研修など、厳かな雰囲気のイベントだ。 Q:こうした法人需要は、コロナ禍の収束後も残るでしょうか。 A:そう思う。なぜなら、リアル開催より圧倒的にコストが安いから。店舗や支店を多く持つ大企業だと、全社会議を行うのに膨大な交通費や宿泊費、会場費がかかる。ビデオ会議を使うケースも多いが、参加者が50~100人を超えてくると、どうしても虚空に向かって話している感じが否めず一体感が出ない。 バーチャル空間で開催すると、お互いのアバターが見えるし、反応も見えるし、集まっている感じがある。空間内で、小さいグループになってしゃべることもできる。こうした利便性から、導入企業の中にはリピーターも多い。 (加藤氏の略歴はリンク先参照) これらの利点はエンタメ系のイベントにも通じる。なんのためにイベントをやるかというと、IP(キャラクターなどの知的財産)の価値向上、つまりもっとファンになってもらうため。公式サイトでの情報発信などで足りない部分を、これまではリアルイベントが担っていた。 でもそれはそれで、運営などのコストが大きい。にもかかわらず、開催地の近郊の人しか来られない。バーチャルなら全国、全世界から人を集めて熱量の高いイベントを行えるし、物理的には実現しにくいギミック(仕掛け)を入れ込むこともできる』、「最近の傾向としては、エンタメとは別の需要が勃興している。企業が顧客向けに行うカンファレンスや全社会議、内定者研修など、厳かな雰囲気のイベントだ」、「大企業だと、全社会議を行うのに膨大な交通費や宿泊費、会場費がかかる。ビデオ会議を使うケースも多いが、参加者が50~100人を超えてくると、どうしても虚空に向かって話している感じが否めず一体感が出ない。 バーチャル空間で開催すると、お互いのアバターが見えるし、反応も見えるし、集まっている感じがある。空間内で、小さいグループになってしゃべることもできる。こうした利便性から、導入企業の中にはリピーターも多い」、なるほど。
・『空間が民主化されてこそメタバース  Q:急激に勃興してきただけに、「メタバース」そのものの定義はまだあやふやな面もあります。加藤さんはどう考えますか。 A:最も重要な要素は、個人のクリエーターが空間作りに参加していること。1社が全部デザインして作った世界じゃなくて、そこにやってきたクリエーターたちの創造物で構成されている世界だ。 われわれも3DCG(コンピューターグラフィックス)を作れるキットを提供していて、開始から約1年で5000以上の創造物がアップロードされた。ユーザーはカフェを作って”飲み会”を開催したり、競馬場を作ってゲームに興じたりしている。1日10時間以上滞在するなど、ここに”住み着いている”人々もいる。 今までだって3D空間で遊ぶオンラインゲームはあったけど、空間が民主化されていて、クリエーターによって提供事業者側とは全然発想の違う物がばんばん出てくる、そういうものこそがメタバースだと思っている。 Q:2000年代にも「セカンドライフ」登場によるメタバースブームがありましたが、あっという間に廃れました。今回は何が違うのでしょうか。 まず、一般消費者の参加ハードルがめちゃくちゃ下がった。当時はそこそこ優秀なパソコンを持っていないと入れなかったので、大衆化へのキャズム(溝)を超えられなかった。それが今は、スマホで3Dがぐりぐり動くようになった。クラスターにもパソコンなんて持っていないような女子高生や小学生が、自分のスマホや親のタブレット端末で遊びに来ている。 クリエイティブツールのハードルが下がったのも大きい。当時はアバターや空間を作るツールがこなれていなかった。ほかにも通信容量やチップの性能など、当時と大きく変わった部分はさまざまある。 もう一つ重要なのが、メタバース上での消費が生まれるようになったこと。以前のブームも(バーチャル店舗を出す、マーケティングに活用するなどの形で)企業のお金は飛び交っていたけど、消費者のお金は流れ込んでいなかった』、「1日10時間以上滞在するなど、ここに”住み着いている”人々もいる」、比喩としても驚かされた。
・『エピックゲームズはもはやアパレル大手?  Q:確かに、デジタル上でお金を払うことは今や当たり前になりました。 A:EC(ネット通販)やデジタルコンテンツ課金の普及で、技術的にも心理的にもハードルが下がった。(メタバースの代表格でもある)エピックゲームズのフォートナイトでは、「スキン」(アバターのコスチューム)が年間30億~40億ドル売れていると言われている。ある意味、世界で最もたくさん服を売っているアパレル企業でもあるわけだ。 加えて、今後はプロが作った物だけでなく、個人クリエーターや、そういう自覚がないような一般の人の作品も消費の対象として台頭してくるだろう。動画の世界で、テレビ番組や映画だけでなくユーチューバーの作品が人気を集めるようになったのと同じだ。 クラスターはまだ、作ったゲームアイテムを売れるような仕組みを備えていないので、このあたりは今後増強していく。世界的にもそこが焦点になるかなと思う。一部のメタバースプラットフォームにはそういう機能が実装されているが、より簡単で便利なサービスを作れるかの勝負はこれからだ。 Q:メタバース上での消費拡大について展望するとき、NFT(Non-Fungible Token=非代替性トークン)とセットで語られることが多いですね。 A:NFTはまた別で成長している概念で、メタバースの発展に必要不可欠かというとそうではない。もちろん絡む部分はある。ただ今のところ、NFT界隈の人々とバーチャル世界に”暮らす”人々、それぞれにコミュニティがあって、まだクロスしていない印象だ。 まずは今あるデジタル課金の仕組みで、メタバース上の消費が十分盛り上がっていくのではないか。フォートナイトでのスキンのバカ売れもこの文脈だ。 「NFTあってのメタバースだ!」と主張するのは、事業上、NFTを売りたい人たちなんだろう。かといって「メタバースにNFTは絶対必要ない!」という主張も、あまりに原理主義的だなと感じる。クラスターにもNFTとして購入したアバターで入ってくる人が増えた。メタバース×NFTの面白い体験が、今後いっぱい出てくるはずだ』、私には理解不能な世界だが、「NFT界隈の人々とバーチャル世界に”暮らす”人々」、とも「まだクロスしていない印象だ」。「今あるデジタル課金の仕組みで、メタバース上の消費が十分盛り上がっていくのではないか」、なるほど。
タグ:「デジタルな作品の場合は、オリジナルとコピーに違いは何もない。違いは、創作者が認めた正当な取引を通じて手に入れたというだけのこと」、見分けは確かに困難だ。 「NFTを用いたデジタル創作物の取引は、現実の世界ですでに行なわれている」、「ブロックチェーン技術を活用」することで、多重譲渡を防止する歯止めになるのだろうか。 「メタバース計画に参入」は確かにすごいブームだ。 野口 悠紀雄氏による「メタバースが「デジタル創作物」のマーケットを作りだそうとしている NFT=非代替性トークンの威力とは」 (その1)(メタバースが「デジタル創作物」のマーケットを作りだそうとしている NFT=非代替性トークンの威力とは、「セカンドライフ」の二の舞は避けられるのか メタバース沸騰が「過去のブーム」とまるで違う点、先駆者clusterが普及に自信を抱く合理的根拠 和製メタバースで「暮らす」「稼ぐ」人と企業の全容) メタバース(仮想空間) 「デジタルアーツの価格はバブルであると言える」、やはりそうかというのが正直な感想だ。 まだ発展途上の技術に対しては、法規制の適用は慎重であるべきだ。 現代ビジネス 東洋経済Plus「「セカンドライフ」の二の舞は避けられるのか メタバース沸騰が「過去のブーム」とまるで違う点」 「あくまでリアルが主でバーチャルが従だったこれまでの価値観が薄れ、バーチャル上の個性や生活が主という時代が来るかもしれない」、「バーチャル上の個性や生活が主」というのは私には想像もつかない。 「「数年内にはメタバース内で家などを建ててNFTとして販売し、親より稼ぐようになる子どもが続出するだろう」、とあるが、「メタバース内で家など」を購入することにどういう意味があるのだろう。全く理解できない。 技術革新が速い業界では、「業界内が決して”一枚岩”ではない」のはやむを得ないとしても、「一般」が理解できない対立は避けてほしいものだ。 東洋経済Plus「先駆者clusterが普及に自信を抱く合理的根拠 和製メタバースで「暮らす」「稼ぐ」人と企業の全容」 「最近の傾向としては、エンタメとは別の需要が勃興している。企業が顧客向けに行うカンファレンスや全社会議、内定者研修など、厳かな雰囲気のイベントだ」、「大企業だと、全社会議を行うのに膨大な交通費や宿泊費、会場費がかかる。ビデオ会議を使うケースも多いが、参加者が50~100人を超えてくると、どうしても虚空に向かって話している感じが否めず一体感が出ない。 バーチャル空間で開催すると、お互いのアバターが見えるし、反応も見えるし、集まっている感じがある。空間内で、小さいグループになってしゃべることもできる。こうした 「1日10時間以上滞在するなど、ここに”住み着いている”人々もいる」、比喩としても驚かされた。 私には理解不能な世界だが、「NFT界隈の人々とバーチャル世界に”暮らす”人々」、とも「まだクロスしていない印象だ」。「今あるデジタル課金の仕組みで、メタバース上の消費が十分盛り上がっていくのではないか」、なるほど。
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英語(その3)(外国人が心底残念に思う日本の偏った英語教育 このままではプログラミング教育も微妙に、「恥をかかないビジネス英語」 認知科学者が教える正しい独学方法とは、英語力「112カ国中78位」の日本で広がる外国嫌い 「そして外国人は日本を見捨てる」でいいのか) [生活]

英語については、2018年7月18日に取上げたままだった。今日は、(その3)(外国人が心底残念に思う日本の偏った英語教育 このままではプログラミング教育も微妙に、「恥をかかないビジネス英語」 認知科学者が教える正しい独学方法とは、英語力「112カ国中78位」の日本で広がる外国嫌い 「そして外国人は日本を見捨てる」でいいのか)である。

先ずは、2019年7月12日付け東洋経済オンラインが掲載したレノボ・ジャパン社長のデビット・ベネット氏による「外国人が心底残念に思う日本の偏った英語教育 このままではプログラミング教育も微妙に」を紹介しよう。
・『このコラムにはコメント欄が付いていて、毎回読ませてもらっています。貴重なご意見ありがとうございます。その中で、たびたび指摘があるのが、日本の英語教育制度についてです。そこで今回はいつもとは少しコラムのテーマを変えて日本と海外の外国語教育の違いについて、私の意見も述べながら書いてみたいと思います。 私の祖国カナダでは、公用語が英語とフランス語です。まず、公用語が複数あると聞くと、日本の方には特殊なように聞こえるかと思いますが、世界の多くの国は複数の公用語を使っています。例えばスイスでは4つ、インドでは州の公用語も含めるとなんと22の公用語があります。こうした複数の公用語を持つ国では、当然子供のころから複数の言語に触れて育ちます』、「複数の公用語」とは聞いただけでゾッとする。
・『「イマージョン教育」でフランス語を習得  カナダの場合、すべての地域で製品のラベルや標識、ウェブサイトも英語フランス語併記が原則です。私が大学のときに住んでいたカナダのトロント(オンタリオ州)をはじめ大体の地域は英語圏で、住民は基本的に英語を使います。小学校2年生からフランス語の授業が義務づけられており、ほとんどはある程度のフランス語の読み書き、会話が問題なくできます。 一方ケベック州だけはこの逆で、市民は基本的にフランス語を話し、2年生から英語の授業が義務化されており、日常に困らない程度の英語を身に付けています。 カナダでわれわれが受けてきたフランス語の授業は、文法という概念を教えることはほとんどなく、「イマージョン(注)」といわれる方法で語学以外のすべての授業がフランス語で行われ、外国語の洪水の中で自然にコミュニケーションが取れるレベルになります。 日本でも来年から小学校で英語の授業が義務化されます。実は私はIT業界の仕事をする前、香川県で文科省の国際交流員の仕事をしていました。そのとき地方都市での英語学習の実態を見てきた経験からみて、英語教育について2つの課題を感じています。) 1つは英語ネイティブの「ALT(Assistant Language Teacher)」の偏在です。私が勤務していた地域では、1人のALTが20校もの学校を巡回しなければならず、ネイティブな先生の英語に触れられる機会は月に1回という学校もありました。こうなるとカナダの例のようにイマージョンというレベルの授業には程遠く、授業の進め方には相当な工夫が必要でしょう。 もう1つはまさにその授業の進め方です。私が教育の仕事に関わっていたのは10年以上前なので、その頃よりは会話重視の授業に変わってきているようですが、どうしても暗記と文法主体の英語学習に偏りがちです。 英語授業の本来の目的はコミュニケーションがとれるようになることです。文法は不要とは思いませんが、現在平均的な日本人が持っている非常に高い英文法の知識までは必要ないかと思います。英語学習において「知識を得ること」「間違えることはよくないこと」という感覚は他の教科以上に排除すべきです』、「「英語学習において「知識を得ること」「間違えることはよくないこと」という感覚は他の教科以上に排除すべきです」、大賛成だ。
(注)イマージョン(教育):外国語を教科としてではなく、手段としてその他の教科を学習する教育方法のこと(Education Career)。
・『語学は音楽やスポーツと同じ  例えば体育の授業でサッカーのパスができない子がいた場合、どう教えるでしょうか。何度も失敗して、そこから感覚を徐々に身に付けてできるようになります。「パスの方法をカードに書いて丸暗記しよう」「パスの練習は恥ずかしい」というアプローチでは、上達は期待できないはずです。 英語は学問でなくコミュニケーションなので、スポーツ、あるいは音楽と同じように感覚として身に付けるべきなのですが、それだけの経験を積む機会が作れないということが課題なのだと思います。 こうした課題は指摘されて久しいと思いますが、結局のところ教育にかける予算やリソースが追いついていないという問題が立ちはだかります。とくに私が勤務していたような地方都市になればそれは深刻です。しかもこの問題は英語だけではありません。やや脱線しますが、2020年から小学校で義務化されるプログラミング教育も、同じような課題を抱えています。 この2つがいかにつながっているのか説明します。 東洋経済オンラインをお読みになっているビジネスパーソンならご存じの通り、現在あらゆるものがインターネットにつながってインテリジェントになる、インテリジェント・トランスフォーメーションの節目にわれわれは立っているといえます。AIによって仕事がなくなるという人もいますが、一方でデータサイエンティストのような仕事が世界的に花形の職業となる可能性もあり、子どもの頃から英語とともにプログラミングを学習させることは、これからの時代にあったすばらしい政策といえます。 しかも、プログラミング授業ではパソコンやタブレットが使われます。このITデバイスをうまく英語教育にも使えばこれぞまさに一石二鳥(ちなみにこの四字熟語はもともと英語です)で、ネイティブな先生と1日1時間ビデオチャットで(あるいはVRならさらにすばらしいかもしれません)英語を話す経験ができれば、先に指摘したコミュニケーションの機会は飛躍的に増える可能性があります。 ところが現実には、プログラミング教育に必要なパソコンすら満足に学校で用意できないという課題があります。つい最近、文科省がまとめた資料によると、プログラミング授業の導入状況について、大規模な自治体ではすでに約7割が授業を実施しているにもかかわらず、小規模な自治体では30%を少し上回っただけということで、自治体の格差が懸念されています。 本来地域に関係なく、個人の才能を世界につなげるはずのITが、逆に格差を生むようなことになってはいけないと、大いに懸念を持っています。この問題は行政だけに任せず、われわれIT業界に取り組んでいかなければならないと考えています』、「プログラミング授業ではパソコンやタブレットが使われます。このITデバイスをうまく英語教育にも使えばこれぞまさに一石二鳥・・・で、ネイティブな先生と1日1時間ビデオチャットで・・・英語を話す経験ができれば、先に指摘したコミュニケーションの機会は飛躍的に増える可能性があります」、その通りだ。
・『母国語の違いがハンデになる可能性も  と、たまにはIT企業の経営者らしいことを言ってみました(笑)。語学とテクノロジーについてもう1つ、経営的な視点のお話をします。 私の知る限りニュートン物理学というものは世界のどこにいっても同じ実験結果を示し、母国語がなんであれ数学をかじった人であればフェルマーの最終定理が究極の難問であることはわかります。 STEM(Science、Technology、Engineering、Mathematics)の素養は国境や言語に関係なく公平に評価されるスキルなのです。だからこそ、世界に出ていくためのハンデはコミュニケーションにあることは明白で、私の会社でもとくに技術職には語学の習得を頑張ってもらい、いつでも世界デビューしてもらえるよう応援しています。 このことを、視点を変えて捉えると日本など非英語圏には、母国語の違いがハンデとなって世界に出てきていない優れた人材が多数眠っているということにもなります。昨今グローバル企業がダイバーシティーを進めているのも、人材の多様性にあるこうした可能性に注目しているためです。 今回は、私自身が教育というものをライフワークとして捉えているので、つい熱が入ってしまいました。AIなどの発展で、これから物事の基準が大きく変わっていくことは間違いなく、英語のスキルが不要になる時代が訪れるかもしれません。しかし、その時代に求められる教育について議論することは意味のあることです。そして、日本で本当によい英語教育が行われるかどうかの節目のタイミングは今なのです』、「日本など非英語圏には、母国語の違いがハンデとなって世界に出てきていない優れた人材が多数眠っているということにもなります」、言われてみればそうかも知れないが、優秀な人材であれば、「母国語の違い」も乗り越えられる筈だ。やはり、「母国語の違いがハンデとなって世界に出てきていない優れた人材が多数眠っている」、というのは夢物語に近いのではなかろうか。

次に、9月19日付けダイヤモンド・オンライン「「恥をかかないビジネス英語」、認知科学者が教える正しい独学方法とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/280515
・『『英語独習法』(岩波新書)が売れている。本書は認知科学の概念である「スキーマ」と呼ばれているものをカギに英語力向上を書いたもので、日本語と英語の認知的な違いを理解することに重点を置く。その独自メソッドを、著者であり慶應義塾大学環境情報学部教授の今井むつみ氏に聞いた。(清談社 沼澤典史)』、興味深そうだ。
・『言語感覚をつかさどる概念 スキーマとは  ビジネスにおける英語の必要性は耳にタコができるほど聞いている人が多いだろう。それに伴うように、昨今は教材も学習法も無数にあふれているが、そのなかで11万部という売り上げを記録しているのが『英語独習法』である。 著者の今井むつみ氏はみずから「英語学や英語教育学の専門家ではない」と話すように、認知科学の研究者。そんな今井氏は日本の英語学習についてこう話す。) 「多くの人にとって英語は何かを達成するための道具であり、目的ではないはずです。しかし、日本の英語学習はその点が曖昧。まず自分が何において熟達したいのかを明確にし、そのなかで英語はどういう役割を果たすのかを考えるべきです。それによって訓練も変わってきます。試験に合格するためにはそれに最適化された教材で試験対策をすることはある程度効果的だとは思いますが、ビジネスなどでのコミュニケーション力を上げるのが目的であれば、試験と同じ手法で勉強しても効果は薄いでしょう。にもかかわらず、日本には認知プロセスの観点からすると、不合理な学習法が多くあります」 今井氏は言語と思考の関係、子どもの母語習得のしくみなどを長年研究してきた。同氏は「合理的な学習法の提案」と「その理由としくみを解説する」ことに本書では主眼を置いている。 カギとなるのは「スキーマ」という概念だ。 「スキーマは『知識のシステム』というべきものですが、多くの場合、持っている意識はありません。例えば、子どもや外国人が話す日本語に違和感を抱くのはスキーマによるものです。しかし、その違和感をすべて言語化することはできない。このように言語のスキーマは、ほとんど言語化できませんが、無意識にみなさんアクセスしています。英語にも同様のスキーマがありますが、日本語スキーマとの間に多くのずれが存在している。このずれを理解し、英語スキーマを獲得することが英語上達のカギとなるのです」 可算名詞と不可算名詞、aとtheの運用なども英語スキーマを獲得している人は無意識に使い分けられるが、日本語スキーマから切り替えができないと、非常に苦心するのだ』、「ビジネスなどでのコミュニケーション力を上げるのが目的であれば、試験と同じ手法で勉強しても効果は薄いでしょう。にもかかわらず、日本には認知プロセスの観点からすると、不合理な学習法が多くあります」、早く合理的な「学習法」に移行してほしいものだ。
・『英語記事を熟読し著者の意図を深掘りする  ビジネスにおいて、英語でメールやレポートを書き、ミーティングなどを行う人も多いだろう。英語スキーマを身につければ、当然、その質は向上する。 そのためにどうすればいいのか。 今井氏は「ライティングに重点を置くべき」とし、次のように話す。 「まずは、日本語の単語を英語の単語に置き換えて文を作るという発想を変えます。日本語の文は漢語名詞が中心となり、動詞に重点をおきません。一方、英語は動詞と前置詞を中心に文を作る言語です。そのため、『○○する』をそのまま英語に置き換えると変な文章になります。例えば『瓶がプカプカ浮かんだまま洞窟に入っていった』という文章は、ついA bottle entered the cave, slowly floating. と書きたくなりますが、英語母語話者はA bottle floated into the cave.と表現するでしょう。日本語では『入る』という動きの様子を擬態語の『ぷかぷか』で表しますが、英語はfloatのような様態動詞に方向を表す前置詞を組み合わせます」 日本語の「歩く」にあたる動作でも、英語にはさまざまな歩き方を一語で表す様態動詞がある。ぶらぶら散歩する(amble)、よちよち歩く(toddle)、重い足取りで歩く(trudge)などだ。英語スキーマを獲得している人ならば、様態動詞を自分の語彙に取り込みやすく、この使い分けができるのだが、日本語スキーマしかないと、walkプラス修飾語で表現しがちだ。それではスキーマを獲得するには何をすればいいのか。 「スキーマは教わって身につくものではなく、自分で独習すべきで、そのためには単語の意味を探求する必要があります。このとき、日本語と英語の一対一の意味を知るだけではなく、一緒に使われる単語や、単語が使われる文脈、頻度、フォーマルな場面で使えるか否かなどを探っていくことが重要です。例えば、『追いかける』と訳されるpursueとchaseという2つの動詞があります。pursueはcareer, goal など、chaseはcat, ballなどと一緒に使われます」 つまり前者は抽象的概念、後者は物理的に動くものが「追いかける」対象になるのだ。 「いくら珍しい単語を使っていても文脈的に間違って使われていれば、その人の英語力は低いとビジネスパートナーに判断されるでしょう。また、近年の英語は国際語にもなっているので、非母語話者にとってわかりやすい英語が求められています。したがって、多くの学習者の現実的な目標は、珍しい単語を幅広く知ることではなく、基本的な単語を適切な文脈で使えることでしょう」 より“深く”単語の意味を知ることがスキーマ獲得につながる。獲得に役立つのはネットからアクセスできるコーパス(言語資料のデータベース)だ。サービスには『SkELL』『WordNet』などがあり、ここで単語を検索すれば多くの文例や類義語を見ることができる。 「自分がよく読むジャンルの英語記事や情報誌などをただ読むだけではなく、『なぜこの単語をこの文章で使ったのか』とコーパスなどを使って著者の単語選択の意図を深掘りするのはスキーマを作る上で有効です。そのように1ページでもいいので熟読し、まねをして書けば英語力は向上します」』、「コーパス」などは初めて知ったが、便利そうだ。ヒマな時に使ってみよう。
・『端的でわかりやすい「007」の英語  ライティング学習を進めていく上で重要なのはアウトプットとフィードバックだ。 「英文を書いてみたら自分なりに見返し、伝えたいことが伝わっているか、より良い表現はないか、冠詞などの間違いはないかをチェックしましょう。その後、できれば英語話者に確認してもらいフィードバックを受けられるとなお良いですね。文章を書けないようでは、話しても内容が薄く、聞き手が理解しづらいでしょう。まずはライティングを鍛えることを意識しましょう」 また、今井氏は、リスニングもスキーマの獲得に寄与するとして、TEDや映画の視聴を勧める。 「話の展開がある程度予想できて、そのジャンルの語彙力があれば理解ができるようになります。TEDで興味のあるスピーチや好きなジャンルの映画の英語を聞き取り、文脈や用法を探求するのも良いでしょう。映画に関して言えば、セリフが短く、世界中の観客に伝わるようなわかりやすい単語が使われていることが多いアクションはよい題材かもしれません。特に人気映画『007』シリーズの『007スペクター』の脚本は素晴らしく、端的でわかりやすい文章なので参考になります」 ちなみに試験対策用の録音教材は背景情報がほとんどなく、話の展開も予想しづらいので、試験勉強以外の目的のためには最も不適切で、リスニング力の強化には向かないそう。 コロナによって自粛生活が続くなか、『独学大全』が大ヒットし、にわかに独学、独習ブームが起こっている。今井氏も「みずから学ぶ力は大事」だと語る。 「どんな技能でも、熟達者になるには知識をみずから探求し、発見する過程で『生きた知識を生み出すサイクル』を作ることが必要です。今回のスキーマを意識した独習法はほかの言語学習においても役立ちます。もちろん、アウトプットをせず、他言語で書かれた情報のみ知りたい人は、ここまでする必要はありません。ただ、高校生より高いレベルの英語でのアウトプットを求める人にとっては、実践してほしい学習法です」 長らく続く自粛生活。そのなかで英語スキーマの獲得を目指してみてはいかがだろうか』、もっと早く知りたかった。

第三に、1月20日付け東洋経済オンラインが掲載した『フランス・ジャポン・エコー』編集長、仏フィガロ東京特派員のレジス・アルノー氏による「英語力「112カ国中78位」の日本で広がる外国嫌い 「そして外国人は日本を見捨てる」でいいのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/475201
・『日本は112カ国中78位――。近年、さまざまな指標における世界での日本のランキングの低さが話題になるが、ついに「英語力」も下から数えたほうが早くなってしまった。11月16日に発表された、EF英語能力指数(EF EPI)において日本の順位は2020年の55位から大幅にランクダウン。2011年の14位からは急落している。ちなみに、隣国の韓国は34位と日本から背中すら見えない状態だ。 これは単に日本人が、英語が苦手である、ということを意味しているのではない。このランキングが示しているのは、日本の外国人嫌いが加速し、国全体が急ピッチで孤立主義の姿勢を強めつつあることだ』、「日本の外国人嫌いが加速し、国全体が急ピッチで孤立主義の姿勢を強めつつある」、とは極めて危険な兆候だ。
・『楽しかった雰囲気が成田空港で一変  外国人にとっても日本はかつてより住みにくい国になっている。特にコロナ禍でその状況は「悪化」している。2021年8月17日、パリ発東京行きのエールフランス航空AF275便に乗っていた人たちもそう強く感じる場面があった。 パリから日本へ向かう機内には、楽しげな雰囲気がただよっていた。これはどこにでもあるフライトではない。フランスのビジネス界では「エア・エクスパット」と呼ばれているこのフライトには、夏休みを利用して帰国していたフランス企業のトップたちが大勢乗っていた。 彼らがこのフライトを選んだのは、学校が始まる前日の9月1日に、子どもたちの隔離期間が終わるのにあわせて入国するためだった。彼らは日本でも定期的に会っており気心知れた間柄だったうえ、夏休み明けで気分も高揚していた。 ところが、成田空港の入国審査でその雰囲気は一変した。 12時間のフライトの後、何日間にもわたって、新型コロナウイルス流行時に導入された特別な手続きをしなければならなかったからである。フランス企業のトップたちは、すべての入国希望者に課せられた手続きなどをしないといけないことは理解していた。グローバル企業の幹部である彼らがうんざりしたのは、手続きのあまりにひどい非効率さである。 彼らには、官僚主義の狂気を描いた、フランツ・カフカの小説の主人公が今や成田空港における手続きを担当しているようにすら見えた。審査官らは英語が苦手で、ほとんどの手続きを外国人スタッフに頼っていた。 その中でも特に印象的だったのは、手続きの最終段階で、日本人職員が何度も書類をチェックした後、「再確認!」と言って、別の職員に渡し、同じ作業を繰り返したことだ。「今の日本に本社の役員を招くことはとてもできない。こんなプロセスを経させたら会社はすぐさま日本への投資をやめるだろう」と、このフライトに乗っていたあるフランス人は嘆く。 それ以来、事態はさらに悪化している。いまだに時間のかかる紙の手続きに頼っているため、多くの人の時間を無駄にしている。旅行者(時には子どもも含めた家族全員)が、成田空港で8時間も待たされることが日常茶飯事で、中には、3日間の隔離のために名古屋まで飛行機で運ばれる人もいる。成田の職員が旅行者に渡す、下線や太字の入った大量の紙は、ツイッターを介して世界中で揶揄されている』、「エア・エクスパット」は「学校が始まる前日の9月1日に、子どもたちの隔離期間が終わるのにあわせて入国する」、なかなかよく出来たフライトプランだ。しかし、入国手続きで「今の日本に本社の役員を招くことはとてもできない。こんなプロセスを経させたら会社はすぐさま日本への投資をやめるだろう」と、このフライトに乗っていたあるフランス人は嘆く」、これは確かに酷い。
・『外国人居住者の入国を拒否する日本  日本における感染者数と死亡者数を見る限り、日本のコロナウイルスへの対応は極めて良好である。本稿の執筆時点では、日本でコロナウイルスに感染して死亡する可能性はほとんどない。 しかし日本は、ほかの民主主義国があえて実施しようとはしないような不作法で無頓着な方法で自国を封鎖している。パンデミックが始まって以来、日本の政治家は、外国人の日本への入国を拒否することで、日本に将来を託そうとしていた外国人学生、労働者、投資家などの計画を壊してきた。 しかも、ここへきてオミクロン株の侵入を防ぐという理由で当面、外国人の新規入国を原則停止したのである。最も衝撃的だったのは、オミクロンと関係のあるアフリカの10カ国からの日本国籍者を認める一方、永住者など一部を除く外国人居住者の入国を禁止するというものだった。 日本が自国民と外国人居住者を「区別」するという措置に対して、ヨーロッパ系航空会社の幹部は、「これは非常に不快な話だ」と怒りを露わにする。「これは、日本に住む外国人が、当面日本の自宅に帰宅できないことを意味している」。 岸田文雄首相はこの政策を勇気あるものと偽っていたが、世界保健機関(WHO)の健康危機管理プログラム責任者であるマイケル・ライアンは、日本人記者の質問を受け、日本の外国人の新規入国禁止をこう説明した。 「疫学的には、(自国民以外のフライトを禁止するという)原理を理解するのは難しい。ウイルスがパスポートを読み、(中略)国籍や法律上の居住地を知るというのだろうか(中略)ほとんどの国を封殺できるという日本政府の考えは、正直なところ、不可能だ」 日本の「外国離れ」はあらゆる場面で見られる。 例えば、政治家たちはかつてより外国人を軽視している。筆者が来日した1995年当時、有力な国会議員のスタッフには、若い外国人研修生がおり、外国からの情報を議員に提供するなどしていた。それは政治家たちが自らを世界に開かれた存在であると示す手段でもあった。そんな政治家たちは「国際派」と冗談で呼ばれていた。 「しかし、今では外国人研修生はいなくなってしまった。そんなことをしたら、その議員は日本人よりも外国人を優遇しているというシグナルを送ることになってしまうからだ」と、あるアメリカ人ロビイストは語る。 今や岸田首相は、野党からも、外国人を日本から締め出すためにより一層の努力をするように迫られている。そして日本国民は90%の確率で彼の施策を支持している。私自身、国境をもっと開くことを支持するこのような記事を書くことで、多くの批判を受けるだろう。しかしこうした政策をとることによって日本が強くなるとは到底思えない。 金融業界でも「孤立主義」が炸裂している。東京や福岡、そして大阪も「金融ハブ」を標榜しているが、上述の通り日本には英語を話せる人材が不足しているうえ、不透明な規制があり、新しい考えの受け入れに消極的で、キャピタルゲインへの厳しい課税があるにもかかわらず、こうした問題を解決するための具体的な努力をしていない。こうした中、海外の金融機関は東京を去り、シンガポールや韓国に拠点を置き始めている』、
・『オフィスの新設場所に日本は選ばない  こうした日本の状況に呼応してか、海外からの日本への関心も低下している。2006年、当時の小泉純一郎首相は、2011年までにFDI(海外直接投資)をGDP(国内総生産)の5%に引き上げることを公約した。その15年後、FDIは4.7%とOECD加盟国の中で最低となっている。2番目に低い韓国は、日本の3倍である。3位の欧州連合(EU)は75%で日本の15倍だ。767%のルクセンブルグは日本の163倍である。 日本企業の買収に、いまだに興味を持つ外国企業もある。後継者がいない企業においては、これは一生に一度のチャンスとも言える。「しかし日本企業は、外国企業に買収される位なら死ぬほうを好みがちだ」と、フランスの監査法人の支社長は嘆く。 今や外国企業は工場やオフィスの設立場所を決める際に、日本を迂回するようになっている。中には北東アジアの本部を日本から韓国に移した企業もある。日本はコストが高く、労働力が減少しているため、外国企業はますます日本に生産拠点を置く意味がなくなってきているのだ。 かつて国際企業の若い幹部候補たちは、キャリアアップの足がかりとして日本でのポジションを切望していた。が、今はもう違う。日本におけるほとんどの市場が縮小しているため、日本は高齢の幹部が優雅にキャリアを終えるために定年前に甘い汁を吸える赴任地となっている。 中にはこうした駐在員の赴任期間後に後任がこず、報酬の安い現地幹部(もちろん日本人である)に仕事を任せてしまう場合もある。こうした状態が続けば、日本人の現地スタッフは外国人とかかわる意欲や能力を失ってしまう。実際、「ソウルの韓国人社員はみな私より英語ができる」とあるフランス大手企業の日本支社長は打ち明ける。 「日本離れ」は外交面でも顕著である。フランス外務省は、かつて最高の外交官を派遣していた。 私が来日した1995年以降、外務省のトップ官僚である「事務局長」の9人中4人が元駐日大使だった』、「かつて国際企業の若い幹部候補たちは、キャリアアップの足がかりとして日本でのポジションを切望していた。が、今はもう違う・・・日本は高齢の幹部が優雅にキャリアを終えるために定年前に甘い汁を吸える赴任地となっている」、寂しい限りだ。
・『マクロン大統領の悲観的な見方  しかし、フランスにとって日本は今や、二流の国になっている。真の意味での国賓訪問は、8年前の2013年に当時のフランソワ・オランド仏大統領が訪日したのが最後だ。 エマニュエル・マクロン大統領は、フランスが開催する2024年パリ大会を見据えて、8月に東京オリンピックの開会式のために訪日したが、ある関係者によると、菅政権の硬直性とどんなテーマでも妥協する意思のないことに愕然としたという。マクロン大統領はすぐには再訪日しないだろう。 日本は、東京オリンピックを開催したことで、世界の中心にい続けられると思っているかもしれない。しかし、1964年に東京で開催された壮大で革新的な大会のような重要性は、オリンピックにはない。むしろ、日本政府がオリンピックを重要視していることは、日本が現在の世界を誤解していることの表れでもある。 日本政府はまた、2025年に大阪で開催される万博も桁外れに重要視している。岸田政権では、この問題を担当する国際博覧会担当相がいるほどだ。しかし、世界的な博覧会は、今や開催国以外では誰も気にとめないローカルなイベントとなっている。日本人で誰が、現在ドバイが万博を開催していることを知っているというだろうか』、「マクロン大統領」は「菅政権の硬直性とどんなテーマでも妥協する意思のないことに愕然とした」、「日本政府がオリンピックを重要視していることは、日本が現在の世界を誤解していることの表れ」、「大阪で開催される万博も桁外れに重要視」、問題は英語だけでなく、国際感覚の鈍さ、ズレにある。こんな調子では、主要国からますます馬鹿にされ、孤立していくだけだ。外務省は何をしているのだろう。 
タグ:(その3)(外国人が心底残念に思う日本の偏った英語教育 このままではプログラミング教育も微妙に、「恥をかかないビジネス英語」 認知科学者が教える正しい独学方法とは、英語力「112カ国中78位」の日本で広がる外国嫌い 「そして外国人は日本を見捨てる」でいいのか) 英語 東洋経済オンライン デビット・ベネット氏による「外国人が心底残念に思う日本の偏った英語教育 このままではプログラミング教育も微妙に」 「複数の公用語」とは聞いただけでゾッとする。 「「英語学習において「知識を得ること」「間違えることはよくないこと」という感覚は他の教科以上に排除すべきです」、大賛成だ。 (注)イマージョン(教育):外国語を教科としてではなく、手段としてその他の教科を学習する教育方法のこと(Education Career)。 「プログラミング授業ではパソコンやタブレットが使われます。このITデバイスをうまく英語教育にも使えばこれぞまさに一石二鳥・・・で、ネイティブな先生と1日1時間ビデオチャットで・・・英語を話す経験ができれば、先に指摘したコミュニケーションの機会は飛躍的に増える可能性があります」、その通りだ。 「日本など非英語圏には、母国語の違いがハンデとなって世界に出てきていない優れた人材が多数眠っているということにもなります」、言われてみればそうかも知れないが、優秀な人材であれば、「母国語の違い」も乗り越えられる筈だ。やはり、「母国語の違いがハンデとなって世界に出てきていない優れた人材が多数眠っている」、というのは夢物語に近いのではなかろうか。 ダイヤモンド・オンライン「「恥をかかないビジネス英語」、認知科学者が教える正しい独学方法とは」 「ビジネスなどでのコミュニケーション力を上げるのが目的であれば、試験と同じ手法で勉強しても効果は薄いでしょう。にもかかわらず、日本には認知プロセスの観点からすると、不合理な学習法が多くあります」、早く合理的な「学習法」に移行してほしいものだ。 「コーパス」などは初めて知ったが、便利そうだ。ヒマな時に使ってみよう。 もっと早く知りたかった。 レジス・アルノー氏による「英語力「112カ国中78位」の日本で広がる外国嫌い 「そして外国人は日本を見捨てる」でいいのか」 「日本の外国人嫌いが加速し、国全体が急ピッチで孤立主義の姿勢を強めつつある」、とは極めて危険な兆候だ。 「エア・エクスパット」は「学校が始まる前日の9月1日に、子どもたちの隔離期間が終わるのにあわせて入国する」、なかなかよく出来たフライトプランだ。しかし、入国手続きで「今の日本に本社の役員を招くことはとてもできない。こんなプロセスを経させたら会社はすぐさま日本への投資をやめるだろう」と、このフライトに乗っていたあるフランス人は嘆く」、これは確かに酷い。 「オミクロンと関係のあるアフリカの10カ国からの日本国籍者を認める一方、永住者など一部を除く外国人居住者の入国を禁止する」、なぜこうした極端に自国優先の発想が出てくるのだろう。「日本の「外国離れ」はあらゆる場面で見られる」、困ったことだ。 「かつて国際企業の若い幹部候補たちは、キャリアアップの足がかりとして日本でのポジションを切望していた。が、今はもう違う・・・日本は高齢の幹部が優雅にキャリアを終えるために定年前に甘い汁を吸える赴任地となっている」、寂しい限りだ。 「マクロン大統領」は「菅政権の硬直性とどんなテーマでも妥協する意思のないことに愕然とした」、「日本政府がオリンピックを重要視していることは、日本が現在の世界を誤解していることの表れ」、「大阪で開催される万博も桁外れに重要視」、問題は英語だけでなく、国際感覚の鈍さ、ズレにある。こんな調子では、主要国からますます馬鹿にされ、孤立していくだけだ。外務省は何をしているのだろう。
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外国人労働者問題(その18)(裁判受けさせず送還「違憲」 国に賠償命令 スリランカ人男性、逆転勝訴―東京高裁、外国人労働者受け入れ拡大は亡国の政策 進む先は「国破れてブラック企業あり」) [社会]

外国人労働者問題については、昨年9月22日に取上げた。今日は、(その18)(裁判受けさせず送還「違憲」 国に賠償命令 スリランカ人男性、逆転勝訴―東京高裁、外国人労働者受け入れ拡大は亡国の政策 進む先は「国破れてブラック企業あり」)である。

先ずは、9月24日付け時事通信「裁判受けさせず送還「違憲」、国に賠償命令 スリランカ人男性、逆転勝訴―東京高裁」を紹介しよう。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021092200768&g=soc
・『スリランカ人男性2人が難民不認定処分を受けた後、入管から訴訟を起こす時間を与えられずに強制送還させられたとして、国を相手取り計1000万円の賠償を求めた訴訟の控訴審判決が22日、東京高裁であった。平田豊裁判長は入管職員の対応について「憲法32条で保障する裁判を受ける権利を侵害し、国家賠償法の適用上、違法になる」として請求を棄却した一審判決を変更、計60万円の賠償を命じた。監視映像、異例の公開 入管職員暴行の国賠訴訟で―大阪地裁 男性の代理人弁護士によると、外国人の強制送還をめぐり、違憲判決が出たのは初めて。訴訟できないまま送還されるケースは少なくなく、判決は入管の姿勢にも影響を与えそうだ。 判決などによると、男性2人は1999年と2005年、それぞれ日本に入国。在留期間を超えて滞在したとして難民不認定処分を受けて入管施設に収容されたが、一時的に身柄拘束を解く「仮放免許可」で出所した。14年12月に許可更新のために東京入国管理局を訪れたところ、不許可を通知されて施設に再収容された。 異議申し立ても棄却され、収容翌日に羽田空港から強制送還された。2人は処分取り消しを求める訴訟を起こす意思があったが、棄却決定の告知が送還直前だったため、時間的な余裕が与えられなかった。 平田裁判長は、棄却決定の告知を強制送還直前とした入管の対応は送還を円滑に実施するためで、「意図的に遅らせた」と認定。告知後に第三者との連絡も事実上認めずに送還したことは「司法審査を受ける機会を実質的に奪い、憲法に違反する」と結論付けた。 国側は、2人の異議申し立ては権利の乱用で救済の必要性に乏しいと主張したが、同裁判長は「司法審査を受ける機会の保障とは別問題。機会を奪うことが許容されるものではない」と退けた』、「2人は処分取り消しを求める訴訟を起こす意思があったが、棄却決定の告知が送還直前だったため、時間的な余裕が与えられなかった」、「司法審査を受ける機会を実質的に奪い、憲法に違反する」との「平田裁判長」の判断は当然である。「入国管理局」が公然と憲法違反に問われるような不法行為をしていたとは、驚きと怒りを感じる。

次に、11月25日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「外国人労働者受け入れ拡大は亡国の政策、進む先は「国破れてブラック企業あり」」を紹介しよう。
・『日本の産業界が求める「新しい時代のおしん」  岸田政権の「外国人労働者拡大」が「事実上の移民政策」などと批判を受けている。 マスコミ各社の報道によれば、家族を帯同できる在留資格「特定技能2号」について、受け入れ拡大を検討しており、事実上、在留期限をなくす方向だという情報もある。 選挙で「日本を守る」と絶叫した保守政党が公約でまったく触れていなかった話を、なぜここにきて急に持ち出したか。普通に考えれば、自民党勝利に貢献した産業界、中小企業経営者への「論功行賞」だ。 「外国人労働者を入れないと日本は人手不足でおしまいだ!」というノストラダムス的終末論が、人口が右肩上がりで増えていた高度経済成長期から唱えられていることからもわかるように、日本の人手不足は「労働者の絶対数が足りない」というわけではない。問題は、低賃金や重労働で敬遠される産業・業界で働きたいという日本人が減少しているという、「雇用ミスマッチ」だ。 このような「低賃金重労働」がビジネスモデルに組み込まれた業界が、喉から手が出るほど欲しいのは、かつて日本中が涙したNHKの連続テレビ小説「おしん」の主人公のように、過酷な労働条件でも文句ひとつ言わずに働く「奴隷」のような労働者であることは言うまでもない。 が、日本の若者にそれをやらせるのは難しい。ある程度、社会が豊かになったこともあって、「仕事があるだけありがたいと思え」というロジックが通用しない。安い賃金やきつい仕事だとすぐに辞めてしまう。おまけに、「仕事のやり甲斐」とか「それ、パワハラですよ」なんて、「おしん」なら口が裂けても言わないようなことを、平然と言い始めた。 そこで、産業界が“新しい時代のおしん”として期待するのが、外国人労働者だ。 日本の若者にとって、低賃金で将来設計ができない、夢が抱けないような産業・業界は、海の向こうから「おしん」をじゃんじゃん呼べばみんながハッピーになる。戦前、日本の若者から敬遠された炭鉱業でも、「労力の輸入」(読売新聞1917年9月14日)という名目で朝鮮人労働者の受け入れが進められたが、これとまったく同じ発想だ。 厳しい言い方をすれば、日本の経営者は100年前からほとんど進歩していないということでもある』、「日本の人手不足は「労働者の絶対数が足りない」というわけではない。問題は、低賃金や重労働で敬遠される産業・業界で働きたいという日本人が減少しているという、「雇用ミスマッチ」だ。 このような「低賃金重労働」がビジネスモデルに組み込まれた業界が、喉から手が出るほど欲しいのは・・・NHKの連続テレビ小説「おしん」の主人公のように、過酷な労働条件でも文句ひとつ言わずに働く「奴隷」のような労働者であることは言うまでもない」、「戦前、日本の若者から敬遠された炭鉱業でも、「労力の輸入」・・・という名目で朝鮮人労働者の受け入れが進められたが、これとまったく同じ発想だ」、「日本の経営者は100年前からほとんど進歩していない」、その通りだ。
・『「外国人労働者拡大」をすると、日本人の賃金はもう上がらなくなる!?  そんな産業界や中小企業経営者に対して、岸田首相お得意の「聞く力」を発揮した結果が、今回の「事実上の移民政策」というわけだ。 ……というような大人の事情があったとしても、首相はぜひ撤回していただきたい。今の日本で「外国人労働者拡大」を推進することは「亡国の政策」以外の何ものでもないからだ。 ご存じのように、日本人労働者の賃金は、先進国の中で突出して低く、韓国の労働者よりも安い。労働環境もよろしくない。「社畜」という言葉に象徴されるように、従業員は組織に全てを捧げるのが当然というカルチャーに加えて、ブラック部活のような根性論の押し付けから、過重労働やパワハラ自殺という問題も深刻化している。 では、そこで想像していただきたい。このように自国民の「劣悪な賃金・労働環境」を放置した国に、外国人労働者がどっと押し寄せたらどうなるか。 まず、日本人の賃金はもう上がらない。本来、先進国の常識では、人手不足には賃上げで対応する。労働者にとって魅力のない業界・会社は賃金を上げて人材を確保して、さらに成長を目指す。できない企業は市場から退場する。そのような新陳代謝で経済が成長する。 しかし、もしそこへ低賃金で文句言わずに働く外国人労働者が大量にやってきたら、魅力のない業界・企業は賃上げの努力をしなくていい。新陳代謝も進まず、経済は「現状維持」となる。つまり、「韓国より低い賃金」という状態が固定化される。 これだけで十分「亡国の政策」だということがわかっていただけたと思うが、さらに罪深いのは全世界に「日本のブラック企業」の悪質性を広く紹介してしまう、「逆PR」になってしまうのだ』、「低賃金で文句言わずに働く外国人労働者が大量にやってきたら、魅力のない業界・企業は賃上げの努力をしなくていい。新陳代謝も進まず、経済は「現状維持」となる。つまり、「韓国より低い賃金」という状態が固定化される。 これだけで十分「亡国の政策」・・・さらに罪深いのは全世界に「日本のブラック企業」の悪質性を広く紹介してしまう、「逆PR」になってしまうのだ」、同感である。
・『「日本で働くの?やめた方がいいよ」という未来  先ほども申し上げたように、どんな美辞麗句を並べ立てても、日本における「外国人労働者」は100年前から変わっておらず、「日本人の嫌がる仕事をあてがい、日本人よりも安くコキ使う」という発想が根底にある。つまり、これから拡大しようという外国人労働者はほぼ間違いなく、「日本人の劣悪な賃金・労働環境」よりさらに酷い目にあうことが、ほぼ確定しているのだ。 日本人だったら耐えれないような賃金でコキ使われ、日本人なら労基に駆け込むような時間外労働を強いられる、そして日本人ならばされないような暴言も吐かれる。 実際、すでにそれをうかがわせるような報告がいくつも上がっている。例えば、20年10月、群馬県内の農業法人で働いていたスリランカ人女性が、雇い主から常習的に暴行を受けていたと告発。農業法人の社長の息子から怒鳴りつけられた音声データが、群馬県庁で開かれた記者会見の場で公開された。 「嫌だったらスリランカに帰れ」「いらねえよ、てめえなんか」 スリランカの女性は会見で「優しい安全な国というイメージが、暴力を受け、日本ってこういう国なのかと思うようになってしまった」(上毛新聞 20年10月17日)と述べている。このような問題は他にも多く発生している。 「外国人労働者拡大」を進めるということは、それと比例してこういうトラブルも増えていくということだ。最近では中国のテニス選手の不倫トラブルが世界中に知れ渡ったように、ネットを介せば、あっという間に世界へ広まっていく。 10年もすれば、ベトナムや中国の若者たちの間で、「日本で働くの?やめた方がいいよ、給料安いくせにブラック企業ばっかだから」なんて会話が当たり前になってしまうかもしれないのだ。実際、経済発展の著しい東南アジア諸国も賃金が上がっていて、いずれ日本など追い抜かされてしまう、と言われている。 このような未来を避けるにはやるべきことはひとつしかない。そう、「日本人の劣悪な賃金・労働環境」を改善するのだ』、確かにこの調子では、「日本」は文字通りのディストピア(反理想郷)になりかねない。
・『どう改善する?反省すべき「日本人の基準」  まず、賃金を他の先進国並みに引き上げる。と言っても、企業に任せていたらいつまでも上がらない。企業側の「景気が良くなったら自主的に上げますんで」という言い訳で、日本はすっかり低賃金が定着してしまっているのだ。 もちろん、今や日本名物となってしまった、過重労働や社内イジメなどパワハラ文化も徹底的に見直す。 なぜ日本人の待遇改善が、外国人の待遇改善に繋がるのかというと、歴史の教訓がそう示している。今の経営者が戦前の経営者と同じような発想であるように、日本の「外国人」の待遇も実はそれほど戦前と変わっていないのだ。 それは一言で言えば、「日本人の待遇」とそろえる、ということだ。 「人種差別などしていなくて素晴らしいじゃないか」と思うかもしれないが、国際的なルールや、他国の文化などをすべて無視して、「日本人」に合わせてしまうのだ。だから、日本人の感覚では「教育・シゴキ」というつもりのものが、国際社会の感覚では「体罰・虐待」に見える、という“日本あるある”が発生する。 その代表が、戦時中の「捕虜」だ。 日露戦争まで日本は国際社会で、捕虜を非常に丁重に扱ってくれる国という評判だった。しかし、太平洋戦争で評価が真逆になる。イギリスやアメリカの捕虜をもっとも多く殺害した国になってしまったのだ。 安倍政権時の2015年、戦後70年を機に新しい日本の役割を考える有識者会議「21世紀構想懇談会」で配布された資料を引用しよう。 「王立英軍退役軍人会の資料によれば、欧州戦線での英兵の戦死者は26万人であり、全軍の死亡率は5.7%であった。またドイツ軍およびイタリア軍下での英軍捕虜の死亡率も5%ていどであった。他方で、日本軍捕虜となった者の死亡率は約25%であり、第二次世界大戦中にこの死亡率は最も高いものであった。戦死者よりも、日本軍の捕虜収容所での死亡率が高く、このことは戦後のイギリス社会で広く知られていた」(21世紀の回顧と和解の軌跡ーイギリスの視点を中心としてー) 当然、捕虜を収容するような用意もない。人員的な余裕も食料もない。かといって解放したらどうなるかわからない。そこで、殺してしまったというケースがかなりあった。 多くの民間人を殺した、殺さないでいまだに議論になっている「南京事件」でも、日本軍が1万人以上の捕虜を1カ所に集めて殺した、ということが当時の兵士たちの日記などから確認されている。当時の軍資料を見ても、膨大な数の捕虜の食料に困った、という記述が見つかっている。  これはアメリカなどでも同様だ。ここまで死亡率が高くなったのは、日本軍は英米の捕虜を、彼らの感覚では、かなり過酷な環境で収容して、時に「処刑」をしてしまうこともあったからである。当時の国際ルールでは、捕虜の殺害は認められていない。にもかかわらず、なぜ日本軍は捕虜に手をかけたのかというと、「日本人の待遇」に合わせたことが大きい。 1942年、思想戦についての著書のある水野正次氏は、このように述べている。 <日本軍人は大御稜威の下、常に最も正しく生命を捧げる『死場所』を求めてその正しい生き方に苦心を払つてゐるのに、米・英軍人はヤング総督が明白に聲明されたやうにその戦闘の方法たるや『捕虜となるまで戦はん!』といふことであった>(大東亜戦争の思想戦略 水野正次 霞ヶ関書房) 英米の兵士は、追いつめられると当たり前のように白旗を上げて、武装解除して投降した。さらに、祖国の家族に手紙を書きたいとか敵に普通に要望する。 そういう態度の米英の兵士を日本人たちは思いっきり蔑んだ。日本の兵士たち投降して捕虜になるというのは「恥」であり、それを避けるために自ら命を絶てと教え込まれていたからだ。 つまり、この時期の日本軍は「捕虜の待遇」などまったく気にもとめていなかった。そもそも、国際ルールなど無視していたということもあり、捕虜が死のうが生きようが気にもとめないくらいの感覚だった。というより、軍隊組織自体が、大量の捕虜を収容しながら戦うという発想で編成されていなかった。』、「日露戦争まで日本は国際社会で、捕虜を非常に丁重に扱ってくれる国という評判だった。しかし、太平洋戦争で評価が真逆になる。イギリスやアメリカの捕虜をもっとも多く殺害した国になってしまったのだ」、「欧州戦線での・・・全軍の死亡率は5.7%」「ドイツ軍およびイタリア軍下での英軍捕虜の死亡率も5%ていど」、「日本軍捕虜となった者の死亡率は約25%であり、第二次世界大戦中にこの死亡率は最も高い」、「軍隊組織自体が、大量の捕虜を収容しながら戦うという発想で編成されていなかった」、「日本軍」の「捕虜」に対する扱いは、どうみても恥部という他ない。
・『日本人・外国人双方の改善を!「第二の敗戦」を避けて  このような悲しい歴史から我々が学ぶべき教訓はひとつ、日本人は自分たちの待遇を、外国人にも押し付ける。それが劣悪なものならば、なおさらということだ。 自分たちが我慢している待遇、組織から受けるハラスメント、精神論などを、文化や言葉が違う外国人にも「日本のルールに従え」と押し付けてしまう。そして、それができないと心身両面で追いつめて、最悪、命を奪ってしまう。 そういうことが太平洋戦争では山ほど起きた。そして、戦争で敗れた後、そのツケを「東京裁判」で払わされた。愛国心あふれる方たちからすれば、あれは敗戦国が理不尽な裁きを受けたという印象だが、実は捕虜を処刑したり、人道的に扱わなかったりという「人道に対する罪」もかなり確認されたからだ。 日本人労働者の待遇改善なき「外国人労働者拡大」も同じことが起きる恐れもある。つまり、中国や東南アジアの新興国などに経済的にもどんどん抜かれるという「敗戦」を喫した後、さらに追い討ちをかけるように、外国人労働者を常軌を逸した低賃金で働かせたり、ブラック企業で苦しめた、という「人道に対する罪」を持ち出され、国際社会で批判を浴びるのだ。 今のまま外国人労働者拡大を進めたら、また同じ過ちの繰り返しである。岸田首相はぜひこの「亡国の政策」を思いとどまるよう、賢明な判断をお願いしたい』、「岸田首相はぜひこの「亡国の政策」を思いとどまるよう、賢明な判断をお願いしたい」、全く同感である。
タグ:(その18)(裁判受けさせず送還「違憲」 国に賠償命令 スリランカ人男性、逆転勝訴―東京高裁、外国人労働者受け入れ拡大は亡国の政策 進む先は「国破れてブラック企業あり」) 外国人労働者問題 時事通信「裁判受けさせず送還「違憲」、国に賠償命令 スリランカ人男性、逆転勝訴―東京高裁」 「2人は処分取り消しを求める訴訟を起こす意思があったが、棄却決定の告知が送還直前だったため、時間的な余裕が与えられなかった」、「司法審査を受ける機会を実質的に奪い、憲法に違反する」との「平田裁判長」の判断は当然である。「入国管理局」が公然と憲法違反に問われるような不法行為をしていたとは、驚きと怒りを感じる。 ダイヤモンド・オンライン 窪田順生 「外国人労働者受け入れ拡大は亡国の政策、進む先は「国破れてブラック企業あり」」 「日本の人手不足は「労働者の絶対数が足りない」というわけではない。問題は、低賃金や重労働で敬遠される産業・業界で働きたいという日本人が減少しているという、「雇用ミスマッチ」だ。 このような「低賃金重労働」がビジネスモデルに組み込まれた業界が、喉から手が出るほど欲しいのは・・・NHKの連続テレビ小説「おしん」の主人公のように、過酷な労働条件でも文句ひとつ言わずに働く「奴隷」のような労働者であることは言うまでもない」、「戦前、日本の若者から敬遠された炭鉱業でも、「労力の輸入」・・・という名目で朝鮮人労働者の受 「低賃金で文句言わずに働く外国人労働者が大量にやってきたら、魅力のない業界・企業は賃上げの努力をしなくていい。新陳代謝も進まず、経済は「現状維持」となる。つまり、「韓国より低い賃金」という状態が固定化される。 これだけで十分「亡国の政策」・・・さらに罪深いのは全世界に「日本のブラック企業」の悪質性を広く紹介してしまう、「逆PR」になってしまうのだ」、同感である。 確かにこの調子では、「日本」は文字通りのディストピア(反理想郷)になりかねない。 「日露戦争まで日本は国際社会で、捕虜を非常に丁重に扱ってくれる国という評判だった。しかし、太平洋戦争で評価が真逆になる。イギリスやアメリカの捕虜をもっとも多く殺害した国になってしまったのだ」、「欧州戦線での・・・全軍の死亡率は5.7%」「ドイツ軍およびイタリア軍下での英軍捕虜の死亡率も5%ていど」、「日本軍捕虜となった者の死亡率は約25%であり、第二次世界大戦中にこの死亡率は最も高い」、「軍隊組織自体が、大量の捕虜を収容しながら戦うという発想で編成されていなかった」、「日本軍」の「捕虜」に対する扱いは、ど 「岸田首相はぜひこの「亡国の政策」を思いとどまるよう、賢明な判断をお願いしたい」、全く同感である。
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フェイスブック問題(その4)(内部報告書が語る若年層でのFBの人気低下の加速 ティーンエージャーが費やす時間は前年比16%減、「フェイスブック改めメタ」が目指すVRの世界 ゴーグルで体験するバーチャルな空間とは?、内部告発で暴露されたフェイスブックの管理と責任能力の欠如) [メディア]

フェイスブック問題については、2000年6月13日に取上げた。久しぶりの今日は、(その4)(内部報告書が語る若年層でのFBの人気低下の加速 ティーンエージャーが費やす時間は前年比16%減、「フェイスブック改めメタ」が目指すVRの世界 ゴーグルで体験するバーチャルな空間とは?、内部告発で暴露されたフェイスブックの管理と責任能力の欠如)である。

先ずは、昨年10月27日付け東洋経済オンラインが転載したブルームバーグ「内部報告書が語る若年層でのFBの人気低下の加速 ティーンエージャーが費やす時間は前年比16%減」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/464618
・『米フェイスブックの社内調査グループは3月、クリス・コックス最高製品責任者(CPO)向けに報告書をまとめた。掲載された一連のチャートやデータは、ティーンエージャーとヤングアダルト層でフェイスブックの人気が低下しているという厄介で加速しつつあるような傾向を浮き彫りにしていた。 1つのカラフルなチャートを見ると、米国のティーンエージャーがフェイスブックに費やす時間は前年比で16%減少し、ヤングアダルトでは5%減った。ティーンの新規加入件数も減少傾向にあるが、最も懸念されるのは若者がユーザー登録する時期がこれまでより後ずれしていることがスライドで示されたことだった。2000年以前に生まれた人の大半が19、20歳までにアカウントを開設したのに対し、その後の世代では24、25歳になるまで加入しないと見込まれる。 この報告書はフェイスブックを10月上旬に公の場で告発した元社員フランシス・ホーゲン氏が集めた数百件の内部資料の一部。こうした資料は米証券取引委員会(SEC)に開示されるなどした』、「公の場で告発した元社員フランシス・ホーゲン氏が集めた数百件の内部資料の一部」が、「SECに開示されるなどした」、さすが情報公開の国だけある。
・『フェイスブックはユーザー保護より自社の利益を優先-内部告発者  内部資料によると、詳細な調査にもかかわず、同社社員はこうしたトレンドがなぜ起きているかや、商品見直しでこうした傾向をなぜ反転できていないかについて完全には把握できていない。フェイスブックは若者の利用が低下していることを以前から調査してきたが、幹部は広告事業を脅かすこうした懸念の表明に明らかに積極的ではなかった。同社の素晴らしい事業の成功が若者を巡る根強い問題を覆い隠してきた。同社は年齢層別のユーザー数を公表していない。 フェイスブックの広報担当ジョー・オズボーン氏は「当社の商品はティーンに幅広く利用されているが、スナップチャットやTikTok(ティックトック)との激しい競争に直面している」とした上で「全てのソーシャルメディア企業はティーンによるサービス利用を望んでいるが、われわれも例外ではない」とコメントした』、「フェイスブックは若者の利用が低下していることを以前から調査してきたが、幹部は広告事業を脅かすこうした懸念の表明に明らかに積極的ではなかった」、利用低下は「広告料」に反映するので、同社としては認めたくない不都合な事実なのだろう。

次に、11月5日付け東洋経済オンラインが掲載した フリーライターの武者 良太氏による「「フェイスブック改めメタ」が目指すVRの世界 ゴーグルで体験するバーチャルな空間とは?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/466305
・『10月28日、カンファレンスイベント「Facebook Connect 2021」においてフェイスブックが社名を変更したことが発表された。 新たな名前は「Meta」(メタ)。最高経営責任者であるマーク・ザッカーバーグ氏は「私たちは人々をつなぐ技術を構築する企業だ」という。そしてインターネットの新たな姿となるであろうメタバースを構築する企業となるべく、メタバースのメタからとった社名となった。 気になるのが、メタバースとは何を指す言葉なのか、だ』、「ザッカーバーグ氏」の度重なる議会喚問などで、「フェイスブック」の企業イメージも悪化していたので、改名はいいチャンスだ。
・『メタバースとは?  一般に言われるメタバースとは変化、高次、超越といった意味を持つメタ(meta)と、宇宙を意味するユニバース(universe)を組み合わせた造語であり、原典であるSF小説「スノウ・クラッシュ」(ニール・スティーヴンスン著)では、ゴーグルをかぶって見ることができる仮想空間を示す言葉として使われていた。 ザッカーバーグ氏が目指す未来も、VR(仮想現実)ヘッドセットをかぶりバーチャルな3D空間に構築された仮想空間で現実離れした体験ができるという、スノウ・クラッシュに近い軸線上にあるようだ。遠く離れている友人と仮想空間内で待ち合わせ、一瞬で海外へ旅立ち観光を楽しみ、ライブに参加してバーチャル上では密でも実際はお互いに自宅にいるから安全な状態で盛り上がれる。 ザッカーバーグ氏は、仮想空間内の自分自身となるアバターで仮想空間にアクセスでき、仮想空間作りも楽しめる「Horizon Worlds」や、遠隔地にいる同僚と一緒に話せる仮想会議室の「Horizon Workrooms」もアピールしていた。これらのサービスはすでに提供済みで、メタが販売中のVRヘッドセット「Quest 2」で利用できる。 このメタの発表は、賛否両論をもって迎えられたが、筆者の観測範囲では否定的な意見のほうが多かった。 幕張メッセで10月27~29日、VR・AR・MR(VRとARの要素を両立させた複合現実)の技術・サービスの展示会「第1回XR総合展秋」が開催されていたが、展示企業や参加者からは「メタバース=VRヘッドセットありきの世界ではない」という言葉が多く聞かれた。 確かに現時点におけるメタバースの定義は、インターネットを使ってコミュニケーションできる仮想現実そのものを指すケースが多い。2003年にはじまったセカンドライフしかり、2013年にはじまったファイナルファンタジーXIVしかり。2017年にリリースされたフォートナイトは戦うためのゲームと見られがちだが、全世界で3億5000万人(2021年6月時点)ものユーザーが集っており、ライブパーティで音楽を楽しんだり、他のユーザーが作り上げたミニゲームを楽しむユーザーも多い。若い世代に圧倒的な人気があることから、フォートナイトを新しいSNSだという声もある。 これらのサービスに共通した特徴は、VRヘッドセットを使わなくてもいいということ。PCやスマートフォンの画面越しに、3D空間に構築された仮想空間でコミュニケーションできる』、確かに「メタバース=VRヘッドセットありきの世界ではない」にも拘らず、「ザッカーバーグ氏が目指す未来も、VR(仮想現実)ヘッドセットをかぶりバーチャルな3D空間に構築された仮想空間で現実離れした体験ができるという・・・」、「ザッカーバーグ氏」自ら誤解を招くようなことをしたのは何故なのだろう。
・『「VRヘッドセット」というハードル  10月16~31日まで開催された「バーチャル渋谷 au 5G ハロウィーンフェス 2021」も、スマートフォン単体でバーチャル空間内の渋谷駅前に入ることができたメタバースな催しだった。KDDIの発表によれば、期間中の参加人数はのべ55万人だという。利用デバイスの割合は発表されなかったが、この参加人数の多さはスマートフォン対応イベントだからと言っていいだろう。 ビジネス利用においても、スマートフォンで見ることができるメタバースサービスに注目が集まっていた。日本では緊急事態宣言およびまん延防止等重点措置が終了したとはいえ、いまだ新型コロナの危機は残っている。移動を必要とせずに商談や会議をしたいという目の前の課題を解決するために、新たなデバイスを用意しなくてはならないというのはハードルが高い。 事実、VRヘッドセットは一般に普及しているデバイスとはいえない。数年前までは高価で扱いにくい存在だったQuest 2は税込み3万7180円とゲーム機として考えると魅力的な存在となったが、誰もが手に取るデバイスとなるにはまだ大きく、約500グラムと重く、バッテリーの持ちも悪い。 しかし、だ。そのことをメタが、ザッカーバーグ氏が意識していないなんてことがあるのだろうか。 フェイスブックは2004年に、学生向けのコミュニケーションサービスとして生まれた。2006年に一般公開され大きなユーザーが集まるSNSへと成長したが、iPhoneをはじめとしたスマートフォンの存在が成長を助けたことに異論を差し挟む人はいないだろう。誰もがコンピューターをポケットに入れて持ち運べる時代が、場所を問わずにコミュニケーションできるSNSを支えてきた。 メタはほかにもワッツアップ(音声、動画メッセージが送れるサービスで4G回線とともに普及)、インスタグラム(スマホカメラの性能向上とともに普及)といったサービスを持っている。フェイスブックを含めてハードウェアの進化やインフラの普及が、インターネットを活用するユーザーの行動形態を変えていくことを知り尽くしている企業体だと言っていい。 ザッカーバーグ氏は、インターネット上のプラットフォームの主軸が文字から画像、動画へと移り変わり、今後はVRとARが後を引き継ぐものになると信じていると話す。 メタが目指すメタバースが、スマートフォンを手に持たずとも多くの情報を摂取できるハンズフリーなデジタル情報社会を作り上げようとする意思であり、宣言だとするならば、VRヘッドセットのメーカーでもある彼らは、より扱いやすいスマートグラスを開発し、誰もが手軽に携帯できる未来を作ろうとしていると考えられる。そう、スマートフォンを置き換えるデバイスの創造だ。2007年にiPhoneが発売されたことで、世界中の情報流通の形も消費の形も変貌したあの衝撃をメガネ型デバイスで起こそうとしているのではないか』、「より扱いやすいスマートグラスを開発し、誰もが手軽に携帯できる未来を作ろうとしていると考えられる。そう、スマートフォンを置き換えるデバイスの創造だ」、なるほど。
・『2022年発売の新型VRヘッドセット  10月28日の発表では、来年に発売されると噂されている新型VRヘッドセットの情報も少しだけ明らかになった。 従来機は主に上半身の動きを検知することができたが、新型機はよりリッチな体験ができるハイエンドモデルとして、足などの下半身、指先や、眼球、表情の動きまでも捉えることが可能になるようだ。VRヘッドセットに表示されたキーボードを叩けば文字が入力できるし、エアギターで本当に音を奏でられるようにもなる。 言葉では伝えきれない喜怒哀楽の感情をアバターに反映させ、現実世界で会って話しているときと同じ感覚でのコミュニケーションができることを予告していた。また周囲の現実を、カラー表示で透かして見ることができる機能も搭載されるようだ。 この段階では、まだメタの理想とする世界にはたどり着けないだろう。しかしコミュニケーション用途において十分な機能を持ったモデルになると想像できる。あとは軽量化や小型化といった課題をどうクリアするか。素材技術や製造技術の進化スピードにもよるが、筆者は、彼らが5カ年計画でデバイスを進化させて、ポストスマートフォンになりえるデバイスが生まれるのではと予想している』、「ポストスマートフォンになりえるデバイスが生まれるのではと予想」、今後の展開は目が離せそうもない。

第三に、1月14日付けNewsweek日本版が掲載したカナダ在住の作家、一田和樹氏による「内部告発で暴露されたフェイスブックの管理と責任能力の欠如」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/ichida/2022/01/post-33_1.php
・『<META社を始めとするビッグテックはそのパワーに応じた責任を放棄している無責任の帝国と言える>
・『META社(旧フェイスブック社)とはなにか  『アンチソーシャルメディア』(シヴァ・ヴァイディアナサン著)によればMETA社(旧フェイスブック社)のCEOマーク・ザッカーバーグは善意に満ちているという。しかし、その善意が間違った方向へと進んでいる。シヴァ・ヴァイディアナサンの言葉を借りれば、「思い上がった善意」で世界中の民主主義と知的文化の劣化を招いたという。 そうなってしまった理由はひとえにMETA社が大きくなりすぎたためだ。企業規模の管理ではとても間に合わなくなり、いたるところで予期しない問題を引き起こし、対処に失敗し続けている。かつてはアラブの春など肯定的な面が評価されたこともあったが、じょじょにそれが制御不能の混乱を引き起こす力なのだということがわかってきた。だから2021年1月に起きたような暴徒の議事堂乱入のような事件にもなり得る。 そのパワーは留まることを知らない。2017年の段階でMETA社の無償インターネット・サービスFree Basicsがネットサービスをほぼ独占した国は60カ国におよび、多くの人々はMETA社とスポンサーのサービスだけを利用しており(それ以外は有償となる)、ニュースもそこで表示されるものを読んでいる。META社が60カ国のメディア・エコシステムを支配しているに等しい。前掲書『アンチソーシャルメディア』には、「フェイスブックの設計やアルゴリズムのわずかな変更ですら、国全体の政治的命運を変えかねないのだ」と書かれているくらいだ。 2017年10月にはカンボジア、スリランカ、ボリビア、グアテマラ、セルビアにおいてMETA社がニュース表示を変更する実験を行ったせいで、独立系ニュースサイトへのアクセスが激減し、その結果言論統制が強化される事態を起こした(The New York Times)。シヴァ・ヴァイディアナサンの言葉がおおげさではないことがわかる。その影響力はもはや1ネットサービスあるいはメディアの枠をはるかに超えている。 2018年に刊行した拙著『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)でフェイスブックはすでに国家であると指摘したが、じょじょに同様の認識が世界に広がっている。ユーラシア・グループ代表のイアン・ブレマーは2022年の10大脅威の2番目に「テクノポーラー」な世界をあげた。端的に言えばビッグテックが地政学上のアクターとなったことを指している。これがリスクにあげられているのは、そのパワーに比較して、統治能力に欠けているためだ。META社を始めとするビッグテックはそのパワーに応じた責任を放棄している無責任の帝国と言える。 そして昨年には管理統治能力の欠如とそもそもそうした責任を負う気がないことが、内部告発=フェイスブック・ペーパーで白日の下にさらされた』、
・『フェイスブック・ペーパーが暴露した管理と責任能力の欠如  昨年、17社以上の報道機関が共同でフェイスブック内部資料をもとに同社の実態を暴露した。主たる内容は以前の記事にも書いたコンテンツモデレーションを始めとする不適切な管理に関するものだった。 The Washington Postは一連の報道をまとめて記事を掲載した。問題となる3つの事実とは、「アメリカ大統領後に安全対策を解除した(議事堂への暴徒乱入を招いた可能性)」、「レコメンデーションが有害なコンテンツに誘導していることを知りながら放置してした」、「ヘイトスピーチや偽情報の問題は発展途上国でより悪化している」である。 The Wall Street Journalのフェイスブック・ペーパーの特集ページには17の記事が掲載されているが、優先すべき利用者に対してコンテンツのルールの適用外としてヘイトなどを放置していたことや、発展途上国で麻薬や人身売買の投稿を充分に規制できずにそれらの温床となっていること、他のSNSよりも利用者に悪影響があることを知りながら対処していないこと、そして、家族や友人との交流を優先するアルゴリズムによってこれらの傾向をさらに助長したことなどがあげられている。 また、フェイスブック・ペーパーとは別にThe MarkupではCitizen Browserというプロジェクトでフェイスブックのコンテンツ管理の実態を暴いている。このプロジェクトはアメリカの人口構成に合わせて割り振ったパネルにCitizen Browserを利用してもらい、その利用状況を自動的に収集し、分析するものだ。あらかじめパネルの属性を把握しているため、突っ込んだ分析も行いやすくなっている。くわしい内容については、別途拙ブログにまとめた。 さまざまなフェイスブックの実態が明らかになっている。性別、世代、バイデン支持かトランプ支持かなど属性の違いによって表示されるニュースが大きく異なっており、2021年1月の暴動後にバイデン支持者とトランプ支持者にそれぞれの主張に合うようなニュースのみを表示していた。いわゆるフィルターバブルである。 特定の政治団体を勧めていないというMETA社の主張にもかかわらず、政治団体に誘導していた。同社では透明性を高めるためにアクセスの多いコンテンツを公開しているが、アクセスの頻度は考慮されず1回のアクセスも千回のアクセスも1とカウントしていた(いわゆるリーチ)。そのため大手メディアが上位に来やすくなっていた。Citizen Browserの統計を元に閲覧回数(インプレッション)でランキング取ってみると、複数の右派メディアが上位に食い込んでおり、これを隠すためにインプレッションを使わなかったのではないかと指摘している。 コンテンツ以外には、広告主に対して、不適切なカテゴリーでの広告出稿を可能としていた。閲覧履歴やいいね!やフォロー関係などから、特定の病気を気にしている利用者利用者を狙って広告を表示できるようになっていた。同様の問題は、以前にも指摘されており、エセ科学に興味を示している7,800万人以上を広告ターゲットとしてカテゴリー化していたこともある。それ以外に、陰謀論、ケムトレイル陰謀論、ワクチン疑惑、ユダヤ人差別者、ユダヤ人陰謀論なども広告のカテゴリーになっていたことを以前の記事でご紹介した』、「Citizen Browserの統計を元に閲覧回数(インプレッション)でランキング取ってみると、複数の右派メディアが上位に食い込んでおり、これを隠すためにインプレッションを使わなかったのではないかと指摘している」、悪質だ。
・『国家以外の地政学上のアクターが跋扈する新しい時代  こうした一連のMETA社の問題は、すでに書いたようにその影響力に比較して管理統治能力が欠落していることに起因しており、それはそのパワーに見合ったビジョンを持っていないことに由来している。企業としての理念はあるかもしれないが(それもまともに機能していないようだが)、地政学上のパワーに釣り合うビジョンはない。そもそも地政学上のアクターになるつもりもなかったし、なりたいとも思っていなかった。そしてなってしまった今でも、できるだけそれを認めたくないと考えている。このような状態では責任ある対応は望むべくもない。 こうした一連の問題が露見した後でMETA社がやったことと言えば社名の変更と、メタバース事業の展開の宣言だ。あとは、国会での追求を逃れるための工作くらいだ。The Wall Street JournalがMETA社の政治工作を記事にしている。 企業としては問題ないかもしれないが、現在持っているパワーと負っている責任にはそぐわない。META社がフェイスブックのアルゴリズムを変えるだけでその国のメディアは滅び、差別が悪化し、暴動が起きる。それを止めるものがなにもないことは、昨年1月のアメリカ議事堂の暴動や、グローバル・サウス諸国での既存メディアのビジネスの破壊、ミャンマー、カンボジア、インド、フィリピンのような専制政治の支援(META社は各国にサポート要員を送っていた)と結果としての民主主義体制の毀損、ヘイトや犯罪(麻薬、人身売買など)の拡大でわかっている。起きてから批判することはできても、起きることは止められていない。 地政学的脅威には地政学的対処でなければ効果がない、と言われる。その通りだとすれば、対症療法であるファクトチェックやリテラシーなどではなく、地政学的対処が必要となる。META社に対して考えられるのは強力な規制や分割などだが、これについてもイアン・ブレマーはその効果は限定的と分析している。現在、META社などのビッグテックに対する効果的な地政学的対処方法は見つかっていないのだ。それがない限りは、混乱はますます広がり、政情は不安定化する一方になるだろう。そして、これまでの傾向を見る限り、保守あるいは右派のグループが優遇され、ヘイトや陰謀論が増殖することになる。 日本でもフェイクニュースについて取り上げられることが増えてきたが、ほとんどは現象としての個々のフェイクニュースを取り上げるものが多い。しかし、メディアのエコシステムやビッグテックの地政学的位置づけを考えなければ全体像を把握できない。ミャンマー、カンボジア、インド、フィリピンで起こったことは他人事ではない。日本でも特定の政治勢力とビッグテックが結びついてメディアのエコシステムを支配する事態が起きないとは言えない。こうした視点とそれに基づく対策がなければ、混乱は収まることがなく悪化するばかりだろう』、「META社がフェイスブックのアルゴリズムを変えるだけでその国のメディアは滅び、差別が悪化し、暴動が起きる。それを止めるものがなにもないことは、昨年1月のアメリカ議事堂の暴動や、グローバル・サウス諸国での既存メディアのビジネスの破壊、ミャンマー、カンボジア、インド、フィリピンのような専制政治の支援・・・と結果としての民主主義体制の毀損、ヘイトや犯罪・・・の拡大でわかっている」、「専制政治の支援」として、「META社は各国にサポート要員を送っていた」、サポート要員とは技術的支援ではなく、政治的支援だとすれば、由々しい問題だ。「META社に対して考えられるのは強力な規制や分割などだが、これについてもイアン・ブレマーはその効果は限定的と分析」、「強力な規制や分割」に「イアン・ブレマー氏」が消極的なのには失望した。
タグ:フェイスブック問題 東洋経済オンライン 一田和樹 「「フェイスブック改めメタ」が目指すVRの世界 ゴーグルで体験するバーチャルな空間とは?」 武者 良太 「より扱いやすいスマートグラスを開発し、誰もが手軽に携帯できる未来を作ろうとしていると考えられる。そう、スマートフォンを置き換えるデバイスの創造だ」、なるほど。 (その4)(内部報告書が語る若年層でのFBの人気低下の加速 ティーンエージャーが費やす時間は前年比16%減、「フェイスブック改めメタ」が目指すVRの世界 ゴーグルで体験するバーチャルな空間とは?、内部告発で暴露されたフェイスブックの管理と責任能力の欠如) 「ポストスマートフォンになりえるデバイスが生まれるのではと予想」、今後の展開は目が離せそうもない。 Newsweek日本版 確かに「メタバース=VRヘッドセットありきの世界ではない」にも拘らず、「ザッカーバーグ氏が目指す未来も、VR(仮想現実)ヘッドセットをかぶりバーチャルな3D空間に構築された仮想空間で現実離れした体験ができるという・・・」、「ザッカーバーグ氏」自ら誤解を招くようなことをしたのは何故なのだろう。 ブルームバーグ「内部報告書が語る若年層でのFBの人気低下の加速 ティーンエージャーが費やす時間は前年比16%減」 「公の場で告発した元社員フランシス・ホーゲン氏が集めた数百件の内部資料の一部」が、「SECに開示されるなどした」、さすが情報公開の国だけある。 「フェイスブックは若者の利用が低下していることを以前から調査してきたが、幹部は広告事業を脅かすこうした懸念の表明に明らかに積極的ではなかった」、利用低下は「広告料」に反映するので、同社としては認めたくない不都合な事実なのだろう。 「ザッカーバーグ氏」の度重なる議会喚問などで、「フェイスブック」の企業イメージも悪化していたので、改名はいいチャンスだ。 「内部告発で暴露されたフェイスブックの管理と責任能力の欠如」 「META社を始めとするビッグテックはそのパワーに応じた責任を放棄している無責任の帝国と言える。 そして昨年には管理統治能力の欠如とそもそもそうした責任を負う気がないことが、内部告発=フェイスブック・ペーパーで白日の下にさらされた」、深刻な問題だ。 「Citizen Browserの統計を元に閲覧回数(インプレッション)でランキング取ってみると、複数の右派メディアが上位に食い込んでおり、これを隠すためにインプレッションを使わなかったのではないかと指摘している」、悪質だ。 「META社がフェイスブックのアルゴリズムを変えるだけでその国のメディアは滅び、差別が悪化し、暴動が起きる。それを止めるものがなにもないことは、昨年1月のアメリカ議事堂の暴動や、グローバル・サウス諸国での既存メディアのビジネスの破壊、ミャンマー、カンボジア、インド、フィリピンのような専制政治の支援・・・と結果としての民主主義体制の毀損、ヘイトや犯罪・・・の拡大でわかっている」、「専制政治の支援」として、「META社は各国にサポート要員を送っていた」、サポート要員とは技術的支援ではなく、政治的支援だとすれば
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日本の構造問題(その24)(「日本は負けた」系ニュースが急増しても事実を認めない人々の“負けパターン”、日本人は「円安」がもたらした惨状をわかってない 自ら危機意識を持って脱却する必要がある、日本が亡国の道を突き進む元凶 「やったふり」「先送り」キャリア形成の弊害) [経済政治動向]

日本の構造問題については、昨年12月1日に取上げた。今日は、(その24)(「日本は負けた」系ニュースが急増しても事実を認めない人々の“負けパターン”、日本人は「円安」がもたらした惨状をわかってない 自ら危機意識を持って脱却する必要がある、日本が亡国の道を突き進む元凶 「やったふり」「先送り」キャリア形成の弊害)である。

先ずは、12月16日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「「日本は負けた」系ニュースが急増しても事実を認めない人々の“負けパターン”」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/290778
・『「日本は絶対に負けない!」と叫ぶほど負ける  最近、中国や台湾、さらには韓国にまで、日本が“負けた系ニュース”をやたらと多く見かけないだろうか。例えば、ざっと目についただけでもこんな調子だ。 ・『日本は「急速に力を失った」…韓国、台湾、中国に負ける“唯一最大の恐しい原因”』(幻冬舎ゴールドオンライン11月27日) ・『王者だった「ニッポン半導体」が負けた訳』(東洋経済オンライン12月1日) ・『日本は20年後に経済規模で韓国に追い抜かれる-その残念な理由とは』(現代ビジネス12月12日) ・『管理職の日韓給与比較」どの職種も大きく水をあけられ大敗北という現実』(プレジデントオンライン12月14日) 愛国心あふれる方たちからすれば、このような記事は「日本をおとしめたい反日マスゴミのデマ」ということなのだろうが、残念ながら、日本の経済力、技術力が衰退していることは、さまざまな客観的データが物語っている。 もちろん、世の中には「日本の賃金は安くない!中国や韓国からもたくさん労働者が来ているのがその証拠だ!」とか「労働生産性なんてのは欧米がつくった数字のトリックだ!」とか「中国や韓国の方が商売上手なだけで日本の技術は今も世界一だ!」なんて感じで、これらのデータ自体が捏造・デマだと主張される方たちもいらっしゃる。 人は自分が信じたいものを信じる。なので、このような考え方をされるのも自由だし、他人がとやかく言うことではない。が、「日本の国益」という視点では、「ジャパン・アズ・ナンバーワンだ!」というような考え方はあまりよろしくないのではないか。 歴史を振り返ると、日本という国はこれまで、自分たちに都合の悪い客観的なデータを否定して、「日本は絶対に負けない!」と叫べば叫ぶほど事態を悪化させるという「負けパターン」を繰り返してきたからだ』、「「日本は絶対に負けない!」と叫べば叫ぶほど事態を悪化させるという「負けパターン」を繰り返してきた」、困った悪弊だ。
・『10年前「自動車産業は負けない」と叫んでいた人たちと、今の現実  「日本は負けない!」と喉を枯らせば枯らすほど、現実逃避や問題先送りがおこなわれて大惨敗という皮肉な結果を招いてしまうというのが、日本のお決まりのパターンだ。 例えばわかりやすいのが、自動車産業である。実は今から10年ほど前、リーマンショックを受けた世界的な自動車販売台数の落ち込みや、中国など海外への生産・販売の依存が極端に高まってきたというデータを根拠に、一部のメディアから、そう遠くない未来、日本の自動車メーカーや関連産業はかなり厳しい環境に追いやられるのではないか、という悲観論が相次いだ。 しかし、愛国心あふれる方たちは、「マスコミってのは、日本がダメになるというストーリーが大好物で、不安ばかりをあおるバカだな」と鼻で笑った。ある研究者の方はネットメディアで「日本の自動車部品は絶対に負けない」と宣言し、世界的に、自動車産業は生産縮小を余儀なくされたとしも、高品質の日系部品メーカーには仕事がたくさん流れてきて、これから日本の大躍進の時代が来るとまで言い切った。 では、それから10年でどうなったか。 世界的な電気自動車(EV)シフトに加えて、中国など新興国でも国産自動車メーカーが着々と成長していることで、日本のお家芸だった自動車産業は窮地に追いやられている。特に深い傷を負っているのが、かつて「絶対負けない」と言われた自動車部品だ。EVシフトによる部品数減少で収益が悪化していたところにコロナ禍が直撃、「歴史ある2次サプライヤーが倒産、自動車部品業界の淘汰が加速か」(日刊自動車新聞20年9月15日)という動きも目立ってきている。10年前に「不安をあおるバカ」と罵られた側の警鐘が現実となりつつあるのだ』、「10年前に「不安をあおるバカ」と罵られた側の警鐘が現実となりつつある」、なるほど。
・『日本が誇る「白物家電」も、気づけば買収されていく有様  かつて世界一と言われた、「白物家電」もほぼ同じパターンだ。 2000年代前半、ハイアールなど中国の白物家電メーカーが海外進出を始めた時、日本の家電業界では、「日本が負けるわけがない」という“日本不敗論”が大多数を占めいていた。 一部の消費者は「中国製?まともに動くわけないじゃん?」と冷笑し、ジャーナリストたちも「日本メーカーのパクリ」などと完全に雑魚扱いしていた。 ところが、売り上げなどのデータで中国メーカーが成長していることが明確になったことで、一部からは「そろそろやばいんじゃない?」という不安の声が上がった。しかし、それでも日本の「不敗神話」が揺らぐことはなかった。 当時はまだ中国や韓国のブランドであっても、それらの家電の基幹部品は日本メーカーのものを使っていることも多かった、という実情もあって油断していたのだろう。肝心の技術の部分はこちらが握っているので、いくら「器」が売れたところで、「メイド・イン・ジャパン」の優位性が脅かされることはない、と高をくくっていたのである。 そして、評論家が「日本は技術力はすごいものがありますが、いかんせん売り方が下手なのです」なんて、のんきな解説をしている間に、海の向こうでは中国メーカーが完全に勝利して、ついに日本やアメリカのメーカーを買収できるようになってしまった。 2012年には、パナソニックがハイアールに三洋電機の洗濯機・冷蔵庫事業を売却。2016年には、東芝が白物家電事業をマイディア(中国)に売却、ハイアールが米・ゼネラル・エレクトリック(GE)の家電事業を買収した。また2018年には、東芝がテレビなど映像事業をハイセンス(中国)に売却した。 このような「負けパターン」は例を挙げればキリがない。鉄鋼、造船、映画、そして最近ではアニメなどもそうだが今、大慌てで国が支援をしている半導体などの場合、かなり早くから「日本の負け」が予見されていた』、「肝心の技術の部分はこちらが握っているので、いくら「器」が売れたところで、「メイド・イン・ジャパン」の優位性が脅かされることはない、と高をくくっていた」、こうした思い上がりは日本人の悪弊だ。
・『「日本の半導体は負ける」という28年前の警鐘をスルーしてきた  80年代、技術・売り上げともに世界一だった「日の丸半導体」は90年に入ると、インテルなど海外メーカーに抜かれていく。日本社会ではまだ「アメリカもやるじゃん」くらいだったが、半導体業界の良識ある人は「終わりのはじまり」を予感していた。93年には、名門・東芝の半導体技術研究システムLSI技術開発部の部長はこう述べている。 「日本企業は一度注文をもらったら製品は安定して供給することには秀でているが、独自の製品の開発は苦手だ。それでは生き残れない」(日経産業新聞1993年3月29日) 90年代初頭、現場の最前線にいた人には明確に「このままでは日本の半導体は惨敗だ」という悪い予感があった。しかし、そこで国も企業も何も効果的な手を打たなかった。 インテルなど海外勢が復活してきたとはいえ、まだ日本の世界シェアは40%もあったし、技術力にも自信があったからだ。「日本は負けない!」という大合唱が、先の部長のような警鐘をかき消して、「いたずらに不安をあおる人々」にしてしまったのだ。 だが、そこからの衰退はご存じの通りだ。現在、日の丸半導体の世界シェアは一桁台に落ち込み、2020年には東芝はLSI事業から撤退。政府は慌てて世界最大手「TSMC」に媚を売って、4000億円の税金を渡して熊本に工場を建設させているが、ここで開発される半導体は10年前の技術。台湾企業のグローバル戦略に利用されているだけで、「日の丸半導体復活」にはほとんど寄与しない。つまり、28年前に東芝の部長が「予言」していた通りのことが進行しているのだ』、「「日本は負けない!」という大合唱が、先の部長のような警鐘をかき消して、「いたずらに不安をあおる人々」にしてしまったのだ」、こうした楽観バイアスはやはり恐ろしいものだ。
・『「わかりきっている負け」に突っ込んだ日本  実は日本の組織には、こういう「負けパターン」が異様に多い。データなどから客観的に分析をすると、どうやっても「負け」が見えている場合、避けるためには、過去の成功体験をリセットして、従来の方法論や従来の組織をガラリと変えなくてはいけない。 しかし、そういう議論を始めるとどこからともなく、「待て!そんなことをしなくても日本が負けるわけがない!」という絶叫が聞こえてくる。従来の手法や組織を変えるということは、これまで投入してきた人やカネがすべて「ムダ」だったということを認めざるを得ないということだ。そんな屈辱を絶対に受け入れられない勢力との争いが勃発して、組織が機能不全に陥る。結局、何も決められず、何も変えられず、進退極まって「わかりきっていた負け」へと突っ込んでいく。 その代表が、ちょうど80年前の今頃起きている。そう、1941年12月7日にはじまった太平洋戦争だ。 ご存じのように、この戦争は始まるかなり前の段階から「日本の負け」はわかりきっていた。当時、アメリカの石油生産能力は日本の700倍、陸軍の「戦争経済研究班」も「対英米との経済戦力の差は20:1」と報告している。この国と戦争をしてもボロ負けする、というのは海軍、陸軍、内閣、そして天皇陛下まで共通の認識だった。 1941年4月、当時日本の若手エリート官僚などを集めた「総力戦研究所」で、データに基づいて客観的かつ科学的に分析しても「日本必敗」という結論は変わらなかった。しかも、「緒戦は優勢ながら、徐々に米国との産業力、物量の差が顕在化し、やがてソ連が参戦して、開戦から3〜4年で日本が敗れる」とほぼ現実通りの敗戦シナリオまで読めていた。 しかし、この8カ月後、日本は戦争を始める。そこでよく言われるのは、アジアの白人支配をもくろむ英米の謀略で、ABCD包囲網やハルノートという理不尽な要求を突きつけられたせいで、日本は戦争に突入させられた、という「日本、ハメられた説」だ。しかし、戦史・紛争史研究家の山崎雅弘氏が、「太平洋戦争は本当に避けることができなかったのか」で指摘しているように、歴史を客観的に検証すれば、それはかなりご都合主義的な解釈だ。 日本政府と軍上層部が消極的に開戦に流れたのは、「これまでやってきたことの否定」を最後まで嫌がり、その責任を押し付けあっているうち機能不全に陥ったからだ』、「日本政府と軍上層部が消極的に開戦に流れた」様子は、腹が立つ。
・『社会全体の「日本は負けない!」の絶叫で戦争へ  アメリカ側が日本に要求していた、「中国からの完全撤兵」は陸軍としては絶対にのめなかった。日中戦争で約20万人の兵士を失い、国家予算の7割を注ぎ込んできたのに「手ぶら」で撤退すれば、陸軍内の責任問題に発展するだけではなく、陸軍そのものの存在も危ぶまれる大失態だ。そこに加えて、撤退という決断を下してしまうと、「戦争を望む国民」から政府や軍の幹部は壮絶な吊し上げにあって、本人や家族の命の危険もあった。 よくドラマなどで、太平洋戦争の開戦が描かれると、「軍靴の音が聞こえる」的な暗い世相で、ヒロインなどは軍国主義に翻弄されながら嫌々戦争に巻き込まれていくようなストーリーも多い。しかし、これはこの時代の「常識」と大きくかけ離れている。 当時、東京・四谷で生まれたばかりの赤ちゃんを育てていた女性は、真珠湾攻撃が成功したというニュースを受けて、個人の日記にこうつづっている。 『血わき、肉躍る思いに胸がいっぱいになる。この感激!一生忘れ得ぬだろう今日この日!爆弾など当たらないという気でいっぱいだ』(NHKスペシャル 新・ドキュメント太平洋戦争 1941 第1回 開戦(前編)) この人は国粋主義者でもなんでもなく、当時のきわめてノーマルな国民感覚を持っている。実は多くの国民はこの当時、「アメリカに目にもの見せてやれ!」「なぜ戦争をしない!」と弱腰の政府や軍に不満を感じていた。そんな社会のムードを受けて、若い軍人たちもとにかく天皇陛下に早く開戦を決断していただきたいと「下」から突き上げていた。戦争の回避を主張することは「反日」であり、「国賊」だったのだ。 政府や軍の幹部、そしてエリートたちが国力や資源という客観的データをもとに分析をした「日本は負ける」という結論が、社会全体の「日本は負けない!」の絶叫によって見事にかき消されてしまった結果が、対米戦争の開戦なのだ』、「戦争の回避を主張することは「反日」であり、「国賊」だったのだ」、「政府や軍の幹部、そしてエリートたちが国力や資源という客観的データをもとに分析をした「日本は負ける」という結論が、社会全体の「日本は負けない!」の絶叫によって見事にかき消されてしまった結果が、対米戦争の開戦なのだ」、「社会全体の「日本は負けない!」の絶叫」を煽ったのはマスコミだ。
・『現場の危機意識を大事に…80年前に学ぶべき  これは他の「負けパターン」にも見事に共通する。先ほどの東芝の部長もそうだが、自動車産業でも白物家電メーカーでも、鉄鋼でも造船でも、現場の最前線で指揮を執っているようなリーダーたちは早くから「このままでは日本は負ける」という危機意識を抱くケースが多い。 しかし、いつの間にか沈黙をする。現場から離れたところにいる、専門家、評論家、そしてジャーナリストなどが、「日本は負けない」などと叫び始める。愛国心を刺激する主張なので、世論も支持しやすい。そして気がつけば、「負け」を口にするものは売国奴となって、「客観的なデータ」はないがしろにされ、数多の問題を先送りにしたまま「負け戦」に突っ込んでいく。こういうことを80年間繰り返してきた結果が、今の日本だ。 冒頭で触れたようなニュースが多いからかもしれないが最近やたらと、「日本は負けない!」的な主張が増えてきた。今こそ80年前の「負けパターン」に学ぶべき時ではないか』、「今こそ80年前の「負けパターン」に学ぶべき時ではないか」、同感である。

次に、1月10日付け東洋経済オンラインが掲載した大蔵省出身で一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏による「日本人は「円安」がもたらした惨状をわかってない 自ら危機意識を持って脱却する必要がある」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/500552
:中国の工業化に対処するため、日本は「安売り戦略」を志向し、円を著しく減価させた。その結果、輸出は増えたが、貿易収支は悪化した。また、賃金も上昇せず、企業も成長しなかった。 昨今の経済現象を鮮やかに斬り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。野口悠紀雄氏による連載第60回。 韓国や台湾は、通貨を増価させた結果、貿易黒字が拡大した。それにより、経済成長率が高まり、賃金が上昇した。また、企業が成長した』、興味深そうだ。
・『中国工業化への対応:「安売り」か、「差別化」か  いま、韓国や台湾の賃金や1人あたりGDPが、日本に近づき、あるいは日本を追い越そうとしている。20年以上にわたる日本経済の停滞と、韓国・台湾の顕著な経済成長が、この結果をもたらすことになった。 なぜこうしたことが生じたのだろうか? それは中国の工業化への対処の違いによると考えられる。 1980年頃から始まった中国の工業化が、1990年代に本格化した。安い労働力を使って、それまで先進国の製造業が作っていた製品を、はるかに安い価格で作り、輸出を増大させた。 これによって、先進国の製造業は極めて大きな打撃を受けた。 中国の工業化に対応するのに、2つの方策がある。 第1は、輸出品の価格を切り下げて、中国の低価格製品に対抗することだ。これを「安売り戦略」と呼ぶことにしよう。 第2は、中国が作れないもの、あるいは中国製品より品質が高いものを輸出することだ。これを「差別化戦略」と呼ぼう』、なるほど。
・『日本は安売り戦略  日本は2000年頃以降、「安売り戦略」をとった。 国内の賃金を円ベースで固定し、かつ円安にする。これに「よって、ドル表示での輸出価格を低下させて、輸出を増大させようとした。) 十分に円安にすれば、輸出が増えるだけでなく、企業の利益を増やすことができる。 「ボリュームゾーン」と呼ばれた政策は、「安売り戦略」の典型だ。これは、新興国の中間層を対象に、安価な製品を大量に販売しようとするものだ。 この考えは、1996年度の『ものづくり白書』で取り上げられた。そして、2000年頃から顕著な円安政策が始まり、また、1990年代前半までは上昇していた賃金が頭打ちになった』、「日本」が「安売り戦略」を選択したのは、誤りで残念だ。「賃金が頭打ちに」なるのも当然だ。
・『韓国と台湾は、技術を高度化  この間に、韓国、台湾では国内の賃金が上昇した。また、為替レートが傾向的に減価することもなかった。 これは、少なくとも結果的に言えば、「差別化戦略」がとられたことを意味する。品質を向上させ、あるいは中国が生産できないものを輸出するか、新しいビジネスモデルを開発したのだ。 実際、下記の図に見られるように、韓国の場合、製造業輸出品に占めるハイテク製品の比率は、30%程度であり、最近では35%程度に上昇している。それに対して、日本の場合には20%程度であり、最近では低下している。 (外部配信先では図表や画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください) 台湾では、鴻海が、中国の安い賃金を活用して、電子製品の組み立てを行うビジネスモデルを開発した。また、TSMC(台湾積体電路製造)は、最先端の半導体製造技術を切り開いた』、「日本」は「安売り戦略」で、「韓国と台湾は、技術を高度化」、とは本来の立場からすると逆であるべきだ。
・『日本では貿易黒字が減少し、貿易赤字に  以上の政策がとられた結果、何が起こったか? 日本では、2000年頃から輸出が増えた。しかし、輸入額も増大した。 輸入品の中には、原油など、価格弾力性の低いものがある。これらは、輸入価格が上昇しても輸入量を減らすことができないため、通貨が安くなれば、輸入額がさらに増える。 このため、貿易黒字は減少する。 実際、日本の貿易黒字は2005年頃から減少に転じ、さらに貿易収支が赤字化した。 貿易収支悪化は、リーマンショック後に顕著になった。2012年頃の原油価格高騰期には、とくにそうだった。 日本ではサービス収支が恒常的に赤字なので、貿易サービス収支が悪化する(2011年以降、2016、2017、2018年を除けば、赤字)。これを所得収支(対外資産からの収益)で賄う形になった。 これは、家計で言えば、退職後の人々と同じパターンだ。給料を得られないので、それまで蓄積した資産の収益で生活を支えるパターンとなる。) 韓国、台湾では、輸出の増加が輸入増加を超えたので、貿易収支の黒字が拡大した。 もともと韓国、台湾では、輸出に対する依存度が大きいので、この拡大は経済に大きな影響を与えたと考えられる。 なお、2000~2007年頃、アメリカの輸入が増加し、アメリカの経常収支赤字が拡大した。これは、アメリカ国内で消費が増加したためだ。これも、日本や韓国などの輸出増大に寄与した。 しかし、リーマンショックによって、このメカニズムが崩壊した。その後、日本も韓国も、輸出の伸び率は低下している。 ただし、日本の輸出が2007年頃以降ほとんど停滞してしまったのに対して、韓国、台湾の輸出は増加を続けた。 そして、日本の貿易収支が2011年後以降2015年まで赤字化したのに、韓国の貿易収支は黒字を続けた』、「韓国の貿易収支は黒字を続けた」、競争力が強かったためだろう。
・『韓国では、企業の時価総額が増加  韓国企業の成長は、時価総額の増加に現れている。 下図は、日本と韓国の国内企業の時価総額合計額の推移を示す。 2000年から2020年の間に、日本では、3.157兆ドルから6.718兆ドルに、2.13倍になっただけだ。 これに対して、韓国企業の時価総額合計額は、同期間中に、0.171兆ドルから2.176兆ドルへと、実に12.7倍になった。 この期間に、韓国企業の利益が顕著に増加したことを示している』、韓国の競争力の強さは、「企業の時価総額合計額」の急増にも表れている。
・『韓国と台湾に登場した巨大時価総額企業:サムスンとTSMC  韓国や台湾には、時価総額が巨大な企業が登場している。 韓国のサムスンの時価総額は、現在、4419億ドルで、世界ランキング第16位だ。 台湾のTSMCは、6239億ドルで、世界ランキング第10位だ。 これらはいずれも、日本で時価総額トップの企業であるトヨタの時価総額(2567億ドル、世界第41位)より大きい。 2010年頃に、日本の電機メーカーから、「打倒サムスン」の声が起きた。 しかし、実際には、打倒されてしまったのは、日本のメーカーだった。) 当時の日本を代表する総合電機メーカーの現在の時価総額は、次の通りだ。 ソニー:1567億ドル、日立:516億ドル、富士通:340億ドル、三菱電機:271億ドル、東芝:178億ドル、NEC:126億ドル、パナソニック:110億ドル。 これらすべてを合わせても3108億ドルで、サムスンの7割にしかならない。 これらすべてにトヨタを加えても、TSMCに及ばない。 半導体も、かつては、DRAMの分野で、日本メーカーが世界を制覇した。 いまは、台湾のTSMCが、世界のどのメーカーも追随できない製品を作っている。 日本政府は先頃、工場建設費の6割を負担してこの工場を日本に誘致することを決めた。 確実でない。 とりわけ、米中貿易戦争の影響は大きいだろう。 実際、韓国の貿易収支黒字は、2018年ごろから頭打ちになっている。これによって、経済成長も頭打ち気味だ。 また、TSMCの急成長も、半導体不足という短期的現象で増幅されている面がある(TSMCの時価総額は、2000年からわずか2年間で3倍以上になった)』、「サムスンとTSMC」の「時価総額」は一時的要因の押し上げはあるとしても、日本の電機メーカーに比べ圧倒的大きさだ。
・『通貨安に対する民族記憶がある韓国と、ない日本  韓国が通貨安政策を求めず、通貨高を実現させたのは、1990年代末のアジア通貨危機の影響と思われる。 この時、韓国は、ウォンの暴落で国が破綻する瀬戸際まで追い詰められた。この時の経験が民族的な記憶となって、通貨政策に反映しているのであろう。 これに対して日本では、そのような経験がない。 しかし、それが以上で見たような、「亡国の円安」の進行を許す結果となった。 いま、異常なまでの円安が進んでいるにもかかわらず、国民が危機意識を持たないのは、日本は韓国のような経験をしていないためだ。 この状況から、何とかして脱却する必要がある』、日本には異常なまでの円高恐怖症があることも大きな要因だ。

第三に、1月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した立命館大学政策科学部教授の上久保誠人氏による「日本が亡国の道を突き進む元凶、「やったふり」「先送り」キャリア形成の弊害」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/292753
・『昨年は、コロナ禍によって「デジタル化の遅れ」をはじめ、日本社会のこれまであまり明らかになっていなかった問題が噴出した年だった。今後さらに新型コロナが感染拡大した場合、今の医療体制ではひとたまりもないことは明らかだが、政府は抜本的な医療改革には手をつけない。この日本の停滞の根源には、子どもの「受験」から始まる古いキャリア形成にあると考える』、興味深そうだ。
・『何事も動き出しが遅い日本はキャリアシステムに問題あり?  日本は政策が「Too Little(少なすぎる)」「Too Late(遅すぎる)」「Too Old(古すぎる)」だ(本連載第290回・p6)。  「コロナ禍」への対応では、感染拡大期に何度も医療崩壊の危機に陥った(第282回)。ワクチンについても、世界最先端の情報を得られず、諸外国に比べて確保も接種も初動が遅れてしまった(第279回・p3)。 後に、菅義偉首相(当時)の強い指揮でワクチン接種の遅れを取り戻し、感染者数・重症者数・死亡者数においては、欧米などと比べて低く抑えられている。だが、国民の政府のコロナ対策への評価は高くない。かろうじて医療崩壊を避けられても、今後強毒性の感染症のパンデミックが起こったら、今の医療体制ではひとたまりもないことは明らかだ。 だが政府は、抜本的な医療体制の改革には手を付けない。一体なぜなのか。 今回は、日本社会の「受験」「就職活動」から「年功序列」「終身雇用」の「日本型雇用システム」という、日本独特のキャリア形成のシステムに焦点を当てる』、「キャリア形成のシステム」がどのように問題を引き起こしているのだろう。
・『「学校では、塾通いを隠し、やったふりをしろ」が問題の原点  日本を動かしている政治家、官僚、財界人は、今の日本のキャリアシステムの頂点に君臨している人たちだ。 例えば、岸田文雄首相は「開成閥」とされている。開成高校の同窓である官僚、財界人が首相の脇を固めているというのだ。また、世襲議員や官界・財界の「麻布閥」が存在するともいわれてきた。 だが、このキャリアシステムが生み出したものは、「誰も結果を出そうとしない」社会だ。結果には「責任」が伴うが、それを嫌がり、誰も責任を取らない社会となっている。 まず、「受験」から考えてみたい。中学・高校・大学の「受験」は、学校の外部にある「塾」に通わなければ合格が難しい。学校で学ぶだけでは、難解な入試問題が解けないのだ。 私は子どもがいるので実際にみたことだが、親が子どもに「塾のことを学校でしゃべるな」という。学校の学びは塾より遅れていることが多く、子どもはすでに塾で学んだことを隠して、学校で勉強を「やったふり」をする。 運動会、学芸会などの学校行事も、受験勉強の妨げにならないように「やったふり」をする。親が、子どもをビデオ撮影する「思い出作り」の場となる。 学校では、塾通いを隠し、やったふりをしろ」という親の教えは、子どもに相当な悪影響がある。これが、「出るくいは打たれる」のを避けて、黙って静かに時が過ぎるのを待つ日本社会の風潮の原点になっていると思うのだ(第56回)。 これは、学校が「次のステップのためにいる場所」でしかないということを意味している。小学校は中学校の、中学校は高校の、高校は大学のためのステップだ。 大学も、就職のためのステップでしかない。あくまで「文系」の話と断っておくが、大学入学という「学歴」を得たら、1年生から就活(就職活動)の準備をするという学生が少なくない。 今の学生は、ゼミも、サークル活動も、ボランティアなど課外活動も、短期留学も、すべて就活のため、「履歴書」に記載するためだけにやっているように感じる。 私は大学で教員をしているが、ゼミやサークルでは「副リーダー」になりたがる学生がいる。履歴書に記載でき、実質的には何の責任がない役をやりたがるのだ。サークルは、4年間活動に没頭するよりも、就活に有利なところに籍を置くことを重視する。海外留学も「履歴書」でアピールできるものだ。短期のものが人気だが、それでは語学力がつかず、異文化も理解できない』、「ゼミも、サークル活動も、ボランティアなど課外活動も、短期留学も、すべて就活のため、「履歴書」に記載するためだけにやっているように感じる」、情けないが仕方ないのだろう。
・『無難に就職、無難な配属を選んで無難に「やったふり」  次に「就職活動」を考える。 自ら起業する学生が増えているというが、それは一握りにすぎない。結局、大多数の学生が「年功序列」「終身雇用」の会社に入社する。同じ会社に勤め続ければ、同期と横並びで出世していくシステムの中で、ローテーションでさまざまな業務を数年ずつ経験しながら、キャリアアップしていくことになる。 このシステムの特徴は、少なくとも表面的には、同期入社の出世は横並びということだ。ゆえに、何か問題が起きて、横並びの出世コースから外れると、元に戻るのが難しい。 だから、自分の担当部署が無難であることが何より重要になる。自分が担当の間、何か問題が起きても、それを解決するより、その問題をできるだけ隠して「先送り」し、別の部署に異動するときに、後任に渡そうとすることになる。 逆に、問題をわざわざ表沙汰にして、解決しようとしても評価されない。「先送り」をしてきた先人にとって都合が悪い。だから、そういう人は煙たがられる。組織の人事評価は、周囲と調和していく「穏健な人」が高く評価され、出世していく傾向になる。 要するに、学校から企業などに入社し、無事に定年退職まで勤め上げる間、成果を上げようとはしなくなる。静かに事を荒立てず、無難に「やったふり」をするのが出世の道なのだ』、「学校から企業などに入社し、無事に定年退職まで勤め上げる間、成果を上げようとはしなくなる。静かに事を荒立てず、無難に「やったふり」をするのが出世の道なのだ」、日本企業の生産性の低さにも大きく影響している筈だ。
・『海外では「公募」が基本、「やったふり」では生きられない  ところが、日本以外の社会では、「年功序列」「終身雇用」というシステムは基本的に存在しない。欧米だけではない。私の勤務校の大学院にはアジアの国々の公務員が留学しているが、彼らの国の制度では、公務員資格を持ち、さまざまな役所を渡り歩きながら、出世していくそうだ。 海外では、組織を移籍する時は、基本的に「公募」を使う。経営者でさえ「公募」で決まる。日本でいう「プロ経営者」だ。部長や課長なども、公募で決まる。内部昇格はあるが、「公募」を必ず行う。外部から応募してきた人材と比べて最適と審査された時のみ、内部昇格できる。要するに、役職に適合する人を組織内外に幅広く募り、最適な「専門家」を採用するのだ。 そういう社会で出世するには、「やったふり」で静かに待っているだけではいけない。「業績」を出し続けねばならないのだ。それを履歴書に載せて、次のポジションを求めて公募にチャレンジする。その繰り返しでキャリアアップしていくのだ。 日本と欧米の組織の違いを、官僚組織を事例に具体的に説明してみよう。 日本では、キャリア官僚は省庁で新卒一括採用される。「年功序列」「終身雇用」で、同じ省庁で退官するまで勤め続ける。その間、さまざまな部署をローテーションで経験し、ジェネラリストになっていく。 「政策」は、省庁内で対応可能な範囲内で立案されることになる。現在ある組織を前提にして、その枠を超える政策は作られない。他の省庁との協力も拒否する。複雑な問題は、「先送り」することになる(第183回)。 その端的な事例が、待機児童問題の解決策だった「幼保一体化」だ。厚生労働省の管轄する保育園と、文部科学省が管轄する幼稚園を一体化しようとしたが、厚労省と文科省の「縦割り」を打破することができず、待機児童問題の解決は「先送り」され続けている(第128回)。日本の行政では、適切な政策の実現よりも、各省庁の組織防衛が優先されるということだ。 一方、海外の官僚組織では、組織防衛よりも「政策」が優先される。既存の省庁で対応できない新しい政策課題は、新しい役所を設置し、専門的な人材を集めて政策立案をするのだ(第156回・p3)。 例えば、英国が2016年に「EU離脱」を決定した時、テリーザ・メイ首相が就任直後に、「EU離脱省」という新たな役所の設置を決断して、EUとの離脱交渉に臨むことにした。EU離脱によって生じる複雑な課題を、既存の省庁が個別に交渉するのではなく、新しい役所を設置し、専門家を新たに雇用して対応したのだ』、「既存の省庁が個別に交渉するのではなく、新しい役所を設置」、わざわざ新設までするかの是非は慎重に検討する必要がある。
・『コロナ禍で明らかになった日本の遅れ、根本に「先送り」  現在の、コロナ禍で明らかになった「デジタル化の遅れ」などの問題も、省庁、民間企業、政界で問題に真剣に取り組まず「やったふり」をして、解決を「先送り」し続けた結果ではないだろうか。 「デジタル庁」がようやく発足し、自民党は胸を張っているが、デジタル化は欧米から20年は遅れているのが現実だ(第202回)。 コロナ対策も問題だらけである。基本的に、コロナ対策を動かしているのは厚労省だ。政府の専門家会議、厚労省のアドバイザリーボードなど「審議会」に招集された御用学者は、省庁が決めた政策に「お墨付き」を与える存在でしかない。 だから、御用学者とは、現在世界の最先端の研究に取り組む若手ではない。すでに、第一線から引退状態の重鎮だ。彼らが「権威」として審議会に呼ばれ、政策に「お墨付き」を与え、省庁は政策の「正当性」を得る。 御用学者も、厚労省の官僚も、「学歴社会」「年功序列」「終身雇用」の日本社会の頂点に君臨する存在だ。その結果、コロナ対策は、「やったふり」「先送り」「縦割り」「組織防衛」ばかりの混乱状態となり、国民を不安に陥れた。 まず、ワクチンの入手・接種の遅れだ。専門家は、世界のワクチン開発の進捗を読み誤り、日本のワクチン入手は諸外国と比べて大幅に遅れた(第277回)。また、国内のワクチン利権を守ることが、ワクチン入手の障害になったという指摘もあった(選択12月号 『<<日本のサンクチュアリ>>国産ワクチンの「巨大利権」』)。 次に、何度も「緊急事態宣言」の発出を繰り返すことになった「医療体制崩壊の危機」だ。病床を確保するための議論は、専門家会議でほとんどなされなかった(第277回・p2)。それは、専門家会議に、感染症の専門家しかいなかったからだ。 彼らは感染症の予防・治療が専門でも、医療体制の確保は専門ではなかった。病床の確保は、他の疾病、糖尿病、心臓病、がん、脳卒中等の病床を分けてもらうしかない。だが、それらの疾病の専門家は会議にいないのだから、病床の確保の議論ができるわけがなかった。要するに、病床の確保は、医学界全体で取り組むべき課題だったが、医学界の「縦割り」が問題解決を妨げたのだ(第262回)。 結局、厚労省は「縦割り」「既得権」に手を付けないようにして、ひたすら国民に行動制限を求める対策に終始してしまったのではないだろうか。 私は、「受験」「就活」「年功序列」「終身雇用」の日本型のキャリアシステムそのものを変えていかなければ、今後も日本が直面するさまざまな課題について、その解決に正面から取り組まず、「やったふり」「先送り」が続くことになると考える。 日本の政界・官界・財界を動かす人たちは、このシステムの頂点にいるので、自らそれを変えることは難しい。彼らが組織内の論理で「やったふり」「結果を出さない」出世争いを続ける間に、世界は、日本を置き去りにして先に進んでいく。それは「亡国の道」である』、「日本の政界・官界・財界を動かす人たちは、このシステムの頂点にいるので、自らそれを変えることは難しい。彼らが組織内の論理で「やったふり」「結果を出さない」出世争いを続ける間に、世界は、日本を置き去りにして先に進んでいく」、外資系企業経営者、学者やジャーナリストなど、「このシステム」の周辺部にいる「人たち」が中心になって世界にキャッチアップしていく努力をするべきだ。
タグ:日本の構造問題 (その24)(「日本は負けた」系ニュースが急増しても事実を認めない人々の“負けパターン”、日本人は「円安」がもたらした惨状をわかってない 自ら危機意識を持って脱却する必要がある、日本が亡国の道を突き進む元凶 「やったふり」「先送り」キャリア形成の弊害) ダイヤモンド・オンライン 窪田順生 「「日本は負けた」系ニュースが急増しても事実を認めない人々の“負けパターン”」 「「日本は絶対に負けない!」と叫べば叫ぶほど事態を悪化させるという「負けパターン」を繰り返してきた」、困った悪弊だ。 「10年前に「不安をあおるバカ」と罵られた側の警鐘が現実となりつつある」、なるほど。 「肝心の技術の部分はこちらが握っているので、いくら「器」が売れたところで、「メイド・イン・ジャパン」の優位性が脅かされることはない、と高をくくっていた」、こうした思い上がりは日本人の悪弊だ。 「「日本は負けない!」という大合唱が、先の部長のような警鐘をかき消して、「いたずらに不安をあおる人々」にしてしまったのだ」、こうした楽観バイアスはやはり恐ろしいものだ。 「日本政府と軍上層部が消極的に開戦に流れた」様子は、腹が立つ。 「戦争の回避を主張することは「反日」であり、「国賊」だったのだ」、「政府や軍の幹部、そしてエリートたちが国力や資源という客観的データをもとに分析をした「日本は負ける」という結論が、社会全体の「日本は負けない!」の絶叫によって見事にかき消されてしまった結果が、対米戦争の開戦なのだ」、「社会全体の「日本は負けない!」の絶叫」を煽ったのはマスコミだ。 「今こそ80年前の「負けパターン」に学ぶべき時ではないか」、同感である。 東洋経済オンライン 野口悠紀雄 「日本人は「円安」がもたらした惨状をわかってない 自ら危機意識を持って脱却する必要がある」 「日本」が「安売り戦略」を選択したのは、誤りで残念だ。「賃金が頭打ちに」なるのも当然だ。 「日本」は「安売り戦略」で、「韓国と台湾は、技術を高度化」、とは本来の立場からすると逆であるべきだ。 「韓国の貿易収支は黒字を続けた」、競争力が強かったためだろう。 韓国の競争力の強さは、「企業の時価総額合計額」の急増にも表れている。 「サムスンとTSMC」の「時価総額」は一時的要因の押し上げはあるとしても、日本の電機メーカーに比べ圧倒的大きさだ。 日本には異常なまでの円高恐怖症があることも大きな要因だ。 上久保誠人 「日本が亡国の道を突き進む元凶、「やったふり」「先送り」キャリア形成の弊害」 「キャリア形成のシステム」がどのように問題を引き起こしているのだろう。 「ゼミも、サークル活動も、ボランティアなど課外活動も、短期留学も、すべて就活のため、「履歴書」に記載するためだけにやっているように感じる」、情けないが仕方ないのだろう。 「学校から企業などに入社し、無事に定年退職まで勤め上げる間、成果を上げようとはしなくなる。静かに事を荒立てず、無難に「やったふり」をするのが出世の道なのだ」、日本企業の生産性の低さにも大きく影響している筈だ。 「既存の省庁が個別に交渉するのではなく、新しい役所を設置」、わざわざ新設までするかの是非は慎重に検討する必要がある。 「日本の政界・官界・財界を動かす人たちは、このシステムの頂点にいるので、自らそれを変えることは難しい。彼らが組織内の論理で「やったふり」「結果を出さない」出世争いを続ける間に、世界は、日本を置き去りにして先に進んでいく」、外資系企業経営者、学者やジャーナリストなど、「このシステム」の周辺部にいる「人たち」が中心になって世界にキャッチアップしていく努力をするべきだ。
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新規上場(IPO)(その3)(1兆6000億円「超巨額上場」で激震 ヤバすぎる国際諜報企業の正体 あらゆる情報を収集している…かもしれない、日本版SPACへの反対論を撤回!今のIPOよりマシかもしれない理由、上場後3年で「4社に1社がマイナス成長」のなぜ) [金融]

新規上場(IPO)については、2015年6月14日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その3)(1兆6000億円「超巨額上場」で激震 ヤバすぎる国際諜報企業の正体 あらゆる情報を収集している…かもしれない、日本版SPACへの反対論を撤回!今のIPOよりマシかもしれない理由、上場後3年で「4社に1社がマイナス成長」のなぜ)である。なお、タイトルから「ブームの裏面」をカット

先ずは、2020年10月17日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの時任 兼作氏による「1兆6000億円「超巨額上場」で激震、ヤバすぎる国際諜報企業の正体 あらゆる情報を収集している…かもしれない」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/76330?imp=0
・『裏の世界から表舞台へ  9月30日、時価総額150億ドル(約1兆6000億円)の巨額上場が市場を揺るがした。米パランティア・テクノロジーズ(以下パランティア)がニューヨーク証券取引所に上場したのだ。 「諜報の世界では知らぬ者がない巨大情報企業が、いよいよ表舞台に姿を現した」 世界各国の情報機関の動向に通じる外事関係者は、そう指摘する。 パランティアは今年7月6日に米証券取引員会(SEC)に新規株式公開(IPO)の申請を行った。同社は2004年に米カリフォルニア州パロアルト、いわゆるシリコンバレーで創業されたデータ分析企業であるが、来歴からして興味深い会社だ。 そもそも「パランティア」とは、英国の著名なファンタジー作家J・R・Rトールキンの代表作『指輪物語』に登場する不思議な霊力を持った石の名称で、全世界ばかりか過去も未来も見通す水晶玉のような道具のこと。データ分析によって、ありとあらゆるものを見通す「神の目」たらんという意図を込めて命名された。 パランティアの創業者はかのペイパル創業者ピーター・ティールで、その際の資金はCIA(米中央情報局)が直接運営するベンチャーキャピタルIn-Q-Telが提供した。In-Q-Telは、諜報活動を通して世界中から集まる膨大な情報を解析するための技術開発を目的に1999年に設立され、1億7000万ドルの資金を運用し、数多くのIT企業に投資を行っている。 In-Q-Telの社名の由来も奥が深い。Intel (Intelligence=情報、諜報の略)の間に、スパイ映画「007」に登場する英国諜報機関の管理者「Q」(QはQuartermaster「需品係将校」の略で、研究開発課の責任者の意味もある)を挟んだとのこと。初代CEO(最高経営責任者)が、人気のコンピュータ・ゲーム「テトリス」のライセンスを旧ソ連の開発者から最初に取得したことで知られるゲームの開発者であった点も興味深い。 ともあれ、パランティアはCIAの資金で創設された情報解析企業なのである』、「CIAの資金で創設された情報解析企業」、が上場しているというのは、米国市場の懐の深さを示しているようだ。
・『「Xキースコア」の脅威  そして、そのパランティアの代表的な業績が「Xキースコア」という驚異的なメール・ハッキングソフトだ。外事関係者が語る。 「パランティアは創業からわずか数年で優れた情報解析システム『Xキースコア』を開発し、めざましい実績を上げた。最たるものは、CIAが血眼になって探していたイスラム過激派『アルカイダ』のトップで、米同時多発テロの首謀者と目されたオサマ・ビン・ラディンの追跡任務への協力だった。同社はこれを見事にやり遂げ、ビンラディンは2011年5月、パキスタンにおいて発見され、射殺された」 こうしたことが評価され、パランティアは米情報機関の御用達となった。CIAを筆頭にNSA(米国家安全保障局)、FBI(米連邦捜査局)、さらにはDIA(米国防情報局)などが顧客となったというが、その存在を世に広く知らしめたのは、NSAの世界的な監視網の実態を暴露した元CIAおよびNSA局員であったエドワード・スノーデン氏だった。 2013年6月、スノーデン氏はNSAが採用している情報収集プログラムについての機密文書をジャーナリストに渡し、その実態を暴露した。この告発によってまず明らかになったのが、「プリズム」というプログラム。NSAはこれを用いて、グーグル、ヤフー、フェイスブック、マイクロソフト、アップル、ユーチューブ、スカイプなど米大手IT会社のサーバーにアクセスし、通信記録を入手していたのである。 世界中でサービスを提供するIT企業が情報収集に加担しているとの暴露は大きな反響を呼んだが、このときNSAが採用していた「Xキースコア」の威力にも注目が集まった』、さすがに情報機関を顧客に持つだけあって、「Xキースコア」、「プリズム」の威力は凄いようだ。
・『スノーデンの告発の契機に  前出の外事関係者が話す。 「スノーデン自身、CIA局員として2007年にスイス・ジュネーヴへ派遣された際にこのプログラムを知ったというが、その使われ方を見てショックを受けた。 たとえば、『攻撃』『殺し』『ブッシュ』などとキーワードを入力して米大統領への敵対的な発言をネット上で検索すると、メールはもちろんチャットやブログ、フェイスブック、さらには非公開のネット情報をも含めて世界中の人々の通信内容が即座にリストアップされてくる。 しかも追跡能力も高く、マークした情報の発信者の身元などはもちろんのこと、その人物と情報をやり取りしている人たちまですべて把握できてしまう。さらに、それらの人物の位置情報や立ち寄り先、接触相手、さらにはネットの閲覧内容や商品購入など、ネットを通じる情報は遺漏なく網羅することも可能だという。 こうなると、秘密などもはや存在しない。これをもとに、さまざまなこともできる。やろうと思えば、名誉棄損どころか実生活に被害を与えることや、身体や生命を脅かすことも難しくない。ビン・ラディンの追跡と殺害はまさにその威力を示すものといえるが、スノーデンはこの実態を知って危機感を抱き、告発へと動いた。『神の目』と言えば聞こえはいいが、実際のところは神をも恐れぬネット監視。覗き見だ」 これについては、日本の国会でも問題になった。2017年5月の衆院外務委員会で共産党の宮本徹議員が、同年4月に米インターネットメディア・インターセプトが公開した「スノーデン・ファイル」(スノーデン氏が持ち出した機密文書)をもとに政府を追及したのである。 宮本議員は、「Xキースコア」をNSAが内閣情報調査室経由で防衛省情報本部電波部に提供したという記述があるとしたうえで、「国内外のネット上のさまざまな情報を収集しているのか」と問いただしたが、政府側はこう答弁した。 《内閣情報調査室におきましては、平素から関係各国との間で必要な情報交換を実施しているところでございますが、その具体的な内容や時期等を明らかにすることは、他国との信頼関係を害することにもなりかねず、今後の事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあることから、お答えは差し控えたいというふうに存じます》 《防衛省におきましては、我が国の防衛に必要な情報を得るため、我が国上空に飛来する軍事通信電波や電子兵器の発する電波などを全国各地の通信所などで収集し、整理、分析しております。電波情報業務の具体的内容につきましては、将来の効果的な情報活動の支障となるおそれがありますことから、お答えを差し控えさせていただきますが、防衛省・自衛隊におきます情報収集活動は、我が国の防衛に必要な情報を得るために行っているものでありまして、インターネット上のメールの傍受を含め、一般市民の監視を行っているものでは全くありません》 これに対し、宮本議員は「内閣情報調査室が音頭をとって、『Xキースコア』を手に入れて、防衛省、警察(情報本部の歴代電波部長は警察庁から出向)、一緒になって、個人の情報を監視できる体制をつくっていっている。とんでもない話ですよ」と批判を浴びせたものの、糠に釘であった。 もっとも、日本政府の答弁は詭弁に近いと言えるようだ。「ネット監視」を否定したというよりも、「一般市民の監視」を否定したというのが正しい読み方とみられる。しかも、政府にとって都合が悪ければ、「一般市民」はいつでも「特定の市民」になりうる。 その証拠に、防衛関係者は当時、こんな証言をしていた。 「2012年、日本はインターネット諜報を開始した。NSAから提供された『Xキースコア』を稼働させ、日本全国のデータを網羅的に収集している。活動拠点は福岡県の太刀洗通信所に置かれている」』、「宮本議員」の「質問」に対し、「日本政府の答弁は」、余りに不誠実だ。マスコミももっと追及してほしい。
・『日本も関与している「タブー」  大刀洗通信所とは、1997年にDIAに習って設置された日本最大の電子諜報機関・防衛省情報本部傘下の6つの通信所のうちの一つで、巨大なレーダードーム施設を有し精鋭部隊が配備されている。 「通信所内には、B地区と呼ばれる閉鎖エリアがある。出入りには公道の下をくぐる地下道を利用するのが原則で、道路に面したゲートは機材の搬入等以外に開けられることはない。そして、地下に広大な基地が設けられ、他の部署と交流を断った別働部隊が常駐している。これこそが、インターネット諜報部隊だ」(防衛省関係者) つまり日本は、パランティアの驚異的なプログラムを、それがスノーデン氏の告発によって世の中に知らしめられる以前に導入していながら、現在に至るまで公には決して認めようとしていないのである。 その意味では、パランティアという企業を詮索すること自体が一種のタブーなのかもしれない。だが今回、同社は株式公開を行い、その事業内容を公にした。上場の目的はいったいどこにあったのか。 「有名になり過ぎたために、CIAが手綱を放すことにしたのだろう。これまでのような諜報業務には、すでに別の会社が用意されているのではないか」 前出の外事関係者はそう分析するが、防衛関係者の見方は異なる。 「もっと多くの企業から機密情報を吸い上げるためだろう」』、「大刀洗通信所」には「巨大なレーダードーム施設を有し精鋭部隊が配備。「日本は、パランティアの驚異的なプログラムを、それがスノーデン氏の告発によって世の中に知らしめられる以前に導入していながら、現在に至るまで公には決して認めようとしていない」。
・『富士通、SOMPOも出資  パランティアについては、別の興味深い話がある。日本の著名企業も出資しているのだ。 今年6月、大手IT企業の富士通がパランティアと戦略的提携をし、約53億円を出資すると発表。また、損保ジャパンをはじめとする保険会社を傘下に持つSOMPOホールディングスも同月、5億円を出資することを明らかにしている。 防衛関係者によれば、個人資産や金融情報、医療情報といった分野にも手を伸ばそうとしているのではないか、というのである。 同関係者は、パランティアが現在の米政権との関わりが深いことも憂慮する。同社の創設者ティール氏はトランプ大統領の支持者として知られ、政権のアドバイザーも務めている。「アメリカ・ファーストの旗振りのもと、日本の情報が狙われているように思えてならない」(防衛関係者)。 パランティアとは別の「諜報企業」が立ち上げられるにしろ、同社の提携企業が増えるにしろ、日本の情報が危険にさらされていることに変わりはない。政府は米国の技術に便乗し、国民に背を向けている場合ではないはずだ』、「日本」の「大手IT企業」や「SOMPOホールディングス」の「パランティアと戦略的提携」に関しては、「日本の情報が危険にさらされ」ることのないよう「日本政府」は、目を光らせるべきだ。

次に、昨年12月22日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏による「日本版SPACへの反対論を撤回!今のIPOよりマシかもしれない理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/291428
・『8月に『日本版「SPAC」の導入に反対する3つの理由、矛盾した汚い仕組みは必要ない!』というタイトルで、日本版SPAC(特別買収目的会社)の導入反対論を書いた筆者だが、考えを変えた。現在の新規株式公開(IPO)よりもマシかもしれないと考えたからだ。現在のIPOプロセスはSPACで考えられる以上に「悪い」ものである可能性がある。その理由を説明しよう』、「山崎氏」のいいところは誤りを誤りとしていさぎよく認めるところだ。
・『日本版SPAC導入は既定路線か 筆者が反対派から賛成派に転じた理由  予想の問題として、わが国にあって「SPAC」(Special Purpose Acquisition Company:合併を目的とする特別目的会社)は実現するだろう。そして、筆者個人は、SPACの導入に関して現在、必ずしも反対ではない。 SPACについて筆者は、8月25日付けの本連載で『日本版「SPAC」の導入に反対する3つの理由、矛盾した汚い仕組みは必要ない!』というタイトルで、導入反対論を書いている。意外だと思われる読者がいらっしゃるだろう。まず、この点について説明する。 筆者は、日本取引所グループ(以下「JPX」)が主宰する「SPAC制度の在り方等に関する研究会」の第1回および第2回の会合に参加した。そして、3回目以降、同研究会から離脱した。 JPX側からは当初、SPACについて「導入するかしないかについては、中立的な立場から議論をする」という説明を受けて参加した。ところが、事務局による議事の運営は本質的な議論に踏み込まず、導入の際の論点出しに終始するもので、議論の進め方がフェアでないと感じた。また、そもそも会の進め方が、議論のできる建て付けになっていないことも不満で、筆者はこの研究会を辞めることにした』、「SPAC制度の在り方等に関する研究会」の「議論の進め方がフェアでない」との理由で、「3回目以降、同研究会から離脱」、とは正義感らしい行動だ。
・『SPAC導入で真に議論すべきは「IPOのあり方」との比較  ちなみに、筆者が「本質的な問題」だと考えるのは、現在行われている新規株式公開(IPO)のあり方との比較だ。 SPACは「空箱上場」とも言われ、利益相反が発生する懸念や合併時に資産額の20%程度の株式を取得するSPACスポンサーの取り分の大きさ、投資家保護の問題(事業の実体のない「空箱」を投資家はどう評価して売買するのか等)といった、多くの問題を抱えている。だが論理的可能性としては、現在のIPOのプロセスがSPAC以上に悪いものなら、「よりましであり得る競合的株式公開手段」として日本版SPACを導入する意義を見いだし得る。 そして、JPXは議論を避けたが、現在のIPOプロセスはSPACで考えられる以上に「悪い」ものである可能性がある。端的に言って、公開価格が低すぎて創業株主等が株式を安く売らされる「アンダープライシング」の問題が深刻であり、公開に至るプロセスも時間と手間が掛かり、証券会社の公開予定会社に対する影響力行使が過剰な場合もある』、言われてみれば確かに「現在のIPOプロセスはSPACで考えられる以上に「悪い」ものである可能性がある」、なるほど。
・『IPO企業の多くは低い株価で株式を売らされている  日本証券経済研究所の『証券レビュー』2021年10月号に載った「IPO企業の公開価格形成に関わる提言(下)」(一橋大学大学院教授・鈴木健嗣)によると、2013年以降にベンチャー企業向け市場のIPO株を公開価格で投資した場合、1日で得られる平均株価収益率は110.5%だという。サンプル数は528社であり、公開価格が初値を割る企業の割合は7.3%(528社中39社。平均初期収益率はマイナス9.3%)に過ぎないという。公開企業の多くが、いかに低い株価で株式を売らされているかがよく分かる。 このアンダープライシングをコストと見ると、実質的な手数料が高いように見えるSPACの方が「まし」であり得る可能性が十分ある(もちろん、個々のSAPCの条件設定にもよる)。 従って、筆者はSPAC導入に反対しないことにした。日本版SPACはやってみるといい。) また、前述の研究会の進め方から見て日本でSPACは導入されるだろうし、JPXはその準備を進めているものと推測する。制度的に、SPAC導入は国会で法律を通す必要があるものではなく、概ね取引所の判断で可能だ。 なお、私見では、SPACが導入された場合は投資家保護上、深刻な問題を抱える可能性がある。筆者個人としては、SPACの研究会に参加して投資家保護についてコメントを述べた上でSPAC導入に賛成したという立場を取るよりいいやり方があると考えた。今後実現するSPACに対して外から投資家保護上の問題を指摘して、必要があれば投資家に警告する立場を取る方が、投資家の役に立つだろうと判断したのだ。 SPACで必要だと思う投資家保護については、あえて書かない。JPXのお手並み拝見、とすることにしよう』、「今後実現するSPACに対して外から投資家保護上の問題を指摘して、必要があれば投資家に警告する立場を取る方が、投資家の役に立つだろうと判断」、山崎氏らしい判断だ。
・『SPAC投資はもうかるか? コスト構造の変化に要注意  投資家の関心の対象は、日本でSPACが導入された場合、SPACに投資するともうかるのか否かだろう。当然のことだ。 結果は個々のSPACによる、ということになるのだが、「もうかりにくいかもしれない」という可能性については、現時点で指摘しておきたい。 先に、IPOのアンダープライシングの問題をコストと見た場合に、SPACの実質的なコストがこれを下回る可能性をSPAC導入への賛成理由に挙げた。前者は企業の創業株主等が支払うコストであるのに対して、後者はSPACの投資家がコスト負担者になることに注意したい。 全体としてコストが節約されて効率的になるとしても、コストの負担者が変化することで関係者の有利・不利は変化する。公開企業側はIPOで売るよりも高い株価で資金調達できて満足かもしれないが、投資家は今日のIPOで買う株価よりもかなり高い株価で投資に参加することになる。 さらにSPACのスポンサーに高い実質的な手数料を払う形になる。株式の希薄化が起きたり、ワラント(定められた期間内に一定の価格で株式を購入できる権利)等がある場合に株価の上値が抑えられる効果が発生する。 わが国の投資家の間では、「IPOへの参加はもうかる」というイメージがある。そのため、少なからぬ投資家が、SPACに投資すると同じようにもうかるのではないかという期待を持つ可能性があり、この点は少々心配だ。 SPACの運営者に、巷間期待されるような「目利きの力」があるかどうかは、例えば、SPACの合併が完成した後の会社の株式リターンを同種の株式の株価指数などのリターンと比較することで評価できよう。しかし、近年の米国の例を見ると、平均的には芳しいものではないようだ(研究会の討議資料にデータが載っていたが、非公開の資料であるため引用できない)。 SPAC一般が良い投資対象であるか否かは、合併会社の株式のリターンに関する実績を見ながら慎重に判断すべきだ。 「SPACはIPOと同じようにもうかるのではないか」と思って、SPACの諸条件を検討せずに勢いで投資するようなことがないよう注意を申し上げておく』、順当な「注意」だ。
・『日本版SPAC導入の反対記事を執筆した後の「反省」  ところで、SPAC反対論を書いた前の記事について、筆者が執筆直後に大いに反省したことを付け加えておく。 記事は、「なぜ米国でSPACがはやるのだろうか、それはSPACのスポンサーをやるともうかるからだろうし、スポンサーが大いにもうかるということは、投資家がもうけにくい要素があるはずだ……」という問題意識から書いたものだ。実質的な手数料の問題や利益相反の可能性の問題指摘は適切だと思い、そこそこに満足して編集部に原稿を送った。 しかし、直後に気が付いた。「そんなにもうかるものならば、なぜ自分でSPACをやろうと思わなかったのか!」。そう。思いつきもしなかったのだ。 金融に関わるビジネスマンの端くれとしては、欠点を探して批判を書いて満足するよりも、まず自分がもうかる可能性について大いに想像を巡らせるべきだろう。 自分がビジネスマンとして二流以下であることを、つくづく感じた瞬間だった』、自虐的なネタも縦横に使いこなすのが山崎氏の身上だ。

第三に、本年1月13日付け日経ビジネスオンラインが掲載したグロース・キャピタル株式会社 CEOの 嶺井 政人氏による「「上場後3年で「4社に1社がマイナス成長」のなぜ」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/plus/00026/010600001/
・『世界を覆う「カネ余り」や起業ブームが後押しし、あまたのスタートアップが生まれている。起業家の「目標」の1つでもあるIPO=新規株式公開。社会的信用度が高まるだけでなく、大きな資金獲得の手段となり、成長へのエンジンを手に入れることができる。より高い場所を目指すため、大事なプロセスであることは言うまでもないだろう。 だが、上場によって企業は加速度的な成長を遂げているのだろうか。 まずは、このデータを見てもらいたい(図「新興3市場上場後の業績推移」参照)。 これは、当社が一橋大学・鈴木健嗣教授と行った共同研究のデータだ。上場した企業の、上場時と3年後の成長を比べたグラフなのだが、年平均にすると、中央値ですら成長率は10%にも達していない。大規模な資金を獲得した企業の成長としては、非常に寂しい結果ではないだろうか。下位25%に至ってみれば、上場後にマイナス成長に陥っている。4社に1社が、上場後3年でマイナス成長になっているという悲惨な状況だ。右図の「営業利益」の3年間での成長率はもっと厳しい。平均値こそ2.3%であるが、これは産業構造を変えるような規模で成長した、トップ企業も含んだ数字である。中央値はなんとマイナス0.6%だ。 この状況を皮肉めかして、人は「上場ゴール(IPOゴール)」と呼ぶ。「日本は世界で一番上場しやすい」「小粒上場なんてさせるからいけないんだ」とからかう人も多い。 だが、待ってほしい。世界で一番上場しやすいこと、小粒でも上場できることは本当に悪なのだろうか。一定規模まで成長した上でないと上場が難しい海外と違い、早いタイミングでも上場という選択肢があることは、日本のスタートアップにとって成長戦略の選択肢が増えるという意味で大きなメリットではないだろうか。上場しやすいのは悪ではなく、むしろ善。悪いのはその上場を成長につなげられていない点にある。 私自身もスタートアップをIPOした際、数々の試練に直面した。そこには、経験者にしか分からない「成長の壁」が存在する。この壁の存在を知り、乗り越えていくことが日本全体の活性化につながると信じている。 上場後の企業の加減速の分水嶺はどこにあるのか。本連載では、上場ベンチャーの資金調達や成長戦略の実行支援のエキスパートとして見てきた経験や成長企業にインタビューした結果に基づき解説していく』、興味深そうだ。
・『上場ゴールと皮肉られてしまう理由  上場ゴールという言葉には、IPOで経営者は「上がりを決め込む」ことができ、企業としても潰れなければいい程度の動きしかしないという批判も含まれている。ただ、当事者からすればそれは違う。上場で上がりを決め込む経営者などほとんどいない。少なくとも、私の周囲の経営者たちは上場後も会社を成長させ続けたいと全力で経営に向き合っている。 建設的な議論なく、上場後に失速してしまっている企業を指差して批判するだけでは、何も生み出さない。本質的に必要なのはIPO後の成長を阻害する要因の把握と、その解決へのアプローチではないだろうか。 上場することで得られるのは、何も資金だけではない。信用度の高まりから、大企業との取引の可能性が高まり、その規模もより大きなものになりやすい。また人材採用や銀行借り入れも各段にしやすくなるだろう。そして知名度向上による恩恵も期待できる。 このようなバラ色のメリットを見れば、どの企業も上場後は加速度的に成長できそうに思える。ただ、実際は先に見た通り、多くの企業は伸び悩んでいるのが実情だ。IPOという成長ドライバーをベンチャーが生かして成長できない理由は何なのだろうか』、「上場ゴールと皮肉られてしまう」ケースも多いのは事実だ。
・『成長のためのIPOがなぜか成長投資を阻む  企業が成長するために投資はあってしかるべきものである。ただ、上場前後の成長投資は実のところ、柔軟性を持って行うことができない。 例えば、上場前のM&A(合併・買収)。新たなマーケットの獲得や、競合企業の買収などM&Aを正しく行うことができれば、企業にとって大きな成長へとつながる。しかし、上場準備中にM&Aを実行すると上場に向けた審査期間が延長になる可能性があり、資金調達をはじめとした計画が大きくずれてしまうことから選択肢として選びづらくなってしまうのだ。 また、上場準備中は将来に向けた新規事業投資や大規模なマーケティング投資を手控える場合が多い。というのも、上場時の株価(時価総額)がいまだにPER(株価収益率)で値付けされることが多いため、短期的には減益要因になりかねないマーケティング投資や新規事業投資は上場時の資金調達額を確保するため避けてしまうからだ。 最近では赤字上場が増えたものの、一部のSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)企業などにとどまるのが実態である。 そして上場後は毎期、増収増益が投資家から期待される中で、増益を維持できる範囲内でしか、成長投資が行いづらいという壁も待っている。減益になるレベルで投資を行うと株価が急落し、投資家から「そんな投資はやめろ」という批判が殺到するだけでなく、株価下落により成長資金の調達すら困難になってしまうのである。 ベンチャーにとって成長の「ゴールデンタイム」である上場前後に成長投資を絞れば、上場後、成長が減速するのは火を見るより明らかである』、「成長の「ゴールデンタイム」である上場前後に成長投資を絞れば、上場後、成長が減速するのは火を見るより明らか」、その通りだ。
・『ベンチャーマインドがIPOで喪失する  IPOすれば知名度は大きく上がる。しかし、それによって事業の立ち上げや成長をけん引していく優秀な人材が雇用できるかといえば、答えは”NO”である。そういった人材はストックオプション(新株予約権)や自らの成長機会をインセンティブ(誘因)に入社をするケースが多い。IPO前はストックオプションの付与がしやすく、かつ会社が成長途上で権限・責任を早いタイミングで与えられる環境下では採用をしやすいが、IPO後は権限や規定が整い、上も詰まっている状態ではそういった人材の採用は容易ではないのである。 またIPOまで会社の中心にいたベンチャーマインドを持った人材たちも、IPO後にストックオプションを行使して離脱してしまう。自分で新たにベンチャーをつくったり、はたまた他のベンチャー企業にジョインしたりするなど、人それぞれだ。 結果的に、中核となる人材が抜け、更なる成長をけん引する社員の入社も容易ではない。そういった状況も会社が一回り大きくなるための足かせとなってしまっている。成長投資も大事だが、この人材の離脱という課題も上場後の企業の成長を押しとどめる要因になりやすい』、「この人材の離脱という課題も上場後の企業の成長を押しとどめる要因になりやすい」、なるほど。
・『小粒上場の是非  こうした上場前後の成長を阻害する要因をここまで議論してこなかったツケは大きい。一部の成長が失速した企業が頻繁にメディアで取り上げられ、小粒上場する企業へのネガティブな印象も大きくなってしまった。 ただ逆を言えば、先ほど挙げた成長阻害要因を解決することができれば、IPO後により大きな成長ができるはずだ。例えば、M&Aを手控える要因になっている審査期間を短縮できれば、よりリスクをとった大胆なチャレンジをベンチャーが上場前にできるはずだ。またベンチャー人材を上場後も魅了し続けるために、より使いやすい上場後のストックオプション制度を議論することも解決策の一つだろう。 上場後の停滞は、日本からイノベーションを起こし、新産業を生み出す上で無視できない課題である。ただ見方を変えると、上場後の成長実現が可能であれば、今までフォーカスしてこなかった、日本の大きな伸びしろともいえる。 この10年で上場ベンチャーが数多く生まれている。そこには上場までたどり着いた優秀な経営陣や、事業が何百とあり、大きな成長ポテンシャルが内在しているはずだ。 では、上場後の「壁」は乗り越えられないかというと、そういったことはない。上場後も急成長を実現できている企業も存在する。成長を続けられたキッカケとは何だったのか。その乗り越え方を、企業のケーススタディを基に、本連載を通じて考えていく』、「上場後も急成長を実現できている企業」の「ケーススタディ」とは、そう多くはない筈だが、早く読んでみたい。 
タグ:新規上場(IPO) (その3)(1兆6000億円「超巨額上場」で激震 ヤバすぎる国際諜報企業の正体 あらゆる情報を収集している…かもしれない、日本版SPACへの反対論を撤回!今のIPOよりマシかもしれない理由、上場後3年で「4社に1社がマイナス成長」のなぜ) 現代ビジネス 時任 兼作 「1兆6000億円「超巨額上場」で激震、ヤバすぎる国際諜報企業の正体 あらゆる情報を収集している…かもしれない」 「CIAの資金で創設された情報解析企業」、が上場しているというのは、米国市場の懐の深さを示しているようだ。 さすがに情報機関を顧客に持つだけあって、「Xキースコア」、「プリズム」の威力は凄いようだ。 「宮本議員」の「質問」に対し、「日本政府の答弁は」、余りに不誠実だ。マスコミももっと追及してほしい。 「大刀洗通信所」には「巨大なレーダードーム施設を有し精鋭部隊が配備。「日本は、パランティアの驚異的なプログラムを、それがスノーデン氏の告発によって世の中に知らしめられる以前に導入していながら、現在に至るまで公には決して認めようとしていない」。 「日本」の「大手IT企業」や「SOMPOホールディングス」の「パランティアと戦略的提携」に関しては、「日本の情報が危険にさらされ」ることのないよう「日本政府」は、目を光らせるべきだ。 ダイヤモンド・オンライン 山崎 元 「日本版SPACへの反対論を撤回!今のIPOよりマシかもしれない理由」 「山崎氏」のいいところは誤りを誤りとしていさぎよく認めるところだ。 「SPAC制度の在り方等に関する研究会」の「議論の進め方がフェアでない」との理由で、「3回目以降、同研究会から離脱」、とは正義感らしい行動だ。 言われてみれば確かに「現在のIPOプロセスはSPACで考えられる以上に「悪い」ものである可能性がある」、なるほど。 「今後実現するSPACに対して外から投資家保護上の問題を指摘して、必要があれば投資家に警告する立場を取る方が、投資家の役に立つだろうと判断」、山崎氏らしい判断だ。 順当な「注意」だ。 自虐的なネタも縦横に使いこなすのが山崎氏の身上だ。 日経ビジネスオンライン 嶺井 政人 「「上場後3年で「4社に1社がマイナス成長」のなぜ」 上場ゴールと皮肉られてしまう理由 「上場ゴールと皮肉られてしまう」ケースも多いのは事実だ。 「成長の「ゴールデンタイム」である上場前後に成長投資を絞れば、上場後、成長が減速するのは火を見るより明らか」、その通りだ。 「この人材の離脱という課題も上場後の企業の成長を押しとどめる要因になりやすい」、なるほど。 「上場後も急成長を実現できている企業」の「ケーススタディ」とは、そう多くはない筈だが、早く読んでみたい。
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ブロックチェーン(その1)(「分散型金融・DeFi」は金融の世界を一変させるか…? 始まったブロックチェーン金融の可能性、The Economist:分散型金融 法規制で安定を、大手からベンチャーまでが魅せられる新経済圏 熱狂メタバースに突き進む「あの企業」の皮算用) [イノベーション]

今日は、仮想通貨などで使われる基盤技術として注目される「ブロックチェーン(その1)(「分散型金融・DeFi」は金融の世界を一変させるか…? 始まったブロックチェーン金融の可能性、The Economist:分散型金融 法規制で安定を、大手からベンチャーまでが魅せられる新経済圏 熱狂メタバースに突き進む「あの企業」の皮算用)を取上げよう。

先ずは、昨年7月7日付け現代ビジネスが掲載した大蔵省出身で一橋大学名誉教授の野口 悠紀雄氏による「「分散型金融・DeFi」は金融の世界を一変させるか…? 始まったブロックチェーン金融の可能性」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/84704?imp=0
・『DeFi(Decentralized Finance:分散型金融:ディーファイ)は、ブロックチェーンを用いて、金融機関を介さず、無人で金融取引を行なう仕組みだ。仮想通貨の取引所や、融資を仲介するサービスが提供されている。DeFiは、信用履歴審査や本人確認なしに、誰でも使えるサービスだ。 まったく新しい金融の仕組みを作る可能性があるが、現在では、これに投資するのは極めてリスクが高い。値上がり期待だけでなく、新しいDeFiサービスを作る動きが日本にも出てくることを望みたい』、興味深そうだ。
・『DeFiは、無人の金融取引  新しい金融の仕組み、DeFiが注目を集めている。これは、ブロックチェーンを用いて、決済、融資、証券、保険、デリバティブなどの金融取引を行なう仕組みだ。 「スマートコントラクト」というプログラムを用いて無人で運用される。したがって、銀行などの中央集権的な管理者が必要ない。安い手数料で迅速な取引が可能だ。 2020年には多くのDeFiサービスが開発され、成長した。2021年6月時点で提供されている分散金融のサービスは、240種類を超えている。 5月には、ビットコインなどの仮想通貨の価格が急落した。しかし、DeFiサービスの利用者は増え続け、前月比3割増の270万人となった。 DeFiに流入した資産総額は、2020年初めには7億ドル弱だったが、2021年5月には約860億ドルになった。その後、仮想通貨価格の下落で価値が減少したが、それでも600億ドル程度だ』、「DeFiに流入した資産総額は」、「600億ドル程度」とはかなりの規模だ。
・『DEX:分散型取引所  DeFiには、いくつかのサービスがある。その1つが、取引の仲介だ。 仮想通貨を売買する場合、現在では、仮想通貨交換業者が管理する取引所を使う。取引所は中央集権型の組織であり、手数料が高い。この問題を、DEX(分散型取引所)が解決した。 DEXの代表が、Uniswapだ。ある仮想通貨を他の仮想通貨に交換したい場合、Uniswapに一定量の仮想通貨を拠出すると、アルゴリズムで計算された量の他の仮想通貨を得ることができる。 Uniswapの場合、5月の取引額は約9兆円だ。これは、日本の大手交換所であるビットフライヤーの1兆8000億円を大きく上回る。 DEXは、以前から画期的なシステムとして注目されていたが、流動性が低いという問題を抱えていた。これに対処するため、プールという仕組みが採用された。 流動性の供給者になりたい人は、誰でも任意の量の仮想通貨をプールに預ける。プールしておくだけで収益を得ることができる。この仕組みによってDEXの資金量が増加し、流動性の問題や取り扱い銘柄が少ないという問題が解決された。 主要なDEXとしては、Uniswapの他に、MDEX、PancakeSwapなどがある』、「プールに預け」た「仮想通貨」が戻ってこないリスクはあるのだろうか。
・『レンディングプラットフォーム  DeFiのもう一つの主要なサービスは、レンディングプラットフォームだ。これは、仮想通貨の融資を仲介するサービスだ。 これを始めたのは、Compoundだ。Compoundでは、ユーザーがウォレットを経由して、自分が保有している仮想通貨を預け入れたり、仮想通貨を借り入れたりすることができる。借りる場合には、借り入れ額の150%を担保にしなければならない。 利率は通貨ごとに異なる。また、需給バランスに応じて変動する。年利6%以上を提供している通貨もある。場合によっては年利が20%になる。このように、通常の金融商品に比べて収益性が高い。 Compoundでもプールの仕組みが使われる。すなわち、貸し手と借り手を直接マッチングさせるのではなく、プールに資金をため込む。この資金は、Compoundが預かるのではなく、ブロックチェーン上にロックされる。ロックされた仮想通貨は、ブロックチェーン上のプログラムで管理される。借りたい人はそこから借りていく。これによって流動性不足の問題が解消された。 Compoundのプールに資金を供給すると、対価として「cToken」というものが付与される。これは、「債権トークン」とも呼ばれる。cTokenには、一定の利率が付与され、引き出すときには、利子が上乗せされて戻ってくる。cTokenを取引所で売却することもできる 。2021年5月時点でCompoundにロックされている資金は約81.5億ドルだ。 DeFiのレンディングプラットフォームには、この他に、Aave(アーベ)などがある。大手3サービスのローン残高は約160億ドル(約1兆8000億円)であり、年初から4.5倍に増えた。 ただし、これを日本の金融機関と比べると、三菱UFJ銀行の貸出金残高が107兆円だから、問題にならないほど少ない』、「大手3サービスのローン残高は約160億ドル(約1兆8000億円)であり、年初から4.5倍に増えた」、順調に増加しているようだ。
・『「誰でも使える」ことの意味は大きい  DeFiは、始まったばかりの新しいサービスなので、「一部のITマニアにしか使えないもの」と見られることが多い。しかし、事実は全く逆だ。 DeFi の利用にあたって、国籍は関係ない。スマートフォンとインターネットさえあれば、金融機能が十分でない国や地域でも、利用できる。 世界には、銀行口座を持ていない人が大勢おり、融資などの金融サービスを受けられないでいる。それに対して、DeFiでは、信用履歴の審査もなく、氏名などの個人情報も求められない。 従来は金融サービスを受けられなかった人々が金融サービスにアクセスできるようになることを、「金融包摂」(Financial Inclusion)」と言う。DeFiはまさにそれを実現するのだ』、マネーロンダリングに使われる懸念を別にすれば、「金融包摂」は望ましいことだ。
・『仮想通貨の原点に戻る動きと解釈できる  ビットコインて、秘密鍵の取得に際して、本人確認は行なわれない。その後、中央集権的組織である取引所が登場して、仕組みが大きく変わった。 DeFiにおけるDEXは、仮想通貨のもともとの仕組みへの「先祖帰り」だと考えることができる。 ところが、ビットコインなどの仮想通貨のシステムでは、送金だけが可能であり、融資などのサービスはなかった。 一方、スマートコントラクトを用いることによって契約の自動化が可能であることは、広く認識されており、これを用いて無人の事業者運営ができると考えられていた。DeFiは、それを実現しつつあると言える。 DeFiによってさまざまなサービスが提供されることになれば、仮想通貨だけですべての金融取引を行なう世界を作ることが可能だ。その意味で、大きな可能性を持つものだ。 ただし、現在のところ、利用者が増えたとはいえ270万人では、社会のごく一部といわざるをえない。相手がこのシステムを受け入れないと決済はできないから、利用価値は少ない。 これが、今後拡大するのか、あるいは一部の人々のものに終わってしまうのか、現在では何とも分からない』、「仮想通貨だけですべての金融取引を行なう世界を作ることが可能だ」、本当に可能なのかは別としても、今後の展開を注視したい。
・『DeFiの可能性と危険性  DeFiでは本人確認が行われないため、マネーロンダリング、不正蓄積資金やテロ資金の取引などの問題がついてまわる。 また 詐欺的なものも出始めているが、利用者保護の仕組みは不十分だ。 金融安定理事会(FSB)は、2019年に分散化金融技術に関する報告書を公表し、「金融システムの分散化は競争の拡大と多様性をもらたす可能性がある」と指摘する一方で、「法的責任の曖昧さや消費者保護に関する不確実性」に言及した。 日本でも、一部でDeFiが注目されているが、それは高い収益性を狙うことができるからだ。ウエブにあるDeFi関連の記事は、「DeFiでどう稼ぐか」といったものが多い。 上で述べたように、DeFiが新しい世界を作る可能性はあるものの、現時点でDeFi が提供するサービスは、DeFi の世界にとどまっており、現実の経済活動とリンクしていない。だから、現在、DeFiへの投資で高い収益率を挙げられるのは、資金が流入し続けているからだ。その意味ではバブルと言うことができる。 そうした条件下でDeFi取引に参加するのは、リスクが非常に大きいことに留意すべきだ。 私が残念に思うのは、日本発のDeFiプロジェクトがほとんどないことだ。上で述べたように、DeFiは将来の金融として大きな可能性を持っている。 それを、投機の対象としてしか見ないのでは、将来の可能性を捨て去ることになる。日本でも、建設的な動きが生じないものだろうか?』、「現在、DeFiへの投資で高い収益率を挙げられるのは、資金が流入し続けているからだ。その意味ではバブルと言うことができる」、「私が残念に思うのは、日本発のDeFiプロジェクトがほとんどないことだ。上で述べたように、DeFiは将来の金融として大きな可能性を持っている。 それを、投機の対象としてしか見ないのでは、将来の可能性を捨て去ることになる。日本でも、建設的な動きが生じないものだろうか?」、確かに「日本発のDeFiプロジェクト」が出てきてほしいものだ。

次に、9月21日付け日経新聞が転載したThe Economist「分散型金融、法規制で安定を」を紹介しよう。「分散型金融、法規制で安定を」を紹介しよう。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM190FU0Z10C21A9000000/
・『懐疑派にとって、批判材料は尽きない。最初の暗号資産(仮想通貨)ビットコインは初期の段階で違法ドラッグの支払いに使われた。最近のハッカーは身代金を仮想通貨で支払うよう要求する。今年、別の仮想通貨イーサのコードにバグを見つけたハッカー集団は数億ドルを盗んだ。世界中の「信者」が一獲千金を狙って取引する仮想通貨の時価総額は2兆2000億ドル(約240兆円)にのぼる。 15年に誕生したブロックチェーンネットワーク「イーサリアム」の利用が急速に広がっている。分散型金融の仕組みが従来の金融システムを大きく変える可能性がある=ロイター なかには狂信的な者もいる。エルサルバドルがビットコインを法定通貨にする取り組みに関わった起業家は、6月の発表の際に壇上で泣きながら、この国を救う決断だと主張した。 犯罪者、愚者、信仰の押しつけとなれば不快感は禁じ得ない。だが、分散型金融(DeFi、ディーファイ)と呼ばれる金融サービスの台頭は熟慮に値する。期待と危険を伴いつつも、金融システムの仕組みを再構築する力を秘めている。分散型金融のイノベーション(技術革新)の急速な拡大には、ウェブの発明初期の熱気に通じるものがある。人の生活のオンライン化がかつてなく進む中で、この暗号革命はデジタル経済の構造を抜本的に変える可能性すらある。 DeFiは金融に創造的破壊をもたらしている3つのテックトレンドの一つだ。巨大テック企業に代表される「プラットフォーマー」は決済分野や銀行業界に割って入り、各国は中央銀行が発行するデジタル通貨(CBDC)に着手している。DeFiは権限を集中させるのではなく、分散する新たな道を切り開く。 その仕組みを理解するにはまず、ブロックチェーンを知る必要がある。コンピューターの巨大なネットワークが、改ざんできない記録を保持して共有する仕組みだ。中央機関はなく、そのデータは自動的に更新される』、「人の生活のオンライン化がかつてなく進む中で、この暗号革命はデジタル経済の構造を抜本的に変える可能性すらある」、その通りだ。
・『イーサリアム、透明性と低コストで急速に普及  2009年に登場した初の大規模なブロックチェーンであるビットコインは話題に事欠かない。だが、今最も注目すべきは15年に誕生したブロックチェーンネットワーク「イーサリアム」だ。一気に普及が進む段階に達しつつある。分散型金融のアプリケーションの大半がイーサリアム上に構築されており、イーサリアムの開発者は金融分野を大きな収益機会をもたらすターゲットとみている。 旧来の銀行は清算機関、コンプライアンス(法令順守)、資本規制、訴訟など、見知らぬ人の間で信用を維持するために巨大なインフラを必要とする。コストが高く、それが内部の者に握られている。クレジットカードの手数料や、大金融機関の幹部が所有するクルーザーを思い浮かべればわかるだろう。それに比べて、ブロックチェーン上の取引は少なくとも理論上は信頼性や透明性が高く、低コストで迅速だ。 使われる専門用語には近寄りがたい感はある。手数料は「ガス」、その通貨は「イーサ」、デジタル資産の権利証書は「非代替性トークン(NFT)」などと呼ばれる。だが、分散型金融の世界での基本的な活動は身近なことだ。例えば、交換所での取引、融資の実行、契約を自動的に実行する「スマートコントラクト」による預金の受け入れなどだ。 活動の目印となる担保として使われているデジタル商品の価値は18年初めはゼロに等しかったが、今では900億ドルに達する。21年4~6月期にイーサリアムが承認した取引の額は2兆5000億ドルに上った。これは米カード決済大手ビザの決済処理額に匹敵し、米ナスダック市場の取引高の6分の1にあたる。 分散型で摩擦の少ない金融システムを構築するという夢はまだ始まったばかりだ。DeFiはさらに挑戦的な分野に広がっている。仮想通貨のウォレット(電子財布)「メタマスク」は、1000万人にのぼる利用者のデジタルIDとして機能している。分散型の仮想空間「メタバース」に入り、メタマスクの利用者が営む店を利用するためには、自分の分身であるアバターに電子財布をリンクさせる。 消費のオンラインシフトが進むなかで、こうしたデジタル世界の覇権争いは激しさを増すだろう。巨大テックがこの世界に重税を課す可能性もある。アップストアで米アップルが取り立てる手数料や米フェイスブックがアバターの個人情報を売ったりする状況を想像してみてほしい。分散型金融なら利用者同士が互いに運営し合うかたちで必要な機能を提供でき、より優れているといえるかもしれない。決済サービスや財産権を提供することもできる。 仮想通貨マニアはここに理想郷を見いだすだろう。だが分散型金融が米銀大手JPモルガン・チェースや米決済大手ペイパルのような信頼を得る道のりは遠い。問題のなかには単純なものもある。ブロックチェーンのプラットフォームは機能の拡張が難しく、コンピューターの使用で大量の電力を浪費しているとしばしば批判される。だが、イーサリアムには自己改善の仕組みがある。需要が高まれば承認作業の手数料が上がり、開発者に利用を抑えるよう促す。イーサリアムは近く改善版がリリースされる予定だが、いずれは他のより優れたブロックチェーンが取って代わる可能性もある』、「イーサリアムは近く改善版がリリースされる予定」、使い勝手はどんなによくなるのだろうか。
・『仮想経済にも現実世界とのつながりが不可欠  分散型金融については、独自の基準を持つ仮想経済が現実の世界とどう関わっていくかが問題になる。懸念の一つは価値を支える外部の後ろ盾がない点だ。仮想通貨は、人々がその有用性に共通の期待を抱くことに依拠しているという点では、米ドルと変わりはない。 だが、従来の通貨は権力を独占する国家と、最後の貸し手である中央銀行の支えがある。分散型にはこうした後ろ盾がないため、パニックに弱い。仮想世界の外での契約の実行にも懸念が残る。ブロックチェーンの契約で家の所有権があるといっても、立ち退きを執行するには警察が必要になる。 DeFiのガバナンスと説明責任は発展途上だ。コードを書くうえでのミスが避けられないため、取り消しがきかず人の手で上書きできない大型取引の連鎖には危険が伴う。イーサリアムと金融システムの境界のグレーゾーンでは統治が行き届かず、マネーロンダリング(資金洗浄)が横行している。分散型とうたいつつも、大きな影響力を握るプログラマーやアプリ所有者もいる。悪意を持つ者がブロックチェーンを運営するコンピューターの大半を乗っ取る事態が起きる危険もある。 デジタル自由主義者はDeFiの自治体制を維持することを望むだろう。不完全でも、純粋だからだ。だが分散型金融が成功するためには、従来の金融システムや法制度との統合が不可欠だ。仮想通貨に詳しい米証券取引委員会(SEC)のゲンスラー委員長が指摘したように、DeFiのアプリケーションの多くは、分散型の組織に運営され、ルールを決められている。こうした組織を法規制の対象にしなくてはならない。各国の中銀が参加する国際決済銀行(BIS)は、仕組みに安定性を持たせるために、DeFiアプリで国が発行するデジタル通貨を使えるようにすることも提案している。 金融は大テックプラットフォーム、大きな政府、そして分散型金融の3者の革新性と欠陥を伴ったビジョンが競いつつ融合する新たな時代に入った。それぞれに技術体系があり、経済運営のあり方について独自のビジョンを具現化している。1990年代のインターネット勃興期と同様に、この変化の行方は誰にもわからない。だが、この動きは通貨の機能を変える可能性があると同時に、デジタル世界全体を変える力も秘めている』、「金融は大テックプラットフォーム、大きな政府、そして分散型金融の3者の革新性と欠陥を伴ったビジョンが競いつつ融合する新たな時代に入った」、「この動きは通貨の機能を変える可能性があると同時に、デジタル世界全体を変える力も秘めている」、今後の展開は要注目だ。

第三に、1月13日付け東洋経済Plus「大手からベンチャーまでが魅せられる新経済圏 熱狂メタバースに突き進む「あの企業」の皮算用」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/29432/?utm_campaign=EDtkprem_2201&utm_source=edTKO&utm_medium=article&utm_content=502434&login=Y&_ga=2.65615598.1595207122.1641535678-441898887.1641535678#tkol-cont
・『IT・ネットにエンタメ・ゲーム、製造業まで、参入企業の顔ぶれは多種多様だ。何が彼らをメタバースに駆り立てるのか。 雷門から仲見世通りを抜けると、浅草寺の本堂が見えてくる。脇にそびえる五重塔を上れば、眼下の景色を見下ろすこともできる――。 仮想空間上で独自の世界を作ったり、散策したりできるアメリカ発のメタバースサービス「ザ・サンドボックス」。ここに「MetaAsakusa(メタアサクサ)」を構築中なのが、普段はカメラマンとして活動する武藤裕也さんだ。 コンピューターグラフィックス(CG)制作についてはまったくの素人。メタバースやブロックチェーン技術には以前から興味があり、仮想世界に浅草寺周辺の風景を再現するプロジェクトを発足しツイッターなどで呼びかけたところ、多くの個人クリエーターの協力を得ることができた。 「協力者の皆さんの熱量がものすごく、メタバースという新しい市場の可能性を感じる」(武藤さん)。メタアサクサには今後、お賽銭ができる機能や、NFT(Non-Fungible Token=非代替性トークン)を用いたアート作品の展示・販売を行える仕組みなども実装していきたい考えだ。 【キーワード解説】NFT Non-Fungible Token(非代替性トークン)の略。「電子証明書」のようなもので、改ざんが難しいブロックチェーン技術を用いて、アートやゲームアイテムなどのデジタルデータに作者の情報などを記載。その作品が唯一無二のものであることを証明する。第三者への転売も可能で、売買金額の一定割合を原作者に還元するプログラムを書き込むこともできる』、「メタアサクサには今後、お賽銭ができる機能や、NFT(Non-Fungible Token=非代替性トークン)を用いたアート作品の展示・販売を行える仕組みなども実装していきたい考えだ」、ずいぶん使い勝手がよくなるようだ。
・『”住み着いている”ユーザーも  メタバースとは、インターネット上の仮想空間のこと。アメリカのSF作家、ニール・スティーヴンスンが著書の中で仮想世界の名称として使用し、近年、IT・ネット業界でこの言葉がさかんに飛び交うようになった。 ユーザーは自身のアバター(分身となるキャラクター)を介し、メタバース上で行動したり、ほかの人々と交流したりする。ヘッドセット型のVR(仮想現実)デバイスのほか、パソコンやスマートフォンの画面で楽しめるものも多い。新型コロナウイルスの感染拡大でリアル空間に大人数で集まることが困難になり、その代替としても熱狂度を高めている。 冒頭のメタアサクサのように、企業が提供するプラットフォーム上でユーザーが自由に空間や過ごし方を発展させられるのもメタバースの醍醐味だ。 2017年からメタバースサービスを提供するクラスターでも、ユーザーは同社のCG制作キットを用い、カフェを作って”飲み会”を開催したり、競馬場を作ってゲームに興じたりしている。「1日10時間以上滞在するなど、ここに”住み着いている”ユーザーもいる」。クラスターの加藤直人CEOはそう話す。 仮想空間でお金を稼ぐ人々も出現している。先述のサンドボックスの仮想空間には広大な土地があり、運営会社が定期的に土地をNFTとして売り出すが、毎回ものの数秒で売り切れる人気ぶりだ。アディダスなどの有名企業や著名アーティストも土地を所有しており、その隣接地などのNFTは「オープンシー」といった取引所で高値で売買されている。 昨年の夏頃にサンドボックスの土地を購入したAさんは、IT企業勤務の30代男性。ほかの類似のゲームも合わせると、数千万円の含み益が出ているという。「サンドボックスは著名人とコラボした土地の販売で話題を集めるのがうまい。用途がまだ不透明な中で、これだけ(売買が)盛り上がっているのには驚く」とAさんは話す』、「ユーザーは同社のCG制作キットを用い、カフェを作って”飲み会”を開催したり、競馬場を作ってゲームに興じたりしている。「1日10時間以上滞在するなど、ここに”住み着いている”ユーザーもいる」」、セミプロのような人物も出てきているようだ。
・『猛攻のメタ、グリーも巨額投資  急過熱するメタバース市場に、世界の名だたる企業も次々と参戦している。 号砲を鳴らしたのが、フェイスブックから社名を改めたメタだ。2021年10月に行った発表会では社名変更のほか、メタバース関連事業の開発などにあたる人材を今後1万人雇用することを発表。すでにメタバース領域に年間約1兆円を投じている。 同12月にはメタバースアプリ「ホライズン・ワールド」をアメリカとカナダで一般公開した。ユーザーはメタが開発するVRデバイス「オキュラス・クエスト 2」を用い、会議などを行える仮想オフィス空間「ホライズン・ワークルームズ」や、外部企業が開発したVRゲームなどを利用できる。 「イマ―シブル(没入感)とインターオペラビリティ(相互運用性)を追求すれば、(友人や同僚など)人と人との距離感をより近くできる。これは当社が既存のサービスを通じても目指してきたことだ。現実世界と仮想世界を行き来できるようなメタバースを目指していく」。フェイスブックジャパンの味澤将宏代表はそう話す。 メタバースの可能性を世に知らしめたのは、アメリカのエピックゲームズが2017年に開始した「フォートナイト」だ。数十~100人単位が同時にプレーできる対戦型オンラインゲームとして誕生し、現在世界中で数億人のユーザーを抱える。ゲームのほか、仮想空間内で音楽ライブなどを開催できるパーティーロイヤルモード、ユーザー自らが作った建物などで遊べるクリエイティブモードも備えるのが特徴だ。 とくに音楽ライブとは相性がいい。会場の収容人数という制約がないうえ、コロナ禍でリアルの開催が難しいことも相まって、1度に1200万人以上を動員するケースも出ている。2020年には米津玄師が、2021年には星野源などがフォートナイト内でバーチャルライブを開催するなど、日本のアーティストによる活用も進む。 日本勢でも猛攻を仕掛ける企業はある。その1つがグリーだ。 2021年8月にメタバースへの参入を発表。子会社のリアリティが運営する2次元バーチャル配信アプリを発展させる形での事業拡大を狙う。現在、同社の利益の大半を稼ぐのはスマホゲームだが、ヒット作の有無に左右されやすい。今後2、3年でメタバースに約100億円を投じ、成長を牽引する次の柱に育成したい考えだ。 直近ではバンダイナムコやセガなど、強力なIP(ゲームキャラクターなどの知的財産)を持つ企業も関連市場へ踏み出している。ゲームやキャラクターの持つ世界観を仮想空間で表現しファンを呼び込むことで新たな商機をつかもうとする動きは活発で、アメリカのディズニーも2021年11月の決算発表時に名乗りを上げた。 漫画のIPを保有する出版社を顧客に抱える国内印刷大手の大日本印刷(DNP)も、独自のメタバース構想を発表している。これまでも街頭サイネージ、商品パッケージを活用したキャンペーンなど、リアルとデジタルを横断する取り組みを多く手がけており、それらのノウハウを生かす。 「メタバースが普及しても、リアルな場所やグッズへの需要が消えるわけではない。両者をつなぐようなビジネスでは、当社にしかできない役割があると思う」(DNPのコンテンツコミュニケーション本部XRコミュニケーション事業開発部企画・開発課の上田哲也課長) 足元では企画展・物販などを行う渋谷の自社拠点「東京アニメセンターin DNP PLAZA SHIBUYA」を活用し、リアル・バーチャルの両軸で開催するファンイベントなどを展開している』、「急過熱するメタバース市場に」、内外の「名だたる企業も次々と参戦している」。
・『「手取り足取りの支援」に商機  メタバースを活用したい企業の支援で稼ぐベンチャーも台頭している。 前出のクラスターは個人向けサービスの傍ら、法人向けにメタバースの企画制作や開発を行う。かつてはエンタメ企業の依頼が多かったが、2020年以降は社内外のカンファレンスに使いたいといった要望が増えたという。不特定多数のユーザーが自由に参加できるメタバースとは、また違った用途だ。 「店舗や支店を多く持つ大企業だと、全社会議を行うのに膨大な交通費や宿泊費がかかる。ビデオ会議を使うケースも多いが、大人数だと虚空に向かって話している感じが否めず一体感が出ない。メタバースを使う利点はコロナ後も残り続けるだろう」(クラスターの加藤CEO)。配信当日のディレクションも含めトータルに支援することで、不慣れな企業からの需要を取り込んでいる。 一方、法人向け支援に特化するSynamon(シナモン)は小規模なイベントや会合の作り込みを売りにする。例えば、三井住友海上向けには事故車を精査する人員の研修用の仮想空間を提供。以前は研修所に出向いてもらい実物を前に行っていたものを、大幅に簡便化できた。 空間内では仮想の事故車をあらゆる角度から観察したり、メジャーを使ってきずのサイズを測ったりと、現地研修と同様のリアルな体験ができる。 シナモンはこれ以外にも、小売り企業向けのVRショールームなどさまざまな案件を手がける。「(メタバース活用に)興味はあるが、アイデアや技術がないという会社は多い。初期段階のコンサルティングから一気通貫で担い、目的に合った活用になるよう支援している」(シナモンの武井勇樹COO〈最高執行責任者〉)。 大手企業もこれらのベンチャーに目をつける。とくに熱心なのは通信各社だ。 NTTドコモは2021年11月、世界最大級のVRイベント「バーチャルマーケット」を運営する日本のベンチャー・ヒッキーに65億円を出資。発表のリリースで「XR(VR・AR〈拡張現実〉などの総称)が“ポストスマホ”として日常・非日常を問わず利用される世界を実現する」と意気込みを表明している。KDDIも前出のクラスター、シナモンにそれぞれ出資している。 まさに「ネコもしゃくしも」状態に突入したメタバース。市場全体は今後ますます拡大するとみられるが、この領域の事業で飛躍できる企業は限られるだろう。ブームに埋もれず成功をつかめるか、各社の腕が試される』、「まさに「ネコもしゃくしも」状態に突入したメタバース」、「ブームに埋もれず成功をつかめるか、各社の腕が試される」、今後の展開が見ものだ。
タグ:(その1)(「分散型金融・DeFi」は金融の世界を一変させるか…? 始まったブロックチェーン金融の可能性、The Economist:分散型金融 法規制で安定を、大手からベンチャーまでが魅せられる新経済圏 熱狂メタバースに突き進む「あの企業」の皮算用) 「「分散型金融・DeFi」は金融の世界を一変させるか…? 始まったブロックチェーン金融の可能性」 「メタアサクサには今後、お賽銭ができる機能や、NFT(Non-Fungible Token=非代替性トークン)を用いたアート作品の展示・販売を行える仕組みなども実装していきたい考えだ」、ずいぶん使い勝手がよくなるようだ。 「まさに「ネコもしゃくしも」状態に突入したメタバース」、「ブームに埋もれず成功をつかめるか、各社の腕が試される」、今後の展開が見ものだ。 The Economist 「大手3サービスのローン残高は約160億ドル(約1兆8000億円)であり、年初から4.5倍に増えた」、順調に増加しているようだ 「金融は大テックプラットフォーム、大きな政府、そして分散型金融の3者の革新性と欠陥を伴ったビジョンが競いつつ融合する新たな時代に入った」、「この動きは通貨の機能を変える可能性があると同時に、デジタル世界全体を変える力も秘めている」、今後の展開は要注目だ。 東洋経済Plus 「急過熱するメタバース市場に」、内外の「名だたる企業も次々と参戦している」。 本当に可能なのかは別としても、今後の展開を注視したい。 「ユーザーは同社のCG制作キットを用い、カフェを作って”飲み会”を開催したり、競馬場を作ってゲームに興じたりしている。「1日10時間以上滞在するなど、ここに”住み着いている”ユーザーもいる」」、セミプロのような人物も出てきているようだ。 日経新聞 「分散型金融、法規制で安定を」 ブロックチェーン 「人の生活のオンライン化がかつてなく進む中で、この暗号革命はデジタル経済の構造を抜本的に変える可能性すらある」、その通りだ。 「プールに預け」た「仮想通貨」が戻ってこないリスクはあるのだろうか。 現代ビジネス 野口 悠紀雄 「イーサリアムは近く改善版がリリースされる予定」、使い勝手はどんなによくなるのだろうか。 「現在、DeFiへの投資で高い収益率を挙げられるのは、資金が流入し続けているからだ。その意味ではバブルと言うことができる」、「私が残念に思うのは、日本発のDeFiプロジェクトがほとんどないことだ。上で述べたように、DeFiは将来の金融として大きな可能性を持っている。 それを、投機の対象としてしか見ないのでは、将来の可能性を捨て去ることになる。日本でも、建設的な動きが生じないものだろうか?」、確かに「日本発のDeFiプロジェクト」が出てきてほしいものだ。 「DeFiに流入した資産総額は」、「600億ドル程度」とはかなりの規模だ。 マネーロンダリングに使われる懸念を別にすれば、「金融包摂」は望ましいことだ。 「大手からベンチャーまでが魅せられる新経済圏 熱狂メタバースに突き進む「あの企業」の皮算用」を
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パンデミック(経済社会的視点)(その20)(オミクロンに慌てふためく日本政府の致命的欠陥 時間はあったはずなのに備えが全然できていない、ポンコツ岸田政権で日本の「ワクチン敗戦」再び…3回目接種遅れは厚労省のブレーキが元凶) [パンデミック]

昨日に続き、今日はパンデミック(経済社会的視点)(その20)(オミクロンに慌てふためく日本政府の致命的欠陥 時間はあったはずなのに備えが全然できていない、ポンコツ岸田政権で日本の「ワクチン敗戦」再び…3回目接種遅れは厚労省のブレーキが元凶)を取上げよう。なお、前回 経済社会的視点を取上げたのは、昨年10月31日である。

先ずは、1月10日付け東洋経済オンラインが掲載した医療ガバナンス研究所理事長の上 昌広氏による「オミクロンに慌てふためく日本政府の致命的欠陥 時間はあったはずなのに備えが全然できていない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/501812
・『オミクロン株の感染が拡大している。政府は沖縄、広島、山口県に対し、1月9日から31日まで特措法に基づくまん延防止等重点措置を適用。東京都も11日から動物園や水族館などの都立施設を休館し、会食を4人以内に制限した。 マスコミは、「病床逼迫リスク再び東京、空床の即時把握できぬまま」(日本経済新聞1月5日)、「沖縄、一般診療に制限一部病院担い手不足」(読売新聞1月8日)など、オミクロン株のリスクを強調する。 私は、このような論調に賛同できない。現時点でまん延防止措置や緊急事態宣言を発出することは愚の骨頂だ。図1をご覧いただきたい。経済協力開発機構(OECD)加盟国における1月7日の人口100万人あたりの感染者数を示す。日本はニュージーランドに次いで少ない。この感染者数で「第6波が来た」と大騒ぎする国は日本以外にはない。(図1OECD加盟国における1月7日の人口100万人あたりの感染者数はリンク先参照) (外部配信先では図表や画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)』、確かに、「図1」の通り「この感染者数で「第6波が来た」と大騒ぎする国は日本以外にはない」。 
・『アメリカやイギリスは学校や経済を止めていない  感染拡大が続く海外の対応は違う。12月27日、アメリカ・バイデン大統領は「備えはできている。学校と経済は動かし続ける」、1月4日、イギリス・ジョンソン首相は「学校と企業活動を継続させ、コロナとともに生きていく方法を見いだす」と発言している。なぜ、彼らは規制を強化しないのか。いくつかの理由がある。ところが、このことはあまり日本では論じられない。 まずは、オミクロン株の毒性が低いことだ。オミクロン株は感染者数ほど、医療体制に負荷をかけていない。昨年12月1日と比べ、1月1日の感染者はアメリカで4.6倍、イギリスは3.6倍増加したが、死者数は1.3倍、1.1倍しか増えていない。コロナ対策で重視すべきは、感染者数ではなく、重症者や死者を減らすことが世界的コンセンサスだ。オミクロン株の感染者は、重症度に関わらず、全員入院させる日本のやり方は異様だ。 なぜ、こんなことになるのか。それは日本でのコロナ対応が、医師と患者が相談して方針を決定する医療ではなく、感染症法に基づいた国家の防疫措置だからだ。感染症法で規定された病原体に感染すれば、たとえ無症状であっても、「病院」に強制隔離されることが感染症法に規定されている。判断するのは保健所長で、医師は介在しないし、本人の同意も不要だ。 沖縄で医療従事者の感染が相次ぎ、医療体制が弱体化していることが問題となっているが、これは感染力が強く、かつワクチン接種者にも感染しうるオミクロン株感染者を、隔離目的で入院させたからだろう。コロナは空気感染するから、院内感染が拡大する。人災と言わざるをえない。病床を確保したいなら、医学的に入院を必要としない感染者を入院させるべきでない。こんなことをしていれば、いくら病床数を増やしても、院内感染で使えなくなる』、「病床を確保したいなら、医学的に入院を必要としない感染者を入院させるべきでない」、その通りだ。
・『海外のコロナ対応は防疫でなく医療が基本  コロナが世界的にまん延した現在、海外のコロナ対応は、防疫でなく医療が基本だ。日本で言えばインフルエンザ感染の扱いだ。患者と医師が相談して、治療法を決める。医師が入院の必要はないと判断すれば、自宅で「自主隔離」となる。高額な支払いを求められる病院を隔離施設として利用したりはしない。 私は馬鹿げていると思っている。繰り返すが、厚生労働省がこのようなことをするのは、感染症法に規定されているからだ。感染症の雛形は、明治時代の伝染病予防法である。内務省が所管し、その基本方針は警察を使った国家権力による強制隔離だ。感染症の流行は国家を不安定化する。国家権力にとって、感染者は犯罪者同様、隔離すべき対象だったのだろう。 この基本思想は今も同じだ。コロナ対策でも、積極的疫学調査、クラスター対策、病床確保など、感染者の同定と隔離には力をいれるが、検査拡充やワクチンによる感染予防、感染者への早期治療についてはおざなりだ。感染者が治療を受ける権利、家族にうつさないための隔離される権利などは保障されていない。 中国で自宅での隔離のルールを守らず外出した人が、ドアを溶接され閉じ込められたことが日本でも話題となっているが、国民の意向とは無関係に、感染者を国家が強制的に隔離する日本も人権軽視という点では中国と大差ない。) 欧米が経済活動を続けられるのは、ウィズ・コロナを実現するため、感染予防や治療体制を強化してきたからだ。この点で日本は大きく見劣りする。 オミクロン株はワクチン接種者へのブレイクスルー感染が問題となっている。これに対しては、追加接種が有効だ。昨年12月11日、イスラエルのシェバ・メディカルセンターと同国保健省の中央ウイルス学研究所は、追加接種により、オミクロン株への中和活性が100倍高まったと報告している。 世界各国は追加接種に懸命だ。ところが、日本は遅々として進まない。図2をご覧いただきたい。OCED加盟38カ国中、36カ国が追加接種の進行状況を公表しているが、日本はその中で断トツの最下位だ(図2)。(図2OCED加盟38カ国中36カ国の追加接種進行状況はリンク先参照)』、「コロナ対策でも、積極的疫学調査、クラスター対策、病床確保など、感染者の同定と隔離には力をいれるが、検査拡充やワクチンによる感染予防、感染者への早期治療についてはおざなりだ。感染者が治療を受ける権利、家族にうつさないための隔離される権利などは保障されていない」、やはり「感染症法」の桎梏から脱する必要がありそうだ。「世界各国は追加接種に懸命だ。ところが、日本は遅々として進まない」、これは重大な政策ミスだ。 
・『早期治療には早期検査と投薬が必要  治療薬の入手も遅れている。アメリカ・メルク社のモルヌピラビル、アメリカ・ファイザー社のパクスロビドなどの経口治療薬は、感染早期に投与することで、重症化や死亡のリスクを、それぞれ3割、9割減らすことが証明されている。世界各国は治療薬確保に奔走している。 アメリカ政府は1月4日、ファイザー社のパクスロビドの供給を、昨年11月に契約した1000万回分から2000万回分に倍増させたと発表した。1月末までに400万回分が納入される。日本が確保したのはモルヌピラビル160万回分、パクスロビド200万回分で、十分量とは言いがたい。1月7日、日本経済新聞は、調剤薬局クオールで「4日時点で全店の1割にあたる約90店に届いたが、この店には1箱、患者1人分のみ」という状況を紹介している。 図3OECD加盟国での人口1000人あたりの検査数 治療体制の問題は、治療薬の確保だけではない。早期投与のためには、早期に検査しなければならない。そのためには、検査体制の強化が必須だ。図3は、1月7日時点でのOECD加盟国での人口1000人あたりの検査数だ。日本の検査数は0.41件で、メキシコについで少ない。英国(20.6)や米国(4.99)のそれぞれ50分の1、12分の1だ。) このような状況を知れば、日本は追加接種を進めず、治療薬を確保せず、検査体制を強化せず、国民への規制だけを強めているのがおわかりいただけるだろう。日本以外の先進国が医療体制を充実させながら、ウィズコロナへと向かっているのとは対照的だ。コロナのパンデミック(世界的流行)が始まってから間もなく2年である。時間は十分にあったはずなのに、ウィズ・コロナへの備えができていなかったとしか言えない。 では、なぜ、海外はそこまでして規制を嫌がるのだろうか。それは過度な規制が人権侵害や経済的なダメージだけでなく、規制が国民の健康を蝕むからだ。 あまり議論されることはないが、規制強化の悪影響は日本で最も深刻だ。それは、日本が先進国でもっとも高齢化が進んでいるからだ。実は、コロナ流行下で日本での死亡数は増加している。 医療ガバナンス研究所の山下えりかの調査によれば、2017~19年の死亡数と比較し、2020、21年の5月は、1.25倍、1.37倍、8月は1.29倍、1.35倍、さらに2021年の1月には1.19倍死亡者数が増えていた。コロナが流行するたびに死亡が増加していることがわかる。この増加は自然変動では説明がつかず、国立感染症研究所は「超過死亡」を認定している』、「日本は追加接種を進めず、治療薬を確保せず、検査体制を強化せず、国民への規制だけを強めている」、「コロナ流行下で日本での死亡数は増加」。 医療ガバナンス研究所の山下えりかの調査によれば、2017~19年の死亡数と比較し、2020、21年の5月は、1.25倍、1.37倍、8月は1.29倍、1.35倍、さらに2021年の1月には1.19倍死亡者数が増えていた。コロナが流行するたびに死亡が増加」、確かに「規制強化の悪影響は日本で最も深刻」なようだ。
・『コロナの規制強化で高齢者の健康が害されている  「超過死亡」はコロナ感染による死亡が増えたためではない。2021年1月には過去3年間と比べて、2万4748人死者が増えているが、この時期にコロナによる死亡が認定されたのは、2261人に過ぎない。コロナの流行時期に合わせて、多数のコロナ関連死が生じていたと考えるのが妥当だ。 全く同じことがコロナ流行下で起こってもおかしくない。12月24日、スポーツ庁は全国の小学5年生と中学2年生を対象とした2021年度の全国体力テストで、男女とも全8種目の合計点の平均値が調査開始以来最低であったと発表した。小中学生の体力がこれだけ落ちるのだから、高齢者の健康が害されるのも、むべなるかなだ。今回のオミクロン株での規制強化でも、多くの高齢者の命が失われてもおかしくないのだ。 オミクロン株対策は合理的でなければならず、海外の経験からもっと学ばなければならない。オミクロン株の流行は、南アフリカだけでなく、イギリス、カナダ、ギリシャ、イタリア、フィンランドなどでもピークアウトしている。感染拡大から1カ月程度で収束に転じたことになる。日本も同様の展開を辿るだろう。ちなみに昨年の冬の流行のピークは1月11日だった。日本でのオミクロン株の流行が欧米レベルまで拡大する可能性は低い。大騒ぎせず、冷静に科学的に議論すべきである』、「冷静に科学的に議論すべきである」、確かにその通りだ。

次に、1月11日付け日刊ゲンダイ「ポンコツ岸田政権で日本の「ワクチン敗戦」再び…3回目接種遅れは厚労省のブレーキが元凶」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/299753
・『新型コロナウイルスはオミクロン株の猛威で感染者が倍々ゲームで拡大中。欧米の状況から「オミクロンは軽症」という認識が広がっているが、欧米と日本には大きな差があることを忘れちゃならない。抗体量が25倍や37倍に増えるとされる3回目接種が、日本は圧倒的に遅れているのだ。厚労省が立てた接種計画すらクリアできていない。 2回目接種から8カ月後を前提にした厚労省の計画では、昨年12月には104万人の3回目接種が完了しているはずだった。さらに、岸田首相は医療従事者や高齢者施設の入所者らを対象に2カ月の前倒し接種を指示、12月中に接種できる人は約880万人になっていた。 ところが、首相官邸の発表によれば、今月7日時点の3回目接種完了者は75万2799人。対象者のわずか8%にすぎず、当初計画の104万人にすら達していないのだ』、「当初計画の104万人にすら達していない」、厚労省の明白なサボタージュだ。
・『後藤厚労相は、接種券が届く前に接種し、集計システムに登録されていない人がいるとして、「公表の接種実績が実際より少ない可能性はある」と苦しい言い訳だったが、ワクチン自体の供給不足もあるからか、どうも3回目の加速への本気度が見えない。 今月に入り、オミクロンの急激な拡大で高齢者施設でのクラスターも発生し、自治体によっては一般高齢者の3回目接種を早める動きも出てきた。そのひとつ、7日から接種を始めた東京・世田谷区の保坂展人区長に話を聞くと、3回目接種が遅れている理由についてこう言った。 世田谷区長「厚労省がブレーキをかけ1カ月を無駄にした」 「高齢者を守るため、世田谷区では昨年11月5日に『3回目前倒し接種』を厚労省に働きかけました。その後、いったん前倒しが進む状況になるかと思われましたが、11月16日に厚労大臣が、自治体間の競争を避けるとして『勝手な前倒しはできない』とブレーキをかけてしまったのです。本来なら12月から前倒しを加速させられたのに、1カ月、時間を無駄にし、それが今の遅れにつながっています」 オミクロンの足音に慌てたのか、12月末になって厚労省が「高齢者施設の先行接種完了の見通しが立てば、一般高齢者の1月中の前倒しを認める」と方針転換したため、今月になって前倒しを表明する自治体が相次いでいるというわけだ。 岸田首相がファイザーCEOとワクチン供給を早める交渉をしたが失敗。堀内ワクチン担当相はポンコツのうえ存在感ゼロ。10日は祝日にもかかわらず政府分科会の尾身会長らが首相公邸で岸田首相と面会し、「高齢者への3回目接種を最優先で推進」するよう要請した。 安倍・菅政権のワクチン確保の遅れに続き、岸田政権も「ワクチン敗戦、再び」である』、「11月16日に厚労大臣が、自治体間の競争を避けるとして『勝手な前倒しはできない』とブレーキをかけてしまったのです。本来なら12月から前倒しを加速させられたのに、1カ月、時間を無駄にし、それが今の遅れにつながっています」、「12月末になって厚労省が「高齢者施設の先行接種完了の見通しが立てば、一般高齢者の1月中の前倒しを認める」と方針転換したため、今月になって前倒しを表明する自治体が相次いでいる」、いかにも厚労省がやりそうなことだが、こんな調子では、「岸田政権も「ワクチン敗戦、再び」である」、となるのは確かだ。
タグ:確かに、「図1」の通り「この感染者数で「第6波が来た」と大騒ぎする国は日本以外にはない」 「ポンコツ岸田政権で日本の「ワクチン敗戦」再び…3回目接種遅れは厚労省のブレーキが元凶」 日刊ゲンダイ 「冷静に科学的に議論すべきである」、確かにその通りだ。 「11月16日に厚労大臣が、自治体間の競争を避けるとして『勝手な前倒しはできない』とブレーキをかけてしまったのです。本来なら12月から前倒しを加速させられたのに、1カ月、時間を無駄にし、それが今の遅れにつながっています」、「12月末になって厚労省が「高齢者施設の先行接種完了の見通しが立てば、一般高齢者の1月中の前倒しを認める」と方針転換したため、今月になって前倒しを表明する自治体が相次いでいる」、いかにも厚労省がやりそうなことだが、こんな調子では、「岸田政権も「ワクチン敗戦、再び」である」、となるのは確か 「日本は追加接種を進めず、治療薬を確保せず、検査体制を強化せず、国民への規制だけを強めている」、「コロナ流行下で日本での死亡数は増加」。 医療ガバナンス研究所の山下えりかの調査によれば、2017~19年の死亡数と比較し、2020、21年の5月は、1.25倍、1.37倍、8月は1.29倍、1.35倍、さらに2021年の1月には1.19倍死亡者数が増えていた。コロナが流行するたびに死亡が増加」、確かに「規制強化の悪影響は日本で最も深刻」なようだ。 「コロナ対策でも、積極的疫学調査、クラスター対策、病床確保など、感染者の同定と隔離には力をいれるが、検査拡充やワクチンによる感染予防、感染者への早期治療についてはおざなりだ。感染者が治療を受ける権利、家族にうつさないための隔離される権利などは保障されていない」、やはり「感染症法」の桎梏から脱する必要がありそうだ。「世界各国は追加接種に懸命だ。ところが、日本は遅々として進まない」、これは重大な政策ミスだ。 「オミクロンに慌てふためく日本政府の致命的欠陥 時間はあったはずなのに備えが全然できていない」 「当初計画の104万人にすら達していない」、厚労省の明白なサボタージュだ。 「病床を確保したいなら、医学的に入院を必要としない感染者を入院させるべきでない」、その通りだ。 上 昌広 東洋経済オンライン (その20)(オミクロンに慌てふためく日本政府の致命的欠陥 時間はあったはずなのに備えが全然できていない、ポンコツ岸田政権で日本の「ワクチン敗戦」再び…3回目接種遅れは厚労省のブレーキが元凶) パンデミック(経済社会的視点)
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パンデミック(医学的視点)(その24)(アングル:新型コロナ 国ごと異なる「エンデミック」化の道筋、ゼロからわかる変異株の大物「オミクロン」の正体 感染症未来疫学センターの水谷哲也教授に聞く、オミクロン株が心配な人に知ってほしい最新事情 欧米で先行 日本国内での流行に備えは十分か、ブースター接種繰り返し 疫系に悪影響の恐れ EU当局が警告 寒い季節の到来に合わせるべきと) [パンデミック]

パンデミック(医学的視点)については、昨年10月30日に取上げた。今日は、(その24)(アングル:新型コロナ 国ごと異なる「エンデミック」化の道筋、ゼロからわかる変異株の大物「オミクロン」の正体 感染症未来疫学センターの水谷哲也教授に聞く、オミクロン株が心配な人に知ってほしい最新事情 欧米で先行 日本国内での流行に備えは十分か、ブースター接種繰り返し 疫系に悪影響の恐れ EU当局が警告 寒い季節の到来に合わせるべきと)である。

先ずは、11月7日付けロイター「アングル:新型コロナ、国ごと異なる「エンデミック」化の道筋」を紹介しよう。
https://jp.reuters.com/article/covid-endemic-idJPKBN2HP0MD
・『新型コロナウイルスの「パンデミック(世界的大流行)」が来年以降のいつ、どこで「エンデミック(一定地域で普段から継続的に発生する状態)」に移行するのか――。感染力の強いデルタ株の拡大が多くの地域で一服するとともに、世界中の科学者がこうした予測に乗り出している。ロイターが十数人の有力専門家を取材して分かった。 専門家の見立てでは、パンデミックから最初に脱却する国は、高いワクチン接種率と感染者が獲得した自然免疫の効果が組み合わさっているはずで、米国、英国、ポルトガル、インドなどが該当しそうだ。もっとも専門家らは、新型コロナは依然として予測不能なウイルスであり、ワクチン未接種の人々に広がる過程で変異を続けると警告する。 ウイルスがようやく獲得した免疫をすり抜ける形に進化してしまう、いわゆる「ドゥームズデー(終末)シナリオ」を完全に否定する向きも見当たらない。ただ、多くの国が向こう1年間にパンデミックの最悪局面を抜け出せるとの自信は、専門家の間で深まりつつある。 世界保健機関(WHO)で新型コロナ対応を主導している疫学研究者、マリア・バンケルコフ氏は「今から来年末までの期間に、われわれはこのウイルスを制御し、重症者と死者を大幅に減らせると想定している」とロイターに語った。 そうしたWHOの考えは、今後18カ月のパンデミックがたどる最も蓋然(がいぜん)性が高い経路を専門家と検討した結果に基づいている。来年末までにWHOが目指すのは、ワクチン接種率を世界の全人口の7割に高めること。バンケルコフ氏は「この段階に達すれば、疫学的に(今とは)非常に異なる状況になるだろう」とみる。 WHOが10月26日に公表した報告書によると、世界のほぼ全ての地域で8月以降、新型コロナウイルスの感染者と死者は減少が続く。例外は欧州で、ロシアやルーマニアといったワクチン接種率が低い国や、マスク着用義務を解除した国・地域をデルタ株の新たな感染の波が襲った。デルタ株は、ワクチン接種率こそ高いが、極めて厳格なロックダウンを実施したため自然免疫がほとんど得られなかった中国やシンガポールなどでも感染者が増えている。 ハーバードT・H・チャン公衆衛生大学院の疫学研究者、マーク・リプシッチ氏は「(エンデミックへの)移行は各地域で違ってくる。なぜならそれは自然感染による免疫を獲得した人の数と、当然ながら国ごとにとてもばらつきがあるワクチン配分量に左右されるからだ」と述べた。 複数の専門家は、米国のデルタ株感染の波は今月で峠を越え、これが最後の大規模な感染急増局面になると見込む。米食品医薬品局(FDA)元長官のスコット・ゴットリーブ氏は「われわれはパンデミックの局面からエンデミック、つまりこのウイルスが米国で持続的な単なる1つの病気となる段階へと移ろうとしている」と説明した。 ワシントン大学の疾病予測分野の有力な専門家の1人、クリス・マレー氏も、米国のデルタ株感染急増は今月で終わり、新たに大きな存在となるような変異株が出現しなければ、来年4月にはコロナ感染症の収束が始まるとみている。 パンデミック局面の規制撤廃に伴って足元で感染者が急増している英国などでも、ワクチンのおかげで入院患者は増えていないもよう。インペリアル・カレッジ・ロンドンの疫学研究者、ニール・ファーガソン氏は、緊急事態としてのパンデミックは大方が過去の話になったと言明した』、「「われわれはパンデミックの局面からエンデミック、つまり・・・持続的な単なる1つの病気となる段階へと移ろうとしている」、楽観的過ぎる印象も受けるが、「WHO」の前提は「ワクチン接種率を世界の全人口の7割に高める」、前提も楽観的過ぎるのかも知れない。
・『<緩やかに改善>  新型コロナウイルスはこれから何年も、マラリアのような他の風土病と同じく、人々に病気や死をもたらす大きな要因となり続けるだろう。WHOのバンケルコフ氏は「エンデミックは(ウイルスが)無害になるという意味ではない」とくぎを刺した。 一部の専門家は、新型コロナウイルスがいずれ、ワクチン接種率の低い地域で感染が急増するはしかのような存在になると話す。インフルエンザのように、より季節性がある呼吸器疾患となりつつあるとの声も聞かれる。また別の専門家によると、新型コロナウイルスは次第に致死率が低下し、主に子どもが感染する方向に進んでいく可能性があるが、そうなるまでに何十年もかかる可能性があるという。 インペリアル・カレッジのファーガソン氏は、英国では新型コロナウイルスのために呼吸器疾患の死者が長期平均を超える状況があと2─5年続く半面、それで医療提供体制がひっ迫したり、社会的距離を確保する措置が再び求められたりする公算は小さいとの見方を示した。 同氏は「進化は緩やかに進んでいく。われわれは新型コロナウイルスをより永続的なウイルスとして扱うことになる」と述べた。 新型コロナウイルスの動向を追ってきたフレッド・ハッチンソンがん研究センターの計算ウイルス学者、トレバー・ベッドフォード氏は、米国で新型コロナウイルスは来年から2023年の間にエンデミックに移行すると想定。年間死者数は5万─10万人と、インフルエンザの3万人より多いと試算した。 その上で、新型コロナウイルスは変異を続けそうなので、最新の流行株に狙いを定めたワクチンを毎年接種しなければならなくなるとの見通しを示した』、「米国で新型コロナウイルスは来年から2023年の間にエンデミックに移行すると想定。年間死者数は5万─10万人と、インフルエンザの3万人より多いと試算」、「エンデミック」に移行しても、死者数が高水準なのに驚かされた。

次に、12月4日付け東洋経済オンライン「ゼロからわかる変異株の大物「オミクロン」の正体 感染症未来疫学センターの水谷哲也教授に聞く」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/473053
・『新型コロナウイルスの変異ウイルスである「オミクロン株」に対する警戒感が日増しに高まっている。日本政府は11月30日から全世界を対象に外国人の入国を禁止すると発表した。 11月24日に南アフリカが初めてWHO(世界保健機関)に報告したオミクロン株に対し、VOC(懸念すべき変異株)としてWHOが指定したのは11月26日。 全世界で猛威を振るったデルタ株ですら、インドで確認されてからVOCに指定されるまで6カ月間の期間があった。報告から2日というオミクロン株の指定は、ほかの変異株も含めて最速である。 異例の速さで“マーク”されたオミクロン株はどういう特徴を持っているのか。コロナウイルスを専門に研究している、東京農工大学農学部附属感染症未来疫学研究センターの哲也教授に話を聞いた(Qは聞き手の質問、Aは水谷氏の回答)』、興味深そうだ。
・『悪いところを“総取り”  Q:オミクロン株はなぜこんなにも警戒されているのでしょうか? A:デルタ株以降、“大物”の変異株はあまり出てこなかった。WHOがデルタ株をVOC(懸念すべき変異株)として指定したのは2021年4月。その後ラムダ株が6月、ミュー株が8月にVOCの前段階である「注目すべき変異株」に指定されたが、どちらもデルタ株の流行に入る隙間がなくて消えてしまった。 オミクロン株はデルタ株に代わって拡大している地域もあるようなので、久しぶりの“大物”になるかもしれない、ということだ。 その可能性の根拠として考えられているのは、ヒトの細胞に感染するときの足がかりになる「スパイクタンパク質」に起きている変異が、従来とは比べものにならないほど多いことだ。 スパイクタンパク質は、いくつものアミノ酸が連なって構成されている。ラムダ株であれば、その内7カ所のアミノ酸が別のものに変わる変異が起きている。一方のオミクロン株では30カ所以上のアミノ酸が変異しており、これまでVOCに指定されたどの変異株と比べても明らかに数が多い。 単に変異の数が多いだけではない。イギリスや南アフリカで最初に確認されたアルファ株やベータ株、インドで確認されたデルタ株など、これまで感染が拡大した変異株の悪いところを総取りしたような特徴がある。 Q:総取り、ですか? 重要なのは、感染の足がかりになるスパイクタンパク質の中でもその一部、「受容体結合領域」と呼ばれる場所で起きている変異だ。ヒトの細胞に侵入する際、直接細胞と接する領域で、ここに変異が起きていると感染のしやすさなどに変化が起こりやすい。 オミクロン株の受容体結合領域の変異を一つ一つ見ると、実験室レベルではヒト細胞とウイルスとの融合を促進することがわかっているもの、中和抗体から逃れる可能性があるもの、それからすでに感染性を高めることがわかっているものなどがある。 さらに、受容体結合領域の外側ではあるものの、領域の構造に影響を与えて感染性を高める変異も起きている。 オミクロン株の変異の特徴は、(イギリス、南アフリカ、ブラジルで最初に確認された)アルファ・ベータ・ガンマ株に近い。そこにインド由来のデルタ株の変異も一部が入ってきたようなイメージだ。 感染しやすくなるなどの特徴がすでにわかっている変異が、これまでの変異株には2?3つだったところ、オミクロン株には少なくとも4つは入っている』、「オミクロン株」には「これまで感染が拡大した変異株の悪いところを総取りしたような特徴がある」、「悪いところを総取り」とはいかにも恐ろしそうだ。
・『かなり厄介な存在の可能性も  Q:ほかにも懸念すべき点はありますか? A:新型コロナが細胞に侵入するとき、「フーリン」と呼ばれるタンパク質分解酵素がスパイクタンパク質を切断するプロセスがある。気になるのは、オミクロン株では初めて、フーリンによって切断される部位の近くにも変異が起こっていることだ。 同じコロナウイルスであるSARSやMERSコロナウイルスは、フーリンによって切断されるこの部位そのものを持っていない。新型コロナウイルスは、この切断部位を持ったことで感染効率が上がり、SARSやMERSコロナウイルスよりも感染が広がったといわれている。 そのため、もしこれがより切断されやすくなるような類いの変異なのであれば、明らかに感染しやすくなっていることになる。変異が起きている場所(フーリンによって切断される部位の近く)だけを見ると、オミクロン株はこれまでの変異株に比べてかなり厄介な感じに見えるのは確かだ。 Q:その一方で、現在主流のデルタ株に比べてどれだけ感染しやすくなっているのかや、重症化しやすくなっているのかなど、まだ詳しいことはわかっていない状況です。) たくさんの変異があるからといって、本当にそれが全体としてウイルスにとって有利な変異になっているのかはわからない。確かに、オミクロン株に起きているこうした変異を1つひとつ見れば、より感染しやすくなっているように見える。 だが大事なのは、スパイクタンパク質全体の「構造」がどう変わっているかだ。変異が起きている部分を個別に見て、感染しやすさや重症化のしやすさを判断することはできない。 フーリンによる切断部位に入った変異も、そこに変異が入ることによって結果的にさらに切断されやすくなって感染性が増すのか、逆に切断されにくくなっているのか、どちらの可能性もありうるため、実際のところはまだわからない。これから出てくる研究成果を見なければいけない。 Q:改めて、ウイルスにとって変異とはどんな意味を持つのでしょうか? A:そもそも一般的には、変異をすること自体ウイルスにとっては不利なことだ。変異前には一定の感染性があったのに、ランダムに変異が入ることでウイルスとして駄目になってしまうことのほうが多いはずだからだ』、「一般的には、変異をすること自体ウイルスにとっては不利なことだ。変異前には一定の感染性があったのに、ランダムに変異が入ることでウイルスとして駄目になってしまうことのほうが多いはず」、なるほど。
・『変異株の大半は人知れず消える  Q:つまり「変異ウイルス=人間にとって危険」というわけではないのですね。(水谷氏の略歴はリンク先参照) A:感染しにくくなるような変異が起きればもちろんその株は流行しないし、逆に感染者の致死率が高くなるような変異が起きてもウイルスは広まることができない。こういう変異は数多く起きているはずだが、ほとんどの変異株は人知れず消えていってしまう。 だからわれわれは、結果的に今回のように感染が広がって生き残った後の変異株しか確認できない。疫学的にも調べないと結論は出ないが、本当にこのままオミクロン株がデルタ株に代わって感染の主流になっていくのであれば、感染しやすくなるような変異が起きた、と考えるのが自然だ。 Q:オミクロン株ではワクチンなどによる中和抗体の効き目の低下が懸念されていますね。 A:中和抗体からどのようにウイルスが逃れているのかは、実際に中和抗体を持った人の血清を使うなどして研究する必要があるので、効果の有無を確認するのには時間がかかる。 とはいえ、中和抗体がまったく効かなくなるということはないだろう。中和抗体は、スパイクタンパク質上にある複数のアミノ酸を認識して結合している。そのため、いくつかのアミノ酸が変異したとしても、中和抗体はほかの部分でウイルスを認識して感染を抑えられる。程度はわからないが、くっつき方が悪くなるようなイメージだ。 Q:今後、主流になったデルタ株に代わって世界中に広まっていくのでしょうか? A:繰り返しになるが、本当に感染しやすくなっているかどうかは起きている変異を一つ一つ見るだけではわからないので、結論が出るのは時間がかかる。 ラムダ株やミュー株も、変異している場所を見て厄介なウイルスなのではないかと思ってはいた。それでも、先んじて流行していたデルタ株に代わる主流にならなかった』、「変異株の大半は人知れず消える」ので、「われわれは、結果的に今回のように感染が広がって生き残った後の変異株しか確認できない」、言われてみればその通りだ。
・『かなりの警戒が必要  変異によってズバ抜けて感染しやすくなるとか、より効率的に体内でウイルスを複製できるようになるとか、そういうことがない限り簡単には世界中で感染の主流になることはない。 だが実際にデルタ株の感染が減る一方でオミクロン株が増えていくのであれば、未知な部分が多いだけにかなりの警戒が必要だ。 デルタ株の流行が続いているアメリカではデルタ株とオミクロン株のせめぎ合いが起きる。一方、今、日本にはほとんど感染者がいない。そこにポンッと入ってくれば、一気にオミクロン株が主流になって広がる可能性もある』、「日本」でも既に「オミクロン株が主流」になりつつあるようだ。

第三に、12月23日付け東洋経済オンラインが掲載した医療ガバナンス研究所理事長の上 昌広 氏による「オミクロン株が心配な人に知ってほしい最新事情 欧米で先行、日本国内での流行に備えは十分か」を紹介しよう。
・『オミクロン株の感染が世界中で拡大している。筆者が考えるオミクロン株の主要な論点について議論したい』、興味深そうだ。
・『オミクロン株はアジアで流行するか  私の最大の関心事だ。11月に南アフリカでオミクロン株が検出された時、筆者はこの変異株が北半球で流行するか否か懐疑的だった。ベータ株(南アフリカ株)、ガンマ株(ブラジル株)、ラムダ株(ペルー株)など、南半球由来の変異株が北半球で流行しなかったからだ。 一方、日本で大流行したアルファ株(イギリス株)、デルタ株(インド株)などの変異株は、いずれもユーラシア大陸由来だ。その本当の発生地は兎も角、最初の流行がユーラシア大陸で確認されている。 私は、この事実を知ると、1997年にアメリカ・カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のジャレド・ダイアモンド教授が表した名著『銃・病原菌・鉄』を思い出した。この本の中で、ダイアモンド教授は、東西に同緯度の陸地が広がる北半球では疾病は拡散しやすく、南北に細長い南半球では、気候帯が異なるため、感染症は広がりにくいと論じていた。私は、全く同じ事が新型コロナウイルス(以下、コロナ)にも通用するかもしれないと考えていた。 ただ、この考えはほどなく否定された。イギリス、そしてアメリカでオミクロン株の流行が拡大したからだ。12月18日、イギリスでは1日あたりのオミクロン株の新規感染者数が、前日の3倍以上となる1万59人となり、翌19日も1万2133人に増加した。状況はアメリカも同じだ。12月20日、アメリカ疾病対策センター(CDC)は、12月18日までの1週間で確認されたコロナの73%がオミクロン株だったと発表した。 では、オミクロン株はアジアでも流行するのか?アルファ株がそうだったように、英米で大流行すれば、常識的にはアジアでも流行するだろう。果たして、本当にそうだろうか。私がひっかかるのは、今冬に限っては、アジアと欧米の流行状況が全く違うことだ。 欧米でデルタ株、およびオミクロン株が大流行している中、アジアで感染が拡大しているのは韓国、ベトナム、ラオスくらいだ(図)。この3カ国で流行しているといっても、その規模は欧米と比較して小さい。12月19日の1日あたりの感染者数(人口100万人あたり、1週間平均)は、イギリス1138人、アメリカ392人であるのに対し、ベトナム185人、ラオス179人、韓国132人だ。(外部配信先では図表や画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください) コロナは流行当初から、欧米と比べ、アジアでの感染は小規模だった。ただ、今冬ほど、その差が極端だったことはない。今夏、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム、そして日本の流行は欧米とほぼ同レベルだった。なぜ、今夏、このような国で大流行したデルタ株が、流行の本番である真冬に抑制されているのか、ワクチン接種(追加接種)や既感染による免疫では説明がつかない』、確かに不思議だ。
・『沖縄米軍基地でクラスターが発生したものの・・・  オミクロン株についても、英米との交流が多いシンガポール、インド、フィリピンなどで感染は拡大していない。また、日本でも沖縄米軍基地の職員の間で150人以上のクラスターが発生しているが(米軍は、このクラスターがオミクロン株によるとは認めていないが、基地に出入りする日本人からオミクロン株が検出されているため、オミクロン株が原因と考えていいだろう)、基地外に感染が拡大したという話は聞かない(12月19日現在)。 オミクロン株は強い感染力を有する。12月17日、イギリスのインペリアル・カレッジ・ロンドンの研究者は、オミクロン株の再感染リスクはデルタ株の5.4倍というモデル研究の結果を発表した。私の知人でイギリス在住の医師も「オミクロン株の感染力は麻疹なみ」という感想を伝えてきた。その理由についても、香港大学の研究者が、デルタ株と比べて、オミクロン株は気管で増殖しやすいために、周囲に広まりやすく、逆に肺で増殖しにくいため、肺炎にならずに重症化しにくいなど、幾つかの仮説を提唱している。欧米で急速にオミクロン株の流行が拡大したのも納得できる。) ただ、欧米の研究でわかったことはアジアでも通用するのか、現時点ではわからないということだ。デルタ株の流行が抑制されているアジアで、オミクロン株が流行するのか、現状では何とも言えない。データに基づいた冷静な議論が必要だ』、「クラスター」は「沖縄米軍基地」の他にも、「岩国」、「横須賀」などのの米軍基地」でも発生(人数はそれぞれ、574人、529人、213人(1月7日付けしんぶん赤旗)。
・『水際対策と同時に国内大規模検査を  では、わが国は何を最優先すべきか。もちろん、オミクロン株が日本でも流行しうるという前提にたって対策を講じることだ。優先すべきは、水際対策と国内でのスクリーニングだ。水際対策の重要性は改めて言うまでもない。 問題は国内スクリーニングだ。日本は、水際対策が成功していると主張してきたため、国内でのオミクロン株の大規模検査を実施してこなかった。12月15日現在の国民1000人あたりの検査数は0.36件で、主要先進7カ国(G7)で最も多い英国(18.0件)の50分の1だ。デルタ株の流行が抑制されているという点では日本と変わらないインド(0.84件)の半分以下である。 クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号で、厳格な船内検疫を実施していたころに、すでに国内感染が拡大していたし、オミクロン株の流行でも、オランダでは、外国との渡航を禁止することを決めた1週間以上前に国内に入っていた。検査数が少ない日本では、オミクロン株が国内に流入していたとしても、検出できていない可能性が否定できない。 日本を含むアジアがオミクロン株に抵抗力があるのでなく、何らかの幸運で、日本国内に流入するのが遅れているだけなら、国内の検査を怠ることで、蔓延を許してしまう。 こうならないためには、国内での検査体制の強化が喫緊の課題であるが、前途は多難だ。それは、厚生労働省が、安倍晋三・元首相の頃から一貫してPCR検査を抑制しているからだ。この状況は現在も変わらない。 岸田文雄首相は自民党総裁選出馬にあたり、9月2日に「岸田4本柱」を発表し、その中に「検査の無料化・拡充」を盛り込んだ。ところが、11月12日、新型コロナ感染症対策本部が発表した「次の感染拡大に向けた安心確保のための取組の全体像」では、無料検査の対象を「感染拡大の傾向が見られる場合、都道府県の判断により」実施するか、あるいは「健康上の理由等によりワクチン接種を受けられない者」に限定した。「感染拡大の傾向」が確認されてから検査をしても手遅れだ。 この状況について、岸田首相には既視感があるはずだ。今年1月、岸田首相のおひざ元である広島県が、広島市の中心に位置する4区の住民約80万人を対象とした無料PCR検査の実施を計画し、県議会は10億3800万円の予算を可決したが、最終的に8000人規模に縮小された。 これは、「医系技官の意向を反映したもの(厚労省関係者)」だ。広島県が計画を発表後、政府は広島市を「緊急事態宣言に準じた措置」の対象地域に該当しないという見解を示し、休業補償などで広島県を冷遇したからだ。広島県は厚労省の意向に従わざるをえなかった。岸田首相はこのあたりの状況について、地元の支援者から聞いているはずだ。 現在、内閣官房で、コロナ感染症対策推進室長を務める迫井正深氏は、広島大学附属高校から東京大学医学部に進んだ医系技官だ。このまま医系技官たちの抵抗を許すのか、あるいは、彼らを方向転換させるのか、岸田首相の手腕が問われている』、「医系技官」が「PCR検査」件数を抑制しようととするのは、迫井氏の前任者からの伝統だ。
・『ワクチン追加接種の必要性は?  検査体制の強化と並ぶ、もう1つのオミクロン株対策の肝は、ワクチン追加接種の促進だ。オミクロン株に限らず、コロナ対策での追加接種の重要性については、「善戦で始まった岸田政権のコロナ対策に映る不安」(12月1配信)でも述べた。 日本が迷走する中、世界は追加接種を進めた。12月18日現在の主要先進国の追加接種完了率はイギリス40%、ドイツ30%、フランス24%、イタリア24%、アメリカ18%、カナダ11%だ。冬場の本格的流行が始まる前に、高齢者や医療従事者の接種を終えていることになる。12月1日から、医療従事者向けに追加接種を開始した日本は、先進国では異例の存在だ。 南アフリカの研究者たちは、デルタ株と比べて、オミクロン株の毒性は低いと報告しているが、感染者の多くが若年者である南アフリカの経験を、そのまま日本にあてはめることはできない。12月16日にインペリアル・カレッジ・ロンドンの研究チームが発表した報告によると、イギリスではオミクロン株の重症度はデルタ株と変わらない。) では、オミクロン株に追加接種は有効なのか。オミクロン株は、コロナワクチンが標的とするスパイク(S)蛋白質に30カ所以上の変異があるため、ワクチンが効きにくい。追加接種しても駄目だろうとお考えの読者も多いだろう。確かに、12月10日にアメリカ疾病管理センターは、オミクロン株感染者43人中、14人は追加接種を終えていたと報告している。 ただ、その後に発表された研究によれば、悲観する必要はなさそうだ。12月9日、アメリカ・ファイザー社は、同社製のワクチンを追加接種することで、オミクロン株の阻止効果は25倍増強されると報告している。さらに、12月13日、イスラエルのシェバ・メディカルセンターの研究チーム、12月20日にはアメリカ・モデルナ社からも同様の報告がなされている。 12月15日にはアメリカ・バイデン政権の首席医療顧問であるアンソニー・ファウチ医師が、オミクロン株に特化したワクチンの追加接種は不要という見解を表明している。つまり、追加接種は完全ではないが、オミクロン株の感染リスクを相当レベル低下させるというのが、現時点での世界のコンセンサスだ。このような状況を知れば、日本は一刻も早く追加接種を進めなければならないことがわかる。2回目接種から6カ月とか8カ月とかの議論をしている場合ではない』、「追加接種は完全ではないが、オミクロン株の感染リスクを相当レベル低下させるというのが、現時点での世界のコンセンサスだ」、「日本は一刻も早く追加接種を進めなければならない」、その通りだ。
・『エビデンスに基づいた議論を  以上が、私が考えているオミクロン株の論点だ。アメリカ国立医学図書館データベース(PubMed)によると、「オミクロン」という単語をタイトルに含むコロナ関係の論文は、すでに63報が発表されているが、日本からは金沢大学呼吸器内科の研究チームが『呼吸器医学』誌に発表した一報だけだ。 ワクチン、治療薬については、「国産」の重要性を声高に主張する政府や有識者たちも、臨床研究による現状把握を求める人は少ない。これが、わが国のコロナ対策が迷走する理由だ。データに基づいた合理的な議論が必要である』、「臨床研究による現状把握」を含めて「データに基づいた合理的な議論が必要」、強く同意する。

第四に、1月13日付け東洋経済オンラインがブルームバーグを転載した「ブースター接種繰り返し、免疫系に悪影響の恐れ EU当局が警告、寒い季節の到来に合わせるべきと」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/502217
・『欧州連合(EU)の医薬品規制当局は11日、新型コロナウイルスワクチンのブースター(追加免疫)接種を頻繁に行うと免疫系に悪影響を及ぼす恐れがあると警告した。 欧州医薬品庁(EMA)は、4カ月ごとのブースター接種を繰り返すと最終的に免疫力が低下する可能性があると指摘。各国はブースター接種の間隔をより空け、インフルエンザ予防接種戦略で示された青写真のように寒い季節の到来に合わせるべきだとの見解を示した』、「接種を頻繁に行うと免疫系に悪影響を及ぼす恐れ」とは穏やかではない、どういうことなのだろう。
・『オミクロン変異株、数週間で欧州人口の半数以上が感染も-WHO  オミクロン感染が急速に広がる中、一部の国は2回目のブースター接種を行う可能性を検討している。イスラエルは今月に入り、60歳以上を対象に4回目のワクチン接種(2回目のブースター)を開始。英国は現時点では2回目のブースターは必要ないが、必要に応じてデータを見直すとしている。 ブースター接種についてEMAでワクチン戦略などの責任者を務めるマルコ・カバレリ氏は「一度や二度ならともかく、何度も繰り返すべきと考えるものではない」と指摘。「現在のパンデミック(世界的大流行)の状況から、よりエンデミック(地域的流行)の状況にどう移れるかを考える必要がある」と記者会見で語った』、確かに「接種を頻繁に行うと免疫系に悪影響を及ぼす恐れ」とは、あり得る問題だ。有効な「免疫」が期待できる上限回数はどの程度なのだろう。
タグ:(その24)(アングル:新型コロナ 国ごと異なる「エンデミック」化の道筋、ゼロからわかる変異株の大物「オミクロン」の正体 感染症未来疫学センターの水谷哲也教授に聞く、オミクロン株が心配な人に知ってほしい最新事情 欧米で先行 日本国内での流行に備えは十分か、ブースター接種繰り返し 疫系に悪影響の恐れ EU当局が警告 寒い季節の到来に合わせるべきと) パンデミック(医学的視点) ロイター 「アングル:新型コロナ、国ごと異なる「エンデミック」化の道筋」 「「われわれはパンデミックの局面からエンデミック、つまり・・・持続的な単なる1つの病気となる段階へと移ろうとしている」、楽観的過ぎる印象も受けるが、「WHO」の前提は「ワクチン接種率を世界の全人口の7割に高める」、前提も楽観的過ぎるのかも知れない。 「米国で新型コロナウイルスは来年から2023年の間にエンデミックに移行すると想定。年間死者数は5万─10万人と、インフルエンザの3万人より多いと試算」、「エンデミック」に移行しても、死者数が高水準なのに驚かされた 東洋経済オンライン 「ゼロからわかる変異株の大物「オミクロン」の正体 感染症未来疫学センターの水谷哲也教授に聞く」 「オミクロン株」には「これまで感染が拡大した変異株の悪いところを総取りしたような特徴がある」、「悪いところを総取り」とはいかにも恐ろしそうだ。 「一般的には、変異をすること自体ウイルスにとっては不利なことだ。変異前には一定の感染性があったのに、ランダムに変異が入ることでウイルスとして駄目になってしまうことのほうが多いはず」、なるほど。 「変異株の大半は人知れず消える」ので、「われわれは、結果的に今回のように感染が広がって生き残った後の変異株しか確認できない」、言われてみればその通りだ。 「日本」でも既に「オミクロン株が主流」になりつつあるようだ。 上 昌広 「オミクロン株が心配な人に知ってほしい最新事情 欧米で先行、日本国内での流行に備えは十分か」 「クラスター」は「沖縄米軍基地」の他にも、「岩国」、「横須賀」などのの米軍基地」でも発生(人数はそれぞれ、574人、529人、213人(1月7日付けしんぶん赤旗) 「医系技官」が「PCR検査」件数を抑制しようととするのは、迫井氏の前任者からの伝統だ。 「追加接種は完全ではないが、オミクロン株の感染リスクを相当レベル低下させるというのが、現時点での世界のコンセンサスだ」、「日本は一刻も早く追加接種を進めなければならない」、その通りだ 「臨床研究による現状把握」を含めて「データに基づいた合理的な議論が必要」、強く同意する。 ブルームバーグ 「ブースター接種繰り返し、免疫系に悪影響の恐れ EU当局が警告、寒い季節の到来に合わせるべきと」 「接種を頻繁に行うと免疫系に悪影響を及ぼす恐れ」とは穏やかではない、どういうことなのだろう。 確かに「接種を頻繁に行うと免疫系に悪影響を及ぼす恐れ」とは、あり得る問題だ。有効な「免疫」が期待
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政府財政問題(その6)(このまま行けば日本の財政破綻は避けられない 「MMT理論」「自国通貨持つ国は安心」は大間違い、日本では絶対に危険な「MMT」をやってはいけない MMTの「4つの誤り」と「3つの害悪」とは何か) [経済政策]

政府財政問題については、昨年11月25日に取上げた。今日は、(その6)(このまま行けば日本の財政破綻は避けられない 「MMT理論」「自国通貨持つ国は安心」は大間違い、日本では絶対に危険な「MMT」をやってはいけない MMTの「4つの誤り」と「3つの害悪」とは何か)である。

先ずは、11月28日付け東洋経済オンラインが掲載した財務省出身で慶應義塾大学大学院准教授の小幡 績 氏による「このまま行けば日本の財政破綻は避けられない 「MMT理論」「自国通貨持つ国は安心」は大間違い」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/471734
・『今回は「財政破綻は日本では起きない」という主張は、完全に誤りであることを説明しよう。 10月16日配信のコラム「『このままでは国家財政破綻』論は1%だけ間違いだ」では、「日銀が国債を買えば大丈夫だ」「国全体のバランスシートは問題ない」」「MMT(現代貨幣理論)は有効だ」「インフレが起きてないから大丈夫」などと完全に誤った主張をする、エコノミスト、有識者たち、いや有害な言説を撒き散らす人々を論破することが、唯一の日本を救う道だと書いた。今回は、その仕事に取りかかりたい』、「小幡」氏は数少ない論争型の学者で、興味深そうだ。
・『「国全体では貯蓄があるから大丈夫」は大間違い  この連載は競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による持ち回り連載です(最終ページには競馬の予想が載っています)。記事の一覧はこちら まず「日本全体では対外債権があり、国全体では貯蓄があるから、日本が破綻することは絶対にない」というのは、単純な誤りだ。なぜなら、国全体でお金があっても、政府が倒産するからである。 これは、企業の例を考えてみれば、すぐにわかる。「日本全体で金余りだ」「銀行は貸す先がない」、と言われていても、資金繰り倒産する企業は必ずある。それは、金が余っていても、その企業には貸さないからだ。なぜ、貸さないかといえば、返ってくる見込みがないからである。 借金を積み上げ、一度も借金を減らしたことのない政府、そして、毎年の赤字額は年々増えていく。毎年新しく借り入れる額が増えていく政府。貸しても返ってこない、と考えるのが普通で、誰も貸さなくなるだろう。つまり、政府が借金をしたいと、新しく国債を発行しても、それを買う人がいなくなるのである。銀行も投資家も金はあるが、買わないのである。 それは、地方政府と違って、日本政府には日本銀行がついており、日本銀行が買うから問題ない、ということらしい。これこそ誤りだ。 「日銀が国債を買い続けるから問題ない」という議論は、100%間違っているのである。なぜなら、日銀が国債を買い続けることは、現実にはできないからである。 なぜ日銀が国債を買い続けることは難しいのか? また「自国通貨建ての国は、理論的に絶対財政破綻しない」という議論は、元日銀の著名エコノミストですら書いているが、それは、机上の理屈であり、現実には実現不可能なシナリオである。それは、日本銀行が国債を引き受け続けるとインフレになるからではない。その場合は、インフレまで時間稼ぎができるが、インフレになる前に、即時に財政破綻してしまうからである。 日本銀行は、すでに発行されている国債を、市場で買うことはできる。だから、理論的には、日本国内に存在するすべての国債を買い尽くすことはできる。しかし、財政破綻回避のために買う必要があるのは、既存の国債ではない。新発債、つまり、日本政府が借金をするために新たに発行する国債である。そして、これを日本銀行が直接買うこと、直接引き受けは、法律で禁止されている。だからできない。 これを回避する方法は2つである。 1つは、民間金融機関に買わせて、それを日本銀行が市場で買うことである。これは、現在すでに行われている。民間主体から見れば、いわゆる「日銀トレード」で、日銀が確実に買ってくれるから、政府から新規に発行された国債を引き受け、それに利ざやを乗せて、日銀に売りつけるのである。 この結果、日本国債のほぼ半分は日銀が保有することになってしまった。 問題は、これがいつまで継続できるか、ということである。日銀は、継続性、持続性が危ういとみて、イールドカーブコントロールという前代未聞の、中央銀行としてはもっともやりたくない金融政策手段に踏み切り、国債の買い入れ量を減少させることに成功した。 逆に言えば、これ以上買うことの困難は現実に始まっており、無限に市場経由で、日銀に引き受けさせることはできないのである。それでも、政府が国債を発行し続けたらどうなるか。民間金融機関は、これを引き受けるのを躊躇し、少なくとも一時的には中止するだろう。 このとき、政府がどうするかが問題である。政府の道は2つである。1つは、危機をようやく認識し、国債発行を減らすことを決意し、遅まきながら財政再建に取り組む、という道である。しかし、これまでの政府の財政再建の取り組みからして、この道はとらない可能性が高い。 そうなると、もう1つの道しかなく、日銀に直接引き受けをさせるように、法律改正をすることになる。理論的に日本では財政破綻は起きないと主張している人々は、この手段があるから、自国通貨建ての国債を発行している限り、財政破綻しないと言っているのである』、「日銀」が「国債」を「これ以上買うことの困難は現実に始まっており、無限に市場経由で、日銀に引き受けさせることはできない」、「それでも、政府が国債を発行し続けたらどうなるか。民間金融機関は、これを引き受けるのを躊躇し、少なくとも一時的には中止するだろう。 このとき、政府がどうするかが問題である。政府の道は2つである。1つは、危機をようやく認識し、国債発行を減らすことを決意し、遅まきながら財政再建に取り組む、という道である。しかし、これまでの政府の財政再建の取り組みからして、この道はとらない可能性が高い。 そうなると、もう1つの道しかなく、日銀に直接引き受けをさせるように、法律改正をする」、なるほど。
・『直接引き受けの話が出れば「日本は秒殺」される  残念ながら、この手段は現実には不可能である。 なぜなら「中央銀行に国債を直接引き受けさせる」という法律を成立させれば、いや国会に提出されたら、いや、それを政府が自ら検討している、と報じられた時点で、政府財政よりも先に、日本が破綻するからである。 日銀、国債直接引き受けへ、という報道が出た瞬間、世界中のトレーダーが日本売りを仕掛け、世界中の投資家もそれに追随して投げ売りをする。 まず、円が大暴落し、その結果、円建ての国債も投げ売りされ、円建ての日本株も投げ売られる。混乱が収まった後には、株だけは少し買い戻されるだろうが、当初は大暴落する。 つまり、為替主導の、円安、債券安、株安のトリプル安であり、生易しいトリプル安ではなく、1998年の金融危機ですら比較にならないぐらいの大暴落である。1997年から1998年の1年間で、1ドル=112円から147円まで暴落したが、「日銀直接引き受け報道」が出て、政府が放置すれば、その時のドル円が110円程度であれば、1週間以内に150円を割る大暴落となり、状況によっては、200円を突破する可能性もある。 ただし、これも現実には起きない。なぜなら、日銀国債直接引き受け報道が出れば、直ちに為替取引も債券取引も株式取引もまったく成り立たなくなり、金融市場は全面取引停止に追い込まれるからだ。 メディアも政治家も、やっと大騒ぎを始め、日銀の直接引き受け報道を政府は否定することになるからだ。しかし、否定しても、いったん火のついた疑念は燃え盛り、取引は再開できないか、再開すれば、さらなる暴落となる。よって、これを収めるには、日銀直接引き受けなど絶対にありえない、という政府の強力で具体的な行動が必要となる。実質的で実効的でかつ大規模な財政再建策とその強い意志を示さざるを得ないだろう。こうなって初めて、暴落は止まる。 つまり、禁じ手といわれている、日銀の直接引き受けは、タブーを犯せば理論的には可能だ。だが現実にはタブーを犯した政府と中央銀行は国際金融市場に打ちのめされるため、結局、禁じ手はやはり禁じ手のままとなる。「自国通貨建ての政府債務なら、いくらでも借金できる」というのは幻想で、為替取引が国際的に行われている限り、それは、自国通貨建てであろうとも、金融市場から攻撃を受ける。 そして、為替の暴落を許容しても、結局国債が暴落してしまい、借金はできなくなり、すべてを日銀に依存することになる、同時に、株式も短期的には大暴落となるから、政治的に持ちようがなく、政権は株式市場により転覆されるだろう。その結果、その政権あるいは次の政権は、財政再建をせざるを得ず、日銀引き受けは結局実現することはない。 日銀直接引き受けがあり得ない、となれば「財政破綻はしない」という論者の議論はほぼすべて破綻する。だから、これ以上議論することもないが、この際、すべての点において彼らを打ちのめしておこう。 まず、政府と日銀を一体で考える、連結政府という議論は、前述したように無意味だ。連結政府という考えで借金しようとすれば、即金融市場暴落だから、一体で考えることは、打ち出の小槌どころか、反対に地獄への道である。 その次に、借金という負債と対になる資産も考えろというバランスシート議論も無意味だ。日本は負債も多いが資産も多いので大丈夫というのは、現実的には、まったく間違いである。 政府が不足しているのは現金である。キャッシュがなければ、国民にも配れないし、公共事業もできないし、国民の医療費の肩代わりもできない。資産があっても現金がなければ、政府の資金調達には使えないので、現金資産あるいはすぐに現金化できる資産しか意味がない。 したがって、特別会計の剰余金は使えるが、それ以外はほとんど使えないのである。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の厚生年金の積立金の運用資産の株式、債券などを売却すれば、確かに100兆円以上現金は入ってくる。 だが、たとえその資産が200兆円で売れたとしても、1000兆円を超える負債を相殺するには遠く及ばないし、もちろん、将来の年金支払い原資が不足するから、将来200兆円不足額が増えるだけのことである さらに、道路や森林などは問題外である。買い手がいない。道路に価値があっても、買う人がいなければ売却はできない。価値があっても価格がつかないというのは、金融市場でなくとも普通のことである。高速道路だけでなくすべての道路に課金すれば、というような議論は意味がない。なぜなら、消費税も政治的に上げられない政府が、すべての道路に課金するなどということを実行するはずはないからだ。万が一、それをするとすれば、財政破綻後であろう。 こう追い詰められれば「財政破綻あり得ない派」の論者たちは、今度は「そもそも借金を返す必要などない。個人や企業と違って、国は返さなくていいんだ」と言うだろう。それならば、バランスシートで考えること自体に意味がない。バランスシートで考えろという議論はそもそも無意味なのである。 前述した金融市場による財政破綻のプロセスで見たように、財政破綻が起こるかどうかは、政府がそのとき必要な現金を調達できるかどうかにかかっているのであって、バランスシートも借金残高も直接は関係ないのである。 しかし、現金化できる資産をすべて売りさばいても、せいぜい1年ちょっとで、2年も持たないだろう。なぜなら、新しい国債が発行できなければ、借り換えもできない。現在、日本政府は、毎年借り換えも含めて国債を170兆円以上新規発行しており、今後は200兆円を超えてくると思われるので、現金化できる資産をすべて売り払っても1年しか持たず、2年は無理なのである』、「現金化できる資産をすべて売り払っても1年しか持たず、2年は無理なのである」、意外に額は少ないようだ。
・『借金残高が大きいとどうなる?  では、借金残高の大きさはまったく関係ないのか?500兆円でも1200兆円でも関係ないのか? 借金の大きさには、2つの大きな影響がある。まず第1に、借金残高が大きいと「こいつ返せるのか、返す気あるのか」という疑念を持たれ、新たに貸してもらえなくなる。その意味では、GDP比で250%でも財政破綻しないのだから、300%でも400%でも大丈夫、60%程度で破綻したギリシャなどとは日本は根本的に違う、という議論は間違いだ。 つまり、日本がこれまで破綻しなかったのは、政府に金を貸してくれる人がいたからで、いまやそれが日銀しかいなくなりつつある、というのが問題であり、250%で破綻しないことは、今後破綻しないことを意味しない。何より、日銀に半分を買わせないといけないという現実は、まもなく破綻することを示している。 第2に、破綻した後の再生の困難さに大きく影響する。日本にとってはこれが最大の問題だ。 ギリシャと違って「自国通貨建てで、国内で借金をしているから大丈夫だ」というのは、厳しい国際金融市場ではない、馴れ合いのそして政府の影響力のある金融機関それと中央銀行が保有しているから、破綻がすぐには起こりにくい、という意味では正しい。 だが、それは逆に言えば、市場が鈍感であり、鈍感な投資家が保有している(鈍感に振舞うことを強制されているとも言えるが)ことを示しているのであり、破綻危機が近づいても、金利が上昇しない(国債価格が下落しない)という市場の警告機能がマヒしていることを意味する。だから、日本政府の破綻は突然起こるのである。 そして、破綻後、政府の財政再建が非常に困難になる。国内の資金は使いつくしている。個人の金融資産は銀行に預けられ、地域金融機関やあるいは半公的な金融機関、ゆうちょ銀行などに預けられている多くの部分は国債になっているから、返ってこない。国民の金融資産の実質価値は激減してしまうのであり、国債の返済は先送り(リスケ)されていつかは返済されるとしても、長期にわたり、インフレ分は目減りするし、何より、すでに老後を迎えている多くの国民は貯金が今必要なのに使えなくなってしまう。 開き直って、財政破綻、デフォルトした場合、過去の借金は水に流してもらって再建するのが政府破綻の場合が多い(実質ベースで半分程度返済される、つまり半分は棒引き)』、「破綻危機が近づいても、金利が上昇しない(国債価格が下落しない)という市場の警告機能がマヒしていることを意味する。だから、日本政府の破綻は突然起こる」、「国民の金融資産の実質価値は激減してしまう」、「財政破綻、デフォルトした場合、過去の借金は水に流してもらって再建するのが政府破綻の場合が多い(実質ベースで半分程度返済される、つまり半分は棒引き」、恐ろしいことだ。
・『国内保有が多いほど、破綻したら大変な事態に  この場合、海外投資家が保有していれば、破綻の負担は海外に転嫁できるが、国内保有の場合は、すべて国内で負担しなければならない。つまり、夜逃げすらできないのである。自分の処理はすべて自分でしなければならないのである。これが、国債が国内保有だから大丈夫、という議論の最大のウソである。 むしろ、国内保有だからこそ、破綻したら本当に終わりであり、再起がほぼ不能になってしまうのである。そして、その額が莫大であれば、1200兆円であれば、1200兆円の負担を国内で負うことになり、2000兆円になってから破綻すれば、そのときの日本国民が2000兆円負担することになるのである。 だから、政府の借金の大きさは致命的に重要なのであり、ほぼ国内から借金をしていることは、日本政府の財政破綻リスクにおいて、もっとも致命的なリスクなのである。 MMT理論の誤り、インフレにならないことの誤り、これについては長くなったので、次回にしよう(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)』、「海外投資家が保有していれば、破綻の負担は海外に転嫁できるが、国内保有の場合は、すべて国内で負担しなければならない」、これが「国債が国内保有だから大丈夫、という議論の最大のウソ」、なるほど。

次に、この続き、12月14日付け東洋経済オンライン「日本では絶対に危険な「MMT」をやってはいけない MMTの「4つの誤り」と「3つの害悪」とは何か」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/473925
・『「MMT(現代貨幣理論)」が、いまだに日本では言及されているようだ。 改めてひとことで言えば、これは「独自通貨を持つ国であれば、債務返済のための通貨発行に制約を受けないため、いくら借金をしても財政破綻は起きない」という理論である。 だが、結論から言えば、これは理論的に誤りであるうえに、現実に採用されれば、経済を破壊する「最も害悪の大きな理論」になる。以下、理由を説明しよう』、「現実に採用されれば、経済を破壊する「最も害悪の大きな理論」になる」、恐ろしいことだ。
・『MMTの「4つの誤り」と「3つの害悪」とは?  理論的には、以下の4つの大きな誤りがある。 第1に、価格メカニズムをまったく無視している。  第2に、リスクという概念が存在していない。  第3に、その結果、金融市場をまったく無視している。  第4に、その結果、マネー自体を無視している。 つまり、現代貨幣理論とは「現代ではマネーを無視していいのだ」という理論である。 だから、貨幣理論なのに財政がすべてを決めるのである。その結果出てくる政策提言は、インフレ水準がターゲットよりも低ければ、財政支出をとことん行い、インフレがターゲットを超えたらとことん財政支出を縮小し、とことん増税する、というものとなる。 これは、誰が見ても、経済を破壊する理論であり、政策であることがわかる。しかし、MMT論者はそれが理解できないようなので、現実の大きな問題点も指摘しよう。 現実の政策としては、3つの害悪がある。 第1に、財政支出の中身がどうであっても、気にしない。  第2に、金融市場が大混乱しても、気にしない。  第3に、インフレが起きにくい経済においては、その破壊的被害を極限まで大きくする。 理論と現実の政策としての問題点の説明は、現実的に日本経済が破壊されることを何よりも防止するために、政策の害悪を先に説明しよう。 日本においてはとりわけ、2013年、2014年と需給ギャップが解消されてもインフレが起きず、インフレ率は景気の指標としても有効でないことが示されているから、日本こそ、MMTをいちばんやってはいけない国なのである。これは第3の点のところで詳しく議論しよう』、「インフレ水準がターゲットよりも低ければ、財政支出をとことん行い、インフレがターゲットを超えたらとことん財政支出を縮小し、とことん増税する、というものとなる。 これは、誰が見ても、経済を破壊する理論であり、政策」、その通りだ。
・『政府が大規模な財政支出を続ければどうなるのか?  第2の害悪として挙げた「金融市場がどうなってもよい」という考え方は、財政支出の適切な規模をMMTでは判断できないこと以上に、経済を壊滅的に破壊する可能性がある。 例えば「財政出動をとことん行って金利が大幅に上昇しても、インフレがターゲットを超えない限り、財政支出を続ける」ということが起こりうる。これは、大規模な財政支出により、民間投資が大幅に縮小する、という典型的なクラウディングアウト(英語の元は「押し出す」の意味)を起こすということである。その結果、民間経済の活力、経済成長力は大幅に低下し、経済は長期的な大不況に陥ることになる。 これに対する彼らの反応は「理論的にはそのとおりだが、現在、世界経済は低金利で困っている。とりわけ日本はその最たるものだ。したがって、金利が上がらない現代でそのような心配をするのは杞憂だ」というものである。 これも、明らかに間違いで、金利が低いのは世界各国の中央銀行が無理やり低金利に押さえ込む、大規模な金融緩和を行っているからである。もし、低金利を維持したまま、大規模財政支出を継続すれば、民間の投資は、干上がってしまう。 投資資金は限られており、金利という価格による需給調節が効かなくても、政府セクターに取られてしまえば、リスク資金は民間へ回ってこない。さらに、人手が不足する。労働力は限られており、とりわけ優秀な人材はすぐに枯渇する。すると、民間投資として適切で利益の上がる投資を行える人材が不足する。彼らは、大規模財政支出に乗じて、その分野で稼ぐために活動しているからである。 中央銀行が資金を供給したところで、それを受け取る民間経済主体はいない。将来の経済見通し、リスクが不透明のため、投資も控えるし、儲かるかわからない投資のための資金も利子率ゼロでも借りない。 ただで資金をくれるのであれば、それはもらうだろうが、それは中央銀行が行うのではなく、政府財政で行うことになるから、これは財政政策であり、民間投資ではない。この財政支出がうまくいくかどうかが、保証されていない以上、この財政出動は意味がない。これは第1の、ワイズスペンディングの議論にも関係する。 この結果、自らリスクをとって金融機関も貸し出しを行うことはせず、企業も個人も借り入れで投資は行わなくなる。 中央銀行が異常な量的緩和を行っていなければ、つまり、国債の実質直接引き受けをせずに、通常の範囲での金融緩和を行っていれば、資金はほとんど国債に吸収されてしまい、民間に回る資金が枯渇し、民間経済主体の資金調達の金利は急騰することになる。民間投資は、大規模財政出動が行われる前から実行されていたものですら、干上がっていくことになるだろう。 そして、金融(株式や債券)市場は、暴落することになるだろう。金利が上がるし、中央銀行が金利を押さえ込んだとしても、そうなると経済も将来の市場の不透明性が増大し、リスクが高まる。ましてや、インフレになるリスク、そしてそのときに大増税、財政支出の急減による大不況のリスクがあるから、誰も投資しなくなるだろう。 つまり、リスクという現在と将来のバランスをとる機能を果たす価格、金融市場の最大の機能を殺すことにより、金融市場は大暴落、実体経済も大混乱となるだろう』、「資金はほとんど国債に吸収されてしまい、民間に回る資金が枯渇し、民間経済主体の資金調達の金利は急騰することになる。民間投資は、大規模財政出動が行われる前から実行されていたものですら、干上がっていくことになるだろう」、典型的な「クラウディングアウト」だ。「リスクという現在と将来のバランスをとる機能を果たす価格、金融市場の最大の機能を殺すことにより、金融市場は大暴落、実体経済も大混乱となるだろう」、弊害は甚大だ。
・『日本でMMTを絶対にやってはいけないワケ  MMT理論を現実の政策として実行することにより、金融市場が混乱にとどまらず、崩壊してしまう危機に追い込まれる可能性は、世界で日本が最も大きい。日本こそ、MMTを絶対に実行してはいけない国なのである。 なぜなら、これが政策としての第3の問題点であるが、インフレが起こりにくい経済においては、財政支出の歯止めが効かないからである。その結果、とことん、経済が破滅的におかしくなるまで、財政支出は拡大され続けるのである。 インフレがなぜ起きにくいのかは、また改めて詳しく議論したいが、大まかにいって理由は3つある。第1に、企業の価格設定行動の結果の合計がマクロ的な物価水準であるから、企業が値上げをできるだけしないようにする日本ではインフレが起きにくい。 企業が値上げをできるだけしない理由は、消費者が値上げに過度に敏感であり、値上げで失う売り上げがあまりに大きいため、日本では商品提供者はできるだけ値上げしないのである。だから、卸売物価は変動しても消費者物価にはあまり反映されないのである。) 第2に、これは世界的な現象でもあるが、過熱した実体経済において生み出された利益や所得は、実物財に回らず、現代ではその多くが資産市場に投資される。だから、モノの値段は上がらず、株式や不動産だけが上がるのである。そして、物価で上がっているのは不動産、つまり家賃が最も大きなものの1つなのである。 第3に、モノの供給が世界中からなされるために、一国内の経済が過熱しても、その国の物価が上がるとは限らない、という普通のこともある。 これら3つの影響で、インフレ率は、現代においては、景気、需給ギャップの指標の役割を果たさなくなっているのである。 だから、金融緩和が過大になって資産市場がバブルになることが21世紀になって頻繁になっているのである。しかし、中央銀行は物価だけでなく資産市場にも目配りをしているから(少なくとも多少は)、MMT論者よりはましなのである。 経済や社会における、過大な財政支出の悪影響、コストはインフレだけではない。労働力や設備など経済資源の無駄遣い、民間経済と公共部門とのバランスの喪失、成長力の低下などがあることは前述したとおりだ』、「日本こそ、MMTを絶対に実行してはいけない国なのである。 なぜなら・・・インフレが起こりにくい経済においては、財政支出の歯止めが効かないからである。その結果、とことん、経済が破滅的におかしくなるまで、財政支出は拡大され続けるのである」、なるほど。
・『MMTは資本市場の機能や国の長期成長力を破壊  これらは、経済における資本の配分、誰が資本をどの程度利用するのが経済にとって望ましいか、ということを行う資本市場の機能をMMTが破壊することによっておこる。価格メカニズムが資本市場において機能しなくなり、しかも、その代わりに配分を行う主体を考えないことにより、資本の利用の非効率性が計画経済よりもひどいものになってしまうのである。 そして、それは、現在において「誰に資本を配分するか」という問題を無視するだけではない。現在と未来において「どれだけ資本を使うか、資源を今投入するか、消費するか、それとも長期的な投資に回すか、さらには、すべての金融資本を今使い切るのではなく、将来に金融資本を実物資本に転換することのほうが効率的か、それをどのくらいのペースで、現在から10年後、20年後、100年後の未来に配分していくか」など、それらを一切考慮しないことにより、経済の長期成長力を徹底的に破壊する。 資本市場は、資本を今、誰に配分するかという問題と、どの時点に配分するか、という現在と将来の資源配分、資本配分という経済成長において、最も重要な機能を果たしているのである。 このようにMMTは、この2つの機能を無視して会計的な現在のバランスだけを強調することにより、市場、価格メカニズム、リスク配分、利子率という現在と未来との相対的な重要性、これらの要素をすべて無視しているのである。 これらの機能を果たすための媒介手段が貨幣、マネーである。MMTは、これらの機能を無視し、貨幣を、政府の手段、そして納税の手段とだけとらえ、経済、市場を無視しているのである。この結果、MMT理論を政策として実行すれば、経済は壊滅するのである。 理論的な4つの誤りのほうも、ここに明確になっただろう。したがって、これ以上、MMT理論を批判する必要はない。もうたくさんだ』、「MMT]が「資本を今、誰に配分するかという問題と、どの時点に配分するか、という現在と将来の資源配分、資本配分という経済成長において、最も重要な機能」を「無視して会計的な現在のバランスだけを強調することにより、市場、価格メカニズム、リスク配分、利子率という現在と未来との相対的な重要性、これらの要素をすべて無視している」、「この結果、MMT理論を政策として実行すれば、経済は壊滅する」、極めて明確な「MMT理論」「批判」である。アメリカの主導学者たちの見解が知りたいところだ。
タグ:政府財政問題 (その6)(このまま行けば日本の財政破綻は避けられない 「MMT理論」「自国通貨持つ国は安心」は大間違い、日本では絶対に危険な「MMT」をやってはいけない MMTの「4つの誤り」と「3つの害悪」とは何か) 東洋経済オンライン 小幡 績 「このまま行けば日本の財政破綻は避けられない 「MMT理論」「自国通貨持つ国は安心」は大間違い」 「『このままでは国家財政破綻』論は1%だけ間違いだ」 「小幡」氏は数少ない論争型の学者で、興味深そうだ。 「日銀」が「国債」を「これ以上買うことの困難は現実に始まっており、無限に市場経由で、日銀に引き受けさせることはできない」、「それでも、政府が国債を発行し続けたらどうなるか。民間金融機関は、これを引き受けるのを躊躇し、少なくとも一時的には中止するだろう。 このとき、政府がどうするかが問題である。政府の道は2つである。1つは、危機をようやく認識し、国債発行を減らすことを決意し、遅まきながら財政再建に取り組む、という道である。しかし、これまでの政府の財政再建の取り組みからして、この道はとらない可能性が高い。 そ 日銀国債直接引き受け報道が出れば、直ちに為替取引も債券取引も株式取引もまったく成り立たなくなり、金融市場は全面取引停止に追い込まれる 日銀の直接引き受けは、タブーを犯せば理論的には可能だ。だが現実にはタブーを犯した政府と中央銀行は国際金融市場に打ちのめされるため、結局、禁じ手はやはり禁じ手のままとなる。 「現金化できる資産をすべて売り払っても1年しか持たず、2年は無理なのである」、意外に額は少ないようだ。 「破綻危機が近づいても、金利が上昇しない(国債価格が下落しない)という市場の警告機能がマヒしていることを意味する。だから、日本政府の破綻は突然起こる」、「国民の金融資産の実質価値は激減してしまう」、「財政破綻、デフォルトした場合、過去の借金は水に流してもらって再建するのが政府破綻の場合が多い(実質ベースで半分程度返済される、つまり半分は棒引き」、恐ろしいことだ。 「海外投資家が保有していれば、破綻の負担は海外に転嫁できるが、国内保有の場合は、すべて国内で負担しなければならない」、これが「国債が国内保有だから大丈夫、という議論の最大のウソ」、なるほど。 「日本では絶対に危険な「MMT」をやってはいけない MMTの「4つの誤り」と「3つの害悪」とは何か」 「現実に採用されれば、経済を破壊する「最も害悪の大きな理論」になる」、恐ろしいことだ。 MMTの「4つの誤り」と「3つの害悪」とは? 「インフレ水準がターゲットよりも低ければ、財政支出をとことん行い、インフレがターゲットを超えたらとことん財政支出を縮小し、とことん増税する、というものとなる。 これは、誰が見ても、経済を破壊する理論であり、政策」、その通りだ。 「資金はほとんど国債に吸収されてしまい、民間に回る資金が枯渇し、民間経済主体の資金調達の金利は急騰することになる。民間投資は、大規模財政出動が行われる前から実行されていたものですら、干上がっていくことになるだろう」、典型的な「クラウディングアウト」だ。「リスクという現在と将来のバランスをとる機能を果たす価格、金融市場の最大の機能を殺すことにより、金融市場は大暴落、実体経済も大混乱となるだろう」、弊害は甚大だ。 「日本こそ、MMTを絶対に実行してはいけない国なのである。 なぜなら・・・インフレが起こりにくい経済においては、財政支出の歯止めが効かないからである。その結果、とことん、経済が破滅的におかしくなるまで、財政支出は拡大され続けるのである」、なるほど。 「MMT]が「資本を今、誰に配分するかという問題と、どの時点に配分するか、という現在と将来の資源配分、資本配分という経済成長において、最も重要な機能」を「無視して会計的な現在のバランスだけを強調することにより、市場、価格メカニズム、リスク配分、利子率という現在と未来との相対的な重要性、これらの要素をすべて無視している」、「この結果、MMT理論を政策として実行すれば、経済は壊滅する」、極めて明確な「MMT理論」「批判」である。アメリカの主導学者たちの見解が知りたいところだ。
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