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心理学(その1)(「損の影響は得の約2倍」 経済心理学のススメ 米国では常識! 消費者は常に合理的とは限らない、「他人を許せない人の脳」で起きている恐ろしい事 「30歳まで」にどんな人と出会ったかが大切) [経済政治動向]

今日は、心理学(その1)(「損の影響は得の約2倍」 経済心理学のススメ 米国では常識! 消費者は常に合理的とは限らない、「他人を許せない人の脳」で起きている恐ろしい事 「30歳まで」にどんな人と出会ったかが大切)を取上げよう。

先ずは、やや古い記事だが、2017年5月2日付け日経ビジネスオンラインが掲載した精神科医で臨床心理士の和田秀樹氏が「「損の影響は得の約2倍」、経済心理学のススメ 米国では常識! 消費者は常に合理的とは限らない」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/report/16/122600095/042800008/
・『経営や政治に心理学者を重用するアメリカ  日本と比べるとアメリカでは、経営にも政治にもはるかに心理学者が重用されている。消費者心理の分析であれ、マネジメントでどうすれば従業員のやる気が増すかであれ、あるいは経済政策の立案であれ、外交問題における相手国の国民や指導者の心理分析であれ、心理学者のアドバイザーの活躍の場は多い(トランプの時代になってからのことは分からないが)。 実際、心理学を組み入れた経済学理論である「行動経済学」の代表的な研究者であるダニエル・カーネマンは、心理学(経済学部に異動したわけでない)の教授の肩書きのまま、2002年にノーベル経済学賞を受賞している。行動経済学が明らかにした(薄々は分かっていても定式化したと言っていいだろう)ものに、人間は得より損のほうに強く反応するということがある。 例えば、10万円のものを1万円まけてもらって得をした場合と、10万円で買ったものが近くの店で9万円で売っていることが分かり、1万円損をした気分になるのとでは、多くの人は、前者の得した気分より、後者の損をした気分のほうが強く感じるだろうし、後々まで尾をひく。心理学の実験では、損のインパクトは得のインパクトの2.25倍だそうだ。 こういうことを真面目に研究した行動経済学は、おそらくは「人々が合理的に判断する」という前提で想定された旧来型の経済学より、はるかにまともな行動予測が可能になり得る。 旧来型の経済学では、1万円の昇給が経済を好転させる効果と、1万円の減給が経済を悪化させる効果は同じということになる。ところが、行動経済学の考え方では、1万円給料が下がったショックは、2.25万円給料が上がった喜びと同等の心理的インパクトがあることになる。そして恐らくは、そのほうが現実の人間の行動予測に役立つ。 経済学に心理学が大きなインパクトを与えたように、経営学やマネジメントでも相当な影響力を持つようだ。アメリカのビジネススクールに留学した人たちに聞くと、心理学の講義や演習をかなりの時間、課せられるようだ』、「行動経済学の考え方では、1万円給料が下がったショックは、2.25万円給料が上がった喜びと同等の心理的インパクトがあることになる。そして恐らくは、そのほうが現実の人間の行動予測に役立つ」、「「人々が合理的に判断する」という前提で想定された旧来型の経済学」が余りに現実離れしていたのに比べ、大きな進歩だ。
・『減税より増税、経費の拡大で不景気解消  だから、昇給はすぐに消費に結びつかないが、減給はたちどころに財布のひもを締めさせるのはそういうメカニズムが働いているのだろう。これまでの長期不況で給料が下がり続けた時代の消費マインドを、少々のベースアップで変えることは困難だということになる。安倍首相が企業に昇給を求めても、企業は利益が減らない程度にしか昇給しないのでは、消費も増えないし、物価も上がらない。というか、不景気はちょっと給料が下がっただけで簡単に生じるが、景気を良くするのは難しいということになる。 このような心理特性(特に実験などで明らかになった心理特性)を知る心理学者を利用すれば、経済学者が考えるのとは別のソリューションが考えられるだろう。 私が、この理論を読んで考えたことは、減税には経済学者が考えるより景気浮揚効果がなさそうだということだ。 要するに減税で得をした喜びは想像されるほど大きなものではないので、それが消費には結び付きにくいということだ。心理学の実験を見る限り、アメリカ人でさえ、得にあまり反応しないのだから、もっと貯蓄傾向の強い日本人は、減税が消費より貯蓄につながってしまうことは大いに予想できる。 逆に増税というのは、損を恐れる効果を活性化させることになる。例えば、消費税の増税が決まると、その前にかけこみ需要がかなり生じるのは、上がった後でものを買って損をしたくないからだろう。ただし、この場合は、消費税を上げた後の、「損だから買わない」という反動が大きく出てしまう。 例えば、直接税を上げて、経費を認めるというのはどうだろうか? この場合は、税金を持っていかれるのは損という心理が働きやすいので、もっと経費を使うようになる効果が期待できる。実際、法人税や所得税が高かったころのほうが、中小企業や自営業者たちは、税金を払いたくない心理から接待費で豪遊していたり、高級車を買ったりする人が多かった。 所得税を増税する代わりに、サラリーマンにも洋服代どころか食費も働くための経費として認めたら、消費が活性化するかもしれない。政府のホストコンピューターにつながったレジから出たレシートは全部経費として認めるなどということができれば、そんなに実用化は困難でないし、レジの機械の会社も儲かるし、さらにいうと、商店からは売り上げの捕捉がしやすくなり、税逃れも防げる』、「サラリーマン」の場合は、給与所得控除があるので、経費を認めると、二重に優遇することになってしまう。
・『減税効果が長く続かない理由は?  得より損に反応するというのは、あくまで心理学を応用した経済学の一面に過ぎない。また、常に同じような行動をとるとは限らない。 例えば、今得をしている場合は、損をしたくないというリスク回避傾向に人間の心理は傾くが、損をしている場合は、損をするリスクをとっても大きく得をしたいという心理が働く。競馬などで負けがこんでくると、損をする確率が上がるのに大穴狙いをして負けを埋め合わせようとするのは、その一例だ。 また、人間というのは、絶対値より変化に過敏に反応することもある。年収100億円のAさんと年収300万円のBさんを比べれば、Aさんが幸せと思われるだろうが、Aさんの去年の年収が101億円で、Bさんの去年の年収が280万円だったとしたら、1億円収入が減ったAさんは不幸に感じるし、20万円収入が増えたBさんは幸せに感じるということになるだろう。 景気対策として減税をするのは簡単だが、税率を戻した時の不満が大きいので、減税をなかなか終えることができない。1999年に高額所得者の所得税率を50%から37%に下げた。その際には、金持ちが反応して、確かに株価は99年初頭の1万3000円から2000年には2万円を超えるまで上昇した。ところが、同じ税率のままだったのに、2003年には株価が7607円まで下がっている。 減税の効果は長く続かないし、お金持ちがさらにお金を持ったところで予想したほど投資には回らないということを明らかにする事例だと思う。その後、最高税率はわずかに上がったが、株価は元には戻らなかった。その間に国の借金が膨れ上がったのはご存知の通りだ』、株価は実体経済の影響を強く受けるので、それを度外視した説明には無理がある。
・『問題続出でも安倍一強は続く  話を変えて、政治情勢を心理学の観点から見てみよう。森友学園事件に始まって、夫人の関与が疑われたり、昔からの親友の学校に莫大な補助金が支払われていることなど、金銭にまつわる疑惑が高まっているうえに、大臣の失言が相次いだり、政務官の道徳的なスキャンダルまで暴露されているというのに、安倍政権の支持率はびくともせず、むしろ野党第一党の民進党の支持率のほうが低迷している。 この不思議な現象も心理学では説明がつく話だ。一つには、「現状維持バイアス」というものがある。 前述のように、人間というのは得をしている局面では、損失回避のほうに走る。賃金がどんどん下がっているとか、失業率が高い局面では、損をするかもしれなくても、新しい政治を求める(アメリカの場合は、一見景気が良さそうだが、賃金が下がり、失業率が高いラストベルトとされる地域の人によるトランプの支持が優勢だった)。しかし、少しずつではあるが、失業率が下がり、賃金も上がり出す局面になると、また野党にやらせて損をするより、今のままがいいという現状維持バイアスが働く。 損や得は主観的なものだから、ドルベースでは民主党時代より賃金が下がっているとか、非正規雇用が増えているとか、国の借金が増えていることより、目に見える賃金や失業率をみて、多くの人が得をしていると思っているのだろう。 さらに、緊迫する北朝鮮の状況もみて、被害を受けて損をしたくない心理が増しているのかもしれない。多少アメリカべったりでもこわもてで、アメリカによる防衛を確かなものにしてくれる政府のほうが損は避けられるという感覚だ。 もう一つは「同調心理」である。人間というものは、友達が増えるとか出世できるといった目に見える得がなくても、身近な人に同調するという不思議な心理特性がある。 アッシュという心理学者は、長さの違う棒を見せて、別の1本と長さが同じ棒を選ぶというテストを行った。周りに誰もいないところだと誰も間違えないのだが、3人ほどのサクラに間違えた答えを言わせると、3割くらいの人がそれにつられることを明らかにした。 人間はある一定の確率で放っておいても同調するのなら、政治においても支持率が高いほうに同調する人が増えても不思議でない。そういう点で、当面は、よほどの円高などが起こらない限り安倍政権は盤石とみるのだが、どうだろうか? この手の心理学を使った経済などの見方を知ったり、判断のバイアスを減らす参考にしてもらうために『「損」を恐れるから失敗する』(PHP新書)という本を上梓した。興味がある人は読んでほしい。多少は仕事や人生に役立つと信じている』、安部政権が長持ちした要因を心理学的に解明したのは、興味深い。

次に、12月30日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した 脳科学者の中野 信子氏による「「他人を許せない人の脳」で起きている恐ろしい事 「30歳まで」にどんな人と出会ったかが大切」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/477279
・『2021年もインターネットを中心とした、炎上や誹謗中傷のニュースが数多く見られました。芸能人の不倫スキャンダルや不謹慎とされる言動など、さまざまな話題がありましたが、その中でよく聞かれるのが「許せない」という言葉です。 自分や自分の身近な人が直接不利益を受けたわけではなく、当事者と関係があるわけでもないのに、強い怒りや憎しみの感情が湧き、知りもしない相手に非常に攻撃的な言葉を浴びせ、完膚なきまでにたたきのめさずにはいられなくなってしまうというのは、「許せない」が暴走してしまっている状態です。 「許せない」の暴走である正義中毒や人を許せなくなる脳の仕組みについて、脳科学者の中野信子氏が監修を務めた『まんがでわかる正義中毒 人は、なぜ他人を許せないのか?』より一部抜粋、再構成してお届けします』、「正義中毒」はSNSなどで確かに増えている。
・『「我こそは正義」と確信した途端、人は「正義中毒」になる  人の脳は、裏切り者や社会のルールから外れた人といった、わかりやすい攻撃対象を見つけ、罰することに快感を覚えるようにできています。他人に「正義の制裁」を加えると、脳の快楽中枢が刺激され、快楽物質である「ドーパミン」が放出されます。この快楽にはまってしまうと簡単には抜け出せなくなってしまい、罰する対象をつねに探し求め、決して人を許せないようになるのです。 こうした状態を、私は正義に溺れてしまった中毒状態、いわば「正義中毒」と呼ぼうと思います。この構造は、いわゆる「依存症」とほとんど同じだからです。有名人の不倫スキャンダルが報じられるたびに、「そんなことをするなんて許せない」とたたきまくり、不適切な動画が投稿されると、対象者が一般人であっても、本人やその家族の個人情報までインターネット上にさらしてしまう。企業の広告が気に入らないと、その商品とは関係のないところまで粗探しをして、あげつらう』、「人の脳は、裏切り者や社会のルールから外れた人といった、わかりやすい攻撃対象を見つけ、罰することに快感を覚えるようにできています。他人に「正義の制裁」を加えると・・・快楽物質である「ドーパミン」が放出されます。この快楽にはまってしまうと簡単には抜け出せなくなってしまい、罰する対象をつねに探し求め、決して人を許せないようになるのです」、「こうした状態を、いわば「正義中毒」と呼ぼうと思います」、「「ドーパミン」が放出」、とは本物だ……
・『「間違ったことが許せない」  「間違っている人を、徹底的に罰しなければならない」 「私は正しく相手が間違っているのだから、どんなひどい言葉をぶつけても構わない」 このような思考パターンがひとたび生じると止められなくなる状態は、恐ろしいものです。本来備わっているはずの冷静さ、自制心、思いやり、共感性などは消し飛んでしまい、普段のその人からは考えられないような、攻撃的な人格に変化してしまうからです。特に対象者が、たとえば不倫スキャンダルのような「わかりやすい失態」をさらしている場合、そして、いくら攻撃しても自分の立場が脅かされる心配がない状況などが重なれば、正義を振りかざす格好の機会となります。) こうした炎上騒ぎを醒めた目で見ている方も多いと思います。しかし、正義中毒が脳に備わっている仕組みである以上、誰しもが陥ってしまう可能性があるのです。もちろん、私自身も同様に気をつける必要があると思っています。 また、自分自身はそうならなくても、正義中毒者たちのターゲットになってしまうこともありえます。何気なくSNSに載せた写真が見ず知らずの他人からケチを付けられ、「不謹慎だ」「間違っている」などとたたかれてしまうようなケースは、典型例だといえます。 正義中毒の状態になると、自分と異なるものをすべて「悪」と考えてしまうのです。自分とは違う考えを持つ人、理解できない言動をする人に「バカなやつ」というレッテルを貼り、どう攻撃するか、相手に最大級のダメージを与えるためには、どんな言葉をぶつければよいかばかりに腐心するようになってしまいます』、「正義中毒が脳に備わっている仕組みである以上、誰しもが陥ってしまう可能性があるのです」、「正義中毒の状態になると、自分と異なるものをすべて「悪」と考えてしまうのです。自分とは違う考えを持つ人、理解できない言動をする人に「バカなやつ」というレッテルを貼り、どう攻撃するか、相手に最大級のダメージを与えるためには、どんな言葉をぶつければよいかばかりに腐心するようになってしまいます」、恐ろしいことだ。
・『「正義中毒」を乗り越えるカギはメタ認知  「メタ認知」とは、自分自身を客観的に認知する能力のことで、脳の前頭前野の重要な機能です。もう少し詳しく説明すると、「自分が○○をしているとわかっている」「自分がこういう気持ちでいることを自覚している」ということです。「私は今こういう状態だが、本当にこれでいいのか?」と問いかけることができるのは前頭前野が働いているからであり、メタ認知が機能しているからなのです。 正義中毒に陥らないようにするためには、つねに自分を客観的に見る習慣をつけ、メタ認知を働かせることが大切です。メタ認知能力の高低には、もちろん遺伝的な要素もありますが、実はそれよりも大きく影響するのが環境要因です。この能力は、個人差はありますが、小学校低学年あたりから徐々に育ち始め、完成するまでには30歳ぐらいまでかかります。これは、脳の前頭前野の発達そのものであり、完成する30歳くらいまでの間はずっと、周囲からの影響を受け続けます。 人生において、若い頃、特に20代ぐらいの時期に付き合いのあった人、尊敬していた人の影響が大きいのはこうした背景があるからで、メタ認知のできている人と若いうちに出会うことには大きなメリットがあります。子どものメタ認知能力を育てるためには、幼少期から30歳くらいまでの時期にどんな人と出会い、どのような影響を受けてきたのかが、非常に大切になるわけです。) 人間は、自分が言い続けてきたこと、やり続けてきたこと、信じ続けてきたことをなかなか変えられません。そして、それまで見せてきた自分と矛盾しないように振る舞わなければいけないという根拠のない思い込みに、無意識に縛られています。この現象を、心理学では「一貫性の原理」と呼んでいます。 しかし、そもそも自分自身、そして他者にも一貫性を求めること自体、不可能なことなのです。人間である以上、言動に矛盾があるのは当たり前、過去の発言や振る舞いを覆してしまってもしょうがないのです。今は絶対的な真実と信じていることだって、いつかその間違いに気づく日が来るかもしれません。そのように「信じていたこと」を裏切られたと感じることこそ、摩擦やいざこざの原因にもなったりするわけですが、それを回避するいちばんいい方法は、他人に「一貫性」を求めること自体をやめることではないかと思います』、「正義中毒に陥らないようにするためには、つねに自分を客観的に見る習慣をつけ、メタ認知を働かせることが大切です」、「自分自身、そして他者にも一貫性を求めること自体、不可能なことなのです。人間である以上、言動に矛盾があるのは当たり前、過去の発言や振る舞いを覆してしまってもしょうがないのです」、その通りだ。
・『対立ではなく並列で考える  正義中毒から解放される最終的な方法は、あらゆる対立軸から抜け出し、何事も並列で処理することではないかと思います。 A国とB国、宗教Aと宗教B、男性と女性でもいいのですが、異なる人間同士が集まれば、対立軸はいくらでも発生します。そして、誰しもが、そのなかでいくつものグループに所属することが可能です。それぞれに視点や知見があり、議論が生じます。それ自体は健全なことです。 しかしここで正義中毒にかかってしまうと、どちらかが参ったと音を上げるまで死力を尽くして相手を攻撃し続けることになります。 「あいつはバカだ」「あいつはおかしい」と感じるその「あいつ」のなかにも、人格や感情、思考が必ず存在します。自分とは違うその何かを、すぐに拒絶してしまうのではなく、まずはいったん受け止める、包み込んでみる。相手の発信した内容を評価し否定する前に、まず、なぜ相手はそう発信したのか、そこから新しい知見が得られないかを考えてみる。 そうすることで、新しい、ポジティブな何かが得られるかもしれません。一度その感覚を体験できれば、自分こそが正義だとは考えにくくなるでしょう。私は、これこそが知性の光のように思えます。 人間は不完全なものであり、結局永遠に完成しないという意識が人間を正義中毒から解放するのではないでしょうか』、「自分とは違うその何かを、すぐに拒絶してしまうのではなく、まずはいったん受け止める、包み込んでみる。相手の発信した内容を評価し否定する前に、まず、なぜ相手はそう発信したのか、そこから新しい知見が得られないかを考えてみる。 そうすることで、新しい、ポジティブな何かが得られるかもしれません」、私はすぐに拒絶するクセがあるので、その克服の努力が必要なようだ 。包容力はこうして生まれるのかも知れない。
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