生命科学(その2)(15億年前 私たちの細胞に起こった「運命のいたずら」…その驚くべき事実、生まれつき決まっている脳細胞の数が「難易度の高い運動」で増える?) [科学]
生命科学については、一昨年4月15日に取上げた。今日は、(その2)(15億年前 私たちの細胞に起こった「運命のいたずら」…その驚くべき事実、生まれつき決まっている脳細胞の数が「難易度の高い運動」で増える?)である。
先ずは、昨年4月7日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した生物学者のポール・ナース氏と理学博士でサイエンス作家の 竹内薫氏による「15億年前、私たちの細胞に起こった「運命のいたずら」…その驚くべき事実」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/267653
・『ノーベル生理学・医学賞を受賞した生物学者ポール・ナースの初の著書『WHAT IS LIFE?(ホワット・イズ・ライフ?)生命とは何か』が世界各国で話題沸騰となっており、いよいよ3月9日に日本でも発刊された。 ポール・ナースが、生物学について真剣に考え始めたきっかけは一羽の蝶だった。12歳か13歳のある春の日、ひらひらと庭の垣根を飛び越えた黄色い蝶の、複雑で、完璧に作られた姿を見て、著者は思った。生きているっていったいどういうことだろう? 生命って、なんなのだろう? 著者は旺盛な好奇心から生物の世界にのめり込み、生物学分野の最前線に立った。本書ではその経験をもとに、生物学の5つの重要な考え方をとりあげながら、生命の仕組みについての、はっきりとした見通しを、語りかけるようなやさしい文章で提示する。 養老孟司氏「生命とは何か。この疑問はだれでも一度は感じたことがあろう。本書は現代生物学の知見を十分に踏まえたうえで、その疑問に答えようとする。現代生物学の入門書、教科書としても使えると思う。」、池谷裕二氏「著名なノーベル賞学者が初めて著した本。それだけで瞠目すべきだが、初心者から専門家まで読者の間口が広く、期待をはるかに超える充実度だ。誠実にして大胆な生物学譚は、この歴史の中核を担った当事者にしか書けまい。」、更科功氏「近代科学四百年の集大成、時代の向こう側まで色褪せない新しい生命論だ。」、さらには、ブライアン・コックス(素粒子物理学者 マンチェスター大学教授)、シッダールタ・ムカジー(ピュリッツァー賞受賞の医学者 がん研究者 コロンビア大学准教授)、アリス・ロバーツ(人類学者 バーミンガム大学教授)など、世界の第一人者から絶賛されている。発売たちまち5万部を突破した本書の発刊を記念して、内容の一部を特別に公開する』、「12歳か13歳」の頃に抱いた疑問を解き明かすとは大したものだ。
・『30兆個の細胞 他の生き物に完全に依存しているため、ウイルスが本当に生きているとは言えないと、結論づける生物学者もいる。だが、よくよく考えてみれば、われわれも含め、生命のほぼすべての形態が、他の生物に依存しているではないか。 あなたの慣れ親しんだ身体も、人と人以外の細胞が混ざりあってできた、一つの生態系だ。われわれのおよそ三〇兆個の細胞など、この生態系に占める数量からすれば微々たるものだ。われわれに依存したり、われわれの内側で生きている、多様な細菌、古細菌、真菌、単細胞真核生物などの共同構成員の数は天井知らずなのだから。 人によっては、いろいろな回虫や、皮膚の上に生息して毛包に卵を生む八本脚のダニなど、わりと大きな動物まで抱えている。こうした人間でない親密な仲間たちは、われわれの細胞と身体に大きく依存しているが、われわれの方も彼らに依存していることがある。 たとえば、ことも、忘れてはならない。私が研究している酵母のような、微生物の多くは、他の生き物が作った分子に完全に依存している。たとえば、炭素と窒素を含む巨大分子を作るために必要なグルコースやアンモニアなどだ。 植物は、はるかに自立しているように見える。空気から二酸化炭素を、土からは水を吸い込み、太陽のエネルギーを利用して、炭素ポリマーなど、自分に必要な複雑な分子の多くを合成する。それでも、植物は、根やその周辺に存在している、大気中から窒素を捉える細菌に依存しているのだ。 こうした細菌抜きでは、生命を支える巨大分子を作ることはできない。事実、それは、われわれが知る限り、真核生物が単独でできることではない』、「腸内細菌は、細胞が自分では作れない、特定のアミノ酸やビタミンを生成してくれる。 さらに、われわれが食べる一口ごとの食べ物は、他の生き物によって作り出されている」、など「他の生き物」に依存しているようだ。
・『最も独立した生命体 つまり、完全にゼロから、自らの細胞の化学的構造を作り出すことができる動物や植物や菌類は、一つもいないのである。おそらく、本当の意味で最も独立した生命体、つまり完全に独立して「自由気ままな生活をしている」と断言できるのは、一見するともっと原始的な感じのものだろう。 たとえば、藍藻(シアノバクテリア)。シアノバクテリアは、光合成をして窒素を捕らえる。海底深くにある活火山の熱水噴出孔から、すべてのエネルギーと化学原料を得ている古細菌も同類だ。驚くべきことに、こうした比較的単純な生き物は、われわれよりも長期にわたって生き延びてきただけでなく、われわれより自立している。 異なる生命体同士の相互依存は、われわれの細胞の根本的な組成にも反映されている。われわれの身体が必要とするエネルギーを作り出すミトコンドリアは、かつてはまったく別個の細菌で、ATP(アデノシン三リン酸)を作る能力を持っていた。 一五億年ほど前に起きた運命のいたずらで、このような細菌のいくつかが、別の種類の細胞の内側に仮住まいを始めた。時がたつにつれ、主である細胞は、「お客さん」の細菌が作ってくれるATPなしでは生きてゆけなくなり、ミトコンドリアは定住することになった。 ウィン・ウィンの関係だったと思われるが、これにより、真核生物の全種族の幕開けとなった。エネルギー供給が安定し、真核生物の細胞は、より大きく、複雑になることができた。このことが、次に、今日の動物や植物や菌類の豊富な多様性へとつながる進化を引き起こした。 (本原稿は、ポール・ナース著『WHAT IS LIFE?(ホワット・イズ・ライフ?)生命とは何か』〈竹内薫訳〉からの抜粋です) ☆好評連載、関連記事 地球上の生命の始まりは「たった1回」だけという驚くべき結論 20億年前、ほとんどの生物が絶滅…「酸素の大惨事」の真相) (ポール・ナース氏の略歴はリンク先参照) (訳者:竹内 薫氏の略歴はリンク先参照)』、「一五億年ほど前に起きた運命のいたずらで、このような細菌のいくつかが、別の種類の細胞の内側に仮住まいを始めた。時がたつにつれ、主である細胞は、「お客さん」の細菌が作ってくれるATPなしでは生きてゆけなくなり、ミトコンドリアは定住することになった」、「主客転倒」も起きるようだ。
・『これだけ心を打たれた本は、初めてだ――訳者より ポール・ナースは生物学の世界における巨人である。二〇〇一年にノーベル生理学・医学賞も受賞している。 本書を翻訳していて感じたことを書きたいと思う。 驚いたのは、この本がポール・ナースにとって初めての「本」の出版だということ。これだけ科学的な実績があり、二〇〇一年にノーベル賞を受賞しているのだから、何冊も本を書いていても不思議ではないが、ロックフェラー大学学長、王立協会(ロイヤル・ソサエティ)会長といった要職で忙しく、一般向けの本を書く暇がなかったのかもしれない。 これは私の推論にすぎないが、ポール・ナースは、次の世代のため、人類が悲惨な状態に陥らないために、生涯で一冊の一般向け科学書を書いたのではないか。この本はまさに、細胞周期の司会進行役を務めるタンパク質キナーゼと同様、新たな世代への橋渡しの役割を担っている。 私は数々の科学書を翻訳してきたが、これだけ心を打たれた本は、初めてだ。それほど、ポール・ナースという科学者の家族、友人、先輩、同僚、部下、人類、そして生き物への愛情を感じた』、「ノーベル賞を受賞」にも拘らず、「この本がポール・ナースにとって初めての「本」の出版」、「要職で忙しく、一般向けの本を書く暇がなかったのかもしれない」、「この本は・・・新たな世代への橋渡しの役割を担っている」、なるほど。
次に、12月28日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したフリーライターの鈴木 舞氏による「生まれつき決まっている脳細胞の数が「難易度の高い運動」で増える?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/291971
・『企業による新規事業創出や個人によるクラウドファンディングなど、新たなチャレンジングが近年、活発だ。不安が少なく安定した「コンフォートゾーン」から抜け出し、新しいステージに飛び出すのは勇気がいることだろうが、やり慣れた仕事、居心地のいい環境では得ることのできない“成果”を掴み取ることも可能だ。コンフォートゾーンから抜け出すと新たな成長段階へと進むことができるのは、ビジネスだけではなくスポーツでも同様らしい。書籍『Life Kinetik(R) 脳が活性化する世界最先端の方法』(ホルスト・ルッツ著/ダイヤモンド社)を参考に、チャレンジに伴う脳の活性化について紐解く』、「チャレンジに伴う脳の活性化」とは興味深そうだ。
・『コンフォートゾーンから脱け出し自分を成長させるには 「スポーツなどの身体活動でより難しい課題に挑戦するほど、脳細胞の数が増えたり、増えた数を維持できる可能性が高くなったりすると報告している」(『Life Kinetik(R) 脳が活性化する世界最先端の方法』より) これはあくまでマウスの実験による報告結果だが、人間の脳でもこうした変化が起きることが期待されている。脳細胞の数が増えるメリットは、身体が知覚した情報の処理能力が向上することだ。記憶力や思考力、判断力が高まるため、新しい物事に関する学習・吸収がはかどることが推測される。 従来は、脳細胞の数は生まれたときに決定され、以降は増えることがないと考えられていた。しかし研究が進むにつれ、後天的に脳細胞が増えることも解明されてきている。その条件のひとつが、難しい課題へのチャレンジではないかと研究では考えられているというわけだ。 難しい課題とは、ランニングのフルマラソンサブ3達成であったり、ゴルフのスコア100切りであったりするだろう。もちろん、個人の能力によって課題の難易度は様々だ。長年続けてきたスポーツであれば、安定したルーティンが確立されていることも多いはず。そういった慣れ親しんだコンフォートゾーンの外に目を向け、ワンステップ上の目標を設定してみると、脳が活性化する可能性がある』、「慣れ親しんだコンフォートゾーンの外に目を向け、ワンステップ上の目標を設定してみると、脳が活性化する可能性がある」、「脳が活性化する可能性がある」とは嬉しいことだ。
・『短期記憶を司るワーキングメモリのメリット ワンステップ上の目標を掲げたら、次は実際に学習やトレーニングに取りかかる段階だ。このとき、「ワーキングメモリ」と呼ばれる能力が効率よく成果を上げるためのキーワードとなる。ワーキングメモリは「作業記憶」とも呼ばれ、作業や一連の動作を遂行する上で必要な情報を一時的に記憶し、処理する能力だ。 脳の記憶は大きく分けて長期記憶と短期記憶があるが、ワーキングメモリは短期記憶に分類される。迅速な対応、必要な情報と不要な情報の取捨選択、的確な判断は、ワーキングメモリの働きによるものだ。 「脳科学の分野では、人間はワーキングメモリを使って5〜9個の情報を同時に処理することができると考えられています。そうすると、9個の情報を同時に処理できる人は、5個の情報しか処理できない人と比べて80%も高い成果を上げられるということになります」(『Life Kinetik(R) 脳が活性化する世界最先端の方法』より) ワーキングメモリが高い人は、テンポよくスピード感をもって物事を進めることが可能だ。新しいこと、不慣れなことへのチャレンジには、挫折というリスクが伴う。しかしワーキングメモリが発揮されることで、学習やトレーニングをスムーズに進められ、挫折を回避できる可能性が高くなるだろう。) そんなワーキングメモリを鍛える方法のひとつが、有酸素運動だ。ウォーキングやジョギング、サイクリングなどの有酸素運動は、ワーキングメモリの強化に適していると考えられている』、「有酸素運動は、ワーキングメモリの強化に適している」、聖徳太子もきっと「ワーキングメモリ」の使い方が上手かったのだろう。
・『着実に成長を辿るには長期記憶も欠かせない ワーキングメモリは、効率的に成果を得るために必要な能力のひとつだ。ただし、人間にとっては長期記憶も重要である。新しい目標にチャレンジするとき、それまで積み重ねてきたトレーニングや習慣が無駄になるわけではない。むしろ長期記憶の蓄積があるからこそ、チャレンジが成功することも多い。 脳内のネットワークをスムーズに構築するには、長期記憶を司る海馬の働きが欠かせない。一度習得した運動でも時間が経つと忘れてしまい、再現するのは簡単ではないからだ。習得した運動を正しく再現するには、海馬の働きが鍵となる。 「海馬は、情報の内容を保存し、その記憶を固定化するために重要な役割を果たしています。海馬がどの情報を長期記憶に送るか、どの情報が不要なのかを決めているのです」(『Life Kinetik(R) 脳が活性化する世界最先端の方法』より) たとえば、ランニング中に疲れやすくなった場合、無自覚のうちにフォームが崩れていることが多い。久しぶりのゴルフで思うように飛距離が伸びないのも、間違ったグリップやスイングが原因のことがある。つまり、脳が正しい方法を再現できなくなくなり、運動機能にも影響を及ぼしているのだ。ワンステップ上の課題にチャレンジしたくても、基本の部分が崩れてしまっては、成長は見込めない。これに深く関わるのが海馬である。 さらに同書によると、「海馬の真の特技は、適切な刺激を受けると新しい細胞をつくることです」とある。海馬は脳の活性化を支える器官とも考えられている、重要な器官なのだ』、「海馬」がそんなに重要な役割を果たしていたとは初めて知った。
・『「脱・コンフォートゾーン」で脳が変化に対して柔軟になる 新しいことや環境にチャレンジするとき、メンタルの負担が増えがちだ。成果を得られるか不安を感じたり、慣れない環境に拒否反応を起こしたりすることは少なくない。一方で、人間の脳はさまざまな刺激に対応する柔軟性を持っている。 「認知に関連する脳領域には、記憶をつかさどる領域があります。その中でもとくに、短期記憶の一部であるワーキングメモリに関連する領域と長期記憶をつかさどる領域は、神経可塑性を発揮します」(『Life Kinetik(R) 脳が活性化する世界最先端の方法』より) 神経可塑性とは、脳の神経が身体の動作や外的刺激に反応し、その入力の強さに応じて常に変化する性質のこと。神経可塑性のお陰で、脳は膨大な量の情報を正確に処理・伝達し、脳内の他の領域とネットワークを構築していく。 この神経可塑性については、国内外の様々な研究によって、繰り返し行われる学習やトレーニングが神経のシナプス結合に影響を与え、成果に導くことを報告されている。 コンフォートゾーンを抜け出すと、未知の情報や状況が多く待ち構えているだろう。直面する課題は困難なものかもしれないが、チャレンジを続けるのが重要だ。ワーキングメモリや海馬が機能しながら、脳は変化に柔軟に対応し、成長へと導かれる。 こうした脳の働きは、人間はチャレンジすることで何歳になっても成長できることを物語っているようだ。この成長を得るためにも、ワンステップ上の課題を設定し、努力を続けてみてはいかがだろう』、「人間はチャレンジすることで何歳になっても成長できることを物語っている」、「この成長を得るためにも、ワンステップ上の課題を設定し、努力を続けてみてはいかがだろう」、もう歳だからを禁句にして、いつまでも「ワンステップ上の課題を設定し、努力を続け」ることが必要なようだ。
先ずは、昨年4月7日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した生物学者のポール・ナース氏と理学博士でサイエンス作家の 竹内薫氏による「15億年前、私たちの細胞に起こった「運命のいたずら」…その驚くべき事実」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/267653
・『ノーベル生理学・医学賞を受賞した生物学者ポール・ナースの初の著書『WHAT IS LIFE?(ホワット・イズ・ライフ?)生命とは何か』が世界各国で話題沸騰となっており、いよいよ3月9日に日本でも発刊された。 ポール・ナースが、生物学について真剣に考え始めたきっかけは一羽の蝶だった。12歳か13歳のある春の日、ひらひらと庭の垣根を飛び越えた黄色い蝶の、複雑で、完璧に作られた姿を見て、著者は思った。生きているっていったいどういうことだろう? 生命って、なんなのだろう? 著者は旺盛な好奇心から生物の世界にのめり込み、生物学分野の最前線に立った。本書ではその経験をもとに、生物学の5つの重要な考え方をとりあげながら、生命の仕組みについての、はっきりとした見通しを、語りかけるようなやさしい文章で提示する。 養老孟司氏「生命とは何か。この疑問はだれでも一度は感じたことがあろう。本書は現代生物学の知見を十分に踏まえたうえで、その疑問に答えようとする。現代生物学の入門書、教科書としても使えると思う。」、池谷裕二氏「著名なノーベル賞学者が初めて著した本。それだけで瞠目すべきだが、初心者から専門家まで読者の間口が広く、期待をはるかに超える充実度だ。誠実にして大胆な生物学譚は、この歴史の中核を担った当事者にしか書けまい。」、更科功氏「近代科学四百年の集大成、時代の向こう側まで色褪せない新しい生命論だ。」、さらには、ブライアン・コックス(素粒子物理学者 マンチェスター大学教授)、シッダールタ・ムカジー(ピュリッツァー賞受賞の医学者 がん研究者 コロンビア大学准教授)、アリス・ロバーツ(人類学者 バーミンガム大学教授)など、世界の第一人者から絶賛されている。発売たちまち5万部を突破した本書の発刊を記念して、内容の一部を特別に公開する』、「12歳か13歳」の頃に抱いた疑問を解き明かすとは大したものだ。
・『30兆個の細胞 他の生き物に完全に依存しているため、ウイルスが本当に生きているとは言えないと、結論づける生物学者もいる。だが、よくよく考えてみれば、われわれも含め、生命のほぼすべての形態が、他の生物に依存しているではないか。 あなたの慣れ親しんだ身体も、人と人以外の細胞が混ざりあってできた、一つの生態系だ。われわれのおよそ三〇兆個の細胞など、この生態系に占める数量からすれば微々たるものだ。われわれに依存したり、われわれの内側で生きている、多様な細菌、古細菌、真菌、単細胞真核生物などの共同構成員の数は天井知らずなのだから。 人によっては、いろいろな回虫や、皮膚の上に生息して毛包に卵を生む八本脚のダニなど、わりと大きな動物まで抱えている。こうした人間でない親密な仲間たちは、われわれの細胞と身体に大きく依存しているが、われわれの方も彼らに依存していることがある。 たとえば、ことも、忘れてはならない。私が研究している酵母のような、微生物の多くは、他の生き物が作った分子に完全に依存している。たとえば、炭素と窒素を含む巨大分子を作るために必要なグルコースやアンモニアなどだ。 植物は、はるかに自立しているように見える。空気から二酸化炭素を、土からは水を吸い込み、太陽のエネルギーを利用して、炭素ポリマーなど、自分に必要な複雑な分子の多くを合成する。それでも、植物は、根やその周辺に存在している、大気中から窒素を捉える細菌に依存しているのだ。 こうした細菌抜きでは、生命を支える巨大分子を作ることはできない。事実、それは、われわれが知る限り、真核生物が単独でできることではない』、「腸内細菌は、細胞が自分では作れない、特定のアミノ酸やビタミンを生成してくれる。 さらに、われわれが食べる一口ごとの食べ物は、他の生き物によって作り出されている」、など「他の生き物」に依存しているようだ。
・『最も独立した生命体 つまり、完全にゼロから、自らの細胞の化学的構造を作り出すことができる動物や植物や菌類は、一つもいないのである。おそらく、本当の意味で最も独立した生命体、つまり完全に独立して「自由気ままな生活をしている」と断言できるのは、一見するともっと原始的な感じのものだろう。 たとえば、藍藻(シアノバクテリア)。シアノバクテリアは、光合成をして窒素を捕らえる。海底深くにある活火山の熱水噴出孔から、すべてのエネルギーと化学原料を得ている古細菌も同類だ。驚くべきことに、こうした比較的単純な生き物は、われわれよりも長期にわたって生き延びてきただけでなく、われわれより自立している。 異なる生命体同士の相互依存は、われわれの細胞の根本的な組成にも反映されている。われわれの身体が必要とするエネルギーを作り出すミトコンドリアは、かつてはまったく別個の細菌で、ATP(アデノシン三リン酸)を作る能力を持っていた。 一五億年ほど前に起きた運命のいたずらで、このような細菌のいくつかが、別の種類の細胞の内側に仮住まいを始めた。時がたつにつれ、主である細胞は、「お客さん」の細菌が作ってくれるATPなしでは生きてゆけなくなり、ミトコンドリアは定住することになった。 ウィン・ウィンの関係だったと思われるが、これにより、真核生物の全種族の幕開けとなった。エネルギー供給が安定し、真核生物の細胞は、より大きく、複雑になることができた。このことが、次に、今日の動物や植物や菌類の豊富な多様性へとつながる進化を引き起こした。 (本原稿は、ポール・ナース著『WHAT IS LIFE?(ホワット・イズ・ライフ?)生命とは何か』〈竹内薫訳〉からの抜粋です) ☆好評連載、関連記事 地球上の生命の始まりは「たった1回」だけという驚くべき結論 20億年前、ほとんどの生物が絶滅…「酸素の大惨事」の真相) (ポール・ナース氏の略歴はリンク先参照) (訳者:竹内 薫氏の略歴はリンク先参照)』、「一五億年ほど前に起きた運命のいたずらで、このような細菌のいくつかが、別の種類の細胞の内側に仮住まいを始めた。時がたつにつれ、主である細胞は、「お客さん」の細菌が作ってくれるATPなしでは生きてゆけなくなり、ミトコンドリアは定住することになった」、「主客転倒」も起きるようだ。
・『これだけ心を打たれた本は、初めてだ――訳者より ポール・ナースは生物学の世界における巨人である。二〇〇一年にノーベル生理学・医学賞も受賞している。 本書を翻訳していて感じたことを書きたいと思う。 驚いたのは、この本がポール・ナースにとって初めての「本」の出版だということ。これだけ科学的な実績があり、二〇〇一年にノーベル賞を受賞しているのだから、何冊も本を書いていても不思議ではないが、ロックフェラー大学学長、王立協会(ロイヤル・ソサエティ)会長といった要職で忙しく、一般向けの本を書く暇がなかったのかもしれない。 これは私の推論にすぎないが、ポール・ナースは、次の世代のため、人類が悲惨な状態に陥らないために、生涯で一冊の一般向け科学書を書いたのではないか。この本はまさに、細胞周期の司会進行役を務めるタンパク質キナーゼと同様、新たな世代への橋渡しの役割を担っている。 私は数々の科学書を翻訳してきたが、これだけ心を打たれた本は、初めてだ。それほど、ポール・ナースという科学者の家族、友人、先輩、同僚、部下、人類、そして生き物への愛情を感じた』、「ノーベル賞を受賞」にも拘らず、「この本がポール・ナースにとって初めての「本」の出版」、「要職で忙しく、一般向けの本を書く暇がなかったのかもしれない」、「この本は・・・新たな世代への橋渡しの役割を担っている」、なるほど。
次に、12月28日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したフリーライターの鈴木 舞氏による「生まれつき決まっている脳細胞の数が「難易度の高い運動」で増える?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/291971
・『企業による新規事業創出や個人によるクラウドファンディングなど、新たなチャレンジングが近年、活発だ。不安が少なく安定した「コンフォートゾーン」から抜け出し、新しいステージに飛び出すのは勇気がいることだろうが、やり慣れた仕事、居心地のいい環境では得ることのできない“成果”を掴み取ることも可能だ。コンフォートゾーンから抜け出すと新たな成長段階へと進むことができるのは、ビジネスだけではなくスポーツでも同様らしい。書籍『Life Kinetik(R) 脳が活性化する世界最先端の方法』(ホルスト・ルッツ著/ダイヤモンド社)を参考に、チャレンジに伴う脳の活性化について紐解く』、「チャレンジに伴う脳の活性化」とは興味深そうだ。
・『コンフォートゾーンから脱け出し自分を成長させるには 「スポーツなどの身体活動でより難しい課題に挑戦するほど、脳細胞の数が増えたり、増えた数を維持できる可能性が高くなったりすると報告している」(『Life Kinetik(R) 脳が活性化する世界最先端の方法』より) これはあくまでマウスの実験による報告結果だが、人間の脳でもこうした変化が起きることが期待されている。脳細胞の数が増えるメリットは、身体が知覚した情報の処理能力が向上することだ。記憶力や思考力、判断力が高まるため、新しい物事に関する学習・吸収がはかどることが推測される。 従来は、脳細胞の数は生まれたときに決定され、以降は増えることがないと考えられていた。しかし研究が進むにつれ、後天的に脳細胞が増えることも解明されてきている。その条件のひとつが、難しい課題へのチャレンジではないかと研究では考えられているというわけだ。 難しい課題とは、ランニングのフルマラソンサブ3達成であったり、ゴルフのスコア100切りであったりするだろう。もちろん、個人の能力によって課題の難易度は様々だ。長年続けてきたスポーツであれば、安定したルーティンが確立されていることも多いはず。そういった慣れ親しんだコンフォートゾーンの外に目を向け、ワンステップ上の目標を設定してみると、脳が活性化する可能性がある』、「慣れ親しんだコンフォートゾーンの外に目を向け、ワンステップ上の目標を設定してみると、脳が活性化する可能性がある」、「脳が活性化する可能性がある」とは嬉しいことだ。
・『短期記憶を司るワーキングメモリのメリット ワンステップ上の目標を掲げたら、次は実際に学習やトレーニングに取りかかる段階だ。このとき、「ワーキングメモリ」と呼ばれる能力が効率よく成果を上げるためのキーワードとなる。ワーキングメモリは「作業記憶」とも呼ばれ、作業や一連の動作を遂行する上で必要な情報を一時的に記憶し、処理する能力だ。 脳の記憶は大きく分けて長期記憶と短期記憶があるが、ワーキングメモリは短期記憶に分類される。迅速な対応、必要な情報と不要な情報の取捨選択、的確な判断は、ワーキングメモリの働きによるものだ。 「脳科学の分野では、人間はワーキングメモリを使って5〜9個の情報を同時に処理することができると考えられています。そうすると、9個の情報を同時に処理できる人は、5個の情報しか処理できない人と比べて80%も高い成果を上げられるということになります」(『Life Kinetik(R) 脳が活性化する世界最先端の方法』より) ワーキングメモリが高い人は、テンポよくスピード感をもって物事を進めることが可能だ。新しいこと、不慣れなことへのチャレンジには、挫折というリスクが伴う。しかしワーキングメモリが発揮されることで、学習やトレーニングをスムーズに進められ、挫折を回避できる可能性が高くなるだろう。) そんなワーキングメモリを鍛える方法のひとつが、有酸素運動だ。ウォーキングやジョギング、サイクリングなどの有酸素運動は、ワーキングメモリの強化に適していると考えられている』、「有酸素運動は、ワーキングメモリの強化に適している」、聖徳太子もきっと「ワーキングメモリ」の使い方が上手かったのだろう。
・『着実に成長を辿るには長期記憶も欠かせない ワーキングメモリは、効率的に成果を得るために必要な能力のひとつだ。ただし、人間にとっては長期記憶も重要である。新しい目標にチャレンジするとき、それまで積み重ねてきたトレーニングや習慣が無駄になるわけではない。むしろ長期記憶の蓄積があるからこそ、チャレンジが成功することも多い。 脳内のネットワークをスムーズに構築するには、長期記憶を司る海馬の働きが欠かせない。一度習得した運動でも時間が経つと忘れてしまい、再現するのは簡単ではないからだ。習得した運動を正しく再現するには、海馬の働きが鍵となる。 「海馬は、情報の内容を保存し、その記憶を固定化するために重要な役割を果たしています。海馬がどの情報を長期記憶に送るか、どの情報が不要なのかを決めているのです」(『Life Kinetik(R) 脳が活性化する世界最先端の方法』より) たとえば、ランニング中に疲れやすくなった場合、無自覚のうちにフォームが崩れていることが多い。久しぶりのゴルフで思うように飛距離が伸びないのも、間違ったグリップやスイングが原因のことがある。つまり、脳が正しい方法を再現できなくなくなり、運動機能にも影響を及ぼしているのだ。ワンステップ上の課題にチャレンジしたくても、基本の部分が崩れてしまっては、成長は見込めない。これに深く関わるのが海馬である。 さらに同書によると、「海馬の真の特技は、適切な刺激を受けると新しい細胞をつくることです」とある。海馬は脳の活性化を支える器官とも考えられている、重要な器官なのだ』、「海馬」がそんなに重要な役割を果たしていたとは初めて知った。
・『「脱・コンフォートゾーン」で脳が変化に対して柔軟になる 新しいことや環境にチャレンジするとき、メンタルの負担が増えがちだ。成果を得られるか不安を感じたり、慣れない環境に拒否反応を起こしたりすることは少なくない。一方で、人間の脳はさまざまな刺激に対応する柔軟性を持っている。 「認知に関連する脳領域には、記憶をつかさどる領域があります。その中でもとくに、短期記憶の一部であるワーキングメモリに関連する領域と長期記憶をつかさどる領域は、神経可塑性を発揮します」(『Life Kinetik(R) 脳が活性化する世界最先端の方法』より) 神経可塑性とは、脳の神経が身体の動作や外的刺激に反応し、その入力の強さに応じて常に変化する性質のこと。神経可塑性のお陰で、脳は膨大な量の情報を正確に処理・伝達し、脳内の他の領域とネットワークを構築していく。 この神経可塑性については、国内外の様々な研究によって、繰り返し行われる学習やトレーニングが神経のシナプス結合に影響を与え、成果に導くことを報告されている。 コンフォートゾーンを抜け出すと、未知の情報や状況が多く待ち構えているだろう。直面する課題は困難なものかもしれないが、チャレンジを続けるのが重要だ。ワーキングメモリや海馬が機能しながら、脳は変化に柔軟に対応し、成長へと導かれる。 こうした脳の働きは、人間はチャレンジすることで何歳になっても成長できることを物語っているようだ。この成長を得るためにも、ワンステップ上の課題を設定し、努力を続けてみてはいかがだろう』、「人間はチャレンジすることで何歳になっても成長できることを物語っている」、「この成長を得るためにも、ワンステップ上の課題を設定し、努力を続けてみてはいかがだろう」、もう歳だからを禁句にして、いつまでも「ワンステップ上の課題を設定し、努力を続け」ることが必要なようだ。
タグ:生命科学 (その2)(15億年前 私たちの細胞に起こった「運命のいたずら」…その驚くべき事実、生まれつき決まっている脳細胞の数が「難易度の高い運動」で増える?) ダイヤモンド・オンライン ポール・ナース 竹内薫 「15億年前、私たちの細胞に起こった「運命のいたずら」…その驚くべき事実」 『WHAT IS LIFE?(ホワット・イズ・ライフ?)生命とは何か』 「12歳か13歳」の頃に抱いた疑問を解き明かすとは大したものだ。 「腸内細菌は、細胞が自分では作れない、特定のアミノ酸やビタミンを生成してくれる。 さらに、われわれが食べる一口ごとの食べ物は、他の生き物によって作り出されている」、など「他の生き物」に依存しているようだ。 「一五億年ほど前に起きた運命のいたずらで、このような細菌のいくつかが、別の種類の細胞の内側に仮住まいを始めた。時がたつにつれ、主である細胞は、「お客さん」の細菌が作ってくれるATPなしでは生きてゆけなくなり、ミトコンドリアは定住することになった」、「主客転倒」も起きるようだ。 「ノーベル賞を受賞」にも拘らず、「この本がポール・ナースにとって初めての「本」の出版」、「要職で忙しく、一般向けの本を書く暇がなかったのかもしれない」、「この本は・・・新たな世代への橋渡しの役割を担っている」、なるほど。 鈴木 舞 「生まれつき決まっている脳細胞の数が「難易度の高い運動」で増える?」 「チャレンジに伴う脳の活性化」とは興味深そうだ。 「慣れ親しんだコンフォートゾーンの外に目を向け、ワンステップ上の目標を設定してみると、脳が活性化する可能性がある」、「脳が活性化する可能性がある」とは嬉しいことだ。 「有酸素運動は、ワーキングメモリの強化に適している」、聖徳太子もきっと「ワーキングメモリ」の使い方が上手かったのだろう。 「海馬」がそんなに重要な役割を果たしていたとは初めて知った。 「人間はチャレンジすることで何歳になっても成長できることを物語っている」、「この成長を得るためにも、ワンステップ上の課題を設定し、努力を続けてみてはいかがだろう」、もう歳だからを禁句にして、いつまでも「ワンステップ上の課題を設定し、努力を続け」ることが必要なようだ。