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環境問題(その11)(50兆円争奪戦に取り残される日本 脱炭素市場で影薄く グリーン覇権の衝撃【1】、「脱炭素」太陽光・風力ではどうにもならない現実 今までの経済活動を根底から見直す必要がある、まるでバブルなカーボン・クレジット市場 国際ルール統一に岸田政権は動くのか) [経済政策]

環境問題については、昨年8月27日に取上げた。今日は、(その11)(50兆円争奪戦に取り残される日本 脱炭素市場で影薄く グリーン覇権の衝撃【1】、「脱炭素」太陽光・風力ではどうにもならない現実 今までの経済活動を根底から見直す必要がある、まるでバブルなカーボン・クレジット市場 国際ルール統一に岸田政権は動くのか)である。

先ずは、昨年10月21日付け日経ビジネスオンラインが掲載したロンドン支局長の大西 孝弘氏による「450兆円争奪戦に取り残される日本、脱炭素市場で影薄く グリーン覇権の衝撃【1】」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00332/101900013/
・『脱炭素市場。それは成長が約束された市場である。世界各国は温暖化ガス排出量の削減義務を負い、再生可能エネルギーやEV(電気自動車)の産業振興を成長の起爆剤にする。変化を先取りした欧州企業は、「脱炭素の巨人」に生まれ変わった。かつて省エネや環境関連の市場を席巻した日本勢は復活できるのか。COP26(第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議)開幕直前。このシリーズでは、脱炭素市場における勝者の条件を探る。第1回は「450兆円争奪戦に取り残される日本」。 年間4兆ドル(約450兆円)の投資が必要だ――。 国際エネルギー機関(IEA)は10月13日に公表した世界エネルギー見通しで、脱炭素に必要な投資額として衝撃的な数字を示した。同時に世界のクリーンエネルギーに対する移行が、「あまりに遅い」と糾弾した。 各国政府に厳しい指摘となる一方、沸き立ったのは市場関係者だ。IEAは1970年代の石油ショックを機に経済協力開発機構(OECD)加盟国によって設立された組織で、もともと再エネ導入に積極的である。とはいえ、年間に必要な投資額を従来見通しの3倍と見積もった。今後の市場拡大を期待し、風力発電や再生燃料を手掛ける会社の株価は、IEAの発表以降に急上昇した。 IEAがこのタイミングで、衝撃的な見通しを示したのは理由がある。10月31日から英グラスゴーでCOP26が開催されるからだ。厳しい削減義務を負うことを避けたい政府にくぎを刺し、CO2削減の実効性を高めようとしている。自ら今回の世界エネルギー見通しを「COP26のガイドブック」と位置付けた。 95年の第1回から毎年開催されていたCOPだが、昨年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、初めて延期された。それだけにホスト国である英国は並々ならぬ意欲を燃やしており、オンラインではなくリアルでの開催を推進。ジョンソン英首相は、歴史的な内容での合意に意欲を見せている』、最終的には、石炭火力廃止、46カ国賛同 COP27議長国・英が声明 日米中印は未同意となった(11月5日日経)。
・『グリーンボンド活況  COPは政治だけの舞台ではない。経済界にとっても重要なイベントだ。なぜならCOPは、何度も脱炭素関連の市場拡大の号砲になってきたからだ。特に2015年に仏パリで開催されたCOP21のインパクトは大きかった。50年までに気温上昇を産業革命前から1.5度以内に抑える目標で合意し、温暖化ガス排出量を実質ゼロ(カーボンニュートラル)にすることが既定路線となった。世界各国が目標達成のために様々な政策を導入しているため、着実に需要が見込める市場となり、投資額は増え続けている。 米調査会社のブルームバーグNEFによると、20年の脱炭素関連の投資額は約5000億ドル(約56兆円)に上り、13年のおよそ2倍の規模となった。中心は再生可能エネルギーであり、この数年はEVの市場が急拡大している。多くの分野で新興国が世界経済をけん引しているが、脱炭素市場の特徴は、成熟社会である欧米で成長率が高い点である。 こうした動向を受け、多くの資金が環境関連に流れ込んでいる。資金使途を環境に配慮した事業に限定したグリーンボンド(環境債)の発行は右肩上がりだ。金融情報会社リフィニティブの調査によると、世界における20年のグリーンボンドの発行額は前年に比べ26%増の2226億ドル(約25兆円)に達した。 国際通貨基金(IMF)トップであるゲオルギエワ専務理事は、10月5日の講演で世界経済の見通しについて、「再エネの導入や自動車の低炭素化などで、世界の国内総生産(GDP)は20年代に約2%押し上げられ、3000万人の新規雇用が創出される可能性がある」と述べた』、「脱炭素関連の投資」などは力強い動きだ。
・『世界上位から消えた日本勢  この市場急拡大の波に、日本勢は乗り切れていない。かつては新エネルギー開発の国家プロジェクト「サンシャイン計画」などの後押しがあり、2000年代前半には太陽光パネル市場で、シャープや京セラなどの日本勢が世界シェアの上位を独占した。 だが、日本政府と電力会社が再エネ普及に対して消極的な姿勢を取り続け、日本メーカーも事業構造改革や投資をためらった結果、世界市場の中で急速に存在感を失った。かつて環境先進国と言われた国の姿は今はない。 逆に、欧州や中国の企業は、この巨大市場を貪欲に狙ってきた。汎用品になった太陽光パネルは、中国メーカーが積極投資で急成長。東日本大震災以降の太陽光発電バブルにおいて、日本のメガソーラーに導入されたパネルの多くは中国製だった。 単価が高く技術の差異化がしやすい製品群でも、日本勢は太刀打ちできていない。風力発電機の市場が拡大する中で、デンマークのヴェスタスや独シーメンスはリスクを取った投資で着実に成長した。三菱重工業はヴェスタスと14年に洋上風力発電機の合弁会社を設立し、世界シェア上位の常連だったが、経営の主導権を握れず20年に撤退した。 劣勢は続く。日本はノーベル化学賞を受賞した吉野彰・旭化成名誉フェローが開発したリチウムイオン電池など電池産業に強みを持つ。10年代前半には車載用蓄電池でパナソニックなど日本勢で世界シェア5割以上を占めていた。しかし、韓国勢や中国勢の技術開発力の向上や大規模投資により、日本勢のシェアは急落した』、「日本勢のシェアは急落」は確かに残念だ。
・『欧州や中国は官民一体となってEVシフト  そして、日本の基幹産業にもこの波は押し寄せている。自動車のEVシフトだ。トヨタ自動車がハイブリッド車で圧倒的なシェアを獲得したが、欧州や中国は官民一体となってEVシフトを進めている。 2020年にEV販売が急増し、市場が急拡大。世界シェア上位は、米テスラや独フォルクスワーゲン、中国の上海汽車集団が占める。日産自動車がいち早くEVに力を入れ、2014年は世界シェアのトップだったものの、この数年は日本勢の存在感が急速に薄れている。 こうした脱炭素市場の世界シェア上位企業の顔ぶれは、同じく市場が拡大するデジタル産業のそれとは特徴が異なる。デジタル産業は米国のGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)や、中国のBAT(百度、アリババ集団、テンセント)など新興企業が多い。一方の脱炭素関連事業では、重厚長大の伝統的な企業が事業構造転換を果たし、新たな市場をつかみ取っている。その点ではオールドインダストリーの厚みがある日本勢に、まだ復活のチャンスがある』、「オールドインダストリーの厚みがある日本勢に」、大いに頑張ってもらいたいものだ。

次に、11月16日付け東洋経済オンラインが掲載した独立したグローバルなシンクタンクのAPI地経学ブリーフィングによる「「脱炭素」太陽光・風力ではどうにもならない現実 今までの経済活動を根底から見直す必要がある」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/467028
・『米中貿易戦争により幕を開けた、国家が地政学的な目的のために経済を手段として使う「地経学」の時代。 独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく』、興味深そうだ。
・『日本のカーボンニュートラルへの意識変革の遅れ  「2050年のカーボンニュートラル実現」は、2020年末に菅義偉首相(当時)が声を上げたことで一気に注目を浴びるようになった。それを受けて、多くの日本企業が右往左往を始めるという状況にもなっている。 しかし、すでに日本はパリ協定に2016年4月には署名していたのである。55カ国以上、55%以上の排出量をカバーする国の参加が協定発効の条件だったため、まだ先と踏んでいたようだが、予想を超える多数の国々があっという間に署名し、何と同年11月に発効に至った。 つまり、条約遵守が前提なら、日本は4年前からカーボンニュートラルに取り組んでおくべきだったのだ』、多くの「多くの日本企業」にとっては、尻に火がつかない限り動き出さないようだ。
・『電力分野のカーボンニュートラル  カーボンニュートラル実現が最もやりやすいのは電力分野である。しかしその実現には、太陽光や風力だけではまったく届かない目標であることを認識しなければならない。バイオ発電もコストと量の両面で残念ながら強いオプションにならない。 実は、電力分野の問題の本質はコストよりも「量」にある。日本の平地の狭さと、遠浅の海の少なさがこの問題を深刻にしている。2018年現在、日本の発電の化石燃料が占める割合は77%。再エネを死に物狂いで入れるなら、太陽光を最大25%、未知数の洋上風力も含めた風力発電を最大20%、水力を最大10%と仮に置くと55%まで行くが、それでもまだ22%足らない。人口減で電力需要は減るという意見もあるが、EV(電気自動車)化やオール電化による電力シフトで相殺されてしまう。 だからこそ、原子力発電にも真剣に向き合う必要があるし、それでも足りないのでアンモニアや水素発電といった非化石の火力発電に注目が集まる。例えば水素発電は、LNG発電所という既存インフラが活用できる。コストの問題が難しいと言われるが、そんなことを言っている場合ではない、水素FITでも炭素税でもあらゆる政策手法を導入して水素活用を進めなければならない状況だ。 ちなみに水素発電を電力全体の10%に導入するには約600万トンの水素が必要だが、現状日本で生産される水素は99%が自家消費であり、流通する水素は1万トン程度。そのため、川崎重工やENEOSなどが進める海外での水素生産+輸入といった方策が必要になる。投資の巨大さと実現までの時間軸を考えると、そのための政策設計はこの2~3年が勝負だ』、国内生産は限られているので、「川崎重工やENEOSなどが進める海外での水素生産+輸入といった方策が必要になる」、なるほど。
・『再エネ拡大で必要となる電力インフラ側への対策  一方、再エネが5割になると何が起こるのかも考えないといけない。すでに九州では、増えすぎた太陽光による発電量を九州電力が受け切れなくなっている。太陽光や風力といった自然エネルギーは、発電できる時間帯に大きなムラがあるからだ。 現在の発電の主力を担う火力発電は、需要に応じた発電量の調節が可能である。そのため、再エネのようなボラティリティの高い電源や原子力のようなつねに同量で発電し続けるような発電側のムラを調整する役目を果たしてきた。 したがって、火力発電を減らすと、発電側で吸収できなくなる分のボラティリティが電力系統に大きな負担を強いることになる。発電の自由化と小売りの自由化という両側の「自由化」に挟まれた「規制側の」送配電インフラの調整力のキャパシティを超えることが、すでに経産省・エネ庁でも大きな問題となっている。 これを従来型の電力インフラ増強のみで対応すると、10兆円を超える資金が必要になるため、エネルギーマネジメント技術の高度化や蓄電池の活用の制度設計の検討が急ピッチで進められている。しかしこの分野は、政策が先行しビジネスモデルが後回しになりがちなため、誰も使わない制度にならないよう民間との連携が極めて大事である』、「発電の自由化と小売りの自由化という両側の「自由化」に挟まれた「規制側の」送配電インフラの調整力のキャパシティを超えることが、すでに経産省・エネ庁でも大きな問題となっている。 これを従来型の電力インフラ増強のみで対応すると、10兆円を超える資金が必要になるため、エネルギーマネジメント技術の高度化や蓄電池の活用の制度設計の検討が急ピッチで進められている」、「政策が先行しビジネスモデルが後回しになりがちなため、誰も使わない制度にならないよう民間との連携が極めて大事」、その通りだ。
・『電力以外の分野が求められる対策レベルの高さ  電力以外の分野が求められる措置はもっと厳しい。例えば産業分野でいちばんCO2を出す鉄鋼業界では、鉄の還元剤に使うコークスを別のものに転換させる必要に迫られている。まだ技術的にも確立していないが、水素還元による方法が有力とされている。 その場合、700万トンという先ほどの水素発電用以上の水素量が必要になるが、求められるコストレベルはさらに問題だ。現在、2050年の水素の価格はCIFベースで20円/N立方メートルにするという政府目標が示されている。チャレンジングではあるがこれが達成できると水素発電は実現化が見えてくる。ところが、鉄鋼で求められる水素の価格は約8円/N立方メートルという厳しいレベルなのである。 その他、産業分野で2番目に炭素排出量が多い化学業界では、完全なるリサイクルが必要だという議論になるだろうし、3番目に排出量の多いセメント業界では、CO2を吸着するセメントでカーボンニュートラルに近づけるという取り組みが発表されている。いずれも技術的にもコスト的にも大変な打ち手であり、各産業の厳しい状況がうかがえる。 運輸分野は、ガソリン車をすべてEVやFCVにすることが求められるだろう。電力側でのカーボンニュートラルが実現しているなら、走行時のカーボンニュートラルは達成できることになる。しかしながら、EVの製造時に出てくる炭素排出についてはまた別問題。家庭分野もオール電化。石油会社やガス会社にとっては前代未聞の深刻さだ』、「カーボンニュートラル」は実際には困難な課題だ。
・『「森林吸収源」への期待と木材需要の拡大  このように、個別対策を少し掘り下げただけでも、今までの経済活動を根底から見直す対策が必要になることがわかる。しかも、全分野でどんなに頑張っても、恐らく炭素排出量をゼロにすることはできない。だからこそ、(カーボンゼロではなく)カーボンニュートラルという言葉に意味が出てくる。ここで注目したいのが「吸収源」という考え方だ。 吸収源確保には、森林吸収対策、土壌改良による吸収強化、先ほど述べたセメント吸着などさまざまなやり方がある。ここでも量的な意味から考えると、圧倒的に森林吸収対策が重要である。木は成長するときに光合成をすることで、CO2を吸って有機物である木として炭素を貯め込んでくれるという、極めて優秀な吸収源なのだ。 ただし、日本の木は、もう成長し切った壮年の木が多い。森林面積がすでに相当多い日本でこれ以上森林自体を増やすことは難しいため、いったん木を切って、若木を植えて再度成長させることが必要だ。これで国内の森林の吸収力を最大限発揮できれば、全炭素排出量の20%分程度に相当する可能性がある。 木を切るなら、その木を使う需要が必要になる。もちろん、切った木を野原に積んでおく手もあるが、コストを賄うビジネスが回っていないとサステナブルにならない。そこで注目されるのが木造ビルだ。 建築着工統計によると、いわゆる戸建て住宅はすでにほとんどが木造だが、4階建て以上の建築物は逆に多くが鉄・コンクリートである。高層になると強度の問題があるが、10階建て未満の中層なら、住宅にせよ非住宅にせよ建築基準を満たせる技術が確立してきている。あとは耐火工法も踏まえたうえでのコストの問題をどうクリアするか。ここは民間だけでなく、政策とも連動した市場創造の工夫のしどころだ。 吸収源の扱いの国際的な枠組みはまだこれからだが、徐々に動きも出てきた。一方で日本の関係省庁は、すでに吸収源の重要さに気づき、国内政策の準備を始めつつある。国際的枠組みとも連動させ、実績でも世界をリードしたいところだ』、「吸収源の扱いの国際的な枠組みはまだこれから」、日本から積極的に提案してゆくべきだ。
・『カーボンニュートラルを日本にとってのチャンスに  カーボンニュートラルに向けた取り組みは、これまでに例がないほどの努力を要する。しかし、こういうときこそイノベーションのチャンス。ビジネスの世界で失速しつつあった日本企業の逆転のフィールドにできる可能性がある。 そのためにも、技術のイノベーションだけで考えるのは絶対にやめたい。ビジネスモデルを作り込み、政策が有機的に組み合わされることが必須だ。民間側は、意識を高くもち、制度や規制ができるのを待つのではなく自分たちでリードしていく気概で臨み、政府側は、リアルなビジネスを作っていくという心意気で相互に共闘していくことで道が開ける』、「民間側は、意識を高くもち、制度や規制ができるのを待つのではなく自分たちでリードしていく気概で臨み、政府側は、リアルなビジネスを作っていくという心意気で相互に共闘していくことで道が開ける」、同感である。

第三に、12月28日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した法政大学大学院教授の真壁昭夫氏による「まるでバブルなカーボン・クレジット市場、国際ルール統一に岸田政権は動くのか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/291646
・『カーボン・クレジットの取引が盛り上がり、既にバブルの様相を呈している。一例が航空業界だ。二酸化炭素1トン当たりのクレジット価格は、21年1月4日の80セントから11月10日には8.35ドルに上昇した。価格高騰の原因の一つは、世界で統一されたルールがないことだ。わが国は、エネルギー政策の転換と脱炭素に関する国際ルール策定に、より真剣に取り組まなければならない』、「カーボン・クレジットの取引」には「世界で統一されたルールがない」、とは初めて知った。
・『国際統一ルールがなく短期的にはゆがんだ状況が続く  世界的に脱炭素の潮流が注目される中、カーボン・クレジットの取引が盛り上がっている。市場参加者の“準備不足”もあり、既にバブルの様相を呈している。 カーボン・クレジット取引とは、炭素税や排出量取引制度に代表される「カーボン・プライシング」(二酸化炭素の価格付け手法)の一つだ。具体的には、森林保護など温室効果ガスの排出削減事業を第三者が認証し、認証された削減量(クレジット)を民間企業が購入する。 航空や鉄鋼、石油など温室効果ガスの排出量が多く、なおかつ削減も難しい企業は、脱炭素が加速する環境下での事業運営に危機感を強めている。企業は社会の公器として利害関係者に脱炭素に取り組む姿勢を示し、理解と賛同を得なければならない。そのためカーボン・クレジット市場がバブルとなっている。最大の原因は国際統一ルールがないことだ。短期的にはゆがんだ状況が続くだろう。 その状況は是正されなければならず、国際統一ルールの策定は急務である。わが国は米国やアジア新興国との連携を強化してカーボン・プライシングなどに関する見解を共有し、脱炭素で国際世論をリードしようとする欧州委員会に「待った」をかけなければならない。脱炭素に関する国際ルール統一に岸田政権がどう取り組むかは、わが国経済の展開に決定的な影響を与える』、「脱炭素で国際世論をリードしようとする欧州委員会に「待った」をかけなければならない」、「欧州委員会」は欧州の利害を反映した案を出しがちなのだろうか。
・『1月の80セントから11月には8.35ドルに上昇  各国企業が脱炭素に取り組む姿勢を示すために、カーボン・クレジットの購入を増やしている。一部では投機的な取引が増えている。 その一例が航空業界のクレジット取引だ。2016年に国際民間航空機関(ICAO)は「国際航空のためのカーボンオフセット及び削減スキーム」(CORSIA)を採択し、21年からカーボン・クレジット取引が始まった。S&Pグローバル・プラッツによると、二酸化炭素1トン当たりのクレジット価格は、21年1月4日の80セントから11月10日には8.35ドルに上昇した。 また、森林保護に基づいたクレジット取引では、一部で本来の削減効果を上回るクレジット需要が発生している。これは行き過ぎだ。 価格高騰の原因の一つは、世界で統一されたルールがないことだ。 カーボン・クレジット取引の仕組みは、企業などが脱炭素(再生エネルギー利用や森林保護など)に取り組んで二酸化炭素排出量を削減し、削減分を第三者機関(政府やNGOなど)に認証してもらう。その上で、脱炭素に取り組む姿勢をアピールしたい(排出削減が難しい)企業に売る。 民間認証機関としては米国のベラやNGOのゴールドスタンダードが知られている。なお、カーボン・クレジット取引は、EUなどが定めた基準に従って運営される排出量取引制度(当局が規制対象の企業に排出の上限を割り当て、超過した企業が、上限に達していない企業の余剰分を公的な市場で買う制度)とは異なる。 認証基準について、政府や自治体が認証機関である場合は基準が厳しく、民間は甘い傾向にある。そのため、民間認証のカーボン・クレジット取引を活用する航空、石油などの企業が増えた。その結果、買うから上がる、上がるから買うという心理が強まり、カーボン・クレジット市場はバブルの様相を呈し始めた』、「カーボン・クレジット市場はバブルの様相」、とは困ったことだ。
・『航空業界や鉄鋼業界は「苦肉の策」として重視  航空業界などがカーボン・クレジット取引を増やす背景には、世界的な脱炭素の加速がある。ある国が脱炭素に取り組む姿勢を強めると、他の国や地域はその上をいく姿勢で脱炭素を進め、国際世論を主導しようとする。加速度的な脱炭素の進行に危機感や焦りを強め、民間認証のカーボン・クレジットを買わざるを得ない企業が増えている。 21年4月、わが国は30年度の温室効果ガス排出量を13年度比で46%削減し、50年のネットゼロを目指すと表明した。その後、アジアでは、韓国が50年までに石炭火力発電を廃止し、30年までに温室効果ガス排出量を18年比で40%削減すると発表した(従来目標は26.3%削減)。中国も海外での新しい石炭火力発電建設を行わないと表明した。 それに対抗するかのように、欧州委員会は脱炭素の取り組みを一段と強化し、新興国の脱炭素を支援することによって石炭火力発電所の廃止を前倒しで実現しようとしている。さらに欧州委員会は49年までに天然ガスの長期契約を原則として終了することも目指している。 その一方で、企業が脱炭素に取り組むには時間とコストがかかる。脱炭素によって、既存のビジネスモデルの維持が困難になるのではないかとの懸念が高まる業種も出始めた。その一つが鉄鋼業界だ。世界的に、鉄スクラップを溶解して鋼材を生産する「電炉法」を重視する鉄鋼メーカーが増えている。なぜなら、石炭を用いる高炉法では大量の二酸化炭素が排出されるからだ。 ただし、電炉法では不純物が混入し、超ハイテン鋼材など高付加価値型の鋼材生産に課題が残るといわれている。水素製鋼を目指すにしても、わが国や新興国にとって水素の製造や調達のコストは高い。脱炭素が加速する中で化石燃料を用いた事業運営に対する批判をかわすために、「苦肉の策」としてカーボン・クレジット取引を重視せざるを得ない企業は増えるだろう』、「脱炭素が加速する中で化石燃料を用いた事業運営に対する批判をかわすために、「苦肉の策」としてカーボン・クレジット取引を重視せざるを得ない企業は増えるだろう」、いわば恰好付けのためのようだ。
・『必要な国際ルールの策定 岸田政権はエネルギー転換を急げ  カーボン・クレジット市場のゆがみは是正されなければならない。必要なのは、国際ルールの統一だ。 航空業界のクレジット取引の場合、本来なら第25回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP25)がルールを定めるはずだった。だが、参加国の意見対立によって実現せず、結果的に、多種多様な認証基準に基づくカーボン・クレジット取引が急増した。その後、環境政策を重視する欧州委員会は脱炭素関連のルール策定を加速して国際世論の主導を狙っているが、COP26でもカーボン・プライシングや途上国支援をめぐり各国意見は食い違った。 わが国は、エネルギー政策の転換と脱炭素に関する国際ルール策定に、より真剣に取り組まなければならない。エネルギー政策転換に関しては、太陽光と風力を用いた発電を増やすことが必要だ。足もとでは総合商社が再生エネルギー関連事業を強化しており、そうした取り組みを支援する意義は大きい。 国際ルール策定に関しては、米国との連携強化と並行して、東南アジア各国に効率性の高い火力発電や、二酸化炭素の回収・再利用などの技術供与を増やすべきだ。それはわが国の脱炭素関連技術を支持し、見解に賛同する国が増加することにつながる。 そうした取り組みを進めることができないと、わが国は脱炭素に遅れる。その結果として、他の国や地域が主導したルールに受動的に対応せざるを得なくなる。国際ルール策定で主導権を取れなければ、本邦企業の競争力は低下し、経済にはマイナスの影響が及ぶだろう。 国際世論の意思決定は多数決のロジックに基づく。わが国は国際的に支持を得られ、なおかつ地球温暖化問題の改善に資する脱炭素の技術規格、カーボン・プライシングのルールなどを世界に明示し、より多くの賛同を得る必要がある。そのために岸田政権はエネルギー政策の転換を急ぎ、を世界に示さなければならない』、「東南アジア各国に効率性の高い火力発電や、二酸化炭素の回収・再利用などの技術供与を増やすべき」、それは日本側のPR材料に過ぎず、「火力発電」の扱いがどうなるかは不明だ。「わが国の脱炭素技術などの優位性」、があるのであれば、この際、大いに売り込むべきだ。
タグ:環境問題 (その11)(50兆円争奪戦に取り残される日本 脱炭素市場で影薄く グリーン覇権の衝撃【1】、「脱炭素」太陽光・風力ではどうにもならない現実 今までの経済活動を根底から見直す必要がある、まるでバブルなカーボン・クレジット市場 国際ルール統一に岸田政権は動くのか) 日経ビジネスオンライン 大西 孝弘 「450兆円争奪戦に取り残される日本、脱炭素市場で影薄く グリーン覇権の衝撃【1】」 最終的には、石炭火力廃止、46カ国賛同 COP27議長国・英が声明 日米中印は未同意となった(11月5日日経) 「脱炭素関連の投資」などは力強い動きだ。 「日本勢のシェアは急落」は確かに残念だ。 「オールドインダストリーの厚みがある日本勢に」、大いに頑張ってもらいたいものだ。 東洋経済オンライン API地経学ブリーフィング 「「脱炭素」太陽光・風力ではどうにもならない現実 今までの経済活動を根底から見直す必要がある」 多くの「多くの日本企業」にとっては、尻に火がつかない限り動き出さないようだ。 、国内生産は限られているので、「川崎重工やENEOSなどが進める海外での水素生産+輸入といった方策が必要になる」、なるほど。 「発電の自由化と小売りの自由化という両側の「自由化」に挟まれた「規制側の」送配電インフラの調整力のキャパシティを超えることが、すでに経産省・エネ庁でも大きな問題となっている。 これを従来型の電力インフラ増強のみで対応すると、10兆円を超える資金が必要になるため、エネルギーマネジメント技術の高度化や蓄電池の活用の制度設計の検討が急ピッチで進められている」、「政策が先行しビジネスモデルが後回しになりがちなため、誰も使わない制度にならないよう民間との連携が極めて大事」、その通りだ。 「カーボンニュートラル」は実際には困難な課題だ。 「吸収源の扱いの国際的な枠組みはまだこれから」、日本から積極的に提案してゆくべきだ。 「民間側は、意識を高くもち、制度や規制ができるのを待つのではなく自分たちでリードしていく気概で臨み、政府側は、リアルなビジネスを作っていくという心意気で相互に共闘していくことで道が開ける」、同感である。 ダイヤモンド・オンライン 真壁昭夫 「まるでバブルなカーボン・クレジット市場、国際ルール統一に岸田政権は動くのか」 「カーボン・クレジットの取引」には「世界で統一されたルールがない」、とは初めて知った。 「脱炭素で国際世論をリードしようとする欧州委員会に「待った」をかけなければならない」、「欧州委員会」は欧州の利害を反映した案を出しがちなのだろうか。 「カーボン・クレジット市場はバブルの様相」、とは困ったことだ。 「脱炭素が加速する中で化石燃料を用いた事業運営に対する批判をかわすために、「苦肉の策」としてカーボン・クレジット取引を重視せざるを得ない企業は増えるだろう」、いわば恰好付けのためのようだ。 「東南アジア各国に効率性の高い火力発電や、二酸化炭素の回収・再利用などの技術供与を増やすべき」、それは日本側のPR材料に過ぎず、「火力発電」の扱いがどうなるかは不明だ。「わが国の脱炭素技術などの優位性」、があるのであれば、この際、大いに売り込むべきだ。
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