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インバウンド戦略(その14)(コロナで息絶えた中国人向けホテルの呆れた経営実態 インバウンドブームでホテルが急増した富士山麓の今、金持ち中国人が抱く「日本の観光業」への本音 インバウンドを牽引した彼らは何を思うのか、外国人消えたニセコ それでも「ホテル続々」の訳 パークハイアットに加え23年アマンも開業予定) [経済政治動向]

インバウンド戦略については、2020年10月17日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その14)(コロナで息絶えた中国人向けホテルの呆れた経営実態 インバウンドブームでホテルが急増した富士山麓の今、金持ち中国人が抱く「日本の観光業」への本音 インバウンドを牽引した彼らは何を思うのか、外国人消えたニセコ それでも「ホテル続々」の訳 パークハイアットに加え23年アマンも開業予定)である。

先ずは、2020年11月10日付けJBPressが掲載したジャーナリストの姫田小夏氏による「コロナで息絶えた中国人向けホテルの呆れた経営実態 インバウンドブームでホテルが急増した富士山麓の今」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/62800
・『秋の富士山麓で妙なホテルに出くわした。ホテルの看板はかかったままだが、フロントまでのアプローチには落ち葉が積り、広い庭も手入れされている気配がない。従業員や客の姿は1人も見当たらない。どうも“廃墟”と化しているようだ。 エントランスで資材を運搬する施行業者に「このホテルには泊まれますか」と聞いてみたのだが、何の反応もない。彼らは日本語を話せないアジア人のようだ。 近くの飲食店に入り、従業員に「あのホテルはどうしたんですか?」と尋ねると、「中国人が経営するホテルですが、いろいろな噂があるホテルです。支配人が1カ月ももたずに交代してしまうという噂を聞いたことがあります」と言う。 新型コロナウイルスでとどめを刺されたということなのだろうか。インターネットのホテル予約サイトで検索すると、予約の受付は中止されていた』、「インバウンドブーム」で投資したケースは極めて多そうだ。
・『インバウンドブームで宿泊施設が急増  山梨県と静岡県にまたがる富士山麓周辺には、多くの宿泊施設がある。山梨県では2014年以降、旅館は年々減少したが、ホテルや簡易宿所は反比例する形で増加した。富士山麓周辺でもホテルや簡易宿泊施設が次々に開業した。) 富士山麓の宿泊施設で特徴的なのは、企業が手放した保養所などを中国資本が買い取ってホテルに改装するケースが多いことだ。冒頭のホテルも、日本の某上場企業が手放した保養所を中国資本が買い取った施設のようだ。 実はもともと富士山麓は日本人の観光客が少ない場所であり、宿泊施設も多くはなかった。富士山は遠方からでも見えるため、わざわざ山麓まで行って眺めてみようという人は少ない。 ところが2010年代に入ってからのインバウンドブームで、中国人観光客に照準を当てたインバウンド専門の宿泊施設が急増した。富士山麓の宿泊施設で働くRさんに訊ねると、「このあたりに中国資本の宿泊施設は100カ所近くあるのではないか」と話していた』、「中国資本の宿泊施設は100カ所近くあるのでは」、予想を上回る多さに驚かされた。
・『職場はブラック、客へのもてなしも皆無  そうした中国資本の宿泊施設では一体どんな経営が行われているのだろうか。今回、中国資本の宿泊施設に勤務した経験を持つ日本人男性Kさんから事情を聞くことができた。 Kさんは、中国のツアー会社が毎日のように団体客を送り込んでくるホテルで、受け入れを中心とした業務を担当していた。) 「ある中国系のホテルで働きましたが、まったく休みが取れない日が3カ月続きました。勤務時間は朝6時から23時までです。ひどいときは朝4時まで働き、ナイトフロントも担当しました。中国人スタッフもいましたが、宿泊者とのトラブル解決はすべて私がやらされました」 初任給は23万円。その後、若干の上乗せがあったとはいえ、とても激務に見合うものではなく、Kさんは1年で退職した。Rさんに意見を求めると「日本の労働基準法を完全に無視しています。文句を言わない真面目な日本人がこき使われているとしか思えない」と語る。 そもそも中国資本の宿泊施設の一部は、日本の法令を遵守しようという意識が希薄である。たとえば客との金銭の授受は中国の決済アプリを利用して行い、「ここはホテルではなく自分の別荘だ」と言い張る経営者も少なくない。Rさんは「そうした施設には、納税も期待できない」と言う。 Kさんが勤務していたホテルは、建物の老朽化が進み、客へのもてなしも皆無に等しかったという。「館内にはこれといった施設もなく、中国人観光客はチェックインしたあとはただ寝るだけでした。ツアーの内容もひどいもので、客は夜には外でラーメンや牛丼を食べさせられ、朝食はコンビニでパンを買わされていました」と振り返る。 初めて訪れた日本でこんな扱いをされたら、期待を膨らませて訪日した中国人観光客も日本に幻滅してしまうだろう』、「ツアー」内容の余りの酷さに驚かされた。
・『中国の旅行会社も吹っ飛んだ  なぜ、そんな状況が生まれたのだろうか。背景にあるのはダンピング競争である。 2015年前後に急激に拡大した日本のインバウンド市場において、団体客を受け入れる宿泊施設は常に「コストとの戦い」を強いられてきた。 かつては1人1泊8000円で提供していた宿泊施設も、中国の旅行代理店からの度重なる減額要求で5000~6000円への値下げを余儀なくされた。その金額では、とても手厚いサービスは提供できない。 さらに売掛金の回収問題が宿泊施設に追い打ちをかけた。中国の旅行代理店が、宿泊料金(ツアー料金の中の宿泊施設側の取り分)を決められた期日までに支払ってくれないのだ。宿泊客を送り込んでくれる中国の旅行代理店は、なくてはならない存在だが、集金はきわめて骨が折れるという。催促の電話をしてもとぼけられたり、居留守を使われたりしてしまう。互いに中国資本であっても、まともな交渉にならないのが実態だ。 あるインバウンド専門ホテルの経営者は「中国の旅行会社は、調子がいいときも支払いが悪い。コロナ禍となればなおさらです」と語る。確かに中国の旅行会社の経営は青息吐息だ。上海の旅行代理店に状況を尋ねてみると、こう説明してくれた。「当社は、当面のあいだ海外旅行の需要はないだろうとの見込みから、ツアー商品を国内旅行に完全にシフトしました。コロナのせいで、中には海外旅行部門を解散させた代理店や、会社ごと吹っ飛んでしまった代理店もあります」。 2019年の訪日外国人旅行者は3188万人。そのうち中国から訪れたのは959万人だった。中国人客が全体の3割と高いシェアを占める中で、団体ツアーを受け入れる宿泊施設は「質ではなく価格」という大陸式のダンピング競争に呑み込まれていった。新型コロナウイルスの感染が拡大する前までは空前のインバウンドブームが続いており、たとえ劣悪なサービスの宿泊施設でも高稼働が続いていた。 だが、コロナ禍によって状況は一変した。日本を訪れる中国人旅行客は消え、ダンピング競争にストップがかかった。事業者にとって損失は計り知れないだろうが、「インバウンドはどうあるべきかを考え直す機会だ」と、これを天の配剤と受け止める事業者もいる。インバウンドの第2ラウンドでは、渦に呑み込まれない経営がカギとなりそうだ』、「コロナ禍」の終息にはまだ時間がかかりそうだが、これを機に「インバウンドはどうあるべきかを考え直す機会だ」と、戦略を再構築すべきだろう。

次に、2021年2月27日付け東洋経済オンラインが掲載した三菱総合研究所研究員 の劉 瀟瀟氏による「金持ち中国人が抱く「日本の観光業」への本音 インバウンドを牽引した彼らは何を思うのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/413599
・『世界でワクチン接種が始まっている今、オリンピックなど、観光産業の復興についての議論が再び視野に入ってきた。特に日本の観光産業を支えてきたと言っても過言ではないインバウンドはコロナ禍で一気に蒸発し、日本の観光産業に大きくダメージを与えている。 2014年からインバウンド、特に訪日中国人富裕層の動向を研究している筆者が知っている範囲でも、多くの企業や自治体が、消費金額と影響力が高い訪日中国人富裕層の誘致に取り組む予定だったのが、コロナ禍のため頓挫してしまい、「これからも来てくれるのか」と不安に思っている。 そこで今回は、中国の大都市に居住する若い富裕層(20~30代、世帯年収3000万円以上、資産2億円以上)9人にインタビューを実施。彼らは欧米への留学経験があるエリート層で、親日でもあり、日本の観光業にとっては欠かせない層である。さらにインタビューと合わせて、コロナが落ち着きつつある中国国内の観光事情も紹介する』、「中国の大都市に居住する若い富裕層」への「インタビュー」とは興味深そうだ。
・『コロナ前の状態に戻りつつある  日本ではまだまだ待ち遠しい「旅行」だが、中国では国内旅行が堅調で、回復傾向にある。春節で移動は制限されたものの、40日間で延べ17億人が移動したと報じられている。 今年の春節の移動者数はコロナ流行前の2019年と比べると4割程度少ないが、北京市の旅行収入は2020年の2.9倍になった。また、中国の真南に位置する海南島の離島免税品(中国国内にいながら買える免税品)売り上げは前年に比べ261%増の9億9700万元(約158億円)になった。徐々にコロナ前の状態に戻ってきていることがうかがえる。 富裕層たちへのインタビューによれば、昨年の初夏から今まで通りに国内旅行・出張をするようになったが、コロナ以前と比較すると大きく3つの変化が見られたようだ。 その1つ目は、中国国内のホテルや周辺の観光施設のレベルアップが著しいことだ。コロナ感染への心配もあり、最近の中国人はホテル内で楽しむ傾向が高い。上海や広州など大都市はもちろん、雲南省、四川省、福建省といった地方都市への関心もますます高くなっている。 富裕層を代表する旅行ブロガーのLulu氏は、「(仕事で世界中のいいホテル、リゾートに泊まっているが)この1、2年、国内のホテルのレベルアップは速い」と話す。特に中国国内のホテルのいちばんの弱点である「美意識」や「デザイン」が、近年海外でデザインの仕事をして帰国したデザイナーや、海外のデザインチームに発注することで改善されつつある。 中国人は世代と居住地の違いによって美意識に大きなギャップがある。50代以上の富裕層なら部屋の大きさなど貫禄あるデザインを好む。一方、無印良品のブランドを冠する「MUJIホテル」のような、「わびさび」の日本文化と美意識は若い世代に強く影響を与えている。そのため若い人たちは洗練されたデザイン(日本・先進国で称賛されたテイスト)を好む。「ミニマリズム」「シンプルで上品」そして「自然環境が良い」ホテルへのニーズが増えているのだ』、「若い人たちは洗練されたデザイン・・・を好む。「ミニマリズム」「シンプルで上品」そして「自然環境が良い」ホテルへのニーズが増えているのだ」、「50代以上の富裕層なら部屋の大きさなど貫禄あるデザインを好む」のとは大きな違いだ。
・『インテリアも購入できる高級ホテル  富裕層やブロガーの中で人気がある、雲南省のHyllaはその一例である。部屋から観光名所の玉龍雪山の絶景雲海が見えるよい立地にあるだけでなく、コンセプトからインテリアまで徹底的に若い世代の富裕層のニーズを意識して設計されている。 例えば、Hyllaにはアンティークの家具を扱うパートナーがいる。高価なSirocco chair、The Spanish Chair、ルイスポールセンのフロアランプ、イサム・ノグチのテーブル……、と、洗練された空間で宿泊客を魅了しているのだ。 なお、部屋ごとにデザインが異なり、気に入った家具・インテリアがあったら宿泊者は購入することも可能だ。 こうしたショールーム型のホテルは北欧や日本でも少しずつ増えている。高級で洗練されたセンスが良い家具やインテリアの使用感を試してみたい中国人富裕層にとっては嬉しいサービスである。 また、ホテルに泊まるたびにインテリアが販売されるため、部屋のデザインも変化している。そのためリピーターになりやすい。 つまり、週末や小旅行なら中国国内でも満足できそうな状況になりつつあるのだ。) 2つ目の変化は異国情緒が味わえる観光地が人気であることだ。その一例が、マカオである。マカオは感染者数が少なく、中国大陸の観光客を誘致するためにさまざまな策を講じている。例えば日本の「GoToトラベル」のような、一定額以上の買い物をすると、買い物券・旅行券はもちろん、フォーシーズンズなど高級ホテルの宿泊券がもらえるキャンペーンも行っている。 宿泊券の場合は、本人が3カ月以内にマカオを訪れなければいけない条件があるが、確実にリピーター育成につながる。実際、上海や北京に住んでいる若い富裕層は、中国国内でいちばん「異国情緒」を感じられるのはマカオだと認識しているようだ。インタビューでも月1回程度、飛行機でマカオに行くという話が多々聞こえてきた。 3つ目の変化は、ホテルだけではなく、中国国内でも海外並み、ないしはそれ以上のサービス・体験ができるようになっていることだ。数年前まで先進国でしか体験できなかったことが中国国内でもそれ以上にできるようになっている。 今回のインタビューで印象深かった一例は、高級ジュエリーのティファニーが手掛ける「ティファニーカフェ」だ。東京にもあるティファニーカフェだが、上海のほうが規模も大きくメニューも圧倒的に多い。 当初は中国人富裕層は国内しか遊びにいけないため、仕方がなく中国国内のコンテンツを楽しんでいたが、いまや中国国内のほうが国外よりも楽しめる状況になってきているのかもしれない』、「当初は中国人富裕層は国内しか遊びにいけないため、仕方がなく中国国内のコンテンツを楽しんでいたが、いまや中国国内のほうが国外よりも楽しめる状況になってきているのかもしれない」、これが事実であれば、「コロナ禍」終息後のインバウンド回復は盛り上がりを欠く可能性がある。
・『回復を下支えしている要因  こうした中国国内の観光業を下支えしているものは、2つあると考えられる。1つ目は全国規模の「健康QRコード」がコロナ感染の拡大をコントロールしていることである。 昨年3月の記事でもご紹介したとおり、ビッグデータを駆使している中国では、感染者との接触経歴、自己申告などに基づき、スマホに表示されるQRコードの色が変わる。どこにいってもよいのは「緑」で、緑であれば普通に生活・移動することができる。 「赤」「黄」では自宅などで隔離する必要がある。もちろん、現地の人からすれば不要だと思われる隔離政策もあるようだが、それでも「多少の不自由はあっても、トータルに考えたときに有効な方法だ」と考えている人々が大多数のようだ。 ちなみにインタビューした中国人富裕層は日本の新型コロナウイルス接触確認アプリのCOCOAの不具合や、感染者数のファックス送信や手動入力に仰天していたが、「自粛だけで感染をコントロールできてえらい、さすが日本」と感心もしていた。 2つ目の理由は最近のチャイナブームだ。日本にいると見方が違うかもしれないが、中国はコロナ感染状況を抑え込んだ国の1つでもある。 その結果、若い人たちには愛国心の高まりも見られつつある。また、国内のサービス業、ブランドは年々レベルアップしており、若者の中では「中国のよさを再発見しよう」という共通認識が形成されている。特にコロナ禍の観光では、今まであまり注目されなかった地方においても、センスがよいホテルも登場し、新しい人気スポットになっている』、「若者の中では「中国のよさを再発見しよう」という共通認識が形成」、「地方においても、センスがよいホテルも登場し、新しい人気スポットになっている」、多様化するのは望ましいことだ。
・『富裕層の日本に対する関心  中国国内の観光業はコロナ禍の中で、健康QRコードやチャイナブームといった相乗効果により、回復傾向にある。日本の観光業にとっては今まで相手にならなかったかもしれないが、今後「小旅行」「高級リゾート週末」などのジャンルにおいて、中国の観光業がライバルになる可能性がある。 ただその一方で、日本の観光業にとって希望が持てるデータも存在する。中国の旅行サイトCtripの調査では中国人が海外旅行解禁された後にいちばん行きたい国は日本だった。また、コロナが収束すれば、中国人の海外旅行は2022年にはコロナ前の2019年に戻るとの予測もある(中国出境游研究所)。 さらに今年の春節の中国で大ヒットになった映画『僕はチャイナタウンの名探偵3』(中国公開2021年2月12日、日本公開は延期)のロケ地は日本である。長澤まさみ、妻夫木聡など人気の俳優たちも参加し、中国版ツィッターのweiboで「はやく日本に行きたい」とのつぶやきもある。 前出のLulu氏の話を聞いても「周りの富裕層、ブロガーの友達は、今いちばん行きたいのはやはり日本だ」という。理由を聞くと、「中国国内の観光はハードの部分が急成長しているが、ソフトの部分はやはり日本にかなわない」ためだ。 「日本は近いし、食事もおいしいし、サービスが素晴らしい。細かいところまでデザイン性が高く、包装のレベルの高さにいつもドキドキする。ヨーロッパほどブランド品は安くはないが、本物だし、日本の化粧品のほうが中国人に合う」と話す。) それでは日本の政府、ないしは観光業はどうすればいいのか。まず考えられるのは、ワクチン接種が確認できるデジタルパスポートの検討だ。ワクチンを接種した人しか来日できないようにし、飲食店や店舗に入る際も提示を義務付けるなど、接客側と観光業者側双方に安心できる仕組みを検討するのは必須だと言える。ただ、より有効に機能させるためには、日本人にも同じような仕組みが必要だろう。 また、まだ日本に来られない富裕層や影響力が強いブロガーを取り込む策としては、「オンライン×オフライン」のサービスを検討する必要もあるだろう。コロナ禍ではリモート観光に取り組む事例も増えているが、例えば、観光コンシェルジュが中国人富裕層に日本の高級リゾートを案内しながら、体験してほしい商品も郵送するといった方法も考えられる。 子どもの短期留学をオンラインにして日本語や伝統文化が体験できるプライベートクラスを開催するのも1つの手だ。またM&Aなど富裕層の関心が高い案件(介護施設・健康関連への関心が高い)を紹介し、現地のオンライン訪問や、コーディネートをフォローするといったことも考えられそうだ』、「ワクチン接種が確認できるデジタルパスポート」、については国内の慎重論が優位を占めそうだ。
・『日本への旅行のニーズはまだまだ高い  日本の観光業者は、ポストコロナの訪日中国人富裕層へのアプローチを研究する際、上述の具体的な内容はもちろん、訪日中国人富裕層のニーズが変化しているというトレンドも忘れてはいけない。 以前、インバウンドで注目された商品など「モノ」の購入、そしてアクティビティーなどの「コト体験」は、今後海外旅行のニーズとしてますます顕著になるとみられる。 中国国内のデータ調査結果や今まで筆者が実施した富裕層へのインタビューからも、有名なレストランで食べて高いホテルに泊まるというニーズから、日本で食事・宿泊・観光することを通して文化・マナーの勉強をしたいというニーズへパラダイム・シフトが起きていることが見えてきている。 中国人観光客へのアプローチとして、スペインは、中国の海外旅行専門調査機関のビッグデータ分析サービス等を活用し、「地方」「自然」「小旅行」への対応を検討しているようだ。中国人の日本旅行へのニーズが高い今だからこそ、日本の観光業はコロナからの回復を待つだけではなく、富裕層のニーズ変化をとらえ、行動を起こす必要があるだろう』、「富裕層のニーズ」が、「中国の海外旅行専門調査機関のビッグデータ分析サービス等」にどの程度含まれるのかは疑問だが、何らかの方法で「富裕層のニーズ変化をとらえ、行動を起こす必要がある」。

第三に、8月21日付け東洋経済オンラインが掲載した ジャーナリストの山田 稔氏による「外国人消えたニセコ、それでも「ホテル続々」の訳 パークハイアットに加え23年アマンも開業予定」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/448634
・『7月中旬、北海道・ニセコを訪れた。ニセコは札幌から直線距離で南西に60kmほど離れた日本有数の国際リゾート地だ。 高級コンドミニアムやホテルが立ち並ぶ中心街(倶知安町のひらふエリア)に真夏の強い陽射しが照りつける。気温は30度を超えている。リゾート客でにぎわう冬とは様相が一変し、周囲は閑散としている。ゲレンデのふもとに設置されたトランポリンの遊具でオーストラリア人の親子が遊んでいるぐらいだ。タンポポが咲き誇る草むらの正面に見える羊蹄山の姿が美しい。 中心街をしばらく進むと、大型のコンドミニアムホテルの建設現場が見えた。数年前に訪れたときは「温泉調査中」の鉄塔が立っていたところだ。建設中の建物に近づいてみると、シンガポールの会社名と代表者の名前が記載されている。開発区域の面積は1万292㎡。工事着手は2018年10月、完了は2022年9月30日となっている。他の所でも建設中の物件や温泉の掘削が見られた。コロナ禍にもかかわらず、開発の手は緩んでいないようだ』、「コロナ禍にもかかわらず、開発の手は緩んでいないようだ」、外資系はさすが手堅い。
・『不動産広告を手に取ると…  国際リゾート地だけあり、このあたりの街並みの看板はほとんど英語表記だ。「REAL ESTATESALES」の立て看板の横にあるポストにFREE!と表示があり、ポストの中には物件情報誌が積み上げられていた。1冊入手してチェックする。気になる販売価格はどうなっているのか。 かけ流しの天然温泉風呂(内風呂、露天風呂)完備のヴィラ5億3800万円 茶室と専用ウッドデッキが備わった新築タウンハウスユニット3億6800万円 倶知安中心部国道5号線沿いの商業物件(1階は回転ずしエリアと厨房など、2階は事務所、居住エリア)1億4175万円 家具付き高級ブティック使用のコンドミニアム(1ベッドルーム)4890万円 こうした高額物件のオンパレードである。これがニセコエリアの不動産取引の一例だ。 国内外からの活発な投資を背景に、ニセコエリアの中心部にあたる倶知安町の2021年の公示地価は商業地、住宅地ともに上昇率が日本一となっている。商業地は4年連続、住宅地は3年連続というから突出した存在だ。香港を中心とするアジア人投資家の取引が活発な土地ならではの現象である。北海道を代表する札幌の繁華街・ススキノ地区の地価が前年比で下落したのとは対照的だ。 「世界的にコロナ感染が拡大してからは訪れるのは国内のお客さんだけですね。外国人も国内在住の方です。昨年の緊急事態宣言では、冬場だけ働いていていた外国人が帰国できず、〝コロナ難民〟と言われていたのですが、そのまま住み着いた人たちもいます」(地元観光業者) また、2030年度末に北海道新幹線が延伸し、新函館北斗~札幌間の約212㎞が開業予定だ。同区間にはニセコエリアの倶知安駅も含まれ、駅前が整備される予定だ。さらに、2030年札幌五輪誘致の動きもある。 「一時と比べて投資熱は落ち着いたものの、北海道新幹線延伸などを見越した海外富裕層の投資活動は続いています」(同)という。 実際、今年に入りマカオなどでカジノを運営する大手グループがニセコでホテル等を開発すると発表。投資金額は400億円との報道もあった。また、6月にはマレーシア企業のコンドミニアム建設も報じられている。 開発エリアも拡大中だ。かつては冒頭のひらふエリアが開発の中心だったが、最近は少し離れたエリアでも開発が盛んだ。 たとえば、昨年オープンした外資系高級ホテル、パークハイアットニセコHANAZONOや2023年開業予定の同じく外資系高級ホテルのアマンニセコが位置するエリアは、それぞれ4~6km程度離れている』、凄い建設ラッシュで、「開発エリアも拡大中」とは頼もしい。
・『最新のデータを読み解くと?  ニセコへの投資熱は当分陰りそうにないが、こうした外国資本による北海道を中心とした全国の土地の売買が活発になったのは平成の半ばごろからだ。リゾート用地の場合、その土地の利用区分が森林であることが多い。森林の売買情報は林野庁、北海道林務局がとりまとめており、最新の統計が8月3日に公表された。 2020年1月から12月までの「外国資本による森林買収に関する調査の結果について」(林野庁)をみると、居住地が海外にある外国法人又は外国人と思われるものによる買収事例は、全国で12件、森林面積は22haとなっている。12件中8件が北海道で、面積は20ha。残りは神奈川県箱根町2件、京都市2件。 これに加えて国内の外資系企業と思われる者による買収が、全国で26件404haある。つまり2020年中の外資による森林買収の合計は38件、424haということになる。 コロナ禍前の2019年1月から12月のデータを見てみよう。まず居住地が海外にある外国資本による買収は全国で31件、163ha。国内の外資系企業による買収が31件、288ha。合わせて62件、451haとなっている。 2020年はコロナ禍の影響で海外の不動産関係者らの来日がままならなかったこともあり、買収事例が大幅に減少したとみられる』、なるほど。
・『外資の手に渡り続ける「北海道の森林」  これまでの買収を含め、北海道の森林をめぐる外資の所有状況はどうなっているのだろうか。北海道林務局森林計画課がまとめたデータをご覧いただきたい。 道内でもやはりニセコ地域に集中しており、面積ベースで約3分の1を占める。 2020年12月末現在、海外資本等(海外資本と国内の外資系の合計)による森林所有面積は、北海道全体で3085haにも及ぶ(所有者数は233)。 あまりにも広大過ぎてピンとこないが、3085haは30.85?だから、東京ドームでいえば656個分、自治体で言うと東京都板橋区(32.22?)、埼玉県三郷市(30.13?)くらいである。 過去10年の推移を見ると、外資による急速な森林買収の実態がより鮮明に浮かび上がってくる。 この10年ほどの間に、面積ベースでほぼ3倍に拡大しているのだ。 では、北海道の森林を取得しているのはどこの国が多いのか。直近2年のデータを見てみよう。 2019、2020年の外資(海外法人・海外企業の日本法人)による森林取得はあわせて47件・252haで、21件が中国(香港)だった。 利用目的でもっとも多いのは「資産保有」だ。転売してビッグマネーを手に入れようという投資目的である。次に目に付くのが、法人の「別荘地開発」や個人の「別荘用地」。あとは「太陽光発電」「鉱物資源の調査等」で、「不明」「未定」も少なくない』、「海外資本等・・・による森林所有面積は、北海道全体で3085ha・・・東京ドームでいえば656個分、自治体で言うと東京都板橋区(32.22?)、埼玉県三郷市(30.13?)くらい」、かなり広い面積を保有しているようだ。
・『外資による土地買収の是非  7月1日に発表された路線価(国税庁が発表する相続税等の評価基準となる地価。公示地価の約8割)では、6年連続で上昇率ナンバー1を続けていた倶知安町の中心地(道道ニセコ高原比羅夫線通り)の価格は72万円/㎡で前年比横ばいだった。路線価が落ち着いたことで、外資による買収に一段と拍車がかかる可能性さえある。 外国人による土地買収については、6月、自衛隊の基地や原子力発電所といった、安全保障上重要な施設の周辺などの利用を規制する「重要土地利用規制法」が成立した。 しかし、防衛拠点に絡まない森林などは対象外だ。北海道は水源地を守るために、水源保全地域内の土地所有者の権利移転について事前届け出制を条例で定めている。 森林法による森林取得の際の届け出制もある。しかし、届け出がどこまで正確に行われているか分からず、日本企業をダミーにするといった案件もあると指摘されている。 外資の手に渡る土地は森林だけに限らない。ゴルフ場やスキー場などすでに開発済みの土地も含まれる。これらを加えたら、とても30?程度では済まない。使途が不明なケースも少なくない。リゾート買収をめぐっては、夕張市の夕張リゾートのように外資の手に渡った揚げ句、倒産といったケースも出ている。こんなことになっては街の再興もままならない。 急速な開発でスキー場の混雑や温泉の湯量減少などの影響が出ている倶知安町は、環境保全に向け、未開発地が多い地区での大型ホテルの建設制限など規制強化に向け、具体案の取りまとめを進めているが、外資の土地取得制限は別問題だ。 もちろん、バブル崩壊後元気をなくしていた観光地がよみがえり、雇用を生み地元経済を活性化させているというプラスの面も大きい。しかし、10年後、20年後を見据え、土地利用や開発のあり方、資源維持などの観点から十分な議論が必要なテーマだろう。 国全体でも、より踏み込んだ立法措置も含めて考える時期ではないだろうか』、確かに、「10年後、20年後を見据え、土地利用や開発のあり方、資源維持などの観点から十分な議論が必要」、同感である。
タグ:インバウンド戦略 (その14)(コロナで息絶えた中国人向けホテルの呆れた経営実態 インバウンドブームでホテルが急増した富士山麓の今、金持ち中国人が抱く「日本の観光業」への本音 インバウンドを牽引した彼らは何を思うのか、外国人消えたニセコ それでも「ホテル続々」の訳 パークハイアットに加え23年アマンも開業予定) JBPRESS 姫田小夏 「コロナで息絶えた中国人向けホテルの呆れた経営実態 インバウンドブームでホテルが急増した富士山麓の今」 「インバウンドブーム」で投資したケースは極めて多そうだ。 「中国資本の宿泊施設は100カ所近くあるのでは」、予想を上回る多さに驚かされた。 「ツアー」内容の余りの酷さに驚かされた。 「コロナ禍」の終息にはまだ時間がかかりそうだが、これを機に「インバウンドはどうあるべきかを考え直す機会だ」と、戦略を再構築すべきだろう。 東洋経済オンライン 劉 瀟瀟 「金持ち中国人が抱く「日本の観光業」への本音 インバウンドを牽引した彼らは何を思うのか」 「中国の大都市に居住する若い富裕層」への「インタビュー」とは興味深そうだ。 「若い人たちは洗練されたデザイン・・・を好む。「ミニマリズム」「シンプルで上品」そして「自然環境が良い」ホテルへのニーズが増えているのだ」、「50代以上の富裕層なら部屋の大きさなど貫禄あるデザインを好む」のとは大きな違いだ。 「当初は中国人富裕層は国内しか遊びにいけないため、仕方がなく中国国内のコンテンツを楽しんでいたが、いまや中国国内のほうが国外よりも楽しめる状況になってきているのかもしれない」、これが事実であれば、「コロナ禍」終息後のインバウンド回復は盛り上がりを欠く可能性がある。 「若者の中では「中国のよさを再発見しよう」という共通認識が形成」、「地方においても、センスがよいホテルも登場し、新しい人気スポットになっている」、多様化するのは望ましいことだ。 「ワクチン接種が確認できるデジタルパスポート」、については国内の慎重論が優位を占めそうだ。 「富裕層のニーズ」が、「中国の海外旅行専門調査機関のビッグデータ分析サービス等」にどの程度含まれるのかは疑問だが、何らかの方法で「富裕層のニーズ変化をとらえ、行動を起こす必要がある」。 山田 稔 「外国人消えたニセコ、それでも「ホテル続々」の訳 パークハイアットに加え23年アマンも開業予定」 「コロナ禍にもかかわらず、開発の手は緩んでいないようだ」、外資系はさすが手堅い。 凄い建設ラッシュで、「開発エリアも拡大中」とは頼もしい。 「海外資本等・・・による森林所有面積は、北海道全体で3085ha・・・東京ドームでいえば656個分、自治体で言うと東京都板橋区(32.22?)、埼玉県三郷市(30.13?)くらい」、かなり広い面積を保有しているようだ。 確かに、「10年後、20年後を見据え、土地利用や開発のあり方、資源維持などの観点から十分な議論が必要」、同感である。
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