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中国情勢(軍事・外交)(その12)(中国の自信過剰と誤算が戦争を招く最大の脅威 MI6長官、習近平のメンツ丸つぶし 欧州「中国離れ」に火をつけたリトアニアの勇敢さ、中国が幸せの国「ブータン」を侵略 40年の国境画定交渉を無視するあり得ない手口とは) [世界情勢]

中国情勢(軍事・外交)については、昨年10月26日に取上げた。今日は、(その12)(中国の自信過剰と誤算が戦争を招く最大の脅威 MI6長官、習近平のメンツ丸つぶし 欧州「中国離れ」に火をつけたリトアニアの勇敢さ、中国が幸せの国「ブータン」を侵略 40年の国境画定交渉を無視するあり得ない手口とは)である。

先ずは、昨年12月1日付けNewsweek日本版「中国の自信過剰と誤算が戦争を招く最大の脅威 MI6長官」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/12/mi6_1.php
・『<007シリーズで有名な英諜報機関MI6の局長が長い歴史のなかで初めて公の場で演説をした。民間からの技術協力がなければ中国に勝てないと判断したからだ> イギリスの対外諜報機関の責任者が情報活動で最も重視している相手国として中国を名指しし、中国政府の「誤算」は戦争につながる可能性があると警告した。 2020年10月にイギリスの諜報機関MI6(正式名称「秘密情報部」)の長官に就任したリチャード・ムーアは11月30日に初めて公の場で演説を行った。そして、イギリスのスパイが直面する「4大脅威」として中国、ロシア、イラン、国際テロ組織の名を挙げ、中国がそのなかで最も重視すべき相手であると語った。 AP通信の報道によれば、ムーアは中国を「われわれとは異なる価値観を持つ独裁的国家」と呼んだ。そして、中国政府はイギリスとその同盟国に対して「大規模なスパイ活動」を仕掛け、「一般世論と政治的意思決定を歪めようと」試み、世界中に「独裁的支配の網」をはりめぐらすためのテクノロジーを輸出していると語った。 「中国政府は西側の弱点に関する自作のプロパガンダをみずから信じており、米政府の決意を過小評価している」と、ムーアは付け加えた。「自信過剰によって中国が判断ミスをするリスクは存在する」 ムーアはまた、中国の現政権は「大胆で決定的な行動」を後押ししていると述べ、その最たる証拠として1949年に中国本土から分裂した台湾を独立国として認めることを拒んでいることを挙げた。 「中国が軍事力を増強していること、そして中国共産党が、必要であれば力づくでも台湾を統一したがっていることも、世界の平和と安定を脅かす深刻な課題を提起している」と、ムーアは述べた』、「英諜報機関MI6の局長が長い歴史のなかで初めて公の場で演説をした」、「イギリスのスパイが直面する「4大脅威」として中国、ロシア、イラン、国際テロ組織の名を挙げ、中国がそのなかで最も重視すべき相手であると語った」、妥当な判断だ。
・『ウクライナ侵略も防ぐ  AP通信が報じたより詳細な報道は以下のとおり。 イギリスは「ロシアからの深刻な脅威にも直面している」と、ムーアは語った。さらに、ロシア政府が2018年にイギリスで起きた元スパイのセルゲイ・スクリパリの毒殺未遂など、暗殺事件の黒幕となり、サイバー攻撃を仕掛け、他国の民主的プロセスに干渉していると指摘した。 「わが国と同盟国、そしてパートナー国は、国際ルールに基づくシステムに違反するロシアの活動に立ち向かい、阻止しなければならない」とMI6長官は述べた。 「欧州およびその周辺のどの国も、ロシアの態度が改善されることを期待してバランスの悪い譲歩をする誘惑に負けてはいけない」と彼は言い、ロシアが2014年にウクライナからクリミアを併合し、最近もウクライナとの国境付近で軍を増強していることを指摘した。 この発言は、ウクライナにおけるさらなる侵略を防ぐためにロシア政府を牽制しようとするイギリスと北大西洋条約機構(NATO)の高官が発した最新の警告を反映している。 イランもまた大きな脅威を与える存在であり、「国家内の国家」とよばれるイスラム教過激派組織ヒズボラを利用して近隣諸国の政治的混乱をあおっている、とムーアは語った。 非政府組織の脅威に関して、ムーアはアフガニスタンの国際的に支援された政府の崩壊と武装勢力タリバンの政権復帰は、武装勢力を「奮い立たせる」要素になったと述べた。 「私はこの件について問題をぼかして語るつもりはない。米軍がアフガニスタンを去った今、脅威は成長する可能性が高い」とムーアは語る。だが彼はタリバンの支配の驚くべきスピードを、西側の諜報活動の失敗と呼ぶのは、「大げさ」であるとも言った。 一方、敵対的な国や集団にこれまでにない能力を与えているサイバーセキュリティの軍拡競争について、これに勝つためには、イギリスのスパイ組織はみずから根付いた極秘文化の一部を手放し、テック企業からの助けを求めなければならない、ともムーアは論じた。 ロンドンの国際戦略研究所で行われた今回の講演で、人工知能やその他の急速に発展する技術には破壊的な潜在能力があることからして、MI6は技術の進歩によって不安定化する世界で「秘密を保つためには、よりオープンになる」必要がある、とムーアは語った。 「われわれに敵対する者たちは、こうした技術を習得することで力を獲得できることを知っているため、人工知能、量子コンピューティング、合成生物学に資金と野心を集中している」と、ムーアは論じた。情報と権力を得るために膨大な規模でデータを収集している国の例として彼は中国の名をあげた』、「サイバーセキュリティの軍拡競争について、これに勝つためには、イギリスのスパイ組織はみずから根付いた極秘文化の一部を手放し、テック企業からの助けを求めなければならない、ともムーアは論じた」、今回、禁を破ってマスコミに登場したのも、こうした事情変化を反映しているのだろう。
・『ボンド映画とは違う  この状況に追いつくために、イギリスのスパイ組織は、「最大のミッションをも解決する世界レベルのテクノロジーを開発するために、ハイテク産業とのパートナーシップを追求していく」と、ムーアは言った。 「007」シリーズに登場する架空のMI6は自ら数々のガジェットを作り出していることに触れ、「ボンド映画のQとは違う。情報機関の中だけですべてをまかなうことはできない」とムーアは付け加えた。 民間部門と協力することは、秘密に包まれた組織にとって「大変化」であるとムーアは言う。イギリス政府は1992年までMI6の存在を認めなかった。最近、情報部は徐々にオープンになってきており、公認の歴史を本にして出版することも認められた。ただし、1949年までしかさかのぼることはできない。 コードネーム「C」で呼ばれる局長の名前が公表されるようになったのも1990年代のこと。ムーアはツィッターのアカウントを持っているが、これもMI6局長として初めてのことだ』、「民間部門と協力することは、秘密に包まれた組織にとって「大変化」であるとムーアは言う」、秘密を解き明かしていくスパイ物小説の醍醐味が若干薄らいだような感じを抱くのは、筆者だけではあるまい。

次に、本年1月15日付けNewsweek日本版が掲載した筑波大学 人社系国際公共政策専攻 准教授の東野篤子氏による「習近平のメンツ丸つぶし 欧州「中国離れ」に火をつけたリトアニアの勇敢さ」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/01/post-97855_1.php
・『欧州で存在感を増していた中国が、想定外の逆風にあえいでいる。きっかけは、小国・リトアニアが中国との経済協力関係を解消し、台湾に接近したことだ。筑波大学の東野篤子准教授は「激怒した中国政府はリトアニアに圧力をかけ、苦境に陥れた。だが、この報復行為に近隣諸国が強く反発。これまで良好だった欧州と中国の関係に隙間風が吹き込んでいる」という――』、興味深そうだ。
・『リトアニアと中国との関係はさほど険悪ではなかった  近年、欧州の小国リトアニアが注目を集めている。同国は中国との関係に見切りを付け、台湾との関係構築を大胆に進めているのだが、これに中国が猛然と反発し、あらゆる手段を用いてリトアニアへの圧力を強めている。 それでも台湾への接近をやめようとしないリトアニアの大胆さと、なりふり構わず同国へのけん制と報復に走る中国という構図に、国際社会の関心が集まっているというわけだ。 なぜこのようなことになったのか、経緯を簡単に振り返っておきたい。もともと、リトアニアと中国との関係はさほど険悪ではなかった。 2012年に中国と中・東欧や西バルカンの16カ国との経済協力枠組みである「16+1」が創設された際には、リトアニアはむしろ中国との関係強化に期待を寄せていたとみられる(なお、同枠組みは2019年にギリシャが参加した際に「17+1」と改称されたが、後述するようにリトアニアの離脱によって「16+1」へと逆戻りすることになる。また、本稿では混乱を防ぐため、時期的には「17+1」とすべきところもすべて「16+1」と記述する)』、もともと「リトアニアはむしろ中国との関係強化に期待を寄せていた」ようだ。
・『中国による「途上国扱い」に不満  発足から数年後、リトアニアだけでなく「16+1」諸国の多くは、同枠組みに不満を抱くようになった。 「16+1」で約束された中国による原発や高速道路の建設などの大型インフラ投資案件には、計画倒れに終わったものが少なくなかった。 実施されても計画が大幅に遅れ、予算が当初予定の何倍にも膨れ上がったものもある。 このため、中国主導のインフラ投資計画に大きな疑問符がつくようになったのである。 また、そもそも中国は「16+1」を、中国による「途上国支援」としてとらえていた側面がある。経済危機や不況に苦しむ中・東欧諸国や西バルカン諸国に対し、中国がインフラ投資を携えて手を差し伸べる――。これが中国の描いていた「16+1」のイメージであった。 しかし、「16+1」の加盟国には、欧州を代表するIT先進国のエストニアやリトアニアから、経済不況にあえぎ、支援を渇望する旧ユーゴ諸国まで、実にさまざまな国が存在していた。こうした国々を十把一絡げに「途上国」扱いしてきたことに、「16+1」の根本的な問題が存在していたのである』、「「16+1」の加盟国には、欧州を代表するIT先進国のエストニアやリトアニアから、経済不況にあえぎ、支援を渇望する旧ユーゴ諸国まで、実にさまざまな国が存在していた。こうした国々を十把一絡げに「途上国」扱いしてきたことに、「16+1」の根本的な問題が存在」、いくら大国とはいえ、ずいぶん荒っぽ過ぎるやり方だ。
・『習近平が出席した会議に首脳が欠席  リトアニアの中国離れが可視化されるようになったのは2021年以降のことである。同年2月にオンラインで開催された「16+1」首脳会議は、習近平自ら出席したにもかかわらず、6カ国が首脳ではなく閣僚を出席させた。 中国はとくに、首脳の欠席をいち早く表明したリトアニアとエストニアを問題視したようであり、両国の駐中国大使は深夜に外交部に呼び出され、叱責されたという。 中国との軋轢が表面化し、一層中国離れを加速させたリトアニアは同5月、「16+1」からの離脱を発表した。 この決定に関する当時の駐中国リトアニア大使の説明は以下のようなものだった。 すなわち、「16+1」にはEU加盟国と非加盟国が混在しているため、2つに分断される恐れがあった。 また、リトアニアは「16+1」を通じて中国への市場アクセスの改善を働きかけてきたが、中国の市場の閉鎖性は全く変わらなかった。つまるところ、「16+1」にこれ以上参加する意義を見いだすことができなくなった――。 リトアニア大使の説明には、「16+1」が抱えていた問題点が凝縮されていたのである』、「リトアニアは「16+1」を通じて中国への市場アクセスの改善を働きかけてきたが、中国の市場の閉鎖性は全く変わらなかった」、これでは「リトアニア」にとってメリットがないが、「中国」にはそこまで個別対応するヒマもなかったからなのかも知れない。
・『欧州で初となる「台湾代表処」を設立  「16+1」からの離脱宣言と相前後するように、リトアニアは台湾への急速な接近を開始した。7月には台湾の大使館に相当する「台湾代表処」を設立することを発表。 EUの27の加盟国のうち、すでに18カ国が台湾の出先機関である代表処を有しているが、その看板にはすべて「台湾」ではなく「台北」が用いられていた。「台湾」の名称を用いることは、中国が求める「ひとつの中国」原則に反するため認められないとする中国側の主張を、多くの欧州諸国が受け入れていたためである。 しかしリトアニアは欧州諸国として初めて「台湾」の名称を冠した代表処を設立することを選択した。対台湾関係の構築において、もはや中国の顔色をうかがうことはしないという決意の表れに他ならない。 また、「台湾」の名称を用いることは台湾を国家承認することを意味するものではないため、「ひとつの中国」原則違反にはあたらない、というのがリトアニアの立場であった。同代表処はその後、11月18日には正式に開設されている。 リトアニアはさらに、台湾に累計25万本近くの新型コロナウイルスワクチンを提供。またリトアニアと台湾の要人同士の訪問も今秋以降活発に行われている。 蔡英文台湾総統も、「状況が許せば、リトアニアという勇敢な国をぜひ訪問したい」と明言している。リトアニアと台湾は、「中国という共通の脅威に立ち向かう民主主義パートナー」と互いを位置づけ、連携をアピールするようになった』、「EUの27の加盟国のうち、すでに18カ国が台湾の出先機関である代表処を有しているが、その看板にはすべて「台湾」ではなく「台北」、「代表処を有している」「国」がこんなに多いとは初めて知った。
・『「歴史のごみ箱にたたきこまれるだろう」  こうした一連の動きは、中国をいたく刺激した。 中国共産党系の新聞『環球時報』英語版は、リトアニアを非難する記事を日々更新している。小国のリトアニアは、米国の歓心を買いたいがために中国に歯向かい、台湾に接近しているというのが、その主な論調である。 また、高圧的な発言で知られる趙立堅外交部報道官は12月20日、「ひとつの中国」原則は「国際関係における基本的な規範であり、国際社会における普遍的コンセンサス」であると強調したうえで、それを尊重しないリトアニアは「歴史のゴミ箱にたたきこまれるだろう」と切り捨てている』、「歴史のゴミ箱にたたきこまれるだろう」とは、「高圧的な」「趙立堅外交部報道官」らしい発言だ。
・『中国が行った報復措置の数々  中国のリトアニアに対する具体的な報復措置も次第にエスカレートしていった。8月には、駐中国リトアニア大使が中国側の要求で本国への帰任を余儀なくされた。 代表処の正式開設以降、駐リトアニア中国大使館は領事館レベルに格下げされたうえ、11月下旬以降はビザ発行などを含めた領事業務も停止された。 ほぼ同時期に、中国に輸出されたリトアニア製品が中国税関を通らなくなった。 そして12月中旬、それまで中国に踏みとどまっていたリトアニア外交官4名とその家族は、中国当局から外交特権の剝奪をちらつかされ、全員が中国から撤退した。 当面はリトアニアの外務本省からリモートで業務を行うという。外交官らへのこうした圧力は、外交官特権に関するウィーン条約にも違反している恐れがある』、「外交官特権に関するウィーン条約にも違反している恐れがある」ような対抗策を打ち出した「中国」も余程、腹に据えかねたのだろう。
・『リトアニアで製造・加工された製品は輸出を認めない  とはいえ、ここまでの段階では、リトアニアが実質的に被った被害は限定的であったといえる。そもそもリトアニアの対中貿易は同国の貿易全体の1%前後であり、中国との2国間貿易が滞っても、同国への経済全体に影響を及ぼすほどではなかった。) リトアニア大使館員の中国からの撤退にしろ、中国当局の厳しい監視と嫌がらせが続く中で、リトアニア人外交官らが中国で十分な外交活動ができる状況ではそもそもなかった。このまま中国にとどまれば拘束の危険もあり、引き上げはむしろ正解であったともいえる。 ただし、その後中国が採用した措置により、リトアニアはいよいよ窮地に追い込まれつつある。 中国は12月中旬以降、欧州諸国を中心とした多国籍企業に対し、リトアニアで製造・加工された製品を用いた場合には中国への輸出を認めないと通告したとされる。 リトアニアには、ドイツ、フランス、スウェーデンなどのEU加盟国の多国籍企業が多数活動しており、そのなかにはドイツの自動車部品大手コンチネンタルなども含まれる。同社はリトアニアの工場で、自動車の座席コントローラーなどの電子部品を製造し、中国にも輸出しているが、同社の製品も中国の税関を通過できない状況である』、「リトアニア」の弱点を突き「中国」のやり方は憎いばかりだ。
・『「ドイツ企業は工場を閉鎖する可能性がある」  影響は徐々に出始めている。EU加盟国の企業の一部は中国の圧力を受け、リトアニア関連の製品の使用停止を検討しているという。 また在バルト諸国ドイツ商工会議所は今週、リトアニア政府に対して書簡を送付し、「リトアニアと中国の経済関係回復のため、建設的な解決法が提示されるのでなければ、ドイツ企業はリトアニアにおける工場を閉鎖する可能性がある」と通知したという。 中国だけではなくリトアニアにも、態度を改める余地があるというメッセージが、ドイツのビジネス界から発せられた意味は重い。 リトアニアにとって、国内で稼働するドイツ企業はまさに生命線といえる。そのドイツのビジネス界が中国側に回るとなれば、リトアニア経済は完全に身動きが取れなくなる。 欧州の企業に直接圧力をかけるという中国の手法は、EU加盟国間の分断を深く静かに進行させている』、「欧州の企業に直接圧力をかけるという中国の手法は、EU加盟国間の分断を深く静かに進行させている」、「中国」の手法は外交巧者だけある。
・『ここまで妨害活動をする中国の「焦り」  中国がここまでしてリトアニアへの妨害活動を行う理由はなにか。それは、台湾への接近を検討している他の諸国に対する「みせしめ」に他ならない。 リトアニアに続いて「台湾」代表処を開設し、台湾との関係強化を図ろうとする国が間違ってもこれ以上増えないよう、全力で阻止しようとしている。 リトアニアの動きを今止めなければ、「ひとつの中国」原則が、中国から遠く離れた欧州の小国をきっかけに突き崩されてしまいかねないというのが中国の焦りである。 このため、国際法違反も厭わずあらゆる手段を用いてリトアニアに圧力をかけ、台湾との関係構築を断念させようとしているのだろう。 EUは、代表処の開設や台湾との交流の深化は「ひとつの中国」原則の違反ではない、とするリトアニアを支持している。そもそもEUでも、現在のEUの事実上の代表部である「欧州経済通商台北弁事処」を、「EU駐台湾弁事処」へと改称する動きも出ているし、2021年秋に公表されたEUのアジア太平洋戦略でも、対台湾関係の構築には積極的な姿勢を見せていた』、「リトアニアの動きを今止めなければ、「ひとつの中国」原則が、中国から遠く離れた欧州の小国をきっかけに突き崩されてしまいかねないというのが中国の焦りである。 このため、国際法違反も厭わずあらゆる手段を用いてリトアニアに圧力をかけ、台湾との関係構築を断念させようとしているのだろう」、そんな危機感が背後にあるのであれば、強硬措置も理解できる。
・『一丸となって対抗する体制にはないEU  その一方で、リトアニア製品が中国の税関でブロックされ、中国が欧州域内の多国籍企業にリトアニア製品のボイコットを強要していることに対しては、EUとして有効な対抗策をとることができていない。 EUは、中国の一連の行動には明確なWTOルール違反がみられるとして、WTOへの提訴を検討中だが、WTOを通じた問題には多大な時間が必要とされる。 また、中国がこうした理不尽な経済的圧力をEUに対して行使してくる可能性を念頭に、かねてEUでは独自の「反強要措置(ACI)」の策定が進んでいたが、このACIの発動までにはまだ多くのEU内部の調整を必要とするうえ、WTOルールとACIの整合性については、EU内部でも慎重な声がある。 すなわち、EUが一丸となって中国の対リトアニア圧力に対抗しうる体制には程遠いのである』、「EUが一丸となって中国の対リトアニア圧力に対抗しうる体制には程遠い」、多くの国の集合体である「EU」の宿命ともいえる。
・『小国を窮地に追い込んだ中国が失ったもの  しかし、リトアニアに対する強硬姿勢によって、中国が失いつつあるものも決して小さくないことには留意しておく必要があろう。 例えば、2020年末にドイツのメルケル首相が主導して基本合意にこぎつけたEU・中国包括的投資協定(CAI)は、中国の人権状況をめぐって中国とEUとの軋轢が鮮明になり、欧州議会が2021年5月に凍結を決めていた。 中国側は依然としてCAIの凍結解除を望んでいるとされるが、中国がEU加盟国への敵対行動を続ける以上、CAIの復活は絶望的である。 さらに、この一連の中国の言動で明らかとなった中国の「小国蔑視」は、これまで中国と密接な経済関係にあった中・東欧諸国の中国離れを確実に加速させている。 チェコやスロバキア、ポーランドなどの中・東欧諸国はリトアニアに続けとばかりに、台湾へのワクチン提供や要人の相互往来を、もはや中国に臆することなく展開している。 中国のさまざまな措置は徐々にリトアニアを窮地に追い込んでいるが、それと引き換えに中国は、かつてのような欧州諸国との良好な関係を、自ら手放しつつあるともいえるのである。(東野篤子氏の略歴はリンク先参照)』、「中国の「小国蔑視」は、これまで中国と密接な経済関係にあった中・東欧諸国の中国離れを確実に加速させている。 チェコやスロバキア、ポーランドなどの中・東欧諸国はリトアニアに続けとばかりに、台湾へのワクチン提供や要人の相互往来を、もはや中国に臆することなく展開している」、面白い展開になってきた。

第三に、1月22日付けデイリー新潮が掲載した経産省、内閣情報調査室内閣情報分析官の藤和彦氏による「中国が幸せの国「ブータン」を侵略 40年の国境画定交渉を無視するあり得ない手口とは」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2022/01220600/?all=1&page=1
・『「中国がブータンと係争中の国境地帯での入植地建設を加速させている」 これを報じたのは1月12日付ロイターだ。ロイターは米国のデータ分析会社ホークアイ360から衛星画像とその分析結果の提供を受け、専門家2人に検証を依頼した。その結果、中国がブータン西部の国境沿いの6か所で200以上の構造物の建設を進めていることがわかった。中国が入植地の建設計画を発表したのは2017年だ。2020年から工事が始まり、昨年になって建設が加速したとされている。政府が住民に補助金を出して、入植を進めていると噂されている。 日本で「幸せの国」として知られるブータンの人口は80万人に満たない。中国と国交を結んでいないブータンは約40年間、およそ500kmに及ぶ国境を画定させるために中国と粘り強く交渉を続けてきた。 だが今や超大国になった中国は、「吹けば飛ぶ」ようなブータンとまともに向き合おうとはしていない。既成事実を積み上げることで国境問題を強引な形で解決しようとしている。南シナ海で人口島を建設し領有権を主張する手口と同じだと言っても過言ではない。ブータンの領土保全のための長年の努力は水泡に帰そうとしている』、「今や超大国になった中国は、「吹けば飛ぶ」ようなブータンとまともに向き合おうとはしていない。既成事実を積み上げることで国境問題を強引な形で解決しようとしている」、「ブータン」を半ば無視した形で「国境問題を強引な形で解決しようとしている」、とは酷い話だ。
・『インドも反発する中国の入植地建設  領土の侵略ともいえる中国の入植地建設は、ブータンの庇護者を任ずるインドの安全保障にも直結する問題だ。入植地は中国、インド、ブータンが国境を接するドクラム高原にほど近く、この場所に中国が軍用道路を建設したことが原因で、2017年に中印両国の部隊が2カ月以上にわたって対峙した経緯がある。 ドクラム高原の南に位置するシリグリ回廊はインドの中心地域と北東地域を結ぶ戦略的に重要な場所だ。シリグリ回廊の幅は狭い(最小で約22km)ことから「ニワトリの首」と呼ばれている。中国がドクラム高原を制圧し、さらに南下して「ニワトリの首」を押さえてしまえば、インドの北東地域は孤立してしまう可能性が高い。 自らのアキレス腱を脅かす中国の入植地建設に対し、インドもブータンと同様、反発しているが、有効な対応をとれないでいるという。 インドと中国の間の3500kmにも及ぶ国境は未画定のままだ。 ドクラムから約1100km離れたラダック地域でも2020年両軍の間で乱闘が生じ犠牲者が出たことから、両軍の大部隊は今でも緊張したままの状態だ。 ラダック地域では今年1月1日、10地点で新年の挨拶とお菓子の交換が行われ、20カ月にわたる両軍の緊張緩和の兆しが見えていた。だがその直後に中国が密かに軍備拡張を進めていることが明らかになった。衛星画像を分析したインドメデイアは「ラダック地域にあるバンドン湖で、軍隊や武器を円滑に前線に移動させるために橋を建設している」と報じた。橋はバンドン湖の中国側にあり、ほぼ完成しているという。「中国はこれにより軍隊や武器を係争地帯に送るためのルートをもう一つ確保したことになる」としてインド側は警戒感を一層強めている。 中国はヒマラヤ高地での活動に200台以上のロボットを派遣する計画を実行に移そうとしている(2021年12月30日付デイリーメール)。兵士は極寒の山間部の酸素の薄い条件下で警戒活動などを行うことが困難なため、ロボットに入れ替えることを決定したのだという。派遣されるロボットは物資を運搬できる。小銃も装備しており、砲撃戦などの際にも様々な任務を遂行できるとされている。 中国は昨年末にも、インドが実効支配する北東部アルナチャルプラデシュ州内に「古里」「馬加」といった漢字表記の「公式名称」を一方的に発表した。中国が「有史以来の中国の領土に条例に基づいて命名した」としているのに対し、インドは「中国語の地名を付けようとアルナチャルプラデシュ州がインドの不可分の領土であるという事実が変わることはない」と猛反発している』、「中国はヒマラヤ高地での活動に200台以上のロボットを派遣する計画を実行に移そうとしている」、「派遣されるロボットは物資を運搬できる。小銃も装備しており、砲撃戦などの際にも様々な任務を遂行できるとされている」、「ロボット」を導入すると、和平がますます遠のきそうだ。
・『インドの“反撃”は  国境地域などで挑発行為を続ける中国を、インドも黙ってみているわけではない。従来の防御中心の戦略から転換し、攻撃能力を強化し始めている。インド側の攻撃能力の一翼を担うのは陸軍第17軍団だ(1月6日付Wedge)。9万人を擁する大規模部隊であり、インド空軍の支援を受けて機動的に部隊を展開することができる。中国の重要インフラを効果的に攻撃できる能力を持つ第17軍団は、昨年から作戦実行可能な状態になったとされている。 「インドは日米豪印による首脳会合「クアッド」に加盟したことで中国に対して今後は強気の態度で臨むのではないか」と指摘する専門家もいる。 「中国が一方的に挑発し、インドがこれに受け身で対応する」というこれまでの構図が崩れつつあるのだ。 日本では中国の台湾への軍事侵攻への懸念が強まっているが、米国は中国による台湾の統一を拒否する姿勢を鮮明にしつつある。自らの過ちで台湾侵攻のコストを極めて高価にしてしまった中国が「米軍のプレゼンスが低い南アジアなら国威発揚のための領土の拡張が比較的容易に行うことができる」と考えたとしても不思議ではない。 その一環がブータンとの国境沿いへの入植地建設かもしれないが、ブータンの背後に控えるインドは中国に次ぐ世界第3位の軍事大国だ。1962年の中国との大規模な国境紛争に大敗したことを機に核兵器を開発したことも忘れてはならない。 中国がこれまでと同様、南アジアで傍若無人な振る舞いを続ければ、捲土重来を期すインドと全面的な軍事衝突につながってしまうのではないだろうか』、「自らの過ちで台湾侵攻のコストを極めて高価にしてしまった中国が「米軍のプレゼンスが低い南アジアなら国威発揚のための領土の拡張が比較的容易に行うことができる」と考えたとしても不思議ではない。 その一環がブータンとの国境沿いへの入植地建設かもしれないが、ブータンの背後に控えるインドは中国に次ぐ世界第3位の軍事大国だ」、「中国」には大国らしい賢明な振舞いを期待したい。
タグ:「中国」には大国らしい賢明な振舞いを期待したい。 「リトアニアは「16+1」を通じて中国への市場アクセスの改善を働きかけてきたが、中国の市場の閉鎖性は全く変わらなかった」、これでは「リトアニア」にとってメリットがないが、「中国」にはそこまで個別対応するヒマもなかったからなのかも知れない。 そんな危機感が背後にあるのであれば、強硬措置も理解できる。 「欧州の企業に直接圧力をかけるという中国の手法は、EU加盟国間の分断を深く静かに進行させている」、「中国」の手法は外交巧者だけある 「リトアニア」の弱点を突き「中国」のやり方は憎いばかりだ。 「外交官特権に関するウィーン条約にも違反している恐れがある」ような対抗策を打ち出した「中国」も余程、腹に据えかねたのだろう。 「「16+1」の加盟国には、欧州を代表するIT先進国のエストニアやリトアニアから、経済不況にあえぎ、支援を渇望する旧ユーゴ諸国まで、実にさまざまな国が存在していた。こうした国々を十把一絡げに「途上国」扱いしてきたことに、「16+1」の根本的な問題が存在」、いくら大国とはいえ、ずいぶん荒っぽ過ぎるやり方だ。 「自らの過ちで台湾侵攻のコストを極めて高価にしてしまった中国が「米軍のプレゼンスが低い南アジアなら国威発揚のための領土の拡張が比較的容易に行うことができる」と考えたとしても不思議ではない。 その一環がブータンとの国境沿いへの入植地建設かもしれないが、ブータンの背後に控えるインドは中国に次ぐ世界第3位の軍事大国だ」、「中国」には賢明な振舞いを期待したい。 「歴史のゴミ箱にたたきこまれるだろう」とは、「高圧的な」「趙立堅外交部報道官」らしい発言だ。 「EUの27の加盟国のうち、すでに18カ国が台湾の出先機関である代表処を有しているが、その看板にはすべて「台湾」ではなく「台北」、「代表処を有している」「国」がこんなに多いとは初めて知った。 「中国はヒマラヤ高地での活動に200台以上のロボットを派遣する計画を実行に移そうとしている」、「派遣されるロボットは物資を運搬できる。小銃も装備しており、砲撃戦などの際にも様々な任務を遂行できるとされている」、「ロボット」を導入すると、和平がますます遠のきそうだ。 (その12)(中国の自信過剰と誤算が戦争を招く最大の脅威 MI6長官、習近平のメンツ丸つぶし 欧州「中国離れ」に火をつけたリトアニアの勇敢さ、中国が幸せの国「ブータン」を侵略 40年の国境画定交渉を無視するあり得ない手口とは) 中国情勢(軍事・外交) もともと「リトアニアはむしろ中国との関係強化に期待を寄せていた」ようだ。 東野篤子氏による「習近平のメンツ丸つぶし 欧州「中国離れ」に火をつけたリトアニアの勇敢さ」 「今や超大国になった中国は、「吹けば飛ぶ」ようなブータンとまともに向き合おうとはしていない。既成事実を積み上げることで国境問題を強引な形で解決しようとしている」、「ブータン」を半ば無視した形で「国境問題を強引な形で解決しようとしている」、とは酷い話だ。 藤和彦氏による「中国が幸せの国「ブータン」を侵略 40年の国境画定交渉を無視するあり得ない手口とは」 デイリー新潮 Newsweek日本版 「民間部門と協力することは、秘密に包まれた組織にとって「大変化」であるとムーアは言う」、秘密を解き明かしていくスパイ物小説の醍醐味が若干薄らいだような感じを抱くのは、筆者だけではあるまい。 「サイバーセキュリティの軍拡競争について、これに勝つためには、イギリスのスパイ組織はみずから根付いた極秘文化の一部を手放し、テック企業からの助けを求めなければならない、ともムーアは論じた」、今回、禁を破ってマスコミに登場したのも、こうした事情変化を反映しているのだろう。 「英諜報機関MI6の局長が長い歴史のなかで初めて公の場で演説をした」、「イギリスのスパイが直面する「4大脅威」として中国、ロシア、イラン、国際テロ組織の名を挙げ、中国がそのなかで最も重視すべき相手であると語った」、妥当な判断だ。 Newsweek日本版「中国の自信過剰と誤算が戦争を招く最大の脅威 MI6長官」 「中国の「小国蔑視」は、これまで中国と密接な経済関係にあった中・東欧諸国の中国離れを確実に加速させている。 チェコやスロバキア、ポーランドなどの中・東欧諸国はリトアニアに続けとばかりに、台湾へのワクチン提供や要人の相互往来を、もはや中国に臆することなく展開している」、面白い展開になってきた。 「EUが一丸となって中国の対リトアニア圧力に対抗しうる体制には程遠い」、多くの国の集合体である「EU」の宿命ともいえる。
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