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中国国内政治(その13)(「第3の歴史決議」で見えた習近平の権力と脆弱性 「中国の特色ある社会主義」とは共産党一党独裁、ゼロコロナへの疑問 米中衝突の危機…「北京五輪後に中国は崩壊する」といえる「これだけの理由」、これから大国に起こる「ヤバすぎる事態」…「北京五輪後に中国は崩壊する」といえる根拠) [世界情勢]

中国国内政治については、昨年10月9日に取上げた。今日は、(その13)(「第3の歴史決議」で見えた習近平の権力と脆弱性 「中国の特色ある社会主義」とは共産党一党独裁、ゼロコロナへの疑問 米中衝突の危機…「北京五輪後に中国は崩壊する」といえる「これだけの理由」、これから大国に起こる「ヤバすぎる事態」…「北京五輪後に中国は崩壊する」といえる根拠)である。

先ずは、昨年11月23日付け東洋経済オンラインが掲載した 東洋大学教授の薬師寺 克行氏による「「第3の歴史決議」で見えた習近平の権力と脆弱性 「中国の特色ある社会主義」とは共産党一党独裁」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/470899
・『日本を含め世界中が注目した中国共産党の「第3の歴史決議」なる文書が先日、公表された。タイトルは『党の百年奮闘の重要な成果と歴史的経験に関する中共中央の決議』(新華社日本語版の表記)。中国語での字数は約3万6000字、日本語訳は約5万5000字にのぼる。日本の新聞1ページの活字が約1万1000字なので、5ページ分相当の膨大な文書だ。 日本語訳が公表されたからといって全文を読む人は、中国研究者や政府関係者らごく一部の専門家に限られるだろう。筆者も覚悟して日本語訳を読んでみたが、これほど読みにくくわかりにくい文書はあまり見たことがない。翻訳が悪いのではなく、定義や意味が不明な抽象的な言葉や造語がこれでもかというほど次から次へと列挙されているから読みにくいのである。 しかし、決議が言いたいことだけはよくわかった。まずアヘン戦争以降に屈辱的な歴史を刻んだ中国の運命を変えて今の素晴らしい中国を作ったのは、結党百年を迎えた中国共産党であるということ。次にこれから先、「中華民族の偉大な復興」という「中国の夢」を実現するためにも中国共産党の指導が不可欠であるということ。最後は、その中国共産党にとって習近平国家主席の存在が党の「核心」として不可欠であるということだ』、「定義や意味が不明な抽象的な言葉や造語がこれでもかというほど次から次へと列挙されているから読みにくいのである」、無理な論理構成が読み難さにつながったのかも知れない。
・『共産党と習近平、断固とした「二つの擁護」  つまりこの決議は、中国共産党による一党支配と、習近平氏の権力を維持し継続することの正統性を示すための文書なのである。それは決議文の冒頭に登場する「二つの擁護」という言葉がはっきりと示している。「習近平同志の党中央・全党の核心としての地位を断固として擁護し、党中央の権威と集中的・統一的始動を断固として擁護する」というのがポイントで、ここに決議文の意図が明記されている。 では、中国は共産党一党支配と習近平体制の下でいったい、どういう国を目指しているのか。それを示すキーワードが「中国の特色ある社会主義」だ。決議文はこの言葉についていろんな角度から言及しており、それを整理してみると以下のようになる。 まずこの言葉を創り出したのはいうまでもなく習近平主席とされている。習近平氏が「どのような社会主義現代化強国を建設するか、いかにしてそれを建設するかについて、一連のオリジナルな国政運営の新理念、新思想、新戦略を打ち出した」というのである。問題はその具体的な内容であるが、冒頭に触れたようにわかりにくい。) まずその全体像については、「マルクス主義の基本原理を中国の具体的な実情と結びつけ、中国の優れた伝統文化と結びつけることを堅持」、「毛沢東思想、鄧小平理論、『三つの代表』重要思想、科学的発展観を堅持」などとしている。 マルクス主義という普遍性を求めるイデオロギーと中国の伝統文化という特殊な空間をどう結び付けるのかがよくわからない。それ以上に、毛沢東、鄧小平、江沢民、胡錦涛という歴代の指導者の掲げた思想のすべてを堅持するというのは、過去に指導者同士が対峙したり、後継者が前任者を否定してきたりした歴史を考えると、成り立たないことであるはずだ。 日本政治に例えれば、「軽武装経済優先」の吉田ドクトリンと、「日米安保改定」の岸信介、「所得倍増論」の池田勇人、「列島改造論」の田中角栄、「財政均衡論」の福田赳夫ら戦後の主歴代の指導者の掲げた思想のすべてを堅持するというのは、首相の政策や理念をすべて堅持すると言っているようなものだ』、「マルクス主義という普遍性を求めるイデオロギーと中国の伝統文化という特殊な空間をどう結び付けるのかがよくわからない」、「過去に指導者同士が対峙したり、後継者が前任者を否定してきたりした歴史を考えると、成り立たないことであるはずだった」、確かに明らかな矛盾もあるようだ。
・『「中国の特色ある社会主義」とは共産党の一党独裁  今回の決議は、毛沢東時代の「文化大革命」を「まったく誤った判断」と表現するなど一部の歴史を批判しているが、これまで同様、毛沢東そのものを全面否定はせず、相変わらず、中国共産党は間違ったことをしてこなかったという無謬性を重視する立場に立っている。つまり、過去の指導者の思想を堅持することは一党支配の無謬性や正統性を維持するためには不可欠なのだ。だから、習近平氏にとって歴代指導者の「思想の堅持」はおそらく建前にすぎない。 本音は「中国の特色ある社会主義」に関するさらに踏み込んだ説明部分にあるだろう。そこでは以下のように書かれている。 「中国の特色ある社会主義の最も本質的な特徴は中国共産党の指導であり、中国の特色ある社会主義制度の最大の優位性は中国共産党の指導であり、中国共産党は最高の政治的指導勢力である」 「改革の全面的深化の総目標は、中国の特色ある社会主義制度を充実・発展させ、国家統治体系・統治能力の現代化を推し進めることである」 「新時代における党の軍隊強化の目標は、『党の指揮に従い、戦闘に勝利できる、優れた気風をもつ』人民軍隊を建設し、人民軍隊を世界一流の軍隊に築き上げることだ」) 要するに共産党だけが支配する政治体制が「中国の特色ある社会主義」ということなのだ。その目標である「中華民族の偉大なる復興」とは、軍事的にも経済的にもアメリカに匹敵する、あるいはアメリカを上回る国家の建設ということだ。このあたりは特に目新しいものではなく、習近平氏がこれまでも繰り返し主張してきたことだ。 経済や軍事についての具体的な政策的目標の数値などは一切、登場しない。つまりこの決議文はあくまでも政治的文書であって、国民に対し政策を提示した文書ではないのである。その結果、習近平氏がどういう社会を目指しているのかが余計にわかりにくくなっているのだ。 そして、決議文は中国社会の将来像を示す代わりに、党への服従を国民に強く求めている』、「この決議文はあくまでも政治的文書であって、国民に対し政策を提示した文書ではない」、「中国社会の将来像を示す代わりに、党への服従を国民に強く求めている」、ムシのいい話だ。
・『鄧小平は分権を進め、習近平は自らへ権力を集中  「党中央による集中的・統一的指導は党の指導の最高原則であり、それを強化・擁護することは全党共通の政治責任」 「党の指導を堅持するには、全党の中央への服従を確保しなければならない」 「個人主義・分散主義・自由主義・自己本位主義・事なかれ主義などを防ぎ、それに反対する」 「面従腹背する者を一掃し、全党が政治的立場、政治的方向、政治的原則、政治的道筋において党中央と高度の一致を保つ」 毛沢東への権力集中への反省から、鄧小平は形式的な面もあったものの、権力集中を改め集団指導体制を取り入れるなど、政府と党の役割分担を明確にする分権を進めた。しかし、習近平氏はその逆を突き進んでいる。 2017年の党大会で習近平氏は「党政軍民学、東西南北中、党はすべてを領導する」と発言して大きな話題になった。その後、習近平氏は強力にそれを実践し、党への権力集中、習近平氏への権力集中を徹底的に進めた。今回の決議文は党や習近平氏への権力集中をさらに進めようという姿勢が明確に出ている。) もちろん権力集中は内政問題だけではない。決議文には「党が対外活動を指導する体制・仕組みを整え、対外活動でのトップダウン設計を強化し、中国の特色ある大国外交について戦略的構想をうち出す」とか、「中国の特色ある強軍」などという表現も登場している。 こうなると、外交交渉の場ではたとえ王毅外相であっても党が決めた方針をオウム返しで繰り返すことしかできなくなる。双方の妥協や譲歩によって合意形成を目指す外交は中国政府相手では成り立たなくなってしまう』、「毛沢東への権力集中への反省から、鄧小平は・・・権力集中を改め集団指導体制を取り入れるなど、政府と党の役割分担を明確にする分権を進めた。しかし、習近平氏はその逆を突き進んでいる」、なるほど。
・『ナショナリズムや民族主義の称揚は不安の裏返し  「中国の特色ある社会主義」のもう1つの特徴は、社会主義というイデオロギーと中国の伝統や文化との融合を強調することによって、ナショナリズムや民族主義を強調している点だ。決議文では「人類の歴史上、外部の力を当てにし、外国のモデルをそのまま取り入れ、人の後についてまねばかりすることで強くなり栄えた民族や国家は1つもない。そのようなことをすれば、失敗をなめるか、従属国になるよりほかはない」などと民族性の重要性を繰り返し強調している。 中国は西側諸国の自由、民主主義などの普遍的価値を強く否定、批判し続けている。香港に対する一連の対応が示すように、民主主義的潮流が中国国内に広がれば、それが共産党一党支配の否定につながることを理解しているからであろう。 ここから浮かび上がってくるのは、共産党指導部の強気の姿勢とは裏腹の一党支配の維持、継続への不安ではなかろうか。共産党は毛沢東時代には抗日戦争や国民党との内戦の勝利、そして建国という歴史とそれらを支えてきたイデオロギーでその支配の正統性を獲得してきた。次の時代の中心人物の鄧小平は「改革開放路線」による経済成長によって正統性の確保に成功した。 しかし今、中国は経済成長に陰りが見えはじめるとともに貧富の格差拡大など数多くの深刻な社会問題を抱えている。共産党がこれから先、一党支配の正統性をどうやって確保するのかは悩ましい問題であろう。 定義の不明な抽象概念の乱用と、ナショナリズムや民族主義を煽って党や習近平氏への忠誠心を国民に強いる今回の決議文からは、習近平氏の圧倒的な権力の強さと同時に、共産党一党支配が抱える脆弱性も読み取ることができる』、「中国は経済成長に陰りが見えはじめるとともに貧富の格差拡大など数多くの深刻な社会問題を抱えている。共産党がこれから先、一党支配の正統性をどうやって確保するのかは悩ましい問題であろう」、「今回の決議文からは、習近平氏の圧倒的な権力の強さと同時に、共産党一党支配が抱える脆弱性も読み取ることができる」、その通りだ。

次に、1月31日付け現代ビジネス「ゼロコロナへの疑問、米中衝突の危機…「北京五輪後に中国は崩壊する」といえる「これだけの理由」」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/91927?imp=0
・『21世紀は中国の世紀だと言われてきたが、無理を重ねて、急激に膨張した大国に異変が生じ始めている。国際的孤立、内政の混乱、人民の不満、そしてコロナの激増—崩壊の序曲が聞こえてきた。その崩壊の根拠を前後編にわたり7つ挙げる。 (1)「ゼロコロナ」政策は大失敗  今年、世界が直面する最大のリスクは中国の「ゼロコロナ政策」の失敗だ—米国のリスク調査会社ユーラシア・グループが発表した論文が大きな波紋を呼んでいる。 同グループ社長のイアン・ブレマー氏がこう警告する。 「新型コロナが流行し始めた'20年に中国が行ったアプローチは世界で最も効果的なものでした。新規感染者を追跡し、大規模なロックダウンで感染拡大を防ぐことができた。しかし、昨年から爆発的に流行を始めたオミクロン株は、これまでの変異株とは段違いの感染力を持っています。 そして、中国製のワクチンはオミクロン株の感染拡大に効果はありません。つまり、ほとんどの中国人はオミクロン株に対する抗体を持っていない。これまで2年間、『国ごとロックダウン』を行ってきたため、再び国を開くことが危険になってしまいました」 2月4日に開幕する北京五輪を控え、中国政府はロックダウンを連発している。西安市では半月以上も都市封鎖が続き、オミクロン株の市中感染が確認された天津市では全市民を対象にPCR検査を行っている。 西安市では、1月1日に腹痛を訴える妊娠8ヵ月の女性が、陰性証明が4時間前に切れていることを理由に診察を拒否され、病院の前に放置されて死産するという悲惨な事件も起こった。 有効かどうかもわからないゼロコロナ政策のために、市民の生活が厳しく制限され、死人まで出ているのが現状だ。 「中国の政策では感染を抑えることができず、より厳しい封鎖が必要になるでしょう。その結果、経済的な混乱が拡大し、『中国はコロナに勝利した』という政府のプロパガンダに対して国民の不満が高まるはずです。 欧米が開発したようなmRNAワクチンを作り、ブースター接種を進めなければ、この状態からは抜け出せない。世界のサプライチェーンの要であった中国が、今年は苦境に立たされることになるのです」(ブレマー氏)) こうした現状に中国の庶民の不満も高まっている。中国の社会問題に詳しいジャーナリストの古畑康雄氏がこう話す。 「中国の国営メディア、新華社通信が米国のコロナ対策がいかにまずかったかを指摘する記事をSNSに投稿しました。すると、SNSでは『米国では病院の前で妊婦が死産するのか』と反論が浮上。ロックダウンしている地域では食べるものもないような生活を強いられているといった批判も書き込まれています。 そういった書き込みはすぐに削除されるのですが、習近平政権の極端な『ゼロコロナ』対策への疑問の声が出ているのも事実です」 五輪が終わり、オミクロン株が爆発的に感染拡大したとき、中国崩壊の序章が幕を上げる』、「欧米が開発したようなmRNAワクチンを作り、ブースター接種を進めなければ、この状態からは抜け出せない。世界のサプライチェーンの要であった中国が、今年は苦境に立たされることになるのです」、「五輪」終了後はどうなるのだろう。
・『(2)米中激突へのカウントダウン  ゼロコロナの失政から国民の目を逸らすために習近平国家主席が画策するのが、台湾侵攻だ。 「祖国の完全な統一という歴史的な任務は、必ず実現しなければならないし、実現できる」 習近平氏が高らかに宣言したのは、昨年10月のことだ。だが、五輪を前に、台湾に対する言動は一転して、おとなしくなっている。むしろそれが怖いと指摘するのは、中国に詳しいジャーナリストの福島香織氏だ。 「去年は台湾を想定した軍事訓練を何度も行っていたのに、今年に入ってやけに静かなのです。北京五輪や秋に控える5年に一度の共産党大会に向けて、穏やかにしているのでしょう。ですが、その後はわかりません。 本当にことを起こすときは騒がない。『殺すぞ』と脅すよりも、いきなり刺すほうが怖い。中国の台湾に対する沈黙を武力行使の前触れと取るべきなのか、現時点では判断がつきません」) 中国が台湾に牙を剥けば、もちろん米バイデン政権が黙っていない。ブッシュ政権で大統領上級顧問を務めたリチャード・ハース氏が言う。 「米国の二大政党、共和党と民主党は多くの点で対立していますが、中国に対して強硬路線を取ることについては同意しています。両党とも半導体で世界をリードする台湾の安全保障については強い危惧を抱いています。そのことは中国も理解しているはずです。 もし中国が台湾に対して軍事力を行使したら、米国と日本はすぐに行動しなければなりません。米中で全面戦争が起こる可能性は低いですが、台湾と中国の突発的な衝突は起こりうる。日米両国はすぐにでも危機に備えなくてはいけません」 軍事衝突のカウントダウンは始まっている』、「ゼロコロナの失政から国民の目を逸らすために習近平国家主席が画策するのが、台湾侵攻だ」、「もし中国が台湾に対して軍事力を行使したら、米国と日本はすぐに行動しなければなりません」、その通りだ。
・『(3)習近平国家主席「暗殺」の危機  今年秋の党大会で習近平氏が異例の3期目に突入するのは確実視されている。国家主席に就任してから10年。さらに5年の任期が延長される。 だが、そうすんなりいくとは限らない。ユーラシア・グループが今年の10大リスクで4位に挙げたのが、「中国の内政」だった。ブレマー氏が言う。 「たしかに習近平氏は毛沢東以来のパワフルな指導者であることは間違いありません。ただ、個人崇拝の復活や社会の統制強化など、毛沢東時代への回帰を強める習氏の強硬路線には、共産党内で異論があることもたしかです。 習氏が3期目の国家主席に就任したら、政策を実行するためにますます独裁へと走るでしょう。しかし、独断的な政策を実行すればするほど国の借金は増え、環境も悪化し、社会に不協和音が生じます。そうなると、政治的な安定が揺らぐことになる。習氏にとっては、今まで経験したことのないような、脆い中国となるはずです」) 党大会を前に、習氏と反対勢力の間では水面下で激しい権力争いが繰り広げられている。 「習氏は3期目突入のために、敵対する勢力をどんどん失脚させています。最近では昨年末に元解放軍上将の劉亜洲氏が逮捕されたとの情報が飛び交っています。劉氏はスタンフォード大学への留学経験のある親米派の軍人で、台湾への武力侵攻に反対してきました。 こうした劉氏の言動が習氏の逆鱗に触れて、失脚させられたとの見方もあります」(福島氏) 反習近平派にとって、習氏が3期目に突入すれば、さらに冷や飯を食わされることになる。いつどこで社会的生命を抹殺されるかわからない。そうした危機感から、習体制を転覆させようとする動きが出てきてもおかしくはない。 「もちろん、権力を持っている側が圧倒的に強いので、習近平体制がひっくり返されるかというとなかなか難しいでしょう。しかし、党大会まであと半年以上あります。 習氏がその座を追われるとしたら、政変以外にもっともありそうなのが、暗殺です。毛沢東時代に副主席だった林彪が毛沢東の殺害を企てたとされるように、中国で暗殺という手段は比較的多く使われます。 米国を拠点にする中国問題専門のニュースサイト『博訊新聞網』によると、直近では'18年10月、習氏が中国南方を視察中に暗殺計画が発覚したとされます。この視察では当初の予定が何度もいきなり変更されたそうですが、それは暗殺の動きが直前に判明したからだと報じられました」(福島氏) 追い詰められた反対勢力の逆襲が起こるのか。 引き続き後編記事『これから大国に起こる「ヤバすぎる事態」…「北京五輪後に中国は大打撃を受ける」といえる根拠』にて、残り4つの根拠を示そう』、「習氏がその座を追われるとしたら、政変以外にもっともありそうなのが、暗殺です」、なるほど。

第三に、1月31日付け現代ビジネス「これから大国に起こる「ヤバすぎる事態」…「北京五輪後に中国は崩壊する」といえる根拠」を紹介しよう。
・『21世紀は中国の世紀だと言われてきたが、無理を重ねて、急激に膨張した中国に異変が生じ始めている。前編記事『ゼロコロナへの疑問、米中衝突の危機…「北京五輪後に中国は大ダメージ」といえる「これだけの理由」』では、7つの根拠のうち、ゼロコロナ政策の失敗や米中対立、習近平の暗殺の可能性についてお伝えした。後編でも引き続きその根拠を示そう。 (4)21世紀の天安門事件が勃発する  中国政府による民主活動家への締め付けは激烈だ。現代中国を研究する東京大学大学院教授の阿古智子氏が解説する。 「著名な民主活動家、郭飛雄氏は昨年1月、米国在住の妻ががんを患っていることを知りました。郭氏は面会のために米国行きを求めましたが叶わず、妻は今月10日に亡くなった。その2日後には、郭氏自身が国家政権転覆扇動容疑で逮捕されたのです。こうした強圧的な支配に国民の不満が溜まっていないはずがありません。 これまでも局地的な小さい暴動やデモは頻発しているはずです。それが私たちの耳に入らないのは、当局がニュースで拡散される前にもみ消しているから。20世紀の天安門事件ほど大規模なものになるかはわかりませんが、今後も政府批判の動きは続くはずです」 とりわけ、若者の間に不満のマグマは密やかに蓄積されている。昨年、中国で大学を卒業したのが909万人。実にその4割が就業できていない。大学進学率が急激に上がったこともあって、学歴エリートとなった若者を吸収するだけの受け皿がないのだ。 中国の社会問題に詳しいジャーナリストの古畑康雄氏が言う。 「仮に就職できたとしても、『996問題』があります。これは朝9時から夜の9時まで週に6日間働かされるというもの。むちゃくちゃに働かされて、30歳くらいで心身を病む。使い物にならなくされ、企業から追い出されてしまうのです」 昨年11月には中国の大手自動車メーカー、BYDで、36歳の男性社員が過労死する事例が報じられた。その前月の休みはわずか2日間で、残りはすべて12時間以上の勤務だったという。) 「中国ではネットが厳しく監視されていますが、それでも規制が届きにくいVPN(仮想プライベートネットワーク)を使って、ツイッターなど、本来、中国国内では使えないサービスで情報発信をしている若者もいます。 彼らは海外の情報も手に入れることができます。若者の本音はこうしたネット空間に溢れていて、当局もそれを規制しきれていません。ネットで若者の連帯が生まれているのです」(古畑氏) 今後、若者の怒りが習近平政権にとってのリスク要因になるはずだ。 20世紀の民主化運動は天安門が舞台となったが、21世紀の天安門事件は、ネット空間が舞台となる。連帯した若者が21世紀の天安門事件は、ネット空間が舞台となる。連帯した若者がITを駆使して中国全土で一斉に蜂起したとき、前回のように武力で弾圧することは困難だろうITを駆使して中国全土で一斉に蜂起したとき、前回のように武力で弾圧することは困難だろう。』、「21世紀の天安門事件は、ネット空間が舞台となる。連帯した若者がITを駆使して中国全土で一斉に蜂起したとき、前回のように武力で弾圧することは困難だろう」、「ネット空間」は「規制」されているとはいえ、「当局もそれを規制しきれていません」からだ。
・『(5)不動産バブル崩壊経済は破綻へ  中国経済が抱える最大の問題は不動産バブルの崩壊だ。昨年から中国の大手不動産会社、恒大集団が債務不履行を繰り返し、倒産の危機に直面している。中国で日本企業向けにリサーチ業務を行う日本人コンサルタントが明かす。 「中国は昨年、人口が48万人しか増えず、今年から人口減少に転じると指摘されています。不動産価格が上昇してきたのは、人口増加で住宅需要が高まることが前提だったわけで、それが終わるのだから不動産価格が暴落するのは目に見えています。 中国人が不動産価格の急落は金融危機を引き起こす。日本のバブル崩壊もそうだった。地価が下がったため、銀行の担保割れが発生。さらに不動産が叩き売られるという悪循環に陥り、「失われた30年」に突入した。 「中国でも金融機関がこぞって不動産会社にカネを貸し付けていますが、経営が破綻すると債権の放棄を迫られるでしょう。そうすると、金融システムが機能不全に陥り、経済の血液であるカネの流れがストップする。すべての産業から資本を引き上げる動きが進み、経済は破綻します。 バブル崩壊が襲った'90年代の日本は、まだ人口が増えていました。それと比べて、人口が減少に転じた中国を襲う不動産バブルの崩壊は日本以上にピッチが早く、大きくなるはずです」(前出・コンサルタント) これまで、中国の庶民はいつか豊かになれるはずだと夢を見て、辛い日々を生きてきた。しかし、その夢は叶わず、それどころか、明日は今日よりも悪くなる時代を生きなければならない。 科学技術振興機構アジア・太平洋総合研究センター特任フェローの大西康雄氏がこう話す。 「中国の庶民の間では『未富先老』—豊かになる前に老いてしまうという不安が蔓延しています。だったら、共産党の現体制に協力したところで意味がないという不満も同時に広がりつつある。日本はバブルが崩壊する前に、雇用や年金、医療・福祉などの社会的インフラを整備してきました。 しかし、中国では社会的インフラへの投資が十分ではない。数億人の比較的貧しい農村住民がいるうえ、社会保障も未整備のまま、高齢化社会を迎えるわけです。庶民は正直なもので、将来が不安だから若者は子供を作らない。その結果、ますます少子高齢化が進むという負のスパイラルに陥っています」 破綻はすぐそこに迫っている』、「中国では社会的インフラへの投資が十分ではない。数億人の比較的貧しい農村住民がいるうえ、社会保障も未整備のまま、高齢化社会を迎えるわけです。庶民は正直なもので、将来が不安だから若者は子供を作らない。その結果、ますます少子高齢化が進むという負のスパイラルに陥っています」 破綻はすぐそこに迫っている」、情勢は極めて深刻なようだ。
・『(6)「嫌われ中国」国際社会でも孤立無縁に  中国政府も直面する国内問題に手をこまねいているわけではない。国内だけで国民を食わせられないなら、海外へ進出して仕事を作る。それが、コロナ以前に習近平政権が強力に推進してきた、中国と欧州を結ぶ広域経済圏構想「一帯一路」だった。中国に詳しいジャーナリストの姫田小夏氏が言う。 「中国と欧州を結ぶ『21世紀海上シルクロード』の中継地点にケニアのナイロビがあり、中国の王毅外相は今年最初の外遊先として同地を訪れるほど重視しています。しかし、中国のアフリカ進出はいまだに物議を醸しています。 中国資本が大挙して押し寄せてきますが、現地におカネが落ちない仕組みだからです。中国はケニアに鉄道を敷設しましたが、車両や駅舎のみならず、列車の車掌や案内係の制服まですべてがメイド・イン・チャイナ。 川上から川下まで中国企業が握り、ほんのわずかな肉体労働だけを現地人が担う。儲けを持っていくのは圧倒的に中国企業なのです」 さらに中国が借金のカタに自分たちが整備したインフラを取得する「債務の罠」も世界中から批判されている。 「ギリシャではピレウス港に中国企業が出資して一部運営権を取得し、地元が反発しています。オーストラリアやスリランカでも重要港の99年間の運営権を取得し、インドや欧州から警戒されている。中国が債務と引き換えに世界進出を企んでいることに世界は気づいているのです」(姫田氏) 中国の孤立は刻々と深まっているのだ』、「中国が借金のカタに自分たちが整備したインフラを取得する「債務の罠」」は、本当に悪どい。「一帯一路」も漸く化けの皮が剥がれてきたようだ。
・『(7)頭脳流出で人材の焼け野原  国内外で風当たりが強まる習近平政権に愛想をつかして、国外脱出を企てる人材も増加している。中国事情に詳しいジャーナリストで、千葉大学客員准教授の高口康太氏はこう分析する。 「中国政府は『共同富裕』(みんなで豊かになる)をスローガンに、大手IT企業を儲けすぎだとして叩いています。ポピュリズムを背景にした上手なやり方かもしれませんが、叩かれるほうからしたらたまったものではない。見切りをつけて海外へ行ってしまう、優秀な社員も多いでしょう。 また、オンラインゲームが若者を腐敗させるとして、昨年からゲーム会社も批判の的になっています。昨年の7月以降、新作が1本も出ておらず、1万4000社が倒産したと言われています。こうした流れが続けば、優秀なIT人材を国内に引き止めることはできなくなります」 中国から逃れて日本に来たエリートは「『内巻』に疲れた」と口を揃える。姫田氏が言う。 「『内巻』とは無駄な競争を意味します。若者からは『上司のヨイショや無駄な徹夜作業がバカバカしい』というグチをよく聞きます。企業間競争も激しく、一つのヒット商品が生まれれば、次々と同じような商品が発売され、すぐに供給過剰になってしまう。果てしない競争に巻き込まれることを嫌って、海外脱出を希望する学歴エリートの若者が多い」 優秀な頭脳は海外へ流出し、国内に留まらざるを得ない若者は無気力に苛まれていく。これでは衰退していくばかりだ。 北京五輪では、コロナによる各国選手の調整不足もあり、中国はメダルラッシュに沸くだろう。しかし、祝祭が終われば、7つの危機が明るみになる。北京五輪は中国最後の輝きになるだろう』、「中国」の「メダルラッシュ」は大したことはなかったようだ。「祝祭が終われば、7つの危機が明るみになる」、どんな感じになるのだろう。余り深刻な危機に陥らないことを願うばかりだ。
タグ:中国国内政治 (その13)(「第3の歴史決議」で見えた習近平の権力と脆弱性 「中国の特色ある社会主義」とは共産党一党独裁、ゼロコロナへの疑問 米中衝突の危機…「北京五輪後に中国は崩壊する」といえる「これだけの理由」、これから大国に起こる「ヤバすぎる事態」…「北京五輪後に中国は崩壊する」といえる根拠) 東洋経済オンライン 薬師寺 克行氏による「「第3の歴史決議」で見えた習近平の権力と脆弱性 「中国の特色ある社会主義」とは共産党一党独裁」 「定義や意味が不明な抽象的な言葉や造語がこれでもかというほど次から次へと列挙されているから読みにくいのである」、無理な論理構成が読み難さにつながったのかも知れない。 「マルクス主義という普遍性を求めるイデオロギーと中国の伝統文化という特殊な空間をどう結び付けるのかがよくわからない」、「過去に指導者同士が対峙したり、後継者が前任者を否定してきたりした歴史を考えると、成り立たないことであるはずだった」、確かに明らかな矛盾もあるようだ。 「この決議文はあくまでも政治的文書であって、国民に対し政策を提示した文書ではない」、「中国社会の将来像を示す代わりに、党への服従を国民に強く求めている」、ムシのいい話だ。 「毛沢東への権力集中への反省から、鄧小平は・・・権力集中を改め集団指導体制を取り入れるなど、政府と党の役割分担を明確にする分権を進めた。しかし、習近平氏はその逆を突き進んでいる」、なるほど。 「中国は経済成長に陰りが見えはじめるとともに貧富の格差拡大など数多くの深刻な社会問題を抱えている。共産党がこれから先、一党支配の正統性をどうやって確保するのかは悩ましい問題であろう」、「今回の決議文からは、習近平氏の圧倒的な権力の強さと同時に、共産党一党支配が抱える脆弱性も読み取ることができる」、その通りだ。 現代ビジネス「ゼロコロナへの疑問、米中衝突の危機…「北京五輪後に中国は崩壊する」といえる「これだけの理由」」 「欧米が開発したようなmRNAワクチンを作り、ブースター接種を進めなければ、この状態からは抜け出せない。世界のサプライチェーンの要であった中国が、今年は苦境に立たされることになるのです」、「五輪」終了後はどうなるのだろう。 「ゼロコロナの失政から国民の目を逸らすために習近平国家主席が画策するのが、台湾侵攻だ」、「もし中国が台湾に対して軍事力を行使したら、米国と日本はすぐに行動しなければなりません」、その通りだ。 「習氏がその座を追われるとしたら、政変以外にもっともありそうなのが、暗殺です」、なるほど。 現代ビジネス「これから大国に起こる「ヤバすぎる事態」…「北京五輪後に中国は崩壊する」といえる根拠」 「21世紀の天安門事件は、ネット空間が舞台となる。連帯した若者がITを駆使して中国全土で一斉に蜂起したとき、前回のように武力で弾圧することは困難だろう」、「ネット空間」は「規制」されているとはいえ、「当局もそれを規制しきれていません」からだ。 「中国が借金のカタに自分たちが整備したインフラを取得する「債務の罠」」は、本当に悪どい。「一帯一路」も漸く化けの皮が剥がれてきたようだ。 「中国」の「メダルラッシュ」は大したことはなかったようだ。「祝祭が終われば、7つの危機が明るみになる」、どんな感じになるのだろう。余り深刻な危機に陥らないことを願うばかりだ。
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ミャンマー(その6)(ミャンマー軍政との関係見直し求める声高まる 会計検査機関や日本政府も対象に、防衛大学校は国軍士官候補生の「留学」受け入れ 日本は対ミャンマー外交 防衛協力の見直しを、上智大・根本敬教授に聞いたミャンマー情勢のいま ミャンマー「情勢打開」へ 日本が握る交渉のカギ) [外交]

ミャンマーについては、6月18日に取上げた。今日は、(その6)(ミャンマー軍政との関係見直し求める声高まる 会計検査機関や日本政府も対象に、防衛大学校は国軍士官候補生の「留学」受け入れ 日本は対ミャンマー外交 防衛協力の見直しを、上智大・根本敬教授に聞いたミャンマー情勢のいま ミャンマー「情勢打開」へ 日本が握る交渉のカギ)である。

先ずは、本年1月21日付けNewsweek日本版が掲載したインドネシア在住ジャーナリストの大塚智彦氏による「ミャンマー軍政との関係見直し求める声高まる 会計検査機関や日本政府も対象に」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/01/post-97907_1.php
・『<私たちとは関係のない遠い国の話だとは言えない関係がある> 軍政による強権支配、人権侵害が続くミャンマーで、反軍政の立場をとる国民や抵抗組織などから国際的な会計監査機関に対して軍との関係を見直すよう要求がでており、こうした要求は日本政府にも向けられていることが国際的な人権団体などの指摘で明らかになっている。 市民や反軍政抵抗組織の人々にとっては、ミャンマー軍との関係維持は軍政の「容認」「正当化」を意味する。軍や軍の関係する組織との関係を見直し、関係を断つことが軍政を孤化させせ国民を支持することに結び付くと、現地の反軍独立系メディア「ミャンマー・ナウ」は、19日国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW) 担当者の寄稿を掲載し伝えた。 人権団体「ジャスティス・フォー・ミャンマー(JFM)」は1月19日、東南アジア諸国連合最高会計検査機関(ASEANSAI)と最高会計検査機関国際組織(INTOSAI)、さらにノルウェーとスウェーデンの監査機関が、ミャンマーの会計検査機関を「ミャンマー代表」としていると指摘した。 ミャンマー会計検査機関は軍政支配下の組織であることから、JFEは軍政と関係が深い組織との関係見直しを求める声明を出したと見られる』、「ミャンマーの会計検査機関」は「軍政支配下の組織」であるとはいえ、小さな国ではやむを得ないのではなかろうか。
・『批判の目は日本にも  またこうした矛先は日本政府にも向けられている。 「ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)」は2021年12月、日本の防衛大学がミャンマー軍士官候補生を留学生として受け入れていることを中止するよう求める声明を出している。 HRWによるとミャンマー軍から8人の士官候補生が防大に留学しており、このうち2人は2021年2月1日のクーデター発生後の留学であるという防衛省からの情報も伝えている。ミャンマーからの留学生受け入れは2015年から始まっているという。 防大はかねてからミャンマーの他に韓国やモンゴル、インドネシア、カンボジア、タイ、フィリピン、マレーシアなどアジア各国を中心に士官候補生などを留学生として受け入れている。 こうした留学生が防大を卒業して帰国、各国の軍で昇進して活躍することで日本との軍事的友好関係に資するとして積極的に推進している経緯がある。 日本政府はクーデター発生直後に重大な懸念を表明し「暴力の停止」や「拘束されたアウン・サン・スー・チー最高顧問兼外相やウィン・ミン大統領らの即時釈放」を軍政に求めた。3月18日には同盟国との共同声明で軍による「非武装の民間人への武力行使」を非難した。 「ミャンマー・ナウ」は、こうした事実がある一方で、留学生をいまだに受け入れていることが「クーデターを非難する日本政府の姿勢と"矛盾"するだけでなく、人道に対する罪や人権侵害への軍の責任を問う国際社会の努力を損なっている」と伝えている』、「非難」声明を出したのであれば、「留学生」の「受け入れ」は停止すべきだった。ブレーキをかけるべきは外務省や首相官邸の筈だ。
・『日本政府の"矛盾"を指摘  こうした独立系メディアによる見解を「見当違いである」とみる向きもあるだろうが、ほぼ毎日軍と武装市民や少数民族の武装勢力の戦闘が行われているミャンマーは、武装市民などだけでなく、一般市民も軍により殺害されている過酷な状況にあり、日本によるミャンマー軍兵士の受け入れという事実は受け入れることが難しいという側面がある。 クーデター発生直後から日本は「民主政府と軍の双方に対話のパイプがある」として仲介・調停に乗り出し、日本の「特別な立場」を強調してきた。 だがここで言われる「軍とのパイプ」とは防大留学生ですでに帰国して軍の幹部あるいは中堅幹部として軍務についている軍人などであり、旧日本兵の遺骨収集活動などに名を連ねている民間人と軍政幹部の限定的な繋がりに過ぎない。 この民間人は日本外務省などと協力して軍政に働きかけて拘束されていた日本人ジャーナリストの解放交渉を進めた。 しかし軍政に抵抗を続ける市民にとって日本の姿勢は「もどかしい」として苛立ちが強まっているという』、「軍とのパイプ」が実態は細く頼りないもののようだ。本当は裏ルートではもっと強力な「パイプ」があるのを筆者が知らないだけではないのか。
・『国内各地で戦闘激化、犠牲者増加  2月1日のクーデター1周年を前に軍は国内治安安定を内外に示すためか、各地で攻勢を強めており、武装市民組織PDFや少数民族武装勢力との戦闘が激化、その影響で非武装・無抵抗の一般市民の犠牲も増加している。 PDFとの関係が疑われる市民らを後ろ手に縛り火を放って焼殺したり、斬首してその首を見せしめに晒すなど、軍による残虐な殺害、人権侵害も伝えられている。 1月になって北西部サガイン地方域やチン州では軍が増強されてPDFや少数民族武装勢力の「チンランド防衛隊(CDF)」との戦闘が激化しているほか、西部ラカイン州でも「アラカン軍(AA)」と軍が衝突している。 東部のカヤ州では州都ロイコウでの激しい戦闘で住民多数が避難を余儀なくされているというように、全土で戦闘が続き犠牲者が増えているのが現況だ。 タイ・バンコクに拠点を置くミャンマーの人権団体「政治犯支援協会(AAPP)」は1月19日現在、クーデター後にミャンマー軍などの治安当局によって殺害された市民が1483人に上り、逮捕・起訴あるいは判決を受けた市民が8687人に達していることを明らかにしている。 「ミャンマー・ナウ」の報道は最後に「クーデター後、ミャンマー軍との軍事的関係を中止したニュージーランドやオーストラリア政府と同じように、日本はミャンマーとの軍事的関係を中断すべきである。さもないと日本はミャンマー軍の残虐行為に間接的に加担するリスクを負うことになるだろう」として日本に対して決断を求めている』、「1月19日現在、クーデター後にミャンマー軍などの治安当局によって殺害された市民が1483人」、市民を大規模に虐殺するなどとんでもないことだ。「日本はミャンマー軍の残虐行為に間接的に加担するリスクを負うことになるだろう」、やはり「日本はミャンマーとの軍事的関係を中断すべき」、同感である。

次に、1月28日付け東洋経済Plus「防衛大学校は国軍士官候補生の「留学」受け入れ 日本は対ミャンマー外交、防衛協力の見直しを」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/29577
・『ミャンマーの軍事クーデターから間もなく1年になる。国軍は圧倒的な武力をよりどころに弾圧を強めているが、今も市民の抵抗は収まらず、誤算が生じている。経済や市民生活は悪化し、金融機能はマヒしている。 国際社会も事態打開に向けての有効な手だてを欠いている。国軍を支援するロシアや事態を静観する中国と、国軍を非難する米英仏に分かれ、国連安全保障理事会は機能不全に陥っている。米英などはミン・アウン・フライン国軍司令官ら国軍関係者や国軍系企業などを対象とした「標的制裁」を実施しているが、目立った成果は上がっていない。 東南アジア諸国連合(ASEAN)も対応が割れている。議長国であるカンボジアのフン・セン首相がミャンマーを訪問してミン・アウン・フライン国軍司令官と会談したが、軍事政権の追認につながるとしてマレーシアの外相が批判した。シンガポールのリー・シェンロン首相も軍事政権トップのASEAN関連会議への参加に反対の姿勢を示している』、キリンビールは、現地の合弁企業から国軍に資金が流れるとして、合弁を解消する旨、表明した。
・『鮮明さを欠く日本の対応  最大の経済援助国である日本の対応は玉虫色で鮮明さに欠ける。 外務省は昨年2月1日以降、アウン・サン・スー・チー国家最高顧問ら関係者の即時解放や民主的な政治体制の早期回復、市民に対する暴力の即時停止などを求める外相談話を数度にわたって発表。主にASEAN諸国と連携して事態打開に向けて働きかけを続けてきた。他方経済制裁や標的制裁は、法整備がなされておらず、実施していない。この点では米英やEU(欧州連合)とは対応が異なる。 外相レベルでの対話は行われていないものの、在ミャンマーの日本大使館を通じた関与は続けているという。政府開発援助(ODA)についてクーデター後に新たに決定した案件はない反面、既存案件は現在も継続している。現地スタッフの安全確保などを理由に「既存案件の多くが事実上中断している」(外務省)というものの、新規ODAの打ち切りや既存案件縮小の判断はしていない。 防衛省はクーデターを非難する一方で、管轄下の防衛大学校はミャンマー国軍の士官候補生2名を「留学」目的でクーデター後も新たに受け入れている。オーストラリアやニュージーランドがクーデター後に防衛協力を打ち切ったのとは対照的だ。 衆参両院は軍事クーデターを非難し、民主的な政治体制の早期回復を求めることなどを骨子とした決議案を可決している。一部の国会議員は、民主派勢力が結成した国民統一政府(NUG)とのパイプを構築し、議員外交を通じて事態の打開を模索している。他方、日本政府は公式にはNUGとの対話窓口を設定していない。 民間レベルではミャンマー国軍との「太いパイプ」を自認する日本ミャンマー協会の渡邉秀央会長(元郵政相)がクーデター後も数度にわたってミャンマーを訪問。クーデターについて「憲法にのっとった正当な行為だ」と擁護している。同協会の役員には、麻生太郎元財務相や福山哲郎・元官房副長官ら、与野党の大物政治家が名を連ねる。協会や渡邉氏の動きは誤ったシグナルになりかねない。 このように政官民によるさまざまな働きかけが続けられているが、矛盾点も多く、国内外の疑念を招きかねない。節目の今こそ、政府はこれまでの外交・防衛面での取り組みを総点検し、対応方針を再構築すべきだ。国軍が人権侵害をやめないのであれば、ODAの一部を打ち切るなど、明確なメッセージを出す時期に来ている』、「ODA」では「他方経済制裁や標的制裁は、法整備がなされておらず、実施していない。この点では米英やEU(欧州連合)とは対応が異なる」、何たる不作為!、早急に法改正すべきだ。「日本ミャンマー協会の渡邉秀央会長」が「クーデター後も数度にわたってミャンマーを訪問。クーデターについて「憲法にのっとった正当な行為だ」と擁護」、とはとんでもないことだ。「国軍が人権侵害をやめないのであれば、ODAの一部を打ち切るなど、明確なメッセージを出す時期に来ている」、その通りだ。

第三に、1月31日付け東洋経済Plus「上智大・根本敬教授に聞いたミャンマー情勢のいま ミャンマー「情勢打開」へ、日本が握る交渉のカギ」を紹介しよう。
・『ミャンマーの軍事クーデターからまもなく1年。ミャンマーにどう向き合うのか。日本の姿勢も問われている。 ミャンマーの軍事クーデターからまもなく1年を迎える。現在も国軍や治安部隊による人権侵害はとどまるところを知らず、多くの市民が逮捕・拘留されたままだ。 この間、日本を含む国際社会は有効な手だてを講じてきたのか。ミャンマーの事情に詳しい上智大学の根本敬教授に聞いた』、興味深そうだ。
・『人権侵害はますますひどくなっている  Q:2021年2月1日に国軍がクーデターを起こしてから、まもなく1年を迎えます。ミャンマーの現状をどうとらえていますか(Qは聞き手の質問、Aは根本氏の回答)。 A:この1年、政治、経済、人権状況とも、まったく改善点が見られない。市民による抵抗が続く一方、国軍による人権侵害はますますひどくなっている。 国際社会も、事態打開に役割を果たせていない。新型コロナウイルス感染症への対応にしても、クーデター政権が無策のまま状況を放置した結果、多くの人が命を落とした。経済はひどい状態になり、新たに進出しようという外国企業もない。 Q:ミャンマーでは1988年に軍事クーデターがあり、民主化運動は封じ込められました。今回も国軍は弾圧を強めていますが、市民による抵抗運動が続いています。 国軍の弾圧により、たくさんの犠牲者が出ている点では共通している。当時と異なるのは、市民による抵抗の基盤ができており、抵抗運動が長期化していることだ。クーデター政権は圧倒的な武力を背景にミャンマーを実効支配しているが、市民の支持取り付けには失敗している。国軍の焦りは強い。 1988年の民主化運動に関わった、ある在日ミャンマー人が、大変わかりやすいたとえをしている。 1988年当時、市民は軍事政権時代の闇の中から光を求めて民主化運動を起こしたが、国軍のクーデターにより一瞬のうちに闇に引き戻されてしまった。一方、今回の抵抗運動の主役は2011年からの10年にわたって、民主化の時代に人生を送ってきた。つまり、光が照らした年月の長さにおいて当時と今回では大きく異なるのだ、と。 とりわけ青春時代に民主化の恩恵を受けてきたZ世代と呼ばれる若者にとって、国軍の支配する社会などはまったく容認できない。しかし、若者たちがこれほどまで抵抗を続けるとは、国軍は思いも寄らなかっただろう。(根本氏の略歴はリンク先参照)』、「青春時代に民主化の恩恵を受けてきたZ世代と呼ばれる若者にとって、国軍の支配する社会などはまったく容認できない。しかし、若者たちがこれほどまで抵抗を続けるとは、国軍は思いも寄らなかっただろう」、「Z世代」の若者などが頑張っている事情が理解できた。
・『カギを握る国際社会の働きかけ  Q:事態の打開策として何が必要でしょうか。 A:国軍が圧倒的な力を持つ以上、ミャンマー市民の力だけで民主主義を回復させることは困難だ。国際社会の働きかけが事態打開の鍵を握っている。 しかし、国連の安全保障理事会では中国、ロシアと米英仏が対立し、機能不全に陥っている。ロシアは前のめりでミャンマー国軍を支援し、中国は実質的に何もできていない。 アメリカは、国軍トップや国軍系企業に対象を絞った「標的制裁」を打ち出すのが精一杯。そうした中で東南アジア諸国連合(ASEAN)に過度な期待が集まっている。 ASEANは、ミャンマーのミン・アウン・フライン国軍司令官に、特使受け入れなど5つの合意事項を履行するように求めている。合意事項の中でも、暴力の即時停止は最も重要だ。しかし、ミン・アウン・フライン司令官は約束を守らず、ASEANの働きかけは功を奏していない。 インドネシアやマレーシア、シンガポールが軍事クーデターを厳しく非難する一方、タイやカンボジアなどは国軍に融和的でASEAN内の足並みがそろっていない。ミャンマーへの対応をめぐり、ASEAN内部には深刻な亀裂が生まれている。 Q:日本はいま、何ができるのでしょうか。 A:G7(主要7カ国)の一員である以上、法整備をしたうえで、国軍司令官などを対象に標的制裁に踏み切るべき。政府開発援助(ODA)の見直しも必要だ。 日本はODAの新規案件の供与を見合わせているが、既存案件については公式には中断を決めていない。既存案件の一部を中断し暴力の即時停止など、日本が提示する条件をミャンマー国軍が飲んだ場合に、再開する。このようなやり方で、譲歩を引き出す手だても講じるべきだ。その一方で、国際機関を通じての食料や医療など人道支援はしっかりやらないといけない。 もう1つの重要な取り組みとして、民主派勢力が樹立した国民統一政府(NUG)の承認に向けた動きを強めるべきだ。 欧州議会は2021年10月、NUGと連邦議会代表委員会(CRPH)をミャンマーの正式な代表として受け入れる決議を賛成多数で可決している。日本でも国会がNUGを正式に認めれば、日本政府が及び腰でも、クーデター政権を牽制し、民主派勢力を勇気づけることになる。 NUGはすでにアメリカやイギリス、オーストラリア、韓国などに代表事務所を設置しており、アメリカのシャーマン国務副長官は2021年8月にNUGの代表と会談している。 Q:防衛省傘下の防衛大学校がミャンマー国軍の士官候補生2名を「留学生」として軍事クーデター以後に新たに受け入れていたことが判明しています。オーストラリアやニュージーランドが、ミャンマー国軍との防衛協力を打ち切ったのとは対照的に、日本は国軍との緊密な関係を維持しています。 民政移管を進めたテイン・セイン政権やアウンサン・スーチー政権時であれば、シビリアンコントロールの研修目的という説明も成り立つ。しかし、G7の一員として、なぜこのタイミングで国軍関係者を受け入れるのか、まったく理解できない。国際社会において恥をさらす行為に等しく、即座にやめるべきだ』、「ASEAN」は「タイやカンボジアなどは国軍に融和的」なので、多くを期待できない。「日本」が不作為で政府として何もしていない現状は国際的にも恥ずかしい限りだ。ここは「日本」が「法整備をしたうえで、国軍司令官などを対象に標的制裁に踏み切るべき。ODAの見直しも必要だ。 日本はODAの新規案件の供与を見合わせているが、既存案件については公式には中断を決めていない。既存案件の一部を中断し暴力の即時停止など、日本が提示する条件をミャンマー国軍が飲んだ場合に、再開する。このようなやり方で、譲歩を引き出す手だても講じるべきだ」、同感である。第二でも触れた「日本ミャンマー協会の渡邉秀央会長」に対しても、然るべき措置を取るべきだ。 
タグ:(その6)(ミャンマー軍政との関係見直し求める声高まる 会計検査機関や日本政府も対象に、防衛大学校は国軍士官候補生の「留学」受け入れ 日本は対ミャンマー外交 防衛協力の見直しを、上智大・根本敬教授に聞いたミャンマー情勢のいま ミャンマー「情勢打開」へ 日本が握る交渉のカギ) ミャンマー Newsweek日本版 大塚智彦氏による「ミャンマー軍政との関係見直し求める声高まる 会計検査機関や日本政府も対象に」 「ミャンマーの会計検査機関」は「軍政支配下の組織」であるとはいえ、小さな国ではやむを得ないのではなかろうか。 「非難」声明を出したのであれば、「留学生」の「受け入れ」は停止すべきだった。ブレーキをかけるべきは外務省や首相官邸の筈だ。 「軍とのパイプ」が実態は細く頼りないもののようだ。本当は裏ルートではもっと強力な「パイプ」があるのを筆者が知らないだけではないのか。 「1月19日現在、クーデター後にミャンマー軍などの治安当局によって殺害された市民が1483人」、市民を大規模に虐殺するなどとんでもないことだ。「日本はミャンマー軍の残虐行為に間接的に加担するリスクを負うことになるだろう」、やはり「日本はミャンマーとの軍事的関係を中断すべき」、同感である。 東洋経済Plus「防衛大学校は国軍士官候補生の「留学」受け入れ 日本は対ミャンマー外交、防衛協力の見直しを」 キリンビールは、現地の合弁企業から国軍に資金が流れるとして、合弁を解消する旨、表明した。 「ODA」では「他方経済制裁や標的制裁は、法整備がなされておらず、実施していない。この点では米英やEU(欧州連合)とは対応が異なる」、何たる不作為!、早急に法改正すべきだ。「日本ミャンマー協会の渡邉秀央会長」が「クーデター後も数度にわたってミャンマーを訪問。クーデターについて「憲法にのっとった正当な行為だ」と擁護」、とはとんでもないことだ。「国軍が人権侵害をやめないのであれば、ODAの一部を打ち切るなど、明確なメッセージを出す時期に来ている」、その通りだ。 東洋経済Plus「上智大・根本敬教授に聞いたミャンマー情勢のいま ミャンマー「情勢打開」へ、日本が握る交渉のカギ」 「青春時代に民主化の恩恵を受けてきたZ世代と呼ばれる若者にとって、国軍の支配する社会などはまったく容認できない。しかし、若者たちがこれほどまで抵抗を続けるとは、国軍は思いも寄らなかっただろう」、「Z世代」の若者などが頑張っている事情が理解できた。 「ASEAN」は「タイやカンボジアなどは国軍に融和的」なので、多くを期待できない。「日本」が不作為で政府として何もしていない現状は国際的にも恥ずかしい限りだ。ここは「日本」が「法整備をしたうえで、国軍司令官などを対象に標的制裁に踏み切るべき。ODAの見直しも必要だ。 日本はODAの新規案件の供与を見合わせているが、既存案件については公式には中断を決めていない。既存案件の一部を中断し暴力の即時停止など、日本が提示する条件をミャンマー国軍が飲んだ場合に、再開する。このようなやり方で、譲歩を引き出す手だても講じ
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スポーツ界(その33)(エセ科学を信じるジョコビッチの無責任、センバツ高校野球で強豪校が落選 選考委員会が苦慮する「言えない事情」とは、ラグビー協会を追われた女性法学者が見た「おっさん組織」のしがらみ) [社会]

スポーツ界については、昨年5月21日に取上げた。今日は、(その33)(エセ科学を信じるジョコビッチの無責任、センバツ高校野球で強豪校が落選 選考委員会が苦慮する「言えない事情」とは、ラグビー協会を追われた女性法学者が見た「おっさん組織」のしがらみ)である。

先ずは、本年1月15日付けNewsweek日本版が掲載した元CIAオペレーション・オフィサーのグレン・カール氏による「エセ科学を信じるジョコビッチの無責任」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/glenn/2022/01/post-74.php
・『<厳格な水際対策を取るオーストラリアのルールに従えないのなら、追い出されて当然> 男子テニスの世界ランキングで頂点に立つノバク・ジョコビッチがオーストラリアに到着したのは、1月5日のこと。17日に始まる全豪オープンで史上単独最多の21回目の4大大会制覇が懸かっていた。 しかし、オーストラリアの法律では、入国者に対して事前に新型コロナウイルスのワクチン接種を受けることを求めている。ワクチン未接種のジョコビッチは、空港で身柄を拘束された。10日には裁判所が政府の入国拒否の決定を覆す判断を下し、ジョコビッチはひとまず解放されたが、政府が再びビザを取り消し、強制送還を行う可能性がある。(編集部注:ジョコビッチは14日、豪政府によって再度ビザを取り消され、翌日身柄を拘束された) 一方、この問題をめぐり、ジョコビッチの祖国セルビアとオーストラリアの関係に緊張が走っている。世界の複数の都市では、ジョコビッチを支持する人たち(主にセルビア人)によるデモも行われている。 しかし、オーストラリア政府が取るべき措置は明白だ。次の飛行機でジョコビッチを追い返せばいい』、その通りだ。
・『ワクチン接種を政治問題化  新型コロナ危機は、世界のポピュリスト(大衆主義者)、リバタリアン(自由意思論者)、さらにはファシストたちにより政治問題として利用されてきた。反ワクチン派は、理にかなった感染対策を「自由の侵害」と批判し、政府の対策の足を引っ張っている。それにより、世界中で多くの人が命を落としてきた。適切な対策が行われていれば、その死は避けられたはずだった。 ジョコビッチは史上最高のテニス選手だし、人間としても立派な行動を取ってきた。コロナ禍で経済的に苦しむランキング下位の選手たちを支援するための基金の設立を呼び掛けたり、恵まれない子供たちを支援する財団に寄付したりしている。しかし、新型コロナに関する公衆衛生上のルールが自分には適用されないと思っているかのような行動を繰り返してきたことも事実だ。 ジョコビッチは2020年に新型コロナに感染し、昨年12月にも検査で陽性を確認したと主張している。その一方で、自身のワクチン接種については言葉を濁したり、回答を拒んだりしてきた。それにもかかわらず、たびたび十分な感染対策を行わずにイベントに参加してきた(20年6月の主催イベントでは大勢の感染者を発生させ、自身も感染した)。専門家の見解よりも「ポジティブ思考により食べ物と水から毒を取り除ける」などという類いの持論を信じて行動してきたのだ。 ジョコビッチのような反ワクチン派が見ようとしない現実がある。それは、たった1人の感染者がわずか数週間で数千万人もの人にウイルスを感染させ、大勢の死者を出す可能性があるということだ』、「反ワクチン派」はこうした「感染」リスクをどのように考えているのだろう。
・『ついに豪国内で感染爆発が  ジョコビッチ騒動が続くなかで、新型コロナのオミクロン株はついにオーストラリアの厳しい防衛ラインを突き破り、国内で広がり始めたようだ。オーストラリアでは16歳以上の92%が2回のワクチン接種を済ませているが、1日当たりの新規感染者数はついに10万人を突破した。これは12月下旬のおよそ10倍だ。 コロナ禍が始まって以降、厳しい入国制限により、何千人ものオーストラリア人が自国への入国が認められなかった。それに、全豪オープンを観戦しようとする人は全て、ワクチン接種証明の提示が求められる。国民の過半数がジョコビッチの国外退去を支持しているのは意外でない。 この問題の解決策は至って簡単だ。オーストラリアの法律を守ろうとせず、国民の命を危険にさらす人物は、国外に追い出せばいい。それだけのことだ』、「オーストラリアの法律を守ろうとせず、国民の命を危険にさらす人物は、国外に追い出せばいい」、「ジョコビッチ」は自分が参加しなければ、「全豪オープン」の価値がないとでも勘違いしているのかも知れないが、国家の力を知らしめるいい機会を逃す手はない。

次に、2月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した作家・スポーツライターの小林信也氏による「センバツ高校野球で強豪校が落選、選考委員会が苦慮する「言えない事情」とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/295240
・『「個人の力が上」? 春のセンバツの選考が物議  「春のセンバツ」の選考委員会で「東海大会ベスト4の大垣日大が選ばれ、準優勝の聖隷クリストファーが選ばれなかった」ことが物議を醸している。 聖隷クリストファーの落選を疑問視する声が圧倒的に多い。落選の理由が「個人の力が大垣日大の方が上だった」などと説明されたことも、多くの人が「不可解で納得がいかない」と感じた要因だ。 一方、私がこの選考結果を聞いて真っ先に思い浮かべたのは「全然別の推測」だった。 過去にも、選ばれるべき順位の学校が見送られた例は少なくない。全てとはいわないが、そのような場合しばしば耳にするのは、表には出ていないが何らかの不祥事や問題行動があったため、という事情だ。 出場停止などの処罰には相当しないが、晴れの舞台に招待される高校としては適性に欠ける。あるいは、もし選ばれて脚光を浴びたら、にわかに問題視されかねない火種を抱えているといった場合、あえて選ばない判断を選考委員会がすることは、センバツに関してはあり得る。 秋季大会で出場枠に該当する成績を上げ、選考対象になった高校の監督から「選考委員会で正式に決まるまで、そして大会当日を迎えるまでの心労」を聞かされたことがある。毎日新聞の担当記者からも、選手だけでなく、監督自身の行動、さらには野球部以外の生徒や教師の問題行動がないよう、くぎを刺される。選考委員会までに世間を騒がせるような悪い出来事があれば、当然、選考に影響するからだ。 支局にも、さまざまな情報が寄せられると聞いた。内部告発、デマも含めて、候補になった高校は「まな板の鯉」の状態。数年前からはSNSを使った暴露や告発も続発しているから、「試合が始まるまで、生きた心地がしなかった」とその監督は深くため息をついた。 寄せられた不祥事の情報が事実なら、記者が本社に報告し、選考委員会の資料の一部になるだろう。今回もそれに該当するとはいえないが、センバツの選考にはこうした側面があることも認識しておくべきだ』、「過去にも、選ばれるべき順位の学校が見送られた例は少なくない。全てとはいわないが、そのような場合しばしば耳にするのは、表には出ていないが何らかの不祥事や問題行動があったため、という事情だ。 出場停止などの処罰には相当しないが、晴れの舞台に招待される高校としては適性に欠ける。あるいは、もし選ばれて脚光を浴びたら、にわかに問題視されかねない火種を抱えているといった場合、あえて選ばない判断を選考委員会がすることは、センバツに関してはあり得る」、主催者側の裁量の余地が大きいので、こんなグレーなことが可能になったのだろう。
・『選考に漏れて訴訟に発展 選ばれなかった「野球以外」の理由  かつて、センバツの選考に漏れて訴訟を起こした高校がある。1970(昭和45)年の帝京商工だ。前年秋の東京都大会で準優勝しながら、選ばれなかった。 選ばれたのは都大会優勝の日大三高と、当時の報道を見ると4位と記されている堀越だった。前年の出場校は、日体荏原と堀越、その前年が日大三高と佼成学園。いずれも都大会の決勝を戦った優勝、準優勝校だ。 この前例に倣えば、帝京商工が選ばれるのが順当。しかも、記録をたどると、帝京商工は決勝で大接戦を演じ、延長12回の末、2対1でサヨナラ負けを喫している。敗れはしたが、優勝した日大三高と遜色ない戦いを演じたわけである。この結果だけを見れば「選ばれて当然」「落ちる理由がわからない」といえる状況だ。 選考を不服とした帝京商工は大会前、日本高等学校野球連盟(日本高野連)の佐伯達夫会長を相手どって大阪地裁に仮処分申請を行った。大阪地裁は3月12日、「選抜大会への出場を主張する権利はない」と学校側の訴えを却下した。 訴訟を起こしたことで、帝京商工は東京都高等学校野球連盟(都高野連)から対外試合禁止の処分を受けた。またこれを不服として帝京商工は都高野連も提訴した。結局、都高野連は出場停止を撤回し、学校側も提訴を取り下げて騒動は収まったと報じられている。 後にも先にも、センバツの選考に関して訴訟に至ったのはこの一件だけだという。この当時を詳しく知る関係者に聞くと、漠然とだが、苦笑しながらこんな記憶を話してくれた。) 「その高校は、日頃から近くの学校としょっちゅうけんかしているという話がありました」 選ばれなかった理由が野球以外の事情にあったようだ』、どういうことだろう。
・『選考委員長が苦しい言い訳 その裏には「言えない」事情?  多くの識者が、東海ブロックの選考委員長を務めた鬼嶋一司氏らの説明に厳しい異論を投げかけている。そもそも、「甲子園で勝てるチームを選んだ」という説明が、センバツの主旨や選考の最も重要な条件とは理解しがたい。強さを追求する大会なら、なぜわざわざ「21世紀枠」を設定するのか。その矛盾が理解できない。 鬼嶋氏はこう話したとスポニチは報じている。 「聖隷クリストファーは頭とハートを使う高校生らしい野球で、2回戦、準決勝で9回に見事な逆転劇を見せた。立派な戦いぶり。個人の力量に勝る大垣日大か、粘り強さの聖隷クリストファーかで選考委員の賛否が分かれましたが、投打に勝る大垣日大を推薦校とする。特に投手力で差があった。春の選抜大会では失点の多いチームは厳しい。大垣日大は総合力の高いチーム。静岡同士ということは全く考慮していなかった。甲子園で勝てる可能性の高いチームを選んだ」 もっともらしい説明だが、対戦してもいないチームの実力を机上で判定すること自体がナンセンスではないか。しかも、「個々の力だけでなく、チームとして一体になったとき、どんなプラスアルファの力が出るか」が野球の醍醐味であり、ことに高校野球の最も魅力的な要素であり、取り組む目標ではないのか。これを軽視し、個々の力を優先するなど、高校野球の風上にも置けない。 だが、そんな批判は、鬼嶋氏らには百も承知の「常識」だろう。NHKの高校野球中継の解説者であり、慶応義塾大学の監督、川崎製鉄千葉の監督も歴任した根っからの野球人だ。学生野球のなんたるかを熟知している人ではないか。この人が恥を忍んで、素人が聞いてもおかしいと思う説明(苦しい言い訳?)をしたのは、本当は言えないことがあったからではないか、そう考えたほうが理解しやすい』、「学生野球のなんたるかを熟知している人ではないか。この人が恥を忍んで、素人が聞いてもおかしいと思う説明(苦しい言い訳?)をしたのは、本当は言えないことがあったからではないか」、なるほど。
・『「強いチーム」が出場する必要はない センバツには新たな挑戦をする学校を  最後に、全く別の角度から、センバツの未来を展望して話を締めたい。 私はかねて、「センバツの役割はもう終わった」と問いかけている。秋の優勝校や上位校が事実上選ばれるのに、「センバツ」とわざわざ名乗るのも看板に偽りありだ。 同時に、私は常々、秋の大会はリーグ戦形式を採用し、全チームが最低でも3試合か4試合できる仕組みに変えるべきだと提言している。その後、決勝トーナメントをやるもよし、やらなくてもよし。やらないと「センバツの資料にならない」と反論されそうだが、センバツに出るのは「強いチーム」である必要は全くない。「魅力的なチーム、野球を通して自分たちや学校、地域を変革しているチーム、新たな挑戦を具現化しているチームが出場するのがセンバツだ」と決めれば、秋は各地区で優勝を決める必要もない。 夏は野球の実力を競う選手権大会。春は野球の楽しみ方や野球を通した自己表現・社会貢献の豊かさを競う実験的な舞台。そんな色分けがあってもいいのではないだろうか。ただしもちろん、夏の大会は猛暑を避けて秋に時期を移行する。 見ていて気持ちのいいチーム。これぞ高校野球のかがみだと多くの人に感銘を与えるチームが集うセンバツでもいい。それはもちろん、全力疾走、あいさつ、地域の清掃活動といったありがちなステレオタイプでなく(もちろんそれらも大切な心がけだが)、もっと斬新な目標とメッセージを持ったチーム、例えば、「全イニング、全員がポジションを変えるチーム」「監督がサインを出さないチーム」「初球ストライクを絶対打つチーム」といった特色でも面白い。 どうしたら勝てるか、ではなく、どうしたらより野球を全員で楽しめるか、どうしたら固定化された野球の価値観や戦術を打破し、野球の可能性を高めることができるか。そんな高校野球がセンバツを中心に展開されたら、高校野球に大きな変革が起こる。高校生の部活動である野球部が、もっと豊かで発展的な活動になるのではないか』、「夏は野球の実力を競う選手権大会。春は野球の楽しみ方や野球を通した自己表現・社会貢献の豊かさを競う実験的な舞台。そんな色分けがあってもいいのではないだろうか」、なかなか面白い提案だ。ただ、「どうしたらより野球を全員で楽しめるか、どうしたら固定化された野球の価値観や戦術を打破し、野球の可能性を高めることができるか」、については、実務的には難しそうだ。

第三に、2月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した法学者の小川 たまか氏による「ラグビー協会を追われた女性法学者が見た「おっさん組織」のしがらみ」を紹介しよう。付注は省略。
・『日本ラグビー協会理事、新リーグ審査委員長を昨年退任した法学者の谷口真由美さんが、自身の経験を新刊『おっさんの掟 「大阪のおばちゃん」が見た日本ラグビー協会「失敗の本質」』(小学館新書)としてまとめた。停滞した組織を変えるために外部から呼ばれた人が、結局「旧来のしがらみ」に絡みとられて意見を言えなくなったり、あるいは意見を言ったことで組織にいられなくなったりする…。ある程度社会で経験を積んだ人ならば、そんな光景を一度や二度ならず目にしたことがあるのではないか。何が失敗の原因なのか。組織が失敗する原因には似通ったところがあるのではないか。谷口さんに、その実情などを聞いた(Qは聞き手の質問)』、興味深そうだ。
・『検証、分析を行うための記録の一つとして  Q:『おっさんの掟 「大阪のおばちゃん」が見た日本ラグビー協会「失敗の本質」』というタイトルを見て一般論が書かれているのかなと思ったら、日本ラグビー協会で何が起こったのかが谷口さんの視点から詳しく書かれていて驚きました。 谷口真由美さん(以下、谷口) 一応法学者なので、ここまでは大丈夫、ここからはアウトというところは考えて書いています。もっとエピソードはありましたが、これでもだいぶカットしています。 Q:冒頭から、いわゆるシャンシャン総会に谷口さんが驚く様子がつづられています。競技全体の底上げよりも大企業の論理が優先される場面も。どの団体、企業、業界でも組織の中でこういった閉塞感を感じている人は多いと思います。 谷口 私は日本ラグビー協会に、今後本当に良くなってほしいと思っています。これを書いた動機の一つはそれです。税金が優遇される公益財団であるならば、検証は必要。検証、分析を行うための記録の一つとして残さなければいけなかった。 その視点で見たときに、過去には『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』や『タテ社会の人間関係 単一社会の理論』、あるいはハンナ・アーレントの「凡庸な悪」の考え方など、歴史から学ぶものはいっぱいあるのに、どうしてこうも同じことを繰り返すのだろうと。そう思ったときに、これは組織論ど真ん中の話だなと。 会議なんかで「もしわからないことがあったらなんでも質問してください」と言われても、「こんなこと聞いたら恥ずかしいんちゃうか」と思うことありますよね。 でも、あなたが感じている疑問・質問は実は他の人も感じている可能性もあるって、質問を促すわけですよね。それと一緒で、何かツラい事象が起こったとき、これは自分だけと思いがちだけれど、案外どこにでもある話なんちゃうかと。 Q:実際、たくさんあると思います。 谷口 なぜあちこちで多発するのか。それをこの本の場合は「おっさん」という軸を持ってくることによって、言語化できる人がいるだろうなと』、「歴史から学ぶものはいっぱいあるのに、どうしてこうも同じことを繰り返すのだろうと。そう思ったときに、これは組織論ど真ん中の話だなと」、人間は結局、過去に学ばず、同じ過ちを繰り返す性があるようだ。
・『ラグビー協会からの内容証明郵便  Q:本の中で「おっさん化」「オバハン化」は老若男女共通の病理であり、特徴として「上司や目上の人の前では平身低頭。しかし部下や下請けなど立場の弱い人間にはとにかく高圧的」「部下や若手からの提案に対しては『リスクが大きい』『誰が責任を取るのか』と否定から入る」「『アレオレ詐欺』の常習犯」など複数が挙げられています。 谷口 無自覚に「おっさんという病」に侵されている人も結構いると思う。まず気づいてもらった方がいいなと。びっくりしたのが、本を読んで「俺ってもしかしてこういうおっさんになってるかも?」と省みている人が周囲にも結構いたことですね。 若い人や女性など、組織の中でやりづらさを感じている人の言語化にもつながればいいと思っています。 Q:本の中で何度か、嫉妬という言葉が“男へん”ではなく“女へん”であることに疑問を示されています。それほど「おっさん」からの圧が……。 谷口 新リーグの審査で、自分の家族と関わりのあるチームを優遇したかのようなうわさを流されまして。私は息子がラグビーをやっていて、その世界に入るかもしれないのに、冤罪(えんざい)、ぬれぎぬを着せられたままというのは許せんなと。 自分さえ黙っていたらとか、立つ鳥跡を濁さずみたいな考え方もあると思うんですけれど、黙った方はなんらかの被害は受けるので。 Q:週刊誌の取材があっても、審査の詳細を外部には話さずにいた谷口さんが考えを変えたのは、ラグビー協会から「協会内で知り得た情報を口外すれば法的措置を含む断固たる措置を取る」と内容証明郵便が届いたからと、本書にはあります。 谷口 秘密保持契約というのは、ライバル会社への情報漏洩(ろうえい)などを防ぐためであり、自分たちが後ろめたいことを黙らせるために秘密保持契約を持ち出すのは、目的外だと思うんですよね。 この本が出た後に「組織の中にいる間にやれよ」とコメントした人がいるけれど、中でも十分やってきた。けれど、みんながスーッと無視した状況で、どうしようもなかったんやっていうところはあります』、「ラグビー協会から「協会内で知り得た情報を口外すれば法的措置を含む断固たる措置を取る」と内容証明郵便が届いた・・・。 谷口 秘密保持契約というのは、ライバル会社への情報漏洩・・・などを防ぐためであり、自分たちが後ろめたいことを黙らせるために秘密保持契約を持ち出すのは、目的外だと思うんです」、そんな「秘密保持契約を持ち出す」とは、「ラグビー協会」のコンプライアンスのレベルは低いようだ。
・『ミスが多く報告される組織ほど良い  Q:スーッと無視、わかります……。ラグビー協会の話ではありませんが、セクハラなどハラスメントの被害者側が、組織から弁護士を通じて「口外禁止」を求められるケースをたびたび聞きます。 谷口 被害者が納得するような内容であればいいと思うんですけれど、口外禁止で蓋をして、どういう状況でそういうことが行われたかが共有されないということは、再発防止にならない。 社会全体の心理的安全性の話でいうと、ミスとかエラーが多く報告されている方が良い組織になります。セクハラが隠蔽される組織で何が起こるかといえば、ラインを引き出すんですね。「どこからがアウトで、どこからがセーフなのか」というラインを。 そうじゃなくて、根本的に何があかんかっていう話をしないといけない。人権は人間にもともと備わっている感情ではないので、アップデートが必要なんです。 Q:人権は、人間にもともと備わっている感情ではない? 谷口 私は、社会で生きていくライセンスが人権勉強だと思っています。運転免許だって更新制ですよね。40年前に免許を取っている人が、何も講習を受けずに走り続けられるわけではない。 人権も同じように、社会が変わっていくし、人間が生きている数だけいろいろな事象があるので、アップデートしていかないといけない。外からの圧がない組織は気をつけないと風通しが悪くなります。 それでいうと、マスコミもそうです、構造的には。今のグローバル企業が変わったのは外国人投資家が入ってきたからESG投資とか海外の基準は、と言い始めていますが、メディアは外圧がかかりづらい業界です(※)。 (※)インフラやメディア産業は外国人投資家の割合に制限がある』、「人権も同じように、社会が変わっていくし、人間が生きている数だけいろいろな事象があるので、アップデートしていかないといけない。外からの圧がない組織は気をつけないと風通しが悪くなります」、その通りだ。
・『組織の壁にぶつかった20〜30代はどうすれば?  Q:外部の目や多様な意見を取り入れる仕組みがあった方が組織の風通しが良くなる、ということでしょうか。 谷口 そうそう。海外の企業が、環境や人権のNGOから不買運動をされた時には、そういうNGOから役員を招いている。外からうるさく言う人をうちに入れるというのは戦略的にアリだと思いますが、そういう事例を日本ではあまり聞きません。 Q:それで逃げ切れちゃう人もいますもんね。 谷口 「サステイナブル」な「ディベロップメント」とか、これだけ言っているのにね。 Q:最後の質問ですが、20代や30代が古い組織のやり方にぶつかった場合、どうしたらよいと思われますか? 谷口 20〜30代が、おっさんやオバハンの多い古い組織の中でものを言っていくのは、本当に難しいと思います。経営層がいかにマインドセットできるか、問題意識を持てるか、からしか始まらない。 20〜30代は、希望がないと感じたらそんな組織を捨てたったらいいと思いますよ。若ければ、まだ流動的に生きていける。コロナ禍の今は、とりあえず所属組織からもらえるもんをもらっとことか、恩義があるとかだったら、いたらいいと思うんですけれど、若い人がいないことで上の世代の目が覚めることもありますから。 若い人は、どんどん自分で事業を起こしたほうがええんちゃうかと思いますね。(谷口真由美氏の略歴はリンク先参照)』、「20〜30代は、希望がないと感じたらそんな組織を捨てたったらいいと思いますよ。若ければ、まだ流動的に生きていける」、「若い人がいないことで上の世代の目が覚めることもありますから」、同感である。
タグ:スポーツ界 (その33)(エセ科学を信じるジョコビッチの無責任、センバツ高校野球で強豪校が落選 選考委員会が苦慮する「言えない事情」とは、ラグビー協会を追われた女性法学者が見た「おっさん組織」のしがらみ) Newsweek日本版 グレン・カール氏による「エセ科学を信じるジョコビッチの無責任」 オーストラリア政府が取るべき措置は明白だ。次の飛行機でジョコビッチを追い返せばいい』、その通りだ 「反ワクチン派」はこうした「感染」リスクをどのように考えているのだろう。 「オーストラリアの法律を守ろうとせず、国民の命を危険にさらす人物は、国外に追い出せばいい」、同感である。 「オーストラリアの法律を守ろうとせず、国民の命を危険にさらす人物は、国外に追い出せばいい」、「ジョコビッチ」は自分が参加しなければ、「全豪オープン」の価値がないとでも勘違いしているのかも知れないが、国家の力を知らしめるいい機会を逃す手はない。 ダイヤモンド・オンライン 小林信也氏による「センバツ高校野球で強豪校が落選、選考委員会が苦慮する「言えない事情」とは」 「過去にも、選ばれるべき順位の学校が見送られた例は少なくない。全てとはいわないが、そのような場合しばしば耳にするのは、表には出ていないが何らかの不祥事や問題行動があったため、という事情だ。 出場停止などの処罰には相当しないが、晴れの舞台に招待される高校としては適性に欠ける。あるいは、もし選ばれて脚光を浴びたら、にわかに問題視されかねない火種を抱えているといった場合、あえて選ばない判断を選考委員会がすることは、センバツに関してはあり得る」、主催者側の裁量の余地が大きいので、こんなグレーなことが可能になったの 「学生野球のなんたるかを熟知している人ではないか。この人が恥を忍んで、素人が聞いてもおかしいと思う説明(苦しい言い訳?)をしたのは、本当は言えないことがあったからではないか」、なるほど。 「夏は野球の実力を競う選手権大会。春は野球の楽しみ方や野球を通した自己表現・社会貢献の豊かさを競う実験的な舞台。そんな色分けがあってもいいのではないだろうか」、なかなか面白い提案だ。ただ、「どうしたらより野球を全員で楽しめるか、どうしたら固定化された野球の価値観や戦術を打破し、野球の可能性を高めることができるか」、については、実務的には難しそうだ。 小川 たまか氏による「ラグビー協会を追われた女性法学者が見た「おっさん組織」のしがらみ」 「歴史から学ぶものはいっぱいあるのに、どうしてこうも同じことを繰り返すのだろうと。そう思ったときに、これは組織論ど真ん中の話だなと」、人間は結局、過去に学ばず、同じ過ちを繰り返す性があるようだ。 「ラグビー協会から「協会内で知り得た情報を口外すれば法的措置を含む断固たる措置を取る」と内容証明郵便が届いた・・・。 谷口 秘密保持契約というのは、ライバル会社への情報漏洩・・・などを防ぐためであり、自分たちが後ろめたいことを黙らせるために秘密保持契約を持ち出すのは、目的外だと思うんです」、そんな「秘密保持契約を持ち出す」とは、「ラグビー協会」のコンプライアンスのレベルは低いようだ。 「人権も同じように、社会が変わっていくし、人間が生きている数だけいろいろな事象があるので、アップデートしていかないといけない。外からの圧がない組織は気をつけないと風通しが悪くなります」、その通りだ。 「20〜30代は、希望がないと感じたらそんな組織を捨てたったらいいと思いますよ。若ければ、まだ流動的に生きていける」、「若い人がいないことで上の世代の目が覚めることもありますから」、同感である。
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エネルギー(その9)(脱原発にのめり込み過ぎた結果 欧米からハシゴを外される一部始終、脱原発にのめり込み過ぎた結果 欧米からハシゴを外される一部始終、キーマンが激白「再エネコストは下げられる」 三菱商事 洋上風力「赤字入札」の見方に大反論) [産業動向]

エネルギーについては、昨年11月13日に取上げた。今日は、(その9)(脱原発にのめり込み過ぎた結果 欧米からハシゴを外される一部始終、脱原発にのめり込み過ぎた結果 欧米からハシゴを外される一部始終、キーマンが激白「再エネコストは下げられる」 三菱商事 洋上風力「赤字入札」の見方に大反論)である。

先ずは、本年1月17日付け文春オンラインが掲載した作家で個人投資家の山本 一郎氏による「脱原発にのめり込み過ぎた結果、欧米からハシゴを外される一部始終」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/51414
・『新年が明けて、日本も欧州も寒い冬がやってきました。 東京では久しぶりの大雪が降り、たった5cmしか積もらなかったのに大騒ぎとなって大雪警報まで発令される始末で、北海道や秋田の皆さんから北から目線のご心配の声を頂戴したのはありがたい限りです。大きなお世話なんじゃあーっ』、「大雪警報」には拍子抜けだった。
・『地球規模の気候変動ショックを起こす可能性が  と思っていたら、南太平洋の島国・トンガ近辺で超絶大規模な火山噴火がありました。大変なことです。南海トラフの地震を怖れる日本も、太平洋プレートではご一緒している地域であるがゆえに、歴史的規模の大噴火が発生してしまうとさすがにビビります。世界のインターネットを繋ぐ海底ケーブルの中継地とも知られるトンガや周辺の皆さんは大丈夫なのでしょうか……。 何よりも、人間が「SDGsが」「地球環境のために持続可能な開発を」と言ってる横で、肝心の地球様が大噴火をさせているのを見ると、地球様にとって人類などほんと地表に生えた光るカビぐらいにしか思ってないんだろうなあと感じるわけであります。 1991年には、フィリピンのルソン島西のピナトゥボ火山で起きた噴火でも大変なことになりましたが、火山噴火にともなう噴出物が成層圏まで巻き上げられて太陽光が遮られ、世界的に気温が低下してしまいました。2年後、日本では東北地方を中心に米が大凶作となって、米不足からタイ米を緊急輸入しなければならない事態になったのです。おそらく今回はそれ以上の地球規模の気候変動ショックを起こす可能性があって、今季の稲作からも影響が出始めるのではないかともいわれています。大変なことだと思うんですよ。 噴火の衝撃もある一方で、この年末年始、寒い冬を越すのに東京電力での発電量だけでは足りず、中部電力などから電力を融通してもらい、何とか急場をしのいだ感じです。常日頃、揶揄されることも多い東京電力もインフラの仕事として立派に首都圏に電力供給をしてくださっているわけで、政策的にも右往左往しなくて良いようにしないとなあというところへ出てきたのがエネルギー政策の理想と現実の話です』、「おそらく今回はそれ以上の地球規模の気候変動ショックを起こす可能性があって」、は幸い杞憂に終わりそうだ。
・『確かに「無駄も多いんじゃねえのか」と感じる日本のエネルギー  このところ、脱炭素社会だゼロカーボンだと、地球の気候変動を促してしまう、減らすべき温室効果ガスの筆頭として二酸化炭素が槍玉に挙げられ続けてきました。世界的にこういう気温上昇にともなう集中豪雨や海面上昇などさまざまな異常気象に対処するため、SDGs(持続可能な開発目標)の名のもとに環境破壊に繋がるエネルギー政策は改めようという機運になってきたわけですね。 確かに、ボンボン石炭燃やして発電所焚いて電気を作って、それが日常的にあったかい便座やどこでも冷たいコーヒーが買える自動販売機に使われ続けているのは気になります。誰も乗ってないのにフル回転で動くエスカレーターも夜空を煌々と照らす繁華街のネオンの類も、毎日膨らみ続ける東京ドームの屋根も、電気で動いている限り「無駄も多いんじゃねえのか」と思うわけですよ。 さらには、新築のタワーマンションに越してみたら、窓枠がアルミサッシで暖房をいくら入れてもサッシと窓からがんがん放熱してひんやりした風が入ってくる残念な日本の住宅事情を見ても、もうちょっと環境にやさしい断熱とかできねえのかと思ったりもします。仕方なく100均に行ってプチプチの断熱材を買ってきてせっせと貼ったり、少し長めのカーテンを吊るしてなるだけ電気を使わない生活に工夫していく以外に方法はないのでしょうか。新年が明けて、日本も欧州も寒い冬がやってきました。 東京では久しぶりの大雪が降り、たった5cmしか積もらなかったのに大騒ぎとなって大雪警報まで発令される始末で、北海道や秋田の皆さんから北から目線のご心配の声を頂戴したのはありがたい限りです。大きなお世話なんじゃあーっ』、確かに「日本」の「住宅」の「断熱」事情はお粗末だ。
・『地球規模の気候変動ショックを起こす可能性が  と思っていたら、南太平洋の島国・トンガ近辺で超絶大規模な火山噴火がありました。大変なことです。南海トラフの地震を怖れる日本も、太平洋プレートではご一緒している地域であるがゆえに、歴史的規模の大噴火が発生してしまうとさすがにビビります。世界のインターネットを繋ぐ海底ケーブルの中継地とも知られるトンガや周辺の皆さんは大丈夫なのでしょうか……。 何よりも、人間が「SDGsが」「地球環境のために持続可能な開発を」と言ってる横で、肝心の地球様が大噴火をさせているのを見ると、地球様にとって人類などほんと地表に生えた光るカビぐらいにしか思ってないんだろうなあと感じるわけであります。 1991年には、フィリピンのルソン島西のピナトゥボ火山で起きた噴火でも大変なことになりましたが、火山噴火にともなう噴出物が成層圏まで巻き上げられて太陽光が遮られ、世界的に気温が低下してしまいました。2年後、日本では東北地方を中心に米が大凶作となって、米不足からタイ米を緊急輸入しなければならない事態になったのです。おそらく今回はそれ以上の地球規模の気候変動ショックを起こす可能性があって、今季の稲作からも影響が出始めるのではないかともいわれています。大変なことだと思うんですよ。 噴火の衝撃もある一方で、この年末年始、寒い冬を越すのに東京電力での発電量だけでは足りず、中部電力などから電力を融通してもらい、何とか急場をしのいだ感じです。常日頃、揶揄されることも多い東京電力もインフラの仕事として立派に首都圏に電力供給をしてくださっているわけで、政策的にも右往左往しなくて良いようにしないとなあというところへ出てきたのがエネルギー政策の理想と現実の話です』、「おそらく今回はそれ以上の地球規模の気候変動ショックを起こす可能性があって、今季の稲作からも影響が出始めるのではないかともいわれています」、先述の通り、幸い杞憂に終わりそうだ。
・『確かに「無駄も多いんじゃねえのか」と感じる日本のエネルギー  このところ、脱炭素社会だゼロカーボンだと、地球の気候変動を促してしまう、減らすべき温室効果ガスの筆頭として二酸化炭素が槍玉に挙げられ続けてきました。世界的にこういう気温上昇にともなう集中豪雨や海面上昇などさまざまな異常気象に対処するため、SDGs(持続可能な開発目標)の名のもとに環境破壊に繋がるエネルギー政策は改めようという機運になってきたわけですね。 確かに、ボンボン石炭燃やして発電所焚いて電気を作って、それが日常的にあったかい便座やどこでも冷たいコーヒーが買える自動販売機に使われ続けているのは気になります。誰も乗ってないのにフル回転で動くエスカレーターも夜空を煌々と照らす繁華街のネオンの類も、毎日膨らみ続ける東京ドームの屋根も、電気で動いている限り「無駄も多いんじゃねえのか」と思うわけですよ。 さらには、新築のタワーマンションに越してみたら、窓枠がアルミサッシで暖房をいくら入れてもサッシと窓からがんがん放熱してひんやりした風が入ってくる残念な日本の住宅事情を見ても、もうちょっと環境にやさしい断熱とかできねえのかと思ったりもします。仕方なく100均に行ってプチプチの断熱材を買ってきてせっせと貼ったり、少し長めのカーテンを吊るしてなるだけ電気を使わない生活に工夫していく以外に方法はないのでしょうか』、「新築のタワーマンション」で「サッシと窓からがんがん放熱してひんやりした風が入ってくる」、いまだにこんなお粗末なつくりとは驚かされた。
・『世界的な「脱原発」と「再生エネルギーシフト」への動き  また、お世話になっている東京電力も10年前は福島第一原発事故をやらかしています。あれは大変だった。結局は私たちの電力代や納める税金での対応を余儀なくされたという意味では国民全員が罰ゲームを食らったようなものですが、あのころからやはり「電力は大事だが、原子力発電は駄目だぞ」という流れがより強くなってしまったように思います。 実際、欧州でもドイツを中心に脱原子力発電所の動きが続き、石油石炭LNGなど脱化石燃料の動きもあいまって、世界的な温暖化対策のためにも再生エネルギーシフトは必要だ、絶対にやり遂げなければならないというような風潮になったのは、やはりSDGsを推し進めたい世界的なコンセンサスが大富豪のお金をかき集め、各国の広告代理店に「SDGsは世界的な超重要事項だぞ」という謎キャンペーンを張りまくったことによる洗脳効果なのでしょうか。思い返せば、プーチン大統領に正面から喧嘩を売ったグレタさんとは何だったのかとか、いろんな記憶が蘇ります。 果ては、炭素排出権の確立も経て、モビリティの世界では電気自動車(EV)が世界標準となって、2030年代なり2040年代にはガソリンで動く自動車は全廃だぞぐらいの勢いで自動車業界の地殻変動が進んでいます。よく分からないけど俺たちのテスラ社の株価は天文学的な数字となった後で大規模リコールなど引き起こしていましたが、それでもガソリン自動車やディーゼル車はもはや社会悪だといわんばかりの勢いでイメージ悪化が進んでいます』、確かに「テスラ」の「株価」の相対的な堅調ぶりが目立つ。
・『再生エネルギーへの移行はどの国もかなり先の話  もちろん、自動車が一斉にEVになりました、二酸化炭素を排出しなくなって良かったですね、といってもエネルギーを消費していることには変わりありません。東京電力など電力会社の皆さんが頑張って作り上げた送電網により一層の依存をすることになります。トヨタ自動車の豊田章男さんも、記者会見や文春誌面で怒り狂っておられましたが、ガソリンで動く車を全部EVにして充電池依存にしたらしたで、その充電するための電力はどうやって創り出すんだという話になり、結果的に発電リソースが大量に必要になって、むしろ多くのインフラ余力を必要とする本末転倒を起こすんじゃないかって話は正論だと思うんですよ。 さらに、これからの世の中は再生エネルギーだぞ、脱炭素だぞと言っても、そこそこ強い風が吹き、長大な海岸線をもつデンマークやノルウェーでさえ風力発電でエネルギー需要の4割しか賄えず、そもそも彼らの人口は600万人もいないわけです。スペインもイギリスも再生エネルギーを増やしたくて頑張っているけれど、やはり過渡期ということもあり全面的に再生エネルギーに移行できるのはかなり先のことになるかもしれません』、「長大な海岸線をもつデンマークやノルウェーでさえ風力発電でエネルギー需要の4割しか賄えず」、「再生エネルギー」といっても限界があるようだ。
・『ロシアが天然ガスを止めちゃって…  そうこうしているうちに、ロシアが被害妄想かなにかもあって突然ウクライナ近くまで軍隊を寄せてきてしまいました。ウクライナがNATOに加盟申請するしないでのすったもんだと合わせて、ロシアの軍事的圧力に対する制裁としてアメリカや欧州はロシアにいままでにない規模の経済制裁をするぞと言い始めました。 その際に、ロシアが欧州向けのLNGパイプラインである「ノルドストリーム2」を止めてしまったために、そのロシアからの天然ガスに依存していたドイツ以下欧州各国がこのクソ寒い冬をどう越すんだと騒ぎになるわけです。おまえら、数カ月前は脱炭素だ再生エネルギーだって随分いろんなことを言ってた割に、ロシアに天然ガス止められたら秒殺されるのさすがにダサくないか』、「LNG」を輸入に頼っている「日本」までもが欧州向けに「LNG」供給で協力させられたのには、驚かされた。
・『エネルギー供給に苦しむドイツでは、大ちゃぶ台返しが発生  エネルギー供給に大きな、喫緊のリスクが出たことで、ドイツほか欧州では「何のエネルギーソースがクリーンなのか」とかいう本末転倒な議論が始まります。果ては、欧州委員会が社会や経済の脱炭素化に寄与するエネルギー源として、天然ガスと原子力を公式に認定する方針を発表するとかいう大ちゃぶ台返しが発生することになります。 これはもう、ダサいという以前にイカレた話であって、いままで積み上げてきた脱炭素、脱化石燃料、脱原発といった各種議論は何だったんだよということですね。 さすがにドイツ国内からは反発が出て、緑の党が「原子力発電はグリーンではない」と言い換えたりもしておりましたが、そのドイツも国内の電力需要を確保するために、よりによって原子力発電によるエネルギーシェアがべらぼうに高いフランスからの電力融通を打診したうえ、ドイツ国内では一時電力費が6割増とかいうデフレなんて言ってる場合じゃない具合で値上がりしております。 過去から現在に至るまで、ドイツのエネルギー政策を見習えと言っていた知識人は、一連の欧州の手のひら返しをどう考えているのか聞いてみたいものです』、「一連の欧州の手のひら返し」は、確かに露骨まご都合主義だ。
・『原子力発電に賛成ではないものの  もちろん、私も原子力発電に賛成かと言われれば、処理に10万年かかるような核廃棄物の処理をいまの世代が必要だからとじゃんじゃん生みだして良いかと言われたら、それこそ持続可能じゃないよなあという意味で、消極的に反対です。だって、トンガと同じように地震多発国で、活火山も多い我が国で、10万年後の未来まで安全に核廃棄物が地中深くに埋められる場所なんてあるようにも思えません。核廃棄物を埋めた場所の近くで火山がどーんと大爆発したらどうなってしまうのでしょうか。 ただし、いま目の前の電力消費がこれだけある中で、化石燃料はだめ、再生エネルギーもすぐには代替できない、じゃあどうするかと言えば、きちんと縛りを作って原子力発電所を事故らないように運用して、核のゴミがどうにかなる技術を何とか開発できるまではしょぼしょぼやっていくほかないのではないかと思っています。 原発再稼働の議論が大事なのは、福島第一原発事故が10年のときを経て私たちに投げかけている問題のみならず、エネルギー政策への国民の向き合い方をどう具体的な政策にむすびつけていくのかが問われているんだと思うわけですよ。太陽光パネル一本槍できた日本の再生エネルギーも再考するべきでしょうし、円安にシフトしている我が国の経済状態で、値上がり一途のLNGや原油石炭の調達のままでいいのかという話もあります。 そんな日本のエネルギー関連議論をよそに、いまや世界中で原子力発電所の建設ラッシュが始まっています』、「いま目の前の電力消費がこれだけある中で、化石燃料はだめ、再生エネルギーもすぐには代替できない、じゃあどうするかと言えば、きちんと縛りを作って原子力発電所を事故らないように運用して、核のゴミがどうにかなる技術を何とか開発できるまではしょぼしょぼやっていくほかないのではないかと思っています」、現実的な考え方だ。
・『現在、欧州では原子力発電が成長産業に  脱原発を叫んでいたはずのヨーロッパでは、建設中の原子力発電所は15基、計画中は37基。また、日本を除くアジア全般で言えば建設中は35基、計画中はなんと56基あるとされます。日本人が欧州のクリーンエネルギーの理念に賛同してSDGsとか言っているあいだに、その欧州では原子力発電はインフラとして成長産業の一部となっていて、世界では洋上風力発電や太陽光パネルと並んで原子力発電も脱炭素の切り札のようになっている現実は直視したほうが良いと思います。 繰り返しになりますが、私も脱炭素の社会にしていくべきだし、原子力発電も長期的影響を考えたら徐々に減らしていくべきという考えには同意します。ただ、いま目の前の電気が足りないという事態で、ガソリン車を全部EVにするんだよとか、再生エネルギーで38%を目指すというような動きが、世界の人たちが無責任に作るルールに翻弄されないようにするべきだ、というのは考えておくべきなんじゃないですかねえ。 そして、今後少なくとも3年間ぐらいは、今回のトンガ火山噴火の影響で穀物生産に悪い影響が起きるだけでなく、日照量の低下で冷夏厳冬が来る可能性も否定できません。否応なく、化石燃料を燃やさないとエネルギーが賄えないよという時代がやってくるとするならば、SDGsとは何だったのかという議論もしておかないといけないんじゃないでしょうか』、「いま目の前の電気が足りないという事態で、ガソリン車を全部EVにするんだよとか、再生エネルギーで38%を目指すというような動きが、世界の人たちが無責任に作るルールに翻弄されないようにするべきだ、というのは考えておくべきなんじゃないですかねえ」、現実的な考え方で、基本的に同意できる。

次に、2月9日付け東洋経済Plus「キーマンが激白「再エネコストは下げられる」 三菱商事、洋上風力「赤字入札」の見方に大反論」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/29724
・『2021年末に結果が開示された洋上風力発電の大型プロジェクトの公募・入札において、圧倒的な低価格で国内3海域すべてを総取りした三菱商事連合。その衝撃的な価格破壊に対して、一部関係者からは「赤字覚悟の入札では」との声もあがりエネルギー業界に波紋を広げた。(「洋上風力 価格破壊ショック」特集はこちらから) 三菱商事連合はこうした見方を払拭し、1兆円規模の洋上風力プロジェクトを完遂することができるのか。岡藤裕治エネルギーサービス本部長は「欧州並みの発電コストに近づけられる」と強調する(Qは聞き手の質問、Aは岡藤氏の回答)。 Q:まさかの3海域総取りでした。 A:一般海域における洋上風力としては国内初の案件だ。事業者として長期にわたってしっかりと事業を遂行していく責任をひしひしと感じている。 Q:他社よりも圧倒的に安い価格が勝利につながりました。「赤字覚悟の入札では」という声もあります。 A:与えられた条件下で、必要なリターンを乗せ、ボトムアップで精査をした結果だ。数字ありきで事業計画を策定したわけではない。万が一、赤字の事業計画を出せば(入札のルールによって)一発でアウトの判定になることは十分認識していた。 各海域は1案件ごとにしっかりと事業計画を立てて入札に臨んだ。結果として3海域すべて取れたのは望外の喜びだが、(始めから)スケールメリットを前提に個々の案件の事業計画を組んだということはいっさいない。 Q:では、ここまで安い売電価格を提示できたのはなぜでしょうか。 A:これといった必殺技やマジックはない。いちばん大きいのは、欧州で他社に先行して、洋上風力プロジェクトを開発段階からやってきた知見、経験だ。2020年には、10年間欧州でともに洋上風力開発を行ってきたオランダの再エネ企業エネコを買収している。 エネコで10年間経験を積んだ人材が、何がプロジェクトの不確実性やリスクになるのか洗い出し、それを潰す。アドバイザーやメーカーの見方を受け売りしないでコストを精査し、ファイナンスなども含めて数字を積み上げていった。エネコの技術を内製化したことが勝因になった』、「2020年」に「買収」した「エネコの技術を内製化したことが勝因になった」、直ぐに「内製化」するとは大したものだ。
・『欧州並みの発電コストに近づける  欧州ではコスト低減が可能だったが日本ではできないのではないか。こうした意見もあるかもしれないが、欧州には欧州の洋上風力プロジェクトの難しさがある。そして、課題の一つひとつを克服してコストを低減している。日本でそれができないということはない。 (洋上風力の)発電コストを欧州並みにできるかどうかはわからないが、少なくとも欧州並みの水準に近づいていくことはできると思っている。再エネの調達費用が高いままだと日本全体の産業競争力が下がってしまう。再エネのコストダウンを通じて国内産業の脱炭素化と経済成長の一助になれればと思う。 Q:欧州での洋上風力に比べると、日本事業の利益は薄くなるのでは。 A:同じ洋上風力でも欧州と日本では求める利益は変わってくる。これはどこの会社でも同じだと思うが、そのマーケットでのリスクやそこで数十年間事業を行うことに対する見方、さまざまな要因で変わってくる。 日本でのプロジェクトは利益を削っているのかと言われれば、イエスでもノーでもなく、マーケットが変わればおのずと求めるリターンは変わるというのが答えだ。 Q:日本における洋上風力事業の位置づけは。 A洋上風力発電を起点にして地域共生事業をやっていきたいという思いがある。当社がさまざまなビジネスを最も展開しているのは日本であり、三菱商事の総合力を発揮した地域共生事業をやっていくのにいちばん適した場所だ。洋上風力をきっかけに地元自治体や市民との関係ができることで、さまざまな施策が展開できる。 Q:事業者選定に関するルールが記載されている「公募占用指針」を読むと、事業期間延長が可能です。この点も事業計画を策定するうえでポイントだったのでしょうか。 A:私たちはFIT(固定価格買い取り制度に基づく売電)が20年間で、海域の占用期間は30年間だと理解している。ルール上は設備を撤去して原状復帰しなさいというものだ。 ここには但し書きあって社会の公益性にかなうなどの特段の事情があり、国交相が認めた場合のみ占用期間の延長は可能だと理解している。ただ、われわれはあくまでも占用期間30年間という枠組みの中で事業計画を策定している。 Q:コスト低減と洋上風力関連産業の育成は両立できるのでしょうか。 A:洋上風力産業の育成と発電コストの低減は対立関係にはない。むしろ、地域の洋上風力産業を育成することが将来的なコスト低減には不可欠だ。 この3案件を通じて、国内サプライチェーンを育成する初めの一歩としなければならない。保守部品を供給するサプライヤーやメンテナンスを担う人々が近くにいることの意味は大きい。欧州から部品を取り寄せるのではコスト低減は進まない。 Q:今後も積極的に攻めますか。 A:ここで「撃ち方やめ」という予定はないし、宣言するつもりもない。一方、1社で(今後の)案件を総取りしようなんて大それたことはまったく考えていない。そんなリソースもないし、業界全体が健全に成長してほしい。 そうでなければ、政府と産業界が掲げる、40年に30~45ギガワットの洋上風力案件を形成するという目標は達成できない』、「国内サプライチェーンを育成する初めの一歩としなければならない。保守部品を供給するサプライヤーやメンテナンスを担う人々が近くにいることの意味は大きい。欧州から部品を取り寄せるのではコスト低減は進まない」、「40年に30~45ギガワットの洋上風力案件を形成するという目標」達成に向けて「産業界」の一段の努力を期待したい。

第三に、2月10日付け東洋経済Plus「三菱商事は「ダブルK点越え」、敵ながら見事だ JERA幹部が明かす「洋上風力」入札の敗因と決意」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/29721
・『脱炭素の切り札である洋上風力発電。三菱商事連合はなぜ国内初の大型案件を「総取り」できたのか。当事者たちの証言からその内幕を明らかにする。 (「JERA幹部」のやじま・さとし氏の略歴はリンク先参照) 「再エネ海域利用法」に基づく洋上風力発電プロジェクトの入札第1弾では、三菱商事連合が秋田県および千葉県の3海域いずれにおいても落札するという、異例の結果となった。(「洋上風力 価格破壊ショック」特集はこちらから) 三菱商事が示した衝撃的な落札価格を、敗退したライバル企業はどのように受け止めているのか。J-POWERおよびノルウェーのエネルギー大手エクイノールと組んで、秋田県の2海域に関する入札に参加していた大手エネルギー企業のJERA(東京電力ホールディングスと中部電力が共同出資)。同社で洋上風力の開発を担当する矢島聡執行役員は、「ベストを尽くしたが、認識が甘かった」と今回の入札を振り返る(Qは聞き手の質問、Aは矢島氏の回答)。 Q:今回の「敗戦」をどう受け止めていますか。 A:われわれなりに考え抜き、相当のリスクを取った形で応札した。ベストは尽くした。しかし、三菱商事連合が提示した条件に及ばなかった。 (電力部門を統括する)三菱商事の中西勝也次期社長(現・常務)および岡藤裕治エネルギーサービス本部長とも一緒に仕事をさせていただいたことがある。お二方とも敵に回したら大変手強い相手だ。三菱商事は慎重で堅実な会社であり、社内稟議もしっかりしている。考え抜いたうえでプロポーザルを出し、勝利したのだろう。 Q:事業者の選定に際しては、価格点(120点満点)と事業実現性に関する得点(120点満点)の2つで構成され、最高点を獲得した事業者が選定されるプロセスです。三菱商事連合は3海域のいずれにおいても価格点で他グループを引き離して満点の120点を獲得しました。 A:各応札事業者に関する評価点を見た時、正直申し上げて愕然とした。私どもが出した数字でも(勝利した場合には関係者に)衝撃を与えるだろうなと思っていたが、認識が甘かった』、普通は入札では協調はしないまでも、3海域いずれにおいても落札するといったことは異例中の異例だ。
・『「違うゲームをやっていた」  結果的に見ると、2位以下のグループとは大きな差が生じた。なぜこれだけの差をつけられてしまったのか、困惑している。われわれも(供給価格に反映される)コスト削減の取り組みではそうとう頑張ったつもりだ。スキーのジャンプ競技で言えば、K点越えは果たした。ところが、三菱商事連合はダブルK点越えというほどのすごさで、観客席の奥まで飛んでいってしまった。 Q:なぜこれだけの価格差がついたのか、謎が深まるばかりです。 A:飛び出したところが違うのか、あるいは違うゲームをやっていたのではないかとすら思った。電力の小売りや環境価値に関して何らかの工夫をしたのかもしれない。今回、応札した三菱商事も住友商事も、キーパーソンは海外の火力発電所の入札で、がちんこ勝負をしてきた人たちだった。それだけに国際入札の猛者たちと戦っているという意識を持って覚悟して臨んだが、負けてしまった。 Q:JERA連合と競合した秋田県能代市、三種町及び男鹿市沖の入札で、三菱商事連合は価格点だけでなく、定性点(事業実現性に関しての得点)でもトップになりました。同県由利本荘市沖の入札でも定性点が2位でした。 A:地元貢献を含め、三菱商事グループを総動員して高い点数を取りに行った結果だろう。あっぱれだ。われわれも地域貢献の取り組み方針については知恵を絞ったうえでプロポーザルに盛り込んだが、結果的に見ると、まだまだやるべきことがあったのかもしれない。 Q:三菱商事連合は3海域とも円滑に運転開始に持っていけると思われますか。 A:しっかりおやりになると思うが、3海域でのプロジェクトを同時に手掛けていくのは大変だと思う。実績が乏しい日本では、洋上風力発電施設の建設に必要なリソースが足りない。 Q:JERAも台湾の洋上風力発電プロジェクトでは苦労していますね。 A:日本に先行して参画している台湾の「フォルモサ2」プロジェクトでは、コロナ禍により工事の遅れや作業船の手配期間の延長が重なり、一時は銀行団の融資も止まるなど事業自体が危うくなった。当社が主導して事業スキームを組み直したが、大変な苦労をした。 一時は3桁億円の後半まで追加コストがかさんでしまうのではないかというほどだったが、財務や施工面でのリストラクチャリングによって今は何とか落ち着いている。洋上風力事業の大変さを経験した。 Q:今後の入札への取り組み姿勢は。 A:戦略の見直しが必要であることは間違いない。ただ、私自身は今後も頑張りたい。ポテンシャルがある地域についてはしっかりと見ていく』、「JERAも台湾の洋上風力発電プロジェクトでは苦労」、「コロナ禍により工事の遅れや作業船の手配期間の延長が重なり、一時は銀行団の融資も止まるなど事業自体が危うくなった。当社が主導して事業スキームを組み直したが、大変な苦労をした」、「プロジェク」のリスクは決して小さくはないようだ。「三菱商事連合」のお手並み拝見である。
タグ:エネルギー 山本 一郎氏による「脱原発にのめり込み過ぎた結果、欧米からハシゴを外される一部始終」 文春オンライン (その9)(脱原発にのめり込み過ぎた結果 欧米からハシゴを外される一部始終、脱原発にのめり込み過ぎた結果 欧米からハシゴを外される一部始終、キーマンが激白「再エネコストは下げられる」 三菱商事 洋上風力「赤字入札」の見方に大反論) 「大雪警報」には拍子抜けだった。 「おそらく今回はそれ以上の地球規模の気候変動ショックを起こす可能性があって」、は幸い杞憂に終わりそうだ。 確かに「日本」の「住宅」の「断熱」事情はお粗末だ。 「おそらく今回はそれ以上の地球規模の気候変動ショックを起こす可能性があって、今季の稲作からも影響が出始めるのではないかともいわれています」、先述の通り、幸い杞憂に終わりそうだ。 「新築のタワーマンション」で「サッシと窓からがんがん放熱してひんやりした風が入ってくる」、いまだにこんなお粗末なつくりとは驚かされた。 確かに「テスラ」の「株価」の相対的な堅調ぶりが目立つ。 「長大な海岸線をもつデンマークやノルウェーでさえ風力発電でエネルギー需要の4割しか賄えず」、「再生エネルギー」といっても限界があるようだ。 「LNG」を輸入に頼っている「日本」までもが欧州向けに「LNG」供給で協力させられたのには、驚かされた。 「一連の欧州の手のひら返し」は、確かに露骨まご都合主義だ。 「いま目の前の電力消費がこれだけある中で、化石燃料はだめ、再生エネルギーもすぐには代替できない、じゃあどうするかと言えば、きちんと縛りを作って原子力発電所を事故らないように運用して、核のゴミがどうにかなる技術を何とか開発できるまではしょぼしょぼやっていくほかないのではないかと思っています」、現実的な考え方だ。 「いま目の前の電気が足りないという事態で、ガソリン車を全部EVにするんだよとか、再生エネルギーで38%を目指すというような動きが、世界の人たちが無責任に作るルールに翻弄されないようにするべきだ、というのは考えておくべきなんじゃないですかねえ」、現実的な考え方で、基本的に同意できる。 東洋経済Plus「キーマンが激白「再エネコストは下げられる」 三菱商事、洋上風力「赤字入札」の見方に大反論」 「2020年」に「買収」した「エネコの技術を内製化したことが勝因になった」、直ぐに「内製化」するとは大したものだ。 「国内サプライチェーンを育成する初めの一歩としなければならない。保守部品を供給するサプライヤーやメンテナンスを担う人々が近くにいることの意味は大きい。欧州から部品を取り寄せるのではコスト低減は進まない」、「40年に30~45ギガワットの洋上風力案件を形成するという目標」達成に向けて「産業界」の一段の努力を期待したい。 東洋経済Plus「三菱商事は「ダブルK点越え」、敵ながら見事だ JERA幹部が明かす「洋上風力」入札の敗因と決意」 普通は入札では協調はしないまでも、3海域いずれにおいても落札するといったことは異例中の異例だ。 「JERAも台湾の洋上風力発電プロジェクトでは苦労」、「コロナ禍により工事の遅れや作業船の手配期間の延長が重なり、一時は銀行団の融資も止まるなど事業自体が危うくなった。当社が主導して事業スキームを組み直したが、大変な苦労をした」、「プロジェク」のリスクは決して小さくはないようだ。「三菱商事連合」のお手並み拝見である。
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保険(その5)(“消えた170億円”にFBIも参戦 ソニー生命社員巨額詐欺事件 不正送金はテレワーク中か、20年超で被害者が8人、不正契約も130件判明 メットライフ生命、営業職員「7000万円詐取」の闇、新人のノルマ廃止 月額給与も平均で6割アップ 第一生命「大量退職問題」解決へ処遇改善の大ナタ) [金融]

保険については、昨年9月16日に取上げた。今日は、(その5)(“消えた170億円”にFBIも参戦 ソニー生命社員巨額詐欺事件 不正送金はテレワーク中か、20年超で被害者が8人、不正契約も130件判明 メットライフ生命、営業職員「7000万円詐取」の闇、新人のノルマ廃止 月額給与も平均で6割アップ 第一生命「大量退職問題」解決へ処遇改善の大ナタ)である。

先ずは、12月4日付けFNNプライムオンライン「“消えた170億円”にFBIも参戦 ソニー生命社員巨額詐欺事件 不正送金はテレワーク中か」を紹介しよう。
・『170億円を不正送金 ソニー生命社員を逮捕(今年5月、イギリス領バミューダ諸島にあるソニー生命の再保険を担う子会社「SA Reinsurance Ltd」(以後、SA社とする)が、アメリカに持つ銀行口座から、およそ1億5500万ドル、日本円にしておよそ170億円が、別のアメリカの銀行口座に“不正”に送金された。 ソニー生命は、8月、この件について公表。「対策本部を設置し、社内調査を進める」「監督当局および捜査当局にも報告した」としていた。そして170億が消えてから半年以上が経った11月29日。警視庁捜査二課は、ソニー生命の現役社員を逮捕した』、「170億円を不正送金」とは極めて「巨額」だ。
・『不正送金の”偽装手口”は不明  逮捕されたのは石川伶容疑者(32)。ソニー生命の子会社であるSA社の口座から、およそ170億円を不正に送金し、だまし取った疑いだ。勤務態度に問題はなかったという石川容疑者は、口座から金が消えた5月の時点で、ソニー生命からSA社に出向中だった。 SA社は、9月末で解散することが決まっていて、石川容疑者はそのための清算作業を都内で担当。社員は数人で上司は1人だけだった。ただ、清算担当だからといって送金のハードルが低かったわけではない。 SA社が持つ口座に送金の指示を出すには、上司の承認と取締役会での承認、そして別の資産運用会社を通した上で、やっと”送金”が実行に移されることになっていた。しかし、今回は、この段階を踏むことなく、石川容疑者が、上司の承認を偽装する手口で直接送金を指示していた。 この”偽装方法”について、捜査が進められているところだが、送金の指示を受けた銀行側は、普段から大きな金額のやり取りを行っていることもあり、不正な指示だとは気づかなかったという』、「送金の指示を出すには、上司の承認と取締役会での承認、そして別の資産運用会社を通した上で、やっと”送金”が実行に移されることになっていた。しかし、今回は、この段階を踏むことなく、石川容疑者が、上司の承認を偽装する手口で直接送金を指示」、「9月末で解散することが決まって」いたことが何らかの形で影響している可能性がある。
・『170億円の送金指示は”テレワーク”中か  石川容疑者は、テレワーク中に、不正送金の”指示”をしていたとみられる。 なぜ巨額な不正送金を行うことができたのか。その一つに“新型コロナ”が影響している。事件がおきた5月中旬、東京都の新規感染者数は連日500人を超え、3回目の緊急事態宣言が出されていた。 全国的にテレワークが呼びかけられ、石川容疑者も在宅で勤務をしていた。上司や周りの目を気にせず仕事ができる環境下だったのは確かだ。石川容疑者は、SA社の口座がある米銀行のオンライン取引ポータルに自宅から接続、不正な送金を指示したとみられている』、「テレワーク」で「上司や周りの目を気にせず仕事ができる環境下だった」、とはまさに「テレワーク」が犯罪に利用された事例だ。
・『170億円の行方分からず FBIも参戦  そして、気になるのが、170億円の行方だ。石川容疑者は、SA社の口座からアメリカの銀行口座に移すよう指示を出したとされるが、その後の金の行方が分かっていないのだ。石川容疑者には多額の借金もなく、タワーマンション暮らしでもない。 石川容疑者が私腹を肥やすために不正送金を行ったのではないとすると、犯行の目的は何なのか。今回の事件、アメリカの口座が登場することなどから、FBIも捜査に協力。警視庁はFBIと連携し、石川容疑者の承認偽装の手口、“消えた170億円”の行方を調べている。(フジテレビ社会部・警視庁担当 山口祥輝)』、そのうち事件が解明されてゆくのが楽しみだ。

次に、12月14日付け東洋経済Plus「20年超で被害者が8人、不正契約も130件判明 メットライフ生命、営業職員「7000万円詐取」の闇」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/29050
・『生保業界で絶えることなく続く営業職員の金銭詐取事件。今度は外資系大手のメットライフ生命で、20年以上にわたって金銭詐取が行われていたことが明らかになった。 大手外資系生保のメットライフ生命保険の営業職員(男性、60代)が契約者など8人から約7000万円の金銭を詐取していたことが東洋経済の取材で明らかになった。 この営業職員は、甲信越・北陸地方にある営業拠点で30年以上にわたって保険営業を担うコンサルタント社員として勤務していた。内部告発をもとに同社が2021年2月から調査を行ったところ、20年以上前から金銭詐取と不正契約を繰り返していたことが発覚。2021年6月末に懲戒解雇されている』、「20年以上前から金銭詐取と不正契約を繰り返していた」、そんなに分からないものなのだろうか。驚いた。
・『不正の事実を公表せず  メットライフ生命は日本で営業する外資系生保の中で最も歴史があり、保険料収入でもトップ。営業職員と代理店、金融機関、通販の4つの販売チャネルを持ち、「コンサルタント社員」と呼ばれる営業職員は2021年3月末で約4200人いる。 同社はこの事案を対外公表しておらず、広報担当者は東洋経済の取材に対し、「当該営業拠点がある現地の財務局を通じて、金融庁には事件についての詳細は報告している」と回答している。 金融庁の担当者は「個別事案には言及できないが、(一般論として)不祥事案の届け出があった場合、被害の大きさや広がりを鑑みて、保険会社に公表を促す場合はある。ただ強制はできず、最終的には会社側の経営判断に委ねている」と話す。 金銭詐取の具体的な手口は、契約者貸付制度(生命保険の解約返戻金の範囲内で、契約者が保険会社からお金を借りられる制度)を利用して、契約者に無断でお金を借りたり、保険契約を勝手に解約してその解約返戻金を詐取していた。 同様の不正としては、2020年末に第一生命で発覚した高齢の女性営業職員による19億円の巨額詐欺事件がある。契約者貸付制度を利用した不正や、高金利の運用をうたう「社内預金話法」による金銭詐取であり、生保業界特有の事件であるとも言える。 今回の被害者8人のうち4人は契約者で、残る4人は保険契約とは無関係の営業職員の知人だった。契約者以外の被害者には「高金利で運用できる特別枠がある」などと言って信じ込ませていた。被害額の合計は約7000万円。最大2000万円の被害に遭った人もいたという。 今回の被害額のうち、営業職員が運用益や弁済金で被害者に払い戻した金額を除く約5000万円は、メットライフ生命が補填して被害者に返済している。今後、同社は補填分をこの営業職員に求償していく考えだ。 深刻なのは、この営業職員による不正は金銭詐取だけにとどまらなかったことだ。
・『架空契約や無断契約を繰り返す  メットライフ生命は、この営業職員が担当していた既契約者100数十人全員に聞き取り調査をして、8人以外に金銭詐取の被害者はいないことを確認しているという。ただ、調査の過程でこの営業職員が130件にも及ぶ「作成契約」を繰り返していたことがわかった。 作成契約とは、実在しない架空の人を名乗って保険契約を作成すること(架空契約)や、実在する人に無断で保険契約を作成すること(無断契約)などを指す。こうした行為は保険業法で「保険募集に関し著しく不適当な行為」とされており、発覚すれば会社から懲戒処分されるのが一般的だ。 この営業職員は約25年前から作成契約を繰り返し行っており、契約締結後の一定期間後に保険を解約・失効させ、再び新たな契約を締結することで、新規契約の実績を積み上げていたという。 金銭詐取もほぼ同時期から行われており、「詐取した金銭を保険料支払いの原資に当てていた可能性が高い」とメットライフ生命は説明する。 ではなぜこの営業職員は多数の作成契約を行うに至ったのか。 背景として浮かび上がるのが、営業職員に課せられるノルマの重さだ。国内生保の営業職員らと同様、メットライフ生命の営業職員も新規の保険契約を獲得し続けなければ、給与水準が下がったり、最悪の場合には雇用契約が打ち切られてしまう。 同社の営業職員に対しては、3カ月ごと、6カ月ごと、12カ月ごとにそれぞれ「査定」があり、会社が定めた営業成績のノルマをクリアしていなければ、給与減額や降格、雇用契約終了などの「ペナルティ」が待っている。むろん、最低限の基本給はあるが、契約実績に応じて支給される成績手当を加算していかなければ、生活していくだけの給与水準は維持できない。「約25年前から作成契約を繰り返し行っており、契約締結後の一定期間後に保険を解約・失効させ、再び新たな契約を締結することで、新規契約の実績を積み上げていた」、「解約・失効」契約をきちんと調べれば、「作成契約」であることはすぐ判明した筈なのに、それをしてなかったのは、「メットライフ生命」側の致命的な手落ちだ。
・『ノルマの重さに押しつぶされた?  メットライフ生命で働く勤続20年の営業職員は「基本給は毎月10万円あるが、成績手当から『基礎控除』という名目で毎月10万円が引かれるため、実質的には基本給はないものと考えている」とため息をつく。 さらに、「基礎控除とはいったい何かと会社に聞いても、『基礎控除は基礎控除だ』というだけで、明確な回答はもらえていない」という。 今回、詐取事件を起こした営業職員の動機はわかっていないが、ノルマの重さや厳しい給与体系のプレッシャーに押しつぶされて不正を働いたのであれば、会社側の責任も問われることにもなりかねない。 実際、複数の同社関係者によると、「この営業職員の営業成績は決して高くはなく、毎回の査定をクリアするのに相当苦労していたようだ」という声が漏れ聞こえてくる。一般的に、勤続30年間で既契約者100数十人は圧倒的に少ないという。 メットライフ生命は2017年に、営業拠点の責任者(マネジャー)が3人の契約者に架空の投資話を持ちかけ、生命保険の解約や契約者貸付制度の手続きをさせて、1億円の金銭を詐取する事件を公表している。 生保業界では営業職員をめぐる金銭詐取事件が引きも切らない。直近では2021年12月9日、第一生命の営業職員(40代、女性)が高齢の契約者に保険契約の解約や減額を誘導し、約3800万円を金融機関から不正に引き出す事件が明らかになっている。 詐取事件の原因と厳しい給与体系などの関係についてメットライフに尋ねたところ、「当社の給与体系や査定の仕組みが今回の不正につながったとの認識は持っていない」との回答だった。 連綿と続く生保会社の営業職員による金銭詐取事件。歯止めをかける抜本的な解決策はなかなか見えてこない』、「この営業職員の営業成績は決して高くはなく、毎回の査定をクリアするのに相当苦労していたようだ」、「既契約者100数十人は圧倒的に少ない」、漏れ聞こえてくる。一般的に、勤続30年間で既契約者100数十人は圧倒的に少ないという」、「圧倒的に少ない」「既契約者」数を踏まえると、過去の「営業成績」ですら不自然に高かったのではなかろうか。会社の内部的なチェック手段として、多面的な分析手法が高度化して、不正への歯止めになってほしいものだ。
タグ:保険 (その5)(“消えた170億円”にFBIも参戦 ソニー生命社員巨額詐欺事件 不正送金はテレワーク中か、20年超で被害者が8人、不正契約も130件判明 メットライフ生命、営業職員「7000万円詐取」の闇、新人のノルマ廃止 月額給与も平均で6割アップ 第一生命「大量退職問題」解決へ処遇改善の大ナタ) FNNプライムオンライン「“消えた170億円”にFBIも参戦 ソニー生命社員巨額詐欺事件 不正送金はテレワーク中か」 「170億円を不正送金」とは極めて「巨額」だ。 「送金の指示を出すには、上司の承認と取締役会での承認、そして別の資産運用会社を通した上で、やっと”送金”が実行に移されることになっていた。しかし、今回は、この段階を踏むことなく、石川容疑者が、上司の承認を偽装する手口で直接送金を指示」、「9月末で解散することが決まって」いたことが何らかの形で影響している可能性がある。 「テレワーク」で「上司や周りの目を気にせず仕事ができる環境下だった」、とはまさに「テレワーク」が犯罪に利用された事例だ。 そのうち事件が解明されてゆくのが楽しみだ。 東洋経済Plus「20年超で被害者が8人、不正契約も130件判明 メットライフ生命、営業職員「7000万円詐取」の闇」 「20年以上前から金銭詐取と不正契約を繰り返していた」、そんなに分からないものなのだろうか。驚いた。 「この営業職員の営業成績は決して高くはなく、毎回の査定をクリアするのに相当苦労していたようだ」、「既契約者100数十人は圧倒的に少ない」、漏れ聞こえてくる。一般的に、勤続30年間で既契約者100数十人は圧倒的に少ないという」、「圧倒的に少ない」「既契約者」数を踏まえると、過去の「営業成績」ですら不自然に高かったのではなかろうか。会社の内部的なチェック手段として、多面的な分析手法が高度化して、不正への歯止めになってほしいものだ。
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ソフトバンクの経営(その16)(「まだ1合目」 資本家・孫正義の見る未来、ソフトバンク「孫正義」の後継者選び 副社長退任のウラで起こっていた「意外なこと」、孫正義氏が米ナスダック再上場を計画する半導体大手アームは「イギリスの国宝」 戦略企業の流出危機に青ざめる英政界) [企業経営]

ソフトバンクの経営については、2000年9月21日に取上げた。久しぶりの今日は、(その16)(「まだ1合目」 資本家・孫正義の見る未来、ソフトバンク「孫正義」の後継者選び 副社長退任のウラで起こっていた「意外なこと」、孫正義氏が米ナスダック再上場を計画する半導体大手アームは「イギリスの国宝」 戦略企業の流出危機に青ざめる英政界)である。

先ずは、昨年12月24日付け日経ビジネスオンライン「「まだ1合目」 資本家・孫正義の見る未来」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00415/122300001/
・『「まだ1合目。始まったばかりだ」──。 浜離宮を見下ろすソフトバンクグループ本社ビル高層階で、孫正義会長兼社長はこう語り始めた。自ら心血を注ぐユニコーン(企業価値10億ドル以上の未上場企業)投資の達成度を聞かれてのことだ。 「資本家として、お金ではなく未来をつくる」。 世界にユニコーン企業とその予備軍は約3000社。このうち約400社に、ソフトバンクG傘下の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」などが出資する。2021年3月期、ソフトバンクGは日本の上場企業として史上最大の約5兆円の純利益をたたき出し、「本業」と位置づけるユニコーン投資はいよいよ軌道に乗ったかにみえた。しかし今、同社はかつてないほどの逆風の最中にある。 「実質は大赤字。一大事だ」(孫氏)。21年4~9月期決算で3636億円の純利益を確保したが、投資会社としての「成績表」であるNAV(ネット・アセット・バリュー、株式など保有資産から負債を除いた評価額)は3カ月で6兆円減った。 保有する中国・アリババ集団の株価は1年で半分に下落、6月末にニューヨーク証券取引所に上場した中国配車アプリ大手の滴滴出行(ディディ)も株価が6割下落した。米中対立の先鋭化により、高度なプログラミング技術や重要な個人情報を囲い込もうと中国当局がIT大手に規制をかけているとされ、成長性への不透明感が強まっている。 世界の分断の余波はそれだけではない。20年9月、ソフトバンクGは傘下の英半導体設計大手アームを米半導体大手エヌビディアに売却することで合意したが、米連邦取引委員会(FTC)が21年12月に入り、売却を阻止するため提訴。欧州委員会も本格調査に入っている。エヌビディアが強くなりすぎれば半導体産業全体の競争が阻害されるとの懸念からだ。売却で見込んでいた3兆~4兆円の利益の実現が遠のく』、「投資会社としての「成績表」であるNAV(ネット・アセット・バリュー、株式など保有資産から負債を除いた評価額)は3カ月で6兆円減った」、見る影もないような大逆風だ。
・『株価は半値に  21年の春先に1万円あったソフトバンクGの株価は足元で半値の5000円台に沈む。売上高のほとんどを占める通信子会社ソフトバンクや英アームの業績は堅調そのもの。それでも株価が低迷するのは、これらの実業よりも、投資こそが本業だと金融市場はみていることを示す。英アームの売却で得られるはずの資金を逃せば、次なるユニコーン投資の足かせになるとの懸念もある。 マクロ視点でみれば、インフレ退治のために米当局が進める金融緩和の正常化も逆風だ。カネ余りが縮小すれば「上場によって一段と価値が高まる」というユニコーン投資の必勝方程式が成り立たなくなる可能性も否定できない。 実際、21年12月に上場したばかりのシンガポールのスーパーアプリ「グラブ」の株価は安値圏で推移。20年度の業績拡大に寄与した韓国ネット通販大手クーパン株も21年3月の上場直後の高値から4割下落した。市場の一部には、破綻した英フィンテックのグリーンシル・キャピタルや米建設テックのカテラを念頭に、ソフトバンクGの「選別眼」の力量を疑問視する向きがなお残る。 振り返れば、孫氏、そしてソフトバンクの歴史はアップダウンの連続だ。ITバブル崩壊による株価急落、英ボーダフォンの日本法人買収による携帯通信事業への参入、米携帯通信大手スプリント買収……。 日本の産業界にとって前例のない大胆な決断は資金繰りのリスクと隣り合わせ。外野は常に、事業の継続性や危機をささやく。だが、そのたびに乗り越えてきたのも事実だ。 孫氏は自らが目指す姿を「投資家でなく資本家」と表現する。今回の逆風は米中対立という外的要因が発端とはいえ、市場環境に大きく左右される「投資会社」の宿命とも言える。この荒波を乗り越え、「300年続く会社」の基礎をどう固めようとしているのか。 次回から、ソフトバンクGおよびビジョン・ファンドの知られざる実態を、幹部の証言を基に追う』、これまで膨大な含み益を支えてきたアリババやネット企業の米国上場に対する中国政府の姿勢が厳しくなり、環境は様変わりとなった。

次に、本年2月7日付け現代ビジネス「ソフトバンク「孫正義」の後継者選び、副社長退任のウラで起こっていた「意外なこと」」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/92068
・『「副社長」が去るのは、3人目  1月28日にソフトバンクグループがマルセロ・クラウレ副社長(51歳)の退任を発表した。 「同氏は、ソフトバンクが買収した米通信大手・スプリントのCEOに就任し、経営を軌道に載せた。その手腕に対する孫正義会長兼社長(64歳)の信頼は非常に篤く、後継者レースの『最有力』と見る向きもあっただけに衝撃が大きい」(全国紙経済部記者) 孫氏は「69歳までに後継者に経営を引き継ぐ」とたびたび語ってきた。 だが、後継候補の「副社長」が社を去るのは、これで3人目だ。 「次期社長含みで三顧の礼をもって迎え入れたニケシュ・アローラ氏は'16年に電撃退社し、投資事業の最高責任者として招聘した佐護勝紀氏も昨春、静かに会社を去った。2人は投資の方向性をめぐって孫氏と対立したことが、退任の理由と見られます」(同・経済部記者) 今回のクラウレ氏の退任は、報酬面での決裂が原因と囁かれるが、同グループの関係者は違った見方を示す。 「クラウレ氏は残る最後の副社長、ラジーブ・ミスラ氏との折り合いが非常に悪い。孫さんが鳴り物入りで立ち上げた『ソフトバンク・ビジョン・ファンド』の主導権争いでミスラ氏に敗れたクラウレ氏は傍流のファンドの責任者に追いやられ、意気消沈していた。ただ、残るミスラ氏はファンド運営のプロという側面が強く、おそらく次期社長とは目されていない」 後継者選びはすっかり暗礁に乗り上げたように見える。だが、かつて孫氏の下で社長室長を務めた嶋聡氏は「本当のところ、孫さんは後継の育成に本気になってはいないのではないか」と語る。 「現在急ピッチで進めている投資事業は、これまでの孫さんの経験がすべて役立つ非常にエキサイティングなもの。彼が簡単に誰かに譲るとは思えない。結局、ウォーレン・バフェット氏と同じように90代までやるんじゃないでしょうか」(嶋氏) 孫氏にとっては「孤独」なほうが都合が良いに』、「バフェット氏と同じように90代までやるんじゃないでしょうか」との見方の方があり得そうだ。

第三に、2月10日付けNewsweek日本版が掲載した在英ジャーナリストの木村正人氏による「孫正義氏が米ナスダック再上場を計画する半導体大手アームは「イギリスの国宝」、戦略企業の流出危機に青ざめる英政界」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/kimura/2022/02/post-136.php
・『<世界に誇る科学力をテコに多くのユニコーンやデカコーン企業を生み出しながら、資本力に勝るアメリカ市場に奪われ、果てはGAFAMに吸収されてしまうイギリスの悪夢再び> [ロンドン発]投資株式会社化を目指すソフトバンクグループ(SBG)は2月8日、英半導体設計大手アームの売却を断念すると発表した。2016年、SBGは320億ドルでアームを買収。20年、米半導体大手エヌビディアに約400億ドル相当で売却する契約を結んだものの、独禁当局との交渉が難航し、断念に追い込まれた。 22年度中に米ナスダック市場での再上場を目指す孫正義会長兼社長に英政界から恨み節が聞こえてくる。アームはもともとロンドン市場とナスダック市場に上場していたが、SBGによる買収で非上場の完全小会社となった。イギリスが国民投票で欧州連合(EU)離脱を選択した直後でテリーザ・メイ英首相(当時)は孫氏に電話で「イギリスへの信頼の証しだ」と祝福した。 孫氏は8日の記者会見で「米当局の独禁法による訴訟が明確になってきた。イギリス、EUなど各国当局が非常に強い懸念を表明している。エヌビディアが提案した解決策で規制当局も納得すると信じていたが、全く相手にしてもらえなかった。エヌビディア側からこれ以上は難しいだろうと契約解消の話があった」と背景を説明した。 アームの再上場先について「アームの取引先は大半が米シリコンバレーの会社。投資家もアームに非常に高い関心を持っている。ハイテクの中心であるアメリカのナスダックが一番適している。他に若干可能性があるのがニューヨーク市場。おそらくナスダックになるだろうと現時点では考えているが、まだ決まったわけではない」との見通しを示した』、「アームの再上場先について「アームの取引先は大半が米シリコンバレーの会社。投資家もアームに非常に高い関心を持っている。ハイテクの中心であるアメリカのナスダックが一番適している。他に若干可能性があるのがニューヨーク市場」、それが最も合理的だ。
・『イギリスの「国宝」が米市場に流出する  英ケンブリッジに拠点を置くアームは性能が増しても回路の複雑さを増やさない独自の設計で消費電力を抑え、スマホの普及とともにシェアを拡大。クラウド、電気自動車(EV)の需要のほか、スパコンにも進出、計算能力を競うランキングで4期連続の世界一となった理化学研究所の「富岳」にはアームの設計を採用した富士通のプロセッサーが使われている。 「国宝」のようなテクノロジー企業が日本に買収され、ロンドン市場からナスダック市場に持って行かれてはたまったものではない。英紙タイムズは「アームは地球上のほぼすべてのスマホを動かすプロセッサーを製造している。アップル、クアルコム、サムスン電子も利用している」と紹介した上で英政界の苦悩を伝えた。 「アームのロンドンでの上場は不可欠だ。戦略的に重要な企業や主要な雇用主の保有は重要で、われわれは歴史的にあまりに無頓着だった」(保守党のアンソニー・ブラウン下院議員)。「わが国は戦略的資産を国内にとどめ、雇用を守る具体的な政策が必要だ」(労働党のデービッド・ザイクナー下院議員)。2人とも地元ケンブリッジ選出の下院議員である。 ボリス・ジョンソン英首相の報道官は「昨年、ロンドンでは記録的なIPO(新規公開株)と民間投資が行われた。企業がロンドンに上場して成長することを支援し、奨励するために懸命に取り組んでいる」と語った。しかしブレグジットで対EU貿易が激減する中、世界的な英テクノロジー企業が米市場に流出という事態になれば衝撃は大きい』、一般的に英国の政治家は「戦略的に重要な企業や主要な雇用主の保有は重要で、われわれは歴史的にあまりに無頓着だった」が、ここに登場した「2人とも地元ケンブリッジ選出の下院議員」、なので、こだわっているのだろう。少なくとも「戦略企業の流出危機に青ざめる英政界」はオーバーだ。
・『ロンドンはテクノロジー企業の評価が低い  英紙フィナンシャル・タイムズはこんな懸念を伝えている。ロンドン市場は米ナスダック、ニューヨーク市場に比べテクノロジー企業の評価が低いと広く認識される中、クワシ・クワーテン英ビジネス・エネルギー・産業戦略相はアームをロンドン市場に再上場させるよう求める声に直面している。 ダレン・ジョーンズ英下院ビジネス・エネルギー・産業戦略特別委員会委員長は同紙に「SBGがロンドン以外での上場を決定した場合、資金調達をするテクノロジー企業にとってロンドンを最も魅力的な市場にする財務省の取り組みに重大な疑問を投げかける」と懸念を示している。 ロンドン証券取引所ではIPOを活発にするため議決権種類株発行企業の上場を認めるとともに、浮動株比率の下限を25%から10%に引き下げた。「特別買収目的会社(SPAC)」も活用しやすくしたため、昨年ロンドンで上場した企業は海外送金サービス「ワイズ」、出前サービス「デリバルー」など120社以上、168億ポンド(約2兆6千億円)が調達された。 19年の35社、20年の38社を大きく上回ったことからイギリスの「IPO(新規公開株)元年」と呼ばれる。しかしアメリカのインフレ懸念で米連邦準備理事会(FRB)が利上げだけでなく、早い時期に量的引き締め(QT)に転換する見通しが強まったことから、英IPO企業の株価も惨憺たる状況となった』、「ロンドンはテクノロジー企業の評価が低い」のが事実であれば、「米ナスダック、ニューヨーク市場」を選択するべきだろう。
・『GAFAMやモデルナが生まれにくい環境  短期利益を求める英市場参加者は株価が上昇するとすぐに売ってしまうため、アメリカのアルファベット(グーグル)やアマゾン、アップル、メタ(フェイスブック)、マイクロソフトといったビッグテック(GAFAM)やmRNAワクチンで一躍有名になった米モデルナのようなバイオテック企業はイギリスでは育ちにくい。イギリス最大の強みはワクチン開発や変異株の探知、感染予測モデリングでも証明された科学力だ。英高等教育専門誌THEによる世界大学ランキングには1位オックスフォード大学、5位タイのケンブリッジ大学、12位インペリアル・カレッジ・ロンドン、18位タイのユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)をはじめ28校がトップ200校に名を連ねる。 世界トップクラスの大学に支えられた研究開発力は、ユニコーン(評価額10億ドル以上の未上場スタートアップ)だけでなく、評価額100億ドル以上の「デカコーン(ユニコーンの10倍を意味する造語)」を産み落としている。その中には日本にも上陸を果たしたデジタル銀行「レボリュート」も含まれている。 昨年4月時点でユニコーンの数はアメリカ288社、中国133社、インド32社に次ぐ世界4位の27社。欧州勢ではドイツ15社、フランス8社を引き離す。しかしイギリスではアームだけでなく、AIを開発する非公開企業ディープマインドもグーグルに買収されている。テクノロジー企業を大きく育てるには米シリコンバレーのようなハイテクの集積地と巨大な資本市場が不可欠だ。 IPOが活況を呈してもロンドン市場が敬遠される最大の理由はブレグジットに代表される予測不可能な政治にある。ずさんなコロナ対策で欧州最大の18万人超の犠牲を出しながら首相官邸や官庁街では平然と飲み会が続けられ、ジョンソン首相が下院で謝罪した舌の根も乾かぬうちに野党党首を誹謗中傷して恥じないような国にいったい誰が投資するというのだろう』、「モデルナが生まれにくい環境」とあるが、ワクチンメーカーでは、やや小粒だがアストラゼネカは英国企業だ。「IPOが活況を呈してもロンドン市場が敬遠される最大の理由はブレグジットに代表される予測不可能な政治にある」、その通りだ。
タグ:これまで膨大な含み益を支えてきたアリババやネット企業の米国上場に対する中国政府の姿勢が厳しくなり、環境は様変わりとなった。 「投資会社としての「成績表」であるNAV(ネット・アセット・バリュー、株式など保有資産から負債を除いた評価額)は3カ月で6兆円減った」、見る影もないような大逆風だ。 「モデルナが生まれにくい環境」とあるが、ワクチンメーカーでは、やや小粒だがアストラゼネカは英国企業だ。「IPOが活況を呈してもロンドン市場が敬遠される最大の理由はブレグジットに代表される予測不可能な政治にある」、その通りだ。 「ロンドンはテクノロジー企業の評価が低い」のが事実であれば、「米ナスダック、ニューヨーク市場」を選択するべきだろう。 少なくとも「戦略企業の流出危機に青ざめる英政界」はオーバーだ。 木村正人氏による「孫正義氏が米ナスダック再上場を計画する半導体大手アームは「イギリスの国宝」、戦略企業の流出危機に青ざめる英政界」 一般的に英国の政治家は「戦略的に重要な企業や主要な雇用主の保有は重要で、われわれは歴史的にあまりに無頓着だった」が、ここに登場した「2人とも地元ケンブリッジ選出の下院議員」、なので、こだわっているのだろう。 「アームの再上場先について「アームの取引先は大半が米シリコンバレーの会社。投資家もアームに非常に高い関心を持っている。ハイテクの中心であるアメリカのナスダックが一番適している。他に若干可能性があるのがニューヨーク市場」、それが最も合理的だ。 Newsweek日本版 「バフェット氏と同じように90代までやるんじゃないでしょうか」との見方の方があり得そうだ。 現代ビジネス「ソフトバンク「孫正義」の後継者選び、副社長退任のウラで起こっていた「意外なこと」」 日経ビジネスオンライン「「まだ1合目」 資本家・孫正義の見る未来」 (その16)(「まだ1合目」 資本家・孫正義の見る未来、ソフトバンク「孫正義」の後継者選び 副社長退任のウラで起こっていた「意外なこと」、孫正義氏が米ナスダック再上場を計画する半導体大手アームは「イギリスの国宝」 戦略企業の流出危機に青ざめる英政界) ソフトバンクの経営
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キシダノミクス(その3)(政権発足100日超 見えてきた「岸田流」強さと限界 安倍氏、菅氏より「まとも」の評価も進まぬ改革、経済安保法案の責任者・藤井敏彦室長「更迭」の理由は無届け兼業と朝日記者不倫、〈経済安保法案の責任者更迭〉朝日新聞が記者の不倫で見解発表「業務外のことと判断」) [国内政治]

キシダノミクスについては、昨年12月4日に取上げた。今日は、(その3)(政権発足100日超 見えてきた「岸田流」強さと限界 安倍氏、菅氏より「まとも」の評価も進まぬ改革、経済安保法案の責任者・藤井敏彦室長「更迭」の理由は無届け兼業と朝日記者不倫、〈経済安保法案の責任者更迭〉朝日新聞が記者の不倫で見解発表「業務外のことと判断」)である。

先ずは、本年1月22日付け東洋経済オンラインが掲載した政治ジャーナリストの泉 宏氏による「政権発足100日超、見えてきた「岸田流」強さと限界 安倍氏、菅氏より「まとも」の評価も進まぬ改革」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/504814
・『岸田文雄政権が発足してから100日が過ぎ、初めての通常国会が始まった。「聞く力」をアピールし、対話の姿勢を打ち出したことで高い支持率を得ていることは強みだが、新型コロナウイルスのオミクロン株は猛威を振るい、経済の立ち直りも容易ではない。アメリカと中国との対立が深まる中で、外交も動きが取れない。「聞く力」だけでなく「決める力」が発揮できるのか。安全運転だけでは限界に突き当たるのは時間の問題だ。 岸田内閣の支持率は、1月のNHK調査で「支持する」が57%。前月から7ポイント上昇した。「支持しない」は20%で、6ポイント低下している。支持率が高い理由は、岸田首相の穏健な姿勢にあることは間違いない。 国会審議の野党への答弁や記者会見での対応は丁寧で、礼儀正しい。野党議員にヤジを飛ばした安倍晋三元首相や、質問に正面から答えない菅義偉前首相に比べれば「まともだ」という評価は、自民党内だけでなく野党からも聞かれる』、「野党への答弁や記者会見での対応は丁寧で、礼儀正しい」、その通りだ。
・『支えるスタッフも安定している  岸田首相を支えるスタッフの体制も安定している。首相の首席秘書官を務める嶋田隆氏は経済産業省の事務次官経験者。与謝野馨氏が経産相だったときだけでなく、官房長官や財務相のときも秘書官を務めた経験もあり、霞が関の信頼が厚い。 財務省出身の首相秘書官・宇波弘貴氏は、厚生労働省の予算担当が長く、コロナ対策に精通。厚労省と連携して水際対策や病床確保を進めてきた。 安倍政権では経産省出身の今井尚哉首席秘書官や警察庁出身の北村滋国家安全保障局長ら「官邸官僚」が、霞が関に強引に指示を下ろすケースが多かった。菅政権でも国土交通省出身の和泉洋人首相補佐官らが号令をかけた。それらに比べると、岸田政権は各省庁の意向も踏まえながら、連携して政策を進める姿勢が目立つ。「霞が関が落ち着いて仕事ができる環境になった」という官僚は少なくない。 さらに、政権運営は「安全運転」だ。1月17日召集の通常国会に提出する法案は58本に絞った。外国人収容と送還のルールを見直す入管難民法改正案は野党の反発が予想されることから、再提出を見送った。 コロナの感染拡大に対応するため、民間病院や開業医などに対する国や都道府県の指揮・管理の強化を狙った感染症法改正も先送りとなった。野党から注文がつく可能性があるほか、医師会などからも不満が出ることが予想されるためだ。与野党対立の火種になりそうな法案は提出せずに、安全運転で通常国会を乗り切って夏の参院選に臨もうという狙いは明らかだ。 だが、課題は山積している。第1にオミクロン株の感染拡大だ。デルタ株などに比べて重症化する比率は低いものの、感染者数は第5波を大きく上回り、自宅療養者は急増。病院に行けないまま症状が悪化するケースも目立ってきた。 岸田首相は病床確保を進めてきたと言うが、感染者が急増すれば、病床が不足するのは避けられない。医師や看護師の確保も、法律上の強制力を伴っていないため、「お願いベース」では限界がある。感染症法の改正を先送りしたツケが出てきそうだ。 ワクチン接種についても、昨年12月段階で3回目接種を加速すべきだという動きがあったものの、十分な量を確保することができずに、欧米諸国などに比べて、大きく出遅れた。国会審議では野党が岸田首相の決断の遅れを追及する構えだ』、「支えるスタッフも安定している」は、早くも崩れ、第三の記事にあるようなスキャンダルが発生した。「ワクチン接種」が「大きく出遅れた」のは致命的なミスだ。
・『岸田政権にとっては「我慢の3カ月」  第2に経済の停滞だ。昨年末には感染が落ち着き、経済の立て直しに向けた2022年度の予算案編成が進められた。しかし、オミクロン株の感染拡大が景気回復に水を差すことは避けられない。 アメリカでは景気回復が進み、インフレ抑制のために金利引き上げも視野に入ってきた。マイナス金利が続く日本との金利差によって、円安・輸入物価高がじわじわと進んでいる。日本が不景気の中の物価上昇で参院選を迎えるようだと、政権への風当たりは厳しくなる。 日本の場合、1月に新年度予算案を国会に提出し、3月末まで衆参両院で審議が繰り広げられることから、経済情勢が悪化しても、この間に政府が新たな景気対策を打ち出すことができない仕組みになっている。岸田政権にとっては「我慢の3カ月」が続くのである。 岸田首相は「新しい資本主義」を掲げて、「新自由主義からの脱却」を唱えている。だが、成長戦略や分配政策に具体策はなく、企業に賃上げを求めているものの、実現の道筋は見えていない。 第3に外交で政権浮揚ができない点である。岸田首相は昨年末からアメリカを訪問してバイデン大統領との首脳会談の機会を探ってきた。しかし、バイデン大統領は国内の議会対策などに忙殺され、対面の首脳会談の時間が取れずに、1月21日にオンラインでの首脳会談にやっとこぎつけた。 岸田首相としては、バイデン大統領との信頼関係をアピールし、国内の求心力を強めたいところだが、思いどおりにはなっていない。逆に、沖縄県や山口県にあるアメリカ軍基地からコロナ感染が広がった疑いが強まり、アメリカ兵に対する検疫や検査の甘さが批判され、岸田政権の対米姿勢が問題視されている。 通常国会の予算委員会などで、野党はコロナ対策や経済政策の「各論」を追及する構え。岸田首相が説得力のある答弁ができるかが勝負どころだ。 そして、ここにきて目立つようになってきたのが自民党内の動きだ。安倍元首相は、幹事長人事で高市早苗氏を推したが、岸田首相は受け入れずに茂木敏充氏を起用したことや、山口県内で長年のライバルである林芳正氏を外相に抜擢したことなどに不満を募らせているという。安倍氏は対中国外交で強硬姿勢を訴えるなど、岸田外交に注文をつけ続けるだろう。 安倍氏は、森友学園をめぐる公文書改ざん問題や桜を見る会での公私混同問題など火種を抱えている。岸田首相が一連の疑惑解明に消極姿勢を続ければ、国民の不満が広がる半面、解明に積極的に乗り出せば安倍氏の怒りを買う。そういうジレンマに陥るのである。 一方、菅前首相は、もともと岸田氏の政治手腕に疑問を持っていた。ポスト安倍を争う自民党総裁選に官房長官だった菅氏が手を挙げたのも、先に立候補を表明した岸田氏や石破茂元幹事長では「まともなコロナ対策ができない」と判断したためだ。菅氏の後継を争う総裁選で、菅氏が河野太郎氏を支持したのも、「岸田氏では改革が進まない」と考えたからだ。 菅氏は、岸田政権でワクチン接種が出遅れていることや感染症法の改正を先送りしたことなどについて批判を強めている。菅氏が河野氏や二階俊博前幹事長らと連携して、岸田政権の揺さぶりに動く可能性もある』、「菅氏が河野氏や二階俊博前幹事長らと連携して、岸田政権の揺さぶりに動く可能性もある」、しかし「参院選」まではお預けだろう。
・『今夏の参院選まで懸案処理は先送り?  日本の現状を大局的に見れば、コロナ禍によって、日本の医療体制の不備やデジタル化の遅れなどが露呈した。安倍政権は感染の拡大と経済の落ち込みに動転し、菅政権はワクチン接種の加速やデジタル庁の新設などを進めたが、コロナ感染の拡大に十分対応できる体制にはほど遠い。 岸田政権は安倍・菅政権を検証したうえで、抜本的な制度改革を推し進める必要がある。だが、「聞く力」は評価されているものの、改革に向けた「決める力」は発揮されていない。 岸田首相にしてみれば、今夏の参院選までは懸案処理を先送りし、参院選を自民・公明の与党勝利で乗り切ることが最優先だろう。そのあとは、衆院議員の任期満了が2025年秋で、参院選の改選が2025年夏なので、衆院の解散をしなければ、3年間は全国一斉の国政選挙がない状況ができる。「黄金の3年間」ともいうべきこの間に、さまざまな懸案を解決したいというのが岸田首相の本音だ。 しかし、世界標準から立ち遅れた日本の諸制度を改革するのは待ったなしであり、まさに時間との勝負である。懸案は参院選後という先送りの姿勢では、政権に対する国民の共感は広がらないだろう』、「黄金の3年間」をあてにして「懸案」を「先送り」していては、「国民」の我慢も限界を迎える可能性がある。

次に、2月9日付け文春オンライン「経済安保法案の責任者・藤井敏彦室長「更迭」の理由は無届け兼業と朝日記者不倫」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/51951
・『岸田政権の目玉政策の一つである「経済安保推進法案」。2月下旬の法案提出に向け、現在、各所との調整が行われている最中だ。それを事務方で取り仕切る責任者である経済安保法制準備室室長を務める藤井敏彦・国家安全保障局担当内閣審議官が、兼業届を出さずに私企業で働き報酬を得ていた疑いがあることや朝日新聞の記者と不倫関係にあることが、「週刊文春」の取材でわかった。「週刊文春」の取材を受けて、2月8日、国家安全保障局は「処分につながる可能性のある行為を把握した」として、藤井氏を更迭した。 藤井氏が働いていたのは、経済学者の中谷巌氏が立ち上げたビジネススクール・不識塾だ。「不識塾では10カ月のカリキュラムで、将来、経営トップを担うと嘱望されている大手企業の執行役員、部長クラスにリベラルアーツ教育をしている。生徒は中谷氏が取締役や社外取締役を務めた企業などで、定員は30名。年間の授業料は550万円で、5月中旬から翌年2月下旬まで土曜日に定期的に講義が開かれている」(不識塾OB) 講義ではテーマごとに大学教授など“ゲスト講師”が講演するほか、進行や生徒へ指導をする“師範”がいる。藤井氏はこの師範を長年、務めているのだ。塾関係者が明かす。 「中谷氏が師範に招き、2013年からやっています。他の師範は学者や企業幹部なので、官僚の藤井氏からは、違う視点のアドバイスを受けられると生徒からの評判もいい」 だが不識塾では藤井氏が師範をしていることは、表に出さないようにしている』、「中谷氏が師範に招き、2013年からやっています」、「中谷氏」ともあろう人物が「公務員倫理規定」に触れるような仕組みの中心にいるとは、信じ難いような話だ。
・『内部資料でも藤井氏の名前を伏せたのはなぜ?  「生徒にも藤井氏の名前を出さないように伝えるほか、内部資料でも藤井氏のことを『F』と記している」(同前) 一体なぜか。それは報酬が発生するからだ。 「師範のギャラは1回あたり5万円、ゲスト講師は1回あたり25万円ほど」(同前) 師範として全部出席し、1回5万円の報酬を得ていた場合は年間約130万円、13年からの9年間で1170万円になる。公務員倫理規程に詳しい国際基督教大学の西尾隆特任教授が語る。 「国家公務員の兼業については国家公務員法で制限されている。報酬を得て、継続的または定期的に従事をする場合は、兼業届を提出し、事前に承認を得なければなりません。また兼業が認められるのは原則、大学など教育機関や非営利団体。営利企業は稀です。違反をした場合は、懲戒処分の対象となり得ます」 不識塾は生徒から年間に数百万円の授業料を取る営利企業である。届け出をせずに報酬を得ていた場合は、立派な“闇営業”だ。 2月5日、不識塾の後に、当の藤井氏を直撃した(Qは聞き手の質問、Aは藤井氏の回答)。 Q:不識塾で師範として5万円のギャラを貰っていると聞いている。 A:「違いますね」 Q:師範を今日もしていましたよね。 A:「まぁ、参加……。参考に見てただけですけど」 Q:兼業届は?』、「不識塾は生徒から年間に数百万円の授業料を取る営利企業である。届け出をせずに報酬を得ていた場合は、立派な“闇営業”だ」、その通りだ。
・『講義前夜、朝日新聞の女性記者のマンションに一泊  「ボランティアなので出していません。講師としてじゃないです。勉強になるんで、行ってるだけです」 当初はボランティアなので兼業届は必要なく、さらに師範をしていることさえ否定したが、次第に回答は二転三転。 Q:2013年から一度も報酬は貰っていないのか。 「自分が(ゲスト)講師として行った時には講師代を貰います。講師として年に1回講義はしています」 Q:無給ではなく? A:「1回30万……いや20万、30万か。講演に兼業届はいりません」と、講演で高額の報酬を貰ったことは認めた。 講演で5000円以上の報酬を得た際には「贈与等報告書」を提出することが国家公務員倫理法で規定されている。だがこの9年間、藤井氏が所属していた内閣官房、経産省、防衛省で、藤井氏は不識塾の報酬についての贈与等報告書を提出していなかった。 そして2月8日付けで藤井氏は更迭、経済産業省に出向する辞令が出された。 だが問題はそれだけではなかった。妻を持つ藤井氏が不識塾の講義前夜、一泊したのは、朝日新聞の敏腕女性記者の自宅マンションだった――。 このほか、藤井氏の人物像、藤井氏を引き上げた大物官僚、不識塾のゼミに藤井氏の所属省庁の利害関係者がいたこと、藤井氏が不倫デートを楽しんだ敏腕女性記者の素顔、藤井氏の問題についての経済安保室と朝日新聞の回答など、詳しくは2月9日(水)12時配信の「週刊文春 電子版」及び2月10日(木)発売の「週刊文春」が報じている』、「講師として年に1回講義はしています」 Q:無給ではなく? A:「1回30万……いや20万、30万か・・・講演で高額の報酬を貰ったことは認めた」、「朝日新聞の女性記者」との不倫については、第三の記事を参照のこと。

第三に、2月10日付けYahooニュースが転載した文春オンライン「〈経済安保法案の責任者更迭〉朝日新聞が記者の不倫で見解発表「業務外のことと判断」」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/19a354940e2b1764685b0763bf12169111cc6578
・『岸田政権が目玉政策に掲げる経済安全保障推進法案の責任者である藤井敏彦・経済安保法制準備室室長が更迭された問題。藤井氏が、ビジネススクールで"副業"を続け報酬を得ていた疑いがあることや、その講義の前日に朝日新聞政治部の女性記者のマンションに一泊する不倫疑惑について、「週刊文春」が事実確認を求めたところ、2月8日付けで更迭された。朝日新聞は、2月10日の朝刊で、この人事を報じる記事を掲載し、その中で女性記者の不倫について「業務外のことと判断しております」との見解を発表した。 2月9日配信の「 週刊文春 電子版 」及び2月10日発売の「週刊文春」では、「経済安保のキーマン 朝日記者不倫と“闇営業”」とする記事を掲載。国家安全保障局(NSS)担当内閣審議官で室長を務めてきた藤井氏が兼業届を出さずに9年間にわたりビジネススクール「不識塾」で講師役の“師範”を務め、報酬を得ていた疑いがあることを報じた。 また、藤井氏は2月4日、不識塾の前夜、朝日新聞の政治部の女性記者のマンションに一泊。塾が終わった後にも銀座でデートを楽しむなど、親密な関係にあった。 女性記者は以前、藤井氏がNSS経済班のトップだった時代に、取材記者と取材対象者で接点があった。昨年3月には単独署名でNSS経済班に関する記事も執筆している。 藤井氏は小誌の直撃に対して「友人」だと説明。女性記者は「お答えできません」と回答した。また、朝日新聞広報部は、不倫関係については「お答えしません」としていた。 「当社記者に関わる内容は業務外のことと判断」 実はここ最近の経済安保法案の報道は、朝日新聞がリード。2月に入ってからもたびたび一面でスクープを報じていただけに、両者の関係に注目が集まっていた。 朝日新聞は、2月10日付けの紙面で藤井氏が更迭されるに至った経緯を記した後、朝日新聞社広報部の次のようなコメントを掲載した。 「文春記事の当社記者に関わる内容は業務外のことと判断しております。なお、記者は経済安保法案に関する最近の報道には関わっておりません」 経済安保法案に関する今後の朝日新聞の報道が注目される。 そのほか、藤井氏が副業していた「不識塾」とはいったいどのような組織なのか、藤井氏の人物像、藤井氏を引き上げた大物官僚、不識塾で藤井氏が受け持つ少人数のゼミに所属省庁の利害関係者がいたこと、敏腕とされる女性記者の素顔など、詳しくは「 週刊文春 電子版 」及び2月10日(木)発売の「週刊文春」が報じている』、「「当社記者に関わる内容は業務外のことと判断」 実はここ最近の経済安保法案の報道は、朝日新聞がリード。2月に入ってからもたびたび一面でスクープを報じていただけに、両者の関係に注目が集まっていた」、「たびたび一面でスクープを報じていた」ということならば、「当社記者に関わる内容は業務外のことと判断」は疑わしい。業務そのものなのではなかろうか。 
タグ:キシダノミクス (その3)(政権発足100日超 見えてきた「岸田流」強さと限界 安倍氏、菅氏より「まとも」の評価も進まぬ改革、経済安保法案の責任者・藤井敏彦室長「更迭」の理由は無届け兼業と朝日記者不倫、〈経済安保法案の責任者更迭〉朝日新聞が記者の不倫で見解発表「業務外のことと判断」) 東洋経済オンライン 泉 宏氏による「政権発足100日超、見えてきた「岸田流」強さと限界 安倍氏、菅氏より「まとも」の評価も進まぬ改革」 「野党への答弁や記者会見での対応は丁寧で、礼儀正しい」、その通りだ。 「支えるスタッフも安定している」は、早くも崩れ、第三の記事にあるようなスキャンダルが発生した。「ワクチン接種」が「大きく出遅れた」のは致命的なミスだ。 「菅氏が河野氏や二階俊博前幹事長らと連携して、岸田政権の揺さぶりに動く可能性もある」、しかし「参院選」まではお預けだろう。 「黄金の3年間」をあてにして「懸案」を「先送り」していては、「国民」の我慢も限界を迎える可能性がある。 文春オンライン 「経済安保法案の責任者・藤井敏彦室長「更迭」の理由は無届け兼業と朝日記者不倫」 「中谷氏が師範に招き、2013年からやっています」、「中谷氏」ともあろう人物が「公務員倫理規定」に触れるような仕組みの中心にいるとは、信じ難いような話だ。 「不識塾は生徒から年間に数百万円の授業料を取る営利企業である。届け出をせずに報酬を得ていた場合は、立派な“闇営業”だ」、その通りだ。 「講師として年に1回講義はしています」 Q:無給ではなく? A:「1回30万……いや20万、30万か・・・講演で高額の報酬を貰ったことは認めた」、「朝日新聞の女性記者」との不倫については、第三の記事を参照のこと。 yahooニュース 文春オンライン「〈経済安保法案の責任者更迭〉朝日新聞が記者の不倫で見解発表「業務外のことと判断」」 「「当社記者に関わる内容は業務外のことと判断」 実はここ最近の経済安保法案の報道は、朝日新聞がリード。2月に入ってからもたびたび一面でスクープを報じていただけに、両者の関係に注目が集まっていた」、「たびたび一面でスクープを報じていた」ということならば、「当社記者に関わる内容は業務外のことと判断」は疑わしい。業務そのものなのではなかろうか。
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GAFA(その6)(日本人が「次のGAFA候補を知らない」悲しい理由 投資家が教える「日本は後回し」の破壊的企業、米マイクロソフトの巨大買収にみる、ザッカーバーグの「やられた感」、「巨大テック企業を取り締まる」が世界のコンセンサスになる日、グーグル日本元社長「日本からGAFAは生まれない」 「GAFAはインフラ 警戒しながらうまく使え」) [イノベーション]

GAFAについては、昨年9月11日に取上げた。今日は、(その6)(日本人が「次のGAFA候補を知らない」悲しい理由 投資家が教える「日本は後回し」の破壊的企業、米マイクロソフトの巨大買収にみる、ザッカーバーグの「やられた感」、「巨大テック企業を取り締まる」が世界のコンセンサスになる日、グーグル日本元社長「日本からGAFAは生まれない」 「GAFAはインフラ 警戒しながらうまく使え」)である。

先ずは、本年1月6日付け東洋経済オンラインが掲載した京都大学大学院特任准教授の山本 康正氏による「日本人が「次のGAFA候補を知らない」悲しい理由 投資家が教える「日本は後回し」の破壊的企業」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/478994
・『GAFAの強さの秘密を明かし、その危険性を警告した書籍『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』は日本だけで15万部のベストセラーになり、「読者が選ぶビジネス書グランプリ2019 総合第1位」「ビジネス書大賞2019 読者賞」の2冠を達成、日本にGAFAという言葉を定着させた。 その著者スコット・ギャロウェイ教授の最新作『GAFA next stage四騎士+Xの次なる支配戦略』がついに刊行され、発売3日で6万部のベストセラーになっている。本書では、コロナ禍でますます肥大化したGAFAと、この4社に匹敵する権威を持つようになる「+X」の巨大テック企業が再び、世界をどのように創り変えていくかを予言している。 本書を「コロナで起きた変化を再点検し、何をすべきか考える本として意味がある」と語るのが、日米のスタートアップに投資をし、京都大学大学院で教鞭をとる山本康正氏だ。「日本はビッグテックに『後回し』にされている」という危機感とともに、解説してもらった』、「日本にGAFAという言葉を定着させた。その著者」の新刊とは興味深そうだ。
・『日本は「後回し」にされている  『GAFA next stage』は、今のタイミングに出版されるからこそ意味があります。今後、コロナが収束した後、「元にもどるから安全だ」と考えるのではなく、この2年間で何が起きたのかを再点検し、それに対して何をすべきかを考えておかなければなりません。 本書には、パンデミックによって2カ月でeコマースの10年分の成長が起きたと書かれています。eコマースに限らず、似たような激変がさまざまな分野で起こっています。しかし日本の普通の大企業に勤めていると、怖いほど、この変化に気づくことができません。 それでも、その変化がソフトウェアの分野なら、すぐに日本にもやってきます。例えば時価総額20兆円超えと報道されるバイトダンスが運営する「TikTok」は、日本の10代の間ではフェイスブックよりも人気です。 同じように「Clubhouse」も、アメリカで流行して、少し低迷したもののドイツで火がつき、その2週間後には日本で大流行していました。海外との時差はほとんどありません。 しかしソフトフェア以外の分野では、日本への波及には時間がかかります。それはつまり、気づいたら海外から取り残されてしまうことを意味します。 かつては、国際市場では「日本を狙え」と言われていましたが、悲しいことに、日本はいま後回しです。それよりも、中国で売ったほうがいいということで、テスラも中国に工場を持っています。日本で購入すれば、おそらく中国の工場から運ばれてくるでしょう。日本は、優先的な市場ではなくなっているのです。 その理由の1つに、日本の規制があります。たとえばテスラの自動運転の機能などは、日本国内での認可については制限されているようです。あえて遅らせて、日本に入りづらくしているわけです』、「パンデミックによって2カ月でeコマースの10年分の成長が起きた」、そんなことが起きていたとは驚かされた。
・『やがて日本にもディスラプションの波はやってくる  しかし、これはただ参入が遅くなるというだけで、いずれ必ず日本にも進出してきます。そのときになって慌てるのではなく、いまから海外の情勢を見極め、先手を打っておiPhoneを思い出してください。初代の機種は2Gでした。あのときは、各国の2Gの仕様が統一されておらず、規格の合っている地域では、一気に初代機種が発売されていました。日本はその年には出ませんでしたが、3Gで世界共通化されたことで1年のタイムラグを経てやってきたわけです。 ただ、当初は「おサイフケータイ」などの機能がなく、充電も長持ちしないなど制約があり、ヒットにはなりましたが、爆発的に売れたのは3GSになって以降です。 要するに、規格の問題で参入タイミングが左右されています。向こうもそれがわかっていますから、「日本にはこのタイミングでこれを出そう」という計画をしています。 iPhone以前は、ガラケーが世界最先端でしたが、わずか3年でひっくり返されました。車については、買い替え年数が長く、スマートフォンより時間はかかりますが、それでも一巡したとき、それが本当に良いものであれば、一気に取って変わられます。 アメリカ自動車大手GMや日本のホンダが資本参加した自動運転ベンチャーのクルーズは実際、2021年11月の初めから、一部の従業員向けに自動運転での送迎を開始しています。法律上、運賃を徴収してロボットタクシーを走らせるということはできていません。従業員を無料で乗せて、サンフランシスコの街を走っているわけです。 つまり、自動運転は、できる、できないではなく、もうできている。あとは、浸透速度をどうするか、そして、法律など規制の問題です。GMクルーズは、2030年までに100万台を投入すると宣言しています。 アメリカでは今、そういったディスラプター(改革を目指す破壊的企業)が続々と生まれています。自分の業界もいずれ食われるかもしれないという危機感は持ったほうがいいでしょう。 保守的な規制が多いために、逆に損をして、危機に気がつけない。これは非常に怖いことです。「まだ来ないから大丈夫」と思っていたのでは、相手の思うツボでしょう。) では、具体的にどんな業界にディスラプションの波が押し寄せるのでしょうか。 『GAFA next stage』では、勃興するディスラプターとして、エアビーアンドビー、レモネード、ネットフリックス、ロビンフッド、スポティファイ、テスラ、ウーバーなどが紹介されています。 単純に投資のリターンを考えれば、そこまで大きくはない企業も出てきます。例えば、スポティファイはアップルミュージックなどの競合との競争激化から、株価の伸びでも顕著とは言えません。著者のスコット・ギャロウェイさんご本人が、ニューヨーク大学のマーケティング畑の方ですから、ブランドストーリーがしっかりとしていて、マーケティングに関して際立つ企業を並べたのかもしれません。 ここからは、私が投資家の視点で注目しているディスラプターをご紹介しましょう。いま盛り上がりを見せているのは、決済・フィンテックです。 私が注目している企業として、金融ディスラプターのストライプがあります。すごい勢いで成長している、とんでもない化け物企業です。ほかに、後払い決済のアファーム、バイナウペイレーターなども急激に伸びています。 これらのディスラプターによって、VISAやMASTERがやられるかもしれないという状況が見えてきていますから、「既存の巨人を倒す」という意味において、注目してよいでしょう』、「私が注目している企業として、金融ディスラプターのストライプがあります。すごい勢いで成長している、とんでもない化け物企業です。ほかに、後払い決済のアファーム、バイナウペイレーターなども急激に伸びています。 これらのディスラプターによって、VISAやMASTERがやられるかもしれないという状況が見えてきていますから、「既存の巨人を倒す」という意味において、注目してよいでしょう」、なるほど。
・『ハイブリッドでは無理、世界はEVへ  ほかにホットなテーマと言えば、エネルギーですね。 最近は、EVのリビアンの話題が大きくなっています。リビアンは、アマゾンが支援するアメリカで人気のピックアップトラックのEVメーカーとして、2021年11月に上場しました。いきなり時価総額8兆円、一時期は10兆円を超えて話題になりました。 トヨタが30兆円、ホンダで7兆円ほどですから、それに匹敵するものがいきなり登場するという、とんでもないことが起きたわけです。リビアンには、日本企業からは住友商事が投資していて先見性を窺うことができます。一方で、ある意味、バブルではないかと言われるほどの過熱を見せています。 脱炭素に関する話は、世界でも頻繁に語られていて、もはや「ハイブリッドでは無理だ」というのが海外におけるコンセンサスです。日本国内では、基幹産業への配慮をしなければならず、言えないところがあるようですが、海外では真っ向からEVです。 電動トラックはリビアンが出していますし、テスラも、2022~23年にはサイバートラックを出すようです。次のモビリティがどうなるのかという点は、いま最大テーマです。 モビリティとエネルギーについては、パイが大きいために期待も膨らんでいます。それもあって、テスラの時価総額は一時100兆円を超えました。 本書では、資本主義の過熱が起きていると指摘されていますが、これは実際に起きていると言えます。スタートアップ業界は、IPOラッシュですが、必ずしも投資リターンに厳しくない事業会社が上場直前のステージで投資をすることによって時価総額を上げており、本来ならば、まだ上場を待ったほうがいい段階でも上場してしまい、上場後に株価が低迷してしまうこともあります。 海外マーケットで頑張る日本企業としては、次世代型電動車椅子のウィルが挙げられます。 ただの車椅子と思いがちですが、例えば、メガネは「目が悪い人がかける」というものから、今は「かけてカッコよくなる、頭が良さそうに見せる」というイメージに変化しましたよね。この発想を狙ったものなのです。 日本よりも海外のほうが売り上げが大きいと推測されるため、時価総額ランキングなどのメディアにはあまり出てきませんが、まだまだ骨があると思います。あまり余計なマーケティングはせずに、プロダクトで勝負しており、彼らの車椅子は、アップルの発表会などにシレッと登場します。 本書にも、プロダクトがしっかりしていればマーケティングはいらないと書かれていますが、その路線です。 実は、それを一番やっているのは、テスラです。彼らは、広告費ゼロ。テスラ車が街を走っていることそのものが広告であり、販売代理店を外して、直営で販売する。ビジネスモデルとしては、いわゆるD2C(ダイレクトトゥーコンシューマー)というもので、利益率が増加します。 ほかに、海外で頑張っている日本企業と言えば、スマートニュースです。海外では今のところ、積極的に攻めている日本企業の1つです。 他社にタダ乗りして、いろんな情報を吸い取るサービスはたくさんありますが、スマートニュースは、スローニュースという別のサービスも通じて本当に中立な情報や必要なもの、ジャーナリズムとは何かをきちんと考えています。いわゆる、パーパス経営をしているわけです。自分たちは何者であるのかを考えながらサービスを提供しているところに、まだまだこれからも伸びしろがあると感じます』、「プロダクトがしっかりしていればマーケティングはいらない・・・実は、それを一番やっているのは、テスラです。彼らは、広告費ゼロ。テスラ車が街を走っていることそのものが広告であり、販売代理店を外して、直営で販売する。ビジネスモデルとしては、いわゆるD2C(ダイレクトトゥーコンシューマー)というもので、利益率が増加」、「次世代型電動車椅子のウィル」、「スマートニュースは、スローニュースという別のサービスも通じて本当に中立な情報や必要なもの、ジャーナリズムとは何かをきちんと考えています」、この2社も注目だ。
・『今後の世界を考えるための一冊  日本企業にいると、どうしても変化や危機に気づかなくなってしまいます。本書は、今の資本主義、現行制度について考え直したり、「こんなことがあった」と復習し、今後の社会の反応を考えるきっかけにするにはいい本だと思います。 ただ、ギャロウェイさんは投資家ではないので、本書を見てそのとおりに株を取引したら、大やけどを負うでしょう。 たとえば本書ではテスラについて非常に厳しい見方をしていますが、原著刊行後の2021年11月までに急激に株価が伸びました。もしも原著を信じて株をショート(売り持ち)していたら、大変なことになっていたはずです(笑)。技術の解説もあまり触れられないので、あくまで技術や投資ではなくマーケティングの人として言葉を聞かなければなりません。 この世代や、非技術畑の人はそう思い込みやすい、そういったストーリーが耳に心地よさそうなのだなという参考になります。その点には注意して読むことをおすすめします』、「本書は、今の資本主義、現行制度について考え直したり、「こんなことがあった」と復習し、今後の社会の反応を考えるきっかけにするにはいい本だと思います。 ただ、ギャロウェイさんは投資家ではないので、本書を見てそのとおりに株を取引したら、大やけどを負うでしょう」、欠点も正直に指摘しているので、安心して読めそうだ。

次に、1月21日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「米マイクロソフトの巨大買収にみる、ザッカーバーグの「やられた感」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/293912
・『マイクロソフトの巨大買収は世界一に返り咲くための戦略  めちゃくちゃ大きな経済ニュースが飛び込んできました。この記事を読み終えていただければ分かると思いますが「グーグルがYouTubeを買収して動画配信時代が来た」とか「アマゾンがホールフーズを買収してリアルな小売業に進出した」ぐらいのレベルの事件です。 米マイクロソフトが18日、米ゲーム大手のアクティビジョン・ブリザードを687億ドル(約7兆8700億円)で買収すると発表しました。 数字をまるめて日本のメディアでは「8兆円買収」と呼ばれているとおり、マイクロソフトにとって過去最大のM&A(合併・買収)です。もし買収が成立すればマイクロソフトのゲーム事業売上高は中国のテンセント(騰訊)、日本のソニーグループに次いで第3位になります。 しかし、「とはいえ」なのです。アクティビジョン・ブリザード社がいかにゲーム大手とはいえ売上高は約91億ドル(約1兆4000億円、直近12カ月、以下同じ)、純利益26億ドル(約3000億円)の企業を買収して、マイクロソフトが業界第三位(!)になることが、「なぜそれほどの大ニュースになるのか?」と疑問が湧くかもしれません。 実はこのニュースは、マイクロソフトが業界3位になるという視点ではなく、「マイクロソフトがGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)や中国のBATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)をはるか下に見る、圧倒的世界一位に返り咲くための戦略が始まった」という視点でこそ捉えるべき話なのです』、「「マイクロソフトがGAFA・・・や中国のBATH・・・をはるか下に見る、圧倒的世界一位に返り咲くための戦略が始まった」、どういうことだろう。
・『米マイクロソフトが巨大買収で手に入れるものとザッカーバーグの「やられた感」  たぶん今回のニュースを目にして一番頭を抱えているのは、メタ(フェイスブック)のCEOのマーク・ザッカーバーグでしょう。アクティビジョン・ブリザードの買収でマイクロソフトが手に入れる三つのもののリストを眺めればザッカーバーグのやられた感が伝わってきます。 (1)「コール オブ デューティ」「オーバーウォッチ」をはじめとするアクティビジョン・ブリザードの人気ゲームタイトル
(2)月間4億人といわれる同社のオンラインゲームユーザー (3)エンジニアを中心とした約1万人のオンラインゲーム開発人材 この三つのアセット(資産)が手に入ることでマイクロソフトの未来に向けたロードマップの先に開けるものが何かというと、それがメタバースです。 フェイスブックが正式社名をメタ・プラットフォームズに変更した戦略意図も同じで、「これからはSNSではなくメタバースにIT企業の主戦場が変わる」ということを意識してのことです。 そして、フェイスブック以外のGAFAもBATHもそのことについては強く意識はしている。しかし今回のニュースで分かったことは、その中でマイクロソフトだけは意識しているだけではなく、メタバースに向けて強烈な一手を打ってきたということです。 さて、ここまでお読みいただいて、「分からない。正直もう無理」とお感じの方、悪いことは言わないので嫌いな野菜を食べるつもりでもう少し先まで読んでみてください。 今回の記事では世界経済がこれからどう動くのか、一番基本的な部分についてできるだけ分かりやすく説明させていただきます』、なるほど。
・『そもそも「メタバース」とは? 概要をざっくり説明  メタバースというのは現実世界とは別の生活を送ることができる仮想空間のことです。アニメが好きな方は細田守監督が『サマーウォーズ』や『竜とそばかすの姫』などの映画作品でメタバースを題材にしているので、それを思い出せばある程度、未来についてのイメージが湧くかもしれません。 自分とは違う人格やキャラとして、この世界とはまるで違う空想世界で暮らし、そこで友人がたくさんでき、おそらく敵もたくさんいて、現実世界よりもずっとエキサイティングな日々を送ることができる仮想空間です。 メタバースでは鎌倉のシェアハウスで海を見ながら、新しい仲間たちと共同生活を始めるような別の生活が楽しめるでしょう。それだけでなく、イベントではジャニーズやK-POPアイドルのコンサートのステージに一緒に上がってダンスしながらライブを楽しめるかもしれません。ビジネスでは、副業でまったく異業種の企業の商品開発会議に出席して、アイデアを提供する仕事につくようになるかもしれない。 「現実社会ではもう自分のこれからの人生の先々が見えてしまった」という残念な感覚と比較すれば、仮想世界にもう一つの人生を期待する莫大なユーザーニーズが存在することは間違いありませんし、それがイベント、旅行、リアルなビジネスなどさまざまなエリアで経済圏を拡大する未来が予想されています。 概念的には1980年代から提唱されてきたそのメタバースが今、バズワードになっている理由は、技術が追い付いてきたことに加えて、現実にメタバースができはじめていることです。 日本で一番有名な(?)メタバースが何かご存じですか?定義にもよると思いますが、読者のみなさんに一番ポピュラーな存在は任天堂の「あつまれ どうぶつの森」でしょう。これまでの累計販売本数は3000万本を超え、結構な数のユーザーが「あつまれ どうぶつの森」の世界で生活をしています。 「あつまれ どうぶつの森」が発展したことで、実はいろいろな社会問題が起きるようになります。たとえばリアルマネートレードといってゲーム内で手に入れたレアアイテム、ないしはアカウントまるごとを現実の金銭で売買するケースが問題視されるようになりました。 アメリカの大統領選挙では、バイデン候補が「あつまれ どうぶつの森」の中に選挙本部を開設しました。そこまではOKだったのですが、政治家の石破茂さんが「じみん島」で政治活動を始めようとしたところ任天堂からNGが出されました。日本の任天堂の規約では政治活動は禁止されていたのです。 任天堂の現在の規約ではリアルマネートレードも禁止されているのですが、ここはメタバース経済の未来のビジネスモデルにあたって、大きな論点となるでしょう。 参加者の持つ土地やキャラ、アイテムは成功したメタバース経済では億単位の経済価値を持つようになります。そしてそのようなマネーの魅力が、メタバースを広げるための誘因になることも間違いありません。 つまり、ゲームだと考えれば禁止される行為も、メタバースだと考えたら将来的には逆のルールができていくのではないかと私は思います』、「日本で一番有名な・・・メタバース」は「任天堂の「あつまれ どうぶつの森」、なんだ。「政治家の石破茂さんが「じみん島」で政治活動を始めようとしたところ任天堂からNGが出されました。日本の任天堂の規約では政治活動は禁止されていたのです」、さすが「石破茂」、目のつけどころがいい。
・『ゲーム業界で「一大M&A時代」が始まる  いずれにしても、オンラインゲームが現時点で一番有力なメタバースになっています。そして、今回のマイクロソフトによる買収劇は、そのメタバースとしてのオンラインゲームの経営資産を一気に手に入れるという打ち手だったことになります。 さて、そうだとしたら、「ひょっとすると日本のゲーム会社は、これから続々と数兆円単位で買収されていくんじゃないの?」と思われるかもしれません。 確かに19日の株式市場でカプコンの株価が+4.6%、スクウェア・エニックスの株価が+3.7%も値上がりしたのは、この類推からではないかと思われます。しかし、この話はそう簡単ではないのです。 日本人がメタバースとしてイメージするのはソニーのプレイステーション5上で展開される高画質なコンピューターグラフィックの世界ではないでしょうか。 カプコンのモンスターハンターのように「仲間を募ってモンスターを狩りに出かける」、ないしはスクウェア・エニックスのファイナルファンタジーのように「パーティーで冒険を繰り広げる」というのはまさに仮想現実であり、もう一つの新しい人生体験と言えるかもしれません。 しかし、問題はユーザー数であり、ハードウエアの普及台数です。ミリオンセラーとして知られるモンハン(モンスターハンター)の最新作の販売本数は世界で800万本を突破。ファイナルファンタジーは、シリーズによっては世界1000万本を超えています。それはそれですごいのですが、これらの日本製のゲームは「億ゲー」ではないのも事実です。 「億ゲー」とは月間のユーザー数が全世界で1億人を超えるオンラインゲームタイトルで、現時点で世界では10本のソフトが億ゲーを達成したとされています。 そして、今回マイクロソフトが手に入れることになる「コール・オブ・デューティ」はその億ゲーの一角を占めている。ここが今回の8兆円買収の最大の根拠だと私は考えます。 そして興味深いのは今回買収される側のアクティビジョン・ブリザード社のコティックCEOが「われわれの野望を実現するにはパートナーが必要だと気付いた」と言っているという事実です。 億ゲーを達成し、一時的に世界最大級のメタバースを所有することになった会社のCEOが、ここから先はもっと巨大な企業と組まないとメタバースのトップにはなれないと考えているのです。 今、ゲーム機のインフラとして最大なのは、任天堂スイッチでもソニーのPS5でもなく、スマートフォンです。そしてスマートフォンの世界ではアップルとグーグルの2大プラットフォームが流通を抑え、さらにはさまざまな規約でゲーム会社の行動やビジネスモデルアイデアに網をかけています。 フェイスブックのザッカーバーグCEOですら、アップルとグーグルの度重なるルール変更に疲弊して、自社のビジネスモデルがプラットフォーム企業に依存していることに落胆したぐらいです。フェイスブックが社名変更で新しい会社名をメタ・プラットフォームズとしたのは、「メタバースの時代には今度こそプラットフォームの立場を手に入れる」という意気込みが込められているといいます。 期せずしてアクティビジョン・ブリザードも同じ壁にぶち当たり、同じくその解決策を模索した。その解が、メタバースの時代にプラットフォームになりうる怪物企業としてのマイクロソフトの中に収まることだったわけです。 今はスマホが有力なプラットフォームだとしても、将来的にVRゴーグル、ウェアラブルツールや大画面モニター、タブレット端末を統合するような新しいプラットフォームが登場するでしょう。そのOSに相当する部分がアンドロイドやiOSから新しい何かに変わるはず。そこを握りにいくためにアクティビジョン・ブリザードはマイクロソフトという船に乗ることを決断したのです。 日本企業でいえば任天堂にはラブコールが殺到するでしょう。もし距離の近いグーグルと何らかの共同声明など出されれば、メタのザッカーバーグは頭をかかえてもだえ苦しむかもしれません。ないしはそれを超える買収にむけて突っ走ることでしょう。 現在、メタバースをめぐっては100を超える新興ベンチャー企業がしのぎを削って市場開拓を進めています。メタバースの未来という視点でいえば、「これから先はGAFAとBATH、そしてマイクロソフトがそれら100社を奪い合う、一大M&A時代が始まった」、そう考えるべきです。そしてその時代の号砲となったのが今回のニュースだったというわけなのです』、「メタバースをめぐっては100を超える新興ベンチャー企業がしのぎを削って市場開拓を進めています」、「これから先はGAFAとBATH、そしてマイクロソフトがそれら100社を奪い合う、一大M&A時代が始まった」、なにか大変な時代に突入したことは確かなようだ。

第三に、1月20日付けNewsweek日本版が掲載したコロンビア大学法科大学院教授のアヌ・ブラッドフォード氏による「「巨大テック企業を取り締まる」が世界のコンセンサスになる日」を紹介しよう。
・『<EU、アメリカ、そして中国──反トラスト法などを武器に、テック企業への本格規制に乗り出す各国政府のアプローチと課題とは> 今日の地政学的環境では、世界の政治リーダーたちの足並みがそろうことはほとんどない。しかし、巨大テクノロジー企業に対する規制を強化すべきだという点では、ほぼ意見が一致し始めている。 その背景には、テクノロジー企業が大きくなりすぎたという現実がある。巨大テクノロジー企業は、自社のオンラインマーケットで自社製品・サービスを優遇しているとか、消費者データを不適切に利用して競争を有利に進めているとか、脅威になりそうな会社をことごとく買収することで競争を阻害しているといった批判を浴びてきた。 このような行為は、実質的に消費者の選択肢を奪うものに等しい。今日の消費者は、一握りのテクノロジー企業の製品やサービスに大きく依存しているからだ。 巨大テクノロジー企業への規制強化の動きで先頭を走るのはEUだ。この10年間に、EUは反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いでグーグルに100億ドル近くの制裁金を科している。 EUの行政執行機関である欧州委員会は現在、グーグルの広告テクノロジーとデータ収集の手法、アップルのアップストアとモバイル決済システム、フェイスブックのデータ収集とデジタル広告モデル、アマゾンのオンラインマーケット運営の在り方について捜査を進めている。 欧州委員会は欧州議会と加盟国政府に対して、「デジタル市場法」という新しい法律の制定を提案している。これは、巨大テクノロジー企業に対する規制の権限を強化することを目的とするものだ。 新しい法律が実施されれば、影響は世界中に及ぶだろう。巨大多国籍企業はしばしば、EUの規制に対処する措置を全世界の事業活動に拡大してきたからだ。この現象は「ブリュッセル効果」と呼ばれる(ベルギーの首都ブリュッセルはEU本部の所在地)。 アメリカは比較的最近まで、EUが反トラスト法を駆使してアメリカのテクノロジー企業への締め付けを強めるのを傍観していた。しかし、風向きが変わり始めた。米議会の下院は、巨大テクノロジー企業の幹部たちをたびたび公聴会に呼び出している。近年、司法省はグーグルを、連邦取引委員会(FTC)はフェイスブックを反トラスト法違反で提訴している』、「EUは反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いでグーグルに100億ドル近くの制裁金」、「欧州委員会は現在、グーグルの広告テクノロジーとデータ収集の手法、アップルのアップストアとモバイル決済システム、フェイスブックのデータ収集とデジタル広告モデル、アマゾンのオンラインマーケット運営の在り方について捜査を進めている」、「欧州委員会は・・・「デジタル市場法」という新しい法律の制定を提案」、「アメリカは比較的最近まで、EUが反トラスト法を駆使してアメリカのテクノロジー企業への締め付けを強めるのを傍観」、「しかし、風向きが変わり始めた。米議会の下院は、巨大テクノロジー企業の幹部たちをたびたび公聴会に呼び出している。近年、司法省はグーグルを、連邦取引委員会(FTC)はフェイスブックを反トラスト法違反で提訴」、日本は残念ながら話題にもならないようだ。
・『中国政府も脱放任主義へ  バイデン政権も、こうした政策転換を強く支持している。テクノロジー企業への厳しい姿勢で知られる人物を相次いで要職に指名しているのはその表れだ。2021年7月には「米経済の競争促進」を目指す野心的な大統領令に署名。巨大テクノロジー企業などの独占的行為に厳しく対処する姿勢を鮮明にした。) ここにきて中国も巨大テクノロジー企業への姿勢を転換させ始めている。中国共産党は長年、国内のテクノロジー企業を厳しく規制することを避けてきた。自国のテクノロジー産業を成長させ、国際的優位を確立するためだった。中国のテクノロジー産業は、それと引き換えに、ネット検閲への協力など、共産党の求めに応じてきた。 しかし、中国政府は最近、国内の格差を問題視し、自国のテクノロジー企業が国家よりも強大な存在に成長しつつあるのではないかという懸念も強めている。こうした新しい状況の下、中国指導部は、テクノロジー企業に厳しい姿勢で臨むようになっている。 中国当局は21年4月、競争を阻害するビジネス慣行を理由に、電子商取引大手のアリババに28億ドル相当の制裁金を科した。当局は、インターネットサービス大手のテンセント(騰訊)にも制裁金を科し、世界の有力音楽レーベルとの契約により獲得していた独占的な権利を手放すよう命じ、子会社である2つのゲーム動画配信会社を合併させる計画に待ったをかけた。 今後の展開が最も予想しやすいのはEUだ。デジタル市場法が実施されれば、欧州委員会は数々の反トラスト法関連の捜査を進めやすくなる。 不透明なのはアメリカの動向だ。最近の動向を見ると、アメリカの保守的な裁判所は、フェイスブック(現メタ)やアマゾンが独占企業だという主張を簡単に受け入れるつもりはなさそうだ。それに、党派対立の激しい米議会が意見を擦り合わせて有意義な法律を作れるかも分からない。 皮肉なことに、中国政府の規制強化がアメリカでの規制強化に道を開く可能性がある。中国で規制が強化されれば、アメリカの規制強化がアメリカのテクノロジー企業の国際競争力を奪うという主張が論拠を失うからだ。 中国政府がテクノロジー企業への締め付けを強めることは間違いない。問題は、どれくらい規制が強化されるかだ。中国が世界のテクノロジー超大国になるためには、自国のテクノロジー産業を力強く繁栄させる必要がある。しかし、中国政府はそれ以上に、社会の調和も実現したい。 この2つの要素のバランスをどのように取るかは、今後長きにわたって中国当局の重要な課題になるだろう。 いずれにせよ間違いないのは、テクノロジー企業への規制強化の動きが世界の新しいコンセンサスになりつつあることだ。EU、アメリカ、中国だけでなく、オーストラリア、インド、日本、ロシア、韓国、イギリスといった有力国も相次いで規制強化に向かって動いている。 巨大テクノロジー企業と政府の戦いは、長く続きそうだ。そして、その戦いの帰趨は全ての国に影響を及ぼす。 (筆者の専門は、国際・比較法学。EU法、国際通商法、反トラスト法に詳しい。著書に『The Brussels Effect 』〔未訳〕がある)』、「テクノロジー企業への」「主要国の」「規制強化の動き」を今後も注目したい。

第四に、2月10日付け東洋経済オンラインが掲載したアレックス社長/グーグル日本法人元社長の辻野 晃一郎氏による「グーグル日本元社長「日本からGAFAは生まれない」 「GAFAはインフラ、警戒しながらうまく使え」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/508797
・『GAFAの強さの秘密を明かし、その危険性を警告した書籍『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』は日本だけで15万部のベストセラーになり、「読者が選ぶビジネス書グランプリ2019 総合第1位」「ビジネス書大賞2019 読者賞」の2冠を達成、日本にGAFAという言葉を定着させた。 その著者スコット・ギャロウェイ教授の最新作『GAFA next stage四騎士+Xの次なる支配戦略』が刊行され、発売3日で6万部のベストセラーになっている。本書では、コロナ禍でますます肥大化したGAFAとこの4社に匹敵する権威を持つようになる「+X」の巨大テック企業が再び、世界をどのように創り変えていくかを予言している。 本稿ではグーグル日本法人元社長の辻野晃一郎氏に、「なぜ日本からGAFA+Xが生まれないのか」を聞いた』、「日本からGAFA+Xが生まれない」のは寂しい限りだが、その理由は何なのだろう。
・『不可逆的変化の時代  民主主義や資本主義など、比較的良い仕組みであろうと考えられ、世界の発展のベースにもなってきたものが、いま瓦解しつつあるという危機意識が、世界共通の認識として高まっています。 スコット・ギャロウェイ氏は、『GAFA next stage』の中で、巨大プラットフォーマーや一部の超富裕層の存在が、政治や世の中をどう歪めているのかという点にフォーカスを当て、コロナとも絡めて、現状を整理し、かなり網羅的に書いています。 内容はアメリカの話ですが、日本も似た状況と言えます。特に、政治に対する信頼は地に堕ちています。長期政権の結果、官邸の独断で縁故主義に基づいた悪しきルールブレイクが行われ、森友問題をはじめ、多くの未解決事件が棚上げになっています。コロナ対策も後手後手の対応が目立ちます。 ところが、日本人は、政治に対してなんとなくの現状維持派が多いのか、あきらめているのか、それとも無関心な人が多いのか、先の衆院選の投票率は、史上3番目の低さでした。アメリカ人は、社会問題や政治問題を自分事として考える人が多いのですが、日本人は、どこか他人事で受け身、あまり深く掘り下げて考えようとしません。 今は、不可逆的な変化が続いている時代です。インターネット以前なら10年かけて起きていた変化が1年で起きるようになりました。ギャロウェイ氏も、コロナ禍で変化のスピードがさらに加速して、数年かかる変化が数日~数カ月で起きたとも書いていますが、実際そのとおりです。 変化する世界の最先端にいるのがGAFAです。彼らの力があまりにも強大になり、社会のいろいろな仕組みにひずみが発生し、結果的に格差や分断を助長しているのは否めません。 本来そのひずみを解消していくのが政治の役割なのですが、今は逆に政治もひずみを大きくする方向で機能してしまっています。こういった危機に、もっと多くの人が気づき、行動を起こさなければならないのですが、日本人は、その意識が低いために、問題がより深刻であると感じます』、「変化する世界の最先端にいるのがGAFAです。彼らの力があまりにも強大になり、社会のいろいろな仕組みにひずみが発生し、結果的に格差や分断を助長しているのは否めません。 本来そのひずみを解消していくのが政治の役割なのですが、今は逆に政治もひずみを大きくする方向で機能してしまっています。こういった危機に、もっと多くの人が気づき、行動を起こさなければならないのですが、日本人は、その意識が低いために、問題がより深刻であると感じます」、同感である。
・『日本から「GAFA+X」が出ない理由  ソニーがEVへの参入を、トヨタがスマートシティや車載OSの開発を発表しています。しかし、日本から本書の言う「GAFA+X」が生まれるのかというと、このままではそれは考えにくいと私は思います。 GAFAの時価総額は、4社でおよそ800兆円、マイクロソフトも300兆円規模、テスラは100兆円規模です。一方、ソニーは十数兆円、トヨタでもピークで40兆円程度です。GAFAやマイクロソフト、テスラなどはすべてクラウドとの連携が得意な企業で、基盤とするユーザーベースが桁違いであるとともに、未来へのストーリーを明確に描いています。 イーロン・マスクは、現時点では、すべてがチャレンジの途中で、まだ真に成功させたといえる事業はありません。しかし、世界中から巨大なマネーを引き付ける魅力があります。彼に匹敵する集金力を持つ人物がそうそういるわけではありませんが、ソニーやトヨタにも時価総額を大きく上げるような夢やビジョンを発信してほしいものです。その昔、ソニーはスティーブ・ジョブズがあこがれた企業でもあったわけですから。 私は、グーグルに入る前はソニーにいました。私が知るソニーは、人がやらないことをやる企業でした。トランジスタが発明されて間もないころ、いち早く個人用のトランジスタラジオを発売し、世間をあっと言わせました。今では、スマホで音楽を聴きながら歩くことは当たり前ですが、そのようなライフスタイルは、ソニーの「ウォークマン」から始まりました。一般ユーザーが気づきもしないような潜在ニーズを掘り起こし、他人がこれまで作ったこともないようなものをゼロから作ってきたのがソニーなのです。 ところが、EVは、すでにみんながやっています。自動走行、コネクテッドカー、クリーンエネルギーなどで自動車産業は大変革期を迎えています。アップルも参入するといわれていますし、今後は、中国勢なども圧倒的な存在になっていくでしょう。その中で、ソニーがどこに勝機を見出そうとしているのかは、今のところ私にはわかりません。 発表を見たところ、「車内をエンターテインメント空間にする」という話です。しかし、車のような移動手段にとって最も重要なことは、人を目的地にできるだけ迅速かつ安全に届ける、ということです。車内を本格的なエンターテインメント空間にするのであれば、完全自動運転も前提になるでしょう。 人の命を預かる工業製品を手掛けるということは、もとよりそれだけの覚悟が求められるということでもありますし、もともとソニーが強みとしてきた領域以外のところに多くのチャレンジがあることは間違いありません。) 日本勢は、「いいデバイスを作れば勝てる」という発想に流れがちです。しかし、もうそこは勝負どころではありません。すべてがつながるデジタルの時代は、車だけを見ていてもダメなのです。もはや車も、スマホやパソコンと同じで、クラウドとつながり、他の車とも交信し、ソフトウェアをバージョンアップしながら進化する工業製品へと変化していきます。 車単体でどんなにイケてる斬新な車を作っても、事故を起こしたり渋滞にハマったりでは進歩がありません。デジタル社会全体を大きく俯瞰して、事故や渋滞から解放されたデジタル交通システムの中の1つの構成要素として車を位置づけていくような発想が必要です。そういう意味では、トヨタがスマートシティをやりはじめたことは、間違ってはいないと思います。 現在、地球上にはまだインターネットにつながっていない人々が半分ぐらいいますが、今後、インターネットにつながることは人権のひとつと解釈されるようになるでしょう。 イーロン・マスクやジェフ・ベゾスは、そのような時代を先読みしているかのごとく、宇宙に何千・何万もの小型通信衛星を打ち上げて、全地球をカバーする通信網を作ろうとしています。 一方、日本では、政治が介入して各携帯会社に値下げ合戦を強要しました。国内で携帯料金の値下げによるユーザー獲得合戦をやったところで、携帯大手4社で均等割りしてせいぜい3000万ユーザーです。地球上の79億人を全員インターネットにつなげようとしているイーロン・マスクやジェフ・ベゾスのスケール感とは比べようもありません』、「日本では、政治が介入して各携帯会社に値下げ合戦を強要しました。国内で携帯料金の値下げによるユーザー獲得合戦をやったところで、携帯大手4社で均等割りしてせいぜい3000万ユーザーです。地球上の79億人を全員インターネットにつなげようとしているイーロン・マスクやジェフ・ベゾスのスケール感とは比べようもありません」、同感である。
・『GAFAは競合ではなく「インフラ的存在」と割り切る  日本企業がGAFAやイーロン・マスクとまともに勝負しても、とても勝ち目はありません。GAFAは公共インフラとでも捉えて、彼らの裏の顔に警戒しつつもうまく使い倒すのが、今を生き抜いていくためには大切なことでしょう。 現状、GAFAが強くなりすぎて、彼らを脅かすスタートアップが生まれにくいという問題も起きています。投資家も「GAFAに対抗するなんて無理だ」と考え、GAFA対抗のようなベンチャーには投資しなくなっていますからね。 これまで、GAFAは、自分たちでイノベーションに積極投資してきました。私がいた頃のグーグルもそうでした。GAFAはイノベーションの巣窟であり、世界を変えてきたわけです。 しかし、ギャロウェイ氏が指摘するように、あまりにも強大になりすぎると、その力を維持することのほうにエネルギーを使うようになります。守りに入るわけですね。しかしそれは衰退への道です。 今後、政治的な圧力で、グーグルとユーチューブを分割するなどの動きが起きれば、競争が促進されることはあるでしょう。現在のバランスが崩れたとき、GAFAの寝首を?く企業が現れるかもしれません。ただ、それが日本から出るかというと、やはり難しいように思います。) 日本から世界を変えるイノベーションを起こそうとするのなら、国家としての構想が必要です。短期的なことばかり考える、今の政府のやり方ではダメです。「国家百年の計」と言いますが、どんな国にしていくのか、何で飯を食う国にするのか、広く国民を巻き込んで長期ビジョンを打ち立てて、未来を真剣に考えなければなりません。 いうまでもなく、もっと科学技術に力を入れねばなりません。今は、人工知能も含めたDXや、クリーンエネルギーの分野が特にフォーカスされていますが、それ以外にも医療や防災産業など、さまざまなアイデアがあるでしょう。 民間のムードも盛り上がらねばなりません。しかし、日本人は、小さい頃から受け身体質が染みついてしまっており、周囲を気にして、あまり自分の意見を言いたがりません。為政者にとってはとても御しやすい国民だと思いますね。 教育から変えて、もっとアグレッシブで、能動的な人材を多く育てなければなりません』、「教育から変えて、もっとアグレッシブで、能動的な人材を多く育てなければなりません」、百年河清を待つようなものだ。アメリカには「国家百年の計」などなくても、個々の企業が「国家」とは離れて独自にやっている。国頼みからは脱却すべきだ。
・『「日本から”次のGAFA”が出るべき」という常識を疑う  「日本もGAFAのような企業を生み出さなければならない」という考え方そのものが正しいのかどうか、という視点もあります。GAFAは、アメリカから出てきたものなのですから、日本は、それをうまく利用させてもらう立場でいればよいとも言えるのです。 アメリカや中国のやり方に追従するのでなく、じゃあ日本はどうしようか、と考えることが大切です。例えば、日本には社歴の長い中小企業が多いですが、「売上1兆円規模の企業を作る」ための政策よりも「100億円企業を100社育てる」ための政策のほうが、無理がないかもしれません。 日本人には根深い劣等感があります。日本の近代史には、2つの断層があります。1つは明治維新です。黒船ショックというか、江戸時代までは遅れていた国だと自らをみなし、欧米にならって早く「一等国」にならねばならないと考えるようになりました。 しかし、日本には、日本独特の歴史があり、決して江戸時代がすべての面で劣っていたわけでもありません。なにより平和が300年近くも続いた時代ですし、精神性や文化の面で、欧米よりも優れたものをたくさん育んでいた時代ともいえます。ところが、それらの過去を全否定してしまいました。 もう1つが太平洋戦争です。敗戦でボロボロになって、そこから這い上がり、再び「一等国」になったわけですが、高度経済成長を遂げた後、ずっと沈滞しています。 日本が、アメリカやフランスとは異なる歴史を持ち、2つの歴史の断層を経て今があるということをどう捉えるかです。日本は、アメリカなど新興国にはない、長い歴史が背景にある国です。その時代のつながりの中で育まれてきた日本人の末裔として、歴史への考察を深めたうえで未来を考えることが大切でしょう。 災害大国であることによる学びから世界に貢献することもできるでしょうし、長寿先進国としてもできることがあるでしょう。また、アフガンで殺害されてしまった中村哲さんのように、半生を途上国に捧げ、現地の人々から非常に感謝されている日本人も多くいます。日本人が、グローバルに通用する才能や資質を持っていないわけではないのです。 自分たちの資質や才能をしっかりと棚卸しして、それをどう伸ばし、どの方向を向いて、世界をより良い場にしていくのか。それを考え抜くことが重要です』、「自分たちの資質や才能をしっかりと棚卸しして、それをどう伸ばし、どの方向を向いて、世界をより良い場にしていくのか。それを考え抜くことが重要です」、総論としては賛成だが、各論になれば、甲論乙駁になるだろう。
タグ:(その6)(日本人が「次のGAFA候補を知らない」悲しい理由 投資家が教える「日本は後回し」の破壊的企業、米マイクロソフトの巨大買収にみる、ザッカーバーグの「やられた感」、「巨大テック企業を取り締まる」が世界のコンセンサスになる日、グーグル日本元社長「日本からGAFAは生まれない」 「GAFAはインフラ 警戒しながらうまく使え」) GAFA 東洋経済オンライン 山本 康正氏による「日本人が「次のGAFA候補を知らない」悲しい理由 投資家が教える「日本は後回し」の破壊的企業」 「日本にGAFAという言葉を定着させた。その著者」の新刊とは興味深そうだ。 「パンデミックによって2カ月でeコマースの10年分の成長が起きた」、そんなことが起きていたとは驚かされた。 「私が注目している企業として、金融ディスラプターのストライプがあります。すごい勢いで成長している、とんでもない化け物企業です。ほかに、後払い決済のアファーム、バイナウペイレーターなども急激に伸びています。 これらのディスラプターによって、VISAやMASTERがやられるかもしれないという状況が見えてきていますから、「既存の巨人を倒す」という意味において、注目してよいでしょう」、なるほど。 「プロダクトがしっかりしていればマーケティングはいらない・・・実は、それを一番やっているのは、テスラです。彼らは、広告費ゼロ。テスラ車が街を走っていることそのものが広告であり、販売代理店を外して、直営で販売する。ビジネスモデルとしては、いわゆるD2C(ダイレクトトゥーコンシューマー)というもので、利益率が増加」、「次世代型電動車椅子のウィル」、「スマートニュースは、スローニュースという別のサービスも通じて本当に中立な情報や必要なもの、ジャーナリズムとは何かをきちんと考えています」、この2社も注目だ。 「本書は、今の資本主義、現行制度について考え直したり、「こんなことがあった」と復習し、今後の社会の反応を考えるきっかけにするにはいい本だと思います。 ただ、ギャロウェイさんは投資家ではないので、本書を見てそのとおりに株を取引したら、大やけどを負うでしょう」、欠点も正直に指摘しているので、安心して読めそうだ。 ダイヤモンド・オンライン 鈴木貴博氏による「米マイクロソフトの巨大買収にみる、ザッカーバーグの「やられた感」」 「「マイクロソフトがGAFA・・・や中国のBATH・・・をはるか下に見る、圧倒的世界一位に返り咲くための戦略が始まった」、どういうことだろう。 「日本で一番有名な・・・メタバース」は「任天堂の「あつまれ どうぶつの森」、なんだ。「政治家の石破茂さんが「じみん島」で政治活動を始めようとしたところ任天堂からNGが出されました。日本の任天堂の規約では政治活動は禁止されていたのです」、さすが「石破茂」、目のつけどころがいい。 「メタバースをめぐっては100を超える新興ベンチャー企業がしのぎを削って市場開拓を進めています」、「これから先はGAFAとBATH、そしてマイクロソフトがそれら100社を奪い合う、一大M&A時代が始まった」、なにか大変な時代に突入したことは確かなようだ。 Newsweek日本版 アヌ・ブラッドフォード氏による「「巨大テック企業を取り締まる」が世界のコンセンサスになる日」 「EUは反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いでグーグルに100億ドル近くの制裁金」、「欧州委員会は現在、グーグルの広告テクノロジーとデータ収集の手法、アップルのアップストアとモバイル決済システム、フェイスブックのデータ収集とデジタル広告モデル、アマゾンのオンラインマーケット運営の在り方について捜査を進めている」、「欧州委員会は・・・「デジタル市場法」という新しい法律の制定を提案」、「アメリカは比較的最近まで、EUが反トラスト法を駆使してアメリカのテクノロジー企業への締め付けを強めるのを傍観」、 「しかし、風向きが変わり始めた。米議会の下院は、巨大テクノロジー企業の幹部たちをたびたび公聴会に呼び出している。近年、司法省はグーグルを、連邦取引委員会(FTC)はフェイスブックを反トラスト法違反で提訴」、日本は残念ながら話題にもならないようだ。 「テクノロジー企業への」「主要国の」「規制強化の動き」を今後も注目したい。 辻野 晃一郎氏による「グーグル日本元社長「日本からGAFAは生まれない」 「GAFAはインフラ、警戒しながらうまく使え」」 「日本からGAFA+Xが生まれない」のは寂しい限りだが、その理由は何なのだろう。 「変化する世界の最先端にいるのがGAFAです。彼らの力があまりにも強大になり、社会のいろいろな仕組みにひずみが発生し、結果的に格差や分断を助長しているのは否めません。 本来そのひずみを解消していくのが政治の役割なのですが、今は逆に政治もひずみを大きくする方向で機能してしまっています。こういった危機に、もっと多くの人が気づき、行動を起こさなければならないのですが、日本人は、その意識が低いために、問題がより深刻であると感じます」、同感である。 「日本では、政治が介入して各携帯会社に値下げ合戦を強要しました。国内で携帯料金の値下げによるユーザー獲得合戦をやったところで、携帯大手4社で均等割りしてせいぜい3000万ユーザーです。地球上の79億人を全員インターネットにつなげようとしているイーロン・マスクやジェフ・ベゾスのスケール感とは比べようもありません」、同感である。 「教育から変えて、もっとアグレッシブで、能動的な人材を多く育てなければなりません」、百年河清を待つようなものだ。アメリカには「国家百年の計」などなくても、個々の企業が「国家」とは離れて独自にやっている。国頼みからは脱却すべきだ。 「自分たちの資質や才能をしっかりと棚卸しして、それをどう伸ばし、どの方向を向いて、世界をより良い場にしていくのか。それを考え抜くことが重要です」、総論としては賛成だが、各論になれば、甲論乙駁になるだろう
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安全保障(その10)(岸田首相が入れ込む「経済安保政策」 日本が生き残るため「決定的に重要なこと」 意外と見落とされているが…、経済安全保障の最強の武器は「技術力」-補助金・自国生産ではない レアアース戦争の勝因を肝に銘じよ、経済安保で経産省vs財務省?上級国民の椅子取りゲームは「百害あって一利なし」) [外交・防衛]

安全保障については、昨年9月20日に取上げた。今日は、(その10)(岸田首相が入れ込む「経済安保政策」 日本が生き残るため「決定的に重要なこと」 意外と見落とされているが…、経済安全保障の最強の武器は「技術力」-補助金・自国生産ではない レアアース戦争の勝因を肝に銘じよ、経済安保で経産省vs財務省?上級国民の椅子取りゲームは「百害あって一利なし」)である。

先ずは、昨年11月24日付け現代ビジネスが掲載した経済評論家の加谷 珪一氏による「岸田首相が入れ込む「経済安保政策」、日本が生き残るため「決定的に重要なこと」 意外と見落とされているが…」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/89587?imp=0
・『岸田政権が提唱する経済安全保障政策が動き始めた。専門家による有識者会議を設置し、経済安全保障推進法案(仮称)の制定を目指す。具体的な内容はこれから議論することになるが、半導体を中心としたサプライチェーンの強化、基幹インフラの機能維持、人工知能(AI)など技術基盤の強化が想定されている。 米中の政治的な対立が激化しており、各国は戦略物資の確保にしのぎを削っている。日本は地政学上、中国の脅威に直接さらされる立場であることを考えると、一連の法整備が必須なのは言うまでもない。だが、防衛力の整備が中心だった従来の安全保障とは異なり、経済安全保障の難易度は高い。経済政策や産業政策とセットにして相乗効果を発揮できなければ、絵に描いた餅に終わってしまう』、興味深そうだ。
・『排除すれば問題が解決するわけではない  日本政府は多くの無人機(ドローン)を保有しているが、その実態を調査したところほとんどが中国製だったという、少々笑えない話があった。ドローンに限らず、通信機器や監視カメラなど多くの分野において中国製品を抜きにシステムを構築するのが難しいのが現状である。 安全保障上の懸念がある製品は排除すべきというのはその通りなのだが、なぜ、そうした製品が使われてきたのかという経緯を考え、それに対応できる十分なソリューションを用意しなければ代替はうまく進まない。 ドローンを購入した各省の部局も好んで中国製のドローンを購入したわけではないだろう。現時点において中国製のドローンは圧倒的な品質と性能、価格であり、日本メーカーの製品では歯が立たない。現実的な選択肢として中国製になってしまったというのが偽らざる現実である。 仮に法案が成立し、懸念のある製品や部品の使用を制限しても、それに代わる十分な製品が日本国内に存在しない場合、性能面で妥協せざるを得なくなる。インテリジェンス(諜報)の世界では、各国がそれぞれの重要分野においてどれほどのケイパビリティ(能力)を持っているのかが極めて重要な意味を持つ。性能面で妥協した可能性があるという事実は、それだけでも諜報活動においてマイナス要因となってしまう。 ドローンの問題について言えば、国内で優秀なドローン製品を開発できる環境作りこそが、もっとも重要な経済安全保障政策であり、この部分を怠った結果として、使用制限などの措置が必要になったと考えるべきだ。通信機器や監視カメラの分野も同じであり、各分野で日本メーカーが競争に敗れたことが中国メーカーの台頭を招いており、従来の競争力を維持できていれば、そもそも中国製を採用する必然性はなかった。今回の主要テーマのひとつである半導体についても同じことが言える』、「ドローンの問題について言えば、国内で優秀なドローン製品を開発できる環境作りこそが、もっとも重要な経済安全保障政策であり、この部分を怠った結果として、使用制限などの措置が必要になったと考えるべきだ。通信機器や監視カメラの分野も同じであり、各分野で日本メーカーが競争に敗れたことが中国メーカーの台頭を招いており、従来の競争力を維持できていれば、そもそも中国製を採用する必然性はなかった・・・半導体についても同じことが言える」、その通りだ。
・『日本の半導体産業は壊滅状態  現在、全世界的な半導体不足が深刻な状況となっているが、半導体チップの多くは台湾メーカーが生産している。半導体業界は熾烈な競争の結果、各社は得意分野に集中せざるを得なくなり、徹底的な分業体制にシフトした。半導体の設計は欧米メーカー、製造は台湾メーカー(および一部の米国メーカー)が圧倒的であり、日本メーカーは製造装置や検査装置、部材の分野でしか存在感がない。 特に台湾メーカーの製造能力は突出しており、台湾メーカーが存在しなければiPhoneの製造もAI(人工知能)システムの構築もままならないというのが現実である。 こうしたところに急浮上してきたのが台湾海峡問題である。万が一、中国が台湾に侵攻した場合、台湾からの半導体供給がストップし、米国の産業が大打撃を受ける可能性がある。バイデン政権は、米国内での製造体制強化を打ち出しており、最大手のインテルは国内工場の大増設を決断した。) ところが日本の場合、半導体の設計や製造という基幹部分においてほぼ壊滅状態となっており、国内で大量の半導体を製造する能力を失っている。政府は台湾の半導体製造大手TSMCに対して日本進出を要請し、8000億円といわれる建設資金の約半額を支援することで熊本県での工場建設が決まったが、自前での半導体確保とはほど遠い状況にある。 米国企業はあくまでコスト対策とスピード感を重視する必要性から台湾に製造を委託しているのであって、高い半導体製造能力は維持している。実際、最大手のインテルは開発から製造までを一貫して行うメーカーであり、いつでも自前調達に切り換えられるポテンシャルがあった。最悪の事態が発生した場合でも、米国は半導体を確保できるが、日本はそうはいかないだろう』、「米国企業はあくまでコスト対策とスピード感を重視する必要性から台湾に製造を委託しているのであって、高い半導体製造能力は維持している・・・最悪の事態が発生した場合でも、米国は半導体を確保できるが、日本はそうはいかないだろう」、確かに「日米企業」の対応は対照的だ。
・『需要がないところには、十分な供給は行われない  結局のところ、自国に高い競争力を持つ企業が存在し、基幹製品を国内調達できる環境がなければ、完全な経済安全保障体制を確立することはできない。もし日本の半導体産業が凋落していなければ、ここまで深刻な状況には陥っていなかった可能性が高い。 つまり経済安全保障を実現するためには、懸念のある製品の排除といった短期的な措置に加え、先端産業の育成という長期的施策が必要であり、そのためには、なぜ過去に失敗したのかという検証が欠かせない。 では日本の半導体産業はなぜここまで凋落してしまったのだろうか。最大の理由は90年代に起きたIT革命の潮流を見誤り、パソコンの台頭を前提にした経営戦略に舵を切ることができなかったからである。 半導体というのは、それを使う最終製品がなければ意味をなさない。80年代は汎用機と呼ばれる大型コンピュータが主流であり、日本メーカーはこの分野で相応の存在感があった。汎用機には大量のメモリが必要となるので、半導体メーカーは汎用機向けのメモリ製造で大きな収益を上げることができた。そして汎用機を製造したコンピュータ・メーカーは、銀行などIT投資を強化している国内企業に製品を販売することができた(第1~3次オンラインシステム)。 80年代の日本においては、汎用機を利用するユーザー企業、そこに汎用機を収めるコンピュータ・メーカー、そしてコンピュータ・メーカーに半導体を収める半導体メーカー(日本は総合メーカーが多く、コンピュータ・メーカーが半導体メーカーを兼ねていた)という、需要と供給のすべてが揃っていた。 現在の米国も同じである。米国には世界最大の消費市場があり、GAFAをはじめ多くの企業が最先端の半導体を搭載したコンピュータを大量購入している。アップルやエヌビディアといった企業は米国の消費者に高性能な半導体を搭載した製品を販売し、半導体メーカーはこうした米国企業に製品を納めているという図式だ。 ところが日本企業は90年代以降のIT革命の流れを見誤り、IT利用という点で、先進国の地位から脱落してしまった。ユーザーが存在しないということは国内には大きな半導体需要が存在しないということであり、当然の結果として半導体産業も衰退してしまう。 台湾や韓国は国内に大きなIT市場が存在しないため、半導体製造に特化し成功したが、これはいわば小国だからこそ実現できる戦略である。日本のように国内に大きな消費市場が存在する大国はそうはいかない。結局のところ、現時点において半導体の確保に苦心しているのは、日本がIT後進国となり、IT需要が消滅したことが大きく影響しているのだ』、「日本企業は90年代以降のIT革命の流れを見誤り、IT利用という点で、先進国の地位から脱落してしまった」、ここはもう少し説明が必要だ。「ユーザーが存在しないということは国内には大きな半導体需要が存在しないということであり、当然の結果として半導体産業も衰退」、その通りだ。
・『「産業競争力の強化」が大前提  以上の話をまとめると、強力な国内消費市場を構築することこそが、経済安全保障の根幹であることが分かる。技術は時代によって変化するので、常に最先端産業の育成を続けなければ、同じことの繰り返しになってしまう。日本がなぜ過去に失敗したのか徹底的に検証し、今後に生かすことが重要だ。 仮に今回の法案によって、半導体の供給や懸念のある製品の排除に成功したとしても、10年後はまったく新しい技術が登場しているだろう。その時点において日本がトッププレイヤーでなければ、やはり製品の確保に事欠くという事態に陥る可能性は高い。 今回、議論の対象となっている経済安全保障政策が目の前に存在するリスクへの対処だとすると、新しい産業の育成は、より本質的・長期的な安全保障政策といってよい。 今後、数十年の経済をリードする基幹技術がAI(人工知能)と再生可能エネルギーであることは、誰の目にも明らかである。この2つの分野において日本がリードできなければ、近い将来、半導体とまったく同じ問題が発生すると予想される。すでに再生可能エネの分野は欧米および中国企業の独壇場となっており、日本メーカーの存在感は皆無に等しい(現時点において風力発電システムの多くは輸入に頼らざるを得ない)。 このままではエネルギーという安全保障上もっとも重要な分野を海外企業に握られるという事態にもなりかねない。新しい産業を育成するという視点を抜きに経済安全保障は成立しないという現実について、全国民で共有していく必要があるだろう』、その通りだが、「経済安全保障」を名目に補助金をバラ蒔くような無駄は避けるべきだ。

次に、2月6日付け現代ビジネスが掲載した大蔵省出身で一橋大学名誉教授の野口 悠紀雄氏による「経済安全保障の最強の武器は「技術力」-補助金・自国生産ではない レアアース戦争の勝因を肝に銘じよ」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/92097?imp=0
・『経済安全保障が重要な課題であることは間違いない。しかし、これは弱体化した産業の自国生産を正当化するために用いられることが多い。農産物自給率引上げがその例だったが、今度は半導体の国内生産への補助を正当化するために用いられる可能性がある。しかし、安全保障のためにもっとも重要なのは技術力であり、それは補助で獲得できるものではない』、「安全保障のためにもっとも重要なのは技術力であり、それは補助で獲得できるものではない」、同感である。
・『経済安全保障には補助金ではなく供給源分散を  「経済安全保障」が、岸田内閣の主要な政策として前面に出てきた。 中国の脅威拡大に対抗してサブプライチェーンの強靭化をはかることが主たる目的とされている。中国は輸出制限などの措置によって、他国に経済的な強制力を行使する可能性がある。 新型コロナ発生源との関係で世界保健機関(WHO)に武漢の研究所を調査するよう求めたオーストラリアに対して、農産物や石炭、鉄鉱石の輸入を止めるなどの経済的圧力をかけた例がある。 こうした圧力に対して、いかに対応すべきかが問題とされている。 経済安全保障が重要な課題であることは間違いない。ただし、「安全保障」という言葉は、全てに優先するという響きを持っている。したがってこれを旗印に、様々なことが行われる可能性が強い。 しばらく前には、農産物自給率の確保がいわれた。「食の安全が脅かされるから自給が必要だ。ところが日本の自給率は非常に低い。だから大変だ」との議論だ。 しかし、本当は逆である。自給率を高めれば、食料安全保障の面で大きな問題が発生するのだ。国内生産だけに頼れば、天候不順などで凶作になったときに食料不足になるからだ。 供給先が世界中に分散していれば、そうした事態を避けられる。供給源をできるだけ分散することこそ、食料安全保障の基本だ。 「経済安全保障」という考えは、弱体化した産業の補助に結びつくことが多い。とりわけ、自国内生産への補助金だ。 食料自給率は、国内生産への補助や、輸入農蓄産物に対する高関税を正当化するために強調されたのだ。 サプライチェーンも同じである。解は供給源分散化であって、自国生産ではない。 脱中国化を図ることは、中国の賃金上昇への対処からも望まれる。そして、すでに、かなりの程度進行している』、「供給源をできるだけ分散することこそ、食料安全保障の基本だ」、「食料自給率は、国内生産への補助や、輸入農蓄産物に対する高関税を正当化するために強調された」、「サプライチェーンも同じである。解は供給源分散化であって、自国生産ではない」、その通りだ。
・『今、半導体に焦点が当たっているが  今回は、農産物の代わりに半導体が補助の対象になる可能性が強い。 半導体はあらゆる電化製品に使われる重要な部品だが、供給が停滞したために、世界的な不足が生じている。だから、対処が必要だという議論だ。 前回述べたように、TSMCの熊本工場誘致に多額の補助金を支出することが既に決定されている。今後は、国内の半導体生産に補助金を出すことにもなるかもしれない。これは、農産物の自給率確保と全く同じものである。 現在、半導体不足が世界的な問題になっていることは事実だ。 この大きな原因は、中国の半導体ファンドリーSMICから自動車用の半導体の供給を受けられなくなったことだ。 しかし、これは中国が望んで行なった輸出禁止ではない。そうではなく、アメリカ商務省がSMICをエンティティリストに載せて、取引を禁じたからだ。つまり、これはアメリカが対中制裁のために行った措置である』、「半導体不足」の「大きな原因は、中国の半導体ファンドリーSMICから自動車用の半導体の供給を受けられなくなったこと」、確かに「中国が望んで行なった輸出禁止ではない」。
・『半導体で困っているのは中国  現在、高性能半導体の供給が受けられずに困っているのは、中国だ。 中国の通信機メーカー、ファーウエイが米商務省リストに載せられたため、台湾のTSMCから高性能半導体の供給が受けられなくなったことによる。 では、中国はこの問題を解決するために台湾に侵攻して台湾を統合し、TSMCを自国企業にするだろうか? そうした危険があることが安全保障上問題だという意見がある。つまり高性能半導体の生産が台湾に集中しており、そこが中国の脅威にさらされているというのだ。 しかし、TSMCのために中国が台湾に侵攻することなど、ありえない。まず、あまりにリスクが大きすぎる。しかも、そのような状況が見えたら、TSMCの技術者は外国に逃げてしまうだろう。どんな国でも喜んで迎えるに違いない。 結局のところTSMCの工場を占領したものの、だれも操業することができないことになってしまう可能性が高い』、「TSMCのために中国が台湾に侵攻することなど、ありえない」、「そのような状況が見えたら、TSMCの技術者は外国に逃げてしまうだろう」、「結局のところTSMCの工場を占領したものの、だれも操業することができないことになってしまう可能性が高い」、同感である。。
・『技術こそが最強の取り引き材料  経済安全保障の基本は、(先に述べた供給先の分散化とともに)取引材料を持つことだ。他の国では絶対に提供できないものを作れることである。その国をつぶしたら世界経済が立ちゆかなくなってしまうような技術を持つ企業や産業を作ることだ TSMCはその好例だ。これをつぶせば、最先端の半導体が製造できなくなる。世界にとって、台湾の存在が不可欠なのだ。 では、日本は取引材料にできるような企業や産業を持っているだろうか? 自動車は日本の基幹産業だが、仮に日本の自動車会社がつぶされたとしても、自動車を生産できる会社は世界中に沢山ある。だから、自動車を安全保障のための取引材料に用いることはできない。 半導体について言えば、製造装置や材料では日本は強い。しかし、日本でしか作れないというものではない。 最先端の半導体製造装置は、極小回路をシリコンウエハーに印刷する極端紫外線リソグラフィ(EUV)と呼ばれるものだ。この製造は、オランダのASMLが独占していて、年間50台くらいしか生産されない。こうしたものこそ、取引材料となしうる。 現在、自動車の生産は半導体の生産で制約されている。様々な電子部品もそうだ。ただし、これはいずれは解消されるだろう。 しかし、先端半導体はこれとは別だ。最先端の技術を持つものが主導権を握る。そして世界の製造業を支配することになる。 こうした問題に対処することこそ必要だが、それは、補助金を出すことで実現できるものではない』、「経済安全保障の基本は、(先に述べた供給先の分散化とともに)取引材料を持つことだ。他の国では絶対に提供できないものを作れることである」、「自動車は日本の基幹産業だが、仮に日本の自動車会社がつぶされたとしても、自動車を生産できる会社は世界中に沢山ある。だから、自動車を安全保障のための取引材料に用いることはできない」、予想以上に取引材料となる産業は少ないようだ。
・『技術は補助金より強し  中国が日本に対して、輸出入制限や禁輸措置、あるいは関税引き上げなどの措置をとってくる可能性は、もちろんある。 中国は貿易管理法によって、輸出管理規制を強めるかもしれない。とりわけ問題なのは、レアアース(希土類)の輸出が制限されることだ。 「レアアース戦争」は、実際に起こった。2010年9月に尖閣諸島で中国人船長が日本海上警察に逮捕される事件があり、その後、中国からのレアアース輸出が規制されたのだ。 日本は、これをWTOに提訴した。そして、協定違反の判決を引き出した。 このときの日本の対応は、WTO提訴だけでなく、もっと積極的なものだった。日立製作所やパナソニック、ホンダなどは、都市鉱山(既存部品の廃品)からの回収やリサイクルを行なった。さらに、より少ないレアアースで性能の良い製品を開発した。 これによって、日本の中国レアアースへの依存度は、2009年の86%から2015年には55%まで低下した。レアアースの価格が急落したため、中国のレアアース生産企業は赤字に陥った。こうして、レアアース戦争は、日本の勝利に終わった。 「ペンは剣より強し」とは、19世紀イギリスの小説家・政治家のリットンの言葉だ。 「言論の力は、政治権力や軍隊などの武力よりも民衆に大きな影響を与える」という意味だが、これをつぎのように解釈し直すこともできるだろう。 それは、どんなに強力な武器を持つよりも、強い技術力を持つことのほうが重要ということだ。 レアアース戦争で日本が勝った原因は、日本の技術だ。このような技術を持つことこそが、経済安全保障でもっとも重要なのだ』、「レアアース戦争で日本が勝った原因は、日本の技術だ。このような技術を持つことこそが、経済安全保障でもっとも重要なのだ」、同感である。

第三に、2月10日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「経済安保で経産省vs財務省?上級国民の椅子取りゲームは「百害あって一利なし」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/295813
・『岸田政権の目玉政策「経済安全保障」のキーマンに文春砲が炸裂  「週刊文春」が、政府が進めている経済安全保障推進法案の準備室長を務めていた、藤井敏彦・国家安全保障局担当内閣審議官に関するスクープを報じた。藤井氏が、兼業届を出さずに私企業で働き報酬を得ていた疑いがあることや、「朝日新聞」の記者と不倫関係にあることがわかったというのだ。2月8日に、国家安全保障局は藤井氏を更迭しているが、それはこの疑惑が原因だと「文春」は報じている。 政府要人が文春や新潮の週刊誌報道でクビを取られるというのは、もはや日本の日常風景となっているので、それほど驚く国民もいないだろう。しかし俗世間とかけ離れた「霞が関ムラ」には衝撃が走っていて、主に2つの「風説」で盛り上がっている。 まず1つ目が、「不倫相手に情報漏洩していたのではないか」というものだ。 2月2日、マスコミ各社は経済安全保障法制に関する有識者会議の提言を報じているのだが、その中でひときわ異彩を放っていたのが朝日新聞だった。各社が提言から抜粋する形で法案のポイントを整理している中で、朝日新聞の記事だけは、「法案には事業者への罰則規定も検討されており」と他紙が掲載していない「特ダネ」がすっぱ抜かれていたのだ。 新聞がこういう書き方をするということは、「ネタ元」(情報源)が立場のある人物であるということに他ならない。それはつまり、経済安保推進法案に関して決定権を持つ政府要人、もしくは法案の準備で中心的な役割を持っている官僚――そう、藤井氏はこの朝日スクープの「ネタ元」の条件にピッタリなのだ。 「文春」が報じたように「不倫」という親密な間柄が事実なら、手柄をあげさせるために特ダネのプレゼントをしたなんてストーリーもありえる。「法案の中身」について寝物語でポロッと漏らしてしまったということだって考えられる。 そんな“男と女のラブゲーム”的な話とうってかわって、もうひとつささやかれているのは霞が関定番のドロドロした“パワーゲーム”だ。それはズバリ、「経済安全保障利権を、財務省が本格的に奪いにきたのではないか」というものだ』、「不倫」による「スクープ」は珍しくもないが、「経済安全保障利権を、財務省が本格的に奪いにきたのではないか」、というのには驚かされた。
・『経産省と財務省の椅子取りゲーム 財務官僚が次々と藤井氏の椅子に座る  報道によれば、藤井氏の更迭を受けて政府は、後任に財務省出身の泉恒有内閣審議官をあてる方向だという。泉氏は昨年7月に財務省に出向するまで、内閣参事官として国家安全保障局にもいたのだから順当といえば順当な話なのだが、なぜこんな話になっているのかというと、経産省出身の藤井氏の後任人事に、財務官僚がとって変わるのは、これが二度目だからだ。 そもそも、藤井氏がなぜ経済安全保障推進法の準備室長になったのかというと、安倍政権時、国家安全保障局の中で経済安全保障を担う専門部署として新設された「経済班」の初代班長だったからだ。では、ここで藤井氏の後任の班長は誰になっているのかというと、財務省国際局出身の高村泰夫内閣審議官である。 つまり、あくまで人事的な見え方に過ぎないが、「経済安保のキーマン」と言われた藤井氏のイスに、財務官僚が次々と座っている構図なのだ。 もちろん、霞が関ではこのような流れになることはある程度予見されていた。岸田政権になってから「安全保障担当」の内閣総理大臣補佐官は、木原誠二官房副長官と寺田稔衆議院議員が担ってきたが、この2人は財務省(旧大蔵省)の出身だからだ。 一般国民の感覚からすれば、「重要なのは政策の中身なんだから、財務官僚が仕切ろうが、経産官僚が主導権を握ろうが、そんなのはどっちでもいい」と思うだろうが、これは経産省からするとなかなか受け入れ難い屈辱的な話である。 「経済安全保障」という国策の遂行、及びそれにまつわる口利きや斡旋、さらに天下りやらという利権は、「経産省と警察で山分けできる」と皮算用がなされていたからだ。 そのあたりをご理解していただくには、そもそもなぜ経済安全保障が目玉政策になったのかを振り返っていく必要がある。「岸田政権肝煎りの」という言葉がつくので、あたかも岸田首相が言い出したことのように誤解をされている方も多いだろうが、実はこの政策をここまでにこぎつけた最大の「功労者」は、甘利明氏だ』、「最大の「功労者」は、甘利明氏だ」、初めて知った。
・『甘利明氏の功績とは? 大企業に「天下り」が続々  安倍政権時代、甘利氏はアメリカのNEC(国家経済会議)にならって、経済安保政策を立案する組織を立ち上げるように首相に提言した。それを受けて、北村滋氏が2代目局長を務めていた国家安全保障局の中に、新たに「経済班」が設置され、藤井氏がその初代班長に就いたという流れだ。 甘利氏といえば、経産相、経済再生担当相を歴任した「商工族のドン」として知られており、経産省にとっては守り神的な存在である。かたや経済班設立に尽力した北村氏は、警察庁で外事畑を歩み、内閣情報調査室のトップを7年以上も務めたことから海外からは「日本のCIA長官」の異名をとるインテリジェンスのプロ。また、安倍元首相からの信頼も厚く、非常に近い間柄だったことでも知られている。 つまり、「経済安全保障」という国策は、安倍・甘利ラインという政治力学の中で産声をあげて、そこにひもづいている経産省と警察庁の官僚たちの手によって、徐々に形づくられていったというわけなのだ。 そんな「経産省+警察」構図を如実に示しているのが、「天下り」である。 昨今の経済安保の重要性が唱えられる世相を受けて、三菱電機、富士通、デンソー、NECなどの大企業に経済安全保障の専門部署が新設されているのだが、その担当役員として迎えられているのが、日下部聡・前資源エネルギー庁長官をはじめとした経産省OBなのだ。 「経済安保バブル」に躍るのは、警察も同じだ。 警察庁では昨年1月、「経済安全保障対策官」を新設。都道府県警と連携しながら、民間企業や大学向けの対策説明会や意見交換といった「経済安全保障コンサルティング」に取り組む方針だという。実際、警視庁では昨年3月、公安部に経済安全保障のプロジェクトチーム(PT)を発足。9月から半導体などの最先端技術を取り扱う製造系の大企業を訪問して、企業を狙ったスパイの具体的な手口などについての情報を提供している。 パッと見、「日本企業の技術を守るために、おまわりさんたちも頑張ってくれている」という美しい話なのだが、全国の警察官の再就職先確保のため、民間企業に「経済安保コンサルタント」を売り込んでいるようにも見える。) 事実、この分野のエキスパートである警察OBの北村氏は現在、「北村エコノミックセキュリティ」という会社を立ち上げて、「コンサルタント」として活躍している。警察庁はこの「北村モデル」を全国規模に拡大しようとしている可能性もゼロではない。日本中の企業に警察OBを「経済安保コンサルタント」として送り込むことができれば今、全国の警察が頭を痛めている「再就職先の確保」問題は一気に解決できる。 このようなオープンになっている情報だけを見ても、経産省と警察庁が「経済安保」というものを、自分たちの既得権益だと考えていることが容易に想像できる。 だからこそ、「経済安全保障利権を、財務省が本格的に奪いにきたのではないか」なんて憶測も飛び交ってしまうのだ』、「「経済安全保障」という国策は、安倍・甘利ラインという政治力学の中で産声をあげて、そこにひもづいている経産省と警察庁の官僚たちの手によって、徐々に形づくられていった」、「日本中の企業に警察OBを「経済安保コンサルタント」として送り込むことができれば今、全国の警察が頭を痛めている「再就職先の確保」問題は一気に解決できる。 このようなオープンになっている情報だけを見ても、経産省と警察庁が「経済安保」というものを、自分たちの既得権益だと考えていることが容易に想像できる」、なるほど。
・『本当の「経済安全保障」はどこへ パワーゲームは「百害あって一利なし」  ただ、一般庶民の立場から言わせていただくと、そのような政治家や官僚という「上級国民」の皆さんが主導権争いなどのパワーゲームにのめりこむ姿を見れば見るほど、「経済安全保障」というものに対しての不安が膨らんでいく。 国益という視点に立てば、経済安全保障というものが必要で「まったなしの課題」というのは同感だ。日本で言われる経済安全保障というのはぶっちゃけ「中国の脅威」にどう立ち向かうのか、という話なので、エネルギー、半導体、サプライチェーン、さらには海洋資源などで、米中対立の影響を受けないよう、日本独自の生産・輸入の体制などを整えるということに対して全く異論はない。 が、先ほどの「天下り」確保のための活発な動きや、霞が関の主導権争いを見ていると、そのせっかくの重要な国策が、特定の人々に利益を誘導するような「利権」となってしまったり、政治的ライバルを貶めるための「政争の具」になって終了、という最悪の結末しか浮かばない。つまり、「経済安保」の法案を通して、官民あげて推進したところで、一部の「上級国民」の皆さんだけが恩恵があって、我々のような市井の一般庶民には「百害あって一利なし」という悪政になってしまうのだ。 実際、これまでも「経済安全保障」や「中国の脅威」というものは、一部の上級国民を利するために、都合よく利用されてきたという動かし難い事実がある。 記憶に新しいのが、自民党総裁選の最中に突如として注目を集めた「日本端子」問題である』、「「経済安保」の法案を通して、官民あげて推進したところで、一部の「上級国民」の皆さんだけが恩恵があって、我々のような市井の一般庶民には「百害あって一利なし」という悪政になってしまうのだ」、要警戒だ。
・『総裁選でデマ浮上 権力闘争で恣意的に利用される「経済安保」  日本端子という会社は、河野太郎衆議院議員の家族が経営している自動車部品会社で、中国にいくつか中国企業との合弁会社がある。河野氏が総裁選に出馬した際、SNS上でこの日本端子について「流言」が飛んだ。曰く、中国の太陽光発電に部品を提供しており、河野家は中国で太陽光利権を一手に握っている。中国の合弁会社は資本の比率などを見ても中国政府から異例の厚遇を受けており、これこそが、河野ファミリーと中国共産党の蜜月の動かぬ証拠である、などさまざまな情報が飛び交った。 結論から言うと、この話は全くのデマだ。日本端子は1960年に設立してから、製品の8割は自動車用のコネクタや圧着端子で、顧客も日本の自動車メーカーが多い。「中国の手先」などの誹謗中傷が多く寄せられたことを受けて、自社HPで「お知らせ」として反論しているが、これまで中国市場で太陽光発電の部品など販売したこともない。また、「異例の厚遇」とやらの資本比率も、中国企業との合弁会社なら石を投げれば当たるほどよくあるものだ。 しかし、こんなデタラメ話が、総裁選の最中にも信憑性をもって語られ、マスコミの中には実際に河野氏に質問をした記者もいた。特定の政治家や、彼らと近しい著名ジャーナリスト、政治評論家がSNSなどで大騒ぎをしていたからだ。当時、これらの人々は「疑惑を徹底追及します」とか「日本の安全保障上大きな問題だ」などと叫んでいたが、今では「そんなことあったっけ?」と何事もなかったような顔をしている。 このように「中国の脅威」や「経済安全保障」というのは、為政者たちの権力闘争で恣意的に利用されることが多い。それは、トランプ前大統領を見てもよくわかるだろう。 自分の都合が悪い問題を追及されると、北朝鮮や中国を痛烈に批判する。今のバイデン大統領も立場が悪くなると、「ウクライナ問題」を持ち出した。それと同じで、日本でも政治や官僚が、自分たちの都合の悪い話が出た時、ここぞとばかりに「経済安全保障」を引っ張り出して、国民の目をそらす恐れがあるのだ。 「そんなのは貴様の妄想だ」という声が聞こえてきそうだが、「経済安保バブル」で天下り拡大にわく霞が関や、熾烈な足の引っ張り合いを見ていると、「妄想」とは言い切れないのではないか。 ただでさえ、経済安全保障というのは、日本の経済成長や景気拡大とは直接的に関係がない政策だ。対象となるのは日本企業の0.3%しかない大企業だけで、しかもナショナリズム丸出しの過度な規制によって、企業活動が足を引っ張られる恐れもある。今のところこの政策で恩恵を受けているのは、一部のコンサルタントと、天下りが拡大できた霞が関だけだ。 経済安全保障を推進するのは結構だが、「国破れて上級国民あり」なんてことだけにはならぬようお願いしたい』、「経済安全保障というのは、日本の経済成長や景気拡大とは直接的に関係がない政策だ。対象となるのは日本企業の0.3%しかない大企業だけで、しかもナショナリズム丸出しの過度な規制によって、企業活動が足を引っ張られる恐れもある。今のところこの政策で恩恵を受けているのは、一部のコンサルタントと、天下りが拡大できた霞が関だけだ」、「国破れて上級国民あり」、言い得て妙だ。
タグ:現代ビジネス 安全保障 (その10)(岸田首相が入れ込む「経済安保政策」 日本が生き残るため「決定的に重要なこと」 意外と見落とされているが…、経済安全保障の最強の武器は「技術力」-補助金・自国生産ではない レアアース戦争の勝因を肝に銘じよ、経済安保で経産省vs財務省?上級国民の椅子取りゲームは「百害あって一利なし」) 加谷 珪一氏による「岸田首相が入れ込む「経済安保政策」、日本が生き残るため「決定的に重要なこと」 意外と見落とされているが…」 「ドローンの問題について言えば、国内で優秀なドローン製品を開発できる環境作りこそが、もっとも重要な経済安全保障政策であり、この部分を怠った結果として、使用制限などの措置が必要になったと考えるべきだ。通信機器や監視カメラの分野も同じであり、各分野で日本メーカーが競争に敗れたことが中国メーカーの台頭を招いており、従来の競争力を維持できていれば、そもそも中国製を採用する必然性はなかった・・・半導体についても同じことが言える」、その通りだ。 「米国企業はあくまでコスト対策とスピード感を重視する必要性から台湾に製造を委託しているのであって、高い半導体製造能力は維持している・・・最悪の事態が発生した場合でも、米国は半導体を確保できるが、日本はそうはいかないだろう」、確かに「日米企業」の対応は対照的だ。 「日本企業は90年代以降のIT革命の流れを見誤り、IT利用という点で、先進国の地位から脱落してしまった」、ここはもう少し説明が必要だ。「ユーザーが存在しないということは国内には大きな半導体需要が存在しないということであり、当然の結果として半導体産業も衰退」、その通りだ。 その通りだが、「経済安全保障」を名目に補助金をバラ蒔くような無駄は避けるべきだ。 野口 悠紀雄氏による「経済安全保障の最強の武器は「技術力」-補助金・自国生産ではない レアアース戦争の勝因を肝に銘じよ」 「安全保障のためにもっとも重要なのは技術力であり、それは補助で獲得できるものではない」、同感である。 「供給源をできるだけ分散することこそ、食料安全保障の基本だ」、「食料自給率は、国内生産への補助や、輸入農蓄産物に対する高関税を正当化するために強調された」、「サプライチェーンも同じである。解は供給源分散化であって、自国生産ではない」、その通りだ。 「半導体不足」の「大きな原因は、中国の半導体ファンドリーSMICから自動車用の半導体の供給を受けられなくなったこと」、確かに「中国が望んで行なった輸出禁止ではない」。 「TSMCのために中国が台湾に侵攻することなど、ありえない」、「そのような状況が見えたら、TSMCの技術者は外国に逃げてしまうだろう」、「結局のところTSMCの工場を占領したものの、だれも操業することができないことになってしまう可能性が高い」、同感である。。 「経済安全保障の基本は、(先に述べた供給先の分散化とともに)取引材料を持つことだ。他の国では絶対に提供できないものを作れることである」、「自動車は日本の基幹産業だが、仮に日本の自動車会社がつぶされたとしても、自動車を生産できる会社は世界中に沢山ある。だから、自動車を安全保障のための取引材料に用いることはできない」、予想以上に取引材料となる産業は少ないようだ。 「レアアース戦争で日本が勝った原因は、日本の技術だ。このような技術を持つことこそが、経済安全保障でもっとも重要なのだ」、同感である。 ダイヤモンド・オンライン 窪田順生氏による「経済安保で経産省vs財務省?上級国民の椅子取りゲームは「百害あって一利なし」 「不倫」による「スクープ」は珍しくもないが、「経済安全保障利権を、財務省が本格的に奪いにきたのではないか」、というのには驚かされた。 「最大の「功労者」は、甘利明氏だ」、初めて知った。 「「経済安全保障」という国策は、安倍・甘利ラインという政治力学の中で産声をあげて、そこにひもづいている経産省と警察庁の官僚たちの手によって、徐々に形づくられていった」、「日本中の企業に警察OBを「経済安保コンサルタント」として送り込むことができれば今、全国の警察が頭を痛めている「再就職先の確保」問題は一気に解決できる。 このようなオープンになっている情報だけを見ても、経産省と警察庁が「経済安保」というものを、自分たちの既得権益だと考えていることが容易に想像できる」、なるほど。 「「経済安保」の法案を通して、官民あげて推進したところで、一部の「上級国民」の皆さんだけが恩恵があって、我々のような市井の一般庶民には「百害あって一利なし」という悪政になってしまうのだ」、要警戒だ。 「経済安全保障というのは、日本の経済成長や景気拡大とは直接的に関係がない政策だ。対象となるのは日本企業の0.3%しかない大企業だけで、しかもナショナリズム丸出しの過度な規制によって、企業活動が足を引っ張られる恐れもある。今のところこの政策で恩恵を受けているのは、一部のコンサルタントと、天下りが拡大できた霞が関だけだ」、「国破れて上級国民あり」、言い得て妙だ。
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日本の政治情勢(その59)(日本3位「国会議員の報酬」世界30カ国ランキング 年収は軽く3000万円超、居眠りしている場合?、「このままでは維新にこてんぱんにやられる」菅直人元首相 突如の"ヒトラー投稿"の真相 次は出馬しないから怖いものはない、なぜ同級生の菅君は「新しい菅直人」になれなかったのか 残念だった「ヒットラー」投稿) [国内政治]

日本の政治情勢については、昨年12月6日に取上げた。今日は、(その59)(日本3位「国会議員の報酬」世界30カ国ランキング 年収は軽く3000万円超、居眠りしている場合?、「このままでは維新にこてんぱんにやられる」菅直人元首相 突如の"ヒトラー投稿"の真相 次は出馬しないから怖いものはない、なぜ同級生の菅君は「新しい菅直人」になれなかったのか 残念だった「ヒットラー」投稿)である。

先ずは、本年1月17日付け東洋経済オンラインが掲載したコラムニスト・明治大学客員研究員の尾藤 克之氏による「日本3位「国会議員の報酬」世界30カ国ランキング 年収は軽く3000万円超、居眠りしている場合?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/503079
・『第208回通常国会が1月17日に召集されます。本格論戦が期待された昨年末の臨時国会では、月額100万円の「文書通信交通滞在費」の問題が浮上し与野党ともに見直しを主張していました。しかし、与野党間で折り合いがつかず結局は法改正は見送られることに。有権者からは「身を切る改革はどうなった」「経費削減はどうしたのか」など批判的な意見が目立っています』、興味深そうだ。
・『各党は議員報酬に切り込めるのか  2021年10月31日の衆議院選挙後に「満額」が振り込まれたことにより「文書通信交通滞在費」を巡る問題は、連日メディアで報道されました。その後は、与野党ともに「日割り」にするだけで決着をつけようとする姿勢が強く見受けられます。 「文書通信交通滞在費」の問題は日割りではなく「報告・領収書提出義務」がないことです。使途の公開義務まで議論が進まなければ何ら意味はありません。 現在、新型コロナウイルスの感染拡大による国民生活への影響を踏まえて、国会議員の歳費(給与)は2割削減されています。改正歳費法による期間は2022年7月末とされています。しかし、月額129万4000円の歳費から25万8800円が減額されたにすぎません。 年間支給額は約1200万円以上、年2回の賞与(年間約600万円)、先送りされた文通費は年間1200万円、立法事務費は780万円などを加算すると軽く3000万円は超えて4000万円に届く金額になります。 新幹線のグリーン車を含めたJR線はすべて無料、航空券も月に4往復分が無料になります。政党からの支給、役職に応じて黒塗りの車もあてがわれます。さらに、秘書3人を雇用することができ、これにかかる費用も国から支給されます。秘書給与に関する費用は年間2000万~3000万円ともいわれています。 議員会館の賃料は無料、議員宿舎には格安で居住することができます。2014年に賃料引き上げをおこないましたが、周辺相場の2割程度で借りることができます。24時間体制の警備がほどこされセキュリティは万全です。部屋から緊急通報のボタンを押せば数分でスタッフが駆けつけます。) 国会中継を見ていると、居眠りしている議員も少なくありません。夢心地の間にお金を稼ぐことができる仕事はほかにはないでしょう。そのため、議員報酬のあり方や経費のつかい方に違和感を覚える人が多いのです。 また、日本の国会議員は世界最高水準の歳費を受け取っていると言われています。世界的にどの程度のランクにあるのでしょうか。 世界議員報酬ランキング(議員報酬ランキング30位は次のとおりです。イギリスのLOVEMONEY.COM の調査「This is what politicians get paid around the world」を参照しています。調査時期(2019年)は1ドル=110円であることから同水準で算出しています。 1位シンガポール88万8428ドル(約9772万円) シンガポールの議員報酬は世界最高水準です。批判にさらされることもありますが、政治家は政治の質を維持するために必要だと弁明しています。 2位 ナイジェリア48万0000ドル(約5280万円) ナイジェリアの議員報酬も世界最高水準といえます。シンガポールと異なる点は、国民の多くが2ドル/日で生活している点です。 3位 日本27万4000ドル(約3014万円) 改正国会議員歳費法が適用されて2割がカットされていますがそれでも高い水準です。各種手当を含めると世界1位の水準になります。 4位ニュージーランド19万6300ドル(2159万円) 2021年から、アーダーン首相は、全閣僚、官庁の責任者の給与を2割削減しています。それでも、議員報酬は高水準です。 5位 アメリカ17万4000ドル(1914万円) 上院議員、下院議員ともに同額です。しかし、2010年以降、下院議員は昇給に反対票を投じていることから2009年以降も給与水準はかわっていません。 6位オーストラリア14万1300ドル(1554万円) オーストラリアの議員報酬は2016年以降、毎年2%上昇しています。ジチュヒ上院議員はテレビ番組で報酬を高いと思わないと主張し物議を醸したことがあります。 7位 イタリア14万3352ドル(1576万円) 欧州でもっとも議員報酬が高額な国として知られていましたが、2018年に、反体制派のポピュリスト党である5つ星(※)が政治家の年金を標的にして勝利しました。(※)五つ星は、2009年10月に人気コメディアンのジュゼッペ・ピエーロ・グリッロと、企業家・政治運動家のジャンロベルト・カザレッジョによって結党された。 8位 ドイツ13万3279ドル(1466万円) 欧州ではイタリアに続く2位の高額議員報酬です。個人で秘書を雇った場合はその人件費として最大23万9000ユーロ(約3100万円)が支払われます。 9位 カナダ13万0710ドル(1437万円) 上院議員、下院議員ともに同額。上院議員は総理大臣の推薦により任命されます。下院議会議員は、4 年に1度行われる連邦選挙の際に一般市民から選出されます。 10位オーストリア11万7903ドル(1296万円) 欧州では、イタリア、ドイツにつぎ議員報酬が高額です。オーストリアの平均年収は約558万円で議員は国民平均の2.8倍の報酬を得ています。) ~11位以降は国名と金額を記載します~ 11位ノルウェー10万8907ドル(1197万円) 12位アイルランド10万6389ドル(1170万円) 13位オランダ10万4076ドル(1540万円) 14位イギリス10万2364ドル(1126万円) 15位デンマーク10万0587ドル(1106万円) 16位フランス9万8647ドル(1085万円) 17位ベルギー9万7549ドル(1073万円) 18位ロシア9万3330ドル(1026万円) 19位フィンランド8万9317ドル(982万円) 20位スウェーデン8万6556ドル(952万円) 21位南アフリカ7万5280ドル(828万円) 22位ケニア7万3200ドル(805万円) 23位スイス6万6000ドル(726万円) 24位ポルトガル5万5455ドル(610万円) 25位スペイン3万7965ドル(417万円) 26位トルコ3万3630ドル(369万円) 27位ポーランド3万1480ドル(346万円) 28位チェコ3万0884ドル(339万円) 29位ハンガリー2万8000ドル(308万円) 30位中国2万2000ドル(242万円) このランキングでは議員に支払われるものを議員報酬と定義しています。日本の基準(月額歳費+賞与+文通費)にならいました。たとえば、立法事務費780万円は個人ではなく政党に支払われるものですから除外しています』、「 日本は27万4000ドル(約3014万円)で3位」だが、「各種手当を含めると世界1位の水準になります」。IMFによれば2020年の1人当たりGDPは、40,089ドルで24位であるのに比べ、「議員報酬」の高さが目立っている。
・『お手本にしたいイギリスの仕組み  日本はイギリスと同じ議院内閣制ですがウェストミンスター・システムとも呼ばれるイギリスの政治形態は参考になります。上院は貴族院と呼ばれ世襲によって構成されてきましたが現在は大幅に削減され無報酬を踏襲しています。議員は名誉職の位置づけて資産があるため無報酬なのです。 下院は基本給に手当が加わりますが、各議員が実費精算することから内容が異なります。議員1人ひとりの手当や使いみちは詳細に公開され、誰でも閲覧できるようになっています。 過去には、イギリスでも議員の出費が不透明だった時代がありました。2009年に多くの不適切な経費請求が相次いで発覚します。イギリスの新聞、デーリー・テレグラフは、全国の646人の議員のうち、200人以上の不適切な経費請求を明らかにします。議員は国民から強い反発を受けました。 その後、ルールが厳格化され、現在ではすべて公開が義務付けられています。議員がどのように税金を使っているのか厳しく問われるようになりました。 議員は国の代表ですから、相応の報酬があることは然るべきと考えます。しかし、それは国民の血税です。税金によって支払われる以上、議員の仕事に見合うかどうかを国民1人ひとりが注視して吟味すべきではありませんか。日本で、報酬の使いみちがガラス張りになる時代はやってくるのでしょうか』、「日本」でも「議員」への諸手当を含んだ「報酬」の徹底的な開示義務を強化すべきだ。

次に、 2月6日付けPRESIDENT Onlineが掲載した作家の中川 右介氏による「「このままでは維新にこてんぱんにやられる」菅直人元首相、突如の"ヒトラー投稿"の真相 次は出馬しないから怖いものはない」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/54367
・『最近ではめったに政治ニュースでも見かけなくなった「菅直人」の3文字が、1月20日前後から、ネット上をにぎわせている。いったい、菅直人元総理は何を始めたのか。菅氏の『原発事故10年目の真実』(幻冬舎)『民主党政権 未完の日本改革』(ちくま新書)などの編集に携わり、40年にわたる親交のある、作家・編集者の中川右介氏が、最近の動向についてリポートする――』、興味深そうだ。
・『最初はそれほど話題になっていなかった  始まりは、1月21日午前11時45分、菅直人元総理(以下敬称略)がツイッターにこう書いたことである(以下、ツイートは正確を期すため、それぞれ全文をそのまま引用する)。 【橋下氏をはじめ弁舌は極めて歯切れが良く、直接話を聞くと非常に魅力的。しかし「維新」という政党が新自由主義的政党なのか、それとも福祉国家的政党なのか、基本的政治スタンスは曖昧。主張は別として弁舌の巧みさでは第一次大戦後の混乱するドイツで政権を取った当時のヒットラーを思い起こす。】 21日時点では、それほど話題になっていなかった。 だが、維新側が過剰な反応を示したために、多くの人が知ることになった。 松井一郎代表のツイッター上でのこの問題への最初の投稿は22日午後6時03分で 【元総理であり現在も立憲の最高顧問の菅さん、貴方何を言ってるか? 解ってるんですか! 民間人と我々をヒットラー呼ばわりとは、誹謗中傷を超えて侮辱ですよね。 立憲は敵と思えばなんでもありという事ですか? 正式に抗議致します。】 一方、名前を出された橋下徹は、23日午後0時57分に 【ヒットラーへ重ね合わす批判は国際的にはご法度。こういうことを平気でやるのは京都大学の藤井聡氏のような非常識な学者。まあ今回は弁舌の巧みさということでお褒めの言葉と受けっておくが。それよりも強い野党を本気で作る気があるなら、大阪では自民に圧勝している維新政治を謙虚に研究すべき。】(原文ママ) と、問題にはするが、撤回や謝罪を求めることはしていない。この問題を大きくしたくない様子だった』、「橋下徹」の反応は大人らしい。
・『「謝罪するつもりはない」大騒動へ…  これらを受けて、ツイッター上では、維新も民主党政権を「ヒトラー以上」と言ったことなどが指摘される。 菅直人の発言は国際的にも問題はないとの声も多く寄せられた。 菅直人はそこまで計算していたわけではなさそうだが、「維新」を問題のある政党だと可視化することになった。菅直人はこの要求に対し、「謝罪するつもりはない」「維新と闘う」と書いて、大騒動となっていく。 24日夜には「#菅直人元首相を支持します」のハッシュタグが登場し、これを付けたツイートは25日昼には3万を超え、トレンドのトップになっていた。 菅直人はこれを受けて、25日午後0時55分に、 【私の維新に関するツイッターに、非常に多くの人から応援のハッシュタグが送られて来ています。応援ありがとう。】とツイートした。たちまち、これへの激励のツイートが寄せられた』、なるほど。
・『なぜ維新批判を始めたのか  維新も黙っていない。26日には馬場伸幸共同代表名義の、立憲民主党の泉健太宛ての抗議文が党本部に届けられた。これに対し、菅直人は同日17時58分に 【私の21日のツイッターに関し、維新から立憲の泉代表に抗議文が届けられた。ツイッターは党の指示ではなく私の一存で発した、私の感想を述べたもの。維新からは私には直接何も言ってきていない。私のツイッターに抗議するなら私にするべき。いずれにしても的外れな謝罪要求に応ずるつもりはない。】 さらに27日午後8時11分には 【闘うリベラル派宣言 維新との闘いで、リベラル派は軟弱と見られていると痛感。私は改めて「闘う(たたかう)リベラル」であることを宣言する。私は学生時代からのリベラル派。ゲバ棒を持った対立グループに取り囲まれたが、要求された自己批判は断固拒否した。今回の維新の脅しは私には通用しない。】 菅直人は、なぜ、維新批判を始め、維新と闘う姿勢を明確にしたのだろうか。 昨年10月の総選挙で、菅直人は東京18区で勝ち、14回目の当選を果たした。 12月に支持者へ向けた報告会が開かれ、その場で菅は、次の総選挙には立候補しないことを明らかにした。75歳という後期高齢者になったことが最大の理由だろう。 今期限りとなれば、誰もが「後継者は?」と思う。現在、菅直人の長男・源太郎は政策秘書を務めている。彼はこれまでに2回、岡山の選挙区から立候補して落選しているので、「議員になる気」はありそうだと思われても仕方がない。 普通なら、いよいよ息子に譲ろうとなるが、「世襲」批判をしてきたので、そういうわけにはいかない。 その報告会の場で、源太郎が後継者として東京18区から立候補することもないと、明言した。 政治家が引退を決めて表明するのは、ほとんどの場合、選挙の直前である。当選した直後に、「もう次は出ない」と宣言するのは珍しい』、「源太郎が後継者として東京18区から立候補することもないと、明言」、いさぎよいが、早目の「引退」表明の狙いは何なのだろう。
・『怖いものがなくなった  「今期限り」と決めたことで、菅直人は「怖いもの」がなくなった。政治家にとって最も怖いのは「落選」だ。もう選挙に出ないのだから、落選しようがない。 ふっきれたように、「残り2年か3年かわからないが、完全燃焼しよう」と、そういう気分に満ちていた。 2011年に総理を辞めたときも、そうだった。「何年かたてば、また、菅さんに総理を、となる時がきますよ」という半ば社交辞令的なことを言われても、「もう総理大臣はやりません」と明言していた。 そして、「総理を目指さないと決めたからこそ、『原発ゼロ』を堂々と言える」とも言っていた。この先、総理大臣になれるかもしれない若い政治家は、さまざまなところから圧力がかかると思うと、なかなか言えないものらしい。 それは原発に限らない。本当に若い時はずけずけと言いたいことを言っていた政治家が、ベテランになり、内閣や党の要職に就いて総理大臣の椅子が見えてくると、慎重になる例をいくつも見ている。 だが、菅直人はそういう未来を放棄したので、「原発ゼロ」を堂々と言えた。電力会社の労働組合から支援できないと言われても、臆さなかった。 今回は、もう選挙に出ないと決めたので、さらに自由になったのだ』、「もう選挙に出ないと決めたので、さらに自由になった」、なるほど。
・『立憲民主党の敗因を分析した結果…  当選報告会では、やり遂げたい政治課題として、脱原発・再生可能エネルギーの普及と、大学生の奨学金問題を挙げていた。選挙中もこの2点を訴えていた。 だが、年が明けると、「維新との対決」が浮上した。 昨年の総選挙で、菅直人は小選挙区で勝てたが、立憲民主党全体は負けた。なかでも、大阪の辻元清美の落選は菅直人にとってもショックだったようだ。 菅直人は、自分の勝因と辻元の敗因、そして党全体の敗因を分析した。 その結果、「闘う」姿勢の有無が勝敗を分けたのではないかと思い当たったのだ。 菅直人の選挙区、東京18区での対立候補は自民党の長島昭久だったが、もとは民主党にいて、しかも菅の中選挙区時代の選挙区から、菅の全面支援のもと当選した人だ。 選対内では、長島批判はすべきではないとの声もあった。「元総理なんだから、どっしりと構えていればいい」「ネガティブキャンペーンは日本では効果がない」などの意見もあった。 しかし、菅は長島と闘う姿勢を見せることでしか選挙には勝てないと判断し、演説の1割くらいは長島の政治姿勢を問うた。 それだけが勝因ではないだろうが、小選挙区で勝った』、「自民党」に寝返った「長島昭久」を批判するのは当然だ。
・『次の総選挙でこてんぱんにやられる  一般に、「リベラル」な人びとは闘いを好まない。相手の意見も聞こうとする。なんとか対話で一致点を見いだそうとする。まして暴力は使わない。 それはそれでいい。だが、そのために、右翼的な人びとからの攻撃に対しては沈黙するしかなくなる。沈黙は美徳ではあるが、政治の場では負けてしまう。 相手を罵詈ばり雑言して勝った人たちは、敗者に容赦なく罵詈雑言を浴びせる。立ち直れなくするために。 民主党政権が終わってから、どうもそういう風潮が強まっていた。 今回の選挙での維新の躍進を見て、菅直人はこのままでは次の総選挙で、立憲民主党はこてんぱんにやられると直感した。自民党を倒す前に、立憲民主党が維新に倒される。 もちろん、大きな敵として自民党は存在するが、与党なのか野党なのか曖昧な、維新の会こそが当面の敵ではないかと考えた。 次の選挙に出ないと決めたことで怖いものはなくなったが、一方で、残された時間は短い。悔いのない議員生活としなければならない。 立憲民主党の他の議員がやりにくい、維新との闘いを決断した。それが自分の役割ではないかと考えた』、「リベラル」な人びとは闘いを好まない」、には違和感がある。むしろ逆なのではなかろうか。
・『戦後、最も重い決断を迫られた総理  1月19日、菅直人はツイッターで 【「維新」と戦う立憲有志の会の準備をしている。「身を切る改革」をスローガンに支持を伸ばした維新。しかし大坂都構想が「身を切る改革」とは思えない。かつて東京都の23区の区長は任命制であった。それを公選制にして23区が行政区から自治体になった。大阪都構想はその逆をやろうとした失敗した。】(原文ママ) と書いた。いわゆる「ヒトラー投稿」はこの2日後だ。 菅直人はいわゆる「団塊の世代」「全共闘世代」である。自身はセクトには入らなかったが、学生運動はしていたので、セクトとは対峙たいじした。万一、襲撃された時に備え、かまぼこの板とマンガ雑誌で作った防護服を服の下に着て大学へ通っていた。実際、ゲバ棒を持つセクトに取り囲まれたこともあった。 けがや、場合によっては死が、リアルに身近にあったのだ。 さらに3.11では、首都圏を含めた東日本が放射能に汚染される事態を想定し、決断を迫られている。 口では「国のために命をかける覚悟」などと勇ましいことを言う政治家がいるが、戦後、自衛隊や警察・消防をはじめとする公務員に対し、命の危険があると分かっていて現地へ行くよう指示したのは、菅直人だけだ。自衛隊の海外派遣は、建前上は安全な所にいくことになっているが、菅直人は暴走している原発へ行けと指示せざるをえない事態に向き合い、最も重い決断をした。 しかし、それを自慢することはない』、「自身はセクトには入らなかったが、学生運動はしていたので、セクトとは対峙たいじした」、ノンセクト・ラジカルと呼ばれた。「暴走している原発へ行けと指示せざるをえない事態に向き合い、最も重い決断をした。 しかし、それを自慢することはない」、政治家には珍しく大したものだ。
・『維新とは「討論」にならない  27日の「闘うリベラル宣言」の翌日、菅直人に会う機会があったが、「宣戦布告をしたからな」と意気軒昂であった。 維新とは、「公開討論」をしても「討論」にならないと判断している。質問してもはぐらかし、切り返し、まともな議論にならないと踏んでいる。 実際、菅直人が維新の政策にある100兆円規模のベーシックインカムについて財政的に実現可能なのか問うと、音喜多駿議員は説明せず、「公開討論会をやりましょう」と言うだけだ。菅直人はそれに応じる気はない。 いまのところ、維新に対する研究をして、そこでの疑問をツイッターに書き、可視化していく戦術をとるようだ。 また今回の騒動で、菅直人の維新に対する姿勢に賛同している議員も出ているので、連携をとっていくだろう。 2月1日に維新の会共同代表の馬場伸幸が抗議文を持ってやって来ると、同日15時04分、菅直人はこう報告する。 【維新の馬場代表が昼過ぎ、マスコミを連れて私の部屋を訪問。私は馬場氏に橋下氏と維新の関係を尋ねた。馬場氏は橋下氏は維新の創業者だが現在は全く無関係と答えた。その上で橋下氏の発言への私のツイッターに対し抗議。しかし、党と無関係な橋下氏の件で、維新の代表が抗議するのは理解できない。】 敵を知らなければ闘えない。 まだ研究不足・認識不足なのは否定できず、1月19日のツイートでは、大阪都構想についても細かい点では間違った内容を書き、大阪市長と大阪府知事を間違えたこともあった。 馬場共同代表からも「大阪のことを勉強してくれ」と指摘され、「いま一生懸命勉強してます」と答えていたように、本を読んだり詳しい人から聞いたりして、勉強し、その過程もツイッターに書いている。 「俺は何でも知っている」と威張らないのも、いかにも菅直人らしい。 ツイッターでは揶揄するコメントもあるが、元総理でありながらまったく偉ぶらないのが、菅直人なのだ。 馬場代表が帰った後、維新について詳しい、れいわ新選組の大石あきこ議員と会い、情報交換をしている。 大石は同日19時59分にツイッターに 【マスコミ連れてアポ無し凸撃とか、ヤバいですね馬場議員。菅直人議員は毅然と対応されたようですが。強アルカリ浴びたあと強酸で中和したかったのか、なんと先ほど菅直人さん、大石あきこを同じ場所に招いてくれました】と書いている。 闘いは始まったばかりだ』、維新を完膚なきまでに叩きのめしてくれんことを期待している。

第三に、2月9日付けYahooニュースが転載したThe PAGE「なぜ同級生の菅君は「新しい菅直人」になれなかったのか 残念だった「ヒットラー」投稿」を紹介しよう。
・『菅直人元総理が日本維新の会に関連し「ドイツで政権を取った当時のヒットラーを思い起こす」とTwitterに投稿した件が物議を醸しています。建築家で、文化論に関する多数の著書で知られる名古屋工業大学名誉教授・若山滋氏は、同級生で、旧知の仲である菅元総理の投稿をどのように受け止めたのでしょうか』、「同級生で、旧知の」友人の見方とは興味深い。
・『バークレイで感じた民族の恨み  カリフォルニア大学バークレイ校で客員研究員をしていたとき、単身赴任だったので、ロックフェラーが創設したインターナショナルハウスに入っていた。 「アイハウス」と呼ばれ、ニューヨークにも同じものがあるから、世話になった日本人は多いはずだ。留学生のための施設であるが研究者も多く、特にこのときはベルリンの壁が崩壊したあとで、東欧の学者が流れてきていた。僕は年の近い彼らとチェスの仲間をつくっていたが、あるコンピューターサイエンスの専門家は、他の専門家から天才といわれ、教授からも一目置かれ、研究奨学金を申請すれば必ずもらえるので、まったく就職する気がなかった。 アイハウスは三食つきだ。大きな食堂で、友人同士で集まって食べる。僕はよく議論をしかけるので「おまえはプロボウカティブ(挑発的)だ」といわれていた。ある議論で、ナチのホロコーストを話題にしたのだが、仲良くしていたポーランド人の比較文学者は「シゲル、どんな文脈でもヒトラーを例えに使うのはやめろ」と注意してくれた。彼はポーランド語、ドイツ語、ロシア語、フランス語、英語に堪能で、博士論文はフランス語と英語で書いていた。比較文化と文学の中の建築記述を研究していた僕とウマが合ったのだが、実はユダヤ系で、ポーランドにはナチに協力したユダヤ人もいてきわめて複雑なのだ。また東欧からアメリカに渡った学者たちはスターリンに対して似たような感情をもっていたし、オーストラリアからの学者は第一次世界大戦におけるガリポリの戦いで英国の指揮官がオーストラリア兵を無駄死にさせたことに対する恨みを口にした。 日本人はこうした、歴史の底に塗り込められた「民族の恨み」にうとい。そしてその多様な恨みを才能もろともに受け入れているアメリカは懐が深い』、「どんな文脈でもヒトラーを例えに使うのはやめろ」、というのも「ポーランドにはナチに協力したユダヤ人もいてきわめて複雑なのだ」。
・『ボート仲間の青雲の志  こんな経験があったので、菅直人元総理の橋下徹氏と日本維新の会に対する「ヒットラーを思い起こす」 という投稿にはやや驚き哀しい思いがした。 というのも菅直人君とは少なからぬ縁があるからだ。高校と大学の同級生であり、大学入学後すぐの学園祭で、同じ高校出身のボート部員に誘われてフォア(4人)のクルーを組んだのだ。ボート部員がコックス(舵手)で、菅君、のちに南極越冬隊長を経験し国立極地研究所の所長になった藤井理行君、そして僕がオール仲間である。練習の過程で、酒も飲み、議論もし、麻雀もやった。まだそれぞれの専門が決まる前であったが、青雲の志だけは一致していた。 菅君が政治に興味をもっていることを感じたのは、永井陽之助先生の「政治学」の講義でよく質問していたからだ。大学紛争が起きると、彼は過激派学生と大学側のあいだに立つグループを立ち上げた。メガフォンを手にして熱心に演説する姿は不屈の闘志を感じさせ、思想と立場はともかく、僕はその行動力に胸を打たれた。 市民運動家として市川房枝さんを担いでから政治の世界にデビューし次第に頭角を現した。僕らは高校の同級生を中心に応援のグループをつくったが、なぜか当時の菅君とは逆に保守寄りの体育会系の友人が多かった。僕はテレビ朝日のスタッフと親しかったので「ニュースステーション」に出演して彼の活躍を褒めたたえる発言をした。厚生大臣になったときには祝賀会もやった。薬害エイズの問題では男を上げた。総理大臣になったとき、僕は名古屋のテレビ局でコメンテーターをしていたので、思いっきりエールを送った。中日新聞にも期待する趣旨の記事を書いた。与謝野馨氏を経済財政政策担当の内閣府特命担当大臣に一本釣りしたのも見事だった。そんな彼がなぜあんな投稿をしたのか』、確かにこの頃の「菅氏」は光輝いていた。
・『福島第一と巨大タンカー  菅内閣の支持率が下がりはじめてからしばらくして東日本大震災(2011年3月11日)が起きた。福島第一原子力発電所の事故では、原子炉に給水ができず、核爆発の危機にも直面したのだが、さまざまな手段によってなんとか免れた。しかし今度は放射性物質を含む水が海に流れ出すことが問題となった。 僕は汚染水処理にタンカーを使うことを思いついた。かつて株式会社IHI(旧石川島播磨重工)から、廃船になったタンカーの都市利用に関する委託研究を受けたことがあるからだ。日本では30万トン級の巨大タンカーが日常的に廃船されており、解体してスクラップするのにも金がかかる。これを建築として利用できないかというのである。名古屋港の一角に係留して、ホテルとショッピングセンターとレジャーランドを兼ねた設計図を描き、IHIとともに名古屋市に提案したことがある。 その経験からタンカーの構造をよく知っており、汚染水を溜め込むにはうってつけだと考え、IHIの技術者に電話して検討してもらった。何回かの電話のやりとりののち、双方で「行けそうだ」という結論に達したので、首相官邸に電話して秘書官に説明した。秘書官は乗り気になり「必ず上にあげます」と約束してくれた。2011年の3月26日から28日にかけてのことである。 3月30日の朝刊には一斉にこの話が掲載され、NHKはタンカーの模型までつくって解説した。発表者は枝野幸男官房長官(当時)であった。僕は官邸への電話のあと、ツテをつうじて原子炉をつくった東芝と現場に入っていた鹿島建設にも連絡したため、いくつかのルートでこの話が広がったのだが、朝日新聞は「首相官邸を中心に28日に浮上した」と報じた。これが正しいのだ。 結局この案は、タンカーの接岸と上部の遮蔽が難しいことから実現しなかった。 このとき僕は、官邸を実際に切りまわしているのは枝野長官だと感じた。菅総理は周囲を怒鳴りまくっているうちに浮いてしまったのだろうか。応用物理が専門で原子力に関する知識も豊富な彼は、陣頭指揮をとることによる支持率挽回を狙ったのだが、その熱心さがかえって裏目に出たようだ。混乱しているときに総理が被災地を視察することにも批判が多かった。 一方、福島第一の吉田昌郎所長(当時)も同じ大学の後輩でボート部だった。ボート部の友人から「東電に大酒飲みの豪傑の後輩がいるからよろしく」といわれ、その存在を知っていた。吉田所長は、首相官邸と東電本社が海水注入を躊躇したにもかかわらず自分の判断で注水を決断した。総理と社長の命令を無視するというのは簡単にできることではない。まさに豪傑だ。事前に予防措置をしなかったという批判もあるが、結局のところ命がけで日本を救ったのは、彼をはじめとする現場に残った人たちであり、自衛隊、消防隊の協力であり、国民は彼らに感謝すべきである。「病気と事故と直接の関係はない」とされているが、吉田昌郎君は本当に一命を捧げたのだ。 また東日本大震災全般に関して、義援金を送ってくれた国々(中でも台湾)の人々に感謝すべきである。そして一時は80キロ圏外に撤退しながらも「トモダチ作戦」に切り替えて被災地を支援した米軍の機動力は見習うべきである。東京電力本社、経済産業省、原子力安全委員会といった偉そうな連中は、いざというとき何の役にも立たなかった。菅総理に批判が集中したが、本当にダメだったのは日本の中枢組織そのものではないか。とはいえその責任を負うのも総理というものだ』、「本当にダメだったのは日本の中枢組織そのものではないか。とはいえその責任を負うのも総理というものだ」、その通りだ。
・『「新しい資本主義」の時代に「新しい菅直人」  震災のあと、菅君と社会の歯車が噛み合わなくなった。野党に戻ってから、与党の政策を批判するのは当然としても、それが相手を攻撃する悪口に聞こえるのである。今回の発言もそうだ。維新の会の躍進に対する危機感があったのだろう。 小選挙区で落選し比例で復活するようになってから、僕は菅君に「もはや第一線を退いたのだから、かつての三木武吉氏や野中広務氏のように、自分が表に立つのではなく裏方にまわり、他党との調整によって少しでも政策を実現する努力をするべきではないか」と進言した。保守vs革新の時代ではなく国家再生の時代に「新しい菅直人」として役を果たしたらどうかと思ったのだ。政治家としてのキャリアは十分だし、知名度もある。頭もいいし、意志も強く、行動力もあり、突破力もある。このままではもったいない。しかしそう簡単にも変われないようだ。党としての立場もあるだろう。 たとえば最近発行された亀井静香氏の『永田町動物園 日本をダメにした101人』(講談社)という本を読んでみると、政界の裏話を暴露しながらも、最後には他の政治家を誉めている。歯に衣着せぬ直言の裏に、相手に対する信頼と敬意が感じられる。亀井氏の情に厚い人間味が出ているのだ。菅君にこういった人間味を期待するのは無理だろうか。ヒトラーの例えは明らかに不適切だ。「言い過ぎ、書き過ぎ」は誰にでもあるのだから、訂正して「新しい資本主義」の時代の「新しい菅直人」になることを勧めたいが、残念ながら年齢的にも難しいだろう。 折から、橋下氏や亀井氏の盟友だった石原慎太郎氏が亡くなった。この三人は保守系の中でも抜群の論客で、彼らも言い過ぎ、書き過ぎは多い。しかしその政治姿勢に全面賛成ではなくても、その人間性に強い魅力があることを感じる。 今の保守の強みはそこではないか。日本の政治状況が、イデオロギー選択の時代からリーダーの人間味重視の時代に移ったということではないか。その人間味が、選挙区への利益誘導や冠婚葬祭への出席で示されるものならまさに古い政治だが、テレビやSNSから滲み出てくるものなら、形骸化したイデオロギーよりむしろ新しい政治であるのかもしれない。革新系野党はそのことに気づいていない。デジタル化が進めば進むほど、政治家の生の人間性が問われるような気がする。 「煙突のあるところ蔵前あり」といわれ「職工学校」とも揶揄された現場主義の大学から、珍しく政治家が出て、しかも内閣総理大臣にまで上り詰めたのは奇跡であった。残念だ』、「日本の政治状況が、イデオロギー選択の時代からリーダーの人間味重視の時代に移った」、「デジタル化が進めば進むほど、政治家の生の人間性が問われるような気がする」、面白い仮設だが、まだ検証不足の感も拭えない。「「職工学校」とも揶揄された現場主義の大学から、珍しく政治家が出て、しかも内閣総理大臣にまで上り詰めたのは奇跡であった」、同感である。
タグ:日本の政治情勢 (その59)(日本3位「国会議員の報酬」世界30カ国ランキング 年収は軽く3000万円超、居眠りしている場合?、「このままでは維新にこてんぱんにやられる」菅直人元首相 突如の"ヒトラー投稿"の真相 次は出馬しないから怖いものはない、なぜ同級生の菅君は「新しい菅直人」になれなかったのか 残念だった「ヒットラー」投稿) 東洋経済オンライン 尾藤 克之氏による「日本3位「国会議員の報酬」世界30カ国ランキング 年収は軽く3000万円超、居眠りしている場合?」 「 日本は27万4000ドル(約3014万円)で3位」だが、「各種手当を含めると世界1位の水準になります」。IMFによれば2020年の1人当たりGDPは、40,089ドルで24位であるのに比べ、「議員報酬」の高さが目立っている。 「日本」でも「議員」への諸手当を含んだ「報酬」の徹底的な開示義務を強化すべきだ。 PRESIDENT ONLINE 中川 右介氏による「「このままでは維新にこてんぱんにやられる」菅直人元首相、突如の"ヒトラー投稿"の真相 次は出馬しないから怖いものはない」 「橋下徹」の反応は大人らしい。 「源太郎が後継者として東京18区から立候補することもないと、明言」、いさぎよいが、早目の「引退」表明の狙いは何なのだろう。 「もう選挙に出ないと決めたので、さらに自由になった」、なるほど。 「自民党」に寝返った「長島昭久」を批判するのは当然だ。 「リベラル」な人びとは闘いを好まない」、には違和感がある。むしろ逆なのではなかろうか。 「自身はセクトには入らなかったが、学生運動はしていたので、セクトとは対峙たいじした」、ノンセクト・ラジカルと呼ばれた。「暴走している原発へ行けと指示せざるをえない事態に向き合い、最も重い決断をした。 しかし、それを自慢することはない」、政治家には珍しく大したものだ。 維新を完膚なきまでに叩きのめしてくれんことを期待している。 yahooニュース The PAGE「なぜ同級生の菅君は「新しい菅直人」になれなかったのか 残念だった「ヒットラー」投稿」 「同級生で、旧知の」友人の見方とは興味深い。 「どんな文脈でもヒトラーを例えに使うのはやめろ」、というのも「ポーランドにはナチに協力したユダヤ人もいてきわめて複雑なのだ」。 確かにこの頃の「菅氏」は光輝いていた。 「本当にダメだったのは日本の中枢組織そのものではないか。とはいえその責任を負うのも総理というものだ」、その通りだ。 「日本の政治状況が、イデオロギー選択の時代からリーダーの人間味重視の時代に移った」、「デジタル化が進めば進むほど、政治家の生の人間性が問われるような気がする」、面白い仮設だが、まだ検証不足の感も拭えない。「「職工学校」とも揶揄された現場主義の大学から、珍しく政治家が出て、しかも内閣総理大臣にまで上り詰めたのは奇跡であった」、同感である。
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