パンデミック(医学的視点)(その25)(「ブースター接種」はどこまで科学的に有効なのか イスラエルではすでに4回目接種も始まったが、あまり語られないオミクロン株の「後遺症問題」 重症化リスクが下がったとしても安心できない、コロナ後遺症で「脳の霧」が出る!?脳脊髄液中に確認された抗体とは?) [パンデミック]
パンデミック(医学的視点)については、1月13日に取上げた。今日は、(その25)(「ブースター接種」はどこまで科学的に有効なのか イスラエルではすでに4回目接種も始まったが、あまり語られないオミクロン株の「後遺症問題」 重症化リスクが下がったとしても安心できない、コロナ後遺症で「脳の霧」が出る!?脳脊髄液中に確認された抗体とは?)である。
先ずは、1月18日付け東洋経済オンラインが転載したThe New York Times「「ブースター接種」はどこまで科学的に有効なのか イスラエルではすでに4回目接種も始まったが」を紹介しよう。
・『1年前は、新型コロナウイルス感染症のワクチンを2回接種するだけで——あるいはジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンなら1回で——十分な予防効果が得られると考えられていた。 しかし、驚くほど感染力の強いオミクロン株が出現し、イスラエルでは重症化リスクの高い人々を対象に4回目の接種が始まっている。アメリカ疾病対策センター(CDC)はブースター接種の対象を若者にも広げ、「ワクチン接種が完了した」という表現を用いるのを避けるようになった。2回接種ではもはや十分といえなくなったためだ。 これからは、ワクチン接種状況が「最新の基準を満たしている」のかいないのか、といった表現が使われることになるだろう。そうなれば当然、次のような疑問が出てくる。新型コロナワクチンの接種に終わりはあるのか、数カ月ごとに袖をまくり上げてブースター(追加)接種を繰り返すことになるのか、という疑問だ』、日本でも「ブースター接種」することになり、医療従事者から優先的に「接種」が進んでいる。
・『効果を裏付けるデータは存在しない 科学者たちはこのウイルスに何度となく予想を裏切られ、身の程を思い知らされてきたため、今後の見通しを示すことに乗り気ではない。ただ、今回の取材では10人ほどの科学者が、ウイルスが今後どのような展開をたどろうとも、全人口を対象に数カ月ごとにブースター接種を繰り返すのは現実的ではないし、科学的でもない、と話した。 イエール大学の免疫学者、岩崎明子氏は、「ワクチンを定期的に接種する例がほかにないわけではないが、半年ごとにブースター接種を繰り返すより、もっといいやり方があるだろう」と話す。 そもそも、数カ月ごとにワクチン接種の行列に並ぶよう人々を説得できるのかといえば、その勝算はかなり低い。アメリカでは成人の約73%がワクチン接種を完了しているが、ブースター接種を受けることを選んだのは今のところ3分の1強にとどまる。 「はっきりいって、これは長期的に維持できる戦略とは思えない」と、アリゾナ大学で免疫学を研究するディープタ・バタチャリア氏は指摘する。 同じく重要な点として、現行ワクチンによる4回目接種の効果を裏受けるデータが存在しないという問題もある(ただ、免疫不全の人は話が異なり、こうした人々は4回目接種で防御効果が高まることは十分に考えられる)。 オミクロン株で感染が急速に広がったアメリカでは、できるだけ早期に3回目の接種を受けるべき、というのが専門家のコンセンサスになっている。とはいえ、追加接種による免疫のブースト効果は一時的なものにすぎず、3回目の接種からわずか数週間で抗体濃度が低下することを示す予備的研究もすでに出ている。さらに、抗体濃度がピークにあるときでさえ、3回目の接種ではオミクロン株に対し感染を一様に予防できるほどの効果は引き出せない。 オミクロン株、あるいは今後出てくる新たな変異株に対して免疫を引き上げることを目的とするのなら、最初に感染が広がったウイルス株に合わせて開発されたワクチンを繰り返し接種するのではなく、ほかの戦略を用いた方がよいというのが専門家の見解だ。 一部では「汎コロナウイルスワクチン」の開発も進められている。変異が極めて遅いか、まったく変異を起こさないウイルス部位を標的とするワクチンだ。 現行ワクチンを打った人々に、ブースターとして経鼻または経口ワクチンを用いることも考えられる。経鼻・経口ワクチンはウイルスの侵入経路となっている鼻腔などの粘膜表面に抗体をつくり出すため、感染予防にはより適している。 さらに、ワクチン接種の間隔を広げるだけで、免疫が強まる可能性もある。これは、新型コロナ以外の病原体に対する戦いで得られた科学的知見だ』、「追加接種による免疫のブースト効果は一時的なものにすぎず、3回目の接種からわずか数週間で抗体濃度が低下することを示す予備的研究もすでに出ている」、「わずか数週間で抗体濃度が低下」、とは頼りない話だ。
・『感染を完全に防ぐのは無理 ニューヨークのロックフェラー大学で免疫学を研究するミシェル・ヌッセンツヴァイク氏は、「ワクチン接種は入院率の抑制に極めて高い効果を発揮している」とした上で、感染を完全に防ぐのは無理だということがオミクロン株によってはっきりしたと話す。 ワクチンで感染の拡大を防げるのなら、定期的なブースター接種には合理性があるかもしれない。「しかしオミクロン株(がこれだけ感染を広げている現状)を踏まえると、(感染防止目的のブースター接種には)意味がない」とヌッセンツヴァイク氏は語る。「目指すべきは、入院を防ぐことだ」。 アメリカでパンデミック関連の首席医療顧問を務めるアンソニー・ファウチ氏も、本当に重要なのは入院を減らすことだと述べている。 ブースター接種で感染を防ぐには、実施のタイミングを変異株の流行にぴったりと合わせ込む必要がある。例えば、昨年秋に3回目の接種を済ませた人は多いが、オミクロン株が流行し始めたころには免疫のブースト効果がすでに低下し、感染しやすい状況になっていた。) インフルエンザの場合は一般的に、冬の流行が始まる直前にワクチン接種を受けることが推奨されている。新型コロナもインフルエンザと同様、季節的に感染を繰り返す病気となる可能性があるが、そうなれば「毎年、冬の前にブースター接種を行うシナリオも考えられる」と、ペンシルベニア大学の免疫学者、スコット・ヘンズリー氏は語る。 さらにインフルエンザの教訓としては、頻繁に接種しても効果が期待できない、というものもある。インフルエンザワクチンを1年に2回接種しても、「それに比例して効果が上がるわけではないので、そこまで頻繁に接種を行う意味はないだろう」と、香港大学で公衆衛生を研究するベン・カウリング氏は言う。「頻繁なワクチン接種で免疫を強めるのは困難だと思う」。 あまりにも頻繁なブースター接種は害をもたらしかねない、といった懸念も出ている。これには理論上、2つの可能性がある。 1つ目の可能性は、免疫システムが疲弊して「アネルジー」という状態に陥り、ワクチンに反応しなくなるシナリオだ。大半の免疫学者は、こちらの可能性については低いとみている。 可能性がより高いとみられているのは、「抗原原罪」と呼ばれる2つ目のシナリオだ。この学説によると、免疫システムの反応は最初に接したウイルス株の記憶に引きずられるため、変異株に対する反応は大幅に低下してしまう。 オミクロン株には50カ所を超える変異があり、それまでの変異株とはかなり異なる。そのため、最初に感染が広がった新型コロナウイルスに反応してできた抗体では、オミクロン株をうまく認識できない。 ハーバード大学のワクチン専門家、エイミー・シャーマン氏は「これが問題となる可能性を示唆する証拠は十分にある。短期間で(ウイルスが)進化している状況を、私たちは間違いなく目撃している」と話す』、「抗原原罪」説では、「免疫システムの反応は最初に接したウイルス株の記憶に引きずられるため、変異株に対する反応は大幅に低下」、もっともらしいシナリオだ。
・『感染防止と重症化予防のどちらを目指すのか 定期的なブースター接種であれ、別の手法であれ、何らかの戦略を採用するには、まず政府が目指す目標をはっきりさせなければならないと専門家は指摘する。例えば、感染防止を目標にするのと、重症化の防止を目標にするのとでは、求められる戦略もまったく違ってくる。 「事態は急速に変化しており、どこに向かっているのかも見えない状況にある」と、エモリー大学の生物統計学者、ナタリー・ディーン氏は言う。「今後の展開がどうあれ、何を目指すのか、とにかく目標をはっきりさせなくてはならない」』、「感染防止と重症化予防のどちらを目指すのか」、「政府が目指す目標をはっきりさせなければならない」のは確かだ。
次に、1月26日付け東洋経済オンラインが転載sたThe New York Times「あまり語られないオミクロン株の「後遺症問題」 重症化リスクが下がったとしても安心できない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/505485
・『保健当局者の多くは、オミクロン株がそれまでの新型コロナウイルス株に比べ重症化しにくいことを示唆する初期データに勇気づけられているが、そこに別の重大な疑問が影を落としている。 ワクチン接種完了者のブレークスルー感染も含め、オミクロン株への感染が「長期コロナ感染症(Long COVID)」につながる可能性はどうなのか、という疑問だ。長期コロナ感染症というのは、いわゆる後遺症のこと。何カ月にもわたって続き、日常生活に支障を及ぼすこともある身体的、神経的、認知的な一連の症状を指す。 オミクロン株とワクチン接種、そして長期コロナ感染症をめぐる関係性はまだ科学的によくわかっていない。これまでに行われてきた研究では、決定的な手がかりが得られていないということだ。この記事では、科学的にわかっていることと、まだわかっていないことのポイントを紹介する』、興味深そうだ。
・『オミクロン株の後遺症リスクは? オミクロン株が最初に確認されたのは昨年11月。そのため、症状がどれだけ長引く可能性があるかを見極めるには、まだしばらく時間がかかる。また、感染から回復して陰性になった後、これまでのウイルス株と同様に、頭にもやがかかったようになるブレインフォグや、激しい倦怠感といった症状につながる可能性があるのかどうかもよくわかっていない。 オミクロン株はそれまでのウイルス株ほど感染当初に重症化しないとするデータが報告されているが、基本的な症状はそれまでのウイルス株と似ているため、長期的な影響もこれまでと同じようなものになる可能性がある。 感染当初の重症化リスクが低下したとしても、それはオミクロン株が長期コロナ感染症を引き起こしにくくなったことを必ずしも意味するものではないと、複数の医師、研究者、患者団体は警告を発している。これまでの研究からは、新型コロナに感染した当初は軽症または無症状だった人々の多くが、その後、何カ月も続く長期コロナ感染症を患ったことが明らかになっている。 ワクチンで長期コロナ感染症を防げるのかどうかは、はっきりしない。 重症化や死亡を防ぐことがワクチンの本来の目的だが、これまでのウイルス株に関していえば、ワクチンによって感染リスクそのものが下がったケースもあったとみられる。長期コロナ感染症を避ける最善の方法はもちろん、最初から感染しないことだ。しかしワクチンによる感染予防効果は、オミクロン株に対してはこれまでほど強くなく、ブレークスルー感染も以前に比べはるかに一般的になっている。 ワクチン接種者と長期コロナ感染症に関する研究は、今のところデルタ株が登場する前に収集されたデータが中心になっており、しかも結果が割れている。ワクチンが長期コロナ感染症の抑制につながるとする研究がある一方で、つながらないとする研究も存在するということだ』、「ワクチン接種者と長期コロナ感染症に関する研究は、今のところデルタ株が登場する前に収集されたデータが中心になっており、しかも結果が割れている」、これでは役立たずだ。
・『ワクチンを打つと後遺症が和らぐ? ワクチンの運用が始まったときにはまだ、感染力の強いデルタ株も、それよりさらに感染力を増したオミクロン株も出現していなかった。が、当時、長期コロナ感染症患者の中には、ワクチン接種後にブレインフォグ、関節痛、息切れ、倦怠感といった症状が改善した人たちもいた。それでも、ワクチンを打っても症状がまったく変化しないという人は多かったし、症状が悪化したと感じる人も少数ながらいた。 2021年2〜9月に症状があると答えた18〜69歳を対象としたイギリス国家統計局の調査によると、長期コロナ感染症の症状を訴える確率は1回のワクチン接種で13%低下し、2回の接種でさらに9%低下した。 長期コロナ感染症の原因は今も明らかになっておらず、専門家によると、さまざまな症状の背後には、患者によって異なる原因が存在する可能性があるという。有力な仮説としては、感染が治まって陰性になった後に残ったウイルスやその遺伝子物質の残骸が関係しているとするもの、あるいは免疫の過剰反応が止まらなくなり、それによって引き起こされた炎症もしくは血行不良と関係しているとするものがある。 イェール大学の免疫学者・岩崎明子氏は、ウイルスの残骸が原因となっている場合には、ワクチンが症状の長期的な改善につながるのではないかと話す。これは、ワクチンで生成される抗体に、そうした残骸を取り除く能力があることが前提となる。 反面、感染後に自己免疫疾患に似た反応を起こし、これが長期コロナ感染症の原因となっている場合には、ワクチンでは一時的にしか症状が改善せず、倦怠感などの問題が再発する可能性がある』、科学的な解明は徐々にしか進まないとはいえ、着実に進展しているようだ。
第三に、2月5日付けダイヤモンド・オンラインが転載したヘルスデーニュース「コロナ後遺症で「脳の霧」が出る!?脳脊髄液中に確認された抗体とは?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/295280
・『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が治癒した後の後遺症の一つとして“脳の霧”(Brain Fog)が注目されているが、その発症機序の解明の手掛かりとなり得る研究結果が、「Annals of Clinical and Translational Neurology」に1月19日掲載された。論文の上席著者である、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のJoanna Hellmuth氏によると、脳の霧の症状が現れている人の脳脊髄液中には、その症状のない人からは検出されない抗体が確認されたという。 COVID-19治癒後に生じる“脳の霧”とは、Hellmuth氏によると、最近の出来事や名前を思い出せない、物事を表現するのに適切な言葉を想起できない、集中力が途切れる、情報処理スピードが低下するといった、認知機能関連症状のことだという。最近の研究によると、このような症状はCOVID-19治癒後の人にとって珍しいものではなく、ニューヨークのクリニックからは、156人のCOVID-19後遺症患者の約67%に認められたというデータが報告されている。 このようなウイルス感染症罹患に伴う“脳の霧”はCOVID-19に限ったものではない。これまでに、COVID-19以外の重症急性呼吸器症候群(SARS)の罹患や、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、C型肝炎ウイルス(HCV)などの感染でも、認知機能関連症状を来すケースがあることが知られている。 今回の研究は、認知機能関連症状のある22人(平均年齢48歳)と、その症状のない10人(同39歳)、計32人のCOVID-19既往者を対象に行われた。COVID-19の発症から10カ月後に採血検査を行うとともに、同意の得られた17人(有症状者13人、無症状者4人)の脳脊髄液を採取して分析した。なお、研究対象者は全員が成人であり、COVID-19の治療に入院を要していなかった。 脳脊髄液検査の結果、有症状のCOVID-19既往者13人中10人に炎症の亢進や、自分の体を攻撃する可能性のある抗体が活性化した所見が認められ、無症状のCOVID-19既往者4人は全て正常と判定された(77%対0%、P=0.01)。また、有症状者で認められた異常所見の一部は、血液検査の結果にも現われていた。 両群の認知機能関連リスク因子を比較すると、無症状者はリスク因子数が平均1未満であるのに対して、有症状者は平均2.5のリスク因子が該当した(P=0.03)。評価した認知機能関連リスク因子には、脳卒中、軽度認知障害、および血管性認知症のリスクを高める可能性のある疾患として、糖尿病と高血圧が含まれていた。また、注意欠如・多動症(ADHD)、アルコール・薬物使用障害、うつ病の既往なども評価されていた。 有症状のCOVID-19既往者の脳脊髄液中に見られた抗体について、Hellmuth氏は、「それらの抗体の標的は不明」とした上で、「ウイルスによって刺激された免疫系によって、意図しない病理学的機能により出現した可能性がある」と推測している。 なお、本研究では、HIV関連神経認知障害(HAND)の診断に使用される基準と同じ手法を用いて、神経心理学者の面接による認知機能の評価が対象者全員に行われていた。その結果は、有症状者では22人中13人(59%)、無症状者では10人中7人(70%)がHAND基準を満たしており、その割合に有意差はなかった(P=0.70)。 この点についてHellmuth氏は、「既存の評価手法では、COVID-19の後遺症として現れる認知機能の低下を診断できない可能性がある。しかし、思考や記憶の問題を訴える患者に対して、医療者は疾患の診断基準を満たすか否かにとらわれるのではなく、患者の訴えを信じて対応すべきではないか」と語っている。(HealthDay News 2022年1月20日)』、「最近の出来事や名前を思い出せない、物事を表現するのに適切な言葉を想起できない、集中力が途切れる、情報処理スピードが低下するといった、認知機能関連症状」とは怖い後遺症だ。「156人のCOVID-19後遺症患者の約67%に認められた」、「評価した認知機能関連リスク因子には、脳卒中、軽度認知障害、および血管性認知症のリスクを高める可能性のある疾患として、糖尿病と高血圧が含まれていた。また、注意欠如・多動症(ADHD)、アルコール・薬物使用障害、うつ病の既往なども評価」、「ウイルスによって刺激された免疫系によって、意図しない病理学的機能により出現した可能性がある」と推測」、なるほど。
先ずは、1月18日付け東洋経済オンラインが転載したThe New York Times「「ブースター接種」はどこまで科学的に有効なのか イスラエルではすでに4回目接種も始まったが」を紹介しよう。
・『1年前は、新型コロナウイルス感染症のワクチンを2回接種するだけで——あるいはジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンなら1回で——十分な予防効果が得られると考えられていた。 しかし、驚くほど感染力の強いオミクロン株が出現し、イスラエルでは重症化リスクの高い人々を対象に4回目の接種が始まっている。アメリカ疾病対策センター(CDC)はブースター接種の対象を若者にも広げ、「ワクチン接種が完了した」という表現を用いるのを避けるようになった。2回接種ではもはや十分といえなくなったためだ。 これからは、ワクチン接種状況が「最新の基準を満たしている」のかいないのか、といった表現が使われることになるだろう。そうなれば当然、次のような疑問が出てくる。新型コロナワクチンの接種に終わりはあるのか、数カ月ごとに袖をまくり上げてブースター(追加)接種を繰り返すことになるのか、という疑問だ』、日本でも「ブースター接種」することになり、医療従事者から優先的に「接種」が進んでいる。
・『効果を裏付けるデータは存在しない 科学者たちはこのウイルスに何度となく予想を裏切られ、身の程を思い知らされてきたため、今後の見通しを示すことに乗り気ではない。ただ、今回の取材では10人ほどの科学者が、ウイルスが今後どのような展開をたどろうとも、全人口を対象に数カ月ごとにブースター接種を繰り返すのは現実的ではないし、科学的でもない、と話した。 イエール大学の免疫学者、岩崎明子氏は、「ワクチンを定期的に接種する例がほかにないわけではないが、半年ごとにブースター接種を繰り返すより、もっといいやり方があるだろう」と話す。 そもそも、数カ月ごとにワクチン接種の行列に並ぶよう人々を説得できるのかといえば、その勝算はかなり低い。アメリカでは成人の約73%がワクチン接種を完了しているが、ブースター接種を受けることを選んだのは今のところ3分の1強にとどまる。 「はっきりいって、これは長期的に維持できる戦略とは思えない」と、アリゾナ大学で免疫学を研究するディープタ・バタチャリア氏は指摘する。 同じく重要な点として、現行ワクチンによる4回目接種の効果を裏受けるデータが存在しないという問題もある(ただ、免疫不全の人は話が異なり、こうした人々は4回目接種で防御効果が高まることは十分に考えられる)。 オミクロン株で感染が急速に広がったアメリカでは、できるだけ早期に3回目の接種を受けるべき、というのが専門家のコンセンサスになっている。とはいえ、追加接種による免疫のブースト効果は一時的なものにすぎず、3回目の接種からわずか数週間で抗体濃度が低下することを示す予備的研究もすでに出ている。さらに、抗体濃度がピークにあるときでさえ、3回目の接種ではオミクロン株に対し感染を一様に予防できるほどの効果は引き出せない。 オミクロン株、あるいは今後出てくる新たな変異株に対して免疫を引き上げることを目的とするのなら、最初に感染が広がったウイルス株に合わせて開発されたワクチンを繰り返し接種するのではなく、ほかの戦略を用いた方がよいというのが専門家の見解だ。 一部では「汎コロナウイルスワクチン」の開発も進められている。変異が極めて遅いか、まったく変異を起こさないウイルス部位を標的とするワクチンだ。 現行ワクチンを打った人々に、ブースターとして経鼻または経口ワクチンを用いることも考えられる。経鼻・経口ワクチンはウイルスの侵入経路となっている鼻腔などの粘膜表面に抗体をつくり出すため、感染予防にはより適している。 さらに、ワクチン接種の間隔を広げるだけで、免疫が強まる可能性もある。これは、新型コロナ以外の病原体に対する戦いで得られた科学的知見だ』、「追加接種による免疫のブースト効果は一時的なものにすぎず、3回目の接種からわずか数週間で抗体濃度が低下することを示す予備的研究もすでに出ている」、「わずか数週間で抗体濃度が低下」、とは頼りない話だ。
・『感染を完全に防ぐのは無理 ニューヨークのロックフェラー大学で免疫学を研究するミシェル・ヌッセンツヴァイク氏は、「ワクチン接種は入院率の抑制に極めて高い効果を発揮している」とした上で、感染を完全に防ぐのは無理だということがオミクロン株によってはっきりしたと話す。 ワクチンで感染の拡大を防げるのなら、定期的なブースター接種には合理性があるかもしれない。「しかしオミクロン株(がこれだけ感染を広げている現状)を踏まえると、(感染防止目的のブースター接種には)意味がない」とヌッセンツヴァイク氏は語る。「目指すべきは、入院を防ぐことだ」。 アメリカでパンデミック関連の首席医療顧問を務めるアンソニー・ファウチ氏も、本当に重要なのは入院を減らすことだと述べている。 ブースター接種で感染を防ぐには、実施のタイミングを変異株の流行にぴったりと合わせ込む必要がある。例えば、昨年秋に3回目の接種を済ませた人は多いが、オミクロン株が流行し始めたころには免疫のブースト効果がすでに低下し、感染しやすい状況になっていた。) インフルエンザの場合は一般的に、冬の流行が始まる直前にワクチン接種を受けることが推奨されている。新型コロナもインフルエンザと同様、季節的に感染を繰り返す病気となる可能性があるが、そうなれば「毎年、冬の前にブースター接種を行うシナリオも考えられる」と、ペンシルベニア大学の免疫学者、スコット・ヘンズリー氏は語る。 さらにインフルエンザの教訓としては、頻繁に接種しても効果が期待できない、というものもある。インフルエンザワクチンを1年に2回接種しても、「それに比例して効果が上がるわけではないので、そこまで頻繁に接種を行う意味はないだろう」と、香港大学で公衆衛生を研究するベン・カウリング氏は言う。「頻繁なワクチン接種で免疫を強めるのは困難だと思う」。 あまりにも頻繁なブースター接種は害をもたらしかねない、といった懸念も出ている。これには理論上、2つの可能性がある。 1つ目の可能性は、免疫システムが疲弊して「アネルジー」という状態に陥り、ワクチンに反応しなくなるシナリオだ。大半の免疫学者は、こちらの可能性については低いとみている。 可能性がより高いとみられているのは、「抗原原罪」と呼ばれる2つ目のシナリオだ。この学説によると、免疫システムの反応は最初に接したウイルス株の記憶に引きずられるため、変異株に対する反応は大幅に低下してしまう。 オミクロン株には50カ所を超える変異があり、それまでの変異株とはかなり異なる。そのため、最初に感染が広がった新型コロナウイルスに反応してできた抗体では、オミクロン株をうまく認識できない。 ハーバード大学のワクチン専門家、エイミー・シャーマン氏は「これが問題となる可能性を示唆する証拠は十分にある。短期間で(ウイルスが)進化している状況を、私たちは間違いなく目撃している」と話す』、「抗原原罪」説では、「免疫システムの反応は最初に接したウイルス株の記憶に引きずられるため、変異株に対する反応は大幅に低下」、もっともらしいシナリオだ。
・『感染防止と重症化予防のどちらを目指すのか 定期的なブースター接種であれ、別の手法であれ、何らかの戦略を採用するには、まず政府が目指す目標をはっきりさせなければならないと専門家は指摘する。例えば、感染防止を目標にするのと、重症化の防止を目標にするのとでは、求められる戦略もまったく違ってくる。 「事態は急速に変化しており、どこに向かっているのかも見えない状況にある」と、エモリー大学の生物統計学者、ナタリー・ディーン氏は言う。「今後の展開がどうあれ、何を目指すのか、とにかく目標をはっきりさせなくてはならない」』、「感染防止と重症化予防のどちらを目指すのか」、「政府が目指す目標をはっきりさせなければならない」のは確かだ。
次に、1月26日付け東洋経済オンラインが転載sたThe New York Times「あまり語られないオミクロン株の「後遺症問題」 重症化リスクが下がったとしても安心できない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/505485
・『保健当局者の多くは、オミクロン株がそれまでの新型コロナウイルス株に比べ重症化しにくいことを示唆する初期データに勇気づけられているが、そこに別の重大な疑問が影を落としている。 ワクチン接種完了者のブレークスルー感染も含め、オミクロン株への感染が「長期コロナ感染症(Long COVID)」につながる可能性はどうなのか、という疑問だ。長期コロナ感染症というのは、いわゆる後遺症のこと。何カ月にもわたって続き、日常生活に支障を及ぼすこともある身体的、神経的、認知的な一連の症状を指す。 オミクロン株とワクチン接種、そして長期コロナ感染症をめぐる関係性はまだ科学的によくわかっていない。これまでに行われてきた研究では、決定的な手がかりが得られていないということだ。この記事では、科学的にわかっていることと、まだわかっていないことのポイントを紹介する』、興味深そうだ。
・『オミクロン株の後遺症リスクは? オミクロン株が最初に確認されたのは昨年11月。そのため、症状がどれだけ長引く可能性があるかを見極めるには、まだしばらく時間がかかる。また、感染から回復して陰性になった後、これまでのウイルス株と同様に、頭にもやがかかったようになるブレインフォグや、激しい倦怠感といった症状につながる可能性があるのかどうかもよくわかっていない。 オミクロン株はそれまでのウイルス株ほど感染当初に重症化しないとするデータが報告されているが、基本的な症状はそれまでのウイルス株と似ているため、長期的な影響もこれまでと同じようなものになる可能性がある。 感染当初の重症化リスクが低下したとしても、それはオミクロン株が長期コロナ感染症を引き起こしにくくなったことを必ずしも意味するものではないと、複数の医師、研究者、患者団体は警告を発している。これまでの研究からは、新型コロナに感染した当初は軽症または無症状だった人々の多くが、その後、何カ月も続く長期コロナ感染症を患ったことが明らかになっている。 ワクチンで長期コロナ感染症を防げるのかどうかは、はっきりしない。 重症化や死亡を防ぐことがワクチンの本来の目的だが、これまでのウイルス株に関していえば、ワクチンによって感染リスクそのものが下がったケースもあったとみられる。長期コロナ感染症を避ける最善の方法はもちろん、最初から感染しないことだ。しかしワクチンによる感染予防効果は、オミクロン株に対してはこれまでほど強くなく、ブレークスルー感染も以前に比べはるかに一般的になっている。 ワクチン接種者と長期コロナ感染症に関する研究は、今のところデルタ株が登場する前に収集されたデータが中心になっており、しかも結果が割れている。ワクチンが長期コロナ感染症の抑制につながるとする研究がある一方で、つながらないとする研究も存在するということだ』、「ワクチン接種者と長期コロナ感染症に関する研究は、今のところデルタ株が登場する前に収集されたデータが中心になっており、しかも結果が割れている」、これでは役立たずだ。
・『ワクチンを打つと後遺症が和らぐ? ワクチンの運用が始まったときにはまだ、感染力の強いデルタ株も、それよりさらに感染力を増したオミクロン株も出現していなかった。が、当時、長期コロナ感染症患者の中には、ワクチン接種後にブレインフォグ、関節痛、息切れ、倦怠感といった症状が改善した人たちもいた。それでも、ワクチンを打っても症状がまったく変化しないという人は多かったし、症状が悪化したと感じる人も少数ながらいた。 2021年2〜9月に症状があると答えた18〜69歳を対象としたイギリス国家統計局の調査によると、長期コロナ感染症の症状を訴える確率は1回のワクチン接種で13%低下し、2回の接種でさらに9%低下した。 長期コロナ感染症の原因は今も明らかになっておらず、専門家によると、さまざまな症状の背後には、患者によって異なる原因が存在する可能性があるという。有力な仮説としては、感染が治まって陰性になった後に残ったウイルスやその遺伝子物質の残骸が関係しているとするもの、あるいは免疫の過剰反応が止まらなくなり、それによって引き起こされた炎症もしくは血行不良と関係しているとするものがある。 イェール大学の免疫学者・岩崎明子氏は、ウイルスの残骸が原因となっている場合には、ワクチンが症状の長期的な改善につながるのではないかと話す。これは、ワクチンで生成される抗体に、そうした残骸を取り除く能力があることが前提となる。 反面、感染後に自己免疫疾患に似た反応を起こし、これが長期コロナ感染症の原因となっている場合には、ワクチンでは一時的にしか症状が改善せず、倦怠感などの問題が再発する可能性がある』、科学的な解明は徐々にしか進まないとはいえ、着実に進展しているようだ。
第三に、2月5日付けダイヤモンド・オンラインが転載したヘルスデーニュース「コロナ後遺症で「脳の霧」が出る!?脳脊髄液中に確認された抗体とは?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/295280
・『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が治癒した後の後遺症の一つとして“脳の霧”(Brain Fog)が注目されているが、その発症機序の解明の手掛かりとなり得る研究結果が、「Annals of Clinical and Translational Neurology」に1月19日掲載された。論文の上席著者である、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のJoanna Hellmuth氏によると、脳の霧の症状が現れている人の脳脊髄液中には、その症状のない人からは検出されない抗体が確認されたという。 COVID-19治癒後に生じる“脳の霧”とは、Hellmuth氏によると、最近の出来事や名前を思い出せない、物事を表現するのに適切な言葉を想起できない、集中力が途切れる、情報処理スピードが低下するといった、認知機能関連症状のことだという。最近の研究によると、このような症状はCOVID-19治癒後の人にとって珍しいものではなく、ニューヨークのクリニックからは、156人のCOVID-19後遺症患者の約67%に認められたというデータが報告されている。 このようなウイルス感染症罹患に伴う“脳の霧”はCOVID-19に限ったものではない。これまでに、COVID-19以外の重症急性呼吸器症候群(SARS)の罹患や、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、C型肝炎ウイルス(HCV)などの感染でも、認知機能関連症状を来すケースがあることが知られている。 今回の研究は、認知機能関連症状のある22人(平均年齢48歳)と、その症状のない10人(同39歳)、計32人のCOVID-19既往者を対象に行われた。COVID-19の発症から10カ月後に採血検査を行うとともに、同意の得られた17人(有症状者13人、無症状者4人)の脳脊髄液を採取して分析した。なお、研究対象者は全員が成人であり、COVID-19の治療に入院を要していなかった。 脳脊髄液検査の結果、有症状のCOVID-19既往者13人中10人に炎症の亢進や、自分の体を攻撃する可能性のある抗体が活性化した所見が認められ、無症状のCOVID-19既往者4人は全て正常と判定された(77%対0%、P=0.01)。また、有症状者で認められた異常所見の一部は、血液検査の結果にも現われていた。 両群の認知機能関連リスク因子を比較すると、無症状者はリスク因子数が平均1未満であるのに対して、有症状者は平均2.5のリスク因子が該当した(P=0.03)。評価した認知機能関連リスク因子には、脳卒中、軽度認知障害、および血管性認知症のリスクを高める可能性のある疾患として、糖尿病と高血圧が含まれていた。また、注意欠如・多動症(ADHD)、アルコール・薬物使用障害、うつ病の既往なども評価されていた。 有症状のCOVID-19既往者の脳脊髄液中に見られた抗体について、Hellmuth氏は、「それらの抗体の標的は不明」とした上で、「ウイルスによって刺激された免疫系によって、意図しない病理学的機能により出現した可能性がある」と推測している。 なお、本研究では、HIV関連神経認知障害(HAND)の診断に使用される基準と同じ手法を用いて、神経心理学者の面接による認知機能の評価が対象者全員に行われていた。その結果は、有症状者では22人中13人(59%)、無症状者では10人中7人(70%)がHAND基準を満たしており、その割合に有意差はなかった(P=0.70)。 この点についてHellmuth氏は、「既存の評価手法では、COVID-19の後遺症として現れる認知機能の低下を診断できない可能性がある。しかし、思考や記憶の問題を訴える患者に対して、医療者は疾患の診断基準を満たすか否かにとらわれるのではなく、患者の訴えを信じて対応すべきではないか」と語っている。(HealthDay News 2022年1月20日)』、「最近の出来事や名前を思い出せない、物事を表現するのに適切な言葉を想起できない、集中力が途切れる、情報処理スピードが低下するといった、認知機能関連症状」とは怖い後遺症だ。「156人のCOVID-19後遺症患者の約67%に認められた」、「評価した認知機能関連リスク因子には、脳卒中、軽度認知障害、および血管性認知症のリスクを高める可能性のある疾患として、糖尿病と高血圧が含まれていた。また、注意欠如・多動症(ADHD)、アルコール・薬物使用障害、うつ病の既往なども評価」、「ウイルスによって刺激された免疫系によって、意図しない病理学的機能により出現した可能性がある」と推測」、なるほど。
タグ:パンデミック(医学的視点) については、1月13日に取上げた。今日は、(その25)(「ブースター接種」はどこまで科学的に有効なのか イスラエルではすでに4回目接種も始まったが、あまり語られないオミクロン株の「後遺症問題」 重症化リスクが下がったとしても安心できない、コロナ後遺症で「脳の霧」が出る!?脳脊髄液中に確認された抗体とは?)である。 先ずは、1月18日付け東洋経済オンラインが転載したThe New York Times「「ブースター接種」はどこまで科学的に有効なのか イスラエルではすでに4回目接種 東洋経済オンライン The New York Times「「ブースター接種」はどこまで科学的に有効なのか イスラエルではすでに4回目接種も始まったが」 日本でも「ブースター接種」することになり、医療従事者から優先的に「接種」が進んでいる。 「追加接種による免疫のブースト効果は一時的なものにすぎず、3回目の接種からわずか数週間で抗体濃度が低下することを示す予備的研究もすでに出ている」、「わずか数週間で抗体濃度が低下」、とは頼りない話だ。 「抗原原罪」説では、「免疫システムの反応は最初に接したウイルス株の記憶に引きずられるため、変異株に対する反応は大幅に低下」、もっともらしいシナリオだ。 「感染防止と重症化予防のどちらを目指すのか」、「政府が目指す目標をはっきりさせなければならない」のは確かだ。 The New York Times「あまり語られないオミクロン株の「後遺症問題」 重症化リスクが下がったとしても安心できない」 「ワクチン接種者と長期コロナ感染症に関する研究は、今のところデルタ株が登場する前に収集されたデータが中心になっており、しかも結果が割れている」、これでは役立たずだ。 科学的な解明は徐々にしか進まないとはいえ、着実に進展しているようだ。 ダイヤモンド・オンライン ヘルスデーニュース「コロナ後遺症で「脳の霧」が出る!?脳脊髄液中に確認された抗体とは?」 「最近の出来事や名前を思い出せない、物事を表現するのに適切な言葉を想起できない、集中力が途切れる、情報処理スピードが低下するといった、認知機能関連症状」とは怖い後遺症だ。「156人のCOVID-19後遺症患者の約67%に認められた」、「評価した認知機能関連リスク因子には、脳卒中、軽度認知障害、および血管性認知症のリスクを高める可能性のある疾患として、糖尿病と高血圧が含まれていた。また、注意欠如・多動症(ADHD)、アルコール・薬物使用障害、うつ病の既往なども評価」、「ウイルスによって刺激された免疫系によっ