株式・為替相場(その14)(インフレ対処でなぜ利上げ・円高を望む?「根性論的勘違い」の自殺行為だ、「日経平均2万円割れの懸念」が無謀ではない理由 株価下落の理由は「ウクライナ」だけではない、混乱の金融市場「想定すべき次のシナリオ」の中身 経済アナリストが語るウクライナ危機の影響) [金融]
株式・為替相場については、昨年12月7日に取上げた。今日は、(その14)(インフレ対処でなぜ利上げ・円高を望む?「根性論的勘違い」の自殺行為だ、「日経平均2万円割れの懸念」が無謀ではない理由 株価下落の理由は「ウクライナ」だけではない、混乱の金融市場「想定すべき次のシナリオ」の中身 経済アナリストが語るウクライナ危機の影響)である。
先ずは、本年2月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏による「インフレ対処でなぜ利上げ・円高を望む?「根性論的勘違い」の自殺行為だ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/295676
・『日本にもインフレがやって来ている。心配なのは、日本銀行が金融政策を利上げに転じ、円高になることを望む声があることだ。円高に耐えて構造改革せよという「根性論的勘違い」ではないかと思うし、自殺行為だ。日本のインフレ対処にはもっと別にやるべきことがある』、「円高論」を「「根性論的勘違い」ではないかと思うし、自殺行為だ」、とは手厳しい。
・『何十年かぶりにインフレ到来? 環境コストを払い始めている どうやら何十年かぶりにインフレがやって来るらしい。 昨年12月末時点で、日本の消費者物価指数は前年同月比0.5%の上昇に過ぎないが、企業物価指数は同8.5%も上昇している。主な原因は、対前年同月比で41.9%にも及ぶ輸入物価の上昇で、原油をはじめとするエネルギー価格の上昇と円安の効果が大きい。 エネルギー価格の上昇は、環境問題を意識して化石燃料採掘に対する投資が抑制されることから生じており、今後も「高止まり」する可能性が大きい。世界的な課題として、化石燃料の使用を抑制したいわけなので、燃料価格が上昇することは環境問題への対応としては、目的にかなっている。 われわれは、エネルギー価格の上昇を通じて環境のコストを払い始めているのだと考えることもできる。) 値上がりの範囲はエネルギーにとどまらず、鉄鉱石や銅などの工業原材料、さらには穀物など食料品にも及んでいる。 経済全体を大まかに見ると、企業はコストの上昇を価格に転嫁できておらず、利益の圧迫を受けた状態にある』、「企業はコストの上昇を価格に転嫁できておらず、利益の圧迫を受けた状態にある」、その通りだ。
・『原料などの値上がりコストを払う 「貧乏になりながらのインフレ」 企業側の対策は、各種の合理化によるコスト削減と、製品価格の引き上げだ。ところが、前者は賃金の抑制要因で間接的に需要を圧迫する要因であるし、後者に関しては価格引き上げに厳しい消費者の目線と競合他社との腹の探り合いで、なかなか進まない。 もっとも、経験則的には、「川上」の物価上昇は、半年くらい遅れて「川下」に波及する。昨年春の携帯電話の料金引き下げの影響が今後消えることもあり、消費者物価にもインフレは到来するだろう。 うまい棒が10円から12円に値上げされたり、すき家の牛丼並盛りが昨年12月に値上げされたりしたように、既に値上げが始まった商品もある。 政府と日本銀行は10年近く「2%」のインフレ率の達成を目指してきた。しかし今回のインフレは、好景気で賃金と物価が両方上がるような、「経済の好循環」と共存する望ましいインフレにはほど遠い。 久しぶりのインフレなので、数十年前の高校の政治経済の教科書にあったインフレの分類を思い出そう。経済の需要が活発で起こるディマンドプル・インフレではなく、原料などのコスト高が原因で起こるコストプッシュ・インフレということになる。 輸入を急に減らすことができない財の値上がりによるコストを払いながらの物価上昇だから、国全体としては貧乏になりながらのインフレだ』、「コストプッシュ・インフレ」で、「国全体としては貧乏になりながらのインフレだ」、その通りだ。
・『米国のインフレは大問題に 消費者物価は昨年末に7.0%上昇 米国では、既にインフレが大きな問題になっている。消費者物価は、昨年末には対前年同月比で7.0%もの上昇となっている。 米連邦準備制度理事会(FRB)は、物価の安定と雇用の最大化の二つの目的を持つが、失業率は3.9%と、目処とされる4%を下回っている。そのため、インフレ対策に政策の重点を置くことができる。 FRBのジェローム・パウエル議長は新しい任期を得たので、今は資本市場に少々のショックが起きるリスクを取ってでも、利上げに及んでバランスシートの縮小を推進できる状況にある。 米国のインフレは、資源価格の上昇に加えて、人手不足がもたらす賃金上昇、新型コロナウイルス対策の金融緩和と財政拡張が効き過ぎたことに伴う需要超過といった複数の原因で起こっていると考えられる。需要の抑制につながる利上げを行うことは一定程度合理的だろう。 ただし、供給の制約がある中で、金融の引き締めによって物価を抑制できるところまで需要を供給に合わせて縮小しようとすると、需要を殺し過ぎてしまう懸念がある。また、それ以前に資本市場で「ショック」が起こる可能性を考えなければならない。 投資家としては、米国の株価が心配な展開が続くので、しばらく「気持ちの悪い時間」を過ごすことになる。リスクが過大になっている向きはポートフォリオを調整する方がいいだろう。ただし、「売って、株価の値下がりをかわして」、「下値で投資し直す」という操作はプロでもうまくはいきにくい。 「高値から2〜3割の下落で、回復まで2年程度かかる調整はよくあることだ」というくらいに達観して静観するのがよかろう) 投資家としての「楽しみ」は、資産価格の下落やFRBのバランシート調整に伴う債券市場の混乱で、大型の倒産や金融機関の経営不安などの「ショック」が起こった場合に訪れる。一つは、株価が急落した局面で追加投資できるチャンスが生じること。もう一つは、その後に予想される金融政策の緩和方向への転換で利益が生じる可能性が大きいことだ。 「10年ぶり」クラスのチャンスが生じる可能性は「あるかもしれない」』、「投資家としての「楽しみ」は、資産価格の下落やFRBのバランシート調整に伴う債券市場の混乱で、大型の倒産や金融機関の経営不安などの「ショック」が起こった場合に訪れる」、確かに「ショック」が起きれば、「金融政策の緩和方向への転換」、で「利益が生じる可能性が大きいこと」、なるほど。
・『日本の望ましいインフレ対策は? 利上げ・円高路線は「根性論的勘違い」 「日本にも来るインフレ」で心配なのは、端的に言って日銀が金融政策を利上げに転じて、円高を望む声があることだ。実質金利を上げると円高にはなるだろうが、それで何を望むのか。 かつて日本経済が、オイルショックのコスト高や円高に耐えて成長した頃の成功体験への郷愁があるのかもしれない。しかし、円高かつ実質金利高の環境の方が高付加価値な製品に重点を置く経済構造への転換ができると思うのは、一種の「根性論的勘違い」ではないだろうか。 「企業を円安で甘やかすのは良くない。円高の環境に耐え得るように、企業を鍛え直すべきだ」とでも考えているのだろうか。 企業経営者の目線で考えてみよう。 原材料価格などコストが上昇している。円高になると、これはいくらか緩和されるかもしれないが、製品の国際競争力が落ちるので利益は増えない。加えて実質金利の上昇は、設備投資に対しても研究開発投資に対しても抑制要因だ。 もうかっていて実質金利が低い方が、前向きなビジネスへの投資は行いやすいはずだ。 加えて、日本が今後経験するはずのインフレには、ディマンドプル・インフレ的な要素が乏しい。一時的なコストプッシュ・インフレの影響の後に、実質金利を上げて需要を殺し、再びデフレに戻るのではまずい。) ここで心底心配なのは「岸田リスク」だ。岸田文雄首相は、どうやらアベノミクス路線を修正したいと考えているらしい。 ここで、理由は何であれ、物価上昇率目標の「2%」が達成された場合、これを奇貨として日銀の政策を転換しようとするのではないか。巡り合わせの悪いことに、来春は日銀の正副総裁が任期を迎える。 岸田首相が金融引き締めと財政再建の路線にかじを切った場合、日本の没落はますます深刻なものとなるだろう。一時のインフレが、中期的な経済停滞を生む結果になるのなら憂鬱だ。 金融引き締めで一時的に円高になるなら、子ども世代には海外移住を本気で考えさせるべきかもしれない』、「金融引き締め」でコスト・プッシュ要因が緩和される筈だ。「財政再建」までする必要はない。
・『インフレには財政拡張か減税によるセーフティーネット拡充で対処せよ 今後、コロナの影響から十分回復していない日本経済に、消費者物価が上昇するにもかかわらず、賃上げがこれに追いつかない状況が生じる可能性が大きい。経済全体が窮乏化するしわ寄せが、経済的弱者に回って来そうだ。 円高にして購買力を増す政策は、公務員や連合が対象とするような大企業の正社員のように、給与と雇用が安定している人にはいいかもしれない。しかし、経済全体には停滞要因となるし、雇用が不安定で賃金交渉力が乏しい非正規労働者などの経済状況を悪化させる可能性がある。 インフレによる家計の購買力の低下に対しては、財政的な拡張ないし減税によるセーフティーネットの強化で応えるべきだろう。 例えば、一時金ではなく、「毎月」継続的に入る1万円の給付金を全国民に支給するとしよう。約15兆円の財源が必要だが、これは当初は国債で賄えばいいし、後には富裕層に増税して「再分配」の効果を得たらよい。 毎月の給付金の事務コストが高いというのであれば、基礎年金を全額財政で負担するといい。保険料徴収等の事務コストが大きく減るし、特に低所得な現役世代にとって重い年金保険料を軽減して、「直ちに」手取り所得を増やすことができる。もちろん、将来の無年金者を減らす効果もある(より重要な効果は、手取り所得の増加と、負担の変化を通じて起こる再分配だ)。 工夫の余地はいくらでもある。今後迎えるインフレにあって必要なのは、円高に耐えて構造改革せよという根性論的「厳しさ」ではなく、困っている国民を広く助ける「優しさ」ではなかろうか』、「困っている国民を広く助ける「優しさ」」が必要であることは論ずまでもないが、「円高」のコスト引き下げ効果を無視すべきではない。「円高に耐えて構造改革せよという根性論的「厳しさ」」、は単なる言いがかりに近い。
次に、3月13日付け東洋経済オンラインが掲載した慶應義塾大学大学院准教授の小幡 績氏による「「日経平均2万円割れの懸念」が無謀ではない理由 株価下落の理由は「ウクライナ」だけではない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/538416
・『個人的見解だが、結論から言うと、日経平均株価は2万円割れの可能性まであるだろう。 この連載は競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による持ち回り連載です(最終ページには競馬の予想が載っています)。 これを今言うのは、とても危険だ。 原稿執筆時点(3月10日)では、9日のアメリカ株式市場は大幅上昇、10日の日経平均株価も一時は約1000円高となったからだ。 世界は、リスクオフからの反動で、一気にリスクオンに傾いたことが背景で、この動きは広範かつ持続しそうにみえる』、興味深そうだ。
・『「日経平均のさらなる下落」を予想するのは無謀? 原油価格の指標であるWTI先物価格は一気に15ドル前後も下落し、1バレル=105ドル前後に。金もプラチナも小麦もすべての資源、農産物先物が一時大幅下落した。 きっかけは、UAE(アラブ首長国連邦)が大幅増産を行うなどと表明したことだ。おそらく、これまで一気に買いポジションを膨らませていた投機筋が投げ売ったということだろう。 リスクオフの流れに乗った投資筋がすべての市場で手仕舞ったということが理由で、株式もその一環にすぎない。さらに株式に限っては、個人投資家がアメリカの株式市場でも下げ局面で買い続けていた流れが、ここで加速したということもあるだろう。 市場は「ウクライナの最悪期はこれからだが、株式市場の最悪期は去った。今度こそ、市場は停戦後を先取りしている」とはやしそうだ。 そんなタイミングで「まだまだ下がる」、しかも「日経平均2万円割れ」など、誰も想定していない可能性に言及するなんて、阿呆以外の何者でもない。しかし私は、下落の継続・拡大を予想する。競馬予想が外れすぎて、外れ慣れているから、外れても気にしないから、ではない。「下がる確実な理由」があるのだ。 それは、株価が下げてきたのは2つの理由があったにもかかわらず、人々も市場も1つの要因で頭がいっぱいになってしまい、もう1つの理由を忘れてしまっているからだ。) この2つの理由とは、前者はウクライナであり、後者はアメリカの利上げである。すなわち、後者のアメリカの利上げによる下落の部分は忘れられているが、実際に利上げが始まり、またそのペースが以前危惧されたように速いペースになれば、株価はもう一度暴落する。そして、実際に利上げは早いペースで行われ、なおかつ、それでもインフレは止まらない、と私は予測するからだ』、「後者のアメリカの利上げによる下落の部分は忘れられているが、実際に利上げが始まり、またそのペースが以前危惧されたように速いペースになれば、株価はもう一度暴落する」、不都合なことはすぐ「忘れられる」ようだ。
・『株価が一直線に下落しなかった3つの理由 みな忘れているが、株式市場はロシアのウクライナ侵攻が始まる前から下落基調が始まっていた。投資家たちは、アメリカの中央銀行であるFED(連邦準備制度)の一挙手一投足に振り回され、そして最後には利上げがついに始まることにおびえていた。そして、その利上げ時期が大幅に前倒されることが見込まれるようになり、実行が目の前に迫ってきたところだったのだ。 そこへ、ロシアがウクライナ侵攻した。もちろん、株式市場はウクライナリスクで暴落した。しかし意外なことに、直ちに切り返すなど乱高下が続いた。一直線の下落にならなかったのだ。なぜか? その理由は3つあった。 第1の理由は、投資家たちがロシアの意思を理解できていなかったからだ。つまり、その結果、侵攻は脅しにすぎないと思っていたし、侵攻が始まってからも、すぐにロシアが落としどころへ向けて動くと思っていた。 投資家たちは「ロシアが戦争を始めても得などない。だから侵攻は合理的でない。したがって脅しにすぎない」――。そう考えたからだ。 この誤りの背後にあるのは、投資家たちの思考の限界だ。自分の枠組み、思考回路でしか、物事を見ることができない。したがって、つねに起こる誤りのパターンといえる。 むしろ、素人には普通のこと(私をはじめ多くの素人の見方は、ロシアは帝国、プーチンは皇帝だから、何が何でもウクライナに侵攻するというもの)が彼らには見えないわけだ。) 実際の投資家の反応を振り返ってみると、以下のようであった。 「ロシアがウクライナに侵攻する」とアメリカの当局が警告したにもかかわらず、多くの専門家、評論家たちは「合理的でない」として脅しにすぎない、あるいはアメリカが不安をあおっている、と斜に構え、侵攻リスクを株価にほとんど織り込まなかった。しかし現実には、侵攻は起きた。 次に、侵攻が始まると「侵攻はすぐに終わる」「キエフはすぐ陥落する」、あるいは「ロシアも長期化を望まないから、すぐに引いて交渉に入る」などと市場関係者は解説した。株価が大きく下がっても、連続して下がり続けず、ある程度、戻した。市場はすでに収束後を織り込んでいると解説して、この反発上昇を自慢した』、「投資家たちの思考の限界だ。自分の枠組み、思考回路でしか、物事を見ることができない。したがって、つねに起こる誤りのパターンといえる」、その通りだ。
・『「自分たちの願望」を正当化した投資家たち しかし実際には、侵攻は長期化し、戦闘は泥沼化した。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はとことん攻め続ける意思ははっきりしているのは、誰の目にも明らかだった。 だが、投資家たちは違った。アリバイ作りのような停戦交渉が行われるたびに、収束を期待し、株価は戻した。 しかし、毎回、交渉は成果がないどころか、そもそも「交渉する意味があるのか」と誰もが思うような、ウクライナには到底受け入れられない無理な主張をロシアは続けるだけだった。交渉が失敗に終わるたびに、株価は下落した。 このプロセスを振り返ってわかることは、投資家たちは自分たちの願望でしかロシアのウクライナ侵攻を見ていなかった、ということだ。事実ではなく、願望を正当化して、他人にも押し付けようとする。これが投資家たちが誤った理由の第2であり、これもまた、投資家たちの悪いクセ、お決まりのパターンの1つだ。 彼らの願望を市場価格に実現させようとする、その厚かましさは今回とくにひどかった。ウクライナ侵攻で原油価格が暴騰したこと、および世界的な景気減速懸念により、FEDの利上げが遠のく、あるいはペースが緩やかになると期待して、むしろ株式市場にはプラスの面もある、とまで言ってのけたのだ。 プーチン大統領よりも狂っているのは彼らだ。ありえない。願望を押し通すにもほどがあるだろう。 ウクライナ侵攻は金融引き締めが遠のき、株式市場にプラスという解釈は自分勝手なだけではなく、根本的に間違っていることが問題だ。これが、株式市場が反発した第3の理由だが、投資家の致命的な「構造的誤ちパターン」でもある。 つまり、願望を強引に市場に押し付け続けたあまり、それが願望だか事実だか、自分たちでもわからなくなってしまったのだ。確信犯的に相場に願望を吹聴して、素人にそれが事実と信じ込ませていたのが、最後にはその確信犯的なウソに自分たちがだまされるようになってしまったのだ。 ウクライナ危機があっても、中央銀行は金融引き締めを止めない。それどころか、利上げは加速する。なぜなら、誰でもわかるように、というか現実に起きているように、インフレが加速しているからだ』、「アリバイ作りのような停戦交渉が行われるたびに、収束を期待し、株価は戻した・・・交渉が失敗に終わるたびに、株価は下落」、「投資家たちは自分たちの願望でしかロシアのウクライナ侵攻を見ていなかった、ということだ。事実ではなく、願望を正当化して、他人にも押し付けようとする。これが投資家たちが誤った理由の第2であり、これもまた、投資家たちの悪いクセ、お決まりのパターンの1つだ」、「確信犯的に相場に願望を吹聴して、素人にそれが事実と信じ込ませていたのが、最後にはその確信犯的なウソに自分たちがだまされるようになってしまったのだ。 ウクライナ危機があっても、中央銀行は金融引き締めを止めない。それどころか、利上げは加速」、「最後にはその確信犯的なウソに自分たちがだまされるようになってしまった」には思わず微笑んでしまった。
・『オイルショック時よりもインフレは複雑で手ごわい 原油、天然ガスだけでなく、ありとあらゆる資源は高騰し、世界的な物流チェーンが止まるから、ロシア資源とは直接は無関係でも、すべての原材料の入手コストが上がる。物流効率も悪くなるからコストも上がる。 インフレは、資源価格の高騰分は当然反映されて加速するだけでなく、資源と無関係に、すべてのコストが上昇し、コストプッシュインフレは加速するのだ。買いだめも企業ベースでも消費者ベースでも起きるだろう。オイルショックの再来だ。 これは素人の目には明らかである。しかし、それでも専門家たちは抵抗を続ける。「スタグフレーションは起きない」「オイルショックのときは違う」などと言い張る。 その最後の根拠は「あのときはもともと不況で、失業率も高かった。今回は景気がよく、失業率も歴史的最低水準だ。だから、まったく違う。不況にならないから、スタグフレーションにはならない」と素人たちを説得しようとする。 ありえない。不況の深刻さはもちろん、オイルショック時よりは軽いだろう。しかし、根本はインフレーションである。もともと好景気、コロナで人材不足、賃金上昇が加速しているところに、インフレ要因がさらに重なったのだから、オイルショック時よりもインフレはより複雑で手ごわいということだ。 だから、利上げをしてもインフレは収まらない。そして、利上げをすれば景気は悪化する。だから、不況の程度はオイルショック時よりも軽いが、より手ごわい複雑なインフレである、種類の異なるスタグフレーションが起きるだけだ。) さらに大きな問題は、これまで世界中の中央銀行が、歴史的にはありえない大規模な金融緩和を行ってきたことであり、それに世界が慣れてしまっているということだ。だから、金融引き締めに慣れていた1980年とは異なる。 スタグフレーション、ロシアによるウクライナ侵攻は株式市場に大きなダメージを与えるが、それに加え、何よりも金融引き締めショックが異常な金融緩和による壮大なバブル崩壊に与える影響は、金融緩和が史上最大なのだから、崩壊も史上最大級の可能性がある。 そして、この金融引き締めとインフレの長期継続による株価暴落リスクを、市場は忘れている。忘れたふりをしているうちに、本当に忘れてしまっている』、「何よりも金融引き締めショックが異常な金融緩和による壮大なバブル崩壊に与える影響は、金融緩和が史上最大なのだから、崩壊も史上最大級の可能性がある。 そして、この金融引き締めとインフレの長期継続による株価暴落リスクを、市場は忘れている。忘れたふりをしているうちに、本当に忘れてしまっている」、「市場」の健忘症も困ったものだ。
・『3月のFOMCが0.25%の利上げになっても結局は暴落へ まず、3月16日のFOMC(連邦公開市場委員会)の声明文公表で、利上げがウクライナ前の懸念どおり、0.5%の利上げになれば、株価は利上げショックで大暴落となるだろう。 一方、利上げ幅が0.25%にとどまれば、やはり利上げペースは弱まったと願望が実現した(ようにみえる)ことに安堵し、株価は大幅上昇するだろう。しかしそれは、その先の利上げによる暴落を準備する上昇にすぎない。ロシアが侵攻を止めたのちに、利上げペースが加速し、そこで暴落することになるだろう。 そして、ロシアが侵攻を止めても、ロシアが行き詰まって、停戦が実現したとしても、すぐに制裁を解くわけにはいかず、プーチン大統領が消えるまでは続けることになる。実際にはプーチンは簡単には消えないから、制裁は市場の願望からかけ離れて長期化するだろう。 したがって、その先の株価反発の材料もないという事実に、最後は、投資家たちも屈服せざるをえず、株価は低迷を続けることになるだろう。この流れの中で、日経平均は2万円を割ることがあってもまったく不思議ではないのである。(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)』、「ロシアが侵攻を止めたのちに、利上げペースが加速し、そこで暴落することになるだろう。 そして、ロシアが侵攻を止めても、ロシアが行き詰まって、停戦が実現したとしても、すぐに制裁を解くわけにはいかず、プーチン大統領が消えるまでは続けることになる。実際にはプーチンは簡単には消えないから、制裁は市場の願望からかけ離れて長期化するだろう。 したがって、その先の株価反発の材料もないという事実に、最後は、投資家たちも屈服せざるをえず、株価は低迷を続けることになるだろう。この流れの中で、日経平均は2万円を割ることがあってもまったく不思議ではない」、説得力ある見方だ。
第三に、3月14日付け東洋経済オンライン「混乱の金融市場「想定すべき次のシナリオ」の中身 経済アナリストが語るウクライナ危機の影響」を紹介しよう。
・『ウクライナ危機をきっかけに市場が混乱している。原油価格の指標であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート、先物)は一時、約14年ぶりの高値圏となる1バレル130ドル超を記録。穀物や鉱物も上がるなど、ウクライナ危機が世界の資源価格高騰を招いている。原料高が景気を冷やすとの見方から、日経平均株価は3月8日に2万5000円を割り込んだ。 3月15~16日にはFOMC(アメリカ連邦公開市場委員会)でFRB(アメリカ連邦準備制度理事会)が0.25%の利上げに踏み切る見通し。金利の上昇は株価への逆風とされ、さらなる株価の下げに市場は身構える。 そこで『週刊東洋経済』3月14日発売号は「株の崩落 次の一手」を特集。『会社四季報』2022年2集春号(3月18日発売予定)の業績予想を先取りしたランキングや米国株ランキング、アナリスト・ストラテジストらによる日米株価予想、急落局面に耐える投資術、波乱相場の売り時・買い時の見分け方といった銘柄選びと投資法を徹底解説した。 では、今後の市場の行方はどうなるか。世界のマネーの動向に詳しい、経済アナリストの豊島逸夫氏に市場シナリオについて聞いた』、興味深そうだ。
・『ロシア国債のデフォルトリスクを注視 最悪のリスクシナリオについて検討が必要な状況になりつつある。 3月4日午前、ロシア軍がウクライナの原子力発電所を砲撃したという報道が飛び込んできた。深夜のアメリカ・ニューヨークの金融市場も一時騒然となった。 砲撃報道の前日、アメリカの格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスがロシア国債を格下げしていた。投機的水準への大幅な格下げで、デフォルト(債務不履行)の懸念が高まった直後だった。 ロシア国債のデフォルトのリスクを注視しなければならない。ロシアはブリンクマンシップ(瀬戸際戦術)を取っている。アメリカなど西側諸国が、ロシア国債のデフォルトをあえて放置するような姿勢を見せれば、ロシアは報復として核を一段とちらつかせるのではないか。 今後、ウクライナの国内核施設への砲撃や占拠を拡大すれば、NATO(北大西洋条約機構)との緊張感が高まり、新冷戦も本格化する。 アメリカやNATOが本格的にレーダーや核兵器の照準をロシアに合わせるようなことが話し合われ、核戦争の脅威が現実味を帯びるような事態になれば、金融市場も大きく揺らぎ、株価は大暴落する。 もう1つの心配は中国の出方だ。今のところ中国は、どっちつかずの状態にある。 私は中国の銀行のアドバイザリーを7年間務めた経験による人脈で、日々中国から情報を入手しているが、彼らも読み切れていない。だが、全国人民代表大会(全人代)終了後の最新情報では、さまざまな分野で中国とロシアの協調路線をにじませていくようだ。 中国とロシアは、アメリカの通貨覇権に対する挑戦をあからさまに示している。ロシアは2014年のクリミア危機以降、外貨準備を増やしてきた。 金の保有量はすでに2000トン以上になったので、昨年からは中国の人民元を増やし、中国に歩み寄っている。中国は、苦渋の決断ながら、ロシアと組んでアメリカを敵にする、ということになるとみている』、「西側諸国が、ロシア国債のデフォルトをあえて放置するような姿勢を見せれば、ロシアは報復として核を一段とちらつかせるのではないか」、「放置」せざるを得ないのに、「核を一段とちらつかせる」、とは物騒だ。
・『新冷戦時代に突入なら日本への投資は新興国レベルに こうした最悪のリスクシナリオが進んだとき、日本はどうなるか。アジアの決済通貨は人民元への傾斜を強めるだろう。 日本円はローカルな通貨となり、円安が一段と進むことになる。通貨の力は、結局は国力によって決まる。これまで日本はアメリカの後ろ盾があったので世界の投資家から資金を集めることができた。 もし新冷戦時代に突入して、日本がスルーされ頭越しに事態が進行すれば、日本への投資は新興国への投資と変わらないぐらいのリスクになるだろう。 ここまでの話は、可能性は低いが、起こらないとは言えないテールリスクとして考えていること。メインシナリオとして考えているのは、もう少しマイルドなものだ。 まず、戦争というリスクのピークは数週間以内に来るのではないか。 地政学的リスクによる資産価格の変動は一時的で長続きはしないというのが、市場関係者が一般的な原則として理解していること。テールリスクのようなことが現実にならなければ、戦争が長期化しても、金融市場へのインパクトは逓減し、さらに陳腐化を速めよう。 ロシアへは確かに強い経済制裁がなされている。ロシアの中央銀行とアメリカの金融機関とのドル取引禁止という措置に踏み込んだのは驚きだった。しかし、ロシア経済は韓国と同程度の規模。世界のGDP(国内総生産)に占める比率は約2%にとどまる。 ロシア制裁がリーマンショックのようなシステミックリスク拡散につながるとは考えにくい。もちろん欧州経済、とくにドイツへの影響は大きいだろうが、アメリカ経済への打撃はさほど大きくないと考えられる』、「もし新冷戦時代に突入して、日本がスルーされ頭越しに事態が進行すれば、日本への投資は新興国への投資と変わらないぐらいのリスクになるだろう」、寂しいことだ。
・『次の最大の関心事はFRB議長がどう動くか そうなるとマーケットの次の最大の関心事は、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長がどう動くか、だ。3月15~16日のFOMC(米連邦公開市場委員会)後、利上げ回数は徐々に明らかになるだろう。 市場の関心は、FRBの資産圧縮の開始時期、縮小される保有債券の種類と量に移っていく。9兆ドル近くに膨らんだFRBの資産は、夏ぐらいから年末にかけて1兆~1.5兆ドルぐらい減らすとみている。 FRBの基本姿勢は、MBS(住宅ローン担保証券)をまず減らし、国債中心のポートフォリオにすること。短期債は再投資せず自然減で減らせる。しかし、長期債売却は債券市場への影響も強く、市場の混乱を起こさずに資産圧縮を進めることは容易ではない。パウエル議長の真価が問われる。 ウクライナ戦争がエスカレートする中で、アメリカの金融政策は超緩和から引き締めへ歴史的な転換をする。今週は、後世の歴史に残る1ページになりそうだ』、「長期債売却は債券市場への影響も強く、市場の混乱を起こさずに資産圧縮を進めることは容易ではない」、とはいえ、「債券市場」は元来、長期的な見方で「資産圧縮」の影響を冷静に織り込んで形成されるので、「混乱」がそれほどひどくならない可能性もあるのではなかろうか。
先ずは、本年2月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏による「インフレ対処でなぜ利上げ・円高を望む?「根性論的勘違い」の自殺行為だ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/295676
・『日本にもインフレがやって来ている。心配なのは、日本銀行が金融政策を利上げに転じ、円高になることを望む声があることだ。円高に耐えて構造改革せよという「根性論的勘違い」ではないかと思うし、自殺行為だ。日本のインフレ対処にはもっと別にやるべきことがある』、「円高論」を「「根性論的勘違い」ではないかと思うし、自殺行為だ」、とは手厳しい。
・『何十年かぶりにインフレ到来? 環境コストを払い始めている どうやら何十年かぶりにインフレがやって来るらしい。 昨年12月末時点で、日本の消費者物価指数は前年同月比0.5%の上昇に過ぎないが、企業物価指数は同8.5%も上昇している。主な原因は、対前年同月比で41.9%にも及ぶ輸入物価の上昇で、原油をはじめとするエネルギー価格の上昇と円安の効果が大きい。 エネルギー価格の上昇は、環境問題を意識して化石燃料採掘に対する投資が抑制されることから生じており、今後も「高止まり」する可能性が大きい。世界的な課題として、化石燃料の使用を抑制したいわけなので、燃料価格が上昇することは環境問題への対応としては、目的にかなっている。 われわれは、エネルギー価格の上昇を通じて環境のコストを払い始めているのだと考えることもできる。) 値上がりの範囲はエネルギーにとどまらず、鉄鉱石や銅などの工業原材料、さらには穀物など食料品にも及んでいる。 経済全体を大まかに見ると、企業はコストの上昇を価格に転嫁できておらず、利益の圧迫を受けた状態にある』、「企業はコストの上昇を価格に転嫁できておらず、利益の圧迫を受けた状態にある」、その通りだ。
・『原料などの値上がりコストを払う 「貧乏になりながらのインフレ」 企業側の対策は、各種の合理化によるコスト削減と、製品価格の引き上げだ。ところが、前者は賃金の抑制要因で間接的に需要を圧迫する要因であるし、後者に関しては価格引き上げに厳しい消費者の目線と競合他社との腹の探り合いで、なかなか進まない。 もっとも、経験則的には、「川上」の物価上昇は、半年くらい遅れて「川下」に波及する。昨年春の携帯電話の料金引き下げの影響が今後消えることもあり、消費者物価にもインフレは到来するだろう。 うまい棒が10円から12円に値上げされたり、すき家の牛丼並盛りが昨年12月に値上げされたりしたように、既に値上げが始まった商品もある。 政府と日本銀行は10年近く「2%」のインフレ率の達成を目指してきた。しかし今回のインフレは、好景気で賃金と物価が両方上がるような、「経済の好循環」と共存する望ましいインフレにはほど遠い。 久しぶりのインフレなので、数十年前の高校の政治経済の教科書にあったインフレの分類を思い出そう。経済の需要が活発で起こるディマンドプル・インフレではなく、原料などのコスト高が原因で起こるコストプッシュ・インフレということになる。 輸入を急に減らすことができない財の値上がりによるコストを払いながらの物価上昇だから、国全体としては貧乏になりながらのインフレだ』、「コストプッシュ・インフレ」で、「国全体としては貧乏になりながらのインフレだ」、その通りだ。
・『米国のインフレは大問題に 消費者物価は昨年末に7.0%上昇 米国では、既にインフレが大きな問題になっている。消費者物価は、昨年末には対前年同月比で7.0%もの上昇となっている。 米連邦準備制度理事会(FRB)は、物価の安定と雇用の最大化の二つの目的を持つが、失業率は3.9%と、目処とされる4%を下回っている。そのため、インフレ対策に政策の重点を置くことができる。 FRBのジェローム・パウエル議長は新しい任期を得たので、今は資本市場に少々のショックが起きるリスクを取ってでも、利上げに及んでバランスシートの縮小を推進できる状況にある。 米国のインフレは、資源価格の上昇に加えて、人手不足がもたらす賃金上昇、新型コロナウイルス対策の金融緩和と財政拡張が効き過ぎたことに伴う需要超過といった複数の原因で起こっていると考えられる。需要の抑制につながる利上げを行うことは一定程度合理的だろう。 ただし、供給の制約がある中で、金融の引き締めによって物価を抑制できるところまで需要を供給に合わせて縮小しようとすると、需要を殺し過ぎてしまう懸念がある。また、それ以前に資本市場で「ショック」が起こる可能性を考えなければならない。 投資家としては、米国の株価が心配な展開が続くので、しばらく「気持ちの悪い時間」を過ごすことになる。リスクが過大になっている向きはポートフォリオを調整する方がいいだろう。ただし、「売って、株価の値下がりをかわして」、「下値で投資し直す」という操作はプロでもうまくはいきにくい。 「高値から2〜3割の下落で、回復まで2年程度かかる調整はよくあることだ」というくらいに達観して静観するのがよかろう) 投資家としての「楽しみ」は、資産価格の下落やFRBのバランシート調整に伴う債券市場の混乱で、大型の倒産や金融機関の経営不安などの「ショック」が起こった場合に訪れる。一つは、株価が急落した局面で追加投資できるチャンスが生じること。もう一つは、その後に予想される金融政策の緩和方向への転換で利益が生じる可能性が大きいことだ。 「10年ぶり」クラスのチャンスが生じる可能性は「あるかもしれない」』、「投資家としての「楽しみ」は、資産価格の下落やFRBのバランシート調整に伴う債券市場の混乱で、大型の倒産や金融機関の経営不安などの「ショック」が起こった場合に訪れる」、確かに「ショック」が起きれば、「金融政策の緩和方向への転換」、で「利益が生じる可能性が大きいこと」、なるほど。
・『日本の望ましいインフレ対策は? 利上げ・円高路線は「根性論的勘違い」 「日本にも来るインフレ」で心配なのは、端的に言って日銀が金融政策を利上げに転じて、円高を望む声があることだ。実質金利を上げると円高にはなるだろうが、それで何を望むのか。 かつて日本経済が、オイルショックのコスト高や円高に耐えて成長した頃の成功体験への郷愁があるのかもしれない。しかし、円高かつ実質金利高の環境の方が高付加価値な製品に重点を置く経済構造への転換ができると思うのは、一種の「根性論的勘違い」ではないだろうか。 「企業を円安で甘やかすのは良くない。円高の環境に耐え得るように、企業を鍛え直すべきだ」とでも考えているのだろうか。 企業経営者の目線で考えてみよう。 原材料価格などコストが上昇している。円高になると、これはいくらか緩和されるかもしれないが、製品の国際競争力が落ちるので利益は増えない。加えて実質金利の上昇は、設備投資に対しても研究開発投資に対しても抑制要因だ。 もうかっていて実質金利が低い方が、前向きなビジネスへの投資は行いやすいはずだ。 加えて、日本が今後経験するはずのインフレには、ディマンドプル・インフレ的な要素が乏しい。一時的なコストプッシュ・インフレの影響の後に、実質金利を上げて需要を殺し、再びデフレに戻るのではまずい。) ここで心底心配なのは「岸田リスク」だ。岸田文雄首相は、どうやらアベノミクス路線を修正したいと考えているらしい。 ここで、理由は何であれ、物価上昇率目標の「2%」が達成された場合、これを奇貨として日銀の政策を転換しようとするのではないか。巡り合わせの悪いことに、来春は日銀の正副総裁が任期を迎える。 岸田首相が金融引き締めと財政再建の路線にかじを切った場合、日本の没落はますます深刻なものとなるだろう。一時のインフレが、中期的な経済停滞を生む結果になるのなら憂鬱だ。 金融引き締めで一時的に円高になるなら、子ども世代には海外移住を本気で考えさせるべきかもしれない』、「金融引き締め」でコスト・プッシュ要因が緩和される筈だ。「財政再建」までする必要はない。
・『インフレには財政拡張か減税によるセーフティーネット拡充で対処せよ 今後、コロナの影響から十分回復していない日本経済に、消費者物価が上昇するにもかかわらず、賃上げがこれに追いつかない状況が生じる可能性が大きい。経済全体が窮乏化するしわ寄せが、経済的弱者に回って来そうだ。 円高にして購買力を増す政策は、公務員や連合が対象とするような大企業の正社員のように、給与と雇用が安定している人にはいいかもしれない。しかし、経済全体には停滞要因となるし、雇用が不安定で賃金交渉力が乏しい非正規労働者などの経済状況を悪化させる可能性がある。 インフレによる家計の購買力の低下に対しては、財政的な拡張ないし減税によるセーフティーネットの強化で応えるべきだろう。 例えば、一時金ではなく、「毎月」継続的に入る1万円の給付金を全国民に支給するとしよう。約15兆円の財源が必要だが、これは当初は国債で賄えばいいし、後には富裕層に増税して「再分配」の効果を得たらよい。 毎月の給付金の事務コストが高いというのであれば、基礎年金を全額財政で負担するといい。保険料徴収等の事務コストが大きく減るし、特に低所得な現役世代にとって重い年金保険料を軽減して、「直ちに」手取り所得を増やすことができる。もちろん、将来の無年金者を減らす効果もある(より重要な効果は、手取り所得の増加と、負担の変化を通じて起こる再分配だ)。 工夫の余地はいくらでもある。今後迎えるインフレにあって必要なのは、円高に耐えて構造改革せよという根性論的「厳しさ」ではなく、困っている国民を広く助ける「優しさ」ではなかろうか』、「困っている国民を広く助ける「優しさ」」が必要であることは論ずまでもないが、「円高」のコスト引き下げ効果を無視すべきではない。「円高に耐えて構造改革せよという根性論的「厳しさ」」、は単なる言いがかりに近い。
次に、3月13日付け東洋経済オンラインが掲載した慶應義塾大学大学院准教授の小幡 績氏による「「日経平均2万円割れの懸念」が無謀ではない理由 株価下落の理由は「ウクライナ」だけではない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/538416
・『個人的見解だが、結論から言うと、日経平均株価は2万円割れの可能性まであるだろう。 この連載は競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による持ち回り連載です(最終ページには競馬の予想が載っています)。 これを今言うのは、とても危険だ。 原稿執筆時点(3月10日)では、9日のアメリカ株式市場は大幅上昇、10日の日経平均株価も一時は約1000円高となったからだ。 世界は、リスクオフからの反動で、一気にリスクオンに傾いたことが背景で、この動きは広範かつ持続しそうにみえる』、興味深そうだ。
・『「日経平均のさらなる下落」を予想するのは無謀? 原油価格の指標であるWTI先物価格は一気に15ドル前後も下落し、1バレル=105ドル前後に。金もプラチナも小麦もすべての資源、農産物先物が一時大幅下落した。 きっかけは、UAE(アラブ首長国連邦)が大幅増産を行うなどと表明したことだ。おそらく、これまで一気に買いポジションを膨らませていた投機筋が投げ売ったということだろう。 リスクオフの流れに乗った投資筋がすべての市場で手仕舞ったということが理由で、株式もその一環にすぎない。さらに株式に限っては、個人投資家がアメリカの株式市場でも下げ局面で買い続けていた流れが、ここで加速したということもあるだろう。 市場は「ウクライナの最悪期はこれからだが、株式市場の最悪期は去った。今度こそ、市場は停戦後を先取りしている」とはやしそうだ。 そんなタイミングで「まだまだ下がる」、しかも「日経平均2万円割れ」など、誰も想定していない可能性に言及するなんて、阿呆以外の何者でもない。しかし私は、下落の継続・拡大を予想する。競馬予想が外れすぎて、外れ慣れているから、外れても気にしないから、ではない。「下がる確実な理由」があるのだ。 それは、株価が下げてきたのは2つの理由があったにもかかわらず、人々も市場も1つの要因で頭がいっぱいになってしまい、もう1つの理由を忘れてしまっているからだ。) この2つの理由とは、前者はウクライナであり、後者はアメリカの利上げである。すなわち、後者のアメリカの利上げによる下落の部分は忘れられているが、実際に利上げが始まり、またそのペースが以前危惧されたように速いペースになれば、株価はもう一度暴落する。そして、実際に利上げは早いペースで行われ、なおかつ、それでもインフレは止まらない、と私は予測するからだ』、「後者のアメリカの利上げによる下落の部分は忘れられているが、実際に利上げが始まり、またそのペースが以前危惧されたように速いペースになれば、株価はもう一度暴落する」、不都合なことはすぐ「忘れられる」ようだ。
・『株価が一直線に下落しなかった3つの理由 みな忘れているが、株式市場はロシアのウクライナ侵攻が始まる前から下落基調が始まっていた。投資家たちは、アメリカの中央銀行であるFED(連邦準備制度)の一挙手一投足に振り回され、そして最後には利上げがついに始まることにおびえていた。そして、その利上げ時期が大幅に前倒されることが見込まれるようになり、実行が目の前に迫ってきたところだったのだ。 そこへ、ロシアがウクライナ侵攻した。もちろん、株式市場はウクライナリスクで暴落した。しかし意外なことに、直ちに切り返すなど乱高下が続いた。一直線の下落にならなかったのだ。なぜか? その理由は3つあった。 第1の理由は、投資家たちがロシアの意思を理解できていなかったからだ。つまり、その結果、侵攻は脅しにすぎないと思っていたし、侵攻が始まってからも、すぐにロシアが落としどころへ向けて動くと思っていた。 投資家たちは「ロシアが戦争を始めても得などない。だから侵攻は合理的でない。したがって脅しにすぎない」――。そう考えたからだ。 この誤りの背後にあるのは、投資家たちの思考の限界だ。自分の枠組み、思考回路でしか、物事を見ることができない。したがって、つねに起こる誤りのパターンといえる。 むしろ、素人には普通のこと(私をはじめ多くの素人の見方は、ロシアは帝国、プーチンは皇帝だから、何が何でもウクライナに侵攻するというもの)が彼らには見えないわけだ。) 実際の投資家の反応を振り返ってみると、以下のようであった。 「ロシアがウクライナに侵攻する」とアメリカの当局が警告したにもかかわらず、多くの専門家、評論家たちは「合理的でない」として脅しにすぎない、あるいはアメリカが不安をあおっている、と斜に構え、侵攻リスクを株価にほとんど織り込まなかった。しかし現実には、侵攻は起きた。 次に、侵攻が始まると「侵攻はすぐに終わる」「キエフはすぐ陥落する」、あるいは「ロシアも長期化を望まないから、すぐに引いて交渉に入る」などと市場関係者は解説した。株価が大きく下がっても、連続して下がり続けず、ある程度、戻した。市場はすでに収束後を織り込んでいると解説して、この反発上昇を自慢した』、「投資家たちの思考の限界だ。自分の枠組み、思考回路でしか、物事を見ることができない。したがって、つねに起こる誤りのパターンといえる」、その通りだ。
・『「自分たちの願望」を正当化した投資家たち しかし実際には、侵攻は長期化し、戦闘は泥沼化した。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はとことん攻め続ける意思ははっきりしているのは、誰の目にも明らかだった。 だが、投資家たちは違った。アリバイ作りのような停戦交渉が行われるたびに、収束を期待し、株価は戻した。 しかし、毎回、交渉は成果がないどころか、そもそも「交渉する意味があるのか」と誰もが思うような、ウクライナには到底受け入れられない無理な主張をロシアは続けるだけだった。交渉が失敗に終わるたびに、株価は下落した。 このプロセスを振り返ってわかることは、投資家たちは自分たちの願望でしかロシアのウクライナ侵攻を見ていなかった、ということだ。事実ではなく、願望を正当化して、他人にも押し付けようとする。これが投資家たちが誤った理由の第2であり、これもまた、投資家たちの悪いクセ、お決まりのパターンの1つだ。 彼らの願望を市場価格に実現させようとする、その厚かましさは今回とくにひどかった。ウクライナ侵攻で原油価格が暴騰したこと、および世界的な景気減速懸念により、FEDの利上げが遠のく、あるいはペースが緩やかになると期待して、むしろ株式市場にはプラスの面もある、とまで言ってのけたのだ。 プーチン大統領よりも狂っているのは彼らだ。ありえない。願望を押し通すにもほどがあるだろう。 ウクライナ侵攻は金融引き締めが遠のき、株式市場にプラスという解釈は自分勝手なだけではなく、根本的に間違っていることが問題だ。これが、株式市場が反発した第3の理由だが、投資家の致命的な「構造的誤ちパターン」でもある。 つまり、願望を強引に市場に押し付け続けたあまり、それが願望だか事実だか、自分たちでもわからなくなってしまったのだ。確信犯的に相場に願望を吹聴して、素人にそれが事実と信じ込ませていたのが、最後にはその確信犯的なウソに自分たちがだまされるようになってしまったのだ。 ウクライナ危機があっても、中央銀行は金融引き締めを止めない。それどころか、利上げは加速する。なぜなら、誰でもわかるように、というか現実に起きているように、インフレが加速しているからだ』、「アリバイ作りのような停戦交渉が行われるたびに、収束を期待し、株価は戻した・・・交渉が失敗に終わるたびに、株価は下落」、「投資家たちは自分たちの願望でしかロシアのウクライナ侵攻を見ていなかった、ということだ。事実ではなく、願望を正当化して、他人にも押し付けようとする。これが投資家たちが誤った理由の第2であり、これもまた、投資家たちの悪いクセ、お決まりのパターンの1つだ」、「確信犯的に相場に願望を吹聴して、素人にそれが事実と信じ込ませていたのが、最後にはその確信犯的なウソに自分たちがだまされるようになってしまったのだ。 ウクライナ危機があっても、中央銀行は金融引き締めを止めない。それどころか、利上げは加速」、「最後にはその確信犯的なウソに自分たちがだまされるようになってしまった」には思わず微笑んでしまった。
・『オイルショック時よりもインフレは複雑で手ごわい 原油、天然ガスだけでなく、ありとあらゆる資源は高騰し、世界的な物流チェーンが止まるから、ロシア資源とは直接は無関係でも、すべての原材料の入手コストが上がる。物流効率も悪くなるからコストも上がる。 インフレは、資源価格の高騰分は当然反映されて加速するだけでなく、資源と無関係に、すべてのコストが上昇し、コストプッシュインフレは加速するのだ。買いだめも企業ベースでも消費者ベースでも起きるだろう。オイルショックの再来だ。 これは素人の目には明らかである。しかし、それでも専門家たちは抵抗を続ける。「スタグフレーションは起きない」「オイルショックのときは違う」などと言い張る。 その最後の根拠は「あのときはもともと不況で、失業率も高かった。今回は景気がよく、失業率も歴史的最低水準だ。だから、まったく違う。不況にならないから、スタグフレーションにはならない」と素人たちを説得しようとする。 ありえない。不況の深刻さはもちろん、オイルショック時よりは軽いだろう。しかし、根本はインフレーションである。もともと好景気、コロナで人材不足、賃金上昇が加速しているところに、インフレ要因がさらに重なったのだから、オイルショック時よりもインフレはより複雑で手ごわいということだ。 だから、利上げをしてもインフレは収まらない。そして、利上げをすれば景気は悪化する。だから、不況の程度はオイルショック時よりも軽いが、より手ごわい複雑なインフレである、種類の異なるスタグフレーションが起きるだけだ。) さらに大きな問題は、これまで世界中の中央銀行が、歴史的にはありえない大規模な金融緩和を行ってきたことであり、それに世界が慣れてしまっているということだ。だから、金融引き締めに慣れていた1980年とは異なる。 スタグフレーション、ロシアによるウクライナ侵攻は株式市場に大きなダメージを与えるが、それに加え、何よりも金融引き締めショックが異常な金融緩和による壮大なバブル崩壊に与える影響は、金融緩和が史上最大なのだから、崩壊も史上最大級の可能性がある。 そして、この金融引き締めとインフレの長期継続による株価暴落リスクを、市場は忘れている。忘れたふりをしているうちに、本当に忘れてしまっている』、「何よりも金融引き締めショックが異常な金融緩和による壮大なバブル崩壊に与える影響は、金融緩和が史上最大なのだから、崩壊も史上最大級の可能性がある。 そして、この金融引き締めとインフレの長期継続による株価暴落リスクを、市場は忘れている。忘れたふりをしているうちに、本当に忘れてしまっている」、「市場」の健忘症も困ったものだ。
・『3月のFOMCが0.25%の利上げになっても結局は暴落へ まず、3月16日のFOMC(連邦公開市場委員会)の声明文公表で、利上げがウクライナ前の懸念どおり、0.5%の利上げになれば、株価は利上げショックで大暴落となるだろう。 一方、利上げ幅が0.25%にとどまれば、やはり利上げペースは弱まったと願望が実現した(ようにみえる)ことに安堵し、株価は大幅上昇するだろう。しかしそれは、その先の利上げによる暴落を準備する上昇にすぎない。ロシアが侵攻を止めたのちに、利上げペースが加速し、そこで暴落することになるだろう。 そして、ロシアが侵攻を止めても、ロシアが行き詰まって、停戦が実現したとしても、すぐに制裁を解くわけにはいかず、プーチン大統領が消えるまでは続けることになる。実際にはプーチンは簡単には消えないから、制裁は市場の願望からかけ離れて長期化するだろう。 したがって、その先の株価反発の材料もないという事実に、最後は、投資家たちも屈服せざるをえず、株価は低迷を続けることになるだろう。この流れの中で、日経平均は2万円を割ることがあってもまったく不思議ではないのである。(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)』、「ロシアが侵攻を止めたのちに、利上げペースが加速し、そこで暴落することになるだろう。 そして、ロシアが侵攻を止めても、ロシアが行き詰まって、停戦が実現したとしても、すぐに制裁を解くわけにはいかず、プーチン大統領が消えるまでは続けることになる。実際にはプーチンは簡単には消えないから、制裁は市場の願望からかけ離れて長期化するだろう。 したがって、その先の株価反発の材料もないという事実に、最後は、投資家たちも屈服せざるをえず、株価は低迷を続けることになるだろう。この流れの中で、日経平均は2万円を割ることがあってもまったく不思議ではない」、説得力ある見方だ。
第三に、3月14日付け東洋経済オンライン「混乱の金融市場「想定すべき次のシナリオ」の中身 経済アナリストが語るウクライナ危機の影響」を紹介しよう。
・『ウクライナ危機をきっかけに市場が混乱している。原油価格の指標であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート、先物)は一時、約14年ぶりの高値圏となる1バレル130ドル超を記録。穀物や鉱物も上がるなど、ウクライナ危機が世界の資源価格高騰を招いている。原料高が景気を冷やすとの見方から、日経平均株価は3月8日に2万5000円を割り込んだ。 3月15~16日にはFOMC(アメリカ連邦公開市場委員会)でFRB(アメリカ連邦準備制度理事会)が0.25%の利上げに踏み切る見通し。金利の上昇は株価への逆風とされ、さらなる株価の下げに市場は身構える。 そこで『週刊東洋経済』3月14日発売号は「株の崩落 次の一手」を特集。『会社四季報』2022年2集春号(3月18日発売予定)の業績予想を先取りしたランキングや米国株ランキング、アナリスト・ストラテジストらによる日米株価予想、急落局面に耐える投資術、波乱相場の売り時・買い時の見分け方といった銘柄選びと投資法を徹底解説した。 では、今後の市場の行方はどうなるか。世界のマネーの動向に詳しい、経済アナリストの豊島逸夫氏に市場シナリオについて聞いた』、興味深そうだ。
・『ロシア国債のデフォルトリスクを注視 最悪のリスクシナリオについて検討が必要な状況になりつつある。 3月4日午前、ロシア軍がウクライナの原子力発電所を砲撃したという報道が飛び込んできた。深夜のアメリカ・ニューヨークの金融市場も一時騒然となった。 砲撃報道の前日、アメリカの格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスがロシア国債を格下げしていた。投機的水準への大幅な格下げで、デフォルト(債務不履行)の懸念が高まった直後だった。 ロシア国債のデフォルトのリスクを注視しなければならない。ロシアはブリンクマンシップ(瀬戸際戦術)を取っている。アメリカなど西側諸国が、ロシア国債のデフォルトをあえて放置するような姿勢を見せれば、ロシアは報復として核を一段とちらつかせるのではないか。 今後、ウクライナの国内核施設への砲撃や占拠を拡大すれば、NATO(北大西洋条約機構)との緊張感が高まり、新冷戦も本格化する。 アメリカやNATOが本格的にレーダーや核兵器の照準をロシアに合わせるようなことが話し合われ、核戦争の脅威が現実味を帯びるような事態になれば、金融市場も大きく揺らぎ、株価は大暴落する。 もう1つの心配は中国の出方だ。今のところ中国は、どっちつかずの状態にある。 私は中国の銀行のアドバイザリーを7年間務めた経験による人脈で、日々中国から情報を入手しているが、彼らも読み切れていない。だが、全国人民代表大会(全人代)終了後の最新情報では、さまざまな分野で中国とロシアの協調路線をにじませていくようだ。 中国とロシアは、アメリカの通貨覇権に対する挑戦をあからさまに示している。ロシアは2014年のクリミア危機以降、外貨準備を増やしてきた。 金の保有量はすでに2000トン以上になったので、昨年からは中国の人民元を増やし、中国に歩み寄っている。中国は、苦渋の決断ながら、ロシアと組んでアメリカを敵にする、ということになるとみている』、「西側諸国が、ロシア国債のデフォルトをあえて放置するような姿勢を見せれば、ロシアは報復として核を一段とちらつかせるのではないか」、「放置」せざるを得ないのに、「核を一段とちらつかせる」、とは物騒だ。
・『新冷戦時代に突入なら日本への投資は新興国レベルに こうした最悪のリスクシナリオが進んだとき、日本はどうなるか。アジアの決済通貨は人民元への傾斜を強めるだろう。 日本円はローカルな通貨となり、円安が一段と進むことになる。通貨の力は、結局は国力によって決まる。これまで日本はアメリカの後ろ盾があったので世界の投資家から資金を集めることができた。 もし新冷戦時代に突入して、日本がスルーされ頭越しに事態が進行すれば、日本への投資は新興国への投資と変わらないぐらいのリスクになるだろう。 ここまでの話は、可能性は低いが、起こらないとは言えないテールリスクとして考えていること。メインシナリオとして考えているのは、もう少しマイルドなものだ。 まず、戦争というリスクのピークは数週間以内に来るのではないか。 地政学的リスクによる資産価格の変動は一時的で長続きはしないというのが、市場関係者が一般的な原則として理解していること。テールリスクのようなことが現実にならなければ、戦争が長期化しても、金融市場へのインパクトは逓減し、さらに陳腐化を速めよう。 ロシアへは確かに強い経済制裁がなされている。ロシアの中央銀行とアメリカの金融機関とのドル取引禁止という措置に踏み込んだのは驚きだった。しかし、ロシア経済は韓国と同程度の規模。世界のGDP(国内総生産)に占める比率は約2%にとどまる。 ロシア制裁がリーマンショックのようなシステミックリスク拡散につながるとは考えにくい。もちろん欧州経済、とくにドイツへの影響は大きいだろうが、アメリカ経済への打撃はさほど大きくないと考えられる』、「もし新冷戦時代に突入して、日本がスルーされ頭越しに事態が進行すれば、日本への投資は新興国への投資と変わらないぐらいのリスクになるだろう」、寂しいことだ。
・『次の最大の関心事はFRB議長がどう動くか そうなるとマーケットの次の最大の関心事は、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長がどう動くか、だ。3月15~16日のFOMC(米連邦公開市場委員会)後、利上げ回数は徐々に明らかになるだろう。 市場の関心は、FRBの資産圧縮の開始時期、縮小される保有債券の種類と量に移っていく。9兆ドル近くに膨らんだFRBの資産は、夏ぐらいから年末にかけて1兆~1.5兆ドルぐらい減らすとみている。 FRBの基本姿勢は、MBS(住宅ローン担保証券)をまず減らし、国債中心のポートフォリオにすること。短期債は再投資せず自然減で減らせる。しかし、長期債売却は債券市場への影響も強く、市場の混乱を起こさずに資産圧縮を進めることは容易ではない。パウエル議長の真価が問われる。 ウクライナ戦争がエスカレートする中で、アメリカの金融政策は超緩和から引き締めへ歴史的な転換をする。今週は、後世の歴史に残る1ページになりそうだ』、「長期債売却は債券市場への影響も強く、市場の混乱を起こさずに資産圧縮を進めることは容易ではない」、とはいえ、「債券市場」は元来、長期的な見方で「資産圧縮」の影響を冷静に織り込んで形成されるので、「混乱」がそれほどひどくならない可能性もあるのではなかろうか。
タグ:「円高論」を「「根性論的勘違い」ではないかと思うし、自殺行為だ」、とは手厳しい。 山崎 元氏による「インフレ対処でなぜ利上げ・円高を望む?「根性論的勘違い」の自殺行為だ」 ダイヤモンド・オンライン 「長期債売却は債券市場への影響も強く、市場の混乱を起こさずに資産圧縮を進めることは容易ではない」、とはいえ、「債券市場」は元来、長期的な見方で「資産圧縮」の影響を冷静に織り込んで形成されるので、「混乱」がそれほどひどくならない可能性もあるのではなかろうか。 「もし新冷戦時代に突入して、日本がスルーされ頭越しに事態が進行すれば、日本への投資は新興国への投資と変わらないぐらいのリスクになるだろう」、寂しいことだ。 「西側諸国が、ロシア国債のデフォルトをあえて放置するような姿勢を見せれば、ロシアは報復として核を一段とちらつかせるのではないか」、「放置」せざるを得ないのに、「核を一段とちらつかせる」、とは物騒だ。 東洋経済オンライン「混乱の金融市場「想定すべき次のシナリオ」の中身 経済アナリストが語るウクライナ危機の影響」 「ロシアが侵攻を止めたのちに、利上げペースが加速し、そこで暴落することになるだろう。 そして、ロシアが侵攻を止めても、ロシアが行き詰まって、停戦が実現したとしても、すぐに制裁を解くわけにはいかず、プーチン大統領が消えるまでは続けることになる。実際にはプーチンは簡単には消えないから、制裁は市場の願望からかけ離れて長期化するだろう。 したがって、その先の株価反発の材料もないという事実に、最後は、投資家たちも屈服せざるをえず、株価は低迷を続けることになるだろう。この流れの中で、日経平均は2万円を割ることがあって 「何よりも金融引き締めショックが異常な金融緩和による壮大なバブル崩壊に与える影響は、金融緩和が史上最大なのだから、崩壊も史上最大級の可能性がある。 そして、この金融引き締めとインフレの長期継続による株価暴落リスクを、市場は忘れている。忘れたふりをしているうちに、本当に忘れてしまっている」、「市場」の健忘症も困ったものだ。 「アリバイ作りのような停戦交渉が行われるたびに、収束を期待し、株価は戻した・・・交渉が失敗に終わるたびに、株価は下落」、「投資家たちは自分たちの願望でしかロシアのウクライナ侵攻を見ていなかった、ということだ。事実ではなく、願望を正当化して、他人にも押し付けようとする。これが投資家たちが誤った理由の第2であり、これもまた、投資家たちの悪いクセ、お決まりのパターンの1つだ」、「確信犯的に相場に願望を吹聴して、素人にそれが事実と信じ込ませていたのが、最後にはその確信犯的なウソに自分たちがだまされるようになってし 「投資家たちの思考の限界だ。自分の枠組み、思考回路でしか、物事を見ることができない。したがって、つねに起こる誤りのパターンといえる」、その通りだ。 「後者のアメリカの利上げによる下落の部分は忘れられているが、実際に利上げが始まり、またそのペースが以前危惧されたように速いペースになれば、株価はもう一度暴落する」、不都合なことはすぐ「忘れられる」ようだ。 小幡 績氏による「「日経平均2万円割れの懸念」が無謀ではない理由 株価下落の理由は「ウクライナ」だけではない」 東洋経済オンライン 「困っている国民を広く助ける「優しさ」」が必要であることは論ずまでもないが、「円高」のコスト引き下げ効果を無視すべきではない。「円高に耐えて構造改革せよという根性論的「厳しさ」」、は単なる言いがかりに近い。 「金融引き締め」でコスト・プッシュ要因が緩和される筈だ。「財政再建」までする必要はない。 「投資家としての「楽しみ」は、資産価格の下落やFRBのバランシート調整に伴う債券市場の混乱で、大型の倒産や金融機関の経営不安などの「ショック」が起こった場合に訪れる」、確かに「ショック」が起きれば、「金融政策の緩和方向への転換」、で「利益が生じる可能性が大きいこと」、なるほど。 「コストプッシュ・インフレ」で、「国全体としては貧乏になりながらのインフレだ」、その通りだ。 「企業はコストの上昇を価格に転嫁できておらず、利益の圧迫を受けた状態にある」、その通りだ。 (その14)(インフレ対処でなぜ利上げ・円高を望む?「根性論的勘違い」の自殺行為だ、「日経平均2万円割れの懸念」が無謀ではない理由 株価下落の理由は「ウクライナ」だけではない、混乱の金融市場「想定すべき次のシナリオ」の中身 経済アナリストが語るウクライナ危機の影響) 株式・為替相場