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働き方改革(その37)(「竹中平蔵氏のせいなのか」ボーナスも退職金もダダ下がり…正社員の待遇悪化"真の黒幕" 良くも悪くもトヨタ自動車の影響大、ジョブ型雇用になれば 社員は「3つの階級」に分断される、日本企業の給与が安い原因は 昔ながらの日本型雇用にあり) [経済政策]

働き方改革については、2月5日に取上げた。今日は、(その37)(「竹中平蔵氏のせいなのか」ボーナスも退職金もダダ下がり…正社員の待遇悪化"真の黒幕" 良くも悪くもトヨタ自動車の影響大、ジョブ型雇用になれば 社員は「3つの階級」に分断される、日本企業の給与が安い原因は 昔ながらの日本型雇用にあり)である。

先ずは、2月16日付けPRESIDENT Onlineが掲載した人事ジャーナリストの溝上 憲文氏による「「竹中平蔵氏のせいなのか」ボーナスも退職金もダダ下がり…正社員の待遇悪化"真の黒幕" 良くも悪くもトヨタ自動車の影響大」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/54703
・『正社員の待遇が悪化の一途だ。なぜ“特権”が消えつつあるのか。人事ジャーナリストの溝上憲文さんは「元凶はバブル経済崩壊後の経済不況で多くの経営者が社員を“人材(財)”ではなく“コスト”と見なしたこと。会社が生き残るためになりふり構わず社員や人件費の削減に踏みきった」という――』、興味深そうだ。
・『正社員の既得権を剝ぎ取ったのは竹中平蔵氏なのか  正社員の待遇が悪化の一途をたどっている。 前回(※)の記事では正社員の特権ともいえる扶養手当、住宅手当などの諸手当がなくなりつつあることに触れた。 ※「正社員の特権がどんどん消えていく」扶養手当、住宅手当…諸手当が“全廃止”される日  正社員の特権はそれだけではない。過去にはさまざまな特権があったが、今では風前のともしびの状態にある。 ところで、そうした正社員の既得権を剝ぎ取ったのは元経済財政政策担当大臣の竹中平蔵氏(慶應義塾大学名誉教授)であるといった意見がネット上で飛び交っている。筆者の前出記事に対してもそのようなコメントがあった。 確かに竹中氏は「日本の正社員は世界一守られている」という主旨の発言をしている。正社員を既得権益者と指弾し、解雇規制緩和論者としても知られるが、実際のところはどうなのか。 そもそも正社員の特権とは何か。非正社員にはなく、正社員の特権ともいえるのは諸手当以外にも次のようなものがある。 ① 終身雇用(60歳定年までの雇用保障) ② 年功的賃金(年齢給、定期昇給等) ③ ボーナス(給与の5カ月分相当) ④ 交際費 ⑤ 退職金 正社員になればこうした待遇を受けられることで誰もが後顧の憂いなく仕事に邁進することができた時代もあった。ところが時代の流れととともに徐々に剝がれ落ちていった。 なぜそうなってしまったのか、そしていつから始まり、その源流は誰(どこ)にあるのかを探ってみたい』、幅広い角度から探る意味は大きい。
・『終身雇用・年功賃金は消え、賞与も退職金もダダ下がり…減給の30年史  1980年代後半からサラリーマンの現場を取材してきたが、①終身雇用という仕組みが揺らぎ始めたのはバブル経済崩壊以降だ。とくに現在のリストラの常套手段である「希望退職者募集」が本格的に始まったのもこの頃だ。経済の停滞や経営環境の深刻化に伴い、企業は固定費の削減を収益改善策の緊急避難的な手段としてリストラを実行する。 その源流は1993年のパイオニアの解雇だ。対象となったのは35人の中高年管理職。当時の松本誠也社長直々に社員を社長室に呼んで個別に面談し、涙ながらに会社の苦境を伝え、引導を渡すというやり方を取った。今から見れば牧歌的な雰囲気すら漂うが、当時は事実上の指名解雇であるとしてマスコミの指弾を浴びた。 その結果、以降は労務に長けた人事担当者が辞めてほしい社員と水面下で接触し、退職勧奨して辞めさせる手法が主流になる。 とはいえ、こうしたやり方では数百人、1000人単位の大量の人員削減は難しい。そこで登場したのが退職金の割増しを条件に全社的にオープンに「希望退職者」を募集する方法だった。 ただし、それは表向きで、実際は退職勧奨によって辞めてほしい社員に応募を勧め、残ってほしい社員を慰留するものであり、パイオニア以降の個別の退職勧奨を隠蔽いんぺいする手法に変わりはなかった。 そして1990年代後半から2000年初頭にかけて大量の希望退職者募集によるリストラが吹き荒れる。それを後押ししたのが株主優先主義の風潮である。企業のROE(株主資本利益率)重視の傾向が強まり、リストラすれば市場が評価し、株価が上がるという現象が発生し、経営者にリストラの免罪符を与えた。 大手化学メーカーの人事担当者は経営内部の雰囲気についてこう語っていた。 「自社の株価や株主対策をどうするかということに役員たちは腐心している。財務体質を強化しないと格付けが下がるとか、きちんとした姿勢を見せないと市場は評価しないという点を社員に強調し、説得材料にしている。たとえば特別損失で何千人削減すれば、どれだけ削減効果が見込めるかといった計算をするようになっている」 そうした風潮に対して90年代後半にトヨタ自動車の奥田碩会長が「従業員の雇用を守れない経営者は腹を切れ」と発言。経営者の姿勢に釘を刺したが、リストラが恒常化していく。この頃から終身雇用の崩壊が叫ばれるようになった。 では、②年功的賃金はどうやって崩れたのか』、「奥田碩」氏の発言も「リストラが恒常化」していく流れを止めることはできなかったようだ。
・『サラリーマン正社員の待遇は良くも悪くも“トヨタ自動車の影響大”  給与が上がらなくなった起点は1997年だ。実質賃金は1997年をピークに長期低落傾向にあり、97年を100とした個別賃金指数は2020年も95にとどまっている。当時、何が起きたのか。リストラと並んで実施されたのはあの手この手の賃金抑制策である。そのターゲットとなったのが年功的賃金だった。 短期的には賃金カットが相次ぎ、当時“賃金リストラ”と呼ばれた。そして中・長期の方策として打ち出されたのが年齢給や定期昇給など年功賃金に代わる成果主義賃金や年俸制だった。そうした動きに拍車をかける元凶となったのが、くしくも前出のトヨタ自動車会長の奥田碩氏だった。トヨタは2002年3月期決算の連結決算で過去最高の経常利益1兆円だったが、同社の春闘での賃上げ回答は「ベアゼロ」だった。 当時、日本経団連会長だった奥田氏は賃上げについて「高コスト体質の是正を図るうえで、ベアはなくてもよい。業績がよければ一時金で報いればよい」との見解を発表している。ベア=ベースアップとは、定期昇給以外の賃金の上乗せであり、なくなると過去の先輩の給与より実質給与は目減りする。定昇がない企業は据え置きとなる。 「ベアはなくてもよい」との発言に対し、当時、大手電機メーカーの人事担当執行役員は「春闘の賃上げのリーダーであるトヨタが史上最高益を出しながら、ベアゼロに踏み切ったことで、無理して賃上げする必要もないという安心感を他の企業にも与えた」と語っていた。 奥田発言はその後も経団連の方針として受け継がれていくことになる。 そして中期的な賃金抑制策である成果主義賃金は、従来の年齢給や、社員の潜在的能力に付与する「能力給」を剝ぎ取っていく。仕事の成果で支払う成果給と単に年齢の積み重ねによって支払う年齢給は矛盾するからである。同時にこの頃から成果とは無縁の扶養手当や住宅手当などの諸手当を廃止する企業が出始めた。 また、日産自動車の再建役としてフランスから”コストカッター”の異名を持つカルロス・ゴーンCEOが来日。学歴重視の年功序列型賃金制度の典型的企業だった日産に完全年俸制を導入したことで話題を呼び、他の企業の給与制度改革を後押しした。 さらにキヤノンは2001年に現在のジョブ型の原型ともいえる賃金制度を導入し、諸手当だけではなく、定期昇給制度廃止も打ち出した。他の企業で、定昇抑制や廃止の動きも加速した。 ただし、成果主義ブームといっても、何をもって成果するのかという定義や評価基準の不明確さが露呈。評価する上司のやり方の稚拙さもあいまって現場が混乱し、相次いで成果主義の修正が発生し、当時は“成果主義”の失敗と呼ばれた。それでも「能力給」は残ったが、一度廃止した年齢給や定昇が復活することは少なかった』、「奥田」氏は「リストラ」では労働者寄りの発言をしたが、「ベア」では正反対の立場を取った。「春闘の賃上げのリーダーであるトヨタが史上最高益を出しながら、ベアゼロに踏み切ったことで、無理して賃上げする必要もないという安心感を他の企業にも与えた」。
・『住宅ローンや教育ローンのボーナス払いが許されなくなった  実はこの頃に③のボーナスの考え方も大きく変わった。以前はボーナスといえば給与の5カ月分が相場であり、サラリーマンの年収は月給の17カ月分と言われた。外国人がボーナスを「13カ月目の給与」と呼ぶほど固定されていた。ところが、前出の奥田氏の「業績がよければ一時金で報いればよい」という発言に象徴されるように、ボーナスが部門業績や会社業績に左右される不安定な存在になっていく。 その典型が鉄鋼業界の労使で締結した会社の業績でボーナスが変動する「業績連動型賞与」だった。電機業界など他の業界にも広まるようになり、多くのサラリーマンにとってはボーナスを当てにした住宅ローンや教育ローンを組むことが許されなくなった。 実はこうした給与・ボーナス改革は目先の業績不振を回避するだけではなく、すでに今日に至る社員の高齢化も視野に入っていた。2002年から始まった「いざなぎ超え」と呼ばれる景気回復期に賃金制度を改革した大手エンジニアリング会社の人事部長はこう語っていた。 「社員は高齢化していくので、年功賃金制度の下では確実に人件費が増えていく。まずは年功賃金をなくし、ボーナスも業績に連動した形にすれば、将来的に人件費を抑えることができる。社員や労働組合には言えないが、賃金制度設計段階で5年後に1割、10年後に2割の人件費削減効果があることを経営トップに報告し、了承を得たうえで導入している」 賃金制度改革によって人件費が削られていけば、当然、給与が上がるはずもない。また給与以前に④の交際費・接待費は真っ先に削られ、現在でもかつてのように飲み食いに使える交際費は復活していない。 食品会社の人事部長は昔の交際費についてこう振り返る。 「かつての交際費は目的外利用の社内消費が相当の比率を占めていた。部下をちょっと高い店に飲みに連れて行き、翌朝、社員から『部長、昨日はありがとうございました』とお礼を言われたものだが、部長自身も会社のカネでただ酒を飲んでいた。今は交際費が減って、部下との打ち上げも割り勘に上乗せする程度で管理職としてのうま味も威厳もなくなった」 交際費を自由に使えることがなくなって久しく、今では少ない交際費をどう使えばよいのかおカネの使い方も知らない管理職もいるという』、「ボーナスが部門業績や会社業績に左右される不安定な存在になっていく」、これにより「住宅ローンや教育ローンのボーナス払い」が出来なくなった変化も大きい。
・『竹中平蔵氏は非正規社員を増やす手助けをしたのか  そして今、正社員の最後の砦とされる退職金の廃止も現実味を帯びている。そもそも退職金制度は社員を長期に囲い込む目的でつくられたもの。勤続年数が長い人ほど金額も増える仕組みであり、終身雇用と一対をなしていた。 しかし、その終身雇用が揺らぎ、会社も必ずしも定年までいてもらいたいと思わなくなれば、制度の根拠を失う。2000年前後から、ついに⑤の退職金の減額に踏み切る企業が続出した。 厚生労働省の定年退職時退職金の調査(就労条件総合調査)によると、2003年の退職金は2499万円(大学卒)だったが、08年に2280万円、12年に1911万円と年々下がり続けている。 大手広告業の人事部長はこう語る。 「2008年のリーマンショック後の役員会議で退職金制度の廃止が議論になったことがある。一時は廃止して、今まで会社が積み立てた分を毎月の給与に上乗せしたほうが社員も喜ぶのではないかという意見が優勢になった。しかし顧問弁護士がそんなことをして社員から訴えられたら責任は持てないと反対され、結果的に退職金を減額することになった。しかし今でも社内では廃止論がくすぶっている」 正社員の特権がなぜ消えつつあるのか。 その元凶はマクロ的にはバブル経済崩壊後の経済不況で多くの経営者が社員を「人材(財)」ではなく「コスト」と見なすようになったことだ。 そして会社が生き残るために社員や人件費の削減に踏み込み、正社員の待遇を少しずつ削っていったのである。 ちなみに冒頭の竹中氏は小泉純一郎政権下の閣僚の一人として製造業の派遣労働を認める規制緩和も担ったとされる。 正社員の特権を剝奪するというより、非正規社員を増やす手助けをしたといえるかもしれないが、実は非正規を増大させた元凶は日経連(現経団連)にある。 日経連が1995年に提唱した「新時代の『日本的経営』」で非正規社員の活用を提唱して以来、正社員を人件費の安い非正規に置き換える動きが急速に拡大した。 小泉政権もそれを援護すべく労働者派遣法の対象業務を次々と拡大し、1999年には原則自由化に踏み切り、03年には製造業派遣を解禁した経緯がある。 竹中氏に責任があるとすれば、正社員の特権の剝奪ではなく、非正規社員の増大とそれに伴う格差の発生ということになるだろう』、「非正規社員の増大」をもたらした「規制緩和」の罪は深い。

次に、2月17日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した弁護士の植田 統氏による「ジョブ型雇用になれば、社員は「3つの階級」に分断される」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/295911
・『日本の昔ながらの雇用制度は崩壊し、アメリカ型のジョブ型雇用がついに日本でも始まる。弁護士で国際経営コンサルタントの植田統氏の新著『2040年「仕事とキャリア」年表』からの抜粋で、日本でも今後浸透していくであろうジョブ型雇用とはどういったシステムかを解説していく。今回は、アメリカで採用されているジョブ型雇用の実際の仕組みについて』、興味深そうだ。
・『ついに日本でも始まるアメリカの「ジョブ型雇用」とは?  今後の日本を占ううえで、大きな指針となるのが、アメリカの「ジョブ型雇用」です。アメリカでは、日本のように新卒一括採用はありません。通年で、ポストに空きがあれば、一般公募か社内公募によって労働者を採用します。 ジョブ型雇用で重視されるのは、雇用主が請け負ってほしいジョブに見合うだけの「経験、スキル」です。 企業から不要と見なされれば容赦なく解雇されるため、労働者は自分の力でキャリアを形成することが求められます。「転職は当たり前」の世界です。 能力がある人は、転職を繰り返して、給与やスキルをどんどん上げていきます。 「富める者」と「富めない者」の差が明確になる雇用制度、それがジョブ型雇用と言えるかもしれません。) では、アメリカのジョブ型雇用とはどういう制度であるのか、そして、それを支える社会の仕組みはどのようになっているのかを見ていきたいと思います。 今後の「仕事とキャリア」を考えるうえで、大いに参考になるに違いありません』、「「富める者」と「富めない者」の差が明確になる雇用制度」、格差がますます大きくなるとは困ったことだ。
・『ジョブ型雇用では社員は「3つの階級」に分けられる  アメリカの「ジョブ型雇用」の説明をしていく前に、まず、アメリカの雇用がどのような構造になっているかを見ていきましょう。 アメリカの雇用は、ピラミッド型の3層構造でできています。 一番上は、上級職員です。経営、企画、管理等の職につき、二番目に位置する中級職員に命令を下す人たちです。アメリカでは、上級職員は「エグゼンプト」と呼ばれています。 彼らが行なう仕事は、時間を掛ければ成果が出るというものではないので、労働時間で管理されることはなく、残業代も出ません。彼らの給与は月給制や年俸制で、雇用契約を結ぶ時に、上司と上級職員が交渉して決まることになります。 アメリカでは、事務系ならMBA、技術系なら工学修士の肩書を持った人が応募資格を持つ職位となっています。 この上級職員レベルの人達は、将来の幹部候補生たちです。上昇志向が強く、大変よく働きます。 彼らは、数年おきに多様な職務を経験しながら昇進していきます。財務部門の幹部候補生なら、本社で会計業務をやり、次は税務を学んで、最後に海外法人のCFO(最高財務責任者)もやって、本社に戻ってきてマネジャーやダイレクターのレベルに昇進していくというイメージです。) ある程度分野は限られていますが、後で述べる中級職員や現場労働者のように、会計業務の入力作業だけとかのジョブに縛りつけられているものではありません。いろいろな部署を経験するのですから、ジェネラリストに近いところがあります。 上級職員は、会社から高いパフォーマンスが求められます。彼らはその要求を満たすために昼夜を問わず必死で働き、うまく行かなければ、あるいは、自分の思うように出世できなければ、サッサと転職していくというイメージです。 私もアメリカのコンサルティング会社に勤めていましたが、同僚のアメリカ人は、深夜まで必死に働いていました。早くマネジャーになりたい、早くパートナー(役員)になりたいという強い願望を持っていました。しかし、いくら働いても、エグゼンプトですから、残業代は出ません。 上級職員は、自らの創意工夫で仕事を進めていきますので、会社に対する貢献度に大きな差が出てきます。査定においても、大きな差がついてきます』、「日本の社員」は入社時点では、皆が建前上平等だが、どのような職務につくのかは会社任せ、何が期待されているかも不明確である。 「残業代」は出ても、申告は自主規制の枠内に納めるよう期待されている。
・『中級職員、ブルーカラーは査定も少なく仕事も定型的  二番目が、中級職員です。アメリカでは、「ノンエグゼンプト」と言われており、事務職員や中級技術者等の実務的な職務を行なう人々を指します。 彼らは、3層目の現場労働者とは違い、肉体労働をすることはないのですが、上級職員から命じられた定型的な職務をこなします。給与は残業代込の月給制が多く、命じられた仕事を済ませて定時に退社するのが普通です。 決まりきった仕事を黙々とこなしているので、査定で大きな差をつけられることはありません。 学歴的には、かつては2年制カレッジや専門学校の卒業生が多かったのですが、近時では4年制大学卒業生が増えてきています。 三番目がブルーカラー労働者です。彼らは、時間制で働き、給与は、その担当するジョブによって決まっている日給や週給をもらいます。アメリカ映画を見ていると、工場労働者がペイデイと言われる給与が支払われる日を楽しみにしているシーンが出てきますが、それがまさにこのことです。 義務教育卒、高校卒の者が多く、中級職員への昇進のチャンスは限られています。時間制で働いていますので、残業をすれば残業代が時間単位で支払われます。しかし、中級職員同様、査定で大きな差をつけられることはありません』、「中級職員、ブルーカラー」は「日本」より楽そうだ。
・『中級職員が同じ社内で上級職員に上がるのは難しい  アメリカでは、こうした3層構造がハッキリとあるお陰で、各レベルの職務がかなりの程度標準化しています。 たとえば、製薬会社に勤める財務専門の上級職員は、自動車や菓子を製造する会社の財務ポストに転職していけます。中級職員であっても同じで、他社の中級職員の同じようなポストに転職していくことは容易です。 しかし、中級職員が同じ会社の中で上級職員に上がるのは容易ではありません。 私の経験してきたことを振り返ってみると、欧米の企業の人とビジネスをしていると、中級職員の中で夜間MBAコースに通っているという人、大学を出た後に中級職員として2、3年勤務した後に退職して大学院に通い直す人に出くわすことがありました。これは職位の高いポジションを手に入れるために、上級職員へのパスポートである学歴を手に入れるためのものでした。 こうしたピラミッド型の3層構造が、雇用の基本形であり、欧米では、今もそれが残っています。日本のように、上級職員と中級職員の垣根が消えてしまった世界とは違っています』、「日本」で「上級職員と中級職員の垣根が消えてしまった」ように見え、全社員が平等との幻想があるが、実際にはエリートと非エリートの格差は大きいのが実情である。欧米のように、初めから「上級職員」と「中級職員」、「現場労働者」を明確に分け、役割も明確化していく方がスッキリすると思う。無論、現場発の改善などがやり難くなるというデメリットもあるが、それは工夫次第で乗り越えることも可能だ。

第三に、この続きを、3月10日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した弁護士の植田 統氏による「日本企業の給与が安い原因は、昔ながらの日本型雇用にあり」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/298246
・『日本の昔ながらの雇用制度は崩壊し、アメリカ型のジョブ型雇用がついに日本でも始まる。弁護士で国際経営コンサルタントの植田統氏の新著『2040年「仕事とキャリア」年表』からの抜粋で、日本でも今後浸透していくであろうジョブ型雇用について解説していく。今回は、欧米とは異なる日本企業のメンバーシップ型雇用が日本人の給与をいかに安く抑えているか、その理由について』、興味深そうだ。
・『専門性が育たないような人事を行う日本企業  メンバーシップ型雇用とは、企業の「メンバー」となりうる人物を雇い、一旦「メンバー」の資格を得た人を大事にするシステムです。欧米が「はじめに職務、ジョブありき」なら、日本は「はじめに人ありき」の仕組みであるということができます。 ですから、日本企業の採用は欧米のような欠員補充のための専門スキルを持った人の中途採用がメインではありません。企業における採用は、「メンバー」として迎え入れるにふさわしい地頭の良さと潜在能力の高さを持った新卒学生を中心としています。 彼らは特定のスキルを持っているわけではないので、OJTで時間をかけて育てていく必要があります。4月に一括で採用し、同期入社全員を一括で研修し、企業のメンバーとしてイロハをたたきこみます。なかには6ヵ月とか1年を研修に割いている企業もあります。 さらに、入社してからは、定期人事異動があり、様々な職務を経験し、ジェネラリストとして育てられていきます。専門性が育たないように人事が行なわれます。 これが、○○会社の○○部長に、「あなたは何ができるのですか」と転職エージェントが聞くと、「部長ならできるのですが」という笑い話が生まれる原因です』、「定期人事異動があり、様々な職務を経験し、ジェネラリストとして育てられていきます。専門性が育たないように人事が行なわれます」、無論、例外的に専門性をそだてるところもある。
・『職務の成果ではなくメンバーとしての協調性で評価  こうした人事慣行が、オフィス・レイアウト、給与や人事評価に反映されています。未経験の職務に配置される人は、個室やコンパートメントに入れられてしまうと、何もわからず何もできない状態に陥ってしまうので、オフィスのレイアウトは大部屋形式となります。 給与についても、職務による給与を与えることはできません。どんなに優秀な人でも、人事異動があった直後はずぶの素人で仕事がうまくできないのですから、職務の成果で評価することはできないのです。 会社内での経験値が重視され、「メンバー」として経験年数が同じ同期入社社員には、基本同じような給与が支払われます。昇進、昇給も年次とともに徐々に上がっていくということになります。 それでも、数年すると同期の間でも人事評価で差がついていくことになりますが、それはどの程度会社のために頑張っているかで判定されます。そして、その頑張りは、どれぐらいの時間を会社にコミットメントしているのか、他の会社の「メンバー」と協調して仕事を進めているのかなどの会社のメンバーらしさで判断されています。 職務の成果ではありません。これが、長時間労働(必ずしも労働しているわけではないので長時間会社内滞在というべきだと思いますが)と忖度文化を生んでいるのです。 最近では、重要性が落ちてきているものと思いますが、出身大学による評価の差も残っています。「あの人は東京大学出身だから仕事ができる」というものです。 人事評価が社内の頑張りという極めて定性的なものですので、「東大出」という学歴のハロー効果(目立つ特徴に引きずられて、人物の評価がゆがめられること)が、入社後何年かたっても人事評価に影響を与え続けます』、「頑張りは、どれぐらいの時間を会社にコミットメントしているのか、他の会社の「メンバー」と協調して仕事を進めているのかなどの会社のメンバーらしさで判断されています」、「これが、長時間労働・・・と忖度文化を生んでいるのです」、日本的な非効率さを生んでいる重要な要素だ。
・『専門スキルよりも多くの部署を経験した人が有利  メンバーシップ雇用の会社では、元々専門スキルを重視しているわけではなく、他部署の人と調整して波風立てずに話をまとめていくことが評価されています。それには、多くの部署を経験し、多くの人と一緒に仕事をしてきたキャリアの長い人が有利になります。 この結果、生まれたのが「年功序列」です。会社内での経験を積めば積むほど、地位も給与も上がっていくという制度です。 ですから、高校卒の社員の5年目の給与が、大学卒の社員の1年目となり、大学卒の社員の3年目の給与が、修士号取得者の1年目の給与となっています。 もちろん、その後の昇進のスピードは、学歴によって違ってきますが、入社時には、こうして年功に基づく給与設定が行なわれています。 年代別の賃金を調べてみると、賃金は50歳前後でほぼピークに達し、その後下がっていく傾向にあります。 これは、日本企業における賃金が、年功序列という枠組みの中で、生活給という点を重視したため、子どもの教育費がピークに達する50歳前後に賃金が高くなるように設計されたからです。 そして、退社は年齢で決められています。) 今日でも60歳定年制を取る企業がほとんどですが、同期社員が、多少の遅れはあっても、ほぼ同じように昇進昇格を繰り返していき、最後は取締役や執行役員に選ばれた者を除き、一斉に60歳で退職させられています』、「メンバーシップ雇用の会社では、元々専門スキルを重視しているわけではなく、他部署の人と調整して波風立てずに話をまとめていくことが評価されています。それには、多くの部署を経験し、多くの人と一緒に仕事をしてきたキャリアの長い人が有利になります。 この結果、生まれたのが「年功序列」です」、「生活給という点を重視したため、子どもの教育費がピークに達する50歳前後に賃金が高くなるように設計されたから」、なるほど、一定の合理性があるようだ。
・『日本企業の給与が安いのは転職できる専門スキルがないから  ここまで見てくれば、なぜ日本企業の給与が安いかは、明らかです。 そこで働く労働者に専門的スキルがないからです。 専門的スキルがなければ転職も難しいので、今いる会社にい続けるしかありません。社員は、会社から出ていくことができず、給与が上がらなくても我慢せざるを得ないのです。 それでも、転職を試みる人がいますが、よほど特殊なスキル、経験を持っていない限り、移った先の会社で冷遇されます。なぜかと言えば、それは、転職した人が前の会社で15年選手であっても、転職した会社では1年選手ですから、下手をすると、1年選手と同じように扱われてしまうからです。 メンバーシップ雇用の世界では、何といっても、その会社での社歴が重要です。社歴が長ければ、社内のいろいろな人と人脈があるから、多少の無理が言えます。定期異動でいろいろな部署を経験しているので、仕事を進める時に、どこの部署の誰に話を通したら、スムーズに行くのかを知っています。 転職してきた1年選手には、こうした能力が欠如しているのです。 そのうえ、日本企業から日本企業に移っても、給与は上がりません。どこの会社も年功序列賃金を取っているのですから、15年選手が転職すると、転職先の会社の15年選手のテーブルに入れられるからです。 転職先の会社の年功序列賃金体系が、転職前の会社の賃金体系を大幅に上回っていれば話は別ですが、そうでない限り、給与はあまり変わらないのです』、「日本企業の給与が安いのは転職できる専門スキルがないから」、確かにその通りなのかも知れない。
・『専門スキルで評価されるには外資系に転職するしかない  転職では、有名会社から無名会社へと移っていくことのほうが多いのですから、現実には、転職をすると給与は下がっていくというケースのほうが多くなります。 唯一の例外は、オーナー企業への転職です。オーナー企業なら、オーナーが気に入れば、どんなに高い給与でも支払えるので、それが可能となるのです。 しかし、入ってみればわかるのですが、周りの人と比べて、倍の給与をもらっていれば、猛烈な嫉妬の対象になります。何か仕事を進めようとしても、周りの人に協力してもらえません。 そのうえ、オーナーは気まぐれですから、オーナーの機嫌を損ねれば、あっという間に降格になったり、最悪の場合、クビになります。 これが現実ですから、日本企業間を転職して成功できる人は非常に限られます。 ですから、私は転職の相談を受けた時には、外資系に行くことを勧めます。なぜ外資系かと言えば、そこでは社内人脈は重要でなく、本人が持った専門スキルが評価されるからです。また、日本のオーナー企業と違い、実力主義の人事制度が会社の中に整備されていますので、突然降格やクビということはありません。 外資系企業なら転職者を受け入れる時には、その企業の本国で行なわれているように、前職プラス10~20%の報酬を提示してくれます。自分の専門スキルが活かせる、給与も上がるとなれば、外資系に行くしかないでしょう』、「オーナー企業」には特有のリスクがあるので、「専門スキルで評価されるには外資系に転職するしかない」、同感である。
タグ:働き方改革 (その37)(「竹中平蔵氏のせいなのか」ボーナスも退職金もダダ下がり…正社員の待遇悪化"真の黒幕" 良くも悪くもトヨタ自動車の影響大、ジョブ型雇用になれば 社員は「3つの階級」に分断される、日本企業の給与が安い原因は 昔ながらの日本型雇用にあり) PRESIDENT ONLINE 溝上 憲文氏による「「竹中平蔵氏のせいなのか」ボーナスも退職金もダダ下がり…正社員の待遇悪化"真の黒幕" 良くも悪くもトヨタ自動車の影響大」 幅広い角度から探る意味は大きい。 「奥田碩」氏の発言も「リストラが恒常化」していく流れを止めることはできなかったようだ。 「奥田」氏は「リストラ」では労働者寄りの発言をしたが、「ベア」では正反対の立場を取った。「春闘の賃上げのリーダーであるトヨタが史上最高益を出しながら、ベアゼロに踏み切ったことで、無理して賃上げする必要もないという安心感を他の企業にも与えた」。 「ボーナスが部門業績や会社業績に左右される不安定な存在になっていく」、これにより「住宅ローンや教育ローンのボーナス払い」が出来なくなった変化も大きい。 「非正規社員の増大」をもたらした「規制緩和」の罪は深い。 ダイヤモンド・オンライン 植田 統氏による「ジョブ型雇用になれば、社員は「3つの階級」に分断される」 「「富める者」と「富めない者」の差が明確になる雇用制度」、格差がますます大きくなるとは困ったことだ。 「日本の社員」は入社時点では、皆が建前上平等だが、どのような職務につくのかは会社任せ、何が期待されているかも不明確である。 「残業代」は出ても、申告は自主規制の枠内に納めるよう期待されている。 「中級職員、ブルーカラー」は「日本」より楽そうだ。 「日本」で「上級職員と中級職員の垣根が消えてしまった」ように見え、全社員が平等との幻想があるが、実際にはエリートと非エリートの格差は大きいのが実情である。欧米のように、初めから「上級職員」と「中級職員」、「現場労働者」を明確に分け、役割も明確化していく方がスッキリすると思う。無論、現場発の改善などがやり難くなるというデメリットもあるが、それは工夫次第で乗り越えることも可能だ。 植田 統氏による「日本企業の給与が安い原因は、昔ながらの日本型雇用にあり」 「定期人事異動があり、様々な職務を経験し、ジェネラリストとして育てられていきます。専門性が育たないように人事が行なわれます」、無論、例外的に専門性をそだてるところもある。 「頑張りは、どれぐらいの時間を会社にコミットメントしているのか、他の会社の「メンバー」と協調して仕事を進めているのかなどの会社のメンバーらしさで判断されています」、「これが、長時間労働・・・と忖度文化を生んでいるのです」、日本的な非効率さを生んでいる重要な要素だ。 「メンバーシップ雇用の会社では、元々専門スキルを重視しているわけではなく、他部署の人と調整して波風立てずに話をまとめていくことが評価されています。それには、多くの部署を経験し、多くの人と一緒に仕事をしてきたキャリアの長い人が有利になります。 この結果、生まれたのが「年功序列」です」、「生活給という点を重視したため、子どもの教育費がピークに達する50歳前後に賃金が高くなるように設計されたから」、なるほど、一定の合理性があるようだ。 「日本企業の給与が安いのは転職できる専門スキルがないから」、確かにその通りなのかも知れない。 「オーナー企業」には特有のリスクがあるので、「専門スキルで評価されるには外資系に転職するしかない」、同感である。
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