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格差問題(その9)(日本人は賃金格差の原因をイマイチわかってない いかに労働規制で対処しても問題は解決されない、データで解明「コロナで階級社会化が加速」の衝撃 打撃を最も受けたのは非正規の若者と女性、「正社員を引きずり下ろしたい」"みんなで豊かになる"物語を失った日本の末路 年収400万が高級取りの時代) [経済]

格差問題については、昨年6月28日に取り上げたままだった。今日は、(その9)(日本人は賃金格差の原因をイマイチわかってない いかに労働規制で対処しても問題は解決されない、データで解明「コロナで階級社会化が加速」の衝撃 打撃を最も受けたのは非正規の若者と女性、「正社員を引きずり下ろしたい」"みんなで豊かになる"物語を失った日本の末路 年収400万が高級取りの時代)である。

先ずは、昨年10月18日付け東洋経済オンラインが掲載した大蔵省出身で一橋大学名誉教授の野口 悠紀雄氏による「日本人は賃金格差の原因をイマイチわかってない いかに労働規制で対処しても問題は解決されない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/461635
・『所得格差をもたらす大きな原因の1つは、賃金格差だ。日本では、企業規模別に大きな賃金格差がある。それは、資本装備率が企業規模別に大きく異なることが原因になっている。この問題を解決しない事後的な所得再分配政策では、いつになっても同じ政策から脱却できない。 昨今の経済現象を鮮やかに斬り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。野口悠紀雄氏による連載第54回』、興味深そうだ。
・『賃金格差は、単純な再分配政策では解決できない  岸田内閣は、所得再分配を経済政策の柱にしている。 所得格差を生む原因としては、さまざまなものがある。 第1に、相続等によって生じる資産保有額の違いは、所得格差の大きな原因だ。 第2に、何らかの理由で働くことができず、収入の途を断たれている人々がいる。 こうしたことを原因として生じる所得格差に対しては、税制や財政支出での対応が必要だ。 所得格差を生む第3の原因は、賃金格差だ。 後述するように、現在の日本では、大企業と零細企業の間に大きな賃金格差がある。あるいは、正規雇用者と非正規雇用者の間に賃金格差がある。 所得格差の大部分は、こうした賃金格差によって生じている。 したがって、分配を重視するのであれば、賃金格差の問題を避けて通ることはできない。賃金格差是正のための政策は、分配政策のなかで中心的な比重を占めるべきものだ。 ところで、賃金格差については、事後的な再分配政策をいくら手厚く行っても、問題を解決したことにはならない。 なぜなら、事後的な再分配政策だけでは、賃金格差を生んでいる原因を是正することはできないからだ。 格差の原因を直さない限り、いつになっても同じような再分配政策から脱却できない。 したがって、賃金格差問題については、その原因を正しく把握し、対策を講じる必要がある。 以下では、賃金格差がどのような原因で生じているのか、それを是正するにはどのような措置が必要なのかを考えることとしよう。 法人企業統計調査(金融業、保険業以外の業種)によって、2020年度における企業規模別の賃金(従業員一人あたりの給与・賞与の合計)を見ると、図表1のとおりだ。 (外部配信先では図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください) 資本金10億円以上の企業(「大企業」と呼ぶ)の賃金は575万円であり、資本金1000万円未満の企業(「零細企業」と呼ぶ)の236万円の2.4倍にもなる。 日本の高度成長期において、「二重構造」ということが言われた。経済成長を牽引する製造業の大企業と、中小零細企業や農業との間で、生産性や賃金に大きな格差があるという問題だ。 日本経済は、現在でもこれと同じような問題を抱えていることになる』、「賃金格差については、事後的な再分配政策をいくら手厚く行っても、問題を解決したことにはならない」、累進税制などの「再分配政策」には技術的な限界でもあるのだろうか。
・『賃金格差の原因は、資本装備率の差  上記のような賃金格差の原因としてまず考えられるのは、分配率(付加価値に占める賃金の比率)だ。そこで分配率を企業規模別に見ると、図表1のw/v欄に示すとおりだ。 分配率は、むしろ大企業の場合に低い。したがって、分配率の差が賃金格差の原因とは考えられない。 ただし、零細企業の分配率は低い。これについては後述する。 賃金格差の原因として第2に考えられるのは、資本装備率の差だ。ここで、「資本装備率」とは、従業員一人あたりの有形固定資産だ(なお、法人企業統計調査は、これを「労働装備率」と称している)。 この値は、大企業が2887万円であるのに対して、零細企業では790万円と、大企業の3.7分の1でしかない。 このように、資本装備率において、企業規模別に顕著な差があり、大企業が高く、零細企業が低い。 これが賃金格差の基本的な原因と考えられる。 法人企業全体での有形固定資本は490兆円だ。そのうち43.6%を占める213兆円が、従業員数では全体の18.6%でしかない大企業に保有されているのである。) 賃金や資本装備率などを産業別に見ると、図表2のとおりだ。 製造業と非製造業を比較すると、あまり大きな差はないが、製造業がやや高めだ。 問題は、宿泊・飲食サービスなど対人サービス業における賃金が低いことだ。 ただし、これは、宿泊・飲食サービスでは、零細企業が多いためかもしれない。そこで、従業員数や付加価値において大企業が占める比率を産業別に見ると、図表3のとおりだ。 従業員数で見ても付加価値で見ても、製造業では大企業の占める比率が高いのに対して、非製造業では製造業より大企業の比率が低い。 そして、宿泊・飲食サービス業では、従業員数で見ても付加価値で見ても、大企業の比率がかなり低い。 したがって、産業別に資本装備率や一人あたり賃金の差が生じる基本的な原因は、大企業の比率が産業別に異なることだと考えることができる。 つまり、賃金格差をもたらしている基本的な原因は、企業規模の違いなのだ』、「資本装備率において、企業規模別に顕著な差があり、大企業が高く、零細企業が低い。 これが賃金格差の基本的な原因と考えられる」、には違和感がある。「資本装備率」が高いのであれば、「資本」の取り分が大きくなるのは理解できるが、「労働」の取り分が大きくなるのは理解できない。ただ、「資本装備率」が「企業規模」を表しているので、「基本的な原因は、企業規模の違いなのだ」との判断はその通りだ。
・『理論値との比較  以上で述べた観察結果を、理論モデルの結果と照合してみよう。 「コブ=ダグラス」と呼ばれる生産関数を想定し、産出の労働弾力性をaとする。ここで、「産出の労働弾力性がaである」とは、労働力がx倍に増加したとき、付加価値生産額がxのa乗倍だけ増加することを意味する。 このモデルから、つぎの結論が得られる(証明略)。 (1)労働分配率(付加価値生産額に占める賃金所得の比率)は、aに等しくなる。 (2)資本装備率をkで表すと、賃金は、kの(1-a)乗に比例する。) このモデルにしたがって理論値を計算すると、図表4のようになる。ここでaとしては、全産業の労働分配率の値0.538(図表1参照)を用いた。 理論値は、実際の賃金の傾向をかなりよく説明している。 つまり、資本装備率の差が賃金格差をもたらすと考えてよいことになる。 ただし、詳しく見ると、資本金5000万円未満の企業につき、現実値は理論値より小さめになる。 これは、このサイズの企業では、労働組合が組織されておらず、交渉力が乏しいためかもしれない。そうであれば、政策的に介入の余地がある』、なるほど。
・『原因と結果を取り違えてはならない  賃金格差が生じる原因として、しばしば非正規労働者の存在が指摘される。「非正規労働者が多いから、賃金が低くなる」という意見だ。 表面的には確かにそのとおりなのだが、これは、原因と結果を取り違えた議論だ。 因果関係としては、零細企業では、生産性が低いために非正規労働者に頼らざるをえないのだ。 だから、「同一労働、同一賃金」を導入し、非正規労働者の労働条件を正規並みにしたとしても、問題は解決できない。そうすれば、非正規労働が削減されるだけの結果にしかならない。 また、賃金格差を解消するために最低賃金を引き上げるべきだと言われることがある。 しかし、そうしたところで問題の解決にはならない。雇用が縮小するだけのことだ。 低賃金を生み出している原因を解決しない限り、いかに労働規制で対処しても、問題は解決されない。 中小零細企業の賃金を大企業並みに引き上げるためには、中小零細企業の資本装備率を高める必要がある。 そのために、中小零細企業に対する政策融資措置が必要だ』、「最低賃金を引き上げるべき」との主張の代表格は、英国人アナリストのデービッド・アトキンソン氏だ。野口氏氏は「雇用が縮小するだけのこと」としているが、私にはどちらが正しいのかは判断できない。

次に、11月30日付け東洋経済オンラインが掲載した早稲田大学人間科学学術院教授の橋本 健二氏による「データで解明「コロナで階級社会化が加速」の衝撃 打撃を最も受けたのは非正規の若者と女性」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/470173
・『コロナ禍で最も経済的な打撃を受けたのは誰なのか。「非正規の若者と女性」と指摘するのが、階級・格差社会を研究する早稲田大学教授の橋本健二氏だ。橋本氏は、かつて「一億総中流」と呼ばれた日本社会に階級性があることを指摘。さらに非正規雇用で所得の低い「アンダークラス」が出現していることを明らかにした。 貧困に陥った若者たちの実態に4日連続で迫る特集「見過ごされる若者の貧困」1日目の第4回は、コロナ禍が格差に与えた影響について、橋本氏がデータで解明する。 【特集のそのほかの記事】第1回:「時給高いから上京」の21歳女性を襲った"想定外" 第2回:「コロナで路上生活」38歳元派遣の"10年前の後悔" 第3回:「親が学費負担放棄」学生を絶望させる新たな貧困  1947年に発表されたアルベール・カミュの小説『ペスト』と、1722年に出版された、『ロビンソン・クルーソー』の作者であるダニエル・デフォーの実録小説『ペスト』(原題は『ペストの年の記録』)の2冊はいずれも、その事実を描いている。 ごく簡単に要約すると、カミュの『ペスト』には、次のように書かれている。 ペストが流行し始めると、必需品への投機が始まったため価格が高騰し、富裕な家庭は何ひとつ不自由しないのに、貧しい家庭は苦しい生活を強いられるようになった。 また看護人や墓掘り人など、感染の危険の多い職業に就く人々は次々に死んでいったが、人手不足になることはなかった。なぜなら、ペストの蔓延による経済組織の破壊によって生まれた多数の失業者が、下層の仕事を担うようになったからだ、と』、世の中はこんな非常事態でも需給バランスが取れるように動いたことに強い印象を受けた。
・『被害にあったのは必ずしも貧困層ではない  デフォーの『ペスト』は、1665年のロンドンでのペストの大流行に題材をとっているが、やはりペストが人々の間の格差をきわだたせたことを克明に描いている。 流行の初期には、まず郊外に疎開先をもつ一部の富裕層が、真っ先に脱出した。豊かな市民や役人たちは、自分や家族はできるだけ家から外に出ないようにして、奉公人を生活必需品の買い物に行かせていたが、往来を駆けずりまわった奉公人たちは感染し、さらに感染を広げていった。死体の運搬や埋葬のために雇われていた者たちが病気になったり死んだりすると、仕事にあぶれた貧乏人たちが代わりに雇われた。 さらに、次のような注目すべき事実も描かれている。ペスト禍で真っ先に生活が困窮したのは、装飾品や衣服、家具など不要不急のものを製造する職人たちと、これらを扱う商売人たちだった、というのである。 料亭、居酒屋その他の飲食店での酒宴は禁止され、過度の飲酒は悪疫伝播の原因だとして厳重に取り締まられ、夜9時過ぎの料亭、居酒屋、コーヒーハウスへの出入りは禁止された。 ここで被害を被ったのは、必ずしも貧困層というわけではなく、自分で事業を営む人々であり、しかもその被害は、感染によるものではなく、事業が痛手を受けたことによるものである。これらの人々のもとで働いていた職人や店員も、仕事を失ったはずだ。 これは現代の日本と、まったくといっていいほど同じである。 政府は必需品ではないものを扱う小売店と飲食店に、強い制限を発動した。しかし、大企業と大型店の攻勢、新興国からの輸入の拡大によって多くの商工業の自営業者が淘汰されてしまった今日、生き残っているのは、大企業では扱いにくい個性的な商品や趣味性の高い商品、つまり必需品ではないものを扱う業者、そして飲食業者である。これらが直撃を受けた。 またこれらの商品を扱う小売店や飲食店は、非正規労働者の多い業種である。だから経営する旧中間階級とともに、非正規労働者が直撃を受けた。 以上からわかったことを整理すると、感染症は、すべての人々に平等に襲いかかるのではない。階級によって影響に差があるのだ。そしてこの階級性には、2つの要素がある。 1つは、感染リスクの違いである。仕事の種類によって、感染リスクの高い場所に近づく必要性は異なる。だから感染リスクは、階級によって異なるのである。 もう1つは、経済的なメカニズムから受ける影響の違いである。物価の上昇から受ける影響は、豊かな階級では小さく、貧しい階級では大きい。感染症の拡大は仕事に影響するが、その影響は階級によって異なる』、「感染症は、すべての人々に平等に襲いかかるのではない。階級によって影響に差があるのだ」、「感染リスクは、階級によって異なる」、「物価の上昇から受ける影響は、豊かな階級では小さく、貧しい階級では大きい」、なるほど。
・『現代資本主義社会を構成する4つの階級  それではデータを使って、コロナ禍がそれぞれの階級にどのような影響を与えたのか、確かめてみよう。ここでは、資本家階級、新中間階級、旧中間階級、労働者階級、アンダークラスの階級5分類を用いる。まずはその説明をしよう。 資本主義社会の最も基本的な階級は、生産手段を所有する経営者である資本家階級と、資本家階級に雇われて働く労働者階級である。しかし現実の社会には、その間に2つの中間階級が存在している。 1つは商工業の自営業者や自営農民などの「旧中間階級」である。これらの人々は生産手段を所有しているが、その量が小さいため、自分や家族でこの生産手段を使い、現場で働いている。このように資本家階級と労働者階級の性質を兼ね備えた人々であり、しかも資本主義の成立以前から存在する古い階級であることから、旧中間階級と呼ばれる。 もう1つは、雇用されて専門職・管理職・上級事務職などとして働く「新中間階級」だ。雇用されて働く労働者階級を管理したり、生産手段全体の管理・運用を行ったりするような仕事は、もともと資本家階級が担っていたが、企業規模が大きくなると一部の労働者に委ねられるようになる。 そうした人々は、労働者階級と同様に被雇用者でありながら、労働者階級の上に立つようになる。このように労働者階級と資本家階級の中間に位置する階級であり、しかも資本主義の発展とともに新しく生まれた階級であることから、新中間階級と呼ばれる。 こうして現代資本主義社会は、資本家階級、新中間階級、旧中間階級、労働者階級の4つの階級から構成されるようになった。) だが、近年になって大きな変化が生じてきた。労働者階級の内部に、従来から存在してきた正規雇用の労働者階級とは異質の、むしろ別の階級とみなすのがふさわしい下層階級が形成されてきたからである。 非正規労働者のなかでも、以前から数が多かったパート主婦は、家計補助のために働くことが多いから、必ずしも貧困に陥りやすいわけではない。しかし近年は、それ以外、つまり男性と配偶者のない女性の非正規労働者が激増している。 雇用が不安定で、賃金が低く、労働者階級としての最低条件すら満たされないこれらの人々は、アンダークラス、あるいはプレカリアートなどと呼ばれてきた。ここでは単刀直入なわかりやすさから、アンダークラスと呼ぶことにしたい。そしてアンダークラスが1つの階級として確立した社会を、新・階級社会と呼ぶことにしたい。 <日本の新・階級構造> 資本家階級:経営者、役員 新中間階級:被雇用の専門職、管理職、上級事務職 旧中間階級:商工業の自営業者、家族従業者、農民 労働者階級:被雇用の単純事務職、販売職、サービス職、その他マニュアル労働者 アンダークラス:非正規労働者(パート、アルバイト、派遣社員) 次の表は、5つの階級の経済状態、そして2020年4月の緊急事態宣言以降に、それぞれの仕事に起こった変化をまとめたものである。 (※外部配信先では図をすべて閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください) これを見ると、コロナ禍で大きなインパクトを受けたのは、弱い立場のアンダークラス、そして以前から衰退が続いてきた零細な商工業者の階級である旧中間階級であることがわかる。 世帯年収は、資本家階級が1100万円と最も多く、これに新中間階級が816万円で続いている。旧中間階級は678万円にとどまり、644万円の労働者階級と大差がないが、2019年と比べると127万円も減った。そして、アンダークラスは393万円と最も低い。 なお2020年の個人年収は、資本家階級が818万円、新中間階級が561万円、旧中間階級が413万円、労働者階級が463万円、アンダークラスが216万円である。アンダークラスの収入がきわめて低く、労働者階級」との比較でも、半分以下にとどまっている』、「アンダークラス」では世帯年収」、「個人年収」とも群を抜いて低いようだ。
・『旧中間階級とアンダークラスは貧困率も高い  貧困率はどうか。資本家階級が7.5%、新中間階級が5.2%と低く、労働者階級も9.5%にとどまるが、旧中間階級は20.4%、アンダークラスは38.0%と高い。 次に、仕事の上での変化を見ると、どの階級も勤務日数や労働時間、そして収入を減らしている人が多いが、階級による違いも大きい。最も影響を受けたのは旧中間階級とアンダークラスで、それぞれ42.0%、29.1%が収入を、そして34.9%、37.2%が勤務日数や労働時間を減らしている。 興味深いのは、勤務日数や労働時間が減ったという人の中で、収入が減ったとする人の比率である。新中間階級では勤務日数や労働時間が減ったという人のうち、収入が減ったのは37.0%である。この比率は労働者階級では52.1%と半数を超え、アンダークラスと旧中間階級は、それぞれ61.6%、67.3%と、明らかに高い。新中間階級は、仕事が減っても会社組織に守られて収入が減らないことが多いのである。 さらに在宅勤務などの勤務形態の変更を経験したのは、新中間階級が最も多く25.4%、もっとも少ないのは旧中間階級で4.3%、ほかはいずれも10%台の前半である。新中間階級は在宅勤務によって感染のリスクを減らすことができたということがわかる。 貧困率が最も高いアンダークラスでは、内部での格差も見逃せない。次の表は、アンダークラスに起こった仕事上の変化を、年齢別に見たものだ。 まず勤務先が休業したという人の比率を見ると、20~39歳の若者が16.8%と高く、40歳以上(8.3%)の2倍となっている。コロナ禍は明らかに、若者の仕事により強く影響したのである。 しかし勤務日数や労働時間、そして収入の変化を見ると、様相が異なる。勤務日数や労働時間が減ったという人は、どちらの年齢層も36.5%で違いがない。収入が減った人の比率は、20~39歳の若者が25.1%にとどまるのに対して、40歳以上では31.8%に上っている』、「新中間階級は在宅勤務によって感染のリスクを減らすことができた」、「アンダークラスでは」、「コロナ禍は明らかに、若者の仕事により強く影響」したが、「収入が減った人の比率は・・・40歳以上では31.8%と「若者」より多いようだ。
・『若者は転職や副業で何とかしのいでいる?  なぜこんな結果になるのか。その理由は、転職した人の比率と副業を始めた人の比率を見ればわかる。20~39歳の若者は9.0%までが転職しているのに、40歳以上で転職したのはわずか0.5%である。また若者の4.8%が副業を始めているが、40歳以上ではこの比率が2.6%にとどまる。 どうやら若者たちは、コロナ禍によって勤め先が休業するなど、大きな影響を受けはしたのだが、転職や副業によって何とかしのいでいるらしいのである。これも若さゆえだろう。ちなみに転職した若者の比率を男女別に見ると、男性4.9%、女性11.3%となっており、女性のほうが苦労したことがうかがえる。 これに対して40歳以上の人々は、仕事が減ったにもかかわらず転職も副業もしなかったために収入が減っているのだが、実はここには男女差がある。収入が減った人の比率は男性では24.7%にとどまるのに対して、女性では36.1%と明らかに多いのである。 中年男性アンダークラスがある程度まで守られているのに対して、中年女性アンダークラスは、放置されているようである。詳しいことはわからないが、おそらく休業補償などの制度が男性のほうにより多く適用されているのだろう。 このようにコロナ禍は、従来からあった階級間の格差をより際立たせた。アンダークラスと旧中間階級がより大きなインパクトを受け、さらにアンダークラスの内部を見ると、若者と女性が受けたインパクトが大きい。 弱者がより大きな影響を被り、格差が拡大した。コロナ禍は日本の社会に、大きな傷跡を残したといわなければならない。この傷を癒やし、さらに格差を縮小して災禍に強い社会をつくりだすことが、今後の日本社会には求められる』、「コロナ禍は、従来からあった階級間の格差をより際立たせた。アンダークラスと旧中間階級がより大きなインパクトを受け、さらにアンダークラスの内部を見ると、若者と女性が受けたインパクトが大きい。 弱者がより大きな影響を被り、格差が拡大した」、「格差を縮小して災禍に強い社会をつくりだすことが、今後の日本社会には求められる」、同感である。

第三に、本年1月19日付けPRESIDENT Onlineが掲載した文筆家・ラジオパーソナリティーの御田寺 圭氏による「「正社員を引きずり下ろしたい」"みんなで豊かになる"物語を失った日本の末路 年収400万が高級取りの時代」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/53872
・『日本郵政グループが、正社員と非正社員の待遇格差を縮めるために「正社員の休暇を減らす」ことを労働組合に提案した。文筆家の御田寺圭さんは「『みんなで豊かになる』という物語は失われてしまった。今は『平等に貧しくなる』方が説得力をもつ時代になっている」という』、「今は『平等に貧しくなる』方が説得力をもつ時代になっている」、寂しい限りだ。
・『日本郵政が「格差を縮めるため」に選んだ方法  フェアなことは、いいことだ――と、だれもが考える時代だ。 フェアネスが尊重されることに、だれも異論を挿まず、賛意を示す。そんな時代だからこそ、こんな結論が導かれた。 日本郵政グループが、2020年10月の最高裁判決で「正社員と非正社員の待遇に不合理な格差がある」と認定された労働条件について、格差を縮める見直しを労働組合に提案したことがわかった。正社員の休暇を減らす内容が含まれており、労組側には反対意見がある。 会社側が見直しを提案したのは、夏期・冬期の有給休暇、年始(1月2~3日)の祝日給、有給の病気休暇の3点。夏冬の有休は現在、郵便業務につく正社員で夏と冬に3日ずつ、アソシエイト社員(期間雇用から無期雇用に切り替えられた社員)で1日ずつだが、期間雇用社員はゼロ。会社提案は、期間雇用社員に夏冬1日ずつ与える一方、正社員は2日ずつに減らす内容で、正社員にとっては不利益な変更になる。 朝日新聞「『正社員の休暇減らす』日本郵政、待遇格差認定の判決受け提案」(2022年1月6日)より引用』、既得権を切り下げられる「労組」はどうするのだろう。
・『「正社員の待遇を、非正社員並みに下げます」  正社員と非正社員の待遇格差があることを批判され、ついには最高裁判決によってその是正を求められてきた日本郵政は、こともあろうに「正社員の待遇を非正社員に近づける(下方修正する)」ことによってその格差を「是正」しようと提案した。 これには少なからず疑問や批判の声が寄せられた。たしかに、これはこれで、不合理な格差を埋める「フェア」な施策であるというわけだが、求められていたのは「非正社員の待遇を正社員並みに近づけること」であるだろう。 しかしながら、日本郵政側がそれを理解していなかったわけではない。もちろん、なにかの気の迷いによって、本末転倒な解決案を出してきたわけでもない。むしろ、これこそが現代社会の時代精神を反映したある種の「総意」であると考えたからこそ、労働組合に対してこの案を堂々と提起したのである』、「「正社員の待遇を非正社員に近づける・・・」ことによってその格差を「是正」しようと提案」、には驚かされた。
・『「若者にとって年収400万円は高給取り」  この社会では「きっといつか、自分も(あの人たちのように)いい暮らしができるようになる」という物語にリアリティを感じることができない人がどんどん増えている。 今年、賃金が上がると思うかNHKの世論調査で聞いたところ「上がる」と答えた人が21%、「上がらない」と答えた人が72%でした。 NHK「ことし賃金は『上がる』21% 『上がらない』72% NHK世論調査」(2022年1月12日)より引用 自分の人生も暮らし向きも上向かず、いつまでも現状がくすぶったまま維持され、低空飛行を続けていくことなる――という閉塞的な未来のビジョンの方が、現代社会ではよほど想像することがたやすい。とくにそれは若者層に顕著になっている。先日にもツイッターでは「若者にとって年収400万円は高給取りとみなされている」とするツイートが大きな波紋を呼んだ。 今日の若者たちにとってみれば「年収400万円は高給取り」というのはまったく冗談ではない。国税庁「民間給与実態統計調査」によれば、20~24歳の男性の平均給与は277万円、25~29歳でも393万円だ。年収400万円が現実的な数字となってくるのは30代からになる。※編集部註:初出時は厚生労働省「賃金構造基本統計調査」の結果を記していましたが、国税庁「民間給与実態統計調査」に差し替えます。(1月20日17時58分追記)』、「今日の若者たちにとってみれば「年収400万円は高給取り」というのはまったく冗談ではない」、てっきり「冗談」だと思っていたが、そうでもないとは改めて驚かされた。
・『「今日よりも明日がいい日になる」「来年は今年よりも給料が大幅に上がっている」「ボーナスをあてにして大きな買い物ができる」 ひと昔前の時代であれば、とくに違和感なく受け入れられてきたこうした一般的な感覚が、現代社会の働き盛りの人びとにとってはそうではない。本当にそのような時代が実在していたのか疑わしい、さながら異世界や別の世界線にある日本社会を語っているかのような感覚に陥ってしまう』、「ひと昔前の時代であれば、とくに違和感なく受け入れられてきたこうした一般的な感覚が、現代社会の働き盛りの人びとにとってはそうではない。本当にそのような時代が実在していたのか疑わしい」、時代の変化は予想以上だ。
・『磯野家も野原家も「圧倒的な勝ち組」に見える  漫画『サザエさん』の磯野家やフグ田家、あるいは『クレヨンしんちゃん』の野原家は当初、ごく平凡な中流家庭つまり「庶民階級」の姿を想定して描写されたし、そのような庶民の描かれ方に人びとは疑問をもたなかった。しかし、いまの20代や30代からすれば、かれらを「ごく平凡な庶民の姿」とみなす人はそれほど多くはないだろう。むしろ圧倒的な勝ち組・富裕層の家庭としてみなすようになっている。 都心もしくは首都圏に一戸建てのマイホームやマイカーを所持し、子どもを複数人育てる――これらは『サザエさん』や『クレヨンしんちゃん』がはじまった時代には「ふつうの一般家庭の姿」として受け入れられていた。だが、もはやその「ふつう」は、はるか遠い高みへと消え去ってしまった。私たちはどんどん貧しくなっていく国に生きている。 『サザエさん』や『クレヨンしんちゃん』で描かれたサラリーマンの暮らし向きは、もはや現代人にとっては「在りし日の懐かしい風景」ではなく、ある種の「(心情的に受け入れがたい描写としての)ファンタジー」なのである』、「漫画『サザエさん』の磯野家やフグ田家、あるいは『クレヨンしんちゃん』の野原家は当初、ごく平凡な中流家庭つまり「庶民階級」の姿を想定して描写された」、「しかし、いまの20代や30代からすれば、かれらを「ごく平凡な庶民の姿」とみなす人はそれほど多くはないだろう。むしろ圧倒的な勝ち組・富裕層の家庭としてみなすようになっている」、「圧倒的な勝ち組・富裕層の家庭としてみなすようになっている」、信じられないような時代の断絶を感じる。
・『正社員は「いつかなれるもの」ではなくなった  磯野家や野原家が庶民ではなく「勝ち組」の既得権益者側に見える――このようなコンテクストを踏まえれば、正社員として働き大小さまざまな恩恵を享受できていることが「ふつうである」という前提を、もはや全社会的に共有することが難しくなっていることが見えてくる。つまり、同じ会社で働く非正規雇用者からすれば、正社員は「いつか自分がそうなりえる姿」ではなくて、一生交わることのない並行世界の住人にしか思えないのだ。 近頃において「無駄を省く(既得権益者の利権を削る)」といったスタンスの党派が喝采されるのも「自分はそのような粛清の刃を向けられる側の世界の住人ではないし、これからもずっとそうである」という感覚を少なくない人が共有しているからだ。 自分が踏み入れることのない並行世界の人びとだけが「おいしい思い」をしている姿を見るのは、不公平というか差別的にすら思える。「正社員/恵まれている人の待遇を削ったら、まわりまわって自分にも損がある」――というマクロ経済学的な知見に裏付けられた正論には、もはや多くの人がリアリティや説得力を感じられなくなっている。「どうせ自分はずっとこのままなのに、どうして同じような仕事をしているあいつらは(大したことをしていないなのに)給料が高いのか。それは不当だ。差別だ」という不公平感の方が優勢になる』、「同じ会社で働く非正規雇用者からすれば、正社員は「いつか自分がそうなりえる姿」ではなくて、一生交わることのない並行世界の住人にしか思えないのだ」、「一生交わることのない並行世界の住人」とは言い得て妙だ。
・『「みんなで豊かになる」という物語の死  自分がけっしてその領域に足を踏み入れることはない「別世界」で暮らす人びとの待遇が引き下げられることは、自分にとってなんの痛みもないどころか、かえって社会がより「公平」に近づいて歓迎されるべき「善行」だ――とすら考えられるようになる。 「いま恵まれている人を引き下げたら、自分がその立場に行けたときに損をする。だから少しでもだれかが得する方向に働きかけよう」という、互助的な規範意識が、機能不全に陥ろうとしている。「みんなが苦しい時代に、おいしい思いをしているのは不当な既得権益者に違いないのだから、かれらにメスを入れて闇を暴き、引きずり下ろす! それが民意である!」――というスタンスを明確にする、いわゆるポピュリズム政党が市民社会からの喝采を浴びますます勢いに乗るのは偶然ではない。 この社会が「みんなで豊かになる」という社会的合意(あるいは共同幻想)を喪失してしまっていることの裏返しでもある』、「互助的な規範意識が、機能不全」、「「みんなが苦しい時代に、おいしい思いをしているのは不当な既得権益者に違いないのだから、かれらにメスを入れて闇を暴き、引きずり下ろす! それが民意である!、なんとも世知辛い世の中になったものだ。
・『「平等に貧しくなろう」が説得力をもつ社会  世の中で「豊かな人」を見かけても、「羨ましいが、きっと自分にもいつかはその番が巡ってくるだろう」と肯定的に考えられなくなった。そうではなくて「豊かな人は、自分たちから富を奪っている収奪者だからこそ豊かなのだ」という感覚が支配していくようになった。 日本郵政の経営陣は、この社会が左右だけではなくて上下に分断されている空気を素直に読み込んだからこそ、「正社員の《特権》を解体して、フェアな待遇に改定しましょう」と持ち掛けた。こうした提言がたとえネットでは批判殺到でも、実社会においてはこの種の提案を支持する人が今日には一定数いることは明らかだ。 「みんなで豊かになる」という物語をだれも信じられなくなった。無理もない。いつか自分が豊かになると信じて待つには「失われた30年」はあまりにも長すぎたからだ。 「みんなで豊かになる」という美しい物語が死んだ。 その代わりにやってきたのが「平等に貧しくなろう」であった。 みんながつらくて苦しい時代には、いつか自分たち全員が慈悲深い神によって掬いあげられる日がやってくる物語よりも、「豊かさ」を享受している者を引きずり下ろす物語の方が、はるかに説得力があった』、「「豊かさ」を享受している者を引きずり下ろす物語の方が、はるかに説得力があった」、嫌な時代になったものだ。
タグ:格差問題 (その9)(日本人は賃金格差の原因をイマイチわかってない いかに労働規制で対処しても問題は解決されない、データで解明「コロナで階級社会化が加速」の衝撃 打撃を最も受けたのは非正規の若者と女性、「正社員を引きずり下ろしたい」"みんなで豊かになる"物語を失った日本の末路 年収400万が高級取りの時代) 東洋経済オンライン 野口 悠紀雄氏による「日本人は賃金格差の原因をイマイチわかってない いかに労働規制で対処しても問題は解決されない」 「賃金格差については、事後的な再分配政策をいくら手厚く行っても、問題を解決したことにはならない」、累進税制などの「再分配政策」には技術的な限界でもあるのだろうか。 「資本装備率において、企業規模別に顕著な差があり、大企業が高く、零細企業が低い。 これが賃金格差の基本的な原因と考えられる」、には違和感がある。「資本装備率」が高いのであれば、「資本」の取り分が大きくなるのは理解できるが、「労働」の取り分が大きくなるのは理解できない。ただ、「資本装備率」が「企業規模」を表しているので、「基本的な原因は、企業規模の違いなのだ」との判断はその通りだ。 「最低賃金を引き上げるべき」との主張の代表格は、英国人アナリストのデービッド・アトキンソン氏だ。野口氏氏は「雇用が縮小するだけのこと」としているが、私にはどちらが正しいのかは判断できない。 橋本 健二氏による「データで解明「コロナで階級社会化が加速」の衝撃 打撃を最も受けたのは非正規の若者と女性」 世の中はこんな非常事態でも需給バランスが取れるように動いたことに強い印象を受けた。 「感染症は、すべての人々に平等に襲いかかるのではない。階級によって影響に差があるのだ」、「感染リスクは、階級によって異なる」、「物価の上昇から受ける影響は、豊かな階級では小さく、貧しい階級では大きい」、なるほど。 「アンダークラス」では世帯年収」、「個人年収」とも群を抜いて低いようだ。 「新中間階級は在宅勤務によって感染のリスクを減らすことができた」、「アンダークラスでは」、「コロナ禍は明らかに、若者の仕事により強く影響」したが、「収入が減った人の比率は・・・40歳以上では31.8%と「若者」より多いようだ。 「コロナ禍は、従来からあった階級間の格差をより際立たせた。アンダークラスと旧中間階級がより大きなインパクトを受け、さらにアンダークラスの内部を見ると、若者と女性が受けたインパクトが大きい。 弱者がより大きな影響を被り、格差が拡大した」、「格差を縮小して災禍に強い社会をつくりだすことが、今後の日本社会には求められる」、同感である。 PRESIDENT ONLINE 御田寺 圭氏による「「正社員を引きずり下ろしたい」"みんなで豊かになる"物語を失った日本の末路 年収400万が高級取りの時代」 「今は『平等に貧しくなる』方が説得力をもつ時代になっている」、寂しい限りだ。 既得権を切り下げられる「労組」はどうするのだろう。 「「正社員の待遇を非正社員に近づける・・・」ことによってその格差を「是正」しようと提案」、には驚かされた。 「今日の若者たちにとってみれば「年収400万円は高給取り」というのはまったく冗談ではない」、てっきり「冗談」だと思っていたが、そうでもないとは改めて驚かされた。 「ひと昔前の時代であれば、とくに違和感なく受け入れられてきたこうした一般的な感覚が、現代社会の働き盛りの人びとにとってはそうではない。本当にそのような時代が実在していたのか疑わしい」、時代の変化は予想以上だ。 「漫画『サザエさん』の磯野家やフグ田家、あるいは『クレヨンしんちゃん』の野原家は当初、ごく平凡な中流家庭つまり「庶民階級」の姿を想定して描写された」、「しかし、いまの20代や30代からすれば、かれらを「ごく平凡な庶民の姿」とみなす人はそれほど多くはないだろう。むしろ圧倒的な勝ち組・富裕層の家庭としてみなすようになっている」、「圧倒的な勝ち組・富裕層の家庭としてみなすようになっている」、信じられないような時代の断絶を感じる。 「同じ会社で働く非正規雇用者からすれば、正社員は「いつか自分がそうなりえる姿」ではなくて、一生交わることのない並行世界の住人にしか思えないのだ」、「一生交わることのない並行世界の住人」とは言い得て妙だ。 「互助的な規範意識が、機能不全」、「「みんなが苦しい時代に、おいしい思いをしているのは不当な既得権益者に違いないのだから、かれらにメスを入れて闇を暴き、引きずり下ろす! それが民意である!、なんとも世知辛い世の中になったものだ。 「「豊かさ」を享受している者を引きずり下ろす物語の方が、はるかに説得力があった」、嫌な時代になったものだ。
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