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安全保障(その11)(圧倒的に議論が不足している経済安全保障問題、「経済安保法制」は看板に偽りあり?法案の欠陥を徹底検証、日本の安全保障政策 今こそ「英国」との連携強化を急ぐべき理由) [外交・防衛]

安全保障については、2月10日に取上げた。今日は、(その11)(圧倒的に議論が不足している経済安全保障問題、「経済安保法制」は看板に偽りあり?法案の欠陥を徹底検証、日本の安全保障政策 今こそ「英国」との連携強化を急ぐべき理由)である。

先ずは、2月16日付けNewsweek日本版が掲載した在米作家に冷泉彰彦氏による「圧倒的に議論が不足している経済安全保障問題」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2022/02/post-1260_1.php
・『<日本経済の問題の本丸は、生産拠点だけでなく先端技術などの高付加価値部門まで国外に流出させて国内産業を空洞化させていること> 岸田政権は「経済安全保障」を重要政策と位置付けており、その法制化、つまり「経済安全保障法制」を制定しようとしています。重要なテーマだと思いますが、圧倒的に議論が不足しています。 非常に単純化していえば、まず一方には、日本の技術が外国に勝手に持ち出されて日本を敵視するような軍事転用がされては大変だとか、同盟国からも要請があるので規制すべきだという立場があります。これは、いわば積極推進派ということになるのでしょう。 反対に、現状としては日本の製造業の多くの企業は中国などを製造拠点にしており、技術の持ち出しはすっかり日常化しています。そんな中で、突然法律が適用されて、公安調査庁の係官が怖い顔をして監視に入ってくるようでは、日常業務が回らないという不安もあるようです。つまり経済界としては一般的にやや消極的というのが本音だと思います。罰則規定を緩和して欲しいというような意見として出ているのはこの立場です。 経済界の中でも、軍需という公共投資に期待する中で、経済安全保障政策の強化を歓迎する部分もあるようです。軍需は非公開ですからイノベーションに後ろ向きになるし、市場は同盟国に限定され、また自国の財政を毀損し、最終的には死の商人に堕落して国家同士の対立を歓迎するということから、過度に依存すると「安全の保障」にはなリません。ですが、産業によっては、過去の産業衰退をどうすることもできなかった経緯の延長で、一線を越えて積極的になる勢力はあるわけです』、確かに「経済安全保障」論議は、経産省あたりから唐突に出てきたようだ。
・『日本経済の「産業空洞化」  難しいのはコンピュータのソフトに関する安全保障です。特に最先端のプログラミング技術を駆使して、ターゲットのサーバなどに不正アクセスして社会に大きな損害を与える「サイバーテロ」の問題については、単に法律を作って取り締まるだけでは効果は限定的です。具体的には、個々の局面で「より高い技術力によって防御を行う」という「力と力」ならぬ「知恵と知恵の戦い」に勝利していかねばなりません。必要な人材を育成し、相互に信用して活躍させる仕組みが何としても必要です。 さらに言えば、巨額の資金と努力を注ぎ込んで開発した技術を、外国に売り渡すという行為への反省も必要と思います。半導体や液晶技術に関しては、基礎的な技術の多くが日本の発明であるにも関わらず、経営力と資金不足のために多くのノウハウが国外に流出しました。国策として進められた増殖炉技術についても、海外に安く叩き売りされてしまいました。このように、国家そのものを構成する技術を切り売りするというのは、仮に非軍事であっても経済安全保障に反するという考え方も必要と思います。) 以上は狭い意味の経済安全保障ですが、より広い意味の考え方に立てば、何よりも国際競争の中で勝っていかねばならないという問題は避けて通ることはできません。一番の問題は空洞化の進行です。日本は他の産業国と同様に、より人件費の安い国に生産拠点を移動したり、消費地へ生産を移動するという「クラシックな空洞化」を進めてきました。 その空洞化が過度になっているだけでなく、日本経済の場合は先端技術の研究開発やデザインなど高付加価値の部分も国外に流出させています。これは日本独特の問題であり、その結果として空洞化した後の国内を「知的産業による先進国経済」に転換させることに失敗し、大卒50%という社会で観光と福祉を基幹産業にせざるを得ないという苦しい国策に追い込まれています。 この問題こそが本丸です。今は機密を囲い込みながら監視を強めて、軍需に依存するというサイクルに入るべき時期ではないと思います。そう考えると、岸田政権が「狭い意味での経済安全保障政策」については、 ・「サプライチェーンの強化」 ・「基幹インフラにおける事前安全性審査制度」 ・「重要技術の研究開発推進」 ・「特許非公開制度」 といった4点に絞り込み、反対にそれ以外に関しての過剰な規制は避けているのは理解できます。経済安全保障の中で最も大切なのは、競争力の維持です。狭い意味での経済安全保障にこだわった結果、経済活動が萎縮するとか、複雑な申請手続きを嫌って、かえって空洞化が加速するというような制度設計は避けなければならないと思います』、「空洞化した後の国内を「知的産業による先進国経済」に転換させることに失敗し、大卒50%という社会で観光と福祉を基幹産業にせざるを得ないという苦しい国策に追い込まれています」、寂しい限りだが、日本で起業家精神の欠如からベンチャー企業の創業が伸び悩んでいる状況では、やむを得ない。

次に、3月31日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した室伏政策研究室代表・政策コンサルタントの室伏謙一氏による「「経済安保法制」は看板に偽りあり?法案の欠陥を徹底検証」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/300498
・『経済安保法案が衆院本会議で審議入りした。充実した審議が期待されるが、そもそも経済安保法案の論点や問題点はどこまで理解されているのだろうか?この法案の論点や問題点について、独自の視点から分析・検証してみたい』、興味深そうだ。
・『経済安保法案が国会審議入り その論点とは?  「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案」(以下、「経済安保法案」という)が審議入りした。今年3月18日に衆院内閣委員会において本法案担当の小林鷹之内閣府特命担当相による趣旨説明が行われ、23日から本格的な質疑が行われている。審議時間は40時間程度確保されているようであり、経済産業委員会との連合審査会も行われることとされている。 経済安保法案については、昨年の自民党総裁選のときから世の注目を集めるようになり、岸田政権の目玉政策の一つともなっている。その一方で、経済安保法案の事務方の責任者である内閣審議官の情報漏えい疑惑が「文春砲」によって明るみに出るなど、順調にここまでたどり着いたとはいえない状況である。 野党はそうした点も含めて追及する構えを見せているようであるが、経済安保に関する法案の企画・立案段階で情報が漏えいしていたのだとすれば、そもそも経済安保を語る以前の問題であるとしかいいようがなく、法施行後の体制のあり方も含めて厳しく追及するのは当然であるし、うやむやにしてはいけない問題ではある。 しかし、スキャンダル追及のような質疑に終始しては、肝心な法案の中身の細部にわたった審議がおろそかにされることになり、今後のわが国の安心安全に関わる重要法案が不十分な審議のまま成立することになりかねない。そのようなことのないように、バランスの取れた、充実した審議が期待されるが、そもそも経済安保法案の論点や問題点はどこまで理解されているのだろうか? そこで、本稿では、経済安保法案の論点や問題点について、独自の視点から分析・検証してみたいと思う』、「経済安保法案の事務方の責任者である内閣審議官の情報漏えい疑惑が「文春砲」によって明るみに出る」、「法案の企画・立案段階で情報が漏えいしていたのだとすれば、そもそも経済安保を語る以前の問題であるとしかいいようがなく、法施行後の体制のあり方も含めて厳しく追及するのは当然であるし、うやむやにしてはいけない問題ではある」、なんとも緊張感を欠いた話だ。
・『経済安保法案の趣旨とは「安全保障の確保」につながる?  経済安保法案は、「国際情勢の複雑化、社会経済構造の変化等に伴い、安全保障を確保するためには、経済活動に関して行われる国家及び国民の安全を害する行為を未然に防止する重要性が増大していることに鑑み」、以下を策定・創設するものだ。 1 安全保障の確保に関する経済施策を一体的に講ずるための政府としての基本方針を策定  2 特定重要物資の安定的な供給の確保に関する制度、特定社会基盤役務の安定的な提供の確保に関する制度及び特定重要技術の開発支援や特許出願の非公開に関する制度を創設  ここで、特定重要物資とは、国民生活に必要不可欠な物資や、国民生活や経済活動が依拠している重要な物資、さらにその生産に必要な原材料等について、外部に過度に依存していたり、そのおそれがあったりする場合に、安定供給の確保が特に必要なものとして政令で指定されるものである。現段階では具体的なものは示されていないが、例えば半導体や医療関係物資等が想定されている。 特定社会基盤役務とは、「国民生活及び経済活動の基盤となる役務であって、その安定的な提供に支障が生じた場合に国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれがあるもの」である。こちらは具体的な対象が法案50条第1項に列挙されており、それらをいくつか挙げれば、電気、水道、ガス、石油備蓄、鉄道、自動車貨物輸送、海上貨物輸送、航空運送、放送通信、金融などである。 これらの役務を提供する事業者のうち、その設備が停止したり、機能低下したりした場合に、特定社会基盤役務の提供に支障を来し、国家・国民の安全を損なうおそれが大きいものとして主務省令で定める基準に該当する者が、特定社会基盤事業者として、主務大臣が指定する(主務省令とは当該特定社会基盤役務を所管する府省の命令のことであり、主務大臣とはその大臣である。要するにどれを指定するかは各府省において決められるということである)。 そして本法案が創設する制度とは、前者については安定供給の確保を、後者については外部からの妨害などにより安定的な役務の提供に支障を来すことがないようにするものである。したがって、非常時も想定して、それが効果的に行うことができるような制度設計となっているか否かが重要なポイントとなる。 総論としては、政府が国会に提出したこの経済安保法案は、非常時ではなく平時を前提にしたような内容となっており、とても「安全保障の確保」につながるようなものとはいえないだろう(もちろん、非常時を念頭に置いて平時から準備をしておくという趣旨なのだろうし、だからこそ「経済施策を一体的に講ずることによる」安全保障の確保なのであり、「確保の推進」なのであろう)。 しかも、新型コロナに今度はウクライナ危機と、ことここに至ってやっと動きだしたわけであり、遅きに失したとしかいいようがない。無論、必要な法制であることに異論を挟む余地はない。したがって、審議を通じて必要な修正が施され、結果としてしっかりとした内容で整備されれば、その遅れも挽回されると考えたいところであるが、どうであろうか。以下、具体的な点を挙げながら見ていこう』、どうなのだろう。
・『非常時に対応できるのか?法案の条文から検証  まず、第1条などに「経済活動に関して行われる国家及び国民の安全を害する行為」という規定があるが、これが具体的に何を指すのか、法案段階では不明である。この範囲を曖昧にしたり、経済界などに忖度して狭めたり、限定的にしたりすれば、実効性が著しく低下することになりかねない。要は「ザル法」になりかねないということである。その他にも基本方針などに記載すべき事項が具体的に示されていない。 もっとも、他の法律でもより具体的な事項は政令以下に落とすということは普通に行われているので、それ自体が直ちに問題というわけではない。問題は、こうした点を内閣委員会の質疑の中で明らかにし、国会の審議に係らしめられない政令以下の制定も律していくことができるかである。当然のことながら、野党の質問能力いかんが大きく関わってくるが、「国会での審議を踏まえて今後検討」といったような逃げの答弁を許すようなことがあってはいけない。せめて判断基準などに関する答弁は引き出してもらいたいところであるが。 次に、経済安保法案と国の役割についてである。先にこの法案は平時を前提としたような内容であると述べたが、まさにそれを如実に表しているのが、この法律の施行に係る国の財政措置についてである。法案第4条第3項には「国は、安全保障の確保に関する経済施策を総合的かつ効果的に推進するために必要な資金の確保その他の措置を講ずるよう努めるものとする」と記載されている。何の変哲もない規定と思われるかもしれないが、「必要な資金」というのがまず引っかかる。しかもその「確保」である。もし国が積極的に財政支出をしようという考えを持ち、それが経済安保法案に反映されているというのであれば、例えば「◯◯に係る費用については、国において財政上必要な措置を講ずるものとする」といった書きぶりになるはずである。 そもそも、「努めるものとする」との努力規定になっている。これでは経済安全保障といいながら、最初から国の役割は最小限にとどめ、民間任せにしようとしているとしか思えない。新型コロナの感染拡大によって、世界各国が国の、政府の役割の重要性についてこれだけ強く認識し、財政支出をはじめとしてその役割を十二分に果たそうとし、それはこのパンデミックの後も当面続けていこうと昨年のコーンウォールサミットでも共同声明という形で合意されたというのに、である。 その他、これに似たものとして、例えば、法案第6条第2項第5号に規定する、安定供給確保基本指針に定める「特定重要物資の安定供給確保のための取組に必要な資金の調達の円滑化の基本的な方向に関する事項」のうち、「必要な資金の調達」についても同様の指摘が可能である。こうした国の財政上の役割の放棄とも取れるような規定については、与野党問わず追及していく必要があろう。もしその質疑において、政府が臆面もなく民間主体で考えているとの趣旨の答弁をするようなことがあれば、大問題である。 さらに、第3節に「株式会社日本政策金融公庫法の特例」が規定され、供給確保促進円滑化業務について規定されている。その仕組みは、法第16条に基づき主務大臣により指定された指定金融機関に公庫から資金を貸し付け、指定金融機関が、特定重要物資として指定された物資を供給する事業者として、所管大臣に認定された認定供給確保事業者に対して事業に必要な資金を貸し付けることとされている。 平時を想定した他の法令であればこうした仕組みでも一向に構わないだろう。しかし、経済安全保障に関する法案である。先にも述べたように、平時にこの体制で準備しておいて非常時に備える趣旨であるとも考えられるが、非常時はいつ来るか分からない。そうであれば、平時から非常時を想定して備える、少なくとも非常時を主眼とした制度設計にしておくべきではないのか。そうした趣旨はこうした規定からは全く読み取れない。 一応、安定供給確保支援法人(法案第31条に基づき主務大臣により指定された一般社団法人、一般財団法人など)に基金を設けさせ、国が資金を補助し、それを原資として認定供給確保事業者に対して助成を行うことができることとされている。しかし、国からはあくまでも補助金であって必要な資金を満額出すわけではないようであるし、事業者に対して助成を行うのはあくまでも安定供給確保支援法人である。なんとややこしい、まどろっこしい仕組みなのか。既存の官民ファンドを改組するなりして、その組織が一括して、国が直接的に財政支援するというのに近い形での助成ではなく支援なり、補助なり、投資を行う仕組みを考えるべきではないか。そもそもこんなややこしい仕組みでは非常時には対応できないだろう。) また、これに関して別の問題点として、先に触れた実際に貸し付けを行う指定金融機関となり得る者に、わが国の銀行法に基づく銀行業の免許を得ている外国銀行支店は含まれるのだろうか。含まれるのだとしたら、経済安全保障に穴を開けるようなものなのではないか。 安定供給確保支援法人についても、外国勢力と何らかの関係があるか否かをしっかりと確認するのだろうか。外国人役職員の有無、外国との交流等の関係性など、厳格・厳密に審査しなければ、経済安全保障との関係において「ザル規定」になるのではないか。 特定社会基盤役務に関しても、導入や維持管理の委託について事前の計画の届出・審査が規定されている。コンセッションはこの対象に入って当然だと考えられるが、まさか適用除外などとはいうまい。その場合であって、導入・維持管理の委託先に外資系企業(外国企業が資本関係において支配的である企業のみならず、外国企業の指示や指導を受けて事業を行う企業を含む)が入っている(実際に業務を行う場合のみならず、特定目的会社などに出資している場合も含む)場合は、どう取り扱うつもりなのだろうか。水道や空港では既に外資系企業も加わってコンセッションが導入されているが。 その他、法案第7条などに規定されている「~外部に過度に依存し、又は依存するおそれがある場合において、外部から行われる行為により国家及び国民の安全を損なう事態を未然に防止するため」に関し、「外部」とは単に国の外部ということなのか、外国を意味するのか、外国企業を意味するのか、全く不明である。のみならず、例えば、法案第52条第2項第2号ハに規定する特定妨害行為に関し、「我が国の外部から行われる特定社会基盤役務の安定的な提供を妨害する行為」とあるが、「我が国の外部から」だけでよく、国内にいる外国勢力などからそのような行為が行われた場合は含まれないのか不明である。含まれないのであれば、これまた「ザル規定」である。 そもそも、この法案には、多くの独自の用語が規定されているにもかかわらず、他の法律であれば当然に設けられている(多くの場合は第2条において)定義に関する条文がない。 また、それとは少々毛色の違う話ではあるが、第5条に「この法律の規定による規制措置の実施に当たっての留意事項」にとして、規制措置は「安全保障を確保するために合理的に必要と認められる限度において行わなければならない」としているが、経済安全保障という非常時対応のための法案にもかかわらず、規制を最小限にと規定するとは、やはり安全保障についての緊張感のかけらもない、万年平時の法案ということの証左のようである』、「定義に関する条文がない」のはやはり問題だ。ただし、「規制を最小限にと規定するとは、やはり安全保障についての緊張感のかけらもない」、のは、規制緩和の時代では当然なのではなかろうか。
・『経済安全保障を担保したいなら国が前面に出て役割を果たすべき  細かい問題点を指摘していけば、枚挙にいとまがないぐらいであるが、真にわが国の経済安全保障を担保する法制としたいのであれば、国内製造・国内調達やインフラ管理運営の自前主義を前提として、国が前面に出てそれに必要な財政支出と強い規制によってその役割を果たすことが必須である。 国際情勢の複雑化などを本法案の目的とするのであれば、いい加減、経済における平和ボケやグローバル化幻想からも目を覚ます必要があるのではないか』、しかし、自由主義経済での企業活動は極めて多面的で、「国が前面に出」る余地は余りないのではなかろうか。

第三に、4月19日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した立命館大学政策科学部教授の上久保誠人氏による「日本の安全保障政策、今こそ「英国」との連携強化を急ぐべき理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/301800
・『ウクライナの想像を超える奮戦で、ウクライナ紛争が長期化・泥沼化している。そのウクライナの背後には、「味方した方が戦争に勝つ」という「不敗神話」を持つ英国の存在がある。日本の安全保障問題も議論に上がる中で、今一度、英国との協力関係を見直したい』、興味深そうだ。
・『「戦争は英国が付いた方が勝つ」、ウクライナでも当てはまるか  ウクライナは、ロシアのミサイル攻撃に屈せず、その後の地上戦で頑強な抵抗を見せてきた。威力を発揮している武器は、対戦車ミサイル「ジャベリン」、トルコ製のドローン「バイラクタルTB2」、歩兵が肩に担いで撃てる地対空ミサイル「スティンガー」といったものだ。NATOから提供されたこれらの兵器は、開戦前からウクライナが保有していて、ロシア軍を待ち構えていたと、一部メディアでは報じられている。 実は、米英側は、ロシア軍の動きを掌握していた。昨年11月には、バイデン米大統領やジョンソン英首相が、ロシアのウクライナ大規模侵攻の懸念を訴えていた。実際、その頃、ロシア軍約9万人がウクライナとの国境沿いに集結していた。 だが、ウクライナのレズニコフ国防相が「侵攻が迫っている兆候はない」と発言するなど、まだ誰も本当にロシア軍がウクライナに侵攻するとは考えていなかった。 そんな中、昨年12月、ワシントン・ポストが、情報機関の文書の内容として、「ロシアがウクライナ侵攻を計画中」と報じ、ウクライナ国境に終結したロシア軍の規模や侵攻ルートを指摘した。驚くべきは、実際に侵攻が始まったときの規模・侵攻ルートを正確に的中させたことだ。(Washington Post“Russia planning massive military offensive against Ukraine involving 175,000 troops, U.S. intelligence warns”)。 今年2月24日、戦闘が始まると、ウクライナ軍が、ロシア軍の経路、車列の規模、先端の位置などを把握して市街地で待ち伏せし、対戦車ミサイルやドローンでロシア軍を攻撃した。ロシア軍は、多数の死者を出した。 これが可能だったのも、米英の情報機関の支援があるからだ。米英側は、ロシア政府・軍の意思決定をリアルタイムに近い形で把握している。 過去の日本の歴史を振り返ると、戦争は英国が付いた方が勝つという「不敗神話」がある。なぜ英国が鍵なのか、そして日本にとって英国との関係がいかに大事だったのか解説しよう』、「ワシントン・ポスト」が「昨年12月」に「「ロシアがウクライナ侵攻を計画中」と報じ、ウクライナ国境に終結したロシア軍の規模や侵攻ルートを指摘した。驚くべきは、実際に侵攻が始まったときの規模・侵攻ルートを正確に的中させた」、さすがに驚くべき情報収集力だ
・『日露戦争で日本が勝ったのは英国の力のおかげ?  ウクライナ紛争そのものから少し離れて、日本の安全保障政策を考えてみたい。注目のひとつが、英国との協力関係の構築である。 日本は、英国の「不敗神話」と浅からぬ因縁がある。例えば、「大英帝国」が歴史上初めて同盟を結んだのが日本であるが、その日本がロシアと戦った「日露戦争」だ。 日本を目指したロシアの「バルチック艦隊」が、大西洋から喜望峰を通過し、インド洋を進み休息を取ろうとした港はことごとく大英帝国の支配下にあった。嫌がらせを受け続けたバルチック艦隊は、日本に着いたときには疲労困憊となり、万全の態勢で待ち構えていた日本の連合艦隊の猛攻撃を受け、ほぼ全滅という大敗を喫した。 また、大英帝国は日本に対して、日露戦争遂行のための膨大な物資調達に必要な多額の資金援助を行った。 日本は1000万ポンドの外国公債の募集をしたが、まずロンドン市場が500万ポンドを引き受けた。残りの500万ポンドについては、ロンドン滞在中だったユダヤ系銀行家ジェイコブ・シフが支援して、ニューヨークの金融街が引き受けた。 大英帝国は日本に情報戦での協力も行った。大英帝国の諜報機関が、ロシア軍司令部に入り込み、ロシア軍の動向に関する情報や、旅順要塞の図面などを入手し、日本に提供した。 日本は、ロシア国内の社会主義指導者、民族独立運動指導者などさまざまな反政府勢力と接触し、ロシアを内側から揺さぶろうとした。ロシア国内では、デモ・ストライキが先鋭化し、それが後に「ロシア革命」につながっていったとする説もある。この日本の工作活動の背後に、大英帝国の諜報機関がいたことは、容易に想像できる。 「大国ロシアと戦う日本を支援する大英帝国」という構図は、ウクライナ紛争と重なる部分がある。その後、第1次・第2次世界大戦などでも、英国が味方した陣営がことごとく勝利した。日英同盟が解消された後に起きた第2次世界大戦では、日本は英国に敗れたのだ』、「ロシアの「バルチック艦隊」が、大西洋から喜望峰を通過し、インド洋を進み休息を取ろうとした港はことごとく大英帝国の支配下にあった。嫌がらせを受け続けたバルチック艦隊は、日本に着いたときには疲労困憊となり、万全の態勢で待ち構えていた日本の連合艦隊の猛攻撃を受け、ほぼ全滅という大敗を喫した」、「日本は、ロシア国内の社会主義指導者、民族独立運動指導者などさまざまな反政府勢力と接触し、ロシアを内側から揺さぶろうとした」、「この日本の工作活動の背後に、大英帝国の諜報機関がいたことは、容易に想像できる」、確かに日露戦争の勝利には「英国」がひとかたならぬ貢献をしたようだ。
・『英国は今後の国際社会で鍵になる?今大切にすべき日英関係  現在、日本の安全保障政策の基軸は「日米同盟」だ。しかし、中国の経済的・軍事的急拡大に対応するために、自由民主主義という「価値観」を共有する国による「自由で開かれたインド太平洋戦略」が構想された(第46回)。そして、日米にオーストラリア、インドの4カ国によるQUAD(日米豪印戦略対話)が成立した。 今後の注目は英国の「インド太平洋」への参加だ。 英国は、EU離脱後に「グローバル・ブリテン」という新たな国家戦略を掲げている。EUに代わる地域との関係を強化することで、英国の国際社会におけるプレゼンスを再強化しようというものだ(第228回)。 経済的なプレゼンス強化とは、「TPP(環太平洋パートナーシップ協定)」に英国が加盟することだ(第192回)。TPP加盟11カ国中6カ国(オーストラリア、カナダ、ブルネイ、マレーシア、シンガポール、ニュージーランド)が「英連邦」加盟国である。 また、軍事的には、英国は米英豪による新たな安全保障協力枠組み「AUKUS(オーカス)」の立ち上げに主導的な役割を果たしている。AUKUSとは、潜水艦、自律型無人潜水機、長距離攻撃能力、敵基地攻撃能力などの軍事分野、サイバーセキュリティー、人工知能、量子コンピューターを用いた暗号化技術といった最先端テクノロジーの共同開発を主な目的とした協定だ。 4月12日、産経新聞が、「AUKUSが非公式に日本の参加を打診している」と報じた。極超音速兵器開発や電子戦能力の強化などで日本の技術力を取り込む狙いがあるという。しかし、日本政府は、その事実はないと即座に否定した。 日本政府内には、AUKUS入りに積極的な意見がある一方で、日米同盟がすでに存在している中でAUKUSに参加する効果があるのか懐疑的な意見もあるという。政府内で明確に方針が決まっていないということだ。 しかし、日米同盟が存在すれば、日英の協力は必要ないとはいえない。米国と英国は得意分野が異なり、安全保障分野において、相互に補完し合う関係にあるからだ。 つまり、日本は英国との協力から、米国とは違うメリットを得られる。そのひとつは、例えば外国のスパイ活動の防止やテロ対策のための「インテリジェンス活動」だろう』、確かに英国の「インテリジェンス活動」から得られる情報は大いに役立つ筈だ。
・『007を地で行く?英国の「人的ネットワーク」を駆使したテロ対策  米国は、高度な技術力を駆使して、「イミント(画像情報)」と呼ばれる、偵察衛星が撮影した画像や、航空機による偵察写真など画像や映像の情報を得る活動や、「シギント(信号情報)」と呼ばれる相手国の通信を傍受することやインターネット上での通信の傍受、相手国のレーダーの波長を調べるなどで情報を得る活動を得意としている。 一方、英国は映画「007シリーズ」で有名なように、「ヒューミント(人的情報)」と呼ばれる、スパイを相手国に潜入させたり、相手国のスパイを懐柔したりして情報を得る活動を、伝統的に得意としてきた。 英国は、旧植民地だった国などで構成される「英連邦」を中心として、世界中に広く深い人的ネットワークを築き、情報網を持っている。オックスフォード、ケンブリッジ、ロンドンなどの大学を卒業した留学生のネットワークがある。 また、BP、シェルなどオイルメジャーやHSBC(香港上海銀行)グループなど多国籍企業による資源・金融ビジネスのネットワークなどもある。これらの多様で複雑な人的ネットワークを、インテリジェンス活動に生かしているのだ(第134回)。 英国のインテリジェンス活動の一端を、私の経験も交えて紹介してみたい。例えば英国の「テロ対策」である(第157回)。 当時、英ヒースロー空港で駐車場に車を停めてターミナルに入るとき、パスポート提示を求められたことは一度もなかった。ロンドン市内も一見、警戒態勢は緩く、いつでも簡単にテロを起こせそうな感じだった。 これは、フランスのパリ市内やシャルル・ド・ゴール空港には多数の警官や武装兵が立ち、警戒していることとは大きな違いだった。だが、テロが頻発するフランス、ベルギーなど欧州大陸に比べれば、発生件数は格段に少なかった。 その理由は、英国の警察・情報機関が、国内外に細かい網の目のような情報網を張り巡らせ、少しでも不穏な動きをする人物を発見すれば、即座に監視し、逮捕できる体制が確立されていたからだ。私を含む世界中から集まる留学生の個人データも完全に掌握していた。 当時、当局の要注意リストには約3000人が掲載され、別の300人を監視下に置いているとされていた。毎月、テロリストの疑いありとして逮捕される人は大変な数に及んだ。 要するに、英国のテロ対策とは、警察と情報機関が長年にわたって作り上げてきた情報網・監視体制をフルに使って、テロを水際で防ぐということだ。 日本には「スパイ防止法」がない。テロ対策が脆弱であり、国内に外国のスパイが好きなように出入りし自由に行動できる「スパイ天国」だともいわれてきた。さらにいえば、日本は英国MI6(秘密情報部)や米国CIA(中央情報局)のような「対外情報機関」が存在しない。英国との協力は、明らかに日本の安全保障上の弱点を補完するものとなり得るのである』、英国では「ヒューミント」の強さに加え、「シギント」でもGCHQ(政府通信本部、通信傍受機関)を抱え、第二次大戦でもドイツの秘密通信の傍受で大きな成果を上げた伝統を持つ。
・『緊急医療体制も日本の一歩先を行く英国  もうひとつ、英国との協力で日本が得られるものを提案したい。それは、新しい感染症のパンデミック発生時などの緊急医療体制の確立である。 コロナ禍で、日本は世界最大の病床数を持ちながら、何度も医療崩壊の危機に陥った。政府は、医療体制の確保や法的措置も検討を進めたが、現在の医療体制が前提であるならば、医療崩壊に備えた抜本的な解決にはならない。 感染症のパンデミック対策とは、限られた医療リソースを、感染対策と、高度医療と、日常的な医療の間でどうバランスさせるかが重要だ。だが、さまざまな既得権や医学界・行政の「縦割り」、高度に専門分化した医療現場を調整するのは極めて困難だ。もし、今後より強毒な感染症のパンデミックに襲われたら、現在の日本の医療体制ではひとたまりもないのは明らかだ(第289回)。 そこで、私は現在の医療体制の外側に存在する自衛隊の医療人材・機材を緊急時に活用する「自衛隊大規模野戦病院」の設置を提案してきた(第283回)。この提案の際、参考としたのが、英国で新型コロナ対策として、英国軍が支援して設置された野戦病院「ナイチンゲール病院」だった(第282回)。 実戦経験豊富な英国軍は、「野戦病院」についても豊富な経験を持っている。また、英国は、大英帝国だった時代から、感染症と闘ってきた豊富な経験を持っているのである(第49回)。 このように、「味方に付いた方が戦争に勝つ」という「不敗神話」を持つ英国との安全保障協力は、日米同盟とは違うメリットを日本にもたらすのは間違いない。 日本を巡る安全保障環境の悪化への対応は、待ったなしである。英国との多角的な協力関係の構築を、今すぐに進めていくべきである』、幸い、英国はEU離脱でアジアに目を向けているので、「英国との多角的な協力関係の構築」する好機を活かしてもらいたい。
タグ:室伏謙一氏による「「経済安保法制」は看板に偽りあり?法案の欠陥を徹底検証」 ダイヤモンド・オンライン 「空洞化した後の国内を「知的産業による先進国経済」に転換させることに失敗し、大卒50%という社会で観光と福祉を基幹産業にせざるを得ないという苦しい国策に追い込まれています」、寂しい限りだが、日本で起業家精神の欠如からベンチャー企業の創業が伸び悩んでいる状況では、やむを得ない。 確かに「経済安全保障」論議は、経産省あたりから唐突に出てきたようだ。 冷泉彰彦氏による「圧倒的に議論が不足している経済安全保障問題」 Newsweek日本版 安全保障 (その11)(圧倒的に議論が不足している経済安全保障問題、「経済安保法制」は看板に偽りあり?法案の欠陥を徹底検証、日本の安全保障政策 今こそ「英国」との連携強化を急ぐべき理由) 「経済安保法案の事務方の責任者である内閣審議官の情報漏えい疑惑が「文春砲」によって明るみに出る」、「法案の企画・立案段階で情報が漏えいしていたのだとすれば、そもそも経済安保を語る以前の問題であるとしかいいようがなく、法施行後の体制のあり方も含めて厳しく追及するのは当然であるし、うやむやにしてはいけない問題ではある」、なんとも緊張感を欠いた話だ。 どうなのだろう。 「定義に関する条文がない」のはやはり問題だ。ただし、「規制を最小限にと規定するとは、やはり安全保障についての緊張感のかけらもない」、のは、規制緩和の時代では当然なのではなかろうか。 しかし、自由主義経済での企業活動は極めて多面的で、「国が前面に出」る余地は余りないのではなかろうか。 上久保誠人氏による「日本の安全保障政策、今こそ「英国」との連携強化を急ぐべき理由」 「ワシントン・ポスト」が「昨年12月」に「「ロシアがウクライナ侵攻を計画中」と報じ、ウクライナ国境に終結したロシア軍の規模や侵攻ルートを指摘した。驚くべきは、実際に侵攻が始まったときの規模・侵攻ルートを正確に的中させた」、さすがに驚くべき情報収集力だ 「ロシアの「バルチック艦隊」が、大西洋から喜望峰を通過し、インド洋を進み休息を取ろうとした港はことごとく大英帝国の支配下にあった。嫌がらせを受け続けたバルチック艦隊は、日本に着いたときには疲労困憊となり、万全の態勢で待ち構えていた日本の連合艦隊の猛攻撃を受け、ほぼ全滅という大敗を喫した」、「日本は、ロシア国内の社会主義指導者、民族独立運動指導者などさまざまな反政府勢力と接触し、ロシアを内側から揺さぶろうとした」、「この日本の工作活動の背後に、大英帝国の諜報機関がいたことは、容易に想像できる」、確かに日露戦 確かに英国の「インテリジェンス活動」から得られる情報は大いに役立つ筈だ。 英国では「ヒューミント」の強さに加え、「シギント」でもGCHQ(政府通信本部、通信傍受機関)を抱え、第二次大戦でもドイツの秘密通信の傍受で大きな成果を上げた伝統を持つ。 幸い、英国はEU離脱でアジアに目を向けているので、「英国との多角的な協力関係の構築」する好機を活かしてもらいたい。
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