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リニア新幹線(その6)(調布市の道路陥没事故でリニア新幹線工事が不安になる理由、JR「超電導リニア」の技術は本当に完成したのか 気鋭の技術ライターの疑問と JR東海の見解、静岡リニア「トンネル湧水全量戻し」本当の問題点 有識者会議の結論は妥当だったが静岡県は反発) [産業動向]

リニア新幹線については、2020年5月24日に取上げた。また、昨日のJR(一般)(その1)のなかでリニア問題を取上げた。今日は、(その6)(調布市の道路陥没事故でリニア新幹線工事が不安になる理由、JR「超電導リニア」の技術は本当に完成したのか 気鋭の技術ライターの疑問と JR東海の見解、静岡リニア「トンネル湧水全量戻し」本当の問題点 有識者会議の結論は妥当だったが静岡県は反発)である。

先ずは、2020年10月23日付けダイヤモンド・オンライン「調布市の道路陥没事故でリニア新幹線工事が不安になる理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/251962
・『突然、住宅の前の道路が陥没する――。衝撃を禁じ得ない現場の直下では、東京外郭環状道路のトンネル工事が進められていた。同じ工法で大深度地下を掘り進むリニア中央新幹線工事に不安はないのか』、このニュースは昨日のこのブログでも紹介した。
・『47メートル下をシールドマシンが通過 因果関係は不明で工事が中断(休日の朝、自宅のガレージのすぐ前を走る道路に亀裂が入り、少しずつ広がって、昼ごろには深さ5メートルの大きな穴になった――。 そんな“嘘のような本当の話”が起きたのは10月18日、東京都調布市の京王線つつじヶ丘駅から徒歩4~5分ほどの住宅街だ。 すでに報じられている通り、この現場の約47メートル直下では、千葉県から埼玉県、そして現場のあった調布市などを通って東名高速道路に接続する全長約85キロメートルの東京外郭環状道路(外環道)のトンネル建設工事が進められ、9月中旬にシールドマシンが通過していた。 ここは外環道を南に向かって東名高速道路に接続するまでのトンネルで、施工主は東日本高速道路(ネクスコ東日本)。工事を請け負ったのは、鹿島建設・前田建設工業・三井住友建設・鉄建建設・西武建設共同企業体(JV)だ。 ネクスコ東日本は翌19日に、「東京外環トンネル施工等検討委員会」を開いた後の記者会見で、陥没と道路工事の関連の有無や原因が判明するまで工事を中断する、と説明した。再開の時期は未定だ。 検討委員会の委員長を務める小泉淳・早稲田大学名誉教授は会見で、「断定するのはまだ早い。ただ、(道路工事と陥没の)因果関係はないとは言えないし、(道路が)急に落ちるとは思えない」と述べた上で、陥没の原因として、(1)シールドマシンが土を取り込みすぎたことによる地盤への影響、(2)陥没した地表付近に以前から空間があった――の2つの可能性を挙げた。 外環道は、都心での渋滞緩和を目指して1966年に都市計画決定した。ところが、住民の反対や用地買収の難航によって計画が遅れ、2007年に当初の高架から地下方式に変更した上で工事が進められた。 首都高速道路の渋滞の大きな要因が、東京都心を目的地とせずに通過する長距離運転の車両の進入だった。これを外環道や首都圏中央連絡自動車道(圏央道)を経由させることで都心の交通渋滞を緩和するという、交通政策の面から見ると非常に理にかなった計画といえる』、確かに「外環道計画」自体は「交通政策」上は合理的だ。
・『トンネル付近の地盤は強固だが 地表から数メートルには弱い層も  ただ、地下トンネル工事という自然を相手にするプロジェクトゆえ、机上の合理的な計画がそのまま通用するとは限らないのが、こうした巨大土木プロジェクトの常である。 しかも「大深度地下」と呼ばれる地下40メートル以上の深さを掘り進むことで、地上の土地所有者の同意が原則不要となったものの、その地質的な影響を事前に予測することは困難だった可能性がある。 ネクスコ東日本によると、工事現場となった地下約47メートル付近は、東久留米層と呼ばれる地層であり、砂層(砂でできた層)に一部、礫層(石ころの層)が入っており、総じて強固な地層だという。検討委員会への報告によると、トンネル内で事故や異常につながるひび割れ、漏水は確認されていない。 一方で、今回の現場の地表では道路の陥没だけでなく、住宅の玄関前のコンクリートのズレや、建物の壁のヒビも発生した。地元で民生委員を務める東村達夫さんは、シールドマシンが通過した9月中旬、自宅で強い振動を感じたことがあったという。 ネクスコ東日本によると、大深度地下をシールドマシンで掘り進むという今回と同様に行われたこれまでの外環道の工事によって、東村さんが訴えたような地上の住民が振動を感じたとの報告はあったそうだ。しかし、道路の陥没だけでなく、今回生じたような地面や建物の亀裂やヒビも報告はなかったという。 また国土交通省によると、国などの認可を受けた大深度地下の工事は過去5件あり、うち外環道と、大深度地下に送水管を通す工事を行った神戸市の工事が着工済みだ。神戸市水道局によると、今回のように道路や建物への損害が発生した事例はないという。 ただ土木工事に詳しい関係者によると、神戸市の工事で使われたシールドマシンの直径はわずか3メートルであり、地下40メートルの深さに対して13分の1しかない。一方で今回調布市の現場で使われたものは16メートルと巨大で、47メートルという深さの3分の1にも達する。「これだけの大きさだと、地表に影響を与えることがあるのかもしれない」(前述の土木工事に詳しい関係者)。 さらに、今回陥没が起きた地表付近の地盤は、必ずしも強固とは言えないようだ。地表に最も近い部分は、数メートルの深さの盛り土で固められていた。一般的に、盛り土は造成時に締め固められるため、強さがある。ところが、さらにその下の数メートルは「沖積層」と呼ばれる、地震などによって液状化現象が起きやすい弱い地層だった。 今回の陥没の深さは5メートルだが、盛り土の中で起きたのか、沖積層にまで達していたのか、現時点では不明だ。ただ東村さんによると、住宅が立ち並ぶ現場付近は数十年前までは水田が多く、すぐ横を流れる入間川は現在のようにコンクリートで護岸工事がされるまで数回、護岸工事後も1回、氾濫を起こしていたという。一般的に水害があった土地の地盤は、決して強くないと考えられることが多い』、本年2月28日付けNHKナビによれば、東京地裁は「外環道」の 東名JCT~中央JCTの区間の工事中止を命じたようだ。
・『静岡県の抵抗に遭うリニア中央新幹線計画 都市部の大深度地下工事は大丈夫なのか!?  ネクスコ東日本が記者会見を開いたまさに同じ日である10月19日、JR東海は山梨県の施設で、リニア中央新幹線の改良型の試験車両を報道機関に公開した。 リニア新幹線を巡っては、静岡県の川勝平太知事が、静岡工区のトンネル工事の影響で大井川の水の流量が減少する懸念があるとして、流量の確保を強く求めている。さらに「リニア計画に反対しない」としながらも、環境保護などを理由に計画の大幅な見直しを訴えている。 トンネルなどの土木工事では、地下水の管理が最大の課題であり、事前に地下水の動きや、掘削工事による流れ方と流量の変化を予測し、工事の最中にこれを管理することは極めて難しい。 だからこそ、国やJR東海は静岡県に対して有効な解決策を打ち出せず、静岡県側も納得する姿勢を見せないという面がある。 一方でリニアの計画路線では、静岡工区のような山岳トンネルではない都内や神奈川県、愛知県内は、外環道と同様の工事を予定。住宅地や商業地の下の40メートル以上の大深度地下をシールドマシンで掘り進んでトンネルを通すことになる。こうした工事については従来、強い不安を訴える声は上がってこなかった。 ちなみにリニアの首都圏の地下トンネル工事に用いられるシールドマシンの直径は14メートルと、こちらもかなり巨大だ。 繰り返すが、今回の調布市での道路陥没と、外環道でのシールドマシン工事との因果関係は現時点では不明だ。逆に因果関係が特定されなければ、都内や神奈川県内などのリニア工事でも、地表部の地盤が弱い箇所で陥没事故が起きるのではないか――。このような不安が沿線住民に付きまとい続けることになる。 調布市の道路陥没現場は、砂を積んだダンプカーが列をなし、夜を徹した作業で、翌19日にはとりあえずふさがれた。とはいえ、付近の住民やリニア中央新幹線計画にまで飛び火した不安の穴をふさぐには、しばらく時間がかかりそうだ』、「リニア」の平地部分は、多くが「大深度地下」の「トンネル」なので、今回の問題がどういう形で決着するか、大いに注目される。

次に、2020年12月28日付け東洋経済オンライン「JR「超電導リニア」の技術は本当に完成したのか 気鋭の技術ライターの疑問と、JR東海の見解」を紹介しよう。
・『リニア中央新幹線は2014年にJR東海の工事実施計画が国から認可され、沿線各地で工事が行われている。走行する車両の研究開発は1960年代からスタートし、これまで数種類の試験車両が開発され、走行試験を繰り返してきた。2013年には営業仕様の「L0(エルゼロ)系」を活用した走行試験が行われ、リニアに関する国の実用技術評価委員会は、2017年に「営業に必要な技術開発は完了」と結論付けた。 現在は、「さらなる快適性の向上や保守の効率化等」を目指したL0系の改良型試験車が走行試験を重ねている。静岡工区におけるトンネル工事が始まらず、目標としていた2027年の開業は事実上不可能となったが、走行に関する技術開発は着々と進んでいるように見える。 しかし、「技術的に本当に実現可能なのか、わからないことがたくさんある」と交通技術ライターの川辺謙一氏は超電導リニアの技術開発に疑問を呈する。川辺氏は大手化学メーカーの技術者を経て独立。難しい技術を一般向けにわかりやすく解説することをモットーに、鉄道、交通分野での著書も多い。 超電導リニアの何が問題なのか、このたび『超電導リニアの不都合な真実』(草思社)を著した川辺氏に聞いた(Qは聞き手の質問、Aは川辺氏の回答)』、興味深そうだ。
・『超電導磁石「クエンチ」の問題  Q:著書では、走行に関わるリスクとして、「クエンチ」という問題を指摘しています。 A:クエンチとは、超電導磁石から発生する磁力が急激に低下する現象です。超電導リニアは超電導磁石から発生する磁力によって浮上や推進を行っているのですが、クエンチが起きると正常な走行ができなくなる可能性があります。 クエンチの原因はわかっていない部分がたくさんあります。技術者向けの専門書『超伝導・低温工学ハンドブック』には「クエンチ発生の可能性を完全に回避することは不可能である」と書いてあります。このような不確定な要素を持ったものを鉄道車輪の代わりに使うというのは飛躍的だと感じます。) 超電導磁石が使われているのは超電導リニアだけではありません。医療機器のMRIや私がメーカー勤務時代に化学分析で使っていたNMR(核磁気共鳴装置)にも超電導磁石が使われていますが、MRIやNMRではクエンチが起きています。国内の病院の約12%でMRIのクエンチを経験しているというデータもあります。 MRIは空調の利いた室内に静置されているという非常に条件のいい状態で使われているにもかかわらず、クエンチが起きています。それに比べると、超電導リニアの超電導磁石は外気にさらされ、振動や衝撃も受けやすいという過酷な状況にさらされています。クエンチが起きやすい状態なのです』、「MRIは空調の利いた室内に静置されているという非常に条件のいい状態で使われているにもかかわらず、クエンチが起きています」、「外気にさらされ、振動や衝撃も受けやすいという過酷な状況にさらされて」いる「超電導リニアの超電導磁石」は「クエンチが起きやすい状態なのです」。走行中に発生したら恐ろしいになりそうだ。
・『技術に100%はないが…  Q:超電導リニアの山梨実験線ではクエンチが起きているのですか。 (川辺氏の略歴はリンク先参照) JR東海の葛西敬之名誉会長の著書『飛躍への挑戦』の中で、「山梨実験線ではクエンチは1度も起きていない」と記されているほか、私自身も超電導リニアに関する記事を書く際に、JR東海から「山梨実験線ではクエンチは1度も起きていない」と書くようにとの指示が編集部経由で伝わってくることがありました。 一方で、1999年8月に山梨リニア実験線でクエンチが起きて車両が停止したとことを報じる新聞報道もあります(山梨日日新聞1999年9月4日付「山梨リニア実験線クエンチで車両停止」)。ところが、国の超電導リニアの実用技術評価委員会の資料はこのクエンチのトラブルについて一切触れていません。 Q:クエンチを完全に回避することが不可能だとしたら、超電導リニアはやめるべきでしょうか? A:技術に100%はありません。90数%で安全が確保されるなら技術として使える部分はあると思います。ただ、その残りの数%で何が起きているのかは技術を評価するうえで、非常に重要です。実用技術評価委員会はクエンチが1度も起きていない、超電導磁石の故障が1度も起きていないということを前提に評価していますが、それはおかしいと私は思います。 Q:著書では、トイレの設置についても言及しています。 A:私はL0系の乗車体験にも参加しましたが、その際、スタッフの方は「車内にご利用いただける化粧室はございません」と案内していました。L0系より以前に製造されたMLX01という車両にはトイレが設置されていましたが、リニア中央新幹線公式サイトで公開されているL0系の車両の図面にはトイレが見当たりません。 しかし、営業運転を想定すれば、トイレがないのは不自然です。スタッフがトイレがないと案内した理由について、私は、高速走行する車両におけるトイレに関する技術が確立できていないと推測します。車両メーカーの技術者の方が、時速360km運転する車両のトイレは使用禁止だと話していました。車両が高速走行すると、トイレの汚物タンクに大きな気密荷重がかかり、トイレの使用に支障をきたす可能性が高まるというのです。時速360kmで難しいのなら、時速500kmではもっと難しいのではないでしょうか』、「JR東海から「山梨実験線ではクエンチは1度も起きていない」と書くようにとの指示が編集部経由で伝わってくる」、不自然な指示だ。「L0系の車両の図面にはトイレが見当たりません」、「高速走行する車両におけるトイレに関する技術が確立できていないと推測」、「「高速走行」では「トイレ」まで難しくなるとは初めて知った。
・『乗り心地は改善できるか  Q:乗り心地についても辛口の評価をしていますね。私は0系や300系など以前の東海道新幹線ほど揺れないと思いますし、線路の状態が悪いローカル線ならもっと揺れると思いますが。 A:人によって感じ方が違うので評価が難しいのですが、私は乗り心地があまりよくないと感じました。特に「耳ツン」に関しては、私の妻も乗りましたが、乗った後、30分以上耳ツンが止まらなかったと言っていました。 Q:技術的に改善できると思いますか。 A:改善できると思います。ただ、そのためには時間もコストもかかります。実際の営業運転を考えると、どこで折り合いをつけるかという問題があると思います。 Q:車内の空調装置や照明装置の電力を賄う誘導集電技術にも疑問を呈していますね。 A:誘導集電方式はMLX01で導入され、性能試験をした実績があります。国の実用技術評価委員会はその実績を踏まえて「誘導集電については、車上電源として実用化に必要な技術が確立している」と評価しました。しかし、本格的な導入はこれからです。 L0系の初期型には先頭車にガスタービン発電装置が搭載されており、そこから空調装置や照明装置の電力を賄っていました。その後登場したL0系改良型試験車は電磁誘導を利用して電力を取り込む誘導集電方式を採用し、ガスタービン発電装置は搭載されていません。 でも、今年9月に撮影した写真では、2つある先頭車のうち1両はガスタービン発電装置が搭載された初期型のL0系で、写真に陽炎がたっていることからガスタービン発電装置が作動している証拠といえます。もし誘導集電方式だけで車内電源を確保できるのであれば、改良型先頭車を2両製造して同じ編成に組み込むはずです。それをやっていないのは、誘導集電の技術が十分に磨かれていないことを意味します。 Q:JR東海の技術に対して、国の技術評価委員会の突っ込みが足りない? A:そう思います。それと、もっと情報を開示してほしいです。論文も出ていないので、どうなっているかがさっぱりわかりません』、「もし誘導集電方式だけで車内電源を確保できるのであれば、改良型先頭車を2両製造して同じ編成に組み込むはずです。それをやっていないのは、誘導集電の技術が十分に磨かれていないことを意味します」、「JR東海の技術に対して、国の技術評価委員会の突っ込みが足りない」、その通りだ。
・『建設的な議論が盛り上がれば  Q:中央新幹線は在来線の開業を匂わせていると著書に書かれています。山梨実験線には超電導リニアには不要な架線柱のようなものも立っているとのことですが。 架線柱のようなものがおおむね50m間隔で立っています。東海道新幹線とほぼ同じ間隔です。電柱がなぜここに立っているのか疑問に感じました。 Q:全般的に超電導リニアに対して辛口に書かれていると感じました。せっかく、さまざまな事実を丁寧に並べているので、ご自身の意見は抑えて、是非の判断は読者に委ねたほうがよかったのでは? A:そこは難しかったのです。本書の目的は批判ではなく、建設的な議論を進めることです。国もJR東海も批判するつもりはまったくありません。私の意見を述べないことも考えたのですが、編集者と相談して、私の意見を述べることにしました。私の意見が正しいとは限らないので、いろいろな意見が出てきてほしいと思っています。そのうえで、もし議論が盛り上がったらうれしいです』、「本書の目的は批判ではなく、建設的な議論を進めることです」、なるほど。
・『インタビューを終えて 難しい技術をわかりやすく伝えるというのが川辺氏の信条だけあって、川辺氏の著書によって超電導の技術やその問題をきちんと理解することができた。著書に記されている内容についても、基となる文献の出典も丁寧に紹介されている。また、鉄道、リニア、航空の現役、OBの技術者ともディスカッションを繰り返したという。 では、川辺氏の指摘についてJR東海はどのように考えているか。同社に確認を取ったところ、以下のような回答があった。 「クエンチについては、山梨リニア実験線で実験の目的上、意図的に起こしたことはあるが、意図せずに起きたことは1度もない。また、1999年の新聞報道については、車両が停止するトラブルは起きたが、その後の調査で原因は冷却材の配管の亀裂による真空度の低下に伴う温度上昇が発生し、磁力が低下した事象であり、超電導磁石のクエンチではなかったことが判明した」』、「超電導磁石のクエンチではなかったことが判明した」、確かにそのようだ。
・『さらなる情報開示が必要では  では、MRIではクエンチが起きているのに、超電導リニアでは1度も起きていないのはなぜか。この点を尋ねたところ、「MRIとの比較はしてないので違いについては説明できないが、超電導リニアは宮崎実験線以来長年にわたってクエンチが起きないように研究を重ね、改良を続けてきたので、その成果である」という回答があった。 また、「L0系にはトイレが付いている」とのことで、高速走行中にトイレが使えないということも「絶対にない」という。体験乗車の際は、「L0系は試験車両であることからトイレは1両しか設置されておらず、乗車イベント等の際は、乗車前にトイレの利用を促しているだけ」ということであった。 現在の走行試験でL0系の両方の先頭車両が初期型と改良試験車に分かれている理由は、「乗り心地の改善に向け初期型を先頭にした走行と改良試験車を先頭にした走行を比較検証するため」であり、ガスタービンを用いている理由は、「誘導集電に必要な地上ループは技術開発に必要な一部の区間にのみ敷設され、実験線の42.8km全線に敷設していない」ためで、誘導集電に関する技術が磨かれていないということはないとしている。また、山梨実験線に立っている架線柱のようなものは、「架空地線という避雷設備」で、役割としては避雷針のようなものだという。 JR東海の回答からは走行試験は順調に進んでいることがうかがえるが、川辺氏のように技術に明るい人からも疑問の声が上がるのは、情報開示が不完全だからだろうか。 とはいえ、先端技術の情報開示は難しい。中国も超電導リニアの開発に乗り出している中、高度な技術をあからさまに開示するのは競争上得策ではない。逆に、完全な秘匿は疑心暗鬼を生む。 難しい問題だが、国民の不安を払拭するためには、情報開示も含めて川辺氏の提唱するような「国民の幅広い議論」が必要かもしれない。それは、膠着状態にある静岡工区の未着工問題においても同様だ』、「国民の不安を払拭するためには、情報開示も含めて川辺氏の提唱するような「国民の幅広い議論」が必要かもしれない」、同感である。

第三に、本年1月5日付け東洋経済オンラインが掲載した「静岡経済新聞」編集長の小林 一哉氏による「静岡リニア「トンネル湧水全量戻し」本当の問題点 有識者会議の結論は妥当だったが静岡県は反発」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/479860
・『南アルプス・リニアトンネルに伴う大井川の水環境問題を議論した国の有識者会議の結論(中間報告)が2021年12月19日に取りまとめられた。その結論は以下のとおりだ。 1) トンネル湧水量の全量を大井川に戻すことで中下流域の河川流量は維持される。 2) トンネル掘削による中下流域の地下水量への影響は、極めて小さい。 ところが、翌日の静岡県内の朝刊各紙は『湧水全量戻し 示さず』(中日)、『全量戻し 方法示さず』(静岡)、『水「全量戻し」議論残る』(朝日)などの大見出しで、中間報告への疑問を投げかけた。 静岡県の川勝平太知事は会見で、「全量戻しができるのかできないのかわからないのが中間報告を読んでの率直な感想。全量戻せないならばおそらくは工事はできないだろうと思う人が多い」と述べ、約2年間もかけた議論を粉々に打ち砕いてしまった。 「全量戻し」とはいったい、何か。国は流域住民に有識者会議の結論をわかりやすく伝えなければ、リニア静岡工区の着工は遠のいたままだ』、「1)」がどうして『湧水全量戻し 示さず』になるのか、理解できない。しかし、「全量戻せないならばおそらくは工事はできないだろうと思う人が多い」と述べ、約2年間もかけた議論を粉々に打ち砕いてしまった」、「中間報告」の意味はどこにあったのだろう。
・『「全量戻し問題」の発端は?  JR東海は2013年9月、環境アセス準備書の中で「トンネル工事によって、大井川上流部の流量が毎秒2㎥減少する」と予測した。この予測に対して、静岡県は「毎秒2立方メートル減少するメカニズムを関係者に分かりやすく説明するとともに(中略)同施設内の湧水を大井川へ戻す対策をとることを求める」などの知事意見書を提出した。 JR東海は2015年11月、トンネル内の湧水減量分の6割強、毎秒1.3立方メートルをリニアトンネルから大井川までの導水路トンネル設置で回復させ、残り0.7立方メートルは『必要に応じて』ポンプアップで戻す対策を明らかにした。 JR東海の対策に、川勝知事は「62万人の“命の水”が失われる。全量を戻してもらう。これは県民の生死に関わる」などと反発、流域住民らは知事を強く支援した。『必要に応じて』の対策では「県民の生死に関わる」としたから、知事は「減少する毎秒2立方メートルの全量戻し」を主張、工事の着工を認めない方針を示した。これが「全量戻し」問題の始まりだった。) その後、県は減量分の毎秒2立方メートルだけでなく、トンネル内の湧水全量を試算して、そのすべてを戻せとハードルを上げた。県の求めに応じて、JR東海は2018年10月になって、『原則としてトンネル湧水の全量を大井川に戻す措置を実施する』と表明した。減量分の毎秒2立方メートルだけでなく、湧水全量を毎秒2.67立方メートルと試算、その全量を戻すとしたのだ。この表明で、川勝知事の“命の水”問題は解決したはずだった。 しかし、今回の有識者会議結論に、新聞各紙は「全量戻しの方法示さず」などと報道。静岡新聞1面トップ記事は『表流水の量は「トンネル湧水の全量戻し」をすれば維持され、地下水量の影響も「極めて小さい」としたが、全量戻しの具体的な方法は示さず、JRと県、流域市町の協議に問題解決を委ねた』と伝え、有識者会議結論を厳しく批判した。 新聞報道を踏まえ、川勝知事は「実質は毎秒2トンの水が失われる、と(JR東海は)言っていた。毎秒2トンの水は60万人の水道水の量」などと述べたから、ふつうに考えれば、JR東海は、トンネル湧水毎秒2.67立方メートルの「全量戻しの方法」を示さなかったと考えるだろう』、地元マスコミにも批判されるような「結論」を出すよう「有識者会議」には、意味がないようだ。
・『静岡県民には理解できない  ところが、JR東海は、毎秒2.67立方メートルについて、導水路トンネルとポンプアップという具体的な方法で、「湧水の全量を戻す」計画を示していた。有識者会議は、JR東海の「湧水全量戻しの方法」を認めたうえで、中下流域の河川流量は維持され、地下水への影響はほぼないという結論を出したのだ。 JR東海は、最大の難工事となる、南アルプス断層帯が続く山梨県境付近の工事で、山梨県側から上り勾配で掘削、まったく対策を取らなければ、最大300万〜500万立方メートルの湧水が県外に流出すると推計した。工事期間のうち、10カ月間だけは県外流出することを当初から説明していた。 静岡県は、トンネル湧水全量の毎秒2.67立方メートル戻しをJR東海が表明してから、約1年後の2019年8月になって、「湧水の県外流出を認めない」と、さらにハードルを上げた。「全量戻し」には、「水1滴」も含まれるという主張に変わってしまった。 県内の新聞各紙が有識者会議結論に疑問を投げかけた「全量戻しの方法を示せ」とは県外流出分についてだったが、一般の県民にはまったく理解できない記事となった。 JR東海は有識者会議で、作業員の安全確保を踏まえ、静岡県側からの下り勾配よる水没の可能性などを説明した。有識者会議の専門家は、静岡県側からの下り勾配工事の危険性を認め、作業員の人命安全を優先、山梨県側からの上り勾配による掘削で、県外流出する300万〜500万立方メートルが中下流域の水環境に影響を及ぼすのかどうかを議論した。) 2021年2月の有識者会議で、県外流出される水量(最大500万立方メートル)について、水循環研究の第一人者、沖大幹・東大教授(水文学)は「非常に微々たる値でしかない」と指摘した。今回の結論となった中下流域への水環境への影響はほぼないという大きな理由のひとつである。 川勝知事の“命の水”とされる上水道だけでなく、農業、工業用水は下流域にある川口発電所付近の2つの取水口から年約9億立方メートルの表流水を導水管で取り入れている。 川口発電所直下の神座地区の河川流量は年平均約19億立方メートルで、上水道などに取られる約9億立方メートルを合計すると、実際の河川流量は年約28億立方メートルにも上る。 さらに、神座地区の河川流量は平均約19億立方メートルだが、変動幅はプラスマイナス9億立方メートルもある。沖教授は、この部分に着目、県外流出する量が最大500万立方メートルとしても、変動幅約9億立方メートルの0・55%と極めてわずかであり、リニア工事による県外流出量は年間の変動幅に吸収されてしまう値である、と説明した』、なるほど。
・『水問題は感情に結び付きやすい  「非常に微々たる値でしかない」県外流出量を静岡県は大きな問題にするのに、利水安定のために変動幅約9億立方メートルもの水をコントロールする対策に取り組んでいないと、沖教授は厳しく批判した。つまり、有識者会議は県外流出についての湧水全量戻しは取るに足らない問題だと結論づけたのだ。 ところが、有識者会議の中間報告が決定した直後、静岡県の難波喬司副知事は会見で「静岡県の意見もかなりの部分を反映してもらったが、必ずしも100%評価できない」としたうえで、県外流出する湧水について「関係者が納得する方策を協議すべきだ」などと述べた。静岡県内の記者たちは、そもそもの「全量戻し」や有識者会議の議論を理解しておらず、「JR東海の説明の不十分さが証明された」(難波氏)という指摘をそのまま受け入れてしまった。 県は2018年8月作成のリニア資料「水循環の状況(断面)」で、源流部から下流域まで地下水路が続き、下流域で大量の地下水が湧出していて、リニア工事が地下水路を遮断するイメージ図を提供、下流域の住民らの不安を煽ったのを皮切りに、川勝知事が先頭に立ち、リニア工事によって、下流域の水資源が枯渇するというイメージをつくり上げるのに躍起だった。 第1回有識者会議で、金子慎JR東海社長は「トンネル工事がどういう仕組みで(下流域に)被害を発生させるのか、専門的な知見から影響が起きる蓋然性(確率)を示してほしい」と要望、有識者会議は「ほぼ影響ない」という結論を示し、問題解決への道筋を示した。県外流出する湧水を含めて、「感情に結び付きやすい水問題」(沖教授)だけに、国、JR東海は有識者会議の結論をわかりやすく丁寧に流域住民に説明すべきである』、こじれ切った「水」問題、改めて中立的な「有識者会議」を作り、「JR東海」、「静岡県」とも冷静になって、ゼロから議論してゆくほかないのではなかろうか。
タグ:リニア新幹線 (その6)(調布市の道路陥没事故でリニア新幹線工事が不安になる理由、JR「超電導リニア」の技術は本当に完成したのか 気鋭の技術ライターの疑問と JR東海の見解、静岡リニア「トンネル湧水全量戻し」本当の問題点 有識者会議の結論は妥当だったが静岡県は反発) ダイヤモンド・オンライン「調布市の道路陥没事故でリニア新幹線工事が不安になる理由」 このニュースは昨日のこのブログでも紹介した 、確かに「外環道計画」自体は「交通政策」上は合理的だ。 、本年2月28日付けNHKナビによれば、東京地裁は「外環道」の 東名JCT~中央JCTの区間の工事中止を命じたようだ。 「リニア」の平地部分は、多くが「大深度地下」の「トンネル」なので、今回の問題がどういう形で決着するか、大いに注目される。 東洋経済オンライン「JR「超電導リニア」の技術は本当に完成したのか 気鋭の技術ライターの疑問と、JR東海の見解」 「MRIは空調の利いた室内に静置されているという非常に条件のいい状態で使われているにもかかわらず、クエンチが起きています」、「外気にさらされ、振動や衝撃も受けやすいという過酷な状況にさらされて」いる「超電導リニアの超電導磁石」は「クエンチが起きやすい状態なのです」。走行中に発生したら恐ろしいになりそうだ。 「JR東海から「山梨実験線ではクエンチは1度も起きていない」と書くようにとの指示が編集部経由で伝わってくる」、不自然な指示だ。「L0系の車両の図面にはトイレが見当たりません」、「高速走行する車両におけるトイレに関する技術が確立できていないと推測」、「「高速走行」では「トイレ」まで難しくなるとは初めて知った。 「もし誘導集電方式だけで車内電源を確保できるのであれば、改良型先頭車を2両製造して同じ編成に組み込むはずです。それをやっていないのは、誘導集電の技術が十分に磨かれていないことを意味します」、「JR東海の技術に対して、国の技術評価委員会の突っ込みが足りない」、その通りだ。 「本書の目的は批判ではなく、建設的な議論を進めることです」、なるほど。 「超電導磁石のクエンチではなかったことが判明した」、確かにそのようだ。 「国民の不安を払拭するためには、情報開示も含めて川辺氏の提唱するような「国民の幅広い議論」が必要かもしれない」、同感である。 東洋経済オンライン 小林 一哉氏による「静岡リニア「トンネル湧水全量戻し」本当の問題点 有識者会議の結論は妥当だったが静岡県は反発」 「1)」がどうして『湧水全量戻し 示さず』になるのか、理解できない。しかし、「全量戻せないならばおそらくは工事はできないだろうと思う人が多い」と述べ、約2年間もかけた議論を粉々に打ち砕いてしまった」、「中間報告」の意味はどこにあったのだろう。 地元マスコミにも批判されるような「結論」を出すよう「有識者会議」には、意味がないようだ。 こじれ切った「水」問題、改めて中立的な「有識者会議」を作り、「JR東海」、「静岡県」とも冷静になって、ゼロから議論してゆくほかないのではなかろうか。
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