大学(その10)(岸田文雄総理の息子も橋本聖子氏の娘も…“日大のドン”が自慢する新入生と 知られざる政界とのつながり、《日大前理事長逮捕》権力の秘密は相撲部監督時代の「日大内八百長」にあった なぜ前理事長は“田中帝国”を作れたのか?、日大前理事長の脱税 医学部不正入試 相次ぐ「大学不祥事」をなくすには?) [社会]
大学については、昨年12月13日に取上げた。今日は、(その10)(岸田文雄総理の息子も橋本聖子氏の娘も…“日大のドン”が自慢する新入生と 知られざる政界とのつながり、《日大前理事長逮捕》権力の秘密は相撲部監督時代の「日大内八百長」にあった なぜ前理事長は“田中帝国”を作れたのか?、日大前理事長の脱税 医学部不正入試 相次ぐ「大学不祥事」をなくすには?)である。
先ずは、昨年12月26日付け文春オンライン「岸田文雄総理の息子も橋本聖子氏の娘も…“日大のドン”が自慢する新入生と、知られざる政界とのつながり」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/50840
・『アメフトの悪質タックル問題が表面化する直前の2018年5月上旬。ある会合で、日大の“ドン”は、誇らしげにこう語っていた。 「日本大学は日本一の大学です。今年は岸田文雄外務大臣(注・実際は前年に外相退任)の息子が入学しましたし、来年は自民党の橋本聖子さんの娘が入ります」 東京地検に脱税容疑で逮捕された田中英寿前理事長(75)。彼が頼った“伏魔殿の生命線”は、知られざる政界とのパイプだった』、「知られざる政界とのパイプ」とは興味深そうだ。
・『まだ田中色一掃とは言い難い 司法担当記者が語る。 「逮捕後の家宅捜索では、田中氏の妻が経営するちゃんこ店の女性従業員が住む築41年の木造アパートから現金2000万円が発見された。他に、日大相撲部ОBで田中氏が会長を務める国際相撲連盟の会計に関わっていた日大職員の自宅にも家宅捜索が入った。彼が管理していた国際相撲連盟の田中氏名義の口座からはすでに金が引き出されていたそうです。特捜部は大学の理事長室からも7000万円を押収。さらに脱税額を積み上げ、田中氏を確実に実刑に持ち込みたい意向です」 拘置所での田中氏は持病のせいで生活に不自由があるものの、食欲は旺盛。脱税容疑については否認を貫いているという。 「田中氏は理事長を辞任し、12月3日の理事会で理事も解任されました。ただ、33人中6人の理事は解任決議に反対票を投じており、まだ田中色一掃とは言い難い」(日大関係者)』、「33人中6人の理事は解任決議に反対票」とは、「田中氏」の影響力は依然根強そうだ。
・『後任の理事長候補は? 一方、ポスト田中を巡る動きは政界にも及んでいる。 「日大医学部出身で、先日政界を引退した鴨下一郎元環境相を次の理事長にという声があります。推す一人が日大OBで菅義偉前首相の側近の星野剛士衆院議員で、彼も理事の候補と目されている」(永田町関係者) その星野議員が語る。 「今回の事件は日大板橋病院が舞台だっただけに、医学部出身で、日大関係者にも人望がある鴨下先生は理事長に適任だと思います。私も、もし母校のために何か出来ることがあるなら、汗をかくつもりでいます」 鴨下氏以外に、日大OBで、一時は大学の理事を務めた古賀誠元自民党幹事長も田中氏の後任理事長候補に名前が挙がっている。 日大では、出身者が地域や職域などで個別に「桜門会」というОB組織を全国に作っているが、政治家も例外ではない。自民党関係者が語る。 「自民党にも桜門会があり、20人弱の日大OB議員が年に1回、中華料理店などで田中氏や学長、日大幹部などと長らく懇親会を行なっていました」 メンバーには林幹雄前幹事長代理や、佐藤勉前総務会長、梶山弘志前経産相など錚々たる顔触れが並んだ。 ただ、それもここ5年ほどは行なわれていなかった。発端は会食の日程調整だった。田中氏は事務局的な役割だった中川俊直議員(当時)らを理事長室に呼びつけた。だが、彼らの顔も見ようとせず、無言でテレビを観ていたという』、「鴨下一郎元環境相」や、「古賀誠元自民党幹事長」が「後任理事長候補」とは興味深い。
・『田中氏の失礼な態度に中川氏は… 「『お座り下さい』の一言もなく、立たせたまま、大相撲を観ていたそうです。陣笠議員など相手にしないと言わんばかりの対応に、中川氏らは怒って5分ほどで部屋を後にした。元々会食の席でも、田中氏は仏頂面でほとんど喋らない。そんな失礼な態度もあって、約5年前に定期的な会食は取り止めになった」(同前) しかし、この一件で日大と自民党のパイプが切れた訳ではない。日大では、田中氏が理事長に就任した08年から学識経験のある学外理事のなかに、常に“政治家枠”を設けてきた。 「最初の3年は古賀氏、そして政権交代で09年に自民党が野に下ると、当時民主党の実力者だった小沢一郎氏を理事に選出。12年に自民党が政権を奪還すると、小沢氏を残して今度は鴨下氏を理事に据えました。直近では前選対委員長の山口泰明氏が理事を務めていました。こうして、常に政権与党で枢要な位置にいる日大出身議員を理事に迎え入れて来たのです」(同前) 田中氏の華麗な政界人脈を見せつけたのが、日大130周年記念を巡る二つのイベントである。 「周年事業の目玉として、前から近しい亀井静香元運輸相の尽力で危機管理学部を創設。16年春の開校祝賀会には亀井氏や文教族のドン、森喜朗元首相が姿をみせました」(日大元幹部)』、「常に政権与党で枢要な位置にいる日大出身議員を理事に迎え入れて来た」、とはさすがだ。
・『田中氏の目配りは政治家の子弟にも JОC副会長でもあった田中氏は、東京五輪招致を牽引した森氏との関係を誇示するように、当時から「招致資金の一部は自分が出した」と周囲に豪語した。 「田中氏の最高の栄誉となるはずだった130周年記念式典は、19年10月に行なわれました。アメフト問題で日大の権威が失墜する中、国会開会日にもかかわらず、麻生太郎財務相や山東昭子参院議長が駆け付けた」(前出・日大元幹部) 田中氏の目配りは政治家の子弟にも及んでいた。それが冒頭の発言だ。 「岸田氏の次男は新設のスポーツ科学部を来春卒業してスポーツ関連会社に就職予定。橋本氏の三女は日大の準付属高校から学校推薦でスポーツ科学部に入学し、今も在学中です」(同前) 田中氏には政治もまた、権力の道具に過ぎなかった』、「東京五輪招致・・・「招致資金の一部は自分が出した」」、というのは。あり得る話だ。「目配りは政治家の子弟にも及んでいた」、利用できるものは何でも利用するようだ。
第三に、5月2日付けAERAdot「日大前理事長の脱税、医学部不正入試 相次ぐ「大学不祥事」をなくすには?」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/dot/2022042600055.html?page=1
・『近年の不正入試、理事長の脱税で、大学への信頼は大きく傷ついた。大学運営を改善するため、国は厳しい「ガバナンス」を求めたが、賛否が渦巻いている。『大学ランキング2023』(朝日新聞出版)から紹介する。 2018年、東京医科大の入試選考において女子受験生の得点を低く操作し、不合格にしていたことが発覚した。 「女性は結婚、出産で医師の仕事を離れることがあるから」というような理由で、女子の入学者数を制限したとされている。これに対し、「重大な女性差別だ」という厳しい批判が起こった。 21年、日本大理事長の田中英壽氏が所得税法違反の容疑で逮捕され、のちに起訴された。日大板橋病院の建て替えをめぐり、計約1億2千万円のリベート収入を申告しなかった脱税容疑が問われたものだ。のちに、田中氏は東京地裁で懲役1年執行猶予3年罰金1300万円の判決を受けた。日本大は田中氏の理事職を解任した。新理事長の加藤直人氏は「日本大学は田中前理事長と永久に決別し、その影響力を排除します」と宣言した。 東京医科大、日本大いずれの事件も連日報道が続き、大学そのものに対する風あたりも強まった。大学は「社会の常識とかけ離れている」と言われてしまう』、「日本大」「新理事長の加藤直人氏」は「危険アメフット事件」が発生した時の「アメフット部長」だったので、完全に復権したようだ。
・『大学への信頼を取り戻すため大学運営のあり方を見直す なかでも日本大は、大学トップが引き起こした事件であり、自らが不祥事をただして究明する、つまり、大学に自浄作用を求めるのは難しいのではないか、というさめた見方もあった。 国は看過できなかった。大学への信頼を取り戻すため、大学運営のあり方を根本的に見直そうとする。「大学トップの暴走を止めるにはどうしたらいいか」というテーマまで議論された。 21年7月、文部科学省は有識者による「学校法人ガバナンス改革会議」を設置した。ガバナンスとは、「統治」と訳されている。この言葉の語源は「舵を取る」という意味のラテン語である。) (「大学のガバナンスで問われる失政、事件、事故、不祥事」の表はリンク先参照) ここでのガバナンスは、透明性が保証された、不祥事を起こさない組織づくり、不祥事を起こしたときに対応できる指示系統、といった意味合いが込められる。 ガバナンスは企業経営で多く用いられる概念だ。「コーポレート・ガバナンス」のあり方を問いただすとき、その企業の「経営陣が企業倫理や社会規範を順守し、組織の健全性、透明性、誠実性」が重要なテーマになる。たとえば、脱税、粉飾決算、不正経理、贈収賄などの不祥事への対応、説明責任だ』、「文部科学省」がようやく「学校法人ガバナンス改革会議」、を設置したようだ。
・『不祥事の温床になる制度や体質をあらためる 大学についても、2000年代に入ってガバナンスという概念が浸透しはじめている。「あの大学のガバナンスはどうなっているのか」と問われたとき、大学トップの専横を許した、大学の一部局あるいは一職員の失政を止められなかった、というケースが多く見られた。 失政について生々しい話がある。 08年、いくつかの大学がデリバティブ(金融派生商品)による資産運用に失敗している。リーマン・ショックに端を発したアメリカの金融危機によって、とんでもない額を失った。当時の報道によれば、駒澤大154億円、立正大148億円、慶應義塾大225億円などの損失や評価損を出したのである。これほどの巨額損失を許した大学の甘い体質が問われた。 私立大は国からの私学助成を受けている。こうした損失の責任はどこにあるのか。大学に対する信頼を失うものであり、しっかりしたガバナンスが求められるのは当然のことだった。 このほかにも、大学ではガバナンスが問われるさまざまな問題が起こっている。不正入試、論文改ざん、研究費不正、セクハラ、パワハラなどだ。 東京医科大、日本大で起こった不祥事を繰り返させてはならない。そのために、「学校法人ガバナンス改革会議」は、不祥事の温床になるような、大学の旧態依然の制度や体質をあらためる政策を打ち出し、大学のガバナンス=統治をしっかり機能させようとしたのである』、「デリバティブ」「による資産運用に失敗」は、「これほどの巨額損失を許した大学の甘い体質が問われる」とするが、「資産運用」では損失が出ることも珍しくないので、やや厳し過ぎる表現だ。
・『内部チェックや牽制機能がなく理事長の暴走を容易に許した 21年12月、「学校法人ガバナンス改革会議」は不祥事の再発防止を念頭に、新しいガバナンスを示した最終報告書をまとめた。そのなかにこんなフレーズがある。「評議員会を最高監督、議決機関と定める」「現役の理事、監事及び職員との兼任は認めず、その選任も理事又は理事会において行うことを認めない」。 わかりやすくいえば、(1)大学の最高議決機関をこれまでの理事会から評議員会に変更して、評議員を全員、学外者とする。理事長、学長、教員は評議員になれない。(2)評議員会の議決権は予算や事業計画のほか理事らの選任にも及ぶこととなり、学部設置、施設建設など重大なことが学外者によって決定される。 なぜ、こんな政策が打ち出されたか。 いま、大学では理事会が強い権力をもっている。しかし、そのトップである理事長が長く居すわって教育、研究を停滞させたり、不正を行って私腹を肥やしたりしても、それを諫めることができないし、解任するなどは不可能だからだ。 大学ガバナンスに取り組んできた、元国会議員の塩崎恭久氏はこう指摘する。 「大学は、公益法人として固定資産税、法人税等多額の免税措置を受けています。ところが、何ら有効な内部チェックや牽制機能が働かないまま理事長の暴走を容易に許してしまった。現行法制下のガバナンスの仕組みこそが問題で、それを定めている私立学校法などを速やかに抜本改正することが不可欠だ、という事です」(「デイリー新潮」21年12月24日)。 そこで、評議員会を大学の最高決議機関として、大学運営のあらゆる面をチェックできる機能をもつようにした。また、不祥事を起こした理事や理事長を解任する権限をもっている。いうなれば第2、第3の日大・田中理事長を出さないための政策である』、「評議員を全員、学外者」、ということで、果たして実効性ある決定が出来るのか、疑問もある。
・『大学の自治が保障されたからこそ、学問の観点から大事だと考える ところが、この最終報告書について、私立大学の多くが反発した。 日本私立大学連盟はこう批判する。) 「評議員会を株主総会と同視し、コーポレート・ガバナンスの考え方をそのまま私立大学の経営に導入しようとする点は、理論上合理性を欠くものと言わざるを得ません。(略)学生と日頃接していない学外評議員だけで、私立大学の教育研究に関する運営の責任は取れません。特に、提案の中核にある『学外者のみで構成される評議員会が、学校法人の重要事項の議決と理事及び監事の選解任を自由にできる』という制度では、学修者本位の教育環境は破壊され、評議員会が暴走しても止めることが出来なくなります」 日本私立大学連盟会長、早稲田大総長の田中愛治さんは、学外者だけの評議員会を最高議決機関にするのはおかしい、と批判する。 「評議員は学生に接する機会がほとんどありません。例えば、多くの学生がオンライン授業を残してほしいと希望しているのに、苦しむ学生を紹介する報道だけを見て、中止を一方的に決められては、誰よりも学生が困ります。(略)大学の自治が保障されてきたからこそ、学問の観点から大事だと考えることに取り組むことができていたのです。そうした歴史を踏まえず、経営的な観点だけで方針を決めるのでは道を誤ります」(朝日新聞2022年1月15日) 文科省が唱えたガバナンスによる大学運営健全化と、大学が守りたい自治や学問の自由のあいだには隔たりがあり、現在、学校法人ガバナンス改革会議で議論を進めている。 文科省、大学ともに重きをおくべきは、学生目線を採り入れたガバナンスだ。専横な大学トップ、危なっかしい経営によって「学生が困ります」という状況を作ってはならない』、「学生に接する機会がほとんど」ない「評議員」による「評議員会を最高議決機関にするのはおかしい」との「早稲田大総長」の批判はその通りだと思う。「現在、学校法人ガバナンス改革会議で議論を進めている。 文科省、大学ともに重きをおくべきは、学生目線を採り入れたガバナンスだ」、今後、実効性ある提言が出てくることを期待したい。
先ずは、昨年12月26日付け文春オンライン「岸田文雄総理の息子も橋本聖子氏の娘も…“日大のドン”が自慢する新入生と、知られざる政界とのつながり」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/50840
・『アメフトの悪質タックル問題が表面化する直前の2018年5月上旬。ある会合で、日大の“ドン”は、誇らしげにこう語っていた。 「日本大学は日本一の大学です。今年は岸田文雄外務大臣(注・実際は前年に外相退任)の息子が入学しましたし、来年は自民党の橋本聖子さんの娘が入ります」 東京地検に脱税容疑で逮捕された田中英寿前理事長(75)。彼が頼った“伏魔殿の生命線”は、知られざる政界とのパイプだった』、「知られざる政界とのパイプ」とは興味深そうだ。
・『まだ田中色一掃とは言い難い 司法担当記者が語る。 「逮捕後の家宅捜索では、田中氏の妻が経営するちゃんこ店の女性従業員が住む築41年の木造アパートから現金2000万円が発見された。他に、日大相撲部ОBで田中氏が会長を務める国際相撲連盟の会計に関わっていた日大職員の自宅にも家宅捜索が入った。彼が管理していた国際相撲連盟の田中氏名義の口座からはすでに金が引き出されていたそうです。特捜部は大学の理事長室からも7000万円を押収。さらに脱税額を積み上げ、田中氏を確実に実刑に持ち込みたい意向です」 拘置所での田中氏は持病のせいで生活に不自由があるものの、食欲は旺盛。脱税容疑については否認を貫いているという。 「田中氏は理事長を辞任し、12月3日の理事会で理事も解任されました。ただ、33人中6人の理事は解任決議に反対票を投じており、まだ田中色一掃とは言い難い」(日大関係者)』、「33人中6人の理事は解任決議に反対票」とは、「田中氏」の影響力は依然根強そうだ。
・『後任の理事長候補は? 一方、ポスト田中を巡る動きは政界にも及んでいる。 「日大医学部出身で、先日政界を引退した鴨下一郎元環境相を次の理事長にという声があります。推す一人が日大OBで菅義偉前首相の側近の星野剛士衆院議員で、彼も理事の候補と目されている」(永田町関係者) その星野議員が語る。 「今回の事件は日大板橋病院が舞台だっただけに、医学部出身で、日大関係者にも人望がある鴨下先生は理事長に適任だと思います。私も、もし母校のために何か出来ることがあるなら、汗をかくつもりでいます」 鴨下氏以外に、日大OBで、一時は大学の理事を務めた古賀誠元自民党幹事長も田中氏の後任理事長候補に名前が挙がっている。 日大では、出身者が地域や職域などで個別に「桜門会」というОB組織を全国に作っているが、政治家も例外ではない。自民党関係者が語る。 「自民党にも桜門会があり、20人弱の日大OB議員が年に1回、中華料理店などで田中氏や学長、日大幹部などと長らく懇親会を行なっていました」 メンバーには林幹雄前幹事長代理や、佐藤勉前総務会長、梶山弘志前経産相など錚々たる顔触れが並んだ。 ただ、それもここ5年ほどは行なわれていなかった。発端は会食の日程調整だった。田中氏は事務局的な役割だった中川俊直議員(当時)らを理事長室に呼びつけた。だが、彼らの顔も見ようとせず、無言でテレビを観ていたという』、「鴨下一郎元環境相」や、「古賀誠元自民党幹事長」が「後任理事長候補」とは興味深い。
・『田中氏の失礼な態度に中川氏は… 「『お座り下さい』の一言もなく、立たせたまま、大相撲を観ていたそうです。陣笠議員など相手にしないと言わんばかりの対応に、中川氏らは怒って5分ほどで部屋を後にした。元々会食の席でも、田中氏は仏頂面でほとんど喋らない。そんな失礼な態度もあって、約5年前に定期的な会食は取り止めになった」(同前) しかし、この一件で日大と自民党のパイプが切れた訳ではない。日大では、田中氏が理事長に就任した08年から学識経験のある学外理事のなかに、常に“政治家枠”を設けてきた。 「最初の3年は古賀氏、そして政権交代で09年に自民党が野に下ると、当時民主党の実力者だった小沢一郎氏を理事に選出。12年に自民党が政権を奪還すると、小沢氏を残して今度は鴨下氏を理事に据えました。直近では前選対委員長の山口泰明氏が理事を務めていました。こうして、常に政権与党で枢要な位置にいる日大出身議員を理事に迎え入れて来たのです」(同前) 田中氏の華麗な政界人脈を見せつけたのが、日大130周年記念を巡る二つのイベントである。 「周年事業の目玉として、前から近しい亀井静香元運輸相の尽力で危機管理学部を創設。16年春の開校祝賀会には亀井氏や文教族のドン、森喜朗元首相が姿をみせました」(日大元幹部)』、「常に政権与党で枢要な位置にいる日大出身議員を理事に迎え入れて来た」、とはさすがだ。
・『田中氏の目配りは政治家の子弟にも JОC副会長でもあった田中氏は、東京五輪招致を牽引した森氏との関係を誇示するように、当時から「招致資金の一部は自分が出した」と周囲に豪語した。 「田中氏の最高の栄誉となるはずだった130周年記念式典は、19年10月に行なわれました。アメフト問題で日大の権威が失墜する中、国会開会日にもかかわらず、麻生太郎財務相や山東昭子参院議長が駆け付けた」(前出・日大元幹部) 田中氏の目配りは政治家の子弟にも及んでいた。それが冒頭の発言だ。 「岸田氏の次男は新設のスポーツ科学部を来春卒業してスポーツ関連会社に就職予定。橋本氏の三女は日大の準付属高校から学校推薦でスポーツ科学部に入学し、今も在学中です」(同前) 田中氏には政治もまた、権力の道具に過ぎなかった』、「東京五輪招致・・・「招致資金の一部は自分が出した」」、というのは。あり得る話だ。「目配りは政治家の子弟にも及んでいた」、利用できるものは何でも利用するようだ。
第三に、5月2日付けAERAdot「日大前理事長の脱税、医学部不正入試 相次ぐ「大学不祥事」をなくすには?」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/dot/2022042600055.html?page=1
・『近年の不正入試、理事長の脱税で、大学への信頼は大きく傷ついた。大学運営を改善するため、国は厳しい「ガバナンス」を求めたが、賛否が渦巻いている。『大学ランキング2023』(朝日新聞出版)から紹介する。 2018年、東京医科大の入試選考において女子受験生の得点を低く操作し、不合格にしていたことが発覚した。 「女性は結婚、出産で医師の仕事を離れることがあるから」というような理由で、女子の入学者数を制限したとされている。これに対し、「重大な女性差別だ」という厳しい批判が起こった。 21年、日本大理事長の田中英壽氏が所得税法違反の容疑で逮捕され、のちに起訴された。日大板橋病院の建て替えをめぐり、計約1億2千万円のリベート収入を申告しなかった脱税容疑が問われたものだ。のちに、田中氏は東京地裁で懲役1年執行猶予3年罰金1300万円の判決を受けた。日本大は田中氏の理事職を解任した。新理事長の加藤直人氏は「日本大学は田中前理事長と永久に決別し、その影響力を排除します」と宣言した。 東京医科大、日本大いずれの事件も連日報道が続き、大学そのものに対する風あたりも強まった。大学は「社会の常識とかけ離れている」と言われてしまう』、「日本大」「新理事長の加藤直人氏」は「危険アメフット事件」が発生した時の「アメフット部長」だったので、完全に復権したようだ。
・『大学への信頼を取り戻すため大学運営のあり方を見直す なかでも日本大は、大学トップが引き起こした事件であり、自らが不祥事をただして究明する、つまり、大学に自浄作用を求めるのは難しいのではないか、というさめた見方もあった。 国は看過できなかった。大学への信頼を取り戻すため、大学運営のあり方を根本的に見直そうとする。「大学トップの暴走を止めるにはどうしたらいいか」というテーマまで議論された。 21年7月、文部科学省は有識者による「学校法人ガバナンス改革会議」を設置した。ガバナンスとは、「統治」と訳されている。この言葉の語源は「舵を取る」という意味のラテン語である。) (「大学のガバナンスで問われる失政、事件、事故、不祥事」の表はリンク先参照) ここでのガバナンスは、透明性が保証された、不祥事を起こさない組織づくり、不祥事を起こしたときに対応できる指示系統、といった意味合いが込められる。 ガバナンスは企業経営で多く用いられる概念だ。「コーポレート・ガバナンス」のあり方を問いただすとき、その企業の「経営陣が企業倫理や社会規範を順守し、組織の健全性、透明性、誠実性」が重要なテーマになる。たとえば、脱税、粉飾決算、不正経理、贈収賄などの不祥事への対応、説明責任だ』、「文部科学省」がようやく「学校法人ガバナンス改革会議」、を設置したようだ。
・『不祥事の温床になる制度や体質をあらためる 大学についても、2000年代に入ってガバナンスという概念が浸透しはじめている。「あの大学のガバナンスはどうなっているのか」と問われたとき、大学トップの専横を許した、大学の一部局あるいは一職員の失政を止められなかった、というケースが多く見られた。 失政について生々しい話がある。 08年、いくつかの大学がデリバティブ(金融派生商品)による資産運用に失敗している。リーマン・ショックに端を発したアメリカの金融危機によって、とんでもない額を失った。当時の報道によれば、駒澤大154億円、立正大148億円、慶應義塾大225億円などの損失や評価損を出したのである。これほどの巨額損失を許した大学の甘い体質が問われた。 私立大は国からの私学助成を受けている。こうした損失の責任はどこにあるのか。大学に対する信頼を失うものであり、しっかりしたガバナンスが求められるのは当然のことだった。 このほかにも、大学ではガバナンスが問われるさまざまな問題が起こっている。不正入試、論文改ざん、研究費不正、セクハラ、パワハラなどだ。 東京医科大、日本大で起こった不祥事を繰り返させてはならない。そのために、「学校法人ガバナンス改革会議」は、不祥事の温床になるような、大学の旧態依然の制度や体質をあらためる政策を打ち出し、大学のガバナンス=統治をしっかり機能させようとしたのである』、「デリバティブ」「による資産運用に失敗」は、「これほどの巨額損失を許した大学の甘い体質が問われる」とするが、「資産運用」では損失が出ることも珍しくないので、やや厳し過ぎる表現だ。
・『内部チェックや牽制機能がなく理事長の暴走を容易に許した 21年12月、「学校法人ガバナンス改革会議」は不祥事の再発防止を念頭に、新しいガバナンスを示した最終報告書をまとめた。そのなかにこんなフレーズがある。「評議員会を最高監督、議決機関と定める」「現役の理事、監事及び職員との兼任は認めず、その選任も理事又は理事会において行うことを認めない」。 わかりやすくいえば、(1)大学の最高議決機関をこれまでの理事会から評議員会に変更して、評議員を全員、学外者とする。理事長、学長、教員は評議員になれない。(2)評議員会の議決権は予算や事業計画のほか理事らの選任にも及ぶこととなり、学部設置、施設建設など重大なことが学外者によって決定される。 なぜ、こんな政策が打ち出されたか。 いま、大学では理事会が強い権力をもっている。しかし、そのトップである理事長が長く居すわって教育、研究を停滞させたり、不正を行って私腹を肥やしたりしても、それを諫めることができないし、解任するなどは不可能だからだ。 大学ガバナンスに取り組んできた、元国会議員の塩崎恭久氏はこう指摘する。 「大学は、公益法人として固定資産税、法人税等多額の免税措置を受けています。ところが、何ら有効な内部チェックや牽制機能が働かないまま理事長の暴走を容易に許してしまった。現行法制下のガバナンスの仕組みこそが問題で、それを定めている私立学校法などを速やかに抜本改正することが不可欠だ、という事です」(「デイリー新潮」21年12月24日)。 そこで、評議員会を大学の最高決議機関として、大学運営のあらゆる面をチェックできる機能をもつようにした。また、不祥事を起こした理事や理事長を解任する権限をもっている。いうなれば第2、第3の日大・田中理事長を出さないための政策である』、「評議員を全員、学外者」、ということで、果たして実効性ある決定が出来るのか、疑問もある。
・『大学の自治が保障されたからこそ、学問の観点から大事だと考える ところが、この最終報告書について、私立大学の多くが反発した。 日本私立大学連盟はこう批判する。) 「評議員会を株主総会と同視し、コーポレート・ガバナンスの考え方をそのまま私立大学の経営に導入しようとする点は、理論上合理性を欠くものと言わざるを得ません。(略)学生と日頃接していない学外評議員だけで、私立大学の教育研究に関する運営の責任は取れません。特に、提案の中核にある『学外者のみで構成される評議員会が、学校法人の重要事項の議決と理事及び監事の選解任を自由にできる』という制度では、学修者本位の教育環境は破壊され、評議員会が暴走しても止めることが出来なくなります」 日本私立大学連盟会長、早稲田大総長の田中愛治さんは、学外者だけの評議員会を最高議決機関にするのはおかしい、と批判する。 「評議員は学生に接する機会がほとんどありません。例えば、多くの学生がオンライン授業を残してほしいと希望しているのに、苦しむ学生を紹介する報道だけを見て、中止を一方的に決められては、誰よりも学生が困ります。(略)大学の自治が保障されてきたからこそ、学問の観点から大事だと考えることに取り組むことができていたのです。そうした歴史を踏まえず、経営的な観点だけで方針を決めるのでは道を誤ります」(朝日新聞2022年1月15日) 文科省が唱えたガバナンスによる大学運営健全化と、大学が守りたい自治や学問の自由のあいだには隔たりがあり、現在、学校法人ガバナンス改革会議で議論を進めている。 文科省、大学ともに重きをおくべきは、学生目線を採り入れたガバナンスだ。専横な大学トップ、危なっかしい経営によって「学生が困ります」という状況を作ってはならない』、「学生に接する機会がほとんど」ない「評議員」による「評議員会を最高議決機関にするのはおかしい」との「早稲田大総長」の批判はその通りだと思う。「現在、学校法人ガバナンス改革会議で議論を進めている。 文科省、大学ともに重きをおくべきは、学生目線を採り入れたガバナンスだ」、今後、実効性ある提言が出てくることを期待したい。
タグ:大学 文春オンライン「岸田文雄総理の息子も橋本聖子氏の娘も…“日大のドン”が自慢する新入生と、知られざる政界とのつながり」 (その10)(岸田文雄総理の息子も橋本聖子氏の娘も…“日大のドン”が自慢する新入生と 知られざる政界とのつながり、《日大前理事長逮捕》権力の秘密は相撲部監督時代の「日大内八百長」にあった なぜ前理事長は“田中帝国”を作れたのか?、日大前理事長の脱税 医学部不正入試 相次ぐ「大学不祥事」をなくすには?) 「知られざる政界とのパイプ」とは興味深そうだ。 「33人中6人の理事は解任決議に反対票」とは、「田中氏」の影響力は依然根強そうだ。 「鴨下一郎元環境相」や、「古賀誠元自民党幹事長」が「後任理事長候補」とは興味深い。 「常に政権与党で枢要な位置にいる日大出身議員を理事に迎え入れて来た」、とはさすがだ。 「東京五輪招致・・・「招致資金の一部は自分が出した」」、というのは。あり得る話だ。「目配りは政治家の子弟にも及んでいた」、利用できるものは何でも利用するようだ。 AERAdot「日大前理事長の脱税、医学部不正入試 相次ぐ「大学不祥事」をなくすには?」 「日本大」「新理事長の加藤直人氏」は「危険アメフット事件」が発生した時の「アメフット部長」だったので、完全に復権したようだ。 「文部科学省」がようやく「学校法人ガバナンス改革会議」、を設置したようだ。 「デリバティブ」「による資産運用に失敗」は、「これほどの巨額損失を許した大学の甘い体質が問われる」とするが、「資産運用」では損失が出ることも珍しくないので、やや厳し過ぎる表現だ。 「評議員を全員、学外者」、ということで、果たして実効性ある決定が出来るのか、疑問もある。 専横な大学トップ、危なっかしい経営によって「学生が困ります」という状況を作ってはならない』、「学生に接する機会がほとんど」ない「評議員」による「評議員会を最高議決機関にするのはおかしい」との「早稲田大総長」の批判はその通りだと思う。「現在、学校法人ガバナンス改革会議で議論を進めている。 文科省、大学ともに重きをおくべきは、学生目線を採り入れたガバナンスだ」、今後、実効性ある提言が出てくることを期待したい。