SSブログ

医療問題(その35)(東大医学部卒・和田秀樹「私が偏差値の高い子に東大医学部をお勧めしないこれだけの理由」 灘→東大理Ⅲだからこそ言える、うつ病3題:うつの再発を繰り返す人は「双極性II型障害」かも…、うつの本当の原因は発達障害だった そんなケースが増えています、うつの本当の原因は発達障害だった そんなケースが増えています) [生活]

医療問題については、1月28日に取上げた。今日は、(その35)(東大医学部卒・和田秀樹「私が偏差値の高い子に東大医学部をお勧めしないこれだけの理由」 灘→東大理Ⅲだからこそ言える、うつ病3題:うつの再発を繰り返す人は「双極性II型障害」かも…、うつの本当の原因は発達障害だった そんなケースが増えています、うつの本当の原因は発達障害だった そんなケースが増えています)である。

先ずは、1月21日付けPRESIDENT Onlineが掲載した国際医療福祉大学大学院教授の和田 秀樹氏による「東大医学部卒・和田秀樹「私が偏差値の高い子に東大医学部をお勧めしないこれだけの理由」 灘→東大理Ⅲだからこそ言える」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/53975?page=1
・『「医者になれないなら人を殺して、罪悪感を背負って切腹しようと思った」。1月15日、大学入学共通テスト初日に、高校2年生が受験生ら3人を刺傷し、逮捕された。精神科医の和田秀樹さんは「受験生の中には『絶対、東大』『絶対、医学部』といった、かくあるべし思考に陥って、それができないと『ダメな人間だ』と自分を責める人がいる。実際には他の選択肢もあり、むしろそのほうが社会的地位や収入が高いケースもあることを知ってほしい」という――』、興味深そうだ。
・『今、日本には「死にたい」と思っている人が約40万人いる  大学入学共通テストの初日である1月15日に、試験会場・東京大学の前の歩道で高校2年生が受験生を含む3人を突然切り付けて、殺人未遂容疑で逮捕された。 私は精神科医であり、受験指導にも関わる仕事をしているためか、メディアから取材依頼の電話が殺到したが、ほとんど断らせていただいた。なぜなら、この少年が「東大を目指していた。医者になれないなら人を殺して、罪悪感を背負って切腹しようと思った」と供述している、と報じられたからだ。 これが事実なら、「拡大自殺」を考えていたことになる。拡大自殺とは、騒ぎを起こして多数の人間を殺し、死刑になることで自殺しようとする行為である。 自殺報道は大々的にやるほど、かえって自殺が増えることは統計学的にも確認されている。そのためWHO(世界保健機関)はたびたびメディア関係者に自殺報道のガイドラインを出している。厚生労働省もそれを基に「自殺対策を推進するためにメディア関係者に知ってもらいたい基礎知識」をHP上に掲示。その中でやっていけないこととして「自殺の報道記事を目立つように配置しないこと。また報道を過度に繰り返さないこと」「自殺に用いた手段について明確に表現しないこと」などと書かれている。 その厚労省の掲示によれば、以前、ウィーンの地下鉄で自殺が頻発したが、その報道をやめたとたん地下鉄の自殺死亡率が75%低下し、さらにウィーン全体の自殺死亡率が20%低下した、とある。 2021年10月末の京王線ジョーカー事件(※1)や、12月の大阪の心療内科クリニック放火事件(※2)など、拡大自殺と思われる事件が続いている。自殺の手段として拡大自殺が知られてしまうと、それをまねする人が出ることで、本人の命だけでなく、巻き添えになる人の命まで危険にさらされる。 ※1 電車内でナイフを用いて乗客17人に重軽傷を負わせ、油をまいて火を放った男が殺人未遂容疑で逮捕された。※2 北区曽根崎新地のビルに入るクリニックが放火され、巻き込まれた25人が死亡、1人が重体。 そういう意味で、この事件はあまりセンセーショナルに報じられてほしくなかったのだ。 読者の皆さんは、世の中に「死にたい」と思う人はどれくらいいると思うだろうか。一般的に人口の3%程度がうつ病と推測されている。すると日本中に380万人程度のうつ病患者がいることになる。そのうち、少なくとも10%程度に希死念慮が生じるとされるから、現時点で死にたいと思っている人は40万人くらいいることになる。 そういう人にとって、自殺報道は強い刺激になり、自殺に踏み切るきっかけになる。やり方を知るとまねをする人が出てしまう。だから危険なのだ。 ただ、私があえて今回この事件を取り上げようと思ったのは、受験生の中に、うつ病や自殺につながる思考パターンを持っている人が多いように映ったからだ。どれだけ役に立てるかわからないが、その思考パターンを和らげるのに役立てばと思って寄稿することにした』、「拡大自殺」に関しては。「自殺報道は大々的にやるほど、かえって自殺が増えることは統計学的にも確認されている」、「2021年10月末の京王線ジョーカー事件(※1)や、12月の大阪の心療内科クリニック放火事件(※2)など、拡大自殺と思われる事件が続いている」、マスコミが興味本位で報道するのは、なるべく控えるべきだろう。
・『「医学部でないとダメ」「東大でないとダメ」という思考  「医学部でないといけない」「東大でないといけない」……一部の成績優秀層にはこうした思考パターンに陥る人がいる。 これは認知療法という心の治療法の治療対象のひとつである「かくあるべし」思考だ。この思考パターンの人は物事に対して「かくあるべし」と考えがちで、思うとおりにならないと、「自分はダメな人間だ」というレッテル貼りをしたり、ひどい場合は生きている価値がないと思ったりしてしまう。 そういう場合に、私が専門とする精神科の認知療法では、ほかにも道があることを提示していく。ほかの可能性が考えられるようになれば、うつ病も緩和されていく可能性がある。あるいは、常日頃かくあるべし、この道しかないと思っている人に、ほかの生き方もある、ほかのやり方もあると思えるようになれば、うつ病や自殺の予防になる。 受験生の中に「医学部でないといけない」「東大でないといけない」といった狭い思考になっている人がいたら、どうか「ほかの道・生き方」があることを知ってほしい(これは、東大や医学部に限らず、今冬に名門校を受験する小学生や中学生にも言える)。 私自身、灘高校にいた頃、勉強のやり方を工夫することで成績が上がったこともあって、「医学部に行くなら、東大理Ⅲしかない」と思っていた。それしか頭になかった。ただ、現実に東大理Ⅲに入学し、医学部に進学し、そこを卒業したからこそ、この考え方は間違いだったと断言できる。 出身大学についてあまりネガティブなことを言いたくないが、東大医学部には組織的な問題を抱えている。医学部なら東大だ、と思い込んで受験し合格した人は卒業した後、今度は東大医学部内で偉くなろうとするかもしれない。でも、それはやめたほうがいい』、「現実に東大理Ⅲに入学し、医学部に進学し、そこを卒業したからこそ、この考え方は間違いだったと断言できる」、「東大医学部には組織的な問題を抱えている」、なるほど。
・『なぜ、東大医学部はノーベル賞受賞者を出せないのか  理Ⅲ=東大医学部は昔も今も受験界の最高峰であり、最難関である。しかし、ノーベル賞学者を一人も輩出していない。世の中に知られた研究成果や業績にも乏しいと言わざるをえない。 なぜか。それは、上が威張りすぎているからだ。 同じ東大でもノーベル賞学者を数多く輩出する物理学科(理学部)では、教授のことを「先生」と呼んではいけないそうで「さん」で呼び合うそうだ。研究者が対等でないと、自由な研究ができないという考えがあるからだという。 東大医学部内には教授を頂点とする絶対的ヒエラルキーがある。だから、威張っている教授に対してご機嫌伺いするのは、部下なら当然のことだ。 私の結婚式でスピーチをしてくれた高校時代の親友がいる。彼も東大医学部に合格した。ある時、私は執筆した原稿の中で、高齢者の患者へ薬の使い過ぎではないかと彼が所属する医局の教授の批判をした。すると彼は自分の結婚式に私を呼ばなかった。以来、同窓会の案内くらいしか連絡がないような状態となっている。彼は教授のお気に入りであったせいか、現在、東大医学部教授になっている。正直にいえば、研究者としての業績が特に優れているとは思えず、その地位をなぜ手にできたかわからない。 そのくらい教授に気を使わないといけない医局が多い(もちろん、そうでない教授もいると信じているが)。今どき、そんな「白い巨塔」のような閉塞的な組織が何か成果を残せるはずがない。部下は、私生活も自由でないし、研究も自由にできるとは思えない』、「今どき、そんな「白い巨塔」のような閉塞的な組織が何か成果を残せるはずがない。部下は、私生活も自由でないし、研究も自由にできるとは思えない」、今どき「「白い巨塔」のような閉塞的な組織」が存在していること自体が驚きだ。
・『東大医学部は臨床の腕を磨くのに適した環境ではない  臨床の腕を磨くにも東大医学部は決して適した環境ではない。教授になるのは、大した研究業績もないものの、論文の数だけは多い人であり、天皇陛下の手術の際も問題になったように臨床の腕のいい人が教授になることはめったにない。 残念ながら医者というのは、師に恵まれないとあまり臨床の腕は上がらない。 私が老年精神医学の分野でそれなりに自信をもてるのは、浴風会病院(東京都杉並区)という高齢者専門の総合病院で故竹中星郎先生という老年精神医学の第一人者のもとで学ぶことができたからだ。 2004年に導入された臨床研修制度も東大医学部卒の価値を下げた。この制度により、どこの大学医学部を出ていても、好きな研修先(病院)が選べる。東大を出ていないと研修できない病院などなくなったのだ。 希望した病院の研修医の応募が多い場合、選抜の試験が行われる。この際、大学在学中の成績が重視されるので、東大より偏差値の低い大学で優等生のほうが、東大の劣等生より、希望した研修先に入りやすいとされる。 ということで、東大医学部は現状、研究も冴えない、臨床の腕も大して磨かれないダメ組織という側面が強い。しかも、医学部では「金儲けに走るのは恥」といった古い価値観「を植え付けられるので、大病院の経営者になったり、起業したりしてリッチになろうとする人も少ない。 医学部を希望する受験生に対して、東大を勧める気になれない。だから、私も自らが主宰する通信教育や進学塾で、医学部受験希望者に対しては無理せずに実力に見合う大学に入ったほうがいいと指導している(たまに、親のブランド志向がひどくて、指導に従わないで1年を無駄にする人もいる)』、「東大医学部は現状、研究も冴えない、臨床の腕も大して磨かれないダメ組織という側面が強い」、「医学部を希望する受験生に対して、東大を勧める気になれない。だから、私も自らが主宰する通信教育や進学塾で、医学部受験希望者に対しては無理せずに実力に見合う大学に入ったほうがいいと指導している」、なるほど。
・『「医学部人気」が沸騰中だが、医師の未来は明るくない  近年沸騰している受験生の間の「医学部人気」そのものにも私は疑問を感じている。 とくに首都圏以外の地方では、成績優秀な生徒が医学部を志向する傾向が強まっている。例えば、鹿児島のラ・サール高校は1985年に117人の東大合格者数を誇ったが、2021年は33人。しかし国立大学医学部合格者数は毎年80人から90人のレベルへ上昇した。私が卒業した灘校でも国公立大学の医学部の合格者数は増え、2021年で63人に達した。 地方では、成績のいい子は東大(文系含む)に行くより、国公立大医学部を選択する流れができつつある。その背景にあるものは何か。 東京に住んでいると、いわゆる六本木ヒルズ族には東大出身者が多いことを知ることになり、東大卒業後の成功モデルを実感できる。だが、地方にいると、東大に行くよりも、地元の国公立大の医学部を出て医者になるほうが安定的に高収入を得られるイメージが強い。最近のように政治家に逆らえず、不祥事が続く官僚の姿が報じられることが続くと、なおのこと東大への憧れは低下する。 頭のいい高校生はどうか視野を広く持ってほしい。進路は医学部でなくてもいいはずなのだ。医師より社会的地位が高く、安定して稼げる職種に就くことも十分に可能なのだ』、「地方にいると、東大に行くよりも、地元の国公立大の医学部を出て医者になるほうが安定的に高収入を得られるイメージが強い」、「頭のいい高校生はどうか視野を広く持ってほしい。進路は医学部でなくてもいいはずなのだ。医師より社会的地位が高く、安定して稼げる職種に就くことも十分に可能なのだ」、その通りだ。
・『医師国家試験合格者は毎年9000人、いずれ医師余りになる  ここ数年、医学部ではない理系の研究者が昔と比べ物にならないくらい高収入を得る道が開かれているのに、そういう情報が地方に届かないのかもしれない。それを危惧した母校・灘校では、各方面で成功した卒業生が在校生に講演する会を定期的に行っているという。 私はこの20年以上にわたって一橋大学で医療経済学を教えているが、医者の将来が明るいものと思っていない。 医療費のほとんどが保険診療で賄われているため、政策的に「伸び」が抑えられている。それにもかかわらず、医師国家試験合格者は毎年9000人もいる。さらに今後、AI(人工知能)が進歩すると、いずれ医師は負かされるケースも出てくる。現在、多くの医師は患者への問診より、検査データや画像データを重視した診察をしている。そうなると診断能力や治療方針を決める能力においてAIに到底勝てないのだ。 先ほど東大医学部の閉塞性を指摘したが、ほかの医学部も似たり寄ったりだ。例えば、教授会での選挙で決まる精神科の教授で、私のように精神療法を専門とする医師が選ばれている大学は現在ひとつもないのはそのいい例だ。医療の中で「心の問題」が軽んじられているのだ。 これはとりもなおさず、医学部在学中の6年間に心にまつわる講義がほとんどない(精神科の講義でも神経伝達物質など脳にまつわる授業がほとんどになる)ことを意味する。 今回のコロナ禍でも、感染症学者が“自粛一辺倒”の方針を出すのに対して、大学の医学部から「これではうつ病が増える」とか、「高齢者の歩行機能や認知機能が落ちるリスクが高い」とかいった反論の声はほぼ皆無だった。 歯科医業界では勤務医が低賃金化し、開業医もその多くが経営に四苦八苦している。同じような道を、医師が歩む可能性がある。収入面でも医学部の未来は明るくなく、自由もなく、世界的研究の夢もない。これなら医学部を除いた、最先端の理系研究者になったほうがはるかにいろいろな面で有望なのではないか。 受験生のうつ状態の予防の観点から、私は声を大にして言いたい。 医学部に行かなければいけない、というのは幻想である。 ほかにもはるかに有望な道がいくらでもある。 医学部志望者(とくに東大を筆頭とした名門国立大学の医学部志望者)がもし勉強でいきづまっていると感じるなら、チャンスだとさえ言える。視野を広く持ち、自分の進路を考えてみてほしい』、「収入面でも医学部の未来は明るくなく、自由もなく、世界的研究の夢もない。これなら医学部を除いた、最先端の理系研究者になったほうがはるかにいろいろな面で有望なのではないか」、同感である。

次に、2月24日付け日経ビジネスオンラインが掲載した精神科医・産業医/メディカルケア大手町院 五十嵐 良雄氏による「#2 うつの再発を繰り返す人は「双極性II型障害」かも…」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/plus/00032/020800002/
・『近年、復職者が休職を繰り返す場合に、一見、うつ病のように見える同じようなうつ症状はあるけれど、その裏に別の病気(背景疾患)が隠れているケースが非常に増えています。うつ症状の背景疾患で特に多いのが「双極性II型障害」と「発達障害」です。 そこで、連載第2回の今回は「双極性II型障害」についてお伝えします』、興味深そうだ。
・『正しく診断することが難しい「双極性II型障害」  「うつの症状」があるために「うつ病」と診断されてしまうけれども、実はその後ろに「双極性II型障害」が隠れているという場合、最大の難関となるのが、その患者を双極性II型障害であると正しく診断すること。というのも、この病気は診断がとても難しいからです。 まずは、その特徴について説明していきましょう。 双極性障害はかつて「躁(そう)・うつ病」と呼ばれていた病気で、(1)気分が高揚して活動が活発になる「躁状態」と、(2)憂うつな気分が続く「うつ状態」が交互にやってくる病気です。(1)と(2)を繰り返すわけです。 現在では、両極端な症状が起こるという意味で「双極性障害」とも呼ばれます。 双極性障害にはI型(いちがた)とII型(にがた)の2つのタイプがあります。 双極性I型障害は、躁状態の時の程度が激しく、明らかにいき過ぎた行動があるため、周囲も気づきやすいという特徴があります。I型の場合は治療のために入院が必要ですが、症状が分かりやすいため診断は容易です』、「双極性障害」とはかって「躁うつ病」と呼ばれたもののようだ。
・『軽く短い躁状態が特徴の双極性II型障害  問題は、双極性II型障害です。 こちらは、長いうつの症状が続いている間に、ごく短い期間、軽い躁(そう)状態があり、その後は再び、うつの症状が続くという病気です。 躁状態がごく軽度で、I型のように激しい症状がなく、その期間も数日間程度とごく短いため、本人や周囲も「最近少し調子が良すぎる」程度にしか感じません。 それが病気(=双極性II型障害)による軽い躁状態であるとは本人も周囲も気づかない。ここが厄介なところです。 そして軽躁状態の後には多くは、うつ状態が現れ、このうつ状態は長く続きます。そのため、うつ病と診断されてしまい、「双極性II型障害」と正しく診断されないまま、それがずっと続いてしまうことが問題なのです。 この双極性II型障害は、5年間で9割が再発するというデータもあるほど、再発率が高い病気でもあります』、「5年間で9割が再発する」、再発率の高さには驚かされた。
・『うつ病と双極性II型障害の治療方法・薬は全く違う  そしてさらに悩ましいのは、うつ病と双極性II型障害では治療方法が全く違うという点です。 うつ病では、うつの症状を改善させるための治療を行い、抗うつ剤を用いますが、双極性II型障害では、躁とうつの波をコントロールする治療が必要となり、その時には抗うつ薬ではなく気分安定薬を用います。 つまり、正しい診断ができていなければ、当然、正しい薬は処方されておらず、治療が適切に行われていないことになります。さらに厄介なことには、双極性障害の患者が抗うつ薬を使っていると、気分の波がかえって大きくなることも多いのです。 実際、双極性II型障害の患者に対して、「この人はうつ病だ」と誤った診断を行った主治医が、抗うつ剤をずっと出し続けているというようなことは非常に多い。最悪の場合、症状を悪化させてしまうこともあります。 双極性II型障害を診断するには「現在、軽躁状態である、あるいは過去に軽躁状態があった」ことを確認する必要があります。 しかし、躁状態が短期間で軽度なため、短い診察時間内に主治医が気づくことは、まずできません。 主治医が双極性II型障害と分からないまま、気づかないまま、うつの症状が改善した段階で「復職可」という診断書を書いている場合があるわけです。 復職先の産業医も、本当の病気に気づくのは難しい。そのため、復職後、いずれ軽躁状態が現れ、その後、再びうつ状態がやってくるという病相を繰り返し、患者は何度も休職することになります』、「双極性障害の患者が抗うつ薬を使っていると、気分の波がかえって大きくなることも多いのです」、正確な診断が鍵のようだ。「復職後、いずれ軽躁状態が現れ、その後、再びうつ状態がやってくるという病相を繰り返し、患者は何度も休職することになります」、「患者」には不幸なことだ。
・『再発を繰り返す場合、一度、疑ってみてほしい  ここで人事関係者の皆さんにお伝えしたいのは、「ひょっとすると?」という視点を持ってほしいということです。 うつの症状の裏側に、こうした別の病気が隠れている可能性があることを知っていただき、再発・再休職を繰り返す人に対しては特に、疑ってみていただきたい。 なぜなら誰かが「背後に、別の病気があるのでは?」という疑いを持たない限り、背景疾患は見つけられないからです。 疑って初めて、双極性かどうかを調べる検査をしたり、過去に躁状態があったかどうかなどの情報を集めて、ようやく正しい診断にこぎつけられます。 医師よりもその人と接する時間が長い周囲の人や人事担当者が疑ってみること、本人の軽躁状態を把握することが、正しく病気を診断する助けになるのです。 軽躁かも? と疑ってみるべき変化のポイントは次のようなものです。 ■こんな変化に気づいたら、軽躁状態かもしれないと疑ってみてください。「軽躁状態がある」「あった」ことを確認できると、双極性II型障害という診断につながります。 【いつもより】・声が大きい ・言葉の数が多い ・話が長い/話の内容が大風呂敷 ・話し続ける ・やたらと明るい ・動きが速い ・話しかける相手が多い ・メール数が多い
・電話をかける回数が多い  ・活動が活発だ  ・人の話を聞かない  ・予定外の行動が多い  ・お金をたくさん使う  ・イライラしていることが多い  ・短睡眠時間でも活動できている  ・怒りっぽい など  ごく短期間であってもこのような変化が見られたら、その時期が双極性II型の軽い躁(そう)状態である可能性があります。 休職を2度、3度、あるいはそれ以上、繰り返している場合は、双極性II型障害である可能性が高い。疑われる場合には、本人からだけでなく、上司や周りの社員、同僚から情報をもらうこともポイントになります。 そして疑いがある場合は、検査機器を導入している医療機関で検査を受け、病気の鑑別をやり直してもらうよう、本人や主治医に働きかけることをお勧めします。 さらにご本人に対しては、患者の教育のためにリワークプログラムを実施している医療機関に転院することを勧めてほしいと、私は考えています。その理由については後述するとして、まず、鑑別に有効な検査機器についてお話しします』、「疑って初めて、双極性かどうかを調べる検査をしたり、過去に躁状態があったかどうかなどの情報を集めて、ようやく正しい診断にこぎつけられます。 医師よりもその人と接する時間が長い周囲の人や人事担当者が疑ってみること、本人の軽躁状態を把握することが、正しく病気を診断する助けになるのです」、なるほど。
・『脳の血流量の計測で可能な補助鑑別「光トポグラフィ」検査  病気の鑑別診断の補助材料として役立つ検査機器は「光トポグラフィ検査」です。 これは、患者の頭に小さな端子を付け、ディスプレー上に表示される文字を読んでもらうなど、脳を働かせている間の、脳の血流の変化を測定する装置です。血流の変化のパターンによってうつの症状が「うつ病パターン」「双極性障害パターン」「統合失調症パターン」「健常パターン」のいずれかであるかが分かります。このパターンは健康な状態の人にも出ますので、この検査だけで病気を診断できるわけではなく、あくまでも補助診断としての検査です。ただし、その人の病気へのなりやすさを表しているのではないかとも考えられており、医師が詳細に患者さんに話を聞いていくと正確な診断ができますし、薬の選択も合理的にできるのです。 メディカルケア虎ノ門では2014年から導入し、鑑別診断の補助材料として成果を上げています。休職を繰り返している患者が多い当院では、実に8割の人が「双極性II型障害」の可能性があるという結果が出ています。 とはいえ、この検査は導入コストが高いことがネックとなり、現在、限られた医療機関でしか受けられない点が課題です。 光トポグラフィ検査は、頭に小さな端子を当て、ディスプレー上の文字を読んだあと、「あ」で始まるものの名前を思いつくまま言い続けるといった課題を行い、その間の脳の血流量(ヘモグロビン濃度)の変化を測定してグラフ化することで病気の特徴を見分けるというもの。血流量の波形変化パターンが病気によってそれぞれ違うことから、鑑別診断の補助材料として用いられています』、「「光トポグラフィ」検査」は、「導入コストが高いことがネックとなり、現在、限られた医療機関でしか受けられない点が課題です」、なるほど。
・『「治す」のではなく「付き合っていく」  「双極性II型障害の場合は、患者の教育のためにリワークプログラムのある病院に転院させるとよい」とお伝えしました。 なぜ、患者に教育が必要なのでしょうか。 実は、双極性II型障害は、うつ病のように「病気を治す」のではなく、「自分の気分の波を知り、コントロールする」という方法を学び、上手に付き合っていく病気だからです。 軽躁の波が来た時に、気分が上がり過ぎないように自分で仕事や生活での活動量を抑えて、日々の気分を安定させるようにします。 例えば、「外出する予定を取りやめる」「身体を休めるようにする」など、自分で活動量を減らし、躁状態の時の気分を上がらないように抑えることが、次に来るかもしれないうつの波を抑えることにつながります。 軽躁状態があっても、その後でうつが現れなければコントロールできているということになります。この病気は上手にコントロールしながら付き合っていく病気なのです。 だからこそ、早期に、双極性II型障害であると診断されて、本人が自覚し、リワークプログラムで病気との付き合い方を学んで、それを実践できるようにすることが大切です。 リワークプログラムの中には双極性II型障害の人向けの特別なプログラムはありませんが、同じ病気の仲間がいることで、この病気と付き合う方法を互いにシェアしたり、学び合うことができることが、患者さんにとってとても重要だと考えています。 次回は、うつの症状の背景にある別の病気、「発達障害」についてお話しします』、「この病気は上手にコントロールしながら付き合っていく病気なのです」、まるでウィズコロナの考え方に近いようだ。

第三に、この続きを、3月1日付け日経ビジネスオンラインが掲載した精神科医・産業医/メディカルケア大手町院長の五十嵐 良雄氏による「#3 うつの本当の原因は発達障害だった そんなケースが増えています」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/plus/00032/020800003/
・『場の空気が読めない。人とコミュニケーションがうまくとれない。不注意によるミスや忘れ物が多い。カッとしやすい……。 こうした特徴を持つ発達障害は一定の割合で存在し、本来、子供の頃から表れて周囲に気づかれているものです。しかし、それが軽度であったために子供時代には本人も周囲も気づかないまま成長し、会社に入ってから対人関係で悩み、その結果、うつ症状が表れて休職するというケースが近年、増えています。今回はうつ病の裏に隠れている「大人の発達障害」について、その対処法を紹介します』、興味深そうだ。
・『原因は職場環境ではなく、本人の障害  「大人の発達障害」は、大人になるまでの長い間、周囲に気づかれなかったほど、障害の程度は軽く、傾向は低いのが特徴です。 しかしながら、会社組織の中で業務を行うようになると、それまでは無意識に避けてこられたような場面にも、直面して取り組まなくてはならなくなり、苦手な場面が増えることから、憂うつになるなど、うつの症状が出るようになります。 例えば、新入社員になってすぐ、上司との関係がうまくいかずに適応障害として休職する場合もあれば、経験を積んでチームリーダーになった途端、部下の個々の状況や気持ちに配慮することができず、悩んでうつの症状が出て休職する場合もあります。 一見、職場の環境に影響されて、うつになったように見えるものの、実は、その背景には周囲とうまくコミュニケーションがとれない、周りの空気を読むのが苦手といった、発達障害が隠れているというケースです。原因は職場環境ではありません。 それゆえ、薬物治療などでうつの症状から回復したとしても、背景にある発達障害に気づけないままだと、復職後にまた同じような場面でストレスを感じてうつを再発することになり、負のスパイラルに陥りかねません。 前回ご紹介した双極性II型障害と同様に、うつ症状の背景にある、本当の原因、大人の発達障害に早期に気づいて対応することが大切なのです』、「「大人の発達障害」は、大人になるまでの長い間、周囲に気づかれなかったほど、障害の程度は軽く、傾向は低いのが特徴です。 しかしながら、会社組織の中で業務を行うようになると、それまでは無意識に避けてこられたような場面にも、直面して取り組まなくてはならなくなり、苦手な場面が増えることから、憂うつになるなど、うつの症状が出るようになります」、「薬物治療などでうつの症状から回復したとしても、背景にある発達障害に気づけないままだと、復職後にまた同じような場面でストレスを感じてうつを再発することになり、負のスパイラルに陥りかねません」、やはり正しい診断がカギのようだ。
・『“大人”は、2つの傾向を併せ持つ場合が多い  大人の発達障害は「自閉症スペクトラム障害(ASD)」と、「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」の2つに、大きく分けられます。 それぞれの特徴は以下の通りです。 ●自閉症スペクトラム障害(ASD)の主な特徴(草食系、おとなしい。表情が少ない。場の空気が読めず、例えば、突発的に妙なことを言う。人とコミュニケーションがうまくとれない。物事にこだわるので、興味が偏っている。これからのことを予測して予定を立てるのが苦手。他者の気持ちを想像したり、視点に立って考えることが苦手。集中力は高いが、他のところに全く注意がいかない。視覚、聴覚などの感覚が過敏。) ●注意欠陥・多動性障害(ADHD)の主な特徴(幼い時に目立った落ち着きのなさ(多動)は目立たたなくなっているものの、時に表れ、常に動き回ったり、せわしないことがある。思い立ったことをすぐにやりたくなる。不注意によるミスや忘れ物が小さい頃より多い。2つのことを同時に行うのは苦手。注意が集中せず、部屋が片づけられない。親しみやすいところがあるが、カッとしやすい。) このように、大きくとらえれば2つに分かれますが、大人になるまで気づかれないほど軽度の人たちは、この両方の傾向を持っていることが多いのが特徴です。 そのため、無理にどちらかに当てはめようとせず、両方の傾向を持っているという前提に立って「どちらの傾向が目立つか」と考えることが大切です』、「大人の発達障害は・・・「ASD」と・・・「ADHD」の2つに、大きく分けられる」が、「2つの傾向を併せ持つ場合が多い」、なるほど。
・『二次障害として双極性障害になることも  また、発達障害があることで、その二次障害として、うつの症状が出るだけでなく、双極性II型障害になることもあります。このことは国内外の論文で報告されるようになってきています。 つまり、「うつの症状が表れてうつ病だと思ったら、実は軽度の躁状態があって双極性II型障害だと分かり、さらに、それらの背景には実は発達障害があった」というような状況もある、ということです。 大事なことは、人事担当者が「こういう場合もある」ということを知っておくことです。知っていれば「ああ、そういうケースなんだな」と分かる。あるいは「もしかしたら?」と気づくことができます』、「うつの症状が表れてうつ病だと思ったら、実は軽度の躁状態があって双極性II型障害だと分かり、さらに、それらの背景には実は発達障害があった」というような状況もある」、ここまで原因が遡って判明するには、時間もかかりそうだ。
・『人格的な異常ではなく、一定の割合で存在する  発達障害については、周囲の理解にまだまだ温度差があり、「その人の性格のせいだ」「やる気がないからだ」と人格的な問題ととらえられがちですが、全くそうではありません。 文部科学省の行った学童を対象とした調査からは、発達障害は全学童の5~6%ほどはいるとされ、本人はとても悩んでいます。できること・できないこと、得意なこと・不得意なことがあるのです。 会社側の対応は大変だろうと思いますが、発達障害的な要素は、程度の差があるだけで、実は誰もが多かれ少なかれ持っているものだととらえます。そう考えなければ、人材として力になりません。 発達障害の人は、不得意なところもありますが、逆に「人よりも得意なこと」もあります。だから、得意なことをしてもらいながら、不得意なことをどう乗り越えてもらうかと、とらえていくことが大切です』、「発達障害の人は、不得意なところもありますが、逆に「人よりも得意なこと」もあります。だから、得意なことをしてもらいながら、不得意なことをどう乗り越えてもらうかと、とらえていくことが大切です」、その通りだろう。
・『まずは本人側の困りごと、職場側の困りごとを整理  ここからは対応についてお伝えしていきましょう。 社員のうつ症状の背景に「発達障害がある」と分かった場合は、まず、本人側の困りごとと、職場側の困りごとを整理することです。それは共通していることもあれば、共通していないこともあります。 そして、本人に「自分の得意なこと、不得意なこと」をハッキリ、自分で知ってもらうことが大事です。なぜなら、それは周囲には分からないことだからです。とはいえ、自分で自分の得意・不得意を認識することも簡単なことではありません。 メディカルケア虎ノ門の「リワークプログラム」でのプログラムでは、発達障害の人向けのものもあります。 そこではまず、発達障害についての書籍や論文を読んで、病気についての理解を深めてもらい、自分の特性や特徴がどのように表れるのかに気づいてもらいます。そして、仕事の場面での自分の強み、弱み、職場での困りごとについて理由を分析して、対処法を検討します。 本人がどういうことが得意で、どういうことが不得意なのかが分かれば、今度は周囲が「得意なことをいかに仕事で生かしてもらうか、不得意なところをどうするか」という対応を検討することができます』、それが出来れば、「本人」「周囲」ともハッピーだ。
・『視覚情報には強いが、音声情報には弱い  脳では、視覚的な情報と音声情報の処理は脳の別々の場所で行われます。一般的に発達障害の人では視覚情報は強く、聴覚情報が弱いことが知られています。 例えば、会社での業務は主に視覚情報と聴覚情報を元に行っています。視覚情報の代表は書類です。聴覚情報の代表は電話や会議ですね。発達障害の人は視覚情報(=書類)には強いけれど、聴覚情報(=電話や会議)には弱いという特徴があります。 だから、会議などで話が進んで「はい、では●さんは××を担当してください、▲さんは◇◇をお願いします」と、仕事の分担が告げられたとしても、発達障害の人は自分が何をやったらいいのか理解するのが苦手です。メモを取っているようでも、耳で聞いた情報を整理するのは得意ではないので、本人は十分理解できていません。 一方で、彼らは視覚情報の情報処理能力はとても高い。だから、文書で指示されれば、自分でそれを読み解いてアウトプットをしっかり出せます。このため、大人の発達障害の人には業務指示は視覚情報で出すというのが原則です。 とはいえ、すべての指示を文書で出し、会議や電話への対応を一切させないというのも現実的ではありません。ここでお伝えしたいのは、考え方の原則としては「彼らが得意な方法で、得意な業務をやってもらうのがいい」ということです』、「発達障害の人は視覚情報(=書類)には強いけれど、聴覚情報(=電話や会議)には弱いという特徴があります」、「考え方の原則としては「彼らが得意な方法で、得意な業務をやってもらうのがいい」」、なるほど。
・『ジョブコーチの支援を活用しましょう  「本人の困りごとと、会社側の困りごと」が完全に一致している場合は、その困りごとに対して対策をとればいいのですが、一致しない場合もあります。職場が困っていることを本人が気付いていない、分かっていないというケースです。 本人が分かっていないことを直すのは難しいため、まずは本人に職場の状況を分からせなければなりません。そういう時に助けになるのがジョブコーチ(=職場適応援助者)です。 ジョブコーチは障害者が企業などに就労する際に、円滑に職場に適応できるよう、その人がどういう仕事に適しているか、どういう職場環境なら働きやすいかといった、障害特性を踏まえた直接的、専門的な助言などの支援を、一定期間、障害者と企業の双方に行う援助者で、独立行政法人「高齢・障害・求職者雇用支援機構」または厚生労働大臣が実施する専門の養成研修を受けています。 具体的には、障害者に対して、「あなたは、こういうことが苦手なんですね」と、まず本人に苦手な内容を認識させ、次に「それはこういう風にすれば、解決できますよ」と指導、助言します。これによって業務遂行力や職場内のコミュニケーション能力を向上させ、また健康管理や生活リズムを整える支援を行います』、「ジョブコーチ」なる「指導・助言」、「業務遂行力や職場内のコミュニケーション能力を向上」、「健康管理や生活リズムを整える支援」、の仕組みはいいことだ。
・『障害特性を踏まえ、仕事の教え方なども助言  企業に対しては「この人にはこういう特性があるため、今の職場では、難しいでしょう。こういう能力がありますから、その能力を生かせる職場に変えてはどうでしょう?」といった雇用管理についての助言や提案を行います。その結果、配置転換などにつながることもあり、会社への貢献にもつながります。 また、ジョブコーチは本人と企業だけでなく、本人の家族や、職場の同僚・上司にも障害者との関わり方、指導方法について具体的なノウハウを助言してくれます。 ジョブコーチには3つのタイプがあります。 【1】地域障害者職業センター所属のジョブコーチが一定期間、事業所に出向いて支援を行う配置型ジョブコーチ。 【2】障害者の就労支援を行う社会福祉法人などに所属するジョブコーチが一定期間、事業所に出向いて支援を行う訪問型ジョブコーチ。 【3】障害者を雇用する企業の従業員がジョブコーチ養成研修を受けて、自社で雇用する障害者の支援を行う企業在籍型ジョブコーチ。 ジョブコーチ支援については、本人からの許可が必要ですので、会社だけの要望では利用できません。その点の注意が必要ですが、詳しくは各地域の障害者職業センターに問い合わせてみてください』、なかなか良い制度のようだ。

第四に、この続きを、3月23日付け日経ビジネスオンラインが掲載した精神科医・産業医/メディカルケア大手町院長の五十嵐 良雄氏による「#2 うつ病の最強の敵、それはストレス! 自覚する前に毎日予防しよう」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/plus/00034/030900002/
・『うつ最大の敵は「ストレス」 発散ではなく、予防するアクションを  前回、うつの症状は自分を取り巻く「環境」と「自分」との間で、何らかのストレスを感じることから起こるものだとお伝えしました。どういう環境が自分にとって苦手なのか。そういう環境に置かれたら、どう対処すればいいのか。この対策を準備することが再休職防止につながります。 今回はさらに一歩踏み込んで、具体的な仕事の場面でのストレス対策について取り上げます。 これまで、私はうつになった多くの患者を診てきました。うつを引き起こす要因は大きく分けて2つあります。それは、「環境の要因」と「自分の要因」です。環境の要因とは外の環境によるストレスであり、これをどう受け取るかが自分の要因です。 ストレスを感じた時の自分の受け止め方や、対処方法に課題がある場合が「自分の要因」ですが、それ以前に、まず、どういう種類のストレスによって、自分がうつの症状を引き起こしたのか。どういう種類のストレスに自分は弱いのかを把握しておくことが大事です。 もともと、ストレス(=stress)とは工学の概念であり、チカラが加わるとモノが歪む現象のことで、ストレスを与える外力をストレッサーといいます。ひと口にストレスといっても、日常生活ではいろいろな外的圧力があり、実は、悪い影響を与えるものばかりではありません。適度なストレスが良い状況を生むこともあります。 例えば、「○○の資格試験に合格したい」といった目標もストレスの一つですが、目標があることで「頑張ろう」という意欲が生まれることもあります。 大事なのは「自分に悪い影響を与え、うつ症状表出の原因となったのはどういうストレスなのか?」を明らかにすることです。 ここで一つ、図表をご紹介しましょう。これは仕事のストレスによって、うつの症状などの健康問題が発生する過程を示しています。2015年に厚生労働省が導入した「ストレスチェック制度」の大元になった、米国労働安全保健研究所の「職業性ストレスモデル」を改変したものです。 ストレス反応には仕事以外の要因も関わっている  (職業性ストレスモデルはリンク先参照) 仕事のストレス以外に、さまざまな要因が加わってストレス反応や健康問題が現れる。(1)の個々の説明は別表を参照 図内の番号順に左から右へ見てきいます。 (1)は「仕事のストレス要因」です。仕事上でストレスを感じる13個の要因が列記されています。個々の要因についてはこの後、「仕事のストレス要因・具体的な内容」表で示しますが、まず知っておいていただきたいのは、(1)の仕事のストレス要因だけで(5)のストレス反応が起きるわけではないことです』、「職業性ストレスモデル」はなかなかよく出来ている印象だ。
・『仕事と家庭、両方にストレスがあると危険  (1)仕事のストレス要因に、(2)個人の状況や性格などの要因、(3)家庭や家族からの要求という要因が加わると、(5)「ストレス反応」が現れ、さらに進むと(6)疾病を発症します。 つまり仕事と家庭の両方でストレスを受ける状況だと、心理的、また生理的にもストレス反応が起こりやすく、疾病につながりやすいと言えます。 反対に、仕事と家庭のどちらか一方にストレス要因があっても、もう一方には無い、あるいは軽微であれば、症状の表出にはつながりにくいのです。 仕事の場面での具体的なストレス要因を列記したものが次の表です。あなたならどの状況にストレスを感じるかチェックしてみてください。どういう状況が苦手なのか。自分自身の特徴を知ることができます。(仕事のストレス要因の表はリンク先参照) 前出の図にある「(1)仕事のストレス要因」13項目の具体的な内容を示している。あなたはこの13項目のうち何に「最も苦手、最も耐えがたい」と感じますか?  いかがですか? 「こういう状況に最もストレスを感じる」、「こんな環境での仕事が一番苦手」といった自分の特徴に気づくきっかけになるのではないでしょうか。 大切なのは「何をストレスに感じるかは、人によって違う」ことです。 Aさんは「仕事量が多いこと」に強いストレスに感じるけれど、Bさんは「役割があいまいで、自分の権限がハッキリしていない」ことがつらい。Cさんはこの両方にストレスは感じるものの、その感じ方はごく弱く、一方で「職場内のメンバー間で意見の違いや衝突が多い」ことには非常に強いストレスを感じるという具合です。 あなたが職場で「イヤだ」「つらい」とストレスに感じることを、皆が同じように感じるわけではありません。その人の状況や、物事の考え方などによって、受け止め方が違ってくるからです。 メディカルケア虎ノ門のリワークプログラムでは、この13の項目一つひとつについて、どの程度ストレスを感じるかを点数化し、その程度の強弱を確認します。そして、自分が最も強くストレスを感じる状況を把握し、プログラムに参加するほかのメンバーとディスカッションして、理解を深めていきます。 ある参加者は「自分が最も強くストレスに感じることを、ほかのメンバーがそれほどストレスに感じていない」と知って、とても驚き、だからこそ、その対策を自分で準備する必要性を強く実感したと話していました』、「仕事と家庭の両方でストレスを受ける状況だと、心理的、また生理的にもストレス反応が起こりやすく、疾病につながりやすいと言えます。 反対に、仕事と家庭のどちらか一方にストレス要因があっても、もう一方には無い、あるいは軽微であれば、症状の表出にはつながりにくいのです」、「家庭」がそんなに重要な役割を果たしているとは初めて知った。
・『上司や同僚、家族のサポートはあるか?  さて、最初の図に戻りましょう。 (1)仕事でストレスを感じながら、(2)個人的な要因や(3)仕事外の要因でもストレスがある状況では、(5)のストレス反応が起こりやすく、やがて(6)の疾病発症となりかねません。 そこで、注目すべき大事な要因が(4)の緩衝要因です。 ここでは「上司や同僚、家族からのアドバイスなどの社会的な支援」を緩衝要因と呼び、仕事や仕事以外のストレスによって心理的・生理的なストレス反応が生じることを防ぐ役割を持つことを表しています。 つまり、仮に仕事上でストレスがあっても、上司や同僚、家族からの助言や支援、何らかのサポートを得られれば、心理的、身体的なストレス反応や健康問題を防ぐことができる可能性を表しているのです。 ただし、待っているだけで自分自身は何もしないのでは、周囲のサポートを得られない場合もあるでしょう。ストレスの負担が大きくなる前に、信頼できる相手に相談するなど、自分から支援を求めることも大切です。 逆に、この「上司や同僚、家族からの社会的支援」を得られない状況(=緩衝要因が足りない)が続いていると、ちょっとした仕事や個人の要因で、心理的、身体的ストレス反応の出現につながりやすいと言えます』、「ストレスの負担が大きくなる前に、信頼できる相手に相談するなど、自分から支援を求めることも大切です」、確かに「待っているだけで自分自身は何もしないのでは、周囲のサポートを得られない場合もあるでしょう」。
・『「ストレス対処法・100選」を持とう!  次に、メディカルケア虎ノ門のリワークプログラムの、すぐに取り組める具体的なストレス対策方法を紹介します。名付けて「ストレス対処法・100選」です。 100個も?と驚くかもしれませんが、対策のバリエーションは少ないよりも多い方が良いでしょう。「この手がダメならあの手」と、あらかじめたくさんの備えがあれば、より安心です。 さて、皆さんは100個、挙げられますか? コツは、具体的に書き出すことです。例えば、 ・「外出する」ではなく「お気に入りのカフェでコーヒーを飲む」、 ・「笑う」ではなく「YouTubeでお笑い芸人の動画を見る」、 ・「身体を動かす」は「駅前のスポーツジムで筋トレをする」 という具合に、誰が読んでも同じことを再現できるよう具体的に書き出します。 抽象的に100個を挙げるのは難しくとも、具体的な行動にしていけば、同じ「身体を動かす」アクションでも、「寝る前に腹筋100回」「自宅周辺を30分ランニング」というようにバリエーションを増やすことができます。 バリエーションがあれば、疲れてヤル気が出ない時でも、その場でできる対処法を見つけやすくなるメリットが生まれます。 何より、ストレスを早期発見し早期対処する。そして実は、ストレスを蓄積する前に予防するという発想が有効です。 ストレス対策というとなぜか、たまったストレスを「解消する」「発散する」方向ばかりが考えられがちですが、そうではなく「ああ、何だかストレスがたまってきたな」と自分が実感する前に、普段の生活の中で先に挙げた100個の対処法をどんどん実行しましょう。) 仕事が原因で生じたストレスは、同じ仕事をしている限り、自分の時間の中でしか解消できません。 仕事をしていて自然にストレスが解消されるのであれば、その仕事を続けていればよいですが、それはありえません。つまり自分の時間を有効に自分のために使うことを考えればよいのです。 一番分かりやすい例は運動です。他人のために運動をする人などいません。運動をしている時間はその人の時間で、その結果はすべてその人に戻ります。すべての人は1日24時間の中で生きています。その時間をどう使うかが大事なのです。 「強い疲労感などのストレス反応が起きてから」「ストレスが溜まっていると感じてから」ではなく、1日に3回、食事するのと同じように、一定のリズムで対処法を毎日実行する。その日のストレスはその日のうちに解消する。 その芽が小さなうちにしっかり摘む。早期発見、早期対処、毎日の予防が有効です』、「「ストレス対処法・100選」を持とう!」とはいいアイデアだ。私はストレスのない生活を送っているので、必要ないが、現役時代に持っていればよかったと若干残念に思う。
タグ:医療問題 (その35)(東大医学部卒・和田秀樹「私が偏差値の高い子に東大医学部をお勧めしないこれだけの理由」 灘→東大理Ⅲだからこそ言える、うつ病3題:うつの再発を繰り返す人は「双極性II型障害」かも…、うつの本当の原因は発達障害だった そんなケースが増えています、うつの本当の原因は発達障害だった そんなケースが増えています) PRESIDENT ONLINE 和田 秀樹氏による「東大医学部卒・和田秀樹「私が偏差値の高い子に東大医学部をお勧めしないこれだけの理由」 灘→東大理Ⅲだからこそ言える」 「拡大自殺」に関しては。「自殺報道は大々的にやるほど、かえって自殺が増えることは統計学的にも確認されている」、「2021年10月末の京王線ジョーカー事件(※1)や、12月の大阪の心療内科クリニック放火事件(※2)など、拡大自殺と思われる事件が続いている」、マスコミが興味本位で報道するのは、なるべく控えるべきだろう。 「現実に東大理Ⅲに入学し、医学部に進学し、そこを卒業したからこそ、この考え方は間違いだったと断言できる」、「東大医学部には組織的な問題を抱えている」、なるほど。 「今どき、そんな「白い巨塔」のような閉塞的な組織が何か成果を残せるはずがない。部下は、私生活も自由でないし、研究も自由にできるとは思えない」、今どき「「白い巨塔」のような閉塞的な組織」が存在していること自体が驚きだ。 「東大医学部は現状、研究も冴えない、臨床の腕も大して磨かれないダメ組織という側面が強い」、「医学部を希望する受験生に対して、東大を勧める気になれない。だから、私も自らが主宰する通信教育や進学塾で、医学部受験希望者に対しては無理せずに実力に見合う大学に入ったほうがいいと指導している」、なるほど。 「地方にいると、東大に行くよりも、地元の国公立大の医学部を出て医者になるほうが安定的に高収入を得られるイメージが強い」、「頭のいい高校生はどうか視野を広く持ってほしい。進路は医学部でなくてもいいはずなのだ。医師より社会的地位が高く、安定して稼げる職種に就くことも十分に可能なのだ」、その通りだ。 「収入面でも医学部の未来は明るくなく、自由もなく、世界的研究の夢もない。これなら医学部を除いた、最先端の理系研究者になったほうがはるかにいろいろな面で有望なのではないか」、同感である。 日経ビジネスオンライン 五十嵐 良雄氏による「#2 うつの再発を繰り返す人は「双極性II型障害」かも…」 「双極性障害」とはかって「躁うつ病」と呼ばれたもののようだ。 「5年間で9割が再発する」、再発率の高さには驚かされた。 「双極性障害の患者が抗うつ薬を使っていると、気分の波がかえって大きくなることも多いのです」、正確な診断が鍵のようだ。「復職後、いずれ軽躁状態が現れ、その後、再びうつ状態がやってくるという病相を繰り返し、患者は何度も休職することになります」、「患者」には不幸なことだ。 「疑って初めて、双極性かどうかを調べる検査をしたり、過去に躁状態があったかどうかなどの情報を集めて、ようやく正しい診断にこぎつけられます。 医師よりもその人と接する時間が長い周囲の人や人事担当者が疑ってみること、本人の軽躁状態を把握することが、正しく病気を診断する助けになるのです」、なるほど。 「「光トポグラフィ」検査」は、「導入コストが高いことがネックとなり、現在、限られた医療機関でしか受けられない点が課題です」、なるほど。 「この病気は上手にコントロールしながら付き合っていく病気なのです」、まるでウィズコロナの考え方に近いようだ。 五十嵐 良雄氏による「#3 うつの本当の原因は発達障害だった そんなケースが増えています」 「「大人の発達障害」は、大人になるまでの長い間、周囲に気づかれなかったほど、障害の程度は軽く、傾向は低いのが特徴です。 しかしながら、会社組織の中で業務を行うようになると、それまでは無意識に避けてこられたような場面にも、直面して取り組まなくてはならなくなり、苦手な場面が増えることから、憂うつになるなど、うつの症状が出るようになります」、「薬物治療などでうつの症状から回復したとしても、背景にある発達障害に気づけないままだと、復職後にまた同じような場面でストレスを感じてうつを再発することになり、負のスパイラル 「大人の発達障害は・・・「ASD」と・・・「ADHD」の2つに、大きく分けられる」が、「2つの傾向を併せ持つ場合が多い」、なるほど。 「うつの症状が表れてうつ病だと思ったら、実は軽度の躁状態があって双極性II型障害だと分かり、さらに、それらの背景には実は発達障害があった」というような状況もある」、ここまで原因が遡って判明するには、時間もかかりそうだ。 「発達障害の人は、不得意なところもありますが、逆に「人よりも得意なこと」もあります。だから、得意なことをしてもらいながら、不得意なことをどう乗り越えてもらうかと、とらえていくことが大切です」、その通りだろう。 それが出来れば、「本人」「周囲」ともハッピーだ。 「発達障害の人は視覚情報(=書類)には強いけれど、聴覚情報(=電話や会議)には弱いという特徴があります」、「考え方の原則としては「彼らが得意な方法で、得意な業務をやってもらうのがいい」」、なるほど。 「ジョブコーチ」なる「指導・助言」、「業務遂行力や職場内のコミュニケーション能力を向上」、「健康管理や生活リズムを整える支援」、の仕組みはいいことだ。 なかなか良い制度のようだ。 五十嵐 良雄氏による「#2 うつ病の最強の敵、それはストレス! 自覚する前に毎日予防しよう」 「職業性ストレスモデル」はなかなかよく出来ている印象だ。 「仕事と家庭の両方でストレスを受ける状況だと、心理的、また生理的にもストレス反応が起こりやすく、疾病につながりやすいと言えます。 反対に、仕事と家庭のどちらか一方にストレス要因があっても、もう一方には無い、あるいは軽微であれば、症状の表出にはつながりにくいのです」、「家庭」がそんなに重要な役割を果たしているとは初めて知った。 「ストレスの負担が大きくなる前に、信頼できる相手に相談するなど、自分から支援を求めることも大切です」、確かに「待っているだけで自分自身は何もしないのでは、周囲のサポートを得られない場合もあるでしょう」。 「「ストレス対処法・100選」を持とう!」とはいいアイデアだ。私はストレスのない生活を送っているので、必要ないが、現役時代に持っていればよかったと若干残念に思う。
nice!(0)  コメント(0)