キシダノミクス(その4)(ウクライナより深刻?「岸田リスク」を総点検する 岸田内閣は短命のほうが日本のためになる?、与党の大醜態「年金受給者5000円給付」撤回の裏側 バラマキ批判におびえて 責任のなすり合い、同じ日本人として恥ずかしい…岸田首相の「岸田に投資を!」が海外メディアにスルーされた納得の理由 いま「自国の利益」をアピールする国は欧米にはない) [国内政治]
キシダノミクスについては、本年2月12日に取上げた。今日は、(その4)(ウクライナより深刻?「岸田リスク」を総点検する 岸田内閣は短命のほうが日本のためになる?、与党の大醜態「年金受給者5000円給付」撤回の裏側 バラマキ批判におびえて 責任のなすり合い、同じ日本人として恥ずかしい…岸田首相の「岸田に投資を!」が海外メディアにスルーされた納得の理由 いま「自国の利益」をアピールする国は欧米にはない)である。
先ずは、2月27日付け東洋経済オンラインが掲載した経済評論家の山崎 元氏による「ウクライナより深刻?「岸田リスク」を総点検する 岸田内閣は短命のほうが日本のためになる?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/514793
・『前回の「株式市場を脅かす『4つのリスク』は解消するのか」(2月5日配信)で、筆者は、「ご本人が心底株式を嫌っているのかどうかは定かでないが、株式市場のほうはすでに岸田文雄首相を嫌っているように見える」と書いた。この推測を強力に裏付ける調査を見つけた』、どんな「調査」なのだろう。
・『「投資家」の岸田政権支持率はたったの3% 日経CNBCが同チャンネルの視聴者を対象に行った調査で、「あなたは、岸田政権を支持しますか?」という質問に対して、「はい」という回答がたったの3%しかなかった(調査期間は2022年1月27日~1月31日)。 日経CNBCは、主にマーケットや経済を題材とする番組を流す有料チャンネルで、実際に投資にかかわっている視聴者が多い。国民一般を対象にした岸田内閣の支持率は、多くの調査でここのところ下落傾向にあるが、それでも40%台半ばくらいの数字が多い。ところが、「投資家の支持率」と見ることができるこの調査では3%なのだ。よほど嫌われていると言っていい。 目下、新型コロナ・オミクロン株の流行が「マンボウ」(まん延防止等重点措置)を通じて経済を減速させ、ウクライナ・ロシア間の地政学的問題が発生し、何よりもFRB(アメリカ連邦準備制度理事会)がインフレ対策に重点を移して今後利上げと量的緩和の回収に進む「パウエルリスク」の顕在化で、内外の株価が下げている。 これらに加えて、株式市場が警戒する「岸田リスク」まで実現したら、投資家としてはたまったものではない。 株式市場が「岸田リスク」と感じている、「岸田首相の懸念材料」は複数あるが、大きく3つのカテゴリーに分けることができる。第1に「税制リスク」、第2に「新しい資本主義リスク」、第3に「金融政策転換リスク」だ』、「日経CNBC」調査で、「投資家」の岸田政権支持率はたったの3%」、とは確かに衝撃的な数字だ。
・『首相が再び税制言及なら日経平均1000円下落も まず、税制に関するリスクとして心配なのは、岸田氏が昨年の自民党総裁選の時点で口にしていた金融所得課税の見直し(要は税率引き上げ)が、再登場する可能性だ。 この構想は、金融所得に対する課税が分離課税であるために、株式の配当等による収入が大きい年収1億円を超えるような富裕層の所得に対する税率が、1億円未満の層よりも低下する通称「1億円の壁」問題への対策として登場した。増税に熱心な官僚やそのサポーター的な学者などの間では前々から話題に上っていた構想だが、どうやら「分配」が大事らしいとぼんやり思っていた岸田氏の耳に入ったのだろう。 金融所得への課税強化は、投資家が株式投資や投資信託への投資などでリスクを取って儲けることに対して、現在よりもより処罰的に働く、投資家から見ると「とんでもない税制改悪」だ。この可能性は、岸田氏が首相に就任した当初にマーケットで懸念されて株価が下がり、一部では「岸田ショック」などとも呼ばれた岸田リスクの第1号案件だ。 市場では不評で、株価を下げかねないことから、参議院選挙の前に持ち出されることはなさそうだが、参議院選挙が終わって、来年の税制が検討される今年の秋以降に、再び話題に上る可能性がある。話題に上るということは、岸田首相の耳に入るということであり、彼にとっては「耳、即ち脳!」なので、反射的に「検討を廃除するものではない」などと口走るかも知れない。 この場合、株価はいったん急落し(日経平均株価で1000円見当か)、その後に様子を見ながら、検討が撤回させるまでじくじく悪影響を与える材料になりそうだ。筆者は、こうした市場の反応を見て、金融所得課税の見直しは実現しないことになるだろうと「予想」するが、予想というものは当てにならない。 仮に参議院選挙に与党が勝利していた場合(今の野党に対して、さてどのくらい負ける要素があるのか?)、しばらく国政選挙のスケジュールがないので、増税マニアの誰かが、岸田氏に「総理の掲げる政策を実現するチャンスは今しかありません」とささやくかも知れない。この場合、ささやきの角度とタイミングが気持ちよくて実現してしまう可能性がゼロではない。) 岸田氏は、「新しい資本主義」という内容空疎な言葉の使用を止める気配がない。おそらく、口にしてみると、耳障りが良くて、自分が何かを考えたかのような誇らしい気分になるのだろう。できるなら人前で口にするのは我慢してほしいものだが、かつての首相たちも、「改革」とか「美しい国」のような、中身が伴わないけれども気持ちのいい言葉を発することをつねとしていた。これは首相官邸の風土病なのかもしれない』、「中身が伴わないけれども気持ちのいい言葉を発することをつねとしていた。これは首相官邸の風土病なのかもしれない」、困ったことだ。
・『日本の資本主義の本質とは何か? しかし、「美しい国」くらいなら国民は陰で嗤っていればよかったが、「新しい資本主義」は、しばしば株価や経済にとってのリスク要因になるので厄介だ。 先の金融所得課税の見直しもその1つだが、岸田首相は、どうやら株主レベルでの利益追求を抑制することが、資本主義の見直しになると思い込んでいるらしい。小さなレベルでは、「自己株買いの規制の検討」、「業績の四半期開示の見直し」、といった株式投資家に不利益ないし迷惑な施策の可能性を口走るし、おおもとで「新自由主義の見直し」が必要だと思っているらしいことが厄介だ。 そもそも日本の経済が新自由主義的だと考えることは事実誤認だ。政・官、および大企業正社員階層から上の企業人たちは(日本の「上層部」と呼ぶことにしよう)、メンバーシップが固定的な「資本主義の仮面を被った縁故主義」とでも呼ぶのがふさわしい形で社会および経済を運営している。 日本の資本主義は独裁国家・権威主義国家と呼ばれる国々が民主主義を名乗るために行っている選挙のごとき一種の仮面にすぎない(ウラジーミル・プーチン氏も選挙で選ばれた大統領だ)。2世、3世議員がうようよいる自民党政権は(野党にもいるが)、経団連ばかりか、連合にも守られて(野党を分断してくれる自民党の最大の応援勢力だ)、固定的な支配構造が当面安泰だ。社会・経済が長年停滞するのも無理はない。 もっとも、正社員メンバーシップから外れた非正規労働者に対しては、企業をはじめとする上層部の行動は、極めてドライに古典的資本主義を適用している。労働力は、極めて安価かつ競争的に商品化されている。ここだけを見ると、今時になってマルクスを持ち出す人達の気持ちがわからなくはないが、日本全体が資本主義的に運営されていると見るのは間違いだ。 こうした状況に「新しい資本主義」が絡むのでややこしい。日本経済の発展のためには、「普通の資本主義」を社会の上層部に対して徹底すべきだし、株式の投資家がおおむね願っている「成長戦略」はその方向にある。しかし、岸田氏にはこれが「行きすぎた新自由主義」に見えるらしい。 また、本来、福祉やセーフティーネットの役割を企業に割り当てることが不適切で、これは岸田氏一人に責任があるわけではなく、日本の社会設計上の誤りだが、企業に賃上げを求めることを「分配政策」だと勘違いしたり、「70歳まで社員を雇用せよ」と要請したりする、「資本主義の修正」のつもりの政策は、企業の活力を奪い、社会を停滞させる。この調子では、「企業の内部留保への課税を検討する」などとも言い出しかねない。 いずれも、株式投資家が嫌う社会の姿だし、経済の一層の停滞を招く。筆者が考える正しい方向性は「強力なセーフティーネット付きの普通の資本主義の徹底」だ。例えば、正社員に対する解雇の金銭解決ルールを整備して人材の流動化・再配置を促すことが必要だが、その前提条件として、解雇されても生活ができるようなセーフティーネット(理想はベーシックインカム)と職業訓練の仕組み、さらには公的な教育・研究の充実などが必要だ。 付け加えると、「普通の資本主義」と「セーフティーネット」の両方が必要だが、順番はセーフティーネットの整備が先だ(柔道で、投げ技よりも受け身を先に練習するように)。 この点で、岸田氏の「分配重視」は役に立つかも知れないのだが、先の「子供1人当たり10万円」の給付金が所得制限付きでボロボロになった様子を見ると、セーフティーネットの構築はおろか、正しいバラマキ政策の作法もご存じない様子だ。 岸田首相の「新しい資本主義」構想は、「予想としては」、おそらく迷走して、その都度株式市場に嫌われながら方針を撤回して、日本にとって時間の空費に終わるだろう。停滞感満載の時間が延びるのは国民にとって災難だが、そのくらいで済めばいい、とも言える』、「「新しい資本主義」構想は、「予想としては」、おそらく迷走して、その都度株式市場に嫌われながら方針を撤回して、日本にとって時間の空費に終わるだろう。停滞感満載の時間が延びるのは国民にとって災難だが、そのくらいで済めばいい、とも言える」、手厳しい見方だ。
・『「金融政策転換リスク」はインフレで発火するか? 本格的に心配なのは、3つ目に挙げた、岸田政権が金融緩和政策を転換しようとするリスクだ。 岸田氏は、かつて「政権禅譲」の期待を裏切った安倍晋三氏を快く思っていまい。また、彼の脳そのものである「耳」には、周囲の官僚達から緊縮財政への誘惑とともに、アベノミクスの金融緩和政策を見直そうとする声が侵入しているにちがいない。) しかも、届くことはないと思われていた消費者物価の「2%」の上昇率が、エネルギー価格をはじめとする輸入物価の上昇につれられて、昨春の携帯料金引き下げの影響が剥落する今春以降に、一時的に達成される可能性が出て来た。 仮にそうなるとして、このインフレは、需要が昂じて景気が過熱して起こったものではなく、需要の弾力性が小さい(価格が上昇しても節約しにくい)エネルギーなどの輸入価格上昇に伴って起こる国民の窮乏化を伴う物価上昇であり、金利を引き上げることが適切な種類のインフレではない』、なるほど。
・『7月の日銀政策委員会の審議委員人事に注目 例えば、政策金利を引き上げると、おそらく大幅な円高が起こり、輸入物価の下落要因にはなる。だが企業の価格競争条件が悪化し(よく話題になる輸出競争力だけではなく、国内製品も競争条件が悪化する)、加えて実質金利の引き上げになるのだから、ここに至っても「コロナ前」に戻ることすらできていない日本経済に良いはずがない。 「円高のほうが、企業は高付加価値製品へのシフトに努力するだろう」という声を聞くことがあるのだが、根拠のない根性論だ。利益が出ていて、実質金利が低いほうが、企業は前向きな投資を行いやすいと考えるのが当然ではなかろうか。日本企業が高付加価値製品分野で競争力を持たないことの原因は、円安ではない。 これまでに何度も指摘してきたことだが、金融政策転換リスクの恐ろしいところは、岸田氏が次の日本銀行の正副総裁の実質的な任命者になることだ。「新しい資本主義」その他に関連する迷走は、少々後から岸田氏の「耳」に悪評が入ることによってその都度修正が可能だが、日銀総裁の任期は5年あるので、影響が固定化される公算が大きい。 このリスクの行方を占ううえでは、7月に任期を迎える日銀の政策委員会の審議委員である、鈴木人司氏および片岡剛士氏の後任に注目したい。鈴木氏は「銀行業界枠」と目される方なので、一人は銀行業界から選ばれるものと予想されるが、「リフレ派」エコノミストである片岡氏の実質的な後任にリフレ派と覚しき人物が選任されないようだと、来年の正副総裁人事に赤に近い黄色信号が点滅する。場合によっては、参議院選挙以上の7月の注目材料だ。) 以上、3つのカテゴリーの「岸田リスク」は、いずれも岸田内閣が向こう1年半以上継続することを前提としている。では、岸田内閣が短命に終わる可能性はないか。 1つには、夏の参議院選挙で自民党が予想外の敗北を喫することはないか。現在の野党の状況を見るとその可能性はなさそうに見えるのだが、1つの要素として注目できるのは、現在参院選の選挙協力で自民党との全面的な合意ができていない公明党との関係だ。 公明党およびその支持母体である創価学会の協力なしに当選できない自民党候補は一定数いるにちがいない』、私は、異次元緩和には反対の立場なので、「リフレ派」の「片岡」氏の後任は、オーソドックスなエコノミストの選任が望ましいと思う。
・『「小泉コミュニケーション担当」首相なら魅力的 仮に選挙協力が不調に終わって、自民党候補が戦前の予想以上に落選した場合に何が起こるか。さすがに、衆参の「ねじれ」が起こるほどに負けないだろうが、岸田政権は弱体化する。ほどほどの負けは、安倍晋三氏、麻生太郎氏、菅義偉氏、二階俊博氏といった、「岸田政権の主流ではない政治的実力者たち」にとって好都合だろう。 加えて、注目できるのは、公明党にとっても、同党の協力がなければ自民党が選挙で苦労することを示すことは、自分たちの価値をつり上げて、政治的影響力を増す効果があることだ。 仮に、参院選の敗北などで岸田政権が弱体化したときに、自民党内で「政局」は起こるだろうか?政治の世界のことなので予測はできないが、例えば、菅前首相は「いま、おれに対する世論の反応は悪くない」と周囲に語っているらしい(『朝日新聞』2月22日)。 さすがに、菅氏のすぐの再登板は考えにくいが、小泉進次郎首相、菅副総理兼官房長官、河野太郎厚労大臣、林芳正外務大臣、といったラインナップなら、なかなか魅力的に思える。派閥力学的には、安倍晋三氏を副総理で遇するといいのかもしれない。 河野氏と菅氏は、いずれもビジネスの世界で言うマイクロ・マネジメントのタイプなので、2人で首相、副首相を分け合うのは不向きに思える。首相だがコミュニケーション担当の扱いで小泉進次郎氏を担ぐのがいいのではないかと提案しておく。「ポエム」を封印して頑張って欲しい。河野太郎氏には、課題満載の官庁である厚労省の根本的な改革を是非期待したい(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)』、「小泉進次郎首相、菅副総理兼官房長官、河野太郎厚労大臣、林芳正外務大臣、といったラインナップ」、馬鹿馬鹿しくてコメントする気にもならないが、「小泉」には「首相」はどう考えても無理だろう。
次に、3月31日付け東洋経済オンラインが掲載した政治ジャーナリストの泉 宏氏による「与党の大醜態「年金受給者5000円給付」撤回の裏側 バラマキ批判におびえて、責任のなすり合い」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/578238
・『2022年度予算成立の直前に、政府・与党内で突然浮上した年金受給者への一律「5000円給付」案が、事実上“撤回”の方向となった。「参院選に向けたバラマキで、極め付きの愚策」(立憲民社幹部)などの激しい批判に、岸田文雄首相も28日の参院決算委員会で「本当に必要なのかどうか」と再検討の意向を示した。 同案を政府に提起した自民、公明両党幹部も態度を一変。野党だけでなく大多数の国民からの批判に怯えた結果、自民党の高市早苗政調会長は29日夕、「もうこの話はなくなった」と明言した。 その一方で、方針転換に伴う自公両党の「裏舞台での責任のなすり合い」(自民幹部)も表面化。同案提起を主導したとされる茂木敏充自民幹事長に対し、公明党は「こちらが考えたわけではない。いい迷惑だ」(幹部)と不満を漏らすなど、与党内のあつれきも隠せない。 そもそも、同案の「提起」も「撤回」も唐突で、政府与党内での根回し不足は明らか。しかも、「今回の与党の混乱で、岸田首相の指導力も問われる」(自民長老)ことは確実で、「どう落とし前をつけるか」(同)が岸田政権の浮沈にもかかわる事態となっている』、「そもそも、同案の「提起」も「撤回」も唐突」、その通りだ。
・『物価高騰の緊急対策として案が浮上 ロシアのウクライナ侵攻を受けた物価高騰を憂慮する岸田首相は、3月29日午前の閣僚懇談会で「原油や穀物の価格上昇が社会経済活動の順調な回復の妨げ」になると指摘。自らをトップとする関係閣僚会議を設置し、与党との連携による4月中の緊急対策策定を表明した。 この対策は①原油高対策、②資源・食料安定供給、③中小企業支援、④生活困窮者支援の4本柱。政府は2022年度予算に計上した総額5兆5000億円の予備費を財源とする方針で、自公両党も政策担当による議論を急ぐ。 そこで注目されたのは、予算に賛成した玉木雄一郎・国民民主代表が強く求めているガソリン税減税のためのトリガー条項の凍結解除案と、年金受給者への一律5000円給付案の取り扱い。 前者については自民、公明、国民民主の3党協議で4月中に結論を出すことを確認。政府も「凍結解除も含めて検討する」としており、与党内には「(凍結解除は)すぐ効果が表れる」(公明幹部)との声もあり、実現の可能性が見込まれる。) その一方で、後者については自民の政策担当責任者の高市氏が「もう事務的にも間に合わなくなったので、この話はなくなった」と言明。生活に困窮する高齢者への支援は「今後、ゼロベースで議論する」と白紙で再検討する意向を明らかにした。 与党内では高市氏を筆頭に「5000円一律給付」案を今後の議題対象から除外すべきだとの声が多く、「白紙イコール中止」との見方が支配的だ。 今回、与党が同案を提起したのは、公的年金の支給額が4月から減額になることを踏まえた年金生活者への救済が狙い。具体的には、生活を支える年金支給額1人当たり約5000円となることから、その分を「補填」するためで、住民税非課税で臨時特別給付金の受給対象世帯を除く年金受給世帯への一律支給というスキームだった。 そもそも年金額は、物価や現役世代の賃金の変動などに伴い、毎年度改定され、2022年度は賃金の減少に合わせて0.4%減とすることが今年1月に決まっている。ただ、原油価格の高騰などで2月以降消費者物価指数は前年同月比で0.6%と急上昇し、ウクライナ情勢でさらなる上昇が確実視されるため、同案が年金生活者への救済措置として急浮上した』、確かに、前述の「同案の「提起」も「撤回」も唐突」」は言い得て妙だ。
・『給付事務費700億円に批判殺到 3月15日に自公両党の幹事長らが同案の実現を政府側に申し入れた際は、岸田首相も「しっかり対応したい」と応じて、いったんは実現の可能性が強まった。 しかし、約2600万人とされる年金受給者への一律給付ともなれば、収入の有無を無視した対策となり、5000円という給付額自体が「救済の効果が少ない」のも事実。しかも、給付事務費に約700億円が必要とされたことが「税金の無駄遣い」との批判を拡大させた。 同案について与党側は、当初から年度内の3月中に2021年度予算の予備費からの支給を決め、参院選前の給付実現を目指していたとされる。しかし、自公両党の提案が公表されると同時に、メディアも含めたバラマキ批判が急拡大したことが、高市氏の「撤回」発言につながった。 2年以上前にコロナパンデミックが始まって以来、この種の「一律給付」を主導してきたのは公明党だ。安倍晋三政権下の2年前には、当時の自民党政調会長だった首相が主導して閣議決定までした収入減少世帯限定での現金30万円給付が、公明党と当時の二階俊博自民幹事長の巻き返しで、全国民一律10万円給付に変更された。 さらに、昨年秋の岸田政権発足後も、その前の衆院選で公明党が「公約」として掲げた「ゼロ歳から高校3年生までを抱える世帯への一律10万円給付」を巡っても、政府与党内のあつれきが表面化し、すったもんだの末、地方自治体に判断を委ねる形で、公明の主張が事実上通った経緯がある。) このため、今回も「一律給付」は公明の発想と受け取る向きが多かった。自公幹事長の茂木、石井啓一両氏が政府に申し入れた段階では、「茂木氏が公明党の立場に忖度した」(自民幹部)との見方が広がった。 ただ、財務省は「寝耳に水」(幹部)で、「国民からも参院選目当てのバラマキと受け止められる」(同)と反発。与党内でも「かえって票が減る」(自民選対)との声が相次ぎ、わずか2週間で事実上の撤回を余儀なくされたのが実態だ。 “主犯”視された公明党は「茂木氏が持ちかけた」(政策担当幹部)と不満を表明。「都合が悪くなると公明のせいにするが今回は違う」(同)と不満たらたら。これに対し茂木氏も「何かに限って対策を打つのではないと何度も言ってきた」と釈明に追われた。 そもそも、公明党にとって夏の参院選は「党勢維持を懸けた正念場」(幹部)。しかも、3月29日にはコロナ対策を巡って貸金業法違反に問われた元同党衆院議員の遠山清彦・元財務副大臣に対し、東京地裁が懲役2年、執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。 この判決について山口那津男公明代表は同日の記者会見で、「このような事態に至ったことを深く心から反省し、国民の皆さまにおわびを申し上げたい」と沈痛な表情で謝罪。同代表周辺も「参院選への悪影響は避けられない」と肩を落とす』、どうも「茂木幹事長」の政治力は大したことなさそうだ。
・『改めて自公“すきま風”が浮き彫りに こうした同党の窮状が、今回の「5000円給付」案の与党内の責任のなすり合いにつながっているのは否定できない。自民党も、「参院選勝利のための自公両党の『相互推薦』を公明党に頼み込んだ負い目」(自民選対)があり、「どちらが“主犯”かの真相はまさに藪の中のまま」(同)で終わることになるのは確実だ。 ただ、「今後は岸田首相と山口代表という与党のツートップの指導力が厳しく問われる」(自民長老)ことは間違いない。それだけに今回の「5000円給付」騒動は、岸田政権での“自公すきま風”の深刻さを浮き彫りにしたともいえそうだ』、「今回の「5000円給付」案の与党内の責任のなすり合い」は、「“自公すきま風”の深刻さを浮き彫りにした」、参院選までに修復できるのだろうか。
第三に、5月21日付けPRESIDENT Onlineが掲載したジャーナリストのさかい もとみ氏による「同じ日本人として恥ずかしい…岸田首相の「岸田に投資を!」が海外メディアにスルーされた納得の理由 いま「自国の利益」をアピールする国は欧米にはない」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/57806
・『岸田首相を知らない市民が「ハイジャックか」と大騒ぎ 5月5日のロンドンは、真昼間のちょっとしたハプニングで騒然としていた。戦闘機2機を従えた大きな旅客機が市街地中心の上空を低空飛行で横切ったのだ。「旅客機がハイジャックか?」「ついにテロが起きたか?」と市民たちは一斉に飛行の様子をSNSに書き込んだ。 日本ではブルーインパルスによる展示飛行があると、仕事の手を休めて上空を見上げる人々でちょっとした騒ぎになる。ジェット機と戦闘機が並んで飛ぶさまはブルーインパルスほどには激しくないが、それでも市民の注目を浴びるには十分だった。いったいこれは何だったのか? 実はこのパフォーマンス、日本からやってきた岸田文雄首相を歓迎するために英空軍(ロイヤル・エアフォース、RAF)が行った儀礼飛行(フライパースト)だった。旅客機エアバスA330を改装した軍用輸送機「RAFボイジャー・ヴェスピナ」が、超音速戦闘機「タイフーン」2機を両側に従えて首相官邸やトラファルガー広場などの上空を通過した。 しかし、岸田首相の訪英を知らなかった大半の市民は、この儀礼飛行を見て大騒ぎになった。その様子はまるで、ハイジャックされた民間機が戦闘機の護衛を受けながら、ロンドン・ヒースロー空港に向かって緊急着陸する、という情景だったからだ。 そんなこともあってか、SNSを見る限りでは“人騒がせな飛行”のおかげで日本のPM(首相、プライムミニスター)がロンドンに来ていたことを初めて知った市民が多かったようだ。実際にメディアの取り上げ方も、会談の内容よりも儀礼飛行の騒ぎを伝えた記事のほうが多い、という皮肉な結果となった』、「RAFが行った儀礼飛行」、従来の「日本の首相」訪問時にもあったのだろうか。
・『「岸田に投資を!」と訴えるも現地メディアは無反応 岸田首相はゴールデンウィークにアジアと欧州を歴訪し、最後の訪問先に英国を選んだ。5日には、ロンドンの金融街「シティー」のギルドホールと呼ばれる市庁舎で講演を行い、「私からのメッセージは1つだ。日本経済はこれからも力強く成長を続ける。安心して日本に投資をしてほしい。インベスト・イン・キシダだ」とアピールした。 その後、6カ国歴訪の成果について、「平和を守る、との目的で訪問し確かな成果を得たと手応えを感じている」と評価。「いずれの首脳とも本音で大変有意義な議論ができた」「力による一方的な現状変更はいかなる場所でも許されないという共通認識を得られた」と自画自賛している。 しかし、現地主要メディアがこの発言を取り上げることはほとんどなかった。日本のように予定調和の記事は出さないという英国メディア特有の慣習もあるが、「関心事はもっと別のことにあったからだ』、「現地主要メディアが」、「インベスト・イン・キシダ」発言を取り上げることはほとんどなかった」、官邸ももっと海外メディア戦略を真剣に検討すべきだ。
・『英メディアの大多数は安全保障の「協定」に注目 岸田首相の訪英を取り上げる記事で目立ったのは、日英の安全保障に関するトピックだった。ロシアによるウクライナ侵攻で欧州全体が“第3次世界大戦”に神経をとがらせる中、英政府のもっぱらの志向は、防衛に絡む国際関係をどう取りまとめていくかに傾いている。 今回の日英会談では、自衛隊と英軍が互いの国に滞在した際の法的地位を定める「円滑化協定」(RAA)について大枠合意した。日本が欧州の国、英国がアジアの国とこうした「円滑化協定」を結ぶのは初めてだ。 英国がこれほどまでに日本に期待を寄せる理由とは何か。実は日英の防衛当局はともに、「最新鋭戦闘機の導入」という重要イシューを抱えており、これを財政難の中、効率的に作り出さなければいけないという難度の高い課題がある。 コロナ禍でさんざんな目に遭った英国も日本同様、財政面で相当厳しい状況にある。カネがない英政府は今や、自国一国で戦闘機開発は成就しない。コストを抑えるため、日本に対し「ギブアンドテイクで良いので、一緒にやろうと持ちかけた」というわけだ。 新たな戦闘機開発という「共通目標」を持つ日英両国は、実証実験の段階から手を結ぶことを決断した。「日英円滑化協定(RAA)」の締結は、戦闘機開発に当たって情報のやりとりを文字通り円滑にすることを目的としたものだ』、「カネがない英政府は今や、自国一国で戦闘機開発は成就しない。コストを抑えるため、日本に対し「ギブアンドテイクで良いので、一緒にやろうと持ちかけた」、「新たな戦闘機開発という「共通目標」を持つ日英両国は、実証実験の段階から手を結ぶこを決断」、「「日英円滑化協定(RAA)」の締結」、両国にとってウィン・ウィンなようだ。
・『ウクライナ侵攻で中国、北朝鮮への警戒感も増している 5月16日には、複数の関係者の話として「航空自衛隊F2戦闘機の後継となる次期戦闘機について、英国と共同開発する方向で調整に入った」と伝えられた。一方の英国も、現在使っている戦闘機「ユーロファイター・タイフーン」の後継機開発を進めており、2035年ごろの就役を目指す。英国が日本に求める「重要な役目」は、技術や部品の共通化でコストダウンが見込める「共同開発」に応じてほしい、といったものだろう。 遠いアジアの出来事とはいえ、北朝鮮がミサイルの発射実験を繰り返していることは、G7にとって喜ばしいことではない。岸田首相訪英の日の朝にも発射実験があった。英政府による日英首脳会談終了後の声明を読むと、北朝鮮への批判もしっかり行っていることが分かる。 英国としては「アジアで唯一のG7の国」である日本に、中国や北朝鮮に対する目を光らせておいてほしい、という思いも強い。こうした背景もあって、英国の現地メディアの報道は「新たな防衛パートナーシップを結んだ英日関係」に注目する論調が目立った』、「英国の現地メディアの報道は「新たな防衛パートナーシップを結んだ英日関係」に注目する論調が目立った」、「岸田」「発言」よりもはるかに意味がある報道だ。
・『どの国も「ロシアへの対応」が最優先事項のはずだが… 今回の岸田首相訪問が、英国世論でことのほか関心を呼ばなかったのはすでに述べた通りだが、それはボリス・ジョンソン首相にとっても同じだっただろう。 というのも、両首脳が会談した5月5日は折しも、英国の統一地方選挙の投票日に当たっていた。筆者が<キーウ電撃訪問はウクライナのためではない……英ジョンソン首相の英雄的行動のウラにある残念な事情>でも紹介したように、ジョンソン首相はコロナの行動規制のさなか、首相官邸で開かれたパーティーに参加したという、いわゆる「パーティーゲート事件」により、強い辞任要求に揉まれながらの日々を送ってきた。おそらく、岸田首相と会っている間も、選挙の情勢が気になって仕方がなかったのではないだろうか。 選挙結果を見ると、首相の人気低下、国政与党・保守党からの支持離れは明確なものとなった。伝統的に保守党が強いと言われてきたロンドンの複数行政区で票を次々と落とし、野党・労働党、自由民主党の躍進を許す格好となっている。 そうでなくても、英国やEU諸国にとって、ウクライナ危機への対応は今や国の最優先事項だ。ロシアによる侵攻後まもなく、ジョンソン首相はバイデン米大統領、マクロン仏大統領、ショルツ独首相の3人とオンライン形式で会談し、ロシアへの経済制裁について協議した。4月9日にはショルツ首相がロンドンを訪れて首脳会談を行い、その3日後にはキーウを電撃訪問し、ゼレンスキー大統領と直接対話している』、「岸田首相と会っている間も、選挙の情勢が気になって仕方がなかったのではないだろうか」、その通りだ。
・『「平和ボケしすぎ」とみられてしまっている 岸田首相が英国を離れた直後も、フィンランドとスウェーデンの北太平洋条約機構(NATO)加盟を後押しすると発言。ロシアへの脅威から2カ国を守るため、NATO正式加盟までの間、英国が防衛支援を行うことで合意した。 このように、米英首脳がいま各国に求めていることは、ひとえに「ロシアをどう叩くか」に尽きる。そんな局面で、岸田首相はG7としての自国の役割は脇に置き、「岸田に投資を!」と訴えたわけだ。ウクライナに攻め込むロシアに対し、日本は地政学的に一定のリスクを抱えている国のはずだが、自国経済のアピールに終始する様子は「近隣国なのに日本は平和ボケしすぎ」とみられてしまっている。英国主要メディアが「岸田に投資を!」という言葉を軒並み無視したことからしても、その温度差は大きい。 筆者は英国に住んで15年になるが、今ほど戦争の脅威を身近に感じる日々はない。日本の国際的なプレゼンスが弱まっていることが指摘される状況で、最もアピールしなければならなかったのは自国の利益ではなく、ロシアとどう対峙するかの姿勢ではなかったか。同じ日本人として恥ずかしくなってしまう』、「最もアピールしなければならなかったのは自国の利益ではなく、ロシアとどう対峙するかの姿勢ではなかったか。同じ日本人として恥ずかしくなってしまう」、強く同意する。
先ずは、2月27日付け東洋経済オンラインが掲載した経済評論家の山崎 元氏による「ウクライナより深刻?「岸田リスク」を総点検する 岸田内閣は短命のほうが日本のためになる?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/514793
・『前回の「株式市場を脅かす『4つのリスク』は解消するのか」(2月5日配信)で、筆者は、「ご本人が心底株式を嫌っているのかどうかは定かでないが、株式市場のほうはすでに岸田文雄首相を嫌っているように見える」と書いた。この推測を強力に裏付ける調査を見つけた』、どんな「調査」なのだろう。
・『「投資家」の岸田政権支持率はたったの3% 日経CNBCが同チャンネルの視聴者を対象に行った調査で、「あなたは、岸田政権を支持しますか?」という質問に対して、「はい」という回答がたったの3%しかなかった(調査期間は2022年1月27日~1月31日)。 日経CNBCは、主にマーケットや経済を題材とする番組を流す有料チャンネルで、実際に投資にかかわっている視聴者が多い。国民一般を対象にした岸田内閣の支持率は、多くの調査でここのところ下落傾向にあるが、それでも40%台半ばくらいの数字が多い。ところが、「投資家の支持率」と見ることができるこの調査では3%なのだ。よほど嫌われていると言っていい。 目下、新型コロナ・オミクロン株の流行が「マンボウ」(まん延防止等重点措置)を通じて経済を減速させ、ウクライナ・ロシア間の地政学的問題が発生し、何よりもFRB(アメリカ連邦準備制度理事会)がインフレ対策に重点を移して今後利上げと量的緩和の回収に進む「パウエルリスク」の顕在化で、内外の株価が下げている。 これらに加えて、株式市場が警戒する「岸田リスク」まで実現したら、投資家としてはたまったものではない。 株式市場が「岸田リスク」と感じている、「岸田首相の懸念材料」は複数あるが、大きく3つのカテゴリーに分けることができる。第1に「税制リスク」、第2に「新しい資本主義リスク」、第3に「金融政策転換リスク」だ』、「日経CNBC」調査で、「投資家」の岸田政権支持率はたったの3%」、とは確かに衝撃的な数字だ。
・『首相が再び税制言及なら日経平均1000円下落も まず、税制に関するリスクとして心配なのは、岸田氏が昨年の自民党総裁選の時点で口にしていた金融所得課税の見直し(要は税率引き上げ)が、再登場する可能性だ。 この構想は、金融所得に対する課税が分離課税であるために、株式の配当等による収入が大きい年収1億円を超えるような富裕層の所得に対する税率が、1億円未満の層よりも低下する通称「1億円の壁」問題への対策として登場した。増税に熱心な官僚やそのサポーター的な学者などの間では前々から話題に上っていた構想だが、どうやら「分配」が大事らしいとぼんやり思っていた岸田氏の耳に入ったのだろう。 金融所得への課税強化は、投資家が株式投資や投資信託への投資などでリスクを取って儲けることに対して、現在よりもより処罰的に働く、投資家から見ると「とんでもない税制改悪」だ。この可能性は、岸田氏が首相に就任した当初にマーケットで懸念されて株価が下がり、一部では「岸田ショック」などとも呼ばれた岸田リスクの第1号案件だ。 市場では不評で、株価を下げかねないことから、参議院選挙の前に持ち出されることはなさそうだが、参議院選挙が終わって、来年の税制が検討される今年の秋以降に、再び話題に上る可能性がある。話題に上るということは、岸田首相の耳に入るということであり、彼にとっては「耳、即ち脳!」なので、反射的に「検討を廃除するものではない」などと口走るかも知れない。 この場合、株価はいったん急落し(日経平均株価で1000円見当か)、その後に様子を見ながら、検討が撤回させるまでじくじく悪影響を与える材料になりそうだ。筆者は、こうした市場の反応を見て、金融所得課税の見直しは実現しないことになるだろうと「予想」するが、予想というものは当てにならない。 仮に参議院選挙に与党が勝利していた場合(今の野党に対して、さてどのくらい負ける要素があるのか?)、しばらく国政選挙のスケジュールがないので、増税マニアの誰かが、岸田氏に「総理の掲げる政策を実現するチャンスは今しかありません」とささやくかも知れない。この場合、ささやきの角度とタイミングが気持ちよくて実現してしまう可能性がゼロではない。) 岸田氏は、「新しい資本主義」という内容空疎な言葉の使用を止める気配がない。おそらく、口にしてみると、耳障りが良くて、自分が何かを考えたかのような誇らしい気分になるのだろう。できるなら人前で口にするのは我慢してほしいものだが、かつての首相たちも、「改革」とか「美しい国」のような、中身が伴わないけれども気持ちのいい言葉を発することをつねとしていた。これは首相官邸の風土病なのかもしれない』、「中身が伴わないけれども気持ちのいい言葉を発することをつねとしていた。これは首相官邸の風土病なのかもしれない」、困ったことだ。
・『日本の資本主義の本質とは何か? しかし、「美しい国」くらいなら国民は陰で嗤っていればよかったが、「新しい資本主義」は、しばしば株価や経済にとってのリスク要因になるので厄介だ。 先の金融所得課税の見直しもその1つだが、岸田首相は、どうやら株主レベルでの利益追求を抑制することが、資本主義の見直しになると思い込んでいるらしい。小さなレベルでは、「自己株買いの規制の検討」、「業績の四半期開示の見直し」、といった株式投資家に不利益ないし迷惑な施策の可能性を口走るし、おおもとで「新自由主義の見直し」が必要だと思っているらしいことが厄介だ。 そもそも日本の経済が新自由主義的だと考えることは事実誤認だ。政・官、および大企業正社員階層から上の企業人たちは(日本の「上層部」と呼ぶことにしよう)、メンバーシップが固定的な「資本主義の仮面を被った縁故主義」とでも呼ぶのがふさわしい形で社会および経済を運営している。 日本の資本主義は独裁国家・権威主義国家と呼ばれる国々が民主主義を名乗るために行っている選挙のごとき一種の仮面にすぎない(ウラジーミル・プーチン氏も選挙で選ばれた大統領だ)。2世、3世議員がうようよいる自民党政権は(野党にもいるが)、経団連ばかりか、連合にも守られて(野党を分断してくれる自民党の最大の応援勢力だ)、固定的な支配構造が当面安泰だ。社会・経済が長年停滞するのも無理はない。 もっとも、正社員メンバーシップから外れた非正規労働者に対しては、企業をはじめとする上層部の行動は、極めてドライに古典的資本主義を適用している。労働力は、極めて安価かつ競争的に商品化されている。ここだけを見ると、今時になってマルクスを持ち出す人達の気持ちがわからなくはないが、日本全体が資本主義的に運営されていると見るのは間違いだ。 こうした状況に「新しい資本主義」が絡むのでややこしい。日本経済の発展のためには、「普通の資本主義」を社会の上層部に対して徹底すべきだし、株式の投資家がおおむね願っている「成長戦略」はその方向にある。しかし、岸田氏にはこれが「行きすぎた新自由主義」に見えるらしい。 また、本来、福祉やセーフティーネットの役割を企業に割り当てることが不適切で、これは岸田氏一人に責任があるわけではなく、日本の社会設計上の誤りだが、企業に賃上げを求めることを「分配政策」だと勘違いしたり、「70歳まで社員を雇用せよ」と要請したりする、「資本主義の修正」のつもりの政策は、企業の活力を奪い、社会を停滞させる。この調子では、「企業の内部留保への課税を検討する」などとも言い出しかねない。 いずれも、株式投資家が嫌う社会の姿だし、経済の一層の停滞を招く。筆者が考える正しい方向性は「強力なセーフティーネット付きの普通の資本主義の徹底」だ。例えば、正社員に対する解雇の金銭解決ルールを整備して人材の流動化・再配置を促すことが必要だが、その前提条件として、解雇されても生活ができるようなセーフティーネット(理想はベーシックインカム)と職業訓練の仕組み、さらには公的な教育・研究の充実などが必要だ。 付け加えると、「普通の資本主義」と「セーフティーネット」の両方が必要だが、順番はセーフティーネットの整備が先だ(柔道で、投げ技よりも受け身を先に練習するように)。 この点で、岸田氏の「分配重視」は役に立つかも知れないのだが、先の「子供1人当たり10万円」の給付金が所得制限付きでボロボロになった様子を見ると、セーフティーネットの構築はおろか、正しいバラマキ政策の作法もご存じない様子だ。 岸田首相の「新しい資本主義」構想は、「予想としては」、おそらく迷走して、その都度株式市場に嫌われながら方針を撤回して、日本にとって時間の空費に終わるだろう。停滞感満載の時間が延びるのは国民にとって災難だが、そのくらいで済めばいい、とも言える』、「「新しい資本主義」構想は、「予想としては」、おそらく迷走して、その都度株式市場に嫌われながら方針を撤回して、日本にとって時間の空費に終わるだろう。停滞感満載の時間が延びるのは国民にとって災難だが、そのくらいで済めばいい、とも言える」、手厳しい見方だ。
・『「金融政策転換リスク」はインフレで発火するか? 本格的に心配なのは、3つ目に挙げた、岸田政権が金融緩和政策を転換しようとするリスクだ。 岸田氏は、かつて「政権禅譲」の期待を裏切った安倍晋三氏を快く思っていまい。また、彼の脳そのものである「耳」には、周囲の官僚達から緊縮財政への誘惑とともに、アベノミクスの金融緩和政策を見直そうとする声が侵入しているにちがいない。) しかも、届くことはないと思われていた消費者物価の「2%」の上昇率が、エネルギー価格をはじめとする輸入物価の上昇につれられて、昨春の携帯料金引き下げの影響が剥落する今春以降に、一時的に達成される可能性が出て来た。 仮にそうなるとして、このインフレは、需要が昂じて景気が過熱して起こったものではなく、需要の弾力性が小さい(価格が上昇しても節約しにくい)エネルギーなどの輸入価格上昇に伴って起こる国民の窮乏化を伴う物価上昇であり、金利を引き上げることが適切な種類のインフレではない』、なるほど。
・『7月の日銀政策委員会の審議委員人事に注目 例えば、政策金利を引き上げると、おそらく大幅な円高が起こり、輸入物価の下落要因にはなる。だが企業の価格競争条件が悪化し(よく話題になる輸出競争力だけではなく、国内製品も競争条件が悪化する)、加えて実質金利の引き上げになるのだから、ここに至っても「コロナ前」に戻ることすらできていない日本経済に良いはずがない。 「円高のほうが、企業は高付加価値製品へのシフトに努力するだろう」という声を聞くことがあるのだが、根拠のない根性論だ。利益が出ていて、実質金利が低いほうが、企業は前向きな投資を行いやすいと考えるのが当然ではなかろうか。日本企業が高付加価値製品分野で競争力を持たないことの原因は、円安ではない。 これまでに何度も指摘してきたことだが、金融政策転換リスクの恐ろしいところは、岸田氏が次の日本銀行の正副総裁の実質的な任命者になることだ。「新しい資本主義」その他に関連する迷走は、少々後から岸田氏の「耳」に悪評が入ることによってその都度修正が可能だが、日銀総裁の任期は5年あるので、影響が固定化される公算が大きい。 このリスクの行方を占ううえでは、7月に任期を迎える日銀の政策委員会の審議委員である、鈴木人司氏および片岡剛士氏の後任に注目したい。鈴木氏は「銀行業界枠」と目される方なので、一人は銀行業界から選ばれるものと予想されるが、「リフレ派」エコノミストである片岡氏の実質的な後任にリフレ派と覚しき人物が選任されないようだと、来年の正副総裁人事に赤に近い黄色信号が点滅する。場合によっては、参議院選挙以上の7月の注目材料だ。) 以上、3つのカテゴリーの「岸田リスク」は、いずれも岸田内閣が向こう1年半以上継続することを前提としている。では、岸田内閣が短命に終わる可能性はないか。 1つには、夏の参議院選挙で自民党が予想外の敗北を喫することはないか。現在の野党の状況を見るとその可能性はなさそうに見えるのだが、1つの要素として注目できるのは、現在参院選の選挙協力で自民党との全面的な合意ができていない公明党との関係だ。 公明党およびその支持母体である創価学会の協力なしに当選できない自民党候補は一定数いるにちがいない』、私は、異次元緩和には反対の立場なので、「リフレ派」の「片岡」氏の後任は、オーソドックスなエコノミストの選任が望ましいと思う。
・『「小泉コミュニケーション担当」首相なら魅力的 仮に選挙協力が不調に終わって、自民党候補が戦前の予想以上に落選した場合に何が起こるか。さすがに、衆参の「ねじれ」が起こるほどに負けないだろうが、岸田政権は弱体化する。ほどほどの負けは、安倍晋三氏、麻生太郎氏、菅義偉氏、二階俊博氏といった、「岸田政権の主流ではない政治的実力者たち」にとって好都合だろう。 加えて、注目できるのは、公明党にとっても、同党の協力がなければ自民党が選挙で苦労することを示すことは、自分たちの価値をつり上げて、政治的影響力を増す効果があることだ。 仮に、参院選の敗北などで岸田政権が弱体化したときに、自民党内で「政局」は起こるだろうか?政治の世界のことなので予測はできないが、例えば、菅前首相は「いま、おれに対する世論の反応は悪くない」と周囲に語っているらしい(『朝日新聞』2月22日)。 さすがに、菅氏のすぐの再登板は考えにくいが、小泉進次郎首相、菅副総理兼官房長官、河野太郎厚労大臣、林芳正外務大臣、といったラインナップなら、なかなか魅力的に思える。派閥力学的には、安倍晋三氏を副総理で遇するといいのかもしれない。 河野氏と菅氏は、いずれもビジネスの世界で言うマイクロ・マネジメントのタイプなので、2人で首相、副首相を分け合うのは不向きに思える。首相だがコミュニケーション担当の扱いで小泉進次郎氏を担ぐのがいいのではないかと提案しておく。「ポエム」を封印して頑張って欲しい。河野太郎氏には、課題満載の官庁である厚労省の根本的な改革を是非期待したい(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)』、「小泉進次郎首相、菅副総理兼官房長官、河野太郎厚労大臣、林芳正外務大臣、といったラインナップ」、馬鹿馬鹿しくてコメントする気にもならないが、「小泉」には「首相」はどう考えても無理だろう。
次に、3月31日付け東洋経済オンラインが掲載した政治ジャーナリストの泉 宏氏による「与党の大醜態「年金受給者5000円給付」撤回の裏側 バラマキ批判におびえて、責任のなすり合い」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/578238
・『2022年度予算成立の直前に、政府・与党内で突然浮上した年金受給者への一律「5000円給付」案が、事実上“撤回”の方向となった。「参院選に向けたバラマキで、極め付きの愚策」(立憲民社幹部)などの激しい批判に、岸田文雄首相も28日の参院決算委員会で「本当に必要なのかどうか」と再検討の意向を示した。 同案を政府に提起した自民、公明両党幹部も態度を一変。野党だけでなく大多数の国民からの批判に怯えた結果、自民党の高市早苗政調会長は29日夕、「もうこの話はなくなった」と明言した。 その一方で、方針転換に伴う自公両党の「裏舞台での責任のなすり合い」(自民幹部)も表面化。同案提起を主導したとされる茂木敏充自民幹事長に対し、公明党は「こちらが考えたわけではない。いい迷惑だ」(幹部)と不満を漏らすなど、与党内のあつれきも隠せない。 そもそも、同案の「提起」も「撤回」も唐突で、政府与党内での根回し不足は明らか。しかも、「今回の与党の混乱で、岸田首相の指導力も問われる」(自民長老)ことは確実で、「どう落とし前をつけるか」(同)が岸田政権の浮沈にもかかわる事態となっている』、「そもそも、同案の「提起」も「撤回」も唐突」、その通りだ。
・『物価高騰の緊急対策として案が浮上 ロシアのウクライナ侵攻を受けた物価高騰を憂慮する岸田首相は、3月29日午前の閣僚懇談会で「原油や穀物の価格上昇が社会経済活動の順調な回復の妨げ」になると指摘。自らをトップとする関係閣僚会議を設置し、与党との連携による4月中の緊急対策策定を表明した。 この対策は①原油高対策、②資源・食料安定供給、③中小企業支援、④生活困窮者支援の4本柱。政府は2022年度予算に計上した総額5兆5000億円の予備費を財源とする方針で、自公両党も政策担当による議論を急ぐ。 そこで注目されたのは、予算に賛成した玉木雄一郎・国民民主代表が強く求めているガソリン税減税のためのトリガー条項の凍結解除案と、年金受給者への一律5000円給付案の取り扱い。 前者については自民、公明、国民民主の3党協議で4月中に結論を出すことを確認。政府も「凍結解除も含めて検討する」としており、与党内には「(凍結解除は)すぐ効果が表れる」(公明幹部)との声もあり、実現の可能性が見込まれる。) その一方で、後者については自民の政策担当責任者の高市氏が「もう事務的にも間に合わなくなったので、この話はなくなった」と言明。生活に困窮する高齢者への支援は「今後、ゼロベースで議論する」と白紙で再検討する意向を明らかにした。 与党内では高市氏を筆頭に「5000円一律給付」案を今後の議題対象から除外すべきだとの声が多く、「白紙イコール中止」との見方が支配的だ。 今回、与党が同案を提起したのは、公的年金の支給額が4月から減額になることを踏まえた年金生活者への救済が狙い。具体的には、生活を支える年金支給額1人当たり約5000円となることから、その分を「補填」するためで、住民税非課税で臨時特別給付金の受給対象世帯を除く年金受給世帯への一律支給というスキームだった。 そもそも年金額は、物価や現役世代の賃金の変動などに伴い、毎年度改定され、2022年度は賃金の減少に合わせて0.4%減とすることが今年1月に決まっている。ただ、原油価格の高騰などで2月以降消費者物価指数は前年同月比で0.6%と急上昇し、ウクライナ情勢でさらなる上昇が確実視されるため、同案が年金生活者への救済措置として急浮上した』、確かに、前述の「同案の「提起」も「撤回」も唐突」」は言い得て妙だ。
・『給付事務費700億円に批判殺到 3月15日に自公両党の幹事長らが同案の実現を政府側に申し入れた際は、岸田首相も「しっかり対応したい」と応じて、いったんは実現の可能性が強まった。 しかし、約2600万人とされる年金受給者への一律給付ともなれば、収入の有無を無視した対策となり、5000円という給付額自体が「救済の効果が少ない」のも事実。しかも、給付事務費に約700億円が必要とされたことが「税金の無駄遣い」との批判を拡大させた。 同案について与党側は、当初から年度内の3月中に2021年度予算の予備費からの支給を決め、参院選前の給付実現を目指していたとされる。しかし、自公両党の提案が公表されると同時に、メディアも含めたバラマキ批判が急拡大したことが、高市氏の「撤回」発言につながった。 2年以上前にコロナパンデミックが始まって以来、この種の「一律給付」を主導してきたのは公明党だ。安倍晋三政権下の2年前には、当時の自民党政調会長だった首相が主導して閣議決定までした収入減少世帯限定での現金30万円給付が、公明党と当時の二階俊博自民幹事長の巻き返しで、全国民一律10万円給付に変更された。 さらに、昨年秋の岸田政権発足後も、その前の衆院選で公明党が「公約」として掲げた「ゼロ歳から高校3年生までを抱える世帯への一律10万円給付」を巡っても、政府与党内のあつれきが表面化し、すったもんだの末、地方自治体に判断を委ねる形で、公明の主張が事実上通った経緯がある。) このため、今回も「一律給付」は公明の発想と受け取る向きが多かった。自公幹事長の茂木、石井啓一両氏が政府に申し入れた段階では、「茂木氏が公明党の立場に忖度した」(自民幹部)との見方が広がった。 ただ、財務省は「寝耳に水」(幹部)で、「国民からも参院選目当てのバラマキと受け止められる」(同)と反発。与党内でも「かえって票が減る」(自民選対)との声が相次ぎ、わずか2週間で事実上の撤回を余儀なくされたのが実態だ。 “主犯”視された公明党は「茂木氏が持ちかけた」(政策担当幹部)と不満を表明。「都合が悪くなると公明のせいにするが今回は違う」(同)と不満たらたら。これに対し茂木氏も「何かに限って対策を打つのではないと何度も言ってきた」と釈明に追われた。 そもそも、公明党にとって夏の参院選は「党勢維持を懸けた正念場」(幹部)。しかも、3月29日にはコロナ対策を巡って貸金業法違反に問われた元同党衆院議員の遠山清彦・元財務副大臣に対し、東京地裁が懲役2年、執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。 この判決について山口那津男公明代表は同日の記者会見で、「このような事態に至ったことを深く心から反省し、国民の皆さまにおわびを申し上げたい」と沈痛な表情で謝罪。同代表周辺も「参院選への悪影響は避けられない」と肩を落とす』、どうも「茂木幹事長」の政治力は大したことなさそうだ。
・『改めて自公“すきま風”が浮き彫りに こうした同党の窮状が、今回の「5000円給付」案の与党内の責任のなすり合いにつながっているのは否定できない。自民党も、「参院選勝利のための自公両党の『相互推薦』を公明党に頼み込んだ負い目」(自民選対)があり、「どちらが“主犯”かの真相はまさに藪の中のまま」(同)で終わることになるのは確実だ。 ただ、「今後は岸田首相と山口代表という与党のツートップの指導力が厳しく問われる」(自民長老)ことは間違いない。それだけに今回の「5000円給付」騒動は、岸田政権での“自公すきま風”の深刻さを浮き彫りにしたともいえそうだ』、「今回の「5000円給付」案の与党内の責任のなすり合い」は、「“自公すきま風”の深刻さを浮き彫りにした」、参院選までに修復できるのだろうか。
第三に、5月21日付けPRESIDENT Onlineが掲載したジャーナリストのさかい もとみ氏による「同じ日本人として恥ずかしい…岸田首相の「岸田に投資を!」が海外メディアにスルーされた納得の理由 いま「自国の利益」をアピールする国は欧米にはない」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/57806
・『岸田首相を知らない市民が「ハイジャックか」と大騒ぎ 5月5日のロンドンは、真昼間のちょっとしたハプニングで騒然としていた。戦闘機2機を従えた大きな旅客機が市街地中心の上空を低空飛行で横切ったのだ。「旅客機がハイジャックか?」「ついにテロが起きたか?」と市民たちは一斉に飛行の様子をSNSに書き込んだ。 日本ではブルーインパルスによる展示飛行があると、仕事の手を休めて上空を見上げる人々でちょっとした騒ぎになる。ジェット機と戦闘機が並んで飛ぶさまはブルーインパルスほどには激しくないが、それでも市民の注目を浴びるには十分だった。いったいこれは何だったのか? 実はこのパフォーマンス、日本からやってきた岸田文雄首相を歓迎するために英空軍(ロイヤル・エアフォース、RAF)が行った儀礼飛行(フライパースト)だった。旅客機エアバスA330を改装した軍用輸送機「RAFボイジャー・ヴェスピナ」が、超音速戦闘機「タイフーン」2機を両側に従えて首相官邸やトラファルガー広場などの上空を通過した。 しかし、岸田首相の訪英を知らなかった大半の市民は、この儀礼飛行を見て大騒ぎになった。その様子はまるで、ハイジャックされた民間機が戦闘機の護衛を受けながら、ロンドン・ヒースロー空港に向かって緊急着陸する、という情景だったからだ。 そんなこともあってか、SNSを見る限りでは“人騒がせな飛行”のおかげで日本のPM(首相、プライムミニスター)がロンドンに来ていたことを初めて知った市民が多かったようだ。実際にメディアの取り上げ方も、会談の内容よりも儀礼飛行の騒ぎを伝えた記事のほうが多い、という皮肉な結果となった』、「RAFが行った儀礼飛行」、従来の「日本の首相」訪問時にもあったのだろうか。
・『「岸田に投資を!」と訴えるも現地メディアは無反応 岸田首相はゴールデンウィークにアジアと欧州を歴訪し、最後の訪問先に英国を選んだ。5日には、ロンドンの金融街「シティー」のギルドホールと呼ばれる市庁舎で講演を行い、「私からのメッセージは1つだ。日本経済はこれからも力強く成長を続ける。安心して日本に投資をしてほしい。インベスト・イン・キシダだ」とアピールした。 その後、6カ国歴訪の成果について、「平和を守る、との目的で訪問し確かな成果を得たと手応えを感じている」と評価。「いずれの首脳とも本音で大変有意義な議論ができた」「力による一方的な現状変更はいかなる場所でも許されないという共通認識を得られた」と自画自賛している。 しかし、現地主要メディアがこの発言を取り上げることはほとんどなかった。日本のように予定調和の記事は出さないという英国メディア特有の慣習もあるが、「関心事はもっと別のことにあったからだ』、「現地主要メディアが」、「インベスト・イン・キシダ」発言を取り上げることはほとんどなかった」、官邸ももっと海外メディア戦略を真剣に検討すべきだ。
・『英メディアの大多数は安全保障の「協定」に注目 岸田首相の訪英を取り上げる記事で目立ったのは、日英の安全保障に関するトピックだった。ロシアによるウクライナ侵攻で欧州全体が“第3次世界大戦”に神経をとがらせる中、英政府のもっぱらの志向は、防衛に絡む国際関係をどう取りまとめていくかに傾いている。 今回の日英会談では、自衛隊と英軍が互いの国に滞在した際の法的地位を定める「円滑化協定」(RAA)について大枠合意した。日本が欧州の国、英国がアジアの国とこうした「円滑化協定」を結ぶのは初めてだ。 英国がこれほどまでに日本に期待を寄せる理由とは何か。実は日英の防衛当局はともに、「最新鋭戦闘機の導入」という重要イシューを抱えており、これを財政難の中、効率的に作り出さなければいけないという難度の高い課題がある。 コロナ禍でさんざんな目に遭った英国も日本同様、財政面で相当厳しい状況にある。カネがない英政府は今や、自国一国で戦闘機開発は成就しない。コストを抑えるため、日本に対し「ギブアンドテイクで良いので、一緒にやろうと持ちかけた」というわけだ。 新たな戦闘機開発という「共通目標」を持つ日英両国は、実証実験の段階から手を結ぶことを決断した。「日英円滑化協定(RAA)」の締結は、戦闘機開発に当たって情報のやりとりを文字通り円滑にすることを目的としたものだ』、「カネがない英政府は今や、自国一国で戦闘機開発は成就しない。コストを抑えるため、日本に対し「ギブアンドテイクで良いので、一緒にやろうと持ちかけた」、「新たな戦闘機開発という「共通目標」を持つ日英両国は、実証実験の段階から手を結ぶこを決断」、「「日英円滑化協定(RAA)」の締結」、両国にとってウィン・ウィンなようだ。
・『ウクライナ侵攻で中国、北朝鮮への警戒感も増している 5月16日には、複数の関係者の話として「航空自衛隊F2戦闘機の後継となる次期戦闘機について、英国と共同開発する方向で調整に入った」と伝えられた。一方の英国も、現在使っている戦闘機「ユーロファイター・タイフーン」の後継機開発を進めており、2035年ごろの就役を目指す。英国が日本に求める「重要な役目」は、技術や部品の共通化でコストダウンが見込める「共同開発」に応じてほしい、といったものだろう。 遠いアジアの出来事とはいえ、北朝鮮がミサイルの発射実験を繰り返していることは、G7にとって喜ばしいことではない。岸田首相訪英の日の朝にも発射実験があった。英政府による日英首脳会談終了後の声明を読むと、北朝鮮への批判もしっかり行っていることが分かる。 英国としては「アジアで唯一のG7の国」である日本に、中国や北朝鮮に対する目を光らせておいてほしい、という思いも強い。こうした背景もあって、英国の現地メディアの報道は「新たな防衛パートナーシップを結んだ英日関係」に注目する論調が目立った』、「英国の現地メディアの報道は「新たな防衛パートナーシップを結んだ英日関係」に注目する論調が目立った」、「岸田」「発言」よりもはるかに意味がある報道だ。
・『どの国も「ロシアへの対応」が最優先事項のはずだが… 今回の岸田首相訪問が、英国世論でことのほか関心を呼ばなかったのはすでに述べた通りだが、それはボリス・ジョンソン首相にとっても同じだっただろう。 というのも、両首脳が会談した5月5日は折しも、英国の統一地方選挙の投票日に当たっていた。筆者が<キーウ電撃訪問はウクライナのためではない……英ジョンソン首相の英雄的行動のウラにある残念な事情>でも紹介したように、ジョンソン首相はコロナの行動規制のさなか、首相官邸で開かれたパーティーに参加したという、いわゆる「パーティーゲート事件」により、強い辞任要求に揉まれながらの日々を送ってきた。おそらく、岸田首相と会っている間も、選挙の情勢が気になって仕方がなかったのではないだろうか。 選挙結果を見ると、首相の人気低下、国政与党・保守党からの支持離れは明確なものとなった。伝統的に保守党が強いと言われてきたロンドンの複数行政区で票を次々と落とし、野党・労働党、自由民主党の躍進を許す格好となっている。 そうでなくても、英国やEU諸国にとって、ウクライナ危機への対応は今や国の最優先事項だ。ロシアによる侵攻後まもなく、ジョンソン首相はバイデン米大統領、マクロン仏大統領、ショルツ独首相の3人とオンライン形式で会談し、ロシアへの経済制裁について協議した。4月9日にはショルツ首相がロンドンを訪れて首脳会談を行い、その3日後にはキーウを電撃訪問し、ゼレンスキー大統領と直接対話している』、「岸田首相と会っている間も、選挙の情勢が気になって仕方がなかったのではないだろうか」、その通りだ。
・『「平和ボケしすぎ」とみられてしまっている 岸田首相が英国を離れた直後も、フィンランドとスウェーデンの北太平洋条約機構(NATO)加盟を後押しすると発言。ロシアへの脅威から2カ国を守るため、NATO正式加盟までの間、英国が防衛支援を行うことで合意した。 このように、米英首脳がいま各国に求めていることは、ひとえに「ロシアをどう叩くか」に尽きる。そんな局面で、岸田首相はG7としての自国の役割は脇に置き、「岸田に投資を!」と訴えたわけだ。ウクライナに攻め込むロシアに対し、日本は地政学的に一定のリスクを抱えている国のはずだが、自国経済のアピールに終始する様子は「近隣国なのに日本は平和ボケしすぎ」とみられてしまっている。英国主要メディアが「岸田に投資を!」という言葉を軒並み無視したことからしても、その温度差は大きい。 筆者は英国に住んで15年になるが、今ほど戦争の脅威を身近に感じる日々はない。日本の国際的なプレゼンスが弱まっていることが指摘される状況で、最もアピールしなければならなかったのは自国の利益ではなく、ロシアとどう対峙するかの姿勢ではなかったか。同じ日本人として恥ずかしくなってしまう』、「最もアピールしなければならなかったのは自国の利益ではなく、ロシアとどう対峙するかの姿勢ではなかったか。同じ日本人として恥ずかしくなってしまう」、強く同意する。
タグ:(その4)(ウクライナより深刻?「岸田リスク」を総点検する 岸田内閣は短命のほうが日本のためになる?、与党の大醜態「年金受給者5000円給付」撤回の裏側 バラマキ批判におびえて 責任のなすり合い、同じ日本人として恥ずかしい…岸田首相の「岸田に投資を!」が海外メディアにスルーされた納得の理由 いま「自国の利益」をアピールする国は欧米にはない) キシダノミクス 東洋経済オンライン 山崎 元氏による「ウクライナより深刻?「岸田リスク」を総点検する 岸田内閣は短命のほうが日本のためになる?」 どんな「調査」なのだろう。 「日経CNBC」調査で、「投資家」の岸田政権支持率はたったの3%」、とは確かに衝撃的な数字だ。 「「新しい資本主義」構想は、「予想としては」、おそらく迷走して、その都度株式市場に嫌われながら方針を撤回して、日本にとって時間の空費に終わるだろう。停滞感満載の時間が延びるのは国民にとって災難だが、そのくらいで済めばいい、とも言える」、手厳しい見方だ。 私は、異次元緩和には反対の立場なので、「リフレ派」の「片岡」氏の後任は、オーソドックスなエコノミストの選任が望ましいと思う。 「小泉進次郎首相、菅副総理兼官房長官、河野太郎厚労大臣、林芳正外務大臣、といったラインナップ」、馬鹿馬鹿しくてコメントする気にもならないが、「小泉」には「首相」はどう考えても無理だろう。 泉 宏氏による「与党の大醜態「年金受給者5000円給付」撤回の裏側 バラマキ批判におびえて、責任のなすり合い」 「そもそも、同案の「提起」も「撤回」も唐突」、その通りだ。 確かに、前述の「同案の「提起」も「撤回」も唐突」」は言い得て妙だ。 どうも「茂木幹事長」の政治力は大したことなさそうだ。 「今回の「5000円給付」案の与党内の責任のなすり合い」は、「“自公すきま風”の深刻さを浮き彫りにした」、参院選までに修復できるのだろうか。 PRESIDENT ONLINE さかい もとみ氏による「同じ日本人として恥ずかしい…岸田首相の「岸田に投資を!」が海外メディアにスルーされた納得の理由 いま「自国の利益」をアピールする国は欧米にはない」 「RAFが行った儀礼飛行」、従来の「日本の首相」訪問時にもあったのだろうか。 「現地主要メディアが」、「インベスト・イン・キシダ」発言を取り上げることはほとんどなかった」、官邸ももっと海外メディア戦略を真剣に検討すべきだ。 「カネがない英政府は今や、自国一国で戦闘機開発は成就しない。コストを抑えるため、日本に対し「ギブアンドテイクで良いので、一緒にやろうと持ちかけた」、「新たな戦闘機開発という「共通目標」を持つ日英両国は、実証実験の段階から手を結ぶこを決断」、「「日英円滑化協定(RAA)」の締結」、両国にとってウィン・ウィンなようだ。 「英国の現地メディアの報道は「新たな防衛パートナーシップを結んだ英日関係」に注目する論調が目立った」、「岸田」「発言」よりもはるかに意味がある報道だ。 「岸田首相と会っている間も、選挙の情勢が気になって仕方がなかったのではないだろうか」、その通りだ。 「最もアピールしなければならなかったのは自国の利益ではなく、ロシアとどう対峙するかの姿勢ではなかったか。同じ日本人として恥ずかしくなってしまう」、強く同意する。