倒産・経営破綻(その1)(ジェネリック大手「日医工」が私的整理申請 赤字が1048億円に拡大、オンキヨー経営破綻「3つの原因」が浮き彫りにする 日の丸家電凋落の深層) [企業経営]
今日は、倒産・経営破綻(その1)(ジェネリック大手「日医工」が私的整理申請 赤字が1048億円に拡大、オンキヨー経営破綻「3つの原因」が浮き彫りにする 日の丸家電凋落の深層)を取上げよう。
先ずは、本年5月19日付け日刊ゲンダイが掲載した経済ジャーナリストの重道武司氏による「ジェネリック大手「日医工」が私的整理申請 赤字が1048億円に拡大」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/305363
・『後発医薬品(ジェネリック医薬品)を巡る品質不正問題が、業界大手3社の一角の経営破綻劇にまで発展した。日医工で、先週末に事業再生ADR(裁判外紛争手続き)を申請。主力行の三井住友銀行(SMBC)をはじめとした取引金融機関による債権放棄など債務負担軽減を受けたうえで再建を目指すとしている。 日医工は2020年、国に承認されていない手順で薬剤を製造していたことが発覚。翌21年3月に主力の富山第一工場(滑川市)が富山県から32日間の業務停止命令を受けた。このため品質管理の厳格化など改善を進めてきたものの思うようにはかどらず、今なお「170品目前後で生産や出荷停止が続いている」(事情通)とされる。 製造委託先だった小林化工(福井県あわら市)の不祥事にも足をすくわれた。睡眠導入剤の成分が薬剤に混入し、2人の死者まで出す「健康被害」を引き起こしたもので、委託品の販売中止に追い込まれた』、「ジェネリック医薬品」業界での相次ぐ「不正」については、このブログの昨年10月5日付けで取上げた。いまだに「「170品目前後で生産や出荷停止が続いている」とは異常事態だ。
・『メガバンクは支援へ 業績は急激に悪化して21年3月期に41億円強の最終赤字に転落。22年3月期には16年に買収した北米子会社ののれんや無形資産などの減損に、原材料・製品の廃棄などを見越した棚卸資産評価損の計上も余儀なくされ、最終損失額は一気に前期比25倍超の1048億円余にまで膨らんだ。 こうなると重荷になってくるのが“借金”だ。過去にしきりとM&Aを繰り返してきたこともあって、3月末の有利子負債残高は1626億円と7年前の約10倍にものぼる。巨額赤字による自己資本の毀損で、財務制限条項に抵触するハメにも陥った。 日医工の取引行はSMBCを筆頭に政府系の日本政策投資銀行(政投銀)や三井住友信託銀行、三菱UFJ銀行、農林中央金庫など。北陸銀行や北国銀行などの地銀も名を連ねる。融資残高は「SMBCで370億円前後」(関係者)とみられ、政投銀と三井住友信託銀行が各200億円前後で続く。すでに政投銀と3メガバンクが設立した事業再生ファンドが最大200億円を出資するとの意向を示しており、「ADR成立は比較的容易では」というのが金融筋の見立てだが、予断は許さない。 後発薬業界では品質不正が多発。38社中約8割の企業が承認外の手順で薬剤を製造していたという業界団体の報告もある』、「過去にしきりとM&Aを繰り返してきたこともあって、3月末の有利子負債残高は1626億円と7年前の約10倍にものぼる。巨額赤字による自己資本の毀損で、財務制限条項に抵触するハメにも陥った」、「財務制限条項に抵触」とは逃げ道がない。それにしても、「後発薬業界では品質不正が多発。38社中約8割の企業が承認外の手順で薬剤を製造していたという業界団体の報告」、とは驚くほどコンプライアンス意識が欠如した業界のようだ。
次に、5月24日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した早稲田大学大学院経営管理研究科教授の長内 厚氏による「オンキヨー経営破綻「3つの原因」が浮き彫りにする、日の丸家電凋落の深層」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/303672
・『「hi-fi」のオンキヨーが経営破綻した3つの理由 この1年、オンキヨーという会社をウォッチし続けてきた。日本のエレクトロニクス企業というと、パナソニック、東芝、ソニー、シャープなどを思い浮かべるが、40、50代以上のhi-fiブームを知っている世代にとって、この度のオンキヨーの破産申請は大きなショックとともに受け入れられたであろう。オンキヨーはもともと、松下電器産業(現パナソニック)の音響エンジニアが独立して作った、オーディオ専業メーカーである。 昨年9月にオンキヨーは主力のAV事業を売却し、売却先のAV事業の売り上げのライセンス料を収益化することを狙っていた。しかし、このスキームが上手く機能することはなく、収益のあてのないオンキヨーは破産の道を選んだ。創業が1946年であるから、創業80年を目前にしての消滅であった。 筆者は2020年秋と2021年秋に、通信社やテレビ局からオンキヨーの経営についてコメントを求められた。2020年の段階ではまだオンキヨーは生き残る術はあったかもしれないし、当時そう答えていた。ただし、大規模なリストラは必要であった。 筆者は、日本の現場を守るためなら経営トップが外国人になっても構わないという考えを本連載でも述べてきたので、リストラ、特にエンジニアの集団をそぎ落とすことについては、最後の最後までやるべきではないと考えている。しかし、オンキヨー破綻の原因は大きく3つあり、その中でも中途半端な規模感というのが最も問題であったと言える』、「中途半端な規模感」とはどういうことなのだろう。
・『パイオニアAV部門買収が岐路に 規模拡大の誘惑に潜むリスク その1つ目の要因とは、パイオニアのAV機器部門の買収による中途半端な規模の拡大である。ソニーやパナソニックといった企業は、まず多くの製品カテゴリーがあり、また組織が十分に大きくコスト競争力もあり、ブランドの知名度も高いので、多品種大量販売をしても何とかなるメーカーである。一方オンキヨーは、一部オンキヨーマニアによって支えられてきた企業であり、知る人ぞ知る高機能・高性能・高級AV機器を少品種少量販売すべきであった。) しかし、パイオニアのAV機器部門を吸収したことで、開発部門の人員という固定費は膨らみ、既存のオンキヨーの製品ラインアップだけでは、到底コストが賄い切れなかった。そのため、事業計画の数字上の辻褄を合わせるために、組織の体力に見合わない大量モデルの投入とそれらが売れることを前提とした、収益化プランを作ってしまった。 実際には、オンキヨーにはそれだけの多くのラインアップを販売店に押し込む力はなく、そもそも店頭に展示されない機種が多数存在していた。 家電の世界は、店頭展示シェアがほぼイコール実販シェアである。店頭に並んでいない商品をカタログから取り寄せ注文する顧客は極めてレアであり、SKU(店頭に並ぶ定番商品)を取れない限り、むやみにモデル数を増やしても売り上げが伸びることはない。 むしろオンキヨーの場合、同社のムダに多いラインアップ同士が競合を起こし、同じメーカーの製品内で共食いのような競合状態になっていた。これは、必ずしもオンキヨーのせいではないが、コロナ禍の輸送力低下、半導体不足により、そもそもカタログに載っている商品の生産すらできないという状況も経営を苦しめていた。 歴史に「たられば」はないというが、オンキヨーが無理をしてパイオニアのAV機器部門を吸収せず、身の丈に合ったオーディオ専業メーカーとしてやっていれば、その後の状況は違っていたかもしれない』、「オンキヨーの場合、同社のムダに多いラインアップ同士が競合を起こし、同じメーカーの製品内で共食いのような競合状態になっていた」、こんな状態では、「パイオニアのAV機器部門を吸収」などもともと無理だったのではあるまいか。
・『オーディオ不況が敗因ではない? ブランドイメージの重要性 2つめの要因は、何がオンキヨーを代表するシグニチャー商品なのかがわからないことだ。hi-fiブームが去り、オーディオ不況とも呼ばれて久しいが、それでも生き残っていて元気のあるオーディオ専業メーカーは、世界を見渡せばいくつもある。 かつてのデンオン、現在のデノンもそうした国内オーディオ専業メーカーである。他にもサウンドバーやミキサーで有名なヤマハのオーディオ部門、米国にはスピーカーのBOSE、欧州ではハイエンドデザインAV機器のB&Oなども健在である。オーディオ不況がオンキヨーの敗因というわけではなさそうだ。 では、何がもうひとつの原因なのか。それは、今述べたメーカーの枕詞にある。BOSEならスピーカー、B&Oならデザイン家電のように、各社は自社の製品の特徴と製品ラインアップを絞って、「このブランドと言えばこれ」「これといえばこのブランド」というイメージを作ってきた。アップルですら、スマートフォン、PC、イヤホンから大きくラインアップを広げようとしていない。 一方のオンキヨーはどうか。デノンのような単品コンポのピュアオーディオだけではなく、ソニー同様のポータブルオーディオを出してみたり、ワイヤレスイヤホンや、パイオニアブランドではあるがシーリングランプまで手がけたりしていた。 あるとき、オンキヨーがオーディオに特化したスマートフォンを発表したときに、真偽のほどは定かではないが、「評価用サンプル」という名目でお土産に新製品のスマートフォンを配っていたという話をしていた記者もいた。少し横道にそれるが、メーカーにとって新製品は我が子であって、それをただでお土産にするなど言語道断である。筆者もメーカー勤務時代にサンプルの貸し出しは行っていたが、「借りパ……」ではないが、返却の遅い媒体にいかに製品サンプルを返却してもらうかで苦労をしていた』、「オンキヨー」には「「このブランドと言えばこれ」「これといえばこのブランド」というイメージがなかった。
・『「良いものをつくれば売れる」という固定観念の危うさ バブル期と言わないまでも1990年代までは、中堅メーカーが良いものをつくれば、ラインアップを広げていったり、製品の数を増やしたりしても、何とかやっていけたかもしれない。それは、かつてNEBA店と呼ばれた地域量販店が、歩合制の店員を店内に配置し、一生懸命商品説明をして、少しでも高いものを売ろうとしていた時代であったからである。 2000年代に入ると、YKK(ヤマダ、コジマ、ケーズ)という全国チェーンが台頭し、ほとんど売り場に説明員がいない状況が生まれ、良いものを作っても顧客に良さが伝わりにくくなった。さらにEコマースの広がりや、Amazonによる家電取り扱いの開始によって、さらに細かな説明をしないと良さが伝わらない商品は売れない状況に陥った。むしろ最近のヤマダ電機の方が、丁寧に商品説明をしてくれている。 このような状況では、店頭での商品力の訴求を期待するのは難しく、ネットでパッと見て良さがわかるかブランドが認知されるような、一点豪華主義にシフトした方が良い。それがオンキヨーにはできなかった』、「店頭での商品力の訴求を期待するのは難しく、ネットでパッと見て良さがわかるかブランドが認知されるような、一点豪華主義にシフトした方が良い。それがオンキヨーにはできなかった」、なるほど明解である。
・『優れた現場があってもそれだけで製品は売れない 最後に3つ目の敗因。これは毎度の話であるが、オンキヨーに戦略がなかったことだ。良いものを作ればいつか消費者はわかってくれる――。このような「待ち」の姿勢では、いくら優れた現場があっても、それだけで製品が売れるわけではない。 最近アップルはiPodの販売終了を発表したが、いまだにソニーはウォークマンのビジネスを世界中で展開している。30万円以上もするような高級モデルもラインアップされている。ソニーのウォークマンの販売戦略は、ひとことでいえば松竹梅の竹をなくして「超松」と「超梅」の2本柱にしたことだ。 「超梅」は1万円前後の商品。これは、スマートフォンを持てない小中学生が外で音楽を聴くためのエントリーモデルである。一方「超松」モデルは大人のウォークマンである。hi-fi世代がハイレゾ音源を趣味として楽しむような顧客に向けて、数は少ないが確実に利益を取れるモデルを出している。 つまり、超梅モデルで、規模の経済性を生み出すことで固定費を稼ぎ、「ハイレゾと言えばウォークマン」という高級オーディオブランドにウォークマンをスイッチさせるための超ハイエンドモデルを、持続的に開発するための土台にしていると言える。それによって、「ソニーのオーディオといえばウォークマン」「ウォークマンと言えば高いけれど超高音質のハイレゾ音楽が楽しめる商品」という、ブランド浸透を図っているのである。 それに対してオンキヨーは、個々の製品をしっかり見るといずれも良い商品ばかりだった。しかし世の中には、しっかり紙のカタログを読み込んでくれたり、店頭で販売員に相談したりするお客さんがいなくなった。この販売の現場の変化に対応できなかったことも、オンキヨーという企業に寿命をもたらした要因だと言える』、確かに「ソニー」の「ブランド」戦略は凄い。「オンキヨー」はマーケティング戦略不在のまま沈没したようだ。
先ずは、本年5月19日付け日刊ゲンダイが掲載した経済ジャーナリストの重道武司氏による「ジェネリック大手「日医工」が私的整理申請 赤字が1048億円に拡大」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/305363
・『後発医薬品(ジェネリック医薬品)を巡る品質不正問題が、業界大手3社の一角の経営破綻劇にまで発展した。日医工で、先週末に事業再生ADR(裁判外紛争手続き)を申請。主力行の三井住友銀行(SMBC)をはじめとした取引金融機関による債権放棄など債務負担軽減を受けたうえで再建を目指すとしている。 日医工は2020年、国に承認されていない手順で薬剤を製造していたことが発覚。翌21年3月に主力の富山第一工場(滑川市)が富山県から32日間の業務停止命令を受けた。このため品質管理の厳格化など改善を進めてきたものの思うようにはかどらず、今なお「170品目前後で生産や出荷停止が続いている」(事情通)とされる。 製造委託先だった小林化工(福井県あわら市)の不祥事にも足をすくわれた。睡眠導入剤の成分が薬剤に混入し、2人の死者まで出す「健康被害」を引き起こしたもので、委託品の販売中止に追い込まれた』、「ジェネリック医薬品」業界での相次ぐ「不正」については、このブログの昨年10月5日付けで取上げた。いまだに「「170品目前後で生産や出荷停止が続いている」とは異常事態だ。
・『メガバンクは支援へ 業績は急激に悪化して21年3月期に41億円強の最終赤字に転落。22年3月期には16年に買収した北米子会社ののれんや無形資産などの減損に、原材料・製品の廃棄などを見越した棚卸資産評価損の計上も余儀なくされ、最終損失額は一気に前期比25倍超の1048億円余にまで膨らんだ。 こうなると重荷になってくるのが“借金”だ。過去にしきりとM&Aを繰り返してきたこともあって、3月末の有利子負債残高は1626億円と7年前の約10倍にものぼる。巨額赤字による自己資本の毀損で、財務制限条項に抵触するハメにも陥った。 日医工の取引行はSMBCを筆頭に政府系の日本政策投資銀行(政投銀)や三井住友信託銀行、三菱UFJ銀行、農林中央金庫など。北陸銀行や北国銀行などの地銀も名を連ねる。融資残高は「SMBCで370億円前後」(関係者)とみられ、政投銀と三井住友信託銀行が各200億円前後で続く。すでに政投銀と3メガバンクが設立した事業再生ファンドが最大200億円を出資するとの意向を示しており、「ADR成立は比較的容易では」というのが金融筋の見立てだが、予断は許さない。 後発薬業界では品質不正が多発。38社中約8割の企業が承認外の手順で薬剤を製造していたという業界団体の報告もある』、「過去にしきりとM&Aを繰り返してきたこともあって、3月末の有利子負債残高は1626億円と7年前の約10倍にものぼる。巨額赤字による自己資本の毀損で、財務制限条項に抵触するハメにも陥った」、「財務制限条項に抵触」とは逃げ道がない。それにしても、「後発薬業界では品質不正が多発。38社中約8割の企業が承認外の手順で薬剤を製造していたという業界団体の報告」、とは驚くほどコンプライアンス意識が欠如した業界のようだ。
次に、5月24日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した早稲田大学大学院経営管理研究科教授の長内 厚氏による「オンキヨー経営破綻「3つの原因」が浮き彫りにする、日の丸家電凋落の深層」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/303672
・『「hi-fi」のオンキヨーが経営破綻した3つの理由 この1年、オンキヨーという会社をウォッチし続けてきた。日本のエレクトロニクス企業というと、パナソニック、東芝、ソニー、シャープなどを思い浮かべるが、40、50代以上のhi-fiブームを知っている世代にとって、この度のオンキヨーの破産申請は大きなショックとともに受け入れられたであろう。オンキヨーはもともと、松下電器産業(現パナソニック)の音響エンジニアが独立して作った、オーディオ専業メーカーである。 昨年9月にオンキヨーは主力のAV事業を売却し、売却先のAV事業の売り上げのライセンス料を収益化することを狙っていた。しかし、このスキームが上手く機能することはなく、収益のあてのないオンキヨーは破産の道を選んだ。創業が1946年であるから、創業80年を目前にしての消滅であった。 筆者は2020年秋と2021年秋に、通信社やテレビ局からオンキヨーの経営についてコメントを求められた。2020年の段階ではまだオンキヨーは生き残る術はあったかもしれないし、当時そう答えていた。ただし、大規模なリストラは必要であった。 筆者は、日本の現場を守るためなら経営トップが外国人になっても構わないという考えを本連載でも述べてきたので、リストラ、特にエンジニアの集団をそぎ落とすことについては、最後の最後までやるべきではないと考えている。しかし、オンキヨー破綻の原因は大きく3つあり、その中でも中途半端な規模感というのが最も問題であったと言える』、「中途半端な規模感」とはどういうことなのだろう。
・『パイオニアAV部門買収が岐路に 規模拡大の誘惑に潜むリスク その1つ目の要因とは、パイオニアのAV機器部門の買収による中途半端な規模の拡大である。ソニーやパナソニックといった企業は、まず多くの製品カテゴリーがあり、また組織が十分に大きくコスト競争力もあり、ブランドの知名度も高いので、多品種大量販売をしても何とかなるメーカーである。一方オンキヨーは、一部オンキヨーマニアによって支えられてきた企業であり、知る人ぞ知る高機能・高性能・高級AV機器を少品種少量販売すべきであった。) しかし、パイオニアのAV機器部門を吸収したことで、開発部門の人員という固定費は膨らみ、既存のオンキヨーの製品ラインアップだけでは、到底コストが賄い切れなかった。そのため、事業計画の数字上の辻褄を合わせるために、組織の体力に見合わない大量モデルの投入とそれらが売れることを前提とした、収益化プランを作ってしまった。 実際には、オンキヨーにはそれだけの多くのラインアップを販売店に押し込む力はなく、そもそも店頭に展示されない機種が多数存在していた。 家電の世界は、店頭展示シェアがほぼイコール実販シェアである。店頭に並んでいない商品をカタログから取り寄せ注文する顧客は極めてレアであり、SKU(店頭に並ぶ定番商品)を取れない限り、むやみにモデル数を増やしても売り上げが伸びることはない。 むしろオンキヨーの場合、同社のムダに多いラインアップ同士が競合を起こし、同じメーカーの製品内で共食いのような競合状態になっていた。これは、必ずしもオンキヨーのせいではないが、コロナ禍の輸送力低下、半導体不足により、そもそもカタログに載っている商品の生産すらできないという状況も経営を苦しめていた。 歴史に「たられば」はないというが、オンキヨーが無理をしてパイオニアのAV機器部門を吸収せず、身の丈に合ったオーディオ専業メーカーとしてやっていれば、その後の状況は違っていたかもしれない』、「オンキヨーの場合、同社のムダに多いラインアップ同士が競合を起こし、同じメーカーの製品内で共食いのような競合状態になっていた」、こんな状態では、「パイオニアのAV機器部門を吸収」などもともと無理だったのではあるまいか。
・『オーディオ不況が敗因ではない? ブランドイメージの重要性 2つめの要因は、何がオンキヨーを代表するシグニチャー商品なのかがわからないことだ。hi-fiブームが去り、オーディオ不況とも呼ばれて久しいが、それでも生き残っていて元気のあるオーディオ専業メーカーは、世界を見渡せばいくつもある。 かつてのデンオン、現在のデノンもそうした国内オーディオ専業メーカーである。他にもサウンドバーやミキサーで有名なヤマハのオーディオ部門、米国にはスピーカーのBOSE、欧州ではハイエンドデザインAV機器のB&Oなども健在である。オーディオ不況がオンキヨーの敗因というわけではなさそうだ。 では、何がもうひとつの原因なのか。それは、今述べたメーカーの枕詞にある。BOSEならスピーカー、B&Oならデザイン家電のように、各社は自社の製品の特徴と製品ラインアップを絞って、「このブランドと言えばこれ」「これといえばこのブランド」というイメージを作ってきた。アップルですら、スマートフォン、PC、イヤホンから大きくラインアップを広げようとしていない。 一方のオンキヨーはどうか。デノンのような単品コンポのピュアオーディオだけではなく、ソニー同様のポータブルオーディオを出してみたり、ワイヤレスイヤホンや、パイオニアブランドではあるがシーリングランプまで手がけたりしていた。 あるとき、オンキヨーがオーディオに特化したスマートフォンを発表したときに、真偽のほどは定かではないが、「評価用サンプル」という名目でお土産に新製品のスマートフォンを配っていたという話をしていた記者もいた。少し横道にそれるが、メーカーにとって新製品は我が子であって、それをただでお土産にするなど言語道断である。筆者もメーカー勤務時代にサンプルの貸し出しは行っていたが、「借りパ……」ではないが、返却の遅い媒体にいかに製品サンプルを返却してもらうかで苦労をしていた』、「オンキヨー」には「「このブランドと言えばこれ」「これといえばこのブランド」というイメージがなかった。
・『「良いものをつくれば売れる」という固定観念の危うさ バブル期と言わないまでも1990年代までは、中堅メーカーが良いものをつくれば、ラインアップを広げていったり、製品の数を増やしたりしても、何とかやっていけたかもしれない。それは、かつてNEBA店と呼ばれた地域量販店が、歩合制の店員を店内に配置し、一生懸命商品説明をして、少しでも高いものを売ろうとしていた時代であったからである。 2000年代に入ると、YKK(ヤマダ、コジマ、ケーズ)という全国チェーンが台頭し、ほとんど売り場に説明員がいない状況が生まれ、良いものを作っても顧客に良さが伝わりにくくなった。さらにEコマースの広がりや、Amazonによる家電取り扱いの開始によって、さらに細かな説明をしないと良さが伝わらない商品は売れない状況に陥った。むしろ最近のヤマダ電機の方が、丁寧に商品説明をしてくれている。 このような状況では、店頭での商品力の訴求を期待するのは難しく、ネットでパッと見て良さがわかるかブランドが認知されるような、一点豪華主義にシフトした方が良い。それがオンキヨーにはできなかった』、「店頭での商品力の訴求を期待するのは難しく、ネットでパッと見て良さがわかるかブランドが認知されるような、一点豪華主義にシフトした方が良い。それがオンキヨーにはできなかった」、なるほど明解である。
・『優れた現場があってもそれだけで製品は売れない 最後に3つ目の敗因。これは毎度の話であるが、オンキヨーに戦略がなかったことだ。良いものを作ればいつか消費者はわかってくれる――。このような「待ち」の姿勢では、いくら優れた現場があっても、それだけで製品が売れるわけではない。 最近アップルはiPodの販売終了を発表したが、いまだにソニーはウォークマンのビジネスを世界中で展開している。30万円以上もするような高級モデルもラインアップされている。ソニーのウォークマンの販売戦略は、ひとことでいえば松竹梅の竹をなくして「超松」と「超梅」の2本柱にしたことだ。 「超梅」は1万円前後の商品。これは、スマートフォンを持てない小中学生が外で音楽を聴くためのエントリーモデルである。一方「超松」モデルは大人のウォークマンである。hi-fi世代がハイレゾ音源を趣味として楽しむような顧客に向けて、数は少ないが確実に利益を取れるモデルを出している。 つまり、超梅モデルで、規模の経済性を生み出すことで固定費を稼ぎ、「ハイレゾと言えばウォークマン」という高級オーディオブランドにウォークマンをスイッチさせるための超ハイエンドモデルを、持続的に開発するための土台にしていると言える。それによって、「ソニーのオーディオといえばウォークマン」「ウォークマンと言えば高いけれど超高音質のハイレゾ音楽が楽しめる商品」という、ブランド浸透を図っているのである。 それに対してオンキヨーは、個々の製品をしっかり見るといずれも良い商品ばかりだった。しかし世の中には、しっかり紙のカタログを読み込んでくれたり、店頭で販売員に相談したりするお客さんがいなくなった。この販売の現場の変化に対応できなかったことも、オンキヨーという企業に寿命をもたらした要因だと言える』、確かに「ソニー」の「ブランド」戦略は凄い。「オンキヨー」はマーケティング戦略不在のまま沈没したようだ。
タグ:倒産・経営破綻 (その1)(ジェネリック大手「日医工」が私的整理申請 赤字が1048億円に拡大、オンキヨー経営破綻「3つの原因」が浮き彫りにする 日の丸家電凋落の深層) 「ジェネリック医薬品」業界での相次ぐ「不正」については、このブログの昨年10月5日付けで取上げた。いまだに「「170品目前後で生産や出荷停止が続いている」とは異常事態だ。 「過去にしきりとM&Aを繰り返してきたこともあって、3月末の有利子負債残高は1626億円と7年前の約10倍にものぼる。巨額赤字による自己資本の毀損で、財務制限条項に抵触するハメにも陥った」、「財務制限条項に抵触」とは逃げ道がない。それにしても、「後発薬業界では品質不正が多発。38社中約8割の企業が承認外の手順で薬剤を製造していたという業界団体の報告」、とは驚くほどコンプライアンス意識が欠如した業界のようだ。 ダイヤモンド・オンライン 長内 厚氏による「オンキヨー経営破綻「3つの原因」が浮き彫りにする、日の丸家電凋落の深層」 「中途半端な規模感」とはどういうことなのだろう。 「オンキヨーの場合、同社のムダに多いラインアップ同士が競合を起こし、同じメーカーの製品内で共食いのような競合状態になっていた」、こんな状態では、「パイオニアのAV機器部門を吸収」などもともと無理だったのではあるまいか。 「オンキヨー」には「「このブランドと言えばこれ」「これといえばこのブランド」というイメージがなかった。 「店頭での商品力の訴求を期待するのは難しく、ネットでパッと見て良さがわかるかブランドが認知されるような、一点豪華主義にシフトした方が良い。それがオンキヨーにはできなかった」、なるほど明解である。 確かに「ソニー」の「ブランド」戦略は凄い。「オンキヨー」はマーケティング戦略不在のまま沈没したようだ。