働き方改革(その38)(在宅は出世に影響?近くにいるほど「高評価」の謎 日本人の有休消化率はなぜこれほど悪いのか、ホンダがテレワークやめ原則出社に踏み切る真意 「三現主義」重視する社内文書 疑問の声も、年功序列はもう限界 ジョブ型雇用は日本経済再生の突破口になるか 衰退の元凶 日本型雇用からの脱却を) [経済政策]
働き方改革については、3月18日に取上げた。今日は、(その38)(在宅は出世に影響?近くにいるほど「高評価」の謎 日本人の有休消化率はなぜこれほど悪いのか、ホンダがテレワークやめ原則出社に踏み切る真意 「三現主義」重視する社内文書 疑問の声も、年功序列はもう限界 ジョブ型雇用は日本経済再生の突破口になるか 衰退の元凶 日本型雇用からの脱却を)である。
先ずは、5月16日付け東洋経済オンラインが掲載した同志社大学教授の太田 肇氏による「在宅は出世に影響?近くにいるほど「高評価」の謎 日本人の有休消化率はなぜこれほど悪いのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/586476
・『コロナ感染拡大から3年目の春。街中では、外食を楽しむ人々が少しずつ増えてきた。それまでテレワークを推奨していた企業でも、通常出勤を命じるところが増えている。もともと日本企業では、「在宅では生産性が上がらない」という意見が多く、テレワーク推進の声も一時のものにとどまった印象だ。太田肇・同志社大学政策学部教授(組織研究)は、ここに「日本型」企業に特有の「承認欲求」が潜んでいるという。以下、太田氏の新刊『日本人の承認欲求テレワークがさらした深層』から抜粋・再構築して紹介する。 前々回:『あなたの上司がムダに出社させたがる本当の理由』 前回:『上司が「仕切りのない」オフィスにこだわる深い訳』』、「「日本型」企業に特有の「承認欲求」」とはどういうことだろう。
・『日本人は休暇の半分を捨てている 少なくとも2020年春にコロナの感染が蔓延する前まで、日本人の年次有給休暇取得率はほぼ5割程度で推移してきた。つまり与えられた休暇の半分は労働者が捨ててきたわけである。 ちなみに欧米では比較的取得率の低いアメリカでも7割程度、欧州諸国は100%近く取得する。また日本人の年間総労働時間も短縮の必要性が叫ばれながら、正社員についてはコロナ禍が訪れるまで主要国のなかで突出して長い状態が続いてきた。その大きな要因が恒常的な残業の存在である。 欧米に比べて年休取得率が低いことや、残業が恒常的に行われていることについては、いくつかの原因が指摘されている。 例えば欧米諸国のなかには取得しなかった休暇を会社が買い取るよう法律で義務づけているところがあるし、以前から企業が時期を指定して休暇を取得させている国も多い。また日本では雇用調整が難しいので、代わりに残業で労働投入量を調整せざるをえないという事情もある。 しかし、それだけでない。労働政策研究・研修機構が2010年に行った調査(「年次有給休暇の取得に関する調査」)では有給休暇を残す理由について聞いている。 結果をみると、「休むと職場の他の人に迷惑になるから」「職場の周囲の人が取らないので年休が取りにくいから」「上司がいい顔をしないから」という回答が上位にあがっている。また同機構が2005年に実施した調査(「働き方の現状と意識に関するアンケート調査」では所定労働時間を超えて働く理由について聞いているが、10.3%の人が「上司や仲間が残業しているので、先に帰りづらいから」と回答している。いわゆる「つきあい残業」である。 注目してほしいのは、わが国では有給休暇を残しても買い取られないし、時間外労働賃金の割増率も欧米に比べて低い(欧米など海外ではおおむね50%以上であるのに対し、わが国では25%以上)ということである。さらに手当が支払われない「サービス残業」が半ば公然と行われているのも周知の事実である』、「日本」の労働者は、権利を余り要求でず、聞き分けがいいようだ。
・『「労働を献上する」ことで承認を得る いったいなぜ、日本人の働き方はこうなるのか。そもそも経済学の常識では、人間は金銭的利益が最大限になるよう効率的に行動するものであり、残った有給休暇を買い取ってもらえないなら、権利としてすべて余さず取得するはずなのだ。時間外労働をしても大して割り増しがないどころか、サービス残業扱いでタダ働きなら残業などしなくて当然だろう。 ところが多くの日本人は強制されなくても休暇を残し、当たり前のように残業をする。彼らは休暇を残し、少ない手当か無給で残業することで会社に自らの労働を献上する。ただ、それは純粋な愛社精神や勤勉さの表れなどではなく、見返りに会社や上司・同僚から承認を得ようとしていると考えられる。 金銭の代わりに承認を受け取っているという見方もできる。実際、いくら仕事ができても休暇をめいっぱい取得し、まったく残業をしない人は奇異な目で見られたり、陰口をたたかれたりすることがある。人事評価に響く可能性もある。 それだけ共同体のメンバーにとって、共同体のなかで承認されること(あるいは承認を失わないこと)が重要なわけである。 このような視点から考えても、超過的な貢献や忠誠心をアピールしづらいテレワークや裁量労働制、ワーケーションなどが思うように普及しないのは納得がいく(全社員いっせいに導入するなら話は別だが)。 ここでまた少し視点を変え、承認欲求の独特な性質に注目してみよう。 承認欲求は自力だけでは充足することができず、相手の自由意思に依存するという受動的な性質がある。テレワークで出社しないと不安になるという理由には、そうした承認欲求の性質も関わっていると考えられる。 いくら仕事ができても、それを評価するのは上司である。とくにテレワークの場合、仕事ぶりが周囲から見えにくいので、仕事の出来不出来は上司に評価されるか否かにかかっているといってもよい。しかも日本企業では仕事の分担が不明確なので一人ひとりの成果を捕捉しにくく、そのぶん評価者の感情や利害関係が評価に入り込みやすい』、「承認欲求は自力だけでは充足することができず、相手の自由意思に依存するという受動的な性質がある。テレワークで出社しないと不安になるという理由には、そうした承認欲求の性質も関わっていると考えられる」、「とくにテレワークの場合、仕事ぶりが周囲から見えにくいので、仕事の出来不出来は上司に評価されるか否かにかかっているといってもよい。しかも日本企業では仕事の分担が不明確なので一人ひとりの成果を捕捉しにくく、そのぶん評価者の感情や利害関係が評価に入り込みやすい」、その通りだ。
・『約2割の人が個人的感情で評価をつけている それを裏づけるデータがある。日本企業と欧米企業のホワイトカラーを対象とした2001年に行われたある調査(回答数計1406)によると、感じのよい部下に対して「甘い人事評価をつけることはない」という回答は欧米企業で75%、日本企業で29%、逆に「甘い人事評価をつけることがある」という回答は欧米企業で6%、日本企業で20%と大きな差がある(佐久間賢『問題解決型リーダーシップ』講談社、2003年)。 それにしても2割の人が、個人的感情で評価をゆがめていると自白しているのは驚くべきことではないか。 一般に個人的なつながりが深いほど特別扱いしやすいことは「内集団ひいき」や「ネポティズム」などとして知られているが、物理的な近接性も感情や利害関係を左右する。互いに近接しているほど相手に対する情報も、また承認の機会も多い。もちろんそこには正の承認だけでなく、負の承認も含まれるが。 そのため近接しているほど承認するにしろ、しないにしろ、相手に対するインパクトが大きくなる。つまり離れている人なら自分を認めてくれるか否かはさほど問題でなくても、ふだん接している人から認められるか否かには無関心でいられないわけである』、「「甘い人事評価をつけることがある」という回答は欧米企業で6%、日本企業で20%と大きな差がある」、「互いに近接しているほど相手に対する情報も、また承認の機会も多い。もちろんそこには正の承認だけでなく、負の承認も含まれるが。 そのため近接しているほど承認するにしろ、しないにしろ、相手に対するインパクトが大きくなる」、これではリモートワークの普及にはやはり限界があるのは、やむを得ないのかも知れない。
次に、5月21日付け東洋経済オンライン「ホンダがテレワークやめ原則出社に踏み切る真意 「三現主義」重視する社内文書、疑問の声も」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/589390
・『「Hondaとして本来目指していた働き方を通じて変革期を勝ち抜くために、『三現主義(注)で物事の本質を考え、更なる進化をうみ出すための出社/対面(リアル)を基本にした働き方』にシフトしていきます」。ホンダは2022年4月、国内営業部門の従業員向けに以上のようなメールを送付した。 出社を前提とした働き方へと転換する意義を強調する内容だ。ホンダの三現主義とは「現場、現実、現物」からなり、創業者の本田宗一郎氏の時代から受け継がれてきた、いわば企業理念。対面でのコミュニケーションを重視した働き方で、社員にホンダらしさを発揮してほしいというわけだ。 ホンダや関係者への取材などによると、一部の経営陣の提案をきっかけに2021年末の時点ですでに出社を基本とする業務ルールを設計していた。 しかし、2022年初めから新型コロナウイルスの感染状況が悪化し日本では蔓延防止措置が取られたため、導入を延期。同措置が解除されたことに合わせて、改めて今回の制度導入に乗り出した。 全社が制度の対象で、3回目のワクチン接種が完了する時期を見定めて5月から段階的に始めるという。ホンダ広報は「部門ごとに対応は異なる」とするが、「対面のコミュニケーションを活性化するとともに、イノベーションの創出を促すことが狙いだ」と理由を説明した。 たとえば、日本本部などの営業部門が集まり、数千人単位が働く埼玉県和光市の和光ビルや白子ビルは5月下旬にも段階的にこの制度を導入する。介護や病気、育児などの事情があり、所属長が承認した場合を除き、原則週5日間すべてで出社を求める』、いまどき「三現主義」で「対面でのコミュニケーションを重視」、とはテレワークとは真逆の考え方であり、違和感もある。
(注)三現主義:「現場」に足を運び、「現物」を直接手に取り、「現実」を見て確認した上で、問題解決を図ることが重要という考え方。ホンダやトヨタ自動車が有名(グロービス経営大学院)。
・『「経営陣は現場を理解していない」 新型コロナの流行が長引く中で、テレワークを基本とする働き方を徐々に変える企業は増えている。 ただ、従来の出社を前提とした働き方へ戻すことについて、社内では不安の声が上がっている。あるホンダ社員は「働き方改革が進みテレワークの定着も進む中、ホンダは真逆に動くのか」と疑問を投げかける。 別のホンダの中堅社員は「在宅による日々の効率化と対面の合わせ技なら理解できるが、経営陣は現場を理解していない。優秀な学生の中からホンダを希望リストから外す人が増えてしまう」と嘆く。 同じ業界の日産自動車は「在宅勤務や時差出勤などを活用して感染対策をとっている」と回答。トヨタ自動車も「コロナ禍では在宅勤務が可能な職場でのより一層の在宅勤務を推進している」といい、東京や名古屋での4月末時点での出社率は4割以下にとどまるという。こうして見ても、ライバルたちと比べてホンダの選択は異質ともいえる。 ホンダは現在、三部敏宏社長の指揮の下、2040年に世界で売る新車をすべて電気自動車(EV)か燃料電池車(FCV)にする「脱エンジン」目標を掲げる。カーボンニュートラルや自動車の知能化などへの対応を迫られている。 「100年に一度の大変革期」と言われる自動車業界での生き残りを図る中、目標達成に向けて社内の意思統一が求められるところだ』、「中堅社員は「在宅による日々の効率化と対面の合わせ技なら理解できるが、経営陣は現場を理解していない。優秀な学生の中からホンダを希望リストから外す人が増えてしまう」と嘆く」、「トヨタ自動車も「コロナ禍では在宅勤務が可能な職場でのより一層の在宅勤務を推進している」といい、東京や名古屋での4月末時点での出社率は4割以下にとどまる」、「三部社長」の真意はどこにあるのだろう。
第三に、5月22日付け現代ビジネスが掲載した大蔵省出身で一橋大学名誉教授の野口 悠紀雄氏による「年功序列はもう限界、ジョブ型雇用は日本経済再生の突破口になるか 衰退の元凶、日本型雇用からの脱却を」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/95391?imp=0
・『「年功序列と終身雇用」という日本型雇用形態から脱却しようとする「ジョブ型雇用」が広がっている。従来の日本型雇用は、日本経済を衰退させた大きな原因だ。ジョブ型雇用がこれを打破することが期待される。 ただし、その導入は簡単なことではない』、興味深そうだ。
・『ジョブ型雇用の導入企業が広がる 「ジョブ型雇用」は、期待する貢献や責任範囲を従業員ごとに明記した「ジョブディスクリプション(職務記述書)」を作成し、報酬を職責に応じて決める仕組みだ。従業員は自ら応募して、より高い職責に挑戦する。 日立製作所や富士通などの大手電機メーカーが導入している。富士通は4月21日、ジョブ型雇用の対象を全従業員の約9割に拡大すると発表した。日立製作所は、7月にも「ジョブ型雇用」を本体の全社員に広げる計画だ。 経団連が2020年夏に行なった調査では、419社のうち約100社が、検討中も含めてジョブ型に着手していた』、「419社のうち約100社が、検討中も含めてジョブ型に着手」、「2020年夏」段階で既に相当進んでいるようだ。
・『年功序列的な給与体系が日本を衰退させた 日本では、年齢が上がるほど、自動的に給与が上がる年功序列的な給与体系を採用している企業が多い。 それに対して、「ジョブ型雇用」では、職務ごとに異なる給与体系になる。技能が認められれば、年齢が若くても高い給料を得られる。逆に、年齢があがっても、自動的に給与があがるわけではない。 また一定期間の雇用が自動的に保障されるわけでもない。職務を要求通りに遂行できなかったり、職務そのものがなくなったりすれば、解雇されることもある。 ジョブ型は、外国ではごく普通の雇用体系だ。むしろ、日本型雇用のほうが、世界的に見れば特異だ。 現在の日本経済の停滞は、日本の雇用・給与体制が硬直的であり、技術や社会の大きな変化に適応できないことが大きな原因になっている。 ジョブ型雇用がこれを変える可能性がある。変化の大きい時代には、企業も労働者も、新しい働き方を切り拓く必要がある』、「日本型雇用」も高度成長期には日本経済の強さを支えたが、「変化の大きい時代」には、そぐわなくなったということなのだろうか。
・『エンジニアやIT専門家だけではない エンジニアやIT専門家のように専門技能で仕事を進める職務にとっては、もともとジョブ型の雇用形態のほうが望ましい。 それだけではない。一般には事務系と考えられる仕事についても、この形態が必要とされる場合が多い。 例えば、金融の仕事がそうだ。日本の金融機関では、定型的な事務作業をする場合が多く、とりわけ専門的な知識が必要とされることが少なかった。 しかし、先端的な金融業務は極めて専門性の高いものであり、ジョブ型雇用にあったものだ』、確かに「先端的な金融業務は極めて専門性の高いものであり、ジョブ型雇用にあったものだ」、その通りだ。
・『経営者も本来はジョブ型であるべきだ それだけではない。実は、経営者も本来は専門的な職業だ。したがって専門的な訓練を受け、それを活用して、1つの組織に固定されることなく、様々な企業の経営を経験することができる。 アメリカでは、経営者は経営の専門家として様々な企業を渡り歩くのがむしろ普通になっている。 これは、雇用統計にも反映されている。アメリカの雇用統計には、製造業や流通業などと並んで、「経営者」という産業分類がある。「経営」は、どの産業にも必要とされる、独立した産業なのである。 それに対して、日本の経営者(オーナー経営者を除く大企業の経営者)は、その組織に長年いる人のことだ。そして、組織の出世の階段を上り、トップに上り詰めた人だ。 出世の階段を上るためには、特定の職務の専門家になるのではなく、ジェネラリストになることが必要と考えられていた。 このような人たちが、激変する世界の中で、新しいビジネスモデルを開拓できるかどうかは、大きな疑問だと言わざる得ない。 日本の電機メーカーが衰退したのは、2000年頃にビジネスモデルを選択を誤ったからだ』、「日本の電機メーカーが衰退したのは、2000年頃にビジネスモデルを選択を誤ったからだ」、「組織の出世の階段を上り、トップに上り詰めた人」の限界なのかも知れない。
・『日本の雇用体制は戦時中に確立された1940年体制 日本の雇用形態は、昔から終身雇用・年功序列型であったと考えられている。確かに、戦後の日本では、この形態が一般的だった。 しかし、第2次世界大戦以前の日本においては、そうではなかった。とくに技能者は、企業間を転々と動くのがむしろ普通だった。 ところが重化学工業の発展に伴い、労働者を1つの企業に定着させ、企業内訓練によって技術を高める必要が生じた。 このために、終身雇用・年功序列型の仕組みを導入し、労働者の企業定着を図ったのである。労働組合も、職業別ではなく、企業別に形成された。 私は、こうした経済体制を「1940年体制」と呼んでいる。 第2次世界大戦後の高度成長期には、この仕組みがうまく機能した。それは、日本が先進国へのキャッチアップ過程にあったからだ。先進国のモデルがあったので、どのようなビジネスモデルを採択したら良いかは、明らかだった。 それに向かって、企業の従業員は、あたかも家族のように一致団結するという体制が必要だった。 しかし、1990年代頃から世界が大きく変わり、状況の大きな変化に対応することが必要になった。その局面で、日本型雇用体制は、大きな障害になってきたのである』、なるほど。
・『さまざまな制度改革が必要 ジョブ型雇用はこれまでの雇用体制とは大きく違うので、簡単に導入できるものではない。 とくに重要なのは、一部の企業だけがジョブ型雇用を導入しても、うまく機能しないことだ。なぜなら、ジョブ型は、労働者が一つの企業にとどまらず、別の企業に移ることが前提になっているからだ。したがって、多くの企業がこのようなこの体制を導入しないと、機能しない。 企業間の労働力の流動性を進めていくためには、様々な制度の整備が必要だ。とくに重要なのは、退職金制度である。 日本の場合には、一定の勤務年数にならないと満額を得られない場合が多い。これが、企業間流動性の大きな障害になっていると思われる。 確定拠出型年金がこれを解決するが、まだ十分に普及しているとは言えない』、「退職金制度」や「年金」制度が変化するのは、相当長い時間が必要だ。
・『目的は「もらいすぎ中高年」対策? ジョブ型雇用の導入には、制度を変える必要があるだけでなく、人々の考え方をも変える必要がある。実際には、年功序列的賃金と終身雇用に頼りたいと考える人が多いかもしれない。 事実、この制度には、さまざまな批判がある。企業がこれを導入するのは、労働コストの高い中高年従業員(いわゆる「もらいすぎ中高年」)の賃金を抑えたいからだという見方もある。 ただし、いまの日本の雇用は、「終身雇用的」とはいっても、文字どおり生涯の雇用を保障しているわけではない。50代の後半になれば、次の職場を探さなければならない。そして、転職できても、元の企業に残れても、賃金が大幅に下がる。 平均寿命が伸びて人生100年時代になってくると、むしろジョブ型のほうが長期間の所得稼得を可能にする可能性がある。 企業別労働組合である日本の労働組合が、これに対してどのような評価をするかが注目される』、「ジョブ型のほうが長期間の所得稼得を可能にする可能性がある」、かどうかはまだ分からない。何回もの法人税減税を賃上げでなく、内部留保増加に回すだけの経営陣の姿勢からみる限り、残念ながら「所得稼得」には期待できそうもない。
先ずは、5月16日付け東洋経済オンラインが掲載した同志社大学教授の太田 肇氏による「在宅は出世に影響?近くにいるほど「高評価」の謎 日本人の有休消化率はなぜこれほど悪いのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/586476
・『コロナ感染拡大から3年目の春。街中では、外食を楽しむ人々が少しずつ増えてきた。それまでテレワークを推奨していた企業でも、通常出勤を命じるところが増えている。もともと日本企業では、「在宅では生産性が上がらない」という意見が多く、テレワーク推進の声も一時のものにとどまった印象だ。太田肇・同志社大学政策学部教授(組織研究)は、ここに「日本型」企業に特有の「承認欲求」が潜んでいるという。以下、太田氏の新刊『日本人の承認欲求テレワークがさらした深層』から抜粋・再構築して紹介する。 前々回:『あなたの上司がムダに出社させたがる本当の理由』 前回:『上司が「仕切りのない」オフィスにこだわる深い訳』』、「「日本型」企業に特有の「承認欲求」」とはどういうことだろう。
・『日本人は休暇の半分を捨てている 少なくとも2020年春にコロナの感染が蔓延する前まで、日本人の年次有給休暇取得率はほぼ5割程度で推移してきた。つまり与えられた休暇の半分は労働者が捨ててきたわけである。 ちなみに欧米では比較的取得率の低いアメリカでも7割程度、欧州諸国は100%近く取得する。また日本人の年間総労働時間も短縮の必要性が叫ばれながら、正社員についてはコロナ禍が訪れるまで主要国のなかで突出して長い状態が続いてきた。その大きな要因が恒常的な残業の存在である。 欧米に比べて年休取得率が低いことや、残業が恒常的に行われていることについては、いくつかの原因が指摘されている。 例えば欧米諸国のなかには取得しなかった休暇を会社が買い取るよう法律で義務づけているところがあるし、以前から企業が時期を指定して休暇を取得させている国も多い。また日本では雇用調整が難しいので、代わりに残業で労働投入量を調整せざるをえないという事情もある。 しかし、それだけでない。労働政策研究・研修機構が2010年に行った調査(「年次有給休暇の取得に関する調査」)では有給休暇を残す理由について聞いている。 結果をみると、「休むと職場の他の人に迷惑になるから」「職場の周囲の人が取らないので年休が取りにくいから」「上司がいい顔をしないから」という回答が上位にあがっている。また同機構が2005年に実施した調査(「働き方の現状と意識に関するアンケート調査」では所定労働時間を超えて働く理由について聞いているが、10.3%の人が「上司や仲間が残業しているので、先に帰りづらいから」と回答している。いわゆる「つきあい残業」である。 注目してほしいのは、わが国では有給休暇を残しても買い取られないし、時間外労働賃金の割増率も欧米に比べて低い(欧米など海外ではおおむね50%以上であるのに対し、わが国では25%以上)ということである。さらに手当が支払われない「サービス残業」が半ば公然と行われているのも周知の事実である』、「日本」の労働者は、権利を余り要求でず、聞き分けがいいようだ。
・『「労働を献上する」ことで承認を得る いったいなぜ、日本人の働き方はこうなるのか。そもそも経済学の常識では、人間は金銭的利益が最大限になるよう効率的に行動するものであり、残った有給休暇を買い取ってもらえないなら、権利としてすべて余さず取得するはずなのだ。時間外労働をしても大して割り増しがないどころか、サービス残業扱いでタダ働きなら残業などしなくて当然だろう。 ところが多くの日本人は強制されなくても休暇を残し、当たり前のように残業をする。彼らは休暇を残し、少ない手当か無給で残業することで会社に自らの労働を献上する。ただ、それは純粋な愛社精神や勤勉さの表れなどではなく、見返りに会社や上司・同僚から承認を得ようとしていると考えられる。 金銭の代わりに承認を受け取っているという見方もできる。実際、いくら仕事ができても休暇をめいっぱい取得し、まったく残業をしない人は奇異な目で見られたり、陰口をたたかれたりすることがある。人事評価に響く可能性もある。 それだけ共同体のメンバーにとって、共同体のなかで承認されること(あるいは承認を失わないこと)が重要なわけである。 このような視点から考えても、超過的な貢献や忠誠心をアピールしづらいテレワークや裁量労働制、ワーケーションなどが思うように普及しないのは納得がいく(全社員いっせいに導入するなら話は別だが)。 ここでまた少し視点を変え、承認欲求の独特な性質に注目してみよう。 承認欲求は自力だけでは充足することができず、相手の自由意思に依存するという受動的な性質がある。テレワークで出社しないと不安になるという理由には、そうした承認欲求の性質も関わっていると考えられる。 いくら仕事ができても、それを評価するのは上司である。とくにテレワークの場合、仕事ぶりが周囲から見えにくいので、仕事の出来不出来は上司に評価されるか否かにかかっているといってもよい。しかも日本企業では仕事の分担が不明確なので一人ひとりの成果を捕捉しにくく、そのぶん評価者の感情や利害関係が評価に入り込みやすい』、「承認欲求は自力だけでは充足することができず、相手の自由意思に依存するという受動的な性質がある。テレワークで出社しないと不安になるという理由には、そうした承認欲求の性質も関わっていると考えられる」、「とくにテレワークの場合、仕事ぶりが周囲から見えにくいので、仕事の出来不出来は上司に評価されるか否かにかかっているといってもよい。しかも日本企業では仕事の分担が不明確なので一人ひとりの成果を捕捉しにくく、そのぶん評価者の感情や利害関係が評価に入り込みやすい」、その通りだ。
・『約2割の人が個人的感情で評価をつけている それを裏づけるデータがある。日本企業と欧米企業のホワイトカラーを対象とした2001年に行われたある調査(回答数計1406)によると、感じのよい部下に対して「甘い人事評価をつけることはない」という回答は欧米企業で75%、日本企業で29%、逆に「甘い人事評価をつけることがある」という回答は欧米企業で6%、日本企業で20%と大きな差がある(佐久間賢『問題解決型リーダーシップ』講談社、2003年)。 それにしても2割の人が、個人的感情で評価をゆがめていると自白しているのは驚くべきことではないか。 一般に個人的なつながりが深いほど特別扱いしやすいことは「内集団ひいき」や「ネポティズム」などとして知られているが、物理的な近接性も感情や利害関係を左右する。互いに近接しているほど相手に対する情報も、また承認の機会も多い。もちろんそこには正の承認だけでなく、負の承認も含まれるが。 そのため近接しているほど承認するにしろ、しないにしろ、相手に対するインパクトが大きくなる。つまり離れている人なら自分を認めてくれるか否かはさほど問題でなくても、ふだん接している人から認められるか否かには無関心でいられないわけである』、「「甘い人事評価をつけることがある」という回答は欧米企業で6%、日本企業で20%と大きな差がある」、「互いに近接しているほど相手に対する情報も、また承認の機会も多い。もちろんそこには正の承認だけでなく、負の承認も含まれるが。 そのため近接しているほど承認するにしろ、しないにしろ、相手に対するインパクトが大きくなる」、これではリモートワークの普及にはやはり限界があるのは、やむを得ないのかも知れない。
次に、5月21日付け東洋経済オンライン「ホンダがテレワークやめ原則出社に踏み切る真意 「三現主義」重視する社内文書、疑問の声も」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/589390
・『「Hondaとして本来目指していた働き方を通じて変革期を勝ち抜くために、『三現主義(注)で物事の本質を考え、更なる進化をうみ出すための出社/対面(リアル)を基本にした働き方』にシフトしていきます」。ホンダは2022年4月、国内営業部門の従業員向けに以上のようなメールを送付した。 出社を前提とした働き方へと転換する意義を強調する内容だ。ホンダの三現主義とは「現場、現実、現物」からなり、創業者の本田宗一郎氏の時代から受け継がれてきた、いわば企業理念。対面でのコミュニケーションを重視した働き方で、社員にホンダらしさを発揮してほしいというわけだ。 ホンダや関係者への取材などによると、一部の経営陣の提案をきっかけに2021年末の時点ですでに出社を基本とする業務ルールを設計していた。 しかし、2022年初めから新型コロナウイルスの感染状況が悪化し日本では蔓延防止措置が取られたため、導入を延期。同措置が解除されたことに合わせて、改めて今回の制度導入に乗り出した。 全社が制度の対象で、3回目のワクチン接種が完了する時期を見定めて5月から段階的に始めるという。ホンダ広報は「部門ごとに対応は異なる」とするが、「対面のコミュニケーションを活性化するとともに、イノベーションの創出を促すことが狙いだ」と理由を説明した。 たとえば、日本本部などの営業部門が集まり、数千人単位が働く埼玉県和光市の和光ビルや白子ビルは5月下旬にも段階的にこの制度を導入する。介護や病気、育児などの事情があり、所属長が承認した場合を除き、原則週5日間すべてで出社を求める』、いまどき「三現主義」で「対面でのコミュニケーションを重視」、とはテレワークとは真逆の考え方であり、違和感もある。
(注)三現主義:「現場」に足を運び、「現物」を直接手に取り、「現実」を見て確認した上で、問題解決を図ることが重要という考え方。ホンダやトヨタ自動車が有名(グロービス経営大学院)。
・『「経営陣は現場を理解していない」 新型コロナの流行が長引く中で、テレワークを基本とする働き方を徐々に変える企業は増えている。 ただ、従来の出社を前提とした働き方へ戻すことについて、社内では不安の声が上がっている。あるホンダ社員は「働き方改革が進みテレワークの定着も進む中、ホンダは真逆に動くのか」と疑問を投げかける。 別のホンダの中堅社員は「在宅による日々の効率化と対面の合わせ技なら理解できるが、経営陣は現場を理解していない。優秀な学生の中からホンダを希望リストから外す人が増えてしまう」と嘆く。 同じ業界の日産自動車は「在宅勤務や時差出勤などを活用して感染対策をとっている」と回答。トヨタ自動車も「コロナ禍では在宅勤務が可能な職場でのより一層の在宅勤務を推進している」といい、東京や名古屋での4月末時点での出社率は4割以下にとどまるという。こうして見ても、ライバルたちと比べてホンダの選択は異質ともいえる。 ホンダは現在、三部敏宏社長の指揮の下、2040年に世界で売る新車をすべて電気自動車(EV)か燃料電池車(FCV)にする「脱エンジン」目標を掲げる。カーボンニュートラルや自動車の知能化などへの対応を迫られている。 「100年に一度の大変革期」と言われる自動車業界での生き残りを図る中、目標達成に向けて社内の意思統一が求められるところだ』、「中堅社員は「在宅による日々の効率化と対面の合わせ技なら理解できるが、経営陣は現場を理解していない。優秀な学生の中からホンダを希望リストから外す人が増えてしまう」と嘆く」、「トヨタ自動車も「コロナ禍では在宅勤務が可能な職場でのより一層の在宅勤務を推進している」といい、東京や名古屋での4月末時点での出社率は4割以下にとどまる」、「三部社長」の真意はどこにあるのだろう。
第三に、5月22日付け現代ビジネスが掲載した大蔵省出身で一橋大学名誉教授の野口 悠紀雄氏による「年功序列はもう限界、ジョブ型雇用は日本経済再生の突破口になるか 衰退の元凶、日本型雇用からの脱却を」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/95391?imp=0
・『「年功序列と終身雇用」という日本型雇用形態から脱却しようとする「ジョブ型雇用」が広がっている。従来の日本型雇用は、日本経済を衰退させた大きな原因だ。ジョブ型雇用がこれを打破することが期待される。 ただし、その導入は簡単なことではない』、興味深そうだ。
・『ジョブ型雇用の導入企業が広がる 「ジョブ型雇用」は、期待する貢献や責任範囲を従業員ごとに明記した「ジョブディスクリプション(職務記述書)」を作成し、報酬を職責に応じて決める仕組みだ。従業員は自ら応募して、より高い職責に挑戦する。 日立製作所や富士通などの大手電機メーカーが導入している。富士通は4月21日、ジョブ型雇用の対象を全従業員の約9割に拡大すると発表した。日立製作所は、7月にも「ジョブ型雇用」を本体の全社員に広げる計画だ。 経団連が2020年夏に行なった調査では、419社のうち約100社が、検討中も含めてジョブ型に着手していた』、「419社のうち約100社が、検討中も含めてジョブ型に着手」、「2020年夏」段階で既に相当進んでいるようだ。
・『年功序列的な給与体系が日本を衰退させた 日本では、年齢が上がるほど、自動的に給与が上がる年功序列的な給与体系を採用している企業が多い。 それに対して、「ジョブ型雇用」では、職務ごとに異なる給与体系になる。技能が認められれば、年齢が若くても高い給料を得られる。逆に、年齢があがっても、自動的に給与があがるわけではない。 また一定期間の雇用が自動的に保障されるわけでもない。職務を要求通りに遂行できなかったり、職務そのものがなくなったりすれば、解雇されることもある。 ジョブ型は、外国ではごく普通の雇用体系だ。むしろ、日本型雇用のほうが、世界的に見れば特異だ。 現在の日本経済の停滞は、日本の雇用・給与体制が硬直的であり、技術や社会の大きな変化に適応できないことが大きな原因になっている。 ジョブ型雇用がこれを変える可能性がある。変化の大きい時代には、企業も労働者も、新しい働き方を切り拓く必要がある』、「日本型雇用」も高度成長期には日本経済の強さを支えたが、「変化の大きい時代」には、そぐわなくなったということなのだろうか。
・『エンジニアやIT専門家だけではない エンジニアやIT専門家のように専門技能で仕事を進める職務にとっては、もともとジョブ型の雇用形態のほうが望ましい。 それだけではない。一般には事務系と考えられる仕事についても、この形態が必要とされる場合が多い。 例えば、金融の仕事がそうだ。日本の金融機関では、定型的な事務作業をする場合が多く、とりわけ専門的な知識が必要とされることが少なかった。 しかし、先端的な金融業務は極めて専門性の高いものであり、ジョブ型雇用にあったものだ』、確かに「先端的な金融業務は極めて専門性の高いものであり、ジョブ型雇用にあったものだ」、その通りだ。
・『経営者も本来はジョブ型であるべきだ それだけではない。実は、経営者も本来は専門的な職業だ。したがって専門的な訓練を受け、それを活用して、1つの組織に固定されることなく、様々な企業の経営を経験することができる。 アメリカでは、経営者は経営の専門家として様々な企業を渡り歩くのがむしろ普通になっている。 これは、雇用統計にも反映されている。アメリカの雇用統計には、製造業や流通業などと並んで、「経営者」という産業分類がある。「経営」は、どの産業にも必要とされる、独立した産業なのである。 それに対して、日本の経営者(オーナー経営者を除く大企業の経営者)は、その組織に長年いる人のことだ。そして、組織の出世の階段を上り、トップに上り詰めた人だ。 出世の階段を上るためには、特定の職務の専門家になるのではなく、ジェネラリストになることが必要と考えられていた。 このような人たちが、激変する世界の中で、新しいビジネスモデルを開拓できるかどうかは、大きな疑問だと言わざる得ない。 日本の電機メーカーが衰退したのは、2000年頃にビジネスモデルを選択を誤ったからだ』、「日本の電機メーカーが衰退したのは、2000年頃にビジネスモデルを選択を誤ったからだ」、「組織の出世の階段を上り、トップに上り詰めた人」の限界なのかも知れない。
・『日本の雇用体制は戦時中に確立された1940年体制 日本の雇用形態は、昔から終身雇用・年功序列型であったと考えられている。確かに、戦後の日本では、この形態が一般的だった。 しかし、第2次世界大戦以前の日本においては、そうではなかった。とくに技能者は、企業間を転々と動くのがむしろ普通だった。 ところが重化学工業の発展に伴い、労働者を1つの企業に定着させ、企業内訓練によって技術を高める必要が生じた。 このために、終身雇用・年功序列型の仕組みを導入し、労働者の企業定着を図ったのである。労働組合も、職業別ではなく、企業別に形成された。 私は、こうした経済体制を「1940年体制」と呼んでいる。 第2次世界大戦後の高度成長期には、この仕組みがうまく機能した。それは、日本が先進国へのキャッチアップ過程にあったからだ。先進国のモデルがあったので、どのようなビジネスモデルを採択したら良いかは、明らかだった。 それに向かって、企業の従業員は、あたかも家族のように一致団結するという体制が必要だった。 しかし、1990年代頃から世界が大きく変わり、状況の大きな変化に対応することが必要になった。その局面で、日本型雇用体制は、大きな障害になってきたのである』、なるほど。
・『さまざまな制度改革が必要 ジョブ型雇用はこれまでの雇用体制とは大きく違うので、簡単に導入できるものではない。 とくに重要なのは、一部の企業だけがジョブ型雇用を導入しても、うまく機能しないことだ。なぜなら、ジョブ型は、労働者が一つの企業にとどまらず、別の企業に移ることが前提になっているからだ。したがって、多くの企業がこのようなこの体制を導入しないと、機能しない。 企業間の労働力の流動性を進めていくためには、様々な制度の整備が必要だ。とくに重要なのは、退職金制度である。 日本の場合には、一定の勤務年数にならないと満額を得られない場合が多い。これが、企業間流動性の大きな障害になっていると思われる。 確定拠出型年金がこれを解決するが、まだ十分に普及しているとは言えない』、「退職金制度」や「年金」制度が変化するのは、相当長い時間が必要だ。
・『目的は「もらいすぎ中高年」対策? ジョブ型雇用の導入には、制度を変える必要があるだけでなく、人々の考え方をも変える必要がある。実際には、年功序列的賃金と終身雇用に頼りたいと考える人が多いかもしれない。 事実、この制度には、さまざまな批判がある。企業がこれを導入するのは、労働コストの高い中高年従業員(いわゆる「もらいすぎ中高年」)の賃金を抑えたいからだという見方もある。 ただし、いまの日本の雇用は、「終身雇用的」とはいっても、文字どおり生涯の雇用を保障しているわけではない。50代の後半になれば、次の職場を探さなければならない。そして、転職できても、元の企業に残れても、賃金が大幅に下がる。 平均寿命が伸びて人生100年時代になってくると、むしろジョブ型のほうが長期間の所得稼得を可能にする可能性がある。 企業別労働組合である日本の労働組合が、これに対してどのような評価をするかが注目される』、「ジョブ型のほうが長期間の所得稼得を可能にする可能性がある」、かどうかはまだ分からない。何回もの法人税減税を賃上げでなく、内部留保増加に回すだけの経営陣の姿勢からみる限り、残念ながら「所得稼得」には期待できそうもない。
タグ:「日本」の労働者は、権利を余り要求でず、聞き分けがいいようだ。 「承認欲求は自力だけでは充足することができず、相手の自由意思に依存するという受動的な性質がある。テレワークで出社しないと不安になるという理由には、そうした承認欲求の性質も関わっていると考えられる」、「とくにテレワークの場合、仕事ぶりが周囲から見えにくいので、仕事の出来不出来は上司に評価されるか否かにかかっているといってもよい。しかも日本企業では仕事の分担が不明確なので一人ひとりの成果を捕捉しにくく、そのぶん評価者の感情や利害関係が評価に入り込みやすい」、その通りだ。 「「甘い人事評価をつけることがある」という回答は欧米企業で6%、日本企業で20%と大きな差がある」、「互いに近接しているほど相手に対する情報も、また承認の機会も多い。もちろんそこには正の承認だけでなく、負の承認も含まれるが。 そのため近接しているほど承認するにしろ、しないにしろ、相手に対するインパクトが大きくなる」、これではリモートワークの普及にはやはり限界があるのは、やむを得ないのかも知れない。 「「日本型」企業に特有の「承認欲求」」とはどういうことだろう。 太田 肇氏による「在宅は出世に影響?近くにいるほど「高評価」の謎 日本人の有休消化率はなぜこれほど悪いのか」 東洋経済オンライン 「日本の電機メーカーが衰退したのは、2000年頃にビジネスモデルを選択を誤ったからだ」、「組織の出世の階段を上り、トップに上り詰めた人」の限界なのかも知れない。 野口 悠紀雄氏による「年功序列はもう限界、ジョブ型雇用は日本経済再生の突破口になるか 衰退の元凶、日本型雇用からの脱却を」 「419社のうち約100社が、検討中も含めてジョブ型に着手」、「2020年夏」段階で既に相当進んでいるようだ。 「日本型雇用」も高度成長期には日本経済の強さを支えたが、「変化の大きい時代」には、そぐわなくなったということなのだろうか。 確かに「先端的な金融業務は極めて専門性の高いものであり、ジョブ型雇用にあったものだ」、その通りだ。 現代ビジネス 「中堅社員は「在宅による日々の効率化と対面の合わせ技なら理解できるが、経営陣は現場を理解していない。優秀な学生の中からホンダを希望リストから外す人が増えてしまう」と嘆く」、「トヨタ自動車も「コロナ禍では在宅勤務が可能な職場でのより一層の在宅勤務を推進している」といい、東京や名古屋での4月末時点での出社率は4割以下にとどまる」、「三部社長」の真意はどこにあるのだろう。 (注)三現主義:「現場」に足を運び、「現物」を直接手に取り、「現実」を見て確認した上で、問題解決を図ることが重要という考え方。ホンダやトヨタ自動車が有名(グロービス経営大学院)。 いまどき「三現主義」で「対面でのコミュニケーションを重視」、とはテレワークとは真逆の考え方であり、違和感もある。 東洋経済オンライン「ホンダがテレワークやめ原則出社に踏み切る真意 「三現主義」重視する社内文書、疑問の声も」 「ジョブ型のほうが長期間の所得稼得を可能にする可能性がある」、かどうかはまだ分からない。何回もの法人税減税を賃上げでなく、内部留保増加に回すだけの経営陣の姿勢からみる限り、残念ながら「所得稼得」には期待できそうもない。 「退職金制度」や「年金」制度が変化するのは、相当長い時間が必要だ。 (その38)(在宅は出世に影響?近くにいるほど「高評価」の謎 日本人の有休消化率はなぜこれほど悪いのか、ホンダがテレワークやめ原則出社に踏み切る真意 「三現主義」重視する社内文書 疑問の声も、年功序列はもう限界 ジョブ型雇用は日本経済再生の突破口になるか 衰退の元凶 日本型雇用からの脱却を) 働き方改革