東芝問題(その43)(「東芝の混乱は 日本の原子力政策の混乱を象徴している」東芝を"崩壊"させた経産省の罪深さ 選挙に響くから…元凶は国が原子力事業への方針を定めなかったこと、東芝迷走の原因はメディアと有識者にある、東芝 再建策に影を落とす「取締役選任への異論」 ファンド推薦の候補者2人は賛同を得られるか) [企業経営]
東芝問題については、昨年11月22日に取上げた。今日は、(その43)(「東芝の混乱は 日本の原子力政策の混乱を象徴している」東芝を"崩壊"させた経産省の罪深さ 選挙に響くから…元凶は国が原子力事業への方針を定めなかったこと、東芝迷走の原因はメディアと有識者にある、東芝 再建策に影を落とす「取締役選任への異論」 ファンド推薦の候補者2人は賛同を得られるか)である。
先ずは、本年3月9日付けPRESIDENT Onlineが掲載した経済ジャーナリストの磯山 友幸氏による「「東芝の混乱は、日本の原子力政策の混乱を象徴している」東芝を"崩壊"させた経産省の罪深さ 選挙に響くから…元凶は国が原子力事業への方針を定めなかったこと」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/55360
・『「モノ言う株主」が実質株主になっている 東芝が迷走を続けている。昨年11月、グループを3分割する計画を公表したものの海外ファンドなど大株主が反対したことから2月には2分割案に修正した。それでも混乱が収まらず、3月1日に綱川智社長と畠沢守副社長が同日付で突如退任する事態に陥った。3月24日に予定している臨時株主総会は実施し、従来方針のまま2分割案を議題として諮るとしている。もっとも、否決された場合は、新分割案を修正するともしており、東芝がどんな形で存続していくのか、見通せない状況が続いている。 東芝の大株主上位には2021年3月末現在、証券保険業務を行う金融機関の名前が並び、「モノ言う株主」と言われる海外の投資ファンドが実質株主になっている。提出されている大量保有報告書によると、旧村上ファンドの幹部だった高坂卓志氏らがシンガポールで立ち上げたエフィッシモ・キャピタル・マネージメントが実質筆頭株主、シンガポールの資産運用会社、3Dインベストメント・パートナーズが2位、米国の資産運用会社ファラロン・キャピタル・マネジメントなどが上位を占める。東芝が公表したデータでは、発行済株式の50.44%を「外国法人等」が保有している』、「発行済株式の50.44%を「外国法人等」が保有」、こうした混乱はかねてから予想されていたものだ。
・『会社分割案を決める前に、経営執行体制を整えるのが筋 また、24.14%を第一生命保険や日本生命保険など「金融機関」が持つ。こうした国内金融機関も「スチュワードシップ・コード」によって保険契約者の利益につながるかどうかで投票方針を決めるため、必ずしも経営陣支持に動くとは限らない。 昨年の株主総会では、会社側が提案していた、取締役会議長だった永山治・中外製薬名誉会長の取締役再任議案が否決された。結局、社外取締役で永山氏の後任を引き受ける人物は現れず、綱川社長が議長を兼ねた。今回、綱川氏は社長を退任したものの、取締役会議長にはとどまる。東芝はガバナンス体制の強化に向けて社外取締役から議長を選ぶとしてきたが、混乱が続く中で、社外の経営者が誰も引き受けない事態が続いている。 綱川氏は退任の理由について会見で「引責辞任ではない」と強弁していた。「新体制が見えないと(臨時総会で)投票しにくいという声があった」としていたが、本来は会社分割案を決める前に、東芝の経営執行体制を整えるのが筋だという批判は根強い。一方で、綱川氏ら現経営陣は、海外ファンドなどが選ぶ社外取締役が経営の実権を握ることに強く抵抗している。投資ファンドの多くは、短期的な資金回収を狙っており、東芝が持つ事業の売却などで利益を得ようとしているという』、「現経営陣は、海外ファンドなどが選ぶ社外取締役が経営の実権を握ることに強く抵抗している。投資ファンドの多くは、短期的な資金回収を狙っており、東芝が持つ事業の売却などで利益を得ようとしているという」、「投資ファンド」に屈する必要はない。
・『会社を破綻処理しなかったことに元凶がある 経営側は、発行済み株式の4割を保有する半導体大手キオクシアホールディングスの株式売却で株主への利益還元を行うことでファンド側の理解を得て、分割した新会社を上場させることで、海外ファンドの呪縛から解き放たれようとしていると見られる。どれだけ株主還元するかが、ファンド側との条件闘争のような様相を呈しており、エレベーター事業や照明事業の売却でその利益を株主還元に回すとしている。 なぜ、ここまで東芝はボロボロになったのか。 会社を破綻処理せず、形の上で存続させることにこだわったことが大きな要因だろう。粉飾決算と子会社だった米ウェスティングハウスの巨額損失が表面化した2016年の段階で、いったん会社更生法を申請し、債務処理を行っていれば、再生できていたかもしれない。東芝メディカルシステムズのキヤノンへの売却を始め、優良な事業の売却で辻褄を合わせ、会社を存続させることに終始したことから、事業の多くを切り売りするハメになった。破綻処理をすれば債権放棄などが求められる銀行主導で再建策が作られたことが大きい。 極め付けは資本不足を補って上場維持をするために2017年末に大規模な第三者割当増資を実施。海外機関投資家を呼び込んだことだ。これによって会社は存続し、上場も維持されたが、その後、投資ファンドに翻弄されることになった』、「2016年の段階で、いったん会社更生法を申請し、債務処理を行っていれば、再生できていたかもしれない」、「破綻処理をすれば債権放棄などが求められる銀行主導で再建策が作られたことが大きい。 極め付けは資本不足を補って上場維持をするために2017年末に大規模な第三者割当増資を実施。海外機関投資家を呼び込んだことだ。これによって会社は存続し、上場も維持されたが、その後、投資ファンドに翻弄されることになった」、無茶な「大規模な第三者割当増資」が元凶になったようだ。
・『存続を支えていた経産省の責任も大きい 東芝の経営者が会社の形上の存続にこだわったのは、破綻処理すれば自身の責任が問われることが大きかったが、裏で存続を支えていた経済産業省の責任も大きい。 ウェスティングハウスの買収は、経済産業省の原子力発電政策の一環として、いわば「国策」で進められていたことは明らか。2015年に発覚する粉飾決算も、リーマンショック時に経営危機に陥っていた東芝を経産省など霞が関が「救済」していたことが遠因になっている。事実上、破綻していたものを存続させるためのやりくりのひとつが粉飾決算だったと見られている。これも、国の原子力事業を担ってきた東芝に対する経産省の「意思」が反映されていたと見ていい。 その後、モノ言う株主の排除に向けて経産省の関係者が「介入」していたと見られる問題が発覚し、米国メディアなどでも報じられたが、それも、原子力事業へのファンドなどへの関与を回避したい経産省の思いがあったと見られている』、「裏で存続を支えていた経済産業省の責任も大きい」、むしろ「経済産業省の責任」の方が「大きい」が適切だと思う。
・『背景にあるのは「国の原子力事業への方針」 逆に言えば、今の東芝の迷走も、国の原子力事業への方針が定まらないことが大きい。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故以降、政治は原発の将来の方向性について議論することを避け続けている。安全性が確認されたものから再稼働するとはしているものの、将来的には原発依存を下げていくともしている。そうした中で、原子力技術を将来にわたってどう継承していくのか。抜本的に考えることすら放棄している。国民世論を二分する原発に「前向き」な政権だとなれば、選挙に響くと考えているからだろう。 民間電力会社に原発を維持させている原発政策にしても、今後どうするのか不明なままだ。現状の原発は、いずれ稼働年限が来て廃炉になっていくが、原発の新設の可否どころか、リプレイス(建て替え)の議論すら事実上タブーになっている。仮にリプレイスをするにしても、それを民間の「事業」として行うのか、国の事業として行っていくのかも、まったく議論されていない。経産省の一部には原発をすべて国有会社に集約すべきだという意見もあるが、政治が議論を避けている中で、一向に方向が定まらない』、「経産省の一部には原発をすべて国有会社に集約すべきだという意見もあるが、政治が議論を避けている中で、一向に方向が定まらない」、「政治」の無責任さは余りに酷い。
・『日本の原子力政策の混乱を象徴している そんな状況の中で、原子力技術の研究開発や、原発新設、廃炉などの事業を東芝や日立などの民間会社に「独自に」行わせる体制を続けられるのか。東芝は福島第一原発の廃炉作業に大きく関与しており、会社のあり方が定まらない中で、本来、国が責任を持たねばならない廃炉作業が宙に浮く危険性もはらんでいる。 本来は、会社を分割するなど東芝が事業形態を見直す前段階として、国が今後の原発事業をどうしていくのか、方向性を明確にする必要がある。さもなければ、東芝の持つ原子力事業や技術を将来にわたってどうしていくのか、より国の管理に近い事業体に変えていくのか。あるいは日立などに集約していくのか、議論が進まない。 ロシアによるウクライナへの侵攻で、原油価格が高騰を続けている。また、西側諸国がロシア産原油・ガスの輸入停止に踏み切れば、価格高騰だけでなく、エネルギー確保にも重大な支障を来しかねない。そんな中で、将来のあり方を議論することなく、原発へのなし崩し的な依存へと進んでいく可能性もある。そうなれば、東芝はまたしても国策に振り回されることになるかもしれない。 東日本大震災からまもなく11年。東芝の混乱は、日本の原子力政策の混乱を象徴していると言ってもいいだろう』、「本来は、会社を分割するなど東芝が事業形態を見直す前段階として、国が今後の原発事業をどうしていくのか、方向性を明確にする必要がある。さもなければ、東芝の持つ原子力事業や技術を将来にわたってどうしていくのか、より国の管理に近い事業体に変えていくのか。あるいは日立などに集約していくのか、議論が進まない」、「東芝」だけに押し付けず、本来、国が前面に立ってリーダシップを取ってゆくべきだろう。
次に、5月31日付けアゴラが掲載した財務省出身で慶応義塾大学准教授の小幡 績氏による「東芝迷走の原因はメディアと有識者にある」を紹介しよう。
https://agora-web.jp/archives/220530052755.html
・『東芝は迷走を続けているが、迷走が、ついに餌食として食い尽くされる局面にまで進んできてしまった。 なぜなら、6月末の株主総会へ向けて、ようやく会社側の提案する取締役候補のメンバーが固まったのだが、それが世界的に常識となっているコーポレートガバナンスのスタンダートから大きく外れるばかりか、もっともやってはいけない陣容になってしまったからだ。 新しく取締役に加わるのは7名で、そのうちの2名は執行役員と兼任だから、日本でいうところの社内であり、それ以外の5名が社外取締役である。そのうちの2名が、東芝の現在の大株主であるファンドの幹部である。 これは最悪だ。 絶対にやってはいけない例として、コーポレートガバナンスの教科書に出てくる、最悪の取締役人事である。 東芝は、この候補者を発表したプレスリリースの中で、こう言っている。 株主からの代表が取締役会に参加することにより、株主と経営陣はより足並みをそろえることができます。 180度間違いだ。 これは一番やってはいけないことだ。 東芝は、取締役の役割と、コーポレートガバナンスの役割と、両方ともまったくわかっていないだけでなく、180度逆に理解している。 取締役とは、すべての投資家の代理として、経営陣を監視する役割である。 ここで大事なのは、「すべての投資家」の代理、ということである。「特定の」株主の代理ではない。 上場企業における取締役は、潜在的な株主、つまり上場企業の株主には、誰でも株式を取引所で買えばなりうるわけであり、「彼らの評価が高い」ということが企業価値であり、「株価が高い」ということになる。すなわち取締役が代表するのは、現在株式を保有しているすべての株主と、それに潜在的な株主、将来株主になり得る投資家である。 株価は、新たにその会社の株式を買う人が決める値段、払う価格であるから、潜在的な投資家は極めて重要な取締役が代表すべき投資家たちである。 それにも関わらず、現在の株主の代理人、しかも特定の大株主の代理人を取締役にする。それは現在の株主を有利に扱い、将来の株主を犠牲にしているのである。 経営陣および社員は、今後もその会社、ここでは東芝と命運をともにするから、会社の長期的利益を最大化しようとする。同時に、潜在的な株主は、将来東芝株を買って、さらにその先の将来に売却する可能性があるわけだから、長期的な企業価値を大事にする。しかし、現在の株主の利益だけを考える取締役は、現在の株価を優先に考えるから、長期の企業価値を最大化しない可能性がある。 これが第一の問題点である』、「経営陣および社員は・・・東芝と命運をともにするから、会社の長期的利益を最大化しようとする」、「潜在的な株主は・・・長期的な企業価値を大事にする」、しかし、「現在の株主の利益だけを考える取締役は、現在の株価を優先に考えるから、長期の企業価値を最大化しない可能性がある」、確かに問題だ。
・『しかし、第二の問題点は、遥かに深刻で致命的だ。 それは、20世紀末に経済学会で確立し、企業の実際のガバナンスの基本として世界中の法制度に取り込まれた原則、「ガバナンスとは、経営陣と株主の対立ではなく、株主と株主の対立をターゲットとし、大株主が、一般の少数株主の利益を奪うことを防止することが最重要である」という不動の真理、これに真っ向から反しているからである。 特定大株主はガバナンスの敵である。仮想敵国である。彼らが、外部の少数株主の利益を損なわないように、一般の株主全体の利益を損なわないように、すべてのガバナンス法令は存在するのである。少数株主は、株主総会の投票で数の力で負けてしまうから、少数派の権利を守るために、法律があり、重要な決定に反対したにもかかわらず、数で押し切られた場合には、株式の買い取り請求が認められており、1株1票の原則、利益配分の平等性の確保のための配当原則、などが決められているのである。 例えば、大株主が、彼らの関係する別の企業に有利なように会社と契約を結ばせることや、戦略的にこの会社を利用することは、その他の株主の利益を大きく損ねるのである。 したがって、ファンドの代表を取締役に入れることは絶対にやってはいけないのである。ファンドが複数集まり、過半数を超えていたとしても、ファンドの短期的な売却利益追求が、長期の企業価値を損なうとその他の少数株主が思った場合には、ファンド主導で決められた決定がなされる前の株価で買い取り請求ができるように法律は作られているのである。法律で守り切れないところは、取締役が、すべての株主の利益を平等に守るためにいるのである。これが取締役の役割の本質である。 そして、経営陣は大株主に選ばれているから、経営陣は大株主の言いなりになることが普通なので、実は、大株主と経営陣の利害対立というのは本質的な問題ではなく、大株主と一般株主の対立こそが、ガバナンスの最大のイシューなのである。それが20世紀の末にアンドレシュライファーというハーバードの教授のグループの研究により確立し、世界銀行も世界各国の政府も、この考え方に倣ってガバナンス関連法制度を整備してきたのである。 したがって、ファンドという大株主の代理人を取締役にするのは、もっともガバナンスが悪い会社なのである。 しかしこれを誰も指摘せず、いままで経営陣側がファンドという大株主の言うことを聞かないのがガバナンスの悪い会社だと批判してきた、有識者、メディア。 こんな無知どころか経済や企業を破壊する有識者とメディアがはびこっている国は、日本だけなのである』、「ファンドという大株主の代理人を取締役にするのは、もっともガバナンスが悪い会社なのである。 しかしこれを誰も指摘せず、いままで経営陣側がファンドという大株主の言うことを聞かないのがガバナンスの悪い会社だと批判してきた、有識者、メディア。 こんな無知どころか経済や企業を破壊する有識者とメディアがはびこっている国は、日本だけなのである」、確かに「有識者、メディア」による「批判」は真逆だ。どうしてこのようなことが起こるのだろう。恐らく、批判の対象としては、最も弱小な「東芝」を血祭にあげ、政府という巨悪には目をつぶっているのが、居心地がいいためなのだろう。
第三に、6月9日付け東洋経済オンライン「東芝、再建策に影を落とす「取締役選任への異論」 ファンド推薦の候補者2人は賛同を得られるか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/595408
・『「10件も応募してくださった。当社の潜在的な価値に対して、大きく期待されていることをうれしく思う」。6月3日に東芝が開いたメディア合同インタビュー。その場で島田太郎社長は笑顔を見せた。 3月下旬の臨時株主総会で、半導体などのデバイス事業を分離する会社分割案が否決された。その後、東芝経営陣は5月30日を期限とし、株式の非公開化を含む経営再建策を「公募」するという異例の方法で、スポンサーを探してきた。 公募に応じて出された提案は島田社長が述べたように計10件。そのうち8件が非公開化を含む内容、2件が上場を維持したうえで資本業務提携を結ぶ、というものだった。 提案をしたスポンサー候補の名前は伏せられている。ただ、市場関係者の間ではCVCキャピタル・パートナーズ、ベインキャピタル、KKRとブラックストーンの連合といった海外ファンドの名前が浮上している。さらに国内勢の産業革新投資機構(JIC)も買収を検討しているもようだ』、やはり、第二の記事で問題にしたファンドが「スポンサー候補」になっているようだ。
・『島田社長は妙に自信ありげ 東芝経営陣はどの提案を選ぶのか。島田社長は、スポンサー選定協議の途中経過と同時に公表した、新たな「経営方針」に合う相手を選びたいようだ。 経営方針で掲げた数値目標はかなり強気だ。2025年度に売上高4兆円、営業利益3600億円を目指すとしている。東芝の2021年度の売上高は約3.3兆円、営業利益は約1590億円。わずか4年で利益を倍以上にするというのだ。2030年度には売上高5兆円、営業利益6000億円を目指すという。 中核とするのがデータビジネス。かみ砕いて言えば、東芝がすでに持っているエレベーターや小売り、発電システムなどのハードから得られるデータをサービスにつなげようという戦略だ。最終的には、量子技術を活用した産業の創出も見据えている。 「ディメンジョン(次元)が違うビジョンになっている」と、島田社長はこの経営方針に自信満々だ。「『この方向に行くなら東芝と一緒にやりたい』と考えてもらいたい」とも語り、スポンサーに歩調を合わせてもらいたいと期待していることが分かる。 ただ、島田社長の思惑どおりに事が運ぶ保証はない。今回手を挙げているスポンサー候補はファンドが中心。「事業の切り売りも含め、短期的な利益を追求するだろう」(ファンド関係者)との見方は強い。 ファンドの考える時間軸は、島田社長が描く中長期の視点と合わない可能性が高い。選ぶスポンサーによっては、経営戦略の前提となる事業そのものが変わってしまう懸念もある。 実際、今回の経営方針では、会社分割案で非注力事業とし売却を検討するとしていたエレベーターや照明、東芝テックなどを、一転して注力事業と位置付けている。外的要因によって、方針が二転三転するような事態も起きかねない』、「ファンドの考える時間軸は、島田社長が描く中長期の視点と合わない可能性が高い。選ぶスポンサーによっては、経営戦略の前提となる事業そのものが変わってしまう懸念もある」、当然だろう。
・『スポンサーは日本勢の参加必須か さらに問題となるのは、改正外為法上、国がとくに重要な「コア業種」として位置づける原子力や防衛関連の事業を東芝が抱えていることだ。それらの買収には外為法の審査を通過する必要があり、海外のファンド・企業のみでの買収はハードルが高い。日本勢の参加が必須とみられている。 島田社長は外為法について、「バイヤー(買い手)がクリアするハードルだと考えている」と述べた。あくまでその問題をクリアした提案の中から、1つを「選ぶ」というスタンスだ。 現状上がっている候補者の中で、確実に外為法をクリアできそうなのは国内勢のJICくらいだろう。ほかのプレーヤーがこのハードルを乗り越えられるかによって、実際の選択肢の数は変わってくる。 外為法をクリアした提案の中から、東芝が描いた戦略に合うものを選び、すり合わせをしていく。今後この難しい選定は、6月28日の株主総会で選ばれる経営陣によって進んでいくことになる。 ところが、この株主総会からして波乱含みだ。東芝が提案している取締役候補の中には、主要株主である2社の幹部が含まれている。ファラロン・キャピタルマネジメントの今井英次郎氏と、エリオット・マネジメントのナビール・バンジー氏だ。 ファラロンとエリオットの2社合わせて、約10%の東芝株を保有している。そのため、特定の株主の意見が強く反映されるのではないかと、取締役候補をめぐっては批判が相次いでいる。 今井氏とバンジー氏の選任に当たっては、東芝の内部でも意見が割れている状況だ。スポンサー選定などを協議する特別委員会の委員長であるジェリー・ブラック社外取締役は前述の合同インタビューで、「社外取締役で弁護士の綿引万里子氏が2人の選任に反対した」と明かした。 その理由については「綿引氏の考えを誤って伝える可能性があるため、コメントは控える」とした。2人の新任が認められると、13人の取締役のうち、ファンドの関係者や推薦者である取締役が6人へと増える。そのことを綿引氏は問題視したとみられる。 ブラック氏自身は「株主からの任命であることに注目するのではなく、個々人の能力が重要だった」とし、2人を取締役候補とすることに賛同。「常に全員が合意できるわけではない。指名委員会としては会社の最大の利益のため、このメンバーでいくと決めた」と説明した。 綿引氏が反対をした事実は、東芝の株主総会招集通知にも注記され、株主にも見える形になった。判断は株主たちに委ねられた形だ』、「外為法について、「バイヤー(買い手)がクリアするハードルだと考えている」と述べた。あくまでその問題をクリアした提案の中から、1つを「選ぶ」というスタンスだ」、「外為法」「の問題をクリア」する必要があるとは、難題が加わった形だ。
・『6月末の株主総会が最大の焦点 実は、綿引氏が問題視しているのは、この2名の選任だけではない。指名委員会委員長のレイモンド・ゼイジ氏に対しても、意見を表明した。その意見は、招集通知と共に公表された「第183期報告書」の中に、監査委員の橋本勝則氏との連名で掲載されている。 ゼイジ氏は今年3月の臨時株主総会直前、3Dインベストメント・パートナーズから受けた株主提案に、ツイッター上で個人的に「賛成」を表明した。取締役会が全会一致で決めた「反対」と真逆の意見を発信したのだ。 これについて綿引氏らは、「善管注意義務に反するとまでは言えない」としつつ「ガバナンス不全につながりかねない」と指摘している。東芝の取締役会はまさに内紛状態にあるわけだ。これを株主はどう判断するだろうか。 昨年の定時株主総会では、永山治取締役会議長と小林伸行監査委員の再任が否決された。ほかの取締役についても、ワイズマン廣田綾子氏が56.31%、畠澤守氏が66.26%と、低い賛成率でなんとか選任された候補者が少なくない。 経営方針の実践やスポンサー探しの話をするにも、まずは体制が安定する必要がある。株主推薦の2人やゼイジ氏は無事に承認され、東芝が描く経営体制は敷けるのか。まずは6月28日が最大の焦点となる』、「東芝の取締役会はまさに内紛状態にある」、「経営方針の実践やスポンサー探しの話をするにも、まずは体制が安定する必要」、さて、「6月28日」の「株主総会」ではどうなるだろうか。
先ずは、本年3月9日付けPRESIDENT Onlineが掲載した経済ジャーナリストの磯山 友幸氏による「「東芝の混乱は、日本の原子力政策の混乱を象徴している」東芝を"崩壊"させた経産省の罪深さ 選挙に響くから…元凶は国が原子力事業への方針を定めなかったこと」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/55360
・『「モノ言う株主」が実質株主になっている 東芝が迷走を続けている。昨年11月、グループを3分割する計画を公表したものの海外ファンドなど大株主が反対したことから2月には2分割案に修正した。それでも混乱が収まらず、3月1日に綱川智社長と畠沢守副社長が同日付で突如退任する事態に陥った。3月24日に予定している臨時株主総会は実施し、従来方針のまま2分割案を議題として諮るとしている。もっとも、否決された場合は、新分割案を修正するともしており、東芝がどんな形で存続していくのか、見通せない状況が続いている。 東芝の大株主上位には2021年3月末現在、証券保険業務を行う金融機関の名前が並び、「モノ言う株主」と言われる海外の投資ファンドが実質株主になっている。提出されている大量保有報告書によると、旧村上ファンドの幹部だった高坂卓志氏らがシンガポールで立ち上げたエフィッシモ・キャピタル・マネージメントが実質筆頭株主、シンガポールの資産運用会社、3Dインベストメント・パートナーズが2位、米国の資産運用会社ファラロン・キャピタル・マネジメントなどが上位を占める。東芝が公表したデータでは、発行済株式の50.44%を「外国法人等」が保有している』、「発行済株式の50.44%を「外国法人等」が保有」、こうした混乱はかねてから予想されていたものだ。
・『会社分割案を決める前に、経営執行体制を整えるのが筋 また、24.14%を第一生命保険や日本生命保険など「金融機関」が持つ。こうした国内金融機関も「スチュワードシップ・コード」によって保険契約者の利益につながるかどうかで投票方針を決めるため、必ずしも経営陣支持に動くとは限らない。 昨年の株主総会では、会社側が提案していた、取締役会議長だった永山治・中外製薬名誉会長の取締役再任議案が否決された。結局、社外取締役で永山氏の後任を引き受ける人物は現れず、綱川社長が議長を兼ねた。今回、綱川氏は社長を退任したものの、取締役会議長にはとどまる。東芝はガバナンス体制の強化に向けて社外取締役から議長を選ぶとしてきたが、混乱が続く中で、社外の経営者が誰も引き受けない事態が続いている。 綱川氏は退任の理由について会見で「引責辞任ではない」と強弁していた。「新体制が見えないと(臨時総会で)投票しにくいという声があった」としていたが、本来は会社分割案を決める前に、東芝の経営執行体制を整えるのが筋だという批判は根強い。一方で、綱川氏ら現経営陣は、海外ファンドなどが選ぶ社外取締役が経営の実権を握ることに強く抵抗している。投資ファンドの多くは、短期的な資金回収を狙っており、東芝が持つ事業の売却などで利益を得ようとしているという』、「現経営陣は、海外ファンドなどが選ぶ社外取締役が経営の実権を握ることに強く抵抗している。投資ファンドの多くは、短期的な資金回収を狙っており、東芝が持つ事業の売却などで利益を得ようとしているという」、「投資ファンド」に屈する必要はない。
・『会社を破綻処理しなかったことに元凶がある 経営側は、発行済み株式の4割を保有する半導体大手キオクシアホールディングスの株式売却で株主への利益還元を行うことでファンド側の理解を得て、分割した新会社を上場させることで、海外ファンドの呪縛から解き放たれようとしていると見られる。どれだけ株主還元するかが、ファンド側との条件闘争のような様相を呈しており、エレベーター事業や照明事業の売却でその利益を株主還元に回すとしている。 なぜ、ここまで東芝はボロボロになったのか。 会社を破綻処理せず、形の上で存続させることにこだわったことが大きな要因だろう。粉飾決算と子会社だった米ウェスティングハウスの巨額損失が表面化した2016年の段階で、いったん会社更生法を申請し、債務処理を行っていれば、再生できていたかもしれない。東芝メディカルシステムズのキヤノンへの売却を始め、優良な事業の売却で辻褄を合わせ、会社を存続させることに終始したことから、事業の多くを切り売りするハメになった。破綻処理をすれば債権放棄などが求められる銀行主導で再建策が作られたことが大きい。 極め付けは資本不足を補って上場維持をするために2017年末に大規模な第三者割当増資を実施。海外機関投資家を呼び込んだことだ。これによって会社は存続し、上場も維持されたが、その後、投資ファンドに翻弄されることになった』、「2016年の段階で、いったん会社更生法を申請し、債務処理を行っていれば、再生できていたかもしれない」、「破綻処理をすれば債権放棄などが求められる銀行主導で再建策が作られたことが大きい。 極め付けは資本不足を補って上場維持をするために2017年末に大規模な第三者割当増資を実施。海外機関投資家を呼び込んだことだ。これによって会社は存続し、上場も維持されたが、その後、投資ファンドに翻弄されることになった」、無茶な「大規模な第三者割当増資」が元凶になったようだ。
・『存続を支えていた経産省の責任も大きい 東芝の経営者が会社の形上の存続にこだわったのは、破綻処理すれば自身の責任が問われることが大きかったが、裏で存続を支えていた経済産業省の責任も大きい。 ウェスティングハウスの買収は、経済産業省の原子力発電政策の一環として、いわば「国策」で進められていたことは明らか。2015年に発覚する粉飾決算も、リーマンショック時に経営危機に陥っていた東芝を経産省など霞が関が「救済」していたことが遠因になっている。事実上、破綻していたものを存続させるためのやりくりのひとつが粉飾決算だったと見られている。これも、国の原子力事業を担ってきた東芝に対する経産省の「意思」が反映されていたと見ていい。 その後、モノ言う株主の排除に向けて経産省の関係者が「介入」していたと見られる問題が発覚し、米国メディアなどでも報じられたが、それも、原子力事業へのファンドなどへの関与を回避したい経産省の思いがあったと見られている』、「裏で存続を支えていた経済産業省の責任も大きい」、むしろ「経済産業省の責任」の方が「大きい」が適切だと思う。
・『背景にあるのは「国の原子力事業への方針」 逆に言えば、今の東芝の迷走も、国の原子力事業への方針が定まらないことが大きい。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故以降、政治は原発の将来の方向性について議論することを避け続けている。安全性が確認されたものから再稼働するとはしているものの、将来的には原発依存を下げていくともしている。そうした中で、原子力技術を将来にわたってどう継承していくのか。抜本的に考えることすら放棄している。国民世論を二分する原発に「前向き」な政権だとなれば、選挙に響くと考えているからだろう。 民間電力会社に原発を維持させている原発政策にしても、今後どうするのか不明なままだ。現状の原発は、いずれ稼働年限が来て廃炉になっていくが、原発の新設の可否どころか、リプレイス(建て替え)の議論すら事実上タブーになっている。仮にリプレイスをするにしても、それを民間の「事業」として行うのか、国の事業として行っていくのかも、まったく議論されていない。経産省の一部には原発をすべて国有会社に集約すべきだという意見もあるが、政治が議論を避けている中で、一向に方向が定まらない』、「経産省の一部には原発をすべて国有会社に集約すべきだという意見もあるが、政治が議論を避けている中で、一向に方向が定まらない」、「政治」の無責任さは余りに酷い。
・『日本の原子力政策の混乱を象徴している そんな状況の中で、原子力技術の研究開発や、原発新設、廃炉などの事業を東芝や日立などの民間会社に「独自に」行わせる体制を続けられるのか。東芝は福島第一原発の廃炉作業に大きく関与しており、会社のあり方が定まらない中で、本来、国が責任を持たねばならない廃炉作業が宙に浮く危険性もはらんでいる。 本来は、会社を分割するなど東芝が事業形態を見直す前段階として、国が今後の原発事業をどうしていくのか、方向性を明確にする必要がある。さもなければ、東芝の持つ原子力事業や技術を将来にわたってどうしていくのか、より国の管理に近い事業体に変えていくのか。あるいは日立などに集約していくのか、議論が進まない。 ロシアによるウクライナへの侵攻で、原油価格が高騰を続けている。また、西側諸国がロシア産原油・ガスの輸入停止に踏み切れば、価格高騰だけでなく、エネルギー確保にも重大な支障を来しかねない。そんな中で、将来のあり方を議論することなく、原発へのなし崩し的な依存へと進んでいく可能性もある。そうなれば、東芝はまたしても国策に振り回されることになるかもしれない。 東日本大震災からまもなく11年。東芝の混乱は、日本の原子力政策の混乱を象徴していると言ってもいいだろう』、「本来は、会社を分割するなど東芝が事業形態を見直す前段階として、国が今後の原発事業をどうしていくのか、方向性を明確にする必要がある。さもなければ、東芝の持つ原子力事業や技術を将来にわたってどうしていくのか、より国の管理に近い事業体に変えていくのか。あるいは日立などに集約していくのか、議論が進まない」、「東芝」だけに押し付けず、本来、国が前面に立ってリーダシップを取ってゆくべきだろう。
次に、5月31日付けアゴラが掲載した財務省出身で慶応義塾大学准教授の小幡 績氏による「東芝迷走の原因はメディアと有識者にある」を紹介しよう。
https://agora-web.jp/archives/220530052755.html
・『東芝は迷走を続けているが、迷走が、ついに餌食として食い尽くされる局面にまで進んできてしまった。 なぜなら、6月末の株主総会へ向けて、ようやく会社側の提案する取締役候補のメンバーが固まったのだが、それが世界的に常識となっているコーポレートガバナンスのスタンダートから大きく外れるばかりか、もっともやってはいけない陣容になってしまったからだ。 新しく取締役に加わるのは7名で、そのうちの2名は執行役員と兼任だから、日本でいうところの社内であり、それ以外の5名が社外取締役である。そのうちの2名が、東芝の現在の大株主であるファンドの幹部である。 これは最悪だ。 絶対にやってはいけない例として、コーポレートガバナンスの教科書に出てくる、最悪の取締役人事である。 東芝は、この候補者を発表したプレスリリースの中で、こう言っている。 株主からの代表が取締役会に参加することにより、株主と経営陣はより足並みをそろえることができます。 180度間違いだ。 これは一番やってはいけないことだ。 東芝は、取締役の役割と、コーポレートガバナンスの役割と、両方ともまったくわかっていないだけでなく、180度逆に理解している。 取締役とは、すべての投資家の代理として、経営陣を監視する役割である。 ここで大事なのは、「すべての投資家」の代理、ということである。「特定の」株主の代理ではない。 上場企業における取締役は、潜在的な株主、つまり上場企業の株主には、誰でも株式を取引所で買えばなりうるわけであり、「彼らの評価が高い」ということが企業価値であり、「株価が高い」ということになる。すなわち取締役が代表するのは、現在株式を保有しているすべての株主と、それに潜在的な株主、将来株主になり得る投資家である。 株価は、新たにその会社の株式を買う人が決める値段、払う価格であるから、潜在的な投資家は極めて重要な取締役が代表すべき投資家たちである。 それにも関わらず、現在の株主の代理人、しかも特定の大株主の代理人を取締役にする。それは現在の株主を有利に扱い、将来の株主を犠牲にしているのである。 経営陣および社員は、今後もその会社、ここでは東芝と命運をともにするから、会社の長期的利益を最大化しようとする。同時に、潜在的な株主は、将来東芝株を買って、さらにその先の将来に売却する可能性があるわけだから、長期的な企業価値を大事にする。しかし、現在の株主の利益だけを考える取締役は、現在の株価を優先に考えるから、長期の企業価値を最大化しない可能性がある。 これが第一の問題点である』、「経営陣および社員は・・・東芝と命運をともにするから、会社の長期的利益を最大化しようとする」、「潜在的な株主は・・・長期的な企業価値を大事にする」、しかし、「現在の株主の利益だけを考える取締役は、現在の株価を優先に考えるから、長期の企業価値を最大化しない可能性がある」、確かに問題だ。
・『しかし、第二の問題点は、遥かに深刻で致命的だ。 それは、20世紀末に経済学会で確立し、企業の実際のガバナンスの基本として世界中の法制度に取り込まれた原則、「ガバナンスとは、経営陣と株主の対立ではなく、株主と株主の対立をターゲットとし、大株主が、一般の少数株主の利益を奪うことを防止することが最重要である」という不動の真理、これに真っ向から反しているからである。 特定大株主はガバナンスの敵である。仮想敵国である。彼らが、外部の少数株主の利益を損なわないように、一般の株主全体の利益を損なわないように、すべてのガバナンス法令は存在するのである。少数株主は、株主総会の投票で数の力で負けてしまうから、少数派の権利を守るために、法律があり、重要な決定に反対したにもかかわらず、数で押し切られた場合には、株式の買い取り請求が認められており、1株1票の原則、利益配分の平等性の確保のための配当原則、などが決められているのである。 例えば、大株主が、彼らの関係する別の企業に有利なように会社と契約を結ばせることや、戦略的にこの会社を利用することは、その他の株主の利益を大きく損ねるのである。 したがって、ファンドの代表を取締役に入れることは絶対にやってはいけないのである。ファンドが複数集まり、過半数を超えていたとしても、ファンドの短期的な売却利益追求が、長期の企業価値を損なうとその他の少数株主が思った場合には、ファンド主導で決められた決定がなされる前の株価で買い取り請求ができるように法律は作られているのである。法律で守り切れないところは、取締役が、すべての株主の利益を平等に守るためにいるのである。これが取締役の役割の本質である。 そして、経営陣は大株主に選ばれているから、経営陣は大株主の言いなりになることが普通なので、実は、大株主と経営陣の利害対立というのは本質的な問題ではなく、大株主と一般株主の対立こそが、ガバナンスの最大のイシューなのである。それが20世紀の末にアンドレシュライファーというハーバードの教授のグループの研究により確立し、世界銀行も世界各国の政府も、この考え方に倣ってガバナンス関連法制度を整備してきたのである。 したがって、ファンドという大株主の代理人を取締役にするのは、もっともガバナンスが悪い会社なのである。 しかしこれを誰も指摘せず、いままで経営陣側がファンドという大株主の言うことを聞かないのがガバナンスの悪い会社だと批判してきた、有識者、メディア。 こんな無知どころか経済や企業を破壊する有識者とメディアがはびこっている国は、日本だけなのである』、「ファンドという大株主の代理人を取締役にするのは、もっともガバナンスが悪い会社なのである。 しかしこれを誰も指摘せず、いままで経営陣側がファンドという大株主の言うことを聞かないのがガバナンスの悪い会社だと批判してきた、有識者、メディア。 こんな無知どころか経済や企業を破壊する有識者とメディアがはびこっている国は、日本だけなのである」、確かに「有識者、メディア」による「批判」は真逆だ。どうしてこのようなことが起こるのだろう。恐らく、批判の対象としては、最も弱小な「東芝」を血祭にあげ、政府という巨悪には目をつぶっているのが、居心地がいいためなのだろう。
第三に、6月9日付け東洋経済オンライン「東芝、再建策に影を落とす「取締役選任への異論」 ファンド推薦の候補者2人は賛同を得られるか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/595408
・『「10件も応募してくださった。当社の潜在的な価値に対して、大きく期待されていることをうれしく思う」。6月3日に東芝が開いたメディア合同インタビュー。その場で島田太郎社長は笑顔を見せた。 3月下旬の臨時株主総会で、半導体などのデバイス事業を分離する会社分割案が否決された。その後、東芝経営陣は5月30日を期限とし、株式の非公開化を含む経営再建策を「公募」するという異例の方法で、スポンサーを探してきた。 公募に応じて出された提案は島田社長が述べたように計10件。そのうち8件が非公開化を含む内容、2件が上場を維持したうえで資本業務提携を結ぶ、というものだった。 提案をしたスポンサー候補の名前は伏せられている。ただ、市場関係者の間ではCVCキャピタル・パートナーズ、ベインキャピタル、KKRとブラックストーンの連合といった海外ファンドの名前が浮上している。さらに国内勢の産業革新投資機構(JIC)も買収を検討しているもようだ』、やはり、第二の記事で問題にしたファンドが「スポンサー候補」になっているようだ。
・『島田社長は妙に自信ありげ 東芝経営陣はどの提案を選ぶのか。島田社長は、スポンサー選定協議の途中経過と同時に公表した、新たな「経営方針」に合う相手を選びたいようだ。 経営方針で掲げた数値目標はかなり強気だ。2025年度に売上高4兆円、営業利益3600億円を目指すとしている。東芝の2021年度の売上高は約3.3兆円、営業利益は約1590億円。わずか4年で利益を倍以上にするというのだ。2030年度には売上高5兆円、営業利益6000億円を目指すという。 中核とするのがデータビジネス。かみ砕いて言えば、東芝がすでに持っているエレベーターや小売り、発電システムなどのハードから得られるデータをサービスにつなげようという戦略だ。最終的には、量子技術を活用した産業の創出も見据えている。 「ディメンジョン(次元)が違うビジョンになっている」と、島田社長はこの経営方針に自信満々だ。「『この方向に行くなら東芝と一緒にやりたい』と考えてもらいたい」とも語り、スポンサーに歩調を合わせてもらいたいと期待していることが分かる。 ただ、島田社長の思惑どおりに事が運ぶ保証はない。今回手を挙げているスポンサー候補はファンドが中心。「事業の切り売りも含め、短期的な利益を追求するだろう」(ファンド関係者)との見方は強い。 ファンドの考える時間軸は、島田社長が描く中長期の視点と合わない可能性が高い。選ぶスポンサーによっては、経営戦略の前提となる事業そのものが変わってしまう懸念もある。 実際、今回の経営方針では、会社分割案で非注力事業とし売却を検討するとしていたエレベーターや照明、東芝テックなどを、一転して注力事業と位置付けている。外的要因によって、方針が二転三転するような事態も起きかねない』、「ファンドの考える時間軸は、島田社長が描く中長期の視点と合わない可能性が高い。選ぶスポンサーによっては、経営戦略の前提となる事業そのものが変わってしまう懸念もある」、当然だろう。
・『スポンサーは日本勢の参加必須か さらに問題となるのは、改正外為法上、国がとくに重要な「コア業種」として位置づける原子力や防衛関連の事業を東芝が抱えていることだ。それらの買収には外為法の審査を通過する必要があり、海外のファンド・企業のみでの買収はハードルが高い。日本勢の参加が必須とみられている。 島田社長は外為法について、「バイヤー(買い手)がクリアするハードルだと考えている」と述べた。あくまでその問題をクリアした提案の中から、1つを「選ぶ」というスタンスだ。 現状上がっている候補者の中で、確実に外為法をクリアできそうなのは国内勢のJICくらいだろう。ほかのプレーヤーがこのハードルを乗り越えられるかによって、実際の選択肢の数は変わってくる。 外為法をクリアした提案の中から、東芝が描いた戦略に合うものを選び、すり合わせをしていく。今後この難しい選定は、6月28日の株主総会で選ばれる経営陣によって進んでいくことになる。 ところが、この株主総会からして波乱含みだ。東芝が提案している取締役候補の中には、主要株主である2社の幹部が含まれている。ファラロン・キャピタルマネジメントの今井英次郎氏と、エリオット・マネジメントのナビール・バンジー氏だ。 ファラロンとエリオットの2社合わせて、約10%の東芝株を保有している。そのため、特定の株主の意見が強く反映されるのではないかと、取締役候補をめぐっては批判が相次いでいる。 今井氏とバンジー氏の選任に当たっては、東芝の内部でも意見が割れている状況だ。スポンサー選定などを協議する特別委員会の委員長であるジェリー・ブラック社外取締役は前述の合同インタビューで、「社外取締役で弁護士の綿引万里子氏が2人の選任に反対した」と明かした。 その理由については「綿引氏の考えを誤って伝える可能性があるため、コメントは控える」とした。2人の新任が認められると、13人の取締役のうち、ファンドの関係者や推薦者である取締役が6人へと増える。そのことを綿引氏は問題視したとみられる。 ブラック氏自身は「株主からの任命であることに注目するのではなく、個々人の能力が重要だった」とし、2人を取締役候補とすることに賛同。「常に全員が合意できるわけではない。指名委員会としては会社の最大の利益のため、このメンバーでいくと決めた」と説明した。 綿引氏が反対をした事実は、東芝の株主総会招集通知にも注記され、株主にも見える形になった。判断は株主たちに委ねられた形だ』、「外為法について、「バイヤー(買い手)がクリアするハードルだと考えている」と述べた。あくまでその問題をクリアした提案の中から、1つを「選ぶ」というスタンスだ」、「外為法」「の問題をクリア」する必要があるとは、難題が加わった形だ。
・『6月末の株主総会が最大の焦点 実は、綿引氏が問題視しているのは、この2名の選任だけではない。指名委員会委員長のレイモンド・ゼイジ氏に対しても、意見を表明した。その意見は、招集通知と共に公表された「第183期報告書」の中に、監査委員の橋本勝則氏との連名で掲載されている。 ゼイジ氏は今年3月の臨時株主総会直前、3Dインベストメント・パートナーズから受けた株主提案に、ツイッター上で個人的に「賛成」を表明した。取締役会が全会一致で決めた「反対」と真逆の意見を発信したのだ。 これについて綿引氏らは、「善管注意義務に反するとまでは言えない」としつつ「ガバナンス不全につながりかねない」と指摘している。東芝の取締役会はまさに内紛状態にあるわけだ。これを株主はどう判断するだろうか。 昨年の定時株主総会では、永山治取締役会議長と小林伸行監査委員の再任が否決された。ほかの取締役についても、ワイズマン廣田綾子氏が56.31%、畠澤守氏が66.26%と、低い賛成率でなんとか選任された候補者が少なくない。 経営方針の実践やスポンサー探しの話をするにも、まずは体制が安定する必要がある。株主推薦の2人やゼイジ氏は無事に承認され、東芝が描く経営体制は敷けるのか。まずは6月28日が最大の焦点となる』、「東芝の取締役会はまさに内紛状態にある」、「経営方針の実践やスポンサー探しの話をするにも、まずは体制が安定する必要」、さて、「6月28日」の「株主総会」ではどうなるだろうか。
タグ:「発行済株式の50.44%を「外国法人等」が保有」、こうした混乱はかねてから予想されていたものだ。 磯山 友幸氏による「「東芝の混乱は、日本の原子力政策の混乱を象徴している」東芝を"崩壊"させた経産省の罪深さ 選挙に響くから…元凶は国が原子力事業への方針を定めなかったこと」 PRESIDENT ONLINE 東芝問題 (その43)(「東芝の混乱は 日本の原子力政策の混乱を象徴している」東芝を"崩壊"させた経産省の罪深さ 選挙に響くから…元凶は国が原子力事業への方針を定めなかったこと、東芝迷走の原因はメディアと有識者にある、東芝 再建策に影を落とす「取締役選任への異論」 ファンド推薦の候補者2人は賛同を得られるか) 「現経営陣は、海外ファンドなどが選ぶ社外取締役が経営の実権を握ることに強く抵抗している。投資ファンドの多くは、短期的な資金回収を狙っており、東芝が持つ事業の売却などで利益を得ようとしているという」、「投資ファンド」に屈する必要はない。 「2016年の段階で、いったん会社更生法を申請し、債務処理を行っていれば、再生できていたかもしれない」、「破綻処理をすれば債権放棄などが求められる銀行主導で再建策が作られたことが大きい。 極め付けは資本不足を補って上場維持をするために2017年末に大規模な第三者割当増資を実施。海外機関投資家を呼び込んだことだ。これによって会社は存続し、上場も維持されたが、その後、投資ファンドに翻弄されることになった」、無茶な「大規模な第三者割当増資」が元凶になったようだ。 「裏で存続を支えていた経済産業省の責任も大きい」、むしろ「経済産業省の責任」の方が「大きい」が適切だと思う。 「経産省の一部には原発をすべて国有会社に集約すべきだという意見もあるが、政治が議論を避けている中で、一向に方向が定まらない」、「政治」の無責任さは余りに酷い。 「本来は、会社を分割するなど東芝が事業形態を見直す前段階として、国が今後の原発事業をどうしていくのか、方向性を明確にする必要がある。さもなければ、東芝の持つ原子力事業や技術を将来にわたってどうしていくのか、より国の管理に近い事業体に変えていくのか。あるいは日立などに集約していくのか、議論が進まない」、「東芝」だけに押し付けず、本来、国が前面に立ってリーダシップを取ってゆくべきだろう。 アゴラ 小幡 績氏による「東芝迷走の原因はメディアと有識者にある」 「経営陣および社員は・・・東芝と命運をともにするから、会社の長期的利益を最大化しようとする」、「潜在的な株主は・・・長期的な企業価値を大事にする」、しかし、「現在の株主の利益だけを考える取締役は、現在の株価を優先に考えるから、長期の企業価値を最大化しない可能性がある」、確かに問題だ。 「ファンドという大株主の代理人を取締役にするのは、もっともガバナンスが悪い会社なのである。 しかしこれを誰も指摘せず、いままで経営陣側がファンドという大株主の言うことを聞かないのがガバナンスの悪い会社だと批判してきた、有識者、メディア。 こんな無知どころか経済や企業を破壊する有識者とメディアがはびこっている国は、日本だけなのである」、確かに「有識者、メディア」による「批判」は真逆だ。どうしてこのようなことが起こるのだろう。恐らく、批判の対象としては、最も弱小な「東芝」を血祭にあげ、政府という巨悪には目をつ 東洋経済オンライン「東芝、再建策に影を落とす「取締役選任への異論」 ファンド推薦の候補者2人は賛同を得られるか」 やはり、第二の記事で問題にしたファンドが「スポンサー候補」になっているようだ。 「ファンドの考える時間軸は、島田社長が描く中長期の視点と合わない可能性が高い。選ぶスポンサーによっては、経営戦略の前提となる事業そのものが変わってしまう懸念もある」、当然だろう。 「外為法について、「バイヤー(買い手)がクリアするハードルだと考えている」と述べた。あくまでその問題をクリアした提案の中から、1つを「選ぶ」というスタンスだ」、「外為法」「の問題をクリア」する必要があるとは、難題が加わった形だ。 「東芝の取締役会はまさに内紛状態にある」、「経営方針の実践やスポンサー探しの話をするにも、まずは体制が安定する必要」、さて、「6月28日」の「株主総会」ではどうなるだろうか。