ウクライナ(その5)(旧ソ連地域研究知りすぎると“消される”…ロシア最大の民間軍事会社「ワグネル」のヤバい実態 事実上の「ロシア軍別動隊」、オリバー・ストーンの甘すぎるプーチンインタビューと その重すぎる代償、佐藤優が教える「第3次世界大戦の発端になる国の名前」 ロシアが「唯一、ロシアと戦争も辞さない国」と警戒、「我々はすでに第三次世界大戦に突入した」エマニュエル・トッドが指摘した世界戦争を激化させる“アメリカの無責任” 『第三次世界大戦はもう始まっている』 #2) [世界情勢]
昨日に続いて、ウクライナ(その5)(旧ソ連地域研究知りすぎると“消される”…ロシア最大の民間軍事会社「ワグネル」のヤバい実態 事実上の「ロシア軍別動隊」、オリバー・ストーンの甘すぎるプーチンインタビューと その重すぎる代償、佐藤優が教える「第3次世界大戦の発端になる国の名前」 ロシアが「唯一、ロシアと戦争も辞さない国」と警戒、「我々はすでに第三次世界大戦に突入した」エマニュエル・トッドが指摘した世界戦争を激化させる“アメリカの無責任” 『第三次世界大戦はもう始まっている』 #2)を取上げよう。
先ずは、5月6日付け現代ビジネスが掲載した慶應義塾大学教授(国際政治)の廣瀬 陽子氏による「旧ソ連地域研究知りすぎると“消される”…ロシア最大の民間軍事会社「ワグネル」のヤバい実態 事実上の「ロシア軍別動隊」」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/94952
・『ウクライナをはじめ、世界各地でロシアの軍事作戦に従事しているといわれる「民間軍事会社」(PMC)。中でも最大規模を誇るのが、プーチンの側近であるエブゲニー・プリゴジンが出資する「ワグネル」だ。【前編】『「プーチンの側近」がオーナーを務める軍事会社「ワグネル」の知られざる現実』に引き続き、プーチンの国家戦略を分析した書籍『ハイブリッド戦争』から同社の実態を詳しく紹介しよう』、「軍事会社」は米英の専売特許と思っていたら、「ロシア」も活用しているとは驚かされた。
・『実態は国営の軍事会社 ワグネルは、ロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)と緊密な関係にあるとされている。小泉悠(注)は、GRUが民間企業を装って設立した事実上の「ロシア軍別働隊」であるとし、コントラクターの募集、訓練、実際の軍事作戦に至るまで、すべて、GRUの指揮下でおこなわれていると見られると述べる。 ワグネルの訓練キャンプはロシア南部クラスノダール州のモリキノに設置されているといわれるが、そのキャンプもGRU第10特殊作戦旅団のすぐ隣にあり、射撃訓練場などは共有されているという。元コントラクターの話によれば、戦地に派遣されるワグネルの部隊はGRUの特殊作戦部隊にほぼ準拠した編制を採用し、シリアでは戦車や火砲さえ与えられていたという。 つまり、実態としては、ほとんど「国営」軍事会社であり、「民間」に偽装した軍隊ともいえるのである。 そして、オーナーのプリゴジンもクレムリンから支持を得ていることから、ワグネルがロシア政府ときわめて緊密な関係を維持しているのはまちがいない。なお、ウトキンもクレムリンのレセプションに招待されており、プーチンとの直接の関係もあるという見方が有力だ。また、ロシア連邦軍の総参謀本部の一般情報機関(GIA)の特別任務旅団に指定されているとも言われている。 プリゴジンは、前述のようにプーチンや軍からの信頼もあり、ロシア版PMCの設立を任されたが、彼は当初、その役目を積極的に引き受けたわけではなく、その危険性やどれだけの儲けがあるのかについて、かなり真剣に悩んでいたという。しかし、プーチンの意向には逆らえず、出資を引き受けたと言われている。 だが、プリゴジンはボランティア的に資金提供をしているわけではなく、それ以上の大きな見返りを受けているという。例えば、ISISから奪還したシリア東部の油田開発の権利やアフリカの資源開発の権利などを得ているとされる。特にシリアの油田開発権はきわめて魅力的なものだったと言われており、プリゴジンにとってワグネルは美味しいドル箱なのが実情だ。 なお、ワグネル創設者のウトキンもプリゴジンのコンコルド・マネジメントのディレクターであり、また、2016年11月には、ウトキンがプリゴジンのケータリングビジネスのCEOに就任していることも明らかになっている。 さらに、ワグネルの海外での活動については、GRUからの支援や調整を受けているとも言われる。そのため、ワグネルはGRUの傭兵部隊だという理解もなされている。なお、プリゴジンの活動には、ロシア企業のみならず、香港の企業も融資をおこなっているとされ、ワグネルのバックグラウンドは相当複雑であると言ってよい』、「プーチンの意向には逆らえず、出資を引き受けた」、設立には「プーチン」の「意向」が強かったようだ。「シリアの油田開発権はきわめて魅力的なものだったと言われており、プリゴジンにとってワグネルは美味しいドル箱なのが実情だ」、こんな余禄もあるようだ。
・『調べていたジャーナリストが… ワグネルの活動は闇に包まれており、その詳細を確かめようとすれば「消される」可能性も高い。 2018年7月30日に中央アフリカ共和国で3人のジャーナリストが移動中に殺害されたが、その3人は、反プーチン派の元実業家であるミハイル・ホドルコフスキーが創設した調査機関「調査管理センター」(ICC)の依頼で、ワグネルの調査をおこなっていたという。) そのため、彼らはワグネルないし、ロシア軍当局関係者によって暗殺されたと考えられている(ただし、ロシアメディアはプーチンに配慮し、強盗説や地元ゲリラ説を主張。ロシア外務省も死亡したジャーナリストが公的な認可なしに現地に赴いていたことを強調)。 じつは、ロシアは17年10月に中央アフリカ共和国大統領との協力を開始し、18年2月には中央アフリカ共和国の国軍に軍事顧問や大統領警備要員など180人を派遣していたが、それに関連してワグネルの人員も投入されていたという疑惑があるのだ(注2)。 暗殺には、ワグネルのことを調べるなという警告の意味もあるのかもしれない。ワグネルを調べていた記者が奇妙な死に方をしている他の事例もある。 そういうわけで、ワグネルの本質というのはなかなか見えてこないのであるが、現状で、ワグネルが確実に関わっている事案は最低でも、 (1)ウクライナ紛争における親露派への支援 (2)シリア内戦におけるバッシャール・アサド政権への支援 (3)スーダンにおけるオマル・アル = バシール政権への支援 (4)2014年リビア内戦におけるハリファ・ハフタルへの支援 (5)中央アフリカ共和国の内戦における政府支援 (6)ベネズエラにおけるニコラス・マドゥロ政権への支援 という6事案があるとされている。 もはや戦争は、戦場だけで行われるものではなくなった。サイバー攻撃やプロパガンダなどに姿かたちを変えて、当事国だけでなく世界中に波及している。現地から遠く離れた日本にいるからこそ知っておくべき「ロシアの狡猾な戦略」を分析した講談社現代新書『ハイブリッド戦争』は、全国の書店・ネット書店にて好評発売中!』、「ワグネルが確実に関わっている事案」「6事案」、をみるとかなり幅広いようだ。これからも注目していきたい。
次に、5月23日付けNewsweek日本版が掲載した石戸 諭氏による「オリバー・ストーンの甘すぎるプーチンインタビューと、その重すぎる代償」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/ishido/2022/05/post-27_1.php
・『<映画監督のオリバー・ストーンがロシアのプーチン大統領にインタビューした映像作品がウクライナ侵攻後、広く見られている。これはその書き起こし版だが、目立つのはやたらとストーンがプーチンに寄り添う危うい姿勢だ> 今回のダメ本 『オリバー・ストーン オン プーチン』オリバー・ストーン[著]土方奈美[訳]文藝春秋(2018年1月15日) インタビューをどのようにアウトプットするか。相手の言い分に寄り添うだけなら、インタビュアーの仕事はほとんどのケースで意味を持たなくなる。言葉を引き出すのではなく、垂れ流すだけになるからだ。だからといって、厳しい言葉ばかりを投げ付ける見せ掛けだけの追及も意味がない。多くの場合、追及する側が自分の言葉に酔ってしまい、問題の本質から遠のいていく。インタビューは常にバランスの上に成り立ち、得た言葉を作品に落とし込む際にはさらに慎重なさじ加減が求められる。 本書では、著名な映画監督であるオリバー・ストーンがプーチンに試みたインタビューが一問一答形式で再現されている。生い立ちから始まり、大統領の座に就いてからの興味深い記述もある。 「ソ連崩壊にともなう最も重要な問題は、ソ連崩壊によって二五〇〇万人のロシア人が瞬きするほどのあいだに異国民となってしまったことだ。気がつけば別の国になっていた。これは二〇世紀最大の悲劇の一つだ」 「答えは非常に単純だ。この地域におけるアメリカの外交政策の基本は、ウクライナがロシアと協力するのを何としても阻止することだと私は確信している。両国の再接近を脅威ととらえているからだ」 いずれもプーチン自身の言葉だ。今回のウクライナ侵攻の背景を読み解く上でも極めて重要な視座を提供していること。これ自体は疑いようがない。だが、プーチンを相手にしたオリバー・ストーンは明らかにバランス感覚を失っている。 これは2015〜17年という時期に取材したことによる時代の制約があったからではない。ロシアはウクライナに攻め入っている。 理由は明白だ。彼はプーチンと自身の間にある共通点を見つけ出し、そこからプーチンという人間を理解しようと試みた。彼のアプローチそのものは良い悪いで判断するものではないが、今回は過剰な同調として作用してしまった。理解の鍵が、インタビュー冒頭のように家庭環境ならばまだ良かった。だが、インタビューを続けているうちに、オリバー・ストーンがアメリカの政治に向ける批判的な姿勢、イデオロギーとプーチンのアメリカへの猜疑心や恐怖心がきれいに重なってくる。結果的に20時間にわたる貴重なインタビューは、プーチンが見せたい「プーチン像」、プーチンが「アメリカに言いたいこと」を記録しただけ。そんな印象ばかりが残る1冊になった』、私も「ウクライナ侵攻」前に番組を観たが、今から思えば「プーチン」の言い分がしっかり入っていたようだ。
・『「あきれるほど寛容」という米メディアの酷評 興味深いのは訳者が記しているように、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポスト、CNNといったメディアからは「あきれるほど寛容」、「ストーンは甘い球を投げつづけ、プーチンがそれを粛々と打ち返すだけ」という厳しい批判が出ていることだ。多くのジャーナリストは同じような感想を抱くだろう。オリバー・ストーンの対象に寄り添う危うさはそれほど明白なのだ。 言葉を引き出すため、インタビューである程度の同調はあってもいい。だが、本や作品に落とし込む時点では、距離を取る必要があった。特に強大な権力者を相手にするときは。本書の失敗から得られる教訓は、あまりにも凡庸なものしかない』、「「あきれるほど寛容」、「ストーンは甘い球を投げつづけ、プーチンがそれを粛々と打ち返すだけ」という厳しい批判が出ている」、同感である。
第三に、5月25日付けPRESIDENT Originalが掲載した作家・元外務省主任分析官の佐藤 優氏による「佐藤優が教える「第3次世界大戦の発端になる国の名前」 ロシアが「唯一、ロシアと戦争も辞さない国」と警戒」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/57922
・『ロシア周辺の国々の動きが活発になってきた。フィンランド、スウェーデンはNATO加盟を、モルドバはEU加盟を申請。ポーランドはNATO諸国がウクライナに武器を供給する重要な拠点となり、ウクライナと共同で税関や鉄道会社の設立・運営を目指す。元外交官で作家の佐藤優氏が明かす、ロシアがもっとも警戒している国とは――(連載第10回)』、興味深そうだ。
・『フィンランド、スウェーデンがNATO加盟申請を正式に表明 ロシアがウクライナへ攻め込んで3カ月。戦争の長期化が確実視されるにつれ、周辺の国々の動きが活発になってきました。そのひとつが、北欧のフィンランドとスウェーデンが北大西洋条約機構(NATO)への加盟申請を表明したことです。 先ごろ初来日したフィンランドのサンナ・マリン首相は、苦学して27歳で市議会議員になりました。2019年に首相に就任したとき、34歳の若さ。連立を組んだ5党のうち3党の党首が30代の女性で、19人の閣僚のうち12人が女性でした。 1917年にロシアから独立したフィンランドは、第2次大戦で領土の一部をソ連に奪われましたが、1948年にはロシアとの間に友好協力相互援助条約を締結しています。 公共放送「フィンランド放送協会」が5月9日に発表した世論調査の結果によると、NATO加盟支持が76%に達したとのことです。かつては20~30%にとどまっていたのですが、ロシアがウクライナに侵攻した直後の3月の調査では60%まで上昇し、さらに上がったというのです。 フィンランドとロシアの国境は、1300キロメートルに及びます。加盟が承認されれば、NATOとロシアの境界線は現在の2倍に延びます』、「ウクライナ侵攻」で中立国だった「フィンランド」「スウェーデン」をNATO側に追いやったのは「ロシア」には手痛いダメージだ。
・『フィンランドとスウェーデンがNATOに加盟しても、大きな変化はない 一方のスウェーデンは軍事中立を伝統としており、ナポレオン戦争を最後に、二度の世界大戦を含めて200年も戦争をしていない国です。両国ともEUには95年に加盟していますが、NATOには加盟せず、安全保障面の中立を維持してきました。平たく言えば、ロシアを刺激するのが怖かったせいです。今回の加盟申請は、ロシアと欧米の間で緊張が高まっている中、自国のカネと力だけで防衛するより安心で安上りだという計算でもありますし、ロシアとの貿易が減少し、関係が疎遠になってきた結果でもあります。 しかしNATOの新規加盟には、全加盟国の賛成が必要です。ストルテンベルグ事務総長は歓迎する声明を出したものの、トルコのエルドアン大統領は「前向きには考えていない」と語りました。トルコがテロ組織と見なす反政府武装組織「クルド労働者党」や「人民防衛部隊」が北欧を拠点に活動している、というのが理由です。 ただ、トルコを説得してフィンランド、スウェーデンがNATOに加盟したとしても、差し当たって大きな変化はないでしょう。なぜなら、スウェーデンとフィンランドに米軍が常駐する巨大基地が建設され、核兵器が配備される可能性は低いとロシアが考えているからです。対してウクライナがNATOに加盟すれば直ちに基地が米軍に提供され、核配備がなされるとプーチン大統領を含むロシアの政治・軍事エリートは考えています』、「スウェーデンとフィンランドに米軍が常駐する巨大基地が建設され、核兵器が配備される可能性は低いとロシアが考えているからです。対してウクライナがNATOに加盟すれば直ちに基地が米軍に提供され、核配備がなされるとプーチン大統領を含むロシアの政治・軍事エリートは考えています」、「スウェーデンとフィンランド」と「ウクライナ」では、「NATO加盟」の影響がここまで違うとは驚かされた。
・『深刻な危機感を持つモルドバ ウクライナの西隣に位置するモルドバも、深刻な危機感を抱いています。親欧米路線で、「鉄の女」と呼ばれる50歳のマイア・サンドゥ大統領は、2020年に就任しました。モルドバは欧州の最貧国の一つと言われ、人口が約260万人の小さな国ですが、親ロシア派と親西欧派の綱引きが絶えません。今年3月にEUへの加盟を申請したため、ロシアの反感を買っています。 モルドバの東側を流れるドニエストル川沿いには、ロシア人とウクライナ人が古くから住んでいます。ここではモルドバ人(ルーマニア人とほぼ同じ)という共通の敵がいるので、ロシア人とウクライナ人はまとまっています。 1991年に「沿ドニエストル共和国」という未承認国家を作り、ロシア軍が平和維持軍の名で駐留しています。ドネツクとルハンスクの「共和国」と同じ形です。ウクライナの黒海沿岸の都市オデーサを占領し、この沿ドニエストル共和国とつなげてしまうのが、ロシアの狙いです』、「ロシア」はかなり広範囲な再編成を考えているようだ。
・『米ロはメディアを通してメッセージを送り合うありさまだった 戦争が始まって以来、私がずっと危惧していたのは、アメリカとロシアの間で対話が途絶えていることでした。しかし5月13日、アメリカのオースティン国防長官とロシアのショイグ国防相が電話会談を行いました。アメリカの呼びかけにロシアが応じて、1時間ほどの話し合いが実施されたということです。 停戦に向けた進展はなかったとされていますが、対話の窓口は常に開けておくことが大切です。外交チャネルがあれば、直接電話をかけたり、大使館を通した外交のやり取りができます。また両国に対話を継続する意思があれば、CIAとSVR(ロシア対外情報庁)が、水面下で連絡を取り合うこともできます。 しかしこの電話会談前の両国は、メディアを通してメッセージを送り合うありさまでした。アメリカは報道官が記者会見を行い、その様子がロシアで報道されて、クレムリンに伝わる。それを受けて高官がロシアのテレビ番組に出て、返事をする。これでは内密なやり取りができず、誤解も生じかねません。 ロシアの政府系テレビ「第1チャンネル」が放送している政治解説番組『グレートゲーム』にラブロフ外相が出演したのは、4月25日です。ラブロフ外相がテレビで1時間も話をするのは、異例のことです。 私はこの番組を観ていましたが、ラブロフ外相は、核戦争を起こさないことがロシアの基本的な立場だとして、ウクライナでの軍事作戦が核兵器使用に結びつかないようにしなければならないと語りました。そして、現状は1962年のキューバ危機よりも緊張していると述べたのです。 キューバ危機の時期には、「文書化された」ルールは多くなかった。しかし、行動上ルールは十分明確だった。モスクワはワシントンがどう行動するかを理解していた。ワシントンもモスクワがどういう振る舞いをするかを理解していた。現在はルールがほとんど残っていない。 そのあと、前述したオースティン国防長官とショイグ国防相の電話会談が実現したので、この時点での緊張は少し緩和されたといえるでしょう』、「ラブロフ外相」「発言」は、核兵器の使用で恫喝したとの見方も可能だ。
・『「問題はポーランド」とロシアが警戒 ただしラブロフ外相は、第3次世界大戦について、次のように言及しました。 全ての人が、いかなる場合においても第3次世界大戦を起こしてはいけないと「呪文」を唱える。この文脈でゼレンスキー・ウクライナ大統領とそのチームによる挑発について検討しなくてはならない。 この人たちは、ウクライナの政権を守るためにNATO軍のほとんどを投入することを要求している。そして、いつもキーウに武器をよこすようにと言っている。これが「火に油を注ぐ」ことになる。 この人たちは、武器の供給によって、紛争をできるだけ長引かせ、ウクライナの最後の一兵までロシアと戦わせ、少しでも多くロシアに犠牲が生じることを望んでいる。武器を供給し、この方向でプロパガンダを展開する(ポーランドを除く)全ての指導者は、NATO軍を派遣することはないと述べている。 ワルシャワは、モラビエツキ首相の口を通じてウクライナに「平和維持軍」なるものを提案しており、平和維持軍の旗の下で軍人の派遣に関心を持っている。 ラブロフ外相が強調したのは、アメリカもNATOもロシアも、戦争はしたくないと思っている。問題はポーランドだ、という点です』、「ワルシャワは、モラビエツキ首相の口を通じてウクライナに「平和維持軍」なるものを提案しており、平和維持軍の旗の下で軍人の派遣に関心を持っている」、「ロシア」が警戒する訳だ。
・『分割占領され、123年間も地図から消えた ポーランドは3月半ばに、ウクライナに平和維持部隊を派遣するようNATO加盟国に要請する意向を明らかにしています。アメリカやNATO本部はウクライナ派兵を完全に否定している中での提案であり、ポーランドは急進的です。 歴史を振り返ると、ポーランドは18世紀末、帝政ロシア、プロイセン、オーストリアによって分割され、123年間にわたり地図から消滅。第1次世界大戦後に独立を回復しますが、第2次次世界大戦時にはソ連とドイツから侵攻され、再び分割占領されました。その苦い経験からロシアの脅威を強く感じるからこそ、断固たる対応を取りたいと考えているのだと思いますが、ことはそれだけにはとどまらない可能性があります。 3日後の4月28日、今度はSVRが注目すべき声明を発表しました。 ロシア対外諜報庁長官のC・V・ナルイシキンは次の通り述べた。 ロシア対外諜報庁が入手した情報によると、ワシントンとワルシャワはウクライナにおける「歴史的領有」に関し、ポーランドの軍事・政治的統制を確立する計画を検討している。 「統合」の第一段階として、「ロシアの侵略から防衛する」ためというスローガンの下でウクライナの西部諸州にポーランド軍を進駐させることになる。現時点でジョー・バイデン米政権と今後の作業の態様について議論している。 暫定的合意によれば、ポーランドはNATOの委任ではなく「有志国」の参加によって行動することになる。ポーランドが有志国を募って、独自の判断でウクライナに平和維持部隊(軍隊)を派遣するという計画だ。 SVRがインテリジェンス情報を公表するのも、異例なことです。ウクライナ西部のガリツィア地方は歴史的にポーランド領ですから、SVRは、ポーランドの狙いはウクライナ支援にとどまらず、第2次世界大戦で失った領土を回復することだと捉えているのです』、「SVRは、ポーランドの狙いはウクライナ支援にとどまらず、第2次世界大戦で失った領土を回復することだと捉えているのです」、ポーランドの真意はそうなのかも知れない。
・『ポーランドが「平和維持軍」を派兵すれば、第3次世界大戦に いわゆる平和維持部隊は、ロシア軍と直接衝突する危険が最も少ないウクライナの地域に配置することを計画している。さらにポーランド軍がウクライナ軍よりも配置されている戦略的対象に対する統制を段階的に凌駕していくことを優先的「戦闘目標」にしている。ポーランドの特務機関は、既に現時点で(ウクライナ)ナショナリズムに対抗する民主的「ワルシャワ」を志向する「合意する能力のある」ウクライナ・エリートの代表者を探している。ポーランド当局の計算では、ウクライナ西部における予防的進駐はかなりの確率で国家分裂をもたらす。その際、ワルシャワは「ポーランド平和維持部隊」が駐留している地域に対する実質的な統治権を得る。 ポーランドが「平和維持軍」の名目でウクライナに派兵すれば、ロシアは敵対行動と見なしてポーランドを攻撃する。それが第3次世界大戦に発展するというラブロフ外相の警告は、決して脅しとは思えません』、「ポーランドが「平和維持軍」の名目でウクライナに派兵すれば、ロシアは敵対行動と見なしてポーランドを攻撃する。それが第3次世界大戦に発展するというラブロフ外相の警告は、決して脅しとは思えません」、確かに危険な行動だ。
・『リトアニア、ハンガリー、ポーランド…立ち位置の違う周辺国 4月27日の本連載で、リトアニアが危ないという話をしました。リトアニアとポーランドに囲まれたロシアの飛び地の領土カリーニングラードの国境を、リトアニアが封鎖しようとする動きがあったからです。しかしロシアからの警告が効いたようで、封鎖は行われていません。戦争拡大の発端になりそうな場所は、ポーランドに移ったといえます。 戦争から距離を置く判断をしたのが、ハンガリーです。4月3日の総選挙で与党を勝利させたオルバン首相は、ウクライナへの軍事支援はしないことを表明しています。ロシアからの天然ガス輸入は止めず、ロシアが要求するルーブル払いにも応じています。EU欧州委員会が決めたロシア産石油の輸入禁止についても、明確に反対する立場です。 ロシアの国営エネルギー大手「ガスプロム」は、ポーランドを通る「ヤマルパイプライン」を経由した天然ガスの供給を停止すると発表しました。緊張が高まる東欧で、ポーランド情勢から目が離せなくなってきました。逆にハンガリーは、安全な場所だといえます。ロシアの侵攻が始まって以来、EU諸国の結束は固まったように報じられていますが、足並みはそろっていないのが現状です』、「ハンガリー」「オルバン首相は、ウクライナへの軍事支援はしないことを表明・・・。ロシアからの天然ガス輸入は止めず、ロシアが要求するルーブル払いにも応じています。EU欧州委員会が決めたロシア産石油の輸入禁止についても、明確に反対する立場」、確かに「EU諸国の」「足並みはそろってないのが現状です」、なるほど。
第四に、6月21日付け文春オンラインが掲載したフランスの歴史人口学者・人類学者のエマニュエル トッド氏による「「我々はすでに第三次世界大戦に突入した」エマニュエル・トッドが指摘した世界戦争を激化させる“アメリカの無責任” 『第三次世界大戦はもう始まっている』 #2」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/55108
・『当初は、ローカルな問題に留まるはずだったウクライナ問題はなぜ国際秩序に大混乱を招くグローバルな問題に発展したのか? ウクライナ問題に関わる大国たちの思惑を、仏の歴史人口学者、エマニュエル・トッド氏の新刊『第三次世界大戦はもう始まっている』より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)』、「第三次世界大戦はもう始まっている」とは刺激的だ。
・『ウクライナは「NATOの“事実上”の加盟国」 ウクライナ問題は、元来は、ソ連崩壊後の国境の修正という「ローカルな問題」でした。1991年当時、ロシアがソ連解体を平和裏に受け入れたことに世界は驚いたわけですが、ロシアからすれば、1990年代前半に行なうべきだった国境の修正をいま試みている、とも言えるでしょう。 しかしこの問題は、初めから「グローバルな問題」としてもありました。 アメリカの地政学的思考を代表するポーランド出身のズビグネフ・ブレジンスキーは、「ウクライナなしではロシアは帝国にはなれない」と述べています(The Grand Chessboard、邦訳『地政学で世界を読む──21世紀のユーラシア覇権ゲーム』日経ビジネス人文庫)。アメリカに対抗しうる帝国となるのを防ぐには、ウクライナをロシアから引き離せばよい、と。 そして実際、アメリカは、こうした戦略に基づいて、ウクライナを「武装化」して「NATOの“事実上”の加盟国」としたわけです。つまり、こうしたアメリカの政策こそが、本来、「ローカルな問題」に留まるはずだったウクライナ問題を「グローバル化=世界戦争化」してしまったのです。 いま人々は「世界は第三次世界大戦に向かっている」と話していますが、「我々はすでに第三次世界大戦に突入した」と私は見ています。 ウクライナ軍は、アメリカとイギリスの指導と訓練によって再組織化され、歩兵に加えて、対戦車砲や対空砲も備えています。とくにアメリカの軍事衛星による支援が、ウクライナ軍の抵抗に決定的に寄与しています。 その意味で、ロシアとアメリカの間の軍事的衝突は、すでに始まっているのです。ただ、アメリカは、自国民の死者を出したくないだけです』、「ブレジンスキーは、「ウクライナなしではロシアは帝国にはなれない」と述べています」、「実際、アメリカは、こうした戦略に基づいて、ウクライナを「武装化」して「NATOの“事実上”の加盟国」としたわけです。つまり、こうしたアメリカの政策こそが、本来、「ローカルな問題」に留まるはずだったウクライナ問題を「グローバル化=世界戦争化」してしまったのです」、極めて新鮮で面白い見方だ。
・『「20世紀最大の地政学的大惨事」 ロシアは、ある意味でエレガントな形で、共産主義体制から抜け出しました。人類史上最も強固な全体主義体制をみずからの手で打倒したのです。これは、ゴルバチョフの偉大な功績です。 そして東欧の衛星国の独立を受け入れ、さらにはソ連の解体さえも受け入れました。 バルト諸国、カフカスならびに中央アジアの諸共和国が独立を果たすことを平和裏に受け入れたのです。 それだけではありません。「広義のロシア」すなわち「スラヴ」の核心部は、ロシア(大ロシア)、ベラルーシ(白ロシア)、ウクライナ(小ロシア)からなりますが、ベラルーシとウクライナの分離独立、すなわち「広義のロシア」の核心部が分裂することまで受け入れたのです。 ちなみにソ連邦が成立した1922年以前に、ウクライナも、ベラルーシも「国家」として存在したことは一度もありません。「ソ連崩壊」は、「共産主義体制の終焉」と「(ソ連という)国家の解体」という二重の意味をもっていましたが、ソ連崩壊直後の「無政府状態」によって、ソ連時代に人工的につくられた国境がそのまま尊重される結果となったのです。プーチンが、ソ連崩壊を20世紀最大の地政学的大惨事」と呼ぶのは、この意味に他なりません。 ロシアによるクリミア編入も、ウクライナにおけるロシア系住民の自律性獲得のための支援(ドンバス地方における親露派の実効支配の支援)も、「人民自決権」という伝統的な考え方に照らせば、それなりの正当性をもっています。しかし西側諸国においては、「とんでもなく忌まわしいこと」とみなされているのです』、「ロシアによるクリミア編入も、ウクライナにおけるロシア系住民の自律性獲得のための支援(ドンバス地方における親露派の実効支配の支援)も、「人民自決権」という伝統的な考え方に照らせば、それなりの正当性をもっています。しかし西側諸国においては、「とんでもなく忌まわしいこと」とみなされているのです」、確かに「ロシア」の見方と「西側諸国」の見方には大きな断絶があるようだ。
・『冷戦後の米露関係 冷戦後のロシアは、「西側との共存」を目指しました。けれども、ロシア人はすぐに裏切られたのです。 ソ連崩壊後、欧米はロシアに新自由主義者の助言者を送り込みました。1990年から1997年までの間、アメリカ人顧問の助けを借りて経済自由化の乱暴な企てが推進されましたが、ロシアの経済と国家を破綻させただけでした。彼らが間違った助言を行なったことで、ロシアがプーチン主導で経済的に立ち直るのに、多大な努力が必要となったのです。 さらにアメリカは「NATOは東方に拡大しない」と言っていたのに、実際は、可能なかぎり戦略的な優位を保って、結局、ロシアを軍事的にも囲い込んでしまいました。誰もがロシアを責めますが、アメリカと同盟国の軍事基地のネットワークを見れば一目瞭然であるように、囲い込まれているのは西側ではなく、ロシアの方です。軍事的緊張を高めてきたのは、ロシアではなくNATOの方だったのです』、「新自由主義者の助言者を送り込みました・・・ロシアの経済と国家を破綻させただけ」、「「NATOは東方に拡大しない」と言っていたのに、実際は、可能なかぎり戦略的な優位を保って、結局、ロシアを軍事的にも囲い込んでしまいました」、その通りだ。
・『戦争前の各国の思惑 「今回の戦争がなぜ始まったか」を理解するには、まず戦争前の各国の思惑を理解する必要があります。 アメリカの目的は、ウクライナをNATOの事実上の加盟国とし、ロシアをアメリカには対抗できない従属的な地位に追いやることでした。 それに対してロシアの目的は、アメリカの目論見を阻止し、アメリカに対抗しうる大国としての地位を維持することでした。 ロシアは、人口規模は日本と同程度ですが、アメリカに対抗しうる勢力であり続けようとしたわけです。だからこそ、アメリカによるウクライナの「武装化」がこれ以上進むことを恐れ、ロシアは侵攻を決断したのです。 今の状況は、「強いロシアが弱いウクライナを攻撃している」と見ることができますが、地政学的により大きく捉えれば、「弱いロシアが強いアメリカを攻撃している」と見ることもできます』、「地政学的により大きく捉えれば、「弱いロシアが強いアメリカを攻撃している」と見ることもできます」、確かにその通りだ。
・『超大国は1つだけより2つ以上ある方がいい ちなみに、1つの国家、1つの帝国が、誰もブレーキをかけられない状態で世界全体に絶対的な支配力を及ぼすのが、よいことであるはずはありません。超大国は、たった1つしかない状態よりも、2つ以上ある方が、世界の均衡はとれるのです。 要するに、冷戦の勝利に酔うアメリカが「全世界の支配者」として君臨するのを阻止できる唯一の存在は、ロシアだったのです。2003年、イラクに対してアメリカが独善的に行動した時も、“西側の自由な空間の保全”に貢献したのはロシアでした。スノーデンをあえて迎え入れることで、結果的に“西洋の市民の自由の擁護”に貢献したのも、ロシアです。そのことに我々は感謝すべきなのです。 そもそも第二次世界大戦時に、みずから多大な犠牲を払ってドイツ国防軍を打ち破り、アメリカ・イギリス・カナダの連合軍による「フランス解放」を可能にしてくれたのも、ソ連でした。ソ連は、2000万人以上の犠牲者を出しながら、ナチスドイツの悪夢からヨーロッパを解放するのに、ある意味でアメリカ以上に貢献したのです。ところが、冷戦後の西側は、その歴史をすっかり忘却してしまったかのような振る舞いをロシアに対してしてきました。 それどころか、ロシアが回復に向かうにつれて、「ロシア嫌い(ロシア恐怖症)」の感情は、弱まるのではなく、いっそう強まりました。プーチン率いるロシアの権威的民主主義体制が、それ自体として憎しみの対象になってしまったのです。西側諸国における「歴史の忘却」や「地政学的な無思慮」以上に、唖然とせざるを得ないのは、この「ロシア嫌い」の高まりです』、「西側諸国における「歴史の忘却」や「地政学的な無思慮」以上に、唖然とせざるを得ないのは、この「ロシア嫌い」の高まりです」、ある程度はその通りだ。しかし、「ロシア」側にも「ウクライナ侵攻問題」では「嫌われる」要素が多くあったことも事実だ。トッド氏の見方は「ロシア」に甘過ぎる印象だ。
先ずは、5月6日付け現代ビジネスが掲載した慶應義塾大学教授(国際政治)の廣瀬 陽子氏による「旧ソ連地域研究知りすぎると“消される”…ロシア最大の民間軍事会社「ワグネル」のヤバい実態 事実上の「ロシア軍別動隊」」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/94952
・『ウクライナをはじめ、世界各地でロシアの軍事作戦に従事しているといわれる「民間軍事会社」(PMC)。中でも最大規模を誇るのが、プーチンの側近であるエブゲニー・プリゴジンが出資する「ワグネル」だ。【前編】『「プーチンの側近」がオーナーを務める軍事会社「ワグネル」の知られざる現実』に引き続き、プーチンの国家戦略を分析した書籍『ハイブリッド戦争』から同社の実態を詳しく紹介しよう』、「軍事会社」は米英の専売特許と思っていたら、「ロシア」も活用しているとは驚かされた。
・『実態は国営の軍事会社 ワグネルは、ロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)と緊密な関係にあるとされている。小泉悠(注)は、GRUが民間企業を装って設立した事実上の「ロシア軍別働隊」であるとし、コントラクターの募集、訓練、実際の軍事作戦に至るまで、すべて、GRUの指揮下でおこなわれていると見られると述べる。 ワグネルの訓練キャンプはロシア南部クラスノダール州のモリキノに設置されているといわれるが、そのキャンプもGRU第10特殊作戦旅団のすぐ隣にあり、射撃訓練場などは共有されているという。元コントラクターの話によれば、戦地に派遣されるワグネルの部隊はGRUの特殊作戦部隊にほぼ準拠した編制を採用し、シリアでは戦車や火砲さえ与えられていたという。 つまり、実態としては、ほとんど「国営」軍事会社であり、「民間」に偽装した軍隊ともいえるのである。 そして、オーナーのプリゴジンもクレムリンから支持を得ていることから、ワグネルがロシア政府ときわめて緊密な関係を維持しているのはまちがいない。なお、ウトキンもクレムリンのレセプションに招待されており、プーチンとの直接の関係もあるという見方が有力だ。また、ロシア連邦軍の総参謀本部の一般情報機関(GIA)の特別任務旅団に指定されているとも言われている。 プリゴジンは、前述のようにプーチンや軍からの信頼もあり、ロシア版PMCの設立を任されたが、彼は当初、その役目を積極的に引き受けたわけではなく、その危険性やどれだけの儲けがあるのかについて、かなり真剣に悩んでいたという。しかし、プーチンの意向には逆らえず、出資を引き受けたと言われている。 だが、プリゴジンはボランティア的に資金提供をしているわけではなく、それ以上の大きな見返りを受けているという。例えば、ISISから奪還したシリア東部の油田開発の権利やアフリカの資源開発の権利などを得ているとされる。特にシリアの油田開発権はきわめて魅力的なものだったと言われており、プリゴジンにとってワグネルは美味しいドル箱なのが実情だ。 なお、ワグネル創設者のウトキンもプリゴジンのコンコルド・マネジメントのディレクターであり、また、2016年11月には、ウトキンがプリゴジンのケータリングビジネスのCEOに就任していることも明らかになっている。 さらに、ワグネルの海外での活動については、GRUからの支援や調整を受けているとも言われる。そのため、ワグネルはGRUの傭兵部隊だという理解もなされている。なお、プリゴジンの活動には、ロシア企業のみならず、香港の企業も融資をおこなっているとされ、ワグネルのバックグラウンドは相当複雑であると言ってよい』、「プーチンの意向には逆らえず、出資を引き受けた」、設立には「プーチン」の「意向」が強かったようだ。「シリアの油田開発権はきわめて魅力的なものだったと言われており、プリゴジンにとってワグネルは美味しいドル箱なのが実情だ」、こんな余禄もあるようだ。
・『調べていたジャーナリストが… ワグネルの活動は闇に包まれており、その詳細を確かめようとすれば「消される」可能性も高い。 2018年7月30日に中央アフリカ共和国で3人のジャーナリストが移動中に殺害されたが、その3人は、反プーチン派の元実業家であるミハイル・ホドルコフスキーが創設した調査機関「調査管理センター」(ICC)の依頼で、ワグネルの調査をおこなっていたという。) そのため、彼らはワグネルないし、ロシア軍当局関係者によって暗殺されたと考えられている(ただし、ロシアメディアはプーチンに配慮し、強盗説や地元ゲリラ説を主張。ロシア外務省も死亡したジャーナリストが公的な認可なしに現地に赴いていたことを強調)。 じつは、ロシアは17年10月に中央アフリカ共和国大統領との協力を開始し、18年2月には中央アフリカ共和国の国軍に軍事顧問や大統領警備要員など180人を派遣していたが、それに関連してワグネルの人員も投入されていたという疑惑があるのだ(注2)。 暗殺には、ワグネルのことを調べるなという警告の意味もあるのかもしれない。ワグネルを調べていた記者が奇妙な死に方をしている他の事例もある。 そういうわけで、ワグネルの本質というのはなかなか見えてこないのであるが、現状で、ワグネルが確実に関わっている事案は最低でも、 (1)ウクライナ紛争における親露派への支援 (2)シリア内戦におけるバッシャール・アサド政権への支援 (3)スーダンにおけるオマル・アル = バシール政権への支援 (4)2014年リビア内戦におけるハリファ・ハフタルへの支援 (5)中央アフリカ共和国の内戦における政府支援 (6)ベネズエラにおけるニコラス・マドゥロ政権への支援 という6事案があるとされている。 もはや戦争は、戦場だけで行われるものではなくなった。サイバー攻撃やプロパガンダなどに姿かたちを変えて、当事国だけでなく世界中に波及している。現地から遠く離れた日本にいるからこそ知っておくべき「ロシアの狡猾な戦略」を分析した講談社現代新書『ハイブリッド戦争』は、全国の書店・ネット書店にて好評発売中!』、「ワグネルが確実に関わっている事案」「6事案」、をみるとかなり幅広いようだ。これからも注目していきたい。
次に、5月23日付けNewsweek日本版が掲載した石戸 諭氏による「オリバー・ストーンの甘すぎるプーチンインタビューと、その重すぎる代償」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/ishido/2022/05/post-27_1.php
・『<映画監督のオリバー・ストーンがロシアのプーチン大統領にインタビューした映像作品がウクライナ侵攻後、広く見られている。これはその書き起こし版だが、目立つのはやたらとストーンがプーチンに寄り添う危うい姿勢だ> 今回のダメ本 『オリバー・ストーン オン プーチン』オリバー・ストーン[著]土方奈美[訳]文藝春秋(2018年1月15日) インタビューをどのようにアウトプットするか。相手の言い分に寄り添うだけなら、インタビュアーの仕事はほとんどのケースで意味を持たなくなる。言葉を引き出すのではなく、垂れ流すだけになるからだ。だからといって、厳しい言葉ばかりを投げ付ける見せ掛けだけの追及も意味がない。多くの場合、追及する側が自分の言葉に酔ってしまい、問題の本質から遠のいていく。インタビューは常にバランスの上に成り立ち、得た言葉を作品に落とし込む際にはさらに慎重なさじ加減が求められる。 本書では、著名な映画監督であるオリバー・ストーンがプーチンに試みたインタビューが一問一答形式で再現されている。生い立ちから始まり、大統領の座に就いてからの興味深い記述もある。 「ソ連崩壊にともなう最も重要な問題は、ソ連崩壊によって二五〇〇万人のロシア人が瞬きするほどのあいだに異国民となってしまったことだ。気がつけば別の国になっていた。これは二〇世紀最大の悲劇の一つだ」 「答えは非常に単純だ。この地域におけるアメリカの外交政策の基本は、ウクライナがロシアと協力するのを何としても阻止することだと私は確信している。両国の再接近を脅威ととらえているからだ」 いずれもプーチン自身の言葉だ。今回のウクライナ侵攻の背景を読み解く上でも極めて重要な視座を提供していること。これ自体は疑いようがない。だが、プーチンを相手にしたオリバー・ストーンは明らかにバランス感覚を失っている。 これは2015〜17年という時期に取材したことによる時代の制約があったからではない。ロシアはウクライナに攻め入っている。 理由は明白だ。彼はプーチンと自身の間にある共通点を見つけ出し、そこからプーチンという人間を理解しようと試みた。彼のアプローチそのものは良い悪いで判断するものではないが、今回は過剰な同調として作用してしまった。理解の鍵が、インタビュー冒頭のように家庭環境ならばまだ良かった。だが、インタビューを続けているうちに、オリバー・ストーンがアメリカの政治に向ける批判的な姿勢、イデオロギーとプーチンのアメリカへの猜疑心や恐怖心がきれいに重なってくる。結果的に20時間にわたる貴重なインタビューは、プーチンが見せたい「プーチン像」、プーチンが「アメリカに言いたいこと」を記録しただけ。そんな印象ばかりが残る1冊になった』、私も「ウクライナ侵攻」前に番組を観たが、今から思えば「プーチン」の言い分がしっかり入っていたようだ。
・『「あきれるほど寛容」という米メディアの酷評 興味深いのは訳者が記しているように、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポスト、CNNといったメディアからは「あきれるほど寛容」、「ストーンは甘い球を投げつづけ、プーチンがそれを粛々と打ち返すだけ」という厳しい批判が出ていることだ。多くのジャーナリストは同じような感想を抱くだろう。オリバー・ストーンの対象に寄り添う危うさはそれほど明白なのだ。 言葉を引き出すため、インタビューである程度の同調はあってもいい。だが、本や作品に落とし込む時点では、距離を取る必要があった。特に強大な権力者を相手にするときは。本書の失敗から得られる教訓は、あまりにも凡庸なものしかない』、「「あきれるほど寛容」、「ストーンは甘い球を投げつづけ、プーチンがそれを粛々と打ち返すだけ」という厳しい批判が出ている」、同感である。
第三に、5月25日付けPRESIDENT Originalが掲載した作家・元外務省主任分析官の佐藤 優氏による「佐藤優が教える「第3次世界大戦の発端になる国の名前」 ロシアが「唯一、ロシアと戦争も辞さない国」と警戒」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/57922
・『ロシア周辺の国々の動きが活発になってきた。フィンランド、スウェーデンはNATO加盟を、モルドバはEU加盟を申請。ポーランドはNATO諸国がウクライナに武器を供給する重要な拠点となり、ウクライナと共同で税関や鉄道会社の設立・運営を目指す。元外交官で作家の佐藤優氏が明かす、ロシアがもっとも警戒している国とは――(連載第10回)』、興味深そうだ。
・『フィンランド、スウェーデンがNATO加盟申請を正式に表明 ロシアがウクライナへ攻め込んで3カ月。戦争の長期化が確実視されるにつれ、周辺の国々の動きが活発になってきました。そのひとつが、北欧のフィンランドとスウェーデンが北大西洋条約機構(NATO)への加盟申請を表明したことです。 先ごろ初来日したフィンランドのサンナ・マリン首相は、苦学して27歳で市議会議員になりました。2019年に首相に就任したとき、34歳の若さ。連立を組んだ5党のうち3党の党首が30代の女性で、19人の閣僚のうち12人が女性でした。 1917年にロシアから独立したフィンランドは、第2次大戦で領土の一部をソ連に奪われましたが、1948年にはロシアとの間に友好協力相互援助条約を締結しています。 公共放送「フィンランド放送協会」が5月9日に発表した世論調査の結果によると、NATO加盟支持が76%に達したとのことです。かつては20~30%にとどまっていたのですが、ロシアがウクライナに侵攻した直後の3月の調査では60%まで上昇し、さらに上がったというのです。 フィンランドとロシアの国境は、1300キロメートルに及びます。加盟が承認されれば、NATOとロシアの境界線は現在の2倍に延びます』、「ウクライナ侵攻」で中立国だった「フィンランド」「スウェーデン」をNATO側に追いやったのは「ロシア」には手痛いダメージだ。
・『フィンランドとスウェーデンがNATOに加盟しても、大きな変化はない 一方のスウェーデンは軍事中立を伝統としており、ナポレオン戦争を最後に、二度の世界大戦を含めて200年も戦争をしていない国です。両国ともEUには95年に加盟していますが、NATOには加盟せず、安全保障面の中立を維持してきました。平たく言えば、ロシアを刺激するのが怖かったせいです。今回の加盟申請は、ロシアと欧米の間で緊張が高まっている中、自国のカネと力だけで防衛するより安心で安上りだという計算でもありますし、ロシアとの貿易が減少し、関係が疎遠になってきた結果でもあります。 しかしNATOの新規加盟には、全加盟国の賛成が必要です。ストルテンベルグ事務総長は歓迎する声明を出したものの、トルコのエルドアン大統領は「前向きには考えていない」と語りました。トルコがテロ組織と見なす反政府武装組織「クルド労働者党」や「人民防衛部隊」が北欧を拠点に活動している、というのが理由です。 ただ、トルコを説得してフィンランド、スウェーデンがNATOに加盟したとしても、差し当たって大きな変化はないでしょう。なぜなら、スウェーデンとフィンランドに米軍が常駐する巨大基地が建設され、核兵器が配備される可能性は低いとロシアが考えているからです。対してウクライナがNATOに加盟すれば直ちに基地が米軍に提供され、核配備がなされるとプーチン大統領を含むロシアの政治・軍事エリートは考えています』、「スウェーデンとフィンランドに米軍が常駐する巨大基地が建設され、核兵器が配備される可能性は低いとロシアが考えているからです。対してウクライナがNATOに加盟すれば直ちに基地が米軍に提供され、核配備がなされるとプーチン大統領を含むロシアの政治・軍事エリートは考えています」、「スウェーデンとフィンランド」と「ウクライナ」では、「NATO加盟」の影響がここまで違うとは驚かされた。
・『深刻な危機感を持つモルドバ ウクライナの西隣に位置するモルドバも、深刻な危機感を抱いています。親欧米路線で、「鉄の女」と呼ばれる50歳のマイア・サンドゥ大統領は、2020年に就任しました。モルドバは欧州の最貧国の一つと言われ、人口が約260万人の小さな国ですが、親ロシア派と親西欧派の綱引きが絶えません。今年3月にEUへの加盟を申請したため、ロシアの反感を買っています。 モルドバの東側を流れるドニエストル川沿いには、ロシア人とウクライナ人が古くから住んでいます。ここではモルドバ人(ルーマニア人とほぼ同じ)という共通の敵がいるので、ロシア人とウクライナ人はまとまっています。 1991年に「沿ドニエストル共和国」という未承認国家を作り、ロシア軍が平和維持軍の名で駐留しています。ドネツクとルハンスクの「共和国」と同じ形です。ウクライナの黒海沿岸の都市オデーサを占領し、この沿ドニエストル共和国とつなげてしまうのが、ロシアの狙いです』、「ロシア」はかなり広範囲な再編成を考えているようだ。
・『米ロはメディアを通してメッセージを送り合うありさまだった 戦争が始まって以来、私がずっと危惧していたのは、アメリカとロシアの間で対話が途絶えていることでした。しかし5月13日、アメリカのオースティン国防長官とロシアのショイグ国防相が電話会談を行いました。アメリカの呼びかけにロシアが応じて、1時間ほどの話し合いが実施されたということです。 停戦に向けた進展はなかったとされていますが、対話の窓口は常に開けておくことが大切です。外交チャネルがあれば、直接電話をかけたり、大使館を通した外交のやり取りができます。また両国に対話を継続する意思があれば、CIAとSVR(ロシア対外情報庁)が、水面下で連絡を取り合うこともできます。 しかしこの電話会談前の両国は、メディアを通してメッセージを送り合うありさまでした。アメリカは報道官が記者会見を行い、その様子がロシアで報道されて、クレムリンに伝わる。それを受けて高官がロシアのテレビ番組に出て、返事をする。これでは内密なやり取りができず、誤解も生じかねません。 ロシアの政府系テレビ「第1チャンネル」が放送している政治解説番組『グレートゲーム』にラブロフ外相が出演したのは、4月25日です。ラブロフ外相がテレビで1時間も話をするのは、異例のことです。 私はこの番組を観ていましたが、ラブロフ外相は、核戦争を起こさないことがロシアの基本的な立場だとして、ウクライナでの軍事作戦が核兵器使用に結びつかないようにしなければならないと語りました。そして、現状は1962年のキューバ危機よりも緊張していると述べたのです。 キューバ危機の時期には、「文書化された」ルールは多くなかった。しかし、行動上ルールは十分明確だった。モスクワはワシントンがどう行動するかを理解していた。ワシントンもモスクワがどういう振る舞いをするかを理解していた。現在はルールがほとんど残っていない。 そのあと、前述したオースティン国防長官とショイグ国防相の電話会談が実現したので、この時点での緊張は少し緩和されたといえるでしょう』、「ラブロフ外相」「発言」は、核兵器の使用で恫喝したとの見方も可能だ。
・『「問題はポーランド」とロシアが警戒 ただしラブロフ外相は、第3次世界大戦について、次のように言及しました。 全ての人が、いかなる場合においても第3次世界大戦を起こしてはいけないと「呪文」を唱える。この文脈でゼレンスキー・ウクライナ大統領とそのチームによる挑発について検討しなくてはならない。 この人たちは、ウクライナの政権を守るためにNATO軍のほとんどを投入することを要求している。そして、いつもキーウに武器をよこすようにと言っている。これが「火に油を注ぐ」ことになる。 この人たちは、武器の供給によって、紛争をできるだけ長引かせ、ウクライナの最後の一兵までロシアと戦わせ、少しでも多くロシアに犠牲が生じることを望んでいる。武器を供給し、この方向でプロパガンダを展開する(ポーランドを除く)全ての指導者は、NATO軍を派遣することはないと述べている。 ワルシャワは、モラビエツキ首相の口を通じてウクライナに「平和維持軍」なるものを提案しており、平和維持軍の旗の下で軍人の派遣に関心を持っている。 ラブロフ外相が強調したのは、アメリカもNATOもロシアも、戦争はしたくないと思っている。問題はポーランドだ、という点です』、「ワルシャワは、モラビエツキ首相の口を通じてウクライナに「平和維持軍」なるものを提案しており、平和維持軍の旗の下で軍人の派遣に関心を持っている」、「ロシア」が警戒する訳だ。
・『分割占領され、123年間も地図から消えた ポーランドは3月半ばに、ウクライナに平和維持部隊を派遣するようNATO加盟国に要請する意向を明らかにしています。アメリカやNATO本部はウクライナ派兵を完全に否定している中での提案であり、ポーランドは急進的です。 歴史を振り返ると、ポーランドは18世紀末、帝政ロシア、プロイセン、オーストリアによって分割され、123年間にわたり地図から消滅。第1次世界大戦後に独立を回復しますが、第2次次世界大戦時にはソ連とドイツから侵攻され、再び分割占領されました。その苦い経験からロシアの脅威を強く感じるからこそ、断固たる対応を取りたいと考えているのだと思いますが、ことはそれだけにはとどまらない可能性があります。 3日後の4月28日、今度はSVRが注目すべき声明を発表しました。 ロシア対外諜報庁長官のC・V・ナルイシキンは次の通り述べた。 ロシア対外諜報庁が入手した情報によると、ワシントンとワルシャワはウクライナにおける「歴史的領有」に関し、ポーランドの軍事・政治的統制を確立する計画を検討している。 「統合」の第一段階として、「ロシアの侵略から防衛する」ためというスローガンの下でウクライナの西部諸州にポーランド軍を進駐させることになる。現時点でジョー・バイデン米政権と今後の作業の態様について議論している。 暫定的合意によれば、ポーランドはNATOの委任ではなく「有志国」の参加によって行動することになる。ポーランドが有志国を募って、独自の判断でウクライナに平和維持部隊(軍隊)を派遣するという計画だ。 SVRがインテリジェンス情報を公表するのも、異例なことです。ウクライナ西部のガリツィア地方は歴史的にポーランド領ですから、SVRは、ポーランドの狙いはウクライナ支援にとどまらず、第2次世界大戦で失った領土を回復することだと捉えているのです』、「SVRは、ポーランドの狙いはウクライナ支援にとどまらず、第2次世界大戦で失った領土を回復することだと捉えているのです」、ポーランドの真意はそうなのかも知れない。
・『ポーランドが「平和維持軍」を派兵すれば、第3次世界大戦に いわゆる平和維持部隊は、ロシア軍と直接衝突する危険が最も少ないウクライナの地域に配置することを計画している。さらにポーランド軍がウクライナ軍よりも配置されている戦略的対象に対する統制を段階的に凌駕していくことを優先的「戦闘目標」にしている。ポーランドの特務機関は、既に現時点で(ウクライナ)ナショナリズムに対抗する民主的「ワルシャワ」を志向する「合意する能力のある」ウクライナ・エリートの代表者を探している。ポーランド当局の計算では、ウクライナ西部における予防的進駐はかなりの確率で国家分裂をもたらす。その際、ワルシャワは「ポーランド平和維持部隊」が駐留している地域に対する実質的な統治権を得る。 ポーランドが「平和維持軍」の名目でウクライナに派兵すれば、ロシアは敵対行動と見なしてポーランドを攻撃する。それが第3次世界大戦に発展するというラブロフ外相の警告は、決して脅しとは思えません』、「ポーランドが「平和維持軍」の名目でウクライナに派兵すれば、ロシアは敵対行動と見なしてポーランドを攻撃する。それが第3次世界大戦に発展するというラブロフ外相の警告は、決して脅しとは思えません」、確かに危険な行動だ。
・『リトアニア、ハンガリー、ポーランド…立ち位置の違う周辺国 4月27日の本連載で、リトアニアが危ないという話をしました。リトアニアとポーランドに囲まれたロシアの飛び地の領土カリーニングラードの国境を、リトアニアが封鎖しようとする動きがあったからです。しかしロシアからの警告が効いたようで、封鎖は行われていません。戦争拡大の発端になりそうな場所は、ポーランドに移ったといえます。 戦争から距離を置く判断をしたのが、ハンガリーです。4月3日の総選挙で与党を勝利させたオルバン首相は、ウクライナへの軍事支援はしないことを表明しています。ロシアからの天然ガス輸入は止めず、ロシアが要求するルーブル払いにも応じています。EU欧州委員会が決めたロシア産石油の輸入禁止についても、明確に反対する立場です。 ロシアの国営エネルギー大手「ガスプロム」は、ポーランドを通る「ヤマルパイプライン」を経由した天然ガスの供給を停止すると発表しました。緊張が高まる東欧で、ポーランド情勢から目が離せなくなってきました。逆にハンガリーは、安全な場所だといえます。ロシアの侵攻が始まって以来、EU諸国の結束は固まったように報じられていますが、足並みはそろっていないのが現状です』、「ハンガリー」「オルバン首相は、ウクライナへの軍事支援はしないことを表明・・・。ロシアからの天然ガス輸入は止めず、ロシアが要求するルーブル払いにも応じています。EU欧州委員会が決めたロシア産石油の輸入禁止についても、明確に反対する立場」、確かに「EU諸国の」「足並みはそろってないのが現状です」、なるほど。
第四に、6月21日付け文春オンラインが掲載したフランスの歴史人口学者・人類学者のエマニュエル トッド氏による「「我々はすでに第三次世界大戦に突入した」エマニュエル・トッドが指摘した世界戦争を激化させる“アメリカの無責任” 『第三次世界大戦はもう始まっている』 #2」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/55108
・『当初は、ローカルな問題に留まるはずだったウクライナ問題はなぜ国際秩序に大混乱を招くグローバルな問題に発展したのか? ウクライナ問題に関わる大国たちの思惑を、仏の歴史人口学者、エマニュエル・トッド氏の新刊『第三次世界大戦はもう始まっている』より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)』、「第三次世界大戦はもう始まっている」とは刺激的だ。
・『ウクライナは「NATOの“事実上”の加盟国」 ウクライナ問題は、元来は、ソ連崩壊後の国境の修正という「ローカルな問題」でした。1991年当時、ロシアがソ連解体を平和裏に受け入れたことに世界は驚いたわけですが、ロシアからすれば、1990年代前半に行なうべきだった国境の修正をいま試みている、とも言えるでしょう。 しかしこの問題は、初めから「グローバルな問題」としてもありました。 アメリカの地政学的思考を代表するポーランド出身のズビグネフ・ブレジンスキーは、「ウクライナなしではロシアは帝国にはなれない」と述べています(The Grand Chessboard、邦訳『地政学で世界を読む──21世紀のユーラシア覇権ゲーム』日経ビジネス人文庫)。アメリカに対抗しうる帝国となるのを防ぐには、ウクライナをロシアから引き離せばよい、と。 そして実際、アメリカは、こうした戦略に基づいて、ウクライナを「武装化」して「NATOの“事実上”の加盟国」としたわけです。つまり、こうしたアメリカの政策こそが、本来、「ローカルな問題」に留まるはずだったウクライナ問題を「グローバル化=世界戦争化」してしまったのです。 いま人々は「世界は第三次世界大戦に向かっている」と話していますが、「我々はすでに第三次世界大戦に突入した」と私は見ています。 ウクライナ軍は、アメリカとイギリスの指導と訓練によって再組織化され、歩兵に加えて、対戦車砲や対空砲も備えています。とくにアメリカの軍事衛星による支援が、ウクライナ軍の抵抗に決定的に寄与しています。 その意味で、ロシアとアメリカの間の軍事的衝突は、すでに始まっているのです。ただ、アメリカは、自国民の死者を出したくないだけです』、「ブレジンスキーは、「ウクライナなしではロシアは帝国にはなれない」と述べています」、「実際、アメリカは、こうした戦略に基づいて、ウクライナを「武装化」して「NATOの“事実上”の加盟国」としたわけです。つまり、こうしたアメリカの政策こそが、本来、「ローカルな問題」に留まるはずだったウクライナ問題を「グローバル化=世界戦争化」してしまったのです」、極めて新鮮で面白い見方だ。
・『「20世紀最大の地政学的大惨事」 ロシアは、ある意味でエレガントな形で、共産主義体制から抜け出しました。人類史上最も強固な全体主義体制をみずからの手で打倒したのです。これは、ゴルバチョフの偉大な功績です。 そして東欧の衛星国の独立を受け入れ、さらにはソ連の解体さえも受け入れました。 バルト諸国、カフカスならびに中央アジアの諸共和国が独立を果たすことを平和裏に受け入れたのです。 それだけではありません。「広義のロシア」すなわち「スラヴ」の核心部は、ロシア(大ロシア)、ベラルーシ(白ロシア)、ウクライナ(小ロシア)からなりますが、ベラルーシとウクライナの分離独立、すなわち「広義のロシア」の核心部が分裂することまで受け入れたのです。 ちなみにソ連邦が成立した1922年以前に、ウクライナも、ベラルーシも「国家」として存在したことは一度もありません。「ソ連崩壊」は、「共産主義体制の終焉」と「(ソ連という)国家の解体」という二重の意味をもっていましたが、ソ連崩壊直後の「無政府状態」によって、ソ連時代に人工的につくられた国境がそのまま尊重される結果となったのです。プーチンが、ソ連崩壊を20世紀最大の地政学的大惨事」と呼ぶのは、この意味に他なりません。 ロシアによるクリミア編入も、ウクライナにおけるロシア系住民の自律性獲得のための支援(ドンバス地方における親露派の実効支配の支援)も、「人民自決権」という伝統的な考え方に照らせば、それなりの正当性をもっています。しかし西側諸国においては、「とんでもなく忌まわしいこと」とみなされているのです』、「ロシアによるクリミア編入も、ウクライナにおけるロシア系住民の自律性獲得のための支援(ドンバス地方における親露派の実効支配の支援)も、「人民自決権」という伝統的な考え方に照らせば、それなりの正当性をもっています。しかし西側諸国においては、「とんでもなく忌まわしいこと」とみなされているのです」、確かに「ロシア」の見方と「西側諸国」の見方には大きな断絶があるようだ。
・『冷戦後の米露関係 冷戦後のロシアは、「西側との共存」を目指しました。けれども、ロシア人はすぐに裏切られたのです。 ソ連崩壊後、欧米はロシアに新自由主義者の助言者を送り込みました。1990年から1997年までの間、アメリカ人顧問の助けを借りて経済自由化の乱暴な企てが推進されましたが、ロシアの経済と国家を破綻させただけでした。彼らが間違った助言を行なったことで、ロシアがプーチン主導で経済的に立ち直るのに、多大な努力が必要となったのです。 さらにアメリカは「NATOは東方に拡大しない」と言っていたのに、実際は、可能なかぎり戦略的な優位を保って、結局、ロシアを軍事的にも囲い込んでしまいました。誰もがロシアを責めますが、アメリカと同盟国の軍事基地のネットワークを見れば一目瞭然であるように、囲い込まれているのは西側ではなく、ロシアの方です。軍事的緊張を高めてきたのは、ロシアではなくNATOの方だったのです』、「新自由主義者の助言者を送り込みました・・・ロシアの経済と国家を破綻させただけ」、「「NATOは東方に拡大しない」と言っていたのに、実際は、可能なかぎり戦略的な優位を保って、結局、ロシアを軍事的にも囲い込んでしまいました」、その通りだ。
・『戦争前の各国の思惑 「今回の戦争がなぜ始まったか」を理解するには、まず戦争前の各国の思惑を理解する必要があります。 アメリカの目的は、ウクライナをNATOの事実上の加盟国とし、ロシアをアメリカには対抗できない従属的な地位に追いやることでした。 それに対してロシアの目的は、アメリカの目論見を阻止し、アメリカに対抗しうる大国としての地位を維持することでした。 ロシアは、人口規模は日本と同程度ですが、アメリカに対抗しうる勢力であり続けようとしたわけです。だからこそ、アメリカによるウクライナの「武装化」がこれ以上進むことを恐れ、ロシアは侵攻を決断したのです。 今の状況は、「強いロシアが弱いウクライナを攻撃している」と見ることができますが、地政学的により大きく捉えれば、「弱いロシアが強いアメリカを攻撃している」と見ることもできます』、「地政学的により大きく捉えれば、「弱いロシアが強いアメリカを攻撃している」と見ることもできます」、確かにその通りだ。
・『超大国は1つだけより2つ以上ある方がいい ちなみに、1つの国家、1つの帝国が、誰もブレーキをかけられない状態で世界全体に絶対的な支配力を及ぼすのが、よいことであるはずはありません。超大国は、たった1つしかない状態よりも、2つ以上ある方が、世界の均衡はとれるのです。 要するに、冷戦の勝利に酔うアメリカが「全世界の支配者」として君臨するのを阻止できる唯一の存在は、ロシアだったのです。2003年、イラクに対してアメリカが独善的に行動した時も、“西側の自由な空間の保全”に貢献したのはロシアでした。スノーデンをあえて迎え入れることで、結果的に“西洋の市民の自由の擁護”に貢献したのも、ロシアです。そのことに我々は感謝すべきなのです。 そもそも第二次世界大戦時に、みずから多大な犠牲を払ってドイツ国防軍を打ち破り、アメリカ・イギリス・カナダの連合軍による「フランス解放」を可能にしてくれたのも、ソ連でした。ソ連は、2000万人以上の犠牲者を出しながら、ナチスドイツの悪夢からヨーロッパを解放するのに、ある意味でアメリカ以上に貢献したのです。ところが、冷戦後の西側は、その歴史をすっかり忘却してしまったかのような振る舞いをロシアに対してしてきました。 それどころか、ロシアが回復に向かうにつれて、「ロシア嫌い(ロシア恐怖症)」の感情は、弱まるのではなく、いっそう強まりました。プーチン率いるロシアの権威的民主主義体制が、それ自体として憎しみの対象になってしまったのです。西側諸国における「歴史の忘却」や「地政学的な無思慮」以上に、唖然とせざるを得ないのは、この「ロシア嫌い」の高まりです』、「西側諸国における「歴史の忘却」や「地政学的な無思慮」以上に、唖然とせざるを得ないのは、この「ロシア嫌い」の高まりです」、ある程度はその通りだ。しかし、「ロシア」側にも「ウクライナ侵攻問題」では「嫌われる」要素が多くあったことも事実だ。トッド氏の見方は「ロシア」に甘過ぎる印象だ。
タグ:ウクライナ (その5)(旧ソ連地域研究知りすぎると“消される”…ロシア最大の民間軍事会社「ワグネル」のヤバい実態 事実上の「ロシア軍別動隊」、オリバー・ストーンの甘すぎるプーチンインタビューと その重すぎる代償、佐藤優が教える「第3次世界大戦の発端になる国の名前」 ロシアが「唯一、ロシアと戦争も辞さない国」と警戒、「我々はすでに第三次世界大戦に突入した」エマニュエル・トッドが指摘した世界戦争を激化させる“アメリカの無責任” 『第三次世界大戦はもう始まっている』 #2) 現代ビジネス 廣瀬 陽子氏による「旧ソ連地域研究知りすぎると“消される”…ロシア最大の民間軍事会社「ワグネル」のヤバい実態 事実上の「ロシア軍別動隊」」 「軍事会社」は米英の専売特許と思っていたら、「ロシア」も活用しているとは驚かされた。 「プーチンの意向には逆らえず、出資を引き受けた」、設立には「プーチン」の「意向」が強かったようだ。「シリアの油田開発権はきわめて魅力的なものだったと言われており、プリゴジンにとってワグネルは美味しいドル箱なのが実情だ」、こんな余禄もあるようだ。 「ワグネルが確実に関わっている事案」「6事案」、をみるとかなり幅広いようだ。これからも注目していきたい。 Newsweek日本版 石戸 諭氏による「オリバー・ストーンの甘すぎるプーチンインタビューと、その重すぎる代償」 私も「ウクライナ侵攻」前に番組を観たが、今から思えば「プーチン」の言い分がしっかり入っていたようだ。 「「あきれるほど寛容」、「ストーンは甘い球を投げつづけ、プーチンがそれを粛々と打ち返すだけ」という厳しい批判が出ている」、同感である。 PRESIDENT Origina 佐藤 優氏による「佐藤優が教える「第3次世界大戦の発端になる国の名前」 ロシアが「唯一、ロシアと戦争も辞さない国」と警戒」 「ウクライナ侵攻」で中立国だった「フィンランド」「スウェーデン」をNATO側に追いやったのは「ロシア」には手痛いダメージだ。 「スウェーデンとフィンランドに米軍が常駐する巨大基地が建設され、核兵器が配備される可能性は低いとロシアが考えているからです。対してウクライナがNATOに加盟すれば直ちに基地が米軍に提供され、核配備がなされるとプーチン大統領を含むロシアの政治・軍事エリートは考えています」、「スウェーデンとフィンランド」と「ウクライナ」では、「NATO加盟」の影響がここまで違うとは驚かされた。 「ロシア」はかなり広範囲な再編成を考えているようだ。 「ラブロフ外相」「発言」は、核兵器の使用で恫喝したとの見方も可能だ。 「ワルシャワは、モラビエツキ首相の口を通じてウクライナに「平和維持軍」なるものを提案しており、平和維持軍の旗の下で軍人の派遣に関心を持っている」、「ロシア」が警戒する訳だ。 「SVRは、ポーランドの狙いはウクライナ支援にとどまらず、第2次世界大戦で失った領土を回復することだと捉えているのです」、ポーランドの真意はそうなのかも知れない。 「ポーランドが「平和維持軍」の名目でウクライナに派兵すれば、ロシアは敵対行動と見なしてポーランドを攻撃する。それが第3次世界大戦に発展するというラブロフ外相の警告は、決して脅しとは思えません」、確かに危険な行動だ。 「ハンガリー」「オルバン首相は、ウクライナへの軍事支援はしないことを表明・・・。ロシアからの天然ガス輸入は止めず、ロシアが要求するルーブル払いにも応じています。EU欧州委員会が決めたロシア産石油の輸入禁止についても、明確に反対する立場」、確かに「EU諸国の」「足並みはそろってないのが現状です」、なるほど。 文春オンライン エマニュエル トッド氏による「「我々はすでに第三次世界大戦に突入した」エマニュエル・トッドが指摘した世界戦争を激化させる“アメリカの無責任” 『第三次世界大戦はもう始まっている』 #2」 「第三次世界大戦はもう始まっている」とは刺激的だ。 「ブレジンスキーは、「ウクライナなしではロシアは帝国にはなれない」と述べています」、「実際、アメリカは、こうした戦略に基づいて、ウクライナを「武装化」して「NATOの“事実上”の加盟国」としたわけです。つまり、こうしたアメリカの政策こそが、本来、「ローカルな問題」に留まるはずだったウクライナ問題を「グローバル化=世界戦争化」してしまったのです」、極めて新鮮で面白い見方だ。 「ロシアによるクリミア編入も、ウクライナにおけるロシア系住民の自律性獲得のための支援(ドンバス地方における親露派の実効支配の支援)も、「人民自決権」という伝統的な考え方に照らせば、それなりの正当性をもっています。しかし西側諸国においては、「とんでもなく忌まわしいこと」とみなされているのです」、確かに「ロシア」の見方と「西側諸国」の見方には大きな断絶があるようだ。 「新自由主義者の助言者を送り込みました・・・ロシアの経済と国家を破綻させただけ」、「「NATOは東方に拡大しない」と言っていたのに、実際は、可能なかぎり戦略的な優位を保って、結局、ロシアを軍事的にも囲い込んでしまいました」、その通りだ。 「地政学的により大きく捉えれば、「弱いロシアが強いアメリカを攻撃している」と見ることもできます」、確かにその通りだ。 「西側諸国における「歴史の忘却」や「地政学的な無思慮」以上に、唖然とせざるを得ないのは、この「ロシア嫌い」の高まりです」、ある程度はその通りだ。しかし、「ロシア」側にも「ウクライナ侵攻問題」では「嫌われる」要素が多くあったことも事実だ。トッド氏の見方は「ロシア」に甘過ぎる印象だ。