台湾(その4)(台湾が韓国をGDPで間もなく逆転!なぜ「永遠のライバル」に勝てるのか、台湾めぐる「戦略的曖昧さ」と「戦略的明確さ」 実際にリスクを高めるのは?、中国軍は最初に日本の米軍基地を爆撃する…米メディアが報じた「中国の台湾侵攻」の悲劇的なシナリオ 台湾海軍の元トップ「われわれに勝機はまったくない」) [世界情勢]
台湾については、昨年11月27日に取上げた。今日は、(その4)(台湾が韓国をGDPで間もなく逆転!なぜ「永遠のライバル」に勝てるのか、台湾めぐる「戦略的曖昧さ」と「戦略的明確さ」 実際にリスクを高めるのは?、中国軍は最初に日本の米軍基地を爆撃する…米メディアが報じた「中国の台湾侵攻」の悲劇的なシナリオ 台湾海軍の元トップ「われわれに勝機はまったくない」)である。
先ずは、本年3月24日付けダイヤモンド・オンラインが転載した財訊「台湾が韓国をGDPで間もなく逆転!なぜ「永遠のライバル」に勝てるのか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/299334
・『台湾と韓国の間には共通点が多い。かつて「アジア四小龍」にそれぞれ数えられ、いずれも電子産業を柱とする。似ているが故にお互いライバルと意識してきた両国だ。経済という点では長く韓国が優勢だったが、ここにきて台湾が逆転しそうだという。『半導体・電池・EV 台湾が最強の理由』(全6回)の#4では、台湾人が快哉を叫ぶ「逆転レース」について伝える。(台湾「財訊」孫蓉萍、翻訳・再編集/ダイヤモンド編集部副編集長 杉本りうこ』、興味深そうだ。
・『1人当たりGDPで韓国を上回る日が近い 台湾の1人当たりGDP(国内総生産、名目)は2003年に韓国に逆転されて以来、追い付くことができない状態が長く続いてきた。その状況がここにきて、大きく変化している。国際通貨基金(IMF)の推計によると、台湾の1人当たりGDPは3年後の25年に4万2801ドルに達し、韓国の4万2719ドルを小幅で上回る見通しだ。 このIMFの推計は非常に保守的な数値である。台湾の経済部(日本の経済産業省に相当)所管のシンクタンク、中華経済研究院は、台湾が21年にすでに僅差で韓国を上回っているという試算を出している。その差は数百ドルにすぎないが、台湾人にとっては奮い立たせられる数字だ。 21年は株式市場においても、台湾の上場企業の時価総額が年初から23.7%伸びたのに対し、韓国は3.6%の小幅成長にとどまっている。台湾と韓国の競争におけるスター選手というべき企業の時価総額を比べると、台湾のTSMC(台湾積体電路製造)が5305億ドルであるのに対し、韓国のサムスン電子は3879億ドル(3月22日の終値ベース)となっている。 長期にわたり台韓間には、国際政治における恩讐があったと同時に、産業競争においても度々角突き合わせてきた経緯があった』、「1人当たりGDP」は、「2003年に韓国に逆転されて以来、追い付くことができない状態が長く続いてきた。その状況がここにきて、大きく変化」、かつては「台湾」の方が上で、それを取り戻しつつあるようだ。
・『韓国は対中輸出が大幅減速 台湾は米中対立が追い風に 経済の活力を奪い合う台湾vs韓国 両国がアジア四小龍と呼ばれた時代、台湾は経済と貿易の自由化を進め、国営事業を民営化し、電子産業を発展させることに全力を挙げた。中小企業が急速に成長した時期でもある。韓国はこの時期、鉄鋼や自動車といった重工業を重視し、財閥を支援した。しかし1997年のアジア通貨危機により、過剰債務を抱えていた財閥は大きな痛手を被り、韓国経済は失速した。 ところが2000年代になると、台湾では90年ごろから起きていた中小企業の中国への流出で産業の空洞化が進んだ一方、韓国では金融経済システムの国際化が進み、財閥企業による規模のメリットを生かした経営が成功した。 そして現在の状況は、台韓経済の3回戦目に突入したといえるわけだ。ここで台湾が逆転しようとしている背景にあるのは、韓国経済が壁に突き当たっていることだ。 中華経済研究院の王健副院長は、「韓国経済を支える財閥企業はスケールメリットという点で秀でているが、景気悪化の局面では対応に遅れる面がある」と指摘している。 また経営規模の大きさという点では、韓国の財閥よりも中国企業の方が大きい。そのため、中国企業によって韓国の財閥から市場が奪われ、技術力の面でも逆転されるという現象が起きている。韓国経済は対中輸出に依存して成長を遂げてきたが、もはや対中輸出の大きな伸びは望めなくなっている。 韓国経済が壁に突き当たっているのとは対照的に、台湾は米中対立を受けた世界的なサプライチェーンの見直しを経済成長の追い風としている。蔡英文総統が17年に産業革新を推進する政策を導入したことも相まって、台湾企業が中国から回帰しているだけでなく、米グーグルや米マイクロソフトといったグローバル企業も台湾に投資するようになっている。 新型コロナウイルスの感染拡大があっても、台湾では都市封鎖が行われず、企業活動が継続でき、輸出の伸びは韓国よりも高かった。この間、台湾ドルの上昇が進んでおり、本来なら輸出には不利な為替環境だ。しかし台湾ドル高のマイナス要素に企業の競争力が勝っており、通貨高は1人当たりGDPを膨らませる結果となっている。 台湾経済は目下繁栄の局面にあるが、王副院長は「台湾が有利なうちに、産業の転換を図り、医療や宇宙産業のような次世代の重要産業を育成しなければならない。またさまざまな金融的手段で企業が資金調達し、十分な研究開発資金を獲得することを妨げてはいけない」と指摘する。 韓国では大手100社の研究開発費がコロナ禍のさなかの20年に前年比3.3%伸びている。その投資分野は半導体やITだけでなく、次世代自動車や水素エネルギー、航空宇宙産業など幅広い。財閥企業はこの転換期に巨額の投資を断行しており、台湾に多い中小企業を圧倒する資本力を見せつけている。 韓国の次期大統領である尹錫悦(ユン・ソンヨル)氏は親米派のため、これまで米国の支援を得てきた台湾のアジアにおける立ち位置が変わる可能性もある。 台湾と韓国の競争はこれからもまだ続く。これまでの歴史を振り返り、世界経済の変化を理解することで、台湾経済の進むべき道はおのずと見えてくる』、「中国企業によって韓国の財閥から市場が奪われ、技術力の面でも逆転されるという現象が起きている。韓国経済は対中輸出に依存して成長を遂げてきたが、もはや対中輸出の大きな伸びは望めなくなっている。 韓国経済が壁に突き当たっているのとは対照的に、台湾は米中対立を受けた世界的なサプライチェーンの見直しを経済成長の追い風としている。蔡英文総統が17年に産業革新を推進する政策を導入したことも相まって、台湾企業が中国から回帰しているだけでなく、米グーグルや米マイクロソフトといったグローバル企業も台湾に投資するようになっている」、韓国と台湾の好対照が明確になったようだ。
次に、5月24日付けNewsweek日本版が掲載した在英ジャーナリストの木村正人氏による「台湾めぐる「戦略的曖昧さ」と「戦略的明確さ」、実際にリスクを高めるのは?」を紹介しよう。
・『<バイデン米大統領は日本で、「台湾を守るため軍事的に関与する気はあるのか」という質問に「そうだ」と明確に回答。この発言の意図とは?> 来日中のジョー・バイデン米大統領と岸田文雄首相は23日、東京・元赤坂の迎賓館で会談した。中国の軍事力が急拡大する中、共同記者会見で「あなたはウクライナ紛争に軍事的に関与したくなかった。もし同じ状況になったら、台湾を守るために軍事的に関与する気はあるのか」と記者に問われたバイデン氏は「そうだ」と明確に答えた。 「それがわれわれの約束だ。われわれは『一つの中国』政策に合意している。しかし軍事力で(台湾を)奪うことを許すわけにはいかない。それを容認すれば(東アジア)地域を混乱させることになる。ウクライナと同じような事態を誘発しかねない。アメリカの責任はさらに重くなった」とバイデン氏は説明した。 米ホワイトハウスは即座に「われわれの政策は変わっていない」とバイデン発言のトーンを弱めた。例によってバイデン氏のアドリブ発言か否か、意図は何か、真相は藪の中だ。 ロシアとの核戦争にエスカレートするのを避けるため「米軍をウクライナに派兵するつもりは全くない」と早々と宣言したバイデン氏はロシア軍のウクライナ侵攻にお墨付きを与える格好となった。台湾問題でも直接の軍事介入を頭から否定すれば、同じ間違いを繰り返す。バイデン氏は少なくとも口先では「戦略的曖昧さ」から「戦略的明確さ」に舵を切った。 一方、岸田氏は「中国人民解放軍海軍の活動や、中露の合同軍事演習を注視している。東シナ海や南シナ海での武力行使による現状変更には断固として反対する」と表明した。しかし日米両国の台湾問題に対する基本的な立場は変わらず、「台湾海峡の平和と安定は国際社会の安全保障と繁栄に欠かせない要素だ」とこれまでの方針を繰り返すにとどめた』、「ロシアとの核戦争にエスカレートするのを避けるため「米軍をウクライナに派兵するつもりは全くない」と早々と宣言したバイデン氏はロシア軍のウクライナ侵攻にお墨付きを与える格好となった。台湾問題でも直接の軍事介入を頭から否定すれば、同じ間違いを繰り返す。バイデン氏は少なくとも口先では「戦略的曖昧さ」から「戦略的明確さ」に舵を切った」、「バイデン氏はロシア軍のウクライナ侵攻にお墨付きを与える格好」、台湾では同じ過ちを回避したとはいえ、外交上の汚点だ。
・『昨年10月にもバイデン氏は「台湾防衛」発言 バイデン氏は昨年10月、米ボルチモアでのタウンホールイベントでも、中国から攻撃された場合、アメリカは台湾を防衛するのかと問われ、「イエス。われわれはその約束をしている」と発言した。中国は台湾を祖国にとって欠かすことのできない一部とみなしており、そこにアメリカが安全保障を拡大することは不必要な挑発と訝る声もあった。 英王立防衛安全保障研究所(RUSI)のマイケル・クラーク前所長は当時、「台湾の将来を決めるのは台湾の人々だけだという理由でアメリカが台湾の防衛に尽力していると明確に表明することは道徳的に正しいことだが、中国に対するアメリカの抑止力の信頼性を高めることにはならない」という道徳的な正義とリアルポリティクスのジレンマに言及している。 1979年に米中関係が正常化された際、台湾に対するアメリカの立場は台湾関係法で定められた。台湾に防衛的武器を提供するとともに、台湾の人々の安全、社会・経済システムを危うくするような力に対抗するアメリカの能力を維持することが約束された。しかし「中国が侵攻してきた場合、台湾を防衛する約束をしていないのは明らかだ」(クラーク氏)。 歴代の米大統領がこの「戦略的曖昧さ」を伝統的に維持してきたのは、台湾問題を巡りアメリカが中国との戦争に巻き込まれるリスクを回避したいからだ。2001年にジョージ・W・ブッシュ大統領(当時)は台湾への50億ドル武器売却を承認し、台湾防衛のため「必要なことは何でもする」と発言したが、その後、中国との関係を強化するため、この立場を和らげている』、「歴代の米大統領がこの「戦略的曖昧さ」を伝統的に維持してきたのは、台湾問題を巡りアメリカが中国との戦争に巻き込まれるリスクを回避したいから」、なるほど。
・『「戦略的曖昧さ」は中国の拡張主義を助長するだけ? 経済的な米中逆転が目前に迫る中、「戦略的曖昧さ」は中国の拡張主義を促すだけだという反省が米国内でも強まってきた。ドナルド・トランプ米大統領時代、台湾との防衛・安全保障協力を強化する国防権限法が可決されるなど、アメリカは台湾への支援を強化している。しかしアメリカの安全保障パートナー国の立場は微妙だ。 台湾問題を巡って米中が敵対し、アメリカか中国かの二者択一を迫られるのを避けるため「戦略的曖昧さ」を望む東アジアの国々も少なくない。昨年3月、米インド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン司令官(当時)は少なくとも27年までに台湾への脅威が顕在化すると証言している。 中国は今のところ24年の台湾総統選を注視している。アメリカが台湾防衛という「戦略的明確さ」をとれば、台湾独立派が勢いづき、中台関係の緊張が一段と増すかもしれない。 ウクライナの場合、「戦略的曖昧さ」というより、核戦争を回避するため直接軍事介入はしないという「戦略的明確さ」が侵攻を思いとどまらせるという抑止力を帳消しにしたとの見方もある。しかしロシア軍のウクライナ侵攻は、ポスト冷戦の国防・安全保障環境を一変させた。これまでの常識が通用しなくなったのだ。 道徳的な正義に重きを置くバイデン氏はウラジーミル・プーチン露大統領を「人殺しの独裁者」「悪党」「戦争犯罪人」「虐殺者」と呼んできた。バイデン氏は3月のワルシャワ演説で「責められるべきはプーチン氏だ」「この男は権力の座にとどまらせてはいけない」と体制転換を目指すとみなすことができる発言をした。 体制転換にゴールを引き上げると戦争の終わりが見えなくなる。このためホワイトハウスは火消しに追われた。しかし今、重要なのは「戦略的曖昧さ」と「戦略的明確さ」のどちらが中国の台湾侵攻というリスクを軽減できるのかを慎重に分析することだ』、「アメリカが台湾防衛という「戦略的明確さ」をとれば、台湾独立派が勢いづき、中台関係の緊張が一段と増すかもしれない」、「台湾独立派」の存在が事態をややこしくしているようだ。
・『台湾有事は日本有事 5月5日、英首相官邸で行われた日英首脳会談で、岸田氏とボリス・ジョンソン英首相は昨年10月に交渉を始めた日英円滑化協定が大枠合意に至ったことを歓迎し、この協定が自衛隊と英軍の共同運用・演習の円滑化を通じ日英安全保障・防衛協力をさらに深化させ、日英両国が世界の平和と安定に一層寄与することを確認している。 英政府は「共同作業・演習・運用を可能にする」協定と位置付け、「イギリスは欧州で初めて日本とこのような協定を結ぶ国となる。インド太平洋地域へのコミットメントを強化し、世界の平和と安全の守りをさらに強化する。訓練、共同演習、災害救援活動を実施するためにともに派遣される」と表明した。 これについて、英首相報道官は「日英両国が原則合意した円滑化協定はこれまでわれわれが一緒にやっていて、これからも継続していきたいすべての活動を反映している。日本の自衛隊と英軍の共同訓練や共同運用を可能にすることや、来るべき数年の間に著しく重要になるインド太平洋地域で拡大していくイギリスの活動も含まれている」と説明した。 「現在、原則合意の段階だ。円滑化協定が最終的に決定された時点で、もっと多くのことが語られるだろう」。台湾有事の際にどう機能するのかという質問には「どんな仮想的な状況が含まれるかについてはコメントしたくないが、自衛隊と英軍の部隊が一緒に作戦行動することは含まれている」とだけ語った。 台湾有事になると、アメリカの反撃を止めるため、沖縄本島から西は中国の軍事影響下に入る。すなわち台湾有事は日本有事なのだ。「戦略的曖昧さ」と「戦略的明確さ」のいずれをとるにせよ、台湾有事のリスクがゼロになるわけではない。バイデン発言の真意がどこにあるのかはともかく、日本はすでに台湾有事を日本有事として備えているのだろうか』、「日本は」「台湾有事を日本有事として備え」るべきだろう。
第三に、6月22日付けPRESIDENT Onlineが掲載したフリーライター・翻訳者の青葉 やまと氏による「中国軍は最初に日本の米軍基地を爆撃する…米メディアが報じた「中国の台湾侵攻」の悲劇的なシナリオ 台湾海軍の元トップ「われわれに勝機はまったくない」」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/58819
・『米メディアが報じた「台湾有事」の悲劇的シナリオ 中国による台湾侵攻の懸念が高まるなか、悲観的なシナリオがアメリカで報じられている。中国が侵攻に踏み切った場合、日米およびその他のアメリカの同盟国が制止に動いたとしても、制止は不可能だという分析だ。さらに、中国は開戦直後、真っ先に在日米軍基地などを叩くとする予測も出ている。米CNNが、米シンクタンクおよび複数のアナリストによる見解をもとに報じた。 台湾侵攻の現実味は、直近でも改めて浮き彫りになっている。アメリカのバイデン大統領は5月23日の訪日中、台湾有事の際にはアメリカによる軍事介入を実行する意思があると明言した。米ワシントン・ポスト紙は、「(バイデン氏が)台湾へのあらゆる攻撃のおそれに対し、鋭い警告を発した」と報じている。 バイデン氏によるこうした警告は就任以来、今回で3度目となる。米中間の緊張の高まりを懸念するホワイトハウスは今回も含め、都度打ち消しの声明を発表してきた。CNNはこのような経緯を説明したうえで、「しかしながら、必然的にこの疑問が浮かぶ。すなわち、中国が台湾の奪取を試みた場合、アメリカとその同盟国たちは制止する能力をもつのだろうか?」と述べ、実際に侵攻が起きた際に阻止は可能なのかと問題提起している。 同記事はアナリストによる分析をもとに、次のように続けた。「そして、驚くべき答えがこちらだ。おそらく、(アメリカと同盟国による制止は)不可能である」』、「CNN」は「アナリストによる分析をもとに・・・驚くべき答えが・・・(アメリカと同盟国による制止は)不可能である」、悲観的な見方だ。
・『米軍を苦しめる「距離の呪縛」 専門家らが懸念しているのは、現実的にアメリカが台湾へどれだけの武力を動員できるかという点だ。CNNは、「中国が保有する兵士・ミサイル・船舶の数は、台湾、あるいはアメリカや日本といった支援国となり得る国が(戦場に)持ち込むことができるこれらの数を上回る」と指摘する。 アメリカおよび同盟国の軍事力を単純に合計すれば、中国の武力に対抗することは難しくない。しかし、中国に近い台湾が戦場となったならば、いかに多くを現地に配備できるかという視点において、中国に一方的に分ぶがあると専門家らはみている。このため記事は、「仮に中国がこの島を手に入れようと決意を固めたならば、おそらくそれは可能だ」と論じている。 CNNは、ワシントンD.C.に拠点を置くシンクタンク「新アメリカ安全保障センター」が最近行った台湾有事の戦局シミュレーションを取り上げている。この机上分析は、アメリカ空軍が台湾有事の際の航空戦力として、主に約800キロ離れたフィリピンからの出撃に頼らざるを得ないとの前提に立ったものだ。このような見方をするのは、同シンクタンクにとどまらない。 米空軍本部で戦略・統合・要求担当副参謀長を務めるクリントン・ヒノテ中将はCNNに対し、米軍が「距離の呪縛」に直面することになるだろうと認めている』、「中国に近い台湾が戦場となったならば、いかに多くを現地に配備できるかという視点において、中国に一方的に分ぶがあると専門家らはみている。このため記事は、「仮に中国がこの島を手に入れようと決意を固めたならば、おそらくそれは可能だ」と論じている」、「距離の呪縛」は確かに「米軍を苦しめる」ようだ。
・『台湾海軍の元トップ「われわれに勝機はまったくない」 別の米有力シンクタンクである大西洋評議会も、同様の分析を示している。台湾での軍事衝突は中国にとっての「ホーム戦」、アメリカとその同盟国にとっては「アウェー戦」になるとの指摘だ。 「地理的な形成不利、および長距離の通信体制を埋め合わせるため、多大なリソースが必要となるだろう」と同機構は述べ、アメリカにとって厳しい戦いになるとの見方を示した。 米軍が距離の壁に阻まれれば、当事者国同士の兵力がものをいうことになる。AFP通信は米国防省のデータをもとに、中台間には圧倒的な兵力差が存在すると指摘している。 陸軍兵の数は台湾の9万人弱に対して中国が100万人以上、戦車は800両対6300両、戦闘機は400機対1600機と、4~11倍の開きがある状態だ。台湾海軍の元トップである李喜明元台湾海軍参謀総長はAFP通信に対し、「軍事的な直接対決となれば、われわれに勝機はまったくない」との厳しい認識を示した。 アジア太平洋外交に特化した米シンクタンク「プロジェクト2049研究所」のエリック・リー助手研究員は、米ナショナル・インタレスト誌への寄稿を通じ、台湾側の防衛設計を明かしている。 それによると台湾側は、まずは中国人民解放軍が「壊滅的なミサイル攻撃」を実施し、追って「水陸両面での総力的な侵攻」に出るシナリオを想定している模様だ。台湾側が応戦に使えるミサイルは数日で払底し、中国軍に有利な進軍を許すおそれがある、と氏は指摘している』、「米軍が距離の壁に阻まれれば、当事者国同士の兵力がものをいうことになる。AFP通信は米国防省のデータをもとに、中台間には圧倒的な兵力差が存在すると指摘」、「李喜明元台湾海軍参謀総長はAFP通信に対し、「軍事的な直接対決となれば、われわれに勝機はまったくない」との厳しい認識」、その通りだろう。
・『防衛に有利な台湾の地形 ただし、本格的な侵攻となれば、中国側も相当な犠牲の覚悟を強いられる。武力衝突では一般に、攻撃側が防衛側を落とすためには3倍の能力が必要だとされる。中国側としても余裕の制圧とはならず、相当な犠牲を強いられることになるだろう。このため大西洋評議会は、中国が直ちに武力行使に及ぶことはないと分析している。) これに加え、島国・台湾の急峻きゅうしゅんな地形が天然の要塞ようさいとして機能し、中国軍を大いに疲弊させるだろう。 AFPによると、米シンクタンク研究員のイアン・イーストン氏は台湾沿岸部の地形について、「防衛側にとって夢のよう」な形状だと語っている。台湾には上陸に適した海岸がわずか14カ所しかなく、さらにこうしたポイントの多くが山や崖に囲まれ、あるいは防衛に適した都市インフラに近接しているためだ。 さらにAFPは、米防衛大学のネイバル・ウォー・カレッジによる分析として、大規模な侵攻に適する期間は毎年5~7月と10月の2回しかないと報じている。海峡は最も狭いポイントでも幅130キロほどあり、その特性は半ば外洋にも近い。年2回のモンスーンの時期を含め、季節による荒天の影響を大きく受ける。 また、コンパクトな国土をもつ台湾だが、その地形は湿地帯に山林、そして都市部の人口密集地とさまざまだ。中国軍がこれらの地域で抜かりなく戦闘を展開するためには、複数の地形に対応できるだけの大量の兵器を中国本土から輸送し、さらにそれらを使いこなせる訓練された兵士を輸送することが不可欠だ。弾薬と食糧の供給も問題となるだろう。 戦略国際問題研究所のボニー・リン上級フェローはAFPの取材に対し、「上陸だけが問題ではないのです」「配備され進軍するとなれば、部隊をどうやって維持するのでしょうか。兵站へいたんはどうするのでしょうか」と問題を提起し、台湾攻略の難しさを強調した』、「台湾沿岸部の地形について、「防衛側にとって夢のよう」な形状・・・台湾には上陸に適した海岸がわずか14カ所しかなく、さらにこうしたポイントの多くが山や崖に囲まれ、あるいは防衛に適した都市インフラに近接しているためだ。 さらにAFPは、米防衛大学のネイバル・ウォー・カレッジによる分析として、大規模な侵攻に適する期間は毎年5~7月と10月の2回しかない」、「中国軍がこれらの地域で抜かりなく戦闘を展開するためには、複数の地形に対応できるだけの大量の兵器を中国本土から輸送し、さらにそれらを使いこなせる訓練された兵士を輸送することが不可欠だ。弾薬と食糧の供給も問題となるだろう」、「中国軍」にとっても「攻撃」は簡単ではなさそうだ。
・『ノルマンディー上陸作戦並みの被害予想も 大西洋評議会はこうした事情を念頭に、「単純にいって中国は、上陸による全面的な台湾侵攻を近い未来に決行できるだけの軍事能力と規模をもたない」と分析している。ただし、射程2000キロ以上におよぶDF-21準中距離弾道ミサイルなどを仮に中国が投入したならば、増援到着までの2日間ほど、台湾は厳しい戦いを強いられるだろうとも指摘している。 いずれにせよ、ひとたび台湾攻撃が発生したならば、両軍への多大な犠牲は避けられそうにない。CNNは「多数のアナリストら」による理解として、台湾侵攻は歴史上悪名高いノルマンディー上陸作戦を超え、「非常に危険かつ入り組んだ」武力衝突になるとの見方を伝えている。 第2次大戦中にアメリカ軍など連合国がドイツ占領下のフランス・ノルマンディー海岸への上陸を目指したノルマンディー上陸作戦は、3カ月という長期にわたり展開し、両軍計約50万人の死者・不明者を出した。仮に台湾への上陸作戦が決行されたならば、台湾のみならず中国側の犠牲者も相当な規模に上る公算だ』、「「多数のアナリストら」による理解として、台湾侵攻は歴史上悪名高いノルマンディー上陸作戦を超え、「非常に危険かつ入り組んだ」武力衝突になるとの見方」、厳しい見方だ。
・『米軍が現実視する「中国軍による基地攻撃」のリスク 台湾と中国間で高まる緊張は、日本人にとってもひとごとではない。新アメリカ安全保障センターは、最近実施したシミュレーションにおいて、戦闘のごく初期段階において中国側が、在日米軍基地に直接攻撃を仕掛けると見込んでいる。CNNは、「この模擬戦争は、中国軍がグアムや日本などにある近場の米軍基地を叩くことから作戦を開始する展開をシミュレートした」としている。 在日米軍基地への先制攻撃により、中国は米軍の出撃を遅らせ、台湾攻撃を進める時間を稼ぐことが可能となる。米空軍本部のヒノテ中将はCNNに対し、中国軍が米軍基地に不意打ちを喰くらわせるおそれは十分にあるとの認識を示した。中国が保有する各種弾道ミサイルは、少なくとも純粋な射程という観点では、近隣の米軍基地を攻撃する能力を有する。 米軍はこのリスクを、現実のものと受け止めているようだ。グアムのアンダーセン空軍基地が破壊されるという非常事態に備え、代替基地の建設に動き出した。米ワー・ゾーン誌は6月15日、中国が同空軍基地を「壊滅」させた場合に備え、米軍が大規模なバックアップ施設の建設に着手したと報じている。 建設先はグアム本島から北東に約170キロ離れたテニアン島の国際空港の敷地内だ。同誌によると計画は10年前から存在したが、今年5月になって建設が本格化した。 グアム防衛論は、ここ数カ月で盛んに議論されるようになった。米防衛・安全保障専門誌の『ディフェンス・ワン』は5月、「グアムはミサイル防衛の強化を必要としている……早急に」との記事を掲載した。記事は、米軍がグアムに重要な潜水艦施設および大規模な空軍基地を有することを念頭に、「グアムが中国にとって魅力的なターゲットであることは容易に理解できる」と論じている。 日本の米軍基地をグアムと完全に同列に論じることはできないが、少なくとも米軍は有事のシナリオとして、台湾へ到達可能な周辺地域の基地を中国が破壊する危険性を視野に入れているようだ』、「グアムのアンダーセン空軍基地が破壊されるという非常事態に備え、代替基地の建設に動き出した」、「建設先はグアム本島から北東に約170キロ離れたテニアン島の国際空港の敷地内」、「米軍」がそこまで備え始めたとは、初めて知った。
・『中国共産党紙の編集長は自信「アメリカと台湾を完全に圧倒」 中台間の緊張は高まるばかりだ。米ワシントンD.C.に本部を構える中東報道研究機関は、中国共産党傘下のグローバル・タイムズの胡こ錫進しゃくしん編集長が5月23日、自身のブログにおいて非常に攻撃的な記事を掲載したと報じている。 問題の記事において胡氏は、「台湾の軍事的支援に固執するならばアメリカは、PLA(中国人民解放軍)との直接衝突という紛れもないリスクに直面することになる」と警告を発した。 胡氏はさらに、「さて、今日の人民解放軍はどうだろうか? わが海軍と空軍の総火力は台湾海峡において、アメリカと台湾の海軍・空軍の火力の合計を完全に圧倒することができる」と述べ、中国側の兵力に大きな自信を示している。 このほか中国側は、冒頭に挙げた訪日中のバイデン氏の発言にも激しく反発している。中国のグローバル・タイムズ紙は6月12日、魏ぎ鳳和ほうわ国務委員兼国防相が、これまで中国が米国に示したなかでも「最も強い警告」を発したと報じた。 魏氏はシンガポールで行った演説を通じ、「中国は間違いなく統一を実現する」と強調し、中国から台湾を分割しようとする者があれば中国軍は最後まで戦うとも発言している』、「魏ぎ鳳和ほうわ国務委員兼国防相」の発言はまさに政治的なようだ。
・『ウクライナ侵攻初期と重なる構図 泥沼化に懸念 大国が小国への侵攻に出る構図は、ロシアによるウクライナ侵攻の泥沼を想起させる。ここ数週間の動きではロシアの優勢が目立つものの、ウクライナ側も当初、ぬかるみの多い領土という地の利を得て善戦した。また、ロシア軍内部に貧弱な兵站ルートなど問題が山積したことで、結果として想定外の長期戦に至っている。 この構図は、中国対台湾にも重なる可能性がある。仮に台湾への武力行使に踏み切った場合、島国・台湾固有の地形に中国軍が足をすくわれる可能性は十分にある。ロシアとは異なり、侵略先との間には台湾海峡が横たわることから、補給にもいっそうの苦闘が予想される。国土を堅守したい台湾側は士気の維持の面でも有利であり、兵士数で上回る中国軍といえど、容易に攻略できるとは限らない。 一方で台湾としても、他国による支援という観点では、ウクライナよりも厳しい事態に直面しかねない。多数の北大西洋条約機構(NATO)加盟国と地続きとなっているウクライナは、隣接諸国からの輸送ルートを確保しやすい状況にある。 反面、海に囲まれ中国ミサイルの射程内に浮かぶ台湾においては、NATOの支援が一定の障壁に阻まれるおそれは否定できない。米軍が「距離の呪縛」に苦しみ、中国側も台湾海峡の攻略に手を焼くとなれば、結果的にロシア・ウクライナ間同様の長期戦へのもつれ込みは必至だ。 中国としても、多大な被害を予期しているとみえる。シンガポールでの演説において中国の魏国防相は、「平和的統一は中国人民の最大の願いである」と述べ、必ずしも武力解決にこだわる姿勢がないと言い添えた。「一つの中国」の固持は既定路線とみられるが、硬軟含めどのような策を繰り出すのか、今後の動向が注目される』、「中国としても、多大な被害を予期しているとみえる。シンガポールでの演説において中国の魏国防相は、「平和的統一は中国人民の最大の願いである」と述べ、必ずしも武力解決にこだわる姿勢がないと言い添えた。「一つの中国」の固持は既定路線とみられるが、硬軟含めどのような策を繰り出すのか、今後の動向が注目される」、「必ずしも武力解決にこだわる姿勢がないと言い添えた」、「平和的統一」のような重要なことも、最後に「言い添え」ることで、実際には軽視していることや、軍事色を薄める狙いだろう。やはり、「中国」の姿勢は要注意だ。
先ずは、本年3月24日付けダイヤモンド・オンラインが転載した財訊「台湾が韓国をGDPで間もなく逆転!なぜ「永遠のライバル」に勝てるのか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/299334
・『台湾と韓国の間には共通点が多い。かつて「アジア四小龍」にそれぞれ数えられ、いずれも電子産業を柱とする。似ているが故にお互いライバルと意識してきた両国だ。経済という点では長く韓国が優勢だったが、ここにきて台湾が逆転しそうだという。『半導体・電池・EV 台湾が最強の理由』(全6回)の#4では、台湾人が快哉を叫ぶ「逆転レース」について伝える。(台湾「財訊」孫蓉萍、翻訳・再編集/ダイヤモンド編集部副編集長 杉本りうこ』、興味深そうだ。
・『1人当たりGDPで韓国を上回る日が近い 台湾の1人当たりGDP(国内総生産、名目)は2003年に韓国に逆転されて以来、追い付くことができない状態が長く続いてきた。その状況がここにきて、大きく変化している。国際通貨基金(IMF)の推計によると、台湾の1人当たりGDPは3年後の25年に4万2801ドルに達し、韓国の4万2719ドルを小幅で上回る見通しだ。 このIMFの推計は非常に保守的な数値である。台湾の経済部(日本の経済産業省に相当)所管のシンクタンク、中華経済研究院は、台湾が21年にすでに僅差で韓国を上回っているという試算を出している。その差は数百ドルにすぎないが、台湾人にとっては奮い立たせられる数字だ。 21年は株式市場においても、台湾の上場企業の時価総額が年初から23.7%伸びたのに対し、韓国は3.6%の小幅成長にとどまっている。台湾と韓国の競争におけるスター選手というべき企業の時価総額を比べると、台湾のTSMC(台湾積体電路製造)が5305億ドルであるのに対し、韓国のサムスン電子は3879億ドル(3月22日の終値ベース)となっている。 長期にわたり台韓間には、国際政治における恩讐があったと同時に、産業競争においても度々角突き合わせてきた経緯があった』、「1人当たりGDP」は、「2003年に韓国に逆転されて以来、追い付くことができない状態が長く続いてきた。その状況がここにきて、大きく変化」、かつては「台湾」の方が上で、それを取り戻しつつあるようだ。
・『韓国は対中輸出が大幅減速 台湾は米中対立が追い風に 経済の活力を奪い合う台湾vs韓国 両国がアジア四小龍と呼ばれた時代、台湾は経済と貿易の自由化を進め、国営事業を民営化し、電子産業を発展させることに全力を挙げた。中小企業が急速に成長した時期でもある。韓国はこの時期、鉄鋼や自動車といった重工業を重視し、財閥を支援した。しかし1997年のアジア通貨危機により、過剰債務を抱えていた財閥は大きな痛手を被り、韓国経済は失速した。 ところが2000年代になると、台湾では90年ごろから起きていた中小企業の中国への流出で産業の空洞化が進んだ一方、韓国では金融経済システムの国際化が進み、財閥企業による規模のメリットを生かした経営が成功した。 そして現在の状況は、台韓経済の3回戦目に突入したといえるわけだ。ここで台湾が逆転しようとしている背景にあるのは、韓国経済が壁に突き当たっていることだ。 中華経済研究院の王健副院長は、「韓国経済を支える財閥企業はスケールメリットという点で秀でているが、景気悪化の局面では対応に遅れる面がある」と指摘している。 また経営規模の大きさという点では、韓国の財閥よりも中国企業の方が大きい。そのため、中国企業によって韓国の財閥から市場が奪われ、技術力の面でも逆転されるという現象が起きている。韓国経済は対中輸出に依存して成長を遂げてきたが、もはや対中輸出の大きな伸びは望めなくなっている。 韓国経済が壁に突き当たっているのとは対照的に、台湾は米中対立を受けた世界的なサプライチェーンの見直しを経済成長の追い風としている。蔡英文総統が17年に産業革新を推進する政策を導入したことも相まって、台湾企業が中国から回帰しているだけでなく、米グーグルや米マイクロソフトといったグローバル企業も台湾に投資するようになっている。 新型コロナウイルスの感染拡大があっても、台湾では都市封鎖が行われず、企業活動が継続でき、輸出の伸びは韓国よりも高かった。この間、台湾ドルの上昇が進んでおり、本来なら輸出には不利な為替環境だ。しかし台湾ドル高のマイナス要素に企業の競争力が勝っており、通貨高は1人当たりGDPを膨らませる結果となっている。 台湾経済は目下繁栄の局面にあるが、王副院長は「台湾が有利なうちに、産業の転換を図り、医療や宇宙産業のような次世代の重要産業を育成しなければならない。またさまざまな金融的手段で企業が資金調達し、十分な研究開発資金を獲得することを妨げてはいけない」と指摘する。 韓国では大手100社の研究開発費がコロナ禍のさなかの20年に前年比3.3%伸びている。その投資分野は半導体やITだけでなく、次世代自動車や水素エネルギー、航空宇宙産業など幅広い。財閥企業はこの転換期に巨額の投資を断行しており、台湾に多い中小企業を圧倒する資本力を見せつけている。 韓国の次期大統領である尹錫悦(ユン・ソンヨル)氏は親米派のため、これまで米国の支援を得てきた台湾のアジアにおける立ち位置が変わる可能性もある。 台湾と韓国の競争はこれからもまだ続く。これまでの歴史を振り返り、世界経済の変化を理解することで、台湾経済の進むべき道はおのずと見えてくる』、「中国企業によって韓国の財閥から市場が奪われ、技術力の面でも逆転されるという現象が起きている。韓国経済は対中輸出に依存して成長を遂げてきたが、もはや対中輸出の大きな伸びは望めなくなっている。 韓国経済が壁に突き当たっているのとは対照的に、台湾は米中対立を受けた世界的なサプライチェーンの見直しを経済成長の追い風としている。蔡英文総統が17年に産業革新を推進する政策を導入したことも相まって、台湾企業が中国から回帰しているだけでなく、米グーグルや米マイクロソフトといったグローバル企業も台湾に投資するようになっている」、韓国と台湾の好対照が明確になったようだ。
次に、5月24日付けNewsweek日本版が掲載した在英ジャーナリストの木村正人氏による「台湾めぐる「戦略的曖昧さ」と「戦略的明確さ」、実際にリスクを高めるのは?」を紹介しよう。
・『<バイデン米大統領は日本で、「台湾を守るため軍事的に関与する気はあるのか」という質問に「そうだ」と明確に回答。この発言の意図とは?> 来日中のジョー・バイデン米大統領と岸田文雄首相は23日、東京・元赤坂の迎賓館で会談した。中国の軍事力が急拡大する中、共同記者会見で「あなたはウクライナ紛争に軍事的に関与したくなかった。もし同じ状況になったら、台湾を守るために軍事的に関与する気はあるのか」と記者に問われたバイデン氏は「そうだ」と明確に答えた。 「それがわれわれの約束だ。われわれは『一つの中国』政策に合意している。しかし軍事力で(台湾を)奪うことを許すわけにはいかない。それを容認すれば(東アジア)地域を混乱させることになる。ウクライナと同じような事態を誘発しかねない。アメリカの責任はさらに重くなった」とバイデン氏は説明した。 米ホワイトハウスは即座に「われわれの政策は変わっていない」とバイデン発言のトーンを弱めた。例によってバイデン氏のアドリブ発言か否か、意図は何か、真相は藪の中だ。 ロシアとの核戦争にエスカレートするのを避けるため「米軍をウクライナに派兵するつもりは全くない」と早々と宣言したバイデン氏はロシア軍のウクライナ侵攻にお墨付きを与える格好となった。台湾問題でも直接の軍事介入を頭から否定すれば、同じ間違いを繰り返す。バイデン氏は少なくとも口先では「戦略的曖昧さ」から「戦略的明確さ」に舵を切った。 一方、岸田氏は「中国人民解放軍海軍の活動や、中露の合同軍事演習を注視している。東シナ海や南シナ海での武力行使による現状変更には断固として反対する」と表明した。しかし日米両国の台湾問題に対する基本的な立場は変わらず、「台湾海峡の平和と安定は国際社会の安全保障と繁栄に欠かせない要素だ」とこれまでの方針を繰り返すにとどめた』、「ロシアとの核戦争にエスカレートするのを避けるため「米軍をウクライナに派兵するつもりは全くない」と早々と宣言したバイデン氏はロシア軍のウクライナ侵攻にお墨付きを与える格好となった。台湾問題でも直接の軍事介入を頭から否定すれば、同じ間違いを繰り返す。バイデン氏は少なくとも口先では「戦略的曖昧さ」から「戦略的明確さ」に舵を切った」、「バイデン氏はロシア軍のウクライナ侵攻にお墨付きを与える格好」、台湾では同じ過ちを回避したとはいえ、外交上の汚点だ。
・『昨年10月にもバイデン氏は「台湾防衛」発言 バイデン氏は昨年10月、米ボルチモアでのタウンホールイベントでも、中国から攻撃された場合、アメリカは台湾を防衛するのかと問われ、「イエス。われわれはその約束をしている」と発言した。中国は台湾を祖国にとって欠かすことのできない一部とみなしており、そこにアメリカが安全保障を拡大することは不必要な挑発と訝る声もあった。 英王立防衛安全保障研究所(RUSI)のマイケル・クラーク前所長は当時、「台湾の将来を決めるのは台湾の人々だけだという理由でアメリカが台湾の防衛に尽力していると明確に表明することは道徳的に正しいことだが、中国に対するアメリカの抑止力の信頼性を高めることにはならない」という道徳的な正義とリアルポリティクスのジレンマに言及している。 1979年に米中関係が正常化された際、台湾に対するアメリカの立場は台湾関係法で定められた。台湾に防衛的武器を提供するとともに、台湾の人々の安全、社会・経済システムを危うくするような力に対抗するアメリカの能力を維持することが約束された。しかし「中国が侵攻してきた場合、台湾を防衛する約束をしていないのは明らかだ」(クラーク氏)。 歴代の米大統領がこの「戦略的曖昧さ」を伝統的に維持してきたのは、台湾問題を巡りアメリカが中国との戦争に巻き込まれるリスクを回避したいからだ。2001年にジョージ・W・ブッシュ大統領(当時)は台湾への50億ドル武器売却を承認し、台湾防衛のため「必要なことは何でもする」と発言したが、その後、中国との関係を強化するため、この立場を和らげている』、「歴代の米大統領がこの「戦略的曖昧さ」を伝統的に維持してきたのは、台湾問題を巡りアメリカが中国との戦争に巻き込まれるリスクを回避したいから」、なるほど。
・『「戦略的曖昧さ」は中国の拡張主義を助長するだけ? 経済的な米中逆転が目前に迫る中、「戦略的曖昧さ」は中国の拡張主義を促すだけだという反省が米国内でも強まってきた。ドナルド・トランプ米大統領時代、台湾との防衛・安全保障協力を強化する国防権限法が可決されるなど、アメリカは台湾への支援を強化している。しかしアメリカの安全保障パートナー国の立場は微妙だ。 台湾問題を巡って米中が敵対し、アメリカか中国かの二者択一を迫られるのを避けるため「戦略的曖昧さ」を望む東アジアの国々も少なくない。昨年3月、米インド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン司令官(当時)は少なくとも27年までに台湾への脅威が顕在化すると証言している。 中国は今のところ24年の台湾総統選を注視している。アメリカが台湾防衛という「戦略的明確さ」をとれば、台湾独立派が勢いづき、中台関係の緊張が一段と増すかもしれない。 ウクライナの場合、「戦略的曖昧さ」というより、核戦争を回避するため直接軍事介入はしないという「戦略的明確さ」が侵攻を思いとどまらせるという抑止力を帳消しにしたとの見方もある。しかしロシア軍のウクライナ侵攻は、ポスト冷戦の国防・安全保障環境を一変させた。これまでの常識が通用しなくなったのだ。 道徳的な正義に重きを置くバイデン氏はウラジーミル・プーチン露大統領を「人殺しの独裁者」「悪党」「戦争犯罪人」「虐殺者」と呼んできた。バイデン氏は3月のワルシャワ演説で「責められるべきはプーチン氏だ」「この男は権力の座にとどまらせてはいけない」と体制転換を目指すとみなすことができる発言をした。 体制転換にゴールを引き上げると戦争の終わりが見えなくなる。このためホワイトハウスは火消しに追われた。しかし今、重要なのは「戦略的曖昧さ」と「戦略的明確さ」のどちらが中国の台湾侵攻というリスクを軽減できるのかを慎重に分析することだ』、「アメリカが台湾防衛という「戦略的明確さ」をとれば、台湾独立派が勢いづき、中台関係の緊張が一段と増すかもしれない」、「台湾独立派」の存在が事態をややこしくしているようだ。
・『台湾有事は日本有事 5月5日、英首相官邸で行われた日英首脳会談で、岸田氏とボリス・ジョンソン英首相は昨年10月に交渉を始めた日英円滑化協定が大枠合意に至ったことを歓迎し、この協定が自衛隊と英軍の共同運用・演習の円滑化を通じ日英安全保障・防衛協力をさらに深化させ、日英両国が世界の平和と安定に一層寄与することを確認している。 英政府は「共同作業・演習・運用を可能にする」協定と位置付け、「イギリスは欧州で初めて日本とこのような協定を結ぶ国となる。インド太平洋地域へのコミットメントを強化し、世界の平和と安全の守りをさらに強化する。訓練、共同演習、災害救援活動を実施するためにともに派遣される」と表明した。 これについて、英首相報道官は「日英両国が原則合意した円滑化協定はこれまでわれわれが一緒にやっていて、これからも継続していきたいすべての活動を反映している。日本の自衛隊と英軍の共同訓練や共同運用を可能にすることや、来るべき数年の間に著しく重要になるインド太平洋地域で拡大していくイギリスの活動も含まれている」と説明した。 「現在、原則合意の段階だ。円滑化協定が最終的に決定された時点で、もっと多くのことが語られるだろう」。台湾有事の際にどう機能するのかという質問には「どんな仮想的な状況が含まれるかについてはコメントしたくないが、自衛隊と英軍の部隊が一緒に作戦行動することは含まれている」とだけ語った。 台湾有事になると、アメリカの反撃を止めるため、沖縄本島から西は中国の軍事影響下に入る。すなわち台湾有事は日本有事なのだ。「戦略的曖昧さ」と「戦略的明確さ」のいずれをとるにせよ、台湾有事のリスクがゼロになるわけではない。バイデン発言の真意がどこにあるのかはともかく、日本はすでに台湾有事を日本有事として備えているのだろうか』、「日本は」「台湾有事を日本有事として備え」るべきだろう。
第三に、6月22日付けPRESIDENT Onlineが掲載したフリーライター・翻訳者の青葉 やまと氏による「中国軍は最初に日本の米軍基地を爆撃する…米メディアが報じた「中国の台湾侵攻」の悲劇的なシナリオ 台湾海軍の元トップ「われわれに勝機はまったくない」」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/58819
・『米メディアが報じた「台湾有事」の悲劇的シナリオ 中国による台湾侵攻の懸念が高まるなか、悲観的なシナリオがアメリカで報じられている。中国が侵攻に踏み切った場合、日米およびその他のアメリカの同盟国が制止に動いたとしても、制止は不可能だという分析だ。さらに、中国は開戦直後、真っ先に在日米軍基地などを叩くとする予測も出ている。米CNNが、米シンクタンクおよび複数のアナリストによる見解をもとに報じた。 台湾侵攻の現実味は、直近でも改めて浮き彫りになっている。アメリカのバイデン大統領は5月23日の訪日中、台湾有事の際にはアメリカによる軍事介入を実行する意思があると明言した。米ワシントン・ポスト紙は、「(バイデン氏が)台湾へのあらゆる攻撃のおそれに対し、鋭い警告を発した」と報じている。 バイデン氏によるこうした警告は就任以来、今回で3度目となる。米中間の緊張の高まりを懸念するホワイトハウスは今回も含め、都度打ち消しの声明を発表してきた。CNNはこのような経緯を説明したうえで、「しかしながら、必然的にこの疑問が浮かぶ。すなわち、中国が台湾の奪取を試みた場合、アメリカとその同盟国たちは制止する能力をもつのだろうか?」と述べ、実際に侵攻が起きた際に阻止は可能なのかと問題提起している。 同記事はアナリストによる分析をもとに、次のように続けた。「そして、驚くべき答えがこちらだ。おそらく、(アメリカと同盟国による制止は)不可能である」』、「CNN」は「アナリストによる分析をもとに・・・驚くべき答えが・・・(アメリカと同盟国による制止は)不可能である」、悲観的な見方だ。
・『米軍を苦しめる「距離の呪縛」 専門家らが懸念しているのは、現実的にアメリカが台湾へどれだけの武力を動員できるかという点だ。CNNは、「中国が保有する兵士・ミサイル・船舶の数は、台湾、あるいはアメリカや日本といった支援国となり得る国が(戦場に)持ち込むことができるこれらの数を上回る」と指摘する。 アメリカおよび同盟国の軍事力を単純に合計すれば、中国の武力に対抗することは難しくない。しかし、中国に近い台湾が戦場となったならば、いかに多くを現地に配備できるかという視点において、中国に一方的に分ぶがあると専門家らはみている。このため記事は、「仮に中国がこの島を手に入れようと決意を固めたならば、おそらくそれは可能だ」と論じている。 CNNは、ワシントンD.C.に拠点を置くシンクタンク「新アメリカ安全保障センター」が最近行った台湾有事の戦局シミュレーションを取り上げている。この机上分析は、アメリカ空軍が台湾有事の際の航空戦力として、主に約800キロ離れたフィリピンからの出撃に頼らざるを得ないとの前提に立ったものだ。このような見方をするのは、同シンクタンクにとどまらない。 米空軍本部で戦略・統合・要求担当副参謀長を務めるクリントン・ヒノテ中将はCNNに対し、米軍が「距離の呪縛」に直面することになるだろうと認めている』、「中国に近い台湾が戦場となったならば、いかに多くを現地に配備できるかという視点において、中国に一方的に分ぶがあると専門家らはみている。このため記事は、「仮に中国がこの島を手に入れようと決意を固めたならば、おそらくそれは可能だ」と論じている」、「距離の呪縛」は確かに「米軍を苦しめる」ようだ。
・『台湾海軍の元トップ「われわれに勝機はまったくない」 別の米有力シンクタンクである大西洋評議会も、同様の分析を示している。台湾での軍事衝突は中国にとっての「ホーム戦」、アメリカとその同盟国にとっては「アウェー戦」になるとの指摘だ。 「地理的な形成不利、および長距離の通信体制を埋め合わせるため、多大なリソースが必要となるだろう」と同機構は述べ、アメリカにとって厳しい戦いになるとの見方を示した。 米軍が距離の壁に阻まれれば、当事者国同士の兵力がものをいうことになる。AFP通信は米国防省のデータをもとに、中台間には圧倒的な兵力差が存在すると指摘している。 陸軍兵の数は台湾の9万人弱に対して中国が100万人以上、戦車は800両対6300両、戦闘機は400機対1600機と、4~11倍の開きがある状態だ。台湾海軍の元トップである李喜明元台湾海軍参謀総長はAFP通信に対し、「軍事的な直接対決となれば、われわれに勝機はまったくない」との厳しい認識を示した。 アジア太平洋外交に特化した米シンクタンク「プロジェクト2049研究所」のエリック・リー助手研究員は、米ナショナル・インタレスト誌への寄稿を通じ、台湾側の防衛設計を明かしている。 それによると台湾側は、まずは中国人民解放軍が「壊滅的なミサイル攻撃」を実施し、追って「水陸両面での総力的な侵攻」に出るシナリオを想定している模様だ。台湾側が応戦に使えるミサイルは数日で払底し、中国軍に有利な進軍を許すおそれがある、と氏は指摘している』、「米軍が距離の壁に阻まれれば、当事者国同士の兵力がものをいうことになる。AFP通信は米国防省のデータをもとに、中台間には圧倒的な兵力差が存在すると指摘」、「李喜明元台湾海軍参謀総長はAFP通信に対し、「軍事的な直接対決となれば、われわれに勝機はまったくない」との厳しい認識」、その通りだろう。
・『防衛に有利な台湾の地形 ただし、本格的な侵攻となれば、中国側も相当な犠牲の覚悟を強いられる。武力衝突では一般に、攻撃側が防衛側を落とすためには3倍の能力が必要だとされる。中国側としても余裕の制圧とはならず、相当な犠牲を強いられることになるだろう。このため大西洋評議会は、中国が直ちに武力行使に及ぶことはないと分析している。) これに加え、島国・台湾の急峻きゅうしゅんな地形が天然の要塞ようさいとして機能し、中国軍を大いに疲弊させるだろう。 AFPによると、米シンクタンク研究員のイアン・イーストン氏は台湾沿岸部の地形について、「防衛側にとって夢のよう」な形状だと語っている。台湾には上陸に適した海岸がわずか14カ所しかなく、さらにこうしたポイントの多くが山や崖に囲まれ、あるいは防衛に適した都市インフラに近接しているためだ。 さらにAFPは、米防衛大学のネイバル・ウォー・カレッジによる分析として、大規模な侵攻に適する期間は毎年5~7月と10月の2回しかないと報じている。海峡は最も狭いポイントでも幅130キロほどあり、その特性は半ば外洋にも近い。年2回のモンスーンの時期を含め、季節による荒天の影響を大きく受ける。 また、コンパクトな国土をもつ台湾だが、その地形は湿地帯に山林、そして都市部の人口密集地とさまざまだ。中国軍がこれらの地域で抜かりなく戦闘を展開するためには、複数の地形に対応できるだけの大量の兵器を中国本土から輸送し、さらにそれらを使いこなせる訓練された兵士を輸送することが不可欠だ。弾薬と食糧の供給も問題となるだろう。 戦略国際問題研究所のボニー・リン上級フェローはAFPの取材に対し、「上陸だけが問題ではないのです」「配備され進軍するとなれば、部隊をどうやって維持するのでしょうか。兵站へいたんはどうするのでしょうか」と問題を提起し、台湾攻略の難しさを強調した』、「台湾沿岸部の地形について、「防衛側にとって夢のよう」な形状・・・台湾には上陸に適した海岸がわずか14カ所しかなく、さらにこうしたポイントの多くが山や崖に囲まれ、あるいは防衛に適した都市インフラに近接しているためだ。 さらにAFPは、米防衛大学のネイバル・ウォー・カレッジによる分析として、大規模な侵攻に適する期間は毎年5~7月と10月の2回しかない」、「中国軍がこれらの地域で抜かりなく戦闘を展開するためには、複数の地形に対応できるだけの大量の兵器を中国本土から輸送し、さらにそれらを使いこなせる訓練された兵士を輸送することが不可欠だ。弾薬と食糧の供給も問題となるだろう」、「中国軍」にとっても「攻撃」は簡単ではなさそうだ。
・『ノルマンディー上陸作戦並みの被害予想も 大西洋評議会はこうした事情を念頭に、「単純にいって中国は、上陸による全面的な台湾侵攻を近い未来に決行できるだけの軍事能力と規模をもたない」と分析している。ただし、射程2000キロ以上におよぶDF-21準中距離弾道ミサイルなどを仮に中国が投入したならば、増援到着までの2日間ほど、台湾は厳しい戦いを強いられるだろうとも指摘している。 いずれにせよ、ひとたび台湾攻撃が発生したならば、両軍への多大な犠牲は避けられそうにない。CNNは「多数のアナリストら」による理解として、台湾侵攻は歴史上悪名高いノルマンディー上陸作戦を超え、「非常に危険かつ入り組んだ」武力衝突になるとの見方を伝えている。 第2次大戦中にアメリカ軍など連合国がドイツ占領下のフランス・ノルマンディー海岸への上陸を目指したノルマンディー上陸作戦は、3カ月という長期にわたり展開し、両軍計約50万人の死者・不明者を出した。仮に台湾への上陸作戦が決行されたならば、台湾のみならず中国側の犠牲者も相当な規模に上る公算だ』、「「多数のアナリストら」による理解として、台湾侵攻は歴史上悪名高いノルマンディー上陸作戦を超え、「非常に危険かつ入り組んだ」武力衝突になるとの見方」、厳しい見方だ。
・『米軍が現実視する「中国軍による基地攻撃」のリスク 台湾と中国間で高まる緊張は、日本人にとってもひとごとではない。新アメリカ安全保障センターは、最近実施したシミュレーションにおいて、戦闘のごく初期段階において中国側が、在日米軍基地に直接攻撃を仕掛けると見込んでいる。CNNは、「この模擬戦争は、中国軍がグアムや日本などにある近場の米軍基地を叩くことから作戦を開始する展開をシミュレートした」としている。 在日米軍基地への先制攻撃により、中国は米軍の出撃を遅らせ、台湾攻撃を進める時間を稼ぐことが可能となる。米空軍本部のヒノテ中将はCNNに対し、中国軍が米軍基地に不意打ちを喰くらわせるおそれは十分にあるとの認識を示した。中国が保有する各種弾道ミサイルは、少なくとも純粋な射程という観点では、近隣の米軍基地を攻撃する能力を有する。 米軍はこのリスクを、現実のものと受け止めているようだ。グアムのアンダーセン空軍基地が破壊されるという非常事態に備え、代替基地の建設に動き出した。米ワー・ゾーン誌は6月15日、中国が同空軍基地を「壊滅」させた場合に備え、米軍が大規模なバックアップ施設の建設に着手したと報じている。 建設先はグアム本島から北東に約170キロ離れたテニアン島の国際空港の敷地内だ。同誌によると計画は10年前から存在したが、今年5月になって建設が本格化した。 グアム防衛論は、ここ数カ月で盛んに議論されるようになった。米防衛・安全保障専門誌の『ディフェンス・ワン』は5月、「グアムはミサイル防衛の強化を必要としている……早急に」との記事を掲載した。記事は、米軍がグアムに重要な潜水艦施設および大規模な空軍基地を有することを念頭に、「グアムが中国にとって魅力的なターゲットであることは容易に理解できる」と論じている。 日本の米軍基地をグアムと完全に同列に論じることはできないが、少なくとも米軍は有事のシナリオとして、台湾へ到達可能な周辺地域の基地を中国が破壊する危険性を視野に入れているようだ』、「グアムのアンダーセン空軍基地が破壊されるという非常事態に備え、代替基地の建設に動き出した」、「建設先はグアム本島から北東に約170キロ離れたテニアン島の国際空港の敷地内」、「米軍」がそこまで備え始めたとは、初めて知った。
・『中国共産党紙の編集長は自信「アメリカと台湾を完全に圧倒」 中台間の緊張は高まるばかりだ。米ワシントンD.C.に本部を構える中東報道研究機関は、中国共産党傘下のグローバル・タイムズの胡こ錫進しゃくしん編集長が5月23日、自身のブログにおいて非常に攻撃的な記事を掲載したと報じている。 問題の記事において胡氏は、「台湾の軍事的支援に固執するならばアメリカは、PLA(中国人民解放軍)との直接衝突という紛れもないリスクに直面することになる」と警告を発した。 胡氏はさらに、「さて、今日の人民解放軍はどうだろうか? わが海軍と空軍の総火力は台湾海峡において、アメリカと台湾の海軍・空軍の火力の合計を完全に圧倒することができる」と述べ、中国側の兵力に大きな自信を示している。 このほか中国側は、冒頭に挙げた訪日中のバイデン氏の発言にも激しく反発している。中国のグローバル・タイムズ紙は6月12日、魏ぎ鳳和ほうわ国務委員兼国防相が、これまで中国が米国に示したなかでも「最も強い警告」を発したと報じた。 魏氏はシンガポールで行った演説を通じ、「中国は間違いなく統一を実現する」と強調し、中国から台湾を分割しようとする者があれば中国軍は最後まで戦うとも発言している』、「魏ぎ鳳和ほうわ国務委員兼国防相」の発言はまさに政治的なようだ。
・『ウクライナ侵攻初期と重なる構図 泥沼化に懸念 大国が小国への侵攻に出る構図は、ロシアによるウクライナ侵攻の泥沼を想起させる。ここ数週間の動きではロシアの優勢が目立つものの、ウクライナ側も当初、ぬかるみの多い領土という地の利を得て善戦した。また、ロシア軍内部に貧弱な兵站ルートなど問題が山積したことで、結果として想定外の長期戦に至っている。 この構図は、中国対台湾にも重なる可能性がある。仮に台湾への武力行使に踏み切った場合、島国・台湾固有の地形に中国軍が足をすくわれる可能性は十分にある。ロシアとは異なり、侵略先との間には台湾海峡が横たわることから、補給にもいっそうの苦闘が予想される。国土を堅守したい台湾側は士気の維持の面でも有利であり、兵士数で上回る中国軍といえど、容易に攻略できるとは限らない。 一方で台湾としても、他国による支援という観点では、ウクライナよりも厳しい事態に直面しかねない。多数の北大西洋条約機構(NATO)加盟国と地続きとなっているウクライナは、隣接諸国からの輸送ルートを確保しやすい状況にある。 反面、海に囲まれ中国ミサイルの射程内に浮かぶ台湾においては、NATOの支援が一定の障壁に阻まれるおそれは否定できない。米軍が「距離の呪縛」に苦しみ、中国側も台湾海峡の攻略に手を焼くとなれば、結果的にロシア・ウクライナ間同様の長期戦へのもつれ込みは必至だ。 中国としても、多大な被害を予期しているとみえる。シンガポールでの演説において中国の魏国防相は、「平和的統一は中国人民の最大の願いである」と述べ、必ずしも武力解決にこだわる姿勢がないと言い添えた。「一つの中国」の固持は既定路線とみられるが、硬軟含めどのような策を繰り出すのか、今後の動向が注目される』、「中国としても、多大な被害を予期しているとみえる。シンガポールでの演説において中国の魏国防相は、「平和的統一は中国人民の最大の願いである」と述べ、必ずしも武力解決にこだわる姿勢がないと言い添えた。「一つの中国」の固持は既定路線とみられるが、硬軟含めどのような策を繰り出すのか、今後の動向が注目される」、「必ずしも武力解決にこだわる姿勢がないと言い添えた」、「平和的統一」のような重要なことも、最後に「言い添え」ることで、実際には軽視していることや、軍事色を薄める狙いだろう。やはり、「中国」の姿勢は要注意だ。
タグ:台湾 (その4)(台湾が韓国をGDPで間もなく逆転!なぜ「永遠のライバル」に勝てるのか、台湾めぐる「戦略的曖昧さ」と「戦略的明確さ」 実際にリスクを高めるのは?、中国軍は最初に日本の米軍基地を爆撃する…米メディアが報じた「中国の台湾侵攻」の悲劇的なシナリオ 台湾海軍の元トップ「われわれに勝機はまったくない」) ダイヤモンド・オンライン 財訊「台湾が韓国をGDPで間もなく逆転!なぜ「永遠のライバル」に勝てるのか」 「1人当たりGDP」は、「2003年に韓国に逆転されて以来、追い付くことができない状態が長く続いてきた。その状況がここにきて、大きく変化」、かつては「台湾」の方が上で、それを取り戻しつつあるようだ。 「中国企業によって韓国の財閥から市場が奪われ、技術力の面でも逆転されるという現象が起きている。韓国経済は対中輸出に依存して成長を遂げてきたが、もはや対中輸出の大きな伸びは望めなくなっている。 韓国経済が壁に突き当たっているのとは対照的に、台湾は米中対立を受けた世界的なサプライチェーンの見直しを経済成長の追い風としている。蔡英文総統が17年に産業革新を推進する政策を導入したことも相まって、台湾企業が中国から回帰しているだけでなく、米グーグルや米マイクロソフトといったグローバル企業も台湾に投資するようになって Newsweek日本版 木村正人氏による「台湾めぐる「戦略的曖昧さ」と「戦略的明確さ」、実際にリスクを高めるのは?」 「ロシアとの核戦争にエスカレートするのを避けるため「米軍をウクライナに派兵するつもりは全くない」と早々と宣言したバイデン氏はロシア軍のウクライナ侵攻にお墨付きを与える格好となった。台湾問題でも直接の軍事介入を頭から否定すれば、同じ間違いを繰り返す。バイデン氏は少なくとも口先では「戦略的曖昧さ」から「戦略的明確さ」に舵を切った」、「バイデン氏はロシア軍のウクライナ侵攻にお墨付きを与える格好」、台湾では同じ過ちを回避したとはいえ、外交上の汚点だ。 「歴代の米大統領がこの「戦略的曖昧さ」を伝統的に維持してきたのは、台湾問題を巡りアメリカが中国との戦争に巻き込まれるリスクを回避したいから」、なるほど。 「アメリカが台湾防衛という「戦略的明確さ」をとれば、台湾独立派が勢いづき、中台関係の緊張が一段と増すかもしれない」、「台湾独立派」の存在が事態をややこしくしているようだ。 「日本は」「台湾有事を日本有事として備え」るべきだろう。 PRESIDENT ONLINE 青葉 やまと氏による「中国軍は最初に日本の米軍基地を爆撃する…米メディアが報じた「中国の台湾侵攻」の悲劇的なシナリオ 台湾海軍の元トップ「われわれに勝機はまったくない」」 「CNN」は「アナリストによる分析をもとに・・・驚くべき答えが・・・(アメリカと同盟国による制止は)不可能である」、悲観的な見方だ。 「中国に近い台湾が戦場となったならば、いかに多くを現地に配備できるかという視点において、中国に一方的に分ぶがあると専門家らはみている。このため記事は、「仮に中国がこの島を手に入れようと決意を固めたならば、おそらくそれは可能だ」と論じている」、「距離の呪縛」は確かに「米軍を苦しめる」ようだ。 「米軍が距離の壁に阻まれれば、当事者国同士の兵力がものをいうことになる。AFP通信は米国防省のデータをもとに、中台間には圧倒的な兵力差が存在すると指摘」、「李喜明元台湾海軍参謀総長はAFP通信に対し、「軍事的な直接対決となれば、われわれに勝機はまったくない」との厳しい認識」、その通りだろう。 「台湾沿岸部の地形について、「防衛側にとって夢のよう」な形状・・・台湾には上陸に適した海岸がわずか14カ所しかなく、さらにこうしたポイントの多くが山や崖に囲まれ、あるいは防衛に適した都市インフラに近接しているためだ。 さらにAFPは、米防衛大学のネイバル・ウォー・カレッジによる分析として、大規模な侵攻に適する期間は毎年5~7月と10月の2回しかない」、「中国軍がこれらの地域で抜かりなく戦闘を展開するためには、複数の地形に対応できるだけの大量の兵器を中国本土から輸送し、さらにそれらを使いこなせる訓練された兵 「「多数のアナリストら」による理解として、台湾侵攻は歴史上悪名高いノルマンディー上陸作戦を超え、「非常に危険かつ入り組んだ」武力衝突になるとの見方」、厳しい見方だ。 「グアムのアンダーセン空軍基地が破壊されるという非常事態に備え、代替基地の建設に動き出した」、「建設先はグアム本島から北東に約170キロ離れたテニアン島の国際空港の敷地内」、「米軍」がそこまで備え始めたとは、初めて知った。 「魏ぎ鳳和ほうわ国務委員兼国防相」の発言はまさに政治的なようだ。 「中国としても、多大な被害を予期しているとみえる。シンガポールでの演説において中国の魏国防相は、「平和的統一は中国人民の最大の願いである」と述べ、必ずしも武力解決にこだわる姿勢がないと言い添えた。「一つの中国」の固持は既定路線とみられるが、硬軟含めどのような策を繰り出すのか、今後の動向が注目される」、「必ずしも武力解決にこだわる姿勢がないと言い添えた」、「平和的統一」のような重要なことも、最後に「言い添え」ることで、実際には軽視していることや、軍事色を薄める狙いだろう。やはり、「中国」の姿勢は要注意だ。