キシダノミクス(その5)(羊頭狗肉の岸田政権 「骨太の方針」と「新しい資本主義」の空虚さ このままでは「失われた4年」が来る、資産所得倍増を妨げる「助言したくてもできない問題」の解決法) [国内政治]
キシダノミクスについては、5月23日に取上げた。今日は、(その5)(羊頭狗肉の岸田政権 「骨太の方針」と「新しい資本主義」の空虚さ このままでは「失われた4年」が来る、資産所得倍増を妨げる「助言したくてもできない問題」の解決法)である。
先ずは、本年6月14日付け現代ビジネスが掲載した経済ジャーナリストの町田 徹氏による「羊頭狗肉の岸田政権 「骨太の方針」と「新しい資本主義」の空虚さ このままでは「失われた4年」が来る」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/96238?imp=0
・『「骨太の方針」とは何か 「岸田総理の『新しい資本主義』は日本経済を改革しないだろう」 今年の世界の10大リスクの第1位に『中国のゼロコロナ政策』をあげて上海のロックダウン(都市封鎖)などを予見したことで知られる、米コンサルティング会社ユーラシア・グループは、クライアントに送付したダイレクトメールのタイトルにこう掲げて、岸田政権の「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」を酷評した。 「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」だけでなく、岸田政権が同じ6月7日に閣議決定した今年の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針2022)の評判も芳しくない。 なぜ、それほどまでに「骨太の方針」と「新しい資本主義」の評判が芳しくないのか考えてみたい。 まずは、「骨太の方針」だ。毎年1回策定される「骨太の方針」は、小泉純一郎政権下の2001年度の第1回以来、各省庁の利害や与党の反対意見を押さえて、やらなければならい改革を官邸主導で進めるための指針と位置づけられてきた。 総理が議長を務める「経済財政諮問会議」が議論の場で、かつての財務大臣、宮沢喜一氏がその場での議論を「骨太」と称したことから、略称として「骨太の方針」が定着したこともよく知られている。 つまり、「骨太の方針」は、時の政権が重点的に取り組もうとする政策課題やその方向性、実現の手法などを毎年6月ごろに明確にしておき、これに沿う形で、その年の年末の予算編成を進めさせる役割を担っているからこそ、その内容が毎回、大きな関心を集めてきたわけだ。 そうした目線で捉えれば、総花的になったと言われる昨今の「骨太の方針」の中でも、「骨太の方針2022」は群を抜いて総花的なものにとどまった。 菅前政権が取りまとめた昨年版も、生温さがなかったわけではないが、それでも脱・炭素社会の実現に向けては、「2050年カーボンニュートラル、2030年度のGHG削減目標の実現に向け、(1)脱炭素を軸として成長に資する政策を推進、(2)再生可能エネルギーの主力電源化を徹底、(3)公的部門の先導により必要な財源を確保しながら脱炭素実現を徹底」といった基本方針を明記して、「再生可能エネルギーの主力電源化を徹底し、再生可能エネルギーに最優先の原則で取り組み、国民負担の抑制と地域との共生を図りながら最大限の導入を促す」と毅然とした方針を具体的に示していた。 ところが、今年版「骨太の方針2022」は、岸田総理が主張してきたはずのものとはやや趣の違う政策がふんだんに盛り込まれて、これが従来の主張とは異なるため、国策の優先順位が見えづらくなった。それゆえ、全体としての関心が薄れてしまい、評価が低下した格好なのである。このことは、総理が自民党総裁選以来拘ってきた金看板の「新しい資本主義」も同じ傾向にある』、「ユーラシア・グループは、クライアントに送付したダイレクトメールのタイトルにこう掲げて、岸田政権の「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」を酷評」、「「ユーラシア・グループ」からまで「酷評」されるも当然だ。
・『「焦点ボケ」の政策 では、具体的に、焦点ボケになった政策を見ていこう。 第1は、当初、総理の出身派閥である宏池会の伝統的な姿勢としても相応の拘りが貫かれるとみられていた「財政の健全化」だ。 5章建ての第1章で、まず、「新型コロナウイルス感染症、ロシアのウクライナ侵略、気候変動などによって、日本を取り巻く環境が大きく変化」する一方で、国内的にも「輸入資源価格の高騰、人口減少・少子高齢化、潜在成長率の停滞、災害の頻発化・激甚化など難局が同時かつ複合的に押し寄せている」と記述。 その文脈に沿って、第1段階として、「総合緊急対策を講じ、国民生活や経済への更なる打撃を抑制」したうえで、第2段階で「骨太方針2022や新しい資本主義に向けたグランドデザイン及び実行計画をジャンプスタートさせるための総合的な方策を早急に具体化し、実行する」と述べたことで、すでに政権発足から9カ月が経っているにもかかわらず、対応をいきなり目先のことに絞り込み、本質的なことはこれから考えると先送りしてしまった。 「危機に対する必要な財政支出は躊躇なく行い、万全を期す。経済あっての財政であり、順番を間違えてはならない。経済をしっかり立て直す。そして、財政健全化に向けて取り組む」と強調し、財政健全化よりも、安倍元総理のアベノミクスの3本の矢のひとつだった積極財政を当面、優先する姿勢も露わになっている。 「骨太の方針2022」は、1章と4章で「財政健全化の旗を降ろさず、これまでの目標に取り組む」と盛り込んで見せたものの、政府が定めた基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化達成の「2025年度」という目標が消し去られてしまった問題もある。 総裁選で岸田氏を支援した自民党内の他の派閥への配慮は明らかで、岸田総理の遠慮もしくは“指導力”不足から、自身の派閥の論理を通せなかったことが伺える』、「財政健全化よりも、安倍元総理のアベノミクスの3本の矢のひとつだった積極財政を当面、優先する姿勢も露わになっている」、「財政健全化よりも、安倍元総理のアベノミクスの3本の矢のひとつだった積極財政を当面、優先する姿勢も露わになっている」、なるほど。
・『格差是正に切り込んでいない 次に、第2章をみてみよう。「新しい資本主義に向けた改革」というタイトルを冠し、「人への投資と分配」という項目もあり、総理の公約の中で最も多くの国民が期待を寄せていた「分配」について、詳述しているはずの章である。が、実際に並んでいるのは、人材の再教育・転職支援や、企業統治の改革、最低賃金の引き上げといった施策だ。直接的に、企業が稼いだ収益と貯め込んできた内部留保の従業員への分配という形の見直しや、所得・資産の格差是正に切り込む政策は見当たらない。 もちろん、人材の再教育に関して、「2024 年度までの3年間に4000 億円規模の予算を投入する施策パッケージを講じて、働く人が自らの意思でスキルアップし、デジタルなど成長分野へ移動できるよう強力に支援する」「対象となるのは、およそ100万人と試算」などとしており、将来、今よりも高い所得を得られる人が増えるかもしれない政策は存在している。 少額投資非課税制度(NISA)や個人型確定拠出年金(iDeCo)の改革も盛り込まれた。これらは「貯蓄よりも投資」で企業に資金を融通して成長を促し、結果として、投資家が自力で資産形成することを後押ししようという政策だ。 当初掲げていた金融資産や取引の見直しのように高額所得者や資産家などへの課税措置を基本とする再分配策に比べれば、目標の実現までの道のりがかなり迂遠な政策と言わざるを得ない。そもそも十分な原資があるのか、個別の投資が成功する保証はないといった突っ込みどころもある』、「少額投資非課税制度・・・や個人型確定拠出年金・・・の改革も盛り込まれた。これらは「貯蓄よりも投資」で企業に資金を融通して成長を促し、結果として、投資家が自力で資産形成することを後押ししようという政策だ。 当初掲げていた金融資産や取引の見直しのように高額所得者や資産家などへの課税措置を基本とする再分配策に比べれば、目標の実現までの道のりがかなり迂遠な政策と言わざるを得ない」、「迂遠」だが「再分配案」よりは無難だ。
・『世界の潮流に逆行 企業統治改革では、「人的投資が企業の持続的な価値創造の基盤である点について株主との共通の理解を作り、今年中に非財務情報の開示ルールを策定するとともに、四半期開示の見直しを行う」ほか、「男女の賃金格差の是正に向けて企業の開示ルールの見直しにも取り組む」とした。 人的投資の共通理解や男女格差の開示は間違った方向ではないが、これらも制度改革がいつ実を結ぶのか展望を示していない。 この中で四半期開示の見直しはやや異質だ。ディスクロージャーの後退となる懸念が大きく、明らかに世界や時代の潮流に逆行するものとして、外国人投資家の日本市場離れリスクが大きい。 決意のほどが疑わしいのが、最低賃金の引き上げだ。「地域間格差にも配慮しながら、できる限り早期に最低賃金の全国加重平均が1000円以上となることを目指し、引き上げに取り組む」と、実現時期の目標を記載しなかった。 現在、最低賃金が1000円を超えているのは、東京都の1041円と神奈川県の1040円だけ。全国平均は930円だ。800円台にとどまる37道県をいつまでにどうするか明記してほしかったところである。今年版「骨太の方針2022」の特色だが、肝心の実現目標を記しておらず、踏み込み不足の感が拭えない。 第3章は、「外交、安全保障、経済安全保障」などに言及した。ここでも優柔不断ぶりが浮き彫りになっている。 最大のポイントは、ロシア軍のウクライナ侵攻、東、南シナ海での中国軍の増強、北朝鮮の相次ぐ弾道ミサイル発射で喫近の課題となっている防衛力の強化について、「防衛力を5年以内に抜本的に強化する」という文言しか記さなかったことだろう。 これまでの発言ぶりからも、総理の念頭には「GDP(国内総生産)比で2%以上への拡大」という防衛費の増額目標があるとみられるが、具体的に言及せず、EUなどがGDP比2%を目指していることを紹介するにとどまった。今までとどう違う戦略で、どんな装備を整備するのかも不明だ。これでは『骨太』らしい決意のほどが感じられない』、「最低賃金の全国加重平均が1000円以上となることを目指し、引き上げに取り組む」と、実現時期の目標を記載しなかった」、「総理の念頭には「GDP(国内総生産)比で2%以上への拡大」という防衛費の増額目標があるとみられるが、具体的に言及せず、EUなどがGDP比2%を目指していることを紹介するにとどまった」、政策のフリーハンドを残したいのだろうが、これでは『骨太』の意味がなくなってしまう。
・『踏み込めない岸田総理 紙幅も尽きてきたので、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」についても、手短にコメントしておきたい。 この計画は、経済成長とからめて分配を目指すとして、「人」「科学技術・イノベーション」「スタートアップ」「グリーン、デジタル」の4つについて官民あげて重点的な投資を行うとした。「骨太の方針2022」と同様に、直接的な再分配の手法をとらずに、所得資産の倍増を目指すというわけだ。激変を避ける現実的な政策哲学と言うことはできる。 しかし、この計画では、例えば、日本の最大の課題のひとつである「人口減少」の打開策が抜け落ちている。地方の振興で都市部からの移住を目指すとした部分があるぐらいで、出生率の向上策や子育て・教育支援、そして大胆な移民受け入れ策など、外部性の大きい社会的課題に切り込んでいないのだ。 同様に、踏み込み不足は、財政再建についてもみられる。 冒頭で紹介したユーラシア・グループのリポートは、新しい資本主義を「大胆な名前にもかかわらず、実現しないだろう」と、「羊頭狗肉」と言わんばかりに皮肉っている。実際の内容は、こうした酷評に反論はしづらいものと言わざるを得ないのだ。 新型コロナウイルスの急激な感染再拡大でもない限り、その可能性は高いとみられているが、この夏の参議院選挙に勝つことができれば、岸田内閣は安泰だという見方が根強い。その後3年前後は、解散でもない限り、国政選挙がないからだ。こうしたことが、岸田政権にとっては、野党に付け込む隙を与えたくないとの思惑に繋がっているのだろう。 加えて、政権発足時の自民党各派閥の応援への配慮や、決断が苦手な総理の人柄が相まって、「骨太の方針2022」と「新しい資本主義グランドデザイン及び実行計画」の両方が踏み込み不足なものにとどまった感が拭えない。が、これで、岸田政権が通算4年前後も続くことになれば、その間が「失われた4年前後」になりかねない。こう考えれば、国民としては、強い危機感を覚えずにいられない』、「夏の参議院選挙に勝つことができれば、岸田内閣は安泰だという見方が根強い。その後3年前後は、解散でもない限り、国政選挙がないからだ。こうしたことが、岸田政権にとっては、野党に付け込む隙を与えたくないとの思惑に繋がっているのだろう」、「野党に付け込む隙を与えたくないとの思惑」、なんとみみっちいことをするのだろう。もっと正々堂々と真向勝負をすべきだろう。
次に、6月15日付けダイモンド・オンラインが掲載した経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏による「資産所得倍増を妨げる「助言したくてもできない問題」の解決法」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/304793
・『岸田政権が掲げる「資産所得倍増」を実現するには、NISAやiDeCoの拡充だけでは不十分だ。お金の話に詳しくない人々のための「マネーのアシスタント」が必要になるからだ。しかし、それを妨げる「助言したくてもできない」という問題が横たわっている。その解決法を提案したい』、「政策提案」とは「山崎氏」にしては珍しい。
・『NISAやiDeCoの拡充だけでは資産所得倍増には不十分な理由 岸田文雄首相が「資産所得倍増」と発言し、そのための具体的なプランが年末までに策定される。一般NISA(少額投資非課税制度)ないし、つみたてNISAの利用枠の拡大が目玉になるのではないかと目されているが、NISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)の利用枠の拡充だけでは不十分だ。 制度がよく分からない、手続きが面倒だ、何に投資したらいいのかが分からない、という個人が少なくないからだ。彼らのための「マネーのアシスタント」が必要だ。 例えば、仮に先週の本連載『資産所得倍増を実現する「誰にもフェア」ないい方法があった』で書いたように、つみたてNISAの利用枠が大幅に拡大されたとしよう。そこで以下のようなプロフィールの架空の人物Aさんを考えてみたい。 Aさんは今年65歳で退職するが、まだまだ元気で知り合いの会社の顧問として働く予定だ。現役時代よりも金額は減るがしばらく定期的な収入がある。利用枠が拡大されるというつみたてNISAに興味を持った。しかし、具体的にどうしたらいいのかが分からない』、「制度がよく分からない、手続きが面倒だ、何に投資したらいいのかが分からない、という個人が少なくないからだ。彼らのための「マネーのアシスタント」が必要」、その通りだ。
・『シナリオ(1)金融機関の窓口に行った場合 仮にAさんが、取引のある銀行や証券会社の窓口に行って、「つみたてNISAのやり方を教えてほしい」と言ったらどうなるだろうか。 控え目な予想は、やや手数料が高めの投資信託に誘導されるのではないかというあたりだ。つみたてNISA自体は金融庁が不適切な商品を多数除外しているので「かなり安心」だ。それでも顧客側から見て無駄に(相対的に)手数料の高い商品が存在する。 もう少し悲観的だが現実的な予想は、つみたてNISAで積み立てようと思っていた金額の一部を生命保険に誘導されるような事態だ。さらに、もっとありそうな話は、退職金を投資信託や外貨建ての生命保険などの高手数料商品で運用するように勧められることだ。特に相談相手が銀行の場合、相手はAさんの預金口座に退職金が振り込まれたことを知っている。 Aさんは、つみたてNISAの手続きが億劫だというくらいのマネーリテラシーの持ち主だ。そのため、「こちらの商品の方がもっといい」と金融機関の専門家に言われたら、十分な反論ができずに取り込まれてしまう可能性が小さくない』、確かに「Aさん」程度の「マネーリテラシーの持ち主」であれば、「金融機関の専門家に言われたら、十分な反論ができずに取り込まれてしまう可能性が小さくない」、その通りだ。
・『シナリオ(2)悪徳FPに相談した場合 特定の金融機関に相談に行くと、ベストな条件を持っている金融機関を選べないかもしれない――。そう思ってAさんは、書籍を出していてメディア出演もあるようなファイナンシャルプランナー(FP)に相談に行くとしよう。アドバイザーに相談しようと思いついたことは悪くない。Aさんは、よく気が付いた。 しかし、相談する相手選びを間違える。相談のついでに生命保険を売って、保険会社から報酬をもらう「悪徳FP」に相談してしまった(行為自体は違法ではないが、相談と商品販売を併営することは利益相反を伴うので、筆者はこの種のFPを「悪徳FP」だと考えている)。) Aさんは、ライフプラン分析にかこつけた世間話で情報収集されて、「つみたてNISAの投資商品よりも貯蓄性の生命保険などの方がライフスタイルに合っている」などと丸め込まれて、保険営業の餌食になる可能性がある。 Aさんが、つみたてNISAまで無事にたどり着く可能性は小さいのではないか』、「Aさんは、」「保険営業の餌食になる可能性がある。 Aさんが、つみたてNISAまで無事にたどり着く可能性は小さい」、その通りだ。
・『シナリオ(3)クリーンで親切なアドバイザーに相談した場合 Aさんは、賢くも金融機関や生命保険を取り扱う悪徳FPを避けて、独立したアドバイザーに相談料を払って、つみたてNISAの相談をしたとしよう。アドバイザーは、後述のように必ずしもFPでなくて構わない。ともかく、相談の相手としては、知識と心根がいい人にたどり着いたとしよう。 アドバイザーは、もちろんつみたてNISAの仕組みや金融機関の選び方について丁寧に教えてくれるだろう。 そして、インターネット上の金融機関を利用するのがいいという結論を2人で得たとしよう。その場合、証券口座やつみたてNISAの口座の開設手続きについても、相談者の問いに逐一答えて手伝ってくれるだろう。 また、Aさんがどうしても対面の金融機関でつみたてNISAの口座開設をしたいと言っている場合、Aさんに付き添って金融機関の窓口まで同行してくれるかもしれない。 投資家の裾野を広げるためには、こうした善意のお手伝いが必要だ。このアドバイザーの仕事ぶりとしては丁寧で好ましい。しかし、ここで困った問題が生じる』、「クリーンで親切なアドバイザーに相談した場合」でも「困った問題が生じる」とはどういうことだろう。
・『アドバイザーが抱える矛盾 一番知りたいことを教えてはいけない Aさんは、当然「では、私はどの商品を幾ら買い付けることにしたらいいのでしょうか?」とアドバイザーに聞くだろう。当然の疑問だ。 ところが、ここでアドバイザーは、個別の投資銘柄とその売買の具体的な数量を顧客にアドバイスしていけない。そのアドバイスは投資顧問業になり、法に抵触するからだ。少なくとも報酬をもらって業務として行ってはいけない。 加えてAさんは、退職金についても運用のアドバイスを求めるかもしれない。「金融機関が勧める投資信託、生命保険、外貨預金はダメだ」といったことを理由を含めて教えてあげたり、Aさんの人生計画と資金計画を分析してアドバイスしてあげたりすることは違法ではない。 ただ、Aさんに「では、私はどの投資信託(またはETF〈上場投資信託〉)を買ったらいいのかなあ。教えてくださいよ」と聞かれたときに、ルール上は「スミマセン、自分で考えてください」と言うしかない。 例えば、「世界株のインデックスファンドで手数料が最も安いものを調べて、いいと思う金額だけ買うといい」というくらいに答えたら違法にはならないだろう。しかし、ほんの少し前まで親切だったアドバイザーが急によそよそしくなる。 法的に問題が起こらないようにAさんに具体的な商品への投資をアドバイスしようとすると、アドバイザーは最低限、助言業務の投資顧問業登録を行っているのでなければならない。 登録は会社で行うのが普通だが、供託金が必要だし、法律に対応した帳簿の整備等が必要だ。コンプライアンスの担当者を置かなければならない場合もあるし、監督当局の検査が入るケースもある。コストと手間は大変だ。 親切心から運用商品まで含めてアドバイスしてもいいと思うアドバイザーにとって、投資顧問業に関するルールが制約になっている』、「投資顧問業に関するルールが制約になっている」、なるほど。
・『親切なアドバイザーを悩ませる無意味な参入障壁 資産の運用を手伝うサービスには、質(内容)・量(金額)両面でかなりのバリエーションがある。 法人や富裕層個人の大きな金額の資産を預かって(通常は信託銀行に資産を預ける)、その運用行為(通常は信託銀行に「運用指図」をする)をアドバイザー自身が実行するような運用行為は、投資一任業務の免許を持った投資顧問業者が行う。これは妥当だろう。 次に、投資の内容をアドバイスする業務は、投資助言業の免許を持った投資顧問業者が行うことになっている。アドバイスとされるものの内容は、現実の判定において微妙だが、具体的な投資銘柄と数量を伴う売買のアドバイスは「投資助言業」とされる可能性がある。 こうしたルールが現実にどの程度フェアに適用されているのかという別の問題もあるが、お金のアドバイスを仕事にしようとする人は、この問題を自分にとって大きなリスクの問題として意識しなければならないのが現実だ。 例えば、古くからある株式の銘柄の売り買いをアドバイスするレポートを売るようなビジネスをしている人も、念のため助言の投資顧問業登録をする場合がある。また、顧客に詳しい運用アドバイスをしようとするFPは、自分の会社で投資顧問業の登録をするか、投資顧問登録を行っている会社に所属するか等のリスク対策が必要になる。先の設例の「クリーンで親切なアドバイザー」が善意のサービスの最後でつまずく原因でもある。 助言の投資顧問業登録のコストと手間が、アドバイスや情報・サービスの提供に対して無益な参入障壁になっている。 身近すぎる例えで恐縮だが、読者は筆者に資産運用の相談をしたいと思うだろうか。 筆者は、他人の資産運用についてアドバイスする親切心を持つことがある。時間があれば相談に乗ってもいい。しかし、投資顧問業の登録はやりたくない。だから謝礼は受け取れないし、受け取らない。 すると、筆者の運用アドバイスはビジネス化されることがなく、筆者はそこに多くの時間を使うことができないから、広がりを持たない。似たような事情を持つ人は少なくないはずだ。 なお、筆者自身は個人向けのアドバイスを自分のビジネスにすることに向いていないだろうと自己評価している。当面はアドバイスの元ネタを考えることの方に注力したい』、「助言の投資顧問業登録のコストと手間が、アドバイスや情報・サービスの提供に対して無益な参入障壁になっている」、「筆者は、他人の資産運用についてアドバイスする親切心を持つことがある。時間があれば相談に乗ってもいい。しかし、投資顧問業の登録はやりたくない。だから謝礼は受け取れないし、受け取らない。 すると、筆者の運用アドバイスはビジネス化されることがなく、筆者はそこに多くの時間を使うことができないから、広がりを持たない。似たような事情を持つ人は少なくないはずだ」、なるほど。
・『お金の助言をビジネスにできる「運転免許並み」のアドバイス資格を提案 前述のような「助言したくてもできない」という状況を踏まえて、投資顧問業よりも範囲が限定されたアドバイザーの資格を作ることを提案したい。多くの国民が金融資産を有効活用するための「お手伝い」について、報酬をもらって行うことができるようにするためだ。 資格の略称を「マネー・アシスタント」(MA)としておこう。以下のような内容でどうだろうか。 (1)MAは顧客に、金融全般や関係する制度に対する知識や相談の提供、手続きの手伝い、「限定された範囲」(詳細は後述)での資産運用のアドバイスを業として行うことができる。例えば、顧客にNISAやiDeCoについて説明したり、投資口座の開設の手伝いをしたり、金融機関に同行したり、限定された運用アドバイスを提供したりして、報酬をもらうことができる。 (2)MA資格の取得のためには、既定のコマ数の講習を受けて簡単なテストに合格すればいい。イメージは自動車の普通運転免許の学科試験を簡単にした程度のものだ。取得が難しい資格にはしない方がいい。「お金について分かっている」と自認する人が気楽に取得できる資格にしたい。理屈上、証券外務員資格よりもずっと易しい内容でいいはずだ。 (3)MA資格は2年ごとに更新を要する。更新には2コマ程度の講習の受講が必要となる。資格の更新には講座の受講だけでいい。例えば、金融に関する新しい状況と知識の確認と、法令の確認や顧客とのトラブル事例の説明、などがあるといいだろう。ここでも、筆者にとっては自動車の運転免許がモデルだ(例えば、調理師など他の資格がよりモデルにふさわしい可能性はあるが)。 (4)MA資格の保有者は、金融庁にMA登録を行うことによって、MAを業として行うことができるようになる。ただしMA業は、金融商品・保険などの取り扱いと兼業できない。金融機関の職員はMA資格を取ることができるが、MA業を行うことができるのは退職後だ。また、MAが商品紹介の謝礼・手数料のキックバックなどを金融機関から受け取ることは禁止行為とする。 (5)MA業の登録者は、金融庁のホームページで公表される。MAと取引した顧客は、違反事例(もしあれば)の報告やMAの業務に対する満足度の評価を金融庁に送ることができる。報告者の本人確認はマイナンバーで行う。違反や評価の情報は金融庁が適切に管理し、必要と認める場合は資格の停止、警告、評価の発表(優良業者も要注意業者も)などを行う。ビジネスを行うMAは顧客に評価され、金融庁に管理・監督される。 われわれの多くは、自動車の運転免許をきっかけに交通法規や自動車の仕組みを知っている。しかし、残念ながら多くの大人が正しい金融知識を持っていない。大人に金融知識を広めるには、運転免許的な仕組みの提供が効果的だろう。 また、資産形成そのものの普及のためには、おびただしい数のアドバイザーやアシスタントが必要になる。そして、正しい金融知識の普及のためには大人同士が教え合う仕組みが有効だ。「正しい内容」を定義し教育することとともにそこにビジネス上のインセンティブを与えるといい。 なおMAの資格は、FPの資格とは切り離して距離を置いたものとして運営するべきだ。FPの資格の運営者は、金融機関や保険会社とのビジネス関係が深く、あるべきMA業とは深刻な利益相反を抱えているからだ。MA資格に必要な知識は、金融庁が責任を持って定義し提供すべきだろう。金融業界関係者やビジネスを知らない学者などによる「有識者会議」は必要ない。 一方、もちろん独立したFPがMAを取ってMA業を営むことには何の問題もない』、「MA資格」の提案は説得力がある。
・『「限定された資産運用アドバイス」の範囲をどこに定めるべきか MA制度ができたとして、MAが業として行っていい金融資産運用アドバイスの範囲をどのように定めるべきだろうか。 いずれにしても、アドバイスの対象にしていい運用商品は金融庁がリストアップして指定することになるだろう。 例えば、リスク資産として対象にできる商品範囲の可能性を挙げてみよう。 (1)アドバイスできるリスク資産は実質一つ。例えば、公的年金と同等の資産配分(今なら国内外の株・債券に投資する「4資産均等」)を持つバランスファンド、または全世界株式のインデックスファンドなどが考えられる。筆者は全世界株式のインデックスファンドを推したいが、日本株に投資させたい向きが多い政治的な力によって、前者に決まる方がありそうな展開だ。 (2)「4資産均等」「全世界株式」「外国株式」「国内株式」、など大きく異ならない選択肢が実質数個あって、それぞれに該当する個別商品を金融庁がリストアップする。低廉な手数料のインデックスファンドが中心で、つみたてNISAの適格商品よりも範囲の狭いものとなる。なお、対面営業の証券会社では低廉な手数料の商品を窓口で扱っていない可能性があるので、適格とされる商品のリストにはETFも入れておきたい。 (3)つみたてNISAの適格商品はアドバイスしていいとする。これに、上記の理由で適当なETFを加える程度の商品範囲はどうか。このくらいまで範囲を広げるとアドバイスにかなりの自由度が生まれるが、MA資格の当面の限界だろう。なお、つみたてNISAの適格商品の基準は適宜見直して入れ替えていい。また、利用者には5年に一度程度の投資対象商品のスイッチングを認めて、商品間の競争を促すといいのではないだろうか。 筆者の個人的な意見としては、MA自体は知識として、例えば手数料の重要性等を教育されているので、最も選択肢が多い(3)でいいのではないかと思うが、現実的には(1)に近いものが無難なのかもしれない。初級資格と上級資格に分けてアドバイス可能な範囲に差を設けるのも一案だろう』、資産運用業務の第一人者らしい現実味溢れる提案で、私には異論を差し挟む余地は、当然のことながら全くない。
先ずは、本年6月14日付け現代ビジネスが掲載した経済ジャーナリストの町田 徹氏による「羊頭狗肉の岸田政権 「骨太の方針」と「新しい資本主義」の空虚さ このままでは「失われた4年」が来る」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/96238?imp=0
・『「骨太の方針」とは何か 「岸田総理の『新しい資本主義』は日本経済を改革しないだろう」 今年の世界の10大リスクの第1位に『中国のゼロコロナ政策』をあげて上海のロックダウン(都市封鎖)などを予見したことで知られる、米コンサルティング会社ユーラシア・グループは、クライアントに送付したダイレクトメールのタイトルにこう掲げて、岸田政権の「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」を酷評した。 「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」だけでなく、岸田政権が同じ6月7日に閣議決定した今年の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針2022)の評判も芳しくない。 なぜ、それほどまでに「骨太の方針」と「新しい資本主義」の評判が芳しくないのか考えてみたい。 まずは、「骨太の方針」だ。毎年1回策定される「骨太の方針」は、小泉純一郎政権下の2001年度の第1回以来、各省庁の利害や与党の反対意見を押さえて、やらなければならい改革を官邸主導で進めるための指針と位置づけられてきた。 総理が議長を務める「経済財政諮問会議」が議論の場で、かつての財務大臣、宮沢喜一氏がその場での議論を「骨太」と称したことから、略称として「骨太の方針」が定着したこともよく知られている。 つまり、「骨太の方針」は、時の政権が重点的に取り組もうとする政策課題やその方向性、実現の手法などを毎年6月ごろに明確にしておき、これに沿う形で、その年の年末の予算編成を進めさせる役割を担っているからこそ、その内容が毎回、大きな関心を集めてきたわけだ。 そうした目線で捉えれば、総花的になったと言われる昨今の「骨太の方針」の中でも、「骨太の方針2022」は群を抜いて総花的なものにとどまった。 菅前政権が取りまとめた昨年版も、生温さがなかったわけではないが、それでも脱・炭素社会の実現に向けては、「2050年カーボンニュートラル、2030年度のGHG削減目標の実現に向け、(1)脱炭素を軸として成長に資する政策を推進、(2)再生可能エネルギーの主力電源化を徹底、(3)公的部門の先導により必要な財源を確保しながら脱炭素実現を徹底」といった基本方針を明記して、「再生可能エネルギーの主力電源化を徹底し、再生可能エネルギーに最優先の原則で取り組み、国民負担の抑制と地域との共生を図りながら最大限の導入を促す」と毅然とした方針を具体的に示していた。 ところが、今年版「骨太の方針2022」は、岸田総理が主張してきたはずのものとはやや趣の違う政策がふんだんに盛り込まれて、これが従来の主張とは異なるため、国策の優先順位が見えづらくなった。それゆえ、全体としての関心が薄れてしまい、評価が低下した格好なのである。このことは、総理が自民党総裁選以来拘ってきた金看板の「新しい資本主義」も同じ傾向にある』、「ユーラシア・グループは、クライアントに送付したダイレクトメールのタイトルにこう掲げて、岸田政権の「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」を酷評」、「「ユーラシア・グループ」からまで「酷評」されるも当然だ。
・『「焦点ボケ」の政策 では、具体的に、焦点ボケになった政策を見ていこう。 第1は、当初、総理の出身派閥である宏池会の伝統的な姿勢としても相応の拘りが貫かれるとみられていた「財政の健全化」だ。 5章建ての第1章で、まず、「新型コロナウイルス感染症、ロシアのウクライナ侵略、気候変動などによって、日本を取り巻く環境が大きく変化」する一方で、国内的にも「輸入資源価格の高騰、人口減少・少子高齢化、潜在成長率の停滞、災害の頻発化・激甚化など難局が同時かつ複合的に押し寄せている」と記述。 その文脈に沿って、第1段階として、「総合緊急対策を講じ、国民生活や経済への更なる打撃を抑制」したうえで、第2段階で「骨太方針2022や新しい資本主義に向けたグランドデザイン及び実行計画をジャンプスタートさせるための総合的な方策を早急に具体化し、実行する」と述べたことで、すでに政権発足から9カ月が経っているにもかかわらず、対応をいきなり目先のことに絞り込み、本質的なことはこれから考えると先送りしてしまった。 「危機に対する必要な財政支出は躊躇なく行い、万全を期す。経済あっての財政であり、順番を間違えてはならない。経済をしっかり立て直す。そして、財政健全化に向けて取り組む」と強調し、財政健全化よりも、安倍元総理のアベノミクスの3本の矢のひとつだった積極財政を当面、優先する姿勢も露わになっている。 「骨太の方針2022」は、1章と4章で「財政健全化の旗を降ろさず、これまでの目標に取り組む」と盛り込んで見せたものの、政府が定めた基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化達成の「2025年度」という目標が消し去られてしまった問題もある。 総裁選で岸田氏を支援した自民党内の他の派閥への配慮は明らかで、岸田総理の遠慮もしくは“指導力”不足から、自身の派閥の論理を通せなかったことが伺える』、「財政健全化よりも、安倍元総理のアベノミクスの3本の矢のひとつだった積極財政を当面、優先する姿勢も露わになっている」、「財政健全化よりも、安倍元総理のアベノミクスの3本の矢のひとつだった積極財政を当面、優先する姿勢も露わになっている」、なるほど。
・『格差是正に切り込んでいない 次に、第2章をみてみよう。「新しい資本主義に向けた改革」というタイトルを冠し、「人への投資と分配」という項目もあり、総理の公約の中で最も多くの国民が期待を寄せていた「分配」について、詳述しているはずの章である。が、実際に並んでいるのは、人材の再教育・転職支援や、企業統治の改革、最低賃金の引き上げといった施策だ。直接的に、企業が稼いだ収益と貯め込んできた内部留保の従業員への分配という形の見直しや、所得・資産の格差是正に切り込む政策は見当たらない。 もちろん、人材の再教育に関して、「2024 年度までの3年間に4000 億円規模の予算を投入する施策パッケージを講じて、働く人が自らの意思でスキルアップし、デジタルなど成長分野へ移動できるよう強力に支援する」「対象となるのは、およそ100万人と試算」などとしており、将来、今よりも高い所得を得られる人が増えるかもしれない政策は存在している。 少額投資非課税制度(NISA)や個人型確定拠出年金(iDeCo)の改革も盛り込まれた。これらは「貯蓄よりも投資」で企業に資金を融通して成長を促し、結果として、投資家が自力で資産形成することを後押ししようという政策だ。 当初掲げていた金融資産や取引の見直しのように高額所得者や資産家などへの課税措置を基本とする再分配策に比べれば、目標の実現までの道のりがかなり迂遠な政策と言わざるを得ない。そもそも十分な原資があるのか、個別の投資が成功する保証はないといった突っ込みどころもある』、「少額投資非課税制度・・・や個人型確定拠出年金・・・の改革も盛り込まれた。これらは「貯蓄よりも投資」で企業に資金を融通して成長を促し、結果として、投資家が自力で資産形成することを後押ししようという政策だ。 当初掲げていた金融資産や取引の見直しのように高額所得者や資産家などへの課税措置を基本とする再分配策に比べれば、目標の実現までの道のりがかなり迂遠な政策と言わざるを得ない」、「迂遠」だが「再分配案」よりは無難だ。
・『世界の潮流に逆行 企業統治改革では、「人的投資が企業の持続的な価値創造の基盤である点について株主との共通の理解を作り、今年中に非財務情報の開示ルールを策定するとともに、四半期開示の見直しを行う」ほか、「男女の賃金格差の是正に向けて企業の開示ルールの見直しにも取り組む」とした。 人的投資の共通理解や男女格差の開示は間違った方向ではないが、これらも制度改革がいつ実を結ぶのか展望を示していない。 この中で四半期開示の見直しはやや異質だ。ディスクロージャーの後退となる懸念が大きく、明らかに世界や時代の潮流に逆行するものとして、外国人投資家の日本市場離れリスクが大きい。 決意のほどが疑わしいのが、最低賃金の引き上げだ。「地域間格差にも配慮しながら、できる限り早期に最低賃金の全国加重平均が1000円以上となることを目指し、引き上げに取り組む」と、実現時期の目標を記載しなかった。 現在、最低賃金が1000円を超えているのは、東京都の1041円と神奈川県の1040円だけ。全国平均は930円だ。800円台にとどまる37道県をいつまでにどうするか明記してほしかったところである。今年版「骨太の方針2022」の特色だが、肝心の実現目標を記しておらず、踏み込み不足の感が拭えない。 第3章は、「外交、安全保障、経済安全保障」などに言及した。ここでも優柔不断ぶりが浮き彫りになっている。 最大のポイントは、ロシア軍のウクライナ侵攻、東、南シナ海での中国軍の増強、北朝鮮の相次ぐ弾道ミサイル発射で喫近の課題となっている防衛力の強化について、「防衛力を5年以内に抜本的に強化する」という文言しか記さなかったことだろう。 これまでの発言ぶりからも、総理の念頭には「GDP(国内総生産)比で2%以上への拡大」という防衛費の増額目標があるとみられるが、具体的に言及せず、EUなどがGDP比2%を目指していることを紹介するにとどまった。今までとどう違う戦略で、どんな装備を整備するのかも不明だ。これでは『骨太』らしい決意のほどが感じられない』、「最低賃金の全国加重平均が1000円以上となることを目指し、引き上げに取り組む」と、実現時期の目標を記載しなかった」、「総理の念頭には「GDP(国内総生産)比で2%以上への拡大」という防衛費の増額目標があるとみられるが、具体的に言及せず、EUなどがGDP比2%を目指していることを紹介するにとどまった」、政策のフリーハンドを残したいのだろうが、これでは『骨太』の意味がなくなってしまう。
・『踏み込めない岸田総理 紙幅も尽きてきたので、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」についても、手短にコメントしておきたい。 この計画は、経済成長とからめて分配を目指すとして、「人」「科学技術・イノベーション」「スタートアップ」「グリーン、デジタル」の4つについて官民あげて重点的な投資を行うとした。「骨太の方針2022」と同様に、直接的な再分配の手法をとらずに、所得資産の倍増を目指すというわけだ。激変を避ける現実的な政策哲学と言うことはできる。 しかし、この計画では、例えば、日本の最大の課題のひとつである「人口減少」の打開策が抜け落ちている。地方の振興で都市部からの移住を目指すとした部分があるぐらいで、出生率の向上策や子育て・教育支援、そして大胆な移民受け入れ策など、外部性の大きい社会的課題に切り込んでいないのだ。 同様に、踏み込み不足は、財政再建についてもみられる。 冒頭で紹介したユーラシア・グループのリポートは、新しい資本主義を「大胆な名前にもかかわらず、実現しないだろう」と、「羊頭狗肉」と言わんばかりに皮肉っている。実際の内容は、こうした酷評に反論はしづらいものと言わざるを得ないのだ。 新型コロナウイルスの急激な感染再拡大でもない限り、その可能性は高いとみられているが、この夏の参議院選挙に勝つことができれば、岸田内閣は安泰だという見方が根強い。その後3年前後は、解散でもない限り、国政選挙がないからだ。こうしたことが、岸田政権にとっては、野党に付け込む隙を与えたくないとの思惑に繋がっているのだろう。 加えて、政権発足時の自民党各派閥の応援への配慮や、決断が苦手な総理の人柄が相まって、「骨太の方針2022」と「新しい資本主義グランドデザイン及び実行計画」の両方が踏み込み不足なものにとどまった感が拭えない。が、これで、岸田政権が通算4年前後も続くことになれば、その間が「失われた4年前後」になりかねない。こう考えれば、国民としては、強い危機感を覚えずにいられない』、「夏の参議院選挙に勝つことができれば、岸田内閣は安泰だという見方が根強い。その後3年前後は、解散でもない限り、国政選挙がないからだ。こうしたことが、岸田政権にとっては、野党に付け込む隙を与えたくないとの思惑に繋がっているのだろう」、「野党に付け込む隙を与えたくないとの思惑」、なんとみみっちいことをするのだろう。もっと正々堂々と真向勝負をすべきだろう。
次に、6月15日付けダイモンド・オンラインが掲載した経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏による「資産所得倍増を妨げる「助言したくてもできない問題」の解決法」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/304793
・『岸田政権が掲げる「資産所得倍増」を実現するには、NISAやiDeCoの拡充だけでは不十分だ。お金の話に詳しくない人々のための「マネーのアシスタント」が必要になるからだ。しかし、それを妨げる「助言したくてもできない」という問題が横たわっている。その解決法を提案したい』、「政策提案」とは「山崎氏」にしては珍しい。
・『NISAやiDeCoの拡充だけでは資産所得倍増には不十分な理由 岸田文雄首相が「資産所得倍増」と発言し、そのための具体的なプランが年末までに策定される。一般NISA(少額投資非課税制度)ないし、つみたてNISAの利用枠の拡大が目玉になるのではないかと目されているが、NISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)の利用枠の拡充だけでは不十分だ。 制度がよく分からない、手続きが面倒だ、何に投資したらいいのかが分からない、という個人が少なくないからだ。彼らのための「マネーのアシスタント」が必要だ。 例えば、仮に先週の本連載『資産所得倍増を実現する「誰にもフェア」ないい方法があった』で書いたように、つみたてNISAの利用枠が大幅に拡大されたとしよう。そこで以下のようなプロフィールの架空の人物Aさんを考えてみたい。 Aさんは今年65歳で退職するが、まだまだ元気で知り合いの会社の顧問として働く予定だ。現役時代よりも金額は減るがしばらく定期的な収入がある。利用枠が拡大されるというつみたてNISAに興味を持った。しかし、具体的にどうしたらいいのかが分からない』、「制度がよく分からない、手続きが面倒だ、何に投資したらいいのかが分からない、という個人が少なくないからだ。彼らのための「マネーのアシスタント」が必要」、その通りだ。
・『シナリオ(1)金融機関の窓口に行った場合 仮にAさんが、取引のある銀行や証券会社の窓口に行って、「つみたてNISAのやり方を教えてほしい」と言ったらどうなるだろうか。 控え目な予想は、やや手数料が高めの投資信託に誘導されるのではないかというあたりだ。つみたてNISA自体は金融庁が不適切な商品を多数除外しているので「かなり安心」だ。それでも顧客側から見て無駄に(相対的に)手数料の高い商品が存在する。 もう少し悲観的だが現実的な予想は、つみたてNISAで積み立てようと思っていた金額の一部を生命保険に誘導されるような事態だ。さらに、もっとありそうな話は、退職金を投資信託や外貨建ての生命保険などの高手数料商品で運用するように勧められることだ。特に相談相手が銀行の場合、相手はAさんの預金口座に退職金が振り込まれたことを知っている。 Aさんは、つみたてNISAの手続きが億劫だというくらいのマネーリテラシーの持ち主だ。そのため、「こちらの商品の方がもっといい」と金融機関の専門家に言われたら、十分な反論ができずに取り込まれてしまう可能性が小さくない』、確かに「Aさん」程度の「マネーリテラシーの持ち主」であれば、「金融機関の専門家に言われたら、十分な反論ができずに取り込まれてしまう可能性が小さくない」、その通りだ。
・『シナリオ(2)悪徳FPに相談した場合 特定の金融機関に相談に行くと、ベストな条件を持っている金融機関を選べないかもしれない――。そう思ってAさんは、書籍を出していてメディア出演もあるようなファイナンシャルプランナー(FP)に相談に行くとしよう。アドバイザーに相談しようと思いついたことは悪くない。Aさんは、よく気が付いた。 しかし、相談する相手選びを間違える。相談のついでに生命保険を売って、保険会社から報酬をもらう「悪徳FP」に相談してしまった(行為自体は違法ではないが、相談と商品販売を併営することは利益相反を伴うので、筆者はこの種のFPを「悪徳FP」だと考えている)。) Aさんは、ライフプラン分析にかこつけた世間話で情報収集されて、「つみたてNISAの投資商品よりも貯蓄性の生命保険などの方がライフスタイルに合っている」などと丸め込まれて、保険営業の餌食になる可能性がある。 Aさんが、つみたてNISAまで無事にたどり着く可能性は小さいのではないか』、「Aさんは、」「保険営業の餌食になる可能性がある。 Aさんが、つみたてNISAまで無事にたどり着く可能性は小さい」、その通りだ。
・『シナリオ(3)クリーンで親切なアドバイザーに相談した場合 Aさんは、賢くも金融機関や生命保険を取り扱う悪徳FPを避けて、独立したアドバイザーに相談料を払って、つみたてNISAの相談をしたとしよう。アドバイザーは、後述のように必ずしもFPでなくて構わない。ともかく、相談の相手としては、知識と心根がいい人にたどり着いたとしよう。 アドバイザーは、もちろんつみたてNISAの仕組みや金融機関の選び方について丁寧に教えてくれるだろう。 そして、インターネット上の金融機関を利用するのがいいという結論を2人で得たとしよう。その場合、証券口座やつみたてNISAの口座の開設手続きについても、相談者の問いに逐一答えて手伝ってくれるだろう。 また、Aさんがどうしても対面の金融機関でつみたてNISAの口座開設をしたいと言っている場合、Aさんに付き添って金融機関の窓口まで同行してくれるかもしれない。 投資家の裾野を広げるためには、こうした善意のお手伝いが必要だ。このアドバイザーの仕事ぶりとしては丁寧で好ましい。しかし、ここで困った問題が生じる』、「クリーンで親切なアドバイザーに相談した場合」でも「困った問題が生じる」とはどういうことだろう。
・『アドバイザーが抱える矛盾 一番知りたいことを教えてはいけない Aさんは、当然「では、私はどの商品を幾ら買い付けることにしたらいいのでしょうか?」とアドバイザーに聞くだろう。当然の疑問だ。 ところが、ここでアドバイザーは、個別の投資銘柄とその売買の具体的な数量を顧客にアドバイスしていけない。そのアドバイスは投資顧問業になり、法に抵触するからだ。少なくとも報酬をもらって業務として行ってはいけない。 加えてAさんは、退職金についても運用のアドバイスを求めるかもしれない。「金融機関が勧める投資信託、生命保険、外貨預金はダメだ」といったことを理由を含めて教えてあげたり、Aさんの人生計画と資金計画を分析してアドバイスしてあげたりすることは違法ではない。 ただ、Aさんに「では、私はどの投資信託(またはETF〈上場投資信託〉)を買ったらいいのかなあ。教えてくださいよ」と聞かれたときに、ルール上は「スミマセン、自分で考えてください」と言うしかない。 例えば、「世界株のインデックスファンドで手数料が最も安いものを調べて、いいと思う金額だけ買うといい」というくらいに答えたら違法にはならないだろう。しかし、ほんの少し前まで親切だったアドバイザーが急によそよそしくなる。 法的に問題が起こらないようにAさんに具体的な商品への投資をアドバイスしようとすると、アドバイザーは最低限、助言業務の投資顧問業登録を行っているのでなければならない。 登録は会社で行うのが普通だが、供託金が必要だし、法律に対応した帳簿の整備等が必要だ。コンプライアンスの担当者を置かなければならない場合もあるし、監督当局の検査が入るケースもある。コストと手間は大変だ。 親切心から運用商品まで含めてアドバイスしてもいいと思うアドバイザーにとって、投資顧問業に関するルールが制約になっている』、「投資顧問業に関するルールが制約になっている」、なるほど。
・『親切なアドバイザーを悩ませる無意味な参入障壁 資産の運用を手伝うサービスには、質(内容)・量(金額)両面でかなりのバリエーションがある。 法人や富裕層個人の大きな金額の資産を預かって(通常は信託銀行に資産を預ける)、その運用行為(通常は信託銀行に「運用指図」をする)をアドバイザー自身が実行するような運用行為は、投資一任業務の免許を持った投資顧問業者が行う。これは妥当だろう。 次に、投資の内容をアドバイスする業務は、投資助言業の免許を持った投資顧問業者が行うことになっている。アドバイスとされるものの内容は、現実の判定において微妙だが、具体的な投資銘柄と数量を伴う売買のアドバイスは「投資助言業」とされる可能性がある。 こうしたルールが現実にどの程度フェアに適用されているのかという別の問題もあるが、お金のアドバイスを仕事にしようとする人は、この問題を自分にとって大きなリスクの問題として意識しなければならないのが現実だ。 例えば、古くからある株式の銘柄の売り買いをアドバイスするレポートを売るようなビジネスをしている人も、念のため助言の投資顧問業登録をする場合がある。また、顧客に詳しい運用アドバイスをしようとするFPは、自分の会社で投資顧問業の登録をするか、投資顧問登録を行っている会社に所属するか等のリスク対策が必要になる。先の設例の「クリーンで親切なアドバイザー」が善意のサービスの最後でつまずく原因でもある。 助言の投資顧問業登録のコストと手間が、アドバイスや情報・サービスの提供に対して無益な参入障壁になっている。 身近すぎる例えで恐縮だが、読者は筆者に資産運用の相談をしたいと思うだろうか。 筆者は、他人の資産運用についてアドバイスする親切心を持つことがある。時間があれば相談に乗ってもいい。しかし、投資顧問業の登録はやりたくない。だから謝礼は受け取れないし、受け取らない。 すると、筆者の運用アドバイスはビジネス化されることがなく、筆者はそこに多くの時間を使うことができないから、広がりを持たない。似たような事情を持つ人は少なくないはずだ。 なお、筆者自身は個人向けのアドバイスを自分のビジネスにすることに向いていないだろうと自己評価している。当面はアドバイスの元ネタを考えることの方に注力したい』、「助言の投資顧問業登録のコストと手間が、アドバイスや情報・サービスの提供に対して無益な参入障壁になっている」、「筆者は、他人の資産運用についてアドバイスする親切心を持つことがある。時間があれば相談に乗ってもいい。しかし、投資顧問業の登録はやりたくない。だから謝礼は受け取れないし、受け取らない。 すると、筆者の運用アドバイスはビジネス化されることがなく、筆者はそこに多くの時間を使うことができないから、広がりを持たない。似たような事情を持つ人は少なくないはずだ」、なるほど。
・『お金の助言をビジネスにできる「運転免許並み」のアドバイス資格を提案 前述のような「助言したくてもできない」という状況を踏まえて、投資顧問業よりも範囲が限定されたアドバイザーの資格を作ることを提案したい。多くの国民が金融資産を有効活用するための「お手伝い」について、報酬をもらって行うことができるようにするためだ。 資格の略称を「マネー・アシスタント」(MA)としておこう。以下のような内容でどうだろうか。 (1)MAは顧客に、金融全般や関係する制度に対する知識や相談の提供、手続きの手伝い、「限定された範囲」(詳細は後述)での資産運用のアドバイスを業として行うことができる。例えば、顧客にNISAやiDeCoについて説明したり、投資口座の開設の手伝いをしたり、金融機関に同行したり、限定された運用アドバイスを提供したりして、報酬をもらうことができる。 (2)MA資格の取得のためには、既定のコマ数の講習を受けて簡単なテストに合格すればいい。イメージは自動車の普通運転免許の学科試験を簡単にした程度のものだ。取得が難しい資格にはしない方がいい。「お金について分かっている」と自認する人が気楽に取得できる資格にしたい。理屈上、証券外務員資格よりもずっと易しい内容でいいはずだ。 (3)MA資格は2年ごとに更新を要する。更新には2コマ程度の講習の受講が必要となる。資格の更新には講座の受講だけでいい。例えば、金融に関する新しい状況と知識の確認と、法令の確認や顧客とのトラブル事例の説明、などがあるといいだろう。ここでも、筆者にとっては自動車の運転免許がモデルだ(例えば、調理師など他の資格がよりモデルにふさわしい可能性はあるが)。 (4)MA資格の保有者は、金融庁にMA登録を行うことによって、MAを業として行うことができるようになる。ただしMA業は、金融商品・保険などの取り扱いと兼業できない。金融機関の職員はMA資格を取ることができるが、MA業を行うことができるのは退職後だ。また、MAが商品紹介の謝礼・手数料のキックバックなどを金融機関から受け取ることは禁止行為とする。 (5)MA業の登録者は、金融庁のホームページで公表される。MAと取引した顧客は、違反事例(もしあれば)の報告やMAの業務に対する満足度の評価を金融庁に送ることができる。報告者の本人確認はマイナンバーで行う。違反や評価の情報は金融庁が適切に管理し、必要と認める場合は資格の停止、警告、評価の発表(優良業者も要注意業者も)などを行う。ビジネスを行うMAは顧客に評価され、金融庁に管理・監督される。 われわれの多くは、自動車の運転免許をきっかけに交通法規や自動車の仕組みを知っている。しかし、残念ながら多くの大人が正しい金融知識を持っていない。大人に金融知識を広めるには、運転免許的な仕組みの提供が効果的だろう。 また、資産形成そのものの普及のためには、おびただしい数のアドバイザーやアシスタントが必要になる。そして、正しい金融知識の普及のためには大人同士が教え合う仕組みが有効だ。「正しい内容」を定義し教育することとともにそこにビジネス上のインセンティブを与えるといい。 なおMAの資格は、FPの資格とは切り離して距離を置いたものとして運営するべきだ。FPの資格の運営者は、金融機関や保険会社とのビジネス関係が深く、あるべきMA業とは深刻な利益相反を抱えているからだ。MA資格に必要な知識は、金融庁が責任を持って定義し提供すべきだろう。金融業界関係者やビジネスを知らない学者などによる「有識者会議」は必要ない。 一方、もちろん独立したFPがMAを取ってMA業を営むことには何の問題もない』、「MA資格」の提案は説得力がある。
・『「限定された資産運用アドバイス」の範囲をどこに定めるべきか MA制度ができたとして、MAが業として行っていい金融資産運用アドバイスの範囲をどのように定めるべきだろうか。 いずれにしても、アドバイスの対象にしていい運用商品は金融庁がリストアップして指定することになるだろう。 例えば、リスク資産として対象にできる商品範囲の可能性を挙げてみよう。 (1)アドバイスできるリスク資産は実質一つ。例えば、公的年金と同等の資産配分(今なら国内外の株・債券に投資する「4資産均等」)を持つバランスファンド、または全世界株式のインデックスファンドなどが考えられる。筆者は全世界株式のインデックスファンドを推したいが、日本株に投資させたい向きが多い政治的な力によって、前者に決まる方がありそうな展開だ。 (2)「4資産均等」「全世界株式」「外国株式」「国内株式」、など大きく異ならない選択肢が実質数個あって、それぞれに該当する個別商品を金融庁がリストアップする。低廉な手数料のインデックスファンドが中心で、つみたてNISAの適格商品よりも範囲の狭いものとなる。なお、対面営業の証券会社では低廉な手数料の商品を窓口で扱っていない可能性があるので、適格とされる商品のリストにはETFも入れておきたい。 (3)つみたてNISAの適格商品はアドバイスしていいとする。これに、上記の理由で適当なETFを加える程度の商品範囲はどうか。このくらいまで範囲を広げるとアドバイスにかなりの自由度が生まれるが、MA資格の当面の限界だろう。なお、つみたてNISAの適格商品の基準は適宜見直して入れ替えていい。また、利用者には5年に一度程度の投資対象商品のスイッチングを認めて、商品間の競争を促すといいのではないだろうか。 筆者の個人的な意見としては、MA自体は知識として、例えば手数料の重要性等を教育されているので、最も選択肢が多い(3)でいいのではないかと思うが、現実的には(1)に近いものが無難なのかもしれない。初級資格と上級資格に分けてアドバイス可能な範囲に差を設けるのも一案だろう』、資産運用業務の第一人者らしい現実味溢れる提案で、私には異論を差し挟む余地は、当然のことながら全くない。
タグ:キシダノミクス (その5)(羊頭狗肉の岸田政権 「骨太の方針」と「新しい資本主義」の空虚さ このままでは「失われた4年」が来る、資産所得倍増を妨げる「助言したくてもできない問題」の解決法) 現代ビジネス 町田 徹氏による「羊頭狗肉の岸田政権 「骨太の方針」と「新しい資本主義」の空虚さ このままでは「失われた4年」が来る」 「ユーラシア・グループは、クライアントに送付したダイレクトメールのタイトルにこう掲げて、岸田政権の「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」を酷評」、「「ユーラシア・グループ」からまで「酷評」されるも当然だ。 「財政健全化よりも、安倍元総理のアベノミクスの3本の矢のひとつだった積極財政を当面、優先する姿勢も露わになっている」、「財政健全化よりも、安倍元総理のアベノミクスの3本の矢のひとつだった積極財政を当面、優先する姿勢も露わになっている」、なるほど。 「少額投資非課税制度・・・や個人型確定拠出年金・・・の改革も盛り込まれた。これらは「貯蓄よりも投資」で企業に資金を融通して成長を促し、結果として、投資家が自力で資産形成することを後押ししようという政策だ。 当初掲げていた金融資産や取引の見直しのように高額所得者や資産家などへの課税措置を基本とする再分配策に比べれば、目標の実現までの道のりがかなり迂遠な政策と言わざるを得ない」、「迂遠」だが「再分配案」よりは無難だ。 「最低賃金の全国加重平均が1000円以上となることを目指し、引き上げに取り組む」と、実現時期の目標を記載しなかった」、「総理の念頭には「GDP(国内総生産)比で2%以上への拡大」という防衛費の増額目標があるとみられるが、具体的に言及せず、EUなどがGDP比2%を目指していることを紹介するにとどまった」、政策のフリーハンドを残したいのだろうが、これでは『骨太』の意味がなくなってしまう。 「夏の参議院選挙に勝つことができれば、岸田内閣は安泰だという見方が根強い。その後3年前後は、解散でもない限り、国政選挙がないからだ。こうしたことが、岸田政権にとっては、野党に付け込む隙を与えたくないとの思惑に繋がっているのだろう」、「野党に付け込む隙を与えたくないとの思惑」、なんとみみっちいことをするのだろう。もっと正々堂々と真向勝負をすべきだろう。 ダイモンド・オンライン 山崎 元氏による「資産所得倍増を妨げる「助言したくてもできない問題」の解決法」 「政策提案」とは「山崎氏」にしては珍しい。 「制度がよく分からない、手続きが面倒だ、何に投資したらいいのかが分からない、という個人が少なくないからだ。彼らのための「マネーのアシスタント」が必要」、その通りだ。 シナリオ(1)金融機関の窓口に行った場合 確かに「Aさん」程度の「マネーリテラシーの持ち主」であれば、「金融機関の専門家に言われたら、十分な反論ができずに取り込まれてしまう可能性が小さくない」、その通りだ。 シナリオ(2)悪徳FPに相談した場合 「Aさんは、」「保険営業の餌食になる可能性がある。 Aさんが、つみたてNISAまで無事にたどり着く可能性は小さい」、その通りだ。 シナリオ(3)クリーンで親切なアドバイザーに相談した場合 「クリーンで親切なアドバイザーに相談した場合」でも「困った問題が生じる」とはどういうことだろう。 「投資顧問業に関するルールが制約になっている」、なるほど。 「助言の投資顧問業登録のコストと手間が、アドバイスや情報・サービスの提供に対して無益な参入障壁になっている」、「筆者は、他人の資産運用についてアドバイスする親切心を持つことがある。時間があれば相談に乗ってもいい。しかし、投資顧問業の登録はやりたくない。だから謝礼は受け取れないし、受け取らない。 すると、筆者の運用アドバイスはビジネス化されることがなく、筆者はそこに多くの時間を使うことができないから、広がりを持たない。似たような事情を持つ人は少なくないはずだ」、なるほど。 「MA資格」の提案は説得力がある。 資産運用業務の第一人者らしい現実味溢れる提案で、私には異論を差し挟む余地は、当然のことながら全くない。