医療問題(その37)(日本が「医療貧国」であるこれだけの理由 無駄に長い入院・過剰な病床数…、「うつは、感染症から体を守るための防御メカニズム」肥満や座りっぱなしがうつにつながる意外な理由 脳が私たちを引きこもらせようとする、東京女子医科大学病院の「ICU崩壊状態」を招いた、患者の命を軽視した経営方針と恐怖政治 東京女子医大の闇 #6) [生活]
医療問題については、6月16日に取上げた。今日は、(その37)(日本が「医療貧国」であるこれだけの理由 無駄に長い入院・過剰な病床数…、「うつは、感染症から体を守るための防御メカニズム」肥満や座りっぱなしがうつにつながる意外な理由 脳が私たちを引きこもらせようとする、東京女子医科大学病院の「ICU崩壊状態」を招いた、患者の命を軽視した経営方針と恐怖政治 東京女子医大の闇 #6)である。
先ずは、7月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した医師・医学博士の奥 真也氏による「日本が「医療貧国」であるこれだけの理由、無駄に長い入院・過剰な病床数…」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/305622
・『現在、日本は「医療先進国」だと言われている。しかし、その裏にある「多額の医療費」の存在を忘れてはならない。医師・医学博士の奥真也氏は、著書『医療貧国ニッポン』の中で、日本は医療費の公費負担割合が非常に高い一方、患者自身の負担額は少ないため、「安くて手厚い医療が当たり前」という意識から抜け出せず、将来的な医療費の増大に歯止めがかからない。この状況が続けば、医療費で国が破綻する「医療貧国」になってしまう、と警告する。本記事では、そんな日本の医療費増大の大きな要因である「入院日数の長さ」「病床の多さ」、さらには「乱立する赤字病院」という大問題に迫る。 ※本記事は奥真也著『医療貧国ニッポン』(PHP研究所)の一部を抜粋・再編集しています』、興味深そうだ。
・『日本の入院数は長すぎる!? その背景とは 日本の医療費増大に直結する問題はいくつかありますが、その1つが「入院日数の長さ」です。海外と比べてみると、日本は驚くほど長いことがわかります。 OECD加盟国の急性期医療の平均在院日数を見ると、ドイツ8.9日、フランス8.8日、イギリス6.9日、アメリカ6.1日、それに対して日本は16.0日と突出して入院期間が長いのです。アメリカだったら手術して3日後には退院するような病気でも、日本は7、8日後の退院になります。 しかし、これでも日本は以前に比べて入院期間がかなり短縮されるようになったのです。日本の診療報酬の支払い方式は、以前は入院も外来もすべて「出来高払い制」でした。医療行為をすればするほど診療報酬が増えるため、入院期間が必要以上に長くなりやすかったのです。) そこで入院医療費の適正化を図るために、2003年から「包括支払い制度」が取り入れられました。急性期入院医療を対象として、傷病の種類ごとに医療費を一括して計算する「疾診断群分類別包括評価制度(DPC制度:Diagnosis Procedure Combination)が導入されたのです。 これによって、入院日数が長引くことが医療機関の収益にプラスにならなくなったため、病院の都合で入院期間が引き延ばされるようなことは減りました。しかし、入院期間が短縮されると病床の空きが増え、病院としては経営に影響します。 病院にとって、「病床稼働率」は収益に大きく影響するのです。病床稼働率を上げるために、金曜日に入院、月曜日に退院というかたちを探る医療機関が日本にはいまだに存在します。 金曜日に入院しても、土日は医師の診療も検査もありません。場合によっては外泊OK、つまり自宅に帰ってもいいということもあります。まだ何も医療を受けていないのに、ベッド代はかかります。個室だったら差額ベッド代も取られます。 また退院は、土日をはさんで月曜日。建前としては、週が明けた月曜日に担当医師の診察を受けて退院許可が下りた、という体裁です。極端な例は減ってきましたが、悪い慣習は根絶されない。入院についての説明の際、患者さんは「この日に入院しないと、他に空きがありません」といわれて承諾することになるのでしょうが、例えば本来なら手術後、10日間の人が15日間の入院になったりする。 日本には「高額療養費制度」といって医衆費が高額になった場合はあとから還ってくる仕組みもありますから、入院が長引いても結果的に患者さん自身があまり懐を痛めることにならずに済むこともあって、まかり通っているのです。 厚労省は、金曜入院、月曜退院のケースが頻発する病院にぺナルティを課す制度を設けたりして病院側の都合で入院を引き延ばすことを抑刷しようとしていますが、まだまだこうしたことが行われている現実があります』、「病床稼働率を上げるために、金曜日に入院、月曜日に退院というかたちを探る医療機関が日本にはいまだに存在します。 金曜日に入院しても、土日は医師の診療も検査もありません。場合によっては外泊OK、つまり自宅に帰ってもいいということもあります。まだ何も医療を受けていないのに、ベッド代はかかります。個室だったら差額ベッド代も取られます」、こんなやり方がまかり通っているとは驚いた。
・『日本は「病床大国」でもある コロナで病床逼迫だったのはなぜ? さらに、日本の医療体制の中で、海外に比べて日本が抜きん出て多いものがまだあります。それは「人口あたりの病床数」です。OECD加盟国の病床数(人口1000人当たり)を見ると、日本は12.8床でトップです。OECD平均は4.4床なので、平均の3倍近くの数があることになります。 しかし、ここである疑問が頭に浮かぶ方もいるかもしれません。「こんなに病床が多いのに、コロナ禍で病床逼迫が叫ばれていたのはなぜ?」と。 日本では病床は、「精神病床」「感染症病床」「結核病床」「療養病床」「一般病床」と分類されています。2020年当時、新型コロナの患者急増の対応に感染症病床だけでは足りないということで、行政側は他の病床をコロナ用に回せないかと病院に要請したわけです。 当初、病院側は積極的ではありませんでした。病床稼働率が収益に響くのに、いつ来るかわからない患者のために何床もベッドを空けておくことに難色を示したのです。そこで、国がベッド空け賃として補助金を手厚く出すことにしたら、協力的なところが増えたという経緯がありました。 病床そのものが本当に逼迫した状態になったことは、日本ではあまりなかったのではないかと思います。実際に逼迫していたのは、ベッドよりも医師や看護師などの医療スタッフです。ケアするスタッフがそろわなくて対応できなかったというのが実情です。 重症患者に用いる人工心肺装置「ECMO(エクモ)」にしても、日本は保有台数がとても多いのです。しかしエクモを操作できる技師がまだ少なく、24時間態勢の医療に対応するには2交代、3交代のスタッフが必要になります。 が、それだけのスタッフを揃えられない状況で他の診療部門には余剰人員がいても、簡単に配置転換できないなど、制度の運用が硬直化しているという側面もありました。コロナ禍の日本の「医療過迫」は、見かけ上の医療スタッフの逼迫、人不足の問題でもあったのです。 話を病床の多さに戻しましょう。日本はもともとそんなに病床の多い国ではありませんでしたが、1970年代から1990年ごろにかけて、猛烈な勢いで病床が増えました。 高齢者の医療費無料化を実践した第二次田中内閣が、「一県一医大構想」を打ち出したため、次々と地方に医科大学が新設され、併せて付属病院がつくられました(なお、医科大学が新設され、その後に附属病院がつくられるのは日本特有のやり方で、アメリカなどは異なります)。 また、自宅でケアできない高齢者のための療養病床がどんどん増やされました。日本には海外のナーシングホームにあたる長期療養型の施設がなかったため、本来ならば病院を退院して療養施設に移るのが望ましい人たちに対して、長期的な入院措置がとられている状況がありました。 例えば、精神疾患を持つ人たちを収容している精神病床などもそうです。入院というより、社会に出さないための超長期的収容施設です。高齢者用の療養病床が「社会的入院」と呼ばれたのも、それに近い仕組みといえます。こういった長期入院が多いことも日本の病床の多さに関係しています。 先進諸国は、医療の効率化を目指して入院日数を短縮させたり、病床回転率を上げたりするなどして、病床数そのものを減らす方向に進められています。日本も同じように、病床を減らしたいのです。実際、厚労省が医療計画に基づいて病床の総量規制を求めています。けれども法的に病床の新設を認めないという規制はあっても、病床を減らせという規制はかけにくいです。民業を圧迫することはつねに慎重に行われます。 国や知事などの行政は、医療機関や医師に対して「命令」することができず、「要請」か「誘導」しかできません。医師免許が強い権限を持っていることにも関連します。日本は、経済も社会も上り調子だった時代にたくさん病床がつくられました。当時の状況からほぼ横ばいのまま、多くの病床がいまも残っているのです』、「実際に逼迫していたのは、ベッドよりも医師や看護師などの医療スタッフです。ケアするスタッフがそろわなくて対応できなかったというのが実情です・・・コロナ禍の日本の「医療過迫」は、見かけ上の医療スタッフの逼迫、人不足の問題でもあったのです」、「長期療養型の施設がなかったため、本来ならば病院を退院して療養施設に移るのが望ましい人たちに対して、長期的な入院措置がとられている状況がありました」、「精神疾患を持つ人たちを収容している精神病床などもそうです。入院というより、社会に出さないための超長期的収容施設です。高齢者用の療養病床が「社会的入院」と呼ばれたのも、それに近い仕組みといえます。こういった長期入院が多いことも日本の病床の多さに関係しています」、「国や知事などの行政は、医療機関や医師に対して「命令」することができず、「要請」か「誘導」しかできません」、なるほど。
・『病院が赤字経営に苦しむ時代 国公立病院が特に深刻 国民皆保険制に基づいた日本の公的医療保険制度は、個人負担は軽いにもかかわらず、高いレベルの医療をみんなが受けられる、至れり尽くせりといってもいいようなラグジュアリーな制度です。世界一の高齢化、長寿化は、こうした手厚い保険制度があったからこそなしえたことだということができるでしょう。 しかし、これまでのやり方では、もうやっていけないのです。なぜなら、日本では赤字経営に苦しむ病院が多数存在しているからです。 ニッセイ基礎研究所が厚生労働省「医療経済実態調査」を基に発表したレポートによれば、医療法人設立の病院は黒字の病院が増加傾向にあるが、それでも全体の65%ほどです(2018年)。さらに、国公立の病院を見ると、黒字の病院の割合は減少傾向で、全体のわずか7%に過ぎません。とくに損益率がマイナス30%を下回る赤字病院の数は25%にも上ります。 一般企業であれば、採算のとれない赤字部署は潰されたり再編されたりして淘汰されていきます。しかし病院は医療を提供する場という役割があるため、簡単に潰したりすることができません。 とくに、地域医療の提供者として公的な性格を強く持つ公立病院はそうです。一方、公立病院は、民間病院よりも経営に対する危機感がシビアではない、ともいえます。いざとなったら税金で補填されてなんとかなるだろうという意識があるからです。 厚労省は2019年、赤字経営が目立ち、再編統合の必要があると見られる全国424の公的病院名を公表しました。これらの病院には、病床数の削減や診療機能の縮小、他病院との統合といった赤字経営脱却のための施策の実施を要請しています。 コロナ禍によってしばらくこの話は下火になっていましたが、ポストコロナの時代になって、あなたの住む地域の病院もこれから大きな変革が迫られるようになります』、「国公立の病院を見ると、黒字の病院の割合は減少傾向で、全体のわずか7%に過ぎません。とくに損益率がマイナス30%を下回る赤字病院の数は25%にも上ります」、「ポストコロナの時代になって、あなたの住む地域の病院もこれから大きな変革が迫られるようになります」、「公立病院」の「赤字経営脱却のための施策」が急務のようだ。
次に、7月23日付けPRESIDENT Onlineが掲載した精神科医のアンデシュ・ハンセン氏による「「うつは、感染症から体を守るための防御メカニズム」肥満や座りっぱなしがうつにつながる意外な理由 脳が私たちを引きこもらせようとする」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/59739
・『私たちはなぜうつになるのか。『スマホ脳』や『最強脳』で、脳のメカニズムを明らかにしてきたスウェーデンの精神科医、アンデシュ・ハンセンさんは「社会的な要因を疑う人は多い。人間関係、仕事や学校などだ。しかしその視点で見ている限り、うつにも役割があることを理解できないだろう」という――。(第1回/全3回) ※本稿は、アンデシュ・ハンセン『ストレス脳』(新潮新書)の一部を再編集したものです』、興味深そうだ。
・『なぜ「炎症」が起こるのか 精神的になるべく元気でいるためには、免疫系とうつの関係を知っておいたほうがいい。その理由を理解するために、混同されがちな2つの概念──「感染」と「炎症」──を見ておこう。 「感染」とは身体が感染性物質、つまり細菌やウイルスに冒されている状態だ。一方「炎症」というのは物理的に圧迫されたり、怪我けがをしたり、毒や細菌、ウイルスによる攻撃など、あらゆる刺激に対して身体が返す答えだ。つまり炎症は感染によっても起きるが、別の要因によっても起きる。 腕を掻いて皮膚が赤くなるのも炎症だ。パンをカットする際に手が滑って指を切ったら、それも炎症。あなたの膵臓から腹部に消化酵素が漏れ出して命が危うくなるのも炎症の一種だ。 身体のどこが炎症を起こしているにしても、次のようなことが起きる。組織が損傷したり、圧迫、細菌、ウイルスによって影響を受けた細胞は、サイトカインという形で緊急シグナルを発する。その部分への血流を増やして、白血球に侵略者を倒させるためだ。血流が増えるとその部分が腫れて、神経を圧迫するので痛みが生じる』、人体は本当によく出来ていると再認識した。
・『炎症は人間を守ってきた 炎症は多くの病気において中心的な要素なので、なるべく起きてほしくないと思うだろう。しかしそれは大きな間違いで、私たちは炎症なくしては生きられない。とはいえ、良いことも度がすぎると良くないのは世の常だ。炎症が長期間続くと問題が生じてしまう。心筋梗塞や脳卒中、リューマチ、糖尿病、パーキンソン病、アルツハイマー型認知症などは長く続いた炎症が主な原因になる病気のほんの一部だ。 長期的、つまり慢性的な炎症は様々な深刻な病気を引き起こす。それでは、なぜ私たちにはそんなに大きな弱味があるのかという問いが芽生える。身体のあちこちで病気を引き起こすリスクを抱えるなんて、進化がどこかでうっかり間違えたのだろうか。 いや、そうではない。炎症は祖先が子供の頃に命を奪う恐れのあったものから私たちを守ってきた。例えば死に至る細菌やウイルスへの感染だ。一方で、慢性的な炎症からくる病気というのは基本的に人生のあとのほうで生じる。進化の秤にかけると、歴史的にほとんどの人が到達しなかった年齢になってから生じる病気よりも、細菌やウイルスから命を守ることのほうが重いのだ』、「炎症は祖先が子供の頃に命を奪う恐れのあったものから私たちを守ってきた。例えば死に至る細菌やウイルスへの感染だ」、なるほど一定の効用があるようだ。
・『座りっぱなし、ストレス、睡眠不足、肥満が引き起こす炎症 さらに重要なのが、現在では炎症を起こす要因が昔と同じではないことだ。人間の歴史のほとんどの期間、炎症は細菌やウイルスによる感染や怪我で起きていた。それが今では現代的なライフスタイルが炎症を引き起こしている。 長いことじっと座っていると筋肉や脂肪組織の炎症につながることが判明しているし、長期的なストレス(日や数週間ではなく、数カ月や数年という期間)も全身の炎症の度合いを高めるようだ。睡眠不足や環境汚染物質にも同じ作用がある。加工食品は胃腸の炎症につながるし、肥満も脂肪組織の炎症につながり、喫煙は肺や気道の炎症を引き起こす。 歴史的に炎症を起こしてきたもの──細菌やウイルスそして怪我は、ほとんどの場合、一過性のものだ。しかし現代の要因──ずっと座っていること、肥満、ストレス、ジャンクフード、喫煙、環境汚染物質などは長く続く傾向がある。体内のプロセスとして歴史的には短期的だった炎症が、今では進化で適応してきたよりも長く続くようになった』、「歴史的に炎症を起こしてきたもの──細菌やウイルスそして怪我は、ほとんどの場合、一過性のものだ。しかし現代の要因──ずっと座っていること、肥満、ストレス、ジャンクフード、喫煙、環境汚染物質などは長く続く傾向がある」、「長く続く」「炎症」はどのような影響を及ぼすのだろう。
・『身体にとっては「炎症は炎症」 身体が炎症の原因を見分けられれば、免疫系を無駄に起動させなくてすむのだが、問題は身体が「炎症は炎症」と捉え、現代のライフスタイル要因を細菌やウイルスに攻撃されているのと同じように解釈してしまうことだ。 身体はつまり、炎症が感染によるものなのか現代のライフスタイル要因によるものなのかを見分けることができない。 同じことが脳についても言える。現代の炎症要因でも、細菌やウイルスに攻撃されている時と同じシグナルが脳に送られてしまう。そのシグナルが長く続きすぎると──そして現代の炎症要因というのは長期的なものだから──脳は「命が危険にさらされていて、常に攻撃を受けている!」と誤解してしまう。そこで脳は気分を下げるという調整を行い、私たちを引きこもらせようとする。精神的に立ち止まらせ、その状態が長く続く。何しろ現代の炎症要因というのは自然に消えてくれることはないのだから。 結果として長期的に精神が停止状態に陥る。つまり私たちがうつと呼ぶ状態だ。このように、うつも炎症に起因する病気のリストに入ってくるのだ』、「現代の炎症要因でも、細菌やウイルスに攻撃されている時と同じシグナルが脳に送られてしまう。そのシグナルが長く続きすぎると・・・脳は「命が危険にさらされていて、常に攻撃を受けている!」と誤解してしまう。そこで脳は気分を下げるという調整を行い、私たちを引きこもらせようとする。精神的に立ち止まらせ、その状態が長く続く。何しろ現代の炎症要因というのは自然に消えてくれることはないのだから。 結果として長期的に精神が停止状態に陥る。つまり私たちがうつと呼ぶ状態だ。このように、うつも炎症に起因する病気のリストに入ってくるのだ」、「うつ」も「炎症に起因する病気のリストに入ってくる」、なるほど。
・『現代最大の炎症要因、ストレスと肥満 現代における最大の炎症要因、長期的なストレスと肥満を詳しく見てみよう。身体の最も重要なストレスホルモン、コルチゾールにはエネルギーを動員する役割がある。 例えば犬に激しく吠えられるとコルチゾールのレベルが上がり、尻尾を巻いて逃げられるように、筋肉にエネルギーが送られる。しかし危険が過ぎ去るとコルチゾールには別の役割がある。体内の炎症を鎮めるというものだ。つまりコルチゾールは炎症のスイッチを切るタイミングを制御している』、なるほど。
・『身体が反応するのをやめてしまう 長期間ストレスにさらされているとコルチゾールのレベルが高いまま暮らすことになり、ついには身体がそのレベルに慣れてしまう。何度も「オオカミが来たぞ!」と叫ぶのと同じで、最後には誰にも気にしてもらえなくなるのだ。その結果、身体はコルチゾールに反応するのをやめ、炎症を鎮める能力を失ってしまう。 なぜそれがそんなに重要なのかを説明しよう。身体では常に小さな炎症が起きている。肌についた小さな傷、筋肉の小さな亀裂、もしくは血管の内側の傷などだ。それ自体はごく自然なことだし、コルチゾールがそういった炎症を見守ってくれる。しかし身体がコルチゾールに反応するのをやめてしまうと、小さな炎症はくすぶったままになり、全身の炎症の度合いが上がってしまう。そういうことが長期的なストレスによって起きてしまうのだ。 しかしあらゆるストレスが危険だという結論には走らないでほしい。ストレスは生き延びるために重要な意味をもつ。ただし身体はストレスのシステムが常にオンになっているようにはできていないのだ』、「長期間ストレスにさらされているとコルチゾールのレベルが高いまま暮らすことになり、ついには身体がそのレベルに慣れてしまう」、「身体はコルチゾールに反応するのをやめ、炎症を鎮める能力を失ってしまう」、「小さな炎症はくすぶったままになり、全身の炎症の度合いが上がってしまう」、なるほど。
・『「回復」がエネルギー動員のスイッチを切る つまりここでポイントになるのは「回復」だ。具体的に言うと、ストレスによって起きるエネルギー動員のスイッチを切ること。回復さえできれば、たいていのストレスには勝つことができる。 回復に必要な時間は個人差があるが、目安としては、労働負荷の軽い仕事ならシフトとシフトの間の休憩は16時間で足りる。仕事の負荷が重い場合は回復にもっと時間がかかり、週末および時には長期休暇も必要になる。回復の際には睡眠と休養を優先すること。リラックスし、色々な「やらなければいけないこと」を最低限に抑えることだ。 長期的なストレス以外には、確実に「肥満」が体内で炎症を起こす最大の要因だ。脂肪組織は単なるエネルギー備蓄ではなく、サイトキシンが全身にシグナルを送って免疫系を起動する。 自分の身体の一部を脅威と見なすなんて、身体はなぜ自分自身のエネルギー備蓄に対して免疫系を動員するのだろうか。確実な答えは誰にもわからないが、可能性としては、肥満が歴史的には存在しなかったからかもしれない。身体はお腹周りの脂肪を見知らぬものと認識し、炎症を起こすことで侵入者、つまり余分な脂肪に闘いを挑むのだ。 肥満がうつのリスクを高めるのは、肥満自体が社会的に不名誉であることも要因だが、脂肪組織の炎症のせいだという可能性もあるのだ』、「身体はお腹周りの脂肪を見知らぬものと認識し、炎症を起こすことで侵入者、つまり余分な脂肪に闘いを挑むのだ。 肥満がうつのリスクを高めるのは、肥満自体が社会的に不名誉であることも要因だが、脂肪組織の炎症のせいだという可能性もあるのだ」、やはり「肥満」も出来るだけ避ける方がよさそうだ。
・『脳が私たちを引きこもらせる ここまでの内容をまとめてみよう。あなたや私は狩猟採集をして暮らすよう進化した。しかし座っている時間が長く、恒常的にストレスを受け続ける現代のライフスタイルによって、体内で炎症の度合いが高くなっている。それを脳が「危険にさらされている」と解釈する。人間の歴史のほとんどの期間、脳にそれを伝えることが炎症の役割だったのだから。 そして常に攻撃を受けているのだと認識する。だから脳は感情を使って私たちを引きこもらせる。感情というのは私たちの行動を制御するために存在するからだ。 脳は私たちのテンションを下げ、気分を落ち込ませ、精神状態を悪化させ、そのせいで私たちは引きこもる。炎症はつまり感情のサーモスタットなのだ。炎症が起きれば起きるほど、精神状態を悪くしなければいけない。私たちの中にはそのサーモスタットがとりわけ過敏な人もいて、それも部分的には遺伝子によるものなのだが、うつになる可能性を高めてしまう。 ということは、うつの人は全員体内で炎症が起きているのだろうか。そういうわけではない。炎症はうつを引き起こす重要な要因の1つだが、要因は炎症だけではない。 うつ全体の3分の1程度が炎症に起因しているとされる。ならばうつにも抗炎症剤が効くのではないかと思うだろう。そう、まさに効くことを示す点が多くある。炎症性サイトカインの産生をブロックする薬はうつにもある程度の効果がある。その薬だけでは充分な効果がないのだが、抗うつ薬の効果を高めるようだ。ただし、それはあくまでうつの原因が炎症だった場合で、そうでなければ効果はない』、「炎症はうつを引き起こす重要な要因の1つだが、要因は炎症だけではない。 うつ全体の3分の1程度が炎症に起因しているとされる」、なるほど。
・『うつは「隠された防御メカニズム」 私が診たうつ患者の多くが、自分は何が原因でうつになったのだろうかと頭をひねっていた。 社会的な要因を疑う人は多い。人間関係、仕事や学校などだ。しかしその視点で見ている限り、うつにも役割があることを理解できないだろう。 先述のとおり、うつを生理現象として捉え、細菌やウイルスとの関係性も考慮しなくてはならない。つまり、今日私たちにふりかかる比較的軽度な脅威ではなく、私たちが地球に現れて99.9%の時間、2人に1人の命を奪ってきた要因を元にして考えるということだ。 うつとはつまり、私たちを様々な感染から救ってきた「隠された防御メカニズム」なのだ。しかし現代のライフスタイルがその防御メカニズムを暴走させてしまうことがある』、「うつは「隠された防御メカニズム」、意外な事実だ。
・『うつは肺炎や糖尿病と変わらない 精神医学だけではなく、生理学的な見地からもうつを考えるうちに気づいた点がある。生物学上、うつは肺炎や糖尿病と何ら変わらない。肺炎も糖尿病もうつも、その人の性格に問題があるせいではない。だから、うつの人に「しっかりしろ」と声をかけるのは、肺炎や糖尿病の人に「しっかりしろ」とはっぱをかけるくらい馬鹿げている。病院で肺炎や糖尿病の治療を受けるのと同じで、うつも治療を受けるべき状態なのだ。 うつの生物学的な仕組み、そしてなぜうつが引き起こされるのかを学んだからといって、すぐに治るわけではない。だが、そこからスタートするのは悪くない。自分の脳や精神状態が免疫学的なプロセスに左右されるという知識をもつことで、私自身もライフスタイル関連のアドバイスを真剣に受け止めるようになった。 当然あなたも「運動はしたほうがいいし、しっかり睡眠を取って、予測不可能なストレスや長期的なストレスは減らしたほうがいい」というのはわかっているだろう。しかし「なぜ」そうしたほうがいいのかという生物学的な理屈を学ぶことで、運動、睡眠、適度なストレス、そして回復というアドバイスが深い意味を帯びるようになる。そういった要因が炎症にブレーキをかけること、脳が「攻撃されている」と誤解するようなシグナルをそれ以上送らないようにすることを学べば、それに適した生活をするようになるだろう』、「しかし「なぜ」そうしたほうがいいのかという生物学的な理屈を学ぶことで、運動、睡眠、適度なストレス、そして回復というアドバイスが深い意味を帯びるようになる。そういった要因が炎症にブレーキをかけること、脳が「攻撃されている」と誤解するようなシグナルをそれ以上送らないようにすることを学べば、それに適した生活をするようになるだろう」、その通りだ。
・『脳の“病気”というより“正常な反応” だからと言って、炎症に抗う方法なら何でも──例えば特定の食事療法など──がうつに効くというわけではない。残念ながらそんなに単純な話ではないのだ。 起きている間ずっと予測不可能なストレスを受け続ける職業もある。そんな労働環境がなぜうつにつながるのか、それも理解できるようになる。 無気力になり引きこもりたくなるのは病気ではなく、健全な反応なのだ。つまり一番良いのは労働環境を変えること。もちろん言うは易しだが、ここでポイントになるのは、異常な環境に対する異常な反応は脳の病気というよりむしろ正常な反応だということだ』、「異常な環境に対する異常な反応は脳の病気というよりむしろ正常な反応だということだ」、これまでの誤解がクリアに払拭できた。
第三に、8月20日付け文春オンライン「東京女子医科大学病院の「ICU崩壊状態」を招いた、患者の命を軽視した経営方針と恐怖政治 東京女子医大の闇 #6」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/56739
・『集中治療科の医師9人が一斉退職することが決まり、ICU(集中治療室)が事実上の崩壊状態になる、東京女子医科大学病院。9月から移植など高度な外科手術がストップするなど、東京都民の命が脅かされる可能性が高い。取材の結果、患者の命を無視した経営方針と、職員の医師たちを恐怖で支配する女子医大の異常な実態が見えてきた。 疑惑追及キャンペーン第5弾の後編は、複数の女子医大関係者の証言によって、前代未聞のICU崩壊状態に至る内幕を告発する。(前編#5を読む/最初から読む:東京女子医大の闇 #1 #2 #3 #4) ※女子医大は教職員に対して、メディア取材に個別対応すると懲戒処分を行うと通告している。そこで本記事は個人の特定を避けるために、複数の職員の証言を区別せずに表記した』、興味深そうだ。
・『死亡事故の再発防止策「小児ICU」を託されたのはカナダの大学で活躍していた専門医のA氏(女子医大「ICU崩壊状態」の原点、それは、苦労して設立した集中治療科の「小児ICU」チームを8カ月で解散させた、経営陣の不可解な対応にあった。 そもそも小児ICUが設立されたのはある重大な事故がきっかけだった。2014年、当時2歳の孝祐くんが、女子医大病院の耳鼻咽喉科で手術を受けた後、鎮静薬プロポフォールを過剰投与されて死亡したのである。医師の間で情報が共有されず、責任の所在が不明確だったことなどが原因だったとされる。 第三者委員会は、再発防止策として、8つに分散していた「ICUの集約化」、そして「小児ICUの新設」(医療機関での呼称はPICU)などを提言した。女子医大はまずICUを集約化してから、次に小児ICUの設立に向けて動いた。 「小児の集中治療専門医はとても少なく、カナダの大学で活躍していた日本人のA氏に白羽の矢が立ちました。2020年1月、A氏に一時帰国してもらい、岩本絹子理事長との面談を経て、小児ICUの責任者(特任教授)として内定したのです」(女子医大関係者)』、「小児の集中治療専門医はとても少なく、カナダの大学で活躍していた日本人のA氏に白羽の矢が立ちました。2020年1月、A氏に一時帰国してもらい、岩本絹子理事長との面談を経て、小児ICUの責任者(特任教授)として内定」、「小児ICUの責任者」の決定は、極めて重要な意味があった筈だ。
・『経営陣は小児ICUが救った子供の命にあまり関心を示さなかった ただし、A氏が赴任する上で、解決しなければならない問題があった。一般病院の5割~7割程度といわれる、女子医大の低い給与体系だ。 「女子医大の医師は、低い給与を補うために週1~2回、他院でアルバイトをしています。しかし、小児ICUは24時間体制の勤務なので、アルバイトが難しい。それで、A氏は一時帰国した際、一般病院並みの給与を保証してほしいと岩本理事長に相談して、その場で了承されたそうです」(同) こうして2021年、A氏はカナダから帰国し、集中治療科の小児ICU特任教授に就任した。6人の小児ICU専門医と専属の看護師が集まり、7月に小児ICUが始動する。 すぐに成果は現れた。新型コロナで重症になった小児の患者を引き受け、全員が元気に退院。さらに、心臓移植を待つ小児患者など、全国各地から重症の子供たちを次々と受け入れていく。 だが、経営陣は小児ICUが救った子供の命にあまり関心を示さなかった、と関係者は証言する』、「経営陣は小児ICUが救った子供の命にあまり関心を示さなかった」、病院の「経営陣」としては、何を考えているのだろう。
・『「土下座するつもりで、岩本理事長に謝ってもらっていいですか」 「経営陣は、小児ICUの採算性とA特任教授の給与に着目していました。岩本理事長は、『他の職員とのバランスがとれない』と一方的に給与の合意を撤回したのです。これに驚いたA特任教授は丸義朗学長に説明を求めましたが、納得のいく返答はなかった、と肩を落としていました」(同) しかも経営陣は、A特任教授が説明を求めた行動自体を問題視した。上司にあたる、集中治療科の野村岳志教授に対して、驚くべき要求をしたという。 「医学部長らから『A先生の件で、岩本理事長に会ってください』と言われたそうです。どうしたらいいのかと聞くと、『土下座するつもりで、岩本理事長に謝ってもらっていいですか』と。もちろん、野村教授は断ったと聞きました」(同) 岩本理事長に土下座して謝る――。 もし本当なら、教育機関としてのモラルを疑う言葉だ。さらに、今年2月の教授会で、丸学長が次のような説明を行っていた』、「医学部長」が「上司にあたる、集中治療科の野村岳志教授に対して」「土下座するつもりで、岩本理事長に謝ってもらっていいですか」、驚くべき打診だ。
・『「発言は YES という意味ではなかったのでしょうか」 「A特任教授は、カナダで年収7000万円だったので、本学で2500万から3500万の給与を要望したが、理事長は応じなかった。A特任教授と規定以上の給与の合意はない」(2/18 教授会での丸学長発言要旨) 教授会から2日後、集中治療科の野村岳志教授は、丸学長にメールを送った。全教授らにBCCで同時配信したので、公開質問状といえるだろう。 「(A特任教授が一時帰国した)2020 年1月、田邉病院長、私、A先生で、岩本理事長と経営統括部長に面談しました。私はよく覚えております。給与総額について理事長は 1、2 秒考え、『そのくらい大丈夫よね、部長』 と経営統括部長に伝え、彼は無言で首を縦に振りました。理事長から『では、頑張ってください』と激励を受けました。この発言は YES という意味ではなかったのでしょうか。 また、A特任教授は、カナダの大学でそんなに貰っていないとのことです。どうして、そのような話をされたのか、確認させてください」(2/20 野村教授から丸学長宛メールより抜粋要約) 回答を求められた丸学長は、直接答えずに、法務部の弁護士に対応させた。 「理事長との面談時にいかなるやり取りがあったにせよ、教員の給与は学長が決定する権限を有しておりますので、理事長との面談のみにより教職員との給与を確定させることはできません」(2/25 女子医大・法務部弁護士からのメールより、抜粋) 木で鼻をくくったような回答である。しかもA特任教授のカナダでの給与について、丸学長がなぜ虚偽の説明をしたのか、法務部の弁護士は答えていない』、「丸学長がなぜ虚偽の説明」をしたのかも疑問だ。
・『リーダーを失った小児ICUチームは“解散” この一方で、丸学長はA特任教授に対して、「令和4年度の契約は更新しない」と言い渡していた。 A特任教授は、辞表を提出せざるを得なかった。だが、筆者が入手したA特任教授の辞令に、任期は「令和5年3月31日」までと記されていた。つまり、女子医大は任期を1年残して、A特任教授に事実上の解雇通告したことになる。 リーダーを失った小児ICUチームは、医師全員が辞職や異動したことで“解散”となった。 「小児ICUは、幼い命に対する重い責任を背負っていました。同時に、女子医大にしか救えない重症の子供たちの命を守るという、使命感もありました。こうした現場のことを、経営陣は何も理解していなかった。ただ気に入らないから壊した、としか思えません」(女子医大関係者)』、「こうした現場のことを、経営陣は何も理解していなかった。ただ気に入らないから壊した、としか思えません」、信じ難い状況だ。
・『経営陣の「患者の安全性を軽視した判断」 経営陣の暴挙は、これだけではない。集中治療科のホームページを担当する医師が、「小児集中治療専門医は全員退職、2022年2月末で小児ICUの運用は停止」とサイトに記したところ、これが問題だとして、女子医大は、医師に「降格」の懲戒処分を行ったのである。なぜ医師は処分の対象となるのか──。 「経営側にとって都合が悪かったのです。女子医大が多額の貸付を受けている福祉医療機構(厚労省の関連団体)などに、A特任教授らが辞表を出した後も『小児ICUは維持していく』と説明していたので、整合性がとれなくなりますから」(同) 野村教授はこの件に関連して、メール履歴を勝手に調べられ、部下の監督不行き届などの理由で、「減給」の懲戒処分を受けた、と関係者は語った。 「みんな恐怖政治に怯えています。女子医大の内部監査室に警察OBを雇って、メールの内容まで勝手にチェックするなんて、教育機関とは思えません」(同) 事実上の“ICU崩壊”が迫る中、8月16日に行われた女子医大病院の会議で、板橋道朗病院長は当面の方針を示した。 「9月からICUに入室した患者は、各々の診療科で責任を持って管理する。何かあったら、麻酔科と救命救急センターの先生が駆けつける体制を継続する。安定するまでは、リスクの高い症例は控えてもらう。一致団結して、安全な集中治療体制を維持していきたい」 各診療科で対応という苦肉の策で、体面上は“ICUを維持”するという。これに対して、現場の医師たちからは疑問の声が相次いだ。 「移植でかなりICUを使っていたので、これから患者を救えなくなるかもしれない、と本当に危惧している」 「大半が集中治療に慣れていないので、今までのようには対応できない。高度な医療をすると、事故を起こす可能性がある」 「小児ICUも潰されてしまった。スタッフが減る予定で、当直が回せるかどうか本当にギリギリ。ICUを診ろと言われると厳しい」 また、板橋病院長は、7月半ばに野村教授が辞表を提出するなど、動きが急激だったので(後任などの準備が)間に合わなかったと会議で説明した。だが、内情をよく知る関係者は次のように証言する。 「後任の医師を探す時間をつくるため、野村教授は6月に辞表を提出した、と聞いています。けれども経営陣は、医師を確保できず、最近までICUに最も関係する外科にも知らせませんでした。9月に移植手術を予定している診療科は大混乱です」(女子医大関係者)』、「女子医大が多額の貸付を受けている福祉医療機構(厚労省の関連団体)などに、A特任教授らが辞表を出した後も『小児ICUは維持していく』と説明」、よくぞこんないい加減な説明をするものだ。
・『孝祐くんを失った父親「強い怒りを覚えます」 当時2歳の孝祐くんを失った父親は、小児ICUチームの解散に続き、事実上のICU崩壊が避けられない状況について、次のように述べた。 「女子医大は、ICUの管理体制を抜本的に見直して、二度と同じ過ちを繰り返さないと、私たち遺族に説明してきました。それは全て嘘だったのでしょうか。現場の医師や看護師の努力を傲慢にも踏みにじった経営陣に、強い怒りを覚えます」 経営陣に翻弄され続けたICUのスタッフたち。騒動の渦中にいる野村教授が、こんなことを言っていたという。 「女子医大の良さは、自由で新しいことにチャレンジする精神でした。それがすっかり変わってしまった。反対意見さえも言えないのなら、ここで医師を教育することはできません」 これまで筆者は、週刊文春と文春オンラインで、女子医大の「疑惑のカネ」について報じてきた。さらに、国税局課税部資料調査課が、「疑惑のカネ」をめぐり税務調査を続けている。それでも経営陣の責任を問う動きは、女子医大の組織内から起きていない。 このままでは、ICUの事実上の崩壊に連鎖して、さらに多くの医師や看護師が去っていき、女子医大は自壊するだろう。その影響を受けるのは、ここで学ぶ約1400人の学生と、命を預ける患者たちである。(前編#5を読む)』、「「女子医大の良さは、自由で新しいことにチャレンジする精神でした。それがすっかり変わってしまった。反対意見さえも言えないのなら、ここで医師を教育することはできません」、経営陣はどうするつもりなのだろうか。
先ずは、7月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した医師・医学博士の奥 真也氏による「日本が「医療貧国」であるこれだけの理由、無駄に長い入院・過剰な病床数…」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/305622
・『現在、日本は「医療先進国」だと言われている。しかし、その裏にある「多額の医療費」の存在を忘れてはならない。医師・医学博士の奥真也氏は、著書『医療貧国ニッポン』の中で、日本は医療費の公費負担割合が非常に高い一方、患者自身の負担額は少ないため、「安くて手厚い医療が当たり前」という意識から抜け出せず、将来的な医療費の増大に歯止めがかからない。この状況が続けば、医療費で国が破綻する「医療貧国」になってしまう、と警告する。本記事では、そんな日本の医療費増大の大きな要因である「入院日数の長さ」「病床の多さ」、さらには「乱立する赤字病院」という大問題に迫る。 ※本記事は奥真也著『医療貧国ニッポン』(PHP研究所)の一部を抜粋・再編集しています』、興味深そうだ。
・『日本の入院数は長すぎる!? その背景とは 日本の医療費増大に直結する問題はいくつかありますが、その1つが「入院日数の長さ」です。海外と比べてみると、日本は驚くほど長いことがわかります。 OECD加盟国の急性期医療の平均在院日数を見ると、ドイツ8.9日、フランス8.8日、イギリス6.9日、アメリカ6.1日、それに対して日本は16.0日と突出して入院期間が長いのです。アメリカだったら手術して3日後には退院するような病気でも、日本は7、8日後の退院になります。 しかし、これでも日本は以前に比べて入院期間がかなり短縮されるようになったのです。日本の診療報酬の支払い方式は、以前は入院も外来もすべて「出来高払い制」でした。医療行為をすればするほど診療報酬が増えるため、入院期間が必要以上に長くなりやすかったのです。) そこで入院医療費の適正化を図るために、2003年から「包括支払い制度」が取り入れられました。急性期入院医療を対象として、傷病の種類ごとに医療費を一括して計算する「疾診断群分類別包括評価制度(DPC制度:Diagnosis Procedure Combination)が導入されたのです。 これによって、入院日数が長引くことが医療機関の収益にプラスにならなくなったため、病院の都合で入院期間が引き延ばされるようなことは減りました。しかし、入院期間が短縮されると病床の空きが増え、病院としては経営に影響します。 病院にとって、「病床稼働率」は収益に大きく影響するのです。病床稼働率を上げるために、金曜日に入院、月曜日に退院というかたちを探る医療機関が日本にはいまだに存在します。 金曜日に入院しても、土日は医師の診療も検査もありません。場合によっては外泊OK、つまり自宅に帰ってもいいということもあります。まだ何も医療を受けていないのに、ベッド代はかかります。個室だったら差額ベッド代も取られます。 また退院は、土日をはさんで月曜日。建前としては、週が明けた月曜日に担当医師の診察を受けて退院許可が下りた、という体裁です。極端な例は減ってきましたが、悪い慣習は根絶されない。入院についての説明の際、患者さんは「この日に入院しないと、他に空きがありません」といわれて承諾することになるのでしょうが、例えば本来なら手術後、10日間の人が15日間の入院になったりする。 日本には「高額療養費制度」といって医衆費が高額になった場合はあとから還ってくる仕組みもありますから、入院が長引いても結果的に患者さん自身があまり懐を痛めることにならずに済むこともあって、まかり通っているのです。 厚労省は、金曜入院、月曜退院のケースが頻発する病院にぺナルティを課す制度を設けたりして病院側の都合で入院を引き延ばすことを抑刷しようとしていますが、まだまだこうしたことが行われている現実があります』、「病床稼働率を上げるために、金曜日に入院、月曜日に退院というかたちを探る医療機関が日本にはいまだに存在します。 金曜日に入院しても、土日は医師の診療も検査もありません。場合によっては外泊OK、つまり自宅に帰ってもいいということもあります。まだ何も医療を受けていないのに、ベッド代はかかります。個室だったら差額ベッド代も取られます」、こんなやり方がまかり通っているとは驚いた。
・『日本は「病床大国」でもある コロナで病床逼迫だったのはなぜ? さらに、日本の医療体制の中で、海外に比べて日本が抜きん出て多いものがまだあります。それは「人口あたりの病床数」です。OECD加盟国の病床数(人口1000人当たり)を見ると、日本は12.8床でトップです。OECD平均は4.4床なので、平均の3倍近くの数があることになります。 しかし、ここである疑問が頭に浮かぶ方もいるかもしれません。「こんなに病床が多いのに、コロナ禍で病床逼迫が叫ばれていたのはなぜ?」と。 日本では病床は、「精神病床」「感染症病床」「結核病床」「療養病床」「一般病床」と分類されています。2020年当時、新型コロナの患者急増の対応に感染症病床だけでは足りないということで、行政側は他の病床をコロナ用に回せないかと病院に要請したわけです。 当初、病院側は積極的ではありませんでした。病床稼働率が収益に響くのに、いつ来るかわからない患者のために何床もベッドを空けておくことに難色を示したのです。そこで、国がベッド空け賃として補助金を手厚く出すことにしたら、協力的なところが増えたという経緯がありました。 病床そのものが本当に逼迫した状態になったことは、日本ではあまりなかったのではないかと思います。実際に逼迫していたのは、ベッドよりも医師や看護師などの医療スタッフです。ケアするスタッフがそろわなくて対応できなかったというのが実情です。 重症患者に用いる人工心肺装置「ECMO(エクモ)」にしても、日本は保有台数がとても多いのです。しかしエクモを操作できる技師がまだ少なく、24時間態勢の医療に対応するには2交代、3交代のスタッフが必要になります。 が、それだけのスタッフを揃えられない状況で他の診療部門には余剰人員がいても、簡単に配置転換できないなど、制度の運用が硬直化しているという側面もありました。コロナ禍の日本の「医療過迫」は、見かけ上の医療スタッフの逼迫、人不足の問題でもあったのです。 話を病床の多さに戻しましょう。日本はもともとそんなに病床の多い国ではありませんでしたが、1970年代から1990年ごろにかけて、猛烈な勢いで病床が増えました。 高齢者の医療費無料化を実践した第二次田中内閣が、「一県一医大構想」を打ち出したため、次々と地方に医科大学が新設され、併せて付属病院がつくられました(なお、医科大学が新設され、その後に附属病院がつくられるのは日本特有のやり方で、アメリカなどは異なります)。 また、自宅でケアできない高齢者のための療養病床がどんどん増やされました。日本には海外のナーシングホームにあたる長期療養型の施設がなかったため、本来ならば病院を退院して療養施設に移るのが望ましい人たちに対して、長期的な入院措置がとられている状況がありました。 例えば、精神疾患を持つ人たちを収容している精神病床などもそうです。入院というより、社会に出さないための超長期的収容施設です。高齢者用の療養病床が「社会的入院」と呼ばれたのも、それに近い仕組みといえます。こういった長期入院が多いことも日本の病床の多さに関係しています。 先進諸国は、医療の効率化を目指して入院日数を短縮させたり、病床回転率を上げたりするなどして、病床数そのものを減らす方向に進められています。日本も同じように、病床を減らしたいのです。実際、厚労省が医療計画に基づいて病床の総量規制を求めています。けれども法的に病床の新設を認めないという規制はあっても、病床を減らせという規制はかけにくいです。民業を圧迫することはつねに慎重に行われます。 国や知事などの行政は、医療機関や医師に対して「命令」することができず、「要請」か「誘導」しかできません。医師免許が強い権限を持っていることにも関連します。日本は、経済も社会も上り調子だった時代にたくさん病床がつくられました。当時の状況からほぼ横ばいのまま、多くの病床がいまも残っているのです』、「実際に逼迫していたのは、ベッドよりも医師や看護師などの医療スタッフです。ケアするスタッフがそろわなくて対応できなかったというのが実情です・・・コロナ禍の日本の「医療過迫」は、見かけ上の医療スタッフの逼迫、人不足の問題でもあったのです」、「長期療養型の施設がなかったため、本来ならば病院を退院して療養施設に移るのが望ましい人たちに対して、長期的な入院措置がとられている状況がありました」、「精神疾患を持つ人たちを収容している精神病床などもそうです。入院というより、社会に出さないための超長期的収容施設です。高齢者用の療養病床が「社会的入院」と呼ばれたのも、それに近い仕組みといえます。こういった長期入院が多いことも日本の病床の多さに関係しています」、「国や知事などの行政は、医療機関や医師に対して「命令」することができず、「要請」か「誘導」しかできません」、なるほど。
・『病院が赤字経営に苦しむ時代 国公立病院が特に深刻 国民皆保険制に基づいた日本の公的医療保険制度は、個人負担は軽いにもかかわらず、高いレベルの医療をみんなが受けられる、至れり尽くせりといってもいいようなラグジュアリーな制度です。世界一の高齢化、長寿化は、こうした手厚い保険制度があったからこそなしえたことだということができるでしょう。 しかし、これまでのやり方では、もうやっていけないのです。なぜなら、日本では赤字経営に苦しむ病院が多数存在しているからです。 ニッセイ基礎研究所が厚生労働省「医療経済実態調査」を基に発表したレポートによれば、医療法人設立の病院は黒字の病院が増加傾向にあるが、それでも全体の65%ほどです(2018年)。さらに、国公立の病院を見ると、黒字の病院の割合は減少傾向で、全体のわずか7%に過ぎません。とくに損益率がマイナス30%を下回る赤字病院の数は25%にも上ります。 一般企業であれば、採算のとれない赤字部署は潰されたり再編されたりして淘汰されていきます。しかし病院は医療を提供する場という役割があるため、簡単に潰したりすることができません。 とくに、地域医療の提供者として公的な性格を強く持つ公立病院はそうです。一方、公立病院は、民間病院よりも経営に対する危機感がシビアではない、ともいえます。いざとなったら税金で補填されてなんとかなるだろうという意識があるからです。 厚労省は2019年、赤字経営が目立ち、再編統合の必要があると見られる全国424の公的病院名を公表しました。これらの病院には、病床数の削減や診療機能の縮小、他病院との統合といった赤字経営脱却のための施策の実施を要請しています。 コロナ禍によってしばらくこの話は下火になっていましたが、ポストコロナの時代になって、あなたの住む地域の病院もこれから大きな変革が迫られるようになります』、「国公立の病院を見ると、黒字の病院の割合は減少傾向で、全体のわずか7%に過ぎません。とくに損益率がマイナス30%を下回る赤字病院の数は25%にも上ります」、「ポストコロナの時代になって、あなたの住む地域の病院もこれから大きな変革が迫られるようになります」、「公立病院」の「赤字経営脱却のための施策」が急務のようだ。
次に、7月23日付けPRESIDENT Onlineが掲載した精神科医のアンデシュ・ハンセン氏による「「うつは、感染症から体を守るための防御メカニズム」肥満や座りっぱなしがうつにつながる意外な理由 脳が私たちを引きこもらせようとする」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/59739
・『私たちはなぜうつになるのか。『スマホ脳』や『最強脳』で、脳のメカニズムを明らかにしてきたスウェーデンの精神科医、アンデシュ・ハンセンさんは「社会的な要因を疑う人は多い。人間関係、仕事や学校などだ。しかしその視点で見ている限り、うつにも役割があることを理解できないだろう」という――。(第1回/全3回) ※本稿は、アンデシュ・ハンセン『ストレス脳』(新潮新書)の一部を再編集したものです』、興味深そうだ。
・『なぜ「炎症」が起こるのか 精神的になるべく元気でいるためには、免疫系とうつの関係を知っておいたほうがいい。その理由を理解するために、混同されがちな2つの概念──「感染」と「炎症」──を見ておこう。 「感染」とは身体が感染性物質、つまり細菌やウイルスに冒されている状態だ。一方「炎症」というのは物理的に圧迫されたり、怪我けがをしたり、毒や細菌、ウイルスによる攻撃など、あらゆる刺激に対して身体が返す答えだ。つまり炎症は感染によっても起きるが、別の要因によっても起きる。 腕を掻いて皮膚が赤くなるのも炎症だ。パンをカットする際に手が滑って指を切ったら、それも炎症。あなたの膵臓から腹部に消化酵素が漏れ出して命が危うくなるのも炎症の一種だ。 身体のどこが炎症を起こしているにしても、次のようなことが起きる。組織が損傷したり、圧迫、細菌、ウイルスによって影響を受けた細胞は、サイトカインという形で緊急シグナルを発する。その部分への血流を増やして、白血球に侵略者を倒させるためだ。血流が増えるとその部分が腫れて、神経を圧迫するので痛みが生じる』、人体は本当によく出来ていると再認識した。
・『炎症は人間を守ってきた 炎症は多くの病気において中心的な要素なので、なるべく起きてほしくないと思うだろう。しかしそれは大きな間違いで、私たちは炎症なくしては生きられない。とはいえ、良いことも度がすぎると良くないのは世の常だ。炎症が長期間続くと問題が生じてしまう。心筋梗塞や脳卒中、リューマチ、糖尿病、パーキンソン病、アルツハイマー型認知症などは長く続いた炎症が主な原因になる病気のほんの一部だ。 長期的、つまり慢性的な炎症は様々な深刻な病気を引き起こす。それでは、なぜ私たちにはそんなに大きな弱味があるのかという問いが芽生える。身体のあちこちで病気を引き起こすリスクを抱えるなんて、進化がどこかでうっかり間違えたのだろうか。 いや、そうではない。炎症は祖先が子供の頃に命を奪う恐れのあったものから私たちを守ってきた。例えば死に至る細菌やウイルスへの感染だ。一方で、慢性的な炎症からくる病気というのは基本的に人生のあとのほうで生じる。進化の秤にかけると、歴史的にほとんどの人が到達しなかった年齢になってから生じる病気よりも、細菌やウイルスから命を守ることのほうが重いのだ』、「炎症は祖先が子供の頃に命を奪う恐れのあったものから私たちを守ってきた。例えば死に至る細菌やウイルスへの感染だ」、なるほど一定の効用があるようだ。
・『座りっぱなし、ストレス、睡眠不足、肥満が引き起こす炎症 さらに重要なのが、現在では炎症を起こす要因が昔と同じではないことだ。人間の歴史のほとんどの期間、炎症は細菌やウイルスによる感染や怪我で起きていた。それが今では現代的なライフスタイルが炎症を引き起こしている。 長いことじっと座っていると筋肉や脂肪組織の炎症につながることが判明しているし、長期的なストレス(日や数週間ではなく、数カ月や数年という期間)も全身の炎症の度合いを高めるようだ。睡眠不足や環境汚染物質にも同じ作用がある。加工食品は胃腸の炎症につながるし、肥満も脂肪組織の炎症につながり、喫煙は肺や気道の炎症を引き起こす。 歴史的に炎症を起こしてきたもの──細菌やウイルスそして怪我は、ほとんどの場合、一過性のものだ。しかし現代の要因──ずっと座っていること、肥満、ストレス、ジャンクフード、喫煙、環境汚染物質などは長く続く傾向がある。体内のプロセスとして歴史的には短期的だった炎症が、今では進化で適応してきたよりも長く続くようになった』、「歴史的に炎症を起こしてきたもの──細菌やウイルスそして怪我は、ほとんどの場合、一過性のものだ。しかし現代の要因──ずっと座っていること、肥満、ストレス、ジャンクフード、喫煙、環境汚染物質などは長く続く傾向がある」、「長く続く」「炎症」はどのような影響を及ぼすのだろう。
・『身体にとっては「炎症は炎症」 身体が炎症の原因を見分けられれば、免疫系を無駄に起動させなくてすむのだが、問題は身体が「炎症は炎症」と捉え、現代のライフスタイル要因を細菌やウイルスに攻撃されているのと同じように解釈してしまうことだ。 身体はつまり、炎症が感染によるものなのか現代のライフスタイル要因によるものなのかを見分けることができない。 同じことが脳についても言える。現代の炎症要因でも、細菌やウイルスに攻撃されている時と同じシグナルが脳に送られてしまう。そのシグナルが長く続きすぎると──そして現代の炎症要因というのは長期的なものだから──脳は「命が危険にさらされていて、常に攻撃を受けている!」と誤解してしまう。そこで脳は気分を下げるという調整を行い、私たちを引きこもらせようとする。精神的に立ち止まらせ、その状態が長く続く。何しろ現代の炎症要因というのは自然に消えてくれることはないのだから。 結果として長期的に精神が停止状態に陥る。つまり私たちがうつと呼ぶ状態だ。このように、うつも炎症に起因する病気のリストに入ってくるのだ』、「現代の炎症要因でも、細菌やウイルスに攻撃されている時と同じシグナルが脳に送られてしまう。そのシグナルが長く続きすぎると・・・脳は「命が危険にさらされていて、常に攻撃を受けている!」と誤解してしまう。そこで脳は気分を下げるという調整を行い、私たちを引きこもらせようとする。精神的に立ち止まらせ、その状態が長く続く。何しろ現代の炎症要因というのは自然に消えてくれることはないのだから。 結果として長期的に精神が停止状態に陥る。つまり私たちがうつと呼ぶ状態だ。このように、うつも炎症に起因する病気のリストに入ってくるのだ」、「うつ」も「炎症に起因する病気のリストに入ってくる」、なるほど。
・『現代最大の炎症要因、ストレスと肥満 現代における最大の炎症要因、長期的なストレスと肥満を詳しく見てみよう。身体の最も重要なストレスホルモン、コルチゾールにはエネルギーを動員する役割がある。 例えば犬に激しく吠えられるとコルチゾールのレベルが上がり、尻尾を巻いて逃げられるように、筋肉にエネルギーが送られる。しかし危険が過ぎ去るとコルチゾールには別の役割がある。体内の炎症を鎮めるというものだ。つまりコルチゾールは炎症のスイッチを切るタイミングを制御している』、なるほど。
・『身体が反応するのをやめてしまう 長期間ストレスにさらされているとコルチゾールのレベルが高いまま暮らすことになり、ついには身体がそのレベルに慣れてしまう。何度も「オオカミが来たぞ!」と叫ぶのと同じで、最後には誰にも気にしてもらえなくなるのだ。その結果、身体はコルチゾールに反応するのをやめ、炎症を鎮める能力を失ってしまう。 なぜそれがそんなに重要なのかを説明しよう。身体では常に小さな炎症が起きている。肌についた小さな傷、筋肉の小さな亀裂、もしくは血管の内側の傷などだ。それ自体はごく自然なことだし、コルチゾールがそういった炎症を見守ってくれる。しかし身体がコルチゾールに反応するのをやめてしまうと、小さな炎症はくすぶったままになり、全身の炎症の度合いが上がってしまう。そういうことが長期的なストレスによって起きてしまうのだ。 しかしあらゆるストレスが危険だという結論には走らないでほしい。ストレスは生き延びるために重要な意味をもつ。ただし身体はストレスのシステムが常にオンになっているようにはできていないのだ』、「長期間ストレスにさらされているとコルチゾールのレベルが高いまま暮らすことになり、ついには身体がそのレベルに慣れてしまう」、「身体はコルチゾールに反応するのをやめ、炎症を鎮める能力を失ってしまう」、「小さな炎症はくすぶったままになり、全身の炎症の度合いが上がってしまう」、なるほど。
・『「回復」がエネルギー動員のスイッチを切る つまりここでポイントになるのは「回復」だ。具体的に言うと、ストレスによって起きるエネルギー動員のスイッチを切ること。回復さえできれば、たいていのストレスには勝つことができる。 回復に必要な時間は個人差があるが、目安としては、労働負荷の軽い仕事ならシフトとシフトの間の休憩は16時間で足りる。仕事の負荷が重い場合は回復にもっと時間がかかり、週末および時には長期休暇も必要になる。回復の際には睡眠と休養を優先すること。リラックスし、色々な「やらなければいけないこと」を最低限に抑えることだ。 長期的なストレス以外には、確実に「肥満」が体内で炎症を起こす最大の要因だ。脂肪組織は単なるエネルギー備蓄ではなく、サイトキシンが全身にシグナルを送って免疫系を起動する。 自分の身体の一部を脅威と見なすなんて、身体はなぜ自分自身のエネルギー備蓄に対して免疫系を動員するのだろうか。確実な答えは誰にもわからないが、可能性としては、肥満が歴史的には存在しなかったからかもしれない。身体はお腹周りの脂肪を見知らぬものと認識し、炎症を起こすことで侵入者、つまり余分な脂肪に闘いを挑むのだ。 肥満がうつのリスクを高めるのは、肥満自体が社会的に不名誉であることも要因だが、脂肪組織の炎症のせいだという可能性もあるのだ』、「身体はお腹周りの脂肪を見知らぬものと認識し、炎症を起こすことで侵入者、つまり余分な脂肪に闘いを挑むのだ。 肥満がうつのリスクを高めるのは、肥満自体が社会的に不名誉であることも要因だが、脂肪組織の炎症のせいだという可能性もあるのだ」、やはり「肥満」も出来るだけ避ける方がよさそうだ。
・『脳が私たちを引きこもらせる ここまでの内容をまとめてみよう。あなたや私は狩猟採集をして暮らすよう進化した。しかし座っている時間が長く、恒常的にストレスを受け続ける現代のライフスタイルによって、体内で炎症の度合いが高くなっている。それを脳が「危険にさらされている」と解釈する。人間の歴史のほとんどの期間、脳にそれを伝えることが炎症の役割だったのだから。 そして常に攻撃を受けているのだと認識する。だから脳は感情を使って私たちを引きこもらせる。感情というのは私たちの行動を制御するために存在するからだ。 脳は私たちのテンションを下げ、気分を落ち込ませ、精神状態を悪化させ、そのせいで私たちは引きこもる。炎症はつまり感情のサーモスタットなのだ。炎症が起きれば起きるほど、精神状態を悪くしなければいけない。私たちの中にはそのサーモスタットがとりわけ過敏な人もいて、それも部分的には遺伝子によるものなのだが、うつになる可能性を高めてしまう。 ということは、うつの人は全員体内で炎症が起きているのだろうか。そういうわけではない。炎症はうつを引き起こす重要な要因の1つだが、要因は炎症だけではない。 うつ全体の3分の1程度が炎症に起因しているとされる。ならばうつにも抗炎症剤が効くのではないかと思うだろう。そう、まさに効くことを示す点が多くある。炎症性サイトカインの産生をブロックする薬はうつにもある程度の効果がある。その薬だけでは充分な効果がないのだが、抗うつ薬の効果を高めるようだ。ただし、それはあくまでうつの原因が炎症だった場合で、そうでなければ効果はない』、「炎症はうつを引き起こす重要な要因の1つだが、要因は炎症だけではない。 うつ全体の3分の1程度が炎症に起因しているとされる」、なるほど。
・『うつは「隠された防御メカニズム」 私が診たうつ患者の多くが、自分は何が原因でうつになったのだろうかと頭をひねっていた。 社会的な要因を疑う人は多い。人間関係、仕事や学校などだ。しかしその視点で見ている限り、うつにも役割があることを理解できないだろう。 先述のとおり、うつを生理現象として捉え、細菌やウイルスとの関係性も考慮しなくてはならない。つまり、今日私たちにふりかかる比較的軽度な脅威ではなく、私たちが地球に現れて99.9%の時間、2人に1人の命を奪ってきた要因を元にして考えるということだ。 うつとはつまり、私たちを様々な感染から救ってきた「隠された防御メカニズム」なのだ。しかし現代のライフスタイルがその防御メカニズムを暴走させてしまうことがある』、「うつは「隠された防御メカニズム」、意外な事実だ。
・『うつは肺炎や糖尿病と変わらない 精神医学だけではなく、生理学的な見地からもうつを考えるうちに気づいた点がある。生物学上、うつは肺炎や糖尿病と何ら変わらない。肺炎も糖尿病もうつも、その人の性格に問題があるせいではない。だから、うつの人に「しっかりしろ」と声をかけるのは、肺炎や糖尿病の人に「しっかりしろ」とはっぱをかけるくらい馬鹿げている。病院で肺炎や糖尿病の治療を受けるのと同じで、うつも治療を受けるべき状態なのだ。 うつの生物学的な仕組み、そしてなぜうつが引き起こされるのかを学んだからといって、すぐに治るわけではない。だが、そこからスタートするのは悪くない。自分の脳や精神状態が免疫学的なプロセスに左右されるという知識をもつことで、私自身もライフスタイル関連のアドバイスを真剣に受け止めるようになった。 当然あなたも「運動はしたほうがいいし、しっかり睡眠を取って、予測不可能なストレスや長期的なストレスは減らしたほうがいい」というのはわかっているだろう。しかし「なぜ」そうしたほうがいいのかという生物学的な理屈を学ぶことで、運動、睡眠、適度なストレス、そして回復というアドバイスが深い意味を帯びるようになる。そういった要因が炎症にブレーキをかけること、脳が「攻撃されている」と誤解するようなシグナルをそれ以上送らないようにすることを学べば、それに適した生活をするようになるだろう』、「しかし「なぜ」そうしたほうがいいのかという生物学的な理屈を学ぶことで、運動、睡眠、適度なストレス、そして回復というアドバイスが深い意味を帯びるようになる。そういった要因が炎症にブレーキをかけること、脳が「攻撃されている」と誤解するようなシグナルをそれ以上送らないようにすることを学べば、それに適した生活をするようになるだろう」、その通りだ。
・『脳の“病気”というより“正常な反応” だからと言って、炎症に抗う方法なら何でも──例えば特定の食事療法など──がうつに効くというわけではない。残念ながらそんなに単純な話ではないのだ。 起きている間ずっと予測不可能なストレスを受け続ける職業もある。そんな労働環境がなぜうつにつながるのか、それも理解できるようになる。 無気力になり引きこもりたくなるのは病気ではなく、健全な反応なのだ。つまり一番良いのは労働環境を変えること。もちろん言うは易しだが、ここでポイントになるのは、異常な環境に対する異常な反応は脳の病気というよりむしろ正常な反応だということだ』、「異常な環境に対する異常な反応は脳の病気というよりむしろ正常な反応だということだ」、これまでの誤解がクリアに払拭できた。
第三に、8月20日付け文春オンライン「東京女子医科大学病院の「ICU崩壊状態」を招いた、患者の命を軽視した経営方針と恐怖政治 東京女子医大の闇 #6」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/56739
・『集中治療科の医師9人が一斉退職することが決まり、ICU(集中治療室)が事実上の崩壊状態になる、東京女子医科大学病院。9月から移植など高度な外科手術がストップするなど、東京都民の命が脅かされる可能性が高い。取材の結果、患者の命を無視した経営方針と、職員の医師たちを恐怖で支配する女子医大の異常な実態が見えてきた。 疑惑追及キャンペーン第5弾の後編は、複数の女子医大関係者の証言によって、前代未聞のICU崩壊状態に至る内幕を告発する。(前編#5を読む/最初から読む:東京女子医大の闇 #1 #2 #3 #4) ※女子医大は教職員に対して、メディア取材に個別対応すると懲戒処分を行うと通告している。そこで本記事は個人の特定を避けるために、複数の職員の証言を区別せずに表記した』、興味深そうだ。
・『死亡事故の再発防止策「小児ICU」を託されたのはカナダの大学で活躍していた専門医のA氏(女子医大「ICU崩壊状態」の原点、それは、苦労して設立した集中治療科の「小児ICU」チームを8カ月で解散させた、経営陣の不可解な対応にあった。 そもそも小児ICUが設立されたのはある重大な事故がきっかけだった。2014年、当時2歳の孝祐くんが、女子医大病院の耳鼻咽喉科で手術を受けた後、鎮静薬プロポフォールを過剰投与されて死亡したのである。医師の間で情報が共有されず、責任の所在が不明確だったことなどが原因だったとされる。 第三者委員会は、再発防止策として、8つに分散していた「ICUの集約化」、そして「小児ICUの新設」(医療機関での呼称はPICU)などを提言した。女子医大はまずICUを集約化してから、次に小児ICUの設立に向けて動いた。 「小児の集中治療専門医はとても少なく、カナダの大学で活躍していた日本人のA氏に白羽の矢が立ちました。2020年1月、A氏に一時帰国してもらい、岩本絹子理事長との面談を経て、小児ICUの責任者(特任教授)として内定したのです」(女子医大関係者)』、「小児の集中治療専門医はとても少なく、カナダの大学で活躍していた日本人のA氏に白羽の矢が立ちました。2020年1月、A氏に一時帰国してもらい、岩本絹子理事長との面談を経て、小児ICUの責任者(特任教授)として内定」、「小児ICUの責任者」の決定は、極めて重要な意味があった筈だ。
・『経営陣は小児ICUが救った子供の命にあまり関心を示さなかった ただし、A氏が赴任する上で、解決しなければならない問題があった。一般病院の5割~7割程度といわれる、女子医大の低い給与体系だ。 「女子医大の医師は、低い給与を補うために週1~2回、他院でアルバイトをしています。しかし、小児ICUは24時間体制の勤務なので、アルバイトが難しい。それで、A氏は一時帰国した際、一般病院並みの給与を保証してほしいと岩本理事長に相談して、その場で了承されたそうです」(同) こうして2021年、A氏はカナダから帰国し、集中治療科の小児ICU特任教授に就任した。6人の小児ICU専門医と専属の看護師が集まり、7月に小児ICUが始動する。 すぐに成果は現れた。新型コロナで重症になった小児の患者を引き受け、全員が元気に退院。さらに、心臓移植を待つ小児患者など、全国各地から重症の子供たちを次々と受け入れていく。 だが、経営陣は小児ICUが救った子供の命にあまり関心を示さなかった、と関係者は証言する』、「経営陣は小児ICUが救った子供の命にあまり関心を示さなかった」、病院の「経営陣」としては、何を考えているのだろう。
・『「土下座するつもりで、岩本理事長に謝ってもらっていいですか」 「経営陣は、小児ICUの採算性とA特任教授の給与に着目していました。岩本理事長は、『他の職員とのバランスがとれない』と一方的に給与の合意を撤回したのです。これに驚いたA特任教授は丸義朗学長に説明を求めましたが、納得のいく返答はなかった、と肩を落としていました」(同) しかも経営陣は、A特任教授が説明を求めた行動自体を問題視した。上司にあたる、集中治療科の野村岳志教授に対して、驚くべき要求をしたという。 「医学部長らから『A先生の件で、岩本理事長に会ってください』と言われたそうです。どうしたらいいのかと聞くと、『土下座するつもりで、岩本理事長に謝ってもらっていいですか』と。もちろん、野村教授は断ったと聞きました」(同) 岩本理事長に土下座して謝る――。 もし本当なら、教育機関としてのモラルを疑う言葉だ。さらに、今年2月の教授会で、丸学長が次のような説明を行っていた』、「医学部長」が「上司にあたる、集中治療科の野村岳志教授に対して」「土下座するつもりで、岩本理事長に謝ってもらっていいですか」、驚くべき打診だ。
・『「発言は YES という意味ではなかったのでしょうか」 「A特任教授は、カナダで年収7000万円だったので、本学で2500万から3500万の給与を要望したが、理事長は応じなかった。A特任教授と規定以上の給与の合意はない」(2/18 教授会での丸学長発言要旨) 教授会から2日後、集中治療科の野村岳志教授は、丸学長にメールを送った。全教授らにBCCで同時配信したので、公開質問状といえるだろう。 「(A特任教授が一時帰国した)2020 年1月、田邉病院長、私、A先生で、岩本理事長と経営統括部長に面談しました。私はよく覚えております。給与総額について理事長は 1、2 秒考え、『そのくらい大丈夫よね、部長』 と経営統括部長に伝え、彼は無言で首を縦に振りました。理事長から『では、頑張ってください』と激励を受けました。この発言は YES という意味ではなかったのでしょうか。 また、A特任教授は、カナダの大学でそんなに貰っていないとのことです。どうして、そのような話をされたのか、確認させてください」(2/20 野村教授から丸学長宛メールより抜粋要約) 回答を求められた丸学長は、直接答えずに、法務部の弁護士に対応させた。 「理事長との面談時にいかなるやり取りがあったにせよ、教員の給与は学長が決定する権限を有しておりますので、理事長との面談のみにより教職員との給与を確定させることはできません」(2/25 女子医大・法務部弁護士からのメールより、抜粋) 木で鼻をくくったような回答である。しかもA特任教授のカナダでの給与について、丸学長がなぜ虚偽の説明をしたのか、法務部の弁護士は答えていない』、「丸学長がなぜ虚偽の説明」をしたのかも疑問だ。
・『リーダーを失った小児ICUチームは“解散” この一方で、丸学長はA特任教授に対して、「令和4年度の契約は更新しない」と言い渡していた。 A特任教授は、辞表を提出せざるを得なかった。だが、筆者が入手したA特任教授の辞令に、任期は「令和5年3月31日」までと記されていた。つまり、女子医大は任期を1年残して、A特任教授に事実上の解雇通告したことになる。 リーダーを失った小児ICUチームは、医師全員が辞職や異動したことで“解散”となった。 「小児ICUは、幼い命に対する重い責任を背負っていました。同時に、女子医大にしか救えない重症の子供たちの命を守るという、使命感もありました。こうした現場のことを、経営陣は何も理解していなかった。ただ気に入らないから壊した、としか思えません」(女子医大関係者)』、「こうした現場のことを、経営陣は何も理解していなかった。ただ気に入らないから壊した、としか思えません」、信じ難い状況だ。
・『経営陣の「患者の安全性を軽視した判断」 経営陣の暴挙は、これだけではない。集中治療科のホームページを担当する医師が、「小児集中治療専門医は全員退職、2022年2月末で小児ICUの運用は停止」とサイトに記したところ、これが問題だとして、女子医大は、医師に「降格」の懲戒処分を行ったのである。なぜ医師は処分の対象となるのか──。 「経営側にとって都合が悪かったのです。女子医大が多額の貸付を受けている福祉医療機構(厚労省の関連団体)などに、A特任教授らが辞表を出した後も『小児ICUは維持していく』と説明していたので、整合性がとれなくなりますから」(同) 野村教授はこの件に関連して、メール履歴を勝手に調べられ、部下の監督不行き届などの理由で、「減給」の懲戒処分を受けた、と関係者は語った。 「みんな恐怖政治に怯えています。女子医大の内部監査室に警察OBを雇って、メールの内容まで勝手にチェックするなんて、教育機関とは思えません」(同) 事実上の“ICU崩壊”が迫る中、8月16日に行われた女子医大病院の会議で、板橋道朗病院長は当面の方針を示した。 「9月からICUに入室した患者は、各々の診療科で責任を持って管理する。何かあったら、麻酔科と救命救急センターの先生が駆けつける体制を継続する。安定するまでは、リスクの高い症例は控えてもらう。一致団結して、安全な集中治療体制を維持していきたい」 各診療科で対応という苦肉の策で、体面上は“ICUを維持”するという。これに対して、現場の医師たちからは疑問の声が相次いだ。 「移植でかなりICUを使っていたので、これから患者を救えなくなるかもしれない、と本当に危惧している」 「大半が集中治療に慣れていないので、今までのようには対応できない。高度な医療をすると、事故を起こす可能性がある」 「小児ICUも潰されてしまった。スタッフが減る予定で、当直が回せるかどうか本当にギリギリ。ICUを診ろと言われると厳しい」 また、板橋病院長は、7月半ばに野村教授が辞表を提出するなど、動きが急激だったので(後任などの準備が)間に合わなかったと会議で説明した。だが、内情をよく知る関係者は次のように証言する。 「後任の医師を探す時間をつくるため、野村教授は6月に辞表を提出した、と聞いています。けれども経営陣は、医師を確保できず、最近までICUに最も関係する外科にも知らせませんでした。9月に移植手術を予定している診療科は大混乱です」(女子医大関係者)』、「女子医大が多額の貸付を受けている福祉医療機構(厚労省の関連団体)などに、A特任教授らが辞表を出した後も『小児ICUは維持していく』と説明」、よくぞこんないい加減な説明をするものだ。
・『孝祐くんを失った父親「強い怒りを覚えます」 当時2歳の孝祐くんを失った父親は、小児ICUチームの解散に続き、事実上のICU崩壊が避けられない状況について、次のように述べた。 「女子医大は、ICUの管理体制を抜本的に見直して、二度と同じ過ちを繰り返さないと、私たち遺族に説明してきました。それは全て嘘だったのでしょうか。現場の医師や看護師の努力を傲慢にも踏みにじった経営陣に、強い怒りを覚えます」 経営陣に翻弄され続けたICUのスタッフたち。騒動の渦中にいる野村教授が、こんなことを言っていたという。 「女子医大の良さは、自由で新しいことにチャレンジする精神でした。それがすっかり変わってしまった。反対意見さえも言えないのなら、ここで医師を教育することはできません」 これまで筆者は、週刊文春と文春オンラインで、女子医大の「疑惑のカネ」について報じてきた。さらに、国税局課税部資料調査課が、「疑惑のカネ」をめぐり税務調査を続けている。それでも経営陣の責任を問う動きは、女子医大の組織内から起きていない。 このままでは、ICUの事実上の崩壊に連鎖して、さらに多くの医師や看護師が去っていき、女子医大は自壊するだろう。その影響を受けるのは、ここで学ぶ約1400人の学生と、命を預ける患者たちである。(前編#5を読む)』、「「女子医大の良さは、自由で新しいことにチャレンジする精神でした。それがすっかり変わってしまった。反対意見さえも言えないのなら、ここで医師を教育することはできません」、経営陣はどうするつもりなのだろうか。
タグ:(その37)(日本が「医療貧国」であるこれだけの理由 無駄に長い入院・過剰な病床数…、「うつは、感染症から体を守るための防御メカニズム」肥満や座りっぱなしがうつにつながる意外な理由 脳が私たちを引きこもらせようとする、東京女子医科大学病院の「ICU崩壊状態」を招いた、患者の命を軽視した経営方針と恐怖政治 東京女子医大の闇 #6) 医療問題 ダイヤモンド・オンライン 奥 真也氏による「日本が「医療貧国」であるこれだけの理由、無駄に長い入院・過剰な病床数…」 奥真也著『医療貧国ニッポン』(PHP研究所) 「病床稼働率を上げるために、金曜日に入院、月曜日に退院というかたちを探る医療機関が日本にはいまだに存在します。 金曜日に入院しても、土日は医師の診療も検査もありません。場合によっては外泊OK、つまり自宅に帰ってもいいということもあります。まだ何も医療を受けていないのに、ベッド代はかかります。個室だったら差額ベッド代も取られます」、こんなやり方がまかり通っているとは驚いた。 「実際に逼迫していたのは、ベッドよりも医師や看護師などの医療スタッフです。ケアするスタッフがそろわなくて対応できなかったというのが実情です・・・コロナ禍の日本の「医療過迫」は、見かけ上の医療スタッフの逼迫、人不足の問題でもあったのです」、「長期療養型の施設がなかったため、本来ならば病院を退院して療養施設に移るのが望ましい人たちに対して、長期的な入院措置がとられている状況がありました」 「精神疾患を持つ人たちを収容している精神病床などもそうです。入院というより、社会に出さないための超長期的収容施設です。高齢者用の療養病床が「社会的入院」と呼ばれたのも、それに近い仕組みといえます。こういった長期入院が多いことも日本の病床の多さに関係しています」、「国や知事などの行政は、医療機関や医師に対して「命令」することができず、「要請」か「誘導」しかできません」、なるほど。 「国公立の病院を見ると、黒字の病院の割合は減少傾向で、全体のわずか7%に過ぎません。とくに損益率がマイナス30%を下回る赤字病院の数は25%にも上ります」、「ポストコロナの時代になって、あなたの住む地域の病院もこれから大きな変革が迫られるようになります」、「公立病院」の「赤字経営脱却のための施策」が急務のようだ。 PRESIDENT ONLINE アンデシュ・ハンセン氏による「「うつは、感染症から体を守るための防御メカニズム」肥満や座りっぱなしがうつにつながる意外な理由 脳が私たちを引きこもらせようとする」 『ストレス脳』(新潮新書) 人体は本当によく出来ていると再認識した。 「炎症は祖先が子供の頃に命を奪う恐れのあったものから私たちを守ってきた。例えば死に至る細菌やウイルスへの感染だ」、なるほど一定の効用があるようだ。 「歴史的に炎症を起こしてきたもの──細菌やウイルスそして怪我は、ほとんどの場合、一過性のものだ。しかし現代の要因──ずっと座っていること、肥満、ストレス、ジャンクフード、喫煙、環境汚染物質などは長く続く傾向がある」、「長く続く」「炎症」はどのような影響を及ぼすのだろう。 「現代の炎症要因でも、細菌やウイルスに攻撃されている時と同じシグナルが脳に送られてしまう。そのシグナルが長く続きすぎると・・・脳は「命が危険にさらされていて、常に攻撃を受けている!」と誤解してしまう。そこで脳は気分を下げるという調整を行い、私たちを引きこもらせようとする。精神的に立ち止まらせ、その状態が長く続く。何しろ現代の炎症要因というのは自然に消えてくれることはないのだから。 結果として長期的に精神が停止状態に陥る。つまり私たちがうつと呼ぶ状態だ。このように、うつも炎症に起因する病気のリストに入ってく 「長期間ストレスにさらされているとコルチゾールのレベルが高いまま暮らすことになり、ついには身体がそのレベルに慣れてしまう」、「身体はコルチゾールに反応するのをやめ、炎症を鎮める能力を失ってしまう」、「小さな炎症はくすぶったままになり、全身の炎症の度合いが上がってしまう」、なるほど。 「身体はお腹周りの脂肪を見知らぬものと認識し、炎症を起こすことで侵入者、つまり余分な脂肪に闘いを挑むのだ。 肥満がうつのリスクを高めるのは、肥満自体が社会的に不名誉であることも要因だが、脂肪組織の炎症のせいだという可能性もあるのだ」、やはり「肥満」も出来るだけ避ける方がよさそうだ。 「炎症はうつを引き起こす重要な要因の1つだが、要因は炎症だけではない。 うつ全体の3分の1程度が炎症に起因しているとされる」、なるほど。 「うつは「隠された防御メカニズム」、意外な事実だ。 「しかし「なぜ」そうしたほうがいいのかという生物学的な理屈を学ぶことで、運動、睡眠、適度なストレス、そして回復というアドバイスが深い意味を帯びるようになる。そういった要因が炎症にブレーキをかけること、脳が「攻撃されている」と誤解するようなシグナルをそれ以上送らないようにすることを学べば、それに適した生活をするようになるだろう」、その通りだ。 「異常な環境に対する異常な反応は脳の病気というよりむしろ正常な反応だということだ」、これまでの誤解がクリアに払拭できた。 文春オンライン「東京女子医科大学病院の「ICU崩壊状態」を招いた、患者の命を軽視した経営方針と恐怖政治 東京女子医大の闇 #6」 「小児の集中治療専門医はとても少なく、カナダの大学で活躍していた日本人のA氏に白羽の矢が立ちました。2020年1月、A氏に一時帰国してもらい、岩本絹子理事長との面談を経て、小児ICUの責任者(特任教授)として内定」、「小児ICUの責任者」の決定は、極めて重要な意味があった筈だ。 「経営陣は小児ICUが救った子供の命にあまり関心を示さなかった」、病院の「経営陣」としては、何を考えているのだろう。 「医学部長」が「上司にあたる、集中治療科の野村岳志教授に対して」「土下座するつもりで、岩本理事長に謝ってもらっていいですか」、驚くべき打診だ。 「丸学長がなぜ虚偽の説明」をしたのかも疑問だ。 「こうした現場のことを、経営陣は何も理解していなかった。ただ気に入らないから壊した、としか思えません」、信じ難い状況だ。 「女子医大が多額の貸付を受けている福祉医療機構(厚労省の関連団体)などに、A特任教授らが辞表を出した後も『小児ICUは維持していく』と説明」、よくぞこんないい加減な説明をするものだ。 「「女子医大の良さは、自由で新しいことにチャレンジする精神でした。それがすっかり変わってしまった。反対意見さえも言えないのなら、ここで医師を教育することはできません」、経営陣はどうするつもりなのだろうか。