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マイナンバー制度(その2)(マイナポイント第2弾」で2万ポイントをもらう方法! マイナンバーカードに健康保険証や公金受取口座を登録すると、第1弾利用者も1万5000ポイント獲得可能、マイナンバーカードが保険証に!?メリット・デメリットは?) [経済政策]

マイナンバー制度については、2021年11月28日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その2)(マイナポイント第2弾」で2万ポイントをもらう方法! マイナンバーカードに健康保険証や公金受取口座を登録すると、第1弾利用者も1万5000ポイント獲得可能、マイナンバーカードが保険証に!?メリット・デメリットは?)である。

先ずは、昨年3月2日付けダイヤモンド・オンライン:ZAI:マイナポイント第2弾」で2万ポイントをもらう方法! マイナンバーカードに健康保険証や公金受取口座を登録すると、第1弾利用者も1万5000ポイント獲得可能」を紹介しよう。
https://diamond.jp/zai/articles/-/295820
・『2022年1月1日から「マイナポイント第2弾」がスタートした。 第1弾では、2021年4月末までに「マイナンバーカード」の申請をした人が、クレジットカードや電子マネーなどのキャッシュレス決済を紐付けて利用することで、最大5000円分のポイントを獲得できたが、今回の第2弾は最大2万円分のポイントを獲得可能だ。 【※関連記事はこちら!】 ⇒「マイナポイント」に申し込む方法と注意点を解説!マイナンバーカードとキャッシュレス決済を登録し、最大5000円分(還元率25%)のポイントを獲得しよう キャッシュレス利用による還元ポイントは、第1弾と同じく最大5000ポイント。なお、このキャッシュレス利用によるポイント付与は、すでに「マイナンバーカード」を持っていて、第1弾でポイントを獲得していない人が対象だ。 また、第2弾では「マイナンバーカード」を健康保険証として利用する申し込みをすると7500ポイント、「公金受取口座情報」を国(デジタル庁)に登録すると7500ポイントと、追加で計1万5000ポイントを獲得できる。この追加獲得分に関しては、すでに第1弾で5000ポイントを受け取っている人も対象となっている。 なお、公金受取口座の登録についてはデジタル庁のページに記載がある。 預貯金口座の情報をマイナンバーとともに事前に国(デジタル庁)に登録しておくことにより、今後の緊急時の給付金等の申請において、申請書への口座情報の記載や通帳の写し等の添付、行政機関における口座情報の確認作業等が不要になります。 口座情報は、緊急時の給付金のほか、年金、児童手当、所得税の還付金等、幅広い給付金等の支給事務に利用することができます。 公金受取口座の登録自体は、2022年春ごろに始まる予定とのこと。一方「マイナンバーカード」の健康保険証としての利用申し込みは、すでに始まっている。申請は「マイナポータル」のアプリがおすすめだ。アプリにログインすると「マイナンバーカードが健康保険証として利用できます」と案内があるので「申し込む」をタップ。 マイナポータル  「保険証利用登録」の画面が表示されるので、スクロールして「同意して次へ進む」をタップ。次の画面で「申し込む」をタップすれば申し込み完了だ。 申し込み状況を確認して「登録完了」と表示があれば、登録できている。 申し込み状況  「マイナンバーカード」を健康保険証として利用できる医療機関はまだまだ少なく、マイナポイントの付与は早くて2022年6月からとなっている。とはいえ、登録エラーなどが生じる可能性も考えて、早めに手続きしておくに越したことはないだろう。 以上、今回は「マイナポイント第2弾」で獲得できるポイントについて解説した』、「マイナンバーカードとキャッシュレス決済を登録」、「「マイナンバーカード」を健康保険証として利用する登録」、「「マイナンバーカード」を健康保険証として利用する申し込み」、「「公金受取口座情報」を登録」、それぞれポイント付与をエサに釣っているようだ。
ここまで「ポイント付与」をしないと普及しないというのはバカバカしい感じもする。

次に、10月17日付けCARD FACTORY「マイナンバーカードが保険証に!?メリット・デメリットは?」を紹介しよう。
https://www.card-factory.jp/column/?id=1634713627-537440
・『みなさん、マイナンバーカードはお持ちですか? マイナンバー制度が本格的にスタートしたのが2016年1月。国はマイナンバーカードを普及させようと様々な策を取っていますね。昨年はマイナポイント事業が行われましたが、新たな普及策として、2021年10月20日からマイナンバーカードの保険証利用が本格開始となりました。ご存じでしたか!? 私はマイナンバーカードを持っていないのですが、カード会社として気になる話題ですね。 マイナンバーカードが保険証として利用できるメリット・デメリットを見ていきましょう。 ❖ マイナンバーカードが保険証に!?メリット・デメリットは? ❖ 主なメリット( ※ いくつかピックアップ ) 1、過去の特定健診や薬剤情報を医師等と共有できる(本人同意の上) 2、自分の特定健診や薬剤情報を閲覧できる 3、高額医療費の限度額を超える支払いが「限度額適用認定証」がなくても不要に 4、マイナポータルとe-Taxの連携で確定申告の医療費控除が簡単に 5、スムーズに保険資格の確認ができ、窓口での受付が効率的になる ❖ デメリット 1、現時点ですべての医療機関や薬局が対応しているわけではない 2、利用登録は、基本はオンライン(マイナポータル)かセブン銀行ATMでしかできない 3、初診で21円、再診で12円の追加医療費が生じる(2022年4月~) デメリット3ですが、2022年10月~変更がありました。マイナ保険証の場合 初診21円 → 6円へ 従来の保険証の場合 初診12円 再診に関しては上乗せはなし。 ただし、カードを読み取る機械を導入している医療機関や薬局のみだそう。こうなってくると病院選びも慎重になってしまいますね。 私が大きなメリットだと感じたものは 3、高額医療費の限度額を超える支払いが「限度額適用認定証」がなくても不要に これくらいですかね。それでも頻繁に使うものでもないですね。 医療機関側も事務処理が効率的になるという反面、導入費用や手間などを考えると、そこまでメリットを感じられないのではないか。 2022年5月時点でマイナンバーカードの普及率は国民の約40%、カードを利用できる医療機関や薬局はわずか約19%だそう。 その後の普及率は、2022年10月には49%まで達し、ようやく約半数となりました。 2023年3月からはすべての医療機関で利用できるよう進めていくそうですが、それまでは健康保険証と両方持ち歩く必要があります。 それならば、しばらくそのままでいいかなと思ってしまいますね。 受付の際、カードリーダーで顔認証か暗証番号入力を行うそうです。 コロナがきっかけで非接触が主流となっていくのかもしれませんが、どちらにしてもカードを出す必要があるなら、窓口で保険証を手渡すほうが楽かなぁ・・・ なんて思ってしまう私は、古いですかね』、「2022年5月時点でマイナンバーカードの普及率は国民の約40%、カードを利用できる医療機関や薬局はわずか約19%だそう。 その後の普及率は、2022年10月には49%まで達し、ようやく約半数となりました。 2023年3月からはすべての医療機関で利用できるよう進めていくそうですが、それまでは健康保険証と両方持ち歩く必要があります。 それならば、しばらくそのままでいいかなと思ってしまいますね」、「カードを出す必要があるなら、窓口で保険証を手渡すほうが楽かなぁ・・・ なんて思ってしまう私は、古いですかね」、カード会社勤務の筆者は慎重な見方のょうだ。 
・『SNS等から声を拾ってみました。 「情報が集約されたカードをお財布に入れて持ち歩くのは怖い。」 「使える病院が少ない!自分が使っている病院は未対応だった。」 「2枚持つのは面倒。保険証利用ができるからってマイナンバーカードを作ろうとは思わない。」 後ろ向きのコメントが多いように見受けられました。 一方で 「薬の管理ができて助かる。お薬手帳のように使えるなら便利。」 「財布の軽量化につながる。」 といった前向きなコメントもありました。 よく利用する人にとっては、便利なのではないでしょうか。 毎年、確定申告で医療費控除を申請している人は、手続きが簡単になって助かりますよね。知人は朗報だと喜んでいました。 マイナンバーカードの保険証利用については、賛否両論ありそうですね。 マイナンバーカードが保険証に!?メリット・デメリットは? 今後の日本は・・・ 国としてはデジタル化を普及させたいのでしょう。 日本は世界に比べて遅れていますからそれもわかるのですが、なんでも一体化したがりますよね。 2025年からはマイナンバーカードが運転免許証の代わりとしても使えるようになるという話も聞きます。 デジタル化の促進は高齢者にはハードルが高いのではないかなと懸念されます。 デジタル化が進むと大きな壁になるのが「暗証番号問題」ではないでしょうか。 国が1人10万円を配る「特別定額給付金」 オンライン申請の際にマイナンバーカードの暗証番号が必要なのですが、暗証番号を忘れた人たちが窓口に殺到した!というニュース、ありましたよね。 定期的に変更しましょう、使い回しはやめましょう、○文字以上必須、大文字小文字記号すべて使いましょう・・・ 『 覚 え ら れ ん ! ! 』 それに代わるのが生体認証(顔や指紋)なんでしょうけど・・・どうも抵抗が。 一体化って便利そうですが、紛失した時のリスクは大きいですよね。 ですが実際のところ、マイナンバーが漏洩し誰かに知られたとしても、悪用できることは少ないと言われています。とはいえ、気分的に嫌ですよね。 利便性と危険性はとなり合わせですから・・・。 将来的にはマイナンバーカード1枚で様々なことが可能になるような社会を目指しているとか。 さらに先の将来には、なんでもスマホで完結!なんていう世の中になるのではないかと。 カード会社に勤める立場としては、ちょっと複雑な気持ちになりますね・・・。 あくまで私見ですが、そもそもマイナンバー制度は国が個人情報を管理するためのものだと思っています。 マイナンバーカードがなくても現状は不自由を感じていませんし、義務化されない限りカードは作らないと思います。 批判的ですみません(笑) 最後に・・・ 今回の保険証利用については、マイナンバーカードを作ってもらう入り口のひとつなのでしょう。 この取り組みによって、どのくらい利用者が増えるかわかりませんが、マイナンバーカードは登録さえ済ませてしまえば、メリットを上手に活用して便利に生活ができるのかもしれません。 しかし、全国民がメリットを感じるようにならなければ、普及率を上げていくのはなかなか難しいのかなと感じています』、「今回の保険証利用については、マイナンバーカードを作ってもらう入り口のひとつなのでしょう。 この取り組みによって、どのくらい利用者が増えるかわかりませんが、マイナンバーカードは登録さえ済ませてしまえば、メリットを上手に活用して便利に生活ができるのかもしれません。 しかし、全国民がメリットを感じるようにならなければ、普及率を上げていくのはなかなか難しいのかなと感じています」、私はマイナンバーカードを持っているが、税金の申告に使っている程度だ。各種のポイント付与のエサには釣られずに、合理的利用に徹している。「保険証利用」はせずに、あくまで現実の「保険証」で済ませるつもりだ。
タグ:「2022年5月時点でマイナンバーカードの普及率は国民の約40%、カードを利用できる医療機関や薬局はわずか約19%だそう。 その後の普及率は、2022年10月には49%まで達し、ようやく約半数となりました。 2023年3月からはすべての医療機関で利用できるよう進めていくそうですが、それまでは健康保険証と両方持ち歩く必要があります。 それならば、しばらくそのままでいいかなと思ってしまいますね」、 CARD FACTORY「マイナンバーカードが保険証に!?メリット・デメリットは?」 「マイナンバーカードとキャッシュレス決済を登録」、「「マイナンバーカード」を健康保険証として利用する登録」、「「マイナンバーカード」を健康保険証として利用する申し込み」、「「公金受取口座情報」を登録」、それぞれポイント付与をエサに釣っているようだ。 ここまで「ポイント付与」をしないと普及しないというのはバカバカしい感じもする。 ダイヤモンド・オンライン:ZAI:マイナポイント第2弾」で2万ポイントをもらう方法! マイナンバーカードに健康保険証や公金受取口座を登録すると、第1弾利用者も1万5000ポイント獲得可能」 マイナンバー制度 (その2)(マイナポイント第2弾」で2万ポイントをもらう方法! マイナンバーカードに健康保険証や公金受取口座を登録すると、第1弾利用者も1万5000ポイント獲得可能、マイナンバーカードが保険証に!?メリット・デメリットは?) 「カードを出す必要があるなら、窓口で保険証を手渡すほうが楽かなぁ・・・ なんて思ってしまう私は、古いですかね」、カード会社勤務の筆者は慎重な見方にょうだ。 「今回の保険証利用については、マイナンバーカードを作ってもらう入り口のひとつなのでしょう。 この取り組みによって、どのくらい利用者が増えるかわかりませんが、マイナンバーカードは登録さえ済ませてしまえば、メリットを上手に活用して便利に生活ができるのかもしれません。 しかし、全国民がメリットを感じるようにならなければ、普及率を上げていくのはなかなか難しいのかなと感じています」、私はマイナンバーカードを持っているが、税金の申告に使っている程度だ。各種のポイント付与のエサには釣られずに、合理的利用に徹している。「 「保険証利用」はせずに、あくまで現実の「保険証」で済ませるつもりだ。
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新自由主義(その3)(『朝日新聞政治部』2題:「なぜ私はダメなんですか!」「お立場が違います」朝日の若手記者を怒らせた“政治取材の不条理”  #1、「非正規労働は急増し 給料は上がらず 経済格差は急拡大した」竹中平蔵の片棒をかついだ元朝日記者の悔恨  #2) [メディア]

昨日に続いて、新自由主義(その3)(「朝日新聞政治部」2題:なぜ私はダメなんですか!」「お立場が違います」朝日の若手記者を怒らせた“政治取材の不条理”  #1、「非正規労働は急増し 給料は上がらず 経済格差は急拡大した」竹中平蔵の片棒をかついだ元朝日記者の悔恨  #2)を取上げよう。

先ずは、昨年6月18日付け文春オンラインが掲載した朝日新聞政治部記者の鮫島 浩氏による「「なぜ私はダメなんですか!」「お立場が違います」朝日の若手記者を怒らせた“政治取材の不条理” 『朝日新聞政治部』 #1」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/55063
・『1997年4月、大物政治記者が支局長を務める浦和支局に赴任した朝日新聞記者の鮫島浩氏。当時、若手の鮫島氏に「次期総理」の呼び声の高い自民党大物議員を取材するチャンスが訪れた。ところが、彼がそこで見たものは“政治取材の残念な実情”だった……。 登場人物すべて実名の話題の内部告発ノンフィクション、「吉田調書事件」の当事者となった元エース記者・鮫島浩氏による初の著書『朝日新聞政治部』より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)』、興味深そうだ。
・『「大物政治記者」との出会い  大物政治記者が支局長を務めるという浦和支局へ私が赴任したのは1997年4月だった。その人、橘優さんは政治部デスクから浦和支局長へ異動し、次期政治部長に有力視されていた。私が初めて出会う政治記者だった。 橘さんは前年、1996年の衆院解散・総選挙の日程をスクープした「特ダネ政治記者」として知られていた。「○日に解散へ」「○日に衆院選投開票へ」「首相が方針固める」といった前打ち記事にどれほどの意味があるのか、当時の私には理解できなかったが、彼のスクープは社内だけでなく政界や各社政治部の中でも高く評価されていた。 奇怪だったのは、橘さんの「ネタ元」が当時の自民党幹事長で次期首相の筆頭候補だった加藤紘一氏であることが公然の秘密だったことだ。 新人記者は「取材源の秘匿」を厳しく指導される。警察取材で「ネタ元」がバレることは絶対にあってはならない。ネタ元の警察官は処分され、新聞記者は「記者失格」の烙印を押される。 政治取材の世界は違うようだった。次期総理の呼び声の高い加藤幹事長から総選挙日程の情報を漏らされるほど親しい政治記者であるという事実は、永田町の政治家や政治記者たちに尊敬とも畏怖ともつかぬ感情を抱かせ、橘さんの影響力を大きくしていた。 次期政治部長と言われるのは果たしてどんな人物なのか、私は興味津々で浦和支局へ向かった。初めて会った橘さんはカジュアルなチノパン姿だった。政治記者はスーツで身を固めていると思っていたから意外だった。 埼玉県下の記者を集めたその後の会議で橘さんが投げかけた言葉は新鮮だった。彼はその日の県版に掲載された小さな記事――雑木林の落ち葉を堆肥として利用する農家の試みを紹介する記事――を引き合いに出し、こう語ったのだ。 「埼玉の小さな農家もグローバル経済に晒されている。東南アジアから大量の木材が輸入され日本の雑木林は大きく変わっている。割り箸のリサイクルひとつから世界が見える。小さな記事を深く掘り下げれば世界を描く記事を書ける……」 茨城で新聞記者として過ごした3年、警察取材や記事の書き方を先輩諸氏から教わることはあっても、世界がどうだ、政治経済がどうだ、という話は聞いたことがなかった。とにかく取材相手に食い込んで特ダネをとれ、と言われるばかりだった。夜討ち朝駆けに奔走して特ダネを追い求め、「抜かれ」「特オチ」に怯えた。 同期の多くが同じ境遇だったろう。地方支局で接する先輩の多くは社会部系だ。政治経済は縁遠いテーマで、国政選挙の時期だけ多少話題にのぼるくらいだった。 でも、この大物政治記者は違う。話がグローバルでダイナミックだ』、「橘さんの「ネタ元」が当時の自民党幹事長で次期首相の筆頭候補だった加藤紘一氏であることが公然の秘密だったことだ。 新人記者は「取材源の秘匿」を厳しく指導される。警察取材で「ネタ元」がバレることは絶対にあってはならない。ネタ元の警察官は処分され、新聞記者は「記者失格」の烙印を押される。 政治取材の世界は違うようだった」、「ネタ元」の秘匿は「政治取材の世界は違うようだった」、なるほど。「浦和支局」長は、「大物政治記者」で「話がグローバルでダイナミックだ」、いい上司に恵まれたものだ。これも、優秀な若手記者を育てるコースなのかも知れない。
・『一度は「大物政治記者」に魅力を感じたが…  当時は政治家にも新聞記者にも携帯電話が普及していなかった。浦和支局にはしばしば「衆院議員の加藤です。支局長をおねがいします」と電話がかかってきた。橘さんは私たちに中央政界について「次はこうなる」と予想を披露し、それが引き起こす政策上の論点・課題を先取りして解説した。その予想は的中し、論点整理も明快だった。私は浦和支局にいながら、中央政界の動きを知っている錯覚に陥った。 それまで新聞記者は「過去に起きたこと」を取材して報じるものと思っていた。橘さんの話を聞くうちに、政治経済の「未来」を的確に見通す記事はとても重要だと気づいた。 当局発表を少し早くリークしてもらって他社より少し早く報じる自称「特ダネ」とは違う。新聞には、各方面の情報を総合的に分析して「次はこうなる」という見立てを読者に示し、権力側に主導権を奪われることなく政策アジェンダを設定する役割があるのではないか――。私はこれまで出会った新聞記者に感じたことのない魅力を「大物政治記者」に感じた』、「新聞には、各方面の情報を総合的に分析して「次はこうなる」という見立てを読者に示し、権力側に主導権を奪われることなく政策アジェンダを設定する役割がある」、さすが「大物政治記者」の下で働いただけのことがありそうだ。
・『「なぜ私はダメなのですか!」「お立場が違います」  その好感が反感に変わるまでさほど時間を要しなかった。 私はある時、埼玉県の自民党関係者から加藤幹事長が極秘で来県するという情報を得た。直接取材する絶好の機会と思い、立ち寄り先のビルの前で待った。ほどなく黒塗りの車が到着し、加藤幹事長がSPを従え降りてきた。私は駆け寄った。その黒塗りの車から降りてきた人物がもう一人いた。橘さんだった。 どこかで加藤幹事長と落ち合い同乗してきたのだろう。忙しい政治家をつかまえサシで話を聞く取材手法のひとつが、車に同乗する「箱乗り」だ。 自分が待ち構えていた政治家と同じ車の中から自分の上司が現れたのだから多少驚きはしたが、私は橘さんに目もくれず、加藤幹事長に向かって直進した。加藤幹事長は素早くエレベーターに乗り込んだ。SPに続き、橘さんも乗り込んだ。浦和支局で大きな顔をしている普段の橘さんと違って、この時の身のこなしは素早かった。私も続こうとしたその時、SPの太い腕が私を制した。 「なぜ私はダメなのですか! あの人は乗り込んだじゃないですか!」 私は橘さんを指さして叫んだ。加藤幹事長も橘さんも黙っていた。SPが沈黙を破った。 「お立場が違います」 これが政治取材の実像か――。私は静かに閉まるエレベーターの扉を睨みつけながら悔しくて仕方がなかった。何を聞くかではなく、誰が聞くのかが重要なのだ。こんな政治取材はおかしい、いつか変えてやる、と青臭く思ったものだ』、「忙しい政治家をつかまえサシで話を聞く取材手法のひとつが、車に同乗する「箱乗り」だ」、確かに便利で確実な「取材手法」だが、それが認められるには「大物政治記者」である必要がありそうだ。「こんな政治取材はおかしい、いつか変えてやる、と青臭く思ったものだ」、負け惜しみ以外の何物でもない。

次に、この続きを、6月18日付け文春オンライン「「非正規労働は急増し、給料は上がらず、経済格差は急拡大した」竹中平蔵の片棒をかついだ元朝日記者の悔恨 『朝日新聞政治部』 #2」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/55067
・『「竹中さんにくっついて一緒にいればいいよ。これは大きなチャンスだから」。2001年、上司の一声から竹中平蔵大臣に密着することとなった元朝日記者の鮫島浩氏。彼のボヤキを聞き、同じ釜の飯を食った鮫島氏が、今の竹中氏を見て「彼は既得権益側になった」と語る理由とは? 登場人物すべて実名の話題の内部告発ノンフィクション、「吉田調書事件」の当事者となった元エース記者・鮫島浩氏による初の著書『朝日新聞政治部』より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む) 小泉政権が2001年春に発足した後、私は野党担当から官邸担当に移った。官邸クラブはキャップ、サブキャップ、官房長官番、官房副長官番、総理番が中心だが、私には明確な担当がなかった。さほど期待されていなかったのだろう。官邸キャップの渡辺勉さんから「明日から竹中平蔵大臣を回ってほしい」と告げられたのはそんな時だった。 渡辺さんは、自民党を担当する平河キャップの曽我豪さんと並んで朝日新聞の将来を担うと嘱望された政治部のエースだった。森喜朗政権では森首相の「神の国発言」を記者会見で激しく追及。理知的な雰囲気を漂わせながら強い正義感と大胆さを秘めた切れ味鋭い政治記者である。 竹中氏は慶応大教授から経済財政担当大臣に民間人として登用され、日が浅かった。小泉総理から構造改革の旗振り役として期待されていたが、自民党や霞が関に応援団は少なく苦戦していた。小泉・竹中構造改革に対する「抵抗勢力」が健在な時代で、官邸主導の政治は確立していなかった』、「上司の一声から竹中平蔵大臣に密着」、「竹中氏」は「小泉総理から構造改革の旗振り役として期待されていたが、自民党や霞が関に応援団は少なく苦戦していた」、「竹中氏」にもそんな時期もあったようだ。
・『「寂しいんだよ。だから政治部に泣きついてきた」  「経済はまったくの素人ですよ」と私は答えた。渡辺さんは「竹中さんにくっついて一緒にいればいいよ。これは大きなチャンスだから」と答え、背景を説明した。竹中大臣はその前夜、各社の官邸キャップを集めてオフレコ懇談を開いてこうぼやいたという。 「経済部の記者が私を担当しているのですが、誰も記者会見以外で取材してくれないんです。経済部は大臣より官僚を重視する。大臣が何を言っても事務次官が言うことを信じる。私はまったく相手にしてもらえないんですよ」 渡辺さんは「竹中さんは寂しいんだよ。だから政治部に泣きついてきた。経済はわからなくていいから、くっついて回って。そのうちわかるようになるよ」と言った。) 政治部と経済部の取材手法の違いはこの一言に凝縮されている。政治部は政治家に番記者を張りつけ、その政治家が直面する政治課題を一緒に追いかけさせる。内閣改造人事で閣僚の顔ぶれが一新したら、政治部記者もがらりと入れ替わる。 他方、経済部は役所ごとに担当記者を置き、役所の政策課題を追いかけさせる。いつまでその職にあるかわからない大臣よりも各省庁の官僚トップに上り詰めた事務次官のほうがおのずから重要となる。 竹中氏は官僚や経済部記者に見向きされず、持ち前の発信力をいかせずに孤立していた。後ろ盾は小泉首相ただ一人だった。今こそ政治部が食い込むチャンスだ――渡辺さんはそう考えた。各社の官邸キャップで竹中氏のSOSを感じ取り、ただちに「竹中番」を張り付けたのは渡辺さんだけだった。彼の独特の嗅覚がもたらした判断だった。のちに朝日新聞社を大きく揺るがすことになる渡辺さんと私の師弟関係はここに始まる』、「政治部は政治家に番記者を張りつけ、その政治家が直面する政治課題を一緒に追いかけさせる。内閣改造人事で閣僚の顔ぶれが一新したら、政治部記者もがらりと入れ替わる。 他方、経済部は役所ごとに担当記者を置き、役所の政策課題を追いかけさせる。いつまでその職にあるかわからない大臣よりも各省庁の官僚トップに上り詰めた事務次官のほうがおのずから重要となる」、「政治部」と「経済部」の取材手法の違いを初めて知った。「竹中氏は官僚や経済部記者に見向きされず、持ち前の発信力をいかせずに孤立していた。後ろ盾は小泉首相ただ一人だった。今こそ政治部が食い込むチャンスだ――渡辺さんはそう考えた。各社の官邸キャップで竹中氏のSOSを感じ取り、ただちに「竹中番」を張り付けたのは渡辺さんだけだった。彼の独特の嗅覚がもたらした判断」、凄い判断だ。
・『朝から夜まで竹中平蔵と付き合った日々  こうして私は竹中大臣の番記者になった。朝から夜までつきまとうのである。全社が張り付ける官房長官番や幹事長番と違って、竹中番は私一人だった。私は竹中氏と政務秘書官の真柄昭宏氏と3人で毎日会った。昼は国会の食堂で、日中は大臣室で、夜はファミレスで、とにかく話した。 当時の竹中氏は政治家や官僚、記者から軽んじられ、私を相手にする時間が十分にあった。政治家の名前と顔もよく知らず、国会でトイレに行くにも迷うほどだった。 政治記者4年目の私のほうが政界事情に詳しく「野中広務さんと青木幹雄さんは○○な関係で……」とありふれた政界解説をしていた。「素人3人組」が寄り添って、政官業の既得権の岩盤に挑む戦略をああでもないこうでもないと言い合う、漫画のような日々だった。 竹中氏の経済解説は非常にわかりやすく、面白かった。自民党や財務省と経済政策や規制緩和策について折衝する舞台裏を包み隠さず話し、「抵抗勢力」を打ち破るにはどうしたらよいか私に意見を求めた。 小泉首相は経済政策の司令塔として竹中氏を指名し、あとは任せっきりという政治スタイルだった。当時の竹中氏は政治的に非力だったが、立場上ディープな情報は集まっていた。何にも増して小泉首相の肉声に日々接していた。 私は竹中氏と毎日膝をつき合わせる取材を通じて日本の経済政策はどういうプロセスで決定されていくのかを生々しく理解するようになった。竹中氏は自らの改革に立ちはだかる財務省や自民党政調会長だった麻生太郎氏に対する不満を日増しに強めた。竹中氏の「財務省嫌い」や「麻生氏嫌い」は今も変わらない。 竹中氏は当初、敗れ続けた。だが、くじけなかった。自民党や財務省が水面下で主導する政策決定過程をオープンにして世論に訴えた。経済財政諮問会議の議事録を公開して「抵抗勢力」の姿を可視化したのだ。これは的中した。マスコミは次第に「抵抗勢力」を悪者に仕立て始めた。そして小泉首相は「竹中抵抗勢力」の闘いが佳境を迎えると歌舞伎役者よろしく登場し、竹中氏に軍配を上げたのだった。 政治の地殻変動が始まった。政策決定の中心が「自民党・霞が関」から「首相官邸」へ移り始めた。竹中氏の影響力は急拡大し、政治家や官僚が頻繁に訪れるようになった。竹中氏と真柄氏と私の素人3人組の作戦会議もファミレスから個室へ場所を移した。経産官僚だった岸博幸氏や財務官僚だった高橋洋一氏、学者から内閣府に入っていた大田弘子氏ら竹中氏を支える裏部隊も出来上がっていった』、「竹中氏は当初、敗れ続けた。だが、くじけなかった。自民党や財務省が水面下で主導する政策決定過程をオープンにして世論に訴えた。経済財政諮問会議の議事録を公開して「抵抗勢力」の姿を可視化したのだ。これは的中した。マスコミは次第に「抵抗勢力」を悪者に仕立て始めた。そして小泉首相は「竹中抵抗勢力」の闘いが佳境を迎えると歌舞伎役者よろしく登場し、竹中氏に軍配を上げたのだった」、「小泉首相」の立ち回りは確かに「歌舞伎役者」そのものだ。
・『彼の功と罪  ふと気づくと竹中氏は小泉政権の経済財政政策のど真ん中にいた。財務省からその立ち位置を奪ったのである。そして、政治部記者として竹中氏を担当していた私は、新聞社の長い歴史を通じて独占的に予算編成や税制改革を報じてきた経済部の財務省担当記者たちに取って代わり、予算や税制をめぐる「特ダネ」を連発した。 経済部記者が事務次官ら官僚をいくら回っても情報は遅かった。すべては竹中氏ら官邸主導で決まり、経済部記者が財務省取材でそれを知るころには私が朝日新聞紙面で報じていたのである。業界用語でいう「圧勝」の日々だった。各社の経済部は慌てて竹中氏を追いかけ始めたが、すでに遅かった。竹中氏は時間に追われ、初対面の記者といちから関係をつくる暇はなかった。 私は「竹中氏に食い込んだ記者」として知られるようになり、政治家や官僚、そして財界からも「竹中大臣を紹介してほしい」「竹中大臣の考えを教えてほしい」という面会依頼が相次いだ。経済知識もなく竹中氏と会食やお茶を重ねていただけなのに、わずか数ヵ月で私の境遇は様変わりしたのである。 これは権力に近づく政治部記者が勘違いする落とし穴でもある。私は茨城県警本部長に食い込んだ昔のサツ回り時代を思い出して自分を戒めるようにした。 朝日新聞社内で、政治部と経済部の関係は緊張した。私が予算や税制の特ダネを出稿するたびに財務省記者クラブを率いる経済部のキャップは「財務省は否定している」と取り下げを求めた。渡辺官邸キャップはそれを聞き流し、真夜中の1時を過ぎて新聞の印刷が始まるころ「そうは言っても、もう明日の新聞は降版しちゃったよ」と電話を切るのだった。 財務省は朝日新聞報道を追認していくようになる。財務省の言う通りに政策が決まらない新たな現実を、経済部はなかなか受け入れられないようだった。政策の主導権は明らかに自民党や財務省から首相官邸に移った。その意味で、小泉政権の誕生は「政権交代」といえた。省庁ごとの縦割りだったマスコミ各社の取材体制も変革を迫られたのである』、「政治部記者として竹中氏を担当していた私は、新聞社の長い歴史を通じて独占的に予算編成や税制改革を報じてきた経済部の財務省担当記者たちに取って代わり、予算や税制をめぐる「特ダネ」を連発した。 経済部記者が事務次官ら官僚をいくら回っても情報は遅かった。すべては竹中氏ら官邸主導で決まり、経済部記者が財務省取材でそれを知るころには私が朝日新聞紙面で報じていたのである」、「各社の経済部は慌てて竹中氏を追いかけ始めたが、すでに遅かった。竹中氏は時間に追われ、初対面の記者といちから関係をつくる暇はなかった」、「財務省は朝日新聞報道を追認していくようになる。財務省の言う通りに政策が決まらない新たな現実を、経済部はなかなか受け入れられないようだった。政策の主導権は明らかに自民党や財務省から首相官邸に移った。その意味で、小泉政権の誕生は「政権交代」といえた。省庁ごとの縦割りだったマスコミ各社の取材体制も変革を迫られたのである」、確かに画期的な変化だ。
・『突如終わった「竹中番」  私は竹中番記者である限り、特ダネを書き続けられる気がした。その日々は突如として終わる。私はある日、「抵抗勢力」のドンと言われた自民党の古賀誠元幹事長の番記者に移るように告げられたのだ。 背景には、政治部と経済部の「手打ち」があった。それまでは政局は政治部、政策は経済部という仕分けが成立していた。政治家は政局に明け暮れ、政策は官僚が担うという時代が続いたからだ。小泉政権はそのシステムを壊した。 政策は官邸主導に移り、総理が指名した竹中氏のような大臣が仕切る新たな政策決定プロセスが整いつつあった。その時代に「政局は政治部、政策は経済部」という縦割り取材は通用しなかった。 両部は、①国会記者会館の朝日新聞の部屋に両部のデスクを常駐させて連携を密にする、②官邸サブキャップに経済部記者を配置する――などの協力態勢で合意するとともに、確執の元凶であった私を「竹中番」から外すことで折り合ったようだ。この社内政治によって私は竹中番を卒業したのである。 私の竹中氏取材は、権力者の懐に食い込んで情報を入手する旧来型のアクセスジャーナリズムの典型である。竹中氏の提灯記事を書いたつもりはないが、竹中氏らが抵抗勢力との戦いを有利に進めるために番記者である私(朝日新聞)を味方に引き込み情報を流したのは間違いない。朝日新聞はそれを承知のうえで、情報の確度を精査して主体的に報道すべき事実を判断して記事化していたが、結果的に竹中氏を後押しする側面があったのは否めない。 旧来の政治・経済報道ではこのように取材相手と「利害を重ねる」ことで情報を入手できる記者が「優秀」と評価されてきた。しかし、アクセスジャーナリズム自体に厳しい視線が向けられる時代になった。 権力者への密着取材が不要とは思わないが、読者の不信を招かないように取材手法や取材経緯をできる限り透明化したうえで「このような記事を書くために密着取材している」と胸を張って言える権力監視報道を具体的に示し、読者の理解と信頼を得ることが不可欠になったと思う。) 竹中氏はその後、2004年参院選に出馬して当選し、2005年には担当大臣として郵政民営化を主導し、霞が関や経済界全体に絶大な影響力を誇るようになる。素人3人組が抵抗勢力を打ち負かす作戦を練るために集った日々がウソのようであった。 永田町・霞が関に単身で乗り込み、既得権の岩盤に挑んだ当初の竹中氏はチャレンジャーだった。規制緩和を中心とする新自由主義について私は批判的だが、他方、自民党の族議員と財務省などのエリート官僚によってベールに包まれてきたこの国の政策決定過程をこじ開け、透明化した彼の功績は大きいと思う。 竹中氏が強大な権力者になるにつれ、取り巻きは急増した。それに伴い、私は竹中氏と疎遠になった。竹中氏は小泉政権が終了した時点で大臣も参院議員も辞めたが、その後も今に至るまで大きな影響力を維持し続けている。当初は竹中氏と激突した霞が関や財界が「竹中化」したのだ』、「私はある日、「抵抗勢力」のドンと言われた自民党の古賀誠元幹事長の番記者に移るように告げられたのだ。 背景には、政治部と経済部の「手打ち」があった」、「既得権の岩盤に挑んだ当初の竹中氏はチャレンジャーだった。規制緩和を中心とする新自由主義について私は批判的だが、他方、自民党の族議員と財務省などのエリート官僚によってベールに包まれてきたこの国の政策決定過程をこじ開け、透明化した彼の功績は大きいと思う。 竹中氏が強大な権力者になるにつれ、取り巻きは急増した。それに伴い、私は竹中氏と疎遠になった」、なるほど。
・『竹中氏は挑戦者から「既得権益側」に変わった  竹中氏が労働市場の規制緩和を主導した後、人材派遣業界で急成長したパソナグループの会長になったこと、そのパソナが政府関連の業務を多く受注していることは象徴的である。挑戦者だった竹中氏は自民党や霞が関の既得権益を打ち破って勝者となり、挑戦を受ける既得権益側になったといえるだろう。 竹中氏が日本に持ち込んで実践したこの20年の構造改革がもたらしたものは何だったのか。株価はコロナ危機でもバブル期以来の高値を更新し、富裕層や大企業は潤い続けた。 一方で非正規労働は急増し、給料は上がらず、経済格差は急拡大した。対ロシア経済制裁による物価高や急速に進む円安のしわ寄せは、所得が低く弱い立場の人々ばかりに向かう。』、「挑戦者だった竹中氏は自民党や霞が関の既得権益を打ち破って勝者となり、挑戦を受ける既得権益側になった」、「竹中氏が日本に持ち込んで実践したこの20年の構造改革」で、「日本社会の健全さは損なわれ、活力は大きく衰えてしまった。 格差が広がる日本社会の曲がり角で、私は政権中枢に接近し「改革」の片棒を担いだのかもしれない」、きちんと総括しているのは、さすがだ。
タグ:新自由主義 (その3)(『朝日新聞政治部』2題:「なぜ私はダメなんですか!」「お立場が違います」朝日の若手記者を怒らせた“政治取材の不条理”  #1、「非正規労働は急増し 給料は上がらず 経済格差は急拡大した」竹中平蔵の片棒をかついだ元朝日記者の悔恨  #2) 文春オンライン 鮫島 浩氏による「「なぜ私はダメなんですか!」「お立場が違います」朝日の若手記者を怒らせた“政治取材の不条理” 『朝日新聞政治部』 #1」 鮫島浩氏による初の著書『朝日新聞政治部』 「橘さんの「ネタ元」が当時の自民党幹事長で次期首相の筆頭候補だった加藤紘一氏であることが公然の秘密だったことだ。 新人記者は「取材源の秘匿」を厳しく指導される。警察取材で「ネタ元」がバレることは絶対にあってはならない。ネタ元の警察官は処分され、新聞記者は「記者失格」の烙印を押される。 政治取材の世界は違うようだった」、「ネタ元」の秘匿は「政治取材の世界は違うようだった」、なるほど。「浦和支局」長は、「大物政治記者」で「話がグローバルでダイナミックだ」、いい上司に恵まれたものだ。これも、優秀な若手記者を育てるコースなのかも知れない。 「新聞には、各方面の情報を総合的に分析して「次はこうなる」という見立てを読者に示し、権力側に主導権を奪われることなく政策アジェンダを設定する役割がある」、さすが「大物政治記者」の下で働いただけのことがありそうだ。 「忙しい政治家をつかまえサシで話を聞く取材手法のひとつが、車に同乗する「箱乗り」だ」、確かに便利で確実な「取材手法」だが、それが認められるには「大物政治記者」である必要がありそうだ。「こんな政治取材はおかしい、いつか変えてやる、と青臭く思ったものだ」、負け惜しみ以外の何物でもない。 文春オンライン「「非正規労働は急増し、給料は上がらず、経済格差は急拡大した」竹中平蔵の片棒をかついだ元朝日記者の悔恨 『朝日新聞政治部』 #2」 「上司の一声から竹中平蔵大臣に密着」、「竹中氏」は「小泉総理から構造改革の旗振り役として期待されていたが、自民党や霞が関に応援団は少なく苦戦していた」、「竹中氏」にもそんな時期もあったようだ。 「政治部は政治家に番記者を張りつけ、その政治家が直面する政治課題を一緒に追いかけさせる。内閣改造人事で閣僚の顔ぶれが一新したら、政治部記者もがらりと入れ替わる。 他方、経済部は役所ごとに担当記者を置き、役所の政策課題を追いかけさせる。いつまでその職にあるかわからない大臣よりも各省庁の官僚トップに上り詰めた事務次官のほうがおのずから重要となる」、「政治部」と「経済部」の取材手法の違いを初めて知った。 「竹中氏は官僚や経済部記者に見向きされず、持ち前の発信力をいかせずに孤立していた。後ろ盾は小泉首相ただ一人だった。今こそ政治部が食い込むチャンスだ――渡辺さんはそう考えた。各社の官邸キャップで竹中氏のSOSを感じ取り、ただちに「竹中番」を張り付けたのは渡辺さんだけだった。彼の独特の嗅覚がもたらした判断」、凄い判断だ。 「竹中氏は当初、敗れ続けた。だが、くじけなかった。自民党や財務省が水面下で主導する政策決定過程をオープンにして世論に訴えた。経済財政諮問会議の議事録を公開して「抵抗勢力」の姿を可視化したのだ。これは的中した。マスコミは次第に「抵抗勢力」を悪者に仕立て始めた。そして小泉首相は「竹中抵抗勢力」の闘いが佳境を迎えると歌舞伎役者よろしく登場し、竹中氏に軍配を上げたのだった」、「小泉首相」の立ち回りは確かに「歌舞伎役者」そのものだ。 「政治部記者として竹中氏を担当していた私は、新聞社の長い歴史を通じて独占的に予算編成や税制改革を報じてきた経済部の財務省担当記者たちに取って代わり、予算や税制をめぐる「特ダネ」を連発した。 経済部記者が事務次官ら官僚をいくら回っても情報は遅かった。すべては竹中氏ら官邸主導で決まり、経済部記者が財務省取材でそれを知るころには私が朝日新聞紙面で報じていたのである」、 「各社の経済部は慌てて竹中氏を追いかけ始めたが、すでに遅かった。竹中氏は時間に追われ、初対面の記者といちから関係をつくる暇はなかった」、「財務省は朝日新聞報道を追認していくようになる。財務省の言う通りに政策が決まらない新たな現実を、経済部はなかなか受け入れられないようだった。政策の主導権は明らかに自民党や財務省から首相官邸に移った。その意味で、小泉政権の誕生は「政権交代」といえた。省庁ごとの縦割りだったマスコミ各社の取材体制も変革を迫られたのである」、確かに画期的な変化だ。 「私はある日、「抵抗勢力」のドンと言われた自民党の古賀誠元幹事長の番記者に移るように告げられたのだ。 背景には、政治部と経済部の「手打ち」があった」、「既得権の岩盤に挑んだ当初の竹中氏はチャレンジャーだった。規制緩和を中心とする新自由主義について私は批判的だが、他方、自民党の族議員と財務省などのエリート官僚によってベールに包まれてきたこの国の政策決定過程をこじ開け、透明化した彼の功績は大きいと思う。 竹中氏が強大な権力者になるにつれ、取り巻きは急増した。それに伴い、私は竹中氏と疎遠になった」、なるほど。 「挑戦者だった竹中氏は自民党や霞が関の既得権益を打ち破って勝者となり、挑戦を受ける既得権益側になった」、「竹中氏が日本に持ち込んで実践したこの20年の構造改革」で、「日本社会の健全さは損なわれ、活力は大きく衰えてしまった。 格差が広がる日本社会の曲がり角で、私は政権中枢に接近し「改革」の片棒を担いだのかもしれない」、きちんと総括しているのは、さすがだ。
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新自由主義(その2)(今考える「新自由主義」 第1回 米初期資本主義の‟超”格差社会と ニューディール政策が生んだ「最も平等な社会」、第2回 再び格差広げたフリードマンの思想とパウエル、第3回 日本の生産性を押し下げる低賃金 米国型コーポレート・ガバナンス導入が病巣) [経済政策]

新自由主義については、2021年7月12日に取上げた。久しぶりの今日は、(その2)(今考える「新自由主義」 第1回 米初期資本主義の‟超”格差社会と ニューディール政策が生んだ「最も平等な社会」、第2回 再び格差広げたフリードマンの思想とパウエル、第3回 日本の生産性を押し下げる低賃金 米国型コーポレート・ガバナンス導入が病巣)である。

先ずは、昨年2月6日付け週刊エコノミスト Onlineが掲載した「今考える「新自由主義」 第1回 米初期資本主義の‟超”格差社会と、ニューディール政策が生んだ「最も平等な社会」=中岡望」を紹介しよう。
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20220206/se1/00m/020/001000d
・『2022年1月17日、岸田文雄首相は国会で施政方針演説を行った。その中で「経済再生の要は『新しい資本主義』の実現である」と語っている。具体的な問題として指摘したのは、次の通りだ。 ①市場に依存し過ぎたことで、公平な分配が行われず生じた格差や貧困の拡大 ②市場や競争の効率性を重視し過ぎたことによる長期的投資の不足、そして持続的可能性の喪失 ③行き過ぎた集中によって生じた都市と地方の格差 ④自然に負荷をかけ過ぎたことによって深刻化した気候変動問題。分厚い中間層の衰退がもたらした健全な民主主義の危機 ▽岸田首相が掲げた目標の中身は綺麗だが…(これに対し、政策目標として、「さまざまな弊害を是正する仕組みを『成長戦略』と『分配戦略』の両面から資本主義の中に埋め込み、資本主義がもたらす便益を最大化する」ことを掲げた。 また、「成長と分配の好循環による持続可能な経済を実現するのが『分配戦略』であり、その第一は所得の向上につながる『賃上げ』である」「成長の果実を従業員に分配し、未来への投資である賃上げが原動力となって、さらなる成長につなげる好循環を作り出す」と、基本的な考え方を語った。 さらに「最低賃金を全国加重平均で1000円以上になるように最低賃金の見直しに取り組む」と具体的な目標を掲げた。 空洞化する中間層対策として、子育て・若者世代の世帯所得の引き上げのために「全世代型社会保障構築会議において、男女が希望通り働ける社会づくりや、若者世代の負担増の抑制、勤労者皆保険など、社会保障制度を支える人を増やし、能力に応じて皆が支え合う持続的な社会保障制度の構築に向けて議論を行う」と政策目標を語った。 賃金格差是正については、「企業の開示ルールを見直す」「今春、新しい資本主義のグランドデザインと実行計画を取りまとめる」とした。 首相の施政方針演説を受け、内閣では「新しい資本主義構想」を巡って議論が行われ、実行計画が策定されることになる』、「新しい資本主義構想」はすっかり色あせた感じだ。
・『岸田首相が言う「新しい資本主義」とは何か 表層的な見直しではいけない  ただ、岸田首相や彼のブレーンたちが、どのような理解の下で「新しい資本主義」を主張しているのか分からないが、歴史的事実と経済的論理に基づかない主張は「アベノミクス」と同様に、実態のない空論的経済政策に終わる可能性がある。 首相が指摘した「ネオリベラリズム(新自由主義)」がもたらしたさまざまな弊害に関して異論を唱える人は少ないのではないだろうか。 だが、国会で行われた議論は極めて表層的な内容であった。今後、具体的な議論が行われるのだろうが、「新しい資本主義」を構想するためにはネオリベラリズムを思想的、歴史的、経済学的、政治的に検証することが不可欠である。 そうした“知的作業”を十分に行わず、表層的な制度的見直しを行うことで「新しい資本主義」構想を描こうとしても、それは内実のない議論に終わるのは目に見えている。ネオリベラリズムの“根”は極めて深い。 今まで岸田首相の「新しい資本主義」の議論からは、ネオリベラリズムに基づく資本主義が形成された過程に対する洞察を感じることはできない。単なる政治的スローガンに終わらせないためには、ネオリベラリズムが誕生してきた背景を理解する必要がある』、「ネオリベラリズムが誕生してきた背景を理解する必要がある」、その通りだ。
・『小泉改革による日本へのネオリベラリズム導入  1970年代末にネオリベラリズム政策を最初に打ち出したのは英国のサッチャー首相であった。80年代には米国のレーガン大統領が「レーガノミクス」と呼ばれるネオリベラリズムを柱とした政策を打ち出した。 「自由競争」「規制緩和」「福祉政策の削減」「財政均衡」「自己責任」などを柱とするレーガノミクスは、米国の経済と社会を大きく変え、その政策は「レーガン革命」と呼ばれた。 そして、90年代になるとネオリベラリズムの弊害が現れ始めた。その最大の問題は、岸田首相が指摘しているように、「貧富の格差」の拡大である。 ネオリベラリズム政策が日本に導入されたのは「小泉改革」であった。バブル崩壊後、日本経済は長期低迷に直面し、不況脱出に苦慮していた。また終身雇用をベースとする「日本的経営」の限界が語られていた。そんな中で小泉純一論首相は、不況打開の切り札としてネオリベラリズムの政策を導入する。 「規制改革」と「競争促進」で経済を活性化して不況脱出を図ろうとした。小泉改革は「20年遅れのレーガン革命」であった。米国におけるネオリベラリズムの導入には長い歴史と経済学、政治力学の変化が深く関わっていた。 だが、日本ではネオリベラリズムの持つ思想的な意味が十分に検討されることなく、また、既に社会問題となっていた貧富の格差の問題を顧みることなく、表層的な景気政策として導入され、社会に与える影響が真剣に議論されることはなかった。 そして1900年代にネオリベラリズム政策を導入した米国で想像を絶するような貧富の格差が生じたように、日本でも貧富の格差が深刻な社会問題となって現れている』、「日本ではネオリベラリズムの持つ思想的な意味が十分に検討されることなく、また、既に社会問題となっていた貧富の格差の問題を顧みることなく、表層的な景気政策として導入され、社会に与える影響が真剣に議論されることはなかった」、その通りで、残念なことだ。
・『サッチャー元英首相がネオリベラリズムを復活させた 歴史的観点から見た「ネオリベラリズム」とは何か  ネオリベラリズムの弊害を克服するには、その本質を理解する必要がある。米国における資本主義原理の発展を踏まえながら、ネオリベラリズムの本質を明らかにする。 ネオリベラリズム「ネオ(新)」は何を意味するのだろうか。米国の資本主義の変遷は三つの言葉で表現される。「古典的リベラリズム(Classical Liberalism)」、「ニューディール・リベラリズム(New Deal Liberalism)」、そして「ネオリベラリズム(Neoliberalism)」である。 「古典的リベラリズム」は、経済学で言えば、古典派経済学の世界、アダム・スミスの世界での資本主義の原理である。市場における自由競争が最適な資源配分を実現するとする考え方である。 そうした自由競争と価格メカニズムの機能は「見えざる神の手」という言葉で表現される。米国の古典的リベラリズムには、「政府の市場への介入忌避」や「自由放任主義」に「小さな政府」を主張する政治論が加わる。 結論を先に言えば、ネオリベラリズムは古典的リベラリズムが新しい状況の中で姿を変え復活したものである。余談であるが、アダム・スミスの『国富論』の出版とトーマス・ジェファーソンの『独立宣言』は同じ1776年に出された。スミスとジェファーソンはお互いに面識があり、二人の考えた国家論は似ていたのかもしれない』、「米国の古典的リベラリズムには、「政府の市場への介入忌避」や「自由放任主義」に「小さな政府」を主張する政治論が加わる」、その通りだ。
・『悪辣な手段を用いて富を蓄積した「泥棒貴族」  古典的リベラリズムが米国社会を席捲するのは、南北戦争前後に始まる産業革命の時代である。米国経済は1860年から1900年の間に6倍に成長し、世界最大の工業国となった。この高度成長の時代は「ギルディド・エイジ(Gilded Age)」と呼ばれる、米国の初期資本主義の輝ける時代であった。 素晴らしい技術革新もあったが、企業家は悪辣な手段を用いて富を蓄積していった。その強欲ぶりに、彼らは「泥棒貴族」と呼ばれた。膨大な富の格差を生み出した。1890年の時点で、所得上位1%の富裕層が全資産の51%、上位12%の富裕層が全資産の86%を保有していた。 米連邦準備制度理事会(FRB)の調査によると、現在の米国は「第2のギルディド・エイジ」と呼ばれているように、19世紀と同じ現象が繰り返されている。上位1%の最富裕層が34%、上位10%の富裕層が88%の資産を保有している。所得下位50%の家計が保有する資産はわずか1.9%に過ぎない。歴史は繰り返されるのである』、「1890年の時点で、所得上位1%の富裕層が全資産の51%、上位12%の富裕層が全資産の86%を保有」、米FRBの調査によると、現在の米国は「第2のギルディド・エイジ」と呼ばれているように、19世紀と同じ現象が繰り返されている。上位1%の最富裕層が34%、上位10%の富裕層が88%の資産を保有」、「歴史は繰り返されるのである」、こんな形の繰り返しは悲劇だ。
・『レーガン元米大統領の改革「レーガノミクス」が格差の種を撒いた 古今のポピュリズムに共通の「反エリート主義」  初期資本主義の時代の特徴は、市場における自由競争に留まらず、社会的にも「社会的ダーウィン主義」が主張されたことだ。企業のみならず、個人にも生存競争や自然淘汰、優勝劣敗、適者生存といった考えが適用された。 さらにリバタリアン(市場至上主義者)は「格差こそが進歩の原動力になる」と、貧富の格差の正当性を主張した。労働者は劣悪な労働環境のもとで長時間労働を強いられた。女性や子供の労働も例外ではなかった。労働改善を求めて行うストは、暴力的に排除された。労働組合は非合法であった。 当然のことながら、過酷な労働環境の改善や賃上げを求める労働者の運動が始まった。英国では「フェビアン協会」が設立され、漸進的な労働改善運動が行われ、それがやがて社会民主主義へと発展していった。 資本主義そのものを廃止するというマルクス主義も誕生した。米国でも労働組合結成の動きが出てくる。1892年に労働者や農民の利益を代弁する政党「人民党」が結成される。同党の党員や支持者は「ポピュリスト」と呼ばれた。現在のポピュリズムの原型である。 19世紀後半の急激な格差拡大がポピュリズムを生み出したのと同じように、21世紀の格差拡大がポピュリズムを蘇生させ、トランプ主義を生み出した。19世紀のポピュリズムは「左派ポピュリズム」であったが、21世紀のポピュリズムは「右派ポピュリズム」であった。そこに共通するのは、反エリート主義である』、「19世紀のポピュリズムは「左派ポピュリズム」であったが、21世紀のポピュリズムは「右派ポピュリズム」であった。そこに共通するのは、反エリート主義である」、なるほど。
・ルーズベルトとウィルソンによる格差是正  人民党は8時間労働の実現、累進的所得税の導入、金本位制に加え、銀本位制導入によるインフレ政策の実施(農民の債務軽減が目的)、鉄道や通信事業の国有化、移民規制などを政策に掲げた。その主張は国民の支持を得て連邦議会に議員を送り込んだ。1892年の大統領選挙では4州で勝利を収めた。最終的に人民党は民主党に吸収され、南部を地盤とする民主党は労働者や農民を支持層に組み入れた。共和党が企業を支持基盤とし、民主党が労働者を支持基盤とする構造ができあがった。 ポピュリズムに続いて、古典的リベラリズウの弊害を是正する目的で「進歩主義運動」が始まった。1890年から1920年は「進歩主義の時代」と呼ばれる。代表的な進歩主義の政治家はセオドーア・ルーズベルト大統領である。 ルーズベルト大統領は独占企業を「トラスト」と呼び、批判的な政策を取った。「スクエア―・ディール」政策を掲げ、不平等の解消を図った。企業に対する規制強化、消費者保護、自然保全、国民皆保険制導入などを政策として掲げた。もう一人の代表的な進歩主義者ウードロー・ウィルソン大統領は、貧富の格差を是正するために初めて「累進的連邦所得税」を導入した。 1913年に導入された所得税の最高税率は7%であった。さらに法人税も引き上げられた。1909年は1%であったが、1917年に6%にまで引き上げられた』、独禁法は現在でも米国企業を強く規制している。
・『フランクリン・ルーズベルト元米大統領(右)は中間層の拡大に貢献した なぜ「ニューディール・リベラリズム」が登場したのか  古典的リベラリズムに終止符を打ったのは、フランクリン・ルーズベルト大統領の「ニューディール政策」である。その政策は進歩主義の政策を踏襲し、さらに進めるものであった。 ルーズベルト大統領の政策は「ニューディール・リベラリズム」と呼ばれ、古典派経済学の市場至上主義を排して、政府の市場介入と市場規制が実施された。ニューディール政策は、政府と国民の間の関係を根本的に変えた。 古典的リベラリズムは市場機能に委ねれば市場は自ずと均衡し、市場における自由競争こそが最適な資源配分をもたらすと主張し、政府の市場への介入を否定した。だが大恐慌によって古典派リベラリズムへの信頼は根底から打ち砕かれた。「市場の失敗」を前に政府による市場規制の必要性が訴えられた。 大恐慌を引き起こす要因となった金融市場に対して厳しい規制が導入された。「グラス・スティーガル法」によって証券業務と銀行業務の分離が行われた。さらに証券市場を規制するために「証券取引員会(SEC)」が設立され、企業に情報公開を義務付け、インサイダー取引を禁止する措置が取られた。 ウィルソン政権の時に設立された「FRB(連邦準備制度理事会)」も財務省から独立し、権限が強化され、独立した金融政策を行えるようになった。所得税も大幅に引き上げられた。1932年に最高所得税率は25%から63%に引き上げられた。さらに1944年に94%にまで引き上げられた』、「大恐慌を引き起こす要因となった金融市場に対して厳しい規制が導入された。「グラス・スティーガル法」によって証券業務と銀行業務の分離が行われた。さらに証券市場を規制するために「証券取引員会(SEC)」が設立され、企業に情報公開を義務付け、インサイダー取引を禁止する措置が取られた。 ウィルソン政権の時に設立された「FRB・・・」も財務省から独立し、権限が強化され、独立した金融政策を行えるようになった」、現在の金融制度の骨格が出来たようだ。
・『「忘れられた人々」のために  疲弊した社会を再構築するためにルーズベルト大統領は「トップダウンではなく、ボトムアップで米国を再構築する」と主張し、「経済的ピラミッドの底辺に存在する“忘れられた人々のために政府の資源を総動員する」と誓った。 「忘れられた人々」とは労働者や農民を意味した。ルーズベルト大統領を支持するグループによる「ニューディール連合」が結成され、その中核となったのが労働組合や農民で、さらに少数民族やインテリ層も戦列に加わった。 米国の保守派の評論家は、ニューディール政策は古典的リベラリズムに依拠する伝統的な米国の価値観を根底から覆す「無血革命」であったと指摘している。「ニューディール連合」は1970年代まで米国政治を支配する。 ルーズベルト大統領が使った「忘れられた人々」という表現は、トランプ大統領によっても使われた。経済的格差が拡大し、社会が混乱すると必ずとポピュリズムが登場する。19世紀後半のギルディド・エイジに格差が拡大したときに誕生したのがポピュリストの人民党であり、進歩主義の登場である。トランプ大統領も社会的底辺に存在する白人労働者を「忘れられた人々」と呼び、強力な支持層へと変えていった』、「経済的格差が拡大し、社会が混乱すると必ずとポピュリズムが登場する」、「ポピュリストの人民党」、「トランプ大統領も社会的底辺に存在する白人労働者を「忘れられた人々」と呼び、強力な支持層へと変えていった」、なるほど。
・『保守派の政治家と企業による反ニューディール運動の展開  ニューディール政策は大恐慌から脱出するために公共事業による景気浮揚政策であるというのが一般的理解である。だが最近の経済学界では、景気浮揚効果は限定的であったという評価に変わってきている。 重要な政策は「労働政策」と「社会政策」であった。1933年の「全国産業復興法」と1935年の「全国労働関係法(ワーグナー法)」である。同法の成立によって、労働組合の団体交渉権や最低賃金制が導入され、最長労働時間、労働者の団体権、企業による不当解雇や差別が禁止された。 さらに労働争議を調停する「全国労働関係局」が設置され、労働紛争の調停が行われるようになった。年金制度や失業保険制度も導入された。労働組合の団体交渉による賃上げに加え、移民規制で新規の労働流入が止まったことや、戦争経済への移行もあり、労働者の実質賃金は上昇した。米国社会は、古典的リベラリズムに完全に決別し、ニューディール・リベラリズムの世界へ入って行った。 なお社会政策としては、1944年に行った一般教書の中でルーズベルト大統領は、国民は正当な報酬を得られる仕事を持つ権利、十分な食事や衣料、休暇を得る権利、農民が適正な農産物価格を受け取る権利、企業は公平な競争を行い、独占の妨害を受けない権利、家を持つ権利、適切な医療を受け、健康に暮らせる権利、病気や失業など経済的な危機から守られる権利、良い教育を受ける権利を持つと訴えた。 これは「第2の権利章典」と呼ばれ、戦後、福祉国家論の基本となった。競争こそが進歩の原動力だと主張する古典的リベラリズムとはまったく異なった世界観である』、「ニューディール政策は大恐慌から脱出するために公共事業による景気浮揚政策であるというのが一般的理解である。だが最近の経済学界では、景気浮揚効果は限定的・・・重要な政策は「労働政策」と「社会政策」であった」、評価が変わったことは初めて知った。
・『小泉氏の改革が日本に米資本主義を浸透させた 戦後米国における中産階級の登場と経済的繁栄  当然、ニューディール政策に反対する動きが起こった。それは1934年に結成された「リバティ・リーグ(Liberty League)」と呼ばれる組織である。 中心になったのは保守派の政治家と、デュポンやGMなどの大企業の経営者であった。彼らは19世紀的な市場競争を主張し、「政府は富裕層と特権階級を守るために存在する」と主張した。 さらに、ニューディール政策によって財政赤字は拡大し、官僚組織が肥大化し、階級闘争が激化すると主張した。彼らは1936年の大統領選挙で候補者を擁立し、ルーズベルト大統領とニューディール政策を攻撃した。 だが、結果はルーズベルト大統領の圧勝に終わり、ニューディール・リベラリズムが米国社会の指針となった。その後、企業家は長い沈黙を強いられることになった。 ニューディール・リベラリズムは戦後の米国経済の繁栄のベースになる。労働者の実質賃金の上昇に加え、1944年の「復員兵援護法(GI法)」によって多くの若者が奨学金を得て大学に進学した。 彼らはホワイトカラーの中核を形成するようになり、戦後の消費ブームを支えた。所得税率も45年から52年まで90%を越える水準で維持された。60年代半ばまで80%を下回ることはなかった。意欲的な所得再配分政策で、米国は“最も平等な社会”を実現した』、「ニューディール・リベラリズムは戦後の米国経済の繁栄のベースになる。労働者の実質賃金の上昇に加え、1944年の「復員兵援護法(GI法)」によって多くの若者が奨学金を得て大学に進学した。 彼らはホワイトカラーの中核を形成するようになり、戦後の消費ブームを支えた」、なるほど。
・『労働組合の交渉力の強化によって賃金が上昇  ニューディール・リベラリズムの影響下で、企業にも変化が出てきた。戦後、GMの経営分析をした経営学者のピーター・ドラッガーは、労働費は「変動費」ではなく、「固定費」として扱うことを主張した。 それは景気が悪くなったからと言って簡単に労働者を解雇すべきではないことを意味する。さらに労働者を「企業の重要な資産として訓練すること」を提言している。GMは他企業に先立って企業年金制度や医療制度を導入し、伝統的な労使関係が変化し始めた。GMの政策がやがて他の企業へと広がっていった。経営陣の態度の変化に加え、労働組合の交渉力の強化によって賃金が上昇していった。 1970年代まで生産性向上と労働賃金上昇率は、ほぼ同じ水準にあった。すなわち生産性向上の果実の大半は労働賃金の引き上げに向けられていたのである。 だが1970年代以降、生産性向上分は経営者の取り分が大きく増え、労働者の配分は低水準で推移するようになる』、「1970年代まで生産性向上と労働賃金上昇率は、ほぼ同じ水準にあった。すなわち生産性向上の果実の大半は労働賃金の引き上げに向けられていたのである。 だが1970年代以降、生産性向上分は経営者の取り分が大きく増え、労働者の配分は低水準で推移」、なるほど。

次に、2月9日付け週刊エコノミスト Onlineが掲載した「集中連載 今考える「新自由主義」 第2回 再び格差広げたフリードマンの思想とパウエル・メモ 組合を弱体化させた米国の失敗=中岡望」を紹介しよう。
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20220209/se1/00m/020/001000d
・『戦後、保守勢力が再びニューディール・リベラリズムを攻撃し始めた。最初の標的となったのは「ワグナー法」であった。1947年に「タフト・ハートリー法」が成立する。改正の狙いは、労働者の組合への参加を阻止することにあった。 具体的には、組合員のみを雇用するクローズド・ショップ制を非合法化する「労働権法」の規定が盛り込まれたことだ。それにより組合の弱体化が進められた。現在、労働権法を可決している州は27州に達している。そうした州での組合活動は大幅に制限されている。企業も労働権法が成立している南部の州へ工場を移転し始めた。こうした州の企業の多くは組合がなく、労働賃金も安かった。 1970年代に企業経営者の意識を変える大きな変化が現れた。ニューディール・リベラリズムの圧倒的な影響の下で経営者は萎縮していた。また冷戦のため経営者は労働組合を無視できなかった』、「組合員のみを雇用するクローズド・ショップ制を非合法化する「労働権法」の規定が盛り込まれたことだ。それにより組合の弱体化が進められた。現在、労働権法を可決している州は27州に達している。そうした州での組合活動は大幅に制限されている」、「クローズド・ショップ制を非合法化」は労組には大打撃だろう。
・『株主と経営者だけがステークホールダー  だが、そうした雰囲気を劇的に変える事態が起こった。1970年9月13日にノーベル経済学賞受賞者で保守派の経済学者ミルトン・フリードマン教授が『ニューヨーク・タイムズ』に長文の記事を寄稿した。 フリードマン教授は寄稿文に「企業の社会的責任は利潤を増やすことである」という題を付け、編集者はそれに「フリードマン・ドクトリン」という見出しを付け足した。フリードマン教授は、経営者の社会的責任とは「社会的な基本ルールに沿って、可能な限り利益を上げたいという株主の願望に沿って経営を行うべきだ」と主張。現代風にいえば、「企業は株主のもの」であり、「株主価値の最大化」こそ、経営者が果たさなければならない“社会的責任”であると説いたのである。 労働組合の要求に応じて賃上げを受け入れ、企業利益を減らすことは、経営者の社会的責任に反することになる。「フリードマン・ドクトリン」が次第に企業経営者に浸透し、米国のコーポレート・ガバナンスが大きく変貌を遂げることになる。それまで労働者は企業のステークホールダー(利害関係者)とみなされていたが、やがて株主と経営者だけがステークホールダーとみなされるようになる』、「フリードマン・ドクトリン」により、「それまで労働者は企業のステークホールダー(利害関係者)とみなされていたが、やがて株主と経営者だけがステークホールダーとみなされるようになる」、なるほど。
・『経済学者フリードマンの思想は米国の経営者に大きな影響を与えた 最高裁の「反労働組合的な判決」リードしたパウエル  さらに経営者の意識を変えたのが秘密文書「パウエル・メモ」である。弁護士のルイス・パウエルが米商業会議所の依頼で1971年8月23日に作成したメモである。「パウエル・メモ」の表題は「企業による民主主義支配の青写真」である。 パウエルは「米国の経済制度が(リベラル派や共産主義者から)広範な攻撃を仕掛けられている」と指摘する。だが米国企業の対応は融和的で断固として経済システムを守ろうとするものではなかった。攻撃に立ち向かうには、政治力の獲得が必要だと説く。 そして「政治力は決意をもって積極的に行使すべきだ」と主張する。ニューディール・リベラリズムを克服するために企業は協力して立ち向かう必要性を訴えた。経営者団体は積極的なロビー活動を通して立法に影響を及ぼし、共和党と手を組んでニューディ―ル連合への攻撃を始めた。 「フリードマン・ドクトリン」が米国企業に対する「経済的マニフェスト」とすれば、「パウエル・メモ」は米国企業に対する「政治的マニフェスト」であった。フリードマン・ドクトリンとパウエル・メモは保守派の共通メッセージとなり、1981年のレーガン政権誕生への布石となる。ちなみにパウエルはニクソン大統領によって最高裁判事に指名された。最高裁は反労働組合的な判決を出すことになるが、そうした判決をリードしたのはパウエルであった』、「弁護士のルイス・パウエルが米商業会議所の依頼で1971年8月23日に作成したメモである。「パウエル・メモ」の表題は「企業による民主主義支配の青写真」、「「フリードマン・ドクトリン」が米国企業に対する「経済的マニフェスト」とすれば、「パウエル・メモ」は米国企業に対する「政治的マニフェスト」であった」、なるほど。
・『コーポレート・ガバナンスの変化が報酬格差を生む  コーポレート・ガバナンスの変化によって経営者は労働者を無視し始める。経営者は賃金を抑制する一方で、株式配当を増やし、経営陣の報酬を引き上げていった。経営者は金銭による報酬以外に巨額のストック・オプションを得て、報酬は急激に増加し始める。 1978年から2020年の間の経営者の報酬は1,322.2%、すなわち13倍以上増えている。この間、労働者の賃金上昇率はわずか18%に過ぎなかった。新型コロナで大量の失業者が出た2019年から2020年の間の不況期にあっても経営者の報酬は18.9%増加している。 経営者と従業員の所得格差は、1965年は20対1であったが、2000年には366対1にまで拡大している(”CEO pay has skyrocketed 1,322% since 1978”, Economic Policy Institute, 2021年8月10日)。ネオリベラリズムは経営者を傲慢にし、古典的リベラリズムの世界を再現させた。 経営者の報酬が急激に上昇するにつれて、貧富の格差も拡大し始めた。1979年から2020年の期間に上位1%の所得は179.3%、上位0.1%は389.1%増えているが、低位90%の層の増加率はわずか28.2%に留まっている。 2020年の所得上位1%の層の年収増加率は7.3%。上位0.1%は9.9%であった。だが低位90%の層の収入の増加率は1.7%に留まっている。低位90%の人々の2020年の平均年収は約4万ドルであったが、上位0.1%の所得は約321万ドル、上位1%の層では約82万ドルであった。低位90%が占める所得比率は最低を記録している(”Wage inequality continued to increase in2020”, Economic Policy Institute, 2021年12月13日)』、「経営者と従業員の所得格差は、1965年は20対1であったが、2000年には366対1にまで拡大している」、「ネオリベラリズムは経営者を傲慢にし、古典的リベラリズムの世界を再現させた」、やれやれ。
・『ネオリベラリズムに基づく「レーガン革命」は未完に終わった  時代は変化していく。ニューディール政策によって力を得た労働組合は絶頂期を迎え、やがて衰退の方向に向かって進み始めた。海外の戦後復興が進むにつれ、米国経済の相対的地位は低下していく。 米国経済は貿易赤字と財政赤字の拡大とインフレという“トリレンマ(三重苦)”に見舞われる。インフレの原因は賃上げに伴う“コスト・プッシュ”にあると、労働組合に対する批判が強まり、ケネディ大統領とニクソン大統領はインフレ抑制のために賃金凍結という非常手段を取らざるを得なくなる。 組合も強引な賃上げとストによって次第に国民から遊離していった。労働組合幹部のスキャンダルも暴露される事態もあり、労働組合は悪者になり、社会的影響力も低下していった。 米国経済は1970年代に戦後最悪の不況に見舞われる。ニューディール政策の経済的支柱であったケインズ経済学も次第に精彩を欠くようになる。さまざまな規制と巨額の財政赤字が経済成長を阻害していると批判された。 こうして規制緩和と自由競争を主張するネオリベラリズムが登場する舞台が整った。1980年の大統領選挙で共和党のロナルド・レーガン候補が現職のカーター大統領を破り、大統領に就任した。 レーガン大統領は、規制緩和、競争促進、大幅減税、福祉政策削減による小さな政府の樹立などを選挙公約として掲げた。そうした主張の根底には古典派経済学の復活があった。それは「供給サイドの経済学」である』、「レーガン大統領は、規制緩和、競争促進、大幅減税、福祉政策削減による小さな政府の樹立などを選挙公約として掲げた。そうした主張の根底には古典派経済学の復活があった。それは「供給サイドの経済学」」なるほど。
・『起きなかった「トリクルダウン」  レーガン減税には経済的側面と政治的側面があった。供給サイドの経済学には、投資こそ経済成長を促進する原動力であるという古典派的考えがあった。そのためには貯蓄を増やす必要がある。 貯蓄を増やすには、富裕層の減税が最も効果的であると考えられた。貯蓄性向の高い富裕層の減税は貯蓄を増やすことになる。貯蓄は株式投資や事業資金に回るはずだと主張された。減税による歳入減少は成長が高まることで将来の税収増に結び付く。経済成長が高まれば、結果的に労働者の賃金も上昇する。 これは“トリクルダウン効果”と呼ばれ、最終的には成長の果実はすべての人に行きわたると説明された。だがトリクルダウン効果は発揮されることはなかった。むしろ貧富の格差を拡大する結果をもたらした。 1981年の「経済復興税法」によって所得税の最高税率は70%から50%に引き下げられた。さらに86年にも税制改革で最高所得税率も28%にまで引き下げられた。フリードマン教授など保守派の経済学者は累進課税に反対し、低率での均一税率(flat tax rate)の適用を主張した。所得税そのものを廃止することを主張する経済学者もいた。レーガノミクスの大幅減税が貧富の格差を生む大きな要因となった』、「貯蓄を増やすには、富裕層の減税が最も効果的であると考えられた。貯蓄性向の高い富裕層の減税は貯蓄を増やすことになる。貯蓄は株式投資や事業資金に回るはずだと主張された。減税による歳入減少は成長が高まることで将来の税収増に結び付く。経済成長が高まれば、結果的に労働者の賃金も上昇する。 これは“トリクルダウン効果”と呼ばれ、最終的には成長の果実はすべての人に行きわたると説明された。だがトリクルダウン効果は発揮されることはなかった。むしろ貧富の格差を拡大する結果をもたらした」、日本でも効果は出なかった。
・『富裕層の税負担は極めて軽い  貧富の格差を拡大させているのは賃金上昇が鈍化しただけではない。富裕層の収入を見ると、労働所得よりも資産所得の方が圧倒的に多いことを反映している。FRBの調査では、2021年第2四半期のデータでは、上位10%の富裕層は83兆ドルの資産を持ち、株式や投資信託の88%を保有している。 富裕層の収入の中で利子配当収入や証券の売買益が大きな比率を占めている。2020年の時点でキャピタル・ゲインなどの金融収入の税率は最高20%であるのに対して、所得税の最高税率は37%である。言い換えれば富裕層の税負担は極めて低い。多額の金融資産を持つ富裕層の資産は自然に増えて行き、金融資産を持たない低所得層との格差は永続的に拡大し続ける構造になっている。 政治的側面でも、保守主義者は「所得税は国家による国民の富の収奪」であると主張し、大幅な減税を主張した。減税によって税収が減れば、保守派が主張する福祉予算削減にもつながり、「小さな政府」が実現できると主張した。 だがレーガン大統領は歳入減にも拘わらず福祉予算などの歳出を削減することができず、レーガノミクスは財政赤字の拡大を招く結果となった。財政赤字をさらに膨れ上がらせたのは、共産主義との対決を主張し、軍事費を大幅に増やした結果でもある。レーガン大統領のネオリベラリズムに基づく政策は、保守派が主張するような成果を上げることができず、「未完の革命」と呼ばれた』、「レーガン大統領のネオリベラリズムに基づく政策は、保守派が主張するような成果を上げることができず、「未完の革命」と呼ばれた」、財政赤字はむしろ拡大した。
・『労働組合の組織率低下が賃金の低迷につながった レーガン政権で始まった“労働組合潰し”  レーガノミクスあるいはネオリベラリズムの狙いは、労働市場の規制緩和にあった。民主党の支持基盤である労働組合を潰すことは共和党にとって政治的な意味があった。同時に労働市場を自由化する狙いもあった。 古典派経済学は自由競争が最適な価格と資源配分を実現することになると主張する。「財市場」と「金融市場」の自由化は着実に進んでいた。だが「労働市場」は、保守派の経済学者に言わせれば、労働組合の“寡占状況”が続いていた。米国の労働組合は産業別組合で、その中央組織AFL・CIO(米労働総同盟・産業別会議)は圧倒的な力を持っていた。ネオリベラリズムに基づく自由な労働市場を作るには、労働組合の影響力を排除する必要があった。 レーガン大統領の就任直後に準公務員の航空管制官のストが起こった。レーガン大統領は一瞬もためらうことなく、ストに参加した管制官全員の首を切った。レーガン大統領の大胆な政策が、労働組合運動の大きな転換点になり、その後、今日に至るまで労働組合参加率は低下を続けている。 83年の労働組合参加率は20.1%であったが、2019年には過去最低の10.3%にまで低下している。2020年は若干増えて、10.8%であった。民間部門だけみると、さらに厳しい状況である。83年に16.8%であったが、2020年には6.3%にまで低下している。経済構造の変化も組合参加率を引き下げる要因となった。 ニューディール・リベラリズムの時代は、大手産別労組が団体交渉で賃上げを勝ち取り、それが他の産業にも波及し、全体的に賃金が引き上げられていった。だがネオリベラリズムの世界では、労働組合は賃金交渉力を失い、賃金引上げよりも、雇用確保を主張するように変わっていった。労働者は分断され、実質賃金の上昇は止まってしまった。ネオリベラリズムの組合攻撃は目的を達成したのである』、「ネオリベラリズムの世界では、労働組合は賃金交渉力を失い、賃金引上げよりも、雇用確保を主張するように変わっていった。労働者は分断され、実質賃金の上昇は止まってしまった」、残念ながらしょうがない。
・『民主党もニューディール政策離れ  ニューディール・リベラリズムを支えてきたのは民主党である。だがレーガン革命以降、民主党も変質し始めた。1993年に誕生したクリントン大統領は“中道右派”政権と言われた。ネオリベラリズムは米国社会に深く浸透していた。 ルーズベルト大統領は民主党支持者によって尊敬され続けたが、民主党の政策は次第にニューディール政策から離れていった。クリントン大統領は積極的に市場の自由化を進めた。特に金融市場の自由化には積極的であった。 ニューディール政策の象徴である金融業務と証券業務の分離を決めた「グラス・スティーガル法」の廃止を決めたのは、クリントン大統領であった。クリントン大統領の最大の支持層は金融界であった。 労働組合は依然として民主党お重要な支持層であったが、その影響力は極めて小さくなっていた。クリントン大統領は労働者に寄り添うよりも、金融界の利益代弁者になっていた。財政赤字削減を訴え、小さな政府を主張するなど、ネオリベラリズムの色に染まっていた。労働組合や環境団体の反対を押し切ってNAFTA(北米自由貿易協定)の批准を勧めたのもクリントン大統領であった』、「クリントン大統領は労働者に寄り添うよりも、金融界の利益代弁者になっていた。財政赤字削減を訴え、小さな政府を主張するなど、ネオリベラリズムの色に染まっていた」、残念だ。
・『「口だけ」だったオバマ大統領  民主党のオバマ大統領が誕生したとき、多くの論者はニューディール政策が蘇るのではないかと期待した。リーマン・ショックで不況に陥った経済を救済するためにオバマ大統領は「米国復興再投資法」を成立させ、不況脱出のため戦後最大の予算を組んだ。 同時に経営危機に陥っていた金融界を潤沢な資金を投入して救済。また労働者の犠牲の上にGMを救済した。巨額の政治献金者の意向に沿う政策を行うなど富裕層に与した。オバマ大統領も在任8年間に積極的にネオリベラリズムのもたらした弊害解決に取り組むことはなかった。 民主党の指導者は口ではルーズベルト大統領を尊敬すると言いながら、ニューディール政策の思想を引き継ぐことはなかった。ルーズベルト大統領が語った「忘れられた人々」という言葉を復活させたのは、トランプ大統領であった。 トランプ大統領は、政治にも見放され、労働組合からも疎外されている貧困層の白人労働者を「忘れられた人々」と呼び、自らの支持基盤に変えていった。トランプ大統領は労働者のために製造業を復活させると公約したものの、最終的には何もしなかった。ネオリベラリズムが生み出した深刻な問題の解決に本気で取り組むことはなかった』、「トランプ大統領は労働者のために製造業を復活させると公約したものの、最終的には何もしなかった」、貧しい白人は騙されたことになる。
・『オバマ大統領は在任中、オリベラリズムの弊害を解決しようとしなかった ビジネス・ラウンド・テーブルの「企業目的声明」  皮肉なことに、ネオリベラリズムが生み出した貧富の格差がもたらす社会的分断に最初に警鐘を鳴らしたのは経済界であった。 2019年8月19日に経営者団体のビジネス・ラウンド・テーブルが「企業目的に関する声明」を発表した。ビジネス・ラウンド・テーブルは、企業目的の再定義を行い、181名の経営者が声明に署名している。 その中で注目されるのは、「従業員に対する投資」という項目である。そこには「従業員に対する投資は従業員に公平な報酬を提供し、重要な(社会保障などの)給付を提供することから始まる。 投資には急速に変化する世界で活用できる新しいスキルを習得するための訓練と教育を通して従業員を支援することも含まれる」と書かれている。声明の発表に際して行われた記者会見で、JPモルガン・チェースのジェミー・ダイモン会長は「企業は労働者とコミュニティに投資している。なぜなら、それが長期的に(企業が)成功する唯一の方法だと知っているからである」と発言している。 これは米国企業がフリードマン・ドクトリンと決別することを意味している。フリードマン教授は、労働者や社会への奉仕は企業の目的ではないと言い切っていた。だがビジネス・ラウンド・テーブルの会員の大企業は。労働者やコミュニティへの投資を経営者の責務であると語っているのである』、「ビジネス・ラウンド・テーブルの会員の大企業は。労働者やコミュニティへの投資を経営者の責務であると語っているのである」、「これは米国企業がフリードマン・ドクトリンと決別することを意味」、日本でも岸田首相がこれに近い提案をしてる。
・『中産階級復興を目指すバイデン大統領の“新ニューディール政策”  バイデン大統領はルーズベルト大統領を尊敬している。大統領執務室には5枚の肖像画が壁に掛かっている。向かって左側にはワシントン初代大統領とハミルトン初代財務長官、右側にはジェファーソン初代国務長官とリンカーン大統領である。その真ん中に一回り大きい額縁でルーズベルト大統領の肖像画が掛かっている。 バイデン大統領はネオリベラリズムで傷ついた米国社会と経済を再興するために「新ニューディール政策」を構想している。その狙いは、大規模な公共投資と労働組合の強化、中産階級の減税である。既に1兆ドル規模の「インフラ投資法」が成立している。 また、ニューディール政策を思い起こさせる社会政策を盛り込んだ大規模な「より良い米国建設法(Build Back Better Act)」を議会に提出し、下院では成立している。だが上院では一部の民主党議員の反対で、まだ成立の見通しは立っていない。 バイデン大統領の政策の主要な柱は、労働組合政策である。ワシントン・ポスト紙は「バイデン大統領はニューディール以来、最も労働組合寄りの大統領である」と書いている(2021年4月30日)。大統領は。米国社会を繁栄させたのは経営者ではなく、労働者であると訴えている。 中産階級を再構築するには労働組合の復興が必要だとも考えている。バイデン大統領は2月4日のツイッターで「バイデン政権の政策は労働組合結成を推し進め、経営者に労働者が自由かつ公平に組合に参加することを認めるさせる」ことだと書いている。 さらに4月24日の議会演説の中で「中産階級が国を作ってきた。組合が中産階級を作ってきた」と、労働組合の重要性を語っている。アマゾンで労組結成の動きがあったとき、バイデン大統領は組合結成を支持するメッセージを送っている』、「大統領は。米国社会を繁栄させたのは経営者ではなく、労働者であると訴えている。 中産階級を再構築するには労働組合の復興が必要だとも考えている」、方向性は正しいが、少数になった下院では力不足だ。
・『資本主義に対する否定的な見方が米国民の間で強まっている 政策を妨げる民主党進歩派と中道派の対立  4月26日に「労働者の組織化と能力向上に関するタスクフォース」を設置する大統領令に署名している。この大統領令には「タスクフォースは労働者が組織し、経営者と団体交渉を行えるように連邦政府の政策、プログラム、経験を総動員する全力を注ぐ」と書かれている。 さらにルーズベルト大統領が設置した「NLRC(全国労働関係委員会)」の強化を打ち出し、法令違反を犯した企業への罰則を強化する方針を明らかにしている。また労働省の労働監督部門の強化も行われる。 ルーズベルト大統領の「ワグナー法」に匹敵する「組織権保護法(Protect the Right to Organize Act:PRO法)」が2021年2月に下院に提案され、3月に可決されている。同法には労働組合の衰退の要因となった「タフト・ハートリー法」の労働権法を見直す条項も含まれている。 だが、多くの経営者は反労働組合の立場を変えていない。米商業会議所のスザンヌ・クラーク理事長は「PRO法は労働者のプライバシーに脅威を与え、従業員に強制的に組合費を支払わせるか、失業させることになる」と反論をしている。同法は、上院で審議されているが、共和党の反対で成立は難しいと見られている。 ルーズベルト大統領は民主党が両院で圧倒的な多数を占めるなかでニューディール政策を実行に移すことができた。だが、現在、議会勢力で民主党と共和党が拮抗している状況で、バイデン大統領が大胆な政策を打ち出すのは難しい。 民主党内でも進歩派と中道派の対立があり、厳しい議会運営を迫られている。現状では、バイデン構想の実現は難しいだろう。ただバイデン大統領の労働組合寄りの政策は国民の支持を得ている』、「民主党内でも進歩派と中道派の対立」は困ったものだ。
・『米国民の労働組合支持率は高まっている  米国は歴史的に反共産主義、反社会主義、反労働組合の国家である。だが新しい状況が出てきている。国民の間、特に若者層の間で資本主義に対する信頼度が低下しているのである。 米ニュースサイト「アクシオス」とコンサルティング会社「モメンティブ」が2021年7月に行った調査(Capitalism and Socialism)で「資本主義が50年前と比べて良くなっているか、悪くなっているか」という設問に対して、「良くなっている」という回答は27%、「悪くなっている」が41%と、圧倒的に資本主義に対する否定的見方が多くなっている。 また最も特徴的なのは、格差社会の最大の犠牲者であえる若者層の間で社会主義を支持する比率が高まってきていることだ。18歳から24歳では、資本主義に否定的な回答は54%に達している。肯定的な回答は42%に留まっている。 国民の労働組合に対する支持率も着実に上昇している。ギャラップの調査(2021年9月2日)では、「労働組合支持」は68%あった。これは1965年に記録された72%以来の高水準である。こうした現象がやがて米国で大きな流れに繋がる可能性はある』、「格差社会の最大の犠牲者であえる若者層の間で社会主義を支持する比率が高まってきていることだ。18歳から24歳では、資本主義に否定的な回答は54%に達している」、「「労働組合支持」は68%あった」、今後の米国の動向を注目したい。

第三に、2月11日付け週刊エコノミスト Onlineが掲載した「集中連載 今考える「新自由主義」 第3回 日本の生産性を押し下げる低賃金 米国型コーポレート・ガバナンス導入が病巣=中岡望」を紹介しよう。
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20220209/se1/00m/020/003000d
・『「新しい資本主義」を議論するには、米国のネオリベラリズムの背景にある思想性、理論性、歴史性を理解する必要がある。 同時に日本においてネオリベラリズム政策やネオリベラリズムに基づくコーポレート・ガバナンスがどう導入されたかを明らかにしない限り、意味のある議論はできない』、興味深そうだ。
・『真の狙いは労働市場の自由化  日本にネオリベラリズムの政策を導入したのは小泉政権である。バブル崩壊後の長期低迷を打開する手段として「規制緩和」や「競争促進政策」が導入された。 だがネオリベラリズム政策の最大の狙いは、米国同様、労働市場の規制緩和であった。労働市場の自由化によって非正規労働や派遣労働の規制が大幅に自由化された。それは企業からすれば、大幅な労働コストの削減を意味した。 労働市場の自由化によって非正規雇用は大幅に増加した。1984年には非正規雇用は15.3%であったが、2020年には37.2%にまで増えている。非正規雇用のうち49%がパート、21.5%がアルバイト、13.3%が契約社員である(総務省「労働力調査」)。賃金も正規雇用と非正規雇用では大きな格差がある。 2019年の一般労働者の時給は1976円でであるが、非正規労働者の時給は1307円である。600円以上の差がある。なお短期間労働に従事する非正規労働者の時給は1103円とさらに低い(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」)。岸田首相は最低賃金1000円(全国加重平均)を実現すると主張しているが、米国ではバイデン大統領は連邦最低賃金15㌦を目標に掲げている。 現在の為替相場で換算すると、約1700円に相当する。日米で時給700円の差がある。かりに最低賃金1000円が実現しても、非正規雇用は社会保険費など企業負担がなく実質手取りは1000円を下回り、とても最低賃金でまともな生活を送れないのが実情である』、「かりに最低賃金1000円が実現しても、非正規雇用は社会保険費など企業負担がなく実質手取りは1000円を下回り、とても最低賃金でまともな生活を送れないのが実情」、その通りだ。
・『労働市場自由化の弊害を軽視した小泉改革  米国型コーポレート・ガバナンスの導入も日本に大きな影響を与えた。戦後の日本経済の成長を支えてきた「日本的経営」はバブル崩壊後、有効性を失ったと主張された。日本型経営では最大のステークホールダーは従業員であり、メインバンクであり、取引先であった。 株主は主要なステークホールダーとはみなされていなかった。だが米国型コーポレート・ガバナンスは株主中心に考えられ、日本でも企業価値、言い換えれば株価を上げることが経営者の責務と考えられるようになった。労働者は「変動費」であり、経営者は従業員の雇用を守るという意識を失っていった。 かつて経営者の責務は従業員の雇用を守ることだと言われていた。米国型コーポレート・ガバナンスは、日本の労使関係を根底から変えてしまった。同時に経営者は米国と同様に巨額の報酬を手にするようになる。 米国や英国では1900年代にはネオリベラリズム政策の弊害が目立ち始めていた。貧富の格差は急速に拡大し、深刻な社会問題を引き起こしつつあった。だが小泉改革では、そうした弊害について真剣に検討することなく、労働市場の自由化が強引に進められていった。 同時に終身雇用は破綻したとして、雇用の流動化が主張された。雇用の流動化は、言葉は魅力的だが、最も大きな恩恵を得るのは企業であって、従業員ではない。企業は高賃金の従業員に早期退職や転職、副業を勧めることで、大幅に労働コストを削減できる。 米国と違って日本では整備された転職市場が存在せず、さらに「同一労働同一賃金」や米国の401(k)のような「ポータブルな企業年金制度」などもなく、転職の負担はすべて従業員に掛かってくる』、「米国と違って日本では整備された転職市場が存在せず、さらに「同一労働同一賃金」や米国の401(k)のような「ポータブルな企業年金制度」などもなく、転職の負担はすべて従業員に掛かってくる」、その通りだ。
・『日本の企業内組合は交渉力を発揮できない  岸田首相がどのような「新しい資本主義」を構想しているのか定かではない。成長すれば、その成果が労働者にも及ぶという供給サイドの経済学が主張する“トリクルダウン効果”論は歴史的にも、理論的にも破綻している。 成長すれば、最終的に恩恵はすべての人に及ぶというのは幻想である。企業は常に賃金上昇を抑えようとする。決して温情で賃上げをするわけではない。過去の企業行動を見れば、日本で行われている「成長」と「分配」を巡る議論は空論そのものであることが分かる。 賃上げをした企業に税の優遇措置を講ずるという報道もなされている。かつて安倍晋三首相は経済団体に賃上げを行うよう要請したことがあるが、企業は応じなかった。経営者は従業員に対する“温情”から賃上げを実施することはないだろう。 従業員と労働者が正当な賃金を得るには、企業と拮抗できる組織と仕組みが必要である。日本の企業は正規社員を減らし、非正規社員を雇用することで労働コストを大幅に削減して利益を上げてきた。米国同様、その利益の多くは株主配当に向けられるか、内部留保として退蔵されてきた。 さらに経営者の報酬も大幅に引き上げられた。本来なら組合は正当な労働報酬を受け取る権利がある。米国の労働組合は産業別組合で企業との交渉力を持っているが、日本の労働組合は企業内組合では、企業に対する交渉力を発揮することは難しい』、「本来なら組合は正当な労働報酬を受け取る権利がある。米国の労働組合は産業別組合で企業との交渉力を持っているが、日本の労働組合は企業内組合では、企業に対する交渉力を発揮することは難しい」、同盟などの労働貴族には殆ど期待できない。
・『日本の時間当たりの付加価値は世界23位  低賃金は生産性向上を妨げる。本来なら企業は賃金上昇によるコストを吸収するために生産性を上げる努力を行う。だが低賃金労働が使える限り、企業は資本コストの高い合理化投資を積極的に行わない。 企業は労働コストが上昇すれば、競争力が低下するために合理化投資を行わざるを得ない。大胆に言えば、日本企業の生産性が低いのは、賃金が安いからである。 先進国の中で日本の生産性は最も低い。2020年の1人当たりの日本の労働生産性はOECD38カ国のうち28位(7万8655㌦)で、24位の韓国(8万3378㌦)よりも低く、ポーランドやエストニアと同水準である(「労働生産性の国際比較2021、日本生産性本部」)。 また。日本の時間当たりの付加価値は49.5㌦で、23位である、1位のアイルランドは121㌦、7位の米国は80㌦である。韓国は32位で43㌦である。なぜここまで低いのか』、「日本企業の生産性」や「日本の時間当たりの付加価値」の低さにはつくづく嫌になる。
・『経営者報酬と配当を増やす経営が日本を弱くした  日本特有の給与体系も影響している。日本では基本給の水準が低いため、残業手当が付かなければ、十分な所得を得られない。その結果、同じアウトプットを生産するために、残業を増やして長時間労働を行うことになる。 それこそが低生産性の最大の要因の一つである。昨今、「働き方改革」で残業を削減する動きがみられるが、残業時間の短縮は残業の減少と所得の減少を意味する。短時間で同じ労働成果を上げることができれば、それは生産性向上を意味し、基本給の引き上げで従業員に還元されるべきものである。 だが、企業は所得が減った従業員に副業を推奨するという奇妙な議論が横行している。「労働の流動化」を口実に賃金引き下げと雇用の安定性が損なわれている。労働賃金を低く抑え、生産性向上投資を抑制し、目先の利益を増やし、経営者報酬と配当を増やし、株価を上げるという経営は、日本経済を間違いなく弱体化させてきた』、「労働賃金を低く抑え、生産性向上投資を抑制し、目先の利益を増やし、経営者報酬と配当を増やし、株価を上げるという経営は、日本経済を間違いなく弱体化させてきた」、その通りである。
・『存在価値を無くした日本の労働組合が低賃金の要因  米国と同様に日本でも労働組合参加率は低下の一途をたどっている。戦後の1949年には労働組合参加率は55%であった。その後、参加率は低下し、1980年代に20%台にまで低下した。 2021年の参加率は16.9%にまで低下している(労働組合基本調査)。米国ほどではないが、労働組合は急激に衰退し、社会的影響力の低下は目を覆うべき状態である。その背景には労働組合幹部が「労働貴族」となって特権を享受しているという“反労働組合キャンペーン”が行われたことが影響している。 労働組合は国民の支持を失い、現在では社会的存在感するなくなっている。日本の労働組合運動の衰退は世界でも際立っている。全くと言っていいほど企業に対する交渉力を失っている』、連合の動きは滑稽でしかない。
・『日本で“スト”はもはや死語  高度経済成長期に賃金上げをリードしてきた「春闘方式」が崩壊し、企業内組合を軸とする労働組合は企業に取り込まれ、十分な交渉力を発揮できなくなった。労働組合運動は連合の結成で再編成されたが、連合はかつてのような影響力を発揮することができない。 目先の政治的な思惑に振り回されている。賃上げに関して十分な“理論武装”をすることもできず、ほぼ賃上げは経営者の言いなりに決定されているのが実情である。 労働組合の弱体化は「労働損失日」の統計に端的に反映されている。2018年のストによる労働損失日は日本ではわずか1日であるのに対して、米国は2815日、カナダは1131日、英国は273日、ドイツは571日、韓国が552日である(労働政策研修機構『データブック国際労働比較2019』)。日本と同様に組合参加率が大幅に低下している米国ですら、賃上げや労働環境を巡って労働組合は経営と対立し、要求を実現している。 日本では“スト”はもはや死語となっている。格差是正や賃上げを要求する「主体」が日本には存在しないのである。その役割を政府に期待するのは、最初から無理な話である。それが実現できるとすれば、日本は社会主義国である』、「2018年のストによる労働損失日は日本ではわずか1日であるのに対して、米国は2815日、カナダは1131日、英国は273日、ドイツは571日、韓国が552日」、日本がここまで少ないとは初めて知った。
・『税制、最低賃金、非正規問題の構造的な見直し  労働市場で個人が企業と向かい合い、交渉することは不可能である。両者の間には圧倒的な力の差がある。だからこそルーズベルト大統領は労働者の団結権と団体交渉権を認め、全国労働関係委員会に労働争議の調整役を委ねたのである。小手先の制度改革ではネオリベラリズムの弊害を断ち切ることはできない。 バイデン大統領は中産階級の失地回復こそが格差是正の道であり、繁栄に至る道であると主張している。そのためには労働組合が企業に対して十分な交渉力を持つ必要があると説いている。 一人ひとりの働く人が、誠実に働けば、家族を養い、子供を教育し、ささやかな家を購入するに足る所得を得る制度を再構築することが必要である。非正規とパート労働で疲弊した国民は決して幸せになれない。平等な労働条件、公平な賃金、雇用の安定を実現することが「新しい資本主義」でなければならない。 貧富の格差拡大は社会を分断し、深刻な貧困問題を引き起こす。長期的には経済成長を損なうことになる。そうした事態を回避するには現在の制度の構造的な見直しが必要である。 税制の見直しや最低賃金の引き上げに加え、正規労働者と非正規労働者に二分された労働市場の見直しも不可欠である。労働者や消費者などさまざまな立場の人の意見を反映させるようなコーポレート・ガバナンスを構築する必要がある』、「現在の制度の構造的な見直しが必要である」、同感である。
・『ネオリベラリズムは「既得権構造」に浸透  ネオリベラルの発想から抜け出す時期に来ている。そのためには、労働規制、税制、コーポレート・ガバナンス、労働組合の役割などの見直しは不可欠である。特にコーポレート・ガバナンスに労働者や消費者などの意見が反映できるようにコーポレート・ガバナンスの改革は不可欠である。 米国におけるネオリベラリズムの検討でみたように、その背後には明確な国家観の違いが存在している。そうした大きな枠組みの議論抜きには、新しい展望は出てこないだろう。 ネオリベラリズムは既得権構造に深く組み込まれている。それを崩すには、社会経済構造を根底から変える必要がある。激しい抵抗に会うのは間違いない。これからの議論で岸田首相の“本気度”と“覚悟”が問われることになるだろう。 最後に一言、小泉改革以降のネオリベラリズムの政策で日本経済の成長率は高まっていない。経済成長はGDPの約80%を占める需要によって決まるのである。日本の長期にわたる低成長はネオリベラリズム政策や発想がもたらした必然的結果なのである。(終わり)』、「ネオリベラリズムは既得権構造に深く組み込まれている。それを崩すには、社会経済構造を根底から変える必要がある。激しい抵抗に会うのは間違いない。これからの議論で岸田首相の“本気度”と“覚悟”が問われることになるだろう」、全く同感である。
タグ:「組合員のみを雇用するクローズド・ショップ制を非合法化する「労働権法」の規定が盛り込まれたことだ。それにより組合の弱体化が進められた。現在、労働権法を可決している州は27州に達している。そうした州での組合活動は大幅に制限されている」、「クローズド・ショップ制を非合法化」は労組には大打撃だろう。 週刊エコノミスト Onlineが掲載した「集中連載 今考える「新自由主義」 第2回 再び格差広げたフリードマンの思想とパウエル・メモ 組合を弱体化させた米国の失敗=中岡望」 新自由主義 (その2)(今考える「新自由主義」 第1回 米初期資本主義の‟超”格差社会と ニューディール政策が生んだ「最も平等な社会」、第2回 再び格差広げたフリードマンの思想とパウエル、第3回 日本の生産性を押し下げる低賃金 米国型コーポレート・ガバナンス導入が病巣) 週刊エコノミスト Onlineが掲載した「今考える「新自由主義」 第1回 米初期資本主義の‟超”格差社会と、ニューディール政策が生んだ「最も平等な社会」=中岡望」 「新しい資本主義構想」はすっかり色あせた感じだ。 「ネオリベラリズムが誕生してきた背景を理解する必要がある」、その通りだ。 「日本ではネオリベラリズムの持つ思想的な意味が十分に検討されることなく、また、既に社会問題となっていた貧富の格差の問題を顧みることなく、表層的な景気政策として導入され、社会に与える影響が真剣に議論されることはなかった」、その通りで、残念なことだ。 「米国の古典的リベラリズムには、「政府の市場への介入忌避」や「自由放任主義」に「小さな政府」を主張する政治論が加わる」、その通りだ。 「1890年の時点で、所得上位1%の富裕層が全資産の51%、上位12%の富裕層が全資産の86%を保有」、米FRBの調査によると、現在の米国は「第2のギルディド・エイジ」と呼ばれているように、19世紀と同じ現象が繰り返されている。上位1%の最富裕層が34%、上位10%の富裕層が88%の資産を保有」、「歴史は繰り返されるのである」、こんな形の繰り返しは悲劇だ。 「19世紀のポピュリズムは「左派ポピュリズム」であったが、21世紀のポピュリズムは「右派ポピュリズム」であった。そこに共通するのは、反エリート主義である」、なるほど。 独禁法は現在でも米国企業を強く規制している。 「大恐慌を引き起こす要因となった金融市場に対して厳しい規制が導入された。「グラス・スティーガル法」によって証券業務と銀行業務の分離が行われた。さらに証券市場を規制するために「証券取引員会(SEC)」が設立され、企業に情報公開を義務付け、インサイダー取引を禁止する措置が取られた。 ウィルソン政権の時に設立された「FRB・・・」も財務省から独立し、権限が強化され、独立した金融政策を行えるようになった」、現在の金融制度の骨格が出来たようだ。 「経済的格差が拡大し、社会が混乱すると必ずとポピュリズムが登場する」、「ポピュリストの人民党」、「トランプ大統領も社会的底辺に存在する白人労働者を「忘れられた人々」と呼び、強力な支持層へと変えていった」、なるほど。 「ニューディール政策は大恐慌から脱出するために公共事業による景気浮揚政策であるというのが一般的理解である。だが最近の経済学界では、景気浮揚効果は限定的・・・重要な政策は「労働政策」と「社会政策」であった」、評価が変わったことは初めて知った。 「ニューディール・リベラリズムは戦後の米国経済の繁栄のベースになる。労働者の実質賃金の上昇に加え、1944年の「復員兵援護法(GI法)」によって多くの若者が奨学金を得て大学に進学した。 彼らはホワイトカラーの中核を形成するようになり、戦後の消費ブームを支えた」、なるほど。 「1970年代まで生産性向上と労働賃金上昇率は、ほぼ同じ水準にあった。すなわち生産性向上の果実の大半は労働賃金の引き上げに向けられていたのである。 だが1970年代以降、生産性向上分は経営者の取り分が大きく増え、労働者の配分は低水準で推移」、なるほど。 「フリードマン・ドクトリン」により、「それまで労働者は企業のステークホールダー(利害関係者)とみなされていたが、やがて株主と経営者だけがステークホールダーとみなされるようになる」、なるほど。 「弁護士のルイス・パウエルが米商業会議所の依頼で1971年8月23日に作成したメモである。「パウエル・メモ」の表題は「企業による民主主義支配の青写真」、「「フリードマン・ドクトリン」が米国企業に対する「経済的マニフェスト」とすれば、「パウエル・メモ」は米国企業に対する「政治的マニフェスト」であった」、なるほど。 「経営者と従業員の所得格差は、1965年は20対1であったが、2000年には366対1にまで拡大している」、「ネオリベラリズムは経営者を傲慢にし、古典的リベラリズムの世界を再現させた」、やれやれ。 「レーガン大統領は、規制緩和、競争促進、大幅減税、福祉政策削減による小さな政府の樹立などを選挙公約として掲げた。そうした主張の根底には古典派経済学の復活があった。それは「供給サイドの経済学」」なるほど。 「貯蓄を増やすには、富裕層の減税が最も効果的であると考えられた。貯蓄性向の高い富裕層の減税は貯蓄を増やすことになる。貯蓄は株式投資や事業資金に回るはずだと主張された。減税による歳入減少は成長が高まることで将来の税収増に結び付く。経済成長が高まれば、結果的に労働者の賃金も上昇する。 これは“トリクルダウン効果”と呼ばれ、最終的には成長の果実はすべての人に行きわたると説明された。だがトリクルダウン効果は発揮されることはなかった。むしろ貧富の格差を拡大する結果をもたらした」、日本でも効果は出なかった。 「レーガン大統領のネオリベラリズムに基づく政策は、保守派が主張するような成果を上げることができず、「未完の革命」と呼ばれた」、財政赤字はむしろ拡大した。 「ネオリベラリズムの世界では、労働組合は賃金交渉力を失い、賃金引上げよりも、雇用確保を主張するように変わっていった。労働者は分断され、実質賃金の上昇は止まってしまった」、残念ながらしょうがない。 「クリントン大統領は労働者に寄り添うよりも、金融界の利益代弁者になっていた。財政赤字削減を訴え、小さな政府を主張するなど、ネオリベラリズムの色に染まっていた」、残念だ。 「トランプ大統領は労働者のために製造業を復活させると公約したものの、最終的には何もしなかった」、貧しい白人は騙されたことになる。 「ビジネス・ラウンド・テーブルの会員の大企業は。労働者やコミュニティへの投資を経営者の責務であると語っているのである」、「これは米国企業がフリードマン・ドクトリンと決別することを意味」、日本でも岸田首相がこれに近い提案をしてる。 「大統領は。米国社会を繁栄させたのは経営者ではなく、労働者であると訴えている。 中産階級を再構築するには労働組合の復興が必要だとも考えている」、方向性は正しいが、少数になった下院では力不足だ。 「民主党内でも進歩派と中道派の対立」は困ったものだ。 「格差社会の最大の犠牲者であえる若者層の間で社会主義を支持する比率が高まってきていることだ。18歳から24歳では、資本主義に否定的な回答は54%に達している」、「「労働組合支持」は68%あった」、今後の米国の動向を注目したい。 週刊エコノミスト Onlineが掲載した「集中連載 今考える「新自由主義」 第3回 日本の生産性を押し下げる低賃金 米国型コーポレート・ガバナンス導入が病巣=中岡望」 「かりに最低賃金1000円が実現しても、非正規雇用は社会保険費など企業負担がなく実質手取りは1000円を下回り、とても最低賃金でまともな生活を送れないのが実情」、その通りだ。 「米国と違って日本では整備された転職市場が存在せず、さらに「同一労働同一賃金」や米国の401(k)のような「ポータブルな企業年金制度」などもなく、転職の負担はすべて従業員に掛かってくる」、その通りだ。 「本来なら組合は正当な労働報酬を受け取る権利がある。米国の労働組合は産業別組合で企業との交渉力を持っているが、日本の労働組合は企業内組合では、企業に対する交渉力を発揮することは難しい」、同盟などの労働貴族には殆ど期待できない。 「日本企業の生産性」や「日本の時間当たりの付加価値」の低さにはつくづく嫌になる。 「労働賃金を低く抑え、生産性向上投資を抑制し、目先の利益を増やし、経営者報酬と配当を増やし、株価を上げるという経営は、日本経済を間違いなく弱体化させてきた」、その通りである。 連合の動きは滑稽でしかない。 「2018年のストによる労働損失日は日本ではわずか1日であるのに対して、米国は2815日、カナダは1131日、英国は273日、ドイツは571日、韓国が552日」、日本がここまで少ないとは初めて知った。 「現在の制度の構造的な見直しが必要である」、同感である。 「ネオリベラリズムは既得権構造に深く組み込まれている。それを崩すには、社会経済構造を根底から変える必要がある。激しい抵抗に会うのは間違いない。これからの議論で岸田首相の“本気度”と“覚悟”が問われることになるだろう」、全く同感である。
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悪徳商法(その6)(オンラインゲームの利益で高配当をうたう「マルチ商法」の被害者が連絡会結成へ、【独自】「三浦瑠麗の夫」10億円詐欺訴訟で明らかになった驚きのスキームがヤバすぎる《訴訟資料入手》、【夫婦連携の証拠?】三浦瑠麗が「グリーン資産への証券投資」を政府提言→5ヵ月後に夫が環境債発売を発表していた《地検特捜部が三浦瑠璃夫妻に襲いかかった理由》) [社会]

悪徳商法については、2020年10月30日に取上げた。久しぶりの今日は、(その6)(オンラインゲームの利益で高配当をうたう「マルチ商法」の被害者が連絡会結成へ、【独自】「三浦瑠麗の夫」10億円詐欺訴訟で明らかになった驚きのスキームがヤバすぎる《訴訟資料入手》、【夫婦連携の証拠?】三浦瑠麗が「グリーン資産への証券投資」を政府提言→5ヵ月後に夫が環境債発売を発表していた《地検特捜部が三浦瑠璃夫妻に襲いかかった理由》)である。

先ずは、昨年10月26日付けダイヤモンド・オンライン「オンラインゲームの利益で高配当をうたう「マルチ商法」の被害者が連絡会結成へ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/311827
・『オンラインゲームの利益を還元するとうたい、出資金を募る「マルチ商法」にだまされたとして、被害者らが全国初の被害連絡会を近く立ち上げることが分かった。連絡会の弁護士によれば、被害者は最大1万人に上るとされる。YahooやAmazonなどの有名サイトの名前を出しながら、巧みに金を集める手口の詳細が明らかになった』、興味深そうだ。
・『オンラインゲーム配信で売り上げ1000億円?! アクセンチュア出身?の男性がトンデモもうけ話       「1年後にはユーザーは確実に1000万人に達し、それに応じて利益も莫大に増えていく」「ポータルサイトの売り上げは2年後に100億円、5年後に1000億円を目指す」 2012年3月、都内在住の三井美恵子さん(仮名、50代)は知人の紹介である会社を訪ね、取締役の男性らからそんな説明を受けた。男性らは、アクセンチュアや日本エンタープライズ出身を名乗ったという。 その会社は、e-World Capital Partners Japan(EWCP)といい、ポータルサイトの運営などを手掛けているとのことだった。そして男性は、以下のような説明を三井さんに行った。 ・EWCPはゲームコンテンツを作成しており、これに出資する人を探している。 ・「モバゲー」や「グリー」の例の通り、ゲーム業界は極めて有望である。 ・Yahoo!やAmazonのウェブサイトを融合させたようなポータルサイトに進化させ、全世界で10億人の利用者の獲得を目指す。 ディー・エヌ・エー(DeNA)やグリーが運営するソーシャルゲームは当時最高益を更新し、急速に市場が拡大していた。男性らの説明によれば、EWCPは「りらっつ」なるポータルサイトを開発し、スマートフォン向けのゲームアプリを配信。会員になれば、そのゲームの月額利用料や広告などの利益を原資に配当されるという。 5年で1000億円もの売り上げが見込めるのであれば、会員からわざわざ出資を募る必要はないのではないか――。三井さんが当然のように抱いた疑問に対し、男性らは次のように答えたという』、「5年で1000億円もの売り上げが見込めるのであれば、会員からわざわざ出資を募る必要はないのではないか」、「三井さんが当然のように抱いた疑問に対し、男性らは次のように答えた」、どんなように答えたのだろう。
・『「1万人限定」「募集は1年で終了」 資金を集めたEWCPの巧みな勧誘手口  「EWCPの会員として1万人の登録者が欲しい。そこから紹介者を増やし、ポータルサイトの利用者を次々と増やしていく」。さらに、こう付け加えることを忘れなかった。 「会員の募集は1年程度で終了する」――。 その言葉を信じ、三井さんは翌日、7万3600円を支払って会員となった。その後、EWCPが主催するセミナーに参加するようになる。 セミナーで男性らは、実在する有名企業の名前が挙げながら、次のような説明を行った。 ・NECビッグローブからゲーム業界第6位のゲーマーズワンというゲームプラットホームを買収した。モバゲーやグリーの売り上げは1000億円程度であり、利益も500億円程度であることからゲーマーズワンの売り上げも相当程度見込める。 ・auでの売り上げが月額2億円を超えており、NTTドコモの売り上げはその2倍はいく。ゲームはAppStoreでも配信し、世界的に売り上げを伸ばしていく。 ・EWCPは上場企業を買収する予定だ。 これらは無論、虚偽であることが後に判明するが、13年3月末にEWCPの会員募集を締め切るとの説明にあおられるようにして、三井さんはさらに出資額を増やしていった。三井さんが最終的に支払った総額は約400万円に上る。 千葉県在住の田所彦三さん(仮名、70代)も、セミナーに参加した一人だ。 やはりそこで聞かされたのは、りらっつが世界的なポータルサイトへと発展し、莫大な利益を生むという“夢物語”だ。田所さんは自分だけでなく、息子も誘い、親子で入会。二人の最終的な投資額は200万円超に達した。 この話がどのような結末を迎えたかは、想像に難くない。 ポータルサイトのリニューアルは12年4月に着手するとの説明だったが、一向に公開されることはなかった。また、NTTドコモの「dマーケット」を通じてゲームを配信し、NTTドコモを通じて利益を配当するとしていたが、その契約すら行っていなかったことも判明した。都内にあったEWCPの事務所はもぬけの殻となり、連絡手段も途絶えてしまった。 三井さんや田所さんらは今、EWCPの元取締役の男性3人に損害賠償を求め、東京地方裁判所に訴訟を起こしている。代理人を務める玉木賢明法律事務所の高田祐輔弁護士が調査を行った結果、男性らの巧妙な勧誘手口の詳細が明らかになった。 まず三井さんや田所さんのような会員が配当を受けるためには、「ポータルパッケージ」を購入することで「ポジション」を獲得しなければならない。 パッケージの価格設定も“絶妙”だ。最初の一つ目は3万9800円、二つ目以降は3万5800円。このパッケージ一つにつき、一つのポジションを獲得することができ、基本的にはポジション数に応じて配当金が増える仕組みとなっている。 また会員が、新規会員を勧誘した場合に得られる配当もあった。会員は自らが獲得したポジションに加え、勧誘した知人らが獲得したポジションも配当に算入されるのだ。この仕組みにより、会員に他者を勧誘するインセンティブが生まれる。まさに会員が会員を増やす「マルチ商法」だ。 高田弁護士によれば、男性らはEWCPを精算した後、Sanctuary(サンクチュアリー)やARKという名の別会社を次々に設立。化粧品や健康食品などに商材を変えてマルチ商法を続けているとみられる。ARKは今年3月、特定商取引法に違反する行為があったとして、中部経済産業局などから行政処分を受けている。 マルチ商法の歴史は古く、過去にも豊田商事や安愚楽牧場など多くの被害者を出す事件が相次いだ。近年の勧誘行為はEWCPの例に見る通り、インターネットを介して行われるケースが増え、被害の実態が見えにくくなっている可能性があるという。 近く結成する「EWCP・Sanctuary・ARK被害連絡会」は玉木賢明法律事務所(070-4212-2119、受付時間:平日午前10時~午後5時)内に開設する。 高田弁護士は「EWCPは全国で1万人の会員を募り、実際に会員募集を締め切ったことから1万人相当の会員がいた可能性がある。マルチ商法の被害を抑止するためにも可能な限り多くの被害者の証言を集め、全容解明に努めたい」と話している』、「資金を集めたEWCPの巧みな勧誘手口」は、「1万人限定」「募集は1年で終了」などで急いで資金を出させようとする典型的な手口だ。また、資金を集めることで、投資総額を大きくしようとした。「会員は自らが獲得したポジションに加え、勧誘した知人らが獲得したポジションも配当に算入されるのだ。この仕組みにより、会員に他者を勧誘するインセンティブが生まれる。まさに会員が会員を増やす「マルチ商法」だ」、確かに巧みな仕組みだ。

次に、本年1月25日付け現代ビジネス「【独自】「三浦瑠麗の夫」10億円詐欺訴訟で明らかになった驚きのスキームがヤバすぎる《訴訟資料入手》」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/105175?imp=0
・『9万坪の土地を取得する大プロジェクト  東京地検特捜部は1月17日、太陽光発電などを手がける投資会社「トライベイキャピタル」(東京都千代田区)などを突然家宅捜索した。同社は衆議院第一議員会館の目の前のビルに本社を置く。同じフロアに「山猫総合研究所」という会社が入居しているが、この会社で代表を務めるのは政治学者・三浦瑠麗氏だ。 三浦瑠麗氏の夫・三浦清志氏が社長を務めるトライベイキャピタルは、なぜ特捜部にガサ入れされたのか。同社が太陽光発電投資でトラブルになり、民事訴訟が起こったことをきっかけに、この捜査は始まった。いったい三浦夫妻に何が起こっているのか? 「現代ビジネス」は2つの訴訟資料を独占入手し、トライベイキャピタルの関係者からも重要な証言を得た。 民事訴訟になっているのは、トライベイキャピタルのSPC(特別目的会社)である「STC3」が計画した太陽光発電投資物件に関するものだ。兵庫県福崎町にある約9万坪の土地の大半を取得して、発電出力2万KWの施設を建設するプロジェクトだった。 トライベイキャピタルは、建設計画と同時に投資を平行して募っていた。ここにトライベイキャピタル側に10億円の投資をしたのは、不動産会社・マーキス(東京都千代田区)。 同社社長でもある税所篤氏が経営する投資会社のメタキャピタル(東京都港区)も投資に関与している模様だ。このメタキャピタルは、役員としてソニーの元最高経営責任者・出井伸之氏(故人)が名を連ねていたことでも知られ、顧問には元東京地検特捜部長の大鶴基成弁護士の名がある。 2021年6月2日から東京地裁で始まった裁判資料によれば、2019年1月頃、三浦清志氏は、税所氏に福崎町の太陽光発電プロジェクトに10億円の投資を求めてきた。実際、2019年6月にSTC3名義の銀行口座に10億円が振り込まれ、「兵庫県福崎太陽光発電プロジェクトに関する売買及び開発契約書」が交わされた』、「政治学者・三浦瑠麗氏」「の夫・三浦清志氏が社長を務めるトライベイキャピタル」が「東京地検特捜部」により「突然家宅捜索」とは穏やかではない。
・『麻布警察署長に「詐欺罪で告訴状」  清志氏が税所氏に説明していたのは、以下のような流れだった。 (1) トライベイキャピタル側が事業用地確保のために必要な住民の同意をとる。 (2) その後、マーキスが10億円をSTC3に出資する。 (3) トライベイキャピタル側が、太陽光発電の事業権利(ID)と土地を取得したうえ、開発許可を申請して、当該役所などの許認可を得る。 (4) トライベイキャピタル側が、役所などの許認可を前提に金融機関から融資を得る。 (5) トライベイキャピタル側は、この融資のお金を使い、マーキスがSTC3に出資した権利の80%を(マーキスから)10億円で取得する。 (6) マーキスは残った権利20%分を行使して、太陽光発電の売電利益を得る。 だが、この太陽光発電プロジェクトが進展することはなかった。10億円を出資したマーキス側とトライベイキャピタル側でトラブルになり、民事調停なども実施されたが、不調に終わった(途中10億円のうち手数料名目などで2億円程度がマーキス側に戻される不可解なカネの流れたあったことが、裁判資料では明らかになっている)。 2021年2月、東京簡裁に提出された調停事件での答弁書には、《マーキスは、麻布警察署長宛に詐欺罪で告訴状を提出することを検討しており、準備を進めている。》と記されている。 今回の捜査は、マーキスが三浦氏を麻布警察署ではなく、同社の顧問を務める大鶴基成氏の「古巣」である東京地検特捜部に「詐欺罪」で刑事告訴した結果だとみられる。 10億円を欺しとろうという詐欺だったと主張しているわけだが、ここには前段があった。 そもそもこの兵庫県福崎町の太陽光プロジェクトでは、京都市内に本社を置くA社が、すでに太陽光発電の事業権利(ID)と一部の土地を取得していた。トライベイキャピタルは、そこに追加の土地取得を行い、事業を進める計画だった。 2018年7月に、京都市のA社はトライベイキャピタルと、土地と事業権利を譲り渡す契約を交わしている。 大規模な太陽光発電施設の建設には、近隣住民の同意が必要という自治体が急増している。兵庫県福崎町のプロジェクトでも、同意がないかぎり計画が前に進まない状況だった』、「大規模な太陽光発電施設の建設には、近隣住民の同意が必要という自治体が急増」、「兵庫県福崎町の太陽光プロジェクト」も「同意がないかぎり計画が前に進まない状況」、なるほど。
・『住民の同意はとれていなかった  前述したように、マーキスが10億円を出資する際の重要な条件は、住民の同意が必要だったことは契約書にも明らかになっている。 だが、この住民への同意を巡って、もともとの土地を持っていたA社とトライベイキャピタル側で紛争が起こった。A社はトライベイキャピタル側から、契約書の代金が支払われていないと主張した。2020年2月から京都地裁で始まった裁判(トライベイキャピタル側が土地所有権や転売などの禁止を主張するもの)で、トライベイキャピタル側の訴状には《(A社がとるとしていた)住民同意は未だとれていない》と書かれている。 一方のA社は、トライベイキャピタル側の主張に猛反発した。 《(A社から)地元住民の同意は取れる見込みである」との説明を行ったと主張していますがこれは誤り》 《(同意の前提である)開発図面が完成していない》 《(地元住民の同意がとれないのは)原告側の能力不足》 このように主張したうえ、測量や地盤調査のボーリング工事や同意書は、トライベイキャピタル側ではなくA社が自ら取得していると反論している。 A社は、トライベイキャピタル側から代金が支払われない以上、IDや土地が譲り渡せないと主張した。 訴訟資料によれば、2019年2月、清志氏はA社に対して、住民からの同意取得が難航していることに関して、言い訳のようにこうメール送信している。 《地元説明会での厳しい反応については、我々も大変残念に思っております。自治会の役員が交代されたことが大きな要因》 なぜ泥沼の訴訟に至ったのか? 記事の後篇「【独自】特捜部が追い込む「三浦瑠麗の夫」弁護士はあの統一教会弁護人だった!《肉声入手》」 では、A社との裁判での清志氏の証言や、三浦夫妻を知るトライベイキャピタルの関係者の独自告白を紹介する』、「住民からの同意取得が難航」、こうしたプロジェクトは恐らく玉のようにあるのだろう。

第三に、1月26日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの伊藤 博敏氏による「【夫婦連携の証拠?】三浦瑠麗が「グリーン資産への証券投資」を政府提言→5ヵ月後に夫が環境債発売を発表していた《地検特捜部が三浦瑠璃夫妻に襲いかかった理由》」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/105194?imp=0
・『「一切知り得ないこと」?  国際政治学者として人気が高く、情報発信力のある三浦瑠麗氏(42歳)の夫である三浦清志氏(43歳)の会社「トライベイキャピタル」(東京都千代田区)が、1月19日に東京地検特捜部の家宅捜索を受けていたことが判明し、波紋を広げている。 「建設の見込みがない太陽光プロジェクトを知人の投資会社代表に持ちかけて10億円を詐取した」という容疑は、FIT(固定価格買取制度)の導入で太陽光プロジェクトが「政府が利回りを保証した国債のようなもの」(太陽光業者)となって、設備ID(事業計画認定番号)が利権化しただけに、それほど珍しいものではない。転売が繰り返されてトラブルが多発しており、「太陽光発電は事件の温床」となっている。 瑠麗氏の東大の一学年先輩で、外務省、マッキンゼー・アンド・カンパニー、ベインキャピタルなどを経て起業したという絵に描いたようなエリートながら、一般には無名の清志氏の事件が注目を集めるのは、「瑠麗氏の夫」という“有名税”の側面はあるものの、「特捜案件」だけにそれほど単純ではない。特捜部は瑠麗氏の情報発信力にも疑いを強めている。 その疑惑を先に示しておきたい。 瑠麗氏は、2020年10月16日に菅義偉前首相が立ち上げた「成長戦略会議」の8人の有識者委員のメンバーとして、各種提言を行ってきた。以下の資料は、瑠麗氏が第9回成長戦略会議(21年4月12日)で提出したもの。 瑠麗氏は、この日のテーマである「グリーン成長戦略」について提案したのだが、資料(写真下)にある「グリーン資産への証券投資」(赤線は筆者)に注目いただきたい。 清志氏のトライベイ社は、会議の5ヵ月後の21年9月末、グリーンボンド(環境債)の発売を発表した。「出力50キロワット未満の低圧案件の開発を対象に5億3000万円を調達する」というもの。 瑠麗氏は自身が経営する「山猫総合研究所」のホームページで、1月20日、捜索を認めた上で「夫の会社経営には関与しておらず、一切知り得ないこと」とリリースした。だが、瑠麗氏のグリーンボンドへの投資を呼びかける提言を清志氏が実行した「婦唱夫随」に相関関係がないとは誰も思わないだろうし、「利益誘導」と捉えられても仕方がない』、「瑠麗氏は、2020年10月16日に菅義偉前首相が立ち上げた「成長戦略会議」の8人の有識者委員のメンバーとして、各種提言」「「グリーン成長戦略」について提案」、夫の「清志氏のトライベイ社は、会議の5ヵ月後の21年9月末、グリーンボンド(環境債)の発売を発表」、「瑠麗氏のグリーンボンドへの投資を呼びかける提言を清志氏が実行した「婦唱夫随」に相関関係がないとは誰も思わないだろうし、「利益誘導」と捉えられても仕方がない」、「利益誘導そのもので極めて悪質だ。
・『再エネを利権化する関係者たち  トラブル多発とはいえ、太陽光プロジェクトが実際に刑事事件化する例は少ない。設備IDなど各種認可の取得、土地使用の交渉と取得、電力会社への接続申請、プロジェクト資金調達など完成には幾つものハードルがあり、頓挫したからといってそれが「最初から資金集めを目的とした詐欺」と決めつけるのは難しい。 実際、トライベイ社の案件は兵庫県福崎町の太陽光プロジェクトで、19年6月、つなぎ資金のために10億円の出資を受けた際には、既にその土地は前所有者が別の太陽光業者に売却済みであることが問題とされた。二重売却の詐欺である。 だが、この二重売却について京都地裁は、トライベイ社の訴えを受けて「土地の権利はトライベイ社にあり」という判決を22年4月に下している。つまり民事上は二重売却ではなかった。 これが太陽光プロジェクトを刑事事件にする難しさである。ただ、トライベイ案件には特捜部が着手したい事情があった。 まず大前提として、国民の負担のもとに成り立っている太陽光、風力、バイオマスなど再生可能エネルギー(再エネ)を利権化している業界関係者への苛立ちである。 FITを成立させるために政府は、12年の導入から約10年間の間に約22兆円を投入した。それを「賦課金」という名称で支払っているのは国民で、1人当たりの純負担額は約10万円にものぼる。 地球環境のために国民が負担した資金の不正流用に神経を尖らせてきた検察は、これまで捜査を積み重ねてきた。特捜部はまず、一般投資家の資金を募るソーシャルレンディングの手法で大手再エネ業者となったJCサービス絡みで、19年5月に関係先の家宅捜索を行っている。 JCサービスの中久保正己社長は、17年10月に子会社のJC証券を通じて、細野豪志元環境相に5000万円を資金提供していたことが判明している。このJCサービスの顧問として、同社から巨額報酬を受け取っていたのが「政界フィクサー」として知られる大樹総研の矢島義也代表だった。 矢島氏は与野党を問わず幅広い政界人脈を持ち、その人脈を生かして財務省、経済産業省、厚生労働省などの高級官僚に食い込んでいた。特捜部は、太陽光やバイオマスなどの再エネ事業の許認可などを通じて、矢島氏が政官界工作を行ったのではないかという疑いを強めた。 だが、JCサービスルートは不発だった。「事業と工作」の関係を紐付けるのが難しいといういつものカベにぶつかり、「政官」が関与したという疑惑を立件できなかった。 ただ、特捜部は「次の再エネ案件」を仕組んでいた。水処理業者と出発しながら再エネ事業に経営資源を移し、小泉純一郎元首相を広告塔にSDGsに関する著作も著して急成長していたテクノシステム(横悪徳商法については、2020年10月30日に取上げた。久しぶりの今日は、(その6)(オンラインゲームの利益で高配当をうたう「マルチ商法」の被害者が連絡会結成へ、【独自】「三浦瑠麗の夫」10億円詐欺訴訟で明らかになった驚きのスキームがヤバすぎる《訴訟資料入手》、【夫婦連携の証拠?】三浦瑠麗が「グリーン資産への証券投資」を政府提言→5ヵ月後に夫が環境債発売を発表していた《地検特捜部が三浦瑠璃夫妻に襲いかかった理由》)である。

先ずは、昨年10月26日付けダイヤモンド・オンライン「オンラインゲームの利益で高配当をうたう「マルチ商法」の被害者が連絡会結成へ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/311827
・『オンラインゲームの利益を還元するとうたい、出資金を募る「マルチ商法」にだまされたとして、被害者らが全国初の被害連絡会を近く立ち上げることが分かった。連絡会の弁護士によれば、被害者は最大1万人に上るとされる。YahooやAmazonなどの有名サイトの名前を出しながら、巧みに金を集める手口の詳細が明らかになった』、興味深そうだ。
・『オンラインゲーム配信で売り上げ1000億円?! アクセンチュア出身?の男性がトンデモもうけ話       「1年後にはユーザーは確実に1000万人に達し、それに応じて利益も莫大に増えていく」「ポータルサイトの売り上げは2年後に100億円、5年後に1000億円を目指す」 2012年3月、都内在住の三井美恵子さん(仮名、50代)は知人の紹介である会社を訪ね、取締役の男性らからそんな説明を受けた。男性らは、アクセンチュアや日本エンタープライズ出身を名乗ったという。 その会社は、e-World Capital Partners Japan(EWCP)といい、ポータルサイトの運営などを手掛けているとのことだった。そして男性は、以下のような説明を三井さんに行った。 ・EWCPはゲームコンテンツを作成しており、これに出資する人を探している。 ・「モバゲー」や「グリー」の例の通り、ゲーム業界は極めて有望である。 ・Yahoo!やAmazonのウェブサイトを融合させたようなポータルサイトに進化させ、全世界で10億人の利用者の獲得を目指す。 ディー・エヌ・エー(DeNA)やグリーが運営するソーシャルゲームは当時最高益を更新し、急速に市場が拡大していた。男性らの説明によれば、EWCPは「りらっつ」なるポータルサイトを開発し、スマートフォン向けのゲームアプリを配信。会員になれば、そのゲームの月額利用料や広告などの利益を原資に配当されるという。 5年で1000億円もの売り上げが見込めるのであれば、会員からわざわざ出資を募る必要はないのではないか――。三井さんが当然のように抱いた疑問に対し、男性らは次のように答えたという』、「5年で1000億円もの売り上げが見込めるのであれば、会員からわざわざ出資を募る必要はないのではないか」、「三井さんが当然のように抱いた疑問に対し、男性らは次のように答えた」、どんなように答えたのだろう。
・『「1万人限定」「募集は1年で終了」 資金を集めたEWCPの巧みな勧誘手口  「EWCPの会員として1万人の登録者が欲しい。そこから紹介者を増やし、ポータルサイトの利用者を次々と増やしていく」。さらに、こう付け加えることを忘れなかった。 「会員の募集は1年程度で終了する」――。 その言葉を信じ、三井さんは翌日、7万3600円を支払って会員となった。その後、EWCPが主催するセミナーに参加するようになる。 セミナーで男性らは、実在する有名企業の名前が挙げながら、次のような説明を行った。 ・NECビッグローブからゲーム業界第6位のゲーマーズワンというゲームプラットホームを買収した。モバゲーやグリーの売り上げは1000億円程度であり、利益も500億円程度であることからゲーマーズワンの売り上げも相当程度見込める。 ・auでの売り上げが月額2億円を超えており、NTTドコモの売り上げはその2倍はいく。ゲームはAppStoreでも配信し、世界的に売り上げを伸ばしていく。 ・EWCPは上場企業を買収する予定だ。 これらは無論、虚偽であることが後に判明するが、13年3月末にEWCPの会員募集を締め切るとの説明にあおられるようにして、三井さんはさらに出資額を増やしていった。三井さんが最終的に支払った総額は約400万円に上る。 千葉県在住の田所彦三さん(仮名、70代)も、セミナーに参加した一人だ。 やはりそこで聞かされたのは、りらっつが世界的なポータルサイトへと発展し、莫大な利益を生むという“夢物語”だ。田所さんは自分だけでなく、息子も誘い、親子で入会。二人の最終的な投資額は200万円超に達した。 この話がどのような結末を迎えたかは、想像に難くない。 ポータルサイトのリニューアルは12年4月に着手するとの説明だったが、一向に公開されることはなかった。また、NTTドコモの「dマーケット」を通じてゲームを配信し、NTTドコモを通じて利益を配当するとしていたが、その契約すら行っていなかったことも判明した。都内にあったEWCPの事務所はもぬけの殻となり、連絡手段も途絶えてしまった。 三井さんや田所さんらは今、EWCPの元取締役の男性3人に損害賠償を求め、東京地方裁判所に訴訟を起こしている。代理人を務める玉木賢明法律事務所の高田祐輔弁護士が調査を行った結果、男性らの巧妙な勧誘手口の詳細が明らかになった。 まず三井さんや田所さんのような会員が配当を受けるためには、「ポータルパッケージ」を購入することで「ポジション」を獲得しなければならない。 パッケージの価格設定も“絶妙”だ。最初の一つ目は3万9800円、二つ目以降は3万5800円。このパッケージ一つにつき、一つのポジションを獲得することができ、基本的にはポジション数に応じて配当金が増える仕組みとなっている。 また会員が、新規会員を勧誘した場合に得られる配当もあった。会員は自らが獲得したポジションに加え、勧誘した知人らが獲得したポジションも配当に算入されるのだ。この仕組みにより、会員に他者を勧誘するインセンティブが生まれる。まさに会員が会員を増やす「マルチ商法」だ。 高田弁護士によれば、男性らはEWCPを精算した後、Sanctuary(サンクチュアリー)やARKという名の別会社を次々に設立。化粧品や健康食品などに商材を変えてマルチ商法を続けているとみられる。ARKは今年3月、特定商取引法に違反する行為があったとして、中部経済産業局などから行政処分を受けている。 マルチ商法の歴史は古く、過去にも豊田商事や安愚楽牧場など多くの被害者を出す事件が相次いだ。近年の勧誘行為はEWCPの例に見る通り、インターネットを介して行われるケースが増え、被害の実態が見えにくくなっている可能性があるという。 近く結成する「EWCP・Sanctuary・ARK被害連絡会」は玉木賢明法律事務所(070-4212-2119、受付時間:平日午前10時~午後5時)内に開設する。 高田弁護士は「EWCPは全国で1万人の会員を募り、実際に会員募集を締め切ったことから1万人相当の会員がいた可能性がある。マルチ商法の被害を抑止するためにも可能な限り多くの被害者の証言を集め、全容解明に努めたい」と話している』、「資金を集めたEWCPの巧みな勧誘手口」は、「1万人限定」「募集は1年で終了」などで急いで資金を出させようとする典型的な手口だ。また、資金を集めることで、投資総額を大きくしようとした。「会員は自らが獲得したポジションに加え、勧誘した知人らが獲得したポジションも配当に算入されるのだ。この仕組みにより、会員に他者を勧誘するインセンティブが生まれる。まさに会員が会員を増やす「マルチ商法」だ」、確かに巧みな仕組みだ。

次に、本年1月25日付け現代ビジネス「【独自】「三浦瑠麗の夫」10億円詐欺訴訟で明らかになった驚きのスキームがヤバすぎる《訴訟資料入手》」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/105175?imp=0
・『9万坪の土地を取得する大プロジェクト  東京地検特捜部は1月17日、太陽光発電などを手がける投資会社「トライベイキャピタル」(東京都千代田区)などを突然家宅捜索した。同社は衆議院第一議員会館の目の前のビルに本社を置く。同じフロアに「山猫総合研究所」という会社が入居しているが、この会社で代表を務めるのは政治学者・三浦瑠麗氏だ。 三浦瑠麗氏の夫・三浦清志氏が社長を務めるトライベイキャピタルは、なぜ特捜部にガサ入れされたのか。同社が太陽光発電投資でトラブルになり、民事訴訟が起こったことをきっかけに、この捜査は始まった。いったい三浦夫妻に何が起こっているのか? 「現代ビジネス」は2つの訴訟資料を独占入手し、トライベイキャピタルの関係者からも重要な証言を得た。 民事訴訟になっているのは、トライベイキャピタルのSPC(特別目的会社)である「STC3」が計画した太陽光発電投資物件に関するものだ。兵庫県福崎町にある約9万坪の土地の大半を取得して、発電出力2万KWの施設を建設するプロジェクトだった。 トライベイキャピタルは、建設計画と同時に投資を平行して募っていた。ここにトライベイキャピタル側に10億円の投資をしたのは、不動産会社・マーキス(東京都千代田区)。 同社社長でもある税所篤氏が経営する投資会社のメタキャピタル(東京都港区)も投資に関与している模様だ。このメタキャピタルは、役員としてソニーの元最高経営責任者・出井伸之氏(故人)が名を連ねていたことでも知られ、顧問には元東京地検特捜部長の大鶴基成弁護士の名がある。 2021年6月2日から東京地裁で始まった裁判資料によれば、2019年1月頃、三浦清志氏は、税所氏に福崎町の太陽光発電プロジェクトに10億円の投資を求めてきた。実際、2019年6月にSTC3名義の銀行口座に10億円が振り込まれ、「兵庫県福崎太陽光発電プロジェクトに関する売買及び開発契約書」が交わされた』、「政治学者・三浦瑠麗氏」「の夫・三浦清志氏が社長を務めるトライベイキャピタル」が「東京地検特捜部」により「突然家宅捜索」とは穏やかではない。
・『麻布警察署長に「詐欺罪で告訴状」  清志氏が税所氏に説明していたのは、以下のような流れだった。 (1) トライベイキャピタル側が事業用地確保のために必要な住民の同意をとる。 (2) その後、マーキスが10億円をSTC3に出資する。 (3) トライベイキャピタル側が、太陽光発電の事業権利(ID)と土地を取得したうえ、開発許可を申請して、当該役所などの許認可を得る。 (4) トライベイキャピタル側が、役所などの許認可を前提に金融機関から融資を得る。 (5) トライベイキャピタル側は、この融資のお金を使い、マーキスがSTC3に出資した権利の80%を(マーキスから)10億円で取得する。 (6) マーキスは残った権利20%分を行使して、太陽光発電の売電利益を得る。 だが、この太陽光発電プロジェクトが進展することはなかった。10億円を出資したマーキス側とトライベイキャピタル側でトラブルになり、民事調停なども実施されたが、不調に終わった(途中10億円のうち手数料名目などで2億円程度がマーキス側に戻される不可解なカネの流れたあったことが、裁判資料では明らかになっている)。 2021年2月、東京簡裁に提出された調停事件での答弁書には、《マーキスは、麻布警察署長宛に詐欺罪で告訴状を提出することを検討しており、準備を進めている。》と記されている。 今回の捜査は、マーキスが三浦氏を麻布警察署ではなく、同社の顧問を務める大鶴基成氏の「古巣」である東京地検特捜部に「詐欺罪」で刑事告訴した結果だとみられる。 10億円を欺しとろうという詐欺だったと主張しているわけだが、ここには前段があった。 そもそもこの兵庫県福崎町の太陽光プロジェクトでは、京都市内に本社を置くA社が、すでに太陽光発電の事業権利(ID)と一部の土地を取得していた。トライベイキャピタルは、そこに追加の土地取得を行い、事業を進める計画だった。 2018年7月に、京都市のA社はトライベイキャピタルと、土地と事業権利を譲り渡す契約を交わしている。 大規模な太陽光発電施設の建設には、近隣住民の同意が必要という自治体が急増している。兵庫県福崎町のプロジェクトでも、同意がないかぎり計画が前に進まない状況だった』、「大規模な太陽光発電施設の建設には、近隣住民の同意が必要という自治体が急増」、「兵庫県福崎町の太陽光プロジェクト」も「同意がないかぎり計画が前に進まない状況」、なるほど。
・『住民の同意はとれていなかった  前述したように、マーキスが10億円を出資する際の重要な条件は、住民の同意が必要だったことは契約書にも明らかになっている。 だが、この住民への同意を巡って、もともとの土地を持っていたA社とトライベイキャピタル側で紛争が起こった。A社はトライベイキャピタル側から、契約書の代金が支払われていないと主張した。2020年2月から京都地裁で始まった裁判(トライベイキャピタル側が土地所有権や転売などの禁止を主張するもの)で、トライベイキャピタル側の訴状には《(A社がとるとしていた)住民同意は未だとれていない》と書かれている。 一方のA社は、トライベイキャピタル側の主張に猛反発した。 《(A社から)地元住民の同意は取れる見込みである」との説明を行ったと主張していますがこれは誤り》 《(同意の前提である)開発図面が完成していない》 《(地元住民の同意がとれないのは)原告側の能力不足》 このように主張したうえ、測量や地盤調査のボーリング工事や同意書は、トライベイキャピタル側ではなくA社が自ら取得していると反論している。 A社は、トライベイキャピタル側から代金が支払われない以上、IDや土地が譲り渡せないと主張した。 訴訟資料によれば、2019年2月、清志氏はA社に対して、住民からの同意取得が難航していることに関して、言い訳のようにこうメール送信している。 《地元説明会での厳しい反応については、我々も大変残念に思っております。自治会の役員が交代されたことが大きな要因》 なぜ泥沼の訴訟に至ったのか? 記事の後篇「【独自】特捜部が追い込む「三浦瑠麗の夫」弁護士はあの統一教会弁護人だった!《肉声入手》」 では、A社との裁判での清志氏の証言や、三浦夫妻を知るトライベイキャピタルの関係者の独自告白を紹介する』、「住民からの同意取得が難航」、こうしたプロジェクトは恐らく玉のようにあるのだろう。

第三に、1月26日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの伊藤 博敏氏による「【夫婦連携の証拠?】三浦瑠麗が「グリーン資産への証券投資」を政府提言→5ヵ月後に夫が環境債発売を発表していた《地検特捜部が三浦瑠璃夫妻に襲いかかった理由》」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/105194?imp=0
・『「一切知り得ないこと」?  国際政治学者として人気が高く、情報発信力のある三浦瑠麗氏(42歳)の夫である三浦清志氏(43歳)の会社「トライベイキャピタル」(東京都千代田区)が、1月19日に東京地検特捜部の家宅捜索を受けていたことが判明し、波紋を広げている。 「建設の見込みがない太陽光プロジェクトを知人の投資会社代表に持ちかけて10億円を詐取した」という容疑は、FIT(固定価格買取制度)の導入で太陽光プロジェクトが「政府が利回りを保証した国債のようなもの」(太陽光業者)となって、設備ID(事業計画認定番号)が利権化しただけに、それほど珍しいものではない。転売が繰り返されてトラブルが多発しており、「太陽光発電は事件の温床」となっている。 瑠麗氏の東大の一学年先輩で、外務省、マッキンゼー・アンド・カンパニー、ベインキャピタルなどを経て起業したという絵に描いたようなエリートながら、一般には無名の清志氏の事件が注目を集めるのは、「瑠麗氏の夫」という“有名税”の側面はあるものの、「特捜案件」だけにそれほど単純ではない。特捜部は瑠麗氏の情報発信力にも疑いを強めている。 その疑惑を先に示しておきたい。 瑠麗氏は、2020年10月16日に菅義偉前首相が立ち上げた「成長戦略会議」の8人の有識者委員のメンバーとして、各種提言を行ってきた。以下の資料は、瑠麗氏が第9回成長戦略会議(21年4月12日)で提出したもの。 瑠麗氏は、この日のテーマである「グリーン成長戦略」について提案したのだが、資料(写真下)にある「グリーン資産への証券投資」(赤線は筆者)に注目いただきたい。 清志氏のトライベイ社は、会議の5ヵ月後の21年9月末、グリーンボンド(環境債)の発売を発表した。「出力50キロワット未満の低圧案件の開発を対象に5億3000万円を調達する」というもの。 瑠麗氏は自身が経営する「山猫総合研究所」のホームページで、1月20日、捜索を認めた上で「夫の会社経営には関与しておらず、一切知り得ないこと」とリリースした。だが、瑠麗氏のグリーンボンドへの投資を呼びかける提言を清志氏が実行した「婦唱夫随」に相関関係がないとは誰も思わないだろうし、「利益誘導」と捉えられても仕方がない』、「瑠麗氏は、2020年10月16日に菅義偉前首相が立ち上げた「成長戦略会議」の8人の有識者委員のメンバーとして、各種提言」「「グリーン成長戦略」について提案」、夫の「清志氏のトライベイ社は、会議の5ヵ月後の21年9月末、グリーンボンド(環境債)の発売を発表」、「瑠麗氏のグリーンボンドへの投資を呼びかける提言を清志氏が実行した「婦唱夫随」に相関関係がないとは誰も思わないだろうし、「利益誘導」と捉えられても仕方がない」、「利益誘導そのもので極めて悪質だ。
・『再エネを利権化する関係者たち  トラブル多発とはいえ、太陽光プロジェクトが実際に刑事事件化する例は少ない。設備IDなど各種認可の取得、土地使用の交渉と取得、電力会社への接続申請、プロジェクト資金調達など完成には幾つものハードルがあり、頓挫したからといってそれが「最初から資金集めを目的とした詐欺」と決めつけるのは難しい。 実際、トライベイ社の案件は兵庫県福崎町の太陽光プロジェクトで、19年6月、つなぎ資金のために10億円の出資を受けた際には、既にその土地は前所有者が別の太陽光業者に売却済みであることが問題とされた。二重売却の詐欺である。 だが、この二重売却について京都地裁は、トライベイ社の訴えを受けて「土地の権利はトライベイ社にあり」という判決を22年4月に下している。つまり民事上は二重売却ではなかった。 これが太陽光プロジェクトを刑事事件にする難しさである。ただ、トライベイ案件には特捜部が着手したい事情があった。 まず大前提として、国民の負担のもとに成り立っている太陽光、風力、バイオマスなど再生可能エネルギー(再エネ)を利権化している業界関係者への苛立ちである。 FITを成立させるために政府は、12年の導入から約10年間の間に約22兆円を投入した。それを「賦課金」という名称で支払っているのは国民で、1人当たりの純負担額は約10万円にものぼる。 地球環境のために国民が負担した資金の不正流用に神経を尖らせてきた検察は、これまで捜査を積み重ねてきた。特捜部はまず、一般投資家の資金を募るソーシャルレンディングの手法で大手再エネ業者となったJCサービス絡みで、19年5月に関係先の家宅捜索を行っている。 JCサービスの中久保正己社長は、17年10月に子会社のJC証券を通じて、細野豪志元環境相に5000万円を資金提供していたことが判明している。このJCサービスの顧問として、同社から巨額報酬を受け取っていたのが「政界フィクサー」として知られる大樹総研の矢島義也代表だった。 矢島氏は与野党を問わず幅広い政界人脈を持ち、その人脈を生かして財務省、経済産業省、厚生労働省などの高級官僚に食い込んでいた。特捜部は、太陽光やバイオマスなどの再エネ事業の許認可などを通じて、矢島氏が政官界工作を行ったのではないかという疑いを強めた。 だが、JCサービスルートは不発だった。「事業と工作」の関係を紐付けるのが難しいといういつものカベにぶつかり、「政官」が関与したという疑惑を立件できなかった。 ただ、特捜部は「次の再エネ案件」を仕組んでいた。水処理業者と出発しながら再エネ事業に経営資源を移し、小泉純一郎元首相を広告塔にSDGsに関する著作も著して急成長していたテクノシステム(横浜市)をターゲットにした。同社は設立10年で売上高160億円を達成したが、その間の無理が重なって資金繰りに窮して決算を粉飾。特捜部は21年5月、融資詐欺で生田尚之代表を逮捕している。この事浜市)をターゲットにした。同社は設立10年で売上高160億円を達成したが、その間の無理が重なって資金繰りに窮して決算を粉飾。特捜部は21年5月、融資詐欺で生田尚之代表を逮捕している。この事件を特捜部は政界に延ばし、生田被告と親しい公明党の遠山清彦元財務副大臣が、日本政策金融公庫に対する違法な融資仲介を行ったとして同年12月、遠山元財務副大臣を在宅起訴した。 さらに特捜部は、22年2月、医療ベンチャー「テラ」を巡る金融商品取引法違反(偽計)容疑で、東京・銀座の大樹総研事務所や矢島代表の自宅マンションなどを捜索した。検察はテラの顧問でもあった矢島代表が、偽計取引に何らかの関与があったのではないかと疑った。結局、「矢島ルート」に延びることはなかったが、偽計に問われたセネジェニックスジャパンの竹森郁被告は、自身の被告人質問で「矢島代表の官界工作」を赤裸々に語っている。 そうした経過を経たうえでのトライベイ事件である』、「FITを成立させるために政府は、12年の導入から約10年間の間に約22兆円を投入した。それを「賦課金」という名称で支払っているのは国民で、1人当たりの純負担額は約10万円にものぼる。 地球環境のために国民が負担した資金の不正流用に神経を尖らせてきた検察は、これまで捜査を積み重ねてきた」、「医療ベンチャー「テラ」を巡る金融商品取引法違反(偽計)容疑で、東京・銀座の大樹総研事務所や矢島代表の自宅マンションなどを捜索した。検察はテラの顧問でもあった矢島代表が、偽計取引に何らかの関与があったのではないかと疑った。結局、「矢島ルート」に延びることはなかったが、偽計に問われたセネジェニックスジャパンの竹森郁被告は、自身の被告人質問で「矢島代表の官界工作」を赤裸々に語っている。 そうした経過を経たうえでのトライベイ事件」、なるほど。
・『清志氏は筆者の直撃に  JCサービス事件、テクノシステム事件、遠山事件、テラ事件、トライベイ事件……。事件は別であり問われる罪も違う。だが、太陽光バブル、FIT制度、再エネブームと事件の背景は共通で、いずれも「政商」の矢島氏が深く関わり、そこに政官ルートが見え隠れするという意味で同じ地下茎で結ばれている。特捜部は、「太陽光の闇」「再エネの不正」を暴くべく、ここ数年、勢力を傾けており、連鎖する事件なのだ。従って三浦夫妻の名は、今回突然飛び出したわけではない。 そこで清志氏に連絡を入れた。電話に出た清志氏は、質問は遮らなかったものの、「取材をお受けするつもりはない」と答えた。この時、捜査が進まなかったのは、同時着手のテクノシステム事件が政界(遠山)ルートに延びたという検察側の「時間的事情」に他ならなかった。それがトライベイへの捜査着手で証明された。 また、筆者は22年3月にも清志氏に取材依頼書を送り携帯電話にも連絡したが、回答はなかった。この時は大樹総研家宅捜索の直後で、しかも清志氏と親しい金融業者が別件で逮捕されており、「トライベイも捜査対象になった」という情報が流れていた。 だが、大樹・矢島氏に捜査が延びることも金融業者のルートが清志氏に及ぶこともなかった。ただ、これも検察が捜査を諦めたわけではなかった。特捜部は、22年春以降、「五輪事件」を集中して捜査し、高橋治之・東京五輪パラリンピック組織委員会元理事とAOKIホールディングス、KADOKAWA、ADKホールディングスなどの経営幹部を軒並み逮捕した。そこに注力していた検察側に時間的余裕がなかった。 その捜査を終え、特捜部はまた太陽光プロジェクトに戻ってきた。トライベイ事件を解明する検察の狙いは次の3つである。 ひとつは「太陽光の闇」を切り開くこと。再エネを普及させるために初期の太陽光のFITは高く、それが高い利回りを生み、それゆえ事業を仕上げるつもりのないブローカーの跋扈を生み「事件の巣窟」となった。しかし警察レベルでは海千山千の「確信犯」を立件する難しさがあった。トライベイ疑惑をどう解明するか。「太陽光案件を手がける際の事件化への道筋をつける」という特捜部の役回りに期待がかかっている。 二つ目は矢島氏が、「政商」としてどう動いたかの解明である。前述のように昨年2月の家宅捜索以降、テラ事件「矢島ルート」は手つかずで終わっている。矢島氏がJCルート絡みで引き受けた「四国まんのうプロジェクト」と呼ばれる太陽光案件では、「許認可を巡り経産官僚の跳梁があった」と、公判で竹森被告は証言した。中久保、矢島の両氏と親しい清志氏は、彼らとどう関わったのか。 三つ目は瑠麗氏の事業への関与である。太陽光を始めとするトライベイの各種事業に、瑠麗氏が直接、関わっていないのは事実だろう。だが、瑠麗氏はメディアに登場するコメンテーターというだけでなく、菅政権肝いりの成長戦略会議の有識者委員を務めるなど公的な立場を持つ。 そこでの発言が利益誘導的なものであったことは指摘したが、それ以外にも立場を利用した関係省庁への資料要求や情報収集、あるいは清志氏の事業を推薦するなどの行為があったかも知れない。特捜部は、そこにも目配りするだろう。 「人もうらやむエリート夫妻」の事件は、ここ数年、再生可能エネルギー分野の「政官業トライアングル」を狙い続けた特捜部の最終章となるかも知れない。筆者は、21年8月、清志氏に最初の取材依頼を入れた。トライベイ社は矢島氏やその顧問先のJCサービスの中久保正己氏と親しく、千葉県山武市で進めていた太陽光プロジェクトにJCサービス関連から約7億円の融資を受けていた。同時に、この時点で今回捜索容疑の兵庫県案件では刑事告訴を受けており、検察案件となる可能性があった』、「トライベイ事件を解明する検察の狙いは次の3つである。 ひとつは「太陽光の闇」を切り開くこと」、「二つ目は矢島氏が、「政商」としてどう動いたかの解明」、「三つ目は瑠麗氏の事業への関与」、「「人もうらやむエリート夫妻」の事件は、ここ数年、再生可能エネルギー分野の「政官業トライアングル」を狙い続けた特捜部の最終章となるかも知れない」、今後の展開が大いに注目される。
タグ:「5年で1000億円もの売り上げが見込めるのであれば、会員からわざわざ出資を募る必要はないのではないか」、「三井さんが当然のように抱いた疑問に対し、男性らは次のように答えた」、どんなように答えたのだろう。 ダイヤモンド・オンライン「オンラインゲームの利益で高配当をうたう「マルチ商法」の被害者が連絡会結成へ」 悪徳商法 (その6)(オンラインゲームの利益で高配当をうたう「マルチ商法」の被害者が連絡会結成へ、【独自】「三浦瑠麗の夫」10億円詐欺訴訟で明らかになった驚きのスキームがヤバすぎる《訴訟資料入手》、【夫婦連携の証拠?】三浦瑠麗が「グリーン資産への証券投資」を政府提言→5ヵ月後に夫が環境債発売を発表していた《地検特捜部が三浦瑠璃夫妻に襲いかかった理由》) 「資金を集めたEWCPの巧みな勧誘手口」は、「1万人限定」「募集は1年で終了」などで急いで資金を出させようとする典型的な手口だ。また、資金を集めることで、投資総額を大きくしようとした。「会員は自らが獲得したポジションに加え、勧誘した知人らが獲得したポジションも配当に算入されるのだ。この仕組みにより、会員に他者を勧誘するインセンティブが生まれる。まさに会員が会員を増やす「マルチ商法」だ」、確かに巧みな仕組みだ。 現代ビジネス「【独自】「三浦瑠麗の夫」10億円詐欺訴訟で明らかになった驚きのスキームがヤバすぎる《訴訟資料入手》」 「政治学者・三浦瑠麗氏」「の夫・三浦清志氏が社長を務めるトライベイキャピタル」が「東京地検特捜部」により「突然家宅捜索」とは穏やかではない。 「大規模な太陽光発電施設の建設には、近隣住民の同意が必要という自治体が急増」、「兵庫県福崎町の太陽光プロジェクト」も「同意がないかぎり計画が前に進まない状況」、なるほど。 「住民からの同意取得が難航」、こうしたプロジェクトは恐らく玉のようにあるのだろう。 現代ビジネス 伊藤 博敏氏による「【夫婦連携の証拠?】三浦瑠麗が「グリーン資産への証券投資」を政府提言→5ヵ月後に夫が環境債発売を発表していた《地検特捜部が三浦瑠璃夫妻に襲いかかった理由》」 「瑠麗氏は、2020年10月16日に菅義偉前首相が立ち上げた「成長戦略会議」の8人の有識者委員のメンバーとして、各種提言」「「グリーン成長戦略」について提案」、夫の「清志氏のトライベイ社は、会議の5ヵ月後の21年9月末、グリーンボンド(環境債)の発売を発表」、「瑠麗氏のグリーンボンドへの投資を呼びかける提言を清志氏が実行した「婦唱夫随」に相関関係がないとは誰も思わないだろうし、「利益誘導」と捉えられても仕方がない」、「利益誘導そのもので極めて悪質だ。 「FITを成立させるために政府は、12年の導入から約10年間の間に約22兆円を投入した。それを「賦課金」という名称で支払っているのは国民で、1人当たりの純負担額は約10万円にものぼる。 地球環境のために国民が負担した資金の不正流用に神経を尖らせてきた検察は、これまで捜査を積み重ねてきた」、 「医療ベンチャー「テラ」を巡る金融商品取引法違反(偽計)容疑で、東京・銀座の大樹総研事務所や矢島代表の自宅マンションなどを捜索した。検察はテラの顧問でもあった矢島代表が、偽計取引に何らかの関与があったのではないかと疑った。結局、「矢島ルート」に延びることはなかったが、偽計に問われたセネジェニックスジャパンの竹森郁被告は、自身の被告人質問で「矢島代表の官界工作」を赤裸々に語っている。 そうした経過を経たうえでのトライベイ事件」、なるほど。 「トライベイ事件を解明する検察の狙いは次の3つである。 ひとつは「太陽光の闇」を切り開くこと」、「二つ目は矢島氏が、「政商」としてどう動いたかの解明」、「三つ目は瑠麗氏の事業への関与」、「「人もうらやむエリート夫妻」の事件は、ここ数年、再生可能エネルギー分野の「政官業トライアングル」を狙い続けた特捜部の最終章となるかも知れない」、今後の展開が大いに注目される。
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韓国「徴用工」問題(その2)(日韓"急接近"でも「徴用工問題」が解決しない真因 韓国側は岸田首相の「お返し」に注目している、韓国で「元徴用工問題」の公開討論会が大紛糾 解決の課題を元駐韓大使が解説、元徴用工問題のボールは韓国から日本に移った 外交が韓国司法から主導権を奪い返せるか) [外交]

韓国「徴用工」問題については、2018年11月17日付けで取上げた。久しぶりの今日hさ、(その2)(日韓"急接近"でも「徴用工問題」が解決しない真因 韓国側は岸田首相の「お返し」に注目している、韓国で「元徴用工問題」の公開討論会が大紛糾 解決の課題を元駐韓大使が解説、元徴用工問題のボールは韓国から日本に移った 外交が韓国司法から主導権を奪い返せるか)である。

先ずは、昨年10月14日付け東洋経済オンラインが掲載した スタンフォード大学講師のダニエル・スナイダー 氏による「日韓"急接近"でも「徴用工問題」が解決しない真因 韓国側は岸田首相の「お返し」に注目している」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/625847
・『10月4日に日本上空を通過した弾道ミサイルを含む、北朝鮮による容赦ない頻度でのミサイル発射が日本と韓国を接近させる、という北朝鮮にとっては皮肉な影響をもたらしている。加えて、アメリカもこの日本と韓国という同盟国に対して、3国間安全保障協力への参加をより積極的に要請している。 この兆候が最も顕著に現れたのは、6日のことだ。 日本と韓国の間の海域で、アメリカの誘導ミサイル艦2隻、日本の海上自衛隊の駆逐艦2隻、韓国海軍の最新鋭駆逐艦1隻が合同で、3国による初の弾道ミサイル防衛演習を行ったのである。日米韓は同じ週に合同航空演習も行った』、「北朝鮮による容赦ない頻度でのミサイル発射が日本と韓国を接近させる、という北朝鮮にとっては皮肉な影響をもたらしている」、その通りだ。
・『日本と韓国が危機感を「共有」  これは、アメリカインド太平洋軍が言うところの「われわれの集団的軍事力の相互運用性」に向けた極めて象徴的な動きだった。演習では、ミサイル飛来を想定して、日米韓の海軍の間でほぼ瞬時に情報を共有しながら、探知・追跡・迎撃の訓練を行った。 この種のミサイル防衛における密かな協力は数年前から続けられており、北朝鮮が発射したミサイルの追跡データを韓国が、横田基地に設置されている事実上の日米合同航空防衛司令部に提供している。 「北朝鮮による前例のない一連の弾道ミサイル発射、新たに法制化された核兵器政策と先制核攻撃の脅威、7回目の核実験の可能性(8回目以降も)、これらが日本と韓国に、共通に直面する危機を強く意識させている」と、元アメリカ国務省高官のエヴァンズ・リヴィア氏は指摘する。) 「この危機は、韓国と日本の連携を促進するだけでなく、アメリカと共に防衛力を強化し、即応態勢を高め、2国間・3国間安全保障協力を強めることで共通の脅威に立ち向かうよう促している」(リヴィア氏) より正式な形での3国間ミサイル防衛体制の構築が次の段階として当然考えられるわけだが、そうした構想は韓国と日本の両方で大きな政治的障害に直面している』、「より正式な形での3国間ミサイル防衛体制の構築が次の段階として当然考えられるわけだが、そうした構想は韓国と日本の両方で大きな政治的障害に直面している」、「大きな政治的障害」とはどういうことだろう。
・『日本との接近に野党が「懸念」  韓国では、野党・共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表が、3国間演習を軍事同盟の形成へと向かう「親日行為」だと非難したことがニュースになった。李代表は、「日本軍が韓半島に進駐してきて旭日旗が再び半島に掲げられる日は想像できないが、あり得ることだ」と発言した。 これに対して、与党・国民の力は即座に、李代表の扇動的な発言を「軽薄な歴史認識」と非難した。しかし尹大統領は支持率低下に見舞われているため、依然として国会を支配し大統領を鋭く批判している民主党からの攻撃にさらされている。 「韓国人は一般的に、中国には警戒感を抱く一方、アメリカとの関係改善を支持し、日本についても支持している」と外交問題評議会で朝鮮半島プログラムを担当するスコット・スナイダー氏は指摘する。「全体として尹大統領は国民が望む外交政策を実行しているが、その功績を認められないおそれが高まっている。彼自身の不人気のせいだ」。 こうした問題はあるものの、日韓関係の打開に向けた尹大統領の努力は国内で広く支持を集めている。最近発表された、日本の「言論NPO」と韓国の「東アジア研究院」が毎年共同で実施している日韓世論調査のレポートによると、両国では互いの国に対して好意的な見方をする人が大きく増えている。) これは10年前の調査開始以来最も大きな改善で、特に韓国の変化が著しい。特筆すべきは、韓国人の間で中国への警戒が高まっており、日本人が以前から抱いている印象に近づき始めていることである。 とはいえ、3国間安全保障協力は依然として、日本の朝鮮植民地支配から生じた戦時中の歴史問題の解決にかかっている。日米韓の政権関係者は未来に目を向けることの必要性を強調する一方、歴史問題が日韓関係を再び冷え込ませかねない「ダモクレスの剣(つねに存在する危険)」だということも理解している』、「韓国では、野党・共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表が、3国間演習を軍事同盟の形成へと向かう「親日行為」だと非難」、「李代表は、「日本軍が韓半島に進駐してきて旭日旗が再び半島に掲げられる日は想像できないが、あり得ることだ」と発言」、「共に民主党」の反日姿勢にも困ったものだ。
・『問題解決に向けた話し合いは行われている  目下の注目は「徴用工問題」だろう。戦時中に日本の鉱山や工場で徴用工として働かされた朝鮮人に対する賠償の問題を解決しようとする試みはいまだ行き詰まっており、徴用工を用いた日本企業の資産について韓国の裁判所が下した現金化命令の確定が迫っている。 日本当局は公式には、韓国が徴用工問題解決に向けて具体的な提案をするのを待っていると主張し続けている。しかし、この問題に携わる複数の韓国当局者や関係者によると、提案はすでに出され、両国の外務省の局長レベルで活発に議論されており、直近には11日にソウルでそうした場が持たれたという。 案は、趙賢東(チョ・ヒョンドン)外交部第1次官の主導により今年夏に設立された官民協議会から出されたものだ。韓国の案は、最大300人の韓国人被害者を対象に、2014年に韓国政府が設立した既存の基金「日帝強制動員被害者支援財団」を通して賠償金を支払うというものである。) 同基金にはすでに、韓国の鉄鋼メーカー大手ポスコから多額の寄付が寄せられている。同社は、両国の国交正常化に伴う1965年の「日韓請求権協定」のもとで提供された日本からの経済支援の恩恵を受けた企業である。 同基金を利用した場合、賠償問題は1965年の協定で解決済みであるという日本側の主張を間接的に認めることになる。基金にはすでに十分過ぎるほどの金額が集まっている。しかし、韓国の裁判所に訴えを起こした被害者ら、および官民協議会に参加した被害者側の法定代理人は、日本企業もこの基金への寄付を行うことを主張している。 長年この問題に取り組んでいる韓国政府高官によると、朴長官は日本が取るべき2つの対応を提案しているという。「1つは、日本政府と関係企業が謝罪の態度を示すこと。もう1つは、民間企業が自主的に賠償基金に寄付することを日本政府が認めることだ」』、「基金にはすでに十分過ぎるほどの金額が集まっている」、しかし、「被害者ら、および官民協議会に参加した被害者側の法定代理人は、日本企業もこの基金への寄付を行うことを主張」、彼らにしたら、韓国企業が寄付しただけでは、腹の虫が治まらないということなのだろう。
・『「金額の問題ではなく、感情の問題」  現時点では、この交渉に関与している日本の当局者は、この解決策を排除していない。「日本側は日本企業による自主的寄付に否定的な姿勢を示していない」と、元外交部高官で「共に民主党」の李代表の外交政策ブレーンである魏聖洛(ウィ・ソンナク)氏は語る。これらの取り組みに積極的に関与している魏氏は、その程度までには「2国間協議は前進している」と言う。 こうした中、韓国当局者が懸念しているのは、この機を捉えようという意識が岸田文雄首相とそのブレーン側に欠けているように見えることである。韓国政府が国内で(間違いなく革新派からの激しい攻撃を受けるであろう)この提案を売り込むためには、日本が一歩踏み出すことが不可欠だからだ。 「資金自体が問題なのではない」と、前出の韓国政府高官は言う。「むしろ、プライドと感情の問題だ。しかし、日本政府は問題解決に向けた取引への合意を渋っているようだ」。日本側は、この問題が1965年の協定で解決済みであるという立場を変えておらず、いかなる形でもそれを蒸し返すことには乗り気ではない。 合意に向けた最大の障害となっているのは、両国の国内政治である。「尹大統領と岸田首相の政治基盤の弱さが、このプロセスに影響を与える要因となっている」と指摘するのは、最も影響力のある韓国の日本研究者であり、尹政権のブレーンでもある朴喆熙(パク・チョルヒ)教授だ。 韓国の野党「共に民主党」はこの解決策に反対の構えを見せている。魏氏は、この解決策を支持する同党の幹部らを含む超党派グループを作ることを提案しており、尹大統領に対しこのアプローチを取るよう公に求めている』、「合意に向けた最大の障害となっているのは」、「「尹大統領と岸田首相の政治基盤の弱さ」だ困ったことだ。
・『岸田首相による「お返しのジェスチャー」が必要  しかし、同様に重要なのが、岸田首相が何らかのジェスチャーを示すことだ。そうすれば、韓国で国民の幅広い支持を得られるかもしれない。日本側は協定遵守に過度にこだわる立場を乗り越える必要があると、韓国専門家であるスナイダー氏も主張する。「韓国側は、交渉を持続的なものにするために、日本側からの何らかの"お返しのジェスチャー"を必要としている」。 残念ながら、岸田首相は依然として、韓国に対する根深い不信感を持った自民党の右派にとらわれている。さらに事態を悪化させているのは、岸田首相の政治基盤の弱さである。 実行可能な妥協案が欠如しているのではなく、国内政治こそが、日韓の正常な関係の回復に向かう狭い道をふさぐ真の障害となっているのだ。 「今後は、尹大統領と岸田首相はそれぞれの国民を置いていかないように、ゆっくりと事を進める可能性が高い」と、アメリカの外交官として両国で務めた経験の長いリヴィア氏は言う。 しかし、絶好の機会はそう長くは続かないかもしれないため、現在協議にあたっている日韓の当局者は年末までに合意をまとめたい考えだ。その"期限"までに「北朝鮮がきっと、協力することが強い共通の利益であることを日韓に思い出させてくれるだろう」』、「日韓の当局者は年末までに合意をまとめたい考えだ」、残念ながら「年末までに合意」は無理だったようだ。こじれた関係を解きほぐすには、時間がかかるようだ。

次に、本年1月17日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元・在韓国特命全権大使の武藤正敏氏による「韓国で「元徴用工問題」の公開討論会が大紛糾、解決の課題を元駐韓大使が解説」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/316198
・『政府の解決案に対する韓国メディアの反応  韓国政府は12日、元徴用工(元朝鮮半島出身労働者)訴訟問題を議論する公開討論会を行った。これについて多くの韓国メディアは、公開討論会で韓国政府が示した解決案に対し、元徴用工団体(以下、団体)がこぞって反発したことを伝えている。 たとえば韓国日報や京郷日報は、政府が元徴用工の意思を無視すれば、2015年の慰安婦合意が元慰安婦団体の反発を受け、元慰安婦に補償金を支払ってきた財団が解散させられ事実上活動を止められた「前例」を再現する恐れがあると批判している。 また、ハンギョレ新聞は、「被害者らの苦痛に対する謝罪と慰労を無視し、解決案を押し付けるならば、韓日関係は一層悪化し、逆風を受けることになるだろう」としている。 その一方で、朝鮮日報などは、日本も応えるべきとしつつも「これ以外現実的な解決策がないのも事実である」とコメントしている。 さらに韓国経済新聞は「政府案は根本的な解決策ではないが、被害者らもひたすらにそっぽを向いている時ではない」とし、日本に対しても「隣国に不幸をもたらした歴史に対する加害者の不断の謝罪と解決努力が必要である」と注文を付けている』、「公開討論会で韓国政府が示した解決案に対し、元徴用工団体(以下、団体)がこぞって反発」、これは織り込み済だろう。
・『解決案の実行を具体化するための課題  団体の反発はもともと予想されていたものである。問題は、この解決案を実行できるかである。 韓国政府は、解決案の実行に当たっては、元徴用工と個別に面会してその方針を説明し、理解を求めるとしている。それを踏まえ、元徴用工が判決金を受領することになるのだろう。 だが、団体は、自らが窓口となり、政府と元徴用工の接触を妨害し、元徴用工が判決金を受領するのを妨げるであろう。したがって、政府がいかに団体の妨害を回避できるかが最大の焦点である。 また、この解決案を実行するに当たり、寄付を行う企業が世論の反発を受けないようなスキームを作れるかも重要である』、「団体は、自らが窓口となり、政府と元徴用工の接触を妨害し、元徴用工が判決金を受領するのを妨げるであろう。したがって、政府がいかに団体の妨害を回避できるかが最大の焦点である」、その通りだ。
・『公開討論会に対して団体側は激しく反発  公開討論会では、外交部の徐旻廷(ソ・ミンジョン)アジア大洋州局長が政府の解決案を説明した。また、パネル討論では、高麗大学の朴鴻圭(パク・ホンギュ)教授とチェ・ウギュン弁護士が、韓国政府の解決案を擁護する発言を行った。 しかし、一般討論演説に差し掛かり、討論者の人数が制限されると討論会は紛糾し、座長を務めた日本専門家の朴喆煕(パク・チョルヒ)ソウル大学国際大学院教授は、討論会を終了せざるを得なくなった。 団体の一部は「外交部が事前に発題文(発表資料)すら提供していない」として、参加しなかった。民族問題研究所と代理人側は参加したが、不参加を決めた一部の団体を支持すると述べた。 市民団体で作る「歴史正義と平和な韓日関係のための共同行動(韓日歴史正義平和行動)」と革新系野党の「共に民主党」(24人)、「正義党」(6人)、無所属(2人)の計32人の議員は、国会前で、「非常時局宣言」とする記者会見を開催した。 同会見では、政府案は「司法府の判決を行政府が無力化する措置で、三権分立に反し、憲法を否定するもの」であり、「韓国の司法の主権を放棄するも同然だ」と非難し、同案の撤回を要求した。 しかし、こうした元徴用工側の反発は想定内だろう。彼らがおとなしく納得するはずはない。それを承知の上で、これしか解決の道はないと確信してのことだろう』、「こうした元徴用工側の反発は想定内だろう。彼らがおとなしく納得するはずはない。それを承知の上で、これしか解決の道はないと確信してのことだろう」、大人の対応だ。
・『解決案に対する団体の対決手段  韓国政府は、行政安全部傘下の日帝強制動員被害者支援財団(財団)が基金を募金して元徴用工に判決金を支給するとしているが、団体は、元徴用工に判決金を受領させない方針である。団体は、戦犯企業による基金への拠出と日本側の謝罪が前提になってこそ、今回の解決案を受け入れるという立場を固守している。 中央日報は、団体による対抗手段を次のように分析している。 判決金を肩代わりしようとする財団と元徴用工側の衝突は結局、裁判所供託手続きに帰結する可能性が高い。この場合、財団は判決金を裁判所に供託して法的に債務を終了させようとするはずで、これに対抗して元徴用工側は「供託無効訴訟」を提起する可能性がある。解決案は結局、問題を解決できないまま、法律紛争につながるという懸念が出ている。 さらに中央日報は、そうなれば「葛藤が長く続く混乱した状況が続くだろう」と指摘。そのため韓国政府と財団は、元徴用工との法律紛争などを懸念し、ひとまず判決金は準備しておくものの、実際の支給は日本企業の拠出が確定した後に先延ばしする案を検討している。 しかし、日本政府は、解決案に対する韓国国内での反応を見守っている状況である。韓国の財団が判決金の支払いを遅らせる場合、日本企業の基金への拠出を認めるとしても、韓国の財団の判決金支払いが始まるまで、日本側の拠出の黙認をちゅうちょすることも考えられる。韓国政府は、団体の反対をいかに回避するか考えるのが先決であろう』、「日本政府は、解決案に対する韓国国内での反応を見守っている状況である。韓国の財団が判決金の支払いを遅らせる場合、日本企業の基金への拠出を認めるとしても、韓国の財団の判決金支払いが始まるまで、日本側の拠出の黙認をちゅうちょすることも考えられる」、その通りだろう。
・『具体的支給の手続きはどのように行うのか  現在の判決金の支給対象は、大法院が2018年に三菱重工業や日本製鉄(旧新日鉄住金)などに支給するよう命じた15人の元徴用工が対象であり、支給すべき判決金は1億~1億5000万ウォン(約1033万円~1550万円)とその遅延利息である。 その後、日本企業に対する損害賠償訴訟2審が進行中の元徴用工(約140人)と、大法院で審理中の元徴用工(約110人)が最終的に勝訴すれば、追加的に基金を増やす必要がある。ただ、訴訟には時効があるため、判決金支給対象者が無限に増えるわけではない。 現在政府は、ポスコが当初拠出する予定だった100億ウォン(約10億3333万円)の残金40億ウォン(約4億1333万円)の拠出を、同社に求めている。だが、支給対象者が増える場合には、日韓請求権協定から恩恵を受けた韓国電力、KORAIL(韓国鉄道公社)、ハナ銀行(旧韓国外換銀行)、KT&Gなど16の企業、公共機関を選定し、拠出を求める考えだという。 財団が寄付金を集めるに当たっては、「韓国企業が肩代わりした」との批判を和らげるため、全国経済人連合会(全経連)内に別途機構を選定し、基金の管理を委託する方向で検討しているという。 判決金の受領対象となるのは当面最初の確定判決を受けた15人だが、そのうち12人は既にこの世を去っている。団体が元徴用工とその遺族に判決金の受領を拒否させることも、この15人の中核的な元徴用工であれば、それほど難しくないかもしれない。 しかし、訴訟の2審が進行中の人々、大法院で審理中の人々は今後訴訟を通じて、受け取りが可能となるまでには相当な時間が必要だろう。団体がこうした人々と政府の接触を全て妨害することは容易ではない。政府と財団が根気よくこうした人々を説得していくならば見通しは開けてくるであろう。 朝鮮日報は、「日本企業が韓国に持つ資産を強制的に処分したとしてもたいした額にはならず、判決額には程遠い。強制処分に伴う深刻な韓日の摩擦も懸念せざるを得ない」「日本との対立をただ続けることが本当に被害者のためになるのか、改めて考えるべき時期に来ているようだ」と指摘している。 さらに「『今の状況では、かつて日本から受け取った請求権資金で実際に成長した韓国企業が動くべきだ』との世論が大勢を占める」とも述べている。 韓国でマスコミが伝える世論、世論調査の結果に示される世論は日本に対して厳しいものが多い。しかし、韓国人は本音と建て前を使い分ける。本音は案外、朝鮮日報の報道に近いのかもしれない』、「『今の状況では、かつて日本から受け取った請求権資金で実際に成長した韓国企業が動くべきだ』との世論が大勢を占める」、これは本音なのだろう。
・『日本企業が基金に参加で日韓政府が一致か  東亜日報は、政府筋の話として、日韓両政府が昨年末、元徴用工問題で韓国企業による寄付で判決金を肩代わりする一方、その基金の設立に日本企業が参加することで一致したことが判明したと報じている。 ただし、最終合意ではないため、日本内の政治的状況など変数によって変わる可能性があるとも伝えている。日本政府は、韓国政府が解決策を公表した後、元徴用工の反発など韓国内の世論の動向を注視しているという。 韓国の朴振(パク・チン)外相は日本の林芳正外相に、韓国の解決案について説明した。外交部は「韓日関係の発展および韓日間の諸般の懸案解決に向け、外交当局の各レベルで緊密に意思疎通を行うことで一致した」と発表した。林外相は解決策について具体的な言及は避けたが「韓国政府と緊密に意思疎通を行いたい」と述べた。 さらに、16日には日韓局長協議でより詰めた協議をした。 また、公開討論会を共催した韓日議員連盟の鄭鎮碩(チョン・ジンソク)会長は、麻生太郎自民党副総裁、松野博一官房長官と相次いで会談し、解決案について意見交換した。鄭鎮碩会長は「元徴用工問題をはじめとする両国間の懸案問題について虚心坦懐に話をした」「一方の努力だけでは困難な『弧掌難鶏』(何かを成し遂げようとしても一人ではどうすることもできない)と訴え、(日本側も)誠意ある努力を行うべきだと強調した」と明らかにした。 また、中央日報は、日韓両政府が公式解決案を発表した後、日本が過去に出した談話の精神を継承するという趣旨の立場表明を発表する案まで話し合ったと報じている。ただ、どの談話を継承するかについては立場が歩み寄ってはおらず、「過去の談話を継承する」という包括的な表現に落ち着く可能性もあると伝えている』、「日韓両政府が昨年末、元徴用工問題で韓国企業による寄付で判決金を肩代わりする一方、その基金の設立に日本企業が参加することで一致したことが判明したと報じている」、「基金の設立」への「参加」であれば、「判決金の肩代わり」より少額で済むのだろうか。
・『日本政府側も現実的な案と評価  共同通信は日本の首相官邸筋の話として、韓国側の解決案は「現実的だ」と評価したと報じている。同筋はさらに「日本政府内では、日本企業が判決金を支払う財団に寄付できるようにする法案が浮上している」と伝えている。 岸田文雄首相は1月13日(現地時間。日本時間14日未明)、米ワシントンにおける記者会見で、韓国の解決案に対するコメントを求められ、「韓国内の具体的な動きについてコメントすることは控える」と即答を避けた。その一方で、「自身と尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が懸案の早期解決を図ることで一致した」とし、「日韓関係を健全な形に戻して発展させたい」と明らかにした。 AFPは岸田首相が、徴用工問題を解決しようとする韓国との今後の関係に対する希望を表明したと伝えている。 元徴用工問題の解決は、韓国政府による解決案によって一歩を踏み出した。今後の課題は、それをどう具体化するか、団体の妨害を乗り越え、元徴用工本人およびその遺族にどう接触し、理解を求めるか、日本側の誠意ある措置がどうなるかにかかっている』、折角、「元徴用工問題の解決は、韓国政府による解決案によって一歩を踏み出した」。「日本側」も「誠意」を示すべきときだろう。

第三に、1月23日付け東洋経済オンラインが掲載した東洋大学教授の薬師寺 克行氏による「元徴用工問題のボールは韓国から日本に移った 外交が韓国司法から主導権を奪い返せるか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/647464
・『元徴用工問題  日本統治下で動員された労働者が日本企業に対する訴訟を起こした問題)について、韓国政府が解決に向けて積極的な動きを見せている。 韓国政府の解決案はまず、損害賠償請求を認める判決が確定した元徴用工に対しては、日本企業に代わって韓国の財団が賠償金を支払う。さらに係争中の元徴用工に対しても同じ方法をとって、この問題を一気に解決しようという内容だ。 この解決策が実現すれば、日韓間で最大の懸念となっている日本企業の資産の現金化を回避できるだけでなく、李明博(イ・ミョンバク)大統領の時から続く日韓関係の「停滞の10年」を終わらせることも期待できるだろう。 日本企業に代わって原告に損害賠償金を支払うとされているのは韓国の「日帝強制動員被害者支援財団」だ。この財団は日本による植民地支配時代、軍人や労働者、慰安婦として動員された人たちの福祉支援、追悼、さらに強制動員被害に関する文化・学術研究、調査などを目的に2014年に設立された。 韓国政府案ではこの財団に韓国企業が寄付し、それを財源として財団が元徴用工に賠償金などを払う。既に韓国最大の製鉄会社ポスコが100億ウォン(約10億円)の拠出を約束し、すでに60億ウォンを寄付している』、興味深そうだ。
・『日本の資金で発展した韓国企業が賠償金を寄付  1965年、日韓請求権協定が結ばれ日韓の国交が正常化した際、日本政府は韓国に対し合計5億ドルの経済協力資金を支払った。当時の朴正煕(パク・チョンヒ)大統領はこの資金も活用して「漢江の奇跡」と呼ばれる高度経済成長を実現した。 ポスコの前身である浦項総合製鉄はこうした朴大統領の政策の下、日本からの資金を使って作られた企業で韓国最大の製鉄会社となっている。ポスコのほかにも日本からの経済協力資金を使った大手企業が合わせて10社ほどあり、財団はこれらの企業に寄付を要請し、元徴用工に渡すお金の原資に充てるつもりだ。 また財団は政府の動きに合わせて1月、定款に新たに「国外強制動員被害者と遺族に対する被害補償と弁済」という条文を追加し、元徴用工への賠償金支払いを可能にする措置をとっている。解決案実現に向けて着々と動いているのだ。) 対象となる元徴用工は、すでに判決が確定している人が15人で、賠償合計金額は数億円となる。このほか現在係争中の訴訟は約70件あり原告の数は約250人になるといわれている。韓国政府は判決が確定した元徴用工だけでなく、係争中の人たちについてもすべて解決しようという方針のようだ。 2018年に大法院が三菱重工業など日本企業に損害賠償金の支払いを命じる判決を出して以後、当時の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は問題解決のために一切、動こうとしなかったことを思えば、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の積極的な姿勢は高く評価できるだろう。 もちろん韓国政府が積極的に解決策を示したからと言って、その通りに進むわけではない。 原告やその支援団体は政府案に強く反対し、お金の受け取りを拒否するとしている。長い年月をかけて勝ち取った判決であるにもかかわらず、日本の政府や企業が何もしないで韓国企業が肩代わりするだけの決着を受け入れるわけにはいかないだろう。 韓国メディアは、原告らは韓国企業が日本企業に代わって資金を提供することを阻止するために形を変えた法廷闘争も検討していると報じており、今後の展開を予測することは難しい』、「日本からの資金を使って作られた企業で韓国最大の製鉄会社となっている。ポスコのほかにも日本からの経済協力資金を使った大手企業が合わせて10社ほどあり、財団はこれらの企業に寄付を要請し、元徴用工に渡すお金の原資に充てるつもりだ」、なかなか上手い仕組みだ。
・『外交の成果を司法がひっくり返した  一方、日本政府や企業の対応だが今のところ表立った動きはない。しかし、韓国政府がこれだけ積極的に動いている一方で、日本側がなにもしなくて済むのだろうか。 大法院判決について日本政府は一貫して、「元徴用工問題はすでに外交的に決着済みの問題であり、判決は国際法違反である」という主張をしている。賠償金支払い問題は韓国国内の問題であって、韓国政府が対応すべきだという立場だ。三菱重工など日本企業も同じで、賠償金を支払うことを拒否している。 そもそも大法院判決は植民地支配が違法という前提に立っている。その植民地支配に直結する日本企業の活動も違法であるから、徴用工の賠償請求が成り立つという論理を展開している。 植民地支配が違法か合法かは、「日韓国交正常化交渉での最大のポイントだった。双方が容易に妥協できない中で、両国政府は国交正常化を優先して、日韓併合条約など「すべての条約及び協定は、もはや無効であることが確認される」という表現で外交的妥協をはかった。これを受けて韓国政府は2度にわたって法律を整備し元徴用工に対する補償を実施してきた。 ところが大法院判決はこうした外交的成果を一気にひっくり返してしまったのだ。 大法院判決はすでに確定しており、類似の訴訟に対して拘束力を持つことになる。それは植民地支配に関する韓国の行政府と司法の認識の違いが固定化することを意味する。 韓国政府案は判決が確定した原告だけでなく、係争中の元徴用工に対する補償まで含んでいる。このことは、当面の懸案である日本企業の資産の現金化を回避することだけが目的ではないことを示している。) 韓国政府には、大法院で新たな判決が出る前に行政府主導で包括的に解決するとともに、日本側から何らかの対応を引き出そうという狙いもあるのではないか。 大法院は今後も同じ論理で元徴用工に対する損害賠償を認めることになるだろう。そうなると日本政府や企業は拒否するしかない。同じことの繰り返しが続く。 しかし、判決前であれば司法の判断に受動的に対応するのではなく、両国の行政府が話し合って打開策を見出すことが可能になる。実際、外交部幹部は韓国の国会で「韓国政府の対応に対して、日本の対応措置がなければ協議する必要はない」などと発言しており、これからは日本側の対応が重要になりそうだ。 ここで問題になるのは、韓国の対応をどこまで信じられるのかという問題だ』、「判決前であれば司法の判断に受動的に対応するのではなく、両国の行政府が話し合って打開策を見出すことが可能になる。実際、外交部幹部は韓国の国会で「韓国政府の対応に対して、日本の対応措置がなければ協議する必要はない」などと発言しており、これからは日本側の対応が重要になりそうだ」、なるほど。
・『岸田首相は慰安婦合意を反故にされた当事者  尹錫悦大統領が日韓関係改善に本気なことは自民党のタカ派議員でも理解している。しかし、日本側には「政権が代わってもこの政策は維持されるのか」という懸念は強い。 2015年、保守系の朴槿恵(パク・クネ)大統領の下で従軍慰安婦についての合意が実現した。ところが大統領が進歩系の文在寅氏に交代すると、「国民世論の理解が得られていない」などという理由であっさりと反故にされてしまった。 この時、合意内容を韓国外相とともに記者会見で発表したのが、当時外相だった岸田文雄首相だ。同じ誤りを繰り返すわけにはいかず、岸田首相が日韓関係についてはことさら慎重な対応をしているのも頷ける。 事実、最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表は、政府の対応を「国民の常識とかけ離れた反民族的で、反歴史的な態度だ」と強い調子で批判しており、保守勢力と進歩勢力の対立は以前にも増して激しくなっている。 しかし、韓国の次期大統領選(2027年予定)までにすべてを決着させてしまえば、政権交代を気にする必要はなくなる。韓国企業とともに日本企業が自発的に財団に寄付し、係争中の元徴用工に渡すような対応が実現すれば、政権交代で反故にすることもできなくなる。 それは同時に元徴用工問題についての主導権を韓国司法の手から外交の世界に引き戻すことにもなる。 日韓の間には元徴用工問題に加えて、韓国側が強く反発している半導体素材などの輸出規制問題や、韓国が一方的に終了を通告し、その後「終了通知の効力停止」を宣言したまま中途半端な状態となっている軍事情報包括保護協定(GSOMIA)問題も残っている。 さらに視野を広げると、ウクライナ戦争の余波で北東アジア地域でも、中国による軍事的脅威や北朝鮮の核の脅威が現実味を持ってきている。さらに世界経済が低迷し、各国が自国の利益追求を強める時代を迎えつつある。そんなときに日韓という中規模国家が長期間、足を引っ張り合っている場合ではない。 尹錫悦大統領が思い切って踏み出した今、次は岸田首相の番だろう』、「2015年、保守系の朴槿恵(パク・クネ)大統領の下で従軍慰安婦についての合意が実現した。ところが大統領が進歩系の文在寅氏に交代すると、「国民世論の理解が得られていない」などという理由であっさりと反故にされてしまった。 この時、合意内容を韓国外相とともに記者会見で発表したのが、当時外相だった岸田文雄首相だ。同じ誤りを繰り返すわけにはいかず、岸田首相が日韓関係についてはことさら慎重な対応をしているのも頷ける」、しかし、「日韓という中規模国家が長期間、足を引っ張り合っている場合ではない。 尹錫悦大統領が思い切って踏み出した今、次は岸田首相の番だろう」、同感である。 
タグ:しかし、「日韓という中規模国家が長期間、足を引っ張り合っている場合ではない。 尹錫悦大統領が思い切って踏み出した今、次は岸田首相の番だろう」、同感である。 「2015年、保守系の朴槿恵(パク・クネ)大統領の下で従軍慰安婦についての合意が実現した。ところが大統領が進歩系の文在寅氏に交代すると、「国民世論の理解が得られていない」などという理由であっさりと反故にされてしまった。 この時、合意内容を韓国外相とともに記者会見で発表したのが、当時外相だった岸田文雄首相だ。同じ誤りを繰り返すわけにはいかず、岸田首相が日韓関係についてはことさら慎重な対応をしているのも頷ける」、 折角、「元徴用工問題の解決は、韓国政府による解決案によって一歩を踏み出した」。「日本側」も「誠意」を示すべきときだろう。 「日韓両政府が昨年末、元徴用工問題で韓国企業による寄付で判決金を肩代わりする一方、その基金の設立に日本企業が参加することで一致したことが判明したと報じている」、「基金の設立」への「参加」であれば、「判決金の肩代わり」より少額で済むのだろうか。 「『今の状況では、かつて日本から受け取った請求権資金で実際に成長した韓国企業が動くべきだ』との世論が大勢を占める」、これは本音なのだろう。 「判決前であれば司法の判断に受動的に対応するのではなく、両国の行政府が話し合って打開策を見出すことが可能になる。実際、外交部幹部は韓国の国会で「韓国政府の対応に対して、日本の対応措置がなければ協議する必要はない」などと発言しており、これからは日本側の対応が重要になりそうだ」、なるほど。 「日本からの資金を使って作られた企業で韓国最大の製鉄会社となっている。ポスコのほかにも日本からの経済協力資金を使った大手企業が合わせて10社ほどあり、財団はこれらの企業に寄付を要請し、元徴用工に渡すお金の原資に充てるつもりだ」、なかなか上手い仕組みだ。 薬師寺 克行氏による「元徴用工問題のボールは韓国から日本に移った 外交が韓国司法から主導権を奪い返せるか」 「より正式な形での3国間ミサイル防衛体制の構築が次の段階として当然考えられるわけだが、そうした構想は韓国と日本の両方で大きな政治的障害に直面している」、「大きな政治的障害」とはどういうことだろう。 「北朝鮮による容赦ない頻度でのミサイル発射が日本と韓国を接近させる、という北朝鮮にとっては皮肉な影響をもたらしている」、その通りだ。 ダニエル・スナイダー 氏による「日韓"急接近"でも「徴用工問題」が解決しない真因 韓国側は岸田首相の「お返し」に注目している」 「基金にはすでに十分過ぎるほどの金額が集まっている」、しかし、「被害者ら、および官民協議会に参加した被害者側の法定代理人は、日本企業もこの基金への寄付を行うことを主張」、彼らにしたら、韓国企業が寄付しただけでは、腹の虫が治まらないということなのだろう。 「韓国では、野党・共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表が、3国間演習を軍事同盟の形成へと向かう「親日行為」だと非難」、「李代表は、「日本軍が韓半島に進駐してきて旭日旗が再び半島に掲げられる日は想像できないが、あり得ることだ」と発言」、「共に民主党」の反日姿勢にも困ったものだ。 武藤正敏氏による「韓国で「元徴用工問題」の公開討論会が大紛糾、解決の課題を元駐韓大使が解説」 ダイヤモンド・オンライン 「日韓の当局者は年末までに合意をまとめたい考えだ」、残念ながら「年末までに合意」は無理だったようだ。こじれた関係を解きほぐすには、時間がかかるようだ。 「合意に向けた最大の障害となっているのは」、「「尹大統領と岸田首相の政治基盤の弱さ」だ困ったことだ。 「日本政府は、解決案に対する韓国国内での反応を見守っている状況である。韓国の財団が判決金の支払いを遅らせる場合、日本企業の基金への拠出を認めるとしても、韓国の財団の判決金支払いが始まるまで、日本側の拠出の黙認をちゅうちょすることも考えられる」、その通りだろう。 「こうした元徴用工側の反発は想定内だろう。彼らがおとなしく納得するはずはない。それを承知の上で、これしか解決の道はないと確信してのことだろう」、大人の対応だ。 「団体は、自らが窓口となり、政府と元徴用工の接触を妨害し、元徴用工が判決金を受領するのを妨げるであろう。したがって、政府がいかに団体の妨害を回避できるかが最大の焦点である」、その通りだ。 「公開討論会で韓国政府が示した解決案に対し、元徴用工団体(以下、団体)がこぞって反発」、これは織り込み済だろう。 (その2)(日韓"急接近"でも「徴用工問題」が解決しない真因 韓国側は岸田首相の「お返し」に注目している、韓国で「元徴用工問題」の公開討論会が大紛糾 解決の課題を元駐韓大使が解説、元徴用工問題のボールは韓国から日本に移った 外交が韓国司法から主導権を奪い返せるか) 東洋経済オンライン 韓国「徴用工」問題
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少子化(その3)(少子化は企業が止める 出生数激減 国任せではいられない 少子化は企業が止める(1)、麻生太郎氏また失言「出産女性の高齢化で少子化」 子育て世代に責任転嫁の絶望、「異次元の少子化対策」2つの問題点と “韓国の失敗”から学ぶべき理由) [社会]

少子化については、2020年11月28日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その3)(少子化は企業が止める 出生数激減 国任せではいられない 少子化は企業が止める(1)、麻生太郎氏また失言「出産女性の高齢化で少子化」 子育て世代に責任転嫁の絶望、「異次元の少子化対策」2つの問題点と “韓国の失敗”から学ぶべき理由)である。

先ずは、昨年10月25日付け日経ビジネスオンライン「[新連載]少子化は企業が止める 出生数激減、国任せではいられない 少子化は企業が止める(1)」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00342/102400055/
・『「日本はいずれ存在しなくなる」──。少子化が深刻化するこの国への悲観と失望が広がる。仕事との両立に悩み、産むことをためらう人はなお少なくない。新型コロナウイルス禍でこうした傾向に一段と拍車がかかった。このまま国が縮めば、経済活動の足場は根底から揺らぐ。いかに若い世代の不安に応え、子育てへの希望を取り戻すか。国任せではいられない。人口減少の阻止へ企業が動く』、確かに企業にとっては存続がかかる問題なので、「国任せではいられない」、自ら取り組むべき課題だ。
・『連載ラインアップ ・少子化は企業が止める 出生数が激減、国任せではいられない(今回) ・伊藤忠、働き方改革で出生率2倍 生産性向上と子育ての意外な関係 ・「伊藤忠ショック」に意義 少子化を止めるカギは企業にある ・キリンは模擬体験、大成建設は夫にも研修… 育児支援に当事者目線 ・第5子出産に祝い金500万円 産み育てやすい職場が人材呼び込む ・出生率上げたフランス、スウェーデンに学ぶ 日本はまだやれる ・パパ育休は男女役割意識を破るか 「日本は子育てしやすい」4割のみ ・出生率2.95が示す「奇跡の町」の教え 「社会の宝」はこう増やす  5年に1度、日本で暮らす全員に実施される国勢調査。その始まりは大正時代の1920年まで遡る。当時の政府は人口という言葉を「国勢」と記した。人口は国の勢いを示すもの、すなわち国力であるという考えがこの言葉には込められていた。 それから100年の時がたち、日本の人口は「国勢」と呼ぶにはほど遠い状態だ。「出生率が死亡率を上回るような変化がない限り、日本はいずれ存在しなくなる」。5月、米テスラのイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)がツイッターでこうつぶやくなど、日本の人口減少は海外から見ても深刻な事態となっている』、「国勢調査」は「人口は国の勢いを示すもの、すなわち国力であるという考えがこの言葉には込められていた」、「それから100年の時がたち、日本の人口は「国勢」と呼ぶにはほど遠い状態だ」、「日本はいずれ存在しなくなる」。「イーロン・マスク」に茶化されるようでは、落ちぶれたものだ。
・『コロナで少子化に拍車、悲観シナリオに迫る  政府は9月、2021年の出生数が81万1622人だったと発表した。前年から3万人近く減り、過去最少となった。1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率も1.30と前年から0.03ポイント下がり、過去4番目の低さとなった。 この出生数を、国立社会保障・人口問題研究所がまとめた日本人の人口推計(最新は17年版)と照らし合わせると、少子化のスピードが想定以上だと分かる。人口推計の標準シナリオとされる中位推計では、21年の出生率は1.42で出生数は86万9000人とされていた。出生数が81万人まで減少するのは27年のはずだった。だがその時は6年も早くやってきた。 足元の81万人という出生数は悲観シナリオとされる低位推計に近づきつつあり、22年の「出生数80万人割れ」も現実味を帯びる。理由ははっきりしている。新型コロナウイルス禍による先行き不安で妊娠・出産の先送りが起きたからだ。 出産可能な15~49歳の女性の数は1990年以降減少しており、現在約2400万人。減少傾向である上に晩産化も進んでいる。そんな彼女らが妊娠を延期すれば「加齢に伴う妊娠確率の低下や、年齢を理由に第2子の出産を諦める動きが起こりやすくなる」と、歴史人口学が専門の鬼頭宏・上智大学名誉教授は懸念する』、「出生数が81万人まで減少するのは27年のはずだった。だがその時は6年も早くやってきた。 足元の81万人という出生数は悲観シナリオとされる低位推計に近づきつつあり、22年の「出生数80万人割れ」も現実味を帯びる。理由ははっきりしている。新型コロナウイルス禍による先行き不安で妊娠・出産の先送りが起きたからだ」、なるほど。
・『結婚離れも加速  「結婚離れ」も加速。かねて価値観の多様化や上がらない給料を背景に結婚しない人は増えていたが、コロナ禍で拍車がかかった。50歳時点で結婚していない人の割合は男性で28.25%、女性で17.81%に達する。 海外でもコロナで一時産み控えが起きた。だが北欧諸国や英国、フランスでは、21年には出生率が回復に転じた。こうした国々では、ロックダウン(都市封鎖)で家事・育児をしながら在宅勤務をしなければならない状況でも、男女が共に働き、一定の世帯収入が得られていた。 日本はどうか。東京都に住む派遣社員、村上明子さん(仮名、41)は、35歳で第1子を出産。もう1人産みたかったが、断念した。)  IT(情報技術)企業のシステムエンジニアとして働く夫は仕事時間が不規則で、家事・育児への協力は得られない。明子さんは1人で保育園送迎や食事の用意といった「ワンオペ育児」に追われる毎日だった。 コロナ禍になると保育園休園への対応などを迫られ、派遣先との契約を打ち切らざるを得なくなった。子どもの面倒を見ながら在宅勤務できる派遣先を探す生活に嫌気が差した。「子育てがこんなにつらいとは」』、「コロナ禍になると保育園休園への対応などを迫られ、派遣先との契約を打ち切らざるを得なくなった。子どもの面倒を見ながら在宅勤務できる派遣先を探す生活に嫌気が差した」、同情を禁じ得ない。
・『「ワンオペ育児」「子育て罰」が不安を増幅  政府は15年、若い世代の結婚や出産の希望がかなった場合の出生率を「希望出生率」と定義し、1.8と想定した。1990年代以降、1.5を下回り続ける出生率を、まずは「産みたくても産めない人」が抱える課題を解消して、1.8まで高めようとしたのだ。 子どもを産んでも仕事を続けられるよう、育児休業の拡充や保育施設の整備、経済不安の解消につながる幼児教育の無償化、不妊治療費用の助成と、さまざまな政策が打ち出されたのは記憶に新しい。 しかし、出生率は1.8に近づくどころか低下する一方だ。村上さんのような仕事と出産・育児を一手に抱え込む女性が増え、「ワンオペ育児」「子育て罰」など、出産・育児にマイナスの印象を与える言葉が世の中にはあふれる。 何を変えなければならないのか。無論、子どもを産むか産まないかは、個々人の選択に委ねられるべきだ。だがこの国の屋台骨を揺るがす少子化への危機感は「自分ごと」として社会全体で共有しなければならない。そのためには国や自治体だけでなく、企業が率先して動く必要がある。 岸田文雄政権が設けた社会保障のあり方を見直す有識者会議「全世代型社会保障構築会議」が5月にまとめた中間整理では「男女が希望どおり働ける社会づくり・子育て支援」こそが、少子化問題を考える上で重要な論点の1つと位置付けている。「『仕事か子育てか』の二者択一を迫られる状況が多く、早急に是正されるべきだ」とも指摘している。 この指摘は意外に思うかもしれない。なぜならこの10年、多くの企業では「働き方改革」を通じて、長時間労働の是正や、育児や介護中の社員でも無理なく働ける制度を導入してきたからだ。それでも「二者択一」にならざるを得ないのはなぜか。1日の多くを過ごす職場の中に、子育てを負担・不安に感じる要因が今なお存在するということである。 日本企業はいい意味でも悪い意味でも、働き手の価値観やライフスタイルに強い影響を与えてきた。ここで改めて子育てしながら働く社員が抱える問題が何なのか、捉え直してみてはどうか。それが少子化問題に関し企業ができる貢献であり、冒頭の悲観シナリオを回避するきっかけにつながるかもしれない。 連載の2回目では、働き方改革が結果的に社内出生率の急上昇につながった伊藤忠商事の取り組みを紹介する』、「子育てしながら働く社員が抱える問題が何なのか、捉え直してみてはどうか。それが少子化問題に関し企業ができる貢献であり、冒頭の悲観シナリオを回避するきっかけにつながるかもしれない」、同感である。

次に、本年1月20日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したフリーライターの鎌田和歌氏による「麻生太郎氏また失言「出産女性の高齢化で少子化」、子育て世代に責任転嫁の絶望」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/316346
・『また自民党議員が少子化について、失言した。1月15日に少子化の最大の要因を「女性の年齢が高齢化しているから」と説明して「体力的な問題があるのかもしれない」と分析して見せたのは82歳の麻生太郎氏。彼らはなぜ、子育て世代の経済的不安から目をそらし続けるのだろうか』、興味深そうだ。
・『全て女性のせい? 何度たたかれてもやめない失言  「(少子化の)一番大きな理由は出産するときの女性の年齢が高齢化しているからです」 「(複数の子どもを出産するには)体力的な問題があるかもしれない」 1月15日に報道されたのはこんな発言。 自民党の麻生太郎副総裁が、福岡県で講演した際に出た発言だという。これが報道されると、たちまちSNS上では批判の声が相次いだ。 麻生氏の発言は、政治家の責任を国民に押し付けているかのように聞こえるだけではなく、停滞する日本経済の中で明るい展望を描きづらい若者や子育て世代の不安をまったく斟酌(しんしゃく)していないように見える。 女性自身の記事「麻生副総裁『少子化最大の要因は女性の晩婚化』発言に女性からブーイングの嵐」では、内閣府の令和4年版「少子化社会対策白書」が引かれ、「夫婦が理想の子供の数を持てない理由として『子育てや教育にお金がかかりすぎるから』が56.3%で最多となっている」ことを指摘。さらに2020年「少子化関連指標の国際比較」で、日本人の平均初婚年齢(29.4歳)は、OECD加盟国の中でも出生率の高いスウェーデン(平均初婚年齢34歳)やフランス(同32.8歳)よりもむしろ低いことが指摘されている。 週刊誌にあっという間に論破されても、特に高齢の政治家たちはこのような失言をやめようとしない』、「週刊誌にあっという間に論破されても、特に高齢の政治家たちはこのような失言をやめようとしない」、懲りない面々だ。
・『繰り返されてきた「少子化」失言 過去には「産まないほうが問題」  多くの人が麻生氏の失言に怒りや失望の声を上げているのは、このような発言が今回が初めてではないからだ。政治の責任を棚に上げ、個人の頑張りが足らないから少子化が進むのだと言いたげな発言はこれまでも繰り返されてきた(以下、肩書はすべて当時)。 「独身者に『おまえ、結婚は夢があるぞ』と堂々と語っている先輩の人はほとんど聞いたことがない。結婚だけはやめとけ、大変だぞ、とみんな言うから。結婚は夢がある、子どもを育てるのはおもしろいって話がもっと世の中に出てこないと、なかなか(子どもが増えるという)動きにならないんじゃないかというのが正直な実感」(2020年11月、麻生太郎財務相の発言) 結婚には夢があり、子どもを育てるのはおもしろいという話が聞かれる社会にするのが政治の役目ではないのか。 年を取ったやつが悪いみたいなことを言っている変なのがいっぱいいるが、それは間違い。子どもを産まなかったほうが問題なんだから」(2019年2月、麻生太郎副総理兼財務相の発言/翌日に撤回) さまざまな理由で子どもを望まない、あるいは望んでもかなわない人がいることへの想像力の欠如は言うまでもないが、政治課題である少子高齢化を、高齢者対子育て世代(若年層)の問題かのようにすり替えるのはいただけない』、「政治課題である少子高齢化を、高齢者対子育て世代(若年層)の問題かのようにすり替えるのはいただけない」、その通りだ。
・『「3人くらい産むようにお願い」「ひとさまの税金で老人ホーム」  もちろん麻生氏以外にも、失言はまだ山ほどある。 「結婚しなくていいという女の人が増えている。お子さん、お孫さんには子供を最低3人くらい産むようにお願いしてもらいたい」(2019年5月、桜田義孝前五輪相) お願いで少子化が改善するなら政治はいらない。 「結婚すれば、必然的に、必ずと言っていいほど子どもが誕生する。日本の国の礎は子どもだと考えており、新郎新婦には必ず3人以上の子どもを産み育てていただきたい」「若いお嬢さんを捕まえて『まもなく結婚するんですね』と聞くと、たいがい『はい』と返事が返ってくるが、たまに『私はしません』という人がいる。『結婚しなければ子どもが生まれないわけだから、ひとさまの子どもの税金で老人ホームに行くことになりますよ』と言うと、はっと気付いたような顔をする」(2018年5月、加藤寛治衆議院議員/当日に謝罪して撤回) 「日本の国の礎は子ども」と言うのであれば、子どもの相対的貧困率が上昇傾向にある現状を変えるべきだ。「ひとさまの子どもの税金で老人ホーム」とは、まるで脅しである。 これ以外にも「子どもを4人以上産んだ女性を厚生労働省で表彰することを検討してはどうか」(2017年11月、山東昭子元参院副議長)、「(人気芸能人の結婚について聞かれ)この結婚を機にですね、やはりママさんたちが『一緒に子どもを産みたい』といった形で国家に貢献してくれればいい」(2015年10月、菅義偉官房長官)といった失言からは、妊娠・出産は個人のものではなく、国家のために行われるものであるという意識がうかがえる。 そのくせ、出産や子育ての負担やリスクは自己責任と突き放すのが、現在の政治に色濃い考え方のように見えてならない』、「妊娠・出産は個人のものではなく、国家のために行われるものであるという意識がうかがえる。 そのくせ、出産や子育ての負担やリスクは自己責任と突き放すのが、現在の政治に色濃い考え方」、確かに矛盾している。
・『「日本の女がちゃぶ台バーン」を無視する政治家たち  冒頭で示したように、子育て世代が理想の子どもの数を持てない最たる要因は経済的な不安である。しかし、このことから目を逸らし続け、若者のワガママ、あるいは女性のワガママかのように思っている節が自民党政治家の失言からはうかがえる。 2022年7月の「男の人は結婚したがっているんですけど、女の人は、無理して結婚しなくていいという人が、最近増えちゃっているんですよね。嘆かわしいことですけどもね。女性も、もっともっと、男の人に寛大になっていただけたらありがたいなと思っている」(2022年7月、桜田義孝元五輪相)という失言は、とてもわかりやすく少子化、未婚化の原因を「女性の考え方」に押し付けている。 ツイッター上でたびたび話題になる、漫画家・秋月りすさんの4コマ漫画がある。人気シリーズ『OL進化論』の1作品で、「子供は最低二人産んでねー」「労働力も必要だから仕事も続けてねー」「男より給料安いけどねー」「育児休暇?男は取れないよ」「保育園?家事?自分の才覚でがんばってよ」と言われ、沈黙する女性の後で、少子化のニュースが載る新聞を広げながら「OL」の一人が「日本の女がーちゃぶ台バーン」「それが少子化なのー」と歌っている。 これは2000年代後半に描かれた作品だ。今から10年以上も前から、今の社会で子どもを産むことが女性側にどれだけ負担があることか語られ、一定の共感を得てきている。その点から目を背け続け、子育て世代を「叱咤(しった)激励」すれば少子化が解消するかのような失言だけを繰り返しているのが、自民党の高齢の政治家たちだ』、「今の社会で子どもを産むことが女性側にどれだけ負担があることか語られ、一定の共感を得てきている。その点から目を背け続け、子育て世代を「叱咤(しった)激励」すれば少子化が解消するかのような失言だけを繰り返しているのが、自民党の高齢の政治家たちだ」、その通りだ。
・『政治家は自分の観測範囲でしか語らない 筆者の周りの声との違い  政治家たちは、しばしば自分の観測範囲で捉えられた事情だけでものを言う。 政治家がエビデンスに基づかずに見聞きした範囲内で少子化の原因を決めつけてしまうのであれば、筆者も見聞きした範囲の「少子化の原因」をここに書いていいだろう。 20〜40代の子育て世代から聞こえてくるのは、例えばこんな声である。 「子ども2人が10代になってから3人目の子どもができたが、中絶した。体力的な事情もあるが、上の2人の学費がかかる時期でもあり経済的な不安が一番大きかった」(30代後半) 「女性は専業主婦になりたがると言われるが、周囲で専業主婦になった女性は夫の転勤についていくためや、不妊治療のためにやむを得ずという人ばかり。出産後の女性が正規で仕事を続けづらいことが、『子どもはぜいたく品』という考え方の要因のひとつ」(40代前半) 「高齢世代から『昔は貧しくても子どもを産んで育てたのに』と言われることがあるが、昔は日本の経済が右肩上がりで夢を見ることができた。賃金が上がらないのに奨学金を返して、ローンで家を買って、子どもを育てて……というのでは、よっぽど実家が太い人でないと3人以上は難しい。芸能人やスポーツ選手が3人目、4人目を授かったというニュースのコメント欄に『お金のある人はぜひたくさん育ててほしい』という書き込みが見られるのは、経済的事情が許せばもう1人、2人欲しいと思っている人がいるということだと思う」(20代後半) 「自己責任と言われ続けた世代が、自己責任だから子どもを持つリスクを取らない、という選択をするのは当然だと思う。自分はよっぽど価値観の合う相手が見つからない限り、結婚も子育てもしたくないと思っている」(30代後半) 「少子化失言」をし続ける政治家たちの耳に、このような声は届いているだろうか』、「「自己責任と言われ続けた世代が、自己責任だから子どもを持つリスクを取らない、という選択をするのは当然だと思う」、「「少子化失言」をし続ける政治家たち」は実態を少しは勉強すべきだ。

第三に、1月25日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した政治・教育ジャーナリスト/大妻女子大学非常勤講師の清水克彦氏による「「異次元の少子化対策」2つの問題点と、“韓国の失敗”から学ぶべき理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/316605
・『永田町をざわつかせる菅義偉前首相の岸田批判  1月23日に通常国会が召集され、与野党の論戦が本格化している。当面は、来年度予算案の審議が軸だが、その焦点となるのが、岸田文雄首相が「異次元」と位置付けている少子化対策と防衛費の増額問題だ。 これらは、増税という形で国民の暮らしに直結する可能性があるのと同時に、岸田政権の今後を大きく左右するからである。 こうした中、今なお永田町をざわつかせているのが、菅前首相による岸田首相批判だ。) 「岸田首相が派閥に居続けることが、派閥政治を引きずっているというメッセージになる」(1月10日発売の月刊「文藝春秋」) 「少子化対策は極めて重要だと思うが、消費税を増税してやるということは、(私自身は)全く考えていない」(1月13日、訪問先のベトナムで) 「(防衛増税の話は)突然だったんじゃないか。議論がなさすぎたんじゃないか」(1月18日、ラジオ日本の番組で) 筆者自身は、その中身はともかく、岸田首相が「異次元」の少子化対策をぶち上げ、国会審議の前に、アメリカのバイデン大統領に防衛費増額の詳細を説明してきたことは、何ら問題ないと思っている。 先にアジェンダ(課題)を設定したまでのことだ。首相であればそれくらいの牽引力があっていい。改善点や修正点があるなら、それを国会で議論すればいいだけの話である。 とはいえ、これまで政権批判を控えてきた菅前首相が、岸田首相個人や岸田政権の重要施策を、何度も公然と批判したことの意味は大きい。すでにさまざまなメディアで報じられている通り、これらの発言は、自民党内でくすぶる岸田首相への不満を代弁したもの、もっと言えば、「反岸田勢力」結集に向けたのろしとも受け止めることができるからだ。 その意味では、政局色の強い発言ともいえるが、では、焦点の一つ、「異次元」の少子化対策と財源確保のための増税はどこが問題なのか見ていこう』、「これまで政権批判を控えてきた菅前首相が、岸田首相個人や岸田政権の重要施策を、何度も公然と批判したことの意味は大きい。すでにさまざまなメディアで報じられている通り、これらの発言は、自民党内でくすぶる岸田首相への不満を代弁したもの、もっと言えば、「反岸田勢力」結集に向けたのろしとも受け止めることができるからだ」、その通りだ。
・『少子化こそが日本最大の有事  少子化は日本にとって最大の有事だ。それはOECD加盟38カ国の中で最も早く少子化が進んでいる韓国を見ればよくわかる。 韓国統計庁によれば、2021年の出生率は0.81。首都ソウルで言えば0.63だ。これは日本の1.30(首都・東京は1.08)よりはるかに低い。このまま推移すれば、5100万人ほどいる韓国の人口は、2100年には半分近くにまで減少する。 「韓国の女性、特にソウルの若い女性は、日本の女性より所得が高く自立してますよね。結婚しなくても生きていけますし、出産しないほうが第一線で働けますしね」 筆者の問いに語るのは、ソウル大学研究員の吉方べき氏である。 確かにその通りだが、韓国の人口減少に関しては、2006年の段階で、オックスフォード人口問題研究所の教授、デービッド・コールマンが「韓国は世界で最初に地球から消滅する」と予測している。 人口が減れば経済が衰退するだけでなく、電気・ガス・水道・交通といった社会インフラが崩壊する。国防や治安維持どころではなくなり、国家としての体をなさなくなってしまう。 先頃、人口減少が報じられた中国でも、今では、「未備先老」(制度が整備されないうちに老いてしまう)が流行語となっている。建国100年の節目を迎える2049年頃には60歳以上が5億人前後に達する(ということは2060年頃には5億人前後が70歳以上になる)、とんでもない規模の老人大国が完成することになる。 OECD加盟国の中で、4番目に出生率が低い日本にも同じことがいえる。その意味では、岸田首相が1月23日に行った施政方針演説で、「わが国は社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際に置かれている」と述べた認識は正しい』、「オックスフォード人口問題研究所の教授、デービッド・コールマンが「韓国は世界で最初に地球から消滅する」と予測している。 人口が減れば経済が衰退するだけでなく、電気・ガス・水道・交通といった社会インフラが崩壊する。国防や治安維持どころではなくなり、国家としての体をなさなくなってしまう」、「先頃、人口減少が報じられた中国でも、今では、「未備先老」・・・が流行語となっている。建国100年の節目を迎える2049年頃には60歳以上が5億人前後に達する(ということは2060年頃には5億人前後が70歳以上になる)、とんでもない規模の老人大国が完成することになる」、「4番目に出生率が低い日本にも同じことがいえる。その意味では、岸田首相が1月23日に行った施政方針演説で、「わが国は社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際に置かれている」と述べた認識は正しい」、その通りだ。
・『「異次元」の少子化対策で指摘すべき2つの問題点  そんな中、1月19日、内閣府では「異次元」の少子化対策に向けた関係府省会議の初会合が開催された。 座長は、小倉将信こども政策担当相。会議には、内閣官房、内閣府、総務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、国土交通省の局長級が集まったところを見ると、「異次元」と銘打つだけあって、政府を挙げて取り組む姿勢だけはうかがえた。 しかし、その中身がふに落ちないのだ。岸田首相が小倉担当相に示した基本的な方向は、 (1)児童手当などの経済的支援強化 (2)保育士の処遇改善や産前・産後のケアなど、幼児教育や保育のサービス拡充 (3)働き方改革の推進  これら3つが柱となっている。このうち(2)には何ら文句はないが、(1)と(3)には問題がある。 まず、(1)の児童手当などの経済的支援強化である。 現在、子どもが生まれれば、出産費用は健康保険対象外のため40万~50万円程度かかるが、42万円が出産一時金として給付される。この額は今年4月から50万円に拡充される。このため出産費用の心配はそれほどない。 子どもができればもらえるのが児童手当だ。現在は2歳までが1人当たり月額1万5000円、3歳から小学生までが月額1万円(第3子以降は1万5000円)で、中学生も1万円がもらえる。 所得制限はあるものの、子どもが生まれ中学校を卒業するまでに1人当たり合計200万円近くもらえる計算になる。出生率が低い東京都は、来年にも1人当たり月額5000円給付を始める見込みだ。 他にも、3~5歳までは幼保無償化の恩恵で保育園や幼稚園は無料、医療費も多くの自治体で15歳までは無料だ。加えて、所得によって異なるものの、高校無償化により公立高では授業料が実質無料、私立高でも授業料の補助が手厚くなった。 筆者を含め多くの親は、聞かれれば、「子育ての費用? いくらあっても足りませんよ。もう家計は火の車ですよ」などと答えるものだ。 しかし実態は、習い事や塾にかかる費用を除き、子育ての基本費用だけを見れば、思ったほど家計の負担にはなっていないのである。 それにもかかわらず、児童手当を拡充する(第2子に月額3万円、第3子に月額6万円。対象を18歳まで拡大など)という。そうなればこれまでの2兆円に加え、さらに2.5兆円規模の予算が必要になる。「こどもは社会全体で育てるもの」と言えば聞こえは良いが、特段、必要のないものに増税で対処すると言われれば、「ちょっと待て」と言わざるを得ない。 (3)の働き方改革も現状では絵に描いた餅のようなものだ。厚生労働省によれば、2021年度の男性の育児休暇の取得率は約14%にとどまっている。去年10月から始まった「産後パパ育休」(出生時育児休業)の成果はまだ明らかではないが、企業に「休んでも昇進に影響を与えない」ことなどを確約させ、育休中に雇用保険から支給される「育児休業給付金」の給付率も引き上げなければ取得率の向上にはつながるまい。 政府は、自営業者や非正規労働者を対象とした子育て支援の新給付制度を創設することも検討している。これ自体は悪いことではないが、それらの実現には、年間で最大1兆円程度の安定財源を確保する必要がある。それを「広く国民負担で」となれば、過去のさまざまな給付の成果を検証し、消費者物価が高騰する中、増税しただけの効果があるかどうかを慎重に見極める必要がある。 筆者は、岸田政権が少子化対策を「異次元」とうたうのであれば、日本より深刻な韓国を参考に、晩婚化や未婚化など出産に関わるさまざまな事情を改めて検証すべきだと思っている。 出産は結婚が前提という日韓の慣習、若者が直面する低賃金と将来不安、社会進出する女性の多さと自立などの側面から、財政支出だけでなく何が必要なのかを導き出してほしいものだ』、「岸田政権が少子化対策を「異次元」とうたうのであれば、日本より深刻な韓国を参考に、晩婚化や未婚化など出産に関わるさまざまな事情を改めて検証すべきだと思っている」、賛成だ。
・『国会論戦の焦点となる「2つの有事」への対応  通常国会のもう一つの焦点、防衛費増額と増税問題はどうだろうか。 政府は去年12月、2023年度から2027年度の5年間の防衛費を43兆円規模とする方針を決定した。この水準を維持するとなると、2027年度以降、4兆円が不足し、このうち歳出削減などでは賄えない1兆円分を増税で賄う案が取り沙汰されている。 増税といっても、法人税、たばこ税、復興特別所得税(一部付け替え)、そして消費税などが考えられる。どれも「防衛費のために」となるとなじまない。 ただ、冷静に考えて、年々高まる中国による台湾有事のリスク、そして北朝鮮によるミサイル開発の現状を思えば、国土の防衛を「広く浅く」国民が負担するのはやむを得ないことのように感じる。 自民党外交部前会長で自衛隊出身の佐藤正久参議院議員は語る。 「中国が台湾に侵攻するとなると浅瀬が多い台湾海峡は使いにくい。台湾本島の大部分が天然の要害なので、攻めるとすれば島の東側になる」 だとすれば、与那国島など八重山諸島はいやが上にも巻き込まれる。当然、中国は在日アメリカ軍基地なども標的にするため、台湾有事=日本有事になってしまう。 個人的には、防衛費増額に伴う不足分は、後に国民の資産となる建設国債で賄うべきだとは思うが、これまで日本の防衛費の国民負担が1人当たり年間4万円(韓国12万円、英仏10万円)に抑えられてきたことを思えば、それこそ復興特別所得税(年収600万円の人で年間約1万円)程度の負担は仕方がないと考える時代に来ているのではないだろうか。 日本にとって少子化は、放置すれば国家の衰退につながる「静かなる有事」であり、中国による台湾への軍事侵攻は「騒々しい有事」である。これら2つの有事への対応が大きな焦点になる国会論戦、「政治には関心がない」という方も、ぜひ注目していただきたいと思っている』、「防衛費増額に伴う不足分は、後に国民の資産となる建設国債で賄うべきだとは思う」、しかし橋や道路などに比べ、耐用年数が短い防衛装備品は一般の赤字国債で賄うべきだ。「2つの有事への対応が大きな焦点になる国会論戦」、は大いに注目したい。
タグ:少子化 (その3)(少子化は企業が止める 出生数激減 国任せではいられない 少子化は企業が止める(1)、麻生太郎氏また失言「出産女性の高齢化で少子化」 子育て世代に責任転嫁の絶望、「異次元の少子化対策」2つの問題点と “韓国の失敗”から学ぶべき理由) 日経ビジネスオンライン「[新連載]少子化は企業が止める 出生数激減、国任せではいられない 少子化は企業が止める(1)」 確かに企業にとっては存続がかかる問題なので、「国任せではいられない」、自ら取り組むべき課題だ。 「国勢調査」は「人口は国の勢いを示すもの、すなわち国力であるという考えがこの言葉には込められていた」、「それから100年の時がたち、日本の人口は「国勢」と呼ぶにはほど遠い状態だ」、「日本はいずれ存在しなくなる」。「イーロン・マスク」に茶化されるようでは、落ちぶれたものだ。 「出生数が81万人まで減少するのは27年のはずだった。だがその時は6年も早くやってきた。 足元の81万人という出生数は悲観シナリオとされる低位推計に近づきつつあり、22年の「出生数80万人割れ」も現実味を帯びる。理由ははっきりしている。新型コロナウイルス禍による先行き不安で妊娠・出産の先送りが起きたからだ」、なるほど。 「コロナ禍になると保育園休園への対応などを迫られ、派遣先との契約を打ち切らざるを得なくなった。子どもの面倒を見ながら在宅勤務できる派遣先を探す生活に嫌気が差した」、同情を禁じ得ない。 「子育てしながら働く社員が抱える問題が何なのか、捉え直してみてはどうか。それが少子化問題に関し企業ができる貢献であり、冒頭の悲観シナリオを回避するきっかけにつながるかもしれない」、同感である。 ダイヤモンド・オンライン 鎌田和歌氏による「麻生太郎氏また失言「出産女性の高齢化で少子化」、子育て世代に責任転嫁の絶望」 「週刊誌にあっという間に論破されても、特に高齢の政治家たちはこのような失言をやめようとしない」、懲りない面々だ。 「政治課題である少子高齢化を、高齢者対子育て世代(若年層)の問題かのようにすり替えるのはいただけない」、その通りだ。 「妊娠・出産は個人のものではなく、国家のために行われるものであるという意識がうかがえる。 そのくせ、出産や子育ての負担やリスクは自己責任と突き放すのが、現在の政治に色濃い考え方」、確かに矛盾している。 「今の社会で子どもを産むことが女性側にどれだけ負担があることか語られ、一定の共感を得てきている。その点から目を背け続け、子育て世代を「叱咤(しった)激励」すれば少子化が解消するかのような失言だけを繰り返しているのが、自民党の高齢の政治家たちだ」、その通りだ。 「「自己責任と言われ続けた世代が、自己責任だから子どもを持つリスクを取らない、という選択をするのは当然だと思う」、「「少子化失言」をし続ける政治家たち」は実態を少しは勉強すべきだ。 清水克彦氏による「「異次元の少子化対策」2つの問題点と、“韓国の失敗”から学ぶべき理由」 「これまで政権批判を控えてきた菅前首相が、岸田首相個人や岸田政権の重要施策を、何度も公然と批判したことの意味は大きい。すでにさまざまなメディアで報じられている通り、これらの発言は、自民党内でくすぶる岸田首相への不満を代弁したもの、もっと言えば、「反岸田勢力」結集に向けたのろしとも受け止めることができるからだ」、その通りだ。 「オックスフォード人口問題研究所の教授、デービッド・コールマンが「韓国は世界で最初に地球から消滅する」と予測している。 人口が減れば経済が衰退するだけでなく、電気・ガス・水道・交通といった社会インフラが崩壊する。国防や治安維持どころではなくなり、国家としての体をなさなくなってしまう」、 「先頃、人口減少が報じられた中国でも、今では、「未備先老」・・・が流行語となっている。建国100年の節目を迎える2049年頃には60歳以上が5億人前後に達する(ということは2060年頃には5億人前後が70歳以上になる)、とんでもない規模の老人大国が完成することになる」、「4番目に出生率が低い日本にも同じことがいえる。その意味では、岸田首相が1月23日に行った施政方針演説で、「わが国は社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際に置かれている」と述べた認識は正しい」、その通りだ。 「岸田政権が少子化対策を「異次元」とうたうのであれば、日本より深刻な韓国を参考に、晩婚化や未婚化など出産に関わるさまざまな事情を改めて検証すべきだと思っている」、賛成だ。 「防衛費増額に伴う不足分は、後に国民の資産となる建設国債で賄うべきだとは思う」、しかし橋や道路などに比べ、耐用年数が短い防衛装備品は一般の赤字国債で賄うべきだ。「2つの有事への対応が大きな焦点になる国会論戦」、は大いに注目したい。
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不動産(その11)(「マンション漏水事故」の95%は給湯管ピンホール 保険加入拒絶 住人同士の大喧嘩にスラム化も、中国人も跋扈する大人気のタワマン…55歳男性の「心底嫌気が差した」ワケ、96年前に決めた激安契約は永遠に有効なのか…山梨県の最強財閥「富士急行」を県知事が訴えたワケ 地裁判決では富士急行が全面勝訴したが…) [産業動向]

不動産については、昨年8月13日に取上げた。今日は、(その11)(「マンション漏水事故」の95%は給湯管ピンホール 保険加入拒絶 住人同士の大喧嘩にスラム化も、中国人も跋扈する大人気のタワマン…55歳男性の「心底嫌気が差した」ワケ、96年前に決めた激安契約は永遠に有効なのか…山梨県の最強財閥「富士急行」を県知事が訴えたワケ 地裁判決では富士急行が全面勝訴したが…)である。

先ずは、昨年10月20日付け東洋経済オンラインが掲載した金融ジャーナリストの伊藤 歩氏による「「マンション漏水事故」の95%は給湯管ピンホール 保険加入拒絶、住人同士の大喧嘩にスラム化も」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/626116
・『「上の階から水が漏れてきた」「下の階を水浸しにしてしまった」……。マンションにお住まいの方なら、漏水事故について一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。 よその住戸で起きたことでも、他人事とは言ってはいられないのが、マンション漏水事故の怖いところ。漏水事故の95%は、給湯管にピンホール(小さい穴)ができることで、発生すると言われている。ピンホールは給湯管に使われている銅管の経年変化、老朽化によって生じる。経年変化だから、いつ、どこで事故が起こるのかわからない。つまり、マンションに住んでいれば、あなたも突然、漏水事故の加害者、あるいは被害者になる可能性があるのだ。 今回は、『優良中古マンション不都合な真実』を著書にもつ伊藤歩氏にピンホール事故の根深さ、悲惨さについて解説してもらう』、「給湯管」に「ピンホール」問題があるとは初めて知った。
・『「水回りの設備がダメになる」の真相  読者の皆さんも、近年、高経年のマンションが増えているけれど、区分所有者間の合意形成が図れず、建て替えがなかなか進まないという話はよく耳にされていると思います。 そして、?体、つまり鉄筋や鉄骨、コンクリートでできている部分は数十年やそこらではダメにならないけれど、水回りの設備が数十年でダメになる。 だから、竣工から40年、50年経過すると、建て替えが必要になるのだ、という話も耳にされたことがあるでしょう。 ではその「水回りの設備がダメになる」現象とは、具体的にはどういう現象を指すのか、想像してみたことがありますでしょうか。 代表的な事例が「給湯管」のピンホール事故なのです。銅でできている給湯管が経年変化によって劣化し、小さな穴が開いてしまうことで起こります。 もちろん、共用部や専有部の「給水管」や「排水管」が劣化し、そこから漏れた水や排水が住戸内に流入する被害や、どこからか雨水が住戸に流れ込む被害も、水回りの設備がダメになる現象に含まれます。 それでも「漏水事故の95%は上階の給湯管ピンホール」事故です。漏水が発生し、それに対応する設備工事会社の経験値がまさにコレなのです。 多くの高経年マンションで、建て替え議論が始まる発端となる「水回りの設備がダメになる」ことが、実は9割方「給湯管のピンホール事故の多発」を意味してることに、結びつけて認識されていないのです』、「水回りの設備が数十年でダメになる」、「代表的な事例が「給湯管」のピンホール事故なのです。銅でできている給湯管が経年変化によって劣化し、小さな穴が開いてしまうことで起こります。 もちろん、共用部や専有部の「給水管」や「排水管」が劣化し、そこから漏れた水や排水が住戸内に流入する被害や、どこからか雨水が住戸に流れ込む被害も、水回りの設備がダメになる現象に含まれます。 それでも「漏水事故の95%は上階の給湯管ピンホール」事故です」。「「漏水事故の95%は上階の給湯管ピンホール」事故」、「漏水事故の」殆どが「「給湯管ピンホール」事故」とは初めて知った。
・『なぜ事故情報が共有されないのか  ところが、多発しているのにとにかく情報がない。報道記事はもちろんのこと、専門家が書いた書籍もありません。調べて出てくるのは、せいぜい設備工事会社によるブログレベルのものです。なぜこんなに情報がないのでしょうか。 「ピンホール事故は必ず専有部分で起きるから」です。専有部分とはマンションの区分所有者が単独で所有権をもち、管理責任を負っている部分ですので、事故の情報を共用部の管理を担うマンション管理組合では共有しにくいのです。) それでは誰が事故の情報をもっているかというと、それはマンション管理会社です。 管理会社は最も詳細な情報をもっています。常駐の管理人がいるマンションであれば、管理会社に雇われている管理人に、常駐の管理人がいない場合は管理会社のコールセンターに、被害者から事故の第一報が入り、その後の業者の手配から保険請求、当事者間の示談まで、一切を管理会社のフロントマネージャーが仕切るからです。 しかし、管理会社のフロントマネージャーが「専有部で起きたことだから管理組合と詳細に情報を共有する必要はない」と考えたら、管理組合には通り一遍の報告しかしないでしょう。 管理会社が情報を管理組合と共有する、それも問題の本質やマンション全体に及ぶであろう影響なども含め、かなりていねいに共有しない限り、同じマンション内でも過去の経験値は活かされないままになるのです』、「ピンホール事故は必ず専有部分で起きる」ので、「事故の情報を共用部の管理を担うマンション管理組合では共有しにくい」、「事故の情報をもっているかというと、それはマンション管理会社」、なるほど。
・『ピンホール事故は他人事じゃない理由  情報がなくても、専有部で起きたことでも、他人事とは言ってはいられないのが、ピンホール事故の怖いところです。 ピンホール事故はいつ、どの住戸に起きるか予測が不能で、いつ自分が加害者になるかわかりません。明日は我が身なのです。最上階の住民以外のすべての住民が突然被害者になる可能性をもち、1階の住民以外のすべての住民が突然加害者になる可能性をもっているのです。 そして、何よりも重要なのは、たとえ自分の部屋で事故が起きなくても、同じマンション内での事故発生件数が増えてくると、保険会社から、マンション全体で加入している「マンション総合保険」への加入を拒絶されるという点です。 事故が起きると保険を使います。自動車の保険を思い浮かべていただければわかると思いますが、保険金を請求する契約者は、保険会社にとってありがたくない存在なので、保険料を引き上げたり、繰り返し事故を起こして保険金を請求してくる人については、契約自体を断るという対応になります。 マンション総合保険に関しても同じで、同一マンション内で全戸の大体15?20%くらいの住戸でピンホール事故が発生すると、保険会社によっては保険契約を断ってくるのです。 とんでもない高額の保険料で保険契約を受ける保険会社もありますが、高額の保険料は管理組合の財政を圧迫します。それでも契約をしてくれるならまだしも、5年後の契約期間満了時にもう一度更新してくれる保証はありません』、「たとえ自分の部屋で事故が起きなくても、同じマンション内での事故発生件数が増えてくると、保険会社から、マンション全体で加入している「マンション総合保険」への加入を拒絶される」、「とんでもない高額の保険料で保険契約を受ける保険会社もありますが、高額の保険料は管理組合の財政を圧迫します。それでも契約をしてくれるならまだしも、5年後の契約期間満了時にもう一度更新してくれる保証はありません」、「保険会社」から見放されるようなことになれば大変だ。
・『保険加入できないと、最悪「スラム化」  もしも保険がかけられなくなるとどうなるか。不動産を売買したり賃貸したりする際に、仲介業者が発行する重要事項説明書にはその旨を記載しなければなりません。 保険に入れないマンションは事実上、売買も賃貸もできなくなります。仲介業者は基本的にそんな物件をあっせんしないからです。 保険を使えなくなればピンホール事故が起きても、その対応に必要な費用は管理組合の自腹。共用部からの雨漏りで被害を受ける住戸が出た場合も管理組合の自腹になります。そんなこんなで修繕積立金は瞬く間に減っていきます。 手元不如意になることで必要な修繕を先送りし、管理状態が悪くなり始めたら、修繕積立金の徴収率も落ち、瞬く間にスラム化します。) 保険の更新時期が到来したタイミングで、突然管理会社から「保険契約を断られました」と告げられたら、もう大変なことになります。 何もアドバイスをしなかった管理会社のフロントマネージャーを罵倒する人、理事会の怠慢だと言って理事長や理事を責める人、何も知らなかったのだから仕方がないだろうと開き直る理事、専有部のことは管理会社の仕事ではないと言って、同じく開き直る管理会社のフロントマネージャー……。良好だったコミュニティは一瞬にして崩壊します』、「保険の更新時期が到来したタイミングで、突然管理会社から「保険契約を断られました」と告げられたら、もう大変なことになります」、「良好だったコミュニティは一瞬にして崩壊します」、その前から「管理会社」は危険な兆候を把握している筈で、それを開示しておくべきだ。
・『住民同士の大喧嘩が起こるケースも  このことを、筆者自身の住戸の給湯管ピンホールを埋める工事をしてくれた日本リニューアルの工藤秀明社長に教えられ、仰天しました。 ネットで連絡先を調べ、会いに行った著名なマンション管理士にも聞いてみると、 「理事長にアドバイスをしても、理事長本人宅がピンホール事故を経験していないと、人によってはなんの根拠もなく自分のところは大丈夫と考え、真面目に聞かない場合もある」 「逆に、理事会はそうなっては大変だから、以前から全戸での予防工事の必要性を説いていたのに、一部の楽観論者の反対でぐずぐず先送りしているうちに、事故が多発してしまうというケースもある。そんなマンションが保険加入を断られると、文字通り住民同士で大ゲンカになる」と語っていました。) 前出の日本リニューアルの工藤社長によれば、マンションによって差はあるものの、肌感覚では築20年超で全戸の10%、築30年を超えてくると全戸の15%から30%、築40年超だと全戸のほぼ50%超の確率でピンホール事故は起きていると言います。 日本リニューアルは給湯管のピンホールを埋めるライニング技術をもっていて、2015年以降の7年間で、工事実績は6900戸(2022年8月時点)に達し、1年先まで受注が決まっている盛況ぶりです』、「日本リニューアルは給湯管のピンホールを埋めるライニング技術をもっていて、2015年以降の7年間で、工事実績は6900戸(2022年8月時点)に達し、1年先まで受注が決まっている盛況ぶり」、凄い技術だ
https://n-renewal.co.jp/ro_5.html
・『多発するピンホール事故の公式の統計がない  にもかかわらず、国土交通省も、マンション管理組合の全国組織も、まったくピンホール事故の統計をもっていません。 2020年3月に、ピンホール事故のリスクに関する単発記事を、あるインターネット媒体で執筆したところ、おびただしい数の批判コメントがつきました。「例外的な事故をさも大量に発生しているかのような書き方をして必要以上に不安を煽っている」「取材もせず字数稼ぎのためにウソの記事を書いて恥ずかしくないのか」といった類の書き込みです。ピンホール事故について世間の認知が広がることが不利益と考える人がいるのかもしれません。 大手損保は2019年10月に、自然災害とマンションの漏水事故の急増を理由に、保険料体系を大幅に見直しています。それまでは導入していなかった、保険事故の発生率を保険料に反映させる制度を導入したのです。 近年は事故の増加で保険金の請求機会が急増し、保険更新時に保険会社から提示される保険料がとんでもない額にハネ上がったことで、この問題に気づく管理組合が増えてきています。 それでもいまだに全国レベルで統計がとれる体制が整う状況にはありません。マンション管理組合や区分所有者には、とても不利益な状況になっています』、「国土交通省も、マンション管理組合の全国組織も、まったくピンホール事故の統計をもっていません」、業界としてはブームに水を差すようなことは控えてほしいのかも知れないが、「統計」整備に取り組むべきだ。

次に、本年1月9日付け現代ビジネス「中国人も跋扈する大人気のタワマン…55歳男性の「心底嫌気が差した」ワケ」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/103945?imp=0
・『タワマンは時限爆弾のようなリスクを抱えている。タワマン内の教育格差を紹介した前編記事『1億円のタワマンを買った、世帯年収1300万円「パワーカップル」の悲惨な末路』に引き続き、タワマンの真実を紹介する』、興味深そうだ。
・『中国人とのトラブル  資産家であれば、タワマン暮らしも快適かもしれない。しかし、家計に余裕がないのに、背伸びをしてタワマン暮らしを選ぶと破滅への道を突き進む他ない。ファイナンシャルプランナーの丸山晴美氏がこう警告する。 「地方から東京に憧れて出てきて、それなりの収入を得て、タワマンを買う方は、自尊心が強い傾向があります。都心のタワマンを買うことをある種のステータスと考えているのです。そういう方は格差にも敏感で、人から見下されたくないと見栄を張り、高層階に住む本当の富裕層に対抗心を燃やしてしまう。 その結果、高額の生活費や子供の教育費で実際に家計が破綻してしまう事例も多いと聞きます。身の丈に合った生活がわからないことが不幸につながるのでしょう」) 円安の影響で、中国人の富裕層にも再び都心のタワマンが人気になっている。北尾陽介さん(55歳・仮名)は彼らが引き起こす近隣トラブルに心底嫌気が差している 「スポーツジムやゲストルームなどの共用部をとにかく汚すだけでなく、ベランダから生臭い匂いが漂ってくる。ベランダ越しに覗いたら、物干し竿にタラを干していました。でもそのくらいならまだかわいいほうです。 マンションの理事会で判明したのですが、中国人住民が管理費や修繕積立金を支払っていなかったのです。管理会社が督促しても中国にいて不在のことも多く、電話がつながっても言葉が通じない。当面は他の住民が彼らの分の管理費と修繕積立金を補填している状態です」(北尾さん) どんな住宅であれ、近隣住民を選ぶことはできないが、タワマンは戸数が多く、住民が多様で、入れ替わりが頻繁なため住民トラブルが起きやすい。終の棲家と思って安易にタワマン購入に踏み切ると、一生後悔することになりかねない』、「中国人住民が管理費や修繕積立金を支払っていなかったのです。管理会社が督促しても中国にいて不在のことも多く、電話がつながっても言葉が通じない。当面は他の住民が彼らの分の管理費と修繕積立金を補填している状態です」、入居時に「管理費や修繕積立金を」受け取っていなかった「管理会社」に責任がある。おそらく支払ってもらえないだろう。
・『そして暴落が待っている  しかも、タワマンはこれから爆発する時限爆弾のようなリスクも抱えている。タワマンに住み続けていると、破滅へと転落する道がますます近づいてくるのだ。『60歳からのマンション学』などの著書があるマンショントレンド評論家の日下部理絵氏が言う。 「一般的なマンションに比べてタワマンは管理費や修繕積立金が高いですが、これがさらに値上がりしていくことは避けられません。ネックになるのが、機械式駐車場の維持費です。ガソリン代の高騰やシェアカーの浸透で、マイカーを持つ家庭が減っていますが、タワマンの駐車場にも空きが目立っています。 その結果、駐車場の使用料が思うように集まらなくなり、マンションの会計を圧迫しているのです。特に駐車場使用料を管理費会計の収入にしているタワマンは、大幅値上げを避けられないでしょう。 さらに、人件費や電気代、保険料などの上昇で、今後は管理費も値上げされます。管理費と修繕積立金を合わせて、毎月5万円以上の金額を徴収されるタワマンも増えていくはずです」) これからの金利上昇局面でタワマンの価値が下落する危険性を指摘するのは、長谷川不動産経済社代表の長谷川高氏だ。 「世帯年収1200万円程度の人が1億円のタワマンを買えてしまうのは、超低金利が原因です。昔の住宅金利は4~6%でしたが、今や変動金利だと年利0.6%くらいで借りられます。しかし、欧米で利上げが進んでいますし、日本でもいずれ利上げする局面が訪れます。金利が1%上がれば、月々の支払いが数万円増える。子供を私立の学校に入れていると、滞納リスクが出てくるでしょう。 しかも金利が上がると、多くの人がマンションを買わなくなるため、マンションの価格が大きく下がります。1億2000万円が適正だと思って買ったタワマンが6000万円でしか売れない事態もありえます。そうなれば、売っても借金だけが残る生き地獄です」) この十数年間、東京の湾岸地区ではタワマンの建設ラッシュが続いてきた。'24年には中央区晴海にある東京五輪・パラリンピックの選手村がタワマン『晴海フラッグ』として生まれ変わる。 「勝どき駅周辺はタワマンが乱立することになりますが、災害時にどうなるのか、不安が尽きません。大地震が発生したら学校が避難所となりますが、とてもじゃないけど、タワマンに住む膨大な住民を収容することなどできません。中央区の職員に聞くと、『マンションの人たちは住戸にとどまってもらう』というのです。 つまり、タワマンの住民には避難場所がない。電気や下水が止まったら、トイレをするにも階段を上り下りしないといけなくなります。私は災害に弱いこともタワマンの大きな問題だと思います」(住宅ジャーナリストの榊淳司氏) 華やかに見えるタワマン暮らしには、深刻なリスクが潜んでいる』、「機械式駐車場の維持費です。ガソリン代の高騰やシェアカーの浸透で、マイカーを持つ家庭が減っていますが、タワマンの駐車場にも空きが目立っています。 その結果、駐車場の使用料が思うように集まらなくなり、マンションの会計を圧迫しているのです。特に駐車場使用料を管理費会計の収入にしているタワマンは、大幅値上げを避けられない」、「日本でもいずれ利上げする局面が訪れます。金利が1%上がれば、月々の支払いが数万円増える。子供を私立の学校に入れていると、滞納リスクが出てくるでしょう。 しかも金利が上がると、多くの人がマンションを買わなくなるため、マンションの価格が大きく下がります。1億2000万円が適正だと思って買ったタワマンが6000万円でしか売れない事態もありえます。そうなれば、売っても借金だけが残る生き地獄です」、確かに金利上昇は悲劇をもたらさざるを得ないだろう。「災害に弱いこともタワマンの大きな問題だと思います」・・・ 華やかに見えるタワマン暮らしには、深刻なリスクが潜んでいる」、同感である。

第三に、1月20日付けPRESIDENT Online「96年前に決めた激安契約は永遠に有効なのか…山梨県の最強財閥「富士急行」を県知事が訴えたワケ 地裁判決では富士急行が全面勝訴したが…」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/65648
・『山梨県が富士急行に貸している山中湖畔の県有地約440ヘクタールの賃貸借契約を巡り、県と富士急が訴訟合戦を繰り広げている。1審判決は富士急の全面勝訴となったが、県はすでに控訴した。ことの発端は山梨県が2020年から「賃料は不当に廉価で、契約は違法で無効」と従来の姿勢を転換したこと。異例の訴訟合戦の内幕をリポートする――』、こんな訴訟問題を抱えているとは初めて知った。
・『県民財産の土地を激安で借りるのは不当?  山梨県の県有地=県民財産が守られるのか、あるいは、一私企業の独占的利益が優先されるのか――。民法の借地法と地方自治法のあり方までが問われるという、全国でも例のない極めて珍しい訴訟が甲府地方裁判所で争われていたが、昨年12月20日、その注目の判決が言い渡された。 判決は、長年にわたる不当な廉価により得られるべき賃貸料を損害賠償として請求していた県側の主張が一切認められず、激安の賃料によりリゾート開発で大成功した地元財閥企業側の全面勝訴だった。が、長崎幸太郎知事(54)は、 「極めて残念。県有地は県民全体の財産であり、そこから得られる利益は県民に最大限還元されなければならず、知事としてそのためにベストを尽くすのは当然のこと」 「(控訴しなければ)実勢価値に対して低廉すぎる賃料を事実上未来永劫えいごうに甘受せざるを得ないこととなり、県民に属するべき利益の回復・実現を図る途が事実上閉ざされることになる」 とコメント。控訴するには県議会の議決が必要なため、27日に臨時県議会を招集し、賛成多数で可決されたために翌日控訴した。 これで今後は舞台を東京高裁に移し、争いは第2ラウンドに移ることになった』、「判決は・・・県側の主張が一切認められず、激安の賃料によりリゾート開発で大成功した地元財閥企業側の全面勝訴だった」、経緯をもう少し詳しくみてみよう。
・『東京ドーム94個分の土地が「1m2につき74円」  今回の訴訟のそもそもの原告は、山梨県に本社を置き、静岡県、神奈川県にまたいで鉄道、観光、不動産、流通事業などを展開する「富士急行」。山中湖周辺のゴルフ場や別荘地開発、また富士山の裾野の広大なアミューズメントパーク「富士急ハイランド」などで知られている。山梨県では歴史ある財閥企業として有名だ。 この富士急行が山梨県を訴えたのは、2021年3月のこと。4カ月後に県が反訴して争ってきたのが今回の訴訟である。 県側の訴えの骨子は、山梨県が1927年から富士急行に貸し付けてきた広大な土地の賃料が地方自治法237条2項に反し違法に安すぎるから、適正な賃料との差額をさかのぼって支払え、というもの。 その土地とは、山中湖畔の南側一帯440ヘクタール(東京ドーム94個分)、3300区画分。富士急行は同地を昭和初期からゴルフ場、別荘地として造成し、基幹事業として巨額の収益を上げてきた。その広大な県有地の賃貸料は、今からほぼ1世紀近い96年前に契約した「1m2につき74円」という驚くべき価格だった』、「広大な県有地の賃貸料は、今からほぼ1世紀近い96年前に契約した「1m2につき74円」という驚くべき価格」、その後、見直しが行われなかったというのも驚きだ。
・『「近隣の別荘地は富士急行の3倍以上」  その後、20年ごとに契約更新が行われてきたが、2017年からの新契約による賃料も当初とまったく変わらず、東京ドーム94個分が年額で約3億円のまま。地元不動産業者によれば、 「これは異様に安い価格。実際、別の地元業者が独自に造成・分譲した近隣の別荘地は富士急行の3倍以上の評価額。しかも、そもそもが随意契約だから、他社が入り込む余地がない。長年、独占的に巨利を得てきたのです」 山中湖畔といえば都心からも2時間ほど、富士山の雄大な姿が間近に見える絶好の避暑地で、三島由紀夫も『豊饒ほうじょうの海』などいくつかの作品で舞台にするなどゆかりがあるため、現在は三島由紀夫文学館も建つ。またゴルフ場隣接の別荘地は石原裕次郎などかつての日活スターがこぞって利用したことから「日活村」とも呼ばれるほどの人気リゾートだ。 それだけに、県民の一部からも以前から疑問の声が上がっており、2017年に新契約が結ばれた直後、県内に住む住民が県を相手に、「県から富士急行への賃料年額3億円は不当に安く、県は賃料を増額する措置を怠ったため、長年の適正賃料との差額を歴代3人の知事と富士急行に請求せよ」 という訴訟を起こしたのである』、「県は賃料を増額する措置を怠ったため、長年の適正賃料との差額を歴代3人の知事と富士急行に請求せよ」、全く正当な要求だ。
・『長崎知事が従来の方針を180度転換  この住民訴訟に、当初県側は「契約は正当だった」と反論していた。ところが2019年の知事選で新たに長崎知事が当選すると、知事主導で県の方針が大転換。住民の主張通り「確かに賃料は安すぎて違法であるから、契約は無効だ」と認めたのである。 そして、これに驚いたのが富士急行。慌てて県側に「既存の賃借権の確認を求める」訴訟を起こし、先述の通り2021年7月、県側が反訴の形で富士急行に対し、適正賃料との差額をさかのぼって請求する損害賠償訴訟を起こしたのが、今回の判決なのだ。 ちなみに、キッカケとなった住民訴訟は、県が富士急行に反訴をしたことでほぼ住民側の主張が容いれられているから、という点を主な理由として「訴えの利益がなくなった」と却下されたが、住民側は不服であるとして東京高裁に控訴しており、現在も争われている』、「2019年の知事選で新たに長崎知事が当選すると、知事主導で県の方針が大転換。住民の主張通り「確かに賃料は安すぎて違法であるから、契約は無効だ」と認めたのである。 そして、これに驚いたのが富士急行。慌てて県側に「既存の賃借権の確認を求める」訴訟を起こし、先述の通り2021年7月、県側が反訴の形で富士急行に対し、適正賃料との差額をさかのぼって請求する損害賠償訴訟を起こしたのが、今回の判決なのだ」、なるほど。
・『364億円もの「県民の利益」が失われている  では、判決はどう下されたのか。 県側の請求は、地方自治法に「適正な対価なくしてこれを譲渡し、若もしくは貸し付けてはならない」との定めがあることに鑑み、当該の土地に対する鑑定評価をやり直した結果、過去20年間の364億円が損害賠償金の総額だが、印紙代などを考慮してまずはその一部の93億円を請求するというもの。 対する富士急行側の主張は、長崎知事以前までは県からの値上げ請求はなかったのだから契約は正当だ、というもの。 これに対して甲府地裁は、 「賃貸借契約は有効で、富士急行の行為に違法性はない」 「これまでに支払われた賃料が地方自治法で規定する『適正な対価』に当たらないとする県の主張は採用できない」 と判断し、県側の請求には「理由がない」として棄却したのである。言うなれば、ほとんど門前払いに等しい判決だった。 「最大の争点を突き詰めると、賃料が“実勢に応じた適正な価格か”という点。何しろ、県が算出した適正額で計算すると364億円もの巨額の“損害”を被っていたという主張ですから、いかに破格の廉価で賃貸されてきたかということ。20年ごとに契約は更新され、賃料も見直されていたとはいえ、その差額=損害はあまりにも莫大ばくだいです」(司法記者)』、「20年ごとに契約は更新され、賃料も見直されていたとはいえ、その差額=損害はあまりにも莫大」、「賃料も見直されていた」、方式に欠点があるのだろうか。
・『富士急行側は「当然の結果」  「もちろん、こんな契約を承認してきた過去歴代の知事や県の責任も大きいですが、重要なのは、当該地は県有地という県民の財産だということで、これはすなわち県民ひとりひとりの損害に当たるということ。つまり、地方自治法で守られているはずの県民の利益については一顧だにされなかったということです」(司法記者) 全面勝訴した富士急行側は、判決後に野田博喜常務らが記者会見を開いた。「当然の結果であると認識しており、主張が認められて深く安堵あんどしている」と胸をなでおろし、「今回の判決は、山中湖村の県有地を連綿と開発してきた先人たちの苦労が司法に改めて認められたということだと考えている。今後とも山梨県の地元企業として地域経済の発展に寄与していきたい」 とコメントした。 一方の県側は冒頭で触れた通り控訴したため、第2ラウンドでは「県vs.地元財閥」という構図のなかで「借地法vs.地方自治法」の真っ向対決がいよいよ本格化することになる』、「第2ラウンドでは「県vs.地元財閥」という構図のなかで「借地法vs.地方自治法」の真っ向対決がいよいよ本格化することになる」、どうなるのだろう。
・『中央政界に足場を築いた“堀内王国”の影響力  それにしても、富士急行側の主張にある通り、なぜ山梨県側は長崎知事が就任するまで値上げ請求をしてこなかったのか。 「それは、富士急行という会社が山梨県内では老舗の財閥企業として絶大な政治力、影響力を持っていたから」と解説するのは地元の財界関係者。 「現社長の堀内光一郎氏は創業家の4代目ですが、先代の父・光雄氏は労働大臣、通産大臣、自民党総務会長などを歴任し、自身の派閥も率いた政界の大物。先先代で祖父の一雄氏、そして創業者で曽祖父の良平氏も代議士として中央政界に足場を築いていた人物。 つまり、富士急行そのものの業容拡大にはもちろん、地元経済の発展にも歴代が中央政界とのつながりで巨大な影響力を及ぼしてきた“堀内王国”。県にとっては税収の面も含めて大切な存在であり、いわば持ちつ持たれつの関係だったのでしょう」 さらに、こんな指摘も』、「先代の父・光雄氏は労働大臣、通産大臣、自民党総務会長などを歴任し、自身の派閥も率いた政界の大物。先先代で祖父の一雄氏、そして創業者で曽祖父の良平氏も代議士として中央政界に足場を築いていた人物。 つまり、富士急行そのものの業容拡大にはもちろん、地元経済の発展にも歴代が中央政界とのつながりで巨大な影響力を及ぼしてきた“堀内王国”。県にとっては税収の面も含めて大切な存在であり、いわば持ちつ持たれつの関係だったのでしょう」、なるほど。
・『対立の背景に「選挙戦」の因縁?  「以前から、県の幹部職員を退職後に“天下り”として受け入れてきたケースも少なくない。だからこそ、県は何も言えなかったのでは」 そんな“癒着”とも見える実情にメスを入れたのが長崎知事だった。 長崎知事といえば、就任早々、当時の河野太郎行革担当大臣が主唱した「ハンコ廃止」に正面切って噛みついた「ハンコ知事」として一躍全国的にも名を馳せた。 その経歴を見ると、堀内王国とは少なからぬ因縁がある。 東大法学部卒業後に財務省に入省。小泉旋風とも言われた郵政選挙(衆院選)で初出馬し、反小泉となっていた堀内光雄氏と山梨2区で激闘。比例で復活当選したのちは、光雄氏の地盤を引き継いだ堀内詔子代議士(現社長・光一郎氏の妻)と幾度も激しい選挙戦を戦ってきた。 それだけに、因縁めいた関係ではあり、山梨県と堀内王国、富士急行との関係は熟知していたと言える。実際、かつての衆院選でも前回の知事選でもこの県有地問題の是正を公約に掲げて闘ってきた。知事就任で県の姿勢を一変させたのは、まさに公約の実行だったわけだ』、「長崎知事」は、「東大法学部卒業後に財務省に入省。小泉旋風とも言われた郵政選挙(衆院選)で初出馬し、反小泉となっていた堀内光雄氏と山梨2区で激闘。比例で復活当選したのちは、光雄氏の地盤を引き継いだ堀内詔子代議士・・・と幾度も激しい選挙戦を戦ってきた」、確かに「因縁めいた関係」だ。
・『次の争点:96年前の賃料評価はずっと有効なのか?  今回の訴訟・判決が注目されたのは、冒頭で触れた通り、あくまでも民法上の契約によって、一私企業の独占的優遇・巨利が守られるのか、あるいは地方自治法による県民の財産・利益が守られるのか、という点だった。 第2ラウンドでは、さらに根源的な争いになりそうだという。 「1審判決では、山梨県と富士急行との県有地賃貸借契約は、富士急行によって別荘地が造成される前の山林原野の状態(素地価格)を基礎に算定された『継続賃料評価』で契約されており、双方の合意があるから有効だとした。 これだと、借地法を適用しなくとも、当事者間でひとたび素地価格を基礎とした継続賃料評価による地代算定に合意すれば、それが将来にわたって未来永劫、有効だということになってしまう。しかし、双方から出された証拠などでは、将来にわたって合意していたとの証明はないし、富士急行側もそのような合意をしていたとは主張していない」(司法関係者) 加えて、判決では、富士急行が別荘地造成にリスクとコストを負ったのであるから「素地価格を基礎にした継続賃料評価による地代算定をすべし」としているが、そもそもの貸し出しは1927年で、96年も前のことである。別荘造成事業が頓挫・失敗するリスクなどはすでに昔のことで、コストも含めてこの長い歳月の間に回収されており、むしろ大きな利益を上げていると見るのが妥当であろう』、「1審判決」には問題が極めて多いようだ。
・『勝訴した場合は「教育と介護福祉分野」へ投資する  しかし、判決は、「大昔にリスクとコストを負った」という前提理由で、「未来永劫」に「破格の廉価賃料」が「固定」されていることを是とすると判断しており、これが妥当か否か――そうした点が争われることになる。 「実は、山梨県の富士急行に対する1927年1月29日付の当初貸付許可の第3項には、富士急行が所定の電気鉄道の敷設を完成しない場合は契約を解除できる、という旨の記載があるのですが、今日に至るまで富士急行は敷設していない。この主張も控訴審での取り扱いが注目ポイント」(同) さらに注目すべきは、地方自治法で守られる県民の利益について、どういう司法判断が下されるかという点だろう。具体的には、年額で現状の賃料3億2500万円に対し、1審での県側の請求は20億円になるため、その差額は約16億円。この「県民の利益」が将来にわたり「未来永劫に認められない」という1審判決の妥当性にどういう判断が下されるのか。 ちなみに、長崎知事は新たな「県有財産」の使途として、県民生活の向上のために、教育と介護福祉分野に投資する、と方向性を示している。内訳は「少人数学級拡充施策」「介護施設待機者ゼロ施策」で、前者には年約16億円、後者には同6億円が必要と試算されている。 このうち少人数学級は県内ですでに小学1~2年生で実現しており、残る3~6年生の実現に年約10億円が見込まれており、前述の介護施策分の6億円と合わせ、増税などに頼らない新たな自主財源としての県有財産がそのまま充当でき、県民全体の生活向上が実現できるというわけだ』、「1927年1月29日付の当初貸付許可の第3項には、富士急行が所定の電気鉄道の敷設を完成しない場合は契約を解除できる、という旨の記載があるのですが、今日に至るまで富士急行は敷設していない。この主張も控訴審での取り扱いが注目ポイント」、なるほど。
・『控訴審ではどちらが勝つのか?  それだけに、控訴審の成り行きは県民にとっても重大事であり、すでに1審判決の報道などもあって注目度は高まっている。 その控訴審の見通しについて、地方自治法に詳しい弁護士が、 「そもそも、県有地を巡って自治体と企業が過去にさかのぼって契約の違法性を争い、損害賠償を求める訴訟は全国でも例がないため、そのまま適応できそうな判例そのものがないのですが」 と前置きし、こう解説する。 「地方自治法237条2項には『普通地方公共団体の財産は、条例又は議会の議決による場合でなければ、(中略)適正な対価なくしてこれを譲渡し、若しくは貸し付けてはならない』と定めてあり、これに違反して締結された契約は違法であり無効、という判例は複数ある。 従って、控訴審でもこの『適正な対価』が争点になるでしょう。1審判決では、富士急行が造成に際して相当のリスクとコストを負担しているのだから賃料計算を96年前の山林原野の価格を基礎にすることには合理性があり、契約は有効とした」』、「「地方自治法237条2項には『普通地方公共団体の財産は、条例又は議会の議決による場合でなければ、(中略)適正な対価なくしてこれを譲渡し、若しくは貸し付けてはならない』と定めてあり、これに違反して締結された契約は違法であり無効、という判例は複数ある。 従って、控訴審でもこの『適正な対価』が争点になるでしょう」、なるほど。
・『再選を目指す長崎知事にとって正念場  「しかし、造成から40年を経た契約ですら山林原野当時の価格を基礎にする、という契約が一般の土地賃貸借契約に照らしてみても果たして合理性があるかどうか疑問。仮に、問題の県有地で交付金(固定資産税と同様のもの)を試算しても富士急行が支払ってきた賃料ははるかに廉価であることなど、控訴審で県側が『適正な対価』ではないことについて、いかに有効で説得力ある証拠を積み上げられるかがポイントでは。 その判断がくつがえれば、過去の裁判例からすれば、過去の契約が違法としてさかのぼって損害賠償が認められることになります」 折しも、山梨県ではすでに任期満了による知事選が1月5日に告示され、22日の投開票に向けて激しい選挙戦が進められている。再選を目指す現職の長崎知事が自民、公明の推薦を受け、新人で元笛吹市長の倉嶋清次氏(74)、新人で元山梨県議の志村直毅氏(53)の無所属3人が立候補。当然ながら、控訴の件も含めてこの訴訟が選挙戦でも大きな注目を集めており、焦点の一つにもなっている。 いずれにせよ、まさに引くに引けないチキンレースの様相を呈してきたこの争い。舞台を東京高裁に移した第2ラウンドからますます目が離せない』、「知事選」の結果は、現職の長崎氏が再選された。「舞台を東京高裁に移した第2ラウンドからますます目が離せない」、どうなるのか、注目したい。
タグ:不動産 「国土交通省も、マンション管理組合の全国組織も、まったくピンホール事故の統計をもっていません」、業界としてはブームに水を差すようなことは控えてほしいのかも知れないが、「統計」整備に取り組むべきだ。 「日本リニューアルは給湯管のピンホールを埋めるライニング技術をもっていて、2015年以降の7年間で、工事実績は6900戸(2022年8月時点)に達し、1年先まで受注が決まっている盛況ぶり」、凄い技術だ https://n-renewal.co.jp/ro_5.html 「保険の更新時期が到来したタイミングで、突然管理会社から「保険契約を断られました」と告げられたら、もう大変なことになります」、「良好だったコミュニティは一瞬にして崩壊します」、その前から「管理会社」は危険な兆候を把握している筈で、それを開示しておくべきだ。 「たとえ自分の部屋で事故が起きなくても、同じマンション内での事故発生件数が増えてくると、保険会社から、マンション全体で加入している「マンション総合保険」への加入を拒絶される」、「とんでもない高額の保険料で保険契約を受ける保険会社もありますが、高額の保険料は管理組合の財政を圧迫します。それでも契約をしてくれるならまだしも、5年後の契約期間満了時にもう一度更新してくれる保証はありません」、「保険会社」から見放されるようなことになれば大変だ。 「ピンホール事故は必ず専有部分で起きる」ので、「事故の情報を共用部の管理を担うマンション管理組合では共有しにくい」、「事故の情報をもっているかというと、それはマンション管理会社」、なるほど。 「「漏水事故の95%は上階の給湯管ピンホール」事故」、「漏水事故の」殆どが「「給湯管ピンホール」事故」とは初めて知った。 「水回りの設備が数十年でダメになる」、「代表的な事例が「給湯管」のピンホール事故なのです。銅でできている給湯管が経年変化によって劣化し、小さな穴が開いてしまうことで起こります。 もちろん、共用部や専有部の「給水管」や「排水管」が劣化し、そこから漏れた水や排水が住戸内に流入する被害や、どこからか雨水が住戸に流れ込む被害も、水回りの設備がダメになる現象に含まれます。 それでも「漏水事故の95%は上階の給湯管ピンホール」事故です」。 「給湯管」に「ピンホール」問題があるとは初めて知った。 伊藤 歩氏による「「マンション漏水事故」の95%は給湯管ピンホール 保険加入拒絶、住人同士の大喧嘩にスラム化も」 東洋経済オンライン (その11)(「マンション漏水事故」の95%は給湯管ピンホール 保険加入拒絶 住人同士の大喧嘩にスラム化も、中国人も跋扈する大人気のタワマン…55歳男性の「心底嫌気が差した」ワケ、96年前に決めた激安契約は永遠に有効なのか…山梨県の最強財閥「富士急行」を県知事が訴えたワケ 地裁判決では富士急行が全面勝訴したが…) 現代ビジネス「中国人も跋扈する大人気のタワマン…55歳男性の「心底嫌気が差した」ワケ」 「中国人住民が管理費や修繕積立金を支払っていなかったのです。管理会社が督促しても中国にいて不在のことも多く、電話がつながっても言葉が通じない。当面は他の住民が彼らの分の管理費と修繕積立金を補填している状態です」、入居時に「管理費や修繕積立金を」受け取っていなかった「管理会社」に責任がある。おそらく支払ってもらえないだろう。 「機械式駐車場の維持費です。ガソリン代の高騰やシェアカーの浸透で、マイカーを持つ家庭が減っていますが、タワマンの駐車場にも空きが目立っています。 その結果、駐車場の使用料が思うように集まらなくなり、マンションの会計を圧迫しているのです。特に駐車場使用料を管理費会計の収入にしているタワマンは、大幅値上げを避けられない」、 「日本でもいずれ利上げする局面が訪れます。金利が1%上がれば、月々の支払いが数万円増える。子供を私立の学校に入れていると、滞納リスクが出てくるでしょう。 しかも金利が上がると、多くの人がマンションを買わなくなるため、マンションの価格が大きく下がります。1億2000万円が適正だと思って買ったタワマンが6000万円でしか売れない事態もありえます。そうなれば、売っても借金だけが残る生き地獄です」、確かに金利上昇は悲劇をもたらさざるを得ないだろう。 「災害に弱いこともタワマンの大きな問題だと思います」・・・ 華やかに見えるタワマン暮らしには、深刻なリスクが潜んでいる」、同感である。 PRESIDENT Online「96年前に決めた激安契約は永遠に有効なのか…山梨県の最強財閥「富士急行」を県知事が訴えたワケ 地裁判決では富士急行が全面勝訴したが…」 「判決は・・・県側の主張が一切認められず、激安の賃料によりリゾート開発で大成功した地元財閥企業側の全面勝訴だった」、経緯をもう少し詳しくみてみよう。 「広大な県有地の賃貸料は、今からほぼ1世紀近い96年前に契約した「1m2につき74円」という驚くべき価格」、その後、見直しが行われなかったというのも驚きだ。 「県は賃料を増額する措置を怠ったため、長年の適正賃料との差額を歴代3人の知事と富士急行に請求せよ」、全く正当な要求だ。 「2019年の知事選で新たに長崎知事が当選すると、知事主導で県の方針が大転換。住民の主張通り「確かに賃料は安すぎて違法であるから、契約は無効だ」と認めたのである。 そして、これに驚いたのが富士急行。慌てて県側に「既存の賃借権の確認を求める」訴訟を起こし、先述の通り2021年7月、県側が反訴の形で富士急行に対し、適正賃料との差額をさかのぼって請求する損害賠償訴訟を起こしたのが、今回の判決なのだ」、なるほど。 「20年ごとに契約は更新され、賃料も見直されていたとはいえ、その差額=損害はあまりにも莫大」、「賃料も見直されていた」、方式に欠点があるのだろうか。 「第2ラウンドでは「県vs.地元財閥」という構図のなかで「借地法vs.地方自治法」の真っ向対決がいよいよ本格化することになる」、どうなるのだろう。 「先代の父・光雄氏は労働大臣、通産大臣、自民党総務会長などを歴任し、自身の派閥も率いた政界の大物。先先代で祖父の一雄氏、そして創業者で曽祖父の良平氏も代議士として中央政界に足場を築いていた人物。 つまり、富士急行そのものの業容拡大にはもちろん、地元経済の発展にも歴代が中央政界とのつながりで巨大な影響力を及ぼしてきた“堀内王国”。県にとっては税収の面も含めて大切な存在であり、いわば持ちつ持たれつの関係だったのでしょう」、なるほど。 「長崎知事」は、「東大法学部卒業後に財務省に入省。小泉旋風とも言われた郵政選挙(衆院選)で初出馬し、反小泉となっていた堀内光雄氏と山梨2区で激闘。比例で復活当選したのちは、光雄氏の地盤を引き継いだ堀内詔子代議士・・・と幾度も激しい選挙戦を戦ってきた」、確かに「因縁めいた関係」だ。 「1審判決」には問題が極めて多いようだ。 「1927年1月29日付の当初貸付許可の第3項には、富士急行が所定の電気鉄道の敷設を完成しない場合は契約を解除できる、という旨の記載があるのですが、今日に至るまで富士急行は敷設していない。この主張も控訴審での取り扱いが注目ポイント」、なるほど。 「「地方自治法237条2項には『普通地方公共団体の財産は、条例又は議会の議決による場合でなければ、(中略)適正な対価なくしてこれを譲渡し、若しくは貸し付けてはならない』と定めてあり、これに違反して締結された契約は違法であり無効、という判例は複数ある。 従って、控訴審でもこの『適正な対価』が争点になるでしょう」、なるほど。 「知事選」の結果は、現職の長崎氏が再選された。「舞台を東京高裁に移した第2ラウンドからますます目が離せない」、どうなるのか、注目したい。
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ESG(その2)(日本のESGは今なお形式的な「確認作業」-元ゴールドマン松井氏、【財務戦略のプロが教える】意外と説明できないESGとSDGsの違いとは?、ESGを会計に反映させる「ESG EBIT」、三菱UFJ銀行 企業買収にサステナビリティ融資) [金融]

ESGについては、2021年4月14日に取上げた。久しぶりの今日は、(その2)(日本のESGは今なお形式的な「確認作業」-元ゴールドマン松井氏、【財務戦略のプロが教える】意外と説明できないESGとSDGsの違いとは?、ESGを会計に反映させる「ESG EBIT」、三菱UFJ銀行 企業買収にサステナビリティ融資)である。

先ずは、本年3月7日付けBloomberg「日本のESGは今なお形式的な「確認作業」-元ゴールドマン松井氏」を紹介しよう。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-03-07/R8CPWHT0G1L101
・『ゴールドマン・サックス証券で副会長を務めたキャシー・松井氏は、日本では今も多くの企業や人々がESG(環境・社会・企業統治)を形式的な「確認作業」と捉えており、実体が伴わないのに環境配慮を装う「グリーンウォッシュ」につながっているとの認識を示した。 松井氏はブルームバーグテレビジョンで、「ESGは単なるコンプライアンス(法令順守)上の取り組みではない」と指摘した。 女性活躍による経済活性化を目指す「ウーマノミクス」の提唱者としても知られる松井氏は、2020年にゴールドマンを退職後、翌年にベンチャー・キャピタル・ファンド「Mパワー・パートナーズ・ファンド」を立ち上げた。同ファンドはヘルスケアやフィンテック、教育、環境などに1億5000万ドル(約170億円)投資する予定。 元ゴールドマン松井氏のファンド、ESG重視で起業家を支援 (2) 岸田文雄政権はグリーン投資を政府の重要課題に位置付け、グリーンテクノロジーへの投資倍増を表明しているが、松井氏はさらなる取り組みが必要だと語った。 日本は輸入化石燃料に大きく依存する一方、50年までに温室効果ガスを実質ゼロにする「カーボンニュートラル達成という野心的な目標を掲げている」ことについて、「革新的技術へ投資しなければ目標に到達できないだろう」と述べた。 日本のエネルギー輸入に関しては、ロシアのウクライナ侵攻が日本企業にとって頭痛の種になっているとみている。 松井氏は「自動車やテクノロジー分野でロシアでの業務停止または撤退する企業が既に見られる」と指摘。化石燃料の供給を全面的に輸入に頼る日本は「地政学的考察と経済の実情との間の微妙なバランスを常に取らなければならない」と語った』、「化石燃料の供給を全面的に輸入に頼る日本は「地政学的考察と経済の実情との間の微妙なバランスを常に取らなければならない」その通りだ。

次に、6月10日付けダイヤモンド・オンライン「【財務戦略のプロが教える】意外と説明できないESGとSDGsの違いとは?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/304043
・『多くの企業が取り組む「ESG経営」。社会での重要性は高まっているものの定着しているとは言いがたい。しかし、すべてのステークホルダーの利益を考えるESG経営こそ、新規事業の種に悩む日本企業にとって千載一遇のチャンスなのaである。企業経営者をはじめとするビジネスパーソンが実践に向けて頭を抱えるESG経営だが、そんな現場の悩みを解決すべく、「ESG×財務戦略」の教科書がついに出版された。本記事では、もはや企業にとって必須科目となっているESG経営の論理と実践が1冊でわかる『SDGs時代を勝ち抜く ESG財務戦略』より本文の一部を抜粋、再編集してお送りする(Qは聞き手の質問、Aは回答)』、興味深そうだ。
・『似て非なるESGとSDGs  Q:今や聞かない日はないほどメジャーな言葉となったSDGsですが、似たようなキーワードとして使われるESGとは何が違うのでしょうか。 A:理解を深めるためには、歴史を紐解く必要があります。2000年に国連ミレニアム・サミットで採択された「ミレニアム開発目標」(Millennium Development Goals、以下「MDGs」)が2015年で終了するのに合わせ、同年9月、国連総会で「持続可能な開発目標」(Sustainable Development Goals、以下「SDGs」)が新たに採択されました。 SDGsは、主に極度の貧困にあえぐ途上国の目標だったMDGsと違い、世界のあらゆる人、国や組織の包括的な目標(アジェンダ)として設定されています。「誰ひとり取り残さない」(leave no one behind)という要請のもと示されたSDGsの具体的指針は、17の目標、および、それらをブレークダウンした169のターゲットとして示されています。 大手町・丸の内エリアへ行くとジャケットの胸の部分に17色に彩られたSDGsのバッジを付けているビジネスパーソンが(GPIFのESG投資開始の影響か)2017年あたりから増えてきたこともあり、日本においてはコロナ禍で認知が広がったESGにくらべてSDGsの方が馴染み深いと思います。 日本ではESGと同じ文脈で語られることの多いSDGsですが、両者の違いと関係をうまく説明できるか言われると言葉に詰まる人が多いと思います。 なぜなら、両者ともに国連から生まれたイニシアティブであり、コンセプトも似ているため、「ESG/SDGs」とひとくくりにされがちだからです』、「世界のあらゆる人、国や組織の包括的な目標(アジェンダ)として設定」、「SDGsの具体的指針は、17の目標、および、それらをブレークダウンした169のターゲットとして示されています」、「両者ともに国連から生まれたイニシアティブであり、コンセプトも似ているため、「ESG/SDGs」とひとくくりにされがち」、なるほど。
・『ESGとSDGsの具体的な違い  Q:ESGとSDGsの具体的な違いを教えていただいてもいいでしょうか。 A:ESGというのは、一般に「ESG投資」という言葉で語られる場面が多いことからもわかるとおり、機関投資家(アセットオーナー)が資産運用会社(アセットマネージャー)を通じて企業に投資をするときに適用する投資規範のことです。 つまり、機関投資家は、投資先の企業の長期的な株主価値向上を図るため、投資判断にあたり環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)を考慮に入れることになるわけです。 他方、SDGsは全人類のグローバル・アジェンダですが、とりわけ企業にとっては具体的に取り組むべき社会・環境課題に関する事業機会の例示と理解することができます』、「ESGというのは・・・機関投資家(アセットオーナー)が資産運用会社(アセットマネージャー)を通じて企業に投資をするときに適用する投資規範のこと」、「SDGsは全人類のグローバル・アジェンダですが、とりわけ企業にとっては具体的に取り組むべき社会・環境課題に関する事業機会の例示」、なるほど。
・『日本とは相性がいいESGの理念  Q:似ているようで違うものなんですね。 A:そうですね。ですが、一緒に考えた方がいいのではないかという見方もあります。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)で最高投資責任者CIOを務めていた水野弘道氏は、古くから「三方良し」の精神が根付いている日本では、「ESGとSDGsは表裏一体の概念である」と啓蒙した方が政財界にすんなり受け入れられるとの読みがありました。 また、水野氏は、ESGとSDGsのコンセプトは日本が古くから守ってきた文化と親和性が高く、日本がこの分野でオピニオンリーダーになれるとの期待があったとも述べられています※1。 欧米の専門家の間ではESGとSDGsはまったく別物という扱いをされることが多いようですが、日本ではGPIFが両者は表裏一体というコンセプトで啓蒙をしてきているため、企業の間でもそのように理解されるようになっています。 これはかつて日本独特の考え方といわれていましたが、近年では欧米のグローバル企業もこれにならい、毎期開示する統合報告書において、自社の事業ポートフォリオがSDGsの掲げる17のどの目標の解決につながるのかを明示することがすっかりお決まりの基本作法になりつつあります』、「日本ではGPIFが両者は表裏一体というコンセプトで啓蒙をしてきているため、企業の間でもそのように理解されるようになっています。 これはかつて日本独特の考え方といわれていましたが、近年では欧米のグローバル企業もこれにならい、毎期開示する統合報告書において、自社の事業ポートフォリオがSDGsの掲げる17のどの目標の解決につながるのかを明示することがすっかりお決まりの基本作法になりつつあります」、「欧米」が「日本」の考え方に近づいた数少ない貴重な例だ。
・『ESGは中長期と言われる理由  Q:企業がESGシフトしていく際のポイントなどあるのでしょうか。 A:企業にしてみれば、機関投資家の資金がどんどんESG投資へシフトしていくなかで自社に投資してもらうためには、ESG投資の基準にフィットするような事業ポートフォリオを構築する必要があるわけです。特にEUの投資家は、ESGスコアが低い(特に環境)企業に対してはダイベストメント(投資の撤退=保有する債券や株式の売却)という手段を選ぶ傾向にあります。 したがって、企業としては、ESGテーマである環境、社会課題を解決する事業としてSDGsに機会を見出すことになるのです。その結果、SDGsに取り組む企業は中長期的な株主価値の向上を実現し、ESG投資を実践する投資家は中長期的に高いリターンを享受し、持続可能な社会をつくることができるようになるわけです。 そして、SDGsに代表される環境・社会課題を解決する事業は資金も時間もかかることが容易に想像されます。だからこそ、ESGのガバナンスが重要課題として理解されています。企業の経営陣が「この四半期も稼がないといけないから」と近視眼的で安易な経営判断に陥ることを防ぐ必要があります。経営陣の暴走を防ぐ役割をガバナンスが担保するわけです。 ガバナンスは、環境・社会課題を解決する事業に取り組むことで長期的な株主価値の向上を図る(高いESGパフォーマンスを実現する)ための前提として捉えるとしっくり来ます。もちろん、ESG投資の世界では、企業の経営陣がショートターミズムへの引力に引っ張られることのないよう、投資家にも健全なエンゲージメントが期待されています。 ※1:2021年6月1日開催のBRIDGEs 2021 ESG & SDGs Meeting基調講演「なぜ私たちはESG&SDGsに取り組まなければならないのか?」より) ★攻めと守りの経営を実現する「ESG×ファイナンス」の決定版!! ★ユニリーバやグーグルをはじめとするESG/SDGs先進企業の事例を多数掲載!! ★実務担当者から若手経営者まで使える財務の教科書!! ★ビジネスとアカデミアの両方からESG/SDGs経営を解説。 『SDGs時代を勝ち抜く ESG財務戦略』桑島浩彰/田中慎一/保田隆明、定価2860円(本体2600円+税10%) ESG財務戦略 ESG実践企業 【この本のここがスゴい!!】 [>]ビジネスとアカデミアによる共著だから論理と実践が1冊でわかる! [>]日本と世界の両方からESG/SDGsを知ることができる! [>]現場で実践できる内容に特化!企業に必要な考え方が無駄なく書かれているから取り組みやすい!』、「ESG投資の世界では、企業の経営陣がショートターミズムへの引力に引っ張られることのないよう、投資家にも健全なエンゲージメントが期待されています」、「投資家」の責任も大きそうだ。

第三に、9月15日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した早稲田大学大学院 会計研究科 客員教授・アビームコンサルティング エグゼクティブアドバイザーの柳 良平氏による「ESGを会計に反映させる「ESG EBIT」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/308699
・『日本企業に対する投資家の企業価値評価が低い。主因は説明不足にある。外国企業との差を端的に示すのがPBR(株価純資産倍率)。会計上の簿価に対してどれだけ付加価値を創出しているか、市場が判断する指標だ。人材など非財務資本の活用と同時に、それをきちんと伝えて市場に評価されることが求められる。今、注目のESGはその象徴といえる。ESGと企業価値をつなぐ方法論「柳モデル」を製薬大手のエーザイでCFOとして確立した柳良平氏が、その理論と実践法を全10回の連載で提示していく。 連載第7回は、ESGを会計に反映させる「ESG EBIT」について考察する』、興味深そうだ。
・『ESGを会計に反映させる「ESG EBIT」 (柳良平氏の略歴はリンク先参照) この連載で提示してきた「ESG ジャーニー」(詳細は第1回ご参照)で、日本企業は、自社のESG経営を新しいESG会計で開示することは可能であろうか。 実は世界的にも、ESGの開示規則やESG会計の在り方が議論されている。 ESG会計の先行事例としては、ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)のジョージ・セラフェイム教授が、インパクト加重会計イニシアティブ(IWAI)を主導している(セラフェイム2021)。IWAIは、現在進行形のプロジェクト(2022年にはIFVIへと発展)であるが、ESGがもたらすさまざまな種類の社会的インパクトを勘案して、従来の会計情報(GAAP)に調整を加える簡便法を提唱している。 IWAIでは、ESGの売上収益に与える影響を「製品インパクト」とし、損益計算書(PL)の従業員関連支出や社会的価値の影響を「雇用インパクト」、環境負荷・コストを売上原価に反映される「環境インパクト」として米国企業を中心に具体的な計算事例を蓄積しつつある。 例えば、ハーバード・ビジネス・スクールの論文(Freiberg, Panella, Serafeim and Zochowski 2020)では、米国企業インテルの2018年の「従業員インパクト」のPLを紹介している(図表1)。 インテルでは、内部昇格の機会ロスやダイバーシティーの促進不足によって、一部に価値破壊があるものの、従業員数が多く、平均賃金がマーケットレベルより高いため、大きな社会的な付加価値の絶対額を創出している。 負の影響を相殺しても、「雇用インパクト(従業員インパクト)」にはプラス39億ドルの影響があり、ESG会計(インパクト会計)におけるEBITDAは、実質的には約6割増になることが示唆されている。 人的資本の向上という非財務価値創造で、インテルは大きな社会貢献をしていることになる』、「「雇用インパクト・・・」にはプラス39億ドルの影響があり、ESG会計(インパクト会計)におけるEBITDAは、実質的には約6割増になることが示唆・・・人的資本の向上という非財務価値創造で、インテルは大きな社会貢献」、なるほど。
・『ESGを会計に反映させる「ESG EBIT」(出所)Freiberg, Panella, Serafeim and Zochowski (2020)から筆者作成 こうしたインパクト加重会計の試みは、基本フォーマットが確立しており、米国企業でも事例が積み上がっている。ESG会計の先行事例として意義が大きいと思料する。日本企業にも一定の示唆があるだろう。) ▽「柳モデル」とエーザイの回帰分析の示唆(一方で、筆者の「柳モデル」(柳 2021a)(Yanagi 2018)は、ESG経営の価値(非財務資本)はPBRに織り込まれるという「PBR仮説」(IIRC-PBRモデル)の立場を取る。 【IIRC-PBRモデル】株主価値=長期的な時価総額=株主資本簿価 (BV) +市場付加価値 (MVA)  株主資本簿価 (BV) =PBR 1倍の部分=「財務資本」 市場付加価値 (MVA) = PBR 1倍超の部分 =非財務資本関連(インタンジブルズ)=「知的資本」+「人的資本」+「製造資本」+「社会・関係資本」+「自然資本」=ESGの価値 (=遅延して将来の「財務資本」に転換されるもの) そして、柳モデルをエーザイに適用したケース研究(柳 2021a)では、2019年7月時点で、エーザイのESGのKPI(88種類)につき、データが入手可能な限り過年度までさかのぼり(平均12年)、時系列データを抽出(1088個)して、ESGファクターとPBR(28年分)との正の相関関係を検証する対数変換での重回帰分析(ROEをコントロールした2ファクターモデル)を実行した。 筆者は従来、「ESGは事後的・長期的に企業価値に遅延浸透効果を持つ」という仮説を立てていたことから、28年分のPBRを用意して、期差分析による回帰分析を行った。 柳 (2021a) では、「p値5%未満、t値2以上、R2 0.5以上」を統計的に有意な水準とし、「正の相関関係」を示した結果を、エーザイ統合報告書2020と エーザイ価値創造レポート2021で開示した。 実証分析の結果、障がい者雇用率と連結人件費がp値1%未満で有意、社員の健康診断の受診率、女性管理職比率、管理職比率、育児短時間勤務制度利用者数、欧米従業員数がp値5%未満で有意に、遅延浸透効果をもってPBRと正の関係がある。 「知的資本」では、承認取得した医療用医薬品数、連結と単体の研究開発費も有意水準5%で長期遅延浸透効果として、PBRにポジティブな影響を及ぼしている。製薬企業における長期的な研究開発投資の重要性が改めて明示された。 さらに、感応度分析を概算(相関係数、遅延浸透効果とPBRや時価総額のレベルから換算)で解釈すると、95%の信頼確率で、以下の事例のような相関関係の示唆となる(柳 2021ab)。 ・エーザイでは人財に10%追加投資すると5年後にPBRが13.8%向上する
・エーザイでは研究開発に10%追加投資すると、10年超の年数をかけてPBRが8.2%拡大する ・エーザイでは10%女性管理職を増やす(例:女性管理職比率を10%から11%に引き上げる)と7年後にPBRが2.4%上がる ・エーザイでは育児時短制度利用者が1割増えると9年後にPBRが3.3%改善する
 加えて、頑強性テストとして、柳・杉森(2021)が柳モデルをTOPIX100企業に適用して回帰分析を行った。 人件費投入を1割増加させることで、7年後にTOPIX100企業平均ではPBRが2.6%上昇するという関係が得られた。同様の計算を研究開発費に対しても行うと、研究開発費投入を1割増加させることで、7年後にTOPIX100企業平均でPBRが3.0%上昇する示唆となる。 このように柳モデルとその回帰分析が「人件費や研究開発費は、会計上は損益計算書(PL)の営業利益のマイナス要因になるが、5年-10年の長期では事後的に価値を生む先行投資」であることを示唆している。 ここから、新しいESGの会計の価値観の提案を考えてみる。』、「柳モデルとその回帰分析が「人件費や研究開発費は、会計上は損益計算書(PL)の営業利益のマイナス要因になるが、5年-10年の長期では事後的に価値を生む先行投資」であることを示唆」、短期的には「マイナス」でも、「5年-10年の長期では」プラスであれば、よさそうだ。 
・『ESG EBITの提案と開示  このように、エーザイでは人件費が5年後に、研究開発費が10年超で企業価値を創造することが証明できた(柳 2021ab)。 さらに日本企業全体でも、人件費と研究開発費は事後的・長期的にPBRを高める(柳・杉森 2021)。 しかしながら、財務会計上は、人的資本や知的資本への先行投資が会計上の利益を低減してしまう。そのため、会計規則だけに縛られると、投資家も経営者も裁量的利益調整やショートターミズムに陥る蓋然性があるのではないか。 ここから、CFOの考えるべきプロフォーマとしては、これらは「費用」ではなく、将来価値を生む非財務資本への「投資」と見做し、営業利益に足し戻したESGの営業利益「ESG EBIT」(人件費・研究開発費控除前営業利益)を「真の利益」「ESGの利益」と見做して、ESG会計の価値提案として示すべきではないだろうか。 筆者はエーザイCFO(当時)として、図表2の内容を、エーザイ統合報告書2020とエーザイ価値創造レポート2021のCFO特集で開示している。 ESGを会計に反映させる「ESG EBIT」 例えばエーザイは、2019年度の会計上(エーザイはIFRS採用)の営業利益は1200億円レベルであるが、ESG EBITは3600億円レベルと約3倍になっている。 「エーザイのPER(株価収益倍率)は近年概ね30倍以上で推移しているため、株価が割高という人もいるが、ESGの利益が3倍なので、人的資本・知的資本を勘案したESGの利益は3倍あるので、見えない価値を考えると実質PERは10倍であり、むしろ割安ではないか」とIRの場でも主張したことがある。 ちなみにニューヨーク大学のレブ教授も「財務会計では企業価値の半分も説明できない」「現在の会計基準(GAAP)の最大の誤謬(ごびゅう)は、人件費や研究開発費をサンクコストのように営業利益から差し引いてしまうことである」として、一定の方式で人件費や研究開発費を足し戻すことを提案している(Lev and Gu 2016)。 このESG EBITの開示により筆者は、CFO(当時)として資本市場のショートターミズム「人件費や研究開発費を大幅に削減して、今期の利益を上げるべきだ」といった短期志向の主張に、「人件費や研究開発費は費用ではなくて将来価値を生む無形資産への投資である」「エーザイでは重回帰分析で人件費は5年後に、研究開発費は10年超でPBRを高める結果が得られている」とロングターミズムで反論して、長期的企業価値を訴求してきた。 こうした考え方は、野村アセットマネジメントCIOの荻原亘氏、東京海上アセットマネジメントの菊池勝也氏、三菱UFJ信託の兵庫真一郎氏、日興アセットマネジメントの中野次朗氏、米国ブラックロックのインパクト投資責任者のエリック・ライス氏などの内外の知見の高い長期投資家からの支持を得ている。 世界が株主資本主義からステークホルダー資本主義に大きくかじを切る中、国内外でESGと企業価値の関係を説明することが求められている。 新時代のアカウンタビリティを一企業で果たすべく、あるいはCFO(当時)の受託者責任として、ESGのPBRへの遅延浸透効果を回帰分析で測定して、その感応度分析を行い、人的資本・知的資本への投資である人件費・研究開発費が事後的・長期的に企業価値向上に正の相関があることを開示した。 そして、これを根拠として、簡便法として、人件費・研究開発費を足し戻したESGの営業利益であるESG EBITを「真の利益」として、「ESG会計の価値提案」を行い、エーザイの統合報告書で開示した。 こうした試みに絶対的な解はなく、企業ごと、業界ごとの特殊事情を織り込んだ創意工夫が必要である。ESG会計は発展途上ではあるが、引き続き理論と実践の融合で「見えない価値を見える化」する研究や議論を継続していきたい。 例えば、今回のESG EBITでは、「人件費は費用ではなく投資である」として、100%をEBITに足し戻して計算する提案をしているが、「全ての人件費が価値創造的ではなく、良い人件費、悪い人件費もあり、マイナス項目も斟酌(しんしゃく)すべきではないか」という意見も寄せられた。 HBSのインパクト加重会計でも、限界効用や、地域社会への貢献、ジェンダーや人種による賃金差・昇進昇給差・構成比率差などを加減して調整した上で、人件費をEBITDAに加算している。 柳モデルの実証研究やESG会計の価値提案は、HBSのジョージ・セラフェイム教授から高い評価を得ており、さらに日本企業のESG会計を発展させるべく、関係者とインパクト加重会計の共同研究を継続的に行っているので、次回以降で紹介したい。 なお、ESGの会計について、幅広く広めていくために、筆者はアビームコンサルティングのエグゼクティブアドバイザーとして多数の日本企業に貢献する一方で、早稲田大学で大学院会計研究科の清水孝教授と共に責任者を務め、2022年度から「早稲田大学 会計ESG講座」を立ち上げる。「ESGの見えざる価値を企業価値につなげる方法」(柳 2021b)を求めて、ESGと柳モデルの旅は続く。(【参考文献】はリンク先参照)』、「筆者はエーザイCFO(当時)として、図表2の内容を、エーザイ統合報告書2020とエーザイ価値創造レポート2021のCFO特集で開示している。 ESGを会計に反映させる「ESG EBIT」 例えばエーザイは、2019年度の会計上(エーザイはIFRS採用)の営業利益は1200億円レベルであるが、ESG EBITは3600億円レベルと約3倍になっている。 「エーザイのPER(株価収益倍率)は近年概ね30倍以上で推移しているため、株価が割高という人もいるが、ESGの利益が3倍なので、人的資本・知的資本を勘案したESGの利益は3倍あるので、見えない価値を考えると実質PERは10倍であり、むしろ割安ではないか」とIRの場でも主張したことがある」、「エーザイ」の「ESGを会計に反映させる「ESG EBIT」」は興味深い取り組みだ。「野村アセットマネジメント」など機関投資家からの支持も得ているようだ。

第四に、本年1月20日付け日経ビジネスオンライン「三菱UFJ銀行、企業買収にサステナビリティ融資」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00159/011200063/
・『金融機関と中小企業支援の投資ファンドが、タッグを組んだ。企業買収の資金融資でもESGが欠かせない要素となってきた。 三菱UFJ銀行は2022年11月18日、企業買収にサステナビリティ目標を課し、達成すれば貸出金利が下がる融資を、プライベートエクイティ(PE=未公開株)ファンドのユニゾン・キャピタルに実施した。 ユニゾンは22年7月、企業や病院内にある保育所の運営を受託するキッズコーポレーションホールディングスの株式を取得し、この買収資金の一部を三菱UFJ銀行が融資した。キッズ社が持つ資産や将来収益を担保にするレバレッジド・バイアウト(LBO)ローンと呼ばれる融資手法を用いており、このLBOローンの一部をサステナビリティ・リンク・ローン(SLL)に置き換えた。融資金額は数十億円。SLLと連動したLBOローンは大手行では初である。 SLLの融資に当たり設定した目標は2つ。保育所受託契約数の一定数の増加と、保育士の入社後1年間の離職率を一定水準以下にすることである。毎年、目標が達成できたかどうかを確認し、両目標をクリアしたら支払金利が0.数%低下する。 買収資金の融資に当たり、サステナビリティ目標の達成で支払い金利が低下するサステナビリティ・リンク・ローンを活用した』、LBOはリスクが高く金利も高いが、こうした目標達成度に応じて、リスクや金利を下げるのは合理的だ。
・『中小企業のESGを強化  ユニゾンは、キッズ社の経営改革を支援し企業価値を高めていく。ユニゾンの後藤玲央ディレクターは、「待機児童の解消を目指すキッズ社は社会的価値が高く、ビジネスの成長という点でも余地がある」と評価する。経営陣のガバナンス改革と現場の業務改革を進めて企業価値を向上させ、4~5年後をめどに新規株式公開(IPO)や他社への株式売却で投資資金を回収したい考えだ。 三菱UFJ銀行ソリューション本部ソリューションプロダクツ部部長の加藤晶弘氏は、「様々な社会課題を解決するためには中小企業のESG強化や積極的な事業再編が欠かせない。ESGを考慮したM&A(合併・買収)が解決のカギを握る」と話し、広がりに期待する。 日本経済の底上げには、ESG経営を中堅・中小企業に広げていく必要がある。優れた技術・サービスを持つ中小企業や未公開企業を支援するPEファンドの存在感が高まっている。企業買収でもESGが欠かせない要素となってきた』、「様々な社会課題を解決するためには中小企業のESG強化や積極的な事業再編が欠かせない」、同感である。
タグ:(その2)(日本のESGは今なお形式的な「確認作業」-元ゴールドマン松井氏、【財務戦略のプロが教える】意外と説明できないESGとSDGsの違いとは?、ESGを会計に反映させる「ESG EBIT」、三菱UFJ銀行 企業買収にサステナビリティ融資) ESG Bloomberg「日本のESGは今なお形式的な「確認作業」-元ゴールドマン松井氏」 「化石燃料の供給を全面的に輸入に頼る日本は「地政学的考察と経済の実情との間の微妙なバランスを常に取らなければならない」その通りだ。 ダイヤモンド・オンライン「【財務戦略のプロが教える】意外と説明できないESGとSDGsの違いとは?」 SDGs時代を勝ち抜く ESG財務戦略 「世界のあらゆる人、国や組織の包括的な目標(アジェンダ)として設定」、「SDGsの具体的指針は、17の目標、および、それらをブレークダウンした169のターゲットとして示されています」、「両者ともに国連から生まれたイニシアティブであり、コンセプトも似ているため、「ESG/SDGs」とひとくくりにされがち」、なるほど。 「ESGというのは・・・機関投資家(アセットオーナー)が資産運用会社(アセットマネージャー)を通じて企業に投資をするときに適用する投資規範のこと」、「SDGsは全人類のグローバル・アジェンダですが、とりわけ企業にとっては具体的に取り組むべき社会・環境課題に関する事業機会の例示」、なるほど。 「欧米」が「日本」の考え方に近づいた数少ない貴重な例だ。 「ESG投資の世界では、企業の経営陣がショートターミズムへの引力に引っ張られることのないよう、投資家にも健全なエンゲージメントが期待されています」、「投資家」の責任も大きそうだ。 ダイヤモンド・オンライン 柳 良平氏による「ESGを会計に反映させる「ESG EBIT」」 「「雇用インパクト・・・」にはプラス39億ドルの影響があり、ESG会計(インパクト会計)におけるEBITDAは、実質的には約6割増になることが示唆・・・人的資本の向上という非財務価値創造で、インテルは大きな社会貢献」、なるほど。 「柳モデルとその回帰分析が「人件費や研究開発費は、会計上は損益計算書(PL)の営業利益のマイナス要因になるが、5年-10年の長期では事後的に価値を生む先行投資」であることを示唆」、短期的には「マイナス」でも、「5年-10年の長期では」プラスであれば、よさそうだ。 「筆者はエーザイCFO(当時)として、図表2の内容を、エーザイ統合報告書2020とエーザイ価値創造レポート2021のCFO特集で開示している。 ESGを会計に反映させる「ESG EBIT」 例えばエーザイは、2019年度の会計上(エーザイはIFRS採用)の営業利益は1200億円レベルであるが、ESG EBITは3600億円レベルと約3倍になっている。 「エーザイのPER(株価収益倍率)は近年概ね30倍以上で推移しているため、株価が割高という人もいるが、ESGの利益が3倍なので、人的資本・知的資本を勘案したESGの利益は3倍あるので、見えない価値を考えると実質PERは10倍であり、むしろ割安ではないか」とIRの場でも主張したことがある」、「エーザイ」の「ESGを会計に反映させる「ESG EBIT」」は興味深い取り組みだ。「野村アセットマネジメント」など機関投資家からの支持も得ているようだ。 日経ビジネスオンライン「三菱UFJ銀行、企業買収にサステナビリティ融資」 LBOはリスクが高く金利も高いが、こうした目標達成度に応じて、リスクや金利を下げるのは合理的だ。 「様々な社会課題を解決するためには中小企業のESG強化や積極的な事業再編が欠かせない」、同感である。
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ロシア(その3)(プーチン大統領の「大祖国戦争パート2」が始まった、カザフ騒乱鎮圧のプーチンが目指す「旧ソ連邦復活」の現実味、「西側には撃ち落とせない」 ──プーチンが極超音速ミサイル「ツィルコン」を実戦配備) [世界情勢]

ロシアについては、2018年7月28日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その3)(プーチン大統領の「大祖国戦争パート2」が始まった、カザフ騒乱鎮圧のプーチンが目指す「旧ソ連邦復活」の現実味、プーチンに新たな悩みの種 旧ソ連のキルギス・タジキスタンが国境で衝突 2人死亡、「西側には撃ち落とせない」 ──プーチンが極超音速ミサイル「ツィルコン」を実戦配備)である。なお、ウクライナ問題は別途、取上げている。

先ずは、本年1月13日付け日経ビジネスオンラインが掲載したキヤノングローバル戦略研究所 研究主幹の宮家 邦彦氏による「プーチン大統領の「大祖国戦争パート2」が始まった」の無料部分を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00023/011100306/
・『米ロ首脳会談、カザフスタンでの衝突、日米2プラス2――。年末から2週間、世界を騒がすイベントが相次いだ。これらは一見したところ無関係な事象にみえるが、ロシアの視点に立てば1つの文脈でつながる。プーチン大統領の目には、1941年にナチス・ドイツが西欧、東欧、北欧の各国と共にソ連(当時)に侵攻した「大祖国戦争」と重なる。ロシアには約25年ぶりで危機と好機が訪れている。 国際報道を追いかける者にとって、今回の年末年始は例年以上に忙しかったのではないか。米国のジョー・バイデン大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領は2021年12月30日、約50分間の電話会談を行った。2人は12月7日に電話会談したばかり。年明け1月10日には事務レベル協議が予定されているにもかかわらず、である。しかも、30日の会談はロシア側の求めにより行われたらしい。プーチン大統領は、何か虫の知らせでもあったのか。 案の定、新年2日に中央アジアが揺れた。カザフスタン西部で、燃料価格上昇の抗議デモが始まり、その後、南部のアルマトイで治安当局とデモ隊の衝突が激化した。5日、カザフスタン政府は全土に非常事態宣言を発令。6日にはロシア主導で「集団安全保障条約機構(CSTO)」加盟国部隊2500人が派遣された。今回の衝突では死者が160人、拘束者は8000人を超えると報じられている。 続く7日、今度はインド太平洋地域で動きがあった。日米安全保障協議委員会(2プラス2)がテレビ会議方式で開かれた。共同文書で「中国の軍事的な台頭や北朝鮮の核・ミサイル開発への懸念」を示したほか、中朝の「極超音速技術に対抗するための共同分析の実施」などで意見が一致。日本は米側に「敵基地攻撃能力」保有を念頭に「国家の防衛に必要なあらゆる選択肢を検討する」と表明したという。 過去2週間、ほぼ数日おきに、東欧、中央アジア、東アジアの各地で、相互に無関係の、地域特有の個別の動きがあったようにみえる。だが、本当にそうか。これらを個別に分析することは重要だが、ロシアが専門ではない筆者は今回あえて、これら全体をロシアの視点から分析してみたい。誤解を恐れず言えば、プーチン大統領はロシア「大祖国戦争」を再び戦いたいのではないか。筆者の問題意識はここにある』、「ロシア「大祖国戦争」を再び戦いたいのではないか」との問題意識は、ウクライナ侵攻の形で現実化した。
・『1997年「NATO・ロシア基本文書」を拒否するロシア  12月7日の米ロ首脳会談でプーチン大統領はNATO(北大西洋条約機構)に対する新たな戦略を打ち出した。ロシア外務省は同17日、NATO側が「ウクライナなどに対する拡大を慎み、ウクライナや他の東欧、南コーカサス、中央アジア諸国の領土内で軍事行動をしない」「ロシア及びその同盟国とNATO諸国との国境付近で旅団規模以上の軍事演習やその他の軍事活動を行わない」などとする新たな条約草案を公表した。 中でも筆者が注目するのは、ロシア側が新条約の内容として「ロシアと、1997年5月27日までにNATO加盟国であった諸国は、他のいかなる欧州諸国の領土にも、同日までに配備していた以上の軍隊や兵器を配備しないと約束する」ことを求めたことだ。 1997年5月27日は「NATO・ロシア基本文書」が署名された日。NATO側は新たな加盟国の領土に核兵器や常駐部隊を配備しないと約束し、ロシア側はNATOの「東方拡大」を事実上黙認した。プーチン大統領にとって同条約の内容は屈辱的なものであり、今回ロシア側はソ連崩壊後のNATOの東方拡大という「新常態」そのものに真正面から挑戦し始めたように思える。 ロシア側はこの「基本条約」署名で、NATOが「核政策を変更しない」「ロシアに対し敵対的行動は取らない」ことなどを約束したと思っていた。ところが、その後のNATO側の動きはロシア側の理解に著しく反している。今回ロシア側は目いっぱいの提案を行ったのだろう。それにしても、あれから四半世紀がたった今、なぜプーチン大統領はNATO側がのむはずのない要求をあえて行ったのだろうか』、「NATO・ロシア基本文書」は、「プーチン大統領にとって同条約の内容は屈辱的なものであり、今回ロシア側はソ連崩壊後のNATOの東方拡大という「新常態」そのものに真正面から挑戦し始めたように思える」、そういう経緯があったのを改めて思い出した。
・『日米2プラス2会合が持つ戦略的意味とは  日米2プラス2会合の開催は2021年3月以来10カ月ぶり。共同声明の内容を見る限り、中国を念頭に置いた日米同盟の抑止力は順調に強化されそうだ。20数年前、この種の文書を担当課長として取りまとめた経験を持つ筆者には、実に隔世の感がある。今回の2プラス2会合の成果は、初めて「台湾海峡」に言及した昨年3月の会合以上に、より具体的内容を含むものだろう。 林芳正外務大臣は「変化する地域の戦略環境に関する認識を、丁寧にすり合わせるための突っ込んだ議論を行うことができた」「特に、ルールに基づく秩序を損なう中国の取組が、様々な課題を提起していることへの懸念を共有し、日米が地域における安定を損なう行動を共に抑止し、必要であれば対処することを決意した」と述べている。 同外相はさらに「日米同盟の抑止力・対処力の抜本的強化に向けて、具体的な議論を進めることを確認」し、「日本としても、国家安全保障戦略の改定等を通じて、自身の防衛力の抜本的強化を行う」と述べている。抽象的かつ官僚的言い方ではあるが、日米、特に日本側の「本気さ」が行間から読み取れる。ロシアから見れば、これは「米中覇権争いが当面続く」という新しい地政学的現実を意味する』、「20数年前、この種の文書を担当課長として取りまとめた経験を持つ筆者には、実に隔世の感がある」、なるほど。
・『カザフスタン騒乱は西側による意趣返し?  こうしたプーチン大統領の戦略観の中で「カザフスタンでの反政府デモ」は予想外だったのではないか。カザフスタンは旧ソビエト連邦の中で最も資源の豊富な共和国の1つであり、対中関係では有力な「緩衝国家」だ。さらに、内政的にも、旧ソ連における「独裁体制の円滑な継承」の数少ない実験場として、特にベラルーシやロシアにとって重要な国家である。 このカザフスタンで新年早々、しかも、ロシアが対NATO強硬姿勢を取り始めた直後に、大きな騒乱が発生した。プーチン大統領は決してこれを「偶然」とは考えないだろう。この事件を新たなNATO政策に対する西側の意趣返しと捉えるロシアは、いかなるコストを払ってでも、カザフスタンの現政権を維持するはずだ。これはロシアにとって、対米関係だけでなく対中関係においても、決して譲歩できない一線である』、「この事件を新たなNATO政策に対する西側の意趣返しと捉えるロシアは、いかなるコストを払ってでも、カザフスタンの現政権を維持するはずだ」、なるほど。
・『「大祖国戦争」を再開するプーチン大統領  ロシアでは、帝政ロシアが1812年に戦った対ナポレオン戦争を「祖国戦争」、ソ連(当時)がナチス・ドイツなどと1941年6月~1945年5月に戦った戦争を「大祖国戦争」と呼ぶそうだ。80年前にドイツ軍と共にソ連に侵攻したのは、ルーマニア、フィンランド、ハンガリー、スロバキア、クロアチア、イタリア、スペイン各軍とフランスの義勇軍団だった。 これらの国名が並ぶのは決して偶然ではない。今、プーチン大統領が感じているNATO東方拡大への反応は80年前と基本的に同じはずだ。 米中覇権争いが激化する中、ロシアには約25年ぶりで危機と好機が訪れている。(以下は有料)』、「80年前にドイツ軍と共にソ連に侵攻したのは、ルーマニア、フィンランド、ハンガリー、スロバキア、クロアチア、イタリア、スペイン各軍とフランスの義勇軍団だった」、「プーチン大統領が感じているNATO東方拡大への反応は80年前と基本的に同じはずだ」、「プーチン大統領」にしてみれば、「「大祖国戦争」を再開」するとの意気込みのようだ。

・次に、1月21日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した国際ジャーナリスト・外交政策センター理事の蟹瀬誠一氏による「カザフ騒乱鎮圧のプーチンが目指す「旧ソ連邦復活」の現実味」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/293834
・『カザフスタン騒乱で権益拡大したロシア  日本の実業家の前澤友作氏らが搭乗したロシアの宇宙船が先月に打ち上げられたことで話題となったバイコヌール宇宙基地がある中央アジア・カザフスタンで、今月初め160人以上が死亡する流血の惨事が起きた。実はその騒乱に乗じて漁夫の利を得た強権政治家がいた。 ロシアのプーチン大統領(69歳)である。 突然のカザフ騒乱は同国内でのロシアの権益を拡大させたばかりでなく、中央アジア全域での勢力圏拡大に弾みをつけたからだ。 騒乱は燃料価格高騰に抗議するデモ隊と治安部隊が衝突した結果だと日本では報道されていたが、それだけであれほどの暴動と銃撃戦が瞬く間に全土に広がるわけがない。おそらく30年近く強権を振るったナザルバエフ前大統領派が現政権に仕掛けたクーデター未遂とみた方が妥当だろう。 その証拠に慌てたトカエフ大統領はロシアに救いを求めた。これ幸いとばかりにプーチン大統領は即座に介入に踏み切る。ロシア主導の旧ソ連構成国6カ国で作る集団安全保障条約機構(CSTO)がカザフ政府から要請を受けたという大義名分を振りかざし、精鋭ロシア空挺部隊などからなる2500人規模の「平和維持軍」を送り込んで動乱を鎮圧し、部隊は撤退を始めている。 結果として、世界最大の内陸国で、石油、天然ガス、ウランなどエネルギー資源豊富な地政学的要衝であるカザフで、ロシアはまんまと支配権を強化するとともに周辺の旧ソ連構成国を震え上がらせた。まさに狡猾な戦略家プーチンの真骨頂である。)  2008年のジョージアへの軍事侵攻に続いて2014年には黒海北岸のクリミア共和国を武力で併合したプーチン大統領は、足並みのそろわない欧州と国内問題で手いっぱいの米国からの批判は口先だけで弱腰だと見抜いている。そして昨年からウクライナの国境付近に10万人もの大規模な兵力を集結させている』、「トカエフ大統領はロシアに救いを求めた。これ幸いとばかりにプーチン大統領は即座に介入に踏み切る。ロシア主導の旧ソ連構成国6カ国で作る集団安全保障条約機構(CSTO)がカザフ政府から要請を受けたという大義名分を振りかざし、精鋭ロシア空挺部隊などからなる2500人規模の「平和維持軍」を送り込んで動乱を鎮圧し、部隊は撤退を始めている。 結果として、世界最大の内陸国で、石油、天然ガス、ウランなどエネルギー資源豊富な地政学的要衝であるカザフで、ロシアはまんまと支配権を強化するとともに周辺の旧ソ連構成国を震え上がらせた。まさに狡猾な戦略家プーチンの真骨頂である」、こんなにも上手く手に入ることもあるようだ。
・『プーチン大統領が目指す旧ソ連邦の復活  直近の狙いは、西側の北大西洋条約機構(NATO)に加盟したいというウクライナの望みを打ち砕くことにある。だが筋金入りの国家主義者の野望は実はもっと大きい。 目指すは旧ソ連邦の復活である。つまり、1991年のソ連解体で次々と独立した14の旧ソ連構成国を再びロシアの強力な支配下に置くことだ。その中にはウクライナやカザフスタン、ベラルーシ、ジョージア、リトアニアなどが含まれている。 「私に20年間を与えてくれれば、ロシアは見違える姿に変わるだろう」 10年以上前にプーチン大統領はスピーチやインタビューでそう思わせぶりに語っていた。 危機感を抱いたバイデン米大統領は昨年末の米ロオンライン首脳会談で、ロシアがウクライナに侵攻すれば「同盟国と共に強力な措置で対応する」と警告を発した。これに対してプーチン大統領は「国境で軍事力を増強しているのはNATOの方だ」と平然と切り返したという。 思い返せば、ソ連崩壊後にエリツィン初代ロシア連邦大統領が領有権を主張したのはジョージアとウクライナの一部とカザフスタン北部だった。これらの地域はロシア系住民が多数いるのでナショナリズムを刺激しやすい。ウクライナの次はカザフスタンというシナリオは、プーチン大統領の目には当然の領土奪還としか映っていないのである。 しかも今回のカザフ騒乱によって、ロシアはさらなる権益拡大を目指すことはまず間違いないだろう。 ロシア語が堪能でプーチン大統領とは政治的に愛憎併存の関係にあったアンゲラ・メルケル前独首相の言葉を借りれば、「ミスタープーチンは我々と別の世界に住んでいる」のだ』、「ウクライナの次はカザフスタンというシナリオは、プーチン大統領の目には当然の領土奪還としか映っていないのである。 しかも今回のカザフ騒乱によって、ロシアはさらなる権益拡大を目指すことはまず間違いないだろう」、「プーチン大統領」の狙いが的中したことになる。
・『プーチン大統領が強気でいられる理由  それにしても、プーチン大統領はなぜそんなに強気でいられるのか。 その背景には国家保安委員会(KGB)の工作員からロシアの「皇帝」にまで上り詰めた彼の揺るぎない国家観がある。プーチン大統領は冷徹な国家主義者である。 彼の国家観のルーツはふたつの社会主義国の崩壊を経験したことによるものだ。ひとつはKGB工作員として1989年に東ドイツに駐在していたときに民主化運動によって政権が瓦解するのを目の当たりにしたこと。もうひとつは、ソ連に帰国後の1991年に誇り高き祖国ソ連が無残に崩壊してしまったことだ。 反対勢力を打ち負かさなければ国家は崩壊するということを彼は肝に銘じた。そして政治的対立に敗れた者は抹殺されることを学んだのだ。 「歴史家を自称するプーチンはソ連崩壊後のNATOの東方拡大を1941年のナチス・ドイツによるソ連侵攻と重ね合わせているかもしれない」と米国家安全保障会議(NSC)元ロシア担当首席顧問だったフィオナ・ヒルは共著“Mr. Putin: Operative in the Kremlin”(邦題『プーチンの世界』)で示唆している。 権謀術数を巡らしてKGB工作員から大統領府副長官、ロシア連邦保安庁(FSB)、首相、そして48歳の若さでロシア連邦の最高権力者へと上り詰めたプーチン大統領は、生き残るためには手段を選ばないことで知られている。 国内ではオルガルヒ(新興財閥)と手を結び、メディアを統制し、反対勢力を容赦なく弾圧、政敵を抹殺してきた。そして海外ではクリミア併合でロシア国民の愛国心に火をつけ、2015年9月にはロシア史上初めて中東シリアへの直接軍事介入に踏み切って崩壊寸前に陥っていたアサド政権を救った。目的のためには武力行使にも躊躇(ちゅうちょ)がないのだ。 さらには、昨年夏の国民投票で8割近くが賛成した憲法改正によって2036年まで現職続投が可能になったプーチン大統領は、昨年12月には大統領経験者とその家族を生涯にわたって刑事訴追から免責する法案に署名した。これで怖いものなしというわけだ』、「憲法改正によって2036年まで現職続投が可能に」、「大統領経験者とその家族を生涯にわたって刑事訴追から免責する法案に署名した。これで怖いものなし」、ただ、ウクライナ戦争の行方と、ガンと闘病中ともいわれるのが唯一の懸念材料だ。
・『米ロ対立による核開発競争のリスク  彼にはお気に入りのフレーズがある。それは「我々に必要なのは偉大な変革ではない。偉大なロシアだ」だ。1907年、ニコライ2世時代に首相を務めたピョートル・ストルイピンが議員たちを批判したときの演説を引用したものである。 プーチン政権の執拗な拡大主義に危機感を募らせたブリンケン米国務長官は7日、報道陣に対していかにもインテリらしい辛辣(しんらつ)なコメントを口にしている。 「近年の歴史の教訓のひとつは、いちどロシアを家に入れると出ていってもらうのが難しくなることだ」 2014年のロシアによるクリミア併合と現在進行中のウクライナへの露骨な軍事的圧力に対する明らかな批判だ。 ロシアの経済力はいまや韓国程度の規模しかない。人口も日本とさして変わらない。だが侮ってはいけないのは、依然として米国をしのぐ数の核兵器を保有する軍事大国で、世界3位の産出量を誇るエネルギー大国であることだ。そして従来の同盟国であるインドとの軍事・エネルギー関係を強化している。 迎撃が難しいとされる核弾頭搭載可能な極超音速ミサイルを実戦配備するとさえ発表しており、米ロの核開発競争の激化につながりかねない。 国際政治では、不確実性に備えることが戦略の最も重要な要素だといわれる。新たなパワーポリティックスの時代に突入した今、米中対立だけでなく冷徹な戦略家であるプーチン大統領が率いるロシアの動向を注視する必要がある』、「迎撃が難しいとされる核弾頭搭載可能な極超音速ミサイル」については、あとで紹介する。「エネルギー大国」のメリットは十分に享受している。

第三に、1月6日付けNewsweek日本版「「西側には撃ち落とせない」 ──プーチンが極超音速ミサイル「ツィルコン」を実戦配備」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/01/post-100499.php
・『<開発競争でアメリカに先んじ、西側のいかなる対空システムも破れるとプーチンが豪語する「ツィルコン」搭載艦が地中海に向かった。ウクライナ侵攻の終わりはますます遠い> ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は4日、核弾頭搭載可能な極超音速巡航ミサイル「ツィルコン」を搭載したフリゲート艦「アドミラル・ゴルシコフ」を実践配備したと発表。他の国にはツィルコンと肩を並べるような兵器はないと述べた。 ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相はプーチンとのビデオ会議で、アドミラル・ゴルシコフは大西洋からインド洋、そして地中海に至る航海に出たと述べた。同艦は「海と陸上のどちらにいる敵にもピンポイントで強力な攻撃」を行うことができ、実戦配備は大きな意味を持つ、とがロシア高官らは言う。 プーチンは軍の幹部らに対し、ツィルコンは「他に類を見ない最強兵器」だと労った。 「世界のいかなる国にも(ツィルコンと)同じようなものは存在しない」とプーチンは述べた。「非常に強力な兵器で、ロシアを外部の脅威から確実に守ると共に、国益を守る役に立つと確信している」 ツィルコンの配備は、ロシアがウクライナ侵攻を終わらせる気がないことを示している。開始から1年近く、侵攻は世界各国の指導者から非難を浴びてきた』、「「世界のいかなる国にも(ツィルコンと)同じようなものは存在しない」とプーチンは述べた。「非常に強力な兵器で、ロシアを外部の脅威から確実に守ると共に、国益を守る役に立つと確信している」」、凄い武器を手に入れたことで、ますます強圧的な姿勢を強める可能性がある。
・『「さまざまな環境条件での演習」を予定  ショイグは4日、ツィルコンについて「いかなる先進的な近代防空・対ミサイルシステムをも出し抜くことができるのは間違いない」と述べた。一方でショイグは、アドミラル・ゴルシコフの航海の主な目的はロシアへの脅威に対抗するとともに、「友好国とともに地域の平和と安定を維持すること」だとも述べた。 ショイグはまた、同艦の乗組員は「さまざまな環境条件における」長距離巡航ミサイルや極超音速兵器の演習を行うだろうと述べた。 米FOXニュースによれば、同艦の実戦配備に先立つ数カ月前、ロシア国防省はツィルコンの発射実験成功を発表している。この時のツィルコンの飛翔距離は約1000キロメートルだったという。 一方、ロシアの独立系ニュースサイトのメデューサはツィルコンについて、「対艦超極音速ミサイルで、最高時速はマッハ9(音速の9倍)を超える」と伝えている。西側の既存の兵器では、探知、追尾、迎撃は困難だという(動画参照)。 プーチンは昨年、アドミラル・ゴルシコフがロシア海軍初のツィルコン搭載艦になると明らかにしていた。プーチンは「極超音速兵器の開発競争」においてロシアはアメリカを凌駕したと述べるとともに、ツィルコンの開発は西側の脅威に対応したものだと主張したとメデューサは伝えている。 伝えられるところでは、ロシアは他にもミサイルの性能試験も行っている。FOXニュースによれば核弾頭の搭載も可能な大型ICBM(大陸間弾道ミサイル)、「サルマート」の試験発射もその一例だ』、「ツィルコンの飛翔距離は約1000キロメートル」、「最高時速はマッハ9(音速の9倍)を超える」、「西側の既存の兵器では、探知、追尾、迎撃は困難」、やっかいな兵器を手にしたものだやれやれ・・・。
タグ:「ツィルコンの飛翔距離は約1000キロメートル」、「最高時速はマッハ9(音速の9倍)を超える」、「西側の既存の兵器では、探知、追尾、迎撃は困難」、やっかいな兵器を手にしたものだやれやれ・・・。 「「世界のいかなる国にも(ツィルコンと)同じようなものは存在しない」とプーチンは述べた。「非常に強力な兵器で、ロシアを外部の脅威から確実に守ると共に、国益を守る役に立つと確信している」」、凄い武器を手に入れたことで、ますます強圧的な姿勢を強める可能性がある。 Newsweek日本版「「西側には撃ち落とせない」 ──プーチンが極超音速ミサイル「ツィルコン」を実戦配備」 「迎撃が難しいとされる核弾頭搭載可能な極超音速ミサイル」については、あとで紹介する。「エネルギー大国」のメリットは十分に享受している。 「憲法改正によって2036年まで現職続投が可能に」、「大統領経験者とその家族を生涯にわたって刑事訴追から免責する法案に署名した。これで怖いものなし」、ただ、ウクライナ戦争の行方と、ガンと闘病中ともいわれるのが唯一の懸念材料だ。 「ウクライナの次はカザフスタンというシナリオは、プーチン大統領の目には当然の領土奪還としか映っていないのである。 しかも今回のカザフ騒乱によって、ロシアはさらなる権益拡大を目指すことはまず間違いないだろう」、「プーチン大統領」の狙いが的中したことになる。 結果として、世界最大の内陸国で、石油、天然ガス、ウランなどエネルギー資源豊富な地政学的要衝であるカザフで、ロシアはまんまと支配権を強化するとともに周辺の旧ソ連構成国を震え上がらせた。まさに狡猾な戦略家プーチンの真骨頂である」、こんなにも上手く手に入ることもあるようだ。 「トカエフ大統領はロシアに救いを求めた。これ幸いとばかりにプーチン大統領は即座に介入に踏み切る。ロシア主導の旧ソ連構成国6カ国で作る集団安全保障条約機構(CSTO)がカザフ政府から要請を受けたという大義名分を振りかざし、精鋭ロシア空挺部隊などからなる2500人規模の「平和維持軍」を送り込んで動乱を鎮圧し、部隊は撤退を始めている。 蟹瀬誠一氏による「カザフ騒乱鎮圧のプーチンが目指す「旧ソ連邦復活」の現実味」 ダイヤモンド・オンライン 「80年前にドイツ軍と共にソ連に侵攻したのは、ルーマニア、フィンランド、ハンガリー、スロバキア、クロアチア、イタリア、スペイン各軍とフランスの義勇軍団だった」、「プーチン大統領が感じているNATO東方拡大への反応は80年前と基本的に同じはずだ」、「プーチン大統領」にしてみれば、「「大祖国戦争」を再開」するとの意気込みのようだ。 「この事件を新たなNATO政策に対する西側の意趣返しと捉えるロシアは、いかなるコストを払ってでも、カザフスタンの現政権を維持するはずだ」、なるほど。 「20数年前、この種の文書を担当課長として取りまとめた経験を持つ筆者には、実に隔世の感がある」、なるほど。 「NATO・ロシア基本文書」は、「プーチン大統領にとって同条約の内容は屈辱的なものであり、今回ロシア側はソ連崩壊後のNATOの東方拡大という「新常態」そのものに真正面から挑戦し始めたように思える」、そういう経緯があったのを改めて思い出した。 「ロシア「大祖国戦争」を再び戦いたいのではないか」との問題意識は、ウクライナ侵攻の形で現実化した。 「ロシア「大祖国戦争」を再び戦いたいのではないか」との問題意識は、ウクライナ侵攻の形で結実した。 (その3)(プーチン大統領の「大祖国戦争パート2」が始まった、カザフ騒乱鎮圧のプーチンが目指す「旧ソ連邦復活」の現実味、「西側には撃ち落とせない」 ──プーチンが極超音速ミサイル「ツィルコン」を実戦配備) ロシア 宮家 邦彦氏による「プーチン大統領の「大祖国戦争パート2」が始まった」 日経ビジネスオンライン
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日本の政治情勢(その66)(国民民主党は連立与党入りご破算に…自民・後藤田正純氏が議員辞職→県知事選出馬の大迷惑・・・繰り上げ当選は麻生派 玉木代表の対抗馬、ガーシー参院議員に警察・検察が激ギレ 「逮捕はないが議員辞職は不可避」の攻防、うつ病理由に辞職の水道橋博士への批判で露わに 「ハンディを抱える議員に優しくない」国会) [国内政治]

日本の政治情勢については、昨年12月29日に取上げた。今日は、(その66)(国民民主党は連立与党入りご破算に…自民・後藤田正純氏が議員辞職→県知事選出馬の大迷惑・・・繰り上げ当選は麻生派 玉木代表の対抗馬、ガーシー参院議員に警察・検察が激ギレ 「逮捕はないが議員辞職は不可避」の攻防、うつ病理由に辞職の水道橋博士への批判で露わに 「ハンディを抱える議員に優しくない」国会)である。

先ずは、本年1月7日付け日刊ゲンダイ「国民民主党は連立与党入りご破算に…自民・後藤田正純氏が議員辞職→県知事選出馬の大迷惑・・・繰り上げ当選は麻生派、玉木代表の対抗馬」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/316930
・『思わぬ余波が広がりそうだ:5日に衆院議員を辞職した自民党の後藤田正純元内閣府副大臣が6日、徳島市内で会見。徳島県知事選(3月23日告示・4月9日投開票)に立候補すると表明した。 後藤田氏の大叔父は「カミソリ」の異名を取った後藤田正晴元官房長官。妻は女優の水野真紀で、親族の知名度を武器に当選8回を重ねてきた。 「衆院は当選5~6回が入閣適齢期になってきているのに、後藤田さんは一度も入閣したことがない。石破派の解体で2021年12月に茂木派に入会しましたが、党内では干されている印象です。国会議員としての限界を感じて、知事転身をはかったのでしょう」(自民党関係者) 会見で後藤田氏は「経験と人脈をルーツである徳島にささげ、徳島新時代を迎えたい」などと意欲を語ったが、残念ながら地元でもあまり歓迎されていないようだ。 「後藤田は前回知事選で自公が推薦した現職の飯泉嘉門知事を批判して対立候補を支援するなど、自民党県連で孤立している。21年の衆院選は選挙区で負けて比例復活だったし、今さら知事選に出ても勝ち目はないでしょう。11年に銀座ホステスとの不倫を報じられて以来、地元での評判はガタ落ちで、女性票も逃げてしまった。昔は選挙のたびに奥さんの水野真紀が応援に入っていたけれど、最近は見かけないね」(地元事情通) 5期目の飯泉嘉門知事は知事選への態度を明らかにしていないが、他にも自民党の三木亨参院議員が立候補を表明していて、保守分裂選挙になるのは確実。地元政界は混迷しているが、それ以上に泡を食っているのが国政で国民民主党の連立政権入りを画策してきたメンメンだという』、「後藤田は前回知事選で自公が推薦した現職の飯泉嘉門知事を批判して対立候補を支援するなど、自民党県連で孤立している。21年の衆院選は選挙区で負けて比例復活だったし、今さら知事選に出ても勝ち目はないでしょう。11年に銀座ホステスとの不倫を報じられて以来、地元での評判はガタ落ちで、女性票も逃げてしまった。昔は選挙のたびに奥さんの水野真紀が応援に入っていたけれど、最近は見かけないね」、「当選8回」という表向きとは、信じ難いような政治力のなさだ。「銀座ホステスとの不倫を報じられて以来、地元での評判はガタ落ちで、女性票も逃げてしまった」、「今さら知事選に出ても勝ち目はない」とはさんざんだ。
・『繰り上げ当選は麻生派、玉木代表の対抗馬  自民党側では、麻生副総裁や茂木幹事長が国民民主との連立を模索してきた。国民民主も22年度予算案に賛成するなど、与党の仲間入りに前のめりだ。特に与党志向が強いのが玉木代表と古川国対委員長だとされる。 国民民主と立憲民主党の支持団体・連合の芳野会長も、麻生副総裁と会食したり、自民党本部で講演したり、与党と急接近。岸田首相が5日、連合の新年交歓会に2年連続で出席すると、「非常に光栄」とハシャいでいた。 いよいよ次の内閣改造で連立入りとの機運もあったのだが、後藤田氏のスタンドプレーのおかげで、ご破算になりそうだという。 今回、衆院比例四国ブロック選出の後藤田氏が議員辞職したため、次点の瀬戸隆一元衆院議員が繰り上げ当選することになった。瀬戸氏の選挙区は香川2区で、玉木代表の対抗馬なのだ。2人の戦績は玉木代表が4選連勝で圧倒するが、瀬戸氏の国政復帰はインパクトが大きい。連立構想が根底から崩れてしまうからだ。 「昨年からくすぶっている国民民主の連立入りは、春闘と連動しています。政権側は民間労組を巻き込んでベースアップを図りたい。そこで国民民主と連立し、玉木代表が労働関連特命相で入閣という話が出てくるわけです。これは玉木氏の選挙区に自民党現職がいないことが前提でした。しかも、繰り上げ当選の瀬戸氏は麻生派です。連立に前向きだった麻生氏も、自派閥の子分を袖にするわけにはいかないでしょう。もっとも、自民党が欲しいのは連合であって国会議員ではない。もはや連立話に現実味はありません」(政治ジャーナリスト・角谷浩一氏) 連立推進派は後藤田氏をもっと大事にすべきだったかもしれない』、「国民民主と連立し、玉木代表が労働関連特命相で入閣という話が出てくるわけです。これは玉木氏の選挙区に自民党現職がいないことが前提でした。しかも、繰り上げ当選の瀬戸氏は麻生派です。連立に前向きだった麻生氏も、自派閥の子分を袖にするわけにはいかないでしょう」、「自民党が欲しいのは連合であって国会議員ではない。もはや連立話に現実味はありません」、「後藤田氏の辞任」が思わぬ波紋を起こしたようだ。

次に、1月16日付けデイリー新潮「ガーシー参院議員に警察・検察が激ギレ 「逮捕はないが議員辞職は不可避」の攻防」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/01160600/?all=1
・『関連先に家宅捜索  YouTubeなどを通じて脅迫されたり中傷を受けたりしたなどとして、複数の著名人から脅迫や名誉毀損などの容疑で告訴状が提出されているガーシー参院議員(NHK党)。捜査を担う警視庁は11日、ガーシー氏がYouTubeから得た収入を管理している会社の関係先を捜索。これを受けてガーシー氏は3月に帰国し、警視庁の任意聴取にも応じる意向を示した。捜査当局の狙いはどこにあるのか? 「警視庁は11日、暴力行為等処罰法違反や名誉毀損などの疑いでガーシー氏がYouTubeから得た収入を管理している会社の関連先を捜索しました」 と、社会部デスク。 「複数の告訴状の内容を裏付ける捜査を重ねているということです。一方で、ガーシー氏に対しては任意の事情聴取を要請してきました」(同) これに対してガーシー氏は、現在滞在するドバイから日本に帰国し、国会にも出席する予定であることを明らかにしている。担当の弁護士を通じ、警視庁にも意向は伝えられているという』、「著名人から脅迫や名誉毀損などの容疑で告訴状が提出」、「ガーシー氏は3月に帰国し、警視庁の任意聴取にも応じる意向」、当然のことだ。
・『当局の神経を逆撫で  ガーシー氏をめぐっては、2022年7月の初当選後、一度も国会に登院していないことについて、参議院から「欠席の理由を書面で回答すること」を求められていた。ガーシー氏は昨年、書面で「海外で政治活動をするという公約を掲げて当選した。海外でSNSを利用してあらゆる不正を暴露し裁くことで、この国の不満を解消していくことが私に投票した皆様との約束で、海外から国会議員の仕事は可能だ」と回答していた。 「この間、警察は検察と連携しながら、立件の可能性を見極めつつ、世の中の反応にも耳を傾けてきました。その結果、捜査当局は、“国会議員としての職責を果たしていない。国民を愚弄している”という声が大きいとの理解をしたようです。参議院からの質問への回答も当局の神経を逆撫でした感じです」(同) もう少し詳しく説明してもらうと、 「国会議員に対する捜査はもちろん慎重にならざるを得ないのですが、一方で当局としては、“国会議員としてふさわしいのか”という判断にまで踏み込んでいたようです」(同)』、「世の中の反応」は「“国会議員としての職責を果たしていない。国民を愚弄している”という声が大きい」、その通りだ。
・『書類送検は間違いない  「ガーシー氏の件は、かつて立花孝志党首(NHK党)にかけられた嫌疑の処理の仕方が参考になるのかなと思いました」(先の社会部記者) 2020年4月、NHKから国民を守る党(当時の名称)の党首だった立花氏は、離党した区議を脅したり、NHKの受信契約者の情報を不正入手したりした件で、脅迫や不正競争防止法違反などの罪で東京地検に在宅起訴されている。 「警視庁の捜査1課はこの件で身柄を取る、つまり逮捕にかなり前向きでした。一方で検察は逮捕には積極的ではなく、結果として在宅起訴に落ち着きました。2019年の参院選で当選した後に辞職し、国会議員のバッジはつけていなかったものの、公党のトップを逮捕するというのはかなりインパクトがあることで慎重にならざるを得なかったようです」(同) 今回はどんなふうに捉えられているのだろうか? 「罪状的に最低でも書類送検は間違いないようです。そして警察も検察も“議員は辞めざるを得ない”との判断をしています」(同)』、「罪状的に最低でも書類送検は間違いないようです。そして警察も検察も“議員は辞めざるを得ない”との判断」、なるほど。
・『「議員辞職すべし」の声  つまり、「逮捕すべし」の段階まではきていないようなのだが、当局の判断を左右するのが、本人の身の処し方だというのだ。 「本人が議員辞職するか否かが焦点になりそうです。そうするなら逮捕・起訴は回避されると思われますが、逆に本人が徹底抗戦して辞職しないと主張し続ければ身柄を取るということもあり得るとのことでした」(同) 逮捕すべしというよりはむしろ「議員辞職すべし」といったところだろうか。捜査当局が国民の声をどれだけ聞いたのか判然とはしないが、体裁だけ見れば立派な国策捜査とみなしうる案件だろう。 立花党首自身、会見で「やはりガーシーは国民の応援がないと厳しい立場になる」としたうえで、3月下旬に行われる予定の参議院総務委員会においてNHK会長を相手にガーシー氏がデビューできるように手配していきたい旨を語っている。 「そこで初陣を飾ることができるのか。そのためには当局とのやり取りもさることながら、結構なハードルを越えなければならないですね」(同)』、「「本人が議員辞職するか否かが焦点になりそうです。そうするなら逮捕・起訴は回避されると思われますが、逆に本人が徹底抗戦して辞職しないと主張し続ければ身柄を取るということもあり得るとのことでした」(同) 逮捕すべしというよりはむしろ「議員辞職すべし」といったところだろうか」』、「議員辞職」となれば、「捜査当局」は満足だろうが、「立花党首」の立場がなくなる。どうなるのか、要注目だ。

第三に、1月22日付けAERAdot「うつ病理由に辞職の水道橋博士への批判で露わに 「ハンディを抱える議員に優しくない」国会」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/dot/2023012000073.html?page=1
・『うつ病を理由に参院議員を辞職した水道橋博士さん(60)に対し「給料泥棒」などと厳しい声が飛んでいる。過去や最近も、不祥事を起こしたのに辞職せず、給料泥棒と言われても仕方ない醜態をさらした議員がいたため、政治家に対する国民の目が厳しくなるのも無理はない。だが、国会運営や議員の事情に詳しい専門家は「水道橋博士さんの件はそうした悪例とは切り離して考えてほしい」と話し、病気や障害を持つ人が議員を続けやすくする仕組みの整備を訴える。 昨年の参院選で当選し、その後、うつ病を発症していたという水道橋博士さん。辞職を発表した、れいわ新選組の山本太郎代表は「れいわ新選組としては、博士が回復するまで何年でも休職していただいて問題はないという立場だった。博士のなかでは、焦りや申し訳なさがどんどん強まっていったようだ」と、水道橋博士さん自らが辞職を選択したことを説明した。 国会議員には給与に当たる歳費が毎月約130万円支払われ、ボーナスなどを合算すると年間で3000万円を超える金額を手にする。原資は税金だけに、高すぎるという批判はかねてあった。 さらに、過去も今も、給料泥棒と言われても仕方がないような醜態をさらした国会議員や地方議員が確かにいた。 オレンジ共済組合事件で、1997年1月に逮捕された友部達夫・参院議員。拘置所に入ったため登院ができなくなったが、参院で辞職勧告決議が可決されたあとも辞職を拒否。 実刑が確定し失職した01年6月まで給与が支払われ続けた。1億円をゆうに超える金額だ。 NHK党のガーシー議員は海外から帰国せず、国会に一度も来ていない。このまま議員を続ければ、任期の6年間で2億円近いお金が支払われることになる。 水道橋博士さんは病気による辞職だが、彼に対しても「給料泥棒」「国民のために働く覚悟がない」などと、厳しい批判が出ている。 「国会議員の報酬が高いとの批判があるうえに、不祥事を起こした議員たちの悪例が続いているため、国民の視線が厳しくなって、政治家全体を汚いことをする人たちかのように見てしまいがちになることは理解できます。ですが、病気を公表し、それを理由に辞職を選択した水道橋博士さんの件はまったく別で、分けて考えてあげてほしい」と思いを話すのは、元参院事務局職員で、国会運営や議員の事情に詳しい同志社大の武蔵勝宏教授(議会制度論)だ。 そもそも、病気や心の病は誰もがなる可能性がある。治療との両立は可能なのか。) 武蔵教授によると、国会には民間企業のような「休職」の仕組みはないが、国会会期中は、欠席届を提出すれば休むことができる。長期の休みが認められるようになったのは、橋本聖子氏が産休を取得した2000年の話で、歴史は浅い。「女性議員が少なく長期の休みについての議論が長く起きなかった」(武蔵教授」という。 民間企業でも、休職などの制度はあっても休みづらい空気の職場はあるが、 「国会議員は健康で体力旺盛な方が多いですが、だからといって休みづらい雰囲気があるわけではありません。与野党問わず、本人に責任のない病気やケガでの欠席については、批判されたり、辞職を求められたりすることはありません。病気や事故にあう可能性はみんなにありますからね」(武蔵教授) 休みは取れるため、病気によっては治療しながらの議員活動が可能なケースは考えられるという。ただ、その一方でハンディを抱える議員に優しくない面もある。 国会会期中、議員は東京にいなければならない。代理での投票や質問は認められておらず、オンラインの会議やリモートでの出席も未整備だ。 海外では、他の議員が代理で投票する制度や、二大政党制の国ではペアリングといって、一方の政党の議員が出席できない場合は、もう一方の政党も投票しない制度を儲けている国がある。 「休むと職務に穴をあけてしまう、という不安を取り除く制度です。病気だからと議員を諦めたり、議員を続けるために出産を断念したりしなくて良いのです。日本の国会は欠席することが念頭になく、その点が遅れています。水道橋博士さんも、今の仕組みでは病気の治療をしながらの継続は難しいと判断したのかもしれません」(武蔵さん) 高すぎると批判されてきた議員の給与や諸手当。休んでいる間も満額支給され続けることが、水道橋博士さんに関しても、世間の反発を強めている一因かもしれない。休職中は減額するなどのルール作りは必要ないのか。 武蔵教授は、「自主返納の仕組みはあっていいかもしれない」と前置きしつつ、現職中に亡くなったある議員の話を引き合いに出した。) 参院議員だった山本孝史さん。05年に胸腺がんが発覚し5月の参院本会議で、がん当事者であることを公表。がん対策基本法の早期成立を訴えた。 07年7月の参院選の時には病状が悪化していたものの、比例で出馬し当選。職責をめぐって批判も起きたが、登院を続け同年12月に亡くなった。 「山本議員のがん患者としての訴えは、与野党を超えて支持されました。山本議員のように、病気や障害の当事者など国会議員には多様な人材が必要で、当事者が生きやすい社会や制度ができるように訴えていく必要があります。それが、休む期間は給与が大きく減ったり無報酬となるなら、再発の可能性があるがんや難しい病気の当事者は、議員の継続や、立候補がしづらくなってしまいます。結果、マイノリティの声が届かず、国会には環境に恵まれた世襲議員ばかりが増えてしまいます」(武蔵教授) ちなみに、お騒がせのガーシー議員に対しては、参院議院運営委員会が20日の理事会で、同議員が提出している海外渡航届を認めないと全会一致で決めた。 会期中の無許可の海外渡航を巡っては、2013年に故・アントニオ猪木議員が北朝鮮にわたり、懲罰委員会が登院停止30日の処分を出した例がある。 武蔵教授によると、ガーシー議員に対しても今後、懲罰委員会が開かれる可能性はあるという。 ただ、「最も重い『除名処分』は戦後、たったの2例しかありません。基本的には本人が辞職を決めない限り、こうした当事者がもっと国会議員になりやすくするために、政治家はどのような仕組みや配慮が必要かを真剣に議論してほしいと思いますを続けられてしまうのが現実です」(武蔵教授) 批判されても国会議員に居座り続ける面々の一方で、病気による辞職を決断し、批判されている水道橋博士さん。 「うつ病を公表した水道橋博士さんは、精神疾患の当事者としての声を伝えられる可能性がありました。辞職はとても残念です。身体や心に障害がある方は日本の人口の7%以上もいて、難しい病気の患者さんもたくさんいます。こうした当事者がもっと国会議員になりやすくするために、政治家はどのような仕組みや配慮が必要かを真剣に議論してほしいと思います」 武蔵教授はそう締めくくった』、「身体や心に障害がある方は日本の人口の7%以上もいて、難しい病気の患者さんもたくさんいます。こうした当事者がもっと国会議員になりやすくするために、政治家はどのような仕組みや配慮が必要かを真剣に議論してほしいと思います」、「身体や心に障害がある方は日本の人口の7%以上もいて、難しい病気の患者さんもたくさんいます」、「こうした当事者がもっと国会議員になりやすくするために、政治家はどのような仕組みや配慮が必要かを真剣に議論してほしいと思います」、その必要性については私は疑問だ。「国会議員」が「身体や心に障害がある方は日本の人口の」構成比と見合っている必要は必ずしもないと思う。例えば、喋れない人が喋れない人を代表する必要はない。それにしても、「国会議員」の椅子にしがみつく議員が多いなかで、「うつ病を理由に参院議員を辞職した水道橋博士」は清々しい例として、拍手を送りたい。ただ、後任を「れいわ」の候補者内で1年交代で回すとの、やり方には絶対反対である。
タグ:日本の政治情勢 (その66)(国民民主党は連立与党入りご破算に…自民・後藤田正純氏が議員辞職→県知事選出馬の大迷惑・・・繰り上げ当選は麻生派 玉木代表の対抗馬、ガーシー参院議員に警察・検察が激ギレ 「逮捕はないが議員辞職は不可避」の攻防、うつ病理由に辞職の水道橋博士への批判で露わに 「ハンディを抱える議員に優しくない」国会) 日刊ゲンダイ「国民民主党は連立与党入りご破算に…自民・後藤田正純氏が議員辞職→県知事選出馬の大迷惑・・・繰り上げ当選は麻生派、玉木代表の対抗馬」 「後藤田は前回知事選で自公が推薦した現職の飯泉嘉門知事を批判して対立候補を支援するなど、自民党県連で孤立している。21年の衆院選は選挙区で負けて比例復活だったし、今さら知事選に出ても勝ち目はないでしょう。11年に銀座ホステスとの不倫を報じられて以来、地元での評判はガタ落ちで、女性票も逃げてしまった。昔は選挙のたびに奥さんの水野真紀が応援に入っていたけれど、最近は見かけないね」、「当選8回」という表向きとは、信じ難いような政治力のなさだ。 「銀座ホステスとの不倫を報じられて以来、地元での評判はガタ落ちで、女性票も逃げてしまった」、「今さら知事選に出ても勝ち目はない」とはさんざんだ。 「国民民主と連立し、玉木代表が労働関連特命相で入閣という話が出てくるわけです。これは玉木氏の選挙区に自民党現職がいないことが前提でした。しかも、繰り上げ当選の瀬戸氏は麻生派です。連立に前向きだった麻生氏も、自派閥の子分を袖にするわけにはいかないでしょう」、「自民党が欲しいのは連合であって国会議員ではない。もはや連立話に現実味はありません」、「後藤田氏の辞任」が思わぬ波紋を起こしたようだ。 デイリー新潮「ガーシー参院議員に警察・検察が激ギレ 「逮捕はないが議員辞職は不可避」の攻防」 「著名人から脅迫や名誉毀損などの容疑で告訴状が提出」、「ガーシー氏は3月に帰国し、警視庁の任意聴取にも応じる意向」、当然のことだ。 「世の中の反応」は「“国会議員としての職責を果たしていない。国民を愚弄している”という声が大きい」、その通りだ。 「罪状的に最低でも書類送検は間違いないようです。そして警察も検察も“議員は辞めざるを得ない”との判断」、なるほど。 「「本人が議員辞職するか否かが焦点になりそうです。そうするなら逮捕・起訴は回避されると思われますが、逆に本人が徹底抗戦して辞職しないと主張し続ければ身柄を取るということもあり得るとのことでした」(同) 逮捕すべしというよりはむしろ「議員辞職すべし」といったところだろうか」』、「議員辞職」となれば、「捜査当局」は満足だろうが、「立花党首」の立場がなくなる。どうなるのか、要注目だ。 AERAdot「うつ病理由に辞職の水道橋博士への批判で露わに 「ハンディを抱える議員に優しくない」国会」 「身体や心に障害がある方は日本の人口の7%以上もいて、難しい病気の患者さんもたくさんいます。こうした当事者がもっと国会議員になりやすくするために、政治家はどのような仕組みや配慮が必要かを真剣に議論してほしいと思います」、「身体や心に障害がある方は日本の人口の7%以上もいて、難しい病気の患者さんもたくさんいます」、 「こうした当事者がもっと国会議員になりやすくするために、政治家はどのような仕組みや配慮が必要かを真剣に議論してほしいと思います」、その必要性については私は疑問だ。「国会議員」が「身体や心に障害がある方は日本の人口の」構成比と見合っている必要は必ずしもないと思う。例えば、喋れない人が喋れない人を代表する必要はない。 それにしても、「国会議員」の椅子にしがみつく議員が多いなかで、「うつ病を理由に参院議員を辞職した水道橋博士」は清々しい例として、拍手を送りたい。ただ、後任を「れいわ」の候補者内で1年交代で回すとの、やり方には絶対反対である。
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