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ブラック企業(その15)(「夢とやりがい」を強調する企業はなぜ危険なのか? ブラック企業チェックリスト、元内閣府の官僚が経験した「ブラックな組織」の実態 倒れる前に実践すべき“組織サバイバル術”とは、勤続10年で手取り15万 子を守る現場の低すぎる「命の価値」) [社会]

ブラック企業については、昨年2月26日に取上げた。今日は、(その15)(「夢とやりがい」を強調する企業はなぜ危険なのか? ブラック企業チェックリスト、元内閣府の官僚が経験した「ブラックな組織」の実態 倒れる前に実践すべき“組織サバイバル術”とは、勤続10年で手取り15万 子を守る現場の低すぎる「命の価値」)である。

先ずは、昨年5月6日付け弁護士ドットコムニュース「「夢とやりがい」を強調する企業はなぜ危険なのか? ブラック企業チェックリスト」を紹介しよう。
https://www.bengo4.com/c_5/n_14435/
・『職場でトラブルに遭遇しても、対処法がわからない人も多いでしょう。そこで、いざという時に備えて、ぜひ知って欲しい法律知識を笠置裕亮弁護士がお届けします。 連載の第13回は「入社後のブラック企業の見分け方」です。入社前には分からなかったものの、入社後に自分の会社に対して疑問を感じた人もいるかもしれません。そんなとき、労働時間や賃金、退職届や社風など、いくつかチェックポイントがあります。 本当に問題のある会社かどうかを見分ける方法について、笠置弁護士に解説してもらいました』、なるほど。
・『入社後に見分ける方法  新社会人になられた皆さんの中には、これまでののんびりとした学生生活から、1日の大半を仕事に費やさなければならないという環境の変化に戸惑っている方も多くいらっしゃるのではないかと思います。 さらに皆さんの中には、入社前に聞いていた話とは全く違い、入社した会社の職場環境があまりにも良くないことに苦しんでおられる方も多くいらっしゃるのではないかと思います。 以前、入社前の段階で「ブラック企業」かどうかを見分ける方法について解説をしました(https://www.bengo4.com/c_5/n_13649/)。 今回は、不運にも入社前の段階では見分けることができないまま、「ブラック企業」に入社してしまったかもしれない…という場合において、本当に問題のある会社かどうかを見分ける方法について解説したいと思います』、興味深そうだ。
・『ポイント1「長時間労働、労働時間管理なし」  まず、労働時間に関していうと、求人段階で社員の本当の残業時間を開示している会社はまずないと言ってよいでしょう。 そのため、入社前の段階ではそれほど忙しくなく、残業があったとしても月20時間程度と聞いていたにもかかわらず、実際には過労死ラインを超えるような長時間残業を強いられたり、有休を取得することを拒否されたといったトラブルはよく耳にします。 社員に対し結果を出すことを強く求めつつ、結果を出すためには長時間労働は当然であることを強調したり、労働時間管理をきちんと行わないなどといった会社は、要注意です』、「社員に対し結果を出すことを強く求めつつ、結果を出すためには長時間労働は当然であることを強調」、これはまさにやりがい詐欺だ。
・『ポイント2「固定残業代に注意」  賃金に関しても、注意すべきポイントがあります。トラブルになることが特に多いのは、固定残業代です。 例えば、入社前の段階では基本給額が月22万円だということで提示を受けていたにもかかわらず、入社した後に提示された契約書には、基本給が14万円、固定残業代が8万円と書かれており、いくら働いても残業代が出ないというケースです。 このような会社は、新入社員であっても長時間労働をあらかじめ見込んでいるため、人件費を節約するために固定残業代制度を導入しているわけですが、基本給額が14万円などという会社には誰も人が集まらないため、入社前の段階ではあたかも一般的な基本給額であるかのように装って求人を行っているのです。 このようなケースにおいて、国による監督が十分機能しているとは言えないため、問題のある求人条件が横行してしまっている状況にあります。なぜ基本給額をごまかすのかといえば、安く長時間労働をさせるためですから、社員の方々としては要注意です』、これは全くの詐欺だ。
・『ポイント3「辞められないような制度はないか?」  人事管理の面でいえば、社員が簡単に辞められないような制度を採用している会社は要注意です。 例えば、退職届を提出する期限を、退職日から相当前(3か月以上前など)に設定していたり、入社祝い金や会社の研修費用を支給しつつも貸し付けという形をとり、入社後5年以内に辞めた場合には返金を求めたりするなどし、トラブルに発展しているケースがあります。 前借金や損害賠償の予定については、実際には労基法により厳しく規制されています。 会社がなぜこのような制度を導入しているかと言えば、劣悪な職場環境等に耐えかねて社員がどんどん退職してしまうため、少しでも足止めをさせようとしているからです。 離職率の高さは、入社前の段階で「ブラック企業」を見分けるための有用なポイントですが、入社後の段階では、離職をさせないような仕組みを採用しているかどうかが重要なポイントだと言えるでしょう』、「離職をさせないような仕組みを採用しているかどうかが重要なポイント」、なるほど。
・『ポイント4「夢ややりがいの強調」  社風として、夢ややりがいを強調し、努力・気合・感謝などといった精神論を強調している会社も要注意です。会社としては、社員に対して精神論を強調することで、会社の劣悪な職場環境について目を向けさせないという狙いがあります。 本当は残業をさせている時間に応じて残業代を払わないといけないところを、「社員自身が好きでやっていることだから」と思わせることで、サービス残業をさせてしまえるわけです。会社にとってこれほど楽な人件費節約術はありません。 経営者の責務は、経営を安定させつつ、社員の生活や健康を考えなければならないはずなのですが、以上に共通しているのは、むしろ会社の出費の節約にばかり目を向けてしまっているということです。このような経営方針の職場は雰囲気が荒み、日常的にハラスメントが蔓延してしまいます。 ここでご紹介したポイントを参考にしていただきつつ、ご自身の会社に問題があるかどうかを今一度確認されてみてはいかがでしょうか。(笠置裕亮弁護士の連載コラム「知っておいて損はない!労働豆知識」では、笠置弁護士の元に寄せられる労働相談などから、働くすべての人に知っておいてもらいたい知識、いざというときに役立つ情報をお届けします』、「社風として、夢ややりがいを強調し、努力・気合・感謝などといった精神論を強調している会社」は前述の「やりがい詐欺」そのものだ。「共通しているのは、むしろ会社の出費の節約にばかり目を向けてしまっているということです。このような経営方針の職場は雰囲気が荒み、日常的にハラスメントが蔓延してしまいます」、こんなブラック企業は働く価値がないので、早目に退職するに越したことはなさそうだ。

次に、6月3日付けダイヤモンド・オンラインが転載したAERAdot「元内閣府の官僚が経験した「ブラックな組織」の実態 倒れる前に実践すべき“組織サバイバル術”とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/309770
・『仕事にやりがいを感じていている人でも、労働環境がブラックな人でも、転職を考えている人の多くは「人間関係」に悩み、それを主な転職理由としています。気まぐれな上司、言うことをきかない部下、一方的に敵視してくる同期……組織とは人がつくり、人で成り立つものであるがゆえに、人間関係の悩みは尽きません。自分が所属する組織の中でどう振る舞い、どのように人間関係を築くかは、決してAIには代替できない「最強のスキル」なのです。特に規律を重んじる官僚組織では、それはより顕著になります。内閣府の元官僚・久保田崇さんはハードな現場で「処世術(スキル)」を武器に生き残ってきました。その一部を『官僚が学んだ究極の組織内サバイバル術』(朝日新書)より抜粋。今回は「ブラックな職場から身を守る術」というテーマで、心身を病む前に人間関係を“やり過ごす”スキルを紹介します。 霞が関の官庁に勤めていた20代から30代の頃は月に150時間の残業をしていました。残業の多さやストレスに耐えかねて体に不調が現れたり国会内で倒れたこともあります。しかし、私にとって幸いだったことは、苦しくてつらい法案作成作業の先には、生きづらさを抱える当事者を支援する仕組みが整い、少しでも社会がよくなるという実感が持てたことでした。さらには、その苦しいときを共に励まし合いながら過ごすことができた上司や同僚、部下などチームのメンバーに恵まれたことです。それがなかったら、とてもやっていけなかったに違いありません。 『ブラック霞が関』(2020年、新潮新書)の著者で友人の千正康裕さんがこう述べています。) <厚労省を含め霞が関では、仕事が増え続ける一方で、人員は減り、長時間労働が常態化しています。長時間労働そのものの問題もありますが、より本質的なつらさは、社会の役に立ちたい、この国で暮らしている人たちの生活を少しでもよくしたい、そのための政策をつくれるはずだという思いで官僚になったのに、そういう実感が持てずにいることです。> 長時間労働が常態化していた過去の自分を振り返ってみても、千正さんのいう通りだと思います。人は、多少残業が多くても、その作業の先にお客さんの笑顔や明るい未来が見えていれば、なんとか頑張っていけます。その逆に、その作業がなんの役に立っているかわからない、あるいは後ろ向きな内容であるとき、人の精神は病んでいきます。それに加えて、パワハラ上司に心ない言葉をぶつけられたり人を人と思わないような扱いをされれば耐えきれずに病んだり壊れたりするのは当たり前です。 長時間労働を正当化してはいけませんし、それを強いる組織(会社)に問題があることは明らかですが、どうしても今すぐにそれを改善することが難しい場合、組織や上司はその先にあるビジョンを共有したりチームが励まし合うような雰囲気づくりなどを心がけていただきたいと思います』、「人は、多少残業が多くても、その作業の先にお客さんの笑顔や明るい未来が見えていれば、なんとか頑張っていけます。その逆に、その作業がなんの役に立っているかわからない、あるいは後ろ向きな内容であるとき、人の精神は病んでいきます。それに加えて、パワハラ上司に心ない言葉をぶつけられたり人を人と思わないような扱いをされれば耐えきれずに病んだり壊れたりするのは当たり前です」、なるほど。
・『長時間労働から身を守る方法  とはいえ、長時間労働を避けられるならば、避けるに越したことはありません。個人として身を守る方法を身につけた方が良いでしょう。 1 業務を効率化する 2 人間関係を向上させて余計な業務を生じさせない 3 職場改善提案を行う ここでは3つの方法に触れます。 1つ目は業務の効率化です。電子化によるスピードアップなどは誰しも取り組んでいることかと思いますが、その作業のアウトプットの「イメージ」や「完成度」についても吟味すべきです。 さまざまな観点からの批判やツッコミに耐えられるようによく練ってつくった文章や資料が、発注者の課長に見せたところ、よく見ずにボツにされた。そんな経験があなたにもあるのではないでしょうか? これは、発注者が求めるアウトプットの「イメージ」が受注者のあなたの「イメージ」とずれていたのでしょう。また、「イメージ」は一致していたとしても、発注者が求めているのはもっと簡易な資料であって、あなたが労力をそこまで投入して完成度を高める必要はなかったというケースも良くあることです。このようなズレを無くすために、労力を投入する前にアウトプットのラフイメージを持って発注者と打ち合わせをすべきです。そうすれば無駄な作業を減らすことができます。) 2つ目は上司を含む職場内の人間関係の構築です。これをすることによって、あなたが担当する仕事がスムーズに進みます。逆にこれを怠ると、「俺はこの件を聞いていないぞ」などと言われ、仮に相手に悪意がないとしても無駄な作業が生じたり、時間が余計にかかったりしてしまいます。 3つ目は、長時間労働が生じていることや人員の増加が必要であること、作業を効率化するための電子・ペーパーレス化などを人事課や総務課などに提案することです。これは個人が提案するより人数を集めたほうが効果的なので、職場の仲間にも相談して連携して声をあげましょう。職場に労働組合があるのなら、そのような場を通じて声をあげるやり方もあるでしょう。私は内閣府に勤めていた頃は、省庁横断の若手官僚の会「新しい霞ヶ関を創る若手の会(プロジェクトK)」の仲間とともに職場環境の改善提案を行いました』、「労力を投入する前にアウトプットのラフイメージを持って発注者と打ち合わせをすべき」、「上司を含む職場内の人間関係の構築」、「長時間労働が生じていることや人員の増加が必要であること、作業を効率化するための電子・ペーパーレス化などを人事課や総務課などに提案すること」、これらは確かに有効なようだ。
・『「その人を変えられる」と思わないこと  ワンマン社長やパワハラ上司に悩んだ経験がある方は多いと思います。本書は、人間関係をサバイバルすることを推奨していますが、心身がすでに限界の状態にある方に、無理してでも頑張れというつもりはありません。限界の状態になる前に、まずは医療機関を受診されることをおすすめします。 そして、原因となっている相手を「変えられる」と思わないことが大切です。こちらがあいさつをしても返してこないような相手に変わってほしいと思うから、腹を立てたり嫌な気持ちになったりするのです。「この人はこういう人なのだ」と受け入れること、その人と距離を置いてできるだけ関わらないようにすること(仕事上の最小限の付き合いに止めること)が大事です。 「その人を変える」より、自分の考え方や対応方法を変えることの方が有効ですので、難しい人間関係においても、なんとかやり過ごす術(サバイバル術)を身につけることが大事です。そして、難しい人間関係のサバイバル術を身につければ、新しい環境や転職先においても、活躍できる場面が多くなります。なぜなら、逆説的になりますが、転職理由で職場の人間関係を挙げる人が多いということは、それをサバイバルできる能力を身につけた人は貴重な存在となり、どんな職場でもしなやかに働くことができるからです。 また、組織で新規事業等への人事配置を担当した経験から言えば、複雑な人間関係を問題なくやり過ごせそうな職員は、それだけで評価の対象となります。とは言え、すでに述べたようにその相手が暴力やパワハラ、違法行為や不正に関わっている場合は、記録を残すなどして毅然(きぜん)とした対処をすることをおすすめします。(久保田崇氏の略歴はリンク先参照)』、「「その人を変える」より、自分の考え方や対応方法を変えることの方が有効ですので、難しい人間関係においても、なんとかやり過ごす術(サバイバル術)を身につけることが大事です。そして、難しい人間関係のサバイバル術を身につければ、新しい環境や転職先においても、活躍できる場面が多くなります。なぜなら、逆説的になりますが、転職理由で職場の人間関係を挙げる人が多いということは、それをサバイバルできる能力を身につけた人は貴重な存在となり、どんな職場でもしなやかに働くことができるからです」、「難しい人間関係においても、なんとかやり過ごす術(サバイバル術)を身につけることが大事です。そして、難しい人間関係のサバイバル術を身につければ、新しい環境や転職先においても、活躍できる場面が多くなります」、確かにその通りなのかも知れない。

第三に、本年3月8日付け日経ビジネスオンラインが掲載した健康社会学者(Ph.D.)の河合 薫氏による「勤続10年で手取り15万 子を守る現場の低すぎる「命の価値」」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00238/
・『今回は「命の価値」について考えてみる。 ーー突然ですが。 わたしのお給料は基本給 11万5000円 そこに手当がついて、手取り15万円ほど。賞与はほぼ寸志です。年収は250万に届きません。指定管理(注)の児童館長として8年。1円も上がっていません。(中略) とてもいい仕事。だいすきな仕事。 だけど、今日会社から言い渡された 更なる減額と職員数カット。 心が折れかけています』、「給料」がずいぶん安いのに驚かされた。
(注)指定管理:指定管理者制度とは、公の施設をノウハウのある民間事業者等に管理してもらう制度のこと(自治調査会、ニュースレター019)
・『「お金ない! 無理!」と民間に丸投げ  2022年の11月28日、児童館の館長を務める40代の女性が投稿した冒頭のツイートは、1.4万リツイートされた。NHKが女性に取材したところ、児童厚生員の資格を持つこの女性は、週6日勤務で、1日の労働時間は9時間ほど。基本給は、この10年近くの間で1円も上がってないという。そう、10年。地域の子どもの遊び場であり、学びの場であり、子どもの成長を支える、児童館の館長さんの基本給が、「10年で、1円も上がってない」。 「土日も開館している上、悩みを抱える子どもから夜中に電話がかかってくることもある」という(NHKの取材から)、子どもを支える“美しい仕事”をしている人たちの生活が、ちっとも“美しくない”状況に追いやられている。 低賃金の理由は「指定管理者制度」。経費削減と市民へのサービス向上を目的に、公共施設の管理・運営に民間企業などの参入を認める制度で、03年の地方自治法の改正に伴って導入された。 市民サービス向上と言えば聞こえはいいが、本来は公務員がやるべき仕事を、「お金ない! 無理!」と民間に丸投げした、自治体による自治体のための制度と言えよう。 実際、導入が認められた当初から、「経費は削られるばかりなのに、依頼される業務は増え続けている」「これができてない、あれが足りないと責められるばかりで採算が取れない」といった窮状が指摘され、撤退したがる会社は年々増加した。最近は、「公募しても手を挙げる会社がゼロ」という事態も相次いでいるという(資料、https://www.nikkei.com/article/DGKKZO67131970U2A221C2EA5000/)。 経費が減らされても、目の前には子どもたちがいる。“ここ”をよりどころにする子どもだ。) 現場で働く人たちは、自分たちの賃金を減らすことによってしか、「市民のため」のサービスを運営、維持できない。行政のスリム化により急増した「低賃金の非正規公務員」と同様の構図が、公立の児童館、図書館、美術館、スポーツセンター、ユースホステルなどでも起きているのだ。 22年8月にもある地方都市の公立図書館で、非正規の図書館員(会計年度任用職員)として働く20代女性が、「最低賃金+40円、手取り9万8000円」で、一人暮らしができないような労働条件は不当だとし、SNS(交流サイト)で「私たちを助けてください」と訴えた。7万人超の賛同署名が集まり、22年11月7日に文部科学省と総務省に要望書を提出した。 「雇用年限の撤廃」「最低賃金2000円」「退職金の支給」「図書館員の研修充実」を提案するとともに、図書館員の勤務実態について調査を行うよう求めている』、「市民サービス向上と言えば聞こえはいいが、本来は公務員がやるべき仕事を、「お金ない! 無理!」と民間に丸投げした、自治体による自治体のための制度」、「現場で働く人たちは、自分たちの賃金を減らすことによってしか、「市民のため」のサービスを運営、維持できない。行政のスリム化により急増した「低賃金の非正規公務員」と同様の構図が、公立の児童館、図書館、美術館、スポーツセンター、ユースホステルなどでも起きているのだ」、なるほど。
・『やりきれない現実が続いている  共働き世帯が増えた今、児童館は大切な「子どもの居場所」だ。 15年には、鎌倉市立図書館の公式Twitterが「学校が始まるのが死ぬほどつらい子は、学校を休んで図書館へいらっしゃい」とつぶやき、話題になったこともある。 その公共図書館における非正規雇用職員の割合は70%超だ(資料、https://www.jla.or.jp/Portals/0/data/iinkai/seisakukikaku/chousakekka_20100608%202.pdf)。 学童保育、保育士、児童相談員という子どもの生活を支えるケア労働は、多くの非正規雇用の大人によって支えられている。どれも経験とスキルが極めて重要な仕事なのに、長く経験を積んでも昇給はなく、退職金もない。 政府は「異次元の少子化対策」をうたい、誰もが「子どもは国の宝」と声高に言うのに、数少ない大切な子どもたちに寄り添う人たちが、「普通に生活できない」って……、おかしくないですか? 低賃金のケア労働者に支えられているのは、子どもだけではない。生活困窮者をケアする生活保護面接相談員やハローワークの相談員も非正規・非常勤化が拡大している。「仕事を失った人」を、不安定な身分かつ低賃金の職員=非正規公務員がサポートするという、やりきれない現実が続いているのである。) これまでも地方自治体に講演会などでお邪魔する度に、非正規公務員の「耳を疑うような過酷な現実」を聞かされてきた。昨今の急激な物価高騰もあり、「低賃金」という言葉では言い尽くせないほどのひどい報酬だ。 新型コロナウイルス禍で非正規という雇用形態がいかに脆弱であり、最低賃金の低さにも問題があることは明々白々だった』、「学童保育、保育士、児童相談員という子どもの生活を支えるケア労働は、多くの非正規雇用の大人によって支えられている。どれも経験とスキルが極めて重要な仕事なのに、長く経験を積んでも昇給はなく、退職金もない。 政府は「異次元の少子化対策」をうたい、誰もが「子どもは国の宝」と声高に言うのに、数少ない大切な子どもたちに寄り添う人たちが、「普通に生活できない」って……、おかしくないですか?」、「新型コロナウイルス禍で非正規という雇用形態がいかに脆弱であり、最低賃金の低さにも問題があることは明々白々だった」、その通りだ。
・『申し訳ないけど「人を雇ってはいけない」  なのに、20年「引き上げなければならなかった最低賃金」は、凍結された。「雇用維持」という4文字が連日飛び交い、「33時間に及ぶ協議の結果、20年度の最低賃金は、事実上据え置きで決着」したのだ。 「最低賃金を上げると、もっともっと雇用に悪影響が出る」という理屈に基づく決定だった。 翌21年も最低賃金の引き上げを巡り、「雇用を維持するためには~」「雇用維持が一番大事~」「雇用維持ができなくなる~」など、「雇用維持」という言葉が飛び交った。 結果的には、全国平均で過去最大の28円増となり、「引き上げ率は3.1%!」とメディアは騒ぎ立てたが、日本の最低賃金の水準が先進国の中で際立って低いことは周知の事実だし、日本が据え置いた20年も諸外国では賃上げが相次いでいたのだから、3%程度ではむしろ少ないくらいだった。 おまけに、テレビの画面には「時給を28円引き上げると、月額〇〇円で、年間〇万円の負担増ですよ。これじゃあやっていけない」と苦悩する経営者の表情が映し出された。 中小企業の経営が厳しいことは十分に理解できる。でも、そこで働く人が生活できないレベルの賃金しか払えない経営者は……、申し訳ないけど「人を雇ってはいけない」と思う。 最低賃金法の第1条には、「この法律は、賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もつて、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする」とある。 最低賃金法9条2項には「地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならない」とあるが、07年の同法改正で同条に「労働者の生計費を考慮するに当たっては、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとする」が加わった。) これが意味するものは何か? 最低賃金は「働く人が普通に生活できる生計費」が最も重視されていると考えるのが、妥当ではないのか。 なのに、最低賃金の議論の度、「企業の支払い能力」ばかりにスポットが当てられ、現場の人の生活は無視され続けている』、「最低賃金の議論の度、「企業の支払い能力」ばかりにスポットが当てられ、現場の人の生活は無視され続けている」、確かに不当だし、こんなことを続けていてはデフレからの脱却など無理だ。
・『子育てに必要な世帯所得が不足する事態  トヨタやホンダは満額回答! 「春闘」で大幅な賃上げ相次ぐ、などと景気のいいニュースばかりが飛び交っているけど、私たちの生活に不可欠なサービスを提供している人たちの生活は? 正社員の賃金アップばかりに注目が集まってるけど、働く人の4割近くを占める非正規雇用の賃金は? むろん、パートタイムなどの非正規従業員の時給を引き上げる動きはある。しかし、その多くは「一部の大企業」だ。 働く人の7割近くが中小企業に勤め4割近くが非正規労働者で、非正規を含めた給与所得者の2割強は、年収が200万円以下のワーキングプア。300万円以下は全体の3分の1を上回り、400万円以下は半数を超える。 私は常々、「働くこと、それにどう報いるのか?」は、その国の本質的な「人」への考え方、価値観を物語るものだと訴えてきた。それは働く人の「命の価値」を考えることに等しい。 「非正規」という単なる雇用形態により、「命の価値」が軽んじられている。労働者全体の4割近くまで増えた非正規の賃金を時給ベースで見ると、正社員の平均時給が2500円であるのに対し、派遣社員は1660円、パートタイムは1050円だ。 静岡県立大短期大学部の中澤秀一准教授は、「最低賃金は全国一律で1500円は最低限必要」と試算している。 モデルにしているのは単身で健康な20代男性。住む場所は、都内ではなく地方。車を持つ場合は、7年落ちの軽自動車を中古で購入し、6年以上使う。しかし、1500円でなんとか生活できても、家庭を持ったり親の介護を補助したりする金銭的な余裕はないという。 エッセンシャルワーカーに、非正規雇用の女性が多いことを鑑みれば、最低賃金が少子化対策にも影響を及ぼすことは明らかであろう。日本の労働者の賃金は1990年代以降上がってないどころか低下する一方で、女性の労働者は増え共働き世帯が増えているのに、女性の賃金は安いまま。それは「子育てに必要な世帯所得が不足する事態」を招いていると考えて当然であろう。) コロナ禍では、エッセンシャルワーカーという新しい言葉の下、「みんなで感謝しよう!」と建物をライトアップしたり、皆で一斉に拍手をしたりという試みがあちこちで起きた。 しかし、一方で、エッセンシャルワーカーの人たちへの、カスハラ(カスタマーハラスメント)が横行した。 「私たち」の生活が、ホワイトカラーの正社員による仕事よりも、むしろ非正規で働く人が多いエッセンシャルワーカーに支えられていることを、誰もが痛感したはずなのに。 これを「職業差別」と言わずしてなんと言えよう』、「日本の労働者の賃金は1990年代以降上がってないどころか低下する一方で、女性の労働者は増え共働き世帯が増えているのに、女性の賃金は安いまま。それは「子育てに必要な世帯所得が不足する事態」を招いていると考えて当然であろう」、「エッセンシャルワーカーの人たちへの、カスハラ・・・が横行した」、虐げられている「エッセンシャルワーカー」にハラスメントを働く人々の心の貧しさには空いた口が塞がらない。
・『とてもいい仕事。だいすきな仕事  しかも、低賃金の仕事は若い人たちから敬遠される。やっと入ってくれた若者でさえ、「生活できない」現実に幻滅し仕事を辞め、働く人たちの高齢化にも拍車がかかる。 低賃金の代名詞だった「介護職」の現場でも、高齢化は著しい。 2022年8月に公表された介護労働安定センターの「介護労働実態調査」によると、各職種の中で最も平均年齢が高いのが訪問ヘルパーで、54.4歳(前回調査より0.3ポイント高い)。60歳以上の訪問ヘルパーの割合は37.6%(同0.6ポイント高い)。 そのうえ、訪問ヘルパーの年齢層で最も多いのは「60歳以上65歳未満」の13.2%。「55歳以上60歳未満」が12.3%、「70歳以上」は12.2%と続いている。 ケア労働などのヒューマンサービスに関わる人たちは、「人が好き、人の役に立ちたい」という気持ちが強い、とても心優しい人たちだ。 ――とてもいい仕事。だいすきな仕事。 くしくも冒頭の児童館の館長さんは、こうつぶやいた。「私」たちの生活は、やりがい搾取により回っているのだ。 最後に実に興味深く、考えさせられるデータを紹介する(資料、https://www.jtuc-rengo.or.jp/activity/roudou/shuntou/2020/wage_report/wage_report.pdf)。 以下の図は、非役職者は実線、課長職は点線、部長職は太線で、その推移を企業規模ごとに見たもので、白斑点のタテ棒は、部長級と非役職の賃金差、黒いタテ棒は課長級と非役職の賃金差だ。 ご覧の通り、1000人以上規模の大企業で賃金格差が著しく大きくなっていることが分かる。部長級と非役職の差は約40から約63へとおよそ23ポイント拡大、課長級と非役職とでは約30から約42へと12ポイントほど広がった。 日本労働組合総連合会「連合・賃金レポート2019 -賃金30年史-」 この報告書では大企業で見られる役職間賃金格差は、1990年代以降の新自由主義やグローバリズムの進行が影響していると指摘。最初に、上場企業役員の報酬が上昇し始め、それに引きずられる形で「部長級」が上昇。「課長級」は10年遅れで上昇したものの2010年以降は小休止状態だ、という。 大きいもの、強きもの、が優先される社会。これが今の日本の現実。 小さいもの、弱きものの「命の価値」は?』、「最初に、上場企業役員の報酬が上昇し始め、それに引きずられる形で「部長級」が上昇。「課長級」は10年遅れで上昇したものの2010年以降は小休止状態だ」、しかも中堅・中小企業と大企業との格差は広がっている格差社会、やはり「新自由主義やグローバリズムの進行」の「影響」は大きいようだ。「ケア労働などのヒューマンサービスに関わる人たちは、「人が好き、人の役に立ちたい」という気持ちが強い、とても心優しい人たちだ。 ――とてもいい仕事。だいすきな仕事。 くしくも冒頭の児童館の館長さんは、こうつぶやいた。「私」たちの生活は、やりがい搾取により回っているのだ」、社会を支える「ケア労働」は大きく歪められたようだ。
タグ:ブラック企業 (その15)(「夢とやりがい」を強調する企業はなぜ危険なのか? ブラック企業チェックリスト、元内閣府の官僚が経験した「ブラックな組織」の実態 倒れる前に実践すべき“組織サバイバル術”とは、勤続10年で手取り15万 子を守る現場の低すぎる「命の価値」) 弁護士ドットコムニュース「「夢とやりがい」を強調する企業はなぜ危険なのか? ブラック企業チェックリスト」 ポイント1「長時間労働、労働時間管理なし」 「社員に対し結果を出すことを強く求めつつ、結果を出すためには長時間労働は当然であることを強調」、これはまさにやりがい詐欺だ。 ポイント2「固定残業代に注意」 これは全くの詐欺だ。 ポイント3「辞められないような制度はないか?」 「離職をさせないような仕組みを採用しているかどうかが重要なポイント」、なるほど。 ポイント4「夢ややりがいの強調」 「社風として、夢ややりがいを強調し、努力・気合・感謝などといった精神論を強調している会社」は前述の「やりがい詐欺」そのものだ。「共通しているのは、むしろ会社の出費の節約にばかり目を向けてしまっているということです。このような経営方針の職場は雰囲気が荒み、日常的にハラスメントが蔓延してしまいます」、こんなブラック企業は働く価値がないので、早目に退職するに越したことはなさそうだ。 ダイヤモンド・オンライン AERAdot「元内閣府の官僚が経験した「ブラックな組織」の実態 倒れる前に実践すべき“組織サバイバル術”とは」 『ブラック霞が関』(2020年、新潮新書) 「人は、多少残業が多くても、その作業の先にお客さんの笑顔や明るい未来が見えていれば、なんとか頑張っていけます。その逆に、その作業がなんの役に立っているかわからない、あるいは後ろ向きな内容であるとき、人の精神は病んでいきます。それに加えて、パワハラ上司に心ない言葉をぶつけられたり人を人と思わないような扱いをされれば耐えきれずに病んだり壊れたりするのは当たり前です」、なるほど。 「労力を投入する前にアウトプットのラフイメージを持って発注者と打ち合わせをすべき」、「上司を含む職場内の人間関係の構築」、「長時間労働が生じていることや人員の増加が必要であること、作業を効率化するための電子・ペーパーレス化などを人事課や総務課などに提案すること」、これらは確かに有効なようだ。 「「その人を変える」より、自分の考え方や対応方法を変えることの方が有効ですので、難しい人間関係においても、なんとかやり過ごす術(サバイバル術)を身につけることが大事です。そして、難しい人間関係のサバイバル術を身につければ、新しい環境や転職先においても、活躍できる場面が多くなります。なぜなら、逆説的になりますが、転職理由で職場の人間関係を挙げる人が多いということは、それをサバイバルできる能力を身につけた人は貴重な存在となり、どんな職場でもしなやかに働くことができるからです」、 「難しい人間関係においても、なんとかやり過ごす術(サバイバル術)を身につけることが大事です。そして、難しい人間関係のサバイバル術を身につければ、新しい環境や転職先においても、活躍できる場面が多くなります」、確かにその通りなのかも知れない。 日経ビジネスオンライン 河合 薫氏による「勤続10年で手取り15万 子を守る現場の低すぎる「命の価値」」 「給料」がずいぶん安いのに驚かされた。 (注)指定管理:指定管理者制度とは、公の施設をノウハウのある民間事業者等に管理してもらう制度のこと(自治調査会、ニュースレター019) 「市民サービス向上と言えば聞こえはいいが、本来は公務員がやるべき仕事を、「お金ない! 無理!」と民間に丸投げした、自治体による自治体のための制度」、「現場で働く人たちは、自分たちの賃金を減らすことによってしか、「市民のため」のサービスを運営、維持できない。行政のスリム化により急増した「低賃金の非正規公務員」と同様の構図が、公立の児童館、図書館、美術館、スポーツセンター、ユースホステルなどでも起きているのだ」、なるほど。 「学童保育、保育士、児童相談員という子どもの生活を支えるケア労働は、多くの非正規雇用の大人によって支えられている。どれも経験とスキルが極めて重要な仕事なのに、長く経験を積んでも昇給はなく、退職金もない。 政府は「異次元の少子化対策」をうたい、誰もが「子どもは国の宝」と声高に言うのに、数少ない大切な子どもたちに寄り添う人たちが、「普通に生活できない」って……、おかしくないですか?」、「新型コロナウイルス禍で非正規という雇用形態がいかに脆弱であり、最低賃金の低さにも問題があることは明々白々だった」、その通りだ 「最低賃金の議論の度、「企業の支払い能力」ばかりにスポットが当てられ、現場の人の生活は無視され続けている」、確かに不当だし、こんなことを続けていてはデフレからの脱却など無理だ。 「日本の労働者の賃金は1990年代以降上がってないどころか低下する一方で、女性の労働者は増え共働き世帯が増えているのに、女性の賃金は安いまま。それは「子育てに必要な世帯所得が不足する事態」を招いていると考えて当然であろう」、「エッセンシャルワーカーの人たちへの、カスハラ・・・が横行した」、虐げられている「エッセンシャルワーカー」にハラスメントを働く人々の心の貧しさには空いた口が塞がらない。 「最初に、上場企業役員の報酬が上昇し始め、それに引きずられる形で「部長級」が上昇。「課長級」は10年遅れで上昇したものの2010年以降は小休止状態だ」、しかも中堅・中小企業と大企業との格差は広がっている格差社会、やはり「新自由主義やグローバリズムの進行」の「影響」は大きいようだ。 「ケア労働などのヒューマンサービスに関わる人たちは、「人が好き、人の役に立ちたい」という気持ちが強い、とても心優しい人たちだ。 ――とてもいい仕事。だいすきな仕事。 くしくも冒頭の児童館の館長さんは、こうつぶやいた。「私」たちの生活は、やりがい搾取により回っているのだ」、社会を支える「ケア労働」は大きく歪められたようだ。
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恋愛・結婚(その6)(「卒婚」したい人は既婚者の3割!実際に踏み切った7%の夫婦の事情とは、浜田雅功・小川菜摘夫妻は「卒婚」?別居でも離婚でもない新しい夫婦の形、生涯現役!英国高齢者たちの自由な「恋愛事情」 高齢者は恋愛をしないなんて誰が決めた?) [社会]

恋愛・結婚については、昨年3月15日に取上げた。今日は、(その6)(「卒婚」したい人は既婚者の3割!実際に踏み切った7%の夫婦の事情とは、浜田雅功・小川菜摘夫妻は「卒婚」?別居でも離婚でもない新しい夫婦の形、生涯現役!英国高齢者たちの自由な「恋愛事情」 高齢者は恋愛をしないなんて誰が決めた?)である。

先ずは、昨年4月15日付けダイヤモンド・オンライン「「卒婚」したい人は既婚者の3割!実際に踏み切った7%の夫婦の事情とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/300355
・『離婚はしないものの、夫婦関係をリセットし、夫・妻がそれぞれの人生を自由に生きる“卒婚”。実際に卒婚願望を持つ夫婦の事情について、国内最大級の既婚者マッチングサービス「既婚者クラブ」の副管理人で、夫婦事情に詳しいあいこ氏に聞いた』、興味深そうだ。
・『卒婚したい人は既婚者の約3割  「卒婚」といえば、加山雄三や清水アキラ夫妻といった芸能人の「卒婚宣言」で度々注目集めるワードだが、そもそもどのような概念なのか。 「卒婚の概念はまだ曖昧な面もあるのですが、大まかには、夫婦関係を継続するか迷ったとき、離婚はしないものの、婚姻関係を“卒業”し、互いのプライベートに干渉しない夫婦の形と言えるでしょう。卒婚のルールは夫婦それぞれが決めるもので、生活スタイルや家計の事情などにより、さまざまです」 既婚者合コンなどのイベントを企画する「e-venz」は昨年10月、全国の30~59歳の既婚男女1000人を対象に行った「卒婚」に関するアンケート結果を発表した。その調査結果(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000039.000059676.html)によれば、既婚男女の約3割が「卒婚してみたい」と回答したという。ただし、実際に卒婚している人は7%にとどまっている。) 卒婚後、同居し続ける夫婦もいれば、別居する夫婦もある。同居の場合は、相手をただの同居人として扱うことになり、パートナーの行動に口出しをしたり、甘えたりすることもなくなるという。家計も、妻が扶養に入ったまま、夫と妻それぞれが経済的に自立するなど、夫婦によって事情は異なる。 「パートナー以外との性交渉を許すかも、夫婦それぞれの判断によります。世間的には、結婚したまま他の人と性交渉すると不倫だと断罪されがちですが、法的には、既婚者がパートナー以外と性的関係を持っても、刑法違反ではありません。もちろん、私的な裁判は起こりえますが、そもそも“相手に干渉しない”卒婚では、お互いが納得ずくなら問題ナシというケースが珍しくありません」 「夫が風俗に行くのが浮気に当たるか」については、夫婦によって見解が異なるだろう。それと同じく、卒婚時にパートナー以外との性交渉を許すかどうかも、夫婦によって異なるようだ。 「なかには、離婚の一つ前の段階として、卒婚を選択される夫婦もいます。たとえば、一度別居して物理的な距離が離れたものの、互いの関係が改善されなかった夫婦が、精神的に距離を置く“卒婚”を選択する。こうして、夫婦が互いの関わり方を見つめ直す機会になるのが卒婚なのです」』、「「卒婚の概念はまだ曖昧な面もあるのですが、大まかには、夫婦関係を継続するか迷ったとき、離婚はしないものの、婚姻関係を“卒業”し、互いのプライベートに干渉しない夫婦の形と言えるでしょう。卒婚のルールは夫婦それぞれが決めるもので、生活スタイルや家計の事情などにより、さまざまです」、「全国の30~59歳の既婚男女1000人を対象に行った「卒婚」に関するアンケート」では、「既婚男女の約3割が「卒婚してみたい」と回答」、「ただし、実際に卒婚している人は7%にとどまっている」、なるほど。
・『卒婚に踏み切るのは50代夫婦が最も多い  どのような理由で、卒婚に踏み切るケースが多いのだろうか。 「卒婚願望を持つのは、子どもが独り立ちした50代が最も多く、実行しているのもその年代がほとんどです。数十年連れ添うと、パートナーに家族としての情はあっても、性的魅力を感じられなくなるのは仕方ないこと。これが卒婚の理由となる事例が多いです」 さらに、卒婚願望を持つ人の考え方には男女差がある、とあいこ氏は続ける。 「女性の場合、デートで褒められるなどして、精神的な承認欲求を満たしたい人が多いです。結婚後、性的対象として見られる機会が減ったことで、『独身時代のようにもう一度ドキドキしたい』という願いがあります。一方、男性は、『妻に文句を言われずに遊びたい』と、自分の性的欲求のために卒婚を選ぶ傾向です。特に妻に本当の性癖を伝えられない男性が多いです」 ほかにも、「相手が不倫した」「もう一度自分の人生を充実させたい」など、夫婦が卒婚を選ぶ背景はさまざま。いずれの事情にも共通するのは、「今のままではお互いが満たされない」という現実だ。 「一度卒婚を試すと、それぞれの生活に潤いが生まれ、ずっと卒婚のままでいいと考える人は多いです」』、「卒婚願望を持つのは、子どもが独り立ちした50代が最も多く、実行しているのもその年代がほとんどです。数十年連れ添うと、パートナーに家族としての情はあっても、性的魅力を感じられなくなるのは仕方ないこと。これが卒婚の理由となる事例が多いです」、「「女性の場合、デートで褒められるなどして、精神的な承認欲求を満たしたい人が多いです。結婚後、性的対象として見られる機会が減ったことで、『独身時代のようにもう一度ドキドキしたい』という願いがあります。一方、男性は、『妻に文句を言われずに遊びたい』と、自分の性的欲求のために卒婚を選ぶ傾向です。特に妻に本当の性癖を伝えられない男性が多いです」、「卒婚願望」の男女の違いはさもありなんだ。
・『卒婚願望を抱えつつも実行できない事情  ここまでの話を聞くと、夫婦が互いの意思を尊重する“卒婚”は、前向きな選択に思われる。だが、前述の「e-venz」のデータによれば、卒婚願望を抱えつつも実行していない人は多い。その理由は何か。 「単純に、卒婚は夫妻双方の合意がないとできないからです。自分が卒婚したくても、パートナーが同じ気持ちとは限りません。それに、そもそも卒婚の概念が明確に定義されていない現段階では、『卒婚したい』と提案しても『何言ってんの?』と返されることも少なくありません」 加えて、そもそも「卒婚」の文字が頭をよぎっても、その覚悟が本物かどうか判断できず、実行できない人もいる。ちょっとしたけんかのたびに「卒婚したい」と感じても、また一緒に過ごせば相手を好きになってしまうこともある。浮気などの決定的な要因があれば別だが、小さな不満の積み重ねで卒婚を決断できる人は少ないそうだ。 「現実的には、金銭的なハードルもあります。卒婚は離婚とは異なり、法的な婚姻関係は続くため、パートナーや夫婦間の子どもに対して、最低限の扶養の責任は残る。男性が卒婚して他の人と付き合うためには、妻や子を養いつつ、デート代もかさむことになり、金銭的な負担も大きいです」 それに、卒婚したからといって、必ずしも良い結果を得られるとも限らない。 「卒婚後、いざ妻が彼氏をつくると『どんな男だ』と問い詰めてしまう人もいます。お互いを束縛しないと決めた関係とはいえ、一度愛した相手の恋愛事情が気になるのは必然でしょう。こうしたトラブルが積み重なり、関係がより悪化、最終的に離婚に至る可能性もあります」 このほか、夫婦が合意した上で新しい恋人を見つけようとしても、「既婚者には手を出せない」と、相手にされないことも多いそうだ。 「世間では卒婚に対する認知度はまだ低く、今後マジョリティーになるのも難しい概念です。とはいえ、卒婚は本来、『互いの欲望を満たし合えない』と悩む夫婦が現状を打破し、お互い一度きりの人生をより良いものにするための考え方。お互いのことを思い合い、卒婚がベストな選択だと考える人もいるんです」 本記事は不倫を助長・推奨するものでは決してない。だが、夫婦関係のあり方が多様化する中、相手の幸せを尊重するために“卒婚”を選ぶ人も増えていくのかもしれない』、「「現実的には、金銭的なハードルもあります。卒婚は離婚とは異なり、法的な婚姻関係は続くため、パートナーや夫婦間の子どもに対して、最低限の扶養の責任は残る。男性が卒婚して他の人と付き合うためには、妻や子を養いつつ、デート代もかさむことになり、金銭的な負担も大きいです」、確かに「金銭的な負担も大きい」のは大きな障害だろう。「夫婦関係のあり方が多様化する中、相手の幸せを尊重するために“卒婚”を選ぶ人も増えていくのかもしれない」、その通りだ。

次に、本年3月13日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した夫婦問題研究家の岡野あつこ氏による「浜田雅功・小川菜摘夫妻は「卒婚」?別居でも離婚でもない新しい夫婦の形」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/319110
・『長年連れ添ったパートナーと離婚する「熟年離婚」が増えています。うまくいかなくなった原因や経過は人それぞれですが、夫婦問題の専門家である筆者は「離婚の前に卒婚という選択肢もある」といいます。離婚に踏み切る前に、卒婚を考えたほうがいいのはどんな夫婦なのか、チェックポイントをまとめました』、第一の記事をより具体的に見たものだが、「離婚の前に卒婚という選択肢もある」というのは分かり易い。
・『連れ添って20年以上、熟年離婚の相談が増えている  長年連れ添ったパートナーと別れを決める、熟年離婚の相談が増えています。たとえば、厚生労働省が発表しているデータでも、同居期間が20年以上の熟年夫婦の離婚は、昭和60(1985)年には約2万件だったのに比べ、令和の時代に入ると約4万件とほぼ倍増していることが分かります。 同居期間別にみた離婚件数の年次推移  紫色の部分が同居期間20年以上の夫婦の離婚件数。昭和60(1985)年には2万434件だったが、令和元(2019)年以降は4万396件、3万8981件、3万8968件となっている 出典:厚生労働省「令和4年度 離婚に関する統計の概況」 その一方で、ここ数年で増えているのが「卒婚」です。卒婚とは、夫婦が離婚をせずに、お互いに自立し、相手を尊重しながらそれぞれの生活をする夫婦関係のこと。「正式に離婚はしたくない。でも、自由に暮らしたい」という願いがかなう夫婦生活として注目を集めています。 たとえば、「卒婚なのでは?」と噂になっていたのが、別居が報じられていたダウンタウンの浜田雅功さん(59歳)とタレントの小川菜摘さん(60歳)のご夫婦です。成城の自宅と都内のマンションにそれぞれ帰宅していたことが報道されていましたが、その後、別居報道を否定していました』、「卒婚とは、夫婦が離婚をせずに、お互いに自立し、相手を尊重しながらそれぞれの生活をする夫婦関係のこと。「正式に離婚はしたくない。でも、自由に暮らしたい」という願いがかなう夫婦生活として注目を集めています」、第一の記事とは微妙に違うが、より分かり易い印象だ。
・『卒婚のメリットは大きく二つ  卒婚には大きなメリットが二つあります。一つは、「相続面での不安が少ない」という点です。夫婦関係から卒業するとはいっても、法律上は婚姻関係が継続しているのが卒婚。たとえ夫が亡くなっても、妻として夫が残したお金などをしっかり受け取れるので安心です。子どもへの相続も同様です。 もう一つのメリットは、「信頼感が高まる」という点です。卒婚はあくまでも相手との信頼関係の上に成り立つもの。だとすれば、「こんなに自由にさせてもらって、お互いを認め合える関係が築けるなんて、とてもありがたいことだな」というように、パートナーに対してより信頼感や感謝の気持ちが高まるようになるのです。 「離婚はしないに越したことはない」という信条を持っている私が、夫婦問題の相談の現場でも離婚より卒婚をおすすめするケースがあるのは、熟年夫婦がお互いに相手に対しイライラと嫌悪感を募らせているよりは、結婚生活から解放される卒婚を選択するほうが、精神的に安定する人も少なくないからです。 一見いいことばかりのような卒婚ですが、落とし穴もあります。たとえば、こんなケースもありました』、「「離婚はしないに越したことはない」という信条を持っている私が、夫婦問題の相談の現場でも離婚より卒婚をおすすめするケースがあるのは、熟年夫婦がお互いに相手に対しイライラと嫌悪感を募らせているよりは、結婚生活から解放される卒婚を選択するほうが、精神的に安定する人も少なくないからです」、なるほど。
・『円満夫婦が迎えた、卒婚の残念すぎる末路  「ウチは理想的な卒婚の関係だと信じて疑いませんでした。それなのに、まさかこんなことになるとは思ってもみなかった」と動揺するのはK子さん(56歳・主婦)。26年前に2歳年下の夫と結婚。2人の子どもが独立してからは、夫と愛犬と都内のマンションに暮らしています。 K子さんの夫は、化粧品を扱う会社の経営者です。 「結婚当初から仕事熱心で付き合いも多く、家事や育児は私に任せきりでした。勤めていた会社から独立、開業してからはさらに忙しくなる一方。そのおかげもあって、私たち家族はお金で苦労したことはありませんでした」 K子さんの夫は、若い頃から浮気の話が絶えなかったといいます。 「初めのうちは私もいちいち怒ったり、実家を巻き込んで大騒ぎしたりしていたのですが、結婚生活が長くなるにつれ『お金を稼いで、元気でいてくれるなら仕方ないか……』と諦めるようになっていました」 やがて子どもたちが独立してからは、夫は都内のマンションで、K子さんは自宅で、それぞれ生活する卒婚状態が自然な形になっていたとのこと。「子どもたちが帰ってくる休日や、親戚関係の用事があるときは自宅に帰ってくる程度。気づけばお互いの近況報告すらしなくなっていました。でも、それはそれで私も楽だったんですけどね」とK子さんは振り返ります。 ところが、安定した卒婚状態に快適さを感じていたのはK子さんだけで、夫のほうはまるで違っていたことが判明する、ある事件が起こったのです。 「ある日、珍しく平日の夕方に夫が帰宅したかと思ったら、開口一番『もうお前とはやっていけない。すまないが、別れてほしい』と離婚を切り出されたんです。今までさんざん夫の浮気は経験しましたが、あんなに真剣な調子で離婚を迫られたのは初めてだったのでビックリしました」 いったい何があったのか? 後日私が夫にヒアリングをしたところ、こんな本音を聞かされたのです。 「実は好きな人がいるんです。いつもメイクやおしゃれをしてきれいでいることを心がけている40代の女性です。一緒に仕事をしているうちに、彼女の聡明さにもどんどん引かれて深い関係になってしまって……。この年になって、こんなに誰かを好きになるとは思わなかった。これまで家庭を守り、自分を支えてきてくれた妻には申し訳ないと思うけれど、残りの人生は彼女と一緒に過ごしたいんです」 夫が新しい恋人との将来を夢見て熱く語る一方、浮気相手の存在を知ったK子さんは現在、「絶対に離婚はしません。夫が自分だけ幸せになるのは許せない」と徹底抗戦の姿勢を見せています』、「夫が新しい恋人との将来を夢見て熱く語る一方、浮気相手の存在を知ったK子さんは現在、「絶対に離婚はしません。夫が自分だけ幸せになるのは許せない」と徹底抗戦の姿勢を見せています」、「徹底抗戦」で解決する問題ではないと思うが・・・。
・『うまくいく卒婚には、夫婦間コミュニケーションが必須  このように、離婚はせずに自由に暮らす卒婚にも、メリットだけではなくデメリットもあります。家庭から解放され、羽を伸ばして好き勝手に暮らしているうちに、パートナー以外の人を本気で好きになってしまったり、もっと大事な人ができてしまったりする場合もある、ということです。 それを防ぐためには、卒婚の関係であっても「定期的に連絡を取り合い、こまめに近況報告をする」「相手を思いやる気持ちは、きちんと言葉で伝え合う」ということを欠かしてはいけません。 同居生活を続ける場合でも、卒婚で離れて暮らす場合でも、結婚生活において変わらず大切にしたいのは「お互いを認め合い、思いやれる関係で添い遂げるパートナーシップを目指す」ということなのです。 ちなみに、私が夫婦問題の相談を受けている中で、「離婚するより卒婚という選択肢も考えてみては?」とうながすパターンが3つあります。具体的には、次の通りです』、「同居生活を続ける場合でも、卒婚で離れて暮らす場合でも、結婚生活において変わらず大切にしたいのは「お互いを認め合い、思いやれる関係で添い遂げるパートナーシップを目指す」ということなのです」、なるほど。
・『■離婚に踏み切る前に、卒婚を考えたほうがいいパターン 1. 「離婚をしたら自分が損する」なら離婚より卒婚 2. 「まだ相手に愛情や尊敬の気持ちが残っている」なら離婚より卒婚 3. 「これまで苦楽を共にしてきた同志愛が残っている」なら離婚より卒婚 私の経験上、「もうダメかもしれない」と追い詰められて離婚を考えることになっても、8割は修復の可能性があります。最終的に離婚という決断をする前に、修復のために“打つべき手”はいくつも存在するということです』、「私の経験上、「もうダメかもしれない」と追い詰められて離婚を考えることになっても、8割は修復の可能性があります。最終的に離婚という決断をする前に、修復のために“打つべき手”はいくつも存在するということです」、「修復の可能性が」「8割は」「あります」、そんなに高いことに驚かされた。

第三に、本年3月5日付け東洋経済オンラインが掲載した在英ジャーナリストの小林 恭子氏による「生涯現役!英国高齢者たちの自由な「恋愛事情」 高齢者は恋愛をしないなんて誰が決めた?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/656075
・『高齢者向け性産業を題材にした映画『茶飲友達』が、注目を集めている。「高齢者」と「恋愛」、まして「性」までは頭の中で結びつきにくいと思われてきたが、実は誰かとつながりたいという思いは若者だけの特権ではなかった。筆者が住むイギリスでは中高年ばかりか「後期高齢者」とされる年代になっても恋愛の現役である人が少なくない』、「イギリスでは中高年ばかりか「後期高齢者」とされる年代になっても恋愛の現役である人が少なくない」、うらやましい限りだ。
・『深紅のバラの前に立つ男性たち  2月14日のバレンタイン・デー。日本では女性が男性に愛を告白する日だが、イギリスではその逆だ。男性たちがガールフレンドや妻など、女性に向かって感謝と愛情を表現する。欠かせないのはカードと花だ。 14日当日、スーパーの店先には深紅のバラの花束が入ったバケツが所狭しと並ぶ。子供を肩車に乗せた父親、建設作業着姿の男性、スーツ姿の会社員、高校生など、さまざまな身なりと年齢の男性たちが花束をバケツから引き抜いていく。 女性たちに人気があるイタリアのスパークリングワイン、プロセコのボトルやチョコレートの箱を抱えながら、自動精算機で買い物を済ます。自宅で女性にカードやバラを渡す光景を想像すると、ほほえましい思いがする。この日、男たちは堂々と愛を告白し、ロマンティックな言葉を吐いてもよいのである。 しかし、考えてみると、年齢にかかわらず互いに愛情を表現する行為は、イギリスでは日常の一部だ。朝起きたときや外に出かける前に家族同士でほっぺたに、あるいは口元にキスをしたり、抱擁(ハグ)したりする習慣がある。友人・知人同士でも、相手を励ましたいとき、特別な感情を共有したいときにハグするのも至極普通の行為である。) 愛情表現の機会が頻繁にあるイギリスでは、筆者が見聞きしただけでも、年齢層や結婚相手あるいはパートナーがいる・いないにかかわらず恋愛関係に至る人が実に多い。10年ほど前のこと。家人の母エリザベス(当時93歳)は2回の結婚で夫と死別し、イングランド南部の海岸保養地チチェスターにある高齢者用施設に住んでいた。個室にいるときも口紅を塗り、首には真珠のネックレス。かくしゃくとした老婦人だった。 美形ではなかったものの、なぜか男性たちが寄ってくる。元実業家の男性入所者と腕を組んで施設内の食堂に向かうのが日課だった。まもなくして、同伴男性が急死する。エリザベスはしばらく落ち込んでいたが、高齢化でより手厚いケアが必要となったため、介護施設に居を移した』、「年齢にかかわらず互いに愛情を表現する行為は、イギリスでは日常の一部だ。朝起きたときや外に出かける前に家族同士でほっぺたに、あるいは口元にキスをしたり、抱擁(ハグ)したりする習慣がある。友人・知人同士でも、相手を励ましたいとき、特別な感情を共有したいときにハグするのも至極普通の行為である。 愛情表現の機会が頻繁にあるイギリスでは、筆者が見聞きしただけでも、年齢層や結婚相手あるいはパートナーがいる・いないにかかわらず恋愛関係に至る人が実に多い」、「愛情表現の機会が頻繁にある」、とは実にうらやましい。
・『ベッドの脇には大量のラブレターが  ある日、新しい施設のエリザベスの部屋を訪ねてみると、ベッドの脇のテーブルの上に手紙が積まれていた。前の施設にいた時に知り合った男性、愛称「コン」が送ったものだった。「私がいなくなって、寂しくて仕方ないっていうの」。コンは当時、85歳。「私のこと、親切で礼儀正しくて、素晴らしい女性だって書いてある」。 ファンレターのようなものだと筆者は理解し、特別な印象を持たなかったが、それから数カ月後、コンが引っ越してきたことを知り、非常に驚いた。高齢者用あるいは介護施設に入所するには、相当の手持ち資金が必要となるため、住んでいる家を売る人も多い。高齢者の家族の財政面、および精神的支援も欠かせない。入所は一家の一大事なのだ。 従って、コンが引っ越すということは、家族や関係者の了解を得るために、相当の努力、頑固さ、そしてエリザベスに対する愛情をコンが示したことを意味する。 「追ってくるなんて、ストーカーみたい。それでいいの?」そう聞くと、エリザベスは「別に、かまわない」。特に「コンが好きだから」とは言わず、嬉しそうにもしていなかった。「来たいというから、仕方ないわね」。今から思うと、「君は素晴らしい、君のことは大好きだ」と言われることに喜びを感じていたのかもしれない。 93歳のエリザベスを追って引っ越しまでしたコンは、移動から1年後、ガンで亡くなった。エリザベスはその10年後、同じ施設で眠るようにして亡くなった』、「93歳のエリザベスを追って引っ越しまでしたコンは、移動から1年後、ガンで亡くなった。エリザベスはその10年後、同じ施設で眠るようにして亡くなった」、「「来たいというから、仕方ないわね」。今から思うと、「君は素晴らしい、君のことは大好きだ」と言われることに喜びを感じていたのかもしれない」、「コン」「エリザベス」ともに幸せな老後を送ったことになる。
・『夫のいる同級生から連絡  友人のチャールズは50代半ばだ。ある日、かつて大学の同級生同士だったジェーンから電話をもらったという。「いすの脚が壊れちゃった。大工仕事が得意だったわよね。ちょっと来て、見てみてくれない?」大学卒業後も同級生同士数人で時々集まっていたので、突然の電話にも驚かず、チャールズはジェーン宅に向かった。 チャールズは卒業直後に結婚したが離婚し、再婚。電話がかかってきたとき、営業職の妻は出張中だった。ジェーンは夫と死別後、石油会社コンサルタントの男性と知り合い、夫が残した広い邸宅に一緒に住んでいた。 ジェーンの家でいすを直し、同居のボーイフレンドと3人で夕食を共にした。その晩、チャールズはジェーン宅の予備の部屋で眠った。翌朝、チャールズは寝室のドアを軽くノックする音で目覚めた。「おはよう。私よ。お茶を持ってきたの。入ってもいい?」。 イギリスでは毎朝、ミルクを入れた紅茶を飲むのが習慣になっている。夫婦の場合、夫あるいは妻が相手のためにお茶を入れてベッドに持ってくるのも定番だ。) チャールズが承諾すると、お茶のカップを乗せたトレイを持って、ジェーンが入ってきた。チャールズはベッド上で体を半分起こし、自分のカップをもらってお茶をすすった。ジェーンも自分のカップからお茶を飲む。しばらく他愛のない会話が続いた。 「ちょっと中に入ってもいいかしら、寒いの」。ジェーンはそう言って、チャールズのベッドに手をかけた。「ダメ」というわけにもいかず、体をずらしてスペースを作ったチャールズ。2人はしばらく黙ってベッドの中にいた。「温かくなったわ」。ジェーンはそう言ってベッドから出て、寝室を後にした。 チャールズは当時を思い出し、こういう。「あの時、ジェーンは何を望んでいたんだろう?」「あなたに触ってもらいたかったんだよ」。筆者はこう返したが、チャールズは納得がいかない様子だった。「彼女のボーイフレンドが家にいるんだよ。何もできるわけないじゃないか。第一、恋愛感情がない」。 この時、筆者は、イギリスでは性的誘惑をかけるには相手や自分にパートナーがいるかどうかも、また年齢も関係ないことを実感したのである』、「チャールズは当時を思い出し、こういう。「あの時、ジェーンは何を望んでいたんだろう?」「あなたに触ってもらいたかったんだよ」。筆者はこう返したが、チャールズは納得がいかない様子だった」、「筆者は、イギリスでは性的誘惑をかけるには相手や自分にパートナーがいるかどうかも、また年齢も関係ないことを実感した」、確かに「イギリス」では不倫は余りにも一般的なので、問題にする声はあまり聞かない。
・『70代でもアクティブな男女は少なくない  イギリスでも、「高齢者の性」をタブー視する雰囲気があるが、年を取っても性行為を楽しむ人がいるのは事実だ。高齢者支援の慈善組織「Age UK」がマンチェスター大学社会科学研究所に依頼した調査(対象者:50代から90代前半の約7000人、2016年発表)によると、「70代以上の男性の54%、女性の31%が現在も性的行為の経験がある」と答えている。 「Age UK」は、性行為を「人生の重要な一部である」と位置付ける。「健全な性生活は心、血圧、ストレスの低下に良い影響を及ぼす。免疫力を上げる可能性もある」。 高齢者に向けて、いくつかアドバイスもしている。「性感染症にかからないように注意する」「加齢によって体の状態が変化するので、女性であれば保湿クリームを使う、男性であれば医師に相談して処方箋を出してもらう」。 性的衝動が低下する場合、「これが片方あるいは両者に失望感や拒絶感を抱かせることになりかねないので、両者がリラックスできるよう、ワインを共に楽しんだり、抱擁するなどを試す」など』、「健全な性生活は心、血圧、ストレスの低下に良い影響を及ぼす。免疫力を上げる可能性もある」、「免疫力を上げる」は、確かにその可能性は否定できないが、言い過ぎのような気もする。
・『一流紙もタブーを破り始めた  イギリスでも高齢化が進む中、高級紙「タイムズ」を含む複数の新聞が「高齢者がいかに性行為を楽しむか」をテーマにした記事を掲載するようになった。 「知的で格好いい女性」として人気がある、放送ジャーナリスト&コラムニストのマリエラ・フロストラップ(60歳)は、中高年の女性の健康問題に焦点を当てるサイト「トップ・サンテ」の最新号に登場し、女性は性行為を予定表の中に書き込むべき、と発言して、波紋を広げた。「セックスのことをまるで仕事のようにドライに扱っていいの?」という疑問である。 しかし、フロストラップの言い分はこうだ。「パートナーとのスキンシップはついつい後回しになってしまう」「でも私にとってはとても重要。親友以上の存在になれるし、パートナーとの関係を維持できる」。年を取ると若い時のような衝動がなくなる時がある。「あふれる情熱からではなく、もっと違う、深い理由である親密さのために性行為をするようになる」。 企業に勤める人であれば退職を考える年齢に達したフロストラップがセックスは日常生活の一部であり、自分はこんな風に位置づけをしているのだと公に発言すること自体が、「高齢者は恋愛をしない・性行為など無縁」という神話を砕く役目を果たしているのは間違いない』、日本でも「「高齢者は恋愛をしない・性行為など無縁」という神話を砕く」ような動きが出てきてほしいものだ。
タグ:「「女性の場合、デートで褒められるなどして、精神的な承認欲求を満たしたい人が多いです。結婚後、性的対象として見られる機会が減ったことで、『独身時代のようにもう一度ドキドキしたい』という願いがあります。一方、男性は、『妻に文句を言われずに遊びたい』と、自分の性的欲求のために卒婚を選ぶ傾向です。特に妻に本当の性癖を伝えられない男性が多いです」、「卒婚願望」の男女の違いはさもありなんだ。 「卒婚願望を持つのは、子どもが独り立ちした50代が最も多く、実行しているのもその年代がほとんどです。数十年連れ添うと、パートナーに家族としての情はあっても、性的魅力を感じられなくなるのは仕方ないこと。これが卒婚の理由となる事例が多いです」、 「全国の30~59歳の既婚男女1000人を対象に行った「卒婚」に関するアンケート」では、「既婚男女の約3割が「卒婚してみたい」と回答」、「ただし、実際に卒婚している人は7%にとどまっている」、なるほど。 「「卒婚の概念はまだ曖昧な面もあるのですが、大まかには、夫婦関係を継続するか迷ったとき、離婚はしないものの、婚姻関係を“卒業”し、互いのプライベートに干渉しない夫婦の形と言えるでしょう。卒婚のルールは夫婦それぞれが決めるもので、生活スタイルや家計の事情などにより、さまざまです」、 ダイヤモンド・オンライン「「卒婚」したい人は既婚者の3割!実際に踏み切った7%の夫婦の事情とは」 恋愛・結婚 (その6)(「卒婚」したい人は既婚者の3割!実際に踏み切った7%の夫婦の事情とは、浜田雅功・小川菜摘夫妻は「卒婚」?別居でも離婚でもない新しい夫婦の形、生涯現役!英国高齢者たちの自由な「恋愛事情」 高齢者は恋愛をしないなんて誰が決めた?) 「「現実的には、金銭的なハードルもあります。卒婚は離婚とは異なり、法的な婚姻関係は続くため、パートナーや夫婦間の子どもに対して、最低限の扶養の責任は残る。男性が卒婚して他の人と付き合うためには、妻や子を養いつつ、デート代もかさむことになり、金銭的な負担も大きいです」、確かに「金銭的な負担も大きい」のは大きな障害だろう。 「夫婦関係のあり方が多様化する中、相手の幸せを尊重するために“卒婚”を選ぶ人も増えていくのかもしれない」、その通りだ。 ダイヤモンド・オンライン 岡野あつこ氏による「浜田雅功・小川菜摘夫妻は「卒婚」?別居でも離婚でもない新しい夫婦の形」 第一の記事をより具体的に見たものだが、「離婚の前に卒婚という選択肢もある」というのは分かり易い。 「卒婚とは、夫婦が離婚をせずに、お互いに自立し、相手を尊重しながらそれぞれの生活をする夫婦関係のこと。「正式に離婚はしたくない。でも、自由に暮らしたい」という願いがかなう夫婦生活として注目を集めています」、第一の記事とは微妙に違うが、より分かり易い印象だ。 「「離婚はしないに越したことはない」という信条を持っている私が、夫婦問題の相談の現場でも離婚より卒婚をおすすめするケースがあるのは、熟年夫婦がお互いに相手に対しイライラと嫌悪感を募らせているよりは、結婚生活から解放される卒婚を選択するほうが、精神的に安定する人も少なくないからです」、なるほど。 「夫が新しい恋人との将来を夢見て熱く語る一方、浮気相手の存在を知ったK子さんは現在、「絶対に離婚はしません。夫が自分だけ幸せになるのは許せない」と徹底抗戦の姿勢を見せています」、「徹底抗戦」で解決する問題ではないと思うが・・・。 「同居生活を続ける場合でも、卒婚で離れて暮らす場合でも、結婚生活において変わらず大切にしたいのは「お互いを認め合い、思いやれる関係で添い遂げるパートナーシップを目指す」ということなのです」、なるほど。 「私の経験上、「もうダメかもしれない」と追い詰められて離婚を考えることになっても、8割は修復の可能性があります。最終的に離婚という決断をする前に、修復のために“打つべき手”はいくつも存在するということです」、「修復の可能性が」「8割は」「あります」、そんなに高いことに驚かされた。 東洋経済オンライン 小林 恭子氏による「生涯現役!英国高齢者たちの自由な「恋愛事情」 高齢者は恋愛をしないなんて誰が決めた?」 「イギリスでは中高年ばかりか「後期高齢者」とされる年代になっても恋愛の現役である人が少なくない」、うらやましい限りだ。 「年齢にかかわらず互いに愛情を表現する行為は、イギリスでは日常の一部だ。朝起きたときや外に出かける前に家族同士でほっぺたに、あるいは口元にキスをしたり、抱擁(ハグ)したりする習慣がある。友人・知人同士でも、相手を励ましたいとき、特別な感情を共有したいときにハグするのも至極普通の行為である。 愛情表現の機会が頻繁にあるイギリスでは、筆者が見聞きしただけでも、年齢層や結婚相手あるいはパートナーがいる・いないにかかわらず恋愛関係に至る人が実に多い」、「愛情表現の機会が頻繁にある」、とは実にうらやましい。 「93歳のエリザベスを追って引っ越しまでしたコンは、移動から1年後、ガンで亡くなった。エリザベスはその10年後、同じ施設で眠るようにして亡くなった」、「「来たいというから、仕方ないわね」。今から思うと、「君は素晴らしい、君のことは大好きだ」と言われることに喜びを感じていたのかもしれない」、「コン」「エリザベス」ともに幸せな老後を送ったことになる。 「チャールズは当時を思い出し、こういう。「あの時、ジェーンは何を望んでいたんだろう?」「あなたに触ってもらいたかったんだよ」。筆者はこう返したが、チャールズは納得がいかない様子だった」、「筆者は、イギリスでは性的誘惑をかけるには相手や自分にパートナーがいるかどうかも、また年齢も関係ないことを実感した」、確かに「イギリス」では不倫は余りにも一般的なので、問題にする声はあまり聞かない。 「健全な性生活は心、血圧、ストレスの低下に良い影響を及ぼす。免疫力を上げる可能性もある」、「免疫力を上げる」は、確かにその可能性は否定できないが、言い過ぎのような気もする。 日本でも「「高齢者は恋愛をしない・性行為など無縁」という神話を砕く」ような動きが出てきてほしいものだ。
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外国人問題(その8)(水際対策緩和で蠢くベトナム人利権の闇2題((19)古川法相が「重大な違反行為」と認めた西日本国際教育学院による“鎖拘束”問題、(57)大手各紙は制度を批判 その一方で新聞配達に「実習生」を求める矛盾)、有能な外国人が“安いニッポン”で働きたいか?「特別高度人材」拡充策の笑止、「こんな恥ずべきことを、いつまで続けるのか」家畜窃盗、無免許運転にひき逃げ…日本で道を踏み外したベトナム人たちの“実態” 野嶋剛が『北関東「移民」アンダーグラウンド』(安田峰俊 著)を読む) [社会]

外国人問題については、昨年4月27日に取上げた。今日は、(その8)(水際対策緩和で蠢くベトナム人利権の闇2題((19)古川法相が「重大な違反行為」と認めた西日本国際教育学院による“鎖拘束”問題、(57)大手各紙は制度を批判 その一方で新聞配達に「実習生」を求める矛盾)、有能な外国人が“安いニッポン”で働きたいか?「特別高度人材」拡充策の笑止、「こんな恥ずべきことを、いつまで続けるのか」家畜窃盗、無免許運転にひき逃げ…日本で道を踏み外したベトナム人たちの“実態” 野嶋剛が『北関東「移民」アンダーグラウンド』(安田峰俊 著)を読む)である。

先ずは、昨年4月29日付け日刊ゲンダイが掲載したジャーナリストの出井康博氏による「水際対策緩和で蠢くベトナム人利権の闇:(19)古川法相が「重大な違反行為」と認めた西日本国際教育学院による“鎖拘束”問題」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/304600
・『4月22日の衆院法務委員会で、本連載でも報じている「日本語学校による留学生への人権侵害行為」がテーマに上った。同委員会では、実習生が被る人権侵害は過去に何度も取り上げられてきた。だが、留学生の「人権」が論じられるのは異例だ。 質問に立った市村浩一郎衆院議員(日本維新の会)に対し、政府を代表して古川禎久法務大臣はこう答弁した。 「生徒(留学生)の進路を妨害する行為、生徒に対する暴力、高額な賠償金について誓約させる行為などは、『日本語教育機関の告示基準』第2条に定められている抹消基準の人権侵害行為に該当すると考えられる」 市村氏は日本語学校で最近発覚した3件の人権侵害の例を挙げ、質問していた。 その1つが、宇都宮市の日本語学校が留学生に進学や就職に必要な証明書の発行を拒み、系列専門学校への内部進学を強要していたケース。そして、福岡市の学校で職員が留学生を鎖につないで拘束した問題。3つ目は、仙台市の学校が、中途退学して就職した場合、賠償金300万円を支払うとの誓約書を作成し、留学生に署名させていた問題である。 宇都宮市のケースは2020年、私が新潮社の国際情報サイト「フォーサイト」で取り上げた。福岡市の一件は今年2月に「週刊新潮」に寄稿後、この連載でも詳しく書いた「西日本国際教育学院」の職員によるベトナム人留学生への「鎖拘束」問題である。仙台市の学校による「誓約書」問題については、地元紙「河北新報」が2月末、学校名を伏せて記事にしている』、3件とも酷い「人権侵害」だ。これらの「日本語学校」への監督責任は法務省にある筈だ。
・『「日本人の名誉にかけてあってはならない」  古川法相は「一般論」と断った上ではあるが、3件とも「告示基準」違反、つまり、日本語学校として留学生の受け入れが認められなくなる行為だと断定した。その意味は小さくない。「鎖拘束」問題も重大な違反行為だと政府が認めたわけである。 その上で古川法相は「入管庁では今年2月、人権侵害等が疑われる報道があったことから、すべての日本語教育機関を対象に、留学生への人権侵害行為を含む不適切な行為を防止し、適切な運営を行うよう、改めて注意喚起を行った」と答弁している。 「今年2月」の報道とは、「週刊新潮」拙稿もしくは「河北新報」記事を指すと思われる。それ以外に、留学生の人権侵害に関する報道はないからだ。) 「(日本語学校が留学生の)立場が弱いことにつけ込むなど、日本人の名誉にかけてあってはならない。(入管庁)職員を督励しながら、私が先頭に立ってやっていく」 入管庁を所轄する立場の古川法相は、そこまでたんかを切った。であれば、「注意喚起」の効果、また違反を犯した学校への処分の有無についても見守りたい。 さらに今回の委員会質疑では、古川法相から日本語学校業界の「留学生利権」に切り込む注目の発言も聞かれた。=つづく』、10月11日付け西日本新聞によれば、「「西日本国際教育学院」が出入国在留管理庁から新規留学生の受け入れを認めないとする処分を受けた問題で、入管庁は11日、学院側の申し立てを認めて処分の執行を止めた福岡地裁決定について、即時抗告しなかった」、ようだ。こんな弱腰の姿勢では思いやられる。

次に、6月29日付け日刊ゲンダイが掲載したジャーナリストの出井康博氏による「水際対策緩和で蠢くベトナム人利権の闇:(57)大手各紙は制度を批判 その一方で新聞配達に「実習生」を求める矛盾」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/307443
・『朝日新聞の実質的な傘下組織「朝日奨学会」は、新聞販売所に斡旋したベトナム人ら外国人の新聞奨学生から月1万円の「奨学会費」を徴収し、年1億円以上の収入を得ているとみられる。近年、このビジネスモデルを模倣する民間の人材派遣業者が増えている。販売所関係者が解説する。 「東京のような都会の販売所では、日本人の配達員が集まりません。朝日の場合、奨学会がベトナム人奨学生らを派遣しているが、それでも人手が足りない。他紙の販売所はさらに深刻で、人材派遣業者が留学生バイトを売り込んでいます」 関係者はそう言って、ある業者から都内の販売所にファクスで届いた留学生斡旋のチラシを取り出した。「〇〇新聞奨学会からのご案内」と書かれた冒頭部分を見ると、まるで新聞社の奨学会のようだが、連絡先になっているのは民間の派遣業者だ。 「この業者の場合、留学生1人の斡旋につき20万円の紹介料に加え、月1万~1.5万円の手数料を販売所から徴収するらしい。『奨学会』と名乗ってはいるが、朝日の奨学生制度のように、販売所が留学生の学費を負担する仕組みはありません。販売所が留学生に支払うのは月15万円の給与だけです」』、「他紙の販売所はさらに深刻で、人材派遣業者が留学生バイトを売り込んでいます」、「留学生1人の斡旋につき20万円の紹介料に加え、月1万~1.5万円の手数料を販売所から徴収するらしい。『奨学会』と名乗ってはいるが、朝日の奨学生制度のように、販売所が留学生の学費を負担する仕組みはありません。販売所が留学生に支払うのは月15万円の給与だけです」、『奨学会』とは名ばかりで、単なる「派遣業者」だ。
・『コストは日本人の半分以下  販売所の合計負担額は、紹介料や手数料を含めても1人当たり月20万円以下で、朝日の奨学生よりも安い。 「日本人の“臨配”(リンパイ=臨時配達員)に頼むと、住居費込みで月40万円以上かかるので、販売所にとって留学生バイトは助かります。問題は人材の質。朝日の奨学生は2年契約ですが、民間業者が紹介するバイトの場合、仕事が長続きしないケースも多いようです」 それでも新聞販売所としては、低賃金の外国人労働者が欲しい。そこで業界団体は、「新聞配達」でも実習生の受け入れが認められるよう、国会議員にロビー活動を展開しているという。実習生であれば低コストで、しかも3年間という長期就労が見込めるからだ。 大手紙はそろって実習制度を批判し、朝日や日経に至っては「廃止」まで主張している。「人材育成」や「技能移転」といった趣旨は建前に過ぎず、低賃金で重労働を担う出稼ぎ外国人の受け入れ手段になっている矛盾を非難しているのだ。しかし、その大手紙の配達現場が実習生を求めている。これこそ大きな「矛盾」ではないか。 実習生には、「母国でやっていた仕事を日本で実習し、帰国して生かす」という規定がある。全く形骸化したルールとはいえ、「新聞配達」などベトナムのようなアジア諸国には存在しない。そんなことは承知のうえで、販売所はなりふり構わず実習生に頼ろうと考えている。それほど現場の人手不足は著しく、また販売所の経営も苦しいわけだ。 ベトナム人奨学生らに週28時間の法定上限を超える就労を強いる背景にも、経営難が影響してのことである。いったい、なぜ販売所はそこまで追い込まれているのか。=つづく』、「大手紙はそろって実習制度を批判し、朝日や日経に至っては「廃止」まで主張」、「その大手紙の配達現場が実習生を求めている。これこそ大きな「矛盾」、「「新聞配達」などベトナムのようなアジア諸国には存在しない。そんなことは承知のうえで、販売所はなりふり構わず実習生に頼ろうと考えている」、マスコミの身勝手ぶりにはほとほと呆れ果てる。

第三に、本年2月19日付け日刊ゲンダイ「有能な外国人が“安いニッポン”で働きたいか?「特別高度人材」拡充策の笑止」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/318950
・『日本人も音を上げる「安いニッポン」で働きたがる有能な外国人がいるのなら、お目にかかってみたいものだ。 岸田政権は17日、高度な知識や技能を持つ外国人材の獲得を促進するため、「特別高度人材制度」の新設を決めた。年収2000万円以上の勤め人、4000万円超の経営者などを呼び込もうというのだが、看板倒れ必至だ。 新制度は在留資格「高度専門職」に優遇措置を設け、4月中の運用開始を目指す。現行制度では学歴や職歴、年収、年齢などをポイント化し、合計が70点以上となった場合に「高度外国人材」として在留期間が5年の「1号」を認める仕組み。「1号」は3年経過で在留期間が無期限の「2号」に移行できる。新制度はポイント制を残しつつ、学術研究や専門技術の分野では①修士号以上・年収2000万円以上②職歴10年以上・年収2000万円以上──を要件に「1号」を付与。経営活動では職歴5年以上・年収4000万円以上が要件となる。 いずれも、「2号」への移行は1年でOK。「10年以上日本に在留し、かつ就労資格・居住資格をもって5年以上在留」などとする一般的な永住権取得条件と比べると、破格の扱いだ。) 外国人労働に詳しいジャーナリストの出井康博氏はこう言う。 「高度人材が日本に集まらないのは、在留資格が壁になっているからではありません。高収入の外国人にとって日本の永住権はインセンティブになりませんし、通貨が弱い国で働くメリットはない。そもそも、企業側が欲しがっているのは低賃金、重労働に耐えられる労働者。要するに技能実習生なのです。制度拡充は岸田政権の“やってる感”の演出に過ぎず、実効性はないでしょう」 これまたG7広島サミットに向けた弥縫策か』、「「高度人材が日本に集まらないのは、在留資格が壁になっているからではありません。高収入の外国人にとって日本の永住権はインセンティブになりませんし、通貨が弱い国で働くメリットはない。そもそも、企業側が欲しがっているのは低賃金、重労働に耐えられる労働者。要するに技能実習生なのです。制度拡充は岸田政権の“やってる感”の演出に過ぎず、実効性はないでしょう」、厳しい政府批判で、同感である。

第四に、3月27日付け文春オンラインが掲載したジャーナリストの野嶋 剛氏による「「こんな恥ずべきことを、いつまで続けるのか」家畜窃盗、無免許運転にひき逃げ…日本で道を踏み外したベトナム人たちの“実態” 野嶋剛が『北関東「移民」アンダーグラウンド』(安田峰俊 著)を読む」を紹介しよう。
・『昨冬のある日、群馬県前橋市で仕事のあと、夕食の場所を探して駅前のベトナム料理の店にふらっと飛び込んだ。雑貨店と一体化した小さな店で、若いベトナム人が貪るように「バロット」という孵化寸前のアヒルの卵を「ビアハノイ」で胃袋に流し込んでいた。ちょっとグロい庶民の味なので、日本人にはハードルが高く、普通の店ではまず見かけない。濃厚なベトナム空間がそこにあった。 この前橋も、本書の舞台「北関東」だったと、読みながら思い起こした。 家畜窃盗。無免許運転にひき逃げ。不法滞在。薬物使用。殺人まで。ベトナム人の犯罪が日本ではすっかり日常になった。 彼らの多くは、技能実習生や語学留学生として来日した。実態は日本が国家ぐるみで行なう非熟練労働力輸入の主役である。この制度、海外からは「現代の人身売買」と評判が悪い。 筆者は、中国問題を主戦場とするジャーナリストだ。いつの間にか、外国人問題の主役が中国人からベトナム人に切り替わり、調べていくうちに鉱脈を掘り当てたに違いない。本書は、道を踏み外したベトナム人との接触に特化したルポルタージュである。 各地で頻発する事件を端緒に、裁判記録やメディアの初報から当事者を探し当て、実態を拾い集めていく。人を傷つける重みすら理解しない女。「群馬の兄貴」と界隈で慕われる反社的な男。ベトナムの地下世界「北関東」の姿は凄まじい。 彼らが職場から逃亡したあとも野放し状態で生活し、悪事に手を染める背景に、労働法の枠外に外国人を置く「実習生」という中途半端な仕組みがあるのは明らかだ。だがそれはあくまで上から目線の見方。筆者は地を這う取材でリアルな現場を突きつけ、容赦なくベトナム人たちの身勝手さを描き出す。日本の制度はおかしい。だが、それは彼らの「悪」と直接は関係がない。それも筆者のメッセージである。 ベトナム語で兵士を意味する「ボドイ」と呼ばれるベトナム人のコミュニティは、どこか牧歌的、刹那的で、ある種の愛らしさも感じさせる。チャイニーズ・マフィアのように金と欲望を吸い上げる集団にはならず、緩やかな裏互助組織としてネットの奥深くに生息している。それもまた、ベトナムらしいと言えなくはない。 筆者が予言するように、ベトナム人の犯罪問題は15年もすれば解消されるだろう。中国人の労働者が日本にあまり来なくなったように、現地の経済水準が向上すれば、給料も安く、行動の自由を著しく制限する日本をあえて選ぶ必要はなくなる。日系ブラジル人から中国人、そしてベトナム人。その次はミャンマー人やカンボジア人か。廉価な労働力を求めて「焼畑」的に人材供給源をさまよう「移民」労働政策。こんな恥ずべきことを、いつまで続けるのか、日本は。(やすだみねとし氏の略歴はリンク先参照)』、「ベトナムの地下世界「北関東」の姿は凄まじい。 彼らが職場から逃亡したあとも野放し状態で生活し、悪事に手を染める背景に、労働法の枠外に外国人を置く「実習生」という中途半端な仕組みがあるのは明らかだ」、「ベトナム人の犯罪問題は15年もすれば解消されるだろう。中国人の労働者が日本にあまり来なくなったように、現地の経済水準が向上すれば、給料も安く、行動の自由を著しく制限する日本をあえて選ぶ必要はなくなる。日系ブラジル人から中国人、そしてベトナム人。その次はミャンマー人やカンボジア人か。廉価な労働力を求めて「焼畑」的に人材供給源をさまよう「移民」労働政策。こんな恥ずべきことを、いつまで続けるのか、日本は」、同感である。
タグ:出井康博氏による「水際対策緩和で蠢くベトナム人利権の闇:(57)大手各紙は制度を批判 その一方で新聞配達に「実習生」を求める矛盾」 10月11日付け西日本新聞によれば、「「西日本国際教育学院」が出入国在留管理庁から新規留学生の受け入れを認めないとする処分を受けた問題で、入管庁は11日、学院側の申し立てを認めて処分の執行を止めた福岡地裁決定について、即時抗告しなかった」、ようだ。こんな弱腰の姿勢では思いやられる。 3件とも酷い「人権侵害」だ。これらの「日本語学校」への監督責任は法務省にある筈だ。 出井康博氏による「水際対策緩和で蠢くベトナム人利権の闇:(19)古川法相が「重大な違反行為」と認めた西日本国際教育学院による“鎖拘束”問題」 日刊ゲンダイ 「大手紙はそろって実習制度を批判し、朝日や日経に至っては「廃止」まで主張」、「その大手紙の配達現場が実習生を求めている。これこそ大きな「矛盾」、「「新聞配達」などベトナムのようなアジア諸国には存在しない。そんなことは承知のうえで、販売所はなりふり構わず実習生に頼ろうと考えている」、マスコミの身勝手ぶりにはほとほと呆れ果てる。 「他紙の販売所はさらに深刻で、人材派遣業者が留学生バイトを売り込んでいます」、「留学生1人の斡旋につき20万円の紹介料に加え、月1万~1.5万円の手数料を販売所から徴収するらしい。『奨学会』と名乗ってはいるが、朝日の奨学生制度のように、販売所が留学生の学費を負担する仕組みはありません。販売所が留学生に支払うのは月15万円の給与だけです」、『奨学会』とは名ばかりで、単なる「派遣業者」だ。 外国人問題 (その8)(水際対策緩和で蠢くベトナム人利権の闇2題((19)古川法相が「重大な違反行為」と認めた西日本国際教育学院による“鎖拘束”問題、(57)大手各紙は制度を批判 その一方で新聞配達に「実習生」を求める矛盾)、有能な外国人が“安いニッポン”で働きたいか?「特別高度人材」拡充策の笑止、「こんな恥ずべきことを、いつまで続けるのか」家畜窃盗、無免許運転にひき逃げ…日本で道を踏み外したベトナム人たちの“実態” 野嶋剛が『北関東「移民」アンダーグラウンド』(安田峰俊 著)を読む) 日刊ゲンダイ「有能な外国人が“安いニッポン”で働きたいか?「特別高度人材」拡充策の笑止」 「「高度人材が日本に集まらないのは、在留資格が壁になっているからではありません。高収入の外国人にとって日本の永住権はインセンティブになりませんし、通貨が弱い国で働くメリットはない。そもそも、企業側が欲しがっているのは低賃金、重労働に耐えられる労働者。要するに技能実習生なのです。制度拡充は岸田政権の“やってる感”の演出に過ぎず、実効性はないでしょう」、厳しい政府批判で、同感である。 文春オンライン 野嶋 剛氏による「「こんな恥ずべきことを、いつまで続けるのか」家畜窃盗、無免許運転にひき逃げ…日本で道を踏み外したベトナム人たちの“実態” 野嶋剛が『北関東「移民」アンダーグラウンド』(安田峰俊 著)を読む」 「ベトナムの地下世界「北関東」の姿は凄まじい。 彼らが職場から逃亡したあとも野放し状態で生活し、悪事に手を染める背景に、労働法の枠外に外国人を置く「実習生」という中途半端な仕組みがあるのは明らかだ」、「ベトナム人の犯罪問題は15年もすれば解消されるだろう。中国人の労働者が日本にあまり来なくなったように、現地の経済水準が向上すれば、給料も安く、行動の自由を著しく制限する日本をあえて選ぶ必要はなくなる。 日系ブラジル人から中国人、そしてベトナム人。その次はミャンマー人やカンボジア人か。廉価な労働力を求めて「焼畑」的に人材供給源をさまよう「移民」労働政策。こんな恥ずべきことを、いつまで続けるのか、日本は」、同感である。
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健康(その23)(酒は「毒」か「薬」か? 医師が最終的に出した答えとは… 酒好きにとっての“永遠の問い”についに決着!、【サプリメントを飲んでいる人は要注意!】サプリメントを飲むと死亡率があがる?、病気予防を目指すなら ウォーキングは1日何歩がいい? 高血圧は1日8000歩程度 糖尿病は1日9000歩程度で頭打ち、脳科学者が提言「低GI食は脳のベストパフォーマンスを引き出す」子どもの成績にも影響) [生活]

健康については、本年3月8日に取上げた。今日は、(その23)(酒は「毒」か「薬」か? 医師が最終的に出した答えとは… 酒好きにとっての“永遠の問い”についに決着!、【サプリメントを飲んでいる人は要注意!】サプリメントを飲むと死亡率があがる?、病気予防を目指すなら ウォーキングは1日何歩がいい? 高血圧は1日8000歩程度 糖尿病は1日9000歩程度で頭打ち、脳科学者が提言「低GI食は脳のベストパフォーマンスを引き出す」子どもの成績にも影響)である。

先ずは、本年2月17日付け日経ビジネスオンライン「酒は「毒」か「薬」か? 医師が最終的に出した答えとは… 酒好きにとっての“永遠の問い”についに決着!」を紹介しよう。
・『酒は「毒」なのか、「薬」なのか…。がんや生活習慣病、うつ病などのリスクを高めることが広く知られている一方で、昔から「百薬の長」ともいわれている。果たしてどちらなのか。そして、どうすれば健康的に飲めるのか。『酒好き医師が教える最高の飲み方(日経ビジネス人文庫)』の著者である葉石かおりさんと、監修者である肝臓専門医の浅部伸一さんに、都内某所で話を伺った(Qは聞き手の質問)』、「酒は「毒」か「薬」か?」、ハッキリしてほしいものだ。
・『医師としては「酒は毒」と言わざるを得ない。だがしかし…  Q:さまざまな調査の結果から、「酒は毒である」という話を聞きます。一方で、1日当たり日本酒なら1合程度、ビールなら中瓶1本という「適量」を守っていればそれほど心配ない、むしろカラダにいいという意見もあります(参考記事)。いったい、どちらが正しいのでしょうか?  浅部さん 医師の立場からは、「酒は基本的に毒」と言わざるを得ません。全国12地域、14万人を対象とした「多目的コホート研究」でも、「時々飲酒(週1回未満)している人」と比べて、「1日当たり日本酒換算で2合」あるいは「同、3合以上飲む人」のがんの発症リスクは、それぞれ1.4倍、1.6倍になります。こうした大きな集団での観察研究による報告は、科学的には「エビデンスレベル」が高いといえるのです。 葉石さん ただ一方で、適量を飲んでいればカラダにいいという「Jカーブ効果」もありますよね。飲酒量を横軸に、死亡率を縦軸にとると、グラフの形が「J」の字になるという、酒好きの間では有名な話です(参考記事)。 アルコール消費量と死亡リスクの関係(海外)海外の14の研究をまとめて解析した結果。適量を飲酒する人は死亡リスクが低い傾向が確認できる(出典:Holman CD,et al. Med J Aust. 1996;164:141-145. 書籍『酒好き医師が教える最高の飲み方』より) 浅部さん 確かに、適量の飲酒が死亡率を下げるという報告もあります。ただ、それらの研究は、どちらかというと細胞実験や少人数での研究結果が目立っていて、その多くが「健康に良い可能性はある」が、まだ「議論のある」段階。つまり、エビデンスレベルが「やや弱い」ことは否めないんです。しかも最新の研究では、少量の飲酒でも死亡リスクが上がるという報告が出ています。 葉石さん がーん。じゃあやっぱり「酒は毒」ですか…。それに、「適量」といっても、日本酒で1合、ビールで中瓶1本って、左党にとっては物足りないですよね…。 浅部さん 私も左党ですから、お気持ちは分かります。 葉石さん そうですよね、浅部さんもお酒がお好きですよね。ズバリ聞きますが、医師である浅部さんは、いつも「適量」で満足されているのでしょうか? 浅部さん そ、それはですね…。いつも「適量」とはいかないかもしれません(笑)』、「適量の飲酒が死亡率を下げるという報告」、「その多くが「健康に良い可能性はある」が、まだ「議論のある」段階。つまり、エビデンスレベルが「やや弱い」ことは否めない」、「最新の研究では、少量の飲酒でも死亡リスクが上がるという報告」、「「適量」といっても、日本酒で1合、ビールで中瓶1本って、左党にとっては物足りないですよね…」、その通りだ。
・『飲み方を変えたら体重3kg減、体脂肪5%減!  Q:適量とされている飲酒量は、1日当たりに換算すると物足りないかもしれませんが、1週間のうちに休肝日を設けたりすれば、もっと飲んでもいいのでしょうか。 葉石さん この本にあるように、多くの専門家、医師に取材して分かったのが、1日というより1週間での総量が大事ということでした。つまり1週間のなかでやりくりすればいいということ。 1日当たり日本酒1合というのは、純アルコール量で20gですが、週に換算すれば約150gなんです。休肝日を設ければ、多く飲んでもいい日を作れる。そういうやりくりをしていけば、健康で楽しく飲み続けることができることを学びました。 浅部さん そういったやりくりはとても大切ですね。もちろん、1日で約150g飲んで残り6日は休肝日、といった極端な飲み方はダメですが。 葉石さん 実は、書籍『酒好き医師が教える最高の飲み方』のもとになった連載「左党の一分」を通じて取材した医師はほとんどが自分も酒好きという方で、適量では物足りなさそうな私を見て、「それならこういう飲み方をしてみるといいよ」と教えてくださったんです。 取材を進めるうちに、会食が多い週は自宅での飲みをやめる、休肝日を増やす、朝晩は体重計に乗るというのが習慣化していきました。その結果、体重は3kg減り、体脂肪も5%減。オーバーしていた中性脂肪も基準値に収まりました。やっぱり、医師のアドバイスは間違いないと感じています。 Q:おお、効果てきめんですね。 葉石さん 朝の目覚めも良く、むくみもなくなり、以前よりもすこぶる体調も肌の調子もいい。運動も取り入れて、とても健康になりました。ダイエットは継続中です。 浅部さん 適量は絶対に守らなくてはいけないと思うと、お酒がおいしくなくなってしまいますよね。適量を「意識」するだけでもだいぶ飲み方が変わってきます。 葉石さん そうなんです。「たまにやらかしてしまってもいい」ぐらいの気持ちでいると、気が楽になって、休肝日も我慢できる。するとカラダの調子が良くなって、ますます健康的に飲もうという気になるんです。 浅部さん 私は、「ゼロリスクで生きる必要はない」と思っているんです。あらゆるリスクを排除して生きようとする“ゼロリスク主義者”には、飲酒は勧められないかもしれません。でも、お酒が好きなら、飲酒の健康リスクをとって、お酒を楽しみたいと思うでしょう。そんな人たちは「どの程度のリスクなら許容できるか」を考えながら飲むべきです。この本は、そのための判断材料になりますね』、「お酒が好きなら、飲酒の健康リスクをとって、お酒を楽しみたいと思うでしょう。そんな人たちは「どの程度のリスクなら許容できるか」を考えながら飲むべきです。この本は、そのための判断材料になりますね」、それは有難い。
・『お世話になりたくない「抗酒剤」の恐怖  Q:酒好きな方は、一方で自分が「アルコール依存症」になったらどうしよう、という恐怖も感じているのではないかと思います。 葉石さん 私も以前は、夕方5時を回ると夕飯の支度をしながらビールをカシュと開けたり、休日は昼からスパークリングワインを飲んだりしていましたが、もうそんなことはしなくなりました。特に、アルコール依存症について取材してからは、怖くなりましたね…(参考記事)。 浅部さん 依存症は精神病の一種なので、専門外来が必要になるんです。病棟の雰囲気も独特だったでしょう。 葉石さん 特に怖かったのが「抗酒剤」の話です。遺伝子によってお酒の強さが決まるのはよく知られていますが、お酒にやたら強い人でもこの抗酒剤を飲むと強制的にお酒に弱くなり、つまり「下戸」になってしまう。だから、アルコール依存症で入院している患者さんがこっそり抜け出してコンビニでお酒を買って飲んでも、抗酒剤のおかげで顔が真っ赤になってすぐバレるんだそうです。抗酒剤のお世話だけにはなりたくないと思いました…(参考記事)。 浅部さん 強制的にお酒に弱くなるということは、危険もあるんです。以前のお酒に強い自分のつもりで飲んだら、あっという間に急性アルコール中毒になります。実は、抗酒剤で死者も出ているんです。その人は、抗酒剤を飲んでいるのに「飲め飲め」と勧められてお酒を飲んで、急性アルコール中毒になったそうですが…。 葉石さん ますます怖くなりました…。 2013年の厚生労働省研究班の調査による推計。アルコール依存症者数は「ICD-10」の診断基準によるもの。ハイリスク群の多量飲酒者は、飲酒する日には純アルコール換算で60g以上飲酒している人。 Q:アルコール依存症の人は109万人、その予備群は980万人もいると推計されています。こうした話を聞くと、酒量を減らそうという気にもなるのでは。そのコツは? 葉石さん 私が取材で聞いたのは、まず自分の「飲酒量の見える化」です。記録をとって把握すること。そのうえで、少しずつ減らしていく。いきなり無理な目標設定をしても、リバウンドしてしまいますから。ダイエットと同じですね。 浅部さん アルコール依存症かどうかは、WHOが掲げるAUDIT(飲酒習慣スクリーニングテスト)や、久里浜医療センターのKAST(久里浜式アルコール依存症スクリーニングテスト)で確認することができます(参考)。心配な方は一度、チェックしてみるといいでしょう。また、アルコールの強さについては、遺伝子検査やアルコールパッチテストで調べてみることをお勧めします(参考)。自分では強い遺伝子型だと思っていても、実は中間タイプだった、ということもよくあるので』、「お酒にやたら強い人でもこの抗酒剤を飲むと強制的にお酒に弱くなり、つまり「下戸」になってしまう。だから、アルコール依存症で入院している患者さんがこっそり抜け出してコンビニでお酒を買って飲んでも、抗酒剤のおかげで顔が真っ赤になってすぐバレるんだそうです。抗酒剤のお世話だけにはなりたくないと思いました…」、「抗酒剤」については初めて知った。私も「世話になりたくない」ものだ。「アルコールの強さについては、遺伝子検査やアルコールパッチテストで調べてみることをお勧めします」、なるほど。
・『自分のタイプを知り、味わって楽しく飲もう!  葉石さん 実は、私も調べてみたら、自分は中間タイプだということが分かったんです。まさに、鍛えられてお酒に強くなったタイプだと(参考記事)。 浅部さん 中間タイプのほうが食道がんのリスクなどが高かったりします。遺伝子型について調べれば、飲み方も変わってくるでしょうね。 Q:どのようなリスクをとるかは個人の選択次第ですが、どうせならおいしいお酒を楽しく味わいたいものですよね。最後にこの記事を読んでいる方にアドバイスをお願いします。 葉石さん 「獺祭」でおなじみ、山口県の旭酒造の会長には、「酒は飲むものではなく、味わうもの」という名言があるんです。まさにこれですね。ただ飲んで酔っ払うのではなく、おいしい料理といい仲間とともに一生涯飲み続けるためにも、健康を害すことがない自分なりの飲み方を見つけていただきたいです。 浅部さん 私は、「その日の体調と相談しながら酒量を決めてください」ということですね。一律にこれくらいの量を飲むと考えるのではなく、体調がいまいちなら付き合いで1杯だけにするとか。それと、悪酔いや二日酔いを防ぐためには、お酒と一緒にたんぱく質、脂質、食物繊維、ビタミンなどをバランスよく含んだおつまみを食べる。つまり、お酒は料理と一緒に味わうもの、ですよ。 Q:確かに、今日はお2人とも、料理もお酒もしっかり味わっていますね。 東京・中央区の京橋もと(酛)にて 葉石さん このお店、お料理も日本酒も本当においしいでしょう。 浅部さん いや、素晴らしいですよ。おかわりいいですか。 Q:すでに本日の「適量」は超えてしまったような気もしますが…。 葉石さん 明日は休肝日にします(笑)』、「酒は飲むものではなく、味わうもの」、味わい深い言葉だ。「その日の体調と相談しながら酒量を決めてください」、「お酒と一緒にたんぱく質、脂質、食物繊維、ビタミンなどをバランスよく含んだおつまみを食べる。つまり、お酒は料理と一緒に味わうもの」、私も「酒」を「味わい」たい。

次に、3月7日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した公衆衛生学者の林 英恵氏による「【サプリメントを飲んでいる人は要注意!】サプリメントを飲むと死亡率があがる?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/318970
・『健康法を知っているだけでは健康にはなれません。本当に正しいとされている健康法を、きちんと行動に移し、毎日無理なく続けるためには技術が必要です。本連載の「健康になる技術」とは、健康でいるために必要なことを実践するスキルです。簡単に言うと、健康になるために「What(何)」を「How(どのように)」行ったら良いのか、自分の環境や特性(弱点・強み)に合わせて実践する技術のこと。本連載では、話題の著書『健康になる技術 大全』の著者、林英恵が「食事」「運動」「習慣」「ストレス」「睡眠」「感情」「認知」のテーマで、現在の最新のエビデンスに基づいた健康に関する情報を集め、最新の健康になるための技術をまとめていきます。何をしたら良いのかはもちろんのこと、健康のための習慣づくりに欠かせない考え方や、悪習慣を断ち切るためのコツ、健康習慣をスムーズに身につけるための感情との付き合い方などを、行動科学やヘルスコミュニケーションのエビデンスに基づいて、丁寧にご紹介していきます。今回は、「サプリメントは健康にいいのか? 悪いのか?」についてです。 *書籍『健康になる技術 大全』の「食事の章」はケンブリッジ大学疫学ユニット上級研究員 今村文昭博士による監修』、「現在の最新のエビデンスに基づいた健康に関する情報を集め、最新の健康になるための技術をまとめていきます」、「今回は、「サプリメントは健康にいいのか? 悪いのか?」についてです」、興味深そうだ。
・『健康のためにと思っているものが仇になる  薬局やコンビニエンスストア、スーパーマーケットでも最近はたくさん並べられているサプリメント。「サプリメント(supplement)」とは、その名の通り、食事で足りないものを「補う」という意味です。錠剤や粉状のもの、液体やエナジーバーなど色々な形状のものがあります。 世界では約1232億ドル(日本円にして約12兆円)(*1)以上で、日本でも約1兆3729億円の市場があります(2022年)(*2)。サプリメント産業は多少の増減はあるものの、アメリカでも日本でも拡大中で、今後もその傾向が見込まれています。 「筋肉増強」、「ダイエット」、「骨を強くする」、ひいては「病気の予防」、「アンチエイジング」まで、健康課題の手っ取り早い解決方法として、消費者にその効果を訴えかけます。健康のために何か行動をとるのは素晴らしいことですが、果たして、サプリメントをとることは良い方法なのでしょうか?』、「世界では約1232億ドル(日本円にして約12兆円)以上で、日本でも約1兆3729億円の市場」、かなり大きな市場だ。
・『「β(ベータ)カロテンのサプリメント服用」が死亡率を上げる?  栄養学やがんの研究者にとって、衝撃的な結果となった研究があります。それは1990年代に発表された、β(ベータ)カロテン(βカロチンとするところもあります)のサプリメントに関する臨床試験です(*3)。 βカロテンとは、緑黄色野菜に含まれる成分です。日本でもがんや心血管疾患の予防が期待できるとして、「飲む緑黄色野菜」と称し、サプリメントや健康飲料として様々な形で売り出されました。記憶にある人もいると思います。 βカロテンのサプリメントによる健康への効果を検証した研究のうちの1つを紹介します。この研究では、喫煙者などの特定のグループでβカロテンのサプリメントを服用すると、肺がんの発生率や死亡率が上がることがわかりました(*3)。一方で、がんをはじめとして、期待された重篤な疾患へのプラスの効果は見られませんでした。 その後、このような研究を含め、複数の研究のエビデンスを統合して分析する研究が行われました。結果、βカロテンのサプリメントを常用することで、逆に肺がんや胃がんのリスクを上げることが指摘されました(*4-8)。 健康に良かれと思って飲んでいるはずのサプリですが、効果がないだけではなく、かえってがんの発生率や死亡率を上げる可能性があるということで、当時大きなニュースとなりました。サプリメントについて語る上で欠かせない話となっています。 たとえ害はなかったとしても、健康にとってプラスの効果が見込めないのであれば、サプリメントを摂取する意味も薄れてしまいます。鉄分やビタミンDの欠乏が医師によって診断され、サプリメントのような形で処方されるようなケースは、指示にしたがってとるべきと思います。 「なんとなく健康によさそうだから」といった曖昧な理由や臆測で、任意にサプリメントをとることはお勧めしません。専門家の判断を仰がないでとるサプリメントに関して、長期的に健康に好ましい効果が見込めるものは、今のところないと考えましょう。 例えば鉄分の不足による貧血に対して鉄剤の効果は認められています(*9,10)。しかし一方で、鉄剤のサプリメントを常用している人ほど、死亡率が高いとアメリカから報告されています(*11)。概してサプリメントの研究となると、そういった二面性が伴って、解釈と結論を出すのがとても難しいのです。どの栄養のサプリメントもやはりプロの判断が必須と考えてください(例外については後述)』、「βカロテンのサプリメントを常用することで、逆に肺がんや胃がんのリスクを上げることが指摘」、「効果がないだけではなく、かえってがんの発生率や死亡率を上げる可能性があるということで、当時大きなニュースとなりました。サプリメントについて語る上で欠かせない話となっています」、「「なんとなく健康によさそうだから」といった曖昧な理由や臆測で、任意にサプリメントをとることはお勧めしません。専門家の判断を仰がないでとるサプリメントに関して、長期的に健康に好ましい効果が見込めるものは、今のところないと考えましょう」、なるほど。
・『足りないものをサプリメントで補えば何とかなるといえるほど、科学は単純ではない  サプリメントに注意が必要な理由があります。それは、サプリメントを摂取すること自体が、還元主義とよばれる、複雑な事象を一つのシンプルな要素に着目して結論づけることの影響を強く受けているためです。実際、成分的なことを基に「XXが足りないためにXXを補うと体に良い」という栄養分の理屈を応用したものがたくさんあります。 注意が必要なのは、体の中でのメカニズムとして特定の栄養分が良いこと(生化学的な考察や概念的なことで、エビデンスではありません)と、実際にサプリメントでそれを摂取した時に出る体の反応や健康・病気との関係(臨床医学や公衆衛生学的なエビデンス)は別のものだということです。 例を挙げてみましょう。「βカロテンは抗酸化物質としての働きを持つ。抗酸化物質は、“酸化ストレス”が原因となる肺がんが予防可能と考えられる。だから、βカロテンのサプリメントをとろう」という考え方はまさに生化学的な考察です。実際にそうした考えに基づいて、βカロテンやビタミンC、Eのサプリメントが売り出された歴史があります。 しかし前述したように、βカロテンのサプリメントで、がんの予防効果が出ないだけでなく、逆に死亡率を上げたりすることが示されました。生化学的な根拠を基に、「このサプリメントがXXに効く!」とうたっているサプリメントは本当に多いのですが、このような考察から、健康と病気の関係を考えるのは不適当です。 足りないものをサプリメントで補えば何とかなるといえるほど、科学は単純ではないのです。こういったことを知ってか知らずしてか、動物実験や絶句するような質の低い研究でも、あたかも万人に向けて伝えられるほど強いエビデンスがあるように伝えるのが、宣伝・ビジネスの技です。 サプリメントに限らず食事全体にいえることですが、生化学的な情報のみに頼らず、実際にそれを摂取したことによる病気と健康との関連がどうなっているかで判断しましょう』、「体の中でのメカニズムとして特定の栄養分が良いこと(生化学的な考察や概念的なことで、エビデンスではありません)と、実際にサプリメントでそれを摂取した時に出る体の反応や健康・病気との関係(臨床医学や公衆衛生学的なエビデンス)は別のものだということです」、「動物実験や絶句するような質の低い研究でも、あたかも万人に向けて伝えられるほど強いエビデンスがあるように伝えるのが、宣伝・ビジネスの技」、騙されないよう気をつけたいものだ。消費者を惑わすような悪質な広告は厳しく取り締まるべきだ。
・『飲んでも良いサプリメントはあるのか?  サプリメントのマイナスの側面について、整理してきました。一方で、サプリメントは、体の状態や人によってプラスに働くことも確かにあります。しかし、この判断は自分でできることではありません。サプリメントが必要な人というのは、医師や管理栄養士の助言によりサプリメントを摂取した方が良いといわれた人のみと考えてください。 例外として、妊娠前や妊娠初期の女性は、胎児の神経器官などの正常な発育への効果が認められているために、サプリメントを含めた葉酸を積極的に摂取することが求められています(*12,13)。厚生労働省も、これを推奨しています(*12)。 そのほかにも、何かの疾患を抱えている人や高齢者など特定の人にとっては有用なサプリメントも考えられます(*14)。例えば、ビタミンB12は高齢になると吸収する機能が落ちることが知られており、食事では得られない用量に関してサプリメントの処方によるビタミンB12の摂取で栄養状態を維持できることが報告されています(*15)。 そういう可能性もあるのですが、それでもまず、健康に不安がある場合や、サプリメントの摂取が必要かもしれないと感じる場合は、まず医師や管理栄養士に相談しましょう。そして、専門家の助言により、今服用しているサプリメントがある場合は、勝手にやめないようにしましょう。また、処方された薬がある上でサプリメントを服用したい人は、必ず医師に飲んでいるサプリメントについて話をするようにしましょう』、「健康に不安がある場合や、サプリメントの摂取が必要かもしれないと感じる場合は、まず医師や管理栄養士に相談しましょう。そして、専門家の助言により、今服用しているサプリメントがある場合は、勝手にやめないようにしましょう。また、処方された薬がある上でサプリメントを服用したい人は、必ず医師に飲んでいるサプリメントについて話をするようにしましょう」、その通りだ。

第三に、2月3日付け日経Goodayが掲載した医学ジャーナリストの大西淳子氏による「病気予防を目指すなら、ウォーキングは1日何歩がいい? 高血圧は1日8000歩程度、糖尿病は1日9000歩程度で頭打ち」を紹介しよう。
https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/column/15/050800004/012700212/
・『ウォーキングや日常生活の中の歩行で慢性疾患の予防を目指す場合、1日の歩数は多いほど予防効果が得られること、高血圧と糖尿病の予防に関しては8000~9000歩が目安となることが、米国の研究(*1)で示されました』、興味深そうだ。
・『歩数が少ない人は死亡リスクが高い、では何歩なら大丈夫?  スマートウォッチなどのウェアラブル活動量計の利用者が増えています。しかし、毎日の歩数を計測し、健康増進に役立てようと考えても、目指すべき1日の歩数については確定的な情報はありません。 これまでに行われた研究では、「1日の歩数が少ない人は、死亡リスクや心血管疾患(心筋梗塞や脳卒中など)の発症リスクが高い」ということが一貫して示されていました。しかし、そうした研究が用いていた方法には改善の余地がありました。たとえば、研究用の活動量計を貸し出した短期間の研究だったり、研究の参加者たちのもともとの(研究参加前の)運動習慣を考慮していなかったり、評価対象が死亡、糖尿病、心血管疾患などに限定されていたり、といった限界がありました。また、長期間かけて発症、進行する慢性疾患に対する運動の効果は検討されていませんでした。 そこで米Vanderbilt大学医療センターのHiral Master氏らは、市販のスマートウォッチを数年間装着している人たちの歩数と、その間の主要な慢性疾患の発症との関係を検討することにしました』、「米Vanderbilt大学医療センター」のものは本格的な実証研究のようだ。
・『6000人の4年間の歩行記録を基に病気との関係を分析  対象は、米国で行われた観察研究「All of Us Research Program(AoURP)」の参加者32万9070人の中から選びました。電子健康記録の研究利用を許可し、本人所有のスマートウォッチ(Fitbit)に6カ月以上にわたって記録されていたデータを提供した18歳以上の6042人(年齢の中央値は56.7歳、73%が女性、BMIの中央値は28.1)を分析対象にしました。 6042人を4年間(中央値)、約590万人-年(*2)追跡しました。参加者の1日あたりの歩数は7731.3歩(中央値)でした。さまざまな慢性疾患を対象として、1日の歩数が1000歩増加するごとの発症リスクの変化を調べたところ、糖尿病や睡眠時無呼吸症候群などのリスクが有意に低下することが明らかになりました(表1)。 表1 歩数が増えることで発症リスクが低下する主な疾患 2型糖尿病は生活習慣や遺伝的な影響によって発症する糖尿病で、糖尿病患者の大部分を占める。(Nat Med. 2022 Nov;28(11):2301-2308.) *1 Master H, et al. Nat Med. 2022 Nov;28(11):2301-2308. *2 人-年:観察した人数とそれぞれの年数を掛け合わせたもの。10人を1年間、もう10人を2年間観察した場合は、30人-年となる。) そこで、主な慢性疾患6種類、すなわち、糖尿病(生活習慣や遺伝的な影響により発症する2型糖尿病)、高血圧、胃食道逆流症、うつ病、肥満(BMI〔体格指数〕が30以上、*3)、睡眠時無呼吸症候群の6疾患について詳しく調べることにしました。なお、対象とした集団では、これら6疾患の複数を保有する患者の割合は高くありませんでした。) 肥満、睡眠時無呼吸症候群、胃食道逆流症、うつ病の4疾患の発症リスクは、1日の歩数が増えると、ほぼ直線的に低下していました。例えば肥満リスクは、肥満発症の有無に関する情報が得られた人たちの1日あたりの歩数の中央値(8280歩)から1万歩に増えた場合には、31%低下することが明らかになりました。また、研究参加時点のBMIも考慮して分析すると、たとえばBMIが28だった人が歩数を1日6000歩前後から1万1000歩まで増やすと、肥満発症リスクは64%低下すると推定されました。 さらに、1日の歩数に基づいて参加者を4等分し、歩数が下位25%だった人と上位25%の人のこれら6疾患の発症リスクを比較しました(表2)。この結果、1日に6000歩程度しか歩かない人が、歩数を2倍弱まで増やせば、個々の疾患のリスクはおおよそ4分の1から2分の1程度低下することが示されました。 表2 1日の歩数が下位25%の人と比較した、上位25%の人の疾患発症リスク (Nat Med. 2022 Nov;28(11):2301-2308.) 一方で、糖尿病、高血圧という2疾患と1日の歩数の関係は非線形で、比例関係は見られませんでした。糖尿病はおおよそ1日9000歩、高血圧は1日8000歩までは、歩数が増加するにつれて発症リスクが低下しましたが、それ以上歩いてもリスク低下は見られなくなっていました。 今回のデータは、1日あたりの歩数は一般的な慢性疾患6疾患の発症リスクと関係し、肥満、睡眠時無呼吸症候群、胃食道逆流症、うつ病のリスクは歩数が増えるほど低くなること、糖尿病と高血圧については、リスク低下の最大の利益は1日8000~9000歩で得られることを示唆しています。 *3 BMI=体重(kg)÷身長(m)2 WHOの基準ではBMI30以上が肥満、日本肥満学会の基準では25以上が肥満。 (大西淳子氏の略歴はリンク先参照)』、「肥満、睡眠時無呼吸症候群、胃食道逆流症、うつ病の4疾患の発症リスクは、1日の歩数が増えると、ほぼ直線的に低下していました。例えば肥満リスクは、肥満発症の有無に関する情報が得られた人たちの1日あたりの歩数の中央値(8280歩)から1万歩に増えた場合には、31%低下することが明らかになりました。また、研究参加時点のBMIも考慮して分析すると、たとえばBMIが28だった人が歩数を1日6000歩前後から1万1000歩まで増やすと、肥満発症リスクは64%低下すると推定」、「1日の歩数に基づいて参加者を4等分し、歩数が下位25%だった人と上位25%の人のこれら6疾患の発症リスクを比較・・・1日に6000歩程度しか歩かない人が、歩数を2倍弱まで増やせば、個々の疾患のリスクはおおよそ4分の1から2分の1程度低下することが示されました」、「糖尿病、高血圧という2疾患と1日の歩数の関係は非線形で、比例関係は見られませんでした。糖尿病はおおよそ1日9000歩、高血圧は1日8000歩までは、歩数が増加するにつれて発症リスクが低下しましたが、それ以上歩いてもリスク低下は見られなくなっていました」、なるほど。 

第四に、3月20日付け日刊ゲンダイが掲載した脳科学者(工学博士)/分子生物学者/日本総合研究所スペシャルアカデミックフェローの西剛志氏による「脳科学者が提言「低GI食は脳のベストパフォーマンスを引き出す」子どもの成績にも影響」を紹介しよう。
・『主食は「白」より「茶色」を選ぼう  Q:GI値は食品ごとに違うのですよね? 各食品のGI値を知らなければならないとすると、低GI食の実践は難しそうです。 低GI食か高GI食か。3つのポイントを覚えておけば、おおむね低GI食になります。ポイント1は、甘すぎるものに注意する。甘さはほとんどがブドウ糖によるもの。砂糖をそのまま使ったお菓子や甘い果物は、一般的にGI値が高いと考えてください。 ポイント2は、主食は「白」より「茶色」寄りのものを選ぶ。米、パン、うどん、パスタといった主食はほぼ糖質ですが、GI値は食べ物の色で異なり、白米より玄米、白い食パンより茶色のライ麦パン、うどんよりそばの方がGI値は低めです。色がついているものほど精製されておらず、食物繊維が多いため、血糖値の上昇が緩やかになるからです。 ポイント3は、食物繊維の量を意識する。主食の見分け方と同様で、食物繊維が多いものはGI値が低め。果物ではスイカやメロンより、グレープフルーツやリンゴ、お菓子ではケーキより高カカオのチョコレートの方が、GI値が低いのです。 Q:白米が大好き。集中力や記憶力は上げたいですが、好きなものも食べたい……。わがままな希望でしょうか。 A:そんなことは全くありません。高GI食でも低GI食に変える裏技があります。いくつか紹介しましょう。まずは、1度に食べる量を少なくする。白米のような高GI食は小分けにしてちょこちょこ食べると血糖スパイクが起こりにくい。次に、ベジファーストやミートファースト、フィッシュファーストを実践する。要は、野菜、肉、魚などを先に食べる。最後に白米を食べれば、血糖値の急上昇を抑制できます。 たとえばとんかつ定食。脳のパフォーマンスアップにおいては、とてもおすすめ。キャベツから食べ始め、とんかつや味噌汁に進み、最後にご飯を食べる。とんかつは油を使って調理しているので、油が腸壁に膜を作って糖分の吸収を遅らせる点もいい。 この「腸壁に膜を作る」も押さえておきたい裏技で、油と同様、乳製品も役立ちます。食パンにチーズをのせ、牛乳やヨーグルトと合わせれば食パン単体では高GI食でも、トータルでは低GI食になります。さらに、酸味も低GI食を実現させる裏技です。お酢やレモンですね。ラーメン、餃子、唐揚げなどには、ぜひこれらをかけてください。 Q:裏技を押さえていれば我慢不要。 A:まさにそうなのですが、一番大事なのは「無理をしない」。低GI食は脳のパフォーマンスアップにつながりますが、無理やりすれば脳にストレスがかかり、かえってパフォーマンスが下がります』、「ポイント1は、甘すぎるものに注意する」、「ポイント2は、主食は「白」より「茶色」寄りのものを選ぶ」、「ポイント3は、食物繊維の量を意識する」、「1度に食べる量を少なくする。白米のような高GI食は小分けにしてちょこちょこ食べると血糖スパイクが起こりにくい」、「ベジファーストやミートファースト、フィッシュファーストを実践する。要は、野菜、肉、魚などを先に食べる。最後に白米を食べれば、血糖値の急上昇を抑制できます」、「「腸壁に膜を作る」も押さえておきたい裏技で、油と同様、乳製品も役立ちます」、確かに効果がありそうだ。
・『朝食抜きは脳の発達を遅らせ感情的に  Q:受験合格を目指す子供の食を脳科学の視点からサポートする「受験フードマイスター養成講座」のカリキュラム「頭がよくなる食事」も担当されていますよね。 A:脳科学を生かした子育ての研究を行っていることもあり、全国の幼稚園・保育所で講演を行っています。その中で、「子供が言うことを聞かない」「キレやすい」「落ち着きがない」といった相談を受けることが非常に多いのです。 いま、朝食を食べないお子さんが増えていますよね。記憶や感情、行動の抑制など高度な精神活動をつかさどる脳の前頭前野は28歳までに成長するのですが、成長期に朝食を取らず脳のエネルギー源が不足すると、前頭前野の発達が遅れてしまう。すると感情が抑制しづらくなり、キレやすくなる。 低血糖で集中力が欠け、落ち着きがなくなる。「ウチの子供はADHD(注意欠陥多動性障害)なのでしょうか?」といった相談もよく受けるのですが、いろんな要因があるものの、低血糖も大いに関係しているでしょう。食を通して、子供たちの脳のパフォーマンスを上げられないか。そのためには親が正しい知識を持つことが不可欠です。養成講座では、エビデンスに基づいた具体的な食事法を紹介しています。食事は本来楽しいもの。正しい知識で、親子ともに幸せになって欲しいと考えています。(聞き手=和田真知子/日刊ゲンダイ))(西剛志氏の略歴はリンク先参照))』、「記憶や感情、行動の抑制など高度な精神活動をつかさどる脳の前頭前野は28歳までに成長するのですが、成長期に朝食を取らず脳のエネルギー源が不足すると、前頭前野の発達が遅れてしまう。すると感情が抑制しづらくなり、キレやすくなる。 低血糖で集中力が欠け、落ち着きがなくなる。「ウチの子供はADHD(注意欠陥多動性障害)なのでしょうか?」といった相談もよく受けるのですが、いろんな要因があるものの、低血糖も大いに関係しているでしょう」、「食を通して、子供たちの脳のパフォーマンスを上げられないか。そのためには親が正しい知識を持つことが不可欠です」、同感である。
タグ:『酒好き医師が教える最高の飲み方(日経ビジネス人文庫)』 日経ビジネスオンライン「酒は「毒」か「薬」か? 医師が最終的に出した答えとは… 酒好きにとっての“永遠の問い”についに決着!」 健康 (その23)(酒は「毒」か「薬」か? 医師が最終的に出した答えとは… 酒好きにとっての“永遠の問い”についに決着!、【サプリメントを飲んでいる人は要注意!】サプリメントを飲むと死亡率があがる?、病気予防を目指すなら ウォーキングは1日何歩がいい? 高血圧は1日8000歩程度 糖尿病は1日9000歩程度で頭打ち、脳科学者が提言「低GI食は脳のベストパフォーマンスを引き出す」子どもの成績にも影響) 「酒は「毒」か「薬」か?」、ハッキリしてほしいものだ。 「適量の飲酒が死亡率を下げるという報告」、「その多くが「健康に良い可能性はある」が、まだ「議論のある」段階。つまり、エビデンスレベルが「やや弱い」ことは否めない」、「最新の研究では、少量の飲酒でも死亡リスクが上がるという報告」、「「適量」といっても、日本酒で1合、ビールで中瓶1本って、左党にとっては物足りないですよね…」、その通りだ。 「お酒が好きなら、飲酒の健康リスクをとって、お酒を楽しみたいと思うでしょう。そんな人たちは「どの程度のリスクなら許容できるか」を考えながら飲むべきです。この本は、そのための判断材料になりますね」、それは有難い。 「抗酒剤」については初めて知った。私も「世話になりたくない」ものだ。「アルコールの強さについては、遺伝子検査やアルコールパッチテストで調べてみることをお勧めします」、なるほど。 「酒は飲むものではなく、味わうもの」、味わい深い言葉だ。「その日の体調と相談しながら酒量を決めてください」、「お酒と一緒にたんぱく質、脂質、食物繊維、ビタミンなどをバランスよく含んだおつまみを食べる。つまり、お酒は料理と一緒に味わうもの」、私も「酒」を「味わい」たい。 ダイヤモンド・オンライン 林 英恵氏による「【サプリメントを飲んでいる人は要注意!】サプリメントを飲むと死亡率があがる?」 「現在の最新のエビデンスに基づいた健康に関する情報を集め、最新の健康になるための技術をまとめていきます」、「今回は、「サプリメントは健康にいいのか? 悪いのか?」についてです」、興味深そうだ。 「世界では約1232億ドル(日本円にして約12兆円)以上で、日本でも約1兆3729億円の市場」、かなり大きな市場だ。 「βカロテンのサプリメントを常用することで、逆に肺がんや胃がんのリスクを上げることが指摘」、「効果がないだけではなく、かえってがんの発生率や死亡率を上げる可能性があるということで、当時大きなニュースとなりました。サプリメントについて語る上で欠かせない話となっています」、 「「なんとなく健康によさそうだから」といった曖昧な理由や臆測で、任意にサプリメントをとることはお勧めしません。専門家の判断を仰がないでとるサプリメントに関して、長期的に健康に好ましい効果が見込めるものは、今のところないと考えましょう」、なるほど。 「体の中でのメカニズムとして特定の栄養分が良いこと(生化学的な考察や概念的なことで、エビデンスではありません)と、実際にサプリメントでそれを摂取した時に出る体の反応や健康・病気との関係(臨床医学や公衆衛生学的なエビデンス)は別のものだということです」、 「動物実験や絶句するような質の低い研究でも、あたかも万人に向けて伝えられるほど強いエビデンスがあるように伝えるのが、宣伝・ビジネスの技」、騙されないよう気をつけたいものだ。消費者を惑わすような悪質な広告は厳しく取り締まるべきだ。 「健康に不安がある場合や、サプリメントの摂取が必要かもしれないと感じる場合は、まず医師や管理栄養士に相談しましょう。そして、専門家の助言により、今服用しているサプリメントがある場合は、勝手にやめないようにしましょう。また、処方された薬がある上でサプリメントを服用したい人は、必ず医師に飲んでいるサプリメントについて話をするようにしましょう」、その通りだ。 日経Gooday 大西淳子氏による「病気予防を目指すなら、ウォーキングは1日何歩がいい? 高血圧は1日8000歩程度、糖尿病は1日9000歩程度で頭打ち」 「米Vanderbilt大学医療センター」のものは本格的な実証研究のようだ。 「肥満、睡眠時無呼吸症候群、胃食道逆流症、うつ病の4疾患の発症リスクは、1日の歩数が増えると、ほぼ直線的に低下していました。例えば肥満リスクは、肥満発症の有無に関する情報が得られた人たちの1日あたりの歩数の中央値(8280歩)から1万歩に増えた場合には、31%低下することが明らかになりました。また、研究参加時点のBMIも考慮して分析すると、たとえばBMIが28だった人が歩数を1日6000歩前後から1万1000歩まで増やすと、肥満発症リスクは64%低下すると推定」、 「1日の歩数に基づいて参加者を4等分し、歩数が下位25%だった人と上位25%の人のこれら6疾患の発症リスクを比較・・・1日に6000歩程度しか歩かない人が、歩数を2倍弱まで増やせば、個々の疾患のリスクはおおよそ4分の1から2分の1程度低下することが示されました」、「糖尿病、高血圧という2疾患と1日の歩数の関係は非線形で、比例関係は見られませんでした。糖尿病はおおよそ1日9000歩、高血圧は1日8000歩までは、歩数が増加するにつれて発症リスクが低下しましたが、それ以上歩いてもリスク低下は見られなくなってい 日刊ゲンダイ 西剛志氏による「脳科学者が提言「低GI食は脳のベストパフォーマンスを引き出す」子どもの成績にも影響」 「ポイント1は、甘すぎるものに注意する」、「ポイント2は、主食は「白」より「茶色」寄りのものを選ぶ」、「ポイント3は、食物繊維の量を意識する」、「1度に食べる量を少なくする。白米のような高GI食は小分けにしてちょこちょこ食べると血糖スパイクが起こりにくい」、「ベジファーストやミートファースト、フィッシュファーストを実践する。要は、野菜、肉、魚などを先に食べる。最後に白米を食べれば、血糖値の急上昇を抑制できます」、「「腸壁に膜を作る」も押さえておきたい裏技で、油と同様、乳製品も役立ちます」、確かに効果があり 「記憶や感情、行動の抑制など高度な精神活動をつかさどる脳の前頭前野は28歳までに成長するのですが、成長期に朝食を取らず脳のエネルギー源が不足すると、前頭前野の発達が遅れてしまう。すると感情が抑制しづらくなり、キレやすくなる。 低血糖で集中力が欠け、落ち着きがなくなる。 「ウチの子供はADHD(注意欠陥多動性障害)なのでしょうか?」といった相談もよく受けるのですが、いろんな要因があるものの、低血糖も大いに関係しているでしょう」、「食を通して、子供たちの脳のパフォーマンスを上げられないか。そのためには親が正しい知識を持つことが不可欠です」、同感である。
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災害(その13)(真っ赤に焼けた火石が直撃し 即死…浅間山が「大噴火」したときに起きた「おぞましい出来事」、597人のうち466人が死んだ…村を丸ごと破壊した「浅間山の大噴火」のおぞましき威力、浅間山の「想像を絶する大噴火」 それが江戸幕府に与えた「意外すぎる影響」をご存知ですか?、死者28名を出した《静岡県熱海市・土石流災害》…県は「天災だ」と結論付けるも 専門家と民間の原因究明チームが「人災だ」と県と市を提訴) [社会]

災害については、昨年3月28日に取上げた。今日は、(その13)(真っ赤に焼けた火石が直撃し 即死…浅間山が「大噴火」したときに起きた「おぞましい出来事」、597人のうち466人が死んだ…村を丸ごと破壊した「浅間山の大噴火」のおぞましき威力、浅間山の「想像を絶する大噴火」 それが江戸幕府に与えた「意外すぎる影響」をご存知ですか?、死者28名を出した《静岡県熱海市・土石流災害》…県は「天災だ」と結論付けるも 専門家と民間の原因究明チームが「人災だ」と県と市を提訴)である。

先ずは、本年2月25日付け現代ビジネス「真っ赤に焼けた火石が直撃し、即死…浅間山が「大噴火」したときに起きた「おぞましい出来事」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/106694?imp=0
・『荒れ狂う山  山はその晩から翌朝にかけて、ますます荒れ狂ったので、人々はついに家・家財をすてて逃げだしたが、まず二十四、五歳の男が、真っ赤に焼けた火石の直撃を受けて即死、人々の心はますます浮き足立った〉(大石慎三郎『天明の浅間山大噴火』52頁) 日本には、富士山、阿蘇山、御嶽山など、さまざまな火山が存在しています。こうした火山は、温泉など天然の恵みを私たちに与えてくれるのと同時に、地震や噴火といった災害をももたらします。 火山大国である日本では、つねに地震や噴火への備えが必要とされるわけですが、実際に火山が噴火したときになにが起きるのかについて、私たちは、なかなかリアリティを持つことができないのも事実です。 そこで注目したいのが、長野県と群馬県の境にある浅間山です。 浅間山は現在、活火山として、「噴火警戒レベル1」が設定されています。昨年9月には直下で火山性地震が観測され、気象庁が注意を呼びかけるという事態にもなっています。 と同時に、この山は、何度も噴火を繰り返してきた火山としても知られています。重要なのは、過去、浅間山が大爆発したときになにが起きたのかについて、かなり詳しい記録が残されているということです。 火山の脅威が荒々しく牙を剥いたとき、いったいなにが起きるのか——。現代の私たちにもそうした「リアル」をわかりやすく教えてくれるが、歴史学者である大石慎三郎氏による『天明の浅間山大噴火』です』、私が小学生のころ「浅間山」「噴火」で火山灰が東京にも薄っすら積もって驚かされた記憶がある。
・『「言語に絶す」  同書は、天明3(1783)年の大噴火の様子を詳しく伝えています。 同書によれば、噴火が始まったのは旧暦の4月の上旬。このとき中規模の噴火が起き、45日ほどの休止を経て、同5月下旬には2回目の爆発がありました。周囲には火山灰が降り積もり、馬に草をやるのにも苦労したという記録が残されています。 そして、6月18日には3回目の爆発が起きました。 やがて噴火の勢いは増していきます。浅間の北側にあった無量院という寺の住職は、 〈「二十八日には昼すぎになって近辺に砂が降り、同日の十二時ごろになって大爆発があり、大地がしきりに鳴動した。火口からの黒煙は以前より強くなり、山の中から赤い雷がしきりに走り出た。人々は身の毛もよだつほどで、見る者はおそろしさのあまりひや汗を流し、気絶せんばかりであった」〉(同書45頁) と書き残しています。 さらに旧暦7月6〜8日にかけて最後の爆発が起きますが、この3日間の被害は、「言語に絶す」ものだったとされます。 まず6日の夜から7日にかけては、火口から灼熱した大小の溶岩流が浅間北側の火口壁を越えて流出し、地表を覆ったそうです。前出の住職の手記には、 〈「七日、鳴音前日より百倍きびしく、地動くこと千倍也。これにより老若男女飲み食をわすれ、立たり居たり、身の置所なく、浅間の方ばかりながめ居り候ところ、山より熱湯湧出しおし下し、南木の御林見るうちに皆燃え尽くす」〉 といった状況がつづられています。犬や鹿といった野生動物が「燃死」したともあります』、200年以上昔とはいえ、相当凄い「噴火」だったようだ。
・『1.2mの灰が積もる  さらに同書は、浅間山の南側に位置し、のちにリゾート地となる軽井沢で、6〜8日の噴火の後になにが起きたのか、その被害の様子も描いています(以下の引用は、読みやすさのため改行の場所をあらためています)。 〈軽井沢では前日の大爆発で灰、軽石が四、五尺もつもり、道路と呑水用の水路が完全に埋ってしまった、そのため宿総出で様子入りの掘り浚(さら)えをはじめた。しかし、あとからあとから焼石・灰などが降ってくるため、用水の確保は徒労に終わった。 山はその晩から翌朝(八日)にかけて、ますます荒れ狂ったので、人々はついに家・家財をすてて逃げだしたが、まず二十四、五歳の男が、真っ赤に焼けた火石の直撃をうけて即死、人々の心はますます浮き立った〉 村の人たちは、夜具や鍋、ざる、すりばちなどを頭にかぶって南のほうへ逃げました。ところが、足洗いの桶などは、頑丈にできているにもかかわらず、火玉や焼石の直撃を受けると、その衝撃で底が抜けて、額や頭に傷をつくる人も多かったそうです。 結局、軽井沢では、1.2m程の灰や軽石が堆積、直径50cmもある焼けた石が降ってきて、あちらこちらで火事を起こしました。 182の民家のうち、火災で焼けたものが52戸、降り積もった軽石で22〜23戸が潰れたと言います。その後、9日、10日に雨が降り、雨水を吸った灰の重みで、潰れた家はついに82戸にもなったそうです。 幸いにも、人命の被害は一人で済みましたが、馬や牛が焼け死に、田畑も灰で埋まって使い物にならなくなったといいます。 噴火という災害がもたらす、人間の生活への巨大な打撃。同書ではさらに、浅間山の北側に位置する鎌原村という村について詳しく伝えています。この村では、火砕流によって村民597人のうち466人が死亡するという惨状となりました。 その事情については、【つづき】「597人のうち466人が死んだ…村を丸ごと破壊した「浅間山の火砕流」のおぞましき威力」で詳しくお伝えします』、「軽井沢では」「182の民家のうち、火災で焼けたものが52戸、降り積もった軽石で22〜23戸が潰れ、・・・その後、9日、10日に雨が降り、雨水を吸った灰の重みで、潰れた家はついに82戸にもなった」、「北側に位置する鎌原村」「では、火砕流によって村民597人のうち466人が死亡」、甚大な被害だ。

次に、この続きを2月25日付け現代ビジネス:学術文庫&選書メチエ編集部による「597人のうち466人が死んだ…村を丸ごと破壊した「浅間山の大噴火」のおぞましき威力」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/106693?imp=0
・『火砕流と粉体流  〈火口から約四キロ、標高差一一〇〇メートルおりた所で、毎秒一〇〇メートルから一五〇メートルあったろうと推定される火砕流が、途中の土砂・岩石などをも巻き込みながら、量と勢いをまして、あっという間に鎌原村を襲い……〉(大石慎三郎『天明の浅間山大噴火』58頁) これは、1783(天明3)年、旧暦の7月8日、浅間山が大爆発した直後に、浅間山麓にある鎌原村という村を襲った悲劇についての記述である。 この大爆発に至る、3ヵ月にわたる噴火は「天明の浅間山大噴火」としてよく知られている。 日本には、富士山、阿蘇山、御嶽山など、さまざまな火山が存在している。これらのうちには噴火のリスクをともなうものもあるが、実際に火山が噴火したときになにが起きるのかについて、私たちはなかなかリアリティを持つことができないのも事実だ。 そんななかにあって、私たちに生々しく、災害の恐ろしさを教えてくれるのが、過去の噴火、そして噴火による被害の記録である。 冒頭で引用したのは、歴史学者である大石慎三郎氏の著書『天明の浅間山大噴火』。同書は、天明の浅間山大噴火の様子を、現代の私たちにもわかりやすく、生々しく描き出している』、興味深そうだ。
・『噴火を眺めた見物客  1783年の4月上旬に浅間山の噴火は始まった。断続的に中規模の爆発がつづいていた。 周辺の村には火山灰や軽石がそうとうな高さに降り積もり、人々は、それらを処理する仕事に日々追われていた。 6月には大規模な噴火があった。周囲の村々には、やはり火山灰や軽石などの被害がつづいていた。 しかし、この噴火を楽しもうという者たちもいた。浅間山近くの人気の湯治場である草津温泉には、噴火を眺めようと、見物客が訪れるという状況だったのだ。浅間山頂からの明るい噴煙は、夜空を美しく染めていた。 ところが7月6日、状況が大きく変わる。 浅間山はさらなる大爆発を見せた。 湯治場の見物客もさすがにこの爆発にはおののいたのであろう、見物に出かける者はいなくなる。 そして7月8日、これまでにない大爆発が起きる。 『天明の浅間山大噴火』がとくにスポットを当てているのが、浅間山の北側に位置する鎌原村という村だ。この村は、冒頭で引用したように、8日の噴火の後、秒速100mを超えると考えられる火砕流……より正確には、その火砕流が引き起こした「粉体流」の被害を受けた。なお、火砕流とは、高温の火山灰や岩のかたまり、空気や水蒸気がまじりあい、猛スピードで山の斜面を駆け下りてくる現象のことだ。 〈火口から約四キロ、標高差一一〇〇メートルおりた所で、毎秒一〇〇メートルから一五〇メートルあったろうと推定される火砕流が、途中の土砂・岩石などをも巻き込みながら、量と勢いをまして、あっという間に鎌原村を襲い、余勢をかって現国鉄吾妻線万座・鹿沢口駅上の崖をこえて吾妻川になだれこんだ〉(同書58頁)』、「火砕流」の恐ろしさは、雲仙普賢岳の噴火や、さらにはイタリアのポンペイを火山灰の下に閉じ込めたベスビオスの噴火で鮮明な記憶となっている。
・『恐るべき死亡率  鎌原村の被害は非常に深刻かつ凄惨なものだった。一つの村で期待される収穫量を「村高」と呼ぶが、鎌原村は村高332石のうち、324石、つまり97%以上が犠牲となった。93軒あった家も、すべて埋め尽くされたという。 村民は597人いたうち466人、すなわち78.1%が死亡、生き残ったのは131人。馬は200頭いたうち170頭が犠牲になった。 さらに火砕流は、流れ込んだ先の吾妻川の流域と、その沿岸で大きな被害をもたらした。火砕流は川で冷えて固まって天然のダムとなり、やがて決壊する。吾妻川両岸には大量の水が流れ出し、その地域に被害を及ぼしていく。 〈それらの被害の実素は(中略)被害村総数五五、流死人一六二四人、流失家屋一一五一戸、田畑泥入被害五〇五五石となっている〉(同書60頁) 吾妻川は下流で利根川と合流するが、同書では、その付近での記録が以下のように引用されている。 〈利根川に黒色の泥水が押し寄せて来た。水中から煙が立ち上り、家屋や大木その他雑多なものが流れて来、その間には人馬が泥水に浮沈するのが見えた〉(同書61頁) 火砕流で堰き止められた巨大な川から大量の水が溢れ、あたりの家や人、家畜を飲み込み、すべてを押し流していく……巨大な噴火は、火砕流によって村を焼き尽くし、さらには水害を通して、1000人を優に超える犠牲を出したのである。 こうした災害についての生々しい記録、そしてそうした記録を丁寧に読み解く研究は、250年ほど後の時代を生きる私たちに、さまざまな教訓、そして、災害への対策のためのアイデアを与えてくれる。 災害への警戒感を抱くことの意義とともに、なにかを記録すること、その記録を読み解くことの重要性をもおしえてくれるように思える。 なお、天明の浅間山大噴火が、現在のリゾート地・軽井沢に及ぼした被害については「真っ赤に焼けた火石が直撃し、即死…浅間山が「大噴火」したときに起きた「おぞましい出来事」」の記事で詳しく解説している』、「災害についての生々しい記録、そしてそうした記録を丁寧に読み解く研究は、250年ほど後の時代を生きる私たちに、さまざまな教訓、そして、災害への対策のためのアイデアを与えてくれる。 災害への警戒感を抱くことの意義とともに、なにかを記録すること、その記録を読み解くことの重要性をもおしえてくれるように思える」、その通りだ。

第三に、この続きを2月25日付け現代ビジネス学術文庫&選書メチエ編集部による「浅間山の「想像を絶する大噴火」、それが江戸幕府に与えた「意外すぎる影響」をご存知ですか?」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/107051?imp=0
・『災害と政治  2011年3月11日に起きた東日本大震災。 この未曾有の大災害の後の日本の状況は、非常に印象的なものでした。原子力発電所の危険性/安全性をめぐって激しい議論が巻き起こり、ときにはそうした議論がSNS上で誹謗中傷合戦に発展することもあり、「人々の政治的な衝突」を目にする頻度が増したようにも思えます。 明確な影響関係があるかどうかはわかりませんが、2012年には民主党から自民党への政権交代が起き、大震災と政権交代とセットにして記憶されている方もいらっしゃるかもしれません。 どうやら巨大な災害は、政治のうえでの変化をも巻き起こす場合があるようです。 火山大国・地震大国・災害大国である日本に暮らす人々にとっては、今後、災害が起きた際にどのような政治的な変化が引き起こされるのかについて考えておくのも、無駄なことではないかもしれません。 そんなことを考える際に手助けとなるのが、過去の災害の記録です。 スポットを当てたいのは、1783(天明3)年に起きた浅間山の大噴火。長野県と群馬県の県境にあるこの活火山は、歴史上、何度も噴火を繰り返してきた山として知られます。 とりわけここで取り上げる「天明の大噴火」は、巨大な被害を巻き起こした噴火として記録されていますが、じつは、政治的に大きな変化を巻き起こした——江戸幕府/徳川政権に大きな影響を与えた——災害としても位置付けられています。 当時の事情について詳しく解説しているのが、日本近世史の研究者である大石慎三郎の『天明の浅間山大噴火』です。 同書をもとに経緯を見ていきましょう』、「天明の大噴火」が「江戸幕府/徳川政権に大きな影響を与えた」、とは興味深そうだ。
・『「昼間だというのに灰のために真っ暗」  ポイントは「降灰」(火山灰が降り積もること)です。天明の浅間山大噴火が始まった1783年の旧暦4月以降は、噴火にともなう降灰の被害が大きくなりました。同書はこのように書いています。 〈たとえば中山道深谷の宿で最後の大爆発の一日前の七日(編集部注:1783年旧暦の8月7日)の一時すぎに、すでにまだ昼間だというのに灰のために真っ暗になり、人々は手さぐりで、お互いに声をかけあって歩くほどであった〉(72頁) こうした降灰は、当然のことながら作物への影響を与えます。 〈これら降灰は、ちょうど成長期にあった農作物の葉面を覆ってその育成を妨げたのはもちろんである。のみならずそれらは、数年間にわたって成層圏に滞留して日光の照射を妨げた。 「癸卯(みずのとう・天明三年)以後三ヶ年、凶歳飢饉にして奥州一ヶ国の餓死人数凡(およそ)二百万人余」(『経世秘策』)といわれる天明の大飢饉は、冷害によるものであるが、その原因を百パーセント浅間山の火山灰のせいにするのは、もちろんできないが、その間に強い因果関係があったことは、気象学者をはじめ関連学者のひとしく認めるところである〉(75〜76頁) そして以下が重要な点、政治的な影響ですが、大石はこう続けます。) 〈ところで三年後に起こった田沼意次の没落(天明六年)は、天明の飢饉を契機に群発する一揆、打ちこわしにその原因があったことは周知のところである。またその三年後(一七八九)に起こったフランス大革命も、その数年前から続いた冷温と狭窄による社会不安を原因としているので、それはまさに浅間山のこの大噴火と関係ありとの議論が、昭和五十四年七月にイギリスで開催された「気候と歴史に関する国際会議」で行われたということが、それに出席した鵜川馨氏(立教大学教授)によって報告されている。 春秋の筆法をもってすれば、天明三年の浅間山大噴火は、田沼意次を失脚させ、マリー・アントワネットをギロチンにかけた、ともいうことになる〉(76頁) 天明の浅間山大噴火という災害は、間接的ではあるかもしれないが、田沼意次の失脚と、フランス革命という政治的な変化の引き金になったかもしれない……。 著者の大石慎三郎は、田沼意次の研究者としても知られていますが、著書『田沼意次の時代』などでは、田沼時代から、次を受け継ぐ松平定信の時代への変化は非常に大きいものだったと書いています。 たとえば田沼の時代に活躍した文人の大田南畝を例に、「田沼政権下の社会の幅の厚みを楽しみ、それに集まった文化人の一人だった南畝にとっては、松平定信政権下の水はことのほか冷たかったにちがいない」としています。) やや乱暴に言えば、比較的寛容で明るい雰囲気のある社会・政治から、より統制的で道徳的な社会・政治へと移り変わっていったということでしょうか。その裏には——間接的ではあるかもしれませんが——天明の浅間山大噴火という巨大な災害があったと言えるかもしれません。 大災害は、社会と、そしてそれと相互に規定し合う政治のあり方を大きく変えることもあるということを、同書は実際の例をもって教えてくれます。 なお、天明の浅間山大噴火のあとの、周辺地域の凄惨な被害については、〈真っ赤に焼けた火石が直撃し、即死…浅間山が「大噴火」したときに起きた「おぞましい出来事」〉の記事などで詳述しています』、「凶歳飢饉にして奥州一ヶ国の餓死人数凡(およそ)二百万人余」・・・といわれる天明の大飢饉は、冷害によるものであるが、その原因を百パーセント浅間山の火山灰のせいにするのは、もちろんできないが、その間に強い因果関係があった」、「間接的ではあるかもしれないが、田沼意次の失脚と、フランス革命という政治的な変化の引き金になったかもしれない」、「浅間山が「大噴火」」が地球規模の寒冷化をもたらしたとすれば、「フランス革命という政治的な変化の引き金になったかもしれない」、確かに「浅間山が「大噴火」」の影響はグローバルだったんかも知れない。さらに、火山の「大噴火」が、フィルターを詰まらせ、原発の冷却を困難にし、原発のメルトダウンをもたらす懸念もある。

第四に、3月25日付け現代ビジネス「死者28名を出した《静岡県熱海市・土石流災害》…県は「天災だ」と結論付けるも、専門家と民間の原因究明チームが「人災だ」と県と市を提訴」を紹介しよう。
・『熱海土石流災害、責任の所在はどこへ  28名の死者を出した静岡県熱海市の土石流災害から1年8ヵ月が経過したが、原因究明は終わっていない。県は「長雨による地下水量の増加で崩落が発生した」という「地下水説」を主たる原因と結論付けた。一方、犠牲者の遺族や被災者は「人災」だったと考え、静岡県や熱海市に対して損害賠償請求訴訟を起こしている。 3月31日には地質学者・塩坂邦雄氏と「熱海土石流原因究明プロジェクトチーム」の清水浩氏が『熱海土石流の真実』を上梓する。塩坂氏は専門家の立場から「造成で尾根が削られ、盛り土側に大量の雨水が流入した」という点を崩落の原因と分析。さらに清水氏は「太陽光発電施設などを含む行政対応の不備が違法行為を見逃すことにつながった」と指摘する。 本の発売日には、熱海市内の「起雲閣」で出版記念会が開かれる。静岡の政界関係者は「これが川勝平太県知事に対する反対運動の狼煙になるかもしれない」と話す。難題を突きつけて工事を中断させている「リニア中央新幹線問題」が象徴するように、川勝知事の「唯我独尊政治」には批判も多い。それが熱海土石流でも「県は悪くない」という結論につながったとして、反川勝派は批判する。「天災」と主張する県および県知事への反発は、大きなうねりとなるかもしれない』、3月16日付け日経新聞によれば、「熱海土石流「市に責任」 百条委が最終報告」、崩落した盛り土を含む土地の前所有者に対し、市が安全対策を強制する「措置命令」を出さなかったことについて、「命令を出すべきだった」などと指摘。当然の指摘だが、県や「市に責任」があるとなれば、「川勝知事」には不利な材料だ。 
タグ:「軽井沢では」「182の民家のうち、火災で焼けたものが52戸、降り積もった軽石で22〜23戸が潰れ、・・・その後、9日、10日に雨が降り、雨水を吸った灰の重みで、潰れた家はついに82戸にもなった」、「北側に位置する鎌原村」「では、火砕流によって村民597人のうち466人が死亡」、甚大な被害だ。 200年以上昔とはいえ、相当凄い「噴火」だったようだ。 私が小学生のころ「浅間山」「噴火」で火山灰が東京にも薄っすら積もって驚かされた記憶がある。 現代ビジネス「真っ赤に焼けた火石が直撃し、即死…浅間山が「大噴火」したときに起きた「おぞましい出来事」」 現代ビジネス:学術文庫&選書メチエ編集部による「597人のうち466人が死んだ…村を丸ごと破壊した「浅間山の大噴火」のおぞましき威力」 (その13)(真っ赤に焼けた火石が直撃し 即死…浅間山が「大噴火」したときに起きた「おぞましい出来事」、597人のうち466人が死んだ…村を丸ごと破壊した「浅間山の大噴火」のおぞましき威力、浅間山の「想像を絶する大噴火」 それが江戸幕府に与えた「意外すぎる影響」をご存知ですか?、死者28名を出した《静岡県熱海市・土石流災害》…県は「天災だ」と結論付けるも 専門家と民間の原因究明チームが「人災だ」と県と市を提訴) 災害 大石慎三郎氏の著書『天明の浅間山大噴火』 「火砕流」の恐ろしさは、雲仙普賢岳の噴火や、さらにはイタリアのポンペイを火山灰の下に閉じ込めたベスビオスの噴火で鮮明な記憶となっている。 「災害についての生々しい記録、そしてそうした記録を丁寧に読み解く研究は、250年ほど後の時代を生きる私たちに、さまざまな教訓、そして、災害への対策のためのアイデアを与えてくれる。 災害への警戒感を抱くことの意義とともに、なにかを記録すること、その記録を読み解くことの重要性をもおしえてくれるように思える」、その通りだ。 現代ビジネス学術文庫&選書メチエ編集部による「浅間山の「想像を絶する大噴火」、それが江戸幕府に与えた「意外すぎる影響」をご存知ですか?」 「天明の大噴火」が「江戸幕府/徳川政権に大きな影響を与えた」、とは興味深そうだ。 「凶歳飢饉にして奥州一ヶ国の餓死人数凡(およそ)二百万人余」・・・といわれる天明の大飢饉は、冷害によるものであるが、その原因を百パーセント浅間山の火山灰のせいにするのは、もちろんできないが、その間に強い因果関係があった」、「間接的ではあるかもしれないが、田沼意次の失脚と、フランス革命という政治的な変化の引き金になったかもしれない」、 「浅間山が「大噴火」」が地球規模の寒冷化をもたらしたとすれば、「フランス革命という政治的な変化の引き金になったかもしれない」、確かに「浅間山が「大噴火」」の影響はグローバルだったんかも知れない。 さらに、火山の「大噴火」が、フィルターを詰まらせ、原発の冷却を困難にし、原発のメルトダウンをもたらす懸念もある。 現代ビジネス「死者28名を出した《静岡県熱海市・土石流災害》…県は「天災だ」と結論付けるも、専門家と民間の原因究明チームが「人災だ」と県と市を提訴」 3月16日付け日経新聞によれば、「熱海土石流「市に責任」 百条委が最終報告」、崩落した盛り土を含む土地の前所有者に対し、市が安全対策を強制する「措置命令」を出さなかったことについて、「命令を出すべきだった」などと指摘。当然の指摘だが、県や「市に責任」があるとなれば、「川勝知事」には不利な材料だ。
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日本郵政(その18)(「国民のカネを投入してまで維持する意味があるのか」組織に根付いた"郵便局体質"の害悪 民間企業で十分カバーできるのに、「日本郵政」がゆうちょ銀 かんぽ生命の株を手放せないワケ、日本郵政は賃上げ大盤振る舞い ベア民営化後最大 取引先の値上げ要請にも「満額回答」なのか) [国内政治]

日本郵政については、2021年4月24日に取上げた。久しぶりの今日は、(その18)(「国民のカネを投入してまで維持する意味があるのか」組織に根付いた"郵便局体質"の害悪 民間企業で十分カバーできるのに、「日本郵政」がゆうちょ銀 かんぽ生命の株を手放せないワケ、日本郵政は賃上げ大盤振る舞い ベア民営化後最大 取引先の値上げ要請にも「満額回答」なのか)である。

先ずは、昨年2月23日付けPRESIDENT Onlineが掲載した経済ジャーナリストの磯山 友幸氏による「「国民のカネを投入してまで維持する意味があるのか」組織に根付いた"郵便局体質"の害悪 民間企業で十分カバーできるのに」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/54950
・『総務省の監督強化は「官業復帰」への布石  続発する郵便局の不正事件に対応して、総務省が「監督体制を強化」するという。相次いで発覚した切手の不正換金事件や顧客の個人情報の政治活動への流用などは、郵便局長や局員の個人的犯罪の域を越え、組織に長く根付いた「郵便局体質」が背景にある。 その体質との決別を目指した郵政民営化を逆戻りさせた総務省にこそ、その責任はあるのだが、問題を逆に総務省の権限強化の口実にしようという。そんな総務省の「監督強化」は、政官一体で画策する「官業復帰」への布石ともいえる。国民のカネを投入してまで郵便局を維持する意味があるのかが問われている。 「郵政事業に対する国民からの信頼を回復させていくことが急務だ。コンプライアンスやガバナンスの一層の強化、再発防止策の確実な実施を促すため、総務省の監督体制を強化する」 2月1日の閣議後の記者会見に臨んだ金子恭之総務相は、こう語った。信頼回復には総務省が乗り出さなければダメだ、というわけだ。弁護士らで作る「有識者会議」を総務省に設けて、日本郵政グループに対する監督機能の強化に向けた具体的な取り組みについて検討し、夏をメドに報告書をまとめるという』、「相次いで発覚した切手の不正換金事件や顧客の個人情報の政治活動への流用などは、郵便局長や局員の個人的犯罪の域を越え、組織に長く根付いた「郵便局体質」が背景にある。 その体質との決別を目指した郵政民営化を逆戻りさせた総務省にこそ、その責任はあるのだが、問題を逆に総務省の権限強化の口実にしようという。そんな総務省の「監督強化」は、政官一体で画策する「官業復帰」への布石ともいえる」、全く盗人猛々しいやり方だ。
・『郵便局の不正が次々に発覚している  きっかけはとどまることを知らない郵便局の不正発覚だ。 2021年6月に逮捕された長崎住吉郵便局の元局長は、高金利の貯金に預け入れするなどと嘘を言って、現金をだまし取る手口で、62人から12億4000万円を詐取したと報じられた。また、熊本県の元局長は、かんぽ生命の顧客の個人情報を流した見返りに現金を受け取っていたとして、同じく2021年6月に逮捕された。 さらに昨夏には、ホテルで会合を開いたとする虚偽の名目で経費を不正に受け取った統括郵便局長2人を、日本郵便が戒告の懲戒処分とし、解任していたことが明らかになっている。 問題は、こうした不正が、その局長個人が「たまたま起こした」犯罪では済まされないことだ。 例えば、個人情報の扱いについては、郵便局全体でタガが外れている。2021年末には、郵便局で投資信託などの取引を行った顧客の個人情報が記載された書類が全国6565の郵便局で延べ29万人分紛失していたことを日本郵政が認めて発表した。誤って廃棄したとみられるので「外部への情報漏えいの可能性は極めて低い」と説明し、責任追及すらまともにしていない』、「郵便局で投資信託などの取引を行った顧客の個人情報が記載された書類が全国6565の郵便局で延べ29万人分紛失」、しかし、「誤って廃棄したとみられるので「外部への情報漏えいの可能性は極めて低い」と説明し、責任追及すらまともにしていない」、酷い気の緩みだ。
・『「まさか郵便局員が不正を働くわけがない」信頼を悪用している  企業などが郵便料金を別納した際に、相当額の郵便切手に消印を押す仕組みがあるが、それを悪用し、切手に消印を押さずに転売する手口が全国の郵便局で次々と見つかった。これも長年続く「郵便局員の小遣い稼ぎ」だったのではないかとの見方が強い。あまりにも巨額なものは事件化したが、少額のケースは闇に葬られてきたとも言われている。 郵便局は国の事業だから潰れない――。民営化された後もそう考えている利用者は少なくない。特に高齢者は長年付き合いのある郵便局長や局員に全幅の信頼を寄せている。郵便局で相次ぐ不正も、そうした無条件の信頼をベースに起きている。まさか郵便局員が不正を働くわけがない、という人々の思いを半ば、悪用しているわけだ。そうした過度の信頼が、内部のチェックを緩ませ、悪しき風習として脈々と続いている。 郵便局はちょっとやそっとでは潰れない、という思い込みは局長や局員にもあるのだろう。だから、多少経費を水増ししたり、ネコババしても会社は安泰だと思うのか。郵便局を舞台にした数々の不祥事の根は深い。まさに「郵便局体質」が脈々と引き継がれているのだ』、「まさか郵便局員が不正を働くわけがない、という人々の思いを半ば、悪用しているわけだ。そうした過度の信頼が、内部のチェックを緩ませ、悪しき風習として脈々と続いている」、「郵便局はちょっとやそっとでは潰れない、という思い込みは局長や局員にもあるのだろう。だから、多少経費を水増ししたり、ネコババしても会社は安泰だと思うのか。郵便局を舞台にした数々の不祥事の根は深い。まさに「郵便局体質」が脈々と引き継がれているのだ」、なるほど。
・『民営化は名ばかり、日本郵政株の3分の1は政府が保有  もとは国鉄(JRの前身)にも似たような体質があった。精算窓口でのネコババやカラ出張が新聞を賑わせたものだ。だが、民営化によって誕生したJRは、その体質を一変させた。日本郵政も民営化によってその体質は変わるはずだった。だが、郵政民営化の歩みは鈍い。2007年に日本郵政グループが発足、当初は完全民営化が前提だったが、その後の揺り戻しで、政府は日本郵政株の3分の1超を持ち続けることになった。 民営化した民間会社にもかかわらず、総務省が「監督強化」できるのも、この政府の持ち株と法律で日本郵政を縛っているからだ。持株会社である日本郵政は、今も日本郵便の株式の100%を保有。本来は保有株すべてを売却することになっている「ゆうちょ銀行」の発行済み株式の88.99%、「かんぽ生命」の49.90%をいまだに持ち続けている。つまり、民営化は名ばかりで、事実上、日本郵政グループは国が実質支配しているのだ。 郵政民営化では、銀行業も保険業も民間の企業で十分で、「官業」として国が事業を行えば民業圧迫になると考えられた。だから政府保有株をすべて売らせて、民間金融機関として自立させる道を考えた』、「日本郵政は、今も日本郵便の株式の100%を保有。本来は保有株すべてを売却することになっている「ゆうちょ銀行」の発行済み株式の88.99%、「かんぽ生命」の49.90%をいまだに持ち続けている。つまり、民営化は名ばかりで、事実上、日本郵政グループは国が実質支配しているのだ」、「郵政民営化」はすっかり骨抜きにされた形だ。
・『政府は郵便局網の維持に必死  今も、日本郵政を通じて間接支配しているのは理由がある。政府は必死になって郵便局網を維持する道を模索している。郵便局を保有する日本郵便には全国一律のサービスを提供する「ユニバーサルサービス」が義務付けられているが、2021年末時点で2万3774に及ぶ郵便局の多くは赤字だとされる。それを補い郵便局網を維持するために、ゆうちょ銀行とかんぽ生命に「業務手数料」や「拠出金」の形で毎年1兆円もの資金負担を求めてきた。 その支援資金が細ってくると、総務省は2019年から新たな方法に切り替えた。それまでは金融2社が自社商品を郵便局で販売してもらう「業務手数料」として支払われていたものを、独立行政法人の「郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構」にいったん拠出させた後、日本郵便に交付金として支払うように変えたのだ。資金をふんだんに持つ独法を絡めることで、郵便局網維持のための資金確保を狙うと共に、税金を投入する道筋を開いたとみられている』、「金融2社が自社商品を郵便局で販売してもらう「業務手数料」として支払われていたものを、独立行政法人の「郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構」にいったん拠出させた後、日本郵便に交付金として支払うように変えたのだ。資金をふんだんに持つ独法を絡めることで、郵便局網維持のための資金確保を狙うと共に、税金を投入する道筋を開いたとみられている」、「支援資金が細ってくると・・・新たな方法に切り替えた」、「総務省」の手際の良さには驚かされる。
・『自民党の集票マシーンと呼ばれた「旧特定郵便局長」  そこまでしてなぜ、政府は「郵便局網」を維持したいのか。その理由をうかがわせる不祥事が昨年発覚した。 2021年10月に西日本新聞の報道で発覚したのだが、全国の郵便局長(旧特定郵便局長ら)でつくる任意団体「全国郵便局長会」(全特)が日本郵政に要望、2018~20年度に約8億円分のカレンダー購入経費を負担させた上で、全国の局長に全特が擁立する自民党参院議員の後援会員らに配布するよう指示したというもの。郵便局の持つ顧客の個人情報を政治活動に流用したとして大問題になった。日本郵政は郵便局長ら112人を社内処分したと発表している。どうやら組織的に、郵便局の持つ情報と日本郵政の資金を使って、特定候補の応援をしていたという疑いが濃厚になった。 旧特定郵便局長は明治時代に地方の名士などが設置したものが多く、代々局長を世襲している例もある。地域の中核的存在だったことから政治的にも大きな影響を持ち、自民党の「集票マシーン」と呼ばれることもある。 こうした郵便局長は日本郵政の職員でありながら、転勤もなく、同じ業務を担い続けている。これが顧客との馴れ合いを生み、不正が頻発している根本原因だとも指摘されている。郵政民営化では、この特定郵便局の解体が決まったが、結局、今もひとつの「既得権」として郵便局長ポストが守られているとされる。 では、総務省が権限を強化することで、こうした長年の問題は解消されるのだろうか。残念ながらむしろ逆だろう』、「旧特定郵便局長は明治時代に地方の名士などが設置したものが多く、代々局長を世襲している例もある。地域の中核的存在だったことから政治的にも大きな影響を持ち、自民党の「集票マシーン」と呼ばれることもある」、「郵政民営化では、この特定郵便局の解体が決まったが、結局、今もひとつの「既得権」として郵便局長ポストが守られているとされる」、「総務省が権限を強化することで、こうした長年の問題は解消されるのだろうか。残念ながらむしろ逆だろう」、「今もひとつの「既得権」として郵便局長ポストが守られている」、全くフザケタ話だ。
・『日本郵政の事業に国民のカネをつぎ込む必要があるのか  自民党の大物議員の間には、「郵政再国営化」論がくすぶっている。宅配便が全国をカバーし、町々にコンビニができる中で、郵便局に対するニーズはどんどん低下している。宅配会社や地域金融機関との競争で収益性も低下、もはや日本郵政のやりくりだけでは既存の郵便局網を維持することは難しくなっている。そうなると集票マシーンを失うことになる自民党にとっては死活問題になる。郵便局を国営化して国で支えようというわけだ。 総務省の官僚たちが、大臣や与党政治家の意向に従わざるを得ないのは言うまでもない。それだけでなく、総務省自身も郵政事業に利権を持つ。 2019年末、かんぽ生命の不正販売問題の責任を取って、日本郵政、かんぽ生命、日本郵便の3社長が交代した。いずれも民間金融機関出身者だったが、後任は揃って官僚出身者となった。民間出身者が過酷なノルマを課したことが不正販売につながったかのような情報が流されたが、実のところ、民間経営者による改革を嫌う局長や総務官僚らの反発が背景にあった。不祥事を機に総務省はまんまと社長ポストを手に入れたのである。 果たして、今回の「監督強化」で総務省は何を奪還しようとしているのか。再国営化か、税金投入か。日本郵政が手掛ける事業はどれも、民間企業で十分のものばかりで、もはや国が手掛ける歴史的意味を失っている。そこにこれからも巨額の国民のカネをつぎ込む必要があるのかどうか、今こそ真剣に考えるべき時だろう』、「民間出身者が過酷なノルマを課したことが不正販売につながったかのような情報が流されたが、実のところ、民間経営者による改革を嫌う局長や総務官僚らの反発が背景にあった。不祥事を機に総務省はまんまと社長ポストを手に入れたのである。 果たして、今回の「監督強化」で総務省は何を奪還しようとしているのか。再国営化か、税金投入か。日本郵政が手掛ける事業はどれも、民間企業で十分のものばかりで、もはや国が手掛ける歴史的意味を失っている。そこにこれからも巨額の国民のカネをつぎ込む必要があるのかどうか、今こそ真剣に考えるべき時だろう」、同感である。

次に、昨年5月14日付け日刊ゲンダイが掲載した金融ジャーナリストの小林佳樹氏による「「日本郵政」がゆうちょ銀、かんぽ生命の株を手放せないワケ」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/305136
・『「郵政民営化法が改正されるかもしれない」 地方銀行の幹部はこう警戒する。 2012年改正の郵政民営化法では、国が日本郵政株の3分の1を持ち続ける一方、日本郵政が持つゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の金融2社の株はできる限り早期に完全処分を目指すとされている。このため日本郵政はゆうちょ銀行、かんぽ生命が上場後、順次、市場で保有株式を売却してきた。 しかし、「日本郵政グループを支えているのは金融2社の収益であり、この2社が完全に独立した瞬間に、日本郵政グループの価値は暴落しかねない。収益性の低い日本郵便のみが残り、ユニバーサルサービスの維持も困難になろう」(市場関係者)とみられている。金融2社株の完全売却は現実的な選択肢ではないのだ』、「日本郵政グループを支えているのは金融2社の収益であり、この2社が完全に独立した瞬間に、日本郵政グループの価値は暴落しかねない。収益性の低い日本郵便のみが残り、ユニバーサルサービスの維持も困難になろう」、「金融2社株の完全売却は現実的な選択肢ではない」のは確かだ。
・『一体経営を担保する仕組み  その一端が垣間見れたのが、朝日新聞が報じた全国郵便局長会の評議員会の議事録(3月26日)だ。この中で、局長会の末武晃会長は「日本郵政まは日本郵便による一定数のゆうちょ銀行、かんぽ生命の株式の保有等、一体経営を担保する仕組みについての検討を求めていきたい」と発言したとされる。 評議員会は全国郵便局長会総会に次ぐ議決機関で、これまでに日本郵政グループの「一体経営の確保」を訴えたことはあるが、トップが金融2社の株式保有にまで踏み込んだ発言を行ったのは初めてだ。政治的な影響力を持つ、全国郵便局長会トップの発言は重い。地方銀行幹部が指摘するように郵政民営化法そのものが改正され、金融2社の株売却にブレーキがかかるのか。 だが、金融2社の株式売却にストップをかけるのはもろ刃の剣でもある。民営化法では、郵政の出資比率が5割を下回るまで金融2社の新規業務に国の認可が必要と定めている。かんぽ生命については21年6月に出資比率が5割を切り、届け出制に移行したが、ゆうちょ銀行はこれから。このまま株式売却を停止すればゆうちょ銀行は新規業務に足かせが残ることになる。 このため株式を完全売却後、日本郵政が株を買い戻すことで、グループ経営を維持する秘策も囁かれ始めた』、「このまま株式売却を停止すればゆうちょ銀行は新規業務に足かせが残ることになる。 このため株式を完全売却後、日本郵政が株を買い戻すことで、グループ経営を維持する秘策も囁かれ始めた」、「株式を完全売却後、日本郵政が株を買い戻すことで、グループ経営を維持」、こんな抜け道を許す訳にはいかない。「民営化法では、郵政の出資比率が5割を下回るまで金融2社の新規業務に国の認可が必要と定めている」、のは、「郵政の出資比率」の低下を、「金融2社の新規業務に国の認可」を不要とする条件にすることで、「郵政の出資比率」低下にインセンティブを付けたが、どうも郵政サイドは「「金融2社の新規業務に国の認可」を不要とする」ことにこだわらなくなったようだ。

第三に、本年3月18日付け日刊ゲンダイ「日本郵政は賃上げ大盤振る舞い、ベア民営化後最大 取引先の値上げ要請にも「満額回答」なのか」を紹介しよう。
・『大手企業の春闘は満額回答ラッシュだ。16日も、マツダ、住友金属鉱山、すかいらーくHDなどが、組合要求に満額で応じた。今後の焦点は企業数の99.7%、労働者雇用の7割を占める中小企業にも、大幅な賃上げが波及するかどうかだ。 中小企業はコスト上昇分を価格転嫁できず、賃上げ余力に乏しい企業が少なくない。中小企業の値上げ要請を発注元の大企業が十分に受け入れないからだ。 とりわけ、「下請け泣かせ」なのが日本郵政グループ傘下の日本郵便だ。中小企業庁は先月、価格転嫁に後ろ向きな企業名を初めて公表。10社以上の中小企業から取引先として社名が挙がった大企業148社のうち、日本郵便は唯一4段階で最低の評価だった。取引先のコスト上昇分から、転嫁を受け入れた割合(平均)はナント「0割未満」である。 ところが、郵政グループの賃上げは大盤振る舞いだ。15日に妥結した今春闘で、ベースアップは郵政民営化後で最大の月額平均4800円。加えて物価高対応として1人当たり7万円の特別一時金まで支給する。定期昇給とベア、特別一時金を含めた賃上げ率は実に5.11%。足元の物価上昇率を大幅に上回る』、「価格転嫁に後ろ向きな企業」「大企業148社のうち、日本郵便は唯一4段階で最低の評価」で「転嫁を受け入れた割合(平均)はナント「0割未満」。「ところが、郵政グループの賃上げは大盤振る舞いだ。15日に妥結した今春闘で、ベースアップは郵政民営化後で最大の月額平均4800円。加えて物価高対応として1人当たり7万円の特別一時金まで支給する。定期昇給とベア、特別一時金を含めた賃上げ率は実に5.11%。足元の物価上昇率を大幅に上回る」、「民営化」のおいしいところだけをツマミ食いする姿勢は腹立たしい限りだ。
・『価格転嫁「0割未満」の改善状況を直撃  いやが上にも価格転嫁の最低評価が脳裏をよぎる。郵政グループは日本郵便の価格対応を改善した上で、従業員の大幅賃上げを実施するのだろうか。中小企業庁による実名公表後、増田寛也社長は会見で「深刻な問題が内在しているのではないか」と危機感を示し、実態調査と対応策の検討を約束していた。 日本郵便は2月13日付の報道発表で自主点検や相談窓口の設置の他、2月20日~3月31日の間、協力会社と契約内容について協議するとしている。価格転嫁の改善なくして賃上げはあり得ない。改善状況を日本郵便に聞いた。 「調査を終えていない途中段階なので、改善されているかどうかも含め、コメントは控える。調査終了後、結果を公表するかどうかは決めていない」(広報担当) 郵政グループに詳しい金融ジャーナリストの森岡英樹氏が言う。 「唯一の最低評価を受け、その後、日本郵便が取引先の値上げ要請に対して真摯に対応していると信じたい。3月末まで調査は続くので、改善状況を公表するとしても、4月以降。それでは中小企業の春闘は終わっている。今のタイミングでも、価格転嫁が大幅に改善しているのであれば、そのことで取引先の賃上げにも貢献できた事例を公表してはどうか。汚名を返上するいい機会だと思います」 民営化されたとはいえ、郵政グループの事業は公共性が高い。従業員の賃上げのように、取引先の値上げ要請にも「満額回答」で応じたらどうなのか』、「従業員の賃上げのように、取引先の値上げ要請にも「満額回答」」で応じた場合の、収益見通しも開示すべきだ。開示すれば、「従業員の賃上げ要請」でも政治的な理由で受け入れることのマイナス効果を嫌でも実感する筈だ。民営化の意味を改めて再確認すべきだが、第一の記事にるように政府が既に「官業復帰」を狙っているのであれば、「官業」が「従業員の賃上げ要請」を受諾する意味を再確認すべきだ。
タグ:日本郵政 (その18)(「国民のカネを投入してまで維持する意味があるのか」組織に根付いた"郵便局体質"の害悪 民間企業で十分カバーできるのに、「日本郵政」がゆうちょ銀 かんぽ生命の株を手放せないワケ、日本郵政は賃上げ大盤振る舞い ベア民営化後最大 取引先の値上げ要請にも「満額回答」なのか) PRESIDENT ONLINE 磯山 友幸氏による「「国民のカネを投入してまで維持する意味があるのか」組織に根付いた"郵便局体質"の害悪 民間企業で十分カバーできるのに」 「相次いで発覚した切手の不正換金事件や顧客の個人情報の政治活動への流用などは、郵便局長や局員の個人的犯罪の域を越え、組織に長く根付いた「郵便局体質」が背景にある。 その体質との決別を目指した郵政民営化を逆戻りさせた総務省にこそ、その責任はあるのだが、問題を逆に総務省の権限強化の口実にしようという。そんな総務省の「監督強化」は、政官一体で画策する「官業復帰」への布石ともいえる」、全く盗人猛々しいやり方だ。 「郵便局で投資信託などの取引を行った顧客の個人情報が記載された書類が全国6565の郵便局で延べ29万人分紛失」、しかし、「誤って廃棄したとみられるので「外部への情報漏えいの可能性は極めて低い」と説明し、責任追及すらまともにしていない」、酷い気の緩みだ。 「まさか郵便局員が不正を働くわけがない、という人々の思いを半ば、悪用しているわけだ。そうした過度の信頼が、内部のチェックを緩ませ、悪しき風習として脈々と続いている」、「郵便局はちょっとやそっとでは潰れない、という思い込みは局長や局員にもあるのだろう。だから、多少経費を水増ししたり、ネコババしても会社は安泰だと思うのか。郵便局を舞台にした数々の不祥事の根は深い。まさに「郵便局体質」が脈々と引き継がれているのだ」、なるほど。 「日本郵政は、今も日本郵便の株式の100%を保有。本来は保有株すべてを売却することになっている「ゆうちょ銀行」の発行済み株式の88.99%、「かんぽ生命」の49.90%をいまだに持ち続けている。つまり、民営化は名ばかりで、事実上、日本郵政グループは国が実質支配しているのだ」、「郵政民営化」はすっかり骨抜きにされた形だ。 「金融2社が自社商品を郵便局で販売してもらう「業務手数料」として支払われていたものを、独立行政法人の「郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構」にいったん拠出させた後、日本郵便に交付金として支払うように変えたのだ。資金をふんだんに持つ独法を絡めることで、郵便局網維持のための資金確保を狙うと共に、税金を投入する道筋を開いたとみられている」、「支援資金が細ってくると・・・新たな方法に切り替えた」、「総務省」の手際の良さには驚かされる。 「旧特定郵便局長は明治時代に地方の名士などが設置したものが多く、代々局長を世襲している例もある。地域の中核的存在だったことから政治的にも大きな影響を持ち、自民党の「集票マシーン」と呼ばれることもある」、「郵政民営化では、この特定郵便局の解体が決まったが、結局、今もひとつの「既得権」として郵便局長ポストが守られているとされる」、 「総務省が権限を強化することで、こうした長年の問題は解消されるのだろうか。残念ながらむしろ逆だろう」、「今もひとつの「既得権」として郵便局長ポストが守られている」、全くフザケタ話だ。 「民間出身者が過酷なノルマを課したことが不正販売につながったかのような情報が流されたが、実のところ、民間経営者による改革を嫌う局長や総務官僚らの反発が背景にあった。不祥事を機に総務省はまんまと社長ポストを手に入れたのである。 果たして、今回の「監督強化」で総務省は何を奪還しようとしているのか。再国営化か、税金投入か。 日本郵政が手掛ける事業はどれも、民間企業で十分のものばかりで、もはや国が手掛ける歴史的意味を失っている。そこにこれからも巨額の国民のカネをつぎ込む必要があるのかどうか、今こそ真剣に考えるべき時だろう」、同感である。 日刊ゲンダイ 小林佳樹氏による「「日本郵政」がゆうちょ銀、かんぽ生命の株を手放せないワケ」 「日本郵政グループを支えているのは金融2社の収益であり、この2社が完全に独立した瞬間に、日本郵政グループの価値は暴落しかねない。収益性の低い日本郵便のみが残り、ユニバーサルサービスの維持も困難になろう」、「金融2社株の完全売却は現実的な選択肢ではない」のは確かだ。 「このまま株式売却を停止すればゆうちょ銀行は新規業務に足かせが残ることになる。 このため株式を完全売却後、日本郵政が株を買い戻すことで、グループ経営を維持する秘策も囁かれ始めた」、「株式を完全売却後、日本郵政が株を買い戻すことで、グループ経営を維持」、こんな抜け道を許す訳にはいかない。 「民営化法では、郵政の出資比率が5割を下回るまで金融2社の新規業務に国の認可が必要と定めている」、のは、「郵政の出資比率」の低下を、「金融2社の新規業務に国の認可」を不要とする条件にすることで、「郵政の出資比率」低下にインセンティブを付けたが、どうも郵政サイドは「「金融2社の新規業務に国の認可」を不要とする」ことにこだわらなくなったようだ。 日刊ゲンダイ「日本郵政は賃上げ大盤振る舞い、ベア民営化後最大 取引先の値上げ要請にも「満額回答」なのか」 「価格転嫁に後ろ向きな企業」「大企業148社のうち、日本郵便は唯一4段階で最低の評価」で「転嫁を受け入れた割合(平均)はナント「0割未満」。「ところが、郵政グループの賃上げは大盤振る舞いだ。15日に妥結した今春闘で、ベースアップは郵政民営化後で最大の月額平均4800円。加えて物価高対応として1人当たり7万円の特別一時金まで支給する。定期昇給とベア、特別一時金を含めた賃上げ率は実に5.11%。足元の物価上昇率を大幅に上回る」、 「民営化」のおいしいところだけをツマミ食いする姿勢は腹立たしい限りだ。 「従業員の賃上げのように、取引先の値上げ要請にも「満額回答」」で応じた場合の、収益見通しも開示すべきだ。開示すれば、「従業員の賃上げ要請」でも政治的な理由で受け入れることのマイナス効果を嫌でも実感する筈だ。民営化の意味を改めて再確認すべきだが、第一の記事にるように政府が既に「官業復帰」を狙っているのであれば、「官業」が「従業員の賃上げ要請」を受諾する意味を再確認すべきだ。
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グローバル化(その2)(スティグリッツ氏「『脱グローバル化』を正しく理解しよう」、エマニュエル・トッドが「グローバル化の夢は死にかけている」と語る真意) [世界経済]

グローバル化については、2020年4月25日に取上げた。久しぶりの今日は、(その2)(スティグリッツ氏「『脱グローバル化』を正しく理解しよう」、エマニュエル・トッドが「グローバル化の夢は死にかけている」と語る真意)である。

先ずは、昨年6月14日付け日経ビジネスオンラインが掲載した米コロンビア大学教授のジョセフ E.スティグリッツ氏による「スティグリッツ氏「『脱グローバル化』を正しく理解しよう」」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00351/060900031/
・『2年以上ぶりに開催された世界経済フォーラムは、1995年以来、私が参加してきたこれまでのダボス会議とは明らかに様子が違っていた。1月の明るい雪と晴天から一転、雪がないスキー場と、5月のどんよりとした霧雨に見舞われた、気候のことではない。 これまでのフォーラムは、グローバル化を擁護してきた。だが今回は、サプライチェーンの寸断、食料やエネルギー価格の高騰、一部の製薬会社が数十億の追加利益を得るために何十億もの人々が新型コロナウイルスワクチンを手にすることができない知的財産権(IP)体制などといった、グローバル化の失敗に主眼を置いていた。 こうした諸問題への対応策として提案されたのは、生産の「再集積」または「友好国化」、さらに「国の生産能力を高めるための産業政策」の制定だ。誰もが国境のない世界を目指しているように見えた時代は過ぎ去り、突然、誰もが少なくともいくつかの国の国境が経済発展と安全保障の鍵であることを認識するようになったのである。 かつて自由なグローバリゼーションの擁護者であった人々にとって、ダボスのこの方向転換は結果として明らかな不協和音をもたらした。「友好国化」と自由で無差別な貿易の原則を両立させることができず、ダボス会議に参加した実業界と政界のリーダーの大半は、ありふれた話に終始した。なぜこのような事態に陥ったのか、あるいは、グローバリゼーションが全盛の時代にまん延していた「欠陥のある超楽観主義的な論理」について、反省の色はほとんど見られなかった。 もちろん、問題はグローバリゼーションだけではない。市場経済全体にレジリエンス(回復力)が欠けているのだ。私たちは、基本的にはスペアタイヤのない車を作り、現在の価格を数ドル下げただけで、将来の緊急事態にはほとんど注意を払ってこなかった。 ジャストインタイムは、経済がわずかな変動にしか直面しない限りにおいては、素晴らしい革新的技術であった。だが、新型コロナウイルスによる操業停止に直面すると、例えばマイクロチップの不足が新車の不足を引き起こすなどといった供給不足の連鎖を引き起こし、大打撃を被ったのだ。 2006年に筆者が『世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す(Making Globalization Work)』(徳間書店)で警告したように、市場はリスクの「値付け」をうまくできない(二酸化炭素の排出量に価格を付けないのと同じ理由だ)。例えばドイツは、明らかに信頼がおけない貿易相手国のロシアからガス供給を受け、依存することを選択した。今、ドイツは、予想され、かつ予測可能であった結果に直面している。 18世紀にアダム・スミスが見出したように、資本主義は独占へと自然に向かっていく傾向があるため、自助努力だけで成り立つシステムではない。しかし、米国のレーガン大統領と英国のサッチャー首相が「規制緩和」の時代を築いて以来、市場の集中が常態化し、電子商取引やソーシャルメディアなど注目される分野だけの現象ではなくなった。 今春、米国で起きた悲惨な粉ミルクの品不足は、それ自体が独占の結果であった。アボット・ラボラトリーズが安全性の問題で生産停止に追い込まれた後、米国人はすぐに、たった1社で米国の供給量の半分近くを占めていることに気づいたのである』、「これまでのフォーラムは、グローバル化を擁護してきた。だが今回は、サプライチェーンの寸断、食料やエネルギー価格の高騰、一部の製薬会社が数十億の追加利益を得るために何十億もの人々が新型コロナウイルスワクチンを手にすることができない知的財産権(IP)体制などといった、グローバル化の失敗に主眼を置いていた」、「こうした諸問題への対応策として提案されたのは、生産の「再集積」または「友好国化」、さらに「国の生産能力を高めるための産業政策」の制定だ。誰もが国境のない世界を目指しているように見えた時代は過ぎ去り、突然、誰もが少なくともいくつかの国の国境が経済発展と安全保障の鍵であることを認識するようになった」、「市場はリスクの「値付け」をうまくできない・・・例えばドイツは、明らかに信頼がおけない貿易相手国のロシアからガス供給を受け、依存することを選択した。今、ドイツは、予想され、かつ予測可能であった結果に直面している」、なるほど。
・『米国の偽善に冷ややかな新興国  今年のダボス会議では、グローバリゼーションの失敗が政治に与えた影響も存分に見られた。ロシアがウクライナに侵攻したとき、クレムリンは即座に、しかもほぼ全世界から非難を浴びた。しかしその3カ月後、新興国や途上国(EMDCs)はより曖昧な立場を取るようになった。多くの者が、2003年には偽りの口実でイラクに侵攻したにもかかわらず、ロシアの侵略に説明責任を求める米国の偽善を指摘している。 EMDCsはまた、欧州と米国による最近のワクチンナショナリズムの歴史も強調している。これは、30年前に押し付けられた世界貿易機関(WTO)のIP条項によって維持されてきたものだ。そして、食料とエネルギー価格の上昇の矢面に立たされているのが、EMDCsである。過去の不正義と相まって、こうした最近の動きは、民主主義と国際的な法の支配を提唱する欧米の信用を失墜させるものだ。 確かに、米国による民主主義擁護の支援を拒否する多くの国は、いずれにせよ民主的ではない。しかしほかの国々は民主的だ。この戦いをリードすべく立ち上がったように見える米国は、制度的な人種差別や権威主義者に媚(こ)びたトランプ政権から、投票を抑制して2021年1月6日の米国議会議事堂での暴動から有権者の注意をそらそうとする共和党の執拗な試みまで、自らの失敗によって立場を損なわれてきたのである。 米国にとって最善の方法は、食料とエネルギーのコスト高騰に対処できるよう支援することで、新興国に対してより大きな連帯感を示すことであろう。これは、富裕国の特別引き出し権(国際通貨基金の準備資産)を再配分し、世界貿易機関(WTO)で新型コロナウイルス関連の強力な知的財産権の放棄を支持すれば、可能になる。 さらに、食糧やエネルギー価格の高騰は、多くの貧困国で債務危機を引き起こし、このパンデミック(世界的大流行)による悲劇的な不公平をさらに悪化させる可能性がある。もし米国と欧州が真のグローバル・リーダーシップを発揮したいのであれば、各国が負担しきれないほどの債務を負うようそそのかした大銀行や債権者の味方をするのはやめるべきだ。 40年にわたりグローバリゼーションを擁護してきたダボス会議の面々は、明らかに舵(かじ)取りを誤った。ダボス会議は、先進国、途上国を問わず繁栄を約束してきた。しかし、北半球の巨大企業が豊かになる一方で、すべての人がより良くなるはずのプロセスは、代わりにあらゆる場所で敵を作っただけだった。「トリクルダウン経済学」とは、富裕層が豊かになれば、自動的にすべての人が恩恵を受けるというものだが、理論も根拠もない詐欺のようなものだ。 今年のダボス会議は、残念な結果に終わった。世界に今日のような状況をもたらした意思決定と政策について、真剣に考える機会であり得たはずだ。グローバリゼーションがピークに達した今、その衰退を管理することが、その隆盛を管理したときよりもうまくいくことを願うばかりである』、「米国にとって最善の方法は、食料とエネルギーのコスト高騰に対処できるよう支援することで、新興国に対してより大きな連帯感を示すことであろう。これは、富裕国の特別引き出し権(国際通貨基金の準備資産)を再配分し、世界貿易機関(WTO)で新型コロナウイルス関連の強力な知的財産権の放棄を支持すれば、可能になる」、「40年にわたりグローバリゼーションを擁護してきたダボス会議の面々は、明らかに舵(かじ)取りを誤った。ダボス会議は、先進国、途上国を問わず繁栄を約束してきた。しかし、北半球の巨大企業が豊かになる一方で、すべての人がより良くなるはずのプロセスは、代わりにあらゆる場所で敵を作っただけだった。「トリクルダウン経済学」とは、富裕層が豊かになれば、自動的にすべての人が恩恵を受けるというものだが、理論も根拠もない詐欺のようなものだ」、「グローバリゼーションがピークに達した今、その衰退を管理することが、その隆盛を管理したときよりもうまくいくことを願うばかりである」、同感である。

次に、本年3月13日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した歴史家・文化人類学者・人口学者のエマニュエル・トッド氏による「エマニュエル・トッドが「グローバル化の夢は死にかけている」と語る真意」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/318698
・『家族制度や識字率、出生率に基づき、現代政治や社会を分析し、「ソ連崩壊」から「米国の金融危機」などを予言した、フランスの歴史家エマニュエル・トッド。彼の分析では、現在起きている戦争の背景に「グローバル化」という私たちのかつての夢があると言います。その真意を、最新刊『2035年の世界地図』(朝日新聞出版)で語った民主主義の未来予想図から一部を抜粋・再編して大公開します(Qは聞き手の質問、Aはトッド氏の回答)』、興味深そうだ。
・『「グローバル化」という夢のあと  Q:中国と米国の対立は深刻化し、両国ともに経済の相互依存を政治的に切り離すデカップリングを進める機運があります。以前、しきりに言われていた「世界がボーダーレスとなり、主権国家は重要性を失う」という言説はどうなったのでしょう。グローバル化は終わったのでしょうか。グローバル化の夢は潰えたのでしょうか。 A:グローバル化の夢は、死にかけています。 もはや人々はグローバル化を天国のようには考えていません。人々はそれが社会にとてつもない格差を生み出したことを知ってしまったからです。しかし一方で、先進国と途上国との間に一定の新たな平等を作り出しました。 私は2つ指摘しておきたい。まず、グローバル化がもたらした現実です。世界の労働者階級の多くは中国にいます。今、世界の労働者階級のおそらく25%は中国にいます。グローバル化の中で国際分業が進み、世界の生産を担っているのは、中国の人々なのです。 もう一つの大きな部分はインドなどです。欧米や日本といった先進国の経済は、工業(に伴う生産活動)から脱却し、サービスや研究などに集中しています。この構造から抜け出せないでしょう。先進国の国民は労働者として生産の現場へ戻れるでしょうか。) 私は、米国でトランプが政権を握ったという事実に大いに興味を持っています。彼は単に中国をやっつけようとしただけではありません。米国の工業生産能力の再構築を目指していたのです。だから、中国との貿易において保護主義的な措置をとりました。 もちろん、オバマ政権がやろうとしたことからの継続的な要素も多くありました。そして、バイデン政権もトランプのとった保護主義的な側面を持つ政策を捨て去ったわけではありません。 しかし、統計的にみると米国が工業での一定の自立を回復する兆しは見られません。 絶対的数値では、モノの取引における米国の赤字、サービスではなく、モノの貿易赤字は増えています。 先日の「ニューヨークタイムズ」の記事では、iPhoneを販売しているアップル社は、自らのサプライチェーンから中国の工場を外すことは不可能と判断した、と書いていました。実際に、iPhoneの付加価値に占める中国の割合は25%に達しています。中国はもはや、単に組み立てラインを担うだけではなく、価値を生み出す場になっているのです』、「世界の労働者階級のおそらく25%は中国にいます・・・もう一つの大きな部分はインドなどです」、「欧米や日本といった先進国の経済は、工業・・・から脱却し、サービスや研究などに集中」、「iPhoneの付加価値に占める中国の割合は25%に達しています。中国はもはや、単に組み立てラインを担うだけではなく、価値を生み出す場になっている」、なるほど。
・『サービス産業社会から工業社会に戻れるか 私たちはそう問われている  その背後には、歴史的な問題があります。非常に重要な歴史的問題です。 西洋――この西洋の中には日本も含まれていますが――の歴史を見ると、農民社会から始まります。そして、農民社会から工業社会に移行します。農民が姿を消し、労働者が登場します。続いて、工業社会からポスト工業社会へ、サービス産業社会へと移行します。 サービス産業社会は多くの労働者を捨て去りますね。基本的な疑問は、この移行の旅には元に戻るための帰りのチケットはありますか、ということです。例えば、工業社会から農民社会へ元に戻すことは可能だと思いますか。答えはノーです。 私たちは、「それはできますか?」と問われています。「サービス産業社会から工業社会に戻ることはできますか?」と。 第三次産業にふさわしい教育を受けた労働者を製造現場の労働者階級に変えることはできますか? われわれには分かりません。いや実は残念ながら知っています。これが不可能であるということを。 この点で、米国の状況は興味をそそります。彼らは生産していないからです。 もちろん教育システムがあり、彼らはあらゆる種類の学位を持っています。しかし彼らは、十分なエンジニアを生み出していません。もはや数学者も十分には生み出しておらず、中国から「輸入」しなければなりません。 最大のジョークですよね? 米国のエンジニアの半数が「輸入」、そしてその大きな部分は中国から「輸入」されています。 米中間の相互依存があります。グローバル化は今も続いており、抜け出すのは非常に困難です。そして、グローバル化にはある要素があります。グローバル化を抽象的なものとして見ることはできません。国家に、そして強大な国家に関係なく存在するものとは見ることができません』、「第三次産業にふさわしい教育を受けた労働者を製造現場の労働者階級に変えることはできますか?」、「これが不可能である」、「もはや数学者も十分には生み出しておらず、中国から「輸入」しなければなりません・・・米国のエンジニアの半数が「輸入」、そしてその大きな部分は中国から「輸入」されています」、「米中間の相互依存があります。グローバル化は今も続いており、抜け出すのは非常に困難です」、なるほど。
・『最初のグローバル化は英国が 第二のグローバル化は米国が担った  最初のグローバル化は、1914年の第一次世界大戦の前でした。それは英国によるものでした。英国は、産業と金融で非常に進んでおり、強力な海軍を持っていました。 英国は最初のグローバル化のリーダーであり、主要なアクターでした。 第二のグローバル化は、まさに米国の力によるものでした。米国の力は現在、弱体化はしたものの、依然として存在します。 ですから、グローバル化から抜け出すということは、先進国、特に米国が労働者階級、つまり工業を担う階級を復活させることを意味します。 問題は、米国の人々にとっては生産の現場で働くより、強力な軍隊を持ち、基軸通貨であるドルを印刷するほうがよっぽど簡単だということです。 繰り返しますが、私は楽観的ではありません。 これが今、われわれが世界規模で直面する大きな戦いの背後にあることだと思います。米国にとって、グローバル化から抜け出すことは簡単ではありません。(エマニュエル・トッド氏の略歴はリンク先参照)』、「最初のグローバル化は、1914年の第一次世界大戦の前でした。それは英国によるものでした。英国は、産業と金融で非常に進んでおり、強力な海軍を持っていました。 英国は最初のグローバル化のリーダーであり、主要なアクターでした」、「第二のグローバル化は、まさに米国の力によるものでした。米国の力は現在、弱体化はしたものの、依然として存在します。 ですから、グローバル化から抜け出すということは、先進国、特に米国が労働者階級、つまり工業を担う階級を復活させることを意味します。 問題は、米国の人々にとっては生産の現場で働くより、強力な軍隊を持ち、基軸通貨であるドルを印刷するほうがよっぽど簡単だということ」、「基軸通貨であるドルを印刷」するといっても、必要以上に「ドルを印刷」すれば、「ドル」は安くなる筈で、全く自由に「印刷」できるわけではない。ただ、「米国の人々にとっては生産の現場で働く」ことに戻るとは考え難い。「米国が労働者階級、つまり工業を担う階級を復活させる」、「グローバル化から抜け出す」、ことも考え難い。
タグ:「40年にわたりグローバリゼーションを擁護してきたダボス会議の面々は、明らかに舵(かじ)取りを誤った。ダボス会議は、先進国、途上国を問わず繁栄を約束してきた。しかし、北半球の巨大企業が豊かになる一方で、すべての人がより良くなるはずのプロセスは、代わりにあらゆる場所で敵を作っただけだった。「トリクルダウン経済学」とは、富裕層が豊かになれば、自動的にすべての人が恩恵を受けるというものだが、理論も根拠もない詐欺のようなものだ」、「グローバリゼーションがピークに達した今、その衰退を管理することが、その隆盛を管理し 「米国にとって最善の方法は、食料とエネルギーのコスト高騰に対処できるよう支援することで、新興国に対してより大きな連帯感を示すことであろう。これは、富裕国の特別引き出し権(国際通貨基金の準備資産)を再配分し、世界貿易機関(WTO)で新型コロナウイルス関連の強力な知的財産権の放棄を支持すれば、可能になる」、 誰もが国境のない世界を目指しているように見えた時代は過ぎ去り、突然、誰もが少なくともいくつかの国の国境が経済発展と安全保障の鍵であることを認識するようになった」、「市場はリスクの「値付け」をうまくできない・・・例えばドイツは、明らかに信頼がおけない貿易相手国のロシアからガス供給を受け、依存することを選択した。今、ドイツは、予想され、かつ予測可能であった結果に直面している」、なるほど。 「これまでのフォーラムは、グローバル化を擁護してきた。だが今回は、サプライチェーンの寸断、食料やエネルギー価格の高騰、一部の製薬会社が数十億の追加利益を得るために何十億もの人々が新型コロナウイルスワクチンを手にすることができない知的財産権(IP)体制などといった、グローバル化の失敗に主眼を置いていた」、「こうした諸問題への対応策として提案されたのは、生産の「再集積」または「友好国化」、さらに「国の生産能力を高めるための産業政策」の制定だ。 ジョセフ E.スティグリッツ氏による「スティグリッツ氏「『脱グローバル化』を正しく理解しよう」」 日経ビジネスオンライン 「最初のグローバル化は、1914年の第一次世界大戦の前でした。それは英国によるものでした。英国は、産業と金融で非常に進んでおり、強力な海軍を持っていました。 英国は最初のグローバル化のリーダーであり、主要なアクターでした」、「第二のグローバル化は、まさに米国の力によるものでした。米国の力は現在、弱体化はしたものの、依然として存在します。 「第三次産業にふさわしい教育を受けた労働者を製造現場の労働者階級に変えることはできますか?」、「これが不可能である」、「もはや数学者も十分には生み出しておらず、中国から「輸入」しなければなりません・・・米国のエンジニアの半数が「輸入」、そしてその大きな部分は中国から「輸入」されています」、「米中間の相互依存があります。グローバル化は今も続いており、抜け出すのは非常に困難です」、なるほど。 「世界の労働者階級のおそらく25%は中国にいます・・・もう一つの大きな部分はインドなどです」、「欧米や日本といった先進国の経済は、工業・・・から脱却し、サービスや研究などに集中」、「iPhoneの付加価値に占める中国の割合は25%に達しています。中国はもはや、単に組み立てラインを担うだけではなく、価値を生み出す場になっている」、なるほど。 エマニュエル・トッド氏による「エマニュエル・トッドが「グローバル化の夢は死にかけている」と語る真意」 ダイヤモンド・オンライン たときよりもうまくいくことを願うばかりである」、同感である。 (その2)(スティグリッツ氏「『脱グローバル化』を正しく理解しよう」、エマニュエル・トッドが「グローバル化の夢は死にかけている」と語る真意) グローバル化 ですから、グローバル化から抜け出すということは、先進国、特に米国が労働者階級、つまり工業を担う階級を復活させることを意味します。 問題は、米国の人々にとっては生産の現場で働くより、強力な軍隊を持ち、基軸通貨であるドルを印刷するほうがよっぽど簡単だということ」、「基軸通貨であるドルを印刷」するといっても、必要以上に「ドルを印刷」すれば、「ドル」は安くなる筈で、全く自由に「印刷」できるわけではない。ただ、「米国の人々にとっては生産の現場で働く」ことに戻るとは考え難い。 「米国が労働者階級、つまり工業を担う階級を復活させる」、「グローバル化から抜け出す」、ことも考え難い。
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三菱重工はどうしたのか?(その7)(三菱スペースジェット失敗の理由 ホンダジェットとの比較を詳解 三菱に欠けホンダにはあったリーダーシップと信念、三菱重工「国産ジェット失敗」で抱える本当の危機 15年で1兆円の投資が水の泡 教訓生かせるか)

三菱重工はどうしたのか?については、2018年5月4日に取上げた。久しぶりの今日は、(その7)(三菱スペースジェット失敗の理由 ホンダジェットとの比較を詳解 三菱に欠けホンダにはあったリーダーシップと信念、三菱重工「国産ジェット失敗」で抱える本当の危機 15年で1兆円の投資が水の泡 教訓生かせるか)である。

先ずは、本年2月15日付けJBPressが掲載した元空将補の横山 恭三氏による「三菱スペースジェット失敗の理由、ホンダジェットとの比較を詳解 三菱に欠けホンダにはあったリーダーシップと信念」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/73967
・『三菱重工業は2023年2月7日、連結子会社の三菱航空機が取り組んでいた「三菱スペースジェット(旧MRJ)」の開発事業から撤退すると発表した。 同社が、国産リージョナルジェット機の事業化を決定し、三菱航空機を設立したのは、2008年である。 三菱航空機は、最初の顧客となる予定だった全日本空輸への機体の納入を2013年に始めるはずだった。 しかし、2009年に設計変更を理由に納入延期すると、その後も検査態勢の不備や試験機の完成遅れなどで6度の納期延期を繰り返した。 三菱重工業が約1兆円の巨費を投じ、経済産業省も約500億円の国費を投入し開発を支援した、国産初の「日の丸ジェット旅客機」の開発は、一機も納入されることなく 開発が中止された。 実際には2020年10月30日に三菱スペースジェット事業は打ち切られていた。 三菱重工は同日、三菱スペースジェットの開発活動は「いったん立ち止まる」と発表した。 筆者は、事業打ち切りの主要な要因は2つあると考える。 一つは採算が取れないことである。 2019年10月31日に地域航空会社3社を持つ米トランス・ステーツ・ホールディングス(TSH)が100機購入の契約を解消したのである。 TSHが契約解消する前の契約総数は387機であった。これで契約総数287機となった。 2007年時点の報道では採算ラインは350機、利益確保には600機の生産が必要とのことであった(出典:J-CASTニュース 2007.6.28)。 TSHが契約を解消した理由は、米国の労使協定「スコープ・クローズ」を既契約機では満たせないためであった。 契約当時、MRJは標準座席数が88席の「MRJ90」と、76席の「MRJ70」の2機種構成で、TSHはMRJ90を発注していた。 両社が契約を締結した時点では、リージョナル機の座席数(最大76席)や最大離陸重量(39トン)を制限する米国の労使協定「スコープ・クローズ」が将来緩和され、MRJ90(標準座席数88、最大離陸重量43トン)が運航できることを想定していた。 しかし、協定は現時点でも緩和されておらず、三菱航空機が協定をクリアする機体を製造できていないことから、契約解消に至った。 三菱側の「スコープ・クローズ」に対する見通しの甘さがうかがえる。 もう一つの事業打ち切りの要因は、型式証明の壁である。 MRJプロジェクトの納入延期のほとんどが型式証明の取得手続きに関わるものだった。 事業凍結への決定打となった大幅な5回目の遅延も、型式証明を得るための大規模な設計変更が理由である。 型式証明とは、民間航空機を対象としたもので、機体の設計が安全性基準に適合することを国が審査・確認する制度である。 安全性基準に適合すると判断した場合に限り、その型式に対して国が適合証明書を発行する。 三菱航空機のエンジニアらは「国内初のジェット旅客機とあって基準の解釈や、どうすれば基準をクリアしたことになるのかが分からず、戸惑い続けた」(三菱航空機の元事業開発担当者)。 機体強度や電気系統、耐火性能などを立証すべく試行錯誤を続けたが、「審査に耐えられない」と設計変更をたびたび余儀なくされた。 2016年秋以降はカナダのボンバルディアや米ボーイングのエンジニアらを次々と採用した。 しかし、それでもなお基準に適合していない不備があちこちで見つかり、証明作業の無限地獄に陥った(出典:日経ビジネス「国産ジェットの夢を阻んだ「型式証明」の壁 責任は三菱重工だけか」2023.2.7)。 また、型式証明の取得にこだわれば、今後数年にわたり年1000億円前後の出費が必要になる可能性があったと報道されている。 上記のとおり、経済産業省が全面支援し、三菱重工が巨費を投じた国産初の「日の丸ジェット旅客機」の開発は、一機も納入されることなく 開発が中止された。  一方、8人乗りのプライベートジェットで単純比較はできないが、自動車メーカーのホンダがプライベートジェットであるホンダジェットの製品化に成功した。 重工メーカーが失敗し、自動車メーカーが成功した航空機開発、なぜこのような結果になったのであろうか。両者を比較して教訓を見つけてみたい。 以下、初めに三菱スペースジェット開発の経緯について述べ、次に三菱重工によるスペースジェット事業失敗の総括について述べ、最後に三菱スペースジェットの失敗とホンダジェットの成功について述べてみたい』、「2009年に設計変更を理由に納入延期すると、その後も検査態勢の不備や試験機の完成遅れなどで6度の納期延期を繰り返した。 三菱重工業が約1兆円の巨費を投じ、経済産業省も約500億円の国費を投入し開発を支援した、国産初の「日の丸ジェット旅客機」の開発は、一機も納入されることなく 開発が中止された」、「三菱重工業が約1兆円」、「経済産業省も約500億円の国費を投入」、全く見っともない結果だ。「重工メーカーが失敗し、自動車メーカーが成功した航空機開発、なぜこのような結果になったのであろうか」、興味深そうだ。 
・(以下、P7まで省略) 3.三菱の失敗とホンダの成功  三菱スペースジェットとホンダジェットを対比させた報道記事は多数出ている。以下はそれらの記事を筆者の視点から取りまとめたものである。 (1)「飛行機作りにはジーザス・クライストが必要だ」(この言葉は、飛行機の「神」、つまり全権を握る存在が不可欠という意味である。 これはホンダジェットの開発リーダーである藤野道格氏が、飛行機設計のノウハウをたたき込まれた米ロッキード(現ロッキード・マーチン)の技術者から教わった言葉である。 ロッキードには「神」がいたという。それがケリー・ジョンソン氏、通称、JCケリーだ。JCはジーザス・クライストの略である。 ロッキードの精鋭部隊「スカンクワークス」の創設者だ。 後にステルス戦闘機を開発し、JCケリーの後を継いだベン・リッチ氏は初めてスカンクワークスに足を踏み入れた時のことを「この世界は一人の男、ケリーを中心に回っていることが分かった」と回想している。 実際、スカンクワークスにはすべての連絡事項をJCケリーに集め、全権を持って決定するための「14カ条のおきて」が存在したという。 これは何もロッキードだけの流儀ではなかった。米航空機の雄、ボーイングが第2次大戦後に確固たる地位を築く立役者となったのがジョー・サッターという技術者だった。 超大型機「747」の開発者としても知られ、ボルト1本の設計さえサッターの許可が必要だったと言われている。 国産旅客機として代表的なホンダジェット、YS-11の開発にはカリスマ技術者と呼ばれるリーダーが存在した。 ホンダジェットの場合、それは藤野道格氏で、日本で技術経営を実践した代表的な人物だ。 藤野氏はホンダエアクラフトカンパニーの社長として、また技術者として同機を開発し、大成功を収めた。 そして、開発開始から販売開始までの30年間、ホンダジェット開発のリーダーを務めた。 翻って三菱重工はどうか。 2008年に開発が始まってから約10年で、三菱航空機の社長を5人もすげ替えてきた。 迷走が顕著となってきたのは、2015年に4代目社長として森本浩通氏が就任した頃からだろう。 森本氏は火力発電プラントの海外営業が長い。直前も米国法人の社長としてニューヨークに駐在していた。つまり全くの門外漢だ。 「突然、宮永さんに通告された時は正直、冗談かと思いましたよ」と当時回想していたが、無理もない。 2013年に三菱重工の社長に就任した宮永俊一氏にとって森本氏の起用は、独立心が強くプライドが高いことで知られる航空・防衛部門を牽制する狙いがあった。 根城の名古屋航空宇宙システム製作所は「名航」と呼ばれ、三菱重工の社長も輩出してきた。 三菱航空機でも航空・防衛畑出身の社長が続いたが、機械畑の宮永氏はジェット開発の掌握のため門外漢をあえて起用した。 森本体制で2015年11月に初飛行に成功したが、その1カ月後に主翼の強度不足という致命的な欠陥が発覚し、4度目の納入延期に追い込まれる。 すると宮永氏はわずか2年で首をすげ替えた。 後任には航空・防衛畑の水谷久和氏を据えた。名航にとっては「大政奉還」と言えたが、これがさらなる迷走を助長した(出典:日経産業新聞『三菱ジェット、ホンダジェットと明暗分けた鉄則』(2020年10月30日)』、「飛行機作りにはジーザス・クライストが必要だ」、「ホンダジェットの場合」、「藤野氏はホンダエアクラフトカンパニーの社長として、また技術者として同機を開発し、大成功を収めた。 そして、開発開始から販売開始までの30年間、ホンダジェット開発のリーダーを務めた」、「翻って三菱重工はどうか。 2008年に開発が始まってから約10年で、三菱航空機の社長を5人もすげ替えてきた」、これでは三菱航空機は失敗するべくして失敗したようだ。
・『(2)純国産・自前主義の弊害  三菱スペースジェットの主要部品・装置の約7割が海外サプライヤー製であるが、三菱重工は高学歴のエリート技術者が集まる名門企業のため、そのプライドもあり、自前主義や純血主義へのこだわりが海外サプライヤーとの統合や調整に難航したとされる。 その結果、三菱重工技術者だけで、運航開始に不可欠な米国連邦航空局(FAA)の型式証明(注1)の取得作業を進めた。 「日本の防衛を担う戦闘機を造っているのだから大丈夫」という根拠なき楽観論が同社の多数派であったといわれるが、型式証明のルールを欧米勢が握る民間航空機の世界は甘くなかったのである。(筆者注:自衛隊機は航空法第11条の適用を受けないため、型式証明が不要である) 一方、ホンダ エアクラフト カンパニーは米国に拠点を構え、ホンダジェットを開発・生産した。以下の3つが大きな理由として考えられる。 ①航空機産業で世界をリードするのは米国企業であり、有能な人材の確保が可能である。 ②キーコンポーネントであるジェットエンジンの内製化を期し、航空機エンジンのグローバル3大企業の1社である米ゼネラル・エレクトリック(GE)と共同開発を目指した 。 ③運航開始に不可欠な FAA の型式証明取得のため、米国航空業界の人脈・知見をフルに活用可能である。 (出典:国際ビジネス・コンサルタント江崎 康弘氏『比較経営検証:日本のものづくり—三菱スペースジェットとホンダジェット—』2021.12) (注1)航空関連の著作を多数刊行してきたノンフィクション作家の前間孝則氏は「型式証明」についてこう書いている。 「FAAに提出する申請書類やレポート、設計書や図面、数々の書類などの紙の重さの合計は機体の重さに匹敵する」 ちなみにホンダジェットの重量は約4トン。量もさることながら、用紙代だって巨額だ。認証の対象になるのは、機体はもちろんのこと、すべての搭載機器、その部品、材料一つひとつ、これらの設計計算書、図面、製造設備、製造方法、検査手順、治工具管理、マネジメントの体制、教育システム・・・。 ひとたび事故が起きれば死に直結するだけに、開発者に対する要求は想像を絶する』、「三菱重工は高学歴のエリート技術者が集まる名門企業のため、そのプライドもあり、自前主義や純血主義へのこだわりが海外サプライヤーとの統合や調整に難航・・・三菱重工技術者だけで、運航開始に不可欠な米国連邦航空局(FAA)の型式証明(注1)の取得作業を進めた。 「日本の防衛を担う戦闘機を造っているのだから大丈夫」という根拠なき楽観論が同社の多数派であったといわれるが、型式証明のルールを欧米勢が握る民間航空機の世界は甘くなかった」、他方、「ホンダ」・・・は米国に拠点を構え、ホンダジェットを開発・生産した。以下の3つが大きな理由として考えられる。 ①航空機産業で世界をリードするのは米国企業であり、有能な人材の確保が可能である。 ②キーコンポーネントであるジェットエンジンの内製化を期し、航空機エンジンのグローバル3大企業の1社である米ゼネラル・エレクトリック(GE)と共同開発を目指した 。 ③運航開始に不可欠な FAA の型式証明取得のため、米国航空業界の人脈・知見をフルに活用可能」、これでは「ホンダ」の成功と「三菱重工」の失敗は、当然とも言えそうだ。
・『(3)本田宗一郎のDNAと国家プロジェクト  本田宗一郎氏は「政府が介入すれば企業の力は弱まる。良品に国境なし。良い製品は売れる。自由競争こそが産業を育てる」 という考えで、国産四輪車開発などで中央官庁と正面から対立したが、この DNAこそがホンダジェットの源流であろう。 ホンダジェットは、ホンダエアクラフト カンパニー社長兼CEOである藤野道格氏が発案した。 彼は当時、歴代のホンダのトップからの厳しいダメ出しに敢然と立ち向かい、ホンダがホンダジェットをやる意味を社内で共有させた。 また、経験のない事業を蓄積も乏しくその基盤のない日本でやることを放棄し、北米に拠点を設立、北米のエコシステムの中で事業を育んだことも、藤野氏の慧眼と思われる。 そして完成まで一貫して藤野氏がプロジェクト・リーダーであったことも大きな要因(勝因)であろう。 ところが、対するMRJは全く対照的な発想と経緯を辿った。 この事業の発案者は、当時の経産省製造産業局の課長クラスと言われている。 「今しか、日本が航空機産業を再興する機会はない」という危機意識の醸成をしたものの、気が乗らない三菱重工を補助金の札束で引っ叩いて、経産省がバックアップするとの約束のもと着手させた。 MRJは、国家事業でもあったため、拠点を国外に置く事など夢想だにしなかった。 また三菱重工側には藤野氏のように、この困難な事業に命を賭けてやる意思のあるリーダーは一人もいなかったのではないかと思われる。 結局ナイナイ尽くしの中で、認証取得困難、設計変更の繰り返しで、刀折れ、矢尽きたのである。 (出典:国際ビジネス・コンサルタント江崎 康弘氏『比較検証:日本のものづくり:ワクチンそしてMRJとホンダジェット』2021.06.22)』、「歴代のホンダのトップからの厳しいダメ出しに敢然と立ち向かい、ホンダがホンダジェットをやる意味を社内で共有させた。 また、経験のない事業を蓄積も乏しくその基盤のない日本でやることを放棄し、北米に拠点を設立、北米のエコシステムの中で事業を育んだことも、藤野氏の慧眼」、他方「MRJ」、「事業の発案者は、当時の経産省製造産業局の課長クラス」、「気が乗らない三菱重工を補助金の札束で引っ叩いて、経産省がバックアップするとの約束のもと着手させた」、経産省も罪つくりだ。
・『おわりに  なぜ、日本の航空機産業をリードする三菱重工業は、「リージョナルジェット」の開発に失敗したのか。多くの国民が関心を持つところであろう。 新型コロナウイルスという不測事態の発生があったにしても、型式証明への準備不足や「スコープ・クローズ」に対する見通しの甘さなど三菱重工業の事業管理の不手際が失敗の要因であったことは否めない。 さらに次のような国レベルの問題点も指摘されている。 有限会社オリンポスの四戸哲社長人は、「MRJの開発主体である三菱重工業、そして開発のために設立された三菱航空機は『作る』ことはできても『創る』ことができなくなっているのではないか」という。 すなわち、航空機を製造する技術が高くても、ゼロから航空機を創造することはできないということである。 また、同社長はその背景について次のように語っている。 「米国からの新技術情報がどんどん来るものですから、自分で考えるより、文献から『学ぶ』ことが好きな人が採用され、どんどん組織の中で偉くなっていったんです」 「そうすると、オリジナリティがあって、自分で何かをしようという意欲のある人が、なかなか組織に入れなくなるし、入っても偉くなれなくなってしまう」 「この選別は、日本の航空産業にかなりのダメージを与えたと思います」 上記のことは、三菱重工だけの問題でなく日本の航空機産業全体の問題でもあろう。 さて、型式証明を得るのに足踏みを続けた責任は三菱航空機だけにあるのでなく、航空行政をつかさどる国土交通省航空局にも問題があるという指摘がある。 「日本では1962年に初飛行した国産ターボプロップ旅客機『YS-11』から半世紀も航空機の型式証明審査から遠ざかっていた。米ボーイングの旅客機などで知見豊富な米連邦航空局(FAA)と比べ日本の航空当局は審査が付け焼き刃だったと言える」 「航空局も危機感を募らせ一時期、FAAからアドバイザーを呼びノウハウを吸収しようとしたが技能を身につけるのはたやすくなかった」 「『ある意味、経験則が生きるのが航空機の世界だが、MRJは燃費性能が高いエンジンや革新的な空力設計、高度な電気システムを採用した。それがさらに審査を難しくさせ、必要あるかないか分からない証明作業を求められた。それに三菱航空機は対応しきれなかった』(同社元関係者)」 「国家プロジェクトでありながら、国が最新の航空機の知見を取り入れ安全性を判定する能力を養ってこなかったのは三菱航空機にとって不幸といえる」 (出典:日経ビジネス2023.2.7) 上記のことは、航空産業をつかさどる行政当局の構造的問題である。 最後に、三菱重工の泉澤清次社長は、三菱スペースジェット開発中止を発表した会見において、「スペースジェットの開発で得た知見は、日本と英国、イタリアの3カ国で共同開発する次期戦闘機などに生かす」と述べた。 是非とも次期戦闘機の開発を成功させてほしい。 また、今回の三菱スペースジェットの失敗を奇貨として、日本の航空行政を含む航空機産業界の改革・改善が進むことを願っている』、確かに「三菱重工」だけでなく、「航空局」などの「審査」ノウハウ欠如なども足を引っ張っただろうが、そんなことは「三菱重工」にしたら覚悟の上だ。「「スペースジェットの開発で得た知見は、日本と英国、イタリアの3カ国で共同開発する次期戦闘機などに生かす」、負け惜しみだろうが、せめて「次期戦闘機」には生かしてほしいものだ。

次に、2月21日付け東洋経済オンライン「三菱重工「国産ジェット失敗」で抱える本当の危機 15年で1兆円の投資が水の泡、教訓生かせるか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/653741
・『多くの産業を巻き込んだ国家プロジェクト。失敗を繰り返すことはないのか。 日本発のジェット旅客機構想は夢と消えた。 三菱重工業は2月7日、2020年10月に「立ち止まる」としていたリージョナルジェット機「三菱スペースジェット(MSJ)」の開発を中止すると発表した。開発子会社である三菱航空機は、トヨタ自動車などほかの出資者との協議を経て清算する予定だ。 2008年に三菱航空機を設立してから15年。2013年に予定していた初号機の納入は6回も延期を繰り返し、これまでに投入した開発費は1兆円を超える。国も500億円の補助金を投入したが、量産前の最後のハードルである米連邦航空局からの型式証明(TC)を取得する直前でのリタイアとなった』、なるほど。
・『「事業性を見いだせない」  コロナ禍を理由に開発を凍結してから2年余り。三菱重工の泉澤清次社長はこの日の会見で「事業性を検討してきたが、開発を再開するに足るものを見いだせなかった」と説明した。 航空機産業は開発時にかけた膨大な投資コストを長期間の販売・運用で回収するビジネスだ。MSJはすでに最初に計画した量産開始時期から10年遅れており、その分投資を回収できる「賞味期限」が短くなってしまう。 商業運航に必要なTC取得作業を再開させても、販売開始まで「数年間、毎年1000億円規模の開発費がかかる」(泉澤社長)状況では、到底ビジネスとして成り立たない、と判断した。 今回の開発中止決定が三菱重工の経営に直接与える影響はほとんどない。2020年3月期に2633億円、翌2021年3月期に1162億円という巨額の損失を計上し、関連資産の減損を済ませているからだ。納入予定だった航空会社への違約金などの交渉状況は明らかではないが、経営にインパクトを与えるほどではないという。 三菱重工は責任の所在を明らかにしていない。泉澤社長は会見で「長いプロジェクトのポイントポイントで社として適切に意思決定をしてきた。何か特定の時期や判断に問題があったわけではない」と説明した。こうした説明は2020年10月の凍結時にもしている。 もしコロナ禍がなかったらうまくいったのか。泉澤社長は「なかなか難しい。1つの原因に帰着することではない」と述べるにとどめた。あまりに長期の開発遅延により、失敗の原因を特定することすらできなかった。) 航空機の部品はおよそ300万点あるとされ、自動車の100倍にもなる。それだけサプライヤーの裾野は広い。MSJの量産が始まれば、拠点のある東海地方には航空機産業の一大拠点ができあがる。そうした期待を背負ってスタートした国家プロジェクトだった。中止判断に時間がかかったのも、利害関係者が多いためだ。泉澤社長は「そんなに簡単に答えを出せるものではない」と語った。 三菱重工は反省点として「型式認証プロセスへの理解不足」や「長期にわたる開発を継続して実施するリソースの不足」をあげる。ただ、それにとどまらない体質の問題を指摘する声もあった。 それが、自らが持つ技術力への強すぎる信頼だ。三菱重工はアメリカのボーイングに対し、主力大型旅客機「B787」の主翼を供給するなど有力なサプライヤーだ。防衛関連でも戦闘機の開発を手がけるなど航空分野への知見も広い。「三菱の技術力を結集すれば開発は可能」。開発着手当時はそんな熱気があったと当時を知る業界関係者は振り返る。 ところが、開発は初期からつまずく。2016年ごろにはTC取得に向けて設計に大きな問題があったことも判明し、900件以上の設計変更を余儀なくされた。開発責任者をはじめ多くの外国人エンジニアを採用し巻き返しをはかったが間に合わなかった。 協力会社からも不満の声が上がった。設計変更や今後の見通しについて十分な説明がなく、理由のわからない原価低減要求も相次いだという。「三菱重工から量産投資を求められても、話半分で対応しておけ」という話が共有されるほどだった。 「技術力が足りなかったということではない。技術がなければ試験飛行はできなかった」。泉澤社長は会見でこう発言し、開発陣をかばった。前出の関係者は「結局、主翼などの部品を高い精度で作る技術は持っていても、それらをまとめ上げる力がなかった」と、振り返る。15年の長きにわたり、独り相撲を繰り広げたに過ぎなかった』、「「三菱の技術力を結集すれば開発は可能」。開発着手当時はそんな熱気があったと当時を知る業界関係者は振り返る。 ところが、開発は初期からつまずく。2016年ごろにはTC取得に向けて設計に大きな問題があったことも判明し、900件以上の設計変更を余儀なくされた。開発責任者をはじめ多くの外国人エンジニアを採用し巻き返しをはかったが間に合わなかった」、自社技術への過信・おごりが命取りになったようだ。
・『エネルギー変革、同じ失敗犯さないか  1兆円の開発費で得たものは、戦闘機や次世代技術の開発に向けた知見活用などあいまいなものだ。1兆円は事実上無に帰した。だが、これほどの巨額損失を出しても三菱重工の財務は比較的健全だ。2022年末時点でのD/Eレシオ(資本に対する負債の倍率)は0.58と財務の健全性の目安とされる1倍を大きく割り込んでいる。 巨額損失を計上しても経営が揺るがなかったのは、この間全社をあげて取り組んだ経営効率化が実を結んだからだ。三菱重工が扱う重厚長大型の事業は製品リードタイムが長く、資産の効率性が高くなかった。 製造拠点ごとに分かれていた調達体制の一本化や業務プロセスの見直しを通じて、既存事業のキャッシュインを増やすことに成功。これらの資金余力が巨額投資を支えた構図だった。 しかし、これらの効率化ももはや限界だ。三菱重工の現在の稼ぎ頭は火力発電用のタービンなどだが、急激な脱炭素の潮流のなか、将来の見通しには疑問符がつく。 そこで目を付けているのが水素発電や二酸化炭素(CO2)の回収・貯留といった新しいエネルギー関連事業だ。三菱重工は2040年に顧客による自社製品の使用を含めたカーボンニュートラル達成を宣言。脱炭素技術の売り込みに躍起になっている。 各地で実証が始まっており、今のところ計画は順調だ。ところが、水素発電にせよCO2の回収・貯留にせよ新しい技術で、世界中どこでも事業化されていない。技術として可能でも、ビジネスとして花開くのかは未知数だ。 「私としては挑戦してよかったプロジェクト。チャレンジしていかないと物事は変わらない」。泉澤社長はMSJについてそう語った。ただ、同じことをもう一度繰り返せば、会社の屋台骨を揺るがす危機になる』、「水素発電や二酸化炭素(CO2)の回収・貯留といった新しいエネルギー関連事業だ。三菱重工は2040年に顧客による自社製品の使用を含めたカーボンニュートラル達成を宣言。脱炭素技術の売り込みに躍起になっている。 各地で実証が始まっており、今のところ計画は順調だ。ところが、水素発電にせよCO2の回収・貯留にせよ新しい技術で、世界中どこでも事業化されていない。技術として可能でも、ビジネスとして花開くのかは未知数」、大いに「チャレンジ」してもらいたいものだ。
タグ:横山 恭三氏による「三菱スペースジェット失敗の理由、ホンダジェットとの比較を詳解 三菱に欠けホンダにはあったリーダーシップと信念」 JBPRESS (その7)(三菱スペースジェット失敗の理由 ホンダジェットとの比較を詳解 三菱に欠けホンダにはあったリーダーシップと信念、三菱重工「国産ジェット失敗」で抱える本当の危機 15年で1兆円の投資が水の泡 教訓生かせるか) 三菱重工はどうしたのか? 「2009年に設計変更を理由に納入延期すると、その後も検査態勢の不備や試験機の完成遅れなどで6度の納期延期を繰り返した。 三菱重工業が約1兆円の巨費を投じ、経済産業省も約500億円の国費を投入し開発を支援した、国産初の「日の丸ジェット旅客機」の開発は、一機も納入されることなく 開発が中止された」、「三菱重工業が約1兆円」、「経済産業省も約500億円の国費を投入」、全く見っともない結果だ。「重工メーカーが失敗し、自動車メーカーが成功した航空機開発、なぜこのような結果になったのであろうか」、興味深そうだ。 「飛行機作りにはジーザス・クライストが必要だ」、「ホンダジェットの場合」、「藤野氏はホンダエアクラフトカンパニーの社長として、また技術者として同機を開発し、大成功を収めた。 そして、開発開始から販売開始までの30年間、ホンダジェット開発のリーダーを務めた」、「翻って三菱重工はどうか。 2008年に開発が始まってから約10年で、三菱航空機の社長を5人もすげ替えてきた」、これでは三菱航空機は失敗するべくして失敗したようだ。 「三菱重工は高学歴のエリート技術者が集まる名門企業のため、そのプライドもあり、自前主義や純血主義へのこだわりが海外サプライヤーとの統合や調整に難航・・・三菱重工技術者だけで、運航開始に不可欠な米国連邦航空局(FAA)の型式証明(注1)の取得作業を進めた。 「日本の防衛を担う戦闘機を造っているのだから大丈夫」という根拠なき楽観論が同社の多数派であったといわれるが、型式証明のルールを欧米勢が握る民間航空機の世界は甘くなかった」、他方、「ホンダ」・・・は米国に拠点を構え、ホンダジェットを開発・生産した。以下の3つが大きな理由として考えられる。 ①航空機産業で世界をリードするのは米国企業であり、有能な人材の確保が可能である。 ②キーコンポーネントであるジェットエンジンの内製化を期し、航空機エンジンのグローバル3大企業の1社である米ゼネラル・エレクトリック(GE)と 共同開発を目指した 。 ③運航開始に不可欠な FAA の型式証明取得のため、米国航空業界の人脈・知見をフルに活用可能」、これでは「ホンダ」の成功と「三菱重工」の失敗は、当然とも言えそうだ。 「歴代のホンダのトップからの厳しいダメ出しに敢然と立ち向かい、ホンダがホンダジェットをやる意味を社内で共有させた。 また、経験のない事業を蓄積も乏しくその基盤のない日本でやることを放棄し、北米に拠点を設立、北米のエコシステムの中で事業を育んだことも、藤野氏の慧眼」、他方「MRJ」、「事業の発案者は、当時の経産省製造産業局の課長クラス」、「気が乗らない三菱重工を補助金の札束で引っ叩いて、経産省がバックアップするとの約束のもと着手させた」、経産省も罪つくりだ。 確かに「三菱重工」だけでなく、「航空局」などの「審査」ノウハウ欠如なども足を引っ張っただろうが、そんなことは「三菱重工」にしたら覚悟の上だ。「「スペースジェットの開発で得た知見は、日本と英国、イタリアの3カ国で共同開発する次期戦闘機などに生かす」、負け惜しみだろうが、せめて「次期戦闘機」には生かしてほしいものだ。 東洋経済オンライン「三菱重工「国産ジェット失敗」で抱える本当の危機 15年で1兆円の投資が水の泡、教訓生かせるか」 「「三菱の技術力を結集すれば開発は可能」。開発着手当時はそんな熱気があったと当時を知る業界関係者は振り返る。 ところが、開発は初期からつまずく。2016年ごろにはTC取得に向けて設計に大きな問題があったことも判明し、900件以上の設計変更を余儀なくされた。開発責任者をはじめ多くの外国人エンジニアを採用し巻き返しをはかったが間に合わなかった」、自社技術への過信・おごりが命取りになったようだ。 「水素発電や二酸化炭素(CO2)の回収・貯留といった新しいエネルギー関連事業だ。三菱重工は2040年に顧客による自社製品の使用を含めたカーボンニュートラル達成を宣言。脱炭素技術の売り込みに躍起になっている。 各地で実証が始まっており、今のところ計画は順調だ。ところが、水素発電にせよCO2の回収・貯留にせよ新しい技術で、世界中どこでも事業化されていない。技術として可能でも、ビジネスとして花開くのかは未知数」、大いに「チャレンジ」してもらいたいものだ。
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今日は更新を休むので、明日にご期待を!

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大学(その11)(技術者教育の「国立高専」 東大18人 難関国立大に多数編入、岡山大学学長 予算2000万円を“趣味の写真”に注ぎ込んでいた!3億円不正経理も責任取らず3月退任で“逃走”、“専門バカ”をつくらない「東京科学大学」に期待できるか 東工大と医科歯科大の統合が心配な理由〈dot.〉) [社会]

大学については、昨年5月2日に取上げた。今日は、(その11)(技術者教育の「国立高専」 東大18人 難関国立大に多数編入、岡山大学学長 予算2000万円を“趣味の写真”に注ぎ込んでいた!3億円不正経理も責任取らず3月退任で“逃走”、“専門バカ”をつくらない「東京科学大学」に期待できるか 東工大と医科歯科大の統合が心配な理由〈dot.〉)である。

先ずは、本年1月30日付け日経ビジネスオンライン「技術者教育の「国立高専」 東大18人、難関国立大に多数編入」を紹介しよう。
:国立高等専門学校(以下、高専)の卒業生の4割が、大学への編入などによって進学していることをご存じだろうか。高専は15歳から5年間一貫の技術者教育を行って、高度な専門性を持つ学生を輩出することを重要なミッションにしている。1962年から各地で設置が始まり、2022年度は高専制度創設60周年の節目の年。現在は全国に51校がある。 30年ほど前は、卒業生の7割から8割はそのまま就職していた。それが、ここ20年は就職が6割、進学が4割となっていて、東京大学をはじめとする難関国立大学に編入する学生も少なくない。理系人材が求められる中で、大学側も受け入れ体制を整えている。高専生の進学状況について見ていきたい』、興味深そうだ。
・『東大18人、東工大26人など国立大学に多数編入  高専は全国に51校あり、1学年に9000人以上が学んでいる。中学校を卒業して高専に入学した学生は、5年間の一貫教育によって一般的な教養と共に産業界で活躍できる専門的な知識や技術を身に付ける。 高専卒業後の進路は就職が6割、進学が4割。就職希望者の就職率は、毎年98%台から99%台と高い数字を誇る。進学については、各高専でさらに2年間高度な教育を受けることができる専攻科に進む学生が約14%、大学に主に3年次から編入する学生が約24%だ。 ここで、2021年4月に、全国の高専51校から主な大学に編入した実数を見てみたい。 300人以上を受け入れているのが、豊橋技術科学大学と長岡技術科学大学。高専の卒業生を編入で受け入れることを主な目的として設置された国立大学だ。高専からの編入が1学年の約8割を占めている。 それ以外の大学を見ると、国立大学が多いことが分かる。東京大学には18人、東京工業大学には26人が編入しているほか、旧帝大でも九州大学の57人をはじめ多くの編入生を受け入れている。 編入に当たっては高専での成績がベースになる。その上で、大学によって異なるが、推薦試験の場合は6月から7月ごろに面接が、学力試験を課す場合は8月から9月ごろに試験が行われる。 大学入試に臨むのであれば、受験勉強をする必要がある。それが、高専生の場合は、高専で5年間集中して学び、大学へは編入試験を経て3年次に進む。専門的な知識を深めた状態で3年次に編入してくる高専卒業生は、大学側にとっても「欲しい人材」になっているのだ。 国立大学が高専生の受け入れを増やしてきた一方で、私立大学でも学生確保を目指す動きがある。東京都市大学は23年度から、高専から3年次に編入する学生に対して、授業料の75%を減免する制度を始める。減免額は最大で221万4000円にも及ぶ。 私立大学の理系学部は、国立大学に比べると学費が高い。高専の卒業生に振り向いてもらえるように、今後同様の施策を打ち出す大学が他にも出てくるのではないだろうか』、「高専卒業後の進路は就職が6割、進学が4割」、「進学については、各高専でさらに2年間高度な教育を受けることができる専攻科に進む学生が約14%、大学に主に3年次から編入する学生が約24%」、「豊橋技術科学大学と長岡技術科学大学。高専の卒業生を編入で受け入れることを主な目的として設置された国立大学だ。高専からの編入が1学年の約8割を占めている」、「高専の卒業生を編入で受け入れることを主な目的として設置された国立大学」が2校あるとは初めて知った。「専門的な知識を深めた状態で3年次に編入してくる高専卒業生は、大学側にとっても「欲しい人材」になっている」、「東京大学には18人、東京工業大学には26人が編入しているほか、旧帝大でも九州大学の57人をはじめ多くの編入生を受け入れている」、なるほど。
・『高専の役割の変化と社会からの要請  なぜ高専からの進学が増えたのか。東京都八王子市にある国立高等専門学校機構本部に進学の現状について聞いた。教育総括参事で教授の下田貞幸氏によると、高専の役割が変化してきた面があると指摘する。 「高専の制度は60年前、即戦力の中堅技術者を養成する目的でスタートしました。『大学を卒業するまで待っていられない』『ある程度知識も技術もある即戦力が早く欲しい』という企業からの声や、社会からの要請が出発点でした。 今は社会の要請が変わってきました。即戦力や中堅技術者といった言葉は使っていません。高度な知識や技術を身に付けるともに、社会の課題を解決する、社会を良くするために学ぶ場に位置づけられています。起業する学生も増えていますね」 かつては高専を卒業すると、就職する学生が7割から8割を占め、進学は2割に満たないくらいだった。それが、約30年前から20年前にかけて、各高専に専攻科ができたことで、進学する学生の割合が増えた。 併せて、高専生を編入で受け入れる大学が増えて、その人数も多くなってきた。大学側も高専の卒業生への期待が大きくなっているという。 「高専では15歳から専門教育が始まって、5年生の時点で大学卒業と同じ程度の力をつけることを目指して教育しています。実習や実験も多く経験していますし、卒業研究も5年生で取り組みます。 一通りのことをやった上で大学に編入すると、1年生から大学に入学している学生に比べて手も動き、知識もあるので、大学で研究のリーダー的な存在になっている学生も結構います。そういう意味で、大学側からは『高専から学生が欲しい』という声をよく聞くようになりました。 東京大学に編入できるような学生は、高専の中でもトップクラスであることは確かですね。そもそも高専には、中学校卒の段階で優秀な学生が来てくれている場合が多いです。そういう学生が育って、より高度な勉強や研究がしたいという意識を持つことで、東京大学や東京工業大学などトップクラスの大学への編入を目指すケースが出てきています」』、「一通りのことをやった上で大学に編入すると、1年生から大学に入学している学生に比べて手も動き、知識もあるので、大学で研究のリーダー的な存在になっている学生も結構います。そういう意味で、大学側からは『高専から学生が欲しい』という声をよく聞くようになりました」、なるほど。
・『半数以上が大学に編入する高専も  高専全体では編入する学生の割合は約4割だが、それを超える高専もある。最も割合が高いのは、6割を超えている群馬県の群馬工業高専と新潟県の長岡工業高専だ。次いで、6割に近い兵庫県の明石工業高専が続く。千葉県の木更津工業高専と奈良県の奈良工業高専は5割を超え、九州では久留米工業高専が4割以上となっている。下田氏が次のように解説する。 「大都市圏の高専は大学に進む割合が高いですね。おそらく、大学の数が多いからではないでしょうか。長岡工業高専については、長岡技術科学大学が近くにあることも要因の一つだと思います」 さらに、高専の専攻科から、各大学の大学院に進む学生も多い。専攻科修了生の約4割が大学院に進学している。次の表は、21年4月の大学院への入学者数だ。 多い順に見ていくと、奈良先端科学技術大学院大学、東北大学、筑波大学、九州大学など、国立大学の大学院に多数進学していることが分かる。修了生は高専と専攻科で学んだことを、大学院でさらに深めていく。高度な知識と技術を持つ人材が、高専から育っているのだ』、「高専の専攻科から、各大学の大学院に進む学生も多い。専攻科修了生の約4割が大学院に進学している」、「修了生は高専と専攻科で学んだことを、大学院でさらに深めていく。高度な知識と技術を持つ人材が、高専から育っているのだ」、頼もしい限りだ。
・『あまり知られていない進学率の高さ  以上のように、高専からの大学編入や、その先の大学院への進学を選ぶ学生の割合は高い。にもかかわらず、学生の親世代も含め、一般にはあまり知られていないのではないだろうか。 高専のパンフレットを見ると、「卒業後の多彩なキャリアパス」として、学生の約4割が進学していることが書かれている。ただ、その記述はあっさりしている。下田氏によると、中学生に説明する際に、進学率のことはそれほど打ち出していないという。 「そういう道もありますよ、というくらいの説明しかしていないと思います。どこまで伝わっているのかは分かりません。そもそも高専自体がマイナーな存在です。中学3年生が全国で約100万人いる中で、高専に進むのは1%弱です。高校の普通科に比べると、まだまだ認識されているとは言えないですね。 高専は各都道府県の第2、第3の都市に設置されているケースが多いので、寮に入って親元を離れる学生が多いです。それも一つの要因なのか、新型コロナウイルス禍では志願者数が減りました。各高専では、それまで寮では2人部屋や3人部屋が主流だったところを、コロナ対応のために個室に変えるといった対応を取った場合もあります」 高専では現在、デジタル分野の教育に力を入れている。サイバーセキュリティー分野では、サイバー攻撃を防ぐ側として活躍できるよう、高度なレベルの教育を行っている。また、22年からは半導体人材の育成にも動き出した。AI(人工知能)やデータサイエンスなども含めて、各分野について拠点校が指定されている。女子学生が9割以上を占める、ビジネス関連の学科を置いている高専もある。 「高専について理解してもらうために、教員が中学校に出向いて説明に回っています。他にも、小・中学校への出前授業や、科学技術フェアなどを開催して、高専の教育内容を知ってもらう機会をつくっています。教育内容と合わせて、高専の卒業生には多彩なキャリアパスがあることも、もっと知っていただきたいですね」 全国の高専生の4割を占める進学率は、今後も下がることはなさそうだ。15歳から専門的な知識と技術を身に付けた高専生への注目度は、今後企業だけでなく、大学からもより高まっていくのではないだろうか』、「専門的な知識と技術を身に付けた高専生への注目度は、今後企業だけでなく、大学からもより高まっていくのではないだろうか」、同感である。

次に、1月31日付けFLASH「岡山大学学長、予算2000万円を“趣味の写真”に注ぎ込んでいた!3億円不正経理も責任取らず3月退任で“逃走”」を紹介しよう。
https://smart-flash.jp/sociopolitics/219986/1
・『深緑色のシカゴ川を前景に、高層ビル群が聳え立つ一枚の風景写真。趣味にしてはハイレベルだが、これが“公金”を私的に流用して作られたものだったとしたらーー。 「許せませんよ。これほど“不正まみれ”の学長が、逃げ切ろうとしているのですから」 と憤るのは、長い歴史と伝統を誇る医学部で有名な、名門・岡山大学の関係者だ。現在、岡山大学の学長を務めるのは、槇野博史氏(74)。医学部出身で、2011年から岡山大学病院の病院長を務め、2017年から現職となった。 「病院長時代から、公私混同がひどく、2000万円もの大学のお金を、趣味の写真に注ぎ込んできたんです。トップとして君臨する現在、これを正面から批判できる大学関係者はいませんよ…」(同前) 2000万円の内訳はこうだ。まず、2011年から2016年にかけて、自身が撮影した写真を特注のパネルに加工した。これが、500万円也。 「パネルは病院内の廊下の壁にずらっと展示され、ご丁寧に『槇野博史』と名前が入っています。製作費はすべて病院運営費などから支出されています。本人は『患者の心を癒やすため』と言い訳していたそうですが……」(病院関係者) さらに槇野学長は、大学の予算で2冊の写真集を自費出版したうえ、別の出版社から発行させた自身が著者である写真集を7冊、それぞれ数百部から2000部ほど大学に購入させているのだ。 「悪質なのは、事務部のチェックが入る50万円を超えないように、業者に分割納品させていることです」(同前) 実際、本誌が入手した明細によると、自費出版した写真集『シカゴ物語』の印刷製本費165万9000円は、49万7700円を3回と16万5900円を1回という不可思議な分割払いがされている。 「これら写真集の発行や買い取りを合計すると、約1500万円ほど。本人は学生への教育目的だと語っていましたが、素人カメラマンの旅行日記が教育に使えるわけもなく、学生に配られた形跡もありません」(前出・大学関係者) こうした“悪事”は、2016年の学長選挙のころに一度、公益通報によって、大学幹部らに発覚した。しかし、すでに学長に内定していたため、形だけの調査と口頭での注意でうやむやにされたという。 「パネルは病院内から撤去され、以後は写真集の購入もなくなりましたが…。槇野氏は、八方美人で口がまわるタイプ。学長の地位もそうやって手に入れたんです」(同前) 前任の森田潔氏は、付属病院の経営を大学から切り離し、地域医療のために大学と病院が連携するという、岡山大学メディカルセンター構想を進めていた。 「これを『引き継ぎます』と宣言したのが槇野学長です。こうして、森田前学長の信任を得ることで学長選を勝ち抜いた槇野学長ですが、いざ就任すると、古巣の病院を守るため『やっぱり難しい』と計画を撤回。あまりに見事な二枚舌でした」(大学幹部) こうした槇野学長の横暴を受け、「岡山大学を正常化する会」という有志の会が設立された。会のホームページには、なんと森田前学長が実名で寄稿し、槇野学長を批判する事態になっている。 さらに槇野学長は、とある重大な“秘密”を抱えたまま、大学を去ろうとしている。 「3億円にものぼる、不正経理です。2014年度分の決算時、7億円の赤字があった岡山大学病院の収支を少しでもよく見せようとして、製薬会社などから治験のために振り込まれた受託研究費を、通常の診療で使用する検査試薬代3億円につけ替える粉飾決算をおこなったのです。本来は研究に使われるはずのお金を、勝手に経費の穴埋めに流用したということです」(病院関係者) 本件は、2021年に公益通報により発覚。その後、あずさ監査法人による監査がおこなわれ、2022年6月3日に監査結果が報告された。そこでは、この経理操作について、「会計原則に違反する」「公的研究費の適正な使用に対する違反」など、厳しい言葉が並び、不正経理が認定されている。しかし、いまだに岡山大学は問題を公表していない。 「まさに槇野学長が病院長を務めていた時代の不正ですよ。自分の身を守るために半年以上、この監査結果の存在自体を“隠蔽”し続けているのです」(大学職員) 公益通報に詳しい拝師徳彦弁護士はこう語る。 「不正会計や公金流用の問題は、その経緯などを調査したうえ、再発防止に向けた適切な対処をおこない、その内容も速やかに公表すべきです」 はたして、槇野学長はどう弁明するつもりなのか。1月下旬の朝、瀟洒な自宅から出てきた槇野学長に声をかけた。しかし、槇野学長は本誌記者の声かけに対して、一瞥することもなく、小走りに送迎車に乗り込み“逃走”したのだーー。 あらためて大学に確認すると、写真パネルについては「正式な会議において承認を受けている」とし、病院運営費は「病院収入が主たる財源」だという。写真集については「教育活動に活用するために、使途の制限のない奨学寄附金を使用した」ため、問題がないと回答。不正会計の“隠蔽”については、すでに関係者の処分をおこなっており「学内調査及びそれに基づく対応が終了したため、速やかに公表する予定です」という。 「取材を受けたから、慌てて公表することにしたのでしょう。戒告以上の懲戒処分があったのなら公表されるはずですが、なんの発表もないということは、誰も責任を取っていないということでしょう」(前出・大学職員) 大学のガバナンスに詳しい京都大学大学院教育学研究科駒込武教授はこう嘆く。 「3億円にものぼる不正会計とは驚きです。次元が違うにせよ、写真集も問題です。現在の国立大学は、学長を中心とした理事会組織に権限が集中しすぎています。しかし、政府や文部科学省は大学経営の効率化を求めるあまり、歯止めをかけられていません」 2015年に似たような不正会計が発覚した秋田大学は、記者会見を開いたうえで、学長の報酬の10分の1を返納するという懲戒処分をおこなっている。一方、岡山大学では来る4月、槇野氏が推す人物が学長に就任することが決まっているーー』、「3億円にものぼる、不正経理です。2014年度分の決算時、7億円の赤字があった岡山大学病院の収支を少しでもよく見せようとして、製薬会社などから治験のために振り込まれた受託研究費を、通常の診療で使用する検査試薬代3億円につけ替える粉飾決算をおこなったのです。本来は研究に使われるはずのお金を、勝手に経費の穴埋めに流用」、「槇野学長が病院長を務めていた時代の不正」、「現在の国立大学は、学長を中心とした理事会組織に権限が集中しすぎています。しかし、政府や文部科学省は大学経営の効率化を求めるあまり、歯止めをかけられていません」、「政府や文部科学省」が求めるガバナンスは、「学長を中心とした理事会組織に権限」を「集中」させるというもので、「学長」自らが問題を起こすことは想定外だ。お粗末極まりない。

第三に、2月5日付けAERAdot「“専門バカ”をつくらない「東京科学大学」に期待できるか 東工大と医科歯科大の統合が心配な理由〈dot.〉」を紹介しよう。
・『 2024年度中をめどに統合を目指す東京工業大学(東工大)と東京医科歯科大学(医歯大)の統合計画案(統合案)は、1月19日に新しい統合大学名「東京科学大学」(仮称)が公表され、いよいよ現実味を帯びてきた。ネット上では「薄っぺらな軽すぎる大学名」「Fラン大学」などと揶揄され、両大学の統合を歓迎しないコメントが散見されるなど、大学の統合話にしては話題になっている。そこで、この統合案の妥当性を長い間、高等教育現場にいた者として考えてみることにした』、興味深そうだ。
・『Big Ten同士の統合は果たして実現するのか  統合案は1月中に、大学や学部の新設、大学内の教育的組織改革(改組)などの認可を判断する大学設置・学校法人審議会(設置審)に提出することも発表された。一般的に、設置審にかけるまでには文部科学省(文科省)との事前協議で計画案が了承されなければならないので、統合案は文科省からゴーサインが出されたものと考えられる。したがって今後、特別に問題がなければ両大学の統合は認可される公算が大きい。しかし、以前、勤務先の大学の学部と大学院の改組(博士課程設置など)で設置審の認可を受けた経験からすれば、両大学の統合には、いくつか問題があるように思う。詳しい統合案を読んでいないことを前提に以下、検証を試みたい。 この統合は、優れた大学として文科省から認められた指定国立大学法人同士なので、いやが上にも注目される。指定国立大学法人は、東北大学、筑波大学、東京大学、医歯大、東工大、一橋大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、九州大学の10校で、北海道大学を除く旧帝国大学6校に筑波大学、医歯大、東工大、一橋大学の4校が加わって、まさにBig Ten Conference(米国カレッジスポーツ)状態となっているといえば揶揄に聞こえるかもしれない。 このなかで、名古屋大学は、正確には国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学で、岐阜大学はこの法人機構に所属し1法人機構2大学(傘下という意味でアンブレラ方式)となっている。そのほかの指定国立大学法人は1法人1大学方式である。ちなみに、国立大学法人は大学数でいえば86校あり、その組織形態のなかには上記の東海国立大学機構以外にも、北海道国立大学機構(小樽商科大学、帯広畜産大学、北見工業大学)、奈良国立大学機構(奈良教育大学、奈良女子大学)がある。なお、大学の再編・統合はそのほかでも進んでいる。 今回の東工大と医歯大の統合は、前述のように指定国立大学法人同士であり、しかも1法人1大学を目指すという点で注目に値するが、以下に述べるように統合には疑問を感じる』、「疑問」とは具体的にはどういうことだろう。
・『言い尽くされた理念目標に目新しさは感じられない  ここで2022年10月14日に両大学で締結された4項目からなる基本合意のうち2項目目と3項目目の概要について言及したい。 2項目目には「多様な社会課題に立ち向かうために、理工学、医歯学、さらには情報学、リベラルアーツ・人文社会科学などを収斂させて獲得できる総合知に基づく『コンバージェンス・サイエンス』を展開します」と書かれている。また、3項目目には「教養教育と専門教育を有機的に関連させ、現代社会が直面する諸課題に対峙して、真に解決すべき 課題を設定し、解決へと導く役割を担う高度専門人材を輩出します」と謳っている。しかし、これらのことは他大学の改組の際にも言い尽くされてきた理念目標であり目新しさはどこにも感じられない。ちなみに俯瞰的・総合的教育研究を目指して、1974年に初めて広島大学に総合科学部が誕生し、その後にも他大学に同じような理念目標を掲げた学部が誕生している。 今回の東工大と医歯大の統合で、この2項目目と3項目目をどう達成するのか、特に人文社会系の教育研究をどう取り入れるのか、両大学とも理系の単科大学であることを考えると極めて心配になる』、「人文社会系の教育研究をどう取り入れるのか、両大学とも理系の単科大学であることを考えると極めて心配になる」、同感である。
・『専門バカをつくらない、は何を意味するのか  2022年11月1日、両大学の学長の話をテレビで長時間、聴いた。両大学とも、単科大学としての危機意識を持ち、理工学と医歯学を連携させて、新領域分野を創生、地球環境問題、感染症、少子高齢社会などの新たな地球規模の問題解決を目指すという。このことは、前述の基本合意の2項目目、3項目目を易しく言い換えているのだが、この目標も、以前から言い尽くされてきた大きなテーマで、まったくもって新しさを感じない。しかも、理工学と医歯学の連携は以前から、他大学内及び他大学間でも行われてきた。だから、両大学長の説明からは統合する確固たる理由が残念ながら伝わってこず、統合の理由としては説得力に欠ける。 地球規模の問題を解決するには、理工医歯系分野だけでは解決できず、人文社会系分野を含めた俯瞰的な視点が欠かせない。東工大学長も、“専門バカ”をつくらないという趣旨の発言を表立ってしていたことからも、両大学ともその視点の重要性を認めている。しかし、その視点は両大学の統合で達成されると考えているのか甚だ疑問である。言い過ぎかもしれないが、東工大学長の公言は、単科大学の危機意識、「職業大学からの脱皮」「職工教育の反省」とも受け取れる。 しかし、人文社会系分野を含めた俯瞰的な視点が重要というなら、なぜ既存の「四4大学連合」(東工大、医歯大、一橋大学、東京外国語大学)を足掛かりに4大学統合を目指さないのか分からない。これが難しいので、今回、東工大と医歯大の統合に安易に走ったとしか思えない。さらにいえば、政府が創設した国際卓越研究大学制度(2024年度から年間数百億円(1校あたり)を支援予定)に選定され易くするための統合といわれても仕方あるまい。これでは、理系寄りの中途半端な総合大学しか誕生しない最悪のシナリオになってしまうのではないかと心配する』、「地球規模の問題を解決するには、理工医歯系分野だけでは解決できず、人文社会系分野を含めた俯瞰的な視点が欠かせない」、「既存の「四4大学連合」を足掛かりに4大学統合を目指さないのか分からない。これが難しいので、今回、東工大と医歯大の統合に安易に走ったとしか思えない」、「政府が創設した国際卓越研究大学制度・・・に選定され易くするための統合といわれても仕方あるまい」、その通りだ。
・『日本は高校からすぐに医歯学部に入学する  テレビ番組での、医歯大学長の「日本は高校からすぐに医歯学部に入学する」という発言にも私は注目。この発言は直接統合の議論に関係しないのだが、統合理由として掲げた俯瞰的教育研究がなぜ日本ではなかなか進まないのかの理由として述べられた言葉だ。あまりにも人ごとの発言ともいえるが、日本の教育を考えるうえで極めて重要な指摘である。この発言は「米国流の日本版メディカルスクール化(4年制大学卒業後に医歯学部に入学)」を意味するようにも思う。大学が率先して医歯学部入学制度を変えてほしい。日本のメディカルスクール化は日本社会の「偏差値教育」の打開につながるかもしれない。幅広い教養を備えた専門家を育成する国家的な教育改革が求められるのだが』、「日本のメディカルスクール化」はなかなかいいアイデアだが、実行するには課題が多すぎる。
・『統合案の先、将来は4大学統合の議論を  今回の東工大と医歯大の統合は、基本合意1項目目「両大学の尖った研究をさらに推進」を優先する、研究を主眼とした統合といえるのではないか。確かに、両大学の研究レベルは高く、統合することにより医療機器、医療材料、医療生命学、医療化学などの分野において格段の進歩が期待できるだろう。この統合は、世界的競争に打ち勝つ新たな挑戦ともいえる。文科省もそれを今回の統合に期待しているのかもしれない。 しかし、大学の役割はむしろ教育にあるといっても過言ではない。そのことを上で述べたつもりだ。公表されている統合案を設置審にかけるので、いまさら既存の四大学連合を足掛かりに、4大学統合を目指すのはもう無理なのだが、統合案の理念目標を達成するには将来的には4大学統合が不可欠な気がする。1法人1大学にするのか、それともアンブレラ方式にするのか、今現在、我が国の大学の再編・統合が進んでいるので、その進捗状況を見極める必要もある。いずれにしても大学の再編・統合は教育改革を見据えて考える必要があるように思う。 (和田眞氏の略歴はリンク先参照)』、「統合案の理念目標を達成するには将来的には4大学統合が不可欠な気がする」、同感である。 
タグ:「専門的な知識と技術を身に付けた高専生への注目度は、今後企業だけでなく、大学からもより高まっていくのではないだろうか」、同感である。 「高専の専攻科から、各大学の大学院に進む学生も多い。専攻科修了生の約4割が大学院に進学している」、「修了生は高専と専攻科で学んだことを、大学院でさらに深めていく。高度な知識と技術を持つ人材が、高専から育っているのだ」、頼もしい限りだ。 「一通りのことをやった上で大学に編入すると、1年生から大学に入学している学生に比べて手も動き、知識もあるので、大学で研究のリーダー的な存在になっている学生も結構います。そういう意味で、大学側からは『高専から学生が欲しい』という声をよく聞くようになりました」、なるほど。 「高専の卒業生を編入で受け入れることを主な目的として設置された国立大学」が2校あるとは初めて知った。「専門的な知識を深めた状態で3年次に編入してくる高専卒業生は、大学側にとっても「欲しい人材」になっている」、「東京大学には18人、東京工業大学には26人が編入しているほか、旧帝大でも九州大学の57人をはじめ多くの編入生を受け入れている」、なるほど。 「高専卒業後の進路は就職が6割、進学が4割」、「進学については、各高専でさらに2年間高度な教育を受けることができる専攻科に進む学生が約14%、大学に主に3年次から編入する学生が約24%」、「豊橋技術科学大学と長岡技術科学大学。高専の卒業生を編入で受け入れることを主な目的として設置された国立大学だ。高専からの編入が1学年の約8割を占めている」、 日経ビジネスオンライン「技術者教育の「国立高専」 東大18人、難関国立大に多数編入」 大学 (その11)(技術者教育の「国立高専」 東大18人 難関国立大に多数編入、岡山大学学長 予算2000万円を“趣味の写真”に注ぎ込んでいた!3億円不正経理も責任取らず3月退任で“逃走”、“専門バカ”をつくらない「東京科学大学」に期待できるか 東工大と医科歯科大の統合が心配な理由〈dot.〉) FLASH「岡山大学学長、予算2000万円を“趣味の写真”に注ぎ込んでいた!3億円不正経理も責任取らず3月退任で“逃走”」 「3億円にものぼる、不正経理です。2014年度分の決算時、7億円の赤字があった岡山大学病院の収支を少しでもよく見せようとして、製薬会社などから治験のために振り込まれた受託研究費を、通常の診療で使用する検査試薬代3億円につけ替える粉飾決算をおこなったのです。本来は研究に使われるはずのお金を、勝手に経費の穴埋めに流用」、「槇野学長が病院長を務めていた時代の不正」、 「現在の国立大学は、学長を中心とした理事会組織に権限が集中しすぎています。しかし、政府や文部科学省は大学経営の効率化を求めるあまり、歯止めをかけられていません」、「政府や文部科学省」が求めるガバナンスは、「学長を中心とした理事会組織に権限」を「集中」させるというもので、「学長」自らが問題を起こすことは想定外だ。お粗末極まりない。 AERAdot「“専門バカ”をつくらない「東京科学大学」に期待できるか 東工大と医科歯科大の統合が心配な理由〈dot.〉」 「疑問」とは具体的にはどういうことだろう。 「人文社会系の教育研究をどう取り入れるのか、両大学とも理系の単科大学であることを考えると極めて心配になる」、同感である。 「地球規模の問題を解決するには、理工医歯系分野だけでは解決できず、人文社会系分野を含めた俯瞰的な視点が欠かせない」、「既存の「四4大学連合」を足掛かりに4大学統合を目指さないのか分からない。これが難しいので、今回、東工大と医歯大の統合に安易に走ったとしか思えない」、「政府が創設した国際卓越研究大学制度・・・に選定され易くするための統合といわれても仕方あるまい」、その通りだ。 「日本のメディカルスクール化」はなかなかいいアイデアだが、実行するには課題が多すぎる。 「統合案の理念目標を達成するには将来的には4大学統合が不可欠な気がする」、同感である。
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