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大学(その12)(もはや衰退モード…日本の大学教育 学生の「能力」は高いのに「人材」を生かせないワケ…東工大学長が明かす、2024年「東工大」と「東京医科歯科大」が統合を決めた「ある深刻な事情」…日本の大学教育 凋落の3つの要因、国際卓越研究大で大学と文科省に吹く「隙間風」 数百億円規模の支援だけでは研究力向上は困難) [社会]

大学については、本年5月11日に取上げた。今日は、(その12)(もはや衰退モード…日本の大学教育 学生の「能力」は高いのに「人材」を生かせないワケ…東工大学長が明かす、2024年「東工大」と「東京医科歯科大」が統合を決めた「ある深刻な事情」…日本の大学教育 凋落の3つの要因、国際卓越研究大で大学と文科省に吹く「隙間風」 数百億円規模の支援だけでは研究力向上は困難)である。

先ずは、6月22日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの春川 正明氏による「もはや衰退モード…日本の大学教育、学生の「能力」は高いのに「人材」を生かせないワケ…東工大学長が明かす」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/111805?imp=0
・『なぜ「リベラルアーツ」が重要なのか  <『言葉の力』を、理系の学生にこそ知ってもらいたい> 2012年に東京工業大学リベラルアーツセンターの特命教授に就任し、学生たちへの教養教育を行っているジャーナリストの池上彰さんの言葉だ。リベラルアーツ(教養)教育の目標は“尖ったリーダー”を育てることだという。 尊敬するジャーナリストの池上彰さんが、教授としてリベラルアーツを教え始めたことがきっかけで、東京工業大学とはどんな大学なのだろうかと興味を持ち始めた。 理系の大学でなぜリベラルアーツに力をいれるのだろうかと思っていたら、東京医科歯科大学と国立大学同士で統合するというニュースが飛び込んで来た。 さらに2024年度の入試で『女子枠』を設けるという。東京で出演している番組でこの『女子枠』について議論することになり、ゲストとして東工大の学長がスタジオに来て共に議論した。 放送の中でもコメントしたが、テレビの生放送に国立大学の学長が出演して討論するとは、とても驚いた。次々と改革を進めている東工大の学長に興味が湧き、大岡山キャンパスにお話を聞きに行ってきた。 「よく世間では、(東工大の学生は)非常に真面目だけど根暗とかオタクとか、チェックのシャツを着ているとか色々言われます。言われても反論できるぐらいのことを、いろんなことをやっているけれども、自虐的なのか、いちいち反論しなくてもいいよと思っちゃう。 だから変な奴が集まっている大学のように勘違いされている。何かを極めたいと思っている人が多いだけなんだけどなぁ」) 東工大の学生のイメージを聞いたら、こんなストレートな答えが返って来た。歴代の学長の肖像画が並んだ歴史を感じさせる部屋でインタビューしたが、2018年に就任した東京工業大学の益一哉学長(68)の発言は、国立大学のトップとは思えない率直さだ。 そういう大学のイメージを、学長として変えたいという考えはないのだろうか。 「ここがね、難しいとこですよね。やっぱり変えたいとも思うし、もっともっとアピールしてもいいとみんな思っている。でも僕ら“尖った”ままでもいいかなという気もする」 東工大に関する資料や本に目を通すと、“尖った”という単語が数多く出てくる。 “尖った”ということ、なんかを極めたいという気持ちをみんな持っているのだろうね。研究をやったら世界一になってみたいとか、誰も考えつかないことをやってみたいとか、プログラムを作るとしたら、絶対誰にも負けないプログラムを作ってみるとか、そういうことに命を掛ける。だからそれを“尖った”という表現で僕らは使っているのかな。 “尖った”人材で、普通の人が思いもつかないような方法で何かを解決するというのもあるし、自分の居るフィールドで、トップに立ってやろうとか思っている人が多いような気がする。『俺たちは違うぜ』と言って」 その口調には、大学への熱い想いを感じる』、「“尖った”人材で、普通の人が思いもつかないような方法で何かを解決するというのもあるし、自分の居るフィールドで、トップに立ってやろうとか思っている人が多いような気がする。『俺たちは違うぜ』と言って」 その口調には、大学への熱い想いを感じる」、なるほど。
・『敗戦後すぐに始まった教養教育  国立大学である東京工業大学は、学生数1万529人(外国人留学生含む)、教員1088人、職員610人(2022年5月1日現在)の国内屈指の理工系大学だ。 世界的な高等教育評価機関の英国クアクアレリ・シモンズ(QS)が発表する『QS世界大学ランキング』では、東工大は世界55位。国内では東京大学、京都大学に次いで3位(2023年)に位置づけている。 また大学通信が調査した『国内有名企業400社就職率ランキング』では、一橋大学に次いで2位(2022年)の結果だ。 益学長は、神戸市立工業高専を卒業し、東京工業大学工学部に編入して卒業し大学院を修了した。工学博士で専門は半導体、集積回路工学だ。高専出身者が国立大学の学長になるのはおそらく初めてだという。 なぜ工業大学という理系の大学で、リベラルアーツ教育に力を入れるのだろうか。しかも東工大では大学1年から4年までだけでなく、大学院、博士課程までリベラルアーツ科目が必修化されている。 「東工大は1945年の敗戦を受けて半年しないうちに、リベラルアーツ教育、教養教育をやらないといけないんだと言って、1946年4月から教養教育を始めたのです」 東工大では、宮城音弥(心理学者、社会評論家)や伊藤整(小説家、詩人、文芸評論家)、江藤淳(文芸評論家)、永井道雄(教育社会学)、吉田夏彦(哲学者)など各分野で時代を代表する錚々たる人達が教えていた。 「卒業生に聞くと、『あれ、面白かった』とみんな言うんだよね。東工大に脈々とそういう伝統があった。ところが、90年代に大学院重点化をするという時に教養部廃止など、日本全体で理系における教養教育がトーンダウンしたように思う。 東工大でも、実はその時にトーンダウンしている。それじゃあいかんというので、リベラルアーツ教育を再度強化し始めた。昔に戻っただけなんです、元々リベラルアーツ教育をやっていた。僕はそう理解している」) 2010年に東工大の教養教育の拠点となる『リベラルアーツセンター』が発足し、2016年には『リベラルアーツ研究教育院』が設立されたが、理系の大学でリベラルアーツ教育に力を入れることに、反対はなかったのだろうか。 「リベラルアーツ教育をやろうと言った時に、『なんでやらないといけないんだ』とか、いう人もいる。とくに1990年代に教養教育がトーンダウンした時に育った人達が多い。 大体の人たちは、リベラルアーツ教育をやっているのは当たり前だと思っている。それが東工大の伝統だと思っているから。批判覚悟で言うと、伝統だと思っていないのが、90年代以降トーンダウンした時に育った一部の人達だと」』、「益学長は、神戸市立工業高専を卒業し、東京工業大学工学部に編入して卒業し大学院を修了した。工学博士で専門は半導体、集積回路工学だ。高専出身者が国立大学の学長になるのはおそらく初めて」、「高専出身者」とはよほど優秀なのだろう。「1946年4月から教養教育を始めたのです」 東工大では、宮城音弥(心理学者、社会評論家)や伊藤整(小説家、詩人、文芸評論家)、江藤淳(文芸評論家)、永井道雄(教育社会学)、吉田夏彦(哲学者)など各分野で時代を代表する錚々たる人達が教えていた」、しかし、「90年代に大学院重点化をするという時に教養部廃止など、日本全体で理系における教養教育がトーンダウンしたように思う。 東工大でも、実はその時にトーンダウンしている。それじゃあいかんというので、リベラルアーツ教育を再度強化し始めた」、なるほど。
・『「人間」を育てる教育  東工大の今のリベラルアーツ教育を長年引っ張って来たのは、上田紀行教授だ。リベラルアーツ研究教育院長を務めた上田教授は「いま世界は科学技術を熟知したリーダーを求めている。人間の根っこを太くするのがリベラルアーツで、『人材』ではなく『人間』を育てる教育だ」と語っている。 その上田教授が教育で必要なものだと長年言い続けて来たのは『パッション(情熱)』と『志』だ。 「『パッション』とか『志』をいつも言っているのは上田紀行だからね。僕もそれに引きずられて。あいつ偉いと思う。何度も何度も僕に、『志』だとか『パッション』と言い続けた。 鈍感な僕でも『そりゃそうだよ。持たないとまずいよな』と思うようになった。僕はいま『大学こそ、志を持たずしてどうするのだ』と言っています」 東工大が目指すのは、世界最高峰の理工系総合大学だ。そのためには経営的センスを持った理系学生を増やしたいという。「最近まで日本の産業界では経営者は文系出身者で、研究や開発は理系出身者という考えに縛られている気がする」と益学長は指摘する。) 「理系・文系という分け方は嫌いだけど、あまりにも文系支配というのかな、文系は文系なりの論理的思考はあるんだけれども。やはり僕らみたいに科学技術とか、いわゆる理系、論理性の高い科学技術に立脚したとか、そういう論理性がある人がもっともっといろんな所に出て行かないといけないような気はする。 例えばよく言うのは、高等教育で文科省は『博士教育を強化しろ、高度人材を作れ』と旗を振ってくれるけれども、文科省の高等局に博士を持った人は殆ど居ないですからね。 博士を持たずに博士教育を語る文科省とか、経産省は技術開発とか色々やるじゃないですか。技術開発の方向を議論するのに、博士を持たずに政策を立てている国ですから、我が国は。 日本の社会がそもそも高度人材を本当に活用しようと思っていない、日本の悪いところです。今までの博士修了者は大学の先生になりたいとか、研究者だけになりたいとやっていたんだけど、これだけ科学技術が進んでいる中、特に理系では博士程度レベルの科学技術を理解した人が様々なところで活躍しないと世界の動きについていけないですよね。 それをなんか(博士を持った人を)変わった人だとしか思わない日本というのはおかしいと思うよ。だから“停滞した30年”があるとも言える。そういう人を活用するというマインドもないんだよね、日本は。もったいないよね。」 そう指摘する益学長は、大学というのは何のためにあると考えているのだろうか。 「一般の人は、高校生の進学先としての大学でしか見ていない。本来は、少なくとも今の世界の理工系の大学は、高校生の出口の4年間の学部レベルの大学と、その後、就職に繋がるというのが大学じゃなくて、その後の大学院まで含めて大学として見ないといけない。 大学というのは人材教育だって言われるけれども、その人材教育っていうのは、単に高校よりちょっとレベルの高いことを教えるだけじゃなくて、新しいものを生み出せる人材を育てるのが大学だと僕は思っている。少なくとも理工系の大学はね。 大学院まで含めて新しいことを生み出す。昔は学術分野における研究成果を出すだけでよかったのかもしれないけれど、今は成果を社会実装し新しい産業も興さないといけない。それが大学だと思う。少なくとも理工系の大学は」 理系大学であるにも関わらず、戦後すぐからリベラルアーツ教育に力を入れて来た東工大は、今後どこを目指すのか。 <【後編】2024年「東工大」と「東京医科歯科大」が統合を決めた「ある深刻な事情」…日本の大学教育、凋落の3つの要因>では、数々の改革を推し進める学長の意外な胸の内に迫る』、「文科省の高等局に博士を持った人は殆ど居ないですからね。 博士を持たずに博士教育を語る文科省とか、経産省は技術開発とか色々やるじゃないですか。技術開発の方向を議論するのに、博士を持たずに政策を立てている国ですから、我が国は」、「文科省」や「経産省」が「博士を持たずに博士教育を語」ったり、「技術開発」をしているのは、確かに日本の「博士」軽視を示しているようだ。「日本の社会がそもそも高度人材を本当に活用しようと思っていない、日本の悪いところです。今までの博士修了者は大学の先生になりたいとか、研究者だけになりたいとやっていたんだけど、これだけ科学技術が進んでいる中、特に理系では博士程度レベルの科学技術を理解した人が様々なところで活躍しないと世界の動きについていけないですよね。 それをなんか(博士を持った人を)変わった人だとしか思わない日本というのはおかしいと思うよ。だから“停滞した30年”があるとも言える」、同感である。

次に、この続きを6月22日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの春川 正明氏による「2024年「東工大」と「東京医科歯科大」が統合を決めた「ある深刻な事情」…日本の大学教育、凋落の3つの要因」を紹介しよう。
・『「国際卓越研究大学」を目指したわけじゃない  国内屈指の国立理工系大である東京工業大学は、戦後すぐから理系大学にも関わらずリベラルアーツ教育に長年力を入れて来た。 現在は、2024年度秋を目途に、国立の東京医科歯科大学と統合することで合意し、世界最高峰の理系総合大学を目指している。更に2024年度の入試での『女子枠』を創設する入試改革も発表した。 『東京科学大学』。東京工業大学と東京医科歯科大学という国立大学同士が統合して出来る大学の仮の名称だ。 「一応、我々の中では決まっているけれども、法人統合というのが国会審議を経ないと正式にならないので、今後の国会で決まって、そこで正式になる」 文部科学省は昨年11月に、『国際卓越研究大学』制度の基本方針を発表した。世界最高水準の研究大学の形成を目指すために、10兆円規模の大学ファンドを創設する。 2024年度からその運用益の目標は年間3000億円だ。選ばれた1大学あたりの支援額は、これまでになくかなりの規模になるが、支援額は現在の大学が獲得している外部資金額に連動すると言われている。 多くのメディアは、今回の両大学の統合は、この国際卓越研究大学に選ばれることを目指したものだと報じ、私もそう思っていた。しかし、統合の目的を益学長に聞くときっぱりと否定。東京医科歯科大学との統合を進めた理由は、強い危機感だった。) 「東工大が今のままでは限界を感じたというのが正直なところ。平成の30年間停滞して、東工大が主に関係する製造業のGDP(国内総生産)は世界でも日本でも伸びてない。 世界でGDPが伸びているのは、ITやバイオなど新しい産業を作ってきたから。良いモノを作れば売れるといって、結果として製造業にしがみついて、新しい芽を育てられなかった。 『工業工場で働く人材を育てるのではなく、育てた人材が工業工場を作る』。今風にいえば新しい産業を作ると、僕らは(1881年に設立された)東京職工学校の時代に言っているのに、この30年間経済が停滞して新しい産業を産み出してこなかった。東工大は『新しい産業を作る』と言ってやっていない。どうしようという、強い反省です。 改革ということで、色んな学院を作ったりしたけど、各学院のいろんな将来計画を聞いていても、まだまだ足りない。2016年に東工大は教育組織、研究組織の大きな改革をし、それぞれに将来計画を真剣に考えている。 でも、どうしても今の産業基盤から抜け切れてない。怒られるかもしれないけど、まだ製造業に抱きついてんだよ、みんなね。全然伸びていない産業に抱きついてどうするのだろうという話を真面目にし始めた。抱き着く先を変えないといけないよね、という」 そう考えていた時に、東京医科歯科大学の田中学長から統合の話が来た。 「たまたま田中さんが、『大学連携推進法人というスキームで一緒にやりませんか』という話をしてきた。最初は面倒な組織は作りたくなかったから、断ろうと思っていたんだけど、こっちも現状を打ち破ることを真剣に考えていた。 『一法人一大学になるぐらいの気合が(相手に)あるんだったら、それぐらいのことやってもいい』と。それが東工大の将来のためにもなるし、日本のためにもなるんだったら、そういうオプションがあってもいいのかなと申し入れた」、「東工大が主に関係する製造業のGDP(国内総生産)は世界でも日本でも伸びてない。 世界でGDPが伸びているのは、ITやバイオなど新しい産業を作ってきたから。良いモノを作れば売れるといって、結果として製造業にしがみついて、新しい芽を育てられなかった」、「まだ製造業に抱きついてんだよ、みんなね。全然伸びていない産業に抱きついてどうするのだろうという話を真面目にし始めた。抱き着く先を変えないといけないよね、という」、「そう考えていた時に、東京医科歯科大学の田中学長から統合の話が来た・・・『一法人一大学になるぐらいの気合が(相手に)あるんだったら、それぐらいのことやってもいい』と。それが東工大の将来のためにもなるし、日本のためにもなるんだったら、そういうオプションがあってもいいのかなと申し入れた」、なるほど。
・『日本は「挑戦したことがなかった国」  益学長の専門は半導体だ。日本の半導体が凋落してしまった3つの理由は「過剰品質を追い求めたこと、世界の動きの変化を捉えられなかったこと、経営者が投資判断を誤ったこと」だと益学長は指摘し、「この3つは日本の大学にもぴったり当てはまる」という。 日本がこの30年間伸びて来なかった理由はなんだと思うかと、益学長に聞いてみた。 「一言で言うと“ゆでガエル(状況の変化が緩やかだと、それに気づかず致命的な状況に陥る)”だったのかなあ。 日本ってそこそこのマーケットサイズを持っているから、ずっと変わらなくても生きていける国だったんだよね。でもこれって難しくて、それはそれでいいじゃないかという考えもあるかもしれない。でも、いつかはゆで上がってしまう。 でもね、残念ながら世界は大きく変化していて、新規な科学技術分野開拓、研究手法や、社会構造など様々なことをやっていたんだよね。その一方で、日本はそこそこでいいと思い続けたのが30年。なんでそうなったかっていうと、日本ってその間そもそも“挑戦したことがなかった国”だから。 2020年にコロナ禍の出口が見えない時に『コロナ敗戦』という言葉が出て、ふと75年前の1945年、さらにその前の75年を考えた。 1870年(1868年は明治維新)以来、黒船来航以来、極論すると自分たちで主体的に何かをしようとした国じゃないんだよ。『ジャパン・アズ・ナンバーワン』って、なんか俺たち頑張って世界を席巻できると思ったのにバブルが崩壊して、どうしようという時に、どうしないといけないって主体的なことを考えられなかった。 そこを僕らは、もう一回考え直さなきゃいけないんじゃないの、という気はしています」 東工大では2024年度の入試から、総合型選抜(旧AO入試)や学校推薦型選抜で『女子枠』を設けると発表した。学部の女子学生の比率は約13%で、「画一的な集団からは、新しい価値観は生まれない」という考えから実施することになった。 「日本では理工系の女子学生が90年代には増えたけど、2000年代で頭打ちになっているんだよね。いろいろ僕らも努力しているのです。 女子校で出張講義をしたりとか、『一日東工大生』として近隣の有力校から女子生徒を中心に招待したりとか、女性活躍推進フォーラム とか色々やったりするのだけれど、日本全体で全然増えていない。これは、普通の努力をしていたらもうダメだと思った」) 東工大の数々の新しい試みを取材する中で、面白い取り組みだなと思ったのは2018年に設置された『未来社会デザイン機構』だ。 “あるべき”未来ではなく、“ありたい”未来社会の姿について、学生だけでなく若者、企業、公的機関など多様な人たちと共に熟議を促すための対話ワークショップを開催し、2200年までの『東工大未来年表』を発表した。 「大学が次にどうするかと考えたら、将来を考えてみるということをしないとダメだよねと。研究者はそれぞれに自分の研究がどうなるか考えているわけだけど、もう少し大きい視点で考えてはという所から来ている。 考えるんだったら、一人で考えるよりも色々な人、それこそ多様性の中で議論する必要があるよね」 大学のトップとして、卒業していく学生を採用する企業に対して言いたいことはあるかと聞くと、こう答えた。 「お互い様なんだけど、真面目にね『何をして欲しい』とか『何をすべきか』ということを、日本の大学も企業も考えてなかったんだよね。 (企業も)自分たちで全部育てるのは土台無理だと思えば、『その教育を、大学さんちゃんとやってください』と言えばいいのに、それは言わないんだよね、未だに。 僕らもちゃんと『こういう教育をやって、こういう能力をつけさせて卒業させていますので、ちゃんと企業も評価してください』と言えばいいのに、日本って無駄をしているよね、どっちもね」 教育を所管する文部科学省に対しては、厳しい指摘をした。 「『大学を十把一絡げに扱わないで』ということ。『いろんなレベルがあって、いろんな多様な大学があったら、多様なやり方でコントロールしてください』と。 国立大学については、いろいろ文科省のプロジェクトがあって、様々な形で大学をサポートしようという気持ちはあるんだけど、何かと細かいことを指定してくるんだよね。『もうちょっと、やらせたら信用してくださいよ』と。 国立大学は税金を使わせていただいているので、それに対する説明責任がちゃんとあるんだけれども、だからと言って、箸の上げ下ろしまでコントロールするのは、それに時間を使っている方が無駄なんじゃないのという気はします」』、「文部科学省に対しては、厳しい指摘をした。 「『大学を十把一絡げに扱わないで』ということ。『いろんなレベルがあって、いろんな多様な大学があったら、多様なやり方でコントロールしてください』と。 国立大学については、いろいろ文科省のプロジェクトがあって、様々な形で大学をサポートしようという気持ちはあるんだけど、何かと細かいことを指定してくるんだよね・・・箸の上げ下ろしまでコントロールするのは、それに時間を使っている方が無駄なんじゃないのという気はします」、確かに「箸の上げ下ろしまでコントロールするのは、行き過ぎだ。
・『やったことが「改革」に映っているだけ  筆者の益学長への印象が、インタビューの前後でがらりと変わった。 取材する前は、熱い情熱で改革を強力に推し進める人という印象を持っていたが、実際に話を聞いてみると、自然体で自分を冷静に客観視しているように感じた。そこで大学を変えてやろうとか、東工大を変えてやるという様な熱い思いはないのかと聞いてみた。) 「そんな、おこがましい気持ちではやっていない。『俺が大学を変えてやろう』なんて思ったことない」 益学長自身の中では、改革マインドに溢れていて、俺が改革するんだという感じではないのかと重ねて聞くと、少しの沈黙の後でこう答えた。 「やっぱりいい大学にしたいという気持ちはある。日本もいい国にしたいという気持ちもある。みんなも幸せな国で、幸せなところで住んで欲しいと思う気持ちもある。『改革は絶対俺がやらなきゃいけない』とか、周りはそう見えるかもしれないけど、なんか違うな、そう思ってないな。 大学を預かる者として、あるいは大学を良くしないといけない責任において、今、何をやらないといけないかを考え、実行していって、それがたまたま改革というように映るだけの様な気がするけど」 『改革が別に目的じゃないということですか?』と更に聞くと 「そうそう、そうそう。ああそう言えばいいんだ。そう、改革が目的じゃないんだよ。 良い社会を持つためには、大学そのものも志を持たないといけないし、ここに居る人も志を持たないといけないよねという話だ。そうだ、改革が目的じゃないんだ。だから俺、答えられなかったんだよ今。あ、いいこと聞いた」 最後に、「大学はイノベーション(技術革新)を創出する拠点だ」と言う益学長は、大学を最終的にどうしたいか、目指すべき大学について聞いた。 「やっぱりね、大学っていろんな“知”があって、いろんなことを考えている人がいるわけじゃないですか。社会に対しては、いろんな形があると思うんだけど、夢を与え続けるというか、夢を生み出し続けるというか、そういう大学。 その夢っていうのは、まあ分かりやすい研究成果でもいいし、産業を興してもいいし、会社に対して夢を与えてもいいし、何かを生み出す。 夢っていうのは、ある意味、『無から有を生む』様なもの。そういうことが出来る人を育てたり、社会に夢とか何かを生み出し続けるようなことが、大学のあるべき、ありたい姿なんだろうと思います」 そこに向けて、今のところ順調に進んでいるのだろうか。 「順調かどうかわかんない。統合ひとつとっても、文化は違うし。生成系AIじゃないけど、技術の進歩は信じられないくらい速い。当然、世界は変化している。でも、僕ら自身が変わり続けようという『志』を持っていれば、何とかなるかな」 【関連記事】もはや衰退モード…日本の大学教育、学生の「能力」は高いのに「人材」を生かせないワケ…東工大学長が明かす>では、益学長が東工大がリベラルアーツ教育に力を入れる理由や大学の在り方などを明かしています』、「夢を与え続けるというか、夢を生み出し続けるというか、そういう大学」、「僕ら自身が変わり続けようという『志』を持っていれば、何とかなるかな」、なるほど。

第三に、6月20日付け東洋経済オンライン「国際卓越研究大で大学と文科省に吹く「隙間風」 数百億円規模の支援だけでは研究力向上は困難」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/680404
・『研究力向上の起爆剤として設立された10兆円ファンド。その支援対象となる国際卓越研究大学に10校が名乗りを上げ、秋頃までに認定校が決定する。1校あたり年間最大600億円もの支援金が最長25年と長期にわたって受け取れることになる。国際卓越研究大学の制度は本当に研究力向上につながるのか?そして申請校の本気度は?本記事を含め全7回にわたり、その中身や、各校トップ・担当者のインタビューをお届けする。 【今後の配信予定】 6月21日(水)配信早稲田大学:田中愛治総長インタビュー 6月22日(木)配信東京科学大学:東京医科歯科大学田中雄二郎学長&東京工業大学益一哉学長インタビュー 6月23日(金)配信東京大学:太田邦史副学長インタビュー 6月24日(土)配信東京理科大学:石川正俊学長&樋上賀一常務理事インタビュー 6月26日(月)配信筑波大学:永田恭介学長インタビュー 6月27日(火)配信東北大学:青木孝文副学長インタビュー 』、興味深そうだ。
・『もうウンザリだ  申請の段階から「こう書きなさい」「書き直してくれ」と文部科学省から口出しをうける。もうウンザリだ――。 「国際卓越研究大学」への認可申請を行ったある大学の幹部は、同制度についてこうぼやく。 世界最高水準の研究大学を生み出すべく岸田政権が目玉政策として立ち上げた10兆円規模の大学ファンド。その運用益で大学を支援する制度だが、その支援金を受け取ることができるのが国際卓越研究大学だ。 国際卓越研究大学は国立大学8校、私立大学2校の計10大学が申請し、文科省の審査を経て認可される。その顔ぶれをみると国立大学では北海道大学を除く東京大学や京都大学など旧帝国大学、筑波大学など難関国立大学が並ぶ。東京工業大学と東京医科歯科大学が統合し、2024年度中に設立される東京科学大学も名乗りを上げた。私立大学では私学の双璧の一つ、早稲田大学と私立の理系総合大学のトップである東京理科大学も申請している。 4月に審査が始まり、各校の提出した計画書をもとに文科省が設置したアドバイザリーボードが審査を行う。秋頃には認定校が決定し、2024年度から支援が開始される予定だ。支援期間は最長25年とされ、安定的に巨額の支援金を受け取れることから大学側の期待も高い。) 冒頭の発言のように複雑な思いを抱く関係者もいるが、「国際卓越研究大学は大学が変わるための最後のチャンス」(ある国立大学職員)という焦りもにじむ。 なぜなら国際卓越研究大学は単に研究力を上げるだけでなく、独自基金の造成など大学が補助金に頼ることなく自律的、持続的に成長できる基盤をつくることを目標としているからだ。候補校の一つである早稲田大学の田中愛治総長は「国際卓越研究大学制度は政府の補助金に頼らず、大学が理想とする研究教育を独自に行えるようにするための制度だと考えている」と語る』、「4月に審査が始まり、各校の提出した計画書をもとに文科省が設置したアドバイザリーボードが審査を行う。秋頃には認定校が決定し、2024年度から支援が開始される予定だ」、なるほど。
・『認定には高いハードルを乗り越える必要  支援額の規模も大きい。10兆円ファンドは年間3000億円の運用益を捻出する目標で、卓越大に選ばれた5校前後に運用益を分配する計画だ。1校あたり最大約600億円を受け取れる計算になる。候補校の年間収入は下表の通りで、東京大学の2641億円から東京理科大学の372億円までばらつきはあるものの、その平均は約1400億円。そこに「最大600億円」の支援金が加わるインパクトは大きい。 ただ、認定のハードルは高い。(被引用数が)トップ10%の論文数が直近5年間の総計で1000本程度、かつ大学の総論文数のうちトップ10%論文が占める割合が10%程度以上あるかなど厳しい要件が定められている。トップ10%論文数、その割合ともにこの基準に達する大学は一握りだ。 認定後も、研究力の向上に加え、(事業規模の成長率を表す)支出成長率を年平均3%程度伸ばすことや、持続的な成長のために必要な運用益を生み出せる独自基金の造成といった目標を達成する必要がある。) ただ、こうした支援金に基づく変革が研究力向上に直結するとは限らない。「そもそも研究力低迷の根本原因は研究時間の減少だ」と、大学関係者は口をそろえる。 研究資金の要となっている科学研究費補助金(科研費)など競争的資金の獲得に当たっては、膨大な書類執筆に加え、採択後の評価対応などに追われる。ある国立大学の研究者は、「海外大学でも研究補助金の獲得に当たって、研究の概要など重要な書類を研究者が書くのは当然だ。しかし、(運営費交付金など基盤的経費が減少し、研究者をサポートする職員の数が少なくなる中)日本の大学ではその他の細かい書類執筆や事務作業まで研究者がやらざるをえない」とこぼす。 文科省の調査によると、大学教員が職務時間のうち研究にあてる時間は2002年度に46.5%だったが、2018年度には32.9%にまで低下している。 また大学改革に伴って、「会議などの事務時間が増加した」(ある大学関係者)ことも研究時間減少の要因のひとつだ。 候補校の複数の幹部らは、「国際卓越研究大学に認定されると事務負担がさらに増えるのではないか」と懸念をもらす。これまでも国立大学法人化をはじめ、学長の権限強化、指定国立大の設置など、さまざまな対応に追われてきた。国際卓越研究大学でも膨大な事務作業や会議に追われ、「改革疲れ」に陥るのではという不安を拭いきれない』、「10兆円ファンドは年間3000億円の運用益を捻出する目標で、卓越大に選ばれた5校前後に運用益を分配する計画だ。1校あたり最大約600億円を受け取れる計算になる。候補校の年間収入は下表の通りで、東京大学の2641億円から東京理科大学の372億円までばらつきはあるものの、その平均は約1400億円。そこに「最大600億円」の支援金が加わるインパクトは大きい。 ただ、認定のハードルは高い。(被引用数が)トップ10%の論文数が直近5年間の総計で1000本程度、かつ大学の総論文数のうちトップ10%論文が占める割合が10%程度以上あるかなど厳しい要件が定められている。トップ10%論文数、その割合ともにこの基準に達する大学は一握りだ」、「大学教員が職務時間のうち研究にあてる時間は2002年度に46.5%だったが、2018年度には32.9%にまで低下している。 また大学改革に伴って、「会議などの事務時間が増加した」(ある大学関係者)ことも研究時間減少の要因のひとつだ。 候補校の複数の幹部らは、「国際卓越研究大学に認定されると事務負担がさらに増えるのではないか」と懸念をもらす」、なるほど。
・『大学から噴出する懸念  文科省は申請書類のページ数に上限を設けるなど「事務負担が過度にならないよう配慮した」というが、現場からは「日頃から文科省に提出するさまざまな書類を作成しているが、そこに国際卓越研究大学の申請書類の作成が加わった。支援金をもらう以上、厳しい審査は必要だが、事務負担が増えては研究力を伸ばすという本来の目的に集中できない」(候補校幹部ら)という声があがる。 国際卓越研究大学の公募要領をみると、提出書類では、過去5年の事業規模や助成期間中の事業成長シミュレーションなど細かい財務数値の記入が求められている。認定後には毎年、進捗状況の報告も義務づけられる。 国際卓越研究大学への懸念はこれだけではない。「そもそも研究力を測る指標としてトップ10%論文数を1000本以上などと定めているが、1000本以上あれば研究力を向上させられる基盤があるといえるのか」「莫大な支援金を受け取れるというが、足元の運用成績はマイナスで、安定的に支援金を受け取れるのか」(同幹部ら)といった声が相次いでいる。 果ては「財務省への説明責任を果たすため、過剰な書類提出を求めている」、「(公募要領上は義務づけられていない)10兆円ファンドに認可大学からの資金拠出が義務化されることがほぼ確定している」(同幹部ら)という“ウワサ”まで飛び交っている。 一方、文科省の担当者は「現場が改革疲れに陥っているのは重々承知しており、評価に追われることは避けたいと考えている。審査過程で大学と対話を重ねながら評価体制を構築したい。だからこそ審査委員会を“アドバイザリー(助言)ボード”とした」と語る。) だが、大学側には、こうした不安があっても国際卓越研究大学の認定を求める切実な「懐事情」がある。 国は運営費交付金など大学へ継続的に支給する補助金を減少させ、科研費や医療研究開発推進事業費補助金など、研究や事業内容で助成を出すか審査する「競争的資金」の比重を高めてきた。しかし科研費は新規採択率が約3割と低く、厳しい競争を勝ち抜く必要がある。 国立大学の場合、運営費交付金は光熱費や人件費といった研究教育の基本的な経費を賄う「基盤的経費」として大学の経営を支えている。 東京大学の収入(経常収益ベース)をみると、2004年度は1771億円で、そのうち運営費交付金は861億円と収入に占める割合は約50%だった。それが2021年度には、収入が2641億円で、運営費交付金は827億と同割合は約30%にまで低下している。 各大学は産学連携収入や基金の拡充、寄付金集めなど財源の多様化に注力することで、運営費交付金の減少分を補い、さらに規模の拡大を続けてきた。 それでも、海外の有名大学と比べると、アメリカのハーバード大学の収入は約7000億円で、大きな差がある。そもそも同大は7兆円超の独自基金の潤沢な運用益を教育・研究費に充てている。日本の大学が互角に戦うには、独自基金の確保や、さらなる外部資金の獲得などこれまで以上の努力が必要だ。こうした状況下では、国際卓越研究大学制度の支援金は大きな力水となる』、「東京大学の収入(経常収益ベース)をみると、2004年度は1771億円で、そのうち運営費交付金は861億円と収入に占める割合は約50%だった。それが2021年度には、収入が2641億円で、運営費交付金は827億と同割合は約30%にまで低下している。 各大学は産学連携収入や基金の拡充、寄付金集めなど財源の多様化に注力することで、運営費交付金の減少分を補い、さらに規模の拡大を続けてきた・・・日本の大学が互角に戦うには、独自基金の確保や、さらなる外部資金の獲得などこれまで以上の努力が必要だ。こうした状況下では、国際卓越研究大学制度の支援金は大きな力水となる」、なるほど。
・『「すれ違い」を乗り越えるには  資金だけではない。世界最高水準の研究大学に発展するには、改革への姿勢が問われる。「従来の大学改革の二の舞になるかは大学次第だ。国際卓越研究大学という制度を少しでもよい制度にし、本気で大学を成長させられるかは、大学自身の知恵と執念にかかっている」(ある候補校の職員)。 別の候補校のある幹部も「不安はあるものの、世界トップレベルの研究大学を実現するためには大学も大胆に変わる必要がある。数値目標ではない評価基準、例えば大学の知をどのように社会に還元したかなど定性的な評価のあり方の提案はじめ大学側からも政府に働きかけ、この制度をよりよいものにしたい」と語る。 よりよい制度にしたいという思いは文科省も同じだ。文科省の担当者は「対話を重ねながら、大学の改革を後押しする姿勢に変わりはない。大学が自律的に成長できるよう規制緩和なども行う計画だ。目先の研究成果を求めず、研究基盤を整備できるよう長い目で支援する」と熱を込める。 世界トップレベルの研究大学を実現し、衰退する研究力を引き上げられるか。政府と大学との腹を割った対話がその第一歩となる』、「世界トップレベルの研究大学を実現し、衰退する研究力を引き上げられるか。政府と大学との腹を割った対話がその第一歩となる」、「政府と大学との腹を割った対話」、出来ればよいが、本当に可能なのだろうか。
タグ:大学 (その12)(もはや衰退モード…日本の大学教育 学生の「能力」は高いのに「人材」を生かせないワケ…東工大学長が明かす、2024年「東工大」と「東京医科歯科大」が統合を決めた「ある深刻な事情」…日本の大学教育 凋落の3つの要因、国際卓越研究大で大学と文科省に吹く「隙間風」 数百億円規模の支援だけでは研究力向上は困難) 現代ビジネス 春川 正明氏による「もはや衰退モード…日本の大学教育、学生の「能力」は高いのに「人材」を生かせないワケ…東工大学長が明かす」 「“尖った”人材で、普通の人が思いもつかないような方法で何かを解決するというのもあるし、自分の居るフィールドで、トップに立ってやろうとか思っている人が多いような気がする。『俺たちは違うぜ』と言って」 その口調には、大学への熱い想いを感じる」、なるほど。 「益学長は、神戸市立工業高専を卒業し、東京工業大学工学部に編入して卒業し大学院を修了した。工学博士で専門は半導体、集積回路工学だ。高専出身者が国立大学の学長になるのはおそらく初めて」、「高専出身者」とはよほど優秀なのだろう。 「1946年4月から教養教育を始めたのです」 東工大では、宮城音弥(心理学者、社会評論家)や伊藤整(小説家、詩人、文芸評論家)、江藤淳(文芸評論家)、永井道雄(教育社会学)、吉田夏彦(哲学者)など各分野で時代を代表する錚々たる人達が教えていた」、しかし、「90年代に大学院重点化をするという時に教養部廃止など、日本全体で理系における教養教育がトーンダウンしたように思う。 東工大でも、実はその時にトーンダウンしている。それじゃあいかんというので、リベラルアーツ教育を再度強化し始めた」、なるほど。 「文科省の高等局に博士を持った人は殆ど居ないですからね。 博士を持たずに博士教育を語る文科省とか、経産省は技術開発とか色々やるじゃないですか。技術開発の方向を議論するのに、博士を持たずに政策を立てている国ですから、我が国は」、「文科省」や「経産省」が「博士を持たずに博士教育を語」ったり、「技術開発」をしているのは、確かに日本の「博士」軽視を示しているようだ。 「日本の社会がそもそも高度人材を本当に活用しようと思っていない、日本の悪いところです。今までの博士修了者は大学の先生になりたいとか、研究者だけになりたいとやっていたんだけど、これだけ科学技術が進んでいる中、特に理系では博士程度レベルの科学技術を理解した人が様々なところで活躍しないと世界の動きについていけないですよね。 それをなんか(博士を持った人を)変わった人だとしか思わない日本というのはおかしいと思うよ。だから“停滞した30年”があるとも言える」、同感である。 春川 正明氏による「2024年「東工大」と「東京医科歯科大」が統合を決めた「ある深刻な事情」…日本の大学教育、凋落の3つの要因」 「東工大が主に関係する製造業のGDP(国内総生産)は世界でも日本でも伸びてない。 世界でGDPが伸びているのは、ITやバイオなど新しい産業を作ってきたから。良いモノを作れば売れるといって、結果として製造業にしがみついて、新しい芽を育てられなかった」、「まだ製造業に抱きついてんだよ、みんなね。全然伸びていない産業に抱きついてどうするのだろうという話を真面目にし始めた。抱き着く先を変えないといけないよね、という」、 「そう考えていた時に、東京医科歯科大学の田中学長から統合の話が来た・・・『一法人一大学になるぐらいの気合が(相手に)あるんだったら、それぐらいのことやってもいい』と。それが東工大の将来のためにもなるし、日本のためにもなるんだったら、そういうオプションがあってもいいのかなと申し入れた」、なるほど。 「文部科学省に対しては、厳しい指摘をした。 「『大学を十把一絡げに扱わないで』ということ。『いろんなレベルがあって、いろんな多様な大学があったら、多様なやり方でコントロールしてください』と。 国立大学については、いろいろ文科省のプロジェクトがあって、様々な形で大学をサポートしようという気持ちはあるんだけど、何かと細かいことを指定してくるんだよね・・・箸の上げ下ろしまでコントロールするのは、それに時間を使っている方が無駄なんじゃないのという気はします」、確かに「箸の上げ下ろしまでコントロールするのは、行き過 ぎだ。 「夢を与え続けるというか、夢を生み出し続けるというか、そういう大学」、「僕ら自身が変わり続けようという『志』を持っていれば、何とかなるかな」、なるほど。 東洋経済オンライン「国際卓越研究大で大学と文科省に吹く「隙間風」 数百億円規模の支援だけでは研究力向上は困難」 「4月に審査が始まり、各校の提出した計画書をもとに文科省が設置したアドバイザリーボードが審査を行う。秋頃には認定校が決定し、2024年度から支援が開始される予定だ」、なるほど。 「10兆円ファンドは年間3000億円の運用益を捻出する目標で、卓越大に選ばれた5校前後に運用益を分配する計画だ。1校あたり最大約600億円を受け取れる計算になる。候補校の年間収入は下表の通りで、東京大学の2641億円から東京理科大学の372億円までばらつきはあるものの、その平均は約1400億円。そこに「最大600億円」の支援金が加わるインパクトは大きい。 ただ、認定のハードルは高い。(被引用数が)トップ10%の論文数が直近5年間の総計で1000本程度、かつ大学の総論文数のうちトップ10%論文が占める割合が10%程度以上あるかなど厳しい要件が定められている。トップ10%論文数、その割合ともにこの基準に達する大学は一握りだ」、「大学教員が職務時間のうち研究にあてる時間は2002年度に46.5%だったが、2018年度には32.9%にまで低下している。 また大学改革に伴って、「会議などの事務時間が増加した」(ある大学関係者)ことも研究時間減少の要因のひとつだ。 候 補校の複数の幹部らは、「国際卓越研究大学に認定されると事務負担がさらに増えるのではないか」と懸念をもらす」、なるほど。 「東京大学の収入(経常収益ベース)をみると、2004年度は1771億円で、そのうち運営費交付金は861億円と収入に占める割合は約50%だった。それが2021年度には、収入が2641億円で、運営費交付金は827億と同割合は約30%にまで低下している。 各大学は産学連携収入や基金の拡充、寄付金集めなど財源の多様化に注力することで、運営費交付金の減少分を補い、さらに規模の拡大を続けてきた・・・日本の大学が互角に戦うには、独自基金の確保や、さらなる外部資金の獲得などこれまで以上の努力が必要だ。こうした状況下では、 国際卓越研究大学制度の支援金は大きな力水となる」、なるほど。 「世界トップレベルの研究大学を実現し、衰退する研究力を引き上げられるか。政府と大学との腹を割った対話がその第一歩となる」、「政府と大学との腹を割った対話」、出来ればよいが、本当に可能なのだろうか。
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キシダノミクス(その7)(岸田首相も公邸ドンチャン忘年会に参加! 寝間着姿ニンマリ写真流出で官邸は“犯人探し”、支持率急落、岸田首相「解散ニヤリ顔」に広がる不信 「解散権をもてあそんでいる」と高まる批判、岸田首相は解散権もてあそび財源問題すべて先送り…棚上げされた国民負担増は総額50兆円!、岸田首相が解散めぐり「思わせぶり発言」した裏側 「任期完投」を優先なら総裁選前の"勝負"見送りも) [国内政治]

キシダノミクスについては、本年3月9日に取上げた。今日は、(その7)(岸田首相も公邸ドンチャン忘年会に参加! 寝間着姿ニンマリ写真流出で官邸は“犯人探し”、支持率急落、岸田首相「解散ニヤリ顔」に広がる不信 「解散権をもてあそんでいる」と高まる批判、岸田首相は解散権もてあそび財源問題すべて先送り…棚上げされた国民負担増は総額50兆円!、岸田首相が解散めぐり「思わせぶり発言」した裏側 「任期完投」を優先なら総裁選前の"勝負"見送りも)である。

先ずは、本年6月2日付け日刊ゲンダイ「岸田首相も公邸ドンチャン忘年会に参加! 寝間着姿ニンマリ写真流出で官邸は“犯人探し”」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/323919
・『首相公邸で親戚とドンチャン騒ぎをしていた岸田首相の長男・翔太郎氏が、1日付で首相秘書官を辞職。血税で維持管理する公邸で大ハシャギする「公私混同」が批判を招いているが、親父もやらかしていた。 6月2日発売の「フライデー」が〈岸田文雄首相 首相公邸「親族大忘年会」に寝間着&裸足で参加〉と報じている。 誌面には、寝間着姿で笑みを浮かべる岸田首相や裕子夫人、翔太郎氏の他、十数人の親族が並ぶ写真がデカデカと掲載されている。「公私混同」の忘年会に岸田本人も“参加”していたということだ。 岸田首相は翔太郎氏を更迭した理由について「公的立場にある政務秘書官として不適切であり、ケジメをつける」と言っていたが、こうなると、自らもケジメをつける必要があるのではないか。 「忘年会について国会で追及された総理は『私も私的な居住スペースにおける食事の場に顔を出した』と認めたうえで、食事を共にすることについては『特段問題ない』と答弁していた。一方、翔太郎さんらが公邸の西階段といった『公的スペース』で“組閣ごっこ”をやっていたことに関しては『不適切だった』としている。総理としては『自分は私的スペースで食事しただけだから問題ない』と言いたいようです。恐らく、自身に責任が及ばないように、『私的スペース』と『公的スペース』という理屈づけにすることにしたのでしょう」(官邸事情通) しかし、公邸は年間1億6000万円もの税金で維持管理されている施設である。「私的スペース」も「公的スペース」もないだろう。丸ごと「公的スペース」なのではないか。ドンチャン騒ぎする場にふさわしくないのは明らかだ』、「私も私的な居住スペースにおける食事の場に顔を出した』と認めたうえで、食事を共にすることについては『特段問題ない』と答弁していた。一方、翔太郎さんらが公邸の西階段といった『公的スペース』で“組閣ごっこ”をやっていたことに関しては『不適切だった』としている」、「公邸は年間1億6000万円もの税金で維持管理されている施設である。「私的スペース」も「公的スペース」もないだろう。丸ごと「公的スペース」なのではないか。ドンチャン騒ぎする場にふさわしくないのは明らかだ」、その通りだ。
・『また「別のブツ」が出てくる  ジャーナリストの鈴木哲夫氏はこう言う。 「総理大臣は、国民の生命、財産を守るため、常に有事に備えるべき立場にあります。公邸が首相官邸の近くにあるのは、有事の際、すぐさま移動し、危機対応の指揮を執るためです。危機管理の中枢なのであって、『ただの家』ではありません。本来、岸田首相は身内のドンチャン騒ぎをいさめる立場にいるはず。“スルー”していたのだとしたら、危機管理意識があまりにも低いと言わざるを得ません」 次々に“内輪”の写真が流出していることに、岸田首相周辺は疑心暗鬼になっているという。 「『どこから写真が漏れたんだ』と、官邸は疑心暗鬼になり、“犯人捜し”を始めているようです。でも、流出経路の特定は困難でしょう。忘年会に参加した親族がマスコミに写真を渡したのか、それとも、親族が友人などに渡したものが流出したのか。いずれにせよ、流出先が複数にわたっている恐れがある。また別の写真が出てくる可能性も否定できません」(前出の官邸事情通) また内閣支持率が下がってもおかしくない。野党は徹底追及すべきだ』、「総理大臣は、国民の生命、財産を守るため、常に有事に備えるべき立場にあります。公邸が首相官邸の近くにあるのは、有事の際、すぐさま移動し、危機対応の指揮を執るためです。危機管理の中枢なのであって、『ただの家』ではありません。本来、岸田首相は身内のドンチャン騒ぎをいさめる立場にいるはず。“スルー”していたのだとしたら、危機管理意識があまりにも低いと言わざるを得ません」、同感である。

次に、6月20日付け東洋経済オンラインが掲載した政治ジャーナリストの星 浩氏による「支持率急落、岸田首相「解散ニヤリ顔」に広がる不信 「解散権をもてあそんでいる」と高まる批判」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/680525
・『永田町に吹き荒れた解散風は、大詰めになって岸田文雄首相が「今国会での解散は考えていない」と発言し、一気にやんだ。 この間、自民党からは早期解散に期待する声が相次ぎ、メディアも大きく伝えた。風を止めなかった岸田首相には「解散権をもてあそんでいる」との批判が高まり、世論調査の内閣支持率は急落。解散の空回りで政権は一転、深刻な危機に直面している』、「内閣支持率は急落」の要因は、「解散権をもてあそんでいる」との批判だけでなく、マイナカード問題での不手際も大きいのだろう。
・『長男の秘書官更迭、公明党との対立  5月のG7広島サミット(主要7カ国首脳会議)は、ウクライナのゼレンスキー大統領が出席するなど岸田首相は外交成果を上げた。内閣支持率も上昇し、岸田氏にとって、6月21日までの通常国会中の衆院解散・総選挙に向けたチャンス到来と見えた。 しかし、その勢いは長続きしなかった。首席秘書官を務める長男・翔太郎氏が首相公邸で悪ふざけをしていた写真が週刊誌に暴露され、岸田首相は首席秘書官更迭を余儀なくされた。 追い打ちをかけるように、衆院の選挙区をめぐる公明党との公認調整がこじれる。定数是正に伴い東京で新設される選挙区で、公明党が公認候補の擁立をめざしたのに対して自民党が拒否。 公明党は態度を硬化させ、東京都では自民党の衆院選候補を推薦しない方針を打ち出した。公明党とその支持母体の創価学会の支援が得られなければ、自民党の苦戦は必至。自民党内に動揺が広がった。) 一方で、公明党が公認調整で抵抗した本音には「早期解散阻止」の狙いもあった。公明党・創価学会は4月の統一地方選で選挙運動を全国で展開。巨大組織の創価学会の態勢を衆院選モードに切り替えるには時間がかかるため、6~7月の解散・総選挙は好ましくないのだ。 安倍晋三政権では、当時の菅義偉官房長官が創価学会の佐藤浩副会長らと連携。解散の時期などについても創価学会側の意向を尊重してきた。岸田政権では松野博一官房長官や茂木敏充自民党幹事長が創価学会とのパイプ役を担うことはなく、解散時期をめぐる意思疎通も進んでいないという。 マイナンバーをめぐる混乱も加わった。健康保険証との統合や金融機関の口座のひもづけで、他人の保険証や口座につながるなどのトラブルが相次ぎ、利用者の不安が広がった。政府は今秋までに総点検を進めることを約束せざるをえない事態となった。 広島サミットの勢いで早期解散の可能性を探っていた岸田首相も、6月初旬には解散見送りに傾いていた』、「公明党との公認調整がこじれる。定数是正に伴い東京で新設される選挙区で、公明党が公認候補の擁立をめざしたのに対して自民党が拒否。 公明党は態度を硬化させ、東京都では自民党の衆院選候補を推薦しない方針を打ち出した」、「岸田政権では松野博一官房長官や茂木敏充自民党幹事長が創価学会とのパイプ役を担うことはなく、解散時期をめぐる意思疎通も進んでいないという」、「岸田首相も、6月初旬には解散見送りに傾いていた」、なるほど。
・『「解散近し」次々と伝えられた自民党議員の発言  だが、多くの自民党衆院議員の心理は違った。 野党の立憲民主党は支持率も低迷し、候補擁立も遅れている。日本維新の会は統一地方選では勢力を増やしたものの、衆院の準備はほとんどできていない。「今がチャンス」「解散近し」といった自民党議員の発言が次々とテレビなどで伝えられた。 メディアは解散をめぐる政治家の発言を垂れ流した。本来、衆院の解散は、憲法によって内閣不信任案が可決された場合、内閣は総辞職か解散を選択することが規定されていて、そこで解散を選ぶ場合に行われる。 憲法の「天皇の国事行為」としての衆院解散を行う場合は、与野党が政策をめぐって決定的に対立した場合や政権が重要な政策変更を行う場合に限定されている。首相が「勝てそうだから」という理由で恣意的に解散できるというわけではない。そうした解散をめぐる原則論は考慮されず、「解散はいつか」というニュースばかりが流された。 メディアが解散に前のめりになるのは理由がある。例えば、テレビにとって解散・総選挙は大ニュースである。解散となれば特別番組を編成し、公示日や投票日には特別番組を組まなくてはならない。選挙取材には多くの記者やディレクターを投入する。スポンサーとの関係もある。そのため、解散の時期には敏感になる。 政治担当の記者や管理職たちは、早期解散の可能性もありうると「保険をかける」傾向が出てくる。その結果、解散発言が次々と流され、それがさらに解散風を強めるという循環を生む。 解散風の広がりを岸田首相はどう見ていたか。解散近しとなれば、野党側は防衛費の財源確保法案などの対決法案でも、審議拒否といった徹底抗戦はやりにくくなる。そのため、法案審議は進み、会期中に可決、成立する見通しとなった。 衆院選に向けた自民党の公認調整も、解散をにらんで順調に行われた。岸田首相はそもそも、衆院議員の任期(4年)のうち1年8カ月しか経っていないことから、世論は早期解散に批判的だと受け止めていた。 加えて、公明党との摩擦などで解散に踏み切るのは難しいと考えていた岸田首相だが、解散風が強まるのは好都合だと判断し、あえて止めることはなかった』、「解散近しとなれば、野党側は防衛費の財源確保法案などの対決法案でも、審議拒否といった徹底抗戦はやりにくくなる。そのため、法案審議は進み、会期中に可決、成立する見通しとなった。 衆院選に向けた自民党の公認調整も、解散をにらんで順調に行われた」、「解散風」にも大きな効用があるようだ。
・『ニヤリ顔が「解散に前向き」と受け止められた  そして6月13日。少子化対策を説明するために開かれた記者会見で、岸田首相は衆院の解散について問われ、内外の政策を遂行すると述べる一方で、解散は「諸般の情勢を見極めて判断する」と答えた。それまでは「今は解散を考えていない」と述べていたのに対して含みを持たせたと報じられ、解散風はいっそう強まる結果となった。 さらに、解散に言及した際に岸田氏が一瞬、ニヤリとしたことが、「解散に前向き」と受け止められた。 しかし、この「ニヤリ顔」には反発が強かった。野党が「解散権をもてあそんでいる」(泉健太立憲民主党代表)と批判。自民党内にも反発の声が出た。予想外の反応に戸惑った岸田首相は15日、記者団の前で「今国会での解散は考えていない」と表明。首相がこうした形で解散断念を明確にするのは極めて異例である。自民党のベテラン議員はこう振り返る。 「岸田さんはもっと早い段階で、この国会では解散は考えずに、政策遂行に邁進するという覚悟を決めるべきだった。首相本人が表明しなくとも、官房長官ら側近が関係者に伝えて、政局を落ち着かせる必要があったが、そうしなかった。解散をもてあそんだといわれてもしょうがない」) 空回りに終わった解散騒動がもたらしたのは、世論調査の内閣支持率急落だった。毎日新聞の調査(6月17、18日)では内閣支持率が前月の45%から33%に急落。不支持は46%から58%に急増した。同時期の朝日新聞の調査でも、支持率は42%で、前月の46%から低下。不支持は42%から46%に増え、支持を上回った。 支持率の急落は、自民党に衝撃を与えている。「マイナンバーカードをめぐるトラブルが影響している」という見方に加えて、「解散権をもてあそんだツケだ」という反応も出ている。 岸田氏は、安倍元首相や菅前首相のような「強権体質」とは違う「聞く力」をアピールしてきた。解散権をテコにして政局ににらみを利かすという手法とは無縁ともみられてきた。 それだけに、解散をめぐる発言での「ニヤリ顔」は岸田氏のイメージを崩し、不信感を募らせていることは確かだ。自民党内からは「支持率が3割台では解散・総選挙は難しい」という意見が出始めた』、「岸田氏は、安倍元首相や菅前首相のような「強権体質」とは違う「聞く力」をアピールしてきた。解散権をテコにして政局ににらみを利かすという手法とは無縁ともみられてきた。 それだけに、解散をめぐる発言での「ニヤリ顔」は岸田氏のイメージを崩し、不信感を募らせていることは確かだ」、一瞬の「ニヤリ顔」も大きな影響力を持つようだ。
・『有権者の不信を増幅する可能性も  岸田首相は今国会での解散を見送ったのを受けて、夏には自民党役員人事・内閣改造を断行、秋の臨時国会で景気対策のための大型補正予算を成立させたうえで衆院の解散・総選挙のタイミングをうかがう。 その段階では、防衛費増額に必要な財源の内容も固まり、3兆円半ばとしている少子化対策の財源の柱も明示したい方針だ。年内の解散・総選挙を勝ち抜き、来年9月の自民党総裁選で再選を果たし、長期政権につなげるというのが基本戦略だ。 しかし、今回の解散見送りの中で見えた岸田氏の「資質」は、有権者の不信を増幅する可能性がある。解散という大権を政局運営のテコとして使おうとした岸田氏だが、国民の信頼あってこその大権であるという「重み」をかみしめるべきだ』、「夏には自民党役員人事・内閣改造を断行、秋の臨時国会で景気対策のための大型補正予算を成立させたうえで衆院の解散・総選挙のタイミングをうかがう。 その段階では、防衛費増額に必要な財源の内容も固まり、3兆円半ばとしている少子化対策の財源の柱も明示したい方針だ。年内の解散・総選挙を勝ち抜き、来年9月の自民党総裁選で再選を果たし、長期政権につなげるというのが基本戦略だ」、「今回の解散見送りの中で見えた岸田氏の「資質」は、有権者の不信を増幅する可能性がある。解散という大権を政局運営のテコとして使おうとした岸田氏だが、国民の信頼あってこその大権であるという「重み」をかみしめるべきだ」、同感である。

第三に、6月20日付け日刊ゲンダイ「岸田首相は解散権もてあそび財源問題すべて先送り…棚上げされた国民負担増は総額50兆円!」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/324788
・『解散権をもてあそび、「『首相だけの特権』を、目いっぱい使わせてもらった」と高揚感に浸っているという岸田首相。「解散詐欺」にかまけて、防衛費増額も少子化対策も財源問題はすべて先送り。「負担増がバレたら選挙に勝てない」と言わんばかりで、棚上げ続出の国民負担は実に50兆円規模に達しそうだ。 今年度から5年間の防衛費を計43兆円に増やすため、必要な14.6兆円の追加財源のうち先日成立した財源確保法で賄えるのは1.5兆円。他にも国有財産の売却などで計4.6兆円を確保したとはいえ、残り10兆円の財源は不透明なままだ。 財源捻出の歳出改革の中身も曖昧で、足りない分は増税で補うが、その開始時期を岸田政権は先送り。16日閣議決定の「骨太の方針」では「2025年以降のしかるべき時期」とし、昨年末の税制改正大綱から、さらに1年の後ろ倒しを示唆』、「棚上げ続出の国民負担は実に50兆円規模に達しそうだ」、「財源捻出の歳出改革の中身も曖昧で、足りない分は増税で補うが、その開始時期を岸田政権は先送り」、「16日閣議決定の「骨太の方針」では「2025年以降のしかるべき時期」とし、昨年末の税制改正大綱から、さらに1年の後ろ倒しを示唆」、こんな無責任な財源先送りを続けて、「棚上げ続出の国民負担は実に50兆円規模」、一体どうするつもりなのだろう。無責任にもほどがある。
・『防衛、少子化対策、脱炭素で「歳出拡大3兄弟」  岸田首相肝いりの「次元の異なる少子化対策」の財源も「年末までに結論を得る」と後回し。来年度から3年間の「加速化プラン」だけで年3.5兆円、総額10.5兆円を投じるのに、岸田首相は「実質追加負担ゼロ」と無責任な目標を掲げるのみ。 こちらも歳出削減で賄う方針だが、防衛費増額の不確定分と合わせて約20兆円の捻出などムリな相談だ。そのクセ、「30年代初頭に子ども関連予算の倍増」を掲げ、こども家庭庁の今年度予算4.8兆円を2倍にする大盤振る舞い。どう考えても負担増は必至だ。 「まず予算規模ありきで、財源確保は先送り。岸田首相にすれば解散カード維持の猶予期間を得たいのでしょう。ただ、防衛も子育て支援も恒常的な政策で合わせて年10兆円規模の歳出拡大には早晩、安定財源が必要となる。国民も負担増に感づいているから内閣支持率は下落するのです」(立正大法制研究所特別研究員・浦野広明氏=税法) 子ども予算倍増を目指す30年代初頭までに、防衛費も含めてザッと30兆円以上の負担増となりかねない。消費税率を25%まで引き上げて、ようやく賄える規模だ。 加えて2050年までに二酸化炭素の実質排出量ゼロを目指すため、岸田政権は今年度から10年間で20兆円規模の「GX(脱炭素)投資」の拠出を決定。当面の財源は、つなぎ国債で確保するが、その償還は二酸化炭素の排出量に応じ、28年度から石油元売り会社などに、33年度から電力会社に支払わせる計画である。 「ガソリン代や電気料金の値上げに直結し、累積20兆円の家計負担増に等しい」(浦野広明氏) 締めて総額50兆円の「歳出拡大3兄弟」。それに伴う負担増を、いつまで岸田首相は宙に浮かせるつもりなのか』、「解散」が迫っているならまだしも、そうでなくなったのなら、財源も示すべきだ。野党も徹底的に岸田政権の無責任ぶりを追及すべきだ。

第四に、6月22日付け東洋経済オンラインが掲載した政治ジャーナリストの泉 宏氏による「岸田首相が解散めぐり「思わせぶり発言」した裏側 「任期完投」を優先なら総裁選前の"勝負"見送りも」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/681188
・『最後まで解散風が吹き荒れ、与野党が神経戦を展開した通常国会が、6月21日、何事もなかったように、当初会期どおり閉幕した。与野党が対立した防衛財源法を始め、重要法はほぼすべて成立、政府与党幹部は「終わりよければすべてよし」と口を揃えた。 国会閉幕を受けて21日夕記者会見した、岸田文雄首相も「経済対策も含めて過去10年にない成果を出せた」と鼻高々だった。ただ、最終局面での「伝家の宝刀を抜くとみせて敵も味方も欺いたうえでの肩透かし」(自民長老)に、与野党双方から「やりすぎ」との批判、反発が噴出し、内閣支持率の再下落も重なって、「いい人の仮面がはがれ、解散カードも失った」(同)との厳しい見方も広がる。 岸田首相は「解散権の次は人事権」とばかりに、秋口までの党・内閣人事で岸田1強による政局運営の主導権を確立する構えで、すでに与党内では「さまざまな人事構想」が飛び交っている。しかし、こうした岸田流手法が、自民党内の反岸田勢力の台頭を後押ししかねず、次の節目となる政局秋の陣は、岸田首相の思惑どおりの展開とはなりそうもない』、「岸田首相は「解散権の次は人事権」とばかりに、秋口までの党・内閣人事で岸田1強による政局運営の主導権を確立する構えで、すでに与党内では「さまざまな人事構想」が飛び交っている。しかし、こうした岸田流手法が、自民党内の反岸田勢力の台頭を後押ししかねず、次の節目となる政局秋の陣は、岸田首相の思惑どおりの展開とはなりそうもない」、その通りだ。
・『与野党双方が岸田首相の顔色をうかがう状況  そうした状況下、官邸や岸田派の側近からは「党・内閣人事の後、首相は当分、内政・外交の重要課題への対応に専念し、状況次第では党総裁選前の解散も見送る考え」(岸田派幹部)との声も漏れてくる。さらには「首相の本音は任期3年の完投で、その時点での勇退も心に秘めている」(最側近)との見方すら出始めている。 その一方で、岸田首相は秋以降の政権浮揚の材料として、国民的批判が拡大する一方のマイナンバーカードと健康保険証一体化について、「全国での集中調査の結果が出る9月下旬に『先送り』を決断する」(同)との声も出る。 いずれにしても、来秋の自民総裁選までの政局運営については「すべては岸田首相の腹一つ」(同)で、与野党双方の実力者・幹部たちが岸田首相の顔色をうかがう状況が続くことは間違いない。) 今回の「解散先送り」までの経過を振り返ると、通常国会会期末まで1週間となった6月15日夜、「伝家の宝刀」の柄に手をかけて凄んでいた岸田首相が、「今国会の衆院解散は考えていない」と次期臨時国会以降への解散先送りを宣言。その瞬間、吹き荒れていた解散風が止まった。 その週末の17日からの天皇皇后両陛下のインドネシア訪問も意識して、16日夕の内閣不信任決議案提出を決めていた立憲民主党では、「首相の肩透かし」に憤慨しながらも、本音では「解散誘発」に怯えていただけに、安堵感が漂った。 その一方で、自民党内では「絶好のチャンスなのに」との恨み節と、「よくぞやめた」と評価する声が複雑に交錯するなど、「政局的には“強か岸田流”」(自民長老)ともみえる決断が、政界全体にどよめきを広げた。 その際、解散をめぐり、思わせぶりな発言を続けてきた岸田首相が、土壇場で変身した理由については、①マイナカードへの国民不信②子育て政策の財源問題先送り③首相長男の「公邸忘年会」での秘書官更迭④選挙区調整での自公対立――などの負の要因拡大で「議席減が確実になったから」(自民選対)との見方が支配的だった。 「解散は勝てる時に」と繰り返してきた岸田首相にとって「前提が崩れた」という分析で、中央各紙も16日付け朝刊で、「解散風、首相あとずさり」(朝日)「与党安堵『今は票逃げる』」(産経)などの見出しで論評、NHKや民放各局も担当記者らが同趣旨の解説を展開した』、「岸田首相が、土壇場で変身した理由については。①マイナカードへの国民不信②子育て政策の財源問題先送り③首相長男の「公邸忘年会」での秘書官更迭④選挙区調整での自公対立――などの負の要因拡大で「議席減が確実になったから」(自民選対)との見方が支配的だった」、なるほど
・『先送り宣言後の含み笑いに「首相の本音」  ところが、官邸周辺からは「もともと岸田首相に解散する気はなく、政局の主導権確保のため、わざと解散風を煽ってきた」との声も漏れてきた。相談相手の最側近も、解散風の風速を倍加させた13日の記者会見での「会期末の状況を見極めて判断する」との発言の際の岸田首相の含み笑いに「首相の本音がにじんだ」と苦笑していた。 今回と同様に今年度予算成立直後の3月末に解散説が飛び交った際も、首相は周辺に「今やったら多少議席が増えるかもしれないが、政治的には無意味、早期解散など考える必要はない」と語ったとされる。) それも踏まえて最側近は、「首相が表舞台で早期解散を否定すれば、その時点で求心力を失うので、解散への意欲をにじませ続けるしかなかった」(最側近)と説明。岸田首相自身も事態が決着した16日夜、「事前の戦略どおりに進んだ」と笑みを浮かべたとされる。 岸田政権は現時点で、発足からまだ1年8カ月余。岸田首相は主要閣僚の相次ぐ辞任などで政権危機に陥った昨年末でも、「やるべき課題に挑み、きちんと成果を出すことが最優先」と繰り返してきた。最側近は「そのために、解散はできるだけ遅らせたいとの考えも揺るがず、初心を貫いただけで、いたずらに解散権をもてあそんだわけではない」と強調した。 今回の解散先送りを受け、当面の政局運営は党・内閣人事断行の時期と内容が焦点となる。与党内ではすでに「政局秋の陣をにらんで、首相は自前の布陣をつくるため、大幅人事を目論んでいる」との憶測が広がる。「首相の大権である解散権と人事権を操って岸田1強を強める狙い」とみる向きが多いが、「やりすぎは禁物」(自民幹部)との声も出る。 今回の岸田首相のやり口について自民党内では「周りをもてあそびすぎた。次も同じことをやれば、自民内の反岸田の動きを加速させるだけ」との声が多い。野党幹部も「また首相が解散権を振り回せば、国民の信頼を失うだけ」と指摘する』、「「首相が表舞台で早期解散を否定すれば、その時点で求心力を失うので、解散への意欲をにじませ続けるしかなかった」(最側近)と説明。岸田首相自身も事態が決着した16日夜、「事前の戦略どおりに進んだ」と笑みを浮かべたとされる」、「今回の岸田首相のやり口について自民党内では「周りをもてあそびすぎた。次も同じことをやれば、自民内の反岸田の動きを加速させるだけ」との声が多い」、そうだろう。
・『「マイナカード」「公邸忘年会」などで支持率再下落  そうした中、解散先送りに合わせて主要メディアなどが順次実施した世論調査で、内閣支持率はそろって下落。支持と不支持が再逆転する結果も相次いだ。なかでも、毎日新聞が17、18の両日実施した全国世論調査では、内閣支持率は33%と5月20、21日実施の前回調査(45%)から12ポイント下落、不支持率は前回調査(46%)から12ポイント増の58%となった。 同社の担当者は「首相の長男で首相秘書官だった翔太郎氏が首相公邸で忘年会を開いていた問題や、マイナンバーカードをめぐるトラブルが多発したことなどが影響したとみられる」と分析した。その一方で、今国会での解散見送りについては、「評価する」が40%で、「評価しない」36%を上回り、「自己都合解散への国民の嫌悪感」(関係者)が浮き彫りになった。) その一方で、自民党内で今回の解散先送りの最大の要因とされていたのが、解散ムードが頂点に達しつつあった6月第2週週末に自民党が実施した選挙区情勢調査の議席予測の結果だ。 それによると自民党は42減の220議席、公明党は9減の23議席で与党51議席減の大敗。逆に立憲民主は17増の114議席、日本維新の会は34増の75議席だった。与党過半数割れではないので野党の政権奪取はありえないが、「岸田首相が退陣を迫られる状況になる」(自民選対)ことは避けられない。 もちろん、この議席予測の前提に自公対立による影響が加味されているかなど不透明な要素は残るが、他の選挙調査機関での情勢分析でも同じ傾向が出たことは事実だ。だからこそ、「負ける勝負はしない」という岸田首相にとって、「当分、解散という選択肢はなくなる」のは当然ともみえる』、「自民党内で今回の解散先送りの最大の要因とされていたのが、解散ムードが頂点に達しつつあった6月第2週週末に自民党が実施した選挙区情勢調査の議席予測の結果だ。 それによると自民党は42減の220議席、公明党は9減の23議席で与党51議席減の大敗。逆に立憲民主は17増の114議席、日本維新の会は34増の75議席だった。与党過半数割れではないので野党の政権奪取はありえないが、「岸田首相が退陣を迫られる状況になる」(自民選対)ことは避けられない」、こんな「議席予測」があったのであれば、「解散」見送りは当然だ。
・『「自公維国」の大連立模索の動きも  ただ、自民が最も警戒する維新は、結果的に野党第1党には届かず、立憲民主との対立による「野党の足の引っ張り合い」が続くことも確実。これを踏まえ、自民執行部の中には「自公に維新と国民民主を加えた大連立」を秘かに探る動きもある。 岸田首相は6月21日夕の会見で、「先送りできない困難な課題に一つ一つ答えを出していく。これに尽きる」と繰り返し、政界が注目する衆院解散のタイミングについても「その基本姿勢に照らして判断する」と踏み込んだ言及を避けた。併せて、当面の焦点となる党役員・内閣改造人事の時期、内容についても「今、具体的なものを考えているわけではない」とかわした。 その一方で、ロシアとウクライナ侵攻終結のための和平工作については「ウクライナの人々の意思を抜きに決めるべきではない」と述べるにとどめたが、「戦争」の長期化、泥沼化にG7各国の足並みの乱れも目立ち始めている。 これに伴い日本の進路も重大な分岐点を迎えるのは避けられず、岸田首相も来年9月の任期切れまでに解散権を行使できる状況にはならないことを前提に、2年後の夏の参院選前の解散による衆参同日選挙までも視野に入れての政権運営を余儀なくされそうだ』、「岸田首相も来年9月の任期切れまでに解散権を行使できる状況にはならないことを前提に、2年後の夏の参院選前の解散による衆参同日選挙までも視野に入れての政権運営を余儀なくされそうだ」、勝負の時はずいぶん先に延びたようだ。
タグ:キシダノミクス (その7)(岸田首相も公邸ドンチャン忘年会に参加! 寝間着姿ニンマリ写真流出で官邸は“犯人探し”、支持率急落、岸田首相「解散ニヤリ顔」に広がる不信 「解散権をもてあそんでいる」と高まる批判、岸田首相は解散権もてあそび財源問題すべて先送り…棚上げされた国民負担増は総額50兆円!、岸田首相が解散めぐり「思わせぶり発言」した裏側 「任期完投」を優先なら総裁選前の"勝負"見送りも) 日刊ゲンダイ「岸田首相も公邸ドンチャン忘年会に参加! 寝間着姿ニンマリ写真流出で官邸は“犯人探し”」 「私も私的な居住スペースにおける食事の場に顔を出した』と認めたうえで、食事を共にすることについては『特段問題ない』と答弁していた。一方、翔太郎さんらが公邸の西階段といった『公的スペース』で“組閣ごっこ”をやっていたことに関しては『不適切だった』としている」、「公邸は年間1億6000万円もの税金で維持管理されている施設である。「私的スペース」も「公的スペース」もないだろう。丸ごと「公的スペース」なのではないか。ドンチャン騒ぎする場にふさわしくないのは明らかだ」、その通りだ。 「総理大臣は、国民の生命、財産を守るため、常に有事に備えるべき立場にあります。公邸が首相官邸の近くにあるのは、有事の際、すぐさま移動し、危機対応の指揮を執るためです。危機管理の中枢なのであって、『ただの家』ではありません。本来、岸田首相は身内のドンチャン騒ぎをいさめる立場にいるはず。“スルー”していたのだとしたら、危機管理意識があまりにも低いと言わざるを得ません」、同感である。 東洋経済オンライン 星 浩氏による「支持率急落、岸田首相「解散ニヤリ顔」に広がる不信 「解散権をもてあそんでいる」と高まる批判」 「内閣支持率は急落」の要因は、「解散権をもてあそんでいる」との批判だけでなく、マイナカード問題での不手際も大きいのだろう。 「公明党との公認調整がこじれる。定数是正に伴い東京で新設される選挙区で、公明党が公認候補の擁立をめざしたのに対して自民党が拒否。 公明党は態度を硬化させ、東京都では自民党の衆院選候補を推薦しない方針を打ち出した」、「岸田政権では松野博一官房長官や茂木敏充自民党幹事長が創価学会とのパイプ役を担うことはなく、解散時期をめぐる意思疎通も進んでいないという」、「岸田首相も、6月初旬には解散見送りに傾いていた」、なるほど。 「解散近しとなれば、野党側は防衛費の財源確保法案などの対決法案でも、審議拒否といった徹底抗戦はやりにくくなる。そのため、法案審議は進み、会期中に可決、成立する見通しとなった。 衆院選に向けた自民党の公認調整も、解散をにらんで順調に行われた」、「解散風」にも大きな効用があるようだ。 「岸田氏は、安倍元首相や菅前首相のような「強権体質」とは違う「聞く力」をアピールしてきた。解散権をテコにして政局ににらみを利かすという手法とは無縁ともみられてきた。 それだけに、解散をめぐる発言での「ニヤリ顔」は岸田氏のイメージを崩し、不信感を募らせていることは確かだ」、一瞬の「ニヤリ顔」も大きな影響力を持つようだ。 「夏には自民党役員人事・内閣改造を断行、秋の臨時国会で景気対策のための大型補正予算を成立させたうえで衆院の解散・総選挙のタイミングをうかがう。 その段階では、防衛費増額に必要な財源の内容も固まり、3兆円半ばとしている少子化対策の財源の柱も明示したい方針だ。年内の解散・総選挙を勝ち抜き、来年9月の自民党総裁選で再選を果たし、長期政権につなげるというのが基本戦略だ」、 「今回の解散見送りの中で見えた岸田氏の「資質」は、有権者の不信を増幅する可能性がある。解散という大権を政局運営のテコとして使おうとした岸田氏だが、国民の信頼あってこその大権であるという「重み」をかみしめるべきだ」、同感である。 日刊ゲンダイ「岸田首相は解散権もてあそび財源問題すべて先送り…棚上げされた国民負担増は総額50兆円!」 泉 宏氏による「岸田首相が解散めぐり「思わせぶり発言」した裏側 「任期完投」を優先なら総裁選前の"勝負"見送りも」 「岸田首相は「解散権の次は人事権」とばかりに、秋口までの党・内閣人事で岸田1強による政局運営の主導権を確立する構えで、すでに与党内では「さまざまな人事構想」が飛び交っている。しかし、こうした岸田流手法が、自民党内の反岸田勢力の台頭を後押ししかねず、次の節目となる政局秋の陣は、岸田首相の思惑どおりの展開とはなりそうもない」、その通りだ。 「岸田首相が、土壇場で変身した理由については。①マイナカードへの国民不信②子育て政策の財源問題先送り③首相長男の「公邸忘年会」での秘書官更迭④選挙区調整での自公対立――などの負の要因拡大で「議席減が確実になったから」(自民選対)との見方が支配的だった」、なるほど 「「首相が表舞台で早期解散を否定すれば、その時点で求心力を失うので、解散への意欲をにじませ続けるしかなかった」(最側近)と説明。岸田首相自身も事態が決着した16日夜、「事前の戦略どおりに進んだ」と笑みを浮かべたとされる」、「今回の岸田首相のやり口について自民党内では「周りをもてあそびすぎた。次も同じことをやれば、自民内の反岸田の動きを加速させるだけ」との声が多い」、そうだろう。 「自民党内で今回の解散先送りの最大の要因とされていたのが、解散ムードが頂点に達しつつあった6月第2週週末に自民党が実施した選挙区情勢調査の議席予測の結果だ。 それによると自民党は42減の220議席、公明党は9減の23議席で与党51議席減の大敗。逆に立憲民主は17増の114議席、日本維新の会は34増の75議席だった。与党過半数割れではないので野党の政権奪取はありえないが、「岸田首相が退陣を迫られる状況になる」(自民選対)ことは避けられない」、こんな「議席予測」があったのであれば、「解散」見送りは当然だ。 「岸田首相も来年9月の任期切れまでに解散権を行使できる状況にはならないことを前提に、2年後の夏の参院選前の解散による衆参同日選挙までも視野に入れての政権運営を余儀なくされそうだ」、勝負の時はずいぶん先に延びたようだ。
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鉄道(その10)(千葉・東葉高速鉄道が「28年度に資金ショート」の恐れ 金利上昇が追い打ち、イタリアの「元祖パノラマ」名車復活させた原動力 朽ち果てた車体復元 財源はどこから出ている?、赤字ローカル線の惨状 本当に「人口減」が原因か 沿線人口は微増だが利用者数が減った例も) [産業動向]

鉄道については、昨年6月18日に取上げた。今日は、(その10)(千葉・東葉高速鉄道が「28年度に資金ショート」の恐れ 金利上昇が追い打ち、イタリアの「元祖パノラマ」名車復活させた原動力 朽ち果てた車体復元 財源はどこから出ている?、赤字ローカル線の惨状 本当に「人口減」が原因か 沿線人口は微増だが利用者数が減った例も)である。

先ずは、本年5月2日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したライターの宮武和多哉氏による「千葉・東葉高速鉄道が「28年度に資金ショート」の恐れ、金利上昇が追い打ち」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/322125
・『千葉県・東葉高速鉄道が、早くて2028年度にも資金ショートする可能性が取り沙汰されている。多額の長期債務残高があり、利払いだけでも精いっぱいな状況が続いているからだ。その原因を突き詰めると、建設前の「鉄建公団」の枠組みにある。最近の金利上昇も“泣きっ面に蜂”状態で、返済にはさらなる不幸が襲い掛かることになりそうだ』、どういうことなのだろう。
・『早くて2028年度にも「資金ショート」  「鉄道会社としての売り上げは年間130億円以上」「1日12万人以上が利用」「営業利益は年間33億」――。千葉県八千代市と船橋市を通る「東葉高速線」を運営する東葉高速鉄道は、これらの数値だけ見れば経営が順調そうに思える。 しかし同社は、早くて2028年度にも「資金ショート」する可能性がある。長期債務残高が2356億円あり、その返済はおろか、利払いだけでも精いっぱいな状況が続いているのだ。 その原因は、「建設にかかった2948億円を償還(返済)する」というスキーム(枠組み)にある。東京メトロ東西線と相互直通運転し、都心への通勤輸送を担う東葉高速線の利用状況は好調であるものの、コロナ禍前に行われていた元本返済も止まり、返済が進んでいない。21年度は、約10.5億円を長期債務にかかる利払いのみに費やしている。 東葉高速鉄道は、なぜこうした経営状況に陥っているのか。また、利用者から「高い」と言われる運賃は、なぜ高いのか? まずはこれまでの経緯をたどってみよう』、興味深そうだ。
・『免許申請から開業まで22年かかり建設費用が3倍に  東葉高速鉄道が開業したのは1996年。しかし免許の申請が行われたのは74年で、工事の大幅な遅れが建設費用の増大につながった。 74年の免許申請は営団地下鉄(現在の東京メトロ)によって行われ、当時は955億円の事業費(建設費など)を見込んでいた。しかし並行する京成電鉄などの事情も絡み、営団は免許を取り下げ、中野駅~西船橋駅間を東西線として開業した。営団は東葉高速鉄道に出資した上、「乗り入れ」という形の関与となる。 その後80年には「日本鉄道建設公団(以下:鉄建公団、現在のJRTT)」が工事を行い、千葉県や船橋市、八千代市などが出資する第三セクターが設備を引き取って運営する、現在の東葉高速鉄道が成立した。そうしてようやく84年に着工を果たす。 しかし、用地買収の交渉は遅々として進まなかった。通常ならここで「土地収用法」に基づき、裁決手続きの上で行政代執行となるはずだが、この頃千葉県は成田国際空港の2期工事を巡ってトラブルが相次ぎ、裁決をつかさどる収用委員会の機能がまひ状態だった。全ての地権者と合意を取り付けることができず、91年度を予定していた開業は93年→95年→96年と、延期を繰り返す。 そしてこの期間に、バブル景気による土地や資材の急騰が起きた。加えて「建中利息」(建設中の資金調達にかかる利息)や管理費が増大し、トンネル陥没事故などが次々と重なる。着工当初に2091億円を見込んでいた事業費は、2948億円まで膨れ上がった』、「この頃千葉県は成田国際空港の2期工事を巡ってトラブルが相次ぎ、裁決をつかさどる収用委員会の機能がまひ状態だった。全ての地権者と合意を取り付けることができず、91年度を予定していた開業は93年→95年→96年と、延期を繰り返す・・・この期間に、バブル景気による土地や資材の急騰が起きた。加えて「建中利息」・・・や管理費が増大し、トンネル陥没事故などが次々と重なる。着工当初に2091億円を見込んでいた事業費は、2948億円まで膨れ上がった」、全く不運という他ない。
・『無理があった「公団P線方式」での建設  鉄建公団の「公団P線方式」で建設が行われたことも事態を深刻化させた。このスキームは、建設や資金調達までを鉄建公団が行い、引き渡しを受けた事業者が「譲渡代金」などの名目で開業後に分割で支払いを行う。 このスキームは経営体力のある大手私鉄の新線(東急田園都市線など)で頻繁に用いられた。一方、経営能力に乏しい第三セクター会社にも適用され、業績低迷とともに支払いに苦しむ事例が続出した。例えば、92年に開業した千葉急行電鉄(現在の京成千原線)はたった6年で経営破綻した。自治体のみならず、出資した京成電鉄も大きな損害を負うことになった。 当時の鉄建公団は政治的な決断を背景に、さまざまなスキームで後に「負の遺産」となる路線を量産している。「P線方式」も建設のための方便として使われた面も否めない。その上、P線区間は不相応な高規格で建設され、工事の遅延などで費用も上がりがちだ。 最近の金利上昇により、東葉高速鉄道の返済計画には、さらなる不幸が襲い掛かることになりそうだ。21年度の約12億円の利払いは、リーマンショック後の超低金利が前提となっている。そうなる以前は、年間50億円以上の利払いを行っていた時期もある。返済内容として、金利が0.1%変動しただけで、返済金額が数億円も上振れする可能性があるという』、「鉄建公団の「公団P線方式」で建設が行われたことも事態を深刻化させた。このスキームは、建設や資金調達までを鉄建公団が行い、引き渡しを受けた事業者が「譲渡代金」などの名目で開業後に分割で支払いを行う」、「P線区間は不相応な高規格で建設され、工事の遅延などで費用も上がりがちだ」、「不相応な高規格で建設」とは問題だ。
・『鉄道建設と資金調達に変化、東急・相鉄直通線は?  東葉高速鉄道などの失敗例を踏まえて、近年の鉄道新線は「最初から補助、開業後の負担を減らす」という考え方にシフトしている。どういったことか、各地の事例を見てみよう。 23年3月に開業した東急・相鉄直通線では、05年に制定された「都市鉄道等利便増進法」によって、自治体が3分の1を補助し(残りはJRTTが調達)、新線開業で出る範囲の受益から東急・相鉄が施設利用料を支払う「受益活用型上下分離方式」が採用されている。いわば「最初から補助、鉄道会社は無理なく支払い」のパターンだ。 もしこれが「P線方式」で建設されていたとしたら、東急・相鉄が事業費の約2700億円を負担することになる。2社の営業利益を合計した8年分に相当する額だ。なお、東急・相鉄直通線の加算運賃も現行の範囲では済まなかっただろう。 05年に開業したつくばエクスプレスのように、「宅地・鉄道一体化法」で、沿線開発と一体化して鉄道を整備し、費用をある程度組み込んだ例もある。この路線は田中角栄元首相の“鶴の一声”で着工を果たしたともいわれ、いわば「政治の力技で何とかした」パターンともいえるだろう。 また、JR東海のように、低金利の環境を生かし、社債の発行で資金を「自社で調達」する事例も増えてきた。なお、同社が建設中のリニア中央新幹線や、89年に開通した瀬戸大橋などは、国の特別会計を活用した「財政投融資」で費用を確保している』、「東葉高速鉄道などの失敗例を踏まえて、近年の鉄道新線は「最初から補助、開業後の負担を減らす」という考え方にシフトしている」、「23年3月に開業した東急・相鉄直通線では、05年に制定された「都市鉄道等利便増進法」によって、自治体が3分の1を補助し(残りはJRTTが調達)、新線開業で出る範囲の受益から東急・相鉄が施設利用料を支払う「受益活用型上下分離方式」が採用されている。いわば「最初から補助、鉄道会社は無理なく支払い」のパターンだ」、「05年に開業したつくばエクスプレスのように、「宅地・鉄道一体化法」で、沿線開発と一体化して鉄道を整備し、費用をある程度組み込んだ例もある。この路線は田中角栄元首相の“鶴の一声”で着工を果たしたともいわれ、いわば「政治の力技で何とかした」パターンともいえるだろう。 また、JR東海のように、低金利の環境を生かし、社債の発行で資金を「自社で調達」する事例も増えてきた。なお、同社が建設中のリニア中央新幹線や、89年に開通した瀬戸大橋などは、国の特別会計を活用した「財政投融資」で費用を確保している」、なるほど。
・『株主である自治体が国に支援を要請へ  東葉高速鉄道は、西船橋駅~東葉勝田台駅間(16.4Km)の運賃で640円、1カ月の通勤定期で2万6890円という、距離の割に高い運賃が問題視されている。 同じ千葉県内では、北総鉄道が通勤定期運賃を13.8%、通学定期運賃を64.7%も大幅値下げした(22年10月1日)。同社は「北総線・成田スカイアクセス」など成田空港への輸送で利用が上向いたことから、20年前には450億円もあった累積損失の解消を見込んでいる。片や、東葉高速鉄道の返済金額はその数倍とあって、なかなか値下げに踏み切れない。 3月20日、東葉高速鉄道に出資する千葉県・八千代市・船橋市は、国土交通省に対して、同社への「抜本的な支援策」を求める申し入れを行った。出資者による財政支出は500億円に上っているが、自治体のみによる支援には限界があるとして、踏み切ったもよう。これまでのように利払いの補填や猶予だけでは、いわば止血にすぎない。 第三セクターの鉄道会社では、例えば埼玉高速鉄道が「事業再生ADR」(裁判外紛争解決手続。私的整理の一つ)で元本の圧縮を図っている。また、P線方式で建設され、約650億円の負債を抱えた北神急行電鉄は、筆頭株主の阪急電鉄に198億円を支払う形で、神戸市が事業の譲渡を受けた。阪急側からすれば「損切り」となるが、神戸市側は市営地下鉄との一体運営で、念願の運賃値下げを行うことができた。 東葉高速鉄道の株主である自治体も、そうした何らかの具体策に踏み込む時期に来ているはずだ』、「これまでのように利払いの補填や猶予だけでは、いわば止血にすぎない。 第三セクターの鉄道会社では、例えば埼玉高速鉄道が「事業再生ADR」・・・で元本の圧縮を図っている。また、P線方式で建設され、約650億円の負債を抱えた北神急行電鉄は、筆頭株主の阪急電鉄に198億円を支払う形で、神戸市が事業の譲渡を受けた。阪急側からすれば「損切り」となるが、神戸市側は市営地下鉄との一体運営で、念願の運賃値下げを行うことができた」、「東葉高速鉄道の株主である自治体も、そうした何らかの具体策に踏み込む時期に来ているはずだ」、その通りなのだろう。

次に、5月31日付け東洋経済オンラインが掲載した欧州鉄道フォトライターの橋爪 智之氏による「イタリアの「元祖パノラマ」名車復活させた原動力 朽ち果てた車体復元、財源はどこから出ている?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/675824
・『ETR252型「アルレッキーノ」――欧州の鉄道に関心のある人でも聞き慣れない名前かもしれない。 だが、昭和世代の乗り物好きなら乗り物図鑑の中で一度は目にしたことがあるであろう、前面展望車両の元祖とも言うべきETR300型「セッテベッロ」といえば、ご存知の人も多いのではないだろうか。 通常は車体前部に設ける運転台を屋根上へ置き、その代わりに前方を眺められる展望席を設けた画期的なデザインで、あの小田急ロマンスカーや名鉄パノラマカーがデザインの参考にしたとされる、イタリアが誇る名車中の名車、と言っても過言ではないだろう』、「小田急ロマンスカーや名鉄パノラマカーがデザインの参考にしたとされる、イタリアが誇る名車中の名車」、とは興味深そうだ。
・『錆びて朽ち果てた名車  ETR250型アルレッキーノは1960年、そのセッテベッロの増備車として同年に開催されたローマオリンピックの観客輸送のため、ETR251~254型の4両編成4本が製造された。オリンピック終了後は、イタリア国内の主要都市間を結ぶRapido(特急列車)で使用されていたが、1990年代に入ると徐々に定期運用から外され、主に臨時列車やチャーター用に使用された。 だが、その回数も徐々に減っていき、ついに保留車両として完全に運用から退くことになった。4本造られたうち、第2編成のETR252型を除いた3本は1999年までにすべて解体されてしまった。残ったETR252型も、海からの潮風が吹くアンコーナ駅構内に長期間野ざらしの状態で放置され、車体は錆びて朽ち果てた状態となった。) 転機となったのは2013年。イタリア鉄道の歴史的遺産を保護・管理する目的で設立されたイタリア鉄道財団(Fondazione FS)が、後世へ残すべき車両としてETR252型を保護する決定を下したのだ。車両は同財団によって速やかに回収され、ひとまず盗難や落書きなどの被害から守るため建物の中へ収容した。資金のメドが立った2016年に、修復を請け負う民間企業の工場へ移送され、すぐに動態保存へ向けた修復工事が始まった。 ETR252型の復元工事は完成まで3年を要した。長年留置されていたアンコーナの車庫は海沿いにあり、海からの潮風が容赦なく吹き付けたことで、車体はかなり傷んだ状態だった。工場へ運ばれた後、まず基礎以外の車体の外板を全て剥がし、配線などもすべて撤去、ほぼゼロの状態から再構築した』、「2013年。イタリア鉄道の歴史的遺産を保護・管理する目的で設立されたイタリア鉄道財団(Fondazione FS)が、後世へ残すべき車両としてETR252型を保護する決定を下したのだ」、「ETR252型の復元工事は完成まで3年を要した。長年留置されていたアンコーナの車庫は海沿いにあり、海からの潮風が容赦なく吹き付けたことで、車体はかなり傷んだ状態だった」、よくぞ「保護する決定」をしたものだ。
・『3年かけ修復完了、直後にコロナ禍が…  内装はオリジナルの状態を極力再現するため、シート生地は現代の基準を満たしつつ、当時の素材を忠実に再現。内壁に使う化粧板なども当時の色彩を保っている。その一方で、本線上を運行するにあたって現代の基準に適合させる改造も行われている。 例えば信号保安装置には、イタリアの主要幹線で採用されている安全性の高いSCMTシステムを搭載、空調装置は最新のものへ交換し、各座席には充電用のサービス電源ソケット(コンセント)を設置している。また、それに伴い必要となる電源容量が不足するため、コンバーター(変圧器)も出力を向上させた新型に交換した。 3年間にわたる修復工事を終え、再びその姿を現したのが2019年だった。お披露目は同年6月27日、ローマで開催されたイタリア鉄道(FS)グループの観光計画発表の場で行われた。すぐに一般向けの公開運転がスタートすることが期待されたが、間もなく世界はコロナ禍によって大混乱へと陥り、運転再開は無期限休止の状態となった。 2021年へ入り、ようやくコロナ禍が少し落ち着きを見せ始めたことで、各国は自由な移動やマスク着用、ワクチン接種などの規制を緩和し始めた。 それに呼応する形で、アルレッキーノの一般向け公開運転開始がアナウンスされた。最初の運行は2021年10月3日、ボローニャ―ローマ間で実施され、チケットは発売開始と同時に完売した。その後、今年2023年に至るまで、年に数度の一般向け公開運転や、チャーター運用などに使用されている。) 鉄道車両の保存には大きく分けて静態保存と動態保存の2種類がある。博物館や公園など、屋内外に動かない状態で保存する静態保存に対し、つねに動かせる状態で保存するのが動態保存だが、日本では前者が一般的となっている。乗り物である鉄道車両は、可能なら動態保存してほしいと願うファンがほとんどだろうと思うが、現実問題として、古い車両を動かせる状態で保存するためには、さまざまな難問をクリアしなければならない。 まず技術の継承が不可欠なのはもちろん、車両を維持管理するためのスペース、すなわち車庫の問題も出てくる。そして、それらを恒久的に続けていくために、当然多額の資金が必要となる。 古い車両は、きちんとしたメンテナンスが必要なのは言うに及ばず、現代の車両とは異なる車体や装置、技術の場合には、特別なケアが必要となる。こうした車両のメンテナンスには、熟練の技術者が必要不可欠となるが、若い技術者を育てなければ恒久的な維持管理は難しくなる。もちろん、ただ技術を教えるだけではなく、その技術者が一人前になった後、その技術だけで生活ができなければ、いずれなり手はいなくなってしまうし、その技術者が定年を迎えるときまでに後継者を育てなければ、その技術は潰えてしまうことになる』、なるべきなら「動態保存」してもらいたいものだ。
・『相当な資金が必要な「動態保存」  部品の確保もまた、今後は重要な課題となってくるだろう。古い車両は、実は技術さえ継承できれば修理や整備は何とかなる可能性があるもので、昔の家電製品のように「叩けばなんとかなる」ではないが、ある意味で言えばスパナやハンマーなどがあれば直せるものが多い。 だが近年、特に半導体技術を使うようになった1970~1980年代以降の車両の場合、部品の交換以外に修理する手段がなくなるため、廃車となった車両から保守用部品を抜き取って保管する必要が生じる。そして、部品が枯渇した段階で修理不能となるため、装置そのものを最新の装置へ換装する以外に修理する手段がなくなる可能性もある。 つまり車両を動態保存するためには、鉄道会社側に相当な負担が生じ、とりわけ資金面に十分な余裕がない限り、まず不可能と言っていいだろう。日本の場合、JRも私鉄も民間企業であるから、多額の寄付金でもない限り資金力には限界がある。ファンがいくら声を上げたところで、ない袖は振れないのはやむをえないことだ。 では、一度はスクラップ寸前の状態となった1960年代の車両を通常の運行ができる状態にまで完全に復元した、イタリア鉄道財団の財源はどうなっているのだろうか。 イタリア鉄道財団では、財団創立メンバーであるイタリア鉄道FS、旅客運行子会社トレニタリア(Trenitalia)、インフラ子会社RFIの3社からの寄付金のほか、国や地方自治体、欧州連合などの公的機関からの寄付金、民間からの寄付金、動産および不動産の売買による収益、財団の資産から生じる年金などの配当金による収益、保有する株式による収益などがある』、「日本の場合、JRも私鉄も民間企業であるから、多額の寄付金でもない限り資金力には限界がある」、「イタリア鉄道財団では、財団創立メンバーであるイタリア鉄道FS、旅客運行子会社トレニタリア(Trenitalia)、インフラ子会社RFIの3社からの寄付金のほか、国や地方自治体、欧州連合などの公的機関からの寄付金、民間からの寄付金、動産および不動産の売買による収益、財団の資産から生じる年金などの配当金による収益、保有する株式による収益などがある」、なるほど。
・『政府が保存をバックアップ  民間からの寄付については、筆者も一度財団へ寄付を申し出たことがあるが、個人からの少額の寄付は受け付けていないようで、今のところは企業などからの大口の寄付で賄われているようだ。 なお、2015年からは政府の文化遺産観光省が協賛パートナーとして名を連ねている。古い車両のほか、歴史的価値のある駅や信号所などの建築物、廃線となった風光明媚なローカル線など、鉄道関連施設や路線そのものを文化遺産と位置付け、国がこれらの保存に全面的なバックアップを約束しているのだから心強い。 FS財団では現在、冒頭で触れた世界的に有名なETR300型セッテベッロのほか、1957年に運行開始した国際特急TEE用のALn442-448型気動車、数々の超特急を牽引したE444型高速旅客用電気機関車などの完全復元を目指して修復工事が進められている。これらの歴史的名車が、再び本線上を疾走する日が一日も早く訪れることを願ってやまない』、「これらの歴史的名車が、再び本線上を疾走する日が一日も早く訪れることを願ってやまない」、その通りだ。「2015年からは政府の文化遺産観光省が協賛パートナーとして名を連ねている。古い車両のほか、歴史的価値のある駅や信号所などの建築物、廃線となった風光明媚なローカル線など、鉄道関連施設や路線そのものを文化遺産と位置付け、国がこれらの保存に全面的なバックアップを約束しているのだから心強い」、日本もインバウンド促進策にもなり得るとして政府の支援策拡大も検討してよいように思う。

第三に、6月22日付け東洋経済オンラインが掲載した鉄道ジャーナリストの北村 幸太郎氏による「赤字ローカル線の惨状、本当に「人口減」が原因か 沿線人口は微増だが利用者数が減った例も」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/680988
・『昭和の頃からいまだ抜本的解決策が見いだせない赤字ローカル線問題。近年は「人口減少」を理由として、半ば諦めムードの世論形成の末に、廃線への道を突き進むケースがほとんどである。筆者もこれなら廃線も仕方がない、そう信じていた。 ところが、その赤字ローカル線、本当に人口減少が原因なのかと首をかしげるようなデータを入手した。それによれば「人口減少率が低い・または人口が微増しているにもかかわらず、鉄道利用者が最大半減になっている線区がある」あるいは「鉄道利用減少率が人口減少率の2倍・3倍の線区がある」という事実がある』、興味深そうだ。
・『人口減より急速に進む利用者減  これが本当ならば、人口減少のみがローカル線衰退の原因ではなく、鉄道事業者の無策・愚策がローカル線衰退の一助になっていたり、むしろローカル線を衰退させて沿線人口減少にもつながっていたりすることもありえるのではないだろうか。 これから挙げる4線区の例は、2000年、2010年、2020年と10年おきの乗車人員、駅から2km圏の沿線人口、そして通学利用者が多いと考えられる10代後半の人口のデータだ。2020年のデータはコロナの影響を排するため、2019年の数値を用いている。人口は国勢調査から引用している。 まず注目したいのはJR小海線の中込―小諸間だ。小海線は2000年から2010年にかけて沿線人口は横ばい、10代後半の人口は8%も増え、2010年から2020年までは人口も2%増えている。) それにもかかわらず、小海線の乗車人員は2000年と比べて2010年は30%減、2020年に至っては人口増で若干持ち直しているものの、2000年比で26%の減少であり、この差分を取りこぼしたままとなっている。 沿線人口を維持、あるいは増えているにもかかわらず利用者数が3割減とは、鉄道が移動の選択肢から外れる要因に手を打つことができなかった鉄道事業者の落ち度ではないだろうか。 通常、人口1人あたりの鉄道利用回数が変わらなければ、人口減少率を超えた鉄道利用者の減少率にはならないはずであり、人口減少だけを利用減少の理由にするには無理がある。 (小海線と米坂線の沿線人口・乗客数の変化を表したグラフはリンク先参照、横軸の数字は年、縦軸の数字は2000年を1とした場合の増減割合を示す(環境経済研究所データを基に筆者作成)) 米坂線の小国―坂町間については、10代後半の人口はあまり減っていないのに大幅な減少だ。こちらは2000年比で10代後半の人口は2010年で4%増、2020年はほぼ同レベルを維持している。沿線人口は全体で2020年までに18%減っているとはいえ、乗車人員は36%も減っている。ローカル線の大口顧客である通学生はほぼ減っておらず、沿線人口の減少率の2倍も客が減るのは、人口減少のせいにする前に商売のやり方のまずさに気付くべきところもあるのではないか』、「小海線」の場合、人口増加が仮に別荘族によるものであれば、鉄道を利用しないのもやむを得ない。
・『首都圏にも実例が  さらに、首都圏にもこのような路線がある。内房線の君津―館山間だ。こちらもこの20年で乗車人員が半減し、列車も新車への置き換えの際に4両から2両に減らされた。ところが沿線人口は1割しか減っていないのである。10代後半に限ってみても3割減だが、高校生人口は全体の5?6%程度であり、その3割が減ったからといってそう大きな差にはならないはずである。 陸羽東線の最上―新庄間も内房線と同じ傾向だ。こちらは人口2割減だが乗車人員6割減だ。高校生は半減だがこちらも全体の5%に過ぎない。となると、これは事業者側の商売音痴がローカル線の衰退を招いたというべきではないだろうか。 (内房線と陸羽東線の沿線人口と利用者数のグラフもリンク先参照。横軸の数字は年、縦軸の数字は2000年を1とした場合の増減割合を示す(環境経済研究所データを基に筆者作成)) 他業界のビジネスパーソンなら、市場の人口が増えている、あるいは微減しかしていない状態にもかかわらず客数や売り上げが半減したら、担当者は幹部から何をやってるんだ!と叱責の対象となり、責任を追及されるはずだ。 大阪産業大学の那須野育大准教授の研究「JR地方交通線の輸送需要に関する考察」(公益事業研究第74巻第1号・2022年発表)では、列車本数や運賃施策が輸送密度に有意な影響を及ぼすとしている。つまり値上げや減便をすれば客が減るし、逆に値下げや増便によって客が増える方向に有意な影響があるということだ。 内房線の南半分についていえば、列車接続はかなり良いほうではある。ただ本数が少なかったり、東京直通列車がほとんどなかったりするため、東京湾アクアライン開通による高速バスの設定にトドメを刺されたのかもしれない。だが、それならば何か高速バスに対抗するような施策を講じただろうか。東京直通の特別快速を1日1往復、1年間走らせたくらいではないだろうか。これでは「やってはみましたよ・けどダメでした」という既成事実を作るための取り組みにすぎない』、JR東日本でも具体策を真剣に検討しても、有効な打開策が出てこないのであれば、簡単な話ではないのだろう。
・『「使いたい時間に列車がない」  価格面でも高速バスに対抗しただろうか?特急料金を取ることに執着して価格競争に敗れた結果、特急がなくなるくらいなら、乗車券と指定席券のみで乗れる快速列車でも走らせていれば運賃を取りっぱぐれることはなかったのではないか。例えばJR九州は高速バスへの対抗で実質往復運賃のみの料金水準で新幹線や特急で往復できる企画きっぷを多数出している。このようにできることはたくさんあったはずである。ところがJRが行ったのは、逆に房総料金回数券を廃止し、特急料金の実質値上げしたことであった。 他の線区はどんな状況だろうか。最近は久留里線の廃線議論でも利用減少を原因に挙げているが、住民からは「そもそも使いたいタイミングに列車がないのにどうやって乗れというのか」という声が上がったそうだ。 宇都宮線では高校生の下校のタイミングに走っていた列車が削減され、学校側が残された列車に合わせた時間割への変更を余儀なくされたことが話題となったこともある。先の那須野教授の研究では高齢化率や1人あたり自動車保有台数による悪影響もあるとしているが、ならば高齢者の利用促進や車より高いアドバンテージの実現といった努力をすべきである。) 例示した線区の現状のダイヤはどうなっているのか。通勤・通学に適したタイミングで運行されているのか。例えば内房線の安房鴨川―館山間では、安房鴨川方面は館山8時01分発の後は9時36分発までないし、反対方向も安房鴨川8時04発の後は9時40分発までないなど、まだ通勤を含む需要がありそうな時間帯に1時間半も列車が来ない。朝ラッシュ時でも1時間も間隔が開くのだから、これでは使えるとは言いがたい。 さらに終電も21時台の駅が目白押しで、これでは飲んで帰るのにも使えない。一部列車を除き、4両編成を2両編成にしたうえで車掌をなくし、ほぼ半分の経費で運転できるようにしたのだから、多少の増発をしてくれてもいいのではないか。 小海線はもっとひどい。小淵沢7時03分着の後は9時08分着まで列車がなく、その後も10時37分着までない。日中や夕方はもっと壊滅的なダイヤだ。沿線人口が増えている線区なのにこの扱いである。一体どうやって生活に使えというのだろうか!?』、確かにこれらの運転間隔では利用促進を呼びかけるのはとうてい無理だ。
・『ローカル線対策、今のままでいいのか  今回のデータの提供元の環境経済研究所、上岡直見氏は「JR東日本の深沢祐二社長は、収益重視で減便が利用者減少の原因とする批判は的外れであり、沿線人口が減る中で利便性をいくら改善しても需要喚起には限界があると述べている(『日本経済新聞』記事「ローカル線は維持できるか」2022年9月5日付)。しかし第三セクターのえちぜん鉄道では、さまざまな工夫によってコロナ下でさえ増客を実現(2022年度前年度比)している。JRのローカル線対策はあまりにもお粗末ではないだろうか」と指摘する。 「人が乗らないから助けてください・もう持ちません」と訴えるローカル線は日本中にあるが、すべてではないにせよ、そう言っている割には団地や商業施設の前に駅も置かずに素通りしているなど、泣き言を言う前にやることあるだろうと思うようなところはあるのではないかと感じる。 一方で、本当に沿線人口が少なすぎてどうしようもない線区もある。そのような線区を、都市部の黒字、つまり都市部の負担で多額の赤字を垂れ流しながらも残せというのは、コロナ禍の営業自粛のような、わずかな犠牲を回避するために多額の経済損失を繰り返す行為であり、何でもかんでも残せばいいというのも違うのではないか。きちんと残すべき路線と残すべきでない路線の適切な線引きをしたうえで存廃論議が進められることを期待したい』、「残すべき路線と残すべきでない路線の適切な線引き」と簡単に言うが、実際には極めて難しい難問である。ただ、何らかの基準でメリハリをつけて「存廃論議」を進めるべきだろう。
タグ:鉄道 (その10)(千葉・東葉高速鉄道が「28年度に資金ショート」の恐れ 金利上昇が追い打ち、イタリアの「元祖パノラマ」名車復活させた原動力 朽ち果てた車体復元 財源はどこから出ている?、赤字ローカル線の惨状 本当に「人口減」が原因か 沿線人口は微増だが利用者数が減った例も) ダイヤモンド・オンライン 宮武和多哉氏による「千葉・東葉高速鉄道が「28年度に資金ショート」の恐れ、金利上昇が追い打ち」 「この頃千葉県は成田国際空港の2期工事を巡ってトラブルが相次ぎ、裁決をつかさどる収用委員会の機能がまひ状態だった。全ての地権者と合意を取り付けることができず、91年度を予定していた開業は93年→95年→96年と、延期を繰り返す・・・この期間に、バブル景気による土地や資材の急騰が起きた。加えて「建中利息」・・・や管理費が増大し、トンネル陥没事故などが次々と重なる。着工当初に2091億円を見込んでいた事業費は、2948億円まで膨れ上がった」、全く不運という他ない。 「鉄建公団の「公団P線方式」で建設が行われたことも事態を深刻化させた。このスキームは、建設や資金調達までを鉄建公団が行い、引き渡しを受けた事業者が「譲渡代金」などの名目で開業後に分割で支払いを行う」、「P線区間は不相応な高規格で建設され、工事の遅延などで費用も上がりがちだ」、「不相応な高規格で建設」とは問題だ。 「東葉高速鉄道などの失敗例を踏まえて、近年の鉄道新線は「最初から補助、開業後の負担を減らす」という考え方にシフトしている」、「23年3月に開業した東急・相鉄直通線では、05年に制定された「都市鉄道等利便増進法」によって、自治体が3分の1を補助し(残りはJRTTが調達)、新線開業で出る範囲の受益から東急・相鉄が施設利用料を支払う「受益活用型上下分離方式」が採用されている。いわば「最初から補助、鉄道会社は無理なく支払い」のパターンだ」、 「05年に開業したつくばエクスプレスのように、「宅地・鉄道一体化法」で、沿線開発と一体化して鉄道を整備し、費用をある程度組み込んだ例もある。この路線は田中角栄元首相の“鶴の一声”で着工を果たしたともいわれ、いわば「政治の力技で何とかした」パターンともいえるだろう。 また、JR東海のように、低金利の環境を生かし、社債の発行で資金を「自社で調達」する事例も増えてきた。なお、同社が建設中のリニア中央新幹線や、89年に開通した瀬戸大橋などは、国の特別会計を活用した「財政投融資」で費用を確保している」、なるほど。 「これまでのように利払いの補填や猶予だけでは、いわば止血にすぎない。 第三セクターの鉄道会社では、例えば埼玉高速鉄道が「事業再生ADR」・・・で元本の圧縮を図っている。また、P線方式で建設され、約650億円の負債を抱えた北神急行電鉄は、筆頭株主の阪急電鉄に198億円を支払う形で、神戸市が事業の譲渡を受けた。阪急側からすれば「損切り」となるが、神戸市側は市営地下鉄との一体運営で、念願の運賃値下げを行うことができた」、「東葉高速鉄道の株主である自治体も、そうした何らかの具体策に踏み込む時期に来ているはずだ」、 その通りなのだろう。 東洋経済オンライン 橋爪 智之氏による「イタリアの「元祖パノラマ」名車復活させた原動力 朽ち果てた車体復元、財源はどこから出ている?」 「小田急ロマンスカーや名鉄パノラマカーがデザインの参考にしたとされる、イタリアが誇る名車中の名車」、とは興味深そうだ。 「2013年。イタリア鉄道の歴史的遺産を保護・管理する目的で設立されたイタリア鉄道財団(Fondazione FS)が、後世へ残すべき車両としてETR252型を保護する決定を下したのだ」、「ETR252型の復元工事は完成まで3年を要した。長年留置されていたアンコーナの車庫は海沿いにあり、海からの潮風が容赦なく吹き付けたことで、車体はかなり傷んだ状態だった」、よくぞ「保護する決定」をしたものだ。 なるべきなら「動態保存」してもらいたいものだ。 「日本の場合、JRも私鉄も民間企業であるから、多額の寄付金でもない限り資金力には限界がある」、「イタリア鉄道財団では、財団創立メンバーであるイタリア鉄道FS、旅客運行子会社トレニタリア(Trenitalia)、インフラ子会社RFIの3社からの寄付金のほか、国や地方自治体、欧州連合などの公的機関からの寄付金、民間からの寄付金、動産および不動産の売買による収益、財団の資産から生じる年金などの配当金による収益、保有する株式による収益などがある」、なるほど。 「これらの歴史的名車が、再び本線上を疾走する日が一日も早く訪れることを願ってやまない」、その通りだ。「2015年からは政府の文化遺産観光省が協賛パートナーとして名を連ねている。古い車両のほか、歴史的価値のある駅や信号所などの建築物、廃線となった風光明媚なローカル線など、鉄道関連施設や路線そのものを文化遺産と位置付け、国がこれらの保存に全面的なバックアップを約束しているのだから心強い」、日本もインバウンド促進策にもなり得るとして政府の支援策拡大も検討してよいように思う。 北村 幸太郎氏による「赤字ローカル線の惨状、本当に「人口減」が原因か 沿線人口は微増だが利用者数が減った例も」 「小海線」の場合、人口増加が仮に別荘族によるものであれば、鉄道を利用しないのもやむを得ない。 JR東日本でも具体策を真剣に検討しても、有効な打開策が出てこないのであれば、簡単な話ではないのだろう。 確かにこれらの運転間隔では利用促進を呼びかけるのはとうてい無理だ。 「残すべき路線と残すべきでない路線の適切な線引き」と簡単に言うが、実際には極めて難しい難問である。ただ、何らかの基準でメリハリをつけて「存廃論議」を進めるべきだろう。
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タウン情報・街並み(その1)(池袋、「たまたま開設」の駅が生んだ街の大発展 当初は貨物の拠点、にぎわいは大塚が上だった、「オタクに優しい秋葉原」はもうない…ぼったくりで稼ぐ“心の荒んだメイド”が増加したワケ) [生活]

今日は、タウン情報・街並み(その1)(池袋、「たまたま開設」の駅が生んだ街の大発展 当初は貨物の拠点、にぎわいは大塚が上だった、「オタクに優しい秋葉原」はもうない…ぼったくりで稼ぐ“心の荒んだメイド”が増加したワケ)を取上げよう。

先ずは、昨年3月4日付け東洋経済オンラインが掲載したフリーランスライターの小川 裕夫氏による「池袋、「たまたま開設」の駅が生んだ街の大発展 当初は貨物の拠点、にぎわいは大塚が上だった」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/535493
・『今年2月、西武グループの持ち株会社である西武ホールディングスは、プリンスホテルなど国内31の保有施設を売却すると発表した。同時期、セブン&アイホールディングスは西武池袋本店などを含む傘下の百貨店「そごう・西武」の売却に向けて調整に入ったと報じられた。 昭和初期から平成にかけて、西武は池袋駅を牙城にして発展してきた。1964年に西武の総帥・堤康次郎が没した後、鉄道事業などは堤義明へ、百貨店事業などは堤清二が率いる西武流通(後のセゾン)グループへと引き継がれた。歳月とともに両者は独立性を強めていくが、池袋駅東口には旗艦店となる西武百貨店と西武鉄道の駅が並び、“西武”を冠する両者は端から見れば同じグループであるように映った。 池袋駅や街の発展は、西武鉄道と西武百貨店の存在を抜きに語ることはできないが、そもそも池袋は都心から外れた農村でしかなく、鉄道・行政当局から期待されていた駅・街ではなかった。たまたま駅が開設されたに過ぎなかったが、それが街を発展させてきた』、「そもそも池袋は都心から外れた農村でしかなく、鉄道・行政当局から期待されていた駅・街ではなかった。たまたま駅が開設されたに過ぎなかった」、驚かされた。
・『板橋や目白よりも遅かった開業  池袋駅を開設したのは、現在のJR東北本線や高崎線・常磐線などを建設した私鉄の日本鉄道だった。上野駅をターミナルに北関東や東北へと路線を広げる日本鉄道は、群馬県の富岡製糸場で生産される生糸を横浜港まで迅速に運搬することを主目的にしていた。 当時、上野駅と新橋(後の汐留)駅は一本の線路でつながっていない。そのため、上野駅で荷下ろしし、新橋駅で再び積み直すという手間が生じた。輸送効率を上げるべく、日本鉄道は赤羽駅から線路を分岐させて品川駅までを結ぶ短絡線を建設。これは品川線と呼ばれる路線だが、現在の埼京線に相当する。 品川線には、中間駅として板橋駅・新宿駅・渋谷駅が開設されたが、この時点で池袋駅は開設どころか計画すら浮上していない。品川線の開業と同年には目白駅や目黒駅が、1901年には大崎駅が開設されたが、この時点でも池袋駅は開設されなかった。) その後も日本鉄道は路線網を広げていき、現在の常磐線にあたる区間を1898年に開業。常磐地方の石炭を輸送するという貨物輸送の役割が強かった同線は、繁華街にある上野ではなく田端駅をターミナルにした。田端駅には、太平洋沿岸で採掘される石炭などが多く運び込まれるようになる。 当時の日本は、工業化の進展とともに東京湾臨海部に工場が続々と誕生。田端駅から東京の南部や神奈川方面へ直通する列車の需要が生まれた。こうして同駅と品川線の目白駅とを結ぶ豊島線の構想が本格的に検討される。 豊島線は、田端駅と目白駅の間に駒込・巣鴨・大塚などの駅を開設し、大塚駅からは南西へと線路を建設して一直線に目白駅を目指す構想だった。しかし、目白駅の拡張は地形的な理由から難しく、さらに一直線で線路を建設すると、巣鴨監獄に線路を通すことになる。 巣鴨監獄は戦後にGHQが接収し、A級戦犯が収監された「巣鴨プリズン」の名で知られる。明治新政府は国家の人権意識が高いことを諸外国に示すため、巣鴨監獄の前身である警視庁監獄巣鴨支署を1895年に開設した』、「工業化の進展とともに東京湾臨海部に工場が続々と誕生。田端駅から東京の南部や神奈川方面へ直通する列車の需要が生まれた。こうして同駅と品川線の目白駅とを結ぶ豊島線の構想が本格的に検討される」、なるほど。
・『「監獄」を避けた線路  なぜ、政府が諸外国に対して人権意識の高さを示さなければならなかったのか。それは、諸外国が不平等条約を改正する条件に「日本が一等国である」ことを盛り込んでいたからだ。当時、西洋諸国は一等国のバロメーターを「文化」と「人権意識」の2つで測っていた。政府はこれまでの囚人の扱いを改め、人権意識の高い国であることを示そうとした。 こうした取り組みや日清戦争の勝利により、西洋諸国は日本を一等国として遇するようになるが、巣鴨監獄を取り壊せば再び野蛮な国と見られてしまうかもしれない。そんな不安もあり、豊島線は巣鴨監獄を避けなければならなかった。 山手線の田端駅から大塚駅までは線路が南西へと向かっているのに、大塚駅付近では線路がいったん北へとカーブしているのは、これらの理由が重なったことによる。こうして豊島線と品川線の合流地点は変更され、1903年、新たな合流地点に池袋駅が開設された。 工業化が進展していた日本では、鉄道の貨物輸送量が年を経るごとに増加していた。日本鉄道は列車の運行本数を増やすべく、翌1904年に新宿駅―池袋駅間を複線化。日露戦争に勝利すると、政府はさらなる強国へと成長するべく軍事輸送の強化に乗り出す。1906年には「鉄道国有法」を施行し、品川線・豊島線などを含む多くの幹線を国有化。これにより、貨物輸送は政府の思惑が強く反映されることになる。 その後、現在の山手線にあたる区間の複線化が進められると同時に、1909年には電化にも着手。こうして現在の山手線の骨格が少しずつ組み上がっていく。) 池袋駅は貨物駅として存在感を強めていたものの、旅客駅としての利用者は決して多くなかった。むしろ1駅隣にある大塚駅のほうが乗降客数は多く、その数は1917年に年間100万人に達していた。それは池袋にターミナルを据える東武東上線、西武池袋線の前身が会社を立ち上げたときの計画からも読み取れる。 東武東上線の前身である東上鉄道は1911年に創立。当初は巣鴨駅付近にターミナルを開設する予定だったが、後に大塚辻町(現・東京メトロ丸ノ内線の新大塚駅付近)へと変更している。1912年に創立した西武の前身である武蔵野鉄道も、当初は巣鴨付近にターミナル駅を開設する予定にしていた。 だが、この2社が池袋駅へとターミナルを変更したことで、鉄道路線が集積。こうした影響もあり、同駅の年間乗降客数は1921年度に大塚駅を抜き、600万人を突破した。 しかし、それでも街のにぎわいは大塚駅のほうが一枚上だった。この時期、東京大宮電気鉄道や東京日光電気鉄道といった、東京進出を狙って計画された私鉄の多くは、大塚もしくは巣鴨をターミナルにすることを計画していた』、「西洋諸国は一等国のバロメーターを「文化」と「人権意識」の2つで測っていた。政府はこれまでの囚人の扱いを改め、人権意識の高い国であることを示そうとした。 こうした取り組みや日清戦争の勝利により、西洋諸国は日本を一等国として遇するようになるが、巣鴨監獄を取り壊せば再び野蛮な国と見られてしまうかもしれない。そんな不安もあり、豊島線は巣鴨監獄を避けなければならなかった。 山手線の田端駅から大塚駅までは線路が南西へと向かっているのに、大塚駅付近では線路がいったん北へとカーブしているのは、これらの理由が重なったことによる。こうして豊島線と品川線の合流地点は変更され、1903年、新たな合流地点に池袋駅が開設された」、「東上鉄道は1911年に創立。当初は巣鴨駅付近にターミナルを開設する予定だったが、後に大塚辻町・・・へと変更している。1912年に創立した西武の前身である武蔵野鉄道も、当初は巣鴨付近にターミナル駅を開設する予定にしていた。 だが、この2社が池袋駅へとターミナルを変更したことで、鉄道路線が集積。こうした影響もあり、同駅の年間乗降客数は1921年度に大塚駅を抜き、600万人を突破した。 しかし、それでも街のにぎわいは大塚駅のほうが一枚上だった」、「東京進出を狙って計画された私鉄の多くは、大塚もしくは巣鴨をターミナルにすることを計画していた」、「池袋」の地位はまだまだ低かったようだ。
・『豊島区発足、東口がにぎわいの中心に  時代が昭和に移ると、東京市は市域の拡張を検討。1932年、北豊島郡に属する巣鴨町・西巣鴨町・高田町・長崎町が合併して豊島区が発足する。新区名は古くから栄える目白を採用して目白区とする案が有力で、将来性を考慮して池袋区とする案も出されたが、折衷案として郡名から豊島区に決まった。 新たな区役所は交通の便が考慮され、池袋駅付近に開庁することが異論なく決まった。区名になることは逃したものの、区役所が設けられたことで池袋は豊島区の中心的な街へと姿を変えていく。 それまでの池袋は、武蔵野鉄道や東武東上線など郊外へと通じる鉄道路線は開設されていたものの、都心部へと直結する鉄道網がなかった。 しかし、都心へとつながる路線がまったく計画されていなかったわけではない。武蔵野鉄道は1925年に池袋―護国寺間の路線免許を取得。昭和初期に立て続けに恐慌が発生していたこともあり未着工のままになっていた。同免許は東京市へ譲渡され、それが転用される形で1939年に市電の池袋線が開通。市電が都心部と直結したことで、池袋駅は東口ににぎわいが生まれていった。 東口には、百貨店の老舗・白木屋と京浜電鉄(現・京浜急行電鉄)系列の京浜百貨店の合弁で1935年に菊屋デパートがオープン。同店は1940年に武蔵野鉄道が買収し、店名は武蔵野デパートとなる。 池袋駅東口は1944年の建物疎開により多くの家屋が移転・撤去させられたが、戦火が激しかったこともあり、戦後は焼け野原と化した。それは武蔵野デパートも例外ではなく、荒廃した池袋駅や百貨店の場所には闇市が立ち並んだ。) 武蔵野鉄道や東武東上線の沿線は農地が多く、終戦直後は多くの農家が池袋の闇市に食料を持ち込み、それを生活資金に換えていた。農家が持ち込む米や野菜を目当てに買い物へ来る客は多く、闇市が池袋に活況を与えた。 終戦直後の混乱期、闇市は黙認されていた。しかし、戦後のほとぼりが冷める頃から行政・警察当局による取り締まりが厳格化していく。とはいえ、やみくもに取り締まれば食料流通は停滞し、それは人々の日常生活に混乱を与える。 そこで、東京都は池袋駅東口から南東へと延びる大型道路(現・グリーン大通り)の南側一帯に着目。戦前期、同エリアは東武の総帥・根津嘉一郎の所有地で、根津山と呼ばれていた。根津山は戦後、百貨店の拡張を視野に入れていた西武の総帥・堤が買収。東京都は闇市の代替地として西武からこの一帯を買い取り、闇市の露店を移転させていった。こうして東口に商店が立ち並んでいく。 池袋駅東口が少しずつ復興を遂げていく中、東口のシンボルでもある武蔵野デパートは西武百貨店と改称し、店舗も増改築を繰り返しながら着々と存在感を大きくしていった』、「東口には、百貨店の老舗・白木屋と京浜電鉄(現・京浜急行電鉄)系列の京浜百貨店の合弁で1935年に菊屋デパートがオープン。同店は1940年に武蔵野鉄道が買収し、店名は武蔵野デパートとなる」、「池袋駅東口が少しずつ復興を遂げていく中、東口のシンボルでもある武蔵野デパートは西武百貨店と改称し、店舗も増改築を繰り返しながら着々と存在感を大きくしていった」、だいぶ現在に近づいたようだ。
・『地下鉄開通でさらに発展  これらの動きと連動するように、1949年には池袋駅―神田駅間の地下鉄建設計画が決定。後に神田駅から御茶ノ水駅へとルート変更し、1954年に開業する。これが丸ノ内線の始まりだ。その後も同線は延伸された。 丸ノ内線の輸送能力が限界に達すると、それを補完する有楽町線の池袋駅―銀座一丁目駅間が1974年に開業。地下鉄も集積したことで、池袋は新宿・渋谷と比肩する繁華街へと変貌した。 実のところ、池袋駅の伸長は1960年代から兆しが現れていた。それを端的に表すのが、1964年に新宿・渋谷と池袋の商店街・行政・私鉄などによって結成された三副都心連絡協議会だ。同協議会は、明治通りの下に渋谷・新宿・池袋を結ぶ地下鉄を建設するように東京都へ働きかけている。 しかし、東京都は工費が莫大になることを理由に拒否。代替案として工費を10分の1に抑えられるモノレール構想が打診されたものの、こちらも実現することはなかった。東京都と帝都高速度交通営団(現・東京メトロ)という事業主体は異なるものの、1960年代から副都心線の萌芽ともいえる計画が持ち上がっていたことは注目に値する。 駅西口に目を移すと、運輸(現・国土交通)省が戦災復興で民衆駅を提案したことから戦後の駅前整備が始まっている。民衆駅とは民間資本によって駅舎を整備する資金調達スキームで、池袋駅西口はそのトップバッターに選ばれた。 民衆駅計画は1947年に策定されたが、西口は権利関係が複雑で、なおかつ東口の根津山のような代替地がなかった。 国鉄や行政の意思だけでは整備ができず、西口に民衆駅を整備するには東武との調整が不可欠だった。闇市を移転する代替地もなかったことから民衆駅の計画は遅々として進まず、竣工に漕ぎ着けたのは1950年になってからだった。それらの影響もあり、民衆駅第1号の名誉はタッチの差で愛知県の豊橋駅となる。 ちなみに、ビックカメラのCMソングに歌われる、東口に西武、西口に東武の構図はこの時点で固まっていない。それどころか、1950年には東横百貨店(現・東急百貨店)が西口に出店。つまり、「東は西武で、西、東急」の時代があった。 東横が開店した同年、東武も西口に百貨店を計画。しかし、地元商店街の反対により、アミューズメントビルの東武会館として計画を縮小して進めざるを得なかった。こうした経緯もあり、東武百貨店は一時的に東武会館のテナントとして入居している。その後、東武は地元商店街からも理解を得て、百貨店事業を拡大。隣接する東横百貨店を買収して南館とした。 東武会館が着工された頃から、それまで停滞していた西口の戦災復興は進み始めた。そして、西口の開発は現在に至るまで繰り返し実施されて街の移り変わりは激しい』、「1950年には東横百貨店(現・東急百貨店)が西口に出店。つまり、「東は西武で、西、東急」の時代があった」、とは初めて知った。「東武も西口に百貨店を計画。しかし、地元商店街の反対により、アミューズメントビルの東武会館として計画を縮小して進めざるを得なかった。こうした経緯もあり、東武百貨店は一時的に東武会館のテナントとして入居している。その後、東武は地元商店街からも理解を得て、百貨店事業を拡大。隣接する東横百貨店を買収して南館とした」、「「東武も西口に百貨店を計画。しかし、地元商店街の反対により、アミューズメントビルの東武会館として計画を縮小して進めざるを得なかった」、「その後、東武は地元商店街からも理解を得て、百貨店事業を拡大。隣接する東横百貨店を買収して南館とした」、当時も「地元商店街」からの「反対」があったとは初めて知った。
・『2023年に開業120周年  池袋駅は、その後も鉄道によって多くの人を引きつけていく。1985年には池袋駅―赤羽駅間を往復していた赤羽線が発展的に埼京線へと姿を変え、埼玉都民と呼ばれる通勤者の流入を促した。 東上線沿線ではニュータウン開発が盛んになり、沿線人口は増加。住民の多くが東京へと通勤するサラリーマンだったことから東上線の混雑は年を追うごとに激化した。 混雑緩和を目的に、1987年には東上線の和光市駅―志木駅間を複々線化。有楽町線にも乗り入れを開始し、有楽町線と東上線が直通運転することで混雑の分散を図った。それでも池袋駅から山手線へと乗り継ぐ利用者が多く、山手線の混雑率が高止まりしていることから、山手線のバイパス機能を担う副都心線が2008年に開業することになった。 来年2023年、池袋駅は開業120年を迎える。地元の豊島区は2014年から池袋駅周辺の整備に着手し、歩行者主体のまちづくりへと舵を切った。これは2032年の豊島区誕生100年を意識した長期的な取り組みだ。 コロナ禍で鉄道を取り巻く環境や存在意義も改めて問われている。飛躍の原点ともいえる西武が揺れる中、池袋駅と街はどのような変化を遂げるのか』、「来年2023年、池袋駅は開業120年を迎える」、「飛躍の原点ともいえる西武が揺れる中、池袋駅と街はどのような変化を遂げるのか」、大いに注目される。

次に、本年5月12日付け日刊SPA!「「オタクに優しい秋葉原」はもうない…ぼったくりで稼ぐ“心の荒んだメイド”が増加したワケ」を紹介しよう。
https://nikkan-spa.jp/1908335
・『「日本がヤバい!」と言われ始めてしばらくたつが、本当にヤバくなってきた。国が貧乏になると悪いことしか起きないのだ。繁華街では、各地で目を覆いたくなるような犯罪が頻発している。日本に住んでいる身として、知っておいて損はない』、興味深そうだ。
・『メイドカフェ5店舗が摘発、客引きの数も減ったようだが…  秋葉原では客引きは1店舗一人までというルールがある。通りでは行政から委託を受けた業者が注意喚起のアナウンスを行っていた 秋葉原がオタクの街から繁華街へと様子を変え始めたのは、’10年代後半のことだ。「メイド通り」と呼ばれるエリアにはコスプレ姿の若い女性たちがズラリと並び、通行人に対して常に声をかけていた。 しかし繁華街の宿命か、ぼったくりや風営法に違反する営業が横行し、’21年5月には過剰な接待を行っていたメイドカフェ5店舗が摘発。現在、秋葉原の路上に立つ客引きの数は減っているようにも思う』、「秋葉原がオタクの街から繁華街へと様子を変え始めたのは、’10年代後半のことだ。「メイド通り」と呼ばれるエリアにはコスプレ姿の若い女性たちがズラリと並び、通行人に対して常に声をかけていた」、この頃はまだ初々しい「メイド」もいた。「しかし繁華街の宿命か、ぼったくりや風営法に違反する営業が横行し、’21年5月には過剰な接待を行っていたメイドカフェ5店舗が摘発。現在、秋葉原の路上に立つ客引きの数は減っているようにも思う」、イヤな時代になったものだ。
・『昼の客引きはむしろ増えている?  だが、ぼったくりはまだまだ健在だ。秋葉原でコンカフェを営む男性が実情を話す。 「夜の客引きの数は確かに減りましたが、昼はむしろ増えています。ターゲットをサラリーマンから外国人観光客と地方から来る客に替えたみたいですね。ぼったくりで稼ぐ店は依然として存在し、8000円ほどのシャンパンを頼まないとキャストと話せなかったり、無断でキャストがドリンクを飲みまくったりして、最後に4万~5万円を請求されます」』、「ターゲットをサラリーマンから外国人観光客と地方から来る客に替えたみたい」、なるほど。
・『ホス狂いのメイドたちがオタクをカモに  かつて「オタクに優しい街」だった秋葉原は、「オタクに厳しい街」となった。その理由は街で働く女性たちの質が変わったことにある。 ひと昔前までのメイドカフェといえば、オタクの女のコが勇気を出して面接に来るような場所でした。しかし、今メイドカフェやコンカフェで働いている女のコたちの中には歌舞伎町のホストクラブで夜な夜な遊んでいるコもたくさんいます。そのうち遊ぶカネがなくなり風俗嬢に転身するコもいるくらいです」(同) 男性いわく、ぼったくりで稼ぐ店のオーナーは「オタク出身の半グレにもなりきれないような不良」だという。当然、彼らの指示でぼったくりが行われているわけだが、キャストの女性たちも遊ぶカネ欲しさからぼったくりをしているのだ。 秋葉原では心の荒んだメイドに注意が必要だ』、「秋葉原では心の荒んだメイドに注意が必要だ」、全くイヤな時代になったものだ。
タグ:山手線の田端駅から大塚駅までは線路が南西へと向かっているのに、大塚駅付近では線路がいったん北へとカーブしているのは、これらの理由が重なったことによる。こうして豊島線と品川線の合流地点は変更され、1903年、新たな合流地点に池袋駅が開設された」、「東上鉄道は1911年に創立。当初は巣鴨駅付近にターミナルを開設する予定だったが、後に大塚辻町・・・へと変更している。1912年に創立した西武の前身である武蔵野鉄道も、当初は巣鴨付近にターミナル駅を開設する予定にしていた。 「西洋諸国は一等国のバロメーターを「文化」と「人権意識」の2つで測っていた。政府はこれまでの囚人の扱いを改め、人権意識の高い国であることを示そうとした。 こうした取り組みや日清戦争の勝利により、西洋諸国は日本を一等国として遇するようになるが、巣鴨監獄を取り壊せば再び野蛮な国と見られてしまうかもしれない。そんな不安もあり、豊島線は巣鴨監獄を避けなければならなかった。 「工業化の進展とともに東京湾臨海部に工場が続々と誕生。田端駅から東京の南部や神奈川方面へ直通する列車の需要が生まれた。こうして同駅と品川線の目白駅とを結ぶ豊島線の構想が本格的に検討される」、なるほど。 「そもそも池袋は都心から外れた農村でしかなく、鉄道・行政当局から期待されていた駅・街ではなかった。たまたま駅が開設されたに過ぎなかった」、驚かされた。 小川 裕夫氏による「池袋、「たまたま開設」の駅が生んだ街の大発展 当初は貨物の拠点、にぎわいは大塚が上だった」 東洋経済オンライン (その1)(池袋、「たまたま開設」の駅が生んだ街の大発展 当初は貨物の拠点、にぎわいは大塚が上だった、「オタクに優しい秋葉原」はもうない…ぼったくりで稼ぐ“心の荒んだメイド”が増加したワケ) タウン情報・街並み だが、この2社が池袋駅へとターミナルを変更したことで、鉄道路線が集積。こうした影響もあり、同駅の年間乗降客数は1921年度に大塚駅を抜き、600万人を突破した。 しかし、それでも街のにぎわいは大塚駅のほうが一枚上だった」、「東京進出を狙って計画された私鉄の多くは、大塚もしくは巣鴨をターミナルにすることを計画していた」、「池袋」の地位はまだまだ低かったようだ。 「東口には、百貨店の老舗・白木屋と京浜電鉄(現・京浜急行電鉄)系列の京浜百貨店の合弁で1935年に菊屋デパートがオープン。同店は1940年に武蔵野鉄道が買収し、店名は武蔵野デパートとなる」、「池袋駅東口が少しずつ復興を遂げていく中、東口のシンボルでもある武蔵野デパートは西武百貨店と改称し、店舗も増改築を繰り返しながら着々と存在感を大きくしていった」、だいぶ現在に近づいたようだ。 「1950年には東横百貨店(現・東急百貨店)が西口に出店。つまり、「東は西武で、西、東急」の時代があった」、とは初めて知った。「東武も西口に百貨店を計画。しかし、地元商店街の反対により、アミューズメントビルの東武会館として計画を縮小して進めざるを得なかった。こうした経緯もあり、東武百貨店は一時的に東武会館のテナントとして入居している。その後、東武は地元商店街からも理解を得て、百貨店事業を拡大。隣接する東横百貨店を買収して南館とした」、 「「東武も西口に百貨店を計画。しかし、地元商店街の反対により、アミューズメントビルの東武会館として計画を縮小して進めざるを得なかった」、「その後、東武は地元商店街からも理解を得て、百貨店事業を拡大。隣接する東横百貨店を買収して南館とした」、当時も「地元商店街」からの「反対」があったとは初めて知った。 「来年2023年、池袋駅は開業120年を迎える」、「飛躍の原点ともいえる西武が揺れる中、池袋駅と街はどのような変化を遂げるのか」、大いに注目される。 日刊SPA!「「オタクに優しい秋葉原」はもうない…ぼったくりで稼ぐ“心の荒んだメイド”が増加したワケ」 「秋葉原がオタクの街から繁華街へと様子を変え始めたのは、’10年代後半のことだ。「メイド通り」と呼ばれるエリアにはコスプレ姿の若い女性たちがズラリと並び、通行人に対して常に声をかけていた」、この頃はまだ初々しい「メイド」もいた。「しかし繁華街の宿命か、ぼったくりや風営法に違反する営業が横行し、’21年5月には過剰な接待を行っていたメイドカフェ5店舗が摘発。現在、秋葉原の路上に立つ客引きの数は減っているようにも思う」、イヤな時代になったものだ。 「ターゲットをサラリーマンから外国人観光客と地方から来る客に替えたみたい」、なるほど。 「秋葉原では心の荒んだメイドに注意が必要だ」、全くイヤな時代になったものだ。
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スタートアップ(その8)(VCが決してやってはいけない3つの致命的ミス 「チームも製品も素晴らしい」だけでは足りない、国税ショックに揺れるスタートアップの報酬制度 ストックオプション課税で予想外の「見解」) [イノベーション]

スタートアップについては、昨年5月1日に取上げた。今日は、(その8)(VCが決してやってはいけない3つの致命的ミス 「チームも製品も素晴らしい」だけでは足りない、国税ショックに揺れるスタートアップの報酬制度 ストックオプション課税で予想外の「見解」)である。

先ずは、本年5月12日付け東洋経済オンラインが掲載したアンドリーセン・ホロウィッツ マネージング・パートナーのスコット・クポール氏による「VCが決してやってはいけない3つの致命的ミス 「チームも製品も素晴らしい」だけでは足りない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/661596
・『起業家が資金調達を考える際の有力な候補の1つに、ベンチャーキャピタルがある。 シリコンバレーの著名なVC、アンドリーセン・ホロウィッツの最初期のメンバーであり、起業家としての経験も持つスコット・クポール氏の著書『VCの教科書』から、VCがアーリー・ステージの投資先をどのように判断するのかについて、抜粋・編集して3回に分けてお届けしよう。今回は3回目となる』、興味深そうだ。
・『なぜ大規模な市場が好ましいのか?  VCがアーリー・ステージで投資機会の評価に用いる基準として、人、製品、市場がある。 前々回では人について、前回は製品について見た。ここでは、「市場」について解説しよう。 VCにとって最も重要なものは、創業者が追求する市場機会の最終的な規模ということがわかっている。 不動産についての格言が、「1に立地、2にも3にも立地」ならば、VCの場合は、「1に市場規模、2にも3にも市場規模」だ。大規模な市場が好ましく、小規模な市場は好ましくない。 その理由は? 大きな市場のルールは、べき乗則カーブと「本塁打率」の説明から直接導かれる。 VCが正解よりも誤りが多いならば、また、VCとしての成功(または失敗)が投資の20~30%をホームランできるかどうかの結果であるならば、勝者の規模だけが重要になる。 ベンチャー投資の犯す誤りは、カテゴリーを正確に選びながら、正しくない企業を選ぶことだ。それに加えて、あと2つの誤りがある。) ひとつは、正しい企業を選ぶが、誤った市場を選ぶことだ。つまり、優良で利益の大きなビジネスを行い、チームも製品も素晴らしいが、さほど大きくない市場にいる企業に投資することだ。 チームがいかに業務を立派に遂行しても、収益が5000万~1億ドルに達しなければ、その企業の時価総額は伸びない。 もうひとつは、不作為の罪は作為の罪よりも重いということだ。 最終的に失敗に終わった企業にVCが投資することはかまわない。このビジネスではよくあることだ。 やってはいけないことは、次のフェイスブックになる企業に投資しないことだ。このビジネスで成功を収めるためには、リスクを回避してはいけない』、「このビジネスで成功を収めるためには、リスクを回避してはいけない」、なるほど。
・その市場は、必要なリターンをもたらしうるか?  以上の点から、VCは大きな市場機会に投資すべきだという自明の理が導かれる。小さな市場で成功を収めても、ビジネス継続のために必要なリターンを、決してVCにもたらさない。 たとえば、スタートアップの成功の可能性を評価する際、VCは市場規模を「そんなの大した問題じゃない」と考えることがよくある。 だが素晴らしいチームと素晴らしい製品はいいとして、市場規模がビッグビジネスを維持するのに十分でなければ、それは大した問題、ということになる。 ベンチマーク・キャピタルの創業者アンディ・ラクレフはこう言っている。平凡なチームでも巨大な市場にいれば企業は成功できるが、素晴らしいチームでも貧弱な市場にいては必ず失敗する。 市場規模を適切に評価することが、なぜそれほど難しいのか?それは、市場の実際の大きさは、投資する時点ではわからないことが多いからだ。だから、市場を評価する際に、VCはさまざまな形で自らをごまかしている。 新製品が既存製品にそのまま置き換わる場合、市場規模は最も評価しやすい。 例としてデータベースを挙げよう。 オラクルはデータベース市場では巨大企業なので、その市場機会をつかもうとするスタートアップは、大きな市場で勝負することになると難なく推測できる。いとも簡単なことだ。 だが、データベース市場全体が、時間がたつにつれてどう展開するのかはわからない。) データベースの機能に取って代わる新たなテクノロジーが現れて、市場を空洞化することになるのか? それとも、クラウド・コンピューティングがワークフローで主流となるにつれて、データベースを必要とするアプリケーションの数が飛躍的に増加し、結果としてデータベース市場が今以上に大きくなるのか? どちらも良い質問だが、おそらくほとんどのVCは、データベース市場を狙うスタートアップには大企業を築くのに十分な規模の市場があるので、もし成功すれば投資のホームランになると考えるだろう』、「ほとんどのVCは、データベース市場を狙うスタートアップには大企業を築くのに十分な規模の市場があるので、もし成功すれば投資のホームランになると考えるだろう」、なるほど。
・『エアビーアンドビーの市場規模は?  市場規模の見積もりをさらに難しくするのは、現在存在しない市場を狙うスタートアップや、テクノロジー的な制約があるためまだ規模が小さい市場を狙うスタートアップがもたらす影響だ。 たとえばエアビーアンドビーを考えてみよう。同社が最初に資金を集めたとき、使用した事例の大部分は、他人の家のソファで寝る人たちだった。 そのような、ひどくお腹を空かせている大学生がどれくらいいるのか調べればーーハンバーガーやチーズやラーメン、つまり、お腹を空かせた大学生が購入するその他製品の市場規模と同じようにーー論理的に結論を下すこともできただろう。 だが、時間がたつにつれて、サービスがほかの要素にまで拡大したらどうなるだろう?そのときはおそらく、既存のホテル市場が、全体的な市場規模の代わりとなるだろう。 なるほど、だがエアビーアンドビーの予約しやすさや低価格により、それまであまり旅行しなかった人たちが旅行するようになったらどうだろうか? 宿の必要な旅行者の市場が、エアビーアンドビーの登場によってむしろ拡大したとしたら? 今になってみると、エアビーアンドビーの成功は、これまでなかった旅行宿泊施設の新形態のおかげで、市場規模が拡大したことが背景にあると思われる。 幸運をつかむか逃すかは、VCの市場規模を理解する能力、発展途上の新市場でテクノロジーの果たす役割について創造的に考える能力によって決まるのだ』、「幸運をつかむか逃すかは、VCの市場規模を理解する能力、発展途上の新市場でテクノロジーの果たす役割について創造的に考える能力によって決まるのだ」、いずれも、そんなに容易いことではないようだ。

次に、6月12日付け東洋経済オンライン「国税ショックに揺れるスタートアップの報酬制度 ストックオプション課税で予想外の「見解」」を紹介しよう。
・『「われわれの想定とは、まったく違う税務上の解釈となりました」──。6月上旬、都内に本社を置くあるスタートアップ企業の経営陣は、社員にそのような説明を行った。 事の発端は5月29日、あるストックオプション(SO)の税率をめぐって国税庁が示した見解にある。SOはあらかじめ決めた価格で自社株を買える権利で、「株式購入権」ともいう。そのうち「信託型SO」が焦点となった。 スタートアップ関係者らを集めて開かれた説明会の場で国税庁の担当者は、「(SOの)権利行使と株式の交付が行われている場合、給与課税の対象となり、源泉所得税の納付が必要」などと指摘。これにより、約800社に及ぶとされる信託型SOの発行企業には突如、追加の税負担が生じることとなった。冒頭の会社もその一社だ』、「約800社に及ぶとされる信託型SOの発行企業には突如、追加の税負担が生じることとなった」、大変な混乱だ。
・『株売却時の課税のみと考えられていた  SOは通常、役員や社員に直接与えられる。それに対して信託型では、信託会社などにオプションプール(SOの交付枠)として割り当て、信託契約期間中や契約終了時に、企業が指定する役員や社員などに同一条件のSOを交付する。 発行時に、誰にどれだけ権利を与えるかを決めておく必要がなく、SOの発行後に入社した人も同一条件でSOを得ることができる公平性などを売りにしていた。従来この信託型SOは、SOの行使時に給与所得課税は行われず、株式売却時の譲渡益課税のみになるとの見方が広がっていた。 ところが国税庁が示した見解に沿えば、役職員が信託型SOを行使した時点で、給与所得として最大55%の課税がなされる。20%の譲渡益課税が生じる前の時点で、キャッシュインなき課税が発生する。 SOの行使と株式の売却でキャピタルゲインを得て20%の納税をすでにしていても、過去5年にさかのぼり、給与所得として追徴課税される。年収4000万円を超えていた場合は、最高税率55%が課せられる。 「所属会社の税解釈を信じてお金を使い切っていた場合、納税のために家などの資産を手放さざるをえない人が出てくるのでは」。スタートアップ関係者からは不安の声が上がる。 信託型SOを導入していた会社やそれを支援していたコンサルティング会社などは行使時点の課税について、一貫して負担は生じないと見ていた。しかし国税庁の説明で、それがひっくり返ることとなった』、「従来この信託型SOは、SOの行使時に給与所得課税は行われず、株式売却時の譲渡益課税のみになるとの見方が広がっていた。 ところが国税庁が示した見解に沿えば、役職員が信託型SOを行使した時点で、給与所得として最大55%の課税がなされる。20%の譲渡益課税が生じる前の時点で、キャッシュインなき課税が発生する。 SOの行使と株式の売却でキャピタルゲインを得て20%の納税をすでにしていても、過去5年にさかのぼり、給与所得として追徴課税される。年収4000万円を超えていた場合は、最高税率55%が課せられる」、「コンサルティング会社など」の見方を勝手に信じていたのが悪いともいえる。
・『信託型ストックオプションでの課税の流れ  源泉所得税を徴収して納付する立場の企業では、会計上の損失計上が必要になる可能性もある。 日本公認会計士協会や企業会計基準委員会(ASBJ)の見解次第では、信託型SOを発行し、すでに役職員による行使が行われていた場合、追加の税負担を会計上で処理しなければならなくなる。上場企業では、人工知能(AI)開発で知られるPKSHA Technologyなどで、その影響が大きいとみられている。 いったいなぜ、このような事態になってしまったのか。あるベンチャーキャピタルの幹部は、「信託型SOはもともと課税関係がグレーだった。今回の件を機に抜け道がふさがれたのはよかった」と指摘する。 一方で投資先が信託型SOを導入している別のベンチャーキャピタルの幹部は、「多くの会社が慎重に調べて信託型SOを導入している。課税関係はクリアだったと信じており、国による後出しじゃんけんは許せない。『税金が安い』と推奨してきたコンサル会社の罪も大きい」と憤る』、「「信託型SOはもともと課税関係がグレーだった。今回の件を機に抜け道がふさがれたのはよかった」と指摘」、「『税金が安い』と推奨してきたコンサル会社の罪も大きい」と憤る」、なるほど。
・『SOの環境整備では一歩前進  立場によって見方は分かれるが、国税庁は説明会当日、日本のスタートアップにとって追い風となるSOの環境整備策も公表している。それは一定の要件を満たすことで、税制の優遇措置を受けることができる「税制適格SO」の行使時における新たな株価算定ルールだ。 従来は明確な算定式がなく保守的な運用が行われていたが、新ルールによって、20%の譲渡益課税のみで済む税制適格SOが発行しやすくなる。信託型SOの特長だった低い行使価格で、税制適格SOを発行できるメリットが生まれる。 自社でも信託型SOを発行していたフォースタートアップスの志水雄一郎社長は、「株価算定ルールが新しくなったのは画期的。既存の信託型SOを新しくして、税制適格SOの仕組みにつくり直すところが多くなるだろう」と予測する。 SOの環境整備をめぐっては、政治による後押しも進む。自民党は5月に公表した提言で、株主総会の決議事項であるSOの行使期間や期間に関する承認を取締役会に委任できるよう会社法を改正することなどを求めた。政府の側も、使い勝手のよいSOの制度設計はスタートアップの人材獲得力向上に欠かせないという意識を持っている。 「国税ショック」を機に、日本のスタートアップの活性化に弾みをつけられるか』、「日本のスタートアップにとって追い風となるSOの環境整備策も公表している。それは一定の要件を満たすことで、税制の優遇措置を受けることができる「税制適格SO」の行使時における新たな株価算定ルールだ」、「「株価算定ルールが新しくなったのは画期的。既存の信託型SOを新しくして、税制適格SOの仕組みにつくり直すところが多くなるだろう」と予測する」、こんな「優遇措置」も出していたようだ。
タグ:「約800社に及ぶとされる信託型SOの発行企業には突如、追加の税負担が生じることとなった」、大変な混乱だ。 東洋経済オンライン「国税ショックに揺れるスタートアップの報酬制度 ストックオプション課税で予想外の「見解」」 「幸運をつかむか逃すかは、VCの市場規模を理解する能力、発展途上の新市場でテクノロジーの果たす役割について創造的に考える能力によって決まるのだ」、いずれも、そんなに容易いことではないようだ。 「ほとんどのVCは、データベース市場を狙うスタートアップには大企業を築くのに十分な規模の市場があるので、もし成功すれば投資のホームランになると考えるだろう」、なるほど。 「このビジネスで成功を収めるためには、リスクを回避してはいけない」、なるほど。 スコット・クポール氏の著書『VCの教科書』 スコット・クポール氏による「VCが決してやってはいけない3つの致命的ミス 「チームも製品も素晴らしい」だけでは足りない」 東洋経済オンライン (その8)(VCが決してやってはいけない3つの致命的ミス 「チームも製品も素晴らしい」だけでは足りない、国税ショックに揺れるスタートアップの報酬制度 ストックオプション課税で予想外の「見解」) スタートアップ 「従来この信託型SOは、SOの行使時に給与所得課税は行われず、株式売却時の譲渡益課税のみになるとの見方が広がっていた。 ところが国税庁が示した見解に沿えば、役職員が信託型SOを行使した時点で、給与所得として最大55%の課税がなされる。20%の譲渡益課税が生じる前の時点で、キャッシュインなき課税が発生する。 SOの行使と株式の売却でキャピタルゲインを得て20%の納税をすでにしていても、過去5年にさかのぼり、給与所得として追徴課税される。年収4000万円を超えていた場合は、最高税率55%が課せられる」、 「コンサルティング会社など」の見方を勝手に信じていたのが悪いともいえる。 「「信託型SOはもともと課税関係がグレーだった。今回の件を機に抜け道がふさがれたのはよかった」と指摘」、「『税金が安い』と推奨してきたコンサル会社の罪も大きい」と憤る」、なるほど。 「日本のスタートアップにとって追い風となるSOの環境整備策も公表している。それは一定の要件を満たすことで、税制の優遇措置を受けることができる「税制適格SO」の行使時における新たな株価算定ルールだ」、 「「株価算定ルールが新しくなったのは画期的。既存の信託型SOを新しくして、税制適格SOの仕組みにつくり直すところが多くなるだろう」と予測する」、こんな「優遇措置」も出していたようだ。
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人工知能(AI)(その15)(「ChatGPTの生みの親」爆発的人気に透ける葛藤 毀誉褒貶のオープンAIだが 拡大は止まらない、ChatGPTの情報は画一的 「生成系AI」は民主主義社会を支えるツールたり得るか、AIに潜む「蛾」の正体 リスクが脅威になる前にすべきこと) [イノベーション]

人工知能(AI)については、本年4月17日に取上げた。今日は、(その15)(「ChatGPTの生みの親」爆発的人気に透ける葛藤 毀誉褒貶のオープンAIだが 拡大は止まらない、ChatGPTの情報は画一的 「生成系AI」は民主主義社会を支えるツールたり得るか、AIに潜む「蛾」の正体 リスクが脅威になる前にすべきこと)である。

先ずは、本年4月19日付け東洋経済オンライン「「ChatGPTの生みの親」爆発的人気に透ける葛藤 毀誉褒貶のオープンAIだが 拡大は止まらない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/666240
・『爆発的に普及する対話型AIのChatGPT。日本企業の中にも社内での業務や事業に活用しようという動きがある一方で、サイバーセキュリティや著作権法上のリスクもある。4月17日発売の『週刊東洋経済』では「ChatGPT 仕事術革命」を特集。「第4次AIブーム」の本格的な到来に備えて会社員が知るべき生成AIの今を追った。(この記事は本特集内にも収録されています) ChatGPTの登場で一躍有名になったのが、人工知能(AI)の研究開発を行う米オープンAIだ。 社会を大変革する技術を生み出した同社だが、足元ではその潜在的リスクの大きさや、データ収集の違法性をめぐって批判にさらされてもいる。いったい、どんな素性の企業なのか』、興味深そうだ。
・『当初は家庭用ロボット向けの開発も  オープンAIは、2015年に非営利法人として設立された。共同議長に就いたのは、現在CEOを務めるサム・アルトマンと、米テスラなどのCEOとして知られるイーロン・マスクだ。 今でこそ大規模言語モデル(LLM)の開発で知られる同社だが、設立翌年に発表された「テクニカルゴールズ」を見ると、それに特化していたわけではない。 ゴールとして定めたのが、家庭用ロボット向けのアルゴリズム導入、自然言語を理解するAIの構築、単一AIでのさまざまなゲーム解決など。 設立当初はとくに、ゲーム解決に必要な「強化学習」のための製品を複数出していた。強化学習とは、与えられた条件下で最大限の結果が出るようにAIの行動を最適化させる手法のこと。 例えば、2016年に発表された「OpenAI Gym」は、ユーザーが開発したAIが強化学習するのを支援するツールだ。2018年には、強化学習をさせたオンライン対戦ゲーム『Dota 2』のAIシステムを発表し、翌年には人間の世界王者に勝利している。 当時のオープンAIを知るゲーム開発者は「多くのゲーム会社が、同社のツールを導入してソフトに搭載するAIの開発をしていた。言語モデルの開発をメインにしている印象はなかった」と振り返る。 ただ実際は、並行して言語モデルの開発も進めていた。2018年には、言語モデルの初代となるGPTを発表。翌2019年にはGPT-2、2020年にはGPT-3と、モデルの表現力や性能を更新していった。今年3月には、大方の予想よりも早くGPT-4を発表し、その飛躍的な性能向上を見せつけた。) オープンAIが言語モデルの開発に邁進するのは、同社がミッションとして掲げる「AGIが全人類に利益をもたらすことを確実にすること」を達成するためだ。 AGIとは「汎用人工知能」のこと。限られた用途でしか使えない現状のAIとは異なり、人間に匹敵する、あるいは超人間的な知性を備える。 今年2月に公表された「Planning for AGI and beyond」という文書には、AGIに関するアルトマンCEOの考え方が記されていた。曰(いわ)く、その実現により、世界経済や新しい科学的知識の発見を活性化させ、人間の創造性にも大きな力を与える、という。 AGIの実現には今後複数の技術的ブレークスルーが必要だが、言語モデルの進化はその重要な道のりの1つ、というわけだ』、「オープンAIは、2015年に非営利法人として設立。共同議長に就いたのは、現在CEOを務めるサム・アルトマンと、米テスラなどのCEOとして知られるイーロン・マスクだ」、「マスク」氏が「共同議長」だったとは初めて知った。「設立当初はとくに、ゲーム解決に必要な「強化学習」のための製品を複数出していた。強化学習とは、与えられた条件下で最大限の結果が出るようにAIの行動を最適化させる手法」、「「多くのゲーム会社が、同社のツールを導入してソフトに搭載するAIの開発をしていた。言語モデルの開発をメインにしている印象はなかった」と振り返る。 ただ実際は、並行して言語モデルの開発も進めていた」、「2018年には、言語モデルの初代となるGPTを発表。翌2019年にはGPT-2、2020年にはGPT-3と、モデルの表現力や性能を更新していった。今年3月には、大方の予想よりも早くGPT-4を発表し、その飛躍的な性能向上を見せつけた。) オープンAIが言語モデルの開発に邁進するのは、同社がミッションとして掲げる「AGIが全人類に利益をもたらすことを確実にすること」を達成するためだ。 AGIとは「汎用人工知能」のこと。限られた用途でしか使えない現状のAIとは異なり、人間に匹敵する、あるいは超人間的な知性を備える」、「「Planning for AGI and beyond」という文書には、AGIに関するアルトマンCEOの考え方が記されていた。曰(いわ)く、その実現により、世界経済や新しい科学的知識の発見を活性化させ、人間の創造性にも大きな力を与える、という。 AGIの実現には今後複数の技術的ブレークスルーが必要だが、言語モデルの進化はその重要な道のりの1つ、というわけだ」、「汎用人工知能」を目指した動きとは初めて知った。
・『AGI実現のための「公共財」を提供  2018年の「オープンAI憲章」によれば、同社は社会がAGI実現への道を歩むための「公共財」を提供するとし、従業員や利害関係者により全人類への利益供与を損なう事態を最小限にするという。オープンAIが非営利の研究開発機関として設立されたゆえんだ。) ただ、今のオープンAIはこの憲章と異なる方向に突き進んでいるようにみえる。 2019年には非営利法人である本体の子会社として、営利企業である「オープンAI LP」を設立。また同年、米マイクロソフトが同社に対する10億ドルの出資と包括的パートナーシップを結ぶことを発表している。 マイクロソフトは2020年9月、新しいAIサービスを開発するためGPT-3の独占的ライセンスを締結。WordやExcelといったオフィス製品を含めた製品群へのAI搭載を加速させていく計画だ。今後数年間で数十億ドルの追加出資を行うことも決まっている。 膨大な計算能力が必要なAIシステムの開発には多くの設備投資が必須で、オープンAIにとってこの提携のうまみは大きい。ただ、同社が資本主義に組み込まれることを批判する声は少なくない。 2018年にオープンAIの理事会を離れたイーロン・マスクは、3月24日のツイッター投稿で「マイクロソフトは投資の一環でオープンAIのコード基盤全体への独占的なアクセス権を獲得した。ChatGPTは完全に(同社のクラウドサービスである)Azureの中に収まっており、いざとなればすべてを手に入れることができる」と警鐘を鳴らした』、「今のオープンAIはこの憲章と異なる方向に突き進んでいるようにみえる。 2019年には非営利法人である本体の子会社として、営利企業である「オープンAI LP」を設立。また同年、米マイクロソフトが同社に対する10億ドルの出資と包括的パートナーシップを結ぶことを発表している。 マイクロソフトは2020年9月、新しいAIサービスを開発するためGPT-3の独占的ライセンスを締結。WordやExcelといったオフィス製品を含めた製品群へのAI搭載を加速させていく計画だ。今後数年間で数十億ドルの追加出資を行うことも決まっている。 膨大な計算能力が必要なAIシステムの開発には多くの設備投資が必須で、オープンAIにとってこの提携のうまみは大きい」、これに対し、「オープンAIの理事会を離れたイーロン・マスクは、3月24日のツイッター投稿で「マイクロソフトは投資の一環でオープンAIのコード基盤全体への独占的なアクセス権を獲得した。ChatGPTは完全に(同社のクラウドサービスである)Azureの中に収まっており、いざとなればすべてを手に入れることができる」と警鐘を鳴らした」、「オープン」な開発と、「巨額の設備投資」と有料サービスでの回収の関係は、確かに難しい問題だ。 
・『安全性に対する懸念  足元では、安全性に対する懸念も表明されている。3月28日には、AIの安全性を研究するFuture of Life Institute(FLI)が、GPT-4よりも強力なAIシステムの開発・運用を6カ月以上停止することを呼びかけ、AIの急速な進化に警鐘を鳴らした。イーロン・マスクや米アップル共同創業者のスティーブ・ウォズニアックら、1000名以上が署名したとされる。 同31日には、イタリアのデータ保護当局がChatGPTの利用の一時禁止を発表。同社がAIの学習に用いるデータ処理が法令に違反していることや、青少年への悪影響などがその理由だ。 こうした動きを受けてか、オープンAIは4月5日に「強力なAIを安全に、広く有益な形で維持することを約束する」などと記した声明を発表している。 ただ、逆風下でも足元の勢いに急ブレーキがかかる様子はない。外部の企業が開発したアプリなどと接続できるChatGPTのAPIが公開されたことで、機能を搭載した製品やサービスは加速度的に増えている。この先にあるのは「全人類への利益」か、巨大企業による「強大な技術の独占」か。行方を注視することが必要だ』、「足元では、安全性に対する懸念も表明されている。3月28日には、AIの安全性を研究するFuture of Life Institute(FLI)が、GPT-4よりも強力なAIシステムの開発・運用を6カ月以上停止することを呼びかけ、AIの急速な進化に警鐘を鳴らした。イーロン・マスクや米アップル共同創業者のスティーブ・ウォズニアックら、1000名以上が署名したとされる。 同31日には、イタリアのデータ保護当局がChatGPTの利用の一時禁止を発表。同社がAIの学習に用いるデータ処理が法令に違反していることや、青少年への悪影響などがその理由だ。 こうした動きを受けてか、オープンAIは4月5日に「強力なAIを安全に、広く有益な形で維持することを約束する」などと記した声明を発表している」、今後はどう展開していくのだろう。

次に、5月25日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏による「ChatGPTの情報は画一的、「生成系AI」は民主主義社会を支えるツールたり得るか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/323363
・『ChatGPTは対話型だが、私が誰であるかを知らない  ChatGPTのような対話型の生成系AIを使うと、多くの人はしばしば、自分が深く理解されていると感じてしまう。 個人個人が投げかける質問や指示に、それぞれ異なる回答を出してくれるからだ。 これまでのマスメディアとは全く違う!ChatGPTは、利用者の個別事情を理解して対応してくれる! こうした思いを抱くかもしれないが、しかしこれは錯覚にすぎない。 ChatGPTなどが、個々人の多様な事情や考え方を学習したり記憶したりする能力は限定的で、個々人に応じてや多角的な視点で答えをだすまでの能力はない。 対話型生成系AIを使う場合に認識すべき最も重要な点は、このことだ。私はChatGPTがどのようなものであるかをおよそは知っている。しかし、ChatGPTは私が誰かを知らないのだ。)(これ以降は、有料だが、今月の閲覧本数残り4本までは無料。) これを理解するには、あなたがよろず相談人になったと想像すればよい。ChatGPTの利用者は、現在約1億人と言われるので、1億人があなたのところに相談に押し寄せると想像しよう。 突如として誰か一人があなたの前に現れ、「この問題をどう解決したらよいのか、アドバイスがほしい」と相談を持ち掛ける。しかし、あなたはその人が誰であるかを全く知らない。だから、具体的なアドバイスを出すことはできない。 この状況は、生成系AIの場合にも同じだ。1億人が押し寄せてくる。そして、それぞれが自分だけの困りごとや疑問・質問への答えや、アドバイスを求めてくる。 しかし、AIは、その一人一人が誰であるかを知らない。だから、当然のことながら、それぞれの個々の状況に応じた具体的なアドバイスを提供することはできない』、「AIは、その一人一人が誰であるかを知らない。だから、当然のことながら、それぞれの個々の状況に応じた具体的なアドバイスを提供することはできない」、言われてみれば、その通りだ。
・『マスメディアや検索エンジンより親身になってくれるように思える  マスメディアも、全ての視聴者や読者に向けて同じ情報を発信している。私たちはそれをよく知っている。それに対して、対話型生成系アプリは、対話形式をとる。そして、個々の場合に、異なる情報を提供している。だから、前記のような錯覚に陥るのだ。 これは従来の検索エンジンとも違う点だ。検索エンジンは、私たちが問いを投げ掛けると、候補のサイトを一覧で示し、それを私たちに引き渡して去ってしまう。だから、検索エンジンは私たちに対して、相談に乗ってくれるような感覚を与えない。検索エンジンは単に情報を提供し、それ以上のことはしない これに対して対話型AIは、利用者の個々の問いに対して真剣に考え、適切な回答を見つけてくれているかのように感じるのだ。こうした体験は私たちにとって新鮮で、それが対話型生成AIの大きな魅力となっている。 しかし、ここで忘れてならないのは、対話型AIが私たちに与える「こちらを見て相談に乗ってくれる」感覚は、実は単なる錯覚に過ぎないという事実だ。中身は同じなのだが、利用者の質問文や指示文にあわせて、見掛けを変えているだけだ』、「対話型AIは、利用者の個々の問いに対して真剣に考え、適切な回答を見つけてくれているかのように感じるのだ。こうした体験は私たちにとって新鮮で、それが対話型生成AIの大きな魅力となっている。 しかし、ここで忘れてならないのは、対話型AIが私たちに与える「こちらを見て相談に乗ってくれる」感覚は、実は単なる錯覚に過ぎないという事実だ。中身は同じなのだが、利用者の質問文や指示文にあわせて、見掛けを変えているだけだ」、なーんだ。
・『一時的には1対1だが記憶の保持は限定的  対話型AIは、一定の時間内であれば、私のことを覚えている。 これによって、「先ほどの回答を少し変えて」とか、「先ほどの質問の後半を変えて」などという問い掛けをすることが可能になる。同じことを何度も繰り返す必要がなくなるため、対話がスムーズに進む。 しかし、この記憶の保持は限定的だ。ChatGPT4の場合は、比較的長い間、多くの回答や質問を記憶することができる。その期間内であれば、私は1億分の1の利用者ではなく、まるで二人だけで話をしているかのように感じられる。それまでの対話の内容に基づく回答が得られるためだ。 しかし、一定の時間が過ぎると、私についての記憶は消えてしまい、私は再び1億分の1の利用者となってしまう』、「ChatGPT4の場合は、比較的長い間、多くの回答や質問を記憶することができる。その期間内であれば、私は1億分の1の利用者ではなく、まるで二人だけで話をしているかのように感じられる。それまでの対話の内容に基づく回答が得られるためだ。 しかし、一定の時間が過ぎると、私についての記憶は消えてしまい、私は再び1億分の1の利用者となってしまう」、やむを得ないようだ。
・『プライバシー保護や公平性の観点からというが  これは、AIが利用者個々の特性や個人情報を記憶することなく、公平に対話するための重要なメカニズムであると同時に、私たちのプライバシーを保護するための重要な機能でもあるとされる。 個別の事情に応じた回答や情報を得られるようにするため、生成系AIを使う場合には、AIに特定の役割を規定するのがよいという提案がある。たとえば「学校の先生になったつもりで答えてほしい」と指示することだ。 こうした規程はもちろん可能だが、筆者がChatGPTにこの方法の有用性を尋ねてみると、「あまり意味がない」との答えが返ってきた。AIに特定の視点や立場を強制し、個々のユーザーに対する公平性を損なう可能性があるからだという。 それよりも、自己紹介のように、自分自身の視点や立場を説明したほうがよいだろう。 つまり、対話型生成系AIを活用する場合には、記憶保持の限定性を理解し、それに合わせて対話することが求められる。一時的な記憶保持の恩恵を享受しつつ、同時にその限定性とそれが意味するものを理解し、適切な使用を心掛ける必要がある』、「対話型生成系AIを活用する場合には、記憶保持の限定性を理解し、それに合わせて対話することが求められる。一時的な記憶保持の恩恵を享受しつつ、同時にその限定性とそれが意味するものを理解し、適切な使用を心掛ける必要がある」、その通りのようだ。
・『マスメディアより平板で画一的情報 懸念される民主主義社会への影響  生成系AIの回答は、われわれが想像する以上に限定的だ。それは画一的、さらにいえば平板と表現すべきものだろう。要するに、何の目新しさもない、毒にも薬にもならない情報だ。 一般的な問い掛けに対して、よく知られた情報や一般的な答えを提供してくれるのだが、それが利用者の主張や考えと全く逆の考えに基づくものであることもしばしばある。 また特定の視点を主張するような文章を生成することを求めても、その要求が必ずしも満たされるわけではない。筆者も不満や腹立たしさを感じることがある。 だが、それは、これまで述べてきた対話型AIの仕組みからすると当然のことだ。 マスメディア、例えばテレビや新聞などは、全ての視聴者や読者に同一の情報を発信しているものの、その中で個人の意見や少数意見を紹介してくれることがある。 対話型生成系AIの場合、「この問題について、少数意見はどんなものがありますか?」と聞くことはできるが、どの程度の少数意見までカバーできるかは、AIの設計や学習データに大きく依存する。 「日本国憲法第9条は必要か?」といった具体的な問題についても、AIが多角的な視点を提供することは保証されていない。 このようなメディアの登場は、多様な考え方や少数意見の尊重が前提になっている民主主義社会にどのような影響を与えるのだろうか? われわれはまだ手探り状態であり、この問題に対する答えを見いだすことができないでいる。生成系AIが人類に投げ掛けた最も大きな問題は、このことだろう』、「「日本国憲法第9条は必要か?」といった具体的な問題についても、AIが多角的な視点を提供することは保証されていない。 このようなメディアの登場は、多様な考え方や少数意見の尊重が前提になっている民主主義社会にどのような影響を与えるのだろうか? われわれはまだ手探り状態であり、この問題に対する答えを見いだすことができないでいる。生成系AIが人類に投げ掛けた最も大きな問題は、このことだろう」、なるほど。

第三に、6月23日付け日経ビジネスオンラインが掲載したロバストインテリジェンス共同創業者の大柴 行人氏による「AIに潜む「蛾」の正体 リスクが脅威になる前にすべきこと」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00548/061600009/
・『私が米ハーバード大学の学生だったころ、研究室のあった理工系学部が入る建物「サイエンスセンター」に巨大な物体が設置されていた。1940年代に登場した米国初のコンピューター「Harvard Mark I(以下、マーク1と表記)」だ。私は毎朝、その物体の目の前を歩いて研究室に通っていた。 コンピューターは誕生当初、一部の研究機関だけが利用するとても特殊な装置だった。「ENIAC」や「IBM 701」など、大きな筐体(きょうたい)にたくさんの電子部品が詰まったその姿は、今や手のひらに収まるスマートフォンを日常的に使用する我々からすれば、信じられないほど遠い過去のもののようにも思える。 しかし、その後の半世紀の間に、コンピューターは何度もの革新を経て性能を飛躍的に向上させ、ユーザビリティーも向上した。パーソナルコンピューターの登場、GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)の普及、インターネットの出現、そしてスマホの普及。これら一連の進化によって、コンピューターは今や我々の生活に欠かせない存在となっている。 AI(人工知能)の現状は、コンピューターの黎明(れいめい)期をほうふつとさせる。一部のマニアが研究していただけだったAIが、多くの企業・消費者に活用されるようになり、裾野は急速に広がりつつある。現状は「大規模」言語モデルと呼ばれているモデルについても、コンピューターがそうであったように性能を劇的に向上させつつ、より小規模で安価なモデルが登場する可能性が十分にあるだろう。 さらに、コンピューターがインターネットを介して互いにつながっていったように、すでにAIは様々なアプリケーションをつなぐインターフェースになり始めている。『AI新時代』の幕開けだ』、「現状は「大規模」言語モデルと呼ばれているモデルについても、コンピューターがそうであったように性能を劇的に向上させつつ、より小規模で安価なモデルが登場する可能性が十分にあるだろう」、「コンピューターがインターネットを介して互いにつながっていったように、すでにAIは様々なアプリケーションをつなぐインターフェースになり始めている」、まさに「『AI新時代』の幕開け」のようだ。
・『サイバーセキュリティーの歴史と相似系のAIリスク  冒頭の話には続きがある。マーク1に近づくと奇妙な物体が展示されていることに気づく──。蛾(が)だ。マーク1の計算処理中に機械に混入したもので、ソフトウエアの「バグ(英語で昆虫を指す)」の由来となった。人類史に最も名を残した昆虫と言えよう。 コンピューターの歴史から学べるもう1つの重要な教訓は、技術の進化と普及が進む一方で、常にバグやハッカーとの戦いが続いてきたという事実だ。 初期のコンピューターではハードウエアの故障やソフトウエアのバグが頻繁に発生し、それらを解決するためにエンジニアたちは日夜努力を重ねていた。 そして、インターネットの普及とともに新たなリスク「サイバーセキュリティー」の問題が台頭する。グローバルにつながったネットワークを通じてマルウエアの拡散を目指すハッカーの台頭に対し、多くのプレーヤーが対抗する努力を重ねた。各国政府はサイバーセキュリティーをめぐる行動計画を立て、大企業は専門の部署をつくってこの問題に対処する。そして、研究者やテック企業は攻撃への対応策の開発に努めた。 こうした各ステークホルダー(利害関係者)の努力の歴史を経て、最終的にサイバーセキュリティー産業は世界で30兆円を超えるとされる巨大市場へと成長している。 AIをめぐり今後同じような変化が起きていく。本連載で複数回にわたって紹介してきたように、AIが急速に普及する中で、すでに大きなひずみみが生まれている。AIが他のアプリケーションにつながることによる様々なリスク、対応に追われる大企業、規制に躍起になる各国政府──。既視感があるだろう。 私たちロバストインテリジェンスは2019年から一貫してこの問題に取り組んできた。それはサイバーセキュリティーがわずか数十年で一大産業となったように、AIリスクがAIの拡大とともにサイバーセキュリティーをもりょうがする大きな課題になると考えているからだ。急拡大を続ける「AI新時代の落とし穴」から人類を救うこと、それが我々の使命だ』、「AIが急速に普及する中で、すでに大きなひずみみが生まれている。AIが他のアプリケーションにつながることによる様々なリスク、対応に追われる大企業、規制に躍起になる各国政府──」、「ロバストインテリジェンスは2019年から一貫してこの問題に取り組んできた。それはサイバーセキュリティーがわずか数十年で一大産業となったように、AIリスクがAIの拡大とともにサイバーセキュリティーをもりょうがする大きな課題になると考えているからだ。急拡大を続ける「AI新時代の落とし穴」から人類を救うこと、それが我々の使命だ」、なるほど。
・『社会として、どうAIリスクに向き合うべきか  当然、私たちだけで立ち向かうにはAIリスクは敵として大きすぎる。AIを導入する産業・政府・そして私たちのようなAI技術を持った企業が共同でこの問題に立ち向かっていく必要がある。 (ステークホルダーが共同で問題に対処することが必要の図 はリンク先参照) まず企業の経営層は意識を変革し、AIの持つリスクを経営アジェンダと捉えて向き合うべきだ。これは何よりも、AIの社会実装の流れに乗り遅れず自社の競争力を高める上で不可欠となることだ。前回までの連載で述べてきた通り、実際に先進企業はAI活用とそのリスク管理をセットで進めている。 次に政府は、いわばAIリスクをめぐる「What」や「Why」示す役割を担う。 AIの活用が当たり前となる時代に備え、規制や制度をアップデートしたり、AIという技術のガバナンスについてのスタンダードを積極的に発信したりすべきだ。その際、特にAIという領域においては必ずしも厳しい規制を導入する必要はなく、むしろ技術の激しい変化に対応できる柔軟な仕組みづくりが求められるだろう。 最後にテック企業や研究機関は、実際にAIリスクに対抗するための「How」を示す立場にある。 AIリスクの研究を深め、新たなリスクを予見し、対策となるソリューションを開発するという役割は今後重要性を増すだろう。 また、実際には産業界や政府が持つ情報には限りがあるため、積極的にそれらのセクターに技術的な情報を発信して、それぞれの役割をサポートしていくことも求められる。 AIの社会実装が進み、より「当たり前」になっていく中で、どのステークホルダーが欠けても経済の成長や人々の幸福は実現できないだろう』、「当然、私たちだけで立ち向かうにはAIリスクは敵として大きすぎる。AIを導入する産業・政府・そして私たちのようなAI技術を持った企業が共同でこの問題に立ち向かっていく必要がある」、「企業の経営層は意識を変革し、AIの持つリスクを経営アジェンダと捉えて向き合うべきだ。これは何よりも、AIの社会実装の流れに乗り遅れず自社の競争力を高める上で不可欠となることだ」、「政府は、いわばAIリスクをめぐる「What」や「Why」示す役割を担う。 AIの活用が当たり前となる時代に備え、規制や制度をアップデートしたり、AIという技術のガバナンスについてのスタンダードを積極的に発信したりすべきだ。その際、特にAIという領域においては必ずしも厳しい規制を導入する必要はなく、むしろ技術の激しい変化に対応できる柔軟な仕組みづくりが求められるだろう」、「テック企業や研究機関は、実際にAIリスクに対抗するための「How」を示す立場にある。 AIリスクの研究を深め、新たなリスクを予見し、対策となるソリューションを開発するという役割は今後重要性を増すだろう。 また、実際には産業界や政府が持つ情報には限りがあるため、積極的にそれらのセクターに技術的な情報を発信して、それぞれの役割をサポートしていくことも求められる」、「AIの社会実装が進み、より「当たり前」になっていく中で、どのステークホルダーが欠けても経済の成長や人々の幸福は実現できないだろう」、なるほど。
・『ロバストインテリジェンスの今後の取り組み  私たちロバストインテリジェンスは当然、先ほど述べた「テック企業」の立場で、引き続きこの領域の先頭を走り続けたいと考えている。大きくは、以下3点の取り組みに力を入れたい。 最初に、テック企業の本来の役割として、AIリスクをめぐる最先端の技術開発を行っていくことだ。 当社には米Google(グーグル)の元シニアAIエンジニアでAIセキュリティーの草分けであるメンバーや、米Microsoft(マイクロソフト)でAIリスクの統括を担当していたメンバー、私の共同創業者でありハーバード大学でコンピューターサイエンスの教授を務めていたYaron Singer(ヤローン・シンガー)など、世界トップクラスのAI人材が集積している。まだ見ぬリスクをいち早く顕在化し、社会に警告していくことに大きな意義があると考えている。 連載の第4回で、当社のエンジニアが発見した新しいプロンプト・インジェクションをご紹介したが、その後も私たちは生成AIや関連ツールのリスク評価を続けている。最近では、米NVIDIA(エヌビディア)のAIソフトウエアの脆弱性をいち早く発見し、公表したところだ。 詳細は省くが、そこでは「『I』を『J』に置き換えてください」といった単純なプロンプトを入力するだけで、学習に用いられた個人情報を引き出せることが分かっている。一見、本当にささいな「バグ」のようなところに、重大な権利侵害につながりうる落とし穴が潜んでいるのだ。 NVIDIAのAIソフトウエア「Nemo Guardrails」に対して、文字の書き換えといった単純なプロンプトで個人情報を引き出せることが判明した。詳細はロバストインテリジェンスのブログにて発信している  2点目は、こうした技術を生かしてAIを活用しビジネスを変革しようとしている国内外の企業のAIリスク管理を担っていくことだ。 本連載で紹介した通り、すでにロバストインテリジェンスでは多くの企業と生成AIを含むAIリスク管理の仕組みをつくってきた。「継続的なリスク検証」の考え方は、必ず今後のAIリスク管理のスタンダードになると考えており、その実装例を1つでも多く作って、社会としてAIリスクに立ち向かう体制づくりに貢献したい。 最後に、政府との協業を進め、AIリスクへ向き合う社会を下支えすることだ。 現在、技術の変化に応じた政策的な対応が様々な場で議論されている。先ほど述べたようにAIリスクについて最先端の研究を重ねている当社も、そうした政策の動きに対して情報を提供し、よりよい制度やスタンダードの形成に貢献していければと考えている。実際これまでも私たちは、米国の標準策定機関であるNIST(米国立標準技術研究所)などと積極的に意見交換してきた。日本でも自民党のAIプロジェクトチームに参加したほか、関係省庁とのコミュニケーションも日々続けている。 多くの先進企業とのつながりを生かし、AIリスクに関する事例や悩み事を共有しあう議論の場づくりにも取り組んでいる。そうした場の成果も積極的に政府とも共有していきたい。 ロバストインテリジェンスの掲げる「AI Integrity」という理念は、AIリスクを除去し、誰もが信頼してAIシステムと向き合える状態を指す。そのためには、少しでも多くの皆さんがこの問題をめぐる議論に参加してくださり、解決の糸口を一緒に探してくださることが不可欠だ。 すでに社会の様々な場面に姿を現しつつある、「蛾」より大きくなってしまったAIリスク。それが社会にとっての本当の脅威となる前に、私たちは次の一手を打たなければならない』、「ロバストインテリジェンスの今後の取り組み」、「テック企業の本来の役割として、AIリスクをめぐる最先端の技術開発を行っていくこと・・・当社には・・・世界トップクラスのAI人材が集積している」、「2点目は、こうした技術を生かしてAIを活用しビジネスを変革しようとしている国内外の企業のAIリスク管理を担っていくことだ・・・「継続的なリスク検証」の考え方は、必ず今後のAIリスク管理のスタンダードになると考えており、その実装例を1つでも多く作って、社会としてAIリスクに立ち向かう体制づくりに貢献したい」、「最後に、政府との協業を進め、AIリスクへ向き合う社会を下支えすることだ。 現在、技術の変化に応じた政策的な対応が様々な場で議論されている。先ほど述べたようにAIリスクについて最先端の研究を重ねている当社も、そうした政策の動きに対して情報を提供し、よりよい制度やスタンダードの形成に貢献していければと考えている。実際これまでも私たちは、米国の標準策定機関であるNIST(米国立標準技術研究所)などと積極的に意見交換してきた。日本でも自民党のAIプロジェクトチームに参加したほか、関係省庁とのコミュニケーションも日々続けている」、「自民党のAIプロジェクトチームに参加」、とは抜け目がないようだ。「すでに社会の様々な場面に姿を現しつつある、「蛾」より大きくなってしまったAIリスク。それが社会にとっての本当の脅威となる前に、私たちは次の一手を打たなければならない」、大いに頑張ってもらいたいものだ。 
タグ:「オープンAIは、2015年に非営利法人として設立。共同議長に就いたのは、現在CEOを務めるサム・アルトマンと、米テスラなどのCEOとして知られるイーロン・マスクだ」、「マスク」氏が「共同議長」だったとは初めて知った。 東洋経済オンライン「「ChatGPTの生みの親」爆発的人気に透ける葛藤 毀誉褒貶のオープンAIだが 拡大は止まらない」 人工知能(AI) (その15)(「ChatGPTの生みの親」爆発的人気に透ける葛藤 毀誉褒貶のオープンAIだが 拡大は止まらない、ChatGPTの情報は画一的 「生成系AI」は民主主義社会を支えるツールたり得るか、AIに潜む「蛾」の正体 リスクが脅威になる前にすべきこと) 「設立当初はとくに、ゲーム解決に必要な「強化学習」のための製品を複数出していた。強化学習とは、与えられた条件下で最大限の結果が出るようにAIの行動を最適化させる手法」、「「多くのゲーム会社が、同社のツールを導入してソフトに搭載するAIの開発をしていた。言語モデルの開発をメインにしている印象はなかった」と振り返る。 ただ実際は、並行して言語モデルの開発も進めていた」、 「2018年には、言語モデルの初代となるGPTを発表。翌2019年にはGPT-2、2020年にはGPT-3と、モデルの表現力や性能を更新していった。今年3月には、大方の予想よりも早くGPT-4を発表し、その飛躍的な性能向上を見せつけた。) オープンAIが言語モデルの開発に邁進するのは、同社がミッションとして掲げる「AGIが全人類に利益をもたらすことを確実にすること」を達成するためだ。 AGIとは「汎用人工知能」のこと。限られた用途でしか使えない現状のAIとは異なり、人間に匹敵する、あるいは超人間的な知性を 知性を備える」、「「Planning for AGI and beyond」という文書には、AGIに関するアルトマンCEOの考え方が記されていた。曰(いわ)く、その実現により、世界経済や新しい科学的知識の発見を活性化させ、人間の創造性にも大きな力を与える、という。 AGIの実現には今後複数の技術的ブレークスルーが必要だが、言語モデルの進化はその重要な道のりの1つ、というわけだ」、「汎用人工知能」を目指した動きとは初めて知った。 「今のオープンAIはこの憲章と異なる方向に突き進んでいるようにみえる。 2019年には非営利法人である本体の子会社として、営利企業である「オープンAI LP」を設立。また同年、米マイクロソフトが同社に対する10億ドルの出資と包括的パートナーシップを結ぶことを発表している。 マイクロソフトは2020年9月、新しいAIサービスを開発するためGPT-3の独占的ライセンスを締結。WordやExcelといったオフィス製品を含めた製品群へのAI搭載を加速させていく計画だ。今後数年間で数十億ドルの追加出資を行うことも決まっている。 膨大な計算能力が必要なAIシステムの開発には多くの設備投資が必須で、オープンAIにとってこの提携のうまみは大きい」、 これに対し、「オープンAIの理事会を離れたイーロン・マスクは、3月24日のツイッター投稿で「マイクロソフトは投資の一環でオープンAIのコード基盤全体への独占的なアクセス権を獲得した。ChatGPTは完全に(同社のクラウドサービスである)Azureの中に収まっており、いざとなればすべてを手に入れることができる」と警鐘を鳴らした」、「オープン」な開発と、「巨額の設備投資」と有料サービスでの回収の関係は、確かに難しい問題だ。 「足元では、安全性に対する懸念も表明されている。3月28日には、AIの安全性を研究するFuture of Life Institute(FLI)が、GPT-4よりも強力なAIシステムの開発・運用を6カ月以上停止することを呼びかけ、AIの急速な進化に警鐘を鳴らした。イーロン・マスクや米アップル共同創業者のスティーブ・ウォズニアックら、1000名以上が署名したとされる。 同31日には、イタリアのデータ保護当局がChatGPTの利用の一時禁止を発表。同社がAIの学習に用いるデータ処理が法令に違反していることや、 、青少年への悪影響などがその理由だ。 こうした動きを受けてか、オープンAIは4月5日に「強力なAIを安全に、広く有益な形で維持することを約束する」などと記した声明を発表している」、今後はどう展開していくのだろう。 ダイヤモンド・オンライン 野口悠紀雄氏による「ChatGPTの情報は画一的、「生成系AI」は民主主義社会を支えるツールたり得るか」 「AIは、その一人一人が誰であるかを知らない。だから、当然のことながら、それぞれの個々の状況に応じた具体的なアドバイスを提供することはできない」、言われてみれば、その通りだ。 「対話型AIは、利用者の個々の問いに対して真剣に考え、適切な回答を見つけてくれているかのように感じるのだ。こうした体験は私たちにとって新鮮で、それが対話型生成AIの大きな魅力となっている。 しかし、ここで忘れてならないのは、対話型AIが私たちに与える「こちらを見て相談に乗ってくれる」感覚は、実は単なる錯覚に過ぎないという事実だ。中身は同じなのだが、利用者の質問文や指示文にあわせて、見掛けを変えているだけだ」、なーんだ。 「ChatGPT4の場合は、比較的長い間、多くの回答や質問を記憶することができる。その期間内であれば、私は1億分の1の利用者ではなく、まるで二人だけで話をしているかのように感じられる。それまでの対話の内容に基づく回答が得られるためだ。 しかし、一定の時間が過ぎると、私についての記憶は消えてしまい、私は再び1億分の1の利用者となってしまう」、やむを得ないようだ。 「対話型生成系AIを活用する場合には、記憶保持の限定性を理解し、それに合わせて対話することが求められる。一時的な記憶保持の恩恵を享受しつつ、同時にその限定性とそれが意味するものを理解し、適切な使用を心掛ける必要がある」、その通りのようだ。 「「日本国憲法第9条は必要か?」といった具体的な問題についても、AIが多角的な視点を提供することは保証されていない。 このようなメディアの登場は、多様な考え方や少数意見の尊重が前提になっている民主主義社会にどのような影響を与えるのだろうか? われわれはまだ手探り状態であり、この問題に対する答えを見いだすことができないでいる。生成系AIが人類に投げ掛けた最も大きな問題は、このことだろう」、なるほど。 日経ビジネスオンライン 大柴 行人氏による「AIに潜む「蛾」の正体 リスクが脅威になる前にすべきこと」 「現状は「大規模」言語モデルと呼ばれているモデルについても、コンピューターがそうであったように性能を劇的に向上させつつ、より小規模で安価なモデルが登場する可能性が十分にあるだろう」、「コンピューターがインターネットを介して互いにつながっていったように、すでにAIは様々なアプリケーションをつなぐインターフェースになり始めている」、まさに「『AI新時代』の幕開け」のようだ。 「AIが急速に普及する中で、すでに大きなひずみみが生まれている。AIが他のアプリケーションにつながることによる様々なリスク、対応に追われる大企業、規制に躍起になる各国政府──」、「ロバストインテリジェンスは2019年から一貫してこの問題に取り組んできた。それはサイバーセキュリティーがわずか数十年で一大産業となったように、AIリスクがAIの拡大とともにサイバーセキュリティーをもりょうがする大きな課題になると考えているからだ。急拡大を続ける「AI新時代の落とし穴」から人類を救うこと、それが我々の使命だ」、なる ほど。 「当然、私たちだけで立ち向かうにはAIリスクは敵として大きすぎる。AIを導入する産業・政府・そして私たちのようなAI技術を持った企業が共同でこの問題に立ち向かっていく必要がある」、「企業の経営層は意識を変革し、AIの持つリスクを経営アジェンダと捉えて向き合うべきだ。これは何よりも、AIの社会実装の流れに乗り遅れず自社の競争力を高める上で不可欠となることだ」、 「政府は、いわばAIリスクをめぐる「What」や「Why」示す役割を担う。 AIの活用が当たり前となる時代に備え、規制や制度をアップデートしたり、AIという技術のガバナンスについてのスタンダードを積極的に発信したりすべきだ。その際、特にAIという領域においては必ずしも厳しい規制を導入する必要はなく、むしろ技術の激しい変化に対応できる柔軟な仕組みづくりが求められるだろう」、 「テック企業や研究機関は、実際にAIリスクに対抗するための「How」を示す立場にある。 AIリスクの研究を深め、新たなリスクを予見し、対策となるソリューションを開発するという役割は今後重要性を増すだろう。 また、実際には産業界や政府が持つ情報には限りがあるため、積極的にそれらのセクターに技術的な情報を発信して、それぞれの役割をサポートしていくことも求められる」、「AIの社会実装が進み、より「当たり前」になっていく中で、どのステークホルダーが欠けても経済の成長や人々の幸福は実現できないだろう」、なるほど。 「ロバストインテリジェンスの今後の取り組み」、「テック企業の本来の役割として、AIリスクをめぐる最先端の技術開発を行っていくこと・・・当社には・・・世界トップクラスのAI人材が集積している」、 「2点目は、こうした技術を生かしてAIを活用しビジネスを変革しようとしている国内外の企業のAIリスク管理を担っていくことだ・・・「継続的なリスク検証」の考え方は、必ず今後のAIリスク管理のスタンダードになると考えており、その実装例を1つでも多く作って、社会としてAIリスクに立ち向かう体制づくりに貢献したい」、 「最後に、政府との協業を進め、AIリスクへ向き合う社会を下支えすることだ。 現在、技術の変化に応じた政策的な対応が様々な場で議論されている。先ほど述べたようにAIリスクについて最先端の研究を重ねている当社も、そうした政策の動きに対して情報を提供し、よりよい制度やスタンダードの形成に貢献していければと考えている。実際これまでも私たちは、米国の標準策定機関であるNIST(米国立標準技術研究所)などと積極的に意見交換してきた。日本でも自民党のAIプロジェクトチームに参加したほか、関係省庁とのコミュニケーションも も日々続けている」、「自民党のAIプロジェクトチームに参加」、とは抜け目がないようだ。「すでに社会の様々な場面に姿を現しつつある、「蛾」より大きくなってしまったAIリスク。それが社会にとっての本当の脅威となる前に、私たちは次の一手を打たなければならない」、大いに頑張ってもらいたいものだ。
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自動車(一般)(その6)(半導体不足 電力不足......日本の自動車産業は崖っぷち?、高校に行かなくても副社長になれる…トヨタ自動車が学歴や門閥を重んじない会社になったワケ むかしから多様性と自由を重んじているからこそ、ボディ丸ごと成型「ギガプレス」で日本車ピンチ 日本の「お家芸」鋼板プレスメーカーの選択は) [産業動向]

自動車(一般)については、2021年7月6日に取上げた。久しぶりの今日は、(その6)(半導体不足 電力不足......日本の自動車産業は崖っぷち?、高校に行かなくても副社長になれる…トヨタ自動車が学歴や門閥を重んじない会社になったワケ むかしから多様性と自由を重んじているからこそ、ボディ丸ごと成型「ギガプレス」で日本車ピンチ 日本の「お家芸」鋼板プレスメーカーの選択は)である。

先ずは、昨年3月23日付けNewsweek日本版が掲載した在米作家の冷泉彰彦氏による「半導体不足、電力不足......日本の自動車産業は崖っぷち?」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2022/03/post-1265_1.php
・『<日本型の「高付加価値部門の空洞化」に、クリーンエネルギーへの転換の遅れが追い討ちをかければ、自動車産業は風前の灯火に> アメリカの消費者は厳しいインフレに直面していますが、何よりも価格の上昇率が高いのは中古車です。つい先週、11年落ちで19万キロ走った小型SUVを「もらい事故」で廃車にした人の話では、車両保険で1万1000ドル(132万円)の保険金が出たそうです。中古としての市場価値からすると、そんな金額になるのです。 実際に中古車市場を見てみると、5年落ち10万キロ越えの車でも、トヨタの中型SUVで3万3000ドル(396万円)と価格はほとんど新車と変わりません。では、新車を買ったらいいかというと、それは不可能です。市場には在庫がないからです。そうなると売り手市場となって中古が新車と価格が変わらないというクレージーなことになるわけです。 それもこれも、日本の半導体工場が火災になったり、新型コロナの影響で生産が止まったりした影響で、自動車用の汎用半導体が極端な供給不足になっているからです。この種の製品は、日本のシェアが異常に高いので、日本での生産が止まると世界中の自動車メーカーが影響を受け、とりわけ米国では深刻な事態になっています』、「中古車市場を見てみると、5年落ち10万キロ越えの車でも、トヨタの中型SUVで3万3000ドル(396万円)と価格はほとんど新車と変わりません」、「売り手市場となって中古が新車と価格が変わらないというクレージーなことになる」、「それもこれも、日本の半導体工場が火災になったり、新型コロナの影響で生産が止まったりした影響で、自動車用の汎用半導体が極端な供給不足になっているからです」、極端な「売り手市場」になっているようだ。
・『日本の半導体産業が復興?  ここからが本論ですが、「自動車用の半導体」でそんなに日本が強いのなら、そして供給不足で世界中が困っているのなら、強気の価格交渉をして日本の半導体産業を20世紀のように再び強くすることができそうにも思えます。ですが、その可能性はありません。 日本の自動車部品産業は、半導体も含めて多くの場合が「本体」つまり最終組み立てメーカーの資本が入っており、親会社の意向によって価格は低く抑えられています。ですが、ここまで市場占有率が高く、需要と供給のバランスが崩れているのなら、思い切って世界から資金を集めて独立し、価格決定権も奪い返して半導体産業を活性化しても良いはずです。 ですが、多くの場合に経営者は「本体」から送り込まれており、「本体」の意向に沿うような経営しかしません。また仮にダイレクトに資金を集めようにも、日本国内にはリスクを許容するマネーは枯渇していますし、海外から借りるとなると専門性が必要な上、将来の円安を考えると怖くて借りられないということもあります。) そんなわけで、多くの部品産業は価格を安く叩かれており、納入先について日系企業だけでなく世界中を相手にするようになっても、そのデフレ体質を世界中から食い物にされているわけです。 しかも、トヨタをはじめ、多くの日本の最終組み立てメーカーは、国内販売比率が10%前後まで低下しています。そして、海外で販売する部分は、そのほとんどが現地生産になっています。さらに言えば、研究開発、デザイン、マーケティングなど主要な高付加価値部門も海外に出している企業が多くなっています。つまり、日本のGDPに寄与しているのは、日本国内の部品や素材メーカーが価格を叩かれて、薄い利幅にあえぎながら生産している部分が中心ということになります。 つまり、人件費の低い国に生産拠点を移したり、市場に近いところで生産するといったクラシックな空洞化、つまり設計や研究開発など知的で高付加価値な部分を「本国に残す」スタイルではないのです。自動車産業をはじめとした日本の多くの製造業の場合は、利幅の薄い部品と素材の一部だけと、生産性の低い事務部門だけが国内に残って、その他の高度な部分はどんどん海外に出す「日本形の空洞化」が進んでいると言えます』、「日本の自動車部品産業は、半導体も含めて多くの場合が「本体」つまり最終組み立てメーカーの資本が入っており、親会社の意向によって価格は低く抑えられています」、「思い切って世界から資金を集めて独立し、価格決定権も奪い返して半導体産業を活性化しても良いはずです。 ですが、多くの場合に経営者は「本体」から送り込まれており、「本体」の意向に沿うような経営しかしません。また仮にダイレクトに資金を集めようにも、日本国内にはリスクを許容するマネーは枯渇していますし、海外から借りるとなると専門性が必要な上、将来の円安を考えると怖くて借りられないということもあります。 そんなわけで、多くの部品産業は価格を安く叩かれており、納入先について日系企業だけでなく世界中を相手にするようになっても、そのデフレ体質を世界中から食い物にされているわけです」、「日本の部品産業」の悲しい宿命だ。
・『見通せないエネルギー政策  これに追い討ちをかけそうなのが、エネルギー問題です。今回の電力逼迫が示しているように、もう日本の世論は原子力発電については、部分的であれ期限を限ったものであれ本格稼働を許容することはなさそうです。そうなると、トヨタの豊田章男社長が警告しているように、やがて「化石燃料まみれの電源」を使って作ったクルマは世界では売れなくなり、自動車産業は完全に日本から出ていく可能性もあるといいます。エネルギー政策に答えがなければ、やがて製鉄も国内では不可能になるでしょう。 産業自体が、EV(電気自動車)化や、AV(自動運転車)化へと大きな改革を進める中で、日本の自動車産業は本来であればそこで挽回を図らなければならないはずです。その日本の自動車産業が、空洞化とエネルギー問題で、崖っぷちまで追い詰められているというのは、大変に厳しい状況と思います。 日本の賃金が上がらないのも、貧困が広まっているのも、その多くはここに原因があります。より高付加価値な産業へ転換することもなく、製造業をどんどん国外流出させて、国内には利幅の薄い部品と素材産業だけが残っていくようでは、日本経済はさらに一層の衰退を覚悟しなくてはならなくなります』、「より高付加価値な産業へ転換することもなく、製造業をどんどん国外流出させて、国内には利幅の薄い部品と素材産業だけが残っていくようでは、日本経済はさらに一層の衰退を覚悟しなくてはならなくなります」、同感である。

次に、4月12日付けPRESIDENT Onlineが掲載したノンフィクション作家の野地 秩嘉氏による「高校に行かなくても副社長になれる…トヨタ自動車が学歴や門閥を重んじない会社になったワケ むかしから多様性と自由を重んじているからこそ」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/68210
・『トヨタ自動車の河合満さんは中学卒業後、トヨタ技能者養成所(現トヨタ工業学園)を経て入社し、現場出身者初の副社長になった。なぜ河合さんはそこまで出世できたのか。なぜトヨタは学歴や門閥を重んじない会社になったのか。『図解 トヨタがやらない仕事、やる仕事』(プレジデント社)を上梓した野地秩嘉さんが解説する――』、興味深そうだ。
・『トヨタに学歴や門閥は関係ない  普通の企業では学歴や門閥を重んじる。一流大学を出ていたり、欧米大学のビジネススクールを出てMBAを持っていたりすると確実に得をする。また、企業トップ、医師、弁護士、有名人の子女が入社するとエリート部署に配属される。エリート部署とは経歴に傷がつかないセクションだ。企画室、秘書室、海外との窓口みたいなところだ。炎天下、靴をすり減らして飛び込み営業するような部署にはまず行かない。 ただし、良家の子女であっても「どぶ板営業をやらせてください」という骨のあるビジネスパーソンもいる。そういう人は必ず大成する。 話は戻る。 トヨタは学歴や門閥を重んじない。社内には一流大学を出た人もいればMBAを持っている人もいる。企業トップや有名人の子息もいる。だが、高学歴だからといって得をすることはない。有名人の子どもだからといって特別な配慮があるわけではない。豊田章男新会長はトヨタに入社してから、現場でしごかれた。社長の息子だからといって得をする会社ではない。 一方で、大学や普通高校を出ていなくとも役員になり、会社を引っ張る役職に就くことができるのがトヨタだ。f その典型が「おやじ」兼エグゼクティブフェローの河合満である』、なるほど。
・『ちゃんと叱ってくれ、一緒に謝ってくれる存在  彼は75歳だ。中学を出た1963年、トヨタ技能者養成所(現・トヨタ工業学園)に入所。トヨタに入って60年になる。肩書は「おやじ」。「おやじ」とは居酒屋で酒を飲んで、くだをまく、「オヤジ」のことではない。同社の正式な肩書である。 おやじの仕事は生産現場に目を光らせること。わたしは河合さんが豊田新会長とふたりで本社に隣接している工場にやってきて、若い作業者と話をしていた姿を見たことがある。 おやじについては豊田新会長が、こんな説明をしている。 「トヨタには、かつて、仲間から『おやじ』と呼ばれる人がたくさんいたと思います。 張相談役(富士夫、当時)は、大野耐一さんのことを親しみを込めて『おやじ』と呼ばれていますし、私にとっては張相談役、成瀬(弘、前マスタードライバー)さんらが『おやじ』と呼べる存在です。 もちろん、豊田(章一郎)名誉会長は本当の『おやじ』ですが(笑) 『おやじ』『おふくろ』という言葉に、『包容力』を感じるのは私だけでしょうか。 間違ったことをすれば、ちゃんと叱ってくれる。迷惑をかけた時には、一緒に謝ってくれる。口数は少なくても、いつも見守っていてくれる。職場にも、そんな『おやじ』や『おふくろ』が増えるといいな、と思っています」(トヨタイムズ 2020.6.17)』、「「おやじ」とは居酒屋で酒を飲んで、くだをまく、「オヤジ」のことではない。同社の正式な肩書である。 おやじの仕事は生産現場に目を光らせること」、「間違ったことをすれば、ちゃんと叱ってくれる。迷惑をかけた時には、一緒に謝ってくれる。口数は少なくても、いつも見守っていてくれる。職場にも、そんな『おやじ』や『おふくろ』が増えるといいな、と思っています」、なるほど。
・『現場出身者として初の副社長に  河合さんが副社長、そして、おやじになることができたのは、全体を見ることのできる人だったからだ。そして、彼は誰よりも勉強熱心だった。河合さんの職場は鍛造工場だ。鉄を叩いて成型する、うるさくて、暑くて、危ない職場だ。そこで河合さんは職場のカイゼンに励んだ。 少しでも仕事がしやすいよう鍛造機械を改良した。暑さを防ぐために自らミスト扇風機を設計して配置した。カイゼンすれば職場環境が良くなるし、対番(2交代の時の同僚)が喜んでくれるからだ。 河合さんは対番のこと、職場全体を考える人だった。そうしているうちに上司が河合さんを管理職に引き上げ、工場の責任者にした。そして彼は現場出身者として初めての副社長になり、おやじになった。トヨタ以外の会社ではまずありえない。学歴も門閥もないトヨタだからこその人事だ。 河合さんが副社長、おやじになることができたのはトヨタが多様性を重んじるからだ。意見が違うからといって排斥されることはない。国籍もジェンダーも何も関係ない。 ただし、仕事においては原則がある。それは現地現物を大切にすることだ。つねに現場で考え、現場では複雑な工作機械は使わない。 それはリーマンショックの後、赤字になった反省から来ている』、「上司が河合さんを管理職に引き上げ、工場の責任者にした。そして彼は現場出身者として初めての副社長になり、おやじになった。トヨタ以外の会社ではまずありえない。学歴も門閥もないトヨタだからこその人事だ」、確かに「学歴も門閥もないトヨタだからこその人事だ」。
・『トヨタが大切にする言葉はなぜ「幼稚」なのか  河合さんはこんな説明をする。 「リーマン(ショック)前には世界中で毎年50万台ずつ増産していき、ラインをどんどん作っていたが、それが設備余剰になってしまった。知恵や工夫、技術を入れない設備をどんどん並べてしまった。まさしく無駄なラインを作った結果だ」 「設備が複雑となり、コストが高くなった。故障しても現場で直せない。生産性は落ちていった」 「人がとことんこだわって手作業でラインを作り込み、改善の積み上げで作業を簡単にしていく。誰がやっても同じ作業となるようにしたうえで、自働化するのが基本だ。そうすることで、シンプル、スリム、フレキシブルなラインになる」(東洋経済オンライン「工場一筋トヨタ副社長が語る車づくりの真髄」2017.10.13) トヨタの現場は複雑な工作機械を使わない。そして、難解な経営用語もまた使わない。 豊田新会長が使ってきたのは「もっといいクルマ」「町いちばん」「自分以外の誰かのために」という3つの単純な言葉だ。 ただ……。評論家やマスコミからの評判はよくない。 「幼稚だ」「意味がわからない」 さんざんなことを言われてきた。 「選択と集中」とか「パーパス経営」とか言っておけば評論家やマスコミは「さすが」と感心する。それは重々、承知のうえで、豊田新会長や河合さんはユーザーや世間が理解しやすい言葉を使う』、「「選択と集中」とか「パーパス経営」とか言っておけば評論家やマスコミは「さすが」と感心する。それは重々、承知のうえで、豊田新会長や河合さんはユーザーや世間が理解しやすい言葉を使う」、さすがだ。
・『本業と関係ないフェイスシールドを作った思い  河合さんはこんなことをしゃべっている。「『自分以外の誰かのために』が社会貢献だ」。対番のためにカイゼンを施した河合さんらしい話だ。 「社会貢献については、アメリカで3D(プリンター)を使って、フェイスシールドをつくり出し、欧州・日本の各所に横展(横展開)をして、昨日までで10万(個)以上を医療の方々に送り届けております。 工場ではマスクも自前で作り、近隣の方々にも提供しようとしています。 ちょうど(トヨタの)運動部が(活動を)自粛している最中なので、選手たちもマスク作りをしてくれています。 そこには当然、トヨタ生産方式があり徹底的にムダを排除して、“1枚でも多く”ということで(やっていますので)(TPSの)良い勉強の場となっております。 休校中の小学校・中学校・幼稚園・保育園に出向いて、草刈りや地域貢献をやったりもしてくれていました」(トヨタイムズ 2020.6.17) マスクを配ること、校庭の草刈りをすること。やらないよりもやったほうがいいに決まっている。小さな貢献かもしれないが、確実に喜ぶ人がいる。 トヨタは人事において多様性を大切にしてきた。そして、佐藤恒治新社長になってからはさらにその原則を推し進めている。以下は佐藤新社長の発言だ』、「『自分以外の誰かのために』が社会貢献だ」、言い得て妙だ。
・『河合おやじがその身をもって示している  「『多様性』『成長』『貢献』の3つを柱に、人事制度や仕組みの見直しを進めたいと思います。トヨタで働く一人ひとりが、『多様』な個性を力に変えて、挑戦と失敗を繰り返す中で『成長』を実感できる。(中略) まず『多様性』です。 トヨタで働く皆さんが、自分らしい人生を歩むための多様な選択肢をつくってまいります。 そのひとつとして、年内に、製造現場も含めたあらゆる現場で、誰もが気兼ねなく、パートナー育休を取得できる環境を整えます。また、今年の10月からは、社内公募制を本格導入し、2024年4月からは、社内FA制度を新設いたします」(トヨタイムズ 2023.3.15) 河合さんは今も自分が育った鍛造セクションの仕事部屋にいる。そこから現場までは50メートルも離れていない。何があってもすぐに駆けつけることができる。 河合おやじがいるかぎり、トヨタは多様性と自由を重んじている。そして、偉そうな経営用語ではなく、わかりやすい言葉で経営を語る』、「河合さんは今も自分が育った鍛造セクションの仕事部屋にいる。そこから現場までは50メートルも離れていない。何があってもすぐに駆けつけることができる。 河合おやじがいるかぎり、トヨタは多様性と自由を重んじている。そして、偉そうな経営用語ではなく、わかりやすい言葉で経営を語る』」、「河合さん」は「トヨタ」に不可欠の存在のようだ。

第三に、6月11日付け東洋経済オンラインがしたしたみずほ銀行ビジネスソリューション部 主任研究員・中央大学兼任教員・上海工程技術大学客員教授の湯 進氏による「ボディ丸ごと成型「ギガプレス」で日本車ピンチ 日本の「お家芸」鋼板プレスメーカーの選択は」を紹介しよう。
・『中国の新興BEV(電気自動車)メーカー、小鵬汽車(Xpeng)は2023年5月23日、新型BEV「G6」をラインオフした。 価格約440万元程度の同モデルは、同社の次世代技術アーキテクチャ「SEPA 2.0扶揺」をベースにした戦略SUVモデルであり、航続距離755kmを実現。800ボルトの急速充電システム、高度運転支援システムXNGP(Xpeng Navigation Guided Pilot)を搭載し、アメリカのテスラ「モデルY」と競合しようとしている。 特筆すべきは、G6がテスラと同様に、超大型アルミダイカスト技術「ギガプレス」を採用し、車両前・後部の一体成型を実現していること。中国メーカーでのギガプレスの採用は、これが初だ。 今後、ギガプレスによる部品の成型技術が進化すれば、ボディを丸ごと成型できるようになるかもしれない。こうした技術や設備の革新が、日系のプレス・ダイカストメーカーに衝撃を与えると予測され、また業界のサプライチェーンを大きく変える可能性もある。一体成型技術の行方は、より一層注目されるだろう』、「G6がテスラと同様に、超大型アルミダイカスト技術「ギガプレス」を採用し、車両前・後部の一体成型を実現していること。中国メーカーでのギガプレスの採用は、これが初だ」、「ギガプレスによる部品の成型技術が進化すれば、ボディを丸ごと成型できるようになるかもしれない」、確かに「ギガプレス」は画期的技術だ。
・『テスラ「アンボックストプロセス」のインパクト  小鵬汽車より大胆な革新を提起したのは、テスラだ。 同社は、車両コスト全体の1割超を占めるボディ(モノコックボディ)のコストダウンを通じて、競争力の向上を図っており、2019年からギガプレスによるアンダーボディ製造を進めている。 テスラが導入するギガプレス装置は、型締め力6000トン級で、車両のリア部分を構成する多くの部品を1つの部品に置き換えることで、製造コストを4割削減できるという。 「モデル3」の場合、171個あった金属部品を2個の大型アルミ部品に置き換え、約1600回必要であった溶接工程や関連設備も不要となったというから、驚きだ。 テスラは一体成型を採用したことにより、製造原価の大幅な削減や収益の向上を実現した。2022年の粗利益率は25.9%に達してトヨタ自動車を超え、車両1台当たりの収益率でもトヨタ自動車を大幅に上回った。 テスラは今、車載バッテリーを原価の高いパナソニック、CATL、LGEから調達しているため、バッテリー以外の部品コストのさらなる低減をすることに注力し、製造工程のイノベーションにより次世代EV工場の実現へ手を打とうとしている。) また、テスラは、2023年3月に投資家向け説明会を開催し、同社5カ所目の生産拠点となるメキシコ工場に新生産方式を導入する方針を示した。高価なレアアースを使用しないモーターの開発やワイヤーハーネスの改良、炭化ケイ素(SiC)パワー半導体などにも取り組み、大衆向けEV開発を急いでいるという。 製造工程についても、新しい方式が発表された。従来の自動車工場では、プレス加工で作られた車体が塗装されたあとに、一度ドアが取り外され、パワートレインや内装品を実装してから、再びドアを取り付ける形で製造されている。 今回、テスラが発表した「アンボックストプロセス」とは、BEVを前部・後部・底部・ドア・フロントフードなどのブロックに分け、それぞれを組み立てる生産方式である。すなわち、内装品やタイヤなどもブロックごとに生産することで製造コストを低減させることができ、コンパクトな工場により生産効率を高めることもできる』、「テスラが導入するギガプレス装置は、型締め力6000トン級で、車両のリア部分を構成する多くの部品を1つの部品に置き換えることで、製造コストを4割削減できるという。 「モデル3」の場合、171個あった金属部品を2個の大型アルミ部品に置き換え、約1600回必要であった溶接工程や関連設備も不要となったというから、驚きだ」、「今回、テスラが発表した「アンボックストプロセス」とは、BEVを前部・後部・底部・ドア・フロントフードなどのブロックに分け、それぞれを組み立てる生産方式である。すなわち、内装品やタイヤなどもブロックごとに生産することで製造コストを低減させることができ、コンパクトな工場により生産効率を高めることもできる」、日本企業もうかうかしていられないようだ。
・『BYD他、中国企業もギガプレスに参入  近年、テスラは機動的に車両の値付けを変動させている。これができたのは、イノベーションを通じて、生産コスト・効率を高めたことによる車両価格のダウンや、スケールメリットが実現したからだ。 テスラの生産性を見据えて、小鵬汽車を含む新興勢のNIO、理想汽車は一体成型ラインを建設し、中国国有自動車大手の長安汽車、BEV大手のBYDもギガプレス機の導入を計画している。これを受け、大型プレス機最大手の中国・力勁(LK)集団 は、2022年に1万2000トンのギガプレス機を投入し、2万トン級の開発にも着手している。 同社は2008年にイタリア・IDRAを買収してグローバル展開を加速しており、2020年にはカリフォルニア州フリーモントのテスラ工場(モデルY生産)に装置を供給しはじめた。この装置で生産したアンダーボディは17%の軽量化、1.8倍のねじり剛性アップを実現したと発表している。 また、スイス・ビューラーや中国・海天集団も、自動車メーカーに6000トンのギガプレス機を供給。中国車体部品大手の文燦集団、アルミ鋳造大手の広東鴻図科技、ジャーシ大手の拓普集団、金型メーカーの賽維達(Sciveda)がギガプレス機を導入し、一体成型した部品や大型金型を自動車メーカーに納入している。) 鉄、銅、チタン、マグネシウムなどさまざまな合金が使用されている鋳造工程で、テスラのギガプレスはアルミ合金を使用しており、アメリカとドイツの工場ではイタリア・IDRA製、中国工場ではLK集団製の大型ギガプレス機により、フロント・リア部のアンダーボディ生産を実現した。 一方、巨額な設備投資、サイクルタイムの長さ、変形・伸びを含む機械的特性の悪さ、異材接合の難しさなどが、ギガプレスのネックとなっている。 また、押し出し材の使用量が多くなり、BEVの軽量化に繋がらない可能性もある。さらに、事故を起こした場合に修理ができない大型アルミダイカストの品質維持などの課題も、クリアする必要もあるだろう。 現在、中国では機械的に締結する接合方法として採用されているフロードリルスクリュー(FDS:Flow Drilling Screw)は、技術的難易度が下がりつつあるが、シーラーやメディアを採用したことより、製品のウェイトは上がる傾向だ。 大手プレスメーカーは、「難易度の低い機械締結を普及させたうえで、本格的な異材接合技術のイノベーションが起きれば、ウェイト問題が解決する」という。 テスラが提唱したホットスタンプ(高張力鋼板の熱間プレス材)とアルミの締結は、一見してFDSに類似しているものの、溶接融合や固相接合などの製造工程、マルチマテリアルに対応した異材接合技術が求められる。 現在、地場自動車メーカーはプレスメーカーや金型メーカーと提携しながら、ラインの内製に取り組んでいる。今後は技術の成熟度やコストダウンを勘案すれば、自動車メーカーが一体化成形部品を大手専業プレスメーカーに委託生産すると予測される』、「地場自動車メーカーはプレスメーカーや金型メーカーと提携しながら、ラインの内製に取り組んでいる。今後は技術の成熟度やコストダウンを勘案すれば、自動車メーカーが一体化成形部品を大手専業プレスメーカーに委託生産すると予測される」、なるほど。
・『日本プレスメーカーの事業戦略は?  テスラや中国メーカーが積極的に一体成型技術の開発に取り組んでいる一方、日本の自動車メーカーは導入が遅れている。 また、ギガプレスを採用するホットスタンプ事業は設備投資が大きいため、既存設備を抱える日系プレスメーカーは、日本自動車メーカーから新製法を採用する部品の受注を確保できなければ、テスラを含む一体化成型を採用するBEVメーカーへの対応は難しいだろう。) 日系プレスメーカーはこれから、どのような対策を取っていけばいいのだろうか。 短期的には、アンダーボディ向けの中小型ダイキャスト部品を中心に、一体成型の需要は増加し、車体の一部はアルミと鉄のハイブリッド構造(異材接合)とすることでコストダウンを図れるだろう。 そうした異材接合技術の改善が行われ、高強度部材を鉄などに置き換えれば、それなりのコスト競争力を維持する可能性も考えられる。 ただし、そのためには日系プレスメーカーが、レーザーや一般溶接による異材接合で、腐食やサビなどの課題をクリアする必要がある。また、アルミのコスト高を勘案すれば、押し出し成型に代替できる熱間・冷間プレスや鍛造などの技術・工法も求められる。 中長期的に見ると、中国地場プレスメーカーの成長や技術・設備の進化にともなって、コストダウンが実現できれば、一体成型が業界主流になっていくと予測される。こうした技術変化を見据えて、プレスメーカーは技術路線を再検討する必要があるだろう。 実際、日本の自動車メーカーが、プレス成型で車体のコストダウンを実現する中で、多くのプレスメーカーも高張力鋼板技術を生かし、協力メーカーとして競争力を維持している。日本大手化学・成型機械メーカーのUBEは、一度に成型できるアルミ部品製造装置を開発した』、「日系プレスメーカーが、レーザーや一般溶接による異材接合で、腐食やサビなどの課題をクリアする必要がある。また、アルミのコスト高を勘案すれば、押し出し成型に代替できる熱間・冷間プレスや鍛造などの技術・工法も求められる」、「日本の自動車メーカーが、プレス成型で車体のコストダウンを実現する中で、多くのプレスメーカーも高張力鋼板技術を生かし、協力メーカーとして競争力を維持している」、なるほど。
・『手をこまぬいている時間は、もうない  自動車メーカーがギガプレスを導入すると、系列部品メーカーからの部品調達が減ってしまうというトレードオフがあるが、一体成型化が進むのは間違いない。 中国メーカーが大型アルミダイカスト装置を本格導入し、ギガプレスの適用範囲がボディ製造まで広がっていけば、コストパフォーマンスに優れたBEV(注)が続々と投入されるだろう。 そうなれば、ガソリン車ブランドが独占している大衆車市場を、BEVが塗り替えることになると予測される。日本の自動車メーカーやプレスメーカーが手をこまぬいている時間は一層なくなり、難しい選択を迫られることになるはずだ』、「中国メーカーが大型アルミダイカスト装置を本格導入し、ギガプレスの適用範囲がボディ製造まで広がっていけば、コストパフォーマンスに優れたBEV(注)が続々と投入されるだろう」、「日本の自動車メーカーやプレスメーカーが手をこまぬいている時間は一層なくなり、難しい選択を迫られることになるはずだ」、大変だ。
(注)BEV:Battery Electric Vehicle、一般にはEV(新電源))
タグ:Newsweek日本版 「「選択と集中」とか「パーパス経営」とか言っておけば評論家やマスコミは「さすが」と感心する。それは重々、承知のうえで、豊田新会長や河合さんはユーザーや世間が理解しやすい言葉を使う」、さすがだ。 「上司が河合さんを管理職に引き上げ、工場の責任者にした。そして彼は現場出身者として初めての副社長になり、おやじになった。トヨタ以外の会社ではまずありえない。学歴も門閥もないトヨタだからこその人事だ」、確かに「学歴も門閥もないトヨタだからこその人事だ」。 「日系プレスメーカーが、レーザーや一般溶接による異材接合で、腐食やサビなどの課題をクリアする必要がある。また、アルミのコスト高を勘案すれば、押し出し成型に代替できる熱間・冷間プレスや鍛造などの技術・工法も求められる」、「日本の自動車メーカーが、プレス成型で車体のコストダウンを実現する中で、多くのプレスメーカーも高張力鋼板技術を生かし、協力メーカーとして競争力を維持している」、なるほど。 「地場自動車メーカーはプレスメーカーや金型メーカーと提携しながら、ラインの内製に取り組んでいる。今後は技術の成熟度やコストダウンを勘案すれば、自動車メーカーが一体化成形部品を大手専業プレスメーカーに委託生産すると予測される」、なるほど。 「今回、テスラが発表した「アンボックストプロセス」とは、BEVを前部・後部・底部・ドア・フロントフードなどのブロックに分け、それぞれを組み立てる生産方式である。すなわち、内装品やタイヤなどもブロックごとに生産することで製造コストを低減させることができ、コンパクトな工場により生産効率を高めることもできる」、日本企業もうかうかしていられないようだ。 「テスラが導入するギガプレス装置は、型締め力6000トン級で、車両のリア部分を構成する多くの部品を1つの部品に置き換えることで、製造コストを4割削減できるという。 「モデル3」の場合、171個あった金属部品を2個の大型アルミ部品に置き換え、約1600回必要であった溶接工程や関連設備も不要となったというから、驚きだ」、 「G6がテスラと同様に、超大型アルミダイカスト技術「ギガプレス」を採用し、車両前・後部の一体成型を実現していること。中国メーカーでのギガプレスの採用は、これが初だ」、「ギガプレスによる部品の成型技術が進化すれば、ボディを丸ごと成型できるようになるかもしれない」、確かに「ギガプレス」は画期的技術だ。 「「おやじ」とは居酒屋で酒を飲んで、くだをまく、「オヤジ」のことではない。同社の正式な肩書である。 おやじの仕事は生産現場に目を光らせること」、「間違ったことをすれば、ちゃんと叱ってくれる。迷惑をかけた時には、一緒に謝ってくれる。口数は少なくても、いつも見守っていてくれる。職場にも、そんな『おやじ』や『おふくろ』が増えるといいな、と思っています」、なるほど。 野地 秩嘉氏による「高校に行かなくても副社長になれる…トヨタ自動車が学歴や門閥を重んじない会社になったワケ むかしから多様性と自由を重んじているからこそ」 PRESIDENT ONLINE 「より高付加価値な産業へ転換することもなく、製造業をどんどん国外流出させて、国内には利幅の薄い部品と素材産業だけが残っていくようでは、日本経済はさらに一層の衰退を覚悟しなくてはならなくなります」、同感である。 ですが、多くの場合に経営者は「本体」から送り込まれており、「本体」の意向に沿うような経営しかしません。また仮にダイレクトに資金を集めようにも、日本国内にはリスクを許容するマネーは枯渇していますし、海外から借りるとなると専門性が必要な上、将来の円安を考えると怖くて借りられないということもあります。 そんなわけで、多くの部品産業は価格を安く叩かれており、納入先について日系企業だけでなく世界中を相手にするようになっても、そのデフレ体質を世界中から食い物にされているわけです」、「日本の部品産業」の悲しい宿命だ。 「日本の自動車部品産業は、半導体も含めて多くの場合が「本体」つまり最終組み立てメーカーの資本が入っており、親会社の意向によって価格は低く抑えられています」、「思い切って世界から資金を集めて独立し、価格決定権も奪い返して半導体産業を活性化しても良いはずです。 「中古車市場を見てみると、5年落ち10万キロ越えの車でも、トヨタの中型SUVで3万3000ドル(396万円)と価格はほとんど新車と変わりません」、「売り手市場となって中古が新車と価格が変わらないというクレージーなことになる」、「それもこれも、日本の半導体工場が火災になったり、新型コロナの影響で生産が止まったりした影響で、自動車用の汎用半導体が極端な供給不足になっているからです」、極端な「売り手市場」になっているようだ。 冷泉彰彦氏による「半導体不足、電力不足......日本の自動車産業は崖っぷち?」 湯 進氏による「ボディ丸ごと成型「ギガプレス」で日本車ピンチ 日本の「お家芸」鋼板プレスメーカーの選択は」 東洋経済オンライン 「河合さんは今も自分が育った鍛造セクションの仕事部屋にいる。そこから現場までは50メートルも離れていない。何があってもすぐに駆けつけることができる。 河合おやじがいるかぎり、トヨタは多様性と自由を重んじている。そして、偉そうな経営用語ではなく、わかりやすい言葉で経営を語る』」、「河合さん」は「トヨタ」に不可欠の存在のようだ。 「『自分以外の誰かのために』が社会貢献だ」、言い得て妙だ。 (その6)(半導体不足 電力不足......日本の自動車産業は崖っぷち?、高校に行かなくても副社長になれる…トヨタ自動車が学歴や門閥を重んじない会社になったワケ むかしから多様性と自由を重んじているからこそ、ボディ丸ごと成型「ギガプレス」で日本車ピンチ 日本の「お家芸」鋼板プレスメーカーの選択は) 自動車(一般) 「中国メーカーが大型アルミダイカスト装置を本格導入し、ギガプレスの適用範囲がボディ製造まで広がっていけば、コストパフォーマンスに優れたBEV(注)が続々と投入されるだろう」、「日本の自動車メーカーやプレスメーカーが手をこまぬいている時間は一層なくなり、難しい選択を迫られることになるはずだ」、大変だ。 (注)BEV:Battery Electric Vehicle、一般にはEV(新電源))
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ゲーム(一般)(その2)(「韓国ではプロ野球並みの人気なのに」ゲーム大国の日本でeスポーツが出遅れた本当の理由 5Gで競技人口はさらに増えていく、日本でeスポーツ人口はどれくらいいるの?世界から遅れをとった理由とは) [文化]

ゲーム(一般)については、2020年2月26日に取上げた。久しぶりの今日は、(その2)(「韓国ではプロ野球並みの人気なのに」ゲーム大国の日本でeスポーツが出遅れた本当の理由 5Gで競技人口はさらに増えていく、日本でeスポーツ人口はどれくらいいるの?世界から遅れをとった理由とは)である。

先ずは、2021年8月17日付けPRESIDENT Onlineが掲載したジャーナリストの中村 尚樹氏による「「韓国ではプロ野球並みの人気なのに」ゲーム大国の日本でeスポーツが出遅れた本当の理由 5Gで競技人口はさらに増えていく」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/48487
・『コンピューターゲームで競い合う「eスポーツ」が人気を集めている。海外では年間賞金総額が233億円の大会もあるほど規模が拡大している。しかしゲーム大国の日本では、海外ほどの盛り上がりはない。なぜなのか――。 ※本稿は、中村尚樹『最前線で働く人に聞く日本一わかりやすい5G』(プレジデント社)の一部を再編集したものです』、「ゲーム大国の日本では、海外ほどの盛り上がりはない」、何故なのだろうか。
・『国体の文化プログラムに採用された  eスポーツは、Electronic Sports(エレクトロニック・スポーツ)の略で、「コンピューターなど電子機器を使った競技」という意味である。Electric(エレクトリック)、つまり「電気」を使うという意味ではなく、あくまで「電子」上の競技である。ちなみにeが小文字になっているのは、決まりがあるわけではない。ただ、アップル社が自社のパーソナルコンピューターに小文字の「i」を冠した製品を売り出して人気を博したことにあやかって、小文字を使うようになったのではないかと、関係者の多くは見ている。 ゲームの種類は、1対1で戦う格闘技だったり、チームに分かれて陣地を取り合う団体戦だったりと、様々だ。具体的にはFPS(シューティングゲーム)、RTS(戦略ゲーム)、MOBA(チーム戦バトル)、格闘ゲーム、スポーツゲーム、パズルゲーム、カードゲーム、ソーシャルゲーム、スマートフォン向けゲームなどがある。 国内ではプロ野球やJリーグも、それぞれの競技をコンピューター画面上で競うeスポーツの大会を開いている。海外では野球のメジャーリーグ、サッカーのFIFA、バスケットボールのNBA、モータースポーツのF1など著名なスポーツ団体が、eスポーツに参入している。2019年から国体でも、文化プログラムとしてeスポーツが競技種目となっている。 2018年には既存のeスポーツ3団体が統合して「日本eスポーツ連合」(JeSU)が発足した。eスポーツ大会の普及活動や認定、プロライセンスの発行、選手の育成や支援などを行っている』、「日本」でも遅まきながら、形は一応できたようだ。
・『世界の競技人口は2億人以上  このeスポーツを、どのくらいの人が楽しんでいるのだろうか。平成30年度の文部科学省の事業として国際研修交流協会がまとめた「eスポーツ分野における先端技術活用型チームマネジメント人材養成事業」成果報告書によれば、国内のeスポーツ競技人口は約390万人、eスポーツを見て楽しむオーディエンスは約160万人と推定されている。さらに世界の競技人口は約2億人以上という。錦織選手や大坂選手の活躍で日本でも人気の高まってきたテニスの競技人口が日本で約400万人、世界では約1億1000万人だから、その世界的な広まりがわかっていただけるだろう。 また、eスポーツの優れている点は、プレーヤーに関してフィジカルな制約が少ないことだ。だから身体に障害のある人たちも、自分にあった補助器具を使うことで、健常者と対等に戦うことができる。大会の多くは、性別や年齢による区分もない。 eスポーツ人気を裏づけるように、特に海外では大会の規模が急速に拡大している。2019年に開かれた「フォートナイト」というゲームの大会では、日本円にして賞金総額約33億6300万円、1位賞金3億2500万円という大会も開かれた。各地の大会の賞金を積み上げた年間の賞金総額では、2019年の「ドータ2」がなんと、233億円である。観客動員では、「リーグ・オブ・レジェンド」の世界大会決勝戦で6万人、インターネットで配信された決勝戦の視聴者が2億人というからすさまじい。ちなみに2008年の北京オリンピック開閉会式の観客が6万人である』、「2019年に開かれた「フォートナイト」というゲームの大会では、日本円にして賞金総額約33億6300万円、1位賞金3億2500万円・・・観客動員では、「リーグ・オブ・レジェンド」の世界大会決勝戦で6万人、インターネットで配信された決勝戦の視聴者が2億人」、世界では凄い大規模だ。
・『日本のeスポーツはいまだ発展途上  eスポーツ先進国はアメリカや韓国、そして中国である。それに比べて、日本はかなり出遅れているといわざるを得ない。「任天堂やソニー、セガを擁するゲーム大国日本でなぜ?」と思われるかもしれない。 eスポーツは、コンピューターを相手に戦うのではなく、電子ゲームを舞台に、複数のプレーヤーが対戦するものをいう。あくまで、人と人とが戦うのがeスポーツなのだ。1対1の個人戦もあれば、5対5の団体戦もあり、中には100人が一度に参加できる競技もある。 一方、日本では家庭用のゲーム機があまりに普及してしまったため、主にパソコンなどを使って対戦するeスポーツは出遅れてしまったのだ。加えて日本では、専用の光ファイバーを使った光回線が普及する前に、従来の電話回線を利用するISDNをはさんだため、インターネットの回線速度が他国と比べて遅かったのも理由のひとつにあげられている。 さらに日本では、景品表示法や刑法の賭博罪との関係で、eスポーツの大会に多額の賞金を出せない恐れがあったり、風俗営業法でeスポーツ特化型ネットカフェの営業時間が規制されたりすることも、日本でeスポーツが出遅れた要因といわれている。 これに対してお隣の韓国は、世界大会上位の常連であり、eスポーツ大国と呼ばれる。その歴史的背景としては、1990年代後半の世界同時不況で韓国が通貨危機に直面した際、国策としてネット事業に力を入れたことがあげられる。仕事のない若者がネットカフェに集まり、オンラインゲームに熱中するようになった。やがてeスポーツの人気は拡大し、ソウル市内にはeスポーツ専用の競技場もオープンするなど、いまや韓国を代表する文化のひとつともなっている』、「日本でeスポーツが出遅れた要因」には、「日本では家庭用のゲーム機があまりに普及してしまったため、主にパソコンなどを使って対戦するeスポーツは出遅れてしまったのだ。加えて日本では、専用の光ファイバーを使った光回線が普及する前に、従来の電話回線を利用するISDNをはさんだため、インターネットの回線速度が他国と比べて遅かったのも理由のひとつ・・・景品表示法や刑法の賭博罪との関係で、eスポーツの大会に多額の賞金を出せない恐れ、風俗営業法でeスポーツ特化型ネットカフェの営業時間が規制」、などがある。
・『後れを取り戻しつつある日本のeスポーツの魅力  もうひとつ指摘しておきたいのは、eスポーツの、「スポーツ」という用語である。日本語でスポーツというと、身体を動かす「運動」を意味する。だからコンピューターゲームをスポーツと呼ぶことに違和感を覚える方もいることだろう。しかし欧米諸国における「スポーツ」の語源はラテン語で、「日々の生活から離れること」「気晴らしをする」「楽しむ」という意味がある。時代が下って、「競技」という意味も加わった。つまり「楽しみでする競技」というのが、欧米で理解されるスポーツなのだ。 身体を動かすのはフィジカルスポーツだ。そして頭脳で勝負するチェスやカードゲームは、マインドスポーツと位置づけられる。eスポーツも、この系譜に入る。 一方、明治期の日本政府は、外国から入ってきた「スポーツ」を「楽しみ」ではなく、教育における「鍛錬」と位置づけた。そこから日本では、身体を鍛える運動がスポーツと考えられるようになったのだ。こうしてみると、日本は「e」に対するアプローチ、そして「スポーツ」に対する受け止め方という二重の意味で、eスポーツに後れをとってきた印象がある。しかしいまではその後れも、急速に取り戻しつつある』、「楽しみでする競技」というのが、欧米で理解されるスポーツなのだ」、「日本では、身体を鍛える運動がスポーツと考えられるようになった」、これらにより、「eスポーツに後れをとってきた」、なるほど。
・『かつてのプロ野球のような勢いでe スポーツが普及する  東京都eスポーツ連合会長で、日本eスポーツ学会代表理事も務める筧誠一郎はeスポーツの魅力について、若い人たちにとってゲームはきわめて身近な存在で、しかも対人性があることだと言う。 「何が若い人たちを惹きつけているのかというと、人と人とが競うという点です。その人の性格や考え方がそのまま表れるのが、eスポーツのいいところですね。コンピューター相手だと、同じ攻め方をすれば、同じ反応が返ってくる。しかしeスポーツは相手が人ですから、対戦相手によって変わるわけです。戦い方の好みも様々です。それは、対戦相手とのコミュニケーションでもあるのです」 人間関係が希薄になりつつある時代だからこそ、人びとはeスポーツに、気のおけない仲間とのつながりを求めているのかもしれない。 1960年生まれの筧は高校時代にテーブルテニス、大学時代にはスペースインベーダーやギャラクシアンに熱中した世代である。大手広告代理店の電通に入社したあとも、ファミコンやスーパーファミコン、プレステ、さらにはオンラインゲームと、ゲーム熱が冷めることはなく、ついにはゲーム制作の企画を立ち上げて、スーパーファミコンやプレステのゲームを大ヒットさせた経験もある。そんな筧がeスポーツを知ったのは46歳のときだった。韓国など海外で、eスポーツが深く浸透している状況を知り、衝撃を受けたのだ。 筧はさっそく社内に勉強会を立ち上げ、eスポーツに関する取り組みを開始した。リーマンショックで開発費が削減されると、筧は49歳で思い切りよく電通を退社した。やがてeスポーツの普及に関する事業をマネジメントする会社を立ち上げ、大会を主催したり、渋谷に日本最大規模の「eスポーツ・パブリックビューイングバー」をオープンさせたりしている。 そんな筧はeスポーツについて気負うことなく、「要はスポーツジャンルのひとつ」と語る。「eスポーツって、特殊なものと思う人もいるかもしれませんが、かつて野球が若者に支持されたように、いまの時代はeスポーツが支持されている。だからプロ野球で行われてきたことが、これからのeスポーツにもそのまま当てはまるのですね」』、「筧は49歳で思い切りよく電通を退社した。やがてeスポーツの普及に関する事業をマネジメントする会社を立ち上げ、大会を主催したり、渋谷に日本最大規模の「eスポーツ・パブリックビューイングバー」をオープンさせたりしている・・・「要はスポーツジャンルのひとつ」・・・プロ野球で行われてきたことが、これからのeスポーツにもそのまま当てはまるのですね」、さすが時代の流れを読むのに長けた電通マンらしい。
・『「配信で一番稼げる」とIOCも重要視  近年、日本でもeスポーツの話題が増えてくるようになった。そのひとつのきっかけがオリンピックである。 すでに「アジア・オリンピック評議会」が主催するアジア版のオリンピック、「アジア競技大会」の2018年ジャカルタ大会では、公開競技としてeスポーツが行われた。そのサッカーゲーム部門では、日本チームが優勝している。また2022年に中国の杭州で行われる予定の大会では、正式種目になることが決まっている。 IOC(国際オリンピック委員会)もeスポーツに関心を示している。トーマス・バッハ会長は「eスポーツ産業の成長は無視できないし、若い世代に魅力もある。五輪に入れるかどうか話をするのは時期尚早だが、対話のドアは開けたままにしておく」(2018年12月4日付け共同通信)と述べている。 こうした状況を踏まえて筧は、「2024年のパリ大会では、公開競技か併設競技のような形で行われるのではないか。そして28年のロサンゼルス大会での正式種目は、ほぼ確定だと思っています」と展望する。その理由として筧はスポンサーの意向、そして人気の高い映像配信をあげる。「オリンピックのトップスポンサーは12社。そのうちアリババ、サムスン、インテルの3社はeスポーツ関連企業なのです。もうひとつ、国際オリンピック委員会が、テレビの次に重視しているのがインターネットの配信です。いままでテレビに頼っていた放映権料が、インターネットの配信に代わる時代が来る。そうしたとき、配信で一番稼げるのは何かというと、eスポーツなのです」』、「オリンピックのトップスポンサーは12社。そのうちアリババ、サムスン、インテルの3社はeスポーツ関連企業」、「いままでテレビに頼っていた放映権料が、インターネットの配信に代わる時代が来る。そうしたとき、配信で一番稼げるのは何かというと、eスポーツなのです」、なるほど。
・『5Gでeスポーツに変革が起きる  eスポーツに対する期待が高まる背景のひとつに、次世代移動通信システムの5Gがある。5G時代で、医療やモビリティなどの利便性向上が期待されるが、「中でも一番相性がいいのがeスポーツ」と、筧は断言する。「医療は患者と医師の1対1の関係です。一方eスポーツでは、一度に100人が同時接続するゲームもある。スマートフォンで大人数のゲームが可能となる。速度面でいえば、北海道と沖縄の距離でも、0.1秒を争うトッププレーヤーにとっては遅延が起きる。これが5Gになると、理論値的には、東京から中国の奥地くらいまで大丈夫です。トッププレーヤーの場合、5Gでもっとすごいプレーが見られるようになります」』、「eスポーツでは、一度に100人が同時接続するゲームもある。スマートフォンで大人数のゲームが可能となる。速度面でいえば・・・5Gになると、理論値的には、東京から中国の奥地くらいまで大丈夫です」、なるほど凄い魅アップだ。
・『eスポーツ関係者が5Gを待ち望む切実な理由  第2回全国高校eスポーツ選手権で準優勝に輝いたクラーク記念国際高校。その秋葉原ITキャンパス「情報科」で教諭を務める笹原圭一郎もこう語る。 「専攻で正式に取り扱ってはいないのですが、みんなスマートフォンを使ってゲームをやっています。eスポーツを、娯楽としてのスポーツと捉えたとき、ユーザー数はダントツだと思います。そのスマートフォンで通信が途絶えたり、遅くなってしまったりしたとき、ミスをして負けてしまうのは、勝った方も、負けた方も、なんともいえない気持ちになります。それが5Gになると、それらのトラブルが格段に減ると思います。5Gの普及でeスポーツは、ますます人気が出るでしょう」 加えて5Gで便利になると期待されるのが、大規模な大会を開く際のセッティングである。 いまeスポーツの大会を開く際には、ゲームだけに使う専用回線を引く必要がある。というのは、すでにある回線を共用すると、他に利用者がいた場合、遅延が起きてしまうからだ。 そこで他からの干渉を受けないゲーム用の回線、そして配信用の回線を設営するのだが、3カ月以上前にNTTなどに申し込み、現地の下見をして配線の確認をする必要がある。これが5G時代になると、その場所だけで運用できるローカル5Gを開設することができるようになる。これまでのように有線で回線を引く必要がなく、ローカル5Gの機械を持ってくればいいだけになり、大会運営の手間が大幅に削減されると期待されている』、「5G時代になると、その場所だけで運用できるローカル5Gを開設することができるようになる。これまでのように有線で回線を引く必要がなく、ローカル5Gの機械を持ってくればいいだけになり、大会運営の手間が大幅に削減されると期待」、確かに便利そうだ。
・『5Gによって加速するeスポーツの未来  全国eスポーツ選手権の主催者のうちの一社である、株式会社サードウェーブ副社長の榎本一郎は「子どもたちが本気でeスポーツに取り組み、その後の選択肢を増やすためには、高校にeスポーツ部がなければなりません」と、熱く語る。 実は榎本自身、高校野球で甲子園を目指したが叶わず、実業団では肩を壊して野球を断念した経験があるのだ。必死に取り組んだ部活動は、その後の人生にも必ず役に立つ。 IBMやDELLといったPCメーカーで要職を歴任し、PC業界に造詣の深い榎本は、eスポーツに深い理解を持つ。しかし学校でeスポーツ部を作ろうにも、ハイスペックなパソコンがなければ難しい。 「若者の可能性を広げたい。eスポーツを文化にしたい」というサードウェーブ社長、尾崎健介の決断で、パソコンの無償貸与事業が実現することになった。 サードウェーブは全国高校eスポーツ選手権で、定価で約17万円のパソコンを、チームに必要な台数分、期間限定でeスポーツ部に無償で貸し出した。無償貸与の内容は、年度によって変わってきているが、「今後もできるだけ続けたい」と榎本は語る。 5Gになれば、eスポーツはどう変わるか、尋ねてみた。「5Gの世界になったら、クラウド側で処理できる範囲が広がるため、ハードウェアに対するスペック的な依存度が低くなり、より多くのデバイスでeスポーツを楽しめる可能性が増えていきます。環境が整っていくと、『これじゃなきゃダメ』という垣根がなくなることで、ハイエンドパソコンを手掛ける我々にとってネガティブな面もあります。しかし、どんなに環境が良くなっても、ユーザーにとって一番良い製品やサービスが選ばれます。そしてeスポーツに関わる時間が増えます。楽しめる時間とスタイルがどんどん広がるという意味で、5Gに期待しています」』、「「5Gの世界になったら、クラウド側で処理できる範囲が広がるため、ハードウェアに対するスペック的な依存度が低くなり、より多くのデバイスでeスポーツを楽しめる可能性が増えていきます」、「楽しめる時間とスタイルがどんどん広がるという意味で、5Gに期待しています」、なるほど。
・『5G時代のeスポーツは従来のゲーム観を覆す  ゲーム会社各社も、5G向けコンテンツの開発を急いでいる。eスポーツはパソコンからスタートしたが、中国ではすでに、パソコンのゲーム市場を、スマートフォンが抜いている。パソコンは家や学校、職場、ネットカフェなど、使える場所が固定されるが、スマートフォンだと移動中の空いた時間にも楽しめるからだ。しかも若い世代はパソコンやテレビより、スマートフォンに馴染んでいる。そこで各社とも、5Gに相応しいゲームの開発に、しのぎを削っているのである。 5G時代になると、これまでの常識を打ち破るようなゲームソフトが出てくるはずだ。それは、練習すれば練習するほど楽しめる、奥の深いゲームとなるだろう。使われるデバイスも、3D対応のゴーグルやビューワーを使いながら、仮想の世界、あるいは拡張現実の世界に入り込むことになるかもしれない。従来なら処理できなかった大量のデータも、5Gが解決してくれる。 5G時代のeスポーツは、従来のゲーム観を覆す新しい世界を見せてくれることだろう。(文中敬称略)』、「5G時代になると、これまでの常識を打ち破るようなゲームソフトが出てくるはずだ。それは、練習すれば練習するほど楽しめる、奥の深いゲームとなるだろう。使われるデバイスも、3D対応のゴーグルやビューワーを使いながら、仮想の世界、あるいは拡張現実の世界に入り込むことになるかもしれない。従来なら処理できなかった大量のデータも、5Gが解決してくれる」、楽しみだ。

次に、昨年8月9日付けエコテコ「日本でeスポーツ人口はどれくらいいるの?世界から遅れをとった理由とは」を紹介しよう。
https://coeteco.jp/articles/11297
・『世界有数のゲーム先進国として名高い日本ですが、eスポーツ市場の伸びは世界から大きく遅れをとっています。そこには、ゲームに対する考え方やカルチャーの違いなど、さまざまな理由があるとされています。eスポーツ市場が拡大しないのは、日本の法律も大きく関係しています。 この記事では、日本のeスポーツ市場が世界から遅れをとった理由やeスポーツ人口について解説します』、興味深そうだ。
・『eスポーツにはどんな種目があるの?  eスポーツとは、コンピューターゲームを競技として捉えた場合の名称のことです。eスポーツには、主に以下のような種目があります。 1.MOBA 2.FPS(シューティングゲーム) 3.バトルロイヤル 4.対戦型格闘ゲーム 5.RTS 6.カード対戦ゲーム ゲーム種目にはシューティングゲーム、格闘ゲームや、カード対戦ゲームなどがあります。現在では国際オリンピック委員会(IOC)がeスポーツをスポーツ活動と認める発言をしており、eスポーツがオリンピック競技になる可能性もあるとされています』、「eスポーツがオリンピック競技になる可能性もある」、時代も変わったものだ。
・『日本のeスポーツ市場が後れをとる背景とは  日本でのゲームの始まりは1970年代頃で、家庭用ゲーム機やゲームセンターのアーケードゲームが主流でした。ゲームを利用して友人との交流を楽しむという文化があった日本では、パソコンを使用せずに十分にゲームをプレーできる環境がありました。 それに対し、世界ではインターネットを通じてコミュニケーションできる、パソコンを利用したゲームが主流です。スーパーファミコンやニンテンドースイッチなど、世界でも大人気のゲームを続々と発信している日本でeスポーツが広まらないのは、パソコンの普及率に原因があると考えられています。 13〜15歳の子どもがパソコンを利用しているのは日本では30.3%ですが、アメリカでは84.3%といわれています。eスポーツは無料で利用しやすいものが多くありますが、そもそもパソコンを所持していないためにプレーできない若い世代も多くいることが現状です。こうした背景から、2020年での世界におけるeスポーツ市場はおおよそ1.1兆円といわれていますが、日本は76億円ほどに留まっています』、「パソコンの普及率に原因があると考えられています。 13〜15歳の子どもがパソコンを利用しているのは日本では30.3%ですが、アメリカでは84.3%といわれています」、スマホで比べるべきと思うが、パソコンでは明確な差があるようだ。
・『日本のeスポーツ市場の拡大を阻む法律  世界では1億円以上の優勝賞金が用意されるeスポーツの大会が盛んに開催されていますが、日本では以下のような法律により高額な賞金を出せない現状があります。 著作権法 刑法(賭博罪) 興行場法 景品表示法 風俗営業法  日本国内のeスポーツの大会ではこれらの法律違反とならないよう、賞金をスポンサーが出したり商品券にしたりなどの工夫が施されています。大会運営者が法律違反をすれば罰金や懲役に課されることもあるため、運営も慎重になることがわかるでしょう。なお、景品表示法では「ゲームの大会」において、10万円以上の景品を出すことは認められていません。 しかし、十分な賞金が出されなければトッププレーヤーの育成が難しい側面があり、日本国内でのeスポーツの盛り上がりも欠ける部分があるといえます』、確かに法律面の制約は大きそうだ。
・『ゲームを「遊び」だと捉える風潮  子どもが学校から帰ってきてゲームを長時間楽しんでいたら、日本の家庭の多くでは保護者が「ゲームなんかしないで勉強しなさい!」と子どもを叱るでしょう。「ゲームは勉強の妨げになる」という古い価値観は、日本の家庭に根付いているといえます。 eスポーツがもたらす多くのメリットには、集中力の向上や想像力・コミュニケーション能力を育む点などが挙げられます。しかし、家庭のなかでeスポーツのメリットやプロリーグで活躍するeスポーツ選手の努力などは知ることが難しいケースもあるでしょう。 また、日本にはeスポーツを「スポーツ」だと認識しない世代が一定層いることも、eスポーツの成長を阻む要因になっています。「汗水流さないゲームをスポーツとは呼べない」と否定的な意見が聞かれるのも、日本の文化的な側面だといえるでしょう』、「「汗水流さないゲームをスポーツとは呼べない」と否定的な意見が聞かれるのも、日本の文化的な側面だ」、その通りだろう。
・『ゲームのインストールなど設定が難しい  カセットを挿入すればゲームが始められる家庭用ゲーム機に慣れていた日本人にとって、パソコンを利用するeスポーツのゲームは、始めるまでのハードルが高いといえるでしょう。eスポーツのタイトルのなかには、パソコンが高スペックでないと十分に楽しめないものもあります。パソコンのセットアップやソフトのインストールなど、プレーするまでにいくつものステップをクリアする必要があります。 パソコンの普及も世界と比較して遅れをとっている日本では、いくつものステップをクリアしてeスポーツを始められる人はほんの一握りだといえるでしょう』、「家庭用ゲーム機に慣れていた日本人にとって、パソコンを利用するeスポーツのゲームは、始めるまでのハードルが高いといえる」、確かにその通りだ。これ以降は日本が後れをとった背景とは、無関係なので、紹介を省略する。
タグ:ゲーム(一般) (その2)(「韓国ではプロ野球並みの人気なのに」ゲーム大国の日本でeスポーツが出遅れた本当の理由 5Gで競技人口はさらに増えていく、日本でeスポーツ人口はどれくらいいるの?世界から遅れをとった理由とは) PRESIDENT ONLINE 中村 尚樹氏による「「韓国ではプロ野球並みの人気なのに」ゲーム大国の日本でeスポーツが出遅れた本当の理由 5Gで競技人口はさらに増えていく」 「ゲーム大国の日本では、海外ほどの盛り上がりはない」、何故なのだろうか。 「日本」でも遅まきながら、形は一応できたようだ。 「2019年に開かれた「フォートナイト」というゲームの大会では、日本円にして賞金総額約33億6300万円、1位賞金3億2500万円・・・観客動員では、「リーグ・オブ・レジェンド」の世界大会決勝戦で6万人、インターネットで配信された決勝戦の視聴者が2億人」、世界では凄い大規模だ。 「日本でeスポーツが出遅れた要因」には、「日本では家庭用のゲーム機があまりに普及してしまったため、主にパソコンなどを使って対戦するeスポーツは出遅れてしまったのだ。加えて日本では、専用の光ファイバーを使った光回線が普及する前に、従来の電話回線を利用するISDNをはさんだため、インターネットの回線速度が他国と比べて遅かったのも理由のひとつ ・・・景品表示法や刑法の賭博罪との関係で、eスポーツの大会に多額の賞金を出せない恐れ、風俗営業法でeスポーツ特化型ネットカフェの営業時間が規制」、などがある。 「楽しみでする競技」というのが、欧米で理解されるスポーツなのだ」、「日本では、身体を鍛える運動がスポーツと考えられるようになった」、これらにより、「eスポーツに後れをとってきた」、なるほど。 「筧は49歳で思い切りよく電通を退社した。やがてeスポーツの普及に関する事業をマネジメントする会社を立ち上げ、大会を主催したり、渋谷に日本最大規模の「eスポーツ・パブリックビューイングバー」をオープンさせたりしている・・・「要はスポーツジャンルのひとつ」・・・プロ野球で行われてきたことが、これからのeスポーツにもそのまま当てはまるのですね」、さすが時代の流れを読むのに長けた電通マンらしい。 「オリンピックのトップスポンサーは12社。そのうちアリババ、サムスン、インテルの3社はeスポーツ関連企業」、「いままでテレビに頼っていた放映権料が、インターネットの配信に代わる時代が来る。そうしたとき、配信で一番稼げるのは何かというと、eスポーツなのです」、なるほど。 「eスポーツでは、一度に100人が同時接続するゲームもある。スマートフォンで大人数のゲームが可能となる。速度面でいえば・・・5Gになると、理論値的には、東京から中国の奥地くらいまで大丈夫です」、なるほど凄い魅アップだ。 「5G時代になると、その場所だけで運用できるローカル5Gを開設することができるようになる。これまでのように有線で回線を引く必要がなく、ローカル5Gの機械を持ってくればいいだけになり、大会運営の手間が大幅に削減されると期待」、確かに便利そうだ。 「「5Gの世界になったら、クラウド側で処理できる範囲が広がるため、ハードウェアに対するスペック的な依存度が低くなり、より多くのデバイスでeスポーツを楽しめる可能性が増えていきます」、「楽しめる時間とスタイルがどんどん広がるという意味で、5Gに期待しています」、なるほど。 「5G時代になると、これまでの常識を打ち破るようなゲームソフトが出てくるはずだ。それは、練習すれば練習するほど楽しめる、奥の深いゲームとなるだろう。使われるデバイスも、3D対応のゴーグルやビューワーを使いながら、仮想の世界、あるいは拡張現実の世界に入り込むことになるかもしれない。従来なら処理できなかった大量のデータも、5Gが解決してくれる」、楽しみだ。 エコテコ「日本でeスポーツ人口はどれくらいいるの?世界から遅れをとった理由とは」 「eスポーツがオリンピック競技になる可能性もある」、時代も変わったものだ。 「パソコンの普及率に原因があると考えられています。 13〜15歳の子どもがパソコンを利用しているのは日本では30.3%ですが、アメリカでは84.3%といわれています」、スマホで比べるべきと思うが、パソコンでは明確な差があるようだ。 確かに法律面の制約は大きそうだ。 「「汗水流さないゲームをスポーツとは呼べない」と否定的な意見が聞かれるのも、日本の文化的な側面だ」、その通りだろう。 「家庭用ゲーム機に慣れていた日本人にとって、パソコンを利用するeスポーツのゲームは、始めるまでのハードルが高いといえる」、確かにその通りだ。これ以降は日本が後れをとった背景とは、無関係なので、紹介を省略する。
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日本型経営・組織の問題点(その14)(社員は“マジメで勤勉”なのに 会社はアナログのまま…富士通の「DX請負人」が痛感した日本企業の重大な欠陥 日本企業が時代遅れになった根本原因、なぜ日本の取締役会はリスクテイクを歓迎しないのか、日本は「企業が最も経営破綻しない先進国」のままで良いのか?) [経済政治動向]

日本型経営・組織の問題点については、昨年4月30日に取上げた。今日は、(その14)(社員は“マジメで勤勉”なのに 会社はアナログのまま…富士通の「DX請負人」が痛感した日本企業の重大な欠陥 日本企業が時代遅れになった根本原因、なぜ日本の取締役会はリスクテイクを歓迎しないのか、日本は「企業が最も経営破綻しない先進国」のままで良いのか?)である。

先ずは、本年5月19日付けPRESIDENT Onlineが掲載した立教大学ビジネススクール教授・戦略コンサルタントの田中 道昭氏による「社員は“マジメで勤勉”なのに、会社はアナログのまま…富士通の「DX請負人」が痛感した日本企業の重大な欠陥 日本企業が時代遅れになった根本原因」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/69640
・『なぜ日本企業のDXはうまくいかないのか。2020年4月、富士通の最高DX責任者になった福田譲氏は、就任してすぐ富士通でDXが進まない最大の原因に気づく。それは、グループ全体を覆う「会社に対する無関心」だった――。(第2回) ※本稿は、Ridgelinez編、田中道昭監修『HUMAN ∞ TRANSFORMATION』(日本経済新聞出版)の一部を再編集したものです』、「DXが進まない最大の原因」が「会社に対する無関心」とは衝撃的だ。
・『SAPジャパン元社長をDX担当に招き入れた  富士通株式会社の時田隆仁社長(以下、時田と略す)は全社変革を推進する上で、既存の組織や人間関係にとらわれない外部人材の登用を通じて多様性のあるマネジメントチームを組成していく。その中でも変革の核となる全社デジタルトランスフォーメーション(のちにFujitsu Transformation=〔フジトラ〕としてプロジェクト化する)の推進のために外部から招き入れたのが、富士通の現・執行役員EVP、CDXO(最高DX責任者)、CIO(最高情報技術責任者)である福田譲である。 福田は1997年に大学卒業後、ERP(統合基幹業務システム)の世界最大手であるSAPジャパンに入社した。化学・石油の大手メーカーを担当する法人営業のエキスパートとしてキャリアを磨きながら、新規事業開発の担当役員や営業統括本部長を歴任。 14年にはSAPジャパンの代表取締役となり、20年4月に富士通に転じるまで23年間、SAPに在籍していた』、「SAPジャパンの代表取締役」を「執行役員EVP、CDXO・・・、CIO」として迎え入れるとは思い切ったことをしたものだ。
・『各国グループ会社の状況を把握できていない  そのSAPジャパン時代に福田は、時田の前任だった前社長の田中達也の依頼で、米国のシリコンバレーを案内したことがあった。SAPは2000年代初め、マイクロソフトに買収されるかという事態に直面したことがあり、世界企業へと脱皮すべく、シリコンバレーに研究所を移して組織変革に弾みをつけたという歴史を持つ企業でもある。 その経緯を説明しながら、富士通の当時の社長である田中にSAPの経営ダッシュボードなどを含めた事業経営の有り様を直接説明した福田は、富士通のグローバル経営の実態を聞き、驚きを禁じ得なかった。 世界的に通用するブランドとポジションを築いていながら、経営者がグローバルの数字を経営の意思決定に繋がる形でタイムリーに把握することができておらず、グループ会社のガバナンスもほとんど利いていないという印象を持ったという』、「SAPジャパン時代に福田」氏は、「富士通の当時の社長」が「経営者がグローバルの数字を経営の意思決定に繋がる形でタイムリーに把握することができておらず、グループ会社のガバナンスもほとんど利いていないという印象を持ったという」、あり得る話だ。
・『「富士通でこれなら日本の他の企業は…」  田中の再びの依頼によって、福田は翌年に富士通の取締役全員のシリコンバレー視察を受け入れ、SAPのデータ駆動型経営について改めて説明した。それをきっかけにして富士通が変わることを期待していたからだ。 しかしながら、メディアなどを通じて富士通の変革が進んだという話を聞くことはなかった。 「富士通でこのようなレベルなら、多くの日本企業は相当に危ないのではないか」。 そう思った福田だが、一方で富士通は世界的に競争力のある技術や優良な顧客資産、そして良い人材も持っているとも感じていた。企業としてのカルチャーも、時代錯誤になっている部分はあるが良いものを持っている。社員一人ひとりが「きちっと」している。真面目で勤勉というのは世界的に見ると大変価値があるし、資本主義に傾倒して多くの欧米企業が失ってしまったもの、GAFAM(グーグル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック〔現・メタ〕、アップル、マイクロソフト)にないものがあると考えていた。 福田は富士通を変えられたら多くの日本企業のリファレンスになると考え、時田の招聘しょうへいを受け入れて富士通に転じ、富士通のトランスフォーメーションの指揮を執ることになる』、「田中の再びの依頼によって、福田は翌年に富士通の取締役全員のシリコンバレー視察を受け入れ、SAPのデータ駆動型経営について改めて説明した」、「福田は富士通を変えられたら多くの日本企業のリファレンスになると考え、時田の招聘しょうへいを受け入れて富士通に転じ、富士通のトランスフォーメーションの指揮を執ることになる」、「田中」氏は「SAPのデータ駆動型経営」や「福田」氏をよほど気に入ったようだ。
・『会社に対する無関心レベルが度を越えていた  福田が富士通に入社して最大の問題だとすぐに気づいたのは、グループ全体を覆う「会社に対する無関心」だった。 「会社を変革することに対して、実は抵抗勢力らしき存在がいませんでした。みんなが変革には賛成する一方で、会社に対するエンゲージメントが非常に低く、何のために富士通にいるのか、何のために仕事をしているのかを考えているように見える社員が少なかったのです」と福田は懐述する。 「上司に言われて仕事をしている」「残業代がつかなくなるので、幹部社員になりたくない」という従業員のリアルな声もあった。数万人が参加しているはずの社内SNSで社長の時田がコメントをつけても、「いいね!」などの反応が100に満たない。グループ12万人が閲覧できるはずの社内ポータルにトップメッセージをアップしても、閲覧数が2万~3万しかいかない――。その一方で、社員アンケートを取ると「他の部署が何をやっているのかが見えない」という不満も出てきていた』、「福田が富士通に入社して最大の問題だとすぐに気づいたのは、グループ全体を覆う「会社に対する無関心」だった。 「会社を変革することに対して、実は抵抗勢力らしき存在がいませんでした。みんなが変革には賛成する一方で、会社に対するエンゲージメントが非常に低く、何のために富士通にいるのか、何のために仕事をしているのかを考えているように見える社員が少なかったのです」、「数万人が参加しているはずの社内SNSで社長の時田がコメントをつけても、「いいね!」などの反応が100に満たない。グループ12万人が閲覧できるはずの社内ポータルにトップメッセージをアップしても、閲覧数が2万~3万しかいかない」、「グループ全体を覆う「会社に対する無関心」」とは驚いた。
・『経営に関心が向かないような仕組みがあった  社員が会社の成長や未来について、なぜこれほどまでに無関心なのか。 「無関心レベルが想像を超えていた」と福田は当時の状況を振り返るが、徐々に「富士通という組織の中に、会社の経営に関心を向かわせないような仕組みや構造があっただけに過ぎない」と思うようになる。会社が進んでいる方向性について、社員に疑問を抱かせないような環境を会社自身がつくっている、ということに気がついたのだ。 福田のこの気づきは、その後の改革に大いに活かされている。富士通は2020年5月にグループのパーパスを「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていく」ことと制定し、全社変革の軸として掲げた。 (【図表1】富士通グループのパーパス出所=『HUMAN ∞ TRANSFORMATION』はリンク先参照) しかしながら、全社変革はトップダウンだけでは実現できない。欠かせないのは、今は無関心な多くの従業員の、多様な個の力による変革をボトムアップで進める意識と意欲だ』、「会社が進んでいる方向性について、社員に疑問を抱かせないような環境を会社自身がつくっている、ということに気がついたのだ。 福田のこの気づきは、その後の改革に大いに活かされている」、なるほど。
・『まずは社員個人が生きることの意義を見つめ直す  彼らの心を動かし、行動を起こす原動力は何なのか? その第一歩として、社員個々を理解し、その原動力をドライブする取り組みとして「パーパスカービング」を経営陣主導で開始した。 「パーパスカービング」とは個人が働くことや生きることの意義を改めて見つめ直した上で、企業のパーパスと自己のパーパスを掛け合わせ、そこで生まれる多様な力を変革の原動力にするという取り組みである。パーパスカービングは全社にわたって実施され、何よりもこの後、変革の先鋒に立つべきリーダー層に変化をもたらした。 「変わらない富士通」に諦めの気持ちを持っていたものが、トップファースト(=経営陣から順に)で行われたパーパスカービングの実施によって、時田をはじめとした経営陣の全社変革への本気度を感じることができた。全社を横断して変革を実践するリーダーシップへ、少しずつ意識の変容が見られてきたのである』、「社員個々を理解し、その原動力をドライブする取り組みとして「パーパスカービング」を経営陣主導で開始した。 「パーパスカービング」とは個人が働くことや生きることの意義を改めて見つめ直した上で、企業のパーパスと自己のパーパスを掛け合わせ、そこで生まれる多様な力を変革の原動力にするという取り組みである。パーパスカービングは全社にわたって実施され、何よりもこの後、変革の先鋒に立つべきリーダー層に変化をもたらした。 「変わらない富士通」に諦めの気持ちを持っていたものが、トップファースト・・・で行われたパーパスカービングの実施によって、時田をはじめとした経営陣の全社変革への本気度を感じることができた」、「トップファースト」で「経営陣の全社変革への本気度」を示す必要があったのだろう。
・『変革の対象は「聖域」なく選ぶ  富士通は先のパーパスを基に2030年のあるべき姿を設定し、富士通グループ全体で変革を推進するプロジェクトとして「FUJITRA(以下、フジトラ)」を20年10月から開始。プロジェクト名のフジトラとは「Fujitsu+Transformation」を略したもので、社長である時田がCDXO(当時)として、またCIOの福田がその補佐として、パーパスを基点に富士通グループ全体をデジタルの力で変革していくプロジェクトである。そして、経路“相互”依存性を打破するために同時多発的に変革を実践していく。 変革テーマの対象は“聖域”なく選び、事業部門から管理部門まで部門を問わない。上がってきたテーマを分類・分析し、優先順位をつけて同時並行で推進。現在では150ほどのテーマがグループ全体において同時並行で取り組まれている。 「現場が主役・全員参加」というスローガンを掲げ、主要組織、主要グループ会社、リージョンごとにDX責任者(DXO)を配置し、DXO同士が推進するテーマの課題や悩みを相互に共有し、DXOたちによるコミュニティが解決し合うプロジェクト推進の基盤も構築できている。 (【図表2】フジトラのプロジェクト体制(2023年3月時点)出所=『HUMAN ∞ TRANSFORMATION』 はリンク先参照)』、「2030年のあるべき姿を設定し、富士通グループ全体で変革を推進するプロジェクトとして「FUJITRA・・・」を20年10月から開始」、「変革テーマの対象は“聖域”なく選び、事業部門から管理部門まで部門を問わない。上がってきたテーマを分類・分析し、優先順位をつけて同時並行で推進。現在では150ほどのテーマがグループ全体において同時並行で取り組まれている」、なるほど。
・『ファーストペンギンとしての出島組織をつくる  フジトラの本当の目的はデジタル化を進めることではなく、顧客の悩みや社会課題に対して自らが課題を設定し、解決し、新しい変革を起こしていくための意欲と能力を醸成していくことだ。 これは、これまで富士通がやりたくてもできなかったことでもあり、富士通という企業そのものの変革を体現してみせることでもある。 「果たして全社DXプロジェクトだけでそのような姿になれるのか?」「もっと加速させる手段はないのか?」――。その解の1つとして生まれたのが、社外から変革を加速させるDXコンサルティングファームとしてのリッジラインズである。 富士通の抱える変革に向けた課題は、多くの日本企業にも共通しており、富士通でそれらを解決できれば、同じような境遇に置かれている日本企業にとって貴重なリファレンスモデルとなり得る。 しかし同時に、大企業である富士通では新しい施策や実証実験などに向けた意思決定や、必要なタレント・チームの組成がスピード感を持った形で実施できない場合が多い。そのためのファーストペンギン役として出島組織(この場合は資本関係で繋がってはいるが、経営の自主性を高く持てる組織の意)であり、プロフェッショナルファームとしてのリッジラインズの存在が生きてくる。)』、「社外から変革を加速させるDXコンサルティングファームとしてのリッジラインズである」、「大企業である富士通では新しい施策や実証実験などに向けた意思決定や、必要なタレント・チームの組成がスピード感を持った形で実施できない場合が多い。そのためのファーストペンギン役として出島組織・・・であり、プロフェッショナルファームとしてのリッジラインズの存在が生きてくる」、なるほど。
・『人を起点にした変革5つのステップ  取り組みの例としては、ジョブ型人事制度を前提にした360度評価や、組織間での人材の移動を柔軟にするプラクティス制、経費精算などの社内のバックオフィス業務をデジタルツールをフル活用して完全自動化する取り組み、新たな知見の創出活動としての「Human & Values Lab」などがある。いずれもリッジラインズで始まり、富士通本体でも活用・検討されている取り組みだ。 ここまでの富士通の変革の現場を振り返ると、人を起点とした企業の変革に取り組む際のファーストステップとして捉えることができる』、「いずれもリッジラインズで始まり、富士通本体でも活用・検討されている取り組みだ」、「人を起点とした企業の変革に取り組む際のファーストステップとして捉えることができる」、なるほど。
・『人起点変革のファーストステップ  ステップ① 変革に取り組む明白な理由を示す ステップ② 企業としての新しい目的を設定する ステップ③ 対話を通じて企業の目的と従業員の原動力を共鳴させる ステップ④ 新しい目的や変革に熱意ある現場が行動変容できる環境をつくる ステップ⑤ ファーストペンギンを設定し、変革を加速する  まず前提としてあるのは、いかに素晴らしい戦略が描けたとしても、トップから現場に至るまでそこにいる人々の行動変容が起きなければ、外から見ていても会社は変わっていないと思われるし、実際、変わっていないということである。そのため、変革に取り組む理由や自社の目的を従業員一人ひとりが理解し、行動に繋げられるための環境づくりがDXの初期ステップでは肝要となる』、「変革に取り組む理由や自社の目的を従業員一人ひとりが理解し、行動に繋げられるための環境づくりがDXの初期ステップでは肝要となる」、その通りなのだろう。
・『「考えたこと」を「実践」に移せる環境を整える  富士通では経営方針説明会においてDX企業への転身を宣言し、全社員に対する強い意識付けを実施した(ステップ①)。続けてパーパスを制定し(ステップ②)、自社が向かう方向性を明確にした上で、対話を通じてパーパスを浸透させていった。それが12万人に向けたメッセージや、パーパスカービングである(ステップ③)。 (【図表3】人起点の変革のファーストステップ出所=『HUMAN ∞ TRANSFORMATION』はリンク先参照) ここまでくると、ただのスローガンや一過性の取り組みではないということに従業員が気づき始める。本気で取り組みたいという熱意ある現場もちらほら出てくるが、そのときにポイントになるのが、彼らが考え出した新たな施策をすぐに実践できる環境をつくるということだ。 フジトラは全社の変革活動としてそれらを見える化し、活動やその成果がすぐに共有できるような環境を提供した。こうなると、後続が変革に向けて動きやすい状況がつくられ、自発的に挑戦しようとする動きも加速してくる(ステップ④)』、「「実践」に移せる環境を整える」のは確かに重要なようだ。
・『出島会社でうまくいったものを本丸に取り込む  その頃には抜本的に変化を起こす必要があるテーマや、これまでの常識にとらわれては決して解決できないテーマも明らかになってくる。そこでファーストペンギンを設定し、既存の組織やプロセスの影響を受けにくい状況で試行錯誤をさせ、うまくいったものを「本丸」に取り込んで一気に変革を進めていく。富士通にとっては、リッジラインズがまさしくファーストペンギンであり、出島として新会社を設立したのもそれが狙いの1つであった(ステップ⑤)。 富士通の場合は、これらのステップを経ることによって、変革を推進する人が自ら考え、行動を起こし、成果を生み出していくことが可能になる状態を創り出していった。 繰り返しになるが、変革を起こすのはまぎれもなく人である。リーダー自らが行動を起こし、周囲の行動を変容させていくためのアプローチとして、これらのステップを活用できる』、「出島会社でうまくいったものを本丸に取り込む」、巧みなやり方だ。
・『「ただデジタル化すればいい」のではない  日本企業の変革・DXで特に重要となるのはステップ①~③である。アナログ・物理データをデジタルデータ化したり、個別の業務をデジタル化したりするだけでは、トランスフォーメーションとはいえない。 組織を横断した全体の業務・製造プロセスのデジタル化・見える化を行い、事業運営やビジネスモデルを変革してこそDXが達成されるといっていいだろう。そのためには、繰り返しになるが自社の(変革の)目的を戦略的に設定し、一人ひとりに理解を促し、浸透させていくことが必要になる。この①~③のステップをおろそかにして、個別の業務におけるツール導入を検討しても、大きなインパクトを出すのは難しい。 そしてこれらのステップは、変革を起こすための序盤に必要なものに過ぎない。活動を更に活性化させていくことで、ムーブメントを起こし全社に広げていくことが重要となる。一過性の取り組みに終わらせることなく、上層部から現場まで巻き込んで変革の理由をそれぞれのレイヤーが「自分事化」し、時に新たな目的を設定し更なる行動に繋げていくこと、このサイクルを継続していくことによって大きな変革を遂げていくことができるようになる』、「日本企業の変革・DXで特に重要となるのはステップ①~③である。アナログ・物理データをデジタルデータ化したり、個別の業務をデジタル化したりするだけでは、トランスフォーメーションとはいえない。 組織を横断した全体の業務・製造プロセスのデジタル化・見える化を行い、事業運営やビジネスモデルを変革してこそDXが達成されるといっていいだろう。そのためには、繰り返しになるが自社の(変革の)目的を戦略的に設定し、一人ひとりに理解を促し、浸透させていくことが必要になる」、なるほど。

次に、6月16日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したニコンやMUFGのCFOをした徳成旨亮氏による「なぜ日本の取締役会はリスクテイクを歓迎しないのか」を紹介しよう。
・『三菱UFJおよびニコンのCFOとして、毎年平均100名近い海外機関投資家と面談してきた徳成旨亮氏によると、海外機関投資家との面談で、頻繁に「君たち(日本経済・日本企業・日本人)には『アニマルスピリッツ』はないのか?」と問い質されてきた、という。 海外投資家は、日本の社会や企業経営を、血気が衰え、数値的期待値を最重視しリスクに怯えている状態にあると見ている。結果、日経平均は1989年の最高値を未だ更新できておらず、水準を切り上げ続けている欧米株と比べて魅力がないと言われても仕方がない状況だ。 この現状を打破するにはどうしたらいいか? 徳成氏は、「CFO思考」が「鍵」になるという。 朝倉祐介氏(アニマルスピリッツ代表パートナー)や堀内勉氏(元森ビルCFO)が絶賛する6/7発売の新刊『CFO思考』では、日本経済・日本企業・日本人が「血気と活力」を取り戻し、着実に成長への道に回帰する秘策が述べられている。本書から、一部を特別に公開する』、『アニマルスピリッツ』を取り戻すには、「「CFO思考」が「鍵」になるという」のは興味深そうだ。
・「企業の永続性」を「成長」より優先する日本の取締役会  コーポレートガバナンス・コードは、取締役会がCEO以下経営陣の健全なアニマルスピリッツに基づくリスクテイクの提案を歓迎し、その果断な意思決定を支援することを求めています。 しかしながら、2023年時点で、日本企業の取締役会において、CEOをはじめとする経営陣に「もっと積極的にリスクを取れ」と背中を押すような行動を取っているケースはほとんどないものと思われます。 日本の社外取締役は、株主価値向上につながる企業価値向上を最優先に考えるというよりも、企業価値向上につながる行動はCEO以下執行サイドの役割であり、みずからの役割は監査など執行に対するチェック機能にあると認識しているものと考えられます。 ここで、取締役会の構成を見てみると、CEOなどの執行サイドの役員に加え、弁護士や会計士、官僚出身者や企業経営者から構成されているケースが多いことが分かります。 コーポレートガバナンス・コードの補充原則4─11①では、「独立社外取締役には、他社での経営経験を有するものを含めるべき[*1]」だとされており、各社はこぞって他社の社長経験者を社外取締役に迎えています。 その結果、他社の社長、会長経験者で、現在は「相談役」「特別顧問」などに就いておられる方々が、取締役会で中心的役割を担っている、というのが、日本の上場企業の平均的な姿になっています。 CFO仲間の懇談会などでよく聞く話を総合すると、平均的に70歳前後のこうした方々は、長年、企業を率い、後輩に社長のバトンを無事に渡された成功体験から、企業の永続性を優先するお考えをお持ちの方が多いようです。また、中には、「ROEや株主価値を重視すべき」という昨今の風潮に心のどこかで抵抗を感じている方もいらっしゃる、という話も聞きます。 誤解を恐れずに言えば、多くの社外取締役は、会社の継続性を優先し、企業がリスクアペタイトに乏しい状況を容認する、つまりリスクテイクよりは企業の安定性を重視する傾向があると言えます。 このため、ISSやグラス・ルイスなどの議決権行使助言会社が「独立社外取締役を増やせ」といった外形標準的な要求をいくら企業側に突き付け、そのとおりになったとしても、コーポレートガバナンス・コードが期待しているような「社外取締役が中心となってCEOのアニマルスピリッツに火をつけ、リスクテイクの背中を押す」といったシナリオは期待しにくいと言えます。 念のため、私のスタンスをお話しすれば、会社の永続性を重視する、という結論は多くの日本企業にとって妥当なものだと考えています。 同時に、海外投資家と面談してきた経験から、取締役会でもっとリスクテイクによる企業価値の向上策や株価対策が議題として採り上げられても良いとも感じています。 取締役会メンバーに「投資家的目線を持った人材」が複数いて、従業員や地域社会などさまざまなステークホルダーの利害を含む多角的な議論が行われ、その結果として経営方針を導き出すことが──たとえそれが従来と同じ結論だったとしても──重要ではないか、というのが私の考えです』、「多くの社外取締役は、会社の継続性を優先し、企業がリスクアペタイトに乏しい状況を容認する、つまりリスクテイクよりは企業の安定性を重視する傾向がある」、「ISSやグラス・ルイスなどの議決権行使助言会社が「独立社外取締役を増やせ」といった外形標準的な要求をいくら企業側に突き付け、そのとおりになったとしても、コーポレートガバナンス・コードが期待しているような「社外取締役が中心となってCEOのアニマルスピリッツに火をつけ、リスクテイクの背中を押す」といったシナリオは期待しにくいと言えます」、なるほど。
・『取締役会に投資家を招く「ボード3.0」という考え方  こうした問題意識は広く認識されつつあり、経済産業省や一部有識者のあいだでは、「ボード3.0」を日本流に応用することがその解決に資するのではないか、と注目されています。 「ボード3.0」とは、2019年にコロンビア・ロースクールのロナルド・ジルソン教授とジェフリー・ゴードン教授が提唱した新しい取締役会のモデルです[*2]。 1960年代までに米国で確立した取締役会のモデルは「アドバイザリーボード」と呼ばれ、取締役会は、経営者本人と企業の顧問法律事務所や取引銀行や投資銀行の担当役員、経営者の知人の他社経営者など「お友達」とも言える人々で構成されていました。 このような取締役会では、リスクアペタイトが旺盛な経営者の欲望を抑制できず、不正や経営破綻につながったことから、このモデルは限界を迎えました。 次に登場したのが、独立社外取締役で構成される監査委員会を活用する「ボード2.0」です。「モニタリングボード」とも呼ばれるこの仕組みは、1970年代から2000年代にかけて徐々に一般的になってきました。日本のコーポレートガバナンス・コードも独立社外取締役が過半数を占め、監査委員会、報酬委員会、指名委員会などを持つ米国の「ボード2.0」をひな型としています。 「ボード2.0」に対しては、米国では課題が指摘されています。CEOほかの執行サイドとの情報格差や管理・監督のためのリソース、またモチベーションの点で社外取締役には限界があり、複雑化する企業経営を十分に監督できないのではないか、という指摘です。 日本企業とは異なり、米国では経営者のアニマルスピリッツやリスクアペタイトは旺盛だけれども、CEOなどの経営陣と社外取締役の情報の非対称性が大きく、経営者の意図を十分咀嚼し議論していく体制が不十分、というわけです。 米国では、アクティビストが株主となり、相当額の投資を背景に大株主としてCEOやCFOとの面談や財務分析を集中して行うことで、経営に深く関与する事例が増えています。 こうなると、その会社のビジネス領域に十分な知見のない社外取締役よりも、洗練されたアクティビストの方が事業をよく理解し戦略の評価能力を有している、という状況になってきます。 こうしたアクティビストから事業売却などの提案を受けた場合、これまでの「独立性」にこだわり過ぎた社外取締役だけでは、賛否を十分に議論できないのではないか、というのがゴードン氏らの指摘です。 「ボード3.0」でゴードン氏らが提唱しているアイデアは、企業価値を持続的に成長させるために、取締役会に、企業が成長することと利害が一致しインセンティブを持つ投資家(プライベートエクイティ・ファンドなど)を迎え、取締役会の情報収集力やアクティビストとの交渉力などを高める、というものです。 実は、米国ではこの「ボード3.0」に対しては批判が多く、2023年の春の時点では、本国での賛同は広がっていません。 むしろ、「ボード3.0」をめぐる議論は、米国本国よりも日本で活発です。 それは、ゴードン氏らが提起した「独立社外取締役の存在だけでは、企業価値の向上につながらない」という論点が、企業業績や株価が低迷している日本でより深刻だからだと考えられます。 しかし、取締役会に投資家を迎え入れるという「ボード3.0」のアイデアが、日本で受け入れられる可能性は米国以上にほとんどありません。 (本書では、日本企業で取締役会がより健全なリスクテイクを行えるようにするための方策を、上記の文章に続いて、この後に提言しています』、「1960年代までに米国で確立した取締役会のモデルは「アドバイザリーボード」と呼ばれ、取締役会は、経営者本人と企業の顧問法律事務所や取引銀行や投資銀行の担当役員、経営者の知人の他社経営者など「お友達」とも言える人々で構成されていました。 このような取締役会では、リスクアペタイトが旺盛な経営者の欲望を抑制できず、不正や経営破綻につながったことから、このモデルは限界を迎えました」、「独立社外取締役で構成される監査委員会を活用する「ボード2.0」です・・・1970年代から2000年代にかけて徐々に一般的になってきました。日本のコーポレートガバナンス・コードも独立社外取締役が過半数を占め、監査委員会、報酬委員会、指名委員会などを持つ米国の「ボード2.0」をひな型としています。 「ボード2.0」に対しては、米国では課題が指摘されています。CEOほかの執行サイドとの情報格差や管理・監督のためのリソース、またモチベーションの点で社外取締役には限界があり、複雑化する企業経営を十分に監督できないのではないか、という指摘」、「「ボード3.0」でゴードン氏らが提唱しているアイデアは、企業価値を持続的に成長させるために、取締役会に、企業が成長することと利害が一致しインセンティブを持つ投資家(プライベートエクイティ・ファンドなど)を迎え、取締役会の情報収集力やアクティビストとの交渉力などを高める、というものです。 実は、米国ではこの「ボード3.0」に対しては批判が多く、2023年の春の時点では、本国での賛同は広がっていません。 むしろ、「ボード3.0」をめぐる議論は、米国本国よりも日本で活発です」、なるほど。
・『徳成旨亮(とくなり・むねあき) ニコン取締役専務執行役員CFO 慶應義塾大学卒業。ペンシルベニア大学経営大学院(ウォートン・スクール)Advanced Management Program for Overseas Bankers修了。 三菱UFJフィナンシャル・グループCFO(最高財務責任者)、米国ユニオンバンク取締役を経て現職。日本IR協議会元理事。米国『インスティテューショナル・インベスター』誌の投資家投票でベストCFO(日本の銀行部門)に2019年まで4年連続選出される。本業の傍ら執筆活動を行い、ペンネーム「北村慶」名義での著書は累計発行部数約17万部。朝日新聞コラム「経済気象台」および日本経済新聞コラム「十字路」への定期寄稿など、金融・経済リテラシーの啓発活動にも取り組んでいる。本書は本名での初の著作。 【著者からのメッセージ】 私は国内外あわせて毎年平均100名前後の機関投資家の方々と、直接もしくはネット経由で面談し、自社の株式への投資をお願いしてきました。これら多くのグローバル投資家から、私が繰り返し言われてきた言葉があります。それは、 「君たち(日本経済・日本企業・日本人)には『アニマルスピリッツ』はないのか?」というフレーズです。 経済学者のジョン・メイナード・ケインズによれば、アニマルスピリッツとは、「実現したいことに対する非合理的なまでの期待と熱意」を意味します。海外の投資家たちは、日本の社会全体や企業経営から血気と活力が衰えている、つまり「アニマルスピリッツ」が日本経済から失われていると見ているのです。 この現状を覆すにはどうすればよいか? それが本書のテーマです。その答えは「CFO思考」にあると私は考えています。 「CFO(Chief Financial Officer、最高財務責任者)」と聞くと、数字のプロであり経理や資金調達に責任を負っている「経理・財務担当役員」が思い浮かぶ方も多いと思います。 しかし、欧米で「CFO」といえば、CEO(最高経営責任者)、COO(最高執行責任者)とともに3名で経営の意思決定を行う「Cスイート」の一角を占める重要職です。CFOは、投資家をはじめとする社外の多くのステークホルダー(利害関係者)に対しては、会社を代表してエンゲージメント(深いつながりを持った対話)を行い、社内に対しては、ROE(自己資本利益率)に代表される投資家の期待・資本の論理や、ESG投資家や地域社会など、異なるステークホルダーの要望を社員にもわかるように翻訳して伝え、その期待を踏まえた経営戦略を立て、それを実践するよう組織に影響を与え行動を促す、という役割を担っています。 そして、「アニマルスピリッツ」をCEOなどほかの経営陣と共有し、「数値をベースにした冷静な判断力」を持って考え、企業としての夢の実現に向け行動する、いわば企業成長のエンジンの役割を果たしています。 本書では、従来の日本の経理・財務担当役員に多く見られる「CFOは企業価値保全を第一義にすべきだ」という考え方を「金庫番思考」、「CFOは冷徹な計算と非合理的なまでの熱意を併せ持ち、企業成長のエンジンとなるべき」という考え方を「CFO思考」と呼びます。「『CFO思考』こそが、企業のパーパス(存在意義・目的)を実現させる」。これが本書の結論です。 本書でお話する内容には、企業経営に関するテーマが多く含まれています。同時に、現在、各企業において、経理、予算、財務、税務、IR、サステナビリティ・ESG、DX・ITといった分野で働くビジネスパーソン、もしくはそのような分野に興味がある方々も意識して書き下ろしました。皆さんが担当しておられるこれらの業務において、どのように「CFO思考」を発揮すればよいのかをご紹介しています。 こうした実務に携わっておられる皆さんには、グローバルで活躍できる人材として、将来日本企業と日本経済の成長のエンジンになっていただきたいと考えています。 CFOという仕事の魅力と楽しさが、一人でも多くの読者の皆さんに伝われば、それに勝る喜びはありません』、「本書では、従来の日本の経理・財務担当役員に多く見られる「CFOは企業価値保全を第一義にすべきだ」という考え方を「金庫番思考」、「CFOは冷徹な計算と非合理的なまでの熱意を併せ持ち、企業成長のエンジンとなるべき」という考え方を「CFO思考」と呼びます。「『CFO思考』こそが、企業のパーパス(存在意義・目的)を実現させる」。これが本書の結論です」、「金庫番思考」ではなく、「CFO思考」を持てとの主張には説得力がある。

第三に、6月18日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したニコンやMUFGのCFOをした徳成旨亮氏による「日本は「企業が最も経営破綻しない先進国」のままで良いのか?」を紹介しよう。
・(冒頭は第二の記事と同じなので省略) ほとんどの日本企業はリスクを取らなすぎ  会社の健全性の維持に関してCFOは全責任を負います。CFOが企業の財務健全性の最後の砦であることに疑いの余地はありません。 財務の健全性を損ねることは、従業員、債権者、取引先など多くのステークホルダーにとって好ましいことではないこともまた明白です。 日本においては、企業経営者は会社を潰さないことを最優先に経営判断をしてきました。経理・財務担当役員は、ケチとか倹約家などと陰口を叩かれようとも「金庫番」としての役割を立派に果たし、ぶ厚い内部留保を積み上げてきました。 結果、日本企業は倒産が少なく、人々は安心して生活ができ、そのことが日本の社会の安定と犯罪の少ない安全をもたらしてきた側面があります。 つまり、会社は社会の「公器」であり、永続することは従業員や取引先や地域社会にとって大きな意味を持つ、という自覚が大企業の経営者にはあったのだと思います。 しかし、取締役会がCEOら経営者のアニマルスピリッツを刺激せず、「金庫番思考」を持つCFOがブレーキに常に足を掛けていては、日本企業は「潰れもしないが、成長もしない」状態に至ることは確実です。 事実、世界的にみて日本は「企業が最も経営破綻しない先進国」なのです。内閣府の白書「日本経済2020─2021」によれば、我が国の倒産件数は減少傾向が続いており、資本金1億円以上の大・中堅企業の倒産は、2015年以降100件未満に止まっています[*1]。 米国企業の取締役会がお友達中心の「ボード1.0」から、独立社外取締役中心のモニタリングモデル「ボード2.0」に移行した主な要因は、経営者によるリスクの取り過ぎ、すなわち「過食」にありましたが、日本企業に一般的に見られる課題は、「小食」です。 すなわち、ほとんどの上場企業がリスクアペタイトを余らせている状態、資本やキャッシュを過大に保有している状態にあるのです。 岸田内閣以前から政治の世界でも、日本企業の内部留保の大きさが話題になってきましたが、これも同じ文脈で理解することができます。 また、8年余りのCFO生活のなかで、私が世界中の複数の投資家から、それも日本を知り日本人を愛する有名ファンドマネージャーから、「君たち日本人にはアニマルスピリッツはないのか?」と何度も言われた背景もここにあります』、「取締役会がCEOら経営者のアニマルスピリッツを刺激せず、「金庫番思考」を持つCFOがブレーキに常に足を掛けていては、日本企業は「潰れもしないが、成長もしない」状態に至ることは確実です。 事実、世界的にみて日本は「企業が最も経営破綻しない先進国」なのです」、「米国企業の取締役会がお友達中心の「ボード1.0」から、独立社外取締役中心のモニタリングモデル「ボード2.0」に移行した主な要因は、経営者によるリスクの取り過ぎ、すなわち「過食」にありましたが、日本企業に一般的に見られる課題は、「小食」です。 すなわち、ほとんどの上場企業がリスクアペタイトを余らせている状態、資本やキャッシュを過大に保有している状態にあるのです」、「8年余りのCFO生活のなかで、私が世界中の複数の投資家から、それも日本を知り日本人を愛する有名ファンドマネージャーから、「君たち日本人にはアニマルスピリッツはないのか?」と何度も言われた背景もここにあります」、「日本企業に一般的に見られる課題は、「小食」です」、とは言い得て妙だ。
・『業態転換よりも市場からの退出を求める海外投資家  会社を潰さず、雇用を守るために、日本企業の経営者が取ってきた企業戦略が、多角化であり事業ポートフォリオ戦略です。すなわち、異なるリスクプロファイルと収益構造を持つ複数の事業を持つことで、会社全体を安定させようとしてきました。 また、主力事業が苦しくなると、その事業が持つ基礎技術や顧客基盤を用いて、会社と終身雇用を守りながら、業態転換を図ってきました。経営論的に言えば、いったん会社を清算して新たに起業することが合理的な場合も含めて、日本の企業経営者は何とか会社全体を存続させようとしてきました。そのベースには、「会社は、社会の『公器』であり、存続していること自体に意味がある」という考え方がありました。こうした考え方を仮に「日本型資本主義」と呼ぶことにしましょう。 これに対して、欧米の企業経営者や投資家は異論を唱えます。 複数の事業を持つのは好ましくない。企業のなかでポートフォリオを組んでもらう必要はない。それは、私たちファンドマネージャーの仕事だ。君たちは、事業構成をなるべくシンプルにして、1つか2つの事業に集中して、成長を目指してもらいたい。寿命が尽きたビジネスは諦めて、それが主力事業ならいったん会社をたたむべきだ。会社を永続させながら、業態転換するなんていう難しいことをやる必要はない。 彼らが念頭に置いている「株式会社」や「資本主義」のあり方は、日本の経営者の平均的な考えと大きく異なるのです。 私がそれを痛感した投資家との対話があります。それは、富士フイルムを巡るやり取りでした。 写真フイルムで高収益を上げていた米国のイーストマン・コダック(以下コダック)が、デジタルカメラという革新的な技術に敗れ去り、かたや富士フイルムは市場がほぼ消滅するという危機を乗り越え、複写機などのOA機器や医療用画像機器、医薬品、化粧品、健康食品や高機能化学品などに主力商品を転換させることで、高収益企業として見事に生き残ったという有名な事例があります。 コダックは世界で初めてカラーフイルムを発売したメーカーで、1963年頃にはすでに4000億円を売り上げ、270億円ほどの富士フイルムとは10倍以上の開きがありました。コダックは写真フイルムの製造に必要な銀とゼラチンを確保するために、銀山や牧場を自前で保有していたという話もあります。 しかしそのコダックは、2012年、経営破綻したのです。一方の富士フイルムは売上2兆8590億円、当期純利益2194億円(2023年3月期)の優良企業として生き残っています。 私が面談した米国の有名投資家は、「富士フイルムが成し遂げたことは素晴らしい」と前置きしたうえで、「しかしコダックの経営者も間違ってはいなかった」と語ったのです。 倒産させておいて何を? という私の疑問の表情に気づいたかのように、そのファンドマネージャーは続けました。「コダックの経営者は、最後まで配当と自社株取得で、過去に蓄積した利益を投資家に返し続けた。ひとつのビジネスが廃れるとき、累積資本は自社株取得などで投資家になるべく早く還元すべきだ。その資金で投資家が次世代のビジネスを作る別のベンチャー企業に投資する。投資家が投資先を選ぶのであって、企業が成功するかもわからない新規事業に乗り出してコングロマリット化することは非効率だ」 業態転換に成功した富士フイルムは例外であって、多くの場合、主力事業が衰退する企業は早く見切りをつけて、経済資本(現預金)や人的資本(技術者や従業員)を市場に解放したほうがよい。資本や有能な人材を欲しているベンチャー企業が米国にはたくさんあるのだから、というわけです。 これが欧米流の企業のあり方であり、彼らが考える「普通の資本主義」です。キーワード的に言えば、企業の優勝劣敗は必然であり、新陳代謝は経済に効率性をもたらす、そして、新たな成長は市場と投資家が主導する、という理屈です。 当然、社会や従業員には一定程度の混乱が生じますが、それも長い目で見れば、経済の成長と新産業の勃興で吸収できる、という将来に対する楽観的見方がベースにあります。 *1 「日本経済2020−2021」内閣府ウェブサイト、2021年3月 https://www5.cao.go.jp/keizai3/2020/0331nk/index.html ※この記事は、書籍『CFO思考』の一部を抜粋・編集して公開しています。』、「会社を潰さず、雇用を守るために、日本企業の経営者が取ってきた企業戦略が、多角化であり事業ポートフォリオ戦略です。すなわち、異なるリスクプロファイルと収益構造を持つ複数の事業を持つことで、会社全体を安定させようとしてきました。 また、主力事業が苦しくなると、その事業が持つ基礎技術や顧客基盤を用いて、会社と終身雇用を守りながら、業態転換を図ってきました・・・そのベースには、「会社は、社会の『公器』であり、存続していること自体に意味がある」という考え方がありました。こうした考え方を仮に「日本型資本主義」と呼ぶことにしましょう」、「これに対して、欧米の企業経営者や投資家は異論を唱えます。 複数の事業を持つのは好ましくない。企業のなかでポートフォリオを組んでもらう必要はない。それは、私たちファンドマネージャーの仕事だ。君たちは、事業構成をなるべくシンプルにして、1つか2つの事業に集中して、成長を目指してもらいたい。寿命が尽きたビジネスは諦めて、それが主力事業ならいったん会社をたたむべきだ。会社を永続させながら、業態転換するなんていう難しいことをやる必要はない。 彼らが念頭に置いている「株式会社」や「資本主義」のあり方は、日本の経営者の平均的な考えと大きく異なる。 これ以降は、第二の記事と同じなので、紹介を省略』、私も「欧米の企業経営者や投資家」の考え方を支持する。「日本型資本主義」でリスクを取れずに現金を積み上げている経営者は、無能という他ない。
タグ:日本型経営・組織の問題点 (その14)(社員は“マジメで勤勉”なのに 会社はアナログのまま…富士通の「DX請負人」が痛感した日本企業の重大な欠陥 日本企業が時代遅れになった根本原因、なぜ日本の取締役会はリスクテイクを歓迎しないのか、日本は「企業が最も経営破綻しない先進国」のままで良いのか?) PRESIDENT ONLINE 田中 道昭氏による「社員は“マジメで勤勉”なのに、会社はアナログのまま…富士通の「DX請負人」が痛感した日本企業の重大な欠陥 日本企業が時代遅れになった根本原因」 Ridgelinez編、田中道昭監修『HUMAN ∞ TRANSFORMATION』(日本経済新聞出版) 「DXが進まない最大の原因」が「会社に対する無関心」とは衝撃的だ。 「SAPジャパンの代表取締役」を「執行役員EVP、CDXO・・・、CIO」として迎え入れるとは思い切ったことをしたものだ。 「SAPジャパン時代に福田」氏は、「富士通の当時の社長」が「経営者がグローバルの数字を経営の意思決定に繋がる形でタイムリーに把握することができておらず、グループ会社のガバナンスもほとんど利いていないという印象を持ったという」、あり得る話だ。 「田中の再びの依頼によって、福田は翌年に富士通の取締役全員のシリコンバレー視察を受け入れ、SAPのデータ駆動型経営について改めて説明した」、「福田は富士通を変えられたら多くの日本企業のリファレンスになると考え、時田の招聘しょうへいを受け入れて富士通に転じ、富士通のトランスフォーメーションの指揮を執ることになる」、「田中」氏は「SAPのデータ駆動型経営」や「福田」氏をよほど気に入ったようだ。 「福田が富士通に入社して最大の問題だとすぐに気づいたのは、グループ全体を覆う「会社に対する無関心」だった。 「会社を変革することに対して、実は抵抗勢力らしき存在がいませんでした。みんなが変革には賛成する一方で、会社に対するエンゲージメントが非常に低く、何のために富士通にいるのか、何のために仕事をしているのかを考えているように見える社員が少なかったのです」、 「数万人が参加しているはずの社内SNSで社長の時田がコメントをつけても、「いいね!」などの反応が100に満たない。グループ12万人が閲覧できるはずの社内ポータルにトップメッセージをアップしても、閲覧数が2万~3万しかいかない」、「グループ全体を覆う「会社に対する無関心」」とは驚いた。 「会社が進んでいる方向性について、社員に疑問を抱かせないような環境を会社自身がつくっている、ということに気がついたのだ。 福田のこの気づきは、その後の改革に大いに活かされている」、なるほど。 「社員個々を理解し、その原動力をドライブする取り組みとして「パーパスカービング」を経営陣主導で開始した。 「パーパスカービング」とは個人が働くことや生きることの意義を改めて見つめ直した上で、企業のパーパスと自己のパーパスを掛け合わせ、そこで生まれる多様な力を変革の原動力にするという取り組みである。パーパスカービングは全社にわたって実施され、何よりもこの後、変革の先鋒に立つべきリーダー層に変化をもたらした。 「変わらない富士通」に諦めの気持ちを持っていたものが、トップファースト・・・で行われたパーパスカービングの実施によって、時田をはじめとした経営陣の全社変革への本気度を感じることができた」、「トップファースト」で「経営陣の全社変革への本気度」を示す必要があったのだろう。 「2030年のあるべき姿を設定し、富士通グループ全体で変革を推進するプロジェクトとして「FUJITRA・・・」を20年10月から開始」、「変革テーマの対象は“聖域”なく選び、事業部門から管理部門まで部門を問わない。上がってきたテーマを分類・分析し、優先順位をつけて同時並行で推進。現在では150ほどのテーマがグループ全体において同時並行で取り組まれている」、なるほど。 「社外から変革を加速させるDXコンサルティングファームとしてのリッジラインズである」、「大企業である富士通では新しい施策や実証実験などに向けた意思決定や、必要なタレント・チームの組成がスピード感を持った形で実施できない場合が多い。そのためのファーストペンギン役として出島組織・・・であり、プロフェッショナルファームとしてのリッジラインズの存在が生きてくる」、なるほど。 「いずれもリッジラインズで始まり、富士通本体でも活用・検討されている取り組みだ」、「人を起点とした企業の変革に取り組む際のファーストステップとして捉えることができる」、なるほど。 「変革に取り組む理由や自社の目的を従業員一人ひとりが理解し、行動に繋げられるための環境づくりがDXの初期ステップでは肝要となる」、その通りなのだろう。 「「実践」に移せる環境を整える」のは確かに重要なようだ。 「出島会社でうまくいったものを本丸に取り込む」、巧みなやり方だ。 「日本企業の変革・DXで特に重要となるのはステップ①~③である。アナログ・物理データをデジタルデータ化したり、個別の業務をデジタル化したりするだけでは、トランスフォーメーションとはいえない。 組織を横断した全体の業務・製造プロセスのデジタル化・見える化を行い、事業運営やビジネスモデルを変革してこそDXが達成されるといっていいだろう。そのためには、繰り返しになるが自社の(変革の)目的を戦略的に設定し、一人ひとりに理解を促し、浸透させていくことが必要になる」、なるほど。 ダイヤモンド・オンライン 徳成旨亮氏による「なぜ日本の取締役会はリスクテイクを歓迎しないのか」 『アニマルスピリッツ』を取り戻すには、「「CFO思考」が「鍵」になるという」のは興味深そうだ。 「多くの社外取締役は、会社の継続性を優先し、企業がリスクアペタイトに乏しい状況を容認する、つまりリスクテイクよりは企業の安定性を重視する傾向がある」、「ISSやグラス・ルイスなどの議決権行使助言会社が「独立社外取締役を増やせ」といった外形標準的な要求をいくら企業側に突き付け、そのとおりになったとしても、コーポレートガバナンス・コードが期待しているような「社外取締役が中心となってCEOのアニマルスピリッツに火をつけ、リスクテイクの背中を押す」といったシナリオは期待しにくいと言えます」、なるほど。 「1960年代までに米国で確立した取締役会のモデルは「アドバイザリーボード」と呼ばれ、取締役会は、経営者本人と企業の顧問法律事務所や取引銀行や投資銀行の担当役員、経営者の知人の他社経営者など「お友達」とも言える人々で構成されていました。 このような取締役会では、リスクアペタイトが旺盛な経営者の欲望を抑制できず、不正や経営破綻につながったことから、このモデルは限界を迎えました」、 「独立社外取締役で構成される監査委員会を活用する「ボード2.0」です・・・1970年代から2000年代にかけて徐々に一般的になってきました。日本のコーポレートガバナンス・コードも独立社外取締役が過半数を占め、監査委員会、報酬委員会、指名委員会などを持つ米国の「ボード2.0」をひな型としています。 「ボード2.0」に対しては、米国では課題が指摘されています。CEOほかの執行サイドとの情報格差や管理・監督のためのリソース、またモチベーションの点で社外取締役には限界があり、複雑化する企業経営を十分に監督できないのではないか、という指摘」、 「「ボード3.0」でゴードン氏らが提唱しているアイデアは、企業価値を持続的に成長させるために、取締役会に、企業が成長することと利害が一致しインセンティブを持つ投資家(プライベートエクイティ・ファンドなど)を迎え、取締役会の情報収集力やアクティビストとの交渉力などを高める、というものです。 実は、米国ではこの「ボード3.0」に対しては批判が多く、2023年の春の時点では、本国での賛同は広がっていません。 むしろ、「ボード3.0」をめぐる議論は、米国本国よりも日本で活発です」、なるほど。 「本書では、従来の日本の経理・財務担当役員に多く見られる「CFOは企業価値保全を第一義にすべきだ」という考え方を「金庫番思考」、「CFOは冷徹な計算と非合理的なまでの熱意を併せ持ち、企業成長のエンジンとなるべき」という考え方を「CFO思考」と呼びます。「『CFO思考』こそが、企業のパーパス(存在意義・目的)を実現させる」。これが本書の結論です」、「金庫番思考」ではなく、「CFO思考」を持てとの主張には説得力がある。 徳成旨亮氏による「日本は「企業が最も経営破綻しない先進国」のままで良いのか?」 「取締役会がCEOら経営者のアニマルスピリッツを刺激せず、「金庫番思考」を持つCFOがブレーキに常に足を掛けていては、日本企業は「潰れもしないが、成長もしない」状態に至ることは確実です。 事実、世界的にみて日本は「企業が最も経営破綻しない先進国」なのです」、「米国企業の取締役会がお友達中心の「ボード1.0」から、独立社外取締役中心のモニタリングモデル「ボード2.0」に移行した主な要因は、経営者によるリスクの取り過ぎ、すなわち「過食」にありましたが、日本企業に一般的に見られる課題は、「小食」です。 すなわち、ほとんどの上場企業がリスクアペタイトを余らせている状態、資本やキャッシュを過大に保有している状態にあるのです」、 「8年余りのCFO生活のなかで、私が世界中の複数の投資家から、それも日本を知り日本人を愛する有名ファンドマネージャーから、「君たち日本人にはアニマルスピリッツはないのか?」と何度も言われた背景もここにあります」、「日本企業に一般的に見られる課題は、「小食」です」、とは言い得て妙だ。 「会社を潰さず、雇用を守るために、日本企業の経営者が取ってきた企業戦略が、多角化であり事業ポートフォリオ戦略です。すなわち、異なるリスクプロファイルと収益構造を持つ複数の事業を持つことで、会社全体を安定させようとしてきました。 また、主力事業が苦しくなると、その事業が持つ基礎技術や顧客基盤を用いて、会社と終身雇用を守りながら、業態転換を図ってきました・・・そのベースには、「会社は、社会の『公器』であり、存続していること自体に意味がある」という考え方がありました。 こうした考え方を仮に「日本型資本主義」と呼ぶことにしましょう」、「これに対して、欧米の企業経営者や投資家は異論を唱えます。 複数の事業を持つのは好ましくない。企業のなかでポートフォリオを組んでもらう必要はない。それは、私たちファンドマネージャーの仕事だ。君たちは、事業構成をなるべくシンプルにして、1つか2つの事業に集中して、成長を目指してもらいたい。寿命が尽きたビジネスは諦めて、それが主力事業ならいったん会社をたたむべきだ。会社を永続させながら、業態転換するなんていう難しいことをやる必要はない。 彼らが念頭に置いている「株式会社」や「資本主義」のあり方は、日本の経営者の平均的な考えと大きく異なる。 これ以降は、第二の記事と同じなので、紹介を省略』、私も「欧米の企業経営者や投資家」の考え方を支持する。「日本型資本主義」でリスクを取れずに現金を積み上げている経営者は、無能という他ない。
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メディア(その32)(鮫島 浩ジャーナリスト:元エース記者が暴露する「朝日新聞の内部崩壊」〜「吉田調書事件」とは何だったのか(1) 朝日新聞政治部(1)、なぜ朝日新聞は「部数減」に悩んでいるのか? 元朝日スクープ記者が明かす、どこまでズブズブ!岸田首相と大メディア上層部が“談合”会食…「放送法解釈変更」炎上中に、「日経テレ東大学」を潰し 看板プロデューサーを退任に追い込んだ…テレ東株主総会・元日経記者の「告発」の迫力) [メディア]

メディアについては、昨年5月29日に取上げた。今日は、(その32)(鮫島 浩ジャーナリスト:元エース記者が暴露する「朝日新聞の内部崩壊」〜「吉田調書事件」とは何だったのか(1) 朝日新聞政治部(1)、なぜ朝日新聞は「部数減」に悩んでいるのか? 元朝日スクープ記者が明かす、どこまでズブズブ!岸田首相と大メディア上層部が“談合”会食…「放送法解釈変更」炎上中に、「日経テレ東大学」を潰し 看板プロデューサーを退任に追い込んだ…テレ東株主総会・元日経記者の「告発」の迫力)である。

先ずは、本年5月23日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの鮫島 浩氏による「元エース記者が暴露する「朝日新聞の内部崩壊」〜「吉田調書事件」とは何だったのか(1)朝日新聞政治部(1)」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/95386?imp=0
・『「鮫島が暴露本を出版するらしい」「俺のことも書いてあるのか?」――いま朝日新聞社内各所で、こんな会話が交わされているという。元政治部記者の鮫島浩氏が上梓した​『朝日新聞政治部』は、登場する朝日新聞幹部は全員実名、衝撃の内部告発ノンフィクションだ。 戦後、日本の左派世論をリードし続けてきた、朝日新聞政治部。そこに身を置いた鮫島氏が明かす政治取材の裏側も興味深いが、本書がもっとも衝撃的なのは、2014年に朝日新聞を揺るがした「吉田調書事件」の内幕をすべて暴露していることだ。 今日から7回連続で、本書の内容を抜粋して紹介していく』、興味深そうだ。
・『夕刊紙に踊る「朝日エリート誤報記者」の見出し  2014年秋、私は久しぶりに横浜の中華街へ妻と向かった。息苦しい都心からとにかく逃れたかった。 朝日新聞の特別報道部デスクを解任され、編集局付という如何にも何かをやらかしたような肩書を付与され、事情聴取に呼び出される時だけ東京・築地の本社へ出向き、会社が下す沙汰を待つ日々だった。蟄居謹慎(ちっきょきんしん)とはこういう暮らしを言うのだろう。駅売りの夕刊紙には「朝日エリート誤報記者」の見出しが躍っていた。私のことだった。 ランチタイムを過ぎ、ディナーにはまだ早い。ふらりと入った中華料理店はがらんとしていた。私たちは円卓に案内された。注文を終えると、二胡を抱えたチャイナドレスの女性が私たちの前に腰掛け、演奏を始めた。私は紹興酒を片手に何気なく聴き入っていたが、ふと気づくと涙が溢れている。 「なぜ泣いているの?」 二胡の音色をさえぎる妻の声で私はふと我に返った。人前で涙を流したことなんていつ以来だろう。ちょっと思い出せないな。これからの私の人生はどうなるのだろう。 朝日新聞社は危機に瀕していた。私が特別報道部デスクとして出稿した福島原発事故を巡る「吉田調書」のスクープは、安倍政権やその支持勢力から「誤報」「捏造」と攻撃されていた。政治部出身の木村伊量社長は、過去の慰安婦報道を誤報と認めたことや、その対応が遅すぎたと批判する池上彰氏のコラム掲載を社長自ら拒否した問題で、社内外から激しい批判を浴びていた。 「吉田調書」「慰安婦」「池上コラム」の三点セットで朝日新聞社は創業以来最大の危機に直面していたのである。特にインターネット上で朝日バッシングは燃え盛っていた。 木村社長は驚くべき対応に出た。2014年9月11日に緊急記者会見し、自らが矢面に立つ「慰安婦」「池上コラム」ではなく、自らは直接関与していない「吉田調書」を理由にいきなり辞任を表明したのである。さらにその場で「吉田調書」のスクープを誤報と断定して取り消し、関係者を処罰すると宣告したのだ。 寝耳に水だった。 その後の社内の事情聴取は苛烈を極めた。会社上層部はデスクの私と記者2人の取材チームに全責任を転嫁しようとしていた。5月に「吉田調書」のスクープを報じた後、木村社長は「社長賞だ、今年の新聞協会賞だ」と絶賛し、7月には新聞協会賞に申請した。ところが9月に入って自らが「慰安婦」「池上コラム」で窮地に追い込まれると、手のひらを返したように態度を一変させたのである』、「木村社長」が「態度を一変させた」とは酷い話だが、その背景には何があったのだろう。
・『私がどんな「罪」に問われていたか  巨大組織が社員個人に全責任を押し付けようと上から襲いかかってくる恐怖は、体験した者でないとわからないかもしれない。それまで笑みを浮かべて私に近づいていた数多くの社員は蜘蛛の子を散らすように遠ざかっていった。 私は27歳で政治部に着任し、菅直人、竹中平蔵、古賀誠、与謝野馨、町村信孝ら与野党政治家の番記者を務めた。39歳で政治部デスクになった時は「異例の抜擢」と社内で見られた。その後、調査報道に専従する特別報道部のデスクに転じ、2013年には現場記者たちの努力で福島原発事故後の除染作業の不正を暴いた。この「手抜き除染」キャンペーンの取材班代表として新聞協会賞を受賞した。 朝日新聞の実権を握ってきたのは政治部だ。特別報道部は政治部出身の経営陣が主導して立ち上げた金看板だった。私は政治部の威光を後ろ盾に特別報道部デスクとして編集局内で遠慮なく意見を言える立場となり、紙面だけではなく人事にまで影響力を持っていた。それが一瞬にして奈落の底へ転落したのである。 ああ、会社員とはこういうものか――。そんな思いにふけっているところへ、妻の声が再び切り込んできた。二胡の妖艶な演奏は続いている。 「なぜ泣いているの?」 なんでだろう……。たぶん厳しい処分が降りるだろう。懲戒解雇になると言ってくる人もいる。すべてを失うなあ……。いろんな人に世話になったなあと思うと、つい……」 妻はしばらく黙っていたが、「それ、ウソ」と言った。続く言葉は強烈だった。 「あなたはこれから自分が何の罪に問われるか、わかってる? 私は吉田調書報道が正しいのか間違っているのか、そんなことはわからない。でも、それはおそらく本質的なことじゃないのよ。あなたはね、会社という閉ざされた世界で『王国』を築いていたの。誰もあなたに文句を言わなかったけど、内心は面白くなかったの。あなたはそれに気づかずに威張っていた。あなたがこれから問われる罪、それは『傲慢罪』よ!」 紹興酒の酔いは一気に覚めた。妻はたたみかけてくる。 「あなたは過去の自分の栄光に浸っているだけでしょ。中国の皇帝は王国が崩壊した後、どうなるか、わかる? 紹興酒を手に、妖艶な演奏に身を浸して、我が身をあわれんで涙を流すのよ。そこへ宦官がやってきて『あなたのおこなってきたことは決して間違っておりません。後世必ずや評価されることでしょう』と言いつつ、料理に毒を盛るのよ!」 中国の皇帝とは、仰々しいたとえである。だが、妻の目に私はそのくらい尊大に映っていたのだろう。そして会社の同僚たちも社内を大手を振って歩く私を快く思っていなかったに違いない。私はそれにまったく気づかなかった。 「裸の王様」がついに転落し、我が身をあわれんで涙を流す姿ほど惨めなものはない。そのような者に誰が同情を寄せるだろうか。 私は、自分がこれから問われる「傲慢罪」やその後に盛られる「毒」を想像して背筋が凍る思いがした。泣いているどころではなかった。独裁国家でこのような立場に追い込まれれば、理屈抜きに生命そのものを絶たれるに違いない。今日の日本社会で私の生命が奪われることはなかろう。奈落の底にどんな人生が待ち受けているかわからないが、生きているだけで幸運かもしれない。 そんな思いがよぎった後、改めて「傲慢罪」という言葉を噛み締めた。「吉田調書」報道に向けられた数々の批判のなかで私の胸にストンと落ちるものはなかった。しかし「傲慢罪」という判決は実にしっくりくる。そうか、私は「傲慢」だったのだ! 政治記者として多くの政治家に食い込んできた。ペコペコすり寄ったつもりはない。権力者の内実を熟知することが権力監視に不可欠だと信じ、朝日新聞政治部がその先頭に立つことを目指してきた。調査報道記者として権力の不正を暴くことにも力を尽くした。朝日新聞に強力な調査報道チームをつくることを夢見て、特別報道部の活躍でそれが現実となりつつあった。それらを成し遂げるには、会社内における「権力」が必要だった――。 しかし、である。自分の発言力や影響力が大きくなるにつれ、知らず知らずのうちに私たちの原点である「一人一人の読者と向き合うこと」から遠ざかり、朝日新聞という組織を守ること、さらには自分自身の社内での栄達を優先するようになっていたのではないか。 私はいまからその罪を問われようとしている。そう思うと奈落の底に落ちた自分の境遇をはじめて受け入れることができた。 そして「傲慢罪」に問われるのは、私だけではないと思った。新聞界のリーダーを気取ってきた朝日新聞もまた「傲慢罪」に問われているのだ』、「39歳で政治部デスクになった時は「異例の抜擢」と社内で見られた。その後、調査報道に専従する特別報道部のデスクに転じ、2013年には現場記者たちの努力で福島原発事故後の除染作業の不正を暴いた。この「手抜き除染」キャンペーンの取材班代表として新聞協会賞を受賞した。 朝日新聞の実権を握ってきたのは政治部だ。特別報道部は政治部出身の経営陣が主導して立ち上げた金看板だった。私は政治部の威光を後ろ盾に特別報道部デスクとして編集局内で遠慮なく意見を言える立場となり、紙面だけではなく人事にまで影響力を持っていた。それが一瞬にして奈落の底へ転落したのである」、「あなたはね、会社という閉ざされた世界で『王国』を築いていたの。誰もあなたに文句を言わなかったけど、内心は面白くなかったの。あなたはそれに気づかずに威張っていた。あなたがこれから問われる罪、それは『傲慢罪』よ!」との奥さんの批判は、手厳しいが本質を突いているようだ。
・『日本社会がオールドメディアに下した判決  誰もが自由に発信できるデジタル時代が到来して情報発信を独占するマスコミの優位が崩れ、既存メディアへの不満が一気に噴き出した。2014年秋に朝日新聞を襲ったインターネット上の強烈なバッシングは、日本社会がオールドメディアに下した「傲慢罪」の判決だったといえる。木村社長はそれに追われる形で社長から引きずり下ろされたのだ。 「吉田調書」報道の取り消し後、朝日新聞社内には一転して、安倍政権の追及に萎縮する空気が充満する。他のメディアにも飛び火し、報道界全体が国家権力からの反撃に怯え、権力批判を手控える風潮がはびこった。安倍政権は数々の権力私物化疑惑をものともせず、憲政史上最長の7年8ヵ月続く。 マスコミの権力監視機能の劣化は隠しようがなかった。民主党政権下の2010年に11位だった日本の世界報道自由度ランキングは急落し、2022年には71位まで転げ落ちた。新聞が国家権力に同調する姿はコロナ禍でより顕著になった。 木村社長が「吉田調書」報道を取り消した2014年9月11日は「新聞が死んだ日」である。日本の新聞界が権力に屈服した日としてメディア史に刻まれるに違いない。 私は2014年末、朝日新聞から停職2週間の処分を受け、記者職を解かれた。6年半の歳月を経て2021年2月に退職届を提出し、たった一人でウェブメディア「SAMEJIMA TIMES」を創刊した。 私と朝日新聞に突きつけられた「傲慢罪」を反省し、読者一人一人と向き合うことを大切にしようと決意した小さなメディアである。自らの新聞記者人生を見つめ直し、どこで道を踏み外したのかをじっくり考えた。本書はいわば「失敗談」の集大成である。 世の中には新聞批判が溢れている。その多くに私は同意する。新聞がデジタル化に対応できず時代に取り残されたのも事実だ。一方で、取材現場の肌感覚とかけ離れた新聞批判もある。新聞の歩みのすべてを否定する必要はない。そこから価値のあるものを抽出して新しいジャーナリズムを構築する材料とするのは、凋落する新聞界に身を置いた者の責務ではないかと思い、筆を執った。 この記事は大手新聞社の中枢に身を置き、その内情を知り尽くした立場からの「内部告発」でもある。 次回は「新人時代のサツ回りが新聞記者をダメにする」​です。 登場人物すべて実名の内部告発ノンフィクション『朝日新聞政治部』は好評発売中。現代ビジネスでは紹介しきれない衝撃の事実も赤裸々に綴られています。 第一章 新聞記者とは? 1994―1998 第二章 政治部で見た権力の裏側 1999―2004 第三章 調査報道への挑戦 2005―2007 第四章 政権交代と東日本大震災 2008―2011 第五章 躍進する特別報道部 2012―2013 第六章 「吉田調書」で間違えたこと 2014 第七章 終わりのはじまり 2015― 終章 』、「「吉田調書」報道の取り消し後、朝日新聞社内には一転して、安倍政権の追及に萎縮する空気が充満する。他のメディアにも飛び火し、報道界全体が国家権力からの反撃に怯え、権力批判を手控える風潮がはびこった・・・マスコミの権力監視機能の劣化は隠しようがなかった」、「木村社長が「吉田調書」報道を取り消した2014年9月11日は「新聞が死んだ日」である。日本の新聞界が権力に屈服した日としてメディア史に刻まれるに違いない。 私は2014年末、朝日新聞から停職2週間の処分を受け、記者職を解かれた。6年半の歳月を経て2021年2月に退職届を提出し、たった一人でウェブメディア「SAMEJIMA TIMES」を創刊した。 私と朝日新聞に突きつけられた「傲慢罪」を反省し、読者一人一人と向き合うことを大切にしようと決意した小さなメディアである」、なるほど。

次に、6月11日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの鮫島 浩氏による「なぜ朝日新聞は「部数減」に悩んでいるのか? 元朝日スクープ記者が明かす」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/95756?imp=0
・『元朝日新聞記者の鮫島浩氏は、2012年に政治部から「特別報道部」へ移り、東日本大震災・原発事故の調査報道でスクープを連発した。とりわけ、福島第一原発元所長の吉田昌郎氏の証言を独自入手した「吉田調書」報道は、社内外で大きな称賛を浴びた。 だが、あるきっかけで特別報道部、そして鮫島氏をとりまく状況は暗転する。前編「元朝日新聞エース記者が衝撃の暴露『朝日はこうして死んだ』」に続き、その一部始終を書籍『朝日新聞政治部』の内容も踏まえてお伝えする』、興味深そうだ。
・『突然の手のひら返し  「吉田調書」スクープは、'14年5月20日の朝刊1面と2面で大展開された。第一報では、「朝日新聞が吉田調書を独自入手したこと」、「吉田所長は第一原発での待機を命じていたのに、所員の9割が命令に違反し、第二原発に撤退していたこと」が主に報じられた。 だが6月になり、「所長の待機命令に違反し、所員の9割が原発から撤退した」という表現をめぐり批判が寄せられるようになる。混乱の中で、待機命令に気づかないまま第二原発へ向かった所員もいた可能性もあるからだ。 「第一報で伝えた吉田調書の内容は事実ですが、『撤退』や『待機命令に違反し』という表現は不十分でした。そこで、あらためて読者に丁寧に説明した特集紙面をつくることを提案したのです」 だが、編集担当、広報担当、社長室ら危機管理を扱う役員たちの了承がとれなかった。 「木村社長が『吉田調書報道を新聞協会賞に申請する』と意気込んでいて、第一報を修正する続報を出すと協会賞申請に水を差す、というのが理由でした。おそらく社長の取り巻きは、木村社長に直接相談はしていないでしょう。 つまり、経営陣の『忖度』が現場の求める紙面展開を抑え込んだのです。協会賞に申請できなくなることより、社長の機嫌を損ねることを恐れていたのだと思います」 結果的に吉田調書報道は受賞候補から早々に外れ、社内外での関心も薄れてしまった。事態は収まったかに見えた』、「「第一報で伝えた吉田調書の内容は事実ですが、『撤退』や『待機命令に違反し』という表現は不十分でした。そこで、あらためて読者に丁寧に説明した特集紙面をつくることを提案したのです」 だが、編集担当、広報担当、社長室ら危機管理を扱う役員たちの了承がとれなかった。 「木村社長が『吉田調書報道を新聞協会賞に申請する』と意気込んでいて、第一報を修正する続報を出すと協会賞申請に水を差す、というのが理由でした。おそらく社長の取り巻きは、木村社長に直接相談はしていないでしょう。 つまり、経営陣の『忖度』が現場の求める紙面展開を抑え込んだのです。協会賞に申請できなくなることより、社長の機嫌を損ねることを恐れていたのだと思います」』、「経営陣の『忖度』が現場の求める紙面展開を抑え込んだのです。協会賞に申請できなくなることより、社長の機嫌を損ねることを恐れていたのだと思います」、「社長」が絶対で、「『忖度』が現場の求める紙面展開を抑え込んだ」とは、腐り切った組織だ。
・『ゲラを見て、社長は激怒した  急展開を迎えたのは、8月5日に朝日新聞が特集記事「慰安婦問題を考える」を掲載してからだ。ここで、戦時中に慰安婦を強制連行したとして、朝日新聞が紙面で報じてきた吉田清治氏の発言(吉田証言)を虚偽と判断し、過去の記事を取り消したのだ。訂正まで20年以上の時間がかかったことや、謝罪の言葉がないことに批判が殺到した。 その後、ジャーナリスト・池上彰氏のコラムが朝日新聞に掲載拒否されたことも週刊誌などで報じられた。慰安婦問題をめぐる朝日新聞の対応を批判する内容だったが、事前にゲラを見た木村社長が激怒したという。 朝日は、「吉田調書」「吉田証言」に加えて「池上コラム」で世論から猛烈な批判を浴び、経営陣は狼狽した。さらに、マスコミ他社や安倍政権からも「攻撃」を受けるようになる。菅義偉官房長官が「吉田調書を近いうちに公開する」と発表すると、各紙は朝日新聞に批判的な立場で吉田調書に関する報道を始めた。 過熱する朝日バッシングに経営陣は総崩れとなり、社長退任は避けられない事態となった。そして、政府が吉田調書を公開した9月11日、木村社長が緊急記者会見を行うこととなる。 それは鮫島氏にとって耳を疑いたくなるような内容だった。木村社長は自らが矢面に立っていた「吉田証言」と「池上コラム問題」ではなく、自らは直接関与していなかった「吉田調書」の責任を取るとして辞意を表明した。さらに記事を取り消して、関係者を厳正に処分すると発表したのだ。) 「吉田調書の第一報が不十分であったことは認めます。ただ、それ以上に記事を出した後の危機管理に問題があったことは間違いありません。木村社長は、私たちをスケープゴートにするために吉田調書報道だけを取り上げて、他の問題の責任を隠蔽しようとしたのです。 しかも、『吉田証言』と『池上コラム問題』は木村社長が深く関わった案件。保身のための会見だったとしか思えません」』、「木村社長は自らが矢面に立っていた「吉田証言」と「池上コラム問題」ではなく、自らは直接関与していなかった「吉田調書」の責任を取るとして辞意を表明した。さらに記事を取り消して、関係者を厳正に処分すると発表した」、「木村社長」がやろうとしたことは筋が通ってないのに、よくぞ社内的に通用したものだ。社内には「社長」のイエスマンしかいないのだろう。
・『懲戒解雇の噂まで……  「吉田調書」のスクープをものにしたはずの鮫島氏ら取材班の記者たちは、異例の会見を経て「誤報記者」の烙印を押されてしまう。そして連日のように、人事部や第三者機関から長時間の事情聴取を受けることになる。とにかく非を認めさせて「処罰」を決めるための儀式のように感じたという。 「社内では私が懲戒解雇されるという噂も立っていました。上層部は様々な情報を流して私を精神的に追い込み、会社に屈服させようとしていたのです。信頼を寄せていた会社が、組織をあげて上から襲い掛かってくる恐怖は経験した者にしかわからないと思います」』、「連日のように、人事部や第三者機関から長時間の事情聴取を受けることになる。とにかく非を認めさせて「処罰」を決めるための儀式のように感じたという」、「信頼を寄せていた会社が、組織をあげて上から襲い掛かってくる恐怖は経験した者にしかわからないと思います」、その通りなのだろう。
・『読者にも見捨てられる  鮫島氏は停職2週間の懲戒処分を受けて、管理部門に「左遷」された。それよりも鮫島氏が解せなかったのは、吉田調書を独自入手した記者も処分されたことだった。 「管理職だった私が結果責任を免れないのは理解できます。ただ、経営陣が自分たちの危機管理の失敗を棚上げして現場の記者に全責任をなすりつけたら、失敗を恐れて無難な仕事しかできなくなってしまう。これが、朝日新聞が死んだ最大の原因ではないでしょうか」 鮫島氏は昨年5月に会社を去った。今はネットメディアを立ち上げ、本来の報道倫理に立ち戻った言論活動を行っている。 昨年6月、朝日新聞社は創業以来最大の約458億円の大赤字を出した。'90年代は約800万部を誇っていた発行部数も、いまや500万部を割っている。記者が失敗を恐れて萎縮し、無難な記事しか載らない紙面が読者に見捨てられつつあるのか。朝日新聞の凋落は、誰にも止められないかもしれない』、「経営陣が自分たちの危機管理の失敗を棚上げして現場の記者に全責任をなすりつけたら、失敗を恐れて無難な仕事しかできなくなってしまう。これが、朝日新聞が死んだ最大の原因ではないでしょうか」、確かにこれではやる気のある記者たちは、「失敗を恐れて無難な仕事しかできなくなってしまう」、これでは、「朝日新聞が死んだ」のも当然だろう。

第三に、2月16日付け日刊ゲンダイ「どこまでズブズブ!岸田首相と大メディア上層部が“談合”会食…「放送法解釈変更」炎上中に」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/320160
・『まさか、放送法の政治的公平をめぐる解釈変更が国会で大炎上しているこのタイミングで──。驚きの会合が14日夜にあった。岸田首相が大手メディア上層部や大手メディア出身のジャーナリストと、東京・日比谷公園のフレンチレストランで約2時間にわたって会食したのだ。 首相動静によれば参加したメンバーは、山田孝男毎日新聞社特別編集委員、小田尚読売新聞東京本社調査研究本部客員研究員、芹川洋一日本経済新聞社論説フェロー、島田敏男NHK放送文化研究所エグゼクティブ・リード、粕谷賢之日本テレビ取締役常務執行役員、政治ジャーナリストの田崎史郎氏の6人。 朝日新聞官邸クラブのツイッターが、会食終了後にレストランから岸田首相や参加者が出てくる様子を動画で撮影して投稿している。直撃された田崎氏は「中身はいろいろ……だな」と答えていた』、「朝日新聞」記者は参加しなかったようだ。これは、矜持を持っているためなのだろうか。
・『批判殺到、付ける薬ナシ  これには、<放送法解釈が問題になっているときに、これ?? どんな感覚してるんだ?><大手メディアも政府広報の下請けに成り下がった感じですかね>など批判コメントが殺到だった。) 岸田首相はこの6人と昨年の参院選直後の7月15日にも会食している。 「安倍元首相時代からのメディアとのメシ食い情報交換を岸田首相も定例化して踏襲している形」(官邸関係者)らしく、日程もずいぶん前から決まっていたのだろう。だが、よりによって、である。 高市大臣が総務省が認めた「行政文書」について「捏造」と言い張ったことで、この問題に対する世論の関心は高まっている。報道の自由への不当な政治介入があったのかどうか、まさに政治とメディアの“距離感”が問われている真っただ中に、首相と複数のメディア上層部が“談合”よろしく親しく会食すれば世間にどう映るのか、子どもでも分かるはずだ。 「政治とメディアが徹底的に癒着していることを見せつけるもので、国民のメディア不信がますます高まる。ジャーナリズムは国民のために権力を監視するという重要な責務があり、単なる民間企業とは違う。どうしてここまで倫理観とケジメがなくなってしまったのか。品性がないし、恥ずかしい」(政治評論家・本澤二郎氏) メディア懐柔に精を出す首相もホイホイ乗っかるメディアも、もはや付ける薬がない』、「ジャーナリズムは国民のために権力を監視するという重要な責務があり、単なる民間企業とは違う。どうしてここまで倫理観とケジメがなくなってしまったのか。品性がないし、恥ずかしい」、同感である。

第四に、6月1日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの伊藤 博敏氏による「「日経テレ東大学」を潰し、看板プロデューサーを退任に追い込んだ…テレ東株主総会・元日経記者の「告発」の迫力」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/111118?imp=0
・『「これは人殺しと同じだわ」  登録者数が100万人を突破した人気YouTubeチャンネル「日経テレ東大学」は、なぜ打ち切りとなり、番組を企画して立ち上げ、進行役の「ピラメキパンダ」を務めた高橋弘樹プロデューサーは、なぜテレビ東京を退社したのか――。 テレビ東京ホールディングス(東証プライム)の株主総会は6月15日に開催されるが、筆者が最も注目しているのは、香港に本社を置く米国籍アクティビスト(物言う株主)のリム・アドバイザーズ(リム社、提案株主名義はLIM JAPAN EVENT MASTER FUND)が、この点を問題視して<日本経済新聞社との共同事業運営契約の開示>などを求めて株主提案していることだ。 「日経テレ東大学」は、「本格的な経済を身近に楽しく」をコンセプトにしたニュース情報番組で、堅いテーマを扱ってもMCを務める実業家の「ひろゆき」こと西村博之氏やイェール大学助教授の成田悠輔氏が、雑談に引き込んで面白く展開し人気を博した。 高橋氏は、「家、ついて行ってイイですか?」「空から日本を見てみよう」「吉木りさに怒られたい」と、低予算でも切り口と面白さで勝負する“テレ東らしさ”を持つプロデューサーである。 「ビジネス系では過去に例のない成功番組」と言われていただけに、今年3月末の配信打ち切りは本人にとっても寝耳に水だったようで、決定を告げられ「これは“人殺し”と同じだわ」と思わずつぶやき、退社に至った。 経済の専門家だけでなく、菅義偉前首相、泉健太・立憲民主党代表、松井一郎・日本維新の会前代表、木原誠二・内閣官房副長官といった有力政治家が登場したのは、「意識的な人々」を引き付けているこの番組の影響力を承知していたからだろう』、「「日経テレ東大学」は、「本格的な経済を身近に楽しく」をコンセプトにしたニュース情報番組で、堅いテーマを扱ってもMCを務める実業家の「ひろゆき」こと西村博之氏やイェール大学助教授の成田悠輔氏が、雑談に引き込んで面白く展開し人気を博した」、面白そうだが、私は残念ながら1回も観ていない。「「ビジネス系では過去に例のない成功番組」と言われていただけに、今年3月末の配信打ち切りは本人にとっても寝耳に水だったようだ」、「配信打ち切り」の理由は何なのだろう。
・『テレ東の天下り問題の「歪み」  テレビ局にとって番組改編の時、「諸般の事情」で打ち切りを決めるのは日常茶飯だ。だが、「日経テレ東大学」の場合、約32%の株式を保有してテレビ東京を「天下り先」としている日経新聞OBの経営陣が、後述するような理解できない事情で打ち切りの断を下し、それにリム社が噛みついた。 株主提案したリム社のポートフォリオ・マネージャーで日本投資責任者の松浦肇氏は、元日経記者として天下り問題の“歪み”を熟知している。日経の元上司がこう評する。 「証券部の記者としてマーケットの問題を鋭く突く優秀な記者でした。運用会社に転じて上場企業に注文をつけていますが、発想は新聞記者と同じで“歪み”を許さない。企業統治とマーケットの監視役であるべき未上場の日経OBが、上場企業のテレ東に『会社員生活のゴール』として天下りし、説明責任や資本効率といた上場企業の基本を無視したまま、『保身の経営』に汲々としている。彼はそれが許せないんです」 リム社のテレ東に対する株主提案は、昨年に次いで2回目である。昨年、約1%の株式を取得したリム社は、日経からの「天下り禁止」「社外取締役の選任」など7項目の株主提案を送り付けた。 テレ東社長は50年近く日経出身者が占め続け、昨年の総会でも小孫茂会長、石川一郎社長、新実傑専務とトップ3は日経OBだった。天下り禁止の株主提案の賛成率は8・15%。否決はされたものの、「日経の矛盾」はマーケットに示せた。 今年の提案は、冒頭の<共同事業運営契約の開示>を含む4項目の定款の一部変更と剰余金の処分を求めている。 なぜ日経との共同事業の開示を求めるのか。リム社は「提案理由」にこう書いている。 《(「日経テレ東大学」の)再生回数や製作本数などを鑑みるに、2022年10月~12月に約3500万円の税引き前利益を稼いだと推計できるが、提案株主がディスカウント・キャッシュフロー(DCF)方式で算定したところ、事業価値は約30億円に達した。》』、「企業統治とマーケットの監視役であるべき未上場の日経OBが、上場企業のテレ東に『会社員生活のゴール』として天下りし、説明責任や資本効率といた上場企業の基本を無視したまま、『保身の経営』に汲々としている。彼はそれが許せないんです」、確かにその通りだろう。
・『「日経テレ東大学」の担当役員が昇格  そして30億円の価値あるものを捨てた背景に疑問を呈している。 《現在も首脳陣4人が日経元幹部である。様々な分野で両者は事業を共同運営しているが、日経に有利な契約が結ばれている又は当社が契約にある権利を十分に生かしていないリスクが内在する。》 今年は「天下り禁止」といった直截な提案はしていない。そして小孫会長は退任するものの、石川社長、新実副社長というツートップを日経OBが占める。その体制ではテレ東の利益を毀損し、それが現われているのが「日経テレ東大学」の打ち切りだ、という主張である。しかも、直近の人事で専務から昇格した新実副社長は、「日経テレ東大学」の担当者だった。 株主提案に書き尽くしたということか、松浦氏に株主提案理由を改めて尋ねたものの、「テレビ東京ホールディングス様の企業・株主価値向上に寄与する株主提案であると自負しております」と短く答えた。 テレビ東京は、「取締会意見」で「(株主提案が指摘する)利益及び事業価値には到底及ばない」と回答していたが、筆者が「到底及ばない根拠を示して欲しい」と質すと次のように答えた。 「利益及び人件費を含めた費用の実態が判断の根拠です。株主提案では、3カ月で約3500万円の税引き前利益を稼いだと推計できるとしていますが、実際にそのような利益は得られていません」(広報・IR部)』、「直近の人事で専務から昇格した新実副社長は、「日経テレ東大学」の担当者だった」、なるほど。
・『日経新聞の嫉妬  だが、21年3月の配信からわずか2年で登録会員100万人を突破した優良コンテンツを捨て去らねばならない理由とは思えない。利益は出ているのだ。 高橋氏は軽妙なピラメキパンダとして、番組内で「テレ東が大好き。常務になるまで会社員を続ける」と広言していた。また、テレ東を退職したプロデューサー・佐久間宣行氏、JAXA退職の宇宙飛行士・野口聡一氏、朝日新聞退職の探検家・角幡唯介氏、日経新聞退職の経済ジャーナリスト・後藤達也氏らを招いて「なんで会社を辞めたんですか?」という番組を製作している。 安定を捨ててリスクを取るのはなぜなのか。高橋氏が「常務まで」というのは、上は日経OBの指定席だからだろうが、リスクを取るのは怖く、「でもそう“冒険”したい」と思っている視聴者=会社員の気持ちを代弁した。その高橋氏をテレ東が追い込んでしまった。損失以外の何ものでもない。 テレ東の現経営陣を知る日経OBは、人気コンテンツの打ち切り理由をシンプルにこう語る。 「日経新聞の嫉妬です。その圧力に上場企業としての立場を忘れたテレ東が折れた。『日経テレ東大学』は、新聞を離れ、後ろ足で砂をかけていった退職者とコラボするような番組を製作していた。それが許せなかった」 後藤氏のことである。 新聞・テレビという旧来型の情報プラットフォームが、やがてYouTubeなどのSNSやチャットGPTに奪われ、衰退していくのはもはや自明だ。22年4月に日経新聞を辞めた後藤達也氏は、Twitterのフォロワー数が50万人超、YouTubeのチャンネル登録数約25万人、noteの優良読者(月500円)約2万人を誇る。 この3つのSNSを駆使して視聴者・読者に経済をわかりやすく伝え、「良いカメラを買った以外に新たな投資はない」といいつつ、note会員からだけでも月に約1000万円の収入がある。それにYouTubeや講演料なども加えると年間売り上げは2億円近いのではないか。もはや、メディアがひとつ誕生したといっていい。 日経もテレ東も、デジタルメディアをどう採り入れるか、優良コンテンツといっていい記者をどう活用するか、そして最大のライバルとなるチャットGPTにどう対抗するかを本気で考え、改革すべき時に来ている。なのに、打ち切り理由が「嫉妬」だとすれば嘆息するしかなく、もはやメディアとしての将来性が失われているというしかない』、「日経OBは、人気コンテンツの打ち切り理由をシンプルにこう語る。 「日経新聞の嫉妬です。その圧力に上場企業としての立場を忘れたテレ東が折れた。『日経テレ東大学』は、新聞を離れ、後ろ足で砂をかけていった退職者とコラボするような番組を製作していた。それが許せなかった」」、「日経新聞の嫉妬」とは驚かされた。こうしたことでは、「もはやメディアとしての将来性が失われているというしかない」、その通りだ。
タグ:メディア (その32)(鮫島 浩ジャーナリスト:元エース記者が暴露する「朝日新聞の内部崩壊」〜「吉田調書事件」とは何だったのか(1) 朝日新聞政治部(1)、なぜ朝日新聞は「部数減」に悩んでいるのか? 元朝日スクープ記者が明かす、どこまでズブズブ!岸田首相と大メディア上層部が“談合”会食…「放送法解釈変更」炎上中に、「日経テレ東大学」を潰し 看板プロデューサーを退任に追い込んだ…テレ東株主総会・元日経記者の「告発」の迫力) 現代ビジネス 鮫島 浩氏による「元エース記者が暴露する「朝日新聞の内部崩壊」〜「吉田調書事件」とは何だったのか(1)朝日新聞政治部(1)」 『朝日新聞政治部』 「木村社長」が「態度を一変させた」とは酷い話だが、その背景には何があったのだろう。 「39歳で政治部デスクになった時は「異例の抜擢」と社内で見られた。その後、調査報道に専従する特別報道部のデスクに転じ、2013年には現場記者たちの努力で福島原発事故後の除染作業の不正を暴いた。この「手抜き除染」キャンペーンの取材班代表として新聞協会賞を受賞した。 朝日新聞の実権を握ってきたのは政治部だ。特別報道部は政治部出身の経営陣が主導して立ち上げた金看板だった。私は政治部の威光を後ろ盾に特別報道部デスクとして編集局内で遠慮なく意見を言える立場となり、紙面だけではなく人事にまで影響力を持っていた。それが一瞬にして奈落の底へ転落したのである」、 「あなたはね、会社という閉ざされた世界で『王国』を築いていたの。誰もあなたに文句を言わなかったけど、内心は面白くなかったの。あなたはそれに気づかずに威張っていた。あなたがこれから問われる罪、それは『傲慢罪』よ!」との奥さんの批判は、手厳しいが本質を突いているようだ。 「「吉田調書」報道の取り消し後、朝日新聞社内には一転して、安倍政権の追及に萎縮する空気が充満する。他のメディアにも飛び火し、報道界全体が国家権力からの反撃に怯え、権力批判を手控える風潮がはびこった・・・マスコミの権力監視機能の劣化は隠しようがなかった」、 「木村社長が「吉田調書」報道を取り消した2014年9月11日は「新聞が死んだ日」である。日本の新聞界が権力に屈服した日としてメディア史に刻まれるに違いない。 私は2014年末、朝日新聞から停職2週間の処分を受け、記者職を解かれた。6年半の歳月を経て2021年2月に退職届を提出し、たった一人でウェブメディア「SAMEJIMA TIMES」を創刊した。 私と朝日新聞に突きつけられた「傲慢罪」を反省し、読者一人一人と向き合うことを大切にしようと決意した小さなメディアである」、なるほど。 鮫島 浩氏による「なぜ朝日新聞は「部数減」に悩んでいるのか? 元朝日スクープ記者が明かす」 「経営陣の『忖度』が現場の求める紙面展開を抑え込んだのです。協会賞に申請できなくなることより、社長の機嫌を損ねることを恐れていたのだと思います」、「社長」が絶対で、「『忖度』が現場の求める紙面展開を抑え込んだ」とは、腐り切った組織だ。 「木村社長は自らが矢面に立っていた「吉田証言」と「池上コラム問題」ではなく、自らは直接関与していなかった「吉田調書」の責任を取るとして辞意を表明した。さらに記事を取り消して、関係者を厳正に処分すると発表した」、「木村社長」がやろうとしたことは筋が通ってないのに、よくぞ社内的に通用したものだ。社内には「社長」のイエスマンしかいないのだろう。 「連日のように、人事部や第三者機関から長時間の事情聴取を受けることになる。とにかく非を認めさせて「処罰」を決めるための儀式のように感じたという」、「信頼を寄せていた会社が、組織をあげて上から襲い掛かってくる恐怖は経験した者にしかわからないと思います」、その通りなのだろう。 「経営陣が自分たちの危機管理の失敗を棚上げして現場の記者に全責任をなすりつけたら、失敗を恐れて無難な仕事しかできなくなってしまう。これが、朝日新聞が死んだ最大の原因ではないでしょうか」、確かにこれではやる気のある記者たちは、「失敗を恐れて無難な仕事しかできなくなってしまう」、これでは、「朝日新聞が死んだ」のも当然だろう。 日刊ゲンダイ「どこまでズブズブ!岸田首相と大メディア上層部が“談合”会食…「放送法解釈変更」炎上中に」 「朝日新聞」記者は参加しなかったようだ。 これは、矜持を持っているためなのだろうか。 「ジャーナリズムは国民のために権力を監視するという重要な責務があり、単なる民間企業とは違う。どうしてここまで倫理観とケジメがなくなってしまったのか。品性がないし、恥ずかしい」、同感である。 伊藤 博敏氏による「「日経テレ東大学」を潰し、看板プロデューサーを退任に追い込んだ…テレ東株主総会・元日経記者の「告発」の迫力」 「「日経テレ東大学」は、「本格的な経済を身近に楽しく」をコンセプトにしたニュース情報番組で、堅いテーマを扱ってもMCを務める実業家の「ひろゆき」こと西村博之氏やイェール大学助教授の成田悠輔氏が、雑談に引き込んで面白く展開し人気を博した」、面白そうだが、私は残念ながら1回も観ていない 「「ビジネス系では過去に例のない成功番組」と言われていただけに、今年3月末の配信打ち切りは本人にとっても寝耳に水だったようだ」、「配信打ち切り」の理由は何なのだろう。 「企業統治とマーケットの監視役であるべき未上場の日経OBが、上場企業のテレ東に『会社員生活のゴール』として天下りし、説明責任や資本効率といた上場企業の基本を無視したまま、『保身の経営』に汲々としている。彼はそれが許せないんです」、確かにその通りだろう。 「直近の人事で専務から昇格した新実副社長は、「日経テレ東大学」の担当者だった」、なるほど。 「日経OBは、人気コンテンツの打ち切り理由をシンプルにこう語る。 「日経新聞の嫉妬です。その圧力に上場企業としての立場を忘れたテレ東が折れた。『日経テレ東大学』は、新聞を離れ、後ろ足で砂をかけていった退職者とコラボするような番組を製作していた。それが許せなかった」」、「日経新聞の嫉妬」とは驚かされた。こうしたことでは、「もはやメディアとしての将来性が失われているというしかない」、その通りだ。
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