電気自動車(EV)(その13)(日本電産 業績急悪化に潜んだ巨額買収のツケ ヨーロッパ買収企業が顧客とトラブル 損失に、日産元COOの志賀氏がEVの出遅れに警鐘「日本は世界から取り残される」) [産業動向]
電気自動車(EV)については、昨年2月21日に取上げた。今日は、(その13)(日本電産 業績急悪化に潜んだ巨額買収のツケ ヨーロッパ買収企業が顧客とトラブル 損失に、日産元COOの志賀氏がEVの出遅れに警鐘「日本は世界から取り残される」)である。
先ずは、本年2月10日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリストの大清水 友明氏による「日本電産、業績急悪化に潜んだ巨額買収のツケ ヨーロッパ買収企業が顧客とトラブル、損失に」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/651556
・『1月24日、日本電産は2023年3月期第3四半期の決算説明会で、通期の営業利益を当初予想より1000億円少ない1100億円、最終利益を1050億円少ない600億円と、大幅に下方修正した。パソコンのハードディスク市場の急速な縮小や中国でのロックダウンによる影響などで市場環境が急速に悪化しているとして、第3四半期に128億円、第4四半期には500億円を投じて収益構造を改善するための改革に乗り出すという。 説明会で永守重信会長は、「前経営陣が外部から来て好き放題の経営をやって、大きな負の遺産を作って去っていった。そうしたいろいろなゴミをすべてきれいにしてしまおうということだ」と述べて、昨年9月に辞任へと追い込んだ関潤前社長に責任転嫁するかのような発言をした。 とても聞き捨てできるものではないが、こうした構造改革費用には、ほかにも看過できない事情があった』、「日本電産」は本年4月1日から社名をニデックに変更した。「永守重信会長」は都合が悪いことは「関潤前社長に責任転嫁」したが、本当のところは自分自身の責任のようだ。
・『誰も突っ込まなかった問題 出席したアナリストが構造改革に取り組む理由を重ねて尋ねたところ、永守氏はヨーロッパで起きた問題に前経営陣が「スピード感を持って対応せず、客先にも行かず、工場にも出向かなかったばかりか、さまざまな問題を処理せずに放置した」と述べた。 「日本電産の基本的な姿勢は『すぐやる、必ずやる、できるまでやる』で、それが強い行動指針になっている。(前経営陣のように)問題を半年も1年も放置すれば、どんなものでも腐って臭いが出てきて、誰も直すことができなくなる。それが今回の大きな損害を出した主因だ」 ただ、ヨーロッパで起きた問題の具体的な中身について、この日の説明会では十分な説明はなく、出席したアナリストや記者からも突っ込んだ質問がなかった。そのため、もやもやとした消化不良感ばかりが残った。 ヨーロッパで起きた問題とは何だったのか。筆者はその一端を示す日本電産の内部資料を入手した。) 資料とは、日本電産の子会社であるドイツの自動車部品メーカーGPM社が起こした顧客とのトラブルについてのものだ。顧客はイギリスの自動車メーカーのジャガー・ランドローバー(以下、ジャガー社)である。GPM社が生産したウォーターポンプの不具合によって出た損害に対して、2021年10月にジャガー社から賠償を求められたという。 GPM社はエンジンの冷却水を循環させるための部品であるウォーターポンプのメーカーとしてヨーロッパでもトップクラスのシェアをもち、日本電産が2015年2月に買収した。ジャガー社との間でトラブルとなったポンプは2016年6月に生産を開始、2019年3月になって最初の市場不具合が報告された。 不具合の内容は、流量をコントロールする機能がうまく作動しないために冷却水の水温が上昇し、それが原因でラジエーターのファンが騒音を出すというものだ。GPM社では対策に苦慮し、翌年にソフトウェアを変更する改善策を取ったが、部品交換代やソフトウェアの変更コストとしてジャガー社から31億円余りを請求されるに至った』、「ジャガー社との間でトラブルとなったポンプ・・・不具合の内容は、流量をコントロールする機能がうまく作動しないために冷却水の水温が上昇し、それが原因でラジエーターのファンが騒音を出すというもの・・・ジャガー社から31億円余りを請求されるに至った」、みっともないトラブルだ。
・『「コスト感性をもっと磨け!」日本電産の稟議書 入手した資料の中には、ジャガー社からの求償に対し25億3300万円を上限に和解調停することに、取締役会の了解を求める稟議書も含まれている。決裁の日付は2022年6月22日。会長である永守氏の大きな決裁印が押され、「AMEC(=車載事業本部)のデタラメな先おくり対応が大問題である」、「天からお金はふってこない」と手書きで書き込まれた永守氏によるメモや「コスト感性をもっと磨け!」との赤字のスタンプが押され、永守氏が巨額の和解金を支払うことに強い不満を持っていたことがうかがえる。 なお、この決裁の後、直ちに和解に至ったが、この経緯を日本電産は詳しく説明していない。それはなぜか。こうしたトラブルを説明することによって過去の買収が失敗だったと批判される可能性があるからではないか。 日本電産がM&Aを繰り返すことで事業規模を大きくしてきたことはよく知られている。その数は2021年9月までで67社に上る。メディアでは「M&Aの名手」などと喧伝され、永守氏自身も日経BP社から出版した『永守流 経営とお金の原則』で、〈これまでのM&Aの成果を勝ち負けでいうなら「67勝0敗」である。つまりすべて成功、失敗はゼロだ〉と自画自賛するが、日本電産の元幹部は「M&Aで100%成功はウソ。少なくともドイツでの買収は完全に失敗している」と言い切る。 社内でも「ババを引いた」と言われるのが、このGPM社である。買収前からその技術力を不安視する声もあったが、永守氏自身は自信満々に買収を進めたのである。数百億円もの巨費を投じたGPM社の買収について2014年12月12日付日本経済新聞でこう述べていた。 「GPMは75年の歴史があり、多くの人が商品イメージを持ち、技術力を高く評価している。環境規制で最低でも世界の車の半分はアイドリングストップが搭載されるようになり、売り上げ、利益の成長が短期で期待できる」) なお、ジャガー社とのトラブルのもととなったポンプの生産開始は2016年、最初の市場不具合が報告されたのは2019年で、いずれも関氏が社長に就任する以前のことだ。それなのに、「処理が遅い」と責任だけ負わされては関氏もたまったものではないだろう。 稟議書が決裁された昨年6月といえば、2年前に社長に就任したばかりの関氏が永守氏と衝突し、事実上、国内から追放される形でドイツに常駐して欧州の問題案件の処理に当たっていたころである。その3カ月後には社長を解任されてしまう』、「「永守氏」は「M&Aの名手」などと喧伝され・・・これまでのM&Aの成果を勝ち負けでいうなら「67勝0敗」である。つまりすべて成功、失敗はゼロだ〉と自画自賛」、「GPM社・・・買収前からその技術力を不安視する声もあったが、永守氏自身は自信満々に買収を進めた・・・数百億円もの巨費を投じたGPM社の買収」、「トラブルのもととなったポンプの生産開始は2016年、最初の市場不具合が報告されたのは2019年で、いずれも関氏が社長に就任する以前のことだ。それなのに、「処理が遅い」と責任だけ負わされては関氏もたまったものではないだろう」、その通りだ。
・『関前社長「本件以外の“負の遺産”」 入手した内部資料の中には、稟議書が関係する役員や担当者らに回覧された際に、それぞれが付したコメントの一覧も含まれる。その中の1つに興味深いものがある。当時、社長だった関氏によるコメントだ。 「本件以外の“負の遺産”も含め健全化を急ぎます」 GPM社がトラブルを抱える顧客はジャガー社だけではない。すでにダイヤモンドオンラインが報じているが、ダイムラー社との間でもGPM製のポンプの不具合をめぐって巨額の損害賠償を求められているという。関氏の指す「本件以外の“負の遺産”」はどこまで広がっているのだろうか。 1月24日の決算説明会で永守氏は、構造改革に600億円以上の金額を積むことについて質問され、こう述べている。 「(構造改革にかかる費用は)欧州の負の遺産がいちばん多いわけで8割ぐらい占める。いま品質問題でトラブっているやつがリコールになるんじゃないかとか、そういうことを想定して金額を算出しているわけだ。必ずしもそうなると決まったわけではないが、来期以降に減益要因にならないように引き当てを済ませておく」 説明会の翌日にインターネットで公開された音声を聞いて私は驚いた。そして、説明会に参加したアナリストや記者からさらなる説明を求める質問が出なかったことが不思議で仕方がなかった。処理に数百億円もかかりかねない品質問題が起き、リコールになるおそれもあることを永守氏が自ら認めているというのに、それを追及しないとは。 筆者は以前に日本電産の子会社が顧客に無断で製品の仕様を変更していた問題を明らかにしたが(「仕様を無断変更か、日本電産が抱える新たな問題空調機器用モーター子会社に無理な収益要求」)、このときも日本電産は事実を明らかにしようとせず、他のメディアはこの問題をさして追及しようとはしなかった。 仕様の無断変更という重大問題はメーカーには説明しても公表されず、今回のGPMの問題もいっさい公に説明がない。こんなことを続けていれば、日本電産が信用を失うことになるのではないか』、「ダイムラー社との間でもGPM製のポンプの不具合をめぐって巨額の損害賠償を求められている」、その分の損失は今回引き当てしたようだ。取材記者が「永守」氏に忖度して甘やかしてきたことが、後継者問題をこじらせた問題につながったのではあるまいか。
次に、4月18日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した佃モビリティ総研代表の佃 義夫氏による「日産元COOの志賀氏がEVの出遅れに警鐘「日本は世界から取り残される」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/321435
・『EV化は製品ではなく産業構造のシフト 日本の出遅れに懸念 カーボンニュートラル(CN)実現に向けて、世界的な“EVシフト”という大きなうねりが自動車業界に押し寄せている。「CASE革命」がありふれた言葉となったように、「コネクテッド」「自動運転」「カーシェアリングサービス」や、とりわけ「電動車」などでの技術革新が生き残りへのカギを握る。 だが、日本自動車産業全体のEV出遅れは、世界新車販売において明確な実績として反映されている。2022年のBEV世界販売は約726万台で21年に比べ7割増となったが、日本市場は軽自動車EVが注目されたものの全体で約5万8800台、乗用車に占める割合は1.7%にとどまっている。 その中にあって日本車を引っ張るトヨタ自動車は、佐藤恒治新社長へ体制を移行するとともに、4月7日に方針説明会を行ってEV戦略強化に拍車をかけることを明言にした。佐藤トヨタ新体制は全方位戦略を貫きつつ「EVファースト」を前面に掲げてきている。 この佐藤トヨタ新体制の方針発表に先立つ3月末には、EU委員会が35年以降も合成燃料e-fuelを使用するエンジン車を容認することを発表するなど、方針転換の動きも出てきた。元々「脱炭素は、EV一辺倒ではない」ことも確かだが、それでも、世界の趨勢はEVシフトにあることは間違いない。 志賀俊之・元日産COOは「日本車全体のEV施策の遅れによって、日本は世界から取り残されることになる」と危惧し真剣に警鐘を鳴らす。前回のインタビューに引き続き、改めて日産の最高執行責任者としての経営体験に加え、官民ファンドで日本のスタートアップ企業などを支援する今の立場で志賀氏に俯瞰した日本自動車産業の進むべき道を聞いた(Qは聞き手の質問)。 Q:まずは、EVシフトに対して日本車の出遅れがよく指摘されています。CNの実現、脱炭素に向けてはいろいろな見方がありますが、世界では大きなうねりとしてEVシフトが進んでいる中で、志賀さんは日本の出遅れに警鐘を鳴らしていますね。) 志賀俊之・元日産COO(以下、志賀氏) 業界の将来に対して、いくつか心配しているところがあるんですが、一番心配しているのは日本の自動車産業の行方ですね。私は、日本自動車工業会の会長をやった時に東日本大震災も経験したんですが、そこで実感したのは日本の自動車産業の強みはOEM(自動車メーカー)だけでなく、部品産業のティア1、2、3、4とあらゆる部品企業によるものということでした。現在、スタートアップを支援している立場でティア2、3クラスの社長さんたちと議論する機会が多いんですが、彼らから「これからどうなっていくんですか?EVシフト・EV化は本当に起きるんですか?」と聞かれるのが実態なんですね。 Q:確かに、内燃機関エンジン車からEVに置き変われば、部品点数が約3万点から2万点に3分の1に減るといわれています。関連部品企業は、その方向がよく見えないことで不安視しているんでしょうね。 志賀氏 そう、インフラ充電網が整備され、航続距離が上がりコストは下がって、EVの価値が認められるようになればお客様もEVが買えるようになるね、ということですが、EVシフトとは、製品のシフトというより産業のシフトということですから、産業転換が必要なんです。私が心配してるのは、本当にEVシフトが起きた際に、これだけ大きなピラミッド構造を抱える日本の自動車産業の構造転換が間に合いますか、ということで警鐘を鳴らしているんです。 Q:つまり、日本はエンジン部品を軸とした従来の自動車サプライチェーン(供給網)の産業構造転換を急ぐべきだと。 志賀氏 EVシフトが遅れれば、産業構造転換が遅れ、ひいては日本が世界から取り残されることになる。これをものすごく不安なこととして懸念しています。また、EVになると部品点数が減るといわれますが、そうでもない。自動運転やCASE対応で車は複雑になり、モジュール化の中でもこれに対応する新たな部品が出てくることにもなります。 Q:日本のモノづくりを管轄する経済産業省などはどう見てるんでしょうか。また、世界を見るとEVシフトで構造転換はどう動いているんですかね』、「内燃機関エンジン車からEVに置き変われば、部品点数が約3万点から2万点に3分の1に減るといわれています。関連部品企業は、その方向がよく見えないことで不安視しているんでしょうね」、「私が心配してるのは、本当にEVシフトが起きた際に、これだけ大きなピラミッド構造を抱える日本の自動車産業の構造転換が間に合いますか、ということで警鐘を鳴らしているんです」、「EVシフトが遅れれば、産業構造転換が遅れ、ひいては日本が世界から取り残されることになる。これをものすごく不安なこととして懸念しています。また、EVになると部品点数が減るといわれますが、そうでもない。自動運転やCASE対応で車は複雑になり、モジュール化の中でもこれに対応する新たな部品が出てくることにもなります」、「自動運転やCASE対応で車は複雑になり、モジュール化の中でもこれに対応する新たな部品が出てくる」、一般論では見落とされがちな点だ。
・『志賀氏 経産省も地方の経産局とも連動して「ミカタプロジェクト」なるもので動き出していますよ。部品企業はみんな迷っているんですから。海外では特に欧州が割り切って進んでいますね。マフラーやトランスミッションなどの部品企業が集約したり残存者利益を得たりすることで、新規事業への構造転換に動いています。その意味では、日本は一口で言えば「じれったい」のが本音です。 Q:それでは、日本の自動車産業はどうすればいいんですかね。 志賀氏 その意味では、自動車は日本の市場だけでは食っていけない。日本だけではガラパゴスになってしまう。世界のトレンド、マーケットの動向に対抗してやっていかねばならない。 OEMサイドはそれができちゃうんですが、部品系はどうなのか。35年には欧米でエンジン車が販売できなくなるが(欧州は合成燃料限定でエンジン車容認に転じた)、日本ではハイブリッド車も含めて電動車として容認されているから、エンジン車は残るとされる。だから20年先なら何もしなくていいよね、との考えにもなる。 国全体で35年、40年が見えているかどうかが分かりづらいのが問題なんです。日本のマーケットも縮んではいるが、年間約500万台販売しており35年にEVが4割、40年には8割となると、そこに向かって対応しなければならない、ということです。 Q:EVシフトとともに、この100年に一度の大変革におけるCASE関連で産業構造の転換を促すのがソフトウエアといわれています。EVと自動運転は親和性が高いし、つながるクルマなども含めてソフトウエアがカギを握る。 志賀氏 そう、もう一つ日本自動車産業の方向の中で心配しているのが、ソフトウエアですね。独フォルクスワーゲン(VW)なども苦労しており、世界中の自動車メーカーがソフトウエアとEVをパッケージで考えて、自動運転も含めた競争力をどう維持していけるかということを考えています』、「海外では特に欧州が割り切って進んでいますね。マフラーやトランスミッションなどの部品企業が集約したり残存者利益を得たりすることで、新規事業への構造転換に動いています。その意味では、日本は一口で言えば「じれったい」のが本音です」、「日本自動車産業の方向の中で心配しているのが、ソフトウエアですね。独フォルクスワーゲン(VW)なども苦労しており、世界中の自動車メーカーがソフトウエアとEVをパッケージで考えて、自動運転も含めた競争力をどう維持していけるかということを考えています」、「ソフトウエア」では「日本」は苦労しそうだ。
・『今のままでは日本は弱い。内燃機関関連が減っていく中で自動車メーカーも従来のメカニカルエンジニアからソフトウエアエンジニアを増やしていくなど、人的なシフトが求められている。あるいは最近はやりのリスキリングですかね(笑)。本当にこれを加速していかないと間に合わなくなる。これも大きな警鐘の一つですね。 Q:日本の自動車メーカーは乗用車8社にトラック4ブランドが生き残ってきた世界でもまれなケースですが、自動車メーカーの牙城が強くスタートアップがなかなか育たない状況もあります。 志賀氏 EVのスタートアップは何社か出てきていますが、実は資金調達、投資が間に合わない。米国などはテスラの他にも新興メーカーのリヴィアンなどが出てきて、相当資金が流れています。日本は乗用車と商用車で12ものブランドがあり、大企業エコシステムがデカくてなかなか隙間がない。新たなイノベーションが起こらない一つの理由でしょう。われわれのような官民ファンドも含めてベンチャーキャピタルが応援していますが、欧米に比べるとまだまだ規模が小さい。 それでもソニー・ホンダのような新たなフォーメーションも出てきています(筆者注:日立オートモティブシステムズとホンダ系部品3社が統合した日立AstemoがEVシフトをにらんで工場投資をするのに、官民ファンドのJICキャピタルが出資して支援することが3月30日に発表されるなど、ファンドの動きも見られるようになっている)。 Q:日本のEV市場も中国BYDや韓国・現代自動車が参入し、昨年は日産・ホンダの軽EVがカーオブザイヤー三冠を独占するなど、ようやく「EV元年」スタートと言われました。 志賀氏 軽EVは本当にようやくですね。私が日産COO最後の年の13年6月に三菱自動車工業と共同開発の軽デイズの発表を三菱の水島工場でやったんですが、その時に益子さん(故益子修三菱自工元社長)と「次は軽EVをやろうね」と言ってたのがちょうど10年かかったんですよ。それでも日本のEVは緒に就いたばかりです。 Q:豊田章男自工会会長の日本自動車連合を引っ張るリーダーシップが脱炭素は「EV一辺倒でない」という立場を取っていることから、日本のEVが出遅れているとの見方もあります』、「昨年は日産・ホンダの軽EVがカーオブザイヤー三冠を独占するなど、ようやく「EV元年」スタートと言われました」、「豊田章男自工会会長の日本自動車連合を引っ張るリーダーシップが脱炭素は「EV一辺倒でない」という立場を取っていることから、日本のEVが出遅れているとの見方もあります」、出遅れにはトヨタの責任も大きそうだ。
・『志賀氏 まあ、章男自工会会長ということだけではなく、各社が悩ましい時期に来ているんじゃないんですかね。かつて私が日産COOをやっていたころは経営オペレーションが明快でしたから。つまり、どうしたら成長できるか、もうけることができるかについて本当にシンプルな答え、法則があったんです。「いいものをより安く提供する」ということですね。9年間、日産のCOOとしてオペレーションを任され迷うことはなかったんです。 しかし、この100年に一度の大変革期における経営者は「全方位でやるのか、集中と選択でやるのか」、集中するなら「限られた経営資源でどこに集中するのか」ということに悩んでいるのでしょう。 世界を見渡すと、GMのメアリー・バーラCEOの戦略が明快ですね。「EVと自動運転」に集中するという明確な戦略です。経営者が方向性をはっきりさせて集中と選択を進める好例として受け止めています。 もちろん、経営資源が限られる中で行う集中と選択に対して、世界各地域に対応した全方位戦略も必要でしょう。だが、例えば「全方位といわれてもどこに行くんですか」との問いに、2030年には○○で、2040年には○○で、そして「2050年には内燃機関車はないぞ」とのマイルストーンを、OEMから裾野のサプライヤーに対して出してあげることも必要なんじゃないかな。 世界の趨勢を見渡すと、ここ数年で各国政府によるEVへの傾斜が鮮明になっている。温暖化防止の大義で先行する欧州だけでなく、EVを世界自動車覇権の柱に据える中国や、バイデン政権の米国もEV重視を明確に打ち出している(バイデン米政権は4月12日に自動車新環境規制の導入を発表、この新規制で32年に新車販売の最大7割がEVとなる)。こうした情勢にあって日本車のEV出遅れがかねて指摘されてきた』、「世界の趨勢を見渡すと、ここ数年で各国政府によるEVへの傾斜が鮮明になっている。温暖化防止の大義で先行する欧州だけでなく、EVを世界自動車覇権の柱に据える中国や、バイデン政権の米国もEV重視を明確に打ち出している」、「日本車のEV出遅れがかねて指摘されてきた」、その通りだ。
・『日本の電源構成ではEVの実質的なCO2排出量はさほど減らない上、高コストな電池や充電設備の未整備、航続距離の問題など、消費者サイドが自発的にEVを選ぶには課題も多い。 日本車をリードするトヨタが脱炭素へ全方位(ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、燃料電池車、バッテリーEV、水素、CN燃料)戦略を掲げる中で「EVも本気」と宣言したのが豊田章男前社長(現会長)だった。それが4月に就任した佐藤恒治新社長は、7日のトヨタ新体制方針説明会で「マルチパスウェイ(全方位)の軸をぶらさずに、BEVの開発、投入に積極的に取り組んでいく」と、EV本格転換を打ち出した。また、「これまでBEVに対する具体的なファクトを十分に示せていなかったかなと反省しています」と、トヨタのEV出遅れを指摘する声に応えるような発言も示した。 いずれにしても、志賀氏の「日本車のEV出遅れは日本自動車産業の構造転換の遅れとなり、世界から取り残されることになる」という主張と懸念に対し、トヨタもこのEV本格化の方針で、産業構造転換に向けた歩みが進むことになった。 軽EVの日産「サクラ」/三菱自「ekクロスEV」がヒットした22年は「日本のEV元年」と言われたものの、日本の新車販売に占めるEVは1.7%にとどまる。世界販売ではEV比率は1割に達し、中国は約2割、欧州は1割、米国は5%で日本車のEVシフトの遅れが逆に鮮明となった。 カーボンニュートラルの時代、世界のEVシフトの進展スピードが加速する中で、モビリティの在り方やビジネスモデルはどう変革していくのか。注視していきたい』、「4月に就任した佐藤恒治新社長は、7日のトヨタ新体制方針説明会で「マルチパスウェイ(全方位)の軸をぶらさずに、BEVの開発、投入に積極的に取り組んでいく」と、EV本格転換を打ち出した。また、「これまでBEVに対する具体的なファクトを十分に示せていなかったかなと反省しています」と、トヨタのEV出遅れを指摘する声に応えるような発言も示した」、「トヨタ」が遅まきながら「EV本格転換を打ち出した」のは結構なことだ。ただ、これまでの世界的な遅れを取り戻すのは容易ではないだろう。
先ずは、本年2月10日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリストの大清水 友明氏による「日本電産、業績急悪化に潜んだ巨額買収のツケ ヨーロッパ買収企業が顧客とトラブル、損失に」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/651556
・『1月24日、日本電産は2023年3月期第3四半期の決算説明会で、通期の営業利益を当初予想より1000億円少ない1100億円、最終利益を1050億円少ない600億円と、大幅に下方修正した。パソコンのハードディスク市場の急速な縮小や中国でのロックダウンによる影響などで市場環境が急速に悪化しているとして、第3四半期に128億円、第4四半期には500億円を投じて収益構造を改善するための改革に乗り出すという。 説明会で永守重信会長は、「前経営陣が外部から来て好き放題の経営をやって、大きな負の遺産を作って去っていった。そうしたいろいろなゴミをすべてきれいにしてしまおうということだ」と述べて、昨年9月に辞任へと追い込んだ関潤前社長に責任転嫁するかのような発言をした。 とても聞き捨てできるものではないが、こうした構造改革費用には、ほかにも看過できない事情があった』、「日本電産」は本年4月1日から社名をニデックに変更した。「永守重信会長」は都合が悪いことは「関潤前社長に責任転嫁」したが、本当のところは自分自身の責任のようだ。
・『誰も突っ込まなかった問題 出席したアナリストが構造改革に取り組む理由を重ねて尋ねたところ、永守氏はヨーロッパで起きた問題に前経営陣が「スピード感を持って対応せず、客先にも行かず、工場にも出向かなかったばかりか、さまざまな問題を処理せずに放置した」と述べた。 「日本電産の基本的な姿勢は『すぐやる、必ずやる、できるまでやる』で、それが強い行動指針になっている。(前経営陣のように)問題を半年も1年も放置すれば、どんなものでも腐って臭いが出てきて、誰も直すことができなくなる。それが今回の大きな損害を出した主因だ」 ただ、ヨーロッパで起きた問題の具体的な中身について、この日の説明会では十分な説明はなく、出席したアナリストや記者からも突っ込んだ質問がなかった。そのため、もやもやとした消化不良感ばかりが残った。 ヨーロッパで起きた問題とは何だったのか。筆者はその一端を示す日本電産の内部資料を入手した。) 資料とは、日本電産の子会社であるドイツの自動車部品メーカーGPM社が起こした顧客とのトラブルについてのものだ。顧客はイギリスの自動車メーカーのジャガー・ランドローバー(以下、ジャガー社)である。GPM社が生産したウォーターポンプの不具合によって出た損害に対して、2021年10月にジャガー社から賠償を求められたという。 GPM社はエンジンの冷却水を循環させるための部品であるウォーターポンプのメーカーとしてヨーロッパでもトップクラスのシェアをもち、日本電産が2015年2月に買収した。ジャガー社との間でトラブルとなったポンプは2016年6月に生産を開始、2019年3月になって最初の市場不具合が報告された。 不具合の内容は、流量をコントロールする機能がうまく作動しないために冷却水の水温が上昇し、それが原因でラジエーターのファンが騒音を出すというものだ。GPM社では対策に苦慮し、翌年にソフトウェアを変更する改善策を取ったが、部品交換代やソフトウェアの変更コストとしてジャガー社から31億円余りを請求されるに至った』、「ジャガー社との間でトラブルとなったポンプ・・・不具合の内容は、流量をコントロールする機能がうまく作動しないために冷却水の水温が上昇し、それが原因でラジエーターのファンが騒音を出すというもの・・・ジャガー社から31億円余りを請求されるに至った」、みっともないトラブルだ。
・『「コスト感性をもっと磨け!」日本電産の稟議書 入手した資料の中には、ジャガー社からの求償に対し25億3300万円を上限に和解調停することに、取締役会の了解を求める稟議書も含まれている。決裁の日付は2022年6月22日。会長である永守氏の大きな決裁印が押され、「AMEC(=車載事業本部)のデタラメな先おくり対応が大問題である」、「天からお金はふってこない」と手書きで書き込まれた永守氏によるメモや「コスト感性をもっと磨け!」との赤字のスタンプが押され、永守氏が巨額の和解金を支払うことに強い不満を持っていたことがうかがえる。 なお、この決裁の後、直ちに和解に至ったが、この経緯を日本電産は詳しく説明していない。それはなぜか。こうしたトラブルを説明することによって過去の買収が失敗だったと批判される可能性があるからではないか。 日本電産がM&Aを繰り返すことで事業規模を大きくしてきたことはよく知られている。その数は2021年9月までで67社に上る。メディアでは「M&Aの名手」などと喧伝され、永守氏自身も日経BP社から出版した『永守流 経営とお金の原則』で、〈これまでのM&Aの成果を勝ち負けでいうなら「67勝0敗」である。つまりすべて成功、失敗はゼロだ〉と自画自賛するが、日本電産の元幹部は「M&Aで100%成功はウソ。少なくともドイツでの買収は完全に失敗している」と言い切る。 社内でも「ババを引いた」と言われるのが、このGPM社である。買収前からその技術力を不安視する声もあったが、永守氏自身は自信満々に買収を進めたのである。数百億円もの巨費を投じたGPM社の買収について2014年12月12日付日本経済新聞でこう述べていた。 「GPMは75年の歴史があり、多くの人が商品イメージを持ち、技術力を高く評価している。環境規制で最低でも世界の車の半分はアイドリングストップが搭載されるようになり、売り上げ、利益の成長が短期で期待できる」) なお、ジャガー社とのトラブルのもととなったポンプの生産開始は2016年、最初の市場不具合が報告されたのは2019年で、いずれも関氏が社長に就任する以前のことだ。それなのに、「処理が遅い」と責任だけ負わされては関氏もたまったものではないだろう。 稟議書が決裁された昨年6月といえば、2年前に社長に就任したばかりの関氏が永守氏と衝突し、事実上、国内から追放される形でドイツに常駐して欧州の問題案件の処理に当たっていたころである。その3カ月後には社長を解任されてしまう』、「「永守氏」は「M&Aの名手」などと喧伝され・・・これまでのM&Aの成果を勝ち負けでいうなら「67勝0敗」である。つまりすべて成功、失敗はゼロだ〉と自画自賛」、「GPM社・・・買収前からその技術力を不安視する声もあったが、永守氏自身は自信満々に買収を進めた・・・数百億円もの巨費を投じたGPM社の買収」、「トラブルのもととなったポンプの生産開始は2016年、最初の市場不具合が報告されたのは2019年で、いずれも関氏が社長に就任する以前のことだ。それなのに、「処理が遅い」と責任だけ負わされては関氏もたまったものではないだろう」、その通りだ。
・『関前社長「本件以外の“負の遺産”」 入手した内部資料の中には、稟議書が関係する役員や担当者らに回覧された際に、それぞれが付したコメントの一覧も含まれる。その中の1つに興味深いものがある。当時、社長だった関氏によるコメントだ。 「本件以外の“負の遺産”も含め健全化を急ぎます」 GPM社がトラブルを抱える顧客はジャガー社だけではない。すでにダイヤモンドオンラインが報じているが、ダイムラー社との間でもGPM製のポンプの不具合をめぐって巨額の損害賠償を求められているという。関氏の指す「本件以外の“負の遺産”」はどこまで広がっているのだろうか。 1月24日の決算説明会で永守氏は、構造改革に600億円以上の金額を積むことについて質問され、こう述べている。 「(構造改革にかかる費用は)欧州の負の遺産がいちばん多いわけで8割ぐらい占める。いま品質問題でトラブっているやつがリコールになるんじゃないかとか、そういうことを想定して金額を算出しているわけだ。必ずしもそうなると決まったわけではないが、来期以降に減益要因にならないように引き当てを済ませておく」 説明会の翌日にインターネットで公開された音声を聞いて私は驚いた。そして、説明会に参加したアナリストや記者からさらなる説明を求める質問が出なかったことが不思議で仕方がなかった。処理に数百億円もかかりかねない品質問題が起き、リコールになるおそれもあることを永守氏が自ら認めているというのに、それを追及しないとは。 筆者は以前に日本電産の子会社が顧客に無断で製品の仕様を変更していた問題を明らかにしたが(「仕様を無断変更か、日本電産が抱える新たな問題空調機器用モーター子会社に無理な収益要求」)、このときも日本電産は事実を明らかにしようとせず、他のメディアはこの問題をさして追及しようとはしなかった。 仕様の無断変更という重大問題はメーカーには説明しても公表されず、今回のGPMの問題もいっさい公に説明がない。こんなことを続けていれば、日本電産が信用を失うことになるのではないか』、「ダイムラー社との間でもGPM製のポンプの不具合をめぐって巨額の損害賠償を求められている」、その分の損失は今回引き当てしたようだ。取材記者が「永守」氏に忖度して甘やかしてきたことが、後継者問題をこじらせた問題につながったのではあるまいか。
次に、4月18日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した佃モビリティ総研代表の佃 義夫氏による「日産元COOの志賀氏がEVの出遅れに警鐘「日本は世界から取り残される」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/321435
・『EV化は製品ではなく産業構造のシフト 日本の出遅れに懸念 カーボンニュートラル(CN)実現に向けて、世界的な“EVシフト”という大きなうねりが自動車業界に押し寄せている。「CASE革命」がありふれた言葉となったように、「コネクテッド」「自動運転」「カーシェアリングサービス」や、とりわけ「電動車」などでの技術革新が生き残りへのカギを握る。 だが、日本自動車産業全体のEV出遅れは、世界新車販売において明確な実績として反映されている。2022年のBEV世界販売は約726万台で21年に比べ7割増となったが、日本市場は軽自動車EVが注目されたものの全体で約5万8800台、乗用車に占める割合は1.7%にとどまっている。 その中にあって日本車を引っ張るトヨタ自動車は、佐藤恒治新社長へ体制を移行するとともに、4月7日に方針説明会を行ってEV戦略強化に拍車をかけることを明言にした。佐藤トヨタ新体制は全方位戦略を貫きつつ「EVファースト」を前面に掲げてきている。 この佐藤トヨタ新体制の方針発表に先立つ3月末には、EU委員会が35年以降も合成燃料e-fuelを使用するエンジン車を容認することを発表するなど、方針転換の動きも出てきた。元々「脱炭素は、EV一辺倒ではない」ことも確かだが、それでも、世界の趨勢はEVシフトにあることは間違いない。 志賀俊之・元日産COOは「日本車全体のEV施策の遅れによって、日本は世界から取り残されることになる」と危惧し真剣に警鐘を鳴らす。前回のインタビューに引き続き、改めて日産の最高執行責任者としての経営体験に加え、官民ファンドで日本のスタートアップ企業などを支援する今の立場で志賀氏に俯瞰した日本自動車産業の進むべき道を聞いた(Qは聞き手の質問)。 Q:まずは、EVシフトに対して日本車の出遅れがよく指摘されています。CNの実現、脱炭素に向けてはいろいろな見方がありますが、世界では大きなうねりとしてEVシフトが進んでいる中で、志賀さんは日本の出遅れに警鐘を鳴らしていますね。) 志賀俊之・元日産COO(以下、志賀氏) 業界の将来に対して、いくつか心配しているところがあるんですが、一番心配しているのは日本の自動車産業の行方ですね。私は、日本自動車工業会の会長をやった時に東日本大震災も経験したんですが、そこで実感したのは日本の自動車産業の強みはOEM(自動車メーカー)だけでなく、部品産業のティア1、2、3、4とあらゆる部品企業によるものということでした。現在、スタートアップを支援している立場でティア2、3クラスの社長さんたちと議論する機会が多いんですが、彼らから「これからどうなっていくんですか?EVシフト・EV化は本当に起きるんですか?」と聞かれるのが実態なんですね。 Q:確かに、内燃機関エンジン車からEVに置き変われば、部品点数が約3万点から2万点に3分の1に減るといわれています。関連部品企業は、その方向がよく見えないことで不安視しているんでしょうね。 志賀氏 そう、インフラ充電網が整備され、航続距離が上がりコストは下がって、EVの価値が認められるようになればお客様もEVが買えるようになるね、ということですが、EVシフトとは、製品のシフトというより産業のシフトということですから、産業転換が必要なんです。私が心配してるのは、本当にEVシフトが起きた際に、これだけ大きなピラミッド構造を抱える日本の自動車産業の構造転換が間に合いますか、ということで警鐘を鳴らしているんです。 Q:つまり、日本はエンジン部品を軸とした従来の自動車サプライチェーン(供給網)の産業構造転換を急ぐべきだと。 志賀氏 EVシフトが遅れれば、産業構造転換が遅れ、ひいては日本が世界から取り残されることになる。これをものすごく不安なこととして懸念しています。また、EVになると部品点数が減るといわれますが、そうでもない。自動運転やCASE対応で車は複雑になり、モジュール化の中でもこれに対応する新たな部品が出てくることにもなります。 Q:日本のモノづくりを管轄する経済産業省などはどう見てるんでしょうか。また、世界を見るとEVシフトで構造転換はどう動いているんですかね』、「内燃機関エンジン車からEVに置き変われば、部品点数が約3万点から2万点に3分の1に減るといわれています。関連部品企業は、その方向がよく見えないことで不安視しているんでしょうね」、「私が心配してるのは、本当にEVシフトが起きた際に、これだけ大きなピラミッド構造を抱える日本の自動車産業の構造転換が間に合いますか、ということで警鐘を鳴らしているんです」、「EVシフトが遅れれば、産業構造転換が遅れ、ひいては日本が世界から取り残されることになる。これをものすごく不安なこととして懸念しています。また、EVになると部品点数が減るといわれますが、そうでもない。自動運転やCASE対応で車は複雑になり、モジュール化の中でもこれに対応する新たな部品が出てくることにもなります」、「自動運転やCASE対応で車は複雑になり、モジュール化の中でもこれに対応する新たな部品が出てくる」、一般論では見落とされがちな点だ。
・『志賀氏 経産省も地方の経産局とも連動して「ミカタプロジェクト」なるもので動き出していますよ。部品企業はみんな迷っているんですから。海外では特に欧州が割り切って進んでいますね。マフラーやトランスミッションなどの部品企業が集約したり残存者利益を得たりすることで、新規事業への構造転換に動いています。その意味では、日本は一口で言えば「じれったい」のが本音です。 Q:それでは、日本の自動車産業はどうすればいいんですかね。 志賀氏 その意味では、自動車は日本の市場だけでは食っていけない。日本だけではガラパゴスになってしまう。世界のトレンド、マーケットの動向に対抗してやっていかねばならない。 OEMサイドはそれができちゃうんですが、部品系はどうなのか。35年には欧米でエンジン車が販売できなくなるが(欧州は合成燃料限定でエンジン車容認に転じた)、日本ではハイブリッド車も含めて電動車として容認されているから、エンジン車は残るとされる。だから20年先なら何もしなくていいよね、との考えにもなる。 国全体で35年、40年が見えているかどうかが分かりづらいのが問題なんです。日本のマーケットも縮んではいるが、年間約500万台販売しており35年にEVが4割、40年には8割となると、そこに向かって対応しなければならない、ということです。 Q:EVシフトとともに、この100年に一度の大変革におけるCASE関連で産業構造の転換を促すのがソフトウエアといわれています。EVと自動運転は親和性が高いし、つながるクルマなども含めてソフトウエアがカギを握る。 志賀氏 そう、もう一つ日本自動車産業の方向の中で心配しているのが、ソフトウエアですね。独フォルクスワーゲン(VW)なども苦労しており、世界中の自動車メーカーがソフトウエアとEVをパッケージで考えて、自動運転も含めた競争力をどう維持していけるかということを考えています』、「海外では特に欧州が割り切って進んでいますね。マフラーやトランスミッションなどの部品企業が集約したり残存者利益を得たりすることで、新規事業への構造転換に動いています。その意味では、日本は一口で言えば「じれったい」のが本音です」、「日本自動車産業の方向の中で心配しているのが、ソフトウエアですね。独フォルクスワーゲン(VW)なども苦労しており、世界中の自動車メーカーがソフトウエアとEVをパッケージで考えて、自動運転も含めた競争力をどう維持していけるかということを考えています」、「ソフトウエア」では「日本」は苦労しそうだ。
・『今のままでは日本は弱い。内燃機関関連が減っていく中で自動車メーカーも従来のメカニカルエンジニアからソフトウエアエンジニアを増やしていくなど、人的なシフトが求められている。あるいは最近はやりのリスキリングですかね(笑)。本当にこれを加速していかないと間に合わなくなる。これも大きな警鐘の一つですね。 Q:日本の自動車メーカーは乗用車8社にトラック4ブランドが生き残ってきた世界でもまれなケースですが、自動車メーカーの牙城が強くスタートアップがなかなか育たない状況もあります。 志賀氏 EVのスタートアップは何社か出てきていますが、実は資金調達、投資が間に合わない。米国などはテスラの他にも新興メーカーのリヴィアンなどが出てきて、相当資金が流れています。日本は乗用車と商用車で12ものブランドがあり、大企業エコシステムがデカくてなかなか隙間がない。新たなイノベーションが起こらない一つの理由でしょう。われわれのような官民ファンドも含めてベンチャーキャピタルが応援していますが、欧米に比べるとまだまだ規模が小さい。 それでもソニー・ホンダのような新たなフォーメーションも出てきています(筆者注:日立オートモティブシステムズとホンダ系部品3社が統合した日立AstemoがEVシフトをにらんで工場投資をするのに、官民ファンドのJICキャピタルが出資して支援することが3月30日に発表されるなど、ファンドの動きも見られるようになっている)。 Q:日本のEV市場も中国BYDや韓国・現代自動車が参入し、昨年は日産・ホンダの軽EVがカーオブザイヤー三冠を独占するなど、ようやく「EV元年」スタートと言われました。 志賀氏 軽EVは本当にようやくですね。私が日産COO最後の年の13年6月に三菱自動車工業と共同開発の軽デイズの発表を三菱の水島工場でやったんですが、その時に益子さん(故益子修三菱自工元社長)と「次は軽EVをやろうね」と言ってたのがちょうど10年かかったんですよ。それでも日本のEVは緒に就いたばかりです。 Q:豊田章男自工会会長の日本自動車連合を引っ張るリーダーシップが脱炭素は「EV一辺倒でない」という立場を取っていることから、日本のEVが出遅れているとの見方もあります』、「昨年は日産・ホンダの軽EVがカーオブザイヤー三冠を独占するなど、ようやく「EV元年」スタートと言われました」、「豊田章男自工会会長の日本自動車連合を引っ張るリーダーシップが脱炭素は「EV一辺倒でない」という立場を取っていることから、日本のEVが出遅れているとの見方もあります」、出遅れにはトヨタの責任も大きそうだ。
・『志賀氏 まあ、章男自工会会長ということだけではなく、各社が悩ましい時期に来ているんじゃないんですかね。かつて私が日産COOをやっていたころは経営オペレーションが明快でしたから。つまり、どうしたら成長できるか、もうけることができるかについて本当にシンプルな答え、法則があったんです。「いいものをより安く提供する」ということですね。9年間、日産のCOOとしてオペレーションを任され迷うことはなかったんです。 しかし、この100年に一度の大変革期における経営者は「全方位でやるのか、集中と選択でやるのか」、集中するなら「限られた経営資源でどこに集中するのか」ということに悩んでいるのでしょう。 世界を見渡すと、GMのメアリー・バーラCEOの戦略が明快ですね。「EVと自動運転」に集中するという明確な戦略です。経営者が方向性をはっきりさせて集中と選択を進める好例として受け止めています。 もちろん、経営資源が限られる中で行う集中と選択に対して、世界各地域に対応した全方位戦略も必要でしょう。だが、例えば「全方位といわれてもどこに行くんですか」との問いに、2030年には○○で、2040年には○○で、そして「2050年には内燃機関車はないぞ」とのマイルストーンを、OEMから裾野のサプライヤーに対して出してあげることも必要なんじゃないかな。 世界の趨勢を見渡すと、ここ数年で各国政府によるEVへの傾斜が鮮明になっている。温暖化防止の大義で先行する欧州だけでなく、EVを世界自動車覇権の柱に据える中国や、バイデン政権の米国もEV重視を明確に打ち出している(バイデン米政権は4月12日に自動車新環境規制の導入を発表、この新規制で32年に新車販売の最大7割がEVとなる)。こうした情勢にあって日本車のEV出遅れがかねて指摘されてきた』、「世界の趨勢を見渡すと、ここ数年で各国政府によるEVへの傾斜が鮮明になっている。温暖化防止の大義で先行する欧州だけでなく、EVを世界自動車覇権の柱に据える中国や、バイデン政権の米国もEV重視を明確に打ち出している」、「日本車のEV出遅れがかねて指摘されてきた」、その通りだ。
・『日本の電源構成ではEVの実質的なCO2排出量はさほど減らない上、高コストな電池や充電設備の未整備、航続距離の問題など、消費者サイドが自発的にEVを選ぶには課題も多い。 日本車をリードするトヨタが脱炭素へ全方位(ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、燃料電池車、バッテリーEV、水素、CN燃料)戦略を掲げる中で「EVも本気」と宣言したのが豊田章男前社長(現会長)だった。それが4月に就任した佐藤恒治新社長は、7日のトヨタ新体制方針説明会で「マルチパスウェイ(全方位)の軸をぶらさずに、BEVの開発、投入に積極的に取り組んでいく」と、EV本格転換を打ち出した。また、「これまでBEVに対する具体的なファクトを十分に示せていなかったかなと反省しています」と、トヨタのEV出遅れを指摘する声に応えるような発言も示した。 いずれにしても、志賀氏の「日本車のEV出遅れは日本自動車産業の構造転換の遅れとなり、世界から取り残されることになる」という主張と懸念に対し、トヨタもこのEV本格化の方針で、産業構造転換に向けた歩みが進むことになった。 軽EVの日産「サクラ」/三菱自「ekクロスEV」がヒットした22年は「日本のEV元年」と言われたものの、日本の新車販売に占めるEVは1.7%にとどまる。世界販売ではEV比率は1割に達し、中国は約2割、欧州は1割、米国は5%で日本車のEVシフトの遅れが逆に鮮明となった。 カーボンニュートラルの時代、世界のEVシフトの進展スピードが加速する中で、モビリティの在り方やビジネスモデルはどう変革していくのか。注視していきたい』、「4月に就任した佐藤恒治新社長は、7日のトヨタ新体制方針説明会で「マルチパスウェイ(全方位)の軸をぶらさずに、BEVの開発、投入に積極的に取り組んでいく」と、EV本格転換を打ち出した。また、「これまでBEVに対する具体的なファクトを十分に示せていなかったかなと反省しています」と、トヨタのEV出遅れを指摘する声に応えるような発言も示した」、「トヨタ」が遅まきながら「EV本格転換を打ち出した」のは結構なことだ。ただ、これまでの世界的な遅れを取り戻すのは容易ではないだろう。
タグ:電気自動車(EV) 「ダイムラー社との間でもGPM製のポンプの不具合をめぐって巨額の損害賠償を求められている」、その分の損失は今回引き当てしたようだ。取材記者が「永守」氏に忖度して甘やかしてきたことが、後継者問題をこじらせた問題につながったのではあるまいか。 「トラブルのもととなったポンプの生産開始は2016年、最初の市場不具合が報告されたのは2019年で、いずれも関氏が社長に就任する以前のことだ。それなのに、「処理が遅い」と責任だけ負わされては関氏もたまったものではないだろう」、その通りだ。 「4月に就任した佐藤恒治新社長は、7日のトヨタ新体制方針説明会で「マルチパスウェイ(全方位)の軸をぶらさずに、BEVの開発、投入に積極的に取り組んでいく」と、EV本格転換を打ち出した。また、「これまでBEVに対する具体的なファクトを十分に示せていなかったかなと反省しています」と、トヨタのEV出遅れを指摘する声に応えるような発言も示した」、「トヨタ」が遅まきながら「EV本格転換を打ち出した」のは結構なことだ。ただ、これまでの世界的な遅れを取り戻すのは容易ではないだろう。 「世界の趨勢を見渡すと、ここ数年で各国政府によるEVへの傾斜が鮮明になっている。温暖化防止の大義で先行する欧州だけでなく、EVを世界自動車覇権の柱に据える中国や、バイデン政権の米国もEV重視を明確に打ち出している」、「日本車のEV出遅れがかねて指摘されてきた」、その通りだ。 「昨年は日産・ホンダの軽EVがカーオブザイヤー三冠を独占するなど、ようやく「EV元年」スタートと言われました」、「豊田章男自工会会長の日本自動車連合を引っ張るリーダーシップが脱炭素は「EV一辺倒でない」という立場を取っていることから、日本のEVが出遅れているとの見方もあります」、出遅れにはトヨタの責任も大きそうだ。 「ソフトウエア」では「日本」は苦労しそうだ。 「海外では特に欧州が割り切って進んでいますね。マフラーやトランスミッションなどの部品企業が集約したり残存者利益を得たりすることで、新規事業への構造転換に動いています。その意味では、日本は一口で言えば「じれったい」のが本音です」、「日本自動車産業の方向の中で心配しているのが、ソフトウエアですね。独フォルクスワーゲン(VW)なども苦労しており、世界中の自動車メーカーがソフトウエアとEVをパッケージで考えて、自動運転も含めた競争力をどう維持していけるかということを考えています」、 「EVシフトが遅れれば、産業構造転換が遅れ、ひいては日本が世界から取り残されることになる。これをものすごく不安なこととして懸念しています。また、EVになると部品点数が減るといわれますが、そうでもない。自動運転やCASE対応で車は複雑になり、モジュール化の中でもこれに対応する新たな部品が出てくることにもなります」、「自動運転やCASE対応で車は複雑になり、モジュール化の中でもこれに対応する新たな部品が出てくる」、一般論では見落とされがちな点だ。 「内燃機関エンジン車からEVに置き変われば、部品点数が約3万点から2万点に3分の1に減るといわれています。関連部品企業は、その方向がよく見えないことで不安視しているんでしょうね」、「私が心配してるのは、本当にEVシフトが起きた際に、これだけ大きなピラミッド構造を抱える日本の自動車産業の構造転換が間に合いますか、ということで警鐘を鳴らしているんです」、 佃 義夫氏による「日産元COOの志賀氏がEVの出遅れに警鐘「日本は世界から取り残される」」 ダイヤモンド・オンライン 「「永守氏」は「M&Aの名手」などと喧伝され・・・これまでのM&Aの成果を勝ち負けでいうなら「67勝0敗」である。つまりすべて成功、失敗はゼロだ〉と自画自賛」、「GPM社・・・買収前からその技術力を不安視する声もあったが、永守氏自身は自信満々に買収を進めた・・・数百億円もの巨費を投じたGPM社の買収」、 「ジャガー社との間でトラブルとなったポンプ・・・不具合の内容は、流量をコントロールする機能がうまく作動しないために冷却水の水温が上昇し、それが原因でラジエーターのファンが騒音を出すというもの・・・ジャガー社から31億円余りを請求されるに至った」、みっともないトラブルだ。 「日本電産」は本年4月1日から社名をニデックに変更した。「永守重信会長」は都合が悪いことは「関潤前社長に責任転嫁」したが、本当のところは自分自身の責任のようだ。 大清水 友明氏による「日本電産、業績急悪化に潜んだ巨額買収のツケ ヨーロッパ買収企業が顧客とトラブル、損失に」 東洋経済オンライン (その13)(日本電産 業績急悪化に潜んだ巨額買収のツケ ヨーロッパ買収企業が顧客とトラブル 損失に、日産元COOの志賀氏がEVの出遅れに警鐘「日本は世界から取り残される」)