ノーベル賞受賞(その8)(「暗黒物質ダークマター」は《お母さん》?「だからぜひ会ってみたいですね」と言い切る理論物理学者・村山斉さんが語る「人類すべての母」、重力波 ヒッグス粒子 ニュートリノ質量 銀河中心の超巨大BHという超発見が続々…「素粒子物理の夢の時代」にトップランナーが語る「夢のその先」、闇市で得た1000ドルをテディベアに隠して出国…「ワクチンでノーベル賞」カリコ氏の壮絶人生) [科学技術]
ノーベル賞受賞については、2019年11月23日に取上げた。久しぶりの今日は、(その8)(「暗黒物質ダークマター」は《お母さん》?「だからぜひ会ってみたいですね」と言い切る理論物理学者・村山斉さんが語る「人類すべての母」、重力波 ヒッグス粒子 ニュートリノ質量 銀河中心の超巨大BHという超発見が続々…「素粒子物理の夢の時代」にトップランナーが語る「夢のその先」、闇市で得た1000ドルをテディベアに隠して出国…「ワクチンでノーベル賞」カリコ氏の壮絶人生)である。
ノーベル賞受賞については、2019年11月23日に取上げた。久しぶりの今日は、(その8)(「暗黒物質ダークマター」は《お母さん》?「だからぜひ会ってみたいですね」と言い切る理論物理学者・村山斉さんが語る「人類すべての母」、重力波 ヒッグス粒子 ニュートリノ質量 銀河中心の超巨大BHという
先ずは、昨年3月6日付け現代ビジネスが掲載した「サイエンスZERO」20周年スペシャル・取材班による「「暗黒物質ダークマター」は《お母さん》?「だからぜひ会ってみたいですね」と言い切る理論物理学者・村山斉さんが語る「人類すべての母」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/107046?imp=0
・『この宇宙を形づくっているものの中で、「目に見える」物質は全体の5%にすぎないというのをご存じでしょうか。宇宙の物質の大部分は正体不明の物質「ダークマター(暗黒物質)」が占めていると考えないと、宇宙での私たちの存在に説明がつかないことが分かってきたのです。 「質量は持つ」けれど「観測できない」という物質、ということです。それは仮説上の物質で「ダークマター」と名付けられ、いまだに実在が確かめられていません。そこで今、世界中の科学者がこの謎の物質を捉えようと理論や実験を総動員して研究しています。中でも、天文学・物理学・数学といった異分野の専門家たちがこのダークマターに迫ろうとする世界トップレベルの研究所が「カブリ数物連携宇宙機構」です。 その初代機構長を務めた理論物理学者の村山斉さんは、ダークマターが実験で捉えられる可能性が見えてきて、今、研究はかつてないほど“面白い時期”を迎えていると言います。「私たちの“生みのお母さん”である『ダークマター』に会いたい」と語る村山さんに、ダークマター研究の20年、そして今後の展望について伺いました(Qは聞き手の質問、Aは村山氏の回答)』、興味深そうだ。
・ダークマターはたった20年前に存在が判明した Q:そもそも、ダークマターとはどんなものか、教えてください。 A:ダークマターは、「暗黒物質」とも呼ばれるもので、素粒子という小さな「粒(つぶ)」みたいな物質、またそれが少し集まったものだと考えています。1930年代に、はるか遠くの銀河団を観測した天文学者がいて、その銀河が「激しいスピードでビュンビュン動いている」ということを発見しました。 その銀河が特異に見えたのは、「激しいスピードで動いている」にもかかわらず、そのまま飛び出していってバラバラになってしまわないことでした。そこでその天文学者は、「何か重力を持つ物質がないと、こんなに速く動いている銀河同士をつなぎ留めておくことはできないはず。こんなに速く動いているということは見えない『ダークマター』があるのではないか」と考えたのです。 ところが、当時は単に望遠鏡では見えない星や、ガスの塊があるからではないかというのが常識でした。20年ほど前になってようやく、今まで全く知られていない新しい物質だということが判明したのです』、「ダークマターは、「暗黒物質」とも呼ばれるもので、素粒子という小さな「粒(つぶ)」みたいな物質、またそれが少し集まったものだと考えています」、なるほど。
・『どうしてどの方向にもビッグバンが観測されないのか? Q:20年前に何があったんでしょうか? A:20年前にビッグバンの名残(残照)を直接観測するための人工衛星WMAP(※1)が上がって、解像度の高い、宇宙誕生初期の写真が撮れるようになりました。その写真には情報がたくさん詰まっていて、宇宙全体の物質のうちダークマターが約8割を占めているというこの宇宙の詳細が明らかになったのです。 そこで初めて、ダークマターと普通の物質は明らかに違うものだということがはっきりしてきました。それまでは、ブラックホールやニュートリノなど、すでに知られているものがダークマターの正体ではないかと考えられていたので、本当に衝撃を受けました。 ※1 ビッグバンを直接観測する人工衛星…2001年にNASA(米航空宇宙局)が打ち上げた「Wilkinson Microwave Anisotropy Probe(通称WMAP)」と呼ばれる宇宙探査機。ビッグバンの名残である「宇宙マイクロ波背景放射」を精密に観測するために打ち上げられた。 Q:ダークマターの存在がはっきりわかったのは、ビッグバンの観測からなんですね? A:はい。宇宙が始まって138億年と言われていますから、138億光年向こうを頑張って観測すると、「あっ、ビッグバンだ」というふうに今でも見えるはずなんです。「あっちを向いてもビッグバンが見える」し、「こっちを向いてもビッグバンが見える」。そういう状況ですね。ですがビッグバンの写真を見るとほとんどのっぺらぼうで、温度の違いは10万分の1しかありません。 ダークマターが存在しない宇宙を考えたとすると、そんなのっぺらぼうみたいな状態だったら、今あるような銀河の塊はできないので、どうしてなのかという問題があったんです。宇宙に星や銀河、私たちが生まれたことは、ダークマターという未知の物質がないと説明がつかなくなったんです』、「138億光年向こうを頑張って観測すると、「あっ、ビッグバンだ」というふうに今でも見えるはずなんです。「あっちを向いてもビッグバンが見える」し、「こっちを向いてもビッグバンが見える」。そういう状況ですね。ですがビッグバンの写真を見るとほとんどのっぺらぼうで、温度の違いは10万分の1しかありません。 ダークマターが存在しない宇宙を考えたとすると、そんなのっぺらぼうみたいな状態だったら、今あるような銀河の塊はできないので、どうしてなのかという問題があったんです。宇宙に星や銀河、私たちが生まれたことは、ダークマターという未知の物質がないと説明がつかなくなったんです」、「ビッグバン」で「宇宙に星や銀河、私たちが生まれたことは、ダークマターという未知の物質がないと説明がつかなくなったんです」、なるほど。
・『ダークマターを探すのは、“私たちのお母さん”だから・・・! Q:村山さんはなぜダークマターの正体を探し続けているんですか? A:ダークマターっていうのは未知の物質なのでちょっと気持ち悪い感じがするかもしれませんが、実は“私たちのお母さん”なんです。 簡単に例えると初期の宇宙では、大きな質量を持ったダークマターが少しずつ重力で引っ張り合いながら固まってきます。そしてダークマターの塊ができたところに、今度はその重力によって原子でできたガスを引きずり込んできます。さらに、そのガス同士が反応して、ぶつかって熱くなって光を出します。するとそれが冷えて固まり星ができ、銀河ができてきます。その中に私たちができてくるんです。 だから、ダークマターは本当に私たちの“生みのお母さん”なんです。 「私たちはどこから来たんだろう?」それが知りたいです。それに、ダークマターからお母さんが生まれた当時の環境が見えてきます。私は、ダークマターが生まれた時期は、宇宙が始まってから100億分の1秒ぐらいのビッグバンの直後だと思っています。始まったばかりの宇宙の姿も見えてくるという意味で、ダークマターはすごく私たちにたくさんのことを教えてくれると思っています。一度ぜひ会ってみたいですね。 後編『重力波、ヒッグス粒子、ニュートリノ質量、銀河中心の超巨大BHという発見が続々…「素粒子物理の夢」の時代にトップランナーが語る「夢のその先」』では、実際に村山さんがダークマターにどうアプローチを試みたのか? を中心に紹介します。「サイエンスZERO」20周年スペシャル 3月26日(日)夜11:30 NHK Eテレ 』、「ダークマターが生まれた時期は、宇宙が始まってから100億分の1秒ぐらいのビッグバンの直後だと思っています」、なるほど。
次に、3月6日付け現代ビジネスが掲載した「サイエンスZERO」20周年スペシャル・取材班による「重力波、ヒッグス粒子、ニュートリノ質量、銀河中心の超巨大BHという超発見が続々…「素粒子物理の夢の時代」にトップランナーが語る「夢のその先」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/107049?imp=0
・『この宇宙の物質には「目に見える」ものが全体の5%しかないことをご存じでしょうか。「質量は持つ」けれど「観測できない」という宇宙の大部分を占める物質は、「ダークマター(暗黒物質)」と呼ばれています。今、世界中の科学者がこの謎の物質を捉えようと理論や実験を総動員して研究しています。 天文学・物理学・数学といった異分野の専門家たちが集まる世界トップレベルの研究所「カブリ数物連携宇宙機構」の初代機構長を務めた宇宙物理学者の村山斉さんは、ダークマターを「我々人類のお母さん」と呼びました。前編『「暗黒物質ダークマター」は《お母さん》?「だからぜひ会ってみたいですね」と言い切る理論物理学者・村山斉さんが語る「人類すべての母」』でその理由を伺いました。 後編では、今後の展望について伺います』、興味深そうだ。
・『「見えない物質をどう追いかける」か? ―見えないダークマターをどうやって探すのでしょうか? 私の研究のスタイルは、探し方を考える前に、ダークマターは「どういう可能性がある物質なのか」についていろいろな仮説を立てることから始めます。その次に、どうやったら探せるのかを考えます。 例えば、今考えている仮説に「SIMP(シンプ)(※1)」というものがありますが、SIMPはこういう考え方だから多分物質にはこういう力が働くので、こうやったら捕まえられるだろうという提案をします。それを具体的にやってみるために、実験が専門の人と相談しながら、道具や装置、使う物質について詰めていきます。こうして実際に装置を作ってやってみようという段階になる。そして実験データをためて、検証していくことになります。 ※1 SIMP…Strongly Interacting Massive Particleの略で、強い相互作用をする素粒子。村山さんたちの研究グループが2015年に提唱したダークマターの候補物質。 Q:実際に「ダークマターの候補」SIMPを探す計画はあるのでしょうか? A:はい。つくば市の高エネルギー加速器研究機構にあるSuperKEKB(※2)という、全周3kmぐらいの大きさの、電子をぐるぐる回す加速器という装置があるんですが、この装置でSIMPが作れる可能性があるということが分かってきました。 この装置はもともと、ノーベル賞を受賞された小林先生、益川先生が作られた小林益川理論(※3)を超える理論を探したいという目的で作られた実験装置でしたが、それをうまく利用することでダークマターを探せる可能性もあるんです。全く新しい装置を作るのは時間もお金も人手も多くかかって大変なので、すでにある装置をうまく使う、そういうアイデアをたくさん考えるのも研究者の仕事のひとつです。 ※2 SuperKEKB加速器…エネルギーの高い電子と陽電子を衝突させて、衝突後に生成される素粒子を測定する「Belle II(ベル・ツー)実験」に使う実験装置。現在の素粒子物理学の基盤である「標準理論」を超える結果が得られると期待されている。 ※3 小林益川理論…当時京都大学に所属していた小林誠氏と益川敏英氏によって1973年に提唱された理論。宇宙の始まりであるビッグバンでは「物質」と「反物質」が同じ量だけ作られたと考えられているが、現在の宇宙には「物質」のほうがはるかに多く存在している。その理由は、クォークと呼ばれる素粒子が6つあれば説明できるというのが小林益川理論。当時はまだ3つしかクォークは見つかっておらず、6つのクォークを予言したこの理論は驚くべきものだった。その後、実験でこの理論が確かめられたことにより、小林、益川両氏には2008年にノーベル物理学賞が贈られた』、「もともと、ノーベル賞を受賞された小林先生、益川先生が作られた小林益川理論(※3)を超える理論を探したいという目的で作られた実験装置でしたが、それをうまく利用することでダークマターを探せる可能性もあるんです。全く新しい装置を作るのは時間もお金も人手も多くかかって大変なので、すでにある装置をうまく使う、そういうアイデアをたくさん考えるのも研究者の仕事のひとつです」、これが有効活用できれば、望ましい。
・『干し草の山から針一本をふるいにかけるソフトウェア Q:SIMPを探す実験はいつから行うのでしょうか? A:実験自体は、今ある装置でもできるはずですが、解析をするためのソフトウエアがまだできていないんです。どんなにいい装置があっても、膨大なデータの山から欲しいものを引き出すのがすごく大変です。 例えて言えば、「干草の山の中から針1本を引っ張り出す」ようなもの。干し草と針を分けるためには、干草は通り抜けるけど針は引っかかる、というふるいを作らないといけないんです。そのふるいに当たるものが、コンピューターのソフトウエアなんですが、これを作るのはそう簡単なことではありません。 SIMPの実験に使うソフトウエアもそろそろできるとは思いますが、その後、実験装置に組み込んでいくので、実験開始にはもう少し時間がかかると思っています。具体的には、実験観測データが出始めるのは、来年の終わりか再来年くらいになるかと思います。 Q:SIMP以外にもダークマターの候補となる物質はあるんですか? A:10年くらい前まではWIMP(※4)という物質がダークマターの有力候補だったので、みんなそればかり一生懸命探していました。それが最近、ほかの候補も探してみようというアイデアがたくさん出てきたんです。実際に探してみたら、「あった!」ということになるかもしれないですから、今、本当に面白い時期になってきたと思っています。 日本ではSIMPのほかに、「アクシオン」という軽い粒子がダークマターの可能性があると考えて、重力波望遠鏡KAGRA(※5)を使って検出する研究も進めています。 ※4 WIMP…Weakly Interacting Massive Particleと呼ばれるダークマターの有力候補物質。重力相互作用と弱い相互作用のみ働くものと考えられている。 ※5 重力波望遠鏡KAGRA…岐阜県飛騨市神岡町にある重力波を検出するための望遠鏡。重力波の初検出は、アメリカのLIGOが2016年に初めて成功したが、そのLIGOとイタリアのVirgoとKAGRAの3つで国際重力波ネットワークをつくり、重力波がどの天体から来たのか、その源を探る研究が進んでいる』、「10年くらい前まではWIMP(※4)という物質がダークマターの有力候補だったので、みんなそればかり一生懸命探していました。それが最近、ほかの候補も探してみようというアイデアがたくさん出てきたんです。実際に探してみたら、「あった!」ということになるかもしれないですから、今、本当に面白い時期になってきたと思っています」、なるほど。
・『素粒子物理学にとって夢のような20年間の成果 Q:いろいろ手を尽くした結果、ダークマターの正体がわからないということもあるのでしょうか? A:理論的にはありえます。そうなると、とても悲しいですね。でも、科学者というのはなんとかして分かりたいと思って、あちこちに手を出す、そういう人たちなんです。もしかしたら永遠に分からないかもしれないと思っていても、手を出した瞬間に捕まえちゃう可能性もあるので、だったらやってみた方が得じゃないかと、そういう発想をするんです。そうやっていくうちに、科学が進歩していくのではないかとも思っています。 Q:この20年の科学の進歩はどう見ていますか? A:素粒子や宇宙の研究にとってはものすごく華々しい20年間でした。重力波(※6)も見つかりましたし、ヒッグス粒子(※7)も見つかりました。それからニュートリノに重さがあるという研究(※8)や、宇宙の歴史をちゃんと理解したという理論にノーベル賞(※9)が出たのもこの20年間でした。それから銀河系の中心に太陽の400万倍もあるブラックホールも発見されました(※10)。本当に今、技術の進歩やコンピューターの進歩のおかげで科学がググって伸びているのを感じられて、この時代に生きていてよかったなと思います。 ※6 重力波…アインシュタインが一般相対性理論で予言していた現象。2016年にアメリカのLIGOが初検出に成功。その功績により、レイナー・ワイス氏、バリー・バリッシュ氏、キップ・ソーン氏が2017年にノーベル物理学を受賞した。 ※7 ヒッグス粒子…宇宙が誕生して間もないころに、他の素粒子に質量を与えたとされる粒子。1964年にイギリスの物理学者ピーター・ヒッグス氏が提唱した理論に登場。CERN(欧州合同原子核研究機関)で行われた実験によって2012年に実際に確認され、2013年にはピーター・ヒッグス氏とフランソワ・アングレール氏が「素粒子の質量の起源に関する機構の理論的発見」をしたことにより、ノーベル賞を受賞した。 ※8 ニュートリノ研究にノーベル賞…2015年のノーベル物理学賞が「ニュートリノ振動の発見により、ニュートリノに質量があることを示したこと」で梶田隆章氏とアーサー・マクドナルド氏に贈られた。 ※9 宇宙の歴史を理解した理論にノーベル賞…2019年にノーベル賞を受賞したジェームズ・ピーブルズ氏は、宇宙の始まりである「ビッグバン」が起きた直後から現在までの宇宙の進化の様子を理論的に研究するうえで大きな貢献をしたことなどが評価された。 ※10 銀河中心に太陽の400万倍のブラックホール発見…2022年、国立天文台など80機関が参加する国際研究チーム「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)・コラボレーション」が、天の川銀河の中心にある巨大ブラックホールの撮影に初めて成功した』、「素粒子や宇宙の研究にとってはものすごく華々しい20年間でした。重力波(※6)も見つかりましたし、ヒッグス粒子(※7)も見つかりました。それからニュートリノに重さがあるという研究(※8)や、宇宙の歴史をちゃんと理解したという理論にノーベル賞(※9)が出たのもこの20年間でした。それから銀河系の中心に太陽の400万倍もあるブラックホールも発見されました(※10)。本当に今、技術の進歩やコンピューターの進歩のおかげで科学がググって伸びているのを感じられて、この時代に生きていてよかったなと思います」、進歩を実感できるのは幸せだ。
・『自分の最初は何か、どこから来たのかという疑問 Q:村山さんが科学に興味を持ったのはいつでしょうか。 A:私たちはどこから来て、なぜ存在しているのだろうということを、たぶんみんな小さい頃に考えると思うんですよ。特に田舎に旅行に行って、夏の夜空をボーっと見て星がいっぱいあるのを見たとき、自分って何だろうなと思ったりすると思うんですよね。 そういうことを考えていると、自分たちの体を作っている原子は、実は星の爆発で散りばめられた塵(ちり)なんだ、自分は星から来たんだなということが分かるんですね。じゃあ星はどこからできたんだろうかと考えると、ダークマターがないと星ができないことを知り、じゃあダークマターはどうやって星を作ったのだろう、そうやってどんどんさかのぼっていくと、宇宙の始まりに行き着いちゃうんですよね。だから本当に最初は自って何だろう。どこから来たんだろうなっていう素朴な疑問から始まったんだと思います。 Q:その疑問を持ち続けて、今があるんでしょうか。 A:高校時代は、中学時代にロックを聴くようになった影響でバンドをやったり、体を鍛えようとラグビー部に入ったりして、あまり勉強をしていませんでした。最初の模擬試験の成績は、物理の点数が40点でしたから、これではいけないと思って、高校3年になってから突貫工事で勉強をした感じです。 大学にはミクロな素粒子を勉強しようと思って入ったのですが、大学院が終わった頃に転機が来ました。小さい素粒子の世界と大きな宇宙が結びつく大発見があったんです。その発見をしたのは、アメリカのバークレーの同僚のジョージ・スムートさん(※11)たちで、はるか遠くの宇宙を見ることでビッグバン直後の小さかったときの宇宙が見えてきました。 大きいものと小さいものが結びついているということが、私の頭の中で初めてつながった瞬間でした。子どもの頃から漠然と思っていた疑問と、今までやってきた研究がひとつになり、「あっ、これは面白い!」とますます研究にのめり込んでいきました。 ※11 ジョージ・スムート氏…カリフォルニア大学バークレー校物理学教授。1989年にNASA(米航空宇宙局)が打ち上げた人工衛星COBEによる観測で主導的な役割を果たし、ビッグバンの名残の熱のゆらぎである宇宙マイクロ波背景放射を初めて観測。その功績により、2006年にジョン・マザー氏とともにノーベル物理学賞を受賞。 Q:今後、この分野の研究はどのように進んでいくのでしょうか? A:実験観測の技術とそれを解析するコンピューター、理論的な予言をするためのシミュレーションが、今、三つ巴でどんどん進歩していますから、やるべきことがはっきりして、あとはやるばかりになってきています。ただ、必要な実験装置の規模も大きくなってきているので1人ではできません。もしかしたら100人でもできないかもしれない。でも、世界中から研究者を集めて、1000人だったらできるかもしれない。そういうふうに、もっといい装置、いい観測、いい実験をしようという動きが大きくなってきているので、これからいろいろな進歩が出てくるのを期待しています。 「サイエンスZERO」20周年スペシャル 3月26日(日)夜11:30 NHK Eテレ 』、「もっといい装置、いい観測、いい実験をしようという動きが大きくなってきているので、これからいろいろな進歩が出てくるのを期待しています」、幸せな科学者人生だ。
第三に、昨年12月8日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの池上 彰氏と増田ユリヤ氏による「闇市で得た1000ドルをテディベアに隠して出国…「ワクチンでノーベル賞」カリコ氏の壮絶人生」を紹介しよう。
・『12月10日にノーベル賞授賞式が開催される。ジャーナリストの池上彰氏は「今年の注目はなんといっても、生理学・医学賞を受賞した研究者、カタリン・カリコさん」という。以前からカリコ氏を取材してきた増田ユリヤ氏がカリコ氏の素顔を明かした』、興味深そうだ。
・『10年かかるワクチン開発を半年で実用化 池上 今年も12月10日にノーベル賞授賞式が開催されます。今年の注目はなんといっても、生理学・医学賞を受賞した研究者、カタリン・カリコさんです。メッセンジャーRNA(mRNA)を使った新しい手法で、新型コロナワクチンの開発に貢献しました。 増田 通常であればワクチンの開発には10年かかるところを、半年で実用化にこぎ着けられたのは、カリコさんの40年にもわたるmRNAの研究成果あってこそ、とその功績が評価されました。 mRNAは、体の設計図であるDNAの情報をコピーして細胞内に届ける役割を担っていて、こうして届けられた設計図のコピーを基にタンパク質が作られます。コロナウイルスの表面の突起もタンパク質でできているため、その情報を人工的にコピーして作ったのがmRNAワクチンです。 アイデア自体は以前からあったのですが、mRNAが体内に入る場合に起きる炎症反応を抑えることができず、専門家の間では「実用化は無理だろう」とみられていました。 池上 挫折し、諦めた研究者も少なくなかったとか』、「通常であればワクチンの開発には10年かかるところを、半年で実用化にこぎ着けられたのは、カリコさんの40年にもわたるmRNAの研究成果あってこそ」、「mRNA」の効用は素晴らしい。
・『降格処分や研究資金の打ち切り 増田 カリコさんは「mRNAが多くの命を救う医学に貢献できるはずだ」と信じて諦めず、研究資金を打ち切られたり、大学で降格処分を受けたりする困難に立ち向かいながら粘り強く研究を続けてきました。実用化につながる論文を共同研究者のドリュー・ワイスマン教授と発表したのが、2005年。 その後、カリコさんは独ビオンテックに移籍し、ジカ熱ワクチンやインフルエンザワクチンの開発に携わっていたので、コロナワクチンも半年で実用化できた。大学で研究した蓄積と、製薬会社での実用化の経験が奏功したのです。 池上 ビオンテックはドイツのトルコ系移民が設立した会社で、カリコさんのようにハンガリーから米国に渡って研究を続けてきたような優秀な人たちを受け入れています。 増田 カリコさんはビオンテックに移籍して、ハンガリー時代に一緒に研究していた人たちと再会しています。信念を持った優秀な人たちを集め、研究部門以外のスタッフも研究者でそろえています。 池上 増田さんはカリコさんに以前から取材されていますね。) ▽米ソ冷戦期にソ連圏からの渡米(増田 コロナ禍当初に出演したあるテレビ番組でカリコさんを2~3分で紹介するコーナーがあったのですが、そのときに「どうしてもカリコさんにお話を聞きたい!」と思い立ち、取材しました。そして21年10月に『世界を救うmRNAワクチンの開発者 カタリン・カリコ』を上梓しました。 カリコさんの研究に対する信念は本当に強いのですが、偉ぶることもなく、堂々と自分の考えていることを言葉にされる方です。ロックミュージックが大好きで、「研究はロックと一緒」とも言っていました。 カリコさんは1955年、ハンガリーで生まれ、子供の頃から自然や科学に興味を持ち、23歳のときに大学院へ進み、RNAの研究を始めます。30歳のときに所属していた研究機関で研究資金を打ち切られたことで米国へ渡ることを決意しますが、85年当時のハンガリーはソ連の支配下にあり、米国への移住はそう簡単にはいきませんでした。 池上 まだ米ソ冷戦期ですから、ソ連圏からの渡米となれば、亡命する人も多かった時代です』、「カリコさんは「mRNAが多くの命を救う医学に貢献できるはずだ」と信じて諦めず、研究資金を打ち切られたり、大学で降格処分を受けたりする困難に立ち向かいながら粘り強く研究を続けてきました」、そこまでの困難を乗り越えたとは初めて知った。
・『一家の生活を繋いだテディベア 増田 研究仲間の中にも亡命という手段を取った人がいましたが、カリコさんは家族と会うためにハンガリーとの間を行き来できる状態にしたいと考え、八方手を尽くし、米テンプル大学のポストドクターの座を得て、正規に出国許可を得ることができたそうです。 しかし当時のハンガリーでは、100ドルを超える外貨の持ち出しが禁止されていました。当時の日本円でわずか2万円程度。これだけ持って米国に渡っても、最初の給料が出るまでは住む所もありません。そこでカリコさんは闇市で自家用車を売って外貨に換え、娘が大事に持っていたテディベアに現金1000ドルを忍ばせて出国したんです。そのテディベアも取材時に見せてもらいましたが、まだ大事に娘さんの部屋に飾ってありました。 池上 一家の生活をつないだ縫いぐるみですから、家宝ものですね』、「米テンプル大学のポストドクターの座を得て、正規に出国許可を得ることができたそうです。 しかし当時のハンガリーでは、100ドルを超える外貨の持ち出しが禁止されていました。当時の日本円でわずか2万円程度。これだけ持って米国に渡っても、最初の給料が出るまでは住む所もありません。そこでカリコさんは闇市で自家用車を売って外貨に換え、娘が大事に持っていたテディベアに現金1000ドルを忍ばせて出国したんです」、「テディベアに現金1000ドルを忍ばせて出国」とは当時は必死だったのだろう。
・『受賞した賞金は大学や研究機関に寄付 増田 その後も研究が評価されず、研究資金の打ち切りや降格など、さまざまな苦労をされるのですが、ワクチン開発で一躍脚光を浴び、ノーベル賞受賞前にも各国のさまざまな賞を受賞しています。しかしぜいたくには全く関心がなく、こうした賞を受賞した際に得た賞金は、母国ハンガリーの大学をはじめ、研究機関に寄付したそうです。 カリコさんは85年に米国へ移住した際に住み始めた家に、今も住んでいます。家具は夫のベーラ・フランシアさんの手作り。古い物を大事にする、質素な暮らしぶりがうかがえますよね。ノーベル賞受賞が決まって、ようやく新車を買ったとか。その話をした際に、カリコさんが「夫も新しくしていないでしょう?」と冗談を言ったのが印象的でした。 池上 エンジニアだったフランシアさんはほとんど表に出てきませんが、カリコさんの研究を熱心に支えたんですよね。ノーベル賞受賞時に取材を受けたカリコさんのコメントも象徴的でした』、夫である「エンジニアだったフランシアさんはほとんど表に出てきませんが、カリコさんの研究を熱心に支えたんですよね」、なるほど。
・『妻と娘の世界的活躍を支える「内助の功」も世界レベル 増田 「いい研究をするためには、研究に協力してくれるいい夫を見つけることが必要だ」と(笑)。フランシアさんは早朝5時にカリコさんを研究室へ送り、その後に娘を学校へ送る。夕方に娘さんとカリコさんをピックアップして、自分は夜中に働くという生活を続けてこられたそうです。 実は2歳のときにテディベアを抱えて国境を渡った長女のスーザンさんも、オリンピックの金メダリストなんですよ。米国代表のボート競技選手として、08年の北京、12年のロンドンと2大会連続で出場。両大会で金メダルを獲得しています。 池上 妻と娘の世界的活躍を支えるフランシアさんの「内助の功」も世界レベルですね。 さて、ノーベル賞受賞者と言えば「蛙跳び」です。受賞者は授賞式で講演を行った後、ストックホルムの大学生有志による懇親会に参加するのですが、そこで学生と一緒に受賞者が蛙跳びを披露するという伝統があるのです。19年にノーベル化学賞を受賞した吉野彰さんは高齢を理由に深夜の懇親会を辞退されたそうですが。 増田 長く研究を続け、厳しい境遇に耐える精神力と体力を持っているカリコさんなら楽々こなせそうです』、「フランシアさんは早朝5時にカリコさんを研究室へ送り、その後に娘を学校へ送る。夕方に娘さんとカリコさんをピックアップして、自分は夜中に働くという生活を続けてこられたそうです・・・長女のスーザンさんも、オリンピックの金メダリスト・・・妻と娘の世界的活躍を支えるフランシアさんの「内助の功」も世界レベルですね」、「フランシアさんの「内助の功」もまさに世界レベル」、その通りだ。
ノーベル賞受賞については、2019年11月23日に取上げた。久しぶりの今日は、(その8)(「暗黒物質ダークマター」は《お母さん》?「だからぜひ会ってみたいですね」と言い切る理論物理学者・村山斉さんが語る「人類すべての母」、重力波 ヒッグス粒子 ニュートリノ質量 銀河中心の超巨大BHという
先ずは、昨年3月6日付け現代ビジネスが掲載した「サイエンスZERO」20周年スペシャル・取材班による「「暗黒物質ダークマター」は《お母さん》?「だからぜひ会ってみたいですね」と言い切る理論物理学者・村山斉さんが語る「人類すべての母」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/107046?imp=0
・『この宇宙を形づくっているものの中で、「目に見える」物質は全体の5%にすぎないというのをご存じでしょうか。宇宙の物質の大部分は正体不明の物質「ダークマター(暗黒物質)」が占めていると考えないと、宇宙での私たちの存在に説明がつかないことが分かってきたのです。 「質量は持つ」けれど「観測できない」という物質、ということです。それは仮説上の物質で「ダークマター」と名付けられ、いまだに実在が確かめられていません。そこで今、世界中の科学者がこの謎の物質を捉えようと理論や実験を総動員して研究しています。中でも、天文学・物理学・数学といった異分野の専門家たちがこのダークマターに迫ろうとする世界トップレベルの研究所が「カブリ数物連携宇宙機構」です。 その初代機構長を務めた理論物理学者の村山斉さんは、ダークマターが実験で捉えられる可能性が見えてきて、今、研究はかつてないほど“面白い時期”を迎えていると言います。「私たちの“生みのお母さん”である『ダークマター』に会いたい」と語る村山さんに、ダークマター研究の20年、そして今後の展望について伺いました(Qは聞き手の質問、Aは村山氏の回答)』、興味深そうだ。
・ダークマターはたった20年前に存在が判明した Q:そもそも、ダークマターとはどんなものか、教えてください。 A:ダークマターは、「暗黒物質」とも呼ばれるもので、素粒子という小さな「粒(つぶ)」みたいな物質、またそれが少し集まったものだと考えています。1930年代に、はるか遠くの銀河団を観測した天文学者がいて、その銀河が「激しいスピードでビュンビュン動いている」ということを発見しました。 その銀河が特異に見えたのは、「激しいスピードで動いている」にもかかわらず、そのまま飛び出していってバラバラになってしまわないことでした。そこでその天文学者は、「何か重力を持つ物質がないと、こんなに速く動いている銀河同士をつなぎ留めておくことはできないはず。こんなに速く動いているということは見えない『ダークマター』があるのではないか」と考えたのです。 ところが、当時は単に望遠鏡では見えない星や、ガスの塊があるからではないかというのが常識でした。20年ほど前になってようやく、今まで全く知られていない新しい物質だということが判明したのです』、「ダークマターは、「暗黒物質」とも呼ばれるもので、素粒子という小さな「粒(つぶ)」みたいな物質、またそれが少し集まったものだと考えています」、なるほど。
・『どうしてどの方向にもビッグバンが観測されないのか? Q:20年前に何があったんでしょうか? A:20年前にビッグバンの名残(残照)を直接観測するための人工衛星WMAP(※1)が上がって、解像度の高い、宇宙誕生初期の写真が撮れるようになりました。その写真には情報がたくさん詰まっていて、宇宙全体の物質のうちダークマターが約8割を占めているというこの宇宙の詳細が明らかになったのです。 そこで初めて、ダークマターと普通の物質は明らかに違うものだということがはっきりしてきました。それまでは、ブラックホールやニュートリノなど、すでに知られているものがダークマターの正体ではないかと考えられていたので、本当に衝撃を受けました。 ※1 ビッグバンを直接観測する人工衛星…2001年にNASA(米航空宇宙局)が打ち上げた「Wilkinson Microwave Anisotropy Probe(通称WMAP)」と呼ばれる宇宙探査機。ビッグバンの名残である「宇宙マイクロ波背景放射」を精密に観測するために打ち上げられた。 Q:ダークマターの存在がはっきりわかったのは、ビッグバンの観測からなんですね? A:はい。宇宙が始まって138億年と言われていますから、138億光年向こうを頑張って観測すると、「あっ、ビッグバンだ」というふうに今でも見えるはずなんです。「あっちを向いてもビッグバンが見える」し、「こっちを向いてもビッグバンが見える」。そういう状況ですね。ですがビッグバンの写真を見るとほとんどのっぺらぼうで、温度の違いは10万分の1しかありません。 ダークマターが存在しない宇宙を考えたとすると、そんなのっぺらぼうみたいな状態だったら、今あるような銀河の塊はできないので、どうしてなのかという問題があったんです。宇宙に星や銀河、私たちが生まれたことは、ダークマターという未知の物質がないと説明がつかなくなったんです』、「138億光年向こうを頑張って観測すると、「あっ、ビッグバンだ」というふうに今でも見えるはずなんです。「あっちを向いてもビッグバンが見える」し、「こっちを向いてもビッグバンが見える」。そういう状況ですね。ですがビッグバンの写真を見るとほとんどのっぺらぼうで、温度の違いは10万分の1しかありません。 ダークマターが存在しない宇宙を考えたとすると、そんなのっぺらぼうみたいな状態だったら、今あるような銀河の塊はできないので、どうしてなのかという問題があったんです。宇宙に星や銀河、私たちが生まれたことは、ダークマターという未知の物質がないと説明がつかなくなったんです」、「ビッグバン」で「宇宙に星や銀河、私たちが生まれたことは、ダークマターという未知の物質がないと説明がつかなくなったんです」、なるほど。
・『ダークマターを探すのは、“私たちのお母さん”だから・・・! Q:村山さんはなぜダークマターの正体を探し続けているんですか? A:ダークマターっていうのは未知の物質なのでちょっと気持ち悪い感じがするかもしれませんが、実は“私たちのお母さん”なんです。 簡単に例えると初期の宇宙では、大きな質量を持ったダークマターが少しずつ重力で引っ張り合いながら固まってきます。そしてダークマターの塊ができたところに、今度はその重力によって原子でできたガスを引きずり込んできます。さらに、そのガス同士が反応して、ぶつかって熱くなって光を出します。するとそれが冷えて固まり星ができ、銀河ができてきます。その中に私たちができてくるんです。 だから、ダークマターは本当に私たちの“生みのお母さん”なんです。 「私たちはどこから来たんだろう?」それが知りたいです。それに、ダークマターからお母さんが生まれた当時の環境が見えてきます。私は、ダークマターが生まれた時期は、宇宙が始まってから100億分の1秒ぐらいのビッグバンの直後だと思っています。始まったばかりの宇宙の姿も見えてくるという意味で、ダークマターはすごく私たちにたくさんのことを教えてくれると思っています。一度ぜひ会ってみたいですね。 後編『重力波、ヒッグス粒子、ニュートリノ質量、銀河中心の超巨大BHという発見が続々…「素粒子物理の夢」の時代にトップランナーが語る「夢のその先」』では、実際に村山さんがダークマターにどうアプローチを試みたのか? を中心に紹介します。「サイエンスZERO」20周年スペシャル 3月26日(日)夜11:30 NHK Eテレ 』、「ダークマターが生まれた時期は、宇宙が始まってから100億分の1秒ぐらいのビッグバンの直後だと思っています」、なるほど。
次に、3月6日付け現代ビジネスが掲載した「サイエンスZERO」20周年スペシャル・取材班による「重力波、ヒッグス粒子、ニュートリノ質量、銀河中心の超巨大BHという超発見が続々…「素粒子物理の夢の時代」にトップランナーが語る「夢のその先」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/107049?imp=0
・『この宇宙の物質には「目に見える」ものが全体の5%しかないことをご存じでしょうか。「質量は持つ」けれど「観測できない」という宇宙の大部分を占める物質は、「ダークマター(暗黒物質)」と呼ばれています。今、世界中の科学者がこの謎の物質を捉えようと理論や実験を総動員して研究しています。 天文学・物理学・数学といった異分野の専門家たちが集まる世界トップレベルの研究所「カブリ数物連携宇宙機構」の初代機構長を務めた宇宙物理学者の村山斉さんは、ダークマターを「我々人類のお母さん」と呼びました。前編『「暗黒物質ダークマター」は《お母さん》?「だからぜひ会ってみたいですね」と言い切る理論物理学者・村山斉さんが語る「人類すべての母」』でその理由を伺いました。 後編では、今後の展望について伺います』、興味深そうだ。
・『「見えない物質をどう追いかける」か? ―見えないダークマターをどうやって探すのでしょうか? 私の研究のスタイルは、探し方を考える前に、ダークマターは「どういう可能性がある物質なのか」についていろいろな仮説を立てることから始めます。その次に、どうやったら探せるのかを考えます。 例えば、今考えている仮説に「SIMP(シンプ)(※1)」というものがありますが、SIMPはこういう考え方だから多分物質にはこういう力が働くので、こうやったら捕まえられるだろうという提案をします。それを具体的にやってみるために、実験が専門の人と相談しながら、道具や装置、使う物質について詰めていきます。こうして実際に装置を作ってやってみようという段階になる。そして実験データをためて、検証していくことになります。 ※1 SIMP…Strongly Interacting Massive Particleの略で、強い相互作用をする素粒子。村山さんたちの研究グループが2015年に提唱したダークマターの候補物質。 Q:実際に「ダークマターの候補」SIMPを探す計画はあるのでしょうか? A:はい。つくば市の高エネルギー加速器研究機構にあるSuperKEKB(※2)という、全周3kmぐらいの大きさの、電子をぐるぐる回す加速器という装置があるんですが、この装置でSIMPが作れる可能性があるということが分かってきました。 この装置はもともと、ノーベル賞を受賞された小林先生、益川先生が作られた小林益川理論(※3)を超える理論を探したいという目的で作られた実験装置でしたが、それをうまく利用することでダークマターを探せる可能性もあるんです。全く新しい装置を作るのは時間もお金も人手も多くかかって大変なので、すでにある装置をうまく使う、そういうアイデアをたくさん考えるのも研究者の仕事のひとつです。 ※2 SuperKEKB加速器…エネルギーの高い電子と陽電子を衝突させて、衝突後に生成される素粒子を測定する「Belle II(ベル・ツー)実験」に使う実験装置。現在の素粒子物理学の基盤である「標準理論」を超える結果が得られると期待されている。 ※3 小林益川理論…当時京都大学に所属していた小林誠氏と益川敏英氏によって1973年に提唱された理論。宇宙の始まりであるビッグバンでは「物質」と「反物質」が同じ量だけ作られたと考えられているが、現在の宇宙には「物質」のほうがはるかに多く存在している。その理由は、クォークと呼ばれる素粒子が6つあれば説明できるというのが小林益川理論。当時はまだ3つしかクォークは見つかっておらず、6つのクォークを予言したこの理論は驚くべきものだった。その後、実験でこの理論が確かめられたことにより、小林、益川両氏には2008年にノーベル物理学賞が贈られた』、「もともと、ノーベル賞を受賞された小林先生、益川先生が作られた小林益川理論(※3)を超える理論を探したいという目的で作られた実験装置でしたが、それをうまく利用することでダークマターを探せる可能性もあるんです。全く新しい装置を作るのは時間もお金も人手も多くかかって大変なので、すでにある装置をうまく使う、そういうアイデアをたくさん考えるのも研究者の仕事のひとつです」、これが有効活用できれば、望ましい。
・『干し草の山から針一本をふるいにかけるソフトウェア Q:SIMPを探す実験はいつから行うのでしょうか? A:実験自体は、今ある装置でもできるはずですが、解析をするためのソフトウエアがまだできていないんです。どんなにいい装置があっても、膨大なデータの山から欲しいものを引き出すのがすごく大変です。 例えて言えば、「干草の山の中から針1本を引っ張り出す」ようなもの。干し草と針を分けるためには、干草は通り抜けるけど針は引っかかる、というふるいを作らないといけないんです。そのふるいに当たるものが、コンピューターのソフトウエアなんですが、これを作るのはそう簡単なことではありません。 SIMPの実験に使うソフトウエアもそろそろできるとは思いますが、その後、実験装置に組み込んでいくので、実験開始にはもう少し時間がかかると思っています。具体的には、実験観測データが出始めるのは、来年の終わりか再来年くらいになるかと思います。 Q:SIMP以外にもダークマターの候補となる物質はあるんですか? A:10年くらい前まではWIMP(※4)という物質がダークマターの有力候補だったので、みんなそればかり一生懸命探していました。それが最近、ほかの候補も探してみようというアイデアがたくさん出てきたんです。実際に探してみたら、「あった!」ということになるかもしれないですから、今、本当に面白い時期になってきたと思っています。 日本ではSIMPのほかに、「アクシオン」という軽い粒子がダークマターの可能性があると考えて、重力波望遠鏡KAGRA(※5)を使って検出する研究も進めています。 ※4 WIMP…Weakly Interacting Massive Particleと呼ばれるダークマターの有力候補物質。重力相互作用と弱い相互作用のみ働くものと考えられている。 ※5 重力波望遠鏡KAGRA…岐阜県飛騨市神岡町にある重力波を検出するための望遠鏡。重力波の初検出は、アメリカのLIGOが2016年に初めて成功したが、そのLIGOとイタリアのVirgoとKAGRAの3つで国際重力波ネットワークをつくり、重力波がどの天体から来たのか、その源を探る研究が進んでいる』、「10年くらい前まではWIMP(※4)という物質がダークマターの有力候補だったので、みんなそればかり一生懸命探していました。それが最近、ほかの候補も探してみようというアイデアがたくさん出てきたんです。実際に探してみたら、「あった!」ということになるかもしれないですから、今、本当に面白い時期になってきたと思っています」、なるほど。
・『素粒子物理学にとって夢のような20年間の成果 Q:いろいろ手を尽くした結果、ダークマターの正体がわからないということもあるのでしょうか? A:理論的にはありえます。そうなると、とても悲しいですね。でも、科学者というのはなんとかして分かりたいと思って、あちこちに手を出す、そういう人たちなんです。もしかしたら永遠に分からないかもしれないと思っていても、手を出した瞬間に捕まえちゃう可能性もあるので、だったらやってみた方が得じゃないかと、そういう発想をするんです。そうやっていくうちに、科学が進歩していくのではないかとも思っています。 Q:この20年の科学の進歩はどう見ていますか? A:素粒子や宇宙の研究にとってはものすごく華々しい20年間でした。重力波(※6)も見つかりましたし、ヒッグス粒子(※7)も見つかりました。それからニュートリノに重さがあるという研究(※8)や、宇宙の歴史をちゃんと理解したという理論にノーベル賞(※9)が出たのもこの20年間でした。それから銀河系の中心に太陽の400万倍もあるブラックホールも発見されました(※10)。本当に今、技術の進歩やコンピューターの進歩のおかげで科学がググって伸びているのを感じられて、この時代に生きていてよかったなと思います。 ※6 重力波…アインシュタインが一般相対性理論で予言していた現象。2016年にアメリカのLIGOが初検出に成功。その功績により、レイナー・ワイス氏、バリー・バリッシュ氏、キップ・ソーン氏が2017年にノーベル物理学を受賞した。 ※7 ヒッグス粒子…宇宙が誕生して間もないころに、他の素粒子に質量を与えたとされる粒子。1964年にイギリスの物理学者ピーター・ヒッグス氏が提唱した理論に登場。CERN(欧州合同原子核研究機関)で行われた実験によって2012年に実際に確認され、2013年にはピーター・ヒッグス氏とフランソワ・アングレール氏が「素粒子の質量の起源に関する機構の理論的発見」をしたことにより、ノーベル賞を受賞した。 ※8 ニュートリノ研究にノーベル賞…2015年のノーベル物理学賞が「ニュートリノ振動の発見により、ニュートリノに質量があることを示したこと」で梶田隆章氏とアーサー・マクドナルド氏に贈られた。 ※9 宇宙の歴史を理解した理論にノーベル賞…2019年にノーベル賞を受賞したジェームズ・ピーブルズ氏は、宇宙の始まりである「ビッグバン」が起きた直後から現在までの宇宙の進化の様子を理論的に研究するうえで大きな貢献をしたことなどが評価された。 ※10 銀河中心に太陽の400万倍のブラックホール発見…2022年、国立天文台など80機関が参加する国際研究チーム「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)・コラボレーション」が、天の川銀河の中心にある巨大ブラックホールの撮影に初めて成功した』、「素粒子や宇宙の研究にとってはものすごく華々しい20年間でした。重力波(※6)も見つかりましたし、ヒッグス粒子(※7)も見つかりました。それからニュートリノに重さがあるという研究(※8)や、宇宙の歴史をちゃんと理解したという理論にノーベル賞(※9)が出たのもこの20年間でした。それから銀河系の中心に太陽の400万倍もあるブラックホールも発見されました(※10)。本当に今、技術の進歩やコンピューターの進歩のおかげで科学がググって伸びているのを感じられて、この時代に生きていてよかったなと思います」、進歩を実感できるのは幸せだ。
・『自分の最初は何か、どこから来たのかという疑問 Q:村山さんが科学に興味を持ったのはいつでしょうか。 A:私たちはどこから来て、なぜ存在しているのだろうということを、たぶんみんな小さい頃に考えると思うんですよ。特に田舎に旅行に行って、夏の夜空をボーっと見て星がいっぱいあるのを見たとき、自分って何だろうなと思ったりすると思うんですよね。 そういうことを考えていると、自分たちの体を作っている原子は、実は星の爆発で散りばめられた塵(ちり)なんだ、自分は星から来たんだなということが分かるんですね。じゃあ星はどこからできたんだろうかと考えると、ダークマターがないと星ができないことを知り、じゃあダークマターはどうやって星を作ったのだろう、そうやってどんどんさかのぼっていくと、宇宙の始まりに行き着いちゃうんですよね。だから本当に最初は自って何だろう。どこから来たんだろうなっていう素朴な疑問から始まったんだと思います。 Q:その疑問を持ち続けて、今があるんでしょうか。 A:高校時代は、中学時代にロックを聴くようになった影響でバンドをやったり、体を鍛えようとラグビー部に入ったりして、あまり勉強をしていませんでした。最初の模擬試験の成績は、物理の点数が40点でしたから、これではいけないと思って、高校3年になってから突貫工事で勉強をした感じです。 大学にはミクロな素粒子を勉強しようと思って入ったのですが、大学院が終わった頃に転機が来ました。小さい素粒子の世界と大きな宇宙が結びつく大発見があったんです。その発見をしたのは、アメリカのバークレーの同僚のジョージ・スムートさん(※11)たちで、はるか遠くの宇宙を見ることでビッグバン直後の小さかったときの宇宙が見えてきました。 大きいものと小さいものが結びついているということが、私の頭の中で初めてつながった瞬間でした。子どもの頃から漠然と思っていた疑問と、今までやってきた研究がひとつになり、「あっ、これは面白い!」とますます研究にのめり込んでいきました。 ※11 ジョージ・スムート氏…カリフォルニア大学バークレー校物理学教授。1989年にNASA(米航空宇宙局)が打ち上げた人工衛星COBEによる観測で主導的な役割を果たし、ビッグバンの名残の熱のゆらぎである宇宙マイクロ波背景放射を初めて観測。その功績により、2006年にジョン・マザー氏とともにノーベル物理学賞を受賞。 Q:今後、この分野の研究はどのように進んでいくのでしょうか? A:実験観測の技術とそれを解析するコンピューター、理論的な予言をするためのシミュレーションが、今、三つ巴でどんどん進歩していますから、やるべきことがはっきりして、あとはやるばかりになってきています。ただ、必要な実験装置の規模も大きくなってきているので1人ではできません。もしかしたら100人でもできないかもしれない。でも、世界中から研究者を集めて、1000人だったらできるかもしれない。そういうふうに、もっといい装置、いい観測、いい実験をしようという動きが大きくなってきているので、これからいろいろな進歩が出てくるのを期待しています。 「サイエンスZERO」20周年スペシャル 3月26日(日)夜11:30 NHK Eテレ 』、「もっといい装置、いい観測、いい実験をしようという動きが大きくなってきているので、これからいろいろな進歩が出てくるのを期待しています」、幸せな科学者人生だ。
第三に、昨年12月8日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの池上 彰氏と増田ユリヤ氏による「闇市で得た1000ドルをテディベアに隠して出国…「ワクチンでノーベル賞」カリコ氏の壮絶人生」を紹介しよう。
・『12月10日にノーベル賞授賞式が開催される。ジャーナリストの池上彰氏は「今年の注目はなんといっても、生理学・医学賞を受賞した研究者、カタリン・カリコさん」という。以前からカリコ氏を取材してきた増田ユリヤ氏がカリコ氏の素顔を明かした』、興味深そうだ。
・『10年かかるワクチン開発を半年で実用化 池上 今年も12月10日にノーベル賞授賞式が開催されます。今年の注目はなんといっても、生理学・医学賞を受賞した研究者、カタリン・カリコさんです。メッセンジャーRNA(mRNA)を使った新しい手法で、新型コロナワクチンの開発に貢献しました。 増田 通常であればワクチンの開発には10年かかるところを、半年で実用化にこぎ着けられたのは、カリコさんの40年にもわたるmRNAの研究成果あってこそ、とその功績が評価されました。 mRNAは、体の設計図であるDNAの情報をコピーして細胞内に届ける役割を担っていて、こうして届けられた設計図のコピーを基にタンパク質が作られます。コロナウイルスの表面の突起もタンパク質でできているため、その情報を人工的にコピーして作ったのがmRNAワクチンです。 アイデア自体は以前からあったのですが、mRNAが体内に入る場合に起きる炎症反応を抑えることができず、専門家の間では「実用化は無理だろう」とみられていました。 池上 挫折し、諦めた研究者も少なくなかったとか』、「通常であればワクチンの開発には10年かかるところを、半年で実用化にこぎ着けられたのは、カリコさんの40年にもわたるmRNAの研究成果あってこそ」、「mRNA」の効用は素晴らしい。
・『降格処分や研究資金の打ち切り 増田 カリコさんは「mRNAが多くの命を救う医学に貢献できるはずだ」と信じて諦めず、研究資金を打ち切られたり、大学で降格処分を受けたりする困難に立ち向かいながら粘り強く研究を続けてきました。実用化につながる論文を共同研究者のドリュー・ワイスマン教授と発表したのが、2005年。 その後、カリコさんは独ビオンテックに移籍し、ジカ熱ワクチンやインフルエンザワクチンの開発に携わっていたので、コロナワクチンも半年で実用化できた。大学で研究した蓄積と、製薬会社での実用化の経験が奏功したのです。 池上 ビオンテックはドイツのトルコ系移民が設立した会社で、カリコさんのようにハンガリーから米国に渡って研究を続けてきたような優秀な人たちを受け入れています。 増田 カリコさんはビオンテックに移籍して、ハンガリー時代に一緒に研究していた人たちと再会しています。信念を持った優秀な人たちを集め、研究部門以外のスタッフも研究者でそろえています。 池上 増田さんはカリコさんに以前から取材されていますね。) ▽米ソ冷戦期にソ連圏からの渡米(増田 コロナ禍当初に出演したあるテレビ番組でカリコさんを2~3分で紹介するコーナーがあったのですが、そのときに「どうしてもカリコさんにお話を聞きたい!」と思い立ち、取材しました。そして21年10月に『世界を救うmRNAワクチンの開発者 カタリン・カリコ』を上梓しました。 カリコさんの研究に対する信念は本当に強いのですが、偉ぶることもなく、堂々と自分の考えていることを言葉にされる方です。ロックミュージックが大好きで、「研究はロックと一緒」とも言っていました。 カリコさんは1955年、ハンガリーで生まれ、子供の頃から自然や科学に興味を持ち、23歳のときに大学院へ進み、RNAの研究を始めます。30歳のときに所属していた研究機関で研究資金を打ち切られたことで米国へ渡ることを決意しますが、85年当時のハンガリーはソ連の支配下にあり、米国への移住はそう簡単にはいきませんでした。 池上 まだ米ソ冷戦期ですから、ソ連圏からの渡米となれば、亡命する人も多かった時代です』、「カリコさんは「mRNAが多くの命を救う医学に貢献できるはずだ」と信じて諦めず、研究資金を打ち切られたり、大学で降格処分を受けたりする困難に立ち向かいながら粘り強く研究を続けてきました」、そこまでの困難を乗り越えたとは初めて知った。
・『一家の生活を繋いだテディベア 増田 研究仲間の中にも亡命という手段を取った人がいましたが、カリコさんは家族と会うためにハンガリーとの間を行き来できる状態にしたいと考え、八方手を尽くし、米テンプル大学のポストドクターの座を得て、正規に出国許可を得ることができたそうです。 しかし当時のハンガリーでは、100ドルを超える外貨の持ち出しが禁止されていました。当時の日本円でわずか2万円程度。これだけ持って米国に渡っても、最初の給料が出るまでは住む所もありません。そこでカリコさんは闇市で自家用車を売って外貨に換え、娘が大事に持っていたテディベアに現金1000ドルを忍ばせて出国したんです。そのテディベアも取材時に見せてもらいましたが、まだ大事に娘さんの部屋に飾ってありました。 池上 一家の生活をつないだ縫いぐるみですから、家宝ものですね』、「米テンプル大学のポストドクターの座を得て、正規に出国許可を得ることができたそうです。 しかし当時のハンガリーでは、100ドルを超える外貨の持ち出しが禁止されていました。当時の日本円でわずか2万円程度。これだけ持って米国に渡っても、最初の給料が出るまでは住む所もありません。そこでカリコさんは闇市で自家用車を売って外貨に換え、娘が大事に持っていたテディベアに現金1000ドルを忍ばせて出国したんです」、「テディベアに現金1000ドルを忍ばせて出国」とは当時は必死だったのだろう。
・『受賞した賞金は大学や研究機関に寄付 増田 その後も研究が評価されず、研究資金の打ち切りや降格など、さまざまな苦労をされるのですが、ワクチン開発で一躍脚光を浴び、ノーベル賞受賞前にも各国のさまざまな賞を受賞しています。しかしぜいたくには全く関心がなく、こうした賞を受賞した際に得た賞金は、母国ハンガリーの大学をはじめ、研究機関に寄付したそうです。 カリコさんは85年に米国へ移住した際に住み始めた家に、今も住んでいます。家具は夫のベーラ・フランシアさんの手作り。古い物を大事にする、質素な暮らしぶりがうかがえますよね。ノーベル賞受賞が決まって、ようやく新車を買ったとか。その話をした際に、カリコさんが「夫も新しくしていないでしょう?」と冗談を言ったのが印象的でした。 池上 エンジニアだったフランシアさんはほとんど表に出てきませんが、カリコさんの研究を熱心に支えたんですよね。ノーベル賞受賞時に取材を受けたカリコさんのコメントも象徴的でした』、夫である「エンジニアだったフランシアさんはほとんど表に出てきませんが、カリコさんの研究を熱心に支えたんですよね」、なるほど。
・『妻と娘の世界的活躍を支える「内助の功」も世界レベル 増田 「いい研究をするためには、研究に協力してくれるいい夫を見つけることが必要だ」と(笑)。フランシアさんは早朝5時にカリコさんを研究室へ送り、その後に娘を学校へ送る。夕方に娘さんとカリコさんをピックアップして、自分は夜中に働くという生活を続けてこられたそうです。 実は2歳のときにテディベアを抱えて国境を渡った長女のスーザンさんも、オリンピックの金メダリストなんですよ。米国代表のボート競技選手として、08年の北京、12年のロンドンと2大会連続で出場。両大会で金メダルを獲得しています。 池上 妻と娘の世界的活躍を支えるフランシアさんの「内助の功」も世界レベルですね。 さて、ノーベル賞受賞者と言えば「蛙跳び」です。受賞者は授賞式で講演を行った後、ストックホルムの大学生有志による懇親会に参加するのですが、そこで学生と一緒に受賞者が蛙跳びを披露するという伝統があるのです。19年にノーベル化学賞を受賞した吉野彰さんは高齢を理由に深夜の懇親会を辞退されたそうですが。 増田 長く研究を続け、厳しい境遇に耐える精神力と体力を持っているカリコさんなら楽々こなせそうです』、「フランシアさんは早朝5時にカリコさんを研究室へ送り、その後に娘を学校へ送る。夕方に娘さんとカリコさんをピックアップして、自分は夜中に働くという生活を続けてこられたそうです・・・長女のスーザンさんも、オリンピックの金メダリスト・・・妻と娘の世界的活躍を支えるフランシアさんの「内助の功」も世界レベルですね」、「フランシアさんの「内助の功」もまさに世界レベル」、その通りだ。
タグ:ダークマターが存在しない宇宙を考えたとすると、そんなのっぺらぼうみたいな状態だったら、今あるような銀河の塊はできないので、どうしてなのかという問題があったんです。宇宙に星や銀河、私たちが生まれたことは、ダークマターという未知の物質がないと説明がつかなくなったんです」、「ビッグバン」で「宇宙に星や銀河、私たちが生まれたことは、ダークマターという未知の物質がないと説明がつかなくなったんです」、なるほど。 「138億光年向こうを頑張って観測すると、「あっ、ビッグバンだ」というふうに今でも見えるはずなんです。「あっちを向いてもビッグバンが見える」し、「こっちを向いてもビッグバンが見える」。そういう状況ですね。ですがビッグバンの写真を見るとほとんどのっぺらぼうで、温度の違いは10万分の1しかありません。 「ダークマターは、「暗黒物質」とも呼ばれるもので、素粒子という小さな「粒(つぶ)」みたいな物質、またそれが少し集まったものだと考えています」、なるほど。 「サイエンスZERO」20周年スペシャル・取材班による「「暗黒物質ダークマター」は《お母さん》?「だからぜひ会ってみたいですね」と言い切る理論物理学者・村山斉さんが語る「人類すべての母」」 それから銀河系の中心に太陽の400万倍もあるブラックホールも発見されました(※10)。本当に今、技術の進歩やコンピューターの進歩のおかげで科学がググって伸びているのを感じられて、この時代に生きていてよかったなと思います」、進歩を実感できるのは幸せだ。 「素粒子や宇宙の研究にとってはものすごく華々しい20年間でした。重力波(※6)も見つかりましたし、ヒッグス粒子(※7)も見つかりました。それからニュートリノに重さがあるという研究(※8)や、宇宙の歴史をちゃんと理解したという理論にノーベル賞(※9)が出たのもこの20年間でした。 「10年くらい前まではWIMP(※4)という物質がダークマターの有力候補だったので、みんなそればかり一生懸命探していました。それが最近、ほかの候補も探してみようというアイデアがたくさん出てきたんです。実際に探してみたら、「あった!」ということになるかもしれないですから、今、本当に面白い時期になってきたと思っています」、なるほど。 「もともと、ノーベル賞を受賞された小林先生、益川先生が作られた小林益川理論(※3)を超える理論を探したいという目的で作られた実験装置でしたが、それをうまく利用することでダークマターを探せる可能性もあるんです。全く新しい装置を作るのは時間もお金も人手も多くかかって大変なので、すでにある装置をうまく使う、そういうアイデアをたくさん考えるのも研究者の仕事のひとつです」、これが有効活用できれば、望ましい。 「サイエンスZERO」20周年スペシャル・取材班による「重力波、ヒッグス粒子、ニュートリノ質量、銀河中心の超巨大BHという超発見が続々…「素粒子物理の夢の時代」にトップランナーが語る「夢のその先」」 「テディベアに現金1000ドルを忍ばせて出国」とは当時は必死だったのだろう。 「ダークマターが生まれた時期は、宇宙が始まってから100億分の1秒ぐらいのビッグバンの直後だと思っています」、なるほど。 現代ビジネス (その8)(「暗黒物質ダークマター」は《お母さん》?「だからぜひ会ってみたいですね」と言い切る理論物理学者・村山斉さんが語る「人類すべての母」、重力波 ヒッグス粒子 ニュートリノ質量 銀河中心の超巨大BHという超発見が続々…「素粒子物理の夢の時代」にトップランナーが語る「夢のその先」、闇市で得た1000ドルをテディベアに隠して出国…「ワクチンでノーベル賞」カリコ氏の壮絶人生) 「カリコさんは「mRNAが多くの命を救う医学に貢献できるはずだ」と信じて諦めず、研究資金を打ち切られたり、大学で降格処分を受けたりする困難に立ち向かいながら粘り強く研究を続けてきました」、そこまでの困難を乗り越えたとは初めて知った。 「通常であればワクチンの開発には10年かかるところを、半年で実用化にこぎ着けられたのは、カリコさんの40年にもわたるmRNAの研究成果あってこそ」、「mRNA」の効用は素晴らしい。 ノーベル賞受賞 「フランシアさんは早朝5時にカリコさんを研究室へ送り、その後に娘を学校へ送る。夕方に娘さんとカリコさんをピックアップして、自分は夜中に働くという生活を続けてこられたそうです・・・長女のスーザンさんも、オリンピックの金メダリスト・・・妻と娘の世界的活躍を支えるフランシアさんの「内助の功」も世界レベルですね」、「フランシアさんの「内助の功」もまさに世界レベル」、その通りだ。 夫である「エンジニアだったフランシアさんはほとんど表に出てきませんが、カリコさんの研究を熱心に支えたんですよね」、なるほど。 池上 彰氏と増田ユリヤ氏による「闇市で得た1000ドルをテディベアに隠して出国…「ワクチンでノーベル賞」カリコ氏の壮絶人生」 ダイヤモンド・オンライン 「もっといい装置、いい観測、いい実験をしようという動きが大きくなってきているので、これからいろいろな進歩が出てくるのを期待しています」、幸せな科学者人生だ。
キシダノミクス(その9)(もはや「切れるカードがない」法務検察からのメッセージも見過ごした岸田官邸の惨、焦る岸田首相 夜10時に「当日消費期限切れおにぎり」到着…能登地震お粗末対応の舞台裏、能登地震「総理視察」は完全失敗!岸田首相のメンツ優先、初動の遅れはもはや“人災”だ) [国内政治]
キシダノミクスについては、昨年12月16日に取上げた。今日は、(その9)(もはや「切れるカードがない」法務検察からのメッセージも見過ごした岸田官邸の惨、焦る岸田首相 夜10時に「当日消費期限切れおにぎり」到着…能登地震お粗末対応の舞台裏、能登地震「総理視察」は完全失敗!岸田首相のメンツ優先、初動の遅れはもはや“人災”だ)である。
先ずは、昨年12月29日付けデイリー新潮「もはや「切れるカードがない」法務検察からのメッセージも見過ごした岸田官邸の惨状」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/12290600/?all=1
・『固まっていません 自民党の安倍派・二階派といった派閥の政治資金規正法違反に対して、捜査のメスを入れている東京地検特捜部。岸田文雄首相は当初から「落としどころ」を見極めたうえで、年明け以降の政権をどう運営していくのかについて頭を悩ませてきたようだ。そんな中、法務検察側からあるメッセージが届いたものの、その意図を図りかね、結果としてミスを犯し、大きなリスクを抱えることになってしまったのだという。「聞く力」はさておき、危機に際しての「対応力」「分析力」「思考力」の低さをまざまざと見せつけることになった岸田官邸の現状をレポートする。 【写真を見る】かつて「パンツ泥棒」騒動を巻き起こした議員の素顔 今回、特捜部のターゲットに 「岸田官邸は特捜部の捜査の最終目的地点を見極めつつ、年明けの通常国会以降の政権運営方針を定めようとしてきました」 と、政治部デスク。 「とはいえ、“切れるカードがない”というのが残念ながら官邸幹部らの合言葉のような状況です。政権浮揚策がない中、できるだけ早いタイミングで派閥の今回問題となった政治資金パーティーなどに関する改革を検討するため、新たな組織を立ち上げる考えが示されましたが、中身は全くと言って良いほど固まっていません」(同)』、「“切れるカードがない”というのが残念ながら官邸幹部らの合言葉のような状況です。政権浮揚策がない中、できるだけ早いタイミングで派閥の今回問題となった政治資金パーティーなどに関する改革を検討するため、新たな組織を立ち上げる考えが示されましたが、中身は全くと言って良いほど固まっていません」、なるほど。
・『メザシの土光がいれば…… 組織を取り仕切る人物についても……。 「萩生田光一政調会長の後を受けた渡海紀三朗氏の名が上がっていますが、仮にそうなったとしても始まる前からアピール度や中身の充実度の低さがハッキリと見えますね。“メザシの土光”みたいな人がいたらなぁという言葉が関係各所から漏れているそうです」(同) 「メザシの土光」とは、昭和50年代から60年代にかけて「土光臨調」とも称される行革で辣腕をふるった土光敏夫氏を指す。土光氏の食卓がメザシなど質素なメニューだったことから、このニックネームが定着したとされる。清貧を絵に描いたような人物が新組織を取り仕切るなら確かに説得力はあるのかもしれないが、そもそも土光氏は行革に取り組んだ時には、すでに財界での実績も知名度も抜群の存在だった。そんな人材が党内にどれほどいるのかははなはだ怪しいので、ないものねだりに等しい願望と言えそうだ。 官邸は特捜部の捜査の行方をどう見極めていたのか?』、「メザシの土光がいれば……・・・ないものねだりに等しい願望と言えそうだ」、なるほど。
・『検察側のメッセージ 「検察側からは、“有名人を立件する”といったメッセージが記者らに投げかけられており、知名度の高い政治家のさまざまな名前が取り沙汰されています。大物とされる議員は衆議院に多いのですが、一方で参院は体質的に問題がより根深いとの指摘もあるなど、情報が錯綜しています。いずれにせよ複数人の立件は避けられないと見られています」 と、社会部デスク。 そんな検察側は一方で、政権側にこんなメッセージを送っていたという。 「法務省の事務次官や官房長を通じ、“捜査は1月16日でひと段落”とのメッセージがあったとされています。こういった情報は通常国会をいつ開会するかを決めるにあたり極めて重要です。予算審議に関しては概ね18日程度かかるとされており、国会の開会日がずれ込めばそれだけ予算の成立に影響を及ぼすことになります」(同) 結果として政権は22日もしくは26日の開会を検討中だ。 「そのチョイスには政権・与党内からブーイングがあがっています。検察のメッセージに嘘はないですし、国会が始まれば捜査の手を引っ込めざるを得ない。16日でひと段落ならば、19日に開会し、多少の余裕をもって予算審議を行えたはずなのです。仮に26日なら金曜日ですから実質的には月曜日の29日開会ということになってしまいます。開会日を遅らせることで、事件と国会審議との期間を少しでも長くして、影響を小さくしたいという思惑もわからなくはないですが、予算成立への影響を懸念する声があがるのも当然でしょう」(先の政治部デスク)』、「「検察側からは・・・複数人の立件は避けられないと見られています」、ところが、結局、「立件」が見送られ、「検察」はミソをつけた。
・『火種を抱えた 始まる前から国会運営に支障をきたしかねない状況になっているというわけだ。まさに綱わたりの印象で、永田町界隈では「どうしてこういう選択になったのか不思議」との感想が主流なのだという。現場を仕切るのは国会対策委員長とはいえ、通常国会の開催日に関しては岸田首相の意向が強いとも指摘されている。 「多少開催日を後ろ倒ししたとて、予算委員会では野党から集中砲火を浴び、それがワイドショーも含めて格好のコンテンツになることは目に見えています。この判断はミスだったのでは」(同) 岸田首相は一連の騒動を受けて「国民の信頼回復のために、火の玉となって、自民党の先頭に立つ」と訴えたが……』、「岸田首相」は自らの派閥「岸田派」の人数の少なさというハンディを、安倍派を事実上壊滅させることで、乗り切ろうと企んでいるのかも知れない。
次に、本年1月11日付けダイモンド・オンラインが掲載したイトモス研究所所長の小倉健一氏による「焦る岸田首相、夜10時に「当日消費期限切れおにぎり」到着…能登地震お粗末対応の舞台裏」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/336956
・『元日に日本を襲った能登地震に対する政府対応が混乱を来している。官邸や防衛省の関係者、被災現場の声に耳を傾けると、岸田文雄首相が率いる官邸の拙い司令塔ぶりが浮き彫りとなった。 ※本記事の中ほどには被災住人の方から提供があった住宅や道路などの被災写真(1月7日午後、石川県羽咋郡志賀町)を掲載しています』、興味深そうだ。
・『能登地震の被災住民から受けた「現場写真」を含む情報提供 1月1日夕方、能登半島を大きな地震が襲った。筆者は、実家(実家の墓)が金沢市内にあり、石川県には浅からぬ縁を持っている。石川県は、北部の能登と南部の加賀で成り立っている。金沢市があるのは加賀で、幸いにして親戚や友人、知人で大きな被害を受けた人はいなかった。 また、金沢は1月6日の段階で、「完全に日常に戻ったとまではいかないまでも、普通に生活している」という情報を知り、1月7日に金沢へ入った。行ってみると、たしかにそこには普通の生活が存在していた。加賀にある旅亭懐石「のとや」の公式ホームページにはこんなことが記されている。) 「旅亭懐石のとやですが、能登震源地から遠いこともあり、幸いにも現状大きな被害はございません。余震も全く感じることもなく、通常通り営業しております」 「被災を受けなかった私達こそ、今できることを頑張ろう、経済を回し、石川県全体を元気にしようと考えました」 被災地の近くまで行けたことで、被災者と直接話をすることができた。今回、筆者が被災した住民から受けた情報提供(写真を含む)も踏まえて、本稿を書く。 今、「不要不急」の人間(政治家、ボランティアなど)が被災地に入ることに大きな批判が巻き起こっている。それは単純に被災地で道路インフラがズタズタになってしまっていて、慢性的に渋滞してしまっているためだ。 金沢から能登へと向かうケースは、被災者であっても緊急を要さない場合、高速道路を使わずに一般道路を使うよう指示が出ている。道路にはヒビが入っており、たとえ一度は修復したものでも、余震が続いていてヒビがまた大きくなっていることがよくある。そのため、夜や雪道では相当に慎重な運転が求められている。 さらに、能登半島北部では村落や集落の孤立化が激しい。土砂崩れや陥没で道路の寸断が相次いでいるためだ。生活に不可欠な飲料水や物資が尽きかけた場所も多い。津波被害に大雪まで加わり、被災者の疲労は日に日に限界へと近づいている』、「金沢から能登へと向かうケースは、被災者であっても緊急を要さない場合、高速道路を使わずに一般道路を使うよう指示が出ている。道路にはヒビが入っており、たとえ一度は修復したものでも、余震が続いていてヒビがまた大きくなっていることがよくある。そのため、夜や雪道では相当に慎重な運転が求められている」、交通事情は極めて厳しそうだ。
・『岸田首相率いる官邸の調整機能欠如とむちゃ振りで大混乱 そこへ、岸田文雄首相率いる官邸の「プッシュ型支援」がやって来る。 プッシュ型支援」とは、災害などの緊急時に、支援が必要とされる地域や人々に対して、その人々の要求を待たずに積極的に支援物資やサービスを提供するアプローチのことを指す。この方法は、支援の迅速化や効率化を目的としている。ただし場合によっては、実際のニーズと合わない支援が行われるリスクもあり、プッシュ型支援を行う際は、事前の情報収集や地域の状況把握が非常に重要となる。 「支持率が低迷する岸田首相は、何とか挽回のチャンスを得たいと焦っているようです。内閣府、自衛隊や警察の対応が思い通りにいかないと感じた官邸は、自治体のトップと岸田首相との『ホットライン』で得た情報を、『そのまま』『最優先で』『実行』するよう指示が飛んでいます」(防衛省関係者) 震災直後の自治体トップは冷静さを欠いていることがあり、これまでの震災の経験を踏まえた判断が官邸には求められるのだが、それを岸田首相はあえてしなかった。 「プッシュ型支援においても、内閣府が主体となって行う政府支援、経済産業省独自の支援、防衛省独自の支援が総合調整されないままに始まり、ニーズ取りも個別、物資の選定や輸送も個別で大混乱してしまった」(同) 「多少の混乱があるのは仕方ない面がありますが、被災地から『輸送された当日までしか消費期限がない大量のおにぎりが運ばれてきた』と抗議がありました。また、誰がまとめたか分からない出どころ不明の孤立者リストが出回り、これを『しらみつぶしにチェックしろ』という指示が飛んだのです。とにかく問題の根本は、岸田首相と自治体のトップとの直電話、ホットラインです。ホットラインを受けた岸田首相は『とにかく全力で何とかしろ』という指示を飛ばすのみ。冷静な判断力を失ってしまった」(同) 自衛隊が現場で得た実際の状況に関する情報や、緊急を要している行動の観点からはかけ離れた指示が最高司令官である岸田首相本人から飛んでくるのである。「現地の声を聞く、寄り添う総理」をアピールしたいのは分かるが、現地へマイクロマネジメントを仕掛けては混乱するだけであろう。 「混乱を極めたのは、官邸からの『被災地のニーズを確認するための御用聞き部隊を編成しろ』というむちゃ振りでした。そんなことに余力を割けるようなタイミングではなく、物資を支給する部隊が、配る際に住民からニーズをくみ取ればよかった。バックヤードで、混乱しがちな現場を落ち着かせる役目が本来、官邸には求められたはずです。しかし、官邸は混乱ばかりを招いてしまった」(同)』、「「混乱を極めたのは、官邸からの『被災地のニーズを確認するための御用聞き部隊を編成しろ』というむちゃ振りでした。そんなことに余力を割けるようなタイミングではなく、物資を支給する部隊が、配る際に住民からニーズをくみ取ればよかった。バックヤードで、混乱しがちな現場を落ち着かせる役目が本来、官邸には求められたはずです。しかし、官邸は混乱ばかりを招いてしまった」(同)」、「官邸は混乱ばかりを招いてしまった」とは手厳しい批判だ。
・『指揮系統がパニックに陥った結果 消費期限切れ直前おにぎり」到着 また、現地の自衛隊が頑張れば頑張るほどに、官邸は怒りのボルテージを上げていったという。 それは、能登半島中部で、自衛隊による給食支援が始まった、1月4日昼のことだ。当時のことについて、防衛省・自衛隊(災害対策)のX(旧Twitter)アカウントは次のようにポストしている。 「#統合任務部隊 (#中部方面後方支援隊)は #輪島市 三井公民館において #給食支援 活動を1月4日昼から開始しました。自衛隊は引き続き、被災者の皆様のニーズに可能な限り応えられるよう全力を期して参ります #災害派遣 #石川県 #令和6年能登半島地震」(1月4日16時57分) この迅速な対応が称賛されるかと思いきや、官邸の反応は違った。 「何で他の地域で支援が始まっていないんだ!今日中に始めろ!と激しい怒りの指示が飛びました」(官邸関係者) 誰もが急いで給食支援を行いたいのである。準備ができたところから開始したわけで、他の部隊がサボっているわけでも何でもない。小さな成功を称賛してこそ、現場は奮い立つのだ。 そして、怒りでパニックになった指揮系統によってこうしたことが重なり、先の防衛省関係者のコメントにあった「輸送された当日までしか消費期限がない大量のおにぎりが運ばれてきた」という事件につながっていく。 事実、1月6日に開催された「第13回災害対策本部員会議」(動画では30分過ぎに当該コメント)では石川県能登町の町長が次のように発言している。 「数々のご支援ありがとうございます。次から次と支援の方が能登町に訪れまして、たくさんのご意見をいただきながら勉強をさせて頂きながら対策を進めているところです。被害状況につきましては今日ようやく調査の指示を出したところです」 「これまでの支援を頂いて、ものすごく助かっていますが、昨日(1月5日午後)10時過ぎにおにぎり等の支援が到着しました。そのおにぎりの消費期限を見ますと1月5日であった。5日の晩に届いたおにぎりの消費期限が5日でありました。これを次の日になって被災者へお届けするのはいかがなものかと思いまして非常に悩みました。ぜひ、消費期限の少し長いものとか、できるだけ早い段階での物資の輸送をお願いしたい。文句を言っているわけではなくて、こういう事実があったということをご認識いただければと思っています」 司令塔の混乱ぶりをうかがわせるエピソードであろう。 「現場での被災者のための行動」と「総理、官邸による実績アピールのための行動」が乖離(かいり)し、総理のトップダウンによる災害対応は、被災者のためではなく、自身と政権のためでしかなくなっている。情けない限りだ』、「総理、官邸による実績アピールのための行動」が乖離(かいり)し、総理のトップダウンによる災害対応は、被災者のためではなく、自身と政権のためでしかなくなっている。情けない限りだ」、本当に情けない限りだ。
第三に、1月20日付けダイモンド・オンラインが掲載したイトモス研究所所長の小倉健一氏によう「能登地震「総理視察」は完全失敗!岸田首相のメンツ優先、初動の遅れはもはや“人災”だ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/337587
・『岸田文雄首相による能登半島地震の被災地視察に対して、批判の声が数多く上がっている。なぜこんなことになってしまったのか』、興味深そうだ。
・『岸田首相の総理視察は被災地「観光旅行」に終わった やはり危惧していた通りに、岸田文雄首相の総理視察は無意味な被災地「観光旅行」になってしまったようだ。被災地から不満の声が上がっている。一体何が起きているのだろうか。 石川県の馳浩知事は、岸田首相の視察でのやりとりを振り返り、現在の被災地のフェーズをこう話している。 「まず、本日、岸田総理、松村(祥史)防災担当大臣と共にヘリから被災状況を視察しました。また、輪島市、珠洲市の避難所を訪問しました」 「今は、発災直後の段階から移行し、1.5次、2次避難を大きく進めるというフェーズであり、岸田総理とは改めて、災害関連死を防ぐため、現地の避難所からできる限り多くの避難者を1.5次避難所や2次避難所等に移送するとともに、孤立集落の避難者を丸ごと金沢市以南の避難所に移送するミッション、この二つの面からの取り組みをさらに加速させる必要があることで一致しました」(1月14日・第21回石川県災害対策本部員会議) つまり、現状は発災直後の救急活動、命を守る、救う活動から、第二の段階へと移行する最中であると言っている。今、被災地で求められているのは、感染症が蔓延(まんえん)していたり、インフラもズタズタのままだったりする避難所から、より安全な避難所への「引っ越し」である。 では、岸田首相の視察は、その流れに沿った形でできたのであろうか。時事通信の「首相動静」(1月14日)を見ると、首相の視察の動線が細かく記されている。必要と思われる部分だけかいつまんで紹介する』、「現状は発災直後の救急活動、命を守る、救う活動から、第二の段階へと移行する最中である・・・今、被災地で求められているのは、感染症が蔓延(まんえん)していたり、インフラもズタズタのままだったりする避難所から、より安全な避難所への「引っ越し」である」、なるほど。
・『「首相動静」に見る総理視察の大失敗 午前7時44分、陸上自衛隊ヘリコプターで官邸屋上ヘリポート発。 午前9時31分、石川県小松市の空自小松基地着。 午前10時32分、同県輪島市の空自輪島分屯基地着。隊員らを激励。 午前10時46分、同市立輪島中学校着。能登半島地震の避難所を視察。被災者と意見交換。松村祥史防災担当相、馳浩知事同行。 午前11時11分、同所発。 午前11時19分、空自輪島分屯基地着。同28分、陸自ヘリで同所発。被災現場を上空から視察。 午前11時54分、珠洲市の野々江総合公園着。同56分、同所発。午後0時1分、同市立緑丘中学校着。避難所を視察。被災者と意見交換。 午後1時17分、金沢市の陸自金沢駐屯地着。 午後1時48分、同市の石川県庁着。昼食。馳知事、古賀篤内閣府副大臣らと意見交換。 午後2時25分から同53分まで、馳知事から要望書受け取り。意見交換。 午後4時6分、小松市の空自小松基地着。同24分、空自輸送機で同所発 ものの見事に、被災地を巡っただけである。前述の通り、今、必要なことは、被災者の1.5次、2次避難を進めることだ。馳知事の発言を見れば分かるように、視察には「安全な1.5次、2次避難所」を組み込んで、被災者が安心して「引っ越し」ができるようにメッセージを送るのが、岸田首相の最大のミッションだったはずである。 日本のリーダーが被災地へ行ったところで、物理的には何の意味もない。安倍晋三元首相が暗殺され、昨年は岸田首相自らの暗殺未遂事件もあった「総理大臣職」がどこかへ行くとなれば、厳重な警備体制が敷かれ、感染症が蔓延する被災地に大人数が押しかけなければならない。その行為自体だけを考えれば、ただの「迷惑行為」なのである。) しかし他方で、「総理大臣」が来ることで励まされる被災者もいるかもしれないし、メディアによって被災地のことが大きく報道されることを考えれば、それはメリットといえる。つまり総理視察は、被災者に希望を持たせ、そして次の行動を促す「大事なメッセージを発信する場」であると割り切らねばならないということだ。 大事なメッセージを発信する場と捉えたときに、岸田首相の訪問によって被災者の安心は増したのだろうか。1.5次、2次避難所へと被災者に「引っ越し」をしてもらうための説得材料になったのだろうか。その答えは、残念ながら0点だ。失敗だった』、「大事なメッセージを発信する場と捉えたときに、岸田首相の訪問によって被災者の安心は増したのだろうか。1.5次、2次避難所へと被災者に「引っ越し」をしてもらうための説得材料になったのだろうか。その答えは、残念ながら0点だ。失敗だった」、なるほど。
・『総理視察に対して被災者からは冷たい反応 今回、被災地視察について「官邸内部からも慎重論が出ていたにもかかわらず、岸田首相が視察を強行したのは、歴代総理が発災から数日で被災地入りしていたことを念頭に置いた、自身のメンツを最優先する岸田首相の強い意向があった」(官邸関係者)のだという。 確かに、東日本大震災当時の首相だった菅直人氏は発災翌日に福島原子力発電所に乗り込んだが、混乱に拍車をかけただけだった。 孤立集落がいまだにあり、食糧不足や電気不足が解消されず、何より感染症が蔓延する被災地である。道路が寸断されているために自衛隊や警察、消防を大量に派遣できていない現状では、これまでの総理視察と時期だけを競っても仕方がない。総理視察は、もっと後になってもよかったはずだ。 岸田首相が「被災地へ負担をかけてしまうために被災地へまだ入れない」ということをメッセージで出さないのだから、被災地の反応は当然冷たいものだった。新聞各紙が拾った被災者の言葉がそれを物語っている。) 《発生から14日目の駆け足の訪問に「今更来たのか」「励ましが足りない」と冷ややかな視線も向けられた》 《地震が起きた1日から身を寄せる井上美紀さん(75)は「首相の地震対応は遅い」と手厳しい。一部の教室などを回って30分間程度で切り上げた姿を見つめ「体育館で皆を大声で励ましたりしてくれれば、心持ちも違うのに」と不満がった》(「産経新聞」1月14日) 《「裏金問題もある中でのパフォーマンスではないか」。3階の教室に身を寄せる市内の60代女性の反応は冷ややかだ。「わずかな時間、1階をのぞいただけでヘリコプターで帰っていった。どんな思いで来たのかもわからない」と取材に不満をこぼした》(毎日新聞・1月14日) 被災者に何一つ希望を与えられず、総理視察は大失敗に終わった。そもそもあれだけ国民に対して「被災地へ入るな」と言っておきながら、自分だけは行くというのはメッセージとして最悪だろう。岸田官邸はもはや、自分たちのやっていることと言っていることの整合性すらとれない状態なのだろう』、「「裏金問題もある中でのパフォーマンスではないか」。3階の教室に身を寄せる市内の60代女性の反応は冷ややかだ。「わずかな時間、1階をのぞいただけでヘリコプターで帰っていった。どんな思いで来たのかもわからない」と取材に不満をこぼした》(毎日新聞・1月14日) 被災者に何一つ希望を与えられず、総理視察は大失敗に終わった。そもそもあれだけ国民に対して「被災地へ入るな」と言っておきながら、自分だけは行くというのはメッセージとして最悪だろう。岸田官邸はもはや、自分たちのやっていることと言っていることの整合性すらとれない状態なのだろう」、手厳しい批判だ。
・『災害危機管理の専門家が考察 「初動には人災の要素を感じます」 そんな中、石川県の災害危機管理アドバイザーも務めてきた神戸大学名誉教授の室崎益輝氏が、能登半島地震について興味深い考察をしている。 《初動対応の遅れがとても気になりました。これまでの多くの大震災では、発災から2、3日後までに自衛隊が温かい食事やお風呂を被災された方々に提供してきました。でも今回は遅れた。緊急消防援助隊の投入も小出しで、救命ニーズに追いついていない。本来は「想定外」を念頭に、迅速に自衛隊、警察、消防を大量に派遣するべきでした。被災状況の把握が直後にできなかったために、国や県のトップがこの震災を過小評価してしまったのではないでしょうか。初動には人災の要素を感じます》 《苦しんでいる被災者を目の前にして、「道路が渋滞するから控えて」ではなく、「公の活動を補完するために万難を排して来て下さい」と言うべきでした。マンパワー不足と専門的なノウハウの欠如で、後手後手の対応が続いてしまっている。政府は「お金は出します」というリップサービスではなく、関連死を防ぐなどの緊急ニーズに応えられる具体的な対策を提供すべきで、「必要な人材を出します」というサービスに徹するべきです》(「朝日新聞」1月14日) 被災地からここまで不信感を持たれる首相は、菅直人氏以来ではないか。危機にあって、適切な行動が取れないリーダーなど要らない』、「これまでの多くの大震災では、発災から2、3日後までに自衛隊が温かい食事やお風呂を被災された方々に提供してきました。でも今回は遅れた。緊急消防援助隊の投入も小出しで、救命ニーズに追いついていない。本来は「想定外」を念頭に、迅速に自衛隊、警察、消防を大量に派遣するべきでした。被災状況の把握が直後にできなかったために、国や県のトップがこの震災を過小評価してしまったのではないでしょうか。初動には人災の要素を感じます・・・政府は「お金は出します」というリップサービスではなく、関連死を防ぐなどの緊急ニーズに応えられる具体的な対策を提供すべきで、「必要な人材を出します」というサービスに徹するべきです・・・被災地からここまで不信感を持たれる首相は、菅直人氏以来ではないか」、極めて厳しい批判だ。「岸田首相」は安倍前首相時代にシャドーボクシングをしていた筈だが、いざ本番となると上手くいかないようだ。
先ずは、昨年12月29日付けデイリー新潮「もはや「切れるカードがない」法務検察からのメッセージも見過ごした岸田官邸の惨状」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/12290600/?all=1
・『固まっていません 自民党の安倍派・二階派といった派閥の政治資金規正法違反に対して、捜査のメスを入れている東京地検特捜部。岸田文雄首相は当初から「落としどころ」を見極めたうえで、年明け以降の政権をどう運営していくのかについて頭を悩ませてきたようだ。そんな中、法務検察側からあるメッセージが届いたものの、その意図を図りかね、結果としてミスを犯し、大きなリスクを抱えることになってしまったのだという。「聞く力」はさておき、危機に際しての「対応力」「分析力」「思考力」の低さをまざまざと見せつけることになった岸田官邸の現状をレポートする。 【写真を見る】かつて「パンツ泥棒」騒動を巻き起こした議員の素顔 今回、特捜部のターゲットに 「岸田官邸は特捜部の捜査の最終目的地点を見極めつつ、年明けの通常国会以降の政権運営方針を定めようとしてきました」 と、政治部デスク。 「とはいえ、“切れるカードがない”というのが残念ながら官邸幹部らの合言葉のような状況です。政権浮揚策がない中、できるだけ早いタイミングで派閥の今回問題となった政治資金パーティーなどに関する改革を検討するため、新たな組織を立ち上げる考えが示されましたが、中身は全くと言って良いほど固まっていません」(同)』、「“切れるカードがない”というのが残念ながら官邸幹部らの合言葉のような状況です。政権浮揚策がない中、できるだけ早いタイミングで派閥の今回問題となった政治資金パーティーなどに関する改革を検討するため、新たな組織を立ち上げる考えが示されましたが、中身は全くと言って良いほど固まっていません」、なるほど。
・『メザシの土光がいれば…… 組織を取り仕切る人物についても……。 「萩生田光一政調会長の後を受けた渡海紀三朗氏の名が上がっていますが、仮にそうなったとしても始まる前からアピール度や中身の充実度の低さがハッキリと見えますね。“メザシの土光”みたいな人がいたらなぁという言葉が関係各所から漏れているそうです」(同) 「メザシの土光」とは、昭和50年代から60年代にかけて「土光臨調」とも称される行革で辣腕をふるった土光敏夫氏を指す。土光氏の食卓がメザシなど質素なメニューだったことから、このニックネームが定着したとされる。清貧を絵に描いたような人物が新組織を取り仕切るなら確かに説得力はあるのかもしれないが、そもそも土光氏は行革に取り組んだ時には、すでに財界での実績も知名度も抜群の存在だった。そんな人材が党内にどれほどいるのかははなはだ怪しいので、ないものねだりに等しい願望と言えそうだ。 官邸は特捜部の捜査の行方をどう見極めていたのか?』、「メザシの土光がいれば……・・・ないものねだりに等しい願望と言えそうだ」、なるほど。
・『検察側のメッセージ 「検察側からは、“有名人を立件する”といったメッセージが記者らに投げかけられており、知名度の高い政治家のさまざまな名前が取り沙汰されています。大物とされる議員は衆議院に多いのですが、一方で参院は体質的に問題がより根深いとの指摘もあるなど、情報が錯綜しています。いずれにせよ複数人の立件は避けられないと見られています」 と、社会部デスク。 そんな検察側は一方で、政権側にこんなメッセージを送っていたという。 「法務省の事務次官や官房長を通じ、“捜査は1月16日でひと段落”とのメッセージがあったとされています。こういった情報は通常国会をいつ開会するかを決めるにあたり極めて重要です。予算審議に関しては概ね18日程度かかるとされており、国会の開会日がずれ込めばそれだけ予算の成立に影響を及ぼすことになります」(同) 結果として政権は22日もしくは26日の開会を検討中だ。 「そのチョイスには政権・与党内からブーイングがあがっています。検察のメッセージに嘘はないですし、国会が始まれば捜査の手を引っ込めざるを得ない。16日でひと段落ならば、19日に開会し、多少の余裕をもって予算審議を行えたはずなのです。仮に26日なら金曜日ですから実質的には月曜日の29日開会ということになってしまいます。開会日を遅らせることで、事件と国会審議との期間を少しでも長くして、影響を小さくしたいという思惑もわからなくはないですが、予算成立への影響を懸念する声があがるのも当然でしょう」(先の政治部デスク)』、「「検察側からは・・・複数人の立件は避けられないと見られています」、ところが、結局、「立件」が見送られ、「検察」はミソをつけた。
・『火種を抱えた 始まる前から国会運営に支障をきたしかねない状況になっているというわけだ。まさに綱わたりの印象で、永田町界隈では「どうしてこういう選択になったのか不思議」との感想が主流なのだという。現場を仕切るのは国会対策委員長とはいえ、通常国会の開催日に関しては岸田首相の意向が強いとも指摘されている。 「多少開催日を後ろ倒ししたとて、予算委員会では野党から集中砲火を浴び、それがワイドショーも含めて格好のコンテンツになることは目に見えています。この判断はミスだったのでは」(同) 岸田首相は一連の騒動を受けて「国民の信頼回復のために、火の玉となって、自民党の先頭に立つ」と訴えたが……』、「岸田首相」は自らの派閥「岸田派」の人数の少なさというハンディを、安倍派を事実上壊滅させることで、乗り切ろうと企んでいるのかも知れない。
次に、本年1月11日付けダイモンド・オンラインが掲載したイトモス研究所所長の小倉健一氏による「焦る岸田首相、夜10時に「当日消費期限切れおにぎり」到着…能登地震お粗末対応の舞台裏」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/336956
・『元日に日本を襲った能登地震に対する政府対応が混乱を来している。官邸や防衛省の関係者、被災現場の声に耳を傾けると、岸田文雄首相が率いる官邸の拙い司令塔ぶりが浮き彫りとなった。 ※本記事の中ほどには被災住人の方から提供があった住宅や道路などの被災写真(1月7日午後、石川県羽咋郡志賀町)を掲載しています』、興味深そうだ。
・『能登地震の被災住民から受けた「現場写真」を含む情報提供 1月1日夕方、能登半島を大きな地震が襲った。筆者は、実家(実家の墓)が金沢市内にあり、石川県には浅からぬ縁を持っている。石川県は、北部の能登と南部の加賀で成り立っている。金沢市があるのは加賀で、幸いにして親戚や友人、知人で大きな被害を受けた人はいなかった。 また、金沢は1月6日の段階で、「完全に日常に戻ったとまではいかないまでも、普通に生活している」という情報を知り、1月7日に金沢へ入った。行ってみると、たしかにそこには普通の生活が存在していた。加賀にある旅亭懐石「のとや」の公式ホームページにはこんなことが記されている。) 「旅亭懐石のとやですが、能登震源地から遠いこともあり、幸いにも現状大きな被害はございません。余震も全く感じることもなく、通常通り営業しております」 「被災を受けなかった私達こそ、今できることを頑張ろう、経済を回し、石川県全体を元気にしようと考えました」 被災地の近くまで行けたことで、被災者と直接話をすることができた。今回、筆者が被災した住民から受けた情報提供(写真を含む)も踏まえて、本稿を書く。 今、「不要不急」の人間(政治家、ボランティアなど)が被災地に入ることに大きな批判が巻き起こっている。それは単純に被災地で道路インフラがズタズタになってしまっていて、慢性的に渋滞してしまっているためだ。 金沢から能登へと向かうケースは、被災者であっても緊急を要さない場合、高速道路を使わずに一般道路を使うよう指示が出ている。道路にはヒビが入っており、たとえ一度は修復したものでも、余震が続いていてヒビがまた大きくなっていることがよくある。そのため、夜や雪道では相当に慎重な運転が求められている。 さらに、能登半島北部では村落や集落の孤立化が激しい。土砂崩れや陥没で道路の寸断が相次いでいるためだ。生活に不可欠な飲料水や物資が尽きかけた場所も多い。津波被害に大雪まで加わり、被災者の疲労は日に日に限界へと近づいている』、「金沢から能登へと向かうケースは、被災者であっても緊急を要さない場合、高速道路を使わずに一般道路を使うよう指示が出ている。道路にはヒビが入っており、たとえ一度は修復したものでも、余震が続いていてヒビがまた大きくなっていることがよくある。そのため、夜や雪道では相当に慎重な運転が求められている」、交通事情は極めて厳しそうだ。
・『岸田首相率いる官邸の調整機能欠如とむちゃ振りで大混乱 そこへ、岸田文雄首相率いる官邸の「プッシュ型支援」がやって来る。 プッシュ型支援」とは、災害などの緊急時に、支援が必要とされる地域や人々に対して、その人々の要求を待たずに積極的に支援物資やサービスを提供するアプローチのことを指す。この方法は、支援の迅速化や効率化を目的としている。ただし場合によっては、実際のニーズと合わない支援が行われるリスクもあり、プッシュ型支援を行う際は、事前の情報収集や地域の状況把握が非常に重要となる。 「支持率が低迷する岸田首相は、何とか挽回のチャンスを得たいと焦っているようです。内閣府、自衛隊や警察の対応が思い通りにいかないと感じた官邸は、自治体のトップと岸田首相との『ホットライン』で得た情報を、『そのまま』『最優先で』『実行』するよう指示が飛んでいます」(防衛省関係者) 震災直後の自治体トップは冷静さを欠いていることがあり、これまでの震災の経験を踏まえた判断が官邸には求められるのだが、それを岸田首相はあえてしなかった。 「プッシュ型支援においても、内閣府が主体となって行う政府支援、経済産業省独自の支援、防衛省独自の支援が総合調整されないままに始まり、ニーズ取りも個別、物資の選定や輸送も個別で大混乱してしまった」(同) 「多少の混乱があるのは仕方ない面がありますが、被災地から『輸送された当日までしか消費期限がない大量のおにぎりが運ばれてきた』と抗議がありました。また、誰がまとめたか分からない出どころ不明の孤立者リストが出回り、これを『しらみつぶしにチェックしろ』という指示が飛んだのです。とにかく問題の根本は、岸田首相と自治体のトップとの直電話、ホットラインです。ホットラインを受けた岸田首相は『とにかく全力で何とかしろ』という指示を飛ばすのみ。冷静な判断力を失ってしまった」(同) 自衛隊が現場で得た実際の状況に関する情報や、緊急を要している行動の観点からはかけ離れた指示が最高司令官である岸田首相本人から飛んでくるのである。「現地の声を聞く、寄り添う総理」をアピールしたいのは分かるが、現地へマイクロマネジメントを仕掛けては混乱するだけであろう。 「混乱を極めたのは、官邸からの『被災地のニーズを確認するための御用聞き部隊を編成しろ』というむちゃ振りでした。そんなことに余力を割けるようなタイミングではなく、物資を支給する部隊が、配る際に住民からニーズをくみ取ればよかった。バックヤードで、混乱しがちな現場を落ち着かせる役目が本来、官邸には求められたはずです。しかし、官邸は混乱ばかりを招いてしまった」(同)』、「「混乱を極めたのは、官邸からの『被災地のニーズを確認するための御用聞き部隊を編成しろ』というむちゃ振りでした。そんなことに余力を割けるようなタイミングではなく、物資を支給する部隊が、配る際に住民からニーズをくみ取ればよかった。バックヤードで、混乱しがちな現場を落ち着かせる役目が本来、官邸には求められたはずです。しかし、官邸は混乱ばかりを招いてしまった」(同)」、「官邸は混乱ばかりを招いてしまった」とは手厳しい批判だ。
・『指揮系統がパニックに陥った結果 消費期限切れ直前おにぎり」到着 また、現地の自衛隊が頑張れば頑張るほどに、官邸は怒りのボルテージを上げていったという。 それは、能登半島中部で、自衛隊による給食支援が始まった、1月4日昼のことだ。当時のことについて、防衛省・自衛隊(災害対策)のX(旧Twitter)アカウントは次のようにポストしている。 「#統合任務部隊 (#中部方面後方支援隊)は #輪島市 三井公民館において #給食支援 活動を1月4日昼から開始しました。自衛隊は引き続き、被災者の皆様のニーズに可能な限り応えられるよう全力を期して参ります #災害派遣 #石川県 #令和6年能登半島地震」(1月4日16時57分) この迅速な対応が称賛されるかと思いきや、官邸の反応は違った。 「何で他の地域で支援が始まっていないんだ!今日中に始めろ!と激しい怒りの指示が飛びました」(官邸関係者) 誰もが急いで給食支援を行いたいのである。準備ができたところから開始したわけで、他の部隊がサボっているわけでも何でもない。小さな成功を称賛してこそ、現場は奮い立つのだ。 そして、怒りでパニックになった指揮系統によってこうしたことが重なり、先の防衛省関係者のコメントにあった「輸送された当日までしか消費期限がない大量のおにぎりが運ばれてきた」という事件につながっていく。 事実、1月6日に開催された「第13回災害対策本部員会議」(動画では30分過ぎに当該コメント)では石川県能登町の町長が次のように発言している。 「数々のご支援ありがとうございます。次から次と支援の方が能登町に訪れまして、たくさんのご意見をいただきながら勉強をさせて頂きながら対策を進めているところです。被害状況につきましては今日ようやく調査の指示を出したところです」 「これまでの支援を頂いて、ものすごく助かっていますが、昨日(1月5日午後)10時過ぎにおにぎり等の支援が到着しました。そのおにぎりの消費期限を見ますと1月5日であった。5日の晩に届いたおにぎりの消費期限が5日でありました。これを次の日になって被災者へお届けするのはいかがなものかと思いまして非常に悩みました。ぜひ、消費期限の少し長いものとか、できるだけ早い段階での物資の輸送をお願いしたい。文句を言っているわけではなくて、こういう事実があったということをご認識いただければと思っています」 司令塔の混乱ぶりをうかがわせるエピソードであろう。 「現場での被災者のための行動」と「総理、官邸による実績アピールのための行動」が乖離(かいり)し、総理のトップダウンによる災害対応は、被災者のためではなく、自身と政権のためでしかなくなっている。情けない限りだ』、「総理、官邸による実績アピールのための行動」が乖離(かいり)し、総理のトップダウンによる災害対応は、被災者のためではなく、自身と政権のためでしかなくなっている。情けない限りだ」、本当に情けない限りだ。
第三に、1月20日付けダイモンド・オンラインが掲載したイトモス研究所所長の小倉健一氏によう「能登地震「総理視察」は完全失敗!岸田首相のメンツ優先、初動の遅れはもはや“人災”だ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/337587
・『岸田文雄首相による能登半島地震の被災地視察に対して、批判の声が数多く上がっている。なぜこんなことになってしまったのか』、興味深そうだ。
・『岸田首相の総理視察は被災地「観光旅行」に終わった やはり危惧していた通りに、岸田文雄首相の総理視察は無意味な被災地「観光旅行」になってしまったようだ。被災地から不満の声が上がっている。一体何が起きているのだろうか。 石川県の馳浩知事は、岸田首相の視察でのやりとりを振り返り、現在の被災地のフェーズをこう話している。 「まず、本日、岸田総理、松村(祥史)防災担当大臣と共にヘリから被災状況を視察しました。また、輪島市、珠洲市の避難所を訪問しました」 「今は、発災直後の段階から移行し、1.5次、2次避難を大きく進めるというフェーズであり、岸田総理とは改めて、災害関連死を防ぐため、現地の避難所からできる限り多くの避難者を1.5次避難所や2次避難所等に移送するとともに、孤立集落の避難者を丸ごと金沢市以南の避難所に移送するミッション、この二つの面からの取り組みをさらに加速させる必要があることで一致しました」(1月14日・第21回石川県災害対策本部員会議) つまり、現状は発災直後の救急活動、命を守る、救う活動から、第二の段階へと移行する最中であると言っている。今、被災地で求められているのは、感染症が蔓延(まんえん)していたり、インフラもズタズタのままだったりする避難所から、より安全な避難所への「引っ越し」である。 では、岸田首相の視察は、その流れに沿った形でできたのであろうか。時事通信の「首相動静」(1月14日)を見ると、首相の視察の動線が細かく記されている。必要と思われる部分だけかいつまんで紹介する』、「現状は発災直後の救急活動、命を守る、救う活動から、第二の段階へと移行する最中である・・・今、被災地で求められているのは、感染症が蔓延(まんえん)していたり、インフラもズタズタのままだったりする避難所から、より安全な避難所への「引っ越し」である」、なるほど。
・『「首相動静」に見る総理視察の大失敗 午前7時44分、陸上自衛隊ヘリコプターで官邸屋上ヘリポート発。 午前9時31分、石川県小松市の空自小松基地着。 午前10時32分、同県輪島市の空自輪島分屯基地着。隊員らを激励。 午前10時46分、同市立輪島中学校着。能登半島地震の避難所を視察。被災者と意見交換。松村祥史防災担当相、馳浩知事同行。 午前11時11分、同所発。 午前11時19分、空自輪島分屯基地着。同28分、陸自ヘリで同所発。被災現場を上空から視察。 午前11時54分、珠洲市の野々江総合公園着。同56分、同所発。午後0時1分、同市立緑丘中学校着。避難所を視察。被災者と意見交換。 午後1時17分、金沢市の陸自金沢駐屯地着。 午後1時48分、同市の石川県庁着。昼食。馳知事、古賀篤内閣府副大臣らと意見交換。 午後2時25分から同53分まで、馳知事から要望書受け取り。意見交換。 午後4時6分、小松市の空自小松基地着。同24分、空自輸送機で同所発 ものの見事に、被災地を巡っただけである。前述の通り、今、必要なことは、被災者の1.5次、2次避難を進めることだ。馳知事の発言を見れば分かるように、視察には「安全な1.5次、2次避難所」を組み込んで、被災者が安心して「引っ越し」ができるようにメッセージを送るのが、岸田首相の最大のミッションだったはずである。 日本のリーダーが被災地へ行ったところで、物理的には何の意味もない。安倍晋三元首相が暗殺され、昨年は岸田首相自らの暗殺未遂事件もあった「総理大臣職」がどこかへ行くとなれば、厳重な警備体制が敷かれ、感染症が蔓延する被災地に大人数が押しかけなければならない。その行為自体だけを考えれば、ただの「迷惑行為」なのである。) しかし他方で、「総理大臣」が来ることで励まされる被災者もいるかもしれないし、メディアによって被災地のことが大きく報道されることを考えれば、それはメリットといえる。つまり総理視察は、被災者に希望を持たせ、そして次の行動を促す「大事なメッセージを発信する場」であると割り切らねばならないということだ。 大事なメッセージを発信する場と捉えたときに、岸田首相の訪問によって被災者の安心は増したのだろうか。1.5次、2次避難所へと被災者に「引っ越し」をしてもらうための説得材料になったのだろうか。その答えは、残念ながら0点だ。失敗だった』、「大事なメッセージを発信する場と捉えたときに、岸田首相の訪問によって被災者の安心は増したのだろうか。1.5次、2次避難所へと被災者に「引っ越し」をしてもらうための説得材料になったのだろうか。その答えは、残念ながら0点だ。失敗だった」、なるほど。
・『総理視察に対して被災者からは冷たい反応 今回、被災地視察について「官邸内部からも慎重論が出ていたにもかかわらず、岸田首相が視察を強行したのは、歴代総理が発災から数日で被災地入りしていたことを念頭に置いた、自身のメンツを最優先する岸田首相の強い意向があった」(官邸関係者)のだという。 確かに、東日本大震災当時の首相だった菅直人氏は発災翌日に福島原子力発電所に乗り込んだが、混乱に拍車をかけただけだった。 孤立集落がいまだにあり、食糧不足や電気不足が解消されず、何より感染症が蔓延する被災地である。道路が寸断されているために自衛隊や警察、消防を大量に派遣できていない現状では、これまでの総理視察と時期だけを競っても仕方がない。総理視察は、もっと後になってもよかったはずだ。 岸田首相が「被災地へ負担をかけてしまうために被災地へまだ入れない」ということをメッセージで出さないのだから、被災地の反応は当然冷たいものだった。新聞各紙が拾った被災者の言葉がそれを物語っている。) 《発生から14日目の駆け足の訪問に「今更来たのか」「励ましが足りない」と冷ややかな視線も向けられた》 《地震が起きた1日から身を寄せる井上美紀さん(75)は「首相の地震対応は遅い」と手厳しい。一部の教室などを回って30分間程度で切り上げた姿を見つめ「体育館で皆を大声で励ましたりしてくれれば、心持ちも違うのに」と不満がった》(「産経新聞」1月14日) 《「裏金問題もある中でのパフォーマンスではないか」。3階の教室に身を寄せる市内の60代女性の反応は冷ややかだ。「わずかな時間、1階をのぞいただけでヘリコプターで帰っていった。どんな思いで来たのかもわからない」と取材に不満をこぼした》(毎日新聞・1月14日) 被災者に何一つ希望を与えられず、総理視察は大失敗に終わった。そもそもあれだけ国民に対して「被災地へ入るな」と言っておきながら、自分だけは行くというのはメッセージとして最悪だろう。岸田官邸はもはや、自分たちのやっていることと言っていることの整合性すらとれない状態なのだろう』、「「裏金問題もある中でのパフォーマンスではないか」。3階の教室に身を寄せる市内の60代女性の反応は冷ややかだ。「わずかな時間、1階をのぞいただけでヘリコプターで帰っていった。どんな思いで来たのかもわからない」と取材に不満をこぼした》(毎日新聞・1月14日) 被災者に何一つ希望を与えられず、総理視察は大失敗に終わった。そもそもあれだけ国民に対して「被災地へ入るな」と言っておきながら、自分だけは行くというのはメッセージとして最悪だろう。岸田官邸はもはや、自分たちのやっていることと言っていることの整合性すらとれない状態なのだろう」、手厳しい批判だ。
・『災害危機管理の専門家が考察 「初動には人災の要素を感じます」 そんな中、石川県の災害危機管理アドバイザーも務めてきた神戸大学名誉教授の室崎益輝氏が、能登半島地震について興味深い考察をしている。 《初動対応の遅れがとても気になりました。これまでの多くの大震災では、発災から2、3日後までに自衛隊が温かい食事やお風呂を被災された方々に提供してきました。でも今回は遅れた。緊急消防援助隊の投入も小出しで、救命ニーズに追いついていない。本来は「想定外」を念頭に、迅速に自衛隊、警察、消防を大量に派遣するべきでした。被災状況の把握が直後にできなかったために、国や県のトップがこの震災を過小評価してしまったのではないでしょうか。初動には人災の要素を感じます》 《苦しんでいる被災者を目の前にして、「道路が渋滞するから控えて」ではなく、「公の活動を補完するために万難を排して来て下さい」と言うべきでした。マンパワー不足と専門的なノウハウの欠如で、後手後手の対応が続いてしまっている。政府は「お金は出します」というリップサービスではなく、関連死を防ぐなどの緊急ニーズに応えられる具体的な対策を提供すべきで、「必要な人材を出します」というサービスに徹するべきです》(「朝日新聞」1月14日) 被災地からここまで不信感を持たれる首相は、菅直人氏以来ではないか。危機にあって、適切な行動が取れないリーダーなど要らない』、「これまでの多くの大震災では、発災から2、3日後までに自衛隊が温かい食事やお風呂を被災された方々に提供してきました。でも今回は遅れた。緊急消防援助隊の投入も小出しで、救命ニーズに追いついていない。本来は「想定外」を念頭に、迅速に自衛隊、警察、消防を大量に派遣するべきでした。被災状況の把握が直後にできなかったために、国や県のトップがこの震災を過小評価してしまったのではないでしょうか。初動には人災の要素を感じます・・・政府は「お金は出します」というリップサービスではなく、関連死を防ぐなどの緊急ニーズに応えられる具体的な対策を提供すべきで、「必要な人材を出します」というサービスに徹するべきです・・・被災地からここまで不信感を持たれる首相は、菅直人氏以来ではないか」、極めて厳しい批判だ。「岸田首相」は安倍前首相時代にシャドーボクシングをしていた筈だが、いざ本番となると上手くいかないようだ。
タグ:(その9)(もはや「切れるカードがない」法務検察からのメッセージも見過ごした岸田官邸の惨、焦る岸田首相 夜10時に「当日消費期限切れおにぎり」到着…能登地震お粗末対応の舞台裏、能登地震「総理視察」は完全失敗!岸田首相のメンツ優先、初動の遅れはもはや“人災”だ) 「「混乱を極めたのは、官邸からの『被災地のニーズを確認するための御用聞き部隊を編成しろ』というむちゃ振りでした。そんなことに余力を割けるようなタイミングではなく、物資を支給する部隊が、配る際に住民からニーズをくみ取ればよかった。バックヤードで、混乱しがちな現場を落ち着かせる役目が本来、官邸には求められたはずです。しかし、官邸は混乱ばかりを招いてしまった」(同)」、「官邸は混乱ばかりを招いてしまった」とは手厳しい批判だ。 被災地からここまで不信感を持たれる首相は、菅直人氏以来ではないか」、極めて厳しい批判だ。「岸田首相」は安倍前首相時代にシャドーボクシングをしていた筈だが、いざ本番となると上手くいかないようだ。 「金沢から能登へと向かうケースは、被災者であっても緊急を要さない場合、高速道路を使わずに一般道路を使うよう指示が出ている。道路にはヒビが入っており、たとえ一度は修復したものでも、余震が続いていてヒビがまた大きくなっていることがよくある。そのため、夜や雪道では相当に慎重な運転が求められている」、交通事情は極めて厳しそうだ。 「これまでの多くの大震災では、発災から2、3日後までに自衛隊が温かい食事やお風呂を被災された方々に提供してきました。でも今回は遅れた。緊急消防援助隊の投入も小出しで、救命ニーズに追いついていない。本来は「想定外」を念頭に、迅速に自衛隊、警察、消防を大量に派遣するべきでした。被災状況の把握が直後にできなかったために、国や県のトップがこの震災を過小評価してしまったのではないでしょうか。初動には人災の要素を感じます・・・ 「「検察側からは・・・複数人の立件は避けられないと見られています」、ところが、結局、「立件」が見送られ、「検察」はミソをつけた。 「メザシの土光がいれば……・・・ないものねだりに等しい願望と言えそうだ」、なるほど。 被災者に何一つ希望を与えられず、総理視察は大失敗に終わった。そもそもあれだけ国民に対して「被災地へ入るな」と言っておきながら、自分だけは行くというのはメッセージとして最悪だろう。岸田官邸はもはや、自分たちのやっていることと言っていることの整合性すらとれない状態なのだろう」、手厳しい批判だ。 「「裏金問題もある中でのパフォーマンスではないか」。3階の教室に身を寄せる市内の60代女性の反応は冷ややかだ。「わずかな時間、1階をのぞいただけでヘリコプターで帰っていった。どんな思いで来たのかもわからない」と取材に不満をこぼした》(毎日新聞・1月14日) 「大事なメッセージを発信する場と捉えたときに、岸田首相の訪問によって被災者の安心は増したのだろうか。1.5次、2次避難所へと被災者に「引っ越し」をしてもらうための説得材料になったのだろうか。その答えは、残念ながら0点だ。失敗だった」、なるほど。 「“切れるカードがない”というのが残念ながら官邸幹部らの合言葉のような状況です。政権浮揚策がない中、できるだけ早いタイミングで派閥の今回問題となった政治資金パーティーなどに関する改革を検討するため、新たな組織を立ち上げる考えが示されましたが、中身は全くと言って良いほど固まっていません」、なるほど。 デイリー新潮「もはや「切れるカードがない」法務検察からのメッセージも見過ごした岸田官邸の惨状」 「現状は発災直後の救急活動、命を守る、救う活動から、第二の段階へと移行する最中である・・・今、被災地で求められているのは、感染症が蔓延(まんえん)していたり、インフラもズタズタのままだったりする避難所から、より安全な避難所への「引っ越し」である」、なるほど。 キシダノミクス 「岸田首相」は自らの派閥「岸田派」の人数の少なさというハンディを、安倍派を事実上壊滅させることで、乗り切ろうと企んでいるのかも知れない。 小倉健一氏によう「能登地震「総理視察」は完全失敗!岸田首相のメンツ優先、初動の遅れはもはや“人災”だ」 「総理、官邸による実績アピールのための行動」が乖離(かいり)し、総理のトップダウンによる災害対応は、被災者のためではなく、自身と政権のためでしかなくなっている。情けない限りだ」、本当に情けない限りだ。 小倉健一氏による「焦る岸田首相、夜10時に「当日消費期限切れおにぎり」到着…能登地震お粗末対応の舞台裏」 ダイモンド・オンライン
情報セキュリティー・サイバー犯罪(その9)(中国ハッカーが日本の防衛機密をハッキング 米国の通報で発覚、中国への情報流出 アプリ以外も危険!日本に普及中「最新中国製品」も要注意、「CISOが不在」日本企業の重大すぎる経営リスク 生成AIによる効率的なセキュリティ対策も課題) [社会]
情報セキュリティー・サイバー犯罪については、2022年5月19日に取上げた。今日は、(その9)(中国ハッカーが日本の防衛機密をハッキング 米国の通報で発覚、中国への情報流出 アプリ以外も危険!日本に普及中「最新中国製品」も要注意、「CISOが不在」日本企業の重大すぎる経営リスク 生成AIによる効率的なセキュリティ対策も課題)である。
先ずは、昨年8月8日付けForbes「中国ハッカーが日本の防衛機密をハッキング、米国の通報で発覚」を紹介しよう。
・『ワシントン・ポストは8月7日、中国の軍事ハッカーが2020年以降、日本の防衛機密ネットワークにアクセスし、米国の同盟国である日本の軍事能力や計画に関する情報にアクセスしていたと報じた。 このハッキングは米国の国家安全保障局(NSA)によって2020年秋に発見されたという。中国の人民解放軍のハッカーらは、日本の自衛隊の計画や能力、軍事的欠点の評価にアクセスするなど、深く執拗な情報収集を行っていたと、複数の米国の元高官がポスト紙に語っている。 報告を受けたNSAと米サイバー軍のトップのポール・ナカソネ陸軍大将と、当時ホワイトハウスの国家安全保障副顧問だったマシュー・ポッティンジャーが東京に急行して防衛大臣に説明を行い、首相にも伝えたとポスト紙は報じている。 このハッキングはトランプ政権下で始まったが、バイデン政権下でも続き、2021年には日本の防衛システムへの侵入が続いていることを示す新たなデータが発見され、情報漏洩が続いていることが発覚した。日米の両国は最終的に、日本の民間企業の手を借りて脆弱性を評価することに合意し、米国のNSAとサイバー軍のチームがその調査結果を確認し、情報漏洩を防ぐ方法について提言を行ったという。 フォーブスは、国務省にコメントを求めたが現時点で回答は得られていない。 「これは衝撃的なほどに酷い情報漏洩だった」とポスト紙の取材に応じた元米軍関係者は語っている。 日本の政府関係者は、ネットワークセキュリティを強化するために、今後5年間で自衛隊のサイバーセキュリティ部隊を4000人規模にすると述べている。さらに、ネットワークを24時間365日監視するサイバー司令部を発足させ、5年間で70億ドル(約1兆円)をサイバーセキュリティに費やす計画だと日本の防衛関係者はポスト紙の取材に語った。 「今回のハッキングにおける日本の当局の対応の遅さは、米国が同盟国である日本と共有する情報の量を減らすことにつながるかもしれない」と米政府関係者はポスト紙に語った』、「日本の防衛当局」の「ハッキングにおける対応の遅さ」は、」、「米国が同盟国である日本と共有する情報の量を減らすことにつながるかもしれない」、全くみっともない限りだ。
次に、昨年8月12日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した日本カウンターインテリジェンス協会代表理事の稲村 悠氏による「中国への情報流出、アプリ以外も危険!日本に普及中「最新中国製品」も要注意」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/327406
・『プロパガンダ工作に適したTikTokの危険性 中国企業が運営する動画共有アプリ「TikTok」について、かねてその危険性は指摘されている。 米経済誌「フォーブス」によれば、TikTokは、欧州のユーザーに向けて、中国政府のプロパガンダ機関による広告を大量に配信してきたことが、7月20日に公開された広告ライブラリーから明らかになったという。広告の中には、新疆ウイグル自治区を観光地として宣伝するものや中国によるコロナ政策を賛辞するものなどが含まれているという。 また、プロパガンダ工作に適した動画を意図的に“おすすめ動画”にして多くのユーザーに閲覧させたり、意図的に特定の動画を排除、浮上させるなど、プロパガンダにはうってつけのアプリのようだ。 さらにTikTokユーザーの情報が意図的に中国に収集される危険性も指摘されており、過去には一部のスタッフが、2人のジャーナリストを含むアメリカ市民のユーザーデータに不適切にアクセスしたと、ニューヨーク・タイムズが報じている。 TikTokのプロパガンダ機能やスパイアプリとしての危険性は広く知られつつあるが、注意すべきアプリはTikTokだけではない』、「TikTok」は、「プロパガンダ工作に適した動画を意図的に“おすすめ動画”にして多くのユーザーに閲覧させたり、意図的に特定の動画を排除、浮上させるなど、プロパガンダにはうってつけのアプリのようだ。 さらにTikTokユーザーの情報が意図的に中国に収集される危険性も指摘されており、過去には一部のスタッフが、2人のジャーナリストを含むアメリカ市民のユーザーデータに不適切にアクセスしたと、ニューヨーク・タイムズが報じている」、なるほど。
・『8月に日本でリリースされた格安ECアプリの「Temu」 「ピンドゥオドゥオ(拼多多)」というアプリをご存じだろうか。 ピンドゥオドゥオは、2015年に上海で創業した企業PDDホールディングスがリリースした、月間7億5000万人が利用する中国3位のECアプリであるが、実は、ユーザーの通話記録や文字メッセージ、写真アルバムなどに不正アクセスしていたことが明らかになっている。 CNNは、ピンドゥオドゥオに不正なコードが発見され、グーグルのアンドロイドOSの脆弱(ぜいじゃく)性を利用し、ユーザーの同意なく、携帯電話の使用内容やデータにアクセスしていることが判明したと報じている。 ピンドゥオドゥオのアプリに内蔵された不正なコードは、一度インストールすると、アプリを削除しても、不正なコードを除去することが非常に難しいとみられている。 そして、その「ピンドゥオドゥオ」をリリースしたPDDホールディングスから、格安ECアプリ「Temu」が日本でリリースされ、8月2日現在でAppstoreの無料Appランキングで1位を獲得している。さらに2位は「TikTok Lite」だ。 これらアプリによって、ユーザーの情報が同意なく収集された場合、その情報は中国による諜報(ちょうほう)活動や情報戦、プロパガンダ工作などの各種工作活動に活用されるのは言うまでもない。 仮に、ここまで解説したアプリの運営会社に悪意がなくとも、中国には、善意の企業さえ政府の意図に従わせる法的根拠がある。 中国の国家情報法は、安全保障や治安維持のために、企業も民間人も中国政府の情報収集活動に協力しなければならないと義務づけ、中国政府は企業などが持つデータをいつでも要求できる。要は、中国政府が情報を出せと言えば、企業は従わざるを得ないのだ。同法は、日本をはじめ外国の企業も当然対象となる。 ちなみに、これは運営企業が“善意”で運営していたら、という仮定の話である。アプリの運営会社の中には、中国政府の意向に忠実で、アプリを世界で流行させ、バックドアを仕掛け、日常的に情報を収集する意図を持っている会社もあり得るだろう』、「格安ECアプリ「Temu」が日本でリリースされ、8月2日現在でAppstoreの無料Appランキングで1位を獲得している。さらに2位は「TikTok Lite」だ。 これらアプリによって、ユーザーの情報が同意なく収集された場合、その情報は中国による諜報(ちょうほう)活動や情報戦、プロパガンダ工作などの各種工作活動に活用されるのは言うまでもない」、恐ろしいことだ。
・『アプリだけではない中国製自動車の脅威 注意すべきは、アプリだけではない。 中国製電気自動車(EV)の日本進出が進んでいる。 テスラを抜き、EV販売台数世界一となった中国自動車メーカー「比亜迪(BYD)」が日本に本格進出を開始、既に日本の交通機関にも食い込んでおり、京阪バスが京都市内を走る路線においてBYD製EVバスの運行を始めている。 ちなみに、このBYDであるが、BYDの日本法人社長の劉学亮氏が、東京新聞の取材に対し、「2010年に、金型メーカー・オギハラの館林工場を買収し、この金型企業から日本のものづくりを勉強できた」と話したという。 このオギハラは、当時世界一の金型加工技術を持っていたとされ、まさに、経済安全保障の技術流出例の典型例であった。 さて、BYDを例になぜ中国製自動車が危険なのかを述べてみたい。 中国政府の動きがヒントとなる。 中国はテスラ社製自動車の軍施設や軍関係者の居住地などへの乗り入れを禁止している。 その理由は、自動車のGPS情報による施設内の主要場所の把握や車載カメラの動画情報など多くのデータが収集されることを警戒していることにあるとみられる。 これはつまり、路線バスなどに加え、例えば宅配業者に中国製自動車を普及させ、自衛隊基地に出入りすることが可能になれば、基地内の施設の場所が容易に把握できることを意味している。 また、「動くスマートフォン」といわれる現代の自動車においては、例えばコネクテッドカーにおいては、ハッキングやバックドアによってナビでの検索履歴はもちろん、過去の移動ルート、さらには電子メールやメッセージ、通話履歴にアクセスされる危険性も指摘されている。 中国は各国のインフラに中国製自動車を普及させることにより、自動車を通じて相手国の多大な情報を収集することが可能となる』、「路線バスなどに加え、例えば宅配業者に中国製自動車を普及させ、自衛隊基地に出入りすることが可能になれば、基地内の施設の場所が容易に把握できることを意味している。 また、「動くスマートフォン」といわれる現代の自動車においては、例えばコネクテッドカーにおいては、ハッキングやバックドアによってナビでの検索履歴はもちろん、過去の移動ルート、さらには電子メールやメッセージ、通話履歴にアクセスされる危険性も指摘されている。 中国は各国のインフラに中国製自動車を普及させることにより、自動車を通じて相手国の多大な情報を収集することが可能となる」、大変だ。
・『米フィットネスアプリで暴かれた米軍の秘密基地 EVが位置情報をトラッキングすることで施設内の位置関係が把握できるのと同様の危険性は、GPS情報を取得するスマートフォンアプリにも指摘できる。 スマートフォンなどのGPS情報を使ってジョギングなどのアクティビティーを記録・分析できる米国発のサービスフィットネスアプリ「Strava」に搭載された機能「Heatmap」が、アメリカ軍のトップシークレットであった秘密基地の存在を浮き彫りにした。 このHeatmap機能は、アプリを使っている人がどの場所で多くのアクティビティーを行っているのかを色で示すことができる。Strava社が公開したHeatmapにアクティビティーの情報が色によって示され、米軍基地で任務にあたる兵士などがスマートフォンやスマートウォッチなどのウエアラブル端末のトラッキング機能をオンにしたままにしたことにより、その活動の全てが記録され、基地の場所が暴露されてしまった。 この画像はHeatmapで把握されたニジェールのフランス軍基地である。位置情報を収集し続けることにより、施設の形がくっきりと可視化される。フィットネスアプリにはこのような危険性が潜むのだ。 Stravaは中国製アプリではないが、いずれにせよ、中国製電気自動車も含めた、位置情報をトラッキングできる商品の普及によるリスクはご理解いただけたのではないだろうか』、「中国製電気自動車も含めた、位置情報をトラッキングできる商品の普及によるリスク」、確かに気を付けるべきだ。
・『日本の農業における中国製ドローンの危険性 ドローンについても、位置情報やカメラを通じた施設情報の収集の危険が指摘される。だが、問題はそれだけではない。 韓国では、農業用ドローンのシェアのうち中国製ドローンが7割を超える。 韓国自治体が農業用ドローンの支援事業を進める際、中国企業の製品に合わせた規格で入札を実施していることが背景にある。 この農業用ドローンについて、ドローンの農薬散布手法などの農業の生産性に関わる重要な農業防除データが中国に流れる可能性も指摘されており。食糧安全保障を脅かしている状態だ。 日本においても、日本の農業用ドローンのうち実に7割程度が中国企業であるDJI製だと推定されており、韓国と同様の危険が顕在化している。 ここまで、中国製アプリを代表に、いくつかの中国製品が日本に浸透することによる危険性について例示して解説したが、日本においてどれだけの人がこの危険性を認識しているだろうか。 その危険性に関する認識・意識が甘ければ、その脅威にのみ込まれる未来しかないだろう。 中国製品の全てを疑い、全て忌避しろとは言わないが、せめて各国で指摘されている危険性については認識し、自身で判断できる意識は持っておきたい。そして、国としても明確に危険性が指摘されている製品については、国民に知らせる責務があると考える。 いずれにせよ、カウンターインテリジェンス(防諜)の重要性について、国民の意識や関心を高めることが、迫る脅威に立ち向かう最大の防御策となるだろう』、「日本においても、日本の農業用ドローンのうち実に7割程度が中国企業であるDJI製だと推定されており、韓国と同様の危険が顕在化している・・・日本においても、日本の農業用ドローンのうち実に7割程度が中国企業であるDJI製だと推定されており、韓国と同様の危険が顕在化している・・・カウンターインテリジェンス(防諜)の重要性について、国民の意識や関心を高めることが、迫る脅威に立ち向かう最大の防御策となるだろう」、その通りだ。
次に、8月12日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した日本カウンターインテリジェンス協会代表理事の稲村 悠氏による「中国への情報流出、アプリ以外も危険!日本に普及中「最新中国製品」も要注意」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/327406
・『プロパガンダ工作に適したTikTokの危険性 中国企業が運営する動画共有アプリ「TikTok」について、かねてその危険性は指摘されている。 米経済誌「フォーブス」によれば、TikTokは、欧州のユーザーに向けて、中国政府のプロパガンダ機関による広告を大量に配信してきたことが、7月20日に公開された広告ライブラリーから明らかになったという。広告の中には、新疆ウイグル自治区を観光地として宣伝するものや中国によるコロナ政策を賛辞するものなどが含まれているという。 また、プロパガンダ工作に適した動画を意図的に“おすすめ動画”にして多くのユーザーに閲覧させたり、意図的に特定の動画を排除、浮上させるなど、プロパガンダにはうってつけのアプリのようだ。 さらにTikTokユーザーの情報が意図的に中国に収集される危険性も指摘されており、過去には一部のスタッフが、2人のジャーナリストを含むアメリカ市民のユーザーデータに不適切にアクセスしたと、ニューヨーク・タイムズが報じている。 TikTokのプロパガンダ機能やスパイアプリとしての危険性は広く知られつつあるが、注意すべきアプリはTikTokだけではない』、「TikTok」は情報セキュリティ上極めて問題が多い怖いソフトのようだ。
・『8月に日本でリリースされた格安ECアプリの「Temu」 「ピンドゥオドゥオ(拼多多)」というアプリをご存じだろうか。 ピンドゥオドゥオは、2015年に上海で創業した企業PDDホールディングスがリリースした、月間7億5000万人が利用する中国3位のECアプリであるが、実は、ユーザーの通話記録や文字メッセージ、写真アルバムなどに不正アクセスしていたことが明らかになっている。 CNNは、ピンドゥオドゥオに不正なコードが発見され、グーグルのアンドロイドOSの脆弱(ぜいじゃく)性を利用し、ユーザーの同意なく、携帯電話の使用内容やデータにアクセスしていることが判明したと報じている。 ピンドゥオドゥオのアプリに内蔵された不正なコードは、一度インストールすると、アプリを削除しても、不正なコードを除去することが非常に難しいとみられている。 そして、その「ピンドゥオドゥオ」をリリースしたPDDホールディングスから、格安ECアプリ「Temu」が日本でリリースされ、8月2日現在でAppstoreの無料Appランキングで1位を獲得している。さらに2位は「TikTok Lite」だ。 これらアプリによって、ユーザーの情報が同意なく収集された場合、その情報は中国による諜報(ちょうほう)活動や情報戦、プロパガンダ工作などの各種工作活動に活用されるのは言うまでもない。 仮に、ここまで解説したアプリの運営会社に悪意がなくとも、中国には、善意の企業さえ政府の意図に従わせる法的根拠がある。 中国の国家情報法は、安全保障や治安維持のために、企業も民間人も中国政府の情報収集活動に協力しなければならないと義務づけ、中国政府は企業などが持つデータをいつでも要求できる。要は、中国政府が情報を出せと言えば、企業は従わざるを得ないのだ。同法は、日本をはじめ外国の企業も当然対象となる。 ちなみに、これは運営企業が“善意”で運営していたら、という仮定の話である。アプリの運営会社の中には、中国政府の意向に忠実で、アプリを世界で流行させ、バックドアを仕掛け、日常的に情報を収集する意図を持っている会社もあり得るだろう』、「格安ECアプリ「Temu」が日本でリリースされ、8月2日現在でAppstoreの無料Appランキングで1位を獲得している。さらに2位は「TikTok Lite」だ。 これらアプリによって、ユーザーの情報が同意なく収集された場合、その情報は中国による諜報(ちょうほう)活動や情報戦、プロパガンダ工作などの各種工作活動に活用されるのは言うまでもない」、「日本」も大いに注意すべきだ。
・『アプリだけではない中国製自動車の脅威 注意すべきは、アプリだけではない。 中国製電気自動車(EV)の日本進出が進んでいる。 テスラを抜き、EV販売台数世界一となった中国自動車メーカー「比亜迪(BYD)」が日本に本格進出を開始、既に日本の交通機関にも食い込んでおり、京阪バスが京都市内を走る路線においてBYD製EVバスの運行を始めている。 ちなみに、このBYDであるが、BYDの日本法人社長の劉学亮氏が、東京新聞の取材に対し、「2010年に、金型メーカー・オギハラの館林工場を買収し、この金型企業から日本のものづくりを勉強できた」と話したという。 このオギハラは、当時世界一の金型加工技術を持っていたとされ、まさに、経済安全保障の技術流出例の典型例であった。 さて、BYDを例になぜ中国製自動車が危険なのかを述べてみたい。 中国政府の動きがヒントとなる。 中国はテスラ社製自動車の軍施設や軍関係者の居住地などへの乗り入れを禁止している。 その理由は、自動車のGPS情報による施設内の主要場所の把握や車載カメラの動画情報など多くのデータが収集されることを警戒していることにあるとみられる。 これはつまり、路線バスなどに加え、例えば宅配業者に中国製自動車を普及させ、自衛隊基地に出入りすることが可能になれば、基地内の施設の場所が容易に把握できることを意味している。 また、「動くスマートフォン」といわれる現代の自動車においては、例えばコネクテッドカーにおいては、ハッキングやバックドアによってナビでの検索履歴はもちろん、過去の移動ルート、さらには電子メールやメッセージ、通話履歴にアクセスされる危険性も指摘されている。 中国は各国のインフラに中国製自動車を普及させることにより、自動車を通じて相手国の多大な情報を収集することが可能となる』、「「動くスマートフォン」といわれる現代の自動車においては、例えばコネクテッドカーにおいては、ハッキングやバックドアによってナビでの検索履歴はもちろん、過去の移動ルート、さらには電子メールやメッセージ、通話履歴にアクセスされる危険性も指摘されている」、なるほど。
・『米フィットネスアプリで暴かれた米軍の秘密基地 EVが位置情報をトラッキングすることで施設内の位置関係が把握できるのと同様の危険性は、GPS情報を取得するスマートフォンアプリにも指摘できる。 スマートフォンなどのGPS情報を使ってジョギングなどのアクティビティーを記録・分析できる米国発のサービスフィットネスアプリ「Strava」に搭載された機能「Heatmap」が、アメリカ軍のトップシークレットであった秘密基地の存在を浮き彫りにした。 このHeatmap機能は、アプリを使っている人がどの場所で多くのアクティビティーを行っているのかを色で示すことができる。Strava社が公開したHeatmapにアクティビティーの情報が色によって示され、米軍基地で任務にあたる兵士などがスマートフォンやスマートウォッチなどのウエアラブル端末のトラッキング機能をオンにしたままにしたことにより、その活動の全てが記録され、基地の場所が暴露されてしまった。 この画像はHeatmapで把握されたニジェールのフランス軍基地である。位置情報を収集し続けることにより、施設の形がくっきりと可視化される。フィットネスアプリにはこのような危険性が潜むのだ。 Stravaは中国製アプリではないが、いずれにせよ、中国製電気自動車も含めた、位置情報をトラッキングできる商品の普及によるリスクはご理解いただけたのではないだろうか』、「中国製電気自動車も含めた、位置情報をトラッキングできる商品の普及によるリスク」に十分に注意する必要がある。
・『日本の農業における中国製ドローンの危険性 ドローンについても、位置情報やカメラを通じた施設情報の収集の危険が指摘される。だが、問題はそれだけではない。 韓国では、農業用ドローンのシェアのうち中国製ドローンが7割を超える。 韓国自治体が農業用ドローンの支援事業を進める際、中国企業の製品に合わせた規格で入札を実施していることが背景にある。 この農業用ドローンについて、ドローンの農薬散布手法などの農業の生産性に関わる重要な農業防除データが中国に流れる可能性も指摘されており。食糧安全保障を脅かしている状態だ。 日本においても、日本の農業用ドローンのうち実に7割程度が中国企業であるDJI製だと推定されており、韓国と同様の危険が顕在化している。 ここまで、中国製アプリを代表に、いくつかの中国製品が日本に浸透することによる危険性について例示して解説したが、日本においてどれだけの人がこの危険性を認識しているだろうか。 その危険性に関する認識・意識が甘ければ、その脅威にのみ込まれる未来しかないだろう。 中国製品の全てを疑い、全て忌避しろとは言わないが、せめて各国で指摘されている危険性については認識し、自身で判断できる意識は持っておきたい。そして、国としても明確に危険性が指摘されている製品については、国民に知らせる責務があると考える。 いずれにせよ、カウンターインテリジェンス(防諜)の重要性について、国民の意識や関心を高めることが、迫る脅威に立ち向かう最大の防御策となるだろう』、「中国製品の全てを疑い、全て忌避しろとは言わないが、せめて各国で指摘されている危険性については認識し、自身で判断できる意識は持っておきたい。そして、国としても明確に危険性が指摘されている製品については、国民に知らせる責務があると考える」、その通りだ。
第三に、本年1月26日付け東洋経済オンラインが掲載したライター の長谷川 敦氏による「「CISOが不在」日本企業の重大すぎる経営リスク 生成AIによる効率的なセキュリティ対策も課題」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/729787
・『日本はセキュリティ人材の不足が長らく続いているが、現場だけでなく、統括を担う「CISO(Chief Information Security Officer、最高情報セキュリティ責任者)」も足りていない。 NRIセキュアテクノロジーズが2024年1月25日に発表した「企業における情報セキュリティ実態調査 NRI Secure Insight 2023」によれば、CISOを設置している日本企業は、アメリカやオーストラリアの半数以下にとどまっている。 CISO未設置の経営リスクや人材確保のポイントについて、情報セキュリティ実態調査の監修を務めた同社DXセキュリティプラットフォーム事業本部本部長の足立道拡氏に聞いた』、「CISOを設置している日本企業は、アメリカやオーストラリアの半数以下」、致命的な立ち遅れだ。
・『経営とセキュリティの両方がわかる人材が必要 「CISOは、CEO(最高経営責任者)をはじめとする経営層と、現場のセキュリティ担当者をつなぐ『通訳』の役割を担っている」と、足立氏は言う。 経営層は、セキュリティ対策の重要性を認識していても、具体的にどのような対策を打てばよいのか理解していないケースが多い。一方の現場でも、対策の必要性について経営層をどう説得すればよいのかわからず「予算獲得が難しい」と苦しむセキュリティ担当者が多いそうだ) だからこそ、経営とセキュリティの両方を理解しているCISOの存在が不可欠だという。実際、CISOが不在の企業においては、次のようなリスクがあると足立氏は指摘する。 「CISOが不在だと、本来投じるべき予算が確保されない事態が生じやすくなる。その結果、技術的な対策ができず『従業員への注意喚起や周知』といった人的対策にとどまることも多い。 今の時代は、企業規模を問わずサイバー攻撃に遭うリスクがあるので、大企業に限らずサプライチェーンの一翼を担う中小企業も、経営層と現場をつなぐ責任者を置いてほしい。本来なら専任が望ましいが、兼務でもかまわない。現状、CIO(最高情報責任者)やCTO(最高技術責任者)がCISOを兼務する形などが多い」 前述のNRIセキュアテクノロジーズの実態調査によれば、CISOを設置している企業は、アメリカでは95.5%、オーストラリアでは97.4%に達していたのに対して、日本は41.1%と大きな差が確認された。) 従業員数が多いほどCISOの設置率も高い傾向にあるが、なぜ日本企業は海外と比べて遅れているのか。足立氏はこう説明する。 「アメリカでは、2013年に重要インフラのサイバーセキュリティ強化に関する大統領令が出て以降、対策は国の重要なイシューになった。現状、』、「CISOを設置している企業は、アメリカでは95.5%、オーストラリアでは97.4%に達していたのに対して、日本は41.1%と大きな差・・・日本企業においては『セキュリティ対策はコスト』という発想が根強く、対策の必要性が認識され始めたのは2018年頃のことと捉えている。そのためCISOを担える人材が十分には育っておらず、キャリアパスが確立されていないこともあり、設置が進まない状況になっている」、なるほど。
・『「すべての能力を備えた人物」を求めないこと では、適任者が不足している中で、企業はどのように人材を確保していけばよいのだろうか。 CISOには「セキュリティの知識・技術」「戦略・会計などのビジネススキル」「リーダーシップと意思決定力」「コミュニケーションスキル」など、広範な知識やスキル、能力が求められる。今の日本では、これらをすべて兼ね備えたスーパーマンのような人材を、社内で見つけるのも外部から調達してくるのも容易ではない。 そのため、「1つでも優れた素養を持っている人物を任命し、『経験を積みながら、中長期的にCISOとして育ってもらえばいい』という意識で臨むことが大事」だと足立氏は助言する。 例えばセキュリティに関する知識や技術は不十分でも、高い統率力を備え戦略立案の経験も豊富にある人材を任命しようとすると、人材確保のハードルも下がるのではないだろうか。実際、日本のCISOは、さまざまなバックグラウンドを持つ人材が多いという。 「元CIOやセキュリティベンダー出身者などを外部から採用し、CISOに任命する動きが出てきた。この流れが浸透すると設置率は高まるのではないか。新任のCISOに不足している部分がある場合には、その分野を得意とするほかのメンバーを補佐役として置くなど、CISOをチームとして機能させていけばいい」 チーム体制を組むことは、次期CISO候補を育成していくうえでも有効だという。例えば外部からビジネススキルが高い人をCISOとして採用してチームを組んだ場合、セキュリティ対策に詳しい若手・中堅の社員が、CISOから優れたリーダーシップや経営視点を間近で学び、「経営とセキュリティの両方の視点を備えた人材」へと成長していくことが期待できる。) またCISOの設置後には、経営トップによるCISOへのバックアップが重要になると足立氏は言う。 「CISOは、普段の業務が賞賛されることはほとんどないうえ、自社がサイバー攻撃を受けて被害が発生した場合、非難を浴びることになりがち。そのためアメリカでもCISOが抱える孤立感やプレッシャーが大きな問題となっている。経営トップがCISOに対して、執行に必要な権限とリソースを与えたうえで、その立場を理解し、支援する姿勢を示さないと、社内にCISOを根づかせることは困難になる」 最近では、CISO同士がさまざまな課題や悩み事について率直に話し合える社外のコミュニティーが生まれている。そうしたつながりをつくることは、CISOの孤立を防ぐうえでも、学びを深めていくうえでも効果があるという』、「これらをすべて兼ね備えたスーパーマンのような人材を、社内で見つけるのも外部から調達してくるのも容易ではない・・・1つでも優れた素養を持っている人物を任命し、『経験を積みながら、中長期的にCISOとして育ってもらえばいい』という意識で臨むことが大事」だと足立氏は助言する」、現実的なアプローチだ。
・『セキュリティ対策をコストと考える企業に人は来ない 今回の調査では、企業規模によらず約9割の企業が「セキュリティ人材が不足している」と回答している。すでに10年以上、同様の傾向が続いているといい、セキュリティ人材が完全な売り手市場になっている中、「セキュリティ対策を単なるコストと考えている企業に人は来ないし定着もしない」と足立氏は警鐘を鳴らす。 「優秀な人材を確保するには、CISOの設置などによって、セキュリティ分野の充実に力を入れており、新しいチャレンジもできるカルチャーであることをアピールできるかが重要になる」 ただし、日本社会全体の労働生産人口が減少し、セキュリティ担当者の業務が増え続けている中では、人材確保の発想だけでは限界があり、限られた人材で業務を回せるよう効率化を図っていくことも大切になる。 今回の調査では、そうした効率化の面でも日本企業に課題があることが浮き彫りになった。生成AIの導入状況を尋ねた項目において、アメリカでは73.5%、オーストラリアでは66.2%の企業が「導入済み」と答えたのに対して、日本は18%に過ぎなかったのだ。) しかも、アメリカやオーストラリアはルールの整備にかかわらず導入率が高いのに対し、日本は従業員数1万人以上の企業で50%が導入しているものの、ほとんどがルールを整備したうえでの導入となっており、慎重さが目立つ結果となった。 (生成AIのルール整備と導入状況 はリンク先参照)』、「「セキュリティ対策を単なるコストと考えている企業に人は来ないし定着もしない」と足立氏は警鐘を鳴らす。 「優秀な人材を確保するには、CISOの設置などによって、セキュリティ分野の充実に力を入れており、新しいチャレンジもできるカルチャーであることをアピールできるかが重要になる」、なるほど。
・『生成AIへの対応が業務効率化のカギとなる また同調査では、「生成AIサービスの利用を検討するにあたり、懸念や課題となること」についても企業に尋ねているが、目立った差が出たのが「自社業務に応用できる人材の不足」を挙げる企業の割合だった。アメリカが20.4%、オーストラリアが8.0%だったのに対して、日本企業は28.7%に上る。 こうした結果について足立氏は次のように述べる。 「新しい技術のリスクを考慮することは悪いことではないが、慎重すぎるままでは、業務の効率化という点でますます後れを取るだろう。セキュリティ業務の自動化や省力化は、今後生成AIがかなり担えるようになることが考えられ、人材不足を補う有効策となりうる。経営者は、そうしたソリューションの導入にブレーキをかけるべきではない。 また生成AIを自社業務に応用できる人材を確保するには、従業員が生成AIに触れて慣れる機会を奨励することが欠かせない。素養がありそうな人に業務と生成AIの双方を学ぶ環境を提供し、ミニマムルールと共に、中長期視点で育てていく視点も必要だろう」 今後、生成AIサービスを活用したセキュリティ対策が広がっていくであろうことを踏まえても、やはりコストを含めセキュリティ戦略を設計するCISOはキーパーソンとなるだろう。CISOの設置は今、企業にとって喫緊の課題となっている』、「今後、生成AIサービスを活用したセキュリティ対策が広がっていくであろうことを踏まえても、やはりコストを含めセキュリティ戦略を設計するCISOはキーパーソンとなるだろう。CISOの設置は今、企業にとって喫緊の課題となっている」、その通りだ。
先ずは、昨年8月8日付けForbes「中国ハッカーが日本の防衛機密をハッキング、米国の通報で発覚」を紹介しよう。
・『ワシントン・ポストは8月7日、中国の軍事ハッカーが2020年以降、日本の防衛機密ネットワークにアクセスし、米国の同盟国である日本の軍事能力や計画に関する情報にアクセスしていたと報じた。 このハッキングは米国の国家安全保障局(NSA)によって2020年秋に発見されたという。中国の人民解放軍のハッカーらは、日本の自衛隊の計画や能力、軍事的欠点の評価にアクセスするなど、深く執拗な情報収集を行っていたと、複数の米国の元高官がポスト紙に語っている。 報告を受けたNSAと米サイバー軍のトップのポール・ナカソネ陸軍大将と、当時ホワイトハウスの国家安全保障副顧問だったマシュー・ポッティンジャーが東京に急行して防衛大臣に説明を行い、首相にも伝えたとポスト紙は報じている。 このハッキングはトランプ政権下で始まったが、バイデン政権下でも続き、2021年には日本の防衛システムへの侵入が続いていることを示す新たなデータが発見され、情報漏洩が続いていることが発覚した。日米の両国は最終的に、日本の民間企業の手を借りて脆弱性を評価することに合意し、米国のNSAとサイバー軍のチームがその調査結果を確認し、情報漏洩を防ぐ方法について提言を行ったという。 フォーブスは、国務省にコメントを求めたが現時点で回答は得られていない。 「これは衝撃的なほどに酷い情報漏洩だった」とポスト紙の取材に応じた元米軍関係者は語っている。 日本の政府関係者は、ネットワークセキュリティを強化するために、今後5年間で自衛隊のサイバーセキュリティ部隊を4000人規模にすると述べている。さらに、ネットワークを24時間365日監視するサイバー司令部を発足させ、5年間で70億ドル(約1兆円)をサイバーセキュリティに費やす計画だと日本の防衛関係者はポスト紙の取材に語った。 「今回のハッキングにおける日本の当局の対応の遅さは、米国が同盟国である日本と共有する情報の量を減らすことにつながるかもしれない」と米政府関係者はポスト紙に語った』、「日本の防衛当局」の「ハッキングにおける対応の遅さ」は、」、「米国が同盟国である日本と共有する情報の量を減らすことにつながるかもしれない」、全くみっともない限りだ。
次に、昨年8月12日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した日本カウンターインテリジェンス協会代表理事の稲村 悠氏による「中国への情報流出、アプリ以外も危険!日本に普及中「最新中国製品」も要注意」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/327406
・『プロパガンダ工作に適したTikTokの危険性 中国企業が運営する動画共有アプリ「TikTok」について、かねてその危険性は指摘されている。 米経済誌「フォーブス」によれば、TikTokは、欧州のユーザーに向けて、中国政府のプロパガンダ機関による広告を大量に配信してきたことが、7月20日に公開された広告ライブラリーから明らかになったという。広告の中には、新疆ウイグル自治区を観光地として宣伝するものや中国によるコロナ政策を賛辞するものなどが含まれているという。 また、プロパガンダ工作に適した動画を意図的に“おすすめ動画”にして多くのユーザーに閲覧させたり、意図的に特定の動画を排除、浮上させるなど、プロパガンダにはうってつけのアプリのようだ。 さらにTikTokユーザーの情報が意図的に中国に収集される危険性も指摘されており、過去には一部のスタッフが、2人のジャーナリストを含むアメリカ市民のユーザーデータに不適切にアクセスしたと、ニューヨーク・タイムズが報じている。 TikTokのプロパガンダ機能やスパイアプリとしての危険性は広く知られつつあるが、注意すべきアプリはTikTokだけではない』、「TikTok」は、「プロパガンダ工作に適した動画を意図的に“おすすめ動画”にして多くのユーザーに閲覧させたり、意図的に特定の動画を排除、浮上させるなど、プロパガンダにはうってつけのアプリのようだ。 さらにTikTokユーザーの情報が意図的に中国に収集される危険性も指摘されており、過去には一部のスタッフが、2人のジャーナリストを含むアメリカ市民のユーザーデータに不適切にアクセスしたと、ニューヨーク・タイムズが報じている」、なるほど。
・『8月に日本でリリースされた格安ECアプリの「Temu」 「ピンドゥオドゥオ(拼多多)」というアプリをご存じだろうか。 ピンドゥオドゥオは、2015年に上海で創業した企業PDDホールディングスがリリースした、月間7億5000万人が利用する中国3位のECアプリであるが、実は、ユーザーの通話記録や文字メッセージ、写真アルバムなどに不正アクセスしていたことが明らかになっている。 CNNは、ピンドゥオドゥオに不正なコードが発見され、グーグルのアンドロイドOSの脆弱(ぜいじゃく)性を利用し、ユーザーの同意なく、携帯電話の使用内容やデータにアクセスしていることが判明したと報じている。 ピンドゥオドゥオのアプリに内蔵された不正なコードは、一度インストールすると、アプリを削除しても、不正なコードを除去することが非常に難しいとみられている。 そして、その「ピンドゥオドゥオ」をリリースしたPDDホールディングスから、格安ECアプリ「Temu」が日本でリリースされ、8月2日現在でAppstoreの無料Appランキングで1位を獲得している。さらに2位は「TikTok Lite」だ。 これらアプリによって、ユーザーの情報が同意なく収集された場合、その情報は中国による諜報(ちょうほう)活動や情報戦、プロパガンダ工作などの各種工作活動に活用されるのは言うまでもない。 仮に、ここまで解説したアプリの運営会社に悪意がなくとも、中国には、善意の企業さえ政府の意図に従わせる法的根拠がある。 中国の国家情報法は、安全保障や治安維持のために、企業も民間人も中国政府の情報収集活動に協力しなければならないと義務づけ、中国政府は企業などが持つデータをいつでも要求できる。要は、中国政府が情報を出せと言えば、企業は従わざるを得ないのだ。同法は、日本をはじめ外国の企業も当然対象となる。 ちなみに、これは運営企業が“善意”で運営していたら、という仮定の話である。アプリの運営会社の中には、中国政府の意向に忠実で、アプリを世界で流行させ、バックドアを仕掛け、日常的に情報を収集する意図を持っている会社もあり得るだろう』、「格安ECアプリ「Temu」が日本でリリースされ、8月2日現在でAppstoreの無料Appランキングで1位を獲得している。さらに2位は「TikTok Lite」だ。 これらアプリによって、ユーザーの情報が同意なく収集された場合、その情報は中国による諜報(ちょうほう)活動や情報戦、プロパガンダ工作などの各種工作活動に活用されるのは言うまでもない」、恐ろしいことだ。
・『アプリだけではない中国製自動車の脅威 注意すべきは、アプリだけではない。 中国製電気自動車(EV)の日本進出が進んでいる。 テスラを抜き、EV販売台数世界一となった中国自動車メーカー「比亜迪(BYD)」が日本に本格進出を開始、既に日本の交通機関にも食い込んでおり、京阪バスが京都市内を走る路線においてBYD製EVバスの運行を始めている。 ちなみに、このBYDであるが、BYDの日本法人社長の劉学亮氏が、東京新聞の取材に対し、「2010年に、金型メーカー・オギハラの館林工場を買収し、この金型企業から日本のものづくりを勉強できた」と話したという。 このオギハラは、当時世界一の金型加工技術を持っていたとされ、まさに、経済安全保障の技術流出例の典型例であった。 さて、BYDを例になぜ中国製自動車が危険なのかを述べてみたい。 中国政府の動きがヒントとなる。 中国はテスラ社製自動車の軍施設や軍関係者の居住地などへの乗り入れを禁止している。 その理由は、自動車のGPS情報による施設内の主要場所の把握や車載カメラの動画情報など多くのデータが収集されることを警戒していることにあるとみられる。 これはつまり、路線バスなどに加え、例えば宅配業者に中国製自動車を普及させ、自衛隊基地に出入りすることが可能になれば、基地内の施設の場所が容易に把握できることを意味している。 また、「動くスマートフォン」といわれる現代の自動車においては、例えばコネクテッドカーにおいては、ハッキングやバックドアによってナビでの検索履歴はもちろん、過去の移動ルート、さらには電子メールやメッセージ、通話履歴にアクセスされる危険性も指摘されている。 中国は各国のインフラに中国製自動車を普及させることにより、自動車を通じて相手国の多大な情報を収集することが可能となる』、「路線バスなどに加え、例えば宅配業者に中国製自動車を普及させ、自衛隊基地に出入りすることが可能になれば、基地内の施設の場所が容易に把握できることを意味している。 また、「動くスマートフォン」といわれる現代の自動車においては、例えばコネクテッドカーにおいては、ハッキングやバックドアによってナビでの検索履歴はもちろん、過去の移動ルート、さらには電子メールやメッセージ、通話履歴にアクセスされる危険性も指摘されている。 中国は各国のインフラに中国製自動車を普及させることにより、自動車を通じて相手国の多大な情報を収集することが可能となる」、大変だ。
・『米フィットネスアプリで暴かれた米軍の秘密基地 EVが位置情報をトラッキングすることで施設内の位置関係が把握できるのと同様の危険性は、GPS情報を取得するスマートフォンアプリにも指摘できる。 スマートフォンなどのGPS情報を使ってジョギングなどのアクティビティーを記録・分析できる米国発のサービスフィットネスアプリ「Strava」に搭載された機能「Heatmap」が、アメリカ軍のトップシークレットであった秘密基地の存在を浮き彫りにした。 このHeatmap機能は、アプリを使っている人がどの場所で多くのアクティビティーを行っているのかを色で示すことができる。Strava社が公開したHeatmapにアクティビティーの情報が色によって示され、米軍基地で任務にあたる兵士などがスマートフォンやスマートウォッチなどのウエアラブル端末のトラッキング機能をオンにしたままにしたことにより、その活動の全てが記録され、基地の場所が暴露されてしまった。 この画像はHeatmapで把握されたニジェールのフランス軍基地である。位置情報を収集し続けることにより、施設の形がくっきりと可視化される。フィットネスアプリにはこのような危険性が潜むのだ。 Stravaは中国製アプリではないが、いずれにせよ、中国製電気自動車も含めた、位置情報をトラッキングできる商品の普及によるリスクはご理解いただけたのではないだろうか』、「中国製電気自動車も含めた、位置情報をトラッキングできる商品の普及によるリスク」、確かに気を付けるべきだ。
・『日本の農業における中国製ドローンの危険性 ドローンについても、位置情報やカメラを通じた施設情報の収集の危険が指摘される。だが、問題はそれだけではない。 韓国では、農業用ドローンのシェアのうち中国製ドローンが7割を超える。 韓国自治体が農業用ドローンの支援事業を進める際、中国企業の製品に合わせた規格で入札を実施していることが背景にある。 この農業用ドローンについて、ドローンの農薬散布手法などの農業の生産性に関わる重要な農業防除データが中国に流れる可能性も指摘されており。食糧安全保障を脅かしている状態だ。 日本においても、日本の農業用ドローンのうち実に7割程度が中国企業であるDJI製だと推定されており、韓国と同様の危険が顕在化している。 ここまで、中国製アプリを代表に、いくつかの中国製品が日本に浸透することによる危険性について例示して解説したが、日本においてどれだけの人がこの危険性を認識しているだろうか。 その危険性に関する認識・意識が甘ければ、その脅威にのみ込まれる未来しかないだろう。 中国製品の全てを疑い、全て忌避しろとは言わないが、せめて各国で指摘されている危険性については認識し、自身で判断できる意識は持っておきたい。そして、国としても明確に危険性が指摘されている製品については、国民に知らせる責務があると考える。 いずれにせよ、カウンターインテリジェンス(防諜)の重要性について、国民の意識や関心を高めることが、迫る脅威に立ち向かう最大の防御策となるだろう』、「日本においても、日本の農業用ドローンのうち実に7割程度が中国企業であるDJI製だと推定されており、韓国と同様の危険が顕在化している・・・日本においても、日本の農業用ドローンのうち実に7割程度が中国企業であるDJI製だと推定されており、韓国と同様の危険が顕在化している・・・カウンターインテリジェンス(防諜)の重要性について、国民の意識や関心を高めることが、迫る脅威に立ち向かう最大の防御策となるだろう」、その通りだ。
次に、8月12日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した日本カウンターインテリジェンス協会代表理事の稲村 悠氏による「中国への情報流出、アプリ以外も危険!日本に普及中「最新中国製品」も要注意」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/327406
・『プロパガンダ工作に適したTikTokの危険性 中国企業が運営する動画共有アプリ「TikTok」について、かねてその危険性は指摘されている。 米経済誌「フォーブス」によれば、TikTokは、欧州のユーザーに向けて、中国政府のプロパガンダ機関による広告を大量に配信してきたことが、7月20日に公開された広告ライブラリーから明らかになったという。広告の中には、新疆ウイグル自治区を観光地として宣伝するものや中国によるコロナ政策を賛辞するものなどが含まれているという。 また、プロパガンダ工作に適した動画を意図的に“おすすめ動画”にして多くのユーザーに閲覧させたり、意図的に特定の動画を排除、浮上させるなど、プロパガンダにはうってつけのアプリのようだ。 さらにTikTokユーザーの情報が意図的に中国に収集される危険性も指摘されており、過去には一部のスタッフが、2人のジャーナリストを含むアメリカ市民のユーザーデータに不適切にアクセスしたと、ニューヨーク・タイムズが報じている。 TikTokのプロパガンダ機能やスパイアプリとしての危険性は広く知られつつあるが、注意すべきアプリはTikTokだけではない』、「TikTok」は情報セキュリティ上極めて問題が多い怖いソフトのようだ。
・『8月に日本でリリースされた格安ECアプリの「Temu」 「ピンドゥオドゥオ(拼多多)」というアプリをご存じだろうか。 ピンドゥオドゥオは、2015年に上海で創業した企業PDDホールディングスがリリースした、月間7億5000万人が利用する中国3位のECアプリであるが、実は、ユーザーの通話記録や文字メッセージ、写真アルバムなどに不正アクセスしていたことが明らかになっている。 CNNは、ピンドゥオドゥオに不正なコードが発見され、グーグルのアンドロイドOSの脆弱(ぜいじゃく)性を利用し、ユーザーの同意なく、携帯電話の使用内容やデータにアクセスしていることが判明したと報じている。 ピンドゥオドゥオのアプリに内蔵された不正なコードは、一度インストールすると、アプリを削除しても、不正なコードを除去することが非常に難しいとみられている。 そして、その「ピンドゥオドゥオ」をリリースしたPDDホールディングスから、格安ECアプリ「Temu」が日本でリリースされ、8月2日現在でAppstoreの無料Appランキングで1位を獲得している。さらに2位は「TikTok Lite」だ。 これらアプリによって、ユーザーの情報が同意なく収集された場合、その情報は中国による諜報(ちょうほう)活動や情報戦、プロパガンダ工作などの各種工作活動に活用されるのは言うまでもない。 仮に、ここまで解説したアプリの運営会社に悪意がなくとも、中国には、善意の企業さえ政府の意図に従わせる法的根拠がある。 中国の国家情報法は、安全保障や治安維持のために、企業も民間人も中国政府の情報収集活動に協力しなければならないと義務づけ、中国政府は企業などが持つデータをいつでも要求できる。要は、中国政府が情報を出せと言えば、企業は従わざるを得ないのだ。同法は、日本をはじめ外国の企業も当然対象となる。 ちなみに、これは運営企業が“善意”で運営していたら、という仮定の話である。アプリの運営会社の中には、中国政府の意向に忠実で、アプリを世界で流行させ、バックドアを仕掛け、日常的に情報を収集する意図を持っている会社もあり得るだろう』、「格安ECアプリ「Temu」が日本でリリースされ、8月2日現在でAppstoreの無料Appランキングで1位を獲得している。さらに2位は「TikTok Lite」だ。 これらアプリによって、ユーザーの情報が同意なく収集された場合、その情報は中国による諜報(ちょうほう)活動や情報戦、プロパガンダ工作などの各種工作活動に活用されるのは言うまでもない」、「日本」も大いに注意すべきだ。
・『アプリだけではない中国製自動車の脅威 注意すべきは、アプリだけではない。 中国製電気自動車(EV)の日本進出が進んでいる。 テスラを抜き、EV販売台数世界一となった中国自動車メーカー「比亜迪(BYD)」が日本に本格進出を開始、既に日本の交通機関にも食い込んでおり、京阪バスが京都市内を走る路線においてBYD製EVバスの運行を始めている。 ちなみに、このBYDであるが、BYDの日本法人社長の劉学亮氏が、東京新聞の取材に対し、「2010年に、金型メーカー・オギハラの館林工場を買収し、この金型企業から日本のものづくりを勉強できた」と話したという。 このオギハラは、当時世界一の金型加工技術を持っていたとされ、まさに、経済安全保障の技術流出例の典型例であった。 さて、BYDを例になぜ中国製自動車が危険なのかを述べてみたい。 中国政府の動きがヒントとなる。 中国はテスラ社製自動車の軍施設や軍関係者の居住地などへの乗り入れを禁止している。 その理由は、自動車のGPS情報による施設内の主要場所の把握や車載カメラの動画情報など多くのデータが収集されることを警戒していることにあるとみられる。 これはつまり、路線バスなどに加え、例えば宅配業者に中国製自動車を普及させ、自衛隊基地に出入りすることが可能になれば、基地内の施設の場所が容易に把握できることを意味している。 また、「動くスマートフォン」といわれる現代の自動車においては、例えばコネクテッドカーにおいては、ハッキングやバックドアによってナビでの検索履歴はもちろん、過去の移動ルート、さらには電子メールやメッセージ、通話履歴にアクセスされる危険性も指摘されている。 中国は各国のインフラに中国製自動車を普及させることにより、自動車を通じて相手国の多大な情報を収集することが可能となる』、「「動くスマートフォン」といわれる現代の自動車においては、例えばコネクテッドカーにおいては、ハッキングやバックドアによってナビでの検索履歴はもちろん、過去の移動ルート、さらには電子メールやメッセージ、通話履歴にアクセスされる危険性も指摘されている」、なるほど。
・『米フィットネスアプリで暴かれた米軍の秘密基地 EVが位置情報をトラッキングすることで施設内の位置関係が把握できるのと同様の危険性は、GPS情報を取得するスマートフォンアプリにも指摘できる。 スマートフォンなどのGPS情報を使ってジョギングなどのアクティビティーを記録・分析できる米国発のサービスフィットネスアプリ「Strava」に搭載された機能「Heatmap」が、アメリカ軍のトップシークレットであった秘密基地の存在を浮き彫りにした。 このHeatmap機能は、アプリを使っている人がどの場所で多くのアクティビティーを行っているのかを色で示すことができる。Strava社が公開したHeatmapにアクティビティーの情報が色によって示され、米軍基地で任務にあたる兵士などがスマートフォンやスマートウォッチなどのウエアラブル端末のトラッキング機能をオンにしたままにしたことにより、その活動の全てが記録され、基地の場所が暴露されてしまった。 この画像はHeatmapで把握されたニジェールのフランス軍基地である。位置情報を収集し続けることにより、施設の形がくっきりと可視化される。フィットネスアプリにはこのような危険性が潜むのだ。 Stravaは中国製アプリではないが、いずれにせよ、中国製電気自動車も含めた、位置情報をトラッキングできる商品の普及によるリスクはご理解いただけたのではないだろうか』、「中国製電気自動車も含めた、位置情報をトラッキングできる商品の普及によるリスク」に十分に注意する必要がある。
・『日本の農業における中国製ドローンの危険性 ドローンについても、位置情報やカメラを通じた施設情報の収集の危険が指摘される。だが、問題はそれだけではない。 韓国では、農業用ドローンのシェアのうち中国製ドローンが7割を超える。 韓国自治体が農業用ドローンの支援事業を進める際、中国企業の製品に合わせた規格で入札を実施していることが背景にある。 この農業用ドローンについて、ドローンの農薬散布手法などの農業の生産性に関わる重要な農業防除データが中国に流れる可能性も指摘されており。食糧安全保障を脅かしている状態だ。 日本においても、日本の農業用ドローンのうち実に7割程度が中国企業であるDJI製だと推定されており、韓国と同様の危険が顕在化している。 ここまで、中国製アプリを代表に、いくつかの中国製品が日本に浸透することによる危険性について例示して解説したが、日本においてどれだけの人がこの危険性を認識しているだろうか。 その危険性に関する認識・意識が甘ければ、その脅威にのみ込まれる未来しかないだろう。 中国製品の全てを疑い、全て忌避しろとは言わないが、せめて各国で指摘されている危険性については認識し、自身で判断できる意識は持っておきたい。そして、国としても明確に危険性が指摘されている製品については、国民に知らせる責務があると考える。 いずれにせよ、カウンターインテリジェンス(防諜)の重要性について、国民の意識や関心を高めることが、迫る脅威に立ち向かう最大の防御策となるだろう』、「中国製品の全てを疑い、全て忌避しろとは言わないが、せめて各国で指摘されている危険性については認識し、自身で判断できる意識は持っておきたい。そして、国としても明確に危険性が指摘されている製品については、国民に知らせる責務があると考える」、その通りだ。
第三に、本年1月26日付け東洋経済オンラインが掲載したライター の長谷川 敦氏による「「CISOが不在」日本企業の重大すぎる経営リスク 生成AIによる効率的なセキュリティ対策も課題」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/729787
・『日本はセキュリティ人材の不足が長らく続いているが、現場だけでなく、統括を担う「CISO(Chief Information Security Officer、最高情報セキュリティ責任者)」も足りていない。 NRIセキュアテクノロジーズが2024年1月25日に発表した「企業における情報セキュリティ実態調査 NRI Secure Insight 2023」によれば、CISOを設置している日本企業は、アメリカやオーストラリアの半数以下にとどまっている。 CISO未設置の経営リスクや人材確保のポイントについて、情報セキュリティ実態調査の監修を務めた同社DXセキュリティプラットフォーム事業本部本部長の足立道拡氏に聞いた』、「CISOを設置している日本企業は、アメリカやオーストラリアの半数以下」、致命的な立ち遅れだ。
・『経営とセキュリティの両方がわかる人材が必要 「CISOは、CEO(最高経営責任者)をはじめとする経営層と、現場のセキュリティ担当者をつなぐ『通訳』の役割を担っている」と、足立氏は言う。 経営層は、セキュリティ対策の重要性を認識していても、具体的にどのような対策を打てばよいのか理解していないケースが多い。一方の現場でも、対策の必要性について経営層をどう説得すればよいのかわからず「予算獲得が難しい」と苦しむセキュリティ担当者が多いそうだ) だからこそ、経営とセキュリティの両方を理解しているCISOの存在が不可欠だという。実際、CISOが不在の企業においては、次のようなリスクがあると足立氏は指摘する。 「CISOが不在だと、本来投じるべき予算が確保されない事態が生じやすくなる。その結果、技術的な対策ができず『従業員への注意喚起や周知』といった人的対策にとどまることも多い。 今の時代は、企業規模を問わずサイバー攻撃に遭うリスクがあるので、大企業に限らずサプライチェーンの一翼を担う中小企業も、経営層と現場をつなぐ責任者を置いてほしい。本来なら専任が望ましいが、兼務でもかまわない。現状、CIO(最高情報責任者)やCTO(最高技術責任者)がCISOを兼務する形などが多い」 前述のNRIセキュアテクノロジーズの実態調査によれば、CISOを設置している企業は、アメリカでは95.5%、オーストラリアでは97.4%に達していたのに対して、日本は41.1%と大きな差が確認された。) 従業員数が多いほどCISOの設置率も高い傾向にあるが、なぜ日本企業は海外と比べて遅れているのか。足立氏はこう説明する。 「アメリカでは、2013年に重要インフラのサイバーセキュリティ強化に関する大統領令が出て以降、対策は国の重要なイシューになった。現状、』、「CISOを設置している企業は、アメリカでは95.5%、オーストラリアでは97.4%に達していたのに対して、日本は41.1%と大きな差・・・日本企業においては『セキュリティ対策はコスト』という発想が根強く、対策の必要性が認識され始めたのは2018年頃のことと捉えている。そのためCISOを担える人材が十分には育っておらず、キャリアパスが確立されていないこともあり、設置が進まない状況になっている」、なるほど。
・『「すべての能力を備えた人物」を求めないこと では、適任者が不足している中で、企業はどのように人材を確保していけばよいのだろうか。 CISOには「セキュリティの知識・技術」「戦略・会計などのビジネススキル」「リーダーシップと意思決定力」「コミュニケーションスキル」など、広範な知識やスキル、能力が求められる。今の日本では、これらをすべて兼ね備えたスーパーマンのような人材を、社内で見つけるのも外部から調達してくるのも容易ではない。 そのため、「1つでも優れた素養を持っている人物を任命し、『経験を積みながら、中長期的にCISOとして育ってもらえばいい』という意識で臨むことが大事」だと足立氏は助言する。 例えばセキュリティに関する知識や技術は不十分でも、高い統率力を備え戦略立案の経験も豊富にある人材を任命しようとすると、人材確保のハードルも下がるのではないだろうか。実際、日本のCISOは、さまざまなバックグラウンドを持つ人材が多いという。 「元CIOやセキュリティベンダー出身者などを外部から採用し、CISOに任命する動きが出てきた。この流れが浸透すると設置率は高まるのではないか。新任のCISOに不足している部分がある場合には、その分野を得意とするほかのメンバーを補佐役として置くなど、CISOをチームとして機能させていけばいい」 チーム体制を組むことは、次期CISO候補を育成していくうえでも有効だという。例えば外部からビジネススキルが高い人をCISOとして採用してチームを組んだ場合、セキュリティ対策に詳しい若手・中堅の社員が、CISOから優れたリーダーシップや経営視点を間近で学び、「経営とセキュリティの両方の視点を備えた人材」へと成長していくことが期待できる。) またCISOの設置後には、経営トップによるCISOへのバックアップが重要になると足立氏は言う。 「CISOは、普段の業務が賞賛されることはほとんどないうえ、自社がサイバー攻撃を受けて被害が発生した場合、非難を浴びることになりがち。そのためアメリカでもCISOが抱える孤立感やプレッシャーが大きな問題となっている。経営トップがCISOに対して、執行に必要な権限とリソースを与えたうえで、その立場を理解し、支援する姿勢を示さないと、社内にCISOを根づかせることは困難になる」 最近では、CISO同士がさまざまな課題や悩み事について率直に話し合える社外のコミュニティーが生まれている。そうしたつながりをつくることは、CISOの孤立を防ぐうえでも、学びを深めていくうえでも効果があるという』、「これらをすべて兼ね備えたスーパーマンのような人材を、社内で見つけるのも外部から調達してくるのも容易ではない・・・1つでも優れた素養を持っている人物を任命し、『経験を積みながら、中長期的にCISOとして育ってもらえばいい』という意識で臨むことが大事」だと足立氏は助言する」、現実的なアプローチだ。
・『セキュリティ対策をコストと考える企業に人は来ない 今回の調査では、企業規模によらず約9割の企業が「セキュリティ人材が不足している」と回答している。すでに10年以上、同様の傾向が続いているといい、セキュリティ人材が完全な売り手市場になっている中、「セキュリティ対策を単なるコストと考えている企業に人は来ないし定着もしない」と足立氏は警鐘を鳴らす。 「優秀な人材を確保するには、CISOの設置などによって、セキュリティ分野の充実に力を入れており、新しいチャレンジもできるカルチャーであることをアピールできるかが重要になる」 ただし、日本社会全体の労働生産人口が減少し、セキュリティ担当者の業務が増え続けている中では、人材確保の発想だけでは限界があり、限られた人材で業務を回せるよう効率化を図っていくことも大切になる。 今回の調査では、そうした効率化の面でも日本企業に課題があることが浮き彫りになった。生成AIの導入状況を尋ねた項目において、アメリカでは73.5%、オーストラリアでは66.2%の企業が「導入済み」と答えたのに対して、日本は18%に過ぎなかったのだ。) しかも、アメリカやオーストラリアはルールの整備にかかわらず導入率が高いのに対し、日本は従業員数1万人以上の企業で50%が導入しているものの、ほとんどがルールを整備したうえでの導入となっており、慎重さが目立つ結果となった。 (生成AIのルール整備と導入状況 はリンク先参照)』、「「セキュリティ対策を単なるコストと考えている企業に人は来ないし定着もしない」と足立氏は警鐘を鳴らす。 「優秀な人材を確保するには、CISOの設置などによって、セキュリティ分野の充実に力を入れており、新しいチャレンジもできるカルチャーであることをアピールできるかが重要になる」、なるほど。
・『生成AIへの対応が業務効率化のカギとなる また同調査では、「生成AIサービスの利用を検討するにあたり、懸念や課題となること」についても企業に尋ねているが、目立った差が出たのが「自社業務に応用できる人材の不足」を挙げる企業の割合だった。アメリカが20.4%、オーストラリアが8.0%だったのに対して、日本企業は28.7%に上る。 こうした結果について足立氏は次のように述べる。 「新しい技術のリスクを考慮することは悪いことではないが、慎重すぎるままでは、業務の効率化という点でますます後れを取るだろう。セキュリティ業務の自動化や省力化は、今後生成AIがかなり担えるようになることが考えられ、人材不足を補う有効策となりうる。経営者は、そうしたソリューションの導入にブレーキをかけるべきではない。 また生成AIを自社業務に応用できる人材を確保するには、従業員が生成AIに触れて慣れる機会を奨励することが欠かせない。素養がありそうな人に業務と生成AIの双方を学ぶ環境を提供し、ミニマムルールと共に、中長期視点で育てていく視点も必要だろう」 今後、生成AIサービスを活用したセキュリティ対策が広がっていくであろうことを踏まえても、やはりコストを含めセキュリティ戦略を設計するCISOはキーパーソンとなるだろう。CISOの設置は今、企業にとって喫緊の課題となっている』、「今後、生成AIサービスを活用したセキュリティ対策が広がっていくであろうことを踏まえても、やはりコストを含めセキュリティ戦略を設計するCISOはキーパーソンとなるだろう。CISOの設置は今、企業にとって喫緊の課題となっている」、その通りだ。
タグ:情報セキュリティー・サイバー犯罪 「TikTok」は、「プロパガンダ工作に適した動画を意図的に“おすすめ動画”にして多くのユーザーに閲覧させたり、意図的に特定の動画を排除、浮上させるなど、プロパガンダにはうってつけのアプリのようだ。 さらにTikTokユーザーの情報が意図的に中国に収集される危険性も指摘されており、過去には一部のスタッフが、2人のジャーナリストを含むアメリカ市民のユーザーデータに不適切にアクセスしたと、ニューヨーク・タイムズが報じている」、なるほど。 「中国製電気自動車も含めた、位置情報をトラッキングできる商品の普及によるリスク」、確かに気を付けるべきだ。 集することが可能となる」、大変だ。 「路線バスなどに加え、例えば宅配業者に中国製自動車を普及させ、自衛隊基地に出入りすることが可能になれば、基地内の施設の場所が容易に把握できることを意味している。 また、「動くスマートフォン」といわれる現代の自動車においては、例えばコネクテッドカーにおいては、ハッキングやバックドアによってナビでの検索履歴はもちろん、過去の移動ルート、さらには電子メールやメッセージ、通話履歴にアクセスされる危険性も指摘されている。 中国は各国のインフラに中国製自動車を普及させることにより、自動車を通じて相手国の多大な情報を収 「格安ECアプリ「Temu」が日本でリリースされ、8月2日現在でAppstoreの無料Appランキングで1位を獲得している。さらに2位は「TikTok Lite」だ。 これらアプリによって、ユーザーの情報が同意なく収集された場合、その情報は中国による諜報(ちょうほう)活動や情報戦、プロパガンダ工作などの各種工作活動に活用されるのは言うまでもない」、恐ろしいことだ。 稲村 悠氏による「中国への情報流出、アプリ以外も危険!日本に普及中「最新中国製品」も要注意」 「今後、生成AIサービスを活用したセキュリティ対策が広がっていくであろうことを踏まえても、やはりコストを含めセキュリティ戦略を設計するCISOはキーパーソンとなるだろう。CISOの設置は今、企業にとって喫緊の課題となっている」、その通りだ。 「「セキュリティ対策を単なるコストと考えている企業に人は来ないし定着もしない」と足立氏は警鐘を鳴らす。 「優秀な人材を確保するには、CISOの設置などによって、セキュリティ分野の充実に力を入れており、新しいチャレンジもできるカルチャーであることをアピールできるかが重要になる」、なるほど。 「これらをすべて兼ね備えたスーパーマンのような人材を、社内で見つけるのも外部から調達してくるのも容易ではない・・・1つでも優れた素養を持っている人物を任命し、『経験を積みながら、中長期的にCISOとして育ってもらえばいい』という意識で臨むことが大事」だと足立氏は助言する」、現実的なアプローチだ。 「CISOを設置している企業は、アメリカでは95.5%、オーストラリアでは97.4%に達していたのに対して、日本は41.1%と大きな差・・・日本企業においては『セキュリティ対策はコスト』という発想が根強く、対策の必要性が認識され始めたのは2018年頃のことと捉えている。そのためCISOを担える人材が十分には育っておらず、キャリアパスが確立されていないこともあり、設置が進まない状況になっている」、なるほど。 「CISOを設置している日本企業は、アメリカやオーストラリアの半数以下」、致命的な立ち遅れだ。 長谷川 敦氏による「「CISOが不在」日本企業の重大すぎる経営リスク 生成AIによる効率的なセキュリティ対策も課題」 東洋経済オンライン 「中国製品の全てを疑い、全て忌避しろとは言わないが、せめて各国で指摘されている危険性については認識し、自身で判断できる意識は持っておきたい。そして、国としても明確に危険性が指摘されている製品については、国民に知らせる責務があると考える」、その通りだ。 「中国製電気自動車も含めた、位置情報をトラッキングできる商品の普及によるリスク」に十分に注意する必要がある。 ダイヤモンド・オンライン 「日本の防衛当局」の「ハッキングにおける対応の遅さ」は、」、「米国が同盟国である日本と共有する情報の量を減らすことにつながるかもしれない」、全くみっともない限りだ。 Forbes「中国ハッカーが日本の防衛機密をハッキング、米国の通報で発覚」 「「動くスマートフォン」といわれる現代の自動車においては、例えばコネクテッドカーにおいては、ハッキングやバックドアによってナビでの検索履歴はもちろん、過去の移動ルート、さらには電子メールやメッセージ、通話履歴にアクセスされる危険性も指摘されている」、なるほど。 「格安ECアプリ「Temu」が日本でリリースされ、8月2日現在でAppstoreの無料Appランキングで1位を獲得している。さらに2位は「TikTok Lite」だ。 これらアプリによって、ユーザーの情報が同意なく収集された場合、その情報は中国による諜報(ちょうほう)活動や情報戦、プロパガンダ工作などの各種工作活動に活用されるのは言うまでもない」、「日本」も大いに注意すべきだ。 「TikTok」は情報セキュリティ上極めて問題が多い怖いソフトのようだ。 「日本においても、日本の農業用ドローンのうち実に7割程度が中国企業であるDJI製だと推定されており、韓国と同様の危険が顕在化している・・・日本においても、日本の農業用ドローンのうち実に7割程度が中国企業であるDJI製だと推定されており、韓国と同様の危険が顕在化している・・・カウンターインテリジェンス(防諜)の重要性について、国民の意識や関心を高めることが、迫る脅威に立ち向かう最大の防御策となるだろう」、その通りだ。 (その9)(中国ハッカーが日本の防衛機密をハッキング 米国の通報で発覚、中国への情報流出 アプリ以外も危険!日本に普及中「最新中国製品」も要注意、「CISOが不在」日本企業の重大すぎる経営リスク 生成AIによる効率的なセキュリティ対策も課題)
トランプ(その50)(「もしトラ」でガザ・ウクライナは見殺し?韓国も危機?トランプ再選リスク検証【池上彰・増田ユリヤ】、トランプ復活ほぼ確実?「もしトラ」で日本が襲われる3つの悪夢とは) [世界情勢]
トランプについては、2020年10月21日に取上げた。今日は、(その50)(「もしトラ」でガザ・ウクライナは見殺し?韓国も危機?トランプ再選リスク検証【池上彰・増田ユリヤ】、トランプ復活ほぼ確実?「もしトラ」で日本が襲われる3つの悪夢とは)である。
先ずは、本年1月25日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの池上 彰氏と増田ユリヤ氏による「「もしトラ」でガザ・ウクライナは見殺し?韓国も危機?トランプ再選リスク検証【池上彰・増田ユリヤ】」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/337726
・『ウクライナ戦争に続いてガザ紛争が起こり、国際情勢は混迷を極めているが、2024年はどんな年になるのか。ジャーナリストの池上彰氏と増田ユリヤ氏に聞いた』、興味深そうだ。
・『トランプ氏の大統領返り咲きで最も打撃を受けるのはパレスチナ 増田 ロシアによるウクライナ侵攻は間もなく開始から2年目に突入し、イスラエルとハマスの争いも、3カ月目に入りました。2024年はどのような年になるでしょうか。 池上 何と言っても注目は「もしトラ」でしょう。「もしトラ」は、24年11月の米大統領選挙で「もしトランプ前大統領が再び大統領に返り咲いたら」を略した言葉です。 増田 「もしドラ」(岩崎夏海著『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』の略称)をもじったものですね。 池上 はい。米国政治は国際情勢の全てに影響を及ぼしますから、24年を占う上で米大統領選の動向は外せません。 増田 このまま「もしトラ」が実現したら、最も打撃を受けるのはパレスチナ。在職中に在イスラエル米大使館をエルサレムに移したトランプ氏ですから、情勢の悪化は避けられません。そもそもバイデン政権でも、イスラエルを制止することはできていませんが。 池上 イスラエル政府とパレスチナ当局は23年11月下旬、戦闘を7日間休止しました。それも程なく再開され、ガザ地区の被害は拡大する一方です。12月8日には国連安全保障理事会で即時停戦案の採決があり、15の理事国のうち日本やフランスなど13カ国が賛成したにもかかわらず、米国が拒否権を発動し、否決されました。 増田 ましてやトランプ政権が実現したら、一体どうなるのか……。 池上 イスラエルの動向は、米国国内のユダヤ人たちの意向にも影響を与えます。米国のユダヤ人は、国内の政局に大きな影響力を持っており、民主党であれ共和党であれ、献金や票で力を持つユダヤ人社会を無視することはできません。これまで何度も米大統領選挙を取材しましたが、民主党と共和党、どちらの大会でも「われわれはイスラエルと共にある」という旗が掲げられたり、缶バッジが売られたりしています。 増田 ただ今回は、米国国内も一枚岩ではありません』、「「民主党と共和党、どちらの大会でも「われわれはイスラエルと共にある」という旗が掲げられたり、缶バッジが売られたりしています」、なるほど。
・『即時停戦を支持する若者がバイデン不支持でトランプがリード 池上 米大統領選候補の支持率で見ると、ハマスとイスラエルの軍事衝突が起きる前はバイデン氏がわずかながらトランプ氏をリードしていました。しかしその後、民主党ではイスラエル支持派と即時停戦派で割れたため、イスラエル寄りの立場を示すバイデン氏の支持は、特に若い世代の間で低下しています。パレスチナ情勢の悪化で、トランプ氏が僅差ながらバイデン氏をリードする事態になりました。 増田 即時停戦を支持する若者の反応は、パレスチナを見殺しにするなという、当然の反発ですよね。しかしそれがバイデン氏の支持率をそぎ、結果的にトランプ氏が浮上するというのは何とも皮肉です。 イスラエル当局は「ハマス殲滅」を大義名分に、一般市民も大量に殺害しています。市民を「人間の盾」にしているのはハマスであり、悪いのはハマスである、だからハマスを殲滅するまで攻撃をやめないというのがイスラエルの論理です。 池上 イスラエル軍のコンリクス報道官が、ガザでハマスの戦闘員1人につき約2人の民間人が死亡したことに対して「(テロリストとの市街戦としては)非常に良い割合だ」と発言して物議を醸しているのは当然でしょう。 増田 米国在住のユダヤ人の中にもイスラエルのガザへの攻撃を非難し、即時停戦を求めてデモを行っている人もいます』、「民主党ではイスラエル支持派と即時停戦派で割れたため、イスラエル寄りの立場を示すバイデン氏の支持は、特に若い世代の間で低下しています。パレスチナ情勢の悪化で、トランプ氏が僅差ながらバイデン氏をリードする事態になりました・・・即時停戦を支持する若者の反応は、パレスチナを見殺しにするなという、当然の反発ですよね。しかしそれがバイデン氏の支持率をそぎ、結果的にトランプ氏が浮上するというのは何とも皮肉です」、なるほど。
・『「もしトラ」ならウクライナ、韓国、NATOに影響 池上 とはいえ、戦闘が長引くのはイスラエルにとっても打撃です。働き盛りの世代が兵士として動員されていますから、経済は足踏み状態に陥っている。そのためイスラエルにとっても「戦闘は5カ月が限度」という指摘もあります。 また、この事態を違った視点で見ているのがウクライナです。ここまで欧米、特に米国からの支援を受けて何とかロシアに抵抗してきましたが、イスラエルとパレスチナの争いに世界の目が向き、ウクライナに対する関心や支援の度合いが低下しつつあることに焦りの色をにじませています。その上、トランプ氏はウクライナ支援を打ち切ると公言しています。 それだけではなく、「もしトラ」なら、米国の経済的な負担を減らすためにNATO(北大西洋条約機構)から脱退し、在韓米軍も撤退させる可能性があります。トランプ氏は在任時に韓国への貿易赤字に不満を持ち、在韓米軍を撤退させようとしたところ、ポンペオ国務長官(当時)が「2期目の優先事項にしましょう」と言って止めたという逸話がありますから。 増田 一方、トランプ氏の対抗馬として急浮上しているのが現在唯一の女性候補である共和党のニッキー・ヘイリー氏。トランプ政権で国連大使を務めましたが、現在はトランプ路線と距離を置いています』、「イスラエルとパレスチナの争いに世界の目が向き、ウクライナに対する関心や支援の度合いが低下しつつあることに焦りの色をにじませています。その上、トランプ氏はウクライナ支援を打ち切ると公言しています。 それだけではなく、「もしトラ」なら、米国の経済的な負担を減らすためにNATO・・・から脱退し、在韓米軍も撤退させる可能性があります。トランプ氏は在任時に韓国への貿易赤字に不満を持ち、在韓米軍を撤退させようとしたところ、ポンペオ国務長官(当時)が「2期目の優先事項にしましょう」と言って止めたという逸話がありますから」、なるほど。
・『今年は各国で選挙がめじろ押し 池上 「このままでは一蓮托生になる」とみて、任期途中で辞任しましたね。当時から「いずれ大統領選に出るつもりなのかな」と思っていましたが、案の定でした。ただ、有力な対抗馬とはいえトランプ氏とは支持率に大きな開きがあり、「もしトラ」の可能性は決して低くはありません。 24年は米大統領選以外にも国際的に注目される選挙がめじろ押し。1月13日には台湾の総統選挙が行われ、米国との連携を強める民進党の頼清徳氏が勝利しましたが、3月にはロシアの大統領選挙が予定されています。プーチン大統領は再選されるでしょう。ロシアが一方的に併合したウクライナの各州でも選挙が行われます。 増田 そして11月には米大統領選。「もしトラ」ならウクライナもガザも見殺しにされる可能性が高い。不安ばかり募りますが、明るいニュースはないのでしょうか。 池上 あえて挙げれば24年7月にあるパリオリンピック・パラリンピックでしょうか。工事の遅れで開催が危ぶまれている25年の大阪万博とは違って、安心して楽しめるのではないかと期待しています』、「米大統領選。「もしトラ」ならウクライナもガザも見殺しにされる可能性が高い・・・明るいニュースは・・・あえて挙げれば24年7月にあるパリオリンピック・パラリンピック・・・安心して楽しめるのではないかと期待しています」、「ウクライナもガザも見殺し」とはいまから覚悟しておく必要がありそうだ。
次に、1月26日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「トランプ復活ほぼ確実?「もしトラ」で日本が襲われる3つの悪夢とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/337837
・『「もしトランプ大統領が再登場したら?」を意味する“もしトラ”という言葉がはやっています。正直なところ、トランプ政権復活の可能性はかなり高いです。「ほぼ確実」と言えるでしょう。それでも、 “もしトラ”では絶対にダメです。実現した場合、2025年には日本企業にもマズいことが起きるからです』、「トランプ政権復活の可能性はかなり高いです。「ほぼ確実」と言えるでしょう。それでも、 “もしトラ”では絶対にダメです。実現した場合、2025年には日本企業にもマズいことが起きるからです」、なるほど。
・『トランプが共和党候補としてバイデンに勝つ!? 「もしトラ」は確実に起こる トランプ前大統領が、共和党の大統領候補を選ぶ二つ目のイベントとなるニューハンプシャー州の予備選挙で再び勝利しました。 候補者の対抗馬はすでに元国連大使のヘイリー氏一人に絞られていて、かつ、ヘイリー氏が緒戦でトランプ候補にもし勝てるとしたら唯一のチャンスは今回のニューハンプシャー州だと言われていました。 ヘイリー氏はこれまでニューハンプシャー州の選挙戦に実質的に注力してきたのですが、結果としてはトランプ候補54%、ヘイリー候補43%と勝つことはできませんでした。 とはいえ、ヘイリー候補の43%は善戦と言えるでしょう。この後、2月24日にヘイリー氏の地元であるサウスカロライナ州の予備選挙では少なくとも1勝できるはずで、候補選びの趨勢(すうせい)が決まるといわれている3月5日のスーパーチューズデーまで、わずかながらチャンスが残っている状況です。 その前提で、未来予測の専門家として断定させていただくことが二つあります。一つ目に、共和党の候補者はトランプ候補でほぼ決まりでしょう。 ここまでは、他の識者の方々も意見は同じだと思います。重要なのは二つ目で、11月の大統領選挙の本選でも間違いなくトランプ候補が、民主党現職のバイデン大統領に勝つでしょう。 世の中では、かつてのベストセラーの「もしドラ」にひっかけて「もしトラ」という言葉がはやっています。「もしトランプ大統領が再登場したら?」を意味する言葉です。言葉としては面白いのですが、未来予測の立場で言えば「もしトラ」ではダメです。 「まず確実にトランプ新大統領が誕生する前提で、2025年には日本企業にはマズいことが起きるだろう」ということが、現時点で一番蓋然(がいぜん)性が高い未来です。 この記事では前半で「なぜトランプ新大統領の誕生が確実なのか」を解説したうえで、後半では「まずトラ」、つまりトランプ大統領で日本企業はどうマズいことになるのかを予測してみたいと思います』、「「まず確実にトランプ新大統領が誕生する前提で、2025年には日本企業にはマズいことが起きるだろう」ということが、現時点で一番蓋然(がいぜん)性が高い未来です」、なるほど。
・『健康不安、スキャンダル、戦争がなければ トランプ政権の復活はほぼ確実 アメリカの大統領選挙は4年に一度行われ、二大政党である民主党と共和党の大統領候補が一騎討ちの形で選挙を戦います。その選挙は50州それぞれに割り当てられている選挙人の数を勝った候補が総取りするという一風変わった間接選挙で行われます。そのため過去何回か、アメリカ全体の総得票数では多かった候補が敗れるという結果も起きています。 この独特の大統領選挙の仕組みは、50州それぞれが独立国家のような権利を有するという歴史的な経緯から生まれた制度なのですが、建国250年もたつとそれなりに制度疲労が起きています。 簡単に説明すると、50州のうち40州前後の州は選挙をする前から民主党候補が勝つか共和党候補が勝つかはほぼ決まっているのです。 ざっくり言えば、東海岸と西海岸では民主党が強く、中央部の州では共和党が強い傾向があります。金融とITの強い州では民主党が強く、工業と農業が盛んな州では共和党が強いと言ったほうがより正確かもしれません。 つまり、アメリカの大統領選挙は残る少数の「激戦区」でどちらの候補が勝つかでバイデン大統領が再選されるのか、トランプ候補が返り咲きをするかが決まる。これが「制度疲労」の正体です。 この制度疲労の欠陥があるせいで、2024年の大統領選挙は比較的予想がつきやすい状態になっています。簡単に言えば、今のところ激戦区においてバイデン大統領がトランプ候補よりも支持率を大きく下げているのです。 民主党としてはバイデン大統領以外の候補が出てきたほうが、本当はトランプ候補に勝てる可能性があるのですが、現職の大統領が選挙に出ると言っている以上、民主党で別の候補が出てくることが難しいのです。 これが、トランプ新大統領復活の可能性が高いという根拠です。私は7割方、この予測が当たると思っていますが、この予測が覆る可能性としての不測の要素は3つあります。 (1)高齢のバイデン大統領、トランプ候補のどちらかに健康不安が発生する (2)同じく大統領候補に選ばれる前に政治的に致命的なスキャンダルが発生する (3)アメリカが本格的な戦争に巻き込まれる どれもありうるシナリオですが、その確率を考えても「まずトランプだろう」というのが現時点での未来予測ということです。 では、ここからは「まず確実にトランプ新大統領が誕生するとしたら、それは日本企業にとって何がどうマズいのか?」を考えてみたいと思います。 トランプ新大統領が誕生すれば、基本的にバイデン現大統領の政策の多くが否定されることになります。 原理原則としては「米国第一主義」「保護主義」「同盟軽視」が基本姿勢になるでしょう。その前提でこの記事では、特に重要な以下の3点について述べてみたいと思います。 (1)ウクライナ紛争およびガザ紛争への影響 (2)地球温暖化の後退 (3)米中の分断』、「ざっくり言えば、東海岸と西海岸では民主党が強く、中央部の州では共和党が強い傾向があります。金融とITの強い州では民主党が強く、工業と農業が盛んな州では共和党が強いと言ったほうがより正確かもしれません。 つまり、アメリカの大統領選挙は残る少数の「激戦区」でどちらの候補が勝つかでバイデン大統領が再選されるのか、トランプ候補が返り咲きをするかが決まる・・・激戦区においてバイデン大統領がトランプ候補よりも支持率を大きく下げているのです。 民主党としてはバイデン大統領以外の候補が出てきたほうが、本当はトランプ候補に勝てる可能性があるのですが、現職の大統領が選挙に出ると言っている以上、民主党で別の候補が出てくることが難しいのです。 これが、トランプ新大統領復活の可能性が高いという根拠です」、なるほど。
・『トランプ政権が復活→ウクライナ紛争終結 軍事予算増で欧州経済は停滞 まず最初に、今年11月にトランプ大統領が誕生した場合、そこでウクライナ紛争が終わる可能性があります。理由はウクライナの弾切れです。 ウクライナはこの2年間、欧米からの支援を受けて敢然とロシアに対抗してきたのですが、直近ではヨーロッパからの弾薬が枯渇しつつあり、戦線も膠着(こうちゃく)状態です。 頼みの綱はアメリカからの弾薬の支援ですが、トランプ大統領はビジネスマンですから、金銭的に割に合わないウクライナへの支援は大幅に縮小する可能性があります。 そうなるとゼレンスキー大統領はどこかの時点で、現実的に和平を模索する必要が出てくるでしょう。クリミア紛争のときと同様に、ウクライナはまた領土の一部をロシアに奪われた形での紛争終結を受け入れざるをえなくなります。 いい面としては、日本を含めた西側諸国とロシアのビジネスが再開することですが、悪い問題として紛争終結が欧州経済に与える影響があります。簡単に言えばロシアに対抗するためのEUないしはNATOの軍事配備増強が必要になり、その負担で欧州の実態経済が悪化することをある程度想定しておく必要があります。 一つわかりやすい例を挙げておきますと、2023年にドイツ経済がマイナス成長になったという事実があります。その主要な理由がドイツの法律にあります。政府の支出が大きくならないようにルールが決められていて、日本政府のようにじゃぶじゃぶと政策的な支出を増やすことができないのです。 日本は10年前の日銀の異次元緩和以降、逆に政治家がどんどん支出を増やしてプライマリーバランスが悪化していることが問題なのですが、それはまた別の問題として、ドイツおよびEUはどこかで政府予算を増やしたら、どこかを削らなければいけない。 つまり軍事予算が増える分、経済への支出が減り、結果として欧州経済が停滞する。これは欧州とのビジネスがある日本企業には大きなリスクになります。 ウクライナ紛争終結の問題はこれだけではありませんが、とにかく戦争終結で世の中の前提が大きく変わるというのが“まずトラ”(まず確実にトランプ新大統領が誕生する場合)で起こる最初の問題です』、「ドイツおよびEUはどこかで政府予算を増やしたら、どこかを削らなければいけない。 つまり軍事予算が増える分、経済への支出が減り、結果として欧州経済が停滞する。これは欧州とのビジネスがある日本企業には大きなリスクになります」、「ドイツやEU」にそんな厳しい財政ルールがあるとは初めて知った。
・『アメリカがパリ協定から離脱→日本の脱炭素投資が遅れ国際競争力ダウン 二番目が、アメリカが地球温暖化を抑止するパリ協定の枠組みから、また離脱するリスクです。これはEV(電気自動車)で出遅れている日本企業にとっては朗報だという側面はあるでしょう。しかし私はその影響が多岐にわたることで、事態はそれほど簡単ではないと捉えています。 悪い方の影響は二つあって、一つは日本企業がアメリカと協調して行ってきた脱炭素投資がはしごを外される危険性です。これはバイデン政権下で日本の自動車メーカーが投資をしてきたアメリカのEVと認められるための投資が無駄になるといった事柄がわかりやすい具体例でしょう。 もう一つは、このタイミングでアメリカとそれに追随する日本が脱炭素投資を緩めてしまうことで、2020年代後半に逆に日本に求められる脱炭素のハードルが大きく上がってしまうことです。ひとことで言えば、遅れが大きくなって国際競争力を下げてしまうリスクといえます』、「アメリカが地球温暖化を抑止するパリ協定の枠組みから、また離脱するリスクです。これはEV(電気自動車)で出遅れている日本企業にとっては朗報だという側面はあるでしょう。しかし私はその影響が多岐にわたることで、事態はそれほど簡単ではないと捉えています。 悪い方の影響は二つあって、一つは日本企業がアメリカと協調して行ってきた脱炭素投資がはしごを外される危険性です・・・もう一つは、このタイミングでアメリカとそれに追随する日本が脱炭素投資を緩めてしまうことで、2020年代後半に逆に日本に求められる脱炭素のハードルが大きく上がってしまうことです」、なるほど。
・『地政学リスクが大きくなり紛争リスクも本格化 三番目が、中国とアメリカのデカップリング(分断)です。これも現時点では熊本や千歳に半導体工場が建設されるなど日本経済にプラスの要素はあるのですが、当然のことながら日本経済の重要な取引先である中国市場との関係が悪化するのは、マイナス要因の方が大きいわけです。 悪いことに、今年から来年にかけて中国経済は不動産バブル崩壊の影響で非常に苦しい状況に陥ると予測されています。最悪の時期であるがゆえにトランプ新大統領は自信をもって中国たたきに出る可能性が高くなります。 その反作用で仮にグローバルサウスが中国寄りに動いたとしたら、日本がアメリカに追随することで日本は中国市場だけでなく、グローバルサウス市場でも立ち回りにくくなるという事態も想定しなければいけないでしょう。 そしてこれらのリスクを組み合わせると、四番目のリスクが浮かび上がります。トランプ新大統領誕生で、地政学リスクははるかに大きくなるのです。 これらの三つの変化によって、国同士の力関係が変化するのもリスクですが、それに加えて新たに高まる別の紛争リスクを考える必要が出てきます。 わかりやすい例を一つ挙げれば、イスラエルとアメリカの関係性が変わることで、イランをはじめとする中東諸国がイスラエルとハマス(あるいはパレスチナ)との戦争に参戦しやすくなる可能性があります。当然のことながら、もしそうなれば新たな中東戦争が勃発し、新たなオイルショックが起きる危険性が高まります』、「イスラエルとアメリカの関係性が変わることで、イランをはじめとする中東諸国がイスラエルとハマス(あるいはパレスチナ)との戦争に参戦しやすくなる可能性があります。当然のことながら、もしそうなれば新たな中東戦争が勃発し、新たなオイルショックが起きる危険性が高まります」、これは大変だ。
・『日本は「もしトラ」ではなく「まずトラ」を真剣に考えるべきだ 全体を総括すると、こういう話になります。トランプ新大統領が誕生する確率は高く、その結果、ロシア、欧州、中国、グローバルサウスそれぞれとアメリカとの関係性が大きく変わることになるでしょう。 日本政府はある程度、アメリカに追随するでしょうから、それぞれの国でビジネスを行う日本企業にとっては逆風も吹くわけです。 もちろんトランプ新大統領のアメリカ第一主義、保護主義、分断主義の恩恵をストレートに受けられる日本企業もあるとは思います。しかし状況がそれほど単純ではない日本企業の場合、今年の秋までに、自社にどのような悪影響が起きるのか、きちんとあぶり出したうえで、対策を考えておく必要があります。 その意味で「もしトラ」などと口にしているのは危険です。「まずトラ」を前提に、生き残り戦略を考えることが今の経営者には求められているのです』、「トランプ新大統領が誕生する確率は高く、その結果、ロシア、欧州、中国、グローバルサウスそれぞれとアメリカとの関係性が大きく変わることになるでしょう。 日本政府はある程度、アメリカに追随するでしょうから、それぞれの国でビジネスを行う日本企業にとっては逆風も吹くわけです・・・「まずトラ」を前提に、生き残り戦略を考えることが今の経営者には求められているのです」、「日本企業」にとって「「まずトラ」を前提に、生き残り戦略を考えることが今の経営者には求められている」、準備はずいぶん大変そうだ。
先ずは、本年1月25日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの池上 彰氏と増田ユリヤ氏による「「もしトラ」でガザ・ウクライナは見殺し?韓国も危機?トランプ再選リスク検証【池上彰・増田ユリヤ】」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/337726
・『ウクライナ戦争に続いてガザ紛争が起こり、国際情勢は混迷を極めているが、2024年はどんな年になるのか。ジャーナリストの池上彰氏と増田ユリヤ氏に聞いた』、興味深そうだ。
・『トランプ氏の大統領返り咲きで最も打撃を受けるのはパレスチナ 増田 ロシアによるウクライナ侵攻は間もなく開始から2年目に突入し、イスラエルとハマスの争いも、3カ月目に入りました。2024年はどのような年になるでしょうか。 池上 何と言っても注目は「もしトラ」でしょう。「もしトラ」は、24年11月の米大統領選挙で「もしトランプ前大統領が再び大統領に返り咲いたら」を略した言葉です。 増田 「もしドラ」(岩崎夏海著『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』の略称)をもじったものですね。 池上 はい。米国政治は国際情勢の全てに影響を及ぼしますから、24年を占う上で米大統領選の動向は外せません。 増田 このまま「もしトラ」が実現したら、最も打撃を受けるのはパレスチナ。在職中に在イスラエル米大使館をエルサレムに移したトランプ氏ですから、情勢の悪化は避けられません。そもそもバイデン政権でも、イスラエルを制止することはできていませんが。 池上 イスラエル政府とパレスチナ当局は23年11月下旬、戦闘を7日間休止しました。それも程なく再開され、ガザ地区の被害は拡大する一方です。12月8日には国連安全保障理事会で即時停戦案の採決があり、15の理事国のうち日本やフランスなど13カ国が賛成したにもかかわらず、米国が拒否権を発動し、否決されました。 増田 ましてやトランプ政権が実現したら、一体どうなるのか……。 池上 イスラエルの動向は、米国国内のユダヤ人たちの意向にも影響を与えます。米国のユダヤ人は、国内の政局に大きな影響力を持っており、民主党であれ共和党であれ、献金や票で力を持つユダヤ人社会を無視することはできません。これまで何度も米大統領選挙を取材しましたが、民主党と共和党、どちらの大会でも「われわれはイスラエルと共にある」という旗が掲げられたり、缶バッジが売られたりしています。 増田 ただ今回は、米国国内も一枚岩ではありません』、「「民主党と共和党、どちらの大会でも「われわれはイスラエルと共にある」という旗が掲げられたり、缶バッジが売られたりしています」、なるほど。
・『即時停戦を支持する若者がバイデン不支持でトランプがリード 池上 米大統領選候補の支持率で見ると、ハマスとイスラエルの軍事衝突が起きる前はバイデン氏がわずかながらトランプ氏をリードしていました。しかしその後、民主党ではイスラエル支持派と即時停戦派で割れたため、イスラエル寄りの立場を示すバイデン氏の支持は、特に若い世代の間で低下しています。パレスチナ情勢の悪化で、トランプ氏が僅差ながらバイデン氏をリードする事態になりました。 増田 即時停戦を支持する若者の反応は、パレスチナを見殺しにするなという、当然の反発ですよね。しかしそれがバイデン氏の支持率をそぎ、結果的にトランプ氏が浮上するというのは何とも皮肉です。 イスラエル当局は「ハマス殲滅」を大義名分に、一般市民も大量に殺害しています。市民を「人間の盾」にしているのはハマスであり、悪いのはハマスである、だからハマスを殲滅するまで攻撃をやめないというのがイスラエルの論理です。 池上 イスラエル軍のコンリクス報道官が、ガザでハマスの戦闘員1人につき約2人の民間人が死亡したことに対して「(テロリストとの市街戦としては)非常に良い割合だ」と発言して物議を醸しているのは当然でしょう。 増田 米国在住のユダヤ人の中にもイスラエルのガザへの攻撃を非難し、即時停戦を求めてデモを行っている人もいます』、「民主党ではイスラエル支持派と即時停戦派で割れたため、イスラエル寄りの立場を示すバイデン氏の支持は、特に若い世代の間で低下しています。パレスチナ情勢の悪化で、トランプ氏が僅差ながらバイデン氏をリードする事態になりました・・・即時停戦を支持する若者の反応は、パレスチナを見殺しにするなという、当然の反発ですよね。しかしそれがバイデン氏の支持率をそぎ、結果的にトランプ氏が浮上するというのは何とも皮肉です」、なるほど。
・『「もしトラ」ならウクライナ、韓国、NATOに影響 池上 とはいえ、戦闘が長引くのはイスラエルにとっても打撃です。働き盛りの世代が兵士として動員されていますから、経済は足踏み状態に陥っている。そのためイスラエルにとっても「戦闘は5カ月が限度」という指摘もあります。 また、この事態を違った視点で見ているのがウクライナです。ここまで欧米、特に米国からの支援を受けて何とかロシアに抵抗してきましたが、イスラエルとパレスチナの争いに世界の目が向き、ウクライナに対する関心や支援の度合いが低下しつつあることに焦りの色をにじませています。その上、トランプ氏はウクライナ支援を打ち切ると公言しています。 それだけではなく、「もしトラ」なら、米国の経済的な負担を減らすためにNATO(北大西洋条約機構)から脱退し、在韓米軍も撤退させる可能性があります。トランプ氏は在任時に韓国への貿易赤字に不満を持ち、在韓米軍を撤退させようとしたところ、ポンペオ国務長官(当時)が「2期目の優先事項にしましょう」と言って止めたという逸話がありますから。 増田 一方、トランプ氏の対抗馬として急浮上しているのが現在唯一の女性候補である共和党のニッキー・ヘイリー氏。トランプ政権で国連大使を務めましたが、現在はトランプ路線と距離を置いています』、「イスラエルとパレスチナの争いに世界の目が向き、ウクライナに対する関心や支援の度合いが低下しつつあることに焦りの色をにじませています。その上、トランプ氏はウクライナ支援を打ち切ると公言しています。 それだけではなく、「もしトラ」なら、米国の経済的な負担を減らすためにNATO・・・から脱退し、在韓米軍も撤退させる可能性があります。トランプ氏は在任時に韓国への貿易赤字に不満を持ち、在韓米軍を撤退させようとしたところ、ポンペオ国務長官(当時)が「2期目の優先事項にしましょう」と言って止めたという逸話がありますから」、なるほど。
・『今年は各国で選挙がめじろ押し 池上 「このままでは一蓮托生になる」とみて、任期途中で辞任しましたね。当時から「いずれ大統領選に出るつもりなのかな」と思っていましたが、案の定でした。ただ、有力な対抗馬とはいえトランプ氏とは支持率に大きな開きがあり、「もしトラ」の可能性は決して低くはありません。 24年は米大統領選以外にも国際的に注目される選挙がめじろ押し。1月13日には台湾の総統選挙が行われ、米国との連携を強める民進党の頼清徳氏が勝利しましたが、3月にはロシアの大統領選挙が予定されています。プーチン大統領は再選されるでしょう。ロシアが一方的に併合したウクライナの各州でも選挙が行われます。 増田 そして11月には米大統領選。「もしトラ」ならウクライナもガザも見殺しにされる可能性が高い。不安ばかり募りますが、明るいニュースはないのでしょうか。 池上 あえて挙げれば24年7月にあるパリオリンピック・パラリンピックでしょうか。工事の遅れで開催が危ぶまれている25年の大阪万博とは違って、安心して楽しめるのではないかと期待しています』、「米大統領選。「もしトラ」ならウクライナもガザも見殺しにされる可能性が高い・・・明るいニュースは・・・あえて挙げれば24年7月にあるパリオリンピック・パラリンピック・・・安心して楽しめるのではないかと期待しています」、「ウクライナもガザも見殺し」とはいまから覚悟しておく必要がありそうだ。
次に、1月26日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「トランプ復活ほぼ確実?「もしトラ」で日本が襲われる3つの悪夢とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/337837
・『「もしトランプ大統領が再登場したら?」を意味する“もしトラ”という言葉がはやっています。正直なところ、トランプ政権復活の可能性はかなり高いです。「ほぼ確実」と言えるでしょう。それでも、 “もしトラ”では絶対にダメです。実現した場合、2025年には日本企業にもマズいことが起きるからです』、「トランプ政権復活の可能性はかなり高いです。「ほぼ確実」と言えるでしょう。それでも、 “もしトラ”では絶対にダメです。実現した場合、2025年には日本企業にもマズいことが起きるからです」、なるほど。
・『トランプが共和党候補としてバイデンに勝つ!? 「もしトラ」は確実に起こる トランプ前大統領が、共和党の大統領候補を選ぶ二つ目のイベントとなるニューハンプシャー州の予備選挙で再び勝利しました。 候補者の対抗馬はすでに元国連大使のヘイリー氏一人に絞られていて、かつ、ヘイリー氏が緒戦でトランプ候補にもし勝てるとしたら唯一のチャンスは今回のニューハンプシャー州だと言われていました。 ヘイリー氏はこれまでニューハンプシャー州の選挙戦に実質的に注力してきたのですが、結果としてはトランプ候補54%、ヘイリー候補43%と勝つことはできませんでした。 とはいえ、ヘイリー候補の43%は善戦と言えるでしょう。この後、2月24日にヘイリー氏の地元であるサウスカロライナ州の予備選挙では少なくとも1勝できるはずで、候補選びの趨勢(すうせい)が決まるといわれている3月5日のスーパーチューズデーまで、わずかながらチャンスが残っている状況です。 その前提で、未来予測の専門家として断定させていただくことが二つあります。一つ目に、共和党の候補者はトランプ候補でほぼ決まりでしょう。 ここまでは、他の識者の方々も意見は同じだと思います。重要なのは二つ目で、11月の大統領選挙の本選でも間違いなくトランプ候補が、民主党現職のバイデン大統領に勝つでしょう。 世の中では、かつてのベストセラーの「もしドラ」にひっかけて「もしトラ」という言葉がはやっています。「もしトランプ大統領が再登場したら?」を意味する言葉です。言葉としては面白いのですが、未来予測の立場で言えば「もしトラ」ではダメです。 「まず確実にトランプ新大統領が誕生する前提で、2025年には日本企業にはマズいことが起きるだろう」ということが、現時点で一番蓋然(がいぜん)性が高い未来です。 この記事では前半で「なぜトランプ新大統領の誕生が確実なのか」を解説したうえで、後半では「まずトラ」、つまりトランプ大統領で日本企業はどうマズいことになるのかを予測してみたいと思います』、「「まず確実にトランプ新大統領が誕生する前提で、2025年には日本企業にはマズいことが起きるだろう」ということが、現時点で一番蓋然(がいぜん)性が高い未来です」、なるほど。
・『健康不安、スキャンダル、戦争がなければ トランプ政権の復活はほぼ確実 アメリカの大統領選挙は4年に一度行われ、二大政党である民主党と共和党の大統領候補が一騎討ちの形で選挙を戦います。その選挙は50州それぞれに割り当てられている選挙人の数を勝った候補が総取りするという一風変わった間接選挙で行われます。そのため過去何回か、アメリカ全体の総得票数では多かった候補が敗れるという結果も起きています。 この独特の大統領選挙の仕組みは、50州それぞれが独立国家のような権利を有するという歴史的な経緯から生まれた制度なのですが、建国250年もたつとそれなりに制度疲労が起きています。 簡単に説明すると、50州のうち40州前後の州は選挙をする前から民主党候補が勝つか共和党候補が勝つかはほぼ決まっているのです。 ざっくり言えば、東海岸と西海岸では民主党が強く、中央部の州では共和党が強い傾向があります。金融とITの強い州では民主党が強く、工業と農業が盛んな州では共和党が強いと言ったほうがより正確かもしれません。 つまり、アメリカの大統領選挙は残る少数の「激戦区」でどちらの候補が勝つかでバイデン大統領が再選されるのか、トランプ候補が返り咲きをするかが決まる。これが「制度疲労」の正体です。 この制度疲労の欠陥があるせいで、2024年の大統領選挙は比較的予想がつきやすい状態になっています。簡単に言えば、今のところ激戦区においてバイデン大統領がトランプ候補よりも支持率を大きく下げているのです。 民主党としてはバイデン大統領以外の候補が出てきたほうが、本当はトランプ候補に勝てる可能性があるのですが、現職の大統領が選挙に出ると言っている以上、民主党で別の候補が出てくることが難しいのです。 これが、トランプ新大統領復活の可能性が高いという根拠です。私は7割方、この予測が当たると思っていますが、この予測が覆る可能性としての不測の要素は3つあります。 (1)高齢のバイデン大統領、トランプ候補のどちらかに健康不安が発生する (2)同じく大統領候補に選ばれる前に政治的に致命的なスキャンダルが発生する (3)アメリカが本格的な戦争に巻き込まれる どれもありうるシナリオですが、その確率を考えても「まずトランプだろう」というのが現時点での未来予測ということです。 では、ここからは「まず確実にトランプ新大統領が誕生するとしたら、それは日本企業にとって何がどうマズいのか?」を考えてみたいと思います。 トランプ新大統領が誕生すれば、基本的にバイデン現大統領の政策の多くが否定されることになります。 原理原則としては「米国第一主義」「保護主義」「同盟軽視」が基本姿勢になるでしょう。その前提でこの記事では、特に重要な以下の3点について述べてみたいと思います。 (1)ウクライナ紛争およびガザ紛争への影響 (2)地球温暖化の後退 (3)米中の分断』、「ざっくり言えば、東海岸と西海岸では民主党が強く、中央部の州では共和党が強い傾向があります。金融とITの強い州では民主党が強く、工業と農業が盛んな州では共和党が強いと言ったほうがより正確かもしれません。 つまり、アメリカの大統領選挙は残る少数の「激戦区」でどちらの候補が勝つかでバイデン大統領が再選されるのか、トランプ候補が返り咲きをするかが決まる・・・激戦区においてバイデン大統領がトランプ候補よりも支持率を大きく下げているのです。 民主党としてはバイデン大統領以外の候補が出てきたほうが、本当はトランプ候補に勝てる可能性があるのですが、現職の大統領が選挙に出ると言っている以上、民主党で別の候補が出てくることが難しいのです。 これが、トランプ新大統領復活の可能性が高いという根拠です」、なるほど。
・『トランプ政権が復活→ウクライナ紛争終結 軍事予算増で欧州経済は停滞 まず最初に、今年11月にトランプ大統領が誕生した場合、そこでウクライナ紛争が終わる可能性があります。理由はウクライナの弾切れです。 ウクライナはこの2年間、欧米からの支援を受けて敢然とロシアに対抗してきたのですが、直近ではヨーロッパからの弾薬が枯渇しつつあり、戦線も膠着(こうちゃく)状態です。 頼みの綱はアメリカからの弾薬の支援ですが、トランプ大統領はビジネスマンですから、金銭的に割に合わないウクライナへの支援は大幅に縮小する可能性があります。 そうなるとゼレンスキー大統領はどこかの時点で、現実的に和平を模索する必要が出てくるでしょう。クリミア紛争のときと同様に、ウクライナはまた領土の一部をロシアに奪われた形での紛争終結を受け入れざるをえなくなります。 いい面としては、日本を含めた西側諸国とロシアのビジネスが再開することですが、悪い問題として紛争終結が欧州経済に与える影響があります。簡単に言えばロシアに対抗するためのEUないしはNATOの軍事配備増強が必要になり、その負担で欧州の実態経済が悪化することをある程度想定しておく必要があります。 一つわかりやすい例を挙げておきますと、2023年にドイツ経済がマイナス成長になったという事実があります。その主要な理由がドイツの法律にあります。政府の支出が大きくならないようにルールが決められていて、日本政府のようにじゃぶじゃぶと政策的な支出を増やすことができないのです。 日本は10年前の日銀の異次元緩和以降、逆に政治家がどんどん支出を増やしてプライマリーバランスが悪化していることが問題なのですが、それはまた別の問題として、ドイツおよびEUはどこかで政府予算を増やしたら、どこかを削らなければいけない。 つまり軍事予算が増える分、経済への支出が減り、結果として欧州経済が停滞する。これは欧州とのビジネスがある日本企業には大きなリスクになります。 ウクライナ紛争終結の問題はこれだけではありませんが、とにかく戦争終結で世の中の前提が大きく変わるというのが“まずトラ”(まず確実にトランプ新大統領が誕生する場合)で起こる最初の問題です』、「ドイツおよびEUはどこかで政府予算を増やしたら、どこかを削らなければいけない。 つまり軍事予算が増える分、経済への支出が減り、結果として欧州経済が停滞する。これは欧州とのビジネスがある日本企業には大きなリスクになります」、「ドイツやEU」にそんな厳しい財政ルールがあるとは初めて知った。
・『アメリカがパリ協定から離脱→日本の脱炭素投資が遅れ国際競争力ダウン 二番目が、アメリカが地球温暖化を抑止するパリ協定の枠組みから、また離脱するリスクです。これはEV(電気自動車)で出遅れている日本企業にとっては朗報だという側面はあるでしょう。しかし私はその影響が多岐にわたることで、事態はそれほど簡単ではないと捉えています。 悪い方の影響は二つあって、一つは日本企業がアメリカと協調して行ってきた脱炭素投資がはしごを外される危険性です。これはバイデン政権下で日本の自動車メーカーが投資をしてきたアメリカのEVと認められるための投資が無駄になるといった事柄がわかりやすい具体例でしょう。 もう一つは、このタイミングでアメリカとそれに追随する日本が脱炭素投資を緩めてしまうことで、2020年代後半に逆に日本に求められる脱炭素のハードルが大きく上がってしまうことです。ひとことで言えば、遅れが大きくなって国際競争力を下げてしまうリスクといえます』、「アメリカが地球温暖化を抑止するパリ協定の枠組みから、また離脱するリスクです。これはEV(電気自動車)で出遅れている日本企業にとっては朗報だという側面はあるでしょう。しかし私はその影響が多岐にわたることで、事態はそれほど簡単ではないと捉えています。 悪い方の影響は二つあって、一つは日本企業がアメリカと協調して行ってきた脱炭素投資がはしごを外される危険性です・・・もう一つは、このタイミングでアメリカとそれに追随する日本が脱炭素投資を緩めてしまうことで、2020年代後半に逆に日本に求められる脱炭素のハードルが大きく上がってしまうことです」、なるほど。
・『地政学リスクが大きくなり紛争リスクも本格化 三番目が、中国とアメリカのデカップリング(分断)です。これも現時点では熊本や千歳に半導体工場が建設されるなど日本経済にプラスの要素はあるのですが、当然のことながら日本経済の重要な取引先である中国市場との関係が悪化するのは、マイナス要因の方が大きいわけです。 悪いことに、今年から来年にかけて中国経済は不動産バブル崩壊の影響で非常に苦しい状況に陥ると予測されています。最悪の時期であるがゆえにトランプ新大統領は自信をもって中国たたきに出る可能性が高くなります。 その反作用で仮にグローバルサウスが中国寄りに動いたとしたら、日本がアメリカに追随することで日本は中国市場だけでなく、グローバルサウス市場でも立ち回りにくくなるという事態も想定しなければいけないでしょう。 そしてこれらのリスクを組み合わせると、四番目のリスクが浮かび上がります。トランプ新大統領誕生で、地政学リスクははるかに大きくなるのです。 これらの三つの変化によって、国同士の力関係が変化するのもリスクですが、それに加えて新たに高まる別の紛争リスクを考える必要が出てきます。 わかりやすい例を一つ挙げれば、イスラエルとアメリカの関係性が変わることで、イランをはじめとする中東諸国がイスラエルとハマス(あるいはパレスチナ)との戦争に参戦しやすくなる可能性があります。当然のことながら、もしそうなれば新たな中東戦争が勃発し、新たなオイルショックが起きる危険性が高まります』、「イスラエルとアメリカの関係性が変わることで、イランをはじめとする中東諸国がイスラエルとハマス(あるいはパレスチナ)との戦争に参戦しやすくなる可能性があります。当然のことながら、もしそうなれば新たな中東戦争が勃発し、新たなオイルショックが起きる危険性が高まります」、これは大変だ。
・『日本は「もしトラ」ではなく「まずトラ」を真剣に考えるべきだ 全体を総括すると、こういう話になります。トランプ新大統領が誕生する確率は高く、その結果、ロシア、欧州、中国、グローバルサウスそれぞれとアメリカとの関係性が大きく変わることになるでしょう。 日本政府はある程度、アメリカに追随するでしょうから、それぞれの国でビジネスを行う日本企業にとっては逆風も吹くわけです。 もちろんトランプ新大統領のアメリカ第一主義、保護主義、分断主義の恩恵をストレートに受けられる日本企業もあるとは思います。しかし状況がそれほど単純ではない日本企業の場合、今年の秋までに、自社にどのような悪影響が起きるのか、きちんとあぶり出したうえで、対策を考えておく必要があります。 その意味で「もしトラ」などと口にしているのは危険です。「まずトラ」を前提に、生き残り戦略を考えることが今の経営者には求められているのです』、「トランプ新大統領が誕生する確率は高く、その結果、ロシア、欧州、中国、グローバルサウスそれぞれとアメリカとの関係性が大きく変わることになるでしょう。 日本政府はある程度、アメリカに追随するでしょうから、それぞれの国でビジネスを行う日本企業にとっては逆風も吹くわけです・・・「まずトラ」を前提に、生き残り戦略を考えることが今の経営者には求められているのです」、「日本企業」にとって「「まずトラ」を前提に、生き残り戦略を考えることが今の経営者には求められている」、準備はずいぶん大変そうだ。
タグ:「イスラエルとパレスチナの争いに世界の目が向き、ウクライナに対する関心や支援の度合いが低下しつつあることに焦りの色をにじませています。その上、トランプ氏はウクライナ支援を打ち切ると公言しています。 それだけではなく、「もしトラ」なら、米国の経済的な負担を減らすためにNATO・・・から脱退し、在韓米軍も撤退させる可能性があります。 「民主党ではイスラエル支持派と即時停戦派で割れたため、イスラエル寄りの立場を示すバイデン氏の支持は、特に若い世代の間で低下しています。パレスチナ情勢の悪化で、トランプ氏が僅差ながらバイデン氏をリードする事態になりました・・・即時停戦を支持する若者の反応は、パレスチナを見殺しにするなという、当然の反発ですよね。しかしそれがバイデン氏の支持率をそぎ、結果的にトランプ氏が浮上するというのは何とも皮肉です」、なるほど。 「「民主党と共和党、どちらの大会でも「われわれはイスラエルと共にある」という旗が掲げられたり、缶バッジが売られたりしています」、なるほど。 池上 彰氏と増田ユリヤ氏による「「もしトラ」でガザ・ウクライナは見殺し?韓国も危機?トランプ再選リスク検証【池上彰・増田ユリヤ】」 ダイヤモンド・オンライン (その50)(「もしトラ」でガザ・ウクライナは見殺し?韓国も危機?トランプ再選リスク検証【池上彰・増田ユリヤ】、トランプ復活ほぼ確実?「もしトラ」で日本が襲われる3つの悪夢とは) トランプ 「日本企業」にとって「「まずトラ」を前提に、生き残り戦略を考えることが今の経営者には求められている」、準備はずいぶん大変そうだ。 「トランプ新大統領が誕生する確率は高く、その結果、ロシア、欧州、中国、グローバルサウスそれぞれとアメリカとの関係性が大きく変わることになるでしょう。 日本政府はある程度、アメリカに追随するでしょうから、それぞれの国でビジネスを行う日本企業にとっては逆風も吹くわけです・・・「まずトラ」を前提に、生き残り戦略を考えることが今の経営者には求められているのです」、 「イスラエルとアメリカの関係性が変わることで、イランをはじめとする中東諸国がイスラエルとハマス(あるいはパレスチナ)との戦争に参戦しやすくなる可能性があります。当然のことながら、もしそうなれば新たな中東戦争が勃発し、新たなオイルショックが起きる危険性が高まります」、これは大変だ。 大きく上がってしまうことです」、なるほど。 「アメリカが地球温暖化を抑止するパリ協定の枠組みから、また離脱するリスクです。これはEV(電気自動車)で出遅れている日本企業にとっては朗報だという側面はあるでしょう。しかし私はその影響が多岐にわたることで、事態はそれほど簡単ではないと捉えています。 悪い方の影響は二つあって、一つは日本企業がアメリカと協調して行ってきた脱炭素投資がはしごを外される危険性です・・・もう一つは、このタイミングでアメリカとそれに追随する日本が脱炭素投資を緩めてしまうことで、2020年代後半に逆に日本に求められる脱炭素のハードルが 「ドイツおよびEUはどこかで政府予算を増やしたら、どこかを削らなければいけない。 つまり軍事予算が増える分、経済への支出が減り、結果として欧州経済が停滞する。これは欧州とのビジネスがある日本企業には大きなリスクになります」、「ドイツやEU」にそんな厳しい財政ルールがあるとは初めて知った。 激戦区においてバイデン大統領がトランプ候補よりも支持率を大きく下げているのです。 民主党としてはバイデン大統領以外の候補が出てきたほうが、本当はトランプ候補に勝てる可能性があるのですが、現職の大統領が選挙に出ると言っている以上、民主党で別の候補が出てくることが難しいのです。 これが、トランプ新大統領復活の可能性が高いという根拠です」、なるほど。 「ざっくり言えば、東海岸と西海岸では民主党が強く、中央部の州では共和党が強い傾向があります。金融とITの強い州では民主党が強く、工業と農業が盛んな州では共和党が強いと言ったほうがより正確かもしれません。 つまり、アメリカの大統領選挙は残る少数の「激戦区」でどちらの候補が勝つかでバイデン大統領が再選されるのか、トランプ候補が返り咲きをするかが決まる・・・ 「「まず確実にトランプ新大統領が誕生する前提で、2025年には日本企業にはマズいことが起きるだろう」ということが、現時点で一番蓋然(がいぜん)性が高い未来です」、なるほど。 「トランプ政権復活の可能性はかなり高いです。「ほぼ確実」と言えるでしょう。それでも、 “もしトラ”では絶対にダメです。実現した場合、2025年には日本企業にもマズいことが起きるからです」、なるほど。 鈴木貴博氏による「トランプ復活ほぼ確実?「もしトラ」で日本が襲われる3つの悪夢とは」 「米大統領選。「もしトラ」ならウクライナもガザも見殺しにされる可能性が高い・・・明るいニュースは・・・あえて挙げれば24年7月にあるパリオリンピック・パラリンピック・・・安心して楽しめるのではないかと期待しています」、「ウクライナもガザも見殺し」とはいまから覚悟しておく必要がありそうだ。 トランプ氏は在任時に韓国への貿易赤字に不満を持ち、在韓米軍を撤退させようとしたところ、ポンペオ国務長官(当時)が「2期目の優先事項にしましょう」と言って止めたという逸話がありますから」、なるほど。
大学(その14)(悪質タックル→アメフト部廃部…白日にさらされた「日大」ガバナンス問題 G&I大学対談(4)、<独自>日大病院から入院を拒否され、77歳で死去…「日大のドン」 田中英壽前理事長の「最期の姿」、東北大学・次期総長に冨永悌二氏「今までなかった新しい研究大学に」大学病院長など歴任 宮城県内の新型コロナ対応を指揮 〝もやもや病〟に影響を与える遺伝子を世界で初報告した実績も) [社会]
大学については、昨年12月22日に取上げた。今日は、(その14)(悪質タックル→アメフト部廃部…白日にさらされた「日大」ガバナンス問題 G&I大学対談(4)、<独自>日大病院から入院を拒否され、77歳で死去…「日大のドン」 田中英壽前理事長の「最期の姿」、東北大学・次期総長に冨永悌二氏「今までなかった新しい研究大学に」大学病院長など歴任 宮城県内の新型コロナ対応を指揮 〝もやもや病〟に影響を与える遺伝子を世界で初報告した実績も)である。
先ずは、昨年12月19日付けダイヤモンド・オンライン「悪質タックル→アメフト部廃部…白日にさらされた「日大」ガバナンス問題 G&I大学対談(4)」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/336436
・『本当に子どもの力を伸ばす学校 悪質タックル→アメフト部廃部…白日にさらされた「日大」ガバナンス問題 文理学部キャンパスにある日本大学アメリカンフットボール場。その塀に貼られたスローガンに込められた意味は何だろう(東京・世田谷区) 大学通信の井沢秀さんと教育ジャーナリストの後藤健夫さんによるG&I大学対談。第2回では半世紀以上にわたって私立大出願者数トップの座にあった早稲田大の志願者数がさらに減少すること、第3回では日東駒専のくくりで日本大が沈んでいく様子などを見てきました。2023年の最後に、ガバナンス能力不足にあえぐ日本大の明日がいずこにあるのかを考えてみましょう』、興味深そうだ。
・『「学長と副学長」辞任後の展望は開けたのか Q:11月15日の理事会で、学長と副学長に辞任勧告が出された日本大。2024年1月9日から学長候補者立候補の受け付けが始まります。副学長の方は1月1日から3月31日まで、23年度内は歯学部の特任教授が就くようです。 後藤 新学長の在任期間は前任者の残り、24年4月1日から26年6月30日までとなります。22年7月に発足した林真理子理事長体制が、後述するアメリカンフットボール部の薬物問題により、わずか1年ほどでそのガバナンス不足を露呈、世間的に追い詰められています。 ヤメ検の弁護士として期待された役割を果たせなかった澤田康広副学長がクビになるのは仕方ないでしょう。酒井健夫学長は田中英壽元理事長(2008~21年)の下で総長を務めた経験(2008~11年)があるものの、第三者委員会から、林理事長とともに「ガバナンスが全く機能しなかった」と切り捨てられました。 井沢 24年も日大はガバナンスを問われることは間違いないと思います。今回、記者会見の質疑で学生新聞(日本大学新聞)の学生が切実な声を発したことが報じられ、そこまで苦しんでいるのかと思いました。今回のガバナンス問題が学生の就職に影響するとは思えないのですが、親や受験生もやはり心配します。 後藤 学長を募集するのではなく、林理事長が兼務する総長パターンでガバナンスを利かせて、その間に学長ではなく新しい理事長を探すのがベストだと思うのだけれど。まず学則を変更して、日大の教授あるいは経験者でなくても学長になれるようにして、外の血を入れることですね。その手始めに林理事長が教授経験なしでも学長になる。林理事長は有識者として十分に学長が務まると思うんです。大組織の運営経験がないのだから、課題が多岐にわたる理事長よりも課題が絞られる学長が適任だと思います。 Q:22年3月、前理事長の時に出された「日本大学再生会議」答申書に沿って、2年前に36人いた理事が現在は22人に、評議員は125人から47人へと大きく削減され、選出母体からの過度の影響を免れるよう、理事の定年制や再任を1回に限る外部人材で理事や評議員の3分の1以上を占めるようにといったガバナンス改革は形にはなってきています。 後藤 前の理事長が組織をつぶしてしまったから、組織の膿(うみ)はまだ残っている。正常な状態に戻す前に、今回の不祥事が起きてしまった。立命館アジア太平洋大学の学長公募では、大学に魅力があったから出口治明さんのような経営者が他薦で就任してくれたけれども、いまの日大で火中の栗を拾う人はいるのだろうか。 井沢 これだけ確固とした組織のガバナンスが崩れて、学校経営の経験が浅い林さんがどこまでできるのでしょう。こういうときこそ、文部科学省が人を出せばいいのにと思います。 後藤 基本的に経営は素人で、林理事長はスナックのママみたいなもの。林さんはむしろ学長にして、代わりに文科省OBを据えて時間稼ぎをしながら人を探すのがいい。でも、日本最大の私立大学であり、組織もでかすぎる。文科省関係者にはやれる人がいないかもしれない。 Q:元文科省高等教育局長が評議員にいることはいます(笑)。 後藤 現理事会だと、和田秀樹専務理事は教育に強い関心があるが、大組織を動かしたことがない。第三者委員会答申検討会議議長として12月4日の会見に出てきた久保利英明弁護士は、総会屋対策で活躍した経験もある一流の企業弁護士です。久保利弁護士のような組織をよく知る人が担ってもらえるなら悪い話ではないかもしれない。理事長は、組織を知っている人、大企業の取締役経験者でないとできないと思う。 Q:政治家には適任者はいませんか。 後藤 一応、OBということであれば古賀誠と小沢一郎がいます。彼らならビシッとやるでしょう。その後のことは知らないけど(笑)』、「林さんはむしろ学長にして、代わりに文科省OBを据えて時間稼ぎをしながら人を探すのがいい。でも、日本最大の私立大学であり、組織もでかすぎる。文科省関係者にはやれる人がいないかもしれない」、「「林さんはむしろ学長にして」、いいアイデアだ。ただ、「代わりに文科省OBを据えて時間稼ぎをしながら人を探すのがいい」、「文科省OB」は逃げ回るだろうし、適任者が果たしているのか疑問だ。
・『悪質タックルが開いたパンドラの箱 Q:悪質タックル問題(2018年5月)から5年半、今回の薬物問題で廃部が決まったアメリカンフットボール部ですが、理事まで務めた元部長が相撲部出身の元理事長の側近で、競技部OBによる学内支配の象徴でした。その後、こうした日大の「パンドラの箱」が開き、背任や脱税事件で逮捕者が出るなど、理事会のガバナンス不足を暴き出す役割を、結果として担う形になりました。 後藤 一時期、日大職員にやたらと相撲部OBがいました。広報もそうでしたが、以前ある業者が、ちょっとした掲載トラブルで就職担当の現場責任者に謝りに行ったことがあります。そうしたら、「うちの金看板に泥を塗る気か」と怒鳴られて、とても恐かったらしいです。ストレスがたまっていたのでしょう(笑)。 井沢 そういうことは、さすがにいまはないですね。今回、アメリカンフットボール部の廃部が決まりました。悪質タックル問題の後、出場停止もありトップではなくなったとはいえ、法政大や早稲田大、関西学院大あたりで選手を引き取ることはないのでしょうか。新しい組織で3部リーグからやり直しでは、いまの3年・4年生ではもう部には戻れませんから。 後藤 閉校が決まって学生募集が停止した大学は、在校生の転学先を探しますが、同情してそこより上位の大学が中途で受け入れてくれるケースもあります。日大のアメフト部対象にドラフトをやるといいかも。悪質タックル問題を受けて、田中体制の5年前に競技部改革をして、「学生ファースト」を掲げているのだから。学生にはアメフトの競技人生を歩める最大限の配慮をしてあげたいですね。 Q:この時、大学付属機関としての位置付けだった「保健体育審議会」と事務組織「保健体育事務局」を廃止しました。再発防止策として、学長によるガバナンスが直接及ぶよう、大学本部に競技スポーツ部を新たに設置しました。しかし、すでに見てきたように、ガバナンスは発揮されませんでした。総務・人事担当で、危機管理総括責任者である村井一吉常務理事は、「体調不良」ということで、12月31日付で常務理事および理事を辞任するそうです。 井沢 他大学では、3年前に部員が寮で大麻を吸って東海大野球部が無期限活動停止になっています。22年に部員が性犯罪を起こし実刑判決となった同志社大アメフト部はやはり無期限活動停止、古くは部員が強盗事件を起こした近畿大ボクシング部が廃部になっています。早稲田大の相撲部は薬物問題が目立たなくなって、日本最大規模の大学である、日大のニュースバリューが大きいということでしょう(笑)。 後藤 成人年齢に達している学生の不祥事で、大学側が謝る必要があるのかと感じることもありますが、それでも合宿所や寮は大学の施設なので、管理責任は生じる。ガバナンス問題はアメフト部だけではない。理事が競技部の監督やコーチを兼任することは禁じられたものの、推薦による入学者選抜とその後に大きな影響力がある。いわゆる田中元理事長派もまだ残っているだろう。 Q:第三者委員会報告書にも、34ある競技部は「法人でも教学でもない第三極を形成しているとの指摘も」と書かれていました。競技部入部式が別途行われ、23年度は470人が新入部員予定者だったそうです。競技部を統括する競技スポーツ部は、学務部、研究推進部、学生部と並ぶ存在ですし』、「競技部入部式が別途行われ、23年度は470人が新入部員予定者だったそうです。競技部を統括する競技スポーツ部は、学務部、研究推進部、学生部と並ぶ存在です」、「競技部」は依然大きな力を持っているようだ。
・『私学助成金不交付はいつまで続くのか Q:日大は2021年度から3年連続で私立大学等経常費補助金の不交付が決まっています。20年度には90億円ほどもらっていました。不交付の翌年度以降の取扱いというのがあって、改善努力を十分に行っていると認められたとしても、原則として翌年度は全額不交付で、2年後は75%減額、3年後は50%減額、4年後は25%減額、5年後からようやく全額交付になります。こうして見てみると、400億~500億円はもらい損ねることになりそうです。 後藤 そろそろ財務もきつくなってくるし、何よりも世間体が悪いですね。 井沢 日大は総合大学というよりも、強い学部の集合体、カレッジ制という印象です。 後藤 事務長も学部の序列はしっかりあります。付属の併設校を持っている学部の事務長が偉い。日本大学櫻丘高校(世田谷区)の文理学部、日本大学鶴ヶ丘高校(杉並区)と日本大学藤沢小中高(藤沢市)の生物資源科学部、日本大学三島高校の国際関係学部、日本大学習志野高校(船橋市)の理工学部、日本大学東北高校(郡山市)の工学部がそうですね。 井沢 学部の歴史がそのまま職員の序列につながっているようです。 後藤 それでも日大人気は下がらない。以前の記事でも指摘したように、本来、日大は明治大の後塵を拝するようなことは許されないのに。お茶の水地区のキャンパス再開発でも、明治に見下ろされてたまるか、明治よりも高い建物を建てるんだと意気込んでいたとの話も聞きました。日大法学部は中央大の法学部同様に法曹養成では定評があった。理工学部の建築は五大建築学部の一つに数えられた。土木は卒業生が全国で活躍して「社長を日本一出す大学」の基盤になった。 井沢 そもそも、23年度の一般選抜で日大の志願者は増えており、24年度は隔年現象で減る可能性が高い。東洋大が23年度入試で1万人以上志願者を減らしているので、今回の件とは関係なく、ハードルが下がったと感じる受験生が日大から東洋大に流れるケースもあるでしょう。24年度入試で日大の志願者が減少したとしても、その要因のすべてがガバナンス問題とされるのは気の毒な気がしますね。 後藤 日大は本来、面倒見のいい優しい大学です。昔は学生職員という制度があって、相撲部員とかが学生のときから職員になって、定年までいると40年超で退職金がえらい額になったものです。ただ今回は、その優しさを誤ってしまった。 Q:24年度入試がどうなるのか、年明けの次回に再び語っていただきましょう。 「ダイヤモンド社教育情報」では、twitterとfacebookで中高一貫校を中心に、学校・教育・入試に関する多彩な話題をお届けします』、「日大は2021年度から3年連続で私立大学等経常費補助金の不交付が決まっています。20年度には90億円ほどもらっていました。不交付の翌年度以降の取扱いというのがあって、改善努力を十分に行っていると認められたとしても、原則として翌年度は全額不交付で、2年後は75%減額、3年後は50%減額、4年後は25%減額、5年後からようやく全額交付になります。こうして見てみると、400億~500億円はもらい損ねることになりそうです」、「経常費補助金」の「減額」を考慮すると、財務的には苦しいことになりそうだ。
次に、本年1月14日付け現代ビジネス「<独自>日大病院から入院を拒否され、77歳で死去…「日大のドン」 田中英壽前理事長の「最期の姿」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/122866?imp=0
・『日大凋落の元凶 2008年から2021年まで理事長の座に君臨し、「日大のドン」と呼ばれた田中英壽氏が死去したことが13日、わかった。77歳だった。田中氏は複数のがんを抱えており、約1ヵ月前から入院していたという。 田中氏は青森県金木町出身。小学生のときに相撲を始め、日大に進学すると、3年時には学生横綱になった。 「現役時代の田中前理事長はアマチュア最強力士の異名を持ち、日大の一学年下には横綱になった輪島がいましたが、『輪島よりも実力が上だった』という声もあります」(日大関係者A氏) 1983年に日大相撲部の監督に就任すると、数多くの関取を輩出。1999年には日大理事となり、2008年に理事長就任。2021年までトップの座に君臨し、日本オリンピック委員会(JOC)副会長も務めた。 「アメフト部の薬物事件でガバナンス不全が問われている日大ですが、そもそも日本一のマンモス大の信用を地に落とした張本人が、かつて絶大な権力を握っていた田中前理事長です」(前出・日大関係者A氏) 長らく「日大のドン」として権勢を振るってきた田中氏だが、潮目が変わったのは2018年のアメフト部の悪質タックル問題だ。これにきっかけにトップとしての資質を疑問視され、権力の座から転げ落ちていく』、「長らく「日大のドン」として権勢を振るってきた田中氏だが、潮目が変わったのは2018年のアメフト部の悪質タックル問題だ。これにきっかけにトップとしての資質を疑問視され、権力の座から転げ落ちていく」、なるほど。
・『見る影もなかった「かつての威光」 2021年11月には医学部附属板橋病院をめぐる背任事件で、所得税法違反容疑で逮捕され、同年12月に理事長を辞任。2022年4月には有罪判決が確定した。 背任事件で逮捕されたことを受け、日大は田中前理事長と『永久に決別、影響力を排除する』と宣言し、多額の損害賠償を求め、田中前理事長名義の複数の不動産を仮差し押さえしました。 学内にはいまでも田中派の残党がいますが、改革を掲げている現執行部は田中派の一掃を目指しており、田中前理事長にかわいがってもらっていた人物は手のひらを返して現執行部にすり寄っています。 また、田中前理事長が監督を務めた相撲部のOBらも同様であり、田中前理事長と距離を置いています」(前出・日大関係者A氏)。 かつての威光は見る影もない…。それは自宅がある地元の東京・阿佐ヶ谷でも同様だった』、「田中前理事長」の「威光」は、「学内」のみならず、「地元の東京・阿佐ヶ谷」でも「見る影もない…」、なるほど。
・『夫人の親族からも総スカン 「田中さんを公私にわたって支え、『日大の女帝』といわれた征子夫人が経営する『ちゃんこ料理たなか』には毎晩のように出世を目指す日大の幹部職員が訪れ、『影の本部』なんて呼ばれていました。 当時の田中さんは近隣の飲食店にも取り巻きを引き連れて訪れていましたが、逮捕されて以来、パッタリ姿を見せなくなりました。もちろん日大職員も見かけません。 阿佐ヶ谷は征子夫人の地元ですが、田中さんは彼女の身内からも総スカンです。 昨年10月、征子夫人が亡くなって店を閉めることになりましたが、長年田中家に仕えてきた従業員への退職金を出し渋り、トラブルになったこともありました。 あまりにも誠意のない対応に対し、征子夫人を慕っていた従業員は怒り心頭で、店にあった備品を持ち出す騒ぎもありました」(近隣の飲食店経営者) 次々と人が離れていく中、田中氏を支える人物が1人だけいた。田中氏をよく知る別の日大関係者B氏が明かす』、「昨年10月、征子夫人が亡くなって店を閉めることになりましたが、長年田中家に仕えてきた従業員への退職金を出し渋り、トラブルになったこともありました」、そんなことで「トラブル」とは恐れ入る。
・『自宅に居座る謎の中国人 「田中氏は、若いころから支えてくれた奥さんが亡くなり、意気消沈の様子でした。ところが、奥さんが亡くなって1ヵ月もすると、40代の中国人女性が阿佐ヶ谷の自宅に居座るようになり、彼女の娘を含めた3人で暮らすようになりました。 実はこの女性、10年以上関係がある愛人です。水商売風の美人で、奥さんが健在のころは、田中氏が用意した新宿のマンションに娘と住んでいました。 田中氏は体調面で問題を抱えていたため、この中国人女性が身の回りの世話をしていました。昨夏は暑さが厳しく、避暑のため2人で仙台にある別荘に滞在していた時期もありましたね」 この女性は、近隣住民の間では「田中さんの世話をしている謎の中国人」として認識されていたが、取材に訪れた記者もゴミ出しをする女性の姿を何度か目撃したことがあった』、「奥さんが亡くなって1ヵ月もすると、40代の中国人女性が阿佐ヶ谷の自宅に居座るようになり、彼女の娘を含めた3人で暮らすようになりました。 実はこの女性、10年以上関係がある愛人です。水商売風の美人で、奥さんが健在のころは、田中氏が用意した新宿のマンションに娘と住んでいました。 田中氏は体調面で問題を抱えていたため、この中国人女性が身の回りの世話をしていました」、なるほど。
・『中国人女性の言いなりだった 「『ちゃんこ料理たなか』の従業員との退職金トラブルの話は私の耳にも入っていましたが、支払わないと決めたのは中国人女性のようです。 脱税で逮捕された田中氏ですが、素顔は相撲部屋の親方そのもので、気前のよさもありました。少なくともケチではありません。しかし、中国人女性の意向に従うしかなかったのでしょう。 理事長時代の田中氏は学内では敵なしの存在でしたが、面倒を見てもらった奥さんには頭が上がらず、いつも『ママ』『ママ』と頼りっきりでした。財布にしてもしっかり者の奥さんに握られていました。 奥さんの亡きあと、いまは身の回りの世話をしてくれる中国人女性の言いなりでした」(前出・日大関係者B氏) 昨年8月下旬、アロハ姿で自宅近くを散歩する田中氏 上の写真は、昨年8月下旬に田中氏の姿をとらえたものだ。目撃者が言う』、「『ちゃんこ料理たなか』の従業員との退職金トラブルの話は私の耳にも入っていましたが、支払わないと決めたのは中国人女性のようです」、何故、こんなところでケチるのだろうと思ったが、「中国人女性」の差し金だったということで納得した。
・『日大病院は入院拒否 「やたら派手なアロハを着た田中さんを目撃したのは夜19時過ぎです。田中さんよりずいぶん若い女性に手を取られながら、ゆっくりと体を左右に動かし、肩をゆすりながら歩いていました。 衰えは顕著であり、主導権を握っているのは手を取って誘導する女性にあるように見えました」 体調が悪化した田中氏は1ヵ月ほど前から入院していたというが、入院をめぐってはこんなひと幕もあったという。 「1ヵ月ほど前、田中氏から駿河台にある日大病院に『入院したい』との申し出がありましたが、病院側は『入院を認めると、コンプライアンス上の問題になります。残念ながらお受けすることはできません』ときっぱり断り、結局ほかの病院に入院することになりました」(前出・日大関係者B氏) 「日大のドン」と呼ばれた男の最期は、あまりにも悲しいものだった』、「病院側は『入院を認めると、コンプライアンス上の問題になります。残念ながらお受けすることはできません』ときっぱり断り、結局ほかの病院に入院することになりました」、通常であれば、「受け入れてしまう」のに、「コンプライアンス上の問題」で断ったとは大したものだ。断られた「田中氏」はさぞかし腹を立てたことだろう。
第三に、本年1月24日付けミヤテレ「東北大学・次期総長に冨永悌二氏「今までなかった新しい研究大学に」大学病院長など歴任 宮城県内の新型コロナ対応を指揮 〝もやもや病〟に影響を与える遺伝子を世界で初報告した実績も」を紹介しよう。
https://nordot.app/1122825473734083436?c=388701204576175201
・『大野総長の任期満了に伴って、4月から東北大学の総長となるのは、現在の副学長・冨永悌二氏。5人の候補者の中から大学外部を含む12人の委員が決めたもの。 冨永氏は福島県出身の66歳。東北大学医学部を卒業し、原因不明の「もやもや病」に影響を与える遺伝子を世界で初めて報告したほか、東北大学病院長の立場としては県内の新型コロナ対策を指揮したことなどが最大の成果として評価された』、「4月から東北大学の総長となるのは、現在の副学長・冨永悌二氏・・・東北大学病院長」、なるほど。
・『<総長選考・監察会議 小野寺 正 議長> 「大学だけではなく周りを巻き込んで方向性をきっちりと出してやっていけるという指導力。これは国際化に当たって非常に重要。高く評価している」 【日本で唯一「国際卓越研究大学」の候補として】 また、年間100億円の助成を受けて、世界トップレベルの研究を目指す国際卓越研究大学日本で唯一「国際卓越研究大学」の候補として】』、「年間100億円の助成を受けて、世界トップレベルの研究を目指す国際卓越研究大学日本で唯一「国際卓越研究大学」の候補」、なるほど。
・『<次期総長 冨永悌二氏> 「若い研究者が自由に独立して研究できるような環境を整える。日本国内のみならず海外からも優秀な研究者に来てもらい研究を推進して行く。東北大学が今までに我が国になかった新しい研究大学として発展するために力を尽くしたい」 冨永氏の就任は4月1日からで、任期は6年間』、「日本国内のみならず海外からも優秀な研究者に来てもらい研究を推進して行く」、「国際卓越研究大学」の試みは、これまでの「日本型」の公平さを取り払い、メリハリを最大限かけた革命的やり方だ。日本の風土のなかで果たして上手くいくのかに注目したい。
先ずは、昨年12月19日付けダイヤモンド・オンライン「悪質タックル→アメフト部廃部…白日にさらされた「日大」ガバナンス問題 G&I大学対談(4)」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/336436
・『本当に子どもの力を伸ばす学校 悪質タックル→アメフト部廃部…白日にさらされた「日大」ガバナンス問題 文理学部キャンパスにある日本大学アメリカンフットボール場。その塀に貼られたスローガンに込められた意味は何だろう(東京・世田谷区) 大学通信の井沢秀さんと教育ジャーナリストの後藤健夫さんによるG&I大学対談。第2回では半世紀以上にわたって私立大出願者数トップの座にあった早稲田大の志願者数がさらに減少すること、第3回では日東駒専のくくりで日本大が沈んでいく様子などを見てきました。2023年の最後に、ガバナンス能力不足にあえぐ日本大の明日がいずこにあるのかを考えてみましょう』、興味深そうだ。
・『「学長と副学長」辞任後の展望は開けたのか Q:11月15日の理事会で、学長と副学長に辞任勧告が出された日本大。2024年1月9日から学長候補者立候補の受け付けが始まります。副学長の方は1月1日から3月31日まで、23年度内は歯学部の特任教授が就くようです。 後藤 新学長の在任期間は前任者の残り、24年4月1日から26年6月30日までとなります。22年7月に発足した林真理子理事長体制が、後述するアメリカンフットボール部の薬物問題により、わずか1年ほどでそのガバナンス不足を露呈、世間的に追い詰められています。 ヤメ検の弁護士として期待された役割を果たせなかった澤田康広副学長がクビになるのは仕方ないでしょう。酒井健夫学長は田中英壽元理事長(2008~21年)の下で総長を務めた経験(2008~11年)があるものの、第三者委員会から、林理事長とともに「ガバナンスが全く機能しなかった」と切り捨てられました。 井沢 24年も日大はガバナンスを問われることは間違いないと思います。今回、記者会見の質疑で学生新聞(日本大学新聞)の学生が切実な声を発したことが報じられ、そこまで苦しんでいるのかと思いました。今回のガバナンス問題が学生の就職に影響するとは思えないのですが、親や受験生もやはり心配します。 後藤 学長を募集するのではなく、林理事長が兼務する総長パターンでガバナンスを利かせて、その間に学長ではなく新しい理事長を探すのがベストだと思うのだけれど。まず学則を変更して、日大の教授あるいは経験者でなくても学長になれるようにして、外の血を入れることですね。その手始めに林理事長が教授経験なしでも学長になる。林理事長は有識者として十分に学長が務まると思うんです。大組織の運営経験がないのだから、課題が多岐にわたる理事長よりも課題が絞られる学長が適任だと思います。 Q:22年3月、前理事長の時に出された「日本大学再生会議」答申書に沿って、2年前に36人いた理事が現在は22人に、評議員は125人から47人へと大きく削減され、選出母体からの過度の影響を免れるよう、理事の定年制や再任を1回に限る外部人材で理事や評議員の3分の1以上を占めるようにといったガバナンス改革は形にはなってきています。 後藤 前の理事長が組織をつぶしてしまったから、組織の膿(うみ)はまだ残っている。正常な状態に戻す前に、今回の不祥事が起きてしまった。立命館アジア太平洋大学の学長公募では、大学に魅力があったから出口治明さんのような経営者が他薦で就任してくれたけれども、いまの日大で火中の栗を拾う人はいるのだろうか。 井沢 これだけ確固とした組織のガバナンスが崩れて、学校経営の経験が浅い林さんがどこまでできるのでしょう。こういうときこそ、文部科学省が人を出せばいいのにと思います。 後藤 基本的に経営は素人で、林理事長はスナックのママみたいなもの。林さんはむしろ学長にして、代わりに文科省OBを据えて時間稼ぎをしながら人を探すのがいい。でも、日本最大の私立大学であり、組織もでかすぎる。文科省関係者にはやれる人がいないかもしれない。 Q:元文科省高等教育局長が評議員にいることはいます(笑)。 後藤 現理事会だと、和田秀樹専務理事は教育に強い関心があるが、大組織を動かしたことがない。第三者委員会答申検討会議議長として12月4日の会見に出てきた久保利英明弁護士は、総会屋対策で活躍した経験もある一流の企業弁護士です。久保利弁護士のような組織をよく知る人が担ってもらえるなら悪い話ではないかもしれない。理事長は、組織を知っている人、大企業の取締役経験者でないとできないと思う。 Q:政治家には適任者はいませんか。 後藤 一応、OBということであれば古賀誠と小沢一郎がいます。彼らならビシッとやるでしょう。その後のことは知らないけど(笑)』、「林さんはむしろ学長にして、代わりに文科省OBを据えて時間稼ぎをしながら人を探すのがいい。でも、日本最大の私立大学であり、組織もでかすぎる。文科省関係者にはやれる人がいないかもしれない」、「「林さんはむしろ学長にして」、いいアイデアだ。ただ、「代わりに文科省OBを据えて時間稼ぎをしながら人を探すのがいい」、「文科省OB」は逃げ回るだろうし、適任者が果たしているのか疑問だ。
・『悪質タックルが開いたパンドラの箱 Q:悪質タックル問題(2018年5月)から5年半、今回の薬物問題で廃部が決まったアメリカンフットボール部ですが、理事まで務めた元部長が相撲部出身の元理事長の側近で、競技部OBによる学内支配の象徴でした。その後、こうした日大の「パンドラの箱」が開き、背任や脱税事件で逮捕者が出るなど、理事会のガバナンス不足を暴き出す役割を、結果として担う形になりました。 後藤 一時期、日大職員にやたらと相撲部OBがいました。広報もそうでしたが、以前ある業者が、ちょっとした掲載トラブルで就職担当の現場責任者に謝りに行ったことがあります。そうしたら、「うちの金看板に泥を塗る気か」と怒鳴られて、とても恐かったらしいです。ストレスがたまっていたのでしょう(笑)。 井沢 そういうことは、さすがにいまはないですね。今回、アメリカンフットボール部の廃部が決まりました。悪質タックル問題の後、出場停止もありトップではなくなったとはいえ、法政大や早稲田大、関西学院大あたりで選手を引き取ることはないのでしょうか。新しい組織で3部リーグからやり直しでは、いまの3年・4年生ではもう部には戻れませんから。 後藤 閉校が決まって学生募集が停止した大学は、在校生の転学先を探しますが、同情してそこより上位の大学が中途で受け入れてくれるケースもあります。日大のアメフト部対象にドラフトをやるといいかも。悪質タックル問題を受けて、田中体制の5年前に競技部改革をして、「学生ファースト」を掲げているのだから。学生にはアメフトの競技人生を歩める最大限の配慮をしてあげたいですね。 Q:この時、大学付属機関としての位置付けだった「保健体育審議会」と事務組織「保健体育事務局」を廃止しました。再発防止策として、学長によるガバナンスが直接及ぶよう、大学本部に競技スポーツ部を新たに設置しました。しかし、すでに見てきたように、ガバナンスは発揮されませんでした。総務・人事担当で、危機管理総括責任者である村井一吉常務理事は、「体調不良」ということで、12月31日付で常務理事および理事を辞任するそうです。 井沢 他大学では、3年前に部員が寮で大麻を吸って東海大野球部が無期限活動停止になっています。22年に部員が性犯罪を起こし実刑判決となった同志社大アメフト部はやはり無期限活動停止、古くは部員が強盗事件を起こした近畿大ボクシング部が廃部になっています。早稲田大の相撲部は薬物問題が目立たなくなって、日本最大規模の大学である、日大のニュースバリューが大きいということでしょう(笑)。 後藤 成人年齢に達している学生の不祥事で、大学側が謝る必要があるのかと感じることもありますが、それでも合宿所や寮は大学の施設なので、管理責任は生じる。ガバナンス問題はアメフト部だけではない。理事が競技部の監督やコーチを兼任することは禁じられたものの、推薦による入学者選抜とその後に大きな影響力がある。いわゆる田中元理事長派もまだ残っているだろう。 Q:第三者委員会報告書にも、34ある競技部は「法人でも教学でもない第三極を形成しているとの指摘も」と書かれていました。競技部入部式が別途行われ、23年度は470人が新入部員予定者だったそうです。競技部を統括する競技スポーツ部は、学務部、研究推進部、学生部と並ぶ存在ですし』、「競技部入部式が別途行われ、23年度は470人が新入部員予定者だったそうです。競技部を統括する競技スポーツ部は、学務部、研究推進部、学生部と並ぶ存在です」、「競技部」は依然大きな力を持っているようだ。
・『私学助成金不交付はいつまで続くのか Q:日大は2021年度から3年連続で私立大学等経常費補助金の不交付が決まっています。20年度には90億円ほどもらっていました。不交付の翌年度以降の取扱いというのがあって、改善努力を十分に行っていると認められたとしても、原則として翌年度は全額不交付で、2年後は75%減額、3年後は50%減額、4年後は25%減額、5年後からようやく全額交付になります。こうして見てみると、400億~500億円はもらい損ねることになりそうです。 後藤 そろそろ財務もきつくなってくるし、何よりも世間体が悪いですね。 井沢 日大は総合大学というよりも、強い学部の集合体、カレッジ制という印象です。 後藤 事務長も学部の序列はしっかりあります。付属の併設校を持っている学部の事務長が偉い。日本大学櫻丘高校(世田谷区)の文理学部、日本大学鶴ヶ丘高校(杉並区)と日本大学藤沢小中高(藤沢市)の生物資源科学部、日本大学三島高校の国際関係学部、日本大学習志野高校(船橋市)の理工学部、日本大学東北高校(郡山市)の工学部がそうですね。 井沢 学部の歴史がそのまま職員の序列につながっているようです。 後藤 それでも日大人気は下がらない。以前の記事でも指摘したように、本来、日大は明治大の後塵を拝するようなことは許されないのに。お茶の水地区のキャンパス再開発でも、明治に見下ろされてたまるか、明治よりも高い建物を建てるんだと意気込んでいたとの話も聞きました。日大法学部は中央大の法学部同様に法曹養成では定評があった。理工学部の建築は五大建築学部の一つに数えられた。土木は卒業生が全国で活躍して「社長を日本一出す大学」の基盤になった。 井沢 そもそも、23年度の一般選抜で日大の志願者は増えており、24年度は隔年現象で減る可能性が高い。東洋大が23年度入試で1万人以上志願者を減らしているので、今回の件とは関係なく、ハードルが下がったと感じる受験生が日大から東洋大に流れるケースもあるでしょう。24年度入試で日大の志願者が減少したとしても、その要因のすべてがガバナンス問題とされるのは気の毒な気がしますね。 後藤 日大は本来、面倒見のいい優しい大学です。昔は学生職員という制度があって、相撲部員とかが学生のときから職員になって、定年までいると40年超で退職金がえらい額になったものです。ただ今回は、その優しさを誤ってしまった。 Q:24年度入試がどうなるのか、年明けの次回に再び語っていただきましょう。 「ダイヤモンド社教育情報」では、twitterとfacebookで中高一貫校を中心に、学校・教育・入試に関する多彩な話題をお届けします』、「日大は2021年度から3年連続で私立大学等経常費補助金の不交付が決まっています。20年度には90億円ほどもらっていました。不交付の翌年度以降の取扱いというのがあって、改善努力を十分に行っていると認められたとしても、原則として翌年度は全額不交付で、2年後は75%減額、3年後は50%減額、4年後は25%減額、5年後からようやく全額交付になります。こうして見てみると、400億~500億円はもらい損ねることになりそうです」、「経常費補助金」の「減額」を考慮すると、財務的には苦しいことになりそうだ。
次に、本年1月14日付け現代ビジネス「<独自>日大病院から入院を拒否され、77歳で死去…「日大のドン」 田中英壽前理事長の「最期の姿」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/122866?imp=0
・『日大凋落の元凶 2008年から2021年まで理事長の座に君臨し、「日大のドン」と呼ばれた田中英壽氏が死去したことが13日、わかった。77歳だった。田中氏は複数のがんを抱えており、約1ヵ月前から入院していたという。 田中氏は青森県金木町出身。小学生のときに相撲を始め、日大に進学すると、3年時には学生横綱になった。 「現役時代の田中前理事長はアマチュア最強力士の異名を持ち、日大の一学年下には横綱になった輪島がいましたが、『輪島よりも実力が上だった』という声もあります」(日大関係者A氏) 1983年に日大相撲部の監督に就任すると、数多くの関取を輩出。1999年には日大理事となり、2008年に理事長就任。2021年までトップの座に君臨し、日本オリンピック委員会(JOC)副会長も務めた。 「アメフト部の薬物事件でガバナンス不全が問われている日大ですが、そもそも日本一のマンモス大の信用を地に落とした張本人が、かつて絶大な権力を握っていた田中前理事長です」(前出・日大関係者A氏) 長らく「日大のドン」として権勢を振るってきた田中氏だが、潮目が変わったのは2018年のアメフト部の悪質タックル問題だ。これにきっかけにトップとしての資質を疑問視され、権力の座から転げ落ちていく』、「長らく「日大のドン」として権勢を振るってきた田中氏だが、潮目が変わったのは2018年のアメフト部の悪質タックル問題だ。これにきっかけにトップとしての資質を疑問視され、権力の座から転げ落ちていく」、なるほど。
・『見る影もなかった「かつての威光」 2021年11月には医学部附属板橋病院をめぐる背任事件で、所得税法違反容疑で逮捕され、同年12月に理事長を辞任。2022年4月には有罪判決が確定した。 背任事件で逮捕されたことを受け、日大は田中前理事長と『永久に決別、影響力を排除する』と宣言し、多額の損害賠償を求め、田中前理事長名義の複数の不動産を仮差し押さえしました。 学内にはいまでも田中派の残党がいますが、改革を掲げている現執行部は田中派の一掃を目指しており、田中前理事長にかわいがってもらっていた人物は手のひらを返して現執行部にすり寄っています。 また、田中前理事長が監督を務めた相撲部のOBらも同様であり、田中前理事長と距離を置いています」(前出・日大関係者A氏)。 かつての威光は見る影もない…。それは自宅がある地元の東京・阿佐ヶ谷でも同様だった』、「田中前理事長」の「威光」は、「学内」のみならず、「地元の東京・阿佐ヶ谷」でも「見る影もない…」、なるほど。
・『夫人の親族からも総スカン 「田中さんを公私にわたって支え、『日大の女帝』といわれた征子夫人が経営する『ちゃんこ料理たなか』には毎晩のように出世を目指す日大の幹部職員が訪れ、『影の本部』なんて呼ばれていました。 当時の田中さんは近隣の飲食店にも取り巻きを引き連れて訪れていましたが、逮捕されて以来、パッタリ姿を見せなくなりました。もちろん日大職員も見かけません。 阿佐ヶ谷は征子夫人の地元ですが、田中さんは彼女の身内からも総スカンです。 昨年10月、征子夫人が亡くなって店を閉めることになりましたが、長年田中家に仕えてきた従業員への退職金を出し渋り、トラブルになったこともありました。 あまりにも誠意のない対応に対し、征子夫人を慕っていた従業員は怒り心頭で、店にあった備品を持ち出す騒ぎもありました」(近隣の飲食店経営者) 次々と人が離れていく中、田中氏を支える人物が1人だけいた。田中氏をよく知る別の日大関係者B氏が明かす』、「昨年10月、征子夫人が亡くなって店を閉めることになりましたが、長年田中家に仕えてきた従業員への退職金を出し渋り、トラブルになったこともありました」、そんなことで「トラブル」とは恐れ入る。
・『自宅に居座る謎の中国人 「田中氏は、若いころから支えてくれた奥さんが亡くなり、意気消沈の様子でした。ところが、奥さんが亡くなって1ヵ月もすると、40代の中国人女性が阿佐ヶ谷の自宅に居座るようになり、彼女の娘を含めた3人で暮らすようになりました。 実はこの女性、10年以上関係がある愛人です。水商売風の美人で、奥さんが健在のころは、田中氏が用意した新宿のマンションに娘と住んでいました。 田中氏は体調面で問題を抱えていたため、この中国人女性が身の回りの世話をしていました。昨夏は暑さが厳しく、避暑のため2人で仙台にある別荘に滞在していた時期もありましたね」 この女性は、近隣住民の間では「田中さんの世話をしている謎の中国人」として認識されていたが、取材に訪れた記者もゴミ出しをする女性の姿を何度か目撃したことがあった』、「奥さんが亡くなって1ヵ月もすると、40代の中国人女性が阿佐ヶ谷の自宅に居座るようになり、彼女の娘を含めた3人で暮らすようになりました。 実はこの女性、10年以上関係がある愛人です。水商売風の美人で、奥さんが健在のころは、田中氏が用意した新宿のマンションに娘と住んでいました。 田中氏は体調面で問題を抱えていたため、この中国人女性が身の回りの世話をしていました」、なるほど。
・『中国人女性の言いなりだった 「『ちゃんこ料理たなか』の従業員との退職金トラブルの話は私の耳にも入っていましたが、支払わないと決めたのは中国人女性のようです。 脱税で逮捕された田中氏ですが、素顔は相撲部屋の親方そのもので、気前のよさもありました。少なくともケチではありません。しかし、中国人女性の意向に従うしかなかったのでしょう。 理事長時代の田中氏は学内では敵なしの存在でしたが、面倒を見てもらった奥さんには頭が上がらず、いつも『ママ』『ママ』と頼りっきりでした。財布にしてもしっかり者の奥さんに握られていました。 奥さんの亡きあと、いまは身の回りの世話をしてくれる中国人女性の言いなりでした」(前出・日大関係者B氏) 昨年8月下旬、アロハ姿で自宅近くを散歩する田中氏 上の写真は、昨年8月下旬に田中氏の姿をとらえたものだ。目撃者が言う』、「『ちゃんこ料理たなか』の従業員との退職金トラブルの話は私の耳にも入っていましたが、支払わないと決めたのは中国人女性のようです」、何故、こんなところでケチるのだろうと思ったが、「中国人女性」の差し金だったということで納得した。
・『日大病院は入院拒否 「やたら派手なアロハを着た田中さんを目撃したのは夜19時過ぎです。田中さんよりずいぶん若い女性に手を取られながら、ゆっくりと体を左右に動かし、肩をゆすりながら歩いていました。 衰えは顕著であり、主導権を握っているのは手を取って誘導する女性にあるように見えました」 体調が悪化した田中氏は1ヵ月ほど前から入院していたというが、入院をめぐってはこんなひと幕もあったという。 「1ヵ月ほど前、田中氏から駿河台にある日大病院に『入院したい』との申し出がありましたが、病院側は『入院を認めると、コンプライアンス上の問題になります。残念ながらお受けすることはできません』ときっぱり断り、結局ほかの病院に入院することになりました」(前出・日大関係者B氏) 「日大のドン」と呼ばれた男の最期は、あまりにも悲しいものだった』、「病院側は『入院を認めると、コンプライアンス上の問題になります。残念ながらお受けすることはできません』ときっぱり断り、結局ほかの病院に入院することになりました」、通常であれば、「受け入れてしまう」のに、「コンプライアンス上の問題」で断ったとは大したものだ。断られた「田中氏」はさぞかし腹を立てたことだろう。
第三に、本年1月24日付けミヤテレ「東北大学・次期総長に冨永悌二氏「今までなかった新しい研究大学に」大学病院長など歴任 宮城県内の新型コロナ対応を指揮 〝もやもや病〟に影響を与える遺伝子を世界で初報告した実績も」を紹介しよう。
https://nordot.app/1122825473734083436?c=388701204576175201
・『大野総長の任期満了に伴って、4月から東北大学の総長となるのは、現在の副学長・冨永悌二氏。5人の候補者の中から大学外部を含む12人の委員が決めたもの。 冨永氏は福島県出身の66歳。東北大学医学部を卒業し、原因不明の「もやもや病」に影響を与える遺伝子を世界で初めて報告したほか、東北大学病院長の立場としては県内の新型コロナ対策を指揮したことなどが最大の成果として評価された』、「4月から東北大学の総長となるのは、現在の副学長・冨永悌二氏・・・東北大学病院長」、なるほど。
・『<総長選考・監察会議 小野寺 正 議長> 「大学だけではなく周りを巻き込んで方向性をきっちりと出してやっていけるという指導力。これは国際化に当たって非常に重要。高く評価している」 【日本で唯一「国際卓越研究大学」の候補として】 また、年間100億円の助成を受けて、世界トップレベルの研究を目指す国際卓越研究大学日本で唯一「国際卓越研究大学」の候補として】』、「年間100億円の助成を受けて、世界トップレベルの研究を目指す国際卓越研究大学日本で唯一「国際卓越研究大学」の候補」、なるほど。
・『<次期総長 冨永悌二氏> 「若い研究者が自由に独立して研究できるような環境を整える。日本国内のみならず海外からも優秀な研究者に来てもらい研究を推進して行く。東北大学が今までに我が国になかった新しい研究大学として発展するために力を尽くしたい」 冨永氏の就任は4月1日からで、任期は6年間』、「日本国内のみならず海外からも優秀な研究者に来てもらい研究を推進して行く」、「国際卓越研究大学」の試みは、これまでの「日本型」の公平さを取り払い、メリハリを最大限かけた革命的やり方だ。日本の風土のなかで果たして上手くいくのかに注目したい。
タグ:大学 (その14)(悪質タックル→アメフト部廃部…白日にさらされた「日大」ガバナンス問題 G&I大学対談(4)、<独自>日大病院から入院を拒否され、77歳で死去…「日大のドン」 田中英壽前理事長の「最期の姿」、東北大学・次期総長に冨永悌二氏「今までなかった新しい研究大学に」大学病院長など歴任 宮城県内の新型コロナ対応を指揮 〝もやもや病〟に影響を与える遺伝子を世界で初報告した実績も) ダイヤモンド・オンライン「悪質タックル→アメフト部廃部…白日にさらされた「日大」ガバナンス問題 G&I大学対談(4)」 「林さんはむしろ学長にして、代わりに文科省OBを据えて時間稼ぎをしながら人を探すのがいい。でも、日本最大の私立大学であり、組織もでかすぎる。文科省関係者にはやれる人がいないかもしれない」、「「林さんはむしろ学長にして」、いいアイデアだ。ただ、「代わりに文科省OBを据えて時間稼ぎをしながら人を探すのがいい」、「文科省OB」は逃げ回るだろうし、適任者が果たしているのか疑問だ。 「競技部入部式が別途行われ、23年度は470人が新入部員予定者だったそうです。競技部を統括する競技スポーツ部は、学務部、研究推進部、学生部と並ぶ存在です」、「競技部」は依然大きな力を持っているようだ。 「経常費補助金」の「減額」を考慮すると、財務的には苦しいことになりそうだ。 現代ビジネス「<独自>日大病院から入院を拒否され、77歳で死去…「日大のドン」 田中英壽前理事長の「最期の姿」」 「長らく「日大のドン」として権勢を振るってきた田中氏だが、潮目が変わったのは2018年のアメフト部の悪質タックル問題だ。これにきっかけにトップとしての資質を疑問視され、権力の座から転げ落ちていく」、なるほど。 「田中前理事長」の「威光」は、「学内」のみならず、「地元の東京・阿佐ヶ谷」でも「見る影もない…」、なるほど。 「昨年10月、征子夫人が亡くなって店を閉めることになりましたが、長年田中家に仕えてきた従業員への退職金を出し渋り、トラブルになったこともありました」、そんなことで「トラブル」とは恐れ入る。 「奥さんが亡くなって1ヵ月もすると、40代の中国人女性が阿佐ヶ谷の自宅に居座るようになり、彼女の娘を含めた3人で暮らすようになりました。 実はこの女性、10年以上関係がある愛人です。水商売風の美人で、奥さんが健在のころは、田中氏が用意した新宿のマンションに娘と住んでいました。 田中氏は体調面で問題を抱えていたため、この中国人女性が身の回りの世話をしていました」、なるほど。 「『ちゃんこ料理たなか』の従業員との退職金トラブルの話は私の耳にも入っていましたが、支払わないと決めたのは中国人女性のようです」、何故、こんなところでケチるのだろうと思ったが、「中国人女性」の差し金だったということで納得した。 「病院側は『入院を認めると、コンプライアンス上の問題になります。残念ながらお受けすることはできません』ときっぱり断り、結局ほかの病院に入院することになりました」、通常であれば、「受け入れてしまう」のに、「コンプライアンス上の問題」で断ったとは大したものだ。断られた「田中氏」はさぞかし腹を立てたことだろう。 ミヤテレ「東北大学・次期総長に冨永悌二氏「今までなかった新しい研究大学に」大学病院長など歴任 宮城県内の新型コロナ対応を指揮 〝もやもや病〟に影響を与える遺伝子を世界で初報告した実績も」 「4月から東北大学の総長となるのは、現在の副学長・冨永悌二氏・・・東北大学病院長」、なるほど。 「年間100億円の助成を受けて、世界トップレベルの研究を目指す国際卓越研究大学日本で唯一「国際卓越研究大学」の候補」、なるほど。 「国際卓越研究大学」の試みは、これまでの「日本型」の公平さを取り払い、メリハリを最大限かけた革命的やり方だ。日本の風土のなかで果たして上手くいくのかに注目したい。
”右傾化”(その16)(神社庁幹部による約3000万円の「横領」が発覚 横領したのは神道政治連盟・打田会長の親族、極右の相次ぐ選挙勝利 マスコミが「ポピュリズム」報道の詭弁で助長する愚行、「世界的右傾化はなぜ止まらないのか」…衆愚政治から抜け出すたった一つの解決法 真剣に政治のことを考えないと国が消滅する) [経済政治動向]
”右傾化”については、昨年5月7日に取上げた。今日は、(その16)(神社庁幹部による約3000万円の「横領」が発覚 横領したのは神道政治連盟・打田会長の親族、極右の相次ぐ選挙勝利 マスコミが「ポピュリズム」報道の詭弁で助長する愚行、「世界的右傾化はなぜ止まらないのか」…衆愚政治から抜け出すたった一つの解決法 真剣に政治のことを考えないと国が消滅する)である。
先ずは、昨年5月20日付け東洋経済オンライン「神社庁幹部による約3000万円の「横領」が発覚 横領したのは神道政治連盟・打田会長の親族」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/673965
・『全国8万社の神社を包括する神社本庁の傘下組織である東京都神社庁(小野貴嗣庁長)の幹部が、複数年にわたって神社庁の口座などから約3000万円を自身の口座に移し、生活費や競馬代として使っていたことがわかった。この幹部は1月に東京都神社庁を解雇されている。 「金銭上の非違行為」(東京都神社庁の庁報『東神』)で解雇されたのは、現在も都内の神社で宮司をしているM氏。複数の関係者によると、M氏による横領が発覚したのは2022年12月。東京都神社庁の口座から別の口座に不自然に現金が移動していることに職員が気づいたという。 発覚後、M氏が東京都神社庁に提出した「事情説明書」によると、生活資金がままならなくなり、「借入だと勝手に考え資金の流用を繰り返してしまいました」としている。妻との不和によるストレスで競馬に費消した旨も書かれている』、「東京都神社庁・・・の幹部が、複数年にわたって神社庁の口座などから約3000万円を自身の口座に移し、生活費や競馬代として使っていた・・・この幹部は1月に東京都神社庁を解雇・・・解雇されたのは、現在も都内の神社で宮司をしているM氏」、「約3000万円」もの金銭を横領、「解雇された」が、「現在も都内の神社で宮司をしている」、とは驚かされた。「約3000万円」は何らかの方法で「弁済」されたのだろうか。下の記事を読むと、うち1900万円は「父親」が「弁済」したようだ。
・『「教誨師」の口座を通して 横領の総額はわかっているだけで約3000万円にのぼる。 2022年12月に発覚した横領額は約1900万円。発覚後、東京都神社庁の小野氏がM氏の父親(都内の宮司)にかけあい、弁済させたという。 だが、2023年に入るとM氏の別の横領も明るみに出る。3月には、新たに630万円が東京都神職教誨師会の口座に移された後、引き出されていたことが発覚した。教誨師(きょうかいし)とは、刑務所などで受刑者に精神的、宗教的な教えを説き、二度と罪を犯さぬよう教えを説く者のことで、M氏は東京都神職教誨師会の事務局長を務めていた。 5月11日の役員会では、さらに約600万円が神職教誨師会の口座から引き出されていたことが確認されたが、損害を被ったのが神社庁か神職教誨師会かははっきりしていない。 神社庁として被害届けを出すべきか、それとも刑事告訴すべきか。5月11日の役員会は紛糾した。「小野庁長はじめ役員が引責辞任するべきではないか」という意見も出たが、この日は組織として被害届けを出す方針だけ固まった。 横領の発覚から5カ月が経過しており、不祥事対応としては遅きに失した感はぬぐえない。) 都内の宮司は「この間、神社庁は『調査中』というばかりで横領の手口や、金が何に使われていたのかなど、ほとんど具体的には説明しなかった。警察に被害届けを出すと決めるまでにどうして5カ月もかかったのか」と首を傾げる。
背景に見え隠れするのが、上部組織である神社本庁で起きている内紛だ』、「刑務所などで受刑者に精神的、宗教的な教えを説き、二度と罪を犯さぬよう教えを説く者のことで、M氏は東京都神職教誨師会の事務局長を務めていた・・・ここからも「630万円」が引き出されたというのは、呆れ果てた。「教誨師」が横領しているのでは、説教を聞かされた「受刑者」も呆れるだろう。
・『神社本庁で起きている泥沼の争い 神社本庁では2022年から2人の宮司が「総長の座」をめぐって争っている。一人は、2期6年が通例であるところ4期12年の長期政権を敷いてきた田中恆清氏(京都・石清水八幡宮宮司)、もう一人が芦原高穂氏(北海道・旭川神社宮司)だ。 経緯は以下の通り。 2022年5月、全国の神社庁長など約170人が集まる評議員会で、神社本庁の宗教的な権威である「統理」に伊勢神宮大宮司を務めた鷹司尚武氏が全会一致で選任された。 鷹司氏はその後の役員会で次期総長に芦原氏を指名。5期15年を目指した田中氏に退任を迫った。 ところが翌6月の役員会では15人中9人が田中氏の続投を支持。結果、宗教的権威である鷹司氏が指名した芦原氏と、宗教法人である神社本庁の役員会が議決した田中氏が、総長の正当性をめぐって争う構図が生まれた。 2022年の7月、神社本庁は芦原氏が宮司をする北海道の旭川地裁に、芦原氏が神社本庁の総長ではないことを確認する仮処分を申し立て、旭川地裁はこれを認めた。一方の芦原氏は東京地裁に地位確認請求訴訟を提起。「真の総長」をめぐる泥沼裁判が始まってしまう。 こうした中、約3000万円もの金を横領していながら東京都神社庁の態度が煮え切らないのは、実は理由がある。それは、M氏が田中氏を支持する神社本庁の中枢と結びついているからだ。 旭川地裁が「芦原氏は総長の地位にはない」という決定をした昨年7月7日、地裁の前に白のベンツが乗りつけた。クルマから出てきたのは神社本庁の吉川通泰副総長と小野貴嗣常務理事。小野氏は東京都神社庁の庁長でもあり「田中総長の長期政権を支えた『ポスト田中』の筆頭格」(有力神社の宮司)と言われる人物だ。 【2023年5月20日7時5分追記】上記の初出時の日付を修正しました。 その2人の後ろから姿を現したのが運転をしていたM氏だ。小野氏の出張に同行するなど行動を共にすることが多く、田中氏の側近である神道政治連盟・打田文博会長の親戚でもあることからM氏は自民党国会議員との接点も多い。 【2023年5月22日11時20分追記】上記と記事の見出しで、初出時の親族を親戚に修正しました。 そうしたM氏のポジションから、「芦原総長」を支持する側からは「横領は本当にこれだけなのか。3000万円もの金の使い道は本当に生活費や競馬だけなのか。徹底した調査がなされているのか疑問だ」という声があがる。 というのも、企業や団体で不祥事が発覚すれば、利害関係のない外部の弁護士や会計士が調査するのが通例だが、今回の調査は東京都神社庁内部のみで行われているからだ。しかもその調査には、「総長をめぐる裁判」において田中氏側の代理人であるだけでなく、東京都神社庁の顧問弁護士であり、M氏と親交のある弁護士が関与している。このような調査で、横領の真相は明らかになるのか。関係者の間では疑念が渦巻いている。 【2023年5月24日13時55分追記】上記を初出時から一部修正しました』、「「真の総長」をめぐる泥沼裁判が始まってしまう。 こうした中、約3000万円もの金を横領していながら東京都神社庁の態度が煮え切らないのは、実は理由がある。それは、M氏が田中氏を支持する神社本庁の中枢と結びついているからだ」、「神社本庁」、「東京都神社庁」は本当にいい加減な組織だ。
・『「話せるときがきたら話します」 5月22日から1週間、神社本庁では全国の宮司・総代が勢揃いする会議が開かれる。田中体制の執行部はM氏の横領についてどんな説明をするのか。 5月中旬、神社で月に一度の月次祭(つきなみさい)を執り行っていたM氏。祭祀終了後、横領について尋ねた。M氏は「今は、否定も肯定もしないことにしています。話せるときがきたら話します。申し訳ありません」と言うばかりだった。 東洋経済は東京都神社庁と神社本庁に「横領額とその内訳」「横領したM氏が神職の資格を剥奪されない理由」「小野庁長の責任」「M氏と親しい弁護士に横領の調査を任せている理由」などを尋ねたが、どちらからも期限までに回答はなかった』、こんないい加減な組織は免税の特権を停止するような荒療治も検討すべきだろう。
次に、昨年12月6日付けNewsweek日本版「極右の相次ぐ選挙勝利、マスコミが「ポピュリズム」報道の詭弁で助長する愚行」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/12/post-103179.php
・『<アルゼンチンやオランダで極右が相次ぎ勝利、脅威を喧伝しながらポピュリストの形容により極右を「主流」にしてしまう報道関係者・研究者の罪をあばく> 新たな「ポピュリズムの衝撃」だった。 11月19日に行われたアルゼンチン大統領選決選投票を制した右派のハビエル・ミレイと、11月22日のオランダ総選挙で第1党になった極右政党・自由党を率いるヘールト・ウィルダース。2人の勝利は、弱体化する自由民主主義に襲いかかる「ポピュリズムの波」の象徴だ。 一方、リアリティー番組に出演するイギリス独立党(UKIP)元党首ナイジェル・ファラージュのように、親しみやすい人物として世間に浸透する極右指導者もいる。 この構図には、極右への反応の矛盾がむき出しになっているが、問題はもっと根深い。 娯楽番組などで人間性を強調すれば、極右は「普通」になる。 極右とその脅威を懸念する者にとって、これは自明の理のはずだ。 だが、極右の脅威を大げさに伝えるのも同じくらい有害だ。 反動政治の復活は想定内であり、かなり前から始まっている。それなのに極右が勝利するたび、予想外の新たな現象という分析が出てくる。 「ポピュリズム」も同様だ。 専門的な研究はどれも、彼らの本質はポピュリストではなく、極右にほかならないと指摘する。だがメディアも学者も、ポピュリストと不用意に形容しがちだ。 極右や人種差別主義者の代わりにポピュリストと呼ぶのは、極右の正当化に貢献する行為だ。 この「人民」を語源とする単語は民主的な支持を想起させ、彼らのエリート主義的本質を消し去ってしまう』、ここではトランプは何故か「極右」、「ポピュリズム」とされてないようだ。
・『主流メディアの責任放棄 極右の主流化や正常化というプロセスは、主流そのものと強く結び付いている。 主流に取り込まれることなく、何かが主流化することはあり得ない。 反対姿勢をアピールして自身の責任を否定しながら主張を取り上げ、過剰報道し、正当化してしまう。それが極右主流化のプロセスだ。 主流派メディアは世論形成に重要な役割を持つが、その多くは役割に伴う責任を放棄するか、無視している。編集方針による選択の結果を、無作為の事象と言わんばかりだ。 いい例が2018年から英紙ガーディアンが連載した「新ポピュリズム」特集だ。その出発点は「なぜ突然、ポピュリズムが大ブームになったのか」という問いだった。 ポピュリズムを取り上げた同紙の記事は、1998年には約300件だったが、16年は2000件に増えたという。だがそれは、単純に同誌がポピュリズムという単語を多用するようになったからではないのか? 極右台頭は「サイレント・マジョリティー」や「白人労働層」のせいにされている。 極右は規範や主流の枠外のアウトサイダーと捉えられがちだが、そうした見方は社会の中核に埋め込まれた構造的格差や抑圧を見落としている。 研究者もそうだ。 この5年間に発表された論文2500件以上のタイトルと要旨を分析したところ、選挙や移民を論点にして極右をごまかし、例外扱いする傾向が強かった。 主流化という問題では、主流自体の大きな役割を考慮すべきだ。 世論形成への特権的アクセスを持つメディアや学術研究者は、主流という良識と正義の砦(とりで)の中にいるのではない。彼らが立っているのは、権力が極めて不均衡な形で分配された闘技場だ。 極右にも「一理ある」が、極右には反対──そんな詭弁は許されない』、「この5年間に発表された論文2500件以上のタイトルと要旨を分析したところ、選挙や移民を論点にして極右をごまかし、例外扱いする傾向が強かった。 主流化という問題では、主流自体の大きな役割を考慮すべきだ。 世論形成への特権的アクセスを持つメディアや学術研究者は、主流という良識と正義の砦(とりで)の中にいるのではない。彼らが立っているのは、権力が極めて不均衡な形で分配された闘技場だ。 極右にも「一理ある」が、極右には反対──そんな詭弁は許されない」、手厳しいメディア批判だ。
第三に、昨年12月27日付けプレジデント 2024年1月12日号が掲載したビジネス・ブレークスルー大学学長の大前研一氏による「「世界的右傾化はなぜ止まらないのか」…衆愚政治から抜け出すたった一つの解決法 真剣に政治のことを考えないと国が消滅する」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/77131
・『グローバル経済の恩恵を忘れるな 世界の右傾化が止まらない。2023年11月19日に行われたアルゼンチン大統領選の決選投票で、「アルゼンチンのトランプ」を自称する右派のハビエル・ミレイ下院議員が、左派のセルヒオ・マサ経済大臣を破って当選、12月10日に就任した。その他、各地で極右政党が勢力を伸ばしている。これは世界の破滅につながる道である。 今では知らない人も多いが、20世紀初頭のアルゼンチンは非常に豊かな国だった。肥沃な土壌を活かして農業大国として成長し、最盛期は世界第5位の経済大国になったほどだ。 しかし、世界恐慌以降のアルゼンチンは没落の一途だ。工業化の波に乗りきれず、左派の正義党(ペロン党)による長期政権のバラマキ政策で政府の債務が増大。何度もデフォルトを起こし、今やインフレ率は140%に達した。経済的には、もはや三流国だ。 こうした状況に不満を持つ国民が選んだのが、過激な政策を掲げる野党ラ・リベルタド・アバンザ(自由の前進)を率いるミレイ氏だ。ミレイ氏は銃所持の合法化を訴え、臓器売買を容認する。しかし、急進的な自由主義者なのかというと、宗教的には保守的で、人工妊娠中絶には反対の姿勢を示している。演説会ではチェーンソーを振り回し、筋骨隆々の大型犬マスティフを5匹飼っているという。まさにマッチョを売りにするミニ・トランプだ。 トランプ的な政治家の躍進は、アルゼンチンに限らない。イタリアでは22年10月に極右のジョルジャ・メローニ氏が首相に就任。ドイツでは23年10月、ヘッセン州の州議会選挙で、反移民を掲げる極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が第二党に躍り出た。 フランスではマクロン大統領の支持率が低迷しており、27年の大統領選では親子2代にわたって極右を標榜しているマリーヌ・ル・ペン氏が勝つと分析する評論家が多い。世界が右傾化する流れを決定的なものにしたドナルド・トランプ氏も、4つの刑事裁判を抱えながら依然として一定の支持があり、24年大統領選でふたたび政治の表舞台に出てくる可能性がある。 トランプ的な主張が支持を集める原因は、グローバル経済への「慣れ」だ。) 私が『ボーダレス・ワールド』(プレジデント社)を書いてグローバル経済を提唱したのは、約30年前だ。世界には、「材料」生産の最適地と、それを加工成形して組み立てる「人材」の最適地がある。2つの最適地でモノをつくって自由に輸入できるようすれば、品質のいいものが安く手に入り、世界中の消費者に恩恵をもたらす。このボーダレス経済論は一世を風靡ふうびし、事実、世界経済はその方向で発展していった。 ボーダレス経済論は、価格に敏感な繊維・アパレル業を例にするとわかりやすい。戦後、日本は材料でも人でも世界の繊維産業で最適地だった。自国の繊維産業の衰退を恐れたアメリカは、日米繊維交渉で日本を抑え込もうとした。アメリカを前に日本は屈服せざるをえなかったが、交渉しているうちに日本の人件費が上がり、すでに最適地は韓国に移っていた。その後、最適地は韓国から台湾、インドネシアへと移動を重ね、90年代からは中国だ。 今では中国も人件費が上がり、産業によっては最適地が異なるものの、総じてみれば世界の工場は中国に集まり、そこでつくられた製品を各国が輸入している。そして、消費者は自国でつくるよりも安い価格で製品を手に入れるというのが、ここ30年の流れだった。 90〜00年代は、多くの消費者がグローバル経済の恩恵を実感していた。それが今では当然になり、逆にグローバル経済が右派政治家による排外主義的な主張のやり玉に挙がったとしても、抵抗を覚えなくなってしまったのだ。 トランプ氏は大統領在任中、中国による知的財産権侵害に対する懲罰と称し、対中関税をたびたび引き上げた。懲罰の目的を「自国の産業保護」と謳うたっていたが、これは建前だ。本当は「中国は日本のように尻尾を振らないから、罰を与えて支持者の溜飲を下げる」という、政治的なパフォーマンスなのだ。
実際、トランプ氏による中国の排斥が政治的なパフォーマンスにすぎなかったことは、現状を見ればわかる。トランプ氏は補助金をちらつかせ、メーカーが中国ではなくアメリカに工場をつくるように働きかけた。釣られた台湾の鴻海ホンハイ精密工業は、ウィスコンシン州で工場建設を計画。トップの郭台銘(テリー・ゴウ)氏が現地に来て鍬入れ式まで行ったが、その後頓挫した。 アメリカの執拗な中国叩きにもかかわらず、結局iPhoneなどのスマートフォンは今も中国で組み立てられており、中の部品についても6割が中国製である。アメリカの消費者はその高くなったスマホを喜んで買い、アメリカ政府は高くなった関税をポケットにしまい込んで知らん顔をしている。精巧なサプライチェーンを基盤としたボーダレス経済は、何も変わっていないのだ』、「アメリカの執拗な中国叩きにもかかわらず、結局iPhoneなどのスマートフォンは今も中国で組み立てられており、中の部品についても6割が中国製である。アメリカの消費者はその高くなったスマホを喜んで買い、アメリカ政府は高くなった関税をポケットにしまい込んで知らん顔をしている。精巧なサプライチェーンを基盤としたボーダレス経済は、何も変わっていないのだ」、なるほど。
・『愛国者を喜ばせるパフォーマンス 前述のアルゼンチンのミレイ大統領は、新自由主義者らしく国内政策では小さな政府を標榜している。しかし、対外的には保護主義色が強く、選挙期間中は南米の自由貿易協定であるメルコスール(南米南部共同市場)からの離脱をほのめかしていた。ただ、これもおそらくパフォーマンスだ。南米のライバル国であるブラジルが中心的存在を担うメルコスールを抜けると言えば、国内の愛国者たちが喜ぶからだ。 ミレイ大統領は中央銀行の廃止や、ペソを廃止してドル化するといった無茶苦茶な政策も掲げている。 もしペソを廃止してドルを使うなら、ユーロ導入国がマーストリヒト条約に批准するのと同じような図式でアメリカと条約を結ぶ必要がある。ユーロを参考にすると、その導入には①物価安定性②健全な財政とその持続性③為替安定④長期金利の安定性という4つの基準を満たす必要がある。このうち、①と②については次の通りだ。 ①過去1年間の自国のインフレ率が、ユーロ導入国でインフレ率が最も低い3カ国の平均値との格差が1.5%以内
②財政赤字がGDP比3%以下、債務残高がGDP比60%以下 アメリカが同様の水準をアルゼンチンに求めたら、ドル化の話は瞬時に終わる。140%のインフレ率を一桁台に抑える魔法は存在しない。また、基準を満たすくらいに債務を減らすには、あらゆる行政サービスを削らなくてはならず、国内で暴動が起きるだろう。 ミレイ大統領は経済学部の出身で、大学で教鞭をとっていたほどだから、自分が掲げる政策が実現できないことがわかるはずだ。もし本気なのであれば、頭がおかしいと言わざるをえない』、「ミレイ大統領は中央銀行の廃止や、ペソを廃止してドル化するといった無茶苦茶な政策も掲げている。 もしペソを廃止してドルを使うなら、ユーロ導入国がマーストリヒト条約に批准するのと同じような図式でアメリカと条約を結ぶ必要がある・・・アメリカが同様の水準をアルゼンチンに求めたら、ドル化の話は瞬時に終わる。140%のインフレ率を一桁台に抑える魔法は存在しない。また、基準を満たすくらいに債務を減らすには、あらゆる行政サービスを削らなくてはならず、国内で暴動が起きるだろう。 ミレイ大統領は経済学部の出身で、大学で教鞭をとっていたほどだから、自分が掲げる政策が実現できないことがわかるはずだ。もし本気なのであれば、頭がおかしいと言わざるをえない」、「ミレイ大統領は経済学部の出身で、大学で教鞭をとっていたほどだから、自分が掲げる政策が実現できないことがわかるはずだ」、どういうことなのだろう。南米人らしく無責任なのだろうか。
・『衆愚政治化を止める唯一の方法とは 問題は、現実にありえない政策を掲げる人物を、なぜ国民が選ぶのかだ。トランプ氏は、大統領選で「MAGA」というスローガンを掲げて当選した。Make America Great Again、アメリカをふたたび偉大な国にするという意味だ。実はミレイ大統領も選挙で「MAGA」を掲げて聴衆から喝采を浴びている。アルゼンチンも頭文字がAなので、国名だけを入れ替えてスローガンを拝借したわけだ。 MAGAという主張には、誰も反論のしようがない。アメリカのリベラル派も自国が復活してほしいと願っている。このように誰も文句のない主張をする人を、英語圏では「マザーフッド」と呼ぶ。「母の愛は素晴らしい」といったあたりまえのことを、さも意味のあることのように言うのはバカだと揶揄するときに使う表現である。 MAGAはまさにマザーフッドだが、右傾化を許した国の国民は、マザーフッドだと思わずに素直に心を震わせる。反知性主義とも言われる所以だ。はっきり言えば、衆愚政治化が進んでいる。 衆愚政治から抜け出す道は一つしかない。国民が賢くなることである。 私は学校で政治家の甘言を見抜く政治リテラシーの教育をしたらいいと思う。特定の政治的思想を教えるのではない。右だけではなく左にもポピュリストやアジテーター(扇動者)はいる。「こういうのが還付金詐欺です」と警察が啓蒙するように、ポピュリストの手口を広く教えて、それに惑わされずに自分の頭で考える術を教えるのだ。 残念ながら今のところ学校で「市民術」と言えるような、政治リテラシーを教えている国はない。それならば、右傾化していない国の国民は、なぜ政治的に成熟しているのか。 ポピュリスト勢力の拡大を抑えられている国には、ある共通点がある。ベルギー、シンガポール、ポーランド。これらは国土や人口、資源などの面でハンデを負った小国であり、政治的には大国のはざまで何とか生き抜いてきた歴史を持つ。真剣に政治のことを考えないと国が消滅するおそれがあるので、国民が政治参加に積極的で、お互いに啓発し合うのである。 一方、右傾化しやすいのは、少なくとも一度は栄華を誇った過去があり、現在も何らかの条件に恵まれ、必死にならなくてもとりあえず生きていける国だ。アメリカやヨーロッパの大国、アルゼンチンがまさしく当てはまる。 没落しつつも、まだ経済大国である日本は後者だ。アルゼンチンと同じバラマキ大国である日本も同じ轍を踏むのか。それは、国民の集団知性しだいである』、「誰も文句のない主張をする人を、英語圏では「マザーフッド」と呼ぶ。「母の愛は素晴らしい」といったあたりまえのことを、さも意味のあることのように言うのはバカだと揶揄するときに使う表現である。 MAGAはまさにマザーフッドだが、右傾化を許した国の国民は、マザーフッドだと思わずに素直に心を震わせる。反知性主義とも言われる所以だ。はっきり言えば、衆愚政治化が進んでいる・・・右傾化しやすいのは、少なくとも一度は栄華を誇った過去があり、現在も何らかの条件に恵まれ、必死にならなくてもとりあえず生きていける国だ。アメリカやヨーロッパの大国、アルゼンチンがまさしく当てはまる。 没落しつつも、まだ経済大国である日本は後者だ。アルゼンチンと同じバラマキ大国である日本も同じ轍を踏むのか。それは、国民の集団知性しだいである」、「日本」も「国民の集団知性」には多くを期待できないので、やはり「右傾化しやすい」、或いは既に「右傾化している」のは確かだ。
先ずは、昨年5月20日付け東洋経済オンライン「神社庁幹部による約3000万円の「横領」が発覚 横領したのは神道政治連盟・打田会長の親族」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/673965
・『全国8万社の神社を包括する神社本庁の傘下組織である東京都神社庁(小野貴嗣庁長)の幹部が、複数年にわたって神社庁の口座などから約3000万円を自身の口座に移し、生活費や競馬代として使っていたことがわかった。この幹部は1月に東京都神社庁を解雇されている。 「金銭上の非違行為」(東京都神社庁の庁報『東神』)で解雇されたのは、現在も都内の神社で宮司をしているM氏。複数の関係者によると、M氏による横領が発覚したのは2022年12月。東京都神社庁の口座から別の口座に不自然に現金が移動していることに職員が気づいたという。 発覚後、M氏が東京都神社庁に提出した「事情説明書」によると、生活資金がままならなくなり、「借入だと勝手に考え資金の流用を繰り返してしまいました」としている。妻との不和によるストレスで競馬に費消した旨も書かれている』、「東京都神社庁・・・の幹部が、複数年にわたって神社庁の口座などから約3000万円を自身の口座に移し、生活費や競馬代として使っていた・・・この幹部は1月に東京都神社庁を解雇・・・解雇されたのは、現在も都内の神社で宮司をしているM氏」、「約3000万円」もの金銭を横領、「解雇された」が、「現在も都内の神社で宮司をしている」、とは驚かされた。「約3000万円」は何らかの方法で「弁済」されたのだろうか。下の記事を読むと、うち1900万円は「父親」が「弁済」したようだ。
・『「教誨師」の口座を通して 横領の総額はわかっているだけで約3000万円にのぼる。 2022年12月に発覚した横領額は約1900万円。発覚後、東京都神社庁の小野氏がM氏の父親(都内の宮司)にかけあい、弁済させたという。 だが、2023年に入るとM氏の別の横領も明るみに出る。3月には、新たに630万円が東京都神職教誨師会の口座に移された後、引き出されていたことが発覚した。教誨師(きょうかいし)とは、刑務所などで受刑者に精神的、宗教的な教えを説き、二度と罪を犯さぬよう教えを説く者のことで、M氏は東京都神職教誨師会の事務局長を務めていた。 5月11日の役員会では、さらに約600万円が神職教誨師会の口座から引き出されていたことが確認されたが、損害を被ったのが神社庁か神職教誨師会かははっきりしていない。 神社庁として被害届けを出すべきか、それとも刑事告訴すべきか。5月11日の役員会は紛糾した。「小野庁長はじめ役員が引責辞任するべきではないか」という意見も出たが、この日は組織として被害届けを出す方針だけ固まった。 横領の発覚から5カ月が経過しており、不祥事対応としては遅きに失した感はぬぐえない。) 都内の宮司は「この間、神社庁は『調査中』というばかりで横領の手口や、金が何に使われていたのかなど、ほとんど具体的には説明しなかった。警察に被害届けを出すと決めるまでにどうして5カ月もかかったのか」と首を傾げる。
背景に見え隠れするのが、上部組織である神社本庁で起きている内紛だ』、「刑務所などで受刑者に精神的、宗教的な教えを説き、二度と罪を犯さぬよう教えを説く者のことで、M氏は東京都神職教誨師会の事務局長を務めていた・・・ここからも「630万円」が引き出されたというのは、呆れ果てた。「教誨師」が横領しているのでは、説教を聞かされた「受刑者」も呆れるだろう。
・『神社本庁で起きている泥沼の争い 神社本庁では2022年から2人の宮司が「総長の座」をめぐって争っている。一人は、2期6年が通例であるところ4期12年の長期政権を敷いてきた田中恆清氏(京都・石清水八幡宮宮司)、もう一人が芦原高穂氏(北海道・旭川神社宮司)だ。 経緯は以下の通り。 2022年5月、全国の神社庁長など約170人が集まる評議員会で、神社本庁の宗教的な権威である「統理」に伊勢神宮大宮司を務めた鷹司尚武氏が全会一致で選任された。 鷹司氏はその後の役員会で次期総長に芦原氏を指名。5期15年を目指した田中氏に退任を迫った。 ところが翌6月の役員会では15人中9人が田中氏の続投を支持。結果、宗教的権威である鷹司氏が指名した芦原氏と、宗教法人である神社本庁の役員会が議決した田中氏が、総長の正当性をめぐって争う構図が生まれた。 2022年の7月、神社本庁は芦原氏が宮司をする北海道の旭川地裁に、芦原氏が神社本庁の総長ではないことを確認する仮処分を申し立て、旭川地裁はこれを認めた。一方の芦原氏は東京地裁に地位確認請求訴訟を提起。「真の総長」をめぐる泥沼裁判が始まってしまう。 こうした中、約3000万円もの金を横領していながら東京都神社庁の態度が煮え切らないのは、実は理由がある。それは、M氏が田中氏を支持する神社本庁の中枢と結びついているからだ。 旭川地裁が「芦原氏は総長の地位にはない」という決定をした昨年7月7日、地裁の前に白のベンツが乗りつけた。クルマから出てきたのは神社本庁の吉川通泰副総長と小野貴嗣常務理事。小野氏は東京都神社庁の庁長でもあり「田中総長の長期政権を支えた『ポスト田中』の筆頭格」(有力神社の宮司)と言われる人物だ。 【2023年5月20日7時5分追記】上記の初出時の日付を修正しました。 その2人の後ろから姿を現したのが運転をしていたM氏だ。小野氏の出張に同行するなど行動を共にすることが多く、田中氏の側近である神道政治連盟・打田文博会長の親戚でもあることからM氏は自民党国会議員との接点も多い。 【2023年5月22日11時20分追記】上記と記事の見出しで、初出時の親族を親戚に修正しました。 そうしたM氏のポジションから、「芦原総長」を支持する側からは「横領は本当にこれだけなのか。3000万円もの金の使い道は本当に生活費や競馬だけなのか。徹底した調査がなされているのか疑問だ」という声があがる。 というのも、企業や団体で不祥事が発覚すれば、利害関係のない外部の弁護士や会計士が調査するのが通例だが、今回の調査は東京都神社庁内部のみで行われているからだ。しかもその調査には、「総長をめぐる裁判」において田中氏側の代理人であるだけでなく、東京都神社庁の顧問弁護士であり、M氏と親交のある弁護士が関与している。このような調査で、横領の真相は明らかになるのか。関係者の間では疑念が渦巻いている。 【2023年5月24日13時55分追記】上記を初出時から一部修正しました』、「「真の総長」をめぐる泥沼裁判が始まってしまう。 こうした中、約3000万円もの金を横領していながら東京都神社庁の態度が煮え切らないのは、実は理由がある。それは、M氏が田中氏を支持する神社本庁の中枢と結びついているからだ」、「神社本庁」、「東京都神社庁」は本当にいい加減な組織だ。
・『「話せるときがきたら話します」 5月22日から1週間、神社本庁では全国の宮司・総代が勢揃いする会議が開かれる。田中体制の執行部はM氏の横領についてどんな説明をするのか。 5月中旬、神社で月に一度の月次祭(つきなみさい)を執り行っていたM氏。祭祀終了後、横領について尋ねた。M氏は「今は、否定も肯定もしないことにしています。話せるときがきたら話します。申し訳ありません」と言うばかりだった。 東洋経済は東京都神社庁と神社本庁に「横領額とその内訳」「横領したM氏が神職の資格を剥奪されない理由」「小野庁長の責任」「M氏と親しい弁護士に横領の調査を任せている理由」などを尋ねたが、どちらからも期限までに回答はなかった』、こんないい加減な組織は免税の特権を停止するような荒療治も検討すべきだろう。
次に、昨年12月6日付けNewsweek日本版「極右の相次ぐ選挙勝利、マスコミが「ポピュリズム」報道の詭弁で助長する愚行」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/12/post-103179.php
・『<アルゼンチンやオランダで極右が相次ぎ勝利、脅威を喧伝しながらポピュリストの形容により極右を「主流」にしてしまう報道関係者・研究者の罪をあばく> 新たな「ポピュリズムの衝撃」だった。 11月19日に行われたアルゼンチン大統領選決選投票を制した右派のハビエル・ミレイと、11月22日のオランダ総選挙で第1党になった極右政党・自由党を率いるヘールト・ウィルダース。2人の勝利は、弱体化する自由民主主義に襲いかかる「ポピュリズムの波」の象徴だ。 一方、リアリティー番組に出演するイギリス独立党(UKIP)元党首ナイジェル・ファラージュのように、親しみやすい人物として世間に浸透する極右指導者もいる。 この構図には、極右への反応の矛盾がむき出しになっているが、問題はもっと根深い。 娯楽番組などで人間性を強調すれば、極右は「普通」になる。 極右とその脅威を懸念する者にとって、これは自明の理のはずだ。 だが、極右の脅威を大げさに伝えるのも同じくらい有害だ。 反動政治の復活は想定内であり、かなり前から始まっている。それなのに極右が勝利するたび、予想外の新たな現象という分析が出てくる。 「ポピュリズム」も同様だ。 専門的な研究はどれも、彼らの本質はポピュリストではなく、極右にほかならないと指摘する。だがメディアも学者も、ポピュリストと不用意に形容しがちだ。 極右や人種差別主義者の代わりにポピュリストと呼ぶのは、極右の正当化に貢献する行為だ。 この「人民」を語源とする単語は民主的な支持を想起させ、彼らのエリート主義的本質を消し去ってしまう』、ここではトランプは何故か「極右」、「ポピュリズム」とされてないようだ。
・『主流メディアの責任放棄 極右の主流化や正常化というプロセスは、主流そのものと強く結び付いている。 主流に取り込まれることなく、何かが主流化することはあり得ない。 反対姿勢をアピールして自身の責任を否定しながら主張を取り上げ、過剰報道し、正当化してしまう。それが極右主流化のプロセスだ。 主流派メディアは世論形成に重要な役割を持つが、その多くは役割に伴う責任を放棄するか、無視している。編集方針による選択の結果を、無作為の事象と言わんばかりだ。 いい例が2018年から英紙ガーディアンが連載した「新ポピュリズム」特集だ。その出発点は「なぜ突然、ポピュリズムが大ブームになったのか」という問いだった。 ポピュリズムを取り上げた同紙の記事は、1998年には約300件だったが、16年は2000件に増えたという。だがそれは、単純に同誌がポピュリズムという単語を多用するようになったからではないのか? 極右台頭は「サイレント・マジョリティー」や「白人労働層」のせいにされている。 極右は規範や主流の枠外のアウトサイダーと捉えられがちだが、そうした見方は社会の中核に埋め込まれた構造的格差や抑圧を見落としている。 研究者もそうだ。 この5年間に発表された論文2500件以上のタイトルと要旨を分析したところ、選挙や移民を論点にして極右をごまかし、例外扱いする傾向が強かった。 主流化という問題では、主流自体の大きな役割を考慮すべきだ。 世論形成への特権的アクセスを持つメディアや学術研究者は、主流という良識と正義の砦(とりで)の中にいるのではない。彼らが立っているのは、権力が極めて不均衡な形で分配された闘技場だ。 極右にも「一理ある」が、極右には反対──そんな詭弁は許されない』、「この5年間に発表された論文2500件以上のタイトルと要旨を分析したところ、選挙や移民を論点にして極右をごまかし、例外扱いする傾向が強かった。 主流化という問題では、主流自体の大きな役割を考慮すべきだ。 世論形成への特権的アクセスを持つメディアや学術研究者は、主流という良識と正義の砦(とりで)の中にいるのではない。彼らが立っているのは、権力が極めて不均衡な形で分配された闘技場だ。 極右にも「一理ある」が、極右には反対──そんな詭弁は許されない」、手厳しいメディア批判だ。
第三に、昨年12月27日付けプレジデント 2024年1月12日号が掲載したビジネス・ブレークスルー大学学長の大前研一氏による「「世界的右傾化はなぜ止まらないのか」…衆愚政治から抜け出すたった一つの解決法 真剣に政治のことを考えないと国が消滅する」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/77131
・『グローバル経済の恩恵を忘れるな 世界の右傾化が止まらない。2023年11月19日に行われたアルゼンチン大統領選の決選投票で、「アルゼンチンのトランプ」を自称する右派のハビエル・ミレイ下院議員が、左派のセルヒオ・マサ経済大臣を破って当選、12月10日に就任した。その他、各地で極右政党が勢力を伸ばしている。これは世界の破滅につながる道である。 今では知らない人も多いが、20世紀初頭のアルゼンチンは非常に豊かな国だった。肥沃な土壌を活かして農業大国として成長し、最盛期は世界第5位の経済大国になったほどだ。 しかし、世界恐慌以降のアルゼンチンは没落の一途だ。工業化の波に乗りきれず、左派の正義党(ペロン党)による長期政権のバラマキ政策で政府の債務が増大。何度もデフォルトを起こし、今やインフレ率は140%に達した。経済的には、もはや三流国だ。 こうした状況に不満を持つ国民が選んだのが、過激な政策を掲げる野党ラ・リベルタド・アバンザ(自由の前進)を率いるミレイ氏だ。ミレイ氏は銃所持の合法化を訴え、臓器売買を容認する。しかし、急進的な自由主義者なのかというと、宗教的には保守的で、人工妊娠中絶には反対の姿勢を示している。演説会ではチェーンソーを振り回し、筋骨隆々の大型犬マスティフを5匹飼っているという。まさにマッチョを売りにするミニ・トランプだ。 トランプ的な政治家の躍進は、アルゼンチンに限らない。イタリアでは22年10月に極右のジョルジャ・メローニ氏が首相に就任。ドイツでは23年10月、ヘッセン州の州議会選挙で、反移民を掲げる極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が第二党に躍り出た。 フランスではマクロン大統領の支持率が低迷しており、27年の大統領選では親子2代にわたって極右を標榜しているマリーヌ・ル・ペン氏が勝つと分析する評論家が多い。世界が右傾化する流れを決定的なものにしたドナルド・トランプ氏も、4つの刑事裁判を抱えながら依然として一定の支持があり、24年大統領選でふたたび政治の表舞台に出てくる可能性がある。 トランプ的な主張が支持を集める原因は、グローバル経済への「慣れ」だ。) 私が『ボーダレス・ワールド』(プレジデント社)を書いてグローバル経済を提唱したのは、約30年前だ。世界には、「材料」生産の最適地と、それを加工成形して組み立てる「人材」の最適地がある。2つの最適地でモノをつくって自由に輸入できるようすれば、品質のいいものが安く手に入り、世界中の消費者に恩恵をもたらす。このボーダレス経済論は一世を風靡ふうびし、事実、世界経済はその方向で発展していった。 ボーダレス経済論は、価格に敏感な繊維・アパレル業を例にするとわかりやすい。戦後、日本は材料でも人でも世界の繊維産業で最適地だった。自国の繊維産業の衰退を恐れたアメリカは、日米繊維交渉で日本を抑え込もうとした。アメリカを前に日本は屈服せざるをえなかったが、交渉しているうちに日本の人件費が上がり、すでに最適地は韓国に移っていた。その後、最適地は韓国から台湾、インドネシアへと移動を重ね、90年代からは中国だ。 今では中国も人件費が上がり、産業によっては最適地が異なるものの、総じてみれば世界の工場は中国に集まり、そこでつくられた製品を各国が輸入している。そして、消費者は自国でつくるよりも安い価格で製品を手に入れるというのが、ここ30年の流れだった。 90〜00年代は、多くの消費者がグローバル経済の恩恵を実感していた。それが今では当然になり、逆にグローバル経済が右派政治家による排外主義的な主張のやり玉に挙がったとしても、抵抗を覚えなくなってしまったのだ。 トランプ氏は大統領在任中、中国による知的財産権侵害に対する懲罰と称し、対中関税をたびたび引き上げた。懲罰の目的を「自国の産業保護」と謳うたっていたが、これは建前だ。本当は「中国は日本のように尻尾を振らないから、罰を与えて支持者の溜飲を下げる」という、政治的なパフォーマンスなのだ。
実際、トランプ氏による中国の排斥が政治的なパフォーマンスにすぎなかったことは、現状を見ればわかる。トランプ氏は補助金をちらつかせ、メーカーが中国ではなくアメリカに工場をつくるように働きかけた。釣られた台湾の鴻海ホンハイ精密工業は、ウィスコンシン州で工場建設を計画。トップの郭台銘(テリー・ゴウ)氏が現地に来て鍬入れ式まで行ったが、その後頓挫した。 アメリカの執拗な中国叩きにもかかわらず、結局iPhoneなどのスマートフォンは今も中国で組み立てられており、中の部品についても6割が中国製である。アメリカの消費者はその高くなったスマホを喜んで買い、アメリカ政府は高くなった関税をポケットにしまい込んで知らん顔をしている。精巧なサプライチェーンを基盤としたボーダレス経済は、何も変わっていないのだ』、「アメリカの執拗な中国叩きにもかかわらず、結局iPhoneなどのスマートフォンは今も中国で組み立てられており、中の部品についても6割が中国製である。アメリカの消費者はその高くなったスマホを喜んで買い、アメリカ政府は高くなった関税をポケットにしまい込んで知らん顔をしている。精巧なサプライチェーンを基盤としたボーダレス経済は、何も変わっていないのだ」、なるほど。
・『愛国者を喜ばせるパフォーマンス 前述のアルゼンチンのミレイ大統領は、新自由主義者らしく国内政策では小さな政府を標榜している。しかし、対外的には保護主義色が強く、選挙期間中は南米の自由貿易協定であるメルコスール(南米南部共同市場)からの離脱をほのめかしていた。ただ、これもおそらくパフォーマンスだ。南米のライバル国であるブラジルが中心的存在を担うメルコスールを抜けると言えば、国内の愛国者たちが喜ぶからだ。 ミレイ大統領は中央銀行の廃止や、ペソを廃止してドル化するといった無茶苦茶な政策も掲げている。 もしペソを廃止してドルを使うなら、ユーロ導入国がマーストリヒト条約に批准するのと同じような図式でアメリカと条約を結ぶ必要がある。ユーロを参考にすると、その導入には①物価安定性②健全な財政とその持続性③為替安定④長期金利の安定性という4つの基準を満たす必要がある。このうち、①と②については次の通りだ。 ①過去1年間の自国のインフレ率が、ユーロ導入国でインフレ率が最も低い3カ国の平均値との格差が1.5%以内
②財政赤字がGDP比3%以下、債務残高がGDP比60%以下 アメリカが同様の水準をアルゼンチンに求めたら、ドル化の話は瞬時に終わる。140%のインフレ率を一桁台に抑える魔法は存在しない。また、基準を満たすくらいに債務を減らすには、あらゆる行政サービスを削らなくてはならず、国内で暴動が起きるだろう。 ミレイ大統領は経済学部の出身で、大学で教鞭をとっていたほどだから、自分が掲げる政策が実現できないことがわかるはずだ。もし本気なのであれば、頭がおかしいと言わざるをえない』、「ミレイ大統領は中央銀行の廃止や、ペソを廃止してドル化するといった無茶苦茶な政策も掲げている。 もしペソを廃止してドルを使うなら、ユーロ導入国がマーストリヒト条約に批准するのと同じような図式でアメリカと条約を結ぶ必要がある・・・アメリカが同様の水準をアルゼンチンに求めたら、ドル化の話は瞬時に終わる。140%のインフレ率を一桁台に抑える魔法は存在しない。また、基準を満たすくらいに債務を減らすには、あらゆる行政サービスを削らなくてはならず、国内で暴動が起きるだろう。 ミレイ大統領は経済学部の出身で、大学で教鞭をとっていたほどだから、自分が掲げる政策が実現できないことがわかるはずだ。もし本気なのであれば、頭がおかしいと言わざるをえない」、「ミレイ大統領は経済学部の出身で、大学で教鞭をとっていたほどだから、自分が掲げる政策が実現できないことがわかるはずだ」、どういうことなのだろう。南米人らしく無責任なのだろうか。
・『衆愚政治化を止める唯一の方法とは 問題は、現実にありえない政策を掲げる人物を、なぜ国民が選ぶのかだ。トランプ氏は、大統領選で「MAGA」というスローガンを掲げて当選した。Make America Great Again、アメリカをふたたび偉大な国にするという意味だ。実はミレイ大統領も選挙で「MAGA」を掲げて聴衆から喝采を浴びている。アルゼンチンも頭文字がAなので、国名だけを入れ替えてスローガンを拝借したわけだ。 MAGAという主張には、誰も反論のしようがない。アメリカのリベラル派も自国が復活してほしいと願っている。このように誰も文句のない主張をする人を、英語圏では「マザーフッド」と呼ぶ。「母の愛は素晴らしい」といったあたりまえのことを、さも意味のあることのように言うのはバカだと揶揄するときに使う表現である。 MAGAはまさにマザーフッドだが、右傾化を許した国の国民は、マザーフッドだと思わずに素直に心を震わせる。反知性主義とも言われる所以だ。はっきり言えば、衆愚政治化が進んでいる。 衆愚政治から抜け出す道は一つしかない。国民が賢くなることである。 私は学校で政治家の甘言を見抜く政治リテラシーの教育をしたらいいと思う。特定の政治的思想を教えるのではない。右だけではなく左にもポピュリストやアジテーター(扇動者)はいる。「こういうのが還付金詐欺です」と警察が啓蒙するように、ポピュリストの手口を広く教えて、それに惑わされずに自分の頭で考える術を教えるのだ。 残念ながら今のところ学校で「市民術」と言えるような、政治リテラシーを教えている国はない。それならば、右傾化していない国の国民は、なぜ政治的に成熟しているのか。 ポピュリスト勢力の拡大を抑えられている国には、ある共通点がある。ベルギー、シンガポール、ポーランド。これらは国土や人口、資源などの面でハンデを負った小国であり、政治的には大国のはざまで何とか生き抜いてきた歴史を持つ。真剣に政治のことを考えないと国が消滅するおそれがあるので、国民が政治参加に積極的で、お互いに啓発し合うのである。 一方、右傾化しやすいのは、少なくとも一度は栄華を誇った過去があり、現在も何らかの条件に恵まれ、必死にならなくてもとりあえず生きていける国だ。アメリカやヨーロッパの大国、アルゼンチンがまさしく当てはまる。 没落しつつも、まだ経済大国である日本は後者だ。アルゼンチンと同じバラマキ大国である日本も同じ轍を踏むのか。それは、国民の集団知性しだいである』、「誰も文句のない主張をする人を、英語圏では「マザーフッド」と呼ぶ。「母の愛は素晴らしい」といったあたりまえのことを、さも意味のあることのように言うのはバカだと揶揄するときに使う表現である。 MAGAはまさにマザーフッドだが、右傾化を許した国の国民は、マザーフッドだと思わずに素直に心を震わせる。反知性主義とも言われる所以だ。はっきり言えば、衆愚政治化が進んでいる・・・右傾化しやすいのは、少なくとも一度は栄華を誇った過去があり、現在も何らかの条件に恵まれ、必死にならなくてもとりあえず生きていける国だ。アメリカやヨーロッパの大国、アルゼンチンがまさしく当てはまる。 没落しつつも、まだ経済大国である日本は後者だ。アルゼンチンと同じバラマキ大国である日本も同じ轍を踏むのか。それは、国民の集団知性しだいである」、「日本」も「国民の集団知性」には多くを期待できないので、やはり「右傾化しやすい」、或いは既に「右傾化している」のは確かだ。
タグ:”右傾化” (その16)(神社庁幹部による約3000万円の「横領」が発覚 横領したのは神道政治連盟・打田会長の親族、極右の相次ぐ選挙勝利 マスコミが「ポピュリズム」報道の詭弁で助長する愚行、「世界的右傾化はなぜ止まらないのか」…衆愚政治から抜け出すたった一つの解決法 真剣に政治のことを考えないと国が消滅する) 東洋経済オンライン「神社庁幹部による約3000万円の「横領」が発覚 横領したのは神道政治連盟・打田会長の親族」 「東京都神社庁・・・の幹部が、複数年にわたって神社庁の口座などから約3000万円を自身の口座に移し、生活費や競馬代として使っていた・・・この幹部は1月に東京都神社庁を解雇・・・解雇されたのは、現在も都内の神社で宮司をしているM氏」、「約3000万円」もの金銭を横領、「解雇された」が、「現在も都内の神社で宮司をしている」、とは驚かされた。「約3000万円」は何らかの方法で「弁済」されたのだろうか。下の記事を読むと、うち1900万円は「父親」が「弁済」したようだ。 「刑務所などで受刑者に精神的、宗教的な教えを説き、二度と罪を犯さぬよう教えを説く者のことで、M氏は東京都神職教誨師会の事務局長を務めていた・・・ここからも「630万円」が引き出されたというのは、呆れ果てた。「教誨師」が横領しているのでは、説教を聞いた「受刑者」も呆れるだろう。 「刑務所などで受刑者に精神的、宗教的な教えを説き、二度と罪を犯さぬよう教えを説く者のことで、M氏は東京都神職教誨師会の事務局長を務めていた・・・ここからも「630万円」が引き出されたというのは、呆れ果てた。「教誨師」が横領しているのでは、説教を聞かされた「受刑者」も呆れるだろう。 「「真の総長」をめぐる泥沼裁判が始まってしまう。 こうした中、約3000万円もの金を横領していながら東京都神社庁の態度が煮え切らないのは、実は理由がある。それは、M氏が田中氏を支持する神社本庁の中枢と結びついているからだ」、「神社本庁」、「東京都神社庁」は本当にいい加減な組織だ。 こんないい加減な組織は免税の特権を停止するような荒療治も検討すべきだろう。 Newsweek日本版「極右の相次ぐ選挙勝利、マスコミが「ポピュリズム」報道の詭弁で助長する愚行」 ここではトランプは何故か「極右」、「ポピュリズム」とされてないようだ。 「この5年間に発表された論文2500件以上のタイトルと要旨を分析したところ、選挙や移民を論点にして極右をごまかし、例外扱いする傾向が強かった。 主流化という問題では、主流自体の大きな役割を考慮すべきだ。 世論形成への特権的アクセスを持つメディアや学術研究者は、主流という良識と正義の砦(とりで)の中にいるのではない。彼らが立っているのは、権力が極めて不均衡な形で分配された闘技場だ。 極右にも「一理ある」が、極右には反対──そんな詭弁は許されない」、手厳しいメディア批判だ。 プレジデント 2024年1月12日号 大前研一氏による「「世界的右傾化はなぜ止まらないのか」…衆愚政治から抜け出すたった一つの解決法 真剣に政治のことを考えないと国が消滅する」 「アメリカの執拗な中国叩きにもかかわらず、結局iPhoneなどのスマートフォンは今も中国で組み立てられており、中の部品についても6割が中国製である。アメリカの消費者はその高くなったスマホを喜んで買い、アメリカ政府は高くなった関税をポケットにしまい込んで知らん顔をしている。精巧なサプライチェーンを基盤としたボーダレス経済は、何も変わっていないのだ」、なるほど。 「ミレイ大統領は中央銀行の廃止や、ペソを廃止してドル化するといった無茶苦茶な政策も掲げている。 もしペソを廃止してドルを使うなら、ユーロ導入国がマーストリヒト条約に批准するのと同じような図式でアメリカと条約を結ぶ必要がある・・・アメリカが同様の水準をアルゼンチンに求めたら、ドル化の話は瞬時に終わる。140%のインフレ率を一桁台に抑える魔法は存在しない。 また、基準を満たすくらいに債務を減らすには、あらゆる行政サービスを削らなくてはならず、国内で暴動が起きるだろう。 ミレイ大統領は経済学部の出身で、大学で教鞭をとっていたほどだから、自分が掲げる政策が実現できないことがわかるはずだ。もし本気なのであれば、頭がおかしいと言わざるをえない」、「ミレイ大統領は経済学部の出身で、大学で教鞭をとっていたほどだから、自分が掲げる政策が実現できないことがわかるはずだ」、どういうことなのだろう。 南米人らしく無責任なのだろうか。 「誰も文句のない主張をする人を、英語圏では「マザーフッド」と呼ぶ。「母の愛は素晴らしい」といったあたりまえのことを、さも意味のあることのように言うのはバカだと揶揄するときに使う表現である。 MAGAはまさにマザーフッドだが、右傾化を許した国の国民は、マザーフッドだと思わずに素直に心を震わせる。反知性主義とも言われる所以だ。 はっきり言えば、衆愚政治化が進んでいる・・・右傾化しやすいのは、少なくとも一度は栄華を誇った過去があり、現在も何らかの条件に恵まれ、必死にならなくてもとりあえず生きていける国だ。アメリカやヨーロッパの大国、アルゼンチンがまさしく当てはまる。 没落しつつも、まだ経済大国である日本は後者だ。アルゼンチンと同じバラマキ大国である日本も同じ轍を踏むのか。それは、国民の集団知性しだいである」、 「日本」も「国民の集団知性」には多くを期待できないので、やはり「右傾化しやすい」、或いは既に「右傾化している」のは確かだ。
宗教(その12)(旧統一教会の解散請求秒読みで「第2の過払い金バブル」が来る!寄付金・献金が標的に、「自爆テロを見ても、容赦がない」日本の知性・養老孟司(86)がどんな宗教よりも「仏教」を信頼する理由 『生きるとはどういうことか』より、「打つ手は思いつかない」養老孟司(86)が「自殺する若者が絶えない日本」の現状について思うこと 『生きるとはどういうことか』より #2) [社会]
宗教については、昨年7月23日に取上げた。今日は、(その12)(旧統一教会の解散請求秒読みで「第2の過払い金バブル」が来る!寄付金・献金が標的に、「自爆テロを見ても、容赦がない」日本の知性・養老孟司(86)がどんな宗教よりも「仏教」を信頼する理由 『生きるとはどういうことか』より、「打つ手は思いつかない」養老孟司(86)が「自殺する若者が絶えない日本」の現状について思うこと 『生きるとはどういうことか』より #2)である。
先ずは、昨年9月7日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「旧統一教会の解散請求秒読みで「第2の過払い金バブル」が来る!寄付金・献金が標的に」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/328792
・『「過払い金バブル」再びの機運 「あなたの払い過ぎたお金が戻ってきます!今すぐご確認を」 「ご家族の方でも大丈夫です、いつ払ったのか記憶が曖昧でも大丈夫です、今すぐお電話ください」 今からそう遠くない未来、テレビやラジオ、そしてネットやSNSでは朝から晩までこのような呼びかけが聞こえることになるだろう。弁護士や司法書士を介して払い過ぎたお金を取り戻す、いわゆる「過払い金返還」のCMが大量に流されるのだ。 「おいおい、そんなの今もバリバリ流れているよ」というツッコミが聞こえてきそうだが、未来の「過払金」請求先は、現在のような消費者金融やクレジットカード会社ではない。 日本全国にある宗教団体である。 近い将来、宗教団体に入信していた人が「だまされた」と訴えるだけで、これまで払った献金を過去にさかのぼって、簡単に取り戻せるような法整備がなされるかもしれない。今の「過払い金返還請求」のように、弁護士事務所で簡単な打ち合わせをして、事務員がマニュアルに沿って事務手続きをするだけで、献金やお布施が戻ってくる――。 もしこんな未来になったら、弁護士業界はウハウハだ。利益率が高いため、案件が多ければ多いほどもうかるので、冒頭のようなCMをバンバン流すはずだ。つまり、2010年頃から弁護士業界に巨額の利益をもたらした「過払い金バブル」が、今度は宗教団体をターゲットにして「再現」される可能性があるのだ。 何を根拠にそんな予想をするのかというと、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)への解散請求がいよいよ秒読みになってきたからだ。 ●旧統一教会解散、請求の方針 政府、10月中旬で調整 近く過料申し立ても 地裁に(朝日新聞 9月3日) ●10月にも解散請求か 文科省が検討 7回質問権行使の旧統一教会に(FNNプライムオンライン 9月4日) 旧統一教会への解散請求が行われることが、なぜ冒頭で述べたような「過払い献金返還バブル」へとつながっていくのか。 わかりやすく言ってしまうと、「旧統一教会が組織的な違法行為をしていると国がお墨付きを与えると、ほとんどの宗教団体もアウトになる」からだ』、「旧統一教会・・・への解散請求がいよいよ秒読みになってきた・・・旧統一教会が組織的な違法行為をしていると国がお墨付きを与えると、ほとんどの宗教団体もアウトになる」、なるほど。
・『旧統一教会への解散請求が通ると、アウトな団体は他にも続々? 旧統一教会だけが今回の解散請求に該当するのかどうかを、まず冷静に考えてみたい。 わかりやすいのは、元大阪府知事で弁護士の橋下徹氏の見解だ。氏はかねてから旧統一教会の「組織的な違法性」を立証することが難しいと指摘してきた。 《旧統一教会に解散命令なら、電通も会社法に基づいて解散命令にしないと不公平。でも電通は解散すべきとはほとんどの人は言わないだろう。だから旧統一教会の解散も難しいと言ってきた》(23年2月2日) 《電通を解散させられないなら、民事の違法性、しかもほとんどが使用者責任の旧統一教会を解散することは困難》(同上) これはその通りで、これまでの解散請求は、地下鉄サリン事件を起こした「オウム真理教」と、詐欺罪で幹部が摘発された「明覚寺」の2件だけで、組織や幹部として明確な違法性が立証されている。これらの前例と、旧統一教会のケースはかけ離れている。 これまで旧統一教会幹部の逮捕者が出ていないことからもわかるように、本部が「霊感商法マニュアル」などを作成して、全国の信者に組織的な指示をしていたような証拠はどこにもない。 つまり、問題になっている霊感商法や高額な献金は、それぞれの信者が強すぎる信仰心を“こじらせた”結果であって、それをオウム真理教のような「組織的な違法性」と断罪するのは「拡大解釈」にもほどがあるのだ。 また、旧統一教会はマインドコントロールが悪質だと主張をしている人もいるが、お笑いコンビ・オセロ(現在はコンビ解散)の中島知子さんのことを思い出してみるといいだろう。彼女はかつて「占い師にマインドコントロールされた」とマスコミが大騒ぎをしていたことを振り返って「まったくデタラメ」と笑い話にして今は普通に地方でタレント活動をしている。つまり、マインドコントロールだなんだという批判・炎上は、反論しない人に対して、「言ったもん勝ち」的な側面が多々ある。 そもそも対象に心を奪われて、経済的に破滅するまでカネを突っ込むのは、ホストクラブにハマる女性やアイドルの追っかけでもよく見られる現象だし、創価学会などの他の有名宗教でも信仰のために、多額の献金をしたり、自宅や土地まで信仰のために捧げたりする人もいる。 「他の新興宗教は信仰心だけれど、旧統一教会は悪質なマインドコントロールだ」というのは、被害者などが感情的に訴える主張としてはわからなくもないが、それだけが解散請求の法的要件となるのは、さすがにありえない。 ただ、先ほども申し上げたように、既に政府は「解散請求ありき」で進んでいる』、「霊感商法や高額な献金は、それぞれの信者が強すぎる信仰心を“こじらせた”結果であって、それをオウム真理教のような「組織的な違法性」と断罪するのは「拡大解釈」にもほどがあるのだ・・・既に政府は「解散請求ありき」で進んでいる」、なるほど。
・『宗教団体のビジネスモデル窮地? 森友・加計問題でも明らかになったように日本の官僚は、首相から直接命令を下されなくとも「忖度」をすることで、行政文書を改ざんするくらい優秀だ。だから、今回も「証拠」をこじつけるなど朝飯前だろう。 私の勝手な想像だが、「組織的な違法性の証拠はないけれど、組織的な違法性があると訴える被害者がいるということは、証拠にも匹敵するような証言なので解散請求できる」という方向性の見解が示されるのではないか。 これは世論的に拍手喝采で岸田政権の支持率もちょっぴり上向くかもしれない。しかし、全国の宗教団体からすれば、「死刑宣告」されたにも等しい暴論だ。 宗教団体というものは、神や仏だ、天国だ地獄だという超自然的な説法を信じる人々の寄付や献金によって運営されることが一般的だ。経済的な余裕のある信者や資産家の信者にはより多くの寄付を求める。これが基本的なビジネスモデルなので当然、信仰心をなくした人の中には「これまで金をだまし取りやがって」と被害を訴えることも少なくない。 誤解を恐れず言えば、あらゆる宗教団体には「被害を訴える人」がいる。信仰をやめた人は、その団体に不満や不信感があるからやめている。また、「今の自分」を肯定するには、過去の自分を「だまされていた」と否定しないとやっていられない。 だから、表立って被害者のいない宗教団体も、探して水を向ければ被害を訴えられる可能性がある。そういう被害者は、歴史が長くて信者数が多い教団ほど多いのだ』、「あらゆる宗教団体には「被害を訴える人」がいる。信仰をやめた人は、その団体に不満や不信感があるからやめている。また、「今の自分」を肯定するには、過去の自分を「だまされていた」と否定しないとやっていられない。 だから、表立って被害者のいない宗教団体も、探して水を向ければ被害を訴えられる可能性がある。そういう被害者は、歴史が長くて信者数が多い教団ほど多いのだ」、その通りだ。
・『他の宗教団体の元信者も「被害」を訴える可能性高まる さて、こういう構造的な問題がある中で、国が旧統一教会を「組織的な違法性あり」と法律的に認定すると、一体どういうことが起きるか。 他の有名宗教団体の元信者たちも「被害」を訴え始めるのではないか。 証拠がなくとも、「被害」を訴えるだけで教団を解散に追い込めると国が太鼓判を押したのだ。こんな心強い話を聞いて、黙っているわけがない。そうなると、弁護士も動く。「勝訴」が約束されているような戦いなので、広告などで「宗教被害者」の募集をかけて、宗教団体を相手どって、過去に払った献金を取り戻すなど集団訴訟を起こすのだ。 そして、判例が積み重なっていくうちに、手続きがもっと簡易になって、書類をやり取りするだけで宗教団体側も支払いに応じるようになる。かくして、冒頭で紹介した「過払い献金返還CM」が朝から晩まで流れるような弁護士業界の黄金時代が再びやってくる――というわけだ。 「宗教被害者を純粋に救済をしている弁護士さんたちが、この問題を過払い金バブルのような金もうけのネタにするわけがないだろ」というお叱りが飛んできそうだ。しかし、なぜ筆者がこのように考えるのかというと、まさしくその「過払い金バブル」がつくられていく時の弁護士業界のアクションや社会のムードが、現代の旧統一教会問題に対するそれらと、うり二つだからだ』、「「過払い金バブル」がつくられていく時の弁護士業界のアクションや社会のムードが、現代の旧統一教会問題に対するそれらと、うり二つだからだ」、不気味なことだ。
・『「過払い金バブル」の前夜と今の空気が似ている そもそもなぜ「過払い金バブル」が起きたのかというと、2006年に最高裁判決で「グレーゾーン金利」が否定され、その後の貸金業法改正でも「廃止」されたからだ。 かつて消費者金融やカード会社は、利息制限法の上限金利(15〜20%)と出資法の上限金利(29.2%)間の高金利帯で貸し付けを行っていた。しかし、これによって返済ができず、いくつもの業者から借り入れをする多重債務者が増えた。このような「被害者」を救済する弁護士たちが「全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会」を設立して、国にクレーゾーン金利の廃止を訴えるとともに、消費者金融が多額の貸付ができない「総量規制」の法制化を求めていた。この背景には、消費者金融の武富士などの違法な取り立てが大きな社会問題になっていたことが大きい。 つまり、消費者金融と宗教団体という違いはあれど、「被害者」が社会的に関心を集めて、彼らを救済する弁護士グループが、政府に対して「被害者救済の法整備をせよ」とゴリゴリに求めていたという構図は現代とまったく同じだ。 しかも、「悪をぶっつぶせ」という社会ムードも似ている』、「消費者金融と宗教団体という違いはあれど、「被害者」が社会的に関心を集めて、彼らを救済する弁護士グループが、政府に対して「被害者救済の法整備をせよ」とゴリゴリに求めていたという構図は現代とまったく同じだ。 しかも、「悪をぶっつぶせ」という社会ムードも似ている」、その通りだ。
・『「日本は強盗とか流行しますよ」ヤミ金業者の言った通りに… 実はこの時代、筆者は月刊誌に寄稿したり、講演したりして、消費者金融への過度な規制を控えるべきだと警鐘を鳴らしていた。 当時、筆者は違法ビジネスやヤミ金によく取材をしていた。彼らは口をそろえて、グレーゾーン金利撤廃や総量規制を「ビジネスチャンス」だと語っていた。 年配の方ならわかるが、昔は「街金」と呼ばれる「無担保小口融資」の業者がいた。免許証などの本人確認だけで金を貸す。もちろん、貸す側もリスクがあるので出資法上限金利という高金利だ。ただ、こういう「無担保小口融資」をしているのは小さな業者なので、最高裁判決以降、過払い金返還請求でほとんど絶滅してしまった。 では、ここを利用をしていた人はどこへいくか。プロミスやアコムなどの消費者金融の大手は銀行傘下に入り、審査も厳しく総量規制で年収の3分の1しか借りられない。となると、「闇」に流れるしかないというわけだ。 2008年ごろに話を聞いたあるヤミ金業者は、「総量規制のおかげで大忙し」だとホクホク顔で語っていた。そして利息を払えなくなった者を、オレオレ詐欺の出し子などにあっせんしている、と笑っていた。 「これからの日本は強盗とか流行しますよ。私はやらせないけれど、やばい連中は金さえ回収できればいいんだから何でもやらせますよ。多重債務者の連中は、どこも金を貸してもらえないんだから、逆らえないでしょ」 確かに、彼らの言う通りになっている。昨今、大学生や無職の人がSNSで「闇バイト」に応募をして、詐欺や強盗のメンバーとして参加させられているが、なぜ「闇バイト」に応募をするのかというと、「低信用」でどこも金を貸してくれないからだ。学費や家賃で生活も困窮する中で、仕送りが何かの事情で途絶えたら、「闇バイト」に応募するしかない、というのが現実だ。 そんな話を、筆者は金融庁のヒアリングに呼ばれて報告もしたが、「難しい問題ですねえ」なんて言われて終わった。当時の金融庁幹部を、ヤミ金業者に実際ひき会わせて話を聞いてもらったりしたが、政策は特に変わらなかった。むしろ、そういうことをやればやるほど、「消費者金融からいくらもらっているんだ」とか「サラ金御用達ライター」とか叩かれるので、面倒臭くなってあきらめた。 今回も似た匂いがプンプンしている』、「昨今、大学生や無職の人がSNSで「闇バイト」に応募をして、詐欺や強盗のメンバーとして参加させられているが、なぜ「闇バイト」に応募をするのかというと、「低信用」でどこも金を貸してくれないからだ。学費や家賃で生活も困窮する中で、仕送りが何かの事情で途絶えたら、「闇バイト」に応募するしかない、というのが現実だ」、なるほど。
・『「受け皿」がなくなると、「闇」に飲み込まれる人が増える 旧統一教会の解散請求をして、宗教法人格をはく奪したところで、税制上の優遇を受けられなくなるだけで、信者の多くは「じゃあカトリックに改宗するか」なんてことにはならない。活動が地下に潜るだけなので、被害者救済も難しくなるなどデメリットも多い。 こういう問題が生じる以上、宗教法人として解散すれば、めでたしめでたし…という単純な話ではない。教団改革の行方を見守っていくためにも、もっと慎重に判断したらどうかと言いたいのだが、ここでも「リテラシーのない旧統一教会御用達ライターは引っ込んでろ!」と叩かれる。 問題が指摘される世界の人々を「善」か「悪」でしか判断せず、存在を認めるか、抹殺をするか、という極論がまかり通っているムードが、「多重債務者救済のため、高金利の無担保小口融資を廃業に追い込め」と正義の弁護士が絶叫していたあの時代とそっくりだ。 弁護士業界は再び「過払い献金バブル」到来でうれしいかもしれないが、多くの宗教団体は経営難に追いやられるので、自主的に解散するところも出てくるだろう。しかし、神や仏に救い求める人たちは必ず存在するので、「新たな受け皿」として、「ヤミ宗教」が横行するかもしれない。宗教法人格を持たないので、行政や自治体のチェックも働かない。高額献金も霊感商法もやりたい放題だし、マルチ商法などとかけ合わせることも可能だ。 暴力団を使用者責任で規制したら、盃を受けない半グレが増えて結果、警察が把握しにくい「かたぎを利用した地下ビジネス」が広まったのと同じ構図が、宗教界でも起きるかもしれない。 旧統一教会を解散させたところで、宗教被害者は消えない。むしろ、宗教法人という「受け皿」をつぶしていけばいくほど、「闇」に飲み込まれる被害者が増えることを忘れてはいけない』、「弁護士業界は再び「過払い献金バブル」到来でうれしいかもしれないが、多くの宗教団体は経営難に追いやられるので、自主的に解散するところも出てくるだろう。しかし、神や仏に救い求める人たちは必ず存在するので、「新たな受け皿」として、「ヤミ宗教」が横行するかもしれない。宗教法人格を持たないので、行政や自治体のチェックも働かない。高額献金も霊感商法もやりたい放題だし、マルチ商法などとかけ合わせることも可能だ。 暴力団を使用者責任で規制したら、盃を受けない半グレが増えて結果、警察が把握しにくい「かたぎを利用した地下ビジネス」が広まったのと同じ構図が、宗教界でも起きるかもしれない。 旧統一教会を解散させたところで、宗教被害者は消えない。むしろ、宗教法人という「受け皿」をつぶしていけばいくほど、「闇」に飲み込まれる被害者が増えることを忘れてはいけない」、その通りだ。
次に、昨年11月19日付け文春オンライン「「自爆テロを見ても、容赦がない」日本の知性・養老孟司(86)がどんな宗教よりも「仏教」を信頼する理由 『生きるとはどういうことか』より」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/66991
・『「べつに私は仏教徒ではない。でも外国の書類に宗教を書くときは、仏教徒と書く」 養老孟司さんはなぜほかのどの宗教よりも、仏教に信頼を置くのか? 日本を代表する知性・養老さんの過去20年間に執筆したエッセイを選りすぐった新刊『生きるとはどういうことか』(筑摩書房)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)』、興味深そうだ。
・『人はなぜ生きるのか? 人はなぜ生きるか。こう訊かれると、すぐにいいたくなる。そりゃ、人によって違うでしょうが。 お金のため、名誉のため、権力のため。人生の動機はこれに尽きる。そう考える人もある。それなら男女はどうなる、家族はどうなる。好きな女のために生きる。もうだれも読まないだろうが、井上靖の「射程」はそういう男を描いている。若いころ、この本にすっかり釣り込まれて読んだから、電車で降りるはずの駅を乗り越した。 家族のためというなら、それは生きるためというより、食うため、食わせるためじゃないか。食うのは生きるためで、それなら生きるのは、食うためではない。 そんなこというけど、あたしゃ貧乏人だし、社会的地位もない。金と名誉と権力には縁がない。自分ではそう思っている人も、じつは金・名誉・権力の例外ではない。そういう意見もある。貧乏人の子だくさんとは、そのことだという。それを説明する。 突き詰めれば、人間の欲は権力欲である。気に入ろうが、気に入るまいが、とりあえずここではそう考えることにする。金があれば、それなりに「思うようにできる」。名誉があれば、それなりに人を「思うようにできる」。ともあれ他人が自分の意見に耳を傾けてくれるに違いないからである。権力があれば、むろんのことである。 貧乏人はどうか。どれもない。ところが一つ、残された手段がある。子どもである。子どもにとっては、親は絶対者に近い。父親が変人で、子ども嫌いだったため、赤ん坊のときから中学生の年齢になるまで、一部屋に閉じ込められ、縛られていた子どもがあった。その子はそれでも後に「母が恋しい」と書いた。すべての権力に縁がないなら、人は子どもをつくる。だから貧乏人の子だくさんなのだ、と。) その欲、権力の欲を去れと説いたはずの人を私は一人だけ、知っているような気がする。釈迦である。だから私は釈迦が好きなのである。そりゃ誤解だといわれるかもしれない。そうかもしれないが、ともかくそうだと思うことにしている。 べつに私は仏教徒ではない。でも外国の書類に宗教を書くときは、仏教徒と書く。そう書いたところで、信じる教義を訊かれることはない。でも仮に訊かれたとしたら、「欲を去れ」だという。そう聞きましたという。如是我聞である。 欲を去ったら、人生の目的がないじゃないか。そのとおりである。だからといって、欲をかいていい。そういう結論にはならない。この「欲をかく」は、欲を欠くではない。徹底的に欲望するという俗語である。 他方、欲を欠いたら、たしかに人生は灰色である。しかし欲は中庸でよろしい。理屈が中庸なのではない。中庸なのは欲である。理屈を中庸にすると、理屈が役に立たない。このあたりは高級な議論だから、短くては納得しない人もいるかもしれない。でも説明が面倒くさい。 人はなにごとであれ、思うようにしようとする。それは人の癖だから、どうしようもない。そういうものだと心得ておくしかない。それを説くのが仏教だと、私は勝手に信じている。他の宗教はそれをいわない。いわないと思う。むしろ徹底的にやれという。宗教を信じること自体についても徹底を要求する』、「人はなにごとであれ、思うようにしようとする。それは人の癖だから、どうしようもない。そういうものだと心得ておくしかない。それを説くのが仏教だと、私は勝手に信じている」、なるほど。
・『容赦がない 自爆テロを見ても、それに反対してテロ撲滅に動く人を見ても、そう思う。相手を殺しても、逆に自分が死んでも、ともかく「思うように」しようとする。もう勘弁してよと、体力のなくなってきた老人は思うが、容赦がない。 容赦という言葉は、西洋語やアラビア語になるんだろうか。魯迅だって、「水に落ちた犬を打て」と書いていたはずである。 「世界はイヤなところだと思え」。そう書いていたのは関川夏央氏である。こういう点では、私もそう思う。いまでは世界は人間でできているというしかない。その人間の悪いところを無限に拡大するようなことは、勘弁してほしいと思う。でもそうはいかないといいつつ、欲望は無限に増大するように見える。やっぱりお釈迦様は偉い』、「いまでは世界は人間でできているというしかない。その人間の悪いところを無限に拡大するようなことは、勘弁してほしいと思う。でもそうはいかないといいつつ、欲望は無限に増大するように見える。やっぱりお釈迦様は偉い」、「釈迦様は偉い」については、理解できなかった。
第三に、昨年11月19日付け文春オンライン「「打つ手は思いつかない」養老孟司(86)が「自殺する若者が絶えない日本」の現状について思うこと 『生きるとはどういうことか』より #2」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/66992
・『「若者が死にたがる理由は複雑であろう。とりあえず打つ手は思いつかない」 十代から三十代までの日本の若者の死因のトップが自殺…そんな現状を知った養老孟司さんは何を思ったのか? 日本を代表する知性・養老さんの過去20年間に執筆したエッセイを選りすぐった新刊『生きるとはどういうことか』(筑摩書房)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)』、興味深そうだ。
・『ベストセラー『バカの壁』はなぜ売れたか 自分の人生がほぼ尽きてしまった状態で、なにを言い、なにをすればいいのか。私の恩師は旧制一高の同窓会に出た後、話題は病気と孫と勲章だけだ、と言っておられた。爺さんの話題はその辺に尽きるらしい。 もう一つ。マンガ「ショージ君」の東海林さんが、年寄りの話はほぼ自慢話だと思う、と言われたのが気になっている。病気、孫、勲章に加えて自慢話を排除すると、年寄りにはなにか語ることがあるだろうか。 令和3年の暮から4年の2月までに、自著6冊が出版された。多過ぎやしないかと思うが、出版社の都合でたまたまそうなったので、私が鋭意努力したわけではない。ひとりでにそうなってしまったのである。人生を振り返ってみると「ひとりでにそうなった」「いつの間にかそうなっていた」ことが多いように思う。断固自分の意志でやったことも当然あるが、ほぼ失敗している。自著が多く出たのも、『バカの壁』(新潮新書)の発行部数が昨年末に450万部を超えたということが契機になったのかもしれない。本が売れたのは、間違いなく私のせいじゃない。なにかの都合で売れてしまったから、仕方がないのである。 どうして売れたか、ときどき訊かれる。はかばかしい返事ができるわけがない。それがわかっていれば、どこの出版社も困らないはずだからである。 日常何をしているかというなら、捕まえた虫、もらった虫、買い求めた虫を標本にしている。 これが楽しくてやめられない。なにが楽しいのか、疑問に思う人も多いだろうと思う。子どものころから好きでやっていたことだから、母親にも年中訊かれた。「虫ばかりいじって、何が面白いの」。これにも返答のしようがない。 虫をいじっていれば、人に会うこともない。コロナ下であっても、いつもと変わりはない。ウクライナ問題で、世間は騒いでいるが、ウクライナの虫好きが採ったゾウムシが千頭あまり、いま私の手元にある。知人がネット上で売っているのに気が付いて、私のために買ってくれたのである。これを標本にするのが楽しくてしょうがない。いままで図版でしか見たことがない虫、あるいは想像したこともない虫の現物を手にしていると、ほとんど至福の境地である。 現地ではごく普通種で良く知られた虫であっても、私が知らなかったら、発見である。発見とは本来そ ういうことだと思う。世間に知られていなかった種類、いわゆる新種を見つけることも多いが、それより自分が知らなかった虫を知ることが楽しいのである。発見とは常に自分に関することだというのは、当たり前であろう。自分が無知であるほど、発見の可能性は高い。) 八十代の半ばになって、自分の人生を振り返る。要するに成り行きと発見の連続ではなかったかと思う。成り行きまかせにしておいても、発見だけはある。発見の機会は向こうからやってくる。アメリカ人のように、人生は自分の選択の連続だなどと思ったことはない。それどころか、選択なんてしたくない。人生の暮になって思う。「何事もあなた任せの年の暮」状態だなあ。 こういう考えだから、若者の前で話をさせられると、言うことに窮する。若者はとりあえず「自分」を立てなければならない。それを「自立」という。今では自立というと、給料を稼いで、親から小遣いを貰わないことだと解釈される可能性が高い。そう考える傾向も世間の成り行きだからやむを得ない。人生の全体を通じる一言なんか、あるはずがないのである。若者には若者の、爺さんには爺さんの考えがあり、立場がある』、「私の恩師は旧制一高の同窓会に出た後、話題は病気と孫と勲章だけだ、と言っておられた。爺さんの話題はその辺に尽きるらしい」、私の場合は、さすがに「勲章」は無縁で、「孫」はいない人もいるので控え、専ら「病気」が共通の話題だ。「人生の全体を通じる一言なんか、あるはずがないのである。若者には若者の、爺さんには爺さんの考えがあり、立場がある」、確かにその通りだ。ここまで突き離した言い方が出来るのも養老氏ならではだ。
・『人生は一期一会の連続 生まれてから死ぬまでの一貫した人生、そんな抽象的な、高級なものは私にはない。いまなら百歳にも達しようという「人生」の紆余曲折を、一言で片づけるほど、情報化というのは乱暴なものである。私の人生はまさに一期一会の連続でしかない。 この年齢になると、知人が亡くなることが増える。最後はいつ会ったかなと思うと、意外に遠い過去だったりすることが多い。昨日はNHKの仕事で、鎌倉の小林秀雄の旧宅で、現在の家主、茂木健一郎君に会った。小林秀雄が座っていたという椅子に座って、偉そうにしてしゃべっていると、本当に偉くなったような気がする。高校生のころ、鎌倉市内の本屋で小林秀雄を見かけた覚えがある。要するに白髪の爺さんだった。直接に口をきいたことはない。そのたたずまいがよほど印象的だったのであろう。今でもその一度の邂逅を記憶しているくらいである。 当時私の住んでいた家は、大佛次郎の家の近所だったから、よく猫を見かけた。大佛さん自身は見たことがない。大佛さんが猫好きだということが知れ渡っていて、子猫が生まれると、大佛さんの家の近くに捨てに来る人がいるという噂だった。茂木君が「養老さんも鎌倉文士じゃないですか」という。私は「文士」だなんて思ったこともない。ただある程度の雰囲気は知っていると思う。 小学生のころ、開業医だった母の往診になぜかついて行って、小島政二郎の家に行ったことがある。妙本寺という寺の山門の先の右の山手の坂を上った突き当りだった。小林秀雄の旧宅と場所は離れているが、山の中腹にあって、似た感じのたたずまいである。現在の私の家も似たような環境にある。芥川龍之介や里見弴の住んだのは平地で、鎌倉でももっと人家が多く、より賑やかな市街地だった。以前、大分の三浦梅園の旧宅に行ったことがあるが、やはり小林邸と似たような場所にあった。里山の中腹で小さな谷間を見下ろす位置である。) 小林秀雄の旧宅からは、市街地を超えて海が見える。水平線が凸凹しているのは、私の目のせいである。三日前に東大病院の眼科に行った。右の目がダメだということがしっかり判明した。子どものころから、右目がよく見えていなかった。双眼の実体顕微鏡を使っても、片目しか使わないから双眼の意味がない。望遠鏡やオペラグラスも同じ。立体視ができないのである。 そういえば、若い時から立体視が苦手だったなあと思い当たる。今頃わかっても打つ手がないが、これも人生の「仕方がない」のうちであろう。 現代人は「仕方がない」が苦手である。何事も思うようになると、なんとなく思っている風情である。コロナに関する議論をテレビで聞いていると、しみじみそう思う。ああすればよかったじゃないか、こうすればいいだろう。ほとんどの人が沈む夕日を扇で招き上げたという平清盛みたいになっている。「ああすれば、こうなる」というのは、いわゆるシミュレーションで、ヒトの意識がもっとも得意とする能力である。それがAIの発達を生んだ。これは右に述べてきたような私の人生観と合わない。 私の人生観なんか、どうでもいいが、世間がシミュレーション全盛の方向に進んでいくときに、人生をどう送ればいいのか。その世界では私の人生はおそらくノイズであり、それならどれだけのノイズが許容される世界なのかが問題となる。 そんなことを考えていると、それも一種のシミュレーションじゃないかと思い、面倒くさいなあ、AIに考えてもらいたい、と思ったりする。やっぱり話はいまではAIに尽きるのである』、「「ああすれば、こうなる」というのは、いわゆるシミュレーションで、ヒトの意識がもっとも得意とする能力である。それがAIの発達を生んだ。これは右に述べてきたような私の人生観と合わない。 私の人生観なんか、どうでもいいが、世間がシミュレーション全盛の方向に進んでいくときに、人生をどう送ればいいのか。その世界では私の人生はおそらくノイズであり、それならどれだけのノイズが許容される世界なのかが問題となる。 そんなことを考えていると、それも一種のシミュレーションじゃないかと思い、面倒くさいなあ、AIに考えてもらいたい、と思ったりする」、なるほど。
・『日本の若者の死因のトップは「自殺」 「人生論」などというヘンな主題になったのは、NHKの仕事がらみで、子どもの質問に答えるというのを引き受けたからで、十歳の小学生が「良い人生とは」という質問をしてきたのである。 もう一つは十代から三十代までの日本の若者の死因のトップが自殺だと知ったからである。人生ではなくて、「生き方」の問題だろうと、とりあえず回答したが、「生き方」の指南は私の仕事ではない。古来から宗教家の仕事に決まっている。宗教は衰退しているといわれるが、AIが宗教に変わったという意見もある。未来をもっぱらAIに託すからであろう。AIは碁将棋に勝つだけではない。なんにでも勝つのである。 自殺が多いのは、人生指南のニーズが高いであろうことを示唆している。日本でいうなら、コンビニより多いとされるお寺の前途は洋々である。若者が死にたがる理由は複雑であろう。とりあえず打つ手は思いつかない』、「十代から三十代までの日本の若者の死因のトップが自殺だと知ったからである。人生ではなくて、「生き方」の問題だろうと、とりあえず回答したが、「生き方」の指南は私の仕事ではない。古来から宗教家の仕事に決まっている。宗教は衰退しているといわれるが、AIが宗教に変わったという意見もある・・・自殺が多いのは、人生指南のニーズが高いであろうことを示唆している。日本でいうなら、コンビニより多いとされるお寺の前途は洋々である。若者が死にたがる理由は複雑であろう。とりあえず打つ手は思いつかない」、「お寺の前途は洋々」なのは「自殺が多い」ためというのは、その通りなのだろうが、余りに暗い。「若者が死にたがる理由は複雑であろう。とりあえず打つ手は思いつかない」と突き放しているが、「「生き方」の問題」は「古来から宗教家の仕事に決まっている」ので、やむを得ないことなのだろう。
先ずは、昨年9月7日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「旧統一教会の解散請求秒読みで「第2の過払い金バブル」が来る!寄付金・献金が標的に」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/328792
・『「過払い金バブル」再びの機運 「あなたの払い過ぎたお金が戻ってきます!今すぐご確認を」 「ご家族の方でも大丈夫です、いつ払ったのか記憶が曖昧でも大丈夫です、今すぐお電話ください」 今からそう遠くない未来、テレビやラジオ、そしてネットやSNSでは朝から晩までこのような呼びかけが聞こえることになるだろう。弁護士や司法書士を介して払い過ぎたお金を取り戻す、いわゆる「過払い金返還」のCMが大量に流されるのだ。 「おいおい、そんなの今もバリバリ流れているよ」というツッコミが聞こえてきそうだが、未来の「過払金」請求先は、現在のような消費者金融やクレジットカード会社ではない。 日本全国にある宗教団体である。 近い将来、宗教団体に入信していた人が「だまされた」と訴えるだけで、これまで払った献金を過去にさかのぼって、簡単に取り戻せるような法整備がなされるかもしれない。今の「過払い金返還請求」のように、弁護士事務所で簡単な打ち合わせをして、事務員がマニュアルに沿って事務手続きをするだけで、献金やお布施が戻ってくる――。 もしこんな未来になったら、弁護士業界はウハウハだ。利益率が高いため、案件が多ければ多いほどもうかるので、冒頭のようなCMをバンバン流すはずだ。つまり、2010年頃から弁護士業界に巨額の利益をもたらした「過払い金バブル」が、今度は宗教団体をターゲットにして「再現」される可能性があるのだ。 何を根拠にそんな予想をするのかというと、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)への解散請求がいよいよ秒読みになってきたからだ。 ●旧統一教会解散、請求の方針 政府、10月中旬で調整 近く過料申し立ても 地裁に(朝日新聞 9月3日) ●10月にも解散請求か 文科省が検討 7回質問権行使の旧統一教会に(FNNプライムオンライン 9月4日) 旧統一教会への解散請求が行われることが、なぜ冒頭で述べたような「過払い献金返還バブル」へとつながっていくのか。 わかりやすく言ってしまうと、「旧統一教会が組織的な違法行為をしていると国がお墨付きを与えると、ほとんどの宗教団体もアウトになる」からだ』、「旧統一教会・・・への解散請求がいよいよ秒読みになってきた・・・旧統一教会が組織的な違法行為をしていると国がお墨付きを与えると、ほとんどの宗教団体もアウトになる」、なるほど。
・『旧統一教会への解散請求が通ると、アウトな団体は他にも続々? 旧統一教会だけが今回の解散請求に該当するのかどうかを、まず冷静に考えてみたい。 わかりやすいのは、元大阪府知事で弁護士の橋下徹氏の見解だ。氏はかねてから旧統一教会の「組織的な違法性」を立証することが難しいと指摘してきた。 《旧統一教会に解散命令なら、電通も会社法に基づいて解散命令にしないと不公平。でも電通は解散すべきとはほとんどの人は言わないだろう。だから旧統一教会の解散も難しいと言ってきた》(23年2月2日) 《電通を解散させられないなら、民事の違法性、しかもほとんどが使用者責任の旧統一教会を解散することは困難》(同上) これはその通りで、これまでの解散請求は、地下鉄サリン事件を起こした「オウム真理教」と、詐欺罪で幹部が摘発された「明覚寺」の2件だけで、組織や幹部として明確な違法性が立証されている。これらの前例と、旧統一教会のケースはかけ離れている。 これまで旧統一教会幹部の逮捕者が出ていないことからもわかるように、本部が「霊感商法マニュアル」などを作成して、全国の信者に組織的な指示をしていたような証拠はどこにもない。 つまり、問題になっている霊感商法や高額な献金は、それぞれの信者が強すぎる信仰心を“こじらせた”結果であって、それをオウム真理教のような「組織的な違法性」と断罪するのは「拡大解釈」にもほどがあるのだ。 また、旧統一教会はマインドコントロールが悪質だと主張をしている人もいるが、お笑いコンビ・オセロ(現在はコンビ解散)の中島知子さんのことを思い出してみるといいだろう。彼女はかつて「占い師にマインドコントロールされた」とマスコミが大騒ぎをしていたことを振り返って「まったくデタラメ」と笑い話にして今は普通に地方でタレント活動をしている。つまり、マインドコントロールだなんだという批判・炎上は、反論しない人に対して、「言ったもん勝ち」的な側面が多々ある。 そもそも対象に心を奪われて、経済的に破滅するまでカネを突っ込むのは、ホストクラブにハマる女性やアイドルの追っかけでもよく見られる現象だし、創価学会などの他の有名宗教でも信仰のために、多額の献金をしたり、自宅や土地まで信仰のために捧げたりする人もいる。 「他の新興宗教は信仰心だけれど、旧統一教会は悪質なマインドコントロールだ」というのは、被害者などが感情的に訴える主張としてはわからなくもないが、それだけが解散請求の法的要件となるのは、さすがにありえない。 ただ、先ほども申し上げたように、既に政府は「解散請求ありき」で進んでいる』、「霊感商法や高額な献金は、それぞれの信者が強すぎる信仰心を“こじらせた”結果であって、それをオウム真理教のような「組織的な違法性」と断罪するのは「拡大解釈」にもほどがあるのだ・・・既に政府は「解散請求ありき」で進んでいる」、なるほど。
・『宗教団体のビジネスモデル窮地? 森友・加計問題でも明らかになったように日本の官僚は、首相から直接命令を下されなくとも「忖度」をすることで、行政文書を改ざんするくらい優秀だ。だから、今回も「証拠」をこじつけるなど朝飯前だろう。 私の勝手な想像だが、「組織的な違法性の証拠はないけれど、組織的な違法性があると訴える被害者がいるということは、証拠にも匹敵するような証言なので解散請求できる」という方向性の見解が示されるのではないか。 これは世論的に拍手喝采で岸田政権の支持率もちょっぴり上向くかもしれない。しかし、全国の宗教団体からすれば、「死刑宣告」されたにも等しい暴論だ。 宗教団体というものは、神や仏だ、天国だ地獄だという超自然的な説法を信じる人々の寄付や献金によって運営されることが一般的だ。経済的な余裕のある信者や資産家の信者にはより多くの寄付を求める。これが基本的なビジネスモデルなので当然、信仰心をなくした人の中には「これまで金をだまし取りやがって」と被害を訴えることも少なくない。 誤解を恐れず言えば、あらゆる宗教団体には「被害を訴える人」がいる。信仰をやめた人は、その団体に不満や不信感があるからやめている。また、「今の自分」を肯定するには、過去の自分を「だまされていた」と否定しないとやっていられない。 だから、表立って被害者のいない宗教団体も、探して水を向ければ被害を訴えられる可能性がある。そういう被害者は、歴史が長くて信者数が多い教団ほど多いのだ』、「あらゆる宗教団体には「被害を訴える人」がいる。信仰をやめた人は、その団体に不満や不信感があるからやめている。また、「今の自分」を肯定するには、過去の自分を「だまされていた」と否定しないとやっていられない。 だから、表立って被害者のいない宗教団体も、探して水を向ければ被害を訴えられる可能性がある。そういう被害者は、歴史が長くて信者数が多い教団ほど多いのだ」、その通りだ。
・『他の宗教団体の元信者も「被害」を訴える可能性高まる さて、こういう構造的な問題がある中で、国が旧統一教会を「組織的な違法性あり」と法律的に認定すると、一体どういうことが起きるか。 他の有名宗教団体の元信者たちも「被害」を訴え始めるのではないか。 証拠がなくとも、「被害」を訴えるだけで教団を解散に追い込めると国が太鼓判を押したのだ。こんな心強い話を聞いて、黙っているわけがない。そうなると、弁護士も動く。「勝訴」が約束されているような戦いなので、広告などで「宗教被害者」の募集をかけて、宗教団体を相手どって、過去に払った献金を取り戻すなど集団訴訟を起こすのだ。 そして、判例が積み重なっていくうちに、手続きがもっと簡易になって、書類をやり取りするだけで宗教団体側も支払いに応じるようになる。かくして、冒頭で紹介した「過払い献金返還CM」が朝から晩まで流れるような弁護士業界の黄金時代が再びやってくる――というわけだ。 「宗教被害者を純粋に救済をしている弁護士さんたちが、この問題を過払い金バブルのような金もうけのネタにするわけがないだろ」というお叱りが飛んできそうだ。しかし、なぜ筆者がこのように考えるのかというと、まさしくその「過払い金バブル」がつくられていく時の弁護士業界のアクションや社会のムードが、現代の旧統一教会問題に対するそれらと、うり二つだからだ』、「「過払い金バブル」がつくられていく時の弁護士業界のアクションや社会のムードが、現代の旧統一教会問題に対するそれらと、うり二つだからだ」、不気味なことだ。
・『「過払い金バブル」の前夜と今の空気が似ている そもそもなぜ「過払い金バブル」が起きたのかというと、2006年に最高裁判決で「グレーゾーン金利」が否定され、その後の貸金業法改正でも「廃止」されたからだ。 かつて消費者金融やカード会社は、利息制限法の上限金利(15〜20%)と出資法の上限金利(29.2%)間の高金利帯で貸し付けを行っていた。しかし、これによって返済ができず、いくつもの業者から借り入れをする多重債務者が増えた。このような「被害者」を救済する弁護士たちが「全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会」を設立して、国にクレーゾーン金利の廃止を訴えるとともに、消費者金融が多額の貸付ができない「総量規制」の法制化を求めていた。この背景には、消費者金融の武富士などの違法な取り立てが大きな社会問題になっていたことが大きい。 つまり、消費者金融と宗教団体という違いはあれど、「被害者」が社会的に関心を集めて、彼らを救済する弁護士グループが、政府に対して「被害者救済の法整備をせよ」とゴリゴリに求めていたという構図は現代とまったく同じだ。 しかも、「悪をぶっつぶせ」という社会ムードも似ている』、「消費者金融と宗教団体という違いはあれど、「被害者」が社会的に関心を集めて、彼らを救済する弁護士グループが、政府に対して「被害者救済の法整備をせよ」とゴリゴリに求めていたという構図は現代とまったく同じだ。 しかも、「悪をぶっつぶせ」という社会ムードも似ている」、その通りだ。
・『「日本は強盗とか流行しますよ」ヤミ金業者の言った通りに… 実はこの時代、筆者は月刊誌に寄稿したり、講演したりして、消費者金融への過度な規制を控えるべきだと警鐘を鳴らしていた。 当時、筆者は違法ビジネスやヤミ金によく取材をしていた。彼らは口をそろえて、グレーゾーン金利撤廃や総量規制を「ビジネスチャンス」だと語っていた。 年配の方ならわかるが、昔は「街金」と呼ばれる「無担保小口融資」の業者がいた。免許証などの本人確認だけで金を貸す。もちろん、貸す側もリスクがあるので出資法上限金利という高金利だ。ただ、こういう「無担保小口融資」をしているのは小さな業者なので、最高裁判決以降、過払い金返還請求でほとんど絶滅してしまった。 では、ここを利用をしていた人はどこへいくか。プロミスやアコムなどの消費者金融の大手は銀行傘下に入り、審査も厳しく総量規制で年収の3分の1しか借りられない。となると、「闇」に流れるしかないというわけだ。 2008年ごろに話を聞いたあるヤミ金業者は、「総量規制のおかげで大忙し」だとホクホク顔で語っていた。そして利息を払えなくなった者を、オレオレ詐欺の出し子などにあっせんしている、と笑っていた。 「これからの日本は強盗とか流行しますよ。私はやらせないけれど、やばい連中は金さえ回収できればいいんだから何でもやらせますよ。多重債務者の連中は、どこも金を貸してもらえないんだから、逆らえないでしょ」 確かに、彼らの言う通りになっている。昨今、大学生や無職の人がSNSで「闇バイト」に応募をして、詐欺や強盗のメンバーとして参加させられているが、なぜ「闇バイト」に応募をするのかというと、「低信用」でどこも金を貸してくれないからだ。学費や家賃で生活も困窮する中で、仕送りが何かの事情で途絶えたら、「闇バイト」に応募するしかない、というのが現実だ。 そんな話を、筆者は金融庁のヒアリングに呼ばれて報告もしたが、「難しい問題ですねえ」なんて言われて終わった。当時の金融庁幹部を、ヤミ金業者に実際ひき会わせて話を聞いてもらったりしたが、政策は特に変わらなかった。むしろ、そういうことをやればやるほど、「消費者金融からいくらもらっているんだ」とか「サラ金御用達ライター」とか叩かれるので、面倒臭くなってあきらめた。 今回も似た匂いがプンプンしている』、「昨今、大学生や無職の人がSNSで「闇バイト」に応募をして、詐欺や強盗のメンバーとして参加させられているが、なぜ「闇バイト」に応募をするのかというと、「低信用」でどこも金を貸してくれないからだ。学費や家賃で生活も困窮する中で、仕送りが何かの事情で途絶えたら、「闇バイト」に応募するしかない、というのが現実だ」、なるほど。
・『「受け皿」がなくなると、「闇」に飲み込まれる人が増える 旧統一教会の解散請求をして、宗教法人格をはく奪したところで、税制上の優遇を受けられなくなるだけで、信者の多くは「じゃあカトリックに改宗するか」なんてことにはならない。活動が地下に潜るだけなので、被害者救済も難しくなるなどデメリットも多い。 こういう問題が生じる以上、宗教法人として解散すれば、めでたしめでたし…という単純な話ではない。教団改革の行方を見守っていくためにも、もっと慎重に判断したらどうかと言いたいのだが、ここでも「リテラシーのない旧統一教会御用達ライターは引っ込んでろ!」と叩かれる。 問題が指摘される世界の人々を「善」か「悪」でしか判断せず、存在を認めるか、抹殺をするか、という極論がまかり通っているムードが、「多重債務者救済のため、高金利の無担保小口融資を廃業に追い込め」と正義の弁護士が絶叫していたあの時代とそっくりだ。 弁護士業界は再び「過払い献金バブル」到来でうれしいかもしれないが、多くの宗教団体は経営難に追いやられるので、自主的に解散するところも出てくるだろう。しかし、神や仏に救い求める人たちは必ず存在するので、「新たな受け皿」として、「ヤミ宗教」が横行するかもしれない。宗教法人格を持たないので、行政や自治体のチェックも働かない。高額献金も霊感商法もやりたい放題だし、マルチ商法などとかけ合わせることも可能だ。 暴力団を使用者責任で規制したら、盃を受けない半グレが増えて結果、警察が把握しにくい「かたぎを利用した地下ビジネス」が広まったのと同じ構図が、宗教界でも起きるかもしれない。 旧統一教会を解散させたところで、宗教被害者は消えない。むしろ、宗教法人という「受け皿」をつぶしていけばいくほど、「闇」に飲み込まれる被害者が増えることを忘れてはいけない』、「弁護士業界は再び「過払い献金バブル」到来でうれしいかもしれないが、多くの宗教団体は経営難に追いやられるので、自主的に解散するところも出てくるだろう。しかし、神や仏に救い求める人たちは必ず存在するので、「新たな受け皿」として、「ヤミ宗教」が横行するかもしれない。宗教法人格を持たないので、行政や自治体のチェックも働かない。高額献金も霊感商法もやりたい放題だし、マルチ商法などとかけ合わせることも可能だ。 暴力団を使用者責任で規制したら、盃を受けない半グレが増えて結果、警察が把握しにくい「かたぎを利用した地下ビジネス」が広まったのと同じ構図が、宗教界でも起きるかもしれない。 旧統一教会を解散させたところで、宗教被害者は消えない。むしろ、宗教法人という「受け皿」をつぶしていけばいくほど、「闇」に飲み込まれる被害者が増えることを忘れてはいけない」、その通りだ。
次に、昨年11月19日付け文春オンライン「「自爆テロを見ても、容赦がない」日本の知性・養老孟司(86)がどんな宗教よりも「仏教」を信頼する理由 『生きるとはどういうことか』より」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/66991
・『「べつに私は仏教徒ではない。でも外国の書類に宗教を書くときは、仏教徒と書く」 養老孟司さんはなぜほかのどの宗教よりも、仏教に信頼を置くのか? 日本を代表する知性・養老さんの過去20年間に執筆したエッセイを選りすぐった新刊『生きるとはどういうことか』(筑摩書房)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)』、興味深そうだ。
・『人はなぜ生きるのか? 人はなぜ生きるか。こう訊かれると、すぐにいいたくなる。そりゃ、人によって違うでしょうが。 お金のため、名誉のため、権力のため。人生の動機はこれに尽きる。そう考える人もある。それなら男女はどうなる、家族はどうなる。好きな女のために生きる。もうだれも読まないだろうが、井上靖の「射程」はそういう男を描いている。若いころ、この本にすっかり釣り込まれて読んだから、電車で降りるはずの駅を乗り越した。 家族のためというなら、それは生きるためというより、食うため、食わせるためじゃないか。食うのは生きるためで、それなら生きるのは、食うためではない。 そんなこというけど、あたしゃ貧乏人だし、社会的地位もない。金と名誉と権力には縁がない。自分ではそう思っている人も、じつは金・名誉・権力の例外ではない。そういう意見もある。貧乏人の子だくさんとは、そのことだという。それを説明する。 突き詰めれば、人間の欲は権力欲である。気に入ろうが、気に入るまいが、とりあえずここではそう考えることにする。金があれば、それなりに「思うようにできる」。名誉があれば、それなりに人を「思うようにできる」。ともあれ他人が自分の意見に耳を傾けてくれるに違いないからである。権力があれば、むろんのことである。 貧乏人はどうか。どれもない。ところが一つ、残された手段がある。子どもである。子どもにとっては、親は絶対者に近い。父親が変人で、子ども嫌いだったため、赤ん坊のときから中学生の年齢になるまで、一部屋に閉じ込められ、縛られていた子どもがあった。その子はそれでも後に「母が恋しい」と書いた。すべての権力に縁がないなら、人は子どもをつくる。だから貧乏人の子だくさんなのだ、と。) その欲、権力の欲を去れと説いたはずの人を私は一人だけ、知っているような気がする。釈迦である。だから私は釈迦が好きなのである。そりゃ誤解だといわれるかもしれない。そうかもしれないが、ともかくそうだと思うことにしている。 べつに私は仏教徒ではない。でも外国の書類に宗教を書くときは、仏教徒と書く。そう書いたところで、信じる教義を訊かれることはない。でも仮に訊かれたとしたら、「欲を去れ」だという。そう聞きましたという。如是我聞である。 欲を去ったら、人生の目的がないじゃないか。そのとおりである。だからといって、欲をかいていい。そういう結論にはならない。この「欲をかく」は、欲を欠くではない。徹底的に欲望するという俗語である。 他方、欲を欠いたら、たしかに人生は灰色である。しかし欲は中庸でよろしい。理屈が中庸なのではない。中庸なのは欲である。理屈を中庸にすると、理屈が役に立たない。このあたりは高級な議論だから、短くては納得しない人もいるかもしれない。でも説明が面倒くさい。 人はなにごとであれ、思うようにしようとする。それは人の癖だから、どうしようもない。そういうものだと心得ておくしかない。それを説くのが仏教だと、私は勝手に信じている。他の宗教はそれをいわない。いわないと思う。むしろ徹底的にやれという。宗教を信じること自体についても徹底を要求する』、「人はなにごとであれ、思うようにしようとする。それは人の癖だから、どうしようもない。そういうものだと心得ておくしかない。それを説くのが仏教だと、私は勝手に信じている」、なるほど。
・『容赦がない 自爆テロを見ても、それに反対してテロ撲滅に動く人を見ても、そう思う。相手を殺しても、逆に自分が死んでも、ともかく「思うように」しようとする。もう勘弁してよと、体力のなくなってきた老人は思うが、容赦がない。 容赦という言葉は、西洋語やアラビア語になるんだろうか。魯迅だって、「水に落ちた犬を打て」と書いていたはずである。 「世界はイヤなところだと思え」。そう書いていたのは関川夏央氏である。こういう点では、私もそう思う。いまでは世界は人間でできているというしかない。その人間の悪いところを無限に拡大するようなことは、勘弁してほしいと思う。でもそうはいかないといいつつ、欲望は無限に増大するように見える。やっぱりお釈迦様は偉い』、「いまでは世界は人間でできているというしかない。その人間の悪いところを無限に拡大するようなことは、勘弁してほしいと思う。でもそうはいかないといいつつ、欲望は無限に増大するように見える。やっぱりお釈迦様は偉い」、「釈迦様は偉い」については、理解できなかった。
第三に、昨年11月19日付け文春オンライン「「打つ手は思いつかない」養老孟司(86)が「自殺する若者が絶えない日本」の現状について思うこと 『生きるとはどういうことか』より #2」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/66992
・『「若者が死にたがる理由は複雑であろう。とりあえず打つ手は思いつかない」 十代から三十代までの日本の若者の死因のトップが自殺…そんな現状を知った養老孟司さんは何を思ったのか? 日本を代表する知性・養老さんの過去20年間に執筆したエッセイを選りすぐった新刊『生きるとはどういうことか』(筑摩書房)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)』、興味深そうだ。
・『ベストセラー『バカの壁』はなぜ売れたか 自分の人生がほぼ尽きてしまった状態で、なにを言い、なにをすればいいのか。私の恩師は旧制一高の同窓会に出た後、話題は病気と孫と勲章だけだ、と言っておられた。爺さんの話題はその辺に尽きるらしい。 もう一つ。マンガ「ショージ君」の東海林さんが、年寄りの話はほぼ自慢話だと思う、と言われたのが気になっている。病気、孫、勲章に加えて自慢話を排除すると、年寄りにはなにか語ることがあるだろうか。 令和3年の暮から4年の2月までに、自著6冊が出版された。多過ぎやしないかと思うが、出版社の都合でたまたまそうなったので、私が鋭意努力したわけではない。ひとりでにそうなってしまったのである。人生を振り返ってみると「ひとりでにそうなった」「いつの間にかそうなっていた」ことが多いように思う。断固自分の意志でやったことも当然あるが、ほぼ失敗している。自著が多く出たのも、『バカの壁』(新潮新書)の発行部数が昨年末に450万部を超えたということが契機になったのかもしれない。本が売れたのは、間違いなく私のせいじゃない。なにかの都合で売れてしまったから、仕方がないのである。 どうして売れたか、ときどき訊かれる。はかばかしい返事ができるわけがない。それがわかっていれば、どこの出版社も困らないはずだからである。 日常何をしているかというなら、捕まえた虫、もらった虫、買い求めた虫を標本にしている。 これが楽しくてやめられない。なにが楽しいのか、疑問に思う人も多いだろうと思う。子どものころから好きでやっていたことだから、母親にも年中訊かれた。「虫ばかりいじって、何が面白いの」。これにも返答のしようがない。 虫をいじっていれば、人に会うこともない。コロナ下であっても、いつもと変わりはない。ウクライナ問題で、世間は騒いでいるが、ウクライナの虫好きが採ったゾウムシが千頭あまり、いま私の手元にある。知人がネット上で売っているのに気が付いて、私のために買ってくれたのである。これを標本にするのが楽しくてしょうがない。いままで図版でしか見たことがない虫、あるいは想像したこともない虫の現物を手にしていると、ほとんど至福の境地である。 現地ではごく普通種で良く知られた虫であっても、私が知らなかったら、発見である。発見とは本来そ ういうことだと思う。世間に知られていなかった種類、いわゆる新種を見つけることも多いが、それより自分が知らなかった虫を知ることが楽しいのである。発見とは常に自分に関することだというのは、当たり前であろう。自分が無知であるほど、発見の可能性は高い。) 八十代の半ばになって、自分の人生を振り返る。要するに成り行きと発見の連続ではなかったかと思う。成り行きまかせにしておいても、発見だけはある。発見の機会は向こうからやってくる。アメリカ人のように、人生は自分の選択の連続だなどと思ったことはない。それどころか、選択なんてしたくない。人生の暮になって思う。「何事もあなた任せの年の暮」状態だなあ。 こういう考えだから、若者の前で話をさせられると、言うことに窮する。若者はとりあえず「自分」を立てなければならない。それを「自立」という。今では自立というと、給料を稼いで、親から小遣いを貰わないことだと解釈される可能性が高い。そう考える傾向も世間の成り行きだからやむを得ない。人生の全体を通じる一言なんか、あるはずがないのである。若者には若者の、爺さんには爺さんの考えがあり、立場がある』、「私の恩師は旧制一高の同窓会に出た後、話題は病気と孫と勲章だけだ、と言っておられた。爺さんの話題はその辺に尽きるらしい」、私の場合は、さすがに「勲章」は無縁で、「孫」はいない人もいるので控え、専ら「病気」が共通の話題だ。「人生の全体を通じる一言なんか、あるはずがないのである。若者には若者の、爺さんには爺さんの考えがあり、立場がある」、確かにその通りだ。ここまで突き離した言い方が出来るのも養老氏ならではだ。
・『人生は一期一会の連続 生まれてから死ぬまでの一貫した人生、そんな抽象的な、高級なものは私にはない。いまなら百歳にも達しようという「人生」の紆余曲折を、一言で片づけるほど、情報化というのは乱暴なものである。私の人生はまさに一期一会の連続でしかない。 この年齢になると、知人が亡くなることが増える。最後はいつ会ったかなと思うと、意外に遠い過去だったりすることが多い。昨日はNHKの仕事で、鎌倉の小林秀雄の旧宅で、現在の家主、茂木健一郎君に会った。小林秀雄が座っていたという椅子に座って、偉そうにしてしゃべっていると、本当に偉くなったような気がする。高校生のころ、鎌倉市内の本屋で小林秀雄を見かけた覚えがある。要するに白髪の爺さんだった。直接に口をきいたことはない。そのたたずまいがよほど印象的だったのであろう。今でもその一度の邂逅を記憶しているくらいである。 当時私の住んでいた家は、大佛次郎の家の近所だったから、よく猫を見かけた。大佛さん自身は見たことがない。大佛さんが猫好きだということが知れ渡っていて、子猫が生まれると、大佛さんの家の近くに捨てに来る人がいるという噂だった。茂木君が「養老さんも鎌倉文士じゃないですか」という。私は「文士」だなんて思ったこともない。ただある程度の雰囲気は知っていると思う。 小学生のころ、開業医だった母の往診になぜかついて行って、小島政二郎の家に行ったことがある。妙本寺という寺の山門の先の右の山手の坂を上った突き当りだった。小林秀雄の旧宅と場所は離れているが、山の中腹にあって、似た感じのたたずまいである。現在の私の家も似たような環境にある。芥川龍之介や里見弴の住んだのは平地で、鎌倉でももっと人家が多く、より賑やかな市街地だった。以前、大分の三浦梅園の旧宅に行ったことがあるが、やはり小林邸と似たような場所にあった。里山の中腹で小さな谷間を見下ろす位置である。) 小林秀雄の旧宅からは、市街地を超えて海が見える。水平線が凸凹しているのは、私の目のせいである。三日前に東大病院の眼科に行った。右の目がダメだということがしっかり判明した。子どものころから、右目がよく見えていなかった。双眼の実体顕微鏡を使っても、片目しか使わないから双眼の意味がない。望遠鏡やオペラグラスも同じ。立体視ができないのである。 そういえば、若い時から立体視が苦手だったなあと思い当たる。今頃わかっても打つ手がないが、これも人生の「仕方がない」のうちであろう。 現代人は「仕方がない」が苦手である。何事も思うようになると、なんとなく思っている風情である。コロナに関する議論をテレビで聞いていると、しみじみそう思う。ああすればよかったじゃないか、こうすればいいだろう。ほとんどの人が沈む夕日を扇で招き上げたという平清盛みたいになっている。「ああすれば、こうなる」というのは、いわゆるシミュレーションで、ヒトの意識がもっとも得意とする能力である。それがAIの発達を生んだ。これは右に述べてきたような私の人生観と合わない。 私の人生観なんか、どうでもいいが、世間がシミュレーション全盛の方向に進んでいくときに、人生をどう送ればいいのか。その世界では私の人生はおそらくノイズであり、それならどれだけのノイズが許容される世界なのかが問題となる。 そんなことを考えていると、それも一種のシミュレーションじゃないかと思い、面倒くさいなあ、AIに考えてもらいたい、と思ったりする。やっぱり話はいまではAIに尽きるのである』、「「ああすれば、こうなる」というのは、いわゆるシミュレーションで、ヒトの意識がもっとも得意とする能力である。それがAIの発達を生んだ。これは右に述べてきたような私の人生観と合わない。 私の人生観なんか、どうでもいいが、世間がシミュレーション全盛の方向に進んでいくときに、人生をどう送ればいいのか。その世界では私の人生はおそらくノイズであり、それならどれだけのノイズが許容される世界なのかが問題となる。 そんなことを考えていると、それも一種のシミュレーションじゃないかと思い、面倒くさいなあ、AIに考えてもらいたい、と思ったりする」、なるほど。
・『日本の若者の死因のトップは「自殺」 「人生論」などというヘンな主題になったのは、NHKの仕事がらみで、子どもの質問に答えるというのを引き受けたからで、十歳の小学生が「良い人生とは」という質問をしてきたのである。 もう一つは十代から三十代までの日本の若者の死因のトップが自殺だと知ったからである。人生ではなくて、「生き方」の問題だろうと、とりあえず回答したが、「生き方」の指南は私の仕事ではない。古来から宗教家の仕事に決まっている。宗教は衰退しているといわれるが、AIが宗教に変わったという意見もある。未来をもっぱらAIに託すからであろう。AIは碁将棋に勝つだけではない。なんにでも勝つのである。 自殺が多いのは、人生指南のニーズが高いであろうことを示唆している。日本でいうなら、コンビニより多いとされるお寺の前途は洋々である。若者が死にたがる理由は複雑であろう。とりあえず打つ手は思いつかない』、「十代から三十代までの日本の若者の死因のトップが自殺だと知ったからである。人生ではなくて、「生き方」の問題だろうと、とりあえず回答したが、「生き方」の指南は私の仕事ではない。古来から宗教家の仕事に決まっている。宗教は衰退しているといわれるが、AIが宗教に変わったという意見もある・・・自殺が多いのは、人生指南のニーズが高いであろうことを示唆している。日本でいうなら、コンビニより多いとされるお寺の前途は洋々である。若者が死にたがる理由は複雑であろう。とりあえず打つ手は思いつかない」、「お寺の前途は洋々」なのは「自殺が多い」ためというのは、その通りなのだろうが、余りに暗い。「若者が死にたがる理由は複雑であろう。とりあえず打つ手は思いつかない」と突き放しているが、「「生き方」の問題」は「古来から宗教家の仕事に決まっている」ので、やむを得ないことなのだろう。
タグ:「霊感商法や高額な献金は、それぞれの信者が強すぎる信仰心を“こじらせた”結果であって、それをオウム真理教のような「組織的な違法性」と断罪するのは「拡大解釈」にもほどがあるのだ・・・既に政府は「解散請求ありき」で進んでいる」、なるほど。 「旧統一教会・・・への解散請求がいよいよ秒読みになってきた・・・旧統一教会が組織的な違法行為をしていると国がお墨付きを与えると、ほとんどの宗教団体もアウトになる」、なるほど。 窪田順生氏による「旧統一教会の解散請求秒読みで「第2の過払い金バブル」が来る!寄付金・献金が標的に」 ダイヤモンド・オンライン (その12)(旧統一教会の解散請求秒読みで「第2の過払い金バブル」が来る!寄付金・献金が標的に、「自爆テロを見ても、容赦がない」日本の知性・養老孟司(86)がどんな宗教よりも「仏教」を信頼する理由 『生きるとはどういうことか』より、「打つ手は思いつかない」養老孟司(86)が「自殺する若者が絶えない日本」の現状について思うこと 『生きるとはどういうことか』より #2) 宗教 「あらゆる宗教団体には「被害を訴える人」がいる。信仰をやめた人は、その団体に不満や不信感があるからやめている。また、「今の自分」を肯定するには、過去の自分を「だまされていた」と否定しないとやっていられない。 だから、表立って被害者のいない宗教団体も、探して水を向ければ被害を訴えられる可能性がある。そういう被害者は、歴史が長くて信者数が多い教団ほど多いのだ」、その通りだ。 「「過払い金バブル」がつくられていく時の弁護士業界のアクションや社会のムードが、現代の旧統一教会問題に対するそれらと、うり二つだからだ」、不気味なことだ。 「消費者金融と宗教団体という違いはあれど、「被害者」が社会的に関心を集めて、彼らを救済する弁護士グループが、政府に対して「被害者救済の法整備をせよ」とゴリゴリに求めていたという構図は現代とまったく同じだ。 しかも、「悪をぶっつぶせ」という社会ムードも似ている」、その通りだ。 「昨今、大学生や無職の人がSNSで「闇バイト」に応募をして、詐欺や強盗のメンバーとして参加させられているが、なぜ「闇バイト」に応募をするのかというと、「低信用」でどこも金を貸してくれないからだ。学費や家賃で生活も困窮する中で、仕送りが何かの事情で途絶えたら、「闇バイト」に応募するしかない、というのが現実だ」、なるほど。 「弁護士業界は再び「過払い献金バブル」到来でうれしいかもしれないが、多くの宗教団体は経営難に追いやられるので、自主的に解散するところも出てくるだろう。しかし、神や仏に救い求める人たちは必ず存在するので、「新たな受け皿」として、「ヤミ宗教」が横行するかもしれない。宗教法人格を持たないので、行政や自治体のチェックも働かない。高額献金も霊感商法もやりたい放題だし、マルチ商法などとかけ合わせることも可能だ。 暴力団を使用者責任で規制したら、盃を受けない半グレが増えて結果、警察が把握しにくい「かたぎを利用した地下ビジネス」が広まったのと同じ構図が、宗教界でも起きるかもしれない。 旧統一教会を解散させたところで、宗教被害者は消えない。むしろ、宗教法人という「受け皿」をつぶしていけばいくほど、「闇」に飲み込まれる被害者が増えることを忘れてはいけない」、その通りだ。 文春オンライン「「自爆テロを見ても、容赦がない」日本の知性・養老孟司(86)がどんな宗教よりも「仏教」を信頼する理由 『生きるとはどういうことか』より」 『生きるとはどういうことか』(筑摩書房) 「人はなにごとであれ、思うようにしようとする。それは人の癖だから、どうしようもない。そういうものだと心得ておくしかない。それを説くのが仏教だと、私は勝手に信じている」、なるほど。 「いまでは世界は人間でできているというしかない。その人間の悪いところを無限に拡大するようなことは、勘弁してほしいと思う。でもそうはいかないといいつつ、欲望は無限に増大するように見える。やっぱりお釈迦様は偉い」、「釈迦様は偉い」については、理解できなかった。 文春オンライン「「打つ手は思いつかない」養老孟司(86)が「自殺する若者が絶えない日本」の現状について思うこと 『生きるとはどういうことか』より #2」 「私の恩師は旧制一高の同窓会に出た後、話題は病気と孫と勲章だけだ、と言っておられた。爺さんの話題はその辺に尽きるらしい」、私の場合は、さすがに「勲章」は無縁で、「孫」はいない人もいるので控え、専ら「病気」が共通の話題だ。 「人生の全体を通じる一言なんか、あるはずがないのである。若者には若者の、爺さんには爺さんの考えがあり、立場がある」、確かにその通りだ。ここまで突き離した言い方が出来るのも養老氏ならではだ。 「「ああすれば、こうなる」というのは、いわゆるシミュレーションで、ヒトの意識がもっとも得意とする能力である。それがAIの発達を生んだ。これは右に述べてきたような私の人生観と合わない。 私の人生観なんか、どうでもいいが、世間がシミュレーション全盛の方向に進んでいくときに、人生をどう送ればいいのか。 その世界では私の人生はおそらくノイズであり、それならどれだけのノイズが許容される世界なのかが問題となる。 そんなことを考えていると、それも一種のシミュレーションじゃないかと思い、面倒くさいなあ、AIに考えてもらいたい、と思ったりする」、なるほど。 「十代から三十代までの日本の若者の死因のトップが自殺だと知ったからである。人生ではなくて、「生き方」の問題だろうと、とりあえず回答したが、「生き方」の指南は私の仕事ではない。古来から宗教家の仕事に決まっている。宗教は衰退しているといわれるが、AIが宗教に変わったという意見もある・・・ 自殺が多いのは、人生指南のニーズが高いであろうことを示唆している。日本でいうなら、コンビニより多いとされるお寺の前途は洋々である。若者が死にたがる理由は複雑であろう。とりあえず打つ手は思いつかない」、「お寺の前途は洋々」なのは「自殺が多い」ためというのは、その通りなのだろうが、余りに暗い。「若者が死にたがる理由は複雑であろう。とりあえず打つ手は思いつかない」と突き放しているが、「「生き方」の問題」は「古来から宗教家の仕事に決まっている」ので、やむを得ないことなのだろう。
富士通が英国で郵便システムの欠陥で史上最大の冤罪事件(その1)(富士通に責任をなすりつけようとしている…「英国史上最大の冤罪」が「とんだとばっちり」と言える理由 英政府は富士通なしではやっていけない、どうして富士通は「闇落ち」したのか 英ポストオフィス大量冤罪の真相 富士通欧州CEO「とんでもない冤罪に関与したことをお詫びしたい」) [企業経営]
今日は、富士通が英国で郵便システムの欠陥で史上最大の冤罪事件(その1)(富士通に責任をなすりつけようとしている…「英国史上最大の冤罪」が「とんだとばっちり」と言える理由 英政府は富士通なしではやっていけない、どうして富士通は「闇落ち」したのか 英ポストオフィス大量冤罪の真相 富士通欧州CEO「とんでもない冤罪に関与したことをお詫びしたい」)を取上げよう。
先ずは、本年1月19日付けPRESIDENT Onlineが掲載した在米ジャーナリストの岩田 太郎氏による「富士通に責任をなすりつけようとしている…「英国史上最大の冤罪」が「とんだとばっちり」と言える理由 英政府は富士通なしではやっていけない」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/77803?page=1
・『「英国史上最大の冤罪」をもたらした「富士通の勘定システム」 富士通がいま「英国史上最大の冤罪えんざい事件」の責任を追及されている。 富士通の英子会社が納入し、英国郵政の旧ロイヤルメール(2012年の民営化後にポストオフィスと改称)で2000年より使用されている勘定系システム「ホライズン」に、重大な欠陥があった。 この欠陥により、実際には郵便局の口座に現金があるにもかかわらず、「現金が不足している」と誤って表示されるという重大なシステムトラブルが15年以上も続いていた。 このシステムトラブルに気づかず、民間委託郵便局長ら736人が不足分の現金を横領したなどの疑いをかけられるという、巨大冤罪事件に発展。236人もの元局長が無実の罪で投獄され、少なくとも4人が自殺したという』、「富士通の英子会社が納入し、英国郵政の旧ロイヤルメール・・・で2000年より使用されている勘定系システム「ホライズン」に、重大な欠陥があった・・・重大なシステムトラブルが15年以上も続いていた。 このシステムトラブルに気づかず、民間委託郵便局長ら736人が不足分の現金を横領したなどの疑いをかけられるという、巨大冤罪事件に発展。236人もの元局長が無実の罪で投獄され、少なくとも4人が自殺したという」、信じ難いような驚くべき事件だ。
・『約278億円もの補償金を支払っている 訴追を逃れるために当局と取引を行い、ありもしない罪を認めた人もいる。 一方、有罪判決が取り消されないまま亡くなった元局長は60人に上る。 元局長が不足分の埋め合わせのため借金をして破産したり、結婚生活が破綻、子どもが学校でいじめを受け、収監中に子どもとの面会・連絡を1年半も禁じられる、横領の前科がついて新たな職を得られず、ホームレスに転落する人が出る、など、英国社会に修復不可能なほどの深い傷を残した。 事件が英政府による組織的な人権侵害であるのは間違いなく、英政府は補償金の支払いを進めてきた。 2019年にロンドンの高等法院で、元局長ら555人に5800万ポンド(約107億6100万円)を支払うことで和解が成立した。これをきっかけに、英政府はこれまでに約1億5000万ポンド(約278億円)の補償金を支払っている。 また、これに加え、2024年には新法案を成立させ、元局長らの有罪判決を取り消し、1人当たり60万ポンド(約1億1100万円)の追加補償金を支払う見込みだ』、「事件が英政府による組織的な人権侵害であるのは間違いなく、英政府は補償金の支払いを進めてきた。 2019年にロンドンの高等法院で、元局長ら555人に5800万ポンド(約107億6100万円)を支払うことで和解が成立した。これをきっかけに、英政府はこれまでに約1億5000万ポンド(約278億円)の補償金を支払っている。 また、これに加え、2024年には新法案を成立させ、元局長らの有罪判決を取り消し、1人当たり60万ポンド(約1億1100万円)の追加補償金を支払う見込みだ」、なるほど。
・『責任はあくまで「英政府」にある この騒動の中、欠陥のある会計システムを構築・納入した富士通に対しても、補償金の支払いを求める声が高まっている。 だが、本来この動きはおかしい。この騒動の責任はあくまで英政府にある。 英政府は、富士通のシステムがバグだらけであることを知っていたが、これを承認し、導入・運用していただけでなく、欠陥を修正していなかった。 その上、無実の人から口座の不足金額をむしり取っただけでなく、有罪判決を下して投獄したり、自殺に追い込んでいたのだ。 その一義的な当事者は、旧ロイヤルメール時代から、現在のポストオフィスまでの間、政権を担当していた、「保守党」と「労働党」、および「英自由民主党」・・・にある。 この構図をしっかり押さえておく必要がある』、「英政府は、富士通のシステムがバグだらけであることを知っていたが、これを承認し、導入・運用していただけでなく、欠陥を修正していなかった。 その上、無実の人から口座の不足金額をむしり取っただけでなく、有罪判決を下して投獄したり、自殺に追い込んでいたのだ。 その一義的な当事者は、・・・政権を担当していた、「保守党」と「労働党」、および「英自由民主党」にある」、開発者の富士通の責任も否定できないのではなかろうか。
・『政治家や官僚が逃げ切りを図っている 一方、英国では、富士通に最終責任を転嫁して逃げ切りを図る政治家や官僚が少なくない、とも報じられている。 実際、事件のどこまでが政治家の責任で、富士通の責任はどの程度なのか、検証してみたい。 問題のシステム「ホライズン」は、旧ロイヤルメール時代の1995年に、当時の保守党政権下で立ち上げられた。 従来は手作業であった年金支払いや振り込み業務をデジタル化し、年間1億5000万ポンドにも上っていた年金受給詐欺を防止する、という触れ込みだった』、単なる事務の機械化だけでなく、「年間1億5000万ポンドにも上っていた年金受給詐欺を防止」という狙いもあったようだ。
・『コスト削減でバグだらけの欠陥品を導入してしまった しかし、実際のところは、旧ロイヤルメールの4割を占める年金など公的給付金の支払いが銀行に奪われることを恐れ、あわてて導入したものに過ぎない。 この時に入札を勝ち抜いて選ばれたのが、「ホライズン」を開発した英IT企業のインターナショナル・コンピューターズ・リミテッド(ICL)だ。 1968年創業のICLは1981年から富士通と関係があり、1990年には富士通が株式の80%を取得。1998年に完全子会社化している。 では、なぜICLのホライズンが選ばれたか。 単純に、入札価格が最も低かったからだ。 だが、安かろう悪かろうという言葉の通り、「ホライズン」はバグだらけの欠陥品であった』、「年金など公的給付金の支払いが銀行に奪われることを恐れ、あわてて導入したものに過ぎない・・・ICLのホライズンが選ばれた」のは、「入札価格が最も低かったから」、なるほど。
・『「安物買いの銭失い」が騒動のきっかけ 当時、旧ロイヤルメールの全株式を保有していた英政府は、まさに「安物買いの銭失い(Penny wise and pound foolish)」をしてしまった。 これにより、今に至る騒動の種をまいてしまったのである。 当時の保守党政権の下、社会資本の整備を民間にゆだねる「PFIプロジェクト」として、「ホライズン」はスタートした。 その後「ホライズン」は、1997年から2010年まで政権の座にあった労働党政権に引き継がれる。 そんな中、「ホライズン」がまだ稼働準備期間中だった1998年には、すでにシステムの「重大なリスク」が内部文書で指摘されていた。 英フィナンシャル・タイムズ紙によると、1999年、当時のトニー・ブレア首相に対して、「ホライズン」の欠陥の一覧が届けられていた。にもかかわらず、政権は調査を開始しなかった』、「1998年には、すでにシステムの「重大なリスク」が内部文書で指摘・・・政権は調査を開始しなかった」、政権にとっての重要性が低かったのだろう。
・『組織の目標がコストカットに集中していた この結果、2000年1月に稼働したホライズンは、その当初から本来存在しない「口座の残高不足」を表示する。 そして稼働初年度の2000年には、早くも6人の局長たちに横領有罪判決が言い渡されているのだ。 続く2001年には41人の局長が訴追され、その数は2002年に64人まで増えている。 起訴されなかった局長も含めると、2010年までに、総計2500人もの人が横領の嫌疑をかけられた。 だが、旧ロイヤルメールは十分な予算を計上して「ホライズン」の問題を解決する姿勢を見せなかった。組織の目標がコストカットに集中していたからだ』、「旧ロイヤルメールは十分な予算を計上して「ホライズン」の問題を解決する姿勢を見せなかった。組織の目標がコストカットに集中していたからだ」、なるほど。
・『自分たちの誤りを認めなかった 起訴された局長の多くは、裁判でシステムの欠陥を指摘し、無実を訴えた。 だが、英国の郵政担当者や検察官たちは自分たちの誤りを認めなかった。 英議会にも局長たちの訴えは伝えられたが、労働党政権はシステムに何ら過失はないと主張するばかりで、逆に訴えた局長を解雇した。 実際には旧ロイヤルメールはホライズンの欠陥に気付いており、外部コンサルタントを雇って調査までさせていたことが分かっている。 だが、欠陥の可能性を指摘した会計士たちは、突如契約を打ち切られたという。 英政府による「もみ消し工作」であった可能性もある。 こうして、過ちを早期に正す機会は失われた。 2009年までの間に、労働党政権下で起訴された局長の数は525人にまで増えた』、「欠陥の可能性を指摘した会計士たちは、突如契約を打ち切られた・・・英政府による「もみ消し工作」であった可能性もある」、「英政府」が果たした役割を再検証する必要がる。
・『富士通に責任をなすりつけようとしている こうした英政府の責任をなすりつけられようとしているのが富士通だ。 2024年現在、労働党の「影の内閣(Shadow Cabinet)」でビジネス・エネルギー・産業戦略相を務めるジョナサン・レイノルズ氏は、英議会で、「もし富士通が事態の重大さを認識していたのであれば、事件の理不尽さの度合いに応じた責任を負わされるだろう」と述べている。 しかし、この発言を評して、米ジャーナリストのロバート・スティーブンス氏は、「過去25年に英政府の監督の下で為された極端な不正義を、(富士通への責任転嫁で)覆い隠そうとするものだ」と強く批判している。 富士通が相応の責任を取らされるのは当然としても、一義的には英政府、特に労働党の政治家の下で、元局長たちが訴追・投獄されたのであり、その責任は消えないという見解を述べたと考えられ』、「米ジャーナリストのロバート・スティーブンス氏は、「過去25年に英政府の監督の下で為された極端な不正義を、(富士通への責任転嫁で)覆い隠そうとするものだ」と強く批判している」、注目すべき発言だ。
・『ドラマがなければ政治家は動かなかった 事件の責任は労働党だけが負っているわけではない。2010年から2015年にかけて、連立政権を組んで郵政を担った「自由民主党」や、2015年から現在までの間に政権を担当している「保守党」も、この問題を事実上放置し、元局長やその家族たちを救わなかったからだ。 2024年1月に英民放ITVが事件のドラマ『ミスターベイツvs.ポストオフィス』を放映した。 このドラマがきっかけとなり、スキャンダルに大きな注目が集まる。 世論の高まりに押された政治家たちは、被害者たちに同情を示す必要に迫られた。 逆に言えば、このドラマ放映がなければ、政治は動かなかったと考えられる』、「2024年1月に英民放ITVが事件のドラマ『ミスターベイツvs.ポストオフィス』を放映した。 このドラマがきっかけとなり、スキャンダルに大きな注目が集まる」、なるほど。
・『英政府は富士通なしではやっていけない 英BBCによれば、富士通はポスト・オフィスのほか、税務当局、歳入税関庁、労働・年金省といった政府機関のITインフラに深く浸透している。 過去4年間で101件の契約を獲得し、総額は20億ポンド(約3700億円)に上るという。 それには、原因となった「ホライズン」の延長契約の3600万ポンド(66億6000万円)も含まれている。 英ITジャーナリストのトニー・コリンズ氏は、「政府は富士通なしではやっていけない」「富士通を排除するのは不可能に近い」とBBCに語っている』、「富士通はポスト・オフィスのほか、税務当局、歳入税関庁、労働・年金省といった政府機関のITインフラに深く浸透している。 過去4年間で101件の契約を獲得し、総額は20億ポンド(約3700億円)に上る」、そんなに深く英政府に食い込んでいたとは初めて知った。
・『「富士通の無能さが証明されれば、賠償金は莫大なものになる」 コリンズ氏は、「富士通は、英政府からの要求がなくても、被害者への補償を独自に決定する可能性がある」と予想している。 こうした見解は、英政治家による富士通批判の高まりと連動している。 たとえば、保守党出身で2010年から2016年まで首相を務め、現在は外務大臣デービッド・キャメロン氏の側近である、フランシス・モード氏は、「富士通は少しでも名誉を重んじるのであれば、速やかに元局長たちに相当に大きな金額の補償金を支払うだろう」と語った。 また、保守党のアレックス・チョーク法相兼大法官は、英放送局のITVに対し、「英政府は本件に関する独立調査委員会の取り調べが終了するのを待って、富士通に対する処分を決定する」と断った。 その上で、「富士通の無能さが証明されれば、賠償金は莫大なものになる」との見方を示している』、「無能さ」は「富士通」だけでなく、「英政府」も無縁ではない筈だ。
・『総選挙を見据えた「富士通攻撃」 政府が被害者に支払う補償金は総額で数百億円相当にも上ると思われる。 ただ、政治家の発言を見る限り、英国内では、補償金の一部を富士通が負担するのはもはや既定路線となっているようだ。 英国では2024年後半、あるいは2025年初頭に総選挙が行われる可能性が高い。 そのため、与党の「保守党」、および野党の「労働党」ともに、富士通を攻撃して国民に「正義」をアピールし、選挙に勝利しようとする可能性もある。 無実の人たちを罪に定め、冤罪もみ消しを図った英政治家や官僚の責任を富士通が負わされることになる』、「与党の「保守党」、および野党の「労働党」ともに、富士通を攻撃して国民に「正義」をアピールし、選挙に勝利しようとする可能性もある。 無実の人たちを罪に定め、冤罪もみ消しを図った英政治家や官僚の責任を富士通が負わされることになる」、「富士通」がスケープゴートにされそうだ。
・『世界規模の危機管理に失敗する恐れも 富士通は世界100カ国以上でビジネスを展開するグローバル企業であり、年間売上は2023年3月31日現在で3兆7137億円、従業員は12万4000人を抱えている。 ※富士通の売上高について事実と異なる内容がありましたので修正しました(2024年1月19日14時45分追記)。 英国におけるスキャンダルは世界で報じられており、グローバルなビジネスを守るためにも、経営陣は早く誠意を示した方が得策という判断に傾くかもしれない。 英BBCは東京発の報道で、富士通の時田隆仁社長が被害者たちに対してコメントを出し渋っていることや、英子会社が「捜査に協力している」といった事務的な声明しか出していないことを批判的に伝えていた。 問題を放置すれば、富士通が英国でさらに炎上し、世界的規模の危機管理に失敗する恐れがあった。 こうした状況を受けて時田社長は1月16日にBBCの取材に対し、「弊社は郵便局長の生活とその家族に影響を与えたことを謝罪する」と明言。 また、英下院のビジネス委員会で同日に証言した富士通の英子会社、富士通サービシーズのポール・パターソン最高経営責任者(CEO)も、同社が当局の郵便局長起訴に協力したことを認め、被害者の補償に貢献する「道義的義務」があると述べて謝罪した。 その上で、「旧ロイヤルメールはホライズンにバグやエラーがあることを、早い段階で知っていた」とダメ出しをしている。 コスト削減ばかりを追求して冤罪を作り出した最終的な責任はあくまでも英政府にある。 富士通は英政府の郵便局長訴追に協力しているが、それは自社の責任逃れや罪のなすりつけであった可能性もある。富士通は誠意あるお詫びの表明を被害者に行い、英政府に対して数十億円から数百億円規模の支払いを覚悟した方がよいかもしれない。 いずれにせよ、英政治家や官僚の責任逃れが続く限り、被害者にとっても富士通にとっても、この事件の区切りはつけられることがないだろう』、「コスト削減ばかりを追求して冤罪を作り出した最終的な責任はあくまでも英政府にある。 富士通は英政府の郵便局長訴追に協力しているが、それは自社の責任逃れや罪のなすりつけであった可能性もある。富士通は誠意あるお詫びの表明を被害者に行い、英政府に対して数十億円から数百億円規模の支払いを覚悟した方がよいかもしれない」、その通りだ。
次に、本年1月24日付けJBPressが掲載した在英ジャーナリストの木村 正人氏による「どうして富士通は「闇落ち」したのか、英ポストオフィス大量冤罪の真相 富士通欧州CEO「とんでもない冤罪に関与したことをお詫びしたい」」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/79059
・『「富士通は最初から関与していた」 [ロンドン発]富士通が英ポストオフィスに納入した勘定系システム「ホライズン」の欠陥が原因で民間委託郵便局長(以下、局長)ら736人が冤罪に陥れられた事件で、富士通のポール・パターソン欧州最高経営責任者(CEO)が19日、真相を究明するホライズン公聴会に出席し、「富士通が社会と元局長らを地に落としたのは明らかだ」と改めて謝罪した。 パターソン氏は16日の下院ビジネス・貿易委員会でも「このひどい冤罪に富士通が関与したことをお詫びしたい。富士通は最初から関与していた。システムにバグやエラーがあり、ポストオフィスによる局長らの起訴を手助けした」として被害者救済制度に資する「道義的義務」があると述べた。英国政府は8月までの賠償を目指している。 これまで富士通はポストオフィス(郵便事業の窓口を担当する国営企業)の陰に隠れてダンマリを決め込んできた。次期総選挙を控えるリシ・スナク首相が突然、冤罪に問われた全員の有罪判決を撤回、賠償に応じると表明したため、方針転換を迫られた。賠償総額は推定10億ポンド(約1880億円)。そのうち富士通がいくら負担するかは公聴会の結論次第だ。 富士通にとってはIT(情報技術)システムの公共調達に食い込むため1998年、ホライズンを開発した英国策企業ICLを買収したことが結果的に裏目に出た。国際競争力を失ったICLのホライズンはバグだらけの「クソ袋」(富士通元エンジニアの証言)だった。東芝を地獄に叩き落した米原子力関連企業ウェスティングハウス買収と同じ轍を踏まないか心配だ』、「富士通のポール・パターソン欧州・・・(CEO)が19日、真相を究明するホライズン公聴会に出席し、「富士通が社会と元局長らを地に落としたのは明らかだ」と改めて謝罪した。 パターソン氏は16日の下院ビジネス・貿易委員会でも「このひどい冤罪に富士通が関与したことをお詫びしたい。富士通は最初から関与していた。システムにバグやエラーがあり、ポストオフィスによる局長らの起訴を手助けした」として被害者救済制度に資する「道義的義務」があると述べた」、なるほど。
・『裁判官「バグがなかったと開き直るのは21世紀に地球は平らだと主張するに等しい」 富士通の企業買収とシステム開発力に問題があったのは明らかだ。しかし前代未聞の冤罪事件は英国社会の抱える構造的な問題が複合的に絡み合って起き、システム導入から25年も放置されてきた。400年以上の歴史を誇るポストオフィス・ブランドを守るため、局長らの無実の訴えは踏みにじられた。少し長くなるが、事件をおさらいしておこう。 1999年から2015年にかけホライズンの記録を証拠に900人以上が起訴され、236人が刑務所に放り込まれた。736人が冤罪とみられるが、有罪判決が取り消されたのは95件だけ。救済を待つ間に33人が他界した。うち4人は人生に絶望して自ら命を絶った。スナク首相によると、すでに2500人以上が約1億5000万ポンド(約282億円)の賠償を受けている。 【これまでの経過】 1996年、富士通とICLがホライズン・プロジェクトを受注 1998年、ICLが富士通の完全子会社に 1999年、ポストオフィスの支店にホライズンを順次設置。少ないポストオフィス直営店と、フランチャイズ契約の民間委託郵便局を合わせた支店数は現在計1万1500店 2000年、ホライゾンのデータを証拠に局長らの起訴開始。起訴支援はポストオフィスと富士通の契約に含まれていた 2009年、コンピューター専門誌コンピューター・ウィークリーが、ホライズンで多額の現金不足を指摘されて契約を一方的に打ち切られたアラン・ベイツ氏ら元局長7人の証言を報道。システム開発の仕事に関わった経験を持つベイツ氏はシステム開発の過程でバグやエラーが発生するという知識があった ・ベイツ氏が中心になって「民間委託郵便局長のための正義を実現する同盟」を発足 2012年、保守党下院議員とポストオフィスがホライズンに対する独立調査の実施で合意。法廷監査事務所セカンドサイトが指名され、元局長らと下院議員も承認 2013年、ポストオフィスがホライズン問題の関係書類の処分を命令 2014年、ポストオフィスが局長らの起訴を停止 ・ポストオフィスがセカンドサイトの調査報告書の受け取り拒否)』、「前代未聞の冤罪事件は英国社会の抱える構造的な問題が複合的に絡み合って起き、システム導入から25年も放置されてきた・・・1999年から2015年にかけホライズンの記録を証拠に900人以上が起訴され、236人が刑務所に放り込まれた。736人が冤罪とみられるが、有罪判決が取り消されたのは95件だけ。救済を待つ間に33人が他界した。うち4人は人生に絶望して自ら命を絶った。スナク首相によると、すでに2500人以上が約1億5000万ポンド(約282億円)の賠償を受けている」、「システム導入から25年も放置」、とは酷い話だ。
・『富士通英国の内部告発者がBBCで証言 2015年、英下院企業・イノベーション・技能委員会がホライズンの調査を開始 ・ポストオフィスのポーラ・ヴェネルズCEOが「冤罪の証拠は何一つない」と疑惑を全面否定。元局長らとの調停を中止 ・富士通英国の内部告発者リチャード・ロール氏が英BBC放送で証言 2016年、ベイツ氏らが訴訟費用を前借りしてポストオフィスを相手取りロンドン高等法院に集団訴訟を起こす 2019年、ヴェネルズ氏に「ポストオフィスへの貢献と慈善活動」を理由にエリザベス女王から大英帝国勲章コマンダー(CBE)が授けられる。ヴェネルズ氏は内閣府高官、インペリアル・カレッジ医療NHS(国家医療サービス)トラスト会長に就任 ・ポストオフィスは元局長ら555人に対し5775万ポンド(約109億円)を支払うことで和解が成立。和解金の多くは訴訟費用に充てられ、元局長らが手にしたのはわずか1200万ポンド(約22億6000万円)だけだった ・集団訴訟を担当した裁判官は「ホライズンにバグやエラーがなかったと否定するのは21世紀に地球は平らだと主張するに等しい」との判断を示す。「富士通社員が提出したホライズンの欠陥に関する証拠の信憑性に重大な懸念がある」と検察当局に書類を送付。その後、ロンドン警視庁は偽証の疑いで富士通元社員2人を事情聴取 2020年、ボリス・ジョンソン首相(当時)が独立のホライズン公聴会開始を約束 ・元局長6人の有罪判決が初めて取り消される 2024年、英民間放送ITVのテレビドラマ『ミスター・ベイツ vsポストオフィス』が1月1日から4日連続で放映されたことをきっかけに事態が急展開する』、「ポストオフィスは元局長ら555人に対し5775万ポンド(約109億円)を支払うことで和解が成立。和解金の多くは訴訟費用に充てられ、元局長らが手にしたのはわずか1200万ポンド(約22億6000万円)だけだった」、「訴訟費用」の高さには驚かされる。
・『ポストオフィス「ホライズンは堅牢」 事件の主犯は400年の歴史とブランドを守るため「ホライズンは堅牢」とシラを切り通し、被害者救済を意図的に遅らせてきたポストオフィスとそれを黙認してきた英国政府である。本来、社会的弱者の権利を保護する司法制度が政府や企業の不正を覆い隠すために使われた。英国の訴訟費用はべらぼうに高い。それらの事情を差し引いても富士通の罪は重い。 富士通のパターソン氏は19日の公聴会で「すべてのバグやエラーは何年も前から知られていた。システムの導入が始まった当初からバグやエラー、欠陥は存在し、関係者にとっては周知の事実であった。ポストオフィスにも知らされていた」とホライズンが導入された1999年から2018年まで富士通がバグやエラー、欠陥と格闘し続けてきたことを認めた。 例えば端末操作のやり方でシステムが入金を二重計上し、現金不足が発生するバグがあった。こうしたバグやエラー、欠陥が無実の局長らを起訴するために使われた証拠に影響を与えることを富士通は認識していた。パターソン氏は「起訴のためポストオフィスに送られた富士通の証拠にこうしたバグの記載がなかったことに個人的に驚いている」と証言した。 富士通内部で起訴のためにバグなどの不都合な証拠は削除されていた。パターソン氏は「恥ずべきこと、ぞっとすることだ。英国の法律ではすべての証拠が局長に開示されるべきだった」と臍を噛んだ。被害者救済の道義的義務を認めるのにこれほど長い歳月を要した理由について「何十年も前の過ちだ。私は真実を明らかにするため何でもする」とだけ話した』、「たバグやエラー、欠陥が無実の局長らを起訴するために使われた証拠に影響を与えることを富士通は認識していた。パターソン氏は「起訴のためポストオフィスに送られた富士通の証拠にこうしたバグの記載がなかったことに個人的に驚いている」と証言した。 富士通内部で起訴のためにバグなどの不都合な証拠は削除されていた。パターソン氏は「恥ずべきこと、ぞっとすることだ。英国の法律ではすべての証拠が局長に開示されるべきだった」と臍を噛んだ」、「富士通」の訴訟戦術上の重大なミスだ。
・『富士通元エンジニア「ホライズンがクソ袋だということはみんな知っていた」 大量冤罪を生んだ原点は「ホライズンがクソ袋だということはみんな知っていた。システムを一から書き直す必要があったが、そのようなことは起きなかった。なぜなら、そのための資金もリソースもなかったからだ。このシステムは決して日の目を見るべきではない非常に質の悪いシステムだった」(元富士通エンジニア、ロール氏)ことにある。 富士通は局長らに気付かれないよう英国本社から局長らの端末に遠隔アクセスし、データを変更していた。決済が遅れてポストオフィスに支払う金銭的ペナルティーが発生するのを防ぐためだ。パターソン氏は下院委員会で「富士通の遠隔サポートは文書化され、ポストオフィスも認識していた」と証言した。しかしポストオフィスはこの事実を否定してきた。 二重計上するバグの場合、ホライズンの記録を見れば簡単に気づくはずだが、なぜか悪意の証拠をもとに冤罪が積み上げられた。どこまでポストオフィスと富士通の間に“不当起訴”の共謀があったのかまだ明らかにされていないが、パターソン氏は「バグやエラーがあるという情報を起訴にどう使うかはポストオフィスの責任だ」と法的責任を否定している。 この問題を追及する『ザ・グレート・ポストオフィス・スキャンダル』の著者でジャーナリストのニック・ウォーリス氏は「パターソン氏はなぜ富士通の誰もそれを止めようとしなかったのか、社内外で潜在的な問題として提起しなかったのか語らなかった。司法妨害の陰謀になる可能性のある共謀を認めたのと同じで、富士通を捜査対象にしてしまった」という』、「「パターソン氏はなぜ富士通の誰もそれを止めようとしなかったのか、社内外で潜在的な問題として提起しなかったのか語らなかった。司法妨害の陰謀になる可能性のある共謀を認めたのと同じで、富士通を捜査対象にしてしまった」、本当にお粗末限りない不手際だ。
・『富士通・時田社長「これは大きな問題であり、富士通は非常に深刻に受け止めている」 「シラを切る文化」が蔓延るポストオフィスは裁判所に和解を勧告されるまで真っ赤な嘘をつき続けた。 公共調達分析会社タッセルによると、富士通は歳入関税庁、内務省、警察、国防省といった英国の公共部門から200近い契約を獲得、総額67億8000万ポンド(約1兆2700億円)にのぼる。富士通は公聴会の報告が出るまで政府契約の入札を自主的に辞退した。 全国民間委託郵便局長連盟幹部マイケル・ルドキン氏は2008年8月、富士通英国のオフィスを訪れ、ホライズン担当の技術者が端末から局長の口座を操作するデモンストレーションを目撃した。その翌日、4万4000ポンド(約827万円)の現金不足が見つかったと抜き打ち検査を受けた。妻のスーザンさんは不正会計罪で起訴され、有罪判決を受けた。 1月16日、富士通の時田隆仁社長はスイスのダボスで開かれる世界経済フォーラム年次総会に出席したが、会場近くを歩いているところで英BBC放送の直撃取材を受け、「これは大きな問題であり、富士通は非常に深刻に受け止めている」とこの問題について初めて口を開いた。) また謝罪するかとの質問に「はい、もちろんだ。富士通は元局長らの生活とその家族に影響を与えたことを謝罪する」と述べた。ただこの直撃取材の間、時田社長は足を止めることはなかった。その様子はまるでBBC記者の直撃から一刻も早く逃げたがっているかのようだった』、「シラを切る文化」が蔓延るポストオフィスは裁判所に和解を勧告されるまで真っ赤な嘘をつき続けた。 公共調達分析会社タッセルによると、富士通は歳入関税庁、内務省、警察、国防省といった英国の公共部門から200近い契約を獲得、総額67億8000万ポンド(約1兆2700億円)にのぼる。富士通は公聴会の報告が出るまで政府契約の入札を自主的に辞退した」、入札辞退は当然だ。「富士通の時田隆仁社長はスイスのダボスで開かれる世界経済フォーラム年次総会に出席したが、会場近くを歩いているところで英BBC放送の直撃取材を受け、「これは大きな問題であり、富士通は非常に深刻に受け止めている」とこの問題について初めて口を開いた・・・直撃取材の間、時田社長は足を止めることはなかった。その様子はまるでBBC記者の直撃から一刻も早く逃げたがっているかのようだった」、予め周到に準備した発言ではなく、その場で即時対応した発言をさせられたとは、極めてお粗末で不味い対応だ。
・『収益の悪化、技術力の低下、モラル喪失のスパイラル 最初から元局長らの訴えに耳を傾けていれば、こんな悲劇は起きなかった。元局長らは富士通に対する刑事責任追及を求めているが、司法の独立を無視して政治決着が図られた今、真相は闇に葬り去られる可能性があると筆者はみる。 ダボスでこそこそ逃げ回るような印象を与えた時田社長と、人工知能(AI)の未来を雄弁に語った米マイクロソフトのサティア・ナデラCEOの差は残酷だ。それが「失われた30年」に開いた日本と世界の差だと痛感した。日本の企業が次々と「闇落ち」していくのは収益の悪化、技術力の低下、モラル喪失の負のスパイラルに陥っているからだ。 各国政府が公共調達で、無実の元局長らを地獄に突き落とした富士通のITシステムより、「私たちは地元のスタートアップや中小企業と提携して公共部門の生産性を高められる。AIによって国内総生産(GDP)に占める医療費と教育費の割合を改善できる」(ナデラCEO)と胸を張るマイクロソフトのAIを買うのは火を見るよりも明らかだ。 (【木村正人】略歴はリンク先参照)』、「元局長らは富士通に対する刑事責任追及を求めているが、司法の独立を無視して政治決着が図られた今、真相は闇に葬り去られる可能性がある・・・各国政府が公共調達で、無実の元局長らを地獄に突き落とした富士通のITシステムより、「私たちは地元のスタートアップや中小企業と提携して公共部門の生産性を高められる。AIによって国内総生産(GDP)に占める医療費と教育費の割合を改善できる」(ナデラCEO)と胸を張るマイクロソフトのAIを買うのは火を見るよりも明らかだ」、その通りだ。自らに不都合なことがあるのであれば、「世界経済フォーラム年次総会」などに出席すべきでない。まさに、恥の上塗りをしたようなものだ。
先ずは、本年1月19日付けPRESIDENT Onlineが掲載した在米ジャーナリストの岩田 太郎氏による「富士通に責任をなすりつけようとしている…「英国史上最大の冤罪」が「とんだとばっちり」と言える理由 英政府は富士通なしではやっていけない」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/77803?page=1
・『「英国史上最大の冤罪」をもたらした「富士通の勘定システム」 富士通がいま「英国史上最大の冤罪えんざい事件」の責任を追及されている。 富士通の英子会社が納入し、英国郵政の旧ロイヤルメール(2012年の民営化後にポストオフィスと改称)で2000年より使用されている勘定系システム「ホライズン」に、重大な欠陥があった。 この欠陥により、実際には郵便局の口座に現金があるにもかかわらず、「現金が不足している」と誤って表示されるという重大なシステムトラブルが15年以上も続いていた。 このシステムトラブルに気づかず、民間委託郵便局長ら736人が不足分の現金を横領したなどの疑いをかけられるという、巨大冤罪事件に発展。236人もの元局長が無実の罪で投獄され、少なくとも4人が自殺したという』、「富士通の英子会社が納入し、英国郵政の旧ロイヤルメール・・・で2000年より使用されている勘定系システム「ホライズン」に、重大な欠陥があった・・・重大なシステムトラブルが15年以上も続いていた。 このシステムトラブルに気づかず、民間委託郵便局長ら736人が不足分の現金を横領したなどの疑いをかけられるという、巨大冤罪事件に発展。236人もの元局長が無実の罪で投獄され、少なくとも4人が自殺したという」、信じ難いような驚くべき事件だ。
・『約278億円もの補償金を支払っている 訴追を逃れるために当局と取引を行い、ありもしない罪を認めた人もいる。 一方、有罪判決が取り消されないまま亡くなった元局長は60人に上る。 元局長が不足分の埋め合わせのため借金をして破産したり、結婚生活が破綻、子どもが学校でいじめを受け、収監中に子どもとの面会・連絡を1年半も禁じられる、横領の前科がついて新たな職を得られず、ホームレスに転落する人が出る、など、英国社会に修復不可能なほどの深い傷を残した。 事件が英政府による組織的な人権侵害であるのは間違いなく、英政府は補償金の支払いを進めてきた。 2019年にロンドンの高等法院で、元局長ら555人に5800万ポンド(約107億6100万円)を支払うことで和解が成立した。これをきっかけに、英政府はこれまでに約1億5000万ポンド(約278億円)の補償金を支払っている。 また、これに加え、2024年には新法案を成立させ、元局長らの有罪判決を取り消し、1人当たり60万ポンド(約1億1100万円)の追加補償金を支払う見込みだ』、「事件が英政府による組織的な人権侵害であるのは間違いなく、英政府は補償金の支払いを進めてきた。 2019年にロンドンの高等法院で、元局長ら555人に5800万ポンド(約107億6100万円)を支払うことで和解が成立した。これをきっかけに、英政府はこれまでに約1億5000万ポンド(約278億円)の補償金を支払っている。 また、これに加え、2024年には新法案を成立させ、元局長らの有罪判決を取り消し、1人当たり60万ポンド(約1億1100万円)の追加補償金を支払う見込みだ」、なるほど。
・『責任はあくまで「英政府」にある この騒動の中、欠陥のある会計システムを構築・納入した富士通に対しても、補償金の支払いを求める声が高まっている。 だが、本来この動きはおかしい。この騒動の責任はあくまで英政府にある。 英政府は、富士通のシステムがバグだらけであることを知っていたが、これを承認し、導入・運用していただけでなく、欠陥を修正していなかった。 その上、無実の人から口座の不足金額をむしり取っただけでなく、有罪判決を下して投獄したり、自殺に追い込んでいたのだ。 その一義的な当事者は、旧ロイヤルメール時代から、現在のポストオフィスまでの間、政権を担当していた、「保守党」と「労働党」、および「英自由民主党」・・・にある。 この構図をしっかり押さえておく必要がある』、「英政府は、富士通のシステムがバグだらけであることを知っていたが、これを承認し、導入・運用していただけでなく、欠陥を修正していなかった。 その上、無実の人から口座の不足金額をむしり取っただけでなく、有罪判決を下して投獄したり、自殺に追い込んでいたのだ。 その一義的な当事者は、・・・政権を担当していた、「保守党」と「労働党」、および「英自由民主党」にある」、開発者の富士通の責任も否定できないのではなかろうか。
・『政治家や官僚が逃げ切りを図っている 一方、英国では、富士通に最終責任を転嫁して逃げ切りを図る政治家や官僚が少なくない、とも報じられている。 実際、事件のどこまでが政治家の責任で、富士通の責任はどの程度なのか、検証してみたい。 問題のシステム「ホライズン」は、旧ロイヤルメール時代の1995年に、当時の保守党政権下で立ち上げられた。 従来は手作業であった年金支払いや振り込み業務をデジタル化し、年間1億5000万ポンドにも上っていた年金受給詐欺を防止する、という触れ込みだった』、単なる事務の機械化だけでなく、「年間1億5000万ポンドにも上っていた年金受給詐欺を防止」という狙いもあったようだ。
・『コスト削減でバグだらけの欠陥品を導入してしまった しかし、実際のところは、旧ロイヤルメールの4割を占める年金など公的給付金の支払いが銀行に奪われることを恐れ、あわてて導入したものに過ぎない。 この時に入札を勝ち抜いて選ばれたのが、「ホライズン」を開発した英IT企業のインターナショナル・コンピューターズ・リミテッド(ICL)だ。 1968年創業のICLは1981年から富士通と関係があり、1990年には富士通が株式の80%を取得。1998年に完全子会社化している。 では、なぜICLのホライズンが選ばれたか。 単純に、入札価格が最も低かったからだ。 だが、安かろう悪かろうという言葉の通り、「ホライズン」はバグだらけの欠陥品であった』、「年金など公的給付金の支払いが銀行に奪われることを恐れ、あわてて導入したものに過ぎない・・・ICLのホライズンが選ばれた」のは、「入札価格が最も低かったから」、なるほど。
・『「安物買いの銭失い」が騒動のきっかけ 当時、旧ロイヤルメールの全株式を保有していた英政府は、まさに「安物買いの銭失い(Penny wise and pound foolish)」をしてしまった。 これにより、今に至る騒動の種をまいてしまったのである。 当時の保守党政権の下、社会資本の整備を民間にゆだねる「PFIプロジェクト」として、「ホライズン」はスタートした。 その後「ホライズン」は、1997年から2010年まで政権の座にあった労働党政権に引き継がれる。 そんな中、「ホライズン」がまだ稼働準備期間中だった1998年には、すでにシステムの「重大なリスク」が内部文書で指摘されていた。 英フィナンシャル・タイムズ紙によると、1999年、当時のトニー・ブレア首相に対して、「ホライズン」の欠陥の一覧が届けられていた。にもかかわらず、政権は調査を開始しなかった』、「1998年には、すでにシステムの「重大なリスク」が内部文書で指摘・・・政権は調査を開始しなかった」、政権にとっての重要性が低かったのだろう。
・『組織の目標がコストカットに集中していた この結果、2000年1月に稼働したホライズンは、その当初から本来存在しない「口座の残高不足」を表示する。 そして稼働初年度の2000年には、早くも6人の局長たちに横領有罪判決が言い渡されているのだ。 続く2001年には41人の局長が訴追され、その数は2002年に64人まで増えている。 起訴されなかった局長も含めると、2010年までに、総計2500人もの人が横領の嫌疑をかけられた。 だが、旧ロイヤルメールは十分な予算を計上して「ホライズン」の問題を解決する姿勢を見せなかった。組織の目標がコストカットに集中していたからだ』、「旧ロイヤルメールは十分な予算を計上して「ホライズン」の問題を解決する姿勢を見せなかった。組織の目標がコストカットに集中していたからだ」、なるほど。
・『自分たちの誤りを認めなかった 起訴された局長の多くは、裁判でシステムの欠陥を指摘し、無実を訴えた。 だが、英国の郵政担当者や検察官たちは自分たちの誤りを認めなかった。 英議会にも局長たちの訴えは伝えられたが、労働党政権はシステムに何ら過失はないと主張するばかりで、逆に訴えた局長を解雇した。 実際には旧ロイヤルメールはホライズンの欠陥に気付いており、外部コンサルタントを雇って調査までさせていたことが分かっている。 だが、欠陥の可能性を指摘した会計士たちは、突如契約を打ち切られたという。 英政府による「もみ消し工作」であった可能性もある。 こうして、過ちを早期に正す機会は失われた。 2009年までの間に、労働党政権下で起訴された局長の数は525人にまで増えた』、「欠陥の可能性を指摘した会計士たちは、突如契約を打ち切られた・・・英政府による「もみ消し工作」であった可能性もある」、「英政府」が果たした役割を再検証する必要がる。
・『富士通に責任をなすりつけようとしている こうした英政府の責任をなすりつけられようとしているのが富士通だ。 2024年現在、労働党の「影の内閣(Shadow Cabinet)」でビジネス・エネルギー・産業戦略相を務めるジョナサン・レイノルズ氏は、英議会で、「もし富士通が事態の重大さを認識していたのであれば、事件の理不尽さの度合いに応じた責任を負わされるだろう」と述べている。 しかし、この発言を評して、米ジャーナリストのロバート・スティーブンス氏は、「過去25年に英政府の監督の下で為された極端な不正義を、(富士通への責任転嫁で)覆い隠そうとするものだ」と強く批判している。 富士通が相応の責任を取らされるのは当然としても、一義的には英政府、特に労働党の政治家の下で、元局長たちが訴追・投獄されたのであり、その責任は消えないという見解を述べたと考えられ』、「米ジャーナリストのロバート・スティーブンス氏は、「過去25年に英政府の監督の下で為された極端な不正義を、(富士通への責任転嫁で)覆い隠そうとするものだ」と強く批判している」、注目すべき発言だ。
・『ドラマがなければ政治家は動かなかった 事件の責任は労働党だけが負っているわけではない。2010年から2015年にかけて、連立政権を組んで郵政を担った「自由民主党」や、2015年から現在までの間に政権を担当している「保守党」も、この問題を事実上放置し、元局長やその家族たちを救わなかったからだ。 2024年1月に英民放ITVが事件のドラマ『ミスターベイツvs.ポストオフィス』を放映した。 このドラマがきっかけとなり、スキャンダルに大きな注目が集まる。 世論の高まりに押された政治家たちは、被害者たちに同情を示す必要に迫られた。 逆に言えば、このドラマ放映がなければ、政治は動かなかったと考えられる』、「2024年1月に英民放ITVが事件のドラマ『ミスターベイツvs.ポストオフィス』を放映した。 このドラマがきっかけとなり、スキャンダルに大きな注目が集まる」、なるほど。
・『英政府は富士通なしではやっていけない 英BBCによれば、富士通はポスト・オフィスのほか、税務当局、歳入税関庁、労働・年金省といった政府機関のITインフラに深く浸透している。 過去4年間で101件の契約を獲得し、総額は20億ポンド(約3700億円)に上るという。 それには、原因となった「ホライズン」の延長契約の3600万ポンド(66億6000万円)も含まれている。 英ITジャーナリストのトニー・コリンズ氏は、「政府は富士通なしではやっていけない」「富士通を排除するのは不可能に近い」とBBCに語っている』、「富士通はポスト・オフィスのほか、税務当局、歳入税関庁、労働・年金省といった政府機関のITインフラに深く浸透している。 過去4年間で101件の契約を獲得し、総額は20億ポンド(約3700億円)に上る」、そんなに深く英政府に食い込んでいたとは初めて知った。
・『「富士通の無能さが証明されれば、賠償金は莫大なものになる」 コリンズ氏は、「富士通は、英政府からの要求がなくても、被害者への補償を独自に決定する可能性がある」と予想している。 こうした見解は、英政治家による富士通批判の高まりと連動している。 たとえば、保守党出身で2010年から2016年まで首相を務め、現在は外務大臣デービッド・キャメロン氏の側近である、フランシス・モード氏は、「富士通は少しでも名誉を重んじるのであれば、速やかに元局長たちに相当に大きな金額の補償金を支払うだろう」と語った。 また、保守党のアレックス・チョーク法相兼大法官は、英放送局のITVに対し、「英政府は本件に関する独立調査委員会の取り調べが終了するのを待って、富士通に対する処分を決定する」と断った。 その上で、「富士通の無能さが証明されれば、賠償金は莫大なものになる」との見方を示している』、「無能さ」は「富士通」だけでなく、「英政府」も無縁ではない筈だ。
・『総選挙を見据えた「富士通攻撃」 政府が被害者に支払う補償金は総額で数百億円相当にも上ると思われる。 ただ、政治家の発言を見る限り、英国内では、補償金の一部を富士通が負担するのはもはや既定路線となっているようだ。 英国では2024年後半、あるいは2025年初頭に総選挙が行われる可能性が高い。 そのため、与党の「保守党」、および野党の「労働党」ともに、富士通を攻撃して国民に「正義」をアピールし、選挙に勝利しようとする可能性もある。 無実の人たちを罪に定め、冤罪もみ消しを図った英政治家や官僚の責任を富士通が負わされることになる』、「与党の「保守党」、および野党の「労働党」ともに、富士通を攻撃して国民に「正義」をアピールし、選挙に勝利しようとする可能性もある。 無実の人たちを罪に定め、冤罪もみ消しを図った英政治家や官僚の責任を富士通が負わされることになる」、「富士通」がスケープゴートにされそうだ。
・『世界規模の危機管理に失敗する恐れも 富士通は世界100カ国以上でビジネスを展開するグローバル企業であり、年間売上は2023年3月31日現在で3兆7137億円、従業員は12万4000人を抱えている。 ※富士通の売上高について事実と異なる内容がありましたので修正しました(2024年1月19日14時45分追記)。 英国におけるスキャンダルは世界で報じられており、グローバルなビジネスを守るためにも、経営陣は早く誠意を示した方が得策という判断に傾くかもしれない。 英BBCは東京発の報道で、富士通の時田隆仁社長が被害者たちに対してコメントを出し渋っていることや、英子会社が「捜査に協力している」といった事務的な声明しか出していないことを批判的に伝えていた。 問題を放置すれば、富士通が英国でさらに炎上し、世界的規模の危機管理に失敗する恐れがあった。 こうした状況を受けて時田社長は1月16日にBBCの取材に対し、「弊社は郵便局長の生活とその家族に影響を与えたことを謝罪する」と明言。 また、英下院のビジネス委員会で同日に証言した富士通の英子会社、富士通サービシーズのポール・パターソン最高経営責任者(CEO)も、同社が当局の郵便局長起訴に協力したことを認め、被害者の補償に貢献する「道義的義務」があると述べて謝罪した。 その上で、「旧ロイヤルメールはホライズンにバグやエラーがあることを、早い段階で知っていた」とダメ出しをしている。 コスト削減ばかりを追求して冤罪を作り出した最終的な責任はあくまでも英政府にある。 富士通は英政府の郵便局長訴追に協力しているが、それは自社の責任逃れや罪のなすりつけであった可能性もある。富士通は誠意あるお詫びの表明を被害者に行い、英政府に対して数十億円から数百億円規模の支払いを覚悟した方がよいかもしれない。 いずれにせよ、英政治家や官僚の責任逃れが続く限り、被害者にとっても富士通にとっても、この事件の区切りはつけられることがないだろう』、「コスト削減ばかりを追求して冤罪を作り出した最終的な責任はあくまでも英政府にある。 富士通は英政府の郵便局長訴追に協力しているが、それは自社の責任逃れや罪のなすりつけであった可能性もある。富士通は誠意あるお詫びの表明を被害者に行い、英政府に対して数十億円から数百億円規模の支払いを覚悟した方がよいかもしれない」、その通りだ。
次に、本年1月24日付けJBPressが掲載した在英ジャーナリストの木村 正人氏による「どうして富士通は「闇落ち」したのか、英ポストオフィス大量冤罪の真相 富士通欧州CEO「とんでもない冤罪に関与したことをお詫びしたい」」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/79059
・『「富士通は最初から関与していた」 [ロンドン発]富士通が英ポストオフィスに納入した勘定系システム「ホライズン」の欠陥が原因で民間委託郵便局長(以下、局長)ら736人が冤罪に陥れられた事件で、富士通のポール・パターソン欧州最高経営責任者(CEO)が19日、真相を究明するホライズン公聴会に出席し、「富士通が社会と元局長らを地に落としたのは明らかだ」と改めて謝罪した。 パターソン氏は16日の下院ビジネス・貿易委員会でも「このひどい冤罪に富士通が関与したことをお詫びしたい。富士通は最初から関与していた。システムにバグやエラーがあり、ポストオフィスによる局長らの起訴を手助けした」として被害者救済制度に資する「道義的義務」があると述べた。英国政府は8月までの賠償を目指している。 これまで富士通はポストオフィス(郵便事業の窓口を担当する国営企業)の陰に隠れてダンマリを決め込んできた。次期総選挙を控えるリシ・スナク首相が突然、冤罪に問われた全員の有罪判決を撤回、賠償に応じると表明したため、方針転換を迫られた。賠償総額は推定10億ポンド(約1880億円)。そのうち富士通がいくら負担するかは公聴会の結論次第だ。 富士通にとってはIT(情報技術)システムの公共調達に食い込むため1998年、ホライズンを開発した英国策企業ICLを買収したことが結果的に裏目に出た。国際競争力を失ったICLのホライズンはバグだらけの「クソ袋」(富士通元エンジニアの証言)だった。東芝を地獄に叩き落した米原子力関連企業ウェスティングハウス買収と同じ轍を踏まないか心配だ』、「富士通のポール・パターソン欧州・・・(CEO)が19日、真相を究明するホライズン公聴会に出席し、「富士通が社会と元局長らを地に落としたのは明らかだ」と改めて謝罪した。 パターソン氏は16日の下院ビジネス・貿易委員会でも「このひどい冤罪に富士通が関与したことをお詫びしたい。富士通は最初から関与していた。システムにバグやエラーがあり、ポストオフィスによる局長らの起訴を手助けした」として被害者救済制度に資する「道義的義務」があると述べた」、なるほど。
・『裁判官「バグがなかったと開き直るのは21世紀に地球は平らだと主張するに等しい」 富士通の企業買収とシステム開発力に問題があったのは明らかだ。しかし前代未聞の冤罪事件は英国社会の抱える構造的な問題が複合的に絡み合って起き、システム導入から25年も放置されてきた。400年以上の歴史を誇るポストオフィス・ブランドを守るため、局長らの無実の訴えは踏みにじられた。少し長くなるが、事件をおさらいしておこう。 1999年から2015年にかけホライズンの記録を証拠に900人以上が起訴され、236人が刑務所に放り込まれた。736人が冤罪とみられるが、有罪判決が取り消されたのは95件だけ。救済を待つ間に33人が他界した。うち4人は人生に絶望して自ら命を絶った。スナク首相によると、すでに2500人以上が約1億5000万ポンド(約282億円)の賠償を受けている。 【これまでの経過】 1996年、富士通とICLがホライズン・プロジェクトを受注 1998年、ICLが富士通の完全子会社に 1999年、ポストオフィスの支店にホライズンを順次設置。少ないポストオフィス直営店と、フランチャイズ契約の民間委託郵便局を合わせた支店数は現在計1万1500店 2000年、ホライゾンのデータを証拠に局長らの起訴開始。起訴支援はポストオフィスと富士通の契約に含まれていた 2009年、コンピューター専門誌コンピューター・ウィークリーが、ホライズンで多額の現金不足を指摘されて契約を一方的に打ち切られたアラン・ベイツ氏ら元局長7人の証言を報道。システム開発の仕事に関わった経験を持つベイツ氏はシステム開発の過程でバグやエラーが発生するという知識があった ・ベイツ氏が中心になって「民間委託郵便局長のための正義を実現する同盟」を発足 2012年、保守党下院議員とポストオフィスがホライズンに対する独立調査の実施で合意。法廷監査事務所セカンドサイトが指名され、元局長らと下院議員も承認 2013年、ポストオフィスがホライズン問題の関係書類の処分を命令 2014年、ポストオフィスが局長らの起訴を停止 ・ポストオフィスがセカンドサイトの調査報告書の受け取り拒否)』、「前代未聞の冤罪事件は英国社会の抱える構造的な問題が複合的に絡み合って起き、システム導入から25年も放置されてきた・・・1999年から2015年にかけホライズンの記録を証拠に900人以上が起訴され、236人が刑務所に放り込まれた。736人が冤罪とみられるが、有罪判決が取り消されたのは95件だけ。救済を待つ間に33人が他界した。うち4人は人生に絶望して自ら命を絶った。スナク首相によると、すでに2500人以上が約1億5000万ポンド(約282億円)の賠償を受けている」、「システム導入から25年も放置」、とは酷い話だ。
・『富士通英国の内部告発者がBBCで証言 2015年、英下院企業・イノベーション・技能委員会がホライズンの調査を開始 ・ポストオフィスのポーラ・ヴェネルズCEOが「冤罪の証拠は何一つない」と疑惑を全面否定。元局長らとの調停を中止 ・富士通英国の内部告発者リチャード・ロール氏が英BBC放送で証言 2016年、ベイツ氏らが訴訟費用を前借りしてポストオフィスを相手取りロンドン高等法院に集団訴訟を起こす 2019年、ヴェネルズ氏に「ポストオフィスへの貢献と慈善活動」を理由にエリザベス女王から大英帝国勲章コマンダー(CBE)が授けられる。ヴェネルズ氏は内閣府高官、インペリアル・カレッジ医療NHS(国家医療サービス)トラスト会長に就任 ・ポストオフィスは元局長ら555人に対し5775万ポンド(約109億円)を支払うことで和解が成立。和解金の多くは訴訟費用に充てられ、元局長らが手にしたのはわずか1200万ポンド(約22億6000万円)だけだった ・集団訴訟を担当した裁判官は「ホライズンにバグやエラーがなかったと否定するのは21世紀に地球は平らだと主張するに等しい」との判断を示す。「富士通社員が提出したホライズンの欠陥に関する証拠の信憑性に重大な懸念がある」と検察当局に書類を送付。その後、ロンドン警視庁は偽証の疑いで富士通元社員2人を事情聴取 2020年、ボリス・ジョンソン首相(当時)が独立のホライズン公聴会開始を約束 ・元局長6人の有罪判決が初めて取り消される 2024年、英民間放送ITVのテレビドラマ『ミスター・ベイツ vsポストオフィス』が1月1日から4日連続で放映されたことをきっかけに事態が急展開する』、「ポストオフィスは元局長ら555人に対し5775万ポンド(約109億円)を支払うことで和解が成立。和解金の多くは訴訟費用に充てられ、元局長らが手にしたのはわずか1200万ポンド(約22億6000万円)だけだった」、「訴訟費用」の高さには驚かされる。
・『ポストオフィス「ホライズンは堅牢」 事件の主犯は400年の歴史とブランドを守るため「ホライズンは堅牢」とシラを切り通し、被害者救済を意図的に遅らせてきたポストオフィスとそれを黙認してきた英国政府である。本来、社会的弱者の権利を保護する司法制度が政府や企業の不正を覆い隠すために使われた。英国の訴訟費用はべらぼうに高い。それらの事情を差し引いても富士通の罪は重い。 富士通のパターソン氏は19日の公聴会で「すべてのバグやエラーは何年も前から知られていた。システムの導入が始まった当初からバグやエラー、欠陥は存在し、関係者にとっては周知の事実であった。ポストオフィスにも知らされていた」とホライズンが導入された1999年から2018年まで富士通がバグやエラー、欠陥と格闘し続けてきたことを認めた。 例えば端末操作のやり方でシステムが入金を二重計上し、現金不足が発生するバグがあった。こうしたバグやエラー、欠陥が無実の局長らを起訴するために使われた証拠に影響を与えることを富士通は認識していた。パターソン氏は「起訴のためポストオフィスに送られた富士通の証拠にこうしたバグの記載がなかったことに個人的に驚いている」と証言した。 富士通内部で起訴のためにバグなどの不都合な証拠は削除されていた。パターソン氏は「恥ずべきこと、ぞっとすることだ。英国の法律ではすべての証拠が局長に開示されるべきだった」と臍を噛んだ。被害者救済の道義的義務を認めるのにこれほど長い歳月を要した理由について「何十年も前の過ちだ。私は真実を明らかにするため何でもする」とだけ話した』、「たバグやエラー、欠陥が無実の局長らを起訴するために使われた証拠に影響を与えることを富士通は認識していた。パターソン氏は「起訴のためポストオフィスに送られた富士通の証拠にこうしたバグの記載がなかったことに個人的に驚いている」と証言した。 富士通内部で起訴のためにバグなどの不都合な証拠は削除されていた。パターソン氏は「恥ずべきこと、ぞっとすることだ。英国の法律ではすべての証拠が局長に開示されるべきだった」と臍を噛んだ」、「富士通」の訴訟戦術上の重大なミスだ。
・『富士通元エンジニア「ホライズンがクソ袋だということはみんな知っていた」 大量冤罪を生んだ原点は「ホライズンがクソ袋だということはみんな知っていた。システムを一から書き直す必要があったが、そのようなことは起きなかった。なぜなら、そのための資金もリソースもなかったからだ。このシステムは決して日の目を見るべきではない非常に質の悪いシステムだった」(元富士通エンジニア、ロール氏)ことにある。 富士通は局長らに気付かれないよう英国本社から局長らの端末に遠隔アクセスし、データを変更していた。決済が遅れてポストオフィスに支払う金銭的ペナルティーが発生するのを防ぐためだ。パターソン氏は下院委員会で「富士通の遠隔サポートは文書化され、ポストオフィスも認識していた」と証言した。しかしポストオフィスはこの事実を否定してきた。 二重計上するバグの場合、ホライズンの記録を見れば簡単に気づくはずだが、なぜか悪意の証拠をもとに冤罪が積み上げられた。どこまでポストオフィスと富士通の間に“不当起訴”の共謀があったのかまだ明らかにされていないが、パターソン氏は「バグやエラーがあるという情報を起訴にどう使うかはポストオフィスの責任だ」と法的責任を否定している。 この問題を追及する『ザ・グレート・ポストオフィス・スキャンダル』の著者でジャーナリストのニック・ウォーリス氏は「パターソン氏はなぜ富士通の誰もそれを止めようとしなかったのか、社内外で潜在的な問題として提起しなかったのか語らなかった。司法妨害の陰謀になる可能性のある共謀を認めたのと同じで、富士通を捜査対象にしてしまった」という』、「「パターソン氏はなぜ富士通の誰もそれを止めようとしなかったのか、社内外で潜在的な問題として提起しなかったのか語らなかった。司法妨害の陰謀になる可能性のある共謀を認めたのと同じで、富士通を捜査対象にしてしまった」、本当にお粗末限りない不手際だ。
・『富士通・時田社長「これは大きな問題であり、富士通は非常に深刻に受け止めている」 「シラを切る文化」が蔓延るポストオフィスは裁判所に和解を勧告されるまで真っ赤な嘘をつき続けた。 公共調達分析会社タッセルによると、富士通は歳入関税庁、内務省、警察、国防省といった英国の公共部門から200近い契約を獲得、総額67億8000万ポンド(約1兆2700億円)にのぼる。富士通は公聴会の報告が出るまで政府契約の入札を自主的に辞退した。 全国民間委託郵便局長連盟幹部マイケル・ルドキン氏は2008年8月、富士通英国のオフィスを訪れ、ホライズン担当の技術者が端末から局長の口座を操作するデモンストレーションを目撃した。その翌日、4万4000ポンド(約827万円)の現金不足が見つかったと抜き打ち検査を受けた。妻のスーザンさんは不正会計罪で起訴され、有罪判決を受けた。 1月16日、富士通の時田隆仁社長はスイスのダボスで開かれる世界経済フォーラム年次総会に出席したが、会場近くを歩いているところで英BBC放送の直撃取材を受け、「これは大きな問題であり、富士通は非常に深刻に受け止めている」とこの問題について初めて口を開いた。) また謝罪するかとの質問に「はい、もちろんだ。富士通は元局長らの生活とその家族に影響を与えたことを謝罪する」と述べた。ただこの直撃取材の間、時田社長は足を止めることはなかった。その様子はまるでBBC記者の直撃から一刻も早く逃げたがっているかのようだった』、「シラを切る文化」が蔓延るポストオフィスは裁判所に和解を勧告されるまで真っ赤な嘘をつき続けた。 公共調達分析会社タッセルによると、富士通は歳入関税庁、内務省、警察、国防省といった英国の公共部門から200近い契約を獲得、総額67億8000万ポンド(約1兆2700億円)にのぼる。富士通は公聴会の報告が出るまで政府契約の入札を自主的に辞退した」、入札辞退は当然だ。「富士通の時田隆仁社長はスイスのダボスで開かれる世界経済フォーラム年次総会に出席したが、会場近くを歩いているところで英BBC放送の直撃取材を受け、「これは大きな問題であり、富士通は非常に深刻に受け止めている」とこの問題について初めて口を開いた・・・直撃取材の間、時田社長は足を止めることはなかった。その様子はまるでBBC記者の直撃から一刻も早く逃げたがっているかのようだった」、予め周到に準備した発言ではなく、その場で即時対応した発言をさせられたとは、極めてお粗末で不味い対応だ。
・『収益の悪化、技術力の低下、モラル喪失のスパイラル 最初から元局長らの訴えに耳を傾けていれば、こんな悲劇は起きなかった。元局長らは富士通に対する刑事責任追及を求めているが、司法の独立を無視して政治決着が図られた今、真相は闇に葬り去られる可能性があると筆者はみる。 ダボスでこそこそ逃げ回るような印象を与えた時田社長と、人工知能(AI)の未来を雄弁に語った米マイクロソフトのサティア・ナデラCEOの差は残酷だ。それが「失われた30年」に開いた日本と世界の差だと痛感した。日本の企業が次々と「闇落ち」していくのは収益の悪化、技術力の低下、モラル喪失の負のスパイラルに陥っているからだ。 各国政府が公共調達で、無実の元局長らを地獄に突き落とした富士通のITシステムより、「私たちは地元のスタートアップや中小企業と提携して公共部門の生産性を高められる。AIによって国内総生産(GDP)に占める医療費と教育費の割合を改善できる」(ナデラCEO)と胸を張るマイクロソフトのAIを買うのは火を見るよりも明らかだ。 (【木村正人】略歴はリンク先参照)』、「元局長らは富士通に対する刑事責任追及を求めているが、司法の独立を無視して政治決着が図られた今、真相は闇に葬り去られる可能性がある・・・各国政府が公共調達で、無実の元局長らを地獄に突き落とした富士通のITシステムより、「私たちは地元のスタートアップや中小企業と提携して公共部門の生産性を高められる。AIによって国内総生産(GDP)に占める医療費と教育費の割合を改善できる」(ナデラCEO)と胸を張るマイクロソフトのAIを買うのは火を見るよりも明らかだ」、その通りだ。自らに不都合なことがあるのであれば、「世界経済フォーラム年次総会」などに出席すべきでない。まさに、恥の上塗りをしたようなものだ。
タグ:富士通が英国で郵便システムの欠陥で史上最大の冤罪事件 (その1)(富士通に責任をなすりつけようとしている…「英国史上最大の冤罪」が「とんだとばっちり」と言える理由 英政府は富士通なしではやっていけない、どうして富士通は「闇落ち」したのか 英ポストオフィス大量冤罪の真相 富士通欧州CEO「とんでもない冤罪に関与したことをお詫びしたい」) PRESIDENT ONLINE 岩田 太郎氏による「富士通に責任をなすりつけようとしている…「英国史上最大の冤罪」が「とんだとばっちり」と言える理由 英政府は富士通なしではやっていけない」 「富士通の英子会社が納入し、英国郵政の旧ロイヤルメール・・・で2000年より使用されている勘定系システム「ホライズン」に、重大な欠陥があった・・・重大なシステムトラブルが15年以上も続いていた。 このシステムトラブルに気づかず、民間委託郵便局長ら736人が不足分の現金を横領したなどの疑いをかけられるという、巨大冤罪事件に発展。 236人もの元局長が無実の罪で投獄され、少なくとも4人が自殺したという」、信じ難いような驚くべき事件だ。 「事件が英政府による組織的な人権侵害であるのは間違いなく、英政府は補償金の支払いを進めてきた。 2019年にロンドンの高等法院で、元局長ら555人に5800万ポンド(約107億6100万円)を支払うことで和解が成立した。これをきっかけに、英政府はこれまでに約1億5000万ポンド(約278億円)の補償金を支払っている。 また、これに加え、2024年には新法案を成立させ、元局長らの有罪判決を取り消し、1人当たり60万ポンド(約1億1100万円)の追加補償金を支払う見込みだ」、なるほど。 「英政府は、富士通のシステムがバグだらけであることを知っていたが、これを承認し、導入・運用していただけでなく、欠陥を修正していなかった。 その上、無実の人から口座の不足金額をむしり取っただけでなく、有罪判決を下して投獄したり、自殺に追い込んでいたのだ。 その一義的な当事者は、・・・政権を担当していた、「保守党」と「労働党」、および「英自由民主党」にある」、開発者の富士通の責任も否定できないのではなかろうか。 単なる事務の機械化だけでなく、「年間1億5000万ポンドにも上っていた年金受給詐欺を防止」という狙いもあったようだ。 「年金など公的給付金の支払いが銀行に奪われることを恐れ、あわてて導入したものに過ぎない・・・ICLのホライズンが選ばれた」のは、「入札価格が最も低かったから」、なるほど。 「1998年には、すでにシステムの「重大なリスク」が内部文書で指摘・・・政権は調査を開始しなかった」、政権にとっての重要性が低かったのだろう。 「旧ロイヤルメールは十分な予算を計上して「ホライズン」の問題を解決する姿勢を見せなかった。組織の目標がコストカットに集中していたからだ」、なるほど。 「欠陥の可能性を指摘した会計士たちは、突如契約を打ち切られた・・・英政府による「もみ消し工作」であった可能性もある」、「英政府」が果たした役割を再検証する必要がる。 「米ジャーナリストのロバート・スティーブンス氏は、「過去25年に英政府の監督の下で為された極端な不正義を、(富士通への責任転嫁で)覆い隠そうとするものだ」と強く批判している」、注目すべき発言だ。 「2024年1月に英民放ITVが事件のドラマ『ミスターベイツvs.ポストオフィス』を放映した。 このドラマがきっかけとなり、スキャンダルに大きな注目が集まる」、なるほど。 「富士通はポスト・オフィスのほか、税務当局、歳入税関庁、労働・年金省といった政府機関のITインフラに深く浸透している。 過去4年間で101件の契約を獲得し、総額は20億ポンド(約3700億円)に上る」、そんなに深く英政府に食い込んでいたとは初めて知った。 「無能さ」は「富士通」だけでなく、「英政府」も無縁ではない筈だ。 「与党の「保守党」、および野党の「労働党」ともに、富士通を攻撃して国民に「正義」をアピールし、選挙に勝利しようとする可能性もある。 無実の人たちを罪に定め、冤罪もみ消しを図った英政治家や官僚の責任を富士通が負わされることになる」、「富士通」がスケープゴートにされそうだ。 「コスト削減ばかりを追求して冤罪を作り出した最終的な責任はあくまでも英政府にある。 富士通は英政府の郵便局長訴追に協力しているが、それは自社の責任逃れや罪のなすりつけであった可能性もある。富士通は誠意あるお詫びの表明を被害者に行い、英政府に対して数十億円から数百億円規模の支払いを覚悟した方がよいかもしれない」、その通りだ。 JBPRESS 木村 正人氏による「どうして富士通は「闇落ち」したのか、英ポストオフィス大量冤罪の真相 富士通欧州CEO「とんでもない冤罪に関与したことをお詫びしたい」」 「富士通のポール・パターソン欧州・・・(CEO)が19日、真相を究明するホライズン公聴会に出席し、「富士通が社会と元局長らを地に落としたのは明らかだ」と改めて謝罪した。 パターソン氏は16日の下院ビジネス・貿易委員会でも「このひどい冤罪に富士通が関与したことをお詫びしたい。富士通は最初から関与していた。 システムにバグやエラーがあり、ポストオフィスによる局長らの起訴を手助けした」として被害者救済制度に資する「道義的義務」があると述べた」、なるほど。 「前代未聞の冤罪事件は英国社会の抱える構造的な問題が複合的に絡み合って起き、システム導入から25年も放置されてきた・・・1999年から2015年にかけホライズンの記録を証拠に900人以上が起訴され、236人が刑務所に放り込まれた。736人が冤罪とみられるが、有罪判決が取り消されたのは95件だけ。救済を待つ間に33人が他界した。うち4人は人生に絶望して自ら命を絶った。 スナク首相によると、すでに2500人以上が約1億5000万ポンド(約282億円)の賠償を受けている」、「システム導入から25年も放置」、とは酷い話だ。 「ポストオフィスは元局長ら555人に対し5775万ポンド(約109億円)を支払うことで和解が成立。和解金の多くは訴訟費用に充てられ、元局長らが手にしたのはわずか1200万ポンド(約22億6000万円)だけだった」、「訴訟費用」の高さには驚かされる。 「たバグやエラー、欠陥が無実の局長らを起訴するために使われた証拠に影響を与えることを富士通は認識していた。パターソン氏は「起訴のためポストオフィスに送られた富士通の証拠にこうしたバグの記載がなかったことに個人的に驚いている」と証言した。 富士通内部で起訴のためにバグなどの不都合な証拠は削除されていた。 パターソン氏は「恥ずべきこと、ぞっとすることだ。英国の法律ではすべての証拠が局長に開示されるべきだった」と臍を噛んだ」、「富士通」の訴訟戦術上の重大なミスだ。 「「パターソン氏はなぜ富士通の誰もそれを止めようとしなかったのか、社内外で潜在的な問題として提起しなかったのか語らなかった。司法妨害の陰謀になる可能性のある共謀を認めたのと同じで、富士通を捜査対象にしてしまった」、本当にお粗末限りない不手際だ。 「シラを切る文化」が蔓延るポストオフィスは裁判所に和解を勧告されるまで真っ赤な嘘をつき続けた。 公共調達分析会社タッセルによると、富士通は歳入関税庁、内務省、警察、国防省といった英国の公共部門から200近い契約を獲得、総額67億8000万ポンド(約1兆2700億円)にのぼる。富士通は公聴会の報告が出るまで政府契約の入札を自主的に辞退した」、入札辞退は当然だ。 「富士通の時田隆仁社長はスイスのダボスで開かれる世界経済フォーラム年次総会に出席したが、会場近くを歩いているところで英BBC放送の直撃取材を受け、「これは大きな問題であり、富士通は非常に深刻に受け止めている」とこの問題について初めて口を開いた・・・直撃取材の間、時田社長は足を止めることはなかった。その様子はまるでBBC記者の直撃から一刻も早く逃げたがっているかのようだった」、予め周到に準備した発言ではなく、その場で即時対応した発言をさせられたとは、極めてお粗末で不味い対応だ。 「元局長らは富士通に対する刑事責任追及を求めているが、司法の独立を無視して政治決着が図られた今、真相は闇に葬り去られる可能性がある・・・各国政府が公共調達で、無実の元局長らを地獄に突き落とした富士通のITシステムより、「私たちは地元のスタートアップや中小企業と提携して公共部門の生産性を高められる。AIによって国内総生産(GDP)に占める医療費と教育費の割合を改善できる」(ナデラCEO)と胸を張るマイクロソフトのAIを買うのは火を見るよりも明らかだ」、 その通りだ。自らに不都合なことがあるのであれば、「世界経済フォーラム年次総会」などに出席すべきでない。まさに、恥の上塗りをしたようなものだ。
歴史問題(18)(兵士1591人が「エリートのプライド」の犠牲になった…日本軍の「謹厳実直な武人」が無謀な作戦を立てたワケ 日本の破滅を招いた「恥の文化」、:731部隊 朝鮮人虐殺…不都合な歴史を「なかったことにしたい人たち」に感じた“怖さ”、ハンムラビ法典「目には目を」は「やられたら、やり返せ!」ではなかった…本来の意味は?) [社会]
歴史問題については、昨年4月15日に取上げた。今日は、(18)(兵士1591人が「エリートのプライド」の犠牲になった…日本軍の「謹厳実直な武人」が無謀な作戦を立てたワケ 日本の破滅を招いた「恥の文化」、:731部隊 朝鮮人虐殺…不都合な歴史を「なかったことにしたい人たち」に感じた“怖さ”、ハンムラビ法典「目には目を」は「やられたら、やり返せ!」ではなかった…本来の意味は?)である。
先ずは、昨年5月2日付けPRESIDENT Onlineが掲載sた軍事史研究家の藤井 非三四氏による「兵士1591人が「エリートのプライド」の犠牲になった…日本軍の「謹厳実直な武人」が無謀な作戦を立てたワケ 日本の破滅を招いた「恥の文化」」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/69854
・『日本人の「恥の意識」は、非常事態において大変な損害をもたらすことがある。軍事史研究家の藤井非三四さんの著書『太平洋戦争史に学ぶ日本人の戦い方』(集英社新書)より、1941年の第二次長沙作戦で起きた悲劇を紹介しよう――』、興味深そうだ。
・『「恥の文化」は時に国家の破滅をもたらす 日本は「恥の文化」だと語られて久しい。普段は恥を知ることは美徳かもしれないが、戦争などの非常事態となるとそれは国家の破滅をもたらしかねない。 国難に直面した国家の指導者や高級指揮官の多くは、厚顔無恥で融通無碍であるのがごく普通で、勝利を収めさえすればそんな姿勢をあれこれ批判されることもない。ところが日本では、初志貫徹、首尾一貫しなければ恥ずかしく面目ないと凝り固まり、方針転換を渋りに渋って万事手遅れとなる場合が多い。 どうして進んで自縄自縛となったり、意地になって行動の幅を狭めてしまったりするのかと考えると、そこに虚栄心が働いているからだ。自分がいかに意志堅固で、なにかをやり遂げる強い決意があったかを知ってもらい、できれば史書に名前を残してもらいたい、という政治家や高級指揮官の心根が見え隠れする。 太平洋戦争中に限っても、こうした硬直した戦い方をして無意味な損害を被った例は数多くある。まず、昭和16年12月24日からの第二次長沙作戦だ』、「日本では、初志貫徹、首尾一貫しなければ恥ずかしく面目ないと凝り固まり、方針転換を渋りに渋って万事手遅れとなる場合が多い。 どうして進んで自縄自縛となったり、意地になって行動の幅を狭めてしまったりするのかと考えると、そこに虚栄心が働いているからだ。自分がいかに意志堅固で、なにかをやり遂げる強い決意があったかを知ってもらい、できれば史書に名前を残してもらいたい、という政治家や高級指揮官の心根が見え隠れする・・・こうした硬直した戦い方をして無意味な損害を被った例は数多くある。まず、昭和16年12月24日からの第二次長沙作戦だ」、なるほど。
・『日本軍は「不落」の長沙を制圧しにかかった 中国戦線の進攻作戦が一段落した昭和13(1938)年末、支那派遣軍の任務は占領地の治安確立と安定を図ることが主となった。しかし、それだけでは部隊の雰囲気が退嬰的になりかねないとされ、長江沿岸地域で限定的な進攻作戦を行ない、中国軍の戦力を減殺させることとなった。 ところが新たに進攻した地域を確保するだけの戦力がないため、攻め込んでは後退するピストン作戦にならざるを得ない。これを見た中国国民政府は、「またもや日本軍を撃退」と宣伝にこれ努め、日本側を苛立たせていた。 昭和16年9月18日からの「加号」作戦(第一次長沙作戦)もこのピストン作戦だった。実施部隊は4個師団を基幹とする第11軍、軍司令官は阿南惟幾中将(大分、陸士18期、歩兵)だった。目標は中国が「不陥」(攻略不可能)と宣伝してきた湖南省の省都である長沙だ。ここを占領すれば中国に和平の気運が生まれるのではとの淡い期待もあった』、「新たに進攻した地域を確保するだけの戦力がないため、攻め込んでは後退するピストン作戦にならざるを得ない。これを見た中国国民政府は、「またもや日本軍を撃退」と宣伝にこれ努め、日本側を苛立たせていた」、なるほど。
・『軍に広がる「完全占領ではなかった」との噂 第11軍の諸隊は、洞庭湖に注ぐ新墻河の線から一斉に攻勢を発起、100キロ南の長沙を目指した。そして早くも9月27日、先遣隊が長沙市街に突入し、翌日には第4師団(大阪)が入城した。予定していた通り、第11軍は10月1日から反転を始め、11月初旬までにもとの態勢に戻った。 ところがすぐに支那派遣軍の内で妙な話が交わされるようになった。中国が言うように長沙市街の一部には中国軍が残っており、第11軍が主張するように完全占領ではなかったらしいという噂だ。 侍従武官も務め、謹厳実直な武人として知られる阿南軍司令官にとって、これは面目の問題となり、この恥辱を雪がなければと思い詰めたようだ。また、長沙入城を第4師団に譲った形となった第3師団(名古屋)の豊嶋房太郎師団長(山口、陸士22期、歩兵)としても、「俺が長沙に行けば、こんな話にならなかったのに」という気持ちになったかもしれない』、「中国が言うように長沙市街の一部には中国軍が残っており、第11軍が主張するように完全占領ではなかったらしいという噂だ。 侍従武官も務め、謹厳実直な武人として知られる阿南軍司令官にとって、これは面目の問題となり、この恥辱を雪がなければと思い詰めたようだ」、「阿南軍司令官にとって、これは面目の問題となり、この恥辱を雪がなければと思い詰めたようだ」、軍事作戦でこのような捉え方をしたとは、その時代錯誤感に驚かされた。
・『師団が転用される前に再び長沙を叩く 雪辱戦を行なうとなれば急がねばならない。第4師団は長沙入城で花道を飾って、フィリピンに転用された。これで支那派遣軍に残る精強な常設師団は第3師団と第6師団(熊本)だけとなり、これもまたほかの戦線に転用されるのは時間の問題と思われた。 そうなると支那派遣軍は警備師団、治安師団、独立混成旅団からなる治安軍となり、ピストン作戦すらも行なう戦力がなくなる。そこで第3師団と第6師団が残っているうちに、再び長沙作戦を行なわなければならないという話になった。 しかし、ひとたび南方作戦が始まれば、再度の長沙作戦など大本営はもちろん支那派遣軍も難色を示す。そこで阿南軍司令官が唱え出したのが「徳義の作戦」だった。 開戦劈頭、支那派遣軍の第23軍が香港攻略に向かう。これに対応すべく中国軍は広東省正面に圧力を加えるだろう。そこでこの中国軍の動きを牽制するため、第11軍は再度長沙正面で攻勢に出るという構想だ。 だれもがエゴイストになりがちな戦場で、自ら進んで友軍のために動くというのだから、まさに徳義の作戦、「武人阿南」の面目躍如ということになる(佐々木春隆『長沙作戦 緒戦の栄光に隠された敗北』光人社NF文庫、2007年)』、「ひとたび南方作戦が始まれば、再度の長沙作戦など大本営はもちろん支那派遣軍も難色を示す。そこで阿南軍司令官が唱え出したのが「徳義の作戦」だった。 開戦劈頭、支那派遣軍の第23軍が香港攻略に向かう。これに対応すべく中国軍は広東省正面に圧力を加えるだろう。そこでこの中国軍の動きを牽制するため、第11軍は再度長沙正面で攻勢に出るという構想だ」、なるほど。
・『軍司令部は長沙作戦に懐疑的だったが… まず問題となるのは、この作戦の効果だ。長沙と香港付近の広州とは粤漢線で結ばれているが、直線でも550キロ以上も離れている。長沙に圧力が加えられたからと、すぐさま反応するような敏感さを中国軍が持ち合わせているとは思えない。さらに第4師団がフィリピンに転用されたため、第11軍が投入できる兵力は第一次作戦の歩兵大隊46個基幹から22個基幹にまで減っている。 第11軍司令部でも、再度の長沙進攻には懐疑的な意見が多かった。参謀長の木下勇少将(福井、陸士26期、騎兵)は、もし香港攻略の第23軍が苦戦に陥ったならば、やむなく長沙に行かざるを得ないという程度の認識だった。後方担当の参謀副長だった二見秋三郎少将(神奈川、陸士28期、歩兵、航空転科)は、補給幹線を維持できるのは汨水までという姿勢を崩さなかった。作戦参謀の島村矩康中佐(高知、陸士36期、歩兵)にいたっては、ピストン作戦そのものに批判的だった』、「軍司令部は長沙作戦に懐疑的だったが…」、さらに第一線指揮官の多くも懐疑的だったと、作戦自体に無理があったようだ。
・『「恥ずかしさ」が軍事的合理性を押し退けた こうして長沙への再進攻はむずかしくなったが、阿南軍司令官は諦めなかった。ここで断念すれば恥ずかしい限りという意識が働いていたのだろう。加えて第3師団長の豊嶋房太郎も積極的だった。 この2人の関係だが、阿南が陸軍次官のときに豊嶋は憲兵司令官で直属の部下という形だった。そして豊嶋が第3師団長に転出すると、追いかける形で阿南が第11軍司令官となった。中央官衙で上司と部下、出征してからは軍司令官と師団長という関係は、そうあることではない。 豊嶋は第3師団長を昭和15年9月から務めているから、そろそろ転属の時期だ。本人としても花道を飾りたいという思いがあっただろうし、上官の阿南としても飾ってやりたいという気持ちになっても不思議ではない。また、第3師団は昭和12年8月以来、長らく中国戦線にあったから内地に帰還するか、ほかの戦線に転用される可能性が高まっていた。これまた大陸戦線の最後に快勝させて送り出してやりたいという気持ちにもなる。このような人情論が出てくると、軍事的な合理性が引っ込むことになりかねない。 友軍のための「徳義の作戦」という話が称賛の声とともに広まってしまった以上、第11軍としてもなにかしなければ格好がつかない。また、太平洋戦争が開戦となって香港攻略戦が始まると、第11軍正面の中国軍が動きだして南下しつつあることが偵知され、これを牽制することになった。具体的には兵力や補給の問題から長沙までは行かないが、屈原(楚の詩人)が入水したことで知られる汨水の南岸まで進出して中国軍を打撃することと決められた。徳義の作戦を屈原で知られる汨水一帯で展開するとなると、ヒロイズムに酔い出すのが当時の日本人だ』、「徳義の作戦を屈原で知られる汨水一帯で展開するとなると、ヒロイズムに酔い出すのが当時の日本人だ」、どういうことなのだろう。
・『軍総司令部には一言もなく独断で作戦を決行 第二次長沙作戦に発展する「さ号」作戦は、香港陥落の前日の昭和16年12月24日に始まった。豊嶋は留守近衛師団長(出征した師団のあとを管理する部隊長)への異動内示を受け取っていたが、これを握り潰して第一線に立った。このときすでに豊嶋は長沙に突進する決心を固めており、阿南との暗黙の合意もあったと見てよいだろう。 作戦は順調に進展し、第11軍主力は12月29日までに汨水の南岸に渡河していた。そしてその日の夕刻、中国軍が長沙に向けて後退中と航空偵察で知った阿南軍司令官は、即刻、長沙への追撃を決心した。支那派遣軍総司令部には一言もなく、阿南のまったくの独断だったという。歩兵大隊22個基幹という戦力で長沙まで押しだせるのかという問題はさておき、そもそも補給幹線の準備は岳州から汨水までであり、汨水から長沙までの70キロには補給の準備がない。 昭和17年1月1日から3日にかけて、第3師団と第6師団は長沙市街に取り付いた。ところが中国軍は長沙死守の構えを見せた。そのため軍旗を集めて保管していた第3師団の指揮所までが戦闘に巻き込まれ、豊嶋師団長自らが旗護中隊長を務めるという難戦に追い込まれた。これでは長沙の完全占領など無理と判断され、1月3日から北上、全軍反転となった』、「補給幹線の準備は岳州から汨水までであり、汨水から長沙までの70キロには補給の準備がない・・・これでは長沙の完全占領など無理と判断され、1月3日から北上、全軍反転となった」、なるほど。
・『1591人の命が不合理な判断で奪われた 第二次長沙作戦の本番は、実はそれからだった。中国軍は退却する日本軍の縦隊を両側から叩き上げた。これを中国では「天炉戦法」という。こちらに十分な火力があれば対応できるのだが、日本軍の第一線に弾薬が補給されたのは1月11日が最初で、それまでは一切補給がなかったというから、天炉戦法の前に苦戦するのも無理はない。その結果、第11軍は戦死1591人、戦傷4412人という大損害を被った(図表1参照)。 「長沙を完全には占領できなかった」「占拠5日で逃げ帰った」といった噂話をまともに受け止めて、これは耐えがたい恥辱、雪辱するとなって強行されたのが第二次長沙作戦であり、その結果がこの大損害だった。高い地位にある者に過剰な恥の意識があると、合理的な判断が阻害され、悲劇が生まれることをこの第二次長沙作戦は物語っている』、「第11軍は戦死1591人、戦傷4412人という大損害を被った・・・「長沙を完全には占領できなかった」「占拠5日で逃げ帰った」といった噂話をまともに受け止めて、これは耐えがたい恥辱、雪辱するとなって強行されたのが第二次長沙作戦であり、その結果がこの大損害だった。高い地位にある者に過剰な恥の意識があると、合理的な判断が阻害され、悲劇が生まれることをこの第二次長沙作戦は物語っている」、信じ難くお粗末極まる軍事作戦だ。
次に、9月5日付け文春オンライン「731部隊、朝鮮人虐殺…不都合な歴史を「なかったことにしたい人たち」に感じた“怖さ”」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/65538
・『あったことを無かったことにしたい人たちがいる。そんな怖さを感じた記事がこの夏にいくつかありました。 まずは「731部隊」についての企画記事を紹介します。信濃毎日新聞の「戦後78年 731部隊の記憶」です(8月11日~17日)。 第1回の記事は『県内元少年隊員2人にネット上で中傷の声 命懸けの証言「嘘」呼ばわり』。 戦時中、満州で細菌兵器開発や人体実験などの残虐行為を実行した731部隊について元隊員が命懸けで証言したら、ネットで「このジジイ、嘘ついてやがる。か、実在しない人物だな」などの誹謗中傷が少なくなかったという』、ネット右翼のいやがらせは、いつもながら自民党政府の意向を代弁した見苦しいものだ。
・『国の姿勢に「まだ隠そうとするのか」と疑問 731部隊の「少年隊」に入隊した清水英男さん(93)は、人体実験で犠牲になった捕虜や、故郷から遠く離れた地で亡くなった仲間のために「命を懸けて証言している」と語る。 同じく元隊員の須永鬼久太さん(95)は部隊の撤退時に上官から「公職に就かない」「部隊について口外しない」「隊員同士連絡を取らない」と3つの禁止命令を受けた。須永さんは証言が積み重ねられているにも関わらず、いまだに部隊の活動実態を認めようとしない国の姿勢に「まだ隠そうとするのか」と疑問を感じている。 そんななか、元隊員(清水さん)の体験談は昨年5月の飯田市平和祈念館のオープン時に展示が見送られた。その理由は「さまざまな意見がある」というものだった。 《「さまざまな意見」とは、細菌戦を示す資料は「現時点で確認されていない」とした2003年の小泉純一郎首相(当時)の国会答弁や、人体実験などの証言が「子どもたちには生々しすぎる」といった指摘を指す。》(8月16日) 「さまざまな意見」というが、清水さんは「みんなが本当のことを話してくれていたら、私の証言の展示が見送られることはなかったと思います」と述べる』、「証言が積み重ねられているにも関わらず、いまだに部隊の活動実態を認めようとしない国の姿勢に「まだ隠そうとするのか」と疑問を感じている」、同感である。
・『「知らない」ままを望む人もいる 取材を終えた記者は、部隊による残虐行為に対する元幹部たちの反省なき態度を感じたと書いている(8月17日)。 そして、 《部隊の実態について証言できる関係者が亡くなり、記録は残されず、部隊の存在そのものが忘れ去られる――。敗戦時に残虐行為の証拠を徹底的に消し去り、戦後も口を閉ざし続けた部隊の元幹部が待ち望んでいたのは、まさにそうした社会だったのだろう。》 ゾッとする。私たちが「知らない」ままを望む人もいるのだ。検証や語り伝えが必要な理由がわかる。新聞やテレビの役割はここにあるのではないか』、「ゾッとする。私たちが「知らない」ままを望む人もいるのだ。検証や語り伝えが必要な理由がわかる。新聞やテレビの役割はここにあるのではないか」、その通りだ。
・『歴史から目を背ける小池知事 731部隊だけではない。先日、関東大震災から100年が経過したが、こんなニュースがあった。 『小池知事、今年も追悼文送らず 関東大震災の朝鮮人慰霊式典 東京』(時事通信9月1日) 《東京都の小池百合子知事は、1日に都内で行われた関東大震災の朝鮮人犠牲者を慰霊する式典に追悼文を送らなかった。送付の取りやめは2017年から7年連続。小池氏は同日の定例記者会見で、理由について「毎年(都慰霊協会が営む)大法要において、都知事として犠牲となった全ての方々への哀悼の意を表している」と述べた。》 朝鮮人による暴動が起きている、などのデマがきっかけで虐殺は起きた。あの石原慎太郎元知事でさえ送っていた追悼文だが、2017年からとりやめている小池都知事。その理由について大法要において「犠牲となった全ての方々へ」哀悼の意を表しているというがこれは話のすり替えだ。朝鮮人犠牲者は地震で亡くなったわけではない。デマによって起きた虐殺で亡くなったからだ。小池都知事は歴史の事実に向き合おうとしなくなったと言える』、「あの石原慎太郎元知事でさえ送っていた追悼文だが、2017年からとりやめている小池都知事・・・その理由について大法要において「犠牲となった全ての方々へ」哀悼の意を表しているというがこれは話のすり替えだ。朝鮮人犠牲者は地震で亡くなったわけではない。デマによって起きた虐殺で亡くなったからだ」、その通りだ。
・『2017年に都議会で起きたこと では、追悼文を送付しなくなった2017年に何が起きたのか? 3月の都議会でのある自民党都議の質問がきっかけだった。『トリック「朝鮮人虐殺」をなかったことにしたい人たち』(加藤直樹 著)という本によるとこの自民党都議は、 《私は、小池知事にぜひ目を通してほしい本があります。ノンフィクション作家の工藤美代子さんの『関東大震災「朝鮮人虐殺」の真実』であります》 と語ったという。実は『トリック「朝鮮人虐殺」をなかったことにしたい人たち』では、工藤美代子・加藤康男夫妻が著した虐殺否定本を取り上げ、どのように間違っているかを検証し、仕掛けられた“トリック”の数々を明らかにしている。しかしネット上で広まる「虐殺は無かった」論は、工藤美代子氏らの言説を鵜呑みにしたものが多いのだ』、『トリック「朝鮮人虐殺」をなかったことにしたい人たち』といったデマゴーグを放置している「小池知事」の姿勢には腹が立つ。
・『「さまざまな説がある」と言うが… 先述した「731部隊」の記事でもそうだったが、公的な人間による「さまざまな説がある」という言葉はあたかも両論併記のように聞こえるが、それは事実から目をそらすことにつながる。しかし先週こんなニュースが。 『関東大震災の朝鮮人虐殺、松野官房長官「事実関係把握する記録見当たらない」』(読売新聞オンライン8月31日) 松野官房長官は30日の記者会見で、デマによって起きた朝鮮人虐殺について「政府として調査した限り、事実関係を把握することのできる記録が見当たらない」と述べた。新たに事実関係を調査する考えはあるかとの問いには否定的な認識を示した。 31日の会見では、過去に政府の会議が報告書で朝鮮人虐殺を認定していることについて「(報告書は)有識者が執筆したものであり、政府の見解を示したものではない」と述べた。 これらは「虐殺はなかった」論を擁護しているとは言わないまでも、野放しに加担してしまわないかという危惧を感じる。むしろ率先しておこなうべきは検証と反省ではないか? 過去の日本人が巨悪で現在の私たちは大丈夫というわけではないからだ。同じ人間だからである。情報不足に不安と興奮、それに偏見と無知が加われば時代は関係ない』、「これらは「虐殺はなかった」論を擁護しているとは言わないまでも、野放しに加担してしまわないかという危惧を感じる。むしろ率先しておこなうべきは検証と反省ではないか?」、その通りだ。
・『差別意識が生んだ悲劇(たとえばこの記事を見ていただきたい。) 『記者の目 関東大震災と朝鮮人虐殺 差別意識を克服できたか=島袋太輔(東京社会部)』(毎日新聞 9月1日) この記事では沖縄出身の男性ら3人が虐殺された「検見川事件」についても書かれている。沖縄出身の男性が殺された理由について「ウチナーンチュ(沖縄の人)はなまりがあるから、朝鮮人と思い込まれたのでは」と研究者は推測する。残る2人は秋田、三重両県の出身で2人もなまりを理由に殺されたとみる。震災当時に上京していた沖縄出身の歴史学者は「朝鮮人だろう」「言葉が少し違う」と詰問されるなどしたという。 沖縄出身の島袋記者は、 《朝鮮人だから武装蜂起をしようとしている、知らない言葉を使うから、発音が滑らかでないから朝鮮人に違いない――。こんな思い込みは、どれも差別意識の産物に他ならない。》 と書く』、「「検見川事件」についても書かれている。沖縄出身の男性が殺された理由について「ウチナーンチュ(沖縄の人)はなまりがあるから、朝鮮人と思い込まれたのでは」と研究者は推測する。残る2人は秋田、三重両県の出身で2人もなまりを理由に殺されたとみる」、歴史を正しくみる必要があり、「検見川事件」などについても改めて事実の検証を行うべきだ。
・『「無関心が行き着く先は差別だ」 昨年にはこんな出来事があった。 『ひろゆきさん「沖縄の人って文法通りしゃべれない」 配信動画の発言、また物議』(琉球新報10月12日) 『ひろゆき氏「沖縄の人って文法通りしゃべれない」 県民の“日本語”めぐり発言』(沖縄タイムス10月12日) 《辺野古新基地建設に対する抗議行動をやゆしているインターネット掲示板「2ちゃんねる」開設者のひろゆき(西村博之)氏が、自らのユーチューブ配信で「沖縄の人って文法通りしゃべれない」「きれいな日本語にならない人の方が多い」などとヘイトスピーチをしていたことが分かった。沖縄キリスト教学院大学の新垣誠教授(国際人権論)は「非常に危険だ。日本軍は『標準語』ではない沖縄の言葉を話す住民を虐殺した」と批判した。》(沖縄タイムス、前掲) 100年前は過去ではない。「差別意識がうかがえる出来事は今も散見される」「無関心が行き着く先は差別だ。教訓を学ばないから差別は繰り返されるのではないか」(毎日新聞、前掲)という言葉を考えたい』、「インターネット掲示板「2ちゃんねる」開設者のひろゆき(西村博之)氏が、自らのユーチューブ配信で「沖縄の人って文法通りしゃべれない」「きれいな日本語にならない人の方が多い」などとヘイトスピーチをしていたことが分かった」、「ひろゆき」氏には心底失望した。
第三に、本年1月17日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した歴史の謎研究会による「ハンムラビ法典「目には目を」は「やられたら、やり返せ!」ではなかった…本来の意味は?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/337335
・『近年、世界を取り巻く状況は目まぐるしく変化しています。現在進行中のウクライナ問題にしても、パレスチナ問題にしても、じつは歴史的背景を知っているかどうかで、理解度は大きく変わってくるのです。世界史はダイナミズムに満ちた壮大な物語、興味深いエピソードの宝庫です。もちろん、「大人の教養」としても、世界史の重要ポイントくらい頭に入れておきたいもの。『読み出したら止まらない 世界史の裏面』(青春出版社)から、興味深い世界史のエピソードをご紹介します』、興味深そうだ。
・『古代ギリシアの彫刻群が大英博物館に大量にそろっている理由 世界最大を誇るロンドンの大英博物館には、「エルギン・マーブル」と呼ばれる古代ギリシアの彫刻群を展示した一角がある。 エルギン・マーブルは、アテネのパルテノン神殿を飾っていた大理石のレリーフや彫刻のコレクションで、大英博物館の超目玉展示物。このコレクションを「エルギン・マーブル」(マーブルは大理石のこと)と呼ぶのは、今から約200年前、これらをアテネからイギリスに持ち込んだのが、エルギン伯(1766~1841)だったからだ。 エルギン伯は、大英帝国の在トルコ大使をつとめていたとき、当時オスマン帝国の支配下にあったギリシアを訪れて、パルテノン神殿を目のあたりにした。パルテノン神殿は、オスマン帝国の弾薬庫として利用されていた関係で、ヴェネチア軍の砲撃を受けて大破していたが、それでもその美しさは失われていなかった。) エルギン伯は、たちまちその建築に魅了され、トルコ政府の許可を得て、神殿の周囲にある大理石の彫像やレリーフの模造品を作った。さらに、1801年、エルギン伯は、トルコ政府要人との人脈を使って「アクロポリスでの測量、調査、発掘、さらに彫刻や碑文の持ち出しを認める」という勅許状を手にし、模造品を作るためといって彫像を掘り起こし、壁面をはぎとった。そして、それらを強引にイギリスまで運んでしまったのだ。 彼のやったことは泥棒同然の行為だったが、トルコ政府は、異民族・異教徒のギリシア文化を重視していなかったため、この略奪行為を黙認した。 しかし、イギリスで「他国の重要な文化遺産を盗むとはけしからん」という声が高まり、エルギン伯はついに議会で非難されるにいたった。 結局、彼は議会に命じられるままに、コレクションを大英博物館に売却せざるをえなくなった。買取価格は、わずか3万5000ポンド。大英博物館は、ずいぶんおトクな買い物をしたことになる。 ちなみに、大英博物館は、このコレクションのほかにも、エジプトのミイラやロゼッタストーンなど、旧植民地などから持ち帰ったものが多数所蔵されている』、「エルギン・マーブル」の帰属問題はまだギリシャ・英国間でもめている。例えば、AFPの2023年11月23日付けでは「英、ギリシャとの首脳会談ドタキャン 大英博物館の遺物返還めぐり」となったようだ。
・『ハンムラビ法典の「目には目を」は「やられたら、やり返せ!」とは違う意味だった? ハンムラビ法典は「目には目を、歯には歯を」というフレーズで知られる。 この「目には目を」、今は「やられたら、やり返せ!」という意味で使われることが多いが、本来の意味は少しちがう。 紀元前1770年頃のバビロニアでは、暴力行為が互いの報復によってエスカレートすることがしばしばあった。とくに、殺人に対する報復は、むしろ神聖な行為とみなされたので、報復が報復を呼び、互いに当事者がいなくなるまで繰り返された。 そこで、ハンムラビ王は、社会秩序を維持するために、「同害報復」の原則を定めた。報復する相手は当事者のみとし、同等の処罰を与えるというものだ。つまり、「やられたら、やり返せ!」ではなく、「やられても、必要以上にやり返したらダメですよ」というのが、「目には目を」の本来の意味である。) ハンムラビ法典は、すべての条文が完全なかたちでのこっている法典としては、世界最古のものだ。 ということもあって、さぞ立派な法律と思っている人も多いだろうが、それは誤解に近い。なにしろ、4000年も前の社会通念・モラルに基づいて成立した法律、現代の目からみれば、驚くような条文が並んでいる。 たとえば、全237条の第1条は、「人を死刑に価すると訴えて立証されなければ、死刑に処す」。まるで、トランプゲームの「ダウト」のようなシステムだ。しかも、立証する手段がないときは、被告者を水に投げ込んで溺れて死ねば有罪。生きて浮かんでくれば無罪で、逆に原告が死刑になる、というように、現代の目からみれば、乱暴きわまる法律が並んでいる』、「ハンムラビ法典では、「同害報復」の原則を定めた。報復する相手は当事者のみとし、同等の処罰を与えるというものだ。つまり、「やられたら、やり返せ!」ではなく、「やられても、必要以上にやり返したらダメですよ」というのが、「目には目を」の本来の意味である」、なるほど。
・『「黄巾の乱」「赤壁の戦い」… 三国時代の人口を激減させた『三国志』の背景 後漢末から、魏、呉、蜀が分立して晋が統一をはたすまでの三国時代は、大勢のヒーローが登場した時代である。蜀の劉備、魏の曹操、呉の孫権のほか、諸葛孔明、関羽、張飛らの活躍は、『三国志』でおなじみだろう。 彼らが登場した後漢末は、外戚と宦官の勢力が大きくなり、大土地所有が進行して、農民の生活がひじょうに苦しくなった時代だった。そして、184年に「黄巾(こうきん)の乱」と呼ばれる農民反乱が起きると、各地で立て続けに反乱が起こるようになり、地方の治安はメチャクチャになった。 だが、すでに末期症状を呈していた漢王朝には、その反乱を鎮圧するだけの力はなく、兵力をもつ豪族に官位を与えてこの事態を乗り切るしかなかった。 そのなかから、頭角を現したのが魏、呉、蜀の3国である。とくに、華北を支配した魏は3国のうち最大最強で、曹操は天下統一まであと少しのところにいた。 ところが、208年の「赤壁の戦い」で、蜀の劉備と呉の孫権の連合軍に、曹操は大敗を喫する。 もし、曹操がこの戦いに勝っていたら、まちがいなく天下を手にしていただろうが、歴史はそうならなかった。この敗北で曹操は中国統一をあきらめ、中国の分裂は決定的になった。)220年、曹操が没して息子の曹丕(そうひ)が跡を継ぐと、細々とつづいていた後漢の皇帝から帝位を譲られ、魏王朝が成立する。 だが、劉備や孫権はそれを認めず、翌年、劉備は蜀の皇帝に、229年には孫権は呉の皇帝に即位した。以後、三つ巴の戦いが続くが、一国が抜きん出ると、他の二国がそれを阻止する格好になったため、結局この中から天下をとる者は現れなかった。 戦乱が続くなか、飢饉による餓死者があいつぎ、後漢末には約5000万人だった人口が、この頃になると、魏・呉・蜀あわせても500万人までに激減していたという説もある。 三国時代とは、それくらい厳しい時代だったのである』、「後漢末には約5000万人だった人口が、この頃になると、魏・呉・蜀あわせても500万人までに激減していたという説もある」、凄い「飢饉」だったようだ。
・『ロシアの歴史は侵略の歴史か 広大な国のはじまりは北海道ほどの広さのモスクワ大公国 ロシアの国土面積は、約1710万平方キロメートル。日本の国土の約45倍、世界の陸地の8分の1に相当する広さを誇る。 そのロシアの歴史は、面積わずか8万平方キロメートル、北海道ほどの広さのモスクワ大公国からはじまった。 モスクワ大公国は当初、東方から侵攻してきたモンゴルのキプチャク・ハン国の支配下にあったが、イワン1世が他のロシア諸侯国に対する宗主権を獲得し、イワン3世の時代の1480年、キプチャク・ハン国から独立した。 そして、同3世は、東ローマ帝国最後の皇帝の姪と結婚し、自らをローマ帝国の後継者という意味で、「ツァーリ」(皇帝)の称号を用いた。1453年、東ローマ帝国が滅び、ギリシア正教の中心もロシアへ移ってきていた。 このイワン3世の孫にあたるのが、「雷帝(らいてい)」こと、イワン4世だ。彼は「全ロシアのツァーリ」を自認し、東方へ勢力を伸ばし、モンゴルの残存勢力から、シベリアの土地を次々と奪いとっていく。 そして、不凍港を求めて、黒海地方にも進出する。そうして、ロシアは東、そして南へと、国土を拡大していった。いずれも、強力な勢力がいないエリアだったので、かつて東方から攻めこんだモンゴルが大帝国を築いたように、今度はロシアが西から侵略を開始して、世界最大の国を築くことになったのだ』、「イワン3世の孫にあたるのが、「雷帝(らいてい)」こと、イワン4世だ。彼は「全ロシアのツァーリ」を自認し、東方へ勢力を伸ばし、モンゴルの残存勢力から、シベリアの土地を次々と奪いとっていく。 そして、不凍港を求めて、黒海地方にも進出する。そうして、ロシアは東、そして南へと、国土を拡大していった。いずれも、強力な勢力がいないエリアだったので、かつて東方から攻めこんだモンゴルが大帝国を築いたように、今度はロシアが西から侵略を開始して、世界最大の国を築くことになったのだ」、「イワン雷帝」を描いたエイゼンシュタイン監督の映画を観た記憶がある。ロシアの黄金期だったのだろう。
先ずは、昨年5月2日付けPRESIDENT Onlineが掲載sた軍事史研究家の藤井 非三四氏による「兵士1591人が「エリートのプライド」の犠牲になった…日本軍の「謹厳実直な武人」が無謀な作戦を立てたワケ 日本の破滅を招いた「恥の文化」」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/69854
・『日本人の「恥の意識」は、非常事態において大変な損害をもたらすことがある。軍事史研究家の藤井非三四さんの著書『太平洋戦争史に学ぶ日本人の戦い方』(集英社新書)より、1941年の第二次長沙作戦で起きた悲劇を紹介しよう――』、興味深そうだ。
・『「恥の文化」は時に国家の破滅をもたらす 日本は「恥の文化」だと語られて久しい。普段は恥を知ることは美徳かもしれないが、戦争などの非常事態となるとそれは国家の破滅をもたらしかねない。 国難に直面した国家の指導者や高級指揮官の多くは、厚顔無恥で融通無碍であるのがごく普通で、勝利を収めさえすればそんな姿勢をあれこれ批判されることもない。ところが日本では、初志貫徹、首尾一貫しなければ恥ずかしく面目ないと凝り固まり、方針転換を渋りに渋って万事手遅れとなる場合が多い。 どうして進んで自縄自縛となったり、意地になって行動の幅を狭めてしまったりするのかと考えると、そこに虚栄心が働いているからだ。自分がいかに意志堅固で、なにかをやり遂げる強い決意があったかを知ってもらい、できれば史書に名前を残してもらいたい、という政治家や高級指揮官の心根が見え隠れする。 太平洋戦争中に限っても、こうした硬直した戦い方をして無意味な損害を被った例は数多くある。まず、昭和16年12月24日からの第二次長沙作戦だ』、「日本では、初志貫徹、首尾一貫しなければ恥ずかしく面目ないと凝り固まり、方針転換を渋りに渋って万事手遅れとなる場合が多い。 どうして進んで自縄自縛となったり、意地になって行動の幅を狭めてしまったりするのかと考えると、そこに虚栄心が働いているからだ。自分がいかに意志堅固で、なにかをやり遂げる強い決意があったかを知ってもらい、できれば史書に名前を残してもらいたい、という政治家や高級指揮官の心根が見え隠れする・・・こうした硬直した戦い方をして無意味な損害を被った例は数多くある。まず、昭和16年12月24日からの第二次長沙作戦だ」、なるほど。
・『日本軍は「不落」の長沙を制圧しにかかった 中国戦線の進攻作戦が一段落した昭和13(1938)年末、支那派遣軍の任務は占領地の治安確立と安定を図ることが主となった。しかし、それだけでは部隊の雰囲気が退嬰的になりかねないとされ、長江沿岸地域で限定的な進攻作戦を行ない、中国軍の戦力を減殺させることとなった。 ところが新たに進攻した地域を確保するだけの戦力がないため、攻め込んでは後退するピストン作戦にならざるを得ない。これを見た中国国民政府は、「またもや日本軍を撃退」と宣伝にこれ努め、日本側を苛立たせていた。 昭和16年9月18日からの「加号」作戦(第一次長沙作戦)もこのピストン作戦だった。実施部隊は4個師団を基幹とする第11軍、軍司令官は阿南惟幾中将(大分、陸士18期、歩兵)だった。目標は中国が「不陥」(攻略不可能)と宣伝してきた湖南省の省都である長沙だ。ここを占領すれば中国に和平の気運が生まれるのではとの淡い期待もあった』、「新たに進攻した地域を確保するだけの戦力がないため、攻め込んでは後退するピストン作戦にならざるを得ない。これを見た中国国民政府は、「またもや日本軍を撃退」と宣伝にこれ努め、日本側を苛立たせていた」、なるほど。
・『軍に広がる「完全占領ではなかった」との噂 第11軍の諸隊は、洞庭湖に注ぐ新墻河の線から一斉に攻勢を発起、100キロ南の長沙を目指した。そして早くも9月27日、先遣隊が長沙市街に突入し、翌日には第4師団(大阪)が入城した。予定していた通り、第11軍は10月1日から反転を始め、11月初旬までにもとの態勢に戻った。 ところがすぐに支那派遣軍の内で妙な話が交わされるようになった。中国が言うように長沙市街の一部には中国軍が残っており、第11軍が主張するように完全占領ではなかったらしいという噂だ。 侍従武官も務め、謹厳実直な武人として知られる阿南軍司令官にとって、これは面目の問題となり、この恥辱を雪がなければと思い詰めたようだ。また、長沙入城を第4師団に譲った形となった第3師団(名古屋)の豊嶋房太郎師団長(山口、陸士22期、歩兵)としても、「俺が長沙に行けば、こんな話にならなかったのに」という気持ちになったかもしれない』、「中国が言うように長沙市街の一部には中国軍が残っており、第11軍が主張するように完全占領ではなかったらしいという噂だ。 侍従武官も務め、謹厳実直な武人として知られる阿南軍司令官にとって、これは面目の問題となり、この恥辱を雪がなければと思い詰めたようだ」、「阿南軍司令官にとって、これは面目の問題となり、この恥辱を雪がなければと思い詰めたようだ」、軍事作戦でこのような捉え方をしたとは、その時代錯誤感に驚かされた。
・『師団が転用される前に再び長沙を叩く 雪辱戦を行なうとなれば急がねばならない。第4師団は長沙入城で花道を飾って、フィリピンに転用された。これで支那派遣軍に残る精強な常設師団は第3師団と第6師団(熊本)だけとなり、これもまたほかの戦線に転用されるのは時間の問題と思われた。 そうなると支那派遣軍は警備師団、治安師団、独立混成旅団からなる治安軍となり、ピストン作戦すらも行なう戦力がなくなる。そこで第3師団と第6師団が残っているうちに、再び長沙作戦を行なわなければならないという話になった。 しかし、ひとたび南方作戦が始まれば、再度の長沙作戦など大本営はもちろん支那派遣軍も難色を示す。そこで阿南軍司令官が唱え出したのが「徳義の作戦」だった。 開戦劈頭、支那派遣軍の第23軍が香港攻略に向かう。これに対応すべく中国軍は広東省正面に圧力を加えるだろう。そこでこの中国軍の動きを牽制するため、第11軍は再度長沙正面で攻勢に出るという構想だ。 だれもがエゴイストになりがちな戦場で、自ら進んで友軍のために動くというのだから、まさに徳義の作戦、「武人阿南」の面目躍如ということになる(佐々木春隆『長沙作戦 緒戦の栄光に隠された敗北』光人社NF文庫、2007年)』、「ひとたび南方作戦が始まれば、再度の長沙作戦など大本営はもちろん支那派遣軍も難色を示す。そこで阿南軍司令官が唱え出したのが「徳義の作戦」だった。 開戦劈頭、支那派遣軍の第23軍が香港攻略に向かう。これに対応すべく中国軍は広東省正面に圧力を加えるだろう。そこでこの中国軍の動きを牽制するため、第11軍は再度長沙正面で攻勢に出るという構想だ」、なるほど。
・『軍司令部は長沙作戦に懐疑的だったが… まず問題となるのは、この作戦の効果だ。長沙と香港付近の広州とは粤漢線で結ばれているが、直線でも550キロ以上も離れている。長沙に圧力が加えられたからと、すぐさま反応するような敏感さを中国軍が持ち合わせているとは思えない。さらに第4師団がフィリピンに転用されたため、第11軍が投入できる兵力は第一次作戦の歩兵大隊46個基幹から22個基幹にまで減っている。 第11軍司令部でも、再度の長沙進攻には懐疑的な意見が多かった。参謀長の木下勇少将(福井、陸士26期、騎兵)は、もし香港攻略の第23軍が苦戦に陥ったならば、やむなく長沙に行かざるを得ないという程度の認識だった。後方担当の参謀副長だった二見秋三郎少将(神奈川、陸士28期、歩兵、航空転科)は、補給幹線を維持できるのは汨水までという姿勢を崩さなかった。作戦参謀の島村矩康中佐(高知、陸士36期、歩兵)にいたっては、ピストン作戦そのものに批判的だった』、「軍司令部は長沙作戦に懐疑的だったが…」、さらに第一線指揮官の多くも懐疑的だったと、作戦自体に無理があったようだ。
・『「恥ずかしさ」が軍事的合理性を押し退けた こうして長沙への再進攻はむずかしくなったが、阿南軍司令官は諦めなかった。ここで断念すれば恥ずかしい限りという意識が働いていたのだろう。加えて第3師団長の豊嶋房太郎も積極的だった。 この2人の関係だが、阿南が陸軍次官のときに豊嶋は憲兵司令官で直属の部下という形だった。そして豊嶋が第3師団長に転出すると、追いかける形で阿南が第11軍司令官となった。中央官衙で上司と部下、出征してからは軍司令官と師団長という関係は、そうあることではない。 豊嶋は第3師団長を昭和15年9月から務めているから、そろそろ転属の時期だ。本人としても花道を飾りたいという思いがあっただろうし、上官の阿南としても飾ってやりたいという気持ちになっても不思議ではない。また、第3師団は昭和12年8月以来、長らく中国戦線にあったから内地に帰還するか、ほかの戦線に転用される可能性が高まっていた。これまた大陸戦線の最後に快勝させて送り出してやりたいという気持ちにもなる。このような人情論が出てくると、軍事的な合理性が引っ込むことになりかねない。 友軍のための「徳義の作戦」という話が称賛の声とともに広まってしまった以上、第11軍としてもなにかしなければ格好がつかない。また、太平洋戦争が開戦となって香港攻略戦が始まると、第11軍正面の中国軍が動きだして南下しつつあることが偵知され、これを牽制することになった。具体的には兵力や補給の問題から長沙までは行かないが、屈原(楚の詩人)が入水したことで知られる汨水の南岸まで進出して中国軍を打撃することと決められた。徳義の作戦を屈原で知られる汨水一帯で展開するとなると、ヒロイズムに酔い出すのが当時の日本人だ』、「徳義の作戦を屈原で知られる汨水一帯で展開するとなると、ヒロイズムに酔い出すのが当時の日本人だ」、どういうことなのだろう。
・『軍総司令部には一言もなく独断で作戦を決行 第二次長沙作戦に発展する「さ号」作戦は、香港陥落の前日の昭和16年12月24日に始まった。豊嶋は留守近衛師団長(出征した師団のあとを管理する部隊長)への異動内示を受け取っていたが、これを握り潰して第一線に立った。このときすでに豊嶋は長沙に突進する決心を固めており、阿南との暗黙の合意もあったと見てよいだろう。 作戦は順調に進展し、第11軍主力は12月29日までに汨水の南岸に渡河していた。そしてその日の夕刻、中国軍が長沙に向けて後退中と航空偵察で知った阿南軍司令官は、即刻、長沙への追撃を決心した。支那派遣軍総司令部には一言もなく、阿南のまったくの独断だったという。歩兵大隊22個基幹という戦力で長沙まで押しだせるのかという問題はさておき、そもそも補給幹線の準備は岳州から汨水までであり、汨水から長沙までの70キロには補給の準備がない。 昭和17年1月1日から3日にかけて、第3師団と第6師団は長沙市街に取り付いた。ところが中国軍は長沙死守の構えを見せた。そのため軍旗を集めて保管していた第3師団の指揮所までが戦闘に巻き込まれ、豊嶋師団長自らが旗護中隊長を務めるという難戦に追い込まれた。これでは長沙の完全占領など無理と判断され、1月3日から北上、全軍反転となった』、「補給幹線の準備は岳州から汨水までであり、汨水から長沙までの70キロには補給の準備がない・・・これでは長沙の完全占領など無理と判断され、1月3日から北上、全軍反転となった」、なるほど。
・『1591人の命が不合理な判断で奪われた 第二次長沙作戦の本番は、実はそれからだった。中国軍は退却する日本軍の縦隊を両側から叩き上げた。これを中国では「天炉戦法」という。こちらに十分な火力があれば対応できるのだが、日本軍の第一線に弾薬が補給されたのは1月11日が最初で、それまでは一切補給がなかったというから、天炉戦法の前に苦戦するのも無理はない。その結果、第11軍は戦死1591人、戦傷4412人という大損害を被った(図表1参照)。 「長沙を完全には占領できなかった」「占拠5日で逃げ帰った」といった噂話をまともに受け止めて、これは耐えがたい恥辱、雪辱するとなって強行されたのが第二次長沙作戦であり、その結果がこの大損害だった。高い地位にある者に過剰な恥の意識があると、合理的な判断が阻害され、悲劇が生まれることをこの第二次長沙作戦は物語っている』、「第11軍は戦死1591人、戦傷4412人という大損害を被った・・・「長沙を完全には占領できなかった」「占拠5日で逃げ帰った」といった噂話をまともに受け止めて、これは耐えがたい恥辱、雪辱するとなって強行されたのが第二次長沙作戦であり、その結果がこの大損害だった。高い地位にある者に過剰な恥の意識があると、合理的な判断が阻害され、悲劇が生まれることをこの第二次長沙作戦は物語っている」、信じ難くお粗末極まる軍事作戦だ。
次に、9月5日付け文春オンライン「731部隊、朝鮮人虐殺…不都合な歴史を「なかったことにしたい人たち」に感じた“怖さ”」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/65538
・『あったことを無かったことにしたい人たちがいる。そんな怖さを感じた記事がこの夏にいくつかありました。 まずは「731部隊」についての企画記事を紹介します。信濃毎日新聞の「戦後78年 731部隊の記憶」です(8月11日~17日)。 第1回の記事は『県内元少年隊員2人にネット上で中傷の声 命懸けの証言「嘘」呼ばわり』。 戦時中、満州で細菌兵器開発や人体実験などの残虐行為を実行した731部隊について元隊員が命懸けで証言したら、ネットで「このジジイ、嘘ついてやがる。か、実在しない人物だな」などの誹謗中傷が少なくなかったという』、ネット右翼のいやがらせは、いつもながら自民党政府の意向を代弁した見苦しいものだ。
・『国の姿勢に「まだ隠そうとするのか」と疑問 731部隊の「少年隊」に入隊した清水英男さん(93)は、人体実験で犠牲になった捕虜や、故郷から遠く離れた地で亡くなった仲間のために「命を懸けて証言している」と語る。 同じく元隊員の須永鬼久太さん(95)は部隊の撤退時に上官から「公職に就かない」「部隊について口外しない」「隊員同士連絡を取らない」と3つの禁止命令を受けた。須永さんは証言が積み重ねられているにも関わらず、いまだに部隊の活動実態を認めようとしない国の姿勢に「まだ隠そうとするのか」と疑問を感じている。 そんななか、元隊員(清水さん)の体験談は昨年5月の飯田市平和祈念館のオープン時に展示が見送られた。その理由は「さまざまな意見がある」というものだった。 《「さまざまな意見」とは、細菌戦を示す資料は「現時点で確認されていない」とした2003年の小泉純一郎首相(当時)の国会答弁や、人体実験などの証言が「子どもたちには生々しすぎる」といった指摘を指す。》(8月16日) 「さまざまな意見」というが、清水さんは「みんなが本当のことを話してくれていたら、私の証言の展示が見送られることはなかったと思います」と述べる』、「証言が積み重ねられているにも関わらず、いまだに部隊の活動実態を認めようとしない国の姿勢に「まだ隠そうとするのか」と疑問を感じている」、同感である。
・『「知らない」ままを望む人もいる 取材を終えた記者は、部隊による残虐行為に対する元幹部たちの反省なき態度を感じたと書いている(8月17日)。 そして、 《部隊の実態について証言できる関係者が亡くなり、記録は残されず、部隊の存在そのものが忘れ去られる――。敗戦時に残虐行為の証拠を徹底的に消し去り、戦後も口を閉ざし続けた部隊の元幹部が待ち望んでいたのは、まさにそうした社会だったのだろう。》 ゾッとする。私たちが「知らない」ままを望む人もいるのだ。検証や語り伝えが必要な理由がわかる。新聞やテレビの役割はここにあるのではないか』、「ゾッとする。私たちが「知らない」ままを望む人もいるのだ。検証や語り伝えが必要な理由がわかる。新聞やテレビの役割はここにあるのではないか」、その通りだ。
・『歴史から目を背ける小池知事 731部隊だけではない。先日、関東大震災から100年が経過したが、こんなニュースがあった。 『小池知事、今年も追悼文送らず 関東大震災の朝鮮人慰霊式典 東京』(時事通信9月1日) 《東京都の小池百合子知事は、1日に都内で行われた関東大震災の朝鮮人犠牲者を慰霊する式典に追悼文を送らなかった。送付の取りやめは2017年から7年連続。小池氏は同日の定例記者会見で、理由について「毎年(都慰霊協会が営む)大法要において、都知事として犠牲となった全ての方々への哀悼の意を表している」と述べた。》 朝鮮人による暴動が起きている、などのデマがきっかけで虐殺は起きた。あの石原慎太郎元知事でさえ送っていた追悼文だが、2017年からとりやめている小池都知事。その理由について大法要において「犠牲となった全ての方々へ」哀悼の意を表しているというがこれは話のすり替えだ。朝鮮人犠牲者は地震で亡くなったわけではない。デマによって起きた虐殺で亡くなったからだ。小池都知事は歴史の事実に向き合おうとしなくなったと言える』、「あの石原慎太郎元知事でさえ送っていた追悼文だが、2017年からとりやめている小池都知事・・・その理由について大法要において「犠牲となった全ての方々へ」哀悼の意を表しているというがこれは話のすり替えだ。朝鮮人犠牲者は地震で亡くなったわけではない。デマによって起きた虐殺で亡くなったからだ」、その通りだ。
・『2017年に都議会で起きたこと では、追悼文を送付しなくなった2017年に何が起きたのか? 3月の都議会でのある自民党都議の質問がきっかけだった。『トリック「朝鮮人虐殺」をなかったことにしたい人たち』(加藤直樹 著)という本によるとこの自民党都議は、 《私は、小池知事にぜひ目を通してほしい本があります。ノンフィクション作家の工藤美代子さんの『関東大震災「朝鮮人虐殺」の真実』であります》 と語ったという。実は『トリック「朝鮮人虐殺」をなかったことにしたい人たち』では、工藤美代子・加藤康男夫妻が著した虐殺否定本を取り上げ、どのように間違っているかを検証し、仕掛けられた“トリック”の数々を明らかにしている。しかしネット上で広まる「虐殺は無かった」論は、工藤美代子氏らの言説を鵜呑みにしたものが多いのだ』、『トリック「朝鮮人虐殺」をなかったことにしたい人たち』といったデマゴーグを放置している「小池知事」の姿勢には腹が立つ。
・『「さまざまな説がある」と言うが… 先述した「731部隊」の記事でもそうだったが、公的な人間による「さまざまな説がある」という言葉はあたかも両論併記のように聞こえるが、それは事実から目をそらすことにつながる。しかし先週こんなニュースが。 『関東大震災の朝鮮人虐殺、松野官房長官「事実関係把握する記録見当たらない」』(読売新聞オンライン8月31日) 松野官房長官は30日の記者会見で、デマによって起きた朝鮮人虐殺について「政府として調査した限り、事実関係を把握することのできる記録が見当たらない」と述べた。新たに事実関係を調査する考えはあるかとの問いには否定的な認識を示した。 31日の会見では、過去に政府の会議が報告書で朝鮮人虐殺を認定していることについて「(報告書は)有識者が執筆したものであり、政府の見解を示したものではない」と述べた。 これらは「虐殺はなかった」論を擁護しているとは言わないまでも、野放しに加担してしまわないかという危惧を感じる。むしろ率先しておこなうべきは検証と反省ではないか? 過去の日本人が巨悪で現在の私たちは大丈夫というわけではないからだ。同じ人間だからである。情報不足に不安と興奮、それに偏見と無知が加われば時代は関係ない』、「これらは「虐殺はなかった」論を擁護しているとは言わないまでも、野放しに加担してしまわないかという危惧を感じる。むしろ率先しておこなうべきは検証と反省ではないか?」、その通りだ。
・『差別意識が生んだ悲劇(たとえばこの記事を見ていただきたい。) 『記者の目 関東大震災と朝鮮人虐殺 差別意識を克服できたか=島袋太輔(東京社会部)』(毎日新聞 9月1日) この記事では沖縄出身の男性ら3人が虐殺された「検見川事件」についても書かれている。沖縄出身の男性が殺された理由について「ウチナーンチュ(沖縄の人)はなまりがあるから、朝鮮人と思い込まれたのでは」と研究者は推測する。残る2人は秋田、三重両県の出身で2人もなまりを理由に殺されたとみる。震災当時に上京していた沖縄出身の歴史学者は「朝鮮人だろう」「言葉が少し違う」と詰問されるなどしたという。 沖縄出身の島袋記者は、 《朝鮮人だから武装蜂起をしようとしている、知らない言葉を使うから、発音が滑らかでないから朝鮮人に違いない――。こんな思い込みは、どれも差別意識の産物に他ならない。》 と書く』、「「検見川事件」についても書かれている。沖縄出身の男性が殺された理由について「ウチナーンチュ(沖縄の人)はなまりがあるから、朝鮮人と思い込まれたのでは」と研究者は推測する。残る2人は秋田、三重両県の出身で2人もなまりを理由に殺されたとみる」、歴史を正しくみる必要があり、「検見川事件」などについても改めて事実の検証を行うべきだ。
・『「無関心が行き着く先は差別だ」 昨年にはこんな出来事があった。 『ひろゆきさん「沖縄の人って文法通りしゃべれない」 配信動画の発言、また物議』(琉球新報10月12日) 『ひろゆき氏「沖縄の人って文法通りしゃべれない」 県民の“日本語”めぐり発言』(沖縄タイムス10月12日) 《辺野古新基地建設に対する抗議行動をやゆしているインターネット掲示板「2ちゃんねる」開設者のひろゆき(西村博之)氏が、自らのユーチューブ配信で「沖縄の人って文法通りしゃべれない」「きれいな日本語にならない人の方が多い」などとヘイトスピーチをしていたことが分かった。沖縄キリスト教学院大学の新垣誠教授(国際人権論)は「非常に危険だ。日本軍は『標準語』ではない沖縄の言葉を話す住民を虐殺した」と批判した。》(沖縄タイムス、前掲) 100年前は過去ではない。「差別意識がうかがえる出来事は今も散見される」「無関心が行き着く先は差別だ。教訓を学ばないから差別は繰り返されるのではないか」(毎日新聞、前掲)という言葉を考えたい』、「インターネット掲示板「2ちゃんねる」開設者のひろゆき(西村博之)氏が、自らのユーチューブ配信で「沖縄の人って文法通りしゃべれない」「きれいな日本語にならない人の方が多い」などとヘイトスピーチをしていたことが分かった」、「ひろゆき」氏には心底失望した。
第三に、本年1月17日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した歴史の謎研究会による「ハンムラビ法典「目には目を」は「やられたら、やり返せ!」ではなかった…本来の意味は?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/337335
・『近年、世界を取り巻く状況は目まぐるしく変化しています。現在進行中のウクライナ問題にしても、パレスチナ問題にしても、じつは歴史的背景を知っているかどうかで、理解度は大きく変わってくるのです。世界史はダイナミズムに満ちた壮大な物語、興味深いエピソードの宝庫です。もちろん、「大人の教養」としても、世界史の重要ポイントくらい頭に入れておきたいもの。『読み出したら止まらない 世界史の裏面』(青春出版社)から、興味深い世界史のエピソードをご紹介します』、興味深そうだ。
・『古代ギリシアの彫刻群が大英博物館に大量にそろっている理由 世界最大を誇るロンドンの大英博物館には、「エルギン・マーブル」と呼ばれる古代ギリシアの彫刻群を展示した一角がある。 エルギン・マーブルは、アテネのパルテノン神殿を飾っていた大理石のレリーフや彫刻のコレクションで、大英博物館の超目玉展示物。このコレクションを「エルギン・マーブル」(マーブルは大理石のこと)と呼ぶのは、今から約200年前、これらをアテネからイギリスに持ち込んだのが、エルギン伯(1766~1841)だったからだ。 エルギン伯は、大英帝国の在トルコ大使をつとめていたとき、当時オスマン帝国の支配下にあったギリシアを訪れて、パルテノン神殿を目のあたりにした。パルテノン神殿は、オスマン帝国の弾薬庫として利用されていた関係で、ヴェネチア軍の砲撃を受けて大破していたが、それでもその美しさは失われていなかった。) エルギン伯は、たちまちその建築に魅了され、トルコ政府の許可を得て、神殿の周囲にある大理石の彫像やレリーフの模造品を作った。さらに、1801年、エルギン伯は、トルコ政府要人との人脈を使って「アクロポリスでの測量、調査、発掘、さらに彫刻や碑文の持ち出しを認める」という勅許状を手にし、模造品を作るためといって彫像を掘り起こし、壁面をはぎとった。そして、それらを強引にイギリスまで運んでしまったのだ。 彼のやったことは泥棒同然の行為だったが、トルコ政府は、異民族・異教徒のギリシア文化を重視していなかったため、この略奪行為を黙認した。 しかし、イギリスで「他国の重要な文化遺産を盗むとはけしからん」という声が高まり、エルギン伯はついに議会で非難されるにいたった。 結局、彼は議会に命じられるままに、コレクションを大英博物館に売却せざるをえなくなった。買取価格は、わずか3万5000ポンド。大英博物館は、ずいぶんおトクな買い物をしたことになる。 ちなみに、大英博物館は、このコレクションのほかにも、エジプトのミイラやロゼッタストーンなど、旧植民地などから持ち帰ったものが多数所蔵されている』、「エルギン・マーブル」の帰属問題はまだギリシャ・英国間でもめている。例えば、AFPの2023年11月23日付けでは「英、ギリシャとの首脳会談ドタキャン 大英博物館の遺物返還めぐり」となったようだ。
・『ハンムラビ法典の「目には目を」は「やられたら、やり返せ!」とは違う意味だった? ハンムラビ法典は「目には目を、歯には歯を」というフレーズで知られる。 この「目には目を」、今は「やられたら、やり返せ!」という意味で使われることが多いが、本来の意味は少しちがう。 紀元前1770年頃のバビロニアでは、暴力行為が互いの報復によってエスカレートすることがしばしばあった。とくに、殺人に対する報復は、むしろ神聖な行為とみなされたので、報復が報復を呼び、互いに当事者がいなくなるまで繰り返された。 そこで、ハンムラビ王は、社会秩序を維持するために、「同害報復」の原則を定めた。報復する相手は当事者のみとし、同等の処罰を与えるというものだ。つまり、「やられたら、やり返せ!」ではなく、「やられても、必要以上にやり返したらダメですよ」というのが、「目には目を」の本来の意味である。) ハンムラビ法典は、すべての条文が完全なかたちでのこっている法典としては、世界最古のものだ。 ということもあって、さぞ立派な法律と思っている人も多いだろうが、それは誤解に近い。なにしろ、4000年も前の社会通念・モラルに基づいて成立した法律、現代の目からみれば、驚くような条文が並んでいる。 たとえば、全237条の第1条は、「人を死刑に価すると訴えて立証されなければ、死刑に処す」。まるで、トランプゲームの「ダウト」のようなシステムだ。しかも、立証する手段がないときは、被告者を水に投げ込んで溺れて死ねば有罪。生きて浮かんでくれば無罪で、逆に原告が死刑になる、というように、現代の目からみれば、乱暴きわまる法律が並んでいる』、「ハンムラビ法典では、「同害報復」の原則を定めた。報復する相手は当事者のみとし、同等の処罰を与えるというものだ。つまり、「やられたら、やり返せ!」ではなく、「やられても、必要以上にやり返したらダメですよ」というのが、「目には目を」の本来の意味である」、なるほど。
・『「黄巾の乱」「赤壁の戦い」… 三国時代の人口を激減させた『三国志』の背景 後漢末から、魏、呉、蜀が分立して晋が統一をはたすまでの三国時代は、大勢のヒーローが登場した時代である。蜀の劉備、魏の曹操、呉の孫権のほか、諸葛孔明、関羽、張飛らの活躍は、『三国志』でおなじみだろう。 彼らが登場した後漢末は、外戚と宦官の勢力が大きくなり、大土地所有が進行して、農民の生活がひじょうに苦しくなった時代だった。そして、184年に「黄巾(こうきん)の乱」と呼ばれる農民反乱が起きると、各地で立て続けに反乱が起こるようになり、地方の治安はメチャクチャになった。 だが、すでに末期症状を呈していた漢王朝には、その反乱を鎮圧するだけの力はなく、兵力をもつ豪族に官位を与えてこの事態を乗り切るしかなかった。 そのなかから、頭角を現したのが魏、呉、蜀の3国である。とくに、華北を支配した魏は3国のうち最大最強で、曹操は天下統一まであと少しのところにいた。 ところが、208年の「赤壁の戦い」で、蜀の劉備と呉の孫権の連合軍に、曹操は大敗を喫する。 もし、曹操がこの戦いに勝っていたら、まちがいなく天下を手にしていただろうが、歴史はそうならなかった。この敗北で曹操は中国統一をあきらめ、中国の分裂は決定的になった。)220年、曹操が没して息子の曹丕(そうひ)が跡を継ぐと、細々とつづいていた後漢の皇帝から帝位を譲られ、魏王朝が成立する。 だが、劉備や孫権はそれを認めず、翌年、劉備は蜀の皇帝に、229年には孫権は呉の皇帝に即位した。以後、三つ巴の戦いが続くが、一国が抜きん出ると、他の二国がそれを阻止する格好になったため、結局この中から天下をとる者は現れなかった。 戦乱が続くなか、飢饉による餓死者があいつぎ、後漢末には約5000万人だった人口が、この頃になると、魏・呉・蜀あわせても500万人までに激減していたという説もある。 三国時代とは、それくらい厳しい時代だったのである』、「後漢末には約5000万人だった人口が、この頃になると、魏・呉・蜀あわせても500万人までに激減していたという説もある」、凄い「飢饉」だったようだ。
・『ロシアの歴史は侵略の歴史か 広大な国のはじまりは北海道ほどの広さのモスクワ大公国 ロシアの国土面積は、約1710万平方キロメートル。日本の国土の約45倍、世界の陸地の8分の1に相当する広さを誇る。 そのロシアの歴史は、面積わずか8万平方キロメートル、北海道ほどの広さのモスクワ大公国からはじまった。 モスクワ大公国は当初、東方から侵攻してきたモンゴルのキプチャク・ハン国の支配下にあったが、イワン1世が他のロシア諸侯国に対する宗主権を獲得し、イワン3世の時代の1480年、キプチャク・ハン国から独立した。 そして、同3世は、東ローマ帝国最後の皇帝の姪と結婚し、自らをローマ帝国の後継者という意味で、「ツァーリ」(皇帝)の称号を用いた。1453年、東ローマ帝国が滅び、ギリシア正教の中心もロシアへ移ってきていた。 このイワン3世の孫にあたるのが、「雷帝(らいてい)」こと、イワン4世だ。彼は「全ロシアのツァーリ」を自認し、東方へ勢力を伸ばし、モンゴルの残存勢力から、シベリアの土地を次々と奪いとっていく。 そして、不凍港を求めて、黒海地方にも進出する。そうして、ロシアは東、そして南へと、国土を拡大していった。いずれも、強力な勢力がいないエリアだったので、かつて東方から攻めこんだモンゴルが大帝国を築いたように、今度はロシアが西から侵略を開始して、世界最大の国を築くことになったのだ』、「イワン3世の孫にあたるのが、「雷帝(らいてい)」こと、イワン4世だ。彼は「全ロシアのツァーリ」を自認し、東方へ勢力を伸ばし、モンゴルの残存勢力から、シベリアの土地を次々と奪いとっていく。 そして、不凍港を求めて、黒海地方にも進出する。そうして、ロシアは東、そして南へと、国土を拡大していった。いずれも、強力な勢力がいないエリアだったので、かつて東方から攻めこんだモンゴルが大帝国を築いたように、今度はロシアが西から侵略を開始して、世界最大の国を築くことになったのだ」、「イワン雷帝」を描いたエイゼンシュタイン監督の映画を観た記憶がある。ロシアの黄金期だったのだろう。
タグ:歴史問題 (18)(兵士1591人が「エリートのプライド」の犠牲になった…日本軍の「謹厳実直な武人」が無謀な作戦を立てたワケ 日本の破滅を招いた「恥の文化」、:731部隊 朝鮮人虐殺…不都合な歴史を「なかったことにしたい人たち」に感じた“怖さ”、「黒船」が日本にきたとき 実は「ペリー」もまた「驚愕」していた…彼が「日本人」について語った「驚くべき内容」) PRESIDENT ONLINE 藤井 非三四氏による「兵士1591人が「エリートのプライド」の犠牲になった…日本軍の「謹厳実直な武人」が無謀な作戦を立てたワケ 日本の破滅を招いた「恥の文化」」 「日本では、初志貫徹、首尾一貫しなければ恥ずかしく面目ないと凝り固まり、方針転換を渋りに渋って万事手遅れとなる場合が多い。 どうして進んで自縄自縛となったり、意地になって行動の幅を狭めてしまったりするのかと考えると、そこに虚栄心が働いているからだ。自分がいかに意志堅固で、なにかをやり遂げる強い決意があったかを知ってもらい、できれば史書に名前を残してもらいたい、という政治家や高級指揮官の心根が見え隠れする・・・こうした硬直した戦い方をして無意味な損害を被った例は数多くある。まず、昭和16年12月24日からの 第二次長沙作戦だ」、なるほど。 「新たに進攻した地域を確保するだけの戦力がないため、攻め込んでは後退するピストン作戦にならざるを得ない。これを見た中国国民政府は、「またもや日本軍を撃退」と宣伝にこれ努め、日本側を苛立たせていた」、なるほど。 「中国が言うように長沙市街の一部には中国軍が残っており、第11軍が主張するように完全占領ではなかったらしいという噂だ。 侍従武官も務め、謹厳実直な武人として知られる阿南軍司令官にとって、これは面目の問題となり、この恥辱を雪がなければと思い詰めたようだ」、「阿南軍司令官にとって、これは面目の問題となり、この恥辱を雪がなければと思い詰めたようだ」、軍事作戦でこのような捉え方をしたとは、その時代錯誤感に驚かされた。 「ひとたび南方作戦が始まれば、再度の長沙作戦など大本営はもちろん支那派遣軍も難色を示す。そこで阿南軍司令官が唱え出したのが「徳義の作戦」だった。 開戦劈頭、支那派遣軍の第23軍が香港攻略に向かう。これに対応すべく中国軍は広東省正面に圧力を加えるだろう。そこでこの中国軍の動きを牽制するため、第11軍は再度長沙正面で攻勢に出るという構想だ」、なるほど。 「軍司令部は長沙作戦に懐疑的だったが…」、さらに第一線指揮官の多くも懐疑的だったと、作戦自体に無理があったようだ。 「徳義の作戦を屈原で知られる汨水一帯で展開するとなると、ヒロイズムに酔い出すのが当時の日本人だ」、どういうことなのだろう。 「補給幹線の準備は岳州から汨水までであり、汨水から長沙までの70キロには補給の準備がない・・・これでは長沙の完全占領など無理と判断され、1月3日から北上、全軍反転となった」、なるほど。 「第11軍は戦死1591人、戦傷4412人という大損害を被った・・・「長沙を完全には占領できなかった」「占拠5日で逃げ帰った」といった噂話をまともに受け止めて、これは耐えがたい恥辱、雪辱するとなって強行されたのが第二次長沙作戦であり、その結果がこの大損害だった。高い地位にある者に過剰な恥の意識があると、合理的な判断が阻害され、悲劇が生まれることをこの第二次長沙作戦は物語っている」、信じ難くお粗末極まる軍事作戦だ。 文春オンライン「731部隊、朝鮮人虐殺…不都合な歴史を「なかったことにしたい人たち」に感じた“怖さ”」 ネット右翼のいやがらせは、いつもながら自民党政府の意向を代弁した見苦しいものだ。 「証言が積み重ねられているにも関わらず、いまだに部隊の活動実態を認めようとしない国の姿勢に「まだ隠そうとするのか」と疑問を感じている」、同感である。 「ゾッとする。私たちが「知らない」ままを望む人もいるのだ。検証や語り伝えが必要な理由がわかる。新聞やテレビの役割はここにあるのではないか」、その通りだ。 「あの石原慎太郎元知事でさえ送っていた追悼文だが、2017年からとりやめている小池都知事・・・その理由について大法要において「犠牲となった全ての方々へ」哀悼の意を表しているというがこれは話のすり替えだ。朝鮮人犠牲者は地震で亡くなったわけではない。デマによって起きた虐殺で亡くなったからだ」、その通りだ。 『トリック「朝鮮人虐殺」をなかったことにしたい人たち』といったデマゴーグを放置している「小池知事」の姿勢には腹が立つ。 「これらは「虐殺はなかった」論を擁護しているとは言わないまでも、野放しに加担してしまわないかという危惧を感じる。むしろ率先しておこなうべきは検証と反省ではないか?」、その通りだ。 「「検見川事件」についても書かれている。沖縄出身の男性が殺された理由について「ウチナーンチュ(沖縄の人)はなまりがあるから、朝鮮人と思い込まれたのでは」と研究者は推測する。残る2人は秋田、三重両県の出身で2人もなまりを理由に殺されたとみる」、歴史を正しくみる必要があり、「検見川事件」などについても改めて事実の検証を行うべきだ。 「インターネット掲示板「2ちゃんねる」開設者のひろゆき(西村博之)氏が、自らのユーチューブ配信で「沖縄の人って文法通りしゃべれない」「きれいな日本語にならない人の方が多い」などとヘイトスピーチをしていたことが分かった」、「ひろゆき」氏には心底失望した。 ダイヤモンド・オンライン 歴史の謎研究会による「ハンムラビ法典「目には目を」は「やられたら、やり返せ!」ではなかった…本来の意味は?」 『読み出したら止まらない 世界史の裏面』(青春出版社) 「エルギン・マーブル」の帰属問題はまだギリシャ・英国間でもめている。例えば、AFPの2023年11月23日付けでは「英、ギリシャとの首脳会談ドタキャン 大英博物館の遺物返還めぐり」となったようだ。 「ハンムラビ法典では、「同害報復」の原則を定めた。報復する相手は当事者のみとし、同等の処罰を与えるというものだ。つまり、「やられたら、やり返せ!」ではなく、「やられても、必要以上にやり返したらダメですよ」というのが、「目には目を」の本来の意味である」、なるほど。 「後漢末には約5000万人だった人口が、この頃になると、魏・呉・蜀あわせても500万人までに激減していたという説もある」、凄い「飢饉」だったようだ。 「イワン3世の孫にあたるのが、「雷帝(らいてい)」こと、イワン4世だ。彼は「全ロシアのツァーリ」を自認し、東方へ勢力を伸ばし、モンゴルの残存勢力から、シベリアの土地を次々と奪いとっていく。 そして、不凍港を求めて、黒海地方にも進出する。そうして、ロシアは東、そして南へと、国土を拡大していった。いずれも、強力な勢力がいないエリアだったので、かつて東方から攻めこんだモンゴルが大帝国を築いたように、今度はロシアが西から侵略を開始して、世界最大の国を築くことになったのだ」、 「イワン雷帝」を描いたエイゼンシュタイン監督の映画を観た記憶がある。ロシアの黄金期だったのだろう。