半導体産業(その13)(国策ラピダスとTSMC"2つの戦略"で決定的な差 早大・長内教授「ビジネスにストーリーがない」、政府支援の光と影「半導体人材」が増えぬ深刻事情 東大・竹内氏「AI半導体で日本に勝ち筋はある」) [産業動向]
半導体産業については、本年4月11日に取上げた。今日は、(その13)(国策ラピダスとTSMC"2つの戦略"で決定的な差 早大・長内教授「ビジネスにストーリーがない」、政府支援の光と影「半導体人材」が増えぬ深刻事情 東大・竹内氏「AI半導体で日本に勝ち筋はある」)であう。
先ずは、本年4月30日付け東洋経済オンライン「国策ラピダスとTSMC"2つの戦略"で決定的な差 早大・長内教授「ビジネスにストーリーがない」を紹介しよう。
・『世界最先端となる「2ナノ」世代の半導体量産を目指す国策企業のラピダス。これまでに政府から最大9200億円の支援を受けることが発表されている。 同業の半導体製造受託企業(ファウンドリー)で世界トップの台湾TSMCとの競合を避けるため、ラピダスは数量を追わず製造のスピードを重視するという「中規模ファウンドリー」戦略を打ち出している。同社について「ビジネスへの考え方がまったく見えてこない」と指摘するのは、『半導体逆転戦略』を上梓した早稲田大学大学院経営管理研究科の長内厚教授だ。 経営学の観点から、ラピダスの問題はどこにあるのか(Qは聞き手の質問、Aは長内教授の回答)』、「経営学の観点から、ラピダスの問題はどこにあるのか」とは興味深そうだ。
・『失敗をトレースする懸念 Q:ラピダスの経営戦略を、どう評価しますか。 A:ラピダスは日本のエレクトロニクス産業が失敗してきたプロセスをそのままトレースしそうな気がしてならない。 問題点は2つある。1つは、どう他社と差をつけるのかが怪しいことだ。 2ナノの技術ではアメリカのIBMと、製造装置ではベルギーの半導体研究機関であるimecと提携している。ただ多くのエンジニアが指摘しているが、どちらも量産のノウハウを持っているわけではない。規模を追わない中規模ファウンドリーで、本当にコスト競争力のある半導体が作れるのかという指摘もある。 量産できたとしても、2ナノであることが差別化要因にならない可能性が大きい。TSMCもサムスン電子も2025年から2ナノの生産を開始すると言っている。 ラピダスはうまくいっても2027年。今誰も作ってないから一見差があるように見えているだけで、2年後の状況を考えたときに本当にそうなのかはわからない。) もう1つは、誰に売るのかが怪しいことだ。 たとえばTSMCの熊本工場は、すでにトヨタやソニーなど顧客が見えている。自動車産業では半導体需要がますます増えるし、ソニーのCMOSイメージセンサー向けのロジック半導体需要はこれからも旺盛だろう。 ラピダスにはそうしたストーリーがなく、とにかく「技術的に新しいものを作ればAIか何か向けに売れるはず」という思い込みがある。戦略の基本は「どう製品を差別化するか」と「どう敵がいない新しい市場に出るか」。こうしたビジネスのありように対する考えが、まったく見えてこない』、「ラピダスにはそうしたストーリーがなく、とにかく「技術的に新しいものを作ればAIか何か向けに売れるはず」という思い込みがある」、甘い見方だ。
・『TSMCのさまざまな施策 Q:ビジネスのありようとは、具体的にどのようなものでしょうか? A:TSMC創業者のモリス・チャンは、台湾当局のプロジェクトで新規開発案件を進めるとき、エンジニアにビジネスマインドを持たせるために「フィフティ・フィフィ」の制度を導入した。開発費の50%は税金から出す、残り50%はエンジニアが自分で民間からの投資を募ってこいと。 (長内氏の略歴はリンク先参照)そうすることで、ビジネス的にありえないストーリーでは出資が得られず研究が前に進まない。結果的にエンジニアがビジネスマインドを高めていくしかなかった。 そういうさまざまな施策があって今のTSMCがある。技術習得からビジネスまで、エンジニアが全体を見られる状態を作ったことが大きかった。 日本のエンジニアが単に技術領域でがんばっても、TSMCには絶対になれない。TSMCより規模の小さいファウンドリーを目指して、この業界で本当に生き残れるのかは怪しい。) Q:ラピダスは差別化戦略として、新しい製造方法を導入することで製造期間を大幅に短縮することを掲げています。 A:戦略の可能性が狭すぎる。スピード戦略を掲げて、達成できなかったときにどうするのか。プランBがない。そうとうな額の公費を長い間つぎ込んだ末にプランBがないというのは、許される状況ではない。 もちろんラピダスが追い詰められた結果、そこでブレイクスルーを生み出す可能性はゼロじゃない。もしかしたらTSMCをはじめ大手企業は、規模が大きいのでラピダスのような効率化を図らなくてもよかっただけなのかもしれない。でもラピダスが実現できたら、競合も同じことをやり始めるだろう。そのとき、ラピダスの優位性は何になるのか』、「ラピダスは差別化戦略として、新しい製造方法を導入することで製造期間を大幅に短縮することを掲げています。 A:戦略の可能性が狭すぎる。スピード戦略を掲げて、達成できなかったときにどうするのか。プランBがない。そうとうな額の公費を長い間つぎ込んだ末にプランBがないというのは、許される状況ではない」、厳しいようだが、その通りだ。
・『装置・材料メーカーはラピダスが最優先ではない Q:量産に欠かせない装置や材料メーカーとの連携にも、疑問を呈しています。 A:国が前のめりだからこそ、 各社の思惑が読みにくくなっている。出資会社も含めて前向きな意思表示をせざるを得なくなっている。装置や材料など関連メーカーにとって、何社かある顧客の1つとして一定のリップサービスは必要かもしれない。でも海外の大手メーカーよりも最優先でラピダスに協力するわけではないだろう。 だから、とにかく半導体生産では数を追うことが重要。生産数が増えれば、それだけ装置や材料メーカーにとって重要顧客になる。 Q:とはいえ、これまでに1兆円近くの公費が投入されています。これからラピダスが目指すべき方向とは。 A:量産を目指すのなら、なぜ量産ノウハウを持っている会社と提携しないのかが不思議だ。現状では研究機関のimecやIBMと協力しているのみ。ラピダスの小池淳義社長は日立製作所時代、台湾大手ファウンドリーであるUMCと合弁を組んだ経験もある。なぜ今回はそういう経験のあるファウンドリーを巻き込んでいないのか。) できない事情があるのかもしれないが、もし軽視しているのだとしたら非常に問題だ。「韓国や台湾にできることは日本でもできるんだ」という根拠のない精神論で彼らと手を組んでいないのだとするともったいない。 逆に、自分たちでは量産を目指さないのも1つのやり方かもしれない。アメリカに製品のノウハウを提供するようなテスト用ラインだけを持った会社になるというような。 もしくは日本でしか作れないものを作るという意味では、NTTが開発している光電融合技術の開発を担う。この技術の成否も、日本にとっては世界をリードできるかどうか重要なポイントだ。そうすれば、少なくとも2030年までのストーリーが見えてくるはず。 つまり、何かしらのビジネスの仕掛けとしてラピダスにしかできないことを考えていく。その中の1つに、UMCをはじめ韓国や台湾と協業していくという考え方があるのではないか』、「これからラピダスが目指すべき方向とは。 A:量産を目指すのなら、なぜ量産ノウハウを持っている会社と提携しないのかが不思議だ。現状では研究機関のimecやIBMと協力しているのみ。ラピダスの小池淳義社長は日立製作所時代、台湾大手ファウンドリーであるUMCと合弁を組んだ経験もある。なぜ今回はそういう経験のあるファウンドリーを巻き込んでいないのか。) できない事情があるのかもしれないが、もし軽視しているのだとしたら非常に問題だ。「韓国や台湾にできることは日本でもできるんだ」という根拠のない精神論で彼らと手を組んでいないのだとするともったいない。 逆に、自分たちでは量産を目指さないのも1つのやり方かもしれない。アメリカに製品のノウハウを提供するようなテスト用ラインだけを持った会社になるというような。 もしくは日本でしか作れないものを作るという意味では、NTTが開発している光電融合技術の開発を担う。この技術の成否も、日本にとっては世界をリードできるかどうか重要なポイント」、その通りだ。
・『TSMC熊本工場にはストーリーがある Q:一方でTSMC熊本には対照的な評価をしています。 A:今までの日本の技術戦略とはかなり様相が違う。 元々、経済産業省としては先端半導体の工場を誘致していたが、結果的には10年以上前の技術の半導体工場を作ることになった。それでも日本に誘致する意味があると判断したのだ。 ソニーや自動車産業というビジネスのストーリーが見えていて、それに必要な技術水準がある。必ずしも最先端技術が必要なのではない、というストーリーを実際に実現させたこと自体が日本では画期的だ。 加えて、第2工場、第3工場と連続的に投資を進めていっているところも理想的。既存工場からの利益を次の投資に回すという当たり前のことをやっている。 「現行の技術で失敗したけど、新しい技術で挽回するんです」という発想を日本は繰り返してきた。だがこれでは投資の原資がどんどん先細っていくので、結局いつまで経っても勝てない。こうした点がラピダスとは対照的だ。) Q:今は別々で動いている、TSMC熊本とラピダスのプロジェクトをつなげる提案もしています。 2つのプロジェクトを1つの戦略でまとめる会社を実際に作るかどうかは別として、新しいプロジェクトや投資を行うためには、基本的には既存のビジネスから得た収益を流すに尽きる。それができる構図を日本としてどう作るかが重要だ。 政府は両方にお金を出している立場なので、そうした連携にうまく持っていければベストだ。 Q:そもそも、政府が特定の産業や企業に多額の公費を投入することの是非についてはどう考えますか? A:中途半端な投資は意味がないので、ある程度まとまった額を拠出したことは評価できる。あとは、まとまった額を出すからには、簡単に諦めないでほしいということだけ。中途半端に進めて、結局アメリカに売却するというのが、いちばん避けなければならないストーリーだ。 著者フォローすると、石阪 友貴さんの最新記事をメールでお知らせします』、「「政府が特定の産業や企業に多額の公費を投入することの是非についてはどう考えますか?A:中途半端な投資は意味がないので、ある程度まとまった額を拠出したことは評価できる。あとは、まとまった額を出すからには、簡単に諦めないでほしいということだけ。中途半端に進めて、結局アメリカに売却するというのが、いちばん避けなければならないストーリーだ」、なるほど。
次に、5月30日付け東洋経済オンライン「政府支援の光と影「半導体人材」が増えぬ深刻事情 東大・竹内氏「AI半導体で日本に勝ち筋はある」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/753499
・『国策として怒涛の勢いで進められている、半導体産業への支援。経済産業省は2年度続けて1兆〜2兆円規模の予算を計上し、台湾の半導体製造受託大手TSMCの熊本工場や国策半導体企業ラピダスへの巨額支援を相次いで決めている。 一方で、支援について「今後は何を作るか、回路設計が重要になる」と指摘するのは、東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻の竹内健教授だ。同氏は東芝で回路設計エンジニアとしてNANDフラッシュメモリーの開発に携わってきた。半導体生産を軸とする政府支援を、どう見ているのか(Qは聞き手の質問、Aは竹内教授の回答)』、興味深そうだ。
・『モノだけでなく、人材への投資も重要 Q:国の半導体政策をどう評価していますか。 A:TSMCやラピダスなど半導体の製造・開発に関する助成・支援は、日本が強みを持つ素材産業や製造装置メーカーには追い風だ。次は「何を作るか」という回路設計への支援に力を入れる必要がある。 AIを実行するコンピューター・半導体の研究開発には、製造よりははるかに少ない投資でよい。製造工場などモノへの投資だけでなく、回路設計者という人材への投資も重要になる。 Q:何を作るのか、というのは重要なポイントのはずです。なぜ設計分野の重要性が理解されづらいのでしょうか。 A:大きな理由としては、産業界の受け皿が減ってしまった。日本の半導体メーカーの多くが負けてしまったことが影響している。30年前には世界の半導体メーカーの売上高ランキング上位の多くを日本企業が占めていたが、今ではトップ10に入っていない。) 政府予算は合理的に判断が行われ、収益が上がる分野に投資される。「日本は半導体には長年投資してきたのに、産業は振るわない」「事業化の出口が不透明では、大学への研究開発投資も難しい」と言われてしまったら、私のように以前から半導体に携わってきた人間は返す言葉もない。 その一方、伝統的な電機メーカーとは一線を画して、異業種やスタートアップが半導体の回路設計に乗り出しているのは明るい兆しだ。AIスタートアップのプリファードネットワークスが、プロセッサーを自ら開発していることは有名だし、自動運転など特定サービスを狙うスタートアップが半導体チップの設計まで手がけだしている。 これはGAFAMが半導体を手がけている動きと似ている。AIのアルゴリズムからソフトウェア、半導体の回路設計まで、もう一度作り直す。複数の技術を融合し、コンピューター全体を最適化する時代が来ている』、「AIのアルゴリズムからソフトウェア、半導体の回路設計まで、もう一度作り直す。複数の技術を融合し、コンピューター全体を最適化する時代が来ている」、なるほど。
・『企業は人材育成に投資する余力がない Q:かつてリストラ対象だった、半導体エンジニアが活躍できる場は増えています。 (竹内教授の略歴はリンク先参照) 新しい半導体開発の現場で、私と同世代や先輩世代、かつて日本の半導体メーカーを牽引し、その後に苦境を味わった方たちが活躍されていて頼もしい。 でも今後を考えると、不安も感じる。昭和のノスタルジーと言われるかもしれないが、かつての日本の電機メーカー・半導体メーカーは人材を育成していた。 私自身も育ててもらった一人で、かつて在籍した東芝、今のキオクシアには感謝している。) 私以外にも今、日本の大学で半導体の研究を行っている教員には、半導体メーカー出身者が多い。そういった人材の育成機関としての企業は、今どうなっているか不安を感じる。最近は海外留学の社内制度もなくなってきているとも聞く。 企業は人材育成に大きな投資をするような余裕は、もはやないのかもしれない。大学は人材育成に関しても、今まで以上にがんばる必要がある。 Q:このままでは、日本からエヌビディアのような半導体企業が生まれる可能性が、限りなくゼロになってしまう。 A:世界中でAI半導体の開発ブームが起きている。「エヌビディアの独り勝ちに挑む」という面もあるだろう。ただ、データセンター向けについては、大量のGPU(画像処理装置)の確保など巨額投資が必要で、もう日本勢がGAFAMと正面から競合するのは難しいかもしれない。 一方で、ネットワークと端末などをつなぐIoT(モノのインターネット化)には、日本が得意とする事業やサービスがある。自動車をはじめとする交通システムや、セキュリティ、製造業などのリアルな現場でも、今後はAIが浸透していくと予想されている。 熟練工など現場の人が持つノウハウ・暗黙知を、AIで代替していくのは必然だろう。こうした日本が得意とするサービスに向けたAI処理を実行する半導体であれば、日本にも勝機があるのでは』、「熟練工など現場の人が持つノウハウ・暗黙知を、AIで代替していくのは必然だろう。こうした日本が得意とするサービスに向けたAI処理を実行する半導体であれば、日本にも勝機があるのでは」、なるほど。
・『半導体を学ぶ学生が増えている Q:東大生の半導体への関心に変化は出てきていますか? A:半導体を学ぼうとする学生は、増えている。今の若い人たちは、リーマンショック後に日本の電機産業が苦境に陥り、リストラを繰り返したことを知らない。最先端の技術開発への純粋な興味はあるが、昔の「半導体立国ニッポン」といったノスタルジー的な半導体への思い入れもなければ、半導体へのネガティブな感情も薄い。) 大学でも以前は「半導体に興味がない」と学生が言うのなら、それが時代の趨勢で仕方ないと思っていた。冬の時代が長く続いたときは、研究室でも「AI研究」などを前面に掲げ、「半導体はAIを実現するための手段」と脇役扱いでやってきた。 しかし最近は、学生から「なぜ半導体の回路設計の研究をやらないのですか?」と聞かれるようになり、風向きが変わってきた。半導体関係の授業を受ける学生も増える一方だ』、「半導体を学ぼうとする学生は、増えている・・・昔の「半導体立国ニッポン」といったノスタルジー的な半導体への思い入れもなければ、半導体へのネガティブな感情も薄い・・・最近は、学生から「なぜ半導体の回路設計の研究をやらないのですか?」と聞かれるようになり、風向きが変わってきた。半導体関係の授業を受ける学生も増える一方だ」、「学生」が関心を示してきたとは、好ましい傾向だ。
・『受け皿が外資系企業になっている Q:これから半導体業界へ就職する若者が増えてくるのでは。 A:今や半導体の研究開発を本格的にできる日本企業は限られている。就職先の受け皿が少ない。一方、TSMCやアップルなど外資系企業が日本に半導体の開発拠点を作る動きが進んでおり、そこの半導体部門に就職する学生は増えている。 彼らには無限の可能性がある。日本という枠にとどまらず、たとえばTSMCだったら台湾本社に乗り込み、世界の最先端の技術開発を牽引してほしい。 日本に残るわれわれには、研究開発や人材育成の面で大きな課題がある。私自身も「政府が投資してくれないから研究が進まない」などと泣き言をいっている場合ではない。円安を契機に、大学の研究者も海外企業から積極的な投資を求めるなど、大学にも新たな知恵が必要とされている。 半導体の冬の時代を経験した身としては、日本でも半導体が盛り上がってきたのは嬉しいと同時に、身が引き締まる思いだ。産官学の力を結集するならば、半導体製造にとどまらず、日本が強みを持つ現場の事業・サービスを牽引できるように、AI半導体の回路設計を推進していきたい』、「私自身も「政府が投資してくれないから研究が進まない」などと泣き言をいっている場合ではない。円安を契機に、大学の研究者も海外企業から積極的な投資を求めるなど、大学にも新たな知恵が必要とされている。 半導体の冬の時代を経験した身としては、日本でも半導体が盛り上がってきたのは嬉しいと同時に、身が引き締まる思いだ。産官学の力を結集するならば、半導体製造にとどまらず、日本が強みを持つ現場の事業・サービスを牽引できるように、AI半導体の回路設計を推進していきたい」、力強い展望と決意表明だ。
先ずは、本年4月30日付け東洋経済オンライン「国策ラピダスとTSMC"2つの戦略"で決定的な差 早大・長内教授「ビジネスにストーリーがない」を紹介しよう。
・『世界最先端となる「2ナノ」世代の半導体量産を目指す国策企業のラピダス。これまでに政府から最大9200億円の支援を受けることが発表されている。 同業の半導体製造受託企業(ファウンドリー)で世界トップの台湾TSMCとの競合を避けるため、ラピダスは数量を追わず製造のスピードを重視するという「中規模ファウンドリー」戦略を打ち出している。同社について「ビジネスへの考え方がまったく見えてこない」と指摘するのは、『半導体逆転戦略』を上梓した早稲田大学大学院経営管理研究科の長内厚教授だ。 経営学の観点から、ラピダスの問題はどこにあるのか(Qは聞き手の質問、Aは長内教授の回答)』、「経営学の観点から、ラピダスの問題はどこにあるのか」とは興味深そうだ。
・『失敗をトレースする懸念 Q:ラピダスの経営戦略を、どう評価しますか。 A:ラピダスは日本のエレクトロニクス産業が失敗してきたプロセスをそのままトレースしそうな気がしてならない。 問題点は2つある。1つは、どう他社と差をつけるのかが怪しいことだ。 2ナノの技術ではアメリカのIBMと、製造装置ではベルギーの半導体研究機関であるimecと提携している。ただ多くのエンジニアが指摘しているが、どちらも量産のノウハウを持っているわけではない。規模を追わない中規模ファウンドリーで、本当にコスト競争力のある半導体が作れるのかという指摘もある。 量産できたとしても、2ナノであることが差別化要因にならない可能性が大きい。TSMCもサムスン電子も2025年から2ナノの生産を開始すると言っている。 ラピダスはうまくいっても2027年。今誰も作ってないから一見差があるように見えているだけで、2年後の状況を考えたときに本当にそうなのかはわからない。) もう1つは、誰に売るのかが怪しいことだ。 たとえばTSMCの熊本工場は、すでにトヨタやソニーなど顧客が見えている。自動車産業では半導体需要がますます増えるし、ソニーのCMOSイメージセンサー向けのロジック半導体需要はこれからも旺盛だろう。 ラピダスにはそうしたストーリーがなく、とにかく「技術的に新しいものを作ればAIか何か向けに売れるはず」という思い込みがある。戦略の基本は「どう製品を差別化するか」と「どう敵がいない新しい市場に出るか」。こうしたビジネスのありように対する考えが、まったく見えてこない』、「ラピダスにはそうしたストーリーがなく、とにかく「技術的に新しいものを作ればAIか何か向けに売れるはず」という思い込みがある」、甘い見方だ。
・『TSMCのさまざまな施策 Q:ビジネスのありようとは、具体的にどのようなものでしょうか? A:TSMC創業者のモリス・チャンは、台湾当局のプロジェクトで新規開発案件を進めるとき、エンジニアにビジネスマインドを持たせるために「フィフティ・フィフィ」の制度を導入した。開発費の50%は税金から出す、残り50%はエンジニアが自分で民間からの投資を募ってこいと。 (長内氏の略歴はリンク先参照)そうすることで、ビジネス的にありえないストーリーでは出資が得られず研究が前に進まない。結果的にエンジニアがビジネスマインドを高めていくしかなかった。 そういうさまざまな施策があって今のTSMCがある。技術習得からビジネスまで、エンジニアが全体を見られる状態を作ったことが大きかった。 日本のエンジニアが単に技術領域でがんばっても、TSMCには絶対になれない。TSMCより規模の小さいファウンドリーを目指して、この業界で本当に生き残れるのかは怪しい。) Q:ラピダスは差別化戦略として、新しい製造方法を導入することで製造期間を大幅に短縮することを掲げています。 A:戦略の可能性が狭すぎる。スピード戦略を掲げて、達成できなかったときにどうするのか。プランBがない。そうとうな額の公費を長い間つぎ込んだ末にプランBがないというのは、許される状況ではない。 もちろんラピダスが追い詰められた結果、そこでブレイクスルーを生み出す可能性はゼロじゃない。もしかしたらTSMCをはじめ大手企業は、規模が大きいのでラピダスのような効率化を図らなくてもよかっただけなのかもしれない。でもラピダスが実現できたら、競合も同じことをやり始めるだろう。そのとき、ラピダスの優位性は何になるのか』、「ラピダスは差別化戦略として、新しい製造方法を導入することで製造期間を大幅に短縮することを掲げています。 A:戦略の可能性が狭すぎる。スピード戦略を掲げて、達成できなかったときにどうするのか。プランBがない。そうとうな額の公費を長い間つぎ込んだ末にプランBがないというのは、許される状況ではない」、厳しいようだが、その通りだ。
・『装置・材料メーカーはラピダスが最優先ではない Q:量産に欠かせない装置や材料メーカーとの連携にも、疑問を呈しています。 A:国が前のめりだからこそ、 各社の思惑が読みにくくなっている。出資会社も含めて前向きな意思表示をせざるを得なくなっている。装置や材料など関連メーカーにとって、何社かある顧客の1つとして一定のリップサービスは必要かもしれない。でも海外の大手メーカーよりも最優先でラピダスに協力するわけではないだろう。 だから、とにかく半導体生産では数を追うことが重要。生産数が増えれば、それだけ装置や材料メーカーにとって重要顧客になる。 Q:とはいえ、これまでに1兆円近くの公費が投入されています。これからラピダスが目指すべき方向とは。 A:量産を目指すのなら、なぜ量産ノウハウを持っている会社と提携しないのかが不思議だ。現状では研究機関のimecやIBMと協力しているのみ。ラピダスの小池淳義社長は日立製作所時代、台湾大手ファウンドリーであるUMCと合弁を組んだ経験もある。なぜ今回はそういう経験のあるファウンドリーを巻き込んでいないのか。) できない事情があるのかもしれないが、もし軽視しているのだとしたら非常に問題だ。「韓国や台湾にできることは日本でもできるんだ」という根拠のない精神論で彼らと手を組んでいないのだとするともったいない。 逆に、自分たちでは量産を目指さないのも1つのやり方かもしれない。アメリカに製品のノウハウを提供するようなテスト用ラインだけを持った会社になるというような。 もしくは日本でしか作れないものを作るという意味では、NTTが開発している光電融合技術の開発を担う。この技術の成否も、日本にとっては世界をリードできるかどうか重要なポイントだ。そうすれば、少なくとも2030年までのストーリーが見えてくるはず。 つまり、何かしらのビジネスの仕掛けとしてラピダスにしかできないことを考えていく。その中の1つに、UMCをはじめ韓国や台湾と協業していくという考え方があるのではないか』、「これからラピダスが目指すべき方向とは。 A:量産を目指すのなら、なぜ量産ノウハウを持っている会社と提携しないのかが不思議だ。現状では研究機関のimecやIBMと協力しているのみ。ラピダスの小池淳義社長は日立製作所時代、台湾大手ファウンドリーであるUMCと合弁を組んだ経験もある。なぜ今回はそういう経験のあるファウンドリーを巻き込んでいないのか。) できない事情があるのかもしれないが、もし軽視しているのだとしたら非常に問題だ。「韓国や台湾にできることは日本でもできるんだ」という根拠のない精神論で彼らと手を組んでいないのだとするともったいない。 逆に、自分たちでは量産を目指さないのも1つのやり方かもしれない。アメリカに製品のノウハウを提供するようなテスト用ラインだけを持った会社になるというような。 もしくは日本でしか作れないものを作るという意味では、NTTが開発している光電融合技術の開発を担う。この技術の成否も、日本にとっては世界をリードできるかどうか重要なポイント」、その通りだ。
・『TSMC熊本工場にはストーリーがある Q:一方でTSMC熊本には対照的な評価をしています。 A:今までの日本の技術戦略とはかなり様相が違う。 元々、経済産業省としては先端半導体の工場を誘致していたが、結果的には10年以上前の技術の半導体工場を作ることになった。それでも日本に誘致する意味があると判断したのだ。 ソニーや自動車産業というビジネスのストーリーが見えていて、それに必要な技術水準がある。必ずしも最先端技術が必要なのではない、というストーリーを実際に実現させたこと自体が日本では画期的だ。 加えて、第2工場、第3工場と連続的に投資を進めていっているところも理想的。既存工場からの利益を次の投資に回すという当たり前のことをやっている。 「現行の技術で失敗したけど、新しい技術で挽回するんです」という発想を日本は繰り返してきた。だがこれでは投資の原資がどんどん先細っていくので、結局いつまで経っても勝てない。こうした点がラピダスとは対照的だ。) Q:今は別々で動いている、TSMC熊本とラピダスのプロジェクトをつなげる提案もしています。 2つのプロジェクトを1つの戦略でまとめる会社を実際に作るかどうかは別として、新しいプロジェクトや投資を行うためには、基本的には既存のビジネスから得た収益を流すに尽きる。それができる構図を日本としてどう作るかが重要だ。 政府は両方にお金を出している立場なので、そうした連携にうまく持っていければベストだ。 Q:そもそも、政府が特定の産業や企業に多額の公費を投入することの是非についてはどう考えますか? A:中途半端な投資は意味がないので、ある程度まとまった額を拠出したことは評価できる。あとは、まとまった額を出すからには、簡単に諦めないでほしいということだけ。中途半端に進めて、結局アメリカに売却するというのが、いちばん避けなければならないストーリーだ。 著者フォローすると、石阪 友貴さんの最新記事をメールでお知らせします』、「「政府が特定の産業や企業に多額の公費を投入することの是非についてはどう考えますか?A:中途半端な投資は意味がないので、ある程度まとまった額を拠出したことは評価できる。あとは、まとまった額を出すからには、簡単に諦めないでほしいということだけ。中途半端に進めて、結局アメリカに売却するというのが、いちばん避けなければならないストーリーだ」、なるほど。
次に、5月30日付け東洋経済オンライン「政府支援の光と影「半導体人材」が増えぬ深刻事情 東大・竹内氏「AI半導体で日本に勝ち筋はある」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/753499
・『国策として怒涛の勢いで進められている、半導体産業への支援。経済産業省は2年度続けて1兆〜2兆円規模の予算を計上し、台湾の半導体製造受託大手TSMCの熊本工場や国策半導体企業ラピダスへの巨額支援を相次いで決めている。 一方で、支援について「今後は何を作るか、回路設計が重要になる」と指摘するのは、東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻の竹内健教授だ。同氏は東芝で回路設計エンジニアとしてNANDフラッシュメモリーの開発に携わってきた。半導体生産を軸とする政府支援を、どう見ているのか(Qは聞き手の質問、Aは竹内教授の回答)』、興味深そうだ。
・『モノだけでなく、人材への投資も重要 Q:国の半導体政策をどう評価していますか。 A:TSMCやラピダスなど半導体の製造・開発に関する助成・支援は、日本が強みを持つ素材産業や製造装置メーカーには追い風だ。次は「何を作るか」という回路設計への支援に力を入れる必要がある。 AIを実行するコンピューター・半導体の研究開発には、製造よりははるかに少ない投資でよい。製造工場などモノへの投資だけでなく、回路設計者という人材への投資も重要になる。 Q:何を作るのか、というのは重要なポイントのはずです。なぜ設計分野の重要性が理解されづらいのでしょうか。 A:大きな理由としては、産業界の受け皿が減ってしまった。日本の半導体メーカーの多くが負けてしまったことが影響している。30年前には世界の半導体メーカーの売上高ランキング上位の多くを日本企業が占めていたが、今ではトップ10に入っていない。) 政府予算は合理的に判断が行われ、収益が上がる分野に投資される。「日本は半導体には長年投資してきたのに、産業は振るわない」「事業化の出口が不透明では、大学への研究開発投資も難しい」と言われてしまったら、私のように以前から半導体に携わってきた人間は返す言葉もない。 その一方、伝統的な電機メーカーとは一線を画して、異業種やスタートアップが半導体の回路設計に乗り出しているのは明るい兆しだ。AIスタートアップのプリファードネットワークスが、プロセッサーを自ら開発していることは有名だし、自動運転など特定サービスを狙うスタートアップが半導体チップの設計まで手がけだしている。 これはGAFAMが半導体を手がけている動きと似ている。AIのアルゴリズムからソフトウェア、半導体の回路設計まで、もう一度作り直す。複数の技術を融合し、コンピューター全体を最適化する時代が来ている』、「AIのアルゴリズムからソフトウェア、半導体の回路設計まで、もう一度作り直す。複数の技術を融合し、コンピューター全体を最適化する時代が来ている」、なるほど。
・『企業は人材育成に投資する余力がない Q:かつてリストラ対象だった、半導体エンジニアが活躍できる場は増えています。 (竹内教授の略歴はリンク先参照) 新しい半導体開発の現場で、私と同世代や先輩世代、かつて日本の半導体メーカーを牽引し、その後に苦境を味わった方たちが活躍されていて頼もしい。 でも今後を考えると、不安も感じる。昭和のノスタルジーと言われるかもしれないが、かつての日本の電機メーカー・半導体メーカーは人材を育成していた。 私自身も育ててもらった一人で、かつて在籍した東芝、今のキオクシアには感謝している。) 私以外にも今、日本の大学で半導体の研究を行っている教員には、半導体メーカー出身者が多い。そういった人材の育成機関としての企業は、今どうなっているか不安を感じる。最近は海外留学の社内制度もなくなってきているとも聞く。 企業は人材育成に大きな投資をするような余裕は、もはやないのかもしれない。大学は人材育成に関しても、今まで以上にがんばる必要がある。 Q:このままでは、日本からエヌビディアのような半導体企業が生まれる可能性が、限りなくゼロになってしまう。 A:世界中でAI半導体の開発ブームが起きている。「エヌビディアの独り勝ちに挑む」という面もあるだろう。ただ、データセンター向けについては、大量のGPU(画像処理装置)の確保など巨額投資が必要で、もう日本勢がGAFAMと正面から競合するのは難しいかもしれない。 一方で、ネットワークと端末などをつなぐIoT(モノのインターネット化)には、日本が得意とする事業やサービスがある。自動車をはじめとする交通システムや、セキュリティ、製造業などのリアルな現場でも、今後はAIが浸透していくと予想されている。 熟練工など現場の人が持つノウハウ・暗黙知を、AIで代替していくのは必然だろう。こうした日本が得意とするサービスに向けたAI処理を実行する半導体であれば、日本にも勝機があるのでは』、「熟練工など現場の人が持つノウハウ・暗黙知を、AIで代替していくのは必然だろう。こうした日本が得意とするサービスに向けたAI処理を実行する半導体であれば、日本にも勝機があるのでは」、なるほど。
・『半導体を学ぶ学生が増えている Q:東大生の半導体への関心に変化は出てきていますか? A:半導体を学ぼうとする学生は、増えている。今の若い人たちは、リーマンショック後に日本の電機産業が苦境に陥り、リストラを繰り返したことを知らない。最先端の技術開発への純粋な興味はあるが、昔の「半導体立国ニッポン」といったノスタルジー的な半導体への思い入れもなければ、半導体へのネガティブな感情も薄い。) 大学でも以前は「半導体に興味がない」と学生が言うのなら、それが時代の趨勢で仕方ないと思っていた。冬の時代が長く続いたときは、研究室でも「AI研究」などを前面に掲げ、「半導体はAIを実現するための手段」と脇役扱いでやってきた。 しかし最近は、学生から「なぜ半導体の回路設計の研究をやらないのですか?」と聞かれるようになり、風向きが変わってきた。半導体関係の授業を受ける学生も増える一方だ』、「半導体を学ぼうとする学生は、増えている・・・昔の「半導体立国ニッポン」といったノスタルジー的な半導体への思い入れもなければ、半導体へのネガティブな感情も薄い・・・最近は、学生から「なぜ半導体の回路設計の研究をやらないのですか?」と聞かれるようになり、風向きが変わってきた。半導体関係の授業を受ける学生も増える一方だ」、「学生」が関心を示してきたとは、好ましい傾向だ。
・『受け皿が外資系企業になっている Q:これから半導体業界へ就職する若者が増えてくるのでは。 A:今や半導体の研究開発を本格的にできる日本企業は限られている。就職先の受け皿が少ない。一方、TSMCやアップルなど外資系企業が日本に半導体の開発拠点を作る動きが進んでおり、そこの半導体部門に就職する学生は増えている。 彼らには無限の可能性がある。日本という枠にとどまらず、たとえばTSMCだったら台湾本社に乗り込み、世界の最先端の技術開発を牽引してほしい。 日本に残るわれわれには、研究開発や人材育成の面で大きな課題がある。私自身も「政府が投資してくれないから研究が進まない」などと泣き言をいっている場合ではない。円安を契機に、大学の研究者も海外企業から積極的な投資を求めるなど、大学にも新たな知恵が必要とされている。 半導体の冬の時代を経験した身としては、日本でも半導体が盛り上がってきたのは嬉しいと同時に、身が引き締まる思いだ。産官学の力を結集するならば、半導体製造にとどまらず、日本が強みを持つ現場の事業・サービスを牽引できるように、AI半導体の回路設計を推進していきたい』、「私自身も「政府が投資してくれないから研究が進まない」などと泣き言をいっている場合ではない。円安を契機に、大学の研究者も海外企業から積極的な投資を求めるなど、大学にも新たな知恵が必要とされている。 半導体の冬の時代を経験した身としては、日本でも半導体が盛り上がってきたのは嬉しいと同時に、身が引き締まる思いだ。産官学の力を結集するならば、半導体製造にとどまらず、日本が強みを持つ現場の事業・サービスを牽引できるように、AI半導体の回路設計を推進していきたい」、力強い展望と決意表明だ。
タグ:東洋経済オンライン「国策ラピダスとTSMC"2つの戦略"で決定的な差 早大・長内教授「ビジネスにストーリーがない」 「経営学の観点から、ラピダスの問題はどこにあるのか」とは興味深そうだ。 「ラピダスにはそうしたストーリーがなく、とにかく「技術的に新しいものを作ればAIか何か向けに売れるはず」という思い込みがある」、甘い見方だ。 「ラピダスは差別化戦略として、新しい製造方法を導入することで製造期間を大幅に短縮することを掲げています。 A:戦略の可能性が狭すぎる。スピード戦略を掲げて、達成できなかったときにどうするのか。プランBがない。そうとうな額の公費を長い間つぎ込んだ末にプランBがないというのは、許される状況ではない」、厳しいようだが、その通りだ。 「これからラピダスが目指すべき方向とは。 A:量産を目指すのなら、なぜ量産ノウハウを持っている会社と提携しないのかが不思議だ。現状では研究機関のimecやIBMと協力しているのみ。ラピダスの小池淳義社長は日立製作所時代、台湾大手ファウンドリーであるUMCと合弁を組んだ経験もある。なぜ今回はそういう経験のあるファウンドリーを巻き込んでいないのか。 できない事情があるのかもしれないが、もし軽視しているのだとしたら非常に問題だ。「韓国や台湾にできることは日本でもできるんだ」という根拠のない精神論で彼らと手を組んでいないのだとするともったいない。 逆に、自分たちでは量産を目指さないのも1つのやり方かもしれない。アメリカに製品のノウハウを提供するようなテスト用ラインだけを持った会社になるというような。 もしくは日本でしか作れないものを作るという意味では、NTTが開発している光電融合技術の開発を担う。この技術の成否も、日本にとっては世界をリードできるかどうか 重要なポイント」、その通りだ。 「「政府が特定の産業や企業に多額の公費を投入することの是非についてはどう考えますか?A:中途半端な投資は意味がないので、ある程度まとまった額を拠出したことは評価できる。あとは、まとまった額を出すからには、簡単に諦めないでほしいということだけ。中途半端に進めて、結局アメリカに売却するというのが、いちばん避けなければならないストーリーだ」、なるほど。 東洋経済オンライン「政府支援の光と影「半導体人材」が増えぬ深刻事情 東大・竹内氏「AI半導体で日本に勝ち筋はある」」 「AIのアルゴリズムからソフトウェア、半導体の回路設計まで、もう一度作り直す。複数の技術を融合し、コンピューター全体を最適化する時代が来ている」、なるほど。 「熟練工など現場の人が持つノウハウ・暗黙知を、AIで代替していくのは必然だろう。こうした日本が得意とするサービスに向けたAI処理を実行する半導体であれば、日本にも勝機があるのでは」、なるほど。 「半導体を学ぼうとする学生は、増えている・・・昔の「半導体立国ニッポン」といったノスタルジー的な半導体への思い入れもなければ、半導体へのネガティブな感情も薄い・・・最近は、学生から「なぜ半導体の回路設計の研究をやらないのですか?」と聞かれるようになり、風向きが変わってきた。半導体関係の授業を受ける学生も増える一方だ」、「学生」が関心を示してきたとは、好ましい傾向だ。 「私自身も「政府が投資してくれないから研究が進まない」などと泣き言をいっている場合ではない。円安を契機に、大学の研究者も海外企業から積極的な投資を求めるなど、大学にも新たな知恵が必要とされている。 半導体の冬の時代を経験した身としては、日本でも半導体が盛り上がってきたのは嬉しいと同時に、身が引き締まる思いだ。産官学の力を結集するならば、半導体製造にとどまらず、日本が強みを持つ現場の事業・サービスを牽引できるように、AI半導体の回路設計を推進していきたい」、力強い決意表明だ。