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少子化(その5)(【民主党も岸田政権も】無意味な“少子化対策”しかできない政治家たちの罪…欠陥だらけの「育休」「高等教育無償化」、「保育園落ちた日本死ね!」から変わらない絶望、今後10年間で出生数が半減「最悪の悪循環」の正体 「少子化」「老後不安」がお互いを悪化させている) [社会]

少子化については、昨年6月6日に取上げた。今日は、(その5)(【民主党も岸田政権も】無意味な“少子化対策”しかできない政治家たちの罪…欠陥だらけの「育休」「高等教育無償化」、「保育園落ちた日本死ね!」から変わらない絶望、今後10年間で出生数が半減「最悪の悪循環」の正体 「少子化」「老後不安」がお互いを悪化させている)である。

先ずは、昨年6月4日付け現代ビジネスが掲載した家族問題評論家の宮本 まき子氏による「「民主党も岸田政権も】無意味な“少子化対策”しかできない政治家たちの罪…欠陥だらけの「育休」「高等教育無償化」、「保育園落ちた日本死ね!」から変わらない絶望」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/110459
・『第3回『「「犬より可愛いから産みなよ」中学生の娘に出産を勧める32歳母の「ヤバい言動」…少子化に直結する貧困問題〈炊きたてのご飯を知らない子どもたち〉」』より続く。
・『少子化解消=「頭数を増やす計画」?  第1回『20年以上前から変わらない「少子化」のヤバすぎる実態…「自分を生かすだけで精一杯」な30歳男性、「子育てを一緒にできる男がいない」と嘆く31歳女性』から、日本の少子化の裏に潜む「母親の劣化」という問題を見てきました。初回の冒頭で、私が23年前に書いた檄文を掲載しています。改めて、見返してみましょう。 〈とてつもない勢いの少子化です。1950年には270万人産まれていた赤ちゃんが、99年には117万人と半分以下。国連の試算によれば「日本は今後50年間に3300万人の移民を受け入れるか、定年を77歳まで引き上げないと90年代の生産性が保てない」とか。政府もやっと「税金の支払い者が産まれないと国は倒産する」ことに気がついたようです』、「少子化」の影響は長い目で見る必要がある。
・『何の意味もない、男たちの「取るだけ育休」  68年前にヒ素ミルク混入事件を起こして多数の乳児が中毒・死亡の事件を起こした菓子メーカーの商標イラストは、エンゼル(天使)でした。パクってるのか、単なる思いつきだったのか、れっきとした正式名称で1994年に「エンゼルプラン」、1999年に「新エンゼルプラン」が緊急保育対策等5カ年事業としてスタートします。無神経なネーミングからして、(男性)政治家・官僚の「子育て関連」への無神経さと、無知あるいは無関心が透けて見えるようでした。 エンゼルの神通力も10年経って効果なしとのことで名称変更。2003年に「少子化社会対策基本法」が施行となって、「次世代育成支援対策推進法」が成立。「子ども・子育て応援プラン」として、地方公共団体と企業向け行動計画の策定が実施され、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」ができました。 筆者はこの頃、21世紀職業財団がテーマにあげた「仕事と家庭の両立支援」と「男女共同参画社会」をテーマに、研修講座や講演で各地を駆けめぐっていました。 どの講演会でも、まずは聞きなれない「ワークライフバランス」の翻訳から始まり、「父親にも育児参加(この時点ではまだ分担ではなかった)を」の呼びかけをしましたが、主催者の多くは予算が少なくて「やっている感」を出すのが精一杯。独身男女向けの講演会の後のオプションが助産師による「赤ちゃんの沐浴・おむつ替え実技指導」だったこともあり、「お?い、その手前が抜けている」と思いましたが、「おりてくる予算が雀の涙でして、すみません」と主催者側も困惑、混乱していました。 2003年の男性の育児休業取得率は0.44%。取得者の多くが公務員で、職場や上司への忖度もあって、取っても5日?2週間程度でした。 昔から言われている「床上げ20日」説は単なる経験談ではありません。胎盤が剥がれた後の子宮壁の復古、100gが出産直前には5kgに拡大した子宮を支えて伸び切った靭帯の復古、お産で広がった骨盤の復古、急変したホルモンの回復など、母体が妊娠以前の状態に回復するのに、「(動き回って)靭帯が緩んだままにならないよう、伏せて(横になって)休んで3?4週間かかる」というのが産婦人科医たちの見解です。 育休は本来、産婦を体の回復のために寝かせて休ませて、夫が家事や育児をサポートするための「主婦業代行」が主目的です。それなのに、日頃多忙を極める仕事人間は、まるで子作りしたご褒美がもらえるかのように、自分で自由に使える休暇のように錯覚してしまいました。いわゆる「取るだけ育休」で、妻子の里帰り出産中に自身はマリンスポーツや海外旅行へ出かけるなどという、けしからん男性がいたのも事実です。 「僕は日頃の疲れを取るためにひたすら眠っていました」という人や、「育児休業を出産予定日から申請していたが、妻の出産時期が遅れて病院から母子が戻る前に育休が終わっていた」という人、「産褥期の妻にまとわりつく上の子の子守りしかできなかった」という人もいました。) そして2022年に出生数が80万人を切った時まで、政治は何をしてきたのか。2000年以降の歴代政権を列挙しておきましょう。森首相の後、「変人宰相」と評された小泉純一郎氏の長期政権があり、続く安倍晋三首相が持病でギブアップ。福田康夫氏、麻生太郎氏と政権たらい回しに怒った国民が自民党を下野させ、2009年に民主党の鳩山由紀夫首相に新しい時代を託しましたが、彼は一年足らずでいなくなります。 その後、菅直人、野田佳彦と2代続けて民主党が首相を出しますが、東日本大震災の際の原発事故対処もあり、また「世の中を変えてくれるだろうという国民の期待を見事に外して、マニフェストなる口先だけの公約で何もできなかった」ことへの不満爆発で、「それ見たことか」の自民党政権が復活して冗長。その後、安倍晋三長期政権→菅義偉首相→岸田文雄首相と続いています。 その間、内閣府子ども・子育て本部による『少子化対策の歩み』という資料をみると、何もかもが牛歩のごとき鈍さだったことが分かります。 「3年経てば赤子も三つ」の諺もありますが、国を背負う人を育成するには20年の長期計画と、親が社会的な信念を持って育てる赤ちゃんが必要なのです。少子化解消=「頭数を増やす計画」にばかり力を入れて、なぜ「産むべき人が産まなかったか?」という長期にわたる社会現象を直視しなかったことが、最大の敗因だったと思います』、「少子化解消=「頭数を増やす計画」にばかり力を入れて、なぜ「産むべき人が産まなかったか?」という長期にわたる社会現象を直視しなかったことが、最大の敗因だった、その通りだ。
・『「増えない収入、増える子育て費用」  「育休」の概念もなかった1970年代、データはありませんが大半の妊婦は実家に戻って産後の療養をしていたようです。実家の都合で里帰り出産をしなかった筆者は、大正生まれの姑に「昔の嫁は出産3日目から立ち働き、7日目には畑仕事をしていたものだ」と言われたのを真に受け、退院した当日から布オムツなどの洗濯をし、4階までの階段を上り下りして買い物に出かけ、朝晩の食事を作り、掃除と育児など、ほとんど立ち働いていました。 退院して1週間後、ドンと音がして足元に黒っぽい血の塊がドカッと落ちるような大出血をしました。動き過ぎて、胎盤が取れた痕の血の塊のカサブタが剥がれ落ち、まだ大きいままの子宮の中に出血が溜まって溢れたのだと後で知らされます。 文明がどんなに進んでも、「人の体が100年やそこらで進化するものじゃない。子宮の復古に床上げ20日間は必須な時間なのに、なぜじっと寝て休まなかったのだ」と医師に叱られました。 つまり「最長2週間の育休」は男の「やっている感」を出すためのポーズで決めた数値にすぎず、短かすぎて「産後の回復」の助けにならない。しかも休業中は減給だから「そんな休暇はいらんわ!」と怒る母親もいました。 2010年の「子ども子育てビジョン」にしても、菅直人首相が閣議決定した頃の男性の育休取得率は1.36%と微々たる増加でした。この頃には「増えない収入、増える子育て費用」が傍目にもはっきりわかるようになり、共働きのための保育所探し(保活)がピークに達してきます。 2008年に「新待機児童ゼロ作戦」ができましたが、各施設に定員増加をさせる程度では焼石に水です。認証保育園や保育ママも増やして定員確保をするも、働きたい事情のある母親も急増し、イタチごっこになりました。 2009年に保活をした筆者の娘は、東京都中央区の入園激戦区を諦めて千葉県に転居し、第6希望まで保育園の申し込みをしました。しかし「共働きで世帯収入が高い」「無職(フリーランスじゃ!)の祖母が同じ市内にいる」と、保育園合格基準点ではむしろ不利となるなど壁は高かった。 総合職から初の管理職試験を目前にしていた娘は、「政府が旗をふっても、女性活躍できないじゃん」と頭を抱えていました。筆者は祖父母という人的資源の無償労働をあてにする行政のあざとさに、「どこが育児の社会化だ」と市役所の保育園申込み窓口で憤っていました。 2014年、「まち・ひと・しごと創生法」が施行され、2015年に「少子化社会対策大綱」が閣議決定され、子ども・子育て支援新制度が本格施行になりますが、内容は主に施設型保育施設に関する条項で、庭や広さがなくてもビルの一室でも保育室を開業できるというものでした。取りあえず預け先があればいいという玉石混合のアバウトさに加え、入所できるかどうかは事業者と親との間での契約に限るので、「保育の質の格差」が新たな問題として浮上していきます』、「「最長2週間の育休」は男の「やっている感」を出すためのポーズで決めた数値にすぎず、短かすぎて「産後の回復」の助けにならない。しかも休業中は減給だから「そんな休暇はいらんわ!」と怒る母親もいました・・・子ども・子育て支援新制度が本格施行になりますが、内容は主に施設型保育施設に関する条項で、庭や広さがなくてもビルの一室でも保育室を開業できるというものでした。取りあえず預け先があればいいという玉石混合のアバウトさに加え、入所できるかどうかは事業者と親との間での契約に限るので、「保育の質の格差」が新たな問題として浮上していきます」、なるほど。
・『「保育園落ちた、日本死ね!!」  女性たちの怒りのマグマが噴出するきっかけになったのが、2016年3月のSNS上での「保育園落ちた、日本死ね!!」のブログでした。4月復職予定にもかかわらず、2月の段階で申し込んだ保育所全てが全滅したある母親の怒号。待機児童問題が進展せずに退職寸前に追い込まれた彼女に、ネット上には同じ境遇の人たちから共感の声が続出しました。 しかし初めて国会で取り上げられた時は、国のトップたる安倍首相が「実際に起こっているか確認しようがない」と我関せずの無視する態度でした。すると母親たちの「#保育園落ちたのは私と私の仲間だ」がTwitterに溢れ、28000人の電子署名があっという間に集まり、国会へデモが起きます。 この保育園不合格問題は国中の関心事になり、非難ごうごうの社会現象を起こしました。支持率低下に焦った安倍首相は国会答弁で「保育環境の改善」を約束させられ、数ヶ月後に「ニッポン一億総活躍プラン」が閣議決定します。子育て関連でこんなに早く政府が動いたのは憲政市上、初めてだったのではないでしょうか。 2017年「新しい経済政策パッケージ」、2018年「人づくり革命基本構想」を作り、2020年までに「生産性革命と人づくり革命を車の両輪として少子高齢化に立ち向かう」「子育て世代、子どもたちに大胆に政策資源を投入」するために、主な取り組みとして1幼児教育の無償化、2待機児童の解消、3高等教育の無償化をあげました。 このうち2019年10月の消費税の増税を資金源に「幼児教育の無償化」を実施。3歳から5歳までの保育園児と幼稚園児が入園料、通園送迎費、給食費、行事費、文具代などの学用品費(これらが結構かかるんですけどね)を除いた費用を無償としました』、「2016年3月のSNS上での「保育園落ちた、日本死ね!!」のブログ・・・安倍首相が「実際に起こっているか確認しようがない」と我関せずの無視する態度でした。すると母親たちの「#保育園落ちたのは私と私の仲間だ」がTwitterに溢れ、28000人の電子署名があっという間に集まり、国会へデモが起きます。 この保育園不合格問題は国中の関心事になり、非難ごうごうの社会現象を起こしました。支持率低下に焦った安倍首相は国会答弁で「保育環境の改善」を約束させられ、数ヶ月後に「ニッポン一億総活躍プラン」が閣議決定・・・子育て関連でこんなに早く政府が動いたのは憲政市上、初めてだったのではないでしょうか・・・2019年10月の消費税の増税を資金源に「幼児教育の無償化」を実施。3歳から5歳までの保育園児と幼稚園児が入園料、通園送迎費、給食費、行事費、文具代などの学用品費(これらが結構かかるんですけどね)を除いた費用を無償としました」、なるほど。
・『看板倒れの「高等教育無償化」  ただし、幼児教育の無償化には落とし穴があって、0歳?2歳は住民税の非課税世帯(低所得者)が無償化の対象で、住民税の課税世帯(中間所得者層)はこれまで通りに全額支払いです。実際はこの年齢の間に母親の育休は終わってしまうし、保育園に通園しないと仕事に復帰できません。なぜ0歳?2歳の数値が対象になったのか、よくわからない年齢制限でしょう。 それに入学前までの幼児の場合、月謝だけが無償化の対象で、それ以外のランチ代や文具教材費、制服や臨海学校などの費用が想定外にかかります。乳幼児にとっては「園での生活=生育」なのですから、そこで使用する物が無償化の対象外と言われても納得できないでしょう。「産み育てる意欲がある親」は上の子が3?6歳の間に次の子を妊娠したいと願います。この時期に金銭的負担を感じると、出産をためらう原因にもなることを、行政サイドは考慮すべきです。 「高等教育無償化」は内実は看板倒れです。「高等」は大学、短大、専門学校の教育を指し、高校は含みません。対象になるのは住民税非課税世帯(低所得者)か、準ずる世帯(家族4人で年収380万円以下)で、浪人学生は除外です。授業料と入学金が減免されますが、生活費は大きく不足するし、無利子奨学金はほとんどの場合、利用できません。入学金の減免は一度きりなので、「滑り止め」を併願することができません。 ぶっちゃけ、「生活保護世帯でも大学への道はありますよ」という慈善的狭き門を提示することで無償化問題を終わらせようとしている。収入基準は超えるけど学費の捻出には苦労している中間所得者層には、メリットがゼロという「絵に描いた餅」にすぎません。 教育の大切さを十分に理解し、自らも経験してきた中産階級の夫婦の半数が「高騰した教育費が出せない」不安から理想の数(2?3人)の子を持てていない。これが「少子化の最大の問題点」なのは周知のことです。 2019年に「少子高齢化という壁に立ち向かうため、それまで高齢者中心となっていた社会保障制度を子育て世代のためにも使えるように全世代型に転換していかなければならない」と大見得を切って消費税を10%に増税したのを、安倍元総理の後で二人目の首相になったらもうお忘れですか? 20年後への先行投資として子どもらにこの程度の救済措置しかできないのですから、政府の本気度を疑ってしまいます。 「選挙の票にも結び付かず、大規模な(箱物)建築計画のキックバックの恩恵もない子ども・教育政策に真摯に向き合う政権トップがいない」まま、25年を右往左往して無為に過ごした国民こそいい迷惑で、犠牲者だったといえるでしょう。 連載第1回から読む→『20年以上前から変わらない「少子化」のヤバすぎる実態…「自分を生かすだけで精一杯」な30歳男性、「子育てを一緒にできる男がいない」と嘆く31歳女性』』、「「産み育てる意欲がある親」は上の子が3?6歳の間に次の子を妊娠したいと願います。この時期に金銭的負担を感じると、出産をためらう原因にもなることを、行政サイドは考慮すべきです・・・「生活保護世帯でも大学への道はありますよ」という慈善的狭き門を提示することで無償化問題を終わらせようとしている。収入基準は超えるけど学費の捻出には苦労している中間所得者層には、メリットがゼロという「絵に描いた餅」にすぎません。 教育の大切さを十分に理解し、自らも経験してきた中産階級の夫婦の半数が「高騰した教育費が出せない」不安から理想の数(2?3人)の子を持てていない。これが「少子化の最大の問題点」なのは周知のことです。なるほど。

次に、本年/6月1日付け東洋経済オンラインが掲載したお金の向こう研究所代表・社会的金融教育家の田内 学氏による「今後10年間で出生数が半減「最悪の悪循環」の正体 「少子化」「老後不安」がお互いを悪化させている」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/757483
・『「お金の本質を突く本で、これほど読みやすい本はない」「勉強しようと思った本で、最後泣いちゃうなんて思ってなかった」 経済の教養が学べる小説『きみのお金は誰のため──ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」』には、発売直後から多くの感想の声が寄せられている。本書は「読者が選ぶビジネス書グランプリ2024」総合グランプリ第1位を獲得、20万部を突破した話題のベストセラーだ。 著者の田内学氏は元ゴールドマン・サックスのトレーダー。資本主義の最前線で16年間戦ってきた田内氏はこう語る。 「みんながどんなにがんばっても、全員がお金持ちになることはできません。でも、みんなでがんばれば、全員が幸せになれる社会を作ることはできる。大切なのは、お金を増やすことではなく、そのお金をどこに流してどんな社会を作るかなんです」 今回は、「少子化」と「老後不安」がお互いを悪化させ続ける「最悪の悪循環」について解説してもらう。 これから日本では「4倍速」で少子化が進む 少子化が加速している。 厚生労働省が5月24日に公表した人口動態統計によると、2024年1~3月に生まれた赤ちゃんの数(出生数)は、前年同期比で6.4%も減少した。 昨年2023年の年間出生数は、75万8631人と統計開始以来最低であったが、今年はさらに下回るだろう。 少子化傾向が続いて久しいが、出生数が150万人を超えていた1983年から、75万人にまで半減するのには40年かかった。 しかし、このペース(年間6.4%減)で少子化が続くと、半減するまではたった10年しかかからない。少子化がこれまでの4倍の速さで進行しつつあるのだ。 これは、若者の意識変化にも如実に現れている。 就職サイトのマイナビが5月20日に発表した調査では、20代正社員の男女のうち25.5%が「子どもは欲しくない」と回答。欲しくない理由については、「お金が足りない」「増税・物価高の中、自分のことで精一杯で育てる責任が持てない」など、金銭面の不安を挙げる人が多かったそうだ。比較的収入が安定している正社員を対象にした調査であるにもかかわらずだ。) 将来不安から資産形成を始める人が増え、新NISAに注目が集まっているが、「将来不安」が「お金の不安」に自動変換されるようになったのはいつごろからだろうか?おそらく、2019年に金融庁が「老後の30年間で約2000万円が不足する」と報告した、いわゆる「老後資金2000万円問題」のころではないだろうか。 筆者は大学生向けに講演することもあるのだが、最近では大学生たちからも「老後不安」という言葉を耳にするようになった。 少子化の要因として、「老後不安」に起因するお金の不安があることは間違いなさそうだ』、「マイナビが5月20日に発表した調査では、20代正社員の男女のうち25.5%が「子どもは欲しくない」と回答。欲しくない理由については、「お金が足りない」「増税・物価高の中、自分のことで精一杯で育てる責任が持てない」など、金銭面の不安を挙げる人が多かったそうだ。比較的収入が安定している正社員を対象にした調査であるにもかかわらずだ・・・少子化の要因として、「老後不安」に起因するお金の不安があることは間違いなさそうだ」、なるほど。
・『2000万円という数字は「蜃気楼」のように遠のく  しかしながら、みんなが資産形成に精を出して、無事に2000万円貯めたとしても、老後の問題は解決しない。 みんながお金を貯めるほどに、老後安心できる金額が蜃気楼のように逃げていくからだ。すでに物価上昇が起きているが、物価はさらに高くなり、2000万円では足りなくなってしまうだろう。 拙著『きみのお金は誰のため』では、この老後の問題について、先生役の“ボス”と呼ばれる人物が主人公・優斗に次のように説明している。 「僕もほんまにそう思うわ。少子化によって働く人の割合が減るってことは、(イス取りゲームの)イスが減るということや。その一方で、高齢者は増えるから、介護職の数を今後20年で3割増やさんとあかんと言われている。仮に、増やせたとしても、他の仕事をする人の数が減る。他の分野で物やサービスが足りなくなるんや」 優斗はため息をついた。 「無理ゲーですよ、それ。お金貯めても、物が足りなければ、値段が上がるんですよね。お金をたくさん持っていたらイスに座れるけど、誰かがイスからはじき出されるってことでしょ?」 まさに、相手を蹴落とすことでしか勝ち残れないサバイバルゲームだ。みんなで協力して生き残ることなんてできやしない。 「1億2000万人もおると、イスの数が減っていることにも、誰かをはじき出していることにも気づかへん。みんなが、お金を貯めさえすればいいと思ってしまうんや」 「イスを買うお金を貯めるんじゃなくて、すぐにイスを作ったほうがいいですよ」 「優斗くん、それなんや」 ボスはニカッと笑った。 「僕らは、未来のためにイスを作らんとあかんのや」 (中略)「でも不思議ですよ。そんな当たり前のことに誰も気づけないなんて」 「気づいている人はいくらでもおるで。これは、社会保障の経済学では当たり前の話やし、年金制度を作る厚生労働省も同じ意見や。年金の問題を解決するには、お金を貯めてもしょうがない。少子化を食い止めたり、1人当たりの生産力を増やしたりしないとあかん」 『きみのお金は誰のため』112ページより) 少子化が進むと働く人の割合が減る。働く人の割合が減れば、当然、提供される物やサービスの総量も減る。どんなにお金を貯めていても、必要としている人全員に行き渡ることはない。結果、物価が上昇するので、「老後の必要資金」は増えることになる。 5年前、2000万円必要だとされていた老後資金は、今では3000万円とも4000万円とも言われている。 この悪循環を止めるには、「子育てすると、老後がより不安になる」という状態を断ち切る必要がある。 子育て支援政策は最優先でおこなうべきだが、これまで本格的な支援をしてこなかった代償は大きい。その理由として、財源の問題がある。 「今後の高齢化による社会保障費の上昇を考えると財政赤字を増やせない」という理由は、正しそうに聞こえる。しかし、社会保障の前提になっているのは、「医療や介護をする人が十分に存在する」ということ。働く人が足りなければ、社会保障費を使う先が存在しないのだ。 また、「子供手当などのお金を配っても、出生率は上がらない」という反論も聞くが、これも反論としては成立していない。「お金だけではなく、他の理由も存在している」と考えるべきだろう。 実際、「子どもは欲しくない」と回答する若者の理由は、経済的な理由以外にも複数あるからだ。マイナビが大学生向けに行った調査では、その理由として「経済的に不安」だけでなく「うまく育てられる自信がない」「自分の時間がなくなる」「精神的に不安」などの項目も、約半数の学生が理由として挙げていた』、「物価が上昇するので、「老後の必要資金」は増えることになる。 5年前、2000万円必要だとされていた老後資金は、今では3000万円とも4000万円とも言われている・・・マイナビが大学生向けに行った調査では、その理由として「経済的に不安」だけでなく「うまく育てられる自信がない」「自分の時間がなくなる」「精神的に不安」などの項目も、約半数の学生が理由として挙げていた」、なるほど。
・『出生数75万人は「明治維新期」以来の少なさ  日本の年間の出生数が、現在と同じ75万人程度だったのは、明治維新真っただ中の1870年代にさかのぼる。当時の日本は、その人口3000万人程度。生産性は今よりもずっと低かった。 それから150年経ち、人口も生産性も増えているのに、当時と同じ人数の子どもを育てる支援ができない社会はいかがなものだろうか。 子育てとともに、人材育成も急務だ。 「老後不安」を口にする大学生の話をしたが、将来のお金への不安が強すぎるあまりに、奨学金の返済を急ぎ、学業よりもアルバイトを優先しているという話を聞いたこともある。) 『きみのお金は誰のため』の中にも、主人公たちが学費で困っているシーンがある。 うらやましがる優斗に、兄は荷造りの手を止めて、あきれた顔を向ける。 「お前さあ、そんな気楽じゃねえよ。大学卒業したら奨学金も返さなきゃいけないし」 「奨学金って借金なの?」 「そうだよ。俺がもらうのは、将来、返さないといけないやつだからな」 「それって、いくらなの?」 「300万円」 「マジかあ……」 その金額に驚いて、優斗は天井を見上げた。(中略)優斗は愚痴をこぼしたが、それこそが擬似的な贈与だとボスは教えてくれた。 「お兄さんは、大学の先生に教わるけど、先生のために働いて返すわけやない。社会に出てから、お金を稼いで、奨学金を返す。そのお金を稼ぐときに、未来の誰かのために働いているんや。次の贈与が起きている」 (『きみのお金は誰のため』172ページ) 単に”大卒資格を得る”ためだけに大学に行くのなら問題だが、大学で学業に専念してそれを社会に還元してくれるなら、国が学費を全額負担することを考えてもいいのではないだろうか』、「単に”大卒資格を得る”ためだけに大学に行くのなら問題だが、大学で学業に専念してそれを社会に還元してくれるなら、国が学費を全額負担することを考えてもいいのではないだろうか」、その通りだ。
・『少子化が進むと「お金を使う場所」自体がなくなる  “子育て支援”という話題になると、「子どもを持つ世帯VS子どもを持たない世帯」という構図になりがちだ。 しかし、子どもが育たなくて困るのは、老後を迎える人すべてである。誰かの子どもたちが働いてくれるから、お金を使うことができる。少子化が止まらなければ、十分な物やサービスを手に入れることができなくなる。繰り返しになるが、お金がその価値を発揮するには、働く人々の存在が必要不可欠なのだ。 明治維新のころは、西洋に追いつくべく人材育成に力を入れていた。その結果、日本は世界の列強に肩を並べることができた。 ところが、現在では諸外国に追い抜かれてしまった。 財源を理由に、人を育てることをいつまで後回しにするのだろうか。 現在推し進められている資産所得倍増計画についても、「NISAを利用して自己責任で老後の不安に備えてくれ」というメッセージにも受け取れる。 たしかに、金銭的な不安が競争原理を働かせ、社会を成長させるという側面もある。しかし、それはお金を得る目的の競争においてのみ有効だ。 金銭的な不安によって、学業に励むことや子どもを産み育てることが困難では、社会全体が沈んでしまうのそではないだろうか』、「金銭的な不安が競争原理を働かせ、社会を成長させるという側面もある。しかし、それはお金を得る目的の競争においてのみ有効だ。 金銭的な不安によって、学業に励むことや子どもを産み育てることが困難では、社会全体が沈んでしまうのではないだろうか」、その通りだ。
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