株式・為替相場(その22)(通貨危機級の円安は日本の “自業自得” 悪いのは日銀だけか?、日米金利差やデジタル赤字だけではない“異常な円安”の「真の原因」) [金融]
株式・為替相場については、本年3月22日に取上げた。今日は、(その22)(通貨危機級の円安は日本の “自業自得” 悪いのは日銀だけか?、日米金利差やデジタル赤字だけではない“異常な円安”の「真の原因」)である。
先ずは、本年5月14日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「通貨危機級の円安は日本の “自業自得”、悪いのは日銀だけか?」を紹介しよう。
・『これほどまでの円安は、わが国の経済政策の“自業自得”といえるかもしれない。海外の一部の専門家からは、「通貨危機的円安」と言われる状況に陥っている。過度な円安を止めるには、いったいどうしたらいいのか』、興味深そうだ。
・『円安は日本の経済政策の「自業自得」 海外から「通貨危機的円安」と言われる状況に 円安傾向が一段と鮮明化している。4月29日、160円24銭までドル高・円安が進行する場面もあった。その後、覆面介入とみられる動きなどから円は対ドルで反発したが、年初から5月3日までに、円はドルに対して8.5%下落した。海外の一部の専門家からは、「通貨危機的円安」と言われる状況に陥っている』、「通貨危機的円安」とはただ事ではない。
・『通貨危機級の円安は日本の “自業自得”、悪いのは日銀だけか? 円安と、世界的な資源や食料品価格の上昇で、わが国では必要な資材の輸入が難しくなるケースも出始めている。オレンジの不作と円安が影響し、ジュースの材料を輸入できなくなる飲料メーカーも出ているという。果汁在庫がなくなり次第、販売を休止するようだ。円安の影響は、私たちの日常生活にも影響を及ぼし始めている。 円安の進行について、重要なポイントとなるのはわが国の金融政策である。1990年代初頭以降、日本経済の実力が低下したことは残念ながら顕著だ。景気低迷を金融緩和で支える経済政策によって、これまでの常識を超える大規模な金融緩和に拍車がかかった。 わが国の金利は極度に低い状況が続いている。円資金も必要以上に潤沢に供給された。それに対して、2022年3月以降、米国で急速に金利が上昇した。こうして主要投資家にとって、潤沢で金利の安い円を借りて、それをドルに換えて運用する「円キャリートレード」の妙味は高まった。また、日本企業や個人投資家が、成長期待の高い米国株などに資金を投じたことで、国内からの資金流出が勢いづいた点もある。 これほどまでの円安は、わが国の経済政策の“自業自得”といえるかもしれない。過度な円安を止めるには、いったいどうしたらいいのか』、「主要投資家にとって、潤沢で金利の安い円を借りて、それをドルに換えて運用する「円キャリートレード」の妙味は高まった。また、日本企業や個人投資家が、成長期待の高い米国株などに資金を投じたことで、国内からの資金流出が勢いづいた点もある。 これほどまでの円安は、わが国の経済政策の“自業自得”といえるかもしれない。過度な円安を止めるには、いったいどうしたらいいのか」、なるほど。
・『オレンジジュース、オリーブオイル、チョコレート… 円安で食料品や必要な資源の輸入が難しくなる 4月後半、予想を上回る米国経済指標の発表や、日本銀行の円安を容認するとも受け取れる発言もあったことから、34年ぶりの水準まで円安は進行した。 通貨危機級の円安は日本の “自業自得”、悪いのは日銀だけか?(食料やエネルギー資源を輸入に頼るわが国にとって、円安の進行は原材料コストの上昇要因になる。典型例の一つが、国内飲料メーカーによるオレンジジュースの販売休止だ。ブラジルなどで異常気象によりオレンジ果汁の供給が減少し、年初来で、オレンジジュース先物の価格は2割程度上昇した。 わが国のオレンジジュースの約9割は輸入品とみられ、円安で国内メーカーの原材料調達コストは膨れた。オレンジジュースの値上げに踏み切る、あるいは国産ミカンでの代替を検討する企業が増えている。 ただ、そうした取り組みにも限界がある。食料や日用品の価格上昇率は「名目賃金」を上回り、3月まで24カ月続けて「実質賃金」は前年同月比でマイナスだ。オリーブオイルやチョコレートも世界的な相場上昇と円安によって、国内での小売価格が上昇傾向にある。 世界的な供給の不安定化を背景に、モノやサービスの価格は上昇が続いている。加えて、円安が進行し、わが国の輸入物価の上昇圧力は再び高まっている。日本企業にとって、一部の資材では量を確保することが相当な困難となっている』、「世界的な供給の不安定化を背景に、モノやサービスの価格は上昇が続いている。加えて、円安が進行し、わが国の輸入物価の上昇圧力は再び高まっている。日本企業にとって、一部の資材では量を確保することが相当な困難となっている」、なるほど。
・『海外の投資家にとって円金利の低さ 潤沢さは見逃せない収益チャンスに 1990年代初めに資産バブルが崩壊して以降、わが国では事実上、ゼロ金利の環境が続いた。2013年以降は、“アベノミクス”により異次元の緩和策が強化された。日銀は国債流通市場から長期国債を大規模に買い入れ、大規模に通貨供給量を増やした。 16年2月から、日銀はマイナス金利政策も実施し、極端に金利が低い環境が出現した。そうして21年春先以降、世界的に物価の上昇が鮮明になっても、わが国は異次元の緩和を継続し、多額の資金供給を継続してきた。 現在、GDP比で見た通貨供給量(マネーストック)は約2倍と、主要先進国の中でも圧倒的に高い。つまり、国内の円資金が有り余っている。米FRBは物価安定のための利上げに加えて量的な引き締め(QT)を実施したが、わが国の金融政策はそこまで至っていない。主要中央銀行のバランスシート規模(対名目GDP比)に関して、日銀は約120%に達した。この水準は米FRB、英国のBOE、欧州のECBを上回る。 海外の投資家にとって円金利の世界的な低さ、潤沢さは見逃せない収益チャンスとなっている。ヘッジファンドなどの主要投資家は、日米の金利差を使って大規模な円キャリートレードを行った。 4月中旬時点で米国の2年国債の流通利回りは約5%だった。一方、わが国の2年金利は、3月のマイナス金利政策解除で幾分か上昇したものの0.3%程度だった。円で資金を調達して米ドルに換える、ドル資金を用いて米国の短期国債を購入するなどして、主要投資家は高い利得を追求できる。そうした取引が連鎖的に増え、円売りに拍車がかかった。米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによると、4月23日時点で、為替先物を使った円売りの水準は18万4180枚だった。06年以降の最高水準である。 また、豊富な円資金の一部は、24年から始まった新NISAをきっかけに海外に流出した。他方、海外の金融・経済の専門家の間では「今回の通貨危機的な円安は、日本政府の自業自得」との指摘もある。それほど1990年以降の、わが国の緩和に緩和を重ねた金融政策は、円の減価圧力を高めた』、「4月23日時点で、為替先物を使った円売りの水準は18万4180枚だった。06年以降の最高水準である。 また、豊富な円資金の一部は、24年から始まった新NISAをきっかけに海外に流出した。他方、海外の金融・経済の専門家の間では「今回の通貨危機的な円安は、日本政府の自業自得」との指摘も」、なるほど。
・『円安を改善するのに必要不可欠なのは実力を高め「金利のある経済」に戻すこと わが国が金融緩和の強化を重ねることが必要な背景に、経済の実力(潜在成長率)の低下がある。世界のGDPに占める、わが国のシェアの推移を確認すると一目瞭然だ。内閣府によると、世界のGDPに占める日本の割合は1980年に9.8%だった。95年には17.6%まで高まった。2010年に8.5%、足元では4%程度に落ち込んだ。 日本銀行が公表している潜在成長率の推移を確認すると、1990年時点でわが国の潜在成長率は4.0%を上回っていた。それがバブル崩壊後、時間の経過とともに低迷した。2020年度後半(20年10月~21年3月)はコロナ禍の発生もあり0.22%にまで低下した。 その後は徐々に持ち直し、23年10~12月期は0.68%と推計されたものの、1%後半から2%代前半との見方の多い米国との経済の実力の差は大きい。IMF(国際通貨基金)によると25年、インドはわが国を追い抜き、世界第4位に浮上する見通しだ。 わが国の潜在成長率の低下の要因は、バブル崩壊後の経済状況にあるだろう。急速な資産価格の下落と、景気悪化に直面したわが国の企業は成長よりも「守り」を優先した。また、政府による不良債権処理も遅れた。1997年度までは公共事業関係費の積み増しで景気を下支えしたが、IT先端分野など成長期待の高い分野へ経営資源を再配分することが遅れた。 国内の多くの企業が、人材をはじめとしたコスト削減に走り設備投資も縮小した。一方、労働者サイドは、年功序列や終身雇用などの雇用慣行の維持を経営陣に求めた。こうして日本の労働市場では、成長期待の高い分野や企業にヒト・モノ・カネが再配分されにくくなった。 日本企業から高価格帯の新しい製品やサービスを生み出す機会が少ないこともあって、賃金は伸び悩んでいる。OECD(経済協力開発機構)のデータによると、1991年~2022年の間、OECD加盟国の平均賃金(年間)は32.5%上昇したが、わが国は2.8%にとどまった(22年の購買力平価ベースの米ドル基準)。 中東情勢の緊迫化や異常気象による農作物の生育不良、米中対立などさまざまなリスクを考えると、今後、世界的に物価は高止まりする恐れがある。日本経済の実力回復が遅れると、「円売り圧力」が続く可能性は高い。経済の実力を高め、金利のある経済状況に戻すことこそ、通貨危機的と言われかねない円安の状況を改善するのに必要不可欠である』、「今後、世界的に物価は高止まりする恐れがある。日本経済の実力回復が遅れると、「円売り圧力」が続く可能性は高い。経済の実力を高め、金利のある経済状況に戻すことこそ、通貨危機的と言われかねない円安の状況を改善するのに必要不可欠である」、なるほど。
次に、6月13日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏による「日米金利差やデジタル赤字だけではない“異常な円安”の「真の原因」」を紹介しよう』。
https://diamond.jp/articles/-/345316
・『市場は注目、日銀6月会合の追加利上げ 金利差だけが円安の要因なのか? 歴史的な円安局面が続くなかで、6月11日、12日のFOMC(米連邦公開市場委員会)とそれに続いて13日から始まる日本銀行の金融政策決定会合に市場の注目が集まっている。 市場の関心はFRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ実施と日銀の追加利上げの見通しだ。 円ドルレートの今後を考える際に日米の金利差の動向が重要であることは間違いがない。一方で最近の円安は日米の金利差だけでなく、「デジタル赤字」に象徴される日本経済の構造に問題があるとする見方もある。 どちらも間違いではないが、最近の異常な円安の原因を十分に説明することにはなっていない。 なぜなら、ほかに「真の原因」があるからだ』、「円ドルレートの今後を考える際に日米の金利差の動向が重要であることは間違いがない。一方で最近の円安は日米の金利差だけでなく、「デジタル赤字」に象徴される日本経済の構造に問題があるとする見方もある。 どちらも間違いではないが、最近の異常な円安の原因を十分に説明することにはなっていない。 なぜなら、ほかに「真の原因」があるからだ」、なるほど。
・『デジタル赤字の直接の影響はない 1日の日本円取引191兆円、圧倒的な投機資金 為替レートは、各国間の金利差によって決まると言われる。日米間について言えば、その理由は次の通りだ。 日本の金利がアメリカの金利より低ければ、日本円で資金調達して、これをドルに変換し、ドル資産に投資すれば、金利差に相当する利益を得られる。この取引は円を売りドルを買う取引なので、円安が進む(正確に言うと、金利差があり、しかも将来円高にならないという見通しが必要だ。なぜなら、金利差があっても将来、大幅に円高になれば、金利差による利益は吹き飛んでしまうからだ)。 日米の10年債利回りを比較すると、2020年から21年には、日本もアメリカもほぼ0%でほとんど差がなかった。(為替レートに影響するのは2年債利回りだと言われるが、ここでは便宜上、10年債利回りを取る)。 ところが、22年4月から23年7月までの期間にFRB(米連邦準備制度理事会)が政策金利を引き上げた。その結果、10年債の利回りは、24年6月には日本は約1%、アメリカは約4.5%となり、金利差が約3.5%に開いている 仮に金利差の拡大だけが円安の原因であるとすれば、日米の金融政策によって為替レートを元の水準に戻すことは可能だ。 つまり、アメリカが金利を引き下げ、日本が金利を引き上げ、金利差を20年頃の状態に戻せば、為替レートも20年から21年の水準(1ドル=105円から110円程度)に戻るだろう(正確に言うと、この期間の物価上昇率が両国で異なるので、その分を調整する必要がある)。 しかし、最近時点の円安はあまりに異常だ。そこで金利差だけではなく、日米経済の構造的な劣化が影響しているのではないかという考えがある。この考えが正しければ、金融政策だけでは、いまの異常な円安を元に戻すことはできない。 例えば、デジタル関連のサービス収支の赤字が膨らんでいるのは、日本におけるデジタル化の遅れを示すものであり、簡単には解決できない。このため、サービス収支の赤字は減らすことができず、そのために円安になるという考えがある。 確かにデジタル赤字の拡大は問題だ。しかし、これが円安の原因だとは考えられない。なぜなら、赤字額が金融取引額に比べて、比較にならないほど少ないからだ。 投機筋は自己資金の何倍もの短期の借り入れを行い、投資総額を増やして投資する。投機資金は借入れによって資金を調達できるので、額が実需とは比較にならないほど巨額になりうる。 このため、外国為替市場では、貿易などの実需ではなく、投機資金の動きによって為替レートが決まるのだ。 国際決済銀行(BIS)の調査によると、世界の外国為替取引高は1日当たりの平均7兆5000億ドルだ。このうち日本円は約17%だ。だから1.28兆ドルだ。1ドル=150円で換算すると191兆円になる。 これに対してデジタル赤字額は、23年度に約5.6兆円だった。これは年間の数字であり、1日の数字に直せば平均して156億円ということになる。これは、上で見た外国為替取引高に比べて極めて小さい。 「新NISA(少額投資非課税制度)の導入によって、投資資金の海外流出が増え、円安を加速している」という見方についても、投機資金の規模に比べると極めて少ないので、同様の評価をすることができる。 このように、通常、指摘される構造要因は、いまの円安の直接的な原因とは考えられない。 円安は22年以降の2年間で急速に進んだ。それまでは1ドルは105円から110円程度の水準だったのが、いまは160円近くになっているのだから、円の価値が3割以上低下したことになる。日本経済の構造的悪化が進んでいるのは事実だが、2年の間に円の価値をこれほど落とすほど急激な構造変化が起きたとは考えにくい』、「円安は22年以降の2年間で急速に進んだ。それまでは1ドルは105円から110円程度の水準だったのが、いまは160円近くになっているのだから、円の価値が3割以上低下したことになる。日本経済の構造的悪化が進んでいるのは事実だが、2年の間に円の価値をこれほど落とすほど急激な構造変化が起きたとは考えにくい」、その通りだ。
・『日本では金利を上げられない 経済の弱さが金融政策の自由度縛る ただし、別の観点から、円安が進む日本の構造を問題視することができる。それは、金融政策に関して強い制約がかかっているため、金融政策の自由度が低くなっていることだ。 仮にいまの日本で、金利をアメリカ並みの水準に引き上げれば、大混乱が起きるだろう。住宅ローンが高騰したり、ゾンビ企業が借入金を返済できなくなって破綻したりするだろう。また国債を発行して財政資金を調達するのも困難になる。 最も大きなものは、株価への影響だ。株価は将来の利益の割引現在値だから、将来の利益が一定であり、かつリスクプレミアムを無視すれば、株価収益率の逆数(=利益÷株価)は利子率と等しくなる。したがって、利子率が上昇すれば株価は下落する。 では、アメリカで、株価は利上げに対してどのように変化したか?株価をダウ平均値で見ると次の通りだ。 上昇を続けていたダウ平均株価は、2021年末にピークになり、22年までは低下した。しかし、暴落というほどの下落ではなかった。そして、22年10月初めをボトムとして、その後は上昇基調になり、23年10月からは明確に上昇した。 22年9月には、10年債利回りもピークになり、その後はほぼ一定。そして24年になってから再び上昇した。 利子率の変動に応じて株価は変動したのだが、24年以降の株価は22年のピークよりも高くなっている。 このように、アメリカの株価は利上げの影響を受けたが、暴落というような事態にはならず、総じて堅調に推移した。 つまり、アメリカの株価は、金利の大幅な上昇に対して大暴落には至らない耐性を持っていたと考えることができる。つまり、経済が強いために大幅な金利引き上げが可能なのだ。 しかし、いま日本で長期金利を4%にするような金融引き締めを行なえば、株価は大暴落するだろう。だから、そのような利上げを、為替レートを円高にするために行うことは難しい。このような意味で経済の弱さが金融政策の自由度を引き下げているということができる』、「アメリカの株価は、金利の大幅な上昇に対して大暴落には至らない耐性を持っていたと考えることができる。つまり、経済が強いために大幅な金利引き上げが可能なのだ。 しかし、いま日本で長期金利を4%にするような金融引き締めを行なえば、株価は大暴落するだろう。だから、そのような利上げを、為替レートを円高にするために行うことは難しい。このような意味で経済の弱さが金融政策の自由度を引き下げている」、なるほど。
・『政治的に不人気の金融引き締め 日銀の独立性、確保されていない!? 利上げを行なったのは、FRBだけではない。イングランド銀行も利上げを行った。ヨーロッパ中央銀行もそうだ。 この結果、ポンドやユーロは、2022年にはドルに対して減価したが、現在では20年頃の水準に戻っている。円レートが2000年頃より大幅に減価したままであるのとは大きな違いだ。 イングランド銀行は22年に、当時のトラス内閣が財源の裏付けのない減税案を提案してポンドが急落した時、国債の買い支えをごく限定的にしか行なわなかった。このため、トラス内閣は減税案の撤回に追い込まれ、その後、トラス首相が辞任した。このように、内閣を潰してさえ、ポンドの価値を維持しようとしたのだ。 つまり、以上の国々では、インフレ退治や通貨価値維持のために、政治的には人気のない金融引き締めを行うことができた。しかし、日本で同じような引き締めを行おうとしても、経済がそれに耐えられないため、実行できない。 このような違いこそが、構造上の最も大きな違いであり、そして、異常な円安をもたらした真の原因と考えることができる』、「以上の国々では、インフレ退治や通貨価値維持のために、政治的には人気のない金融引き締めを行うことができた。しかし、日本で同じような引き締めを行おうとしても、経済がそれに耐えられないため、実行できない。 このような違いこそが、構造上の最も大きな違いであり、そして、異常な円安をもたらした真の原因と考えることができる」、その通りである。
先ずは、本年5月14日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「通貨危機級の円安は日本の “自業自得”、悪いのは日銀だけか?」を紹介しよう。
・『これほどまでの円安は、わが国の経済政策の“自業自得”といえるかもしれない。海外の一部の専門家からは、「通貨危機的円安」と言われる状況に陥っている。過度な円安を止めるには、いったいどうしたらいいのか』、興味深そうだ。
・『円安は日本の経済政策の「自業自得」 海外から「通貨危機的円安」と言われる状況に 円安傾向が一段と鮮明化している。4月29日、160円24銭までドル高・円安が進行する場面もあった。その後、覆面介入とみられる動きなどから円は対ドルで反発したが、年初から5月3日までに、円はドルに対して8.5%下落した。海外の一部の専門家からは、「通貨危機的円安」と言われる状況に陥っている』、「通貨危機的円安」とはただ事ではない。
・『通貨危機級の円安は日本の “自業自得”、悪いのは日銀だけか? 円安と、世界的な資源や食料品価格の上昇で、わが国では必要な資材の輸入が難しくなるケースも出始めている。オレンジの不作と円安が影響し、ジュースの材料を輸入できなくなる飲料メーカーも出ているという。果汁在庫がなくなり次第、販売を休止するようだ。円安の影響は、私たちの日常生活にも影響を及ぼし始めている。 円安の進行について、重要なポイントとなるのはわが国の金融政策である。1990年代初頭以降、日本経済の実力が低下したことは残念ながら顕著だ。景気低迷を金融緩和で支える経済政策によって、これまでの常識を超える大規模な金融緩和に拍車がかかった。 わが国の金利は極度に低い状況が続いている。円資金も必要以上に潤沢に供給された。それに対して、2022年3月以降、米国で急速に金利が上昇した。こうして主要投資家にとって、潤沢で金利の安い円を借りて、それをドルに換えて運用する「円キャリートレード」の妙味は高まった。また、日本企業や個人投資家が、成長期待の高い米国株などに資金を投じたことで、国内からの資金流出が勢いづいた点もある。 これほどまでの円安は、わが国の経済政策の“自業自得”といえるかもしれない。過度な円安を止めるには、いったいどうしたらいいのか』、「主要投資家にとって、潤沢で金利の安い円を借りて、それをドルに換えて運用する「円キャリートレード」の妙味は高まった。また、日本企業や個人投資家が、成長期待の高い米国株などに資金を投じたことで、国内からの資金流出が勢いづいた点もある。 これほどまでの円安は、わが国の経済政策の“自業自得”といえるかもしれない。過度な円安を止めるには、いったいどうしたらいいのか」、なるほど。
・『オレンジジュース、オリーブオイル、チョコレート… 円安で食料品や必要な資源の輸入が難しくなる 4月後半、予想を上回る米国経済指標の発表や、日本銀行の円安を容認するとも受け取れる発言もあったことから、34年ぶりの水準まで円安は進行した。 通貨危機級の円安は日本の “自業自得”、悪いのは日銀だけか?(食料やエネルギー資源を輸入に頼るわが国にとって、円安の進行は原材料コストの上昇要因になる。典型例の一つが、国内飲料メーカーによるオレンジジュースの販売休止だ。ブラジルなどで異常気象によりオレンジ果汁の供給が減少し、年初来で、オレンジジュース先物の価格は2割程度上昇した。 わが国のオレンジジュースの約9割は輸入品とみられ、円安で国内メーカーの原材料調達コストは膨れた。オレンジジュースの値上げに踏み切る、あるいは国産ミカンでの代替を検討する企業が増えている。 ただ、そうした取り組みにも限界がある。食料や日用品の価格上昇率は「名目賃金」を上回り、3月まで24カ月続けて「実質賃金」は前年同月比でマイナスだ。オリーブオイルやチョコレートも世界的な相場上昇と円安によって、国内での小売価格が上昇傾向にある。 世界的な供給の不安定化を背景に、モノやサービスの価格は上昇が続いている。加えて、円安が進行し、わが国の輸入物価の上昇圧力は再び高まっている。日本企業にとって、一部の資材では量を確保することが相当な困難となっている』、「世界的な供給の不安定化を背景に、モノやサービスの価格は上昇が続いている。加えて、円安が進行し、わが国の輸入物価の上昇圧力は再び高まっている。日本企業にとって、一部の資材では量を確保することが相当な困難となっている」、なるほど。
・『海外の投資家にとって円金利の低さ 潤沢さは見逃せない収益チャンスに 1990年代初めに資産バブルが崩壊して以降、わが国では事実上、ゼロ金利の環境が続いた。2013年以降は、“アベノミクス”により異次元の緩和策が強化された。日銀は国債流通市場から長期国債を大規模に買い入れ、大規模に通貨供給量を増やした。 16年2月から、日銀はマイナス金利政策も実施し、極端に金利が低い環境が出現した。そうして21年春先以降、世界的に物価の上昇が鮮明になっても、わが国は異次元の緩和を継続し、多額の資金供給を継続してきた。 現在、GDP比で見た通貨供給量(マネーストック)は約2倍と、主要先進国の中でも圧倒的に高い。つまり、国内の円資金が有り余っている。米FRBは物価安定のための利上げに加えて量的な引き締め(QT)を実施したが、わが国の金融政策はそこまで至っていない。主要中央銀行のバランスシート規模(対名目GDP比)に関して、日銀は約120%に達した。この水準は米FRB、英国のBOE、欧州のECBを上回る。 海外の投資家にとって円金利の世界的な低さ、潤沢さは見逃せない収益チャンスとなっている。ヘッジファンドなどの主要投資家は、日米の金利差を使って大規模な円キャリートレードを行った。 4月中旬時点で米国の2年国債の流通利回りは約5%だった。一方、わが国の2年金利は、3月のマイナス金利政策解除で幾分か上昇したものの0.3%程度だった。円で資金を調達して米ドルに換える、ドル資金を用いて米国の短期国債を購入するなどして、主要投資家は高い利得を追求できる。そうした取引が連鎖的に増え、円売りに拍車がかかった。米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによると、4月23日時点で、為替先物を使った円売りの水準は18万4180枚だった。06年以降の最高水準である。 また、豊富な円資金の一部は、24年から始まった新NISAをきっかけに海外に流出した。他方、海外の金融・経済の専門家の間では「今回の通貨危機的な円安は、日本政府の自業自得」との指摘もある。それほど1990年以降の、わが国の緩和に緩和を重ねた金融政策は、円の減価圧力を高めた』、「4月23日時点で、為替先物を使った円売りの水準は18万4180枚だった。06年以降の最高水準である。 また、豊富な円資金の一部は、24年から始まった新NISAをきっかけに海外に流出した。他方、海外の金融・経済の専門家の間では「今回の通貨危機的な円安は、日本政府の自業自得」との指摘も」、なるほど。
・『円安を改善するのに必要不可欠なのは実力を高め「金利のある経済」に戻すこと わが国が金融緩和の強化を重ねることが必要な背景に、経済の実力(潜在成長率)の低下がある。世界のGDPに占める、わが国のシェアの推移を確認すると一目瞭然だ。内閣府によると、世界のGDPに占める日本の割合は1980年に9.8%だった。95年には17.6%まで高まった。2010年に8.5%、足元では4%程度に落ち込んだ。 日本銀行が公表している潜在成長率の推移を確認すると、1990年時点でわが国の潜在成長率は4.0%を上回っていた。それがバブル崩壊後、時間の経過とともに低迷した。2020年度後半(20年10月~21年3月)はコロナ禍の発生もあり0.22%にまで低下した。 その後は徐々に持ち直し、23年10~12月期は0.68%と推計されたものの、1%後半から2%代前半との見方の多い米国との経済の実力の差は大きい。IMF(国際通貨基金)によると25年、インドはわが国を追い抜き、世界第4位に浮上する見通しだ。 わが国の潜在成長率の低下の要因は、バブル崩壊後の経済状況にあるだろう。急速な資産価格の下落と、景気悪化に直面したわが国の企業は成長よりも「守り」を優先した。また、政府による不良債権処理も遅れた。1997年度までは公共事業関係費の積み増しで景気を下支えしたが、IT先端分野など成長期待の高い分野へ経営資源を再配分することが遅れた。 国内の多くの企業が、人材をはじめとしたコスト削減に走り設備投資も縮小した。一方、労働者サイドは、年功序列や終身雇用などの雇用慣行の維持を経営陣に求めた。こうして日本の労働市場では、成長期待の高い分野や企業にヒト・モノ・カネが再配分されにくくなった。 日本企業から高価格帯の新しい製品やサービスを生み出す機会が少ないこともあって、賃金は伸び悩んでいる。OECD(経済協力開発機構)のデータによると、1991年~2022年の間、OECD加盟国の平均賃金(年間)は32.5%上昇したが、わが国は2.8%にとどまった(22年の購買力平価ベースの米ドル基準)。 中東情勢の緊迫化や異常気象による農作物の生育不良、米中対立などさまざまなリスクを考えると、今後、世界的に物価は高止まりする恐れがある。日本経済の実力回復が遅れると、「円売り圧力」が続く可能性は高い。経済の実力を高め、金利のある経済状況に戻すことこそ、通貨危機的と言われかねない円安の状況を改善するのに必要不可欠である』、「今後、世界的に物価は高止まりする恐れがある。日本経済の実力回復が遅れると、「円売り圧力」が続く可能性は高い。経済の実力を高め、金利のある経済状況に戻すことこそ、通貨危機的と言われかねない円安の状況を改善するのに必要不可欠である」、なるほど。
次に、6月13日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏による「日米金利差やデジタル赤字だけではない“異常な円安”の「真の原因」」を紹介しよう』。
https://diamond.jp/articles/-/345316
・『市場は注目、日銀6月会合の追加利上げ 金利差だけが円安の要因なのか? 歴史的な円安局面が続くなかで、6月11日、12日のFOMC(米連邦公開市場委員会)とそれに続いて13日から始まる日本銀行の金融政策決定会合に市場の注目が集まっている。 市場の関心はFRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ実施と日銀の追加利上げの見通しだ。 円ドルレートの今後を考える際に日米の金利差の動向が重要であることは間違いがない。一方で最近の円安は日米の金利差だけでなく、「デジタル赤字」に象徴される日本経済の構造に問題があるとする見方もある。 どちらも間違いではないが、最近の異常な円安の原因を十分に説明することにはなっていない。 なぜなら、ほかに「真の原因」があるからだ』、「円ドルレートの今後を考える際に日米の金利差の動向が重要であることは間違いがない。一方で最近の円安は日米の金利差だけでなく、「デジタル赤字」に象徴される日本経済の構造に問題があるとする見方もある。 どちらも間違いではないが、最近の異常な円安の原因を十分に説明することにはなっていない。 なぜなら、ほかに「真の原因」があるからだ」、なるほど。
・『デジタル赤字の直接の影響はない 1日の日本円取引191兆円、圧倒的な投機資金 為替レートは、各国間の金利差によって決まると言われる。日米間について言えば、その理由は次の通りだ。 日本の金利がアメリカの金利より低ければ、日本円で資金調達して、これをドルに変換し、ドル資産に投資すれば、金利差に相当する利益を得られる。この取引は円を売りドルを買う取引なので、円安が進む(正確に言うと、金利差があり、しかも将来円高にならないという見通しが必要だ。なぜなら、金利差があっても将来、大幅に円高になれば、金利差による利益は吹き飛んでしまうからだ)。 日米の10年債利回りを比較すると、2020年から21年には、日本もアメリカもほぼ0%でほとんど差がなかった。(為替レートに影響するのは2年債利回りだと言われるが、ここでは便宜上、10年債利回りを取る)。 ところが、22年4月から23年7月までの期間にFRB(米連邦準備制度理事会)が政策金利を引き上げた。その結果、10年債の利回りは、24年6月には日本は約1%、アメリカは約4.5%となり、金利差が約3.5%に開いている 仮に金利差の拡大だけが円安の原因であるとすれば、日米の金融政策によって為替レートを元の水準に戻すことは可能だ。 つまり、アメリカが金利を引き下げ、日本が金利を引き上げ、金利差を20年頃の状態に戻せば、為替レートも20年から21年の水準(1ドル=105円から110円程度)に戻るだろう(正確に言うと、この期間の物価上昇率が両国で異なるので、その分を調整する必要がある)。 しかし、最近時点の円安はあまりに異常だ。そこで金利差だけではなく、日米経済の構造的な劣化が影響しているのではないかという考えがある。この考えが正しければ、金融政策だけでは、いまの異常な円安を元に戻すことはできない。 例えば、デジタル関連のサービス収支の赤字が膨らんでいるのは、日本におけるデジタル化の遅れを示すものであり、簡単には解決できない。このため、サービス収支の赤字は減らすことができず、そのために円安になるという考えがある。 確かにデジタル赤字の拡大は問題だ。しかし、これが円安の原因だとは考えられない。なぜなら、赤字額が金融取引額に比べて、比較にならないほど少ないからだ。 投機筋は自己資金の何倍もの短期の借り入れを行い、投資総額を増やして投資する。投機資金は借入れによって資金を調達できるので、額が実需とは比較にならないほど巨額になりうる。 このため、外国為替市場では、貿易などの実需ではなく、投機資金の動きによって為替レートが決まるのだ。 国際決済銀行(BIS)の調査によると、世界の外国為替取引高は1日当たりの平均7兆5000億ドルだ。このうち日本円は約17%だ。だから1.28兆ドルだ。1ドル=150円で換算すると191兆円になる。 これに対してデジタル赤字額は、23年度に約5.6兆円だった。これは年間の数字であり、1日の数字に直せば平均して156億円ということになる。これは、上で見た外国為替取引高に比べて極めて小さい。 「新NISA(少額投資非課税制度)の導入によって、投資資金の海外流出が増え、円安を加速している」という見方についても、投機資金の規模に比べると極めて少ないので、同様の評価をすることができる。 このように、通常、指摘される構造要因は、いまの円安の直接的な原因とは考えられない。 円安は22年以降の2年間で急速に進んだ。それまでは1ドルは105円から110円程度の水準だったのが、いまは160円近くになっているのだから、円の価値が3割以上低下したことになる。日本経済の構造的悪化が進んでいるのは事実だが、2年の間に円の価値をこれほど落とすほど急激な構造変化が起きたとは考えにくい』、「円安は22年以降の2年間で急速に進んだ。それまでは1ドルは105円から110円程度の水準だったのが、いまは160円近くになっているのだから、円の価値が3割以上低下したことになる。日本経済の構造的悪化が進んでいるのは事実だが、2年の間に円の価値をこれほど落とすほど急激な構造変化が起きたとは考えにくい」、その通りだ。
・『日本では金利を上げられない 経済の弱さが金融政策の自由度縛る ただし、別の観点から、円安が進む日本の構造を問題視することができる。それは、金融政策に関して強い制約がかかっているため、金融政策の自由度が低くなっていることだ。 仮にいまの日本で、金利をアメリカ並みの水準に引き上げれば、大混乱が起きるだろう。住宅ローンが高騰したり、ゾンビ企業が借入金を返済できなくなって破綻したりするだろう。また国債を発行して財政資金を調達するのも困難になる。 最も大きなものは、株価への影響だ。株価は将来の利益の割引現在値だから、将来の利益が一定であり、かつリスクプレミアムを無視すれば、株価収益率の逆数(=利益÷株価)は利子率と等しくなる。したがって、利子率が上昇すれば株価は下落する。 では、アメリカで、株価は利上げに対してどのように変化したか?株価をダウ平均値で見ると次の通りだ。 上昇を続けていたダウ平均株価は、2021年末にピークになり、22年までは低下した。しかし、暴落というほどの下落ではなかった。そして、22年10月初めをボトムとして、その後は上昇基調になり、23年10月からは明確に上昇した。 22年9月には、10年債利回りもピークになり、その後はほぼ一定。そして24年になってから再び上昇した。 利子率の変動に応じて株価は変動したのだが、24年以降の株価は22年のピークよりも高くなっている。 このように、アメリカの株価は利上げの影響を受けたが、暴落というような事態にはならず、総じて堅調に推移した。 つまり、アメリカの株価は、金利の大幅な上昇に対して大暴落には至らない耐性を持っていたと考えることができる。つまり、経済が強いために大幅な金利引き上げが可能なのだ。 しかし、いま日本で長期金利を4%にするような金融引き締めを行なえば、株価は大暴落するだろう。だから、そのような利上げを、為替レートを円高にするために行うことは難しい。このような意味で経済の弱さが金融政策の自由度を引き下げているということができる』、「アメリカの株価は、金利の大幅な上昇に対して大暴落には至らない耐性を持っていたと考えることができる。つまり、経済が強いために大幅な金利引き上げが可能なのだ。 しかし、いま日本で長期金利を4%にするような金融引き締めを行なえば、株価は大暴落するだろう。だから、そのような利上げを、為替レートを円高にするために行うことは難しい。このような意味で経済の弱さが金融政策の自由度を引き下げている」、なるほど。
・『政治的に不人気の金融引き締め 日銀の独立性、確保されていない!? 利上げを行なったのは、FRBだけではない。イングランド銀行も利上げを行った。ヨーロッパ中央銀行もそうだ。 この結果、ポンドやユーロは、2022年にはドルに対して減価したが、現在では20年頃の水準に戻っている。円レートが2000年頃より大幅に減価したままであるのとは大きな違いだ。 イングランド銀行は22年に、当時のトラス内閣が財源の裏付けのない減税案を提案してポンドが急落した時、国債の買い支えをごく限定的にしか行なわなかった。このため、トラス内閣は減税案の撤回に追い込まれ、その後、トラス首相が辞任した。このように、内閣を潰してさえ、ポンドの価値を維持しようとしたのだ。 つまり、以上の国々では、インフレ退治や通貨価値維持のために、政治的には人気のない金融引き締めを行うことができた。しかし、日本で同じような引き締めを行おうとしても、経済がそれに耐えられないため、実行できない。 このような違いこそが、構造上の最も大きな違いであり、そして、異常な円安をもたらした真の原因と考えることができる』、「以上の国々では、インフレ退治や通貨価値維持のために、政治的には人気のない金融引き締めを行うことができた。しかし、日本で同じような引き締めを行おうとしても、経済がそれに耐えられないため、実行できない。 このような違いこそが、構造上の最も大きな違いであり、そして、異常な円安をもたらした真の原因と考えることができる」、その通りである。
タグ:株式・為替相場 (その22)(通貨危機級の円安は日本の “自業自得” 悪いのは日銀だけか?、日米金利差やデジタル赤字だけではない“異常な円安”の「真の原因」) ダイヤモンド・オンライン 真壁昭夫氏による「通貨危機級の円安は日本の “自業自得”、悪いのは日銀だけか?」 「通貨危機的円安」とはただ事ではない。 「主要投資家にとって、潤沢で金利の安い円を借りて、それをドルに換えて運用する「円キャリートレード」の妙味は高まった。また、日本企業や個人投資家が、成長期待の高い米国株などに資金を投じたことで、国内からの資金流出が勢いづいた点もある。 これほどまでの円安は、わが国の経済政策の“自業自得”といえるかもしれない。過度な円安を止めるには、いったいどうしたらいいのか」、なるほど。 「世界的な供給の不安定化を背景に、モノやサービスの価格は上昇が続いている。加えて、円安が進行し、わが国の輸入物価の上昇圧力は再び高まっている。日本企業にとって、一部の資材では量を確保することが相当な困難となっている」、なるほど。 「4月23日時点で、為替先物を使った円売りの水準は18万4180枚だった。06年以降の最高水準である。 また、豊富な円資金の一部は、24年から始まった新NISAをきっかけに海外に流出した。他方、海外の金融・経済の専門家の間では「今回の通貨危機的な円安は、日本政府の自業自得」との指摘も」、なるほど。 「今後、世界的に物価は高止まりする恐れがある。日本経済の実力回復が遅れると、「円売り圧力」が続く可能性は高い。経済の実力を高め、金利のある経済状況に戻すことこそ、通貨危機的と言われかねない円安の状況を改善するのに必要不可欠である」、なるほど。 野口悠紀雄氏による「日米金利差やデジタル赤字だけではない“異常な円安”の「真の原因」」 「円ドルレートの今後を考える際に日米の金利差の動向が重要であることは間違いがない。一方で最近の円安は日米の金利差だけでなく、「デジタル赤字」に象徴される日本経済の構造に問題があるとする見方もある。 どちらも間違いではないが、最近の異常な円安の原因を十分に説明することにはなっていない。 なぜなら、ほかに「真の原因」があるからだ」、なるほど。 「円安は22年以降の2年間で急速に進んだ。それまでは1ドルは105円から110円程度の水準だったのが、いまは160円近くになっているのだから、円の価値が3割以上低下したことになる。日本経済の構造的悪化が進んでいるのは事実だが、2年の間に円の価値をこれほど落とすほど急激な構造変化が起きたとは考えにくい」、その通りだ。 「アメリカの株価は、金利の大幅な上昇に対して大暴落には至らない耐性を持っていたと考えることができる。つまり、経済が強いために大幅な金利引き上げが可能なのだ。 しかし、いま日本で長期金利を4%にするような金融引き締めを行なえば、株価は大暴落するだろう。だから、そのような利上げを、為替レートを円高にするために行うことは難しい。このような意味で経済の弱さが金融政策の自由度を引き下げている」、なるほど。 「以上の国々では、インフレ退治や通貨価値維持のために、政治的には人気のない金融引き締めを行うことができた。しかし、日本で同じような引き締めを行おうとしても、経済がそれに耐えられないため、実行できない。 このような違いこそが、構造上の最も大きな違いであり、そして、異常な円安をもたらした真の原因と考えることができる」、その通りである。