イスラエル・パレスチナ(その5)(ハマスとの停戦めぐり揺れ動くイスラエル国民 人質の全員解放か ハマスの壊滅か…割れる意見、イスラエルがハマスと同時にヒズボラにも戦争を仕掛けたがる理由、ネタニヤフ政権「イスラエル史上 最も右寄り」の訳 イスラエルの選挙制度に問題がある) [世界情勢]
イスラエル・パレスチナについては、本年5月30日に取上げた。今日は、(その5)(ハマスとの停戦めぐり揺れ動くイスラエル国民 人質の全員解放か ハマスの壊滅か…割れる意見、イスラエルがハマスと同時にヒズボラにも戦争を仕掛けたがる理由、ネタニヤフ政権「イスラエル史上 最も右寄り」の訳 イスラエルの選挙制度に問題がある)である。
先ずは、6月12日付け東洋経済オンラインが掲載したミルトス(イスラエル・ユダヤ文化の出版社)代表の谷内 意咲氏による「ハマスとの停戦めぐり揺れ動くイスラエル国民 人質の全員解放か、ハマスの壊滅か…割れる意見」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/760352
・『ハマスの奇襲テロによってイスラエルが戦争に突入してから8カ月経ったが、この数日で大きな動きが2つあった。人質4人が軍事作戦によって奪還されたこと、そしてベニー・ガンツが戦時内閣から離脱を表明したことである。 これまでにイスラエル国防軍(IDF)の地上作戦やハマスとの交渉によって135人の人質がイスラエルに戻ってきたが、今も120人はガザのどこかに監禁されたままである。 この数カ月間、IDFは地上作戦によって拉致された人の遺体を救出してきた。イスラエル側の安否不明者数が少しずつ減っている中での、生存者4人奪還のニュースだった』、「地上作戦やハマスとの交渉によって135人の人質がイスラエルに戻ってきたが、今も120人はガザのどこかに監禁されたまま」、なるほど。
・『6月8日に人質4人を奪還 この戦争において、イスラエル国民が最優先事項と考えるのは、人質の奪還であることは間違いない。人口1,000万人に満たない小国イスラエルの同胞意識は、われわれには想像もつかないほど強い。 2000年もの間、土地も国も持てず世界に離散しながら生き延びてきたユダヤ人の根底にある意識と言えるだろう。(「『囚われた人々』奪還へ突き動かすイスラエルの教え」参照) 戦争が始まった直後、ガザ近郊に住む娘と孫が人質として連れ去られたというMさんに話を伺ったことがある。約50日後、ハマスとの交渉で一家は全員生還した。Mさんに祝福のメッセージを送ったら、すぐに短い一文が返ってきた。「私たちは幸せですが、残りの人質が全員帰ってくるまで、私たちは戦い続けます」 テルアビブ美術館の広場は「人質広場」と呼ばれ、人質解放を訴える家族が日々活動している。その中には、家族が無事に帰ってきた人や親族ではない人も大勢いて、1日も早く全員が帰還できるよう人質家族を支え続けている。 6月8日に生還した4人は、ガザ地区のヌセイラット難民キャンプでハマスに拘束されていたノア・アルガマニさん(25)、アルモグ・メイールさん(21)、シュロミ・ジヴさん(40)、アンドレイ・コズロヴさん(27)。実に246日ぶりの解放であった。この4人はいずれもノバ音楽フェスティバルから2023年10月7日に拉致された。) ノアさんについては、バイクに乗せられ拉致される中で助けを求めて叫ぶ様子が世界で報じられ、ハマスの蛮行の象徴として記憶している人も多いだろう。母親のリオラさんは進行するがんと戦いながら、車椅子に乗って娘の解放を訴え続けていた。 この作戦は「アルノン作戦」(当初は「夏の種作戦」)と名づけられていた。IDFとシャバク(イスラエル総保安庁)、ヤマム(イスラエル国境警察の対テロ特殊部隊)などあらゆる治安機関が連携し、約1カ月かけて準備された。人質4人はトンネルではなく、ガザ市民の住宅に拘束されていた。 ハマスはガザ市民を「人間の盾」としていることは周知の事実だが、人質も同様で、IDFの攻撃によって犠牲になった人質がいることも判明している。生還したノアさんの証言によると、自身もIDFのミサイル攻撃によって命の危険を感じたことがあったという』、「人質4人はトンネルではなく、ガザ市民の住宅に拘束されていた。 ハマスはガザ市民を「人間の盾」としていることは周知の事実だが、人質も同様で、IDFの攻撃によって犠牲になった人質がいることも判明している。生還したノアさんの証言によると、自身もIDFのミサイル攻撃によって命の危険を感じたことがあったという」、なるほど。
・『戦時内閣からガンツ氏が脱退 6月8日の午前11時、作戦が開始された。ハマスは、IDFがヌセイラット難民キャンプの一角を包囲している情報をつかむと攻撃を開始し、激しい銃撃戦となった。 救出部隊は、建物の1階にいたノアさんを救出した後、3階の3人を救い出した。11時15分、「ダイヤモンドはわれわれの手に」と伝えられた。人質を保護したという報告である。 救出自体は短時間で完了したが、数百人の武装テロリストが周りを取り囲み、救出部隊を執拗に攻撃し続け、人質を運搬するためのトラックが爆破された。それで保護した人質を海岸へと導き、最終的にIDF空軍のヘリでイスラエルに連れ戻した。11時50分のことである。 テロリストとの激しい銃撃戦により、ヤマムの指揮官1人が犠牲になった。ハマス傘下のガザ保健省の発表では、パレスチナ人274人が死亡し、698人が負傷したとされている。 人質奪還のニュースにイスラエル中が沸き立った日の翌6月9日、戦時内閣に参加していたベニー・ガンツが辞任を発表した。ガンツは戦争勃発の5日後に戦時内閣に加わったが、つねにネタニヤフ首相との不協和音が報じられていた。ガンツはこの日、65歳の誕生日を迎えた。 「戦争が勃発した後、私たちは政治的パートナーシップからではなく、運命共同体として1つになる必要性を感じ、緊急内閣に加わった。けれどもこの内閣は、政治的な判断に重きを置き、重要な戦略的決定を先延ばしにしている」) ガンツはネタニヤフ政権を厳しく批判し、総選挙を行なうことを提案した。 「残念ながら、われわれが真の勝利へ向かうことを阻止しているのはネタニヤフである。真の勝利を獲得するには、この秋、戦争から1年が経つ頃に、総選挙に臨むことが適切であると考える。国民の信任を得た内閣を立ち上げ、困難な挑戦に立ち向かうためである」 ガンツの政権離脱の発表がなされた後、イスラエルのチャンネル11が世論調査を行なった。「もし今、総選挙が行なわれたとしたら、どの政党に投票するか」(注:イスラエルは比例代表制なので政党に投票する)に対する答えの割合を、議席数に換算したものが次である。 ▽イスラエル世論調査でわかる2つのこと(()内は党首名、【】内は同じ設問で約1週間前に行なわれた世論調査からの変動数である』、「救出自体は短時間で完了したが、数百人の武装テロリストが周りを取り囲み、救出部隊を執拗に攻撃し続け、人質を運搬するためのトラックが爆破された。それで保護した人質を海岸へと導き、最終的にIDF空軍のヘリでイスラエルに連れ戻した。11時50分のことである。 テロリストとの激しい銃撃戦により、ヤマムの指揮官1人が犠牲になった。ハマス傘下のガザ保健省の発表では、パレスチナ人274人が死亡し、698人が負傷」、「テロリスト側の損害は極めて多いようだ。
・国家統一党(ガンツ)23議席【-4】 ・リクード党(ネタニヤフ)22議席【+1】 ・未来がある党(ラピッド)16議席【+2】 ・わが家イスラエル党(リーベルマン)12議席【±0】 ・シャス党(デリー)10 議席【±0】 ・ユダヤの力党(ベングビール)9議席【±0】 ・労働党(ゴラン)7議席【+1】 ・ユダヤ・トーラー連合(シャピラ)7議席【±0】 ・ハダッシュ・タアル党(ティビ)5議席【±0】 ・統一アラブリスト党(アッバス)5議席【±0】 ・宗教シオニズム党(スモトリッチ)4議席【±0】 ※国会の定数は120議席 この結果を現在の与野党に振り分けると、与党は52議席【+1】、野党は63議席【-1】(どちらにも属さないアラブ系のハダッシュ・タアル党の5議席を除く)となる。 現与党の下野が確実視される中で、皮肉なことに、ガンツが離脱を発表したことで自身の国家統一党は4議席減らし、与党のリクード党が1議席増やしている。そして注目したいのは、若干ではあるが左派系の支持が回復していることだ。) 建国以来、第1党として多くの期間イスラエルの政権を担ってきた左派の労働党は、1993年のオスロ合意を導いたが、これを失敗と見る国民からの支持を得られず、この数十年で議席を減らし続けた。 労働党は現在4議席を有するのみだが、最新の世論調査では7議席となっている。2022年に実施された最後の選挙でしきい値を割り込んで議席を失った中道左派のメレツ党と連携すれば、10議席に増えるという予測も出ている。つまり、ベングビールの右派政党を上回る計算となる』、「建国以来、第1党として多くの期間イスラエルの政権を担ってきた左派の労働党は、1993年のオスロ合意を導いたが、これを失敗と見る国民からの支持を得られず、この数十年で議席を減らし続けた。 労働党は現在4議席を有するのみだが、最新の世論調査では7議席となっている」、なるほど。
・『現職首相への不信感 並行して次の世論調査も行なわれた。 ◆ガンツが提案する数カ月以内の総選挙について(・賛成57% ・反対31% ・わからない12%) ◆ガンツの政権離脱について(・支持52% ・不支持27% ・わからない21%) ◆ガンツは「この戦争は数年続く」、ネタニヤフは「勝利は近い」と述べている。どちらが正しいと思うか?(・ガンツ51% ・ネタニヤフ22% ・わからない27%) ◆人質解放とパレスチナ囚人の釈放を含む停戦案について(・賛成49% ・反対32% ・わからない19%) 最後の停戦案については、2024年5月末にアメリカのバイデン大統領が示したものである。双方が戦闘を停止し、段階的に人質解放・パレスチナ囚人釈放を実行し、ガザ地区北部住民を帰還させ、最終的にIDF部隊がガザ地区から完全撤退し、ガザ地区の復興を目指すとしている。 しかしイスラエル・ハマス双方が反対を表明し、暗礁に乗り上げたままである。1週間前のイスラエル世論調査では、この停戦案について「支持40%」「反対27%」「わからない33%」だった。) しかし人質4名の奪還とガンツの政権離脱というニュースがもたらされたことにより、わからないと答えた人が14ポイント減少し、停戦案に賛成する人が9ポイント増加し、反対も5ポイント増える結果となっている。 オスロ合意以降、イスラム過激派によるテロが活発化してイスラエル世論が右傾化し、ネタニヤフ率いるリクード党が右派や宗教党と手を組んで支持を伸ばしてきたが、ここに来て中道のガンツやラピッド、さらに左派への揺り戻しが来ている』、「オスロ合意以降、イスラム過激派によるテロが活発化してイスラエル世論が右傾化し、ネタニヤフ率いるリクード党が右派や宗教党と手を組んで支持を伸ばしてきたが、ここに来て中道のガンツやラピッド、さらに左派への揺り戻しが来ている」、なるほど。
・『左派への揺り戻しの兆し ネタニヤフ首相の汚職や司法制度改革に反発する声も大きく、今秋に選挙が行なわれればネタニヤフは退陣を免れないだろう。 では、次期首相はガンツになるのか。ガンツはIDF参謀総長経験者である。イツハク・ラビンやアリエル・シャロンなど、右派・左派に関わらず歴代首相の中には国防の最前線で戦った人物が多い。IDFにはイスラエル国民が絶対的信頼を置いているからである。 ガンツは政界入りしてから副首相兼国防相、国会議長を歴任しているが、首相としての手腕は未知数である。次期首相の有力候補であることは確かだが、ガンツにこの難局を乗り切るだけの政治力があるのか、不安な要素も多いと言われる。 現内閣では、右派からも不満が出てきている。イタマル・ベングビール国家安全保障相は、停戦案に応じるなら政権を離脱すると公言している。ベングビールが離脱するなら現政権は過半数割れとなるため、ネタニヤフはこれを阻止したい。 つまり現行の停戦案に応じる可能性は極めて低いだろう。中道のガンツが離脱し相対的に右派の影響力が強まるならなおさらである。 4人の人質奪還という喜ばしいニュースとは裏腹に、国民の過半数が総選挙に賛成し、現政権に不満を募らせている。ネタニヤフについては、自らの政治的延命を図っているとの批判が高まっている。 イスラエルは中東で唯一の民主主義国家を標榜しているが、今その真価が問われている』、「4人の人質奪還という喜ばしいニュースとは裏腹に、国民の過半数が総選挙に賛成し、現政権に不満を募らせている。ネタニヤフについては、自らの政治的延命を図っているとの批判が高まっている」、次のイスラエル政権はどうなるのだろう。
次に、6月29日付けNewsweek日本版「イスラエルがハマスと同時にヒズボラにも戦争を仕掛けたがる理由」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2024/06/post-104884.php
・『<レバノンのイスラム教過激派勢力ヒズボラによるミサイル攻撃を受け、イスラエルはヒズボラへの攻撃の意思を明らかにしている。ガザ地区でのハマスとの戦いも続くなか、本気で二正面戦争に突入するのだろうか> 元英国首相ウィンストン・チャーチルが残した多くの名言の中に、「歴史から学ばない者は、歴史を繰り返して滅ぶ」というものがある。 イスラエルがレバノン南部で、レバノンの過激派組織ヒズボラと本格的な戦争に乗り出す準備をしている可能性があることも、まさにその例であるようにみえる。 イスラエルのカッツ外相は先ごろ、ヒズボラに対する全面戦争を決断する時が「まもなくやってくる」と述べ、イスラエル国防軍(IDF)幹部が作戦計画に署名したことを明かした。 一方、ガザ地区のハマスに対するイスラエルの戦争もまだ終わっていない。イスラエルは、ベンヤミン・ネタニヤフ首相が紛争開始時に掲げた2つの主要目標、すなわち、ガザにおける軍事・統治組織としてのハマスの壊滅と、ハマスが拘束している残りのイスラエル人人質(生存とみられる約80人と、死亡とみられる約40人の遺体)の解放をまだ達成していない』、「イスラエルのカッツ外相は先ごろ、ヒズボラに対する全面戦争を決断する時が「まもなくやってくる」と述べ、イスラエル国防軍(IDF)幹部が作戦計画に署名したことを明かした。 一方、ガザ地区のハマスに対するイスラエルの戦争もまだ終わっていない」、二正面作戦をやる気のようだ。
・『激怒する北部住民 イスラエルには、ヒズボラの脅威を排除したいもっともな理由がある。昨年10月8日にガザ紛争が始まって以来、ヒズボラは後ろ盾のイランから供与されたミサイルやロケット、無人機を、国境越しにイスラエル北部に撃ち込んでいる。しかもその目的は、イスラエル国防軍の注意をガザ作戦からそらせ、ハマスを支援するためだと、ヒズボラは明言している。 ヒズボラの攻撃は比較的限定的で、今のところイスラエル北部に限られている。それでも、国境付近の住民約6万人が避難を余儀なくされている。うんざりした住民は、ネタニヤフ政権にヒズボラを国境から撤退させろと要求している。 その怒りはここ数日でさらに増大した。ヒズボラが低空飛行の偵察機で撮影したイスラエル北部の都市ハイファの軍事施設や民間施設の映像を公表したからだ。 つまり、ヒズボラはこの地域で新たな標的を設定する準備にかかっていたのだ。ハイファは人口30万人近い都市だが、ヒズボラの攻撃はまだ受けていない。 ネタニヤフ内閣で最も右寄りの閣僚ベザレル・スモトリッチ財務相とイタマール・ベン・グヴィル警察相は、イスラエル軍のレバノン南部への侵攻を公然と要求している。このような圧力がなくても、イスラエル北部の住民は与党リクード党の強力な支持者であることから、ネタニヤフ首相としては、ヒズボラの脅威をなんとしても無力化したいのだ』、「イスラエル北部の住民は与党リクード党の強力な支持者であることから、ネタニヤフ首相としては、ヒズボラの脅威をなんとしても無力化したいのだ」、なるほど。
・『アメリカとイランの利害関係 アメリカは明らかに、イスラエルが紛争で第二の戦端を開くリスクを懸念している。ジョー・バイデン大統領はイスラエルとレバノンにアモス・ホッホシュタインを特使として派遣し、緊張緩和を図っている。 ホッホシュタインはレバノンを訪れても、ヒズボラの指導者ハッサン・ナスララと直接交渉することはできない。ヒズボラがアメリカの国際的テロ組織リストに載っているからだ。その代わり、彼は同じシーア派としてナスララと話ができるレバノン国会のナビ・ベリ議長と会談した。 だがヒズボラは、この地域における主な支援者であるイランの要求には従う。どんなレバノンの指導者も、イランに承認された行動をやめるようヒズボラを説得できるかどうかは疑わしい。 現時点のイスラエルとヒズボラの戦争の可能性におけるイランの利害関係は複雑だ。イスラエルが二正面から軍事的圧力を受けるのが喜ばしいことは明らかだ。だが、イランの指導者たちはヒズボラを、イランの核施設を攻撃したがっているイスラエルに対する抑止力だと考えている。 ヒズボラは推定15万発のミサイルとロケット弾を保有しており、その中にはイスラエル領の内部まで届くものもある。これまでのところイランは、ヒズボラとイスラエルとの大規模な戦闘拡大は望んでいないようだ。 イスラエルのミサイル防衛システム「アイアン・ドーム」は、ガザからのロケット弾攻撃を無力化することには目覚しい成功を収めているが、より高性能なミサイルの集中砲火に対しては、それほど有効ではないかもしれない。 現に今年4月、イランがイスラエルにミサイル150発と無人機170機を直接撃ち込んだときは、イスラエルはアメリカ、イギリス、フランス、ヨルダンからの支援を必要とした』、「これまでのところイランは、ヒズボラとイスラエルとの大規模な戦闘拡大は望んでいないようだ。 イスラエルのミサイル防衛システム「アイアン・ドーム」は、ガザからのロケット弾攻撃を無力化することには目覚しい成功を収めているが、より高性能なミサイルの集中砲火に対しては、それほど有効ではないかもしれない。 現に今年4月、イランがイスラエルにミサイル150発と無人機170機を直接撃ち込んだときは、イスラエルはアメリカ、イギリス、フランス、ヨルダンからの支援を必要とした」、なるほど。
・『レバノン介入の教訓 もう1つのファクターは、イスラエルによるレバノンへの過去の介入は、歴史的にかなりコストがかかったということだ。 イスラエルとレバノンの問題は、ヨルダンの故フセイン国王が1970年、当時ヤセル・アラファトが率いていたパレスチナ解放機構(PLO)をレバノンに移転させたことから始まった。PLOが1967年の戦争後、ヨルダンを対イスラエル作戦の拠点として使っていたため、イスラエルの報復を誘発したからだ。 1970年代初頭から、PLOはレバノンで国家の中の国家を作った。PLOは弱体化していたレバノン政府とほぼ無関係に行動した。レバノンは宗派を理由に分裂し、1975年には長期にわたる内戦に突入した。 PLOはレバノン南部からイスラエルに攻撃を仕掛け、イスラエルは1978年にレバノンへの限定侵攻を開始し、パレスチナの民兵集団をリタニ川以北に追いやった。 この侵攻は部分的にしか成功しなかった。PLOはすぐに国境まで後退し、イスラエル北部への攻撃を再開した。1982年、イスラエルのメヘナム・ベギン首相(当時)はPLOをレバノンから完全に排除することを決定し、ベイルートまでレバノン侵攻を開始した。PLO指導部と戦闘員の大部分は拠点をチュニジアに移さざるをえなくなった。 この成功にもかかわらず、2度にわたる侵攻は、それまで静かだったレバノン南部のシーア派住民を急進化させるという予期せぬ結果を招いた。 その結果、最高指導者ルホラ・ホメイニ師率いるイランは、革命後間もない時期にレバノンのシーア派聖職者たちと協力して、ヒズボラ(アラビア語で「神の党」)を設立。イスラエルにとってPLO以上の脅威となった。 イランの支援を受けてヒズボラは年々勢力を強め、レバノン政治に影響を与える勢力となり、定期的にイスラエルに向けてミサイルを発射するようになった。 2006年、ヒズボラは、捕らえた2人のイスラエル兵の救出を目的としたレバノン南部へのイスラエル国防軍の進撃を阻止することができた。結果は実質的に引き分けで、2人の兵士は2008年にレバノン人捕虜と交換された。 当時、多くのアラブ人オブザーバーは、軍事力で圧倒的に不利な紛争を引き分けにもちこんだヒズボラは、政治的・軍事的に勝利したと判断した。 この紛争中と紛争後しばらくの間、ナスララは、サウジアラビアなど保守的なスンニ派アラブ諸国の支配者に嫌われていたにもかかわらず、この地域で最も人気のある指導者の一人だった』、「多くのアラブ人オブザーバーは、軍事力で圧倒的に不利な紛争を引き分けにもちこんだヒズボラは、政治的・軍事的に勝利したと判断した。 この紛争中と紛争後しばらくの間、ナスララは、サウジアラビアなど保守的なスンニ派アラブ諸国の支配者に嫌われていたにもかかわらず、この地域で最も人気のある指導者の一人だった」、なるほど。
・『歴史は繰り返すのか 歴史は繰り返すのか──これは、イスラエルがヒズボラとの戦争を議論する場合避けて通れない問題だ。現在の状況とチャーチルの言葉との関連も明らかだ。 ほとんどの軍事専門家は、二つの正面で戦争を構えることには警告を発するだろう。ジョージ・W・ブッシュ元米大統領は、アフガニスタン戦争にまだ決着がつかない2003年にイラク侵攻を開始した。その結果、米軍は大きな犠牲を払い、国も壊滅的な損失を被った。 19世紀のアメリカの作家マーク・トウェインは、「歴史は繰り返さないが、しばしば韻を踏む」と言ったと伝えられる。イスラエルの指導者たちは過去からの響きに耳を傾けるだろうか』、「イスラエルの指導者たちは」、「ハマスと同時にヒズボラにも戦争を仕掛けたが」っているようだ。に正面作戦は上手くいくのだろうか。
第三に、7月12日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリストの池上 彰氏による「ネタニヤフ政権「イスラエル史上、最も右寄り」の訳 イスラエルの選挙制度に問題がある」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/770535
・『2023年10月、ロシアとウクライナの戦況が膠着状態になる中、世界はもう1つ別の戦闘を抱え込みました。イスラム武装組織ハマス(正式名称はイスラム抵抗運動)とイスラエルの衝突です。 戦闘のきっかけとなったのは2023年10月7日、ハマスがイスラエルに陸・海・空から一斉攻撃を仕掛け、イスラエル兵や民間人を殺害し、多数の人質を取ったことにあります。これは国際人道法違反です。国際人道法は民間人を標的とすることを禁じています。当然ながらハマスは国際社会から強く非難されました。 もちろんハマスのやったことは許されることではありません。しかしこれまで何があったのか、70年余りの中東の歴史を見なければなりません。 ハマスの目的はなんだったのか。「パレスチナ問題」を忘れさせないことではないのか。 世界の目を再び引きつけることになったパレスチナ問題。本記事ではイスラエルの側の視点から考えてみることにしましょう』、「パレスチナ問題。本記事ではイスラエルの側の視点から考えてみることにしましょう」、なるほど。
・『世界はパレスチナを忘れていた 今回のハマスによるテロは、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ政権がパレスチナを追い詰め過ぎたことも一因だろうと指摘されています。 2022年のイスラエル総選挙で、ネタニヤフが率いる右派政党「リクード」が第1党になり、ネタニヤフが首相に返り咲きました。自らの汚職問題で1年半前に政権を失ったのに、奇跡の復活です。 1993年のオスロ合意により、まずヨルダン川西岸はA地区、B地区、C地区に分け、A地区はパレスチナ人の100%自治を認める、B地区は、行政はパレスチナ人、警察はイスラエルが主導、C地区は行政も警察もイスラエルと決められていました。 それなのにネタニヤフ政権は、対テロ政策と銘打ってさまざまな攻撃をしたり、「ここは自分たちの土地だ」と勝手に入っていって住宅をつくったり、パレスチナ人の土地をどんどん奪っていきました。 ネタニヤフ政権になる前は、パレスチナ暫定自治区への入植を認めていませんでした。アメリカのビル・クリントン政権時代、あるいはバラク・オバマ政権時代は、アメリカもイスラエルの入植を一切、認めていません。) 『週刊文春』で対談したイスラム学の専門家・飯塚正人氏によれば、イスラエルの選挙制度に問題があるといいます。「一院制のイスラエルが完全比例代表制を変えなければ、問題は解決しない」というのです。 イスラエルは世界各地から出身地や宗教に対する立場の違う人が集まっていますから、完全比例代表制をとると、小さな政党が乱立します。20%ほどアラブ系の住民もいて、アラブ系の政党も議席を持っています。完全比例代表制はとても民主的なのですが、結果的に少数の意見が反映されるため、極右も議席を持つのです。 一院制の議会の定数は120で、政権樹立に必要なのは過半数。単独で取れる政党は存在しません。ネタニヤフが率いる「リクード」は第1党ですが32議席ですから、単独では組閣できず、大きく躍進した極右政党「宗教シオニズム」などと連立を組みました。重要閣僚にも起用しています。 その結果、イスラエルの極右閣僚は、イスラム教の聖地である神殿の丘にある「アルアクサ・モスク」を訪れ、イスラム教徒を挑発するなど、パレスチナに対するさまざまな嫌がらせをしています。これにパレスチナ人が反発しているのです。 極右のユダヤ人の中にはヨルダン川西岸地区のパレスチナ自治区にオスロ合意に反して入植地を作って住み着く人たちがでています。周りのパレスチナ人が反発すると、入植地のユダヤ人たちは周囲のパレスチナ人の住宅を襲撃したり、パレスチナ人を射殺したりしていますが、イスラエルの警察も軍も黙認しているのです。 イスラエル史上、「最も右寄り」といわれる新ネタニヤフ政権の誕生で、パレスチナの我慢も限界になったのではないかというわけです。 選挙の結果で、たとえば以前はパレスチナとの和平を推進する労働党など、リベラルな穏健派が政権に入ると、「パレスチナと共存していこう」という動きになっていました。イスラエルにも和平派はいるのです。 2005年にイスラエルがガザ地区を放棄したときは、入植していたユダヤ人をイスラエル政府が追い出しました。パレスチナとイスラエルの2国共存を考えると、ヨルダン川西岸地区に入植しているユダヤ人をどうするかが問題でしょう』、「極右のユダヤ人の中にはヨルダン川西岸地区のパレスチナ自治区にオスロ合意に反して入植地を作って住み着く人たちがでています。周りのパレスチナ人が反発すると、入植地のユダヤ人たちは周囲のパレスチナ人の住宅を襲撃したり、パレスチナ人を射殺したりしていますが、イスラエルの警察も軍も黙認しているのです」、こんな「スロ合意」違反を米国が見逃しているのも問題だ。もっとも、トランプが大統領にんれば、もっとイスラエルのやりたい放題になるのだろう。
・『ネタニヤフによるネタニヤフのための改革 ネタニヤフは、汚職裁判を抱えたままで首相に返り咲きとなりました。ネタニヤフ連立政権が最も力を入れたのが、司法制度改革です。 ネタニヤフは、最高裁判所が有罪判決を出しても、議会がそれをひっくり返すことができる法律を成立させようとしました。 この改革は、ネタニヤフ自身が「有罪判決を逃れるための改革」と見られ、35万人の市民の抗議デモが起きました。イスラエルが民主主義の国ではなくなるのではないかと、イスラエル国内だけでなく、欧米諸国からも批判が相次ぎました。 しかしハマスによるテロによって、イスラエル国内のムードは一変、ネタニヤフ首相は野党も加わる「戦時内閣」を発足させ(加わらない野党も存在するが)、国民の意識はハマスに対する報復に集中し、政権批判から目をそらされてしまいました。 ネタニヤフ首相は、2023年10月7日のハマスの奇襲攻撃を察知できず、1200人もの市民の犠牲を出した責任を問われています。ハマスとの戦闘が終われば辞任に追い込まれるのは必至でしょう。 ネタニヤフにしてみれば、戦争が続くほど自分は首相を続けられる。停戦合意を拒否する理由が、ここにあるのかもしれません』、「ネタニヤフにしてみれば、戦争が続くほど自分は首相を続けられる。停戦合意を拒否する理由が、ここにあるのかもしれません」、困ったことだ。さらに前述のもしトラを考慮すると、パレスチナ問題には暗い材料しか思い浮かばない。やれやれ・・・。
先ずは、6月12日付け東洋経済オンラインが掲載したミルトス(イスラエル・ユダヤ文化の出版社)代表の谷内 意咲氏による「ハマスとの停戦めぐり揺れ動くイスラエル国民 人質の全員解放か、ハマスの壊滅か…割れる意見」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/760352
・『ハマスの奇襲テロによってイスラエルが戦争に突入してから8カ月経ったが、この数日で大きな動きが2つあった。人質4人が軍事作戦によって奪還されたこと、そしてベニー・ガンツが戦時内閣から離脱を表明したことである。 これまでにイスラエル国防軍(IDF)の地上作戦やハマスとの交渉によって135人の人質がイスラエルに戻ってきたが、今も120人はガザのどこかに監禁されたままである。 この数カ月間、IDFは地上作戦によって拉致された人の遺体を救出してきた。イスラエル側の安否不明者数が少しずつ減っている中での、生存者4人奪還のニュースだった』、「地上作戦やハマスとの交渉によって135人の人質がイスラエルに戻ってきたが、今も120人はガザのどこかに監禁されたまま」、なるほど。
・『6月8日に人質4人を奪還 この戦争において、イスラエル国民が最優先事項と考えるのは、人質の奪還であることは間違いない。人口1,000万人に満たない小国イスラエルの同胞意識は、われわれには想像もつかないほど強い。 2000年もの間、土地も国も持てず世界に離散しながら生き延びてきたユダヤ人の根底にある意識と言えるだろう。(「『囚われた人々』奪還へ突き動かすイスラエルの教え」参照) 戦争が始まった直後、ガザ近郊に住む娘と孫が人質として連れ去られたというMさんに話を伺ったことがある。約50日後、ハマスとの交渉で一家は全員生還した。Mさんに祝福のメッセージを送ったら、すぐに短い一文が返ってきた。「私たちは幸せですが、残りの人質が全員帰ってくるまで、私たちは戦い続けます」 テルアビブ美術館の広場は「人質広場」と呼ばれ、人質解放を訴える家族が日々活動している。その中には、家族が無事に帰ってきた人や親族ではない人も大勢いて、1日も早く全員が帰還できるよう人質家族を支え続けている。 6月8日に生還した4人は、ガザ地区のヌセイラット難民キャンプでハマスに拘束されていたノア・アルガマニさん(25)、アルモグ・メイールさん(21)、シュロミ・ジヴさん(40)、アンドレイ・コズロヴさん(27)。実に246日ぶりの解放であった。この4人はいずれもノバ音楽フェスティバルから2023年10月7日に拉致された。) ノアさんについては、バイクに乗せられ拉致される中で助けを求めて叫ぶ様子が世界で報じられ、ハマスの蛮行の象徴として記憶している人も多いだろう。母親のリオラさんは進行するがんと戦いながら、車椅子に乗って娘の解放を訴え続けていた。 この作戦は「アルノン作戦」(当初は「夏の種作戦」)と名づけられていた。IDFとシャバク(イスラエル総保安庁)、ヤマム(イスラエル国境警察の対テロ特殊部隊)などあらゆる治安機関が連携し、約1カ月かけて準備された。人質4人はトンネルではなく、ガザ市民の住宅に拘束されていた。 ハマスはガザ市民を「人間の盾」としていることは周知の事実だが、人質も同様で、IDFの攻撃によって犠牲になった人質がいることも判明している。生還したノアさんの証言によると、自身もIDFのミサイル攻撃によって命の危険を感じたことがあったという』、「人質4人はトンネルではなく、ガザ市民の住宅に拘束されていた。 ハマスはガザ市民を「人間の盾」としていることは周知の事実だが、人質も同様で、IDFの攻撃によって犠牲になった人質がいることも判明している。生還したノアさんの証言によると、自身もIDFのミサイル攻撃によって命の危険を感じたことがあったという」、なるほど。
・『戦時内閣からガンツ氏が脱退 6月8日の午前11時、作戦が開始された。ハマスは、IDFがヌセイラット難民キャンプの一角を包囲している情報をつかむと攻撃を開始し、激しい銃撃戦となった。 救出部隊は、建物の1階にいたノアさんを救出した後、3階の3人を救い出した。11時15分、「ダイヤモンドはわれわれの手に」と伝えられた。人質を保護したという報告である。 救出自体は短時間で完了したが、数百人の武装テロリストが周りを取り囲み、救出部隊を執拗に攻撃し続け、人質を運搬するためのトラックが爆破された。それで保護した人質を海岸へと導き、最終的にIDF空軍のヘリでイスラエルに連れ戻した。11時50分のことである。 テロリストとの激しい銃撃戦により、ヤマムの指揮官1人が犠牲になった。ハマス傘下のガザ保健省の発表では、パレスチナ人274人が死亡し、698人が負傷したとされている。 人質奪還のニュースにイスラエル中が沸き立った日の翌6月9日、戦時内閣に参加していたベニー・ガンツが辞任を発表した。ガンツは戦争勃発の5日後に戦時内閣に加わったが、つねにネタニヤフ首相との不協和音が報じられていた。ガンツはこの日、65歳の誕生日を迎えた。 「戦争が勃発した後、私たちは政治的パートナーシップからではなく、運命共同体として1つになる必要性を感じ、緊急内閣に加わった。けれどもこの内閣は、政治的な判断に重きを置き、重要な戦略的決定を先延ばしにしている」) ガンツはネタニヤフ政権を厳しく批判し、総選挙を行なうことを提案した。 「残念ながら、われわれが真の勝利へ向かうことを阻止しているのはネタニヤフである。真の勝利を獲得するには、この秋、戦争から1年が経つ頃に、総選挙に臨むことが適切であると考える。国民の信任を得た内閣を立ち上げ、困難な挑戦に立ち向かうためである」 ガンツの政権離脱の発表がなされた後、イスラエルのチャンネル11が世論調査を行なった。「もし今、総選挙が行なわれたとしたら、どの政党に投票するか」(注:イスラエルは比例代表制なので政党に投票する)に対する答えの割合を、議席数に換算したものが次である。 ▽イスラエル世論調査でわかる2つのこと(()内は党首名、【】内は同じ設問で約1週間前に行なわれた世論調査からの変動数である』、「救出自体は短時間で完了したが、数百人の武装テロリストが周りを取り囲み、救出部隊を執拗に攻撃し続け、人質を運搬するためのトラックが爆破された。それで保護した人質を海岸へと導き、最終的にIDF空軍のヘリでイスラエルに連れ戻した。11時50分のことである。 テロリストとの激しい銃撃戦により、ヤマムの指揮官1人が犠牲になった。ハマス傘下のガザ保健省の発表では、パレスチナ人274人が死亡し、698人が負傷」、「テロリスト側の損害は極めて多いようだ。
・国家統一党(ガンツ)23議席【-4】 ・リクード党(ネタニヤフ)22議席【+1】 ・未来がある党(ラピッド)16議席【+2】 ・わが家イスラエル党(リーベルマン)12議席【±0】 ・シャス党(デリー)10 議席【±0】 ・ユダヤの力党(ベングビール)9議席【±0】 ・労働党(ゴラン)7議席【+1】 ・ユダヤ・トーラー連合(シャピラ)7議席【±0】 ・ハダッシュ・タアル党(ティビ)5議席【±0】 ・統一アラブリスト党(アッバス)5議席【±0】 ・宗教シオニズム党(スモトリッチ)4議席【±0】 ※国会の定数は120議席 この結果を現在の与野党に振り分けると、与党は52議席【+1】、野党は63議席【-1】(どちらにも属さないアラブ系のハダッシュ・タアル党の5議席を除く)となる。 現与党の下野が確実視される中で、皮肉なことに、ガンツが離脱を発表したことで自身の国家統一党は4議席減らし、与党のリクード党が1議席増やしている。そして注目したいのは、若干ではあるが左派系の支持が回復していることだ。) 建国以来、第1党として多くの期間イスラエルの政権を担ってきた左派の労働党は、1993年のオスロ合意を導いたが、これを失敗と見る国民からの支持を得られず、この数十年で議席を減らし続けた。 労働党は現在4議席を有するのみだが、最新の世論調査では7議席となっている。2022年に実施された最後の選挙でしきい値を割り込んで議席を失った中道左派のメレツ党と連携すれば、10議席に増えるという予測も出ている。つまり、ベングビールの右派政党を上回る計算となる』、「建国以来、第1党として多くの期間イスラエルの政権を担ってきた左派の労働党は、1993年のオスロ合意を導いたが、これを失敗と見る国民からの支持を得られず、この数十年で議席を減らし続けた。 労働党は現在4議席を有するのみだが、最新の世論調査では7議席となっている」、なるほど。
・『現職首相への不信感 並行して次の世論調査も行なわれた。 ◆ガンツが提案する数カ月以内の総選挙について(・賛成57% ・反対31% ・わからない12%) ◆ガンツの政権離脱について(・支持52% ・不支持27% ・わからない21%) ◆ガンツは「この戦争は数年続く」、ネタニヤフは「勝利は近い」と述べている。どちらが正しいと思うか?(・ガンツ51% ・ネタニヤフ22% ・わからない27%) ◆人質解放とパレスチナ囚人の釈放を含む停戦案について(・賛成49% ・反対32% ・わからない19%) 最後の停戦案については、2024年5月末にアメリカのバイデン大統領が示したものである。双方が戦闘を停止し、段階的に人質解放・パレスチナ囚人釈放を実行し、ガザ地区北部住民を帰還させ、最終的にIDF部隊がガザ地区から完全撤退し、ガザ地区の復興を目指すとしている。 しかしイスラエル・ハマス双方が反対を表明し、暗礁に乗り上げたままである。1週間前のイスラエル世論調査では、この停戦案について「支持40%」「反対27%」「わからない33%」だった。) しかし人質4名の奪還とガンツの政権離脱というニュースがもたらされたことにより、わからないと答えた人が14ポイント減少し、停戦案に賛成する人が9ポイント増加し、反対も5ポイント増える結果となっている。 オスロ合意以降、イスラム過激派によるテロが活発化してイスラエル世論が右傾化し、ネタニヤフ率いるリクード党が右派や宗教党と手を組んで支持を伸ばしてきたが、ここに来て中道のガンツやラピッド、さらに左派への揺り戻しが来ている』、「オスロ合意以降、イスラム過激派によるテロが活発化してイスラエル世論が右傾化し、ネタニヤフ率いるリクード党が右派や宗教党と手を組んで支持を伸ばしてきたが、ここに来て中道のガンツやラピッド、さらに左派への揺り戻しが来ている」、なるほど。
・『左派への揺り戻しの兆し ネタニヤフ首相の汚職や司法制度改革に反発する声も大きく、今秋に選挙が行なわれればネタニヤフは退陣を免れないだろう。 では、次期首相はガンツになるのか。ガンツはIDF参謀総長経験者である。イツハク・ラビンやアリエル・シャロンなど、右派・左派に関わらず歴代首相の中には国防の最前線で戦った人物が多い。IDFにはイスラエル国民が絶対的信頼を置いているからである。 ガンツは政界入りしてから副首相兼国防相、国会議長を歴任しているが、首相としての手腕は未知数である。次期首相の有力候補であることは確かだが、ガンツにこの難局を乗り切るだけの政治力があるのか、不安な要素も多いと言われる。 現内閣では、右派からも不満が出てきている。イタマル・ベングビール国家安全保障相は、停戦案に応じるなら政権を離脱すると公言している。ベングビールが離脱するなら現政権は過半数割れとなるため、ネタニヤフはこれを阻止したい。 つまり現行の停戦案に応じる可能性は極めて低いだろう。中道のガンツが離脱し相対的に右派の影響力が強まるならなおさらである。 4人の人質奪還という喜ばしいニュースとは裏腹に、国民の過半数が総選挙に賛成し、現政権に不満を募らせている。ネタニヤフについては、自らの政治的延命を図っているとの批判が高まっている。 イスラエルは中東で唯一の民主主義国家を標榜しているが、今その真価が問われている』、「4人の人質奪還という喜ばしいニュースとは裏腹に、国民の過半数が総選挙に賛成し、現政権に不満を募らせている。ネタニヤフについては、自らの政治的延命を図っているとの批判が高まっている」、次のイスラエル政権はどうなるのだろう。
次に、6月29日付けNewsweek日本版「イスラエルがハマスと同時にヒズボラにも戦争を仕掛けたがる理由」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2024/06/post-104884.php
・『<レバノンのイスラム教過激派勢力ヒズボラによるミサイル攻撃を受け、イスラエルはヒズボラへの攻撃の意思を明らかにしている。ガザ地区でのハマスとの戦いも続くなか、本気で二正面戦争に突入するのだろうか> 元英国首相ウィンストン・チャーチルが残した多くの名言の中に、「歴史から学ばない者は、歴史を繰り返して滅ぶ」というものがある。 イスラエルがレバノン南部で、レバノンの過激派組織ヒズボラと本格的な戦争に乗り出す準備をしている可能性があることも、まさにその例であるようにみえる。 イスラエルのカッツ外相は先ごろ、ヒズボラに対する全面戦争を決断する時が「まもなくやってくる」と述べ、イスラエル国防軍(IDF)幹部が作戦計画に署名したことを明かした。 一方、ガザ地区のハマスに対するイスラエルの戦争もまだ終わっていない。イスラエルは、ベンヤミン・ネタニヤフ首相が紛争開始時に掲げた2つの主要目標、すなわち、ガザにおける軍事・統治組織としてのハマスの壊滅と、ハマスが拘束している残りのイスラエル人人質(生存とみられる約80人と、死亡とみられる約40人の遺体)の解放をまだ達成していない』、「イスラエルのカッツ外相は先ごろ、ヒズボラに対する全面戦争を決断する時が「まもなくやってくる」と述べ、イスラエル国防軍(IDF)幹部が作戦計画に署名したことを明かした。 一方、ガザ地区のハマスに対するイスラエルの戦争もまだ終わっていない」、二正面作戦をやる気のようだ。
・『激怒する北部住民 イスラエルには、ヒズボラの脅威を排除したいもっともな理由がある。昨年10月8日にガザ紛争が始まって以来、ヒズボラは後ろ盾のイランから供与されたミサイルやロケット、無人機を、国境越しにイスラエル北部に撃ち込んでいる。しかもその目的は、イスラエル国防軍の注意をガザ作戦からそらせ、ハマスを支援するためだと、ヒズボラは明言している。 ヒズボラの攻撃は比較的限定的で、今のところイスラエル北部に限られている。それでも、国境付近の住民約6万人が避難を余儀なくされている。うんざりした住民は、ネタニヤフ政権にヒズボラを国境から撤退させろと要求している。 その怒りはここ数日でさらに増大した。ヒズボラが低空飛行の偵察機で撮影したイスラエル北部の都市ハイファの軍事施設や民間施設の映像を公表したからだ。 つまり、ヒズボラはこの地域で新たな標的を設定する準備にかかっていたのだ。ハイファは人口30万人近い都市だが、ヒズボラの攻撃はまだ受けていない。 ネタニヤフ内閣で最も右寄りの閣僚ベザレル・スモトリッチ財務相とイタマール・ベン・グヴィル警察相は、イスラエル軍のレバノン南部への侵攻を公然と要求している。このような圧力がなくても、イスラエル北部の住民は与党リクード党の強力な支持者であることから、ネタニヤフ首相としては、ヒズボラの脅威をなんとしても無力化したいのだ』、「イスラエル北部の住民は与党リクード党の強力な支持者であることから、ネタニヤフ首相としては、ヒズボラの脅威をなんとしても無力化したいのだ」、なるほど。
・『アメリカとイランの利害関係 アメリカは明らかに、イスラエルが紛争で第二の戦端を開くリスクを懸念している。ジョー・バイデン大統領はイスラエルとレバノンにアモス・ホッホシュタインを特使として派遣し、緊張緩和を図っている。 ホッホシュタインはレバノンを訪れても、ヒズボラの指導者ハッサン・ナスララと直接交渉することはできない。ヒズボラがアメリカの国際的テロ組織リストに載っているからだ。その代わり、彼は同じシーア派としてナスララと話ができるレバノン国会のナビ・ベリ議長と会談した。 だがヒズボラは、この地域における主な支援者であるイランの要求には従う。どんなレバノンの指導者も、イランに承認された行動をやめるようヒズボラを説得できるかどうかは疑わしい。 現時点のイスラエルとヒズボラの戦争の可能性におけるイランの利害関係は複雑だ。イスラエルが二正面から軍事的圧力を受けるのが喜ばしいことは明らかだ。だが、イランの指導者たちはヒズボラを、イランの核施設を攻撃したがっているイスラエルに対する抑止力だと考えている。 ヒズボラは推定15万発のミサイルとロケット弾を保有しており、その中にはイスラエル領の内部まで届くものもある。これまでのところイランは、ヒズボラとイスラエルとの大規模な戦闘拡大は望んでいないようだ。 イスラエルのミサイル防衛システム「アイアン・ドーム」は、ガザからのロケット弾攻撃を無力化することには目覚しい成功を収めているが、より高性能なミサイルの集中砲火に対しては、それほど有効ではないかもしれない。 現に今年4月、イランがイスラエルにミサイル150発と無人機170機を直接撃ち込んだときは、イスラエルはアメリカ、イギリス、フランス、ヨルダンからの支援を必要とした』、「これまでのところイランは、ヒズボラとイスラエルとの大規模な戦闘拡大は望んでいないようだ。 イスラエルのミサイル防衛システム「アイアン・ドーム」は、ガザからのロケット弾攻撃を無力化することには目覚しい成功を収めているが、より高性能なミサイルの集中砲火に対しては、それほど有効ではないかもしれない。 現に今年4月、イランがイスラエルにミサイル150発と無人機170機を直接撃ち込んだときは、イスラエルはアメリカ、イギリス、フランス、ヨルダンからの支援を必要とした」、なるほど。
・『レバノン介入の教訓 もう1つのファクターは、イスラエルによるレバノンへの過去の介入は、歴史的にかなりコストがかかったということだ。 イスラエルとレバノンの問題は、ヨルダンの故フセイン国王が1970年、当時ヤセル・アラファトが率いていたパレスチナ解放機構(PLO)をレバノンに移転させたことから始まった。PLOが1967年の戦争後、ヨルダンを対イスラエル作戦の拠点として使っていたため、イスラエルの報復を誘発したからだ。 1970年代初頭から、PLOはレバノンで国家の中の国家を作った。PLOは弱体化していたレバノン政府とほぼ無関係に行動した。レバノンは宗派を理由に分裂し、1975年には長期にわたる内戦に突入した。 PLOはレバノン南部からイスラエルに攻撃を仕掛け、イスラエルは1978年にレバノンへの限定侵攻を開始し、パレスチナの民兵集団をリタニ川以北に追いやった。 この侵攻は部分的にしか成功しなかった。PLOはすぐに国境まで後退し、イスラエル北部への攻撃を再開した。1982年、イスラエルのメヘナム・ベギン首相(当時)はPLOをレバノンから完全に排除することを決定し、ベイルートまでレバノン侵攻を開始した。PLO指導部と戦闘員の大部分は拠点をチュニジアに移さざるをえなくなった。 この成功にもかかわらず、2度にわたる侵攻は、それまで静かだったレバノン南部のシーア派住民を急進化させるという予期せぬ結果を招いた。 その結果、最高指導者ルホラ・ホメイニ師率いるイランは、革命後間もない時期にレバノンのシーア派聖職者たちと協力して、ヒズボラ(アラビア語で「神の党」)を設立。イスラエルにとってPLO以上の脅威となった。 イランの支援を受けてヒズボラは年々勢力を強め、レバノン政治に影響を与える勢力となり、定期的にイスラエルに向けてミサイルを発射するようになった。 2006年、ヒズボラは、捕らえた2人のイスラエル兵の救出を目的としたレバノン南部へのイスラエル国防軍の進撃を阻止することができた。結果は実質的に引き分けで、2人の兵士は2008年にレバノン人捕虜と交換された。 当時、多くのアラブ人オブザーバーは、軍事力で圧倒的に不利な紛争を引き分けにもちこんだヒズボラは、政治的・軍事的に勝利したと判断した。 この紛争中と紛争後しばらくの間、ナスララは、サウジアラビアなど保守的なスンニ派アラブ諸国の支配者に嫌われていたにもかかわらず、この地域で最も人気のある指導者の一人だった』、「多くのアラブ人オブザーバーは、軍事力で圧倒的に不利な紛争を引き分けにもちこんだヒズボラは、政治的・軍事的に勝利したと判断した。 この紛争中と紛争後しばらくの間、ナスララは、サウジアラビアなど保守的なスンニ派アラブ諸国の支配者に嫌われていたにもかかわらず、この地域で最も人気のある指導者の一人だった」、なるほど。
・『歴史は繰り返すのか 歴史は繰り返すのか──これは、イスラエルがヒズボラとの戦争を議論する場合避けて通れない問題だ。現在の状況とチャーチルの言葉との関連も明らかだ。 ほとんどの軍事専門家は、二つの正面で戦争を構えることには警告を発するだろう。ジョージ・W・ブッシュ元米大統領は、アフガニスタン戦争にまだ決着がつかない2003年にイラク侵攻を開始した。その結果、米軍は大きな犠牲を払い、国も壊滅的な損失を被った。 19世紀のアメリカの作家マーク・トウェインは、「歴史は繰り返さないが、しばしば韻を踏む」と言ったと伝えられる。イスラエルの指導者たちは過去からの響きに耳を傾けるだろうか』、「イスラエルの指導者たちは」、「ハマスと同時にヒズボラにも戦争を仕掛けたが」っているようだ。に正面作戦は上手くいくのだろうか。
第三に、7月12日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリストの池上 彰氏による「ネタニヤフ政権「イスラエル史上、最も右寄り」の訳 イスラエルの選挙制度に問題がある」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/770535
・『2023年10月、ロシアとウクライナの戦況が膠着状態になる中、世界はもう1つ別の戦闘を抱え込みました。イスラム武装組織ハマス(正式名称はイスラム抵抗運動)とイスラエルの衝突です。 戦闘のきっかけとなったのは2023年10月7日、ハマスがイスラエルに陸・海・空から一斉攻撃を仕掛け、イスラエル兵や民間人を殺害し、多数の人質を取ったことにあります。これは国際人道法違反です。国際人道法は民間人を標的とすることを禁じています。当然ながらハマスは国際社会から強く非難されました。 もちろんハマスのやったことは許されることではありません。しかしこれまで何があったのか、70年余りの中東の歴史を見なければなりません。 ハマスの目的はなんだったのか。「パレスチナ問題」を忘れさせないことではないのか。 世界の目を再び引きつけることになったパレスチナ問題。本記事ではイスラエルの側の視点から考えてみることにしましょう』、「パレスチナ問題。本記事ではイスラエルの側の視点から考えてみることにしましょう」、なるほど。
・『世界はパレスチナを忘れていた 今回のハマスによるテロは、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ政権がパレスチナを追い詰め過ぎたことも一因だろうと指摘されています。 2022年のイスラエル総選挙で、ネタニヤフが率いる右派政党「リクード」が第1党になり、ネタニヤフが首相に返り咲きました。自らの汚職問題で1年半前に政権を失ったのに、奇跡の復活です。 1993年のオスロ合意により、まずヨルダン川西岸はA地区、B地区、C地区に分け、A地区はパレスチナ人の100%自治を認める、B地区は、行政はパレスチナ人、警察はイスラエルが主導、C地区は行政も警察もイスラエルと決められていました。 それなのにネタニヤフ政権は、対テロ政策と銘打ってさまざまな攻撃をしたり、「ここは自分たちの土地だ」と勝手に入っていって住宅をつくったり、パレスチナ人の土地をどんどん奪っていきました。 ネタニヤフ政権になる前は、パレスチナ暫定自治区への入植を認めていませんでした。アメリカのビル・クリントン政権時代、あるいはバラク・オバマ政権時代は、アメリカもイスラエルの入植を一切、認めていません。) 『週刊文春』で対談したイスラム学の専門家・飯塚正人氏によれば、イスラエルの選挙制度に問題があるといいます。「一院制のイスラエルが完全比例代表制を変えなければ、問題は解決しない」というのです。 イスラエルは世界各地から出身地や宗教に対する立場の違う人が集まっていますから、完全比例代表制をとると、小さな政党が乱立します。20%ほどアラブ系の住民もいて、アラブ系の政党も議席を持っています。完全比例代表制はとても民主的なのですが、結果的に少数の意見が反映されるため、極右も議席を持つのです。 一院制の議会の定数は120で、政権樹立に必要なのは過半数。単独で取れる政党は存在しません。ネタニヤフが率いる「リクード」は第1党ですが32議席ですから、単独では組閣できず、大きく躍進した極右政党「宗教シオニズム」などと連立を組みました。重要閣僚にも起用しています。 その結果、イスラエルの極右閣僚は、イスラム教の聖地である神殿の丘にある「アルアクサ・モスク」を訪れ、イスラム教徒を挑発するなど、パレスチナに対するさまざまな嫌がらせをしています。これにパレスチナ人が反発しているのです。 極右のユダヤ人の中にはヨルダン川西岸地区のパレスチナ自治区にオスロ合意に反して入植地を作って住み着く人たちがでています。周りのパレスチナ人が反発すると、入植地のユダヤ人たちは周囲のパレスチナ人の住宅を襲撃したり、パレスチナ人を射殺したりしていますが、イスラエルの警察も軍も黙認しているのです。 イスラエル史上、「最も右寄り」といわれる新ネタニヤフ政権の誕生で、パレスチナの我慢も限界になったのではないかというわけです。 選挙の結果で、たとえば以前はパレスチナとの和平を推進する労働党など、リベラルな穏健派が政権に入ると、「パレスチナと共存していこう」という動きになっていました。イスラエルにも和平派はいるのです。 2005年にイスラエルがガザ地区を放棄したときは、入植していたユダヤ人をイスラエル政府が追い出しました。パレスチナとイスラエルの2国共存を考えると、ヨルダン川西岸地区に入植しているユダヤ人をどうするかが問題でしょう』、「極右のユダヤ人の中にはヨルダン川西岸地区のパレスチナ自治区にオスロ合意に反して入植地を作って住み着く人たちがでています。周りのパレスチナ人が反発すると、入植地のユダヤ人たちは周囲のパレスチナ人の住宅を襲撃したり、パレスチナ人を射殺したりしていますが、イスラエルの警察も軍も黙認しているのです」、こんな「スロ合意」違反を米国が見逃しているのも問題だ。もっとも、トランプが大統領にんれば、もっとイスラエルのやりたい放題になるのだろう。
・『ネタニヤフによるネタニヤフのための改革 ネタニヤフは、汚職裁判を抱えたままで首相に返り咲きとなりました。ネタニヤフ連立政権が最も力を入れたのが、司法制度改革です。 ネタニヤフは、最高裁判所が有罪判決を出しても、議会がそれをひっくり返すことができる法律を成立させようとしました。 この改革は、ネタニヤフ自身が「有罪判決を逃れるための改革」と見られ、35万人の市民の抗議デモが起きました。イスラエルが民主主義の国ではなくなるのではないかと、イスラエル国内だけでなく、欧米諸国からも批判が相次ぎました。 しかしハマスによるテロによって、イスラエル国内のムードは一変、ネタニヤフ首相は野党も加わる「戦時内閣」を発足させ(加わらない野党も存在するが)、国民の意識はハマスに対する報復に集中し、政権批判から目をそらされてしまいました。 ネタニヤフ首相は、2023年10月7日のハマスの奇襲攻撃を察知できず、1200人もの市民の犠牲を出した責任を問われています。ハマスとの戦闘が終われば辞任に追い込まれるのは必至でしょう。 ネタニヤフにしてみれば、戦争が続くほど自分は首相を続けられる。停戦合意を拒否する理由が、ここにあるのかもしれません』、「ネタニヤフにしてみれば、戦争が続くほど自分は首相を続けられる。停戦合意を拒否する理由が、ここにあるのかもしれません」、困ったことだ。さらに前述のもしトラを考慮すると、パレスチナ問題には暗い材料しか思い浮かばない。やれやれ・・・。
タグ:イスラエル・パレスチナ (その5)(ハマスとの停戦めぐり揺れ動くイスラエル国民 人質の全員解放か ハマスの壊滅か…割れる意見、イスラエルがハマスと同時にヒズボラにも戦争を仕掛けたがる理由、ネタニヤフ政権「イスラエル史上 最も右寄り」の訳 イスラエルの選挙制度に問題がある) 東洋経済オンライン 谷内 意咲氏による「ハマスとの停戦めぐり揺れ動くイスラエル国民 人質の全員解放か、ハマスの壊滅か…割れる意見」 「地上作戦やハマスとの交渉によって135人の人質がイスラエルに戻ってきたが、今も120人はガザのどこかに監禁されたまま」、なるほど。 「人質4人はトンネルではなく、ガザ市民の住宅に拘束されていた。 ハマスはガザ市民を「人間の盾」としていることは周知の事実だが、人質も同様で、IDFの攻撃によって犠牲になった人質がいることも判明している。生還したノアさんの証言によると、自身もIDFのミサイル攻撃によって命の危険を感じたことがあったという」、なるほど。 「救出自体は短時間で完了したが、数百人の武装テロリストが周りを取り囲み、救出部隊を執拗に攻撃し続け、人質を運搬するためのトラックが爆破された。それで保護した人質を海岸へと導き、最終的にIDF空軍のヘリでイスラエルに連れ戻した。11時50分のことである。 テロリストとの激しい銃撃戦により、ヤマムの指揮官1人が犠牲になった。ハマス傘下のガザ保健省の発表では、パレスチナ人274人が死亡し、698人が負傷」、「テロリスト側の損害は極めて多いようだ。 「建国以来、第1党として多くの期間イスラエルの政権を担ってきた左派の労働党は、1993年のオスロ合意を導いたが、これを失敗と見る国民からの支持を得られず、この数十年で議席を減らし続けた。 労働党は現在4議席を有するのみだが、最新の世論調査では7議席となっている」、なるほど。 「オスロ合意以降、イスラム過激派によるテロが活発化してイスラエル世論が右傾化し、ネタニヤフ率いるリクード党が右派や宗教党と手を組んで支持を伸ばしてきたが、ここに来て中道のガンツやラピッド、さらに左派への揺り戻しが来ている」、なるほど。 「4人の人質奪還という喜ばしいニュースとは裏腹に、国民の過半数が総選挙に賛成し、現政権に不満を募らせている。ネタニヤフについては、自らの政治的延命を図っているとの批判が高まっている」、次のイスラエル政権はどうなるのだろう。 Newsweek日本版「イスラエルがハマスと同時にヒズボラにも戦争を仕掛けたがる理由」 「イスラエルのカッツ外相は先ごろ、ヒズボラに対する全面戦争を決断する時が「まもなくやってくる」と述べ、イスラエル国防軍(IDF)幹部が作戦計画に署名したことを明かした。 一方、ガザ地区のハマスに対するイスラエルの戦争もまだ終わっていない」、二正面作戦をやる気のようだ。 「イスラエル北部の住民は与党リクード党の強力な支持者であることから、ネタニヤフ首相としては、ヒズボラの脅威をなんとしても無力化したいのだ」、なるほど。 「これまでのところイランは、ヒズボラとイスラエルとの大規模な戦闘拡大は望んでいないようだ。 イスラエルのミサイル防衛システム「アイアン・ドーム」は、ガザからのロケット弾攻撃を無力化することには目覚しい成功を収めているが、より高性能なミサイルの集中砲火に対しては、それほど有効ではないかもしれない。 現に今年4月、イランがイスラエルにミサイル150発と無人機170機を直接撃ち込んだときは、イスラエルはアメリカ、イギリス、フランス、ヨルダンからの支援を必要とした」、なるほど。 「多くのアラブ人オブザーバーは、軍事力で圧倒的に不利な紛争を引き分けにもちこんだヒズボラは、政治的・軍事的に勝利したと判断した。 この紛争中と紛争後しばらくの間、ナスララは、サウジアラビアなど保守的なスンニ派アラブ諸国の支配者に嫌われていたにもかかわらず、この地域で最も人気のある指導者の一人だった」、なるほど。 「イスラエルの指導者たちは」、「ハマスと同時にヒズボラにも戦争を仕掛けたが」っているようだ。に正面作戦は上手くいくのだろうか。 池上 彰氏による「ネタニヤフ政権「イスラエル史上、最も右寄り」の訳 イスラエルの選挙制度に問題がある」 「パレスチナ問題。本記事ではイスラエルの側の視点から考えてみることにしましょう」、なるほど。 「極右のユダヤ人の中にはヨルダン川西岸地区のパレスチナ自治区にオスロ合意に反して入植地を作って住み着く人たちがでています。周りのパレスチナ人が反発すると、入植地のユダヤ人たちは周囲のパレスチナ人の住宅を襲撃したり、パレスチナ人を射殺したりしていますが、イスラエルの警察も軍も黙認しているのです」、こんな「スロ合意」違反を米国が見逃しているのも問題だ。もっとも、トランプが大統領にんれば、もっとイスラエルのやりたい放題になるのだろう。 「ネタニヤフにしてみれば、戦争が続くほど自分は首相を続けられる。停戦合意を拒否する理由が、ここにあるのかもしれません」、困ったことだ。さらに前述のもしトラを考慮すると、パレスチナ問題には暗い材料しか思い浮かばない。やれやれ・・・。