鉄道(その13)(豪雪で露呈 オーストリア「看板特急」の落とし穴 ドア1カ所だけ故障でも「編成丸ごと」工場送り、「芸術の国」イタリアが進める鉄道保存の本気度 400両超保有の「財団」 自前の工場で徹底整備、JR東・西はなぜ車両の「脱オーダーメイド」を検討するのか?装置・部品の「共通化」構想の狙いとは) [産業動向]
鉄道については、本年2月19日に取上げた。今日は、(その13)(豪雪で露呈 オーストリア「看板特急」の落とし穴 ドア1カ所だけ故障でも「編成丸ごと」工場送り、「芸術の国」イタリアが進める鉄道保存の本気度 400両超保有の「財団」 自前の工場で徹底整備、JR東・西はなぜ車両の「脱オーダーメイド」を検討するのか?装置・部品の「共通化」構想の狙いとは)である。
先ずは、本年3月1日付け東洋経済オンラインが掲載した欧州鉄道フォトライターの橋爪 智之氏による「豪雪で露呈、オーストリア「看板特急」の落とし穴 ドア1カ所だけ故障でも「編成丸ごと」工場送り」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/737656
・『2023年12月初旬、ドイツやオーストリアなど中欧と呼ばれる地域を中心に、非常に強い寒波が襲った。ミュンヘンなど大都市周辺でも、積雪は数十センチを超え、チェコ共和国南部では同国での観測史上最低となるマイナス28℃を記録した。 除雪が追い付かないほどの積雪によって交通網はマヒし、ドイツ南部からオーストリアへかけての地域は、空路・陸路ともに数日間にわたって交通機関が全面的にストップするなど大混乱となった』、大変だ。
・『主力特急車両が相次ぎダウン かつてないほどの低い気温と積雪により、除雪完了に伴う運行再開後も列車に不具合が相次いだ。オーストリア連邦鉄道(OBB)の都市間特急「レイルジェット」は2023年の時点で60本の列車がオーストリアおよびその周辺国との間を結んで運行しているが、このうちの1割にあたる6本が完全に使用不能となり、工場で修理せざるをえないという緊急事態となった。 だが、工場も修理だけではなく、日常の定期検査も並行して行わなければならないというキャパシティの問題があるため、使用不能となった編成のうちすぐに修理に取り掛かれたのは6本中4本だけだった。 ほかの54本の編成についても、一時は完全な状態で運行ができる編成がわずかに12本しかなく、残りは営業用として動かせる状態にはあるものの、ドアやトイレなどが故障した不完全な状態で営業せざるをえなかった。運行中に故障が悪化し、運転打ち切りや運休が相次ぐ結果となった。) 運休こそ逃れた列車に関しても代替運行となり、ローカル列車などに使用される通常客車を使用した列車も見られた。レイルジェットは、ビジネスクラスと呼ばれる特等席を筆頭に通常の1等・2等車、そして食堂車を連結しているが、代替の列車にはビジネスクラスや食堂車は連結されず、サービスダウンは否めなかった。 レイルジェットは、従来の客車特急列車インターシティの上位に位置する列車として2008年に誕生。客車ではあるが1両ごとに切り離しはできず、完全に固定された7両の編成を機関車が牽引・推進するもので、客車列車というよりは電車に近い。いわゆる高速列車ではないものの、最高時速は230kmに達し、洗練された内外装デザインも含め、従来型客車の旧態依然としたイメージを打ち破る車両となった。 2016年までの間に60本が製造され、チェコ鉄道にも同型車両が7本納入された。現在は、ウィーン―ザルツブルク間などの主要幹線において、新幹線で言うところの「のぞみ」や「こだま」のような、速達タイプ(RJX)と各駅停車タイプ(RJ)が設定されるなど、オーストリア国内における都市間輸送の大半をこのレイルジェットが担う形となっている』、「レイルジェットは、従来の客車特急列車インターシティの上位に位置する列車として2008年に誕生。客車ではあるが1両ごとに切り離しはできず、完全に固定された7両の編成を機関車が牽引・推進するもので、客車列車というよりは電車に近い。いわゆる高速列車ではないものの、最高時速は230kmに達し、洗練された内外装デザインも含め、従来型客車の旧態依然としたイメージを打ち破る車両となった。 2016年までの間に60本が製造され、チェコ鉄道にも同型車両が7本納入された。現在は、ウィーン―ザルツブルク間などの主要幹線において、新幹線で言うところの「のぞみ」や「こだま」のような、速達タイプ(RJX)と各駅停車タイプ(RJ)が設定されるなど、オーストリア国内における都市間輸送の大半をこのレイルジェットが担う形」、なるほど。
・『1両ごとに切り離せないレイルジェット 今回、運行開始以来大きな問題のなかったレイルジェットに、記録的な大雪と寒波という想定を超えた異常気象が襲ったことで、不具合が多発してしまった。さすがのオーストリア連邦鉄道もここまでの異常気象は想定していなかったようだが、それを差し引いても予備車がほとんどない状態で運用を回している現状について、見通しが甘かったのではないかという声も聞かれた。 予備車不足の問題もさることながら、もう1つ大きな問題となったのが、固定編成のレイルジェットならではの「不具合発生に伴う編成全体の離脱」だ。 客車の利点の1つとして、柔軟な編成が組めることが挙げられる。乗客の増減に合わせて1両単位で車両を連結・切り離しできるので、鉄道会社によっては団体客が乗車する日に1両追加で連結するということもやっていた。) これは、万が一車両の不具合が発生した際、その不具合があった車両だけを切り離し、別の運行可能な客車を代わりに連結できるということでもある。寝台車のような特殊な車両の場合は同じ設備の車両が用意できず、個室寝台の代わりがクシェット(簡易寝台)や座席車になってしまうといったことは過去に何度も発生してきたが、運休するよりはマシで、本来のサービスを受けられない乗客に対しては返金などのお詫びをして終了となる。 ところが、固定編成のレイルジェットは、故障した1両だけを切り離すということができない。ドアやトイレといった部分的な故障でも、修理するためには7両編成丸ごと工場へ入場させなければならない。 日本的に考えると、客用ドアの故障は大きなトラブルである。不具合が発生すれば工場へ即入場となるだろう。だが、今回はただでさえ故障が相次いで工場が逼迫している状況で、こう言っては何だが「たかがドア1カ所」のために編成を丸ごと工場入りさせて列車を運休することなどできない。乗客には多少の不便をかけることにはなるが、運休することを考えれば走らせたほうがまだマシなため、故障した状態のまま営業に就かせるケースが相次ぐことになる』、「固定編成のレイルジェットは、故障した1両だけを切り離すということができない。ドアやトイレといった部分的な故障でも、修理するためには7両編成丸ごと工場へ入場させなければならない。 日本的に考えると、客用ドアの故障は大きなトラブルである。不具合が発生すれば工場へ即入場となるだろう。だが、今回はただでさえ故障が相次いで工場が逼迫している状況で、こう言っては何だが「たかがドア1カ所」のために編成を丸ごと工場入りさせて列車を運休することなどできない。乗客には多少の不便をかけることにはなるが、運休することを考えれば走らせたほうがまだマシなため、故障した状態のまま営業に就かせるケースが相次ぐことになる」、これは大変だ。
・『「固定編成」は欧州に向いているのか? ヨーロッパの鉄道は過去20年で大きく変化し、列車の編成も日本のように動力分散方式の電車・ディーゼルカーや、客車列車でもそれに準ずる固定編成の列車が増えてきた。2023年冬から走り始めた夜行列車「ナイトジェット」の最新型も、ついに固定編成を採用するに至った。 ただ前述の通り、固定編成の列車はどこかに不具合が発生した場合、編成単位での工場入りが必要となる。日本と異なり不具合の発生確率が高いヨーロッパでは、故障のたびに運休が発生しては、それこそ運用が回らなくなってしまう。 ある意味では、柔軟性という面において利点のある固定されていない編成のほうが、ヨーロッパの列車運用には合っているのかもしれない』、「固定編成の列車はどこかに不具合が発生した場合、編成単位での工場入りが必要となる。日本と異なり不具合の発生確率が高いヨーロッパでは、故障のたびに運休が発生しては、それこそ運用が回らなくなってしまう。 ある意味では、柔軟性という面において利点のある固定されていない編成のほうが、ヨーロッパの列車運用には合っているのかもしれない」、その通りだ。
次に、4月20日付け東洋経済オンラインが掲載した欧州鉄道フォトライターの橋爪 智之氏による「「芸術の国」イタリアが進める鉄道保存の本気度 400両超保有の「財団」、自前の工場で徹底整備」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/748914
・『鉄道黎明期より長い時間を歩んできたヨーロッパの多くの国では、車両を含む鉄道産業遺産が国や地方自治体の管理する博物館を中心に保存され、民間団体が廃車となった車両を買い取って動態保存している例も多い。そんな中、異色の存在となっているのがイタリアのFondazione FS Italiane(イタリア鉄道財団)だ。 イタリア鉄道財団は、イタリア鉄道、トレニタリア(イタリア鉄道旅客輸送子会社)、RFI(イタリア鉄道インフラ子会社)の3社のCEOが創立メンバーとなって、2013年3月6日に財団の設立趣意書および定款に署名した。2015年12月には、政府の文化遺産・活動・観光省が財団の「機関会員」として加わっている』、日本では「動態保存」は極めて少ないが、イタリアではかなり多いようだ。
・『鉄道遺産保存「財団」の財源は? 財団が設立された目的は、1839年に誕生したイタリア鉄道の膨大な歴史的・技術的遺産を国の歴史の重要な一部として強化し、無傷で将来の世代に引き渡すことで、長い歴史の中における国の成長と国家統一の象徴としての鉄道の重要性を証明することに加え、イタリア国家の利益のために、観光の面で鉄道需要の回復を刺激することが最終的な目標となっている。 その主な活動内容は、400両以上の歴史的鉄道車両の保存(うち約200両は動態保存され現在も稼働中)、イタリア鉄道に関するさまざまな文献資料の保存、ナポリ近郊のピエトラルサと、トリエステにある鉄道博物館の維持管理、運休している風光明媚な鉄道路線の観光路線としての再生などだ。もちろん、純粋な維持管理だけではなく、若い世代への技術継承も含まれる。技術者の育成は、古い技術の維持には必要不可欠なことだ。) 気になるのは財源だ。前述の3社からの資金や政府の補助金などがベースだが、不動産収入や株式運用による資産、地方自治体や企業からの寄付金なども使われている。ただし、個人からの寄付はとくに募っていない。筆者は以前に寄付を申し出たが、十分な財源があるので大丈夫と断られてしまった。このあたりは、博物館やイベントなどで寄付を募っている英国やドイツなどと異なり興味深い。 財団のロゴは、イタリア鉄道(FS)で1966~1982年に使用された、通称「テレビロゴ」(文字周囲の枠がブラウン管時代のテレビの画面に似ているところからそう呼ばれる)をベースにしている。 古典車両を維持管理するための中枢とも言うべき車両工場は全国に3カ所あり、各工場は原則的に車両の種類によって役割が分担されている。いったい、工場ではどのような作業が行われているのだろうか。財団が保有する工場の一つである、ラ・スペツィア工場を取材する機会を得た。 ▽財団の工場内部を取材(ラ・スペツィアはイタリア北西部、リグーリア州の東部に位置する人口約9万人の港町で、首都ローマとジェノヴァを結ぶ幹線上に位置する。ラ・スペツィア工場は1926年に建設され、当時はまだ三相交流方式という特殊な電化方式を採用していたイタリア国鉄の電気機関車を整備する工場として使用された。 2014年にイタリア鉄道財団へ譲渡され、以降は主に財団の保有する電気機関車の定期点検やオーバーホールのほか、動かない状態で保管されていた車両の修復作業なども請け負っている。) 工場建屋内へ入ると、戦前製の古い機関車がずらりと並んでいる。 財団の保有する車両は、1:動態保存(本線走行可能)2:動態保存(本線走行不可)3:静態保存 の3種類に大別される。 1は動く状態に完全復元され、信号などの保安装置も現在の最新システムに換装し、イベント時に本線上を走行させることが可能な車両だ。2は、電気装置などはすべて稼働状態となっていて、パンタグラフを上げて電気を通せば動かすことができるが、保安装置が現代の基準に合致しないため、構内など閉鎖された場所でのデモ走行に限られる。日本で言えば「碓氷峠鉄道文化むら」(群馬県)に保存されているEF63形電気機関車のようなものだ。3は文字通り、動力や制御装置が稼働できない状態で、博物館などで保存・展示させるための車両だ。 工場建屋の中に1両、ピカピカに磨き上げられた電気機関車がいる。E424型249号機といい、第二次大戦直後の1946年に製造された4動軸の機関車だ。主にローカル線で旅客・貨物列車の両方に使えるよう設計され、荷物や郵便を運べるように車体中央にはシャッター付きの荷室が設けられたユニークな機関車だ。 後年、近郊列車をプッシュプル運転する目的で、推進運転制御装置を搭載し、色を当時の最新塗装へ変更して使用されたが、その改造の際に元番号+200へと改番されている。つまり、オリジナルの状態ではE424型049号機だった』、「1は動く状態に完全復元され、信号などの保安装置も現在の最新システムに換装し、イベント時に本線上を走行させることが可能な車両だ。2は、電気装置などはすべて稼働状態となっていて、パンタグラフを上げて電気を通せば動かすことができるが、保安装置が現代の基準に合致しないため、構内など閉鎖された場所でのデモ走行に限られる。日本で言えば「碓氷峠鉄道文化むら」(群馬県)に保存されているEF63形電気機関車のようなものだ。3は文字通り、動力や制御装置が稼働できない状態で、博物館などで保存・展示させるための車両だ」、なるほど。
・『見えない部分も解体して徹底修復 現場で案内をしてくれた技師いわく、この車両は動かせる状態にあるが、信号装置が古い状態のままで、かつパンタグラフは現在本線上での使用を認められてない古いタイプ(FS Tipo42)を搭載しているため、本線走行はできないという(前述「2」に該当)。 ただ、現場のこだわりで車体表記は元の番号である049号機へ塗り替えており(製造銘板などは249号機のまま)、前面の目立つ位置に取り付けられていた制御回路引き通し線も撤去し、オリジナルの古いパンタグラフとともに美しい状態で保存できている、と技師は胸を張っていた。動かすことはできるので、工場内のイベントなどでは、今後も元気な様子を見ることができるだろう。) 隣の建屋では、完全に解体された625型蒸気機関車の修復が行われていた。古い車両は、外側がきれいでも内側に傷んでいる部分が多く、この625型も車体の基礎となる台枠部分が腐食して、かなり鉄板が薄くなっているのが見た目にもわかる。完全にばらした状態から修復するのは、こうした見えない部分の補強をするためである。 屋外には、整備が終わった状態の車両から整備待ちで保管されている車両まで数十両が留置されている。その中でもとくに気になったのは、現存するのがここで保管されている2両だけというALn442-448型気動車だ』、「この車両は動かせる状態にあるが、信号装置が古い状態のままで、かつパンタグラフは現在本線上での使用を認められてない古いタイプ(FS Tipo42)を搭載しているため、本線走行はできないという(前述「2」に該当)」、なるほど。
・『朽ち果てた車両を「救出」 ALn442-448型は、1955年にブレダ(現在の日立レールの前身であるアンサルドブレダの合併前の会社)で製造された気動車で、1957年のTEE(ヨーロッパ国際特急)運行開始時に使用された歴史的な車両だ。だが、数両を残してすべて解体され、ミラノの科学技術博物館に保存された1両もアスベストが問題となって展示が取りやめとなり、そのまま解体されてしまった。 最後に残ったALn442-448型2008号機は、アスベスト除去業者へ引き渡されたものの、その業者が倒産してしまい、屋外で雨ざらしとなって何年も放置され、すっかり朽ち果てていた。本来であれば解体されてもおかしくはないところだが、財団が救出して引き取ったものだ。 保管された車両を拝ませてもらった時には、あまりの朽ち果てた状態に愕然とした。実際、技師もこれからどうやって修復をしていこうかと頭を悩ませていると語っていたが、3年前に同様の状態から見事に復活し、本線走行を行っているETR252型アルレッキーノの例を見れば、必ずや復活を果たせるだろうと期待せずにはいられない。) そんな財団の悩みが、1980年代以降に製造されたいわゆる新性能車両だ。1980年代というと、ちょうどチョッパ制御やインバーター制御など、半導体技術が世に出始めた頃である。 旧来の技術である抵抗制御などは、ある意味で言えば「溶接してハンマーで叩けば直せる」アナログ式なので、技術を継承さえすれば、理論上は半永久的に残すことができる。蒸気機関車は言わずもがな、電車や電気機関車も、古い時代の車両は動態保存されている車両が多い。 一方でチョッパ制御以降の車両は、制御装置に半導体を用いていることから、故障してしまえば部品の交換以外に修理の方法がない。ところが半導体は日進月歩で進化を続けており、古くなった製品はすぐに生産中止となることから、現役の車両ですら、まだ動く車両を廃車にして、予備部品の確保(共食い)を行っている車種もある』、「チョッパ制御以降の車両は、制御装置に半導体を用いていることから、故障してしまえば部品の交換以外に修理の方法がない。ところが半導体は日進月歩で進化を続けており、古くなった製品はすぐに生産中止となることから、現役の車両ですら、まだ動く車両を廃車にして、予備部品の確保(共食い)を行っている車種もある」、確かに「半導体」導入以降は「予備部品の確保(共食い)」が必要になるようだ。
・『鉄道遺産も絵画などと同様の価値 財団は現在、1両のチョッパ制御機関車(E632型030号機)を保有している。状況次第では今後も増えていくものと考えられ、予備部品の確保はもちろんのこと、万が一部品が枯渇した際にどう対処していくのかが将来的な課題と言えよう。 絵画など多くの文化的遺産を保有し、それらの修復技術にも定評があるイタリアは、産業遺産である鉄道についても同様の価値を見出し、これらを観光資源として再生するという取り組みを、国を挙げて行っている。 数年前から修復作業が進められているイタリアの伝説的な鉄道車両、ETR302型セッテベッロを含め今も修復を待つ車両は多いが、これらが再び息を吹き返し、イタリアの大地を駆け抜ける日もそう遠くない未来のことだろう』、「修復技術にも定評があるイタリアは、産業遺産である鉄道についても同様の価値を見出し、これらを観光資源として再生するという取り組みを、国を挙げて行っている」、「イタリア」が「修復技術にも定評がある」、「産業遺産である鉄道についても同様の価値を見出し、これらを観光資源として再生するという取り組みを、国を挙げて行っている」、注目すべき国の1つだ。
第三に、7月15日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した鉄道ジャーナリストの枝久保達也氏による「JR東・西はなぜ車両の「脱オーダーメイド」を検討するのか?装置・部品の「共通化」構想の狙いとは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/346902
・『JR東日本とJR西日本は7月5日、旅客輸送量や労働生産人口の減少が見込まれる中、将来にわたり鉄道輸送事業を維持発展させ、利用者への安定的な輸送サービスを提供する目的で、車両の装置・部品共通化の検討を開始したと発表した。その狙いと、今後の可能性とは』、興味深そうだ。
・『鉄道車両の全ての部品が特注品なわけではない ひとくちに車両の「共通化」といってもさまざまなレベルがある。鉄道車両は基本的にオーダーメイドだが、当然、全ての部品が特注品なわけではない。日本の鉄道車両、特に電車は日立製作所、川崎重工業の子会社である川崎車両、JR東海の子会社である日本車輛製造、JR東日本の子会社である総合車両製作所、近鉄グループの近畿車輛の5社がほとんどを占める。 例えば相模鉄道のJR直通用車両「12000系」や、東急電鉄の田園都市線「2020系」、大井町線「6020系」、目黒線「3020系」、京王電鉄京王ライナー対応車「5000系」は、JR東日本の山手線・横須賀線「E235系」と同様の標準設計「sustina」を採用し、総合車両製作所で製造されている。 また、日立製作所のアルミ車両標準設計「A-train」は、東京メトロの「10000系」以降の多くの車両や、東武鉄道の「50000系」「60000系」、西武鉄道の「20000系」「30000系」など、JR東日本、大手私鉄、公営地下鉄、海外鉄道など広く用いられている。 これらメーカーの標準設計で製造された車両は、鉄道事業者ごとの特色を出すために前面形状こそ作り分けられているものの、よく見れば、車体の側面や内装はほとんど同じであることに気づくだろう。このように衝突安全性向上や環境負荷低減に対応しつつ、コスト削減を図るのも共通化の効果だ』、「これらメーカーの標準設計で製造された車両は、鉄道事業者ごとの特色を出すために前面形状こそ作り分けられているものの、よく見れば、車体の側面や内装はほとんど同じであることに気づくだろう。このように衝突安全性向上や環境負荷低減に対応しつつ、コスト削減を図るのも共通化の効果だ」、なるほど。
・『車両設計自体を共通化することも 車体の標準設計のみならず、車両設計自体を共通化することもある。例えば東海道・山陽新幹線では、JR西日本「500系」などの独自設計の車両が走っていたこともあるが、現在は「N700S」などに共通化されている。北陸新幹線でもJR東日本とJR西日本が同一設計の「E7/W7系」を導入した。 私鉄では東京メトロと東武鉄道が、地下鉄日比谷線向けに共通設計の「13000系」と「70000系」を近畿車輛に発注している。両系列は、前面形状を除く車体と走行関係のシステムは同一で、内装も装飾以外はおおむね共通化されているが、一部に構造が異なる点もある。 近年の鉄道車両の生産数は、新幹線やJR東日本の一部形式を除けば、多くても300~400両、ほとんどは100両程度と少ないため、量産効果が小さい。特に一部列車のみ日比谷線に乗り入れる東武鉄道は、必要な編成数がそれほど多くないため、独自設計の車両を製造すると高くつく。そこで東京メトロと一括して発注することで、性能や操作性を統一するとともにコストダウンを狙った。 だが、こうした車両設計の共通化は、上記新幹線や地下鉄など運行系統がほぼ一体化している路線であればともかく、全く違う地域を走る路線では、それぞれの環境や特性にあわせる必要があるため困難だ』、「近年の鉄道車両の生産数は、新幹線やJR東日本の一部形式を除けば、多くても300~400両、ほとんどは100両程度と少ないため、量産効果が小さい。特に一部列車のみ日比谷線に乗り入れる東武鉄道は、必要な編成数がそれほど多くないため、独自設計の車両を製造すると高くつく。そこで東京メトロと一括して発注することで、性能や操作性を統一するとともにコストダウンを狙った」、なるほど。
・『両社の独自性と効率化のバランスを見ながら共通化対象部品を拡大 今回の発表を受け、国鉄時代に全国に導入された「103系」や「205系」のように車両自体を共通化する方向に進むのでは、という反応も見られる。しかし、ホームドアの整備が進む現代では、車両と設備の整合が必要であり、都市部の車両をJR東日本は4ドア、JR西日本は3ドアに統一しているため、完全な共通化は不可能だ。そこでまずは装置・部品の共通化から検討に着手する。 電車には電機部品(パンタグラフ、制御装置、モーター、補助電源装置、バッテリーなど)、空気圧システム(コンプレッサー、ブレーキ装置、戸閉め装置)、空調、案内装置などさまざまな装置・部品が設置されている。これらは車両メーカーが製造する部品もあれば、東芝や東洋電機製造、三菱電機のように、主要電気装置や車両機器を手掛ける電機メーカーもある。 大掛かりなシステムは各社がサプライヤーとともに一貫して設計・製造している。安定調達や競争原理を考慮すれば、無理な統一はかえって非効率、コスト増にもなりかねない。ただ部品によっては事業者ごとのニーズに応じて、似たようなものを多品種少量生産している。 これらはサプライヤーにとって儲かる仕事ではなく、今後は発注数の減少が予想されるため、業界全体の効率化を図り、限られた人員や設備を各社の得意な領域に集中したい。そこでモーター、台車のオイルダンパー、パンタグラフ、行先表示器など、可能な範囲で装置・部品の共通化に着手し、各社の独自性と効率化のバランスを見ながら共通化対象部品を拡大するというのが今回の発表だ』、「今後は発注数の減少が予想されるため、業界全体の効率化を図り、限られた人員や設備を各社の得意な領域に集中したい。そこでモーター、台車のオイルダンパー、パンタグラフ、行先表示器など、可能な範囲で装置・部品の共通化に着手し、各社の独自性と効率化のバランスを見ながら共通化対象部品を拡大するというのが今回の発表だ」、なるほど。
・『今回の共通化検討が形になるのは5~10年後か 具体的には、まずJR東日本とJR西日本が共通化の方向性など土台作りを進め、続いて他の鉄道事業者や車両メーカー、サプライヤーと意見交換をして具体的な内容を詰める。そして共通化部品調達の仕組みを構築した上で、実際の車両に展開する。 現行車両の部品の交換は現実的ではないため、共通化を取り入れた設計は今後の新型車両から導入する。つまり、今回の検討が形になるのは5年後、10年後レベルの話になる。QRコード乗車券を8事業者共同で進めるように、今後の検討で、大手私鉄が参加してさらに大きな取り組みになる可能性もある。 車両設計を完全に共通化するのは困難だが、プレスリリースには「各鉄道事業者の独自の使用となるものは今後検討」として、ドア位置や枚数、車体幅、長さ、前面形状などが挙げられている。「sustina」は車両ごとに車体構造のカスタマイズが可能であり、前述のように、すでに導入した私鉄もある。 近年JR西日本が導入した「225系」「227系」「321系」「323系」は、川崎車両と近畿車輛が担当している。JR東日本は装置・部品以上の検討は全く白紙というが、将来的にJR西日本が「sustina」を採用することもあり得るかもしれない(逆にJR東日本が車両調達先をグループ以外に変更するとは考えにくい)。 いずれにせよ、人口減少が進めば鉄道事業は縮小していく。事業が縮小すれば鉄道車両も削減され、新造車両も減少する。海外進出を進める車両メーカーもあるが、サプライヤーの多くは国内需要が中心だ。事業者のみ、メーカーのみの課題ではなく、将来にわたって鉄道システムを機能させるための検討が、今後ますます本格化しそうだ』、「現行車両の部品の交換は現実的ではないため、共通化を取り入れた設計は今後の新型車両から導入する。つまり、今回の検討が形になるのは5年後、10年後レベルの話になる。QRコード乗車券を8事業者共同で進めるように、今後の検討で、大手私鉄が参加してさらに大きな取り組みになる可能性もある・・・人口減少が進めば鉄道事業は縮小していく。事業が縮小すれば鉄道車両も削減され、新造車両も減少する。海外進出を進める車両メーカーもあるが、サプライヤーの多くは国内需要が中心だ。事業者のみ、メーカーのみの課題ではなく、将来にわたって鉄道システムを機能させるための検討が、今後ますます本格化しそうだ」、設計の共通化などによる効率化が、今後進展するのは、楽しみだ。
先ずは、本年3月1日付け東洋経済オンラインが掲載した欧州鉄道フォトライターの橋爪 智之氏による「豪雪で露呈、オーストリア「看板特急」の落とし穴 ドア1カ所だけ故障でも「編成丸ごと」工場送り」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/737656
・『2023年12月初旬、ドイツやオーストリアなど中欧と呼ばれる地域を中心に、非常に強い寒波が襲った。ミュンヘンなど大都市周辺でも、積雪は数十センチを超え、チェコ共和国南部では同国での観測史上最低となるマイナス28℃を記録した。 除雪が追い付かないほどの積雪によって交通網はマヒし、ドイツ南部からオーストリアへかけての地域は、空路・陸路ともに数日間にわたって交通機関が全面的にストップするなど大混乱となった』、大変だ。
・『主力特急車両が相次ぎダウン かつてないほどの低い気温と積雪により、除雪完了に伴う運行再開後も列車に不具合が相次いだ。オーストリア連邦鉄道(OBB)の都市間特急「レイルジェット」は2023年の時点で60本の列車がオーストリアおよびその周辺国との間を結んで運行しているが、このうちの1割にあたる6本が完全に使用不能となり、工場で修理せざるをえないという緊急事態となった。 だが、工場も修理だけではなく、日常の定期検査も並行して行わなければならないというキャパシティの問題があるため、使用不能となった編成のうちすぐに修理に取り掛かれたのは6本中4本だけだった。 ほかの54本の編成についても、一時は完全な状態で運行ができる編成がわずかに12本しかなく、残りは営業用として動かせる状態にはあるものの、ドアやトイレなどが故障した不完全な状態で営業せざるをえなかった。運行中に故障が悪化し、運転打ち切りや運休が相次ぐ結果となった。) 運休こそ逃れた列車に関しても代替運行となり、ローカル列車などに使用される通常客車を使用した列車も見られた。レイルジェットは、ビジネスクラスと呼ばれる特等席を筆頭に通常の1等・2等車、そして食堂車を連結しているが、代替の列車にはビジネスクラスや食堂車は連結されず、サービスダウンは否めなかった。 レイルジェットは、従来の客車特急列車インターシティの上位に位置する列車として2008年に誕生。客車ではあるが1両ごとに切り離しはできず、完全に固定された7両の編成を機関車が牽引・推進するもので、客車列車というよりは電車に近い。いわゆる高速列車ではないものの、最高時速は230kmに達し、洗練された内外装デザインも含め、従来型客車の旧態依然としたイメージを打ち破る車両となった。 2016年までの間に60本が製造され、チェコ鉄道にも同型車両が7本納入された。現在は、ウィーン―ザルツブルク間などの主要幹線において、新幹線で言うところの「のぞみ」や「こだま」のような、速達タイプ(RJX)と各駅停車タイプ(RJ)が設定されるなど、オーストリア国内における都市間輸送の大半をこのレイルジェットが担う形となっている』、「レイルジェットは、従来の客車特急列車インターシティの上位に位置する列車として2008年に誕生。客車ではあるが1両ごとに切り離しはできず、完全に固定された7両の編成を機関車が牽引・推進するもので、客車列車というよりは電車に近い。いわゆる高速列車ではないものの、最高時速は230kmに達し、洗練された内外装デザインも含め、従来型客車の旧態依然としたイメージを打ち破る車両となった。 2016年までの間に60本が製造され、チェコ鉄道にも同型車両が7本納入された。現在は、ウィーン―ザルツブルク間などの主要幹線において、新幹線で言うところの「のぞみ」や「こだま」のような、速達タイプ(RJX)と各駅停車タイプ(RJ)が設定されるなど、オーストリア国内における都市間輸送の大半をこのレイルジェットが担う形」、なるほど。
・『1両ごとに切り離せないレイルジェット 今回、運行開始以来大きな問題のなかったレイルジェットに、記録的な大雪と寒波という想定を超えた異常気象が襲ったことで、不具合が多発してしまった。さすがのオーストリア連邦鉄道もここまでの異常気象は想定していなかったようだが、それを差し引いても予備車がほとんどない状態で運用を回している現状について、見通しが甘かったのではないかという声も聞かれた。 予備車不足の問題もさることながら、もう1つ大きな問題となったのが、固定編成のレイルジェットならではの「不具合発生に伴う編成全体の離脱」だ。 客車の利点の1つとして、柔軟な編成が組めることが挙げられる。乗客の増減に合わせて1両単位で車両を連結・切り離しできるので、鉄道会社によっては団体客が乗車する日に1両追加で連結するということもやっていた。) これは、万が一車両の不具合が発生した際、その不具合があった車両だけを切り離し、別の運行可能な客車を代わりに連結できるということでもある。寝台車のような特殊な車両の場合は同じ設備の車両が用意できず、個室寝台の代わりがクシェット(簡易寝台)や座席車になってしまうといったことは過去に何度も発生してきたが、運休するよりはマシで、本来のサービスを受けられない乗客に対しては返金などのお詫びをして終了となる。 ところが、固定編成のレイルジェットは、故障した1両だけを切り離すということができない。ドアやトイレといった部分的な故障でも、修理するためには7両編成丸ごと工場へ入場させなければならない。 日本的に考えると、客用ドアの故障は大きなトラブルである。不具合が発生すれば工場へ即入場となるだろう。だが、今回はただでさえ故障が相次いで工場が逼迫している状況で、こう言っては何だが「たかがドア1カ所」のために編成を丸ごと工場入りさせて列車を運休することなどできない。乗客には多少の不便をかけることにはなるが、運休することを考えれば走らせたほうがまだマシなため、故障した状態のまま営業に就かせるケースが相次ぐことになる』、「固定編成のレイルジェットは、故障した1両だけを切り離すということができない。ドアやトイレといった部分的な故障でも、修理するためには7両編成丸ごと工場へ入場させなければならない。 日本的に考えると、客用ドアの故障は大きなトラブルである。不具合が発生すれば工場へ即入場となるだろう。だが、今回はただでさえ故障が相次いで工場が逼迫している状況で、こう言っては何だが「たかがドア1カ所」のために編成を丸ごと工場入りさせて列車を運休することなどできない。乗客には多少の不便をかけることにはなるが、運休することを考えれば走らせたほうがまだマシなため、故障した状態のまま営業に就かせるケースが相次ぐことになる」、これは大変だ。
・『「固定編成」は欧州に向いているのか? ヨーロッパの鉄道は過去20年で大きく変化し、列車の編成も日本のように動力分散方式の電車・ディーゼルカーや、客車列車でもそれに準ずる固定編成の列車が増えてきた。2023年冬から走り始めた夜行列車「ナイトジェット」の最新型も、ついに固定編成を採用するに至った。 ただ前述の通り、固定編成の列車はどこかに不具合が発生した場合、編成単位での工場入りが必要となる。日本と異なり不具合の発生確率が高いヨーロッパでは、故障のたびに運休が発生しては、それこそ運用が回らなくなってしまう。 ある意味では、柔軟性という面において利点のある固定されていない編成のほうが、ヨーロッパの列車運用には合っているのかもしれない』、「固定編成の列車はどこかに不具合が発生した場合、編成単位での工場入りが必要となる。日本と異なり不具合の発生確率が高いヨーロッパでは、故障のたびに運休が発生しては、それこそ運用が回らなくなってしまう。 ある意味では、柔軟性という面において利点のある固定されていない編成のほうが、ヨーロッパの列車運用には合っているのかもしれない」、その通りだ。
次に、4月20日付け東洋経済オンラインが掲載した欧州鉄道フォトライターの橋爪 智之氏による「「芸術の国」イタリアが進める鉄道保存の本気度 400両超保有の「財団」、自前の工場で徹底整備」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/748914
・『鉄道黎明期より長い時間を歩んできたヨーロッパの多くの国では、車両を含む鉄道産業遺産が国や地方自治体の管理する博物館を中心に保存され、民間団体が廃車となった車両を買い取って動態保存している例も多い。そんな中、異色の存在となっているのがイタリアのFondazione FS Italiane(イタリア鉄道財団)だ。 イタリア鉄道財団は、イタリア鉄道、トレニタリア(イタリア鉄道旅客輸送子会社)、RFI(イタリア鉄道インフラ子会社)の3社のCEOが創立メンバーとなって、2013年3月6日に財団の設立趣意書および定款に署名した。2015年12月には、政府の文化遺産・活動・観光省が財団の「機関会員」として加わっている』、日本では「動態保存」は極めて少ないが、イタリアではかなり多いようだ。
・『鉄道遺産保存「財団」の財源は? 財団が設立された目的は、1839年に誕生したイタリア鉄道の膨大な歴史的・技術的遺産を国の歴史の重要な一部として強化し、無傷で将来の世代に引き渡すことで、長い歴史の中における国の成長と国家統一の象徴としての鉄道の重要性を証明することに加え、イタリア国家の利益のために、観光の面で鉄道需要の回復を刺激することが最終的な目標となっている。 その主な活動内容は、400両以上の歴史的鉄道車両の保存(うち約200両は動態保存され現在も稼働中)、イタリア鉄道に関するさまざまな文献資料の保存、ナポリ近郊のピエトラルサと、トリエステにある鉄道博物館の維持管理、運休している風光明媚な鉄道路線の観光路線としての再生などだ。もちろん、純粋な維持管理だけではなく、若い世代への技術継承も含まれる。技術者の育成は、古い技術の維持には必要不可欠なことだ。) 気になるのは財源だ。前述の3社からの資金や政府の補助金などがベースだが、不動産収入や株式運用による資産、地方自治体や企業からの寄付金なども使われている。ただし、個人からの寄付はとくに募っていない。筆者は以前に寄付を申し出たが、十分な財源があるので大丈夫と断られてしまった。このあたりは、博物館やイベントなどで寄付を募っている英国やドイツなどと異なり興味深い。 財団のロゴは、イタリア鉄道(FS)で1966~1982年に使用された、通称「テレビロゴ」(文字周囲の枠がブラウン管時代のテレビの画面に似ているところからそう呼ばれる)をベースにしている。 古典車両を維持管理するための中枢とも言うべき車両工場は全国に3カ所あり、各工場は原則的に車両の種類によって役割が分担されている。いったい、工場ではどのような作業が行われているのだろうか。財団が保有する工場の一つである、ラ・スペツィア工場を取材する機会を得た。 ▽財団の工場内部を取材(ラ・スペツィアはイタリア北西部、リグーリア州の東部に位置する人口約9万人の港町で、首都ローマとジェノヴァを結ぶ幹線上に位置する。ラ・スペツィア工場は1926年に建設され、当時はまだ三相交流方式という特殊な電化方式を採用していたイタリア国鉄の電気機関車を整備する工場として使用された。 2014年にイタリア鉄道財団へ譲渡され、以降は主に財団の保有する電気機関車の定期点検やオーバーホールのほか、動かない状態で保管されていた車両の修復作業なども請け負っている。) 工場建屋内へ入ると、戦前製の古い機関車がずらりと並んでいる。 財団の保有する車両は、1:動態保存(本線走行可能)2:動態保存(本線走行不可)3:静態保存 の3種類に大別される。 1は動く状態に完全復元され、信号などの保安装置も現在の最新システムに換装し、イベント時に本線上を走行させることが可能な車両だ。2は、電気装置などはすべて稼働状態となっていて、パンタグラフを上げて電気を通せば動かすことができるが、保安装置が現代の基準に合致しないため、構内など閉鎖された場所でのデモ走行に限られる。日本で言えば「碓氷峠鉄道文化むら」(群馬県)に保存されているEF63形電気機関車のようなものだ。3は文字通り、動力や制御装置が稼働できない状態で、博物館などで保存・展示させるための車両だ。 工場建屋の中に1両、ピカピカに磨き上げられた電気機関車がいる。E424型249号機といい、第二次大戦直後の1946年に製造された4動軸の機関車だ。主にローカル線で旅客・貨物列車の両方に使えるよう設計され、荷物や郵便を運べるように車体中央にはシャッター付きの荷室が設けられたユニークな機関車だ。 後年、近郊列車をプッシュプル運転する目的で、推進運転制御装置を搭載し、色を当時の最新塗装へ変更して使用されたが、その改造の際に元番号+200へと改番されている。つまり、オリジナルの状態ではE424型049号機だった』、「1は動く状態に完全復元され、信号などの保安装置も現在の最新システムに換装し、イベント時に本線上を走行させることが可能な車両だ。2は、電気装置などはすべて稼働状態となっていて、パンタグラフを上げて電気を通せば動かすことができるが、保安装置が現代の基準に合致しないため、構内など閉鎖された場所でのデモ走行に限られる。日本で言えば「碓氷峠鉄道文化むら」(群馬県)に保存されているEF63形電気機関車のようなものだ。3は文字通り、動力や制御装置が稼働できない状態で、博物館などで保存・展示させるための車両だ」、なるほど。
・『見えない部分も解体して徹底修復 現場で案内をしてくれた技師いわく、この車両は動かせる状態にあるが、信号装置が古い状態のままで、かつパンタグラフは現在本線上での使用を認められてない古いタイプ(FS Tipo42)を搭載しているため、本線走行はできないという(前述「2」に該当)。 ただ、現場のこだわりで車体表記は元の番号である049号機へ塗り替えており(製造銘板などは249号機のまま)、前面の目立つ位置に取り付けられていた制御回路引き通し線も撤去し、オリジナルの古いパンタグラフとともに美しい状態で保存できている、と技師は胸を張っていた。動かすことはできるので、工場内のイベントなどでは、今後も元気な様子を見ることができるだろう。) 隣の建屋では、完全に解体された625型蒸気機関車の修復が行われていた。古い車両は、外側がきれいでも内側に傷んでいる部分が多く、この625型も車体の基礎となる台枠部分が腐食して、かなり鉄板が薄くなっているのが見た目にもわかる。完全にばらした状態から修復するのは、こうした見えない部分の補強をするためである。 屋外には、整備が終わった状態の車両から整備待ちで保管されている車両まで数十両が留置されている。その中でもとくに気になったのは、現存するのがここで保管されている2両だけというALn442-448型気動車だ』、「この車両は動かせる状態にあるが、信号装置が古い状態のままで、かつパンタグラフは現在本線上での使用を認められてない古いタイプ(FS Tipo42)を搭載しているため、本線走行はできないという(前述「2」に該当)」、なるほど。
・『朽ち果てた車両を「救出」 ALn442-448型は、1955年にブレダ(現在の日立レールの前身であるアンサルドブレダの合併前の会社)で製造された気動車で、1957年のTEE(ヨーロッパ国際特急)運行開始時に使用された歴史的な車両だ。だが、数両を残してすべて解体され、ミラノの科学技術博物館に保存された1両もアスベストが問題となって展示が取りやめとなり、そのまま解体されてしまった。 最後に残ったALn442-448型2008号機は、アスベスト除去業者へ引き渡されたものの、その業者が倒産してしまい、屋外で雨ざらしとなって何年も放置され、すっかり朽ち果てていた。本来であれば解体されてもおかしくはないところだが、財団が救出して引き取ったものだ。 保管された車両を拝ませてもらった時には、あまりの朽ち果てた状態に愕然とした。実際、技師もこれからどうやって修復をしていこうかと頭を悩ませていると語っていたが、3年前に同様の状態から見事に復活し、本線走行を行っているETR252型アルレッキーノの例を見れば、必ずや復活を果たせるだろうと期待せずにはいられない。) そんな財団の悩みが、1980年代以降に製造されたいわゆる新性能車両だ。1980年代というと、ちょうどチョッパ制御やインバーター制御など、半導体技術が世に出始めた頃である。 旧来の技術である抵抗制御などは、ある意味で言えば「溶接してハンマーで叩けば直せる」アナログ式なので、技術を継承さえすれば、理論上は半永久的に残すことができる。蒸気機関車は言わずもがな、電車や電気機関車も、古い時代の車両は動態保存されている車両が多い。 一方でチョッパ制御以降の車両は、制御装置に半導体を用いていることから、故障してしまえば部品の交換以外に修理の方法がない。ところが半導体は日進月歩で進化を続けており、古くなった製品はすぐに生産中止となることから、現役の車両ですら、まだ動く車両を廃車にして、予備部品の確保(共食い)を行っている車種もある』、「チョッパ制御以降の車両は、制御装置に半導体を用いていることから、故障してしまえば部品の交換以外に修理の方法がない。ところが半導体は日進月歩で進化を続けており、古くなった製品はすぐに生産中止となることから、現役の車両ですら、まだ動く車両を廃車にして、予備部品の確保(共食い)を行っている車種もある」、確かに「半導体」導入以降は「予備部品の確保(共食い)」が必要になるようだ。
・『鉄道遺産も絵画などと同様の価値 財団は現在、1両のチョッパ制御機関車(E632型030号機)を保有している。状況次第では今後も増えていくものと考えられ、予備部品の確保はもちろんのこと、万が一部品が枯渇した際にどう対処していくのかが将来的な課題と言えよう。 絵画など多くの文化的遺産を保有し、それらの修復技術にも定評があるイタリアは、産業遺産である鉄道についても同様の価値を見出し、これらを観光資源として再生するという取り組みを、国を挙げて行っている。 数年前から修復作業が進められているイタリアの伝説的な鉄道車両、ETR302型セッテベッロを含め今も修復を待つ車両は多いが、これらが再び息を吹き返し、イタリアの大地を駆け抜ける日もそう遠くない未来のことだろう』、「修復技術にも定評があるイタリアは、産業遺産である鉄道についても同様の価値を見出し、これらを観光資源として再生するという取り組みを、国を挙げて行っている」、「イタリア」が「修復技術にも定評がある」、「産業遺産である鉄道についても同様の価値を見出し、これらを観光資源として再生するという取り組みを、国を挙げて行っている」、注目すべき国の1つだ。
第三に、7月15日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した鉄道ジャーナリストの枝久保達也氏による「JR東・西はなぜ車両の「脱オーダーメイド」を検討するのか?装置・部品の「共通化」構想の狙いとは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/346902
・『JR東日本とJR西日本は7月5日、旅客輸送量や労働生産人口の減少が見込まれる中、将来にわたり鉄道輸送事業を維持発展させ、利用者への安定的な輸送サービスを提供する目的で、車両の装置・部品共通化の検討を開始したと発表した。その狙いと、今後の可能性とは』、興味深そうだ。
・『鉄道車両の全ての部品が特注品なわけではない ひとくちに車両の「共通化」といってもさまざまなレベルがある。鉄道車両は基本的にオーダーメイドだが、当然、全ての部品が特注品なわけではない。日本の鉄道車両、特に電車は日立製作所、川崎重工業の子会社である川崎車両、JR東海の子会社である日本車輛製造、JR東日本の子会社である総合車両製作所、近鉄グループの近畿車輛の5社がほとんどを占める。 例えば相模鉄道のJR直通用車両「12000系」や、東急電鉄の田園都市線「2020系」、大井町線「6020系」、目黒線「3020系」、京王電鉄京王ライナー対応車「5000系」は、JR東日本の山手線・横須賀線「E235系」と同様の標準設計「sustina」を採用し、総合車両製作所で製造されている。 また、日立製作所のアルミ車両標準設計「A-train」は、東京メトロの「10000系」以降の多くの車両や、東武鉄道の「50000系」「60000系」、西武鉄道の「20000系」「30000系」など、JR東日本、大手私鉄、公営地下鉄、海外鉄道など広く用いられている。 これらメーカーの標準設計で製造された車両は、鉄道事業者ごとの特色を出すために前面形状こそ作り分けられているものの、よく見れば、車体の側面や内装はほとんど同じであることに気づくだろう。このように衝突安全性向上や環境負荷低減に対応しつつ、コスト削減を図るのも共通化の効果だ』、「これらメーカーの標準設計で製造された車両は、鉄道事業者ごとの特色を出すために前面形状こそ作り分けられているものの、よく見れば、車体の側面や内装はほとんど同じであることに気づくだろう。このように衝突安全性向上や環境負荷低減に対応しつつ、コスト削減を図るのも共通化の効果だ」、なるほど。
・『車両設計自体を共通化することも 車体の標準設計のみならず、車両設計自体を共通化することもある。例えば東海道・山陽新幹線では、JR西日本「500系」などの独自設計の車両が走っていたこともあるが、現在は「N700S」などに共通化されている。北陸新幹線でもJR東日本とJR西日本が同一設計の「E7/W7系」を導入した。 私鉄では東京メトロと東武鉄道が、地下鉄日比谷線向けに共通設計の「13000系」と「70000系」を近畿車輛に発注している。両系列は、前面形状を除く車体と走行関係のシステムは同一で、内装も装飾以外はおおむね共通化されているが、一部に構造が異なる点もある。 近年の鉄道車両の生産数は、新幹線やJR東日本の一部形式を除けば、多くても300~400両、ほとんどは100両程度と少ないため、量産効果が小さい。特に一部列車のみ日比谷線に乗り入れる東武鉄道は、必要な編成数がそれほど多くないため、独自設計の車両を製造すると高くつく。そこで東京メトロと一括して発注することで、性能や操作性を統一するとともにコストダウンを狙った。 だが、こうした車両設計の共通化は、上記新幹線や地下鉄など運行系統がほぼ一体化している路線であればともかく、全く違う地域を走る路線では、それぞれの環境や特性にあわせる必要があるため困難だ』、「近年の鉄道車両の生産数は、新幹線やJR東日本の一部形式を除けば、多くても300~400両、ほとんどは100両程度と少ないため、量産効果が小さい。特に一部列車のみ日比谷線に乗り入れる東武鉄道は、必要な編成数がそれほど多くないため、独自設計の車両を製造すると高くつく。そこで東京メトロと一括して発注することで、性能や操作性を統一するとともにコストダウンを狙った」、なるほど。
・『両社の独自性と効率化のバランスを見ながら共通化対象部品を拡大 今回の発表を受け、国鉄時代に全国に導入された「103系」や「205系」のように車両自体を共通化する方向に進むのでは、という反応も見られる。しかし、ホームドアの整備が進む現代では、車両と設備の整合が必要であり、都市部の車両をJR東日本は4ドア、JR西日本は3ドアに統一しているため、完全な共通化は不可能だ。そこでまずは装置・部品の共通化から検討に着手する。 電車には電機部品(パンタグラフ、制御装置、モーター、補助電源装置、バッテリーなど)、空気圧システム(コンプレッサー、ブレーキ装置、戸閉め装置)、空調、案内装置などさまざまな装置・部品が設置されている。これらは車両メーカーが製造する部品もあれば、東芝や東洋電機製造、三菱電機のように、主要電気装置や車両機器を手掛ける電機メーカーもある。 大掛かりなシステムは各社がサプライヤーとともに一貫して設計・製造している。安定調達や競争原理を考慮すれば、無理な統一はかえって非効率、コスト増にもなりかねない。ただ部品によっては事業者ごとのニーズに応じて、似たようなものを多品種少量生産している。 これらはサプライヤーにとって儲かる仕事ではなく、今後は発注数の減少が予想されるため、業界全体の効率化を図り、限られた人員や設備を各社の得意な領域に集中したい。そこでモーター、台車のオイルダンパー、パンタグラフ、行先表示器など、可能な範囲で装置・部品の共通化に着手し、各社の独自性と効率化のバランスを見ながら共通化対象部品を拡大するというのが今回の発表だ』、「今後は発注数の減少が予想されるため、業界全体の効率化を図り、限られた人員や設備を各社の得意な領域に集中したい。そこでモーター、台車のオイルダンパー、パンタグラフ、行先表示器など、可能な範囲で装置・部品の共通化に着手し、各社の独自性と効率化のバランスを見ながら共通化対象部品を拡大するというのが今回の発表だ」、なるほど。
・『今回の共通化検討が形になるのは5~10年後か 具体的には、まずJR東日本とJR西日本が共通化の方向性など土台作りを進め、続いて他の鉄道事業者や車両メーカー、サプライヤーと意見交換をして具体的な内容を詰める。そして共通化部品調達の仕組みを構築した上で、実際の車両に展開する。 現行車両の部品の交換は現実的ではないため、共通化を取り入れた設計は今後の新型車両から導入する。つまり、今回の検討が形になるのは5年後、10年後レベルの話になる。QRコード乗車券を8事業者共同で進めるように、今後の検討で、大手私鉄が参加してさらに大きな取り組みになる可能性もある。 車両設計を完全に共通化するのは困難だが、プレスリリースには「各鉄道事業者の独自の使用となるものは今後検討」として、ドア位置や枚数、車体幅、長さ、前面形状などが挙げられている。「sustina」は車両ごとに車体構造のカスタマイズが可能であり、前述のように、すでに導入した私鉄もある。 近年JR西日本が導入した「225系」「227系」「321系」「323系」は、川崎車両と近畿車輛が担当している。JR東日本は装置・部品以上の検討は全く白紙というが、将来的にJR西日本が「sustina」を採用することもあり得るかもしれない(逆にJR東日本が車両調達先をグループ以外に変更するとは考えにくい)。 いずれにせよ、人口減少が進めば鉄道事業は縮小していく。事業が縮小すれば鉄道車両も削減され、新造車両も減少する。海外進出を進める車両メーカーもあるが、サプライヤーの多くは国内需要が中心だ。事業者のみ、メーカーのみの課題ではなく、将来にわたって鉄道システムを機能させるための検討が、今後ますます本格化しそうだ』、「現行車両の部品の交換は現実的ではないため、共通化を取り入れた設計は今後の新型車両から導入する。つまり、今回の検討が形になるのは5年後、10年後レベルの話になる。QRコード乗車券を8事業者共同で進めるように、今後の検討で、大手私鉄が参加してさらに大きな取り組みになる可能性もある・・・人口減少が進めば鉄道事業は縮小していく。事業が縮小すれば鉄道車両も削減され、新造車両も減少する。海外進出を進める車両メーカーもあるが、サプライヤーの多くは国内需要が中心だ。事業者のみ、メーカーのみの課題ではなく、将来にわたって鉄道システムを機能させるための検討が、今後ますます本格化しそうだ」、設計の共通化などによる効率化が、今後進展するのは、楽しみだ。
タグ:鉄道 橋爪 智之氏による「豪雪で露呈、オーストリア「看板特急」の落とし穴 ドア1カ所だけ故障でも「編成丸ごと」工場送り」 「1は動く状態に完全復元され、信号などの保安装置も現在の最新システムに換装し、イベント時に本線上を走行させることが可能な車両だ。2は、電気装置などはすべて稼働状態となっていて、パンタグラフを上げて電気を通せば動かすことができるが、保安装置が現代の基準に合致しないため、構内など閉鎖された場所でのデモ走行に限られる。日本で言えば「碓氷峠鉄道文化むら」(群馬県)に保存されているEF63形電気機関車のようなものだ。3は文字通り、動力や制御装置が稼働できない状態で、博物館などで保存・展示させるための車両だ」、なるほ 枝久保達也氏による「JR東・西はなぜ車両の「脱オーダーメイド」を検討するのか?装置・部品の「共通化」構想の狙いとは」 橋爪 智之氏による「「芸術の国」イタリアが進める鉄道保存の本気度 400両超保有の「財団」、自前の工場で徹底整備」 「固定編成の列車はどこかに不具合が発生した場合、編成単位での工場入りが必要となる。日本と異なり不具合の発生確率が高いヨーロッパでは、故障のたびに運休が発生しては、それこそ運用が回らなくなってしまう。 ある意味では、柔軟性という面において利点のある固定されていない編成のほうが、ヨーロッパの列車運用には合っているのかもしれない」、その通りだ。 「レイルジェットは、従来の客車特急列車インターシティの上位に位置する列車として2008年に誕生。客車ではあるが1両ごとに切り離しはできず、完全に固定された7両の編成を機関車が牽引・推進するもので、客車列車というよりは電車に近い。いわゆる高速列車ではないものの、最高時速は230kmに達し、洗練された内外装デザインも含め、従来型客車の旧態依然としたイメージを打ち破る車両となった。 2016年までの間に60本が製造され、チェコ鉄道にも同型車両が7本納入された。 (その13)(豪雪で露呈 オーストリア「看板特急」の落とし穴 ドア1カ所だけ故障でも「編成丸ごと」工場送り、「芸術の国」イタリアが進める鉄道保存の本気度 400両超保有の「財団」 自前の工場で徹底整備、JR東・西はなぜ車両の「脱オーダーメイド」を検討するのか?装置・部品の「共通化」構想の狙いとは) 「固定編成のレイルジェットは、故障した1両だけを切り離すということができない。ドアやトイレといった部分的な故障でも、修理するためには7両編成丸ごと工場へ入場させなければならない。 日本的に考えると、客用ドアの故障は大きなトラブルである。不具合が発生すれば工場へ即入場となるだろう。だが、今回はただでさえ故障が相次いで工場が逼迫している状況で、こう言っては何だが「たかがドア1カ所」のために編成を丸ごと工場入りさせて列車を運休することなどできない。乗客には多少の不便をかけることにはなるが、運休することを考えれば 日本では「動態保存」は極めて少ないが、イタリアではかなり多いようだ。 走らせたほうがまだマシなため、故障した状態のまま営業に就かせるケースが相次ぐことになる」、これは大変だ。 「チョッパ制御以降の車両は、制御装置に半導体を用いていることから、故障してしまえば部品の交換以外に修理の方法がない。ところが半導体は日進月歩で進化を続けており、古くなった製品はすぐに生産中止となることから、現役の車両ですら、まだ動く車両を廃車にして、予備部品の確保(共食い)を行っている車種もある」、確かに「半導体」導入以降は「予備部品の確保(共食い)」が必要になるようだ。 東洋経済オンライン 事業が縮小すれば鉄道車両も削減され、新造車両も減少する。海外進出を進める車両メーカーもあるが、サプライヤーの多くは国内需要が中心だ。事業者のみ、メーカーのみの課題ではなく、将来にわたって鉄道システムを機能させるための検討が、今後ますます本格化しそうだ」、設計の共通化などによる効率化が、今後進展するのは、楽しみだ。 「修復技術にも定評があるイタリアは、産業遺産である鉄道についても同様の価値を見出し、これらを観光資源として再生するという取り組みを、国を挙げて行っている」、「イタリア」が「修復技術にも定評がある」、「産業遺産である鉄道についても同様の価値を見出し、これらを観光資源として再生するという取り組みを、国を挙げて行っている」、注目すべき国の1つだ。 現在は、ウィーン―ザルツブルク間などの主要幹線において、新幹線で言うところの「のぞみ」や「こだま」のような、速達タイプ(RJX)と各駅停車タイプ(RJ)が設定されるなど、オーストリア国内における都市間輸送の大半をこのレイルジェットが担う形」、なるほど。 「近年の鉄道車両の生産数は、新幹線やJR東日本の一部形式を除けば、多くても300~400両、ほとんどは100両程度と少ないため、量産効果が小さい。特に一部列車のみ日比谷線に乗り入れる東武鉄道は、必要な編成数がそれほど多くないため、独自設計の車両を製造すると高くつく。そこで東京メトロと一括して発注することで、性能や操作性を統一するとともにコストダウンを狙った」、なるほど。 「この車両は動かせる状態にあるが、信号装置が古い状態のままで、かつパンタグラフは現在本線上での使用を認められてない古いタイプ(FS Tipo42)を搭載しているため、本線走行はできないという(前述「2」に該当)」、なるほど。 「現行車両の部品の交換は現実的ではないため、共通化を取り入れた設計は今後の新型車両から導入する。つまり、今回の検討が形になるのは5年後、10年後レベルの話になる。QRコード乗車券を8事業者共同で進めるように、今後の検討で、大手私鉄が参加してさらに大きな取り組みになる可能性もある・・・人口減少が進めば鉄道事業は縮小していく。 大変だ。 ど。 ダイヤモンド・オンライン 「これらメーカーの標準設計で製造された車両は、鉄道事業者ごとの特色を出すために前面形状こそ作り分けられているものの、よく見れば、車体の側面や内装はほとんど同じであることに気づくだろう。このように衝突安全性向上や環境負荷低減に対応しつつ、コスト削減を図るのも共通化の効果だ」、なるほど。 「今後は発注数の減少が予想されるため、業界全体の効率化を図り、限られた人員や設備を各社の得意な領域に集中したい。そこでモーター、台車のオイルダンパー、パンタグラフ、行先表示器など、可能な範囲で装置・部品の共通化に着手し、各社の独自性と効率化のバランスを見ながら共通化対象部品を拡大するというのが今回の発表だ」、なるほど。