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経済学(その7)(2)(内田舞+浜田宏一『うつを生きる 精神科医と患者の対話』(文春新書)より2題:精神疾患も国民経済も正しい治療法はすぐには見つからない、人生で大きな災厄に見舞われたときのレジリエンスとは?) [経済政治動向]

昨日に続いて、経済学(その7)(2)(内田舞+浜田宏一『うつを生きる 精神科医と患者の対話』(文春新書)より2題:精神疾患も国民経済も正しい治療法はすぐには見つからない、人生で大きな災厄に見舞われたときのレジリエンスとは?)を取上げよう。

先ずは、本年7月31日付け文春オンライン「内田舞+浜田宏一『うつを生きる 精神科医と患者の対話』(文春新書)より 精神疾患も国民経済も正しい治療法はすぐには見つからない。「精神医学と経済政策が似ている」ワケ」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/72390
・『アベノミクスのブレーンとして知られる経済学者の浜田宏一氏。その活躍の裏側で長らく躁うつ病に苦しんできた。さらに回復の途上、実の息子を自死で亡くす。人生とは何か? ともにアメリカで活躍するハーバード大学医学部准教授で小児精神科医の内田舞氏を聞き手に、その波乱に満ちた半生を語る。7月19日に発売になった『うつを生きる 精神科医と患者の対話』(文春新書)から、精神医学と経済学の相似性について語られた箇所から一部抜粋してお届けします。(全4回の3回目/最初から読む)』、興味深そうだ。
・『大うつ病と大恐慌――精神医学と経済学は似ている  浜田 イェールの初診の医師から「大うつ病(major depression)ですね」と笑顔なしに診断を伝えられたとき、僕は「経済のほうにも大恐慌(great depression)というのがあります」と答えたのですが、経済学と精神医学にはいろんな意味で似たことがあるように思います。 内田 major depressionとgreat depression! 言葉の面白さに吹き出してしまいました。その笑わない先生もさすがにここは笑ってほしかったですね(笑)。浜田 僕が大学時代に、東大管弦楽団の指揮者で東邦大の薬理学教授であり、宮城道雄賞の受賞者でもあった伊藤隆太先生に作曲を習っていました。その先生が言うには、医学と経済学は「患者(国民経済)の状態について本当はよくわからない時が多いのが似ているのではないか」と。しかし、「この症状がたいしたことはないか、深刻になりそうかは大体の勘で判断はつく」「どの専門医につなげばいいか」ということはわかる、けれども、「この病はAで」とか「Bをすれば治る」などとは必ずしもわかるわけではないというわけです。 とりわけ精神医学の場合はそうだと言えそうですね。いままで体験しなかった形のコロナ禍などを体験する場合には、教科書にも書いていないわけですので、経済政策も完全にこの政策は効果があるとは分からない。そこで試行錯誤で政策も対応していくわけです。経済学でもわからないことだらけなのです。だから研究が楽しみともいえます』、「その先生が言うには、医学と経済学は「患者(国民経済)の状態について本当はよくわからない時が多いのが似ているのではないか」と。しかし、「この症状がたいしたことはないか、深刻になりそうかは大体の勘で判断はつく」「どの専門医につなげばいいか」ということはわかる、けれども、「この病はAで」とか「Bをすれば治る」などとは必ずしもわかるわけではないというわけです。 とりわけ精神医学の場合はそうだと言えそうですね」、なるほど。
・『なぜ経済政策は難しい? アメリカがインフレーションにあえぐ理由  浜田 例えばコロナ禍に対応して人が集まれなくなり、学校も閉鎖になって母親も勤めに出られなくなって勤労者家庭は苦しくなった、そこでバイデン大統領が財政を大盤振る舞いしてそれを救ったのは正しかったと思います。ところがウクライナにロシアが攻め込んで、世界エネルギ―価格が上がったことも手伝って、アメリカはインフレーションになった。 インフレの物価上昇率は収まっていますが、選挙民は、物価の上昇率でなく、よき昔に比べていまの価格がより高いことを気にしている。これがバイデンの次の大統領選挙にも響きそうになった。インフレの要因も絡み合って複雑なので、前にインフレと同じメカニズムで起きているとは限らない。インフレの症状に対して、これをやってみようかあれをやってみようかとさまざまに経済政策を試行錯誤しているわけです。 したがって、どういう政策対応がいいのかも、正解というもの初めからははよくわからない。困っている人にお金を配ったり、財政支出をしたり金融を緩めたりして人助けはするが、インフレが進みそうになれば金融を引き締めたりして対応していくのです。もちろん景気の悪い時に昔の日銀のように金融を引き締め円高にしようとする場合、あるいは震災の時に復興が重要な時の財務省のように財政均衡を優先としたりするような理不尽な政策は経済学の基本原理に反するので学者がとがめるべきなのですが。基本原理については、いまの経済学で素人の人よりは学者のほうがわかっているのはもちろんです』、「景気の悪い時に昔の日銀のように金融を引き締め円高にしようとする場合、あるいは震災の時に復興が重要な時の財務省のように財政均衡を優先としたりするような理不尽な政策は経済学の基本原理に反するので学者がとがめるべきなのですが。基本原理については、いまの経済学で素人の人よりは学者のほうがわかっているのはもちろんです」、実際には日銀や財務省の「理不尽な政策」をとがめた「学者」は多くはなかった。
・『パンデミックと歴史的な日本の円安  浜田 目の前の新しい事象、あるいは新しい政策問題、起きたばかりの災害や感染症などが引き起こす事態については新しいデータを少しずつ学んでいくとともに、そのメカニズムを解明できる経済学をきちんと用意していかねばなりません。このように、昔のモデルでは目の前の新しい状況には対応できないこともあります、しかし細かいモデルの分析とともに、あるいはそれよりもむしろ、経済事象の基本を見据える考察が、我々を救ってくれます。 例えば何年か前に、舞さんのお母さんがアメリカに行かれた際に手をケガされて、緊急で手術をされ大変だったそうですね。手術に何十万もかかったと聞きました。 内田 もう大変でした。ただ転んで手首を骨折しただけなのに、必要な治療に総額でかかった費用は何百万円相当でしたね。クレジットカード付帯の海外旅行保険でカバーされ、自費ではなかったのでよかったのですが、日本とは比べ物にならない高い医療費に一家でショックを受けました。 浜田 それは大変でしたね。こういう個別の例を見ると、当事者にとっては極端な円安の弊害が明らかです。しかし、25年前から現在までの日本経済の歴史を見ると、日本経済は必要以上の円安のためにデフレで苦しんできたのです。必要以上の円高の下では日本物価が例えば米国のそれより高いわけですので、日本で造ったものが海外に売れないわけです。そうして、円高は日銀が金融緩和すれば止めることができたのに、それを日銀がしなかったために日本は20年ものデフレ景気沈滞が続いたというのがわたくしの(おそらく正しい)意見です。 安倍晋三首相の第二次政権(2012―2020)の功績は、とくに日銀総裁に黒田東彦氏を任命して、それまでの円高にあえぐ日本経済を、金融緩和、円安の方針で救ったのです。私も安倍首相の内閣官房参与として、その一翼に参加しました。参加できるまでに、うつが回復していたのを感謝したいと思います。参与として政策に関与したのもうつの一層の回復に役立ったと思えますが、それは後で述べることにします。 繰り返しになりますが、外からは医者は確実に病をどう治せるかを知っているかのように思えますがそうでもないらしい。経済政策も同じで、わからないことがかなり多い。それでも政策当局は精一杯経済を操作していくしかない。完全な治療法はわからなくても、患者が危機に陥らないように手当てをしていかねばならないのに似ています。 経済政策において、時々僕は意見を変えるので評判が悪いこともあります。金融政策を緩めようと言うと前は引き締めしようと言っていたではないかと驚かれたりする。でも状況が変わっている時には対応を変えなければいけないのです。ケインズの言葉に、「状況が変わっているのに同じことを言う人はバカだ」というのがあると言われています。 2008年から2009年にかけてのリーマン危機の下で各国は無価値に近くなった不動産抵当証券を買いまくったわけです。日本には抵当証券の危機はなかったので金融緩和粗品方。そのため強い円高が生じました。そこでアベノミクスで黒田日銀総裁の異次元の金融緩和を行い、円高を阻止しました。これが安倍第二次内閣の特にその前半にアベノミクスが顕著に日本の雇用増加に働いた理由です』、「必要以上の円高の下では日本物価が例えば米国のそれより高いわけですので、日本で造ったものが海外に売れないわけです。そうして、円高は日銀が金融緩和すれば止めることができたのに、それを日銀がしなかったために日本は20年ものデフレ景気沈滞が続いたというのがわたくしの(おそらく正しい)意見です。 安倍晋三首相の第二次政権(2012―2020)の功績は、とくに日銀総裁に黒田東彦氏を任命して、それまでの円高にあえぐ日本経済を、金融緩和、円安の方針で救ったのです。私も安倍首相の内閣官房参与として、その一翼に参加しました・・・そのため強い円高が生じました。そこでアベノミクスで黒田日銀総裁の異次元の金融緩和を行い、円高を阻止しました。これが安倍第二次内閣の特にその前半にアベノミクスが顕著に日本の雇用増加に働いた理由です」、なるほど。
・『新型コロナがもたらした世界経済への影響  浜田 ところが、2020年になると、世界は新型コロナに襲われました。人に会ったり、接触したりすることを避けざるを得なくなりました。そのため大きな生産減、雇用減が各国で起こったわけです。それを救うために、バイデン大統領は、これを大規模の財政政策で解消しようとしました。それは正しかったと思います。ただその結果、アメリカは10パーセントに届くような消費者物価のインフレに見舞われた。そこでアメリカの連邦銀行は、金融を引き締め、金利を上げざるを得なくなった。そして今度はリーマン危機の時と逆のようなことが起きました。日本が金利を上げることができなかったために、円安が生じてしまったのです。舞さんのお母様のエピソードの背景にはこのようなことがあるのです。 ただ植田日銀総裁は、金融を十分に緩和しなかったために雇用が伸びなかった歴史を重視しているのでしょう。円安を止めるのに必要な金融引き締めへの方向転換にはとても慎重に舵をとっています。 内田 なるほど、パンデミックを引き金に、世界経済と連動して歴史的に見ても稀な事態が起きているわけですね。世界的にコロナのような状況が起こることは誰も予想できなかったものの、その場その場で起きたことに反応していかなければならないということですよね。どんな介入においてもリスクとベネフィットがあり、ベネフィットがある中でもリスクが見え隠れした次点で、そのリスクに対応する準備をしなければならない。その際、完全な治療法がなくても、危機に陥らないための対処療法や時間稼ぎも大切という点も納得です。 ただ、パンデミックが終わっても中東やウクライナでの戦争が起こり、またアメリカの利下げも起こりそうにない。素人の感想で申し訳ないのですが、こういった世界的状況のなかで海外の動きによる円安の解消が期待できないのであれば、なおさら日本の内から変わるべき時期なのではないかと思いました。もちろん金融引き締めという直接的な対応も必要であるものの、同時に日本経済そのものが成長して円の価値を上げる必要もあると。 日本の経済成長を妨げる要因として少子化や多様性の欠如などが頻繁にあげられますが、そう考えると、日本の古典的な労働観やジェンダーバイアス、さらに家庭を持ちながら仕事をすることのハードルの高さといった現状の是正こそが、長期的に経済効果をもたらすのかもしれないと考えてしまいます。今こそ多くの人が健康や家庭を犠牲にせずに自分の能力が発揮できるような社会に近づいてほしいですね』、「日本の経済成長を妨げる要因として少子化や多様性の欠如などが頻繁にあげられますが、そう考えると、日本の古典的な労働観やジェンダーバイアス、さらに家庭を持ちながら仕事をすることのハードルの高さといった現状の是正こそが、長期的に経済効果をもたらすのかもしれないと考えてしまいます。今こそ多くの人が健康や家庭を犠牲にせずに自分の能力が発揮できるような社会に近づいてほしいですね」、その通りだ。
・『精神科医と経済学者の試行錯誤のプロセス  内田 ところで、精神医学と経済学は、治療の過程においてその場にある情報を合わせた上での一番いい判断をしながらも、試行錯誤(trial and error)を繰り返すというところが似ていると、以前浜田さんは書かれていましたね。例えば、私が研究をしているテーマの一つに、躁うつ病の発症を予測できるかというものがあります。 先ほども申し上げた通り、うつ状態の患者さんがいらっしゃった場合は、大うつ病なのか躁うつ病なのかがわからないことも多いのです。実は躁うつ病であるにもかかわらず、うつ状態だったので抗うつ薬を使ってみたら、気分が上がりすぎて軽躁状態になってしまい、普段よりもイライラしたり、衝動的なことをしたりしてしまったということは、臨床現場では頻繁にあるシナリオです。そこでの誤診がなるべく減るように、臨床所見、そして脳の構造や機能の違いから、様々な研究手法を使って、うつ病と躁うつ病を見分けるヒントを探しているのです。少しずつですが、すでに実際の臨床現場で使われているヒントも見つかっています。 こういった研究の進歩はあるのですが、それでもうつ状態から躁状態への予期せぬ転換は避けられないものです。だから試行錯誤をするしかない。もし、うつ病の治療のために抗うつ薬を飲んでいて躁状態が出てきたのであれば、抗うつ剤をやめてみましょう、そして躁状態が続くようであれば気分安定剤を試してみましょう、といったように対応を変えなければならない。その状況状況に応じて見えてくる次の段階があるので、そこでまた、その場にあった対応が必要になってくるんですよね。 ちなみに浜田さんの手記には「精神医学とは経済学のようなものだ。断定的な関係がない」という浜田さんの発言に、同僚の方が「でも精神医学は患者を治すことができる。経済学がどうかはわからないけれど」と答えられたというエピソードがありました。これも大変印象的でした。 浜田さんが試行錯誤のプロセスを経て、今もリチウムの服用を続けていらっしゃること。その間、きっと様々な感情の変化と付き合いながらも、しかし当時のような希死念慮や深いうつ状態はその後は経験されずに人生を送られてきたこと。その事実は「精神医学は患者を治すことができる」という言葉が確かに真実であると示してくれるもので、私も医師として勇気づけられる言葉でした。希望をいただきました。 浜田 本書の対談を始める際は、話すなかで悲しいことを思い出してうつまでが再発してしまうのではと、心配でありました。幸い、対話が自分の精神構造を自分で探している過程のように思えてきて、自分の精神状態に対しての認識が深まったように感じています。精神科医の大きな役割も、患者に自分を発見させるところにあると思います。 (内田舞氏の略歴はリンク先参照) (浜田宏一氏の略歴はリンク先参照))』、「同僚の方が「でも精神医学は患者を治すことができる。経済学がどうかはわからないけれど」と答えられたというエピソードがありました。これも大変印象的でした。 浜田さんが試行錯誤のプロセスを経て、今もリチウムの服用を続けていらっしゃること。その間、きっと様々な感情の変化と付き合いながらも、しかし当時のような希死念慮や深いうつ状態はその後は経験されずに人生を送られてきたこと。その事実は「精神医学は患者を治すことができる」という言葉が確かに真実であると示してくれるもので、私も医師として勇気づけられる言葉でした。希望をいただきました」、なるほど。

次に、8月28日付け文春オンライン「郡司 珠子郡司 珠子:アベノミクスのブレーン・浜田宏一氏が経験した双極性障害、息子の自死。人生で大きな災厄に見舞われたときのレジリエンスとは? 内田舞×浜田宏一『うつを生きる 精神科医と患者の対話』(文春新書)を読む」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/72950
・『アベノミクスのブレーンで経済学者の浜田宏一氏が自身の躁うつ病体験、息子の自死について、浜田氏とつながりのある小児精神科医の内田舞氏と語り合った『うつを生きる 精神科医と患者の対話』(文春新書)。渡米前の浜田家の向かいの家に育ち、浜田宏一氏の子どもたちと幼少時の時間を共にした編集者が、夏目漱石の時代から変わらぬその心の葛藤を、そして人生の中で訪れる大きな災厄に見舞われたときのレジリエンスを本書の中に読む。必読の書評です』、興味深そうだ。
・『渡米前の浜田家とのつながり  浜田宏一はアベノミクスのブレーンとして、経済政策を担った経済学者である。 本書は、宏一の長いうつ闘病をひもとく対談集であると同時に、未来を嘱望された学者が息子を亡くした苦悩の記録でもある。 88歳になる宏一の対談相手に、ハーバード大学医学部の現役精神科医である内田舞が選ばれたのは、単にその職業によるものではない。舞の母・千代子は、娘と同じく精神科医。アメリカでうつを発症した宏一が頼ったのが、同じイェール大学にいた千代子だった。アメリカ人の主治医には語りきれない心の機微を、宏一は母語で打ち明けることができた。 筆者は、渡米前の浜田家の向かいの家に育った。宏一の子どもたちと幼稚園・小学校時代を共にし、海風の吹く庭で木に登り、空き地を走り回った。野生児たちを見守る宏一は、含羞をたたえた品のよい父親だった。 浜田家には、欧米の学問生活のにおいがあった。宏一は、東大経済学部からマサチューセッツ工科大学を経て、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの客員研究員となり、「ゲーム理論を国際間の経済政策の駆け引きに応用する」ことを研究主題としていた。 高校生になるころ、子どもたちもまた欧米へと羽ばたいていった。そこに日本と変わらぬ暮らしがあることを、筆者は疑いもしなかった。だが現実は、おそろしいほど違った。 終身在職兼付きでイェール大学に招聘され、英語で博士課程を教える立場となった宏一は、講義恐怖症から重度のうつを発症。のちに離婚を経験した。 そして、26歳の息子を喪った。同じアメリカで。おそらくは同じ病気で』、「終身在職兼付きでイェール大学に招聘され、英語で博士課程を教える立場となった宏一は、講義恐怖症から重度のうつを発症」、「英語で博士課程を教える」のが「重度のうつを発症」するほど、ストレスがあるもののようだ。
・『精神科医としての注意深い聞き取り、学者らしい入念な語り  1985年、当時の日本経済には破竹の勢いがあった。 アメリカでその日本経済を教えるのだという気負いが、宏一のうつを悪化させた。母語でない言語で学問を教え、高い水準で存在を承認してもらうことに伴う苦しみは、想像を絶するものだった。「頭が破裂しそう」になり、「間違った道を選んだ」という思いが暴走し、希死念慮に囚われ入院を余儀なくされた。 「自分はこの場にふさわしくない」「ダメな人間だ」と思い込んだ過程を、舞は精神科医として注意深く聞き取り、宏一は学者らしい入念さで自分の心に迫っている』、「アメリカでその日本経済を教えるのだという気負いが、宏一のうつを悪化させた。母語でない言語で学問を教え、高い水準で存在を承認してもらうことに伴う苦しみは、想像を絶するものだった。「頭が破裂しそう」になり、「間違った道を選んだ」という思いが暴走し、希死念慮に囚われ入院を余儀なくされた。 「自分はこの場にふさわしくない」「ダメな人間だ」と思い込んだ過程を、舞は精神科医として注意深く聞き取り、宏一は学者らしい入念さで自分の心に迫っている」、なるほど。
・『夏目漱石の時代からの変わらぬ葛藤  自分の問題として能動的に取り組みなさい」というアメリカ医療のスタンスに驚きながらも、「大うつ病」から「双極性Ⅱ型障害」と診断名が変わり、自分に合う薬と出会った宏一は、症状がなくなる経験をする。 医療者としての舞は、宏一の症状のなかに「インポスター症候群」を見る。自分の力で達成したことを自分で評価できなかったり、他人が思う能力に自分が値しないと過小評価したりする症状である。さらに舞は、投薬や通院を「負け」「ずるい」と考える傾向がいまだに根強いことを指摘、「内的評価」を育てることの重要性を説く。  学問の高みは、生半可な努力では通用しない世界だ。スポーツでいえばオリンピック代表。日々の鍛錬の果てに、ようやく場に立つことが許される。その世界を極めながらも、異国にあってマイノリティとならざるを得ぬ、息苦しさ。夏目漱石の時代から変わらぬ葛藤が、そこにある。  一度入り込んだ恐怖、襲いかかる妄念をふり払うのは、容易なことではない。 退院後も治療は続き、宏一は一部の講義を担当できなくなった。そのころ息子・広太郎は3000マイル離れた西海岸で、ガラス作家となっていた。いつしか父と同じように希死念慮に取りつかれるようになり、酷く苦しんでいた息子に、宏一は様々な理由から会いに行くことができなかった。死の一報を受けた日の、身を切るような痛みを、宏一は鮮明に覚えている。 「息子を亡くした苦しみ、そして自分にはうつ体験がありながらそれを防げなかったという後悔から解放されることは一生ない」  家族を亡くした人と気持ちを共有させてほしいという思いから、宏一は辛い経験を詳細に語る。それに対し舞は、精神疾患には遺伝要因が大きくかかわるとしつつも、遺伝子の発現には疾患リスクだけでなく、その人をその人たらしめている様々な美点も含むのだと語る。やんちゃだった広太郎の輝くような笑みは、変わらず周囲の記憶に刻まれている』、「息子を亡くした苦しみ、そして自分にはうつ体験がありながらそれを防げなかったという後悔から解放されることは一生ない」、実に悲痛な体験だ。
・『経済学と精神医学の類似点  宏一の気づきは、経済学と精神医学の類似点へと向かう。 専門家が見れば、症状の深刻度合いはわかるが、病名や治療薬は必ずしも確実ではない。複雑な要因がからみあって生じた症状に対して、試行錯誤を重ね危機に陥らぬよう手当てしていく、そういった点で似かよっているのだ。 病気をきっかけとして宏一は、数理経済学・理論経済学から政策へと視座を変え、日銀の金融政策緩和を提言したことがひとつのきっかけとなって、内閣官房参与となって経済政策を先導することになる。アベノミクスの功罪、回復の過程で気づかされた学問世界の隘路については、本書後半に詳しい』、「病気をきっかけとして宏一は、数理経済学・理論経済学から政策へと視座を変え、日銀の金融政策緩和を提言したことがひとつのきっかけとなって、内閣官房参与となって経済政策を先導することになる」、「視座」変更は初めて知った。
・『大きな災厄のなかでのレジリエンス  読み通すと、光が見えてくる本だ。 宏一の業績は高く評価される。政策論議から怒りを買ったアメリカ政府高官からさえも「学問的成果を尊重する」の一言があり、それが認知療法的に有効だったという。アメリカまで駆けつけてくれた同僚もいる。他人の絶え間ない評価や手助け、そして新しい仕事が、回復の一助となっていくのだ。  宏一には、苦しい時期の彼の口述を手記としてまとめた現在の妻が、また今も各地で、地に足の着いた生活をする家族がいて、交流がある。世に知られた人が立て続けに大きな災厄に見舞われた時に、レジリエンス(弾性)ある身内の存在はどれほどの支えとなっただろうか。そのレジリエンスもまた、宏一を介して培われたものに違いない。 舞は「ラジカル・アクセプタンス」という言葉を最後に引用している。仏教の思想を基とする心理用語で、「起きたことは起きたこと」と、事実をアクセプト(受容)して前に進むことを意味する。 「また自分がどこかで役に立てるだろうと未来を信じること」 「いまどう最善の道を選ぶのか」 宏一は文字に記すことで、長い闘いの果ての精神の有り様を後世に伝えている。 その模索は深く長く、心に響く』、「宏一は文字に記すことで、長い闘いの果ての精神の有り様を後世に伝えている。 その模索は深く長く、心に響く」、貴重な資料になるだろう。
タグ:(その7)(2)(内田舞+浜田宏一『うつを生きる 精神科医と患者の対話』(文春新書)より2題:精神疾患も国民経済も正しい治療法はすぐには見つからない、人生で大きな災厄に見舞われたときのレジリエンスとは?) 経済学 文春オンライン「内田舞+浜田宏一『うつを生きる 精神科医と患者の対話』(文春新書)より 精神疾患も国民経済も正しい治療法はすぐには見つからない。「精神医学と経済政策が似ている」ワケ」 『うつを生きる 精神科医と患者の対話』(文春新書) 「その先生が言うには、医学と経済学は「患者(国民経済)の状態について本当はよくわからない時が多いのが似ているのではないか」と。しかし、「この症状がたいしたことはないか、深刻になりそうかは大体の勘で判断はつく」「どの専門医につなげばいいか」ということはわかる、けれども、「この病はAで」とか「Bをすれば治る」などとは必ずしもわかるわけではないというわけです。 とりわけ精神医学の場合はそうだと言えそうですね」、なるほど。 「景気の悪い時に昔の日銀のように金融を引き締め円高にしようとする場合、あるいは震災の時に復興が重要な時の財務省のように財政均衡を優先としたりするような理不尽な政策は経済学の基本原理に反するので学者がとがめるべきなのですが。基本原理については、いまの経済学で素人の人よりは学者のほうがわかっているのはもちろんです」、実際には日銀や財務省の「理不尽な政策」をとがめた「学者」は多くはなかった。 「必要以上の円高の下では日本物価が例えば米国のそれより高いわけですので、日本で造ったものが海外に売れないわけです。そうして、円高は日銀が金融緩和すれば止めることができたのに、それを日銀がしなかったために日本は20年ものデフレ景気沈滞が続いたというのがわたくしの(おそらく正しい)意見です。 安倍晋三首相の第二次政権(2012―2020)の功績は、とくに日銀総裁に黒田東彦氏を任命して、それまでの円高にあえぐ日本経済を、金融緩和、円安の方針で救ったのです。 私も安倍首相の内閣官房参与として、その一翼に参加しました・・・そのため強い円高が生じました。そこでアベノミクスで黒田日銀総裁の異次元の金融緩和を行い、円高を阻止しました。これが安倍第二次内閣の特にその前半にアベノミクスが顕著に日本の雇用増加に働いた理由です」、なるほど。 「日本の経済成長を妨げる要因として少子化や多様性の欠如などが頻繁にあげられますが、そう考えると、日本の古典的な労働観やジェンダーバイアス、さらに家庭を持ちながら仕事をすることのハードルの高さといった現状の是正こそが、長期的に経済効果をもたらすのかもしれないと考えてしまいます。今こそ多くの人が健康や家庭を犠牲にせずに自分の能力が発揮できるような社会に近づいてほしいですね」、その通りだ。 「同僚の方が「でも精神医学は患者を治すことができる。経済学がどうかはわからないけれど」と答えられたというエピソードがありました。これも大変印象的でした。 浜田さんが試行錯誤のプロセスを経て、今もリチウムの服用を続けていらっしゃること。その間、きっと様々な感情の変化と付き合いながらも、しかし当時のような希死念慮や深いうつ状態はその後は経験されずに人生を送られてきたこと。 その事実は「精神医学は患者を治すことができる」という言葉が確かに真実であると示してくれるもので、私も医師として勇気づけられる言葉でした。希望をいただきました」、なるほど。 文春オンライン「郡司 珠子郡司 珠子:アベノミクスのブレーン・浜田宏一氏が経験した双極性障害、息子の自死。人生で大きな災厄に見舞われたときのレジリエンスとは? 内田舞×浜田宏一『うつを生きる 精神科医と患者の対話』(文春新書)を読む」 舞の母・千代子は、娘と同じく精神科医。アメリカでうつを発症した宏一が頼ったのが、同じイェール大学にいた千代子だった。 「終身在職兼付きでイェール大学に招聘され、英語で博士課程を教える立場となった宏一は、講義恐怖症から重度のうつを発症」、「英語で博士課程を教える」のが「重度のうつを発症」するほど、ストレスがあるもののようだ。 「アメリカでその日本経済を教えるのだという気負いが、宏一のうつを悪化させた。母語でない言語で学問を教え、高い水準で存在を承認してもらうことに伴う苦しみは、想像を絶するものだった。「頭が破裂しそう」になり、「間違った道を選んだ」という思いが暴走し、希死念慮に囚われ入院を余儀なくされた。 「自分はこの場にふさわしくない」「ダメな人間だ」と思い込んだ過程を、舞は精神科医として注意深く聞き取り、宏一は学者らしい入念さで自分の心に迫っている」、なるほど。 「息子を亡くした苦しみ、そして自分にはうつ体験がありながらそれを防げなかったという後悔から解放されることは一生ない」、実に悲痛な体験だ。 「病気をきっかけとして宏一は、数理経済学・理論経済学から政策へと視座を変え、日銀の金融政策緩和を提言したことがひとつのきっかけとなって、内閣官房参与となって経済政策を先導することになる」、「視座」変更は初めて知った。 「宏一は文字に記すことで、長い闘いの果ての精神の有り様を後世に伝えている。 その模索は深く長く、心に響く」、貴重な資料になるだろう。
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経済学(その7)(内田舞+浜田宏一『うつを生きる 精神科医と患者の対話』(文春新書)より5題:なぜ、いま心の病を語るのか?、必要な助けを求めるのを躊躇してしまう日本人 状況を改善するために働きかけるアメリカ人、浜田宏一氏がいま語るアベノミクスの功罪、精神疾患も国民経済も正しい治療法はすぐには見つからない、人生で大きな災厄に見舞われたときのレジリエンスとは?) [経済政治動向]

経済学については、本年3月7日に取上げた。今日は、(その7)(内田舞+浜田宏一『うつを生きる 精神科医と患者の対話』(文春新書)より5題:なぜ、いま心の病を語るのか?、必要な助けを求めるのを躊躇してしまう日本人 状況を改善するために働きかけるアメリカ人、浜田宏一氏がいま語るアベノミクスの功罪、精神疾患も国民経済も正しい治療法はすぐには見つからない、人生で大きな災厄に見舞われたときのレジリエンスとは?)である。ただし、このうち、精神疾患も国民経済も正しい治療法はすぐには見つからない、人生で大きな災厄に見舞われたときのレジリエンスとは?の2つは明日紹介したい。

先ずは、7月19日付け文春オンライン「内田舞+浜田宏一『うつを生きる 精神科医と患者の対話』(文春新書)より:アベノミクスのブレーンとして知られる経済学者の浜田宏一氏は、長らく躁うつ病に苦しんできた。なぜ、いま心の病を語るのか?」を紹介しよう。
・『アベノミクスのブレーンとして知られる経済学者の浜田宏一氏。その活躍の裏側で長らく躁うつ病に苦しんできた。さらに回復の途上、実の息子を自死で亡くす。人生とは何か? ともにアメリカで活躍するハーバード大学医学部准教授で小児精神科医の内田舞氏を聞き手に、その波乱に満ちた半生を語る。7月19日発売の『うつを生きる 精神科医と患者の対話』(文春新書)から一部抜粋してお届けします。(全2回の1回目/続きを読む)』、「実の息子を自死で亡くす」、とは初めて知った。
・『なぜ心の病を語るのか  内田 お久しぶりです。浜田さんとは、私と同じく精神科医である私の母を通して知り合いました。私がまだ幼少時、イェール大学のあるアメリカ東部のニューヘイブンに家族で住んでいた頃からのご縁で、また研修医としてイェール大学で過ごした時期にも何度かお会いする機会がありました。 当時、浜田さんはイェール大学経済学部の教授で、ゲーム理論を国際金融の具体的な政策問題に適用して、イェール大に招かれて教えられていました。その後、安倍政権下で内閣参与として日本の経済政策に関わられることになりました。アベノミクスの推進者でいらっしゃることはみなさんご存じの通りで。 浜田 舞さんのお母さまの千代子ドクターとは友達でありながら、同時に千代子先生に精神科医としてアドバイスを仰ぎ、様々な面で助けてもらいました。イェール大学の入院生活を終えた後もうつが続き、どうしても母国語の日本語でないと本心が語れないと感じていた1987年頃に、ちょうど舞さんとご両親がニューヘイブンに越してきて、経済学部の研究員に日本人の精神科医である千代子先生を紹介してもらいました。 千代子先生は当時イェール大学の客員研究員として臨床を勉強されていたので診察を受けることはできなかったのですが、たくさんの相談に乗ってもらったのです。その後もアメリカに主治医がいるものの、少し長めに日本に帰国する機会があったときには、千代子先生に日本の精神科の主治医として診ていただいた。「うつは患者のエネルギーが回復する治りかけが最も自殺のリスクが高く、危ないから油断してはならない」ということを適切な時に言ってくださったりして、本当にお世話になりました。知人にも「私のうつを治してくれた人の一人」と紹介しています。出会った頃の舞さんはまだ小さいかわいいお子さんでした。 内田 浜田さんは社会的には成功されていると映るキャリアのその裏側で、躁うつ病で長らく大変な時期を過ごされてきたんですよね。これまであまりオープンにされてこなかったと思うのですが、今回、お話しになろうと決意されたのはどうしてでしょう。 浜田 拙著『エールの書斎から』(NTT出版)のなかに、そして友人の西部邁さんの追悼文のなかに少しだけは書きましたが、誰かのためになればと、いずれきちんと体験を語りたいと思ってきました。実は息子もうつ病で亡くしていましてね。ただ、私ひとりの闘病記というのは出版社に話をしてみてもなかなか出版はむずかしいらしい。 舞さんは私と同じくアメリカに来られて、こちらでの暮らしも長いです。いまはハーバード大学で小児うつ病センター長をされていて、臨床医でありながら、脳神経科学を通して感情を理解する研究もされている「心の病」のプロフェッショナルです。日本で教育を受け、その後アメリカに学び、暮らし、日本とアメリカの文化の両方を知っているという意味で私とも境遇が似ているところがあります。 そして昨年出版された『ソーシャルジャスティス 小児精神科医、社会を診る』(文春新書)は、そんな舞さんのアメリカの生活に根差した視点で評判になったように、日本でも積極的に発信されている。精神科医と患者の、しかし主治医と患者という関係ではない、背景に共通点のある二人の対話ならうまく伝わるところもあるのではないかなと』、「精神科医と患者の、しかし主治医と患者という関係ではない、背景に共通点のある二人の対話ならうまく伝わるところもあるのではないかなと」、なるほど。
・『経済学と精神医学は似ている  浜田 さらに、これは追々お話ししてみたいのですが、私は経済学と精神医学、より正確には経済政策と医療にはどこか似たところがあるとも思うわけです。 内田 それは面白い視点ですね。どういうところでしょう? 浜田 英語で「うつ状態」は「ディプレッション(depression)」ですが、経済学では同じ言葉の「ディプレッション(depression)」は「不況」を意味しますから。英語で「大(だい)うつ病」は「メジャー・ディプレッション(major depression)」ですが、「グレート・ディプレッション(great depression)」と言えば「大恐慌」のことですね。わたくしは初診の医者にそう言う元気がありました。 言葉遊びのように聞こえるかもしれませんが(笑)、科学的でありながら、ひとつに解決策が定まらなかったり、患者さんや経済の変化を見ながら修正を重ねるところだったり、技法が科学というよりアートに近いと感じられるところなんかが共通していると思います。それはまた後々お話しすることにしますが、舞さんを聞き手にお迎えしたら、直接の主治医ではないからこそ聞いてもらえることもありそうです。学問や日米文化の比較や社会のことまで、多岐にわたるお話ができるのではないかと。それから、心の病は遺伝も大きいでしょうが、時代や社会など環境とも無縁ではないので、そのあたりも伺いたい。 内田 ありがとうございます。浜田さんのように経済学の研究実績もあって、日本の経済政策にも携わられた方が、ご自身の躁うつの闘病について、また、そこからの回復を語ってくださるのは本当に貴重だと思いますし、今回の対話の機会に感謝しています』、確かに類似点があるのは興味深い。
・『メンタルヘルスの現在地  内田 アメリカでは日常生活のなかでセラピーを受ける人も多いですし、メンタルヘルスで苦しんだ経験や精神科の受診について友達同士で語り合うのもごくごく普通のことになってきました。もちろん今でも偏見がまったくないわけではないにせよ、浜田さんがアメリカで精神科に最初かかられた1980年代半ば頃はおそらく今のようにオープンに語られることはなかったでしょうし、日本においてはなおそうだったのではないでしょうか。 私は小児精神科医で、日ごろは子どもたちのメンタルヘルスの問題を扱っていますが、日本では小児精神科の確立が発達途上であることからも、まだまだ心の不調で医療にかかるのはハードルが高く、正しい知識も十分に伝わっていないのではないかと感じています。 浜田さんがどのように躁うつ病とともに生きてこられたのか、アメリカでどのような治療を受けて何がきっかけで回復に向かわれたのか、そして息子さんをご自分も苦しまれたうつで亡くされるというつらい経験からどう立ち直られたのか。息子さんを亡くされるという体験、また、ご自身の闘病について浜田さんがつづられた手記を私は今回読ませていただきましたが、その手記の内容も交えてお話を伺いながら、心の不調とともに生きることのヒントも探っていけたらと思います。 浜田 手記というのは、いまの私の妻であるキャロリンが私の口述をもとにして2000年頃にまとめてくれたものです。前半の2章は息子の広太郎のこと、後半の2章は入院中のことを含め自分の闘病について語ったものです。自分のこととはいえ今では忘れかけていることもあり、本書が生まれたのはこの手記があったからとも言えます。私のうつ症状の対処に苦労しながらも、こうやって記録に残してくれたことを、妻のキャロリンに感謝します』、「私のうつ症状の対処に苦労しながらも、こうやって記録に残してくれたことを、妻のキャロリンに感謝します」、なるほど。
・『闘病を回顧することの意義  浜田 ところで、舞さんもご存じの私の主治医のボルマー先生に、今回の舞さんとの対話で当時のことを思い出して「またうつの症状が再発しないだろうか」と相談をしたら、「心配はないしないでよい」と言われました。舞さんにはそれどころか、「むしろ改善につながるかもしれない」と背中を押していただきました。 内田 もしかしたら途中でつらかった時期のことを思い出されて感情的になったり悲しくなったりされることもあるかもしれませんが、そのときはもちろん私もサポートしますし、休憩しながらお話しできればと思います。そして、今は以前と比べてもうだいぶうつの状態も安定されていて、ボルマー先生も近くにいらっしゃるからきっと大丈夫だと思います。 さらに、ご闘病を回顧する機会というのはとても大事なものだと思います。当時は気づかなかった気分の悪化のきっかけや回復に役立ったことが具体的に思い起こされたりすることもあるでしょう。また、自分自身がどのようなことに価値を感じて生きてきたのかがはっきりすることもあります。そうした振り返りの過程を経ることで、今まで肩に背負ってきたトラウマや後悔、あるいは気づかずに自分自身に向けていた偏見などから解放されることもあります。この対話がそんなきっかけになってくだされば嬉しく思います。 浜田 私も88才になりますが、人から見れば学者としても政策アドバイザーとしても、大変恵まれた人生に生まれたと思われるかもしれませんね。他人に対してヒントになるかどうかわかりませんが、この本が少しでも人々のうつのつらさを和らげ、あるいは人生に思い悩んでみずから命を絶つ人を減らすことにつながれば嬉しいです。 内田 きっと多くの人を勇気づけてくれる本になることと思います。無理せずゆっくりまいりましょう。 (内田舞氏の略歴はリンク先参照) (浜田宏一氏の略歴はリンク先参照)』、「ご闘病を回顧する機会というのはとても大事なものだと思います。当時は気づかなかった気分の悪化のきっかけや回復に役立ったことが具体的に思い起こされたりすることもあるでしょう。また、自分自身がどのようなことに価値を感じて生きてきたのかがはっきりすることもあります。そうした振り返りの過程を経ることで、今まで肩に背負ってきたトラウマや後悔、あるいは気づかずに自分自身に向けていた偏見などから解放されることもあります」、なるほど。

次に、7月19日付け文春オンライン「内田舞+浜田宏一『うつを生きる 精神科医と患者の対話』(文春新書)より:必要な助けを求めるのを躊躇してしまう日本人、状況を改善するために働きかけるアメリカ人ーー病のときに医療とどう向き合うか?」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/72071
・・・・「重いうつ病」という診断  浜田 このような日常を送るにつれうつ気分が進み、「これでは大変」だと思って、イェールの職員のための診療所に行って初診をしてもらいましたら、「重いうつ病」だと診断されました。それまで、うつ的な症状を実は経験しながらも、自分は精神科医とは全く無関係と思っていた私には驚きでした。医者はまったく笑わずこちらを見ていて、まるで患者たちの全手の重荷を背負っているような風情でした。こちらがうつだから冷たく見えただけかもしれませんが。 内田 いただいた手記には、最初は全然笑わないから印象はネガティブだったけれども、でも実際に初診が終わってからは、うつの症状が少し軽減したと書いてありましたね。 浜田 そのように言っていましたか。その医師が今度はある街の精神科医を紹介してくれました。僕が“ケミスト(chemist)”と呼びたくなるような薬一辺倒の人でした。なぜケミストと呼ぶかというと、彼とはわたくしの精神状態を議論した覚えはほとんどなく、私が高コレステロール症といったとたんに抗コレステロール薬の話に花が咲いたことがあったからです。とはいっても彼が入院を勧めてくれたので実は恩人の一人なのですが。パメラーを処方されました。 内田 三環系というひと昔前によく使われていた抗うつ剤ですね。 浜田 でもなかなか良くならなかった。当時、薬を飲みながらも講義はしていたものの、眠気は絶えず襲ってくるし、頭に靄がかかったような感じで全然自信がなくなって、博士課程の院生の授業が教えられなくなったんですね。修士課程の授業には集中できたけれど、博士課程を教えるのはどんどん難しくなっていった。 内田 うつの症状で頭が働かなかったせいもあると思います。また、近年使われている抗うつ薬の副作用はずいぶん減ってきましたが、当時使われていた三環系の薬は頭をぼんやりさせてしまう副作用もあったので、それで頭に靄がかかったように感じられたのかもしれないですね。 浜田 初診の診療所の医者は、「ロラゼパムというマイナー・トランキライザーを処方しますか」と言っていましたが、僕はそのとき「要らない」と言ったんですね。これは大失敗だったのかもしれない。そして彼に紹介された「ケミスト」の先生は、マイナー・トランキライザーは抗うつではなく、むしろ昂うつ剤で、結局はうつを悪化させてしまうので飲まないように、という方針でした。アルコールのような依存性があるからと。すると心の休まる時間が一日中ないのです』、医者によって、処方薬の考え方もずいぶん違うようだ。
・『抗うつ薬に依存性はあるのか  内田 ロラゼパムはベンゾジアゼピンというカテゴリーに入る薬で、ひと昔前は「マイナー・トランキライザー」、直訳すると「少し鎮静化させる薬」と呼ばれておりました。  このカテゴリーの薬は、その場で高まっている感情、特に怒りや不安を下げてくれる薬で、どうしたらいいかわからないと感じるパニック状態などには最もよく効くものです。高所恐怖症の方が飛行機に乗らなければならないとき、先端恐怖症の方が予防接種を受けるときなどに予防的に飲むこともありますね。ただ、確かに依存性があるので、効果のベネフィット(利点)と依存性のリスクのバランスを、その人、その状況によって判断する必要があります。 もちろん依存性は回避したいものですが、ここでは投薬のリスクとともに投薬をしないリスクも考えなければなりません。ついつい副作用や依存性といった投薬のリスクに目が行きがちですが、逆に投薬を避けて、どうしようもない不安に駆られる時間が続いてしまうのもとても苦しいことです。そういった状況では、不安を取り除いてあげることのベネフィットが上回ることも多いのです。 そして、薬というのは処方の仕方次第でリスクを低くおさえることもできます。私自身、医師としては、なるべく低いリスクで一番高いベネフィットをもたらすようなプランを常に考えようとしていますね。さらに、不安とうつは頻繁に共存して、お互いを悪化させ合うものです。高まる不安や強い不快感などをベンゾジアゼピンで取り除くことで、うつ気分が少し改善するということもあるので、マイナー・トランキライザーが必ずしも「うつを悪化させる」わけではないように思えます。 浜田 なるほど、そういう説明は初めて聞きました。 私が経験したうつ病には、「日まわり症状」といって、午前中にうつが強くなって、午後になるとつらさが和らぐサイクルがありました。これは1986年に病院に入ってからのことですが、朝になると今日こそは薬なしで我慢しようと毎日頑張ったわけです。でもうつの状況がよくならず、いよいよその薬(ロラゼパム)を医局室の窓口までもらいに行くとなった時のみじめな感じをよく覚えています』、「依存性は回避したいものですが、ここでは投薬のリスクとともに投薬をしないリスクも考えなければなりません。ついつい副作用や依存性といった投薬のリスクに目が行きがちですが、逆に投薬を避けて、どうしようもない不安に駆られる時間が続いてしまうのもとても苦しいことです。そういった状況では、不安を取り除いてあげることのベネフィットが上回ることも多いのです。 そして、薬というのは処方の仕方次第でリスクを低くおさえることもできます。私自身、医師としては、なるべく低いリスクで一番高いベネフィットをもたらすようなプランを常に考えようとしていますね。さらに、不安とうつは頻繁に共存して、お互いを悪化させ合うものです。高まる不安や強い不快感などをベンゾジアゼピンで取り除くことで、うつ気分が少し改善するということもあるので、マイナー・トランキライザーが必ずしも「うつを悪化させる」わけではないように思えます」、なるほど。
・『薬に頼ること=敗北、ズルという考え方  内田 この薬なしでは一日耐えられなかったという敗北感のような感覚だったのでしょうか。 浜田 まさに敗北感です。しかし、その薬なしでは死んでしまいたい気持ちになることもありました。 内田 そうですか。「薬を飲むこと=敗北」のように捉える見方はいまもありますし、メンタルの不調で薬に頼るのはよくないという考えはうつ病患者さんだけではなく、社会で広く共有されているところがあります。でも、私はそう感じる必要はないと思うのです。 もちろん薬ではなく、心理療法や、趣味、運動や人との交流による気分転換、環境への働きかけなどで抑うつ気分が治るのであれば、その方がいいとは思います。しかしそれらの手段をどんなに試してもよくならないうつ症状もあれば、さらにうつ気分が重症すぎて気分転換すら手につかないという状況もあります。そんなときにもし気持ちを回復させてくれる安全な薬があるのであれば、それは選択肢の一つであってもいいのではないでしょうか。 頭痛がするときには頭を冷やしたり、首の筋肉をもみほぐしたりしますよね。それでも痛みが止まないときには頭痛薬を飲んだり、あるいは頭痛の原因となっている疾患を治療します。それと同じように、抑うつ気分も薬によって症状を軽くすることで心の痛みが軽減することはあるし、うつ病という病の治療に薬が必要なことも多いのです。 それは決して失敗でも敗北でもなく、自分のケアをしているだけなのです。そういった考え方へと少しずつ個人個人、そして社会の認識が変わっていけば、もしかしたらうつ病に苦しむ人がいまより減るかもしれない、現に苦しんでいる人がもう少し早い段階で助けを求められるようになるかもしれない、と思います』、「うつ病という病の治療に薬が必要なことも多いのです。 それは決して失敗でも敗北でもなく、自分のケアをしているだけなのです。そういった考え方へと少しずつ個人個人、そして社会の認識が変わっていけば、もしかしたらうつ病に苦しむ人がいまより減るかもしれない、現に苦しんでいる人がもう少し早い段階で助けを求められるようになるかもしれない、と思います」、なるほど。
・『必要な助けを求めるのを躊躇してしまう日本人  浜田 日本人は特に苦しんでいても、必要な助けを求めるのを躊躇してしまいますね。アメリカだったら、自分がある問題で悩んでいるとなれば、「まずは専門家に相談してみたら」とサポートにつながることを促されたり、あるいは「あなたを困らせている人と交渉してみたら」とその状況を変えるための働きかけを示唆されることが一般的ですよね。でも日本では、「自分に悪いところがないかもまず考えてみなさい」となるのではないでしょうか。 内田 あとは日本では「とにかく耐えなさい」と我慢を強いられることが多いかもしれませんね。 先日、ボストンに住んでいる同世代の日本人の方に街で偶然出会ったときに、その人がご自身の不安について話されたことがありました。そこで私は、認知行動療法をはじめ、不安を和らげるストレスマネージメントやリラクゼーションの方法を少し紹介した後に、「必要であれば、こういう薬も効くよ」と思いつく選択肢をパパッとアドバイスのつもりで伝えたんですね。そうしたら、薬の話をした途端に、「そんなチート(cheat)するのなんて嫌ですよ」という反応が返ってきて。 浜田 ああ、ズルをすると思われたんですか。 内田 不安をコントロールするためにはいろんな手段があって、その一つの中に薬も入っていてもいいと思うんです。でも精神科の治療薬に関しては、必要が生じて頼ることになったとしても、処方されては「負け」あるいは「ずるい」というネガティブな印象がもたれているのだなと感じた会話でした。 浜田 ズルをするということに関して、思い出すことがあります。私がうつになったあとで、日本の尊敬する経済学者から「浜田くんは学問がうまく行かないことをうつのせいにして、言い訳をしている」と言われたことがありました。この言葉にはあとで述べるような経済学、数理経済学の本質にかかわるような問題提起もあるのですが、精神医学上、これはうつ患者に対して言ってはならないことでしょう。私としては、とても辛い経験だったのにもかかわらず、「言い訳」として捉えられてしまった。 内田 それは酷いですね。しかし、残念ながら近年も同じような話をよく耳にします。 例えば、テニスの大坂なおみ選手が自身の抑うつ気分について語り、メンタルヘルスを守るために試合直後の記者会見には出席しないと発言したときには、多くの人が「うつを言い訳にして、義務を放棄している」と彼女を非難しました。あるいは逆に、「うつなのに、ファッション誌の撮影はできるのか」と仕事を選択的にこなせていることを取り上げて、「こういった仕事ができているのであれば、うつではないはずだ」と彼女を嘘つき扱いをしたのです。 うつなどの精神科の病があったとしても、それで社会的機能がすべて失われるわけではなく、むしろうつに苦しむ人のほとんどは仕事や家事育児をこなしながら生きています。たとえば足の怪我をしたときに、長時間の立ち仕事はできなくとも、座りながらの事務作業ならばできるといったこともあるでしょう。しかし痛みが強すぎたら、座りながらの仕事でさえ手につかなくなることもある。同じようにうつも症状によって、できることとできないことがあるのは当然で、重症の場合には生活のすべてに影響が及ぶものなのです。 また、大坂選手は試合後の記者会見を取りやめた理由として、試合が終わったばかりの気持ちが未整理のタイミングで、記者からの批判的な質問に晒される場に自分自身を置きたくないという説明がありました。次の試合が控えていればなおさらです。こういった自尊心を守る選択というのは、うつであったとしてもなかったとしても、あるいは大坂選手のように公の目にさらされるテニスプレーヤーであったとしてもなかったとしても、誰もが自分のためにしていい選択だと思うのです』、「自尊心を守る選択というのは、うつであったとしてもなかったとしても、あるいは大坂選手のように公の目にさらされるテニスプレーヤーであったとしてもなかったとしても、誰もが自分のためにしていい選択だと思うのです」、その通りだ。
・『希死念慮とはーー「この世界から隠れたい」と思うまで(内田 手記の中では、うつの状態が重くなっていくのを感じられる過程も書かれていましたね。当時の奥様に「あんなに大好きだった音楽を楽しめなくなったのはおかしいよね。」と言われたことがうつの重症度を物語っていた、との記述が大変印象的でした。好きだったはずのことも楽しくない、楽しめないというのはうつの大きな特徴ですね。 浜田 はい、大好きだった音楽会も楽しめなくなりました。治療中でも鬱々として音楽会に行きたいと言うと、家内が一緒にニューヨークに日帰りで連れて行ってくれたのを覚えています。 主に天井桟敷でしたが、メトロポリタン・オペラで未見だったオペラの『ボリス・ゴドゥノフ』、モーツアルトの『魔笛』などを見ることができました。また、ベートーヴェンのピアノ協奏曲を全部弾くというシリーズを聴きに行ったこともあります。しかし、うつ気分の中では、アバドとポリーニという大演奏家の演奏を聴いても、ただ機械的に演奏しているように聴こえてしまった。 僕の趣味は童謡やクラシックの作曲なのですが、後に自作集のCDを作っていただいた中野雄先生は、大演奏家でも時々、音楽的センスから言うと冴えない演奏をすることがあると。特にその2人は浮き沈みが高いから、自分のせいだけと考えないほうがいいと後になって言われました。しかし、音楽も楽しめなくなってしまったのはその通りで、「これは重大な事態だ」と自分でも気づくきっかけだったんです。 コネチカット州にノーウィッチという温泉がありまして、日本の温泉とはずいぶん違って、ゆっくり浸かって気分が豊かになるという趣ではないんですが、家内がうつに効くかもと連れて行ってくれました。しかし、ニューヘイブンに戻る帰り道ではまた講義が不安で暗雲に包まれた気持ちになってなかなか心が晴れない。次第に手紙を開けるのさえ、悪い知らせがあるのではないかと怖くなって、ごく限られた親しい人を除いては付き合いを避け、「この世界から隠れたい」という気持ちが強まってきました。 そんなことでだんだん疲れてきて、あるとき夜思い余って一人になったら、自分の頭が破裂しそうだと感じました。これ以上この生活を続けていると自分がだめになるという恐怖にさらされました。自分はいくつもの間違いをおかして人生を台無しにしてしまった、子どもたちや家内の反対にもかかわらず安定した有名大の地位もなげうって間違った道を選んでしまった、そんな間違いをするなんて自分はダメな人間だ、という思考が止まらなくなった。 ジェームズ・トービンという私の先生は、単にノーベル経済学賞授賞者であるだけでなく、経済学史上に残る大先生で、僕のことを心配しては食事に誘って慰めてくれたりもしました。しかし、料理屋で近くの食卓に座る人が、わたくしの講義を批判してくる大学院生に妄想で見えてくることがありました。そうすると、いつしか自殺したいという思いが出てくる。この苦しみはなかなか終わらない。どうしたら無事に自殺できるかまで考えるようになったんです。 (内田舞氏の略歴はリンク先参照) (浜田宏一氏の略歴はリンク先参照)』、「ジェームズ・トービンという私の先生は、単にノーベル経済学賞授賞者であるだけでなく、経済学史上に残る大先生で、僕のことを心配しては食事に誘って慰めてくれたりもしました。しかし、料理屋で近くの食卓に座る人が、わたくしの講義を批判してくる大学院生に妄想で見えてくることがありました。そうすると、いつしか自殺したいという思いが出てくる。この苦しみはなかなか終わらない。どうしたら無事に自殺できるかまで考えるようになったんです」、酷い時だったのだろうが、こんな「希死念慮」は深刻だ。

第三に、7月31日付け文春オンライン「田舞+浜田宏一『うつを生きる 精神科医と患者の対話』(文春新書)より 経済学者・浜田宏一氏がいま語るアベノミクスの功罪。「安倍首相も自民党に残る男性優位の考え方から解放されていなかった」」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/72391
・『・・・アベノミクスが実現したこと、やり残したこと  浜田 さて、戦後の歴史を見ると、円安だった時期のほうが日本経済は生き生きとしていた。円安でエズラ・ヴォ―ゲルから「ジャパン・アズ・ナンバーワン」とおそらく揶揄をも含めて言われていた日本の成長経路は、日本の貿易相手、欧米の産業にとってはハンディがきつすぎたと思います。そこで円高を是正しようとして、米・英・独・仏そして日本の代表がニューヨークのプラザ・ホテルに集まり各国の金融政策を変えて円高の体制に変えようとしたのが、「プラザ合意」です。 円高を保つには、日本の金融政策を諸国より引き締め気味に保っていかねばなりません。それに最大限の協力をしようとして、そしてまた1990年に向けて起こったバブルの後遺症を警戒しすぎて、引き締め政策を長く続けて円高に続けたのが、日銀総裁の三重野康、松下康雄、速水優、福井俊彦(彼は金融緩和をかなり効果的に続けたのですが、ゼロ金利解除を急ぎすぎた。しかし最後に引き締めました)、そして白川方明の各総裁です。これらの日本銀行総裁は、変動為替制度の下では為替レートが金融政策で操作可能なことを十分に理解しなかったか、理解していても正しい政策を実行できなかったわけです。日本が貿易立国を続けるのを完全に阻害し、平成時代の「デフレと沈滞の20年間」をもたらしたのです。 この状態から日本経済を救ったのが、「アベノミクス」を実践し、そのために最適任の黒田東彦日銀総裁を指名した安倍晋三首相でした。第二次安倍政権は、2012年末から始まりましたが、そのもっとも成果を上げたのは、新コロナ禍のはじまる2019年の終わりごろまででした。年度から年度で見て400万人以上の新雇用が生まれたことが知られています。ところで、私に都合よく統計を見ますと、四半期とのデータで、第二次安倍政権の初め(2013年、1-3月)からコロナ勃発の前年(2019年、10月-12月)を比較すると、かする程度ではありますが、実は550万人の新雇用を生んだのです。550万人と一言で言いますが、後楽園ドーム満員の収容人数が約5万5000人ですから、その100個分の雇用が生まれたわけです。新卒の就職状況も緩和して、大学教授がゼミの学生の就職先を心配しないでよくなった。これは、人々に幸福感をもたらしたといえないでしょうか。 非正規社員の雇用、とくに女性の雇用はめざましく増えた。しかし、日本の支配層にあたる中年の正社員の給与はあまり上がらなかった。よい教育を受けて、正社員でいる人の方が必ずしも生産性が高いとは限らないので、これも自然なことではありますが。ただ、みんながたくさん働いて外国からの企業収益も高まって、国民総所得(GNI)も増えたけれども、人々が豊かになった感覚がないと言われているのは、雇用が増えてもそれは非正規の部分が多くて賃金があまり上昇しなかったことによります。安倍さんは、為替レートが高すぎて日本企業が国内で生産できない苦しみを、金融緩和と円安で解消しまし、女性を含め非正規の人が増えた。日本の労働市場の民主化を助けたのです。労働者全体の平均賃金はあまり増えなかったのですが』、「この状態から日本経済を救ったのが、「アベノミクス」を実践し、そのために最適任の黒田東彦日銀総裁を指名した安倍晋三首相でした」、私は「アベノミクス」や「黒田東彦日銀総裁」を全く評価してない。「第二次安倍政権の初め(2013年、1-3月)からコロナ勃発の前年(2019年、10月-12月)を比較すると、かする程度ではありますが、実は550万人の新雇用を生んだのです・・・非正規社員の雇用、とくに女性の雇用はめざましく増えた。しかし、日本の支配層にあたる中年の正社員の給与はあまり上がらなかった」、なるほど。
・『もっと冒険してアイデアを育てる政策が必要だった  浜田 これはわたくしの反省でもありますが、安倍さんの時代に国民がもっと冒険してアイデアを育て、労働生産性をあげる政策も同時に必要だったんでしょう。各人の得意な点をより伸ばして個性を磨くような教育を普及しなければならなかった。それに、私も2019年の三度目の消費税増税の決断には反対の意見を述べるべきでした。そういった政策の不備もあって、いまも国民に豊かになった感覚がない状態が続いているようなのは残念です。 内田 550万人の新しい雇用というのは歴史的に見ても偉業ですよね。多くの人が働けるようになったことで国全体の生産量や労働生産性も向上し、新卒者の就職の心配も少なくなった。このように日本経済を豊かにしたのは評価されるべきアベノミクスの貢献ではないでしょうか。 浜田 その点を認めないジャーナリズムは間違っています。 内田 日本社会で一人ひとりがそれぞれのユニークな能力を伸ばして冒険ができるような文化が広がることは私も強く願っていますし、先ほど申し上げた通り、私はそれこそが一番長期的に効果のある経済政策なのではないかと思っています』、「浜田 これはわたくしの反省でもありますが、安倍さんの時代に国民がもっと冒険してアイデアを育て、労働生産性をあげる政策も同時に必要だったんでしょう。各人の得意な点をより伸ばして個性を磨くような教育を普及しなければならなかった。それに、私も2019年の三度目の消費税増税の決断には反対の意見を述べるべきでした・・・多くの人が働けるようになったことで国全体の生産量や労働生産性も向上し、新卒者の就職の心配も少なくなった。このように日本経済を豊かにしたのは評価されるべきアベノミクスの貢献ではないでしょうか」、私自身の「アベノミクス」の評価は前述の通り、全く評価してない。
・『何が女性の労働を妨げているのか?  内田 ここで、女性の非正規雇用が増えたということについて質問させてください。もちろん雇用はないよりもあった方がいいので、女性の雇用の受け皿が非正規であれ増えたことは良かったということは間違いないでしょう。しかし、日本の女性の労働者の正社員比率が低く、非正規雇用率が高いことは、やはり男性と比較すると考えさせられるところがあります。男性の非正規雇用も同じく増えているものの、正社員における男性比率が圧倒的に高く、この差異は男女間の大きな賃金格差をはじめとする経済的ジェンダーギャップの大きな要因でもあると語られています。 こう考えると、女性の職が増えたことが事実であっても、低賃金で雇われる女性労働者が増えたことは、誰にとっても暮らしやすくなったとは安易に言えないところもあるのではないかと思うのですが、この点はどのようにお考えでしょうか。 浜田 そうですね。現状を見ると本来なら実現されるべき同一労働、同一賃金の姿はかけ離れた形で雇用全体だけ増えたのを喜んでいていいのかが、正しい意味でのアベノミクス批判として残ります。日本女性の貢献度、活躍度を国際的に比較してみても、各先進国に劣るのをどう考えるかというのが、舞さんの指摘でしょう。 ただ、たんなる雇用量の改善、そして女性雇用量の改善も基本的に重要で、その点ではアベノミクスは当時の状況ではよく機能したことは間違いがないのです。とはいえ、理想の労働市場の姿から言えば、日本の労働市場に男女同一賃金、同一能力=同一賃金の原則が成り立つように変えていかねばならないのです。 内田 そのためには具体的にどういった道筋が考えられるのでしょう?  浜田 手始めとして、いまの女性労働の活用を阻害している、税法にある主婦の年収約130万円近くにある共稼ぎの壁を撤廃する必要があります。これはおそらく、女性をなるべき家庭のとどめようという男性本位のイデオロギーに依拠した法制であると思います。つまり、いま共稼ぎの主婦が年106万円、または約130万円を超えて働こうとすると、それ以下で免除されていた社会保障税を支払わなければならなくなっている。これが、非正規労働の女性の一層長く就業しようとする意欲を妨げています。 したがって、この壁がなかったならば、アベノミクスの女性労働増加はもっと顕著であったと考えられるのです。またこの制度の下では、雇用者も、賃金を増やすと税金も増えますよという形で、女性労働者を安く使うインセンティブが生まれるのです。世界的に見ても、日本で職場での女性の活躍度が低いのはこのような制度的条件、税法上のハンディが女性にはあるからです』、「世界的に見ても、日本で職場での女性の活躍度が低いのはこのような制度的条件、税法上のハンディが女性にはあるからです」、その通りだ。
・『「安倍首相も自民党に残る男性優位の考え方から解放されていなかった」  浜田 要するにアベノミクスの円安誘導とそれにともなう量的改善は有効でしたが、そこで男女の本質的な平等を実現するには、より根本的に法制度を含めた質的改善が必要なのです。このような制度的条件が不備であり、自民党にまだ残る男性優位の考え方から安倍首相も全く解放されていなかったのです。そのあたりにアベノミクスに対する世間の関心が冷えている理由があるのかもしれません。そして以上のことは、アドバイザーとしてのわたくしの自己反省であり、将来に向けては現岸田政権に対する要望でもあります。 内田 アベノミクスが実現した成果は大きいけれども、同時に浜田さんとしてはやり残したと思われる点もあるのですね。日本政府に残る男性優位的な価値観にも踏み込んで具体的に発言してくださってありがとうございます。きっと読者の方もこの箇所を読んでハッとされるのではないかと思います。 男性優位な価値観が自民党政治に留まらず日本社会全体において揺るがないこと、まさにそこが最後の砦だと私もアメリカにいてもどかしく感じるところなのですが、その砦を崩すには日本にどういったことが求められると考えられていますか。 浜田 まずは、日本のように学歴がいいだけで会社にいつまでも勤めていられる制度は、日本経済の成長阻害要因です。男女それぞれの能率の良さで賃金は払われなければなりません。 安倍さんはわたくしとの対談で、安倍家で初めは夫が60万の月給をもらっていたのに、妻が月給10万円で働けるようになったという事態を提起しています。家計は(したがって国民経済も)総合的に改善します。正規雇用と非正規雇用を分ける市場は問題がありますが、失業がなくなるのが第一で、雇用を増やすことにより国民全体が豊かになったことは確かです。そこからさらに男女均等にするには、別の努力が必要ですね』、「さらに男女均等にするには、別の努力が必要ですね」、その通りだが、そんな「努力」が払われるのは、まだこれからだ。
・『「女性の働き方」の問題は男性の問題でもある  内田 私がハーバードの研修医だった頃、指導医から「研修医として果たすべき責任は全員同じで、そして休む権利も同じようにある」と言われたことを思い出します。男性でも女性でも同じ責任を果たす機会が与えられ、果たした責任が同じであれば、同じ給与と待遇を得られるべきでしょう。 また、責任という点で、日本では女性が家事育児を担う時間が男性の5.5倍であるという調査が発表されました。家事育児という誰かがやらなければならない無償労働の責任と評価に不均衡があることも含めて、ジェンダー不平等問題は法や政策を使ったアプローチと同時に、教育や啓発による意識のアップデートも国全体で必要な状況だと感じます。 浜田さんがいい学歴さえあれば会社にずっと勤めていられる日本の労働システムの問題点を挙げられましたが、学歴一つとっても、女の子は男の子に比べて進学を期待されない無意識のバイアスがあったり、あるいは近年露呈したように、医学部入試では男性と同じ点数を取っても女性が入学できないような仕組みも暗黙裡に残されています。あるいは就職してからも、男女に寄せられる期待度には依然として開きがあり、同じ企業の中で学歴も実力も同等かそれ以上であっても、男性に比べて昇進がまわってこないような構造的差別のなかで女性たちは生きています。 また、こういった労働に関わるイシューは「女性の働き方の問題」として扱われがちですが、女性が働きにくい労働環境というのは実は男性をも苦しめているものだと思います。例えば、医学部入試の女性差別問題が発覚した際に、多くの医師が「出産する女性医師が欠けることで病棟は破綻するから、なるべく女性を医師にさせない施策は必要だ」と語りました。 こういった意見を聞いて、私は女性差別は他の問題、具体的には長時間労働の隠れ蓑にされていると思いました。病気や怪我は誰に起こるかわからないし、あるいは休暇は誰でも必要なのに、一人でも欠けたら破綻するほど過酷な職場での長時間労働が当たり前とされていること自体がそもそも問題だと思います。そしてその前提が男性には自明のこととされていていることもまた問題だと思ったのです。医師の過労死や自死率は男女ともに他の職種よりも高いことも考えると、ジェンダーに目が行きがちな話題ですが、同時に根幹にはもっと根深い問題も潜んでいるのですよね。 税制のことも、雇用のことも、全て個人の生活や社会のあり方にまで直接影響することであり、あらゆる角度からのアプローチが必要なのかと思います。 浜田 そうですね。そのためにも、まずは雇用を増やし、次にその雇用の条件や内容を吟味する、などと手を付けられる問題を一つずつこなしていくことが大切ですね。このようにどうしたら国民を豊かにしたらよいかに頭を使っていると、自分がうつ病であるということを忘れてしまうわけですね。 (内田舞氏の略歴はリンク先参照)。 (浜田宏一氏の略歴はリンク先参照)』、「医師の過労死や自死率は男女ともに他の職種よりも高いことも考えると、ジェンダーに目が行きがちな話題ですが、同時に根幹にはもっと根深い問題も潜んでいるのですよね。 税制のことも、雇用のことも、全て個人の生活や社会のあり方にまで直接影響することであり、あらゆる角度からのアプローチが必要なのかと思います」、その通りだ。
なお、精神疾患も国民経済も正しい治療法はすぐには見つからない、人生で大きな災厄に見舞われたときのレジリエンスとは?の2つについては、明日紹介したい。
タグ:経済学 (その7)(内田舞+浜田宏一『うつを生きる 精神科医と患者の対話』(文春新書)より5題:なぜ、いま心の病を語るのか?、必要な助けを求めるのを躊躇してしまう日本人 状況を改善するために働きかけるアメリカ人、浜田宏一氏がいま語るアベノミクスの功罪、精神疾患も国民経済も正しい治療法はすぐには見つからない、人生で大きな災厄に見舞われたときのレジリエンスとは?) 文春オンライン「内田舞+浜田宏一『うつを生きる 精神科医と患者の対話』(文春新書)より:アベノミクスのブレーンとして知られる経済学者の浜田宏一氏は、長らく躁うつ病に苦しんできた。なぜ、いま心の病を語るのか?」 『うつを生きる 精神科医と患者の対話』(文春新書) 「実の息子を自死で亡くす」、とは初めて知った。 「精神科医と患者の、しかし主治医と患者という関係ではない、背景に共通点のある二人の対話ならうまく伝わるところもあるのではないかなと」、なるほど。 確かに類似点があるのは興味深い。 「私のうつ症状の対処に苦労しながらも、こうやって記録に残してくれたことを、妻のキャロリンに感謝します」、なるほど。 「ご闘病を回顧する機会というのはとても大事なものだと思います。当時は気づかなかった気分の悪化のきっかけや回復に役立ったことが具体的に思い起こされたりすることもあるでしょう。また、自分自身がどのようなことに価値を感じて生きてきたのかがはっきりすることもあります。そうした振り返りの過程を経ることで、今まで肩に背負ってきたトラウマや後悔、あるいは気づかずに自分自身に向けていた偏見などから解放されることもあります」、なるほど。 文春オンライン「内田舞+浜田宏一『うつを生きる 精神科医と患者の対話』(文春新書)より:必要な助けを求めるのを躊躇してしまう日本人、状況を改善するために働きかけるアメリカ人ーー病のときに医療とどう向き合うか?」 医者によって、処方薬の考え方もずいぶん違うようだ。 「依存性は回避したいものですが、ここでは投薬のリスクとともに投薬をしないリスクも考えなければなりません。ついつい副作用や依存性といった投薬のリスクに目が行きがちですが、逆に投薬を避けて、どうしようもない不安に駆られる時間が続いてしまうのもとても苦しいことです。そういった状況では、不安を取り除いてあげることのベネフィットが上回ることも多いのです。 そして、薬というのは処方の仕方次第でリスクを低くおさえることもできます。私自身、医師としては、なるべく低いリスクで一番高いベネフィットをもたらすようなプランを常に 考えようとしていますね。さらに、不安とうつは頻繁に共存して、お互いを悪化させ合うものです。高まる不安や強い不快感などをベンゾジアゼピンで取り除くことで、うつ気分が少し改善するということもあるので、マイナー・トランキライザーが必ずしも「うつを悪化させる」わけではないように思えます」、なるほど。 「うつ病という病の治療に薬が必要なことも多いのです。 それは決して失敗でも敗北でもなく、自分のケアをしているだけなのです。そういった考え方へと少しずつ個人個人、そして社会の認識が変わっていけば、もしかしたらうつ病に苦しむ人がいまより減るかもしれない、現に苦しんでいる人がもう少し早い段階で助けを求められるようになるかもしれない、と思います」、なるほど。 「自尊心を守る選択というのは、うつであったとしてもなかったとしても、あるいは大坂選手のように公の目にさらされるテニスプレーヤーであったとしてもなかったとしても、誰もが自分のためにしていい選択だと思うのです」、その通りだ。 「ジェームズ・トービンという私の先生は、単にノーベル経済学賞授賞者であるだけでなく、経済学史上に残る大先生で、僕のことを心配しては食事に誘って慰めてくれたりもしました。しかし、料理屋で近くの食卓に座る人が、わたくしの講義を批判してくる大学院生に妄想で見えてくることがありました。そうすると、いつしか自殺したいという思いが出てくる。この苦しみはなかなか終わらない。どうしたら無事に自殺できるかまで考えるようになったんです」、酷い時だったのだろうが、こんな「希死念慮」は深刻だ。 文春オンライン「田舞+浜田宏一『うつを生きる 精神科医と患者の対話』(文春新書)より 経済学者・浜田宏一氏がいま語るアベノミクスの功罪。「安倍首相も自民党に残る男性優位の考え方から解放されていなかった」」 私は「アベノミクス」や「黒田東彦日銀総裁」を全く評価してない。「第二次安倍政権の初め(2013年、1-3月)からコロナ勃発の前年(2019年、10月-12月)を比較すると、かする程度ではありますが、実は550万人の新雇用を生んだのです・・・非正規社員の雇用、とくに女性の雇用はめざましく増えた。しかし、日本の支配層にあたる中年の正社員の給与はあまり上がらなかった」、なるほど。 「浜田 これはわたくしの反省でもありますが、安倍さんの時代に国民がもっと冒険してアイデアを育て、労働生産性をあげる政策も同時に必要だったんでしょう。各人の得意な点をより伸ばして個性を磨くような教育を普及しなければならなかった。それに、私も2019年の三度目の消費税増税の決断には反対の意見を述べるべきでした・・・ 多くの人が働けるようになったことで国全体の生産量や労働生産性も向上し、新卒者の就職の心配も少なくなった。このように日本経済を豊かにしたのは評価されるべきアベノミクスの貢献ではないでしょうか」、私自身の「アベノミクス」の評価は前述の通り、全く評価してない。 「世界的に見ても、日本で職場での女性の活躍度が低いのはこのような制度的条件、税法上のハンディが女性にはあるからです」、その通りだ。 「さらに男女均等にするには、別の努力が必要ですね」、その通りだが、そんな「努力」が払われるのは、まだこれからだ。 「医師の過労死や自死率は男女ともに他の職種よりも高いことも考えると、ジェンダーに目が行きがちな話題ですが、同時に根幹にはもっと根深い問題も潜んでいるのですよね。 税制のことも、雇用のことも、全て個人の生活や社会のあり方にまで直接影響することであり、あらゆる角度からのアプローチが必要なのかと思います」、その通りだ。 なお、精神疾患も国民経済も正しい治療法はすぐには見つからない、人生で大きな災厄に見舞われたときのレジリエンスとは?の2つについては、明日紹介したい。
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株式・為替相場(その23)(ブラックマンデー超え暴落の原因 日米景気不安、企業経営への影響は 検証 ブラックマンデー超え大暴落(2)、ドル円レートの「正しい理論値」など存在しない だからこそ意図的に歪みを加えてはいけない) [金融]

株式・為替相場については、本年6月16日に取上げた。今日は、(その23)(ブラックマンデー超え暴落の原因 日米景気不安、企業経営への影響は 検証 ブラックマンデー超え大暴落(2)、ドル円レートの「正しい理論値」など存在しない だからこそ意図的に歪みを加えてはいけない)である。

先ずは、8月7日付け日経ビジネスオンライン「ブラックマンデー超え暴落の原因 日米景気不安、企業経営への影響は 検証 ブラックマンデー超え大暴落(2)」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00210/080600062/
・『この記事の3つのポイント 1.日本株が5日までに急落。世界の中でも落ち込み大きく 2.米経済の減速懸念浮上。為替は円安基調から転換 3.国内消費への影響は不透明。内需企業にもリスク  米国景気の減速懸念が強まったことなどをきっかけにパニックに陥った東京株式市場。6日は日経平均株価が5営業日ぶりに反発し、3217円(10%)高の3万4675円で取引を終えた。それでも終値ベースのピーク(7月11日の4万2224円)からの下落幅は7500円を超える。日本株の暴落はなぜ起きたのか、今後の株価や為替はどうなるのかなど、知っておきたい10の疑問をまとめた。 1:株暴落はなぜ起きた? 2:なぜ日本株だけ下げ幅が大きいのか? 3:株価はまだ下がるのか? 4:今後の金利はどう動く? 5:円高はどこまで進む? 6:日本企業の業績に与える影響は? 7:波乱含みの市場で評価される企業は? 8:国内消費の行方は? 9:投資初心者はどうしたらいいの? 10:今後注目のイベントは?』、興味深そうだ。
・『1:株暴落はなぜ起きた?  今回の日経平均株価の落ち込みが始まったのは日本銀行が追加利上げを発表した翌日の8月1日だ。一日の値動きで過去最大の下落幅を記録した5日までのトータルで7643円(19.5%)もの激しい落ち込みとなった。 (1)相場の上昇をけん引していた米ハイテク株への期待がしぼみ調整局面に入ったこと(2)日銀が追加利上げと量的引き締め(QT)を同時決定したことがサプライズだったこと(3)米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が米連邦公開市場委員会(FOMC)後に9月の利下げを強く示唆し、日米の金融政策の方向性の明確な違いが意識されたこと(4)米国の経済指標が予想を下回り景気減速懸念が浮上したこと――などが要因として挙げられる。 結果として、日銀の金融政策の正常化と米景気に対する不安から今までマーケットが想定していた持続成長の前提が揺らいだ。大和証券の坪井裕豪・日米株チーフストラテジストは「想定が急に見直しを迫られたことで、マーケットから資金が逃げ出すスピードが速くなってしまった」と見る』、「結果として、日銀の金融政策の正常化と米景気に対する不安から今までマーケットが想定していた持続成長の前提が揺らいだ」、なるほど。
・『株の下落要因が重なった日本 2:なぜ日本株だけ下げ幅が大きいのか?  株価の下落は世界各地の市場に波及したが、その中で日本株の落ち込みは特に大きい。これは下げ要因が重なったからだ。最たるものはQ.1で挙げた日銀の利上げと、それに付随した円高だ。三菱UFJアセットマネジメントの石金淳チーフファンドマネジャーは「日本経済の状態から見て日銀は利上げを必ずしも急ぐ必要はなかったが、円安を阻止するために利上げをしたのではないか。それに伴う円高のスピードが問題だ」と指摘する。 日銀短観(6月調査)の結果における、輸出企業の2024年度の想定為替レートは1ドル=142円68銭。日経平均が最高値を更新した時の実勢レートは1ドル=158円前後と、想定レートより15円程度円安で推移していたが、1ドル=145円前後まで円高に振れ、想定レートに近づいた。 想定レートよりも実際のレートが円安で推移すると、輸出企業は収益が膨らむ。1ドル=140円という想定の下で1000億円の年間利益を予想している企業があったとしよう。もし実際の為替レートが1ドル=150円で推移すると、その企業は1000億円を上回る利益を計上すると投資家は期待する。 今回はその逆の動きで、実勢レートが想定レートに近づいてしまったため、業績の上振れ期待がしぼんでしまった。また「日銀の政策変更後の株安を受けて、日本の景気が金利上昇に耐えられないとの不安が広がり、金融株などの景気敏感株の売りが出ている」(大和証券の坪井氏)との指摘もある。 ■連載「検証 ブラックマンデー超え大暴落」記事一覧 ・日経平均3217円高、急反発に潜む不安 消える円安期待、日産の憂鬱 ・ブラックマンデー超え暴落の原因 日米景気不安、企業経営への影響は(今回)』、「実勢レートが想定レートに近づいてしまったため、業績の上振れ期待がしぼんでしまった。また「日銀の政策変更後の株安を受けて、日本の景気が金利上昇に耐えられないとの不安が広がり、金融株などの景気敏感株の売りが出ている」、なるほど。
3:株価はまだ下がるのか?  三菱UFJアセットの石金氏は年内の日経平均株価の変動範囲を3万~3万7000円程度と予想。「短期的な底は打った。米景気は減速するが、大崩れしないだろう。インフレ率や金利の低下が株価の上昇を支える材料となる。半面(50%を下回ると景気後退の可能性が指摘される)米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況指数が連続して45%を割ることがあれば株価の下げ要因となりうる」と話す。 大和証券の坪井氏は年内の日経平均株価のレンジを2万9000~4万円と見る。今後の日本株の行方を占うポイントとして注目しているのが、世界各国の中央銀行トップらが米ワイオミング州に集まる8月下旬の国際経済シンポジウム(通称・ジャクソンホール会議)だ』、「ジャクソンホール会議」は確かに注目点だ。
・『インバウンド依存の内需企業に逆風も  4:今後の金利はどう動く?  7月30~31日の日銀会合を経て一時1.07%まで上昇した国内長期金利は、5日には4カ月ぶりの低水準となる0.750%まで下がった。米国の弱い雇用統計を受けて米国金利も23年12月以来の水準まで急低下しており、日米の金利差が縮小した。これが円安基調を反転させた。 ふくおかフィナンシャルグループの佐々木融チーフ・ストラテジストは「日本の株価が落ち着きを取り戻し、インフレ率が上がってくれば利上げ観測がまた出てくるため、長期金利は緩やかに上昇するだろう」と見る。 一方、米国金利については「直近の低下は利下げ期待を織り込みすぎている」と話す。「年内100ベーシス(1%)以上の利下げを織り込んでおり、低下しすぎている。これが元の水準に戻る可能性もある」と予想する。 5:円高はどこまで進む?  5日の東京外国為替市場で円相場は一時1ドル=141円台まで値上がりしたが、6日には1ドル=145円程度まで反落した。 りそなホールディングス(HD)市場企画部の井口慶一シニアストラテジストは「23年から続いていたドル高・円安の動きはいったん終了したと見られる」と話す。その上で「今後は中長期的にドル安・円高の動きに進んでいく可能性がある。年末に向けて1ドル=140円辺りに向かっていくと考えられる」とした。 6:日本企業の業績に与える影響は?  前述のように円高は輸出企業の収益にはマイナス要因となる。ただし1ドル=140円程度の水準であれば企業の想定為替レートとの乖離(かいり)は小さく、販売拡大やコスト削減などの企業努力でマイナス影響を吸収する余地はあると考えられる。りそなHDの井口氏は「輸出企業の決算の状況はそこまで悪くない状況で推移している。過度に悲観的にならなくてもいい」と話す。 一方、輸入企業にとって円高はコストダウン要因となる。以前なら1ドルのものを仕入れるのに150円以上かかっていたのが、145円あるいは140円で済むようになるからだ。 一般に内需系の企業は為替変動に強いとされる。ただし、円高は“安いニッポン”に押し寄せていたインバウンド(訪日外国人)にはマイナスだ。インバウンドの財布のひもが固くなれば、これまで外国人を相手に潤ってきた企業は影響を受けることになる。その意味では内需企業といえども為替変動と無縁ではいられない。 7:波乱含みの市場で評価される企業は?  松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストは「半導体銘柄などを中心に大幅に(株価が)下がる中、家具販売大手のニトリホールディングス(HD)やイオンはほとんど株価を下げていない」と指摘する。実際、ニトリHDの株価は市場が売り一色となった5日もほとんど下がらず、6日には7月末を上回る水準まで上げた。 三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジストは、景気状況に左右されにくい業種として「電気、ガス、鉄道、食品などの分野」を挙げる』、「景気状況に左右されにくい業種として「電気、ガス、鉄道、食品などの分野」を挙げる」、その通りだ。
・『積み立て投資の経験則「売らずに続ける」  8:国内消費の行方は?  円高は物価上昇を抑えることで個人消費の拡大要因となる。一方、株安は個人が保有する資産の価値を下げて個人消費を抑える効果がある。株安が実体経済に影響を与えるまではタイムラグがあるので、現時点では国内消費が大きく落ち込むとは見られていない。 第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミストの熊野英生氏は「現段階ではデフレ圧力があるくらいで、不況の入り口とまでは言えない」と話す。ただし「株価の低迷が年末まで続けば、業績が悪化した企業が賃上げに弱気になり、春闘交渉に影響して本格的な景気悪化が始まる可能性がある」と指摘する。 9:投資初心者はどうしたらいいの?  今回の株暴落によって一部では投資を始めたばかりの個人によるパニック売りが発生したとも言われたが、5日に買い増しした人もいる。積み立て投資においては「売らずに続ける」ことが重要とされる。ニッセイ基礎研究所金融研究部の前山裕亮主任研究員は「値下がりした今はむしろ買い増しのチャンス」と話す。 NISA(少額投資非課税制度)制度を使い、日経平均株価に連動するインデックスファンドに積み立て投資を行った場合で運用の成果を検証した以下のようなデータがある。積み立ての期間が長い人ほど含み益は大きい。24年年初に始めた人は8月2日時点で既に損失が出ている状況だった。5日にはより多くの損失が出たと考えられる。 6日にあった楽天証券の決算発表では楠雄治社長が投資家に冷静な対応を求めた。「過去12年間で10%を超えるドローダウン(高値から安値までの下落)は10回以上あった。相場の急変は時々起こる。積み立て投資を行っている人はそのまま続けてほしい」と語った。 10:今後注目のイベントは?  先に紹介したジャクソンホール会議は8月下旬に迫っている。FRBのパウエル議長が利下げについてどこまで具体的に言及するかが注目を集めることになりそうだ。今のところ9月にはFRBが実際に政策金利を引き下げる可能性が高いと見られており、それを前提に金利や為替レートは動いている。 その先の11月には米大統領選が控える。現職のバイデン大統領の後継者として選挙に臨む民主党のハリス副大統領と、ホワイトハウスへの返り咲きを狙う共和党のトランプ前大統領の激戦となりそうだ。次期大統領が進める経済政策は米国の景気指標や株価だけでなく、日本を含む各国・地域の経済や企業業績にも影響を及ぼす』、「ジャクソンホール会議」では、米FRB議長は、物価目標達成に自信を示し、9月利下げ「時が来た」とした。「バイデン大統領の後継者である民主党のハリス副大統領の人気が「トランプ氏」を上回っていることもあり、「トランプ氏」の「返り咲き」の可能性は薄らぎつつあるようだ。

第三に、8月24日付け東洋経済オンラインが掲載した慶応義塾大学大学院教授の小幡 績氏による「ドル円レートの「正しい理論値」など存在しない だからこそ意図的に歪みを加えてはいけない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/812705
・『為替レートについての騒ぎがまだ続いている。だが、ひとことで言えば、いかなる真面目な議論も、為替に関しては無駄である。  為替は何を根拠にして決まるのか?  なぜなら、為替レートの理論値というものがまったく存在しないからだ。だから、為替は、理論とも、ファンダメンタルズとも、あらゆる合理性から無縁のところで決まる。だから、為替を「正しい」水準に戻そうとする真摯な努力はすべて徒労に終わる。諦めたほうがいい。 合理性で決まらないなら、為替は何で決まるのか。それは、投機家の意向と行動である。 それは、株でも一緒ではないか? 行動ファイナンスでは、すべての金融リスク資産の価格は投資家行動で決まるのだから、為替に限ったことではないのではないか? そうだ。しかし、為替がもっとも極端なのだ。 じゃあ、今が1ドル=145円前後で、2023年1月が130円前後だったのを説明する要素はまったく何もないのか?行動ファイナンスのいう、投機家の意向と行動で決まるということなのか? それも違う。行動ファイナンスですら役に立たない。投機家の期待、1ドル=145円という期待の自己実現という、何でも説明できてしまう自己実現の論理ですら成り立たないのだ』、「行動ファイナンスですら役に立たない。投機家の期待、1ドル=145円という期待の自己実現という、何でも説明できてしまう自己実現の論理ですら成り立たないのだ」、なるほど。 
・『「購買力平価理論」は「物価の絶対水準」の話  結論を言っておこう。今、1ドルが145円なのは、1949年4月23日にGHQが1ドル=360円と決めたからなのだ。 なぜそう言えるのか。説明しよう。 その前に、まず、経済学における為替の理論をおおざっぱに概観しておこう。まずは古典的な、購買力平価である。 これは「世界中で一物一価が成り立つような水準に為替レートが決まる」という考え方で、要はビックマックレートとかスターバックスラテレートなどと同じ考え方である。 日本でだけあるブランドもののバックが安いと、世界中から日本にそれを買いに来る観光客が溢れたり、バイヤーが転売したりするので、そのモノの価格が世界中で一物一価に収斂していくが、それをマクロ経済全体で行うのは、為替レートが動くほうが早いので、為替が調整される、という考え方である。 逆に言えば、世界中で一物一価が成り立っているときに、為替がずれてしまうと、大混乱が生じるから、為替がぶれたときに、瞬時にもとに戻るほうが早いから、為替レートが調整するということである。 株価も理論値は、厳密には存在しない。PER(株価収益率)は10倍でも20倍でもいいから、企業の収益見通しにコンセンサスが成り立っても、日経平均株価の予想は、PERの想定によって2万円にも4万円にもなりうる。 それでも、株価については理屈で議論ができ、前提を置けば、水準について何らかの論理的な予想、議論、説明ができる。 しかし、為替はそれがまったくできない。論理がほぼゼロなのだ。「そんなことはないだろう」と反論が来そうだ。例えば「東洋経済オンライン」などで、みずほ銀行のチーフマーケット・エコノミストである唐鎌大輔氏がいつも綿密かつ明快な論理で円安を説明してきたじゃないか?などと思うだろう。 それはそうだが、そうではない。結論から言えば、唐鎌理論は、円高にはなりにくいことの論理的な説明を与えてくれるが、しかし、円高の限界が1ドル=120円なのか140円なのかについては、ほぼ何も言えない。「昔ほどには円高にはならない」、ということが限界だ。) 実体経済における貿易収支を通じた調整も働く。為替レート(例えば円)が安くなって、国内物価が安くなった国からは、その安くなった製品が輸出され、外貨(例えばドル)を稼ぐ。その稼いだ外貨を自国通貨(例えば円)に戻すから、ドル売り円買いが起きて、ドル安円高になる。マクロ経済均衡に戻る、つまり、為替レートのずれが元に戻るようになる。 この購買力平価理論は物価の絶対水準の話なので、絶対的購買力平価理論であり、相対的購買力平価理論もある。それは、物価の変化率、つまりインフレ率の各国間の変動の違いを為替レートが調整する、という理論で、つまり、インフレ率が高くなった国の通貨の為替レートは安くなって、国際的な物価水準の変動が調整される、ということになる』、「株価については理屈で議論ができ、前提を置けば、水準について何らかの論理的な予想、議論、説明ができる。 しかし、為替はそれがまったくできない。論理がほぼゼロなのだ。「そんなことはないだろう」と反論が来そうだ。例えば「東洋経済オンライン」などで、みずほ銀行のチーフマーケット・エコノミストである唐鎌大輔氏がいつも綿密かつ明快な論理で円安を説明してきたじゃないか?などと思うだろう。 それはそうだが、そうではない。結論から言えば、唐鎌理論は、円高にはなりにくいことの論理的な説明を与えてくれるが、しかし、円高の限界が1ドル=120円なのか140円なのかについては、ほぼ何も言えない・・・購買力平価理論は物価の絶対水準の話なので、絶対的購買力平価理論であり、相対的購買力平価理論もある。それは、物価の変化率、つまりインフレ率の各国間の変動の違いを為替レートが調整する、という理論で、つまり、インフレ率が高くなった国の通貨の為替レートは安くなって、国際的な物価水準の変動が調整される、ということになる」、なるほど。
・『もう1つの理論である「金利平価理論」とは?  もう1つの為替均衡理論は、金利平価理論で、資本市場において、裁定取引が働いて、為替レートが均衡するという理論である。つまり、外国(米国)の金利が高く、自国(日本)の金利が低い場合、アメリカのドルで運用したほうが得になってしまうから、均衡では、ドルが今後安くなることが予想されていることになる。 つまり、金利差が年率5%あれば、1年後のドルは今より5%安くなるはずだ、と投資家たちは思っているということだ。それなら、ドルで運用して円で運用するよりも5%ドルの名目値が増えても、ドルが円に比べて5%安くなるから、ドルでも円でもどちらで運用しても同じリターンが得られる、ということだ。そう期待されているから、実際にも、ドルは1年後には5%安くなっている、ということになる。 これはドル円の金利差が円安をもたらしている、ということと逆になっているように見えるが、必ずしもそうではない。予想外にアメリカの金利が上がったとしよう。予想外に金利差が広がったということであるが、この場合は、サプライズに対して瞬間的に急激に円安が進み、その後、金利差を埋め合わせるように、円高が進むことになる。 そうでないと、永遠にドル買いが進んでしまい、誰も円を持たなくなってしまう。だから、均衡に向かうとすると、いったん円安に急激にオーバーシュートして、そこから円高が進むことになる(ただし、実際には投機家たちが合理的に期待(将来への予想)をするかどうかなどにかかっているので、理論的にもさまざまなケース、シナリオが考えられる)。) ここでは為替理論を幅広く網羅することが目的ではないので、基本的なポイントを整理しよう』、「もう1つの為替均衡理論は、金利平価理論で、資本市場において、裁定取引が働いて、為替レートが均衡するという理論である。つまり、外国(米国)の金利が高く、自国(日本)の金利が低い場合、アメリカのドルで運用したほうが得になってしまうから、均衡では、ドルが今後安くなることが予想されていることになる・・・予想外にアメリカの金利が上がったとしよう。予想外に金利差が広がったということであるが、この場合は、サプライズに対して瞬間的に急激に円安が進み、その後、金利差を埋め合わせるように、円高が進むことになる。 そうでないと、永遠にドル買いが進んでしまい、誰も円を持たなくなってしまう。だから、均衡に向かうとすると、いったん円安に急激にオーバーシュートして、そこから円高が進むことになる」、なるほど。
・『為替の基本的な「3つのポイント」とは何か  第1に、理論は均衡理論であり、為替市場は常に均衡へ向かうことが仮定され、その均衡へ向かうメカニズムも機能することが前提となっている。しかし、現実の世界では、均衡はまったく成り立っていないし、かつ均衡へ向かうメカニズムも機能していない。したがって、現実の為替市場は理論と大きく異なる。 第2に、実体経済と金融資本市場とが分離している。実体経済における購買力平価と金融資本市場の金利平価の理論値が異なった場合、どうなるのか? 一般には短期的には金融市場、長期的には実体経済ということだが、絶対的購買力平価が長期的にも成り立ったことは過去にもほとんどない。実体経済と金融市場の分裂が、ここでも生じるのである。 第3に、均衡へ向かうメカニズムが、投機家や経済主体の期待に基づくものと為替への需要と供給によるものと2つ存在することが示唆されている。 前出の説明では、暗に合理的期待形成がなされる前提に実はなっているのだが、実際には、それは成り立たないことははっきりしている。また、為替は結局需給で決まるというのは、唐鎌理論もそうなのであるが、実は、金融市場では本来理論的には成り立たないはずの議論なのである。 なぜなら、需給で為替レートが本来の水準からのズレが生じれば、そのズレを利用して儲けようとする裁定取引が投機家によって行われ、すぐに為替は元の水準に戻ることになる。) となると、結局、実際、為替はどのように決まっているのか? 前出の議論を踏まえると、理論的には論理的とは言えないが、結局現実には需給で決まっている、という説だけが生き残りそうである。そうだとすると、なぜ、論理的には生じるはずの裁定取引が行われないのか? それは「正しい」水準が存在しないので、戻っていくべき為替レートというものが存在しないからである。ファンダメンタルズがないから、戻るべき理論値もないし、アンカー(錨)となる拠り所もないのである。 唯一の拠り所は、昨日までの為替水準であるが、昨日の為替水準にも正しい理論値はもちろん存在していなかったから、昨日までの水準から今日ズレたからと言って明日戻っていくはずがない。 つまり、為替水準は、常に365日、正しくないところにあるのであって、なぜその水準かというと、たまたまそこに為替水準があった、ということだけなのだ。既成事実として存在していた、という以外のことは何もないのである。 では、なぜ為替はそこから「ズレ」たのか?いや、そこから動いたのか? ここに需給が登場する。誰かが売ったから下がったのであり、誰かが買ったから上がったのである』、「為替の基本的な「3つのポイント」:①理論は均衡理論であり、為替市場は常に均衡へ向かうことが仮定され、その均衡へ向かうメカニズムも機能することが前提となっている。しかし、現実の世界では、均衡はまったく成り立っていないし、かつ均衡へ向かうメカニズムも機能していない。したがって、現実の為替市場は理論と大きく異なる・・・②実体経済における購買力平価と金融資本市場の金利平価の理論値が異なった場合、どうなるのか? 一般には短期的には金融市場、長期的には実体経済ということだが、絶対的購買力平価が長期的にも成り立ったことは過去にもほとんどない。実体経済と金融市場の分裂が、ここでも生じるのである・・・③結局現実には需給で決まっている、という説だけが生き残りそうである。そうだとすると、なぜ、論理的には生じるはずの裁定取引が行われないのか? それは「正しい」水準が存在しないので、戻っていくべき為替レートというものが存在しないからである。ファンダメンタルズがないから、戻るべき理論値もないし、アンカー(錨)となる拠り所もないのである。 唯一の拠り所は、昨日までの為替水準であるが、昨日の為替水準にも正しい理論値はもちろん存在していなかったから、昨日までの水準から今日ズレたからと言って明日戻っていくはずがない。 つまり、為替水準は、常に365日、正しくないところにあるのであって、なぜその水準かというと、たまたまそこに為替水準があった、ということだけなのだ」、なるほど。
・為替に需給が生じた「3つの原因」とは?  では、この需給が生じた原因は何なのか?それは、第1に、論理が出てくる場合と、出てこない場合がある。第2に、実体経済からの生じた需要と供給の場合と、金融資本市場からの売りと買いの場合がある。第3に、金融市場から需給に関しては、運用ニーズというある種の実需の場合と、投機的需要の場合とがある。 そして、この3つの軸からの、さまざまな違う需要と供給が入り混じるために、為替レートは1つの論理では説明できない動きをすることになるのである。 論理が出てくる場合とはどんな場合か。例えば、日本の貿易赤字が増加して、輸入のためにドルが必要だから、ドル買い円売りが出る、というのは1つの論理である。これは実体経済の貿易によるものだ。次に、金融市場では、アメリカの金利が上がったから、ドルでの運用ニーズが高まり、ドル買い円売りが生じた、という論理がありうる。) 「なんだ、論理があるじゃないか!」と思われるかもしれないが、これは為替水準の論理ではなく、為替の変化の方向の論理なのである。貿易赤字が増えれば円安方向、アメリカの金利が上がるのも円安方向、という論理はある。しかし、では、今の1ドル=145円が150円になるのか155円になるのか、ということに関しては、何も言えない。さらに、145円と155円とどちらが長期的に正しいのか、ということはそれ以上に一切何も言えない。 その結果、為替はオーバーシュート(行きすぎること)も起こりやすくなるし、かつ一度同じ方向に動き出すとそのモメンタム(一方向への流れ)が止まらず、オーバーシュートの乱高下をしながら、かなりの期間、同じ方向に動き続ける。 いったん円安の流れになったらしばらく止まらないし、転換点が来たら、今度は円高方向しかありえない。しかし、皆がそう思っているから、一気に円高が進んでも、進みすぎかどうかは判断できないから、その流れに乗るが、しかし、強い投機家は、オーバーシュートを意図的に作りながら儲けることができる。 このように、強い投機家によって、為替相場は短期的には作られることが多いが、長期的な動きは、一部の投機家の意図では支配しきれない。大きな投機家集団、世の中全体の「群衆的な」動きによって決まってくる。それは誰にも予想はできないし、支配もできない。しかし、その流れで決まってくるのが現実だ。 その結果が、今の1ドル=145円前後なのである。今145円で125円でないのは、あるポイントからオーバーシュートとモメンタムを繰り返した結果なのである。 そして、そのあるポイントとは、1ドル=360円と1949年に決められたポイントなのである。そして、それが1971年末まで続けられたからであり、1973年まで1ドル=308円にしたからであり、1973年に308円スタートで変動相場制に移行したからである。 円安すぎる水準に長く固定されすぎていたから、その後は、一貫した円高モメンタムが続いたのであり、その流れがあったから、過度な円高というオーバーシュートが何度も繰り返されたのである。 そして、そのオーバーシュートが行きすぎたことから、円安の流れにどこかで転換せざるをえなかったのであるが、異次元緩和がきっかけとなって、今度は円安オーバーシュートが起きてしまったのである。したがって、すべては、1ドル=360円と決めたから、その後の水準の推移があったのであり、ゲームの始まりにおいて、たまたま決められた水準が今の水準に影響を残し続けているのである。 したがって、為替は本質的に、変動を続け、経済に歪みを与え続けるのであり、そういうものであるからこそ、異次元緩和のような、為替に意図的に強力な歪みをもたらすことは、もっともやってはいけないことであり、経済をもっとも大きく歪ませることになるのである。 ただ、異次元緩和を行ってしまった事実は動かせないし、今1ドル=160円まで行ってしまってから、今145円前後になっているということも動かせないので、この罪を償うことはほぼ不可能に近いのであり、その不可能を現在の日銀に世間が要求したために、為替市場が荒れることになったのである(本編はここで終了です。この後は筆者が週末のレースなどを予想するコーナーです。あらかじめご了承下さい)』、「強い投機家によって、為替相場は短期的には作られることが多いが、長期的な動きは、一部の投機家の意図では支配しきれない。大きな投機家集団、世の中全体の「群衆的な」動きによって決まってくる。それは誰にも予想はできないし、支配もできない。しかし、その流れで決まってくるのが現実だ・・・異次元緩和のような、為替に意図的に強力な歪みをもたらすことは、もっともやってはいけないことであり、経済をもっとも大きく歪ませることになるのである。 ただ、異次元緩和を行ってしまった事実は動かせないし、今1ドル=160円まで行ってしまってから、今145円前後になっているということも動かせないので、この罪を償うことはほぼ不可能に近いのであり、その不可能を現在の日銀に世間が要求したために、為替市場が荒れることになったのである」、難しい為替市場を分析した貴重な論文である。
タグ:株式・為替相場 (その23)(ブラックマンデー超え暴落の原因 日米景気不安、企業経営への影響は 検証 ブラックマンデー超え大暴落(2)、ドル円レートの「正しい理論値」など存在しない だからこそ意図的に歪みを加えてはいけない) 日経ビジネスオンライン「ブラックマンデー超え暴落の原因 日米景気不安、企業経営への影響は 検証 ブラックマンデー超え大暴落(2)」 「結果として、日銀の金融政策の正常化と米景気に対する不安から今までマーケットが想定していた持続成長の前提が揺らいだ」、なるほど。 「実勢レートが想定レートに近づいてしまったため、業績の上振れ期待がしぼんでしまった。また「日銀の政策変更後の株安を受けて、日本の景気が金利上昇に耐えられないとの不安が広がり、金融株などの景気敏感株の売りが出ている」、なるほど。 「ジャクソンホール会議」は確かに注目点だ。 「景気状況に左右されにくい業種として「電気、ガス、鉄道、食品などの分野」を挙げる」、その通りだ。 「ジャクソンホール会議」では、米FRB議長は、物価目標達成に自信を示し、9月利下げ「時が来た」とした。「バイデン大統領の後継者である民主党のハリス副大統領の人気が「トランプ氏」を上回っていることもあり、「トランプ氏」の「返り咲き」の可能性は薄らぎつつあるようだ。 東洋経済オンライン 小幡 績氏による「ドル円レートの「正しい理論値」など存在しない だからこそ意図的に歪みを加えてはいけない」 「行動ファイナンスですら役に立たない。投機家の期待、1ドル=145円という期待の自己実現という、何でも説明できてしまう自己実現の論理ですら成り立たないのだ」、なるほど。 「株価については理屈で議論ができ、前提を置けば、水準について何らかの論理的な予想、議論、説明ができる。 しかし、為替はそれがまったくできない。論理がほぼゼロなのだ。「そんなことはないだろう」と反論が来そうだ。例えば「東洋経済オンライン」などで、みずほ銀行のチーフマーケット・エコノミストである唐鎌大輔氏がいつも綿密かつ明快な論理で円安を説明してきたじゃないか?などと思うだろう。 それはそうだが、そうではない。結論から言えば、唐鎌理論は、円高にはなりにくいことの論理的な説明を与えてくれるが、しかし、円高の限界が1ドル=120円なのか140円なのかについては、ほぼ何も言えない・・・購買力平価理論は物価の絶対水準の話なので、絶対的購買力平価理論であり、相対的購買力平価理論もある。それは、物価の変化率、つまりインフレ率の各国間の変動の違いを為替レートが調整する、という理論で、つまり、インフレ率が高くなった国の通貨の為替レートは安くなって、国際的な物価水準の変動が調整される、ということにな る」、なるほど。 「もう1つの為替均衡理論は、金利平価理論で、資本市場において、裁定取引が働いて、為替レートが均衡するという理論である。つまり、外国(米国)の金利が高く、自国(日本)の金利が低い場合、アメリカのドルで運用したほうが得になってしまうから、均衡では、ドルが今後安くなることが予想されていることになる・・・予想外にアメリカの金利が上がったとしよう。予想外に金利差が広がったということであるが、この場合は、サプライズに対して瞬間的に急激に円安が進み、その後、金利差を埋め合わせるように、円高が進むことになる。 そうでないと、永遠にドル買いが進んでしまい、誰も円を持たなくなってしまう。だから、均衡に向かうとすると、いったん円安に急激にオーバーシュートして、そこから円高が進むことになる」、なるほど。 「為替の基本的な「3つのポイント」:①理論は均衡理論であり、為替市場は常に均衡へ向かうことが仮定され、その均衡へ向かうメカニズムも機能することが前提となっている。しかし、現実の世界では、均衡はまったく成り立っていないし、かつ均衡へ向かうメカニズムも機能していない。したがって、現実の為替市場は理論と大きく異なる・・・②実体経済における購買力平価と金融資本市場の金利平価の理論値が異なった場合、どうなるのか? 一般には短期的には金融市場、長期的には実体経済ということだが、絶対的購買力平価が長期的にも成り立ったこ ことは過去にもほとんどない。実体経済と金融市場の分裂が、ここでも生じるのである・・・③結局現実には需給で決まっている、という説だけが生き残りそうである。そうだとすると、なぜ、論理的には生じるはずの裁定取引が行われないのか? それは「正しい」水準が存在しないので、戻っていくべき為替レートというものが存在しないからである。ファンダメンタルズがないから、戻るべき理論値もないし、アンカー(錨)となる拠り所もないのである。 唯一の拠り所は、昨日までの為替水準であるが、昨日の為替水準にも正しい理論値はもちろん存在して なかったから、昨日までの水準から今日ズレたからと言って明日戻っていくはずがない。 つまり、為替水準は、常に365日、正しくないところにあるのであって、なぜその水準かというと、たまたまそこに為替水準があった、ということだけなのだ」、なるほど。 「強い投機家によって、為替相場は短期的には作られることが多いが、長期的な動きは、一部の投機家の意図では支配しきれない。大きな投機家集団、世の中全体の「群衆的な」動きによって決まってくる。それは誰にも予想はできないし、支配もできない。しかし、その流れで決まってくるのが現実だ・・・異次元緩和のような、為替に意図的に強力な歪みをもたらすことは、もっともやってはいけないことであり、経済をもっとも大きく歪ませることになるのである。 ただ、異次元緩和を行ってしまった事実は動かせないし、今1ドル=160円まで行ってしまってから、今145円前後になっているということも動かせないので、この罪を償うことはほぼ不可能に近いのであり、その不可能を現在の日銀に世間が要求したために、為替市場が荒れることになったのである」、難しい為替市場を分析した貴重な論文である。
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維新の会(その10)(日本維新の会に名古屋地裁が異例の「ガサ入れ」した理由がヤバすぎる…維新国会議員をパワハラ告発したら即刻「クビ」、“兵庫のおねだり知事”斎藤元彦と“公務員はタダ働き”大阪維新の凶悪すぎるタッグ…「阪神・オリ優勝パレード」担当はなぜ自死するほど追い詰められたのか、大阪 箕面市長選 新人の原田亮氏が初当選) [国内政治]

維新の会については、本年7月3日に取上げた。今日は、(その10)(日本維新の会に名古屋地裁が異例の「ガサ入れ」した理由がヤバすぎる…維新国会議員をパワハラ告発したら即刻「クビ」、“兵庫のおねだり知事”斎藤元彦と“公務員はタダ働き”大阪維新の凶悪すぎるタッグ…「阪神・オリ優勝パレード」担当はなぜ自死するほど追い詰められたのか、大阪 箕面市長選 新人の原田亮氏が初当選)である。

先ずは、本年7月22日付け現代ビジネス「【独自】日本維新の会に名古屋地裁が異例の「ガサ入れ」した理由がヤバすぎる…維新国会議員をパワハラ告発したら即刻「クビ」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/133883?imp=0
・『裁判官まで出動、証拠品を押収  今年4月30日午前のことだった。国政政党「日本維新の会」の愛知県総支部がおかれる名鉄瀬戸線、尾張旭駅前の雑居ビルの一室に緊張が走った。 急襲したのは、名古屋地方裁判所の職員たちだった。執行官が文書を読み上げ、女性の裁判官も出動し「証拠保全」手続きを行った。裁判所による「ガサ」が打たれ、これは夕方まで続いたのである。 捜索差押許可状などで「ガサ」を入れ強制的に証拠品を押収するのは基本的に警察や検察庁である。裁判所によるガサ入れなど異例のことだ。 「民事事件で証拠隠滅などの恐れがあると判断したとき、裁判所が証拠保全として証拠品の差し押さえをすることができます。たとえば医療訴訟では、カルテの保存期間が5年なので、そうした場合に行われるものです。ただその場合でも、裁判所に訴状が出てから行われることが多い。民事提訴がされる前で、しかも国政政党相手に裁判所がガサを入れるなんて、あまり聞いたことがない」 現代ビジネスの取材に「異例だ」と繰り返しながらこう応えるのは、民事が専門だった元裁判官のひとりだ。 このガサ入れから2ヶ月あまり経った7月10日、名古屋地裁で民事裁判が起こされた。原告は、今年2月まで愛知維新の会に所属していた北名古屋市の小村貴司市議。被告は、愛知維新の会代表の浦野靖人衆議院議員である。 今年2月に、小村市議は愛知維新の会から除名処分を下されており、それが無効であることを求める内容だった。 小村市議は、維新所属の岬まき衆議院議員の秘書を経て、2022年4月の北名古屋市議選で初当選を果たした。岬議員は、過去に選挙公報に虚偽の経歴を記載し、党本部から処分を受けるなど、これまで複数のトラブルが確認されている。 愛知維新の会でも同様だったようで、2023年11月、小村市議のもとに、岬議員の複数の秘書から「パワハラ」「公私混同」などの苦情が寄せられた。小村市議が説明する。 「岬議員の秘書、運転手など10人近くから助けてくれというクレームが寄せられました。私も岬議員から土下座を強要され『お前の根性どこまでひん曲がっている』などと罵声を浴びせられたことがあるので、よくわかります。 日本維新の会の規約では国会議員や地方議員である特別党員以外、ハラスメントの被害の訴えができないシステム。そこで、私が被害にあった元秘書やスタッフをとりまとめて、党のハラスメント相談窓口に訴えを起こしたのです」』、「国政政党「日本維新の会」の愛知県総支部がおかれる名鉄瀬戸線、尾張旭駅前の雑居ビルの一室に緊張が走った。 急襲したのは、名古屋地方裁判所の職員たちだった。執行官が文書を読み上げ、女性の裁判官も出動し「証拠保全」手続きを行った。裁判所による「ガサ」が打たれ、これは夕方まで続いたのである。 捜索差押許可状などで「ガサ」を入れ強制的に証拠品を押収するのは基本的に警察や検察庁である。裁判所によるガサ入れなど異例のことだ・・・民事提訴がされる前で、しかも国政政党相手に裁判所がガサを入れるなんて、あまり聞いたことがない」 現代ビジネスの取材に「異例だ」と繰り返しながらこう応えるのは、民事が専門だった元裁判官のひとりだ・・・「岬議員の秘書、運転手など10人近くから助けてくれというクレームが寄せられました。私も岬議員から土下座を強要され『お前の根性どこまでひん曲がっている』などと罵声を浴びせられたことがあるので、よくわかります」、なるほど。
・『気に入らないと土下座で謝罪させた  現代ビジネスでも、岬議員の元秘書らがパワハラを訴えったLINEを入手している。 《毎日労働時間が14時間ほどとなることが常態化》《(岬議員の私物のために)最大で70万円も秘書が立て替え》《日常的に人格否定、罵声、罵詈雑言の数々。机をたたき相手を追い込む》《夏の炎天下の中で休みもなくポスターノルマ、1日10枚を課す》《岬議員が気に入らないと土下座で謝罪させた》《新型コロナに罹患して休むと、給料が20万円から10万円に下げられた》 
数々のパワハラや不透明な金銭のやりとりが書かれている。これらを小村市議が代表して訴え出た。しかし、1か月、2か月たっても党から回答が得られなかった。維新の弁護士から「待ってほしい」というメールが1度、届いただけだった。 一方で、小村市議は愛知維新の会の副代表・守島正衆議院議員と連絡を取り合っていた。守島氏からは、 《ハラスメント窓口へのアプローチお願いします。僕は報告すべきところにしておきます》とLINEでメッセージが届いていたので安心していたという。 だが2月20日に愛知維新の会は臨時の役員会を開催し、告発した小村市議を除名処分とした。 維新は地方議員に対して、「身を切る改革」として議員報酬の一定額を災害の被災地やボランティア団体に寄付することを求めている。小村市議は「身を切る改革」を実行していないことが除名処分の理由とされた。 愛知維新の会は《「身を切る改革」の実行は本会公認の必須条件であり、選挙公約》《北名古屋市民の皆様との公約を反故にすることは、断じて許されるものではない》と理由を説明している。 「すでにそのころ、身を切る改革の一部は支払いをすませてやっていました。残りの寄付も、今年3月と6月に近く実行することで話をしており、了承してもらっていました。維新では全国的にも、身を切る改革を実行していない地方議員はかなりいます。 いきなり除名処分としたのは岬議員のパワハラを訴える私が煙たくて、意趣返しで除名処分に追い込んだのではないかとみています」 小村市議はそう話す。数々のパワハラや不透明な金銭のやりとりが書かれている。これらを小村市議が代表して訴え出た』、「《日常的に人格否定、罵声、罵詈雑言の数々。机をたたき相手を追い込む》《夏の炎天下の中で休みもなくポスターノルマ、1日10枚を課す》《岬議員が気に入らないと土下座で謝罪させた》・・・愛知維新の会は臨時の役員会を開催し、告発した小村市議を除名処分とした。 維新は地方議員に対して、「身を切る改革」として議員報酬の一定額を災害の被災地やボランティア団体に寄付することを求めている。小村市議は「身を切る改革」を実行していないことが除名処分の理由とされた・・・いきなり除名処分としたのは岬議員のパワハラを訴える私が煙たくて、意趣返しで除名処分に追い込んだのではないかとみています」、なるほど。
・『党規委員会も開催せずに除名処分  冒頭の「ガサ」では重要な証拠が確保できたという。 「4月30日の証拠保全では、私の除名を決めた役員会の動画や議事録などが抑えられました。名古屋地裁がまだ提訴前でも証拠保全を認めてくれたのがよかった。 押さえた証拠からわかったのが、除名処分を決めた役員会は2月18日に開催されていたことです。その翌日には、維新の本部に報告するFAXが送信されていた。規約にもある党紀委員会も開催せずに、除名処分を決めたというのは、手続き違反で処分は無効。かなりあわてていたのだと思います」 小村市議によると、維新の地方組織では長崎県、和歌山県、石川県などでパワハラや政治とカネをめぐるようなトラブルが相次いでいるという。 維新は国政でも馬場伸幸代表と共同代表でもある大阪府の吉村洋文知事の間で対立が勃発している。国会でも政策活動費を巡って一度は自民党と合意するも、すぐに反故にされた。馬場代表は「第二自民党」を主張するが、「自民党と一緒になれば維新はつぶれてしまう」「自民党とぶつかっていく、それがケンカのやり方だ」と吉村知事は猛反発。 7月7日に小池百合子知事が3期目の当選を果たした東京都知事選では、2位と大健闘した、前安芸高田市長の石丸伸二氏を支援するかどうかでも揉めに揉めた。 石丸氏の選対本部長だった藤川晋之助氏がこう明かす。 「選挙前、維新の幹部がごぞって石丸氏と面会しにきたが、政党の推薦などは不要だと断った。ところが、石丸氏が156万票をとる躍進を果たすと維新は後出しじゃんけんのように『石丸氏から推薦してくれと持ち掛けられた』といいはじめた。真相はまったく違う」 内部告発で大混乱し、「死者」も出ている兵庫県の斎藤元彦知事は、吉村知事の元部下だ。維新が推薦し、兵庫県知事となった。 維新の国会議員はこう溜息をつく。 「党の県連本部に裁判所からガサってウワサは聞いたけど、本当だったんですね。都知事選でも候補者を擁立できず、国会でもダメダメぶりを露呈しています。『この党は長くない』とそんな話ばかり出ますね。実際、そう感じます」 国会でも地方でも、お粗末ぶりをさらけだす維新だが、裁判所からの異例の「ガサ」が決定打になるかもしれない』、「石丸氏が156万票をとる躍進を果たすと維新は後出しじゃんけんのように『石丸氏から推薦してくれと持ち掛けられた』といいはじめた。真相はまったく違う」、「維新」の主張は信頼できない。「内部告発で大混乱し、「死者」も出ている兵庫県の斎藤元彦知事は、吉村知事の元部下だ。維新が推薦し、兵庫県知事となった」、「兵庫県の斎藤知事」が「吉村知事の元部下」だったとは初めて知った。

次に、7月30日付け文春オンライン「“兵庫のおねだり知事”斎藤元彦と“公務員はタダ働き”大阪維新の凶悪すぎるタッグ…「阪神・オリ優勝パレード」担当はなぜ自死するほど追い詰められたのか」を紹介しよう。
・『兵庫県の斎藤元彦知事をめぐる問題。果たしてワイドショーなどでやっている「おねだり」疑惑中心の視点でよいのだろうか。 「公益通報」など重要な論点があるが、今回ここで注目したいのは「阪神・オリックス優勝パレード」である。あれはいったい何だったのか。知れば知るほどゾッとするのだ。 まず、先週またしてもショッキングなニュースがあった。 「阪神・オリックス優勝パレード担当 兵庫県元課長が死亡 告発文で『疲労し療養中』と記載 斎藤知事が公表」(毎日放送7月25日) 《兵庫県の斎藤知事を告発した文書で、阪神・オリックスの優勝パレードの業務で疲弊し療養中と記載されていた元課長の男性(53)が、今年4月に死亡していたことがわかりました。》 ここで言う「斎藤知事を告発した文書」とは、この春まで兵庫県で西播磨県民局長を務めていた60歳の男性職員(以下X氏)による文書のことだ。 X氏は3月中旬、知事による部下へのパワハラや視察先企業からの贈答品の受け取りなど7項目の疑惑を指摘した文書を、一部の報道機関や県議に送付。県はX氏が文書作成者だと断定し、X氏の公用PCを押収した。 その2日後、斎藤知事は定例会見で「業務時間中に『うそ八百』を含め、文書を作って流す行為は公務員として失格だ」と述べた。県はX氏を停職3カ月の懲戒処分にした。 X氏は7月7日に急死。「死をもって抗議する」という文言を遺していた(週刊文春7月25日号)。 X氏の告発には2023年11月23日に開催された阪神タイガースとオリックス・バファローズのリーグ優勝を記念したパレードもあった。兵庫と大阪を本拠地とする関西のチームがセ・パ両リーグで優勝したことを祝うために大阪市と神戸市でおこなわれた』、「X氏は3月中旬、知事による部下へのパワハラや視察先企業からの贈答品の受け取りなど7項目の疑惑を指摘した文書を、一部の報道機関や県議に送付。県はX氏が文書作成者だと断定し、X氏の公用PCを押収した。 その2日後、斎藤知事は定例会見で「業務時間中に『うそ八百』を含め、文書を作って流す行為は公務員として失格だ」と述べた。県はX氏を停職3カ月の懲戒処分にした。 X氏は7月7日に急死。「死をもって抗議する」という文言を遺していた」、なるほど。
・『優勝パレードで見え隠れする維新の影  文書には、兵庫県は「必要経費を補うため、信用金庫への県補助金を増額し、それを募金としてキックバックさせた」旨の告発もあった。担当部局は当初1億円で予算要求したが、副知事の指示で4億円に増額したという。 さらに告発文書には「パレードを担当した課長はこの一連の不正行為と難しい調整に精神が持たず、うつ病を発症した」と記されていた。この課長は告発文書が公になった後の4月20日に自死していると週刊文春は7月25日号で伝えた。 そして先週24日、兵庫県は阪神・オリックス優勝パレード担当課長の死を認めた。県は死亡から3カ月にわたって公表していなかった。 3月に斎藤知事をめぐる疑惑が浮上して以降、X氏と優勝パレード担当課長の2人の職員の死亡が明らかになったのである』、「3月に斎藤知事をめぐる疑惑が浮上して以降、X氏と優勝パレード担当課長の2人の職員の死亡が明らかになったのである」、「2人の職員の死亡」とは衝撃的だ。
・『維新には「公務員は働かせてナンボ」という考え方がある  ではあらためて阪神・オリックス優勝パレードを振り返ろう。実は当初から数々の問題が指摘されていた。 「阪神・オリックス優勝パレード 教職員に大阪府 ネット募金要求 「寄付で評価?」組合懸念」(しんぶん赤旗2023年11月9日) 2023年6月、プロ野球交流戦で写真撮影に応じる(右から)斎藤元彦知事、大阪府の吉村洋文知事、万博協会の石毛博行事務総長 時事通信 パレードの開催費用を集めるため、大阪府が府立学校の校長・准校長に、教職員がクラウドファンディング(CF)に協力するよう事務連絡を出したことがわかったと記事は伝えている。 大阪府はパレード開催のため警備費、交通規制告知などに5億円かかると説明。しかし集まりが悪いから教職員に協力を「求めている」という。 さらに大阪府と市は、パレードの現地で来場者の誘導などを担う要員として各1500人のボランティアも募っていた。 「勤労感謝の日に職員3000人を7時間タダ働きさせようとする大阪府・大阪市のヤバさ これが『維新流』?」(東京新聞2023年11月9日 ) 府市トップの所属はいずれも維新だが、記事の中で大阪在住のジャーナリスト吉富有治氏は、 「もともと維新は大阪府市を統合する大阪都構想が党是。その中で『税金の無駄遣いをなくす』ことや『コストカット』を言い続けてきた。根本に『公務員は働かせてナンボ』という考え方がある」と解説。 ここで維新の名前が出てきたが、阪神とオリックスのパレードの資金集めは当初は万博を前面に押し出していた』、「教職員がクラウドファンディング(CF)に協力するよう事務連絡を出した・・・「勤労感謝の日に職員3000人を7時間タダ働きさせようとする大阪府・大阪市のヤバさ」、「職員」の「犠牲」は当然とする維新の会ならではだ。
・『阪神もオリックスも悪くない。優勝のめでたさに名を借りた「万博PR」が批判されていたのだ    《9月下旬の発表では、名前が「兵庫・大阪連携『阪神タイガース、オリックス・バファローズ優勝記念パレード』~2025年大阪・関西万博500日前!~」と、なぜか無関係の万博が盛りこまれていたため炎上。》(中日スポーツ2023年10月18日) これには「パレードの政治利用だ」と批判が噴出。専門家はスポーツを使って体制側の悪評を隠す「スポーツウオッシング」に当たる、と指摘した。※『優勝パレード、万博PRに? 「政治利用」と批判噴出』(共同通信2023年11月18日) 当時も今も阪神ファンとオリックスファンの中にはせっかくの優勝に水を差されたようで気分がよくない方もいるだろう。 ポイントはまさにそこで、阪神もオリックスも悪くない。優勝のめでたさに名を借りた「万博PR」が批判されていたのだ。 万博の建設費用が当初の計画より高騰し、批判が高まっていた時期だけにどさくさ感があった』、「阪神もオリックスも悪くない。優勝のめでたさに名を借りた「万博PR」が批判されていたのだ」、なるほど。
・『一体何のための、誰のためのパレードだったのか?  さらにパレードでは大阪府・大阪市の職員へのタダ働きや募金要求などが問題となった。維新による公務員残酷物語だ、と。 大阪府の吉村洋文知事はパレード後にXに次のようにポストした。 【速報】阪神とオリックス、史上初の優勝記念同時パレードは計96万人の観客 大阪会場は前回の阪神パレード超える55万人 →監督、選手、パレードに来てくれた人達96万人のこの笑顔。やって良かったよ。メディアからは、散々批判を受けたけどね。この笑顔。これが答え。 午後5:59 ・ 2023年11月23日 ところが今回「カネ集め」に奔走させられた兵庫県のパレード担当課長が自死していたことが明らかになり、そのカネも「信用金庫への県補助金を増額し、それを募金としてキックバックさせた」と告発されていた。 一体何のための、誰のためのパレードだったのか? 万博PRのために懸命になったのも大きな要因にみえるが、万博は「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマである。ゾッとする。 兵庫県の斎藤元彦知事は3年前の知事選で自民と維新が推薦して当選している。「おねだり」以外にも、知事の背景を含め、告発内容にあらためて注目すべきではないか』、「今回「カネ集め」に奔走させられた兵庫県のパレード担当課長が自死していたことが明らかになり、そのカネも「信用金庫への県補助金を増額し、それを募金としてキックバックさせた」と告発されていた。 一体何のための、誰のためのパレードだったのか?・・・兵庫県の斎藤元彦知事は3年前の知事選で自民と維新が推薦して当選している。「おねだり」以外にも、知事の背景を含め、告発内容にあらためて注目すべきではないか」、その通りだ。

第三に、8月26日付けNHK NEWS Web「大阪 箕面市長選 新人の原田亮氏が初当選」を紹介しよう。
https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20240826/2000087055.html
・『任期満了に伴う大阪・箕面市の市長選挙は、無所属で新人の原田亮氏が初めての当選を果たしました。 箕面市長選挙の開票結果です。 原田亮、無所属・新。当選。3万2448票。 上島一彦、大阪維新・現。1万8309票。 小林友子、無所属・新。3768票。 無所属で新人の原田氏が、大阪維新の会の現職と共産党が推薦した無所属の新人を抑え、初めての当選を果たしました。原田氏は38歳。箕面市議会議員を経て、大阪府議会議員を2期務めました。 原田氏は「今の箕面市を変えてほしい、新しい箕面市をつくってほしいという支援の輪が広がり、大きなうねりを起こして勝利をつかむことができた。バス路線網を変え、緑を増やし、子育て・教育世界一のまちにしていく」と述べました。 大阪府内の首長選挙で大阪維新の会の現職が敗れるのは初めてです』、「維新の会」が足元の自治体の首長選挙で敗北したのは、初めてだ。「兵庫県の斎藤知事」を巡る問題が跳ね返ってきたとみるべきだろう。いよいよ「維新の会」も年貢の収め時なのかも知れない。
タグ:維新の会 (その10)(日本維新の会に名古屋地裁が異例の「ガサ入れ」した理由がヤバすぎる…維新国会議員をパワハラ告発したら即刻「クビ」、“兵庫のおねだり知事”斎藤元彦と“公務員はタダ働き”大阪維新の凶悪すぎるタッグ…「阪神・オリ優勝パレード」担当はなぜ自死するほど追い詰められたのか、大阪 箕面市長選 新人の原田亮氏が初当選) 現代ビジネス「【独自】日本維新の会に名古屋地裁が異例の「ガサ入れ」した理由がヤバすぎる…維新国会議員をパワハラ告発したら即刻「クビ」」 「国政政党「日本維新の会」の愛知県総支部がおかれる名鉄瀬戸線、尾張旭駅前の雑居ビルの一室に緊張が走った。 急襲したのは、名古屋地方裁判所の職員たちだった。執行官が文書を読み上げ、女性の裁判官も出動し「証拠保全」手続きを行った。裁判所による「ガサ」が打たれ、これは夕方まで続いたのである。 捜索差押許可状などで「ガサ」を入れ強制的に証拠品を押収するのは基本的に警察や検察庁である。裁判所によるガサ入れなど異例のことだ・・・ 民事提訴がされる前で、しかも国政政党相手に裁判所がガサを入れるなんて、あまり聞いたことがない」 現代ビジネスの取材に「異例だ」と繰り返しながらこう応えるのは、民事が専門だった元裁判官のひとりだ・・・「岬議員の秘書、運転手など10人近くから助けてくれというクレームが寄せられました。私も岬議員から土下座を強要され『お前の根性どこまでひん曲がっている』などと罵声を浴びせられたことがあるので、よくわかります」、なるほど。 「《日常的に人格否定、罵声、罵詈雑言の数々。机をたたき相手を追い込む》《夏の炎天下の中で休みもなくポスターノルマ、1日10枚を課す》《岬議員が気に入らないと土下座で謝罪させた》・・・愛知維新の会は臨時の役員会を開催し、告発した小村市議を除名処分とした。 維新は地方議員に対して、「身を切る改革」として議員報酬の一定額を災害の被災地やボランティア団体に寄付することを求めている。小村市議は「身を切る改革」を実行していないことが除名処分の理由とされた・・・いきなり除名処分としたのは岬議員のパワハラを訴える私が煙た くて、意趣返しで除名処分に追い込んだのではないかとみています」、なるほど。 「石丸氏が156万票をとる躍進を果たすと維新は後出しじゃんけんのように『石丸氏から推薦してくれと持ち掛けられた』といいはじめた。真相はまったく違う」、「維新」の主張は信頼できない。「内部告発で大混乱し、「死者」も出ている兵庫県の斎藤元彦知事は、吉村知事の元部下だ。維新が推薦し、兵庫県知事となった」、「兵庫県の斎藤知事」が「吉村知事の元部下」だったとは初めて知った。 文春オンライン「“兵庫のおねだり知事”斎藤元彦と“公務員はタダ働き”大阪維新の凶悪すぎるタッグ…「阪神・オリ優勝パレード」担当はなぜ自死するほど追い詰められたのか」 「X氏は3月中旬、知事による部下へのパワハラや視察先企業からの贈答品の受け取りなど7項目の疑惑を指摘した文書を、一部の報道機関や県議に送付。県はX氏が文書作成者だと断定し、X氏の公用PCを押収した。 その2日後、斎藤知事は定例会見で「業務時間中に『うそ八百』を含め、文書を作って流す行為は公務員として失格だ」と述べた。県はX氏を停職3カ月の懲戒処分にした。 X氏は7月7日に急死。「死をもって抗議する」という文言を遺していた」、なるほど。 「3月に斎藤知事をめぐる疑惑が浮上して以降、X氏と優勝パレード担当課長の2人の職員の死亡が明らかになったのである」、「2人の職員の死亡」とは衝撃的だ。 「教職員がクラウドファンディング(CF)に協力するよう事務連絡を出した・・・「勤労感謝の日に職員3000人を7時間タダ働きさせようとする大阪府・大阪市のヤバさ」、「職員」の「犠牲」は当然とする維新の会ならではだ。 「阪神もオリックスも悪くない。優勝のめでたさに名を借りた「万博PR」が批判されていたのだ」、なるほど。 「今回「カネ集め」に奔走させられた兵庫県のパレード担当課長が自死していたことが明らかになり、そのカネも「信用金庫への県補助金を増額し、それを募金としてキックバックさせた」と告発されていた。 一体何のための、誰のためのパレードだったのか?・・・兵庫県の斎藤元彦知事は3年前の知事選で自民と維新が推薦して当選している。「おねだり」以外にも、知事の背景を含め、告発内容にあらためて注目すべきではないか」、その通りだ。 NHK NEWS Web「大阪 箕面市長選 新人の原田亮氏が初当選」 「維新の会」が足元の自治体の首長選挙で敗北したのは、初めてだ。「兵庫県の斎藤知事」を巡る問題が跳ね返ってきたとみるべきだろう。いよいよ「維新の会」も年貢の収め時なのかも知れない。
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大学(その16)(卓越大内定の東北大、研究資金の申請で虚偽疑惑 「名ばかりテニュアトラック」で卓越研究員採択、「解体的出直しをはかる」“東京女子医大の闇”女帝・岩本絹子氏の理事長退任が確定的に!「7日に臨時理事会が開催され、理事長辞職を勧告予定」 東京女子医の闇#21、《東京女子医大“理事長解任”を決定》封印された内部告発「カネに強い執着心」「異論に報復人事」第三者委員会が暴いた女帝の正体「破壊された医療現場を死守する医師の矜持」 東京女子医の闇#22) [社会]

大学については、本年3月23日に取上げた。今日は、(その16)(卓越大内定の東北大、研究資金の申請で虚偽疑惑 「名ばかりテニュアトラック」で卓越研究員採択、「解体的出直しをはかる」“東京女子医大の闇”女帝・岩本絹子氏の理事長退任が確定的に!「7日に臨時理事会が開催され、理事長辞職を勧告予定」 東京女子医の闇#21、《東京女子医大“理事長解任”を決定》封印された内部告発「カネに強い執着心」「異論に報復人事」第三者委員会が暴いた女帝の正体「破壊された医療現場を死守する医師の矜持」 東京女子医の闇#22)である。

先ずは、本年4月23日付け東洋経済オンライン「卓越大内定の東北大、研究資金の申請で虚偽疑惑 「名ばかりテニュアトラック」で卓越研究員採択」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/749273
・『政府が若手研究者の安定雇用促進を目的に実施する「卓越研究員事業」に、東北大学が要件を満たさない雇用制度で2019年度と2020年度に申し込み、研究支援の補助金を得ていた疑いが極めて濃いことが東洋経済による取材で分かった。 政府が「卓越研究員」として認定した優秀な若手研究者を、国公立大学などの研究機関がいくつかの要件を満たす形で雇用すれば、研究機関が補助金を得られる卓越研究員事業。この要件のうち最も基本的なものが、若手研究者を「テニュアトラック」で採用していることだ』、興味深そうだ。
・『「名ばかりテニュアトラック」で申請  テニュアトラックとは、研究機関が若手研究者を将来的に無期雇用になれるチャンス付きの有期雇用で受け入れる制度をいう。 まずは3~5年程度の有期雇用でスタートするが、その期間内に、”もれなく””公正な”審査を受ける機会を与える必要がある。そして、審査に合格すれば「テニュア」と呼ばれる無期雇用のポストに昇格させる。 あらかじめテニュアトラックの採用人数と同じ数のテニュアのポストは確保しておき、合否は相対評価ではなく絶対評価で決める。つまり、若手研究者本人が結果さえ出せば必ずテニュアになれるというスキームで、アカデミアの世界では国際的に認知されている。当然、文部科学省もそのように明確に定義している。 しかし、東北大学は、無期雇用のポストをあらかじめ用意していない「名ばかりテニュアトラック」で卓越研究員事業に申し込み、文科省は実態を問題視せずに採択していたようだ。 東北大学が2018年度に創設し、2020年度まで学際科学フロンティア研究所で実施していた「東北大学テニュアトラック制度」が、本来のテニュアトラックではない問題については、2023年秋に東洋経済オンライン『卓越大内定・東北大が「名ばかりテニュアトラック」』で報じた。 制度の趣旨とかけ離れた実態について、東北大学の小谷元子理事は、「東北大学テニュアトラック制度はテニュアトラック制度ではないので、誤解のないようにしていただきたい」などと弁明。東北大学の制度は、名称にテニュアトラックという言葉を使っているが、「本来の制度とは別物の独自のもので、元から研究者にはテニュア審査の機会を与えるとは約束していない」などと説明していた(『東北大、「名ばかりテニュアトラック」への言い分』)。) 過去に東北大学が卓越研究員事業に採択された事例があることから、東洋経済は文科省に情報公開請求し、東北大学の卓越研究員事業への申請書を確認した。 その結果、2019年度と2020年度分に関して雇用条件の欄などに「東北大学テニュアトラック制度に基づく雇用」「学際研を活用した『東北大学版テニュアトラック制度』により卓越研究員を採用する」などの記載があった。 そのため、東北大学に対して、「卓越研究員事業の申請書にある東北大学テニュアトラック制度は、本来のテニュアトラック制度ではないため、卓越研究員事業の採択要件を満たしていないのではないか」と質問したところ、「文科省の示す要件に基づき申請を行い、審査の結果、採択されている」(広報室)と文書で回答があった。 2019年度や2020年度と、小谷理事が東洋経済のインタビューに応じた2023年秋では、同じ東北大学テニュアトラック制度でも中身が違うとでもいうのだろうか』、「若手研究者本人が結果さえ出せば必ずテニュアになれるというスキームで、アカデミアの世界では国際的に認知されている。当然、文部科学省もそのように明確に定義している。 しかし、東北大学は、無期雇用のポストをあらかじめ用意していない「名ばかりテニュアトラック」で卓越研究員事業に申し込み、文科省は実態を問題視せずに採択していたようだ・・・東北大学の制度は、名称にテニュアトラックという言葉を使っているが、「本来の制度とは別物の独自のもので、元から研究者にはテニュア審査の機会を与えるとは約束していない」などと説明していた」、なるほど。
・『東北大の若手研究者が文科省に告発メール  実は2019年当時、東北大学の学際研に所属していた複数の若手研究者が、文科省の人材政策課人材政策推進室に対し、東北大学テニュアトラック制度が名ばかりのもので、ほとんどテニュアになれないことや、それにもかかわらず卓越研究員事業に申請していることを告発する内部通報のメールを送っていた。 東洋経済は今回、その際のメールのやり取りを入手した。 それによると、人材政策推進室の担当者は、「東北大学に確認しましたが、東北大学のテニュアトラック制度のスキームとして、(中略)あらかじめテニュアポストの確保は行っているとのことでした」などと内部通報者に返信していた。文科省としては東北大学の説明を受け入れ、「東北大学テニュアトラック制度には問題はない」と結論づけていた。 ㊤2019年に文科省が内部告発者に返信したメール。東北大学への事情聴取の結果として「あらかじめテニュアポストの確保は行っているとのことでした」とある/㊦2023年秋、東北大学は「予めテニュアポジションが用意された採用ではない」と文書で東洋経済に回答した(記者撮影) だが、前述のように2023年秋の東洋経済の取材に対し小谷理事は、「東北大学テニュアトラック制度はテニュアトラック制度ではない」と明言している。口頭だけでなく、文書でも「本(東北大学テニュアトラック)制度は、予めテニュアポジションが用意された採用ではない」と記している。 そこで今回、文科省に一連の経緯を説明したうえで、東北大学テニュアトラックによる卓越研究員事業の申請に問題がなかったのかただした。 すると、人材政策推進室長の髙見暁子室長は改めて東北大学に確認を行ったとして、「東北大学によると、東北大学テニュアトラック制度で採用した研究者については、必ずしもそのまま卓越研究員事業に申請したのではなく、申請に当たって(卓越研究員事業の条件に沿うように例外的に)テニュアポストをあらかじめ用意したということだった」と述べ、これ以上の調査はしない見解を示した。) ここまでの東北大学の主張を時系列に整理すると以下のようになる。 ・東北大学テニュアトラック制度は、あらかじめテニュアポストを確保している本来のテニュアトラック制度である(2019年の文科省のヒヤリングに対する説明) ・東北大学テニュアトラック制度はテニュアトラック制度ではない。あらかじめテニュアポストを用意していない(2023年秋の東洋経済の取材に対する回答) ・東北大学テニュアトラック制度の研究者でも、卓越研究員事業に申請したものは、本来のテニュアトラックである(今回の東洋経済の指摘を受けた文科省・髙見室長への説明) つまり、東北大学テニュアトラック制度はテニュアトラック制度ではないが、例外的に一部、本来のテニュアトラックでの雇用が存在していたことになる』、「東北大学テニュアトラック制度はテニュアトラック制度ではないが、例外的に一部、本来のテニュアトラックでの雇用が存在していたことになる」、なるほど。
・『申請書の中に「名ばかり」の証拠  しかし、東北大学のこうした説明を真に受けることはできない。 東北大学は当時の卓越研究員事業の申請書に、テニュアトラックで採用された若手研究者が審査を経てテニュアのポストに昇格できる条件について「優れた業績を有すると認められた場合」という本人への評価のみにとどまらず、「かつメンター部局(理学部や工学部など受け入れ先の学部)の採用計画に合致する場合」と記していたからだ。 繰り返しになるが、テニュアトラック制度では若手研究者がテニュアへの昇格審査に合格した場合に就くテニュアのポストは、テニュアトラックとしての採用時にあらかじめ確保しておかなければならない。そのため、本来のテニュアトラック制度なのであれば、テニュアへの昇格条件として「採用計画に合致する場合」という但し書きが付くことはありえない。 この申請書の記述内容からみても、東北大学が卓越研究員事業に申請したポストはやはり、あらかじめテニュアポストを用意していない名ばかりテニュアトラックだったように映る。 研究者の雇用問題に詳しい一般社団法人「科学・政策と社会研究室」の榎木英介代表は、「東北大学の主張は詭弁、後付け、言い訳にしか見えない。これが国際卓越研究大学になる大学なのかと唖然とする。こうしたやり方を許せば研究の世界でのモラルハザード(道徳観や倫理観の欠如)につながる。東北大学には組織体として問題があり、国際卓越研究大学に値するものではない」と指摘する。 東北大学は新たに設けられた「国際卓越研究大学」に、今2024年度に認定される見通しだ。そうなれば、東京大学や京都大学を差し置いて、東北大学が卓越大の第1号となり、政府が設立したファンドから年間数百億円規模の支援を受けられる。当然、それに見合う高いガバナンスが求められるはずだ』、「こうしたやり方を許せば研究の世界でのモラルハザード(道徳観や倫理観の欠如)につながる。東北大学には組織体として問題があり、国際卓越研究大学に値するものではない」と指摘・・・東北大学は新たに設けられた「国際卓越研究大学」に、今2024年度に認定される見通しだ。そうなれば、東京大学や京都大学を差し置いて、東北大学が卓越大の第1号となり、政府が設立したファンドから年間数百億円規模の支援を受けられる。当然、それに見合う高いガバナンスが求められるはずだ」、こんなに問題のある「東北大学」を「卓越大の第1号」とすべきではない。「卓越大」制度に泥を塗ることになりかねない。

次に、8月6日付け文春オンライン「「解体的出直しをはかる」“東京女子医大の闇”女帝・岩本絹子氏の理事長退任が確定的に!「7日に臨時理事会が開催され、理事長辞職を勧告予定」 東京女子医の闇#21」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/72581
・『8月5日午後5時から、東京女子医科大学(東京・新宿区)で行われていた一連の疑惑に関する、第三者委員会の調査報告書の説明会で、岩本絹子氏が、理事長を退任する方向で理事らが合意したことが明らかになった。 説明会に参加した女子医大関係者によると、 「7日に臨時理事会が開催され、岩本氏に理事長辞職を勧告する予定。理事や監事も全員辞職して、解体的な出直しをはかることになる」という。 2日に公表された、第三者委員会の調査報告書で、経営手腕や多額の疑惑のカネについて厳しく批判された岩本氏に対して、周囲は辞任を勧めていたが、本人は態度を保留していた。 理事会では、過半数の同意があれば、理事長を解任できるため、岩本氏の理事長退任は不可避となった。 「週刊文春」ではジャーナリストの岩澤倫彦氏が8月1日、多額の不透明なカネや、高度医療に欠かせない集中治療室を崩壊させるなど、乱脈経営が際立っている東京女子医科大学について調査していた第三者委員会が、厳しい評価の報告書をまとめたことを報じた(#20)。 「女子医大の理事会は解散すべき、という第三者委員会の指摘に衝撃を受けました。これは岩本絹子理事長に対する実質的な辞任勧告だと思います」 といった女子医大関係者の声が聞こえてくるなど、東京女子医大を支配してきた女帝の進退に注目が集まっていた』、「「女子医大の理事会は解散すべき、という第三者委員会の指摘に衝撃を受けました。これは岩本絹子理事長に対する実質的な辞任勧告だと思います」、その通りだろう。

第三に、この続きを、8月8日付け文春オンライン「《東京女子医大“理事長解任”を決定》封印された内部告発「カネに強い執着心」「異論に報復人事」第三者委員会が暴いた女帝の正体「破壊された医療現場を死守する医師の矜持」 東京女子医の闇#22」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/72755
・『7日に開かれた東京女子医科大学の臨時理事会で、岩本絹子氏(77)が理事長を解任された。最後まで辞任を拒否した女帝は、約5億円かけて改装した理事長室の立ち入りを禁じられ、“赤い巨塔”から追放されたのである。 関係者によると、一連の不正行為で巨額の損失を受けた女子医大は、損害賠償請求と被害届を出す検討に入るという。 「ターニングポイントは文春報道。不正なカネの具体的な疑義を示しているのに客観的な調査をせず、疑いの当事者である理事長・岩本絹子氏らの主張を、大学の言い分として教職員、保護者、文科省に説明した。これはとんでもないこと」 一連の疑惑やガバナンスの調査を行った、第三者委員会の竹内朗弁護士はこう指摘した。高度医療に定評があった女子医大病院を、徹底的に破壊した女帝とは、何者だったのか? そして、不正の内部告発を生かさなかった人物の告白とは──』、「高度医療に定評があった女子医大病院を、徹底的に破壊した女帝とは、何者だったのか? そして、不正の内部告発を生かさなかった人物の告白とは──」、興味深そうだ。
・『女帝を退任に追い込んだ第三者委員会の報告書  現在77歳の岩本氏は、1973年に東京女子医大を卒業。8年後、東京・江戸川区で同級生A氏と共同で産婦人科医院を開業した。 今年3月29日、警視庁捜査二課が特別背任容疑で、岩本氏の自宅など関係先に一斉家宅捜索を行なった。家宅捜索が続く午後6時30分頃、黒のワゴン車に小柄な女性が乗り込んだ。フードを目深に下ろして顔は見えない。 待機していた報道カメラマンたちが、一斉にワゴン車に駆け寄って取り囲む。女性はフードを少し上げ、窓ガラスに並んだカメラのレンズを見回した。メガネの奥に光る、ギョロリとした大きな目。東京女子医大の女帝といわれる、岩本氏だった。 文部科学省はこの家宅捜索を重視して、一連の不正行為やガバナンスについて、独立した調査を行う第三者委員会の設置を東京女子医大に指導する。 第三者委員会には、去年まで検察ナンバー2だった山上秀明弁護士ら4人が選任された。これに合計20人の弁護士と、58人の公認会計士などが加わり、4月10日から女子医大関係者や取引先などの調査を開始。岩本氏のヒヤリングは延べ5回にわたったという。 そして8月2日、全247ページの調査報告書を公表、岩本氏を中心にした、不正な資金の流れを解明して、その責任を厳しく指摘した。 「岩本氏は、副理事長となって経営統括理事となったその瞬間から、資金の不正支出・利益相反行為の疑義を生ぜしめる行為に手を染めていたことになる。(中略)金銭に対する強い執着心と、本法人に対する忠実性の欠如を見て取ることができる」(調査報告書P236)』、「第三者委員会には、去年まで検察ナンバー2だった山上秀明弁護士ら4人が選任された。これに合計20人の弁護士と、58人の公認会計士などが加わり」、これ以上ないほど重厚な布陣には、心底驚かされた、
・『「不正に資金を還流させた」と認定  週刊文春が岩本氏らの“疑惑のカネ”を報道したのは、2022年4月。同年7月からは文春オンラインで、側近らを交えた不透明なカネの流れを追及してきた。(#1、#2、#3、#18、週刊文春電子版「疑惑のダミー会社と女帝をつなぐ『第三の女』と白ベンツ」など) 岩本氏らは文春報道について“フェイクニュースである”と強弁。形ばかりの調査を行い、教職員に配布した文書で、このように主張していた。 「記事で指摘された点は違法・不当なものではないとのことであり、既に執筆した記者等に対して厳重に抗議しておりますが、今後然るべき法的措置を講じる所存です」(令和4年6月10日付) 疑惑の一つは、岩本氏が会長を兼任する同窓会の至誠会から、女子医大に職員を出向させたとして給与を架空請求していた疑いである。 岩本氏は、女子医大の副理事長に就任した翌2015年、人事課、経理課、購買・管財課、建築設計室を管理する「経営統括部」を新設して、自ら担当理事に就き経営の実権を握る。その経営統括部に至誠会から職員を出向させ、女子医大が給与を負担していた。だが、業務実態はほとんどなかった。 第三者委員会の調査によると、総額約2.5億円(2015年1月~2020年6月)の給与は、専用の管理口座にプールされて、2021年3月には岩本氏の側近X(報告書ではE)や、側近Y(同F)らに各1000万円が支給されていた。この疑惑について、第三者委員会では次のように認定している。 「岩本氏は、本法人の理事長(副理事長)と至誠会の代表理事を兼任するという立場を利用し、本法人経営統括部で勤務していた者に対して、 至誠会という自身が大きな影響力を及ぼしていた存在を道具として不正に資金を還流させたものと認められる」(調査報告書P54)』、「岩本氏は、本法人の理事長(副理事長)と至誠会の代表理事を兼任するという立場を利用し、本法人経営統括部で勤務していた者に対して、 至誠会という自身が大きな影響力を及ぼしていた存在を道具として不正に資金を還流させた」、文春の調査報道の華々しい成果だ。
・『封印された内部告発  私立学校法では、「監事」に学校法人のガバナンスを監視する責任を定めている。実は2019年に、当時の評議員だった女子医大OGが、前述した出向職員の架空請求疑惑について、監事の一人に内部告発をしていたことが、取材で新たに判明した。 「至誠会の職員から『出向職員として自分の名前が使われている』という相談を受けました。それで2019年7月25日に、新宿のホテルのラウンジで監事の1人と会い、架空請求が行われている可能性が高いと話して、調査を依頼しました。 しかし何も調査はされず、監事からは『私たちがすべきことは冷静に岩本先生を支えることです。メールはこれを最後にさせていただきます』というメッセージが届きました。その時に内部告発は揉み消された、と思いました」(元評議員の医師) この監事は、岩本氏と女子医大の同級生で、現在は同大の名誉教授の肩書を持つ。 2019年に内部告発を受けた時、どのように対応したのか、話を聞いた。 「その頃、新宿のバーで会ってお話しはしました。ただ、内部告発と言える内容だったか……。申し訳ありませんが、はっきり覚えていません」(Qは聞き手の質問) Q:その頃は、岩本氏を信じていた? 「私は同級生として、彼女を守るつもりでいたので、絶対的に信頼していたんです。吉岡家(創立者一族)でもあるし。岩本さんの悪口を聞くと、『いや、彼女はそんな人じゃないから。本当はいい人だよ、優しい人だよ』と庇っていました」 Q:創立者一族だから特別扱い? 「そうです。彼女は学生の頃から、自分は吉岡家だというプライドがあって、『私は吉岡家だから、この大学を守っていく義務がある』みたいな感じで言っていました」 Q:他に内部告発は? 「文書が届きましたが、信じられなかったんです。まさかと思って。それをY(岩本氏の側近)に『書いてあることは本当?』と言って渡したら、調べてみますと。そして『全部嘘でした』という返事をくれました。今思うと、犯人に証拠を渡したようなものです」 Q:調査報告書を読んでどう感じた? 「監事として責任を非常に感じています。ただ、知る術がないわけです。彼女は裏で全部やっていたわけだし、もちろん理事会にも出さない。(疑惑のカネは)文春の記事で分かったくらいです。本当にびっくりしましたけど」 岩本氏に対する内部告発を側近に渡せば、どのような結果になるのか、予想はつくはずだ。同級生や創立者一族という理由で「守る」というのであれば、監事としての職責を放棄していたことに等しい』、「岩本氏に対する内部告発を側近に渡せば、どのような結果になるのか、予想はつくはずだ。同級生や創立者一族という理由で「守る」というのであれば、監事としての職責を放棄していたことに等しい」、その通りだ。
・『「給与の二重払い」と特別背任容疑  至誠会の出向契約は、2020年1月に元宝塚トップスター・彩輝なお氏の親族が経営するケネス&セルジオ社との業務委託契約に切り替えられた。岩本氏は無名時代から彩輝氏の大ファンで、理事長就任のパーティでは花束の贈呈を受けている間柄である。 女子医大との業務委託契約は月額350万円。そのうち側近Xは月額給与200万円、側近Yは50万円、その他にXらの飲食等にケネス社名義のクレジットカードで月額70万円が用意された。マージンとしてケネス社に支払われたのは、月額30万円のみ。 その後、岩本氏の専属運転手である甥の人件費として、女子医大は月額60万円を同社に追加で支払っていた。費用総額は3年間で1億円超。週刊文春が「利益相反の疑いがある」として報道すると、ケネス社の意向で業務委託契約はすぐに解除された。(※すべて税別の金額) 文春報道を受けて、女子医大は文科省に対し、「助言を受けた実績があることを踏まえ、ケネス社を選定した」などと報告していた。しかし、同社と女子医大にそれまで取引実績はなく、“虚偽報告”だったと第三者委員会は指摘、側近XとYが、同社と至誠会から同時に給与を得ていたことは、「給与の二重払い」だと認定した。警視庁が捜査している、特別背任容疑が成立する可能性が高い。 また、岩本氏が経営していた産婦人科病院の女性従業員Z(報告書ではO)が、業務実態のないダミー会社の社長を務め、女子医大の受注業者からキックバックを受けた疑惑もある。(週刊文春電子版オリジナル「疑惑のダミー会社と女帝をつなぐ『第三の女』と白ベンツ」) 岩本氏が女子医大の実権を握った2015年から、大型施設のスクラップ&ビルドが相次いだ。 その際、側近Xが解体業者や不動産会社、設計事務所などに働きかけ、Zのダミー会社と多額のコンサルタント契約を結ばせていた。解体業者との契約だけでも1億円を超す。 この疑惑について、第三者委員会は厳しく批判した。 「E氏(側近X)の行為は、職務上の地位を悪用して狡猾。 岩本氏はヒアリングにおいて『知らなかった』旨を述べたが、一連の還流に岩本氏が全く関与していなかったとは認めがたく、仮に岩本氏が知らなかったとしても、経営統括理事であった岩本氏には重大な管理責任が認められる」(調査報告書P76より要約)』、「岩本氏が女子医大の実権を握った2015年から、大型施設のスクラップ&ビルドが相次いだ。 その際、側近Xが解体業者や不動産会社、設計事務所などに働きかけ、Zのダミー会社と多額のコンサルタント契約を結ばせていた。解体業者との契約だけでも1億円を超す。 この疑惑について、第三者委員会は厳しく批判」、なるほど。
・『経営危機を招いた「高度医療に対する関心の薄さ」  現在、女子医大病院は病床稼働率が約5割と、危機的な経営が続く。 海外から専門医を招聘するなど、苦労の末に立ち上げた小児集中治療室(PICU)について、岩本氏は収益性や専門医の給与額を理由に、わずか半年で解体した。これが引き金となって、成人の集中治療室も機能停止となり、臓器移植がストップ。医療ミスによる死亡事故も発生するなど、医療安全の体制が崩壊してしまった。 第三者委員会は、岩本氏について「大学病院という高度医療機関において臨床に携わった経験も実績も乏しく、本病院がPICUなど高度医療施設を備えて、患者や地域医療に貢献しようとすることに対する理解も関心も薄かった」と指摘。 5日に行われた、女子医大の教職員に向けた説明会で、副委員長の竹内弁護士は次のように補足した。 「PICU について、医療安全の確立とか、中長期的な業績の向上、医療現場の士気向上よりも、目先の儲かる、儲からないという話に経営判断が間違ってしまった。 岩本氏がやってきた経営は、一言で言うと人件費のカット。それによって、現場が大きく疲弊した。人的資源を破壊し、組織の持続可能性を危機にさらす財務施策が、現在のような窮状に追い込んだものであり、経営責任は極めて重い」』、「苦労の末に立ち上げた小児集中治療室(PICU)について、岩本氏は収益性や専門医の給与額を理由に、わずか半年で解体した。これが引き金となって、成人の集中治療室も機能停止となり、臓器移植がストップ。医療ミスによる死亡事故も発生するなど、医療安全の体制が崩壊してしまった。 第三者委員会は、岩本氏について「大学病院という高度医療機関において臨床に携わった経験も実績も乏しく、本病院がPICUなど高度医療施設を備えて、患者や地域医療に貢献しようとすることに対する理解も関心も薄かった」と指摘・・・岩本氏がやってきた経営は、一言で言うと人件費のカット。それによって、現場が大きく疲弊した。人的資源を破壊し、組織の持続可能性を危機にさらす財務施策が、現在のような窮状に追い込んだものであり、経営責任は極めて重い」、その通りだ。
・『多くの教職員の前で失脚した女帝  「この度は世間をお騒がせしてしまい、大変申し訳なく思い、本日は理事一同のお詫びということで参集いたしました。誠に申し訳ありませんでした」 ステージの上に立った理事長の岩本氏は、一応の謝罪を述べると頭を下げた。一人を除き勢揃いした理事と監事もそれに続く。 8月5日午後6時過ぎ、850人収容の東京女子医大・弥生記念講堂は、集まった教職員でほぼ満席。第三者委員会の調査報告書を受けて、岩本氏ら経営陣の進退に関心が集まっていた。 「厳しい内容でございますが、真摯に受け止めて改善していくことをお約束いたします。しかしながら弁護士に伺いましたところ、(調査報告書には)事実と多少違うところもあるし、このまま全てを(受け入れるのは)女子医大のイメージが非常に悪い。学生や職員のために、内容を一旦検証、精査して、私や理事監事の辞任も含めて検討させていただきたい」 会場がどよめいた。第三者委員会の指摘を受けても岩本氏は何も反省せず、理事長の座に残る意向を示したのである。だが、この発言を受けてすぐにマイクを握った人がいた。 「すみません、理事の石黒からですが、理事長先生がおっしゃった内容は、理事・監事全員の総意ではございません」 続いて立った肥塚直美常務理事(病院長を兼務)は、第三者委員会の調査報告書が公開された翌3日、岩本氏を除き、理事と監事が集まったことを明かした。協議の結果、岩本氏には理事長を辞職してもらうことが妥当、理事たちも経営責任を明確にするため、全員辞職することになったという。 そして、石黒直子理事が岩本氏の発言を改めて否定した。 「調査報告書に更なる検討を立ち上げることは、いたしません。しっかり第三者委員会に検討を行っていただきましたので、これに則って我々はやっていく。ご賛同の理事・監事の先生は、立っていただけますか」 促されて、ステージ上にいた理事と監事の全員が立ち上がった。女子医大を支配してきた岩本氏に、役員たちが反旗を翻した瞬間である。 この時、岩本氏は憮然とした表情を浮かべた。側近中の側近として、これまで最も積極的に岩本氏を擁護してきた石黒理事に裏切られ、命運は尽きた。 たとえ自ら辞任しなくても、女子医大の規約では、役員の過半数の同意で理事長職を解任することは可能なので、岩本氏の失脚はこの時に確定したのである』、「第三者委員会の調査報告書が公開された翌3日、岩本氏を除き、理事と監事が集まったことを明かした。協議の結果、岩本氏には理事長を辞職してもらうことが妥当、理事たちも経営責任を明確にするため、全員辞職することになったという・・・しっかり第三者委員会に検討を行っていただきましたので、これに則って我々はやっていく。ご賛同の理事・監事の先生は、立っていただけますか」 促されて、ステージ上にいた理事と監事の全員が立ち上がった。女子医大を支配してきた岩本氏に、役員たちが反旗を翻した瞬間である」、最後はもろいものだ。
・『患者を守る若き女医の静かな怒り  質疑応答では、一人の女子医大OGの医師が、こんな問いを投げかけた。 「私は循環器内科で 10 年目のスタッフです。赤ちゃんの頃に女子医大で先天性の心臓疾患手術を受けて、ずっとここに通って死ぬ時もここがいいという患者さんの主治医をしています。だから、あなた方に責任を問う必要がある。 理事長のお金の問題だけじゃなく、この数年に女子医大の内部で起きたことについて、説明があまりに足らないというのが今の感想です」 これに岩本氏は相変わらずの持論を述べた。 「調査報告書では全部、ダメダメダメって書いてあるわけですよね。しかも推測で書いてあるとこもありまして。これを受け入れたら、特に学生さんたちが可哀想だ、という声も上がっております。(報告書を)全部のんだら、本当に女子医大ってどういう学校だって話になります」 「この数年、理事長と学長が代わってから、ポリクリ(医学生の臨床実習)に回ってくる学生は、『学校が楽しくない』と言っています。 学生が可哀想というのは、こっちの台詞ですよ。こんな混乱を招いて、学生に面と向かって説明したことはありますか」(前出・循環器内科の女医) 「学生に関して、私はよく分かりませんが……」(岩本氏) 他人事のような回答に、会場からは失笑がもれる。この日も岩本氏は最後まで、辞任するとは明言しなかった』、「「学生に関して、私はよく分かりませんが……」(岩本氏) 他人事のような回答に、会場からは失笑がもれる」、なるほど。
・『イバラの道の先にある東京女子医大の未来  第三者委員会の報告書の中には、呆れるようなことも記載されていた。 岩本氏は、至誠会の会長を去年解任されるまで、自らに対して至誠会から中元と歳暮として3万円分の商品券を贈らせていたのである。 コロナ禍だった2020年の夏、女子医大は職員のボーナスカットを宣言して、社会の大きな批判を浴びた。その後、ボーナス支給に方針を転換したが、前年のほぼ半分の1ヶ月分でしかない。 女子医大の教職員は、この10年ほど給与のベースアップはほとんどない。しかし、今回の調査で岩本氏の報酬だけは、2015年当時の約1800万円から、2023年に約3200万円と72%も増加させていたことが分かった。岩本氏の報酬額を上げたのは「本人の判断」と関係者は証言している。 また、報告書にはこんな記述もある。 「(岩本氏は)自身の考えとは異なる意見を述べる者に対しては、自身の権力基盤を脅かす存在として敵視し、組織から排除することを繰り返し行った。それまでどんなに気心が知れている間柄であっても、一度異論を述べた者を突如として敵視し、(中略)報復と疑われる不適切な人事措置を講じてまで、組織から排除した」(調査報告書P236) 週刊文春が2022年に報道した“疑惑のカネ”をめぐって、取材に協力したとして2人の事務職員が、この報復的な人事措置によって懲戒解雇の処分を受けた。同様に合理性を欠いた理由で懲戒処分を連発することで、岩本氏は恐怖政治による支配を続けてきたのである。 私たちが長期間にわたって「東京女子医大の闇」の連載を続け、女帝らの問題を追及してきたのは、この大学病院を必要とする患者が数多く存在するからだ。高度医療は一朝一夕に実現しない。 そして惨憺たる診療現場に踏みとどまり、患者を守り続けている医療スタッフがいる以上、スラップ訴訟を受けても引き下がるつもりはなかった。 女帝が退場しても、医療スタッフの確保や財政の立て直しなど、女子医大にはイバラの道が続く。 これから先も、私たちはしっかり見守り続けるつもりだ』、「コロナ禍だった2020年の夏、女子医大は職員のボーナスカットを宣言して、社会の大きな批判を浴びた。その後、ボーナス支給に方針を転換したが、前年のほぼ半分の1ヶ月分でしかない。 女子医大の教職員は、この10年ほど給与のベースアップはほとんどない。しかし、今回の調査で岩本氏の報酬だけは、2015年当時の約1800万円から、2023年に約3200万円と72%も増加させていたことが分かった・・・女帝が退場しても、医療スタッフの確保や財政の立て直しなど、女子医大にはイバラの道が続く。 これから先も、私たちはしっかり見守り続けるつもりだ」、今後の文春の監視に期待したい。 
タグ:東洋経済オンライン「卓越大内定の東北大、研究資金の申請で虚偽疑惑 「名ばかりテニュアトラック」で卓越研究員採択」 (その16)(卓越大内定の東北大、研究資金の申請で虚偽疑惑 「名ばかりテニュアトラック」で卓越研究員採択、「解体的出直しをはかる」“東京女子医大の闇”女帝・岩本絹子氏の理事長退任が確定的に!「7日に臨時理事会が開催され、理事長辞職を勧告予定」 東京女子医の闇#21、《東京女子医大“理事長解任”を決定》封印された内部告発「カネに強い執着心」「異論に報復人事」第三者委員会が暴いた女帝の正体「破壊された医療現場を死守する医師の矜持」 東京女子医の闇#22) 大学 「若手研究者本人が結果さえ出せば必ずテニュアになれるというスキームで、アカデミアの世界では国際的に認知されている。当然、文部科学省もそのように明確に定義している。 しかし、東北大学は、無期雇用のポストをあらかじめ用意していない「名ばかりテニュアトラック」で卓越研究員事業に申し込み、文科省は実態を問題視せずに採択していたようだ・・・ 東北大学の制度は、名称にテニュアトラックという言葉を使っているが、「本来の制度とは別物の独自のもので、元から研究者にはテニュア審査の機会を与えるとは約束していない」などと説明していた」、なるほど。 「東北大学テニュアトラック制度はテニュアトラック制度ではないが、例外的に一部、本来のテニュアトラックでの雇用が存在していたことになる」、なるほど。 「こうしたやり方を許せば研究の世界でのモラルハザード(道徳観や倫理観の欠如)につながる。東北大学には組織体として問題があり、国際卓越研究大学に値するものではない」と指摘・・・東北大学は新たに設けられた「国際卓越研究大学」に、今2024年度に認定される見通しだ。そうなれば、東京大学や京都大学を差し置いて、東北大学が卓越大の第1号となり、政府が設立したファンドから年間数百億円規模の支援を受けられる。当然、それに見合う高いガバナンスが求められるはずだ」、 こんなに問題のある「東北大学」を「卓越大の第1号」とすべきではない。「卓越大」制度に泥を塗ることになりかねない。 文春オンライン「「解体的出直しをはかる」“東京女子医大の闇”女帝・岩本絹子氏の理事長退任が確定的に!「7日に臨時理事会が開催され、理事長辞職を勧告予定」 東京女子医の闇#21」 「「女子医大の理事会は解散すべき、という第三者委員会の指摘に衝撃を受けました。これは岩本絹子理事長に対する実質的な辞任勧告だと思います」、その通りだろう。 文春オンライン「《東京女子医大“理事長解任”を決定》封印された内部告発「カネに強い執着心」「異論に報復人事」第三者委員会が暴いた女帝の正体「破壊された医療現場を死守する医師の矜持」 東京女子医の闇#22」 「高度医療に定評があった女子医大病院を、徹底的に破壊した女帝とは、何者だったのか? そして、不正の内部告発を生かさなかった人物の告白とは──」、興味深そうだ。 「第三者委員会には、去年まで検察ナンバー2だった山上秀明弁護士ら4人が選任された。これに合計20人の弁護士と、58人の公認会計士などが加わり」、これ以上ないほど重厚な布陣には、心底驚かされた、 「岩本氏は、本法人の理事長(副理事長)と至誠会の代表理事を兼任するという立場を利用し、本法人経営統括部で勤務していた者に対して、 至誠会という自身が大きな影響力を及ぼしていた存在を道具として不正に資金を還流させた」、文春の調査報道の華々しい成果だ。 「岩本氏に対する内部告発を側近に渡せば、どのような結果になるのか、予想はつくはずだ。同級生や創立者一族という理由で「守る」というのであれば、監事としての職責を放棄していたことに等しい」、その通りだ。 「岩本氏が女子医大の実権を握った2015年から、大型施設のスクラップ&ビルドが相次いだ。 その際、側近Xが解体業者や不動産会社、設計事務所などに働きかけ、Zのダミー会社と多額のコンサルタント契約を結ばせていた。解体業者との契約だけでも1億円を超す。 この疑惑について、第三者委員会は厳しく批判」、なるほど。 「苦労の末に立ち上げた小児集中治療室(PICU)について、岩本氏は収益性や専門医の給与額を理由に、わずか半年で解体した。これが引き金となって、成人の集中治療室も機能停止となり、臓器移植がストップ。医療ミスによる死亡事故も発生するなど、医療安全の体制が崩壊してしまった。 第三者委員会は、岩本氏について「大学病院という高度医療機関において臨床に携わった経験も実績も乏しく、本病院がPICUなど高度医療施設を備えて、患者や地域医療に貢献しようとすることに対する理解も関心も薄かった」と指摘・・・ 岩本氏がやってきた経営は、一言で言うと人件費のカット。それによって、現場が大きく疲弊した。人的資源を破壊し、組織の持続可能性を危機にさらす財務施策が、現在のような窮状に追い込んだものであり、経営責任は極めて重い」、その通りだ。 「第三者委員会の調査報告書が公開された翌3日、岩本氏を除き、理事と監事が集まったことを明かした。協議の結果、岩本氏には理事長を辞職してもらうことが妥当、理事たちも経営責任を明確にするため、全員辞職することになったという・・・しっかり第三者委員会に検討を行っていただきましたので、これに則って我々はやっていく。ご賛同の理事・監事の先生は、立っていただけますか」 促されて、ステージ上にいた理事と監事の全員が立ち上がった。女子医大を支配してきた岩本氏に、役員たちが反旗を翻した瞬間である」、最後はもろいものだ。 「「学生に関して、私はよく分かりませんが……」(岩本氏) 他人事のような回答に、会場からは失笑がもれる」、なるほど。 「コロナ禍だった2020年の夏、女子医大は職員のボーナスカットを宣言して、社会の大きな批判を浴びた。その後、ボーナス支給に方針を転換したが、前年のほぼ半分の1ヶ月分でしかない。 女子医大の教職員は、この10年ほど給与のベースアップはほとんどない。しかし、今回の調査で岩本氏の報酬だけは、2015年当時の約1800万円から、2023年に約3200万円と72%も増加させていたことが分かった・・・女帝が退場しても、医療スタッフの確保や財政の立て直しなど、女子医大にはイバラの道が続く。 これから先も、私たちはしっか り見守り続けるつもりだ」、今後の文春の監視に期待したい。
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認知症(その4)(「アルツハイマーは4割が誤診だった?」...認知症薬が利かなくてもこれまで原因や対策が分からなかった「ヤバすぎる理由」、「甲状腺機能低下症」「てんかん」...認知症と誤診されやすい病気の「特徴的な症状」と「正確な検査方法」、日本人に「認知症がぶっちぎりで多い」のはナゼなのか? 最新脳科学でわかった 黒幕とされる「ある脳内物質」の名前、日本で認知症が「ぶっちぎりで多い」のは「遺伝のせい」なのか…?日本人が「ストレス中毒でボケる」悲しすぎる理由) [生活]

認知症については、本年6月10日に取上げた。今日は、(その4)(「アルツハイマーは4割が誤診だった?」...認知症薬が利かなくてもこれまで原因や対策が分からなかった「ヤバすぎる理由」、「甲状腺機能低下症」「てんかん」...認知症と誤診されやすい病気の「特徴的な症状」と「正確な検査方法」、日本人に「認知症がぶっちぎりで多い」のはナゼなのか? 最新脳科学でわかった 黒幕とされる「ある脳内物質」の名前、日本で認知症が「ぶっちぎりで多い」のは「遺伝のせい」なのか…?日本人が「ストレス中毒でボケる」悲しすぎる理由)である。

先ずは、本年7月25日付け現代ビジネス「「アルツハイマーは4割が誤診だった?」...認知症薬が利かなくてもこれまで原因や対策が分からなかった「ヤバすぎる理由」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/134222
・『人が認知症になるかどうかは、体質や遺伝といった「運命」で決まると思われてきた。だが最新医学の知見によれば、決してそれだけではない。日々の積み重ねが健やかな脳を作るのだ。 1章記事『日本人に「認知症がぶっちぎりで多い」のはナゼなのか? 最新脳科学でわかった、黒幕とされる「ある脳内物質」の名前』、2章記事『「AB型で右利き」の人は認知症になりやすい! 最新研究でわかった「驚きの理由」』、3章記事『87歳の医師が「認知症にならないために実践する」毎日の生活ルーチンがヤバすぎる…!』より続く』、いずれも興味深そうだ。
・『最新の治療薬が効かない  ここまで認知症の原因やその予防法について見てきた。しかし、いざ認知症になってしまったら、その先はもう医師による治療や薬に頼るほかない。 認知症治療は日々、進歩を遂げている。その象徴と言えるのが、アルツハイマー病の治療薬であるレカネマブの登場だ。 もちろん、これまでもアリセプトやメマンチンなどアルツハイマー病の薬はあった。とはいえ、これらは病気によって減少する脳の神経細胞の働きを助ける薬で、症状を緩和させる対症療法的なものだった。 一方でレカネマブはアルツハイマー病の原因物質の1つと考えられている「アミロイドβ」に直接働きかける。 ところが、このレカネマブをはじめとした抗アミロイドβ抗体薬の治験をめぐって重大な事実が判明した。新潟大学脳研究所助教の春日健作氏が説明する。 「治療効果を示さない患者が多数出ました。なんとその原因の一つは、アルツハイマー病と診断されて集められた治験者の2割程度が、実際にはアルツハイマー病ではなかったからなんです」 誤診のせいで、正確な薬効を測ることができなかったというのだ』、「アルツハイマー病と診断されて集められた治験者の2割程度が、実際にはアルツハイマー病ではなかったから」、「アルツハイマー病との診断」がそんなに頼りないものとは驚きだ。
・『4割が誤診?  こうした事態から、研究者たちの間では認知症をより正確に診断する方法が模索され始めた。そこで昨年春、春日氏らの研究グループは、認知症患者から検査目的で採取した脳脊髄液を解析した。 その結果、日常診療でアルツハイマー病と診断された患者のなんと4割が誤診、つまりアルツハイマー病ではない可能性が明らかになったのだ。衝撃的な数字だが、なぜこのような結果となったのか。春日氏が語る。 「アルツハイマー病は『脳の病気』なので、本当は脳を解剖しなければ、正確にアルツハイマー病なのかそうでないかは診断できません。しかし、生前に脳を解剖することはできない。これまでの診断は医師の力量に頼るところが大きかったゆえに誤診もたくさんあったということなんです」 そもそも「認知症」は病名ではない。認知機能が失われ、かつ日常生活に支障が生じている「状態」の総称である。 そして、その原因となる疾患は70以上に及び、専門医でも見極めは容易ではないのだ。メモリークリニックお茶の水院長の朝田隆氏が説明する。 「認知症は、実は非常に歴史の浅い疾患です。私が医師になった当時の健康寿命は60代後半くらいで、『ボケる』前に亡くなる人が多かったので、医師としてあまり認知症について勉強・研究する必要がなかった。高齢化が進み、該当する症状を持つ人が増えたことで、医師たちも認知症を認識するようになりました。そのため、本当の意味での専門医が少ないのです」』、「日常診療でアルツハイマー病と診断された患者のなんと4割が誤診、つまりアルツハイマー病ではない可能性が明らかになった・・・そもそも「認知症」は病名ではない。認知機能が失われ、かつ日常生活に支障が生じている「状態」の総称である。 そして、その原因となる疾患は70以上に及び、専門医でも見極めは容易ではないのだ」、なるほど。
・『薬が効いているのか確かめない  認知症を最初に診るのが大抵、町医者であることも誤診が多発する原因の1つだ。くどうちあき脳神経外科クリニック院長の工藤千秋氏が語る。 「認知症の原因の約3分の2がアルツハイマー病だと言われています。そのため大半の医師は、物忘れやうつ状態など認知症のような症状が見られる患者が診察に来た場合、アルツハイマー病を疑い、とりあえずアリセプトなどの認知症治療薬を処方します。 そこまでならまだいい。問題なのは3、4ヵ月経過を見て、処方した薬が効いているかどうかを確かめないことです。効果がなければ、他の疾患かもしれないと見方を変えなければいけない。 ところが、なかには認識を改めず、薬を出し続けている医師もいます。当院にも5年も効かない薬を処方され続けた患者さんが来院されたことがあります。認知症は3年スパンで進行していきますから、もう初期の状態をとっくに通り過ぎてしまっていました」 同じ認知症でも原因疾患が異なれば、治療法も異なる。誤診によって効きもしない薬をずっと処方され続け、無駄な医療費を払い続けた挙げ句、改善するどころか悪化させてしまうこともありうるのだ。 「週刊現代」2024年7月20・27日合併号より 後編記事『「甲状腺機能低下症」「てんかん」...認知症と誤診されやすい病気の「特徴的な症状」と「正確な検査方法」』へつづく』、「「認知症の原因の約3分の2がアルツハイマー病だと言われています。そのため大半の医師は、物忘れやうつ状態など認知症のような症状が見られる患者が診察に来た場合、アルツハイマー病を疑い、とりあえずアリセプトなどの認知症治療薬を処方します・・・問題なのは3、4ヵ月経過を見て、処方した薬が効いているかどうかを確かめないことです。効果がなければ、他の疾患かもしれないと見方を変えなければいけない。 ところが、なかには認識を改めず、薬を出し続けている医師もいます・・・同じ認知症でも原因疾患が異なれば、治療法も異なる。誤診によって効きもしない薬をずっと処方され続け、無駄な医療費を払い続けた挙げ句、改善するどころか悪化させてしまうこともありうるのだ」、いい加減な「医師」にかかると悲劇だ。

次に、7月25日付け現代ビジネス「「甲状腺機能低下症」「てんかん」...認知症と誤診されやすい病気の「特徴的な症状」と「正確な検査方法」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/134223
・『人が認知症になるかどうかは、体質や遺伝といった「運命」で決まると思われてきた。だが最新医学の知見によれば、決してそれだけではない。日々の積み重ねが健やかな脳を作るのだ。 前編記事『「アルツハイマーは4割が誤診だった?」...認知症薬が利かなくてもこれまで原因や対策が分からなかった「ヤバすぎる理由」』より続く。 ▽実は甲状腺の病気だった(前出の春日氏は、認知症の原因疾患は大きく3つに分類されるという。①脳の神経細胞がゆっくりと死んでゆく「神経変性疾患」。アルツハイマー型やレビー小体型、前頭側頭型がこれにあたる。②脳の血管の病気が原因である「脳血管性認知症」。脳梗塞や脳出血によって起こる。③「その他の原因」。甲状腺機能の低下やビタミンB不足などによって起こる。 認知症は一般的に「治らない病気」だと思われている。しかし、それは脳自体が変性してしまう①の場合のこと。②、③については治る可能性もあるのだ。ゆえに診断を誤ると、治療のチャンスを逃してしまう場合もある。 埼玉森林病院院長の磯野浩氏が実際にあったケースを紹介する。 『認知症が進んでいるようなので診てほしい』と、ある母娘が受診に来ました。母親は長年ひとり暮らしをしていて、数年前から徐々に進行する物忘れに加え、誰もいないはずの2階に人が住んでいると訴えてきたため、近隣のメンタルクリニックを受診したところ、『認知症』と診断された。それで投薬治療を続けたのですが、症状は悪化する一方。そこで私のところに来たということでした。 私は一目見て、『これはアルツハイマー病などではなさそうだ』と気づきました。66歳と聞いていたのに、私の目には90代に映ったからです。毛髪は広範囲に抜け落ち、全身がむくんでいます。これは老化ではなく、病気によるものと判断し、血液検査をしました。すると、『甲状腺機能低下症』であることが判明したのです。これは適切な治療で改善が見込める病気です。この母親も、治療で目覚ましい回復を遂げました。とはいえ、もっと早く気づいていれば、早期に回復したはずです」) ▽てんかんやADHDを認知症と誤診(前出の工藤氏は、てんかんが誤診に繋がりがちだと言う。てんかんは子供の病気と勘違いしている人も多いが、60歳以降にも増える病気だ。 「高齢者のてんかんは、子供が起こすような『痙攣発作』と症状が異なり分かりづらい。突然ぼーっとして、呼びかけても反応がなく、口をもごもごさせている。数秒経ってから意識が戻る。実はこれはてんかんの発作なのです。医学的には『複雑部分発作』と言います。 しかし、こうした所見を知らない医師が物忘れだけに気づき、認知症の診断をくだし、薬を処方してしまうのです」 またADHD(発達障害の一種)も認知症と間違われやすい病気だ。前出の朝田氏が語る。 「ADHDの方でも、学校生活や社会人生活を通じて症状が落ち着きます。ところが50歳を超え、脳の機能が衰えてくると、再び症状が出てきてしまう。周囲は『いよいよボケたか……』と勘違いし、病院へ連れて行かれ、誤診に繋がるのです」 心配な症状が出たので向かった、あるいは家族に連れて行かれた病院で「認知症」と誤診されてはたまったものでない。) ▽正確な検査をしなければ断定できない(逆に認知症がまったく別の病気と誤診される場合もある。典型的なのがうつ病だ。朝田氏が続けて説明する。 「レビー小体型認知症では、初期にうつ症状が出やすいので、老人性うつと誤診されることが多いのです」 とある認知症専門医は匿名を条件に、メンタルクリニックの対応に苦言を呈する。 「一部のメンタルクリニックには、なんでもうつ病にしたがる医師がいます。本来、認知症が疑われる患者が来たら、MRIを撮ったり、脳血流検査をしたり、正確な検査をしなければ断定できないはずなのに、『うつ病だから』と間違った治療を施してしまう。 高齢者に処方されることの多い抗うつ剤に、パキシル、ルボックスなどのSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)がありますが、これらを飲み続けることで認知症が悪化したり、複雑化したりすることもあります」』、「「一部のメンタルクリニックには、なんでもうつ病にしたがる医師がいます。本来、認知症が疑われる患者が来たら、MRIを撮ったり、脳血流検査をしたり、正確な検査をしなければ断定できないはずなのに、『うつ病だから』と間違った治療を施してしまう。 高齢者に処方されることの多い抗うつ剤に、パキシル、ルボックスなどのSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)がありますが、これらを飲み続けることで認知症が悪化したり、複雑化したりすることもあります」、恐ろしいことだ。
・『最新の検査方法  こうした誤診を避けるためにはどうしたらよいか。朝田氏は認知症専門医へ早期の受診を勧める。 「たとえば日本老年精神医学会と日本認知症学会、この2つの学会が『認知症専門医の集まり』です。ホームページに医師の名前と医療機関名が掲載されていますから、調べてみてください」 認知症の中でもっとも多いアルツハイマー病では、さまざまな検査法の開発が進んでいる。前出の春日氏が説明する。 「最近ではアルツハイマー病の原因物質を可視化する『PET検査』が使われています。原因物質といわれる『アミロイドβ』や『タウ』といったたんぱく質が、脳にどれだけたまっているかを確認できます。 また脳脊髄液や血液でアルツハイマー病を診断できる『バイオマーカー検査』も研究されています。これらの検査により、高精度で脳内の変化を捉えられるようになりました。 これらの検査は現状、一部のみが保険適用で、受けられる医療機関も限られていますが、できる限り設備や診察環境が整った病院を探すのが良いでしょう」 認知症にならないための暮らし方を日頃から心掛け、いざなってしまったら、適切な病院で診断を受ける。真の意味で「認知症にならない」ためにはこの2つが重要なのだ。 「週刊現代」2024年7月20・27日合併号より 1章のはじめから読む『日本人に「認知症がぶっちぎりで多い」のはナゼなのか? 最新脳科学でわかった、黒幕とされる「ある脳内物質」の名前』へつづく』、「「最近ではアルツハイマー病の原因物質を可視化する『PET検査』が使われています。原因物質といわれる『アミロイドβ』や『タウ』といったたんぱく質が、脳にどれだけたまっているかを確認できます。 また脳脊髄液や血液でアルツハイマー病を診断できる『バイオマーカー検査』も研究されています。これらの検査により、高精度で脳内の変化を捉えられるようになりました。 これらの検査は現状、一部のみが保険適用で、受けられる医療機関も限られていますが、できる限り設備や診察環境が整った病院を探すのが良いでしょう」」なるほど。

第三に、7月25日付け現代ビジネス「日本人に「認知症がぶっちぎりで多い」のはナゼなのか? 最新脳科学でわかった、黒幕とされる「ある脳内物質」の名前」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/134102
・『人が認知症になるかどうかは、体質や遺伝といった「運命」で決まると思われてきた。だが最新医学の知見によれば、決してそれだけではない。日々の積み重ねが健やかな脳を作るのだ』、興味深そうだ。
・『認知症は「不機嫌」から始まる  なんだかイライラすることが多くなった。スーパーやコンビニのレジで、少し焦ってしまうことがある。睡眠時間が短くなり、眠りが浅くなった—。最近そんなふうに感じているなら、あなたの脳で、認知症のリスクが急速に高まっているサインかもしれない。 「日本人はほかの国の人と比べて、悲観的になりやすくストレスを溜めやすい傾向があります。じつは近年、ストレスを感じやすい人ほど、認知症を引き起こす脳内の老廃物『アミロイドβ』が増えやすいことがわかってきているのです」 こう語るのは、オーストラリア・シドニー大学の脳・精神センターで認知症を研究しているファン・ユンテ氏だ。 日本人のうち認知症患者が占める割合は、1000人あたり23・3人と、じつは世界で最も多い。先進国(OECD加盟国)の平均は1000人あたり14・8人。いくら日本が高齢化大国とはいえ、あまりに多すぎると思わないだろうか。 その隠れた理由として、研究者たちが注目しているのが「ストレスと認知症の関係」なのだ。なかでも、ストレスと密接なかかわりをもつ「ある脳内物質」が、黒幕と目されている。 「脳のほぼ中心にある、視床下部というところから分泌されるオレキシンです。オレキシンは別名『ストレスホルモン』とも呼ばれ、ストレスを感じたり、夜にしっかり眠れなかったりすると増えることが知られています。 このオレキシンは不眠症の患者などで特に多いことが分かっていましたが、私たちの研究によると、アルツハイマー型認知症の患者の脳内でも増えていると判明したのです」(ファン氏)』、「日本人のうち認知症患者が占める割合は、1000人あたり23・3人と、じつは世界で最も多い。先進国(OECD加盟国)の平均は1000人あたり14・8人・・・オレキシンは別名『ストレスホルモン』とも呼ばれ、ストレスを感じたり、夜にしっかり眠れなかったりすると増えることが知られています。 このオレキシンは不眠症の患者などで特に多いことが分かっていましたが、私たちの研究によると、アルツハイマー型認知症の患者の脳内でも増えていると判明したのです」、なるほど。
・『全ての原因は「脳内物質」にあり  日本人は韓国人と並んで、世界でも最も「ストレスを感じている」という人が多いとの調査がある。加えて、睡眠時間を見ると、OECD平均が8時間25分なのに対し、日本人は7時間22分で加盟国最短となっている。 つまりは、こういうことだ。日本人は世界一ストレスを感じやすく、世界一寝不足で、そして世界一ボケやすい国民である——そして、これらの原因はすべて、オレキシンのせいかもしれない。 オレキシンは当初、脳内の「食欲中枢」で見つかったため、食欲を制御する物質と考えられていた。ところが、のちに食欲だけでなく、ストレスや睡眠をコントロールする働きも持ちあわせていることが分かった。おくむらメモリークリニック理事長の奥村歩氏が言う。 「オレキシンは、ひとことで言うと『脳を覚醒させる物質』です。かつて私たち人間は、クマやヘビといった外敵と遭遇したとき、脳を目覚めさせ、筋肉や内臓を活性化させて戦闘モードに入っていました。そのスイッチこそオレキシンなのです。 この働きは今も生きていて、仕事や作業をして集中力を働かせると、脳内でオレキシンが分泌される。そのときに、副産物としてアミロイドβも増えてしまうのです」 「週刊現代」2024年7月20・27日合併号より さらに、日本人にはこのメカニズムが働きやすくなる「やむにやまれぬ事情」もある。その詳細を後編【日本で認知症が「ぶっちぎりで多い」のは「遺伝のせい」なのか…?日本人が「ストレス中毒でボケる」悲しすぎる理由】で解説しよう。) ▽「ストレス認知症」にならないための10カ条(リンク先参照)』、「「オレキシンは、ひとことで言うと『脳を覚醒させる物質』です。かつて私たち人間は、クマやヘビといった外敵と遭遇したとき、脳を目覚めさせ、筋肉や内臓を活性化させて戦闘モードに入っていました。そのスイッチこそオレキシンなのです。 この働きは今も生きていて、仕事や作業をして集中力を働かせると、脳内でオレキシンが分泌される。そのときに、副産物としてアミロイドβも増えてしまうのです」、なるほど。

第四に、7月25日付け現代ビジネス「日本で認知症が「ぶっちぎりで多い」のは「遺伝のせい」なのか…?日本人が「ストレス中毒でボケる」悲しすぎる理由」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/134104
・『人が認知症になるかどうかは、体質や遺伝といった「運命」で決まると思われてきた。だが最新医学の知見によれば、決してそれだけではない。日々の積み重ねが健やかな脳を作るのだ』、興味深そうだ。
・『認知症は「不機嫌」から始まる  なんだかイライラすることが多くなった。スーパーやコンビニのレジで、少し焦ってしまうことがある。睡眠時間が短くなり、眠りが浅くなった—。最近そんなふうに感じているなら、あなたの脳で、認知症のリスクが急速に高まっているサインかもしれない。 「日本人はほかの国の人と比べて、悲観的になりやすくストレスを溜めやすい傾向があります。じつは近年、ストレスを感じやすい人ほど、認知症を引き起こす脳内の老廃物『アミロイドβ』が増えやすいことがわかってきているのです」 こう語るのは、オーストラリア・シドニー大学の脳・精神センターで認知症を研究しているファン・ユンテ氏だ。 日本人のうち認知症患者が占める割合は、1000人あたり23・3人と、じつは世界で最も多い。先進国(OECD加盟国)の平均は1000人あたり14・8人。いくら日本が高齢化大国とはいえ、あまりに多すぎると思わないだろうか。 その隠れた理由として、研究者たちが注目しているのが「ストレスと認知症の関係」なのだ。なかでも、ストレスと密接なかかわりをもつ「ある脳内物質」が、黒幕と目されている。 「脳のほぼ中心にある、視床下部というところから分泌されるオレキシンです。オレキシンは別名『ストレスホルモン』とも呼ばれ、ストレスを感じたり、夜にしっかり眠れなかったりすると増えることが知られています。 このオレキシンは不眠症の患者などで特に多いことが分かっていましたが、私たちの研究によると、アルツハイマー型認知症の患者の脳内でも増えていると判明したのです」(ファン氏)』、「日本人のうち認知症患者が占める割合は、1000人あたり23・3人と、じつは世界で最も多い・・・その隠れた理由として、研究者たちが注目しているのが「ストレスと認知症の関係」なのだ。なかでも、ストレスと密接なかかわりをもつ「ある脳内物質」が、黒幕と目されている。 「脳のほぼ中心にある、視床下部というところから分泌されるオレキシンです。オレキシンは別名『ストレスホルモン』とも呼ばれ、ストレスを感じたり、夜にしっかり眠れなかったりすると増えることが知られています。 このオレキシンは不眠症の患者などで特に多いことが分かっていましたが、私たちの研究によると、アルツハイマー型認知症の患者の脳内でも増えていると判明したのです」、なるほど。
・『全ての原因は「脳内物質」にあり  日本人は韓国人と並んで、世界でも最も「ストレスを感じている」という人が多いとの調査がある。加えて、睡眠時間を見ると、OECD平均が8時間25分なのに対し、日本人は7時間22分で加盟国最短となっている。 つまりは、こういうことだ。日本人は世界一ストレスを感じやすく、世界一寝不足で、そして世界一ボケやすい国民である——そして、これらの原因はすべて、オレキシンのせいかもしれない。 オレキシンは当初、脳内の「食欲中枢」で見つかったため、食欲を制御する物質と考えられていた。ところが、のちに食欲だけでなく、ストレスや睡眠をコントロールする働きも持ちあわせていることが分かった。おくむらメモリークリニック理事長の奥村歩氏が言う。 「オレキシンは、ひとことで言うと『脳を覚醒させる物質』です。かつて私たち人間は、クマやヘビといった外敵と遭遇したとき、脳を目覚めさせ、筋肉や内臓を活性化させて戦闘モードに入っていました。そのスイッチこそオレキシンなのです。 この働きは今も生きていて、仕事や作業をして集中力を働かせると、脳内でオレキシンが分泌される。そのときに、副産物としてアミロイドβも増えてしまうのです」 「週刊現代」2024年7月20・27日合併号より さらに、日本人にはこのメカニズムが働きやすくなる「やむにやまれぬ事情」もある。その詳細を後編【日本で認知症が「ぶっちぎりで多い」のは「遺伝のせい」なのか…?日本人が「ストレス中毒でボケる」悲しすぎる理由】で解説しよう。 『「ストレス認知症」にならないための10カ条(リンク先参照)』、「「オレキシンは、ひとことで言うと『脳を覚醒させる物質』です。かつて私たち人間は、クマやヘビといった外敵と遭遇したとき、脳を目覚めさせ、筋肉や内臓を活性化させて戦闘モードに入っていました。そのスイッチこそオレキシンなのです。 この働きは今も生きていて、仕事や作業をして集中力を働かせると、脳内でオレキシンが分泌される。そのときに、副産物としてアミロイドβも増えてしまうのです』、「副産物」を増やさない程度で、「オレキシン」を「分泌させる」ような裏ワザを身につけたいものだが、製薬会社や医学会が目を皿のようにして探し回っているのだろう。回答は専門家に任せるのが賢明なようだ。
タグ:認知症 (その4)(「アルツハイマーは4割が誤診だった?」...認知症薬が利かなくてもこれまで原因や対策が分からなかった「ヤバすぎる理由」、「甲状腺機能低下症」「てんかん」...認知症と誤診されやすい病気の「特徴的な症状」と「正確な検査方法」、日本人に「認知症がぶっちぎりで多い」のはナゼなのか? 最新脳科学でわかった 黒幕とされる「ある脳内物質」の名前、日本で認知症が「ぶっちぎりで多い」のは「遺伝のせい」なのか…?日本人が「ストレス中毒でボケる」悲しすぎる理由) 現代ビジネス「「アルツハイマーは4割が誤診だった?」...認知症薬が利かなくてもこれまで原因や対策が分からなかった「ヤバすぎる理由」 いずれも興味深そうだ。 「アルツハイマー病と診断されて集められた治験者の2割程度が、実際にはアルツハイマー病ではなかったから」、「アルツハイマー病との診断」がそんなに頼りないものとは驚きだ。 「日常診療でアルツハイマー病と診断された患者のなんと4割が誤診、つまりアルツハイマー病ではない可能性が明らかになった・・・そもそも「認知症」は病名ではない。認知機能が失われ、かつ日常生活に支障が生じている「状態」の総称である。 そして、その原因となる疾患は70以上に及び、専門医でも見極めは容易ではないのだ」、なるほど。 「「認知症の原因の約3分の2がアルツハイマー病だと言われています。そのため大半の医師は、物忘れやうつ状態など認知症のような症状が見られる患者が診察に来た場合、アルツハイマー病を疑い、とりあえずアリセプトなどの認知症治療薬を処方します・・・問題なのは3、4ヵ月経過を見て、処方した薬が効いているかどうかを確かめないことです。効果がなければ、他の疾患かもしれないと見方を変えなければいけない。 ところが、なかには認識を改めず、薬を出し続けている医師もいます・・・ 同じ認知症でも原因疾患が異なれば、治療法も異なる。誤診によって効きもしない薬をずっと処方され続け、無駄な医療費を払い続けた挙げ句、改善するどころか悪化させてしまうこともありうるのだ」、いい加減な「医師」にかかると悲劇だ。 現代ビジネス「「甲状腺機能低下症」「てんかん」...認知症と誤診されやすい病気の「特徴的な症状」と「正確な検査方法」」 「「一部のメンタルクリニックには、なんでもうつ病にしたがる医師がいます。本来、認知症が疑われる患者が来たら、MRIを撮ったり、脳血流検査をしたり、正確な検査をしなければ断定できないはずなのに、『うつ病だから』と間違った治療を施してしまう。 高齢者に処方されることの多い抗うつ剤に、パキシル、ルボックスなどのSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)がありますが、これらを飲み続けることで認知症が悪化したり、複雑化したりすることもあります」、恐ろしいことだ。 「「最近ではアルツハイマー病の原因物質を可視化する『PET検査』が使われています。原因物質といわれる『アミロイドβ』や『タウ』といったたんぱく質が、脳にどれだけたまっているかを確認できます。 また脳脊髄液や血液でアルツハイマー病を診断できる『バイオマーカー検査』も研究されています。これらの検査により、高精度で脳内の変化を捉えられるようになりました。 これらの検査は現状、一部のみが保険適用で、受けられる医療機関も限られていますが、できる限り設備や診察環境が整った病院を探すのが良いでしょう」」なるほど。 現代ビジネス「日本人に「認知症がぶっちぎりで多い」のはナゼなのか? 最新脳科学でわかった、黒幕とされる「ある脳内物質」の名前」 「日本人のうち認知症患者が占める割合は、1000人あたり23・3人と、じつは世界で最も多い。先進国(OECD加盟国)の平均は1000人あたり14・8人・・・オレキシンは別名『ストレスホルモン』とも呼ばれ、ストレスを感じたり、夜にしっかり眠れなかったりすると増えることが知られています。 このオレキシンは不眠症の患者などで特に多いことが分かっていましたが、私たちの研究によると、アルツハイマー型認知症の患者の脳内でも増えていると判明したのです」、なるほど。 「「オレキシンは、ひとことで言うと『脳を覚醒させる物質』です。かつて私たち人間は、クマやヘビといった外敵と遭遇したとき、脳を目覚めさせ、筋肉や内臓を活性化させて戦闘モードに入っていました。そのスイッチこそオレキシンなのです。 この働きは今も生きていて、仕事や作業をして集中力を働かせると、脳内でオレキシンが分泌される。そのときに、副産物としてアミロイドβも増えてしまうのです」、なるほど。 現代ビジネス「日本で認知症が「ぶっちぎりで多い」のは「遺伝のせい」なのか…?日本人が「ストレス中毒でボケる」悲しすぎる理由」 「日本人のうち認知症患者が占める割合は、1000人あたり23・3人と、じつは世界で最も多い・・・その隠れた理由として、研究者たちが注目しているのが「ストレスと認知症の関係」なのだ。なかでも、ストレスと密接なかかわりをもつ「ある脳内物質」が、黒幕と目されている。 「脳のほぼ中心にある、視床下部というところから分泌されるオレキシンです。オレキシンは別名『ストレスホルモン』とも呼ばれ、ストレスを感じたり、夜にしっかり眠れなかったりすると増えることが知られています。 このオレキシンは不眠症の患者などで特に多いことが分かっていましたが、私たちの研究によると、アルツハイマー型認知症の患者の脳内でも増えていると判明したのです」、なるほど。 「「オレキシンは、ひとことで言うと『脳を覚醒させる物質』です。かつて私たち人間は、クマやヘビといった外敵と遭遇したとき、脳を目覚めさせ、筋肉や内臓を活性化させて戦闘モードに入っていました。そのスイッチこそオレキシンなのです。 この働きは今も生きていて、仕事や作業をして集中力を働かせると、脳内でオレキシンが分泌される。そのときに、副産物としてアミロイドβも増えてしまうのです』、 「副産物」を増やさない程度で、「オレキシン」を「分泌させる」ような裏ワザを身につけたいものだが、製薬会社や医学会が目を皿のようにして探し回っているのだろう。回答は専門家に任せるのが賢明なようだ。
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本日は更新を休むので、明日にご期待を!

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日本の政治情勢(その72)(苦手な「EBPM」に官僚が本腰を入れる真の狙い「データで政策効果を検証」ができない政党政治、経済学者が「ポスト岸田」に提言!自民党総裁選で誰が勝っても絶対やるべきこと) [国内政治]

日本の政治情勢については、本年5月10日に取上げた。今日は、(その72)(苦手な「EBPM」に官僚が本腰を入れる真の狙い「データで政策効果を検証」ができない政党政治、経済学者が「ポスト岸田」に提言!自民党総裁選で誰が勝っても絶対やるべきこと、「党運営の時代遅れともいえる実態を正す」自民党次世代リーダー福田達夫・大野敬太郎・小倉將信が〈改革試案〉を緊急提言)である。

先ずは、本年7月23日付け東洋経済オンラインが掲載した慶應義塾大学 経済学部教授の土居 丈朗氏による「苦手な「EBPM」に官僚が本腰を入れる真の狙い「データで政策効果を検証」ができない政党政治」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/782209
・『7月19日に開催された経済財政諮問会議で、EBPM(証拠に基づく政策立案)の強化に向けてアクションプランを取りまとめるよう、岸田文雄首相は指示を出した。 同日の会議に提出された民間議員ペーパーによると、重要政策・計画ごとに収集データや検証方法、実効性あるEBPMの体制等を定める「EBPMアクションプラン」を本年内に策定する、としている』、興味深そうだ。
・『EBPMの発端は「GDP推計の改善」  EBPMとは何か。 Evidence-Based Policy Makingの頭字語だが、それを解説した内閣府の説明文が興味深い。EBPMとは、政策の企画をその場限りのエピソードに頼るのではなく、政策目的を明確化したうえで合理的根拠(エビデンス)に基づくものとすること、である。 「エピソード・ベース」とは、たまたま見聞きした事例や経験(エピソード)のみに基づき政策を立案してしまい、これだけでは根拠や分析が不十分となる。これに対して、「エビデンス・ベース」は、変化が生じた要因についての事実関係をデータで収集し、どのような要因がその変化をもたらしたかをよく考え、データで検証して政策を立案するものであると位置づける。 日本において、EBPMが意味ある形で初めて政治の俎上に載ったのは、2016年12月に経済財政諮問会議で決定した「統計改革の基本方針」だった。 当時は、GDP(国内総生産)の推計が不安定だったことから、正確な景気判断のためにGDP統計を軸にした経済統計の改善を図ることと合わせて、EBPMの定着と推進を図ろうとするものだった。自民党内にも、この時期にEBPMに期待を寄せる議員が複数いた。) これを受けて、2017年1月に、内閣官房に統計改革推進室(2023年11月以降は同行政改革推進本部事務局に業務移管)を設置するとともに、菅義偉官房長官(当時)を議長とする統計改革推進会議が設けられ、EBPMのための体制構築などが議論された。そして、同年5月「最終取りまとめ」を公表した。 その中では、EBPMを推進する取り組みを総括する政策立案総括審議官などを各府省に設置し、その下で所管する行政に関してEBPMを進める体制整備を行うよう提言された。それに基づき、現在では各府省に政策立案総括審議官などのポストが設けられている。 こうして、EBPMは官邸主導で推進されるものと期待された』、「内閣官房に統計改革推進室(2023年11月以降は同行政改革推進本部事務局に業務移管)を設置するとともに、菅義偉官房長官(当時)を議長とする統計改革推進会議が設けられ、EBPMのための体制構築などが議論』、「EBPMを進める体制整備を行うよう提言・・・現在では各府省に政策立案総括審議官などのポストが設けられている。 こうして、EBPMは官邸主導で推進されるものと期待された」、なるほど。
・『「過ちを認めない」官僚の特性がEBPMを阻む  しかし、コロナ禍での政策立案では、それと逆行する動きさえあった。真にEBPMが推進されていれば、2020年度から2023年度まで10兆円単位の巨額の補正予算が組まれることはなかっただろう。そこでは、エビデンス・ベースというよりエピソード・ベースが跋扈した。 これまで、なぜEBPMが浸透してこなかったのか。 一因として挙げられるのは、官僚の無謬性である。 官僚は行政において誤ったことはしない、とか誤ったことをするはずがない、という認識がある。加えて、国民の側も、官僚は誤ったことをしてはならない、という見方が強い。そうすると、前任者が決定した政策について、誤っていたとしてもそれを否定するように改めることは難しい。 しかし、EBPMの発想は、「過ちては改むるに憚ること勿れ」である。過ちと気づいたならばためらうことなく改めるべきである。官僚の無謬性にこだわりが強いと、「改めたほうがよい」というエビデンスがあっても受け入れられない。政権交代がほぼない日本においては、なおさらである。) もう一つの原因は、EBPMに使えるデータが整備されていなかったり、分析体制が整っていなかったりすることである。EBPMを推進する体制は、外部人材を多く採用しなければ、一朝一夕には構築できない。 そうした経緯もあって、冒頭に記したように、「EBPMアクションプラン」の策定という議論になった。 ただ、今般の「EBPMの強化」には、これまでの「EBPMの推進」と違うニュアンスを感じる。それは、これから求められる霞が関におけるEBPMの取り組みににじみ出ているように思える』、「真にEBPMが推進されていれば、2020年度から2023年度まで10兆円単位の巨額の補正予算が組まれることはなかっただろう。そこでは、エビデンス・ベースというよりエピソード・ベースが跋扈した・・・今般の「EBPMの強化」には、これまでの「EBPMの推進」と違うニュアンスを感じる」、なるほど。
・『政策効果を検証できるデータはあるか  まず、行政改革推進会議は、国の全事業(約5000事業)について、その具体的内容について記載する行政事業レビューシートの改訂を行った。そこでは、行政事業レビューシートを作成する段階から、担当部局にEBPMの発想を浸透させるべく、政策のロジックモデルを記載するよう求めた。 ロジックモデルとは、政策を実現するために投入される資源(インプット)、政策を実施することに伴う活動(アウトプット)と、その結果、期待される成果(アウトカム)について、論理的関係を説明するフローチャートである。 これまでは、政策を講じる際に用いる達成手段(インプット)と期待される成果(アウトカム)の間の因果関係があいまいだったり、こじつけて関係づけてごまかしたりしていた。 今後は、行政事業レビューシートにおいて、政策のロジックモデルに沿った説明を記載することによって、EBPMに向けた端緒となる。 しかし、それだけではEBPMは貫徹しない。最も重要なのは、政策が奏功したか否かを検証できるデータである。しかも、それは、相関関係ではなく因果関係を突き止めるのに資するデータである。単にデータがあったらそれでよいわけではない。) 政策のインプットを表す変数とそのアウトカムを表す変数があって、2つの変数の間にどのような関係があるかについて、一方が増えるときに、他方が増えるとか減るとかという関係を統計学的に確認することはできる。 しかし、それは相関関係であって因果関係ではない。2つの変数の間に正の相関関係があるからといって、一方の変数が原因で、他方の変数が結果という関係にあると断じてはならない。 しかも、2つの変数以外の別の変数が作用して、一見するとその両者には強い相関関係があるように見えても、実は「見せかけの相関関係」にすぎない場合もある』、経済分性でも「見せかけの相関関係」は大いに気を付ける必要がある。
・『政策対象者だけに変化が生じれば「効果アリ」  因果関係を分析するには、そうした分析が可能な形でデータが入手できなければならない。典型的なケースでは、政策の対象となった企業や個人と対象となっていない企業や個人のデータがそれぞれ入手でき、かつ政策を講じる前と後のデータがそれぞれ入手できると、因果関係の分析が可能になるケースがある。 政策の中には、その対象を絞るケースがある。そうしたケースには、政策を講じる前後の変化と対象者と対象外の者との違いに着目して、その政策にしかるべき効果があったか否かを確認できる。 例えば、ある政策を講じる前は、対象者も対象外の者も違いはなかったものの、政策が講じられた後に対象者にだけある変化が生じたのに対して、対象外の者にはそうした変化がまったく生じていなかった、ということなら、その変化はその政策によって引き起こされたと考えられる。 こうした動きをデータで分析できれば、因果関係を確認することができ、当該政策を原因としてしかるべき成果という結果を引き起こしたという立論が可能となる。こうしたケースならば、まさにEBPMといえるものである。) しかし、いつでもこうした形で因果関係を突き止められるとは限らない。特に、全員を対象とした政策は、対象外となる者がいないため、対象者と対象外の者との間の違いが区別できず、当該政策が原因なのか他の要因が原因なのかが判別できない。 今後策定予定の「EBPMアクションプラン」では、前述のように、収集データや検証方法も視野に入れており、さらなるEBPMの強化が期待される。 こうした取り組みは、なぜ今唱えられているのか。官僚の無謬性があって元来不得手であるEBPMを、ここまで強力に推すからにはワケがあろう。 そのワケは、予算において無理筋な政治的要求を断るための効果的な手段だからだとにらむ』、「こうした取り組みは、なぜ今唱えられているのか。官僚の無謬性があって元来不得手であるEBPMを、ここまで強力に推すからにはワケがあろう。 そのワケは、予算において無理筋な政治的要求を断るための効果的な手段だからだとにらむ」、その通りだろう。
・『エビデンスを示せるのは政治家より官僚  コロナ禍では、与党側から過剰な予算要求が横行した。官僚側もそれに悪乗りした面もあるが、無理筋な予算要求を効果的に止める手段がなかった。 しかし、EBPMでは、提案する政策にエビデンスがないなら却下される。EBPMでは、エビデンスを解明する分析を必要とするが、今のところわが国の政党にはそうした機能があまりなく、むしろ中央省庁にその機能がある。 最後の関門は、EBPMについての首相官邸の理解であろう。 官僚がEBPMに則して政策に効果がないと否定しても、「自らの政策に反対するのであれば異動してもらう」などとして聞き入れなかったり、政策の実施を事務方に事前の相談もなく突如決めたりするような首相官邸の姿勢である限り、誰が総理大臣になっても、わが国にEBPMは定着しない。 EBPMによって、国民のためになる政策が選りすぐられてゆくことが、今求められる』、「最後の関門は、EBPMについての首相官邸の理解であろう。 官僚がEBPMに則して政策に効果がないと否定しても、「自らの政策に反対するのであれば異動してもらう」などとして聞き入れなかったり、政策の実施を事務方に事前の相談もなく突如決めたりするような首相官邸の姿勢である限り、誰が総理大臣になっても、わが国にEBPMは定着しない。 EBPMによって、国民のためになる政策が選りすぐられてゆくことが、今求められる』、「最後の関門は、EBPMについての首相官邸の理解であろう。 官僚がEBPMに則して政策に効果がないと否定しても、「自らの政策に反対するのであれば異動してもらう」などとして聞き入れなかったり、政策の実施を事務方に事前の相談もなく突如決めたりするような首相官邸の姿勢である限り、誰が総理大臣になっても、わが国にEBPMは定着しない」、その通りだ。

次に、8月20日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「経済学者が「ポスト岸田」に提言!自民党総裁選で誰が勝っても絶対やるべきこと」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/348964
・『自民党は岸田首相の後任を選ぶ総裁選挙を、9月12日に告示し27日に投開票を行う方針だと報じられた。立候補者の多さ、告示期間の長さ、共に異例の展開だという。国政がさまざまな課題を抱える中で、人口減少などに端を発して日本経済が「限界」を迎えていることは明らかである。人々の労働意欲を高め、企業の生産性を上げ、経済の持続的な回復を目指すにはどうしたらいいのか』、興味深そうだ。
・『「新卒一括採用、年功序列、終身雇用」 雇用3点セットはなぜ改革できないのか(世界経済が大きく変貌を遂げる中、わが国の雇用慣行はなかなか変わらない。「新卒一括採用、年功序列、終身雇用」の雇用慣行は、かつて高度成長期には労働力の確保に相応の効果をもたらした。しかし現在、人口減少などわが国経済の「限界」は明らかである。必要な分野で必要な人材が働けるよう、労働市場を改革することが経済の活性化に欠かせない。 欧米の主要国でも、古い雇用慣行のせいで経済成長が阻害されるケースがある。それに対して、1980年代の英国やオランダ、90年代以降のドイツは、いずれも痛みを伴う改革を進めて労働市場の流動性を高めた。その結果、人々の就業意欲は自律的に高まり企業の生産性が回復した例もある。 雇用慣行を一朝一夕に改革するのは難しい。わが国の年金の仕組みは、旧来の雇用慣行を前提にしている。人々の労働意欲を高め、経済の持続的な回復を目指すにはどうしたらいいのか。リスキリング(学び直し)に加え、年金のポータビリティー制度を確立し、職を変える人が不利にならないようにすることが大切だ。つまり、労働市場だけでなく社会保障制度の改革も合わせて議論することが肝心なのである』、「労働市場だけでなく社会保障制度の改革も合わせて議論することが肝心なのである」、なるほど。
・『日本人の「働きがい」が125カ国中で最低レベルのワケ  なぜ、わたしたちは働くか。それは、人生を豊かにするためだろう。趣味のために働く、好きなことを仕事にして自己実現を目指す。所得を得るには人生のかなりの時間を仕事に費やす。やりがい、情熱を感じられれば、働きがいは高まるはずだ。その結果、新しいことへの挑戦が増え、新しい商品やサービス(需要)が創出されて経済が成長する期待も高まる。 ところが、過去30年間、わが国の「働きがい」(ワーク・エンゲージメント)は、主要先進国の中で最低水準にある。ワーク・エンゲージメントとは、オランダのユトレヒト大学のウィルマー・シャウフェリ教授が提唱したものだ。「活力」(仕事中にあふれる活力)、「熱意」(仕事を愛している、誇りを感じる)、「没頭」(仕事に夢中になる)の3つで構成される。 また、米国の調査企業によると、22年まで4年連続で、日本の働きがいの水準はデータのある125カ国中で最低レベルだった。主要因は、バブル崩壊後の景気停滞だろう。1990年1月、わが国では株式バブルが崩壊し、景気は減速し、企業の投資活動なども低下した。そして97年、金融システム不安が発生して大手銀行が次々と経営破綻した。この時すでに雇用慣行は事実上、限界を迎えつつあった。 しかし、わが国の政治は雇用の維持を優先し、労働市場の改革を進めて成長期待の高い分野に経営資源を再配分することを行わなかった。この時、日本全体で近視眼的な損失回避の心理が高まったとも言い換えられる。 一方、世界経済はグローバル化した。90年代に米国ではIT革命が起き、先端企業は高付加価値のソフトウエア分野に選択と集中を行った。また、中国は「世界の工場」としての地位を確立し、これにより世界中で工業製品の価格競争が激化した。さらに、台湾と韓国は、半導体やデジタル家電の受託製造体制の整備にまい進した。 翻ってわが国産業界の競争力は低下した。既存分野に人材が固着し、賃金は伸び悩んだ。その結果、わが国のワーク・エンゲージメントは世界最低水準に甘んじることになる。 他方、株主が経営者に改革を求めることを、エンゲージメントと呼ぶこともある(シェアホルダー・エンゲージメント)。わが国企業の経営者は、株主からのエンゲージメント要請にも十分に対応することができなかった』、「97年、金融システム不安が発生して大手銀行が次々と経営破綻した。この時すでに雇用慣行は事実上、限界を迎えつつあった。 しかし、わが国の政治は雇用の維持を優先し、労働市場の改革を進めて成長期待の高い分野に経営資源を再配分することを行わなかった。この時、日本全体で近視眼的な損失回避の心理が高まったとも言い換えられる・・・わが国産業界の競争力は低下した。既存分野に人材が固着し、賃金は伸び悩んだ。その結果、わが国のワーク・エンゲージメントは世界最低水準に甘んじることになる。 他方、株主が経営者に改革を求めることを、エンゲージメントと呼ぶこともある(シェアホルダー・エンゲージメント)。わが国企業の経営者は、株主からのエンゲージメント要請にも十分に対応することができなかった」、なるほど。
・『海外の過去の好例から何を学べるか 人々の就業意欲と生産性を高める方法  海外では、景気の停滞を克服するため、財政や金融政策で目先の景気を支えつつ、中長期の視点で労働市場などの改革を進めた国があった。80年代、サッチャー政権下の英国は、首相のリーダーシップの下で労働市場改革を比較的スピーディーに実行した。 当時のサッチャー首相は、労働組合中心の雇用の慣行を規制し賃金決定を柔軟化した。失業保険の給付に関しても、所得比例から定額方式に修正した。国有企業の民営化も進め経済全体で市場原理は発揮されやすくなった。 また、70年代にオランダ経済は第1次オイルショックなどの影響で停滞した。その後80年代、オランダ政府は労使の協力を前提に、規制緩和や失業給付の引き下げなどを段階的に実現した。景気停滞を克服し、持続的な経済成長の基盤を整備した。 90年代、ドイツは旧東ドイツ統合の負担などで景気停滞に陥った。一時は、「欧州の病人」などとやゆされた。停滞を脱する起爆剤になったのは、2002年から始まったシュレーダー改革だ。ドイツ政府は、経済全体で市場原理を高め、成長が期待できる分野にヒト、モノ、カネの再配分を促進した。そのために、企業の解雇規制を緩和した一方、職業訓練や紹介制度を拡充した。その際、政府系と民間の職業紹介サービス企業の競争も促進した。 同時にドイツは、失業保険の給付期間を短くした。人々の就業意欲は上昇し、自動車や精密機械など主力産業で雇用のマッチングが進んだ。それは、リーマンショック後の欧州財政危機から、ユーロ圏経済の回復をも支えたと考えられる。 いずれも、失業者の増加など一時的な痛みを伴う改革だったが、労働市場全体の流動性を高め、失業保険など社会保障も見直したことが重要だ。職業訓練・紹介制度も整え、人々の就業意識を高めたことで、全体で生産性は高まった。さらに、失業給付の削減は財政健全化にも有効だった。人的資本の強化こそ経済・社会の効率性向上に欠かせない』、英国でも80年代前半、炭鉱ストをサッチャー首相が断固とした姿勢で握り潰し、それ以降は労働運動は大人しくなった。
・『働き方改革と年金改革は両輪 確定拠出型年金の拡充は道半ば  雇用慣行は、人々の生き方を形成する。サッチャー改革以前の英国は、「ゆりかごから墓場まで」と呼ばれた手厚い社会保障制度があった。これにより、生産性は停滞し、財政も悪化した。労働組合は構成員の雇用維持を優先したことで、新規参入者である若年層の雇用機会を結果的に奪っていた。それが、サッチャー改革によって経済と社会の推進力が高まった。 日本も今、労働慣行やそれに付随する社会の仕組みを改革することが求められている。わが国の企業年金は、あらかじめ給付額の算定方法が決まっている「確定給付企業年金」と、拠出額は決まっており将来の受取額が個人の資金運用の結果で変化する「確定拠出年金」の二つに分かれる。2023年度末時点の加入者数は前者の方が多い(企業年金連合会の報告)。政府は、「個人型確定拠出年金」(iDeCo)など確定拠出型年金の制度を拡充したが、道半ばだ。 確定給付の年金加入者の場合、定年前に転職すると受取額が減少することもある。そのため、確実な受取額をあえて手放したくないと考える人もいるだろう。景気低迷に加え、企業年金の制度面から個人が不利になる部分があることも、労働市場の流動性向上を妨げ、働きがいの低下につながったと考えられる。企業の収益力が低下し、リスクを避けたいという心理に加え、企業年金制度の改革の遅れも、雇用慣行の改革を妨げた可能性は否定できない。 近年では、年功に基づいた評価制度をやめ、年齢、性別に関係なく能力、収益貢献などの実績で人事評価を行う企業が増えている。6月、わが国の実質賃金は27カ月ぶりのプラスだった。賃上げの持続性は、働きがいを感じ、成長を目指す人の増加、それを通した企業の収益の増加と長期存続に不可欠だ。 諸外国とは条件の違いはあるものの、それでもなお日本は、海外の労働・社会保障制度改革を参考に、学び直しや職業紹介サービスを拡充すべきだ。加えて、政府は、成長を目指し勤め先を変える人が不利にならない環境整備を急ぐべきである』、「日本は、海外の労働・社会保障制度改革を参考に、学び直しや職業紹介サービスを拡充すべきだ。加えて、政府は、成長を目指し勤め先を変える人が不利にならない環境整備を急ぐべきである」、その通りだ。
タグ:経済分性でも「見せかけの相関関係」は大いに気を付ける必要がある。 「真にEBPMが推進されていれば、2020年度から2023年度まで10兆円単位の巨額の補正予算が組まれることはなかっただろう。そこでは、エビデンス・ベースというよりエピソード・ベースが跋扈した・・・今般の「EBPMの強化」には、これまでの「EBPMの推進」と違うニュアンスを感じる」、なるほど。 「内閣官房に統計改革推進室(2023年11月以降は同行政改革推進本部事務局に業務移管)を設置するとともに、菅義偉官房長官(当時)を議長とする統計改革推進会議が設けられ、EBPMのための体制構築などが議論』、「EBPMを進める体制整備を行うよう提言・・・現在では各府省に政策立案総括審議官などのポストが設けられている。 こうして、EBPMは官邸主導で推進されるものと期待された」、なるほど。 土居 丈朗氏による「苦手な「EBPM」に官僚が本腰を入れる真の狙い「データで政策効果を検証」ができない政党政治」 東洋経済オンライン (その72)(苦手な「EBPM」に官僚が本腰を入れる真の狙い「データで政策効果を検証」ができない政党政治、経済学者が「ポスト岸田」に提言!自民党総裁選で誰が勝っても絶対やるべきこと) 日本の政治情勢 「こうした取り組みは、なぜ今唱えられているのか。官僚の無謬性があって元来不得手であるEBPMを、ここまで強力に推すからにはワケがあろう。 そのワケは、予算において無理筋な政治的要求を断るための効果的な手段だからだとにらむ」、その通りだろう。 「最後の関門は、EBPMについての首相官邸の理解であろう。 官僚がEBPMに則して政策に効果がないと否定しても、「自らの政策に反対するのであれば異動してもらう」などとして聞き入れなかったり、政策の実施を事務方に事前の相談もなく突如決めたりするような首相官邸の姿勢である限り、誰が総理大臣になっても、わが国にEBPMは定着しない。 EBPMによって、国民のためになる政策が選りすぐられてゆくことが、今求められる』、 「最後の関門は、EBPMについての首相官邸の理解であろう。 官僚がEBPMに則して政策に効果がないと否定しても、「自らの政策に反対するのであれば異動してもらう」などとして聞き入れなかったり、政策の実施を事務方に事前の相談もなく突如決めたりするような首相官邸の姿勢である限り、誰が総理大臣になっても、わが国にEBPMは定着しない」、その通りだ。 ダイヤモンド・オンライン 真壁昭夫氏による「経済学者が「ポスト岸田」に提言!自民党総裁選で誰が勝っても絶対やるべきこと」 「労働市場だけでなく社会保障制度の改革も合わせて議論することが肝心なのである」、なるほど。 「97年、金融システム不安が発生して大手銀行が次々と経営破綻した。この時すでに雇用慣行は事実上、限界を迎えつつあった。 しかし、わが国の政治は雇用の維持を優先し、労働市場の改革を進めて成長期待の高い分野に経営資源を再配分することを行わなかった。この時、日本全体で近視眼的な損失回避の心理が高まったとも言い換えられる・・・わが国産業界の競争力は低下した。既存分野に人材が固着し、賃金は伸び悩んだ。その結果、わが国のワーク・エンゲージメントは世界最低水準に甘んじることになる。 他方、株主が経営者に改革を求めることを、エンゲージメントと呼ぶこともある(シェアホルダー・エンゲージメント)。わが国企業の経営者は、株主からのエンゲージメント要請にも十分に対応することができなかった」、なるほど。 英国でも80年代前半、炭鉱ストをサッチャー首相が断固とした姿勢で握り潰し、それ以降は労働運動は大人しくなった。 「日本は、海外の労働・社会保障制度改革を参考に、学び直しや職業紹介サービスを拡充すべきだ。加えて、政府は、成長を目指し勤め先を変える人が不利にならない環境整備を急ぐべきである」、その通りだ。
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最低賃金(その2)(“中小企業6割が賃上げ”というが「最低賃金アップ」でしか安いニッポンは変われない、「最低賃金50円引き上げ」時代遅れの根拠なき議論 「経営者代表」を議論の主役にしてはいけない訳) [経済政策]

最低賃金については、2021年8月6日に取上げた。今日は、(その2)(“中小企業6割が賃上げ”というが「最低賃金アップ」でしか安いニッポンは変われない、「最低賃金50円引き上げ」時代遅れの根拠なき議論 「経営者代表」を議論の主役にしてはいけない訳)である。

先ずは、昨年4月6日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「“中小企業6割が賃上げ”というが「最低賃金アップ」でしか安いニッポンは変われない」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/320801
・『「賃上げ」で明るい兆しは本当か?  まったく実感がないという人も多いだろうが、実は今、世間では「賃上げラッシュ」らしい。 岸田政権の「賃上げしましょう」の呼びかけにこぞって、企業が応えているというわけだ。しかも、注目すべきは、この賃上げの動きは、物価上昇を価格転嫁しにくい中小企業にまで「波及」をしているという点だ。 『中小企業の約6割が賃上げ予定 物価上昇率カバー可能な「4%以上」賃上げは18.7%に 日本商工会議所(TBS NEWS DIG)』 このような話を聞くと、「いいぞ!これで“安いニッポン”からおさらばだ」「日本中で賃上げと物価高の好循環が生まれて不況から脱出するぞ!」なんて感じで、新年度から明るい希望を抱いたという人も多いだろう。 そういういいムードにケチをつけるようで大変心苦しいのだが、今騒がれているような「賃上げラッシュ」では、日本の低賃金は解決できないだろう。 実はこのようなニュースで語られているトヨタやファーストリテイリングという世界的企業や、産業別労働組合があるような大企業というのは、日本の全企業の中でわずか0.3%に過ぎない。全就業者数でも3割程度だ。 こんなほんの一握りの企業が給料を爆上げしたところで、日本人全体の給料が上がるわけがない。3割の労働者の給料がちょっと増えたところで、7割が低賃金のままでは経済の好循環もへったくれもないのだ。 「これだから学のない人間は困る。わずか0.3%でも大企業が賃金を上げれば下請けや取引先である中小企業に波及するだろうが。実際に、中小企業の6割は賃上げ予定だぞ」というお叱りを受けそうだが、実はこの話もかなり微妙だ。 実は上場企業など大企業は、これまでも着々と賃上げをしている。が、日本の平均年収はこの30年間ほぼ横ばいだ。つまり、大企業が賃上げをすれば、「シャワー効果」で、中小企業も賃金が上がるというのは、「神話」に過ぎない。 また、「中小企業の6割が賃上げ予定」という調査自体が眉唾だ。これは日本商工会議所の会員である3308社の回答に基づいているのだが、これが日本の中小企業の実態をあまり反映していない恐れがあるからだ』、「大企業が賃上げをすれば、「シャワー効果」で、中小企業も賃金が上がるというのは、「神話」に過ぎない。 また、「中小企業の6割が賃上げ予定」という調査自体が眉唾だ。これは日本商工会議所の会員である3308社の回答に基づいているのだが、これが日本の中小企業の実態をあまり反映していない恐れがあるからだ」、なるほど。
・『「中小企業6割が賃上げ」に反映された声は実態と乖離?  日本に中小企業がどれだけあるのかということは実は正確にはよくわかっていないが、独立行政法人中小企業基盤整備機構によれば、中小企業357万8176社だという。 では、「中小企業の6割が賃上げ予定」という調査結果を世に公表した日本商工会議所には、この中のどれほどの中小企業をカバーしているのか。ホームページによれば、全国の商工会議所の会員数は123万(22年4月現在)で、しかもこの数には大企業も含まれる。つまり、日本商工会議所(以下、日商)には全中小企業の3割程度しか加盟していないのである。 そんな少数派の中でわずか3000社程度のアンケートをピックアップしただけで、さも「中小企業全体」が賃上げをしようとしている、と触れ回るのはやや乱暴な気がしないだろうか。 また、問題は調査対象の数だけではない。 商工会議所に参加している企業経営者というのは基本的に、中小企業振興・地域振興や情報交換など積極的だ。交流会やセミナーもよく催されており、そういうものに参加する人が多い。つまり、「意識高い系経営者」なのだ。こういう人たちが集まった団体で、アンケートを取れば当然、多くの人が「賃上げ予定」と答える。日本の賃金が異常に低く、多くの労働者が苦しんでいるという問題意識があるからだ。 しかし、商工会議所に加わらない、残り234万社の経営者に同じことを聞いたらどうだろうか。筆者は商工会議所の会員と比べるとかなり賃上げへの意欲は薄れるのではないかと考えている』、「独立行政法人中小企業基盤整備機構によれば、中小企業357万8176社だという・・・全国の商工会議所の会員数は123万(22年4月現在)で、しかもこの数には大企業も含まれる。つまり、日本商工会議所(以下、日商)には全中小企業の3割程度しか加盟していないのである」、なるほど。
・『賃上げもできない中小企業が大半、商工会議所に入る“余裕”なし  そもそも、234万社の経営者はなぜ商工会に入っていないのかというと、メリットを感じないからだ。つまり、中小企業振興や地域振興などにそれほど興味がないのだ。では、なぜ興味がないのか。個々の性格的な部分もあるかもしれないが、やはり大きいのは経営者として「余裕」がないからではないのか。 先ほど日本の中小企業は、357万社だという話をしたが、その6割は「小規模事業者」だ。製造業ならば従業員20人以下、商業サービスなら5人以下の、いわゆる「零細企業」である。 さて、あなたがこういう零細企業の経営者になったとして、日本の中小企業振興や地域振興を考えられるだろうか。自分の会社を存続させることで頭が一杯で、そんな心の余裕も時間の余裕もないのではないか。 そして、こういう余裕のない零細企業経営者は「賃上げ」ができるだろうか。もし商工会議所のアンケートが来たとしても、「こんな厳しい状況で、賃上げなんかできるわけがないだろ」と即答ではないか。 こういう「賃金が上げられない小さな会社」が、日本全国に300万社近くあふれている。これが「安いニッポン」の根本的な理由だ。 こういう会社は従業員に低賃金しか払えない。何年も昇給せずに同じ給料を払っている。だが、従業員もそれに不満は言いづらい。従業員が数人しかいないので人間関係が密になるからだ。ほぼ家族同然の付き合いをしているので、社長が苦しいことは、身近に見ているのでよく知っている。いくら給料が安いからといってワガママが言えない。だから、低い賃金でも我慢して働いている――。 そして、こういう小さな家族経営の企業は、トヨタ自動車やユニクロの下請けでもなければ取引先でもないので、この手の大企業の「賃上げラッシュ」はまったく関係ない。日本商工会議所の会員になるような「意識の高い中小企業」と統計的には同じ「中小企業」というくくりにされるが、ビジネスモデルも規模も経営にかけるモチベーションもまったく違うので、「6割が賃上げ」と聞いても、自分たちとはまったく関係のない世界の話なのだ』、「日本商工会議所の会員になるような「意識の高い中小企業」と統計的には同じ「中小企業」というくくりにされるが、ビジネスモデルも規模も経営にかけるモチベーションもまったく違うので、「6割が賃上げ」と聞いても、自分たちとはまったく関係のない世界の話なのだ」、なるほど。
・『日本の小さな会社たちをすくい上げる手立て  だから、「賃上げラッシュ」がいくら起きても、日商が「中小企業の6割が賃上げ予定」というニュースを出しても、日本の賃金は何も変わらないのだ。 さて、そこで気になるのは、「じゃあ、どうする?」ということだろう。「賃金を上げられない小さな会社」を賃上げしてもらわないことには、日本の賃金はいつまでも経っても上がっていかない。大企業や日商会員の中小企業とは別の世界で商いをしている「零細企業」にどう賃上げをさせていくのか、という悩ましい問題に突き当たる。 いろいろな意見があるだろうが、筆者は「最低賃金の引き上げ」しかないと思っている。 そう聞くと、こんな状況で最低賃金を引き上げたら、「賃金を上げられない小さな会社」に「死ね」ということか、というお叱りを受けるかもしれない。 ただ、「賃金を上げられない小さな会社」はある程度のプレッシャーを与えなければ、いつまで経っても成長できず、零細企業のまま補助金で延命していくしかないという厳しい現実がある。 だから、心を鬼にして、零細企業が成長するための手厚いサポートをしながら、最低賃金の引き上げをしていくのである。「賃金を上げられない小さな会社」が税金でつぶれないような延命をするのではなく、最低賃金の引き上げと経営のサポートで鍛えあげる。それが結果として、零細企業をよみがえらせて、日本経済の復活にもつながるのだ。 実際、日本以外の先進国では「最低賃金の引き上げ」を経済政策として継続している。意識の高い中小企業経営者もそこに気づき始めている。2023年度の最低賃金額の改定について、最低賃金を「引上げるべき」と回答した会員企業は42.4%となり、「引き下げるべき」「現状の金額を維持すべき」との回答(計33.7%)を上回った。ちょっと前までは、日商では最低賃金を引き上げるなという大合唱だっだが、さすがにそれでは何も変わらないということに多くの経営者が気づき始めたのだ。 最低賃金を引き上げるのは長期的には、中小企業を強く成長させていく。そういう大局的な視点で、「賃金の引き上げ」というものをあらためて考えるべきではないか』、「最低賃金の引き上げと経営のサポートで鍛えあげる。それが結果として、零細企業をよみがえらせて、日本経済の復活にもつながるのだ。 実際、日本以外の先進国では「最低賃金の引き上げ」を経済政策として継続している。意識の高い中小企業経営者もそこに気づき始めている・・・最低賃金を引き上げるのは長期的には、中小企業を強く成長させていく。そういう大局的な視点で、「賃金の引き上げ」というものをあらためて考えるべきではないか」、その通りだ。

次に、7月30日付け東洋経済オンラインが掲載した小西美術工藝社社長のデービッド・アトキンソン氏による「「最低賃金50円引き上げ」時代遅れの根拠なき議論 「経営者代表」を議論の主役にしてはいけない訳」を紹介しよう。
・『オックスフォード大学で日本学を専攻、ゴールドマン・サックスで日本経済の「伝説のアナリスト」として名をはせたデービッド・アトキンソン氏。 退職後も日本経済の研究を続け、日本を救う数々の提言を行ってきた彼の著書『給料の上げ方――日本人みんなで豊かになる』では、日本人の給料を上げるための方法が詳しく解説されている。 「いまの日本の給料は、日本人のまじめさや能力にふさわしい水準ではありません。そんな低水準の給料でもガマンして働いている、その『ガマン』によって、いまの日本経済のシステムは成り立っています。でも、そんなのは絶対におかしい」 そう語るアトキンソン氏に、これからの日本に必要なことを解説してもらう』、「いまの日本の給料は、日本人のまじめさや能力にふさわしい水準ではありません。そんな低水準の給料でもガマンして働いている、その『ガマン』によって、いまの日本経済のシステムは成り立っています。でも、そんなのは絶対におかしい」、その通りだ。
・『「50円引き上げ」の結論自体は評価できる  中央最低賃金審議会は、2024年の引き上げの目安を50円と決定しました。 2024年の最低賃金の引き上げにより、全都道府県で2025年に最低賃金が1000円を超える可能性が高まっています。現時点で1000円を超える都道府県は8つですが、2024年には少なくとも16都道府県に増える見通しです。 日本の最低賃金は都道府県ごとに設定され、経済状況に応じてA、B、Cの3つのランクに分類されています。各ランクの最低賃金引き上げの目安額は中央最低賃金審議会によって示されます。 2024年の目安額は全ランク共通で50円の引き上げとなり、地域間の賃金格差の是正を図る大きな一歩となりました。 過去には、最高の最低賃金と最低の最低賃金の格差が広がっていました。1997年には100円だった差が、2018年には223円まで拡大しました。今回の統一された引き上げ幅は、東京都にとって4.5%、最下位の岩手県にとっては5.6%の引き上げとなり、地域間格差の縮小となります。) 実際の引き上げ幅は、各都道府県での議論を経て決定されますが、全国加重平均が1054円を超えることが予想されます。これは過去の事例から、引き上げ幅が目安より大きくなることが多いためです』、「実際の引き上げ幅は、各都道府県での議論を経て決定されますが、全国加重平均が1054円を超えることが予想されます。これは過去の事例から、引き上げ幅が目安より大きくなることが多いためです」、なるほど。
・『「データに基づいた議論」ができていない  問題は、中央最低賃金審議会では経営者代表の意見がしばしば具体的なデータに欠けるため、議論が抽象論に終始することです。 たとえば「価格転嫁ができていない企業が相当数いる」との主張がありますが、具体的な企業数や業種ごとの詳細なデータが示されていません。このような主張には、統計的なデータが不可欠です。 「価格転嫁ができていない企業が相当数いる」との発言には、2つの問題があります。 まず、「相当数いる」とは具体的に何社なのかが示されていません。356万社ある中小企業の中で、どの程度が価格転嫁できていないのか具体的なデータがなければ、無責任な発言となります。 次に「価格転嫁ができていない」と言われても、どの業種で何%できていないのかを具体的に示す必要があります。ここではエピソードではなく、統計的なデータが不可欠です。 さらに経営者代表は、物価上昇の影響を理由に賃金は上げられないと主張していますが、それは労働者に物価上昇の負担を押し付ける結果となります。 今回の審議会では、経営者側は「中小企業に支払い能力を超えた過度な引き上げによる負担を負わせない配慮を」と主張しました。しかし、経営者側が主張する「中小企業の支払い能力」の具体的なデータを示していません。 中小企業も全体で見れば、大企業と同じように利益が最高水準を更新し続け、内部留保も増加しています。その中で、経営者側が「支払い能力」を持ち出すのであれば、その詳細を示すべきです。 中小企業は356万社もあり、最低賃金が1500円になっても対応できる企業もあるはずです。最低賃金がいくらになれば、どの業種のどの企業がどのような影響を受けるかを具体的に示すことが求められます。) 最低賃金の引き上げは、経済全体に対しても重要な影響を及ぼします。 最低賃金が上がることで、低賃金労働者の生活水準が向上し、消費活動が活発化することが期待されます。一方で、企業側には賃金コストの増加が負担となることもありますが、これは価格転嫁することで解決できます。 一部の人は生産性を上げてから賃金を上げるべきと主張しますが、日本企業の生産性は、それほどではないものの上昇しています。それにもかかわらず労働分配率が下がっているため、経営者は賃金を上げていません。よって、経営者側の「生産性を上げてから賃金を上げる」という抽象的な意見は、そもそも経営者側が守っていないのですから、退けるべきです。 逆に、賃金を上げることで生産性を上げざるを得ないという現実もあります。外国の分析では、賃金を上げると経営者が生産性向上に必死になることが確認されています』、「一部の人は生産性を上げてから賃金を上げるべきと主張しますが、日本企業の生産性は、それほどではないものの上昇しています。それにもかかわらず労働分配率が下がっているため、経営者は賃金を上げていません。よって、経営者側の「生産性を上げてから賃金を上げる」という抽象的な意見は、そもそも経営者側が守っていないのですから、退けるべきです」、その通りだ。
・『当初案「たった20円」経営者側は労働者を舐めている  経営者も労働者同様に利害関係者です。経営者に決定権を渡して、最低賃金の議論をさせるべきではありません。特に、経営者の団体は最低賃金の設定に必要な分析能力が十分ではないことは以上のことからもわかります。 実は今回の議論で、経営者側は当初案として20円の引き上げを示したそうです。とんでもない数字です。交渉とはいえ、公的な場でたった2%程度の引き上げを示す経営者側には、審議会に出席する資格はないとすら思います。 ビッグデータの時代では、最低賃金の設定には、もっと科学的なやり方が必要です。イギリスのLow Pay Commissionのように、学者や統計専門家がビッグデータを駆使して経済全体に与える影響を分析し、そのうえで労働者側と経営者側の意見をヒアリングする方法が求められます。 EUのように、最低賃金を平均所得の50%、中央値の60%に収斂させることも1つの方向性です。 人口減少が進む中、最低賃金は経済政策の中で中心的な役割を果たすべきです。たくさんの人の生活にかかることですから、労働者と経営者が根拠もなく議論を続けるのではなく、エビデンスに基づいた科学的なアプローチが求められます。 最低賃金の引き上げは、経済全体に対する影響を考慮し、ビッグデータと統計的な分析を用いて慎重に決定されるべきです』、「人口減少が進む中、最低賃金は経済政策の中で中心的な役割を果たすべきです。たくさんの人の生活にかかることですから、労働者と経営者が根拠もなく議論を続けるのではなく、エビデンスに基づいた科学的なアプローチが求められます。 最低賃金の引き上げは、経済全体に対する影響を考慮し、ビッグデータと統計的な分析を用いて慎重に決定されるべきです」、同感である。
タグ:「独立行政法人中小企業基盤整備機構によれば、中小企業357万8176社だという・・・全国の商工会議所の会員数は123万(22年4月現在)で、しかもこの数には大企業も含まれる。つまり、日本商工会議所(以下、日商)には全中小企業の3割程度しか加盟していないのである」、なるほど。 「大企業が賃上げをすれば、「シャワー効果」で、中小企業も賃金が上がるというのは、「神話」に過ぎない。 また、「中小企業の6割が賃上げ予定」という調査自体が眉唾だ。これは日本商工会議所の会員である3308社の回答に基づいているのだが、これが日本の中小企業の実態をあまり反映していない恐れがあるからだ」、なるほど。 窪田順生氏による「“中小企業6割が賃上げ”というが「最低賃金アップ」でしか安いニッポンは変われない」 ダイヤモンド・オンライン (その2)(“中小企業6割が賃上げ”というが「最低賃金アップ」でしか安いニッポンは変われない、「最低賃金50円引き上げ」時代遅れの根拠なき議論 「経営者代表」を議論の主役にしてはいけない訳) 最低賃金 「日本商工会議所の会員になるような「意識の高い中小企業」と統計的には同じ「中小企業」というくくりにされるが、ビジネスモデルも規模も経営にかけるモチベーションもまったく違うので、「6割が賃上げ」と聞いても、自分たちとはまったく関係のない世界の話なのだ」、なるほど。 「最低賃金の引き上げと経営のサポートで鍛えあげる。それが結果として、零細企業をよみがえらせて、日本経済の復活にもつながるのだ。 実際、日本以外の先進国では「最低賃金の引き上げ」を経済政策として継続している。意識の高い中小企業経営者もそこに気づき始めている・・・最低賃金を引き上げるのは長期的には、中小企業を強く成長させていく。そういう大局的な視点で、「賃金の引き上げ」というものをあらためて考えるべきではないか」、その通りだ。 東洋経済オンライン デービッド・アトキンソン氏による「「最低賃金50円引き上げ」時代遅れの根拠なき議論 「経営者代表」を議論の主役にしてはいけない訳」 「いまの日本の給料は、日本人のまじめさや能力にふさわしい水準ではありません。そんな低水準の給料でもガマンして働いている、その『ガマン』によって、いまの日本経済のシステムは成り立っています。でも、そんなのは絶対におかしい」、その通りだ。 「実際の引き上げ幅は、各都道府県での議論を経て決定されますが、全国加重平均が1054円を超えることが予想されます。これは過去の事例から、引き上げ幅が目安より大きくなることが多いためです」、なるほど。 「一部の人は生産性を上げてから賃金を上げるべきと主張しますが、日本企業の生産性は、それほどではないものの上昇しています。それにもかかわらず労働分配率が下がっているため、経営者は賃金を上げていません。よって、経営者側の「生産性を上げてから賃金を上げる」という抽象的な意見は、そもそも経営者側が守っていないのですから、退けるべきです」、その通りだ。 「人口減少が進む中、最低賃金は経済政策の中で中心的な役割を果たすべきです。たくさんの人の生活にかかることですから、労働者と経営者が根拠もなく議論を続けるのではなく、エビデンスに基づいた科学的なアプローチが求められます。 最低賃金の引き上げは、経済全体に対する影響を考慮し、ビッグデータと統計的な分析を用いて慎重に決定されるべきです」、同感である。
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災害(その19)(高をくくっていないか「巨大地震」への財政の備え 復旧・復興の国債増発のため平時にすべきこと、「から騒ぎ」だった南海トラフ巨大地震 日本の地震予知に欠けている重要な視点とは) [社会]

災害については、本年8月14日に取上げた。今日は、(その19)(高をくくっていないか「巨大地震」への財政の備え 復旧・復興の国債増発のため平時にすべきこと、「から騒ぎ」だった南海トラフ巨大地震 日本の地震予知に欠けている重要な視点とは)である。

先ずは、8月14日付け東洋経済オンラインが掲載した慶應義塾大学 経済学部教授の土居 丈朗氏による「高をくくっていないか「巨大地震」への財政の備え 復旧・復興の国債増発のため平時にすべきこと」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/799116
・『8月8日に、宮崎県で最大震度6弱の揺れを観測したマグニチュード7.1の地震があり、これを受けて気象庁は南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)を発表した。この発表は、南海トラフ地震臨時情報制度発足以来初めてのことである。 自然災害は起きてほしくはないが、いかに備えるかは重要である。残念ながら、いざ大きな自然災害が起こると、民間で大きな損害が生じる。 南海トラフ地震については、内閣府が2019年6月に「南海トラフ巨大地震の被害想定について(経済的な被害)」を公表している。これによると、南海トラフ地震が起きると、より被害が大きい陸側ケースで資産等の被害額は171.6兆円、波及して生じる生産の低下や交通の寸断などによる経済活動への影響額は合わせて42.1兆円にのぼるという。 政府が推計した資本ストック被害額は、1995年の阪神・淡路大震災では10兆円弱、2011年の東日本大震災では約17兆円だったから、南海トラフ地震は桁違いである』、「内閣府が2019年6月に「南海トラフ巨大地震の被害想定について(経済的な被害)」を公表している。これによると、南海トラフ地震が起きると、より被害が大きい陸側ケースで資産等の被害額は171.6兆円、波及して生じる生産の低下や交通の寸断などによる経済活動への影響額は合わせて42.1兆円にのぼるという。 政府が推計した資本ストック被害額は、1995年の阪神・淡路大震災では10兆円弱、2011年の東日本大震災では約17兆円だったから、南海トラフ地震は桁違いである」、確かに恐ろしい規模の被害だ。
・『巨大災害の後には債務が増大  この被害額や影響額の中には、国家財政状況の悪化や株価下落、物価高騰の影響は含まれていない。 これまでわが国で起きた巨大災害では、発災直後に政府が民間を財政的に支援してきた。その財源は、大半を国債で賄っていた。 内閣府の「国民経済計算」によると、巨大災害発生後のわが国の一般政府の債務残高は、次のような経緯をたどった。 阪神・淡路大震災が起きた1995年には、1994年度末の約402兆円から1995年度末に452兆円へと50兆円増えた。対GDP比でみると、1994年度末の78.5%から1995年度末には86.1%へと7.6%上昇した。 東日本大震災が起きた2011年には、2010年度末の約927兆円から2011年度末に約993兆円へと66兆円増えた。対GDP比でみると、2010年度末の183.6%から2011年度末には198.6%へと15.0%上昇した。 新型コロナが流行し始めて緊急事態宣言が出された2020年には、2019年度末の約1252兆円から2020年度末に約1313兆円へと61兆円増えた。対GDP比でみると、2019年度末の224.7%から2020年度末には243.6%へと18.9%上昇した。 政府債務対GDP比の上昇幅は、これらの年度を除いた1995年度以降の平均では5%程度だから、巨大災害発生の年には上昇幅が大きいことがわかる。 やはり、大きな災害が起こると、初動で政府が民間を支援することになり、その財源を災害直後は増税で賄うわけにはいかず、国債を増発して支援することになるから、このように政府債務は増大する。) 債務残高の増加額だけだと、災害直前のGDPの約10%程度だが、災害が生じるとGDPも落ち込むから、対GDP比でみるとさらに大きく上昇することになる。 他方で、巨大災害発生後の復旧・復興によって、経済活動が活性化されてGDPが大きく増えて、増税しなくても税収が多く入って政府債務対GDP比が低下に転じるということはあっただろうか。 残念ながら、わが国では阪神・淡路大震災や東日本大震災の後でもそうしたエビデンスはない。 おまけに、わが国の政府支出の規模は、復旧・復興の事業が終われば不要となるから、その分だけ縮小するかと思いきや、さまざまな要因で巨大災害発生前の水準には戻らず、むしろさらに拡大することが常態化している。今般のコロナ禍でも、コロナ対策が終わっても、防衛費やこども予算などで政府支出は膨張しており、縮小する様子はない。 こんな財政運営では、巨大災害が起きずとも、政府債務対GDP比は拡大の一途である』、「他方で、巨大災害発生後の復旧・復興によって、経済活動が活性化されてGDPが大きく増えて、増税しなくても税収が多く入って政府債務対GDP比が低下に転じるということはあっただろうか。 残念ながら、わが国では阪神・淡路大震災や東日本大震災の後でもそうしたエビデンスはない。 おまけに、わが国の政府支出の規模は、復旧・復興の事業が終われば不要となるから、その分だけ縮小するかと思いきや、さまざまな要因で巨大災害発生前の水準には戻らず、むしろさらに拡大することが常態化している。今般のコロナ禍でも、コロナ対策が終わっても、防衛費やこども予算などで政府支出は膨張しており、縮小する様子はない。 こんな財政運営では、巨大災害が起きずとも、政府債務対GDP比は拡大の一途である」、由々しい野放図さだ。
・『政府がお金を借りにくくなっている  これまでは、巨大災害の直後に政府が借金をして民間を支援することができていたが、今後も必ずそのようにできるという保証はない。 まず、国債の消化は以前に比べて苦しくなっている。コロナ禍での国債消化は象徴的だった。 東洋経済オンラインの拙稿「2021年度予算、『短期国債が4割』の異常事態短期債借り換えに奔走、コロナ対策の高い代償」でも詳述したが、コロナ禍では、新規に発行する国債(当年度の新発国債だけでなく借換債も含む)の過半は、2年以下の満期でしか発行できなかった。量的金融緩和策の下だったにもかかわらず、である。 政府はコロナ対策のため国債を大量発行しようにも、金融機関はコロナ後の先行き不安がある中で長期債を追加的に大量購入する余裕はなかったのである。) 加えて、2010年代は日本銀行がデフレ脱却のために国債を大量に買い入れていたが、現在ではもはやそうではない。 2024年3月に、日銀はマイナス金利政策だけでなく、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)もETF(上場投資信託)とJ-REIT(不動産投資信託)の新規買い入れもやめた。今や、国債の買い入れ額の減額についてペースを見計らっている。 今後は、これまでのように日銀頼みで国債の大量増発はできない』、「2024年3月に、日銀はマイナス金利政策だけでなく、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)もETF(上場投資信託)とJ-REIT(不動産投資信託)の新規買い入れもやめた。今や、国債の買い入れ額の減額についてペースを見計らっている。 今後は、これまでのように日銀頼みで国債の大量増発はできない」、その通りだ。
・『「日銀が国債を買えばいい」はもう通じない  巨大災害発生直後ぐらい日銀は特別な対応をするだろう、とみるのは甘い。 災害発生直後には、復旧のための物資が必要となる一方で、生産設備が被災すると生産が滞る。供給が落ち込む一方で需要が増えるから、物価の上昇圧力が高まる。そんな状況で、日銀は金融緩和政策を積極的にはできない。東日本大震災はデフレ下だったから顕著にそうはならなかったが、現在は逆に物価が上がり始めている。 緊急時でも、政府が臨時的に長期債を低利で大量増発できる、と高をくくってはいけない。国債金利も上がり始めており、災害対応で巨額の国債増発が必要になって、必要な金額を発行できたとしても、それには相当な利払い費を後に要することになる。 そう考えると、巨大災害発生後の復旧・復興のために必要とする国債増発を、市場を混乱させないような規模でできるような財政運営を平時から心がけることが重要となる。 緊急時には、当該年度予算のための新発国債と、当該年度に満期を迎えて借り換える借換債に、臨時的な国債増発が加わる。これらを合計した国債発行が、市場で円滑に行える程度に抑制できるかが問われる。そのカギとなるのは、当該年度予算のための新発国債の抑制に他ならない。 巨大災害が仮に起きたとしても、復旧・復興のための国債増発が支障なくできる程度に、平時から新発国債を抑制し、財政余力を確保しておかなければならない』、「緊急時でも、政府が臨時的に長期債を低利で大量増発できる、と高をくくってはいけない。国債金利も上がり始めており、災害対応で巨額の国債増発が必要になって、必要な金額を発行できたとしても、それには相当な利払い費を後に要することになる。 そう考えると、巨大災害発生後の復旧・復興のために必要とする国債増発を、市場を混乱させないような規模でできるような財政運営を平時から心がけることが重要となる・・・そのカギとなるのは、当該年度予算のための新発国債の抑制に他ならない。 巨大災害が仮に起きたとしても、復旧・復興のための国債増発が支障なくできる程度に、平時から新発国債を抑制し、財政余力を確保しておかなければならない」、その通りだ。

次に、8月19日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元週刊文春・月刊文芸春秋編集長の木俣正剛氏による「「から騒ぎ」だった南海トラフ巨大地震、日本の地震予知に欠けている重要な視点とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/348931
・『「巨大地震注意」は何事もなく解除 社会が被った予想以上の影響  私は元編集者で地震の専門家ではありませんが、逆に専門家の言うことも「まずは疑ってかかる」ということを、仕事上の責任だと思っています。 8月8日に宮崎で地震が起こり、政府は「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」を召集、その夜には南海トラフ地震臨時情報として「巨大地震注意」という文言が日本中にあふれました。日本中がバニックになり、お盆の連休に期待していた観光地の宿泊施設では予約のキャンセルが相次ぎ、新幹線は徐行し、人々は食料品の買い出しに走りました。 そんな中、私も建設、消防、自衛隊、自治体などに関わるキーマンたちに意見を聞き、日本が最低限取り組むべき防災・減災対策についてまとめた記事を寄稿しました(https://diamond.jp/articles/-/348677)。しかし、たった1週間後の15日に「巨大地震注意」の呼びかけは解除となりました。 日本は地震大国ですから、地震への警戒は常にすべきですが、何十年も国家予算をかけて、政府と気象庁が「地震予知連絡会」を運営しているのに、予知を成功させたことがなく、また珍しく「巨大地震注意」という予告を出したのに、「地震活動などに特段の異常が観測されなかった」と、明確な説明がないまま収束しました。この機に、地震予知の方法を見直してもいいのではないかと思います。 もちろん、巨大地震のリスクを常に分析し、少しでも不安が生じれば国民に早期の警戒を呼びかけることは、国家として必要不可欠な仕事の一つです。今回は事前に決められたルールの範囲で適正に発出された呼びかけでもあったことでしょう。1週間で解除されましたが、引き続き国民一人一人が警戒を続けるべきです。とはいえ、これだけの影響を社会に与えることが改めてわかったのだから、予知の精度を上げていくことも、同じくらい重要なテーマだと思うのです。 そもそも論になってしまいますが、ロバート・ゲラー東大教授は「地震予知が科学的に不可能である」と主張していました。彼によると、(1)日本政府が使用している確率論的地震動予測地図は、実際の地震発生場所と一致しないことが多く、その信頼性に疑問がある、(2)地震の前兆を観測することは非常に難しく、短期的な地震予知は現実的ではない、ということです。 実際、予知に成功していないわけですから、この主張は一定の説得力があります』、「ロバート・ゲラー東大教授は「地震予知が科学的に不可能である」と主張していました。彼によると、(1)日本政府が使用している確率論的地震動予測地図は、実際の地震発生場所と一致しないことが多く、その信頼性に疑問がある、(2)地震の前兆を観測することは非常に難しく、短期的な地震予知は現実的ではない、ということです」、これまでの常識は抜本的に見直す必要がありそうだ。
・『プレート理論は定説ではなくなりつつある? 疑問を投げかける専門家の気になる主張  特に、地震予知連絡会や気象庁、政府が地震が起きる度に説明の中心としているプレート理論そのものが、世界的に見て定説とまでは言い切れるものではなくなっているということを主張する学者は少なからずいるのが実情です。そのことを、日本のメディアは吟味してから報道すべきです。 これについて、詳しく述べましょう。もともとプレート理論は仮説として有力視され、1969年に開催された米国のランドマークペンローズ会議で発表されました。出席した日本人科学者は、初めてこの理論を知り、その理論を信じ、いつしか「仮説」から「真理」のように解釈してしまいました。そして地震予知連絡会が作られ、莫大な予算が投じられて、新しい視点や理論が出てきても、なかなか受け容れられない仕組みになってしまっていると言われます。 科学は常に進歩します。DNA解析で日本人のルーツに関する研究が大きく変わったように、地球の内部に関する調査も50年前から進歩しました。私に新しい調査結果を教えてくれたのは、埼玉大学名誉教授(地質学)の角田史雄氏と元内閣情報調査室参事官の藤和彦氏による『徹底図解 メガ地震がやってくる!』(ビジネス社)という書籍でした。この書籍の内容を参照しながら、論を進めましょう(引用は「要約」になるので、詳しくは本書をお読みください)。 本書によると、かつては地球の内部を調べる方法がなく、推測によって、地下100kmまでの範囲内に硬い岩盤(プレート)があるという理論が主流でした(400キロという説もあります)。しかしこの10年ほどで新しい研究が進みました。米国地質研究所は、人間に使うMRIを巨大にしたような装置を使ってさらに地下深くの状況を解明することに成功し、660kmまでのデータを公開しました。同時に世界火山学会(スミソニアン博物館)も、火山爆発とマントルのたまり具合を詳細にデータで発表しています。 この調査でわかったことは、プレートに関する従来の説を覆すものでした。プレート説の根幹は、地中深くにあるマントル(地球内部の地殻と核との間の層。溶けると溶岩流のような状態になる)の対流によって隆起した山脈(海嶺)から生まれたプレートが十数枚あり、それがぶつかるか、片方の下部に沈むと地震や火山噴火を誘発するというものです。 しかし、このMRI(正式名はMT=マントルトモグラフィー)の調査では、太平洋の底には地下1000キロまで温かいマントルが流れているものの、巨大プレートを形成するための強い関連性はないこと、またプレートは地下すべてを覆っているものではなく、厚さもなくて、巨大地震のエネルギーを生み出せるほどのパワーはないことが指摘されました。そしてプレートは常に一定方向に遠距離移動しており、実際には時計回りに回転していて、いずれ衝突し地震が起こるという「沈み込み理論」は適合しないということです。) 確かにそう考えると、阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震など、最大震度7を記録している地震はすべてプレート境界面以外で起こっています。そして予知もできませんでした。また海外に目を転じても、大規模地震の震源とされる太平洋プレートから2500kmも離れた中国四川省で起きたM8の大地震の説明がつきません。 となると、8月当初、日本中に警告が発せられていた南海トラフ地震の発生理由も、ユーラシアプレートとフィリピン海プレートの境界で起こるという理論が基になっているので、疑問がわいてきます』、「このMRI(正式名はMT=マントルトモグラフィー)の調査では、太平洋の底には地下1000キロまで温かいマントルが流れているものの、巨大プレートを形成するための強い関連性はないこと、またプレートは地下すべてを覆っているものではなく、厚さもなくて、巨大地震のエネルギーを生み出せるほどのパワーはないことが指摘されました。そしてプレートは常に一定方向に遠距離移動しており、実際には時計回りに回転していて、いずれ衝突し地震が起こるという「沈み込み理論」は適合しないということです。 確かにそう考えると、阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震など、最大震度7を記録している地震はすべてプレート境界面以外で起こっています。そして予知もできませんでした。また海外に目を転じても、大規模地震の震源とされる太平洋プレートから2500kmも離れた中国四川省で起きたM8の大地震の説明がつきません」、なるほど。
・『最先端の調査が行われる一方 過去の巨大地震を根拠とした推論も  もっとも、地震予知連絡会の調査もいい加減なものではありません。国土地理院が設置した約1300カ所の電子基準点から得られるデータを基に、人工知能(AI)と物理モデルを組み合わせたハイブリッドな解析手法を用いた「MEGA地震予測」のシステムを駆使しています。今回宮崎で地震が起きたとき、南海トラフ地震との関連性を発表するのに時間がかかったのは、まさにこのシステムでの計算に2時間も全力を傾けていたからです。 が、メディアの報道を見ると、南海トラフ地震が起こる確率は、むしろ過去の巨大地震を根拠としたアバウトな推理になってしまっています。1854年の安政東海地震、安政南海地震から約90年後に昭和東南海地震、昭和南海地震が起きたため、今はそれから80年たっているから、次の大地震発生まであと10年しか猶予がないというものです。 一方、「日向灘はもともと群発地震が起こっていたところで、最初の南海トラフには入っていなかった。ましてや、それが南海(四国、和歌山)から駿河、房総半島まで及ぶとは思えない」と言う地震学者もいます。地震の専門家からメディアにいたるまで、どうも目線が合っていないように感じてしまいます。 話を最新の調査結果に戻すと、(1)マントル対流による摩擦熱ではプレートを動かすことはできない、(2)そもそもプレートを生む海嶺の下にはマントル対流がない、という説が唱えられ始めました。米国地質研究所の調査画像によれば、地球の地下1000kmに及ぶ冷たく巨大な岩の柱がマントル対流を遮っているそうです。 一方、地下200kmの環太平洋火山・地震帯が日本をすっぽり覆っていること、その下の熱いマントルが南太平洋から東アフリカへと伸びる「熱の移送路」があることも判明しました。 そこで地質学者である角田氏は、大地震の真犯人は地球内部からの高熱流(地表の下410kmから660kmにある、上部マントルと下部マントルに挟まれる遷移層=マグマと岩石が混じった状態のもの)ではないかと推理しました。彼自身が語っているように、これはまだ仮説にすぎません。しかし、もともと海域の理論であるプレート説が陸の地震に拡大解釈された感は否めません。) たまたま日本の場合、地形的に特殊な場所にあり、プレートが起こした地震と解釈できる部分があったため、学者の多くがプレート説に取り憑かれてしまったというのです。 実はプレートを動かしているのは、もっと地球の深奥にある高熱流であり、プレートはその共犯者でしかないと角田氏は推理しています。つまり無縁ではないのですが、マントルが地震を起こして、下から突き上げられたプレートが動いて最終仕上げをするという構造になっており、前述のようにプレートそのものには大きなエネルギーを放出する力はないということで、「プレートを追いかけても、地震予知はできない」というのが氏の仮説の結論です。 そして、地球には黒潮のようなマントルの流れが三つあり、そのうち二つが日本列島の下にあります。M7以上の地震の半分が日本で起こるのは、そのためだというのです。 「角田仮説」では、地球の深層で5回以上M5以上の深発地震が起こり、それが3回続くと、確実にそのマントル対流上で大地震が起こるそうです。たとえば阪神淡路大震災のときは、5カ月前と2カ月前にフィジーとジャワで起きていました。東日本大震災のときは、約1カ月の間にフィジーとフィリピンで10回起きていました。熊本地震の場合も、小笠原とフィジーで5回起きています』、「プレートそのものには大きなエネルギーを放出する力はないということで、「プレートを追いかけても、地震予知はできない」というのが氏の仮説の結論です。 そして、地球には黒潮のようなマントルの流れが三つあり、そのうち二つが日本列島の下にあります。M7以上の地震の半分が日本で起こるのは、そのためだというのです・・・地球の深層で5回以上M5以上の深発地震が起こり、それが3回続くと、確実にそのマントル対流上で大地震が起こるそうです。たとえば阪神淡路大震災のときは、5カ月前と2カ月前にフィジーとジャワで起きていました。東日本大震災のときは、約1カ月の間にフィジーとフィリピンで10回起きていました。熊本地震の場合も、小笠原とフィジーで5回起きています」、なるほど。
・『様々な仮説を検証しながら自ら警戒して備えるべき  このように、過去の大地震と深層地震と火山の関係を調べると、過去に起きた86回に及ぶM7以上の大地震は、すべてこの例に当てはまると本書は伝えています。 本書には、大地震が次にどこで起こるかという予測も詳述されていますが、ネタばれになるので、紹介するのはやめておきます。もともとは、政府側にいて地震予知連絡会が地震を予知できないことに不審感を持った藤氏が、自身の仮説を紹介するために出版したもので、近いうちに南海トラフ地震にポイントを絞った新刊も上梓されるそうです。 もちろん、日向灘では群発地震が続いています。そして確率論ではありますが、昭和東南海地震から80年という注意喚起にも、それなりの説得力はあります。ですから読者諸氏には、引き続き警戒を緩めないでほしいと思います。日本は地震大国。そしてここで紹介した話も、今のところ仮説にすぎません。科学的にははっきりしたことはわかっていないのだから、自ら警戒して備えるしかないのです』、「過去の大地震と深層地震と火山の関係を調べると、過去に起きた86回に及ぶM7以上の大地震は、すべてこの例に当てはまると本書は伝えています・・・もともとは、政府側にいて地震予知連絡会が地震を予知できないことに不審感を持った藤氏が、自身の仮説を紹介するために出版したもので、近いうちに南海トラフ地震にポイントを絞った新刊も上梓されるそうです。 もちろん、日向灘では群発地震が続いています。そして確率論ではありますが、昭和東南海地震から80年という注意喚起にも、それなりの説得力はあります。ですから読者諸氏には、引き続き警戒を緩めないでほしいと思います。日本は地震大国。そしてここで紹介した話も、今のところ仮説にすぎません。科学的にははっきりしたことはわかっていないのだから、自ら警戒して備えるしかないのです」、「地震」に関しては、決定的な理論は確立していないとはいえ、科学的にははっきりしたことはわかっていないのだから、自ら警戒して備えるしかないのです」、その通りなのだろう。 
タグ:(その19)(高をくくっていないか「巨大地震」への財政の備え 復旧・復興の国債増発のため平時にすべきこと、「から騒ぎ」だった南海トラフ巨大地震 日本の地震予知に欠けている重要な視点とは) 災害 東洋経済オンライン 土居 丈朗氏による「高をくくっていないか「巨大地震」への財政の備え 復旧・復興の国債増発のため平時にすべきこと」 「内閣府が2019年6月に「南海トラフ巨大地震の被害想定について(経済的な被害)」を公表している。これによると、南海トラフ地震が起きると、より被害が大きい陸側ケースで資産等の被害額は171.6兆円、波及して生じる生産の低下や交通の寸断などによる経済活動への影響額は合わせて42.1兆円にのぼるという。 政府が推計した資本ストック被害額は、1995年の阪神・淡路大震災では10兆円弱、2011年の東日本大震災では約17兆円だったから、南海トラフ地震は桁違いである」、確かに恐ろしい規模の被害だ。 「他方で、巨大災害発生後の復旧・復興によって、経済活動が活性化されてGDPが大きく増えて、増税しなくても税収が多く入って政府債務対GDP比が低下に転じるということはあっただろうか。 残念ながら、わが国では阪神・淡路大震災や東日本大震災の後でもそうしたエビデンスはない。 おまけに、わが国の政府支出の規模は、復旧・復興の事業が終われば不要となるから、その分だけ縮小するかと思いきや、さまざまな要因で巨大災害発生前の水準には戻らず、むしろさらに拡大することが常態化している。 今般のコロナ禍でも、コロナ対策が終わっても、防衛費やこども予算などで政府支出は膨張しており、縮小する様子はない。 こんな財政運営では、巨大災害が起きずとも、政府債務対GDP比は拡大の一途である」、由々しい野放図さだ。 「2024年3月に、日銀はマイナス金利政策だけでなく、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)もETF(上場投資信託)とJ-REIT(不動産投資信託)の新規買い入れもやめた。今や、国債の買い入れ額の減額についてペースを見計らっている。 今後は、これまでのように日銀頼みで国債の大量増発はできない」、その通りだ。 「緊急時でも、政府が臨時的に長期債を低利で大量増発できる、と高をくくってはいけない。国債金利も上がり始めており、災害対応で巨額の国債増発が必要になって、必要な金額を発行できたとしても、それには相当な利払い費を後に要することになる。 そう考えると、巨大災害発生後の復旧・復興のために必要とする国債増発を、市場を混乱させないような規模でできるような財政運営を平時から心がけることが重要となる・・・そのカギとなるのは、当該年度予算のための新発国債の抑制に他ならない。 巨大災害が仮に起きたとしても、復旧・復興のための 国債増発が支障なくできる程度に、平時から新発国債を抑制し、財政余力を確保しておかなければならない」、その通りだ。 ダイヤモンド・オンライン 木俣正剛氏による「「から騒ぎ」だった南海トラフ巨大地震、日本の地震予知に欠けている重要な視点とは」 「ロバート・ゲラー東大教授は「地震予知が科学的に不可能である」と主張していました。彼によると、(1)日本政府が使用している確率論的地震動予測地図は、実際の地震発生場所と一致しないことが多く、その信頼性に疑問がある、(2)地震の前兆を観測することは非常に難しく、短期的な地震予知は現実的ではない、ということです」、これまでの常識は抜本的に見直す必要がありそうだ。 「このMRI(正式名はMT=マントルトモグラフィー)の調査では、太平洋の底には地下1000キロまで温かいマントルが流れているものの、巨大プレートを形成するための強い関連性はないこと、またプレートは地下すべてを覆っているものではなく、厚さもなくて、巨大地震のエネルギーを生み出せるほどのパワーはないことが指摘されました。そしてプレートは常に一定方向に遠距離移動しており、実際には時計回りに回転していて、いずれ衝突し地震が起こるという「沈み込み理論」は適合しないということです。 確かにそう考えると、阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震など、最大震度7を記録している地震はすべてプレート境界面以外で起こっています。そして予知もできませんでした。また海外に目を転じても、大規模地震の震源とされる太平洋プレートから2500kmも離れた中国四川省で起きたM8の大地震の説明がつきません」、なるほど。 「プレートそのものには大きなエネルギーを放出する力はないということで、「プレートを追いかけても、地震予知はできない」というのが氏の仮説の結論です。 そして、地球には黒潮のようなマントルの流れが三つあり、そのうち二つが日本列島の下にあります。M7以上の地震の半分が日本で起こるのは、そのためだというのです・・・地球の深層で5回以上M5以上の深発地震が起こり、それが3回続くと、確実にそのマントル対流上で大地震が起こるそうです。 たとえば阪神淡路大震災のときは、5カ月前と2カ月前にフィジーとジャワで起きていました。東日本大震災のときは、約1カ月の間にフィジーとフィリピンで10回起きていました。熊本地震の場合も、小笠原とフィジーで5回起きています」、なるほど。 「過去の大地震と深層地震と火山の関係を調べると、過去に起きた86回に及ぶM7以上の大地震は、すべてこの例に当てはまると本書は伝えています・・・もともとは、政府側にいて地震予知連絡会が地震を予知できないことに不審感を持った藤氏が、自身の仮説を紹介するために出版したもので、近いうちに南海トラフ地震にポイントを絞った新刊も上梓されるそうです。 もちろん、日向灘では群発地震が続いています。 そして確率論ではありますが、昭和東南海地震から80年という注意喚起にも、それなりの説得力はあります。ですから読者諸氏には、引き続き警戒を緩めないでほしいと思います。日本は地震大国。そしてここで紹介した話も、今のところ仮説にすぎません。科学的にははっきりしたことはわかっていないのだから、自ら警戒して備えるしかないのです」、 「地震」に関しては、決定的な理論は確立していないとはいえ、科学的にははっきりしたことはわかっていないのだから、自ら警戒して備えるしかないのです」、その通りなのだろう。
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