積水ハウス事件(その5)(あの積水ハウスが50億円以上だまし取られた…! 衝撃の「地面師詐欺」の語られなかった真相 短期集中連載・第1回、仲介業者の住所は「元衆議院議員」の事務所!? 謎が謎を呼ぶ積水ハウスの「巨額地面師詐欺事件」 短期集中連載・第6回、社長が会長を追い落とすクーデターに発展!積水ハウス「巨額地面師詐欺事件」の醜悪な結末 短期集中連載・最終回) [社会]
積水ハウス事件については、2020年5月12日に取上げた。今日は、(その5)(あの積水ハウスが50億円以上だまし取られた…! 衝撃の「地面師詐欺」の語られなかった真相 短期集中連載・第1回、仲介業者の住所は「元衆議院議員」の事務所!? 謎が謎を呼ぶ積水ハウスの「巨額地面師詐欺事件」 短期集中連載・第6回、社長が会長を追い落とすクーデターに発展!積水ハウス「巨額地面師詐欺事件」の醜悪な結末 短期集中連載・最終回)である。
先ずは、本年8月10日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの森 功氏による「あの積水ハウスが50億円以上だまし取られた…! 衝撃の「地面師詐欺」の語られなかった真相 短期集中連載・第1回」を紹介しよう。
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・『ハウスメーカー、デベロッパーとして国内最大手の積水ハウスが、50億円以上ものカネを騙し取られた2018年の「地面師詐欺」事件は、いまも多くの謎に包まれている。15人以上の逮捕者を出す大捕物になったものの、不起訴になった容疑者も多数いて、公判でもすべてが明らかになったとは言い難い。 このたび、事件をモデルにしたドラマ「地面師たち」(原作・新庄耕)の配信がNetflixでスタートし、大反響を呼んでいる。ノンフィクション作家・森功氏の文庫『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』には、ドラマでは描かれなかった数々の知られざる事実が記されており、その内容を7回連続で公開する』、興味深そうだ。
・『ストップされた工事 通報を受けた警視庁大崎警察署の捜査員が現場に駆け付けたのは、2017年6月1日の昼過ぎのことだった。 「あなたたちは、どちらの方ですか」 積水ハウス工務部の担当者たちは、パトカーから降りてきた警察官にいきなりそう誰何(すいか)された。工務部とは文字どおり、デベロッパーが建設工事にとりかかる前に現場の調査をし、資材を調達する先発隊だ。積水ハウスの工務部の社員も、そのために現場で作業をしようとしていたのだが、そこへ警察官が現れること自体、まったく事情が呑み込めない。まさに面食らった。 現場はJR山手線の五反田駅から徒歩3分、目黒川を渡ったところにある旅館「海喜館(うみきかん)」の玄関先だ。不動産代金を払い込んで売買契約が成立したはずの積水ハウスの社員が、古くなった建物の取り壊し準備を始めた。旅館の周辺に赤いカラーコーンを配置し、測量を始めようとした。その矢先の出来事だ。とつぜんパトカーがサイレンを鳴らして駆け付け、周囲が大騒ぎになったのである。 通報したのは旅館の持ち主、海老澤佐妃子(えびさわ・さきこ)の異母弟から頼まれた弁護士だった。警察官がやって来るのとほぼ同時に、その弁護士も旅館の玄関先に現れた。驚いたのは積水ハウスのほうだ。 「ここは持ち主からうちが買いとったんです。それで、測量を始めたところですが……」 二人の工務部員のうちの一人が、警察官にそう説明した。そこへ通報した弁護士が割って入った。 「あんた方、何を言っているんですか。私こそ持ち主の依頼でここへ来ています」 すでに旅館の土地建物の売買契約を済ませていたはずの積水側にとっては、まさに寝耳に水だ。 「あなたこそ何を言っているんだ。こっちは支払いも済ませているんだよ。なのに、何の権利があって邪魔するんだ」 だが、弁護士も負けていない。 「私の依頼人は海老澤さんから相続する人なんだ。ここは売ってないんだから、測量なんか絶対にさせないよ」) 史上空前「55億円」の被害 近所の商店主が、たまたまその騒ぎを見ていた。当日の出来事をこう振り返った。 「しばらく揉めていたのですが、泡を喰った積水ハウスの人が、うちの店に駆けこんできたんです。そうして『これは、海老澤佐妃子さんじゃないんですか?』とパスポートの写真を見せながら、僕に確認するのです。その写真は海老澤さんとは似ても似つかない別人でした。それで、僕が『まったく似てないので、違う人だと思うよ』と教えてあげると、彼らは青ざめてね。一人は急いで走り去っちゃった。二人のうち残った若い方の人に『オタクたち、おそらく騙されてるよ』って言ってやったんです」 残された積水ハウスの担当者は、商店主のその言葉に呆然として立ちすくんだ。「営業部が本人を確認したし、旅館の内覧もおこなったはずなのに……」工務部の若い担当者は、消え入るような声でそうつぶやいた。かたわらの商店主に説明するというより、ひとりごちるように、こう言葉を続けた。
「そういえば、俺たちが『旅館で本契約を取り交わしたい』と先方に申し出たとき、向こうは変だった。『あまり佐妃子さんの容態がよくないから、旅館じゃなくホテルでやりたい』と断られたもんな。あっ、そのホテルに来た女がこの写真の……ああ、どうしよう」 もはや積水ハウスが前代未聞の不動産詐欺に遭ったのは、明らかだ。それでもあきらめきれない積水ハウス側では、事件が判明した6月1日から10日まで、旅館「海喜館」の周囲を封鎖した。その日の夜から、建物に誰も寄り付かないよう、制服のガードマンたちが24時間、この古ぼけた旅館を見張るようになる。 地主になりすまして不動産を騙し取る地面師詐欺は、昨今のマンションブームに加え、東京五輪を控えて地価が高騰してきた都内の優良物件が狙われる傾向が強い。五反田駅の至近に建つ旅館「海喜館」は、老朽化して長らく営業もしていない。近所でも地主の海老澤佐妃子を見かけなくなっていたという。まさに地面師にとって狙い目だった。 50件とも100件とも言われる警視庁管内の地面師詐欺のなかでも、積水ハウスのケースは飛び抜けてスケールが大きい。事件が発覚したあとの8月2日付の積水ハウスの発表によれば、2000平米(およそ600坪)の土地をはじめとした一連の不動産取引総額は70億円にのぼる。うち積水ハウスは63億円をニセ地主に支払い、最終的に55億5000万円もの大金をまんまと騙し取られたのである。紛れもなく、これまで類を見ない史上最大の地面師詐欺である』、「2000平米(およそ600坪)の土地をはじめとした一連の不動産取引総額は70億円にのぼる。うち積水ハウスは63億円をニセ地主に支払い、最終的に55億5000万円もの大金をまんまと騙し取られたのである。紛れもなく、これまで類を見ない史上最大の地面師詐欺である」、なるほど。
・『老舗旅館・海喜館の成り立ち 地面師事件には、それぞれに特徴がある。不動産のプロが騙されるケースはさほど珍しくないが、なかでも積水ハウスの件は、騙された会社の規模が群を抜いている。 大和ハウス、住友林業とともに、日本のハウスメーカー御三家の一角を占め、2018年1月の決算では大和ハウスに次ぐ2兆1593億円を売り上げた業界のリーディングカンパニーだ。マンション開発も手掛ける日本屈指のデベロッパーでもある。取引における経験や知識も豊富だ。そんな業界のガリバー企業が、なぜこうも簡単に巨額の不動産代金を騙し取られたのか。 積水ハウス事件の複雑怪奇なカラクリを追う。 事件に巻き込まれた地主の海老澤佐妃子は1944年、五反田のこの地で生まれた。生まれた頃、すでに両親が海喜館を経営しており、彼女は旅館で育った。 「もともと海喜館は佐妃子さんのお父さんが始めた旅館でした。なにしろ場所がいいので人気があり、ずいぶん繁盛していました」 旅館の周囲を歩くと、古くから住んでいる町内会の役員に出会うことができた。 「お父さんはとても羽振りがよく、やがて奥さん以外にも愛人をつくってしまいました。それで夫婦が揉めたんです。あげくお父さんが家を出て行き、外腹(ほかばら)の男の子までつくってしまった。以来、母娘の二人暮らしになり、旅館は佐妃子さんのお母さんが切り盛りするようになりました。お母さんの時代、旅館はずっと賑わっていましたよ」 そう説明してくれた。戦前から花街として栄えてきた五反田では、いまもその名残がある。夜になると、ピンクサロンや個室マッサージなど、風俗店のネオンサインに若いサラリーマンの酔客が吸い寄せられる。事件の舞台となった海喜館は、そんな花街から少し隔てた目黒川沿いの老舗旅館として栄えてきた。 1975年12月23日、夫に代わり旅館を経営してきた佐妃子の実母きよが他界し、佐妃子がこの不動産を相続した。町内会の役員は、その頃のこともよく覚えていた。 「佐妃子さんは、相続後もしばらく板前さんや仲居さんを使って海喜館を経営していました。このあたりは商店が多くてね、町内会の行事にも積極的に参加してくれました」』、「地主の海老澤佐妃子は1944年、五反田のこの地で生まれた。生まれた頃、すでに両親が海喜館を経営しており、彼女は旅館で育った。 「もともと海喜館は佐妃子さんのお父さんが始めた旅館でした。なにしろ場所がいいので人気があり、ずいぶん繁盛していました」・・・事件の舞台となった海喜館は、そんな花街から少し隔てた目黒川沿いの老舗旅館として栄えてきた。 1975年12月23日、夫に代わり旅館を経営してきた佐妃子の実母きよが他界し、佐妃子がこの不動産を相続した。町内会の役員は、その頃のこともよく覚えていた。 「佐妃子さんは、相続後もしばらく板前さんや仲居さんを使って海喜館を経営していました」、なるほど。
・『二人の大物地面師 もともと海喜館は宴会などもおこなえる大きな旅館だった。日本中が空前の好景気に沸いたバブル時代はもとより、バブル崩壊後も出張サラリーマンの宿泊客を目当てに営業を続け、それなりに経営はうまくいっていたようだ。だが、施設が古くなっていくにつれ、近隣に建設されたビジネスホテルに押されるようになり、経営は次第に苦しくなっていった。町内会の役員が続ける。 「旅館の経営が成り立っていたのは、10年前まででしょうかね。そうなると、場所がいいからね。『旅館を廃業してマンション経営をしないか』『スポーツジムをやらないか』と、不動産会社の営業マンやら、マンションデベロッパーの社員やら、ヤクザ風の不動産ブローカーにいたるまで、いろんな人が佐妃子さんに近づいて来るようになった。彼らは客を装って旅館に泊まってね、彼女が接客に出てくると、『旅館を売ってほしい』とうるさくて、佐妃子さんも嫌気がさしていたんだよ。しまいに佐妃子さんは常連客しか泊めなくなってね。旅館は絶対に売らない、って頑なに言い続けてきたんです」 そんな状態が何年も続いてきた。それでは経営がうまくいくはずもない。海老澤佐妃子は2015年3月、旅館を廃業した。といっても売る気はなく、その後もしばらく板前といっしょに旅館に住み続けた。が、やがて体調を崩してしまう。生来、身体の丈夫なほうでなかった佐妃子は、すでに古希を過ぎていた。町内会の役員はさらにこう言った。 「僕が最後に旅館で佐妃子さんを見かけたのは、廃業届を出してから2年ほど経った17年の2月ごろでした。それから姿を見ていません」 近所で姿を見かけなくなったのは、彼女が入院したからだ。当然のごとく主が入院中の旅館は、人の出入りが途絶えた。瞬く間に無人の廃墟のように荒れ果てていった。 そんな高齢の地主の変化を見逃さなかったのが、地面師たちである。 詳しくは後述するが、今度の計画に加わった輩が、この古ぼけた旅館に出没するようになるのは、彼女が入院する少し前のことだった。地面師グループは、一見するとマンションデベロッパーや不動産ブローカーと見分けがつかない。が、彼らは土地を買って開発するつもりなど毛頭ない。土地を材料にいかにして金を手にするか、それだけが目的であり、そこでいろんな手段を駆使する。そうしてそれまでの不動産ブローカーたちに交じりながら、地面師たちが海喜館の周囲に出没するようになっていた。 「海喜館の詐欺で最初に計画を立てたのが、マイクと北田の二人でしょう。警視庁も彼らが当初から絡んでいたと睨んで捜査を進めてきました」 そう明かしてくれたのは、海喜館について地面師たちの動きを調査してきた東京都内の不動産業者だ。この「マイク」と「北田」とは、内田マイクと北田文明のことを指す。二人はともに、業界にその名の知れ渡った大物地面師である。 第2回【あの積水ハウスが50億円以上だまし取られた…! 暗躍した2人の「スター地面師」の正体】につづく。 【地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団】2018年、「積水ハウスが地面師に55億円以上を騙し取られた」というニュースに日本中が驚いた。そもそも、地面師とはなんなのか。「不動産の持ち主になりすまし、勝手に不動産を転売して大儲けする」詐欺集団で、騙されるのは、デベロッパーや不動産業者などの「プロ」たち。被害者の中には積水ハウスを筆頭に、信じられないような大手が含まれている。本書は、その複雑で巧妙すぎる手口をすべて記す――購入はこちらから』、「海老澤佐妃子は2015年3月、旅館を廃業した。といっても売る気はなく、その後もしばらく板前といっしょに旅館に住み続けた。が、やがて体調を崩してしまう。生来、身体の丈夫なほうでなかった佐妃子は、すでに古希を過ぎていた。町内会の役員はさらにこう言った。 「僕が最後に旅館で佐妃子さんを見かけたのは、廃業届を出してから2年ほど経った17年の2月ごろでした。それから姿を見ていません」 近所で姿を見かけなくなったのは、彼女が入院したからだ。当然のごとく主が入院中の旅館は、人の出入りが途絶えた。瞬く間に無人の廃墟のように荒れ果てていった・・・地面師たちが海喜館の周囲に出没するようになっていた」、なるほど。
次に、8月10日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの森 功氏による「仲介業者の住所は「元衆議院議員」の事務所!? 謎が謎を呼ぶ積水ハウスの「巨額地面師詐欺事件」 短期集中連載・第6回」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/134778?imp=0
・『ハウスメーカー、デベロッパーとして国内最大手の積水ハウスが、50億円以上ものカネを騙し取られた2018年の「地面師詐欺」事件は、いまも多くの謎に包まれている。15人以上の逮捕者を出す大捕物になったものの、不起訴になった容疑者も多数いて、公判でもすべてが明らかになったとは言い難い。 このたび、事件をモデルにしたドラマ「地面師たち」(原作・新庄耕)の配信がNetflixでスタートし、大反響を呼んでいる。ノンフィクション作家・森功氏の文庫『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』には、ドラマでは描かれなかった数々の知られざる事実が記されており、その内容を7回連続で公開する』、興味深そうだ。
・『政界や芸能界ともつながっていた 積水ハウスの払い込み窓口となったIKUTAについては、さすがに民事訴訟の資料からは大きな金の流れは見えない。オーナーの生田におよそ10億円が渡っている、という新聞報道もあった。 が、実際にそれがすべて生田の懐に入ったかどうかは不明だ。 ちなみに生田は政界や芸能界にも知己の多いある種の著名人でもある。会社の所在地が元代議士の小林興起事務所に登記され、小林夫人の明子も役員として名を連ねていたことでも、注目を集めてきた。まだ事件が摘発される前、その小林興起に取材した。 「詐欺が表沙汰になってから、初めて私どもの事務所にIKUTAが登記されていることを知りました」 はじめは、そんな話をして埒が明かなかった小林事務所だが、当人に確認してもらうとニュアンスが変わってきた。 「小林の記憶によれば、IKUTAから小林事務所に登記を置かせてほしいと依頼があったのが(事件の)2年ほど前だそうです。当時、支援企業の対応を任せていた秘書が、小林が落選中だったので事務所に何か利益になればいい、という思いもあって話を持ってきたそうです。その方(生田のこと)ともお会いし、女性向けの美容、健康事業をする会社だとのことで夫人も名前を貸した。 ですが、実際には何の事業もスタートしませんでした。事務所のスペースを貸す窓口の秘書は家賃収入なども期待していたが、それもまったく発生しませんでした。先方からは、『今回はこんなことになってしまって申し訳ない。ただ、自分も騙された側で小林事務所にはご迷惑をかけないので、ご心配なく』とご連絡があり、『自分は積水ハウスさんに繋いだだけ。まさか本人確認もしないでこの案件を進めていたとは理解できない』と言っているそうです」』、「『自分は積水ハウスさんに繋いだだけ」との言い訳は事実に近いのだろう。
・『調査報告書の裏事情 「分譲マンション用地の取引事故に関する経緯概要等のご報告」 犯行から9ヵ月後の2018年3月6日、積水ハウス株式会社代表取締役社長、仲井嘉浩の名でこう題した発表がなされた。 平成29(二〇一七)年8月2日付で発表いたしました『分譲マンション用地の購入に関する取引事故につきまして』(以下、「本件」といいます。)に関し、社外役員による『調査対策委員会』の平成30年1月24日付調査報告書を受領いたしました。これを受けまして、当社としての本件に関する経緯概要並びに再発防止に向けた取組み等を以下の通りご報告いたします〉 その〈1.事件の経緯概要〉という項目でこう記している。 〈東京マンション事業部が担当する業務のなかで、東京都品川区西五反田の土地建物(以下、「本件不動産」といいます。)につき、その所有者と称するA氏(後に、偽者と判明しました。)から、その知人の仲介者が実質的に経営する会社(以下、「X社」といいます。)を中間の売買当事者とし、X社から転売される形式で、当社がこれを買い受けることとなりました。4月24日、A氏とX社の間の売買契約、X社と当社との間の売買契約という2件の売買契約を同時に締結するとともに、所有権移転の仮登記申請手続を行った上で、手付金を支払い、仮登記が完了しました〉 繰り返すまでもなく、A氏がニセ海老澤佐妃子の羽毛田正美で、X社がIKUTA社である。 これではほとんど事件の詳細がわからない。報告書にはこうも書かれている。 〈なお、事件経緯のご報告につきましては、捜査上の機密保持への配慮のため、これ以上の詳細説明は差し控えさせていただきます〉』、「事件経緯のご報告につきましては、捜査上の機密保持への配慮のため、これ以上の詳細説明は差し控えさせていただきます」、こんなことでは実態解明は期待できない。
・『60億円の行方 とどのつまり60億円あまりを手にしたのは誰か。 そこが事件解明の焦点になる。事件はこれで終わらない。「調査対策委員会」の事件の経緯概要はこう続く。 〈売買契約締結後、本件不動産の取引に関連した複数のリスク情報が、当社の複数の部署に、訪問、電話、文書通知等の形で届くようになりましたが、当社の関係部署は、これらのリスク情報を取引妨害の嫌がらせの類であると判断していました。そのため、本件不動産の所有権移転登記を完全に履行することによって、これらが鎮静化することもあるだろうと考え、6月1日に残代金支払いを実施し、所有権移転登記申請手続を進めましたが、6月9日に、登記申請却下の通知が届き、A氏の詐称が判明しました。当社は、直ちにA氏との間での留保金の相殺手続を実施し、実質的被害額は約55億5千万円となりました〉 そもそも積水ハウスが17年8月に公表した詐欺の被害額は63億円だった。総額70億円の取引総額からすると、7億円も少ない。さらに次の調査委員会で特定した〈実質的被害額〉となると、そこからさらに8億円近く減り、55億5000万円としている。その分、積水ハウスが被害を免れていることになるが、実質的な被害とは何を意味するのか。そこには妙なカラクリがある。 前述したように、積水ハウスと地面師グループとの取引は、五反田駅前の海喜館だけではなかった。海老澤佐妃子のなりすましは、なぜかこれとは別に積水ハウスのマンションを購入する契約を結んでいる。それが中野区にある「グランドメゾン江古田の杜」という名称の分譲マンションだ。積水側は地面師詐欺に遭っている取引の渦中、このマンションの一一戸の部屋を海老澤のなりすまし役に売るべく、交渉を重ねて契約までしているのである』、「積水ハウスと地面師グループとの取引は、五反田駅前の海喜館だけではなかった。海老澤佐妃子のなりすましは、なぜかこれとは別に積水ハウスのマンションを購入する契約を結んでいる。それが中野区にある「グランドメゾン江古田の杜」という名称の分譲マンションだ。積水側は地面師詐欺に遭っている取引の渦中、このマンションの一一戸の部屋を海老澤のなりすまし役に売るべく、交渉を重ねて契約までしている」、なるほど。
・『金額の誤差が意味するもの 積水ハウスでは63億円を払い込み総額とし、手付金を14億円として残りの49億円を契約当日の2017年6月1日に払ったとする。その金額が先の民事訴訟や〈事実経過報告〉のそれと微妙にずれている。民事訴訟では売買代金を60億円、手付金を12億円としてきた。 一方、積水側は払い込んだ63億円からニセ佐妃子に売ったマンションの売買代金を差し引いた金額の55億5000万円について、実質的な詐欺の被害額として発表している。これらの誤差は何を意味するのか。先の不動産業者が指摘する。 「マンションの売買を担当したのは、東京マンション事業部であり、その際、ニセの海老澤佐妃子が担当者と直接契約しています。つまりニセモノが積水ハウスに何度も足を運んでいて、なりすましに気づいていないということになる。そんな話がありえるでしょうか。積水ハウスが発表した第三者委員会の調査報告書ではこの点がすっぽり隠されています。それは隠さなければならない事情があったからではないか」 積水側が海喜館の購入代金を支払うついでに、せっかくだから分譲マンション販売の営業をかけた。表面的に見れば、単なる営業努力の成果のように感じる。が、こと地面師案件だけにそう単純とは言い切れないかもしれない』、「積水側が海喜館の購入代金を支払うついでに、せっかくだから分譲マンション販売の営業をかけた。表面的に見れば、単なる営業努力の成果のように感じる。が、こと地面師案件だけにそう単純とは言い切れないかもしれない」、確かに不透明だ。
・『不自然な取引の理由とは... ニセ地主を仕立て上げる地面師事件では、なりすまし役と買い手の接触をできるだけ減らすのが彼らの常道である。 理由はニセモノだとバレないようにするためだ。ニセ地主を取引現場に登場させるのは、たいてい一度きりで、取引の細かいやり取りについては、手馴れた地面師グループの交渉役がおこなう。 だが、積水ハウス事件では、肝心かなめの旅館の売買とは別に、なりすまし役がマンションの購入契約を結んでいる。それ自体が極めて奇異なのである。積水ハウスは取引総額70億円のうちマンションの内金6億7390万円を差し引いたおよそ63億円をまるまる騙しとられているのではないか。 そんな疑いも浮かぶ。発表した被害額との差を含め、不自然な取引や微妙な金額の誤差の裏には、表沙汰にできない何らかの理由があるのではないか。 事件は日本を代表する住宅建設会社の経営を揺らした。騙されたその責任をめぐり、会社のツートップが反目し、あげくにクーデター騒動に発展する。 最終回【社長が会長を追い落とすクーデターに発展!積水ハウス「巨額地面師詐欺事件」の醜悪な結末】につづく』、「肝心かなめの旅館の売買とは別に、なりすまし役がマンションの購入契約を結んでいる。それ自体が極めて奇異なのである。積水ハウスは取引総額70億円のうちマンションの内金6億7390万円を差し引いたおよそ63億円をまるまる騙しとられているのではないか。 そんな疑いも浮かぶ。発表した被害額との差を含め、不自然な取引や微妙な金額の誤差の裏には、表沙汰にできない何らかの理由があるのではないか」、確かに不合理な点が多過ぎる。「表沙汰にできない何らかの理由がある」のであれば、由々しいことだ。実態解明の第二弾が出て、解明してほしいものだ。
第三に、8月10日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの森 功氏による「社長が会長を追い落とすクーデターに発展!積水ハウス「巨額地面師詐欺事件」の醜悪な結末 短期集中連載・最終回」を紹介しよう。
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・『ハウスメーカー、デベロッパーとして国内最大手の積水ハウスが、50億円以上ものカネを騙し取られた2018年の「地面師詐欺」事件は、いまも多くの謎に包まれている。15人以上の逮捕者を出す大捕物になったものの、不起訴になった容疑者も多数いて、公判でもすべてが明らかになったとは言い難い。 このたび、事件をモデルにしたドラマ「地面師たち」(原作・新庄耕)の配信がNetflixでスタートし、大反響を呼んでいる。ノンフィクション作家・森功氏の文庫『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』には、ドラマでは描かれなかった数々の知られざる事実が記されており、その内容を7回連続で公開する』、興味深そうだ。
・『会長追い落としクーデターの「舞台裏」 それは、事件から半年あまり経った2018年1月24日の出来事だった。 「ではこれより取締役会を開催します」 午後2時ちょうど、大阪市北区の積水ハウス本社で、会長の和田勇が議長として、重役会の開催宣言をした。76歳(取締役会当時。以下同)の和田は細身の身体に似合わないハリのある声をしている。取締役会のメインテーマが、東京・五反田の海喜館をめぐる地面師詐欺なのは言うまでもない。和田はすぐにその議題に入った。 「本日、調査対策委員会が進めてきた調査報告書が提出されました。執行の責任者には極めて重い責任があります」 積水ハウスでは事件を公表したひと月後の9月、社外監査役と社外取締役らで調査対策委員会を立ち上げ、事件の経緯を調べてきた。その調査結果の報告がなされたのが、この日だったのである。和田を含めた9人の社内役員に加え、2人の社外取締役を加えた11人の内外の重役が会議に参加していた。 「したがって最初に、最も重い責任者である阿部俊則社長の退任を求めます」 和田はそう切り出した。社長解任の緊急動議である。戸建て住宅のハウスメーカーとしてスタートした積水ハウスは、近年のマンションやリゾート施設の開発、さらには海外事業も手掛け、業績を伸ばしてきた。 その立て役者が和田であり、実力会長として業界に名を馳せてきた。10歳違いの阿部を社長に引き立て、バックアップしてきたともいえる。いわば2人は師弟関係にあったのだが、その弟分の社長をばっさり切り捨てようとしたことになる。それほど事件の衝撃は大きかった』、「10歳違いの阿部を社長に引き立て、バックアップしてきたともいえる。いわば2人は師弟関係にあったのだが、その弟分の社長をばっさり切り捨てようとしたことになる」、その割には動議が否決されるなど、手際の悪さが目立つ。
・『阿部社長の「反撃」 半面、実は社長の解任については、本番の前に開かれた社外取締役会でも諮られていたので、すでに情報が漏れ伝わっていた。そのため出席した重役たちのあいだにはさほどの驚きも、混乱もない。 まるで予定されていた行事であるかのように、採決へと進んだ。事前におこなわれた社外取締役2人の協議では、阿部の退任に異論はなく、和田の申し出が了承されていたからでもある。解任動議の当事者である阿部は、ひとり会議室をあとにし、10人の重役による社長退任の決議が粛々とおこなわれた。 しかしその緊急動議の採決は予想外の結果に終わった。賛成5に対して反対も5――。数だけでみると真っ二つに割れているように思えるが、阿部を外した10人の出席者の内実は、社外の2人と会長である和田以外に2人の賛成しか取り付けられなかったことになる。むろん過半数にも達していない。そのため、社長の解任動議は流れてしまう。 すると今度は、会議室に呼び戻された社長の阿部が反撃に出た。 「私は混乱を招いた(取締役会の)議長解任を提案します。新たな議長として、稲垣士郎副社長を提案します」 すでにこの時点で勝敗は、決していたともいえる。単純に計算すると、内外11人の全取締役のうち、和田派は5人、一方の阿部派は本人を入れると6人だ。その計算どおり、議長交代が6対5で可決された。そして返す刀で阿部が立ちあがって告げた。 「ここで、会長である和田氏の解任を提案します」 こうなると、退席した和田の一票が減る。そうして10人の重役の投票により、会長の解任動議が6対4で可決されたのである。 社長の阿部は、もとよりこの日のクーデターを想定して動いてきたに違いない。08年に社長の座に就いて以来10年ものあいだ、会長の和田の顔色をうかがいながら、経営にあたってきた。とりわけ東京の不動産ブームに乗り、マンション事業を推し進めてきたが、まさにそこで躓いたのである。 危機感を抱いた阿部は取締役会に先立つ17年12月には、マンション事業部本部長を務めてきた常務執行役の三谷和司に詰め腹を切らせた。東京シャーメゾン事業本部長で同じ常務の堀内容介にマンション事業を兼務させ、法務部長や不動産部長の部長職を解くといった更迭人事に手を付けていった。 そうしておいて自らは、和田に代わって会長に就任すべく、事件直後から動いた。 「今度の件で、君に社長を任せたい、と思っているのだけど、どうかな」 そう囁かれたのが、常務執行役の仲井嘉浩だった。仲井は阿部にとってひと回り以上年齢が下の52歳で、和田からするとふた回り違う。大幅な若返り人事でもある。なにより社長の椅子を約束する打診を断るはずもなかった』、「阿部」は「自らは、和田に代わって会長に就任すべく、事件直後から動いた」。手際よい防衛線だ。
・『主犯格を取り逃がす こうして和田退任のレールを敷いた上で臨んだのが、先の取締役会だったのである。阿部会長、仲井社長という新たな布陣を決めた重役会のあと、阿部が会見に臨んだ。 「五反田の件の責任はどうなるのですか。今度の社長人事はその結果でしょうか」 そう尋ねる質問が相次いだ。それは無理もない。五反田の海喜館取引に積極的に乗り出したのが、当の阿部だった。自ら現地の視察にも訪れ、社内では社長案件と呼ばれてきた。が、阿部は自らの取り組みはむろん、取締役会でのクーデターのことなどおくびにも出さず、こう言い張った。 「それは関係ありません。(若返りのための)人事刷新です」 3月5日には、個人株主が阿部を善管注意義務違反などで訴え、損害賠償と遅延損害金の支払いを求める請求をおこなった。そのあたりから、警視庁による本格的な捜査が始まる。 「2017年度内の3月中には、地面師グループをいっせい摘発できるのではないか」 取材してきた記者のあいだではそう事件の早期解明が囁かれた。17年8月以来、ずっと燻ってきた事件摘発の期待が高まったが、警視庁の捜査はそこからずれ込んでいく。 「8月末の新捜査二課長への交代を待って、9月はじめの捜査着手ではないか」 「すでに事件は警視総監マターなので、三浦正充さんが総監に着任する九月半ばかな」 そんなさまざまな検挙情報が駆け巡ってきた末、ついに警視庁は10月16日、海喜館を舞台に暗躍した地面師グループ8人の逮捕にこぎ着けたのである。 これだけの一斉検挙となると、一つの警察署には収容できない。身柄の拘束先は、当人の住居や留置所の空き状況によって異なった。逮捕第一陣となった8人の氏名と逮捕時の年齢、留置した警察署を改めて挙げると、生田剛(46)が渋谷署、近藤久美(35)が原宿署、佐藤隆(67)が赤坂署、永田浩資(54)が目白署、小林護(54)が代々木署、秋葉紘子(74)が原宿署、羽毛田正美(63)が東京湾岸署、常世田吉弘(67)が戸塚署だ。 事件におけるそれぞれの役割を記すと、IKUTAホールディングスの生田と近藤が積水ハウスとの取引窓口で、佐藤は小山とともに行動してきた首謀者の手下、小林は運転手役だ。指定暴力団住吉会の重鎮だった小林楠扶の息子であり、そのことも一部で話題になった。また秋葉は犯行における重要な役回りをした。持ち主のなりすまし役を引き込む手配師である。その秋葉から旅館の持ち主、海老澤佐妃子のなりすまし役に任命されたのが羽毛田で、彼女の内縁の夫役が常世田だ。 警視庁は逮捕予定者を15人前後と定め、捜査に着手した。この第一陣の8人が逮捕された4日後の20日、逃げていた佐々木利勝(59)を逮捕し、三田署に留置した。佐々木は地主のニセ振込口座づくりを担い、9人目の逮捕者となる。27日には連絡係の岡本吉弘(42)が出頭し、29日、11人目の逮捕者となったのがあの北田文明だった。その後の三木勝博(63)、武井美幸(57)と合わせると、警視庁はここまでで13人に縄を打ったことになる。 だがその実、あろうことか、警視庁は肝心の主犯格の一人であるカミンスカスこと旧姓小山操(58)を取り逃がしている』、「肝心の主犯格の一人であるカミンスカスこと旧姓小山操(58)を取り逃がしている」とは致命的なミスだ。
・『なぜ取り逃がしたのか 第一陣検挙の3日前にあたる10月13日1時15分、NHKをはじめとしたマスコミ環視のなか、小山は羽田空港からフィリピン航空ファーストクラスに乗り、悠々と高飛びした。事情通によれば、その経緯は以下の通りだという。 「何度も取り調べを受け、捜査が迫っているのを知った小山は当初、仲間の三木と関釜フェリーに乗って下関から韓国の釜山に渡ろうとした。航空便より船便のほうが港の監視態勢が緩いと考えたからです。しかし三木に誘いを断られたあげく、早朝の船便に間に合わず、いったんは韓国行きを断念した。しかし、いよいよ捜査の手が近づくと、愛人のいるフィリピンに向かうことを思い立ったのです。はじめ成田空港からJAL便に乗ろうとしたところ、日本の航空会社は警察に通報する危険性が高いと思い直し、羽田から出ているフィリピン航空に切り替えたと聞いています」 関釜フェリーの件はマスコミにも漏れていなかったようだが、そのあとの足取りはしっかり新聞やテレビ、週刊誌の記者にとらえられ、報じられている。警視庁にとっては大失態であるが、新聞やテレビがさほど問題にしないのは、捜査当局から睨まれ、警察情報からシャットアウトされるのを恐れるからだろう。 記者がそこまでつかんでいるのに、なぜ警視庁は肝心の主犯を取り逃がしてしまったのか。 「そのせいで、犯行グループに内通している警視庁OBがいたのではないか、とも囁かれています」(事情通) むろん小山は国際指名手配され、その後逮捕された。 事件の奥行きはもっと深い。これまで書いてきたように、積水ハウス事件を企画・立案したのは、小山ではなく、内田マイクであり、北田文明である。たとえば第一陣の逮捕組である永田は内田の連絡役であり、55億5000万円を振り分けるための銀行口座を用意して9人目の逮捕者となった佐々木は、北田の指示を仰いできた。それぞれ、内田グループ、北田グループとして、他の地面師事件でも名前が挙がってきた。さらに積水ハウスの預金小切手を現金化する役割を担った土井淑雄(63)という存在も明らかになっている。私が北田と遭遇した時に取材をしていた、あの地面師である。土井は事件のなかで金融チームを結成し、現金を振り分ける役割を担ってきたとされる。 入院していた地主の海老澤佐妃子は、この決済直後の6月24日に病院で息を引き取った。地面師たちはそこを狙いすましたかのようでもある。 なかでも内田と北田という二人の大物地面師は積水ハウス事件を計画立案した。そして警視庁は11月20日、14人目の積水事件犯として内田を逮捕した。文字どおり神出鬼没の詐欺集団を率いてきた大物2人を手中に収めた。 だが、経営トップの“クーデター騒動”にまで発展した事件で騙しとられた55億5000万円は、闇の住人たちの手で分配され、すでに溶けてなくなったとみたほうがいい』、「警視庁にとっては大失態であるが、新聞やテレビがさほど問題にしないのは、捜査当局から睨まれ、警察情報からシャットアウトされるのを恐れるからだろう・・・積水ハウス事件を企画・立案したのは、小山ではなく、内田マイクであり、北田文明である。たとえば第一陣の逮捕組である永田は内田の連絡役であり、55億5000万円を振り分けるための銀行口座を用意して9人目の逮捕者となった佐々木は、北田の指示を仰いできた。それぞれ、内田グループ、北田グループとして、他の地面師事件でも名前が挙がってきた・・・警視庁は11月20日、14人目の積水事件犯として内田を逮捕した。文字どおり神出鬼没の詐欺集団を率いてきた大物2人を手中に収めた。 だが、経営トップの“クーデター騒動”にまで発展した事件で騙しとられた55億5000万円は、闇の住人たちの手で分配され、すでに溶けてなくなったとみたほうがいい」、「55億5000万円」が「すでに溶けてなくなったとみたほうがいい」、鮮やかな手口だ。
先ずは、本年8月10日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの森 功氏による「あの積水ハウスが50億円以上だまし取られた…! 衝撃の「地面師詐欺」の語られなかった真相 短期集中連載・第1回」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/images/134772?skin=images&imp=0
・『ハウスメーカー、デベロッパーとして国内最大手の積水ハウスが、50億円以上ものカネを騙し取られた2018年の「地面師詐欺」事件は、いまも多くの謎に包まれている。15人以上の逮捕者を出す大捕物になったものの、不起訴になった容疑者も多数いて、公判でもすべてが明らかになったとは言い難い。 このたび、事件をモデルにしたドラマ「地面師たち」(原作・新庄耕)の配信がNetflixでスタートし、大反響を呼んでいる。ノンフィクション作家・森功氏の文庫『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』には、ドラマでは描かれなかった数々の知られざる事実が記されており、その内容を7回連続で公開する』、興味深そうだ。
・『ストップされた工事 通報を受けた警視庁大崎警察署の捜査員が現場に駆け付けたのは、2017年6月1日の昼過ぎのことだった。 「あなたたちは、どちらの方ですか」 積水ハウス工務部の担当者たちは、パトカーから降りてきた警察官にいきなりそう誰何(すいか)された。工務部とは文字どおり、デベロッパーが建設工事にとりかかる前に現場の調査をし、資材を調達する先発隊だ。積水ハウスの工務部の社員も、そのために現場で作業をしようとしていたのだが、そこへ警察官が現れること自体、まったく事情が呑み込めない。まさに面食らった。 現場はJR山手線の五反田駅から徒歩3分、目黒川を渡ったところにある旅館「海喜館(うみきかん)」の玄関先だ。不動産代金を払い込んで売買契約が成立したはずの積水ハウスの社員が、古くなった建物の取り壊し準備を始めた。旅館の周辺に赤いカラーコーンを配置し、測量を始めようとした。その矢先の出来事だ。とつぜんパトカーがサイレンを鳴らして駆け付け、周囲が大騒ぎになったのである。 通報したのは旅館の持ち主、海老澤佐妃子(えびさわ・さきこ)の異母弟から頼まれた弁護士だった。警察官がやって来るのとほぼ同時に、その弁護士も旅館の玄関先に現れた。驚いたのは積水ハウスのほうだ。 「ここは持ち主からうちが買いとったんです。それで、測量を始めたところですが……」 二人の工務部員のうちの一人が、警察官にそう説明した。そこへ通報した弁護士が割って入った。 「あんた方、何を言っているんですか。私こそ持ち主の依頼でここへ来ています」 すでに旅館の土地建物の売買契約を済ませていたはずの積水側にとっては、まさに寝耳に水だ。 「あなたこそ何を言っているんだ。こっちは支払いも済ませているんだよ。なのに、何の権利があって邪魔するんだ」 だが、弁護士も負けていない。 「私の依頼人は海老澤さんから相続する人なんだ。ここは売ってないんだから、測量なんか絶対にさせないよ」) 史上空前「55億円」の被害 近所の商店主が、たまたまその騒ぎを見ていた。当日の出来事をこう振り返った。 「しばらく揉めていたのですが、泡を喰った積水ハウスの人が、うちの店に駆けこんできたんです。そうして『これは、海老澤佐妃子さんじゃないんですか?』とパスポートの写真を見せながら、僕に確認するのです。その写真は海老澤さんとは似ても似つかない別人でした。それで、僕が『まったく似てないので、違う人だと思うよ』と教えてあげると、彼らは青ざめてね。一人は急いで走り去っちゃった。二人のうち残った若い方の人に『オタクたち、おそらく騙されてるよ』って言ってやったんです」 残された積水ハウスの担当者は、商店主のその言葉に呆然として立ちすくんだ。「営業部が本人を確認したし、旅館の内覧もおこなったはずなのに……」工務部の若い担当者は、消え入るような声でそうつぶやいた。かたわらの商店主に説明するというより、ひとりごちるように、こう言葉を続けた。
「そういえば、俺たちが『旅館で本契約を取り交わしたい』と先方に申し出たとき、向こうは変だった。『あまり佐妃子さんの容態がよくないから、旅館じゃなくホテルでやりたい』と断られたもんな。あっ、そのホテルに来た女がこの写真の……ああ、どうしよう」 もはや積水ハウスが前代未聞の不動産詐欺に遭ったのは、明らかだ。それでもあきらめきれない積水ハウス側では、事件が判明した6月1日から10日まで、旅館「海喜館」の周囲を封鎖した。その日の夜から、建物に誰も寄り付かないよう、制服のガードマンたちが24時間、この古ぼけた旅館を見張るようになる。 地主になりすまして不動産を騙し取る地面師詐欺は、昨今のマンションブームに加え、東京五輪を控えて地価が高騰してきた都内の優良物件が狙われる傾向が強い。五反田駅の至近に建つ旅館「海喜館」は、老朽化して長らく営業もしていない。近所でも地主の海老澤佐妃子を見かけなくなっていたという。まさに地面師にとって狙い目だった。 50件とも100件とも言われる警視庁管内の地面師詐欺のなかでも、積水ハウスのケースは飛び抜けてスケールが大きい。事件が発覚したあとの8月2日付の積水ハウスの発表によれば、2000平米(およそ600坪)の土地をはじめとした一連の不動産取引総額は70億円にのぼる。うち積水ハウスは63億円をニセ地主に支払い、最終的に55億5000万円もの大金をまんまと騙し取られたのである。紛れもなく、これまで類を見ない史上最大の地面師詐欺である』、「2000平米(およそ600坪)の土地をはじめとした一連の不動産取引総額は70億円にのぼる。うち積水ハウスは63億円をニセ地主に支払い、最終的に55億5000万円もの大金をまんまと騙し取られたのである。紛れもなく、これまで類を見ない史上最大の地面師詐欺である」、なるほど。
・『老舗旅館・海喜館の成り立ち 地面師事件には、それぞれに特徴がある。不動産のプロが騙されるケースはさほど珍しくないが、なかでも積水ハウスの件は、騙された会社の規模が群を抜いている。 大和ハウス、住友林業とともに、日本のハウスメーカー御三家の一角を占め、2018年1月の決算では大和ハウスに次ぐ2兆1593億円を売り上げた業界のリーディングカンパニーだ。マンション開発も手掛ける日本屈指のデベロッパーでもある。取引における経験や知識も豊富だ。そんな業界のガリバー企業が、なぜこうも簡単に巨額の不動産代金を騙し取られたのか。 積水ハウス事件の複雑怪奇なカラクリを追う。 事件に巻き込まれた地主の海老澤佐妃子は1944年、五反田のこの地で生まれた。生まれた頃、すでに両親が海喜館を経営しており、彼女は旅館で育った。 「もともと海喜館は佐妃子さんのお父さんが始めた旅館でした。なにしろ場所がいいので人気があり、ずいぶん繁盛していました」 旅館の周囲を歩くと、古くから住んでいる町内会の役員に出会うことができた。 「お父さんはとても羽振りがよく、やがて奥さん以外にも愛人をつくってしまいました。それで夫婦が揉めたんです。あげくお父さんが家を出て行き、外腹(ほかばら)の男の子までつくってしまった。以来、母娘の二人暮らしになり、旅館は佐妃子さんのお母さんが切り盛りするようになりました。お母さんの時代、旅館はずっと賑わっていましたよ」 そう説明してくれた。戦前から花街として栄えてきた五反田では、いまもその名残がある。夜になると、ピンクサロンや個室マッサージなど、風俗店のネオンサインに若いサラリーマンの酔客が吸い寄せられる。事件の舞台となった海喜館は、そんな花街から少し隔てた目黒川沿いの老舗旅館として栄えてきた。 1975年12月23日、夫に代わり旅館を経営してきた佐妃子の実母きよが他界し、佐妃子がこの不動産を相続した。町内会の役員は、その頃のこともよく覚えていた。 「佐妃子さんは、相続後もしばらく板前さんや仲居さんを使って海喜館を経営していました。このあたりは商店が多くてね、町内会の行事にも積極的に参加してくれました」』、「地主の海老澤佐妃子は1944年、五反田のこの地で生まれた。生まれた頃、すでに両親が海喜館を経営しており、彼女は旅館で育った。 「もともと海喜館は佐妃子さんのお父さんが始めた旅館でした。なにしろ場所がいいので人気があり、ずいぶん繁盛していました」・・・事件の舞台となった海喜館は、そんな花街から少し隔てた目黒川沿いの老舗旅館として栄えてきた。 1975年12月23日、夫に代わり旅館を経営してきた佐妃子の実母きよが他界し、佐妃子がこの不動産を相続した。町内会の役員は、その頃のこともよく覚えていた。 「佐妃子さんは、相続後もしばらく板前さんや仲居さんを使って海喜館を経営していました」、なるほど。
・『二人の大物地面師 もともと海喜館は宴会などもおこなえる大きな旅館だった。日本中が空前の好景気に沸いたバブル時代はもとより、バブル崩壊後も出張サラリーマンの宿泊客を目当てに営業を続け、それなりに経営はうまくいっていたようだ。だが、施設が古くなっていくにつれ、近隣に建設されたビジネスホテルに押されるようになり、経営は次第に苦しくなっていった。町内会の役員が続ける。 「旅館の経営が成り立っていたのは、10年前まででしょうかね。そうなると、場所がいいからね。『旅館を廃業してマンション経営をしないか』『スポーツジムをやらないか』と、不動産会社の営業マンやら、マンションデベロッパーの社員やら、ヤクザ風の不動産ブローカーにいたるまで、いろんな人が佐妃子さんに近づいて来るようになった。彼らは客を装って旅館に泊まってね、彼女が接客に出てくると、『旅館を売ってほしい』とうるさくて、佐妃子さんも嫌気がさしていたんだよ。しまいに佐妃子さんは常連客しか泊めなくなってね。旅館は絶対に売らない、って頑なに言い続けてきたんです」 そんな状態が何年も続いてきた。それでは経営がうまくいくはずもない。海老澤佐妃子は2015年3月、旅館を廃業した。といっても売る気はなく、その後もしばらく板前といっしょに旅館に住み続けた。が、やがて体調を崩してしまう。生来、身体の丈夫なほうでなかった佐妃子は、すでに古希を過ぎていた。町内会の役員はさらにこう言った。 「僕が最後に旅館で佐妃子さんを見かけたのは、廃業届を出してから2年ほど経った17年の2月ごろでした。それから姿を見ていません」 近所で姿を見かけなくなったのは、彼女が入院したからだ。当然のごとく主が入院中の旅館は、人の出入りが途絶えた。瞬く間に無人の廃墟のように荒れ果てていった。 そんな高齢の地主の変化を見逃さなかったのが、地面師たちである。 詳しくは後述するが、今度の計画に加わった輩が、この古ぼけた旅館に出没するようになるのは、彼女が入院する少し前のことだった。地面師グループは、一見するとマンションデベロッパーや不動産ブローカーと見分けがつかない。が、彼らは土地を買って開発するつもりなど毛頭ない。土地を材料にいかにして金を手にするか、それだけが目的であり、そこでいろんな手段を駆使する。そうしてそれまでの不動産ブローカーたちに交じりながら、地面師たちが海喜館の周囲に出没するようになっていた。 「海喜館の詐欺で最初に計画を立てたのが、マイクと北田の二人でしょう。警視庁も彼らが当初から絡んでいたと睨んで捜査を進めてきました」 そう明かしてくれたのは、海喜館について地面師たちの動きを調査してきた東京都内の不動産業者だ。この「マイク」と「北田」とは、内田マイクと北田文明のことを指す。二人はともに、業界にその名の知れ渡った大物地面師である。 第2回【あの積水ハウスが50億円以上だまし取られた…! 暗躍した2人の「スター地面師」の正体】につづく。 【地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団】2018年、「積水ハウスが地面師に55億円以上を騙し取られた」というニュースに日本中が驚いた。そもそも、地面師とはなんなのか。「不動産の持ち主になりすまし、勝手に不動産を転売して大儲けする」詐欺集団で、騙されるのは、デベロッパーや不動産業者などの「プロ」たち。被害者の中には積水ハウスを筆頭に、信じられないような大手が含まれている。本書は、その複雑で巧妙すぎる手口をすべて記す――購入はこちらから』、「海老澤佐妃子は2015年3月、旅館を廃業した。といっても売る気はなく、その後もしばらく板前といっしょに旅館に住み続けた。が、やがて体調を崩してしまう。生来、身体の丈夫なほうでなかった佐妃子は、すでに古希を過ぎていた。町内会の役員はさらにこう言った。 「僕が最後に旅館で佐妃子さんを見かけたのは、廃業届を出してから2年ほど経った17年の2月ごろでした。それから姿を見ていません」 近所で姿を見かけなくなったのは、彼女が入院したからだ。当然のごとく主が入院中の旅館は、人の出入りが途絶えた。瞬く間に無人の廃墟のように荒れ果てていった・・・地面師たちが海喜館の周囲に出没するようになっていた」、なるほど。
次に、8月10日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの森 功氏による「仲介業者の住所は「元衆議院議員」の事務所!? 謎が謎を呼ぶ積水ハウスの「巨額地面師詐欺事件」 短期集中連載・第6回」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/134778?imp=0
・『ハウスメーカー、デベロッパーとして国内最大手の積水ハウスが、50億円以上ものカネを騙し取られた2018年の「地面師詐欺」事件は、いまも多くの謎に包まれている。15人以上の逮捕者を出す大捕物になったものの、不起訴になった容疑者も多数いて、公判でもすべてが明らかになったとは言い難い。 このたび、事件をモデルにしたドラマ「地面師たち」(原作・新庄耕)の配信がNetflixでスタートし、大反響を呼んでいる。ノンフィクション作家・森功氏の文庫『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』には、ドラマでは描かれなかった数々の知られざる事実が記されており、その内容を7回連続で公開する』、興味深そうだ。
・『政界や芸能界ともつながっていた 積水ハウスの払い込み窓口となったIKUTAについては、さすがに民事訴訟の資料からは大きな金の流れは見えない。オーナーの生田におよそ10億円が渡っている、という新聞報道もあった。 が、実際にそれがすべて生田の懐に入ったかどうかは不明だ。 ちなみに生田は政界や芸能界にも知己の多いある種の著名人でもある。会社の所在地が元代議士の小林興起事務所に登記され、小林夫人の明子も役員として名を連ねていたことでも、注目を集めてきた。まだ事件が摘発される前、その小林興起に取材した。 「詐欺が表沙汰になってから、初めて私どもの事務所にIKUTAが登記されていることを知りました」 はじめは、そんな話をして埒が明かなかった小林事務所だが、当人に確認してもらうとニュアンスが変わってきた。 「小林の記憶によれば、IKUTAから小林事務所に登記を置かせてほしいと依頼があったのが(事件の)2年ほど前だそうです。当時、支援企業の対応を任せていた秘書が、小林が落選中だったので事務所に何か利益になればいい、という思いもあって話を持ってきたそうです。その方(生田のこと)ともお会いし、女性向けの美容、健康事業をする会社だとのことで夫人も名前を貸した。 ですが、実際には何の事業もスタートしませんでした。事務所のスペースを貸す窓口の秘書は家賃収入なども期待していたが、それもまったく発生しませんでした。先方からは、『今回はこんなことになってしまって申し訳ない。ただ、自分も騙された側で小林事務所にはご迷惑をかけないので、ご心配なく』とご連絡があり、『自分は積水ハウスさんに繋いだだけ。まさか本人確認もしないでこの案件を進めていたとは理解できない』と言っているそうです」』、「『自分は積水ハウスさんに繋いだだけ」との言い訳は事実に近いのだろう。
・『調査報告書の裏事情 「分譲マンション用地の取引事故に関する経緯概要等のご報告」 犯行から9ヵ月後の2018年3月6日、積水ハウス株式会社代表取締役社長、仲井嘉浩の名でこう題した発表がなされた。 平成29(二〇一七)年8月2日付で発表いたしました『分譲マンション用地の購入に関する取引事故につきまして』(以下、「本件」といいます。)に関し、社外役員による『調査対策委員会』の平成30年1月24日付調査報告書を受領いたしました。これを受けまして、当社としての本件に関する経緯概要並びに再発防止に向けた取組み等を以下の通りご報告いたします〉 その〈1.事件の経緯概要〉という項目でこう記している。 〈東京マンション事業部が担当する業務のなかで、東京都品川区西五反田の土地建物(以下、「本件不動産」といいます。)につき、その所有者と称するA氏(後に、偽者と判明しました。)から、その知人の仲介者が実質的に経営する会社(以下、「X社」といいます。)を中間の売買当事者とし、X社から転売される形式で、当社がこれを買い受けることとなりました。4月24日、A氏とX社の間の売買契約、X社と当社との間の売買契約という2件の売買契約を同時に締結するとともに、所有権移転の仮登記申請手続を行った上で、手付金を支払い、仮登記が完了しました〉 繰り返すまでもなく、A氏がニセ海老澤佐妃子の羽毛田正美で、X社がIKUTA社である。 これではほとんど事件の詳細がわからない。報告書にはこうも書かれている。 〈なお、事件経緯のご報告につきましては、捜査上の機密保持への配慮のため、これ以上の詳細説明は差し控えさせていただきます〉』、「事件経緯のご報告につきましては、捜査上の機密保持への配慮のため、これ以上の詳細説明は差し控えさせていただきます」、こんなことでは実態解明は期待できない。
・『60億円の行方 とどのつまり60億円あまりを手にしたのは誰か。 そこが事件解明の焦点になる。事件はこれで終わらない。「調査対策委員会」の事件の経緯概要はこう続く。 〈売買契約締結後、本件不動産の取引に関連した複数のリスク情報が、当社の複数の部署に、訪問、電話、文書通知等の形で届くようになりましたが、当社の関係部署は、これらのリスク情報を取引妨害の嫌がらせの類であると判断していました。そのため、本件不動産の所有権移転登記を完全に履行することによって、これらが鎮静化することもあるだろうと考え、6月1日に残代金支払いを実施し、所有権移転登記申請手続を進めましたが、6月9日に、登記申請却下の通知が届き、A氏の詐称が判明しました。当社は、直ちにA氏との間での留保金の相殺手続を実施し、実質的被害額は約55億5千万円となりました〉 そもそも積水ハウスが17年8月に公表した詐欺の被害額は63億円だった。総額70億円の取引総額からすると、7億円も少ない。さらに次の調査委員会で特定した〈実質的被害額〉となると、そこからさらに8億円近く減り、55億5000万円としている。その分、積水ハウスが被害を免れていることになるが、実質的な被害とは何を意味するのか。そこには妙なカラクリがある。 前述したように、積水ハウスと地面師グループとの取引は、五反田駅前の海喜館だけではなかった。海老澤佐妃子のなりすましは、なぜかこれとは別に積水ハウスのマンションを購入する契約を結んでいる。それが中野区にある「グランドメゾン江古田の杜」という名称の分譲マンションだ。積水側は地面師詐欺に遭っている取引の渦中、このマンションの一一戸の部屋を海老澤のなりすまし役に売るべく、交渉を重ねて契約までしているのである』、「積水ハウスと地面師グループとの取引は、五反田駅前の海喜館だけではなかった。海老澤佐妃子のなりすましは、なぜかこれとは別に積水ハウスのマンションを購入する契約を結んでいる。それが中野区にある「グランドメゾン江古田の杜」という名称の分譲マンションだ。積水側は地面師詐欺に遭っている取引の渦中、このマンションの一一戸の部屋を海老澤のなりすまし役に売るべく、交渉を重ねて契約までしている」、なるほど。
・『金額の誤差が意味するもの 積水ハウスでは63億円を払い込み総額とし、手付金を14億円として残りの49億円を契約当日の2017年6月1日に払ったとする。その金額が先の民事訴訟や〈事実経過報告〉のそれと微妙にずれている。民事訴訟では売買代金を60億円、手付金を12億円としてきた。 一方、積水側は払い込んだ63億円からニセ佐妃子に売ったマンションの売買代金を差し引いた金額の55億5000万円について、実質的な詐欺の被害額として発表している。これらの誤差は何を意味するのか。先の不動産業者が指摘する。 「マンションの売買を担当したのは、東京マンション事業部であり、その際、ニセの海老澤佐妃子が担当者と直接契約しています。つまりニセモノが積水ハウスに何度も足を運んでいて、なりすましに気づいていないということになる。そんな話がありえるでしょうか。積水ハウスが発表した第三者委員会の調査報告書ではこの点がすっぽり隠されています。それは隠さなければならない事情があったからではないか」 積水側が海喜館の購入代金を支払うついでに、せっかくだから分譲マンション販売の営業をかけた。表面的に見れば、単なる営業努力の成果のように感じる。が、こと地面師案件だけにそう単純とは言い切れないかもしれない』、「積水側が海喜館の購入代金を支払うついでに、せっかくだから分譲マンション販売の営業をかけた。表面的に見れば、単なる営業努力の成果のように感じる。が、こと地面師案件だけにそう単純とは言い切れないかもしれない」、確かに不透明だ。
・『不自然な取引の理由とは... ニセ地主を仕立て上げる地面師事件では、なりすまし役と買い手の接触をできるだけ減らすのが彼らの常道である。 理由はニセモノだとバレないようにするためだ。ニセ地主を取引現場に登場させるのは、たいてい一度きりで、取引の細かいやり取りについては、手馴れた地面師グループの交渉役がおこなう。 だが、積水ハウス事件では、肝心かなめの旅館の売買とは別に、なりすまし役がマンションの購入契約を結んでいる。それ自体が極めて奇異なのである。積水ハウスは取引総額70億円のうちマンションの内金6億7390万円を差し引いたおよそ63億円をまるまる騙しとられているのではないか。 そんな疑いも浮かぶ。発表した被害額との差を含め、不自然な取引や微妙な金額の誤差の裏には、表沙汰にできない何らかの理由があるのではないか。 事件は日本を代表する住宅建設会社の経営を揺らした。騙されたその責任をめぐり、会社のツートップが反目し、あげくにクーデター騒動に発展する。 最終回【社長が会長を追い落とすクーデターに発展!積水ハウス「巨額地面師詐欺事件」の醜悪な結末】につづく』、「肝心かなめの旅館の売買とは別に、なりすまし役がマンションの購入契約を結んでいる。それ自体が極めて奇異なのである。積水ハウスは取引総額70億円のうちマンションの内金6億7390万円を差し引いたおよそ63億円をまるまる騙しとられているのではないか。 そんな疑いも浮かぶ。発表した被害額との差を含め、不自然な取引や微妙な金額の誤差の裏には、表沙汰にできない何らかの理由があるのではないか」、確かに不合理な点が多過ぎる。「表沙汰にできない何らかの理由がある」のであれば、由々しいことだ。実態解明の第二弾が出て、解明してほしいものだ。
第三に、8月10日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの森 功氏による「社長が会長を追い落とすクーデターに発展!積水ハウス「巨額地面師詐欺事件」の醜悪な結末 短期集中連載・最終回」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/134779?imp=0
・『ハウスメーカー、デベロッパーとして国内最大手の積水ハウスが、50億円以上ものカネを騙し取られた2018年の「地面師詐欺」事件は、いまも多くの謎に包まれている。15人以上の逮捕者を出す大捕物になったものの、不起訴になった容疑者も多数いて、公判でもすべてが明らかになったとは言い難い。 このたび、事件をモデルにしたドラマ「地面師たち」(原作・新庄耕)の配信がNetflixでスタートし、大反響を呼んでいる。ノンフィクション作家・森功氏の文庫『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』には、ドラマでは描かれなかった数々の知られざる事実が記されており、その内容を7回連続で公開する』、興味深そうだ。
・『会長追い落としクーデターの「舞台裏」 それは、事件から半年あまり経った2018年1月24日の出来事だった。 「ではこれより取締役会を開催します」 午後2時ちょうど、大阪市北区の積水ハウス本社で、会長の和田勇が議長として、重役会の開催宣言をした。76歳(取締役会当時。以下同)の和田は細身の身体に似合わないハリのある声をしている。取締役会のメインテーマが、東京・五反田の海喜館をめぐる地面師詐欺なのは言うまでもない。和田はすぐにその議題に入った。 「本日、調査対策委員会が進めてきた調査報告書が提出されました。執行の責任者には極めて重い責任があります」 積水ハウスでは事件を公表したひと月後の9月、社外監査役と社外取締役らで調査対策委員会を立ち上げ、事件の経緯を調べてきた。その調査結果の報告がなされたのが、この日だったのである。和田を含めた9人の社内役員に加え、2人の社外取締役を加えた11人の内外の重役が会議に参加していた。 「したがって最初に、最も重い責任者である阿部俊則社長の退任を求めます」 和田はそう切り出した。社長解任の緊急動議である。戸建て住宅のハウスメーカーとしてスタートした積水ハウスは、近年のマンションやリゾート施設の開発、さらには海外事業も手掛け、業績を伸ばしてきた。 その立て役者が和田であり、実力会長として業界に名を馳せてきた。10歳違いの阿部を社長に引き立て、バックアップしてきたともいえる。いわば2人は師弟関係にあったのだが、その弟分の社長をばっさり切り捨てようとしたことになる。それほど事件の衝撃は大きかった』、「10歳違いの阿部を社長に引き立て、バックアップしてきたともいえる。いわば2人は師弟関係にあったのだが、その弟分の社長をばっさり切り捨てようとしたことになる」、その割には動議が否決されるなど、手際の悪さが目立つ。
・『阿部社長の「反撃」 半面、実は社長の解任については、本番の前に開かれた社外取締役会でも諮られていたので、すでに情報が漏れ伝わっていた。そのため出席した重役たちのあいだにはさほどの驚きも、混乱もない。 まるで予定されていた行事であるかのように、採決へと進んだ。事前におこなわれた社外取締役2人の協議では、阿部の退任に異論はなく、和田の申し出が了承されていたからでもある。解任動議の当事者である阿部は、ひとり会議室をあとにし、10人の重役による社長退任の決議が粛々とおこなわれた。 しかしその緊急動議の採決は予想外の結果に終わった。賛成5に対して反対も5――。数だけでみると真っ二つに割れているように思えるが、阿部を外した10人の出席者の内実は、社外の2人と会長である和田以外に2人の賛成しか取り付けられなかったことになる。むろん過半数にも達していない。そのため、社長の解任動議は流れてしまう。 すると今度は、会議室に呼び戻された社長の阿部が反撃に出た。 「私は混乱を招いた(取締役会の)議長解任を提案します。新たな議長として、稲垣士郎副社長を提案します」 すでにこの時点で勝敗は、決していたともいえる。単純に計算すると、内外11人の全取締役のうち、和田派は5人、一方の阿部派は本人を入れると6人だ。その計算どおり、議長交代が6対5で可決された。そして返す刀で阿部が立ちあがって告げた。 「ここで、会長である和田氏の解任を提案します」 こうなると、退席した和田の一票が減る。そうして10人の重役の投票により、会長の解任動議が6対4で可決されたのである。 社長の阿部は、もとよりこの日のクーデターを想定して動いてきたに違いない。08年に社長の座に就いて以来10年ものあいだ、会長の和田の顔色をうかがいながら、経営にあたってきた。とりわけ東京の不動産ブームに乗り、マンション事業を推し進めてきたが、まさにそこで躓いたのである。 危機感を抱いた阿部は取締役会に先立つ17年12月には、マンション事業部本部長を務めてきた常務執行役の三谷和司に詰め腹を切らせた。東京シャーメゾン事業本部長で同じ常務の堀内容介にマンション事業を兼務させ、法務部長や不動産部長の部長職を解くといった更迭人事に手を付けていった。 そうしておいて自らは、和田に代わって会長に就任すべく、事件直後から動いた。 「今度の件で、君に社長を任せたい、と思っているのだけど、どうかな」 そう囁かれたのが、常務執行役の仲井嘉浩だった。仲井は阿部にとってひと回り以上年齢が下の52歳で、和田からするとふた回り違う。大幅な若返り人事でもある。なにより社長の椅子を約束する打診を断るはずもなかった』、「阿部」は「自らは、和田に代わって会長に就任すべく、事件直後から動いた」。手際よい防衛線だ。
・『主犯格を取り逃がす こうして和田退任のレールを敷いた上で臨んだのが、先の取締役会だったのである。阿部会長、仲井社長という新たな布陣を決めた重役会のあと、阿部が会見に臨んだ。 「五反田の件の責任はどうなるのですか。今度の社長人事はその結果でしょうか」 そう尋ねる質問が相次いだ。それは無理もない。五反田の海喜館取引に積極的に乗り出したのが、当の阿部だった。自ら現地の視察にも訪れ、社内では社長案件と呼ばれてきた。が、阿部は自らの取り組みはむろん、取締役会でのクーデターのことなどおくびにも出さず、こう言い張った。 「それは関係ありません。(若返りのための)人事刷新です」 3月5日には、個人株主が阿部を善管注意義務違反などで訴え、損害賠償と遅延損害金の支払いを求める請求をおこなった。そのあたりから、警視庁による本格的な捜査が始まる。 「2017年度内の3月中には、地面師グループをいっせい摘発できるのではないか」 取材してきた記者のあいだではそう事件の早期解明が囁かれた。17年8月以来、ずっと燻ってきた事件摘発の期待が高まったが、警視庁の捜査はそこからずれ込んでいく。 「8月末の新捜査二課長への交代を待って、9月はじめの捜査着手ではないか」 「すでに事件は警視総監マターなので、三浦正充さんが総監に着任する九月半ばかな」 そんなさまざまな検挙情報が駆け巡ってきた末、ついに警視庁は10月16日、海喜館を舞台に暗躍した地面師グループ8人の逮捕にこぎ着けたのである。 これだけの一斉検挙となると、一つの警察署には収容できない。身柄の拘束先は、当人の住居や留置所の空き状況によって異なった。逮捕第一陣となった8人の氏名と逮捕時の年齢、留置した警察署を改めて挙げると、生田剛(46)が渋谷署、近藤久美(35)が原宿署、佐藤隆(67)が赤坂署、永田浩資(54)が目白署、小林護(54)が代々木署、秋葉紘子(74)が原宿署、羽毛田正美(63)が東京湾岸署、常世田吉弘(67)が戸塚署だ。 事件におけるそれぞれの役割を記すと、IKUTAホールディングスの生田と近藤が積水ハウスとの取引窓口で、佐藤は小山とともに行動してきた首謀者の手下、小林は運転手役だ。指定暴力団住吉会の重鎮だった小林楠扶の息子であり、そのことも一部で話題になった。また秋葉は犯行における重要な役回りをした。持ち主のなりすまし役を引き込む手配師である。その秋葉から旅館の持ち主、海老澤佐妃子のなりすまし役に任命されたのが羽毛田で、彼女の内縁の夫役が常世田だ。 警視庁は逮捕予定者を15人前後と定め、捜査に着手した。この第一陣の8人が逮捕された4日後の20日、逃げていた佐々木利勝(59)を逮捕し、三田署に留置した。佐々木は地主のニセ振込口座づくりを担い、9人目の逮捕者となる。27日には連絡係の岡本吉弘(42)が出頭し、29日、11人目の逮捕者となったのがあの北田文明だった。その後の三木勝博(63)、武井美幸(57)と合わせると、警視庁はここまでで13人に縄を打ったことになる。 だがその実、あろうことか、警視庁は肝心の主犯格の一人であるカミンスカスこと旧姓小山操(58)を取り逃がしている』、「肝心の主犯格の一人であるカミンスカスこと旧姓小山操(58)を取り逃がしている」とは致命的なミスだ。
・『なぜ取り逃がしたのか 第一陣検挙の3日前にあたる10月13日1時15分、NHKをはじめとしたマスコミ環視のなか、小山は羽田空港からフィリピン航空ファーストクラスに乗り、悠々と高飛びした。事情通によれば、その経緯は以下の通りだという。 「何度も取り調べを受け、捜査が迫っているのを知った小山は当初、仲間の三木と関釜フェリーに乗って下関から韓国の釜山に渡ろうとした。航空便より船便のほうが港の監視態勢が緩いと考えたからです。しかし三木に誘いを断られたあげく、早朝の船便に間に合わず、いったんは韓国行きを断念した。しかし、いよいよ捜査の手が近づくと、愛人のいるフィリピンに向かうことを思い立ったのです。はじめ成田空港からJAL便に乗ろうとしたところ、日本の航空会社は警察に通報する危険性が高いと思い直し、羽田から出ているフィリピン航空に切り替えたと聞いています」 関釜フェリーの件はマスコミにも漏れていなかったようだが、そのあとの足取りはしっかり新聞やテレビ、週刊誌の記者にとらえられ、報じられている。警視庁にとっては大失態であるが、新聞やテレビがさほど問題にしないのは、捜査当局から睨まれ、警察情報からシャットアウトされるのを恐れるからだろう。 記者がそこまでつかんでいるのに、なぜ警視庁は肝心の主犯を取り逃がしてしまったのか。 「そのせいで、犯行グループに内通している警視庁OBがいたのではないか、とも囁かれています」(事情通) むろん小山は国際指名手配され、その後逮捕された。 事件の奥行きはもっと深い。これまで書いてきたように、積水ハウス事件を企画・立案したのは、小山ではなく、内田マイクであり、北田文明である。たとえば第一陣の逮捕組である永田は内田の連絡役であり、55億5000万円を振り分けるための銀行口座を用意して9人目の逮捕者となった佐々木は、北田の指示を仰いできた。それぞれ、内田グループ、北田グループとして、他の地面師事件でも名前が挙がってきた。さらに積水ハウスの預金小切手を現金化する役割を担った土井淑雄(63)という存在も明らかになっている。私が北田と遭遇した時に取材をしていた、あの地面師である。土井は事件のなかで金融チームを結成し、現金を振り分ける役割を担ってきたとされる。 入院していた地主の海老澤佐妃子は、この決済直後の6月24日に病院で息を引き取った。地面師たちはそこを狙いすましたかのようでもある。 なかでも内田と北田という二人の大物地面師は積水ハウス事件を計画立案した。そして警視庁は11月20日、14人目の積水事件犯として内田を逮捕した。文字どおり神出鬼没の詐欺集団を率いてきた大物2人を手中に収めた。 だが、経営トップの“クーデター騒動”にまで発展した事件で騙しとられた55億5000万円は、闇の住人たちの手で分配され、すでに溶けてなくなったとみたほうがいい』、「警視庁にとっては大失態であるが、新聞やテレビがさほど問題にしないのは、捜査当局から睨まれ、警察情報からシャットアウトされるのを恐れるからだろう・・・積水ハウス事件を企画・立案したのは、小山ではなく、内田マイクであり、北田文明である。たとえば第一陣の逮捕組である永田は内田の連絡役であり、55億5000万円を振り分けるための銀行口座を用意して9人目の逮捕者となった佐々木は、北田の指示を仰いできた。それぞれ、内田グループ、北田グループとして、他の地面師事件でも名前が挙がってきた・・・警視庁は11月20日、14人目の積水事件犯として内田を逮捕した。文字どおり神出鬼没の詐欺集団を率いてきた大物2人を手中に収めた。 だが、経営トップの“クーデター騒動”にまで発展した事件で騙しとられた55億5000万円は、闇の住人たちの手で分配され、すでに溶けてなくなったとみたほうがいい」、「55億5000万円」が「すでに溶けてなくなったとみたほうがいい」、鮮やかな手口だ。
タグ:積水ハウス事件 (その5)(あの積水ハウスが50億円以上だまし取られた…! 衝撃の「地面師詐欺」の語られなかった真相 短期集中連載・第1回、仲介業者の住所は「元衆議院議員」の事務所!? 謎が謎を呼ぶ積水ハウスの「巨額地面師詐欺事件」 短期集中連載・第6回、社長が会長を追い落とすクーデターに発展!積水ハウス「巨額地面師詐欺事件」の醜悪な結末 短期集中連載・最終回) 現代ビジネス 森 功氏による「あの積水ハウスが50億円以上だまし取られた…! 衝撃の「地面師詐欺」の語られなかった真相 短期集中連載・第1回」 森功氏の文庫『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』 「2000平米(およそ600坪)の土地をはじめとした一連の不動産取引総額は70億円にのぼる。うち積水ハウスは63億円をニセ地主に支払い、最終的に55億5000万円もの大金をまんまと騙し取られたのである。紛れもなく、これまで類を見ない史上最大の地面師詐欺である」、なるほど。 「地主の海老澤佐妃子は1944年、五反田のこの地で生まれた。生まれた頃、すでに両親が海喜館を経営しており、彼女は旅館で育った。 「もともと海喜館は佐妃子さんのお父さんが始めた旅館でした。なにしろ場所がいいので人気があり、ずいぶん繁盛していました」・・・事件の舞台となった海喜館は、そんな花街から少し隔てた目黒川沿いの老舗旅館として栄えてきた。 1975年12月23日、夫に代わり旅館を経営してきた佐妃子の実母きよが他界し、佐妃子がこの不動産を相続した。町内会の役員は、その頃のこともよく覚えていた。 「佐妃子さんは、相続後もしばらく板前さんや仲居さんを使って海喜館を経営していました」、なるほど。 「海老澤佐妃子は2015年3月、旅館を廃業した。といっても売る気はなく、その後もしばらく板前といっしょに旅館に住み続けた。が、やがて体調を崩してしまう。生来、身体の丈夫なほうでなかった佐妃子は、すでに古希を過ぎていた。町内会の役員はさらにこう言った。 「僕が最後に旅館で佐妃子さんを見かけたのは、廃業届を出してから2年ほど経った17年の2月ごろでした。それから姿を見ていません」 近所で姿を見かけなくなったのは、彼女が入院したからだ。当然のごとく主が入院中の旅館は、人の出入りが途絶えた。瞬く間に無人の廃墟のように荒れ果てていった・・・地面師たちが海喜館の周囲に出没するようになっていた」、なるほど。 森 功氏による「仲介業者の住所は「元衆議院議員」の事務所!? 謎が謎を呼ぶ積水ハウスの「巨額地面師詐欺事件」 短期集中連載・第6回」 「『自分は積水ハウスさんに繋いだだけ」との言い訳は事実に近いのだろう。 「事件経緯のご報告につきましては、捜査上の機密保持への配慮のため、これ以上の詳細説明は差し控えさせていただきます」、こんなことでは実態解明は期待できない。 「積水ハウスと地面師グループとの取引は、五反田駅前の海喜館だけではなかった。海老澤佐妃子のなりすましは、なぜかこれとは別に積水ハウスのマンションを購入する契約を結んでいる。それが中野区にある「グランドメゾン江古田の杜」という名称の分譲マンションだ。積水側は地面師詐欺に遭っている取引の渦中、このマンションの一一戸の部屋を海老澤のなりすまし役に売るべく、交渉を重ねて契約までしている」、なるほど。 「積水側が海喜館の購入代金を支払うついでに、せっかくだから分譲マンション販売の営業をかけた。表面的に見れば、単なる営業努力の成果のように感じる。が、こと地面師案件だけにそう単純とは言い切れないかもしれない」、確かに不透明だ。 「肝心かなめの旅館の売買とは別に、なりすまし役がマンションの購入契約を結んでいる。それ自体が極めて奇異なのである。積水ハウスは取引総額70億円のうちマンションの内金6億7390万円を差し引いたおよそ63億円をまるまる騙しとられているのではないか。 そんな疑いも浮かぶ。発表した被害額との差を含め、不自然な取引や微妙な金額の誤差の裏には、表沙汰にできない何らかの理由があるのではないか」、確かに不合理な点が多過ぎる。 「表沙汰にできない何らかの理由がある」のであれば、由々しいことだ。実態解明の第二弾が出て、解明してほしいものだ。 森 功氏による「社長が会長を追い落とすクーデターに発展!積水ハウス「巨額地面師詐欺事件」の醜悪な結末 短期集中連載・最終回」 「10歳違いの阿部を社長に引き立て、バックアップしてきたともいえる。いわば2人は師弟関係にあったのだが、その弟分の社長をばっさり切り捨てようとしたことになる」、その割には動議が否決されるなど、手際の悪さが目立つ。 「阿部社長「は「自らは、和田に代わって会長に就任すべく、事件直後から動いた」。手際よい防衛線だ。 「肝心の主犯格の一人であるカミンスカスこと旧姓小山操(58)を取り逃がしている」とは致命的なミスだ。 「警視庁にとっては大失態であるが、新聞やテレビがさほど問題にしないのは、捜査当局から睨まれ、警察情報からシャットアウトされるのを恐れるからだろう・・・ 積水ハウス事件を企画・立案したのは、小山ではなく、内田マイクであり、北田文明である。たとえば第一陣の逮捕組である永田は内田の連絡役であり、55億5000万円を振り分けるための銀行口座を用意して9人目の逮捕者となった佐々木は、北田の指示を仰いできた。それぞれ、内田グループ、北田グループとして、他の地面師事件でも名前が挙がってきた・・・ 警視庁は11月20日、14人目の積水事件犯として内田を逮捕した。文字どおり神出鬼没の詐欺集団を率いてきた大物2人を手中に収めた。 だが、経営トップの“クーデター騒動”にまで発展した事件で騙しとられた55億5000万円は、闇の住人たちの手で分配され、すでに溶けてなくなったとみたほうがいい」、「55億5000万円」が「すでに溶けてなくなったとみたほうがいい」、鮮やかな手口だ。