災害(その19)(高をくくっていないか「巨大地震」への財政の備え 復旧・復興の国債増発のため平時にすべきこと、「から騒ぎ」だった南海トラフ巨大地震 日本の地震予知に欠けている重要な視点とは) [社会]
災害については、本年8月14日に取上げた。今日は、(その19)(高をくくっていないか「巨大地震」への財政の備え 復旧・復興の国債増発のため平時にすべきこと、「から騒ぎ」だった南海トラフ巨大地震 日本の地震予知に欠けている重要な視点とは)である。
先ずは、8月14日付け東洋経済オンラインが掲載した慶應義塾大学 経済学部教授の土居 丈朗氏による「高をくくっていないか「巨大地震」への財政の備え 復旧・復興の国債増発のため平時にすべきこと」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/799116
・『8月8日に、宮崎県で最大震度6弱の揺れを観測したマグニチュード7.1の地震があり、これを受けて気象庁は南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)を発表した。この発表は、南海トラフ地震臨時情報制度発足以来初めてのことである。 自然災害は起きてほしくはないが、いかに備えるかは重要である。残念ながら、いざ大きな自然災害が起こると、民間で大きな損害が生じる。 南海トラフ地震については、内閣府が2019年6月に「南海トラフ巨大地震の被害想定について(経済的な被害)」を公表している。これによると、南海トラフ地震が起きると、より被害が大きい陸側ケースで資産等の被害額は171.6兆円、波及して生じる生産の低下や交通の寸断などによる経済活動への影響額は合わせて42.1兆円にのぼるという。 政府が推計した資本ストック被害額は、1995年の阪神・淡路大震災では10兆円弱、2011年の東日本大震災では約17兆円だったから、南海トラフ地震は桁違いである』、「内閣府が2019年6月に「南海トラフ巨大地震の被害想定について(経済的な被害)」を公表している。これによると、南海トラフ地震が起きると、より被害が大きい陸側ケースで資産等の被害額は171.6兆円、波及して生じる生産の低下や交通の寸断などによる経済活動への影響額は合わせて42.1兆円にのぼるという。 政府が推計した資本ストック被害額は、1995年の阪神・淡路大震災では10兆円弱、2011年の東日本大震災では約17兆円だったから、南海トラフ地震は桁違いである」、確かに恐ろしい規模の被害だ。
・『巨大災害の後には債務が増大 この被害額や影響額の中には、国家財政状況の悪化や株価下落、物価高騰の影響は含まれていない。 これまでわが国で起きた巨大災害では、発災直後に政府が民間を財政的に支援してきた。その財源は、大半を国債で賄っていた。 内閣府の「国民経済計算」によると、巨大災害発生後のわが国の一般政府の債務残高は、次のような経緯をたどった。 阪神・淡路大震災が起きた1995年には、1994年度末の約402兆円から1995年度末に452兆円へと50兆円増えた。対GDP比でみると、1994年度末の78.5%から1995年度末には86.1%へと7.6%上昇した。 東日本大震災が起きた2011年には、2010年度末の約927兆円から2011年度末に約993兆円へと66兆円増えた。対GDP比でみると、2010年度末の183.6%から2011年度末には198.6%へと15.0%上昇した。 新型コロナが流行し始めて緊急事態宣言が出された2020年には、2019年度末の約1252兆円から2020年度末に約1313兆円へと61兆円増えた。対GDP比でみると、2019年度末の224.7%から2020年度末には243.6%へと18.9%上昇した。 政府債務対GDP比の上昇幅は、これらの年度を除いた1995年度以降の平均では5%程度だから、巨大災害発生の年には上昇幅が大きいことがわかる。 やはり、大きな災害が起こると、初動で政府が民間を支援することになり、その財源を災害直後は増税で賄うわけにはいかず、国債を増発して支援することになるから、このように政府債務は増大する。) 債務残高の増加額だけだと、災害直前のGDPの約10%程度だが、災害が生じるとGDPも落ち込むから、対GDP比でみるとさらに大きく上昇することになる。 他方で、巨大災害発生後の復旧・復興によって、経済活動が活性化されてGDPが大きく増えて、増税しなくても税収が多く入って政府債務対GDP比が低下に転じるということはあっただろうか。 残念ながら、わが国では阪神・淡路大震災や東日本大震災の後でもそうしたエビデンスはない。 おまけに、わが国の政府支出の規模は、復旧・復興の事業が終われば不要となるから、その分だけ縮小するかと思いきや、さまざまな要因で巨大災害発生前の水準には戻らず、むしろさらに拡大することが常態化している。今般のコロナ禍でも、コロナ対策が終わっても、防衛費やこども予算などで政府支出は膨張しており、縮小する様子はない。 こんな財政運営では、巨大災害が起きずとも、政府債務対GDP比は拡大の一途である』、「他方で、巨大災害発生後の復旧・復興によって、経済活動が活性化されてGDPが大きく増えて、増税しなくても税収が多く入って政府債務対GDP比が低下に転じるということはあっただろうか。 残念ながら、わが国では阪神・淡路大震災や東日本大震災の後でもそうしたエビデンスはない。 おまけに、わが国の政府支出の規模は、復旧・復興の事業が終われば不要となるから、その分だけ縮小するかと思いきや、さまざまな要因で巨大災害発生前の水準には戻らず、むしろさらに拡大することが常態化している。今般のコロナ禍でも、コロナ対策が終わっても、防衛費やこども予算などで政府支出は膨張しており、縮小する様子はない。 こんな財政運営では、巨大災害が起きずとも、政府債務対GDP比は拡大の一途である」、由々しい野放図さだ。
・『政府がお金を借りにくくなっている これまでは、巨大災害の直後に政府が借金をして民間を支援することができていたが、今後も必ずそのようにできるという保証はない。 まず、国債の消化は以前に比べて苦しくなっている。コロナ禍での国債消化は象徴的だった。 東洋経済オンラインの拙稿「2021年度予算、『短期国債が4割』の異常事態短期債借り換えに奔走、コロナ対策の高い代償」でも詳述したが、コロナ禍では、新規に発行する国債(当年度の新発国債だけでなく借換債も含む)の過半は、2年以下の満期でしか発行できなかった。量的金融緩和策の下だったにもかかわらず、である。 政府はコロナ対策のため国債を大量発行しようにも、金融機関はコロナ後の先行き不安がある中で長期債を追加的に大量購入する余裕はなかったのである。) 加えて、2010年代は日本銀行がデフレ脱却のために国債を大量に買い入れていたが、現在ではもはやそうではない。 2024年3月に、日銀はマイナス金利政策だけでなく、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)もETF(上場投資信託)とJ-REIT(不動産投資信託)の新規買い入れもやめた。今や、国債の買い入れ額の減額についてペースを見計らっている。 今後は、これまでのように日銀頼みで国債の大量増発はできない』、「2024年3月に、日銀はマイナス金利政策だけでなく、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)もETF(上場投資信託)とJ-REIT(不動産投資信託)の新規買い入れもやめた。今や、国債の買い入れ額の減額についてペースを見計らっている。 今後は、これまでのように日銀頼みで国債の大量増発はできない」、その通りだ。
・『「日銀が国債を買えばいい」はもう通じない 巨大災害発生直後ぐらい日銀は特別な対応をするだろう、とみるのは甘い。 災害発生直後には、復旧のための物資が必要となる一方で、生産設備が被災すると生産が滞る。供給が落ち込む一方で需要が増えるから、物価の上昇圧力が高まる。そんな状況で、日銀は金融緩和政策を積極的にはできない。東日本大震災はデフレ下だったから顕著にそうはならなかったが、現在は逆に物価が上がり始めている。 緊急時でも、政府が臨時的に長期債を低利で大量増発できる、と高をくくってはいけない。国債金利も上がり始めており、災害対応で巨額の国債増発が必要になって、必要な金額を発行できたとしても、それには相当な利払い費を後に要することになる。 そう考えると、巨大災害発生後の復旧・復興のために必要とする国債増発を、市場を混乱させないような規模でできるような財政運営を平時から心がけることが重要となる。 緊急時には、当該年度予算のための新発国債と、当該年度に満期を迎えて借り換える借換債に、臨時的な国債増発が加わる。これらを合計した国債発行が、市場で円滑に行える程度に抑制できるかが問われる。そのカギとなるのは、当該年度予算のための新発国債の抑制に他ならない。 巨大災害が仮に起きたとしても、復旧・復興のための国債増発が支障なくできる程度に、平時から新発国債を抑制し、財政余力を確保しておかなければならない』、「緊急時でも、政府が臨時的に長期債を低利で大量増発できる、と高をくくってはいけない。国債金利も上がり始めており、災害対応で巨額の国債増発が必要になって、必要な金額を発行できたとしても、それには相当な利払い費を後に要することになる。 そう考えると、巨大災害発生後の復旧・復興のために必要とする国債増発を、市場を混乱させないような規模でできるような財政運営を平時から心がけることが重要となる・・・そのカギとなるのは、当該年度予算のための新発国債の抑制に他ならない。 巨大災害が仮に起きたとしても、復旧・復興のための国債増発が支障なくできる程度に、平時から新発国債を抑制し、財政余力を確保しておかなければならない」、その通りだ。
次に、8月19日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元週刊文春・月刊文芸春秋編集長の木俣正剛氏による「「から騒ぎ」だった南海トラフ巨大地震、日本の地震予知に欠けている重要な視点とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/348931
・『「巨大地震注意」は何事もなく解除 社会が被った予想以上の影響 私は元編集者で地震の専門家ではありませんが、逆に専門家の言うことも「まずは疑ってかかる」ということを、仕事上の責任だと思っています。 8月8日に宮崎で地震が起こり、政府は「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」を召集、その夜には南海トラフ地震臨時情報として「巨大地震注意」という文言が日本中にあふれました。日本中がバニックになり、お盆の連休に期待していた観光地の宿泊施設では予約のキャンセルが相次ぎ、新幹線は徐行し、人々は食料品の買い出しに走りました。 そんな中、私も建設、消防、自衛隊、自治体などに関わるキーマンたちに意見を聞き、日本が最低限取り組むべき防災・減災対策についてまとめた記事を寄稿しました(https://diamond.jp/articles/-/348677)。しかし、たった1週間後の15日に「巨大地震注意」の呼びかけは解除となりました。 日本は地震大国ですから、地震への警戒は常にすべきですが、何十年も国家予算をかけて、政府と気象庁が「地震予知連絡会」を運営しているのに、予知を成功させたことがなく、また珍しく「巨大地震注意」という予告を出したのに、「地震活動などに特段の異常が観測されなかった」と、明確な説明がないまま収束しました。この機に、地震予知の方法を見直してもいいのではないかと思います。 もちろん、巨大地震のリスクを常に分析し、少しでも不安が生じれば国民に早期の警戒を呼びかけることは、国家として必要不可欠な仕事の一つです。今回は事前に決められたルールの範囲で適正に発出された呼びかけでもあったことでしょう。1週間で解除されましたが、引き続き国民一人一人が警戒を続けるべきです。とはいえ、これだけの影響を社会に与えることが改めてわかったのだから、予知の精度を上げていくことも、同じくらい重要なテーマだと思うのです。 そもそも論になってしまいますが、ロバート・ゲラー東大教授は「地震予知が科学的に不可能である」と主張していました。彼によると、(1)日本政府が使用している確率論的地震動予測地図は、実際の地震発生場所と一致しないことが多く、その信頼性に疑問がある、(2)地震の前兆を観測することは非常に難しく、短期的な地震予知は現実的ではない、ということです。 実際、予知に成功していないわけですから、この主張は一定の説得力があります』、「ロバート・ゲラー東大教授は「地震予知が科学的に不可能である」と主張していました。彼によると、(1)日本政府が使用している確率論的地震動予測地図は、実際の地震発生場所と一致しないことが多く、その信頼性に疑問がある、(2)地震の前兆を観測することは非常に難しく、短期的な地震予知は現実的ではない、ということです」、これまでの常識は抜本的に見直す必要がありそうだ。
・『プレート理論は定説ではなくなりつつある? 疑問を投げかける専門家の気になる主張 特に、地震予知連絡会や気象庁、政府が地震が起きる度に説明の中心としているプレート理論そのものが、世界的に見て定説とまでは言い切れるものではなくなっているということを主張する学者は少なからずいるのが実情です。そのことを、日本のメディアは吟味してから報道すべきです。 これについて、詳しく述べましょう。もともとプレート理論は仮説として有力視され、1969年に開催された米国のランドマークペンローズ会議で発表されました。出席した日本人科学者は、初めてこの理論を知り、その理論を信じ、いつしか「仮説」から「真理」のように解釈してしまいました。そして地震予知連絡会が作られ、莫大な予算が投じられて、新しい視点や理論が出てきても、なかなか受け容れられない仕組みになってしまっていると言われます。 科学は常に進歩します。DNA解析で日本人のルーツに関する研究が大きく変わったように、地球の内部に関する調査も50年前から進歩しました。私に新しい調査結果を教えてくれたのは、埼玉大学名誉教授(地質学)の角田史雄氏と元内閣情報調査室参事官の藤和彦氏による『徹底図解 メガ地震がやってくる!』(ビジネス社)という書籍でした。この書籍の内容を参照しながら、論を進めましょう(引用は「要約」になるので、詳しくは本書をお読みください)。 本書によると、かつては地球の内部を調べる方法がなく、推測によって、地下100kmまでの範囲内に硬い岩盤(プレート)があるという理論が主流でした(400キロという説もあります)。しかしこの10年ほどで新しい研究が進みました。米国地質研究所は、人間に使うMRIを巨大にしたような装置を使ってさらに地下深くの状況を解明することに成功し、660kmまでのデータを公開しました。同時に世界火山学会(スミソニアン博物館)も、火山爆発とマントルのたまり具合を詳細にデータで発表しています。 この調査でわかったことは、プレートに関する従来の説を覆すものでした。プレート説の根幹は、地中深くにあるマントル(地球内部の地殻と核との間の層。溶けると溶岩流のような状態になる)の対流によって隆起した山脈(海嶺)から生まれたプレートが十数枚あり、それがぶつかるか、片方の下部に沈むと地震や火山噴火を誘発するというものです。 しかし、このMRI(正式名はMT=マントルトモグラフィー)の調査では、太平洋の底には地下1000キロまで温かいマントルが流れているものの、巨大プレートを形成するための強い関連性はないこと、またプレートは地下すべてを覆っているものではなく、厚さもなくて、巨大地震のエネルギーを生み出せるほどのパワーはないことが指摘されました。そしてプレートは常に一定方向に遠距離移動しており、実際には時計回りに回転していて、いずれ衝突し地震が起こるという「沈み込み理論」は適合しないということです。) 確かにそう考えると、阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震など、最大震度7を記録している地震はすべてプレート境界面以外で起こっています。そして予知もできませんでした。また海外に目を転じても、大規模地震の震源とされる太平洋プレートから2500kmも離れた中国四川省で起きたM8の大地震の説明がつきません。 となると、8月当初、日本中に警告が発せられていた南海トラフ地震の発生理由も、ユーラシアプレートとフィリピン海プレートの境界で起こるという理論が基になっているので、疑問がわいてきます』、「このMRI(正式名はMT=マントルトモグラフィー)の調査では、太平洋の底には地下1000キロまで温かいマントルが流れているものの、巨大プレートを形成するための強い関連性はないこと、またプレートは地下すべてを覆っているものではなく、厚さもなくて、巨大地震のエネルギーを生み出せるほどのパワーはないことが指摘されました。そしてプレートは常に一定方向に遠距離移動しており、実際には時計回りに回転していて、いずれ衝突し地震が起こるという「沈み込み理論」は適合しないということです。 確かにそう考えると、阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震など、最大震度7を記録している地震はすべてプレート境界面以外で起こっています。そして予知もできませんでした。また海外に目を転じても、大規模地震の震源とされる太平洋プレートから2500kmも離れた中国四川省で起きたM8の大地震の説明がつきません」、なるほど。
・『最先端の調査が行われる一方 過去の巨大地震を根拠とした推論も もっとも、地震予知連絡会の調査もいい加減なものではありません。国土地理院が設置した約1300カ所の電子基準点から得られるデータを基に、人工知能(AI)と物理モデルを組み合わせたハイブリッドな解析手法を用いた「MEGA地震予測」のシステムを駆使しています。今回宮崎で地震が起きたとき、南海トラフ地震との関連性を発表するのに時間がかかったのは、まさにこのシステムでの計算に2時間も全力を傾けていたからです。 が、メディアの報道を見ると、南海トラフ地震が起こる確率は、むしろ過去の巨大地震を根拠としたアバウトな推理になってしまっています。1854年の安政東海地震、安政南海地震から約90年後に昭和東南海地震、昭和南海地震が起きたため、今はそれから80年たっているから、次の大地震発生まであと10年しか猶予がないというものです。 一方、「日向灘はもともと群発地震が起こっていたところで、最初の南海トラフには入っていなかった。ましてや、それが南海(四国、和歌山)から駿河、房総半島まで及ぶとは思えない」と言う地震学者もいます。地震の専門家からメディアにいたるまで、どうも目線が合っていないように感じてしまいます。 話を最新の調査結果に戻すと、(1)マントル対流による摩擦熱ではプレートを動かすことはできない、(2)そもそもプレートを生む海嶺の下にはマントル対流がない、という説が唱えられ始めました。米国地質研究所の調査画像によれば、地球の地下1000kmに及ぶ冷たく巨大な岩の柱がマントル対流を遮っているそうです。 一方、地下200kmの環太平洋火山・地震帯が日本をすっぽり覆っていること、その下の熱いマントルが南太平洋から東アフリカへと伸びる「熱の移送路」があることも判明しました。 そこで地質学者である角田氏は、大地震の真犯人は地球内部からの高熱流(地表の下410kmから660kmにある、上部マントルと下部マントルに挟まれる遷移層=マグマと岩石が混じった状態のもの)ではないかと推理しました。彼自身が語っているように、これはまだ仮説にすぎません。しかし、もともと海域の理論であるプレート説が陸の地震に拡大解釈された感は否めません。) たまたま日本の場合、地形的に特殊な場所にあり、プレートが起こした地震と解釈できる部分があったため、学者の多くがプレート説に取り憑かれてしまったというのです。 実はプレートを動かしているのは、もっと地球の深奥にある高熱流であり、プレートはその共犯者でしかないと角田氏は推理しています。つまり無縁ではないのですが、マントルが地震を起こして、下から突き上げられたプレートが動いて最終仕上げをするという構造になっており、前述のようにプレートそのものには大きなエネルギーを放出する力はないということで、「プレートを追いかけても、地震予知はできない」というのが氏の仮説の結論です。 そして、地球には黒潮のようなマントルの流れが三つあり、そのうち二つが日本列島の下にあります。M7以上の地震の半分が日本で起こるのは、そのためだというのです。 「角田仮説」では、地球の深層で5回以上M5以上の深発地震が起こり、それが3回続くと、確実にそのマントル対流上で大地震が起こるそうです。たとえば阪神淡路大震災のときは、5カ月前と2カ月前にフィジーとジャワで起きていました。東日本大震災のときは、約1カ月の間にフィジーとフィリピンで10回起きていました。熊本地震の場合も、小笠原とフィジーで5回起きています』、「プレートそのものには大きなエネルギーを放出する力はないということで、「プレートを追いかけても、地震予知はできない」というのが氏の仮説の結論です。 そして、地球には黒潮のようなマントルの流れが三つあり、そのうち二つが日本列島の下にあります。M7以上の地震の半分が日本で起こるのは、そのためだというのです・・・地球の深層で5回以上M5以上の深発地震が起こり、それが3回続くと、確実にそのマントル対流上で大地震が起こるそうです。たとえば阪神淡路大震災のときは、5カ月前と2カ月前にフィジーとジャワで起きていました。東日本大震災のときは、約1カ月の間にフィジーとフィリピンで10回起きていました。熊本地震の場合も、小笠原とフィジーで5回起きています」、なるほど。
・『様々な仮説を検証しながら自ら警戒して備えるべき このように、過去の大地震と深層地震と火山の関係を調べると、過去に起きた86回に及ぶM7以上の大地震は、すべてこの例に当てはまると本書は伝えています。 本書には、大地震が次にどこで起こるかという予測も詳述されていますが、ネタばれになるので、紹介するのはやめておきます。もともとは、政府側にいて地震予知連絡会が地震を予知できないことに不審感を持った藤氏が、自身の仮説を紹介するために出版したもので、近いうちに南海トラフ地震にポイントを絞った新刊も上梓されるそうです。 もちろん、日向灘では群発地震が続いています。そして確率論ではありますが、昭和東南海地震から80年という注意喚起にも、それなりの説得力はあります。ですから読者諸氏には、引き続き警戒を緩めないでほしいと思います。日本は地震大国。そしてここで紹介した話も、今のところ仮説にすぎません。科学的にははっきりしたことはわかっていないのだから、自ら警戒して備えるしかないのです』、「過去の大地震と深層地震と火山の関係を調べると、過去に起きた86回に及ぶM7以上の大地震は、すべてこの例に当てはまると本書は伝えています・・・もともとは、政府側にいて地震予知連絡会が地震を予知できないことに不審感を持った藤氏が、自身の仮説を紹介するために出版したもので、近いうちに南海トラフ地震にポイントを絞った新刊も上梓されるそうです。 もちろん、日向灘では群発地震が続いています。そして確率論ではありますが、昭和東南海地震から80年という注意喚起にも、それなりの説得力はあります。ですから読者諸氏には、引き続き警戒を緩めないでほしいと思います。日本は地震大国。そしてここで紹介した話も、今のところ仮説にすぎません。科学的にははっきりしたことはわかっていないのだから、自ら警戒して備えるしかないのです」、「地震」に関しては、決定的な理論は確立していないとはいえ、科学的にははっきりしたことはわかっていないのだから、自ら警戒して備えるしかないのです」、その通りなのだろう。
先ずは、8月14日付け東洋経済オンラインが掲載した慶應義塾大学 経済学部教授の土居 丈朗氏による「高をくくっていないか「巨大地震」への財政の備え 復旧・復興の国債増発のため平時にすべきこと」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/799116
・『8月8日に、宮崎県で最大震度6弱の揺れを観測したマグニチュード7.1の地震があり、これを受けて気象庁は南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)を発表した。この発表は、南海トラフ地震臨時情報制度発足以来初めてのことである。 自然災害は起きてほしくはないが、いかに備えるかは重要である。残念ながら、いざ大きな自然災害が起こると、民間で大きな損害が生じる。 南海トラフ地震については、内閣府が2019年6月に「南海トラフ巨大地震の被害想定について(経済的な被害)」を公表している。これによると、南海トラフ地震が起きると、より被害が大きい陸側ケースで資産等の被害額は171.6兆円、波及して生じる生産の低下や交通の寸断などによる経済活動への影響額は合わせて42.1兆円にのぼるという。 政府が推計した資本ストック被害額は、1995年の阪神・淡路大震災では10兆円弱、2011年の東日本大震災では約17兆円だったから、南海トラフ地震は桁違いである』、「内閣府が2019年6月に「南海トラフ巨大地震の被害想定について(経済的な被害)」を公表している。これによると、南海トラフ地震が起きると、より被害が大きい陸側ケースで資産等の被害額は171.6兆円、波及して生じる生産の低下や交通の寸断などによる経済活動への影響額は合わせて42.1兆円にのぼるという。 政府が推計した資本ストック被害額は、1995年の阪神・淡路大震災では10兆円弱、2011年の東日本大震災では約17兆円だったから、南海トラフ地震は桁違いである」、確かに恐ろしい規模の被害だ。
・『巨大災害の後には債務が増大 この被害額や影響額の中には、国家財政状況の悪化や株価下落、物価高騰の影響は含まれていない。 これまでわが国で起きた巨大災害では、発災直後に政府が民間を財政的に支援してきた。その財源は、大半を国債で賄っていた。 内閣府の「国民経済計算」によると、巨大災害発生後のわが国の一般政府の債務残高は、次のような経緯をたどった。 阪神・淡路大震災が起きた1995年には、1994年度末の約402兆円から1995年度末に452兆円へと50兆円増えた。対GDP比でみると、1994年度末の78.5%から1995年度末には86.1%へと7.6%上昇した。 東日本大震災が起きた2011年には、2010年度末の約927兆円から2011年度末に約993兆円へと66兆円増えた。対GDP比でみると、2010年度末の183.6%から2011年度末には198.6%へと15.0%上昇した。 新型コロナが流行し始めて緊急事態宣言が出された2020年には、2019年度末の約1252兆円から2020年度末に約1313兆円へと61兆円増えた。対GDP比でみると、2019年度末の224.7%から2020年度末には243.6%へと18.9%上昇した。 政府債務対GDP比の上昇幅は、これらの年度を除いた1995年度以降の平均では5%程度だから、巨大災害発生の年には上昇幅が大きいことがわかる。 やはり、大きな災害が起こると、初動で政府が民間を支援することになり、その財源を災害直後は増税で賄うわけにはいかず、国債を増発して支援することになるから、このように政府債務は増大する。) 債務残高の増加額だけだと、災害直前のGDPの約10%程度だが、災害が生じるとGDPも落ち込むから、対GDP比でみるとさらに大きく上昇することになる。 他方で、巨大災害発生後の復旧・復興によって、経済活動が活性化されてGDPが大きく増えて、増税しなくても税収が多く入って政府債務対GDP比が低下に転じるということはあっただろうか。 残念ながら、わが国では阪神・淡路大震災や東日本大震災の後でもそうしたエビデンスはない。 おまけに、わが国の政府支出の規模は、復旧・復興の事業が終われば不要となるから、その分だけ縮小するかと思いきや、さまざまな要因で巨大災害発生前の水準には戻らず、むしろさらに拡大することが常態化している。今般のコロナ禍でも、コロナ対策が終わっても、防衛費やこども予算などで政府支出は膨張しており、縮小する様子はない。 こんな財政運営では、巨大災害が起きずとも、政府債務対GDP比は拡大の一途である』、「他方で、巨大災害発生後の復旧・復興によって、経済活動が活性化されてGDPが大きく増えて、増税しなくても税収が多く入って政府債務対GDP比が低下に転じるということはあっただろうか。 残念ながら、わが国では阪神・淡路大震災や東日本大震災の後でもそうしたエビデンスはない。 おまけに、わが国の政府支出の規模は、復旧・復興の事業が終われば不要となるから、その分だけ縮小するかと思いきや、さまざまな要因で巨大災害発生前の水準には戻らず、むしろさらに拡大することが常態化している。今般のコロナ禍でも、コロナ対策が終わっても、防衛費やこども予算などで政府支出は膨張しており、縮小する様子はない。 こんな財政運営では、巨大災害が起きずとも、政府債務対GDP比は拡大の一途である」、由々しい野放図さだ。
・『政府がお金を借りにくくなっている これまでは、巨大災害の直後に政府が借金をして民間を支援することができていたが、今後も必ずそのようにできるという保証はない。 まず、国債の消化は以前に比べて苦しくなっている。コロナ禍での国債消化は象徴的だった。 東洋経済オンラインの拙稿「2021年度予算、『短期国債が4割』の異常事態短期債借り換えに奔走、コロナ対策の高い代償」でも詳述したが、コロナ禍では、新規に発行する国債(当年度の新発国債だけでなく借換債も含む)の過半は、2年以下の満期でしか発行できなかった。量的金融緩和策の下だったにもかかわらず、である。 政府はコロナ対策のため国債を大量発行しようにも、金融機関はコロナ後の先行き不安がある中で長期債を追加的に大量購入する余裕はなかったのである。) 加えて、2010年代は日本銀行がデフレ脱却のために国債を大量に買い入れていたが、現在ではもはやそうではない。 2024年3月に、日銀はマイナス金利政策だけでなく、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)もETF(上場投資信託)とJ-REIT(不動産投資信託)の新規買い入れもやめた。今や、国債の買い入れ額の減額についてペースを見計らっている。 今後は、これまでのように日銀頼みで国債の大量増発はできない』、「2024年3月に、日銀はマイナス金利政策だけでなく、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)もETF(上場投資信託)とJ-REIT(不動産投資信託)の新規買い入れもやめた。今や、国債の買い入れ額の減額についてペースを見計らっている。 今後は、これまでのように日銀頼みで国債の大量増発はできない」、その通りだ。
・『「日銀が国債を買えばいい」はもう通じない 巨大災害発生直後ぐらい日銀は特別な対応をするだろう、とみるのは甘い。 災害発生直後には、復旧のための物資が必要となる一方で、生産設備が被災すると生産が滞る。供給が落ち込む一方で需要が増えるから、物価の上昇圧力が高まる。そんな状況で、日銀は金融緩和政策を積極的にはできない。東日本大震災はデフレ下だったから顕著にそうはならなかったが、現在は逆に物価が上がり始めている。 緊急時でも、政府が臨時的に長期債を低利で大量増発できる、と高をくくってはいけない。国債金利も上がり始めており、災害対応で巨額の国債増発が必要になって、必要な金額を発行できたとしても、それには相当な利払い費を後に要することになる。 そう考えると、巨大災害発生後の復旧・復興のために必要とする国債増発を、市場を混乱させないような規模でできるような財政運営を平時から心がけることが重要となる。 緊急時には、当該年度予算のための新発国債と、当該年度に満期を迎えて借り換える借換債に、臨時的な国債増発が加わる。これらを合計した国債発行が、市場で円滑に行える程度に抑制できるかが問われる。そのカギとなるのは、当該年度予算のための新発国債の抑制に他ならない。 巨大災害が仮に起きたとしても、復旧・復興のための国債増発が支障なくできる程度に、平時から新発国債を抑制し、財政余力を確保しておかなければならない』、「緊急時でも、政府が臨時的に長期債を低利で大量増発できる、と高をくくってはいけない。国債金利も上がり始めており、災害対応で巨額の国債増発が必要になって、必要な金額を発行できたとしても、それには相当な利払い費を後に要することになる。 そう考えると、巨大災害発生後の復旧・復興のために必要とする国債増発を、市場を混乱させないような規模でできるような財政運営を平時から心がけることが重要となる・・・そのカギとなるのは、当該年度予算のための新発国債の抑制に他ならない。 巨大災害が仮に起きたとしても、復旧・復興のための国債増発が支障なくできる程度に、平時から新発国債を抑制し、財政余力を確保しておかなければならない」、その通りだ。
次に、8月19日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元週刊文春・月刊文芸春秋編集長の木俣正剛氏による「「から騒ぎ」だった南海トラフ巨大地震、日本の地震予知に欠けている重要な視点とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/348931
・『「巨大地震注意」は何事もなく解除 社会が被った予想以上の影響 私は元編集者で地震の専門家ではありませんが、逆に専門家の言うことも「まずは疑ってかかる」ということを、仕事上の責任だと思っています。 8月8日に宮崎で地震が起こり、政府は「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」を召集、その夜には南海トラフ地震臨時情報として「巨大地震注意」という文言が日本中にあふれました。日本中がバニックになり、お盆の連休に期待していた観光地の宿泊施設では予約のキャンセルが相次ぎ、新幹線は徐行し、人々は食料品の買い出しに走りました。 そんな中、私も建設、消防、自衛隊、自治体などに関わるキーマンたちに意見を聞き、日本が最低限取り組むべき防災・減災対策についてまとめた記事を寄稿しました(https://diamond.jp/articles/-/348677)。しかし、たった1週間後の15日に「巨大地震注意」の呼びかけは解除となりました。 日本は地震大国ですから、地震への警戒は常にすべきですが、何十年も国家予算をかけて、政府と気象庁が「地震予知連絡会」を運営しているのに、予知を成功させたことがなく、また珍しく「巨大地震注意」という予告を出したのに、「地震活動などに特段の異常が観測されなかった」と、明確な説明がないまま収束しました。この機に、地震予知の方法を見直してもいいのではないかと思います。 もちろん、巨大地震のリスクを常に分析し、少しでも不安が生じれば国民に早期の警戒を呼びかけることは、国家として必要不可欠な仕事の一つです。今回は事前に決められたルールの範囲で適正に発出された呼びかけでもあったことでしょう。1週間で解除されましたが、引き続き国民一人一人が警戒を続けるべきです。とはいえ、これだけの影響を社会に与えることが改めてわかったのだから、予知の精度を上げていくことも、同じくらい重要なテーマだと思うのです。 そもそも論になってしまいますが、ロバート・ゲラー東大教授は「地震予知が科学的に不可能である」と主張していました。彼によると、(1)日本政府が使用している確率論的地震動予測地図は、実際の地震発生場所と一致しないことが多く、その信頼性に疑問がある、(2)地震の前兆を観測することは非常に難しく、短期的な地震予知は現実的ではない、ということです。 実際、予知に成功していないわけですから、この主張は一定の説得力があります』、「ロバート・ゲラー東大教授は「地震予知が科学的に不可能である」と主張していました。彼によると、(1)日本政府が使用している確率論的地震動予測地図は、実際の地震発生場所と一致しないことが多く、その信頼性に疑問がある、(2)地震の前兆を観測することは非常に難しく、短期的な地震予知は現実的ではない、ということです」、これまでの常識は抜本的に見直す必要がありそうだ。
・『プレート理論は定説ではなくなりつつある? 疑問を投げかける専門家の気になる主張 特に、地震予知連絡会や気象庁、政府が地震が起きる度に説明の中心としているプレート理論そのものが、世界的に見て定説とまでは言い切れるものではなくなっているということを主張する学者は少なからずいるのが実情です。そのことを、日本のメディアは吟味してから報道すべきです。 これについて、詳しく述べましょう。もともとプレート理論は仮説として有力視され、1969年に開催された米国のランドマークペンローズ会議で発表されました。出席した日本人科学者は、初めてこの理論を知り、その理論を信じ、いつしか「仮説」から「真理」のように解釈してしまいました。そして地震予知連絡会が作られ、莫大な予算が投じられて、新しい視点や理論が出てきても、なかなか受け容れられない仕組みになってしまっていると言われます。 科学は常に進歩します。DNA解析で日本人のルーツに関する研究が大きく変わったように、地球の内部に関する調査も50年前から進歩しました。私に新しい調査結果を教えてくれたのは、埼玉大学名誉教授(地質学)の角田史雄氏と元内閣情報調査室参事官の藤和彦氏による『徹底図解 メガ地震がやってくる!』(ビジネス社)という書籍でした。この書籍の内容を参照しながら、論を進めましょう(引用は「要約」になるので、詳しくは本書をお読みください)。 本書によると、かつては地球の内部を調べる方法がなく、推測によって、地下100kmまでの範囲内に硬い岩盤(プレート)があるという理論が主流でした(400キロという説もあります)。しかしこの10年ほどで新しい研究が進みました。米国地質研究所は、人間に使うMRIを巨大にしたような装置を使ってさらに地下深くの状況を解明することに成功し、660kmまでのデータを公開しました。同時に世界火山学会(スミソニアン博物館)も、火山爆発とマントルのたまり具合を詳細にデータで発表しています。 この調査でわかったことは、プレートに関する従来の説を覆すものでした。プレート説の根幹は、地中深くにあるマントル(地球内部の地殻と核との間の層。溶けると溶岩流のような状態になる)の対流によって隆起した山脈(海嶺)から生まれたプレートが十数枚あり、それがぶつかるか、片方の下部に沈むと地震や火山噴火を誘発するというものです。 しかし、このMRI(正式名はMT=マントルトモグラフィー)の調査では、太平洋の底には地下1000キロまで温かいマントルが流れているものの、巨大プレートを形成するための強い関連性はないこと、またプレートは地下すべてを覆っているものではなく、厚さもなくて、巨大地震のエネルギーを生み出せるほどのパワーはないことが指摘されました。そしてプレートは常に一定方向に遠距離移動しており、実際には時計回りに回転していて、いずれ衝突し地震が起こるという「沈み込み理論」は適合しないということです。) 確かにそう考えると、阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震など、最大震度7を記録している地震はすべてプレート境界面以外で起こっています。そして予知もできませんでした。また海外に目を転じても、大規模地震の震源とされる太平洋プレートから2500kmも離れた中国四川省で起きたM8の大地震の説明がつきません。 となると、8月当初、日本中に警告が発せられていた南海トラフ地震の発生理由も、ユーラシアプレートとフィリピン海プレートの境界で起こるという理論が基になっているので、疑問がわいてきます』、「このMRI(正式名はMT=マントルトモグラフィー)の調査では、太平洋の底には地下1000キロまで温かいマントルが流れているものの、巨大プレートを形成するための強い関連性はないこと、またプレートは地下すべてを覆っているものではなく、厚さもなくて、巨大地震のエネルギーを生み出せるほどのパワーはないことが指摘されました。そしてプレートは常に一定方向に遠距離移動しており、実際には時計回りに回転していて、いずれ衝突し地震が起こるという「沈み込み理論」は適合しないということです。 確かにそう考えると、阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震など、最大震度7を記録している地震はすべてプレート境界面以外で起こっています。そして予知もできませんでした。また海外に目を転じても、大規模地震の震源とされる太平洋プレートから2500kmも離れた中国四川省で起きたM8の大地震の説明がつきません」、なるほど。
・『最先端の調査が行われる一方 過去の巨大地震を根拠とした推論も もっとも、地震予知連絡会の調査もいい加減なものではありません。国土地理院が設置した約1300カ所の電子基準点から得られるデータを基に、人工知能(AI)と物理モデルを組み合わせたハイブリッドな解析手法を用いた「MEGA地震予測」のシステムを駆使しています。今回宮崎で地震が起きたとき、南海トラフ地震との関連性を発表するのに時間がかかったのは、まさにこのシステムでの計算に2時間も全力を傾けていたからです。 が、メディアの報道を見ると、南海トラフ地震が起こる確率は、むしろ過去の巨大地震を根拠としたアバウトな推理になってしまっています。1854年の安政東海地震、安政南海地震から約90年後に昭和東南海地震、昭和南海地震が起きたため、今はそれから80年たっているから、次の大地震発生まであと10年しか猶予がないというものです。 一方、「日向灘はもともと群発地震が起こっていたところで、最初の南海トラフには入っていなかった。ましてや、それが南海(四国、和歌山)から駿河、房総半島まで及ぶとは思えない」と言う地震学者もいます。地震の専門家からメディアにいたるまで、どうも目線が合っていないように感じてしまいます。 話を最新の調査結果に戻すと、(1)マントル対流による摩擦熱ではプレートを動かすことはできない、(2)そもそもプレートを生む海嶺の下にはマントル対流がない、という説が唱えられ始めました。米国地質研究所の調査画像によれば、地球の地下1000kmに及ぶ冷たく巨大な岩の柱がマントル対流を遮っているそうです。 一方、地下200kmの環太平洋火山・地震帯が日本をすっぽり覆っていること、その下の熱いマントルが南太平洋から東アフリカへと伸びる「熱の移送路」があることも判明しました。 そこで地質学者である角田氏は、大地震の真犯人は地球内部からの高熱流(地表の下410kmから660kmにある、上部マントルと下部マントルに挟まれる遷移層=マグマと岩石が混じった状態のもの)ではないかと推理しました。彼自身が語っているように、これはまだ仮説にすぎません。しかし、もともと海域の理論であるプレート説が陸の地震に拡大解釈された感は否めません。) たまたま日本の場合、地形的に特殊な場所にあり、プレートが起こした地震と解釈できる部分があったため、学者の多くがプレート説に取り憑かれてしまったというのです。 実はプレートを動かしているのは、もっと地球の深奥にある高熱流であり、プレートはその共犯者でしかないと角田氏は推理しています。つまり無縁ではないのですが、マントルが地震を起こして、下から突き上げられたプレートが動いて最終仕上げをするという構造になっており、前述のようにプレートそのものには大きなエネルギーを放出する力はないということで、「プレートを追いかけても、地震予知はできない」というのが氏の仮説の結論です。 そして、地球には黒潮のようなマントルの流れが三つあり、そのうち二つが日本列島の下にあります。M7以上の地震の半分が日本で起こるのは、そのためだというのです。 「角田仮説」では、地球の深層で5回以上M5以上の深発地震が起こり、それが3回続くと、確実にそのマントル対流上で大地震が起こるそうです。たとえば阪神淡路大震災のときは、5カ月前と2カ月前にフィジーとジャワで起きていました。東日本大震災のときは、約1カ月の間にフィジーとフィリピンで10回起きていました。熊本地震の場合も、小笠原とフィジーで5回起きています』、「プレートそのものには大きなエネルギーを放出する力はないということで、「プレートを追いかけても、地震予知はできない」というのが氏の仮説の結論です。 そして、地球には黒潮のようなマントルの流れが三つあり、そのうち二つが日本列島の下にあります。M7以上の地震の半分が日本で起こるのは、そのためだというのです・・・地球の深層で5回以上M5以上の深発地震が起こり、それが3回続くと、確実にそのマントル対流上で大地震が起こるそうです。たとえば阪神淡路大震災のときは、5カ月前と2カ月前にフィジーとジャワで起きていました。東日本大震災のときは、約1カ月の間にフィジーとフィリピンで10回起きていました。熊本地震の場合も、小笠原とフィジーで5回起きています」、なるほど。
・『様々な仮説を検証しながら自ら警戒して備えるべき このように、過去の大地震と深層地震と火山の関係を調べると、過去に起きた86回に及ぶM7以上の大地震は、すべてこの例に当てはまると本書は伝えています。 本書には、大地震が次にどこで起こるかという予測も詳述されていますが、ネタばれになるので、紹介するのはやめておきます。もともとは、政府側にいて地震予知連絡会が地震を予知できないことに不審感を持った藤氏が、自身の仮説を紹介するために出版したもので、近いうちに南海トラフ地震にポイントを絞った新刊も上梓されるそうです。 もちろん、日向灘では群発地震が続いています。そして確率論ではありますが、昭和東南海地震から80年という注意喚起にも、それなりの説得力はあります。ですから読者諸氏には、引き続き警戒を緩めないでほしいと思います。日本は地震大国。そしてここで紹介した話も、今のところ仮説にすぎません。科学的にははっきりしたことはわかっていないのだから、自ら警戒して備えるしかないのです』、「過去の大地震と深層地震と火山の関係を調べると、過去に起きた86回に及ぶM7以上の大地震は、すべてこの例に当てはまると本書は伝えています・・・もともとは、政府側にいて地震予知連絡会が地震を予知できないことに不審感を持った藤氏が、自身の仮説を紹介するために出版したもので、近いうちに南海トラフ地震にポイントを絞った新刊も上梓されるそうです。 もちろん、日向灘では群発地震が続いています。そして確率論ではありますが、昭和東南海地震から80年という注意喚起にも、それなりの説得力はあります。ですから読者諸氏には、引き続き警戒を緩めないでほしいと思います。日本は地震大国。そしてここで紹介した話も、今のところ仮説にすぎません。科学的にははっきりしたことはわかっていないのだから、自ら警戒して備えるしかないのです」、「地震」に関しては、決定的な理論は確立していないとはいえ、科学的にははっきりしたことはわかっていないのだから、自ら警戒して備えるしかないのです」、その通りなのだろう。
タグ:(その19)(高をくくっていないか「巨大地震」への財政の備え 復旧・復興の国債増発のため平時にすべきこと、「から騒ぎ」だった南海トラフ巨大地震 日本の地震予知に欠けている重要な視点とは) 災害 東洋経済オンライン 土居 丈朗氏による「高をくくっていないか「巨大地震」への財政の備え 復旧・復興の国債増発のため平時にすべきこと」 「内閣府が2019年6月に「南海トラフ巨大地震の被害想定について(経済的な被害)」を公表している。これによると、南海トラフ地震が起きると、より被害が大きい陸側ケースで資産等の被害額は171.6兆円、波及して生じる生産の低下や交通の寸断などによる経済活動への影響額は合わせて42.1兆円にのぼるという。 政府が推計した資本ストック被害額は、1995年の阪神・淡路大震災では10兆円弱、2011年の東日本大震災では約17兆円だったから、南海トラフ地震は桁違いである」、確かに恐ろしい規模の被害だ。 「他方で、巨大災害発生後の復旧・復興によって、経済活動が活性化されてGDPが大きく増えて、増税しなくても税収が多く入って政府債務対GDP比が低下に転じるということはあっただろうか。 残念ながら、わが国では阪神・淡路大震災や東日本大震災の後でもそうしたエビデンスはない。 おまけに、わが国の政府支出の規模は、復旧・復興の事業が終われば不要となるから、その分だけ縮小するかと思いきや、さまざまな要因で巨大災害発生前の水準には戻らず、むしろさらに拡大することが常態化している。 今般のコロナ禍でも、コロナ対策が終わっても、防衛費やこども予算などで政府支出は膨張しており、縮小する様子はない。 こんな財政運営では、巨大災害が起きずとも、政府債務対GDP比は拡大の一途である」、由々しい野放図さだ。 「2024年3月に、日銀はマイナス金利政策だけでなく、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)もETF(上場投資信託)とJ-REIT(不動産投資信託)の新規買い入れもやめた。今や、国債の買い入れ額の減額についてペースを見計らっている。 今後は、これまでのように日銀頼みで国債の大量増発はできない」、その通りだ。 「緊急時でも、政府が臨時的に長期債を低利で大量増発できる、と高をくくってはいけない。国債金利も上がり始めており、災害対応で巨額の国債増発が必要になって、必要な金額を発行できたとしても、それには相当な利払い費を後に要することになる。 そう考えると、巨大災害発生後の復旧・復興のために必要とする国債増発を、市場を混乱させないような規模でできるような財政運営を平時から心がけることが重要となる・・・そのカギとなるのは、当該年度予算のための新発国債の抑制に他ならない。 巨大災害が仮に起きたとしても、復旧・復興のための 国債増発が支障なくできる程度に、平時から新発国債を抑制し、財政余力を確保しておかなければならない」、その通りだ。 ダイヤモンド・オンライン 木俣正剛氏による「「から騒ぎ」だった南海トラフ巨大地震、日本の地震予知に欠けている重要な視点とは」 「ロバート・ゲラー東大教授は「地震予知が科学的に不可能である」と主張していました。彼によると、(1)日本政府が使用している確率論的地震動予測地図は、実際の地震発生場所と一致しないことが多く、その信頼性に疑問がある、(2)地震の前兆を観測することは非常に難しく、短期的な地震予知は現実的ではない、ということです」、これまでの常識は抜本的に見直す必要がありそうだ。 「このMRI(正式名はMT=マントルトモグラフィー)の調査では、太平洋の底には地下1000キロまで温かいマントルが流れているものの、巨大プレートを形成するための強い関連性はないこと、またプレートは地下すべてを覆っているものではなく、厚さもなくて、巨大地震のエネルギーを生み出せるほどのパワーはないことが指摘されました。そしてプレートは常に一定方向に遠距離移動しており、実際には時計回りに回転していて、いずれ衝突し地震が起こるという「沈み込み理論」は適合しないということです。 確かにそう考えると、阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震など、最大震度7を記録している地震はすべてプレート境界面以外で起こっています。そして予知もできませんでした。また海外に目を転じても、大規模地震の震源とされる太平洋プレートから2500kmも離れた中国四川省で起きたM8の大地震の説明がつきません」、なるほど。 「プレートそのものには大きなエネルギーを放出する力はないということで、「プレートを追いかけても、地震予知はできない」というのが氏の仮説の結論です。 そして、地球には黒潮のようなマントルの流れが三つあり、そのうち二つが日本列島の下にあります。M7以上の地震の半分が日本で起こるのは、そのためだというのです・・・地球の深層で5回以上M5以上の深発地震が起こり、それが3回続くと、確実にそのマントル対流上で大地震が起こるそうです。 たとえば阪神淡路大震災のときは、5カ月前と2カ月前にフィジーとジャワで起きていました。東日本大震災のときは、約1カ月の間にフィジーとフィリピンで10回起きていました。熊本地震の場合も、小笠原とフィジーで5回起きています」、なるほど。 「過去の大地震と深層地震と火山の関係を調べると、過去に起きた86回に及ぶM7以上の大地震は、すべてこの例に当てはまると本書は伝えています・・・もともとは、政府側にいて地震予知連絡会が地震を予知できないことに不審感を持った藤氏が、自身の仮説を紹介するために出版したもので、近いうちに南海トラフ地震にポイントを絞った新刊も上梓されるそうです。 もちろん、日向灘では群発地震が続いています。 そして確率論ではありますが、昭和東南海地震から80年という注意喚起にも、それなりの説得力はあります。ですから読者諸氏には、引き続き警戒を緩めないでほしいと思います。日本は地震大国。そしてここで紹介した話も、今のところ仮説にすぎません。科学的にははっきりしたことはわかっていないのだから、自ら警戒して備えるしかないのです」、 「地震」に関しては、決定的な理論は確立していないとはいえ、科学的にははっきりしたことはわかっていないのだから、自ら警戒して備えるしかないのです」、その通りなのだろう。