株式・為替相場(その23)(ブラックマンデー超え暴落の原因 日米景気不安、企業経営への影響は 検証 ブラックマンデー超え大暴落(2)、ドル円レートの「正しい理論値」など存在しない だからこそ意図的に歪みを加えてはいけない) [金融]
株式・為替相場については、本年6月16日に取上げた。今日は、(その23)(ブラックマンデー超え暴落の原因 日米景気不安、企業経営への影響は 検証 ブラックマンデー超え大暴落(2)、ドル円レートの「正しい理論値」など存在しない だからこそ意図的に歪みを加えてはいけない)である。
先ずは、8月7日付け日経ビジネスオンライン「ブラックマンデー超え暴落の原因 日米景気不安、企業経営への影響は 検証 ブラックマンデー超え大暴落(2)」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00210/080600062/
・『この記事の3つのポイント 1.日本株が5日までに急落。世界の中でも落ち込み大きく 2.米経済の減速懸念浮上。為替は円安基調から転換 3.国内消費への影響は不透明。内需企業にもリスク 米国景気の減速懸念が強まったことなどをきっかけにパニックに陥った東京株式市場。6日は日経平均株価が5営業日ぶりに反発し、3217円(10%)高の3万4675円で取引を終えた。それでも終値ベースのピーク(7月11日の4万2224円)からの下落幅は7500円を超える。日本株の暴落はなぜ起きたのか、今後の株価や為替はどうなるのかなど、知っておきたい10の疑問をまとめた。 1:株暴落はなぜ起きた? 2:なぜ日本株だけ下げ幅が大きいのか? 3:株価はまだ下がるのか? 4:今後の金利はどう動く? 5:円高はどこまで進む? 6:日本企業の業績に与える影響は? 7:波乱含みの市場で評価される企業は? 8:国内消費の行方は? 9:投資初心者はどうしたらいいの? 10:今後注目のイベントは?』、興味深そうだ。
・『1:株暴落はなぜ起きた? 今回の日経平均株価の落ち込みが始まったのは日本銀行が追加利上げを発表した翌日の8月1日だ。一日の値動きで過去最大の下落幅を記録した5日までのトータルで7643円(19.5%)もの激しい落ち込みとなった。 (1)相場の上昇をけん引していた米ハイテク株への期待がしぼみ調整局面に入ったこと(2)日銀が追加利上げと量的引き締め(QT)を同時決定したことがサプライズだったこと(3)米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が米連邦公開市場委員会(FOMC)後に9月の利下げを強く示唆し、日米の金融政策の方向性の明確な違いが意識されたこと(4)米国の経済指標が予想を下回り景気減速懸念が浮上したこと――などが要因として挙げられる。 結果として、日銀の金融政策の正常化と米景気に対する不安から今までマーケットが想定していた持続成長の前提が揺らいだ。大和証券の坪井裕豪・日米株チーフストラテジストは「想定が急に見直しを迫られたことで、マーケットから資金が逃げ出すスピードが速くなってしまった」と見る』、「結果として、日銀の金融政策の正常化と米景気に対する不安から今までマーケットが想定していた持続成長の前提が揺らいだ」、なるほど。
・『株の下落要因が重なった日本 2:なぜ日本株だけ下げ幅が大きいのか? 株価の下落は世界各地の市場に波及したが、その中で日本株の落ち込みは特に大きい。これは下げ要因が重なったからだ。最たるものはQ.1で挙げた日銀の利上げと、それに付随した円高だ。三菱UFJアセットマネジメントの石金淳チーフファンドマネジャーは「日本経済の状態から見て日銀は利上げを必ずしも急ぐ必要はなかったが、円安を阻止するために利上げをしたのではないか。それに伴う円高のスピードが問題だ」と指摘する。 日銀短観(6月調査)の結果における、輸出企業の2024年度の想定為替レートは1ドル=142円68銭。日経平均が最高値を更新した時の実勢レートは1ドル=158円前後と、想定レートより15円程度円安で推移していたが、1ドル=145円前後まで円高に振れ、想定レートに近づいた。 想定レートよりも実際のレートが円安で推移すると、輸出企業は収益が膨らむ。1ドル=140円という想定の下で1000億円の年間利益を予想している企業があったとしよう。もし実際の為替レートが1ドル=150円で推移すると、その企業は1000億円を上回る利益を計上すると投資家は期待する。 今回はその逆の動きで、実勢レートが想定レートに近づいてしまったため、業績の上振れ期待がしぼんでしまった。また「日銀の政策変更後の株安を受けて、日本の景気が金利上昇に耐えられないとの不安が広がり、金融株などの景気敏感株の売りが出ている」(大和証券の坪井氏)との指摘もある。 ■連載「検証 ブラックマンデー超え大暴落」記事一覧 ・日経平均3217円高、急反発に潜む不安 消える円安期待、日産の憂鬱 ・ブラックマンデー超え暴落の原因 日米景気不安、企業経営への影響は(今回)』、「実勢レートが想定レートに近づいてしまったため、業績の上振れ期待がしぼんでしまった。また「日銀の政策変更後の株安を受けて、日本の景気が金利上昇に耐えられないとの不安が広がり、金融株などの景気敏感株の売りが出ている」、なるほど。
3:株価はまだ下がるのか? 三菱UFJアセットの石金氏は年内の日経平均株価の変動範囲を3万~3万7000円程度と予想。「短期的な底は打った。米景気は減速するが、大崩れしないだろう。インフレ率や金利の低下が株価の上昇を支える材料となる。半面(50%を下回ると景気後退の可能性が指摘される)米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況指数が連続して45%を割ることがあれば株価の下げ要因となりうる」と話す。 大和証券の坪井氏は年内の日経平均株価のレンジを2万9000~4万円と見る。今後の日本株の行方を占うポイントとして注目しているのが、世界各国の中央銀行トップらが米ワイオミング州に集まる8月下旬の国際経済シンポジウム(通称・ジャクソンホール会議)だ』、「ジャクソンホール会議」は確かに注目点だ。
・『インバウンド依存の内需企業に逆風も 4:今後の金利はどう動く? 7月30~31日の日銀会合を経て一時1.07%まで上昇した国内長期金利は、5日には4カ月ぶりの低水準となる0.750%まで下がった。米国の弱い雇用統計を受けて米国金利も23年12月以来の水準まで急低下しており、日米の金利差が縮小した。これが円安基調を反転させた。 ふくおかフィナンシャルグループの佐々木融チーフ・ストラテジストは「日本の株価が落ち着きを取り戻し、インフレ率が上がってくれば利上げ観測がまた出てくるため、長期金利は緩やかに上昇するだろう」と見る。 一方、米国金利については「直近の低下は利下げ期待を織り込みすぎている」と話す。「年内100ベーシス(1%)以上の利下げを織り込んでおり、低下しすぎている。これが元の水準に戻る可能性もある」と予想する。 5:円高はどこまで進む? 5日の東京外国為替市場で円相場は一時1ドル=141円台まで値上がりしたが、6日には1ドル=145円程度まで反落した。 りそなホールディングス(HD)市場企画部の井口慶一シニアストラテジストは「23年から続いていたドル高・円安の動きはいったん終了したと見られる」と話す。その上で「今後は中長期的にドル安・円高の動きに進んでいく可能性がある。年末に向けて1ドル=140円辺りに向かっていくと考えられる」とした。 6:日本企業の業績に与える影響は? 前述のように円高は輸出企業の収益にはマイナス要因となる。ただし1ドル=140円程度の水準であれば企業の想定為替レートとの乖離(かいり)は小さく、販売拡大やコスト削減などの企業努力でマイナス影響を吸収する余地はあると考えられる。りそなHDの井口氏は「輸出企業の決算の状況はそこまで悪くない状況で推移している。過度に悲観的にならなくてもいい」と話す。 一方、輸入企業にとって円高はコストダウン要因となる。以前なら1ドルのものを仕入れるのに150円以上かかっていたのが、145円あるいは140円で済むようになるからだ。 一般に内需系の企業は為替変動に強いとされる。ただし、円高は“安いニッポン”に押し寄せていたインバウンド(訪日外国人)にはマイナスだ。インバウンドの財布のひもが固くなれば、これまで外国人を相手に潤ってきた企業は影響を受けることになる。その意味では内需企業といえども為替変動と無縁ではいられない。 7:波乱含みの市場で評価される企業は? 松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストは「半導体銘柄などを中心に大幅に(株価が)下がる中、家具販売大手のニトリホールディングス(HD)やイオンはほとんど株価を下げていない」と指摘する。実際、ニトリHDの株価は市場が売り一色となった5日もほとんど下がらず、6日には7月末を上回る水準まで上げた。 三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジストは、景気状況に左右されにくい業種として「電気、ガス、鉄道、食品などの分野」を挙げる』、「景気状況に左右されにくい業種として「電気、ガス、鉄道、食品などの分野」を挙げる」、その通りだ。
・『積み立て投資の経験則「売らずに続ける」 8:国内消費の行方は? 円高は物価上昇を抑えることで個人消費の拡大要因となる。一方、株安は個人が保有する資産の価値を下げて個人消費を抑える効果がある。株安が実体経済に影響を与えるまではタイムラグがあるので、現時点では国内消費が大きく落ち込むとは見られていない。 第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミストの熊野英生氏は「現段階ではデフレ圧力があるくらいで、不況の入り口とまでは言えない」と話す。ただし「株価の低迷が年末まで続けば、業績が悪化した企業が賃上げに弱気になり、春闘交渉に影響して本格的な景気悪化が始まる可能性がある」と指摘する。 9:投資初心者はどうしたらいいの? 今回の株暴落によって一部では投資を始めたばかりの個人によるパニック売りが発生したとも言われたが、5日に買い増しした人もいる。積み立て投資においては「売らずに続ける」ことが重要とされる。ニッセイ基礎研究所金融研究部の前山裕亮主任研究員は「値下がりした今はむしろ買い増しのチャンス」と話す。 NISA(少額投資非課税制度)制度を使い、日経平均株価に連動するインデックスファンドに積み立て投資を行った場合で運用の成果を検証した以下のようなデータがある。積み立ての期間が長い人ほど含み益は大きい。24年年初に始めた人は8月2日時点で既に損失が出ている状況だった。5日にはより多くの損失が出たと考えられる。 6日にあった楽天証券の決算発表では楠雄治社長が投資家に冷静な対応を求めた。「過去12年間で10%を超えるドローダウン(高値から安値までの下落)は10回以上あった。相場の急変は時々起こる。積み立て投資を行っている人はそのまま続けてほしい」と語った。 10:今後注目のイベントは? 先に紹介したジャクソンホール会議は8月下旬に迫っている。FRBのパウエル議長が利下げについてどこまで具体的に言及するかが注目を集めることになりそうだ。今のところ9月にはFRBが実際に政策金利を引き下げる可能性が高いと見られており、それを前提に金利や為替レートは動いている。 その先の11月には米大統領選が控える。現職のバイデン大統領の後継者として選挙に臨む民主党のハリス副大統領と、ホワイトハウスへの返り咲きを狙う共和党のトランプ前大統領の激戦となりそうだ。次期大統領が進める経済政策は米国の景気指標や株価だけでなく、日本を含む各国・地域の経済や企業業績にも影響を及ぼす』、「ジャクソンホール会議」では、米FRB議長は、物価目標達成に自信を示し、9月利下げ「時が来た」とした。「バイデン大統領の後継者である民主党のハリス副大統領の人気が「トランプ氏」を上回っていることもあり、「トランプ氏」の「返り咲き」の可能性は薄らぎつつあるようだ。
第三に、8月24日付け東洋経済オンラインが掲載した慶応義塾大学大学院教授の小幡 績氏による「ドル円レートの「正しい理論値」など存在しない だからこそ意図的に歪みを加えてはいけない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/812705
・『為替レートについての騒ぎがまだ続いている。だが、ひとことで言えば、いかなる真面目な議論も、為替に関しては無駄である。 為替は何を根拠にして決まるのか? なぜなら、為替レートの理論値というものがまったく存在しないからだ。だから、為替は、理論とも、ファンダメンタルズとも、あらゆる合理性から無縁のところで決まる。だから、為替を「正しい」水準に戻そうとする真摯な努力はすべて徒労に終わる。諦めたほうがいい。 合理性で決まらないなら、為替は何で決まるのか。それは、投機家の意向と行動である。 それは、株でも一緒ではないか? 行動ファイナンスでは、すべての金融リスク資産の価格は投資家行動で決まるのだから、為替に限ったことではないのではないか? そうだ。しかし、為替がもっとも極端なのだ。 じゃあ、今が1ドル=145円前後で、2023年1月が130円前後だったのを説明する要素はまったく何もないのか?行動ファイナンスのいう、投機家の意向と行動で決まるということなのか? それも違う。行動ファイナンスですら役に立たない。投機家の期待、1ドル=145円という期待の自己実現という、何でも説明できてしまう自己実現の論理ですら成り立たないのだ』、「行動ファイナンスですら役に立たない。投機家の期待、1ドル=145円という期待の自己実現という、何でも説明できてしまう自己実現の論理ですら成り立たないのだ」、なるほど。
・『「購買力平価理論」は「物価の絶対水準」の話 結論を言っておこう。今、1ドルが145円なのは、1949年4月23日にGHQが1ドル=360円と決めたからなのだ。 なぜそう言えるのか。説明しよう。 その前に、まず、経済学における為替の理論をおおざっぱに概観しておこう。まずは古典的な、購買力平価である。 これは「世界中で一物一価が成り立つような水準に為替レートが決まる」という考え方で、要はビックマックレートとかスターバックスラテレートなどと同じ考え方である。 日本でだけあるブランドもののバックが安いと、世界中から日本にそれを買いに来る観光客が溢れたり、バイヤーが転売したりするので、そのモノの価格が世界中で一物一価に収斂していくが、それをマクロ経済全体で行うのは、為替レートが動くほうが早いので、為替が調整される、という考え方である。 逆に言えば、世界中で一物一価が成り立っているときに、為替がずれてしまうと、大混乱が生じるから、為替がぶれたときに、瞬時にもとに戻るほうが早いから、為替レートが調整するということである。 株価も理論値は、厳密には存在しない。PER(株価収益率)は10倍でも20倍でもいいから、企業の収益見通しにコンセンサスが成り立っても、日経平均株価の予想は、PERの想定によって2万円にも4万円にもなりうる。 それでも、株価については理屈で議論ができ、前提を置けば、水準について何らかの論理的な予想、議論、説明ができる。 しかし、為替はそれがまったくできない。論理がほぼゼロなのだ。「そんなことはないだろう」と反論が来そうだ。例えば「東洋経済オンライン」などで、みずほ銀行のチーフマーケット・エコノミストである唐鎌大輔氏がいつも綿密かつ明快な論理で円安を説明してきたじゃないか?などと思うだろう。 それはそうだが、そうではない。結論から言えば、唐鎌理論は、円高にはなりにくいことの論理的な説明を与えてくれるが、しかし、円高の限界が1ドル=120円なのか140円なのかについては、ほぼ何も言えない。「昔ほどには円高にはならない」、ということが限界だ。) 実体経済における貿易収支を通じた調整も働く。為替レート(例えば円)が安くなって、国内物価が安くなった国からは、その安くなった製品が輸出され、外貨(例えばドル)を稼ぐ。その稼いだ外貨を自国通貨(例えば円)に戻すから、ドル売り円買いが起きて、ドル安円高になる。マクロ経済均衡に戻る、つまり、為替レートのずれが元に戻るようになる。 この購買力平価理論は物価の絶対水準の話なので、絶対的購買力平価理論であり、相対的購買力平価理論もある。それは、物価の変化率、つまりインフレ率の各国間の変動の違いを為替レートが調整する、という理論で、つまり、インフレ率が高くなった国の通貨の為替レートは安くなって、国際的な物価水準の変動が調整される、ということになる』、「株価については理屈で議論ができ、前提を置けば、水準について何らかの論理的な予想、議論、説明ができる。 しかし、為替はそれがまったくできない。論理がほぼゼロなのだ。「そんなことはないだろう」と反論が来そうだ。例えば「東洋経済オンライン」などで、みずほ銀行のチーフマーケット・エコノミストである唐鎌大輔氏がいつも綿密かつ明快な論理で円安を説明してきたじゃないか?などと思うだろう。 それはそうだが、そうではない。結論から言えば、唐鎌理論は、円高にはなりにくいことの論理的な説明を与えてくれるが、しかし、円高の限界が1ドル=120円なのか140円なのかについては、ほぼ何も言えない・・・購買力平価理論は物価の絶対水準の話なので、絶対的購買力平価理論であり、相対的購買力平価理論もある。それは、物価の変化率、つまりインフレ率の各国間の変動の違いを為替レートが調整する、という理論で、つまり、インフレ率が高くなった国の通貨の為替レートは安くなって、国際的な物価水準の変動が調整される、ということになる」、なるほど。
・『もう1つの理論である「金利平価理論」とは? もう1つの為替均衡理論は、金利平価理論で、資本市場において、裁定取引が働いて、為替レートが均衡するという理論である。つまり、外国(米国)の金利が高く、自国(日本)の金利が低い場合、アメリカのドルで運用したほうが得になってしまうから、均衡では、ドルが今後安くなることが予想されていることになる。 つまり、金利差が年率5%あれば、1年後のドルは今より5%安くなるはずだ、と投資家たちは思っているということだ。それなら、ドルで運用して円で運用するよりも5%ドルの名目値が増えても、ドルが円に比べて5%安くなるから、ドルでも円でもどちらで運用しても同じリターンが得られる、ということだ。そう期待されているから、実際にも、ドルは1年後には5%安くなっている、ということになる。 これはドル円の金利差が円安をもたらしている、ということと逆になっているように見えるが、必ずしもそうではない。予想外にアメリカの金利が上がったとしよう。予想外に金利差が広がったということであるが、この場合は、サプライズに対して瞬間的に急激に円安が進み、その後、金利差を埋め合わせるように、円高が進むことになる。 そうでないと、永遠にドル買いが進んでしまい、誰も円を持たなくなってしまう。だから、均衡に向かうとすると、いったん円安に急激にオーバーシュートして、そこから円高が進むことになる(ただし、実際には投機家たちが合理的に期待(将来への予想)をするかどうかなどにかかっているので、理論的にもさまざまなケース、シナリオが考えられる)。) ここでは為替理論を幅広く網羅することが目的ではないので、基本的なポイントを整理しよう』、「もう1つの為替均衡理論は、金利平価理論で、資本市場において、裁定取引が働いて、為替レートが均衡するという理論である。つまり、外国(米国)の金利が高く、自国(日本)の金利が低い場合、アメリカのドルで運用したほうが得になってしまうから、均衡では、ドルが今後安くなることが予想されていることになる・・・予想外にアメリカの金利が上がったとしよう。予想外に金利差が広がったということであるが、この場合は、サプライズに対して瞬間的に急激に円安が進み、その後、金利差を埋め合わせるように、円高が進むことになる。 そうでないと、永遠にドル買いが進んでしまい、誰も円を持たなくなってしまう。だから、均衡に向かうとすると、いったん円安に急激にオーバーシュートして、そこから円高が進むことになる」、なるほど。
・『為替の基本的な「3つのポイント」とは何か 第1に、理論は均衡理論であり、為替市場は常に均衡へ向かうことが仮定され、その均衡へ向かうメカニズムも機能することが前提となっている。しかし、現実の世界では、均衡はまったく成り立っていないし、かつ均衡へ向かうメカニズムも機能していない。したがって、現実の為替市場は理論と大きく異なる。 第2に、実体経済と金融資本市場とが分離している。実体経済における購買力平価と金融資本市場の金利平価の理論値が異なった場合、どうなるのか? 一般には短期的には金融市場、長期的には実体経済ということだが、絶対的購買力平価が長期的にも成り立ったことは過去にもほとんどない。実体経済と金融市場の分裂が、ここでも生じるのである。 第3に、均衡へ向かうメカニズムが、投機家や経済主体の期待に基づくものと為替への需要と供給によるものと2つ存在することが示唆されている。 前出の説明では、暗に合理的期待形成がなされる前提に実はなっているのだが、実際には、それは成り立たないことははっきりしている。また、為替は結局需給で決まるというのは、唐鎌理論もそうなのであるが、実は、金融市場では本来理論的には成り立たないはずの議論なのである。 なぜなら、需給で為替レートが本来の水準からのズレが生じれば、そのズレを利用して儲けようとする裁定取引が投機家によって行われ、すぐに為替は元の水準に戻ることになる。) となると、結局、実際、為替はどのように決まっているのか? 前出の議論を踏まえると、理論的には論理的とは言えないが、結局現実には需給で決まっている、という説だけが生き残りそうである。そうだとすると、なぜ、論理的には生じるはずの裁定取引が行われないのか? それは「正しい」水準が存在しないので、戻っていくべき為替レートというものが存在しないからである。ファンダメンタルズがないから、戻るべき理論値もないし、アンカー(錨)となる拠り所もないのである。 唯一の拠り所は、昨日までの為替水準であるが、昨日の為替水準にも正しい理論値はもちろん存在していなかったから、昨日までの水準から今日ズレたからと言って明日戻っていくはずがない。 つまり、為替水準は、常に365日、正しくないところにあるのであって、なぜその水準かというと、たまたまそこに為替水準があった、ということだけなのだ。既成事実として存在していた、という以外のことは何もないのである。 では、なぜ為替はそこから「ズレ」たのか?いや、そこから動いたのか? ここに需給が登場する。誰かが売ったから下がったのであり、誰かが買ったから上がったのである』、「為替の基本的な「3つのポイント」:①理論は均衡理論であり、為替市場は常に均衡へ向かうことが仮定され、その均衡へ向かうメカニズムも機能することが前提となっている。しかし、現実の世界では、均衡はまったく成り立っていないし、かつ均衡へ向かうメカニズムも機能していない。したがって、現実の為替市場は理論と大きく異なる・・・②実体経済における購買力平価と金融資本市場の金利平価の理論値が異なった場合、どうなるのか? 一般には短期的には金融市場、長期的には実体経済ということだが、絶対的購買力平価が長期的にも成り立ったことは過去にもほとんどない。実体経済と金融市場の分裂が、ここでも生じるのである・・・③結局現実には需給で決まっている、という説だけが生き残りそうである。そうだとすると、なぜ、論理的には生じるはずの裁定取引が行われないのか? それは「正しい」水準が存在しないので、戻っていくべき為替レートというものが存在しないからである。ファンダメンタルズがないから、戻るべき理論値もないし、アンカー(錨)となる拠り所もないのである。 唯一の拠り所は、昨日までの為替水準であるが、昨日の為替水準にも正しい理論値はもちろん存在していなかったから、昨日までの水準から今日ズレたからと言って明日戻っていくはずがない。 つまり、為替水準は、常に365日、正しくないところにあるのであって、なぜその水準かというと、たまたまそこに為替水準があった、ということだけなのだ」、なるほど。
・為替に需給が生じた「3つの原因」とは? では、この需給が生じた原因は何なのか?それは、第1に、論理が出てくる場合と、出てこない場合がある。第2に、実体経済からの生じた需要と供給の場合と、金融資本市場からの売りと買いの場合がある。第3に、金融市場から需給に関しては、運用ニーズというある種の実需の場合と、投機的需要の場合とがある。 そして、この3つの軸からの、さまざまな違う需要と供給が入り混じるために、為替レートは1つの論理では説明できない動きをすることになるのである。 論理が出てくる場合とはどんな場合か。例えば、日本の貿易赤字が増加して、輸入のためにドルが必要だから、ドル買い円売りが出る、というのは1つの論理である。これは実体経済の貿易によるものだ。次に、金融市場では、アメリカの金利が上がったから、ドルでの運用ニーズが高まり、ドル買い円売りが生じた、という論理がありうる。) 「なんだ、論理があるじゃないか!」と思われるかもしれないが、これは為替水準の論理ではなく、為替の変化の方向の論理なのである。貿易赤字が増えれば円安方向、アメリカの金利が上がるのも円安方向、という論理はある。しかし、では、今の1ドル=145円が150円になるのか155円になるのか、ということに関しては、何も言えない。さらに、145円と155円とどちらが長期的に正しいのか、ということはそれ以上に一切何も言えない。 その結果、為替はオーバーシュート(行きすぎること)も起こりやすくなるし、かつ一度同じ方向に動き出すとそのモメンタム(一方向への流れ)が止まらず、オーバーシュートの乱高下をしながら、かなりの期間、同じ方向に動き続ける。 いったん円安の流れになったらしばらく止まらないし、転換点が来たら、今度は円高方向しかありえない。しかし、皆がそう思っているから、一気に円高が進んでも、進みすぎかどうかは判断できないから、その流れに乗るが、しかし、強い投機家は、オーバーシュートを意図的に作りながら儲けることができる。 このように、強い投機家によって、為替相場は短期的には作られることが多いが、長期的な動きは、一部の投機家の意図では支配しきれない。大きな投機家集団、世の中全体の「群衆的な」動きによって決まってくる。それは誰にも予想はできないし、支配もできない。しかし、その流れで決まってくるのが現実だ。 その結果が、今の1ドル=145円前後なのである。今145円で125円でないのは、あるポイントからオーバーシュートとモメンタムを繰り返した結果なのである。 そして、そのあるポイントとは、1ドル=360円と1949年に決められたポイントなのである。そして、それが1971年末まで続けられたからであり、1973年まで1ドル=308円にしたからであり、1973年に308円スタートで変動相場制に移行したからである。 円安すぎる水準に長く固定されすぎていたから、その後は、一貫した円高モメンタムが続いたのであり、その流れがあったから、過度な円高というオーバーシュートが何度も繰り返されたのである。 そして、そのオーバーシュートが行きすぎたことから、円安の流れにどこかで転換せざるをえなかったのであるが、異次元緩和がきっかけとなって、今度は円安オーバーシュートが起きてしまったのである。したがって、すべては、1ドル=360円と決めたから、その後の水準の推移があったのであり、ゲームの始まりにおいて、たまたま決められた水準が今の水準に影響を残し続けているのである。 したがって、為替は本質的に、変動を続け、経済に歪みを与え続けるのであり、そういうものであるからこそ、異次元緩和のような、為替に意図的に強力な歪みをもたらすことは、もっともやってはいけないことであり、経済をもっとも大きく歪ませることになるのである。 ただ、異次元緩和を行ってしまった事実は動かせないし、今1ドル=160円まで行ってしまってから、今145円前後になっているということも動かせないので、この罪を償うことはほぼ不可能に近いのであり、その不可能を現在の日銀に世間が要求したために、為替市場が荒れることになったのである(本編はここで終了です。この後は筆者が週末のレースなどを予想するコーナーです。あらかじめご了承下さい)』、「強い投機家によって、為替相場は短期的には作られることが多いが、長期的な動きは、一部の投機家の意図では支配しきれない。大きな投機家集団、世の中全体の「群衆的な」動きによって決まってくる。それは誰にも予想はできないし、支配もできない。しかし、その流れで決まってくるのが現実だ・・・異次元緩和のような、為替に意図的に強力な歪みをもたらすことは、もっともやってはいけないことであり、経済をもっとも大きく歪ませることになるのである。 ただ、異次元緩和を行ってしまった事実は動かせないし、今1ドル=160円まで行ってしまってから、今145円前後になっているということも動かせないので、この罪を償うことはほぼ不可能に近いのであり、その不可能を現在の日銀に世間が要求したために、為替市場が荒れることになったのである」、難しい為替市場を分析した貴重な論文である。
先ずは、8月7日付け日経ビジネスオンライン「ブラックマンデー超え暴落の原因 日米景気不安、企業経営への影響は 検証 ブラックマンデー超え大暴落(2)」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00210/080600062/
・『この記事の3つのポイント 1.日本株が5日までに急落。世界の中でも落ち込み大きく 2.米経済の減速懸念浮上。為替は円安基調から転換 3.国内消費への影響は不透明。内需企業にもリスク 米国景気の減速懸念が強まったことなどをきっかけにパニックに陥った東京株式市場。6日は日経平均株価が5営業日ぶりに反発し、3217円(10%)高の3万4675円で取引を終えた。それでも終値ベースのピーク(7月11日の4万2224円)からの下落幅は7500円を超える。日本株の暴落はなぜ起きたのか、今後の株価や為替はどうなるのかなど、知っておきたい10の疑問をまとめた。 1:株暴落はなぜ起きた? 2:なぜ日本株だけ下げ幅が大きいのか? 3:株価はまだ下がるのか? 4:今後の金利はどう動く? 5:円高はどこまで進む? 6:日本企業の業績に与える影響は? 7:波乱含みの市場で評価される企業は? 8:国内消費の行方は? 9:投資初心者はどうしたらいいの? 10:今後注目のイベントは?』、興味深そうだ。
・『1:株暴落はなぜ起きた? 今回の日経平均株価の落ち込みが始まったのは日本銀行が追加利上げを発表した翌日の8月1日だ。一日の値動きで過去最大の下落幅を記録した5日までのトータルで7643円(19.5%)もの激しい落ち込みとなった。 (1)相場の上昇をけん引していた米ハイテク株への期待がしぼみ調整局面に入ったこと(2)日銀が追加利上げと量的引き締め(QT)を同時決定したことがサプライズだったこと(3)米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が米連邦公開市場委員会(FOMC)後に9月の利下げを強く示唆し、日米の金融政策の方向性の明確な違いが意識されたこと(4)米国の経済指標が予想を下回り景気減速懸念が浮上したこと――などが要因として挙げられる。 結果として、日銀の金融政策の正常化と米景気に対する不安から今までマーケットが想定していた持続成長の前提が揺らいだ。大和証券の坪井裕豪・日米株チーフストラテジストは「想定が急に見直しを迫られたことで、マーケットから資金が逃げ出すスピードが速くなってしまった」と見る』、「結果として、日銀の金融政策の正常化と米景気に対する不安から今までマーケットが想定していた持続成長の前提が揺らいだ」、なるほど。
・『株の下落要因が重なった日本 2:なぜ日本株だけ下げ幅が大きいのか? 株価の下落は世界各地の市場に波及したが、その中で日本株の落ち込みは特に大きい。これは下げ要因が重なったからだ。最たるものはQ.1で挙げた日銀の利上げと、それに付随した円高だ。三菱UFJアセットマネジメントの石金淳チーフファンドマネジャーは「日本経済の状態から見て日銀は利上げを必ずしも急ぐ必要はなかったが、円安を阻止するために利上げをしたのではないか。それに伴う円高のスピードが問題だ」と指摘する。 日銀短観(6月調査)の結果における、輸出企業の2024年度の想定為替レートは1ドル=142円68銭。日経平均が最高値を更新した時の実勢レートは1ドル=158円前後と、想定レートより15円程度円安で推移していたが、1ドル=145円前後まで円高に振れ、想定レートに近づいた。 想定レートよりも実際のレートが円安で推移すると、輸出企業は収益が膨らむ。1ドル=140円という想定の下で1000億円の年間利益を予想している企業があったとしよう。もし実際の為替レートが1ドル=150円で推移すると、その企業は1000億円を上回る利益を計上すると投資家は期待する。 今回はその逆の動きで、実勢レートが想定レートに近づいてしまったため、業績の上振れ期待がしぼんでしまった。また「日銀の政策変更後の株安を受けて、日本の景気が金利上昇に耐えられないとの不安が広がり、金融株などの景気敏感株の売りが出ている」(大和証券の坪井氏)との指摘もある。 ■連載「検証 ブラックマンデー超え大暴落」記事一覧 ・日経平均3217円高、急反発に潜む不安 消える円安期待、日産の憂鬱 ・ブラックマンデー超え暴落の原因 日米景気不安、企業経営への影響は(今回)』、「実勢レートが想定レートに近づいてしまったため、業績の上振れ期待がしぼんでしまった。また「日銀の政策変更後の株安を受けて、日本の景気が金利上昇に耐えられないとの不安が広がり、金融株などの景気敏感株の売りが出ている」、なるほど。
3:株価はまだ下がるのか? 三菱UFJアセットの石金氏は年内の日経平均株価の変動範囲を3万~3万7000円程度と予想。「短期的な底は打った。米景気は減速するが、大崩れしないだろう。インフレ率や金利の低下が株価の上昇を支える材料となる。半面(50%を下回ると景気後退の可能性が指摘される)米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況指数が連続して45%を割ることがあれば株価の下げ要因となりうる」と話す。 大和証券の坪井氏は年内の日経平均株価のレンジを2万9000~4万円と見る。今後の日本株の行方を占うポイントとして注目しているのが、世界各国の中央銀行トップらが米ワイオミング州に集まる8月下旬の国際経済シンポジウム(通称・ジャクソンホール会議)だ』、「ジャクソンホール会議」は確かに注目点だ。
・『インバウンド依存の内需企業に逆風も 4:今後の金利はどう動く? 7月30~31日の日銀会合を経て一時1.07%まで上昇した国内長期金利は、5日には4カ月ぶりの低水準となる0.750%まで下がった。米国の弱い雇用統計を受けて米国金利も23年12月以来の水準まで急低下しており、日米の金利差が縮小した。これが円安基調を反転させた。 ふくおかフィナンシャルグループの佐々木融チーフ・ストラテジストは「日本の株価が落ち着きを取り戻し、インフレ率が上がってくれば利上げ観測がまた出てくるため、長期金利は緩やかに上昇するだろう」と見る。 一方、米国金利については「直近の低下は利下げ期待を織り込みすぎている」と話す。「年内100ベーシス(1%)以上の利下げを織り込んでおり、低下しすぎている。これが元の水準に戻る可能性もある」と予想する。 5:円高はどこまで進む? 5日の東京外国為替市場で円相場は一時1ドル=141円台まで値上がりしたが、6日には1ドル=145円程度まで反落した。 りそなホールディングス(HD)市場企画部の井口慶一シニアストラテジストは「23年から続いていたドル高・円安の動きはいったん終了したと見られる」と話す。その上で「今後は中長期的にドル安・円高の動きに進んでいく可能性がある。年末に向けて1ドル=140円辺りに向かっていくと考えられる」とした。 6:日本企業の業績に与える影響は? 前述のように円高は輸出企業の収益にはマイナス要因となる。ただし1ドル=140円程度の水準であれば企業の想定為替レートとの乖離(かいり)は小さく、販売拡大やコスト削減などの企業努力でマイナス影響を吸収する余地はあると考えられる。りそなHDの井口氏は「輸出企業の決算の状況はそこまで悪くない状況で推移している。過度に悲観的にならなくてもいい」と話す。 一方、輸入企業にとって円高はコストダウン要因となる。以前なら1ドルのものを仕入れるのに150円以上かかっていたのが、145円あるいは140円で済むようになるからだ。 一般に内需系の企業は為替変動に強いとされる。ただし、円高は“安いニッポン”に押し寄せていたインバウンド(訪日外国人)にはマイナスだ。インバウンドの財布のひもが固くなれば、これまで外国人を相手に潤ってきた企業は影響を受けることになる。その意味では内需企業といえども為替変動と無縁ではいられない。 7:波乱含みの市場で評価される企業は? 松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストは「半導体銘柄などを中心に大幅に(株価が)下がる中、家具販売大手のニトリホールディングス(HD)やイオンはほとんど株価を下げていない」と指摘する。実際、ニトリHDの株価は市場が売り一色となった5日もほとんど下がらず、6日には7月末を上回る水準まで上げた。 三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジストは、景気状況に左右されにくい業種として「電気、ガス、鉄道、食品などの分野」を挙げる』、「景気状況に左右されにくい業種として「電気、ガス、鉄道、食品などの分野」を挙げる」、その通りだ。
・『積み立て投資の経験則「売らずに続ける」 8:国内消費の行方は? 円高は物価上昇を抑えることで個人消費の拡大要因となる。一方、株安は個人が保有する資産の価値を下げて個人消費を抑える効果がある。株安が実体経済に影響を与えるまではタイムラグがあるので、現時点では国内消費が大きく落ち込むとは見られていない。 第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミストの熊野英生氏は「現段階ではデフレ圧力があるくらいで、不況の入り口とまでは言えない」と話す。ただし「株価の低迷が年末まで続けば、業績が悪化した企業が賃上げに弱気になり、春闘交渉に影響して本格的な景気悪化が始まる可能性がある」と指摘する。 9:投資初心者はどうしたらいいの? 今回の株暴落によって一部では投資を始めたばかりの個人によるパニック売りが発生したとも言われたが、5日に買い増しした人もいる。積み立て投資においては「売らずに続ける」ことが重要とされる。ニッセイ基礎研究所金融研究部の前山裕亮主任研究員は「値下がりした今はむしろ買い増しのチャンス」と話す。 NISA(少額投資非課税制度)制度を使い、日経平均株価に連動するインデックスファンドに積み立て投資を行った場合で運用の成果を検証した以下のようなデータがある。積み立ての期間が長い人ほど含み益は大きい。24年年初に始めた人は8月2日時点で既に損失が出ている状況だった。5日にはより多くの損失が出たと考えられる。 6日にあった楽天証券の決算発表では楠雄治社長が投資家に冷静な対応を求めた。「過去12年間で10%を超えるドローダウン(高値から安値までの下落)は10回以上あった。相場の急変は時々起こる。積み立て投資を行っている人はそのまま続けてほしい」と語った。 10:今後注目のイベントは? 先に紹介したジャクソンホール会議は8月下旬に迫っている。FRBのパウエル議長が利下げについてどこまで具体的に言及するかが注目を集めることになりそうだ。今のところ9月にはFRBが実際に政策金利を引き下げる可能性が高いと見られており、それを前提に金利や為替レートは動いている。 その先の11月には米大統領選が控える。現職のバイデン大統領の後継者として選挙に臨む民主党のハリス副大統領と、ホワイトハウスへの返り咲きを狙う共和党のトランプ前大統領の激戦となりそうだ。次期大統領が進める経済政策は米国の景気指標や株価だけでなく、日本を含む各国・地域の経済や企業業績にも影響を及ぼす』、「ジャクソンホール会議」では、米FRB議長は、物価目標達成に自信を示し、9月利下げ「時が来た」とした。「バイデン大統領の後継者である民主党のハリス副大統領の人気が「トランプ氏」を上回っていることもあり、「トランプ氏」の「返り咲き」の可能性は薄らぎつつあるようだ。
第三に、8月24日付け東洋経済オンラインが掲載した慶応義塾大学大学院教授の小幡 績氏による「ドル円レートの「正しい理論値」など存在しない だからこそ意図的に歪みを加えてはいけない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/812705
・『為替レートについての騒ぎがまだ続いている。だが、ひとことで言えば、いかなる真面目な議論も、為替に関しては無駄である。 為替は何を根拠にして決まるのか? なぜなら、為替レートの理論値というものがまったく存在しないからだ。だから、為替は、理論とも、ファンダメンタルズとも、あらゆる合理性から無縁のところで決まる。だから、為替を「正しい」水準に戻そうとする真摯な努力はすべて徒労に終わる。諦めたほうがいい。 合理性で決まらないなら、為替は何で決まるのか。それは、投機家の意向と行動である。 それは、株でも一緒ではないか? 行動ファイナンスでは、すべての金融リスク資産の価格は投資家行動で決まるのだから、為替に限ったことではないのではないか? そうだ。しかし、為替がもっとも極端なのだ。 じゃあ、今が1ドル=145円前後で、2023年1月が130円前後だったのを説明する要素はまったく何もないのか?行動ファイナンスのいう、投機家の意向と行動で決まるということなのか? それも違う。行動ファイナンスですら役に立たない。投機家の期待、1ドル=145円という期待の自己実現という、何でも説明できてしまう自己実現の論理ですら成り立たないのだ』、「行動ファイナンスですら役に立たない。投機家の期待、1ドル=145円という期待の自己実現という、何でも説明できてしまう自己実現の論理ですら成り立たないのだ」、なるほど。
・『「購買力平価理論」は「物価の絶対水準」の話 結論を言っておこう。今、1ドルが145円なのは、1949年4月23日にGHQが1ドル=360円と決めたからなのだ。 なぜそう言えるのか。説明しよう。 その前に、まず、経済学における為替の理論をおおざっぱに概観しておこう。まずは古典的な、購買力平価である。 これは「世界中で一物一価が成り立つような水準に為替レートが決まる」という考え方で、要はビックマックレートとかスターバックスラテレートなどと同じ考え方である。 日本でだけあるブランドもののバックが安いと、世界中から日本にそれを買いに来る観光客が溢れたり、バイヤーが転売したりするので、そのモノの価格が世界中で一物一価に収斂していくが、それをマクロ経済全体で行うのは、為替レートが動くほうが早いので、為替が調整される、という考え方である。 逆に言えば、世界中で一物一価が成り立っているときに、為替がずれてしまうと、大混乱が生じるから、為替がぶれたときに、瞬時にもとに戻るほうが早いから、為替レートが調整するということである。 株価も理論値は、厳密には存在しない。PER(株価収益率)は10倍でも20倍でもいいから、企業の収益見通しにコンセンサスが成り立っても、日経平均株価の予想は、PERの想定によって2万円にも4万円にもなりうる。 それでも、株価については理屈で議論ができ、前提を置けば、水準について何らかの論理的な予想、議論、説明ができる。 しかし、為替はそれがまったくできない。論理がほぼゼロなのだ。「そんなことはないだろう」と反論が来そうだ。例えば「東洋経済オンライン」などで、みずほ銀行のチーフマーケット・エコノミストである唐鎌大輔氏がいつも綿密かつ明快な論理で円安を説明してきたじゃないか?などと思うだろう。 それはそうだが、そうではない。結論から言えば、唐鎌理論は、円高にはなりにくいことの論理的な説明を与えてくれるが、しかし、円高の限界が1ドル=120円なのか140円なのかについては、ほぼ何も言えない。「昔ほどには円高にはならない」、ということが限界だ。) 実体経済における貿易収支を通じた調整も働く。為替レート(例えば円)が安くなって、国内物価が安くなった国からは、その安くなった製品が輸出され、外貨(例えばドル)を稼ぐ。その稼いだ外貨を自国通貨(例えば円)に戻すから、ドル売り円買いが起きて、ドル安円高になる。マクロ経済均衡に戻る、つまり、為替レートのずれが元に戻るようになる。 この購買力平価理論は物価の絶対水準の話なので、絶対的購買力平価理論であり、相対的購買力平価理論もある。それは、物価の変化率、つまりインフレ率の各国間の変動の違いを為替レートが調整する、という理論で、つまり、インフレ率が高くなった国の通貨の為替レートは安くなって、国際的な物価水準の変動が調整される、ということになる』、「株価については理屈で議論ができ、前提を置けば、水準について何らかの論理的な予想、議論、説明ができる。 しかし、為替はそれがまったくできない。論理がほぼゼロなのだ。「そんなことはないだろう」と反論が来そうだ。例えば「東洋経済オンライン」などで、みずほ銀行のチーフマーケット・エコノミストである唐鎌大輔氏がいつも綿密かつ明快な論理で円安を説明してきたじゃないか?などと思うだろう。 それはそうだが、そうではない。結論から言えば、唐鎌理論は、円高にはなりにくいことの論理的な説明を与えてくれるが、しかし、円高の限界が1ドル=120円なのか140円なのかについては、ほぼ何も言えない・・・購買力平価理論は物価の絶対水準の話なので、絶対的購買力平価理論であり、相対的購買力平価理論もある。それは、物価の変化率、つまりインフレ率の各国間の変動の違いを為替レートが調整する、という理論で、つまり、インフレ率が高くなった国の通貨の為替レートは安くなって、国際的な物価水準の変動が調整される、ということになる」、なるほど。
・『もう1つの理論である「金利平価理論」とは? もう1つの為替均衡理論は、金利平価理論で、資本市場において、裁定取引が働いて、為替レートが均衡するという理論である。つまり、外国(米国)の金利が高く、自国(日本)の金利が低い場合、アメリカのドルで運用したほうが得になってしまうから、均衡では、ドルが今後安くなることが予想されていることになる。 つまり、金利差が年率5%あれば、1年後のドルは今より5%安くなるはずだ、と投資家たちは思っているということだ。それなら、ドルで運用して円で運用するよりも5%ドルの名目値が増えても、ドルが円に比べて5%安くなるから、ドルでも円でもどちらで運用しても同じリターンが得られる、ということだ。そう期待されているから、実際にも、ドルは1年後には5%安くなっている、ということになる。 これはドル円の金利差が円安をもたらしている、ということと逆になっているように見えるが、必ずしもそうではない。予想外にアメリカの金利が上がったとしよう。予想外に金利差が広がったということであるが、この場合は、サプライズに対して瞬間的に急激に円安が進み、その後、金利差を埋め合わせるように、円高が進むことになる。 そうでないと、永遠にドル買いが進んでしまい、誰も円を持たなくなってしまう。だから、均衡に向かうとすると、いったん円安に急激にオーバーシュートして、そこから円高が進むことになる(ただし、実際には投機家たちが合理的に期待(将来への予想)をするかどうかなどにかかっているので、理論的にもさまざまなケース、シナリオが考えられる)。) ここでは為替理論を幅広く網羅することが目的ではないので、基本的なポイントを整理しよう』、「もう1つの為替均衡理論は、金利平価理論で、資本市場において、裁定取引が働いて、為替レートが均衡するという理論である。つまり、外国(米国)の金利が高く、自国(日本)の金利が低い場合、アメリカのドルで運用したほうが得になってしまうから、均衡では、ドルが今後安くなることが予想されていることになる・・・予想外にアメリカの金利が上がったとしよう。予想外に金利差が広がったということであるが、この場合は、サプライズに対して瞬間的に急激に円安が進み、その後、金利差を埋め合わせるように、円高が進むことになる。 そうでないと、永遠にドル買いが進んでしまい、誰も円を持たなくなってしまう。だから、均衡に向かうとすると、いったん円安に急激にオーバーシュートして、そこから円高が進むことになる」、なるほど。
・『為替の基本的な「3つのポイント」とは何か 第1に、理論は均衡理論であり、為替市場は常に均衡へ向かうことが仮定され、その均衡へ向かうメカニズムも機能することが前提となっている。しかし、現実の世界では、均衡はまったく成り立っていないし、かつ均衡へ向かうメカニズムも機能していない。したがって、現実の為替市場は理論と大きく異なる。 第2に、実体経済と金融資本市場とが分離している。実体経済における購買力平価と金融資本市場の金利平価の理論値が異なった場合、どうなるのか? 一般には短期的には金融市場、長期的には実体経済ということだが、絶対的購買力平価が長期的にも成り立ったことは過去にもほとんどない。実体経済と金融市場の分裂が、ここでも生じるのである。 第3に、均衡へ向かうメカニズムが、投機家や経済主体の期待に基づくものと為替への需要と供給によるものと2つ存在することが示唆されている。 前出の説明では、暗に合理的期待形成がなされる前提に実はなっているのだが、実際には、それは成り立たないことははっきりしている。また、為替は結局需給で決まるというのは、唐鎌理論もそうなのであるが、実は、金融市場では本来理論的には成り立たないはずの議論なのである。 なぜなら、需給で為替レートが本来の水準からのズレが生じれば、そのズレを利用して儲けようとする裁定取引が投機家によって行われ、すぐに為替は元の水準に戻ることになる。) となると、結局、実際、為替はどのように決まっているのか? 前出の議論を踏まえると、理論的には論理的とは言えないが、結局現実には需給で決まっている、という説だけが生き残りそうである。そうだとすると、なぜ、論理的には生じるはずの裁定取引が行われないのか? それは「正しい」水準が存在しないので、戻っていくべき為替レートというものが存在しないからである。ファンダメンタルズがないから、戻るべき理論値もないし、アンカー(錨)となる拠り所もないのである。 唯一の拠り所は、昨日までの為替水準であるが、昨日の為替水準にも正しい理論値はもちろん存在していなかったから、昨日までの水準から今日ズレたからと言って明日戻っていくはずがない。 つまり、為替水準は、常に365日、正しくないところにあるのであって、なぜその水準かというと、たまたまそこに為替水準があった、ということだけなのだ。既成事実として存在していた、という以外のことは何もないのである。 では、なぜ為替はそこから「ズレ」たのか?いや、そこから動いたのか? ここに需給が登場する。誰かが売ったから下がったのであり、誰かが買ったから上がったのである』、「為替の基本的な「3つのポイント」:①理論は均衡理論であり、為替市場は常に均衡へ向かうことが仮定され、その均衡へ向かうメカニズムも機能することが前提となっている。しかし、現実の世界では、均衡はまったく成り立っていないし、かつ均衡へ向かうメカニズムも機能していない。したがって、現実の為替市場は理論と大きく異なる・・・②実体経済における購買力平価と金融資本市場の金利平価の理論値が異なった場合、どうなるのか? 一般には短期的には金融市場、長期的には実体経済ということだが、絶対的購買力平価が長期的にも成り立ったことは過去にもほとんどない。実体経済と金融市場の分裂が、ここでも生じるのである・・・③結局現実には需給で決まっている、という説だけが生き残りそうである。そうだとすると、なぜ、論理的には生じるはずの裁定取引が行われないのか? それは「正しい」水準が存在しないので、戻っていくべき為替レートというものが存在しないからである。ファンダメンタルズがないから、戻るべき理論値もないし、アンカー(錨)となる拠り所もないのである。 唯一の拠り所は、昨日までの為替水準であるが、昨日の為替水準にも正しい理論値はもちろん存在していなかったから、昨日までの水準から今日ズレたからと言って明日戻っていくはずがない。 つまり、為替水準は、常に365日、正しくないところにあるのであって、なぜその水準かというと、たまたまそこに為替水準があった、ということだけなのだ」、なるほど。
・為替に需給が生じた「3つの原因」とは? では、この需給が生じた原因は何なのか?それは、第1に、論理が出てくる場合と、出てこない場合がある。第2に、実体経済からの生じた需要と供給の場合と、金融資本市場からの売りと買いの場合がある。第3に、金融市場から需給に関しては、運用ニーズというある種の実需の場合と、投機的需要の場合とがある。 そして、この3つの軸からの、さまざまな違う需要と供給が入り混じるために、為替レートは1つの論理では説明できない動きをすることになるのである。 論理が出てくる場合とはどんな場合か。例えば、日本の貿易赤字が増加して、輸入のためにドルが必要だから、ドル買い円売りが出る、というのは1つの論理である。これは実体経済の貿易によるものだ。次に、金融市場では、アメリカの金利が上がったから、ドルでの運用ニーズが高まり、ドル買い円売りが生じた、という論理がありうる。) 「なんだ、論理があるじゃないか!」と思われるかもしれないが、これは為替水準の論理ではなく、為替の変化の方向の論理なのである。貿易赤字が増えれば円安方向、アメリカの金利が上がるのも円安方向、という論理はある。しかし、では、今の1ドル=145円が150円になるのか155円になるのか、ということに関しては、何も言えない。さらに、145円と155円とどちらが長期的に正しいのか、ということはそれ以上に一切何も言えない。 その結果、為替はオーバーシュート(行きすぎること)も起こりやすくなるし、かつ一度同じ方向に動き出すとそのモメンタム(一方向への流れ)が止まらず、オーバーシュートの乱高下をしながら、かなりの期間、同じ方向に動き続ける。 いったん円安の流れになったらしばらく止まらないし、転換点が来たら、今度は円高方向しかありえない。しかし、皆がそう思っているから、一気に円高が進んでも、進みすぎかどうかは判断できないから、その流れに乗るが、しかし、強い投機家は、オーバーシュートを意図的に作りながら儲けることができる。 このように、強い投機家によって、為替相場は短期的には作られることが多いが、長期的な動きは、一部の投機家の意図では支配しきれない。大きな投機家集団、世の中全体の「群衆的な」動きによって決まってくる。それは誰にも予想はできないし、支配もできない。しかし、その流れで決まってくるのが現実だ。 その結果が、今の1ドル=145円前後なのである。今145円で125円でないのは、あるポイントからオーバーシュートとモメンタムを繰り返した結果なのである。 そして、そのあるポイントとは、1ドル=360円と1949年に決められたポイントなのである。そして、それが1971年末まで続けられたからであり、1973年まで1ドル=308円にしたからであり、1973年に308円スタートで変動相場制に移行したからである。 円安すぎる水準に長く固定されすぎていたから、その後は、一貫した円高モメンタムが続いたのであり、その流れがあったから、過度な円高というオーバーシュートが何度も繰り返されたのである。 そして、そのオーバーシュートが行きすぎたことから、円安の流れにどこかで転換せざるをえなかったのであるが、異次元緩和がきっかけとなって、今度は円安オーバーシュートが起きてしまったのである。したがって、すべては、1ドル=360円と決めたから、その後の水準の推移があったのであり、ゲームの始まりにおいて、たまたま決められた水準が今の水準に影響を残し続けているのである。 したがって、為替は本質的に、変動を続け、経済に歪みを与え続けるのであり、そういうものであるからこそ、異次元緩和のような、為替に意図的に強力な歪みをもたらすことは、もっともやってはいけないことであり、経済をもっとも大きく歪ませることになるのである。 ただ、異次元緩和を行ってしまった事実は動かせないし、今1ドル=160円まで行ってしまってから、今145円前後になっているということも動かせないので、この罪を償うことはほぼ不可能に近いのであり、その不可能を現在の日銀に世間が要求したために、為替市場が荒れることになったのである(本編はここで終了です。この後は筆者が週末のレースなどを予想するコーナーです。あらかじめご了承下さい)』、「強い投機家によって、為替相場は短期的には作られることが多いが、長期的な動きは、一部の投機家の意図では支配しきれない。大きな投機家集団、世の中全体の「群衆的な」動きによって決まってくる。それは誰にも予想はできないし、支配もできない。しかし、その流れで決まってくるのが現実だ・・・異次元緩和のような、為替に意図的に強力な歪みをもたらすことは、もっともやってはいけないことであり、経済をもっとも大きく歪ませることになるのである。 ただ、異次元緩和を行ってしまった事実は動かせないし、今1ドル=160円まで行ってしまってから、今145円前後になっているということも動かせないので、この罪を償うことはほぼ不可能に近いのであり、その不可能を現在の日銀に世間が要求したために、為替市場が荒れることになったのである」、難しい為替市場を分析した貴重な論文である。
タグ:株式・為替相場 (その23)(ブラックマンデー超え暴落の原因 日米景気不安、企業経営への影響は 検証 ブラックマンデー超え大暴落(2)、ドル円レートの「正しい理論値」など存在しない だからこそ意図的に歪みを加えてはいけない) 日経ビジネスオンライン「ブラックマンデー超え暴落の原因 日米景気不安、企業経営への影響は 検証 ブラックマンデー超え大暴落(2)」 「結果として、日銀の金融政策の正常化と米景気に対する不安から今までマーケットが想定していた持続成長の前提が揺らいだ」、なるほど。 「実勢レートが想定レートに近づいてしまったため、業績の上振れ期待がしぼんでしまった。また「日銀の政策変更後の株安を受けて、日本の景気が金利上昇に耐えられないとの不安が広がり、金融株などの景気敏感株の売りが出ている」、なるほど。 「ジャクソンホール会議」は確かに注目点だ。 「景気状況に左右されにくい業種として「電気、ガス、鉄道、食品などの分野」を挙げる」、その通りだ。 「ジャクソンホール会議」では、米FRB議長は、物価目標達成に自信を示し、9月利下げ「時が来た」とした。「バイデン大統領の後継者である民主党のハリス副大統領の人気が「トランプ氏」を上回っていることもあり、「トランプ氏」の「返り咲き」の可能性は薄らぎつつあるようだ。 東洋経済オンライン 小幡 績氏による「ドル円レートの「正しい理論値」など存在しない だからこそ意図的に歪みを加えてはいけない」 「行動ファイナンスですら役に立たない。投機家の期待、1ドル=145円という期待の自己実現という、何でも説明できてしまう自己実現の論理ですら成り立たないのだ」、なるほど。 「株価については理屈で議論ができ、前提を置けば、水準について何らかの論理的な予想、議論、説明ができる。 しかし、為替はそれがまったくできない。論理がほぼゼロなのだ。「そんなことはないだろう」と反論が来そうだ。例えば「東洋経済オンライン」などで、みずほ銀行のチーフマーケット・エコノミストである唐鎌大輔氏がいつも綿密かつ明快な論理で円安を説明してきたじゃないか?などと思うだろう。 それはそうだが、そうではない。結論から言えば、唐鎌理論は、円高にはなりにくいことの論理的な説明を与えてくれるが、しかし、円高の限界が1ドル=120円なのか140円なのかについては、ほぼ何も言えない・・・購買力平価理論は物価の絶対水準の話なので、絶対的購買力平価理論であり、相対的購買力平価理論もある。それは、物価の変化率、つまりインフレ率の各国間の変動の違いを為替レートが調整する、という理論で、つまり、インフレ率が高くなった国の通貨の為替レートは安くなって、国際的な物価水準の変動が調整される、ということにな る」、なるほど。 「もう1つの為替均衡理論は、金利平価理論で、資本市場において、裁定取引が働いて、為替レートが均衡するという理論である。つまり、外国(米国)の金利が高く、自国(日本)の金利が低い場合、アメリカのドルで運用したほうが得になってしまうから、均衡では、ドルが今後安くなることが予想されていることになる・・・予想外にアメリカの金利が上がったとしよう。予想外に金利差が広がったということであるが、この場合は、サプライズに対して瞬間的に急激に円安が進み、その後、金利差を埋め合わせるように、円高が進むことになる。 そうでないと、永遠にドル買いが進んでしまい、誰も円を持たなくなってしまう。だから、均衡に向かうとすると、いったん円安に急激にオーバーシュートして、そこから円高が進むことになる」、なるほど。 「為替の基本的な「3つのポイント」:①理論は均衡理論であり、為替市場は常に均衡へ向かうことが仮定され、その均衡へ向かうメカニズムも機能することが前提となっている。しかし、現実の世界では、均衡はまったく成り立っていないし、かつ均衡へ向かうメカニズムも機能していない。したがって、現実の為替市場は理論と大きく異なる・・・②実体経済における購買力平価と金融資本市場の金利平価の理論値が異なった場合、どうなるのか? 一般には短期的には金融市場、長期的には実体経済ということだが、絶対的購買力平価が長期的にも成り立ったこ ことは過去にもほとんどない。実体経済と金融市場の分裂が、ここでも生じるのである・・・③結局現実には需給で決まっている、という説だけが生き残りそうである。そうだとすると、なぜ、論理的には生じるはずの裁定取引が行われないのか? それは「正しい」水準が存在しないので、戻っていくべき為替レートというものが存在しないからである。ファンダメンタルズがないから、戻るべき理論値もないし、アンカー(錨)となる拠り所もないのである。 唯一の拠り所は、昨日までの為替水準であるが、昨日の為替水準にも正しい理論値はもちろん存在して なかったから、昨日までの水準から今日ズレたからと言って明日戻っていくはずがない。 つまり、為替水準は、常に365日、正しくないところにあるのであって、なぜその水準かというと、たまたまそこに為替水準があった、ということだけなのだ」、なるほど。 「強い投機家によって、為替相場は短期的には作られることが多いが、長期的な動きは、一部の投機家の意図では支配しきれない。大きな投機家集団、世の中全体の「群衆的な」動きによって決まってくる。それは誰にも予想はできないし、支配もできない。しかし、その流れで決まってくるのが現実だ・・・異次元緩和のような、為替に意図的に強力な歪みをもたらすことは、もっともやってはいけないことであり、経済をもっとも大きく歪ませることになるのである。 ただ、異次元緩和を行ってしまった事実は動かせないし、今1ドル=160円まで行ってしまってから、今145円前後になっているということも動かせないので、この罪を償うことはほぼ不可能に近いのであり、その不可能を現在の日銀に世間が要求したために、為替市場が荒れることになったのである」、難しい為替市場を分析した貴重な論文である。