宇宙(その2)宇宙論基礎2題:このまま膨張し続けたら 宇宙はどうなってしまうのか…、「ナゾの物質」ダークマターの正体がついに明らかに…?) [科学技術]
昨日に続いて、宇宙を(その2)宇宙論の基礎から捉えた(その2)宇宙論の基礎2題:このまま膨張し続けたら 宇宙はどうなってしまうのか…、「ナゾの物質」ダークマターの正体がついに明らかに…?)を取上げよう。
先ずは、本年9月8日付け現代ビジネスが掲載した高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所による「このまま膨張し続けたら、宇宙はどうなってしまうのか…「最悪のシナリオ」と「人類に残された希望」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/136796
・『138億年前、点にも満たない極小のエネルギーの塊からこの宇宙は誕生した。そこから物質、地球、生命が生まれ、私たちの存在に至る。しかし、ふと冷静になって考えると、誰も見たことがない「宇宙の起源」をどのように解明するというのか、という疑問がわかないだろうか? 本連載では、第一線の研究者たちが基礎から最先端までを徹底的に解説した『宇宙と物質の起源』より、宇宙の大いなる謎解きにご案内しよう。 *本記事は、高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所・編『宇宙と物質の起源 「見えない世界」を理解する』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです』、興味深そうだ。
・『宇宙全体の70%を占めるダークエネルギー 前の記事で述べたように、ダークエネルギーもしくは宇宙定数が現在の宇宙に占める割合は、観測から約70%です。このダークエネルギーの多さが、インフレーションと同様に、現在の宇宙で、宇宙の加速膨張を引き起こしています。 Ia型と呼ばれる超新星爆発からの光を観測すると、宇宙の大きさが1/3から1/2の昔と比べて、現在の宇宙年齢に近づけば近づくほど、加速膨張がどんどん激しくなってきていることがわかってきました。Ia型とは、恒星の終末期の1つの姿である白色矮星にガスが降り積もって臨界質量を超えることで爆発するタイプの超新星爆発です。1998年に同時に発表された宇宙の加速膨張を示す観測データの業績により、アメリカのソール・パールムッター博士たちと、オーストラリアのブライアン・シュミット博士とアメリカのアダム・リース博士たちの2つのグループに2011年、ノーベル物理学賞が与えられました。 ダークエネルギーは、現在では宇宙全体のエネルギーの70%と、大きな量となっています。しかし、本当に定数であることを仮定するならば、宇宙が生まれた宇宙初期では、ものすごく小さな量だったことを意味します。宇宙が始まったときに、なんらかの物理過程により、この小さな種が仕込まれたのではないかと考えられています。また、近い将来、ダークエネルギーが宇宙のエネルギーの100%を占めるようになり、完全に支配的になると予想されています。しかし、その小ささの起源は、現代物理学では説明できません。未解決であり、新しい物理学の理論の発見が必要だと考えられています。この章の最後に、唯一あり得る科学的ではない解決方法である、人間原理での解決方法を解説します。人間原理は、人間の存在がこの宇宙の性質を決めているかもしれないという不思議な概念です』、「ダークエネルギーが宇宙のエネルギーの「70%を占めているのが」、「近い将来」、「100%を占めるようになり、完全に支配的になると予想されています。しかし、その小ささの起源は、現代物理学では説明できません。未解決であり、新しい物理学の理論の発見が必要だと考えられています。この章の最後に、唯一あり得る科学的ではない解決方法である、人間原理での解決方法を解説します。人間原理は、人間の存在がこの宇宙の性質を決めているかもしれないという不思議な概念です」、なるほど。
・『宇宙は再び加速膨張期を迎えた 宇宙が誕生したエネルギーとされるプランク(質量)スケール(約1000京GeV)から、宇宙はさまざまな相転移を経験して、その相を変えてきました。それを水の3相に例えるならば、水蒸気、水、氷というように、温度が低くなるにつれて、エネルギーのより低い、まったく異なる相に変わってきたというものです。それらの相とは、大統一理論の相転移(1京GeV)、電弱相転移(100GeV)、量子色力学の相転移(100MeV)などです。その一方、ダークエネルギーのエネルギースケールは、0.002eVで、最も低いエネルギー状態の真空だと理解されています。この、ダークエネルギーのスケール(0.002eV)だけは、現在の物理学では説明できません。以下に説明するように、その数字をもつ物理量が存在しないのです。 大統一理論が正しいかどうかは、まだ実験では検証されていませんが、理論の整合性だけから、その存在の確からしさが予言されています。大統一理論の相転移後、1京GeVのエネルギースケールの真空のエネルギーが残っている可能性があります。また、電弱相転移を引き起こすヒッグス粒子は、2012年にCERNのLHC実験により発見されました。2013年にヒッグス粒子の存在を予言した2人の理論家、ヒッグス博士とアングレール博士にノーベル物理学賞が贈られています。電弱相転移により、100GeV程度の真空のエネルギーが残っている可能性があります。加えて、温度1兆度(100MeV)の火の玉宇宙の中で、大量のクォーク・反クォークが一斉に対消滅するうちに、約10億分の1個だけが陽子や中性子などの核子として残ります。この量子色力学の相転移の真空のエネルギーは、約100MeVのエネルギースケールだと考えられています。 つまり、現在の物理学における素粒子の標準理論では、ダークエネルギーのエネルギースケールの約0.002eVで起こる相転移は知られていません。約0.002eVのスケールの真空のエネルギーは、現在の物理学では理論的に説明不可能なのです。これは、重力を修正するようなエキゾチックなモデルを考えたとしても、加えてそのエネルギースケールをさらに仮定しなければならないことに変わりはありません。このことは、未発見の新しい物理法則の存在を予感させます。 その真空のエネルギーが支配的になりエネルギー密度が近似的に一定になると、アインシュタイン博士が唱えた宇宙項、つまり宇宙定数とまったく同じ働きをします。宇宙定数を含む、もっと広い概念としてダークエネルギーという、完全に定数でなくても緩やかな変化であればよいという考え方も、観測からは否定されていません。第7章で説明した通り、宇宙定数つまりダークエネルギーが支配的になると、宇宙の大きさは倍々ゲームのように再び加速膨張により時間発展していきます』、「現在の物理学における素粒子の標準理論では、ダークエネルギーのエネルギースケールの約0.002eVで起こる相転移は知られていません。約0.002eVのスケールの真空のエネルギーは、現在の物理学では理論的に説明不可能なのです。これは、重力を修正するようなエキゾチックなモデルを考えたとしても、加えてそのエネルギースケールをさらに仮定しなければならないことに変わりはありません。このことは、未発見の新しい物理法則の存在を予感させます。 その真空のエネルギーが支配的になりエネルギー密度が近似的に一定になると、アインシュタイン博士が唱えた宇宙項、つまり宇宙定数とまったく同じ働きをします。宇宙定数を含む、もっと広い概念としてダークエネルギーという、完全に定数でなくても緩やかな変化であればよいという考え方も、観測からは否定されていません」、なるほど。
・『ダークエネルギーとは何か? 宇宙定数を素粒子論の言葉で表現するなら、未知のスカラー場が、そのポテンシャルエネルギーの底に落ち着いている状況だと考えられています。ポテンシャルエネルギーとは、スカラー場が固有にもつ位置エネルギーのようなエネルギーのことで、低いエネルギー状態に行けば行くほど安定であることを意味します。ダークエネルギーとなる未知のスカラー場の正体は、実験的にも、観測的にも、まったく明らかになっていません。そのため理論上は、その存在を仮定して宇宙モデルをつくることになります。 ここでは、ダークエネルギーとなるスカラー場を「φ」と呼びましょう。このφのポテンシャルエネルギーの底のエネルギー密度の大きさが、重要なのです。エネルギースケールでは、約0.002eVです。ポテンシャルエネルギーもしくは、エネルギー密度で表すならば、約0.002eVの4乗、つまり約16eV⁴の1兆分の1となります。もっと想像をたくましくした場合、必ずしも、現在ポテンシャルエネルギーの底に落ち着いていなくてもよいという考え方も可能となります。つまり、ポテンシャルエネルギーの底では、特別なエネルギースケールなどはなくて、エネルギー密度は確かにゼロとするのです。 しかし、将来そこに落ち着けばよいと考えて、今はポテンシャルの途中をゆっくり転がり落ちていると解釈するのです。つまり、宇宙定数ではなく、動いているダークエネルギーというより広い概念を導入することになります。そして0.002eVの4乗は、ゼロに向かう過渡期のポテンシャルエネルギーの値と解釈します。そうすれば、現在の宇宙が偶然、このエネルギースケールをとっているだけで、新しいエネルギースケールを説明しなくてもよいという解釈となります。このスカラー場は、光子、ニュートリノ、バリオン物質、ダークマターとも違う、第5の成分という意味で「クインテッセンスモデル」とも呼ばれます。 そして、そのゆっくり動く度合いは、理論と観測から厳しい制限を受けます。ポテンシャルの式中にφの逆べき、1/φの項が現れる理論モデルの場合、宇宙膨張からくる摩擦力とポテンシャルを落ちていく力が釣り合ってゆっくり転がるモデルとなります。そのため、最も無理のない自然なモデルだと考えられました。これを「トラッカー場モデル」と呼びます。 しかし、最新の観測より、トラッカー場モデルは、ファイが速く動きすぎるとして棄却されました。現在では、その真空に落ち着く直前(フリージング)か、別の真空から動き始める瞬間(ソーイング)かの、2つのモデルが観測から許されています。 これまで、スカラー場のモデルと書いてきましたが、理論的には何一つ確定していません。強いて候補を挙げるなら、前述の軽いALP(正確な分類では、スピンの場ですが、鏡に映す変換により場の値の符号がマイナスになる擬スカラー場です)のような量子場かもしれません。しかし、その約0.002eVというエネルギースケールをもつポテンシャルについては、第一原理から導かれるわけではなく、仮定するしか、現在は方法がありません。前述のALPでも、理論的にはそのエネルギースケールが必然ではありません。また、繰り返しますが、重力を修正したとしても、このエネルギースケールのエネルギー密度を第一原理から自然に導出するわけではないので、さらにエネルギースケール自体について仮定を追加する必要があるというのが現状です。つまり、重力を修正しても解決されていないのです』、「最新の観測より、トラッカー場モデルは、ファイが速く動きすぎるとして棄却されました。現在では、その真空に落ち着く直前(フリージング)か、別の真空から動き始める瞬間(ソーイング)かの、2つのモデルが観測から許されています。 これまで、スカラー場のモデルと書いてきましたが、理論的には何一つ確定していません。強いて候補を挙げるなら、前述の軽いALP(正確な分類では、スピンの場ですが、鏡に映す変換により場の値の符号がマイナスになる擬スカラー場です)のような量子場かもしれません。しかし、その約0.002eVというエネルギースケールをもつポテンシャルについては、第一原理から導かれるわけではなく、仮定するしか、現在は方法がありません。前述のALPでも、理論的にはそのエネルギースケールが必然ではありません」、難し過ぎて到底理解できない。
・『宇宙の未来 次に、最低限の仮定の下、このままダークエネルギーのエネルギー密度がほぼ定数だとして、この宇宙の未来がどうなっていくのかを見ていきます。現代物理学の知識で予想する、標準的な宇宙の運命は以下のようです。 まず、このまま加速膨張が続けば、基本的に銀河団に属していない銀河と銀河の間の距離は遠ざかり、宇宙は、どんどん空っぽになってしまいます。約40億年後、われわれの銀河とアンドロメダ銀河が合体します。形成される超巨大銀河には「ミルコメダ」という名前がすでに付けられています。約50億年後、太陽が死を迎えます。そのとき、地球は肥大した太陽に飲み込まれるという説と、地球の公転軌道が広がって飲み込まれないという2つの説が唱えられています。いずれにしても人類は、そのままでは生き延びることは不可能でしょう。 約1400億年後、ミルコメダは、激しい加速膨張で独りぼっちの銀河となります。約1兆年後、われわれの銀河にある一番の長寿命の恒星である赤色矮星まで、すべての恒星が燃え尽きます。約1000京年後、すべての銀河はブラックホールだらけになります。 約10³⁴年後、つまり、約1000京年の1000兆倍後、大統一理論の予言により、宇宙のすべての陽子が陽電子などに崩壊します。原子や分子などの普通の物質はなくなることになります。そして、約10⁸³年後、つまり約1000京年の1000京倍の1000京倍の1000京倍の1000万倍後、それぞれの銀河の中心にある超巨大ブラックホールが蒸発します。それ以後、天体と呼ぶことのできる物体は、宇宙から消え去るでしょう。 さらに仮定することを増やすと、ダークエネルギーが時間とともにより多くなるエキゾチックなモデルで、ビッグリップと呼ばれるより激しい加速膨張によって未来にすべての天体が引き裂かれることを提案した研究者もいます。このシナリオはとても刺激的ですが、その理論を示唆する観測・実験結果は今のところ得られていません』、「このまま加速膨張が続けば、基本的に銀河団に属していない銀河と銀河の間の距離は遠ざかり、宇宙は、どんどん空っぽになってしまいます。約40億年後、われわれの銀河とアンドロメダ銀河が合体します。形成される超巨大銀河には「ミルコメダ」という名前がすでに付けられています。約50億年後、太陽が死を迎えます。そのとき、地球は肥大した太陽に飲み込まれるという説と、地球の公転軌道が広がって飲み込まれないという2つの説が唱えられています。いずれにしても人類は、そのままでは生き延びることは不可能でしょう・・・約1400億年後、ミルコメダは、激しい加速膨張で独りぼっちの銀河となります。約1兆年後、われわれの銀河にある一番の長寿命の恒星である赤色矮星まで、すべての恒星が燃え尽きます。約1000京年後、すべての銀河はブラックホールだらけになります。 約10³⁴年後、つまり、約1000京年の1000兆倍後、大統一理論の予言により、宇宙のすべての陽子が陽電子などに崩壊します。原子や分子などの普通の物質はなくなることになります。そして、約10⁸³年後、つまり約1000京年の1000京倍の1000京倍の1000京倍の1000万倍後、それぞれの銀河の中心にある超巨大ブラックホールが蒸発します。それ以後、天体と呼ぶことのできる物体は、宇宙から消え去るでしょう。 さらに仮定することを増やすと、ダークエネルギーが時間とともにより多くなるエキゾチックなモデルで、ビッグリップと呼ばれるより激しい加速膨張によって未来にすべての天体が引き裂かれることを提案した研究者もいます」、なるほど。
・『残された大問題 これまで、真空のエネルギースケール約0.002eVを説明する物理法則を探ることが、ダークエネルギー問題の科学的な解決であることを説明してきました。つまり、現在の宇宙は、なぜ放射(約0.01%)、見える物質(約5%)、ダークマター(約25%)、ダークエネルギー(約70%)と、すべての成分が数桁の範囲でだいたい同じ程度のエネルギー密度なのか? そして、ダークエネルギーの量は、定数だというのに、なぜ、理論物理の知られているあらゆるスケールと比べてこんなに小さいのか? という問題でした。その小ささには、大変なチューニングが必要で、その値がもし約1000倍でも大きい宇宙だったら、宇宙はもっと早くに速く膨張してしまい、銀河はできないし地球は生まれないことからも、極めて深刻であることがわかります。 実は、物理学ではなく、哲学的にこの問題を解く試みがあります。それが、フランスの哲学者ルネ・デカルト博士が提唱した「我思う、故に我あり」という考え方を人間原理に適用したものです。それを、宇宙論の文脈で言い換えると、「宇宙の法則がこうなっているからこそ、この問いを発する人間が(必然として)生まれてきたという原理」などとなります。「必然として」を入れると、強い人間原理と呼ばれます。われわれは、ダークエネルギー(宇宙定数)が小さい宇宙に住んでいます。実際、観測される約1meVのスケールから、自然なスケールである1TeVまでが約15桁、その4乗の約60桁も小さいのです。この60桁というずれの程度は、理論的に説明するためには、ゼロ点からのずれ具合がすさまじく小さい数を仮定してチューニングしなければならないことを意味します。 その異常さを、標準理論を例にとって見てみます。標準理論にも、さまざまな質量が現れます。しかし、例えば、ヒッグス粒子の質量のスケール(約100GeV)から、一番軽い素粒子である電子の質量のスケール(約500KeV)までの、そのずれ方は大きく見積もっても6桁くらいに収まっているのです。多くの素粒子物理学者は、この6桁くらいのずれ方はなんらかの理由により説明できると考えています。そのため、この6桁のずれ程度ならば、普段、標準理論のほころびだとはそれほど思っていないように思います。筆者が発表した理論モデルの1つに、ニュートリノ質量(単位meV)の4乗がダークエネルギーのエネルギー密度になるかもしれない、というものがあります。しかし正直に申し上げて、この場合でもスケールを手で置いているという範疇を出ないものです。将来の観測で筆者のモデルが正しいと証明されるか、それとも棄却されるか、個人的には楽しみにしています。ぜひ、若い方々も、この問題に科学で真っ向からトライしてみてください。 宇宙は唯一ではないとするマルチバースの考え方を採用するならば、われわれの宇宙は、唯一の宇宙ではなく、それこそ天文学的な大きな数字の数だけ生まれた宇宙の中のただの1つにすぎないのかもしれません。そして、それぞれの宇宙は、物理法則が違っている可能性すらあります。宇宙定数が約60桁小さい宇宙も、確率的には有り得ないほど低くても、天文学的数字のマルチバースの中では、偶然に、たった1つでも誕生する可能性があるかもしれません。そして、その宇宙は人間が生まれる条件が整っているのです。その場合、人間が生まれる条件に合った宇宙だけに、人間が生まれただけにすぎないのかもしれないのです。そして、その人間が、自分たちの宇宙は「なぜ、こんなにも自分たちに都合がよくできているのか?(宇宙定数が小さくなっているのか?)」という疑問を発しているという解決方法なのです。
このように、「宇宙定数問題」または「ダークエネルギー問題」を人間原理で解決する場合、驚くことに人間の存在が、その宇宙全体の性質を決めてしまっていることになってしまいます。つまり、人間が住む宇宙のみ人間に観測され得ると言っているのです。 人類は、古来より信じられてきた天動説を捨て、精密な観測データの蓄積により得られたコペルニクス原理を採用し、地動説を信じるようになってきました。さらに、宇宙は一様で等方だとする宇宙原理を信じて、われわれの銀河や太陽系が特別な場所ではないと受け入れてきたのです。現代の人類が、より観測技術が進んだことにより、われわれの住んでいる宇宙は例外的な宇宙だったと受け入れなければならない状況になってきているのは、大変皮肉なことです。 説明なしの原理の導入は、その背後に隠れているかもしれない未発見の物理法則の探究を止めてしまう可能性があるのですが、現在、エキゾチックな宇宙モデルを仮定する以外には、人間原理による解決方法しかあり得ないようにも思えます。しかし、科学的な問題に人間原理を適用することは、最終手段として取っておくべきものだと思われます。 つまり、これまで解決不可能とされてきた問題に対して、新しい物理学の法則を見つけることこそ、科学による勝利なのです。繰り返しますが、ダークエネルギー問題は、今のところ人間原理の適用以外に解く方法がないように見え、人間原理を適用する最初の例になるかもしれないという大変に面白い問題と言えるでしょう。人類は、宇宙誕生の秘密に迫る、最も根本的な科学の問題に直面しているのかもしれませんね。 さらに「宇宙と物質の起源」シリーズの連載記事では、最新研究にもとづくスリリングな宇宙論をお届けする』、「ダークエネルギー問題は、今のところ人間原理の適用以外に解く方法がないように見え、人間原理を適用する最初の例になるかもしれないという大変に面白い問題と言えるでしょう。人類は、宇宙誕生の秘密に迫る、最も根本的な科学の問題に直面しているのかもしれませんね。 さらに「宇宙と物質の起源」シリーズの連載記事では、最新研究にもとづくスリリングな宇宙論をお届けする」、確かに「スリリング」ではあるが、理解の限度を超えつつあるようだ。
次に、9月8日付け現代ビジネスが掲載した高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所による「「ナゾの物質」ダークマターの正体がついに明らかに…?「最有力候補」を科学的検証とともに一挙解説!」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/136795
・『・・・どうやってダークマターを見つけるのか 先の記事で、理論的に予言されるダークマターの有力候補について、ちょっとだけご紹介しました。本記事では、それぞれについて詳しく説明してみたいと思います。 最も有力な候補と目されているのは、WIMPと呼ばれる未発見の素粒子です。「弱い相互作用をする重い粒子」という意味の英語の頭文字を取って、そうした性質をもつ粒子の総称として名付けられました。重さは、陽子の100倍(約100GeV)程度以上です。他の粒子との相互作用が弱すぎて散乱の頻度が低くて見つけられない粒子なのです。英語の単語wimp自体が弱虫という意味なので、名は体を表していますね。具体的な粒子としては、まだ仮説である超対称性理論に現れる光子、もしくは、Z粒子かヒッグス粒子の相棒の総称であるニュートラリーノが、WIMPの候補として注目されています。 ニュートラリーノの見つけ方は単純です。キセノン原子などの重い原子核を数トンも用意して、ニュートラリーノがぶつかってくるのを待つ方法が、最も有力とされています。キセノン原子の中の陽子や中性子との相互作用は弱いのですが、大量にキセノンを用意すれば、確率が上がって、直接検出できるという考え方です。しかし、これまでにニュートラリーノが確実に発見された、とする報告はありません。また、高エネルギー加速器研究機構(KEK)も参加するスイス・ジュネーブにある欧州合同原子核研究機構(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)での加速器実験でニュートラリーノがつくられると期待されていたのですが、見つかりませんでした。 その一方、宇宙観測を用いるアイデアもあります。銀河の中心など、ダークマターの密度が濃いところで、ダークマター同士がお互いに衝突して対消滅することが期待されています。対消滅した後、ニュートラリーノならば、光や電子、クォークなど見える粒子を対生成によりつくることが理論的に予想されています。そうした2次的につくられた見える粒子を検出し、間接的にWIMPを検出するのです。現在の理解では、質量が約100GeVよりずっと重いせいで、数も少なく衝突頻度が低いのではないかという解釈がなされています。今後、ターゲットの原子の量を多くする、もしくは、検出器の感度を高めるなど装置の改良を重ねて、将来的に検出されることが期待されています。) 138億年前、点にも満たない極小のエネルギーの塊からこの宇宙は誕生した。そこから物質、地球、生命が生まれ、私たちの存在に至る。しかし、ふと冷静になって考えると、誰も見たことがない「宇宙の起源」をどのように解明するというのか、という疑問がわかないだろうか? 本連載では、第一線の研究者たちが基礎から最先端までを徹底的に解説した『宇宙と物質の起源』より、宇宙の大いなる謎解きにご案内しよう。 *本記事は、高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所・編『宇宙と物質の起源 「見えない世界」を理解する』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです』、「これまでにニュートラリーノが確実に発見された、とする報告はありません。また、高エネルギー加速器研究機構(KEK)も参加するスイス・ジュネーブにある欧州合同原子核研究機構(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)での加速器実験でニュートラリーノがつくられると期待されていたのですが、見つかりませんでした・・・宇宙観測を用いるアイデアもあります。銀河の中心など、ダークマターの密度が濃いところで、ダークマター同士がお互いに衝突して対消滅することが期待されています。対消滅した後、ニュートラリーノならば、光や電子、クォークなど見える粒子を対生成によりつくることが理論的に予想されています。そうした2次的につくられた見える粒子を検出し、間接的にWIMPを検出するのです。現在の理解では、質量が約100GeVよりずっと重いせいで、数も少なく衝突頻度が低いのではないかという解釈がなされています。今後、ターゲットの原子の量を多くする、もしくは、検出器の感度を高めるなど装置の改良を重ねて、将来的に検出されることが期待されています」、なるほど。
・『どうやってダークマターを見つけるのか 先の記事で、理論的に予言されるダークマターの有力候補について、ちょっとだけご紹介しました。本記事では、それぞれについて詳しく説明してみたいと思います。 最も有力な候補と目されているのは、WIMPと呼ばれる未発見の素粒子です。「弱い相互作用をする重い粒子」という意味の英語の頭文字を取って、そうした性質をもつ粒子の総称として名付けられました。重さは、陽子の100倍(約100GeV)程度以上です。他の粒子との相互作用が弱すぎて散乱の頻度が低くて見つけられない粒子なのです。英語の単語wimp自体が弱虫という意味なので、名は体を表していますね。具体的な粒子としては、まだ仮説である超対称性理論に現れる光子、もしくは、Z粒子かヒッグス粒子の相棒の総称であるニュートラリーノが、WIMPの候補として注目されています。 ニュートラリーノの見つけ方は単純です。キセノン原子などの重い原子核を数トンも用意して、ニュートラリーノがぶつかってくるのを待つ方法が、最も有力とされています。キセノン原子の中の陽子や中性子との相互作用は弱いのですが、大量にキセノンを用意すれば、確率が上がって、直接検出できるという考え方です。しかし、これまでにニュートラリーノが確実に発見された、とする報告はありません。また、高エネルギー加速器研究機構(KEK)も参加するスイス・ジュネーブにある欧州合同原子核研究機構(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)での加速器実験でニュートラリーノがつくられると期待されていたのですが、見つかりませんでした。 その一方、宇宙観測を用いるアイデアもあります。銀河の中心など、ダークマターの密度が濃いところで、ダークマター同士がお互いに衝突して対消滅することが期待されています。対消滅した後、ニュートラリーノならば、光や電子、クォークなど見える粒子を対生成によりつくることが理論的に予想されています。そうした2次的につくられた見える粒子を検出し、間接的にWIMPを検出するのです。現在の理解では、質量が約100GeVよりずっと重いせいで、数も少なく衝突頻度が低いのではないかという解釈がなされています。今後、ターゲットの原子の量を多くする、もしくは、検出器の感度を高めるなど装置の改良を重ねて、将来的に検出されることが期待されています』、「現在の理解では、質量が約100GeVよりずっと重いせいで、数も少なく衝突頻度が低いのではないかという解釈がなされています。今後、ターゲットの原子の量を多くする、もしくは、検出器の感度を高めるなど装置の改良を重ねて、将来的に検出されることが期待されています」、なるほど。
・『原始ブラックホール 3つ目の候補は、筆者の推しダークマターである原始ブラックホールです。通常のブラックホールが重い恒星の最期につぶれてつくられる天体であるのと異なり、原始ブラックホールは宇宙初期に密度ゆらぎが極めて大きな部分がつぶれることで生成されます。見える物質からつくられたのではなく、火の玉の放射がつぶれてつくられたブラックホールなのです。通常のブラックホールの重さは、およそ太陽質量以上、つまり約100京トンの10億倍以上です。それに対し、原始ブラックホールがダークマターになる場合の重さは、約1000億トンから約10京トンの間と予想されています。つまり、太陽質量より桁違いに軽いのです。 これは筆者の研究で示したことなのですが、もし原始ブラックホールが約1000億トンより軽い場合、ホーキング輻射として知られているように、ガンマ線の熱輻射を出して蒸発してしまい、現在のガンマ線の観測で蒸発する様子が見えるはずです。しかし、これまでの観測からそうした現象は見られないので、原始ブラックホールがダークマターになっているなら、もっと重くないといけないということになります。 その一方、重さが約10京トンより重い場合というのは、すばる望遠鏡の観測により否定されてしまいます。すばる望遠鏡でアンドロメダ銀河の恒星をずっと観測していると、その恒星の前を原始ブラックホールが通り過ぎる場合があります。そのとき、原始ブラックホールによる重力レンズ効果で、恒星の明るさが増光することが期待されていました。しかし、実際は観測されなかったことから、重さ約10京トン以上の原始ブラックホールを完全に否定してしまいました。 将来、ガンマ線観測の感度が上がれば、残っている質量領域である、約1000億トンより重く、約10京トンより軽い原始ブラックホールが、ゆっくりと蒸発する様子が観測されるかもしれません。また、原始ブラックホールをつくる密度ゆらぎは、同時に非線形重力波をつくることが知られています。将来の感度の高い、レーザー干渉計宇宙アンテナLISAや0.1ヘルツ帯干渉計型重力波天文台DECIGOなど人工衛星での重力波観測で、その非線形重力波を観測できれば、原始ブラックホールのダークマター説が検証される可能性があります』、「原始ブラックホールは宇宙初期に密度ゆらぎが極めて大きな部分がつぶれることで生成されます。見える物質からつくられたのではなく、火の玉の放射がつぶれてつくられたブラックホールなのです。通常のブラックホールの重さは、およそ太陽質量以上、つまり約100京トンの10億倍以上です。それに対し、原始ブラックホールがダークマターになる場合の重さは、約1000億トンから約10京トン「原始ブラックホールは宇宙初期に密度ゆらぎが極めて大きな部分がつぶれることで生成されます。見える物質からつくられたのではなく、火の玉の放射がつぶれてつくられたブラックホールなのです。通常のブラックホールの重さは、およそ太陽質量以上、つまり約100京トンの10億倍以上です。それに対し、原始ブラックホールがダークマターになる場合の重さは、約1000億トンから約10京トンのの間と予想されています。つまり、太陽質量より桁違いに軽いのです・・・もし原始ブラックホールが約1000億トンより軽い場合、ホーキング輻射として知られているように、ガンマ線の熱輻射を出して蒸発してしまい、現在のガンマ線の観測で蒸発する様子が見えるはずです。しかし、これまでの観測からそうした現象は見られないので、原始ブラックホールがダークマターになっているなら、もっと重くないといけないということになります」、なるほど。
・『右巻きニュートリノ 4つ目の候補は、未発見の右巻きニュートリノです。 その質量についての条件として、すでに検出されている左巻きニュートリノの質量の30倍程度あれば、質量だけなら、ダークマターに十分足りるのです。しかし、その程度だと軽すぎて光のように飛び回るせいで、銀河をダークマターとしてつなぎ止められません。つまり、「冷たいダークマター」とはなりません。 要求される条件は、左巻きニュートリノの数万倍以上の重さ、つまり、数千eVの質量をもつ必要があります。重い右巻きニュートリノは、X線光子を出して崩壊することが理論的に予言されています。その光子を検出できれば、右巻きニュートリノがダークマターであると確定する可能性があります。また、大強度陽子加速器施設J‐PARCでのニュートリノ振動実験T2Kなどでは、ニュートリノが右巻きニュートリノに崩壊もしくは振動する痕跡も探っています。 KEKが参加するLiteBIRD衛星実験では、将来得られる詳細な宇宙マイクロ波背景放射の偏光のデータから、右巻きニュートリノダークマターを検出する可能性があります。 さらに「宇宙と物質の起源」シリーズの連載記事では、最新研究にもとづくスリリングな宇宙論をお届けする』、「要求される条件は、左巻きニュートリノの数万倍以上の重さ、つまり、数千eVの質量をもつ必要があります。重い右巻きニュートリノは、X線光子を出して崩壊することが理論的に予言されています。その光子を検出できれば、右巻きニュートリノがダークマターであると確定する可能性があります」、まだまだ発展途上の学問のようだ。
先ずは、本年9月8日付け現代ビジネスが掲載した高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所による「このまま膨張し続けたら、宇宙はどうなってしまうのか…「最悪のシナリオ」と「人類に残された希望」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/136796
・『138億年前、点にも満たない極小のエネルギーの塊からこの宇宙は誕生した。そこから物質、地球、生命が生まれ、私たちの存在に至る。しかし、ふと冷静になって考えると、誰も見たことがない「宇宙の起源」をどのように解明するというのか、という疑問がわかないだろうか? 本連載では、第一線の研究者たちが基礎から最先端までを徹底的に解説した『宇宙と物質の起源』より、宇宙の大いなる謎解きにご案内しよう。 *本記事は、高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所・編『宇宙と物質の起源 「見えない世界」を理解する』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです』、興味深そうだ。
・『宇宙全体の70%を占めるダークエネルギー 前の記事で述べたように、ダークエネルギーもしくは宇宙定数が現在の宇宙に占める割合は、観測から約70%です。このダークエネルギーの多さが、インフレーションと同様に、現在の宇宙で、宇宙の加速膨張を引き起こしています。 Ia型と呼ばれる超新星爆発からの光を観測すると、宇宙の大きさが1/3から1/2の昔と比べて、現在の宇宙年齢に近づけば近づくほど、加速膨張がどんどん激しくなってきていることがわかってきました。Ia型とは、恒星の終末期の1つの姿である白色矮星にガスが降り積もって臨界質量を超えることで爆発するタイプの超新星爆発です。1998年に同時に発表された宇宙の加速膨張を示す観測データの業績により、アメリカのソール・パールムッター博士たちと、オーストラリアのブライアン・シュミット博士とアメリカのアダム・リース博士たちの2つのグループに2011年、ノーベル物理学賞が与えられました。 ダークエネルギーは、現在では宇宙全体のエネルギーの70%と、大きな量となっています。しかし、本当に定数であることを仮定するならば、宇宙が生まれた宇宙初期では、ものすごく小さな量だったことを意味します。宇宙が始まったときに、なんらかの物理過程により、この小さな種が仕込まれたのではないかと考えられています。また、近い将来、ダークエネルギーが宇宙のエネルギーの100%を占めるようになり、完全に支配的になると予想されています。しかし、その小ささの起源は、現代物理学では説明できません。未解決であり、新しい物理学の理論の発見が必要だと考えられています。この章の最後に、唯一あり得る科学的ではない解決方法である、人間原理での解決方法を解説します。人間原理は、人間の存在がこの宇宙の性質を決めているかもしれないという不思議な概念です』、「ダークエネルギーが宇宙のエネルギーの「70%を占めているのが」、「近い将来」、「100%を占めるようになり、完全に支配的になると予想されています。しかし、その小ささの起源は、現代物理学では説明できません。未解決であり、新しい物理学の理論の発見が必要だと考えられています。この章の最後に、唯一あり得る科学的ではない解決方法である、人間原理での解決方法を解説します。人間原理は、人間の存在がこの宇宙の性質を決めているかもしれないという不思議な概念です」、なるほど。
・『宇宙は再び加速膨張期を迎えた 宇宙が誕生したエネルギーとされるプランク(質量)スケール(約1000京GeV)から、宇宙はさまざまな相転移を経験して、その相を変えてきました。それを水の3相に例えるならば、水蒸気、水、氷というように、温度が低くなるにつれて、エネルギーのより低い、まったく異なる相に変わってきたというものです。それらの相とは、大統一理論の相転移(1京GeV)、電弱相転移(100GeV)、量子色力学の相転移(100MeV)などです。その一方、ダークエネルギーのエネルギースケールは、0.002eVで、最も低いエネルギー状態の真空だと理解されています。この、ダークエネルギーのスケール(0.002eV)だけは、現在の物理学では説明できません。以下に説明するように、その数字をもつ物理量が存在しないのです。 大統一理論が正しいかどうかは、まだ実験では検証されていませんが、理論の整合性だけから、その存在の確からしさが予言されています。大統一理論の相転移後、1京GeVのエネルギースケールの真空のエネルギーが残っている可能性があります。また、電弱相転移を引き起こすヒッグス粒子は、2012年にCERNのLHC実験により発見されました。2013年にヒッグス粒子の存在を予言した2人の理論家、ヒッグス博士とアングレール博士にノーベル物理学賞が贈られています。電弱相転移により、100GeV程度の真空のエネルギーが残っている可能性があります。加えて、温度1兆度(100MeV)の火の玉宇宙の中で、大量のクォーク・反クォークが一斉に対消滅するうちに、約10億分の1個だけが陽子や中性子などの核子として残ります。この量子色力学の相転移の真空のエネルギーは、約100MeVのエネルギースケールだと考えられています。 つまり、現在の物理学における素粒子の標準理論では、ダークエネルギーのエネルギースケールの約0.002eVで起こる相転移は知られていません。約0.002eVのスケールの真空のエネルギーは、現在の物理学では理論的に説明不可能なのです。これは、重力を修正するようなエキゾチックなモデルを考えたとしても、加えてそのエネルギースケールをさらに仮定しなければならないことに変わりはありません。このことは、未発見の新しい物理法則の存在を予感させます。 その真空のエネルギーが支配的になりエネルギー密度が近似的に一定になると、アインシュタイン博士が唱えた宇宙項、つまり宇宙定数とまったく同じ働きをします。宇宙定数を含む、もっと広い概念としてダークエネルギーという、完全に定数でなくても緩やかな変化であればよいという考え方も、観測からは否定されていません。第7章で説明した通り、宇宙定数つまりダークエネルギーが支配的になると、宇宙の大きさは倍々ゲームのように再び加速膨張により時間発展していきます』、「現在の物理学における素粒子の標準理論では、ダークエネルギーのエネルギースケールの約0.002eVで起こる相転移は知られていません。約0.002eVのスケールの真空のエネルギーは、現在の物理学では理論的に説明不可能なのです。これは、重力を修正するようなエキゾチックなモデルを考えたとしても、加えてそのエネルギースケールをさらに仮定しなければならないことに変わりはありません。このことは、未発見の新しい物理法則の存在を予感させます。 その真空のエネルギーが支配的になりエネルギー密度が近似的に一定になると、アインシュタイン博士が唱えた宇宙項、つまり宇宙定数とまったく同じ働きをします。宇宙定数を含む、もっと広い概念としてダークエネルギーという、完全に定数でなくても緩やかな変化であればよいという考え方も、観測からは否定されていません」、なるほど。
・『ダークエネルギーとは何か? 宇宙定数を素粒子論の言葉で表現するなら、未知のスカラー場が、そのポテンシャルエネルギーの底に落ち着いている状況だと考えられています。ポテンシャルエネルギーとは、スカラー場が固有にもつ位置エネルギーのようなエネルギーのことで、低いエネルギー状態に行けば行くほど安定であることを意味します。ダークエネルギーとなる未知のスカラー場の正体は、実験的にも、観測的にも、まったく明らかになっていません。そのため理論上は、その存在を仮定して宇宙モデルをつくることになります。 ここでは、ダークエネルギーとなるスカラー場を「φ」と呼びましょう。このφのポテンシャルエネルギーの底のエネルギー密度の大きさが、重要なのです。エネルギースケールでは、約0.002eVです。ポテンシャルエネルギーもしくは、エネルギー密度で表すならば、約0.002eVの4乗、つまり約16eV⁴の1兆分の1となります。もっと想像をたくましくした場合、必ずしも、現在ポテンシャルエネルギーの底に落ち着いていなくてもよいという考え方も可能となります。つまり、ポテンシャルエネルギーの底では、特別なエネルギースケールなどはなくて、エネルギー密度は確かにゼロとするのです。 しかし、将来そこに落ち着けばよいと考えて、今はポテンシャルの途中をゆっくり転がり落ちていると解釈するのです。つまり、宇宙定数ではなく、動いているダークエネルギーというより広い概念を導入することになります。そして0.002eVの4乗は、ゼロに向かう過渡期のポテンシャルエネルギーの値と解釈します。そうすれば、現在の宇宙が偶然、このエネルギースケールをとっているだけで、新しいエネルギースケールを説明しなくてもよいという解釈となります。このスカラー場は、光子、ニュートリノ、バリオン物質、ダークマターとも違う、第5の成分という意味で「クインテッセンスモデル」とも呼ばれます。 そして、そのゆっくり動く度合いは、理論と観測から厳しい制限を受けます。ポテンシャルの式中にφの逆べき、1/φの項が現れる理論モデルの場合、宇宙膨張からくる摩擦力とポテンシャルを落ちていく力が釣り合ってゆっくり転がるモデルとなります。そのため、最も無理のない自然なモデルだと考えられました。これを「トラッカー場モデル」と呼びます。 しかし、最新の観測より、トラッカー場モデルは、ファイが速く動きすぎるとして棄却されました。現在では、その真空に落ち着く直前(フリージング)か、別の真空から動き始める瞬間(ソーイング)かの、2つのモデルが観測から許されています。 これまで、スカラー場のモデルと書いてきましたが、理論的には何一つ確定していません。強いて候補を挙げるなら、前述の軽いALP(正確な分類では、スピンの場ですが、鏡に映す変換により場の値の符号がマイナスになる擬スカラー場です)のような量子場かもしれません。しかし、その約0.002eVというエネルギースケールをもつポテンシャルについては、第一原理から導かれるわけではなく、仮定するしか、現在は方法がありません。前述のALPでも、理論的にはそのエネルギースケールが必然ではありません。また、繰り返しますが、重力を修正したとしても、このエネルギースケールのエネルギー密度を第一原理から自然に導出するわけではないので、さらにエネルギースケール自体について仮定を追加する必要があるというのが現状です。つまり、重力を修正しても解決されていないのです』、「最新の観測より、トラッカー場モデルは、ファイが速く動きすぎるとして棄却されました。現在では、その真空に落ち着く直前(フリージング)か、別の真空から動き始める瞬間(ソーイング)かの、2つのモデルが観測から許されています。 これまで、スカラー場のモデルと書いてきましたが、理論的には何一つ確定していません。強いて候補を挙げるなら、前述の軽いALP(正確な分類では、スピンの場ですが、鏡に映す変換により場の値の符号がマイナスになる擬スカラー場です)のような量子場かもしれません。しかし、その約0.002eVというエネルギースケールをもつポテンシャルについては、第一原理から導かれるわけではなく、仮定するしか、現在は方法がありません。前述のALPでも、理論的にはそのエネルギースケールが必然ではありません」、難し過ぎて到底理解できない。
・『宇宙の未来 次に、最低限の仮定の下、このままダークエネルギーのエネルギー密度がほぼ定数だとして、この宇宙の未来がどうなっていくのかを見ていきます。現代物理学の知識で予想する、標準的な宇宙の運命は以下のようです。 まず、このまま加速膨張が続けば、基本的に銀河団に属していない銀河と銀河の間の距離は遠ざかり、宇宙は、どんどん空っぽになってしまいます。約40億年後、われわれの銀河とアンドロメダ銀河が合体します。形成される超巨大銀河には「ミルコメダ」という名前がすでに付けられています。約50億年後、太陽が死を迎えます。そのとき、地球は肥大した太陽に飲み込まれるという説と、地球の公転軌道が広がって飲み込まれないという2つの説が唱えられています。いずれにしても人類は、そのままでは生き延びることは不可能でしょう。 約1400億年後、ミルコメダは、激しい加速膨張で独りぼっちの銀河となります。約1兆年後、われわれの銀河にある一番の長寿命の恒星である赤色矮星まで、すべての恒星が燃え尽きます。約1000京年後、すべての銀河はブラックホールだらけになります。 約10³⁴年後、つまり、約1000京年の1000兆倍後、大統一理論の予言により、宇宙のすべての陽子が陽電子などに崩壊します。原子や分子などの普通の物質はなくなることになります。そして、約10⁸³年後、つまり約1000京年の1000京倍の1000京倍の1000京倍の1000万倍後、それぞれの銀河の中心にある超巨大ブラックホールが蒸発します。それ以後、天体と呼ぶことのできる物体は、宇宙から消え去るでしょう。 さらに仮定することを増やすと、ダークエネルギーが時間とともにより多くなるエキゾチックなモデルで、ビッグリップと呼ばれるより激しい加速膨張によって未来にすべての天体が引き裂かれることを提案した研究者もいます。このシナリオはとても刺激的ですが、その理論を示唆する観測・実験結果は今のところ得られていません』、「このまま加速膨張が続けば、基本的に銀河団に属していない銀河と銀河の間の距離は遠ざかり、宇宙は、どんどん空っぽになってしまいます。約40億年後、われわれの銀河とアンドロメダ銀河が合体します。形成される超巨大銀河には「ミルコメダ」という名前がすでに付けられています。約50億年後、太陽が死を迎えます。そのとき、地球は肥大した太陽に飲み込まれるという説と、地球の公転軌道が広がって飲み込まれないという2つの説が唱えられています。いずれにしても人類は、そのままでは生き延びることは不可能でしょう・・・約1400億年後、ミルコメダは、激しい加速膨張で独りぼっちの銀河となります。約1兆年後、われわれの銀河にある一番の長寿命の恒星である赤色矮星まで、すべての恒星が燃え尽きます。約1000京年後、すべての銀河はブラックホールだらけになります。 約10³⁴年後、つまり、約1000京年の1000兆倍後、大統一理論の予言により、宇宙のすべての陽子が陽電子などに崩壊します。原子や分子などの普通の物質はなくなることになります。そして、約10⁸³年後、つまり約1000京年の1000京倍の1000京倍の1000京倍の1000万倍後、それぞれの銀河の中心にある超巨大ブラックホールが蒸発します。それ以後、天体と呼ぶことのできる物体は、宇宙から消え去るでしょう。 さらに仮定することを増やすと、ダークエネルギーが時間とともにより多くなるエキゾチックなモデルで、ビッグリップと呼ばれるより激しい加速膨張によって未来にすべての天体が引き裂かれることを提案した研究者もいます」、なるほど。
・『残された大問題 これまで、真空のエネルギースケール約0.002eVを説明する物理法則を探ることが、ダークエネルギー問題の科学的な解決であることを説明してきました。つまり、現在の宇宙は、なぜ放射(約0.01%)、見える物質(約5%)、ダークマター(約25%)、ダークエネルギー(約70%)と、すべての成分が数桁の範囲でだいたい同じ程度のエネルギー密度なのか? そして、ダークエネルギーの量は、定数だというのに、なぜ、理論物理の知られているあらゆるスケールと比べてこんなに小さいのか? という問題でした。その小ささには、大変なチューニングが必要で、その値がもし約1000倍でも大きい宇宙だったら、宇宙はもっと早くに速く膨張してしまい、銀河はできないし地球は生まれないことからも、極めて深刻であることがわかります。 実は、物理学ではなく、哲学的にこの問題を解く試みがあります。それが、フランスの哲学者ルネ・デカルト博士が提唱した「我思う、故に我あり」という考え方を人間原理に適用したものです。それを、宇宙論の文脈で言い換えると、「宇宙の法則がこうなっているからこそ、この問いを発する人間が(必然として)生まれてきたという原理」などとなります。「必然として」を入れると、強い人間原理と呼ばれます。われわれは、ダークエネルギー(宇宙定数)が小さい宇宙に住んでいます。実際、観測される約1meVのスケールから、自然なスケールである1TeVまでが約15桁、その4乗の約60桁も小さいのです。この60桁というずれの程度は、理論的に説明するためには、ゼロ点からのずれ具合がすさまじく小さい数を仮定してチューニングしなければならないことを意味します。 その異常さを、標準理論を例にとって見てみます。標準理論にも、さまざまな質量が現れます。しかし、例えば、ヒッグス粒子の質量のスケール(約100GeV)から、一番軽い素粒子である電子の質量のスケール(約500KeV)までの、そのずれ方は大きく見積もっても6桁くらいに収まっているのです。多くの素粒子物理学者は、この6桁くらいのずれ方はなんらかの理由により説明できると考えています。そのため、この6桁のずれ程度ならば、普段、標準理論のほころびだとはそれほど思っていないように思います。筆者が発表した理論モデルの1つに、ニュートリノ質量(単位meV)の4乗がダークエネルギーのエネルギー密度になるかもしれない、というものがあります。しかし正直に申し上げて、この場合でもスケールを手で置いているという範疇を出ないものです。将来の観測で筆者のモデルが正しいと証明されるか、それとも棄却されるか、個人的には楽しみにしています。ぜひ、若い方々も、この問題に科学で真っ向からトライしてみてください。 宇宙は唯一ではないとするマルチバースの考え方を採用するならば、われわれの宇宙は、唯一の宇宙ではなく、それこそ天文学的な大きな数字の数だけ生まれた宇宙の中のただの1つにすぎないのかもしれません。そして、それぞれの宇宙は、物理法則が違っている可能性すらあります。宇宙定数が約60桁小さい宇宙も、確率的には有り得ないほど低くても、天文学的数字のマルチバースの中では、偶然に、たった1つでも誕生する可能性があるかもしれません。そして、その宇宙は人間が生まれる条件が整っているのです。その場合、人間が生まれる条件に合った宇宙だけに、人間が生まれただけにすぎないのかもしれないのです。そして、その人間が、自分たちの宇宙は「なぜ、こんなにも自分たちに都合がよくできているのか?(宇宙定数が小さくなっているのか?)」という疑問を発しているという解決方法なのです。
このように、「宇宙定数問題」または「ダークエネルギー問題」を人間原理で解決する場合、驚くことに人間の存在が、その宇宙全体の性質を決めてしまっていることになってしまいます。つまり、人間が住む宇宙のみ人間に観測され得ると言っているのです。 人類は、古来より信じられてきた天動説を捨て、精密な観測データの蓄積により得られたコペルニクス原理を採用し、地動説を信じるようになってきました。さらに、宇宙は一様で等方だとする宇宙原理を信じて、われわれの銀河や太陽系が特別な場所ではないと受け入れてきたのです。現代の人類が、より観測技術が進んだことにより、われわれの住んでいる宇宙は例外的な宇宙だったと受け入れなければならない状況になってきているのは、大変皮肉なことです。 説明なしの原理の導入は、その背後に隠れているかもしれない未発見の物理法則の探究を止めてしまう可能性があるのですが、現在、エキゾチックな宇宙モデルを仮定する以外には、人間原理による解決方法しかあり得ないようにも思えます。しかし、科学的な問題に人間原理を適用することは、最終手段として取っておくべきものだと思われます。 つまり、これまで解決不可能とされてきた問題に対して、新しい物理学の法則を見つけることこそ、科学による勝利なのです。繰り返しますが、ダークエネルギー問題は、今のところ人間原理の適用以外に解く方法がないように見え、人間原理を適用する最初の例になるかもしれないという大変に面白い問題と言えるでしょう。人類は、宇宙誕生の秘密に迫る、最も根本的な科学の問題に直面しているのかもしれませんね。 さらに「宇宙と物質の起源」シリーズの連載記事では、最新研究にもとづくスリリングな宇宙論をお届けする』、「ダークエネルギー問題は、今のところ人間原理の適用以外に解く方法がないように見え、人間原理を適用する最初の例になるかもしれないという大変に面白い問題と言えるでしょう。人類は、宇宙誕生の秘密に迫る、最も根本的な科学の問題に直面しているのかもしれませんね。 さらに「宇宙と物質の起源」シリーズの連載記事では、最新研究にもとづくスリリングな宇宙論をお届けする」、確かに「スリリング」ではあるが、理解の限度を超えつつあるようだ。
次に、9月8日付け現代ビジネスが掲載した高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所による「「ナゾの物質」ダークマターの正体がついに明らかに…?「最有力候補」を科学的検証とともに一挙解説!」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/136795
・『・・・どうやってダークマターを見つけるのか 先の記事で、理論的に予言されるダークマターの有力候補について、ちょっとだけご紹介しました。本記事では、それぞれについて詳しく説明してみたいと思います。 最も有力な候補と目されているのは、WIMPと呼ばれる未発見の素粒子です。「弱い相互作用をする重い粒子」という意味の英語の頭文字を取って、そうした性質をもつ粒子の総称として名付けられました。重さは、陽子の100倍(約100GeV)程度以上です。他の粒子との相互作用が弱すぎて散乱の頻度が低くて見つけられない粒子なのです。英語の単語wimp自体が弱虫という意味なので、名は体を表していますね。具体的な粒子としては、まだ仮説である超対称性理論に現れる光子、もしくは、Z粒子かヒッグス粒子の相棒の総称であるニュートラリーノが、WIMPの候補として注目されています。 ニュートラリーノの見つけ方は単純です。キセノン原子などの重い原子核を数トンも用意して、ニュートラリーノがぶつかってくるのを待つ方法が、最も有力とされています。キセノン原子の中の陽子や中性子との相互作用は弱いのですが、大量にキセノンを用意すれば、確率が上がって、直接検出できるという考え方です。しかし、これまでにニュートラリーノが確実に発見された、とする報告はありません。また、高エネルギー加速器研究機構(KEK)も参加するスイス・ジュネーブにある欧州合同原子核研究機構(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)での加速器実験でニュートラリーノがつくられると期待されていたのですが、見つかりませんでした。 その一方、宇宙観測を用いるアイデアもあります。銀河の中心など、ダークマターの密度が濃いところで、ダークマター同士がお互いに衝突して対消滅することが期待されています。対消滅した後、ニュートラリーノならば、光や電子、クォークなど見える粒子を対生成によりつくることが理論的に予想されています。そうした2次的につくられた見える粒子を検出し、間接的にWIMPを検出するのです。現在の理解では、質量が約100GeVよりずっと重いせいで、数も少なく衝突頻度が低いのではないかという解釈がなされています。今後、ターゲットの原子の量を多くする、もしくは、検出器の感度を高めるなど装置の改良を重ねて、将来的に検出されることが期待されています。) 138億年前、点にも満たない極小のエネルギーの塊からこの宇宙は誕生した。そこから物質、地球、生命が生まれ、私たちの存在に至る。しかし、ふと冷静になって考えると、誰も見たことがない「宇宙の起源」をどのように解明するというのか、という疑問がわかないだろうか? 本連載では、第一線の研究者たちが基礎から最先端までを徹底的に解説した『宇宙と物質の起源』より、宇宙の大いなる謎解きにご案内しよう。 *本記事は、高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所・編『宇宙と物質の起源 「見えない世界」を理解する』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです』、「これまでにニュートラリーノが確実に発見された、とする報告はありません。また、高エネルギー加速器研究機構(KEK)も参加するスイス・ジュネーブにある欧州合同原子核研究機構(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)での加速器実験でニュートラリーノがつくられると期待されていたのですが、見つかりませんでした・・・宇宙観測を用いるアイデアもあります。銀河の中心など、ダークマターの密度が濃いところで、ダークマター同士がお互いに衝突して対消滅することが期待されています。対消滅した後、ニュートラリーノならば、光や電子、クォークなど見える粒子を対生成によりつくることが理論的に予想されています。そうした2次的につくられた見える粒子を検出し、間接的にWIMPを検出するのです。現在の理解では、質量が約100GeVよりずっと重いせいで、数も少なく衝突頻度が低いのではないかという解釈がなされています。今後、ターゲットの原子の量を多くする、もしくは、検出器の感度を高めるなど装置の改良を重ねて、将来的に検出されることが期待されています」、なるほど。
・『どうやってダークマターを見つけるのか 先の記事で、理論的に予言されるダークマターの有力候補について、ちょっとだけご紹介しました。本記事では、それぞれについて詳しく説明してみたいと思います。 最も有力な候補と目されているのは、WIMPと呼ばれる未発見の素粒子です。「弱い相互作用をする重い粒子」という意味の英語の頭文字を取って、そうした性質をもつ粒子の総称として名付けられました。重さは、陽子の100倍(約100GeV)程度以上です。他の粒子との相互作用が弱すぎて散乱の頻度が低くて見つけられない粒子なのです。英語の単語wimp自体が弱虫という意味なので、名は体を表していますね。具体的な粒子としては、まだ仮説である超対称性理論に現れる光子、もしくは、Z粒子かヒッグス粒子の相棒の総称であるニュートラリーノが、WIMPの候補として注目されています。 ニュートラリーノの見つけ方は単純です。キセノン原子などの重い原子核を数トンも用意して、ニュートラリーノがぶつかってくるのを待つ方法が、最も有力とされています。キセノン原子の中の陽子や中性子との相互作用は弱いのですが、大量にキセノンを用意すれば、確率が上がって、直接検出できるという考え方です。しかし、これまでにニュートラリーノが確実に発見された、とする報告はありません。また、高エネルギー加速器研究機構(KEK)も参加するスイス・ジュネーブにある欧州合同原子核研究機構(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)での加速器実験でニュートラリーノがつくられると期待されていたのですが、見つかりませんでした。 その一方、宇宙観測を用いるアイデアもあります。銀河の中心など、ダークマターの密度が濃いところで、ダークマター同士がお互いに衝突して対消滅することが期待されています。対消滅した後、ニュートラリーノならば、光や電子、クォークなど見える粒子を対生成によりつくることが理論的に予想されています。そうした2次的につくられた見える粒子を検出し、間接的にWIMPを検出するのです。現在の理解では、質量が約100GeVよりずっと重いせいで、数も少なく衝突頻度が低いのではないかという解釈がなされています。今後、ターゲットの原子の量を多くする、もしくは、検出器の感度を高めるなど装置の改良を重ねて、将来的に検出されることが期待されています』、「現在の理解では、質量が約100GeVよりずっと重いせいで、数も少なく衝突頻度が低いのではないかという解釈がなされています。今後、ターゲットの原子の量を多くする、もしくは、検出器の感度を高めるなど装置の改良を重ねて、将来的に検出されることが期待されています」、なるほど。
・『原始ブラックホール 3つ目の候補は、筆者の推しダークマターである原始ブラックホールです。通常のブラックホールが重い恒星の最期につぶれてつくられる天体であるのと異なり、原始ブラックホールは宇宙初期に密度ゆらぎが極めて大きな部分がつぶれることで生成されます。見える物質からつくられたのではなく、火の玉の放射がつぶれてつくられたブラックホールなのです。通常のブラックホールの重さは、およそ太陽質量以上、つまり約100京トンの10億倍以上です。それに対し、原始ブラックホールがダークマターになる場合の重さは、約1000億トンから約10京トンの間と予想されています。つまり、太陽質量より桁違いに軽いのです。 これは筆者の研究で示したことなのですが、もし原始ブラックホールが約1000億トンより軽い場合、ホーキング輻射として知られているように、ガンマ線の熱輻射を出して蒸発してしまい、現在のガンマ線の観測で蒸発する様子が見えるはずです。しかし、これまでの観測からそうした現象は見られないので、原始ブラックホールがダークマターになっているなら、もっと重くないといけないということになります。 その一方、重さが約10京トンより重い場合というのは、すばる望遠鏡の観測により否定されてしまいます。すばる望遠鏡でアンドロメダ銀河の恒星をずっと観測していると、その恒星の前を原始ブラックホールが通り過ぎる場合があります。そのとき、原始ブラックホールによる重力レンズ効果で、恒星の明るさが増光することが期待されていました。しかし、実際は観測されなかったことから、重さ約10京トン以上の原始ブラックホールを完全に否定してしまいました。 将来、ガンマ線観測の感度が上がれば、残っている質量領域である、約1000億トンより重く、約10京トンより軽い原始ブラックホールが、ゆっくりと蒸発する様子が観測されるかもしれません。また、原始ブラックホールをつくる密度ゆらぎは、同時に非線形重力波をつくることが知られています。将来の感度の高い、レーザー干渉計宇宙アンテナLISAや0.1ヘルツ帯干渉計型重力波天文台DECIGOなど人工衛星での重力波観測で、その非線形重力波を観測できれば、原始ブラックホールのダークマター説が検証される可能性があります』、「原始ブラックホールは宇宙初期に密度ゆらぎが極めて大きな部分がつぶれることで生成されます。見える物質からつくられたのではなく、火の玉の放射がつぶれてつくられたブラックホールなのです。通常のブラックホールの重さは、およそ太陽質量以上、つまり約100京トンの10億倍以上です。それに対し、原始ブラックホールがダークマターになる場合の重さは、約1000億トンから約10京トン「原始ブラックホールは宇宙初期に密度ゆらぎが極めて大きな部分がつぶれることで生成されます。見える物質からつくられたのではなく、火の玉の放射がつぶれてつくられたブラックホールなのです。通常のブラックホールの重さは、およそ太陽質量以上、つまり約100京トンの10億倍以上です。それに対し、原始ブラックホールがダークマターになる場合の重さは、約1000億トンから約10京トンのの間と予想されています。つまり、太陽質量より桁違いに軽いのです・・・もし原始ブラックホールが約1000億トンより軽い場合、ホーキング輻射として知られているように、ガンマ線の熱輻射を出して蒸発してしまい、現在のガンマ線の観測で蒸発する様子が見えるはずです。しかし、これまでの観測からそうした現象は見られないので、原始ブラックホールがダークマターになっているなら、もっと重くないといけないということになります」、なるほど。
・『右巻きニュートリノ 4つ目の候補は、未発見の右巻きニュートリノです。 その質量についての条件として、すでに検出されている左巻きニュートリノの質量の30倍程度あれば、質量だけなら、ダークマターに十分足りるのです。しかし、その程度だと軽すぎて光のように飛び回るせいで、銀河をダークマターとしてつなぎ止められません。つまり、「冷たいダークマター」とはなりません。 要求される条件は、左巻きニュートリノの数万倍以上の重さ、つまり、数千eVの質量をもつ必要があります。重い右巻きニュートリノは、X線光子を出して崩壊することが理論的に予言されています。その光子を検出できれば、右巻きニュートリノがダークマターであると確定する可能性があります。また、大強度陽子加速器施設J‐PARCでのニュートリノ振動実験T2Kなどでは、ニュートリノが右巻きニュートリノに崩壊もしくは振動する痕跡も探っています。 KEKが参加するLiteBIRD衛星実験では、将来得られる詳細な宇宙マイクロ波背景放射の偏光のデータから、右巻きニュートリノダークマターを検出する可能性があります。 さらに「宇宙と物質の起源」シリーズの連載記事では、最新研究にもとづくスリリングな宇宙論をお届けする』、「要求される条件は、左巻きニュートリノの数万倍以上の重さ、つまり、数千eVの質量をもつ必要があります。重い右巻きニュートリノは、X線光子を出して崩壊することが理論的に予言されています。その光子を検出できれば、右巻きニュートリノがダークマターであると確定する可能性があります」、まだまだ発展途上の学問のようだ。
タグ:宇宙 (その2)宇宙論基礎2題:このまま膨張し続けたら 宇宙はどうなってしまうのか…、「ナゾの物質」ダークマターの正体がついに明らかに…?) 現代ビジネス 高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所 「このまま膨張し続けたら、宇宙はどうなってしまうのか…「最悪のシナリオ」と「人類に残された希望」」 高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所・編『宇宙と物質の起源 「見えない世界」を理解する』(ブルーバックス) 「ダークエネルギーが宇宙のエネルギーの「70%を占めているのが」、「近い将来」、「100%を占めるようになり、完全に支配的になると予想されています。しかし、その小ささの起源は、現代物理学では説明できません。未解決であり、新しい物理学の理論の発見が必要だと考えられています。この章の最後に、唯一あり得る科学的ではない解決方法である、人間原理での解決方法を解説します。人間原理は、人間の存在がこの宇宙の性質を決めているかもしれないという不思議な概念です」、なるほど。 「現在の物理学における素粒子の標準理論では、ダークエネルギーのエネルギースケールの約0.002eVで起こる相転移は知られていません。約0.002eVのスケールの真空のエネルギーは、現在の物理学では理論的に説明不可能なのです。これは、重力を修正するようなエキゾチックなモデルを考えたとしても、加えてそのエネルギースケールをさらに仮定しなければならないことに変わりはありません。 このことは、未発見の新しい物理法則の存在を予感させます。 その真空のエネルギーが支配的になりエネルギー密度が近似的に一定になると、アインシュタイン博士が唱えた宇宙項、つまり宇宙定数とまったく同じ働きをします。宇宙定数を含む、もっと広い概念としてダークエネルギーという、完全に定数でなくても緩やかな変化であればよいという考え方も、観測からは否定されていません」、なるほど。 「最新の観測より、トラッカー場モデルは、ファイが速く動きすぎるとして棄却されました。現在では、その真空に落ち着く直前(フリージング)か、別の真空から動き始める瞬間(ソーイング)かの、2つのモデルが観測から許されています。 これまで、スカラー場のモデルと書いてきましたが、理論的には何一つ確定していません。強いて候補を挙げるなら、前述の軽いALP(正確な分類では、スピンの場ですが、鏡に映す変換により場の値の符号がマイナスになる擬スカラー場です)のような量子場かもしれません。 しかし、その約0.002eVというエネルギースケールをもつポテンシャルについては、第一原理から導かれるわけではなく、仮定するしか、現在は方法がありません。前述のALPでも、理論的にはそのエネルギースケールが必然ではありません」、難し過ぎて到底理解できない。 「このまま加速膨張が続けば、基本的に銀河団に属していない銀河と銀河の間の距離は遠ざかり、宇宙は、どんどん空っぽになってしまいます。約40億年後、われわれの銀河とアンドロメダ銀河が合体します。形成される超巨大銀河には「ミルコメダ」という名前がすでに付けられています。約50億年後、太陽が死を迎えます。そのとき、地球は肥大した太陽に飲み込まれるという説と、地球の公転軌道が広がって飲み込まれないという2つの説が唱えられています。いずれにしても人類は、そのままでは生き延びることは不可能でしょう・・・ 約1400億年後、ミルコメダは、激しい加速膨張で独りぼっちの銀河となります。約1兆年後、われわれの銀河にある一番の長寿命の恒星である赤色矮星まで、すべての恒星が燃え尽きます。約1000京年後、すべての銀河はブラックホールだらけになります。 約10³⁴年後、つまり、約1000京年の1000兆倍後、大統一理論の予言により、宇宙のすべての陽子が陽電子などに崩壊します。原子や分子などの普通の物質はなくなることになります。そして、約10⁸³年後、つまり約1000京年の1000京倍の1000京倍の1000京倍の1000万倍後、それぞれの銀河の中心にある超巨大ブラックホールが蒸発します。それ以後、天体と呼ぶことのできる物体は、宇宙から消え去るでしょう。 さらに仮定することを増やすと、ダークエネルギーが時間とともにより多くなるエキゾチックなモデルで、ビッグリップと呼ばれるより激しい加速膨張によって未来にすべての天体が引き裂かれることを提案した研究者もいます」、なるほど。 「ダークエネルギー問題は、今のところ人間原理の適用以外に解く方法がないように見え、人間原理を適用する最初の例になるかもしれないという大変に面白い問題と言えるでしょう。人類は、宇宙誕生の秘密に迫る、最も根本的な科学の問題に直面しているのかもしれませんね。 さらに「宇宙と物質の起源」シリーズの連載記事では、最新研究にもとづくスリリングな宇宙論をお届けする」、確かに「スリリング」ではあるが、理解の限度を超えつつあるようだ。 「「ナゾの物質」ダークマターの正体がついに明らかに…?「最有力候補」を科学的検証とともに一挙解説!」 「これまでにニュートラリーノが確実に発見された、とする報告はありません。また、高エネルギー加速器研究機構(KEK)も参加するスイス・ジュネーブにある欧州合同原子核研究機構(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)での加速器実験でニュートラリーノがつくられると期待されていたのですが、見つかりませんでした・・・宇宙観測を用いるアイデアもあります。銀河の中心など、ダークマターの密度が濃いところで、ダークマター同士がお互いに衝突して対消滅することが期待されています。 対消滅した後、ニュートラリーノならば、光や電子、クォークなど見える粒子を対生成によりつくることが理論的に予想されています。そうした2次的につくられた見える粒子を検出し、間接的にWIMPを検出するのです。現在の理解では、質量が約100GeVよりずっと重いせいで、数も少なく衝突頻度が低いのではないかという解釈がなされています。今後、ターゲットの原子の量を多くする、もしくは、検出器の感度を高めるなど装置の改良を重ねて、将来的に検出されることが期待されています」、なるほど。 「現在の理解では、質量が約100GeVよりずっと重いせいで、数も少なく衝突頻度が低いのではないかという解釈がなされています。今後、ターゲットの原子の量を多くする、もしくは、検出器の感度を高めるなど装置の改良を重ねて、将来的に検出されることが期待されています」、なるほど。 「原始ブラックホールは宇宙初期に密度ゆらぎが極めて大きな部分がつぶれることで生成されます。見える物質からつくられたのではなく、火の玉の放射がつぶれてつくられたブラックホールなのです。通常のブラックホールの重さは、およそ太陽質量以上、つまり約100京トンの10億倍以上です。それに対し、原始ブラックホールがダークマターになる場合の重さは、約1000億トンから約10京トン「原始ブラックホールは宇宙初期に密度ゆらぎが極めて大きな部分がつぶれることで生成されます。 見える物質からつくられたのではなく、火の玉の放射がつぶれてつくられたブラックホールなのです。通常のブラックホールの重さは、およそ太陽質量以上、つまり約100京トンの10億倍以上です。それに対し、原始ブラックホールがダークマターになる場合の重さは、約1000億トンから約10京トンのの間と予想されています。つまり、太陽質量より桁違いに軽いのです・・・もし原始ブラックホールが約1000億トンより軽い場合、ホーキング輻射として知られているように、ガンマ線の熱輻射を出して蒸発してしまい、現在のガンマ線の観測で蒸発す る様子が見えるはずです。しかし、これまでの観測からそうした現象は見られないので、原始ブラックホールがダークマターになっているなら、もっと重くないといけないということになります」、なるほど。 「要求される条件は、左巻きニュートリノの数万倍以上の重さ、つまり、数千eVの質量をもつ必要があります。重い右巻きニュートリノは、X線光子を出して崩壊することが理論的に予言されています。その光子を検出できれば、右巻きニュートリノがダークマターであると確定する可能性があります」、まだまだ発展途上の学問のようだ。