中国国内政治(その15)(習近平はもうおしまいなのか…中国人民解放軍で「静かなクーデター」!粛清に反抗してとうとう制服組トップが軍を掌握、中国の権力闘争がさらに激化!習近平主席の猜疑心を煽る…ベトナムが李強首相に与えた「国賓待遇」の波紋、もはや滑稽! 14億国民も呆れた習近平の「皇帝ぶりっこ」 林愛華「中南海ディープスロート」第13回) [世界情勢]
中国国内政治については、昨年8月12日に取上げた。今日は、(その15)(習近平はもうおしまいなのか…中国人民解放軍で「静かなクーデター」!粛清に反抗してとうとう制服組トップが軍を掌握、中国の権力闘争がさらに激化!習近平主席の猜疑心を煽る…ベトナムが李強首相に与えた「国賓待遇」の波紋、もはや滑稽! 14億国民も呆れた習近平の「皇帝ぶりっこ」 林愛華「中南海ディープスロート」第13回)である。特に、第一の記事はスクープといえる衝撃的な内容だ。
先ずは、本年10月30日付け現代ビジネスが掲載した評論家の石 平氏による「習近平はもうおしまいなのか…中国人民解放軍で「静かなクーデター」!粛清に反抗してとうとう制服組トップが軍を掌握」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/140302?imp=0
・『張又侠、踊り出る 今年10月に入ってからの中国軍上層部の動きを時間列順に追っていくと、大きな異変が静かに起きていることに気がつく。解放軍に対する習近平主席の指揮権は実質上解除され、それに取って代わって、共産党中央軍事委員会筆頭副主席で制服組のトップの張又侠氏がすでに軍の掌握に成功している模様である。 まずは10月14日、15日、解放軍の「全軍軍事理論工作会議」が北京で開かれた。習主席がその間、福建省などで地方視察中であって会議に出席しなかった中で、前述の張又侠氏は会議を主宰し講話を行なった。 会議は一応、「軍事理論の構築」に関する習主席の「重要指示」を受けて開催されたものではある。しかし、解放軍各軍種と五大戦区のトップたちが揃って参加する重要会議に習主席が欠席するのはやはり異様なことである。特にそれは「軍事理論」に関する全軍会議であれば、軍の方向性を示す立場の習主席こそが本来、自ら参加して仕切るべき会議のはずである。 ところが今回、全軍会議の事実上の中心人物となったのは張氏である。習主席はその間、緊急性の全くない地方視察に出かけているが、その理由に関しては、習主席は自分が軍会議に呼ばれなかったことを覆い隠すためにわざと地方に出かけたのではないかとの観測も成り立つ』、「解放軍に対する習近平主席の指揮権は実質上解除され、それに取って代わって、共産党中央軍事委員会筆頭副主席で制服組のトップの張又侠氏がすでに軍の掌握に成功している模様である・・・解放軍の「全軍軍事理論工作会議」が北京で開かれた。習主席がその間、福建省などで地方視察中であって会議に出席しなかった中で、前述の張又侠氏は会議を主宰し講話を行なった。 会議は一応、「軍事理論の構築」に関する習主席の「重要指示」を受けて開催されたものではある。しかし、解放軍各軍種と五大戦区のトップたちが揃って参加する重要会議に習主席が欠席するのはやはり異様なことである。特にそれは「軍事理論」に関する全軍会議であれば、軍の方向性を示す立場の習主席こそが本来、自ら参加して仕切るべき会議のはずである。 ところが今回、全軍会議の事実上の中心人物となったのは張氏である。習主席はその間、緊急性の全くない地方視察に出かけているが、その理由に関しては、習主席は自分が軍会議に呼ばれなかったことを覆い隠すためにわざと地方に出かけたのではないかとの観測も成り立つ」、これは大スクープだ。
・『習主席の指揮権は排除 以上は、10月に入ってから、軍活動と軍外交における張氏の突出ぶりであるが、実はそれとは対照的に、もう一人の軍事委員会副主席である何衛東氏は10月に入ってから全く公の場に出てこないという異常事態も生じてきている。 何氏が公の活動に出たのは9月13日、北京で開催された安全保障関係の国際フォーラムに参加しに来た外国の防衛関係者と会談した時である。しかしそれ以後は、彼のいっさい動静が伝わっていない。特に、前述の二つの張氏主宰の全軍会議には、同じ軍事委員会副主席の何氏が参加していないのはもはや完全なる異常事態。普通ならばそれは、彼の失脚さえ意味するものである。 何氏という人物は、習近平独裁体制が完全確立した2022年10月の党大会で習主席によって政治局員・軍事委員会副主席に大抜擢された軍人であり、まさに軍における習主席側近の一人である。しかし今、この何氏が張氏によって軍指導部の重要会議から排除されたのであれば、それは当然、張氏はすでに、軍における習主席の指揮権を排除して軍の掌握に成功していることを示している』、「何氏という人物は、習近平独裁体制が完全確立した2022年10月の党大会で習主席によって政治局員・軍事委員会副主席に大抜擢された軍人であり、まさに軍における習主席側近の一人である。しかし今、この何氏が張氏によって軍指導部の重要会議から排除されたのであれば、それは当然、張氏はすでに、軍における習主席の指揮権を排除して軍の掌握に成功していることを示している」、なるほど。
・昨年からの軍幹部粛清で習近平との関係に亀裂 張氏は解放軍古参将軍を父親に持ち、1979年の対ベトナム国境戦争に参戦したという実戦体験の実力派軍人だ。習近平政権以前は大軍区の瀋陽軍区の司令官にまで上り詰めたが、習近平政権になってから五年間にわたって解放軍総装備部部長・中央軍事委員会装備発展部部長を勤めた。習政権の2期目には政治局員・軍事委員会副主席に昇進して現代に至る。 こうしてみると、張氏は本来、習主席と同様に共産党高官を父親にもつ「太子党」として主席とは緊密な関係にあり、習主席の軍掌握の要でもあり続けたが、二人の関係に亀裂が生じてきたきっかけは、昨年から始まった習主席主導の腐敗摘発としての軍粛清であると考えられる。 粛清された大物軍人の一人である前国防大臣の李尚福は、まさに張氏の後任として軍事委員会装備発展部長を五年間務めた人間であるから、李尚福の装備発展部長昇進はやはり張氏の推薦によるものであると知られて、李は張氏人脈の軍人であることは明らかである。したがって、習主席による李尚福粛清は張氏にとっても大打撃であるだけでなく、装備発展部長としての李尚福の腐敗問題に対する追究はいずれかその前任の張氏の身に及んでくる可能性もある。 その一件から張氏は徐々に反習近平へ傾いてきているが、その痕跡の一つとして挙げられるのは、解放軍機関紙が事実上の「習近平批判」を展開した珍事にある。 今年7月27日付の解放軍機関紙「解放軍報」は、「いま、個別なところでは党内政治生活が正常さを失い、個人は党組織の上に凌駕し、家長制的なやり方で、鶴の一声で物事を決めるようなことが起きている」と、独裁者の習近平主席を暗に批判している論説を掲載した。これに続いて、8月10日付の解放軍報はまたも、「民主的な意思決定はすなわち党組織の集団的意思決定であって、個人的な独断による意思決定があってはならない」とする論評を掲載して露骨に習近平独裁を批判した。 そして今年8月の北戴河会議で長老たち中心の「反習近平政変」が起きたことは色々と伝わってきている中で、どうやら実力軍人の張氏は長老の支持と、習主席の軍粛清拡大を恐れている軍幹部の支持を受けて軍に対する習主席の実質上の指導権を排除した上で軍の掌握に成功しているのではないかと考えられる』、「8月10日付の解放軍報はまたも、「民主的な意思決定はすなわち党組織の集団的意思決定であって、個人的な独断による意思決定があってはならない」とする論評を掲載して露骨に習近平独裁を批判した。 そして今年8月の北戴河会議で長老たち中心の「反習近平政変」が起きたことは色々と伝わってきている中で、どうやら実力軍人の張氏は長老の支持と、習主席の軍粛清拡大を恐れている軍幹部の支持を受けて軍に対する習主席の実質上の指導権を排除した上で軍の掌握に成功しているのではないかと考えられる」、なるほど。
・『軍でも政府でも習近平はお飾りに ただし、習氏は依然として共産党総書記・軍事委員会主席である以上、張氏に掌握された軍は今後においても、少なくとも形的には習主席の「指導下」にある体裁をとり、習主席をいわば「飾り物」に祭り上げておきながら軍独自の路線を自主的に走ることとなろう。 その一方、習主席のもう一人の側近であった李強首相も今、習氏から離反して独自路線を走り始めているから、3期目の習近平政権は早くも空中分解の局面を迎えている様相である。 ただし権力闘争の激化が双方の共倒れと政権そのものの崩壊をもたらす危険性もあるから、おそらく2027年秋の党大会開催までは、共産党指導部は習氏を名目上の最高指導者として担ぎながら、「軍は張又侠、政府は李強首相」という形で政権運営を行なっていくことになろう。しかしそれでは、3期目の満了に伴う習近平政権の終焉は現実味を帯びてきているのである。 【つづきを読む】『中国の権力闘争がさらに激化!習近平主席の猜疑心を煽る…ベトナムが李強首相に与えた「国賓待遇」の波紋』』、「張氏に掌握された軍は今後においても、少なくとも形的には習主席の「指導下」にある体裁をとり、習主席をいわば「飾り物」に祭り上げておきながら軍独自の路線を自主的に走ることとなろう。 その一方、習主席のもう一人の側近であった李強首相も今、習氏から離反して独自路線を走り始めているから、3期目の習近平政権は早くも空中分解の局面を迎えている様相である・・・2027年秋の党大会開催までは、共産党指導部は習氏を名目上の最高指導者として担ぎながら、「軍は張又侠、政府は李強首相」という形で政権運営を行なっていくことになろう。しかしそれでは、3期目の満了に伴う習近平政権の終焉は現実味を帯びてきているのである」、なるほど。
次に、10月26日付け現代ビジネスが掲載した評論家の石 平氏による「中国の権力闘争がさらに激化!習近平主席の猜疑心を煽る…ベトナムが李強首相に与えた「国賓待遇」の波紋」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/139907?imp=0
・『異例! なんで公安部トップが天津を経済視察 10月16日、中国の新華社通信が次のニュ=スを伝えた。15日、16日の両日、中国公安部長の王小洪氏は、共産党中央書記処書記、国務委員の肩書で直轄市の天津市で「経済の高品質発展」について視察を行ったという。 視察中、王氏は関連企業を訪れ、当面の経済情勢と経済工作に関する習近平主席の重要講話精神の学習・貫徹を呼びかけた。同時に彼は、内需の拡大、経済構造の向上、全国統一大市場の構築などについて語り、それらの重要性を強調したという。 王氏は国務委員の一人ではあるが、本職が公安部長であって、全国の公安警察の総責任者だ。国務院における彼の役割分担はあくまでも公安や治安維持である。したがって彼の立場と仕事は本来、「経済」とは何の関係もない。公安責任者が地方で企業を視察して「内需の拡大、経済構造の向上」を語るのはまさに前代未聞の大珍事、荒唐無稽でさえある』、「中国公安部長の王小洪氏は、共産党中央書記処書記、国務委員の肩書で直轄市の天津市で「経済の高品質発展」について視察を行ったという。 視察中、王氏は関連企業を訪れ、当面の経済情勢と経済工作に関する習近平主席の重要講話精神の学習・貫徹を呼びかけた。同時に彼は、内需の拡大、経済構造の向上、全国統一大市場の構築などについて語り、それらの重要性を強調したという。 王氏は国務委員の一人ではあるが、本職が公安部長であって、全国の公安警察の総責任者だ。国務院における彼の役割分担はあくまでも公安や治安維持である・・・公安責任者が地方で企業を視察して「内需の拡大、経済構造の向上」を語るのはまさに前代未聞の大珍事、荒唐無稽でさえある」、なるほど。
・『習近平人脈の中核中の中核 王氏の経歴をみれば、彼が1984年から2013年までにずっと福建省で公安警察の仕事に従事していたが、習近平主席は1990年から96年までに福州市党委員会書記を務めた時、王氏が福州市公安副局長・局長を歴任し、習氏直轄の部下として仕え、それ以来、習氏の側近の一人となった。 そして2012年秋の習近平政権成立後、王氏はまず河南省公安庁長に昇進し、2015年には北京公安局長に転任、16年からは公安部副部長、2022年には公安部長に昇進して全国の公安警察のトップとなって、習主席の公安警察掌握の要となった。 その一方、王氏は習主席一番側近の政治局常務委員の蔡奇と並んで、習近平の福建省勤務時代からの「譜代側近」として、今や習政権の一番中枢の「福建組」の核心人物の一人でもある』、「王氏の経歴をみれば、彼が1984年から2013年までにずっと福建省で公安警察の仕事に従事していたが、習近平主席は1990年から96年までに福州市党委員会書記を務めた時、王氏が福州市公安副局長・局長を歴任し、習氏直轄の部下として仕え、それ以来、習氏の側近の一人となった。 そして2012年秋の習近平政権成立後、王氏はまず河南省公安庁長に昇進し・・・2022年には公安部長に昇進して全国の公安警察のトップとなって、習主席の公安警察掌握の要となった・・・習近平の福建省勤務時代からの「譜代側近」として、今や習政権の一番中枢の「福建組」の核心人物の一人でもある」、なるほど。
・『他に信頼できる側近がいない!? このような背景からは、公安警察トップの王氏が突如、天津に現れて、畑違いの「経済視察」を行ったことの理由がある程度分かってくる。 つまり、本来は習主席の側近であるはずの李強首相が経済運営の問題上、習主席と悉く対立している中で、習主席は李首相を制する切り札として、国務委員でもある公安トップの王氏に経済運営に関与させることによって、李首相の仕事を邪魔し徹底的に牽制する魂胆であろう。 そしてそのことは、習主席と李首相との信頼関係が完全に崩壊したことを意味する一方、習主席は今、蔡奇や王小洪など数名の福建時代からの「譜代側近」以外に、もう誰も信頼できなくなっていることを意味する。 信頼できる人が数名しかいないから、習主席はやむを得ず、公安一筋の王氏に無理やり「経済」を語らせ、経済運営にまで関与させようとしているが、これほど荒唐無稽なことは逆に、習近平政権は完全に行き詰まって末期症状を呈していることを示している。そして公安警察トップが経済運営に口出しするようでは、中国経済自体は地獄入りする以外にないのであろう』、「本来は習主席の側近であるはずの李強首相が経済運営の問題上、習主席と悉く対立している中で、習主席は李首相を制する切り札として、国務委員でもある公安トップの王氏に経済運営に関与させることによって、李首相の仕事を邪魔し徹底的に牽制する魂胆であろう・・・公安一筋の王氏に無理やり「経済」を語らせ、経済運営にまで関与させようとしているが、これほど荒唐無稽なことは逆に、習近平政権は完全に行き詰まって末期症状を呈していることを示している。そして公安警察トップが経済運営に口出しするようでは、中国経済自体は地獄入りする以外にないのであろう」、なるほど。
・『もはやベトナムが李強を「元首」扱い 一方、渦中の人物である李首相の方でも最近、次のような興味深い動きがあった。今月12日と13日の両日、ラオスでの国際会議参加を終えた彼はその足でハノイへ行き、二日間の日程でベトナムに対する公式訪問を行った。訪問での首脳会談の中には特に注目すべきところは特にないが、意外だったのは、ベトナム側の李首相に対する異例な厚遇ぶりである。 012日の夕刻、李首相がハノイ空港に到着した時、ベトナムの副首相兼外相は飛行機の下で彼を迎えた。そしてその晩のうち、李首相はベトナム共産党中央本部へ赴き、ベトナム共産党総書記・国家主席トー・ラムと会談した。 ベトナムでは総書記・国家主席は国家元首の立場であって、中国首相のカウンターパートナーではなく、本来、李首相と会談しなくても良い。たとえ会談があるとしても、李首相の表敬訪問を受ける形での儀礼的な会談で済ませて良い。しかし今回、ベトナム主席は高官たちを率いて李首相をトップとする中国側と長方形のテーブルを挟む形での正式会談を行った。それは普通、対等な立場にある首脳同士の会談の様式である。 そして翌日の13日、今度はベトナム首相は李首相の歓迎式典をとり行った後に首脳会談。午後には、ベトナムの国会主席(議長)が李首相と会談した。 このようして、李首相訪越の二日間において、ベトナム側は党・国家・政府・国会のトップが総出の形で彼と会談したわけである。それは普段、習近平主席やバイデン大統領などの外国元首に対する首脳外交の行い方であって、中国の首相であるはずの李首相に事実上の国賓待遇を与えたのである』、「ベトナムでは総書記・国家主席は国家元首の立場であって、中国首相のカウンターパートナーではなく、本来、李首相と会談しなくても良い。たとえ会談があるとしても、李首相の表敬訪問を受ける形での儀礼的な会談で済ませて良い。しかし今回、ベトナム主席は高官たちを率いて李首相をトップとする中国側と長方形のテーブルを挟む形での正式会談を行った。それは普通、対等な立場にある首脳同士の会談の様式である。 そして翌日の13日、今度はベトナム首相は李首相の歓迎式典をとり行った後に首脳会談。午後には、ベトナムの国会主席(議長)が李首相と会談した。 このようして、李首相訪越の二日間において、ベトナム側は党・国家・政府・国会のトップが総出の形で彼と会談したわけである。それは普段、習近平主席やバイデン大統領などの外国元首に対する首脳外交の行い方であって、中国の首相であるはずの李首相に事実上の国賓待遇を与えた」、ベトナム側の狙いは何なのだろう。
・『猜疑心の強い習近平は…… 習主席と李首相との確執がすでに表面化している中で、ベトナム側は一体どうして、習主席の不興を買うかもしれないことも覚悟の上、李首相に余分な厚遇を与えたのか。 ここに出てくる可能性の一つはすなわち、同じ共産党一党独裁国家として共産党流の権力闘争をよく知っているベトナムは、最近の動向から李首相の台頭が不可避と読んで、将来有望の李首相に恩を売っておく判断となっているのではないか。 つまり、李首相に対する異例な厚遇の背後には、中国中枢部の権力闘争の行方に対するベトナム側の読みと国益からの打算があると思われるが、その一方、ベトナム側のこの挙動は逆、習近平vs.李強の確執に火を注ぐことにもなりかねない。 猜疑心が強く了見の狭い習主席は、子分の李首相がベトナムで国家主席の自分と同様な待遇を受けたことに対し不快ないし嫉妬を感じてしまう可能性が十分にある。そして、その一方、李首相が国際的に評価が高まることに対し、独裁者の習主席はそれが自分の地位に対する潜在的脅威だと捉えて警戒心を強めることもある。 ベトナムが余計なことをしてくれたことで、習主席と李首相との確執がむしろ深まる方向へと向かい、いよいよ「佳境」に入っていく様相である』、「李首相に対する異例な厚遇の背後には、中国中枢部の権力闘争の行方に対するベトナム側の読みと国益からの打算があると思われるが、その一方、ベトナム側のこの挙動は逆、習近平vs.李強の確執に火を注ぐことにもなりかねない。 猜疑心が強く了見の狭い習主席は、子分の李首相がベトナムで国家主席の自分と同様な待遇を受けたことに対し不快ないし嫉妬を感じてしまう可能性が十分にある・・・ベトナムが余計なことをしてくれたことで、習主席と李首相との確執がむしろ深まる方向へと向かい、いよいよ「佳境」に入っていく様相である」、どういう形で決着するのだろう。
第三に、昨年12月28日付け現代ビジネスが掲載した「林愛華氏による「もはや滑稽! 14億国民も呆れた習近平の「皇帝ぶりっこ」 林愛華「中南海ディープスロート」第13回」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/122004?imp=0
・『香港特別行政区長官との会談で異変 香港の李家超特別行政区長官が北京へ来て、12月18日に中南海で、習近平主席に政務報告した。会談の出席者などの変化には、大きなメッセージが隠されている。 なんと会見の場で、李家超長官の向かいに座っていたのは、李強国務院総理(首相)だった。慣例に従うなら、彼がその場にいるはずはない。 本来であれば、香港特別行政区長官が北京で政務報告する場合、まず国務院総理に会い、そのあと、国家主席に報告してきた。それは香港が特別行政区で、中国と対等な関係にあることを示していた。 昨年まではルール通りだった。すなわち、2022年12月22日午後に上京した李家超行政長官は、まず李克強総理(当時)と会い、翌日の23日午後に習近平主席と会って、それぞれに報告した。 しかし、今年はまったく違った。報告は一回だけとなり、李強総理との単独会見はなくなった。 異変と言ってよいだろう。李強総理は習近平主席が李家超長官の報告を聞く会見の一列席者にされたのだ。 今回は、中国共産党中央委員会書記処の蔡奇筆頭書記(党中央弁公庁主任)、中共中央統戦部の石泰峰部長、中央政法委員会の陳文清書記も、初めて加わった。ほかには丁薛祥筆頭副総理と、中共中央港澳(香港マカオ)弁公室の夏宝龍主任がいた。李強総理を含めて、計6人だった。 しかし昨年は、当時の韓正副総理、中央弁公庁の丁薛祥主任、中共中央港澳弁公室の夏宝龍主任などが同席したと報道されている(光明日報 2022年12月24日付)。今年の中国政府側の同席者の数が、第19回中国共産党代表大会(2017年)以来、最も多かったと「北(京)青(年報)政知新媒体」は報道した』、「報告は一回だけとなり、李強総理との単独会見はなくなった。 異変と言ってよいだろう。李強総理は習近平主席が李家超長官の報告を聞く会見の一列席者にされたのだ」、なるほど。
・『会談から消えた外交メンバー 異変のその2は、外交関係者が同席しなかったことだ。以前は香港の特別行政長官との会見の場には、必ず外交関係の長がいた。例えば楊潔篪や王毅など歴代外交部長(外相)が常連であった。しかし、今回から外交メンバーがいなくなり、中共中央書記処の蔡奇筆頭書記などが初めて同席した。 香港は、かつてのような中国との対等な関係ではなくなり、完全に中国に従属する一地域に成り下がった。李家超長官はもはや、ひとつの省のトップにすぎなかったのだ。 昨年と同様、今年の香港特別長官との会見でも、習近平主席は帝王を象徴する龍の椅子には座らなかった。しかし、2021年12月22日に当時の香港特別行政長官の林鄭月蛾と会見したときには、龍が彫刻された椅子に座って、帝王のカラーを象徴する黄色のコップを使ったことで、話題になった。習近平主席が昔の皇帝となったように見せていたからだ。 騒ぎになって、翌年は龍の椅子はなくなったが、黄色のコップはそのまま今年も使われた。椅子を変えたのは、習主席も内外の世論を気にしているのであろう。 習主席が帝王趣味にこだわっていることは、隠すことができない。2017年11月8日に、トランプ米大統領と夫人が訪中した。習主席は贅を尽くして一行を接待した。故宮を独占した豪華な茶会、贅沢な宴会、宮廷を再現した京劇鑑賞など、習主席はその帝王ぶりたいという「美学」を実現させたのだ。 故宮で外国の首脳を招待する。これは、「建国の父」と呼ばれた毛沢東氏をはじめとする歴代指導者たちにもできなかったことだ』、「習主席が帝王趣味にこだわっていることは、隠すことができない。2017年11月8日に、トランプ米大統領と夫人が訪中した。習主席は贅を尽くして一行を接待した。故宮を独占した豪華な茶会、贅沢な宴会、宮廷を再現した京劇鑑賞など、習主席はその帝王ぶりたいという「美学」を実現させたのだ。 故宮で外国の首脳を招待する。これは、「建国の父」と呼ばれた毛沢東氏をはじめとする歴代指導者たちにもできなかったことだ」、なるほど。
・『習近平の「帝国趣味」 2014年には、APEC(アジア太平洋経済協力会議)の首脳会議が、北京で行われた。宴会で使った食器セットは68種類もあり、全部黄色だった。それらの食器セットは「帝王黄」と名付けられたと報道されている。清朝の中国では、黄色は皇帝しか使えない色だった。 2015年から、習氏が香港特別行政区長官と会見するときには、龍の椅子を愛用してきた。2021年からその椅子のほかに「帝王黄」のコップも加えて、不評を買った。それで習主席は、龍の椅子を封印せざるを得なくなった。 習主席は帝王文化にこだわり過ぎで、ますます国民との距離が乖離しているように見える。彼が中国の最高指導者になって以来、洪水やコロナなどの自然災害の際、素早く現地を見舞ったことは一度もない。被災地を訪ねるのは、いつも安全になった数か月後だった。前任者たちの時代ではあり得なかったことだ。 習氏はこのようなやり方で、自分を神格化しようと考えているのかもしれないが、国民の間ではかなり不評だった。江沢民元主席も胡錦涛前主席も、大災害の後はすぐに現地を視察した。それらの写真が災害の後によくネットで流れるのは、習主席に対する不満の現れだ』、「習主席は帝王文化にこだわり過ぎで、ますます国民との距離が乖離しているように見える。彼が中国の最高指導者になって以来、洪水やコロナなどの自然災害の際、素早く現地を見舞ったことは一度もない。被災地を訪ねるのは、いつも安全になった数か月後だった。前任者たちの時代ではあり得なかったことだ」、なるほど。
・『一枚岩ではない政権 ここまでして独裁体制にこだわる習主席だが、本当は自分の地位に対する不安が極めて大きい。12月22日、習主席が主催して中共中央政治局の民主生活会が開かれた。新華社の報道からは、中共中央政治局の内部が一枚板ではないことが読み取れる。 「習氏は中央政治局のすべての同志に自省した発言をさせ、評価し、要求して、総括した。今度の中央政治局の民主生活会の成果は大きい。政治の健康診断をし、政治の埃(ほこり)をふき取り、政治の魂を浄化する目的を達した」(新華社12月23日付) 「思想の一致は、政治の一致と行動の一致の基礎だ。政治面と行動面で党中央と高度な一致を保つこと。特に思想を党中央と高度な一致をすることが最重要だと、習氏は指摘した」(新華社12月23日付) 筆者は思わず噴き出した。民主生活会を利用して、最高幹部の一人一人に自省、裏返して言えば「忠誠」の言葉を面と向かって言わせている。思想も行動も必ず党中央(習近平総書記)に一致すべきと強要した。 習近平をここまでさせた不安の大きさをどう考えるべきだろう。中央政治局委員は全部で24名いる。そのメンバーたちに面と向かって、自分に対する忠誠心を誓わせた上に、思想や行動を党中央、つまり自分自身に合わせるように求めた。ここまで言わせなければ、安心できないのだ。 12月25日、「財新網」が社説を掲載したが、すぐ消えた。タイトルは「重温実事求是思想路線(事実を重んじる思想路線を再び考えよう)」。文革の弊害を指摘して、暗に習氏の路線が中国経済を後退させ、国民生活を貧しくしたと批判したのだ。 社説は掲載された後、すぐに削除されたが、ネット上にはコピーが出回っている。その社説はすぐ大きな話題となり、ウォール・ストリート・ジャーナルの「今日のウォールストリートのチャンネル」及び海外の中国系マスコミが報じている。 政権の中枢にいても安心できないだけではなく、統制しているはずのメディアすら逆らっている。2024年を迎える習氏の内心は穏やかではないだろう』、「民主生活会を利用して、最高幹部の一人一人に自省、裏返して言えば「忠誠」の言葉を面と向かって言わせている。思想も行動も必ず党中央(習近平総書記)に一致すべきと強要した。 習近平をここまでさせた不安の大きさをどう考えるべきだろう。中央政治局委員は全部で24名いる。そのメンバーたちに面と向かって、自分に対する忠誠心を誓わせた上に、思想や行動を党中央、つまり自分自身に合わせるように求めた。ここまで言わせなければ、安心できないのだ・・・12月25日、「財新網」が社説を掲載したが、すぐ消えた。タイトルは「重温実事求是思想路線(事実を重んじる思想路線を再び考えよう)」。文革の弊害を指摘して、暗に習氏の路線が中国経済を後退させ、国民生活を貧しくしたと批判したのだ。 社説は掲載された後、すぐに削除されたが、ネット上にはコピーが出回っている。その社説はすぐ大きな話題となり、ウォール・ストリート・ジャーナルの「今日のウォールストリートのチャンネル」及び海外の中国系マスコミが報じている・・・政権の中枢にいても安心できないだけではなく、統制しているはずのメディアすら逆らっている。2024年を迎える習氏の内心は穏やかではないだろう」、ここまでするのかと驚かされたが、末期的な印象も受ける。
先ずは、本年10月30日付け現代ビジネスが掲載した評論家の石 平氏による「習近平はもうおしまいなのか…中国人民解放軍で「静かなクーデター」!粛清に反抗してとうとう制服組トップが軍を掌握」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/140302?imp=0
・『張又侠、踊り出る 今年10月に入ってからの中国軍上層部の動きを時間列順に追っていくと、大きな異変が静かに起きていることに気がつく。解放軍に対する習近平主席の指揮権は実質上解除され、それに取って代わって、共産党中央軍事委員会筆頭副主席で制服組のトップの張又侠氏がすでに軍の掌握に成功している模様である。 まずは10月14日、15日、解放軍の「全軍軍事理論工作会議」が北京で開かれた。習主席がその間、福建省などで地方視察中であって会議に出席しなかった中で、前述の張又侠氏は会議を主宰し講話を行なった。 会議は一応、「軍事理論の構築」に関する習主席の「重要指示」を受けて開催されたものではある。しかし、解放軍各軍種と五大戦区のトップたちが揃って参加する重要会議に習主席が欠席するのはやはり異様なことである。特にそれは「軍事理論」に関する全軍会議であれば、軍の方向性を示す立場の習主席こそが本来、自ら参加して仕切るべき会議のはずである。 ところが今回、全軍会議の事実上の中心人物となったのは張氏である。習主席はその間、緊急性の全くない地方視察に出かけているが、その理由に関しては、習主席は自分が軍会議に呼ばれなかったことを覆い隠すためにわざと地方に出かけたのではないかとの観測も成り立つ』、「解放軍に対する習近平主席の指揮権は実質上解除され、それに取って代わって、共産党中央軍事委員会筆頭副主席で制服組のトップの張又侠氏がすでに軍の掌握に成功している模様である・・・解放軍の「全軍軍事理論工作会議」が北京で開かれた。習主席がその間、福建省などで地方視察中であって会議に出席しなかった中で、前述の張又侠氏は会議を主宰し講話を行なった。 会議は一応、「軍事理論の構築」に関する習主席の「重要指示」を受けて開催されたものではある。しかし、解放軍各軍種と五大戦区のトップたちが揃って参加する重要会議に習主席が欠席するのはやはり異様なことである。特にそれは「軍事理論」に関する全軍会議であれば、軍の方向性を示す立場の習主席こそが本来、自ら参加して仕切るべき会議のはずである。 ところが今回、全軍会議の事実上の中心人物となったのは張氏である。習主席はその間、緊急性の全くない地方視察に出かけているが、その理由に関しては、習主席は自分が軍会議に呼ばれなかったことを覆い隠すためにわざと地方に出かけたのではないかとの観測も成り立つ」、これは大スクープだ。
・『習主席の指揮権は排除 以上は、10月に入ってから、軍活動と軍外交における張氏の突出ぶりであるが、実はそれとは対照的に、もう一人の軍事委員会副主席である何衛東氏は10月に入ってから全く公の場に出てこないという異常事態も生じてきている。 何氏が公の活動に出たのは9月13日、北京で開催された安全保障関係の国際フォーラムに参加しに来た外国の防衛関係者と会談した時である。しかしそれ以後は、彼のいっさい動静が伝わっていない。特に、前述の二つの張氏主宰の全軍会議には、同じ軍事委員会副主席の何氏が参加していないのはもはや完全なる異常事態。普通ならばそれは、彼の失脚さえ意味するものである。 何氏という人物は、習近平独裁体制が完全確立した2022年10月の党大会で習主席によって政治局員・軍事委員会副主席に大抜擢された軍人であり、まさに軍における習主席側近の一人である。しかし今、この何氏が張氏によって軍指導部の重要会議から排除されたのであれば、それは当然、張氏はすでに、軍における習主席の指揮権を排除して軍の掌握に成功していることを示している』、「何氏という人物は、習近平独裁体制が完全確立した2022年10月の党大会で習主席によって政治局員・軍事委員会副主席に大抜擢された軍人であり、まさに軍における習主席側近の一人である。しかし今、この何氏が張氏によって軍指導部の重要会議から排除されたのであれば、それは当然、張氏はすでに、軍における習主席の指揮権を排除して軍の掌握に成功していることを示している」、なるほど。
・昨年からの軍幹部粛清で習近平との関係に亀裂 張氏は解放軍古参将軍を父親に持ち、1979年の対ベトナム国境戦争に参戦したという実戦体験の実力派軍人だ。習近平政権以前は大軍区の瀋陽軍区の司令官にまで上り詰めたが、習近平政権になってから五年間にわたって解放軍総装備部部長・中央軍事委員会装備発展部部長を勤めた。習政権の2期目には政治局員・軍事委員会副主席に昇進して現代に至る。 こうしてみると、張氏は本来、習主席と同様に共産党高官を父親にもつ「太子党」として主席とは緊密な関係にあり、習主席の軍掌握の要でもあり続けたが、二人の関係に亀裂が生じてきたきっかけは、昨年から始まった習主席主導の腐敗摘発としての軍粛清であると考えられる。 粛清された大物軍人の一人である前国防大臣の李尚福は、まさに張氏の後任として軍事委員会装備発展部長を五年間務めた人間であるから、李尚福の装備発展部長昇進はやはり張氏の推薦によるものであると知られて、李は張氏人脈の軍人であることは明らかである。したがって、習主席による李尚福粛清は張氏にとっても大打撃であるだけでなく、装備発展部長としての李尚福の腐敗問題に対する追究はいずれかその前任の張氏の身に及んでくる可能性もある。 その一件から張氏は徐々に反習近平へ傾いてきているが、その痕跡の一つとして挙げられるのは、解放軍機関紙が事実上の「習近平批判」を展開した珍事にある。 今年7月27日付の解放軍機関紙「解放軍報」は、「いま、個別なところでは党内政治生活が正常さを失い、個人は党組織の上に凌駕し、家長制的なやり方で、鶴の一声で物事を決めるようなことが起きている」と、独裁者の習近平主席を暗に批判している論説を掲載した。これに続いて、8月10日付の解放軍報はまたも、「民主的な意思決定はすなわち党組織の集団的意思決定であって、個人的な独断による意思決定があってはならない」とする論評を掲載して露骨に習近平独裁を批判した。 そして今年8月の北戴河会議で長老たち中心の「反習近平政変」が起きたことは色々と伝わってきている中で、どうやら実力軍人の張氏は長老の支持と、習主席の軍粛清拡大を恐れている軍幹部の支持を受けて軍に対する習主席の実質上の指導権を排除した上で軍の掌握に成功しているのではないかと考えられる』、「8月10日付の解放軍報はまたも、「民主的な意思決定はすなわち党組織の集団的意思決定であって、個人的な独断による意思決定があってはならない」とする論評を掲載して露骨に習近平独裁を批判した。 そして今年8月の北戴河会議で長老たち中心の「反習近平政変」が起きたことは色々と伝わってきている中で、どうやら実力軍人の張氏は長老の支持と、習主席の軍粛清拡大を恐れている軍幹部の支持を受けて軍に対する習主席の実質上の指導権を排除した上で軍の掌握に成功しているのではないかと考えられる」、なるほど。
・『軍でも政府でも習近平はお飾りに ただし、習氏は依然として共産党総書記・軍事委員会主席である以上、張氏に掌握された軍は今後においても、少なくとも形的には習主席の「指導下」にある体裁をとり、習主席をいわば「飾り物」に祭り上げておきながら軍独自の路線を自主的に走ることとなろう。 その一方、習主席のもう一人の側近であった李強首相も今、習氏から離反して独自路線を走り始めているから、3期目の習近平政権は早くも空中分解の局面を迎えている様相である。 ただし権力闘争の激化が双方の共倒れと政権そのものの崩壊をもたらす危険性もあるから、おそらく2027年秋の党大会開催までは、共産党指導部は習氏を名目上の最高指導者として担ぎながら、「軍は張又侠、政府は李強首相」という形で政権運営を行なっていくことになろう。しかしそれでは、3期目の満了に伴う習近平政権の終焉は現実味を帯びてきているのである。 【つづきを読む】『中国の権力闘争がさらに激化!習近平主席の猜疑心を煽る…ベトナムが李強首相に与えた「国賓待遇」の波紋』』、「張氏に掌握された軍は今後においても、少なくとも形的には習主席の「指導下」にある体裁をとり、習主席をいわば「飾り物」に祭り上げておきながら軍独自の路線を自主的に走ることとなろう。 その一方、習主席のもう一人の側近であった李強首相も今、習氏から離反して独自路線を走り始めているから、3期目の習近平政権は早くも空中分解の局面を迎えている様相である・・・2027年秋の党大会開催までは、共産党指導部は習氏を名目上の最高指導者として担ぎながら、「軍は張又侠、政府は李強首相」という形で政権運営を行なっていくことになろう。しかしそれでは、3期目の満了に伴う習近平政権の終焉は現実味を帯びてきているのである」、なるほど。
次に、10月26日付け現代ビジネスが掲載した評論家の石 平氏による「中国の権力闘争がさらに激化!習近平主席の猜疑心を煽る…ベトナムが李強首相に与えた「国賓待遇」の波紋」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/139907?imp=0
・『異例! なんで公安部トップが天津を経済視察 10月16日、中国の新華社通信が次のニュ=スを伝えた。15日、16日の両日、中国公安部長の王小洪氏は、共産党中央書記処書記、国務委員の肩書で直轄市の天津市で「経済の高品質発展」について視察を行ったという。 視察中、王氏は関連企業を訪れ、当面の経済情勢と経済工作に関する習近平主席の重要講話精神の学習・貫徹を呼びかけた。同時に彼は、内需の拡大、経済構造の向上、全国統一大市場の構築などについて語り、それらの重要性を強調したという。 王氏は国務委員の一人ではあるが、本職が公安部長であって、全国の公安警察の総責任者だ。国務院における彼の役割分担はあくまでも公安や治安維持である。したがって彼の立場と仕事は本来、「経済」とは何の関係もない。公安責任者が地方で企業を視察して「内需の拡大、経済構造の向上」を語るのはまさに前代未聞の大珍事、荒唐無稽でさえある』、「中国公安部長の王小洪氏は、共産党中央書記処書記、国務委員の肩書で直轄市の天津市で「経済の高品質発展」について視察を行ったという。 視察中、王氏は関連企業を訪れ、当面の経済情勢と経済工作に関する習近平主席の重要講話精神の学習・貫徹を呼びかけた。同時に彼は、内需の拡大、経済構造の向上、全国統一大市場の構築などについて語り、それらの重要性を強調したという。 王氏は国務委員の一人ではあるが、本職が公安部長であって、全国の公安警察の総責任者だ。国務院における彼の役割分担はあくまでも公安や治安維持である・・・公安責任者が地方で企業を視察して「内需の拡大、経済構造の向上」を語るのはまさに前代未聞の大珍事、荒唐無稽でさえある」、なるほど。
・『習近平人脈の中核中の中核 王氏の経歴をみれば、彼が1984年から2013年までにずっと福建省で公安警察の仕事に従事していたが、習近平主席は1990年から96年までに福州市党委員会書記を務めた時、王氏が福州市公安副局長・局長を歴任し、習氏直轄の部下として仕え、それ以来、習氏の側近の一人となった。 そして2012年秋の習近平政権成立後、王氏はまず河南省公安庁長に昇進し、2015年には北京公安局長に転任、16年からは公安部副部長、2022年には公安部長に昇進して全国の公安警察のトップとなって、習主席の公安警察掌握の要となった。 その一方、王氏は習主席一番側近の政治局常務委員の蔡奇と並んで、習近平の福建省勤務時代からの「譜代側近」として、今や習政権の一番中枢の「福建組」の核心人物の一人でもある』、「王氏の経歴をみれば、彼が1984年から2013年までにずっと福建省で公安警察の仕事に従事していたが、習近平主席は1990年から96年までに福州市党委員会書記を務めた時、王氏が福州市公安副局長・局長を歴任し、習氏直轄の部下として仕え、それ以来、習氏の側近の一人となった。 そして2012年秋の習近平政権成立後、王氏はまず河南省公安庁長に昇進し・・・2022年には公安部長に昇進して全国の公安警察のトップとなって、習主席の公安警察掌握の要となった・・・習近平の福建省勤務時代からの「譜代側近」として、今や習政権の一番中枢の「福建組」の核心人物の一人でもある」、なるほど。
・『他に信頼できる側近がいない!? このような背景からは、公安警察トップの王氏が突如、天津に現れて、畑違いの「経済視察」を行ったことの理由がある程度分かってくる。 つまり、本来は習主席の側近であるはずの李強首相が経済運営の問題上、習主席と悉く対立している中で、習主席は李首相を制する切り札として、国務委員でもある公安トップの王氏に経済運営に関与させることによって、李首相の仕事を邪魔し徹底的に牽制する魂胆であろう。 そしてそのことは、習主席と李首相との信頼関係が完全に崩壊したことを意味する一方、習主席は今、蔡奇や王小洪など数名の福建時代からの「譜代側近」以外に、もう誰も信頼できなくなっていることを意味する。 信頼できる人が数名しかいないから、習主席はやむを得ず、公安一筋の王氏に無理やり「経済」を語らせ、経済運営にまで関与させようとしているが、これほど荒唐無稽なことは逆に、習近平政権は完全に行き詰まって末期症状を呈していることを示している。そして公安警察トップが経済運営に口出しするようでは、中国経済自体は地獄入りする以外にないのであろう』、「本来は習主席の側近であるはずの李強首相が経済運営の問題上、習主席と悉く対立している中で、習主席は李首相を制する切り札として、国務委員でもある公安トップの王氏に経済運営に関与させることによって、李首相の仕事を邪魔し徹底的に牽制する魂胆であろう・・・公安一筋の王氏に無理やり「経済」を語らせ、経済運営にまで関与させようとしているが、これほど荒唐無稽なことは逆に、習近平政権は完全に行き詰まって末期症状を呈していることを示している。そして公安警察トップが経済運営に口出しするようでは、中国経済自体は地獄入りする以外にないのであろう」、なるほど。
・『もはやベトナムが李強を「元首」扱い 一方、渦中の人物である李首相の方でも最近、次のような興味深い動きがあった。今月12日と13日の両日、ラオスでの国際会議参加を終えた彼はその足でハノイへ行き、二日間の日程でベトナムに対する公式訪問を行った。訪問での首脳会談の中には特に注目すべきところは特にないが、意外だったのは、ベトナム側の李首相に対する異例な厚遇ぶりである。 012日の夕刻、李首相がハノイ空港に到着した時、ベトナムの副首相兼外相は飛行機の下で彼を迎えた。そしてその晩のうち、李首相はベトナム共産党中央本部へ赴き、ベトナム共産党総書記・国家主席トー・ラムと会談した。 ベトナムでは総書記・国家主席は国家元首の立場であって、中国首相のカウンターパートナーではなく、本来、李首相と会談しなくても良い。たとえ会談があるとしても、李首相の表敬訪問を受ける形での儀礼的な会談で済ませて良い。しかし今回、ベトナム主席は高官たちを率いて李首相をトップとする中国側と長方形のテーブルを挟む形での正式会談を行った。それは普通、対等な立場にある首脳同士の会談の様式である。 そして翌日の13日、今度はベトナム首相は李首相の歓迎式典をとり行った後に首脳会談。午後には、ベトナムの国会主席(議長)が李首相と会談した。 このようして、李首相訪越の二日間において、ベトナム側は党・国家・政府・国会のトップが総出の形で彼と会談したわけである。それは普段、習近平主席やバイデン大統領などの外国元首に対する首脳外交の行い方であって、中国の首相であるはずの李首相に事実上の国賓待遇を与えたのである』、「ベトナムでは総書記・国家主席は国家元首の立場であって、中国首相のカウンターパートナーではなく、本来、李首相と会談しなくても良い。たとえ会談があるとしても、李首相の表敬訪問を受ける形での儀礼的な会談で済ませて良い。しかし今回、ベトナム主席は高官たちを率いて李首相をトップとする中国側と長方形のテーブルを挟む形での正式会談を行った。それは普通、対等な立場にある首脳同士の会談の様式である。 そして翌日の13日、今度はベトナム首相は李首相の歓迎式典をとり行った後に首脳会談。午後には、ベトナムの国会主席(議長)が李首相と会談した。 このようして、李首相訪越の二日間において、ベトナム側は党・国家・政府・国会のトップが総出の形で彼と会談したわけである。それは普段、習近平主席やバイデン大統領などの外国元首に対する首脳外交の行い方であって、中国の首相であるはずの李首相に事実上の国賓待遇を与えた」、ベトナム側の狙いは何なのだろう。
・『猜疑心の強い習近平は…… 習主席と李首相との確執がすでに表面化している中で、ベトナム側は一体どうして、習主席の不興を買うかもしれないことも覚悟の上、李首相に余分な厚遇を与えたのか。 ここに出てくる可能性の一つはすなわち、同じ共産党一党独裁国家として共産党流の権力闘争をよく知っているベトナムは、最近の動向から李首相の台頭が不可避と読んで、将来有望の李首相に恩を売っておく判断となっているのではないか。 つまり、李首相に対する異例な厚遇の背後には、中国中枢部の権力闘争の行方に対するベトナム側の読みと国益からの打算があると思われるが、その一方、ベトナム側のこの挙動は逆、習近平vs.李強の確執に火を注ぐことにもなりかねない。 猜疑心が強く了見の狭い習主席は、子分の李首相がベトナムで国家主席の自分と同様な待遇を受けたことに対し不快ないし嫉妬を感じてしまう可能性が十分にある。そして、その一方、李首相が国際的に評価が高まることに対し、独裁者の習主席はそれが自分の地位に対する潜在的脅威だと捉えて警戒心を強めることもある。 ベトナムが余計なことをしてくれたことで、習主席と李首相との確執がむしろ深まる方向へと向かい、いよいよ「佳境」に入っていく様相である』、「李首相に対する異例な厚遇の背後には、中国中枢部の権力闘争の行方に対するベトナム側の読みと国益からの打算があると思われるが、その一方、ベトナム側のこの挙動は逆、習近平vs.李強の確執に火を注ぐことにもなりかねない。 猜疑心が強く了見の狭い習主席は、子分の李首相がベトナムで国家主席の自分と同様な待遇を受けたことに対し不快ないし嫉妬を感じてしまう可能性が十分にある・・・ベトナムが余計なことをしてくれたことで、習主席と李首相との確執がむしろ深まる方向へと向かい、いよいよ「佳境」に入っていく様相である」、どういう形で決着するのだろう。
第三に、昨年12月28日付け現代ビジネスが掲載した「林愛華氏による「もはや滑稽! 14億国民も呆れた習近平の「皇帝ぶりっこ」 林愛華「中南海ディープスロート」第13回」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/122004?imp=0
・『香港特別行政区長官との会談で異変 香港の李家超特別行政区長官が北京へ来て、12月18日に中南海で、習近平主席に政務報告した。会談の出席者などの変化には、大きなメッセージが隠されている。 なんと会見の場で、李家超長官の向かいに座っていたのは、李強国務院総理(首相)だった。慣例に従うなら、彼がその場にいるはずはない。 本来であれば、香港特別行政区長官が北京で政務報告する場合、まず国務院総理に会い、そのあと、国家主席に報告してきた。それは香港が特別行政区で、中国と対等な関係にあることを示していた。 昨年まではルール通りだった。すなわち、2022年12月22日午後に上京した李家超行政長官は、まず李克強総理(当時)と会い、翌日の23日午後に習近平主席と会って、それぞれに報告した。 しかし、今年はまったく違った。報告は一回だけとなり、李強総理との単独会見はなくなった。 異変と言ってよいだろう。李強総理は習近平主席が李家超長官の報告を聞く会見の一列席者にされたのだ。 今回は、中国共産党中央委員会書記処の蔡奇筆頭書記(党中央弁公庁主任)、中共中央統戦部の石泰峰部長、中央政法委員会の陳文清書記も、初めて加わった。ほかには丁薛祥筆頭副総理と、中共中央港澳(香港マカオ)弁公室の夏宝龍主任がいた。李強総理を含めて、計6人だった。 しかし昨年は、当時の韓正副総理、中央弁公庁の丁薛祥主任、中共中央港澳弁公室の夏宝龍主任などが同席したと報道されている(光明日報 2022年12月24日付)。今年の中国政府側の同席者の数が、第19回中国共産党代表大会(2017年)以来、最も多かったと「北(京)青(年報)政知新媒体」は報道した』、「報告は一回だけとなり、李強総理との単独会見はなくなった。 異変と言ってよいだろう。李強総理は習近平主席が李家超長官の報告を聞く会見の一列席者にされたのだ」、なるほど。
・『会談から消えた外交メンバー 異変のその2は、外交関係者が同席しなかったことだ。以前は香港の特別行政長官との会見の場には、必ず外交関係の長がいた。例えば楊潔篪や王毅など歴代外交部長(外相)が常連であった。しかし、今回から外交メンバーがいなくなり、中共中央書記処の蔡奇筆頭書記などが初めて同席した。 香港は、かつてのような中国との対等な関係ではなくなり、完全に中国に従属する一地域に成り下がった。李家超長官はもはや、ひとつの省のトップにすぎなかったのだ。 昨年と同様、今年の香港特別長官との会見でも、習近平主席は帝王を象徴する龍の椅子には座らなかった。しかし、2021年12月22日に当時の香港特別行政長官の林鄭月蛾と会見したときには、龍が彫刻された椅子に座って、帝王のカラーを象徴する黄色のコップを使ったことで、話題になった。習近平主席が昔の皇帝となったように見せていたからだ。 騒ぎになって、翌年は龍の椅子はなくなったが、黄色のコップはそのまま今年も使われた。椅子を変えたのは、習主席も内外の世論を気にしているのであろう。 習主席が帝王趣味にこだわっていることは、隠すことができない。2017年11月8日に、トランプ米大統領と夫人が訪中した。習主席は贅を尽くして一行を接待した。故宮を独占した豪華な茶会、贅沢な宴会、宮廷を再現した京劇鑑賞など、習主席はその帝王ぶりたいという「美学」を実現させたのだ。 故宮で外国の首脳を招待する。これは、「建国の父」と呼ばれた毛沢東氏をはじめとする歴代指導者たちにもできなかったことだ』、「習主席が帝王趣味にこだわっていることは、隠すことができない。2017年11月8日に、トランプ米大統領と夫人が訪中した。習主席は贅を尽くして一行を接待した。故宮を独占した豪華な茶会、贅沢な宴会、宮廷を再現した京劇鑑賞など、習主席はその帝王ぶりたいという「美学」を実現させたのだ。 故宮で外国の首脳を招待する。これは、「建国の父」と呼ばれた毛沢東氏をはじめとする歴代指導者たちにもできなかったことだ」、なるほど。
・『習近平の「帝国趣味」 2014年には、APEC(アジア太平洋経済協力会議)の首脳会議が、北京で行われた。宴会で使った食器セットは68種類もあり、全部黄色だった。それらの食器セットは「帝王黄」と名付けられたと報道されている。清朝の中国では、黄色は皇帝しか使えない色だった。 2015年から、習氏が香港特別行政区長官と会見するときには、龍の椅子を愛用してきた。2021年からその椅子のほかに「帝王黄」のコップも加えて、不評を買った。それで習主席は、龍の椅子を封印せざるを得なくなった。 習主席は帝王文化にこだわり過ぎで、ますます国民との距離が乖離しているように見える。彼が中国の最高指導者になって以来、洪水やコロナなどの自然災害の際、素早く現地を見舞ったことは一度もない。被災地を訪ねるのは、いつも安全になった数か月後だった。前任者たちの時代ではあり得なかったことだ。 習氏はこのようなやり方で、自分を神格化しようと考えているのかもしれないが、国民の間ではかなり不評だった。江沢民元主席も胡錦涛前主席も、大災害の後はすぐに現地を視察した。それらの写真が災害の後によくネットで流れるのは、習主席に対する不満の現れだ』、「習主席は帝王文化にこだわり過ぎで、ますます国民との距離が乖離しているように見える。彼が中国の最高指導者になって以来、洪水やコロナなどの自然災害の際、素早く現地を見舞ったことは一度もない。被災地を訪ねるのは、いつも安全になった数か月後だった。前任者たちの時代ではあり得なかったことだ」、なるほど。
・『一枚岩ではない政権 ここまでして独裁体制にこだわる習主席だが、本当は自分の地位に対する不安が極めて大きい。12月22日、習主席が主催して中共中央政治局の民主生活会が開かれた。新華社の報道からは、中共中央政治局の内部が一枚板ではないことが読み取れる。 「習氏は中央政治局のすべての同志に自省した発言をさせ、評価し、要求して、総括した。今度の中央政治局の民主生活会の成果は大きい。政治の健康診断をし、政治の埃(ほこり)をふき取り、政治の魂を浄化する目的を達した」(新華社12月23日付) 「思想の一致は、政治の一致と行動の一致の基礎だ。政治面と行動面で党中央と高度な一致を保つこと。特に思想を党中央と高度な一致をすることが最重要だと、習氏は指摘した」(新華社12月23日付) 筆者は思わず噴き出した。民主生活会を利用して、最高幹部の一人一人に自省、裏返して言えば「忠誠」の言葉を面と向かって言わせている。思想も行動も必ず党中央(習近平総書記)に一致すべきと強要した。 習近平をここまでさせた不安の大きさをどう考えるべきだろう。中央政治局委員は全部で24名いる。そのメンバーたちに面と向かって、自分に対する忠誠心を誓わせた上に、思想や行動を党中央、つまり自分自身に合わせるように求めた。ここまで言わせなければ、安心できないのだ。 12月25日、「財新網」が社説を掲載したが、すぐ消えた。タイトルは「重温実事求是思想路線(事実を重んじる思想路線を再び考えよう)」。文革の弊害を指摘して、暗に習氏の路線が中国経済を後退させ、国民生活を貧しくしたと批判したのだ。 社説は掲載された後、すぐに削除されたが、ネット上にはコピーが出回っている。その社説はすぐ大きな話題となり、ウォール・ストリート・ジャーナルの「今日のウォールストリートのチャンネル」及び海外の中国系マスコミが報じている。 政権の中枢にいても安心できないだけではなく、統制しているはずのメディアすら逆らっている。2024年を迎える習氏の内心は穏やかではないだろう』、「民主生活会を利用して、最高幹部の一人一人に自省、裏返して言えば「忠誠」の言葉を面と向かって言わせている。思想も行動も必ず党中央(習近平総書記)に一致すべきと強要した。 習近平をここまでさせた不安の大きさをどう考えるべきだろう。中央政治局委員は全部で24名いる。そのメンバーたちに面と向かって、自分に対する忠誠心を誓わせた上に、思想や行動を党中央、つまり自分自身に合わせるように求めた。ここまで言わせなければ、安心できないのだ・・・12月25日、「財新網」が社説を掲載したが、すぐ消えた。タイトルは「重温実事求是思想路線(事実を重んじる思想路線を再び考えよう)」。文革の弊害を指摘して、暗に習氏の路線が中国経済を後退させ、国民生活を貧しくしたと批判したのだ。 社説は掲載された後、すぐに削除されたが、ネット上にはコピーが出回っている。その社説はすぐ大きな話題となり、ウォール・ストリート・ジャーナルの「今日のウォールストリートのチャンネル」及び海外の中国系マスコミが報じている・・・政権の中枢にいても安心できないだけではなく、統制しているはずのメディアすら逆らっている。2024年を迎える習氏の内心は穏やかではないだろう」、ここまでするのかと驚かされたが、末期的な印象も受ける。
タグ:中国国内政治 (その15)(習近平はもうおしまいなのか…中国人民解放軍で「静かなクーデター」!粛清に反抗してとうとう制服組トップが軍を掌握、中国の権力闘争がさらに激化!習近平主席の猜疑心を煽る…ベトナムが李強首相に与えた「国賓待遇」の波紋、もはや滑稽! 14億国民も呆れた習近平の「皇帝ぶりっこ」 林愛華「中南海ディープスロート」第13回) 現代ビジネス 石 平氏による「習近平はもうおしまいなのか…中国人民解放軍で「静かなクーデター」!粛清に反抗してとうとう制服組トップが軍を掌握」 「解放軍に対する習近平主席の指揮権は実質上解除され、それに取って代わって、共産党中央軍事委員会筆頭副主席で制服組のトップの張又侠氏がすでに軍の掌握に成功している模様である・・・解放軍の「全軍軍事理論工作会議」が北京で開かれた。習主席がその間、福建省などで地方視察中であって会議に出席しなかった中で、前述の張又侠氏は会議を主宰し講話を行なった。 会議は一応、「軍事理論の構築」に関する習主席の「重要指示」を受けて開催されたものではある。 しかし、解放軍各軍種と五大戦区のトップたちが揃って参加する重要会議に習主席が欠席するのはやはり異様なことである。特にそれは「軍事理論」に関する全軍会議であれば、軍の方向性を示す立場の習主席こそが本来、自ら参加して仕切るべき会議のはずである。 ところが今回、全軍会議の事実上の中心人物となったのは張氏である。習主席はその間、緊急性の全くない地方視察に出かけているが、その理由に関しては、習主席は自分が軍会議に呼ばれなかったことを覆い隠すためにわざと地方に出かけたのではないかとの観測も成り立つ」、これは大スクープ だ。 「何氏という人物は、習近平独裁体制が完全確立した2022年10月の党大会で習主席によって政治局員・軍事委員会副主席に大抜擢された軍人であり、まさに軍における習主席側近の一人である。しかし今、この何氏が張氏によって軍指導部の重要会議から排除されたのであれば、それは当然、張氏はすでに、軍における習主席の指揮権を排除して軍の掌握に成功していることを示している」、なるほど。 「8月10日付の解放軍報はまたも、「民主的な意思決定はすなわち党組織の集団的意思決定であって、個人的な独断による意思決定があってはならない」とする論評を掲載して露骨に習近平独裁を批判した。 そして今年8月の北戴河会議で長老たち中心の「反習近平政変」が起きたことは色々と伝わってきている中で、どうやら実力軍人の張氏は長老の支持と、習主席の軍粛清拡大を恐れている軍幹部の支持を受けて軍に対する習主席の実質上の指導権を排除した上で軍の掌握に成功しているのではないかと考えられる」、なるほど。 「張氏に掌握された軍は今後においても、少なくとも形的には習主席の「指導下」にある体裁をとり、習主席をいわば「飾り物」に祭り上げておきながら軍独自の路線を自主的に走ることとなろう。 その一方、習主席のもう一人の側近であった李強首相も今、習氏から離反して独自路線を走り始めているから、3期目の習近平政権は早くも空中分解の局面を迎えている様相である・・・ 2027年秋の党大会開催までは、共産党指導部は習氏を名目上の最高指導者として担ぎながら、「軍は張又侠、政府は李強首相」という形で政権運営を行なっていくことになろう。しかしそれでは、3期目の満了に伴う習近平政権の終焉は現実味を帯びてきているのである」、なるほど。 石 平氏による「中国の権力闘争がさらに激化!習近平主席の猜疑心を煽る…ベトナムが李強首相に与えた「国賓待遇」の波紋」 「中国公安部長の王小洪氏は、共産党中央書記処書記、国務委員の肩書で直轄市の天津市で「経済の高品質発展」について視察を行ったという。 視察中、王氏は関連企業を訪れ、当面の経済情勢と経済工作に関する習近平主席の重要講話精神の学習・貫徹を呼びかけた。同時に彼は、内需の拡大、経済構造の向上、全国統一大市場の構築などについて語り、それらの重要性を強調したという。 王氏は国務委員の一人ではあるが、本職が公安部長であって、全国の公安警察の総責任者だ。国務院における彼の役割分担はあくまでも公安や治安維持である・・・ 公安責任者が地方で企業を視察して「内需の拡大、経済構造の向上」を語るのはまさに前代未聞の大珍事、荒唐無稽でさえある」、なるほど。 「王氏の経歴をみれば、彼が1984年から2013年までにずっと福建省で公安警察の仕事に従事していたが、習近平主席は1990年から96年までに福州市党委員会書記を務めた時、王氏が福州市公安副局長・局長を歴任し、習氏直轄の部下として仕え、それ以来、習氏の側近の一人となった。 そして2012年秋の習近平政権成立後、王氏はまず河南省公安庁長に昇進し・・・2022年には公安部長に昇進して全国の公安警察のトップとなって、習主席の公安警察掌握の要となった・・・ 習近平の福建省勤務時代からの「譜代側近」として、今や習政権の一番中枢の「福建組」の核心人物の一人でもある」、なるほど。 「本来は習主席の側近であるはずの李強首相が経済運営の問題上、習主席と悉く対立している中で、習主席は李首相を制する切り札として、国務委員でもある公安トップの王氏に経済運営に関与させることによって、李首相の仕事を邪魔し徹底的に牽制する魂胆であろう・・・公安一筋の王氏に無理やり「経済」を語らせ、経済運営にまで関与させようとしているが、これほど荒唐無稽なことは逆に、習近平政権は完全に行き詰まって末期症状を呈していることを示している。そして公安警察トップが経済運営に口出しするようでは、中国経済自体は地獄入りする以外 にないのであろう」、なるほど。 「ベトナムでは総書記・国家主席は国家元首の立場であって、中国首相のカウンターパートナーではなく、本来、李首相と会談しなくても良い。たとえ会談があるとしても、李首相の表敬訪問を受ける形での儀礼的な会談で済ませて良い。しかし今回、ベトナム主席は高官たちを率いて李首相をトップとする中国側と長方形のテーブルを挟む形での正式会談を行った。それは普通、対等な立場にある首脳同士の会談の様式である。 そして翌日の13日、今度はベトナム首相は李首相の歓迎式典をとり行った後に首脳会談。午後には、ベトナムの国会主席(議長)が李 李首相と会談した。 このようして、李首相訪越の二日間において、ベトナム側は党・国家・政府・国会のトップが総出の形で彼と会談したわけである。それは普段、習近平主席やバイデン大統領などの外国元首に対する首脳外交の行い方であって、中国の首相であるはずの李首相に事実上の国賓待遇を与えた」、ベトナム側の狙いは何なのだろう。 「李首相に対する異例な厚遇の背後には、中国中枢部の権力闘争の行方に対するベトナム側の読みと国益からの打算があると思われるが、その一方、ベトナム側のこの挙動は逆、習近平vs.李強の確執に火を注ぐことにもなりかねない。 猜疑心が強く了見の狭い習主席は、子分の李首相がベトナムで国家主席の自分と同様な待遇を受けたことに対し不快ないし嫉妬を感じてしまう可能性が十分にある・・・ ベトナムが余計なことをしてくれたことで、習主席と李首相との確執がむしろ深まる方向へと向かい、いよいよ「佳境」に入っていく様相である」、どういう形で決着するのだろう。 「林愛華氏による「もはや滑稽! 14億国民も呆れた習近平の「皇帝ぶりっこ」 林愛華「中南海ディープスロート」第13回」 「報告は一回だけとなり、李強総理との単独会見はなくなった。 異変と言ってよいだろう。李強総理は習近平主席が李家超長官の報告を聞く会見の一列席者にされたのだ」、なるほど。 「習主席が帝王趣味にこだわっていることは、隠すことができない。2017年11月8日に、トランプ米大統領と夫人が訪中した。習主席は贅を尽くして一行を接待した。故宮を独占した豪華な茶会、贅沢な宴会、宮廷を再現した京劇鑑賞など、習主席はその帝王ぶりたいという「美学」を実現させたのだ。 故宮で外国の首脳を招待する。これは、「建国の父」と呼ばれた毛沢東氏をはじめとする歴代指導者たちにもできなかったことだ」、なるほど。 「習主席は帝王文化にこだわり過ぎで、ますます国民との距離が乖離しているように見える。彼が中国の最高指導者になって以来、洪水やコロナなどの自然災害の際、素早く現地を見舞ったことは一度もない。被災地を訪ねるのは、いつも安全になった数か月後だった。前任者たちの時代ではあり得なかったことだ」、なるほど。 「民主生活会を利用して、最高幹部の一人一人に自省、裏返して言えば「忠誠」の言葉を面と向かって言わせている。思想も行動も必ず党中央(習近平総書記)に一致すべきと強要した。 習近平をここまでさせた不安の大きさをどう考えるべきだろう。中央政治局委員は全部で24名いる。そのメンバーたちに面と向かって、自分に対する忠誠心を誓わせた上に、思想や行動を党中央、つまり自分自身に合わせるように求めた。ここまで言わせなければ、安心できないのだ・・・ 12月25日、「財新網」が社説を掲載したが、すぐ消えた。タイトルは「重温実事求是思想路線(事実を重んじる思想路線を再び考えよう)」。文革の弊害を指摘して、暗に習氏の路線が中国経済を後退させ、国民生活を貧しくしたと批判したのだ。 社説は掲載された後、すぐに削除されたが、ネット上にはコピーが出回っている。その社説はすぐ大きな話題となり、ウォール・ストリート・ジャーナルの「今日のウォールストリートのチャンネル」及び海外の中国系マスコミが報じている・・・ 政権の中枢にいても安心できないだけではなく、統制しているはずのメディアすら逆らっている。2024年を迎える習氏の内心は穏やかではないだろう」、ここまでするのかと驚かされたが、末期的な印象も受ける。
中国情勢(軍事・外交)(その16)(日本の高校で中国人留学生が増え続ける仰天事態 過当競争の中国と少子化ニッポンの利害が一致、中国人が異民族を「同化」させようとするワケ 日本人とは本質的に異なる“頭の中”、いつから「中国5000年の歴史」に?モンゴル生まれの帰化日本人が暴く!歴史の書き換え) [世界情勢]
中国情勢(軍事・外交)については、昨年5月22日に取上げた。今日は、(その16)(日本の高校で中国人留学生が増え続ける仰天事態 過当競争の中国と少子化ニッポンの利害が一致、中国人が異民族を「同化」させようとするワケ 日本人とは本質的に異なる“頭の中”、いつから「中国5000年の歴史」に?モンゴル生まれの帰化日本人が暴く!歴史の書き換え)である。
先ずは、本年5月18日付け東洋経済オンラインが掲載した中国・東南アジア専門ジャーナリストの舛友 雄大氏による「日本の高校で中国人留学生が増え続ける仰天事態 過当競争の中国と少子化ニッポンの利害が一致」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/754566
・『中国から日本の中学校や高校に留学する「低年齢留学」が増え始めた。背景にあるのは、中国における教育環境の悪化と日本の過疎地が直面する超少子化だ』、興味深そうだ。
・『生徒の5割が中国人留学生に 房総半島の南部に位置し、太平洋が目の前に広がる鴨川令徳高校(千葉県鴨川市)の教務担当は、「10年ほど前から中国人留学生を受け入れるようになっており、生徒全体に占める割合が50%ほどになっている」と話す。校内には中国語が話せるスタッフもいる。 明徳義塾中学・高等学校(高知県須崎市・土佐市)の担当者からは、全校生徒1000人近くのうち250人ほどの留学生がおり、そのうち中国人留学生は約200人」との回答があった。つまり、中国人の比率は2割ほどということだ。 また、岡山県の山間部に位置する中高一貫の朝日塾中等教育学校(岡山市)の国際交流部長は「6学年全体で中国人留学生が3割を占めているが、高校に該当する3学年では3割を超えている」と話す。こちらには教員と事務を兼ねた、中国語が話せるスタッフがいるそうだ。 「(中国人留学生は)徐々に増えてきています。バックグラウンドが違う他者との触れ合いは大切なので、計画的に入れていこうということです。エージェントや中国での姉妹校を通じて募集しています」(同前) 朝日塾中等教育学校では、今後については学習環境を維持するために留学生比率は3割を堅持していく方針なのだという。「あまり留学生が増えると学びが妨げられる懸念があります。仲間内で母国語ばかりしゃべるようなことになりかねません」。 中学生の場合は子どもの生活を支える監護者が必須となるため、留学のハードルが上がる。そのため受け入れが進んでいるのは高校生だ。特に中国人留学生の受け入れが多いのが、寮を備えた地方の高校だ。 楽商ジャパンは高校留学に関して中国でのマーケティングや日本語教育から試験のアレンジまで一手に担う留学エージェントだ。同社の袁列・代表取締役は、「ここ10年で中国人高校留学生は大体10倍になった。10年前には積極的に受け入れる高校は日本全国で4校程度だったが、今では20校以上になっている」と明かす。) 地方だけの動きではない。東京はじめ大都市でも中国人留学生の受け入れに積極的な高校は出てきている。関西の都市部にある高校の担当者は「全校生徒450人中ざっと50人ほど」つまり1割強が中国人留学生で、「感覚的にはコロナになる1年ほど前から増え始めた」と回答した。 さらに、筆者は首都圏にある入試偏差値60台の有力進学校でも中国人留学生の受け入れが始まっていることを確認した。驚くことに、受け入れ校の中には、合格後に集中的に日本語を学ぶことを前提に「面接時点で日本語能力を要求しない学校もある」(袁列氏)という。 全国的に高校の中国人留学生が増えてきているらしいことは、「学校基本調査」からも見てとれる。日本の私立高校における外国人生徒数は2013年から2023年にかけて3694人から6272人まで増えている。高校以下の学齢で中国人の留学を斡旋するエージェントが増えていることも、その傍証となる。 中国人留学生比率がすでに一定の水準に達している高校の教師が、匿名を条件に全国で中国人留学生の受け入れが広がる現状について語る。 「これは日本の少子化のあおりです。生徒が減っても高校には一定数の教師が必要です。教師の人件費を払うためには、どうにか生徒を入れて、学校を回さないといけない」 だが、あまりに中国人留学生を増やしすぎると経営とは別の意味で”学校崩壊”が始まることになる。この教師は、「受け入れる留学生の学力にこだわらなくなると、指導できくなった教師が辞めていき、代わりの教師を探すという悪循環に陥る」と事情を明かす。 この日本人教師は、「国際的プログラムを持たない一般の高校が受け入れられる留学生の数は全体の2〜5%ほどで、10〜15%までいくと違和感が出る」と打ち明ける。 「中国人の学校」とみなされ、日本人生徒から敬遠される事態を避ける工夫も必要ということだ。 そもそも、なぜ中国で日本への高校留学が人気となっているのか』、「「受け入れる留学生の学力にこだわらなくなると、指導できくなった教師が辞めていき、代わりの教師を探すという悪循環に陥る」と事情を明かす。 この日本人教師は、「国際的プログラムを持たない一般の高校が受け入れられる留学生の数は全体の2〜5%ほどで、10〜15%までいくと違和感が出る」と打ち明ける。 「中国人の学校」とみなされ、日本人生徒から敬遠される事態を避ける工夫も必要ということだ」、なるほど。
・『中国の体制への失望が背中を押す 都内で中国系進学塾を経営する中国人男性は「(中国人保護者の)中国国内の体制への失望です。つまりイデオロギー色の強い中国の教育を避けているのです。そして中国の教育をめぐる『巻』(ジュアン、過度な競争を意味する)が無意味で、子どもの心身を破壊することがわかったのです」と話す。 日本への留学を考えても、競争率の高いインターナショナルスクールに入るのは難しい(参考:日本のインター校に中国から「教育移民」が殺到中)。さらにインターの場合、保護者が日本に居住しているのが前提なので、一般の高校への留学が有力なオプションになってきている。 中国から都内の高校に留学した経験がある現役の女子大学生は、小学生の頃に家族で日本に旅行してすっかり気に入り、日本留学を決めたのだという。「中国の高校はすごく『巻』なので比較的早い段階で出国しました」と語る。) 一方、袁列氏は「最大の原因は中国の『中考分流』です」と断言する。中考分流とは、2018年に導入が始まった新たな教育制度だ。増加する一方の大卒者が就職難に苦しむ現状への対策として、大学に進む学生の数を絞るのが目的である。 高校入試(中考)時点で、約半数の生徒が高校や大学への進学の道を閉ざされる。この制度のもとで中国では大学に行けそうもなくなった子どものため、親が海外留学を用意しているのだ。 ある西日本の高校に通う現役の中国人留学生王濤君(仮名)は、自分のクラスでは8人に1人が中国人だと教えてくれた。本人も、まさに「巻」と「中考分流」が留学の理由なのだという。中国でこの高校の評判を聞いて来日を決めた。 王君が語る中国の教育熱は、日本人の想像の遥か上を行く。 「幼稚園のとき、私がまだ泥遊びをしている頃に幾何学や関数を学んでいる子どもがいました。私が小学校や中学校に通っていたときは、みんな楽器やダンスなどの特技を持っていました」「春節で中国に帰ったときには、空港で幼稚園児くらいの子が円周率を100桁まで暗唱していました」 王君によると、日本での学校生活は充実していて、教師の面倒見もいいという。卒業後は首都圏にある某私立大学の理工学部を目指しているそうだ』、「「最大の原因は中国の『中考分流』です」と断言する。中考分流とは、2018年に導入が始まった新たな教育制度だ。増加する一方の大卒者が就職難に苦しむ現状への対策として、大学に進む学生の数を絞るのが目的である。 高校入試(中考)時点で、約半数の生徒が高校や大学への進学の道を閉ざされる。この制度のもとで中国では大学に行けそうもなくなった子どものため、親が海外留学を用意しているのだ・・・日本での学校生活は充実していて、教師の面倒見もいいという。卒業後は首都圏にある某私立大学の理工学部を目指しているそうだ」、なるほど。
・『費用がアメリカの2割以下で済む 日本留学がブームとなっているのには、経済的要因もある。袁列氏によると、コロナの影響で、留学先として近場の日本が好まれるようになったという。国際情勢の不安定化で欧米を避ける傾向が強まったうえ、ここ数年円安が続いていることも日本の人気を高めた。「アメリカだと生活費など含めて年1600万円ほど必要ですが、日本なら多くても300万円です」。 中国からやってきた高校留学生は、基本的に日本の大学に進学する。受け入れ校にはたいてい協定校や指定校推薦がある。留学生の在留資格では高校卒業後に浪人生としては日本に残れないという制約もあるが、日本人と同じ入試に挑む生徒もいる。 「国語が苦手な生徒が多く国立大学合格は難しいが、優秀層には早慶などのトップ私立校に入学する人もいる」(袁列氏)という。ただ、前出の教師は、昔は私立有名大学を目指す留学生が少なくなかったが、最近は「意識が薄かったり、向上心が乏しかったりする生徒が増えた」と嘆く。それでも日本は大学全入時代なので、選り好みしなければ進学は難しくない。 年々悪化する自国の教育環境から子どもを救い出そうとする中国人保護者の増加、そして少子化のなかで生徒数確保が焦眉の急である日本の高校の利害は一致している。中国から日本の高校を目指す留学生はますます増えていきそうだ』、「ここ数年円安が続いていることも日本の人気を高めた。「アメリカだと生活費など含めて年1600万円ほど必要ですが、日本なら多くても300万円です」。 中国からやってきた高校留学生は、基本的に日本の大学に進学する・・・年々悪化する自国の教育環境から子どもを救い出そうとする中国人保護者の増加、そして少子化のなかで生徒数確保が焦眉の急である日本の高校の利害は一致している。中国から日本の高校を目指す留学生はますます増えていきそうだ』、「中国から日本の高校を目指す留学生はますます増えていきそうだ」、なにやら不気味な予感がする。
次に、10月24日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した静岡大学教授の楊 海英氏による「中国人が異民族を「同化」させようとするワケ、日本人とは本質的に異なる“頭の中”」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/352341
・『気が付けば近所や職場に中国人がいることが珍しくない日本社会。中国人の考え方を知る上で、知らなければならないキーワードが「同化」である。モンゴルに生まれて中国で学び、日本に帰化した著者が述べる、「日中文化の本質的な違い」とは? ※本稿は、楊海英著『中国を見破る』(PHP新書)を一部抜粋・編集したものです』、興味深そうだ。
・『町中華から“ガチ中華”へ 数年前から“ガチ中華”が増えたという話を聞くようになった。いわゆる「町中華」が日本人の舌に合わせた中華料理であるのに対して、“ガチ中華”は中国人が好む本場の料理を食べられる店のことをいうそうだ。 ブームの火付け役となったのは東京・池袋にある中華店だといわれる。池袋といえば豊島区の大繁華街で、日本を代表するターミナル駅がある。その豊島区に居住する外国人の国籍は中国人がおよそ半数にも上っているという。 東京全体を見ても、2024年1月時点の都内在住外国人約65万人のうち約40%が中国人(都総務局人口統計部データ)であり、26万人近い中国人が都内に住んでいることになる。これだけ多くの中国人がいれば、昔ながらの町中華ではなく、中華圏の人々が好む味の中華料理店が東京で増えるのは当然かもしれない。 いうまでもなく、日本には、古くから多くの中国人が移住してきた。華僑と呼ばれた従来の移住者は、横浜、神戸、長崎といった各都市でチャイナタウンを形成している。つまり中国のローカルルールはチャイナタウンのなかに限定して、地元の日本人とは良好な関係を築くことで共存共栄を望んできたように思う(日本が好きになって、私のように、日本に帰化する人も多数いたにちがいない!)』、「2024年1月時点の都内在住外国人約65万人のうち約40%が中国人・・・であり、26万人近い中国人が都内に住んでいることになる。これだけ多くの中国人がいれば、昔ながらの町中華ではなく、中華圏の人々が好む味の中華料理店が東京で増えるのは当然かもしれない・・・中国のローカルルールはチャイナタウンのなかに限定して、地元の日本人とは良好な関係を築くことで共存共栄を望んできたように思う」、なるほど。
・『背後に見え隠れする国家の存在 そのように日本のルールを尊重しながら地元社会との間では衝突を避け、静かに暮らしてきた人たちがいる一方で、そうでない中国系の人たちもいる。 たとえば、2022年10月にサンシャイン60のフランス料理店で起きた大乱闘事件は記憶に新しいところだろう。サンシャイン60といえば池袋のシンボルタワーであり、家族連れや中高生も訪れる有名スポット。そのような場所で起きたことは衝撃的だった。 また地方の私立高校では、経営難から脱するために、中国人留学生を積極的に受け入れていたら、いつのまにか留学生ばかりの学校になったという例もある。 日本でもようやく経済安全保障推進法が成立したが、中国人留学生を介して、先端技術が流出、漏洩するリスクに対する責任を日本企業が負う時代になっている。 さらには、マネーロンダリング、スパイ、日本国内の攪乱といった非合法な行為を目的に入国した中国人が、一般市民が暮らす社会に潜伏していることも否定できない。 そうかと思えば、共産党支配に嫌気がさし、純粋に日本で暮らすことに希望をもち、祖国と決別し、移住してくる中国人もいる。 そうしたことは何も「中国人」だけに限ったことではないだろう。しかしこと「中国人」に関しては、それぞれの背後に「中国」という国家の存在が見え隠れすることに注意を払う必要がある。日本人にとっては、長年の歴史から身近な存在であるだけに、その本質が見えにくくなっていることに気づかなければならない』、「こと「中国人」に関しては、それぞれの背後に「中国」という国家の存在が見え隠れすることに注意を払う必要がある。日本人にとっては、長年の歴史から身近な存在であるだけに、その本質が見えにくくなっていることに気づかなければならない」、なるほど。
・『「心が異なる」相手は同化させる 紀元前の非常に古い文献である『左伝』(春秋左氏伝)に「わが族に非ざる者は、その心もまた異なる」という有名な言葉が記されている。 要するに、中華以外の人間は心がわれわれと違うので、自分たちとは違う人間だと言っているのだが、これを「異心論」という。その「わが族に非ざる者」に対し、中国がたどり着いたのは「同化させるべき」だという考え方だった(私はこれを「同化論」と呼ぶことにした!)。 欧米でいう「カルチャー」に、「文化」という訳語をつけたのは近世の日本人で、中国語の「文化」は意味がまるで違う。それは、相手を「文明化」させることであり、別の言い方をすれば、「中華化」することだ。つまり中国人(漢族、漢人)と同化させることである。この「中華化」は、「華化」「華夏化」と言い換えることもできる。 「華夏」とは、まさしく「中華」そのものを指し、あるいは「中華民族」そのものを意味する言葉だ。異民族を華夏にすることこそ、中国人にとって「文化」だといえる。漢字圏に生きる日本人だからこそ、見えにくい例のひとつである』、「「華夏」とは、まさしく「中華」そのものを指し、あるいは「中華民族」そのものを意味する言葉だ。異民族を華夏にすることこそ、中国人にとって「文化」だといえる」、なるほど。
・『中国語の祖型 ところが話をややこしくするようだが、最初に「われわれは華夏だ」と称したのは漢人ではない。五胡十六国時代の五胡、つまり万里の長城を越えて南下してきた北方異民族の匈奴(きょうど)と鮮卑(せんぴ)が、自らを「華夏」と呼んだのである。 これは1990年代にNHKの後藤多聞氏が、台湾の中央研究院で電子化された漢籍をつぶさに検索したところ、最も古い「華夏」の文字が五胡十六国時代の文献で見つかったことからわかったものだ。 五胡十六国、つまりテュルク系言語やモンゴル系言語を話す匈奴系・鮮卑系の人々が大挙して万里の長城以南の地に入り、互いに融合して共存をめざすなかで、ある種のスローガンとして自分たちを「華夏」であると唱えた。 彼らは長城以南の地に暮らしていた中国人(プロト・チャイニーズ)たちともコミュニケーションをとるため、一種のピジン語(異なる言語の話者間で通じる混合言語)を話すようになった。おそらくは漢語の語彙をベースに文法表現をアルタイ語化した言葉で、それが後に現代の中国語の祖型になっていったと考えられる。つまり中国語とは、諸民族融合の必要性により生まれたピジン語だといえるのだ。 ちなみに、北方から遊牧民がやってきたことで、それまで長城の南に暮らしていたプロト・チャイニーズはどう対応したかというと、一部は異民族の支配からどんどん南へ逃れ、いわゆる「客家(ハッカ)」となった(どこへ行っても客人扱いされるがゆえに、そう呼ばれるのだ!)』、「五胡十六国、つまりテュルク系言語やモンゴル系言語を話す匈奴系・鮮卑系の人々が大挙して万里の長城以南の地に入り、互いに融合して共存をめざすなかで、ある種のスローガンとして自分たちを「華夏」であると唱えた。 彼らは長城以南の地に暮らしていた中国人(プロト・チャイニーズ)たちともコミュニケーションをとるため、一種のピジン語・・・を話すようになった。おそらくは漢語の語彙をベースに文法表現をアルタイ語化した言葉で、それが後に現代の中国語の祖型になっていったと考えられる。つまり中国語とは、諸民族融合の必要性により生まれたピジン語だ」、なるほど。
・『歴史を書き換えたのは漢人である ところで今、私が説明してきた意味での「華夏族」は、自らを漢人と名乗ったか。もちろんそうではなく、もともとが遊牧民であることに誇りをもっていた。祖先が匈奴であることを示す石碑が数多く長城沿いに残っているのは、その証左であろう。 つまり、「北方異民族は野蛮人であり、万里の長城の南に入ってきた人々を当時の漢人たちが漢化すなわち文明化した。それゆえに異民族たちは北方からきた民族であることを隠していた」というような現代中国がいう歴史は、後世に書き換えられたものだといえる。 歴史を書き換えたのは、いうまでもなく漢人だろう。「中国文化は優れているため、野蛮な遊牧民を同化したのだ」という論理とその実行プロセス。それこそ、中国人にとっての「文化」なのである。 同時に「北方異民族たちは漢化したからこそ華夏と呼ばれるようになった」という見解もあるようだが、これも適切ではない。繰り返すようだが、実際は北からきた異民族らが、長城の南に暮らしはするものの、いわゆる漢人になるつもりはなかったため、新たに華夏と自称したのである』、「北からきた異民族らが、長城の南に暮らしはするものの、いわゆる漢人になるつもりはなかったため、新たに華夏と自称したのである」、なるほど。
・『「負け惜しみ」の思想としての朱子学 こうした「中国文化が優れているため、異民族は漢化した」という歴史認識が打ち出されたのは主に近代以降で、その祖型は宋代にまでさかのぼる。南宋の儒学者である朱熹が形にしたといわれる、日本人が近世からとくに受け入れてきた朱子学の「負け惜しみ」論がその原型となる。 宋は国力が弱く、モンゴル系の契丹(キタイ帝国)や満洲系の金と軍事的に対抗できなかった。契丹や金と戦って五胡十六国の再来を招くことを恐れたがゆえに、金によって南に追われて南宋を建国したとき、「自分たちは野蛮人と異なり戦いには興味がないが、代わりに文化がある、それゆえに強い」という一種の自己満足、言い換えれば負け惜しみの思想として朱子学が誕生した。 それが近世に入り、とりわけ満洲人の清朝が崩壊していく過程を見て「満洲人も漢化=漢文化に同化した」という考え方が生まれ、歴史を書き換えるという不合理な仕業が合理的なものへと転換していったといえる。すべては漢人や漢人の文化が優れているという物語を捏造するためである』、「宋は国力が弱く、モンゴル系の契丹(キタイ帝国)や満洲系の金と軍事的に対抗できなかった。契丹や金と戦って五胡十六国の再来を招くことを恐れたがゆえに、金によって南に追われて南宋を建国したとき、「自分たちは野蛮人と異なり戦いには興味がないが、代わりに文化がある、それゆえに強い」という一種の自己満足、言い換えれば負け惜しみの思想として朱子学が誕生した・・・それが近世に入り、とりわけ満洲人の清朝が崩壊していく過程を見て「満洲人も漢化=漢文化に同化した」という考え方が生まれ、歴史を書き換えるという不合理な仕業が合理的なものへと転換していったといえる。すべては漢人や漢人の文化が優れているという物語を捏造するためである」、「負け惜しみの思想として朱子学が誕生した」、というのは初めて知ったが、興味深い。
第三に、10月25日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した静岡大学教授の楊 海英氏による「いつから「中国5000年の歴史」に?モンゴル生まれの帰化日本人が暴く!歴史の書き換え」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/352343
・『『三国志』や『キングダム』などの作品を通じて日本に浸透する中国の歴史と文化。だが、私たちが自明に考える中国史の裏には、「国家による操作」が潜んでいた…。モンゴルに生まれ、中国で学んだ帰化日本人が「中国5000年」のウソを学術的に明らかにする。※本稿は、楊海英著『中国を見破る』(PHP新書)を一部抜粋・編集したものです』、興味深そうだ。
・『司馬遷の『史記』より『キングダム』 日本には中国の歴史や文化に詳しい人が多いと感じる。中学、高校で中国の歴史や地理、漢文を学び、大学生や社会人になれば中国関連の単行本や新書を読む。書店にいけば単行本、新書、文庫、漫画、雑誌と各コーナーに中国関連の本が並んでいる。 エンタメ作品でも、昔の中国を舞台にした小説、漫画、アニメ、ゲームはたくさんある。たとえば、秦の始皇帝たちを描く『キングダム』は、コミックの新刊がいつもベストセラー入りし、テレビアニメのシリーズが続いている。本場の中国でも人気は高く、司馬遷の『史記』は読んでいなくても、『キングダム』のファンという人たちがいるくらいだ。 『三国志』も日本では長らく人気の読み物といえよう。居酒屋で「三国志では趙雲が一番好き」「あいつは曹操タイプだ」と、中国古典の知識が会話に出てくることも珍しくない。そのように、日本人は昔から巨大な隣国を意識し、中国の歴史や文化からたくさんのことを学んできたのは間違いない。 令和に改元されたときにそのことを認識した日本人もいただろう。日本の元号は、西暦645年の「大化」以来、漢籍の言葉をもとに定められてきた。『大学』『中庸』『論語』『孟子』の四書、『易経』『書経』『詩経』『礼記』『春秋』の五経が出典として多く、「令和」の出典が『万葉集』だと話題になるほど、「元号は漢籍の言葉」というのが常識だった。 しかし、である。これほど多大な影響を受けてきたにもかかわらず、日本人の中国理解が本当に正しいものなのかというと、疑問符を付けざるを得ない。言い換えれば、中国の本質を知っているか否かも、疑いたくなる』、「『三国志』も日本では長らく人気の読み物といえよう。居酒屋で「三国志では趙雲が一番好き」「あいつは曹操タイプだ」と、中国古典の知識が会話に出てくることも珍しくない。そのように、日本人は昔から巨大な隣国を意識し、中国の歴史や文化からたくさんのことを学んできたのは間違いない・・・しかし、である。これほど多大な影響を受けてきたにもかかわらず、日本人の中国理解が本当に正しいものなのかというと、疑問符を付けざるを得ない。言い換えれば、中国の本質を知っているか否かも、疑いたくなる」、なるほど。
・『中国の歴史はせいぜい2500年 「昔は“中国4000年の歴史”と言ってたのに?最近は“中国5000年の歴史”になった。いつの間に1000年も延びたんですかね」 日本人からたまにそんな質問を受けることがある。 日本で「中国4000年の歴史」が広まったのは、1980年代にインスタントラーメンのコマーシャルで「中国4000年の幻の麺」というフレーズが広まったからだと言われる。実はその頃から中国では「わが国の歴史は5000年」と主張しだしたようだ。私が小学生の頃も3000年だと教わったのだが。 だから、中国人が先ほどのコマーシャルを観たら、「1000年も短くされた」と憤慨しただろう。しかし私は「日本人は優しいから、中国人の顔を立てて4000年にしてくれた」と思っている。 欧米はじめ他の国々では「中国の歴史はせいぜい2500年、長くても3000年」とみるのが一般的だからだ』、「日本で「中国4000年の歴史」が広まったのは、1980年代にインスタントラーメンのコマーシャルで「中国4000年の幻の麺」というフレーズが広まったからだと言われる。実はその頃から中国では「わが国の歴史は5000年」と主張しだしたようだ・・・欧米はじめ他の国々では「中国の歴史はせいぜい2500年、長くても3000年」とみるのが一般的」、そんなにいい加減なものとは、驚かされた。
・『文明の起点はいつか もちろん、中国には5000年よりもはるか昔から人間が住んでいた。しかし、現在につながる“中国の歴史”と呼ぶわけにはいかない。人間が生活をしていればそれで歴史と認証されるのなら、5000年の歴史を誇る国は世界各地に存在することになる。 大事なのは、現在につながる文明があったかどうかだろう。にもかかわらず、そうした認識を持ち合わせていないかのように、中国は、5000年の歴史を証明することに力を注いできた。なかでも特徴的なものが、国を挙げて取り組んだ「夏商周年表プロジェクト」という研究だ。 中国語では「夏商周断代工程」と書き、21世紀を迎えるにあたってのミレニアム・プロジェクトとして、1996年から2000年にかけて進められた。「夏商周」の3文字でピンときた人もいるだろう。最初の王朝とされる夏王朝、それに続く商(殷)王朝、周王朝について具体的な年代を確定するという取り組みだ。 それまで中国の歴史は、司馬遷の『史記』にある周王朝の「共和元年」(紀元前841年)が、文献によって確認できる最も古い時代とされてきた。共和元年より古い時代は、文献によって確認できないから、夏王朝と商王朝は「神話伝説の時代」と呼ばれてきた。 司馬遷にならって、中国の歴史が紀元前841年に始まるとすれば、現在から2865年前になる。「どれだけ長くても3000年の歴史」という通説に根拠を与えるものだ』、「大事なのは、現在につながる文明があったかどうかだろう。にもかかわらず、そうした認識を持ち合わせていないかのように、中国は、5000年の歴史を証明することに力を注いできた。なかでも特徴的なものが、国を挙げて取り組んだ「夏商周年表プロジェクト」という研究だ。 中国語では「夏商周断代工程」と書き、21世紀を迎えるにあたってのミレニアム・プロジェクトとして、1996年から2000年にかけて進められた。「夏商周」の3文字でピンときた人もいるだろう。最初の王朝とされる夏王朝、それに続く商(殷)王朝、周王朝について具体的な年代を確定するという取り組みだ・・・夏王朝と商王朝は「神話伝説の時代」と呼ばれてきた。 司馬遷にならって、中国の歴史が紀元前841年に始まるとすれば、現在から2865年前になる。「どれだけ長くても3000年の歴史」という通説に根拠を与えるものだ」、なるほど。
・『単に歴史を書き換えたにすぎない ところが「夏商周年表プロジェクト」では、中国の歴史として夏・商・周の年表を作成した。約200人の学者が参加し、天文学、考古学、文献学などの手法を取り入れて研究を進めた結果、次のような“歴史”を定めた。 ◆夏王朝:紀元前2070年頃~紀元前1600年頃 ◆商(殷)王朝:紀元前1600年頃~紀元前1046年頃。そのうち殷墟(いんきょ、河南省安陽市)への遷都は紀元前1300年頃 ◆周王朝:紀元前1046年頃~紀元前256年 周王朝については、各時代の王の在位年も確定している。 この“歴史”は従来の古代中国史と異なり、根拠が乏しいことから、外国の歴史研究者から批判されたし、その“説”を信じる人もいない。日本の中国史研究者たちも、さすがに認められないという立場が多かった。商王朝以前が実際にあったとする根拠に乏しいからだ。 新たな文献の発見や科学的な研究方法の進歩によってこれまでの歴史が見直され、修正されることはある。しかし有力な根拠がない場合は、単に歴史を書き換えたにすぎない。 2000年に終了した「夏商周年表プロジェクト」の内容は、2004年にスタートした「中華文明探源プロジェクト」(中華文明探源工程)に受け継がれ、2018年に最終報告がまとめられた。 この報告では、5800年ほど前に、黄河と揚子江(長江)の中・下流域や長城の外、モンゴル高原南部を流れる西遼河流域に文明が出現したことになっている。その文明は500年ほどかけて中国全土に広がり、3800年ほど前に、中原地域に成熟した文明が形成され、現在まで中国文明として発展してきた、というのである。 いわゆる“中国5000年の歴史”も最初は、黄河と揚子江で生まれた文明が中国全土に広がった頃を起点とした歴史観ということだ。しかし、いつの間にか、モンゴルの西遼河まで盗まれてしまったのではないか』、「「中華文明探源プロジェクト」(中華文明探源工程)に受け継がれ、2018年に最終報告がまとめられた。 この報告では、5800年ほど前に、黄河と揚子江(長江)の中・下流域や長城の外、モンゴル高原南部を流れる西遼河流域に文明が出現したことになっている。その文明は500年ほどかけて中国全土に広がり、3800年ほど前に、中原地域に成熟した文明が形成され、現在まで中国文明として発展してきた、というのである。 いわゆる“中国5000年の歴史”も最初は、黄河と揚子江で生まれた文明が中国全土に広がった頃を起点とした歴史観ということだ。しかし、いつの間にか、モンゴルの西遼河まで盗まれてしまったのではないか」、「モンゴルの西遼河まで盗まれてしまった」というのはどういうことなのだろうか。私には意味が分からない。
先ずは、本年5月18日付け東洋経済オンラインが掲載した中国・東南アジア専門ジャーナリストの舛友 雄大氏による「日本の高校で中国人留学生が増え続ける仰天事態 過当競争の中国と少子化ニッポンの利害が一致」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/754566
・『中国から日本の中学校や高校に留学する「低年齢留学」が増え始めた。背景にあるのは、中国における教育環境の悪化と日本の過疎地が直面する超少子化だ』、興味深そうだ。
・『生徒の5割が中国人留学生に 房総半島の南部に位置し、太平洋が目の前に広がる鴨川令徳高校(千葉県鴨川市)の教務担当は、「10年ほど前から中国人留学生を受け入れるようになっており、生徒全体に占める割合が50%ほどになっている」と話す。校内には中国語が話せるスタッフもいる。 明徳義塾中学・高等学校(高知県須崎市・土佐市)の担当者からは、全校生徒1000人近くのうち250人ほどの留学生がおり、そのうち中国人留学生は約200人」との回答があった。つまり、中国人の比率は2割ほどということだ。 また、岡山県の山間部に位置する中高一貫の朝日塾中等教育学校(岡山市)の国際交流部長は「6学年全体で中国人留学生が3割を占めているが、高校に該当する3学年では3割を超えている」と話す。こちらには教員と事務を兼ねた、中国語が話せるスタッフがいるそうだ。 「(中国人留学生は)徐々に増えてきています。バックグラウンドが違う他者との触れ合いは大切なので、計画的に入れていこうということです。エージェントや中国での姉妹校を通じて募集しています」(同前) 朝日塾中等教育学校では、今後については学習環境を維持するために留学生比率は3割を堅持していく方針なのだという。「あまり留学生が増えると学びが妨げられる懸念があります。仲間内で母国語ばかりしゃべるようなことになりかねません」。 中学生の場合は子どもの生活を支える監護者が必須となるため、留学のハードルが上がる。そのため受け入れが進んでいるのは高校生だ。特に中国人留学生の受け入れが多いのが、寮を備えた地方の高校だ。 楽商ジャパンは高校留学に関して中国でのマーケティングや日本語教育から試験のアレンジまで一手に担う留学エージェントだ。同社の袁列・代表取締役は、「ここ10年で中国人高校留学生は大体10倍になった。10年前には積極的に受け入れる高校は日本全国で4校程度だったが、今では20校以上になっている」と明かす。) 地方だけの動きではない。東京はじめ大都市でも中国人留学生の受け入れに積極的な高校は出てきている。関西の都市部にある高校の担当者は「全校生徒450人中ざっと50人ほど」つまり1割強が中国人留学生で、「感覚的にはコロナになる1年ほど前から増え始めた」と回答した。 さらに、筆者は首都圏にある入試偏差値60台の有力進学校でも中国人留学生の受け入れが始まっていることを確認した。驚くことに、受け入れ校の中には、合格後に集中的に日本語を学ぶことを前提に「面接時点で日本語能力を要求しない学校もある」(袁列氏)という。 全国的に高校の中国人留学生が増えてきているらしいことは、「学校基本調査」からも見てとれる。日本の私立高校における外国人生徒数は2013年から2023年にかけて3694人から6272人まで増えている。高校以下の学齢で中国人の留学を斡旋するエージェントが増えていることも、その傍証となる。 中国人留学生比率がすでに一定の水準に達している高校の教師が、匿名を条件に全国で中国人留学生の受け入れが広がる現状について語る。 「これは日本の少子化のあおりです。生徒が減っても高校には一定数の教師が必要です。教師の人件費を払うためには、どうにか生徒を入れて、学校を回さないといけない」 だが、あまりに中国人留学生を増やしすぎると経営とは別の意味で”学校崩壊”が始まることになる。この教師は、「受け入れる留学生の学力にこだわらなくなると、指導できくなった教師が辞めていき、代わりの教師を探すという悪循環に陥る」と事情を明かす。 この日本人教師は、「国際的プログラムを持たない一般の高校が受け入れられる留学生の数は全体の2〜5%ほどで、10〜15%までいくと違和感が出る」と打ち明ける。 「中国人の学校」とみなされ、日本人生徒から敬遠される事態を避ける工夫も必要ということだ。 そもそも、なぜ中国で日本への高校留学が人気となっているのか』、「「受け入れる留学生の学力にこだわらなくなると、指導できくなった教師が辞めていき、代わりの教師を探すという悪循環に陥る」と事情を明かす。 この日本人教師は、「国際的プログラムを持たない一般の高校が受け入れられる留学生の数は全体の2〜5%ほどで、10〜15%までいくと違和感が出る」と打ち明ける。 「中国人の学校」とみなされ、日本人生徒から敬遠される事態を避ける工夫も必要ということだ」、なるほど。
・『中国の体制への失望が背中を押す 都内で中国系進学塾を経営する中国人男性は「(中国人保護者の)中国国内の体制への失望です。つまりイデオロギー色の強い中国の教育を避けているのです。そして中国の教育をめぐる『巻』(ジュアン、過度な競争を意味する)が無意味で、子どもの心身を破壊することがわかったのです」と話す。 日本への留学を考えても、競争率の高いインターナショナルスクールに入るのは難しい(参考:日本のインター校に中国から「教育移民」が殺到中)。さらにインターの場合、保護者が日本に居住しているのが前提なので、一般の高校への留学が有力なオプションになってきている。 中国から都内の高校に留学した経験がある現役の女子大学生は、小学生の頃に家族で日本に旅行してすっかり気に入り、日本留学を決めたのだという。「中国の高校はすごく『巻』なので比較的早い段階で出国しました」と語る。) 一方、袁列氏は「最大の原因は中国の『中考分流』です」と断言する。中考分流とは、2018年に導入が始まった新たな教育制度だ。増加する一方の大卒者が就職難に苦しむ現状への対策として、大学に進む学生の数を絞るのが目的である。 高校入試(中考)時点で、約半数の生徒が高校や大学への進学の道を閉ざされる。この制度のもとで中国では大学に行けそうもなくなった子どものため、親が海外留学を用意しているのだ。 ある西日本の高校に通う現役の中国人留学生王濤君(仮名)は、自分のクラスでは8人に1人が中国人だと教えてくれた。本人も、まさに「巻」と「中考分流」が留学の理由なのだという。中国でこの高校の評判を聞いて来日を決めた。 王君が語る中国の教育熱は、日本人の想像の遥か上を行く。 「幼稚園のとき、私がまだ泥遊びをしている頃に幾何学や関数を学んでいる子どもがいました。私が小学校や中学校に通っていたときは、みんな楽器やダンスなどの特技を持っていました」「春節で中国に帰ったときには、空港で幼稚園児くらいの子が円周率を100桁まで暗唱していました」 王君によると、日本での学校生活は充実していて、教師の面倒見もいいという。卒業後は首都圏にある某私立大学の理工学部を目指しているそうだ』、「「最大の原因は中国の『中考分流』です」と断言する。中考分流とは、2018年に導入が始まった新たな教育制度だ。増加する一方の大卒者が就職難に苦しむ現状への対策として、大学に進む学生の数を絞るのが目的である。 高校入試(中考)時点で、約半数の生徒が高校や大学への進学の道を閉ざされる。この制度のもとで中国では大学に行けそうもなくなった子どものため、親が海外留学を用意しているのだ・・・日本での学校生活は充実していて、教師の面倒見もいいという。卒業後は首都圏にある某私立大学の理工学部を目指しているそうだ」、なるほど。
・『費用がアメリカの2割以下で済む 日本留学がブームとなっているのには、経済的要因もある。袁列氏によると、コロナの影響で、留学先として近場の日本が好まれるようになったという。国際情勢の不安定化で欧米を避ける傾向が強まったうえ、ここ数年円安が続いていることも日本の人気を高めた。「アメリカだと生活費など含めて年1600万円ほど必要ですが、日本なら多くても300万円です」。 中国からやってきた高校留学生は、基本的に日本の大学に進学する。受け入れ校にはたいてい協定校や指定校推薦がある。留学生の在留資格では高校卒業後に浪人生としては日本に残れないという制約もあるが、日本人と同じ入試に挑む生徒もいる。 「国語が苦手な生徒が多く国立大学合格は難しいが、優秀層には早慶などのトップ私立校に入学する人もいる」(袁列氏)という。ただ、前出の教師は、昔は私立有名大学を目指す留学生が少なくなかったが、最近は「意識が薄かったり、向上心が乏しかったりする生徒が増えた」と嘆く。それでも日本は大学全入時代なので、選り好みしなければ進学は難しくない。 年々悪化する自国の教育環境から子どもを救い出そうとする中国人保護者の増加、そして少子化のなかで生徒数確保が焦眉の急である日本の高校の利害は一致している。中国から日本の高校を目指す留学生はますます増えていきそうだ』、「ここ数年円安が続いていることも日本の人気を高めた。「アメリカだと生活費など含めて年1600万円ほど必要ですが、日本なら多くても300万円です」。 中国からやってきた高校留学生は、基本的に日本の大学に進学する・・・年々悪化する自国の教育環境から子どもを救い出そうとする中国人保護者の増加、そして少子化のなかで生徒数確保が焦眉の急である日本の高校の利害は一致している。中国から日本の高校を目指す留学生はますます増えていきそうだ』、「中国から日本の高校を目指す留学生はますます増えていきそうだ」、なにやら不気味な予感がする。
次に、10月24日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した静岡大学教授の楊 海英氏による「中国人が異民族を「同化」させようとするワケ、日本人とは本質的に異なる“頭の中”」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/352341
・『気が付けば近所や職場に中国人がいることが珍しくない日本社会。中国人の考え方を知る上で、知らなければならないキーワードが「同化」である。モンゴルに生まれて中国で学び、日本に帰化した著者が述べる、「日中文化の本質的な違い」とは? ※本稿は、楊海英著『中国を見破る』(PHP新書)を一部抜粋・編集したものです』、興味深そうだ。
・『町中華から“ガチ中華”へ 数年前から“ガチ中華”が増えたという話を聞くようになった。いわゆる「町中華」が日本人の舌に合わせた中華料理であるのに対して、“ガチ中華”は中国人が好む本場の料理を食べられる店のことをいうそうだ。 ブームの火付け役となったのは東京・池袋にある中華店だといわれる。池袋といえば豊島区の大繁華街で、日本を代表するターミナル駅がある。その豊島区に居住する外国人の国籍は中国人がおよそ半数にも上っているという。 東京全体を見ても、2024年1月時点の都内在住外国人約65万人のうち約40%が中国人(都総務局人口統計部データ)であり、26万人近い中国人が都内に住んでいることになる。これだけ多くの中国人がいれば、昔ながらの町中華ではなく、中華圏の人々が好む味の中華料理店が東京で増えるのは当然かもしれない。 いうまでもなく、日本には、古くから多くの中国人が移住してきた。華僑と呼ばれた従来の移住者は、横浜、神戸、長崎といった各都市でチャイナタウンを形成している。つまり中国のローカルルールはチャイナタウンのなかに限定して、地元の日本人とは良好な関係を築くことで共存共栄を望んできたように思う(日本が好きになって、私のように、日本に帰化する人も多数いたにちがいない!)』、「2024年1月時点の都内在住外国人約65万人のうち約40%が中国人・・・であり、26万人近い中国人が都内に住んでいることになる。これだけ多くの中国人がいれば、昔ながらの町中華ではなく、中華圏の人々が好む味の中華料理店が東京で増えるのは当然かもしれない・・・中国のローカルルールはチャイナタウンのなかに限定して、地元の日本人とは良好な関係を築くことで共存共栄を望んできたように思う」、なるほど。
・『背後に見え隠れする国家の存在 そのように日本のルールを尊重しながら地元社会との間では衝突を避け、静かに暮らしてきた人たちがいる一方で、そうでない中国系の人たちもいる。 たとえば、2022年10月にサンシャイン60のフランス料理店で起きた大乱闘事件は記憶に新しいところだろう。サンシャイン60といえば池袋のシンボルタワーであり、家族連れや中高生も訪れる有名スポット。そのような場所で起きたことは衝撃的だった。 また地方の私立高校では、経営難から脱するために、中国人留学生を積極的に受け入れていたら、いつのまにか留学生ばかりの学校になったという例もある。 日本でもようやく経済安全保障推進法が成立したが、中国人留学生を介して、先端技術が流出、漏洩するリスクに対する責任を日本企業が負う時代になっている。 さらには、マネーロンダリング、スパイ、日本国内の攪乱といった非合法な行為を目的に入国した中国人が、一般市民が暮らす社会に潜伏していることも否定できない。 そうかと思えば、共産党支配に嫌気がさし、純粋に日本で暮らすことに希望をもち、祖国と決別し、移住してくる中国人もいる。 そうしたことは何も「中国人」だけに限ったことではないだろう。しかしこと「中国人」に関しては、それぞれの背後に「中国」という国家の存在が見え隠れすることに注意を払う必要がある。日本人にとっては、長年の歴史から身近な存在であるだけに、その本質が見えにくくなっていることに気づかなければならない』、「こと「中国人」に関しては、それぞれの背後に「中国」という国家の存在が見え隠れすることに注意を払う必要がある。日本人にとっては、長年の歴史から身近な存在であるだけに、その本質が見えにくくなっていることに気づかなければならない」、なるほど。
・『「心が異なる」相手は同化させる 紀元前の非常に古い文献である『左伝』(春秋左氏伝)に「わが族に非ざる者は、その心もまた異なる」という有名な言葉が記されている。 要するに、中華以外の人間は心がわれわれと違うので、自分たちとは違う人間だと言っているのだが、これを「異心論」という。その「わが族に非ざる者」に対し、中国がたどり着いたのは「同化させるべき」だという考え方だった(私はこれを「同化論」と呼ぶことにした!)。 欧米でいう「カルチャー」に、「文化」という訳語をつけたのは近世の日本人で、中国語の「文化」は意味がまるで違う。それは、相手を「文明化」させることであり、別の言い方をすれば、「中華化」することだ。つまり中国人(漢族、漢人)と同化させることである。この「中華化」は、「華化」「華夏化」と言い換えることもできる。 「華夏」とは、まさしく「中華」そのものを指し、あるいは「中華民族」そのものを意味する言葉だ。異民族を華夏にすることこそ、中国人にとって「文化」だといえる。漢字圏に生きる日本人だからこそ、見えにくい例のひとつである』、「「華夏」とは、まさしく「中華」そのものを指し、あるいは「中華民族」そのものを意味する言葉だ。異民族を華夏にすることこそ、中国人にとって「文化」だといえる」、なるほど。
・『中国語の祖型 ところが話をややこしくするようだが、最初に「われわれは華夏だ」と称したのは漢人ではない。五胡十六国時代の五胡、つまり万里の長城を越えて南下してきた北方異民族の匈奴(きょうど)と鮮卑(せんぴ)が、自らを「華夏」と呼んだのである。 これは1990年代にNHKの後藤多聞氏が、台湾の中央研究院で電子化された漢籍をつぶさに検索したところ、最も古い「華夏」の文字が五胡十六国時代の文献で見つかったことからわかったものだ。 五胡十六国、つまりテュルク系言語やモンゴル系言語を話す匈奴系・鮮卑系の人々が大挙して万里の長城以南の地に入り、互いに融合して共存をめざすなかで、ある種のスローガンとして自分たちを「華夏」であると唱えた。 彼らは長城以南の地に暮らしていた中国人(プロト・チャイニーズ)たちともコミュニケーションをとるため、一種のピジン語(異なる言語の話者間で通じる混合言語)を話すようになった。おそらくは漢語の語彙をベースに文法表現をアルタイ語化した言葉で、それが後に現代の中国語の祖型になっていったと考えられる。つまり中国語とは、諸民族融合の必要性により生まれたピジン語だといえるのだ。 ちなみに、北方から遊牧民がやってきたことで、それまで長城の南に暮らしていたプロト・チャイニーズはどう対応したかというと、一部は異民族の支配からどんどん南へ逃れ、いわゆる「客家(ハッカ)」となった(どこへ行っても客人扱いされるがゆえに、そう呼ばれるのだ!)』、「五胡十六国、つまりテュルク系言語やモンゴル系言語を話す匈奴系・鮮卑系の人々が大挙して万里の長城以南の地に入り、互いに融合して共存をめざすなかで、ある種のスローガンとして自分たちを「華夏」であると唱えた。 彼らは長城以南の地に暮らしていた中国人(プロト・チャイニーズ)たちともコミュニケーションをとるため、一種のピジン語・・・を話すようになった。おそらくは漢語の語彙をベースに文法表現をアルタイ語化した言葉で、それが後に現代の中国語の祖型になっていったと考えられる。つまり中国語とは、諸民族融合の必要性により生まれたピジン語だ」、なるほど。
・『歴史を書き換えたのは漢人である ところで今、私が説明してきた意味での「華夏族」は、自らを漢人と名乗ったか。もちろんそうではなく、もともとが遊牧民であることに誇りをもっていた。祖先が匈奴であることを示す石碑が数多く長城沿いに残っているのは、その証左であろう。 つまり、「北方異民族は野蛮人であり、万里の長城の南に入ってきた人々を当時の漢人たちが漢化すなわち文明化した。それゆえに異民族たちは北方からきた民族であることを隠していた」というような現代中国がいう歴史は、後世に書き換えられたものだといえる。 歴史を書き換えたのは、いうまでもなく漢人だろう。「中国文化は優れているため、野蛮な遊牧民を同化したのだ」という論理とその実行プロセス。それこそ、中国人にとっての「文化」なのである。 同時に「北方異民族たちは漢化したからこそ華夏と呼ばれるようになった」という見解もあるようだが、これも適切ではない。繰り返すようだが、実際は北からきた異民族らが、長城の南に暮らしはするものの、いわゆる漢人になるつもりはなかったため、新たに華夏と自称したのである』、「北からきた異民族らが、長城の南に暮らしはするものの、いわゆる漢人になるつもりはなかったため、新たに華夏と自称したのである」、なるほど。
・『「負け惜しみ」の思想としての朱子学 こうした「中国文化が優れているため、異民族は漢化した」という歴史認識が打ち出されたのは主に近代以降で、その祖型は宋代にまでさかのぼる。南宋の儒学者である朱熹が形にしたといわれる、日本人が近世からとくに受け入れてきた朱子学の「負け惜しみ」論がその原型となる。 宋は国力が弱く、モンゴル系の契丹(キタイ帝国)や満洲系の金と軍事的に対抗できなかった。契丹や金と戦って五胡十六国の再来を招くことを恐れたがゆえに、金によって南に追われて南宋を建国したとき、「自分たちは野蛮人と異なり戦いには興味がないが、代わりに文化がある、それゆえに強い」という一種の自己満足、言い換えれば負け惜しみの思想として朱子学が誕生した。 それが近世に入り、とりわけ満洲人の清朝が崩壊していく過程を見て「満洲人も漢化=漢文化に同化した」という考え方が生まれ、歴史を書き換えるという不合理な仕業が合理的なものへと転換していったといえる。すべては漢人や漢人の文化が優れているという物語を捏造するためである』、「宋は国力が弱く、モンゴル系の契丹(キタイ帝国)や満洲系の金と軍事的に対抗できなかった。契丹や金と戦って五胡十六国の再来を招くことを恐れたがゆえに、金によって南に追われて南宋を建国したとき、「自分たちは野蛮人と異なり戦いには興味がないが、代わりに文化がある、それゆえに強い」という一種の自己満足、言い換えれば負け惜しみの思想として朱子学が誕生した・・・それが近世に入り、とりわけ満洲人の清朝が崩壊していく過程を見て「満洲人も漢化=漢文化に同化した」という考え方が生まれ、歴史を書き換えるという不合理な仕業が合理的なものへと転換していったといえる。すべては漢人や漢人の文化が優れているという物語を捏造するためである」、「負け惜しみの思想として朱子学が誕生した」、というのは初めて知ったが、興味深い。
第三に、10月25日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した静岡大学教授の楊 海英氏による「いつから「中国5000年の歴史」に?モンゴル生まれの帰化日本人が暴く!歴史の書き換え」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/352343
・『『三国志』や『キングダム』などの作品を通じて日本に浸透する中国の歴史と文化。だが、私たちが自明に考える中国史の裏には、「国家による操作」が潜んでいた…。モンゴルに生まれ、中国で学んだ帰化日本人が「中国5000年」のウソを学術的に明らかにする。※本稿は、楊海英著『中国を見破る』(PHP新書)を一部抜粋・編集したものです』、興味深そうだ。
・『司馬遷の『史記』より『キングダム』 日本には中国の歴史や文化に詳しい人が多いと感じる。中学、高校で中国の歴史や地理、漢文を学び、大学生や社会人になれば中国関連の単行本や新書を読む。書店にいけば単行本、新書、文庫、漫画、雑誌と各コーナーに中国関連の本が並んでいる。 エンタメ作品でも、昔の中国を舞台にした小説、漫画、アニメ、ゲームはたくさんある。たとえば、秦の始皇帝たちを描く『キングダム』は、コミックの新刊がいつもベストセラー入りし、テレビアニメのシリーズが続いている。本場の中国でも人気は高く、司馬遷の『史記』は読んでいなくても、『キングダム』のファンという人たちがいるくらいだ。 『三国志』も日本では長らく人気の読み物といえよう。居酒屋で「三国志では趙雲が一番好き」「あいつは曹操タイプだ」と、中国古典の知識が会話に出てくることも珍しくない。そのように、日本人は昔から巨大な隣国を意識し、中国の歴史や文化からたくさんのことを学んできたのは間違いない。 令和に改元されたときにそのことを認識した日本人もいただろう。日本の元号は、西暦645年の「大化」以来、漢籍の言葉をもとに定められてきた。『大学』『中庸』『論語』『孟子』の四書、『易経』『書経』『詩経』『礼記』『春秋』の五経が出典として多く、「令和」の出典が『万葉集』だと話題になるほど、「元号は漢籍の言葉」というのが常識だった。 しかし、である。これほど多大な影響を受けてきたにもかかわらず、日本人の中国理解が本当に正しいものなのかというと、疑問符を付けざるを得ない。言い換えれば、中国の本質を知っているか否かも、疑いたくなる』、「『三国志』も日本では長らく人気の読み物といえよう。居酒屋で「三国志では趙雲が一番好き」「あいつは曹操タイプだ」と、中国古典の知識が会話に出てくることも珍しくない。そのように、日本人は昔から巨大な隣国を意識し、中国の歴史や文化からたくさんのことを学んできたのは間違いない・・・しかし、である。これほど多大な影響を受けてきたにもかかわらず、日本人の中国理解が本当に正しいものなのかというと、疑問符を付けざるを得ない。言い換えれば、中国の本質を知っているか否かも、疑いたくなる」、なるほど。
・『中国の歴史はせいぜい2500年 「昔は“中国4000年の歴史”と言ってたのに?最近は“中国5000年の歴史”になった。いつの間に1000年も延びたんですかね」 日本人からたまにそんな質問を受けることがある。 日本で「中国4000年の歴史」が広まったのは、1980年代にインスタントラーメンのコマーシャルで「中国4000年の幻の麺」というフレーズが広まったからだと言われる。実はその頃から中国では「わが国の歴史は5000年」と主張しだしたようだ。私が小学生の頃も3000年だと教わったのだが。 だから、中国人が先ほどのコマーシャルを観たら、「1000年も短くされた」と憤慨しただろう。しかし私は「日本人は優しいから、中国人の顔を立てて4000年にしてくれた」と思っている。 欧米はじめ他の国々では「中国の歴史はせいぜい2500年、長くても3000年」とみるのが一般的だからだ』、「日本で「中国4000年の歴史」が広まったのは、1980年代にインスタントラーメンのコマーシャルで「中国4000年の幻の麺」というフレーズが広まったからだと言われる。実はその頃から中国では「わが国の歴史は5000年」と主張しだしたようだ・・・欧米はじめ他の国々では「中国の歴史はせいぜい2500年、長くても3000年」とみるのが一般的」、そんなにいい加減なものとは、驚かされた。
・『文明の起点はいつか もちろん、中国には5000年よりもはるか昔から人間が住んでいた。しかし、現在につながる“中国の歴史”と呼ぶわけにはいかない。人間が生活をしていればそれで歴史と認証されるのなら、5000年の歴史を誇る国は世界各地に存在することになる。 大事なのは、現在につながる文明があったかどうかだろう。にもかかわらず、そうした認識を持ち合わせていないかのように、中国は、5000年の歴史を証明することに力を注いできた。なかでも特徴的なものが、国を挙げて取り組んだ「夏商周年表プロジェクト」という研究だ。 中国語では「夏商周断代工程」と書き、21世紀を迎えるにあたってのミレニアム・プロジェクトとして、1996年から2000年にかけて進められた。「夏商周」の3文字でピンときた人もいるだろう。最初の王朝とされる夏王朝、それに続く商(殷)王朝、周王朝について具体的な年代を確定するという取り組みだ。 それまで中国の歴史は、司馬遷の『史記』にある周王朝の「共和元年」(紀元前841年)が、文献によって確認できる最も古い時代とされてきた。共和元年より古い時代は、文献によって確認できないから、夏王朝と商王朝は「神話伝説の時代」と呼ばれてきた。 司馬遷にならって、中国の歴史が紀元前841年に始まるとすれば、現在から2865年前になる。「どれだけ長くても3000年の歴史」という通説に根拠を与えるものだ』、「大事なのは、現在につながる文明があったかどうかだろう。にもかかわらず、そうした認識を持ち合わせていないかのように、中国は、5000年の歴史を証明することに力を注いできた。なかでも特徴的なものが、国を挙げて取り組んだ「夏商周年表プロジェクト」という研究だ。 中国語では「夏商周断代工程」と書き、21世紀を迎えるにあたってのミレニアム・プロジェクトとして、1996年から2000年にかけて進められた。「夏商周」の3文字でピンときた人もいるだろう。最初の王朝とされる夏王朝、それに続く商(殷)王朝、周王朝について具体的な年代を確定するという取り組みだ・・・夏王朝と商王朝は「神話伝説の時代」と呼ばれてきた。 司馬遷にならって、中国の歴史が紀元前841年に始まるとすれば、現在から2865年前になる。「どれだけ長くても3000年の歴史」という通説に根拠を与えるものだ」、なるほど。
・『単に歴史を書き換えたにすぎない ところが「夏商周年表プロジェクト」では、中国の歴史として夏・商・周の年表を作成した。約200人の学者が参加し、天文学、考古学、文献学などの手法を取り入れて研究を進めた結果、次のような“歴史”を定めた。 ◆夏王朝:紀元前2070年頃~紀元前1600年頃 ◆商(殷)王朝:紀元前1600年頃~紀元前1046年頃。そのうち殷墟(いんきょ、河南省安陽市)への遷都は紀元前1300年頃 ◆周王朝:紀元前1046年頃~紀元前256年 周王朝については、各時代の王の在位年も確定している。 この“歴史”は従来の古代中国史と異なり、根拠が乏しいことから、外国の歴史研究者から批判されたし、その“説”を信じる人もいない。日本の中国史研究者たちも、さすがに認められないという立場が多かった。商王朝以前が実際にあったとする根拠に乏しいからだ。 新たな文献の発見や科学的な研究方法の進歩によってこれまでの歴史が見直され、修正されることはある。しかし有力な根拠がない場合は、単に歴史を書き換えたにすぎない。 2000年に終了した「夏商周年表プロジェクト」の内容は、2004年にスタートした「中華文明探源プロジェクト」(中華文明探源工程)に受け継がれ、2018年に最終報告がまとめられた。 この報告では、5800年ほど前に、黄河と揚子江(長江)の中・下流域や長城の外、モンゴル高原南部を流れる西遼河流域に文明が出現したことになっている。その文明は500年ほどかけて中国全土に広がり、3800年ほど前に、中原地域に成熟した文明が形成され、現在まで中国文明として発展してきた、というのである。 いわゆる“中国5000年の歴史”も最初は、黄河と揚子江で生まれた文明が中国全土に広がった頃を起点とした歴史観ということだ。しかし、いつの間にか、モンゴルの西遼河まで盗まれてしまったのではないか』、「「中華文明探源プロジェクト」(中華文明探源工程)に受け継がれ、2018年に最終報告がまとめられた。 この報告では、5800年ほど前に、黄河と揚子江(長江)の中・下流域や長城の外、モンゴル高原南部を流れる西遼河流域に文明が出現したことになっている。その文明は500年ほどかけて中国全土に広がり、3800年ほど前に、中原地域に成熟した文明が形成され、現在まで中国文明として発展してきた、というのである。 いわゆる“中国5000年の歴史”も最初は、黄河と揚子江で生まれた文明が中国全土に広がった頃を起点とした歴史観ということだ。しかし、いつの間にか、モンゴルの西遼河まで盗まれてしまったのではないか」、「モンゴルの西遼河まで盗まれてしまった」というのはどういうことなのだろうか。私には意味が分からない。
タグ:中国情勢(軍事・外交) (その16)(日本の高校で中国人留学生が増え続ける仰天事態 過当競争の中国と少子化ニッポンの利害が一致、中国人が異民族を「同化」させようとするワケ 日本人とは本質的に異なる“頭の中”、いつから「中国5000年の歴史」に?モンゴル生まれの帰化日本人が暴く!歴史の書き換え) 東洋経済オンライン 舛友 雄大氏による「日本の高校で中国人留学生が増え続ける仰天事態 過当競争の中国と少子化ニッポンの利害が一致」 「「受け入れる留学生の学力にこだわらなくなると、指導できくなった教師が辞めていき、代わりの教師を探すという悪循環に陥る」と事情を明かす。 この日本人教師は、「国際的プログラムを持たない一般の高校が受け入れられる留学生の数は全体の2〜5%ほどで、10〜15%までいくと違和感が出る」と打ち明ける。 「中国人の学校」とみなされ、日本人生徒から敬遠される事態を避ける工夫も必要ということだ」、なるほど。 「「最大の原因は中国の『中考分流』です」と断言する。中考分流とは、2018年に導入が始まった新たな教育制度だ。増加する一方の大卒者が就職難に苦しむ現状への対策として、大学に進む学生の数を絞るのが目的である。 高校入試(中考)時点で、約半数の生徒が高校や大学への進学の道を閉ざされる。この制度のもとで中国では大学に行けそうもなくなった子どものため、親が海外留学を用意しているのだ・・・ 日本での学校生活は充実していて、教師の面倒見もいいという。卒業後は首都圏にある某私立大学の理工学部を目指しているそうだ」、なるほど。 「ここ数年円安が続いていることも日本の人気を高めた。「アメリカだと生活費など含めて年1600万円ほど必要ですが、日本なら多くても300万円です」。 中国からやってきた高校留学生は、基本的に日本の大学に進学する・・・年々悪化する自国の教育環境から子どもを救い出そうとする中国人保護者の増加、そして少子化のなかで生徒数確保が焦眉の急である日本の高校の利害は一致している。 「中国から日本の高校を目指す留学生はますます増えていきそうだ」、なにやら不気味な予感がする。 ダイヤモンド・オンライン 楊 海英氏による「中国人が異民族を「同化」させようとするワケ、日本人とは本質的に異なる“頭の中”」 楊海英著『中国を見破る』(PHP新書) 「2024年1月時点の都内在住外国人約65万人のうち約40%が中国人・・・であり、26万人近い中国人が都内に住んでいることになる。これだけ多くの中国人がいれば、昔ながらの町中華ではなく、中華圏の人々が好む味の中華料理店が東京で増えるのは当然かもしれない・・・中国のローカルルールはチャイナタウンのなかに限定して、地元の日本人とは良好な関係を築くことで共存共栄を望んできたように思う」、なるほど。 「こと「中国人」に関しては、それぞれの背後に「中国」という国家の存在が見え隠れすることに注意を払う必要がある。日本人にとっては、長年の歴史から身近な存在であるだけに、その本質が見えにくくなっていることに気づかなければならない」、なるほど。 「「華夏」とは、まさしく「中華」そのものを指し、あるいは「中華民族」そのものを意味する言葉だ。異民族を華夏にすることこそ、中国人にとって「文化」だといえる」、なるほど。 「五胡十六国、つまりテュルク系言語やモンゴル系言語を話す匈奴系・鮮卑系の人々が大挙して万里の長城以南の地に入り、互いに融合して共存をめざすなかで、ある種のスローガンとして自分たちを「華夏」であると唱えた。 彼らは長城以南の地に暮らしていた中国人(プロト・チャイニーズ)たちともコミュニケーションをとるため、一種のピジン語・・・ を話すようになった。おそらくは漢語の語彙をベースに文法表現をアルタイ語化した言葉で、それが後に現代の中国語の祖型になっていったと考えられる。つまり中国語とは、諸民族融合の必要性により生まれたピジン語だ」、なるほど。 「北からきた異民族らが、長城の南に暮らしはするものの、いわゆる漢人になるつもりはなかったため、新たに華夏と自称したのである」、なるほど。 「宋は国力が弱く、モンゴル系の契丹(キタイ帝国)や満洲系の金と軍事的に対抗できなかった。契丹や金と戦って五胡十六国の再来を招くことを恐れたがゆえに、金によって南に追われて南宋を建国したとき、「自分たちは野蛮人と異なり戦いには興味がないが、代わりに文化がある、それゆえに強い」という一種の自己満足、言い換えれば負け惜しみの思想として朱子学が誕生した・・・ それが近世に入り、とりわけ満洲人の清朝が崩壊していく過程を見て「満洲人も漢化=漢文化に同化した」という考え方が生まれ、歴史を書き換えるという不合理な仕業が合理的なものへと転換していったといえる。すべては漢人や漢人の文化が優れているという物語を捏造するためである」、「負け惜しみの思想として朱子学が誕生した」、というのは初めて知ったが、興味深い。 楊 海英氏による「いつから「中国5000年の歴史」に?モンゴル生まれの帰化日本人が暴く!歴史の書き換え」 「『三国志』も日本では長らく人気の読み物といえよう。居酒屋で「三国志では趙雲が一番好き」「あいつは曹操タイプだ」と、中国古典の知識が会話に出てくることも珍しくない。そのように、日本人は昔から巨大な隣国を意識し、中国の歴史や文化からたくさんのことを学んできたのは間違いない・・・しかし、である。これほど多大な影響を受けてきたにもかかわらず、日本人の中国理解が本当に正しいものなのかというと、疑問符を付けざるを得ない。言い換えれば、中国の本質を知っているか否かも、疑いたくなる」、なるほど。 「日本で「中国4000年の歴史」が広まったのは、1980年代にインスタントラーメンのコマーシャルで「中国4000年の幻の麺」というフレーズが広まったからだと言われる。実はその頃から中国では「わが国の歴史は5000年」と主張しだしたようだ・・・欧米はじめ他の国々では「中国の歴史はせいぜい2500年、長くても3000年」とみるのが一般的」、そんなにいい加減なものとは、驚かされた。 「大事なのは、現在につながる文明があったかどうかだろう。にもかかわらず、そうした認識を持ち合わせていないかのように、中国は、5000年の歴史を証明することに力を注いできた。なかでも特徴的なものが、国を挙げて取り組んだ「夏商周年表プロジェクト」という研究だ。 中国語では「夏商周断代工程」と書き、21世紀を迎えるにあたってのミレニアム・プロジェクトとして、1996年から2000年にかけて進められた。「夏商周」の3文字でピンときた人もいるだろう。 最初の王朝とされる夏王朝、それに続く商(殷)王朝、周王朝について具体的な年代を確定するという取り組みだ・・・夏王朝と商王朝は「神話伝説の時代」と呼ばれてきた。 司馬遷にならって、中国の歴史が紀元前841年に始まるとすれば、現在から2865年前になる。「どれだけ長くても3000年の歴史」という通説に根拠を与えるものだ」、なるほど。 「「中華文明探源プロジェクト」(中華文明探源工程)に受け継がれ、2018年に最終報告がまとめられた。 この報告では、5800年ほど前に、黄河と揚子江(長江)の中・下流域や長城の外、モンゴル高原南部を流れる西遼河流域に文明が出現したことになっている。その文明は500年ほどかけて中国全土に広がり、3800年ほど前に、中原地域に成熟した文明が形成され、現在まで中国文明として発展してきた、というのである。 いわゆる“中国5000年の歴史”も最初は、黄河と揚子江で生まれた文明が中国全土に広がった頃を起点とした歴史観ということだ。しかし、いつの間にか、モンゴルの西遼河まで盗まれてしまったのではないか」、「モンゴルの西遼河まで盗まれてしまった」というのはどういうことなのだろうか。私には意味が分からない。
ハラスメント(その28)(「投資家によるセクハラが社会問題化している」ベンチャーキャピタル最大手・ジャフコで起きた“セクハラ問題”、「僕たちは犯罪者に育てられた」錦織一清が語ったジャニー喜多川氏への“複雑な思い”」、アバクロ元CEOは性加害で逮捕、Nスペも再放送…、【独自】齋藤元彦・前兵庫県知事をたたき潰した「兵庫政界の闇」とは…、【追及スクープ第2弾】齋藤元彦・前兵庫県知事を潰した「既得権益の逆襲」と「パワハラ・おねだり告発文書」の深層とは)「 [社会]
ハラスメントについては、本年10月5日に取上げた。今日は(その28)(「投資家によるセクハラが社会問題化している」ベンチャーキャピタル最大手・ジャフコで起きた“セクハラ問題” 、「僕たちは犯罪者に育てられた」錦織一清が語ったジャニー喜多川氏への“複雑な思い”」、アバクロ元CEOは性加害で逮捕、Nスペも再放送…、【独自】齋藤元彦・前兵庫県知事をたたき潰した「兵庫政界の闇」とは…、【追及スクープ第2弾】齋藤元彦・前兵庫県知事を潰した「既得権益の逆襲」と「パワハラ・おねだり告発文書」の深層とは))である。
先ずは、本年10月16日付け文春オンライン「「投資家によるセクハラが社会問題化している」ベンチャーキャピタル最大手・ジャフコで起きた“セクハラ問題” 取材記者が解説する告発の背景」を紹介しよう。
・『ベンチャー投資最大手「ジャフコグループ」に勤務していた女性が、同社男性社員からのセクハラ被害とその後の同社の不当な対応を訴えた問題。 10月11日、女性の代理人弁護士が都内で会見を行ったが、この会見に先立ち「週刊文春電子版」では、女性本人の告発を報じた。告発に至った経緯とはどのようなものだったのか。 「被害者女性は、セクハラ行為自体も当然ですが、その後の会社の対応をどちらかというと問題視していると思っています」 そう語るのは、この問題を取材した「週刊文春」の播磨谷拓巳記者である。 「女性がセクハラ被害を受けた後、加害者の男性社員には処分が下ったのですが、その後、被害者女性も退職金を出すからと退職を勧められるようになった。それを断ると、給料を半額にすると提示され、応じなければ退職するよう迫られました。さらにその面談の際に、執行役員から人格を否定するような発言も出たということです」(播磨谷記者) ベンチャーキャピタル最大手で起きたセクハラとその後の会社の酷い対応。今回の告発の背景には、業界が抱える問題に一石を投じたいという女性の思いがあったという』、「同社男性社員からのセクハラ被害・・・加害者の男性社員には処分が下った」のは当然だが、問題は、「被害者女性も退職金を出すからと退職を勧められるようになった。それを断ると、給料を半額にすると提示され、応じなければ退職するよう迫られました。さらにその面談の際に、執行役員から人格を否定するような発言も出た」、本当に信じ難い飛んでもないことだ。
・『「今回、被害者の方は声を上げた理由として『同じような目に遭う人を減らしたい』 同じような目に遭った人の声に押された』というようなことをおっしゃっていました。 欧米では投資家による女性起業家へのセクハラが社会問題化しており、日本でもNHKや日本経済新聞で特集が組まれています。今回の事件は会社の内部で起きた事案ではありますが、ベンチャーキャピタルの中で地位を持った方が、セクハラを起こしてしまったり適切な対応ができなかったりするということが顕著に表れた例だと思います」(同前) 退職の強要だけでないジャフコ社の“セカンドハラスメント”とも言えるような被害者女性への対応、ジャフコ上層部の責任などについて記者が解説した動画番組の全編は、「週刊文春電子版」で見ることができる。また、被害者が受けた卑劣なセクハラや会社側の質問状への回答などの詳細を報じた記事も「週刊文春電子版」で配信している』、「退職の強要だけでないジャフコ社の“セカンドハラスメント”とも言えるような被害者女性への対応、ジャフコ上層部の責任などについて記者が解説した動画番組」、「ベンチャーキャピタル」トップ企業にあるまじき飛んでもないような不祥事だ。
次に、10月17日付け文春オンライン「「僕たちは犯罪者に育てられた」錦織一清が語ったジャニー喜多川氏への“複雑な思い”「ヒガシは『鬼畜の所業』と発言したけど…」〈阿川佐和子対談に初登場〉」を紹介しよう。
・『2020年12月にジャニーズ事務所を退所し、シンガー・演出家・俳優として活動する錦織一清さん。元「少年隊」のリーダーが初めて「週刊文春」の名物コーナー「阿川佐和子のこの人に会いたい」に登場し、阿川佐和子さんに「旧ジャニーズ事務所への思い」を率直に明かした。インタビューの一部を抜粋して紹介する』、興味深そうだ。
・『パパイヤ鈴木とのユニットでアルバムリリース 阿川 はじめまして。週刊文春によくお出でくださいましたね。錦織さんとパパイヤ鈴木さんとのユニット「Funky Diamond 18」が、新しいアルバム『PLATONIX』をリリースされたそうで(10月16日発売)。 錦織 そうなんですよ。11月から全国6カ所でライブもやります。 阿川 パパイヤさんとは同い年なんですって? 錦織 え~とね、高校の同級生なんですけど、訳あって僕が1個上です(笑)。パパイヤとは高校時代、踊りの話とかをよくしてましたよ。 後半では阿川さんが旧ジャニーズ事務所について尋ねた』、「旧ジャニーズ事務所」との関係は特に興味深い。
・『「僕たちは犯罪者に育てられた子どもたち」 阿川 昨年、ジャニー喜多川さんの過去の性加害が明るみに出て、ジャニーズ事務所が解体されるという事態になりました。 錦織 はい、なりましたね。 阿川 錦織さんはどういうお気持ちで受け止めました? 錦織 まぁ……ヒガシが「鬼畜の所業」と発言した件。それは自己否定にもつながってしまうんですよね。 阿川 自分の歩んできた人生も。 錦織 うん。当然、犯罪はよくないと思います。でも、これは事実だからしょうがないんだけど、僕たちは犯罪者に育てられた子どもたちなんだよね。自分が川で溺れているときに助けてくれた人が、実は殺人犯だったらどうするかって話で。 阿川 恩人が犯罪者だった。 錦織 はい。……でも僕は――。 錦織から語られた元ジャニーズとしての覚悟、メリー喜多川氏から受けたまさかの仕打ち、少年隊の裏話、そしてパパイヤ鈴木とのユニット結成秘話とは……。10月16日(水)12時から配信の「週刊文春 電子版」および17日(木)発売の「週刊文春」ではインタビュー全文を読むことができる』、「ヒガシが「鬼畜の所業」と発言した件。それは自己否定にもつながってしまうんですよね・・・僕たちは犯罪者に育てられた子どもたちなんだよね。自分が川で溺れているときに助けてくれた人が、実は殺人犯だったらどうするかって話で。 阿川 恩人が犯罪者だった」、「犯罪者に育てられた子どもたちなんだよね」、というのは悲痛な訴えだ』、「犯罪者に育てられた子どもたちなんだよね」、というのは悲痛な訴えだ」、なるほど。
第三に、10月26日付け日刊ゲンダイ「アバクロ元CEOは性加害で逮捕、Nスペも再放送…それでもジャニーズ起用にこだわるNHKの“自己矛盾”」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geinox/362510
・『22日、米アパレル大手「アバクロンビー&フィッチ」のマイク・ジェフリーズ元CEOが、在任中に国際的な性的人身売買組織を運営していたとして逮捕・起訴された。ジェフリーズは、アバクロのモデル起用をエサに、モデル応募者に性行為を要求。秘密保持契約に署名させた後、ジェフリーズやスミス、その他の人物とセックスを強要したり、セックスイベントへの参加強要など、在任中、20年にわたり悪事を繰り返していたという。 少年たちの夢を食い荒らし、何十年も性加害を繰り返していた手口はまさに日本のジャニー喜多川氏と同じ手口である。 同ブランドは「アバクロ」と呼ばれ、アバクロのメンズモデルは“マッチョイケメン”の代名詞的存在でもある。日本では2009年に銀座店がオープンの際、開店前に800人が並び、アバクロのメンズモデルたちとの写真撮影に長蛇の列ができたことでも話題になった。そんな世界的ブランドの組織ぐるみの被害者は100人を超えるといわれており、アメリカ国内外で波紋が広がっている』、「ジェフリーズは、アバクロのモデル起用をエサに、モデル応募者に性行為を要求。秘密保持契約に署名させた後、ジェフリーズやスミス、その他の人物とセックスを強要したり、セックスイベントへの参加強要など、在任中、20年にわたり悪事を繰り返していたという。 少年たちの夢を食い荒らし、何十年も性加害を繰り返していた手口はまさに日本のジャニー喜多川氏と同じ手口である・・・同ブランドは「アバクロ」と呼ばれ、アバクロのメンズモデルは“マッチョイケメン”の代名詞的存在でもある・・・そんな世界的ブランドの組織ぐるみの被害者は100人を超えるといわれており、アメリカ国内外で波紋が広がっている」、なるほど。
・『「Nスペを制作した報道部門に罪の意識が感じられず」 そんな中、NHKはNHKスペシャル「ジャニー喜多川“アイドル帝国”の実像」を20日21時に放送。23日深夜にも再放送し、世界に警鐘を鳴らすかのように見せつつも、旧ジャニーズの番組起用を再開するというNHKの“自己矛盾”を問う声も高まっている。同志社女子大学教授(メディア論)の影山貴彦氏がこう言う。 NHKは民放が旧ジャニーズ起用を再開する中、見切り発車せず、公共放送たるべく硬派な一面を見せていただけに、Nスぺの内容は中途半端。番組の最後にエンタメ部門のOBが過去をわびるような内容で話をまとめ『報道とエンタメは別』と批判を回避し、OB1人に罪をなすり付けた感が否めない。つまり、制作した報道部門に罪の意識が感じられなかったのです。検証に必要なのは、現NHK職員がどうなのかであり、視聴者からすれば報道もエンタメも、どちらもNHK。報道部門もジャニーズ問題に関して当事者であり、加害者だということを忘れるべきではありません」 それでもNHKは旧ジャニーズタレントを大晦日の紅白歌合戦で起用するのか。 早くも「なかったこと」になり始めているジャニーズ問題』、「NHKは民放が旧ジャニーズ起用を再開する中、見切り発車せず、公共放送たるべく硬派な一面を見せていただけに、Nスぺの内容は中途半端。番組の最後にエンタメ部門のOBが過去をわびるような内容で話をまとめ『報道とエンタメは別』と批判を回避し、OB1人に罪をなすり付けた感が否めない。つまり、制作した報道部門に罪の意識が感じられなかったのです。検証に必要なのは、現NHK職員がどうなのかであり、視聴者からすれば報道もエンタメも、どちらもNHK。報道部門もジャニーズ問題に関して当事者であり、加害者だということを忘れるべきではありません」、なるほど。
第四に、10月23日付けYahooニュースが転載した現代ビジネス「【独自】齋藤元彦・前兵庫県知事をたたき潰した「兵庫政界の闇」とは…「裏の絶対権力者」たちが作り上げた「タブー」と「天下り構造」の全貌をスクープする」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/1e3ad4052d49835d19c77f39b1dbf4483fd98797
・『パワハラや贈答品の「おねだり」に関する内部告発で失職した、齋藤元彦前兵庫県知事(46歳)。「職員を自殺に追い込んだ」と非難されても仏頂面を貫き、11月17日の出直し選に再出馬を表明している。「鋼のメンタル」と揶揄され、今や「全国民の敵」と言っても過言ではない扱いだ。 【ひと目でわかる騒動まとめ】齋藤前知事が辞職するまで、何が起きていたのか? だがここにきて、ハラスメントの証拠が乏しいことや、齋藤氏の前に5期20年の長きにわたって県知事を務めた井戸敏三氏(79歳)との対立などの論点が浮上し、空気が変わりつつある。 なぜ齋藤氏は「あきらめようとしない」のか。そして、齋藤騒動の本質とは何なのか? 現在発売中の「週刊現代」が報じたスクープ記事を特別に全文公開する』、「だがここにきて、ハラスメントの証拠が乏しいことや、齋藤氏の前に5期20年の長きにわたって県知事を務めた井戸敏三氏(79歳)との対立などの論点が浮上し、空気が変わりつつある。 なぜ齋藤氏は「あきらめようとしない」のか。そして、齋藤騒動の本質とは何なのか? 現在発売中の「週刊現代」が報じたスクープ記事を特別に全文公開する」、興味深そうだ。
・『始まりは「自民党の内部抗争」 「ぜひ次の兵庫県知事選に立候補してください」 2020年11月、大阪市内の某会議室。県知事選を翌年7月に控えたベテラン自民党県議数人が、当時、大阪府財政課長だった齋藤氏に直談判した。 自民党兵庫県議団は分裂していた。井戸元知事の後継候補である、金沢和夫副知事の擁立をめぐって割れていたのだ。この県議らは、井戸路線との決別を唱える「改革派」だった。 「井戸さんが自ら『金沢でまとめてくれ』と自民党県議団に指示し、多数決で強引に決めようとした。これに反発した党内の有志が、水面下で齋藤擁立に動いた」(ベテラン自民党県議)』、「自民党兵庫県議団は分裂していた。井戸元知事の後継候補である、金沢和夫副知事の擁立をめぐって割れていたのだ。この県議らは、井戸路線との決別を唱える「改革派」だった。 「井戸さんが自ら『金沢でまとめてくれ』と自民党県議団に指示し、多数決で強引に決めようとした。これに反発した党内の有志が、水面下で齋藤擁立に動いた」、なるほど。
・『維新が乗って「流れが変わった」 齋藤氏は東京大学経済学部卒業後、2002年に総務省に入省。2018年に大阪府へ出向し、出世ポストの財政課長を務めていた。 「齋藤さんはもともと、政界進出を考えていたようだ。自民の有志と会ううちに『自民党内では(改革派は)少数派でも、そこまで言ってくれるのなら』とその気になっていった」(兵庫県庁幹部) 齋藤擁立の動きを知った井戸氏と自民党県連幹部は2020年12月、井戸氏の引退表明にあわせて金沢支持を大々的に表明した。流れが変わったのは、齋藤支持派の自民党有志に大阪維新の会が乗ったのが契機だった。 「当時は維新も対抗馬擁立を模索しており、齋藤さんも候補の一人だった。そんな中、齋藤さんが松井(一郎・前大阪府知事)さん、吉村(洋文・大阪府知事)さんに『自民党から出馬の打診を受けた』と報告したのです。 齋藤さんは吉村さんのお気に入りで、通例2年で総務省へ帰さなければならないところを、引き止めて出向3年目に入っていた。なので、吉村さんにも齋藤さんを応援する強い意向があった」(前出の県議) そもそも齋藤氏は、こうした自民党内の井戸派と反井戸派の分裂抗争を背景に知事の座に就いたことを、まず押さえておく必要がある』、「齋藤支持派の自民党有志に大阪維新の会が乗ったのが契機だった。 「当時は維新も対抗馬擁立を模索しており、齋藤さんも候補の一人だった。そんな中、齋藤さんが松井(一郎・前大阪府知事)さん、吉村(洋文・大阪府知事)さんに『自民党から出馬の打診を受けた』と報告したのです。 齋藤さんは吉村さんのお気に入りで、通例2年で総務省へ帰さなければならないところを、引き止めて出向3年目に入っていた。なので、吉村さんにも齋藤さんを応援する強い意向があった」(前出の県議) そもそも齋藤氏は、こうした自民党内の井戸派と反井戸派の分裂抗争を背景に知事の座に就いたことを、まず押さえておく必要がある」、なるほど。
・『「公然の秘密」に手をつけた 齋藤氏は県知事選で金沢氏に25万票あまりの大差をつけて当選した。しかし、就任早々に「井戸路線との決別」を推し進めたために、県庁職員や県関係者の反感を次々と買うことになった。 まず着手したのが、地域整備事業と分収造林事業による、合計約1500億円規模の「井戸時代の隠れ負債」の返済だ。 地域整備事業とは、民間の乱開発を防ぐため、県が先回りして土地を買い取り開発した事業のことで、バブル崩壊後の地価下落で負債となっていた。分収造林事業は、かつて木材需要が高かった時代に県がヒノキや杉を植え、売却益を土地の所有者と折半していた事業で、これも木材が売れなくなるにつれて負債が拡大した。 県の財政事情に詳しいベテラン職員が話す。 「これらの事業で取得した土地や資材の簿価と実勢価格が大きく違うことは、井戸県政最大のタブーとなっていました。もし露見すれば、20年にわたり『兵庫の殿様』として絶対的地位を築いていた井戸さんのメンツを潰すことになる。井戸さんと近い多くの県議も触れない『公然の秘密』だったわけです」 そのタブーに、齋藤氏はいきなり「返済開始」を宣言したのだ。 「正論ではありますが、急に寝た子を起こされた財政系の職員・OBは、自分たちの長年の恥部を指摘されたような気持ちになった。OBの中には、県庁にやって来て『あいつ何やねん、余計なことしやがって』と現役職員に不満をぶちまける人もいた」(同前)』、「地域整備事業と分収造林事業による、合計約1500億円規模の「井戸時代の隠れ負債」の返済だ。 地域整備事業とは、民間の乱開発を防ぐため、県が先回りして土地を買い取り開発した事業のことで、バブル崩壊後の地価下落で負債となっていた・・・これらの事業で取得した土地や資材の簿価と実勢価格が大きく違うことは、井戸県政最大のタブーとなっていました。もし露見すれば、20年にわたり『兵庫の殿様』として絶対的地位を築いていた井戸さんのメンツを潰すことになる。井戸さんと近い多くの県議も触れない『公然の秘密』だったわけです」 そのタブーに、齋藤氏はいきなり「返済開始」を宣言したのだ。 「正論ではありますが、急に寝た子を起こされた財政系の職員・OBは、自分たちの長年の恥部を指摘されたような気持ちになった。OBの中には、県庁にやって来て『あいつ何やねん、余計なことしやがって』と現役職員に不満をぶちまける人もいた」、なるほど。
・『「天下り」にもメスを入れた さらに齋藤氏は、県の外郭団体役員に対して、定年規定を「厳正適用」し始めた。本来、県の内規では65歳定年のところ、井戸体制下でなし崩し的に70歳以上まで延長されていた慣行に、メスを入れたのだ。 外郭団体役員は県庁幹部の天下りポストであり、さらに「多くの団体役員が、井戸氏の後援会『新生兵庫をつくる会』の幹部を兼任していた」(県幹部)という。この幹部が続ける。 「齋藤さんは『脱・井戸県政』がテーマでしたから、外郭団体役員に就いた県職員OBとの飲み会には一切出なかった。コミュニケーションがないところに、急に定年規定の話が出てきたわけです。 彼らからすれば、老後の年収300万円以上が消えるわけですから、まさに死活問題です」 取材に応じた兵庫県庁職員・関係者の多くが、齋藤氏の性格について「正論で押し通そうとする人」と語った。その片鱗は今回の騒動でも窺えたが、地方の役所で避けて通れない「地元有力者との飲みニケーション」も、齋藤氏は大いに苦手としていたようだ』、「本来、県の内規では65歳定年のところ、井戸体制下でなし崩し的に70歳以上まで延長されていた慣行に、メスを入れたのだ。 外郭団体役員は県庁幹部の天下りポストであり、さらに「多くの団体役員が、井戸氏の後援会『新生兵庫をつくる会』の幹部を兼任していた・・・コミュニケーションがないところに、急に定年規定の話が出てきたわけです。 彼らからすれば、老後の年収300万円以上が消えるわけですから、まさに死活問題です・・・地方の役所で避けて通れない「地元有力者との飲みニケーション」も、齋藤氏は大いに苦手としていたようだ」、なるほど。
・『自民党を怒らせた「大学無償化」 彼が踏んだ「虎の尾」はこれだけではなかった。国政自民党の怒りを買ったのが、昨年8月に表明した県立大学の無償化だ。 教育無償化は大阪での維新の目玉政策で、齋藤氏も踏襲した。これに自民党文教族の重鎮国会議員が猛反発したという。 「その重鎮にとって、高等教育の無償化は自分が成し遂げられなかった悲願。それをポッと出の40代の若造が、根回しもなく進めようとした。『俺を差し置いてどういう了見だ。やっぱり維新絡みの知事は信用できない』と怒り、それ以来、反齋藤の急先鋒となった」(前出と別の県幹部) この重鎮を含む兵庫県選出の自民党国会議員は、県知事選では全員が齋藤支持だったが、この件を機に離反が相次いだ。維新と近い当時の菅義偉総理の意を受けて、齋藤支持の流れを作った西村康稔衆院議員が、裏金問題で党員資格停止となり「地元の国会議員の抑えが利かなくなった」(同)ことも影響した。 さらに齋藤氏に対して、県庁職員からも反発が強まっていく。あげくのはてに起きたのが、今年3月の西播磨県民局長による告発だった。 その詳細を、後編記事【追及スクープ第2弾】齋藤元彦・前兵庫県知事を潰した「既得権益の逆襲」と「パワハラ・おねだり告発文書」の深層とは…齋藤氏辞職までの「全内幕」】にてお伝えする』、「教育無償化は大阪での維新の目玉政策で、齋藤氏も踏襲した。これに自民党文教族の重鎮国会議員が猛反発したという。 「その重鎮にとって、高等教育の無償化は自分が成し遂げられなかった悲願。それをポッと出の40代の若造が、根回しもなく進めようとした。『俺を差し置いてどういう了見だ。やっぱり維新絡みの知事は信用できない』と怒り、それ以来、反齋藤の急先鋒となった・・・この重鎮を含む兵庫県選出の自民党国会議員は、県知事選では全員が齋藤支持だったが、この件を機に離反が相次いだ。維新と近い当時の菅義偉総理の意を受けて、齋藤支持の流れを作った西村康稔衆院議員が、裏金問題で党員資格停止となり「地元の国会議員の抑えが利かなくなった」(同)ことも影響・・・さらに齋藤氏に対して、県庁職員からも反発が強まっていく。あげくのはてに起きたのが、今年3月の西播磨県民局長による告発だった」、これまで「齋藤氏」は飛んでもない知事との報道が支配的だったが、「井戸県政最大のタブー」へ切り込んむという正しいことをしたというのは、初めて知った。
第五に、この続きを10月23日付けYahooニュースが転載した現代ビジネス:【追及スクープ第2弾】齋藤元彦・前兵庫県知事を潰した「既得権益の逆襲」と「パワハラ・おねだり告発文書」の深層とは…齋藤氏辞職までの「全内幕」を紹介しよう。
・パワハラや贈答品の「おねだり」に関する内部告発で失職した、齋藤元彦前兵庫県知事(46歳)。「職員を自殺に追い込んだ」と非難されても仏頂面を貫き、11月17日の出直し選に再出馬を表明している。 だがここにきて、ハラスメントの証拠が乏しいことや、齋藤氏の前に5期20年の長きにわたって県知事を務めた井戸敏三氏(79歳)との対立などの論点が浮上し、空気が変わりつつある。 なぜ齋藤氏は諦めないのか。そして、齋藤騒動の本質とは何なのか? 現在発売中の「週刊現代」が報じたスクープ記事を特別に全文公開する。 前編はこちら:【齋藤元彦・前兵庫県知事をたたき潰した「兵庫政界の闇」とは…「裏の絶対権力者」たちが作り上げた「タブー」と「天下り構造」の全貌をスクープする】』、「ここにきて、ハラスメントの証拠が乏しいことや、齋藤氏の前に5期20年の長きにわたって県知事を務めた井戸敏三氏(79歳)との対立などの論点が浮上し、空気が変わりつつある。 なぜ齋藤氏は諦めないのか。そして、齋藤騒動の本質とは何なのか? 現在発売中の「週刊現代」が報じたスクープ記事を特別に全文公開する」、興味深そうだ、
・『県庁職員を敵に回して 兵庫県庁の職員の間で「反齋藤」の気運が高まった背景には、2021年12月、齋藤氏が兵庫県庁舎の建て直し中止を表明したことがあった。 齋藤氏は建て直し中止で「1000億円の予算削減」を行い、前編記事でも解説した「井戸県政の隠れ負債」返済に充てることを狙った。 だが、コンパクトな庁舎に計画を変更し、在宅勤務普及の流れに合わせてコスト削減を目指したところ、「リモートワークを職員定数の削減につなげるつもりか」と兵庫県職員労組が反発。さらに、土木系のOB職員の天下りを受け入れているゼネコンも、「巨額の庁舎建設が凍結されてしまうなら、何のために県庁OBを受け入れてきたのか」と不満を募らせた。 齋藤氏が進めようとした改革は、方針としては井戸県政の既得権益にメスを入れるものであり、多くの県民の意に沿っていたと言えるだろう。ただ、保守的風土の兵庫県で20年かけて築かれた権益に切り込むには、「権力基盤が固まっていない1期目なのに、改革のスピード、量ともにあまりに性急すぎた」(前出の県幹部)印象が否めない』、「齋藤氏が進めようとした改革は、方針としては井戸県政の既得権益にメスを入れるものであり、多くの県民の意に沿っていたと言えるだろう。ただ、保守的風土の兵庫県で20年かけて築かれた権益に切り込むには、「権力基盤が固まっていない1期目なのに、改革のスピード、量ともにあまりに性急すぎた」・・・印象が否めない」、なるほど。
・『「西播磨県民局長」告発の深層 今回、一気に齋藤氏への逆風が強まったのは、西播磨県民局長だった県庁幹部のA氏が2024年7月7日に自殺したことがきっかけだ。 そもそも一連の騒動の発端は今年3月、このA氏が告発文をメディアや県議に送付したことだった。問題の深層を知るには、A氏の人物像、そしてなぜ告発、自殺に至ったのかにも目を向ける必要がある。 京都大学を1987年に卒業したA氏は、エリートコースとされる人事部門で順調に出世していった。 井戸氏からの信頼は厚く、2021年7月の兵庫県知事選の直前、同年3月の人事では、県の人事政策トップの管理局長として采配を振った。その年の4月に西播磨県民局長に異動したのも「大仕事を成し遂げて、井戸さんからの『お礼』的な人事」(県職員)だったという。 井戸県政においては、西播磨県民局長は井戸氏の出身地たつの市を管轄する重要ポストだった。「A氏は定年までに県庁に戻って特別職の人事委員長に就き、キャリアを終えるつもりでいたようだ」(前出の県職員)という。 しかし程なく、「栄転」のはずの県民局長就任が、A氏にとって「左遷」に変わる。齋藤氏が当選したのだ。 「井戸さんの後継である金沢候補が勝つ前提でいたA氏にとっては、驚天動地の事態だったのではないか。なにしろ管理局長として仕切った人事も、井戸さんに『金沢が仕事をしやすい配置にしてくれ』とお願いされてやったものだったから」(同前)』、「京都大学を1987年に卒業したA氏は、エリートコースとされる人事部門で順調に出世していった。 井戸氏からの信頼は厚く、2021年7月の兵庫県知事選の直前、同年3月の人事では、県の人事政策トップの管理局長として采配を振った。その年の4月に西播磨県民局長に異動したのも「大仕事を成し遂げて、井戸さんからの『お礼』的な人事」(県職員)だったという。 井戸県政においては、西播磨県民局長は井戸氏の出身地たつの市を管轄する重要ポストだった。「A氏は定年までに県庁に戻って特別職の人事委員長に就き、キャリアを終えるつもりでいたようだ」(前出の県職員)という。 しかし程なく、「栄転」のはずの県民局長就任が、A氏にとって「左遷」に変わる。齋藤氏が当選したのだ」、なるほど。
・『齋藤前知事とA氏の関係 県庁職員などの証言を総合すると、A氏と齋藤氏の関係は決して悪くはなかった。「知事と人事系職員の会食にも出席していたし、携帯電話の番号も交換するような間柄でした」(別の県職員)。とはいえ、前知事の井戸氏の意向を色濃く反映した人事政策を実施した身としては、肩身が狭かったはずだ。 さらに、齋藤県政ではA氏自身の先行きが不透明になっていった。 齋藤氏は就任後、自身に近い改革派の幹部職員を集めて「新県政推進室」を発足させた。A氏もじきに本庁へ呼び戻され、これに加わるとみられていたが、大方の予想に反して西播磨県民局長に残留することになったのである。 A氏は定年を間近に控えていた。前出の県職員はこう話す。 「定年時の人事が決まる昨年後半以降、Aさんから人事課に『自分の人事はどうなりそうか』と問い合わせが来ていたようです。 人事畑のエースを自任していた彼からすれば、定年時には本庁で勤務したいと考えていたようですが、県民局長として県庁生活を終えることになった。彼はしばしば『今の人事を仕切っている奴らは低学歴集団だ』といった不満を漏らすようになりました」 A氏が告発文を各所に送ったのは今年3月、県民局長として定年を迎えると決まった直後のことだった。) 当初、文書には送り主が書かれていなかった。調査を経て、それがA氏だと特定されると、A氏は4月4日に公益通報窓口に届け出て、この問題が広く世間に知られることになった。 その後、A氏は今年7月、県の百条委員会に証人として喚問される直前に自殺し、帰らぬ人となった。もうひとつ、世間でほとんど報じられていないのが、この百条委員会とA氏の自殺との関連についてである』、「人事畑のエースを自任していた彼からすれば、定年時には本庁で勤務したいと考えていたようですが、県民局長として県庁生活を終えることになった。彼はしばしば『今の人事を仕切っている奴らは低学歴集団だ』といった不満を漏らすようになりました」 A氏が告発文を各所に送ったのは今年3月、県民局長として定年を迎えると決まった直後のことだった。 当初、文書には送り主が書かれていなかった。調査を経て、それがA氏だと特定されると、A氏は4月4日に公益通報窓口に届け出て、この問題が広く世間に知られることになった。 その後、A氏は今年7月、県の百条委員会に証人として喚問される直前に自殺し、帰らぬ人となった』、「調査を経て、それがA氏だと特定されると、A氏は4月4日に公益通報窓口に届け出て」、「公益通報」は書いたのが「A氏だと特定され」てからというのは初めて知った。
・『拙速すぎた「百条委員会」 A氏は勤め先で使用していた業務用パソコンで告発文を作成したことが明らかになっている。じつはその中には、A氏の私的な「倫理上問題のある記録」のデータも保存されており、百条委員会からパソコンの提出を求められたA氏は、そのデータの公開を避けて欲しいと委員会側に嘆願していたという。 A氏の真意はわからないにしても、こうした経緯が強いストレスになっていたことは間違いなさそうだ。 そもそも、今回の百条委員会の設置については、県議会でも一部議員から「拙速ではないか」と批判が上がっていた。あるベテラン県議が言う。 「告発文の中身や事実関係を精査する第三者委員会の調査結果が出る前に、百条委員会が設置された。議論の土台がなく、『ゴールポスト(議論の落としどころ)が動く』ような状態になってしまった」) 実際、百条委員会では当初、齋藤氏のパワハラ疑惑を調査することが目的とされていたが、職員アンケートの結果は伝聞が大半を占め、証拠として弱かった。その後、論点は齋藤氏の資質や、公益通報への初動対応の問題に二転三転している。 「もし弁護士による第三者委員会で事実関係が冷静に精査されていれば、A氏の死は避けられた可能性が高い」(同前)』、「「もし弁護士による第三者委員会で事実関係が冷静に精査されていれば、A氏の死は避けられた可能性が高い」、というのも初めて知った。
・『「齋藤辞職」のシナリオ A氏の告発をめぐっては、単なる一県職員の内部告発とは異なる政治力学が動いていた形跡もある。 県関係者への取材によると、A氏が公益通報を行った4月4日から間もない4月上旬、兵庫県総合庁舎内の一室に、A氏と反齋藤派の自民党県議、井戸派の県OBらが集まった。 その席でA氏は「この件は早く終わらせたい」と訴えたが、自民党県議と県OBが「何を言うとるんや。齋藤をとことん追い詰めるチャンスやないか」などとすごんだというのだ。 ある県OBは、こうも指摘する。 「Aさんは不遇な人事をきっかけに告発文を書いたが、それを利用して反齋藤の『ヒーロー』に仕立て上げ、不信任案提出、さらには齋藤知事の辞職までつなげるシナリオを描いた勢力がいるのではないか」』、「「Aさんは不遇な人事をきっかけに告発文を書いたが、それを利用して反齋藤の『ヒーロー』に仕立て上げ、不信任案提出、さらには齋藤知事の辞職までつなげるシナリオを描いた勢力がいるのではないか」、きっと前知事の井戸派のグループだろう。
・『「再選」はあり得るのか 齋藤氏の失職に伴い、10月31日告示、11月17日投開票で実施される兵庫県知事選は、7人もの候補者が現れる混戦となっている。実質的には、齋藤前知事、稲村和美前尼崎市長、維新を離党し無所属で出馬した元アナウンサーの清水貴之参議院議員の三つ巴の情勢だ。 選挙事情に詳しい地元関係者が解説する。 「齋藤前知事は県内の若手経営者が主な支持層で、抜群の知名度もあり、今回の騒動を経ても一定の支持を集めている。稲村氏は泉房穂前明石市長が応援の構えを見せているが、左派の『緑の党』と関係が深く、支持が限定される可能性が高い。 維新を離れた清水氏は、自民党支持者を取り込めるかが勝負。菅義偉元総理の弟が役員を務めていた神戸の外車ディーラー『ジーライオン』グループ創業者の娘と結婚しているため、資金力も潤沢で経済界の受けはいい」 一方、齋藤氏の失職後も自民党は候補者を一本化できずにいる。擁立を断念すれば、自主投票となる自民票と公明票の行方が最大の焦点となる』、「齋藤氏」への対抗馬が2人もいるようだと、「齋藤氏」再選の可能性もあるだろう。
・『「政治ショー」がもたらしたもの この騒動で、兵庫県政は半年にわたって機能停止した。齋藤氏によるハラスメントの事実関係については今後、9月に設置された第三者委員会の報告を待つ必要がある。 齋藤氏に「改革」を進めるうえで不可欠な、部下・各関係先への配慮が足りなかったことは事実だろう。また少なからぬ県関係者が、齋藤氏の「ハラスメント気質」を指摘していることも事実だ。 その一方で、齋藤氏が、これほど大掛かりな「政治ショー」の末に権力の座を追われる必要があったのかという点には、少なからず疑問も残る。 兵庫県民は3年前、「井戸県政からの脱却」を望んで齋藤氏を選んだ。地方政治改革の流れに、本件はどう影を落とすのか。来月の県民の判断が注目される。) (齋藤元彦前兵庫県知事をめぐるできごと の表はリンク先参照)』、知事選は11月17日投開票である、「県民の判断が注目される」、さてどうなるだろうか。
先ずは、本年10月16日付け文春オンライン「「投資家によるセクハラが社会問題化している」ベンチャーキャピタル最大手・ジャフコで起きた“セクハラ問題” 取材記者が解説する告発の背景」を紹介しよう。
・『ベンチャー投資最大手「ジャフコグループ」に勤務していた女性が、同社男性社員からのセクハラ被害とその後の同社の不当な対応を訴えた問題。 10月11日、女性の代理人弁護士が都内で会見を行ったが、この会見に先立ち「週刊文春電子版」では、女性本人の告発を報じた。告発に至った経緯とはどのようなものだったのか。 「被害者女性は、セクハラ行為自体も当然ですが、その後の会社の対応をどちらかというと問題視していると思っています」 そう語るのは、この問題を取材した「週刊文春」の播磨谷拓巳記者である。 「女性がセクハラ被害を受けた後、加害者の男性社員には処分が下ったのですが、その後、被害者女性も退職金を出すからと退職を勧められるようになった。それを断ると、給料を半額にすると提示され、応じなければ退職するよう迫られました。さらにその面談の際に、執行役員から人格を否定するような発言も出たということです」(播磨谷記者) ベンチャーキャピタル最大手で起きたセクハラとその後の会社の酷い対応。今回の告発の背景には、業界が抱える問題に一石を投じたいという女性の思いがあったという』、「同社男性社員からのセクハラ被害・・・加害者の男性社員には処分が下った」のは当然だが、問題は、「被害者女性も退職金を出すからと退職を勧められるようになった。それを断ると、給料を半額にすると提示され、応じなければ退職するよう迫られました。さらにその面談の際に、執行役員から人格を否定するような発言も出た」、本当に信じ難い飛んでもないことだ。
・『「今回、被害者の方は声を上げた理由として『同じような目に遭う人を減らしたい』 同じような目に遭った人の声に押された』というようなことをおっしゃっていました。 欧米では投資家による女性起業家へのセクハラが社会問題化しており、日本でもNHKや日本経済新聞で特集が組まれています。今回の事件は会社の内部で起きた事案ではありますが、ベンチャーキャピタルの中で地位を持った方が、セクハラを起こしてしまったり適切な対応ができなかったりするということが顕著に表れた例だと思います」(同前) 退職の強要だけでないジャフコ社の“セカンドハラスメント”とも言えるような被害者女性への対応、ジャフコ上層部の責任などについて記者が解説した動画番組の全編は、「週刊文春電子版」で見ることができる。また、被害者が受けた卑劣なセクハラや会社側の質問状への回答などの詳細を報じた記事も「週刊文春電子版」で配信している』、「退職の強要だけでないジャフコ社の“セカンドハラスメント”とも言えるような被害者女性への対応、ジャフコ上層部の責任などについて記者が解説した動画番組」、「ベンチャーキャピタル」トップ企業にあるまじき飛んでもないような不祥事だ。
次に、10月17日付け文春オンライン「「僕たちは犯罪者に育てられた」錦織一清が語ったジャニー喜多川氏への“複雑な思い”「ヒガシは『鬼畜の所業』と発言したけど…」〈阿川佐和子対談に初登場〉」を紹介しよう。
・『2020年12月にジャニーズ事務所を退所し、シンガー・演出家・俳優として活動する錦織一清さん。元「少年隊」のリーダーが初めて「週刊文春」の名物コーナー「阿川佐和子のこの人に会いたい」に登場し、阿川佐和子さんに「旧ジャニーズ事務所への思い」を率直に明かした。インタビューの一部を抜粋して紹介する』、興味深そうだ。
・『パパイヤ鈴木とのユニットでアルバムリリース 阿川 はじめまして。週刊文春によくお出でくださいましたね。錦織さんとパパイヤ鈴木さんとのユニット「Funky Diamond 18」が、新しいアルバム『PLATONIX』をリリースされたそうで(10月16日発売)。 錦織 そうなんですよ。11月から全国6カ所でライブもやります。 阿川 パパイヤさんとは同い年なんですって? 錦織 え~とね、高校の同級生なんですけど、訳あって僕が1個上です(笑)。パパイヤとは高校時代、踊りの話とかをよくしてましたよ。 後半では阿川さんが旧ジャニーズ事務所について尋ねた』、「旧ジャニーズ事務所」との関係は特に興味深い。
・『「僕たちは犯罪者に育てられた子どもたち」 阿川 昨年、ジャニー喜多川さんの過去の性加害が明るみに出て、ジャニーズ事務所が解体されるという事態になりました。 錦織 はい、なりましたね。 阿川 錦織さんはどういうお気持ちで受け止めました? 錦織 まぁ……ヒガシが「鬼畜の所業」と発言した件。それは自己否定にもつながってしまうんですよね。 阿川 自分の歩んできた人生も。 錦織 うん。当然、犯罪はよくないと思います。でも、これは事実だからしょうがないんだけど、僕たちは犯罪者に育てられた子どもたちなんだよね。自分が川で溺れているときに助けてくれた人が、実は殺人犯だったらどうするかって話で。 阿川 恩人が犯罪者だった。 錦織 はい。……でも僕は――。 錦織から語られた元ジャニーズとしての覚悟、メリー喜多川氏から受けたまさかの仕打ち、少年隊の裏話、そしてパパイヤ鈴木とのユニット結成秘話とは……。10月16日(水)12時から配信の「週刊文春 電子版」および17日(木)発売の「週刊文春」ではインタビュー全文を読むことができる』、「ヒガシが「鬼畜の所業」と発言した件。それは自己否定にもつながってしまうんですよね・・・僕たちは犯罪者に育てられた子どもたちなんだよね。自分が川で溺れているときに助けてくれた人が、実は殺人犯だったらどうするかって話で。 阿川 恩人が犯罪者だった」、「犯罪者に育てられた子どもたちなんだよね」、というのは悲痛な訴えだ』、「犯罪者に育てられた子どもたちなんだよね」、というのは悲痛な訴えだ」、なるほど。
第三に、10月26日付け日刊ゲンダイ「アバクロ元CEOは性加害で逮捕、Nスペも再放送…それでもジャニーズ起用にこだわるNHKの“自己矛盾”」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geinox/362510
・『22日、米アパレル大手「アバクロンビー&フィッチ」のマイク・ジェフリーズ元CEOが、在任中に国際的な性的人身売買組織を運営していたとして逮捕・起訴された。ジェフリーズは、アバクロのモデル起用をエサに、モデル応募者に性行為を要求。秘密保持契約に署名させた後、ジェフリーズやスミス、その他の人物とセックスを強要したり、セックスイベントへの参加強要など、在任中、20年にわたり悪事を繰り返していたという。 少年たちの夢を食い荒らし、何十年も性加害を繰り返していた手口はまさに日本のジャニー喜多川氏と同じ手口である。 同ブランドは「アバクロ」と呼ばれ、アバクロのメンズモデルは“マッチョイケメン”の代名詞的存在でもある。日本では2009年に銀座店がオープンの際、開店前に800人が並び、アバクロのメンズモデルたちとの写真撮影に長蛇の列ができたことでも話題になった。そんな世界的ブランドの組織ぐるみの被害者は100人を超えるといわれており、アメリカ国内外で波紋が広がっている』、「ジェフリーズは、アバクロのモデル起用をエサに、モデル応募者に性行為を要求。秘密保持契約に署名させた後、ジェフリーズやスミス、その他の人物とセックスを強要したり、セックスイベントへの参加強要など、在任中、20年にわたり悪事を繰り返していたという。 少年たちの夢を食い荒らし、何十年も性加害を繰り返していた手口はまさに日本のジャニー喜多川氏と同じ手口である・・・同ブランドは「アバクロ」と呼ばれ、アバクロのメンズモデルは“マッチョイケメン”の代名詞的存在でもある・・・そんな世界的ブランドの組織ぐるみの被害者は100人を超えるといわれており、アメリカ国内外で波紋が広がっている」、なるほど。
・『「Nスペを制作した報道部門に罪の意識が感じられず」 そんな中、NHKはNHKスペシャル「ジャニー喜多川“アイドル帝国”の実像」を20日21時に放送。23日深夜にも再放送し、世界に警鐘を鳴らすかのように見せつつも、旧ジャニーズの番組起用を再開するというNHKの“自己矛盾”を問う声も高まっている。同志社女子大学教授(メディア論)の影山貴彦氏がこう言う。 NHKは民放が旧ジャニーズ起用を再開する中、見切り発車せず、公共放送たるべく硬派な一面を見せていただけに、Nスぺの内容は中途半端。番組の最後にエンタメ部門のOBが過去をわびるような内容で話をまとめ『報道とエンタメは別』と批判を回避し、OB1人に罪をなすり付けた感が否めない。つまり、制作した報道部門に罪の意識が感じられなかったのです。検証に必要なのは、現NHK職員がどうなのかであり、視聴者からすれば報道もエンタメも、どちらもNHK。報道部門もジャニーズ問題に関して当事者であり、加害者だということを忘れるべきではありません」 それでもNHKは旧ジャニーズタレントを大晦日の紅白歌合戦で起用するのか。 早くも「なかったこと」になり始めているジャニーズ問題』、「NHKは民放が旧ジャニーズ起用を再開する中、見切り発車せず、公共放送たるべく硬派な一面を見せていただけに、Nスぺの内容は中途半端。番組の最後にエンタメ部門のOBが過去をわびるような内容で話をまとめ『報道とエンタメは別』と批判を回避し、OB1人に罪をなすり付けた感が否めない。つまり、制作した報道部門に罪の意識が感じられなかったのです。検証に必要なのは、現NHK職員がどうなのかであり、視聴者からすれば報道もエンタメも、どちらもNHK。報道部門もジャニーズ問題に関して当事者であり、加害者だということを忘れるべきではありません」、なるほど。
第四に、10月23日付けYahooニュースが転載した現代ビジネス「【独自】齋藤元彦・前兵庫県知事をたたき潰した「兵庫政界の闇」とは…「裏の絶対権力者」たちが作り上げた「タブー」と「天下り構造」の全貌をスクープする」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/1e3ad4052d49835d19c77f39b1dbf4483fd98797
・『パワハラや贈答品の「おねだり」に関する内部告発で失職した、齋藤元彦前兵庫県知事(46歳)。「職員を自殺に追い込んだ」と非難されても仏頂面を貫き、11月17日の出直し選に再出馬を表明している。「鋼のメンタル」と揶揄され、今や「全国民の敵」と言っても過言ではない扱いだ。 【ひと目でわかる騒動まとめ】齋藤前知事が辞職するまで、何が起きていたのか? だがここにきて、ハラスメントの証拠が乏しいことや、齋藤氏の前に5期20年の長きにわたって県知事を務めた井戸敏三氏(79歳)との対立などの論点が浮上し、空気が変わりつつある。 なぜ齋藤氏は「あきらめようとしない」のか。そして、齋藤騒動の本質とは何なのか? 現在発売中の「週刊現代」が報じたスクープ記事を特別に全文公開する』、「だがここにきて、ハラスメントの証拠が乏しいことや、齋藤氏の前に5期20年の長きにわたって県知事を務めた井戸敏三氏(79歳)との対立などの論点が浮上し、空気が変わりつつある。 なぜ齋藤氏は「あきらめようとしない」のか。そして、齋藤騒動の本質とは何なのか? 現在発売中の「週刊現代」が報じたスクープ記事を特別に全文公開する」、興味深そうだ。
・『始まりは「自民党の内部抗争」 「ぜひ次の兵庫県知事選に立候補してください」 2020年11月、大阪市内の某会議室。県知事選を翌年7月に控えたベテラン自民党県議数人が、当時、大阪府財政課長だった齋藤氏に直談判した。 自民党兵庫県議団は分裂していた。井戸元知事の後継候補である、金沢和夫副知事の擁立をめぐって割れていたのだ。この県議らは、井戸路線との決別を唱える「改革派」だった。 「井戸さんが自ら『金沢でまとめてくれ』と自民党県議団に指示し、多数決で強引に決めようとした。これに反発した党内の有志が、水面下で齋藤擁立に動いた」(ベテラン自民党県議)』、「自民党兵庫県議団は分裂していた。井戸元知事の後継候補である、金沢和夫副知事の擁立をめぐって割れていたのだ。この県議らは、井戸路線との決別を唱える「改革派」だった。 「井戸さんが自ら『金沢でまとめてくれ』と自民党県議団に指示し、多数決で強引に決めようとした。これに反発した党内の有志が、水面下で齋藤擁立に動いた」、なるほど。
・『維新が乗って「流れが変わった」 齋藤氏は東京大学経済学部卒業後、2002年に総務省に入省。2018年に大阪府へ出向し、出世ポストの財政課長を務めていた。 「齋藤さんはもともと、政界進出を考えていたようだ。自民の有志と会ううちに『自民党内では(改革派は)少数派でも、そこまで言ってくれるのなら』とその気になっていった」(兵庫県庁幹部) 齋藤擁立の動きを知った井戸氏と自民党県連幹部は2020年12月、井戸氏の引退表明にあわせて金沢支持を大々的に表明した。流れが変わったのは、齋藤支持派の自民党有志に大阪維新の会が乗ったのが契機だった。 「当時は維新も対抗馬擁立を模索しており、齋藤さんも候補の一人だった。そんな中、齋藤さんが松井(一郎・前大阪府知事)さん、吉村(洋文・大阪府知事)さんに『自民党から出馬の打診を受けた』と報告したのです。 齋藤さんは吉村さんのお気に入りで、通例2年で総務省へ帰さなければならないところを、引き止めて出向3年目に入っていた。なので、吉村さんにも齋藤さんを応援する強い意向があった」(前出の県議) そもそも齋藤氏は、こうした自民党内の井戸派と反井戸派の分裂抗争を背景に知事の座に就いたことを、まず押さえておく必要がある』、「齋藤支持派の自民党有志に大阪維新の会が乗ったのが契機だった。 「当時は維新も対抗馬擁立を模索しており、齋藤さんも候補の一人だった。そんな中、齋藤さんが松井(一郎・前大阪府知事)さん、吉村(洋文・大阪府知事)さんに『自民党から出馬の打診を受けた』と報告したのです。 齋藤さんは吉村さんのお気に入りで、通例2年で総務省へ帰さなければならないところを、引き止めて出向3年目に入っていた。なので、吉村さんにも齋藤さんを応援する強い意向があった」(前出の県議) そもそも齋藤氏は、こうした自民党内の井戸派と反井戸派の分裂抗争を背景に知事の座に就いたことを、まず押さえておく必要がある」、なるほど。
・『「公然の秘密」に手をつけた 齋藤氏は県知事選で金沢氏に25万票あまりの大差をつけて当選した。しかし、就任早々に「井戸路線との決別」を推し進めたために、県庁職員や県関係者の反感を次々と買うことになった。 まず着手したのが、地域整備事業と分収造林事業による、合計約1500億円規模の「井戸時代の隠れ負債」の返済だ。 地域整備事業とは、民間の乱開発を防ぐため、県が先回りして土地を買い取り開発した事業のことで、バブル崩壊後の地価下落で負債となっていた。分収造林事業は、かつて木材需要が高かった時代に県がヒノキや杉を植え、売却益を土地の所有者と折半していた事業で、これも木材が売れなくなるにつれて負債が拡大した。 県の財政事情に詳しいベテラン職員が話す。 「これらの事業で取得した土地や資材の簿価と実勢価格が大きく違うことは、井戸県政最大のタブーとなっていました。もし露見すれば、20年にわたり『兵庫の殿様』として絶対的地位を築いていた井戸さんのメンツを潰すことになる。井戸さんと近い多くの県議も触れない『公然の秘密』だったわけです」 そのタブーに、齋藤氏はいきなり「返済開始」を宣言したのだ。 「正論ではありますが、急に寝た子を起こされた財政系の職員・OBは、自分たちの長年の恥部を指摘されたような気持ちになった。OBの中には、県庁にやって来て『あいつ何やねん、余計なことしやがって』と現役職員に不満をぶちまける人もいた」(同前)』、「地域整備事業と分収造林事業による、合計約1500億円規模の「井戸時代の隠れ負債」の返済だ。 地域整備事業とは、民間の乱開発を防ぐため、県が先回りして土地を買い取り開発した事業のことで、バブル崩壊後の地価下落で負債となっていた・・・これらの事業で取得した土地や資材の簿価と実勢価格が大きく違うことは、井戸県政最大のタブーとなっていました。もし露見すれば、20年にわたり『兵庫の殿様』として絶対的地位を築いていた井戸さんのメンツを潰すことになる。井戸さんと近い多くの県議も触れない『公然の秘密』だったわけです」 そのタブーに、齋藤氏はいきなり「返済開始」を宣言したのだ。 「正論ではありますが、急に寝た子を起こされた財政系の職員・OBは、自分たちの長年の恥部を指摘されたような気持ちになった。OBの中には、県庁にやって来て『あいつ何やねん、余計なことしやがって』と現役職員に不満をぶちまける人もいた」、なるほど。
・『「天下り」にもメスを入れた さらに齋藤氏は、県の外郭団体役員に対して、定年規定を「厳正適用」し始めた。本来、県の内規では65歳定年のところ、井戸体制下でなし崩し的に70歳以上まで延長されていた慣行に、メスを入れたのだ。 外郭団体役員は県庁幹部の天下りポストであり、さらに「多くの団体役員が、井戸氏の後援会『新生兵庫をつくる会』の幹部を兼任していた」(県幹部)という。この幹部が続ける。 「齋藤さんは『脱・井戸県政』がテーマでしたから、外郭団体役員に就いた県職員OBとの飲み会には一切出なかった。コミュニケーションがないところに、急に定年規定の話が出てきたわけです。 彼らからすれば、老後の年収300万円以上が消えるわけですから、まさに死活問題です」 取材に応じた兵庫県庁職員・関係者の多くが、齋藤氏の性格について「正論で押し通そうとする人」と語った。その片鱗は今回の騒動でも窺えたが、地方の役所で避けて通れない「地元有力者との飲みニケーション」も、齋藤氏は大いに苦手としていたようだ』、「本来、県の内規では65歳定年のところ、井戸体制下でなし崩し的に70歳以上まで延長されていた慣行に、メスを入れたのだ。 外郭団体役員は県庁幹部の天下りポストであり、さらに「多くの団体役員が、井戸氏の後援会『新生兵庫をつくる会』の幹部を兼任していた・・・コミュニケーションがないところに、急に定年規定の話が出てきたわけです。 彼らからすれば、老後の年収300万円以上が消えるわけですから、まさに死活問題です・・・地方の役所で避けて通れない「地元有力者との飲みニケーション」も、齋藤氏は大いに苦手としていたようだ」、なるほど。
・『自民党を怒らせた「大学無償化」 彼が踏んだ「虎の尾」はこれだけではなかった。国政自民党の怒りを買ったのが、昨年8月に表明した県立大学の無償化だ。 教育無償化は大阪での維新の目玉政策で、齋藤氏も踏襲した。これに自民党文教族の重鎮国会議員が猛反発したという。 「その重鎮にとって、高等教育の無償化は自分が成し遂げられなかった悲願。それをポッと出の40代の若造が、根回しもなく進めようとした。『俺を差し置いてどういう了見だ。やっぱり維新絡みの知事は信用できない』と怒り、それ以来、反齋藤の急先鋒となった」(前出と別の県幹部) この重鎮を含む兵庫県選出の自民党国会議員は、県知事選では全員が齋藤支持だったが、この件を機に離反が相次いだ。維新と近い当時の菅義偉総理の意を受けて、齋藤支持の流れを作った西村康稔衆院議員が、裏金問題で党員資格停止となり「地元の国会議員の抑えが利かなくなった」(同)ことも影響した。 さらに齋藤氏に対して、県庁職員からも反発が強まっていく。あげくのはてに起きたのが、今年3月の西播磨県民局長による告発だった。 その詳細を、後編記事【追及スクープ第2弾】齋藤元彦・前兵庫県知事を潰した「既得権益の逆襲」と「パワハラ・おねだり告発文書」の深層とは…齋藤氏辞職までの「全内幕」】にてお伝えする』、「教育無償化は大阪での維新の目玉政策で、齋藤氏も踏襲した。これに自民党文教族の重鎮国会議員が猛反発したという。 「その重鎮にとって、高等教育の無償化は自分が成し遂げられなかった悲願。それをポッと出の40代の若造が、根回しもなく進めようとした。『俺を差し置いてどういう了見だ。やっぱり維新絡みの知事は信用できない』と怒り、それ以来、反齋藤の急先鋒となった・・・この重鎮を含む兵庫県選出の自民党国会議員は、県知事選では全員が齋藤支持だったが、この件を機に離反が相次いだ。維新と近い当時の菅義偉総理の意を受けて、齋藤支持の流れを作った西村康稔衆院議員が、裏金問題で党員資格停止となり「地元の国会議員の抑えが利かなくなった」(同)ことも影響・・・さらに齋藤氏に対して、県庁職員からも反発が強まっていく。あげくのはてに起きたのが、今年3月の西播磨県民局長による告発だった」、これまで「齋藤氏」は飛んでもない知事との報道が支配的だったが、「井戸県政最大のタブー」へ切り込んむという正しいことをしたというのは、初めて知った。
第五に、この続きを10月23日付けYahooニュースが転載した現代ビジネス:【追及スクープ第2弾】齋藤元彦・前兵庫県知事を潰した「既得権益の逆襲」と「パワハラ・おねだり告発文書」の深層とは…齋藤氏辞職までの「全内幕」を紹介しよう。
・パワハラや贈答品の「おねだり」に関する内部告発で失職した、齋藤元彦前兵庫県知事(46歳)。「職員を自殺に追い込んだ」と非難されても仏頂面を貫き、11月17日の出直し選に再出馬を表明している。 だがここにきて、ハラスメントの証拠が乏しいことや、齋藤氏の前に5期20年の長きにわたって県知事を務めた井戸敏三氏(79歳)との対立などの論点が浮上し、空気が変わりつつある。 なぜ齋藤氏は諦めないのか。そして、齋藤騒動の本質とは何なのか? 現在発売中の「週刊現代」が報じたスクープ記事を特別に全文公開する。 前編はこちら:【齋藤元彦・前兵庫県知事をたたき潰した「兵庫政界の闇」とは…「裏の絶対権力者」たちが作り上げた「タブー」と「天下り構造」の全貌をスクープする】』、「ここにきて、ハラスメントの証拠が乏しいことや、齋藤氏の前に5期20年の長きにわたって県知事を務めた井戸敏三氏(79歳)との対立などの論点が浮上し、空気が変わりつつある。 なぜ齋藤氏は諦めないのか。そして、齋藤騒動の本質とは何なのか? 現在発売中の「週刊現代」が報じたスクープ記事を特別に全文公開する」、興味深そうだ、
・『県庁職員を敵に回して 兵庫県庁の職員の間で「反齋藤」の気運が高まった背景には、2021年12月、齋藤氏が兵庫県庁舎の建て直し中止を表明したことがあった。 齋藤氏は建て直し中止で「1000億円の予算削減」を行い、前編記事でも解説した「井戸県政の隠れ負債」返済に充てることを狙った。 だが、コンパクトな庁舎に計画を変更し、在宅勤務普及の流れに合わせてコスト削減を目指したところ、「リモートワークを職員定数の削減につなげるつもりか」と兵庫県職員労組が反発。さらに、土木系のOB職員の天下りを受け入れているゼネコンも、「巨額の庁舎建設が凍結されてしまうなら、何のために県庁OBを受け入れてきたのか」と不満を募らせた。 齋藤氏が進めようとした改革は、方針としては井戸県政の既得権益にメスを入れるものであり、多くの県民の意に沿っていたと言えるだろう。ただ、保守的風土の兵庫県で20年かけて築かれた権益に切り込むには、「権力基盤が固まっていない1期目なのに、改革のスピード、量ともにあまりに性急すぎた」(前出の県幹部)印象が否めない』、「齋藤氏が進めようとした改革は、方針としては井戸県政の既得権益にメスを入れるものであり、多くの県民の意に沿っていたと言えるだろう。ただ、保守的風土の兵庫県で20年かけて築かれた権益に切り込むには、「権力基盤が固まっていない1期目なのに、改革のスピード、量ともにあまりに性急すぎた」・・・印象が否めない」、なるほど。
・『「西播磨県民局長」告発の深層 今回、一気に齋藤氏への逆風が強まったのは、西播磨県民局長だった県庁幹部のA氏が2024年7月7日に自殺したことがきっかけだ。 そもそも一連の騒動の発端は今年3月、このA氏が告発文をメディアや県議に送付したことだった。問題の深層を知るには、A氏の人物像、そしてなぜ告発、自殺に至ったのかにも目を向ける必要がある。 京都大学を1987年に卒業したA氏は、エリートコースとされる人事部門で順調に出世していった。 井戸氏からの信頼は厚く、2021年7月の兵庫県知事選の直前、同年3月の人事では、県の人事政策トップの管理局長として采配を振った。その年の4月に西播磨県民局長に異動したのも「大仕事を成し遂げて、井戸さんからの『お礼』的な人事」(県職員)だったという。 井戸県政においては、西播磨県民局長は井戸氏の出身地たつの市を管轄する重要ポストだった。「A氏は定年までに県庁に戻って特別職の人事委員長に就き、キャリアを終えるつもりでいたようだ」(前出の県職員)という。 しかし程なく、「栄転」のはずの県民局長就任が、A氏にとって「左遷」に変わる。齋藤氏が当選したのだ。 「井戸さんの後継である金沢候補が勝つ前提でいたA氏にとっては、驚天動地の事態だったのではないか。なにしろ管理局長として仕切った人事も、井戸さんに『金沢が仕事をしやすい配置にしてくれ』とお願いされてやったものだったから」(同前)』、「京都大学を1987年に卒業したA氏は、エリートコースとされる人事部門で順調に出世していった。 井戸氏からの信頼は厚く、2021年7月の兵庫県知事選の直前、同年3月の人事では、県の人事政策トップの管理局長として采配を振った。その年の4月に西播磨県民局長に異動したのも「大仕事を成し遂げて、井戸さんからの『お礼』的な人事」(県職員)だったという。 井戸県政においては、西播磨県民局長は井戸氏の出身地たつの市を管轄する重要ポストだった。「A氏は定年までに県庁に戻って特別職の人事委員長に就き、キャリアを終えるつもりでいたようだ」(前出の県職員)という。 しかし程なく、「栄転」のはずの県民局長就任が、A氏にとって「左遷」に変わる。齋藤氏が当選したのだ」、なるほど。
・『齋藤前知事とA氏の関係 県庁職員などの証言を総合すると、A氏と齋藤氏の関係は決して悪くはなかった。「知事と人事系職員の会食にも出席していたし、携帯電話の番号も交換するような間柄でした」(別の県職員)。とはいえ、前知事の井戸氏の意向を色濃く反映した人事政策を実施した身としては、肩身が狭かったはずだ。 さらに、齋藤県政ではA氏自身の先行きが不透明になっていった。 齋藤氏は就任後、自身に近い改革派の幹部職員を集めて「新県政推進室」を発足させた。A氏もじきに本庁へ呼び戻され、これに加わるとみられていたが、大方の予想に反して西播磨県民局長に残留することになったのである。 A氏は定年を間近に控えていた。前出の県職員はこう話す。 「定年時の人事が決まる昨年後半以降、Aさんから人事課に『自分の人事はどうなりそうか』と問い合わせが来ていたようです。 人事畑のエースを自任していた彼からすれば、定年時には本庁で勤務したいと考えていたようですが、県民局長として県庁生活を終えることになった。彼はしばしば『今の人事を仕切っている奴らは低学歴集団だ』といった不満を漏らすようになりました」 A氏が告発文を各所に送ったのは今年3月、県民局長として定年を迎えると決まった直後のことだった。) 当初、文書には送り主が書かれていなかった。調査を経て、それがA氏だと特定されると、A氏は4月4日に公益通報窓口に届け出て、この問題が広く世間に知られることになった。 その後、A氏は今年7月、県の百条委員会に証人として喚問される直前に自殺し、帰らぬ人となった。もうひとつ、世間でほとんど報じられていないのが、この百条委員会とA氏の自殺との関連についてである』、「人事畑のエースを自任していた彼からすれば、定年時には本庁で勤務したいと考えていたようですが、県民局長として県庁生活を終えることになった。彼はしばしば『今の人事を仕切っている奴らは低学歴集団だ』といった不満を漏らすようになりました」 A氏が告発文を各所に送ったのは今年3月、県民局長として定年を迎えると決まった直後のことだった。 当初、文書には送り主が書かれていなかった。調査を経て、それがA氏だと特定されると、A氏は4月4日に公益通報窓口に届け出て、この問題が広く世間に知られることになった。 その後、A氏は今年7月、県の百条委員会に証人として喚問される直前に自殺し、帰らぬ人となった』、「調査を経て、それがA氏だと特定されると、A氏は4月4日に公益通報窓口に届け出て」、「公益通報」は書いたのが「A氏だと特定され」てからというのは初めて知った。
・『拙速すぎた「百条委員会」 A氏は勤め先で使用していた業務用パソコンで告発文を作成したことが明らかになっている。じつはその中には、A氏の私的な「倫理上問題のある記録」のデータも保存されており、百条委員会からパソコンの提出を求められたA氏は、そのデータの公開を避けて欲しいと委員会側に嘆願していたという。 A氏の真意はわからないにしても、こうした経緯が強いストレスになっていたことは間違いなさそうだ。 そもそも、今回の百条委員会の設置については、県議会でも一部議員から「拙速ではないか」と批判が上がっていた。あるベテラン県議が言う。 「告発文の中身や事実関係を精査する第三者委員会の調査結果が出る前に、百条委員会が設置された。議論の土台がなく、『ゴールポスト(議論の落としどころ)が動く』ような状態になってしまった」) 実際、百条委員会では当初、齋藤氏のパワハラ疑惑を調査することが目的とされていたが、職員アンケートの結果は伝聞が大半を占め、証拠として弱かった。その後、論点は齋藤氏の資質や、公益通報への初動対応の問題に二転三転している。 「もし弁護士による第三者委員会で事実関係が冷静に精査されていれば、A氏の死は避けられた可能性が高い」(同前)』、「「もし弁護士による第三者委員会で事実関係が冷静に精査されていれば、A氏の死は避けられた可能性が高い」、というのも初めて知った。
・『「齋藤辞職」のシナリオ A氏の告発をめぐっては、単なる一県職員の内部告発とは異なる政治力学が動いていた形跡もある。 県関係者への取材によると、A氏が公益通報を行った4月4日から間もない4月上旬、兵庫県総合庁舎内の一室に、A氏と反齋藤派の自民党県議、井戸派の県OBらが集まった。 その席でA氏は「この件は早く終わらせたい」と訴えたが、自民党県議と県OBが「何を言うとるんや。齋藤をとことん追い詰めるチャンスやないか」などとすごんだというのだ。 ある県OBは、こうも指摘する。 「Aさんは不遇な人事をきっかけに告発文を書いたが、それを利用して反齋藤の『ヒーロー』に仕立て上げ、不信任案提出、さらには齋藤知事の辞職までつなげるシナリオを描いた勢力がいるのではないか」』、「「Aさんは不遇な人事をきっかけに告発文を書いたが、それを利用して反齋藤の『ヒーロー』に仕立て上げ、不信任案提出、さらには齋藤知事の辞職までつなげるシナリオを描いた勢力がいるのではないか」、きっと前知事の井戸派のグループだろう。
・『「再選」はあり得るのか 齋藤氏の失職に伴い、10月31日告示、11月17日投開票で実施される兵庫県知事選は、7人もの候補者が現れる混戦となっている。実質的には、齋藤前知事、稲村和美前尼崎市長、維新を離党し無所属で出馬した元アナウンサーの清水貴之参議院議員の三つ巴の情勢だ。 選挙事情に詳しい地元関係者が解説する。 「齋藤前知事は県内の若手経営者が主な支持層で、抜群の知名度もあり、今回の騒動を経ても一定の支持を集めている。稲村氏は泉房穂前明石市長が応援の構えを見せているが、左派の『緑の党』と関係が深く、支持が限定される可能性が高い。 維新を離れた清水氏は、自民党支持者を取り込めるかが勝負。菅義偉元総理の弟が役員を務めていた神戸の外車ディーラー『ジーライオン』グループ創業者の娘と結婚しているため、資金力も潤沢で経済界の受けはいい」 一方、齋藤氏の失職後も自民党は候補者を一本化できずにいる。擁立を断念すれば、自主投票となる自民票と公明票の行方が最大の焦点となる』、「齋藤氏」への対抗馬が2人もいるようだと、「齋藤氏」再選の可能性もあるだろう。
・『「政治ショー」がもたらしたもの この騒動で、兵庫県政は半年にわたって機能停止した。齋藤氏によるハラスメントの事実関係については今後、9月に設置された第三者委員会の報告を待つ必要がある。 齋藤氏に「改革」を進めるうえで不可欠な、部下・各関係先への配慮が足りなかったことは事実だろう。また少なからぬ県関係者が、齋藤氏の「ハラスメント気質」を指摘していることも事実だ。 その一方で、齋藤氏が、これほど大掛かりな「政治ショー」の末に権力の座を追われる必要があったのかという点には、少なからず疑問も残る。 兵庫県民は3年前、「井戸県政からの脱却」を望んで齋藤氏を選んだ。地方政治改革の流れに、本件はどう影を落とすのか。来月の県民の判断が注目される。) (齋藤元彦前兵庫県知事をめぐるできごと の表はリンク先参照)』、知事選は11月17日投開票である、「県民の判断が注目される」、さてどうなるだろうか。
タグ:ハラスメント (その28)(「投資家によるセクハラが社会問題化している」ベンチャーキャピタル最大手・ジャフコで起きた“セクハラ問題”、「僕たちは犯罪者に育てられた」錦織一清が語ったジャニー喜多川氏への“複雑な思い”」、アバクロ元CEOは性加害で逮捕、Nスペも再放送…、【独自】齋藤元彦・前兵庫県知事をたたき潰した「兵庫政界の闇」とは…、【追及スクープ第2弾】齋藤元彦・前兵庫県知事を潰した「既得権益の逆襲」と「パワハラ・おねだり告発文書」の深層とは) 文春オンライン「「投資家によるセクハラが社会問題化している」ベンチャーキャピタル最大手・ジャフコで起きた“セクハラ問題” 取材記者が解説する告発の背景」 「同社男性社員からのセクハラ被害・・・加害者の男性社員には処分が下った」のは当然だが、問題は、「被害者女性も退職金を出すからと退職を勧められるようになった。それを断ると、給料を半額にすると提示され、応じなければ退職するよう迫られました。さらにその面談の際に、執行役員から人格を否定するような発言も出た」、本当に信じ難い飛んでもないことだ。 「退職の強要だけでないジャフコ社の“セカンドハラスメント”とも言えるような被害者女性への対応、ジャフコ上層部の責任などについて記者が解説した動画番組」、「ベンチャーキャピタル」トップ企業にあるまじき飛んでもないような不祥事だ。 文春オンライン「「僕たちは犯罪者に育てられた」錦織一清が語ったジャニー喜多川氏への“複雑な思い”「ヒガシは『鬼畜の所業』と発言したけど…」〈阿川佐和子対談に初登場〉」 「旧ジャニーズ事務所」との関係は特に興味深い。 「犯罪者に育てられた子どもたちなんだよね」、というのは悲痛な訴えだ』、「犯罪者に育てられた子どもたちなんだよね」、というのは悲痛な訴えだ」、なるほど。 日刊ゲンダイ「アバクロ元CEOは性加害で逮捕、Nスペも再放送…それでもジャニーズ起用にこだわるNHKの“自己矛盾”」 「ジェフリーズは、アバクロのモデル起用をエサに、モデル応募者に性行為を要求。秘密保持契約に署名させた後、ジェフリーズやスミス、その他の人物とセックスを強要したり、セックスイベントへの参加強要など、在任中、20年にわたり悪事を繰り返していたという。 少年たちの夢を食い荒らし、何十年も性加害を繰り返していた手口はまさに日本のジャニー喜多川氏と同じ手口である・・・同ブランドは「アバクロ」と呼ばれ、アバクロのメンズモデルは“マッチョイケメン”の代名詞的存在でもある・・・そんな世界的ブランドの組織ぐるみの被害者は1 00人を超えるといわれており、アメリカ国内外で波紋が広がっている」、なるほど。 「NHKは民放が旧ジャニーズ起用を再開する中、見切り発車せず、公共放送たるべく硬派な一面を見せていただけに、Nスぺの内容は中途半端。番組の最後にエンタメ部門のOBが過去をわびるような内容で話をまとめ『報道とエンタメは別』と批判を回避し、OB1人に罪をなすり付けた感が否めない。つまり、制作した報道部門に罪の意識が感じられなかったのです。検証に必要なのは、現NHK職員がどうなのかであり、視聴者からすれば報道もエンタメも、どちらもNHK。報道部門もジャニーズ問題に関して当事者であり、加害者だということを忘れるべ きではありません」、なるほど。 yahooニュース 現代ビジネス「【独自】齋藤元彦・前兵庫県知事をたたき潰した「兵庫政界の闇」とは…「裏の絶対権力者」たちが作り上げた「タブー」と「天下り構造」の全貌をスクープする」 「だがここにきて、ハラスメントの証拠が乏しいことや、齋藤氏の前に5期20年の長きにわたって県知事を務めた井戸敏三氏(79歳)との対立などの論点が浮上し、空気が変わりつつある。 なぜ齋藤氏は「あきらめようとしない」のか。そして、齋藤騒動の本質とは何なのか? 現在発売中の「週刊現代」が報じたスクープ記事を特別に全文公開する」、興味深そうだ。 「自民党兵庫県議団は分裂していた。井戸元知事の後継候補である、金沢和夫副知事の擁立をめぐって割れていたのだ。この県議らは、井戸路線との決別を唱える「改革派」だった。 「井戸さんが自ら『金沢でまとめてくれ』と自民党県議団に指示し、多数決で強引に決めようとした。これに反発した党内の有志が、水面下で齋藤擁立に動いた」、なるほど。 「齋藤支持派の自民党有志に大阪維新の会が乗ったのが契機だった。 「当時は維新も対抗馬擁立を模索しており、齋藤さんも候補の一人だった。そんな中、齋藤さんが松井(一郎・前大阪府知事)さん、吉村(洋文・大阪府知事)さんに『自民党から出馬の打診を受けた』と報告したのです。 齋藤さんは吉村さんのお気に入りで、通例2年で総務省へ帰さなければならないところを、引き止めて出向3年目に入っていた。なので、吉村さんにも齋藤さんを応援する強い意向があった」(前出の県議) そもそも齋藤氏は、こうした自民党内の井戸派と反井戸派の分裂抗争を背景に知事の座に就いたことを、まず押さえておく必要がある」、なるほど。 「地域整備事業と分収造林事業による、合計約1500億円規模の「井戸時代の隠れ負債」の返済だ。 地域整備事業とは、民間の乱開発を防ぐため、県が先回りして土地を買い取り開発した事業のことで、バブル崩壊後の地価下落で負債となっていた・・・これらの事業で取得した土地や資材の簿価と実勢価格が大きく違うことは、井戸県政最大のタブーとなっていました。もし露見すれば、20年にわたり『兵庫の殿様』として絶対的地位を築いていた井戸さんのメンツを潰すことになる。井戸さんと近い多くの県議も触れない『公然の秘密』だったわけです」 そのタブーに、齋藤氏はいきなり「返済開始」を宣言したのだ。 「正論ではありますが、急に寝た子を起こされた財政系の職員・OBは、自分たちの長年の恥部を指摘されたような気持ちになった。OBの中には、県庁にやって来て『あいつ何やねん、余計なことしやがって』と現役職員に不満をぶちまける人もいた」、なるほど。 「本来、県の内規では65歳定年のところ、井戸体制下でなし崩し的に70歳以上まで延長されていた慣行に、メスを入れたのだ。 外郭団体役員は県庁幹部の天下りポストであり、さらに「多くの団体役員が、井戸氏の後援会『新生兵庫をつくる会』の幹部を兼任していた・・・コミュニケーションがないところに、急に定年規定の話が出てきたわけです。 彼らからすれば、老後の年収300万円以上が消えるわけですから、まさに死活問題です・・・地方の役所で避けて通れない「地元有力者との飲みニケーション」も、齋藤氏は大いに苦手としていたようだ」 、なるほど。 「教育無償化は大阪での維新の目玉政策で、齋藤氏も踏襲した。これに自民党文教族の重鎮国会議員が猛反発したという。 「その重鎮にとって、高等教育の無償化は自分が成し遂げられなかった悲願。それをポッと出の40代の若造が、根回しもなく進めようとした。『俺を差し置いてどういう了見だ。やっぱり維新絡みの知事は信用できない』と怒り、それ以来、反齋藤の急先鋒となった・・・ この重鎮を含む兵庫県選出の自民党国会議員は、県知事選では全員が齋藤支持だったが、この件を機に離反が相次いだ。維新と近い当時の菅義偉総理の意を受けて、齋藤支持の流れを作った西村康稔衆院議員が、裏金問題で党員資格停止となり「地元の国会議員の抑えが利かなくなった」(同)ことも影響・・・ さらに齋藤氏に対して、県庁職員からも反発が強まっていく。あげくのはてに起きたのが、今年3月の西播磨県民局長による告発だった」、これまで「齋藤氏」は飛んでもない知事との報道が支配的だったが、「井戸県政最大のタブー」へ切り込んむという正しいことをしたというのは、初めて知った。 現代ビジネス:【追及スクープ第2弾】齋藤元彦・前兵庫県知事を潰した「既得権益の逆襲」と「パワハラ・おねだり告発文書」の深層とは…齋藤氏辞職までの「全内幕」 「ここにきて、ハラスメントの証拠が乏しいことや、齋藤氏の前に5期20年の長きにわたって県知事を務めた井戸敏三氏(79歳)との対立などの論点が浮上し、空気が変わりつつある。 なぜ齋藤氏は諦めないのか。そして、齋藤騒動の本質とは何なのか? 現在発売中の「週刊現代」が報じたスクープ記事を特別に全文公開する」、興味深そうだ、 「齋藤氏が進めようとした改革は、方針としては井戸県政の既得権益にメスを入れるものであり、多くの県民の意に沿っていたと言えるだろう。ただ、保守的風土の兵庫県で20年かけて築かれた権益に切り込むには、「権力基盤が固まっていない1期目なのに、改革のスピード、量ともにあまりに性急すぎた」・・・印象が否めない」、なるほど。 「京都大学を1987年に卒業したA氏は、エリートコースとされる人事部門で順調に出世していった。 井戸氏からの信頼は厚く、2021年7月の兵庫県知事選の直前、同年3月の人事では、県の人事政策トップの管理局長として采配を振った。その年の4月に西播磨県民局長に異動したのも「大仕事を成し遂げて、井戸さんからの『お礼』的な人事」(県職員)だったという。 井戸県政においては、西播磨県民局長は井戸氏の出身地たつの市を管轄する重要ポストだった。「A氏は定年までに県庁に戻って特別職の人事委員長に就き、キャリアを終えるつもり 「調査を経て、それがA氏だと特定されると、A氏は4月4日に公益通報窓口に届け出て」、「公益通報」は書いたのが「A氏だと特定され」てからというのは初めて知った。 「「もし弁護士による第三者委員会で事実関係が冷静に精査されていれば、A氏の死は避けられた可能性が高い」、というのも初めて知った。 「「Aさんは不遇な人事をきっかけに告発文を書いたが、それを利用して反齋藤の『ヒーロー』に仕立て上げ、不信任案提出、さらには齋藤知事の辞職までつなげるシナリオを描いた勢力がいるのではないか」、きっと前知事の井戸派のグループだろう。 「齋藤氏」への対抗馬が2人もいるようだと、「齋藤氏」再選の可能性もあるだろう。
広域強盗事件(その3)(なぜここまで短い言葉で若者たちは闇バイトにはまり込んだか?その理由は絶望的な「国語力」にあった 石井光太ルポ、少年院で使用されている幼児教育向けの「表情・感情カード」がヤバすぎる…犯罪と国語力の関係について 石井光太ルポ、詐欺総額1000万円「ルフィ」エリート美女が出廷「水着で出勤しろ!」「俺たちはクズだから」寺島春奈(29)を追い詰める“同僚女性”の証言、「トクリュウ」がとうとう近所にやって来た!“狙われる街”に急務の治安対策とは) [社会]
広域強盗事件については、本年5月1日に取上げた。今日は、(その3)(なぜここまで短い言葉で若者たちは闇バイトにはまり込んだか?その理由は絶望的な「国語力」にあった 石井光太ルポ、少年院で使用されている幼児教育向けの「表情・感情カード」がヤバすぎる…犯罪と国語力の関係について 石井光太ルポ、詐欺総額1000万円「ルフィ」エリート美女が出廷「水着で出勤しろ!」「俺たちはクズだから」寺島春奈(29)を追い詰める“同僚女性”の証言、「トクリュウ」がとうとう近所にやって来た!“狙われる街”に急務の治安対策とは)である。
先ずは、本年5月30日付け現代ビジネスが掲載したノンフィクション作家の石井 光太氏による「なぜここまで短い言葉で若者たちは闇バイトにはまり込んだか?その理由は絶望的な「国語力」にあった 石井光太ルポ」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/110989?imp=0
・『20って20万ですか?やりたいです 闇バイトの存在が、日本全国で起きている特殊詐欺や強盗事件とかかわっていたとして、にわかに注目されている。 俗にいう闇バイトとは、SNSを介して主に2通りの方法で行われる。犯罪集団の方がSNSで略語を使って募集する方法と、SNSで家出や自殺願望についての発信をした個人に対して犯罪集団の方がメッセージを送ってリクルートする方法だ。 共通するのは、犯罪集団が何の関係性もない人間を、ある日突然支配できる点だ。だからこそ、彼らはその人間をコマのように扱って乱暴な指示を出したり、簡単に切り捨てたりする。 実際のSNSで行われるリクルートのやり取りが次だ。 〈運びのバイトあります。1回即金で20保障します。年齢地域不問です〉 〈20って20マンですか〉 〈そうです。リスク対策万全です〉 〈やりたいです〉 〈ケータイ番号、住所、身分証の写真を送ってもらえますか〉 〈はい〉 大半の人からすれば、なぜこんなSNSの短い言葉に簡単に騙され、重大犯罪を起こすのかと不思議に思うだろう。その背景には、彼らの語彙のなさ、理解力の乏しさ、コミュニケーションスキルの脆弱さがある。 私は『ルポ 誰が国語力を殺すのか』(文藝春秋)で、少年院に入っている少年たちが抱える子供の問題について詳しく見てきた。犯罪と言葉という観点から、日本のダークサイドで起きていることを考えたい』、「犯罪と言葉という観点から」とは興味深そうだ。
・『女子少年院で私が尋ねたこと 本書の取材で、東日本にある少年院で、特殊詐欺で逮捕された10代の少女と出会った。 彼女は劣悪な環境の家庭から逃げ出したいため、ツイッターにそのことを書いた上、割のいいバイトをしたいと発信した。犯罪集団はそうした書き込みをリアルタイム検索で巡回していたのだろう。すぐにダイレクトメッセージが届いた。) 提案されたバイトは、〈1回につき25万円〉だという。〈1カ月で100万円も夢じゃない〉とも書かれていた。少女はバイトの内容さえ確認せずに飛びついた。そして言いなりになって住所など個人情報をすべて教え、特殊詐欺に加担させられたのである。 女子少年院でインタビューをした際、私と少女との間に次のような会話があった(Qは筆者の質問、Aは少女の回答)。 Q:怪しい仕事だと思わなかった? A:わかんないです。 Q:1回25万円は高額だよね。 A:そう言われたからそうだと思った。 Q:危険を冒してまで家を出たかった? A:たぶん。 常識的に考えれば、こんな割のいい仕事があるわけがない。だが、この言葉からわかる通り、彼女はSNSで届いた言葉を鵜呑みにし、何の疑問も抱かずに言われるままに動き、そして逮捕と同時にトカゲのしっぽのように切り捨てられたのである。 短文でのコミュニケーションは、他の闇バイトの世界でも当たり前のこととして行われていることだ。高額報酬という割には、驚くほどの短文でやりとりし、会話にしたら30秒ほどの内容で、数十万、数百万という単位の闇バイトに引きずり込まれる。 集団自殺の勧誘なども同じだ。相手が誰なのか、なぜ集団自殺を持ちかけたのかといったやり取りすらなく、現場へ向かっていく。 こうした短文でのやり取りに、深い思慮はまったくといっていいほどない。だから、一般的には理解できないほど容易く最悪の事態が起きてしまう』、「高額報酬という割には、驚くほどの短文でやりとりし、会話にしたら30秒ほどの内容で、数十万、数百万という単位の闇バイトに引きずり込まれる・・・こうした短文でのやり取りに、深い思慮はまったくといっていいほどない。だから、一般的には理解できないほど容易く最悪の事態が起きてしまう」、なるほど。
・『十分な語彙を獲得できない 私が本書で明らかにしたのは、なぜこうしたことが起こるのかという点だ。 少年院の法務教官など更生にかかわる多くの人たちが指摘するのが、彼らが劣悪な成育歴から十分な語彙を獲得できず、言葉を使いこなせていないということだ。 本書では、これを「国語力」と呼んでいる。文科省は、国語力について、年齢相応の語彙をつけながら、情緒力、想像力、論理的思考力を育て、それを適切に表現する能力と定義している。 人が生きていくには、言葉によって自分の内面と向き合い、物事を想像し、論理的に物事を思考し、それを表現していかなければならない。それができてはじめて周囲に自分を理解してもらい、様々な壁を乗り越えていくことができる。国語力とは、そんな全人的な力なのだ。) なぜ、闇バイトの犯罪に巻き込まれる若者たちは、国語力が劣っている傾向にあるのか。大半の関係者が、その原因を家庭に求めている。 統計によれば、少年院にいる子供たちは、一般と比べて有意に劣悪な家庭環境の中で育っている。それは男子の場合は4割、女子の場合は7割が虐待を受けて育っていることからも明らかだろう(虐待以外の要素を含めれば、親が依存症だとか、親戚の家をたらい回しにされて育ったなど、9割以上は何かしらの問題家庭で育っている)。 こうした家庭では、子供が国語力を高めることは望むべくもない。 たとえば、虐待親から子供が何の理由もなしに四六時中殴られていたとしよう。 そうすれば子供たちは「なぜ叩かれているのか」を考えることも、「なんで叩くのか」と聞くこともしなくなる。理由を考えても答えが出てこないし、親に聞いても殴られるだけだからだ。 あるいは、親が外で遊び歩いてまったく家に帰ってこなかったとしよう。ネグレクトである。 そうなれば、子供は絵本の読み聞かせや会話のやり取りで言葉を育むことができないし、学齢期になっても夜中まで孤独な時間を過ごさなければならなくなる』、「人が生きていくには、言葉によって自分の内面と向き合い、物事を想像し、論理的に物事を思考し、それを表現していかなければならない。それができてはじめて周囲に自分を理解してもらい、様々な壁を乗り越えていくことができる。国語力とは、そんな全人的な力なのだ・・・虐待親から子供が何の理由もなしに四六時中殴られていたとしよう。 そうすれば子供たちは「なぜ叩かれているのか」を考えることも、「なんで叩くのか」と聞くこともしなくなる。理由を考えても答えが出てこないし、親に聞いても殴られるだけだからだ。 あるいは、親が外で遊び歩いてまったく家に帰ってこなかったとしよう。ネグレクトである。 そうなれば、子供は絵本の読み聞かせや会話のやり取りで言葉を育むことができないし、学齢期になっても夜中まで孤独な時間を過ごさなければならなくなる」、なるほど。
・『見知らぬ人間のDMを信用して こうした子供たちは、親子関係が良好な家庭で育つ子供たちと比べて、明らかに語彙の量、自分の感情を知覚する力、見知らぬ世界や他者への想像力を広げる力、物事の因果間関係を志向する力が弱まる。つまり、国語力という人間が生きていくのに必要な全人的な力が脆弱になるのだ。 先の女子少年院の少女も同様だ。彼女もまた、親との不適切な関係によって、言葉で物事を感じ、考え、表現する力をつけることができなかった。 それは、幼い彼女にとって家庭での悲しく不条理な日々を生き抜く術だったはずだ。だが、思春期になった時、それは「無思慮」「思考停止」という形として現れ、むしろ社会で生きていく上での足枷となった。 だからこそ、彼女は何も考えずにSNSに不用意な書き込みをし、見知らぬ人間からのダイレクトメッセージをいとも簡単に鵜呑みにし、警戒心を失った状態で指示通りに行動してしまったのである。 こうした人たちは、他人どころか自分すら大切にすることができない。思いやりもまた言葉によって生まれる感情だからだ。ゆえに、彼らはお年寄りをターゲットにし、大金をむしり取り、時には暴力を振るうことにすら無頓着でいられるのだ。 では、こうした国語力の弱さを社会はどうサポートしようとしているのか。非行少年たちの更生の最前線の取り組みについては後篇《少年院で使用されている幼児教育向けの「表情・感情カード」がヤバすぎる…犯罪と国語力の関係について》で詳しく述べたい』、「こうした子供たちは、親子関係が良好な家庭で育つ子供たちと比べて、明らかに語彙の量、自分の感情を知覚する力、見知らぬ世界や他者への想像力を広げる力、物事の因果間関係を志向する力が弱まる。つまり、国語力という人間が生きていくのに必要な全人的な力が脆弱になるのだ。 先の女子少年院の少女も同様だ。彼女もまた、親との不適切な関係によって、言葉で物事を感じ、考え、表現する力をつけることができなかった。 それは、幼い彼女にとって家庭での悲しく不条理な日々を生き抜く術だったはずだ。だが、思春期になった時、それは「無思慮」「思考停止」という形として現れ、むしろ社会で生きていく上での足枷となった・・・こうした人たちは、他人どころか自分すら大切にすることができない。思いやりもまた言葉によって生まれる感情だからだ。ゆえに、彼らはお年寄りをターゲットにし、大金をむしり取り、時には暴力を振るうことにすら無頓着でいられるのだ」、不幸なことだ。
次に、この続きを、5月30日付け現代ビジネスが掲載したノンフィクション作家の石井 光太氏による「少年院で使用されている幼児教育向けの「表情・感情カード」がヤバすぎる…犯罪と国語力の関係について 石井光太ルポ」を紹介しよう。
・『感情を言語化できない 前篇《なぜここまで短い言葉で若者たちは闇バイトにはまり込んだか?その理由は絶望的な「国語力」にあった》に引き続き、非行少年たちの更生最前線をレポートしよう。 少年院などの更生現場では、犯罪を犯した若者たちに国語力をつけさせるための様々な取り組みを行っている。 『ルポ 誰が国語力を殺すのか』(文藝春秋)で紹介したものが、少年院で使用されている各種カードだ。その1つが、「表情・感情カード」である。 表情・感情カードとは、数十枚のイラストと言葉からなる幼児知育用のカードだ。各カードには、異なるイラストとともに感情を表す言葉が記されている。たとえば、涙を流す女の子のイラストがあり、「さみしい」「こころぼそい」などと書かれている。 少年院の若者たちの多くは、自分の感情を細かく言語化することが不得意だ。ゆえに、何かあれば逐一、表情・感情カードを取り出し、今の自分の感覚が何であるかを探し当て、言語化する訓練をするのである。 本書で、私が話を聞いた法務教官は次のように言っていた。 「たとえば他人と行き違いがあった時、彼らは簡単に『死ね』『ムカつく』『うざい』と言い捨ててしまいます。しかし、それを言えば他人とぶつかることはあっても、うまくいくことはありません。 しかし、きちんと自分の感情に向きあって『さみしい』『こころぼそい』と言うことができたらどうでしょう。ぶつかることは避けられますし、相手もその子を理解しようとしてくれます」』、「少年院で使用されている各種カードだ。その1つが、「表情・感情カード」である。 表情・感情カードとは、数十枚のイラストと言葉からなる幼児知育用のカードだ。各カードには、異なるイラストとともに感情を表す言葉が記されている。たとえば、涙を流す女の子のイラストがあり、「さみしい」「こころぼそい」などと書かれている。 少年院の若者たちの多くは、自分の感情を細かく言語化することが不得意だ。ゆえに、何かあれば逐一、表情・感情カードを取り出し、今の自分の感覚が何であるかを探し当て、言語化する訓練をするのである・・・私が話を聞いた法務教官は次のように言っていた。 「たとえば他人と行き違いがあった時、彼らは簡単に『死ね』『ムカつく』『うざい』と言い捨ててしまいます。しかし、それを言えば他人とぶつかることはあっても、うまくいくことはありません。 しかし、きちんと自分の感情に向きあって『さみしい』『こころぼそい』と言うことができたらどうでしょう。ぶつかることは避けられますし、相手もその子を理解しようとしてくれます」、「表情・感情カード」とは面白い試みだ。
・『言葉のバブル 実際に劣悪な家庭環境で育ってきた若者たちは、怒りを言葉にすることはしても、悲しみを言葉にすることは苦手だ。怒りは他者に向けられるものだが、悲しみは自分を掘り下げるものである。だから、つらいことを思い出さないために、常に怒りの感情だけを外に向けようとする。 表情・感情カードは、幼児教育向けの教材だ。それを、18歳前後の若者たちが、少年院で使用していると聞くと、愕然とする人もいるかもしれない。逆に言えば、家庭環境によって国語力を奪われてきた若者たちは、こういう教育を受けなければ、自身の感情にすら気づけない状態にあるということでもある。 もちろん、こうした取り組みを半年から1年ほど少年院で行っても、必ずしも成果が出るわけではない。だからこそ、少年院を出た子供たちにも似たような教育が必要になる。 福岡には、ヒューマンハーバーという非行少年を多く受け入れている企業がある。ここが運営する更生教育施設「そんとく塾」では、「言葉のバブル」という授業を行っている。 下の図がそれだ。このように喜怒哀楽に関わる言葉を、より詳細な言葉で細かく分解させ、今の自分がどのような感情なのかを適切に理解し、表現することを練習するのだ。 たとえば、その人の身に何か悲しい出来事が起きたとしよう。この時の悲しみの程度が「せつない」くらいなのに、誤って「死にたい」と解釈し、表現したらどうだろう。 あるいは、何か腹立たしい出来事が起きたとしよう。それが「いまいましい」程度なのに、「殺す」と表現したらどうだろう』、「家庭環境によって国語力を奪われてきた若者たちは、こういう教育を受けなければ、自身の感情にすら気づけない状態にあるということでもある。 もちろん、こうした取り組みを半年から1年ほど少年院で行っても、必ずしも成果が出るわけではない。だからこそ、少年院を出た子供たちにも似たような教育が必要になる・・・非行少年を多く受け入れている企業がある。ここが運営する更生教育施設「そんとく塾」では、「言葉のバブル」という授業を行っている。 下の図がそれだ。このように喜怒哀楽に関わる言葉を、より詳細な言葉で細かく分解させ、今の自分がどのような感情なのかを適切に理解し、表現することを練習するのだ。 たとえば、その人の身に何か悲しい出来事が起きたとしよう。この時の悲しみの程度が「せつない」くらいなのに、誤って「死にたい」と解釈し、表現したらどうだろう。 あるいは、何か腹立たしい出来事が起きたとしよう。それが「いまいましい」程度なのに、「殺す」と表現したらどうだろう」、なるほど。
・『言葉があまりにも軽視されている時代に こうした誤った表現が、無用なトラブルを生むことは目に見えている。だからこそ、自分の内面をきちんと理解し、表現することが必要なのだ。 同塾で言葉のバブルの授業をする原田公裕は語る。 「生きることに困難を抱えている人の大半は言葉に問題を抱えています。その苦労を知らない頭のいい大人たちが、『ちゃんとやれ』と叱っても効果がないんです。それなら、きちんと学び直しの機会をつくり、“考える力”“他者への想像力”“論理力”をつけさせるべきです」 少年犯罪でなくても、同じことは一般の人たちにも当てはまる。学校で、会社で、家庭で、言葉をうまくつかえないことが原因のトラブルは多数発生しているだろう。 どれだけ言葉で自分を理解できるのか。他人や社会を思いやれるのか。言葉をうまく操ることができれば、その人は何倍も生きやすくなるだろう。 つまり、国語力を身につけることは、「生きづらさ」からの脱却になるのだ。 現代の人々を取り巻く国語力の問題や、それを習得するための取り組みについて詳しい事例は、『ルポ 誰が国語力を殺すのか』に書いたので参照していただきたい。 ここで言えるのは、言葉こそが、この複雑で困難な時代をうまく生き抜くために必要不可欠な力の1つであるといことだ。しかし今の社会では、それがあまりに軽視されているように思えてならない。 前篇記事《なぜここまで短い言葉で若者たちは闇バイトにはまり込んだか?その理由は絶望的な「国語力」にあった》もあわせてお読み下さい』、「言葉こそが、この複雑で困難な時代をうまく生き抜くために必要不可欠な力の1つであるといことだ。しかし今の社会では、それがあまりに軽視されているように思えてならない。」、その通りだ。
第三に、10月18日付け文春オンライン「詐欺総額1000万円「ルフィ」エリート美女が出廷「水着で出勤しろ!」「俺たちはクズだから」寺島春奈(29)を追い詰める“同僚女性”の証言」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/74263
・『10月8日、東京地裁716号法廷に現れた色白の美女は両脇を刑務官に囲まれ、無表情で腰を下ろした。丸眼鏡の奥の瞳は、感情を押し殺すように前を見据えている。目鼻立ちは整っているが、くたびれたTシャツは1年半余にわたる勾留の長さを物語っていた。 この日行われたのは、渡辺優樹(40)を頂点とする特殊詐欺組織“ルフィグループ”のメンバー寺島春奈(29)の公判である。 1995年、長野市に3人きょうだいの末っ子として生まれた寺島。祖父、父は共に教員を務めた地元の名士だった。中学時代はソフトテニス部に所属していたが、その生活は次第に荒れていく。不良とつるみ始め、進学した市内の高校を中退すると、キャバクラ嬢として働き始めた。その後、寺島は詐欺グループのメンバーとして犯罪に加担していく』、「祖父、父は共に教員を務めた地元の名士」だったが、「高校を中退すると、キャバクラ嬢として働き始めた。その後、寺島は詐欺グループのメンバーとして犯罪に加担」、なるほど。
・『警視庁の調べに対し犯罪への関与を否定 昨年5月24日午後3時半、フィリピンから成田空港に男女4人が降り立った。胸元に薔薇の花弁が施されたオーバーサイズの黒色パーカーを目深に被った寺島は終始俯き、細く整った眉を時折、不機嫌そうに動かした。 同日、警視庁捜査2課は寺島ら4人を窃盗容疑で逮捕。2019年6月から11月にかけて、警察官らを騙って東京都の女性2人に「口座が不正に残高照会されている」などと嘘の電話をかけ、キャッシュカード計8枚や現金計150万円を盗むなどしたという。その後、寺島は窃盗や詐欺で5回の再逮捕、追起訴を経て、現在東京拘置所に勾留されている。 「逮捕後、彼女は警視庁の調べに対して黙秘を貫き、その後は『事件については知らずに電話をかけていた』と犯罪への関与を否定していました。今回、こうした寺島の主張を崩すため、検察側の証人として呼ばれたのが、現地で一緒に暮らしていた犯行グループの元女性メンバーX子でした」(社会部記者) 開廷から約2分後、囚人服姿のX子が入廷し、証言台の前に置かれた長椅子に座る。2019年、X子は「リゾートのアルバイト」を募集していたツイッターで詐欺グループのメンバーと知り合い、同年11月2日にフィリピンに渡航。時を前後して寺島もフィリピンに渡航していた。詐欺グループの幹部を通じて知り合った2人は同部屋で暮らし、共に詐欺に手を染めてきたという。自戒を込めて語られるX子の証言からは、組織内で美貌の“エリート姫”として寺島が重用され、深く詐欺に傾倒していく様が仔細に浮かび上がった』、「逮捕後、彼女は警視庁の調べに対して黙秘を貫き、その後は『事件については知らずに電話をかけていた』と犯罪への関与を否定していました。今回、こうした寺島の主張を崩すため、検察側の証人として呼ばれたのが、現地で一緒に暮らしていた犯行グループの元女性メンバーX子でした・・・X子の証言からは、組織内で美貌の“エリート姫”として寺島が重用され、深く詐欺に傾倒していく様が仔細に浮かび上がった」、なるほど。
・『「日本で受け子をしていた女だ」幹部から寺島を紹介された マニラ市内にあるウエスト・マカティ・ホテル。2019年当時、渡辺らが現地の実業家から約7億円で購入する契約を結んだとされる詐欺の拠点だ。渡航当日、同ホテル7階に連れて行かれたX子は「大石」と名乗る幹部を紹介された。不安に苛まれながら「フランスの音楽院に行くためにお金がほしくてやってきた。20万~50万円はほしい」と話すと、大石はこう言い放った。 「それなら、1カ月で稼げる。俺たちは犯罪者だから。クズだから!」 その日、「青木」という偽名を与えられたX子は、その翌日「春日井」と名乗る細身の美女を紹介される。その女性こそ、同時期にフィリピンに渡航した“新入り”の寺島だった。そのとき、X子はメンバーにこう伝えられたという。 「春日井は日本で受け子をしていた女だ。だから、“わかっている”」 階下の殺風景な一室。その日を境に2人は同室で寝食を共にし、昼間は詐欺に手を染めるようになる。 「これは掛け子の業務報告をするためのものだから」 大石から2人に手渡されたのは、秘匿性の高いアプリ「テレグラム」がインストールされた携帯電話だった。細分化された組織の中で、彼女たちが所属していたのは「ST箱」「シークレット担当」と呼ばれていた。支給される生活費は、週5000ペソ(約1万円)。組織の中では「週給費」と呼ばれ、週の始まりに手渡しでメンバー全員に支給されたという』、「「春日井(寺島)は日本で受け子をしていた女だ。だから、“わかっている”」 階下の殺風景な一室。その日を境に2人は同室で寝食を共にし、昼間は詐欺に手を染めるようになる」、「寺島」の扱いは別格のようだ。
・『「うまくいかなかったら水着で出勤しろ!」 X子は証言台で次のように語る。 「私はこれからどういうことをするのだろうとわからなかったので不安になっていたんですが、春日井さんはおおらかにしていた。だから、彼女は『何をやるのか』、わかっているのだろうと思っていました」 翌4日早朝、幹部は掛け子が一堂に会した朝礼で2人をメンバーに紹介した。 「今日から新人として入った青木と春日井だ」 そこでX子と寺島は2台目の携帯電話と共に、紙の束を手渡される。 〈こちらは、警視庁公安課の◯◯です。捕まった犯人の所有物からあなたの銀行キャッシュカードから現金を引き出している形跡がありました〉 掛け子が高齢者に電話をかける際の事例が書かれた詐欺マニュアルである。 「それを見て、高齢者相手に騙しの電話をする仕事なのだと思いました。マニュアルは春日井さんも受け取っています」(X子) その日、X子は詐欺グループ内で寺島が厚遇されている現実を垣間見る。X子に背を向ける形で座って、電話をかける寺島の隣に張り付き、手法を伝授する男。付きっきりで詐欺を仕込み、エリートとして育成していく意図を感じたという。だが、彼女たちは同時に恐怖と金に支配された環境に身を置くことになる。 「明日詐欺がうまくいかなかったら水着で出勤しろ! 成功したら10万円やる」 寺島らの歓迎会を開いた幹部は、そう命じたという。) 寺島は「『一緒に頑張りましょう』という感じだった」 「それが嫌で、私は翌日頑張って初めて詐欺を成功させました。キャッシュカードには1日100万円の出金限度額があるので、1日に引き出せなかったお金は翌朝に引き出すことになる。それを『朝出し』と言っていました」(X子) 掛け子の報酬は、騙し取った金の4%。また、詐欺総額が月1千万円を超えると、全員に50万円のボーナスが配られたという。 「報酬はストックしていって、必要があるときに申請します。大石からテレグラムで『いくら必要か』と聞かれ、日本円で受け取っていました」(X子) 検察から「被告側は『犯罪組織かはわからず、電話していた』と主張しているが」と問われたX子は、次のように証言している。 「彼女は『一緒に頑張りましょう』という感じだった。(犯罪行為を)わかっていた感じです」』、「X子は詐欺グループ内で寺島が厚遇されている現実を垣間見る。X子に背を向ける形で座って、電話をかける寺島の隣に張り付き、手法を伝授する男。付きっきりで詐欺を仕込み、エリートとして育成していく意図を感じたという・・・掛け子の報酬は、騙し取った金の4%。また、詐欺総額が月1千万円を超えると、全員に50万円のボーナスが配られたという。 「報酬はストックしていって、必要があるときに申請します。大石からテレグラムで『いくら必要か』と聞かれ、日本円で受け取っていました」(X子)」、なるほど。
・『マニュアルに書かれていない手法の詐欺も X子の証言が浮き彫りにするのは、詐欺グループが寺島らに詐欺の“英才教育”を施し、彼女たちが積極的に関与していく様子だった。当時、彼らが得意としていたのが「現金キャッチ」と呼ばれる手法である。 「『キャッシュカードとは別に現金は家にありますか?』と尋ねて『金は偽札である可能性がある』と伝え、R(日本にいる受け子)が現金を持って帰る手法です」(X子) 「現金キャッチ」は、前述したマニュアルに書かれていない。X子と寺島は幹部から「経験者から方法を聞いてこい」と言われ、掛け子の先輩に近付き、電話のやり方を学んだという。日本にいる受け子が現金を受け取る一部始終を目の当たりにすると、大石から「2人もこれができるようにやってほしい」と言われ、報酬を握らされたという。 11月13日午前、ついに寺島は詐欺の月額1000万円を達成。大石が「おめでとう!」と寺島を労っていたころ、ホテル周辺は途端に物々しい雰囲気に包まれた。同日午後、フィリピンの入管当局は特殊詐欺に関わった容疑で日本人36人の身柄を拘束したのだ』、「当時、彼らが得意としていたのが「現金キャッチ」と呼ばれる手法である。 「『キャッシュカードとは別に現金は家にありますか?』と尋ねて『金は偽札である可能性がある』と伝え、R(日本にいる受け子)が現金を持って帰る手法です」(X子)・・・11月13日午前、ついに寺島は詐欺の月額1000万円を達成。大石が「おめでとう!」と寺島を労っていたころ、ホテル周辺は途端に物々しい雰囲気に包まれた。同日午後、フィリピンの入管当局は特殊詐欺に関わった容疑で日本人36人の身柄を拘束したのだ」、「フィリピンの入管当局」による「身柄拘束」のタイミングが偶然に合ったのだろう。
・『掛け子としての黒いキャリアを重ねた寺島 半分の人が拘束された。私と春日井さんは解放されましたが、パスポートは没収されてしまった。その日、春日井さんと一緒にタクシーに乗って(入管当局に)見つからないように南へ向かいました。辿り着いたホテルで1週間何もしないで過ごして、その後『また掛け子をする』というので、店を借り切って掛け子を始めました」(X子) X子は逃亡生活に嫌気が差し、翌2020年2月末に組織を抜け出した。日本大使館に行き、パスポートの紛失を届け出た上、オーバーステイの税金を納付し、同年3月に帰国。成田空港で待っていたのは逮捕状を携えた警視庁の捜査員だった。だが、寺島は詐欺グループを抜けることなく、フィリピンに留まり続け、掛け子としての黒いキャリアを重ねたのだ。 X子がこうした証言をする間、寺島は一度も彼女を見ることはなく、過去の記憶に蓋をするかのように時折目を閉じた。近く予定される被告人質問で寺島は何を語るのか。間もなく裁判は佳境に差し掛かる』、やはり「寺島」は“エリート姫”らしく「X子」のように自発的に自首したりせず、最後までグループの一員であり続けたようだ。
第四に、10月23日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元週刊文春・月刊文藝春秋編集長の木俣正剛氏による「「トクリュウ」がとうとう近所にやって来た!“狙われる街”に急務の治安対策とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/352571
・わが家は大丈夫か? ひたひたと迫る「トクリュウ」の恐怖 10月16日朝、横浜市青葉区の市が尾駅近くで老人の家が襲われ、窓を割った侵入者に老人が縛られたまま殺されたというニュースが流れました。ああ、例の「トクリュウ」(匿名・流動型犯罪グループ)が、とうとうわが家の近くにまで現れたのです。 青葉区は閑静な住宅地で、東京のベッドタウンとしてどんどん発展しました。ほとんどが東急電鉄の沿線で、宅地開発でも同じ地域を一気に売り出すので、町内に住んでいるのは大体同じ世代になります。つまり、今は子どもが巣立って独居老人や老夫婦だけが住んでいるか、二世帯住宅になっているかという街です。 「トクリュウ」が現れる前から、老人に対する詐欺らしき電話や「押し買い」への注意が回覧板に出るようになっていました。実際、プロ野球横浜ベイスターズや読売巨人軍の選手が近所に住んでいるケースも多く、遠征中(夫の留守がわかっているので)に6人組の強盗に入られた選手の名前を聞いたこともあります。 閑静で安全な住宅地だったはずが、だんだん防犯意識が強い街になり、怪しげな人が道を行き交うと、すぐ噂になります。なぜかわが家はまったく被害に遭っていないので、巡回にきた警官に聞いてみると、「泥棒が入りにくい構造になっているからではないか」と解説してくれました。具体的には次の通りです。
(1)夫婦の寝る時間、起きる時間、仕事に出る時間が違っていて、犯罪者が行動バターンを読みにくい(出版社勤務でよかったです)。
(2)家への出入りを周囲から見咎められやすい構造になっている。
(3)砂利石が敷かれていて、音がする。
(4)買っている犬は小犬だが、吠え声が野太くて、他人には大きな犬が家の中にいるように思える。
しかし、実はわが家は一つの不安を抱えていました。ドアの鍵を車の鍵のようにカバンに入れたままでも、手でドアに触れるだけで開くというシステムにしたのですが、実はこの鍵が一つ見当たらないのです。基本はカバンの中に入れてあるので、家のどこかにあるはずですが、愛犬の散歩でフンを拾うときに、たまたま落としてしまった可能性もないではありません。 10日ばかり探しましたが、出てきません。もしこれを「トクリュウ」が拾ったら、と思うと気が気ではありません。街中を探し歩きながら、ドアを触ればいいだけですから。妻に目茶苦茶叱られながら、家探しを行い、最近着た服やカバンを毎日漁っていましたが、今日、ついに鍵を変えることにしました。命あってのモノダネです。)「実はわが家は一つの不安を抱えていました。ドアの鍵を車の鍵のようにカバンに入れたままでも、手でドアに触れるだけで開くというシステムにしたのですが、実はこの鍵が一つ見当たらないのです・・・家探しを行い、最近着た服やカバンを毎日漁っていましたが、今日、ついに鍵を変えることにしました。命あってのモノダネです」、賢明だ。
・実際、疑い出すと「黒い服の若い男が、町を徘徊しては様子を見ている」「若い黒人(ただし学生風で理知的な顔立ち)の4人組が、ゴミの缶をビニール袋にいっぱい入れて運んでいたから、資源ゴミ泥棒じゃないか」「自転車に乗った男が、自宅を10分ほどずっと眺めていた」などという、近所の噂話が耳に入ってきます。 「住人同士が挨拶をしている街の家には、まず泥棒は入らない」と元警視総監の講演で聞いたことがあります。昼と夜には町内でパトロールをしているし、ほとんどの家が犬を飼い、門灯もつけ、監視カメラも多い。その意味では防犯意識はしっかりした町なので、生命の危険を感じるようなことはなく、ある意味、コミュニティがしっかりでき上がっており、「挨拶ができる安心な街って、こういうところだろうな」と安心していたのです』、「「住人同士が挨拶をしている街の家には、まず泥棒は入らない」と元警視総監の講演で聞いたことがあります。昼と夜には町内でパトロールをしているし、ほとんどの家が犬を飼い、門灯もつけ、監視カメラも多い。その意味では防犯意識はしっかりした町なので、生命の危険を感じるようなことはなく、ある意味、コミュニティがしっかりでき上がっており、「挨拶ができる安心な街って、こういうところだろうな」と安心していたのです」、なるほど。
・日本の犯罪は別次元に突入 急がれる治安対策の発想転換 しかし、今回の「トクリュウ」は防犯の必要性が別次元に入ったと考えるべきではないでしょうか。たとえば青葉区の殺人は、同一犯と思わる犯罪がどんどん明るみに出て首都圏で15件に及び、他にも栃木と札幌で類似した事件が発生していると判明。埼玉、千葉、神奈川に警視庁と警察庁の合同捜査本部が設置されました。これまでに判明しているのは、強盗致傷が10件、強盗殺人が1件、それ以外は強盗予備、窃盗などだそうです。 私はこのニュースを見た時点で、地域の治安対策を完全に転換しなければいけないと感じました。もう日本を「治安のいい国」などと言ってはいられません。性善説が前提となっており、財布を落としても交番に行けば届けられており、お巡りさんが近所とコミュニケーションをとるような時代ではなくなったのです。政府は防犯カメラ設置への補助や相談窓口の開設などの対策を打ち出しましたが、そんな生ぬるいものでは、今回のような犯罪は根絶などできないと思います。 私は治安対策の抜本的な強化を提案したいと思います。まずは日本の警察を、かつて暴力団を暴対法でほとんど根絶したような強い法的根拠を持つ警察へと、作り直す時期がきているということです。今回も広域捜査本部ができましたが、殺人が10日に発生したのに立ち上げは18日になってから。最初から「トクリュウ」に関わる犯罪は広域であることがわかっているのだから、もっと早くから全国規模で捜査体制を組むか、特別チームをつくるといった対策が必要だったのではないでしょうか』、「今回の「トクリュウ」は防犯の必要性が別次元に入ったと考えるべきではないでしょうか・・・私は治安対策の抜本的な強化を提案したいと思います。まずは日本の警察を、かつて暴力団を暴対法でほとんど根絶したような強い法的根拠を持つ警察へと、作り直す時期がきているということです。今回も広域捜査本部ができましたが、殺人が10日に発生したのに立ち上げは18日になってから。最初から「トクリュウ」に関わる犯罪は広域であることがわかっているのだから、もっと早くから全国規模で捜査体制を組むか、特別チームをつくるといった対策が必要だったのではないでしょうか」、なるほど。
・振り込め詐欺(以前は「オレオレ詐欺」)は、1990年代に社会問題化し始め、2004年に警察庁が「振り込め詐欺」へと名称を統一しました。2004年の振り込め詐欺の被害額は約280億円でしたが、2014年には約565億円に増加。「ルフィ」などの黒幕が海外で逮捕された2024年においても、被害額は約452億円と推定されています。つまり、暴力団は衰弱しても、半グレや暴力団崩れが関与した闇バイト、振込詐欺の受け子など、お金のない若者をテレグラムなどの匿名性の高いシステムを使って動かす組織は存続し続け、元締めがわからない形で犯行を過激化させているという状況ははっきりしています』、「2004年の振り込め詐欺の被害額は約280億円でしたが、2014年には約565億円に増加。「ルフィ」などの黒幕が海外で逮捕された2024年においても、被害額は約452億円と推定されています。つまり、暴力団は衰弱しても、半グレや暴力団崩れが関与した闇バイト、振込詐欺の受け子など、お金のない若者をテレグラムなどの匿名性の高いシステムを使って動かす組織は存続し続け、元締めがわからない形で犯行を過激化させているという状況ははっきりしています」、なるほど。
・「振り込め詐欺」さえ撲滅できない 日本の警察の不安な実情 しかし、旧態然とした組織や法律のままで、「振り込め詐欺」を何十年も解決できないのが今の警察なのです。今の組織や法体系では、これに対抗するのは無理であり、政府はこのリスクをもっと重大視した立法と組織変更を行う必要があるのではないでしょうか。 たとえば、米国は9.11で国家を揺るがすほどのテロ被害を受けましたが、その後、国家情報長官を新設し、テロリスト情報の共有の円滑化や国土安全保障局を使った盗聴を強化し、結果として20年以上にわたって大規模なテロを防止しています。被害の規模は違うとはいえ、イスラム諸国のテロリスト同様、日本の「トクリュウ」には時代背景を見ても出現する理由が存在します。 小泉純一郎、安倍晋三の両内閣で新自由主義的改革が行われ、格差社会が現実となりました。最初は限定されていた派遣社員の範囲がどんどん拡大され、20代の平均貯蓄額は2000年には約131万円だったものが、2020年には約72万円へと減りました。若者が貧乏であることが、裏バイトが増え続ける根源的な原因であり、彼らをリスクなしに利用できる黒幕が生き延び続ける原因です。日本を支える治安という重要なインフラを壊すテロリスト的存在であると「トクリュウ」を認識した上で、新しい組織、法律を考える必要があるのではないでしょうか。 「日本の警察は優秀」と国際的にも評価を受けています。実際、1990年は犯罪数が約250万件に対して検挙率が約60%、2010年は同150万件に対して同30%、そして2020年は同約70万件に対して同約40%となっており、犯罪数、検挙率ともに良好と言えます。 しかし実際には、検挙率は自転車泥棒を取り締まればすぐ増えます。私の取材経験では、警察は現場で事件を追うよりも昇進のための試験に熱心で、市民の訴えをなるべく事件化せずに葬り去ろうという傾向の組織であることも事実なのです。もし今回の事件も広域捜査本部ができなかったら、強盗予備に分類されていた犯罪は「トクリュウ」犯罪と位置付けられていなかったかもしれません。) 本当は「トクリュウ」をマフィア同様の組織と認定し、暴対法の対象にするだけでなく、いわゆる「盗聴法」(正式名:通信傍受法)の対象を拡大し、テレグラムの完全使用禁止やダークウェブまで監視する権限を、警察に与えるべきではないでしょうか』、「旧態然とした組織や法律のままで、「振り込め詐欺」を何十年も解決できないのが今の警察なのです・・・米国は9.11で国家を揺るがすほどのテロ被害を受けましたが、その後、国家情報長官を新設し、テロリスト情報の共有の円滑化や国土安全保障局を使った盗聴を強化し、結果として20年以上にわたって大規模なテロを防止しています・・・20代の平均貯蓄額は2000年には約131万円だったものが、2020年には約72万円へと減りました。若者が貧乏であることが、裏バイトが増え続ける根源的な原因であり、彼らをリスクなしに利用できる黒幕が生き延び続ける原因です。日本を支える治安という重要なインフラを壊すテロリスト的存在であると「トクリュウ」を認識した上で、新しい組織、法律を考える必要があるのではないでしょうか・・・本当は「トクリュウ」をマフィア同様の組織と認定し、暴対法の対象にするだけでなく、いわゆる「盗聴法」(正式名:通信傍受法)の対象を拡大し、テレグラムの完全使用禁止やダークウェブまで監視する権限を、警察に与えるべきではないでしょうか」、なるほど。
・米国は国家安全保障局(NSA)による「エシュロン」と呼ばれる通信傍受システムで、テロを相当数未然に防ぎました。日本の盗聴法も、2016年の改正でそれまでの薬物・銃器・集団密航・組織的犯罪しか認められていなかった傍受の範囲が拡大され、傷害、爆発物使用、放火、誘拐、監禁、窃盗、詐欺、児童ポルノなどが加えられ、傍受についても「通信会社に出向く」のではなく「警察が必用とする日数分の通話の圧縮データを通信会社から送ってもらい、立会人なしで警察がデータの検証を行える」ように改正されました。 もちろん、個人情報を大事にして人権を養護する団体からは、疑問の声が多く出ましたが、これだけ「トクリュウ」犯罪が過激化し、しかも海外からの指示やお互いを知らない闇バイトメンバーの犯行など犯罪が流動化している現実を見れば、彼らの通信網や連絡網を把握できるよう、即応できる仕組みを考える必用があると思います』、「これだけ「トクリュウ」犯罪が過激化し、しかも海外からの指示やお互いを知らない闇バイトメンバーの犯行など犯罪が流動化している現実を見れば、彼らの通信網や連絡網を把握できるよう、即応できる仕組みを考える必用がある」、その通りだ。
・『過去の日本を取り戻すにはトクリュウ対策を徹底せよ 私は警察を全面的に信用し、権力の濫用を心配しない人間ではありません。しかし、今日のような犯罪の多発化、過激化、単純化は社会情勢の変化と共に起こっているものであり、それには何よりも国民の安全が優先されることが大事です。 たとえば、「トクリュウ」犯罪撲滅の目標を3年以内と警察に決めさせ、3年の時限立法で特別な盗聴許可を出したり、闇バイトで犯罪を唆された人物が警察に事前に名乗り出た場合、報奨金などを出し家族を保護する施設をつくったりすることも検討すべきでしょう。 石破総理は自民党総裁選の立候補演説で、過去の日本についてこう追憶しました。 今ほど豊かではなかったけれど、そこには大勢の人の笑顔がありました。(略)もう一度そういう日本を取り戻したいと思っています。互いが悪口を言ったり足を引っ張ったりするのではなく、共に助け合い、悲しい思いでいる人、苦しい思いでいる人、そういう人たちを助け合うような、そういう日本にしてまいりたいと思っております。日本を守りたい、国民を守りたい、地方を守りたいのです」 まさに「トクリュウ」の撲滅、闇バイト志望者の激減こそ、かつての仲のいい日本人社会を取り戻すチャンスなのではないでしょうか。全身全霊をかけ、全力で警察を叱咤し、必用な法律という武器を与えて、「かつての日本人の笑顔」を取り戻してほしいと考えます』、「「トクリュウ」の撲滅、闇バイト志望者の激減こそ、かつての仲のいい日本人社会を取り戻すチャンスなのではないでしょうか。全身全霊をかけ、全力で警察を叱咤し、必用な法律という武器を与えて、「かつての日本人の笑顔」を取り戻してほしい」、同感である。
先ずは、本年5月30日付け現代ビジネスが掲載したノンフィクション作家の石井 光太氏による「なぜここまで短い言葉で若者たちは闇バイトにはまり込んだか?その理由は絶望的な「国語力」にあった 石井光太ルポ」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/110989?imp=0
・『20って20万ですか?やりたいです 闇バイトの存在が、日本全国で起きている特殊詐欺や強盗事件とかかわっていたとして、にわかに注目されている。 俗にいう闇バイトとは、SNSを介して主に2通りの方法で行われる。犯罪集団の方がSNSで略語を使って募集する方法と、SNSで家出や自殺願望についての発信をした個人に対して犯罪集団の方がメッセージを送ってリクルートする方法だ。 共通するのは、犯罪集団が何の関係性もない人間を、ある日突然支配できる点だ。だからこそ、彼らはその人間をコマのように扱って乱暴な指示を出したり、簡単に切り捨てたりする。 実際のSNSで行われるリクルートのやり取りが次だ。 〈運びのバイトあります。1回即金で20保障します。年齢地域不問です〉 〈20って20マンですか〉 〈そうです。リスク対策万全です〉 〈やりたいです〉 〈ケータイ番号、住所、身分証の写真を送ってもらえますか〉 〈はい〉 大半の人からすれば、なぜこんなSNSの短い言葉に簡単に騙され、重大犯罪を起こすのかと不思議に思うだろう。その背景には、彼らの語彙のなさ、理解力の乏しさ、コミュニケーションスキルの脆弱さがある。 私は『ルポ 誰が国語力を殺すのか』(文藝春秋)で、少年院に入っている少年たちが抱える子供の問題について詳しく見てきた。犯罪と言葉という観点から、日本のダークサイドで起きていることを考えたい』、「犯罪と言葉という観点から」とは興味深そうだ。
・『女子少年院で私が尋ねたこと 本書の取材で、東日本にある少年院で、特殊詐欺で逮捕された10代の少女と出会った。 彼女は劣悪な環境の家庭から逃げ出したいため、ツイッターにそのことを書いた上、割のいいバイトをしたいと発信した。犯罪集団はそうした書き込みをリアルタイム検索で巡回していたのだろう。すぐにダイレクトメッセージが届いた。) 提案されたバイトは、〈1回につき25万円〉だという。〈1カ月で100万円も夢じゃない〉とも書かれていた。少女はバイトの内容さえ確認せずに飛びついた。そして言いなりになって住所など個人情報をすべて教え、特殊詐欺に加担させられたのである。 女子少年院でインタビューをした際、私と少女との間に次のような会話があった(Qは筆者の質問、Aは少女の回答)。 Q:怪しい仕事だと思わなかった? A:わかんないです。 Q:1回25万円は高額だよね。 A:そう言われたからそうだと思った。 Q:危険を冒してまで家を出たかった? A:たぶん。 常識的に考えれば、こんな割のいい仕事があるわけがない。だが、この言葉からわかる通り、彼女はSNSで届いた言葉を鵜呑みにし、何の疑問も抱かずに言われるままに動き、そして逮捕と同時にトカゲのしっぽのように切り捨てられたのである。 短文でのコミュニケーションは、他の闇バイトの世界でも当たり前のこととして行われていることだ。高額報酬という割には、驚くほどの短文でやりとりし、会話にしたら30秒ほどの内容で、数十万、数百万という単位の闇バイトに引きずり込まれる。 集団自殺の勧誘なども同じだ。相手が誰なのか、なぜ集団自殺を持ちかけたのかといったやり取りすらなく、現場へ向かっていく。 こうした短文でのやり取りに、深い思慮はまったくといっていいほどない。だから、一般的には理解できないほど容易く最悪の事態が起きてしまう』、「高額報酬という割には、驚くほどの短文でやりとりし、会話にしたら30秒ほどの内容で、数十万、数百万という単位の闇バイトに引きずり込まれる・・・こうした短文でのやり取りに、深い思慮はまったくといっていいほどない。だから、一般的には理解できないほど容易く最悪の事態が起きてしまう」、なるほど。
・『十分な語彙を獲得できない 私が本書で明らかにしたのは、なぜこうしたことが起こるのかという点だ。 少年院の法務教官など更生にかかわる多くの人たちが指摘するのが、彼らが劣悪な成育歴から十分な語彙を獲得できず、言葉を使いこなせていないということだ。 本書では、これを「国語力」と呼んでいる。文科省は、国語力について、年齢相応の語彙をつけながら、情緒力、想像力、論理的思考力を育て、それを適切に表現する能力と定義している。 人が生きていくには、言葉によって自分の内面と向き合い、物事を想像し、論理的に物事を思考し、それを表現していかなければならない。それができてはじめて周囲に自分を理解してもらい、様々な壁を乗り越えていくことができる。国語力とは、そんな全人的な力なのだ。) なぜ、闇バイトの犯罪に巻き込まれる若者たちは、国語力が劣っている傾向にあるのか。大半の関係者が、その原因を家庭に求めている。 統計によれば、少年院にいる子供たちは、一般と比べて有意に劣悪な家庭環境の中で育っている。それは男子の場合は4割、女子の場合は7割が虐待を受けて育っていることからも明らかだろう(虐待以外の要素を含めれば、親が依存症だとか、親戚の家をたらい回しにされて育ったなど、9割以上は何かしらの問題家庭で育っている)。 こうした家庭では、子供が国語力を高めることは望むべくもない。 たとえば、虐待親から子供が何の理由もなしに四六時中殴られていたとしよう。 そうすれば子供たちは「なぜ叩かれているのか」を考えることも、「なんで叩くのか」と聞くこともしなくなる。理由を考えても答えが出てこないし、親に聞いても殴られるだけだからだ。 あるいは、親が外で遊び歩いてまったく家に帰ってこなかったとしよう。ネグレクトである。 そうなれば、子供は絵本の読み聞かせや会話のやり取りで言葉を育むことができないし、学齢期になっても夜中まで孤独な時間を過ごさなければならなくなる』、「人が生きていくには、言葉によって自分の内面と向き合い、物事を想像し、論理的に物事を思考し、それを表現していかなければならない。それができてはじめて周囲に自分を理解してもらい、様々な壁を乗り越えていくことができる。国語力とは、そんな全人的な力なのだ・・・虐待親から子供が何の理由もなしに四六時中殴られていたとしよう。 そうすれば子供たちは「なぜ叩かれているのか」を考えることも、「なんで叩くのか」と聞くこともしなくなる。理由を考えても答えが出てこないし、親に聞いても殴られるだけだからだ。 あるいは、親が外で遊び歩いてまったく家に帰ってこなかったとしよう。ネグレクトである。 そうなれば、子供は絵本の読み聞かせや会話のやり取りで言葉を育むことができないし、学齢期になっても夜中まで孤独な時間を過ごさなければならなくなる」、なるほど。
・『見知らぬ人間のDMを信用して こうした子供たちは、親子関係が良好な家庭で育つ子供たちと比べて、明らかに語彙の量、自分の感情を知覚する力、見知らぬ世界や他者への想像力を広げる力、物事の因果間関係を志向する力が弱まる。つまり、国語力という人間が生きていくのに必要な全人的な力が脆弱になるのだ。 先の女子少年院の少女も同様だ。彼女もまた、親との不適切な関係によって、言葉で物事を感じ、考え、表現する力をつけることができなかった。 それは、幼い彼女にとって家庭での悲しく不条理な日々を生き抜く術だったはずだ。だが、思春期になった時、それは「無思慮」「思考停止」という形として現れ、むしろ社会で生きていく上での足枷となった。 だからこそ、彼女は何も考えずにSNSに不用意な書き込みをし、見知らぬ人間からのダイレクトメッセージをいとも簡単に鵜呑みにし、警戒心を失った状態で指示通りに行動してしまったのである。 こうした人たちは、他人どころか自分すら大切にすることができない。思いやりもまた言葉によって生まれる感情だからだ。ゆえに、彼らはお年寄りをターゲットにし、大金をむしり取り、時には暴力を振るうことにすら無頓着でいられるのだ。 では、こうした国語力の弱さを社会はどうサポートしようとしているのか。非行少年たちの更生の最前線の取り組みについては後篇《少年院で使用されている幼児教育向けの「表情・感情カード」がヤバすぎる…犯罪と国語力の関係について》で詳しく述べたい』、「こうした子供たちは、親子関係が良好な家庭で育つ子供たちと比べて、明らかに語彙の量、自分の感情を知覚する力、見知らぬ世界や他者への想像力を広げる力、物事の因果間関係を志向する力が弱まる。つまり、国語力という人間が生きていくのに必要な全人的な力が脆弱になるのだ。 先の女子少年院の少女も同様だ。彼女もまた、親との不適切な関係によって、言葉で物事を感じ、考え、表現する力をつけることができなかった。 それは、幼い彼女にとって家庭での悲しく不条理な日々を生き抜く術だったはずだ。だが、思春期になった時、それは「無思慮」「思考停止」という形として現れ、むしろ社会で生きていく上での足枷となった・・・こうした人たちは、他人どころか自分すら大切にすることができない。思いやりもまた言葉によって生まれる感情だからだ。ゆえに、彼らはお年寄りをターゲットにし、大金をむしり取り、時には暴力を振るうことにすら無頓着でいられるのだ」、不幸なことだ。
次に、この続きを、5月30日付け現代ビジネスが掲載したノンフィクション作家の石井 光太氏による「少年院で使用されている幼児教育向けの「表情・感情カード」がヤバすぎる…犯罪と国語力の関係について 石井光太ルポ」を紹介しよう。
・『感情を言語化できない 前篇《なぜここまで短い言葉で若者たちは闇バイトにはまり込んだか?その理由は絶望的な「国語力」にあった》に引き続き、非行少年たちの更生最前線をレポートしよう。 少年院などの更生現場では、犯罪を犯した若者たちに国語力をつけさせるための様々な取り組みを行っている。 『ルポ 誰が国語力を殺すのか』(文藝春秋)で紹介したものが、少年院で使用されている各種カードだ。その1つが、「表情・感情カード」である。 表情・感情カードとは、数十枚のイラストと言葉からなる幼児知育用のカードだ。各カードには、異なるイラストとともに感情を表す言葉が記されている。たとえば、涙を流す女の子のイラストがあり、「さみしい」「こころぼそい」などと書かれている。 少年院の若者たちの多くは、自分の感情を細かく言語化することが不得意だ。ゆえに、何かあれば逐一、表情・感情カードを取り出し、今の自分の感覚が何であるかを探し当て、言語化する訓練をするのである。 本書で、私が話を聞いた法務教官は次のように言っていた。 「たとえば他人と行き違いがあった時、彼らは簡単に『死ね』『ムカつく』『うざい』と言い捨ててしまいます。しかし、それを言えば他人とぶつかることはあっても、うまくいくことはありません。 しかし、きちんと自分の感情に向きあって『さみしい』『こころぼそい』と言うことができたらどうでしょう。ぶつかることは避けられますし、相手もその子を理解しようとしてくれます」』、「少年院で使用されている各種カードだ。その1つが、「表情・感情カード」である。 表情・感情カードとは、数十枚のイラストと言葉からなる幼児知育用のカードだ。各カードには、異なるイラストとともに感情を表す言葉が記されている。たとえば、涙を流す女の子のイラストがあり、「さみしい」「こころぼそい」などと書かれている。 少年院の若者たちの多くは、自分の感情を細かく言語化することが不得意だ。ゆえに、何かあれば逐一、表情・感情カードを取り出し、今の自分の感覚が何であるかを探し当て、言語化する訓練をするのである・・・私が話を聞いた法務教官は次のように言っていた。 「たとえば他人と行き違いがあった時、彼らは簡単に『死ね』『ムカつく』『うざい』と言い捨ててしまいます。しかし、それを言えば他人とぶつかることはあっても、うまくいくことはありません。 しかし、きちんと自分の感情に向きあって『さみしい』『こころぼそい』と言うことができたらどうでしょう。ぶつかることは避けられますし、相手もその子を理解しようとしてくれます」、「表情・感情カード」とは面白い試みだ。
・『言葉のバブル 実際に劣悪な家庭環境で育ってきた若者たちは、怒りを言葉にすることはしても、悲しみを言葉にすることは苦手だ。怒りは他者に向けられるものだが、悲しみは自分を掘り下げるものである。だから、つらいことを思い出さないために、常に怒りの感情だけを外に向けようとする。 表情・感情カードは、幼児教育向けの教材だ。それを、18歳前後の若者たちが、少年院で使用していると聞くと、愕然とする人もいるかもしれない。逆に言えば、家庭環境によって国語力を奪われてきた若者たちは、こういう教育を受けなければ、自身の感情にすら気づけない状態にあるということでもある。 もちろん、こうした取り組みを半年から1年ほど少年院で行っても、必ずしも成果が出るわけではない。だからこそ、少年院を出た子供たちにも似たような教育が必要になる。 福岡には、ヒューマンハーバーという非行少年を多く受け入れている企業がある。ここが運営する更生教育施設「そんとく塾」では、「言葉のバブル」という授業を行っている。 下の図がそれだ。このように喜怒哀楽に関わる言葉を、より詳細な言葉で細かく分解させ、今の自分がどのような感情なのかを適切に理解し、表現することを練習するのだ。 たとえば、その人の身に何か悲しい出来事が起きたとしよう。この時の悲しみの程度が「せつない」くらいなのに、誤って「死にたい」と解釈し、表現したらどうだろう。 あるいは、何か腹立たしい出来事が起きたとしよう。それが「いまいましい」程度なのに、「殺す」と表現したらどうだろう』、「家庭環境によって国語力を奪われてきた若者たちは、こういう教育を受けなければ、自身の感情にすら気づけない状態にあるということでもある。 もちろん、こうした取り組みを半年から1年ほど少年院で行っても、必ずしも成果が出るわけではない。だからこそ、少年院を出た子供たちにも似たような教育が必要になる・・・非行少年を多く受け入れている企業がある。ここが運営する更生教育施設「そんとく塾」では、「言葉のバブル」という授業を行っている。 下の図がそれだ。このように喜怒哀楽に関わる言葉を、より詳細な言葉で細かく分解させ、今の自分がどのような感情なのかを適切に理解し、表現することを練習するのだ。 たとえば、その人の身に何か悲しい出来事が起きたとしよう。この時の悲しみの程度が「せつない」くらいなのに、誤って「死にたい」と解釈し、表現したらどうだろう。 あるいは、何か腹立たしい出来事が起きたとしよう。それが「いまいましい」程度なのに、「殺す」と表現したらどうだろう」、なるほど。
・『言葉があまりにも軽視されている時代に こうした誤った表現が、無用なトラブルを生むことは目に見えている。だからこそ、自分の内面をきちんと理解し、表現することが必要なのだ。 同塾で言葉のバブルの授業をする原田公裕は語る。 「生きることに困難を抱えている人の大半は言葉に問題を抱えています。その苦労を知らない頭のいい大人たちが、『ちゃんとやれ』と叱っても効果がないんです。それなら、きちんと学び直しの機会をつくり、“考える力”“他者への想像力”“論理力”をつけさせるべきです」 少年犯罪でなくても、同じことは一般の人たちにも当てはまる。学校で、会社で、家庭で、言葉をうまくつかえないことが原因のトラブルは多数発生しているだろう。 どれだけ言葉で自分を理解できるのか。他人や社会を思いやれるのか。言葉をうまく操ることができれば、その人は何倍も生きやすくなるだろう。 つまり、国語力を身につけることは、「生きづらさ」からの脱却になるのだ。 現代の人々を取り巻く国語力の問題や、それを習得するための取り組みについて詳しい事例は、『ルポ 誰が国語力を殺すのか』に書いたので参照していただきたい。 ここで言えるのは、言葉こそが、この複雑で困難な時代をうまく生き抜くために必要不可欠な力の1つであるといことだ。しかし今の社会では、それがあまりに軽視されているように思えてならない。 前篇記事《なぜここまで短い言葉で若者たちは闇バイトにはまり込んだか?その理由は絶望的な「国語力」にあった》もあわせてお読み下さい』、「言葉こそが、この複雑で困難な時代をうまく生き抜くために必要不可欠な力の1つであるといことだ。しかし今の社会では、それがあまりに軽視されているように思えてならない。」、その通りだ。
第三に、10月18日付け文春オンライン「詐欺総額1000万円「ルフィ」エリート美女が出廷「水着で出勤しろ!」「俺たちはクズだから」寺島春奈(29)を追い詰める“同僚女性”の証言」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/74263
・『10月8日、東京地裁716号法廷に現れた色白の美女は両脇を刑務官に囲まれ、無表情で腰を下ろした。丸眼鏡の奥の瞳は、感情を押し殺すように前を見据えている。目鼻立ちは整っているが、くたびれたTシャツは1年半余にわたる勾留の長さを物語っていた。 この日行われたのは、渡辺優樹(40)を頂点とする特殊詐欺組織“ルフィグループ”のメンバー寺島春奈(29)の公判である。 1995年、長野市に3人きょうだいの末っ子として生まれた寺島。祖父、父は共に教員を務めた地元の名士だった。中学時代はソフトテニス部に所属していたが、その生活は次第に荒れていく。不良とつるみ始め、進学した市内の高校を中退すると、キャバクラ嬢として働き始めた。その後、寺島は詐欺グループのメンバーとして犯罪に加担していく』、「祖父、父は共に教員を務めた地元の名士」だったが、「高校を中退すると、キャバクラ嬢として働き始めた。その後、寺島は詐欺グループのメンバーとして犯罪に加担」、なるほど。
・『警視庁の調べに対し犯罪への関与を否定 昨年5月24日午後3時半、フィリピンから成田空港に男女4人が降り立った。胸元に薔薇の花弁が施されたオーバーサイズの黒色パーカーを目深に被った寺島は終始俯き、細く整った眉を時折、不機嫌そうに動かした。 同日、警視庁捜査2課は寺島ら4人を窃盗容疑で逮捕。2019年6月から11月にかけて、警察官らを騙って東京都の女性2人に「口座が不正に残高照会されている」などと嘘の電話をかけ、キャッシュカード計8枚や現金計150万円を盗むなどしたという。その後、寺島は窃盗や詐欺で5回の再逮捕、追起訴を経て、現在東京拘置所に勾留されている。 「逮捕後、彼女は警視庁の調べに対して黙秘を貫き、その後は『事件については知らずに電話をかけていた』と犯罪への関与を否定していました。今回、こうした寺島の主張を崩すため、検察側の証人として呼ばれたのが、現地で一緒に暮らしていた犯行グループの元女性メンバーX子でした」(社会部記者) 開廷から約2分後、囚人服姿のX子が入廷し、証言台の前に置かれた長椅子に座る。2019年、X子は「リゾートのアルバイト」を募集していたツイッターで詐欺グループのメンバーと知り合い、同年11月2日にフィリピンに渡航。時を前後して寺島もフィリピンに渡航していた。詐欺グループの幹部を通じて知り合った2人は同部屋で暮らし、共に詐欺に手を染めてきたという。自戒を込めて語られるX子の証言からは、組織内で美貌の“エリート姫”として寺島が重用され、深く詐欺に傾倒していく様が仔細に浮かび上がった』、「逮捕後、彼女は警視庁の調べに対して黙秘を貫き、その後は『事件については知らずに電話をかけていた』と犯罪への関与を否定していました。今回、こうした寺島の主張を崩すため、検察側の証人として呼ばれたのが、現地で一緒に暮らしていた犯行グループの元女性メンバーX子でした・・・X子の証言からは、組織内で美貌の“エリート姫”として寺島が重用され、深く詐欺に傾倒していく様が仔細に浮かび上がった」、なるほど。
・『「日本で受け子をしていた女だ」幹部から寺島を紹介された マニラ市内にあるウエスト・マカティ・ホテル。2019年当時、渡辺らが現地の実業家から約7億円で購入する契約を結んだとされる詐欺の拠点だ。渡航当日、同ホテル7階に連れて行かれたX子は「大石」と名乗る幹部を紹介された。不安に苛まれながら「フランスの音楽院に行くためにお金がほしくてやってきた。20万~50万円はほしい」と話すと、大石はこう言い放った。 「それなら、1カ月で稼げる。俺たちは犯罪者だから。クズだから!」 その日、「青木」という偽名を与えられたX子は、その翌日「春日井」と名乗る細身の美女を紹介される。その女性こそ、同時期にフィリピンに渡航した“新入り”の寺島だった。そのとき、X子はメンバーにこう伝えられたという。 「春日井は日本で受け子をしていた女だ。だから、“わかっている”」 階下の殺風景な一室。その日を境に2人は同室で寝食を共にし、昼間は詐欺に手を染めるようになる。 「これは掛け子の業務報告をするためのものだから」 大石から2人に手渡されたのは、秘匿性の高いアプリ「テレグラム」がインストールされた携帯電話だった。細分化された組織の中で、彼女たちが所属していたのは「ST箱」「シークレット担当」と呼ばれていた。支給される生活費は、週5000ペソ(約1万円)。組織の中では「週給費」と呼ばれ、週の始まりに手渡しでメンバー全員に支給されたという』、「「春日井(寺島)は日本で受け子をしていた女だ。だから、“わかっている”」 階下の殺風景な一室。その日を境に2人は同室で寝食を共にし、昼間は詐欺に手を染めるようになる」、「寺島」の扱いは別格のようだ。
・『「うまくいかなかったら水着で出勤しろ!」 X子は証言台で次のように語る。 「私はこれからどういうことをするのだろうとわからなかったので不安になっていたんですが、春日井さんはおおらかにしていた。だから、彼女は『何をやるのか』、わかっているのだろうと思っていました」 翌4日早朝、幹部は掛け子が一堂に会した朝礼で2人をメンバーに紹介した。 「今日から新人として入った青木と春日井だ」 そこでX子と寺島は2台目の携帯電話と共に、紙の束を手渡される。 〈こちらは、警視庁公安課の◯◯です。捕まった犯人の所有物からあなたの銀行キャッシュカードから現金を引き出している形跡がありました〉 掛け子が高齢者に電話をかける際の事例が書かれた詐欺マニュアルである。 「それを見て、高齢者相手に騙しの電話をする仕事なのだと思いました。マニュアルは春日井さんも受け取っています」(X子) その日、X子は詐欺グループ内で寺島が厚遇されている現実を垣間見る。X子に背を向ける形で座って、電話をかける寺島の隣に張り付き、手法を伝授する男。付きっきりで詐欺を仕込み、エリートとして育成していく意図を感じたという。だが、彼女たちは同時に恐怖と金に支配された環境に身を置くことになる。 「明日詐欺がうまくいかなかったら水着で出勤しろ! 成功したら10万円やる」 寺島らの歓迎会を開いた幹部は、そう命じたという。) 寺島は「『一緒に頑張りましょう』という感じだった」 「それが嫌で、私は翌日頑張って初めて詐欺を成功させました。キャッシュカードには1日100万円の出金限度額があるので、1日に引き出せなかったお金は翌朝に引き出すことになる。それを『朝出し』と言っていました」(X子) 掛け子の報酬は、騙し取った金の4%。また、詐欺総額が月1千万円を超えると、全員に50万円のボーナスが配られたという。 「報酬はストックしていって、必要があるときに申請します。大石からテレグラムで『いくら必要か』と聞かれ、日本円で受け取っていました」(X子) 検察から「被告側は『犯罪組織かはわからず、電話していた』と主張しているが」と問われたX子は、次のように証言している。 「彼女は『一緒に頑張りましょう』という感じだった。(犯罪行為を)わかっていた感じです」』、「X子は詐欺グループ内で寺島が厚遇されている現実を垣間見る。X子に背を向ける形で座って、電話をかける寺島の隣に張り付き、手法を伝授する男。付きっきりで詐欺を仕込み、エリートとして育成していく意図を感じたという・・・掛け子の報酬は、騙し取った金の4%。また、詐欺総額が月1千万円を超えると、全員に50万円のボーナスが配られたという。 「報酬はストックしていって、必要があるときに申請します。大石からテレグラムで『いくら必要か』と聞かれ、日本円で受け取っていました」(X子)」、なるほど。
・『マニュアルに書かれていない手法の詐欺も X子の証言が浮き彫りにするのは、詐欺グループが寺島らに詐欺の“英才教育”を施し、彼女たちが積極的に関与していく様子だった。当時、彼らが得意としていたのが「現金キャッチ」と呼ばれる手法である。 「『キャッシュカードとは別に現金は家にありますか?』と尋ねて『金は偽札である可能性がある』と伝え、R(日本にいる受け子)が現金を持って帰る手法です」(X子) 「現金キャッチ」は、前述したマニュアルに書かれていない。X子と寺島は幹部から「経験者から方法を聞いてこい」と言われ、掛け子の先輩に近付き、電話のやり方を学んだという。日本にいる受け子が現金を受け取る一部始終を目の当たりにすると、大石から「2人もこれができるようにやってほしい」と言われ、報酬を握らされたという。 11月13日午前、ついに寺島は詐欺の月額1000万円を達成。大石が「おめでとう!」と寺島を労っていたころ、ホテル周辺は途端に物々しい雰囲気に包まれた。同日午後、フィリピンの入管当局は特殊詐欺に関わった容疑で日本人36人の身柄を拘束したのだ』、「当時、彼らが得意としていたのが「現金キャッチ」と呼ばれる手法である。 「『キャッシュカードとは別に現金は家にありますか?』と尋ねて『金は偽札である可能性がある』と伝え、R(日本にいる受け子)が現金を持って帰る手法です」(X子)・・・11月13日午前、ついに寺島は詐欺の月額1000万円を達成。大石が「おめでとう!」と寺島を労っていたころ、ホテル周辺は途端に物々しい雰囲気に包まれた。同日午後、フィリピンの入管当局は特殊詐欺に関わった容疑で日本人36人の身柄を拘束したのだ」、「フィリピンの入管当局」による「身柄拘束」のタイミングが偶然に合ったのだろう。
・『掛け子としての黒いキャリアを重ねた寺島 半分の人が拘束された。私と春日井さんは解放されましたが、パスポートは没収されてしまった。その日、春日井さんと一緒にタクシーに乗って(入管当局に)見つからないように南へ向かいました。辿り着いたホテルで1週間何もしないで過ごして、その後『また掛け子をする』というので、店を借り切って掛け子を始めました」(X子) X子は逃亡生活に嫌気が差し、翌2020年2月末に組織を抜け出した。日本大使館に行き、パスポートの紛失を届け出た上、オーバーステイの税金を納付し、同年3月に帰国。成田空港で待っていたのは逮捕状を携えた警視庁の捜査員だった。だが、寺島は詐欺グループを抜けることなく、フィリピンに留まり続け、掛け子としての黒いキャリアを重ねたのだ。 X子がこうした証言をする間、寺島は一度も彼女を見ることはなく、過去の記憶に蓋をするかのように時折目を閉じた。近く予定される被告人質問で寺島は何を語るのか。間もなく裁判は佳境に差し掛かる』、やはり「寺島」は“エリート姫”らしく「X子」のように自発的に自首したりせず、最後までグループの一員であり続けたようだ。
第四に、10月23日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元週刊文春・月刊文藝春秋編集長の木俣正剛氏による「「トクリュウ」がとうとう近所にやって来た!“狙われる街”に急務の治安対策とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/352571
・わが家は大丈夫か? ひたひたと迫る「トクリュウ」の恐怖 10月16日朝、横浜市青葉区の市が尾駅近くで老人の家が襲われ、窓を割った侵入者に老人が縛られたまま殺されたというニュースが流れました。ああ、例の「トクリュウ」(匿名・流動型犯罪グループ)が、とうとうわが家の近くにまで現れたのです。 青葉区は閑静な住宅地で、東京のベッドタウンとしてどんどん発展しました。ほとんどが東急電鉄の沿線で、宅地開発でも同じ地域を一気に売り出すので、町内に住んでいるのは大体同じ世代になります。つまり、今は子どもが巣立って独居老人や老夫婦だけが住んでいるか、二世帯住宅になっているかという街です。 「トクリュウ」が現れる前から、老人に対する詐欺らしき電話や「押し買い」への注意が回覧板に出るようになっていました。実際、プロ野球横浜ベイスターズや読売巨人軍の選手が近所に住んでいるケースも多く、遠征中(夫の留守がわかっているので)に6人組の強盗に入られた選手の名前を聞いたこともあります。 閑静で安全な住宅地だったはずが、だんだん防犯意識が強い街になり、怪しげな人が道を行き交うと、すぐ噂になります。なぜかわが家はまったく被害に遭っていないので、巡回にきた警官に聞いてみると、「泥棒が入りにくい構造になっているからではないか」と解説してくれました。具体的には次の通りです。
(1)夫婦の寝る時間、起きる時間、仕事に出る時間が違っていて、犯罪者が行動バターンを読みにくい(出版社勤務でよかったです)。
(2)家への出入りを周囲から見咎められやすい構造になっている。
(3)砂利石が敷かれていて、音がする。
(4)買っている犬は小犬だが、吠え声が野太くて、他人には大きな犬が家の中にいるように思える。
しかし、実はわが家は一つの不安を抱えていました。ドアの鍵を車の鍵のようにカバンに入れたままでも、手でドアに触れるだけで開くというシステムにしたのですが、実はこの鍵が一つ見当たらないのです。基本はカバンの中に入れてあるので、家のどこかにあるはずですが、愛犬の散歩でフンを拾うときに、たまたま落としてしまった可能性もないではありません。 10日ばかり探しましたが、出てきません。もしこれを「トクリュウ」が拾ったら、と思うと気が気ではありません。街中を探し歩きながら、ドアを触ればいいだけですから。妻に目茶苦茶叱られながら、家探しを行い、最近着た服やカバンを毎日漁っていましたが、今日、ついに鍵を変えることにしました。命あってのモノダネです。)「実はわが家は一つの不安を抱えていました。ドアの鍵を車の鍵のようにカバンに入れたままでも、手でドアに触れるだけで開くというシステムにしたのですが、実はこの鍵が一つ見当たらないのです・・・家探しを行い、最近着た服やカバンを毎日漁っていましたが、今日、ついに鍵を変えることにしました。命あってのモノダネです」、賢明だ。
・実際、疑い出すと「黒い服の若い男が、町を徘徊しては様子を見ている」「若い黒人(ただし学生風で理知的な顔立ち)の4人組が、ゴミの缶をビニール袋にいっぱい入れて運んでいたから、資源ゴミ泥棒じゃないか」「自転車に乗った男が、自宅を10分ほどずっと眺めていた」などという、近所の噂話が耳に入ってきます。 「住人同士が挨拶をしている街の家には、まず泥棒は入らない」と元警視総監の講演で聞いたことがあります。昼と夜には町内でパトロールをしているし、ほとんどの家が犬を飼い、門灯もつけ、監視カメラも多い。その意味では防犯意識はしっかりした町なので、生命の危険を感じるようなことはなく、ある意味、コミュニティがしっかりでき上がっており、「挨拶ができる安心な街って、こういうところだろうな」と安心していたのです』、「「住人同士が挨拶をしている街の家には、まず泥棒は入らない」と元警視総監の講演で聞いたことがあります。昼と夜には町内でパトロールをしているし、ほとんどの家が犬を飼い、門灯もつけ、監視カメラも多い。その意味では防犯意識はしっかりした町なので、生命の危険を感じるようなことはなく、ある意味、コミュニティがしっかりでき上がっており、「挨拶ができる安心な街って、こういうところだろうな」と安心していたのです」、なるほど。
・日本の犯罪は別次元に突入 急がれる治安対策の発想転換 しかし、今回の「トクリュウ」は防犯の必要性が別次元に入ったと考えるべきではないでしょうか。たとえば青葉区の殺人は、同一犯と思わる犯罪がどんどん明るみに出て首都圏で15件に及び、他にも栃木と札幌で類似した事件が発生していると判明。埼玉、千葉、神奈川に警視庁と警察庁の合同捜査本部が設置されました。これまでに判明しているのは、強盗致傷が10件、強盗殺人が1件、それ以外は強盗予備、窃盗などだそうです。 私はこのニュースを見た時点で、地域の治安対策を完全に転換しなければいけないと感じました。もう日本を「治安のいい国」などと言ってはいられません。性善説が前提となっており、財布を落としても交番に行けば届けられており、お巡りさんが近所とコミュニケーションをとるような時代ではなくなったのです。政府は防犯カメラ設置への補助や相談窓口の開設などの対策を打ち出しましたが、そんな生ぬるいものでは、今回のような犯罪は根絶などできないと思います。 私は治安対策の抜本的な強化を提案したいと思います。まずは日本の警察を、かつて暴力団を暴対法でほとんど根絶したような強い法的根拠を持つ警察へと、作り直す時期がきているということです。今回も広域捜査本部ができましたが、殺人が10日に発生したのに立ち上げは18日になってから。最初から「トクリュウ」に関わる犯罪は広域であることがわかっているのだから、もっと早くから全国規模で捜査体制を組むか、特別チームをつくるといった対策が必要だったのではないでしょうか』、「今回の「トクリュウ」は防犯の必要性が別次元に入ったと考えるべきではないでしょうか・・・私は治安対策の抜本的な強化を提案したいと思います。まずは日本の警察を、かつて暴力団を暴対法でほとんど根絶したような強い法的根拠を持つ警察へと、作り直す時期がきているということです。今回も広域捜査本部ができましたが、殺人が10日に発生したのに立ち上げは18日になってから。最初から「トクリュウ」に関わる犯罪は広域であることがわかっているのだから、もっと早くから全国規模で捜査体制を組むか、特別チームをつくるといった対策が必要だったのではないでしょうか」、なるほど。
・振り込め詐欺(以前は「オレオレ詐欺」)は、1990年代に社会問題化し始め、2004年に警察庁が「振り込め詐欺」へと名称を統一しました。2004年の振り込め詐欺の被害額は約280億円でしたが、2014年には約565億円に増加。「ルフィ」などの黒幕が海外で逮捕された2024年においても、被害額は約452億円と推定されています。つまり、暴力団は衰弱しても、半グレや暴力団崩れが関与した闇バイト、振込詐欺の受け子など、お金のない若者をテレグラムなどの匿名性の高いシステムを使って動かす組織は存続し続け、元締めがわからない形で犯行を過激化させているという状況ははっきりしています』、「2004年の振り込め詐欺の被害額は約280億円でしたが、2014年には約565億円に増加。「ルフィ」などの黒幕が海外で逮捕された2024年においても、被害額は約452億円と推定されています。つまり、暴力団は衰弱しても、半グレや暴力団崩れが関与した闇バイト、振込詐欺の受け子など、お金のない若者をテレグラムなどの匿名性の高いシステムを使って動かす組織は存続し続け、元締めがわからない形で犯行を過激化させているという状況ははっきりしています」、なるほど。
・「振り込め詐欺」さえ撲滅できない 日本の警察の不安な実情 しかし、旧態然とした組織や法律のままで、「振り込め詐欺」を何十年も解決できないのが今の警察なのです。今の組織や法体系では、これに対抗するのは無理であり、政府はこのリスクをもっと重大視した立法と組織変更を行う必要があるのではないでしょうか。 たとえば、米国は9.11で国家を揺るがすほどのテロ被害を受けましたが、その後、国家情報長官を新設し、テロリスト情報の共有の円滑化や国土安全保障局を使った盗聴を強化し、結果として20年以上にわたって大規模なテロを防止しています。被害の規模は違うとはいえ、イスラム諸国のテロリスト同様、日本の「トクリュウ」には時代背景を見ても出現する理由が存在します。 小泉純一郎、安倍晋三の両内閣で新自由主義的改革が行われ、格差社会が現実となりました。最初は限定されていた派遣社員の範囲がどんどん拡大され、20代の平均貯蓄額は2000年には約131万円だったものが、2020年には約72万円へと減りました。若者が貧乏であることが、裏バイトが増え続ける根源的な原因であり、彼らをリスクなしに利用できる黒幕が生き延び続ける原因です。日本を支える治安という重要なインフラを壊すテロリスト的存在であると「トクリュウ」を認識した上で、新しい組織、法律を考える必要があるのではないでしょうか。 「日本の警察は優秀」と国際的にも評価を受けています。実際、1990年は犯罪数が約250万件に対して検挙率が約60%、2010年は同150万件に対して同30%、そして2020年は同約70万件に対して同約40%となっており、犯罪数、検挙率ともに良好と言えます。 しかし実際には、検挙率は自転車泥棒を取り締まればすぐ増えます。私の取材経験では、警察は現場で事件を追うよりも昇進のための試験に熱心で、市民の訴えをなるべく事件化せずに葬り去ろうという傾向の組織であることも事実なのです。もし今回の事件も広域捜査本部ができなかったら、強盗予備に分類されていた犯罪は「トクリュウ」犯罪と位置付けられていなかったかもしれません。) 本当は「トクリュウ」をマフィア同様の組織と認定し、暴対法の対象にするだけでなく、いわゆる「盗聴法」(正式名:通信傍受法)の対象を拡大し、テレグラムの完全使用禁止やダークウェブまで監視する権限を、警察に与えるべきではないでしょうか』、「旧態然とした組織や法律のままで、「振り込め詐欺」を何十年も解決できないのが今の警察なのです・・・米国は9.11で国家を揺るがすほどのテロ被害を受けましたが、その後、国家情報長官を新設し、テロリスト情報の共有の円滑化や国土安全保障局を使った盗聴を強化し、結果として20年以上にわたって大規模なテロを防止しています・・・20代の平均貯蓄額は2000年には約131万円だったものが、2020年には約72万円へと減りました。若者が貧乏であることが、裏バイトが増え続ける根源的な原因であり、彼らをリスクなしに利用できる黒幕が生き延び続ける原因です。日本を支える治安という重要なインフラを壊すテロリスト的存在であると「トクリュウ」を認識した上で、新しい組織、法律を考える必要があるのではないでしょうか・・・本当は「トクリュウ」をマフィア同様の組織と認定し、暴対法の対象にするだけでなく、いわゆる「盗聴法」(正式名:通信傍受法)の対象を拡大し、テレグラムの完全使用禁止やダークウェブまで監視する権限を、警察に与えるべきではないでしょうか」、なるほど。
・米国は国家安全保障局(NSA)による「エシュロン」と呼ばれる通信傍受システムで、テロを相当数未然に防ぎました。日本の盗聴法も、2016年の改正でそれまでの薬物・銃器・集団密航・組織的犯罪しか認められていなかった傍受の範囲が拡大され、傷害、爆発物使用、放火、誘拐、監禁、窃盗、詐欺、児童ポルノなどが加えられ、傍受についても「通信会社に出向く」のではなく「警察が必用とする日数分の通話の圧縮データを通信会社から送ってもらい、立会人なしで警察がデータの検証を行える」ように改正されました。 もちろん、個人情報を大事にして人権を養護する団体からは、疑問の声が多く出ましたが、これだけ「トクリュウ」犯罪が過激化し、しかも海外からの指示やお互いを知らない闇バイトメンバーの犯行など犯罪が流動化している現実を見れば、彼らの通信網や連絡網を把握できるよう、即応できる仕組みを考える必用があると思います』、「これだけ「トクリュウ」犯罪が過激化し、しかも海外からの指示やお互いを知らない闇バイトメンバーの犯行など犯罪が流動化している現実を見れば、彼らの通信網や連絡網を把握できるよう、即応できる仕組みを考える必用がある」、その通りだ。
・『過去の日本を取り戻すにはトクリュウ対策を徹底せよ 私は警察を全面的に信用し、権力の濫用を心配しない人間ではありません。しかし、今日のような犯罪の多発化、過激化、単純化は社会情勢の変化と共に起こっているものであり、それには何よりも国民の安全が優先されることが大事です。 たとえば、「トクリュウ」犯罪撲滅の目標を3年以内と警察に決めさせ、3年の時限立法で特別な盗聴許可を出したり、闇バイトで犯罪を唆された人物が警察に事前に名乗り出た場合、報奨金などを出し家族を保護する施設をつくったりすることも検討すべきでしょう。 石破総理は自民党総裁選の立候補演説で、過去の日本についてこう追憶しました。 今ほど豊かではなかったけれど、そこには大勢の人の笑顔がありました。(略)もう一度そういう日本を取り戻したいと思っています。互いが悪口を言ったり足を引っ張ったりするのではなく、共に助け合い、悲しい思いでいる人、苦しい思いでいる人、そういう人たちを助け合うような、そういう日本にしてまいりたいと思っております。日本を守りたい、国民を守りたい、地方を守りたいのです」 まさに「トクリュウ」の撲滅、闇バイト志望者の激減こそ、かつての仲のいい日本人社会を取り戻すチャンスなのではないでしょうか。全身全霊をかけ、全力で警察を叱咤し、必用な法律という武器を与えて、「かつての日本人の笑顔」を取り戻してほしいと考えます』、「「トクリュウ」の撲滅、闇バイト志望者の激減こそ、かつての仲のいい日本人社会を取り戻すチャンスなのではないでしょうか。全身全霊をかけ、全力で警察を叱咤し、必用な法律という武器を与えて、「かつての日本人の笑顔」を取り戻してほしい」、同感である。
タグ:(その3)(なぜここまで短い言葉で若者たちは闇バイトにはまり込んだか?その理由は絶望的な「国語力」にあった 石井光太ルポ、少年院で使用されている幼児教育向けの「表情・感情カード」がヤバすぎる…犯罪と国語力の関係について 石井光太ルポ、詐欺総額1000万円「ルフィ」エリート美女が出廷「水着で出勤しろ!」「俺たちはクズだから」寺島春奈(29)を追い詰める“同僚女性”の証言、「トクリュウ」がとうとう近所にやって来た!“狙われる街”に急務の治安対策とは) 広域強盗事件 現代ビジネス 石井 光太氏による「なぜここまで短い言葉で若者たちは闇バイトにはまり込んだか?その理由は絶望的な「国語力」にあった 石井光太ルポ」 「犯罪と言葉という観点から」とは興味深そうだ。 「高額報酬という割には、驚くほどの短文でやりとりし、会話にしたら30秒ほどの内容で、数十万、数百万という単位の闇バイトに引きずり込まれる・・・こうした短文でのやり取りに、深い思慮はまったくといっていいほどない。だから、一般的には理解できないほど容易く最悪の事態が起きてしまう」、なるほど。 「人が生きていくには、言葉によって自分の内面と向き合い、物事を想像し、論理的に物事を思考し、それを表現していかなければならない。それができてはじめて周囲に自分を理解してもらい、様々な壁を乗り越えていくことができる。国語力とは、そんな全人的な力なのだ・・・虐待親から子供が何の理由もなしに四六時中殴られていたとしよう。 そうすれば子供たちは「なぜ叩かれているのか」を考えることも、「なんで叩くのか」と聞くこともしなくなる。 理由を考えても答えが出てこないし、親に聞いても殴られるだけだからだ。 あるいは、親が外で遊び歩いてまったく家に帰ってこなかったとしよう。ネグレクトである。 そうなれば、子供は絵本の読み聞かせや会話のやり取りで言葉を育むことができないし、学齢期になっても夜中まで孤独な時間を過ごさなければならなくなる」、なるほど。 「こうした子供たちは、親子関係が良好な家庭で育つ子供たちと比べて、明らかに語彙の量、自分の感情を知覚する力、見知らぬ世界や他者への想像力を広げる力、物事の因果間関係を志向する力が弱まる。つまり、国語力という人間が生きていくのに必要な全人的な力が脆弱になるのだ。 先の女子少年院の少女も同様だ。彼女もまた、親との不適切な関係によって、言葉で物事を感じ、考え、表現する力をつけることができなかった。 それは、幼い彼女にとって家庭での悲しく不条理な日々を生き抜く術だったはずだ。 だが、思春期になった時、それは「無思慮」「思考停止」という形として現れ、むしろ社会で生きていく上での足枷となった・・・こうした人たちは、他人どころか自分すら大切にすることができない。思いやりもまた言葉によって生まれる感情だからだ。ゆえに、彼らはお年寄りをターゲットにし、大金をむしり取り、時には暴力を振るうことにすら無頓着でいられるのだ」、不幸なことだ。 石井 光太氏による「少年院で使用されている幼児教育向けの「表情・感情カード」がヤバすぎる…犯罪と国語力の関係について 石井光太ルポ」 『ルポ 誰が国語力を殺すのか』(文藝春秋) 「少年院で使用されている各種カードだ。その1つが、「表情・感情カード」である。 表情・感情カードとは、数十枚のイラストと言葉からなる幼児知育用のカードだ。各カードには、異なるイラストとともに感情を表す言葉が記されている。たとえば、涙を流す女の子のイラストがあり、「さみしい」「こころぼそい」などと書かれている。 少年院の若者たちの多くは、自分の感情を細かく言語化することが不得意だ。ゆえに、何かあれば逐一、表情・感情カードを取り出し、今の自分の感覚が何であるかを探し当て、言語化する訓練をするのである・・・私が 話を聞いた法務教官は次のように言っていた。 「たとえば他人と行き違いがあった時、彼らは簡単に『死ね』『ムカつく』『うざい』と言い捨ててしまいます。しかし、それを言えば他人とぶつかることはあっても、うまくいくことはありません。 しかし、きちんと自分の感情に向きあって『さみしい』『こころぼそい』と言うことができたらどうでしょう。ぶつかることは避けられますし、相手もその子を理解しようとしてくれます」、「表情・感情カード」とは面白い試みだ。 「家庭環境によって国語力を奪われてきた若者たちは、こういう教育を受けなければ、自身の感情にすら気づけない状態にあるということでもある。 もちろん、こうした取り組みを半年から1年ほど少年院で行っても、必ずしも成果が出るわけではない。だからこそ、少年院を出た子供たちにも似たような教育が必要になる・・・非行少年を多く受け入れている企業がある。ここが運営する更生教育施設「そんとく塾」では、「言葉のバブル」という授業を行っている。 下の図がそれだ。このように喜怒哀楽に関わる言葉を、より詳細な言葉で細かく分解させ、今の自分がどのような感情なのかを適切に理解し、表現することを練習するのだ。 たとえば、その人の身に何か悲しい出来事が起きたとしよう。この時の悲しみの程度が「せつない」くらいなのに、誤って「死にたい」と解釈し、表現したらどうだろう。 あるいは、何か腹立たしい出来事が起きたとしよう。それが「いまいましい」程度なのに、「殺す」と表現したらどうだろう」、なるほど。 「言葉こそが、この複雑で困難な時代をうまく生き抜くために必要不可欠な力の1つであるといことだ。しかし今の社会では、それがあまりに軽視されているように思えてならない。」、その通りだ。 文春オンライン「詐欺総額1000万円「ルフィ」エリート美女が出廷「水着で出勤しろ!」「俺たちはクズだから」寺島春奈(29)を追い詰める“同僚女性”の証言」 「祖父、父は共に教員を務めた地元の名士」だったが、「高校を中退すると、キャバクラ嬢として働き始めた。その後、寺島は詐欺グループのメンバーとして犯罪に加担」、なるほど。 「逮捕後、彼女は警視庁の調べに対して黙秘を貫き、その後は『事件については知らずに電話をかけていた』と犯罪への関与を否定していました。今回、こうした寺島の主張を崩すため、検察側の証人として呼ばれたのが、現地で一緒に暮らしていた犯行グループの元女性メンバーX子でした・・・X子の証言からは、組織内で美貌の“エリート姫”として寺島が重用され、深く詐欺に傾倒していく様が仔細に浮かび上がった」、なるほど。 「「春日井(寺島)は日本で受け子をしていた女だ。だから、“わかっている”」 階下の殺風景な一室。その日を境に2人は同室で寝食を共にし、昼間は詐欺に手を染めるようになる」、「寺島」の扱いは別格のようだ。 「X子は詐欺グループ内で寺島が厚遇されている現実を垣間見る。X子に背を向ける形で座って、電話をかける寺島の隣に張り付き、手法を伝授する男。付きっきりで詐欺を仕込み、エリートとして育成していく意図を感じたという・・・掛け子の報酬は、騙し取った金の4%。また、詐欺総額が月1千万円を超えると、全員に50万円のボーナスが配られたという。 「報酬はストックしていって、必要があるときに申請します。大石からテレグラムで『いくら必要か』と聞かれ、日本円で受け取っていました」(X子)」、なるほど。 「当時、彼らが得意としていたのが「現金キャッチ」と呼ばれる手法である。 「『キャッシュカードとは別に現金は家にありますか?』と尋ねて『金は偽札である可能性がある』と伝え、R(日本にいる受け子)が現金を持って帰る手法です」(X子)・・・11月13日午前、ついに寺島は詐欺の月額1000万円を達成。大石が「おめでとう!」と寺島を労っていたころ、ホテル周辺は途端に物々しい雰囲気に包まれた。同日午後、フィリピンの入管当局は特殊詐欺に関わった容疑で日本人36人の身柄を拘束したのだ」、「フィリピンの入管当局」による「身 柄拘束」のタイミングが偶然に合ったのだろう。 やはり「寺島」は“エリート姫”らしく「X子」のように自発的に自首したりせず、最後までグループの一員であり続けたようだ。 ダイヤモンド・オンライン 木俣正剛氏による「「トクリュウ」がとうとう近所にやって来た!“狙われる街”に急務の治安対策とは」 「実はわが家は一つの不安を抱えていました。ドアの鍵を車の鍵のようにカバンに入れたままでも、手でドアに触れるだけで開くというシステムにしたのですが、実はこの鍵が一つ見当たらないのです・・・家探しを行い、最近着た服やカバンを毎日漁っていましたが、今日、ついに鍵を変えることにしました。命あってのモノダネです」、賢明だ。 「「住人同士が挨拶をしている街の家には、まず泥棒は入らない」と元警視総監の講演で聞いたことがあります。昼と夜には町内でパトロールをしているし、ほとんどの家が犬を飼い、門灯もつけ、監視カメラも多い。その意味では防犯意識はしっかりした町なので、生命の危険を感じるようなことはなく、ある意味、コミュニティがしっかりでき上がっており、「挨拶ができる安心な街って、こういうところだろうな」と安心していたのです」、なるほど。 「今回の「トクリュウ」は防犯の必要性が別次元に入ったと考えるべきではないでしょうか・・・私は治安対策の抜本的な強化を提案したいと思います。まずは日本の警察を、かつて暴力団を暴対法でほとんど根絶したような強い法的根拠を持つ警察へと、作り直す時期がきているということです。今回も広域捜査本部ができましたが、殺人が10日に発生したのに立ち上げは18日になってから。 最初から「トクリュウ」に関わる犯罪は広域であることがわかっているのだから、もっと早くから全国規模で捜査体制を組むか、特別チームをつくるといった対策が必要だったのではないでしょうか」、なるほど。 「2004年の振り込め詐欺の被害額は約280億円でしたが、2014年には約565億円に増加。「ルフィ」などの黒幕が海外で逮捕された2024年においても、被害額は約452億円と推定されています。つまり、暴力団は衰弱しても、半グレや暴力団崩れが関与した闇バイト、振込詐欺の受け子など、お金のない若者をテレグラムなどの匿名性の高いシステムを使って動かす組織は存続し続け、元締めがわからない形で犯行を過激化させているという状況ははっきりしています」、なるほど。 「旧態然とした組織や法律のままで、「振り込め詐欺」を何十年も解決できないのが今の警察なのです・・・米国は9.11で国家を揺るがすほどのテロ被害を受けましたが、その後、国家情報長官を新設し、テロリスト情報の共有の円滑化や国土安全保障局を使った盗聴を強化し、結果として20年以上にわたって大規模なテロを防止しています・・・20代の平均貯蓄額は2000年には約131万円だったものが、2020年には約72万円へと減りました。 若者が貧乏であることが、裏バイトが増え続ける根源的な原因であり、彼らをリスクなしに利用できる黒幕が生き延び続ける原因です。日本を支える治安という重要なインフラを壊すテロリスト的存在であると「トクリュウ」を認識した上で、新しい組織、法律を考える必要があるのではないでしょうか・・・本当は「トクリュウ」をマフィア同様の組織と認定し、暴対法の対象にするだけでなく、いわゆる「盗聴法」(正式名:通信傍受法)の対象を拡大し、テレグラムの完全使用禁止やダークウェブまで監視する権限を、警察に与えるべきではないでしょうか」、 なるほど。 「これだけ「トクリュウ」犯罪が過激化し、しかも海外からの指示やお互いを知らない闇バイトメンバーの犯行など犯罪が流動化している現実を見れば、彼らの通信網や連絡網を把握できるよう、即応できる仕組みを考える必用がある」、その通りだ。 「「トクリュウ」の撲滅、闇バイト志望者の激減こそ、かつての仲のいい日本人社会を取り戻すチャンスなのではないでしょうか。全身全霊をかけ、全力で警察を叱咤し、必用な法律という武器を与えて、「かつての日本人の笑顔」を取り戻してほしい」、同感である。
地方自治体(その2)(81%の市議会は「パソコン持ち込み」がNG…地方議員が一般企業で通用しない人材ばかりになる根本原因 まともな人材からは避けられ、「家業」になっている、「区の財産の私物化」疑惑の山崎区長が引退…息子が区長選挙に出馬表明も区民の間で広がる「黒い噂」、「市長には人事権はありません」「えっ、どういうこと?」副市長が市長の〈最大の抵抗勢力〉になる理由) [国内政治]
地方自治体については、昨年2月7日に取上げた。今日は、(その2)(81%の市議会は「パソコン持ち込み」がNG…地方議員が一般企業で通用しない人材ばかりになる根本原因 まともな人材からは避けられ、「家業」になっている、「区の財産の私物化」疑惑の山崎区長が引退…息子が区長選挙に出馬表明も区民の間で広がる「黒い噂」、「市長には人事権はありません」「えっ、どういうこと?」副市長が市長の〈最大の抵抗勢力〉になる理由)である。
先ずは、昨年3月14日付けPRESIDENT Onlineが掲載した経済ジャーナリストの磯山 友幸氏による「81%の市議会は「パソコン持ち込み」がNG…地方議員が一般企業で通用しない人材ばかりになる根本原因 まともな人材からは避けられ、「家業」になっている」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/67404
・『「無投票どころか、定員割れもあり得る」 2023年は市町村や都道府県などで首長や議会の選挙が行われる「統一地方選挙」の年である。選挙と言えば、首長や議員になりたい多くの候補者から議員定数の人数だけを選ぶために行うのだが、このところ全国各地で異変が起きている。候補者が定員を超えずに「無投票」で当選者が決まるケースが相次いでいるのだ。 大分県南東部にある津久見市。江戸時代から続く石灰石鉱山の町も、そんな自治体のひとつだ。ご多分に漏れず人口減少が続き、今や1万5896人となった。 「今回も無投票になるのだろうか」。市民は顔を合わせると、そう小声で話す。4月23日に予定される市議会議員選挙に立候補者が集まるのかが懸念されているのだ。 というのも前々回の2015年と前回の2019年は定員14に対して立候補者14人と、2回連続で無投票になった。今回は、その定員を12に減らしたのだが、それでも懸念は消えない。「無投票どころか、定員割れもあり得ます。市議会議員のなり手がいないのです」と地元の有力者はつぶやく』、「このところ全国各地で異変が起きている。候補者が定員を超えずに「無投票」で当選者が決まるケースが相次いでいるのだ・・・前々回の2015年と前回の2019年は定員14に対して立候補者14人と、2回連続で無投票になった。今回は、その定員を12に減らしたのだが、それでも懸念は消えない。「無投票どころか、定員割れもあり得ます。市議会議員のなり手がいないのです」と地元の有力者はつぶやく」、なるほど。
・『「おいしいポスト」の時代は終わった 2022年以降だけでも、奥州市、宇城市、常陸大宮市、知立市、美濃加茂市、瑞浪市などの市議会議員選挙が無投票となった。町村の議会になるとさらに多い。 かつては、「無投票」と言えば、事前の候補者調整や、特定の有力者しか立候補できない暗黙の了解があるケースがほとんどだった。時には立候補調整に金銭授受が発覚、事件化することすらあった。議員は地域の名士たちが代々就く「家業」で、世間相場からすれば高い議員報酬のほか、公共事業に関する利権もある「おいしいポスト」だったのだ。 ところが、昨今の「無投票」の多くはまったく事情が違う。報酬は下がり、公共事業も激減して利権も消える中で、「うまみのないポスト」になったこともあるが、報酬の割には苦労の絶えない仕事になったという面も大きい。 というのも、自治体は今、山積する問題に直面している。少子化による人口減少で税収が減少、財政が悪化して老朽化した公共設備の更新もままならない。一方で高齢化に伴って福祉関連の予算は増える一方だ。かつてのように、議会が増える予算を分配すれば良い時代は議員も気楽だったが、足らない予算を分配しなければならない時代になって議員も苦しい立場に立たされるようになった。特に規模の小さい市町村の場合、議員はまったく魅力のない職業になりつつある』、「かつては、「無投票」と言えば、事前の候補者調整や、特定の有力者しか立候補できない暗黙の了解があるケースがほとんどだった。時には立候補調整に金銭授受が発覚、事件化することすらあった。議員は地域の名士たちが代々就く「家業」で、世間相場からすれば高い議員報酬のほか、公共事業に関する利権もある「おいしいポスト」だったのだ。 ところが、昨今の「無投票」の多くはまったく事情が違う。報酬は下がり、公共事業も激減して利権も消える中で、「うまみのないポスト」になったこともあるが、報酬の割には苦労の絶えない仕事になったという面も大きい。 というのも、自治体は今、山積する問題に直面している。少子化による人口減少で税収が減少、財政が悪化して老朽化した公共設備の更新もままならない。一方で高齢化に伴って福祉関連の予算は増える一方だ。かつてのように、議会が増える予算を分配すれば良い時代は議員も気楽だったが、足らない予算を分配しなければならない時代になって議員も苦しい立場に立たされるようになった。特に規模の小さい市町村の場合、議員はまったく魅力のない職業になりつつある」、なるほど。
・『全国815市の平均報酬額は42万3000円 例えば、全国市議会議長会が2022年8月にまとめた「市議会議員報酬に関する調査結果(令和3年12月31日現在)」によると、全国に815ある「市」の議員報酬の平均額は42万3000円。このほかに期末手当や政務調査費などが支給される。一見、高給取りのようにも見えるが、国会議員と違って秘書や事務員を雇えば自腹である。選挙のビラや印刷物などにも多額の費用がかかる。議員報酬も5万人未満の287の市だと平均は33万4000円。中には北海道夕張市のように月額18万円で、期末手当を合わせても年間461万円というところもある。 地方議会の議員の多くは兼業である。農家や建設業などが多いが、「最近は本業に力を入れたいので議員を辞めるという若手が増えた」と別の過疎地域の議会関係者は言う。 同じ全国市議会議長会がまとめた「市議会活動に関する実態調査(令和3年中)」によると、多くが年に4回の定例議会を開いており、年間平均の88.8日の会期が設定されている。最低、年間の4分の1は議会に拘束されるわけだ。しかも、議会は日中に開かれるのが一般的なので、本業に大きく支障をきたすことになる。そのため「専業」で議員をやっている人も少なくない』、「「市議会活動に関する実態調査(令和3年中)」によると、多くが年に4回の定例議会を開いており、年間平均の88.8日の会期が設定されている。最低、年間の4分の1は議会に拘束されるわけだ。しかも、議会は日中に開かれるのが一般的なので、本業に大きく支障をきたすことになる。そのため「専業」で議員をやっている人も少なくない」、なるほど。
・『「政治は男の役目」という認識が強い しかし、専業となれば、それなりの報酬がなければ生活が成り立たないし、議員としての体面も保てない。「議員報酬をもっと引き上げるべきだ」という声もあるが、財政が厳しさを増す中で、議員報酬の引き上げに賛成する住民は少ない。 2022年12月末。内閣府の地方制度調査会が答申をまとめ、岸田文雄首相に提出した。「多様な人材が参画し住民に開かれた地方議会の実現に向けた対応方策に関する答申」と題したもので、「女性議員が少ない議会や議員の平均年齢が高い議会において無投票当選となる割合が高い傾向」にあるとして、女性や若手など多様な人材が議会活動に参画する必要性を強調している。 地方では今でも、高齢者層を中心に、政治は「男の役目」だという認識が強いところが多く、女性議員へのセクハラ行為やセクハラ発言もしばしばニュースに取り上げられるなど、各地で問題が表面化している。そうした「意識」や「環境」を変えて、女性の立候補を促進すべきだとしている』、「内閣府の地方制度調査会が答申」では、「女性議員が少ない議会や議員の平均年齢が高い議会において無投票当選となる割合が高い傾向」にあるとして、女性や若手など多様な人材が議会活動に参画する必要性を強調・・・地方では今でも、高齢者層を中心に、政治は「男の役目」だという認識が強いところが多く、女性議員へのセクハラ行為やセクハラ発言もしばしばニュースに取り上げられるなど、各地で問題が表面化している。そうした「意識」や「環境」を変えて、女性の立候補を促進すべきだとしている」、なるほど。
・『「家業」化した専業議員が牛耳っている 多様な人材の参画を求める具体策としては、「夜間・休日等の議会開催」や「通年会期制の活用による柔軟な会議日程の設定」などを掲げている。 もっとも前述の「実態調査」によると、2021年中に「休日議会」が開催されたのは山形県上山市や東京都国分寺市などの7議会7回だけ、夜間議会は大阪府大東市の1回だけだった。 欧州の地方議会では、本業を持った市民が議員となり夜間に議会を開催している例が多くある。コミュニティーに直結した問題を解決する議会には「専業」の議員ではなく住民自身が携わるべきだという考えも広く浸透している。そうしたフルタイムで働いている人が議員を兼務しようと思えば、議会の開会は休日や夜間ということになる。 そうした考え方は日本でもかなり前から紹介され、必要性が叫ばれているもの、「家業」化した専業議員が議会を牛耳っていることもあり、議会改革はほとんど進んでいないのが実情だ』、「2021年中に「休日議会」が開催されたのは山形県上山市や東京都国分寺市などの7議会7回だけ、夜間議会は大阪府大東市の1回だけだった。 欧州の地方議会では、本業を持った市民が議員となり夜間に議会を開催している例が多くある。コミュニティーに直結した問題を解決する議会には「専業」の議員ではなく住民自身が携わるべきだという考えも広く浸透している。そうしたフルタイムで働いている人が議員を兼務しようと思えば、議会の開会は休日や夜間ということになる。 そうした考え方は日本でもかなり前から紹介され、必要性が叫ばれているもの、「家業」化した専業議員が議会を牛耳っていることもあり、議会改革はほとんど進んでいないのが実情だ」、「「家業」化した専業議員が議会を牛耳っている」のは、議会改革のガンだ。
・『「パソコン持ち込み可」の市議会は19% 答申ではまた、企業に雇用されているビジネスパーソンなどが立候補するのが難しい現状を変えることが必要だとして、「就業規則において、立候補に伴う休暇制度を設けることや、議員との副業・兼業を可能とすること等について、各企業に要請していくことを検討すべきである」としている。 新型コロナウイルスの蔓延以降、世間ではオンライン会議が一般化しているが、議会にオンライン会議を導入しようという動きはほとんどない。小学校高学年にはタブレット端末が全員分支給されている一方で、市議会でタブレット端末を導入しているのは815市のうち423市で52%に満たない。本会議場に全員がパソコンを持ち込むことが原則になっている市はわずか13。本会議場へのパソコン持ち込みを認めている市議会は155と19%に過ぎない。 そんな状況だから、議会へのオンラインでの出席などはほとんど実現していない。答申でも「議会へのオンラインによる出席」についても触れられているが、リアルで出席しないと出席とは認められないとする意見などと併記する書き方に終始していて、明確にオンライン会議を認めるようには求めていない』、「本会議場へのパソコン持ち込みを認めている市議会は155と19%に過ぎない。 そんな状況だから、議会へのオンラインでの出席などはほとんど実現していない。答申でも「議会へのオンラインによる出席」についても触れられているが、リアルで出席しないと出席とは認められないとする意見などと併記する書き方に終始していて、明確にオンライン会議を認めるようには求めていない」、なるほど。
・『役所幹部の定年後のポストになりつつある このままだと地方議会はどうなっていくのか。 定年退職した高齢者が議員に立候補する傾向がますます強まるという見方もある。定年後の年金受給者ならば、少ない議員報酬でも十分にやっていけるというわけだ。 一方で、有権者も高齢化する中で、議員が高齢者ばかりになれば、若者や女性向けの政策や予算配分が軽視され、なおさら若者や女性が自治体から離れていくことになりかねない。 さらには、「役所幹部の定年後のポストになりつつあります」という声もある。役所の幹部ならば市の政策などに精通しているため、何の障害もなく議員が務まるというのだ。だが、そうなれば、ますます市議会が市民目線から離れていくことになりかねない。 このままでは、民主主義の根幹であるはずの地方自治が、根底から崩れていくことになりかねない』、「(議員が)「役所幹部の定年後のポストになりつつあります」という声もある。役所の幹部ならば市の政策などに精通しているため、何の障害もなく議員が務まるというのだ。だが、そうなれば、ますます市議会が市民目線から離れていくことになりかねない。 このままでは、民主主義の根幹であるはずの地方自治が、根底から崩れていくことになりかねない」、確かに。「(議員が)「役所幹部の定年後のポストに」なることについては、一定の歯止めが必要だ。
次に、昨年4月11日付けFRIDAY「「区の財産の私物化」疑惑の山崎区長が引退…息子が区長選挙に出馬表明も区民の間で広がる「黒い噂」」を紹介しよう。
https://friday.kodansha.co.jp/article/305631
・『人望、資金力、知名度など、その人を構成する要素すべてが判断される選挙。特に、世襲を懸けた選挙ではその一族のすべてが判断されるため、凄まじい政治闘争が見られることになる。 東京都江東区のある一家の存亡を懸けた政治闘争が4月23日に投開票される東京都の区長選挙で行われようとしている。その一族の名前は山崎家。 「60年前、蕎麦屋で働いていた時はオカモチを持つと、身体が小さいからふらふらしながら運んでいた。親父さんは婿に入って苦労をしていた蕎麦屋の時代から知っている。だから、様々な批判があるなかで応援してきた。だけど、イッキは選挙の時、『おにぎりよりもパンが好き』なんて言って自分だけ小洒落たパンを食べてな。東海大学中退で、代替わりするなら、もう山崎家の応援はできん」 江東区で長年、山崎家を支えた長老はそう嘆息する。「親父さん」とは今期で引退を表明した山崎孝明江東区長(79)。「イッキ」とは、区長長男の山崎一輝都議(50)だ。 父が区長を務め、長男が江東区選出の都議で、山崎家は江東区を代表する政治家一族。父の引退後、長男は都議を辞職し、4月16日告示の区長選出馬の準備を進めている。 当初、山崎区長は、’22年11月の江東区議会で5選を目指し出馬する意向を表明していた。自民党東京都連は「原則、多選禁止」を標榜するも、山崎区長への推薦を早々と決めていた。 ところが一転——、 3月27日、江東区内のホテル「イースト21東京」で開かれた決起大会に山崎区長は姿を見せなかった。一輝氏の説明によると、病院に救急搬送され入院し、「区長選には出られない」と本人から連絡があったという。 山崎区長は23区区長会の会長も務める「大物区長」だ。突然の引退騒動で、江東区は蜂の巣をつついたような状況となっている。) 「もともとガンを患い、体調不良で今年も10日ほど入院をし、区長参加の区議会も半分は欠席していた。80歳も目前で健康問題を抱える中、『もう一期やってから一輝に渡す』が区長の願いだった。それが突然、区長選に出馬せず、引退を表明。原因のひとつが、『3万票』と呼ばれる公明党が自主投票に踏み切ったこと。前回の4選でさえ『多選』を理由に公明党は直前まで推薦を出さなかった。今回も様子見をしていたところフライデーデジタルで若洲ゴルフリンクスを親子で私物化した報道が出たことで、公明党は『自主投票』となった」(江東区区議) 「若洲ゴルフリンクス」は江東区内にあり、女子ゴルフ界のレジェンドである岡本綾子氏が監修し、「日本一予約が取りにくい」といわれる人気の都立ゴルフ場。その人気のゴルフ場を山崎親子は『特別枠』で利用していた疑惑を弊誌が報じた。都民が「100回電話してもつながらない」といわれる最中、港湾局の内部資料によれば、月一回程度の使用頻度だった。 右上に「取扱厳重注意」と注意書きのある「若洲ゴルフリンクス利用実績」と題されたその資料には、山崎親子の利用実績がこう記されている。 「令和2年度 山崎孝明区長15回 山崎一輝都議10回(計25回)」 「令和3年度 山崎孝明区長14回 山崎一輝都議13回(計27回)」「令和4年度 山崎孝明区長0回 山崎一輝都議15回(計15回)」 回数については予約をカウントしたもので、実際にプレイした数字とは異なろう。また令和4年度は区長は「0回」であるが、体調を悪化させ、プレイしていないだけだ。 「都民のものである若洲ゴルフリンクスを山崎家で私物化し、区長の座も世襲させるとはとんでもないこと。衆議院議員の世襲ならまだしも、決済権限が段違いにある区長を親子でしたら区の財産の私物化が広がる恐れがある」 江東区議2期、東京都議6期、衆議院議員(東京15区選出)を3期務めた木村勉氏(83)はそう憤る。 木村家も山崎家と並ぶ政治家一家だ。次女の高橋恵海氏は江東区議を務め、21年の都議会議員選挙出馬も次点で落選。落選したが、支えた区議がわずか2人で2万4000票を取ったことで、善戦とみなされている。 今回、長女の木村弥生元衆議院議員(京都3区など・57)は区長選挙に出馬を表明。 4月3日、野田聖子前少子化担当相(62)を応援弁士に招き、江戸資料館で決起集会を行った。2年前の総裁選で野田氏が出馬をした際、木村氏が推薦人に名を連ね、「親友のために」として、「政界は9割が男性」「バランスのとれた社会が望ましい」と木村氏へエールを送った。) 江東区の政治は保守分裂で主役が移り変わった。80年代、中曽根康弘元総理の右腕だった柿沢弘治元外相(故人)が自民党から離れることで、保守系が割れ、木村勉氏、山崎孝明氏が頭角を現した。12年前に木村氏が衆議院議員で敗れ引退すると山崎家が興隆を極めた。 「区長が体調を崩す前までは若洲ゴルフリンクスの土曜日の午前が『区長枠』で、区役所前にバスを止めて町内会長らを乗せて向かっていた。都市伝説の類でしょうが、『山崎さんと知り合いだから保育園にはいれた』という噂が出るほど『澱』がたまっている」(同区議) 21年11月の衆院選の東京15区(江東区)で柿沢弘治氏の長男の未途(みと)氏(52)が当選を果たすと自民党が追加公認し、入党を果たした。ただ、ベルギー生まれで生後3ヶ月から江東区で育った未途氏は東京都連には入れず、遠藤利明総務会長が仲立ちし、山形県連の預かりとなっている。 自民党の東京15区(江東区)の支部長ポストは空白のままで、これも「山崎家と柿沢家の争い」といわれている。木村氏の決起集会に未途氏の後援者や元秘書が顔を出していた。前述の区議はこう語る。 「昭和、平成で覇を競った山崎家、木村家、柿沢家の争いが世代を変えていまも続いている。区長選では保守分裂となりましたが、東京都連は一輝氏を推すことになった。だが、一輝氏と反りが合わない高島直樹幹事長は世襲反対で、都連は一致団結して戦えるのか。選挙で敗れた家は『没落』となる」 日本では、数百年以上前から「おごれる者久しからず」と言われている。区長や区議の権力を利用して好き勝手していた一族がどのような結末を迎えるのかは歴史が示している』、古くからの田舎ではなく、東京都の23区の一角で「山崎家、木村家、柿沢家の争いが世代を変えていまも続いている」とは心底から驚かされた。柿沢未途は江東区長選挙で買収した容疑で逮捕されるという政治家失格といえる事件を起こした。「山崎家が興隆を極めた。「区長が体調を崩す前までは若洲ゴルフリンクスの土曜日の午前が『区長枠』で、区役所前にバスを止めて町内会長らを乗せて向かっていた」という公私混同も、実に低レベルの不祥事だ。買収事件で江東区民が目ざめることを期待したい。
第三に、本年10月23日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した弁護士・社会福祉士・元衆議院議員・前明石市長の泉 房穂氏による「「市長には人事権はありません」「えっ、どういうこと?」副市長が市長の〈最大の抵抗勢力〉になる理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/351950
・『10歳で「明石市をやさしい街にする」と決めたという、前明石市長の泉房穂氏。3期12年にわたる任期において、前例のない子育て改革を打ち出し続けたその功績は「明石モデル」と呼ばれ、全国から注目されてきた。徹底して既得権益に抗い、市民のための政治を貫き続けた泉房穂氏の信念とは。本稿は、泉房穂『日本が滅びる前に 明石モデルがひらく国家の未来』(集英社新書)の一部を抜粋・編集したものです』、興味深そうだ。
・『地方自治体のトップはやる気になればなんでもできる 「トップがやる気になればできる。できないのはトップのやる気がないから」 ツイッターなどで私がよく記す言葉です。この言葉には「明石市にできることは全国どこの自治体でもできる」という意味と、「明石市にできることは国でもできる」という2つの意味があります。 「明石市にできることは全国どこの自治体でもできる」は、文字通りの意味として理解していただいて構いません。明石市程度のことは、やろうと思えばどこでもできる。ただ、市町村ごとに置かれた状況が違う以上、同じことをしたから同じ効果が得られるとは限りませんし、真っ先に取り組むべきこともそれぞれに異なってくるはずです。 明石市はベッドタウンなので、子どもに特化した政策が非常に効果的でしたが、過疎化が進む市町村であれば、推進すべきは子育て支援よりも産業振興や移住支援事業などのほうです。 一方の「明石市にできることは国でもできる」には、こういった意味があります。 かつて、国と地方自治体ではトップの権限に制度上の違いがありました。地方自治は首長制ですから、アメリカの大統領のようにトップは強力な権限を持っています。市長は人事権と予算編成権を持っています。場合によっては「専決処分」を用いて議会の議決を経ることなく、やるべきことを実行することもできます。) しかし、国は議院内閣制なのでトップである総理大臣には、原則として大統領ほどの強い権限はありません。 だからこそ、日本では「派閥政治」が幅を利かせてきました』、なるほど。
・『現在の内閣総理大臣は首長並みの権限を持っている ところが、「人事の天才」と言われた小泉純一郎首相が2001年に登場してから、その流れが劇的に変わっていきました。 2014年には、当時の安倍晋三首相が内閣官房に「内閣人事局」という新しい組織を設け、省庁の幹部の人事をまとめて管理するようになりました。こうして総理大臣は閣僚の罷免権に加え、官僚たちを異動させられる力も持ったため、今や自治体の首長のように予算をシフトすることも可能です。 安倍政権が7年8カ月に及ぶ「最長政権」となったのも、人事権をフル活用して官僚を統治したからに他なりません。 このように、現在の総理大臣は首長並みの権限を持っています。だからこそ、私は「明石市にできることは国でもできる」と方々で事あるごとに発言しているわけです。 問題なのは、その権限を既得権益のために使うのか、国民のために使うのかということ。残念ながら昨今の総理大臣の言動を見るに、権限を「国民のため」に使っているようにはとても思えません』、「現在の総理大臣は首長並みの権限を持っています。だからこそ、私は「明石市にできることは国でもできる」と方々で事あるごとに発言しているわけです。 問題なのは、その権限を既得権益のために使うのか、国民のために使うのかということ。残念ながら昨今の総理大臣の言動を見るに、権限を「国民のため」に使っているようにはとても思えません」、なるほど。
・『人事権を行使している市長はほとんどいない 私が「明石の市長になって冷たい社会をやさしくするんだ」と思ったのは10歳のときでした。その後、より具体的に市長を目指すようになったのは20代になってからです。 権限のない国会議員になっても大きな仕事はできない。それよりも、市長になって世の中が思い込んでいる「できない」を「できる」に置き換えていく。 それが自分の使命であり、私がこの世に生きる意味だと確信していました。一時期、私は国会議員をしていたこともあり、その経験はもちろん今に役立っていますが、市長を目指す気持ちは一貫して持ち続けていました。 市長は人事権と予算編成権という2つの権利を持っています。ところが、全国を見回してみてもその権利を行使している市長はほとんどいません。もしかしたら、この私が全国で唯一の存在だったかもしれません。 私が市長になるまでの明石市の人事権のほとんどは、人事当局(総務局職員室)が握っていました。人事当局が人事をして、最後に判だけ市長に押させる。場合によって市長の要望が受け入れられることもあったようですが、それでも数名が受け入れられれば上出来という状況だったようです。これは明石市だけの話ではなく、他の市町村も似たり寄ったりの状況といえます。 2011年、市長に就任したばかりの私が人事権を行使しようとしたところ、「市長には、人事権は実質的にはありません」と人事当局から激しい抵抗を受けました。) 各部署の部長人事ですら「市長に部長人事権は数名分しかありません」と言われる始末。「えっ、どういうこと?」と聞くと、多くの部署は年功序列ですでに次期部長は決まっているから私の指名する余地はないというのです』、「市長は人事権と予算編成権という2つの権利を持っています。ところが、全国を見回してみてもその権利を行使している市長はほとんどいません。もしかしたら、この私が全国で唯一の存在だったかもしれません。 私が市長になるまでの明石市の人事権のほとんどは、人事当局(総務局職員室)が握っていました。人事当局が人事をして、最後に判だけ市長に押させる。場合によって市長の要望が受け入れられることもあったようですが、それでも数名が受け入れられれば上出来という状況だったようです。これは明石市だけの話ではなく、他の市町村も似たり寄ったりの状況といえます・・・市長に就任したばかりの私が人事権を行使しようとしたところ、「市長には、人事権は実質的にはありません」と人事当局から激しい抵抗を受けました。) 各部署の部長人事ですら「市長に部長人事権は数名分しかありません」と言われる始末。「えっ、どういうこと?」と聞くと、多くの部署は年功序列ですでに次期部長は決まっているから私の指名する余地はないというのです」、なるほど。
・『本来の権限を行使したがる首長は組織内で大反発を食らう 流れ作業で人事が決められるような状況の中、59歳にしてやっと部長になった人が本当に優秀な人材なら私も文句は言いません。しかし、単なる順番待ちで部長になった人に何を期待したらよいのか。 役職にふさわしい志も長期展望もない、退職まであと1年の部長に、10年後の活気あふれる明石市を考える能力、さらにそれを成し遂げる実行力があるとはとても思えません。 予算案にしても各課、各部で若干抑えながら調整されたものが市長のところに上がってきて、市長である私のすることといえば人事と同じく、判を押すだけの状況でした。 要するに人事にしろ、予算にしろ、市長が目にする段階ではすでにすべてが決まっている。市長に口を挟む余地を与えないこういった役所のやり方は、明石市に限らず全国どこでも似たり寄ったりの状況です。) 市長が2つの権限を行使しようとすれば、職員からものすごい反発、抵抗を受けます。ですから、実際にそれを行使したことのある市長は全国でもほとんどいないはずです。でも私は12年の任期の中で、関係部署に抵抗を受けても市民の望むことを実現すべく働いてきました。 抵抗を受けようが、脅されようが、嫌がらせを受けようが、「やさしい街をつくる」という志を貫く一心で、誰にも屈することはありませんでした。 私にできたのですから、他の市町村の首長にも2つの権限を行使することは必ずできるはずです。何度も言いますが、「やる気になればできる」ことなのです』、「役職にふさわしい志も長期展望もない、退職まであと1年の部長に、10年後の活気あふれる明石市を考える能力、さらにそれを成し遂げる実行力があるとはとても思えません。 予算案にしても各課、各部で若干抑えながら調整されたものが市長のところに上がってきて、市長である私のすることといえば人事と同じく、判を押すだけの状況でした。 要するに人事にしろ、予算にしろ、市長が目にする段階ではすでにすべてが決まっている。市長に口を挟む余地を与えないこういった役所のやり方は、明石市に限らず全国どこでも似たり寄ったりの状況です。 市長が2つの権限を行使しようとすれば、職員からものすごい反発、抵抗を受けます。ですから、実際にそれを行使したことのある市長は全国でもほとんどいないはずです。でも私は12年の任期の中で、関係部署に抵抗を受けても市民の望むことを実現すべく働いてきました。 抵抗を受けようが、脅されようが、嫌がらせを受けようが、「やさしい街をつくる」という志を貫く一心で、誰にも屈することはありませんでした。 私にできたのですから、他の市町村の首長にも2つの権限を行使することは必ずできるはずです。何度も言いますが、「やる気になればできる」ことなのです」、なるほど。
・『副市長は市長にとっての最大の抵抗勢力になりうる 市役所には市長を補佐し、時に職務を代行する役割を担う副市長という役職があります。いったん公務員を辞めてから就く特別職です。字面だけ見ると「市長をサポートする人」と多くの方が思われるかもしれません。 しかし、地方自治を構造的に捉えた一般論として話せば、副市長は市長にとっての最大の抵抗勢力にもなりうる存在です。 副市長は市の職員の代表であり、なおかつ議会と市長をつなぐパイプ役、調整の窓口といってもいい。つまり、基本的に副市長は職員の側の人間であり、議会(多数派)の側の人間です。) 簡単にいえば、議会にとって副市長は自分たちの子分のような存在であり、役所職員からすれば自分たちの親分のような存在となります。 議会の多数派が推す人が市長になれば、市長と副市長が対立する構造にはなりません。しかし、私のように支持母体となる集団を持たない(私の支持母体は市民です)人間が市長になると、当然副市長は組織防衛に走ります。とりわけそれまでの市役所のやり方を根底から覆えそうとする私のような市長であれば、組織の抵抗はより激しくなります。 私がもし既得権益のためだけに働き、職員や議員と仲良くしたいのなら、副市長はとても頼りがいのある存在になります。でも、私のように議会より市民を選び、職員より市民を選ぶと、副市長は必ずしも頼りがいのある存在とはいえなくなります。 副市長の選任には、議会の同意が必要です。形式的には市長が「この人を」と提案しますが、実際にそれを許可するのは議会なので「この人にやってほしい」と私がいくら思っていたとしても、抜擢人事を成し遂げるのは難しい。 だから一般論でいう副市長は「庁内の人望のある人。簡単にいえば人事畑のトップ」が就くことが多いのです』、「市役所には市長を補佐し、時に職務を代行する役割を担う副市長という役職があります。いったん公務員を辞めてから就く特別職です・・・副市長は市の職員の代表であり、なおかつ議会と市長をつなぐパイプ役、調整の窓口といってもいい。つまり、基本的に副市長は職員の側の人間であり、議会(多数派)の側の人間です。) 簡単にいえば、議会にとって副市長は自分たちの子分のような存在であり、役所職員からすれば自分たちの親分のような存在となります・・・私のように議会より市民を選び、職員より市民を選ぶと、副市長は必ずしも頼りがいのある存在とはいえなくなります。 副市長の選任には、議会の同意が必要です。形式的には市長が「この人を」と提案しますが、実際にそれを許可するのは議会なので「この人にやってほしい」と私がいくら思っていたとしても、抜擢人事を成し遂げるのは難しい。 だから一般論でいう副市長は「庁内の人望のある人。簡単にいえば人事畑のトップ」が就くことが多いのです」、なるほど。本当に市民のための市政をしようとすると、「職員」、「副市長」、「議会」との対立を覚悟して臨まないといけないようだ。
先ずは、昨年3月14日付けPRESIDENT Onlineが掲載した経済ジャーナリストの磯山 友幸氏による「81%の市議会は「パソコン持ち込み」がNG…地方議員が一般企業で通用しない人材ばかりになる根本原因 まともな人材からは避けられ、「家業」になっている」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/67404
・『「無投票どころか、定員割れもあり得る」 2023年は市町村や都道府県などで首長や議会の選挙が行われる「統一地方選挙」の年である。選挙と言えば、首長や議員になりたい多くの候補者から議員定数の人数だけを選ぶために行うのだが、このところ全国各地で異変が起きている。候補者が定員を超えずに「無投票」で当選者が決まるケースが相次いでいるのだ。 大分県南東部にある津久見市。江戸時代から続く石灰石鉱山の町も、そんな自治体のひとつだ。ご多分に漏れず人口減少が続き、今や1万5896人となった。 「今回も無投票になるのだろうか」。市民は顔を合わせると、そう小声で話す。4月23日に予定される市議会議員選挙に立候補者が集まるのかが懸念されているのだ。 というのも前々回の2015年と前回の2019年は定員14に対して立候補者14人と、2回連続で無投票になった。今回は、その定員を12に減らしたのだが、それでも懸念は消えない。「無投票どころか、定員割れもあり得ます。市議会議員のなり手がいないのです」と地元の有力者はつぶやく』、「このところ全国各地で異変が起きている。候補者が定員を超えずに「無投票」で当選者が決まるケースが相次いでいるのだ・・・前々回の2015年と前回の2019年は定員14に対して立候補者14人と、2回連続で無投票になった。今回は、その定員を12に減らしたのだが、それでも懸念は消えない。「無投票どころか、定員割れもあり得ます。市議会議員のなり手がいないのです」と地元の有力者はつぶやく」、なるほど。
・『「おいしいポスト」の時代は終わった 2022年以降だけでも、奥州市、宇城市、常陸大宮市、知立市、美濃加茂市、瑞浪市などの市議会議員選挙が無投票となった。町村の議会になるとさらに多い。 かつては、「無投票」と言えば、事前の候補者調整や、特定の有力者しか立候補できない暗黙の了解があるケースがほとんどだった。時には立候補調整に金銭授受が発覚、事件化することすらあった。議員は地域の名士たちが代々就く「家業」で、世間相場からすれば高い議員報酬のほか、公共事業に関する利権もある「おいしいポスト」だったのだ。 ところが、昨今の「無投票」の多くはまったく事情が違う。報酬は下がり、公共事業も激減して利権も消える中で、「うまみのないポスト」になったこともあるが、報酬の割には苦労の絶えない仕事になったという面も大きい。 というのも、自治体は今、山積する問題に直面している。少子化による人口減少で税収が減少、財政が悪化して老朽化した公共設備の更新もままならない。一方で高齢化に伴って福祉関連の予算は増える一方だ。かつてのように、議会が増える予算を分配すれば良い時代は議員も気楽だったが、足らない予算を分配しなければならない時代になって議員も苦しい立場に立たされるようになった。特に規模の小さい市町村の場合、議員はまったく魅力のない職業になりつつある』、「かつては、「無投票」と言えば、事前の候補者調整や、特定の有力者しか立候補できない暗黙の了解があるケースがほとんどだった。時には立候補調整に金銭授受が発覚、事件化することすらあった。議員は地域の名士たちが代々就く「家業」で、世間相場からすれば高い議員報酬のほか、公共事業に関する利権もある「おいしいポスト」だったのだ。 ところが、昨今の「無投票」の多くはまったく事情が違う。報酬は下がり、公共事業も激減して利権も消える中で、「うまみのないポスト」になったこともあるが、報酬の割には苦労の絶えない仕事になったという面も大きい。 というのも、自治体は今、山積する問題に直面している。少子化による人口減少で税収が減少、財政が悪化して老朽化した公共設備の更新もままならない。一方で高齢化に伴って福祉関連の予算は増える一方だ。かつてのように、議会が増える予算を分配すれば良い時代は議員も気楽だったが、足らない予算を分配しなければならない時代になって議員も苦しい立場に立たされるようになった。特に規模の小さい市町村の場合、議員はまったく魅力のない職業になりつつある」、なるほど。
・『全国815市の平均報酬額は42万3000円 例えば、全国市議会議長会が2022年8月にまとめた「市議会議員報酬に関する調査結果(令和3年12月31日現在)」によると、全国に815ある「市」の議員報酬の平均額は42万3000円。このほかに期末手当や政務調査費などが支給される。一見、高給取りのようにも見えるが、国会議員と違って秘書や事務員を雇えば自腹である。選挙のビラや印刷物などにも多額の費用がかかる。議員報酬も5万人未満の287の市だと平均は33万4000円。中には北海道夕張市のように月額18万円で、期末手当を合わせても年間461万円というところもある。 地方議会の議員の多くは兼業である。農家や建設業などが多いが、「最近は本業に力を入れたいので議員を辞めるという若手が増えた」と別の過疎地域の議会関係者は言う。 同じ全国市議会議長会がまとめた「市議会活動に関する実態調査(令和3年中)」によると、多くが年に4回の定例議会を開いており、年間平均の88.8日の会期が設定されている。最低、年間の4分の1は議会に拘束されるわけだ。しかも、議会は日中に開かれるのが一般的なので、本業に大きく支障をきたすことになる。そのため「専業」で議員をやっている人も少なくない』、「「市議会活動に関する実態調査(令和3年中)」によると、多くが年に4回の定例議会を開いており、年間平均の88.8日の会期が設定されている。最低、年間の4分の1は議会に拘束されるわけだ。しかも、議会は日中に開かれるのが一般的なので、本業に大きく支障をきたすことになる。そのため「専業」で議員をやっている人も少なくない」、なるほど。
・『「政治は男の役目」という認識が強い しかし、専業となれば、それなりの報酬がなければ生活が成り立たないし、議員としての体面も保てない。「議員報酬をもっと引き上げるべきだ」という声もあるが、財政が厳しさを増す中で、議員報酬の引き上げに賛成する住民は少ない。 2022年12月末。内閣府の地方制度調査会が答申をまとめ、岸田文雄首相に提出した。「多様な人材が参画し住民に開かれた地方議会の実現に向けた対応方策に関する答申」と題したもので、「女性議員が少ない議会や議員の平均年齢が高い議会において無投票当選となる割合が高い傾向」にあるとして、女性や若手など多様な人材が議会活動に参画する必要性を強調している。 地方では今でも、高齢者層を中心に、政治は「男の役目」だという認識が強いところが多く、女性議員へのセクハラ行為やセクハラ発言もしばしばニュースに取り上げられるなど、各地で問題が表面化している。そうした「意識」や「環境」を変えて、女性の立候補を促進すべきだとしている』、「内閣府の地方制度調査会が答申」では、「女性議員が少ない議会や議員の平均年齢が高い議会において無投票当選となる割合が高い傾向」にあるとして、女性や若手など多様な人材が議会活動に参画する必要性を強調・・・地方では今でも、高齢者層を中心に、政治は「男の役目」だという認識が強いところが多く、女性議員へのセクハラ行為やセクハラ発言もしばしばニュースに取り上げられるなど、各地で問題が表面化している。そうした「意識」や「環境」を変えて、女性の立候補を促進すべきだとしている」、なるほど。
・『「家業」化した専業議員が牛耳っている 多様な人材の参画を求める具体策としては、「夜間・休日等の議会開催」や「通年会期制の活用による柔軟な会議日程の設定」などを掲げている。 もっとも前述の「実態調査」によると、2021年中に「休日議会」が開催されたのは山形県上山市や東京都国分寺市などの7議会7回だけ、夜間議会は大阪府大東市の1回だけだった。 欧州の地方議会では、本業を持った市民が議員となり夜間に議会を開催している例が多くある。コミュニティーに直結した問題を解決する議会には「専業」の議員ではなく住民自身が携わるべきだという考えも広く浸透している。そうしたフルタイムで働いている人が議員を兼務しようと思えば、議会の開会は休日や夜間ということになる。 そうした考え方は日本でもかなり前から紹介され、必要性が叫ばれているもの、「家業」化した専業議員が議会を牛耳っていることもあり、議会改革はほとんど進んでいないのが実情だ』、「2021年中に「休日議会」が開催されたのは山形県上山市や東京都国分寺市などの7議会7回だけ、夜間議会は大阪府大東市の1回だけだった。 欧州の地方議会では、本業を持った市民が議員となり夜間に議会を開催している例が多くある。コミュニティーに直結した問題を解決する議会には「専業」の議員ではなく住民自身が携わるべきだという考えも広く浸透している。そうしたフルタイムで働いている人が議員を兼務しようと思えば、議会の開会は休日や夜間ということになる。 そうした考え方は日本でもかなり前から紹介され、必要性が叫ばれているもの、「家業」化した専業議員が議会を牛耳っていることもあり、議会改革はほとんど進んでいないのが実情だ」、「「家業」化した専業議員が議会を牛耳っている」のは、議会改革のガンだ。
・『「パソコン持ち込み可」の市議会は19% 答申ではまた、企業に雇用されているビジネスパーソンなどが立候補するのが難しい現状を変えることが必要だとして、「就業規則において、立候補に伴う休暇制度を設けることや、議員との副業・兼業を可能とすること等について、各企業に要請していくことを検討すべきである」としている。 新型コロナウイルスの蔓延以降、世間ではオンライン会議が一般化しているが、議会にオンライン会議を導入しようという動きはほとんどない。小学校高学年にはタブレット端末が全員分支給されている一方で、市議会でタブレット端末を導入しているのは815市のうち423市で52%に満たない。本会議場に全員がパソコンを持ち込むことが原則になっている市はわずか13。本会議場へのパソコン持ち込みを認めている市議会は155と19%に過ぎない。 そんな状況だから、議会へのオンラインでの出席などはほとんど実現していない。答申でも「議会へのオンラインによる出席」についても触れられているが、リアルで出席しないと出席とは認められないとする意見などと併記する書き方に終始していて、明確にオンライン会議を認めるようには求めていない』、「本会議場へのパソコン持ち込みを認めている市議会は155と19%に過ぎない。 そんな状況だから、議会へのオンラインでの出席などはほとんど実現していない。答申でも「議会へのオンラインによる出席」についても触れられているが、リアルで出席しないと出席とは認められないとする意見などと併記する書き方に終始していて、明確にオンライン会議を認めるようには求めていない」、なるほど。
・『役所幹部の定年後のポストになりつつある このままだと地方議会はどうなっていくのか。 定年退職した高齢者が議員に立候補する傾向がますます強まるという見方もある。定年後の年金受給者ならば、少ない議員報酬でも十分にやっていけるというわけだ。 一方で、有権者も高齢化する中で、議員が高齢者ばかりになれば、若者や女性向けの政策や予算配分が軽視され、なおさら若者や女性が自治体から離れていくことになりかねない。 さらには、「役所幹部の定年後のポストになりつつあります」という声もある。役所の幹部ならば市の政策などに精通しているため、何の障害もなく議員が務まるというのだ。だが、そうなれば、ますます市議会が市民目線から離れていくことになりかねない。 このままでは、民主主義の根幹であるはずの地方自治が、根底から崩れていくことになりかねない』、「(議員が)「役所幹部の定年後のポストになりつつあります」という声もある。役所の幹部ならば市の政策などに精通しているため、何の障害もなく議員が務まるというのだ。だが、そうなれば、ますます市議会が市民目線から離れていくことになりかねない。 このままでは、民主主義の根幹であるはずの地方自治が、根底から崩れていくことになりかねない」、確かに。「(議員が)「役所幹部の定年後のポストに」なることについては、一定の歯止めが必要だ。
次に、昨年4月11日付けFRIDAY「「区の財産の私物化」疑惑の山崎区長が引退…息子が区長選挙に出馬表明も区民の間で広がる「黒い噂」」を紹介しよう。
https://friday.kodansha.co.jp/article/305631
・『人望、資金力、知名度など、その人を構成する要素すべてが判断される選挙。特に、世襲を懸けた選挙ではその一族のすべてが判断されるため、凄まじい政治闘争が見られることになる。 東京都江東区のある一家の存亡を懸けた政治闘争が4月23日に投開票される東京都の区長選挙で行われようとしている。その一族の名前は山崎家。 「60年前、蕎麦屋で働いていた時はオカモチを持つと、身体が小さいからふらふらしながら運んでいた。親父さんは婿に入って苦労をしていた蕎麦屋の時代から知っている。だから、様々な批判があるなかで応援してきた。だけど、イッキは選挙の時、『おにぎりよりもパンが好き』なんて言って自分だけ小洒落たパンを食べてな。東海大学中退で、代替わりするなら、もう山崎家の応援はできん」 江東区で長年、山崎家を支えた長老はそう嘆息する。「親父さん」とは今期で引退を表明した山崎孝明江東区長(79)。「イッキ」とは、区長長男の山崎一輝都議(50)だ。 父が区長を務め、長男が江東区選出の都議で、山崎家は江東区を代表する政治家一族。父の引退後、長男は都議を辞職し、4月16日告示の区長選出馬の準備を進めている。 当初、山崎区長は、’22年11月の江東区議会で5選を目指し出馬する意向を表明していた。自民党東京都連は「原則、多選禁止」を標榜するも、山崎区長への推薦を早々と決めていた。 ところが一転——、 3月27日、江東区内のホテル「イースト21東京」で開かれた決起大会に山崎区長は姿を見せなかった。一輝氏の説明によると、病院に救急搬送され入院し、「区長選には出られない」と本人から連絡があったという。 山崎区長は23区区長会の会長も務める「大物区長」だ。突然の引退騒動で、江東区は蜂の巣をつついたような状況となっている。) 「もともとガンを患い、体調不良で今年も10日ほど入院をし、区長参加の区議会も半分は欠席していた。80歳も目前で健康問題を抱える中、『もう一期やってから一輝に渡す』が区長の願いだった。それが突然、区長選に出馬せず、引退を表明。原因のひとつが、『3万票』と呼ばれる公明党が自主投票に踏み切ったこと。前回の4選でさえ『多選』を理由に公明党は直前まで推薦を出さなかった。今回も様子見をしていたところフライデーデジタルで若洲ゴルフリンクスを親子で私物化した報道が出たことで、公明党は『自主投票』となった」(江東区区議) 「若洲ゴルフリンクス」は江東区内にあり、女子ゴルフ界のレジェンドである岡本綾子氏が監修し、「日本一予約が取りにくい」といわれる人気の都立ゴルフ場。その人気のゴルフ場を山崎親子は『特別枠』で利用していた疑惑を弊誌が報じた。都民が「100回電話してもつながらない」といわれる最中、港湾局の内部資料によれば、月一回程度の使用頻度だった。 右上に「取扱厳重注意」と注意書きのある「若洲ゴルフリンクス利用実績」と題されたその資料には、山崎親子の利用実績がこう記されている。 「令和2年度 山崎孝明区長15回 山崎一輝都議10回(計25回)」 「令和3年度 山崎孝明区長14回 山崎一輝都議13回(計27回)」「令和4年度 山崎孝明区長0回 山崎一輝都議15回(計15回)」 回数については予約をカウントしたもので、実際にプレイした数字とは異なろう。また令和4年度は区長は「0回」であるが、体調を悪化させ、プレイしていないだけだ。 「都民のものである若洲ゴルフリンクスを山崎家で私物化し、区長の座も世襲させるとはとんでもないこと。衆議院議員の世襲ならまだしも、決済権限が段違いにある区長を親子でしたら区の財産の私物化が広がる恐れがある」 江東区議2期、東京都議6期、衆議院議員(東京15区選出)を3期務めた木村勉氏(83)はそう憤る。 木村家も山崎家と並ぶ政治家一家だ。次女の高橋恵海氏は江東区議を務め、21年の都議会議員選挙出馬も次点で落選。落選したが、支えた区議がわずか2人で2万4000票を取ったことで、善戦とみなされている。 今回、長女の木村弥生元衆議院議員(京都3区など・57)は区長選挙に出馬を表明。 4月3日、野田聖子前少子化担当相(62)を応援弁士に招き、江戸資料館で決起集会を行った。2年前の総裁選で野田氏が出馬をした際、木村氏が推薦人に名を連ね、「親友のために」として、「政界は9割が男性」「バランスのとれた社会が望ましい」と木村氏へエールを送った。) 江東区の政治は保守分裂で主役が移り変わった。80年代、中曽根康弘元総理の右腕だった柿沢弘治元外相(故人)が自民党から離れることで、保守系が割れ、木村勉氏、山崎孝明氏が頭角を現した。12年前に木村氏が衆議院議員で敗れ引退すると山崎家が興隆を極めた。 「区長が体調を崩す前までは若洲ゴルフリンクスの土曜日の午前が『区長枠』で、区役所前にバスを止めて町内会長らを乗せて向かっていた。都市伝説の類でしょうが、『山崎さんと知り合いだから保育園にはいれた』という噂が出るほど『澱』がたまっている」(同区議) 21年11月の衆院選の東京15区(江東区)で柿沢弘治氏の長男の未途(みと)氏(52)が当選を果たすと自民党が追加公認し、入党を果たした。ただ、ベルギー生まれで生後3ヶ月から江東区で育った未途氏は東京都連には入れず、遠藤利明総務会長が仲立ちし、山形県連の預かりとなっている。 自民党の東京15区(江東区)の支部長ポストは空白のままで、これも「山崎家と柿沢家の争い」といわれている。木村氏の決起集会に未途氏の後援者や元秘書が顔を出していた。前述の区議はこう語る。 「昭和、平成で覇を競った山崎家、木村家、柿沢家の争いが世代を変えていまも続いている。区長選では保守分裂となりましたが、東京都連は一輝氏を推すことになった。だが、一輝氏と反りが合わない高島直樹幹事長は世襲反対で、都連は一致団結して戦えるのか。選挙で敗れた家は『没落』となる」 日本では、数百年以上前から「おごれる者久しからず」と言われている。区長や区議の権力を利用して好き勝手していた一族がどのような結末を迎えるのかは歴史が示している』、古くからの田舎ではなく、東京都の23区の一角で「山崎家、木村家、柿沢家の争いが世代を変えていまも続いている」とは心底から驚かされた。柿沢未途は江東区長選挙で買収した容疑で逮捕されるという政治家失格といえる事件を起こした。「山崎家が興隆を極めた。「区長が体調を崩す前までは若洲ゴルフリンクスの土曜日の午前が『区長枠』で、区役所前にバスを止めて町内会長らを乗せて向かっていた」という公私混同も、実に低レベルの不祥事だ。買収事件で江東区民が目ざめることを期待したい。
第三に、本年10月23日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した弁護士・社会福祉士・元衆議院議員・前明石市長の泉 房穂氏による「「市長には人事権はありません」「えっ、どういうこと?」副市長が市長の〈最大の抵抗勢力〉になる理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/351950
・『10歳で「明石市をやさしい街にする」と決めたという、前明石市長の泉房穂氏。3期12年にわたる任期において、前例のない子育て改革を打ち出し続けたその功績は「明石モデル」と呼ばれ、全国から注目されてきた。徹底して既得権益に抗い、市民のための政治を貫き続けた泉房穂氏の信念とは。本稿は、泉房穂『日本が滅びる前に 明石モデルがひらく国家の未来』(集英社新書)の一部を抜粋・編集したものです』、興味深そうだ。
・『地方自治体のトップはやる気になればなんでもできる 「トップがやる気になればできる。できないのはトップのやる気がないから」 ツイッターなどで私がよく記す言葉です。この言葉には「明石市にできることは全国どこの自治体でもできる」という意味と、「明石市にできることは国でもできる」という2つの意味があります。 「明石市にできることは全国どこの自治体でもできる」は、文字通りの意味として理解していただいて構いません。明石市程度のことは、やろうと思えばどこでもできる。ただ、市町村ごとに置かれた状況が違う以上、同じことをしたから同じ効果が得られるとは限りませんし、真っ先に取り組むべきこともそれぞれに異なってくるはずです。 明石市はベッドタウンなので、子どもに特化した政策が非常に効果的でしたが、過疎化が進む市町村であれば、推進すべきは子育て支援よりも産業振興や移住支援事業などのほうです。 一方の「明石市にできることは国でもできる」には、こういった意味があります。 かつて、国と地方自治体ではトップの権限に制度上の違いがありました。地方自治は首長制ですから、アメリカの大統領のようにトップは強力な権限を持っています。市長は人事権と予算編成権を持っています。場合によっては「専決処分」を用いて議会の議決を経ることなく、やるべきことを実行することもできます。) しかし、国は議院内閣制なのでトップである総理大臣には、原則として大統領ほどの強い権限はありません。 だからこそ、日本では「派閥政治」が幅を利かせてきました』、なるほど。
・『現在の内閣総理大臣は首長並みの権限を持っている ところが、「人事の天才」と言われた小泉純一郎首相が2001年に登場してから、その流れが劇的に変わっていきました。 2014年には、当時の安倍晋三首相が内閣官房に「内閣人事局」という新しい組織を設け、省庁の幹部の人事をまとめて管理するようになりました。こうして総理大臣は閣僚の罷免権に加え、官僚たちを異動させられる力も持ったため、今や自治体の首長のように予算をシフトすることも可能です。 安倍政権が7年8カ月に及ぶ「最長政権」となったのも、人事権をフル活用して官僚を統治したからに他なりません。 このように、現在の総理大臣は首長並みの権限を持っています。だからこそ、私は「明石市にできることは国でもできる」と方々で事あるごとに発言しているわけです。 問題なのは、その権限を既得権益のために使うのか、国民のために使うのかということ。残念ながら昨今の総理大臣の言動を見るに、権限を「国民のため」に使っているようにはとても思えません』、「現在の総理大臣は首長並みの権限を持っています。だからこそ、私は「明石市にできることは国でもできる」と方々で事あるごとに発言しているわけです。 問題なのは、その権限を既得権益のために使うのか、国民のために使うのかということ。残念ながら昨今の総理大臣の言動を見るに、権限を「国民のため」に使っているようにはとても思えません」、なるほど。
・『人事権を行使している市長はほとんどいない 私が「明石の市長になって冷たい社会をやさしくするんだ」と思ったのは10歳のときでした。その後、より具体的に市長を目指すようになったのは20代になってからです。 権限のない国会議員になっても大きな仕事はできない。それよりも、市長になって世の中が思い込んでいる「できない」を「できる」に置き換えていく。 それが自分の使命であり、私がこの世に生きる意味だと確信していました。一時期、私は国会議員をしていたこともあり、その経験はもちろん今に役立っていますが、市長を目指す気持ちは一貫して持ち続けていました。 市長は人事権と予算編成権という2つの権利を持っています。ところが、全国を見回してみてもその権利を行使している市長はほとんどいません。もしかしたら、この私が全国で唯一の存在だったかもしれません。 私が市長になるまでの明石市の人事権のほとんどは、人事当局(総務局職員室)が握っていました。人事当局が人事をして、最後に判だけ市長に押させる。場合によって市長の要望が受け入れられることもあったようですが、それでも数名が受け入れられれば上出来という状況だったようです。これは明石市だけの話ではなく、他の市町村も似たり寄ったりの状況といえます。 2011年、市長に就任したばかりの私が人事権を行使しようとしたところ、「市長には、人事権は実質的にはありません」と人事当局から激しい抵抗を受けました。) 各部署の部長人事ですら「市長に部長人事権は数名分しかありません」と言われる始末。「えっ、どういうこと?」と聞くと、多くの部署は年功序列ですでに次期部長は決まっているから私の指名する余地はないというのです』、「市長は人事権と予算編成権という2つの権利を持っています。ところが、全国を見回してみてもその権利を行使している市長はほとんどいません。もしかしたら、この私が全国で唯一の存在だったかもしれません。 私が市長になるまでの明石市の人事権のほとんどは、人事当局(総務局職員室)が握っていました。人事当局が人事をして、最後に判だけ市長に押させる。場合によって市長の要望が受け入れられることもあったようですが、それでも数名が受け入れられれば上出来という状況だったようです。これは明石市だけの話ではなく、他の市町村も似たり寄ったりの状況といえます・・・市長に就任したばかりの私が人事権を行使しようとしたところ、「市長には、人事権は実質的にはありません」と人事当局から激しい抵抗を受けました。) 各部署の部長人事ですら「市長に部長人事権は数名分しかありません」と言われる始末。「えっ、どういうこと?」と聞くと、多くの部署は年功序列ですでに次期部長は決まっているから私の指名する余地はないというのです」、なるほど。
・『本来の権限を行使したがる首長は組織内で大反発を食らう 流れ作業で人事が決められるような状況の中、59歳にしてやっと部長になった人が本当に優秀な人材なら私も文句は言いません。しかし、単なる順番待ちで部長になった人に何を期待したらよいのか。 役職にふさわしい志も長期展望もない、退職まであと1年の部長に、10年後の活気あふれる明石市を考える能力、さらにそれを成し遂げる実行力があるとはとても思えません。 予算案にしても各課、各部で若干抑えながら調整されたものが市長のところに上がってきて、市長である私のすることといえば人事と同じく、判を押すだけの状況でした。 要するに人事にしろ、予算にしろ、市長が目にする段階ではすでにすべてが決まっている。市長に口を挟む余地を与えないこういった役所のやり方は、明石市に限らず全国どこでも似たり寄ったりの状況です。) 市長が2つの権限を行使しようとすれば、職員からものすごい反発、抵抗を受けます。ですから、実際にそれを行使したことのある市長は全国でもほとんどいないはずです。でも私は12年の任期の中で、関係部署に抵抗を受けても市民の望むことを実現すべく働いてきました。 抵抗を受けようが、脅されようが、嫌がらせを受けようが、「やさしい街をつくる」という志を貫く一心で、誰にも屈することはありませんでした。 私にできたのですから、他の市町村の首長にも2つの権限を行使することは必ずできるはずです。何度も言いますが、「やる気になればできる」ことなのです』、「役職にふさわしい志も長期展望もない、退職まであと1年の部長に、10年後の活気あふれる明石市を考える能力、さらにそれを成し遂げる実行力があるとはとても思えません。 予算案にしても各課、各部で若干抑えながら調整されたものが市長のところに上がってきて、市長である私のすることといえば人事と同じく、判を押すだけの状況でした。 要するに人事にしろ、予算にしろ、市長が目にする段階ではすでにすべてが決まっている。市長に口を挟む余地を与えないこういった役所のやり方は、明石市に限らず全国どこでも似たり寄ったりの状況です。 市長が2つの権限を行使しようとすれば、職員からものすごい反発、抵抗を受けます。ですから、実際にそれを行使したことのある市長は全国でもほとんどいないはずです。でも私は12年の任期の中で、関係部署に抵抗を受けても市民の望むことを実現すべく働いてきました。 抵抗を受けようが、脅されようが、嫌がらせを受けようが、「やさしい街をつくる」という志を貫く一心で、誰にも屈することはありませんでした。 私にできたのですから、他の市町村の首長にも2つの権限を行使することは必ずできるはずです。何度も言いますが、「やる気になればできる」ことなのです」、なるほど。
・『副市長は市長にとっての最大の抵抗勢力になりうる 市役所には市長を補佐し、時に職務を代行する役割を担う副市長という役職があります。いったん公務員を辞めてから就く特別職です。字面だけ見ると「市長をサポートする人」と多くの方が思われるかもしれません。 しかし、地方自治を構造的に捉えた一般論として話せば、副市長は市長にとっての最大の抵抗勢力にもなりうる存在です。 副市長は市の職員の代表であり、なおかつ議会と市長をつなぐパイプ役、調整の窓口といってもいい。つまり、基本的に副市長は職員の側の人間であり、議会(多数派)の側の人間です。) 簡単にいえば、議会にとって副市長は自分たちの子分のような存在であり、役所職員からすれば自分たちの親分のような存在となります。 議会の多数派が推す人が市長になれば、市長と副市長が対立する構造にはなりません。しかし、私のように支持母体となる集団を持たない(私の支持母体は市民です)人間が市長になると、当然副市長は組織防衛に走ります。とりわけそれまでの市役所のやり方を根底から覆えそうとする私のような市長であれば、組織の抵抗はより激しくなります。 私がもし既得権益のためだけに働き、職員や議員と仲良くしたいのなら、副市長はとても頼りがいのある存在になります。でも、私のように議会より市民を選び、職員より市民を選ぶと、副市長は必ずしも頼りがいのある存在とはいえなくなります。 副市長の選任には、議会の同意が必要です。形式的には市長が「この人を」と提案しますが、実際にそれを許可するのは議会なので「この人にやってほしい」と私がいくら思っていたとしても、抜擢人事を成し遂げるのは難しい。 だから一般論でいう副市長は「庁内の人望のある人。簡単にいえば人事畑のトップ」が就くことが多いのです』、「市役所には市長を補佐し、時に職務を代行する役割を担う副市長という役職があります。いったん公務員を辞めてから就く特別職です・・・副市長は市の職員の代表であり、なおかつ議会と市長をつなぐパイプ役、調整の窓口といってもいい。つまり、基本的に副市長は職員の側の人間であり、議会(多数派)の側の人間です。) 簡単にいえば、議会にとって副市長は自分たちの子分のような存在であり、役所職員からすれば自分たちの親分のような存在となります・・・私のように議会より市民を選び、職員より市民を選ぶと、副市長は必ずしも頼りがいのある存在とはいえなくなります。 副市長の選任には、議会の同意が必要です。形式的には市長が「この人を」と提案しますが、実際にそれを許可するのは議会なので「この人にやってほしい」と私がいくら思っていたとしても、抜擢人事を成し遂げるのは難しい。 だから一般論でいう副市長は「庁内の人望のある人。簡単にいえば人事畑のトップ」が就くことが多いのです」、なるほど。本当に市民のための市政をしようとすると、「職員」、「副市長」、「議会」との対立を覚悟して臨まないといけないようだ。
タグ:地方自治体 (その2)(81%の市議会は「パソコン持ち込み」がNG…地方議員が一般企業で通用しない人材ばかりになる根本原因 まともな人材からは避けられ、「家業」になっている、「区の財産の私物化」疑惑の山崎区長が引退…息子が区長選挙に出馬表明も区民の間で広がる「黒い噂」、「市長には人事権はありません」「えっ、どういうこと?」副市長が市長の〈最大の抵抗勢力〉になる理由) PRESIDENT ONLINE 磯山 友幸氏による「81%の市議会は「パソコン持ち込み」がNG…地方議員が一般企業で通用しない人材ばかりになる根本原因 まともな人材からは避けられ、「家業」になっている」 「このところ全国各地で異変が起きている。候補者が定員を超えずに「無投票」で当選者が決まるケースが相次いでいるのだ・・・前々回の2015年と前回の2019年は定員14に対して立候補者14人と、2回連続で無投票になった。今回は、その定員を12に減らしたのだが、それでも懸念は消えない。「無投票どころか、定員割れもあり得ます。市議会議員のなり手がいないのです」と地元の有力者はつぶやく」、なるほど。 「かつては、「無投票」と言えば、事前の候補者調整や、特定の有力者しか立候補できない暗黙の了解があるケースがほとんどだった。時には立候補調整に金銭授受が発覚、事件化することすらあった。議員は地域の名士たちが代々就く「家業」で、世間相場からすれば高い議員報酬のほか、公共事業に関する利権もある「おいしいポスト」だったのだ。 ところが、昨今の「無投票」の多くはまったく事情が違う。報酬は下がり、公共事業も激減して利権も消える中で、「うまみのないポスト」になったこともあるが、報酬の割には苦労の絶えない仕事になったとい う面も大きい。 というのも、自治体は今、山積する問題に直面している。少子化による人口減少で税収が減少、財政が悪化して老朽化した公共設備の更新もままならない。一方で高齢化に伴って福祉関連の予算は増える一方だ。かつてのように、議会が増える予算を分配すれば良い時代は議員も気楽だったが、足らない予算を分配しなければならない時代になって議員も苦しい立場に立たされるようになった。特に規模の小さい市町村の場合、議員はまったく魅力のない職業になりつつある」、なるほど。 「「市議会活動に関する実態調査(令和3年中)」によると、多くが年に4回の定例議会を開いており、年間平均の88.8日の会期が設定されている。最低、年間の4分の1は議会に拘束されるわけだ。しかも、議会は日中に開かれるのが一般的なので、本業に大きく支障をきたすことになる。そのため「専業」で議員をやっている人も少なくない」、なるほど。 「内閣府の地方制度調査会が答申」では、「女性議員が少ない議会や議員の平均年齢が高い議会において無投票当選となる割合が高い傾向」にあるとして、女性や若手など多様な人材が議会活動に参画する必要性を強調・・・地方では今でも、高齢者層を中心に、政治は「男の役目」だという認識が強いところが多く、女性議員へのセクハラ行為やセクハラ発言もしばしばニュースに取り上げられるなど、各地で問題が表面化している。そうした「意識」や「環境」を変えて、女性の立候補を促進すべきだとしている」、なるほど。 「2021年中に「休日議会」が開催されたのは山形県上山市や東京都国分寺市などの7議会7回だけ、夜間議会は大阪府大東市の1回だけだった。 欧州の地方議会では、本業を持った市民が議員となり夜間に議会を開催している例が多くある。コミュニティーに直結した問題を解決する議会には「専業」の議員ではなく住民自身が携わるべきだという考えも広く浸透している。そうしたフルタイムで働いている人が議員を兼務しようと思えば、議会の開会は休日や夜間ということになる。 そうした考え方は日本でもかなり前から紹介され、必要性が叫ばれているもの、「家業」化した専業議員が議会を牛耳っていることもあり、議会改革はほとんど進んでいないのが実情だ」、「「家業」化した専業議員が議会を牛耳っている」のは、議会改革のガンだ。 「本会議場へのパソコン持ち込みを認めている市議会は155と19%に過ぎない。 そんな状況だから、議会へのオンラインでの出席などはほとんど実現していない。答申でも「議会へのオンラインによる出席」についても触れられているが、リアルで出席しないと出席とは認められないとする意見などと併記する書き方に終始していて、明確にオンライン会議を認めるようには求めていない」、なるほど。 「(議員が)「役所幹部の定年後のポストになりつつあります」という声もある。役所の幹部ならば市の政策などに精通しているため、何の障害もなく議員が務まるというのだ。だが、そうなれば、ますます市議会が市民目線から離れていくことになりかねない。 このままでは、民主主義の根幹であるはずの地方自治が、根底から崩れていくことになりかねない」、確かに。「(議員が)「役所幹部の定年後のポストに」なることについては、一定の歯止めが必要だ。 FRIDAY「「区の財産の私物化」疑惑の山崎区長が引退…息子が区長選挙に出馬表明も区民の間で広がる「黒い噂」」 古くからの田舎ではなく、東京都の23区の一角で「山崎家、木村家、柿沢家の争いが世代を変えていまも続いている」とは心底から驚かされた。柿沢未途は江東区長選挙で買収した容疑で逮捕されるという政治家失格といえる事件を起こした。「山崎家が興隆を極めた。「区長が体調を崩す前までは若洲ゴルフリンクスの土曜日の午前が『区長枠』で、区役所前にバスを止めて町内会長らを乗せて向かっていた」という公私混同も、実に低レベルの不祥事だ。買収事件で江東区民が目ざめることを期待したい。 ダイヤモンド・オンライン 泉 房穂氏による「「市長には人事権はありません」「えっ、どういうこと?」副市長が市長の〈最大の抵抗勢力〉になる理由」 泉房穂『日本が滅びる前に 明石モデルがひらく国家の未来』(集英社新書) 「現在の総理大臣は首長並みの権限を持っています。だからこそ、私は「明石市にできることは国でもできる」と方々で事あるごとに発言しているわけです。 問題なのは、その権限を既得権益のために使うのか、国民のために使うのかということ。残念ながら昨今の総理大臣の言動を見るに、権限を「国民のため」に使っているようにはとても思えません」、なるほど。 「市長は人事権と予算編成権という2つの権利を持っています。ところが、全国を見回してみてもその権利を行使している市長はほとんどいません。もしかしたら、この私が全国で唯一の存在だったかもしれません。 私が市長になるまでの明石市の人事権のほとんどは、人事当局(総務局職員室)が握っていました。人事当局が人事をして、最後に判だけ市長に押させる。場合によって市長の要望が受け入れられることもあったようですが、それでも数名が受け入れられれば上出来という状況だったようです。 これは明石市だけの話ではなく、他の市町村も似たり寄ったりの状況といえます・・・市長に就任したばかりの私が人事権を行使しようとしたところ、「市長には、人事権は実質的にはありません」と人事当局から激しい抵抗を受けました。) 各部署の部長人事ですら「市長に部長人事権は数名分しかありません」と言われる始末。「えっ、どういうこと?」と聞くと、多くの部署は年功序列ですでに次期部長は決まっているから私の指名する余地はないというのです」、なるほど。 「役職にふさわしい志も長期展望もない、退職まであと1年の部長に、10年後の活気あふれる明石市を考える能力、さらにそれを成し遂げる実行力があるとはとても思えません。 予算案にしても各課、各部で若干抑えながら調整されたものが市長のところに上がってきて、市長である私のすることといえば人事と同じく、判を押すだけの状況でした。 要するに人事にしろ、予算にしろ、市長が目にする段階ではすでにすべてが決まっている。市長に口を挟む余地を与えないこういった役所のやり方は、明石市に限らず全国どこでも似たり寄ったりの状況です。 市長が2つの権限を行使しようとすれば、職員からものすごい反発、抵抗を受けます。ですから、実際にそれを行使したことのある市長は全国でもほとんどいないはずです。でも私は12年の任期の中で、関係部署に抵抗を受けても市民の望むことを実現すべく働いてきました。 抵抗を受けようが、脅されようが、嫌がらせを受けようが、「やさしい街をつくる」という志を貫く一心で、誰にも屈することはありませんでした。 私にできたのですから、他の市町村の首長にも2つの権限を行使することは必ずできるはずです。何度も言いますが、「やる気になれば できる」ことなのです」、なるほど。 「市役所には市長を補佐し、時に職務を代行する役割を担う副市長という役職があります。いったん公務員を辞めてから就く特別職です・・・副市長は市の職員の代表であり、なおかつ議会と市長をつなぐパイプ役、調整の窓口といってもいい。つまり、基本的に副市長は職員の側の人間であり、議会(多数派)の側の人間です。) 簡単にいえば、議会にとって副市長は自分たちの子分のような存在であり、役所職員からすれば自分たちの親分のような存在となります・・・ 私のように議会より市民を選び、職員より市民を選ぶと、副市長は必ずしも頼りがいのある存在とはいえなくなります。 副市長の選任には、議会の同意が必要です。形式的には市長が「この人を」と提案しますが、実際にそれを許可するのは議会なので「この人にやってほしい」と私がいくら思っていたとしても、抜擢人事を成し遂げるのは難しい。 だから一般論でいう副市長は「庁内の人望のある人。簡単にいえば人事畑のトップ」が就くことが多いのです」、なるほど。本当に市民のための市政をしようとすると、「職員」、「副市長」、「議会」との対立を 覚悟して臨まないといけないようだ。
司法(その19)(フランス人記者が見た日本の「離婚後共同親権」が危うい理由、「京アニ事件死刑判決」は「国民への忖度」だったのか?「判決に矛盾が内在してしまう司法の問題」と今こそ考えるべき「刑法39条削除論」、不祥事が続く成年後見制度 相続人の認知症リスクに備え「遺す側」ができる対策とは?【税理士が解説】) [社会]
司法については、本年3月15日に取上げた。今日は、(その19)(フランス人記者が見た日本の「離婚後共同親権」が危うい理由、「京アニ事件死刑判決」は「国民への忖度」だったのか?「判決に矛盾が内在してしまう司法の問題」と今こそ考えるべき「刑法39条削除論」、不祥事が続く成年後見制度 相続人の認知症リスクに備え「遺す側」ができる対策とは?【税理士が解説】)である。
先ずは、本年6月8日付けNewsWEEK日本版が掲載したジャーナリストの西村カリン氏による「フランス人記者が見た日本の「離婚後共同親権」が危うい理由」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/japan/2024/06/post-104703.php
・『<5月に成立した民法改正法により日本でも26年から離婚後の共同親権が可能になるが、「外圧」による中途半端な制度では誰も得しない> 5月17日に国会で成立した民法改正法により、日本でも離婚後の共同親権が2026年から可能になる予定だ。 この重要な変化の背景には外圧があった。日本人と外国人の国際結婚が増えたことで、国際離婚も増加。日本人の親(主に母親)が外国人の親の同意を得ずに子供を連れ去る例もあり、国際問題になっている。 日本では離婚すれば多くの場合、子供と同居する親が親権を取り、もう一方の親は子供に会えない状況になりがちだ。家庭内暴力(DV)などの理由で逃げる親もいるので、必ずしも子供を連れ出したほうが悪いとは言えないが、海外では「子供を誘拐した日本人の親は犯罪者」と紹介されることが多く、大きな社会問題になっていた。 20年7月には欧州議会が、日本人の親による「子供の連れ去り」を懸念し、共同親権に向けた法改正などを求める対日決議を採択。国境を越えた子供の連れ去りが発生した場合は元の居住国に返すことなどを定めたハーグ条約の履行も求めた。 欧米諸国では一方の親が他方の親の同意を得ずに子供の居所を移動させることは誘拐行為で、重大な犯罪だ。しかし、日本では違法な行為とされていないことで批判を浴びた。また日本では離婚後に片親にしか親権が認められないため、別居親は子供に会えないと欧米では理解された』、「日本人の親(主に母親)が外国人の親の同意を得ずに子供を連れ去る例もあり、国際問題になっている・・・海外では「子供を誘拐した日本人の親は犯罪者」と紹介されることが多く、大きな社会問題になっていた。 20年7月には欧州議会が、日本人の親による「子供の連れ去り」を懸念し、共同親権に向けた法改正などを求める対日決議を採択。国境を越えた子供の連れ去りが発生した場合は元の居住国に返すことなどを定めたハーグ条約の履行も求めた・・・欧米諸国では一方の親が他方の親の同意を得ずに子供の居所を移動させることは誘拐行為で、重大な犯罪だ。しかし、日本では違法な行為とされていないことで批判を浴びた。また日本では離婚後に片親にしか親権が認められないため、別居親は子供に会えないと欧米では理解された」、「欧州議会」でまで取上げられたというのは、恥ずかしいことだ。この問題を放置してきた日本の司法当局の責任は重大だ。
・『不勉強な海外マスコミのせい 実際は、親権と子供に会う権利(面会交流権)は別のものだ。家庭裁判所で手続きをすれば面会交流ができると知らないか、知っていても手続きをしなかった外国人の別居親がいる。そうした点が、欧米の人々に対してきちんと説明されなかったことが誤解につながった。 それは完全に海外マスコミのせいだと、私は思うようになった。私も含めて日本の民法について不勉強だったり、文化の違いを理解していない記者が、「日本には共同親権がないから離婚後、別居親と子供の関係が崩れる」と説明してしまった。) 日本で共同親権についての議論が本格的に浮上した際、私は反対派の意見をよく聞き、フランスの親権と日本の親権の意味を勉強した。その結果、「日本も共同親権を導入したほうがいい」という私の意見は180度ではないが、一部変わった。日本での共同親権と、われわれ欧米人が思う共同親権の中身が違うからだ。 フランスの場合は「親が別れても親権は変わらない」、つまり共同親権が原則で、単独親権は極めて例外だ。また、別居親の親権には面会交流権も含まれる。そのためDVや虐待を理由に家庭裁判所の判断で親権を失った別居親は、面会交流権も失う』、民法は確か「フランス」をお手本にした筈だが、「親権」や「面会交流権」は「フランス」とは異なっているようだ。他の欧米諸国も「フランス」に近いのであれば、日本が変更すべきだが、各国様々であれば、そのまま放置してもよさそうだ。
・『日本では親権と面会交流権は別々の権利 共同親権があっても行使が困難な場合は、裁判所が日常の親権行使を同居親の単独に制限できる。その際も面会交流権は残るが、子供にとってリスクがある場合は裁判所の判断でその権利を停止する。 日本では、親権と面会交流権は別々の権利だ。それを理解せず、共同親権になれば自動的に面会交流権も得られると考えた外国人が多かったと思われる。だから、日本政府に「共同親権を導入してほしい」という海外からの強い圧力があったのではないか。 5月に成立した改正法はその点に関して曖昧だ。親権に面会交流権が含まれているかどうかが分かりにくいし、そのことで争いが起こるリスクが高い。 共同親権の反対派は、家庭裁判所が共同親権が妥当と判断すれば、離婚後もDVや虐待が継続してしまうことを危惧する。「DVや虐待がある場合は裁判所が単独親権にする」と政府は反論するが、本当にそうなるかは不安だ。ここが主な問題だと思う。DVがあったと証明することは難しいし、実際の状況を判断するために調査が必要だが、日本ではDV対策が明らかに不十分だ。裁判所が間違って判断するリスクを否定できない。) その問題を解決せずに共同親権を可能にするのは、女性や子供の安全への脅威であると認めないといけない。一方で「嘘のDV告発をされた」と訴える男性もいるので、しっかり調査ができればそうした例も減らすことができる。DV対策やDVの立証方法を強化することが急務だろう。 日本では離婚後、家庭裁判所の判断で面会交流権を得た別居親に子供を会わせない同居親がいたとしても、罰則がない。それが多くの国との大きな違いで、誤解が生まれた原因の1つと考えられる』、我が国でも「DV対策やDVの立証方法を強化」するよ同時に、「面会交流権を得た別居親に」は子供と会う権利を保証すべきだ。
・『グローバル化の限界が露呈 フランスの場合、親権を持つ別居親はDVや虐待の犯罪歴がない限り、面会交流権も持つ。同居親の一方的な都合で別居親の面会交流権が守られなければ、別居親は被害届を出すことができる(同居親は最大で懲役1年または1万5000ユーロの罰金が科される可能性がある)。 日本の状況は大きく異なる。厚生労働省の調査(21年)では、面会交流が実施されているのは母子家庭で30・2%、父子家庭で48%にすぎない。日本弁護士連合会の調査(14年)では、調停で合意した親子交流が全くできていない人の割合は44%だ。なぜそうなっているのか、理由を把握することが重要だが、共同親権を導入するだけで状況が改善するとは思わない。 ここまで説明してきた点の背景には、日本と欧米の社会や文化の無視できない違いがある。同時に日本はG7の一国であり、他の加盟国とさまざまな分野で協力し、ハーグ条約などにも署名した。そうした約束を守らないと、国際社会から批判を受ける。 これはまさにグローバル化の限界だと思う。それぞれの国の文化や社会構成は簡単に変更できないので、国際ルールに賛同する前に十分に国内で議論し、適切なプロセスで法律を改正することが重要だ。国際的批判や外圧を止めるために、不十分な議論に基づいて中途半端な法改正をすれば、誰の利益にもならないリスクがある。 今回、「日本でも共同親権が可能だ」と政府は国際社会に対して言えるようになった。しかし共同親権導入の本当の目的が不明のままで、国内外の賛成派からも反対派からも批判が止まらない可能性が高い。親子の交流などについて、根本的な問題解決につながることもあまり期待できない。 改正法の中身は、親権の共同行使と単独行使の境界などが曖昧すぎるから、これからさまざまな具体的なことを決定していくことになる。その段階では、子供の利益を第一に考えてほしい』、「日本はG7の一国であり、他の加盟国とさまざまな分野で協力し、ハーグ条約などにも署名した。そうした約束を守らないと、国際社会から批判を受ける。 これはまさにグローバル化の限界だと思う。それぞれの国の文化や社会構成は簡単に変更できないので、国際ルールに賛同する前に十分に国内で議論し、適切なプロセスで法律を改正することが重要だ」、その通りだ。
次に、8月27日付け現代ビジネスが掲載した「「京アニ事件死刑判決」は「国民への忖度」だったのか?「判決に矛盾が内在してしまう司法の問題」と今こそ考えるべき「刑法39条削除論」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/136027
・『世間が大騒ぎするような重大な殺人事件が起こると、必ず「精神鑑定」という難題が浮上する。 鑑定の結果、加害者に精神障害が認められると、刑法39条の規定で無罪か刑の軽減になる。 厳罰派は、被害者感情を持ち出して、「犯罪をした精神障害者にも処罰を与えるべきだ」と主張する。 一方、精神科医や人権派弁護士らは「精神障害者に必要なのは、処罰ではなく治療だ」と主張する。 議論は一向に進まず平行線のままだが、刑法39条をめぐるこの混乱をどう考えるべきだろうか。 前編『「遺族は到底納得できない」...なぜ5人殺傷で罪に問われないのか、意味不明な行為ほど罰が軽くなる「刑法39条の大矛盾」』から続く』、この記事だけでなく、報道の多くは、「京アニ」の建物の構造上で欠陥に触れてないが、私は二階への階段が1つしかない構造にも被害を大きくした原因があると思う。
・『起訴前鑑定で不起訴になるケースが9割 犯罪白書によると、2022年における刑法犯の検挙人員は16万9409人。そのうち精神障害者等(精神障害者1039人+精神障害の疑いのある者305人)は1344人。刑法犯の検挙人員総数のうち、精神障害者等の比率は0.8%だった。 検察庁の調査では、同年、心神喪失を理由に不起訴処分に付された被疑者(過失運転致死傷等及び道交違反を除く)は370人。また、最高裁判所事務総局の資料によると、第1審において心神喪失を理由に無罪となった者は4人だった。 全体で不起訴人員は約14万人いるため、精神障害者が不起訴になるケースは少ないと思われるかもしれない。 しかし22年では、起訴前鑑定などで心神喪失や心神耗弱が指摘され、検察官が心神喪失者等医療観察法に基づいて申し立てた者278人のうち、258人が不起訴になっているというデータもある。つまり、ほとんどが不起訴になっている。 九州工業大学名誉教授(刑事法学)で、著書に『刑法39条はもういらない』(青弓社)がある、佐藤直樹氏が解説する。 「例年、精神障害犯罪者が起こした事件のうち、約9割が起訴前鑑定で責任無能力とされ、不起訴になっています。その場合、犯罪としてカウントされないため、犯罪事実の解明がまったくされず、その事実がなかったことになる。 裁判が行われないことは精神障害者当人にとっても問題がある。なぜかと言えば、精神障害者から憲法32条の『裁判を受ける権利』を奪っているから。刑法39条は、精神障害者を人権の担い手としての『人間』というカテゴリーから、排除する役割を果たしているのです」(以下「」は佐藤氏)』、「例年、精神障害犯罪者が起こした事件のうち、約9割が起訴前鑑定で責任無能力とされ、不起訴になっています。その場合、犯罪としてカウントされないため、犯罪事実の解明がまったくされず、その事実がなかったことになる。 裁判が行われないことは精神障害者当人にとっても問題がある。なぜかと言えば、精神障害者から憲法32条の『裁判を受ける権利』を奪っているから。刑法39条は、精神障害者を人権の担い手としての『人間』というカテゴリーから、排除する役割を果たしているのです」、言われてみれば、その通りだ。
・『京アニ事件死刑判決は国民への忖度か 刑法39条の規定は「精神鑑定の結果は正しい」ことが前提となっているが、精神科医によって診断結果が異なることは決して稀ではなく、むしろ見解が一致することはほぼない。 一方で、精神鑑定が裁判でまったく機能していないというケースもある。どういうことだろうか。 「たとえば、京アニ事件の場合、起訴前鑑定では『妄想性パーソナリティ障害で、犯行時の行動には影響はほとんどみられない』と診断されました。これは『人格がヘンなだけ』という意味。公判中の精神鑑定では『重度の妄想性障害で、妄想が犯行動機を形成している』と診断されたのですが、これは『明らかに病気』という意味です。 最終的に京都地裁は『重度の妄想性障害。放火や殺人を選択したことについては、妄想の影響は認められない』として死刑判決を下したのですが、『病気』を認定するのなら、犯行に妄想の影響はないという判断になるのはおかしい。 つまり、裁判所が『被告は妄想性障害だとしながら、完全責任能力がある』という無理筋の結論に至ったのは、『死刑以外は許さない』という国民感情に忖度したからであり、精神鑑定の結果はまったく考慮されていないのです」 そもそも、精神科医や裁判所が、先述の「不可知論」がいうように、犯行時の責任能力というものを正確に判断できるわけがないと、佐藤氏は指摘する。 「いま実際に裁判でやっていることは、犯人が合理的に行動しているかどうか、犯罪行為が外から見て了解できるかどうか、の判断にすぎません。責任能力の実質であるはずの『精神状態がおかしくないかどうか』(生物学的要件)と、『善悪の判断能力の有無』『制御能力の有無』(心理学的要件)はほぼ検討されず、まったく別のところで、責任能力が判断されているのが実態なのです」』、「「いま実際に裁判でやっていることは、犯人が合理的に行動しているかどうか、犯罪行為が外から見て了解できるかどうか、の判断にすぎません。責任能力の実質であるはずの『精神状態がおかしくないかどうか』(生物学的要件)と、『善悪の判断能力の有無』『制御能力の有無』(心理学的要件)はほぼ検討されず、まったく別のところで、責任能力が判断されているのが実態なのです」、なるほど。
・『刑法39条は精神障害者を差別している 佐藤氏が語るように、責任能力の規定が精神障害者の「人間」というカテゴリーからの排除を意味していた。そうだとすれば、刑法39条は削除されるべきだと主張する。 「39条が廃止されれば、『人権』という観点からいっても、起訴前に責任能力の有無を判断されることもなくなりますし、精神障害者の『裁判を受ける権利』や、あえていえば『処罰される権利』も保障することになります。精神鑑定は、責任能力の判断のために使うのではなく、『情状』を考慮するために使われるべき。この場合は黙秘権を保障するために、新たに『鑑定拒否権』を確立する必要があります。というのは、現状の精神鑑定では、被疑者・被告人が沈黙していても、その状態を手がかりに鑑定結果を出すことができるからです。精神障害犯罪者を『人間』にとどめておくためにも刑法39条を削除すべきではないでしょうか」 あまり知られていないが、かつて刑法40条に「瘖唖(いんあ)者(聴力障害者)の責任能力」の規定があったものの、1995年の刑法の平易化の際に、『瘖唖者への差別である』として削除された経緯がある。 であれば、同様に刑法39条の規定も精神障害者に対する差別ではないだろうか』、「精神鑑定は、責任能力の判断のために使うのではなく、『情状』を考慮するために使われるべき。この場合は黙秘権を保障するために、新たに『鑑定拒否権』を確立する必要があります。というのは、現状の精神鑑定では、被疑者・被告人が沈黙していても、その状態を手がかりに鑑定結果を出すことができるからです。精神障害犯罪者を『人間』にとどめておくためにも刑法39条を削除すべきではないでしょうか」、同感である。
第三に、10月3日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した税理士・岡野相続税理士法人 代表社員の岡野雄志氏による「不祥事が続く成年後見制度、相続人の認知症リスクに備え「遺す側」ができる対策とは?【税理士が解説】」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/351395
・『今年4月にRKB毎日放送で成年後見人の特集が放映され、成年後見制度の「現実」が明らかとなった。それをきっかけに、制度のしくみや問題点に注目が集まっている。成年後見人による財産の着服などの不祥事も続いているが、本制度は相続時にも欠かせない制度であることをご存じだろうか。相続人の中に「認知症」をはじめとする判断能力の低下が見られる家族がいた場合で、法定相続を選択せず遺産分割協議を行う際には、成年後見制度を利用する必要がある。2023年6月には、認知症の親と相続をテーマにした映画「親のお金は誰のもの」(監督・田中光敏)が公開され、相続と成年後見制度の問題点に光をあてている。そこで本記事では、認知症の相続人がいる場合の相続手続きについて、成年後見制度の実情も交えながら詳しく解説する。(税理士・岡野相続税理士法人 代表社員 岡野雄志)』、「相続人の中に「認知症」をはじめとする判断能力の低下が見られる家族がいた場合で、法定相続を選択せず遺産分割協議を行う際には、成年後見制度を利用する必要がある」、なるほど。
・『相続時に「成年後見人」が必要となるケース 家族が亡くなり相続が開始されると、相続人全員で遺産分割協議を行う必要がある。遺産分割協議では誰が何を、いくら相続するのか決めていくが、相続人の中に判断能力が不十分となっている方がいる場合はどうすればよいのだろうか。結論から言うと、その方自身の相続権を守るためにも「成年後見人」を立てる必要がある。 今年5月8日に開催された「第2回認知症施策推進関係者会議」では、厚生労働省の研究班が2040年時点での日本国内における認知症患者数は約584万人に上るとの予想を発表した。高齢化社会の日本では認知症は身近な病であり、相続を迎えた時に成年後見人が必要になるケースは少なくないのだ。 「被相続人が遺した財産は少ないし、どうせ認知症の介護もするのだから無視していいだろう」と勝手に遺産分割協議を進めてしまったら、遺産分割協議そのものが無効となってしまう。判断能力が不十分な相続人に代わって署名・捺印を行うと、私文書偽造の罪に問われる可能性もある。 成年後見人の申し立てから選任までは時間を要するため億劫に感じる方も多いかもしれない。しかし、適切に相続を進めるためにも、認知能力が不十分な相続人がいる相続では、成年後見人を立てよう』、「「被相続人が遺した財産は少ないし、どうせ認知症の介護もするのだから無視していいだろう」と勝手に遺産分割協議を進めてしまったら、遺産分割協議そのものが無効となってしまう。判断能力が不十分な相続人に代わって署名・捺印を行うと、私文書偽造の罪に問われる可能性もある・・・認知能力が不十分な相続人がいる相続では、成年後見人を立てよう」、なるほど。
・『成年後見制度は法定後見と任意後見の2種類 成年後見人とは、認知症だけではなく知的障害や精神障害などの症状がある方に代わって「法律行為」を行える人を意味する。 成年後見制度には、法定後見と任意後見の2種類がある。任意後見は本人に判断能力があり、将来に備えて本人の意思で契約するものであるのに対し、法定後見は、すでに判断能力が不十分である方向けの制度である。法定後見には「成年後見人」・「保佐人」・「補助人」の3種類があるが、相続の際は遺産分割などにおいて高度な判断が欠かせないため、全ての法律行為に対して代理権を持つ成年後見人が必要となる。 保佐人も相続人に代わって相続に参加することが可能だが、付与されているのは民法に定められた行為を行う際に必要な同意権であり、代理権については家庭裁判所の審判が下りなければ付与されない。相続時には預貯金の解約や不動産の取得なども行う必要があり、保佐人にはできないことが多いため、成年後見人を選任することが妥当だ。 成年後見人が必要となった場合、必要となった方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てを行う必要がある。申し立てから選任までは1~2カ月の期間を要し、この間は遺産分割協議を終えることはできない。 医師による診断書などの必要書類をそろえ提出すると、家庭裁判所による審問や調査が始まる。判断能力については鑑定が行われることも多く、さまざまな調査の結果や現在の本人を取り巻く環境を踏まえて、家庭裁判所が適任と考える成年後見人を選ぶ。申立時には成年後見人に選んで欲しい人を家庭裁判所側に伝えられるが、希望が通らないケースも多い』、「成年後見人とは、認知症だけではなく知的障害や精神障害などの症状がある方に代わって「法律行為」を行える人を意味する。 成年後見制度には、法定後見と任意後見の2種類がある。任意後見は本人に判断能力があり、将来に備えて本人の意思で契約するものであるのに対し、法定後見は、すでに判断能力が不十分である方向けの制度である。法定後見には「成年後見人」・「保佐人」・「補助人」の3種類があるが、相続の際は遺産分割などにおいて高度な判断が欠かせないため、全ての法律行為に対して代理権を持つ成年後見人が必要となる。 保佐人も相続人に代わって相続に参加することが可能だが、付与されているのは民法に定められた行為を行う際に必要な同意権であり、代理権については家庭裁判所の審判が下りなければ付与されない・・・相続時には預貯金の解約や不動産の取得なども行う必要があり、保佐人にはできないことが多いため、成年後見人を選任することが妥当だ。 成年後見人が必要となった場合、必要となった方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てを行う必要がある。申し立てから選任までは1~2カ月の期間を要し、この間は遺産分割協議を終えることはできない」、なるほど。
・『成年後見人はなぜ批判されるのか 冒頭で触れたが、今年放映された成年後見人に関する報道が大きな話題となった。放送では、被後見人に対する支出が大きく制限されることや、成年後見人の報酬の実態などが明らかとなった。成年後見人による預貯金などの着服問題もあわせて放映されたため、制度への批判が噴出している。 成年後見人への不満は上記に留まらず、使いにくい制度としても知られている。 まず、柔軟な資産運用はできなくなる。財産は維持を目的に管理するだけであり、投資などの行為で増やすことはできなくなるからだ。 また、家庭裁判所が選んだ成年後見人と家族との意思疎通が上手く進まず、対立することも多い。成年後見人は一度選出されると、特別な事情が認められない限り外すこともできない。相続時に必要となった場合、相続手続き完了後も成年後見人を外せないのだ。こうした制度の難点に加えて着服などの不祥事も重なり、制度そのものが批判されるに至ったのだ』、「成年後見人への不満は上記に留まらず、使いにくい制度としても知られている。 まず、柔軟な資産運用はできなくなる。財産は維持を目的に管理するだけであり、投資などの行為で増やすことはできなくなるからだ。 また、家庭裁判所が選んだ成年後見人と家族との意思疎通が上手く進まず、対立することも多い。成年後見人は一度選出されると、特別な事情が認められない限り外すこともできない。相続時に必要となった場合、相続手続き完了後も成年後見人を外せないのだ」、なるほど。
・『成年後見人が厳しい財産管理を行う理由 成年後見人が被後見人の同居家族の支出に対して、厳しい意見を伝えることがある。この部分はRKB毎日放送の番組でもクローズアップされていたが、なぜこのような厳しい管理が行われているのか。 実は、同居家族が被後見人の財産に頼って生活してしまうケースがあるのだ。家族が被後見人の財産を必要以上に費消しかねないため、選ばれた成年後見人は厳しく資産を管理し、時には家族に指導をせざるを得ない。財産の状況は定期的に家庭裁判所への報告義務もある。 成年後見人は「被後見人の資産を守る」ことが重要な仕事だが、家族は被後見人も含めた「家族の暮らしを守る」ことを求めるがゆえに、成年後見人と家族は時に対立するのだ。この対立を避けるためには、双方の歩み寄りが大切である』、「同居家族が被後見人の財産に頼って生活してしまうケースがあるのだ。家族が被後見人の財産を必要以上に費消しかねないため、選ばれた成年後見人は厳しく資産を管理し、時には家族に指導をせざるを得ない。財産の状況は定期的に家庭裁判所への報告義務もある。 成年後見人は「被後見人の資産を守る」ことが重要な仕事だが、家族は被後見人も含めた「家族の暮らしを守る」ことを求めるがゆえに、成年後見人と家族は時に対立するのだ。この対立を避けるためには、双方の歩み寄りが大切である」、なるほど。
・『成年後見人を回避して相続する方法はあるのか 相続人に認知症の方がいる場合に、成年後見人を回避して相続する方法はあるのだろうか。結論を言うと、認知症の方の相続権を守り、不利益を被らないようにするためにも「相続開始後は回避できない」。 加えて、被相続人に債務が多く相続放棄を検討する場合も、成年後見人が手続きをしなければ相続放棄できない。 成年後見制度を回避して円満な相続を進めるためには、生前から遺言書・家族信託・贈与など対策が必要となる。たとえば、遺言書で財産を与える人を指定しておけば遺産分割協議は不要だ。成年後見制度を利用しなくても財産の承継がスムーズに行える』、「認知症の方の相続権を守り、不利益を被らないようにするためにも「相続開始後は回避できない」。 加えて、被相続人に債務が多く相続放棄を検討する場合も、成年後見人が手続きをしなければ相続放棄できない。 成年後見制度を回避して円満な相続を進めるためには、生前から遺言書・家族信託・贈与など対策が必要となる。たとえば、遺言書で財産を与える人を指定しておけば遺産分割協議は不要だ。成年後見制度を利用しなくても財産の承継がスムーズに行える」、なるほど。
・『成年後見制度にもメリットはある 問題点が指摘されている成年後見制度だが、相続手続きに代理人として参加できる以外のメリットがあることも知っておこう。 認知症の症状がある方を介護施設に入居させたい場合、居住していた不動産の売却や介護施設との契約を進めたいと考える方も多いだろう。判断能力が低下していると法律行為である契約ができないが、成年後見人がいれば進めることが可能だ。不動産の売却も、家庭裁判所の許可をもらえればスムーズに行える。 また、詐欺と考えられるような契約を被後見人が結んでしまった場合は、成年後見人が取り消しできる。認知症の方は不本意な契約を結ばされることも多いため、成年後見人が取消権を行使できることも本制度の大きなメリットだ』、「居住していた不動産の売却や介護施設との契約を進めたいと考える方も多いだろう。判断能力が低下していると法律行為である契約ができないが、成年後見人がいれば進めることが可能だ。不動産の売却も、家庭裁判所の許可をもらえればスムーズに行える。 また、詐欺と考えられるような契約を被後見人が結んでしまった場合は、成年後見人が取り消しできる」、なるほど。
・『自分が認知症になったらどうする? 家族のためにできる備えとは 自身が将来認知症になることを想定すると、どのような相続対策ができるだろうか。家族に財産を残したいと考えているなら、自身が認知症になる前に贈与を開始することが大切だ。認知症の症状が出てから開始された生前贈与は無効となるおそれがある。相続対策も認知症になると進まなくなってしまうため、早期の贈与も検討しよう。 加えて、任意後見制度を知っておくこともおすすめだ。任意後見は本人の判断能力が十分なうちから、将来に備えて任意後見人を自身で選んでおける。契約は公正証書で取り交わすため安全性が高く、契約内容は柔軟に変えられる。任意後見人にはできない業務もあるが、任意後見契約の内容に「遺産分割協議の代理」を加えておくことで、相続時にも相続人の代理人として参加できる。 生前にできる相続対策は多く、早めに活用することで成年後見人を立てることを回避する効果もある。特に事業継承や不動産の多い相続は複雑な手続きが多く、相続開始後に頭を抱える相続人も少なくない。株式や不動産を誰に相続するのか、生前からの対策を税理士とともに進めてほしい。早期の相続対策は、二次相続への備えにもなる。 本記事では成年後見人の問題点について、メリットも交えながら解説した。成年後見人が必要となるご家族は、今後も増える可能性が高い。ぜひ本記事内でも紹介したように、贈与や任意後見の必要性を家族内でじっくり話し合い関心を深めてほしい。 備えあれば憂いなし、万が一に備えて今できることを始めよう』、「相続対策も認知症になると進まなくなってしまうため、早期の贈与も検討しよう。 加えて、任意後見制度を知っておくこともおすすめだ。任意後見は本人の判断能力が十分なうちから、将来に備えて任意後見人を自身で選んでおける。契約は公正証書で取り交わすため安全性が高く、契約内容は柔軟に変えられる。任意後見人にはできない業務もあるが、任意後見契約の内容に「遺産分割協議の代理」を加えておくことで、相続時にも相続人の代理人として参加できる。 生前にできる相続対策は多く、早めに活用することで成年後見人を立てることを回避する効果もある・・・相続対策も認知症になると進まなくなってしまうため、早期の贈与も検討しよう。 加えて、任意後見制度を知っておくこともおすすめだ。任意後見は本人の判断能力が十分なうちから、将来に備えて任意後見人を自身で選んでおける。契約は公正証書で取り交わすため安全性が高く、契約内容は柔軟に変えられる。任意後見人にはできない業務もあるが、任意後見契約の内容に「遺産分割協議の代理」を加えておくことで、相続時にも相続人の代理人として参加できる。 生前にできる相続対策は多く、早めに活用することで成年後見人を立てることを回避する効果もある。特に事業継承や不動産の多い相続は複雑な手続きが多く、相続開始後に頭を抱える相続人も少なくない。株式や不動産を誰に相続するのか、生前からの対策を税理士とともに進めてほしい。早期の相続対策は、二次相続への備えにもなる」、なあでも「生前にできる相続対策は多く、早めに活用することで成年後見人を立てることを回避する効果もある。特に事業継承や不動産の多い相続は複雑な手続きが多く、相続開始後に頭を抱える相続人も少なくない」、やはり「生前」から早目に「相続対策」に取り組んでおくことが肝心なようだ。
先ずは、本年6月8日付けNewsWEEK日本版が掲載したジャーナリストの西村カリン氏による「フランス人記者が見た日本の「離婚後共同親権」が危うい理由」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/japan/2024/06/post-104703.php
・『<5月に成立した民法改正法により日本でも26年から離婚後の共同親権が可能になるが、「外圧」による中途半端な制度では誰も得しない> 5月17日に国会で成立した民法改正法により、日本でも離婚後の共同親権が2026年から可能になる予定だ。 この重要な変化の背景には外圧があった。日本人と外国人の国際結婚が増えたことで、国際離婚も増加。日本人の親(主に母親)が外国人の親の同意を得ずに子供を連れ去る例もあり、国際問題になっている。 日本では離婚すれば多くの場合、子供と同居する親が親権を取り、もう一方の親は子供に会えない状況になりがちだ。家庭内暴力(DV)などの理由で逃げる親もいるので、必ずしも子供を連れ出したほうが悪いとは言えないが、海外では「子供を誘拐した日本人の親は犯罪者」と紹介されることが多く、大きな社会問題になっていた。 20年7月には欧州議会が、日本人の親による「子供の連れ去り」を懸念し、共同親権に向けた法改正などを求める対日決議を採択。国境を越えた子供の連れ去りが発生した場合は元の居住国に返すことなどを定めたハーグ条約の履行も求めた。 欧米諸国では一方の親が他方の親の同意を得ずに子供の居所を移動させることは誘拐行為で、重大な犯罪だ。しかし、日本では違法な行為とされていないことで批判を浴びた。また日本では離婚後に片親にしか親権が認められないため、別居親は子供に会えないと欧米では理解された』、「日本人の親(主に母親)が外国人の親の同意を得ずに子供を連れ去る例もあり、国際問題になっている・・・海外では「子供を誘拐した日本人の親は犯罪者」と紹介されることが多く、大きな社会問題になっていた。 20年7月には欧州議会が、日本人の親による「子供の連れ去り」を懸念し、共同親権に向けた法改正などを求める対日決議を採択。国境を越えた子供の連れ去りが発生した場合は元の居住国に返すことなどを定めたハーグ条約の履行も求めた・・・欧米諸国では一方の親が他方の親の同意を得ずに子供の居所を移動させることは誘拐行為で、重大な犯罪だ。しかし、日本では違法な行為とされていないことで批判を浴びた。また日本では離婚後に片親にしか親権が認められないため、別居親は子供に会えないと欧米では理解された」、「欧州議会」でまで取上げられたというのは、恥ずかしいことだ。この問題を放置してきた日本の司法当局の責任は重大だ。
・『不勉強な海外マスコミのせい 実際は、親権と子供に会う権利(面会交流権)は別のものだ。家庭裁判所で手続きをすれば面会交流ができると知らないか、知っていても手続きをしなかった外国人の別居親がいる。そうした点が、欧米の人々に対してきちんと説明されなかったことが誤解につながった。 それは完全に海外マスコミのせいだと、私は思うようになった。私も含めて日本の民法について不勉強だったり、文化の違いを理解していない記者が、「日本には共同親権がないから離婚後、別居親と子供の関係が崩れる」と説明してしまった。) 日本で共同親権についての議論が本格的に浮上した際、私は反対派の意見をよく聞き、フランスの親権と日本の親権の意味を勉強した。その結果、「日本も共同親権を導入したほうがいい」という私の意見は180度ではないが、一部変わった。日本での共同親権と、われわれ欧米人が思う共同親権の中身が違うからだ。 フランスの場合は「親が別れても親権は変わらない」、つまり共同親権が原則で、単独親権は極めて例外だ。また、別居親の親権には面会交流権も含まれる。そのためDVや虐待を理由に家庭裁判所の判断で親権を失った別居親は、面会交流権も失う』、民法は確か「フランス」をお手本にした筈だが、「親権」や「面会交流権」は「フランス」とは異なっているようだ。他の欧米諸国も「フランス」に近いのであれば、日本が変更すべきだが、各国様々であれば、そのまま放置してもよさそうだ。
・『日本では親権と面会交流権は別々の権利 共同親権があっても行使が困難な場合は、裁判所が日常の親権行使を同居親の単独に制限できる。その際も面会交流権は残るが、子供にとってリスクがある場合は裁判所の判断でその権利を停止する。 日本では、親権と面会交流権は別々の権利だ。それを理解せず、共同親権になれば自動的に面会交流権も得られると考えた外国人が多かったと思われる。だから、日本政府に「共同親権を導入してほしい」という海外からの強い圧力があったのではないか。 5月に成立した改正法はその点に関して曖昧だ。親権に面会交流権が含まれているかどうかが分かりにくいし、そのことで争いが起こるリスクが高い。 共同親権の反対派は、家庭裁判所が共同親権が妥当と判断すれば、離婚後もDVや虐待が継続してしまうことを危惧する。「DVや虐待がある場合は裁判所が単独親権にする」と政府は反論するが、本当にそうなるかは不安だ。ここが主な問題だと思う。DVがあったと証明することは難しいし、実際の状況を判断するために調査が必要だが、日本ではDV対策が明らかに不十分だ。裁判所が間違って判断するリスクを否定できない。) その問題を解決せずに共同親権を可能にするのは、女性や子供の安全への脅威であると認めないといけない。一方で「嘘のDV告発をされた」と訴える男性もいるので、しっかり調査ができればそうした例も減らすことができる。DV対策やDVの立証方法を強化することが急務だろう。 日本では離婚後、家庭裁判所の判断で面会交流権を得た別居親に子供を会わせない同居親がいたとしても、罰則がない。それが多くの国との大きな違いで、誤解が生まれた原因の1つと考えられる』、我が国でも「DV対策やDVの立証方法を強化」するよ同時に、「面会交流権を得た別居親に」は子供と会う権利を保証すべきだ。
・『グローバル化の限界が露呈 フランスの場合、親権を持つ別居親はDVや虐待の犯罪歴がない限り、面会交流権も持つ。同居親の一方的な都合で別居親の面会交流権が守られなければ、別居親は被害届を出すことができる(同居親は最大で懲役1年または1万5000ユーロの罰金が科される可能性がある)。 日本の状況は大きく異なる。厚生労働省の調査(21年)では、面会交流が実施されているのは母子家庭で30・2%、父子家庭で48%にすぎない。日本弁護士連合会の調査(14年)では、調停で合意した親子交流が全くできていない人の割合は44%だ。なぜそうなっているのか、理由を把握することが重要だが、共同親権を導入するだけで状況が改善するとは思わない。 ここまで説明してきた点の背景には、日本と欧米の社会や文化の無視できない違いがある。同時に日本はG7の一国であり、他の加盟国とさまざまな分野で協力し、ハーグ条約などにも署名した。そうした約束を守らないと、国際社会から批判を受ける。 これはまさにグローバル化の限界だと思う。それぞれの国の文化や社会構成は簡単に変更できないので、国際ルールに賛同する前に十分に国内で議論し、適切なプロセスで法律を改正することが重要だ。国際的批判や外圧を止めるために、不十分な議論に基づいて中途半端な法改正をすれば、誰の利益にもならないリスクがある。 今回、「日本でも共同親権が可能だ」と政府は国際社会に対して言えるようになった。しかし共同親権導入の本当の目的が不明のままで、国内外の賛成派からも反対派からも批判が止まらない可能性が高い。親子の交流などについて、根本的な問題解決につながることもあまり期待できない。 改正法の中身は、親権の共同行使と単独行使の境界などが曖昧すぎるから、これからさまざまな具体的なことを決定していくことになる。その段階では、子供の利益を第一に考えてほしい』、「日本はG7の一国であり、他の加盟国とさまざまな分野で協力し、ハーグ条約などにも署名した。そうした約束を守らないと、国際社会から批判を受ける。 これはまさにグローバル化の限界だと思う。それぞれの国の文化や社会構成は簡単に変更できないので、国際ルールに賛同する前に十分に国内で議論し、適切なプロセスで法律を改正することが重要だ」、その通りだ。
次に、8月27日付け現代ビジネスが掲載した「「京アニ事件死刑判決」は「国民への忖度」だったのか?「判決に矛盾が内在してしまう司法の問題」と今こそ考えるべき「刑法39条削除論」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/136027
・『世間が大騒ぎするような重大な殺人事件が起こると、必ず「精神鑑定」という難題が浮上する。 鑑定の結果、加害者に精神障害が認められると、刑法39条の規定で無罪か刑の軽減になる。 厳罰派は、被害者感情を持ち出して、「犯罪をした精神障害者にも処罰を与えるべきだ」と主張する。 一方、精神科医や人権派弁護士らは「精神障害者に必要なのは、処罰ではなく治療だ」と主張する。 議論は一向に進まず平行線のままだが、刑法39条をめぐるこの混乱をどう考えるべきだろうか。 前編『「遺族は到底納得できない」...なぜ5人殺傷で罪に問われないのか、意味不明な行為ほど罰が軽くなる「刑法39条の大矛盾」』から続く』、この記事だけでなく、報道の多くは、「京アニ」の建物の構造上で欠陥に触れてないが、私は二階への階段が1つしかない構造にも被害を大きくした原因があると思う。
・『起訴前鑑定で不起訴になるケースが9割 犯罪白書によると、2022年における刑法犯の検挙人員は16万9409人。そのうち精神障害者等(精神障害者1039人+精神障害の疑いのある者305人)は1344人。刑法犯の検挙人員総数のうち、精神障害者等の比率は0.8%だった。 検察庁の調査では、同年、心神喪失を理由に不起訴処分に付された被疑者(過失運転致死傷等及び道交違反を除く)は370人。また、最高裁判所事務総局の資料によると、第1審において心神喪失を理由に無罪となった者は4人だった。 全体で不起訴人員は約14万人いるため、精神障害者が不起訴になるケースは少ないと思われるかもしれない。 しかし22年では、起訴前鑑定などで心神喪失や心神耗弱が指摘され、検察官が心神喪失者等医療観察法に基づいて申し立てた者278人のうち、258人が不起訴になっているというデータもある。つまり、ほとんどが不起訴になっている。 九州工業大学名誉教授(刑事法学)で、著書に『刑法39条はもういらない』(青弓社)がある、佐藤直樹氏が解説する。 「例年、精神障害犯罪者が起こした事件のうち、約9割が起訴前鑑定で責任無能力とされ、不起訴になっています。その場合、犯罪としてカウントされないため、犯罪事実の解明がまったくされず、その事実がなかったことになる。 裁判が行われないことは精神障害者当人にとっても問題がある。なぜかと言えば、精神障害者から憲法32条の『裁判を受ける権利』を奪っているから。刑法39条は、精神障害者を人権の担い手としての『人間』というカテゴリーから、排除する役割を果たしているのです」(以下「」は佐藤氏)』、「例年、精神障害犯罪者が起こした事件のうち、約9割が起訴前鑑定で責任無能力とされ、不起訴になっています。その場合、犯罪としてカウントされないため、犯罪事実の解明がまったくされず、その事実がなかったことになる。 裁判が行われないことは精神障害者当人にとっても問題がある。なぜかと言えば、精神障害者から憲法32条の『裁判を受ける権利』を奪っているから。刑法39条は、精神障害者を人権の担い手としての『人間』というカテゴリーから、排除する役割を果たしているのです」、言われてみれば、その通りだ。
・『京アニ事件死刑判決は国民への忖度か 刑法39条の規定は「精神鑑定の結果は正しい」ことが前提となっているが、精神科医によって診断結果が異なることは決して稀ではなく、むしろ見解が一致することはほぼない。 一方で、精神鑑定が裁判でまったく機能していないというケースもある。どういうことだろうか。 「たとえば、京アニ事件の場合、起訴前鑑定では『妄想性パーソナリティ障害で、犯行時の行動には影響はほとんどみられない』と診断されました。これは『人格がヘンなだけ』という意味。公判中の精神鑑定では『重度の妄想性障害で、妄想が犯行動機を形成している』と診断されたのですが、これは『明らかに病気』という意味です。 最終的に京都地裁は『重度の妄想性障害。放火や殺人を選択したことについては、妄想の影響は認められない』として死刑判決を下したのですが、『病気』を認定するのなら、犯行に妄想の影響はないという判断になるのはおかしい。 つまり、裁判所が『被告は妄想性障害だとしながら、完全責任能力がある』という無理筋の結論に至ったのは、『死刑以外は許さない』という国民感情に忖度したからであり、精神鑑定の結果はまったく考慮されていないのです」 そもそも、精神科医や裁判所が、先述の「不可知論」がいうように、犯行時の責任能力というものを正確に判断できるわけがないと、佐藤氏は指摘する。 「いま実際に裁判でやっていることは、犯人が合理的に行動しているかどうか、犯罪行為が外から見て了解できるかどうか、の判断にすぎません。責任能力の実質であるはずの『精神状態がおかしくないかどうか』(生物学的要件)と、『善悪の判断能力の有無』『制御能力の有無』(心理学的要件)はほぼ検討されず、まったく別のところで、責任能力が判断されているのが実態なのです」』、「「いま実際に裁判でやっていることは、犯人が合理的に行動しているかどうか、犯罪行為が外から見て了解できるかどうか、の判断にすぎません。責任能力の実質であるはずの『精神状態がおかしくないかどうか』(生物学的要件)と、『善悪の判断能力の有無』『制御能力の有無』(心理学的要件)はほぼ検討されず、まったく別のところで、責任能力が判断されているのが実態なのです」、なるほど。
・『刑法39条は精神障害者を差別している 佐藤氏が語るように、責任能力の規定が精神障害者の「人間」というカテゴリーからの排除を意味していた。そうだとすれば、刑法39条は削除されるべきだと主張する。 「39条が廃止されれば、『人権』という観点からいっても、起訴前に責任能力の有無を判断されることもなくなりますし、精神障害者の『裁判を受ける権利』や、あえていえば『処罰される権利』も保障することになります。精神鑑定は、責任能力の判断のために使うのではなく、『情状』を考慮するために使われるべき。この場合は黙秘権を保障するために、新たに『鑑定拒否権』を確立する必要があります。というのは、現状の精神鑑定では、被疑者・被告人が沈黙していても、その状態を手がかりに鑑定結果を出すことができるからです。精神障害犯罪者を『人間』にとどめておくためにも刑法39条を削除すべきではないでしょうか」 あまり知られていないが、かつて刑法40条に「瘖唖(いんあ)者(聴力障害者)の責任能力」の規定があったものの、1995年の刑法の平易化の際に、『瘖唖者への差別である』として削除された経緯がある。 であれば、同様に刑法39条の規定も精神障害者に対する差別ではないだろうか』、「精神鑑定は、責任能力の判断のために使うのではなく、『情状』を考慮するために使われるべき。この場合は黙秘権を保障するために、新たに『鑑定拒否権』を確立する必要があります。というのは、現状の精神鑑定では、被疑者・被告人が沈黙していても、その状態を手がかりに鑑定結果を出すことができるからです。精神障害犯罪者を『人間』にとどめておくためにも刑法39条を削除すべきではないでしょうか」、同感である。
第三に、10月3日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した税理士・岡野相続税理士法人 代表社員の岡野雄志氏による「不祥事が続く成年後見制度、相続人の認知症リスクに備え「遺す側」ができる対策とは?【税理士が解説】」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/351395
・『今年4月にRKB毎日放送で成年後見人の特集が放映され、成年後見制度の「現実」が明らかとなった。それをきっかけに、制度のしくみや問題点に注目が集まっている。成年後見人による財産の着服などの不祥事も続いているが、本制度は相続時にも欠かせない制度であることをご存じだろうか。相続人の中に「認知症」をはじめとする判断能力の低下が見られる家族がいた場合で、法定相続を選択せず遺産分割協議を行う際には、成年後見制度を利用する必要がある。2023年6月には、認知症の親と相続をテーマにした映画「親のお金は誰のもの」(監督・田中光敏)が公開され、相続と成年後見制度の問題点に光をあてている。そこで本記事では、認知症の相続人がいる場合の相続手続きについて、成年後見制度の実情も交えながら詳しく解説する。(税理士・岡野相続税理士法人 代表社員 岡野雄志)』、「相続人の中に「認知症」をはじめとする判断能力の低下が見られる家族がいた場合で、法定相続を選択せず遺産分割協議を行う際には、成年後見制度を利用する必要がある」、なるほど。
・『相続時に「成年後見人」が必要となるケース 家族が亡くなり相続が開始されると、相続人全員で遺産分割協議を行う必要がある。遺産分割協議では誰が何を、いくら相続するのか決めていくが、相続人の中に判断能力が不十分となっている方がいる場合はどうすればよいのだろうか。結論から言うと、その方自身の相続権を守るためにも「成年後見人」を立てる必要がある。 今年5月8日に開催された「第2回認知症施策推進関係者会議」では、厚生労働省の研究班が2040年時点での日本国内における認知症患者数は約584万人に上るとの予想を発表した。高齢化社会の日本では認知症は身近な病であり、相続を迎えた時に成年後見人が必要になるケースは少なくないのだ。 「被相続人が遺した財産は少ないし、どうせ認知症の介護もするのだから無視していいだろう」と勝手に遺産分割協議を進めてしまったら、遺産分割協議そのものが無効となってしまう。判断能力が不十分な相続人に代わって署名・捺印を行うと、私文書偽造の罪に問われる可能性もある。 成年後見人の申し立てから選任までは時間を要するため億劫に感じる方も多いかもしれない。しかし、適切に相続を進めるためにも、認知能力が不十分な相続人がいる相続では、成年後見人を立てよう』、「「被相続人が遺した財産は少ないし、どうせ認知症の介護もするのだから無視していいだろう」と勝手に遺産分割協議を進めてしまったら、遺産分割協議そのものが無効となってしまう。判断能力が不十分な相続人に代わって署名・捺印を行うと、私文書偽造の罪に問われる可能性もある・・・認知能力が不十分な相続人がいる相続では、成年後見人を立てよう」、なるほど。
・『成年後見制度は法定後見と任意後見の2種類 成年後見人とは、認知症だけではなく知的障害や精神障害などの症状がある方に代わって「法律行為」を行える人を意味する。 成年後見制度には、法定後見と任意後見の2種類がある。任意後見は本人に判断能力があり、将来に備えて本人の意思で契約するものであるのに対し、法定後見は、すでに判断能力が不十分である方向けの制度である。法定後見には「成年後見人」・「保佐人」・「補助人」の3種類があるが、相続の際は遺産分割などにおいて高度な判断が欠かせないため、全ての法律行為に対して代理権を持つ成年後見人が必要となる。 保佐人も相続人に代わって相続に参加することが可能だが、付与されているのは民法に定められた行為を行う際に必要な同意権であり、代理権については家庭裁判所の審判が下りなければ付与されない。相続時には預貯金の解約や不動産の取得なども行う必要があり、保佐人にはできないことが多いため、成年後見人を選任することが妥当だ。 成年後見人が必要となった場合、必要となった方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てを行う必要がある。申し立てから選任までは1~2カ月の期間を要し、この間は遺産分割協議を終えることはできない。 医師による診断書などの必要書類をそろえ提出すると、家庭裁判所による審問や調査が始まる。判断能力については鑑定が行われることも多く、さまざまな調査の結果や現在の本人を取り巻く環境を踏まえて、家庭裁判所が適任と考える成年後見人を選ぶ。申立時には成年後見人に選んで欲しい人を家庭裁判所側に伝えられるが、希望が通らないケースも多い』、「成年後見人とは、認知症だけではなく知的障害や精神障害などの症状がある方に代わって「法律行為」を行える人を意味する。 成年後見制度には、法定後見と任意後見の2種類がある。任意後見は本人に判断能力があり、将来に備えて本人の意思で契約するものであるのに対し、法定後見は、すでに判断能力が不十分である方向けの制度である。法定後見には「成年後見人」・「保佐人」・「補助人」の3種類があるが、相続の際は遺産分割などにおいて高度な判断が欠かせないため、全ての法律行為に対して代理権を持つ成年後見人が必要となる。 保佐人も相続人に代わって相続に参加することが可能だが、付与されているのは民法に定められた行為を行う際に必要な同意権であり、代理権については家庭裁判所の審判が下りなければ付与されない・・・相続時には預貯金の解約や不動産の取得なども行う必要があり、保佐人にはできないことが多いため、成年後見人を選任することが妥当だ。 成年後見人が必要となった場合、必要となった方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てを行う必要がある。申し立てから選任までは1~2カ月の期間を要し、この間は遺産分割協議を終えることはできない」、なるほど。
・『成年後見人はなぜ批判されるのか 冒頭で触れたが、今年放映された成年後見人に関する報道が大きな話題となった。放送では、被後見人に対する支出が大きく制限されることや、成年後見人の報酬の実態などが明らかとなった。成年後見人による預貯金などの着服問題もあわせて放映されたため、制度への批判が噴出している。 成年後見人への不満は上記に留まらず、使いにくい制度としても知られている。 まず、柔軟な資産運用はできなくなる。財産は維持を目的に管理するだけであり、投資などの行為で増やすことはできなくなるからだ。 また、家庭裁判所が選んだ成年後見人と家族との意思疎通が上手く進まず、対立することも多い。成年後見人は一度選出されると、特別な事情が認められない限り外すこともできない。相続時に必要となった場合、相続手続き完了後も成年後見人を外せないのだ。こうした制度の難点に加えて着服などの不祥事も重なり、制度そのものが批判されるに至ったのだ』、「成年後見人への不満は上記に留まらず、使いにくい制度としても知られている。 まず、柔軟な資産運用はできなくなる。財産は維持を目的に管理するだけであり、投資などの行為で増やすことはできなくなるからだ。 また、家庭裁判所が選んだ成年後見人と家族との意思疎通が上手く進まず、対立することも多い。成年後見人は一度選出されると、特別な事情が認められない限り外すこともできない。相続時に必要となった場合、相続手続き完了後も成年後見人を外せないのだ」、なるほど。
・『成年後見人が厳しい財産管理を行う理由 成年後見人が被後見人の同居家族の支出に対して、厳しい意見を伝えることがある。この部分はRKB毎日放送の番組でもクローズアップされていたが、なぜこのような厳しい管理が行われているのか。 実は、同居家族が被後見人の財産に頼って生活してしまうケースがあるのだ。家族が被後見人の財産を必要以上に費消しかねないため、選ばれた成年後見人は厳しく資産を管理し、時には家族に指導をせざるを得ない。財産の状況は定期的に家庭裁判所への報告義務もある。 成年後見人は「被後見人の資産を守る」ことが重要な仕事だが、家族は被後見人も含めた「家族の暮らしを守る」ことを求めるがゆえに、成年後見人と家族は時に対立するのだ。この対立を避けるためには、双方の歩み寄りが大切である』、「同居家族が被後見人の財産に頼って生活してしまうケースがあるのだ。家族が被後見人の財産を必要以上に費消しかねないため、選ばれた成年後見人は厳しく資産を管理し、時には家族に指導をせざるを得ない。財産の状況は定期的に家庭裁判所への報告義務もある。 成年後見人は「被後見人の資産を守る」ことが重要な仕事だが、家族は被後見人も含めた「家族の暮らしを守る」ことを求めるがゆえに、成年後見人と家族は時に対立するのだ。この対立を避けるためには、双方の歩み寄りが大切である」、なるほど。
・『成年後見人を回避して相続する方法はあるのか 相続人に認知症の方がいる場合に、成年後見人を回避して相続する方法はあるのだろうか。結論を言うと、認知症の方の相続権を守り、不利益を被らないようにするためにも「相続開始後は回避できない」。 加えて、被相続人に債務が多く相続放棄を検討する場合も、成年後見人が手続きをしなければ相続放棄できない。 成年後見制度を回避して円満な相続を進めるためには、生前から遺言書・家族信託・贈与など対策が必要となる。たとえば、遺言書で財産を与える人を指定しておけば遺産分割協議は不要だ。成年後見制度を利用しなくても財産の承継がスムーズに行える』、「認知症の方の相続権を守り、不利益を被らないようにするためにも「相続開始後は回避できない」。 加えて、被相続人に債務が多く相続放棄を検討する場合も、成年後見人が手続きをしなければ相続放棄できない。 成年後見制度を回避して円満な相続を進めるためには、生前から遺言書・家族信託・贈与など対策が必要となる。たとえば、遺言書で財産を与える人を指定しておけば遺産分割協議は不要だ。成年後見制度を利用しなくても財産の承継がスムーズに行える」、なるほど。
・『成年後見制度にもメリットはある 問題点が指摘されている成年後見制度だが、相続手続きに代理人として参加できる以外のメリットがあることも知っておこう。 認知症の症状がある方を介護施設に入居させたい場合、居住していた不動産の売却や介護施設との契約を進めたいと考える方も多いだろう。判断能力が低下していると法律行為である契約ができないが、成年後見人がいれば進めることが可能だ。不動産の売却も、家庭裁判所の許可をもらえればスムーズに行える。 また、詐欺と考えられるような契約を被後見人が結んでしまった場合は、成年後見人が取り消しできる。認知症の方は不本意な契約を結ばされることも多いため、成年後見人が取消権を行使できることも本制度の大きなメリットだ』、「居住していた不動産の売却や介護施設との契約を進めたいと考える方も多いだろう。判断能力が低下していると法律行為である契約ができないが、成年後見人がいれば進めることが可能だ。不動産の売却も、家庭裁判所の許可をもらえればスムーズに行える。 また、詐欺と考えられるような契約を被後見人が結んでしまった場合は、成年後見人が取り消しできる」、なるほど。
・『自分が認知症になったらどうする? 家族のためにできる備えとは 自身が将来認知症になることを想定すると、どのような相続対策ができるだろうか。家族に財産を残したいと考えているなら、自身が認知症になる前に贈与を開始することが大切だ。認知症の症状が出てから開始された生前贈与は無効となるおそれがある。相続対策も認知症になると進まなくなってしまうため、早期の贈与も検討しよう。 加えて、任意後見制度を知っておくこともおすすめだ。任意後見は本人の判断能力が十分なうちから、将来に備えて任意後見人を自身で選んでおける。契約は公正証書で取り交わすため安全性が高く、契約内容は柔軟に変えられる。任意後見人にはできない業務もあるが、任意後見契約の内容に「遺産分割協議の代理」を加えておくことで、相続時にも相続人の代理人として参加できる。 生前にできる相続対策は多く、早めに活用することで成年後見人を立てることを回避する効果もある。特に事業継承や不動産の多い相続は複雑な手続きが多く、相続開始後に頭を抱える相続人も少なくない。株式や不動産を誰に相続するのか、生前からの対策を税理士とともに進めてほしい。早期の相続対策は、二次相続への備えにもなる。 本記事では成年後見人の問題点について、メリットも交えながら解説した。成年後見人が必要となるご家族は、今後も増える可能性が高い。ぜひ本記事内でも紹介したように、贈与や任意後見の必要性を家族内でじっくり話し合い関心を深めてほしい。 備えあれば憂いなし、万が一に備えて今できることを始めよう』、「相続対策も認知症になると進まなくなってしまうため、早期の贈与も検討しよう。 加えて、任意後見制度を知っておくこともおすすめだ。任意後見は本人の判断能力が十分なうちから、将来に備えて任意後見人を自身で選んでおける。契約は公正証書で取り交わすため安全性が高く、契約内容は柔軟に変えられる。任意後見人にはできない業務もあるが、任意後見契約の内容に「遺産分割協議の代理」を加えておくことで、相続時にも相続人の代理人として参加できる。 生前にできる相続対策は多く、早めに活用することで成年後見人を立てることを回避する効果もある・・・相続対策も認知症になると進まなくなってしまうため、早期の贈与も検討しよう。 加えて、任意後見制度を知っておくこともおすすめだ。任意後見は本人の判断能力が十分なうちから、将来に備えて任意後見人を自身で選んでおける。契約は公正証書で取り交わすため安全性が高く、契約内容は柔軟に変えられる。任意後見人にはできない業務もあるが、任意後見契約の内容に「遺産分割協議の代理」を加えておくことで、相続時にも相続人の代理人として参加できる。 生前にできる相続対策は多く、早めに活用することで成年後見人を立てることを回避する効果もある。特に事業継承や不動産の多い相続は複雑な手続きが多く、相続開始後に頭を抱える相続人も少なくない。株式や不動産を誰に相続するのか、生前からの対策を税理士とともに進めてほしい。早期の相続対策は、二次相続への備えにもなる」、なあでも「生前にできる相続対策は多く、早めに活用することで成年後見人を立てることを回避する効果もある。特に事業継承や不動産の多い相続は複雑な手続きが多く、相続開始後に頭を抱える相続人も少なくない」、やはり「生前」から早目に「相続対策」に取り組んでおくことが肝心なようだ。
タグ:司法 (その19)(フランス人記者が見た日本の「離婚後共同親権」が危うい理由、「京アニ事件死刑判決」は「国民への忖度」だったのか?「判決に矛盾が内在してしまう司法の問題」と今こそ考えるべき「刑法39条削除論」、不祥事が続く成年後見制度 相続人の認知症リスクに備え「遺す側」ができる対策とは?【税理士が解説】) Newsweek日本版 西村カリン氏による「フランス人記者が見た日本の「離婚後共同親権」が危うい理由」 「日本人の親(主に母親)が外国人の親の同意を得ずに子供を連れ去る例もあり、国際問題になっている・・・海外では「子供を誘拐した日本人の親は犯罪者」と紹介されることが多く、大きな社会問題になっていた。 20年7月には欧州議会が、日本人の親による「子供の連れ去り」を懸念し、共同親権に向けた法改正などを求める対日決議を採択。国境を越えた子供の連れ去りが発生した場合は元の居住国に返すことなどを定めたハーグ条約の履行も求めた・・・ 欧米諸国では一方の親が他方の親の同意を得ずに子供の居所を移動させることは誘拐行為で、重大な犯罪だ。しかし、日本では違法な行為とされていないことで批判を浴びた。また日本では離婚後に片親にしか親権が認められないため、別居親は子供に会えないと欧米では理解された」、「欧州議会」でまで取上げられたというのは、恥ずかしいことだ。この問題を放置してきた日本の司法当局の責任は重大だ。 民法は確か「フランス」をお手本にした筈だが、「親権」や「面会交流権」は「フランス」とは異なっているようだ。他の欧米諸国も「フランス」に近いのであれば、日本が変更すべきだが、各国様々であれば、そのまま放置してもよさそうだ。 我が国でも「DV対策やDVの立証方法を強化」するよ同時に、「面会交流権を得た別居親に」は子供と会う権利を保証すべきだ。 「日本はG7の一国であり、他の加盟国とさまざまな分野で協力し、ハーグ条約などにも署名した。そうした約束を守らないと、国際社会から批判を受ける。 これはまさにグローバル化の限界だと思う。それぞれの国の文化や社会構成は簡単に変更できないので、国際ルールに賛同する前に十分に国内で議論し、適切なプロセスで法律を改正することが重要だ」、その通りだ。 現代ビジネス 「「京アニ事件死刑判決」は「国民への忖度」だったのか?「判決に矛盾が内在してしまう司法の問題」と今こそ考えるべき「刑法39条削除論」」 この記事だけでなく、報道の多くは、「京アニ」の建物の構造上で欠陥に触れてないが、私は二階への階段が1つしかない構造にも被害を大きくした原因があると思う。 「例年、精神障害犯罪者が起こした事件のうち、約9割が起訴前鑑定で責任無能力とされ、不起訴になっています。その場合、犯罪としてカウントされないため、犯罪事実の解明がまったくされず、その事実がなかったことになる。 裁判が行われないことは精神障害者当人にとっても問題がある。なぜかと言えば、精神障害者から憲法32条の『裁判を受ける権利』を奪っているから。刑法39条は、精神障害者を人権の担い手としての『人間』というカテゴリーから、排除する役割を果たしているのです」、言われてみれば、その通りだ。 「「いま実際に裁判でやっていることは、犯人が合理的に行動しているかどうか、犯罪行為が外から見て了解できるかどうか、の判断にすぎません。責任能力の実質であるはずの『精神状態がおかしくないかどうか』(生物学的要件)と、『善悪の判断能力の有無』『制御能力の有無』(心理学的要件)はほぼ検討されず、まったく別のところで、責任能力が判断されているのが実態なのです」、なるほど。 「精神鑑定は、責任能力の判断のために使うのではなく、『情状』を考慮するために使われるべき。この場合は黙秘権を保障するために、新たに『鑑定拒否権』を確立する必要があります。というのは、現状の精神鑑定では、被疑者・被告人が沈黙していても、その状態を手がかりに鑑定結果を出すことができるからです。精神障害犯罪者を『人間』にとどめておくためにも刑法39条を削除すべきではないでしょうか」、同感である。 ダイヤモンド・オンライン 岡野雄志氏による「不祥事が続く成年後見制度、相続人の認知症リスクに備え「遺す側」ができる対策とは?【税理士が解説】」 「相続人の中に「認知症」をはじめとする判断能力の低下が見られる家族がいた場合で、法定相続を選択せず遺産分割協議を行う際には、成年後見制度を利用する必要がある」、なるほど。 「「被相続人が遺した財産は少ないし、どうせ認知症の介護もするのだから無視していいだろう」と勝手に遺産分割協議を進めてしまったら、遺産分割協議そのものが無効となってしまう。判断能力が不十分な相続人に代わって署名・捺印を行うと、私文書偽造の罪に問われる可能性もある・・・認知能力が不十分な相続人がいる相続では、成年後見人を立てよう」、なるほど。 「成年後見人とは、認知症だけではなく知的障害や精神障害などの症状がある方に代わって「法律行為」を行える人を意味する。 成年後見制度には、法定後見と任意後見の2種類がある。任意後見は本人に判断能力があり、将来に備えて本人の意思で契約するものであるのに対し、法定後見は、すでに判断能力が不十分である方向けの制度である。法定後見には「成年後見人」・「保佐人」・「補助人」の3種類があるが、相続の際は遺産分割などにおいて高度な判断が欠かせないため、全ての法律行為に対して代理権を持つ成年後見人が必要となる。 保佐人も相続人に代わって相続に参加することが可能だが、付与されているのは民法に定められた行為を行う際に必要な同意権であり、代理権については家庭裁判所の審判が下りなければ付与されない・・・相続時には預貯金の解約や不動産の取得なども行う必要があり、保佐人にはできないことが多いため、成年後見人を選任することが妥当だ。 成年後見人が必要となった場合、必要となった方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てを行う必要がある。申し立てから選任までは1~2カ月の期間を要し、この間は遺産分割協議を終えることはできない」、なる ほど。 「成年後見人への不満は上記に留まらず、使いにくい制度としても知られている。 まず、柔軟な資産運用はできなくなる。財産は維持を目的に管理するだけであり、投資などの行為で増やすことはできなくなるからだ。 また、家庭裁判所が選んだ成年後見人と家族との意思疎通が上手く進まず、対立することも多い。成年後見人は一度選出されると、特別な事情が認められない限り外すこともできない。相続時に必要となった場合、相続手続き完了後も成年後見人を外せないのだ」、なるほど。 「同居家族が被後見人の財産に頼って生活してしまうケースがあるのだ。家族が被後見人の財産を必要以上に費消しかねないため、選ばれた成年後見人は厳しく資産を管理し、時には家族に指導をせざるを得ない。財産の状況は定期的に家庭裁判所への報告義務もある。 成年後見人は「被後見人の資産を守る」ことが重要な仕事だが、家族は被後見人も含めた「家族の暮らしを守る」ことを求めるがゆえに、成年後見人と家族は時に対立するのだ。この対立を避けるためには、双方の歩み寄りが大切である」、なるほど。 「居住していた不動産の売却や介護施設との契約を進めたいと考える方も多いだろう。判断能力が低下していると法律行為である契約ができないが、成年後見人がいれば進めることが可能だ。不動産の売却も、家庭裁判所の許可をもらえればスムーズに行える。 また、詐欺と考えられるような契約を被後見人が結んでしまった場合は、成年後見人が取り消しできる」、なるほど。 「相続対策も認知症になると進まなくなってしまうため、早期の贈与も検討しよう。 加えて、任意後見制度を知っておくこともおすすめだ。任意後見は本人の判断能力が十分なうちから、将来に備えて任意後見人を自身で選んでおける。契約は公正証書で取り交わすため安全性が高く、契約内容は柔軟に変えられる。任意後見人にはできない業務もあるが、任意後見契約の内容に「遺産分割協議の代理」を加えておくことで、相続時にも相続人の代理人として参加できる。 生前にできる相続対策は多く、早めに活用することで成年後見人を立てることを回避する効 果もある・・・相続対策も認知症になると進まなくなってしまうため、早期の贈与も検討しよう。 加えて、任意後見制度を知っておくこともおすすめだ。任意後見は本人の判断能力が十分なうちから、将来に備えて任意後見人を自身で選んでおける。契約は公正証書で取り交わすため安全性が高く、契約内容は柔軟に変えられる。任意後見人にはできない業務もあるが、任意後見契約の内容に「遺産分割協議の代理」を加えておくことで、相続時にも相続人の代理人として参加できる。 生前にできる相続対策は多く、早めに活用することで成年後見人を立てることを回避する効果もある。特に事業継承や不動産の多い相続は複雑な手続きが多く、相続開始後に頭を抱える相続人も少なくない。株式や不動産を誰に相続するのか、生前からの対策を税理士とともに進めてほしい。早期の相続対策は、二次相続への備えにもなる」、なあでも「生前にできる相続対策は多く、早めに活用することで成年後見人を立てることを回避する効果もある。特に事業継承や不動産の多い相続は複雑な手続きが多く、相続開始後に頭を抱える相続人も少なくない」、やは り「生前」から早目に「相続対策」に取り組んでおくことが肝心なようだ。
トランプ(その54)(トランプがバイデンに与えてしまった「必殺技」...最高裁判決で無限の権力を手中に?、トランプ再選は米国経済・金融市場が抱える問題を増幅、衝撃の暴露...トランプとプーチンの「黒い蜜月」・核戦争を回避したバイデン政権の裏側が明らかに) [世界情勢]
トランプについては、本年7月30日に取上げた。今日は、(その54)(トランプがバイデンに与えてしまった「必殺技」...最高裁判決で無限の権力を手中に?、トランプ再選は米国経済・金融市場が抱える問題を増幅、衝撃の暴露...トランプとプーチンの「黒い蜜月」・核戦争を回避したバイデン政権の裏側が明らかに)である。
先ずは、本年8月6日付けNewsweek日本版が掲載したパックン(パトリック・ハーラン)による「トランプがバイデンに与えてしまった「必殺技」...最高裁判決で無限の権力を手中に?」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/pakkun/2024/08/post-97_1.php
・『<米連邦最高裁によると、トランプら歴代大統領の「公的行為」は刑事責任に問えない。それってバイデン現大統領は実質やり放題ってこと?と米出身芸人パックンは指摘します> このコラムを、バイデン米大統領は読んでいる。僕はそれを確信している。証拠は、前回僕がこのコラムで「バイデンは病気を理由に1週間ぐらい休みを取り大統領選から撤退して、その後職務に復帰する」というシナリオを描いたら、現実世界でそのとおりの流れになったこと! 新型コロナではなく胃痙攣の仮病が僕のおすすめだったけど、まあ細かいことは気にしない。 偶然だと思えない。絶対にチャットGPTで翻訳してこのコラムを読んでいるのだ、バイデンは。 ということで、今回はドナルド・トランプが絶対に大統領に返り咲かないようにする「決め手」をバイデンにお伝えしよう。みなさんも読んでいいけど、これはバイデンさん宛のメッセージだ。 へ?バイデン用ならなぜ英語で書かないの~? という疑問が浮かぶだろうけど、まあ、細かいことは気にしない』、興味深そうだ。
・『政敵の暗殺もおとがめなし? 実はバイデンは今までの大統領になかった、とんでもない必殺技を手に入れている。それも保守派判事が牛耳る連邦最高裁のおかげだ。7月、最高裁は大統領が「公的な行為」に関して刑事責任を負わないとする判決を出した。 以前から現役大統領は逮捕・訴追されないことになっていたが、この判決でさらに退任してからもずっと免責される新世界が開かれた。バイデン、チャンス! 幸い、大統領の職務の幅はとても広い。一番分かりやすいのは、憲法に定められている軍の最高司令官という立場。特殊部隊に指令を出すことは「公的な行為」に当たるから、政敵の暗殺を命じても司法上のおとがめはないようだ。 つまり、必殺技はまさに必「殺」技になり得る。リベラル派のソニア・ソトマイヨール判事も、先の判決の反対意見書でも実際にこのような危険性を指摘している。 もちろん、僕は暗殺もどんな暴力も一切推薦も擁護もしない。だが判決発表の数日後にトランプが「耳一髪」で暗殺を免れた事件が起きたことで、世の中では暗殺はバイデンが仕組んだとする陰謀論が出回っている。) 最高裁判決で免責を受けたことで、反対意見書で危惧されていたシナリオを実現させたという荒唐無稽な主張だ。もちろん僕はそんなことは信じない。そもそもバイデンのシナリオライターはソトマイヨールではなく、僕だからね。 とにかく、えぐすぎるから暗殺は忘れよう。暴力以外にも「公的な行為」としてできることは沢山ある。 例えば、大統領は行政府の長なので、財務省を通じて政府の予算を使うのも仕事だ。トランプ当選を防ぐため、与党民主党のカマラ・ハリス陣営にお金を大量に回すこともできるはず。選挙CMを大量に制作して放送できる!税金で! そういえば、放送・通信を管轄する米連邦通信委員会(FCC)も行政府に属する機関だ。公共の電波はバイデンの手中にある。 トランプのCMを流さないようにすることも、保守派大手のFOXニュースの放送認可を取り消すことも可能だ。トランプ派のスローガン「MAGA」を放送禁止用語に設定できる!そうなれば逆に反抗期の若者は口に出したくなるだろうけど』、「7月、最高裁は大統領が「公的な行為」に関して刑事責任を負わないとする判決を出した。 以前から現役大統領は逮捕・訴追されないことになっていたが、この判決でさらに退任してからもずっと免責される新世界が開かれた・・・大統領の職務の幅はとても広い。一番分かりやすいのは、憲法に定められている軍の最高司令官という立場。特殊部隊に指令を出すことは「公的な行為」に当たるから、政敵の暗殺を命じても司法上のおとがめはないようだ。 つまり、必殺技はまさに必「殺」技になり得る」、なるほど。
・『不正な捜査も免責? なんだったら、司法省も大統領の管轄。トランプもその側近も、邪魔してくるヤツを逮捕させることもできる!やろうと思えば、トランプ支持者を全員捕まえて、国外に追放することができる。不法移民全員をそうすると、トランプ本人が公約しているぐらい、国外追放はれっきとした「公的行為」だ。 ここで、このコラムを読んでいるバイデンは「ドワハハハハ!」と、高笑いし始めていることだろう。映画『アラジン』の最後に、悪党のジャファーが無限の力を手に入れ、巨人化していくシーンを思い出してください。あんな感じだ。 もちろん、上記のような権力乱用は法律違反であって、憲法違反でもある。公的な行為でも、権限を不正な目的で利用した場合、横領、背任、人権侵害などの犯罪に当たり、犯人は取り締まられてしかるべきだ。本来は。 だが最高裁の判決によると、その犯人が大統領である場合「目的」も審査することができない! 判決文の中で「たとえ捜査がでっち上げであったり、不正な目的で行われたりしたとしても、それは司法省の捜査や起訴機能に対する大統領の独占的権限を奪うものではない」と指摘。大統領が行政府をどう利用しても「絶対的な免責」があると、はっきりと結論付けている。 どんな悪業でも「公的な行為」であれば罪に問われないのだ。しかも、トランプを止めるのはむしろ善行でしょう、バイデンさん? おそらくいくつかの疑問が浮かんでいることでしょう。それにも答えておこう。) Q:例え大統領が免責されても、不正な命令を実行する公務員は逮捕・訴追されるのではないか? A:大統領が司法省に取り締まらないように命令すればいいし、たとえ有罪になっても(トランプが側近に対して何度もやったように)恩赦もできる! Q:自分の良心が働いて、部下の公務員が命令を断った場合は? A:更迭すればいい。逮捕もできる! Q:上下両院に弾劾されないのか? A:そんな動きがあるときも打つ手はある。大統領には(両院の意見が一致しないとき)議会を休会させる権限も憲法で規定されている。あと、何度も言うけど、議員たちを逮捕や国外追放できるぞ。 Q:国民が反発しない? A:国民なんか知るもんか。大統領が全能だ!ドワハハハハ! バイデン大統領は再び笑い始め、天に向かって指先から雷を放ち始めているだろう。究極のパワー!全宇宙を支配するのだ!と、叫んでいて、下半身が竜巻になっているはずだ。 僕、映画の見すぎかな......? まあ、『アラジン』のランプの精、ジーニーになることはなくても、均衡も抑制もなしに「公的な行為」で政敵を仕留められる大統領が独裁者になる危険性を今回の判決がはらんでいることは心から懸念している。 実は、バイデンも既にこのことに気づいている。判決が発表された日にテレビ会見で「この判決は、大統領のできることには実質的に制限がないことをほぼ確実に意味している」と指摘している。 しかし、それに気づいていても、権力を乱用しないのがバイデン。ハリスもきっとそうだと信じる。だが、万が一トランプになった場合はどうなのでしょうか......。 このコラムを、トランプが読んでいないことを祈ろう』、「トランプもその側近も、邪魔してくるヤツを逮捕させることもできる!やろうと思えば、トランプ支持者を全員捕まえて、国外に追放することができる。不法移民全員をそうすると、トランプ本人が公約しているぐらい、国外追放はれっきとした「公的行為」だ・・・最高裁の判決によると、その犯人が大統領である場合「目的」も審査することができない! 判決文の中で「たとえ捜査がでっち上げであったり、不正な目的で行われたりしたとしても、それは司法省の捜査や起訴機能に対する大統領の独占的権限を奪うものではない」と指摘。大統領が行政府をどう利用しても「絶対的な免責」があると、はっきりと結論付けている。 どんな悪業でも「公的な行為」であれば罪に問われないのだ・・・均衡も抑制もなしに「公的な行為」で政敵を仕留められる大統領が独裁者になる危険性を今回の判決がはらんでいることは心から懸念している」、現在の最高裁判事の殆どはトランプの息がかかっているとはいえ、飛んでもない判断を下すものだ。
次に、7月18日付け野村総合研究所の刊行物NRIに同研究所 エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏が寄稿した「トランプ再選は米国経済・金融市場が抱える問題を増幅:ドル高・円安が緩やかに修正されるのであれば日本経済にプラスだが。。。」を紹介しよう。
https://www.nri.com/jp/knowledge/blog/lst/2024/fis/kiuchi/0718
・『トランプ再選は「ドル高、株高要因」か「ドル安、株安要因」か? 7月13日に起きた襲撃事件を受けて、米国大統領選はトランプ前大統領が優勢との見方が一段と強まっている。しかし、それを受けた金融市場の反応は概して薄い(コラム「金融市場はトランプ再選をどう織り込むか:トランプトレードの再来も」、2024年7月5日)。 見方は分かれるところではあるが、トランプ前大統領が再選を果たし、同氏の経済政策、いわゆる「トランポノミクス2.0」が実施されれば、それは、世界経済、米国経済にマイナスとなり、世界的な株安とドル安を生じさせると筆者は考えている。ただしそれがどの程度の規模になるのかは、今後の米国経済の行方次第だろう。「トランポノミクス2.0」は、米国経済・金融が抱える問題を増幅する役割を果たすことになるのではないか。 トランプ再選については、「ドル高、株高要因」との見方と、筆者のように「ドル安、株安要因」との見方の双方がある。実際、「トランポノミクス2.0」の経済・金融への影響には両面があることは確かである。 トランプ氏が公約に掲げる追加関税は、国内物価を押し上げ、金利上昇要因となる。それはドル高要因にもなる。また、大型減税の延長や社会保障支出の抑制などを行わない姿勢は、財政悪化をもたらし、これも金利上昇を通じてドル高要因になり得る。また、大型減税の延長や規制緩和は景気にプラス効果を生む。それは株高要因であり、ドル高要因ともなる』、「トランプ再選については、「ドル高、株高要因」との見方と、筆者のように「ドル安、株安要因」との見方の双方がある・・・トランプ氏が公約に掲げる追加関税は、国内物価を押し上げ、金利上昇要因となる。それはドル高要因にもなる。また、大型減税の延長や社会保障支出の抑制などを行わない姿勢は、財政悪化をもたらし、これも金利上昇を通じてドル高要因になり得る。また、大型減税の延長や規制緩和は景気にプラス効果を生む。それは株高要因であり、ドル高要因ともなる」、なるほど。
・『「トランポノミクス2.0」は経済に逆風で「ドル安、株安要因」か 他方で、中国に加えてすべての貿易相手国に対して追加関税を導入するとするトランプ氏の政策では、輸入を減らして米国内の生産、雇用を拡大させる効果よりも、経済を悪化させる効果の方が勝るだろう(コラム「ノーベル賞受賞の経済学者16人がトランプ再選に警鐘」、2024年7月3日)。 追加関税は貿易相手側の報復措置を引き出し、世界貿易を縮小させる。また、追加関税は、国内消費者に輸入品をより高く買わせる増税策にも等しく、個人消費を悪化させる。こうした追加関税など保護主義的な政策がもたらす経済の悪影響は、大型減税の延長や規制緩和のプラス効果を大きく上回るものと考える。さらに、財政悪化による金利上昇も、景気に逆風となる。景気悪化は株安要因である。 また、トランプ氏はドル安政策を標榜している。米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策に関与する考えや財政悪化も、通貨の信認の低下を通じてドル安要因となる。保護主義的な政策などを通じて経済が悪化すれば、最終的には金利は大きく下がり、ドル安が進むだろう。 大統領選でのトランプ優勢の流れを金融市場は比較的静観し、反応が薄いのは、上記のようにトランプ再選がもたらす経済、金融市場への影響が両面あるなど、複雑であることも関係しているだろう』、「中国に加えてすべての貿易相手国に対して追加関税を導入するとするトランプ氏の政策では、輸入を減らして米国内の生産、雇用を拡大させる効果よりも、経済を悪化させる効果の方が勝るだろう・・・追加関税は貿易相手側の報復措置を引き出し、世界貿易を縮小させる。また、追加関税は、国内消費者に輸入品をより高く買わせる増税策にも等しく、個人消費を悪化させる。こうした追加関税など保護主義的な政策がもたらす経済の悪影響は、大型減税の延長や規制緩和のプラス効果を大きく上回るものと考える。さらに、財政悪化による金利上昇も、景気に逆風となる・・・トランプ氏はドル安政策を標榜している。米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策に関与する考えや財政悪化も、通貨の信認の低下を通じてドル安要因となる。保護主義的な政策などを通じて経済が悪化すれば、最終的には金利は大きく下がり、ドル安が進むだろう・・・金融市場は比較的静観し、反応が薄いのは、上記のようにトランプ再選がもたらす経済、金融市場への影響が両面あるなど、複雑であることも関係しているだろう」、なるほど。
・『トランプ前政権時と現在とでは経済・金融情勢は大きく異なる さらに、トランプ前政権時には、極端な保護主義的な政策がとられたものの、米国及び世界経済は深刻な悪化を免れた。また、トランプ氏はFRBへの緩和要請を強めつつドル安志向を明言したが、実際にはドルは大きく下落しなかった。 恐らくこうした経験を踏まえて、トランプが再選しても、経済、金融には大きな影響をもたらさないという楽観論が金融市場に広まっているのではないか。いわば「トランプ慣れ」したのである。 しかし、留意しておきたいのは、トランプ前政権時と現在とでは、米国経済及び世界経済と金融情勢は大きく異なるという点だ。第1に、バイデン政権になってから、物価は大きく上昇し、それを受けてFRBは大幅な利上げを行った。米国経済は金融引き締めの影響を受けて既に脆弱であり、この先大きく減速する可能性がある。この点から、保護主義的な政策が米国経済を悪化させるリスクは、現在の方が高いのである。また、当時と比べて中国経済の減速が強まっていることも、保護主義的な政策が世界経済を悪化させるリスクを高めるだろう。 第2に、財政面で積極的なコロナ対策を行った結果、現在の財政環境はトランプ前政権時よりも悪化しており、また金融市場は財政環境の悪化をより警戒するようになっている。そのもとで財政拡張的な政策がとられれば、金利上昇あるいは金利高止まりが経済を悪化させるだろう。また、財政の悪化は通貨の信認を損ねることから、ドル安のリスクも高める。 ドルは歴史的な高水準でこの先は大幅下落のリスクもある 第3に、FRBの大幅利上げによって、現在のドルの水準は、トランプ前政権時よりもかなり高くなった。実質実効ドル指数は、2022年10月には、1985年2月のプラザ合意前の歴史的ドル高水準に3%程度にまで迫った(図表)。大幅に高くなったドルは、経済、金融環境の変化や為替政策の変化によって、急速に下落するリスクも高まっている可能性がある。 (図表 実質実効ドル指数はリンク先参照) 以上の点から、トランプ再選時の経済、金融への影響を、トランプ前政権時の経験に基づいて予想するのはリスクがある。米国経済、金融が抱える問題は当時と比べてより大きくなっているのである。 それらの問題が顕在化していく中、トランプ再選後の経済政策、いわゆる「トランポノミクス2.0」は、それらを増幅する役割を果たすだろう。トランプ再選がもたらす経済や通貨への悪影響が非常に大きなものになるのか、そこまでには至らないのかは、大幅利上げを受けた今後の米国経済のパフォーマンスに大きく依存するだろう。 ただしその点も含めて、経済悪化のリスクは比較的高く、金融市場での株安、ドル安リスクを相応に高めるものと見ておきたい』、「米国経済、金融が抱える問題は当時と比べてより大きくなっている・・・トランプ再選後の経済政策、いわゆる「トランポノミクス2.0」は、それらを増幅する役割を果たすだろう。トランプ再選がもたらす経済や通貨への悪影響が非常に大きなものになるのか、そこまでには至らないのかは、大幅利上げを受けた今後の米国経済のパフォーマンスに大きく依存するだろう。 ただしその点も含めて、経済悪化のリスクは比較的高く、金融市場での株安、ドル安リスクを相応に高めるものと見ておきたい」、なるほど。
・『急速な円高と輸出環境悪化が日本経済に打撃となる可能性 トランプ再選が日本経済や金融市場に与える影響は、米国経済の減速、ドル安、米国株安を通じたものとなるだろう。日本では現在、急速な円安による物価高懸念が、個人消費を悪化させている。この点から、トランプ再選によって緩やかにドル高円安が修正されるのであれば、日本経済にとってはプラスであり歓迎すべきこととなるだろう。 しかし、ドル高円安の調整が緩やかに進むことは保証されるものではない。実質実効ドルが歴史的高水準にある中で、米国の政権が事実上の基軸通貨であるドルの価値を引き下げることを正式に掲げることは、世界経済や金融市場に大きな打撃を与えうるリスクの高い施策だ。その結果、ドル高円安の調整が急速なものになることは十分に考えられる。 急速な円高となれば、輸出企業の収益を悪化させ、また株価を大きく下落させることを通じて、日本経済にも打撃となる。それに米国の保護主義政策と米国経済の大幅減速による輸出環境の悪化が重なれば、日本は景気後退に陥る可能性が高まるだろう。 こうした点から、トランプ再選の影響については、日本としては慎重に見ておく必要がある』、「ドル高円安の調整が急速なものになることは十分に考えられる。 急速な円高となれば、輸出企業の収益を悪化させ、また株価を大きく下落させることを通じて、日本経済にも打撃となる。それに米国の保護主義政策と米国経済の大幅減速による輸出環境の悪化が重なれば、日本は景気後退に陥る可能性が高まるだろう。 こうした点から、トランプ再選の影響については、日本としては慎重に見ておく必要がある」、なるほど。
第三に、10月17日付けNewsweek日本版が掲載したフォーリン・ポリシー誌コラムニストのマイケル・ハーシュ氏による「衝撃の暴露...トランプとプーチンの「黒い蜜月」・核戦争を回避したバイデン政権の裏側が明らかに」を紹介しよう。
・『・ウッドワードの新著『戦争』には、11月の米大統領選の選挙結果を左右しかねない暴露話が多数収録されている──> あまりに対照的な光景だ。そして、アメリカの政治システムが外交分野においてさえ機能不全に陥っている現状の表れでもある。 過去数年間、ジョー・バイデン米大統領がロシアのウラジーミル・プーチン大統領と対峙していたのとほぼ同じ期間にわたって、前任のドナルド・トランプは秘密裏にプーチンと対話をし、アメリカのウクライナへの軍事支援に反対していた──ワシントン・ポスト紙の著名ジャーナリスト、ボブ・ウッドワードが新著『戦争』でそう明かしたのだ。 この本には衝撃的な暴露話が多数ある。 10月15日の発売日を前にフォーリン・ポリシー誌が入手した同書の中で、ウッドワードはトランプが大統領退任後にプーチンと最大7回電話で話したと書いた。 また今年のある時点では、フロリダ州の別荘マールアラーゴに滞在していたトランプが、ロシア指導者との「プライベートな電話」のために側近に部屋から出るよう命じたという。 それ以外の電話が、ロシアがウクライナに侵攻した2022年2月24日より前だったのか後だったのか、詳細は不明だ。 それでも、今回の暴露は トランプがローガン法──米国民が連邦政府の許可なく外国の高官と通信したり、アメリカと対立する「外国政府の措置や行動に影響を与える」行為を禁じる法──に違反していたとの疑惑をかき立てる。 この疑惑は、トランプが17年1月の大統領就任以前から側近を通じてロシアと接触していたという指摘にも通じるものだ。) 米大統領選の投票日まで1カ月を切るなか、この本はトランプとプーチンの関係、ビジネスや財政面でのトランプとロシアとのつながりをめぐる不穏な疑惑を再燃させている。 なかでも改めて注目されるのが、なぜトランプはやたらとプーチンを持ち上げるのかという謎だ。トランプは自分が大統領選に勝利すれば、ウクライナ戦争を交渉によって「24時間以内」に終結させると約束。ウクライナに対し、ロシアに国土を譲渡してNATO加盟を断念するよう迫るとほのめかしている(これはプーチンの要求の一部でもある)。) 22年の侵攻開始のわずか2日前、トランプはプーチンの侵略を称賛するような行動に出た。右派のラジオ番組に出演し、プーチンによるウクライナ東部の独立承認を「天才的」と評したのだ』、「過去数年間、ジョー・バイデン米大統領がロシアのウラジーミル・プーチン大統領と対峙していたのとほぼ同じ期間にわたって、前任のドナルド・トランプは秘密裏にプーチンと対話をし、アメリカのウクライナへの軍事支援に反対していた──ワシントン・ポスト紙の著名ジャーナリスト、ボブ・ウッドワードが新著『戦争』でそう明かしたのだ。 この本には衝撃的な暴露話が多数ある。 10月15日の発売日を前にフォーリン・ポリシー誌が入手した同書の中で、ウッドワードはトランプが大統領退任後にプーチンと最大7回電話で話したと書いた。 また今年のある時点では、フロリダ州の別荘マールアラーゴに滞在していたトランプが、ロシア指導者との「プライベートな電話」のために側近に部屋から出るよう命じたという・・・それでも、今回の暴露は トランプがローガン法──米国民が連邦政府の許可なく外国の高官と通信したり、アメリカと対立する「外国政府の措置や行動に影響を与える」行為を禁じる法──に違反していたとの疑惑をかき立てる。・・・22年の侵攻開始のわずか2日前、トランプはプーチンの侵略を称賛するような行動に出た。右派のラジオ番組に出演し、プーチンによるウクライナ東部の独立承認を「天才的」と評したのだ」、「プーチンと最大7回電話で話した」、というのは衝撃的だ。
・『側近も戸惑う蜜月ぶり 新著は「トランプがプーチンを批判しようとしないのは1回限りの出来事ではなく、一貫した性格的特徴だ」と指摘している。 ウッドワードによれば、トランプが大統領退任後もプーチンと電話しているという情報のソースは、トランプ側近の匿名の1人のみ。ただし現在もトランプの最側近であるジェーソン・ミラーもウッドワードの話を完全には否定せず、「異議を唱えたい」と答えたという。 さらに、トランプは本当に電話1本でウクライナ戦争を解決できるのかという質問に対し、ミラーはこう答えた。 「できると思う。彼は相手の弱点を知っていて、双方を動かせる要素を分かっている。(プーチンとウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領に)それぞれ1本電話するだけで実現できるだろう」) ウッドワードは、トランプ政権で国家情報長官を務めたダニエル・コーツが、トランプとプーチンの関係に長年困惑していたとも指摘している。コーツは、トランプは「プーチンに手を差し伸べ、決して彼を悪く言わない。私にとっては‥...恐ろしいことだ」と語っている。 一方、トランプ陣営の広報担当者スティーブン・チョンは、新著は嘘だらけの作り話だとしてウッドワードへの個人攻撃を展開。「彼は精神を病んだごろつきだ。頭の回転が遅く無気力で無能、全体的に個性のない退屈な人間だ」と述べた。 新著では、22年にバイデンが直面した「10月ミサイル危機」の恐ろしい詳細も記されている。ロシアの侵攻開始から半年ほどがたち、ウクライナの反転攻勢が始まった同年秋、バイデン政権の元に、プーチンが戦場での苦境に絶望を募らせているという危険な情報が届き始めた。 米情報機関は、ロシアが戦術核を使用する可能性を50%と判断したという(侵攻初期の5%およびその後の10%と比べると劇的な上昇だ)。 著書によれば、バイデンはジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)に、「あらゆるチャンネルを使ってロシアと連絡を取り、われわれがどう反応するかを伝えろ」と即座に指示した。 バイデンは「直接的な脅し文句ではない威圧的な言葉」を使うようチームに命じ、「ウクライナとの交渉のためではなく、米ロが大惨事を回避するためにチャンネルを開く必要がある」と語ったという。) ロイド・オースティン米国防長官は22年10月21日の電話会談で、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相(当時)にこう警告した。 「われわれの指導者も、そちらの指導者も、核戦争には勝者は存在せず、絶対に手を出してはならないと繰り返し述べてきた。(核を使用すれば)双方にとって存続を脅かす対立の道に踏み出すことになる。滑りやすい坂道に足を踏み入れるな」 オースティンはまた、もし核兵器が使われたら「ウクライナにおけるわれわれの作戦行動を縛ってきた制限を全て見直すことになるだろう」と述べたという。「これによりロシアは、あなた方ロシア人には想像できないレベルで国際舞台で孤立することになるだろう」 これに対し、脅迫されるのは気に入らないとショイグが答えると、オースティンはこう返したという。「私は世界史上最も強力な軍隊の指導者だ。脅迫などするものか」 2日後、ショイグは電話をかけてきて、ウクライナ側に「汚い爆弾」を使う計画があるとの虚偽の主張をした。核兵器使用の口実にするために嘘を持ち出したというのがアメリカ側の見立てだ。 あなたの言うことは信じられない」とオースティンは答えたとウッドワードは書いている。「そうした兆候は見つかっていないし、世界にもすぐに見抜かれるはずだ。やめておきなさい」。ショイグはこれに対し、「分かった」と答えたという』、「オースティン米国防長官は22年10月21日の電話会談で、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相(当時)にこう警告した。 「われわれの指導者も、そちらの指導者も、核戦争には勝者は存在せず、絶対に手を出してはならないと繰り返し述べてきた。(核を使用すれば)双方にとって存続を脅かす対立の道に踏み出すことになる。滑りやすい坂道に足を踏み入れるな」、「2日後、ショイグは電話をかけてきて、ウクライナ側に「汚い爆弾」を使う計画があるとの虚偽の主張をした。核兵器使用の口実にするために嘘を持ち出したというのがアメリカ側の見立てだ。 あなたの言うことは信じられない」とオースティンは答えたとウッドワードは書いている。「そうした兆候は見つかっていないし、世界にもすぐに見抜かれるはずだ。やめておきなさい」。ショイグはこれに対し、「分かった」と答えたという」、いずれもずいぶんギリギリの発言で驚かされた。
・『「オバマの対応は失敗だった」 ウッドワードによれば、当時、国防総省の幹部を務めていたコリン・カールは後になって、ウクライナ侵攻が始まって以降で22年秋がたぶん「最も背筋が凍る思いをした」時期だったと語ったという。 一方でこの時期、バイデンは世界の指導者として、1962年のキューバ・ミサイル危機でソ連に立ち向かったジョン・F・ケネディ大統領ばりの気概を見せたのかもしれない。かつて副大統領として仕えたバラク・オバマ元大統領についてバイデンが述べたという、批判的な発言は注目に値する。 ロシアは14年、ウクライナ東部の一部を「占領」するとともにクリミア半島をロシアに併合した。この時、オバマは比較的穏やかな対応を取ったが、それは大きな過ちだったとバイデンは言ったのだ。 「おかげでこんなことになってしまった。われわれの大失敗だ」とバイデンは述べたという。「バラクはプーチン(のやること)をまともに取り合おうとしなかった。プーチンにそのまま続けていいと許可を出してしまったんだ。で、私がそのいまいましい許可を取り消そうとしているわけだ!」 ウクライナ侵攻が始まって2年半というもの、バイデンは「対応が煮え切らない」とか、「ウクライナ防衛のための十分な武器をすぐに送らなかった」といった批判を浴びてきた。 確かにバイデンは、M1A1エイブラムズといった主力の戦車や精度の高い長距離砲、F16などのジェット戦闘機の供与には二の足を踏んだ(最終的には供与したが)。) そしてウクライナがハルキウ州で反攻を始めた後の22年10月、バイデンはアメリカ国民に対し、ロシアが核兵器を使用すれば「アルマゲドン(最終戦争)」に発展する可能性もあると警告を発した。 そんな事態は、核兵器が使われる「直接的な脅威」が存在したキューバ・ミサイル危機以来初めてだとも彼は述べた。 当時、核兵器の使用などプーチンのはったりではと考える人もいた。だがウッドワードが引用したアメリカの情報機関の分析は、侵攻前のプーチンの意図を驚くほど正確に見抜いていたのと同様に、この場合もまさに慧眼というべき内容だった。 実際、後になってプーチンは、何がロシアの戦術核使用のきっかけになり得るかを具体的に説明している。 プーチンは9月、ウクライナが西側から供与された長距離ミサイルでロシア領の奥深くまで攻撃するのを西側諸国が認めるなら、核兵器による反撃は正当化されるかもしれないと述べたのだ』、「ロシアは14年、ウクライナ東部の一部を「占領」するとともにクリミア半島をロシアに併合した。この時、オバマは比較的穏やかな対応を取ったが、それは大きな過ちだったとバイデンは言ったのだ。 「おかげでこんなことになってしまった。われわれの大失敗だ」とバイデンは述べたという。「バラクはプーチン(のやること)をまともに取り合おうとしなかった。プーチンにそのまま続けていいと許可を出してしまったんだ。で、私がそのいまいましい許可を取り消そうとしているわけだ!」、「オバマ」がこんな失敗をしたとは初めて知った。尻拭いさせられる「バイデン」には同情したくなる。
・『「10月ミサイル危機」の対応 ウクライナの抵抗ゆえに、ロシア側に何十万人もの犠牲が出ていることも、見方によっては大きな危険をはらんでいる。 本書には米統合参謀本部議長(当時)のマーク・ミリーとロシアのバレリー・ゲラシモフ参謀総長の会話が出てくるが、そこでゲラシモフは、ロシア側の核兵器使用の条件の1つとして「戦場において壊滅的な損害を受けた」場合を挙げている。それに対しミリーは「そんなことはあり得ない」と述べた。) 一方で、そう遠くない未来にそうした事態が起こらないとは限らない。 「10月ミサイル危機」で──それも トランプとプーチンの関係に対する疑惑が拡大していくなかで──バイデンが取った行動の理由は、今となってはよく分かる。 政治家として台頭するなかで、トランプは繰り返し、自分とプーチンの間には、プーチンの言いなりにならなければならないような関係は存在しないと主張してきた。その一方で、トランプはプーチンへの批判を拒んでもきた。 ウッドワードは、9月にロシアで開催されたある経済会議でのこんなプーチンの言葉を取り上げている。「トランプ氏は、ウクライナ危機を含むあらゆる火急の問題を数日で解決すると述べている。喜ばしい話だと言うほかない」 ちなみに、トランプが大統領選に出馬するよりもっと前、彼の経営する企業が経営不振に陥った挙げ句、資金面でロシアや旧ソ連圏の国々への依存の度を深めていたことについては、本書以外でも調査や報道が何度もされている』、「ウッドワードは、9月にロシアで開催されたある経済会議でのこんなプーチンの言葉を取り上げている。「トランプ氏は、ウクライナ危機を含むあらゆる火急の問題を数日で解決すると述べている。喜ばしい話だと言うほかない」 ちなみに、トランプが大統領選に出馬するよりもっと前、彼の経営する企業が経営不振に陥った挙げ句、資金面でロシアや旧ソ連圏の国々への依存の度を深めていたことについては、本書以外でも調査や報道が何度もされている」、「数日で解決する」、とは「ウクライナ」に和平を飲ませるという意味だろうか。「彼の経営する企業が経営不振に陥った挙げ句、資金面でロシアや旧ソ連圏の国々への依存の度を深めていた」、「トランプ」系企業が「ロシア」への「依存の度を深めていた」というのは、事実であれば、飛んでもないことだ。私的な利益のために、「ウクライナ」支援という米国の国益を犠牲にすることになる。米国の法律に違反する可能性はないのだろうか。
先ずは、本年8月6日付けNewsweek日本版が掲載したパックン(パトリック・ハーラン)による「トランプがバイデンに与えてしまった「必殺技」...最高裁判決で無限の権力を手中に?」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/pakkun/2024/08/post-97_1.php
・『<米連邦最高裁によると、トランプら歴代大統領の「公的行為」は刑事責任に問えない。それってバイデン現大統領は実質やり放題ってこと?と米出身芸人パックンは指摘します> このコラムを、バイデン米大統領は読んでいる。僕はそれを確信している。証拠は、前回僕がこのコラムで「バイデンは病気を理由に1週間ぐらい休みを取り大統領選から撤退して、その後職務に復帰する」というシナリオを描いたら、現実世界でそのとおりの流れになったこと! 新型コロナではなく胃痙攣の仮病が僕のおすすめだったけど、まあ細かいことは気にしない。 偶然だと思えない。絶対にチャットGPTで翻訳してこのコラムを読んでいるのだ、バイデンは。 ということで、今回はドナルド・トランプが絶対に大統領に返り咲かないようにする「決め手」をバイデンにお伝えしよう。みなさんも読んでいいけど、これはバイデンさん宛のメッセージだ。 へ?バイデン用ならなぜ英語で書かないの~? という疑問が浮かぶだろうけど、まあ、細かいことは気にしない』、興味深そうだ。
・『政敵の暗殺もおとがめなし? 実はバイデンは今までの大統領になかった、とんでもない必殺技を手に入れている。それも保守派判事が牛耳る連邦最高裁のおかげだ。7月、最高裁は大統領が「公的な行為」に関して刑事責任を負わないとする判決を出した。 以前から現役大統領は逮捕・訴追されないことになっていたが、この判決でさらに退任してからもずっと免責される新世界が開かれた。バイデン、チャンス! 幸い、大統領の職務の幅はとても広い。一番分かりやすいのは、憲法に定められている軍の最高司令官という立場。特殊部隊に指令を出すことは「公的な行為」に当たるから、政敵の暗殺を命じても司法上のおとがめはないようだ。 つまり、必殺技はまさに必「殺」技になり得る。リベラル派のソニア・ソトマイヨール判事も、先の判決の反対意見書でも実際にこのような危険性を指摘している。 もちろん、僕は暗殺もどんな暴力も一切推薦も擁護もしない。だが判決発表の数日後にトランプが「耳一髪」で暗殺を免れた事件が起きたことで、世の中では暗殺はバイデンが仕組んだとする陰謀論が出回っている。) 最高裁判決で免責を受けたことで、反対意見書で危惧されていたシナリオを実現させたという荒唐無稽な主張だ。もちろん僕はそんなことは信じない。そもそもバイデンのシナリオライターはソトマイヨールではなく、僕だからね。 とにかく、えぐすぎるから暗殺は忘れよう。暴力以外にも「公的な行為」としてできることは沢山ある。 例えば、大統領は行政府の長なので、財務省を通じて政府の予算を使うのも仕事だ。トランプ当選を防ぐため、与党民主党のカマラ・ハリス陣営にお金を大量に回すこともできるはず。選挙CMを大量に制作して放送できる!税金で! そういえば、放送・通信を管轄する米連邦通信委員会(FCC)も行政府に属する機関だ。公共の電波はバイデンの手中にある。 トランプのCMを流さないようにすることも、保守派大手のFOXニュースの放送認可を取り消すことも可能だ。トランプ派のスローガン「MAGA」を放送禁止用語に設定できる!そうなれば逆に反抗期の若者は口に出したくなるだろうけど』、「7月、最高裁は大統領が「公的な行為」に関して刑事責任を負わないとする判決を出した。 以前から現役大統領は逮捕・訴追されないことになっていたが、この判決でさらに退任してからもずっと免責される新世界が開かれた・・・大統領の職務の幅はとても広い。一番分かりやすいのは、憲法に定められている軍の最高司令官という立場。特殊部隊に指令を出すことは「公的な行為」に当たるから、政敵の暗殺を命じても司法上のおとがめはないようだ。 つまり、必殺技はまさに必「殺」技になり得る」、なるほど。
・『不正な捜査も免責? なんだったら、司法省も大統領の管轄。トランプもその側近も、邪魔してくるヤツを逮捕させることもできる!やろうと思えば、トランプ支持者を全員捕まえて、国外に追放することができる。不法移民全員をそうすると、トランプ本人が公約しているぐらい、国外追放はれっきとした「公的行為」だ。 ここで、このコラムを読んでいるバイデンは「ドワハハハハ!」と、高笑いし始めていることだろう。映画『アラジン』の最後に、悪党のジャファーが無限の力を手に入れ、巨人化していくシーンを思い出してください。あんな感じだ。 もちろん、上記のような権力乱用は法律違反であって、憲法違反でもある。公的な行為でも、権限を不正な目的で利用した場合、横領、背任、人権侵害などの犯罪に当たり、犯人は取り締まられてしかるべきだ。本来は。 だが最高裁の判決によると、その犯人が大統領である場合「目的」も審査することができない! 判決文の中で「たとえ捜査がでっち上げであったり、不正な目的で行われたりしたとしても、それは司法省の捜査や起訴機能に対する大統領の独占的権限を奪うものではない」と指摘。大統領が行政府をどう利用しても「絶対的な免責」があると、はっきりと結論付けている。 どんな悪業でも「公的な行為」であれば罪に問われないのだ。しかも、トランプを止めるのはむしろ善行でしょう、バイデンさん? おそらくいくつかの疑問が浮かんでいることでしょう。それにも答えておこう。) Q:例え大統領が免責されても、不正な命令を実行する公務員は逮捕・訴追されるのではないか? A:大統領が司法省に取り締まらないように命令すればいいし、たとえ有罪になっても(トランプが側近に対して何度もやったように)恩赦もできる! Q:自分の良心が働いて、部下の公務員が命令を断った場合は? A:更迭すればいい。逮捕もできる! Q:上下両院に弾劾されないのか? A:そんな動きがあるときも打つ手はある。大統領には(両院の意見が一致しないとき)議会を休会させる権限も憲法で規定されている。あと、何度も言うけど、議員たちを逮捕や国外追放できるぞ。 Q:国民が反発しない? A:国民なんか知るもんか。大統領が全能だ!ドワハハハハ! バイデン大統領は再び笑い始め、天に向かって指先から雷を放ち始めているだろう。究極のパワー!全宇宙を支配するのだ!と、叫んでいて、下半身が竜巻になっているはずだ。 僕、映画の見すぎかな......? まあ、『アラジン』のランプの精、ジーニーになることはなくても、均衡も抑制もなしに「公的な行為」で政敵を仕留められる大統領が独裁者になる危険性を今回の判決がはらんでいることは心から懸念している。 実は、バイデンも既にこのことに気づいている。判決が発表された日にテレビ会見で「この判決は、大統領のできることには実質的に制限がないことをほぼ確実に意味している」と指摘している。 しかし、それに気づいていても、権力を乱用しないのがバイデン。ハリスもきっとそうだと信じる。だが、万が一トランプになった場合はどうなのでしょうか......。 このコラムを、トランプが読んでいないことを祈ろう』、「トランプもその側近も、邪魔してくるヤツを逮捕させることもできる!やろうと思えば、トランプ支持者を全員捕まえて、国外に追放することができる。不法移民全員をそうすると、トランプ本人が公約しているぐらい、国外追放はれっきとした「公的行為」だ・・・最高裁の判決によると、その犯人が大統領である場合「目的」も審査することができない! 判決文の中で「たとえ捜査がでっち上げであったり、不正な目的で行われたりしたとしても、それは司法省の捜査や起訴機能に対する大統領の独占的権限を奪うものではない」と指摘。大統領が行政府をどう利用しても「絶対的な免責」があると、はっきりと結論付けている。 どんな悪業でも「公的な行為」であれば罪に問われないのだ・・・均衡も抑制もなしに「公的な行為」で政敵を仕留められる大統領が独裁者になる危険性を今回の判決がはらんでいることは心から懸念している」、現在の最高裁判事の殆どはトランプの息がかかっているとはいえ、飛んでもない判断を下すものだ。
次に、7月18日付け野村総合研究所の刊行物NRIに同研究所 エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏が寄稿した「トランプ再選は米国経済・金融市場が抱える問題を増幅:ドル高・円安が緩やかに修正されるのであれば日本経済にプラスだが。。。」を紹介しよう。
https://www.nri.com/jp/knowledge/blog/lst/2024/fis/kiuchi/0718
・『トランプ再選は「ドル高、株高要因」か「ドル安、株安要因」か? 7月13日に起きた襲撃事件を受けて、米国大統領選はトランプ前大統領が優勢との見方が一段と強まっている。しかし、それを受けた金融市場の反応は概して薄い(コラム「金融市場はトランプ再選をどう織り込むか:トランプトレードの再来も」、2024年7月5日)。 見方は分かれるところではあるが、トランプ前大統領が再選を果たし、同氏の経済政策、いわゆる「トランポノミクス2.0」が実施されれば、それは、世界経済、米国経済にマイナスとなり、世界的な株安とドル安を生じさせると筆者は考えている。ただしそれがどの程度の規模になるのかは、今後の米国経済の行方次第だろう。「トランポノミクス2.0」は、米国経済・金融が抱える問題を増幅する役割を果たすことになるのではないか。 トランプ再選については、「ドル高、株高要因」との見方と、筆者のように「ドル安、株安要因」との見方の双方がある。実際、「トランポノミクス2.0」の経済・金融への影響には両面があることは確かである。 トランプ氏が公約に掲げる追加関税は、国内物価を押し上げ、金利上昇要因となる。それはドル高要因にもなる。また、大型減税の延長や社会保障支出の抑制などを行わない姿勢は、財政悪化をもたらし、これも金利上昇を通じてドル高要因になり得る。また、大型減税の延長や規制緩和は景気にプラス効果を生む。それは株高要因であり、ドル高要因ともなる』、「トランプ再選については、「ドル高、株高要因」との見方と、筆者のように「ドル安、株安要因」との見方の双方がある・・・トランプ氏が公約に掲げる追加関税は、国内物価を押し上げ、金利上昇要因となる。それはドル高要因にもなる。また、大型減税の延長や社会保障支出の抑制などを行わない姿勢は、財政悪化をもたらし、これも金利上昇を通じてドル高要因になり得る。また、大型減税の延長や規制緩和は景気にプラス効果を生む。それは株高要因であり、ドル高要因ともなる」、なるほど。
・『「トランポノミクス2.0」は経済に逆風で「ドル安、株安要因」か 他方で、中国に加えてすべての貿易相手国に対して追加関税を導入するとするトランプ氏の政策では、輸入を減らして米国内の生産、雇用を拡大させる効果よりも、経済を悪化させる効果の方が勝るだろう(コラム「ノーベル賞受賞の経済学者16人がトランプ再選に警鐘」、2024年7月3日)。 追加関税は貿易相手側の報復措置を引き出し、世界貿易を縮小させる。また、追加関税は、国内消費者に輸入品をより高く買わせる増税策にも等しく、個人消費を悪化させる。こうした追加関税など保護主義的な政策がもたらす経済の悪影響は、大型減税の延長や規制緩和のプラス効果を大きく上回るものと考える。さらに、財政悪化による金利上昇も、景気に逆風となる。景気悪化は株安要因である。 また、トランプ氏はドル安政策を標榜している。米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策に関与する考えや財政悪化も、通貨の信認の低下を通じてドル安要因となる。保護主義的な政策などを通じて経済が悪化すれば、最終的には金利は大きく下がり、ドル安が進むだろう。 大統領選でのトランプ優勢の流れを金融市場は比較的静観し、反応が薄いのは、上記のようにトランプ再選がもたらす経済、金融市場への影響が両面あるなど、複雑であることも関係しているだろう』、「中国に加えてすべての貿易相手国に対して追加関税を導入するとするトランプ氏の政策では、輸入を減らして米国内の生産、雇用を拡大させる効果よりも、経済を悪化させる効果の方が勝るだろう・・・追加関税は貿易相手側の報復措置を引き出し、世界貿易を縮小させる。また、追加関税は、国内消費者に輸入品をより高く買わせる増税策にも等しく、個人消費を悪化させる。こうした追加関税など保護主義的な政策がもたらす経済の悪影響は、大型減税の延長や規制緩和のプラス効果を大きく上回るものと考える。さらに、財政悪化による金利上昇も、景気に逆風となる・・・トランプ氏はドル安政策を標榜している。米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策に関与する考えや財政悪化も、通貨の信認の低下を通じてドル安要因となる。保護主義的な政策などを通じて経済が悪化すれば、最終的には金利は大きく下がり、ドル安が進むだろう・・・金融市場は比較的静観し、反応が薄いのは、上記のようにトランプ再選がもたらす経済、金融市場への影響が両面あるなど、複雑であることも関係しているだろう」、なるほど。
・『トランプ前政権時と現在とでは経済・金融情勢は大きく異なる さらに、トランプ前政権時には、極端な保護主義的な政策がとられたものの、米国及び世界経済は深刻な悪化を免れた。また、トランプ氏はFRBへの緩和要請を強めつつドル安志向を明言したが、実際にはドルは大きく下落しなかった。 恐らくこうした経験を踏まえて、トランプが再選しても、経済、金融には大きな影響をもたらさないという楽観論が金融市場に広まっているのではないか。いわば「トランプ慣れ」したのである。 しかし、留意しておきたいのは、トランプ前政権時と現在とでは、米国経済及び世界経済と金融情勢は大きく異なるという点だ。第1に、バイデン政権になってから、物価は大きく上昇し、それを受けてFRBは大幅な利上げを行った。米国経済は金融引き締めの影響を受けて既に脆弱であり、この先大きく減速する可能性がある。この点から、保護主義的な政策が米国経済を悪化させるリスクは、現在の方が高いのである。また、当時と比べて中国経済の減速が強まっていることも、保護主義的な政策が世界経済を悪化させるリスクを高めるだろう。 第2に、財政面で積極的なコロナ対策を行った結果、現在の財政環境はトランプ前政権時よりも悪化しており、また金融市場は財政環境の悪化をより警戒するようになっている。そのもとで財政拡張的な政策がとられれば、金利上昇あるいは金利高止まりが経済を悪化させるだろう。また、財政の悪化は通貨の信認を損ねることから、ドル安のリスクも高める。 ドルは歴史的な高水準でこの先は大幅下落のリスクもある 第3に、FRBの大幅利上げによって、現在のドルの水準は、トランプ前政権時よりもかなり高くなった。実質実効ドル指数は、2022年10月には、1985年2月のプラザ合意前の歴史的ドル高水準に3%程度にまで迫った(図表)。大幅に高くなったドルは、経済、金融環境の変化や為替政策の変化によって、急速に下落するリスクも高まっている可能性がある。 (図表 実質実効ドル指数はリンク先参照) 以上の点から、トランプ再選時の経済、金融への影響を、トランプ前政権時の経験に基づいて予想するのはリスクがある。米国経済、金融が抱える問題は当時と比べてより大きくなっているのである。 それらの問題が顕在化していく中、トランプ再選後の経済政策、いわゆる「トランポノミクス2.0」は、それらを増幅する役割を果たすだろう。トランプ再選がもたらす経済や通貨への悪影響が非常に大きなものになるのか、そこまでには至らないのかは、大幅利上げを受けた今後の米国経済のパフォーマンスに大きく依存するだろう。 ただしその点も含めて、経済悪化のリスクは比較的高く、金融市場での株安、ドル安リスクを相応に高めるものと見ておきたい』、「米国経済、金融が抱える問題は当時と比べてより大きくなっている・・・トランプ再選後の経済政策、いわゆる「トランポノミクス2.0」は、それらを増幅する役割を果たすだろう。トランプ再選がもたらす経済や通貨への悪影響が非常に大きなものになるのか、そこまでには至らないのかは、大幅利上げを受けた今後の米国経済のパフォーマンスに大きく依存するだろう。 ただしその点も含めて、経済悪化のリスクは比較的高く、金融市場での株安、ドル安リスクを相応に高めるものと見ておきたい」、なるほど。
・『急速な円高と輸出環境悪化が日本経済に打撃となる可能性 トランプ再選が日本経済や金融市場に与える影響は、米国経済の減速、ドル安、米国株安を通じたものとなるだろう。日本では現在、急速な円安による物価高懸念が、個人消費を悪化させている。この点から、トランプ再選によって緩やかにドル高円安が修正されるのであれば、日本経済にとってはプラスであり歓迎すべきこととなるだろう。 しかし、ドル高円安の調整が緩やかに進むことは保証されるものではない。実質実効ドルが歴史的高水準にある中で、米国の政権が事実上の基軸通貨であるドルの価値を引き下げることを正式に掲げることは、世界経済や金融市場に大きな打撃を与えうるリスクの高い施策だ。その結果、ドル高円安の調整が急速なものになることは十分に考えられる。 急速な円高となれば、輸出企業の収益を悪化させ、また株価を大きく下落させることを通じて、日本経済にも打撃となる。それに米国の保護主義政策と米国経済の大幅減速による輸出環境の悪化が重なれば、日本は景気後退に陥る可能性が高まるだろう。 こうした点から、トランプ再選の影響については、日本としては慎重に見ておく必要がある』、「ドル高円安の調整が急速なものになることは十分に考えられる。 急速な円高となれば、輸出企業の収益を悪化させ、また株価を大きく下落させることを通じて、日本経済にも打撃となる。それに米国の保護主義政策と米国経済の大幅減速による輸出環境の悪化が重なれば、日本は景気後退に陥る可能性が高まるだろう。 こうした点から、トランプ再選の影響については、日本としては慎重に見ておく必要がある」、なるほど。
第三に、10月17日付けNewsweek日本版が掲載したフォーリン・ポリシー誌コラムニストのマイケル・ハーシュ氏による「衝撃の暴露...トランプとプーチンの「黒い蜜月」・核戦争を回避したバイデン政権の裏側が明らかに」を紹介しよう。
・『・ウッドワードの新著『戦争』には、11月の米大統領選の選挙結果を左右しかねない暴露話が多数収録されている──> あまりに対照的な光景だ。そして、アメリカの政治システムが外交分野においてさえ機能不全に陥っている現状の表れでもある。 過去数年間、ジョー・バイデン米大統領がロシアのウラジーミル・プーチン大統領と対峙していたのとほぼ同じ期間にわたって、前任のドナルド・トランプは秘密裏にプーチンと対話をし、アメリカのウクライナへの軍事支援に反対していた──ワシントン・ポスト紙の著名ジャーナリスト、ボブ・ウッドワードが新著『戦争』でそう明かしたのだ。 この本には衝撃的な暴露話が多数ある。 10月15日の発売日を前にフォーリン・ポリシー誌が入手した同書の中で、ウッドワードはトランプが大統領退任後にプーチンと最大7回電話で話したと書いた。 また今年のある時点では、フロリダ州の別荘マールアラーゴに滞在していたトランプが、ロシア指導者との「プライベートな電話」のために側近に部屋から出るよう命じたという。 それ以外の電話が、ロシアがウクライナに侵攻した2022年2月24日より前だったのか後だったのか、詳細は不明だ。 それでも、今回の暴露は トランプがローガン法──米国民が連邦政府の許可なく外国の高官と通信したり、アメリカと対立する「外国政府の措置や行動に影響を与える」行為を禁じる法──に違反していたとの疑惑をかき立てる。 この疑惑は、トランプが17年1月の大統領就任以前から側近を通じてロシアと接触していたという指摘にも通じるものだ。) 米大統領選の投票日まで1カ月を切るなか、この本はトランプとプーチンの関係、ビジネスや財政面でのトランプとロシアとのつながりをめぐる不穏な疑惑を再燃させている。 なかでも改めて注目されるのが、なぜトランプはやたらとプーチンを持ち上げるのかという謎だ。トランプは自分が大統領選に勝利すれば、ウクライナ戦争を交渉によって「24時間以内」に終結させると約束。ウクライナに対し、ロシアに国土を譲渡してNATO加盟を断念するよう迫るとほのめかしている(これはプーチンの要求の一部でもある)。) 22年の侵攻開始のわずか2日前、トランプはプーチンの侵略を称賛するような行動に出た。右派のラジオ番組に出演し、プーチンによるウクライナ東部の独立承認を「天才的」と評したのだ』、「過去数年間、ジョー・バイデン米大統領がロシアのウラジーミル・プーチン大統領と対峙していたのとほぼ同じ期間にわたって、前任のドナルド・トランプは秘密裏にプーチンと対話をし、アメリカのウクライナへの軍事支援に反対していた──ワシントン・ポスト紙の著名ジャーナリスト、ボブ・ウッドワードが新著『戦争』でそう明かしたのだ。 この本には衝撃的な暴露話が多数ある。 10月15日の発売日を前にフォーリン・ポリシー誌が入手した同書の中で、ウッドワードはトランプが大統領退任後にプーチンと最大7回電話で話したと書いた。 また今年のある時点では、フロリダ州の別荘マールアラーゴに滞在していたトランプが、ロシア指導者との「プライベートな電話」のために側近に部屋から出るよう命じたという・・・それでも、今回の暴露は トランプがローガン法──米国民が連邦政府の許可なく外国の高官と通信したり、アメリカと対立する「外国政府の措置や行動に影響を与える」行為を禁じる法──に違反していたとの疑惑をかき立てる。・・・22年の侵攻開始のわずか2日前、トランプはプーチンの侵略を称賛するような行動に出た。右派のラジオ番組に出演し、プーチンによるウクライナ東部の独立承認を「天才的」と評したのだ」、「プーチンと最大7回電話で話した」、というのは衝撃的だ。
・『側近も戸惑う蜜月ぶり 新著は「トランプがプーチンを批判しようとしないのは1回限りの出来事ではなく、一貫した性格的特徴だ」と指摘している。 ウッドワードによれば、トランプが大統領退任後もプーチンと電話しているという情報のソースは、トランプ側近の匿名の1人のみ。ただし現在もトランプの最側近であるジェーソン・ミラーもウッドワードの話を完全には否定せず、「異議を唱えたい」と答えたという。 さらに、トランプは本当に電話1本でウクライナ戦争を解決できるのかという質問に対し、ミラーはこう答えた。 「できると思う。彼は相手の弱点を知っていて、双方を動かせる要素を分かっている。(プーチンとウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領に)それぞれ1本電話するだけで実現できるだろう」) ウッドワードは、トランプ政権で国家情報長官を務めたダニエル・コーツが、トランプとプーチンの関係に長年困惑していたとも指摘している。コーツは、トランプは「プーチンに手を差し伸べ、決して彼を悪く言わない。私にとっては‥...恐ろしいことだ」と語っている。 一方、トランプ陣営の広報担当者スティーブン・チョンは、新著は嘘だらけの作り話だとしてウッドワードへの個人攻撃を展開。「彼は精神を病んだごろつきだ。頭の回転が遅く無気力で無能、全体的に個性のない退屈な人間だ」と述べた。 新著では、22年にバイデンが直面した「10月ミサイル危機」の恐ろしい詳細も記されている。ロシアの侵攻開始から半年ほどがたち、ウクライナの反転攻勢が始まった同年秋、バイデン政権の元に、プーチンが戦場での苦境に絶望を募らせているという危険な情報が届き始めた。 米情報機関は、ロシアが戦術核を使用する可能性を50%と判断したという(侵攻初期の5%およびその後の10%と比べると劇的な上昇だ)。 著書によれば、バイデンはジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)に、「あらゆるチャンネルを使ってロシアと連絡を取り、われわれがどう反応するかを伝えろ」と即座に指示した。 バイデンは「直接的な脅し文句ではない威圧的な言葉」を使うようチームに命じ、「ウクライナとの交渉のためではなく、米ロが大惨事を回避するためにチャンネルを開く必要がある」と語ったという。) ロイド・オースティン米国防長官は22年10月21日の電話会談で、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相(当時)にこう警告した。 「われわれの指導者も、そちらの指導者も、核戦争には勝者は存在せず、絶対に手を出してはならないと繰り返し述べてきた。(核を使用すれば)双方にとって存続を脅かす対立の道に踏み出すことになる。滑りやすい坂道に足を踏み入れるな」 オースティンはまた、もし核兵器が使われたら「ウクライナにおけるわれわれの作戦行動を縛ってきた制限を全て見直すことになるだろう」と述べたという。「これによりロシアは、あなた方ロシア人には想像できないレベルで国際舞台で孤立することになるだろう」 これに対し、脅迫されるのは気に入らないとショイグが答えると、オースティンはこう返したという。「私は世界史上最も強力な軍隊の指導者だ。脅迫などするものか」 2日後、ショイグは電話をかけてきて、ウクライナ側に「汚い爆弾」を使う計画があるとの虚偽の主張をした。核兵器使用の口実にするために嘘を持ち出したというのがアメリカ側の見立てだ。 あなたの言うことは信じられない」とオースティンは答えたとウッドワードは書いている。「そうした兆候は見つかっていないし、世界にもすぐに見抜かれるはずだ。やめておきなさい」。ショイグはこれに対し、「分かった」と答えたという』、「オースティン米国防長官は22年10月21日の電話会談で、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相(当時)にこう警告した。 「われわれの指導者も、そちらの指導者も、核戦争には勝者は存在せず、絶対に手を出してはならないと繰り返し述べてきた。(核を使用すれば)双方にとって存続を脅かす対立の道に踏み出すことになる。滑りやすい坂道に足を踏み入れるな」、「2日後、ショイグは電話をかけてきて、ウクライナ側に「汚い爆弾」を使う計画があるとの虚偽の主張をした。核兵器使用の口実にするために嘘を持ち出したというのがアメリカ側の見立てだ。 あなたの言うことは信じられない」とオースティンは答えたとウッドワードは書いている。「そうした兆候は見つかっていないし、世界にもすぐに見抜かれるはずだ。やめておきなさい」。ショイグはこれに対し、「分かった」と答えたという」、いずれもずいぶんギリギリの発言で驚かされた。
・『「オバマの対応は失敗だった」 ウッドワードによれば、当時、国防総省の幹部を務めていたコリン・カールは後になって、ウクライナ侵攻が始まって以降で22年秋がたぶん「最も背筋が凍る思いをした」時期だったと語ったという。 一方でこの時期、バイデンは世界の指導者として、1962年のキューバ・ミサイル危機でソ連に立ち向かったジョン・F・ケネディ大統領ばりの気概を見せたのかもしれない。かつて副大統領として仕えたバラク・オバマ元大統領についてバイデンが述べたという、批判的な発言は注目に値する。 ロシアは14年、ウクライナ東部の一部を「占領」するとともにクリミア半島をロシアに併合した。この時、オバマは比較的穏やかな対応を取ったが、それは大きな過ちだったとバイデンは言ったのだ。 「おかげでこんなことになってしまった。われわれの大失敗だ」とバイデンは述べたという。「バラクはプーチン(のやること)をまともに取り合おうとしなかった。プーチンにそのまま続けていいと許可を出してしまったんだ。で、私がそのいまいましい許可を取り消そうとしているわけだ!」 ウクライナ侵攻が始まって2年半というもの、バイデンは「対応が煮え切らない」とか、「ウクライナ防衛のための十分な武器をすぐに送らなかった」といった批判を浴びてきた。 確かにバイデンは、M1A1エイブラムズといった主力の戦車や精度の高い長距離砲、F16などのジェット戦闘機の供与には二の足を踏んだ(最終的には供与したが)。) そしてウクライナがハルキウ州で反攻を始めた後の22年10月、バイデンはアメリカ国民に対し、ロシアが核兵器を使用すれば「アルマゲドン(最終戦争)」に発展する可能性もあると警告を発した。 そんな事態は、核兵器が使われる「直接的な脅威」が存在したキューバ・ミサイル危機以来初めてだとも彼は述べた。 当時、核兵器の使用などプーチンのはったりではと考える人もいた。だがウッドワードが引用したアメリカの情報機関の分析は、侵攻前のプーチンの意図を驚くほど正確に見抜いていたのと同様に、この場合もまさに慧眼というべき内容だった。 実際、後になってプーチンは、何がロシアの戦術核使用のきっかけになり得るかを具体的に説明している。 プーチンは9月、ウクライナが西側から供与された長距離ミサイルでロシア領の奥深くまで攻撃するのを西側諸国が認めるなら、核兵器による反撃は正当化されるかもしれないと述べたのだ』、「ロシアは14年、ウクライナ東部の一部を「占領」するとともにクリミア半島をロシアに併合した。この時、オバマは比較的穏やかな対応を取ったが、それは大きな過ちだったとバイデンは言ったのだ。 「おかげでこんなことになってしまった。われわれの大失敗だ」とバイデンは述べたという。「バラクはプーチン(のやること)をまともに取り合おうとしなかった。プーチンにそのまま続けていいと許可を出してしまったんだ。で、私がそのいまいましい許可を取り消そうとしているわけだ!」、「オバマ」がこんな失敗をしたとは初めて知った。尻拭いさせられる「バイデン」には同情したくなる。
・『「10月ミサイル危機」の対応 ウクライナの抵抗ゆえに、ロシア側に何十万人もの犠牲が出ていることも、見方によっては大きな危険をはらんでいる。 本書には米統合参謀本部議長(当時)のマーク・ミリーとロシアのバレリー・ゲラシモフ参謀総長の会話が出てくるが、そこでゲラシモフは、ロシア側の核兵器使用の条件の1つとして「戦場において壊滅的な損害を受けた」場合を挙げている。それに対しミリーは「そんなことはあり得ない」と述べた。) 一方で、そう遠くない未来にそうした事態が起こらないとは限らない。 「10月ミサイル危機」で──それも トランプとプーチンの関係に対する疑惑が拡大していくなかで──バイデンが取った行動の理由は、今となってはよく分かる。 政治家として台頭するなかで、トランプは繰り返し、自分とプーチンの間には、プーチンの言いなりにならなければならないような関係は存在しないと主張してきた。その一方で、トランプはプーチンへの批判を拒んでもきた。 ウッドワードは、9月にロシアで開催されたある経済会議でのこんなプーチンの言葉を取り上げている。「トランプ氏は、ウクライナ危機を含むあらゆる火急の問題を数日で解決すると述べている。喜ばしい話だと言うほかない」 ちなみに、トランプが大統領選に出馬するよりもっと前、彼の経営する企業が経営不振に陥った挙げ句、資金面でロシアや旧ソ連圏の国々への依存の度を深めていたことについては、本書以外でも調査や報道が何度もされている』、「ウッドワードは、9月にロシアで開催されたある経済会議でのこんなプーチンの言葉を取り上げている。「トランプ氏は、ウクライナ危機を含むあらゆる火急の問題を数日で解決すると述べている。喜ばしい話だと言うほかない」 ちなみに、トランプが大統領選に出馬するよりもっと前、彼の経営する企業が経営不振に陥った挙げ句、資金面でロシアや旧ソ連圏の国々への依存の度を深めていたことについては、本書以外でも調査や報道が何度もされている」、「数日で解決する」、とは「ウクライナ」に和平を飲ませるという意味だろうか。「彼の経営する企業が経営不振に陥った挙げ句、資金面でロシアや旧ソ連圏の国々への依存の度を深めていた」、「トランプ」系企業が「ロシア」への「依存の度を深めていた」というのは、事実であれば、飛んでもないことだ。私的な利益のために、「ウクライナ」支援という米国の国益を犠牲にすることになる。米国の法律に違反する可能性はないのだろうか。
タグ:Newsweek日本版 (その54)(トランプがバイデンに与えてしまった「必殺技」...最高裁判決で無限の権力を手中に?、トランプ再選は米国経済・金融市場が抱える問題を増幅、衝撃の暴露...トランプとプーチンの「黒い蜜月」・核戦争を回避したバイデン政権の裏側が明らかに) トランプ パックン(パトリック・ハーラン)による「トランプがバイデンに与えてしまった「必殺技」...最高裁判決で無限の権力を手中に?」 「7月、最高裁は大統領が「公的な行為」に関して刑事責任を負わないとする判決を出した。 以前から現役大統領は逮捕・訴追されないことになっていたが、この判決でさらに退任してからもずっと免責される新世界が開かれた・・・大統領の職務の幅はとても広い。一番分かりやすいのは、憲法に定められている軍の最高司令官という立場。特殊部隊に指令を出すことは「公的な行為」に当たるから、政敵の暗殺を命じても司法上のおとがめはないようだ。 つまり、必殺技はまさに必「殺」技になり得る」、なるほど。 「トランプもその側近も、邪魔してくるヤツを逮捕させることもできる!やろうと思えば、トランプ支持者を全員捕まえて、国外に追放することができる。不法移民全員をそうすると、トランプ本人が公約しているぐらい、国外追放はれっきとした「公的行為」だ・・・最高裁の判決によると、その犯人が大統領である場合「目的」も審査することができない! 判決文の中で「たとえ捜査がでっち上げであったり、不正な目的で行われたりしたとしても、それは司法省の捜査や起訴機能に対する大統領の独占的権限を奪うものではない」と指摘。 大統領が行政府をどう利用しても「絶対的な免責」があると、はっきりと結論付けている。 どんな悪業でも「公的な行為」であれば罪に問われないのだ・・・均衡も抑制もなしに「公的な行為」で政敵を仕留められる大統領が独裁者になる危険性を今回の判決がはらんでいることは心から懸念している」、現在の最高裁判事の殆どはトランプの息がかかっているとはいえ、飛んでもない判断を下すものだ。 野村総合研究所の刊行物NRI 木内登英氏が寄稿した「トランプ再選は米国経済・金融市場が抱える問題を増幅:ドル高・円安が緩やかに修正されるのであれば日本経済にプラスだが。。。」 「トランプ再選については、「ドル高、株高要因」との見方と、筆者のように「ドル安、株安要因」との見方の双方がある・・・トランプ氏が公約に掲げる追加関税は、国内物価を押し上げ、金利上昇要因となる。それはドル高要因にもなる。また、大型減税の延長や社会保障支出の抑制などを行わない姿勢は、財政悪化をもたらし、これも金利上昇を通じてドル高要因になり得る。また、大型減税の延長や規制緩和は景気にプラス効果を生む。それは株高要因であり、ドル高要因ともなる」、なるほど。 「中国に加えてすべての貿易相手国に対して追加関税を導入するとするトランプ氏の政策では、輸入を減らして米国内の生産、雇用を拡大させる効果よりも、経済を悪化させる効果の方が勝るだろう・・・追加関税は貿易相手側の報復措置を引き出し、世界貿易を縮小させる。また、追加関税は、国内消費者に輸入品をより高く買わせる増税策にも等しく、個人消費を悪化させる。 こうした追加関税など保護主義的な政策がもたらす経済の悪影響は、大型減税の延長や規制緩和のプラス効果を大きく上回るものと考える。さらに、財政悪化による金利上昇も、景気に逆風となる・・・トランプ氏はドル安政策を標榜している。米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策に関与する考えや財政悪化も、通貨の信認の低下を通じてドル安要因となる。保護主義的な政策などを通じて経済が悪化すれば、最終的には金利は大きく下がり、ドル安が進むだろう・・・金融市場は比較的静観し、反応が薄いのは、上記のようにトランプ再選がもたらす経済、 金融市場への影響が両面あるなど、複雑であることも関係しているだろう」、なるほど。 「米国経済、金融が抱える問題は当時と比べてより大きくなっている・・・トランプ再選後の経済政策、いわゆる「トランポノミクス2.0」は、それらを増幅する役割を果たすだろう。トランプ再選がもたらす経済や通貨への悪影響が非常に大きなものになるのか、そこまでには至らないのかは、大幅利上げを受けた今後の米国経済のパフォーマンスに大きく依存するだろう。 ただしその点も含めて、経済悪化のリスクは比較的高く、金融市場での株安、ドル安リスクを相応に高めるものと見ておきたい」、なるほど。 「ドル高円安の調整が急速なものになることは十分に考えられる。 急速な円高となれば、輸出企業の収益を悪化させ、また株価を大きく下落させることを通じて、日本経済にも打撃となる。それに米国の保護主義政策と米国経済の大幅減速による輸出環境の悪化が重なれば、日本は景気後退に陥る可能性が高まるだろう。 こうした点から、トランプ再選の影響については、日本としては慎重に見ておく必要がある」、なるほど。 マイケル・ハーシュ氏による「衝撃の暴露...トランプとプーチンの「黒い蜜月」・核戦争を回避したバイデン政権の裏側が明らかに」 「過去数年間、ジョー・バイデン米大統領がロシアのウラジーミル・プーチン大統領と対峙していたのとほぼ同じ期間にわたって、前任のドナルド・トランプは秘密裏にプーチンと対話をし、アメリカのウクライナへの軍事支援に反対していた──ワシントン・ポスト紙の著名ジャーナリスト、ボブ・ウッドワードが新著『戦争』でそう明かしたのだ。 この本には衝撃的な暴露話が多数ある。 10月15日の発売日を前にフォーリン・ポリシー誌が入手した同書の中で、ウッドワードはトランプが大統領退任後にプーチンと最大7回電話で話したと書いた。 また今年のある時点では、フロリダ州の別荘マールアラーゴに滞在していたトランプが、ロシア指導者との「プライベートな電話」のために側近に部屋から出るよう命じたという・・・それでも、今回の暴露は トランプがローガン法──米国民が連邦政府の許可なく外国の高官と通信したり、アメリカと対立する「外国政府の措置や行動に影響を与える」行為を禁じる法──に違反していたとの疑惑 をかき立てる。・・・22年の侵攻開始のわずか2日前、トランプはプーチンの侵略を称賛するような行動に出た。右派のラジオ番組に出演し、プーチンによるウクライナ東部の独立承認を「天才的」と評したのだ」、「プーチンと最大7回電話で話した」、というのは衝撃的だ。 「オースティン米国防長官は22年10月21日の電話会談で、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相(当時)にこう警告した。 「われわれの指導者も、そちらの指導者も、核戦争には勝者は存在せず、絶対に手を出してはならないと繰り返し述べてきた。(核を使用すれば)双方にとって存続を脅かす対立の道に踏み出すことになる。滑りやすい坂道に足を踏み入れるな」、「2日後、ショイグは電話をかけてきて、ウクライナ側に「汚い爆弾」を使う計画があるとの虚偽の主張をした。 核兵器使用の口実にするために嘘を持ち出したというのがアメリカ側の見立てだ。 あなたの言うことは信じられない」とオースティンは答えたとウッドワードは書いている。「そうした兆候は見つかっていないし、世界にもすぐに見抜かれるはずだ。やめておきなさい」。ショイグはこれに対し、「分かった」と答えたという」、いずれもずいぶんギリギリの発言で驚かされた。 「ロシアは14年、ウクライナ東部の一部を「占領」するとともにクリミア半島をロシアに併合した。この時、オバマは比較的穏やかな対応を取ったが、それは大きな過ちだったとバイデンは言ったのだ。 「おかげでこんなことになってしまった。われわれの大失敗だ」とバイデンは述べたという。「バラクはプーチン(のやること)をまともに取り合おうとしなかった。プーチンにそのまま続けていいと許可を出してしまったんだ。で、私がそのいまいましい許可を取り消そうとしているわけだ!」、「オバマ」がこんな失敗をしたとは初めて知った。 尻拭いさせられる「バイデン」には同情したくなる。 「ウッドワードは、9月にロシアで開催されたある経済会議でのこんなプーチンの言葉を取り上げている。「トランプ氏は、ウクライナ危機を含むあらゆる火急の問題を数日で解決すると述べている。喜ばしい話だと言うほかない」 ちなみに、トランプが大統領選に出馬するよりもっと前、彼の経営する企業が経営不振に陥った挙げ句、資金面でロシアや旧ソ連圏の国々への依存の度を深めていたことについては、本書以外でも調査や報道が何度もされている」、 「数日で解決する」、とは「ウクライナ」に和平を飲ませるという意味だろうか。「彼の経営する企業が経営不振に陥った挙げ句、資金面でロシアや旧ソ連圏の国々への依存の度を深めていた」、「トランプ」系企業が「ロシア」への「依存の度を深めていた」というのは、事実であれば、飛んでもないことだ。私的な利益のために、「ウクライナ」支援という米国の国益を犠牲にすることになる。米国の法律に違反する可能性はないのだろうか。