イスラエル・パレスチナ(その8)(3000人以上を殺傷したヒズボラへの「ポケベル爆弾攻撃」がヤバすぎる!一斉に鳴り出し 5秒後に突然爆発...イスラエルが見せつけた「驚きの手口」、問題の源流を読み解く、イスラエルの「最も危険な男」を誰が止めるのか 見捨てられないアメリカを無視するネタニヤフ首相) [世界情勢]
イスラエル・パレスチナについては、本年9月22日に取上げた。今日は、(その8)(3000人以上を殺傷したヒズボラへの「ポケベル爆弾攻撃」がヤバすぎる!一斉に鳴り出し 5秒後に突然爆発...イスラエルが見せつけた「驚きの手口」、イスラエルの「最も危険な男」を誰が止めるのか 見捨てられないアメリカを無視するネタニヤフ首相)である。
先ずは、本年10月1日付け現代ビジネスが掲載した経済評論家の朝香 豊氏による「3000人以上を殺傷したヒズボラへの「ポケベル爆弾攻撃」がヤバすぎる!一斉に鳴り出し、5秒後に突然爆発...イスラエルが見せつけた「驚きの手口」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/138352
・『ポケベル、トランシーバーの爆発 中東のレバノンで、イスラム教シーア派組織ヒズボラのメンバーらが所持していたポケベルやトランシーバーが次々と爆発し、周辺にいた人たちを含め多数の死傷者が出るという事件が起こった。 その後もイスラエルはヒズボラへの攻撃の手を緩めず、9月23日にはレバノン各地で1600カ所を標的にした大規模な空爆を実施し、9月27日にはヒズボラの本部の空爆も行った。 こうした事態を受けて、中東で全面戦争が起こるかもしれないとの懸念が広がっている。 しかし恐らくそういう事態に発展することはなく、イスラエルの一方的な勝利で終わると見るのが妥当だと私は考えている。 イスラエルが強気でヒズボラ攻勢を強めているのは、その自信がイスラエルにはあるからだ』、「ヒズボラのメンバーらが所持していたポケベルやトランシーバーが次々と爆発し、周辺にいた人たちを含め多数の死傷者が出る」、「イスラエル」の諜報機関の鮮やかな手口だ。
・『2回の爆発で37人の死者 ところで、ヒズボラが通信手段としてポケベルとかトランシーバーを使っていたと聞いて、随分とローテクなものを使っているんだなと、不思議に思った人もいるだろう。スマホを使った方がずっと便利じゃないかといえばそのとおりだが、スマホに頼るわけにはいかない事情がある。スマホだと電源をいれれば、位置を簡単に特定できてしまう上に、通信内容も傍受されやすいからだ。 こうしたことを避けるために、あえて一昔前のローテクなものを使うようにしたわけだ。 爆発の1回目は2024年9月17日で、ヒズボラのメンバーらが持っていたポケベルがメッセージを受信して一斉に鳴り出し、その5秒後に突然爆発した。5秒というのは、ポケベルが鳴って通信内容を確認しようとして顔に近づける時間を計算に入れ、「最大効果」を発揮するのがこのタイミングだと考えたからのようだ。 これにより、12人が死亡し約2700人が負傷したと報じられた。中には、鳴り出した卓上のポケベルを取って父親に渡そうとした9歳の女の子が爆発で死亡したケースもあったようだ。 爆発の2回目は翌9月18日で、今度は無線で会話ができるトランシーバーが爆発し、20人が死亡、約450人が負傷したと報じられた。 その後両爆発での死者は合わせて37人に達した模様だ』、「スマホだと電源をいれれば、位置を簡単に特定できてしまう上に、通信内容も傍受されやすいからだ。 こうしたことを避けるために、あえて一昔前のローテクなものを使うようにしたわけだ・・・メッセージを受信して一斉に鳴り出し、その5秒後に突然爆発した。5秒というのは、ポケベルが鳴って通信内容を確認しようとして顔に近づける時間を計算に入れ、「最大効果」を発揮するのがこのタイミングだと考えたからのようだ。 これにより、12人が死亡し約2700人が負傷したと報じられた」、なるほど。
・『イスラエルの様々な手口 ポケベルは台湾のメーカーのもの、トランシーバーは日本のメーカーのものだが、台湾のメーカーも日本のメーカーも爆発には無関係だと主張している。 流通段階のどこかでマルウェアと爆発物が仕掛けられ、マルウェアに信号が送られたと見られている。マルウェアだけでリチウムイオンバッテリーを暴走させたという説もある。 どちらにせよ、仕掛けを行ったのは、報道されているとおり、イスラエルであるのは間違いないだろう。 多数の通信機器を同時に爆破させるには、高度な技術力が必要だ。これを持っていて、現在ヒズボラ攻撃を行おうとするのはイスラエルしかない。 また過去にもイスラエルは敵対勢力に物品を送って、これによる殺害をたびたび実行してきたと見られている。 例えば、様々なテロ事件を引き起こした日本赤軍を暖かく迎えたことで知られるパレスチナ解放人民戦線(PFLP)の指導者のワディ・ハダドは、イスラエル側が仕掛けた毒入り歯磨きを毎日使用する中で、体内に毒物がどんどん溜まっていき、それが原因で1978年に亡き者にされたと言われている。 普段使っている歯磨き粉の銘柄と見た目は全く同じ毒入り歯磨き粉を用意し、タイミングを見計らってすり替えたのではないかという。 またイスラエルの諜報機関のシン・ベト(イスラエル総保安庁)は、1996年に携帯電話を起爆させて、ハマスの幹部であるヤヒヤ・アヤシュを殺害している。アヤシュが携帯電話で通話中であることを確認して、そのタイミングで携帯電話を爆破した。 アヤシュはハマスの爆弾製造の専門家で、ハマスの行う自爆テロの手法を発展させた人物であり、イスラエルにとっては最大級の危険人物だった。 こうした過去の手口との類似から、今回についてもイスラエルが行った可能性は高いとされる。 そもそもイスラエルがやったことが当然疑われるこの攻撃について、イスラエルは否定も肯定もしない立場を貫いている。当然疑われるのに否定していない以上、イスラエルがやったとみなしてよいのではないか』、「イスラエルの諜報機関のシン・ベト(イスラエル総保安庁)は、1996年に携帯電話を起爆させて、ハマスの幹部であるヤヒヤ・アヤシュを殺害している。アヤシュが携帯電話で通話中であることを確認して、そのタイミングで携帯電話を爆破した。 アヤシュはハマスの爆弾製造の専門家で、ハマスの行う自爆テロの手法を発展させた人物であり、イスラエルにとっては最大級の危険人物だった」、「爆弾製造の専門家」が「イスラエルの諜報機関」が仕掛けた「携帯電話」「爆弾」で殺害されたとは皮肉だ。
・『イラン、ヒズボラ、ハマスに報復は無理 さて、ヒズボラはイスラエルと敵対しているハマスを支援しており、今回のイスラエルによるガザ地区への攻撃に対して強く反発し、イスラエルにロケット攻撃をたびたび仕掛けてきていた。 ハマスとヒズボラの背後にはイランが控えていて、イランからの様々な援助を受けて、ハマスとヒズボラは活動を続けてきた。 イスラエルはイランが賓客として招いたハマス最高幹部のイスマイル・ハニヤ政治局長を、イラン滞在中に亡き者にし、イランのメンツを丸つぶれにした。これにより、イランの現体制に不満を持ち、イスラエルに協力する国内勢力がイラン国内にいることが露呈した。イランはまた、イスラエルの高度な技術力・諜報力に驚愕したのも間違いない。口先ではイスラエルへの報復を誓いながらも、イランはその後イスラエルに対して何もできない状態が続いてきた。 この状況に安心したイスラエルは、ヒズボラを徹底的に叩く動きに出たと見ればいい。いくらヒズボラを叩いても、イランが出てくる心配は事実上ないだろう。 ヒズボラの最高指導者のナスララ師は、「敵は超えてはならない一線をすべて超えた」として、イスラエルに対する報復を宣言したが、私はイラン同様に、大したことは何もできないのではないかと見ている』、「イスラエルはイランが賓客として招いたハマス最高幹部のイスマイル・ハニヤ政治局長を、イラン滞在中に亡き者にし、イランのメンツを丸つぶれにした・・・イランはその後イスラエルに対して何もできない状態が続いてきた。 この状況に安心したイスラエルは、ヒズボラを徹底的に叩く動きに出たと見ればいい。いくらヒズボラを叩いても、イランが出てくる心配は事実上ないだろう」。なるほど。
・『ヒズボラ内部で幹部への不信高まる そもそもヒズボラは、今回のイスラエルのものと見られる通信機器への攻撃で、多くの幹部級の戦闘員が亡くなったり怪我を負ったりしている状態だ。ヒズボラの戦闘力は大きく低下したはずだ。 また、通信機器を使うことへの恐怖心をヒズボラのメンバーに与え、戦闘員同士の通信に大きな支障が出たのも間違いない。仮に今後新たにポケベルが支給されようとしても、戦闘員たちは素直に受け取れないだろう。今度はマルウェアが仕込まれていないという絶対的な保証などないからだ。通信手段が確保できなければ、ヒズボラからイスラエルへの本格的な報復は事実上できなくなったと見ればいいだろう。 さらに、イスラエルが仕込みをやった通信機器を、それとは知らず戦闘員たちに配布していたヒズボラの幹部たちへの不信感も、当然大きく高まっているはずだ。 そもそも、ポケベルやトランシーバーに爆発物を仕掛けることができたのは、こうしたものをヒズボラが戦闘員に配布することを、イスラエルが事前に掴んでいたことを示している。 ひょっとしたら、イスラエルの工作員が「スマホでは位置もバレるし、盗聴のおそれも高いから、ローテクのポケベルやトランシーバーにした方がいいんじゃないですか」なんて進言して、ナスララ師らヒズボラの幹部たちがこれをいい提案だと承認したことすら考えられる。実際にどうだったのかはわからないが、いずれにせよ、ヒズボラの情報がイスラエル側にダダ漏れ状態で漏れているのは間違いない。 実際、これらの爆発事件が起こった後の9月20日に、イスラエルはレバノンの首都・ベイルートを空爆してヒズボラ幹部の殺害に成功している。殺された中には、ヒズボラの精鋭部隊「ラドワン部隊」のアキル司令官を含む、複数のヒズボラの幹部たちが含まれていると報じられた。 レバノン保健省によると、死者は少なくとも31人に上るとのことだ。このうちの何人がヒズボラの幹部なのかはわからないが、かなり多いと見られている。ポケベルを使っての通信ができないために、ヒズボラの幹部たちはわざわざ集まってミーティングせざるをえなくなった。このタイミングを狙った攻撃であるのは間違いない。これは、ヒズボラの内部情報がイスラエル側に漏れまくりであることを示している。 但し、この時にヒズボラの幹部たちが集まっていたのは、民間の集合住宅の地下なので、民間人の死傷者もかなり出ているのも間違いない』、「ポケベルを使っての通信ができないために、ヒズボラの幹部たちはわざわざ集まってミーティングせざるをえなくなった。このタイミングを狙った攻撃であるのは間違いない。これは、ヒズボラの内部情報がイスラエル側に漏れまくりであることを示している」、」なるほど。
・『見せつけた力の差、ナスララ師をついに排除 イスラエル軍はその後ヒズボラへの空爆をエスカレートさせ、23日にはレバノン各地で1600カ所を標的にした大規模な空爆を実施した。これにより、ヒズボラが所有するロケット弾数千発が破壊されたと、イスラエルは発表している。レバノン政府は、犠牲者は子ども50人を含む550人以上に達したとして、イスラエルを強く非難した。 9月27日には、イスラエルはレバノン南部にあるヒズボラのロケット弾の発射台や武器庫などに加え、さらにヒズボラ本部までをも空爆した。これにより、ヒズボラ最高指導者のナスララ師排除に成功した。イスラエルは2006年のレバノン侵攻の際に、ヒズボラの兵力を温存した決着を求められたことが、その後のイスラエルの安全保障に重大な脅威をもたらしたと認識しており、今回は世界が何を言おうが、ヒズボラの完全解体を目指すのであろう。 イスラエル側による容赦ないヒズボラへの攻撃により、中東がいっきに不安定化することへの懸念が、マスメディアでは報じられているが、それはありえないと見ていいと思う。 すでに見たように、ヒズボラの幹部クラスの多くが一気に死傷した。有効な通信手段が失われた。イスラエルとヒズボラの圧倒的な技術力の差、諜報力の差がここまで明らかになった。ヒズボラ内部で幹部への不信感が否応なく高まってもいる。この中でヒズボラの側にイスラエルに対する効果的な対抗手段が取れる余地はないと見るべきだ。 イランが大人しくなったように、ヒズボラも大人しくならざるをえないのではないか』、「ヒズボラの幹部クラスの多くが一気に死傷した。有効な通信手段が失われた。イスラエルとヒズボラの圧倒的な技術力の差、諜報力の差がここまで明らかになった。ヒズボラ内部で幹部への不信感が否応なく高まってもいる。この中でヒズボラの側にイスラエルに対する効果的な対抗手段が取れる余地はないと見るべきだ。 イランが大人しくなったように、ヒズボラも大人しくならざるをえないのではないか」、その通りなのかも知れない。
次に、9月26日付けNewsweek日本版が掲載した曽我太一氏による「イスラエルへの「ダブルスタンダード」に、今こそ国際社会が向き合うべき理由」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/soga/2024/09/post-5.php
・『<各国はなぜイスラエルをそこまで擁護するのか? 歴史を振り返ると「甘い姿勢」ばかりではなかった...> イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの終わりの見えない攻撃は、国際社会が今後イスラエルとどう向き合っていくのかという、大きな問いを突き付けている。 2023年10月7日のハマスによる大規模なテロ攻撃で、イスラエル史上、最長の戦争が始まった。欧米各国はすぐさまイスラエルへの全面的な支持を表明。アメリカのバイデン大統領や欧州各国首脳が相次いで緊急訪問し、連帯を示した。 しかし、ガザへの苛烈な攻撃が続くと、その論調はすぐに変化。ワシントン・ポスト紙が「西側諸国のウクライナでの道徳主義を損なう」と、ロシアに対する厳しい姿勢とイスラエルに対する姿勢の違いを批判するなど、内外から「ダブルスタンダード」との批判を呼ぶことになった。 人権や人道主義という理念を掲げる欧米各国がなぜイスラエルをそこまで擁護するのか。 背景には、歴史的なユダヤ人迫害やホロコーストに端を発する罪の意識に加え、必ずしも全ユダヤ系人口の意見を反映しているとは言えないが、政治的影響力を持つユダヤ系・非ユダヤ系団体によるアメリカの「イスラエル・ロビー」の存在がある。AIPAC(アメリカ・イスラエル公共問題委員会)はその最たる例だ。 しかし、歴史を振り返れば、アメリカがイスラエルに厳しい姿勢を示したこともある。共和党は今でこそロビー団体の影響を受け、イスラエル支持一辺倒となっているが、かつてはユダヤ人入植地の建設を凍結させるため、貸付保証の停止という制裁をちらつかせて圧力をかけたこともある。 ホロコーストという負の歴史を持つドイツでは近年、いかなるイスラエル批判も許されない風潮が強化されている。08年、国内での議論なしにメルケル首相がイスラエルの国会で行った演説で、イスラエルの安全保障を「国是」としたことから流れが変わった。 イスラエル出身のホロコースト研究者で米ブラウン大学のオメル・バルトフ教授は「イスラエル側からの働きかけもあり、一切批判できなくなった」と指摘。ユダヤ系研究者の反対にもかかわらず、19年にはイスラエルに対するボイコット活動を反ユダヤ主義と見なす決議がドイツ連邦議会で採択された。 ただ、各国政府の姿勢は世論をそのまま反映しているわけではない。論議を呼んでいる国際刑事裁判所(ICC)の逮捕状請求をめぐっては、イギリスで54%、フランスで49%、ドイツでも44%が、イスラエルのネタニヤフ首相に逮捕状が発行されるべきと回答。「発行されるべきではない」は各国とも20%前後だった。 イスラエル観の違いは特に若い世代で顕著だ。) 昨年10月のCNNの世論調査では、イスラエルの反撃が正当化されると回答した人は65歳以上では81%に上ったが、35〜49歳では44%、18〜34歳では27%。熱烈なイスラエル支持で知られるキリスト教福音派ですら、若い世代ではイスラエル支持の割合が減っているという調査もある。 若い世代にとってはホロコーストよりも、第3次中東戦争の1967年から現在にまで続くパレスチナ占領のほうが現在進行形の記憶としてイスラエルの見方を左右している。市民の冷ややかな目と、政府レベルの姿勢には深いギャップがあるのが実情なのだ。 今回露呈したダブルスタンダードは、法の支配や人道主義で国際社会をリードしてきた欧米諸国の説得力を損なうだけでなく、イスラエルの将来的な孤立を深めかねない。 今や国内でも戦争を止めるために外国の介入を求める声が上がるのをよそに、さらなる右傾化がイスラエルで進むとどうなるのか。過激派が核のボタンを握ってからでは遅いのだ』、「イスラエル出身のホロコースト研究者で米ブラウン大学のオメル・バルトフ教授は「イスラエル側からの働きかけもあり、一切批判できなくなった」と指摘。ユダヤ系研究者の反対にもかかわらず、19年にはイスラエルに対するボイコット活動を反ユダヤ主義と見なす決議がドイツ連邦議会で採択された・・・国際刑事裁判所(ICC)の逮捕状請求をめぐっては、イギリスで54%、フランスで49%、ドイツでも44%が、イスラエルのネタニヤフ首相に逮捕状が発行されるべきと回答。「発行されるべきではない」は各国とも20%前後だった。 イスラエル観の違いは特に若い世代で顕著だ・・・今回露呈したダブルスタンダードは、法の支配や人道主義で国際社会をリードしてきた欧米諸国の説得力を損なうだけでなく、イスラエルの将来的な孤立を深めかねない。 今や国内でも戦争を止めるために外国の介入を求める声が上がるのをよそに、さらなる右傾化がイスラエルで進むとどうなるのか。過激派が核のボタンを握ってからでは遅いのだ」、確かに「イスラエル」は既に核兵器を秘密裏に保有しているだけに、「過激派が核のボタンを」握る懸念は大きな脅威だ。
第三に、10月7日付け東洋経済オンラインが掲載した東洋大学教授の薬師寺 克行氏による「イスラエルの「最も危険な男」を誰が止めるのか 見捨てられないアメリカを無視するネタニヤフ首相」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/832215
・『パレスチナのガザ地区に始まり、イスラエル北部からレバノン南部でのヒズボラ、さらにはイランへと、イスラエルの戦線は日ごとに拡大し続けている。 1年前、ハマスの急襲攻撃で多数の死者と人質を出し失脚の瀬戸際に立たされたイスラエルのネタニヤフ首相は見事に復活し、今や向かうところ敵なしの状況だ。 ガザでのハマスとの戦いでイスラエルは大量の地上軍を投入し、4万人以上のパレスチナ人の命を奪うとともにハマスを壊滅状態に追い込んだ。北の敵であるヒズボラに対しては、彼らが使用するポケベルを一斉に爆破するという奇策に続き、最高指導者のナスララ師をはじめほとんどの幹部の殺害にも成功した。 現在はレバノンへの地上侵攻と首都ベイルートなどへの激しい空爆を続けるなど「第2のガザ」を目指している』、「失脚の瀬戸際に立たされたイスラエルのネタニヤフ首相は見事に復活し、今や向かうところ敵なしの状況だ。 ガザでのハマスとの戦いでイスラエルは大量の地上軍を投入し、4万人以上のパレスチナ人の命を奪うとともにハマスを壊滅状態に追い込んだ。北の敵であるヒズボラに対しては、彼らが使用するポケベルを一斉に爆破するという奇策に続き、最高指導者のナスララ師をはじめほとんどの幹部の殺害にも成功」、なるほど。
・『戦線拡大を続ける思惑とは こうした状況を前に、ハマスやヒズボラを裏で操っているイランがついにイスラエルに対するミサイル攻撃に踏み切った。イラン攻撃の口実を求めていたネタニヤフ首相にしてみれば、まさに思うつぼである。ハマス、ヒズボラ、イランという敵対勢力との戦いは、これまでのところネタニヤフ首相の思惑通り進んでいるようだ。 もちろんアメリカなどはイスラエルに対し停戦合意の働きかけを繰り返したが、ネタニヤフ首相はまったく聞く耳を持たなかった。 彼が戦線を拡大し続ける意図はなにか。8月のアメリカの雑誌『TIMES』 のインタビューでその一端が語られている。) まずイスラエルが置かれている今の状況についてネタニヤフ首相は、「ハマス、フーシ派、ヒズボラ、シリアとイラクのシーア派民兵を含む、より広範なイランのテロ枢軸に直面している」と語り、それらの脅威を取り除かなければならないと強調している。 また、イスラエルがかつて合意したパレスチナ国家との共存を目的とする「二国家解決案」については、「パレスチナ人がすべての権限を持つパレスチナ国家が仮に誕生しても、軍事面はイスラエルが実権を握る不完全国家しか認めるつもりはない」として、パレスチナ国家が誕生してもイスラエルによる軍事的支配は続けるとしている。 その理由は、「パレスチナの地から軍事的権限を放棄すれば、イランの代理組織が直ちに入ってきて、ハマスの奇襲のようなことが繰り返されるからだ」としている』、「ネタニヤフ首相は、「ハマス、フーシ派、ヒズボラ、シリアとイラクのシーア派民兵を含む、より広範なイランのテロ枢軸に直面している」と語り、それらの脅威を取り除かなければならないと強調・・・パレスチナ国家との共存を目的とする「二国家解決案」については、「パレスチナ人がすべての権限を持つパレスチナ国家が仮に誕生しても、軍事面はイスラエルが実権を握る不完全国家しか認めるつもりはない・・・パレスチナの地から軍事的権限を放棄すれば、イランの代理組織が直ちに入ってきて、ハマスの奇襲のようなことが繰り返されるからだ」、なるほど。
・『「二国家解決案」を否定し、軍事手段のみ つまりネタニヤフ首相は、パレスチナ問題の最終的解決策として世界が期待している「二国家解決案」は、イランが影響力を持つ勢力が新たに生まれイスラエルを攻撃してくるため認めないというのである。そればかりかイスラエルの平和を実現するためには、イランの息のかかったすべての勢力を軍事的に倒すしかないと考えているのだ。 ネタニヤフ首相の頭には、かつてのイスラエルの首相が苦しみながらも挑戦した話し合いによる合意形成で平和的秩序を構築するという考えはまったくない。軍事的手段でしか平和は実現しないという極めて単純な発想で戦線を拡大しているのである。そして、それが同時に彼の権力維持の手段でもある。 昨年10月のハマスの奇襲はネタニヤフ首相にとっては屈辱的なことであったが、責任を取って辞任するのではなく、この危機を逆に生かして戦時内閣を作り、ガザ侵攻に踏み切った。国民の間に恐怖心をあおり、戦闘を正当化していった。 ガザの戦闘が落ち着き始めると新たにヒズボラという標的を作り出し求心力を維持した。一方で連立政権のパートナーである極右勢力をひきつけておくためには、彼らが主張する「停戦拒否」を受け入れるとともに、ヨルダン川西岸の入植地拡大を続けパレスチナ人に対する弾圧を緩めなかった。) もちろんネタニヤフ流の戦線拡大や権力維持に対する強い批判はある。 アメリカ政治史上、ユダヤ人として最高位の上院院内総務に就いたチャック・シューマー議員はネタニヤフ首相について、「自らの政治的生き残りをイスラエルの最善の利益よりも優先させて、道を見失った。ネタニヤフ首相が、暴力の連鎖を断ち切り、国際舞台でイスラエルの信用を維持し、二国家解決に向けて取り組むと期待する人は誰もいない」と厳しく非難している。 またイスラエルとの関係正常化の動きが取りざたされているサウジアラビアのサウード外相も「イスラエルの真の安全はパレスチナ人の正当な権利を認めることから生まれる。占領と恨みの土台の上に平和を築くことはできない」と語る。 残念ながら、こうしたまっとうな主張がネタニヤフ首相の耳に届くことはなさそうだ』、「ネタニヤフ首相の頭には、かつてのイスラエルの首相が苦しみながらも挑戦した話し合いによる合意形成で平和的秩序を構築するという考えはまったくない。軍事的手段でしか平和は実現しないという極めて単純な発想で戦線を拡大しているのである。そして、それが同時に彼の権力維持の手段でもある。 昨年10月のハマスの奇襲はネタニヤフ首相にとっては屈辱的なことであったが、責任を取って辞任するのではなく、この危機を逆に生かして戦時内閣を作り、ガザ侵攻に踏み切った。国民の間に恐怖心をあおり、戦闘を正当化していった。 ガザの戦闘が落ち着き始めると新たにヒズボラという標的を作り出し求心力を維持した。一方で連立政権のパートナーである極右勢力をひきつけておくためには、彼らが主張する「停戦拒否」を受け入れるとともに、ヨルダン川西岸の入植地拡大を続けパレスチナ人に対する弾圧を緩めなかった・・・ユダヤ人として最高位の上院院内総務に就いたチャック・シューマー議員はネタニヤフ首相について、「自らの政治的生き残りをイスラエルの最善の利益よりも優先させて、道を見失った。ネタニヤフ首相が、暴力の連鎖を断ち切り、国際舞台でイスラエルの信用を維持し、二国家解決に向けて取り組むと期待する人は誰もいない」と厳しく非難している。 またイスラエルとの関係正常化の動きが取りざたされているサウジアラビアのサウード外相も「イスラエルの真の安全はパレスチナ人の正当な権利を認めることから生まれる。占領と恨みの土台の上に平和を築くことはできない」と語る。 残念ながら、こうしたまっとうな主張がネタニヤフ首相の耳に届くことはなさそうだ」、なるほど。
・『もはやアメリカの要求も無視 1948年のイスラエル独立後、中東和平問題で大きな役割を果たしてきたのはアメリカだった。 1978年にはカーター大統領が動き、エジプトのサダト大統領とイスラエルのベギン首相が、国交を結ぶキャンプデービッド合意を締結した。 1993年にはクリントン大統領が間に入り、イスラエルのラビン首相とPLO(パレスチナ解放機構)のアラファト議長が、イスラエル国家とパレスチナ自治政府を相互に認めるオスロ合意を締結した。国際社会においてアメリカが圧倒的な力を持っていた時代だったからこそ実現した交渉だった。 アメリカの衰退とともにイスラエルに対する力も落ちていった。 残り任期がわずかとなったバイデン大統領は、中東和平実現をレガシー(政治的遺産)とすべく積極的に動いている。ガザでの停戦、ヒズボラとの停戦を繰り返しイスラエルに提起しブリンケン国務長官らが活発に動いた。しかし、ネタニヤフ首相はアメリカの要求を無視し、裏切り続けている。) ネタニヤフ首相は首相在職期間が通算で18年に及び、これまで4人のアメリカ大統領と付き合ってきた。アメリカ政府の要求をいくら無視してもアメリカはイスラエル支持を変えることができないと見切っている。 アメリカは歴代政権が民主、共和両党を問わずイスラエルを支持し、ハマスやヒズボラをテロ組織に指定している。またイランに対しても経済制裁を続けている。国民の多くもイスラエル支持を当然視している。 仮にバイデン大統領がネタニヤフ首相を批判し武器の提供などをストップすれば、共和党はもちろん民主党の中からも、そして多くの国民から「イスラエルを見捨ててテロ組織を支援するのか」などと批判されることは避けられない。 まして今は大統領選の終盤という微妙なタイミングである。イスラエル批判が民主党候補のカマラ・ハリス副大統領に不利に働くことは明らかである。 そればかりかアメリカは、イスラエルの戦線拡大を前に地中海やオマーン湾など中東地域への米軍の増派を進めており、和平推進とは真逆の行動を強いられているのである』、「ネタニヤフ首相は首相在職期間が通算で18年に及び、これまで4人のアメリカ大統領と付き合ってきた。アメリカ政府の要求をいくら無視してもアメリカはイスラエル支持を変えることができないと見切っている。 アメリカは歴代政権が民主、共和両党を問わずイスラエルを支持し、ハマスやヒズボラをテロ組織に指定している。またイランに対しても経済制裁を続けている。国民の多くもイスラエル支持を当然視している・・・まして今は大統領選の終盤という微妙なタイミングである。イスラエル批判が民主党候補のカマラ・ハリス副大統領に不利に働くことは明らかである。 そればかりかアメリカは、イスラエルの戦線拡大を前に地中海やオマーン湾など中東地域への米軍の増派を進めており、和平推進とは真逆の行動を強いられているのである」、なるほど。
・『欧州も国連も、身動きが取れない では、次々と新たな脅威を作り出し戦闘を継続するネタニヤフ首相を誰が止めることができるのか。 世界各地でネタニヤフ首相を批判するデモが繰り広げられている。しかし、ユダヤ人のホロコーストという歴史を抱えるドイツをはじめ欧州主要国は、イスラエル批判を鮮明にすることができないまま、身動きが取れないでいる。 ウクライナ戦争をめぐって欧米主要国と中ロが決定的に対立する国連は完全な機能不全に陥っている。 その結果、イランとの戦闘が本格化し戦乱が湾岸諸国まで巻き込むようなことになれば、中東からの原油供給がストップするなど国際社会も世界経済も大混乱に陥ることは必至である。 世界の主要プレーヤーが何もできない中、ネタニヤフ首相は自分の好きなように中東の危機を演出し権力を維持し続けるのであろうか。 今やネタニヤフ首相は世界で最も危険な男の一人になりつつある』、「ユダヤ人のホロコーストという歴史を抱えるドイツをはじめ欧州主要国は、イスラエル批判を鮮明にすることができないまま、身動きが取れないでいる。 ウクライナ戦争をめぐって欧米主要国と中ロが決定的に対立する国連は完全な機能不全に陥っている・・・世界の主要プレーヤーが何もできない中、ネタニヤフ首相は自分の好きなように中東の危機を演出し権力を維持し続けるのであろうか。 今やネタニヤフ首相は世界で最も危険な男の一人になりつつある」、トランプが仮に大統領選で勝利すれば、「ネタニヤフ」を抑えるどころか、けしかけかねない。「「ネタニヤフ」を抑え込める勢力は当面、出てこないとすれば、軍事面で失敗しない限り、「ネタニヤフ」の天下はまだ続くことになるだろう。やれやれだ。
先ずは、本年10月1日付け現代ビジネスが掲載した経済評論家の朝香 豊氏による「3000人以上を殺傷したヒズボラへの「ポケベル爆弾攻撃」がヤバすぎる!一斉に鳴り出し、5秒後に突然爆発...イスラエルが見せつけた「驚きの手口」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/138352
・『ポケベル、トランシーバーの爆発 中東のレバノンで、イスラム教シーア派組織ヒズボラのメンバーらが所持していたポケベルやトランシーバーが次々と爆発し、周辺にいた人たちを含め多数の死傷者が出るという事件が起こった。 その後もイスラエルはヒズボラへの攻撃の手を緩めず、9月23日にはレバノン各地で1600カ所を標的にした大規模な空爆を実施し、9月27日にはヒズボラの本部の空爆も行った。 こうした事態を受けて、中東で全面戦争が起こるかもしれないとの懸念が広がっている。 しかし恐らくそういう事態に発展することはなく、イスラエルの一方的な勝利で終わると見るのが妥当だと私は考えている。 イスラエルが強気でヒズボラ攻勢を強めているのは、その自信がイスラエルにはあるからだ』、「ヒズボラのメンバーらが所持していたポケベルやトランシーバーが次々と爆発し、周辺にいた人たちを含め多数の死傷者が出る」、「イスラエル」の諜報機関の鮮やかな手口だ。
・『2回の爆発で37人の死者 ところで、ヒズボラが通信手段としてポケベルとかトランシーバーを使っていたと聞いて、随分とローテクなものを使っているんだなと、不思議に思った人もいるだろう。スマホを使った方がずっと便利じゃないかといえばそのとおりだが、スマホに頼るわけにはいかない事情がある。スマホだと電源をいれれば、位置を簡単に特定できてしまう上に、通信内容も傍受されやすいからだ。 こうしたことを避けるために、あえて一昔前のローテクなものを使うようにしたわけだ。 爆発の1回目は2024年9月17日で、ヒズボラのメンバーらが持っていたポケベルがメッセージを受信して一斉に鳴り出し、その5秒後に突然爆発した。5秒というのは、ポケベルが鳴って通信内容を確認しようとして顔に近づける時間を計算に入れ、「最大効果」を発揮するのがこのタイミングだと考えたからのようだ。 これにより、12人が死亡し約2700人が負傷したと報じられた。中には、鳴り出した卓上のポケベルを取って父親に渡そうとした9歳の女の子が爆発で死亡したケースもあったようだ。 爆発の2回目は翌9月18日で、今度は無線で会話ができるトランシーバーが爆発し、20人が死亡、約450人が負傷したと報じられた。 その後両爆発での死者は合わせて37人に達した模様だ』、「スマホだと電源をいれれば、位置を簡単に特定できてしまう上に、通信内容も傍受されやすいからだ。 こうしたことを避けるために、あえて一昔前のローテクなものを使うようにしたわけだ・・・メッセージを受信して一斉に鳴り出し、その5秒後に突然爆発した。5秒というのは、ポケベルが鳴って通信内容を確認しようとして顔に近づける時間を計算に入れ、「最大効果」を発揮するのがこのタイミングだと考えたからのようだ。 これにより、12人が死亡し約2700人が負傷したと報じられた」、なるほど。
・『イスラエルの様々な手口 ポケベルは台湾のメーカーのもの、トランシーバーは日本のメーカーのものだが、台湾のメーカーも日本のメーカーも爆発には無関係だと主張している。 流通段階のどこかでマルウェアと爆発物が仕掛けられ、マルウェアに信号が送られたと見られている。マルウェアだけでリチウムイオンバッテリーを暴走させたという説もある。 どちらにせよ、仕掛けを行ったのは、報道されているとおり、イスラエルであるのは間違いないだろう。 多数の通信機器を同時に爆破させるには、高度な技術力が必要だ。これを持っていて、現在ヒズボラ攻撃を行おうとするのはイスラエルしかない。 また過去にもイスラエルは敵対勢力に物品を送って、これによる殺害をたびたび実行してきたと見られている。 例えば、様々なテロ事件を引き起こした日本赤軍を暖かく迎えたことで知られるパレスチナ解放人民戦線(PFLP)の指導者のワディ・ハダドは、イスラエル側が仕掛けた毒入り歯磨きを毎日使用する中で、体内に毒物がどんどん溜まっていき、それが原因で1978年に亡き者にされたと言われている。 普段使っている歯磨き粉の銘柄と見た目は全く同じ毒入り歯磨き粉を用意し、タイミングを見計らってすり替えたのではないかという。 またイスラエルの諜報機関のシン・ベト(イスラエル総保安庁)は、1996年に携帯電話を起爆させて、ハマスの幹部であるヤヒヤ・アヤシュを殺害している。アヤシュが携帯電話で通話中であることを確認して、そのタイミングで携帯電話を爆破した。 アヤシュはハマスの爆弾製造の専門家で、ハマスの行う自爆テロの手法を発展させた人物であり、イスラエルにとっては最大級の危険人物だった。 こうした過去の手口との類似から、今回についてもイスラエルが行った可能性は高いとされる。 そもそもイスラエルがやったことが当然疑われるこの攻撃について、イスラエルは否定も肯定もしない立場を貫いている。当然疑われるのに否定していない以上、イスラエルがやったとみなしてよいのではないか』、「イスラエルの諜報機関のシン・ベト(イスラエル総保安庁)は、1996年に携帯電話を起爆させて、ハマスの幹部であるヤヒヤ・アヤシュを殺害している。アヤシュが携帯電話で通話中であることを確認して、そのタイミングで携帯電話を爆破した。 アヤシュはハマスの爆弾製造の専門家で、ハマスの行う自爆テロの手法を発展させた人物であり、イスラエルにとっては最大級の危険人物だった」、「爆弾製造の専門家」が「イスラエルの諜報機関」が仕掛けた「携帯電話」「爆弾」で殺害されたとは皮肉だ。
・『イラン、ヒズボラ、ハマスに報復は無理 さて、ヒズボラはイスラエルと敵対しているハマスを支援しており、今回のイスラエルによるガザ地区への攻撃に対して強く反発し、イスラエルにロケット攻撃をたびたび仕掛けてきていた。 ハマスとヒズボラの背後にはイランが控えていて、イランからの様々な援助を受けて、ハマスとヒズボラは活動を続けてきた。 イスラエルはイランが賓客として招いたハマス最高幹部のイスマイル・ハニヤ政治局長を、イラン滞在中に亡き者にし、イランのメンツを丸つぶれにした。これにより、イランの現体制に不満を持ち、イスラエルに協力する国内勢力がイラン国内にいることが露呈した。イランはまた、イスラエルの高度な技術力・諜報力に驚愕したのも間違いない。口先ではイスラエルへの報復を誓いながらも、イランはその後イスラエルに対して何もできない状態が続いてきた。 この状況に安心したイスラエルは、ヒズボラを徹底的に叩く動きに出たと見ればいい。いくらヒズボラを叩いても、イランが出てくる心配は事実上ないだろう。 ヒズボラの最高指導者のナスララ師は、「敵は超えてはならない一線をすべて超えた」として、イスラエルに対する報復を宣言したが、私はイラン同様に、大したことは何もできないのではないかと見ている』、「イスラエルはイランが賓客として招いたハマス最高幹部のイスマイル・ハニヤ政治局長を、イラン滞在中に亡き者にし、イランのメンツを丸つぶれにした・・・イランはその後イスラエルに対して何もできない状態が続いてきた。 この状況に安心したイスラエルは、ヒズボラを徹底的に叩く動きに出たと見ればいい。いくらヒズボラを叩いても、イランが出てくる心配は事実上ないだろう」。なるほど。
・『ヒズボラ内部で幹部への不信高まる そもそもヒズボラは、今回のイスラエルのものと見られる通信機器への攻撃で、多くの幹部級の戦闘員が亡くなったり怪我を負ったりしている状態だ。ヒズボラの戦闘力は大きく低下したはずだ。 また、通信機器を使うことへの恐怖心をヒズボラのメンバーに与え、戦闘員同士の通信に大きな支障が出たのも間違いない。仮に今後新たにポケベルが支給されようとしても、戦闘員たちは素直に受け取れないだろう。今度はマルウェアが仕込まれていないという絶対的な保証などないからだ。通信手段が確保できなければ、ヒズボラからイスラエルへの本格的な報復は事実上できなくなったと見ればいいだろう。 さらに、イスラエルが仕込みをやった通信機器を、それとは知らず戦闘員たちに配布していたヒズボラの幹部たちへの不信感も、当然大きく高まっているはずだ。 そもそも、ポケベルやトランシーバーに爆発物を仕掛けることができたのは、こうしたものをヒズボラが戦闘員に配布することを、イスラエルが事前に掴んでいたことを示している。 ひょっとしたら、イスラエルの工作員が「スマホでは位置もバレるし、盗聴のおそれも高いから、ローテクのポケベルやトランシーバーにした方がいいんじゃないですか」なんて進言して、ナスララ師らヒズボラの幹部たちがこれをいい提案だと承認したことすら考えられる。実際にどうだったのかはわからないが、いずれにせよ、ヒズボラの情報がイスラエル側にダダ漏れ状態で漏れているのは間違いない。 実際、これらの爆発事件が起こった後の9月20日に、イスラエルはレバノンの首都・ベイルートを空爆してヒズボラ幹部の殺害に成功している。殺された中には、ヒズボラの精鋭部隊「ラドワン部隊」のアキル司令官を含む、複数のヒズボラの幹部たちが含まれていると報じられた。 レバノン保健省によると、死者は少なくとも31人に上るとのことだ。このうちの何人がヒズボラの幹部なのかはわからないが、かなり多いと見られている。ポケベルを使っての通信ができないために、ヒズボラの幹部たちはわざわざ集まってミーティングせざるをえなくなった。このタイミングを狙った攻撃であるのは間違いない。これは、ヒズボラの内部情報がイスラエル側に漏れまくりであることを示している。 但し、この時にヒズボラの幹部たちが集まっていたのは、民間の集合住宅の地下なので、民間人の死傷者もかなり出ているのも間違いない』、「ポケベルを使っての通信ができないために、ヒズボラの幹部たちはわざわざ集まってミーティングせざるをえなくなった。このタイミングを狙った攻撃であるのは間違いない。これは、ヒズボラの内部情報がイスラエル側に漏れまくりであることを示している」、」なるほど。
・『見せつけた力の差、ナスララ師をついに排除 イスラエル軍はその後ヒズボラへの空爆をエスカレートさせ、23日にはレバノン各地で1600カ所を標的にした大規模な空爆を実施した。これにより、ヒズボラが所有するロケット弾数千発が破壊されたと、イスラエルは発表している。レバノン政府は、犠牲者は子ども50人を含む550人以上に達したとして、イスラエルを強く非難した。 9月27日には、イスラエルはレバノン南部にあるヒズボラのロケット弾の発射台や武器庫などに加え、さらにヒズボラ本部までをも空爆した。これにより、ヒズボラ最高指導者のナスララ師排除に成功した。イスラエルは2006年のレバノン侵攻の際に、ヒズボラの兵力を温存した決着を求められたことが、その後のイスラエルの安全保障に重大な脅威をもたらしたと認識しており、今回は世界が何を言おうが、ヒズボラの完全解体を目指すのであろう。 イスラエル側による容赦ないヒズボラへの攻撃により、中東がいっきに不安定化することへの懸念が、マスメディアでは報じられているが、それはありえないと見ていいと思う。 すでに見たように、ヒズボラの幹部クラスの多くが一気に死傷した。有効な通信手段が失われた。イスラエルとヒズボラの圧倒的な技術力の差、諜報力の差がここまで明らかになった。ヒズボラ内部で幹部への不信感が否応なく高まってもいる。この中でヒズボラの側にイスラエルに対する効果的な対抗手段が取れる余地はないと見るべきだ。 イランが大人しくなったように、ヒズボラも大人しくならざるをえないのではないか』、「ヒズボラの幹部クラスの多くが一気に死傷した。有効な通信手段が失われた。イスラエルとヒズボラの圧倒的な技術力の差、諜報力の差がここまで明らかになった。ヒズボラ内部で幹部への不信感が否応なく高まってもいる。この中でヒズボラの側にイスラエルに対する効果的な対抗手段が取れる余地はないと見るべきだ。 イランが大人しくなったように、ヒズボラも大人しくならざるをえないのではないか」、その通りなのかも知れない。
次に、9月26日付けNewsweek日本版が掲載した曽我太一氏による「イスラエルへの「ダブルスタンダード」に、今こそ国際社会が向き合うべき理由」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/soga/2024/09/post-5.php
・『<各国はなぜイスラエルをそこまで擁護するのか? 歴史を振り返ると「甘い姿勢」ばかりではなかった...> イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの終わりの見えない攻撃は、国際社会が今後イスラエルとどう向き合っていくのかという、大きな問いを突き付けている。 2023年10月7日のハマスによる大規模なテロ攻撃で、イスラエル史上、最長の戦争が始まった。欧米各国はすぐさまイスラエルへの全面的な支持を表明。アメリカのバイデン大統領や欧州各国首脳が相次いで緊急訪問し、連帯を示した。 しかし、ガザへの苛烈な攻撃が続くと、その論調はすぐに変化。ワシントン・ポスト紙が「西側諸国のウクライナでの道徳主義を損なう」と、ロシアに対する厳しい姿勢とイスラエルに対する姿勢の違いを批判するなど、内外から「ダブルスタンダード」との批判を呼ぶことになった。 人権や人道主義という理念を掲げる欧米各国がなぜイスラエルをそこまで擁護するのか。 背景には、歴史的なユダヤ人迫害やホロコーストに端を発する罪の意識に加え、必ずしも全ユダヤ系人口の意見を反映しているとは言えないが、政治的影響力を持つユダヤ系・非ユダヤ系団体によるアメリカの「イスラエル・ロビー」の存在がある。AIPAC(アメリカ・イスラエル公共問題委員会)はその最たる例だ。 しかし、歴史を振り返れば、アメリカがイスラエルに厳しい姿勢を示したこともある。共和党は今でこそロビー団体の影響を受け、イスラエル支持一辺倒となっているが、かつてはユダヤ人入植地の建設を凍結させるため、貸付保証の停止という制裁をちらつかせて圧力をかけたこともある。 ホロコーストという負の歴史を持つドイツでは近年、いかなるイスラエル批判も許されない風潮が強化されている。08年、国内での議論なしにメルケル首相がイスラエルの国会で行った演説で、イスラエルの安全保障を「国是」としたことから流れが変わった。 イスラエル出身のホロコースト研究者で米ブラウン大学のオメル・バルトフ教授は「イスラエル側からの働きかけもあり、一切批判できなくなった」と指摘。ユダヤ系研究者の反対にもかかわらず、19年にはイスラエルに対するボイコット活動を反ユダヤ主義と見なす決議がドイツ連邦議会で採択された。 ただ、各国政府の姿勢は世論をそのまま反映しているわけではない。論議を呼んでいる国際刑事裁判所(ICC)の逮捕状請求をめぐっては、イギリスで54%、フランスで49%、ドイツでも44%が、イスラエルのネタニヤフ首相に逮捕状が発行されるべきと回答。「発行されるべきではない」は各国とも20%前後だった。 イスラエル観の違いは特に若い世代で顕著だ。) 昨年10月のCNNの世論調査では、イスラエルの反撃が正当化されると回答した人は65歳以上では81%に上ったが、35〜49歳では44%、18〜34歳では27%。熱烈なイスラエル支持で知られるキリスト教福音派ですら、若い世代ではイスラエル支持の割合が減っているという調査もある。 若い世代にとってはホロコーストよりも、第3次中東戦争の1967年から現在にまで続くパレスチナ占領のほうが現在進行形の記憶としてイスラエルの見方を左右している。市民の冷ややかな目と、政府レベルの姿勢には深いギャップがあるのが実情なのだ。 今回露呈したダブルスタンダードは、法の支配や人道主義で国際社会をリードしてきた欧米諸国の説得力を損なうだけでなく、イスラエルの将来的な孤立を深めかねない。 今や国内でも戦争を止めるために外国の介入を求める声が上がるのをよそに、さらなる右傾化がイスラエルで進むとどうなるのか。過激派が核のボタンを握ってからでは遅いのだ』、「イスラエル出身のホロコースト研究者で米ブラウン大学のオメル・バルトフ教授は「イスラエル側からの働きかけもあり、一切批判できなくなった」と指摘。ユダヤ系研究者の反対にもかかわらず、19年にはイスラエルに対するボイコット活動を反ユダヤ主義と見なす決議がドイツ連邦議会で採択された・・・国際刑事裁判所(ICC)の逮捕状請求をめぐっては、イギリスで54%、フランスで49%、ドイツでも44%が、イスラエルのネタニヤフ首相に逮捕状が発行されるべきと回答。「発行されるべきではない」は各国とも20%前後だった。 イスラエル観の違いは特に若い世代で顕著だ・・・今回露呈したダブルスタンダードは、法の支配や人道主義で国際社会をリードしてきた欧米諸国の説得力を損なうだけでなく、イスラエルの将来的な孤立を深めかねない。 今や国内でも戦争を止めるために外国の介入を求める声が上がるのをよそに、さらなる右傾化がイスラエルで進むとどうなるのか。過激派が核のボタンを握ってからでは遅いのだ」、確かに「イスラエル」は既に核兵器を秘密裏に保有しているだけに、「過激派が核のボタンを」握る懸念は大きな脅威だ。
第三に、10月7日付け東洋経済オンラインが掲載した東洋大学教授の薬師寺 克行氏による「イスラエルの「最も危険な男」を誰が止めるのか 見捨てられないアメリカを無視するネタニヤフ首相」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/832215
・『パレスチナのガザ地区に始まり、イスラエル北部からレバノン南部でのヒズボラ、さらにはイランへと、イスラエルの戦線は日ごとに拡大し続けている。 1年前、ハマスの急襲攻撃で多数の死者と人質を出し失脚の瀬戸際に立たされたイスラエルのネタニヤフ首相は見事に復活し、今や向かうところ敵なしの状況だ。 ガザでのハマスとの戦いでイスラエルは大量の地上軍を投入し、4万人以上のパレスチナ人の命を奪うとともにハマスを壊滅状態に追い込んだ。北の敵であるヒズボラに対しては、彼らが使用するポケベルを一斉に爆破するという奇策に続き、最高指導者のナスララ師をはじめほとんどの幹部の殺害にも成功した。 現在はレバノンへの地上侵攻と首都ベイルートなどへの激しい空爆を続けるなど「第2のガザ」を目指している』、「失脚の瀬戸際に立たされたイスラエルのネタニヤフ首相は見事に復活し、今や向かうところ敵なしの状況だ。 ガザでのハマスとの戦いでイスラエルは大量の地上軍を投入し、4万人以上のパレスチナ人の命を奪うとともにハマスを壊滅状態に追い込んだ。北の敵であるヒズボラに対しては、彼らが使用するポケベルを一斉に爆破するという奇策に続き、最高指導者のナスララ師をはじめほとんどの幹部の殺害にも成功」、なるほど。
・『戦線拡大を続ける思惑とは こうした状況を前に、ハマスやヒズボラを裏で操っているイランがついにイスラエルに対するミサイル攻撃に踏み切った。イラン攻撃の口実を求めていたネタニヤフ首相にしてみれば、まさに思うつぼである。ハマス、ヒズボラ、イランという敵対勢力との戦いは、これまでのところネタニヤフ首相の思惑通り進んでいるようだ。 もちろんアメリカなどはイスラエルに対し停戦合意の働きかけを繰り返したが、ネタニヤフ首相はまったく聞く耳を持たなかった。 彼が戦線を拡大し続ける意図はなにか。8月のアメリカの雑誌『TIMES』 のインタビューでその一端が語られている。) まずイスラエルが置かれている今の状況についてネタニヤフ首相は、「ハマス、フーシ派、ヒズボラ、シリアとイラクのシーア派民兵を含む、より広範なイランのテロ枢軸に直面している」と語り、それらの脅威を取り除かなければならないと強調している。 また、イスラエルがかつて合意したパレスチナ国家との共存を目的とする「二国家解決案」については、「パレスチナ人がすべての権限を持つパレスチナ国家が仮に誕生しても、軍事面はイスラエルが実権を握る不完全国家しか認めるつもりはない」として、パレスチナ国家が誕生してもイスラエルによる軍事的支配は続けるとしている。 その理由は、「パレスチナの地から軍事的権限を放棄すれば、イランの代理組織が直ちに入ってきて、ハマスの奇襲のようなことが繰り返されるからだ」としている』、「ネタニヤフ首相は、「ハマス、フーシ派、ヒズボラ、シリアとイラクのシーア派民兵を含む、より広範なイランのテロ枢軸に直面している」と語り、それらの脅威を取り除かなければならないと強調・・・パレスチナ国家との共存を目的とする「二国家解決案」については、「パレスチナ人がすべての権限を持つパレスチナ国家が仮に誕生しても、軍事面はイスラエルが実権を握る不完全国家しか認めるつもりはない・・・パレスチナの地から軍事的権限を放棄すれば、イランの代理組織が直ちに入ってきて、ハマスの奇襲のようなことが繰り返されるからだ」、なるほど。
・『「二国家解決案」を否定し、軍事手段のみ つまりネタニヤフ首相は、パレスチナ問題の最終的解決策として世界が期待している「二国家解決案」は、イランが影響力を持つ勢力が新たに生まれイスラエルを攻撃してくるため認めないというのである。そればかりかイスラエルの平和を実現するためには、イランの息のかかったすべての勢力を軍事的に倒すしかないと考えているのだ。 ネタニヤフ首相の頭には、かつてのイスラエルの首相が苦しみながらも挑戦した話し合いによる合意形成で平和的秩序を構築するという考えはまったくない。軍事的手段でしか平和は実現しないという極めて単純な発想で戦線を拡大しているのである。そして、それが同時に彼の権力維持の手段でもある。 昨年10月のハマスの奇襲はネタニヤフ首相にとっては屈辱的なことであったが、責任を取って辞任するのではなく、この危機を逆に生かして戦時内閣を作り、ガザ侵攻に踏み切った。国民の間に恐怖心をあおり、戦闘を正当化していった。 ガザの戦闘が落ち着き始めると新たにヒズボラという標的を作り出し求心力を維持した。一方で連立政権のパートナーである極右勢力をひきつけておくためには、彼らが主張する「停戦拒否」を受け入れるとともに、ヨルダン川西岸の入植地拡大を続けパレスチナ人に対する弾圧を緩めなかった。) もちろんネタニヤフ流の戦線拡大や権力維持に対する強い批判はある。 アメリカ政治史上、ユダヤ人として最高位の上院院内総務に就いたチャック・シューマー議員はネタニヤフ首相について、「自らの政治的生き残りをイスラエルの最善の利益よりも優先させて、道を見失った。ネタニヤフ首相が、暴力の連鎖を断ち切り、国際舞台でイスラエルの信用を維持し、二国家解決に向けて取り組むと期待する人は誰もいない」と厳しく非難している。 またイスラエルとの関係正常化の動きが取りざたされているサウジアラビアのサウード外相も「イスラエルの真の安全はパレスチナ人の正当な権利を認めることから生まれる。占領と恨みの土台の上に平和を築くことはできない」と語る。 残念ながら、こうしたまっとうな主張がネタニヤフ首相の耳に届くことはなさそうだ』、「ネタニヤフ首相の頭には、かつてのイスラエルの首相が苦しみながらも挑戦した話し合いによる合意形成で平和的秩序を構築するという考えはまったくない。軍事的手段でしか平和は実現しないという極めて単純な発想で戦線を拡大しているのである。そして、それが同時に彼の権力維持の手段でもある。 昨年10月のハマスの奇襲はネタニヤフ首相にとっては屈辱的なことであったが、責任を取って辞任するのではなく、この危機を逆に生かして戦時内閣を作り、ガザ侵攻に踏み切った。国民の間に恐怖心をあおり、戦闘を正当化していった。 ガザの戦闘が落ち着き始めると新たにヒズボラという標的を作り出し求心力を維持した。一方で連立政権のパートナーである極右勢力をひきつけておくためには、彼らが主張する「停戦拒否」を受け入れるとともに、ヨルダン川西岸の入植地拡大を続けパレスチナ人に対する弾圧を緩めなかった・・・ユダヤ人として最高位の上院院内総務に就いたチャック・シューマー議員はネタニヤフ首相について、「自らの政治的生き残りをイスラエルの最善の利益よりも優先させて、道を見失った。ネタニヤフ首相が、暴力の連鎖を断ち切り、国際舞台でイスラエルの信用を維持し、二国家解決に向けて取り組むと期待する人は誰もいない」と厳しく非難している。 またイスラエルとの関係正常化の動きが取りざたされているサウジアラビアのサウード外相も「イスラエルの真の安全はパレスチナ人の正当な権利を認めることから生まれる。占領と恨みの土台の上に平和を築くことはできない」と語る。 残念ながら、こうしたまっとうな主張がネタニヤフ首相の耳に届くことはなさそうだ」、なるほど。
・『もはやアメリカの要求も無視 1948年のイスラエル独立後、中東和平問題で大きな役割を果たしてきたのはアメリカだった。 1978年にはカーター大統領が動き、エジプトのサダト大統領とイスラエルのベギン首相が、国交を結ぶキャンプデービッド合意を締結した。 1993年にはクリントン大統領が間に入り、イスラエルのラビン首相とPLO(パレスチナ解放機構)のアラファト議長が、イスラエル国家とパレスチナ自治政府を相互に認めるオスロ合意を締結した。国際社会においてアメリカが圧倒的な力を持っていた時代だったからこそ実現した交渉だった。 アメリカの衰退とともにイスラエルに対する力も落ちていった。 残り任期がわずかとなったバイデン大統領は、中東和平実現をレガシー(政治的遺産)とすべく積極的に動いている。ガザでの停戦、ヒズボラとの停戦を繰り返しイスラエルに提起しブリンケン国務長官らが活発に動いた。しかし、ネタニヤフ首相はアメリカの要求を無視し、裏切り続けている。) ネタニヤフ首相は首相在職期間が通算で18年に及び、これまで4人のアメリカ大統領と付き合ってきた。アメリカ政府の要求をいくら無視してもアメリカはイスラエル支持を変えることができないと見切っている。 アメリカは歴代政権が民主、共和両党を問わずイスラエルを支持し、ハマスやヒズボラをテロ組織に指定している。またイランに対しても経済制裁を続けている。国民の多くもイスラエル支持を当然視している。 仮にバイデン大統領がネタニヤフ首相を批判し武器の提供などをストップすれば、共和党はもちろん民主党の中からも、そして多くの国民から「イスラエルを見捨ててテロ組織を支援するのか」などと批判されることは避けられない。 まして今は大統領選の終盤という微妙なタイミングである。イスラエル批判が民主党候補のカマラ・ハリス副大統領に不利に働くことは明らかである。 そればかりかアメリカは、イスラエルの戦線拡大を前に地中海やオマーン湾など中東地域への米軍の増派を進めており、和平推進とは真逆の行動を強いられているのである』、「ネタニヤフ首相は首相在職期間が通算で18年に及び、これまで4人のアメリカ大統領と付き合ってきた。アメリカ政府の要求をいくら無視してもアメリカはイスラエル支持を変えることができないと見切っている。 アメリカは歴代政権が民主、共和両党を問わずイスラエルを支持し、ハマスやヒズボラをテロ組織に指定している。またイランに対しても経済制裁を続けている。国民の多くもイスラエル支持を当然視している・・・まして今は大統領選の終盤という微妙なタイミングである。イスラエル批判が民主党候補のカマラ・ハリス副大統領に不利に働くことは明らかである。 そればかりかアメリカは、イスラエルの戦線拡大を前に地中海やオマーン湾など中東地域への米軍の増派を進めており、和平推進とは真逆の行動を強いられているのである」、なるほど。
・『欧州も国連も、身動きが取れない では、次々と新たな脅威を作り出し戦闘を継続するネタニヤフ首相を誰が止めることができるのか。 世界各地でネタニヤフ首相を批判するデモが繰り広げられている。しかし、ユダヤ人のホロコーストという歴史を抱えるドイツをはじめ欧州主要国は、イスラエル批判を鮮明にすることができないまま、身動きが取れないでいる。 ウクライナ戦争をめぐって欧米主要国と中ロが決定的に対立する国連は完全な機能不全に陥っている。 その結果、イランとの戦闘が本格化し戦乱が湾岸諸国まで巻き込むようなことになれば、中東からの原油供給がストップするなど国際社会も世界経済も大混乱に陥ることは必至である。 世界の主要プレーヤーが何もできない中、ネタニヤフ首相は自分の好きなように中東の危機を演出し権力を維持し続けるのであろうか。 今やネタニヤフ首相は世界で最も危険な男の一人になりつつある』、「ユダヤ人のホロコーストという歴史を抱えるドイツをはじめ欧州主要国は、イスラエル批判を鮮明にすることができないまま、身動きが取れないでいる。 ウクライナ戦争をめぐって欧米主要国と中ロが決定的に対立する国連は完全な機能不全に陥っている・・・世界の主要プレーヤーが何もできない中、ネタニヤフ首相は自分の好きなように中東の危機を演出し権力を維持し続けるのであろうか。 今やネタニヤフ首相は世界で最も危険な男の一人になりつつある」、トランプが仮に大統領選で勝利すれば、「ネタニヤフ」を抑えるどころか、けしかけかねない。「「ネタニヤフ」を抑え込める勢力は当面、出てこないとすれば、軍事面で失敗しない限り、「ネタニヤフ」の天下はまだ続くことになるだろう。やれやれだ。
タグ:「イスラエル出身のホロコースト研究者で米ブラウン大学のオメル・バルトフ教授は「イスラエル側からの働きかけもあり、一切批判できなくなった」と指摘。ユダヤ系研究者の反対にもかかわらず、19年にはイスラエルに対するボイコット活動を反ユダヤ主義と見なす決議がドイツ連邦議会で採択された・・・国際刑事裁判所(ICC)の逮捕状請求をめぐっては、イギリスで54%、フランスで49%、ドイツでも44%が、イスラエルのネタニヤフ首相に逮捕状が発行されるべきと回答。 曽我太一氏による「イスラエルへの「ダブルスタンダード」に、今こそ国際社会が向き合うべき理由」 「「ネタニヤフ」を抑え込める勢力は当面、出てこないとすれば、軍事面で失敗しない限り、「ネタニヤフ」の天下はまだ続くことになるだろう。やれやれだ。 「ユダヤ人のホロコーストという歴史を抱えるドイツをはじめ欧州主要国は、イスラエル批判を鮮明にすることができないまま、身動きが取れないでいる。 ウクライナ戦争をめぐって欧米主要国と中ロが決定的に対立する国連は完全な機能不全に陥っている・・・世界の主要プレーヤーが何もできない中、ネタニヤフ首相は自分の好きなように中東の危機を演出し権力を維持し続けるのであろうか。 今やネタニヤフ首相は世界で最も危険な男の一人になりつつある」、トランプが仮に大統領選で勝利すれば、「ネタニヤフ」を抑えるどころか、けしかけかねない。 まして今は大統領選の終盤という微妙なタイミングである。イスラエル批判が民主党候補のカマラ・ハリス副大統領に不利に働くことは明らかである。 そればかりかアメリカは、イスラエルの戦線拡大を前に地中海やオマーン湾など中東地域への米軍の増派を進めており、和平推進とは真逆の行動を強いられているのである」、なるほど。 「ネタニヤフ首相は首相在職期間が通算で18年に及び、これまで4人のアメリカ大統領と付き合ってきた。アメリカ政府の要求をいくら無視してもアメリカはイスラエル支持を変えることができないと見切っている。 アメリカは歴代政権が民主、共和両党を問わずイスラエルを支持し、ハマスやヒズボラをテロ組織に指定している。またイランに対しても経済制裁を続けている。国民の多くもイスラエル支持を当然視している・・・ くことはできない」と語る。 残念ながら、こうしたまっとうな主張がネタニヤフ首相の耳に届くことはなさそうだ」、なるほど。 ユダヤ人として最高位の上院院内総務に就いたチャック・シューマー議員はネタニヤフ首相について、「自らの政治的生き残りをイスラエルの最善の利益よりも優先させて、道を見失った。ネタニヤフ首相が、暴力の連鎖を断ち切り、国際舞台でイスラエルの信用を維持し、二国家解決に向けて取り組むと期待する人は誰もいない」と厳しく非難している。 またイスラエルとの関係正常化の動きが取りざたされているサウジアラビアのサウード外相も「イスラエルの真の安全はパレスチナ人の正当な権利を認めることから生まれる。占領と恨みの土台の上に平和を築 国民の間に恐怖心をあおり、戦闘を正当化していった。 ガザの戦闘が落ち着き始めると新たにヒズボラという標的を作り出し求心力を維持した。一方で連立政権のパートナーである極右勢力をひきつけておくためには、彼らが主張する「停戦拒否」を受け入れるとともに、ヨルダン川西岸の入植地拡大を続けパレスチナ人に対する弾圧を緩めなかった・・・ 「ネタニヤフ首相の頭には、かつてのイスラエルの首相が苦しみながらも挑戦した話し合いによる合意形成で平和的秩序を構築するという考えはまったくない。軍事的手段でしか平和は実現しないという極めて単純な発想で戦線を拡大しているのである。そして、それが同時に彼の権力維持の手段でもある。 昨年10月のハマスの奇襲はネタニヤフ首相にとっては屈辱的なことであったが、責任を取って辞任するのではなく、この危機を逆に生かして戦時内閣を作り、ガザ侵攻に踏み切った。 パレスチナの地から軍事的権限を放棄すれば、イランの代理組織が直ちに入ってきて、ハマスの奇襲のようなことが繰り返されるからだ」、なるほど。 「ネタニヤフ首相は、「ハマス、フーシ派、ヒズボラ、シリアとイラクのシーア派民兵を含む、より広範なイランのテロ枢軸に直面している」と語り、それらの脅威を取り除かなければならないと強調・・・パレスチナ国家との共存を目的とする「二国家解決案」については、「パレスチナ人がすべての権限を持つパレスチナ国家が仮に誕生しても、軍事面はイスラエルが実権を握る不完全国家しか認めるつもりはない・・・ 「失脚の瀬戸際に立たされたイスラエルのネタニヤフ首相は見事に復活し、今や向かうところ敵なしの状況だ。 ガザでのハマスとの戦いでイスラエルは大量の地上軍を投入し、4万人以上のパレスチナ人の命を奪うとともにハマスを壊滅状態に追い込んだ。北の敵であるヒズボラに対しては、彼らが使用するポケベルを一斉に爆破するという奇策に続き、最高指導者のナスララ師をはじめほとんどの幹部の殺害にも成功」、なるほど。 薬師寺 克行氏による「イスラエルの「最も危険な男」を誰が止めるのか 見捨てられないアメリカを無視するネタニヤフ首相」 Newsweek日本版 東洋経済オンライン ってからでは遅いのだ」、確かに「イスラエル」は既に核兵器を秘密裏に保有しているだけに、「過激派が核のボタンを」握る懸念は大きな脅威だ。 「発行されるべきではない」は各国とも20%前後だった。 イスラエル観の違いは特に若い世代で顕著だ・・・今回露呈したダブルスタンダードは、法の支配や人道主義で国際社会をリードしてきた欧米諸国の説得力を損なうだけでなく、イスラエルの将来的な孤立を深めかねない。 今や国内でも戦争を止めるために外国の介入を求める声が上がるのをよそに、さらなる右傾化がイスラエルで進むとどうなるのか。過激派が核のボタンを握ってからでは遅いのだ」、確かに「イスラエル」は既に核兵器を秘密裏に保有しているだけに、「過激派が核のボタンを」握 「ヒズボラの幹部クラスの多くが一気に死傷した。有効な通信手段が失われた。イスラエルとヒズボラの圧倒的な技術力の差、諜報力の差がここまで明らかになった。ヒズボラ内部で幹部への不信感が否応なく高まってもいる。この中でヒズボラの側にイスラエルに対する効果的な対抗手段が取れる余地はないと見るべきだ。 イランが大人しくなったように、ヒズボラも大人しくならざるをえないのではないか」、その通りなのかも知れない。 「ポケベルを使っての通信ができないために、ヒズボラの幹部たちはわざわざ集まってミーティングせざるをえなくなった。このタイミングを狙った攻撃であるのは間違いない。これは、ヒズボラの内部情報がイスラエル側に漏れまくりであることを示している」、」なるほど。 「イスラエルはイランが賓客として招いたハマス最高幹部のイスマイル・ハニヤ政治局長を、イラン滞在中に亡き者にし、イランのメンツを丸つぶれにした・・・イランはその後イスラエルに対して何もできない状態が続いてきた。 この状況に安心したイスラエルは、ヒズボラを徹底的に叩く動きに出たと見ればいい。いくらヒズボラを叩いても、イランが出てくる心配は事実上ないだろう」。なるほど。 「イスラエルの諜報機関のシン・ベト(イスラエル総保安庁)は、1996年に携帯電話を起爆させて、ハマスの幹部であるヤヒヤ・アヤシュを殺害している。アヤシュが携帯電話で通話中であることを確認して、そのタイミングで携帯電話を爆破した。 アヤシュはハマスの爆弾製造の専門家で、ハマスの行う自爆テロの手法を発展させた人物であり、イスラエルにとっては最大級の危険人物だった」、「爆弾製造の専門家」が「イスラエルの諜報機関」が仕掛けた「携帯電話」「爆弾」で殺害されたとは皮肉だ。 5秒というのは、ポケベルが鳴って通信内容を確認しようとして顔に近づける時間を計算に入れ、「最大効果」を発揮するのがこのタイミングだと考えたからのようだ。 これにより、12人が死亡し約2700人が負傷したと報じられた」、なるほど。 「スマホだと電源をいれれば、位置を簡単に特定できてしまう上に、通信内容も傍受されやすいからだ。 こうしたことを避けるために、あえて一昔前のローテクなものを使うようにしたわけだ・・・メッセージを受信して一斉に鳴り出し、その5秒後に突然爆発した。 「ヒズボラのメンバーらが所持していたポケベルやトランシーバーが次々と爆発し、周辺にいた人たちを含め多数の死傷者が出る」、「イスラエル」の諜報機関の鮮やかな手口だ。 朝香 豊氏による「3000人以上を殺傷したヒズボラへの「ポケベル爆弾攻撃」がヤバすぎる!一斉に鳴り出し、5秒後に突然爆発...イスラエルが見せつけた「驚きの手口」」 現代ビジネス (その8)(3000人以上を殺傷したヒズボラへの「ポケベル爆弾攻撃」がヤバすぎる!一斉に鳴り出し 5秒後に突然爆発...イスラエルが見せつけた「驚きの手口」、問題の源流を読み解く、イスラエルの「最も危険な男」を誰が止めるのか 見捨てられないアメリカを無視するネタニヤフ首相) イスラエル・パレスチナ