保険(その9)(大手損保が断ち切れない代理店への過剰な忖度 いまだ横行する「社員代行」「テリトリー制」、金融庁 「マネードクター」と生保の取引実態を調査 過剰な便宜供与があれば立ち入り検査も視野に) [金融]
保険については、本年2月14日に取上げた。今日は、(その9)(大手損保が断ち切れない代理店への過剰な忖度 いまだ横行する「社員代行」「テリトリー制」、金融庁 「マネードクター」と生保の取引実態を調査 過剰な便宜供与があれば立ち入り検査も視野に)である。
先ずは、本年5月3日付け東洋経済オンライン「大手損保が断ち切れない代理店への過剰な忖度 いまだ横行する「社員代行」「テリトリー制」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/751986
・『「当業界に対する社会からの信頼は毀損した状態にある。(中略)信頼を取り戻すためには、保険会社と代理店の関係や、業界の商習慣を変えていくことが必要だ」 日本損害保険協会の新納啓介会長(あいおいニッセイ同和損害保険社長)は、3月21日の定例記者会見の冒頭で、そう力強く語っていた。中古車販売大手ビッグモーターによる保険金不正請求問題で、損害保険ジャパンが業務改善計画書を金融庁に提出してから、約1週間後のことだ。 会見では、代理店や募集人(販売担当者)向けに配布する冊子「募集コンプライアンス(法令順守)ガイド」を改定したことなどを説明。悪しき商慣習を見直すため、損保協会内に「業務抜本改革推進PT(プロジェクトチーム)」も設置し、業界を挙げて構造変革に取り組む姿勢を示した』、なるほど。
・『「病巣」を取り除くのは簡単ではない しかしながら、損保業界の「病巣」を完全に取り除くのは簡単ではなさそうだ。なぜなら、変革に向けた決意を疑いたくなるような事例が、損保の間でいまだに散見されるからだ。 その1つが、「社員代行」と呼ばれている行為だ。社員代行とは、代理店が人件費(出向負担金)を支払わずに、損保会社から社員を事実上出向させて、代理店業務を代行させること。自社商品を優先的に販売してもらおうと、損保が代理店に対してあの手この手で行う過剰な便宜供与の象徴でもある。 損保協会の募集ガイドでは、行ってはならない便宜供与の具体例として「特定の代理店に対して、出向負担金なしで保険会社の社員を出向させ、保険募集を行った」と記載している。2月の改定で追記されたばかりの項目で、対応の優先度は高い。 ところが、損保ジャパンでは昨夏から、関西地域の一部代理店に対して、負担金なしで社員を事実上出向させ、代理店の募集業務などを代行させていた。損保ジャパンは社員代行について、災害対応といった緊急時などに限ると内規で制限していた。にもかかわらず。損保ジャパンの関西地域の支社長や支店長は、代理店の求めに応じるかたちで社員代行を黙認していたという。 損保ジャパンのある社員は「その代理店主は代理店の会員組織の役員を務めており、声が通りやすい。うち(損保ジャパン)の支社長や支店長だけでなく、役員も社員代行の実情を知っていたはずだ」と話す。 損保ジャパンに事実関係を尋ねたところ、担当役員が社員代行を認識していたことは否定したものの、支社長や支店長が「認識していたことを確認した」と回答。また「代理店に対する過度な便宜供与に該当する可能性も含めて調査している」といい、「同様の事案が発生しないよう、社内への注意喚起、徹底を図る」としている。 社員代行をめぐっては、金融庁が3月に設置した損害保険の有識者会議で、取り締まり強化に向けた議論を始めている。今後、金融庁が詳しい実態を調べる中で、損保ジャパンのような事例がほかの損保でも露見する可能性がありそうだ』、「損保ジャパンの関西地域の支社長や支店長は、代理店の求めに応じるかたちで社員代行を黙認していたという・・・社員代行をめぐっては、金融庁が3月に設置した損害保険の有識者会議で、取り締まり強化に向けた議論を始めている。今後、金融庁が詳しい実態を調べる中で、損保ジャパンのような事例がほかの損保でも露見する可能性がありそうだ」、なるほど。
・『自動車ディーラーにおもねる損保 金融庁の有識者会議では、自動車販売店などいわゆる兼業代理店への規制強化策についても議論が進んでいる。中でも耳目を集めているのが、代理店の保険募集における「比較推奨販売」のあり方だ。 比較推奨販売とは、代理店が複数の保険会社の商品を顧客に提示・推奨して販売する際のルールの一つだ。ポイントは大きく2つある。1つは、商品ごとの特性や保険料水準などの客観的な基準や理由について説明して顧客に比較検討させること。2つ目は、特定の商品だけを顧客に提示・推奨する場合は、代理店とその保険会社との資本関係や取引関係などの理由を顧客に説明しなければならない、という規制がある。2016年に施行された改正保険業法によって強化された募集規制の1つだ。 法改正以降、保険募集だけを生業とする専業の乗り合い代理店では、比較推奨販売の規制を満たすための体制整備が徐々に進んだ。その一方で、自動車販売店などの兼業代理店では、金融庁や財務局の監視の目が行き届かず、ほぼ野放しの状態だった。 その結果として起きたのが、ビッグモーター問題だった。) 金融庁は有識者会議の中で、事故車をビッグモーターに斡旋する(入庫紹介)件数に応じて、「保険会社の商品を顧客に推奨していたにもかかわらず、(事務に精通しているといった)別の理由を装っていた」と指摘。そのため「保険業法が求める比較推奨が適切に実施されておらず、顧客の適切な商品選択が歪められていたおそれがある」と総括している。 今後は適切な比較推奨販売を、自動車販売店などの兼業代理店にも徹底させる考えだ』、「「保険業法が求める比較推奨が適切に実施されておらず、顧客の適切な商品選択が歪められていたおそれがある」と総括している。 今後は適切な比較推奨販売を、自動車販売店などの兼業代理店にも徹底させる考えだ」、なるほど。
・『あいおいへのテリトリー変更 ただ足元では、西日本地域のある「トヨタ自動車系ディーラー」と損保大手の間で、比較推奨販売を歪めかねない事態が起きている。 損保による営業協力や便宜供与の度合いによって、推奨する自動車保険を変えるディーラーは依然として多い(記者撮影) そのディーラーは複数の販売店を展開しており、損保大手各社の首脳が定期的に挨拶にうかがうほどの有力企業だ。損保との取引は、トヨタとの関係が深いあいおいを中心に、東京海上日動火災保険、三井住友海上火災保険の3社で9割超を占めていた。 しかし今年初めに突如、同ディーラーは約3割の契約シェアを持っていた三井住友海上に対して、事実上の取引打ち切りを宣告した。さらに同ディーラーの代表者は、三井住友海上の自動車保険を優先的に販売する「テリトリー店舗」を、すべてあいおいに変更すると明言したという。 なぜ、あいおいに変更するのか。理由は、ディーラー代表者の「娘の夫(A氏)があいおい出身者」(大手損保幹部)だからだ。A氏は今春、あいおいを退職し同ディーラーに役員として入社。時期を同じくして、あいおいへのテリトリー変更も実施されている。 同ディーラーは今後、三井住友海上の契約者が契約を更新する際は、あいおいを推奨し、乗り換えを促すとみられる。 だが、同ディーラーはあいおいを推奨する理由として、「弊社オーナーの親族が、あいおい出身者のため」や「役員にあいおい出身者がいるため」などと顧客に説明できるのだろうか。一方で、「あいおいの商品性が優れているため」などと誤魔化して説明した場合は、ビッグモーターと同様に別の理由を装っていることになり、比較推奨販売を歪めてしまうわけだ。 そもそも、金融庁が比較推奨販売の旗を10年以上にわたって振ってきたにもかかわらず、依然として顧客の意向を置き去りにし、テリトリー店舗ごとにプッシュする保険会社を自在に変えるという販売方針が、横行していることも問題だ。 損保協会の協会長会社として、悪しき商慣習の見直しを訴えるあいおいが、同ディーラーに対して比較推奨販売をどう実効的に指導し、徹底させていくのか。そこに損保業界としての変革への決意が、はっきりと映し出されることになる』、「比較推奨販売とは、代理店が複数の保険会社の商品を顧客に提示・推奨して販売する際のルールの一つだ。ポイントは大きく2つある。1つは、商品ごとの特性や保険料水準などの客観的な基準や理由について説明して顧客に比較検討させること。2つ目は、特定の商品だけを顧客に提示・推奨する場合は、代理店とその保険会社との資本関係や取引関係などの理由を顧客に説明しなければならない、という規制がある・・・金融庁が比較推奨販売の旗を10年以上にわたって振ってきたにもかかわらず、依然として顧客の意向を置き去りにし、テリトリー店舗ごとにプッシュする保険会社を自在に変えるという販売方針が、横行していることも問題だ。 損保協会の協会長会社として、悪しき商慣習の見直しを訴えるあいおいが、同ディーラーに対して比較推奨販売をどう実効的に指導し、徹底させていくのか。そこに損保業界としての変革への決意が、はっきりと映し出されることになる」、なるほど。
次に、6月18日付け東洋経済オンライン「金融庁、「マネードクター」と生保の取引実態を調査 過剰な便宜供与があれば立ち入り検査も視野に」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/764006
・『「マネードクター」の名称で保険代理店事業を展開するFPパートナーと、保険販売(募集)を委託している生命保険各社との取引をめぐって、金融庁が実態調査に乗り出していることがわかった。 調査の対象となっているのは、FPパートナーの代理申請会社(幹事会社)となっている東京海上日動あんしん生命保険のほか、アフラック生命保険、SOMPOひまわり生命保険、メディケア生命保険、はなさく生命保険など。 金融庁が生保各社に報告を求めている項目は、①FPパートナーへの広告料の支払い状況と同広告料が適正と判断した根拠、②営業社員(募集人)候補の紹介数、③リーズ(見込み客)情報の提供数、④出向者の状況、⑤そのほかの本業支援の状況、と大きく5つある。 特に①の広告料については、相場や実態に見合わない不適正な料金を支払っていないか、アフラックやひまわり生命に対して「詳細に報告するよう求めてきている」(ひまわり生命関係者)という。 金融庁は、調査によってFPパートナーへの過剰な便宜供与や実質的な利益供与の疑いが強まった場合は、生保各社やFPパートナーへの立ち入り検査に踏み切ることも視野に入れているもようだ』、「金融庁は、調査によってFPパートナーへの過剰な便宜供与や実質的な利益供与の疑いが強まった場合は、生保各社やFPパートナーへの立ち入り検査に踏み切ることも視野に入れているもようだ」、今回は生保がやり玉に挙がったようだ。
・『生保業界でも過剰な便宜供与 金融庁が調査に急きょ乗り出したのはなぜか。それは昨夏からの「損保不正」問題を受けて、構造要因となった保険会社による過剰な便宜供与を解消しようと、対策を講じている真っ最中だったからだ。) 旧ビッグモーターによる保険金不正請求問題では、損害保険会社が修理の必要な事故車を優先的に紹介(入庫紹介)し、その見返りとして保険契約を旧ビッグモーターから割り振ってもらうという、いびつな取引が背景にあった。 さらに旧ビッグモーターは、保険会社からの出向者による業務支援や、事故査定の簡略化などさまざまな便宜供与、本業支援の実績を基にして、特定の損保の自動車保険を集中的に推奨する店舗を、「テリトリー」として割り振るなどして、損保をアゴで使うような力関係に変わっていったという経緯がある。 損保不正問題を受けて、金融庁が設置した有識者会議の報告書案にはこう書かれている。「(複数の保険会社の商品を取り扱う)乗合代理店が損害保険会社からの便宜供与の実績等の理由により、当該損害保険会社の商品を推奨することを決定しておきながら、顧客に対して『特定の損害保険会社の事務に精通している』といった本来の理由を隠した説明を行っていたなど、比較推奨販売に関する規定が不適切に運用されていたことも明らかになった」』、「比較推奨販売に関する規定が不適切に運用されていたことも明らかになった」、それは由々しいことだ。
・『誠実義務の趣旨も踏まえ、適切な比較推奨販売を 続いて報告書案では、「こうした実態を踏まえ、損害保険会社に対して、自社の保険商品の優先的な取扱いを誘引するための便宜供与を解消する措置の構築を求める」と記述。 乗り合い代理店に対しては、金融サービス提供法における「顧客等に対する誠実義務の趣旨も踏まえ、適切な比較推奨販売を行うよう求める必要がある」としている。) 金融庁が定義する比較推奨販売とは、「顧客の意向を踏まえ、顧客の最善の利益を勘案しつつ、顧客にとって最適と考えられるものを比較又は推奨提案」することだ。また比較や提案の理由については「単に『経営方針』等のみにとどまるのではなく、顧客の立場に立ち、その顧客にとって提案商品が最適と考えた具体的な理由を分かりやすく説明する」ことを求めている。 この比較推奨販売は、2014年に改正された保険業法で新たに定められたもの。当時は、保険募集を専業とする生保系の乗り合い代理店に照準を合わせており、この10年の間に生保各社と乗り合い代理店では、募集人への教育やシステムの構築といった体制整備が進んだはずだった。 ところが、ふたを開けてみると、金融庁が損保不正問題への対応に注力している間に、生保各社と一部の乗り合い代理店の間で、ルールの潜脱を疑われるような取引が発覚。監視の目を盗むような行為に映ったことで、適正化に向けた調査に急きょ踏み切ることになったわけだ』、「金融庁が定義する比較推奨販売とは、「顧客の意向を踏まえ、顧客の最善の利益を勘案しつつ、顧客にとって最適と考えられるものを比較又は推奨提案」することだ。また比較や提案の理由については「単に『経営方針』等のみにとどまるのではなく、顧客の立場に立ち、その顧客にとって提案商品が最適と考えた具体的な理由を分かりやすく説明する」ことを求めている。 この比較推奨販売は、2014年に改正された保険業法で新たに定められたもの・・・金融庁が損保不正問題への対応に注力している間に、生保各社と一部の乗り合い代理店の間で、ルールの潜脱を疑われるような取引が発覚。監視の目を盗むような行為に映ったことで、適正化に向けた調査に急きょ踏み切ることになったわけだ」、なるほど。
・『金融庁が問題視する広告料支払い 中でも金融庁が問題視しているのが、生保によるFPパートナーへの広告料の支払いだ。ここで言う広告とは、マネードクターのウェブサイトと店舗(5月末で27店舗)のサイネージに、保険会社の広告を表示するというもの。「その程度の規模なら、うちがもし払うとしても月100万円程度が限界かな」(生保役員)という声もある中で、アフラックは年9600万円、ひまわり生命は同6000万円を過年度に支払っていた。) 「広告費(広告料)での支援について申し出てきている保険会社がある。保険各社の当社への支援については、別に時間を設定してご案内させて頂きたい」 ひまわり生命の複数の関係者によると、FPパートナーが株式上場した翌月の2022年10月、FPパートナーの黒木勉社長と会談した際、そうした趣旨の発言がひまわり生命側に対してあったという』、「問題視しているのが、生保によるFPパートナーへの広告料の支払いだ。ここで言う広告とは、マネードクターのウェブサイトと店舗(5月末で27店舗)のサイネージに、保険会社の広告を表示するというもの。「その程度の規模なら、うちがもし払うとしても月100万円程度が限界かな」(生保役員)という声もある中で、アフラックは年9600万円、ひまわり生命は同6000万円を過年度に支払っていた」、なるほど。
・『顧客の意向把握がおざなりになっていないか ひまわり生命は当時、変額保険の発売を控えていた。取引強化に向けて、FPパートナーへ出資の打診をしたものの、黒木社長からはあえなく断られてしまった。ただ、そこで話は終わらず、あくまで他社の動きとして、広告料で支援する事例が紹介されたわけだ。6000万円の広告料の支払いは、同会談の後に実行されている。 そうした広告料などの支援が奏功したのかは定かではないが、アフラックとひまわり生命の一部商品は、現在実施しているFPパートナーの社内表彰キャンペーンにおいて、獲得保険料を5倍にしてカウント。さらに年末までの半年間における成績優秀者には、300万円から1000万円相当のストックオプション(株式購入権)を付与するとしている。 そうしたキャンペーンが、顧客の意向把握をおざなりにして、5倍でカウントされる商品を強引に勧めることに本当につながらないのか。金融庁の調査によって、そうした検証も今後進んでいくことになりそうだ』、「アフラックとひまわり生命の一部商品は、現在実施しているFPパートナーの社内表彰キャンペーンにおいて、獲得保険料を5倍にしてカウント。さらに年末までの半年間における成績優秀者には、300万円から1000万円相当のストックオプション(株式購入権)を付与するとしている。 そうしたキャンペーンが、顧客の意向把握をおざなりにして、5倍でカウントされる商品を強引に勧めることに本当につながらないのか。金融庁の調査によって、そうした検証も今後進んでいくことになりそうだ」、確かに「顧客の意向把握をおざなりにして、5倍でカウントされる商品を強引に勧めることに本当につながらないのか」は、大きな懸念材料だ。金融庁によく監視してもらいたいところだ。
先ずは、本年5月3日付け東洋経済オンライン「大手損保が断ち切れない代理店への過剰な忖度 いまだ横行する「社員代行」「テリトリー制」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/751986
・『「当業界に対する社会からの信頼は毀損した状態にある。(中略)信頼を取り戻すためには、保険会社と代理店の関係や、業界の商習慣を変えていくことが必要だ」 日本損害保険協会の新納啓介会長(あいおいニッセイ同和損害保険社長)は、3月21日の定例記者会見の冒頭で、そう力強く語っていた。中古車販売大手ビッグモーターによる保険金不正請求問題で、損害保険ジャパンが業務改善計画書を金融庁に提出してから、約1週間後のことだ。 会見では、代理店や募集人(販売担当者)向けに配布する冊子「募集コンプライアンス(法令順守)ガイド」を改定したことなどを説明。悪しき商慣習を見直すため、損保協会内に「業務抜本改革推進PT(プロジェクトチーム)」も設置し、業界を挙げて構造変革に取り組む姿勢を示した』、なるほど。
・『「病巣」を取り除くのは簡単ではない しかしながら、損保業界の「病巣」を完全に取り除くのは簡単ではなさそうだ。なぜなら、変革に向けた決意を疑いたくなるような事例が、損保の間でいまだに散見されるからだ。 その1つが、「社員代行」と呼ばれている行為だ。社員代行とは、代理店が人件費(出向負担金)を支払わずに、損保会社から社員を事実上出向させて、代理店業務を代行させること。自社商品を優先的に販売してもらおうと、損保が代理店に対してあの手この手で行う過剰な便宜供与の象徴でもある。 損保協会の募集ガイドでは、行ってはならない便宜供与の具体例として「特定の代理店に対して、出向負担金なしで保険会社の社員を出向させ、保険募集を行った」と記載している。2月の改定で追記されたばかりの項目で、対応の優先度は高い。 ところが、損保ジャパンでは昨夏から、関西地域の一部代理店に対して、負担金なしで社員を事実上出向させ、代理店の募集業務などを代行させていた。損保ジャパンは社員代行について、災害対応といった緊急時などに限ると内規で制限していた。にもかかわらず。損保ジャパンの関西地域の支社長や支店長は、代理店の求めに応じるかたちで社員代行を黙認していたという。 損保ジャパンのある社員は「その代理店主は代理店の会員組織の役員を務めており、声が通りやすい。うち(損保ジャパン)の支社長や支店長だけでなく、役員も社員代行の実情を知っていたはずだ」と話す。 損保ジャパンに事実関係を尋ねたところ、担当役員が社員代行を認識していたことは否定したものの、支社長や支店長が「認識していたことを確認した」と回答。また「代理店に対する過度な便宜供与に該当する可能性も含めて調査している」といい、「同様の事案が発生しないよう、社内への注意喚起、徹底を図る」としている。 社員代行をめぐっては、金融庁が3月に設置した損害保険の有識者会議で、取り締まり強化に向けた議論を始めている。今後、金融庁が詳しい実態を調べる中で、損保ジャパンのような事例がほかの損保でも露見する可能性がありそうだ』、「損保ジャパンの関西地域の支社長や支店長は、代理店の求めに応じるかたちで社員代行を黙認していたという・・・社員代行をめぐっては、金融庁が3月に設置した損害保険の有識者会議で、取り締まり強化に向けた議論を始めている。今後、金融庁が詳しい実態を調べる中で、損保ジャパンのような事例がほかの損保でも露見する可能性がありそうだ」、なるほど。
・『自動車ディーラーにおもねる損保 金融庁の有識者会議では、自動車販売店などいわゆる兼業代理店への規制強化策についても議論が進んでいる。中でも耳目を集めているのが、代理店の保険募集における「比較推奨販売」のあり方だ。 比較推奨販売とは、代理店が複数の保険会社の商品を顧客に提示・推奨して販売する際のルールの一つだ。ポイントは大きく2つある。1つは、商品ごとの特性や保険料水準などの客観的な基準や理由について説明して顧客に比較検討させること。2つ目は、特定の商品だけを顧客に提示・推奨する場合は、代理店とその保険会社との資本関係や取引関係などの理由を顧客に説明しなければならない、という規制がある。2016年に施行された改正保険業法によって強化された募集規制の1つだ。 法改正以降、保険募集だけを生業とする専業の乗り合い代理店では、比較推奨販売の規制を満たすための体制整備が徐々に進んだ。その一方で、自動車販売店などの兼業代理店では、金融庁や財務局の監視の目が行き届かず、ほぼ野放しの状態だった。 その結果として起きたのが、ビッグモーター問題だった。) 金融庁は有識者会議の中で、事故車をビッグモーターに斡旋する(入庫紹介)件数に応じて、「保険会社の商品を顧客に推奨していたにもかかわらず、(事務に精通しているといった)別の理由を装っていた」と指摘。そのため「保険業法が求める比較推奨が適切に実施されておらず、顧客の適切な商品選択が歪められていたおそれがある」と総括している。 今後は適切な比較推奨販売を、自動車販売店などの兼業代理店にも徹底させる考えだ』、「「保険業法が求める比較推奨が適切に実施されておらず、顧客の適切な商品選択が歪められていたおそれがある」と総括している。 今後は適切な比較推奨販売を、自動車販売店などの兼業代理店にも徹底させる考えだ」、なるほど。
・『あいおいへのテリトリー変更 ただ足元では、西日本地域のある「トヨタ自動車系ディーラー」と損保大手の間で、比較推奨販売を歪めかねない事態が起きている。 損保による営業協力や便宜供与の度合いによって、推奨する自動車保険を変えるディーラーは依然として多い(記者撮影) そのディーラーは複数の販売店を展開しており、損保大手各社の首脳が定期的に挨拶にうかがうほどの有力企業だ。損保との取引は、トヨタとの関係が深いあいおいを中心に、東京海上日動火災保険、三井住友海上火災保険の3社で9割超を占めていた。 しかし今年初めに突如、同ディーラーは約3割の契約シェアを持っていた三井住友海上に対して、事実上の取引打ち切りを宣告した。さらに同ディーラーの代表者は、三井住友海上の自動車保険を優先的に販売する「テリトリー店舗」を、すべてあいおいに変更すると明言したという。 なぜ、あいおいに変更するのか。理由は、ディーラー代表者の「娘の夫(A氏)があいおい出身者」(大手損保幹部)だからだ。A氏は今春、あいおいを退職し同ディーラーに役員として入社。時期を同じくして、あいおいへのテリトリー変更も実施されている。 同ディーラーは今後、三井住友海上の契約者が契約を更新する際は、あいおいを推奨し、乗り換えを促すとみられる。 だが、同ディーラーはあいおいを推奨する理由として、「弊社オーナーの親族が、あいおい出身者のため」や「役員にあいおい出身者がいるため」などと顧客に説明できるのだろうか。一方で、「あいおいの商品性が優れているため」などと誤魔化して説明した場合は、ビッグモーターと同様に別の理由を装っていることになり、比較推奨販売を歪めてしまうわけだ。 そもそも、金融庁が比較推奨販売の旗を10年以上にわたって振ってきたにもかかわらず、依然として顧客の意向を置き去りにし、テリトリー店舗ごとにプッシュする保険会社を自在に変えるという販売方針が、横行していることも問題だ。 損保協会の協会長会社として、悪しき商慣習の見直しを訴えるあいおいが、同ディーラーに対して比較推奨販売をどう実効的に指導し、徹底させていくのか。そこに損保業界としての変革への決意が、はっきりと映し出されることになる』、「比較推奨販売とは、代理店が複数の保険会社の商品を顧客に提示・推奨して販売する際のルールの一つだ。ポイントは大きく2つある。1つは、商品ごとの特性や保険料水準などの客観的な基準や理由について説明して顧客に比較検討させること。2つ目は、特定の商品だけを顧客に提示・推奨する場合は、代理店とその保険会社との資本関係や取引関係などの理由を顧客に説明しなければならない、という規制がある・・・金融庁が比較推奨販売の旗を10年以上にわたって振ってきたにもかかわらず、依然として顧客の意向を置き去りにし、テリトリー店舗ごとにプッシュする保険会社を自在に変えるという販売方針が、横行していることも問題だ。 損保協会の協会長会社として、悪しき商慣習の見直しを訴えるあいおいが、同ディーラーに対して比較推奨販売をどう実効的に指導し、徹底させていくのか。そこに損保業界としての変革への決意が、はっきりと映し出されることになる」、なるほど。
次に、6月18日付け東洋経済オンライン「金融庁、「マネードクター」と生保の取引実態を調査 過剰な便宜供与があれば立ち入り検査も視野に」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/764006
・『「マネードクター」の名称で保険代理店事業を展開するFPパートナーと、保険販売(募集)を委託している生命保険各社との取引をめぐって、金融庁が実態調査に乗り出していることがわかった。 調査の対象となっているのは、FPパートナーの代理申請会社(幹事会社)となっている東京海上日動あんしん生命保険のほか、アフラック生命保険、SOMPOひまわり生命保険、メディケア生命保険、はなさく生命保険など。 金融庁が生保各社に報告を求めている項目は、①FPパートナーへの広告料の支払い状況と同広告料が適正と判断した根拠、②営業社員(募集人)候補の紹介数、③リーズ(見込み客)情報の提供数、④出向者の状況、⑤そのほかの本業支援の状況、と大きく5つある。 特に①の広告料については、相場や実態に見合わない不適正な料金を支払っていないか、アフラックやひまわり生命に対して「詳細に報告するよう求めてきている」(ひまわり生命関係者)という。 金融庁は、調査によってFPパートナーへの過剰な便宜供与や実質的な利益供与の疑いが強まった場合は、生保各社やFPパートナーへの立ち入り検査に踏み切ることも視野に入れているもようだ』、「金融庁は、調査によってFPパートナーへの過剰な便宜供与や実質的な利益供与の疑いが強まった場合は、生保各社やFPパートナーへの立ち入り検査に踏み切ることも視野に入れているもようだ」、今回は生保がやり玉に挙がったようだ。
・『生保業界でも過剰な便宜供与 金融庁が調査に急きょ乗り出したのはなぜか。それは昨夏からの「損保不正」問題を受けて、構造要因となった保険会社による過剰な便宜供与を解消しようと、対策を講じている真っ最中だったからだ。) 旧ビッグモーターによる保険金不正請求問題では、損害保険会社が修理の必要な事故車を優先的に紹介(入庫紹介)し、その見返りとして保険契約を旧ビッグモーターから割り振ってもらうという、いびつな取引が背景にあった。 さらに旧ビッグモーターは、保険会社からの出向者による業務支援や、事故査定の簡略化などさまざまな便宜供与、本業支援の実績を基にして、特定の損保の自動車保険を集中的に推奨する店舗を、「テリトリー」として割り振るなどして、損保をアゴで使うような力関係に変わっていったという経緯がある。 損保不正問題を受けて、金融庁が設置した有識者会議の報告書案にはこう書かれている。「(複数の保険会社の商品を取り扱う)乗合代理店が損害保険会社からの便宜供与の実績等の理由により、当該損害保険会社の商品を推奨することを決定しておきながら、顧客に対して『特定の損害保険会社の事務に精通している』といった本来の理由を隠した説明を行っていたなど、比較推奨販売に関する規定が不適切に運用されていたことも明らかになった」』、「比較推奨販売に関する規定が不適切に運用されていたことも明らかになった」、それは由々しいことだ。
・『誠実義務の趣旨も踏まえ、適切な比較推奨販売を 続いて報告書案では、「こうした実態を踏まえ、損害保険会社に対して、自社の保険商品の優先的な取扱いを誘引するための便宜供与を解消する措置の構築を求める」と記述。 乗り合い代理店に対しては、金融サービス提供法における「顧客等に対する誠実義務の趣旨も踏まえ、適切な比較推奨販売を行うよう求める必要がある」としている。) 金融庁が定義する比較推奨販売とは、「顧客の意向を踏まえ、顧客の最善の利益を勘案しつつ、顧客にとって最適と考えられるものを比較又は推奨提案」することだ。また比較や提案の理由については「単に『経営方針』等のみにとどまるのではなく、顧客の立場に立ち、その顧客にとって提案商品が最適と考えた具体的な理由を分かりやすく説明する」ことを求めている。 この比較推奨販売は、2014年に改正された保険業法で新たに定められたもの。当時は、保険募集を専業とする生保系の乗り合い代理店に照準を合わせており、この10年の間に生保各社と乗り合い代理店では、募集人への教育やシステムの構築といった体制整備が進んだはずだった。 ところが、ふたを開けてみると、金融庁が損保不正問題への対応に注力している間に、生保各社と一部の乗り合い代理店の間で、ルールの潜脱を疑われるような取引が発覚。監視の目を盗むような行為に映ったことで、適正化に向けた調査に急きょ踏み切ることになったわけだ』、「金融庁が定義する比較推奨販売とは、「顧客の意向を踏まえ、顧客の最善の利益を勘案しつつ、顧客にとって最適と考えられるものを比較又は推奨提案」することだ。また比較や提案の理由については「単に『経営方針』等のみにとどまるのではなく、顧客の立場に立ち、その顧客にとって提案商品が最適と考えた具体的な理由を分かりやすく説明する」ことを求めている。 この比較推奨販売は、2014年に改正された保険業法で新たに定められたもの・・・金融庁が損保不正問題への対応に注力している間に、生保各社と一部の乗り合い代理店の間で、ルールの潜脱を疑われるような取引が発覚。監視の目を盗むような行為に映ったことで、適正化に向けた調査に急きょ踏み切ることになったわけだ」、なるほど。
・『金融庁が問題視する広告料支払い 中でも金融庁が問題視しているのが、生保によるFPパートナーへの広告料の支払いだ。ここで言う広告とは、マネードクターのウェブサイトと店舗(5月末で27店舗)のサイネージに、保険会社の広告を表示するというもの。「その程度の規模なら、うちがもし払うとしても月100万円程度が限界かな」(生保役員)という声もある中で、アフラックは年9600万円、ひまわり生命は同6000万円を過年度に支払っていた。) 「広告費(広告料)での支援について申し出てきている保険会社がある。保険各社の当社への支援については、別に時間を設定してご案内させて頂きたい」 ひまわり生命の複数の関係者によると、FPパートナーが株式上場した翌月の2022年10月、FPパートナーの黒木勉社長と会談した際、そうした趣旨の発言がひまわり生命側に対してあったという』、「問題視しているのが、生保によるFPパートナーへの広告料の支払いだ。ここで言う広告とは、マネードクターのウェブサイトと店舗(5月末で27店舗)のサイネージに、保険会社の広告を表示するというもの。「その程度の規模なら、うちがもし払うとしても月100万円程度が限界かな」(生保役員)という声もある中で、アフラックは年9600万円、ひまわり生命は同6000万円を過年度に支払っていた」、なるほど。
・『顧客の意向把握がおざなりになっていないか ひまわり生命は当時、変額保険の発売を控えていた。取引強化に向けて、FPパートナーへ出資の打診をしたものの、黒木社長からはあえなく断られてしまった。ただ、そこで話は終わらず、あくまで他社の動きとして、広告料で支援する事例が紹介されたわけだ。6000万円の広告料の支払いは、同会談の後に実行されている。 そうした広告料などの支援が奏功したのかは定かではないが、アフラックとひまわり生命の一部商品は、現在実施しているFPパートナーの社内表彰キャンペーンにおいて、獲得保険料を5倍にしてカウント。さらに年末までの半年間における成績優秀者には、300万円から1000万円相当のストックオプション(株式購入権)を付与するとしている。 そうしたキャンペーンが、顧客の意向把握をおざなりにして、5倍でカウントされる商品を強引に勧めることに本当につながらないのか。金融庁の調査によって、そうした検証も今後進んでいくことになりそうだ』、「アフラックとひまわり生命の一部商品は、現在実施しているFPパートナーの社内表彰キャンペーンにおいて、獲得保険料を5倍にしてカウント。さらに年末までの半年間における成績優秀者には、300万円から1000万円相当のストックオプション(株式購入権)を付与するとしている。 そうしたキャンペーンが、顧客の意向把握をおざなりにして、5倍でカウントされる商品を強引に勧めることに本当につながらないのか。金融庁の調査によって、そうした検証も今後進んでいくことになりそうだ」、確かに「顧客の意向把握をおざなりにして、5倍でカウントされる商品を強引に勧めることに本当につながらないのか」は、大きな懸念材料だ。金融庁によく監視してもらいたいところだ。
タグ:確かに「顧客の意向把握をおざなりにして、5倍でカウントされる商品を強引に勧めることに本当につながらないのか」は、大きな懸念材料だ。金融庁によく監視してもらいたいところだ。 「損保ジャパンの関西地域の支社長や支店長は、代理店の求めに応じるかたちで社員代行を黙認していたという・・・社員代行をめぐっては、金融庁が3月に設置した損害保険の有識者会議で、取り締まり強化に向けた議論を始めている。今後、金融庁が詳しい実態を調べる中で、損保ジャパンのような事例がほかの損保でも露見する可能性がありそうだ」、なるほど。 「金融庁が定義する比較推奨販売とは、「顧客の意向を踏まえ、顧客の最善の利益を勘案しつつ、顧客にとって最適と考えられるものを比較又は推奨提案」することだ。また比較や提案の理由については「単に『経営方針』等のみにとどまるのではなく、顧客の立場に立ち、その顧客にとって提案商品が最適と考えた具体的な理由を分かりやすく説明する」ことを求めている。 この比較推奨販売は、2014年に改正された保険業法で新たに定められたもの・・・ 「比較推奨販売に関する規定が不適切に運用されていたことも明らかになった」、それは由々しいことだ。 「金融庁は、調査によってFPパートナーへの過剰な便宜供与や実質的な利益供与の疑いが強まった場合は、生保各社やFPパートナーへの立ち入り検査に踏み切ることも視野に入れているもようだ」、今回は生保がやり玉に挙がったようだ。 保険 東洋経済オンライン「金融庁、「マネードクター」と生保の取引実態を調査 過剰な便宜供与があれば立ち入り検査も視野に」 東洋経済オンライン「大手損保が断ち切れない代理店への過剰な忖度 いまだ横行する「社員代行」「テリトリー制」」 (その9)(大手損保が断ち切れない代理店への過剰な忖度 いまだ横行する「社員代行」「テリトリー制」、金融庁 「マネードクター」と生保の取引実態を調査 過剰な便宜供与があれば立ち入り検査も視野に) 「アフラックとひまわり生命の一部商品は、現在実施しているFPパートナーの社内表彰キャンペーンにおいて、獲得保険料を5倍にしてカウント。さらに年末までの半年間における成績優秀者には、300万円から1000万円相当のストックオプション(株式購入権)を付与するとしている。 そうしたキャンペーンが、顧客の意向把握をおざなりにして、5倍でカウントされる商品を強引に勧めることに本当につながらないのか。金融庁の調査によって、そうした検証も今後進んでいくことになりそうだ」、 「問題視しているのが、生保によるFPパートナーへの広告料の支払いだ。ここで言う広告とは、マネードクターのウェブサイトと店舗(5月末で27店舗)のサイネージに、保険会社の広告を表示するというもの。「その程度の規模なら、うちがもし払うとしても月100万円程度が限界かな」(生保役員)という声もある中で、アフラックは年9600万円、ひまわり生命は同6000万円を過年度に支払っていた」、なるほど。 金融庁が損保不正問題への対応に注力している間に、生保各社と一部の乗り合い代理店の間で、ルールの潜脱を疑われるような取引が発覚。監視の目を盗むような行為に映ったことで、適正化に向けた調査に急きょ踏み切ることになったわけだ」、なるほど。